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CONTENTS
「泰緬鉄道」カンチャナブリー(タイ) KT
随 想
少林寺拳法と高齢者の健康保持… ………………………………… <大屋昭夫>… 464
シリーズ解説 果実とその加工品の話(第11回)
果実・果汁飲料と機能性成分(9) レモンの効能と機能性
…………………………………………………………… <三宅義明>… 466
シリーズ解説 日本の伝統食品(第5回)
日本伝統食品としてのすんき… …………………………………
<北村義明>… 472
風水樹花徒然記☆10:熱帯と出会う………………………………………… <大場秀章>… 477
海外技術・マーケット情報
健康飲料の世界的なトレンド…………………………………………………………………480
今コールド飲料が“ホット”……………………………………………………………………483
高分子フィルム包装材料の最近の進歩………………………………………………………486
肥満の研究:食品と腸と脳のメカニズム……………………………………………………488
たんぱく質素材の最新情報……………………………………………………………………491
新包装材料はシェルフライフと持続可能性に効果的………………………………………494
業界トピックス:上半期の低アルコール飲料市場動向/総市場は6%増で5年連続のプラス
… …………………………………………………………………………… 497
連載エッセー:食の遠近画法 近隣窮乏化… …………………………… <五明紀春>… 498
特別解説:青果物のバルクコンテナ物流システムの開発……………… <椎名武夫>… 500
特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
─平成25年の上半期を振り返って─
… …………………………………… <醸造産業新聞社 編集部>… 506
業界の話題…………………………………………………………………………………………… 512
今月の統計…………………………………………………………………………………………… 516
技術用語解説:応力-ひずみ曲線,塑性変形,弾性変形,引張り試験… ……………… 518
最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 519
野菜・果物を巡って(第五十六話) 日本のマンゴーに乾杯
… …………………………………………………… <吉田企世子>… 524
会長就任ご挨拶……………………………………………………………………………………… 526
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
随 想
••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••
少林寺拳法と高齢者の健康保持
おお
や
あき
お
大 屋 昭 夫
(東京都少林寺拳法連盟副会長)
少林寺拳法は,年齢性別に関係なく,特に高齢
が出来ず,柔道そのものに力の限界を感じるよう
者でも十分に楽しみながら出来ます。何故なら私
になっていました。そんなある日,後輩からこう
が実施しているからです。
いう武道があると紹介されたのが「少林寺拳法」
で,29歳の時でした。柔道は相手を投げるときは,
私は,昭和2年10月生まれで現在85歳です。私
は日本人の平均寿命を越えましたが,お陰様で現
腰を使って投げる技がほとんどですが,少林寺拳
在も仕事をしながら,道場では少林寺拳法の道衣
法の技は,突き蹴りもありますが,手首を捕って
を着て後進の指導をしております。ここまでこら
投げたり固めたりする技もあり,体の大きさに関
れたのは,丈夫な体に生んで育ててくれた親に感
係なく出来るので,これだと思い,迷いなく入門
謝するとともに,良き師,良き同僚そして良き後
しました。少林寺拳法の修行を継続するとともに,
輩に恵まれたからだと思っております。
技も徐々に上達して,技そのものにも魅力を感じ
るようになり,更に修行に励むようになりました。
これまでの人生を振り返ると,台湾の台中で生
まれ育ち,台湾の学校で学び,戦中は特攻隊員と
しかし,私が少林寺拳法を今日まで続けてこら
して訓練に明け暮れ,幸か不幸か昭和20年8月15
れたのは,技の魅力もさることながら,少林寺拳
日に本土で天皇陛下の玉音放送を聞いて戦争終結
法の教えの素晴らしさと今は亡き恩師の素晴らし
を知りました。戦後は生活のため色々な体験をし
い人柄を感じたからでした。
少林寺拳法は,元々釈尊の説いた「自己確立」
ました。体は小さかったのですが,若い頃は柔道
をやっていたせいか,腕っ節は少々自信がありま
の教え『己こそ己の寄るべ,己を措きて誰に寄る
した。
べぞ,良く整えし己こそ,まこと得がたき寄るべ
なり』を広めようとした達磨大師が,中国におい
しかし,講道館でも柔道をやっていましたが,
て,釈尊の教え,易筋行としての護身練胆の技法
自分より大きく力のある人にはなかなか勝つこと
や不撓不屈の精神を伝えたものを,少林寺拳法創
始者である宗道臣氏が,昭和の始めに「日本民族
発展のための捨石になろう」という思いから,特
殊工作任務を志願して満州(中国東北部)に渡り,
中国人から一つ一つ技法等を学ばれた。昭和20年
終戦直後,中国東北部にいた宗道臣氏は,国家や
民族の利益が優先し,力だけが正義であるかのよ
うな国際政治の厳しい現実を目の当たりにしまし
た。その中で宗道臣氏は,物事は影響力ある立場
に立つ人の人格や考え方によって大きな差がある
ことを発見され,
「人,人,人,すべては人の質
中高年の指導者に指導中の筆者(左から2人目)
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のきっかけで会得する機会が必ずあります。
にある」と悟られました。「すべてが人によって
何事も一朝一夕で出来るものではありませんが,
行なわれるなら,本当の平和は,慈悲心と勇気と
正義感の強い人を一人でも多く育てる以外にな
健康維持を思うなら,少林寺拳法の教えと技法を
い」と気付かれました。そして,「志のある青少
学ぶことは,心身の健康維持には最適の一つであ
年を集め,道を説いて正義感を引き出し,自信と
ると私は思っております。
少林寺拳法はその人の体力,年齢,時間に応じ
勇気と行動力を養わせて,祖国復興に役立つ人間
て無理なく修行でき,あくまでも自己確立と自他
を育成しよう」と決心されました。
しかし,帰国された宗道臣氏が見たのは,敗戦
共楽を目的の一つとしているからです。何よりも
下の混乱した日本の姿でした。道義も人情もすた
私自身がこの年齢で,少林寺拳法を実施している
れた日本人同士がいがみ合い,不正と暴力が横行
ことで証明出来ます。歳を重ねていても十分に修
する社会で,青少年も大人たちも国民の大多数が
行は出来ます。
日本は少子高齢化社会になり,特に高齢化対策
将来の希望もなく右往左往していました。そこで
に社会的関心が高まってきております。
宗道臣氏は,中国在住時に学んだ拳技を整理再編
し,創意工夫を加え,ご自身の人生観や世界観を
私自身高齢化の一員であります。少しでも社会
説き,人づくりと平和で物心ともに豊かな社会実
のために役に立たねばと思って生活をしてきまし
現を目的として,少林寺拳法と名付けて,昭和22年
た。せめて自分で出来ることは自分でしたいもの
10月に香川県多度津町で始められたのが最初です。
です。そのためには心身ともに健康でなければな
現在では,日本を含め世界37ケ国で,少林寺拳
りません。私はこれまで少林寺拳法の素晴らしさ
を他の人にも味わって頂こうと思い,少林寺拳法
法の修行に励んでいる拳士が沢山おります。
に関わってきましたが,大変良かったと思ってお
私は,昭和31年に少林寺拳法に巡り合い,今日
ります。
まで57年の時が過ぎました。少林寺拳法の教えと
技法は沢山ありますが,学べば学ぶほど奥が深く
これで良いと思えばそれ以上の発展や向上は止
これで良いと言うことはありません。これまで少
まります。常に向上心を持って望むことが大切で
林寺拳法を継続してきましたが,他の武芸も同じ
あり,何事も生涯修行ではないかと思って今日を
くこれで良いと言うことはないと思います。特に
生きています。
技法については自然体になること,つまり力を抜
人の命は天からの授かりものであり,命を大切
くことです。力を入れることによって相手も力を
にして天寿を全うするまで,私は生涯修行と思い,
入れ抵抗します。自分から力を抜くことにより,
これからも少林寺拳法を通じて後進の指導を行い,
相手も力が入りませんから抵抗も出来なくなるの
自分を大切に他人を大切にしながら,与えられた
です。技法の修練は形は分かるが,力の強弱は見
人生を過ごしたいと思います。
えるものではありませんが,体感して会得は出来
ます。
沢庵禅師は,自然体になることを「手足固く覚
えたその術は,心はさらに入らぬものなり」と言
われたそうです。
自然に体が動くようになれば,本来力は余り必
要なくなるものです。
よく自然体になるにはどうしたら良いかと質問
されますが,自然体になることは難しいことです
が,自然体に近づくことは出来ると思います。ま
ず地道に修行を続けることにより,ある日何らか
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少林寺拳法について法話中の筆者
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
第11回
果実・果汁飲料と機能性成分(9)
レモンの効能と機能性
み や け・よ し あ き
三重大学大学院農学
研究科(修士)修了。
現在,東海学園大学
スポーツ健康科学部
教授,学長補佐(学
生生活担当)。
三 宅 義 明
博士(農学)
機能性成分の含有量に大きな相違はない。また,
●1.はじめに ●
輸入レモンと比べて流通量は少ないが,国産のレ
カンキツ果実には様々な種類があるが,それぞ
モンも瀬戸内などで同様品種が栽培され,市販さ
れには甘味,酸味,香りに特徴がある。糖含量が
れている。一方,三重・紀南地区のマイヤーレモ
少なく,酸含量の多い果汁は,クエン酸を主体と
ンや小笠原諸島の小笠原・島レモン(別名,菊池
した有機酸を多く含み,また,ビタミンC(アス
レモン,マイヤーレモンと推察される)といった
コルビン酸)の含有率も高い。これらカンキツ果
レモン類が地域特産果物として栽培,市販されて
実は果皮に含まれる精油(香気成分を多く含む)
いる。レモン類のマイヤーレモン(学名 Citrus
とともに利用される場合が多く,一般に香酸カン
meyeri Y. Tanaka)1)は,レモンとオレンジ類と
キツと呼ばれている1)。世界的にはレモン,ライ
の交配品種で,上述のレモンと外観は似ているが,
ムが主流であり,わが国ではユズ,カボス,スダ
酸味が少し弱く,香りに若干の違いがある。ここ
チ,ダイダイなどが利用されている。香酸カンキ
では,香酸カンキツのレモン(Citrus limon(L.)
ツの果汁は酸味が強いため,一般的にはそのもの
Burm. f.)を中心に効能や機能性成分を紹介したい。
では飲料としては適さず,薄めたり,甘味を付け
●2.栄養成分 ●
たりして飲用,または,香味付け酸味調味料とし
て利用されている。
レモン果汁に含まれる特徴的な栄養成分は,ク
香酸カンキツのレモンは国内外で飲食されてお
エン酸,ビタミンC(アスコルビン酸)である。
り,清涼飲料水,酒類,調味料,菓子類などに広
日本食品成分標準表2)では,レモンの炭水化物は
く利用されている。わが国では,アメリカ合衆国・
8.6g/ 果汁100gであるが,その内の約6gはク
カリフォルニア産の輸入レモンが市場に出回って
エン酸である。ま た , ビ タ ミ ン C は 5 0 m g/果
いるが,収穫端境期には南半球のチリ産,ニュー
汁100g で, ミ ネ ラ ル の 中 で は カ リ ウ ム が 比
ジーランド産などの果実も流通している。これら
較 的 多 く , 1 0 0 m g /果汁 1 0 0 g で あ る 。
はユーレカ種,リスボン種,ビアフランカ種な
どのレモン(学名 Citrus limon(L)Burm. f.)1)で,
これらは果実の外観は類似しており,栄養成分や
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●3.レモンに含まれる機能性成分 ●
レモンに含まれる特徴的な機能性成分と効能に
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レモンの効能と機能性
第1表 レモンの機能性成分と効能に関する研究報告
関与成分
酸味成分
香気成分
生理作用,効能
クエン酸
Limonene
Eriocitrin
フラボノイド
参考文献
運動後の血中乳酸の減少促進
ヒト(運動負荷)
14
鉄吸収の促進
動物(鉄欠乏ラット)
24
脳内モノアミン遊離の増加
動物(ラット)
26
脳波(α波)の増大
ヒト
25
自律神経活動,交感神経の亢進
ヒト
27
抗酸化作用
試験管実験
3,4,5
がん細胞アポトーシス誘導
Eriodictyol
実験対象
ヒト骨髄性白血病細胞
(HL- 60)
13
食後・血清中性脂肪濃度上昇の
遅延効果
ヒト
18,19
Hesperidin,Eriocitrin
血圧上昇抑制効果
動物(高血圧自然発症ラット)
23
Hesperidin,Eriocitrin
血清コレステロール低下作用
動物(高脂肪食ラット)
17
Eriocitrin
酸化ストレス低減効果
(運動酸化ストレス)
動物(運動負荷ラット)
15,16
酸化ストレス低減効果
(高血糖酸化ストレス)
動物(糖尿病発症ラット)
12
血清 LDL 酸化抵抗性
ヒト
21,22
Hesperidin,Eriocitrin
クマリン類
8-Geranyloxypsolaren
5-Geranyloxypsolaren
5-Geranyloxy-7-methoxycoumarin
発がんプロモーション抑制作用
フェニル
プロパノイド
1-Feruloyl-β-D-glucopyranoside
1-Sinapoyl-β-D-glucopyranoside
抗酸化作用
ヒトリンパ腫細胞
(Raji 細胞)
6
試験管実験
8
ついての研究報告を第1表にまとめた。以下に説
ノース(ラムノースの C1 の OH 基とグルコース
明したい。
の C6 の OH 基が脱水結合した二糖類)のフラバ
(1)フラボノイド
ノン配糖体である Hesperidin(8.9mg/100mL 果
フラボノイドは,2つのベンゼン環が炭素原子
汁,173mg/100g果皮)と Eriocitrin(12.1mg/100
3個からなるプロピレンの両端に結合した構造
(C6-C3-C3)を持つ化合物の総称で,中央の C3 が
mL 果 汁,280mg/100g 果 皮 ) が 主 に 含 ま れ
ている(第1図)。レモンは他のカンキツと比
酸素を含むヘテロ環の
酸化還元状態の違いに
よってフラボン類,イ
ソフラボン類,フラボ
ノール類,フラバノン
類,アントシアン類,
Diosmin
Hesperidin
カ テ キ ン 類( フ ラ バ
ノール類)などに分類
3'
される。カンキツには
4'
8
主にフラバノン類とフ
6
ラボン類が存在し,こ
れらは果汁に比べ果皮
に多く含まれている。
レモンには糖鎖がルチ
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6,8-Diglucosyldiosmetin
Eriocitrin
第1図 レモンに含まれる特徴的なフラボノイド
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
1.03mg 含まれている8)。
べ Eriocitrin が特に多く含まれており,後述す
(4)香気成分
るが Eriocitrin は抗酸化性などの多くの機能性
3),
4)
を有している成分である
カンキツの香気成分は Limonene が共通の主成
。また,レモンに
は フ ラ ボ ン 類 の Diosmin(1.3mg/100mL 果 汁,
分(精油中の60~90%)でシトラスフレーバー
26.2mg/100g 果 皮 ) や 6 , 8-Diglucosyldiosmetin
に 寄 与 し て い る。 レ モ ン に つ い て も 主 成 分 は
(4.9mg/100mL 果汁,33.9mg/100g果皮)が含ま
Limonene であり,また,レモンの香り(レモンフ
5)
レーバー)に関与するキーコンパウンドに Citral
れていることも特徴である 。
があり,これはレモンの特徴的な成分である。
グレープフルーツや夏ミカンなどの苦味が強い
(5)マイヤーレモンの機能性成分の特徴
カンキツは,糖鎖がラムノグルコシド(ラムノー
ス C1 の OH 基とグルコースの C2 の OH 基が脱水
レモンとオレンジ類との交配品種のマイヤーレ
結合した二糖類)のフラボノイド配糖体を多く含
モンはレモン類に属し,外観はオレンジ類よりも
む。これら成分は苦味が強いが,レモンにはほと
レモンに似ている。マイヤーレモンの機能性成分
んど含まれていない。カンキツの中ではレモンの
の特徴は,フラボノイドにおいてはレモンとオレ
果皮は比較的苦みが弱いが,その一要因にラムノ
ンジ類と同様に Hesperidin が含まれており,レ
グルコシド型のフラボノイド配糖体が少ないこと
モンの特徴成分の 6 , 8-Diglucosyldiosmetin がレ
がある。
モンとほぼ同量含まれている。オレンジ類と比
(2)クマリン類
べ Narirutin が,レモンと比べ Eriocitrin が少量
カンキツは,植物に広く分布しているクマリン類
である。各種果実のフラボノイドの主成分分析
を含有しており,また,フラン環とクマリンが縮環
の分散図では,マイヤーレモンは,レモンとオ
した構造のフラノクマリン類(Psolaren 等)も含ま
レンジ類の中間的位置であり,レモンとオレン
れている。これらは果汁にはほとんど存在せず,
ジ類のそれぞれの一部の特徴を有していた9)。一
果皮に存在し,特にフラベド(外果皮)に多く
方,マイヤーレモンのクマリン類は,レモンに特
含まれている。レモンは 8-Geranyloxypsolaren
徴的に含まれる上述のクマリン類は含まれてお
(3.35mg/100g 果 皮 ),5-Geranyloxypsolaren
ら ず,5 , 7-Dimethoxycoumarin と 7-methoxy-5-
(3.47mg/100g
),5-Geranyloxy-7-
prenyloxycoumarin が比較的高含有である10)。さ
methoxycoumarin(2.15mg/100g 果 皮 ) が 特 徴
らに,マイヤーレモンから新規抗酸化成分である
果
皮
6)
的に多く含まれており,他のカンキツと異なる 。
フェニルプロパノイドの Meyerin(p-クマル酸誘
カンキツのフラベドには香気成分が含まれている
導体)が単離されている11)。また,マイヤーレモ
精油が存在し,市販のレモン精油やレモン精油を
ンの香気成分の組成は,オレンジ類よりレモンに
原料としたコールドプレス・レモンオイル中には
類似しているが,レモンと比べると Thymol を
7)
335〜550 ppm の同成分が検出されている 。
多く含有しているのも特徴である。以上のように,
(3)フェニルプロパノイド
マイヤーレモンは,レモンとオレンジの交配種で
フェニルプロパンが縮合した化合物(C6 -C3 )の
外観はレモンと比較的類似しているが,機能性成
フェニルプロパノイドは植物に広く分布しており,
カンキツにも含まれている。レモン果汁から抗酸
分の含有量や組成に相違がある。
●4.レモンの効能 ●
化性を示すフェニルプロパノイドのフェルラ酸配
(1)抗酸化作用
糖 体(1-Feruloyl-β-D-glucopyranoside) と シ ナ
ピ ン 酸 配 糖(1-Sinapoyl-β-D-glucopyranoside)
レモンフラボノイドは,レモンから抽出される
が 単離され,各成分は果汁100g当たり1.71mg,
フラボノイド成分を多く含む素材である。これは,
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レモンの効能と機能性
レモン果皮をアルコールで抽出し,疎水性吸着樹
汁もしくはクエン酸の摂取により,血中乳酸の除
脂にて吸着,洗浄の処理をすることによって調製
去を促進する効果が認められている14)。レモン果
さ れ,Eriocitrin が38.5 %,Hesperidin が18.2 %,
汁の効果は約6%含まれるクエン酸に起因すると
6 , 8-Diglucosyldiosmetin が0.72%,Diosmin が 微
考えられた。運動後に摂取する飲食品に,レモン
12)
量に含まれている 。in vitro の抗酸化活性測定
の酸味と糖質の甘味を利用した食品(はちみつレ
にて,レモンフラボノイドは,他のカンキツから
モンなど)があるが,これらに運動後の血中乳酸
調製されるフラボノイド素材よりも抗酸化活性が
の除去を促進する生理作用が示唆され,骨格筋細
高い。その要因は抗酸化物質の Eriocitrin が高含
胞の乳酸の蓄積は運動パフォーマンスの低下につ
有であるからである。Eriocitrin はフラボノイド
ながる場合があり,その抑制に有効であると思わ
B環の C 3’
,C 4’に隣接する水酸基が存在しており,
れる。
これが高い抗酸化活性に関与していると思われる
運動負荷によって体内の酸化ストレスを過剰
(第1図)。Eriocitrin はライム,スダチなどにも
にさせたラットに Eriocitrin を摂取させることで,
3−5)
肝臓や骨格筋における酸化損傷を抑制する効果が
レモンフラボノイドをⅠ型糖尿病発症ラットに
認められている15),16)。Eriocitrin に運動酸化スト
摂取させたところ,糖尿病発症によって肝臓など
レスに対する低減効果が示され,急激な運動など
に生じる酸化障害が抑制され,体内の酸化ストレ
は体組織に酸化障害を与える場合があり,その予
含まれるが,レモンに最も多く含まれている
。
12)
スの低減効果が示された 。同効果は Eriocitrin
防に有効であると思われる。
(3)抗動脈硬化作用,血圧上昇抑制効果
と Hesperidin にも確認されている。糖尿病発症
は体内の酸化ストレスを過剰にし,合併症を誘発
高 脂 肪・ 高 コ レ ス テ ロ ー ル 食 餌 の ラ ッ ト
するといわれており,体内酸化ストレスを低減す
に,レモンフラボノイドに含まれる Hseperidin,
るレモンフラボノイドには糖尿病合併症の抑制効
Eriocitrin を 摂 取 さ せ た と こ ろ, 血 清 コ レ ス テ
果が期待される。
ロール濃度の低下効果が認められている17)。また,
(2)がん抑制作用
ヒトへのレモン果汁,レモンフラボノイドの摂取
レ モ ン フ ラ ボ ノ イ ド に 約40 % 含 ま れ て い る
実験では,食後血清中性脂肪濃度の上昇遅延効果
Eriocitrin は 配 糖 体 で あ り, そ の ア グ リ コ ン で
ある Eriodictyol にヒト骨髄性白血病細胞 HL-60
が認められている18),19)。血中のコレステロール
に 対 し て ア ポ ト ー シ ス( 細 胞 の 自 然 死 ) の 誘
起因することが知られているため,レモンフラボ
濃度や中性脂肪濃度の高値は,動脈硬化の発症に
13)
導作用が認められている 。レモンフラボノ
ノイドはこれらを低下させ,動脈硬化の予防効果
イ ド の 成 分 に, が ん 細 胞 の 増 殖 抑 制 作 用 が 示
が期待される。
さらに,レモンフラボノイドをβ-グルコシダーゼ
さ れ た。 ま た,Epstein-Barr ウ イ ル ス(EBV)
活 性 化 抑 制 実 験 か ら, レ モ ン の ク マ リ ン 類 の
によりレモンフラボノイド・アグリコンを調製し20),
8-Geranyloxypsolaren,5-Geranyloxypsolaren,
これをヒトに摂取した実験では,血清 LDL の被
5-Geranyloxy-7-m e t h o x y c o u m a r i n に 発 ガ ン
酸化能への抵抗性が認められている21),22)。LDL
プロモーションの抑制作用が認められてい
の酸化は,動脈硬化発症の初期過程といわれてお
6)
る 。以上,レモンには,がん抑制作用の機
り,レモンフラボノイドには LDL の酸化を抑制
能性物質が見いだされている。
する効果(抗酸化作用)があるため,この実験か
(3)運動に対する生理作用,抗酸化作用
らも動脈硬化の予防効果が示唆された。
さらに,高血圧自然発症ラットへのレモン果汁,
持久運動後の飲料摂取がヒトの血液成分濃度に
レモンフラボノイドの摂取により,血圧上昇抑制
及ぼす影響を検討したところ,運動後のレモン果
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⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話
効果が認められている23)。高血圧予防の食事指導
モン果汁の香気成分を摂取することにより,リ
として減塩食がすすめられている。その一つに,
ラックス効果が示された25)。また,香気成分の
レモン果汁などの酸味が強い香酸カンキツを,醤
Limonene をラットへ投与したところ,脳内モノ
油などの食塩高含有調味料の代替に利用すること
アミン遊離の増加が認められている26)。さらに,
もある。レモン果汁は減塩効果のみでなく,果汁
レモン果汁のヒト摂取実験では,摂取後に自律神
やレモンフラボノイド摂取からも高血圧の予防効
経の交感神経活動の亢進が認められており,レモ
果が示唆された。
ン果汁の自律神経活動への影響も示されている27)。
こうしん
(4)ミネラルの吸収向上作用
●5.おわりに ●
レモン果汁に多く含まれるクエン酸は,ミネラ
ルと結合するキレート作用がある。鉄欠乏食餌で
香酸カンキツのレモンにはクエン酸,アスコル
貧血状態としたラットに,レモン果汁と鉄分を
ビン酸などの栄養成分が含まれることはよく知ら
24)
投与したところ,鉄吸収の向上が認められている 。
れているが,レモンには機能性成分のフラボノイ
レモン果汁のクエン酸と鉄とのキレート作用によ
ド,クマリン類,フェニルプロパノイドといった
り鉄吸収が向上したと推察された。厚生労働省の
特徴的な成分が含まれていることが分かってきた。
国民健康栄養調査では,日本人のカルシウムと鉄
これら機能性成分の生理作用や効能については解
の摂取不足が報告されおり,レモン果汁には摂取
明されつつある。レモンはオレンジ,グレープフ
不足のミネラルに対しての吸収向上効果が示され
ルーツと同様によく知られたカンキツ果実で,世
た。
界中で食べられている。わが国は輸入果実が多い
(5)リラックス作用,自律神経活動への影響
が,国内の各地域ではレモンやレモン類が地域特
レモン精油を添加して香り成分を高めたレモン
産果物として栽培され,市販されている。レモン
果汁をヒトに摂取させたところ,摂取後の脳波
に含まれる機能性成分の情報や知識が消費者に受
(α波)の増大が認められている。α波の増大は
け入れられ,日々のレモンの摂食が国民の健康増
進につながっていくことを切望している。
精神のリラックス作用と関連があるといわれ,レ
参 考 文 献
1)カ ンキツ総論,香酸(酸果)カンキツ(酢ミカン),
p185−195,岩堀修一,門屋一臣 編,養賢堂 1999
2)食品成分表,香川芳子監修,女子栄養出版 2011
3)Miyake Y., et al., Isolation of eriocitrin(eriodictyol
7-rutinoside)from lemon fruit(Citrus limon BURM.
f.)and its antioxidative activity. Food Sci. Technol.
Int. Tokyo 3 : 84−89(1997)
4)Miyake Y., et al., Characteristics of antioxidative
flavonoid glycoside in lemon fruit. Food Sci. Technol.
Int. Tokyo 4 : 29−32(1998)
5)Miyake Y., et al., Isolation of C-glucosylflavone from
lemon peel and antioxidative activity of flavonoid
compounds in lemon fruit. J. Agric. Food Chem. 45 :
4619−4623(1997)
6)Miyake Y., et al., Identification of coumarins from
lemon fruit(Citrus limon)as inhibitors of in vitro
tumor promotion, superoxide and nitric oxide
食品と容器
470
generation. J. Agric. Food Chem. 47 : 3151−3157
(1999)
7)M iyake Y., et al., Isolation and extraction of
antimicrobial substances against oral bacteria from
lemon peel. J. Food Sci. Technol. 48 : 635−639
(2011)
8)Miyake Y., et al., Isolation of antioxidative phenolicglucosides from lemon juice and their suppressive
effect for expression of blood adhesion molecules.
Biosci. Biotechnol. Biochem. 71 : 1911−1919(2007)
9)三宅義明 , et al., マイヤーレモンに含まれるフラボノ
イド,クマリンの特徴 . 日本食品科学工学会誌 58 :
178−181(2011)
10)三 宅義明 , et al. 小笠原・島レモンに含まれるフラ
ボノイド,フェニルプロパノイド,クマリン類の特
徴 . 日本食品科学工学会誌 60 : 38−42(2013)
11)Miyake Y., et al., A novel trans-4-hydroxycinnamic
2013 VOL. 54 NO. 8
レモンの効能と機能性
acid derivative from Meyer lemon(Citrus meyeri).
Food Chem. 135 : 2235−2237(2012)
12)M iyake Y., et al., Protective effects of lemon
flavonoids on oxidative stress in diabetic rats. Lipids
33 : 689−695(1998)
13)Ogata S., et al., Apoptosis induced by the flavonoid
from lemon fruit(Citrus lemon BURM. F.)and
its metabolites in HL- 60 Cells. Biosci. Biotechnol.
Biochem. 64 : 1075−1078(2000)
14)三宅義明 , et al., ヒトにおけるレモン果汁およびクエ
ン酸摂取が運動後の血中乳酸濃度に及ぼす影響.日本
栄養・食料学会誌 54 : 29−33(2001)
15)Kato Y., et al., Preparation of monoclonal antibody
to N.
(hexanonyl)lysine
: Application to the
evaluation of protective effects of flavonoid
supplementation against exercise-induced oxidative
stress in rat skeletal muscle. Biochem. Biophys. Res.
Commun. 274 : 389−393(2000)
16)M inato K., et al., Lemon flavonoid, erioctrin,
suppresses exercise-induced oxidative damage in rat
liver. Life Sci. 72 : 1609−1616(2003)
17)Miyake Y., et al., Lipid-lowering effect for eriocitrin
of main flavonoid in lemon fruit in rats on a highfat and high-cholesterol diet. J. Food Sci. 71 : S633−
S637(2006)
18)臼田美香 , et al., レモンの食後高脂血症抑制作用の検
討 . 日本未病システム学会雑誌 10 : 62−63(2004)
19)臼田美香 , et al., レモンフラボノイドの食後血清中性
脂肪濃度に及ぼす影響 . 機能性食品と薬理栄養 3 : 37
−40(2005)
20)Miyake Y., et al., Difference in plasma metabolites
concentration after ingestion of lemon flavonoids and
their aglycones in humans. J. Nutr. Sci. Vitaminol.
52 : 54−60(2006)
21)桜井智香 , et al., レモンフラボノイドのヒト LDL 被酸
化能に関する検討 . 日本未病システム学会雑誌 9 : 239
−242(2003)
22)Miyake Y., et al., Preparation of a lemon flavonoid
aglycone and its suppressive effect on the
susceptibility of LDL to oxidation following human
ingestion. Food Sci. Technol. Res. 15 : 83−88(2009)
23)Miyake Y., et al., Suppressive effect of components
in lemon juice on blood pressure in spontaneously
hypertensive rats(SHR).Food Sci. Technol. Int.
Tokyo 4 : 29−32(1998)
24)Takatera K., et al., Effects of citric acid and lemon
juice on iron absorption and improvement of anemia
in iron-deficient rats. Food Sci. Technol. Res. 18 :
127−130(2012)
25)石川清香 , et al., レモン果汁の香り成分によるラット
の脳内神経伝達物質及びヒトの脳波に与える影響につ
いて.Aroma Res. 3 : 126−130(2002)
26)F u k u m o t o S . , e t a l . , F l a v o r c o m p o n e n t s o f
monoterpenes in citrus essential oils enhance the
release of monoamines from rat brain slices. Nutr.
Neurosci. 9 : 73−80(2006)
27)永井成美 , et al. レモン,グレープフルーツ摂取が自
律神経活動動態に及ぼす効果.肥満研究 14 : 17−24
(2008)
別刷り合本をご利用下さい
食品加工における微生物・酵素の利用<伝統食品編>
食品製造と微生物の関わりは微生物の存在を認識するよりもはるか以前に始まる。近年,これらの技術はバイオ
先端技術を始めとする最新の科学技術によって,その合理性と精微さが明らかにされつつあるが,本書は<伝統食
品編>として,微生物を利用した伝統的な発酵食品について専門の方々に解説をしていただいた。
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機能性/納豆-最近の研究-/漬物(発酵漬物)/Ⅲ酪農製品:発酵乳・乳酸菌飲料/チーズ(チーズの多様性と
乳酸菌由来酵素)/バター(発酵バター)概論/Ⅳ酒精飲料:ビール小史(1),(2)ビール・発泡酒・第3のビ
ール/清酒概論,清酒の機能性/焼酎(1)歴史,製法、焼酎(2)焼酎の世界/ワインの科学(1)ワイン造り
の基礎知識、ワインの科学(2)ブドウ栽培とワイン造り/蒸留酒と微生物(1)ウイスキー・ブランデーの基礎
知識と微生物,蒸留酒と微生物(2)蒸留酒の貯蔵・熟成・ブレンダー,蒸留酒と微生物(3)酒の世界(蒸留酒)
と微生物・その楽しみ方/Ⅴパン類:製パン技術とパン酵母/冷凍生地製パン法と冷凍耐性パン酵母/米粉を利用
した製パン技術
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
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2013 VOL. 54 NO. 8
◆ 第5回 ◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
日本伝統食品としてのすんき
き た む ら・よ し あ き
筑波大学生物学類卒業,同大
学院農学研究科に進学の後,
農林水産省食品総合研究所炭
水化物研究室長,農林水産省
総合食料局技術室長等を経て,
現在,(独)農研機構 食品総
合研究所応用微生物研究領域
長。博士(農学)
◆1.はじめに ◆
北 村 義 明
3
・
3
・
「木曽の酢茎に春も暮れつつ」 凡兆
すんき(すんき漬け)とは 木曽御嶽山麓の長
野県木曽郡大滝村,木曽町三岳,開田高原から木
と読まれた記録が残っている。
祖村にかけて,古くから代々受け継がれて製造さ
京都の有名な「すぐき(酸 茎 )」は,上賀茂の
れている発酵漬物である(写真1)。主に赤カブ
在来カブであるすぐき菜を漬け込んだ発酵漬物で
系の大滝カブや開田カブを初めとした在来品種の
あるが,こちらは塩を加え,茎葉部と根部をその
カブの茎葉部分を漬け込んだものであるが,その
まま漬け込むところが,「すんき」と大きく異な
最大の特徴は,食塩を全く使わない無塩漬物であ
る。海から遠く,塩が貴重品であった木曽地方で
るところである。無塩の漬物は,新潟県の中越地
も京都のすぐきのような漬物を作ろうとして工夫
方に「いぜこみ菜」または「ゆでこみ菜」と呼ば
したものであろうと考えられている。
3
れるものや,世界的にも中国の「酸菜」やネパー
ルのグンドルック等が知られているが,数少ない。
「すんき」は古くは元禄3年(1690年)に大津
3
・
◆2.すんきの作り方1) ◆
すんきの製造工程は第1図のように非常に単純
での芭蕉一門による連句の中で
であるが,漬け込む前に材料を「湯がく」ことに
特徴がある。前述の
京都の「すぐき」は
洗浄したすぐき菜の
根部の表面を切り落
とし,茎葉部でくる
むようにして塩を加
えて生のまま漬け込
むが,すんきの場合
は茎葉部のみを加熱
写真1 「すんき」製品 (カラー写真を HP に掲載 C051)
食品と容器
472
したものを,塩を加
2013 VOL. 54 NO. 8
◆
日本伝統食品としてのすんき
えずそのまま漬け込む。この際に,後述する「す
前に,小規模な漬け込みを行い,そこで作ったそ
んき種」を加えることも特徴の一つである。そし
の年のすんきを「すんき種」にして大規模に漬け
て,そのまま雨風を防ぐ物置に保管する場合や,
込む場合もある。また,「すんき干し」の代わり
一晩室内に保管し,翌日寒い小屋等に移すなど,
に,桶の底に残った漬け汁を保存し,それを種と
各家庭で様々な工夫をして,各家庭の味を作って
して加える方法もあるという。
2-2.ズミの実を利用する漬け方1, 4)
いる。2~3日で乳酸菌が繁殖し,低温での発酵
で1週間程度で食べられるようになるが,熟成に
「すんき干し」を利用せずに,「ズミ」の果実を
おけ
は2カ月程かける。11月頃に製造し,寒い間は桶
種として仕込む方法もある。
か
ごと凍りついているものを,凍ったまま掻き出し
水洗いしたカブ菜を3~4cm 程度にざく切り
て食卓に添えたり味噌汁に入れたりするが,より
した後に,大鍋の湯の中で軽く湯がき,同様に軽
長期間保存するためには,気温が低い時期に軒下
く湯切りした後,適当量を桶に入れる。そこに,
等で陰干ししてよく乾かせた「すんき干し」とし
山から採取して,軽く圧搾してつぶしたズミの果
て保存する。
実をいれ,よくかき混ぜる。これを繰り返し,最
そ
後に落としぶた,重石を乗せて空気を遮断する。
上述のすんきを作る各地域や各家庭で様々な工
夫を凝らしており,作り方もいくつかのバリエー
ズミのほかに,ヤマブドウ等の果実が使われるこ
ションが報告されているので,代表的な二つを簡
ともある。
すんきを漬ける桶は,伝統的には背が高めの木
単に紹介する。
2-1.「すんき種」を利用する漬け方
桶が使われていたが,近年はプラスチックの漬物
材料のカブは首部を少し残して根部を切り落と
樽が使われている。味噌や他の有塩漬物に使った
した茎葉部(以降,本稿では便宜的にカブ菜と呼
樽や重石を流用すると失敗するといわれ,厳禁で
ぶこととする)を,そのまま水でよく洗浄した
ある。無塩の漬物であることから,他の漬物等で
後,湯を沸かした大鍋に入れ,1~2分軽く湯が
働く耐塩性菌や,塩分の働きで押さえられている
く。鍋から取り出したカブ菜を,一度別の容器に
腐敗菌等の混入がその原因であろう。
2, 3)
たる
置く程度に軽く湯切りした後,若干のゆで汁も含
写真2は,2010年に木曽福島で開かれたすんき
んだまま熱いうちに専用の桶に隙間なく敷き詰め
シンポジウムの際に披露されたすんき製造実演の
る。1段敷き詰めた後,「すんき種」を上に並べ
写真である。ここではざく切りにしたカブ菜に,
た後,更に1~2層湯がいたカブ菜を敷き詰め,
ざく切りにしたすんき種を混ぜ込む製造方法が紹
更にすんき種を加えることを繰り返し,桶の上ま
介されている。
で漬け込む。最後に落としぶたを
して,仕込み量の2倍程度の重さ
のよく洗った重石を乗せ,空気を
遮断する。落としぶたを使わずに
石だけ乗せている場合もある。
前の冬に漬け込んだすんきの
「すんき干し」を「すんき種」と
して利用する。乾燥状態のまま上
記の桶に漬け込む場合や,一度水
でよく戻してから利用する場合も
ある。また,大がかりに漬け込む
食品と容器
第1図 「すんき」の製造工程 (カラー写真を HP に掲載 C052)
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2013 VOL. 54 NO. 8
◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
近の研究では,乳酸菌の中でも発酵過程を通し
◆3.すんきの栄養学 ◆
て Lactobacillus delbrueckii, L. fermentum と L.
plantarum が優占種であると報告されている8)。
共立女子大学の板橋は,精力的にすんきの栄
養・調理科学的研究を行い,無塩のすんき製法と
この L. delbrueckii もすんきに特徴的な新亜種で
これに食塩5%を加えた製法での模擬製造を行い,
あ る L. delbrueckii subsp. sunkii subsp. nov. と
食塩添加では原料中の粗タンパク質が製造後に半
する事が提唱され 9),また他の研究ではすんき
減するのに対し,無塩製法では90%以上が残存す
中の乳酸菌として L. buchneri グループに含まれ
ることを報告した
5, 6)
。当時の観察では,木曽地
る4種の新種 L. kisonensis sp. nov, L. otakiensis
方で一回の食事において,味噌汁,油いため,お
sp. nov, L. rapi sp. nov, L. sunkii sp. nov が提唱
ひたし等の形で50g前後(生鮮品として約500g)
されている10)。これらの乳酸菌が原料カブ菜に含
のすんきを摂取していたとのことであり,この中
まれる糖質を発酵して乳酸等の有機酸を産生して,
に約10gの粗タンパク質が含まれる計算になるこ
pH4.2前後の酸性環境になることに加え,優占種
とから,流通機構が乏しかった過去において有効
によるバイオプリザベーション効果により他の雑
なタンパク源であったと考えられている。一食で
菌の生育を抑えていると考えられる。
500gの摂取は非常に多量であると思えるが,無
ところで,「作り方」のところですんき干しの
塩であるからこそ摂食できる量であろう。
「すんき種」や代わりにズミの果実を加えること
また,板橋らは,ズミを使った製法ではすんき
を紹介した。当初これらの「種」は乳酸菌のス
種を使った製法よりも,ズミ果実由来の有機酸含
ターターとして働くのではないかと考えられてい
4)
量が高く,官能試験で高評価が得られることや ,
たが,いくつかの研究により,すんき干しの中に
プレーンヨーグルトを発酵種として用いたすんき
はこれらの優占種の乳酸菌はほとんど生存してお
漬けを模擬製造し,すんき種を用いたものより遊
らず,またズミの果実からも乳酸菌が分離されな
離の呈味アミノ酸の含量が高く,官能評価で優れ
かったことが示されている11 ,12)。これらの「種」
たものができることも紹介している7)。
は乳酸菌のスターターとしてではなく pH 調整剤
として,有用乳酸菌の優先的生育を促すものと考
◆4.すんきの微生物 ◆
えられる。これら乳酸菌は原料カブ菜由来のもの
すんきは無塩漬物であるが糸状菌,酵母ならび
がこれら酸性環境で優占種として生育してきたも
に乳酸菌以外の細菌はほとんど観察されない。最
のと思われるが,漬け込み前の「湯がき」も,原
写真2 「すんき」の模擬製造 (カラー写真を HP に掲載 C053) (写真提供:東京家政大学 宮尾茂雄 教授)
食品と容器
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2013 VOL. 54 NO. 8
◆
日本伝統食品としてのすんき
料組織の軟化とともに他の雑菌混入の低減に役
様々なヒトの体調を整える健康機能を発揮すると
立っていると考えられる。
して注目されているが,すんきから分離された発
酵乳酸菌についてもアレルギー予防・軽減効果
◆5.すんきの食べ方 ◆
がん
や13),胃癌の原因菌であるピロリ菌の増殖抑制効
すんきは,2~3cm に切り,そのまま器に盛
果,変異原物質の吸着効果等14)が報告されてい
りつけて食卓に並ぶ場合が多い。塩分がないので
る。また,原料カブ菜由来の高い食物繊維含有
普通の漬物のつもりで食べれば最初は物足りなさ
量や,発酵食品中のポリフェノール,ビタミン
を感じるかもしれないが,そのまま食べればほん
等の抗酸化性も期待されることに加え,無塩で
のりと爽やかな香りとほどよい酸味を楽しむこと
あることから食事全体の摂取塩分の低減効果が
ができ,これを楽しむ事ができれば多量に食べら
あるなど,体に優しい優れた発酵食品である。
れるという無塩ならではの楽しみもある。塩分が
◆7.終わりに ◆
しょう
欲しい場合は醤油をかけたり,かつお節と一緒に
食べるのも美味しい。専用の醤油たれを付けて販
すんきの季節は11月の仕込みから,春先までが
売している工房もある。そのまま食べる事に加
中心となるが,先に挙げたすんき干しは次の年の
え,かけそばにすんきを乗せるすんきそば,豆腐
すんきができるまで利用される。近年は,凍結乾
と共に具として加える味噌汁であるすんき汁が有
燥したすんきを入れた「すんき茶漬けのもと」も
名であり,爽やかな酸味が良い風味を与えている
販売されていて,通年で楽しむことができる。食
(写真3)。これ以外に,あえ物,油炒め,炒め煮,
の健康志向のためのスローフード運動の推進や,
うま煮等,調理素材として,またすんき自体を調
日本の伝統発酵食品の見直しなどから近年人気が
味料として各種料理に利用される。地元の木曽町
出てきており,これに地域産業振興が重なり,木
では,すんきを使ったおやき,カレー,白和え,
曽町では町をあげてすんきによる町おこしに取り
おこわ,蒸しパン,サラダ,パスタ,ピザ,焼き
組んでいる。すんきは木曽地方の家庭で自家用に
飯等数々の料理を紹介している。また,生のすん
作られるほかに,地元の工房等が製造したものが
きがない時期は,冬の寒い時期に乾燥させた「す
販売されているが,木曽地方以外では,長野県内
んき干し」を戻して料理素材として利用すること
でさえほとんど販売されておらず,東京等大都市
ができる。
での入手は困難であるので,是非木曽まで足を伸
いた
ばして,味わっていただきたい。木曽まで出向く
◆6.すんきの健康機能 ◆
ことができない方々は,インターネット等を利用
した通信販売でも取り寄せることができるので15),
近年,乳酸菌はプロバイオティックスとして
すんき汁
すんきそば
おやき
写真3 「すんき」料理 (カラー写真を HP に掲載 C054)
(写真提供:東京家政大学 宮尾茂雄 教授)
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◆
❖シリーズ解説❖ 日本の伝統食品
シーズンである11月から3月頃までに是非お取り
シャキシャキした歯ごたえの虜となること請け合
寄せいただきたい。無塩漬物の爽やかな酸味と
いである。
参 考 文 献
1)映 像記録「DVD 日本の味・伝統食品 第3集」
(財)
221−226(2008)
9)Kudo, Y. et al., Int. J. Sys. Evol. Microbiol. 62, 2643
味の素食の文化センター企画・製作・出版(1998)
2)中山大樹,Japan Food Science, 3(6),53−55(1964)
−2649(2012)
3)宮尾茂雄,New Food Industry, 26(2),61−64(1984)
10)Watanabe, K. et al., Int. J. Sys. Evol. Microbiol. 59,
4)板 橋雅子,高村節子,日本食品工業学会誌,32(12),
754−760(2009)
11)宮尾茂雄,New Food Industry, 32(1),3−5(1990)
859−863(1985)
5)板橋雅子,調理科学,15(4),226−228(1982)
12)遠藤明仁,日本乳酸菌学会誌,22(2),87−92(2011)
6)板橋雅子,調理科学,15(4),229−231(1982)
13)増田健幸ら,日本乳酸菌学会誌,21(1),42−49(2010)
7)板 橋雅子,高村節子,日本食品工業学会誌,32(1),
14)小松あき子ら,日本調理科学会誌,44(2),128−136
56−60(1985)
(2011)
8)Endo, A. et al., Letters in Applied Microbiology 47,
15)http://www.kisomachi.or.jp/kiso-sunki.html
別刷り合本をご利用下さい 新発売 !
米 の 話
本書は本誌『食品と容器』のシリーズ解説:米の話(第1回~第23回)を別冊にしてまとめたものである。
これまでにも,米に関する成書は数多く出版されてきている。特にサイエンスの部分については不変の真理が論
文に編纂されており,その部分についてはゆるぎない。技術についても同様で,日々改良されている部分はあるが
基本原理はしっかりと不動である場合が多い。しかしながら,近年の社会情勢の変化で“6次産業化”というキー
ワードが生まれているように,米周辺でも生産・加工・流通がこれまでに比べてより密接に関連することが求めら
れている。これまでの良書と同内容が多々含まれるが,過去の情勢と現在の情勢の違いが反映されていることで,
新しさを感じさせる書を目指した。
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需要動向(農林水産省)/第3回 米の成分(1)粒の生物的形成(増村威宏)/第4回 米の成分(2)澱粉(藤
田直子・阿久澤さゆり)/第5回 米の成分(3)タンパク質(大能俊久)/第6回 米の成分(4)脂質 こめ
油の魅力(浦田貴之)/第7回 米の成分(5)機能性脂質(宮澤陽夫)/第8回 米の品質(1)玄米品質 (山
川博幹)/第9回 米の品質(2)精米(河野征弘)/第10,11,12回 米の加工利用(1)業務用炊飯Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ(平
田孝一)/第13回 米の加工利用(2)家庭用炊飯(加古さおり)/第14回 米の加工利用(3)炊飯米特性の理
化学測定(鈴木啓太郎)/第15回 米の加工利用(4)無洗米(鈴木敬子)/第16回 米の加工利用(5)発芽玄
米(日浦拓也)/第17回 米の加工利用(6)保存食(伊藤秀朗)/第18回 米の加工利用(7)米粉の伝統的利
用(宮本 守)/第19回 米の加工利用(8)米粉の新たな利用(宮本 守)/第20回 米の加工利用(9)酒(古
川幸子)/第21回 米の加工利用(10)米を利用した医薬品(黒田昌治)/第22回 米の加工利用(11)非食利用
(大野 孝)/第23回 世界の米料理(奥西智哉)
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食品と容器
476
2013 VOL. 54 NO. 8
味を一変してしまう魔法の粉,コショウの魅力は
風水樹花徒然記 ☆10
絶大であり,その魅力と名はまたたく間にヨー
熱帯と出会う
おお
ば
ひで
ロッパ中に知れ渡っていった。
あき
☆Ⅱ コショウがきっかけ ☆
大 場 秀 章
(東京大学名誉教授)
コショウを陸路で入手し,売り捌いていたのが
☆Ⅰ 世にいう大航海時代 ☆
イタリアの商人たちだった。先進ヨーロッパのな
社用を含め,ヨーロッパに出かける人や機会が
などから直接東方の品々を買い付け,それらを陸路
かでは中東に最も近いイタリアでは,アラビア商人
増えている。散策して受ける印象は,古代はとも
や河川を通じヨーロッパ中に売り捌いていたのだ。
かく,中世との深い係わりだろう。都市毎の特色
コショウでばく大な利益を得たメディチ家:
とともに,都市を貫く共通性も少なくない。教会
やがてコショウは,肉だけでなく,新たに登場
や城郭に加え,市庁舎がありその前には広場があ
したインド風シチューなどの料理にも欠かせぬも
るたたずまいなどはそれだ。
のとなり市価は高まる一方だった。そのコショウ
ハンザ同盟: ドイツなど,北ヨーロッパで耳
を始めとする香料販売でばく大な利益を得ていた
にするのはハンザ都市だったという来歴である。
商家のひとつがフィレンツェの名家,メディチ
ハンザとは交易を中心にした中世の都市同盟であ
家(Medici)だった。やがて「香料(薬味)のメ
る。当時は大量の物資の移送となると主体は船に
ディチ」を意味する medicine の語が生まれ,こ
よるものだった。船といってもバルト海から地中
の語はさらには薬種,医薬品,医学を指す言葉に
海に至る諸地域の河川を廻船してのものであり,
発展していった。
こうしてばく大な利益を享受するイタリア同様
海上を通じての交易ではなかった。
この時代の交易がヨーロッパ諸都市を結ぶ人工
に地中海に面したポルトガルやスペインでは,原
の河川,運河の掘削を進め,運河を通じての南北
産地のインドに船で乗り付け直接コショウを現地
交流が進んだのである。まさに今日のヨーロッパ
人から買い付ける,洋上貿易への期待が高まって
の骨子をかたちづくったといってよい。
いた。というのもアラビア商人たちはイタリア商
外洋への憧れ: 物欲は人の常だが,とくに身
人に足止めされてしまい,スペインやポルトガル
近にはない品々を求める欲求には大きなものがあ
人は直接彼らからコショウなどを買うことができ
る。未知のものを含む多くの物品をもたらした交
なかったのだ。
易は時代とともに一層発達していった。やがて交
また彼らが外洋を目ざした背景には造船技術の
易はハンザ同盟のような河川を通じてのものから,
発達があったが,それだけでなく操舵・操帆,星
外洋を舞台にしたものへと転換するのである。
の運行や羅針盤などを使いこなす技術の習熟も進
外洋交易に商人たちを駆り立てる大きなきっか
けとなったひとつが,11〜13世紀にヨーロッパ各
んでいたこともある。
ハンザ同盟の一員であるオランダが運んでくる
地から聖地奪還を目ざした十字軍の派兵だった。
塩漬けのニシンの樽詰めは長期保存が可能で,航
聖地を目ざした兵士らは異国の風習や暮らし,文
海には打ってつけのものだった。オランダの樽詰
物に出会った。とくにその帰
め技術は肉の保存にも応用できるものだった。こ
還者が東方で口にしたコショ
うした食品の加工と保存の技術の発達も長期の洋
ウなどのスパイスの効いた料
上航海での栄養供給に欠かせなかった。
図1 コショウ
食品と容器
理には帰還した後も忘れがた
当時の航海は風頼みであり,後の時代のように
い も の が あ っ た。 な か で も
石炭の積込み地の確保は不要だったが,飲料水と
日々欠かせない食事のメイン
調理用の薪を入手できる寄港地がインドを目ざす
の食材である肉そのものの風
遠洋航海には不可欠だった。この寄港地確保のた
477
2013 VOL. 54 NO. 8
めに制海権を得ることにスペイン,オランダ,イ
だ。シーボルトを日本に派遣したのもその東イン
ギリスなどはしのぎを削るが,それはまだ先のこ
ド政庁だった。シーボルトは日本からアジサイや
とである。
ユリなど,多数の植物をオランダに搬出し,園芸
インドに到達するには: アラビアの商人がい
資源に育て上げた。
うコショウの産地インドとは一体どこなのだろう。
コショウを求めての航海が豊かなアジアの植物
そこまでどうやって航行していくかは大問題だった。
相を発見し,その学術調査を進めた。世界最大の
新大陸アメリカにはじめて到達したコロンブス
花,ラフレッシアやショクダイオオコンニャクな
も実はインドを目ざして航海したひとりだった。
どの奇品はヨーロッパの人々を瞠目させ,さらな
彼は自らが到達した新大陸の一角をインドと信じ
る関心を熱帯に向けさせたといってよい。
この経緯を辿るなら,コショウをしてヨーロッ
て疑わなかった。こうしてインドから遠い新大陸
に西インド諸島の地名が誕生した。
紀元前5世紀に著されたヘロドトスの『歴史』
パの多くの人々に,未知の世界の存在と魅力ある
産物を知らしめたといえるのではないだろうか。
は最初の歴史書といわれ,長く後代にも影響を及
外来を意味するエキゾティックという語には,暗
ぼした。オーケアノスが四周を囲む世界は,アジ
黙裡に魅力あるものの意味が付加されていったと
ア(アシエ),ヨーロッパ(エウローペ),リビア
いえる。
(リビュエー)の3大陸からなり,ネイロス川(ナ
ヨーロッパの園芸に従来にない魅力を生み出し
イル川)がヨーロッパからアジアを分かつとヘロ
たシーボルトの導入した日本の植物はその典型的
ドトスは書く。だが,インドについてはアジアの
な例である。園芸ばかりではない。食など多様な
東端にあるものの,人跡未踏のためその状況を語
文物にそれは当てはまる。
れる者は誰もいない,と記されるのみだ。 ☆Ⅲ 熱帯を食べる ☆
中世のスペインやポルトガル人は,コロンブス
のように西に直進すればインドに到達できると誰
南北両半球で夏至に太陽が真上にくる地点を結
もが考えたのではない。地動説に理解を示してい
んだ北回帰線と南回帰線の間に挟まれた地域を熱
たと思われるコロンブスはむしろ例外的な航海者
帯,夏至前後には太陽が地平線に沈まない南北極
であり,大方はアフリカを回り込めばインドに到
より23度27分までの範囲を寒帯,その中間が温帯
達できると考えていた。1497年に,喜望峰を回り
と区分けされた。コショウはヨーロッパに皆無の
インドのカリカットに至るインド航路を拓いたバ
熱帯の産物であり,多くのヨーロッパ人を熱帯に
スコ・ダ・ガマもそのひとりだった。
駆り立てた少なくともそのひとつだった。
スパイス諸島とオランダ: アラビア商人がイ
コショウが普及して後も多くの品々が熱帯から
ンドと呼んだ地域に含まれると考えられるアジア
もたらされ,熱帯への憧れはさらに高まっていっ
の熱帯地域はスパイスの宝庫だ。コショウに加え,
た。大規模な熱帯探検に駆り立てた背景にはこう
丁子(クローブ),ターメリック,シナモンなど,
した人々の期待があった,といってよい。多くの
芳香性や刺激性に富むスパイスが多数あり,それ
探検船がヨーロッパの港を出港した。航海の技術
らは続々とヨーロッパに持ち込まれた。ニクヅク
も格段に高まり,造られる船舶の規模も大型化し
はその仮種皮(種皮の外周にできる付属体)が
たが,動力となったのは相変わらず風だった。未
マース,種子がナツメグになる重要なスパイスの
知の大陸だったオーストラリア,多数の島々が発
原木でモルッカ諸島に多産した。この諸島は他の
見され,そこに生きるおびただしい数の動植物の
スパイスも多数産したことから,スパイス諸島と
生きた個体や標本が舶載されヨーロッパにもたら
呼ばれたほどだ。
された。
モルッカ諸島を長期間領有してきたオランダの
サボテンなどの多肉植物の奇妙奇天烈のさまを
東インド政庁は,新たなスパイスやスパイスの原
思い浮かべていただきたい。こうした未知の動植
木の発見など,資源植物の開発に熱心に取り組ん
物を前に困惑を隠さなかったのは博物学者だった。
食品と容器
478
2013 VOL. 54 NO. 8
どう命名したらよいのか,見当さえつかなかった
ガルを経由してヨーロッパに広がったジャガイモ
からだ。1735年に分類学の父と呼ばれるリンネが
は北ヨーロッパで頻発した飢饉から多くの人々を
動植物を体系化することを試み,ようやく秩序的
救った。麦も育たぬ劣悪な環境下でも収穫するこ
な命名,すなわち分類学への道が拓かれていった
とができたからだ。痩せ地でも十分に育つトウモ
のである。
ロコシも飢饉を救った。アフリカやインドなどアジア
熱帯果樹に出会う: 今なら誰でも知っている
でもトウモロコシが食糧難の緩和に役立っている。
トケイソウが渡来したとき,ヨーロッパの人々は
ポルトガルに入ったジャガイモとサツマイモは,
その異様ぶりに狂喜した。何しろ日時計のような
そこからヨーロッパ中に広まっていったが,最初
大きな円盤状の花の中央から突出した複雑な飾り
はともにイモとしてとくに区別されてはいなかっ
のついた時計針のような雌しべ,それに葉の柄の
た。この両者が区別されるようになったのは,甘
上端にできる膨らんだ腺体など,植物学者がその
味の有無ではなくサツマイモの方は寒冷地に不向
構造を正しく捉えるだけでも相当時間が必要だっ
きであることが判ったからだった。
た。卵のように膨らんだ果
トウガラシとトマトは世界の料理を変えたという
実も異様に映えた。
しかもそのトケイソウの
意味で重要な外来種だった。トマトを使わないイ
果実には独特の甘味があっ
タリア料理,トウガラシのないインドや東南アジ
て食べられ,ジュースにす
アの料理を想像するのはむずかしい。かつてよく
ると爽やかさが引き立っ
出かけたインドではトウガラシはインド原産だと
た。草姿や花をして熱帯植
怒られたことを思い出す。
物の代表格となったことと
相まって,トケイソウはや
図2 トケイソウ
パーキンソン『地上の楽園』
(1629年刊)から 主食のジャガイモやトウモロコシなどに加えて,
がて熱帯を代表する果樹に
なっていった。
☆むすび ☆
ヨーロッパの列強はやがて熱帯を自国の産業活
性化の場として活用する道を辿ることになった。
想像を超えた巨大な果実,
植民地化が進み,農産物の生産ではプランテー
ドリアンはそのいぼ状の外皮からは想像できない
ションと呼ぶ単一作物の大規模栽培が行われるよ
甘味と独特の風味をもち,たちまち熱帯を代表す
うになった。綿花やサイザルアサなどの繊維,ゴ
る果実となったが,今でもその臭いに顔を背ける
ムノキといった工業資源,コプラ,パームオイル,
人も少なくない。
サトウキビ,コーヒー,ココアなどである。最近
ドリアンに較べれば
き
では花卉栽培もさかんだ。
すっかり食卓に定着した
かつての羨望の的であったエキゾティズムという言
パイナップルも熱帯から
葉もあまり聞かなくなった。それだけ人々は熱帯を知
もたらされたものだ。そ
るようになったといえば,それはその通りだが,時間
の他,今や枚挙にいとま
軸でみるならばかつての魅力溢れる熱帯は私たち
がない熱帯産の果実や野
の目の前から姿を
菜が市場に登場し,食卓
消したともいえる。
を飾るが,そのほとんど
それを象徴するひ
が16世紀以前のヨーロッ
とつが環境の破壊
パではまったくみかけな
であり,森林の消
かったものであった。
滅だ。これが希望
新大陸の食材が飢饉を救い,料理を変えた:
に満ちた熱帯との
ヨーロッパにはなかった食材の筆頭は,ジャガ
出会いの果てだと
図3 ドリアン
ピソ『両インドの自然と社会』
(1658年刊)から。
ドリアンの最初の印刷図だが,
天地が逆になっている。
イモ,サツマイモ,トウモロコシだろう。ポルト
食品と容器
479
したら悲しい。
図4 リヨン植物園大温室
熱帯植物はヨーロッパの戸外では育たない
ため,温室はパラダイスの役割を担った。
2013 VOL. 54 NO. 8
●
海外技術情報●
健康飲料の世界的なトレンド
( Raising a Glass to Healthier Drinks )
Food Technology(USA)p. 37( ’
13・2 )文献 № 5848
HealthFocus International Global Trend
世界の飲料市場で「健康」は引き続き主要な関
心領域である。ジュースやウォーターといった一
Study によると,ラベルの「低カロリー」表示に,
部の製品は健康的なイメージが根強いが,その他
極めて関心がある人達は2003年の35%から2010年
の製品は,スポーツ・エナジー飲料に見られるハ
には49%まで増えている。2003年と2010年の間で,
イドレーション(水分補給)にとどまらない特定
「無糖」関心派は30%から45%に増大したが,同
の健康効能を求めて処方されている。さらに,企
期間で「低糖」派も32%から48%に増えた。全米
業はすべてのタイプの製品を,様々な健康プラッ
では「低糖」派は,「無糖」派が頭打ちなのにま
トホーム(共通基盤)に引き続き位置づけている。
だ伸びている。
すなわち,それは無糖,低カロリー,ナチュラル
Innova Market Insights 社 に よ る と, オ ー ガ
といったパッシブなものから,ビタミン・ミネラ
ニック表示は4番目となり,「抗酸化成分」表示
ル強化,カルシウム添加,機能性と同じく,特定
を上回っている。ここ数年「抗酸化成分」表示
の健康効能(免疫性強化,心臓や口腔などの健康
は,ソフトドリンクの新製品数が増加しているに
改善)をうたったアクティブなものまで幅広い。
もかかわらず,表示製品数を減らしている。これ
世界中の多くの消費者は,健康に関して効能が
は多分「抗酸化成分」に対する規制が,その理由
ある製品により価値をおく。17カ国で実施した
となっていると思われ,特に欧州では European
HealthFocus International 社 の 世 帯 調 査2010に
Food Safety Authority(EFSA)が多くの「抗酸
よると,全回答者の50%以上が付加的な栄養素で
化成分」表示申請を却下している。
こうこう
中間カロリー製品の上昇
強化された食品・飲料に,より多くの金額を支払
「悪魔のような糖分をやっつける」が Innova
う価値があることに理解を示している。
ヘルスクレーム(健康強調表示)
Market Insights 社の2013年主要トレンドの一つ
2012年 3 月 ま で の12カ 月 間 に Innova Market
であると,市場調査担当者はリポートする。議論
Insights 社に登録された世界の新製品飲料の内,
の余地はあるが,トランス脂肪酸という伝統的考
60%近くが健康に関連するものだった。その内,
え方の中で,塩分よりも糖分が悪魔に見たてられ
半分以上がパッシブヘルスクレームで20%近くが
つつある。企業は戦略的に新技術と甘味料の組み
アクティブヘルスクレームだった。最も一般的な
合わせによって,製品の糖分を減少させる研究を
ヘルス関連クレームはナチュラルと人工添加物
行い,ステビアやモンクフルーツ 1)のような天
や保存料を使っていないことと明らかに関連し,
然甘味料を進歩させ,より高度な革新が可能に
ウォーターやジュースを始めとした幅広い製品を
なった。
含んでいた。
コーラ市場への関心を活性化することを狙っ
23%以上の新製品が「添加物・保存料なし」表
た最近のトレンドの一つは,PepsiCo 社の Pepsi
示で売られている。その一方で,約12%に「ナ
Next コーラに代表される中間カロリーソフトド
チュラル」表示が使われている。新製品の5%を
リンクである。これらは,通常の Pepsi より60%
占める「オーガニック」表示を加えるならば,こ
カロリーが少なく,異性化糖(HFCS),アスパ
の三つの表示の内,一つまたは二つを表示してい
ルテーム 2),アセスルファム K 3),スクロース
るのは約35%になる。
食品と容器
(ショ糖)で甘味付けされている。ソフトドリン
480
2013 VOL. 54 NO. 8
たのである。
クでゼロカロリー
かフルカロリーの
アイスコーヒーとティー
二者択一をしたく
アイスコーヒーの需要は,小売市場の成長に伴
ない個人を狙った
い,またソフトドリンクやスポーツ・エナジー飲
もので,2012年4
料といった代替飲料と競合するために,低カロ
月のテストに続い
リーオプションも伝統的なコーヒー製品に加わっ
て,全米で発売さ
てきた。オーガニックやフェアトレードコーヒー
れ た。PepsiCo 社
のような付加価値製品に加えて,特定のタイプや
はその製品が期待
ストレートコーヒーが,カートン,ボトル,蓋付
を上回り,失った
消費者はもちろん
ふた
PepsiCo 社の Pepsi Next
コーラは中間カロリー製品
きカップを始めとした容器の便利な形態の幅が広
がるにつれ,棚スペースを拡大している。
新規のコーラ飲用者を魅了すると主張する。
2012年1月には,Nestlé 社と Coca-Cola 社が,
一方,炭酸飲料市場をリードする Coca-Cola 社
RTD ティー合弁会社である Beverage Partners
は,Sprite と Fanta を使って,Select の名称で自
Worldwide 社の事業範囲を縮小し,欧州とカナ
社の中間カロリーソフトドリンクをテストすると
ダに特化すると発表した。台湾と香港では Coca-
4)
いう。砂糖,ステビア,エリスリトール を始め
Cola 社が Nestlé 社から Nestea ブランドのライ
とする天然甘味料を特徴とするその製品は,標準
センスを受ける予定である。この新しい取り組
的製品よりカロリーが半減されているという。
みは Nestea ブランドが成功している市場,すな
HealthFocus International 2012 研究報告によ
わち,カナダと東欧では No. 1であり,西欧では
ると,消費者は「無糖」より「低糖」の方に大き
Lipton 社に次いで2位の市場に,両社がフォー
な関心がある。何故なら,「美味しさ」という味
カスすることを意味する。アメリカでは第4位に
覚は,今なお最も重要だからだ。
すぎず,他ブランドにシェアを奪われて来た。
ジュースにフォーカス
ティー部門では,ステビアで甘味付けされた
買い物客がジュース(100%ジュース)やジュー
RTD 製品が登場した。最初にステビアで甘味付
スドリンク(水,香料,甘味料など他の成分入
けされたのは,100%ナチュラルのティー飲料
り)を買う理由の一つは,健康効能を求めるため
Lipton Natural だった。2012年始めに Coca-Cola
である。同製品のこうしたペルソナ(見かけ)は,
社がそれに続き,オーガニックでフェアトレー
引き続き新製品開発の最前線にあり,ビタミン
ドの Not Too Sweet Tea を Honest Tea 事業とし
/ ミネラル強化や糖分無添加表示に特に人気があ
て, オ ー ガ
る。それは,アメリカ市場をリードする Minute
ニックショ糖
Maid の新製品 Pure Squeezed ブランドの新オレ
とステビアの
ンジジュース商品ライン(100%ジュースとカル
ブレンドで甘
シウム,ビタミン D 強化のジュースドリンクを
味付けし発
含む4種類の製品)に反映されている。
売 し た。 ま
また,子供向けのジュース,およびジュースド
た,緑茶にア
リンク市場は,最近数カ月間,一部の関心の的
ロエ繊維を結
だった。英国 Britvic 社(英国の Pepsi ボトラー)
合したティー
は ア メ リ カ で 子 供 向 け ブ ラ ン ド で あ る Fruit
飲料を,消化器系健康と免疫支援効果をうたって,
Shoot を展開した。同ブランドは,ほぼ1年間ア
Grourmetti ブランドの Chantea から発売した。
RTD リプトン100%ナチュラルティーは
ステビアを最初に採用した
メリカで PepsiCo 社のボトラーによって販売さ
ティー・プラットホームの出現
れていたが,1州から8州までその販路を拡大し
ティー市場での確立は,缶やボトルで飲みき
食品と容器
481
2013 VOL. 54 NO. 8
りサイズに集中する傾向がある発展途上市場と
めた。Coca-Cola France 社は甘味料 Truvia 6)に
は対照的に,大容量容器での販売数量に反映さ
純度97%の Reb A(ステビア系甘味料)の使用
れ て い る。Coca-Cola 社 は ド イ ツ で,Nestea ア
が承認され,ソフトドリンク Fanta Still に最初
イスティーラインを1.5L の PET ボトルで無糖の
のステビア系甘味料を処方した。同製品は2011
Weisser Pfirsich( 白 桃 ) と Zitronen( レ モ ン )
年年央までに,Fanta 販売の8%を占め,主要
フレーバーで拡張した。2012年3月には,ステビ
供 給 者 で あ る Teisseire 社 の Sucre Stevia 0 %
アを甘味料として同国で初めて使用とうたって,
と Routin 社の Fruiss Stevia サブラインの希釈可
二つのボトル入りティー飲料を発売した。
能なシロップを始め,その他の多くのソフトド
オーストリアのジュース飲料と RTD ティー専
リンクにステビアを含む処方が適用された。フ
業である Pfanner 社も,ドイツでティー飲料の
ランスでは,その Fanta Still の成功に追随して,
ラインアップを拡張した。レモンとエルダーフラ
Nestea と Sprite ブランドにカロリーと糖分量を
ワー
5)
30%削減するためステビアが使用される予定である。
入り白茶 Der Weisse を2L ゲーブルトッ
プ(切り妻屋根)カートンで発売したのである。
Coca-Cola 社は Truvia を過去3年以上にわた
ティー抽出物で作られる飲料にも関心は集まっ
り,7カ国で30製品以上に展開してきたと伝えら
た。Thuringer Waldquell 社が2012年5月に発売
れたが,主に非主力ブランドの製品拡張の場合で
し た Rooibos Tea Erdbeere-Rhabarber( ス ト ロ
あった。しかしながら,Nestea および Sprite ブ
ベリーダイオウ入りルイボス茶)と Weiss Tee
ランドは,ステビアの使用により,ソフトドリン
Pfirsich( ピーチ入り白茶 ) は,ナチュラルミネラ
ク市場でのトップブランドへと躍進した。
ステビア甘味料の他の欧州諸国への導入には,
ルウォーターで人工着色や甘味料は使用せず,従
来のアイスティーよりカロリーは控えめである。
ドイツの Fritz-Kola とフィンランドの Hartwall
英国は RTD ティー市場規模が小さく,消費者
Jaffa Super が あ る。 ご く 最 近,2012年4月 に は
にティーをホットでなくコールドで飲ませるの
Eckes-Granini Iberica 社 が ス テ ビ ア 甘 味 料 を
が難しい。Lipton Ice Tea が90%以上のシェアを
使い,1サービング30 kcal ジャストの Granini
持っているが,最近では,他の供給者の追撃も続
Light ジュースドリンクをスペイン市場に投入し
き,特にプライベートブランドである Marks &
た。しかし,英国で最初にステビアで甘味付け
Spencer 社は,3種の煎じ出しティー飲料を発売
された飲料の発売競争を制したのは,Pepsi ボト
した。湧き水で抽出した白茶,緑茶,ルイボス茶
ラーの Britvic 社だった。以前その高い糖分レベ
に,ミント,レモン,ラズベリーのフレーバーを
ルで批判された SoBe V-Water の処方を,2008年
付けているのが特徴である。
からアメリカで SoBe ドリンクに使って来たステ
ステビアが地球を巡る
ビアを使用することで,見直す予定であると2012
食品・飲料業界は,この数年ナチュラルなステ
年4月に発表した。処方を見直した飲料はカロ
ビアベース甘味料の嵐に見舞われた。「クリーン
リーが抑えられ,糖分と人工的な成分を避けたい
ラベル」製品需要が出現して市場の間隙を埋め,
人々には
ソフトドリンクの糖分・カロリー減少に関心のあ
魅力的だ
る人々に代替品を提供している。しかし,同時に
ろう。英
既存の代替品であるアスパルテーム,アセスル
国ではさ
ファムK,サッカリンを始め,多くの高甘味度甘
らなるス
味料が「人工甘味料」の区分であることに懸念が
テ ビ ア
示されている。
ベース飲
かんげき
欧州では,フランスが EU 全面承認以前の移行
料の発売
措置を利用して,早くからステビアの使用を始
が発表さ
食品と容器
482
SoBe lifewater はステビアを使用して,
ゼロカロリーとノン人工甘味料を実現 2013 VOL. 54 NO. 8
れると見込まれるが,Coca-Cola 社がいずれ発表
するのはほぼ間違いない。
の甘さを持つがカロリーはゼロ。
4)エリスリトール: メロン,ブドウやナシなどの果実
(常盤恭徳)
や醤油・味噌・清酒などの発酵食品に含まれている天
(訳注)
然の糖アルコールでカロリーがほとんど無いことが特徴。
1) モンクフルーツ:中国桂林地方でのみ栽培され,天
5) エルダーフラワー:スイカズラ科の落葉低木。山野
然甘味料として脚光を浴びる。
に自生。幹や枝を消炎・利尿薬に,花を発汗に用いる。
2) アスパルテーム:アスパラギン酸と,フェニルアラ
6)Truvia:コカコーラ社とカーギル社が2008年共同開
ニン(必須アミノ酸の一つ)から合成した甘味料。砂
発したステビアベース人工甘味料でコカコーラ製品に
糖の180 ~ 200倍の甘みがあるがカロリーは少ない。
使用。
(ペプシコはステビア抽出甘味料 PureVia を独自
3)アセスルファムK:人工甘味料の一つ。砂糖の200倍
展開)
●
海外技術情報 ●
今コールド飲料が“ホット”
( Cold Drinks Are Hot )
Prepared Foods(USA)p. 29( ’
13・3 )文献 № 5856
の成長を促進しながら,消費者の飲食パターンを
消費者は2012年の陳列棚にずらりと並んだ新
変化させつつあるという。
しい飲料を,健康,エネルギー増進,さらに減
量支援への期待をもって目にした。コーヒーと
加 え て, テ ィ ー セ グ メ ン ト は 多 く の 異 な る
ティーは最近飛躍的に伸びてきたが,Markets
フレーバーや品種に見事に分化した。例えば,
and Markets 社リポートによると,コーヒーと
Inko’
s 社は,低カロリー,ノンカロリ―,RTD
ティーの RTD 市場売り上げは,2011年中に690
白茶セグメントで確たる地位を得て,昨年非白茶
億ドルに達し,また2017年までに1,250億ドルに
系品目に初めて進出した。これを機に,同社は製
達する(年率10.9%で成長)と予測している。ア
品パッケージで15.5オンスのリサイクル可能なア
ジア・パシフィック市場が最大市場だが,調査
ルミ缶という新分野を開拓した。
リポートでは北米の RTD コーヒー需要は,特に
Inko’
s 社 の 緑 茶 は ま た,Vanderbilt-Ingram
「健康への気づかいと炭酸飲料の健康への悪影響
Cancer Center 1)による調査により,緑茶が一部
のために」上昇すると確信している。
の消化器系,特に食道,胃,直・結腸がんの発症
それはまた,新製品開発調査にも反映されてい
率低減に役立つことが分かり,利益を享受した。
て,18 ~ 24歳では炭酸ソーダから一般的に好ま
すべての消化器系がんにおける発症リスクは,少
れるエネルギー高揚飲料としてコーヒーへの移行
なくとも20年間定常的に緑茶を飲んでいた女性で
が示されている。2002年では18~24歳の25%は
は27%減少し,同様に,長期間のティー飲用パ
コーヒーを2週間に1回は飲んだが,2012年には
ターンは子宮がんを予防するのに役立つという。
その比率が39%に跳ね上がった。積極的な健康効
1,000人 の 女 性 に 関 す る 2 年 間 の 研 究 が Cancer
能の領域と飲料を結び付ける研究は,飲料市場の
Epidemiology 誌で発表されたが,それによると,
支持要因の一つとなりうる。
がんのない女性はがんと診断された女性より,幼
健康効能を表明する多くの研究と共に,ティー
いころからティー飲用者である傾向が分かった。
売り上げも上昇している。全世界でティー売り上
興味をそそるニュース
げは2011~2017年の間に50%成長すると Mintel
消費者がナチュラルだと認知する飲料となると,
International 社 は 予 測 す る。IBISWorld 社 も,
ジュースに匹敵するのはわずかしかない。にもか
ここ数年で同様のティーの成長を予測するが,同
かわらず,ジュースセグメントは糖分についての
時に「健康的な暮らしに重きをおく」ことが業界
社会的関心という課題に直面してきた。この問題
食品と容器
483
2013 VOL. 54 NO. 8
と真っ向から戦って,Honest Tea 社は2012年に
するために」,二つの人工甘味料,すなわちアス
Honest Kids 加糖フルーツジュース製品の処方を
パルテームと,ごく微量のアセスルファム・カ
改めた。同時に,5種類をすべて更新し,オーガ
リウムのミックスを特徴としている。日本では,
ニックサトウキビの糖分を取り除き,果汁分を増
「特定保健用食品」表示許可を取得した。Pepsi
加させた。しかし,カロリーは以前と変わらず
Special は,吸収を悪くすることで脂肪をブロッ
6.75オンスパウチ当たり40kcal のままである。
クしやすくすることが見込まれるデキストリン3)
Complex Beverage 社は誰も予想していなかっ
を処方していることを自慢にしている。
た野菜を活用する。同社の新規レタス・ティーブ
イタリア人の研究で,機能性飲料が健康な消費
ランドはレタスの抽出物を特徴とするが,同製品
者の心臓機能をより向上させることもありうる
は,循環機能強化の役割と免疫システム力に注目
ことが分かった。。シエナ大学調査によると,カ
させる研究によって,ビタミン強化飲料に対す
フェインやタウリンを含むエナジードリンクを消
る想定外のアプローチとして,一部の健康専門
費した被験者は,1時間後に左右心室機能が向上
家に称賛された。同社は Peach Mango, Strawberry
し,拡張期血圧は6%上昇した。その一方で,心
Banana, Exotic Apricot フレーバーが選べるその飲
拍数と収縮期血圧上昇は「統計的に有意」ではな
料が,無添加,低糖,低カロリーのレタス抽出物
かったという。
とビタミンを含む唯一の機能性ティー飲料である
エナジードリンクのパワー
と主張する。
Bloomberg 社の業界分析リポートによると,
機能性飲料
エナジードリンク市場の全世界売上高は2011年に
Coca-cola 社のより興味深い新製品が海外で登
14%伸びて415億ドルに達し,4,980億ドルの全世
場した。同社はフランスの製薬会社 Sanofi 社に資
界ソフトドリンク業界で8.7%のシェアを獲得し
本参加した。減量を補助し,その他の健康効能
たという。
Energy-X は,エネルギーサプリのミックスで
を提供する,「美容飲料」製品である Oenobiol 社
2)
Beautific ブランド を開発・販売するためである。
ある“The Juice”をその製品ラインに追加した。
その製品には「髪と爪を強化し,肌つやをよくし,
同製品は,ジュース,ソーダ,スポーツドリン
減量と活力向上に資する」と表示される予定であ
ク,ウォーター,カクテル,さらにはオートミー
る。
ルにも適しているニュートラルな味覚を期待させ
10kcal(12オンス当たり)の Dr Pepper10の発
る。面白いことに,これに含有されるカフェイン
売が昨年成功したことから,Dr Pepper Snapple
はコーヒー生豆のエキスに由来しており,製品に
社 が, 同 様 の 新 規 バ ー ジ ョ ン を 7 up, A&W,
は,エナジードリンクの過剰摂取についての懸念
Sunkist, Canada Dry, RC(Royal Crown) の ラ
が増大しているため,「24時間以内に4ショット
インアップで今年1月に復活させた。同社は売り
以上服用しないように」という警告が表示されて
上げの30%がダイエットかつ低カロリーソーダと
いる。
Nurish Brands 社は新しいスパークリングエナ
ジュースやウォーターといった「カラダに良い」
飲料だと言う。同社 CEO の L. Young 氏はここ
ジードリンクに,“Feel good, Do more(気分を
数年で「カラダに良い」飲料が売り上げの40 ~
直して,もう少し頑張ろう)”と書かれた“Feel
50%を占めるようになると the Huffington Post
Natural Energy”というタグを付けた。微炭酸
誌に語った。
で天然甘味料のエナジードリンクは,どれも10.5
ダイエットペプシ愛好家は,同社が何も言わず
オンス缶で15kcal,1日必要量のビタミンC,カ
に甘味料を変更したけれども,これから数カ月後
ルシウム,ビタミンDばかりでなく85mg の天然
にはそのわずかな変化に気づくかもしれない。同
カフェインを含んでいる。
Pulse Beverage 社 は“good-for-you”( 健 康 に
飲料は,「一口ごとに味覚同一性を確かなものに
食品と容器
484
2013 VOL. 54 NO. 8
良い)プレミアレモネードを100% ナチュラルオ
エールのように,甘いアルコール飲料であること
プションとして位置づける。2012年には Pulse 社
で差別化している。
は Blueberry Lemonade を,人工甘味料も着色料
その他のアルコール飲料では,圧縮可能なア
も使わない Cabana 100%ナチュラル Lemonade
ルコールパウチが,Nielsen 社によれば,6月23
製品ラインに追加した。New Almond Breeze は
日までの1年間で153%の売り上げの伸びを示し,
11オンスの再栓可能な無菌パッケージで登場し,
1億5,400万ドルに達した。昨年夏には,Diageo
3種のフレーバー,すなわちオリジナル,オリジ
社は冷凍されて,グラスかコップに絞り出される
ナルゼロ甘味料,バニラゼロ甘味料のアーモンド
はずのフルーティなモルト飲料をパウチに入れて,
ミルクを提供する。
Parrot Bay と Smirnoff ブランドで全国展開を開
始した。いずれのシングルサーブも10オンスパウ
アメリカでは,ダイエット分野以外での PepsiCo
チで1.99ドルがメーカー推奨価格である。
社 の 狙 い が フ レ ー バ ー の 強 化 に あ る こ と が,
Four Loko 5)エ ナ ジ ー ド リ ン ク で 知 ら れ る
Sierra Mist Natural ブ ラ ン ド に Strawberry Kiwi
Splash を追加したことで証明された。これは,
Phusion Projects 社は,パウチ入りモルト飲料
本物の砂糖を使用し,人工添加物や保存剤は使用
ブ ラ ン ド Island Squeeze を 追 加 し た。 同 様 に
していない。一方で同社は,昨年の夏にかけて
Constellation ブランドはパウチ入り冷凍ワイン
Mountain Dew ソーダのモルトフレーバー品種
カクテルを Arbor Mist wine-with-fruit ラインで
Johnson City Gold をテストした。同製品はレモ
発売し,その後 Moscato で製品ラインを増強し
ン,ライムが利いたモルトフレーバーが期待でき
た。同様のコンセプトで,ココナツ,マンゴー,
る。
ピ ー チ フ レ ー バ ー の 冷 凍 カ ク テ ル ポ ッ プ 6)を
成人飲料は冷凍で
Fruitflavorz 社が発売した。これらのアイスポッ
ア ル コ ー ル 飲 料 の 分 野 は, ビ ー ル が 引 き 続
プの内容物はいずれもウオツカと15%アルコール
き全米成人飲料業界では最大のセグメント
を混合したものである。
(常盤恭徳)
で,アルコール全体量の4/5以上を占めると
Technomic 社の“2012年 BeerTAB”リポートは
(訳注)
1) アメリカ,テネシー州 Nashvill 市にある国立がん研
言う。しかしながら,ビールは経済的で基本的な
究・療養センター。 消費者トレンド前線で挑戦を試みたが,売り上げ
2)Oenobiol 社は Sanofi 社が買収合意した美容栄養補助
は2011年に1.3%減少した。その中で,Anheuser-
食品メーカーで Coca –Cola 社と Sanofi 社が共同で開
Busch InBev 社と MillerCoors 社は,新興セグメ
発する新しい飲料ブランド Beutific の販売を担当する。
ントに進出して,ブランド拡張と品ぞろえの多様
(Reuter 記事2012/10/17)
化により全ビール量のほぼ3/4を占めるに至っ
3)デンプンを酸熱,酵素などで加水分解するときに生
た。
ずる中間生成物で,デンプンより分子量の小さい多糖
Anheuser-Busch InBev 社が2013年 Super Bowl
の総称。アミロデキストリンともいう。(日本大百科)
期間中に上市した新製品 Budweiser Black Crown
4) アメリカのアルコール,またはノン・アルコール発
酵飲料で,原料に麦芽を含むもの。
は,より香り豊かなもの,そしてよりアルコール
クラフト・ビールの職人的イメージに対応した製品
濃度の高いもので,今までより若い世代(21歳~
イメージの形成に効果があるとされ,多種多様のフレー
34歳)のビール飲用者をターゲットにした。
バーで発売されている。(Wikipedia)
MillerCoors 社 は そ れ に 追 随 し て, 限 定 的 市
5) アメリカ,カナダ,英国で Phusion Projects 社から
場でビッグゲームの期間中,Redd’
s Apple Ale
販売されている炭酸,アルコール入りのモルト飲料
の全国発売を宣伝した。同飲料はフレーバーモ
6) 炭酸水・シャンペン等の泡立つ飲料(ランダムハウ
ル ト 飲 料 4)分 野 で,Mike’
s Hard Lemonade や
ス)
Twisted Tea の 類 に 対 抗 す る 狙 い が あ っ た が,
食品と容器
485
2013 VOL. 54 NO. 8
●
海外技術情報 ●
高分子フィルム包装材料の最近の進歩
( The Film Business : Recent Development in Polymeric Film Packaging Materials )
Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 21( ’
12・11/12 )文献 № 5853
英国の包装コンサルタントの S. Pira 氏によれ
高分子フィルムは食品包装に多用されている。
スーパーマーケットでは多くの商品がフィルムで
ば,フィルムが大勢を占める世界の軟包装市場の
包装されて棚に並ぶ。食品包装フィルムは低コス
規模は2011年に538億ドルであり,2016年まで毎
ト化,高性能化,低環境負荷等の面で開発が進む。
年4% ずつ増加するそうだ。そのうち約75%が
現代の包装容器に求められることは多い。食品
食品用である。フィルムは,ガス置換包装で有効
を物理的な損傷や汚染から保護し,分かりやすい
利用されるが,この技術で食品を包装する際に,
表示,ブランド表示は当然として,目立ち,開け
品質保持のために様々な混合気体が用いられ,蓋
やすさ,いたずら防止,軽量,強固で,長い賞味
用フィルムにはガスバリアー性と透明性が求めら
期間が求められる。さらに,コストアップが受け
れる。多くのフィルムは積層品で,バリアー性の
入れられる範囲で,環境負荷が小さく,持続可能
ある EVOH とトレーと接着性のある PE から成
性が求められるようになった。これらをすべて満
る。Sealed Air Cryovac 社が開発した Darfresh Ⓡ
たすことは容易ではないが,高分子フィルムは食
Broom という製品は,性質が大きく異なるフィ
品の広い範囲の問題解決の重要なパートを占める。
ルムを組み合わせたもので,新鮮な肉や魚をガス
主な理由は,フィルムの適応能力と低コストに
置換包装するために作られた。まず酸素を透過す
ある。フィルムはポリエチレン(PE),ポリプロ
る内層フィルムを真空収縮させ内容物をトレーに
ピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリエ
固定して水分損失を抑え,ガスバリアー性フィル
ステル,ナイロン,エチレンビニルアルコール
ムで置換ガスをヘッドスペースに閉じ込める。
(EVOH),塩化ビニリデンや,ポリ乳酸(PLA)
開発が進む主な4分野は次の通りである。第1
のようなバイオプラスチックからも作ることが
は既存材料を改善する分野で,バリアー性の改善
できる。機械加工が容易で,硬さや色が変えら
と薄肉化,第2はナノテクノロジーを利用した改
れ,印刷が可能であることから多様なデザインが
善,第3は特に抗菌包装でのアクティブパッケー
可能である。材料の種類により強固,軽量,破れ
ジングの実用化,最後は原材料を石油から持続可
にくい,ガスや水蒸気に対するバリアー性に優れ
能で同等の性能を持つものへの置き換えで,長期
たものがある。金属やシリコン,酸化アルミニウ
的な最重要課題である。
ム等で蒸着またはコーティングすればバリアー性
既存材料の改善
が向上する。温度変化に耐えるものは冷凍食品や
ガスバリアー性を改善すれば食品の酸化を抑制
熱処理用に使用できる。単層のものや,異なる
でき,シェルフライフを長くできる。金属蒸着し
材料からなる積層あるいは共押出フィルムがあ
たポリエステルでは,バリアー性が改善される
る。ガスバリアー性に優れるが,水蒸気を透過す
反面,中身が見えない問題がある。ExxonMobil
る EVOH と反対の性質を持つ PE を合わせ,そ
Chemical 社では二軸延伸 PP フィルムにコーティ
れぞれの長所を併せ持つフィルムができる。また,
ングすることでこの問題をクリアした。バリアー
フィルムの製造方法を変えれば性能を改善できる。
性は EVOH より優れ,金属蒸着したポリエステ
二軸延伸 PP フィルムは,無延伸 PP フィルムと
ルと同等の性質を持つ。Bicor MB866というフィ
比較して水蒸気,酸素,窒素に対するバリアー性
ルムは,内面がバリアー性を持つポリビニルアル
が2倍に改善され,食品包装に多用されている。
コール(PVOH)コーティング,外面がアクリル
食品と容器
486
2013 VOL. 54 NO. 8
コーティングという構成で,バリアー性と透明性
善に利用されてきた。Honeywell 社の Aegis Ⓡ とい
を両立した。内面側の PVOH コーティング面に
うナノクレイを配合したナイロン樹脂は,バリ
は印刷が可能で,通常その上に PE のシーラント
アー層として使用できる。米国のナノクレイメー
フィルムが積層される。一方でドイツのフラウン
カー Nanocor 社から Imperm Ⓡというバリアー性
ホーファー研究所では,PET 等の二軸延伸フィ
が高いナイロン樹脂が発売されている。Imperm
ルムに透明なバリアー層である酸化アルミニウム
grade 105という製品は,非接触のバリアー層と
をコーティングするという方法を考えた。
して PE や PP 等と組み合わせて使用できる。高
もう一つの課題は,食品用プラスチックトレー
いガスバリアー性により,食品のシェルフライ
のシールフィルムに,密封性と開けやすさとい
フ を 延 長 で き る。 ロ シ ア の 軟 包 装 材 メ ー カ ー
う相反する性質が求められることである。フィ
Danaflex 社は17層のハイバリアーフィルムで,
ン ラ ン ド の KWH Plast 社 で は,課 題 解 決 の た
金属缶に取って代わることを狙っている。
アクティブパッケージング
め に PP を ベ ー ス と し た フ ィ ル ム を 開 発 し た。
TM
SecurityPeel
と呼ばれる製品は共押出で作られ,
食品の微生物腐敗は主にその表面で生じる。包
バリアー層に EVOH を使用した多層フィルムで
装に接触した場合,食品とのすき間に水分の膜を
あり,開けやすさと密封性を両立し,内面側の水
形成し微生物の成長には格好の環境となるが,抗
滴で中身が見えにくくならないように防曇剤が添
菌フィルムの利点は,そのポイントで抗菌成分を
加されている。
使用できることにある。多種類の抗菌成分が配合
性能を保ち,フィルムを薄く軽くすることは
や塗布されたフィルムについて,微生物増殖抑制
重要な課題である。英国の Linpac 社が開発した
効果が評価されており,ソルビン酸カリウムやナ
PP ベースの LINtop HB Lock Seal というフィル
イシンを用いたフィルムで微生物の増殖抑制効果
ムは,市販フィルムで最も薄い35ミクロンを実現
が認められた。日本のシナネン社からゼオミック
しており,肉や魚の包装に使われる。十分なバリ
というシルバーゼオライト(ゼオライトに銀イオ
アー性と曇り防止の性能があり,コストと CO2の
ンを取り込んだもの)が代表例である。フィルム
削減を両立した。LINtop Star という PE ベース
に配合したゼオミックから,抗菌性のある銀イオ
のフィルムは,競合品より薄いが性能は優れてい
ンが食品の保存中に放出される。欧州では,スペ
る。フィルムを薄くするもう一つのメリットは,
インの Artival SA 社が香辛料由来の抗菌性精油
同一径の芯に,より長いフィルムが巻けるため,
でコーティングしたフィルムを開発した。この製
稼働率を向上させることである。
品は多くの微生物に対して抗菌性を示した。同じ
ナノテクノロジー
くスペインの Derprosa 社からは,共押出二軸延
欧州ではコスト低減と環境性に優れるため,食
伸フィルムに抗菌性を付与したものが出されてい
品包装分野でナノテクノロジーが多用されている。
る。
ナノ複合材が良い例であり,ナイロン等の樹脂に
環境維持
金属やその酸化物,ナノチューブやナノファイ
石油の価格高騰や枯渇により,生分解性やリサ
バー,ナノクレイ(粘土鉱物)等のナノ粒子を配
イクル性を含め,持続可能なフィルムの開発が進
合し,樹脂の物理的性質を改変できる。食品包装
められている。
では,ナノクレイ等を利用したものが多数開発さ
二軸延伸 PLA フィルムには大きな可能性があ
れている。ナノクレイの配合により,性能を保ち
る。2010年にドバイの Taghleef 社から発売され
ながら薄肉化や,紫外線バリアー性,透明性,強
た NATIVIATM という製品には,用途ごとに金
度の優れたものができるし,PLA のバリアー性
属蒸着したものや透明なものがあり,生分解性が
も向上する。
ある。無機成分のナノ複合材を添加してバリアー
ナノテクノロジーは,フィルムを含む包装材料の改
食品と容器
性を向上させることもできる。一方,英国のフィ
487
2013 VOL. 54 NO. 8
したもので,伸縮性
ルム大手 Innovia 社からは,再生可能な木材パル
という,堆肥化できるフィ
フィルムやガス置換
ルムが発売され,生鮮品等の食品や日用品用とし
包装のバリアーフィ
て順調に採用されている。
ルム等で使われるこ
TM
プから NatureFlex
とになろう。その他
環境に優しいフィルム開発が本格的になり,
EU が設立した‘Wheylayer’というプロジェク
に,合成ポリビニル
トでは,高いガスバリアー性により多用されるが
ピロリドンと,カル
高価で再生できない EVOH の代わりに,ホエイ
ボキシメチルセル
たんぱく質を加工した材料を使用する取り組みが
ロースから成る生分
行われている。ホエイたんぱく質は積層フィルム
解性のフィルムがあ
のバリアー層やコーティングとして使用でき,生
る。チェコの研究者
分解性がある。ホエイたんぱく質は牛乳メーカー
により食品向けに開
で毎日大量に発生する廃棄物であり,有効利用
発されたこのフィル
できれば一石二鳥である。EU が設立した ISA-
ムは廉価で,高い酸
pack というプロジェクトでは,生鮮品向けに賞
素バリアー性を示し,水蒸気透過性がある。ナノ
味期間の延長,高品質,安全を念頭に,持続可能
材料に基づく持続可能な食品包装材料の研究が,
で高機能な包装を実現することで,食品と食品容
欧州科学技術研究協力機構の活動として行われ,
器の廃棄物を減らせるとみている。このプロジェ
その開発が2010年から2014年にかけて進行中であ
クトは,微生物由来のポリヒドロキシ酪酸を利用
る。
NATIVIA フードの PLA フィルム
(内麻博之)
●
海外技術情報 ●
肥満の研究:食品と腸と脳のメカニズム
( Food-Gut-Brain Mechanisms )
Food Technology(USA)p. 21( ’
13・3 )文献 № 5857
過去70年間,先進諸国では安価な食品が量,種
的であり,脳による末梢起源(腹部器官と脂肪組
類ともに大幅に増えた。おいしくて安い食品を生
織)の信号統合に関与している。“食物処理”の
産する傾向が脂肪や砂糖含量の高い食品を増加さ
一環として,食物の摂取に応答して消化管からホ
せ,あまり身体を動かさない生活習慣と結びつい
ルモンが放出される。この短期動的信号は,既に
て,先進国や発展途上国での体重過多や肥満人口
蓄えられているエネルギー量と出入りするエネル
増加の一因になっている。
ギー束を脳に伝達する恒常的信号によって補完さ
過剰な体脂肪の蓄積は,寿命や生活の質に大き
れる。エネルギーの単なる調整(エネルギー収
く影響する2型糖尿病や心血管疾患などの代謝性
支)の域を越えて,主に快感や恩恵に励起される
疾患と関係がある。また,人口の高齢化も問題で
高レベルの制御もある。これらの信号はすべて脳
ある。高齢者はしばしば食欲不振(相対的食欲不
で処理され食欲を増減させたり空腹感や満腹感を
振)に悩まされる。これは緩やかな体重減少と運
引き起こす。
空腹や食欲のコントロールと,肥満や糖尿病な
動機能の減退をもたらす筋肉量の低下や生活の質
どの慢性の非感染性疾患発症の可能性は,生命の
の劇的な低下につながる。
空腹と満腹
初期段階(出生前)に確立される。女性は妊娠時,
空腹および満腹システムは,非常に複雑で多面
一度に“二人分の摂食”を考えるが,妊娠中の栄
食品と容器
488
2013 VOL. 54 NO. 8
養状態は胎児が成人になるまで長期的に因果関係
Health 研究プロジェクトに900万ユーロの資金を
を持つ。肥満や他の慢性疾患に対する感受性は妊
提供した。このプロジェクトは,①空腹や満腹,
娠中の母体の栄養水準に関係することが疫学的証
摂食行動のメカニズム,②ライフステージによる
拠で裏付けられている。第二次世界大戦中,数カ
それらの変化,③食事成分や食物構成の影響,④
月以上深刻な食糧難のためにカロリー摂取量が著
肥満や慢性疾患,栄養不良への対処策を研究して
しく低下したオランダのいわゆる“飢餓の冬”を
いる。
対照に比較調査した結果,厳しい食糧難に伴う
生理的プロセスの研究や食品選択の心理は,食
胎児のカロリー不足が,肥満や糖尿病,その他
物構成や異なる食事成分の影響を分析することに
の健康リスクに著しく影響していた(Roseboom
よって補完される。たんぱく質は主要栄養素中で
ら,2006;Bouret,2010)。また逆に,肥満の原
最も満腹感を与えることが証明され,最近ヨー
因となる現在の環境で肥満や糖尿病の母から生ま
ロッパで数種の新規食品に利用されているように,
れ,結果的に発育早期に過栄養または過剰栄養を
各種アプローチの組み合わせによって,食欲をコ
経験した子供は,肥満や糖尿病になるリスクがよ
ントロールする新しい食品の「手掛かり」を得よ
り高い。今日の栄養プログラミングの影響を正確
うとしている。
に定量化することは難しいが,ヨーロッパでは子
例えば,減量または体重維持食として,Aberdeen
供の20%は体重過多や肥満であるという最近の統
大 学 の Rowett 保 健 栄 養 研 究 所 と イ ギ リ ス の
計(ヨーロッパ肥満研究協会:EASO)を見ると,
Marks & Spencer 社が共同開発したたんぱく質
小児肥満症増加傾向の一因であるように思われる。
強化インスタント食品がある。この製品は,た
体重の減量
んぱく質は炭水化物や脂肪よりも満腹にさせる
(Larsen ら,2010)という原理に基づいていて,
人々は,減量はできるが長期間維持するのは難し
いことを知っている。その理由の一つは,摂食量の
消費者の空腹をコントロールし間食の誘惑を抑える。
自主的低減は腸と脳の多くの相互作用との闘いであ
き き ん
Full 4Health は,食欲コントロールに対して
り,生命を脅かす減量を回避させたり(例えば飢饉
より効果的なツールを提供するために食物や食品
の間),おいしそうな食品に食欲をそそられたり
の組成変更を可能にする新しい知見の提供を目指
するからである。リモナバン(商品名 Acomplia)
している。これは消費者の体重管理をサポートし,
やシブトラミン(同 Meridia)など多数の抗肥満
臨床医に頼らず健康をコントロール可能にする。
薬や減量薬が上市されたが,精神衛生や心血管系
各ライフステージについて空腹と満腹の感覚制御
に許容しがたい副作用が生じた(Derosa および
に関与するメカニズムを理解することは,食物摂
Maffioli,2012)ため,その後撤退した。
取をコントロールする手段として食物そのものを
利用する道を切り開くことになる。
減量手術は病的肥満(肥満度指数>40)や2型
糖尿病を治療するために行われる手術である。手
研究のハイライト
術後ほとんどの患者は2型糖尿病が急速に改善す
摂取した食物は消化管と相互に影響し合い,消
るが,胃の手術は肥満に対して“手っ取り早い解
化管は神経やホルモンシグナル伝達によって脳と
決策”ではない。患者は手術後食事制限や運動を
情報交換することは分かっているが,基本的なメ
しなければならない。従って,長期治療をせずに
カニズムはほとんど分かっていない。また,食物
幅広い年齢にわたって生活の質を改善するために,
への生理的,心理的反応は成長し年を取ると変化
体重過多や肥満の原因になるカロリーの過剰摂取
し,食物の選択や優先傾向に影響を及ぼす。Full
に対する新しい取り組みが必要である。
4Health は,人生の各段階で食品へのニューロ
Full 4Health プロジェクト
ン的,ホルモン的,分子的,生理的,心理的反応
欧州委員会はヨーロッパ全域から19人の学識
に重点をおいてヒトや実験動物の研究を行う。 経験者と産業界の協力者を集めるために Full 4
例えば,食物の処理に関与し,脳へ満腹信号を
食品と容器
489
2013 VOL. 54 NO. 8
伝達する消化管ペプチドホルモンの放出が発生学
る。多くの専門分野が連携して,発育過程は食物
的に調節される範囲は分かっていない。これは食
-腸-脳の軸にどう影響するか,高齢者ではこの
物摂取関連の慢性疾患(通常,過剰摂取に起因す
軸の機能障害はどのように慢性疾患の一因になる
るが,高齢者や臨床的障害による栄養不良も関
かを研究している。生涯(特に幼年期,青年期,
係する)への対処上重要な課題である。Full 4
および高齢者)にわたる,食物に対する脳反応の
Health は,消化管と食物や食事成分との相互作
解明はまさに開かれたばかりの科学の1章であり,
用を研究し,空腹と満腹の信号伝達や統合におけ
健康的な幼年期と健康的な加齢を促進するために
る腸管内分泌物の役割や迷走神経,後脳と視床下
今後解決しなければならない多くの基本的な問題
部,前脳の機構を明らかにする。
が残っている。
関連する社会政策
食物と腸-脳の信号伝達と統合に対する反応が
四つの主要年齢層(子供,青年,成人,高齢者)
Full 4Health プ ロジェクトは 欧 州 連 合 の 健 康
でどう違うかを理解するため,Full 4Health は,
関連政策の一環であり,健康および消費者保護総
ヒトの食事介入実験によって主要栄養素とエネル
局(Health and Consumer Protection Directorate
ギー含量を種々変えた食品に対してこの四つの年
General)出版の Healthier Together in the European
齢層間および男性・女性間,痩身者・体重過多者
Union に要点が説明されている。
そうしん
間での反応を比較し,さらにヨーロッパの文化的
2005年3月,欧州連合は,ボランティア活動を
多様性を加味する。
通して肥満問題に取り組むために消費者団体や健
満腹やエネルギー収支に対する腸-脳の信号伝
康 NGO,産業代表を集めて Platform for Action
達については多くのことが分かっているが,消化
on Diet, Physical Activity and Health を 設 立 し
管と消化管の常在菌に対する食物の役割について
た。2012年 5 月,Health and Consumer 政 策 の
はあまり分かっていない。消化を調節してカロ
コミッショナーの J. Dalli 氏は,消費者の重要性
リー摂取の低減に寄与するテクスチャーや主要栄
を力説するプレスリリース“単一市場の中心に”
養素含量(例えばたんぱく質)のような,食物の
を発表した。Full 4Health などのプロジェクト
潜在特性を研究する必要がある。
の成果は,より健康的な生き方を目指す自発的な
腸-脳の信号伝達に対する研究は,脳の視床下
消費者ベースの活動を手助けし,肥満率のさらな
部(エネルギー収支センター)に集中し,統合機
る増加を防止しなければならない。年齢層ごとに
能を持つ他の重要な脳機構(特に,神経や腸から
作られた行動データや心理的データ,機構的デー
の信号が収束する後脳)を見落とす傾向がある。
タは,①健康的な幼年期と健康的な加齢を促進す
食物摂取のコントロールに寄与する食事成分や食
るための政策戦略,②幼年期肥満の増加に対する
品構成を特定し,満腹をコントロールする食品を
主要問題,③年齢層全体の生活の質に対する動向
開発することによって食物-腸-脳の軸を操作す
予測に関連している。より健康的な生活を促進す
ることが研究の中心である。
るために食物-腸-脳の軸に食物を活用する食事
最近まで摂食の快感や恩恵の影響は正しく評価
や食品,サプリメントを開発することによって食
されていなかったが,摂食行動の多くはエネル
品や飲料分野を成長させる可能性がある。
ギー必要量よりも快感に影響されている。腸は
新食品が先導する
脳(エネルギー収支センターだけでなく快楽セン
Full 4Health は前記の研究を通して,食品の
ターでもある)に作用する多くのペプチドホルモ
満足度や栄養価を損なわずに全体のカロリー摂取
ンを産生する。この影響をまねることは,過食欲
を減らす食品組成を証拠に基づいて推奨しようと
求の効果的な調節につながる可能性がある。食物
している。空腹と満腹のメカニズムを利用した食
の恩恵と食物選択の神経心理学を理解することは,
品は,薬学的なアプローチより利点が多い。
肥満と臨床的栄養不良への対処に極めて重要であ
食品と容器
(合田芳宏)
490
2013 VOL. 54 NO. 8
●
海外技術情報 ●
たんぱく質素材の最新情報
( Plugging into Proteins )
Food Technology(USA)p. 54( ’
13・2 )文献 № 5849
おいて“高たんぱく質”であることを重要視して
近年,たんぱく質素材において新たな波が起き
か き ん
いる。
ている。たんぱく質というとステーキや家 禽肉,
魚などのイメージが頭に浮かぶ。しかし,実際に
たんぱく質を強化した食品は体重のコントロー
は,様々な種類のたんぱく質が存在する。消費者
ルのために推奨されており,植物たんぱく質の摂
が,たんぱく質の豊富な商品をさがすと,大豆,
取が勧められることもある。消費者の多くは,た
ホエイ,小麦,ジャガイモ,えんどう豆,ナタネ,
んぱく質の満腹感を促進する作用を含め,たんぱ
カゼイン,卵白アルブミン,ゼラチン,コラーゲ
く質を摂ることの利益を理解している。たんぱく
ンなど,従来からあるものや,近年広まりつつあ
質の摂取により,空腹感が減るのを実感できる。
る数多くの素材に由来するたんぱく質を見いだす
たんぱく質の需要が高まるにつれ,新たな素材
の探索が進められている。大豆,小麦,ルーピン,
だろう。
ひよこ豆といった伝統的なたんぱく質素材が再評
たんぱく質素材における新たな潮流について紹
介する前に,たんぱく質とその効用について述べ
価されるとともに,いんげん豆,ナッツ類,穀類,
る。プロテイン(たんぱく質)という言葉は,ギ
野菜類を使った新規な製品が現れている。さら
リシャ語で“第一”あるいは“起源”を表す“プ
に,食肉の代替となるテクスチャー,ジューシー
ロティオス”という単語からきている。たんぱく
さ,フレーバーを改善する技術が開発されている。
“フレキシタリアン”と呼ばれる,菜食主義では
質は生体の細胞,組織,器官の構造や機能その制
御に必須であり,各々のたんぱく質は,ホルモン,
ないが時々は健康や環境への配慮から肉食を控え
酵素,抗体など特別な機能を持つ。
る人たちが増加し,代替たんぱく質源に興味が持
動物および植物由来のたんぱく質は私たちの食
たれている。世界規模で起きている肥満の蔓延へ
品のキー成分であり,様々な栄養および機能的効
の解決策としても,たんぱく質の利用はより大き
果をもたらす。さらに,今後より多くのたんぱく
な役割を持ちつつある。
質が必要となることが予想される。世界の人口が
えんどう豆たんぱく質
2020年に90億人に達し,食糧としてたんぱく質
えんどう豆は将来,たんぱく質材料の貴重な供
の必要量が顕著に上昇すると予測されている。肉
給源となり,従来使われてきた素材に取って代わ
や魚だけではこの要求を満たすことはおそらく不
るかもしれない。これまで,黄えんどうはあまり
可能であるから,植物性のたんぱく質の利用を増
知られていなかったが,食品加工分野での革新的
やす必要がある。たんぱく質を強化した食品は特
な素材となる可能性が見いだされている。黄えん
に発展途上国で重要であり,これらの国は代替た
どうは25%のたんぱく質を含み,優れたたんぱく
んぱく質資源を探索するであろう。
質源であるだけでなく,従来使用されていた製法
E. Sloan 氏は,たんぱく質を,筋肉の発達や満
を変え,たんぱく質の新しい波において大きな役
腹感をもたらし,体重制御や高齢からくる脆弱さ
割を果たすかもしれない。黄えんどう豆からはた
を防ぐのに役立つ次世代の栄養成分と記述してい
んぱく質含量が85%の消化性の高いたんぱく質濃
る (2012,Food Technology)。Sloan 氏によると消
縮物が製造されている。特に,チョコレートへの
費者の10人に1人はより多くのたんぱく質を摂る
応用が注目されており,黄えんどう豆から開発さ
よう努力しており,39%の消費者が食品の表示に
れた製品(Nutralys)は,アミノ酸組成と分散性
食品と容器
491
2013 VOL. 54 NO. 8
あろう。
に優れ,チョコレートの製造工程に影響を与える
ことなく16%まで添加できる。これにより,チョ
海から得られるたんぱく質
コレートのテクスチャーや融解性,風味を損なわ
菜食主義者のためのたんぱく質と,オメガ3脂
ず栄養特性を改善することができる。また,動物
肪酸等の栄養豊
性たんぱく質に匹敵する分岐アミノ酸(ロイシン,
富な脂質を組み
イソロイシン,バリン)を含み,スポーツ用食品
合わせた製品が
への利用も期待できる。
開発されてい
いんげん豆について
る。AlmagineHP
2008年の ADM 社による,一連のいんげん豆パ
は,たんぱく質
TM
ウダー Vegefull
も含むが脂質含
の発売は,たんぱく質素材の
潮流においても先
量が高い組成で,
進的なものだった。
クッキーやアイ
いんげん豆は優れ
スクリームなど
たたんぱく質資源
脂肪代替や天然
であるが,そのこ
乳化剤として利
ろは多くの加工業
用される。たんぱく質含量の高い(50%)製品は,
者は,いんげん豆
消化性がよくアミノ酸スコアに優れ,繊維や脂質,
を大豆やホエイと
糖類,微量栄養成分の新たな供給源ともなる。マ
いった主要なたん
イルドなフレーバー,低 pH での安定性,熱安定
ぱく質源と関連づ
けて考えていな
かった。栄養,機
ホエイたんぱく質は急成長した原料
の象徴である 性などから様々な製品で活用できる。
いんげん豆パウダーは多用途に使
えるたんぱく質強化原料である 米由来の組織化たんぱく質
米粉と海藻抽出物から作られた新規な組織化た
能的価値を持つたんぱく質資源として,黒いんげ
んぱく質が USDA により承認された。この製品
ん,赤いんげん,ネービー,ピントなど様々ない
は,大豆や小麦の製品に代わり食品の脂肪やカロ
んげん豆を利用した一連の製品が生産された。い
リーを減らしながら,風味や外観を改善するのに
んげん豆パウダーはクッキー,パンそのほかの
使用できる。加水分解の必要がない,いやな風味
ベーカリー製品,スナック,ディップ,シリアル,
や匂いがない,アレルゲンやグルテンフリーであ
ドライミックス等に風味やテクスチャーに影響を
る等の利点がある。低脂肪ソーセージパテ,肉の
与えることなく利用できる。
使用を抑えたハンバーガーパテ,イタリアンミー
たんぱく質のシンボル的存在
トボールが紹介されている。USFDA は脂肪,畜
今日のたんぱく質のうねりを象徴するものをあ
肉,家禽肉の代替としての最終製品の25%以下の
使用は安全上問題がないとしている。
げるとするとそれはホエイとホエイ由来のたんぱ
く質素材である。大豆と同様に,ホエイがプロテ
新たな市場
イン調製の主要な素材であることに,ほとんど反
2012年の IFT FoodExpo ではホエイたんぱく
論はないだろう。しかし,常にそうだったわけで
質とラクトースの利用が注目された。その中には,
はない。ホエイは,価値の低い副産物から製品に
エナジーショット,アクティブな高齢者のための
栄養的,機能的な性質を加えることができる主要
アイスティー,元気を取り戻すためのクリアなシ
な乳製品へと大変身を遂げたのである。今後の問
トラス風味のドリンクがある。積極的健康維持の
題としては,世界人口が増加したんぱく質不足が
ための食事による解決などの,高齢者のための製
もたらされると,酪農産業の持続可能性とコスト,
品を含む新たな市場が注目される。高品質で多様
新規植物たんぱく質などとの競合が課題となるで
な乳たんぱく質は,高齢者の低下した代謝を助け
食品と容器
492
2013 VOL. 54 NO. 8
ス(ひよこ豆ペースト)のスナックとしての利用
ることが期待される。
スポーツ栄養飲料用ホエイにおけるブレークス
の増大があげられる。フムスの売上高は1990年代
ルー
半ばには年間500万ドルであったが,現在は3億
Aria 社の開発したホエイたんぱく質加水分解
5,000万ドルで勢いが衰える気配はない。10年前
物は高レベルでスポーツドリンクに取り込むこと
には米国で生産されるひよこ豆の90%が輸出され
ができる。多くの高たんぱく質スポーツドリンク
ていたが,国内の需要が高まったため,今では輸
は収斂味という欠点があるが,新しいホエイプロ
出されるのは40%にすぎない。フムスの原料とな
テイン Hydro365を使うと,100mL に対して40g
るひよこ豆は優れたたんぱく質源である。4分の
のたんぱく質を含む収斂味のないスポーツ栄養ド
1カップのフムスには4.9gのたんぱく質が含ま
リンクを作ることができる。クリアで,非常にた
れ,これは女性の1日の推奨摂取量の11%,男性
んぱく質含量の高い,風味の良いリカバリー飲料
では9%に相当する。すべての必須アミノ酸が含
に使えるという点で特色がある。運動後のスポー
まれているわけではないが,ピタパンなどと組
ツドリンク市場に革命をもたらすことを目指して
み合わせると完全なたんぱく質となる。チポト
いる。
レ,乾燥トマト,サルサ,ほうれん草とアーティ
れん
たんぱく質市場展開の種をまく
チョークなど様々なフレーバーのものがあり,子
種子類は見過ごされがちであるが,たんぱく質
供向けにチョコレート風味のデザートフムスまで
の良い供給源であり,本稿のテーマである“たん
ある。濃縮乳製品やカルシウムの添加しテクス
ぱく質の潮流”において,将来,ますます大きな
チャーやフレーバーを高めた,たんぱく質強化フ
役割を果たす可能性がある。たんぱく質含量を見
ムスが開発されている。
ると,キア種子は1オンスに4.4gのたんぱく質
飲料に透明性をもたらす分離大豆たんぱく質
を含み,9種類すべての必須アミノ酸をバランス
飲 料 に 透 明 性 を も た ら す, 酸 に 安 定 な 分 離
良く含む。キノアも
大豆たんぱく質が開発されている。ADM 社の
たんぱく質含量レベ
CLARISOY150は,豆乳やスムージー,食事代替
ル が 高 く(20 % 程
飲料の新たな可能性を開くものである。この透明
度),すべての必須
な分離大豆たんぱく質によって,濁った系の酸性
アミノ酸を含む。ア
飲料,pH7.0またはそれ以上の中性飲料への用途
マ種子には大豆と同
でクリーンな味わいが表現される。そのクリーン
レベルの必須アミノ
なフレーバーとより高い pH 域での良好な溶解性
酸が含まれる。ヘン
により,マイルドなフレーバーの中性飲料への大
プ種子は9種類の必
豆たんぱく質の利用が可能になる。高温での安定
須アミノ酸を含む21
性が乳製品と同等に高いため,たんぱく質含量の
種類の知られている
高い飲料が製造できる。そして従来の分離大豆た
すべてのアミノ酸を
んぱく質に伴う問題点を克服し,透明で完全なた
含む。ヒマワリの種
んぱく質栄養物を提供することができる。
たんぱく質リッチなキア種子は
9種の必須アミノ酸を含む 子も1オンス当たり6g のたんぱく質を含む。種
ジャガイモたんぱく質
子類は菜食主義者やアスリートに好まれ,さくさ
ジャガイモはでんぷん性の食品と考えられてい
くした食感,カラフルな外観,マイルドな風味な
るが,たんぱく質源としての可能性を持っている。
どから,トッピングや中に混ぜる他の材料に取っ
技術分野でのブレークスルーにより,可溶性の
て代わる可能性がある。
ジャガイモたんぱく質が開発された。このたんぱ
たんぱく質潮流への刺激
く質は,ゲル形成性,起泡性,乳化性に特色があ
今日のたんぱく質の潮流の前兆として,フム
る。このたんぱく質は米国では,グルテンフリー
食品と容器
493
2013 VOL. 54 NO. 8
のベーカリー製品,菓子類,スポーツ栄養食品,
るのに,大きな役割を果たすであろう。材料分野
肉代替食品に0.01% から10%まで使用することが
では,グルテンフリー製品開発へのたんぱく質の
認められている。アミノ酸バランスが良く,優れ
応用が考えられる。えんどう豆,レンズ豆,ひよ
た乳化性,起泡性,ゲル形成性を提供する。グル
こ豆は穀物と組み合わせると理想的なアミノ酸供
テンフリーパンでは,このたんぱく質が多くの機
給源となる。もちろん,たんぱく質は栄養バーや
能的な問題点の解決に役立ち,色,形,保存性に
プロテインシェーク,サプリメントなどに今後も
優れた製品となる。
利用されるだろう。この潮流の中で,従来の素材
人々の健康への配慮はたんぱく質の潮流を促進
が再評価されるとともに,新たなイノベーション
する。糖尿病は世界的に問題となっており,たん
が生まれ,それぞれの食生活のニーズに適合され
ぱく質素材はこれらの人々のための食品を開発す
ていくことが期待される。
(門間美千子)
●
海外技術情報 ●
新包装材料はシェルフライフと持続可能性に効果的
( Multifaceted Empowerment )
Food Engineering(USA)p. 49( ’
13・3 )文献 № 5859
(200mL)に IPN Group の Clean Valve というい
無味無臭の食品向け水溶性フィルム Vivos が
MonoSol 社から登場した。このフィルムは水中
たずら防止機能付き(TE)キャップを採用した。
に投下すると食物中に溶解してしまい ゴミとな
5mm 径の Clean Valve は吸い込むとストローの
らない文字通り食べる包装材だ,と同社の上級
ように機能して製品を排出するが,パウチが転倒
マネジャー Kumar 氏は言う。Cloud Packaging
したりつぶされた時の液漏れを防止する。
Systems 社 の 成 形 − 充 填 − シ ー ル 機 Dual-web
持続可能性の拡大
Hydroforma は,単一粉体,あるいは粉体2種の
包装の軽量化,再生可能素材,リサイクル材
(post-consumer-recycled content)の活用が食品
充填が可能だ。
加工業の持続可能性を高めることにつながる。
Lundberg Family Farms 社は有機米の包装に
PE 材をベースとし Velcro 社のフック式開閉技術
ビールメーカー Carlsberg 社は段ボールに代
Press-Lok を 装 着 し た Peel Plastics 社 の ス タ ン
えてフランス企業 CEISA 社の印刷済み低密度ポ
ディングパウチ EZ-Close を採用し簡易開封機能
リエチレンシュリンクフィルムを使い KHS 社の
を持たせるようにした。底面が平らなので店頭で
の陳列も容易になる。
ベルギーの Abramo 社は同国の ScaldoPack 社
がオンタリオ州の Takigawi 社に技術ライセンス
供与する自己発熱機能付きパウチをスープに採用
する。220mL のスープを5分間で35℃まで加温
できる。外側のパウチが内容物を保持し内側のパ
ウチに無害な生石灰をベースとする発熱機能を内
包する。パウチ前面のボタンを押すと加温機能が
作動する。
オランダのジュースメーカー Roosvicees 社は
PACK EXPO に展示された MonSol の水溶性パック
を使ったココアミックスとオートミールのサンプル
無菌充填果汁の使い捨てスタンディングパウチ
食品と容器
494
2013 VOL. 54 NO. 8
標準フィルムの2/3まで軽減する。主な製品
群として従来の配向性ポリアミド(OPA)/PE に
代わる OPA Light フィルム,配向性ポリエチレ
ンテレフタレート(OPET)/PE に代わる OPET
Light フィルムがある。
前 出 の 水 溶 性 パ ッ ク や WikiCell Design 社 の
WikiCell のような食べられる包装というのが,
おそらく資源を無駄にしない包装の最も高レベル
のものになり得るのではないか。WikiCell はハー
バード大学教授 D. Edwards 氏の発明によるもの
Press-Lok のフック式シールを装着した Lundberg
Family Farms の米用スタンディングパウチ
で,2013年中にはこの技術を利用した製品がパリ
の WikiBar に登場することになっている。
Innopack Kisters シュリンク包装機で包装する
再生可能な植物性素材も持続可能性を高める対
FullyEnclosed Film Pack を採用している。出来
応策の一つとして,ますます注目を集めるように
上がった24本マルチパックには従来のシュリンク
なってきた。Innovia 社の NatureFlex セルロー
包装に見られる側面の開口部が無く,缶や瓶が輸
ズフィルムはバイオプラスチック材の中では水蒸
送中に横ズレしない。
気バリアー性が高く,紙やポリ乳酸のようなバイ
オプラスチック材とのラミネート加工ができる。
硬質容器の代替え包装として Printpack 社の
Viscopack や Smart Bottle 社 の Smart Bottle が
堆肥化の標準である ASTM D6400に適合するも
ある。Printpack 社の8オンスから2ガロンまで
のもある。
のサイズのピローパウチは,中・高バリアー性の
石油に代わるポリマー生産原料としても植物素
共押し出しポリオレフィンフィルム PerformX を
材が次第に市場シェアーを獲得しつつある。Clear
使用するもので,Viscopack System 3.0機により
Lam Packaging 社のロール状フィルム Bio-PET
成形,充填,シールを行う。1ガロン・パック毎
は,そのフィ
分60個の生産能力があり,乾燥品のパックもでき
ルムの生産原
る。上下両端にダイカットされたハンドルが付い
料に,豊田通
た Smart Bottle は安定した内容物の注ぎ出しが
商が供給する
できる。サイズは0.5~5.28ガロン,注ぎ口の径は
サトウキビの
10 ~110mm,キャップ形状はスポーツキャップ,
バイオエタ
スクリューキャップ,スナップオンキャップの中
ノール由来の
から選べる。Kraft Foods 社は Kraft YES Pack
モノエチレン
と称する Smart Bottle でフードサービス向け営
グリコールを
業用サラダドレッシングを販売している。従来の
使用している
取手付き広口容器を使用したドレッシングに比べ
ため,30%が
内容物の歩留まりが99%まで向上し,エネルギー
再生可能原料
消費量が50%減,プラスチックの使用量が60%減,
となっている。 Clear Lam 社の微小穴付き Peel&Reseall
容積あたり個数が増加することにより輸送関連の
この製品は標
二酸化炭素排出量が70%減少するとしている。
準 的 な PET
リッド。空気穴の径は内容物の呼吸量に
合わせてある。
と一緒にリサイクルできる。
軟包装用フィルムも軽 量化されている。Amcor
Flexibles 社 の Thinner Amcor Light Laminates
Klöckner Pentaplast 社 が 販 売 し て い る100 %
は包装材重量およびカーボンフットプリントを
リ サ イ ク ル 材 の 食 品 仕 様 熱 成 形 Pentaform
食品と容器
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SmartCycle フィルムは直接食品に触れる包装材
孔機はラミネート形成・パウチ成形・充填・シール
としての FDA の基準を満たしている。
装置にレトロフィットとして組み入れることがで
シェルフライフを伸ばす効果
き,素材にナノサイズ(100ミクロン以下),ミク
Mantrose-Haeuser 社が特許出願中の VerdeCoat は,
ロンサイズ(100ミクロン~1mm),あるいはマ
クロサイズ(1mm 超)の穿孔を施すことができる。
スターチ,セルローズ,成形ファイバー,バガス
ざ ん さ
陳列効果の向上
(サトウキビ搾汁後の残渣),ヤシ,紙,ポリ乳酸
を原料とする包装材用の食品仕様バイオポリマー
メタリックな外観は陳列効果を高める。Eckart
バリアーコーティングで,生分解性プラスチック
社の Mirrogold は母材に金色のミラー効果を施す
協会(BPI)の堆肥化要件認定を受けるとともに,
ために使用するインクだ。金属蒸着したフィル
ウエスタンミシガン大学の実験で再パルプ化が可
ムには包装設備の金属探知機が機能しない場合
能なことが確認されている。
があるが,非連続パターンに金属蒸着した Vast
インモールドラべリングの 採 用で 薄肉 容 器 の
Films 社の MetDetect フィルムは,高周波の光
バリアー性を向上させることも可能だ。Constantia
が透過するため,このフィルムで成形したパウチ
Flexibles 社 傘 下 で ベ ル ギ ー・ マ ル デ ゲ ム の
の内容物に混入したわずか0.8mm の異物でも金
Drukkerij Verstaetes 社は酸素バリアー性・遮光性
属検出器で検出できる。スクイズボトルの感圧
を持つインモールドラベルを生産している。ラベル
ラベル用に開発された Acucote 社の FLEXPrime
は白色と透明の2種類あり,酸素透過量はわずか0.5
コンフォーマブルフィルムは,インクの乗りがよ
㏄ /m / 日(23℃,湿度65%,酸素100%時)となっ
く耐湿性に優れていてフォイルスタンピングにも
ている。遮光バリアーラベルは80ミクロンの白色
対応しダイカット性も良好だ。
2
PET ボトルに装着したシュリンクラベルがリ
キャスト成形フィルムで99%の遮光性を有する。
サイクル PET 材の品質劣化を招く恐れがある。
Amcor Rigid Plastics 社の200mL PET 容器を
採 用 し た Beam 社 の Skinnygirl Margarita カ ク
ExxonMobil Chemical 社 の 密 度1.0g/cc 以 下 の
テル4本入りパック Skinnyminis は,脱酸素剤
Label-Lyte 50TD200ポリオレフィンフィルムは,
や UV 遮光添加剤の効果で長期のシェルフライフ
水に浮き上がるのでリサイクル処理工程で分別が
を確保している。従来750mL ガラス瓶入りで販
容易にできる。Printkote 社のダブルクレーコー
売してきたが,ガラス瓶では販売ができない(ヤ
ト SBS ボード紙は,高品質印刷を施すことでプ
ンキースタジアムのような)新たな販路を開いて
レミアムイメージを備えた高級チョコレート,菓
くれる,と Beam 社のブランドディレクターの
子用に最適な再生可能包装材となる。バージニ
M. Frank 氏は言う。この PET ボトルは200ポン
ア州 MeadWestvaco 社のコビントン工場で生産
ドの縦荷重に耐え Amcor Flexible Capsules 社の
される Printkote ボード紙は,ドイツの研究機関
アルミ製ロールオン・ピルファープルーフキャッ
フラウンホーファーが行った欧州標準化委員会
の EN1230-2に沿った官能テストにすべて合格し
プ装着に対応している。
生肉,野菜および炭水化物を素材としそのまま
ている。T . H . E . M. 社が開発した Zipbox はポリ
加熱できるインスタント食品で,3室構造のアモ
コートされた紙パックと Zip-Pak Press-to-Close
ルファス PET トレーと3段階バリアー性を備え
ジッパーを装着したヘッダーを組み合わせた製品
たトレーリッドの組み合わせで,長期のシェルフ
で,U . S . Sugar 社 の Plantation ブ ラ ン ド に 使 用
ライフを確保している製品がある。タンパク質に
されている。このパックは開閉が容易でドライグ
対しては酸素バリアー性を持たせ,野菜と炭水化
ローサリー(冷蔵を要しない食品や雑貨)や冷凍
物に対しては呼吸ができる程度のレーザー穿孔を
食品用に利用できる。Hartness International 社
設けた KM Packaging Services 社のリッドフィル
との共同開発による充填ラインは100個 / 分以上
ムを採用している。Stewarts of America 社製穿
の処理能力がある。 (桜田三郎)
せんこう
食品と容器
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業
T
界
O
ト
P
ピ
I
ッ
C
ク
S
ス
上半期の低アルコール飲料市場動向
総市場は6%増で5年連続のプラス
したことが寄与した。続くサントリー〈−196℃〉
醸造産業新聞社が推計した今年上半期(1~6
よい〉は「練乳いちごサワー」「ラムネサワー」
は21%増で3年連続の2ケタ増となった。「スト
ロングゼロ」が25%増と好調。サントリー〈ほろ
月累計)の低アルコール RTD 飲料市場規模は前
など期間限定品が堅調で9%増。宝酒造〈焼酎ハ
年比6%増の4,520万箱(350mL ×24本換算)と
イボール〉は12%増となり6年連続の2ケタ増と
なった。これで5年連続のプラスとなり過去最高
なった。
今年発売の新商品では,アサヒが3月に発売し
を更新した。アル分8~9%の「ストロング系」
分野が引き続き牽引。8%増の約1,180万箱とな
た〈ハイリキ〉は104万箱,キリンが5月に発売
り,総市場の約26%を占めたもようだ。ただ伸び
した〈カリブーン〉は21万箱。このほか,モルソ
率は1ケタにとどまった。
ン・クアーズ・ジャパン〈ジーマ〉14%増,〈ス
〈氷結〉2%増,〈−196℃〉21%増
ミノフアイス〉22%増など瓶入り商品が軒並み伸
長した。
ブランド別販売数量は第1表のとおり。上位4
ブランドのトップブランドのキリン〈氷結〉は
伸長の続く「ストロング系」分野に対し,ア
2%増。「ストロング」が14%の2ケタ増となっ
ル分2~4%の「ライト系」分野の商品はアサ
たほか,「スタンダード」が3%増と堅調に推移
ヒ〈すらっと〉18%減,アサヒ〈カクテルパート
ナー〉13%減,サントリー〈カロリ。〉31%減な
第1表 2013年上半期(1~6月)の主要ブランド販売数量
銘柄名
ど苦戦したブランドが目立った。
数量
前年比
(万箱) (%)
キリン〈氷結〉
上位5ブランドの市場占有率は54.3%で前年よ
り1.1ポイント上昇したものの,上位10ブランド
1,007
102
サントリー〈-196℃〉
753
121
サントリー〈ほろよい〉
359
109
宝酒造〈焼酎ハイボール〉
225
112
アサヒ〈すらっと〉
125
82
アサヒ〈カクテルパートナー〉
122
87
宝酒造「果汁系商品」計
116
109
アサヒ〈ハイリキ〉
104
−
キリン〈本搾り〉
101
186
トリーで9%増。次いで宝酒造7%増。主要4社
計は3,550万箱となった。洋酒ベースのハイボー
サントリー〈カロリ。〉
97
69
サントリー〈カクテルカロリ。〉
84
103
宝酒造〈can チューハイ・レギュラー〉
79
95
アサヒ〈果実の瞬間〉
53
89
モルソンクアーズJ〈ジーマ〉
42
114
キリン〈スミノフアイス〉
41
122
カルピス〈カルピスサワー〉
38
125
キリン〈ワインスプリッツァ〉
33
71
※チョーヤ計
23
100
キリン〈カリブーン〉
21
−
サッポロ〈バカルディ〉
15
94
サッポロ〈ネクターサワー〉
14
64
では0.7ポイント低下し66.1%となった。伸長の続
く上位4ブランドへの集中傾向がうかがえる。
主要4社の販売数量すべてプラス
主要4社(サントリー,キリン,宝酒造,アサ
ヒ)の販売数量は第2表のとおり。4社すべてが
前年を上回った。伸び率が最も高かったのはサン
ル缶商品を加えた4社の市場占有率は0.1ポイン
ト上昇し83.4%。
第2表 2013年1~6月の主要4社実績
サントリー
キリン
宝酒造
アサヒ
計
前年比(%)
1,326
1,210
525
489
109
105
107
102
3,550
106
《注》1箱=350mL ×24本換算。洋酒ベースの「ハイボール缶」
除く
《注》1箱 =350mL ×24本換算。宝「果汁系商品」計は〈直搾
り〉〈can チューハイすりおろし〉計。〈ジーマ〉は各容量の実
績の単純合算。「チョーヤ計」は全商品の合算。サッポロ〈バ
カルディ〉は「モヒート」「キューバリブレ」計。
食品と容器
数量(万箱)
(醸造産業新聞社 編集部)
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食の遠近画法 75
連載エッセー
町内会祭も姿を消し,御輿も奉加帳も回らない。
近隣窮乏化
ご
みょう
とし
コミュニティーの崩壊である。つまり町を一つ壊
して,一巻の終わりとなった。
○
はる
五 明 紀 春(女子栄養大学教授)
十八歳人口が減り始めて二十年。近年,全国各
県による高校生の囲い込みが,一段と加速して来
近所に,真夜中も煌々と明るいコンビニが出来
た。県内大学への進学を誘導するために,教育委
て十五年,店主は二度替わっている。この間に,
員会が先頭に立っている県もある。若い人材を県
周辺の細々とやっていた文具店,酒屋,食料・雑
外に逃がさぬための大学版の「ブロック化」とも
貨店などが,草が枯れるように姿を消して,町は
言えるだろう。
様変わりした。そこまでは,まあ仕方なかった。
地方の高齢化,過疎化が進む中,各県による
しかし,最近,当のコンビニが,突然,店仕舞
「ブロック化」は,正当防衛と理解される。都市
いしてしまったのである。その一角は真っ暗に
圏の有力大学が競って全国から吸い上げた若者
なった。すでに二カ月経つが,生活圏に不可逆的
たちは,卒業後どうなったか。「ブロック化」は,
変化をもたらしたまま,一向に空白が埋められる
人材を吸い上げる一方の都市圏大学に対する当然
様子はない。美容体操教室が出来るとの噂である。
の対抗策と言えるだろう。
多くの卒業生が出身地に戻らない,となれば,
筆者も含めて,食料保存庫として,毎日,便利
に使っていた人たちには,いわばライフライン。
地方の人材は枯渇し,地域社会の地盤沈下を招く
それが,断りもなしに失われたのである。当惑は
だろう。地方に活気がなくなれば,雇用機会は失
小さくない。近年は,若者たちより,独居とおぼ
われ,さらにUターンが難しくなる。この悪循環
しき年配者で賑わうようになっていたから,余計,
が始まって,すでに久しい。都市圏大学が,地方
心配になった。しかし,いつまでも待つ訳にはい
の疲弊・窮乏化に手を貸している,と言われても
かない。生活圏の再編成が,すでに進行している
仕方ないのではなかろうか。そこに「一票の格差
はずだ。といって,近隣に代わる店は,もうない。
是正」が追い討ちをかけている,というのが今の
事態ではあるまいか。泣き面に蜂である。
「便利屋」がなくなって,「不便」だけが残った。
かと言って,「田舎の学問より京の昼寝」の通
コンビニの十五年は,町の精気を吸い取っただけ
り,若いうちは,都会に出て,全国各地から集
に終わった。
まって来る人たちと交流し,視野を広めることも
当節,どこへ行っても「開店自由,閉店自由」
が,まかり通っているようだ。こうなると,近隣
肝要だ。そこにディレンマがある。人材を,吸い
の人々の日常生活は,絶えず,予期せぬ脅威に曝
込んでは吐き出す「人材ポンプ」の機能を大学が
されることになる。「自由開店」は,町を作って
担っているとすれば,地方から吸い込んだ人材は,
いた小売店を潰し,「自由閉店」は,近隣のライ
元の地方へと吐き出す努力が迫られよう。
くだん
フラインを奪う。件のコンビニは,二度に渡って,
したがって都市圏大学は,卒業生の地方還流に
町を破壊したことになるだろう。自由競争は,商
一肌も二肌も脱がねばなるまい。また,それらの
売の浮沈だけでなく,人びとの生活の浮沈も道連
大学も,全国から優秀な学生を集めるには,卒業
れにする。自由経済の盲点と言えまいか。
後の出身地での仕事確保は,不可欠の戦略目標で
あるはずだ。
筆者の田舎の駅前商店街も同じ轍を踏んだ。
及ばずながら,筆者の大学も「人材ポンプ」と
スーパー進出十五年,そのスーパーがシャッター
通りだけを残して撤退したのも最近のことである。
して,在学中の県人会活動に力を入れ始めた。出
病人が枕を並べている活気のない町に,誰も寄り
身地での同窓生ネットワークを予め構築すること
つかなくなったのも当然であろう。賑やかだった
で,スムーズなUターンを期待してのことである。
食品と容器
498
2013 VOL. 54 NO. 8
噌汁が,格好の減塩ターゲットにされてきた。味
○
岩倉使節団(1871-1873)の副使,木戸孝允と
噌汁の血圧上昇効果を示すエビデンスが皆無であ
大久保利通は,ヴィクトリア女王に謁見した後,
るにもかかわらずである。どころか,近年の疫学
ロンドンの貧民窟をこっそり見てまわった。二人
調査,介入試験,動物実験は,すべて「味噌汁摂
は,そのすさまじさに息を呑んだ。繁栄の絶頂に
取と血圧は無関係である」ことを示している。
(注)
あった大英帝国の闇に大きな衝撃を受けた。大久
これらの結果は,味噌汁由来の塩分は,一日の
保は「あれを見て,世の中が浅ましくなった」と
塩分摂取量から控除してもよいことを示唆してい
嘆いている。街路を覆う路上生活者の群にも,度
る。しかも,日本人の塩分摂取量に対する味噌汁
肝を抜かれている。二人の目には,文明開化と隣
の寄与率は,たかだか五パーセント程度である。
り合わせの暗部が焼きついた。(田中彰「岩倉使
千年の味覚文化が,せいぜい数十年のキャン
おとし
ペーンで貶められたと言って過言ではない。味噌
節団『米欧回覧実記』より)
緑色に濁ったテムズ川は悪臭を放ち,工場の煤
汁の冤罪によって,日本食全般が「自信喪失」に
煙が一日中太陽を遮っていた19世紀のロンドンは,
陥ったことは否めない。多くの日本人が,「ケチ
世界の最先端都市であった。同時に,ディケンズ
のついた味噌汁」を心底楽しめなくなった。どこ
の描いた貧民都市,マルクス『資本論』エンゲル
か後ろめたい気持ちで,薄味の不味い味噌汁に我
ス『イギリス労働者階級の状態』を生んだプロレ
慢を強いられてきたのではなかろうか。味噌汁を
タリア都市でもあった。
横目に見ながら,食卓から遠ざけてしまった人も
出発前,西欧文明に懐疑的・悲観的だった大久
少なくないと思われる。
保は,下層貧民に,文明の不徹底を見,逆に希望
こうなると,味噌だけでなく,和食食材におけ
的・楽観的だった木戸は,弱肉強食の自由競争に
る塩分給源の総ざらいをしたくなる。特に,高塩
文明の宿痾を見たと言われる(同上)。
分を咎められてきた伝統的な発酵保存食品の「再
しゅくあ
とが
当今でも,
「格差社会」は自由競争の不徹底に
審」が待たれる。それらの多くに降圧機能が示唆
よるとするか,その不可避の帰結とするか,論者
されているからである。
は分かれているようだ。同様,使節団の意見も分
味噌汁は「扇の要」として,和食食材の束ね役
かれたに相違ない。
である。米,魚,豆,野菜,海藻,茸などの近隣
しかし,固定した身分制の下に,安眠を貪って
食材と補完して,日本食文化を形づくってきた。
いたはずの故国の方が,よほど人民にとって幸福
わが国の一次産業の復興,食料自給率の向上は,
なのでは,と二人の頭をよぎったのでは―。これ
味噌汁の再興にかかっていると言って過言ではあ
は筆者の想像である。
るまい。味噌汁の「理論武装」が急がれる。
その後の明治国家は,文明開化路線・資本主義
○
路線をひたすら突き進んだ。西洋古今の成功者の
他国を犠牲にしての貿易収支の改善を「近隣窮
人物伝であるスマイルズ『西国立志篇』
(1870-
乏化政策」( J. ロビンソン)という。多くは為替
1871邦訳刊)の「天は自ら助くるものを助く」は,
レートの切り下げを指す。この政策は,ただちに
明治の青年を奮い立たせた。適者生存・優勝劣敗
他国の反撃を受けて,貿易は縮小し,経済ナショ
を唱え,隣人の窮乏を正当化したスペンサー『社
ナリズムが一気に燃え盛る。挙げ句,世界全体が
会進化論』は,同時代のベストセラーになった。
不況に沈む。さらには戦争へと突き進む。経験済
それから百年,大して遠くまでは来ていないよ
みのことである。WTO, IMF, EU は,隣人窮乏
うにも思われる。昨今は,隣人のみならず隣国の
化政策の国際監視機関でもある。
窮乏を待望している風潮さえあるようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
○
(注)みそサイエンス研究会シンポジウム(平成25年7
「食塩を含む」という唯それだけの理由で,味
食品と容器
月4日)主催:一般社団法人中央味噌研究
499
2013 VOL. 54 NO. 8
●
特別解説
●
青果物のバルクコンテナ物流システムの開発
し い な・ た け お
岩手大学農学部卒業。農
水省食品総合研究所入
所、 現 在、( 独 ) 農 業・
食品産業技術総合研究機
構食品総合研究所食品工
学研究領域上席研究員
(流通工学ユニット長)。
農学博士
椎 名 武 夫
用等が必要としている。
1.はじめに
一方,段ボール箱はほぼ100%リサイクルされ
食料供給コストの縮減が喫緊の課題であり,農
ているものの,地球温暖化防止対策の加速化のた
林水産省は「食料供給コスト縮減アクションプラ
め,輸送容器等におけるリユース方式の採用,す
1)
なわち通い容器の利用が期待される2)。
ン」 を策定している。同アクションプランでは,
供給コスト縮減のために重点的に取り組むべき課
筆者らは,コストと環境負荷の低減を目的とし
題として,①低価格資材の供給や効率利用等によ
て,新規に開発されたバルクコンテナによる青果
る生産コストの縮減,②経営規模拡大,技術開発
物物流技術の開発などに取り組んでいる。ここで
等による生産コストの縮減,③卸売市場改革や物
は,平成22年度から農林水産省「新たな農林水産
流効率化等による流通コストの縮減,④品質や形
政策を推進する実用技術開発事業」で実施した「コ
状等に関する消費者ニーズ等への効率的な対応に
スト・環境負荷同時低減のためのバルクコンテナ
よるコストの縮減,⑤農協の経済事業改革の推進
物流技術の開発(22014)」に関する研究概要3)を
による生産コスト及び流通コストの縮減,の5つ
紹介する。
をあげている。青果物の出荷容器として90%以上
の割合で使用されている段ボール箱は,集出荷経
費のうちの約21%を占める。そのような背景から,
2.バルクコンテナ物流による温室効
果ガス削減およびコスト縮減の可能性
2-1.温室効果ガス削減効果
上記③においては,より低コストな通い容器の利
実用技術開発事業による研究実施に
先立ち,青果物のバルクコンテナ物流
による温室効果ガス(Greenhouse Gas,
GHG)削減の可能性をライフサイクル
アセスメント(Life Cycle Assessment,
LCA)手法により解析した。
写真1 新規バルクコンテナの使用時1基(左)と
非使用時9基(右)の状態 (カラー写真を HP に掲載 C055)
食品と容器
500
対象とするバルクコンテナ(タフパッ
ク,キョーラク(株)・王子インターパッ
ク(株)製,以下 BC と略記)は,最近開
2013 VOL. 54 NO. 8
(g-CO2/kg)
発されたもので,プラスチック製のパレットおよ
び上ぶた,並びに複々両面段ボール(3層段ボー
ル)製のスリーブで構成され,自動車部品等の輸
送のための通い容器として利用されている(写真
CO2排出量
1)。
この BC は,プラスチック部分に数種類の寸法
100
80
60
40
20
たサイズ選択が可能となっている。BC は,軽量
である,耐久性がある(プラスチック部分は100
プラスチッ
クコンテナ
0
のサイズは任意となっているため,内容品に応じ
段ボール箱
規格があり,高さ方向の寸法を規定するスリーブ
120
B
C
大
B
C
小
第1図 ダイコン物流に関わる GHG 排出量比較
回以上の使用に耐える),繰り返し利用容器とし
(バルクコンテナと既存容器との比較)
ての優位性を持つだけでなく,スリーブの折りた
70
7分の1に低下するため,復路の輸送効率が向上
60
コスト削減率 (%)
たみが可能で使用時に対する非使用時の容積が約
するという特徴を持つ。
BC の特徴である大量物流という利用形を考慮
して,産地から消費地の物流拠点(卸売市場,量
販店の物流センターなど)への物流を想定し,輸
送には10tトラックを用い,青果物の産地出荷施
50
40
30
20
10
0
設から消費地物流拠点までの距離は560km(高速
道路500km,一般道30km×2)として,解析を
ダイコン ニンジン タマネギ カボチャ キャベツ ハクサイ
第2図 BC 物流の包材コスト削減率試算
実施した(折笠ら,2010)。具体的には,包装資
第1図に,解析結果を示す。図より,段ボー
材,輸送燃料,使用電力などごとに GHG(CO2 )
排出原単位を調べ,それに各プロセスの物理量を
ル箱による輸送の CO2 排出量が最も大きく,次
乗算するインベントリー分析を実施し,使用容器
いでプラスチックコンテナ,BC 小,BC 大の順
の間で比較を実施した。比較の際の基準となる
となった。また,段ボール箱と比較した BC 大の
機能単位は,青果物1kg 当たりの CO2 排出量[g-
CO2 削減率は,約40% となった。これは,BC の
CO2 / kg]とした。
繰り返し利用による輸送1回当たりの実質 CO2
ここでは,ダイコンを対象とした解析につい
排出量の減少と,返却時において,BC の折りた
て簡単に触れる。BC としては,スリーブ長(高
たみによる体積減少に伴う復路の輸送効率の向上
さ)の異なる大(1,078×1,058×790mm)および
が原因と考えられる。
小(1,078×1,058×390 mm)の2種類を設定した。
以上のように,ダイコンの流通において,既存
BC 物流の比較対象としたのは,段ボール箱およ
の段ボール箱による流通方式に替えて,リユース
びプラスチックコンテナである。段ボール箱に
式バルクコンテナによる物流を導入することによ
ついては,内寸590×330×150mm,1箱当たり
り,大幅に CO2 排出量を削減する効果を有する
の質量は0.97kg,内容量は10.0kg と設定した。プ
ことが示された。また,その後の解析により,物
ラスチックコンテナについては,内寸487×328
流拠点から小売への輸送のための小分け用プラス
×300mm,1箱当たりの質量は2.0kg,内容量は
チック製通い容器を含む場合も40%程度の CO2
15.0kg と設定した。なお,紙面の都合で解析の
排出量削減効果が期待できることが示された5 ,6)。
詳細を記載することができないため,詳細につい
今後,青果物生産も考慮し,包装条件による青果
4)
ては,文献 を参照されたい。
食品と容器
物の品質劣化・ロスを介した CO2 排出への影響
501
2013 VOL. 54 NO. 8
ン,ニンジン,カブ,タマネギ,キャベツ,ハク
についても調査する予定である。
2-2.コスト縮減効果
サイ,カボチャ,温州ミカン,ネーブルオレンジ
BC 物流への適合性が高い青果物としてダイコ
を選定し,BC 物流の適用により,既存の段ボー
ル箱物流方式と比較してどの程度コスト縮減が期
4.0
待できるか試算した。
加速度伝達率
3.5
第2図に,6種類の野菜について,通常段ボー
3.0
2.5
Layer-5
ル箱から BC へ転換することによるコスト縮減効
2.0
Layer-4
果を示した。図から,青果物の種類によって幅が
1.5
Layer-3
あるものの,約3~7割の包材コスト縮減が可能
1.0
Layer-2
0.5
Layer-1
であることが示された3)。
3.BC 物流導入における技術的課題
への対応
0.0
0
10
20
30
周波数(Hz)
青果物をバルク状態で荷扱いすることで,容器
第3図 振動周波数が多段積載ダイコンの加速度
伝達率に及ぼす影響 への投げ入れなどによる落下高さ(落下衝撃)の
(5段に棒積みし,正弦波固定周波数0.6Gで加振)
増大,多段積載による静荷重の増大,振動衝撃が
加わったときの動荷重の増大などによる物理的損
傷の発生,およびこれらのストレス因子による生
損傷割合(%)
理的な損傷や成分変化が起こることが懸念される。
そこで,落下,振動衝撃,物理的傷害などの発
生メカニズムの解明とその抑制手法,生理的損
傷・成分変化の発生メカニズムの解明とその抑制
手法,等について検討を行った。
第3図は,振動試験機を用いて計測した,多段
積載ダイコンの振動伝達特性を示す7)。図の縦軸
の加速度伝達率は,ダイコンの加速度を振動台の
周波数(Hz)
加速度で除した値であり,振動台の加速度が何倍
第4図 多段積載時のダイコンの損傷に及ぼす振動
周波数の影響 に増幅されたかを示す。加速度伝達率(すなわち
ダイコンの加速度)の大きい上段では,主として
(正弦波固定周波数,加速度0.6Gで40分間加振)
擦り傷が発生し,上段で発生する擦り傷の発生程
度と加速度伝達率との間には比例関係が認められ
た。一方,下段では主として押し傷が発生したが,
その程度は,品質劣化と判断されるレベルではな
かった。
ところで,第3図の結果は,ダイコン1列5
段で積み上げた際のデータであり,この場合,
15Hz 付近に共振点があることが分かった。
通常,段ボール箱包装の場合,箱内に段積みす
写真2 振動によるバルクコンテナダイコンの
位置移動(カラー写真を HP に掲載 C056)
る際には,上段ダイコンは,下段の2本のダイコ
ンの間に積載する最密充填が採用される。そこで
(開始時は,容器に奇数段4列 / 偶数段3列×5段の条件で
1段ごとに向きを交互にして充填)
食品と容器
次に,ダイコンを,容器に奇数段4列/偶数段3
502
2013 VOL. 54 NO. 8
上段
バルクコンテナ
中段
加速度(G)
加速度(G)
8
7
6
5
4
3
2
1
0
下段
0
10
20
30
8
7
6
5
4
3
2
1
0
段ボール箱
中段
下段
0
40
上段
10
20
30
40
周波数(Hz)
周波数(Hz)
第5図 ダイコンに生じる加速度の比較(加振加速度振幅0.6Gの正弦波で加振)
列×5段の条件で1段ごとに向きを交互にして充
物品に作用する加速度と損傷との間には正の相関
填した(交互反転最密充填,以下,最密充填)条
があるため,ダイコンの損傷が抑制される可能性
件で振動特性,および,損傷の評価を実施した。
が示されたといえる9)。今後,加速度伝達率に加
損傷評価は,加振時間を40分として,損傷が発生
えて,損傷評価を実施する必要がある。
第6図は,キャベツについて,バルクコンテナ
しやすい上段部分(3~5段目)のダイコン(計
11本)について調査した。
に充填する際に発生が想定される,最大落下高さ
第4図に,各振動周波数における損傷割合を示
80cm までの平面(コンクリート床)への落下処
8)
した 。 損傷は,2,10,15,20,30 Hz の中で
理を3回施した際の呼吸速度の変化を示したもの
は10Hz で最大値(2.0%)を示し,次いで15およ
である10)。
び20Hz における1.6%であった。 一方,2Hz で
80cm からの落下処理では,落下直後からの著
は0.3%であり,他の周波数と比較して損傷割合
しい呼吸速度の一時的な上昇がみられる。なお,
は有意に小さかった(p <0.01)。
呼吸速度の一時的な上昇は,1日後に対照区に対
写真2に,40分加振後のダイコンの積載位置の
して有意差の無いレベルまで低下することが確認
8)
変化を写真で示した 。 10~20Hz で著しい移動
された。
一方,落下処理を施したキャベツの品質変化の
が確認され,2および30Hz では移動はほとんど
確認されなかった。移動程度が大きいこ
ると考えられる。
さらに,既存の物流条件との比較を目
的として,ダイコンの合計積載段数が10
段となる条件,すなわちバルクコンテナ
に10段積載した場合と,通常段ボール箱
内に2段詰めしその段ボール箱を5段に
積載した場合について,加速度伝達特性
を比較した。
第5図に,測定結果を示す。バルクコ
ンテナと段ボール箱について,上段(い
80
呼吸速度(mgCO2kg-1h-1)
とが,損傷程度が大きい要因の一つであ
:無処理
食品と容器
:20cm
60
A
40
20
0
0
25
50
75
100
125
150
時間(h)
ずれも10段目)における加速度を比較す
ると,バルクコンテナで明らかに小さい。
:80cm
第6図 落下処理を施したキャベツの呼吸速度変化
503
2013 VOL. 54 NO. 8
指標として,重要な構成成分である糖組成の変化
下を来たすことから,ハンドリングの際には注意
を測定した。第7図に示すように,40cm 以上の
しなければならない。逆に,20cm 程度までの平
高さから落下させた場合,貯蔵中に糖含量が減少
面への落下であれば,成分変化を生じる可能性が
9)
小さいと考えられた。
する可能性があることが分かった 。40cm 以上
というような落下高さの大きな衝撃は,物理的な
第8図は,バルクコンテナへのキャベツの充填
傷の発生に加えて,重要成分の減少という品質低
時に,後から投入される個体の切り口が,充填済
みキャベツに当たり頂部に傷害が発生する場合を
想定し,頂部の1枚目の結球葉に傷害処理を施し
全糖 (mg·g-1 FW)
35
た時の,ストレス応答性タンパクとして知られる
a
a
a
30
calcium-modulated protein(calmodulin,CaM)
をコードする遺伝子の発現変動を調べた結果で
ある11)。傷害後のキャベツにおいて,報告のある
b
25
Control
20 cm
アイソフォーム(BoCam 1 ,BoCam 2 )のうち,
40 cm
10 cm
BoCam1 の発現レベルが顕著に増大しているこ
20
0
1
2
3
4
5
とが分かる。
6
その後の研究により,ストレス応答遺伝子の発
処理後の日数(日)
現,さらにはカスケード的に生じる代謝制御系の
第7図 落下高さがキャベツの糖含量に及ぼす影響
(図中の a,b は有意差を示す) 変動などにより呼吸速度の上昇,有害成分の生成,
有用成分の分解などが誘起され,品質低下へとつ
10.0
ながることが明らかになりつつある。
相 対 発 現
(A)
御することで,ストレス応答が軽減され品質変
c
5.0
2.5
ところで,キャベツでは,環境ガス組成を制
d
7.5
化を抑制できることが示された10)。それに加えて,
キャベツの実輸送試験により,バルクコンテナに
ab
a
おいても MA 包装が可能であり,品質保持に有
b
ab
効であることも示された12)。
これまでの検討結果から,バルクコンテナの利
0.0
0
5
15
30
60
120
用によって懸念される品質管理上の問題点につい
10.0
ては,十分に克服が可能であると判断された。
相 対 発 現
(B)
今後,さらに実用化に向けた取り組みを継続す
7.5
る予定である。
謝辞
5.0
2.5
a
a
ab
ab
b
本研究は,新たな農林水産政策を推進する実用
ab
技術開発事業「コスト・環境負荷同時低減のため
のバルクコンテナ物流技術の開発」(22014)に
0.0
0
5
15
30
60
処理時間(分)
よって実施した。
120
本原稿は,農産物流通技術研究会の研究会報で
ある農流技研会報,第294号「新しい研究」に掲
第8図 傷害処理キャベツのリアルタイム
PCR による遺伝子発現変動解析
載された内容9)に,加筆修正を加えたものである。
(A:BoCam1,B:BoCam2。いずれも
BoGAPDH に対する相対値。) 食品と容器
転載を許可頂いた同研究会に深謝する。
504
2013 VOL. 54 NO. 8
引 用 文 献
1)農林水産省(2006):“食料供給コスト縮減アクション
2013a.新規バルクコンテナ輸送に伴うダイコンの加
プラン”,
(オンライン),入手先 <http://www.maff.go.
速度および接触部位応力が損傷特性に及ぼす影響の解
jp/j/study/syoku_cost/pdf/plan01.pdf>,
( 参照2013−
明.日本食品保蔵科学会誌.39(2),67−74.
6−15)
8)兼 田朋子,中村宣貴,タンマウォン マナスィカン,
2)通 い容器普及促進協議会(2007)
:“通い容器の本格
北澤裕明,曽我綾香,吉田誠,福島崇志,中野浩平,
的な普及に向けて(提言)”,(オンライン),入手先
椎名武夫.2013b.加振周波数と包装資材が多段積載
<http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/ryutu/
されたダイコンの加速度,回転,損傷特性に及ぼす影
pdf/070927_1a.pdf>,
(参照2013−6−15)
響.日本食品保蔵科学会誌.39(5),印刷中.
3)椎 名 武 夫, 中 村 宣 貴, 兼 田 朋 子,Manasikan
9)椎 名武夫,中村宣貴,Manasikan THAMMAWONG,
THAMMAWONG.2013a.青果物のバルクコンテナ
兼田朋子,中野浩平,吉田誠,曽我綾香,鈴木美穂子,
物流技術の開発~コスト・環境負荷の同時低減を目指
室井義広,山崎弘,打田宏,西尾恵,安田慎一,新實
して~.農流技研会報,294号,18−20.
誉也,柏木俊幸,大野誠治,池口尚宏,横山幸一,藤
4)折 笠貴寛,ロイ ポリトシュ,吉田誠,曽我綾香,大
ノ木隆,並木晋哉.2013b.コスト・環境負荷低減の
野誠治,新實誉也,横山幸一,芳賀浩,中村宣貴,椎
ための青果物のバルクコンテナ物流技術の開発.平成
名武夫.2010.新規バルクコンテナを利用した青果物
24年度食品試験研究成果情報.
流通による温室効果ガス排出量削減の可能性.日本
10)T hammawong, M., Kaneta, T., Nakamura, N.,
LCA 学会第5回研究発表会講演要旨.20−21.
Yoshida, M., Soga, A., Shiina, T. 2011. Influence
5)椎名武夫,折笠貴寛,中村宣貴,大野誠治,柏木俊幸,
of impact stress on the postharvest physiological
新實誉也 ,藤ノ木隆 ,並木晋哉 ,横山幸一.2012a.
and chemical properties of cabbage heads. Food
Preservation Science. 37(6).273−282.
小売り段階を考慮した新規バルクコンテナ物流システ
ムの LC-CO2 解析.日本 LCA 学会第7回研究発表会
11)T hammawong, M., Hewajulige, I. G. N., Kaneta,
講演要旨.164−165.
T., Nakamura, N., Ito, Y., Shiina, T. 2012. The
6)椎名武夫,折笠貴寛,中村宣貴,池口尚宏,大野誠治,
calmodulin-encoding gene BoCam1: A sensitive
柏木俊幸,新實誉也,藤ノ木隆,並木晋哉,横山幸一.
wound-responsive gene in cabbage. Food
2012b.新規バルクコンテナによる青果物物流システ
Preservation Science. 38(5).277−283.
ムのコスト・環境負荷低減効果の解析.農業環境工学
12)中野浩平,齋藤誠,吉田誠,中村宣貴,椎名武夫.2012.
関連学会2012年合同大会.H41.
キャベツのバルクコンテナ流通のための MA 包装設
7)兼 田朋子,中村宣貴,タンマウォン マナスィカン,
計.農業環境工学関連学会2012年合同大会.O305.
曽我綾香,吉田誠,新實誉也,横山幸一,椎名武夫.
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伝子解析,育種など,ポストゲノム時代へ向けた新たな研究開発についても紹介した。
B5版/本文104ページ 定価1,500円
《内容》監修に当たって(春見隆文)/アミノ酸の生産と利用(森永 康)/シトルリン,オルニチン(柴崎 剛)
/醸造調味料とみりん(井村聡明)/エリスリトールの特性と用途開発(内田 実)/エリスリトールの発酵生産
と浸透圧ストレス応答(春見隆文)/乳酸菌による保健効果(阿部 申・小田宗宏)/脱酸素低温発酵法による新
たなヨーグルト製造法~伝統的なヨーグルトを科学することで誕生した新たな発酵方法~(堀内啓史)/食品とバ
イオフィルム(古川壮一・荻原博和・森永 康)/麹菌の遺伝子資源・遺伝子解析(柏木 豊)/パン酵母のパン
生地中での働きと製品特徴および育種・開発(渡追 肇)/醸造用酵母の多様性-ワイン酵母を中心に-(後藤奈
美)/乳酸菌の育種と分類(鈴木チセ)/ポストゲノム時代の発酵産業―微生物の多様性と可能性(春見隆文)
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
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2013 VOL. 54 NO. 8
特別レポート
Report
日本における清涼飲料,ビール系酒類市場
―平成25年の上半期を振り返って―
けん
市場全体を活性化,「炭酸飲料が依然市場を牽 引
▉清涼飲料の最新市場動向
している」(メーカー関係者)流れは上半期通し
市場全体3%増,炭酸飲料の伸長が寄与
て続いた。一方で,スポーツ・機能性飲料も大
スポーツ・機能性復調,コーヒーは苦戦
塚製薬の新製品〈ポカリスエットイオンウォー
上半期(1~6月累計)の清涼飲料市場は,前
ター〉や,既存品でもコカ〈アクエリアス・ゼ
年比3%増とプラスでの折り返しとなった。7月
ロ〉,サントリー〈グリーンダカラ〉などスポー
に入り,東京で猛暑日が4日連続となるなどさら
ツ時以外の飲用拡大が奏功,伸長が目立った。茶
に勢いを増し,「このままいけば,4年連続の市
系飲料は上位ブランドの好調さが目立った。ミネ
場拡大もみえてきた」(メーカー筋)との弾んだ
ラルウォーターは国産の堅調,輸入も復調気配が
声もきかれる。メーカー別では経営統合したポッ
みられた。コーヒーは190g缶中心に苦戦。7月
カサッポロフード&ビバレッジを除き,軒並みプ
1日にはコカ・コーラシステムの関東4ボトラー
ラス。最も伸び率が高かったのはカルピス9%増。
が経営統合,コカ・コーライーストジャパンとな
次いで伊藤園8%増,キリンビバレッジと大塚グ
り,3日にはサントリー食品インターナショナル
ループ6%増などが高い伸び。月別では,2月が
が東証一部に上場するなど環境も変化しつつある。
閏 年の翌年で稼働日減となった社が多かったこ
ここでは,上半期の各月の市場動向を振り返ると
とから1%減となったが,他の月は軒並みプラス。
ともに,伸長が続く炭酸飲料,今年好調なスポー
うるう
ツ・機能性飲料の動向をみていきたい。
カテゴリー別では,比較的好天が多く,止渇系
の飲料の好調さが目立った。特に炭酸飲料が好調
1月:総市場3%増,特保コーラ好調続く
で,主要ブランドの順調さに加え,新製品群が
1月は3%増。年初からスムースな荷動きが続
第1表 平成25年1~6月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%)
業界平均
サントリー
伊藤園
アサヒ飲料
キリン
ビバレッジ
大塚
グループ
ポッカ
サッポロ
カルピス
コカ・コーラ
合計
1月
103
107
109
109
111
113
91
108
97
2月
99
102
105
103
101
101
87
112
95
3月
102
100
108
109
103
103
96
109
101
4月
104
109
106
105
106
109
93
124
100
5月
104
104
109
104
109
109
100
102
100
6月
103
108
108
90
107
103
97
104
102
1 ~ 2月累計
101
104
107
106
105
107
89
110
96
1 ~ 3月累計
102
102
107
107
104
105
90
109
97
1 ~ 4 月累計
102
104
107
106
105
106
90
113
98
1 ~ 5 月累計
102
104
107
106
106
107
92
110
99
1 ~ 6 月累計
103
105
108
102
106
106
94
109
100
注)コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。ポッカサッポロはポッカサッポロフード&ビバレッジ。
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ブレンド茶の主要ブランドが軒並みプラス。
き,稼働日増も一部であり,多くのメーカーが
プラス。「昨年末の押し込みが少なかったことか
4月:総市場4%増,ミネラルウォーター拡大
ら順調なスタートが切れた」(複数社)との声も。
4月は4%増。炭酸飲料は既存商品のキャン
伸び率最大は13%増の大塚グループ。キリンビバ
ペーン開始に加え,新製品も寄与し好調な流れが
レッジは11%増で〈午後の紅茶〉21%増,炭酸飲
続いた。ミネラルウォーターは国産の高い伸びが
料計が85%増と大幅に伸ばした。コカ・コーラシ
目立った。「気温の変動が大きく難しい月」(メー
ステムは前年割れ。冬の気温が低い時期でも炭酸
カー関係者)だったが,ホット飲料を縮小した
飲料が順調な動きを続け,トクホのコーラ2品の
CVS や自販機等では,販売ロスが一部でみられ
〈メッツコーラ〉〈ペプシスペシャル〉が底上げす
た。メーカー別ではサントリーと大塚グループは
る形に。茶系飲料も順調で各社プラス。ホット飲
9%増と高い伸び。大塚グループは同月発売の
〈ポカリスエットイオンウォーター〉が上乗せで,
料は気温の上下があったが概ね好調。
2月:稼働減で1%減,水「備蓄喚起」裏返しも
〈ポカリスエット〉は28%増。上半期通じて〈ポ
2月は,稼働日がメーカーにより1~2日程
カリスエット〉ブランドは順調で,〈アクエリア
度少なかったことも影響し前年比1%減。ただ,
スゼロ〉などとともに日常飲用訴求がスポーツ機
「実需はそれほど悪くない」という声もきかれ,
能性飲料を牽引した。新製品群は順調な出足。ま
実際の荷動きはスムースだった。国産ミネラル
た,ミネラルウォーターの伸びが目立った。サン
ウォーターは,昨年東日本大震災1年を前に,組
トリー〈天然水〉31%増,アサヒ〈おいしい水〉
織小売を中心に国産水の備蓄需要喚起策が実施さ
63%増。キリンビバレッジは〈アルカリイオンの
れた裏返しで今年はマイナスとなったブランドが
水〉が8%増も〈ボルヴィック〉13%減。大塚グ
多かった。ホット飲料は順調。一部,積雪の影響
ループのミネラルウォーター(米国産〈クリスタ
で北日本を中心に自販機の稼働率が低下した。缶
ルガイザー〉など)は5%増で上半期の中で輸入
コーヒーは2ケタ増から2ケタ減まで大きな差。
ブランドも徐々に復調の芽が出てきた。
5月:「止渇系」好調で市場全体4%増
炭酸飲料は主力商品が牽引。リニューアルした
5月は4%増。前年同月が9%増と高く月初は
〈十六茶〉は7%増と順調な滑り出しとなった。
3月:主要社軒並みプラス,新製品等の出足好調
苦戦したが,メーカーによっては稼働日増が寄
3月は2%増。比較的高い気温やリニューアル
与,中旬から下旬にかけ気温が高くなり,スポー
品を含めた新製品群が好調で,市場の数字を下支
ツ飲料や茶系飲料など止渇系飲料が牽引した。大
えした。主要社は軒並みプラス。伸び率が最も高
塚製薬〈ポカリスエット〉は前年比17%増と4月
かったのがアサヒ飲料,カルピスの9%増で,伊
(28%増)に続き2ケタ増を維持,「新製品〈ポカ
藤園も8%増と高い伸び。伸び率の高い各社はミ
リスエットイオンウォーター〉が好調で,ブラン
ネラルウォーターが高伸長をみせた。気温の上昇
ド全体が活性化している」(同社)。コカ・コーラ
からホット飲料やコーヒー飲料は低調。止渇系の
システム〈アクエリアス〉は新キャンペーン開
飲料の炭酸飲料,茶系飲料が好調だった。新販促
始(4月)後好調で日常飲用を提案する〈同ゼ
キャンペーンを開始した〈コカ・コーラ〉ブラン
ロ〉の一新もありプラス。「気温上昇とともに勢
ドは「通常品,ゼロとも大幅増」(日本コカ),サ
いを増した」(日本コカ)。サントリー〈グリーン
ントリー〈ペプシ〉は特保の「スペシャル」,ゼ
ダカラ〉41%増なども好調。また,茶系飲料も好
ロの「ネックス」もともに好調で27%の2ケタ増,
調な動きが目立った。伊藤園〈お~いお茶〉はリ
キリンビバレッジ〈メッツコーラ〉も順調で炭酸
ニューアルもあり日本茶計で9%増,サントリー
飲料計は67%増。また,果汁炭酸「フルーツサイ
〈伊右衛門〉2%増,アサヒ飲料〈十六茶〉7%
ダー」を発売したアサヒ飲料〈三ツ矢〉が33%増
増などプラス。各社の新製品は「概ね順調な動
と大きく伸びた。茶系飲料は緑茶,ウーロン茶,
き」「止渇系や炭酸商品が求められている」(メー
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カー関係者)など流通からの引きも強い。キリン
飲料〈フルーツビネガースパークリング白ぶど
ビバレッジ〈にっぽん米茶〉は発売3日で30万箱
う酢&レモン酢〉を発売。「味わい系の炭酸のポ
を突破。一方で,缶コーヒーの SOT 缶はいぜん
ジションを確立したい」(同社)キリン・トロピ
低調で,ブランド差が大きくでた月となった。
カーナは高果汁の炭酸飲料〈トロピカーナハンド
6月:3%増,上位ブランド順調な動き
メイドテイスト〉シリーズを,コカ〈シュウェッ
6月は3%増。稼働日が少ない社が多かった
プス〉は「ビターレモン」に新たに「ブラッドオ
が,アサヒ飲料,ポッカサッポロを除きプラスで,
レンジ」も発売した。「大人向け,アダルト炭酸
サントリーと伊藤園は8%増と高い伸びとなっ
は一つの市場拡大のポイント」(同社)。エナジー
た。前年同月に一部押し込みがみられ数字が膨ら
系もスポーツ炭酸飲料や「ゼロ」などラインアッ
んでいた影響もあったが,各社の主力ブランドを
プ拡充が目立つ。無糖炭酸の〈南アルプスの天然
中心に出荷を伸ばした。カテゴリー別では,コー
水スパークリング〉や伊藤園の特保〈スタイリー
ヒーは各ブランドとも苦戦,「CVS のカウンター
甘くない炭酸水〉も登場,今後も「大人向け」狙
コーヒー拡大の影響が一部ででている」(メー
いの商品が目白押しだ。
カー筋)との声もきかれる。CVS で複数商品が
「熱中症対策」飲料が多彩に,「日常飲用」訴求
採用されている商品ほど影響がでており,「それ
今年は「熱中症対策」を含めた水分補給を訴
ぞれは小さいが合わさると大きな数字になってし
求した清涼飲料が多数登場,従来のスポーツド
まう」(大手メーカー)という。カウンターコー
リンク系の商品群に加え,日常飲用を訴求した
ヒーは,地域や店舗数の拡大が今後も予定されて
り,乳性やトマトを使用した飲料なども登場して
おり,SOT 缶への影響は懸念材料だ。一方でス
いる。このカテゴリーの2強のコカ・コーラシス
ポーツ・機能性飲料は順調。茶系飲料は上位ブラ
テム〈アクエリアス〉と大塚製薬〈ポカリスエッ
ンドの好調さが目立った。ミネラルウォーターは
ト〉は浸透しているスポーツ時飲用以外の日常飲
国産で〈サントリー天然水〉や〈アルカリイオン
用の訴求が目立つ。大塚製薬は4月に〈ポカリス
の水〉が2ケタ増となったのが目立った。
エット・イオンウォーター〉を発売,4〜6月と
炭酸飲料「大人向け」が牽引,飲用層が拡大
2ケタ増と好調な動き。「〈ポカリスエット〉の機
昨年まで6年連続で伸長を続けている炭酸飲料。
能はそのままに,外出時や軽い運動,就寝前や起
今年も各社から新たな炭酸飲料が発売され,市場
床時など幅広いシーンでの飲用を取り込む」
(同
を賑わした。平均気温の上昇など自然環境の追い
社)。コカは熱中症に適したナトリウム含有量に
風もあるだろうが,「気分転換,刺激,リフレッ
〈アクエリアス〉を4月に変更,5月の〈同ゼロ〉
シュなどの潜在的な需要は大きい」との見方は
一新以降,好調な流れとなり,「夏の気温に左右
メーカー各社の共通。特に「大人向け」の提案が
されがちだが,本来飲んでいた飲用オケージョン
相次いでいる。人口構成上,少子高齢化が進めば
で幅広く飲んでもらえるようにしていく」という。
子どもの口数は減る。炭酸飲料の近年の伸びは,
一方,発売当初から日常飲用を訴求する商品の
にぎ
大人の飲用人口拡大,頻度拡大が支えている。ア
動きも好調。昨年発売のサントリー食品インター
サヒ飲料は〈スパイラルグレープ〉を6月に発売,
ナショナル〈グリーンダカラ〉は4月12%増,5
「甘すぎる,子どもの飲み物という印象を覆し,
月に41%増と勢いを増している。キリンビバレッ
大人まで満足させるグレープ炭酸を開発」(同
ジ〈世界のキッチンから・ソルティライチ〉は6
社)。サントリーは昨年導入した炭酸無菌充填ラ
月に一新,熱中症対策以外の飲用訴求にもつなが
インを活用,新製品〈トロッタスパークリング〉
るラベルに変更した。カルピスは乳性の止渇飲料
2種(濃密りんご・特濃ホワイト)を5月28日発
〈カルピスオアシス〉を4月に発売,「〈カルピス〉
売,コーヒーや紅茶の炭酸飲料も発売する。ポッ
にこだわりの自然由来の素材を合わせたソルティ
カサッポロフード&ビバレッジは果実酢入り炭酸
テイストの新しい乳性飲料」(同社)。カゴメも7
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月2日から〈TOMATO WATER〉を発売した。
第2表 平成25年上半期のビール系酒類課税数量
上位ブランドが好調で,さらに他も順調な流れで
数量(kL) 前年比(%)
国 産
カテゴリー全体が活性化している。
ビール
▉ビール類市場の最新市場動向
のビール系酒類課税数量は,前年同期比0.9%減
の252万3,065kL となった。この数量は,最近20
新ジャンル
年の253万6,093kL が最も少なかった。1~5月
累計はほぼ前年並みだったが,6月が前年同月と
比べ稼働日が1日少ないこともあって4.1%減と
落ち込んだことで前年を下回った。要因としては,
やはり若者を中心とした「ビール離れ」や飲酒人
口の減少が大きい。ただ,この「自然減」は近年,
93.7
833
118.5
計
351,598
93.7
その他の醸造酒
286,493
92.2
リキュール
669,262
108.0
955,755
102.7
2,523,065
99.1
で見ると今年上半期の0.9%減は「善戦」したと
その「善戦」の一因としては,新製品の貢献度
3月
が近年の中では比較的高かったことと,大手小売
4月
業向けの限定商品(PB 商品あるいは留め型商品)
が多数発売され,その分が上乗せとなったことが
5月
考えられる。
新ジャンル2.7%増,昨年の伸び率上回る
6月
分野別の動きを見ると,新ジャンルだけが前年
を上回った。伸び率は2.7%で,前年同期(2.6%)
48.2%(48.7%)
発泡酒÷総計
13.9%(14.7%)
新ジャンル÷総計
37.9%(36.6%)
第3表 平成25年上半期の月別ビール系酒類課税数量
2月
いうことがいえるかもしれない。
ビール÷総計
注)ビールはビール酒造組合、発泡酒は発泡酒の税制を考える
会が発表。新ジャンルは発泡酒の税制を考える会が参考と
して発表。カッコ内は前年。
1月
毎年2%減程度と指摘されており,そういう視点
ビール
数量(kL) 129,152
発泡酒 新ジャンル
合計
38,580
92,314
260,046
97.7
89.6
100.7
97.4
数量(kL) 167,694
53,365
142,280
363,339
前年比(%)
前年比(%)
104.4
92.2
100.7
101.0
数量(kL) 202,965
61,403
174,078
438,446
前年比(%)
85.5
94.3
107.2
94.4
数量(kL) 228,356
67,142
176,059
471,557
前年比(%)
103.9
93.2
105.5
102.8
数量(kL) 224,145
66,307
176,865
467,317
前年比(%)
106.0
102.5
101.5
103.8
数量(kL) 263,399
64,801
194,160
522,360
89.5
100.2
95.9
前年比(%)
より高かった。新ジャンルはここ数年,伸び率の
98.1
350,765
総 計
量。これまでは,東日本大震災が発生した平成23
111.7
輸 入
計
年間の上半期の課税数量としては最も少ない数
3,387
1,215,712
国 産
発泡酒
上半期(1~6月累計)のビール大手5社合計
98.0
輸 入
計
上半期の数量,最近20年で最低
1,212,324
94.6
低下が続き,「そろそろ頭打ちか」との見方がさ
酒は6.3%減と依然マイナスが続いているが,さ
さやかれていたが,今年上半期は健闘した形だ。
すがに落ち込み幅は1ケタ台にとどまってきた。
要因としては,アサヒ〈クリアアサヒ・プライム
社別シェア,アサヒが4年連続1位
リッチ〉やキリン〈澄みきり〉など新ジャンルの
社別の動きをみると,アサヒとキリンは前年を
新商品がまずまずの動きを見せたことが挙げられ
下回ったが,サントリー,サッポロ,オリオン
る。ビールは,昨年上半期が2.0%増と上半期と
の3社は前年を上回った。シェアは,アサヒが
しては6年ぶりにプラスとなり,「そろそろ底打
37.1%で前年同月より若干低下したものの,4年
ちか」との見方が聞かれたが,今年は再びマイナ
連続で1位となった。サントリーは2.9%増で上
スに転じた。ビールの中では,全体の3分の1強
半期の数量としては過去最高を記録,また,シェ
を占める業務用の大樽 が1.0%のプラスとなった
アも15.1%で過去最高となった。サッポロは0.6%
ものの,4割強を占める缶が2.3%減,2割強を
の増加で,シェアは前年より0.2ポイント上昇した。
占める瓶が6.2%減となったことが響いた。発泡
分野別にみると,ビールはアサヒが依然として
だる
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第4表 平成25年上半期の各社別ビール系酒類課税数量
数量
(kL)
前年比
(%)
シェア
(%)
50.0
26.4
24.8
(50.7)
(24.9)
(24.5)
合 計
937,170
98.7
37.1
(37.3)
キリン
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
299,837
247,190
336,377
96.5
94.2
100.9
24.7
70.3
35.2
(25.1)
(69.9)
(35.8)
合 計
883,403
97.5
35.0
(35.6)
130,932
0
249,477
101.1
−
106.6
10.8
0.0
26.1
(10.4)
(1.6)
(25.2)
102.9
15.1
(14.5)
103.5
83.0
98.2
13.7
2.1
13.1
(13.0)
(2.3)
(13.7)
合 計
298,993
100.6
11.9
(11.7)
10,425
4,377
8,291
103.7
94.2
110.1
0.9
1.2
0.9
(0.8)
(1.2)
(0.8)
0.9
(0.9)
23,093
103.9
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
1,215,712
351,598
955,755
98.1
93.7
102.7
100.0 (100.0)
100.0 (100.0)
100.0 (100.0)
合 計
2,523,065
99.1
100.0 (100.0)
サッポロ
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
サントリー
380,405
166,890
7,299
124,805
5社合計
サッポロ
合 計
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
オリオン
サントリー
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
キリン
96.7
99.3
103.7
商品名
アサヒ
607,628
92,735
236,806
アサヒ
ビ ー ル
発 泡 酒
新ジャンル
合 計
第5表 平成25年上半期の各社主要商品販売数量
注)シェアのカッコ内は前年同期の数値
数量(万箱)前年比(%)
スーパードライ
ドライブラック
※スタイルフリー
◎クリアアサヒ
◎クリアアサヒプライムリッチ
◎アサヒ・オフ
4,460
75
574
1,023
302
354
98.5
44.1
106.5
91.5
−
105.0
ラガー計
ラガー
一番搾り計
一番搾り
※淡麗生計
※淡麗生
※淡麗グリーンラベル
※淡麗W
◎のどごし生
◎澄みきり
745
631
1,471
1,448
1,932
1,056
771
105
2,037
187
92.1
92.5
98.5
97.8
94.9
91.0
99.5
105.0
95.8
−
ザ・プレミアム・モルツ
◎金麦
◎金麦・糖質70%オフ
737
1,285
271
102.9
105.4
169.9
767
387
57
950
644
97.0
101.7
81.6
95.4
88.7
黒ラベル
ヱビス計
※発泡酒計
◎新ジャンル計
◎麦とホップ計
最もシェアが高く,前年より0.7ポイント低下し
おり。全分野を通して最も数量が多いのはアサヒ
たものの50%台を確保した。サッポロは前年比
〈スーパードライ〉で変わりはない。数量は前年
3.5%増と好調で,シェアは前年より0.7ポイント
より1.5%減少した。次いで多いのはキリン〈の
上昇して13.7%となった。発泡酒は,該当商品が
どごし生〉で,数量が2,000万箱を超えたのは昨
なくなったサントリーをはじめ,全社が前年実績
年同様,これら2商品のみだった。その他では,
を割り込んだ。その中では,アサヒが0.7%減と
キリン〈一番搾り〉,サントリー〈金麦〉,キリン
最も落ち込み幅が少なかった。機能系商品の〈ス
〈淡麗生〉,アサヒ〈クリアアサヒ〉の4商品が
1,000万箱を超えた。
タイルフリー〉が6.5%増と好調だったことが寄
与している。社別シェアをみると,キリンが前
商品別の伸び率をみると,アサヒ〈スタイルフ
年より0.4ポイント上昇し70.3%と,70%台に乗っ
リー〉が6.5%増と好調な動きをみせたほか,〈金
たのが目立つ。アサヒのシェアは1.5ポイント上
麦〉5.4%増,アサヒ〈アサヒオフ〉5.0%増,キ
昇し26.4%となった。サントリーの発泡酒がなく
リン〈淡麗W〉5.0%増などの動きのよいのが目
なったことで,キリンとアサヒの2社で全発泡
立った。ビールでは,昨年上半期にリニューアル
酒の96.7%とほとんどを占めた。新ジャンルでは,
効果で15.4%の2ケタ増となった〈ザ・プレミア
サッポロだけが前年実績を下回った。社別のシェ
ム・モルツ〉が今年も2.9%増と堅調な動きをみせ,
アは,サントリーが前年より0.9ポイント上昇し
上半期として最高数量を更新した。
新商品「貢献度」,久々にアップ
た以外は大きな変動はみられなかった。
アサヒ〈スタイルフリー〉6.5%の増加
ビール類の新商品は,ここ数年は「貢献度」の
低い年が続いたが,今年は久々に「貢献度」が上
各社の主要商品の上半期販売数量は第5表のと
食品と容器
510
2013 VOL. 54 NO. 8
昇した。メーカー4社から24商品が登場,昨年上
第6表 平成25年上半期ビール系酒類容器別動向
半期の15商品を大きく上回った。ただし,このう
前年比
(%)
本年
前年
ち特定小売業向けの新商品が8商品あり,それを
除くと16商品で昨年とあまり変わりはない。
24新 商 品 合 計 の 上 半 期 出 荷 数 量 は1,078万 箱
(大瓶換算)で,前年上半期の15新商品合計数量
(820万箱)を31.5%上回った。上半期のビール類
総計数量に占める新商品の比率をみると,今年
は5.5%で,昨年(4.2%)より1.3ポイント上昇し
た。商品別の上半期数量をみると,今年はアサヒ
〈クリアアサヒ・プライムリッチ〉の302万箱が最
構成比(%)
ビ
ー
ル
瓶
缶
大樽
93.8
97.7
101.0
20.4
42.8
36.8
21.3
42.9
35.8
発
泡
酒
瓶
缶
大樽
99.1
93.6
94.9
0.3
95.9
3.8
0.3
96.0
3.7
新ジャンル
瓶
缶
大樽
102.5
111.7
97.6
2.4
0.0
97.8
2.2
総
瓶
缶
大樽
93.9
99.4
101.1
9.9
71.0
19.2
10.4
70.8
18.8
計
多。次いでキリン〈澄みきり〉187万箱が多かっ
た。昨年は,キリン〈麦のごちそう〉が199万箱
第7表 平成25年上半期のビール系酒類用途別動向
で最も多く,次いでアサヒ〈スーパードライ・ド
前年比
(%)
本年
前年
99.1
97.0
50.6
49.4
50.1
49.9
ライブラック〉170万箱だった。
構成比(%)
ビ
ー
ル
業務用
家庭用
6表のとおり。総計の容器別前年比では,昨年上
発
泡
酒
業務用
家庭用
94.8
93.7
4.5
95.5
4.4
95.6
半期は大樽のみ4.0%のプラスだったが,今年上
新ジャンル
業務用
家庭用
111.5
102.5
2.4
97.6
2.2
97.8
総
業務用
家庭用
99.3
99.0
25.9
74.1
25.9
74.1
容器別前年比,大樽のみ1.1%のプラス
分野別および総計の容器別前年比と構成比は第
半期も大樽のみが1.1%のプラスとなった。
ビールでも大樽のみ1.0%のプラス。昨年上半
期は缶が2.5%のプラスとなり,「ビール持ち直
計
し」の根拠の一つといわれたが,今年は2.3%減
別では,昨年上半期は業務用比率が50.1%(前年
で,ふたたびマイナス基調に戻った。ビール内の
49.7%)と,上半期としては初めて50%を超えた
容器別構成比では,昨年は缶の構成比が前年より
が,今年はさらに業務用の比率が上昇,50.6%と
0.2ポイント上昇したが,今年は0.1ポイント低下,
なった。ただし,7月以降はビールの家庭用需要
瓶の低下分も合わせて大樽の構成比が36.8%に上
が多くなる傾向にあり,今後,業務用の比率は低
昇した。新ジャンルでは,業務用大樽の数量が伸
下することが確実。昨年は,上半期の業務用比率
び続けており,今年上半期も11.7%の2ケタ増と
は50.1%だったが,年間では47.5%まで後退した。
なった。
今年も年間で50%を上回ることはなさそうだ。
ノンアルビール,市場拡大ペース鈍化
業務用の大樽製品全体に占める分野別構成比
アルコール分0.00%のビール風味飲料,いわゆ
は,ビール=92.5%(前年同期92.8%),発泡酒=
2.8%(同2.9%),新ジャンル4.7%(同4.3%)で,
るノンアルコールビールは昨年まで市場拡大が
新ジャンルの構成比上昇が続いている。今年は,
目立ったが,今年上半期は前年並みの705万箱に
これまで新ジャンルの大樽を発売していなかった
とどまった。2月が前年同月にアサヒ〈ドライ
キリンビールも6月から九州地区限定ではあるが
ゼロ〉新発売があった裏返しで42.3%の大幅減と
〈のどごし生〉の大樽をテスト展開しており,新
なったことが響いている。今後の推移については
ジャンル大樽の規模拡大はまだ続くことが間違い
不明の部分が大きいが,昨年までのような大幅増
なさそうだ。
が続くことは考えられない状況だ。
ビールの用途別,業務用比率が上昇
(醸造産業新聞社 編集部)
用途別の動向は第7表のとおり。ビールの用途
食品と容器
511
2013 VOL. 54 NO. 8
業界の話題
健康意識に年齢格差 20代男性
日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
(日食 2013/06/21 日付)
ルールを定めているが,ハラー
衆議院の農林水産委員会は19
ル認証の項目などは決まってい
日,農林水産物・食品の輸出拡
ない。イスラム教圏の国でも微
大について全会派一致で決議し
妙に制度が異なり,日本国内で
健康に気をつけている人は高
た。世界人口の4分の1を占め
イスラム教徒向けの食品を販売
年代層ほど多く,50代以上では
るイスラム教圏への輸出促進の
していても,その食品が輸出先
8割弱にのぼるのに対し,10代
ために,国内の農林水産業・食
で認められない可能性もある。
では5割強にすぎず,健康意識
品産業でも適切なハラール認証
12年缶詰国内生産量,32年ぶり
の年齢格差は大きい。一方,健
が受けられるようにし,放射能
増加 供給回復・特性再評価で
康に気をつけていない人が最も
の影響で輸入を制限している国
多いのは男性20代で3割弱に当
への情報発信と交渉を進めるな
日本缶詰協会が20日発表した
たることが,ネットリサーチの
ど,政府が打ち出している施策
12年( 1 ~ 12月 ) の 缶 詰・ 瓶
マイボイスコムが行った自主
を後押しした。
詰・レトルト食品の国内生産量
の3割弱「健康気遣わない」
マイボイスコム調べ
(日食 2013/06/21 日付)
企画アンケートで浮き彫りに
輸出拡大の決議は18日に自民
(日食 2013/06/24 日付)
は,缶詰が飲料を除く丸缶合計
なった。調査は5月に実施され,
党がまとめ,公明党や野党と調
で32年ぶりの増加となったほか,
9,537人の回答を得た。
整。農林水産委員会には6会派
レトルト食品が6年連続で過去
健康維持・促進のため行って
が共同提案した。急速に進む少
最高記録を更新。缶詰は震災復
いることは「朝食を毎日食べ
子高齢化で日本国内の市場が縮
興による供給回復が大きく,さ
る」「体に良い食品をとる」「移
小,アジアなどの経済成長が見
らに備蓄需要の増加や味覚,利
動などはなるべく歩いたり階段
込める国への輸出拡大をすべき
便性など市場価値の再評価が後
を使う」「十分に睡眠をとる」。
として,適正農業規範であるグ
押しした。レトルト食品はカ
健康維持・促進のため必要だが
ローバル GAP の導入,食品産
レーが減少したものの,料理用
できていないことは「スポーツ
業の海外展開支援のための商談
調理ソースと鍋つゆ関連が大き
をする」がトップで「甘いもの
会やイベントの開催,地理的表
く上昇。瓶詰はジャムが増加し
を控える」「食べ過ぎない(腹
示の検討,ハラール食品への対
たが,ご飯まわりが一昨年の反
八分目)」「カロリーを控える」
応などを求めた。
動で大きく減少した。
農水省は決議を受けて輸出拡
国産缶詰は80年以降,為替面
健康維持のため改善したいことは
大を加速させる考えだが,ハ
などでの競争力低下や他国が内
「運動不足」がトップ。
「睡眠の
ラール食品について対応が遅れ
製化を加速させたことに伴い,
量や質」
「精神的ストレス」
「生
ていて,まず情報を収集してい
輸出量が減少。また,レトルト
活リズムが不規則」などが続く。
く構えだ。ハラールはイスラム教
食品への移行などで国内生産量
マイボイスコムでは,1998年
圏で摂取を許された品目を指し,
は年々減少しており,今回の前
から1万人調査を実施し,1,800
豚などを禁忌品としているほか,
年増は32年ぶりとなる。一昨年
テーマを超える自主企画調査結
禁忌品以外の肉でも,と畜の際
の震災による供給減からの反動
果を発表している。
に一定の手順を踏まなければな
が最大の要因だが,防災意識に
衆議院・農水委,食品輸出拡大
らない。国際的な食品の規格を
伴う備蓄需要の増加,テレビな
で決議 ハラール対応など政府
定めるコーデックス委員会でも
どでの露出拡大による市場特性
施策を後押し
ハラール食品の表示については
への見直しも生産増に影響した。
など食の項目が上位を占めた。
食品と容器
512
2013 VOL. 54 NO. 8
各ジャンルを丸缶ベースで見
た場合,生産増の最大要因と
展開 「防災」キーワードに
(日食 2013/06/28 日付)
間7月18日~8月8日,入賞作
品発表期間8月8日~9月6
なったのは,ボリュームの大き
日本缶詰 協会は7月18日まで
日▽賞品=グランプリ(1人)
い水産缶が9%増と増幅したこ
の間,
「非常時にも大活躍!缶詰・
サーモス社「シャトルシェフ」
とにある。未曽有の原料危機に
びん詰・レトルト食品を使ったア
と缶詰博士・黒川勇人氏セレ
あるツナ関連は軒並み減少した
レンジレシピコンテスト」を料理
クト「レア缶詰セット」,優秀
が,サバが28%増と大きく増加,
ブログのポータルサイト「レシピブ
賞(3人)サーモス社「真空断
単一カテゴリーでは「まぐろ・
ログ」
(http://www.recipe-blog.
熱ケータイマグ」と同「レア缶
かつお類」に肉薄するレベルに
jp/sp/r130620a)で開催してい
詰セット」,部門賞(12人)「缶
まで拡大したことが大きい。
る。「防災」をキーワードに缶
詰・びん詰・レトルト食品セッ
また,水産缶以外でも果実・
詰・瓶詰・レトルト食品の特性
ト」(優秀賞以上にも贈呈)
野菜・食肉など各ジャンルでの
である日常性,簡便性,即食・
手作りが減少傾向の60代,宅
ボリュームゾーンが好調に推移。
個食性,殺菌料・保存料無添加,
配・ 配 達 が キ ー ワ ー ドに キ
1~3月の原料生産が好調だっ
常温長期間保存,安全性などを
ユーピー「食生活総合調査」
たミカン缶,メーカー訴求が順
啓発することで,イメージ向上
調なやきとり缶,道産原料が堅
と利用機会の増大を推進する。
キユーピーは,89年から毎年
調だったスイートコーンなどが
同コンテストでは,応募期間
「食生活総合調査」(食生活の実
いずれも前年を超え,全ジャ
中に優秀レシピ4品を選考,8
態や傾向をつかむことを目的に,
ンルの合計生産量は24万2,187t
月8日から同サイトで発表する。
キユーピーが毎年実施している
優秀作品は9月1日に開催予
調査。「シニア」「主婦」「単身
レトルト食品は全体の約4
定 の「 防 災 の 日 缶 詰・ び ん
者」の3つの対象に対して毎年
割を占めるカレーが3.4%減と
詰・レトルト食品フェスティバ
順番に調査をしている)を実施
なったが,料理用調理ソース
ル2013in 秋 葉 原 」 で, 来 場 者
している。12年度は50~79歳の
(おかずソース),鍋物調味料
の試食投票による最終審査を経
未婚者以外の女性を対象に,シ
(つゆ・たれ)が共に大きく増
てグランプリを決定する。フェ
ニア層の「食事行動」
「調理行
加,カレーのマイナス分をカ
スティバルは昨年も秋葉原で開
動」「買い物行動」について調
バーした。特に鍋物調味料は
催, 1 日 で5,000人 以 上 が 来 場
べた。「食事行動」では,おい
大 手 流 通 PB の 生 産 増 や ラ イ
し,耳目を集めた。
しさの重視傾向,野菜の食べ方
(丸缶のみ)となった。
(日食 2013/07/03 日付)
ンアップ数の拡大などで約2.4
昨年に続き2回目となる今回
に洋風化の兆し,パン周辺商品
倍に拡大,カレーに次ぐジャ
は,「和食」「洋食」「中華」「創
と味付け不要商品の伸び,昼
ンル第2位の生産規模に達し
作料理」の部門別での募集を実
食・夕食ともに外食利用率上昇
た。トータルでは6.3%増の35
施。各部門ともに利用者自慢の
傾向が見て取れた。調査では60
万5,000t にまで拡大している。
オリジナルレシピを幅広く募集
歳以上を「シニア層」ととらえ,
瓶詰は海苔(佃煮)や調理・
し,各部門1人を優秀賞(最終
比較対象として50代も含めて調
特殊品(食べるラー油など)など
審査進出)に,3人を部門賞に
査を実施,前回(09年度)の調
の“ご飯まわり”が一昨年の反動
選出する。選考は缶詰に造詣の
査結果と照らし合わせて各行動
で大きく減少。ジャムが約2%前
深い複数名で行う。
における傾向とその変化を分析
年を超えたが,トータルでは3.8%
〈レシピコンテスト概要〉▽
している。
減の6万8,215tで着地した。
主催者=公益社団法人日本缶詰
「 食 事 行 動 」 で,「 普段の食
日本缶詰協会,缶・びん詰・レ
協会▽開催期間=レシピ募集期
生活の中で重視していること」
トルト使ったレシピコンテスト
間6月20日~7月18日,審査期
食品と容器
513
「普段の食生活で実際に行って
2013 VOL. 54 NO. 8
いること」の問い(いずれも複
年と比較して上昇していること
「市販の弁当や惣菜などを利用
数回答可)の回答は09年に比べ
がわかった。最も利用する店舗
する頻度」の問いに,09年比べ
て増加幅が大きく,かつ重視の
は,平日の昼食・平日の夕食と
対象すべて(50,60,70代)で
傾向が高い項目は「おいしいと
もに「ファミリーレストラン」
利用頻度が高まっている。
「利
感じるものを食べること」
。ま
で,利用率の上昇が顕著だった
用しない」を除く「利用する」
た,50代に比べ60代以上は「魚
店舗は,平日の昼食では「喫茶
(頻度問わず)の合計を見ると
を食べる」
「緑黄色野菜を食
店・コーヒーショップ・カフェ」
50代98.4%と突出している。
「市
べる」を重視する傾向にある。
「ファストフード(回転寿司)」,
販の弁当や惣菜などを利用する
「好きな野菜の食べ方」(複数回
平日の夕食では「ファストフー
場面」の問いには,60代は「簡
答可)では,60代以上は「煮付
ド(回転寿司)」「ファミリーレ
単に済ませたい」「おいしいも
け・煮物」「サラダ 」
「おひた
ストラン」「焼肉店」。平日の昼
のが食べたい」「売場を通って
し」の順で好む傾向がわかった。
食・夕食に共通して利用率の低
おいしそうに見えた」ときの
09年と比較すると,これらの品
下が目立った店舗は「日本料理
3項目が伸びている。「市販の
目は下降気味で,逆に伸びてい
店(寿司)」。
弁当や惣菜はおいしい」とい
調理行動では「最も最近に食
う認識の高まりが見受けられ
「野菜スープ」「温野菜」「マリ
べた各食事の形態」の問いに
る。「弁当や惣菜を購入する場
ネ・カルパッチョ」などが認め
は,平日に「主に家庭で手作り
所」は,50代は CVS が最も高
られ,一部に洋風化の兆しが見
したもの」を食べた60代以上が
く,09年 比 で は6.8 % と 大 き く
られた。一方,50代では「炒め
多く,朝食約85%,昼食約72%,
伸 び た。60代 以 上 は 大 型 ス ー
物」「漬け物」「天ぷら」「鍋物」
夕食では約97%と高くなってい
パーの利用率が高く,09年比で
る。しかしながら,09年からの
7.3%増。
る食べ方は「鍋物」「漬け物」
「煮付け・煮物」の減少幅が大
き く, よ り 手 軽 な「 温 野 菜 」
変化をとらえると,60代を中心
調査対象のすべての年代で弁
「サラダ」の伸びが顕著だった。
に平日の朝食・昼食ともに「手
当・惣菜の購入場所として利用
「あなたの家庭では以下にあ
作り」の食事が減少傾向にあ
率が減少しているのは「百貨店
げる調味料類を使っています
る。 朝 食 で は60代 前 半 が09年
の食品売場」だった。
か」
(複数回答可)では60代以
差で14.7%減,昼食では60代後
「日頃食品の買い物や調理を
上で使用率の高い順に「醤油」
半で19.6%減となっている。一
担当している人がさまざまな理
「マヨネーズ」「食酢」「トマト
方,60代で増加傾向にある形態
由で買い物・調理ができないと
ケチャップ」「ごま油」で,09
は「 お 湯 を 注 い だ り, レ ン ジ
き,どのようなことを検討しま
年との比較では「ジャム」「は
で加熱処理しただけの食べ物」
すか」の問い(重複回答可)に
ちみつ・メープルシロップ」な
どのパン周辺商品と,味付けが
(平日朝食)や「調理せずにそ
のまま食べたもの」(平日昼食),
は,60代以上の約7割が「同居
している家族や親族の手を借り
不要の「鍋の素」「パスタソー
「市販の惣菜や弁当」(平日夕
る」。09年からの変化でとらえ
ス」「麻婆豆腐の素などの中華
食)などがあげられ,簡便思考
た際,60代以上で最も増加率の
合わせ調味料」などの伸び率が
が見て取れる。
高い項目は「生鮮食品や加工
大きいことがわかる。一方で使
「普段調理で重視している」
食品などを配達してくれる宅
「普段の調理で実際に行ってい
配サービスを利用」を検討す
は「化学調味料」があげられる。
る」こと(重複回答可)では
る。このほかにも「お店で買っ
「外食をする頻度」と「よく
「あり合わせの材料でメニュー
た品物を自宅に届けてくれる配
用率の低下が目立つ項目として
利用するお店の種類」の問いに
を考えて作る」が最も多かった。
達サービスを利用する」が6.8%
は,60代以上の外食利用率は09
シニア層の「買い物行動」で,
プラス,「一食がセットになっ
食品と容器
514
2013 VOL. 54 NO. 8
た調理済み(温めるだけで食べ
を見込んでおり,残りの4,000
t(前年比16.8%増),生産金
られる)の食品配達サービスを
億~ 5,000億円を,戦略投資に
額108億2,500万円(同16.0%増)
利用」が6.5%のプラスと「宅
よって積み上げていく考えだ。
と生産量・生産金額ともに高い
配」「配達」がキーワードとし
戦略投資の重点エリアについて
伸びを示して大幅増となったと
て浮かんでくる。
は,
「アジアに限らず,飲料市
発表した。また,商品は前年比
*
場が小さくて,可処分所得が上
28%増の1,029品目が登録され
「調査方法」は,留め置き手
がっているエリアで橋頭堡が築
ており,4年前の約3倍と増え
法で,地域は 首 都 圏( 1 都 3
ける機会があれば積極的に対応
ている。
県)の50~79歳の既婚・離死別
していきたい」と語った。
ほ
増加の内訳はスーパーやド
女性(5歳刻み)。有効回収数
一方,国内飲料事業について
ラッグストアの小売店,通信販
(回収ベース)482人,50~54歳
は,「トップシェアは必達目標
売などの市販用が生産量,生
81人,55~59歳103人,60歳~
と思っている」(鳥井社長)と
産 金 額 で, 前 年 比27.2 %, 同
64歳95人,65~69歳81人,70~
し,「まずは既存で追いつくこ
16.6%,施設・病院給食などの
74歳70人,75~79歳52人。調査
とを考え,機会があれば投資も
業務用が同13.8%,同15.9%の
期間は12年11月7日~11月21日。
考えていく」(同)方針。2020
増加で,市販用の伸びが顕著と
サントリー食品インターナショ
年での国内と海外比率は,売上
なっている。販売店舗や売場面
ナル,東証一部に上場 戦略投
高で5対5,利益面でも5対5
積が増加する中,卸売業など流
資で成長目指す
から海外比率が少し高い割合を
通関係企業では今後の介護食品
理想とする。
需要の高まりを見込み,小売店
(日食 2013/07/05 日付)
サントリー食品インターナ
今 後 は,「 や っ て み な は れ 」
に積極的に提案を行い,取り扱
われるようになってきた。
ショナルが3日,東京証券取引
精神や社会・自然との共生と
所市場第一部に上場した。今回
いったサントリーグループの良
市販用の金額の伸び率は生産
の上場によって,同社はグロー
さを継続していきながら,上場
量に比較して低いが,これは利
バルな成長に向けた強固な財務
会社としてすべてのステークホ
用しやすい価格帯を実現しつつ
基盤を確保することになる。鳥
ルダーの期待に応えるため,透
あることを反映している。加え
井信宏社長は「株主からお預か
明で公正な経営をしていくとい
て,期中に7社の新規会員が加
りした大事な資金を有効に活用
う。鳥井社長は「経営陣,従業
入し,会員企業は52社と増加し
して,国内外で積極的な戦略的
員一同が本日を第2の創業記念
てメーカーの関心の高さもうか
投資をして,さらなる成長と
日という思いを胸に,気持ちを
がえる。
収益構造の革新を目指してい
新たに企業価値の向上にまい進
く」と意気込みを語った。上場
していきたい」と強調した。
護食まで幅広く使える食べやす
を機に,成長スピードを加速さ
12年 ユ ニ バ ー サ ル デ ザ イ ン
さに配慮したレトルト食品や冷
せ,清涼飲料業界のグローバル
フード,生産金額100億円突破
凍食品などの調理加工食品,飲
なリーディングカンパニーを目
生産量も大幅増
み物や食事にとろみを付けると
指していく構えだ。売り出し価
(日食 2013/07/19 日付)
UDF は,日常の食事から介
ろみ調整食品などがあり,パッ
日本介護食品協議会(古舘正
ケージには必ず UDF マークを
史会長)は12日,東京都内のホ
記載して,利用者が選びやすい
同 社 は2020年 ビ ジ ョ ン と し
テルメトロポリタンエドモント
ように「かたさ」や「粘度」の
て,売上高2兆円を目指してい
で第12回定時総会を開催し,12
規格で分類された四つの区分を
る。そのうち,既存事業で1兆
年のユニバーサルデザインフー
表示している。
5,000億~1兆6,000億円の成長
ド(UDF) の 生 産 量 を9,237
格3,100円 に 対 し, 初 値 は3,120
円,終値は3,145円となった。
食品と容器
515
2013 VOL. 54 NO. 8
今月の統計
(万トン)
600
缶・びん詰の総生産数量は近年下降傾向をたどっていたが
2012年は久々に前年比101%と微増に転じた。
500
400
ペットフード
レトルト食品
びん詰
300
大缶
一般缶詰
(丸缶)
200
注:大缶は18リットル缶,9リットル缶など,業務用として作られる大型缶詰
飲料缶詰
(丸缶)
100
0
1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
第1図 缶びん詰,他生産数量・年別推移(内容重量)
(万トン)
400
(万トン)
14
350
2002年
300
2007年
12
2007年
10
2012年
250
2002年
2012年
8
200
6
レトルト食品が前年比106%と増加
(5年前比115%,10年前比127%)。
150
100
4
2
50
調理・
特殊
食肉
ジャム
野菜
第2図 缶びん詰,他生産数量
果実
0
水産
ペットフード
レトルト食品
びん詰
大缶
一般缶詰
(
丸缶)
飲料缶詰
(
丸缶)
0
第3図 丸缶(飲料除く)の品目別生産数量
(万トン)
6
(万トン)
3.5
3
2002年
2.5
2007年
2002年
5
2007年
2012年
4
2012年
2
3
1.5
2
1
その他
ジャム
第5図 びん詰の品目別数量
第4図 大缶の品目別生産数量
食品と容器
のり
その他
0
ジャム
0
トマト
1
たけのこ
0.5
516
2013 VOL. 54 NO. 8
今月の統計
第 1 表 缶 び ん 詰 , 他 生 産 数 量 ( 内 容 重 量 )
飲 料 缶 詰 (丸 缶)
一 般 缶 詰 (丸 缶)
大
缶
び
ん
詰
缶 び ん 詰計
レ ト ルト 食品
ペ ッ トフ ード
2002年
2007年
数量(トン) 構成比 数量(トン)
3,871,829
89.3% 3,163,075
332,732
7.7%
276,691
48,701
1.1%
35,369
80,611
1.9%
72,534
4,333,872
100.0% 3,547,670
280,321
-
309,369
16,048
-
11,265
(( 公 社 ) 日 本 缶 詰 協 会 調 査 )
2012年
構 成 比 数 量 ( ト ン ) 構 成 比 前 年 比 5 年 前 比 10年 前 比
89.2% 3,005,180
89.8% 100.9%
95.0%
77.6%
7.8
242,187
7.2
104.0
87.5
72.8
1.0
32,513
1.0
100.7
91.9
66.8
2.0
68,215
2.0
96.2
94.0
84.6
100.0
3,348,095
100.0
101.0
94.4
77.3
-
354,697
-
106.3
114.7
126.5
-
7,736
-
92.0
68.7
48.2
第 2 表 缶 び ん 詰 品 目 別 生 産 数 量 ( 内 容 重 量 )
(( 公 社 ) 日 本 缶 詰 協 会 調 査 )
2002年
2007年
2012年
数 量 ( ト ン ) 構 成 比 数 量 ( ト ン ) 構 成 比 数 量 ( ト ン ) 構 成 比 前 年 比 5 年 前 比 10年 前 比
(丸 缶)
水
産
果
実
野
菜
ジ
ャ
ム
食
肉
調 理 ・ 特殊
飲
料
丸
缶
計
(大 缶)
た け の こ
ト
マ
ト
ジ
ャ
ム
そ
の
他
大
缶
計
(びん詰)
の
り
ジ
ャ
ム
そ
の
他
び ん 詰 計
総
合
計
122,570
47,266
68,609
959
10,209
83,119
3,871,829
4,204,561
2.9%
1.1
1.6
0.0
0.2
2.0
92.1
100.0
113,367
36,745
58,836
711
7,869
59,163
3,163,075
3,439,766
3.3%
1.1
1.7
0.0
0.2
1.7
92.0
100.0
107,250
34,341
48,211
394
6,962
45,028
3,005,180
3,247,367
3.3%
1.1
1.5
0.0
0.2
1.4
92.5
100.0
109.0%
105.3
95.5
99.2
100.7
102.4
100.9
101.1
6.2
8.2
20.3
65.3
100.0
1,832
3,673
7,080
22,785
35,369
5.2
10.4
20.0
64.4
100.0
2,367
2,642
6,518
20,985
32,513
7.3
8.1
20.0
64.5
100.0
92.6
104.0
93.4
103.8
100.7
129.2
71.9
92.1
92.1
91.9
78.3
66.3
65.9
66.0
66.8
7,300
30,306
43,005
80,611
4,333,872
9.1
37.6
53.3
100.0
-
5,225
28,336
38,973
72,534
3,547,670
7.2
39.1
53.7
100.0
-
5,935
30,659
31,621
68,215
3,348,095
8.7
44.9
46.4
100.0
-
90.6
102.1
92.1
96.2
101.0
113.6
108.2
81.1
94.0
94.4
81.3
101.2
73.5
84.6
77.3
平均気温(℃)
降水量(mm)
平年比
前年比
平年差 前年差
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
月間
下旬
月間
7月 上旬
中旬
26.4
29.1
26.2
19.4
12.7
7.3
5.5
6.2
12.1
15.2
19.8
23.1
22.9
27.3
27.7
+0.6
+1.7
+2.4
+0.9
-0.6
-1.4
-0.6
-0.3
+2.7
+0.6
+0.9
+0.3
+0.8
+2.9
+1.8
注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値
食品と容器
87.5%
72.7
70.3
41.1
68.2
54.2
77.6
77.2
3,024
3,986
9,890
31,801
48,701
第3表 平均気温,降水量,日照時間
7月
8月
9月
10月
11月
12月
2013年 1月
2月
3月
4月
5月
6月
94.6%
93.5
81.9
55.4
88.5
76.1
95.0
94.4
-0.9
+1.6
+1.1
-0.1
-2.2
-0.2
+0.7
+0.8
+3.3
+0.7
+0.2
+1.4
+1.5
+3.1
+0.2
(%)
130.0
25.0
214.5
154.5
154.0
69.0
70.0
30.0
44.5
99.5
56.0
58.0
159.0
14.5
48.0
*:暫定値
517
85
15
102
78
166
135
134
53
38
80
41
81
95
24
107
(7月中旬まで・東京)
日照時間(h)
前年比
平年比
(%)
239
10
91
129
137
116
140
32
31
84
24
121
86
22
78
(%)
181.3
236.0 *
164.4
156.6
153.3
166.9
212.5
173.7
190.1
196.0
227.1
39.5
123.9
63.7
57.5
126
135
140
117
105
95
113
104
117
112
132
138
101
165
132
(%)
97
140
99
111
107
89
116
117
127
121
116
84
99
139
91
☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査)
2013 VOL. 54 NO. 8
技術用語
解説
「容器の事典」(缶詰技術研究会編)から抜粋
属も弾性変形する。金属の板や棒を軽く振ると曲
応力-ひずみ曲線
〔stress-strain curve〕
がっては元に戻る変形が見られる。地震の時,高
層建築物は波のように弾性変形することで崩壊を
材料または製品に圧縮や引張りといった外力が
回避する。製缶機械では DI ボディーメーカーの
加わると,材料には応力(stress)あるいはひず
ラムの変形が分かりやすい。DI 缶側壁の肉厚は
み(strain)が発生する。その際における応力と
円周方向でミクロンメートル単位の精度があるが,
ひずみの関係を,一般にひずみを横軸に,応力を
しごきダイスとポンチの動的同心度の実現にラム
縦軸にとった平面上に曲線で示したもの。S-S
の弾性変形が貢献する。円周上の各所で発生する
カーブと呼ばれることもあるが,これは stress
材料の変形抵抗はダイスとポンチの同心度を出す
と strain の頭文字に由来する。この応力-ひず
ように働き,ラムが弾性変形することで,自動的
み曲線より,材料および製品の機械的特性の基と
に調心される。
また,触圧検査は缶体の弾性変形を利用して内
なる引張り強さ,伸び,弾性率,降伏点および加
圧を測定する。弾性変形が無ければ触圧子の押し
工硬化率などの情報を読み取ることができる。
跡が残ってしまう。缶体ではベビーフード用缶詰
塑性変形 〔plastic deformation〕
の蓋が,最初に開けた時にペコッと音を立てて外
缶胴・缶底・ネック・蓋・スコア・タブ・かし
側に軽い反転を起こすのが好例と言える。弾性変
め・巻締等,何れも塑性変形を利用している。熱
形では力を受けて変形した材料の内部に,元に戻
可塑性プラスチックスの成形も塑性変形に含まれ
ろうとする力が発生する。ボルトの締結は締め付
るが,ここでは金属の塑性変形について記す。軟
けられた部分の弾性変形で材料の反発力が発生し,
鋼の荷重-伸び特性では最初に原点からある傾き
材料とボルト頭部との面圧が大きくなることで,
で直線が伸びる。荷重と伸びが比例するこの領域
摩擦抵抗が大きくなることを利用している。
は弾性変形で,荷重を除くと同直線を戻り変形は
引張り試験 〔tensile test〕
残らない。しかし荷重を増してゆくと荷重が一度
低下し,伸びが急に増す現象が観察される。荷重
引張り試験とは,引張り荷重によって材料を破
が低下した点が降伏点,それ以降の変形が塑性変
断するまで引張り,その挙動を測定する試験のこ
形である。降伏点を示さない材料では,荷重-伸
とをいう。試験で得られたデータから,引張り強
びの関係が前記直線から外れた点で代用する。塑
さ(サンプルが破断するまでの最大荷重)
,引張
性変形域で荷重を除くと荷重-伸びは前記直線の
り強度(サンプルが破断するまでの最大引張り応
傾きに沿って戻り,荷重(外力)が無くなっても
力),引張り伸び(引張り応力により伸びた後の
伸びが残る。永久変形が生じた訳である。金属の
長さから前の長さを減じ,その値を元の長さで除
成形加工はこの現象を利用している。また,角出
した値を100倍し,%表示したもの),弾性率(引
しも塑性変形であるが,何らかの異常が発生した
張り応力に応じたひずみの変化率)など,様々な
可能性を示すもので,塑性変形が食の安全に貢献
引張り特性が分かる。ここで,引張り応力とは試
する一例といえる。
験片に与えられた引張り荷重をその荷重が作用す
る面積で割った値のことをいう。試験片は加重に
弾性変形 〔elastic deformation〕
よりその面積が変化するが,元の断面積に基づい
て計算する。
ゴムのように力を除くと元の形に戻る変形。金
食品と容器
518
2013 VOL. 54 NO. 8
最近の技術雑誌から
国 内 編
食
衛
生
〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術/埼玉県F市に
おける弁当の食中毒事件(その1)―
笹本 史:食品機械装置,50(7)54~59(‘13)
分 析 ・ 測 定
〔解説〕特集―食品分析の技術動向―
ジャパンフードサイエンス,52(7)44~59(‘13)
○ LC/MS および GC/MS を用いたメタボローム解析手
法の応用/―緑茶葉のプロファイリング解析―
………合田隆大・川名修一・坂本雄紀・小倉泰郎
○テラヘルツ分光法の食品計測への応用
…………………西名繁樹・吉田美那子・佐藤周作
〔解説〕特集1―増えている?アニサキス食中毒―
杉山 広:食と健康,57(7)8~16(‘13)
〔解説〕特集2―夏到来 ! 食中毒にご注意を―
柳沼健史:食と健康,57(7)48~57(‘13)
〔解説〕特集―国際化対応の食品検査と信頼性向上の必
須要件とは―
月刊 HACCP,19(7)11~43(‘13)
○食品微生物試験の信頼性確保…………………田中廣行
○食品の微生物試験法の国際対応の解説と,現場におけ
る試験法選定の考え方……………………五十君靜信
○食品企業における自主検査と外部委託検査/~特に微
生物検査を中心に~………………………戸ヶ崎惠一
○食品企業における異物検査/~昆虫異物の同定を中心
に~……………………………………………奥田貢司
○過去の食中毒・食品事故の発生に関する資料集
…………………………………………………編集部
微 生 物・酵 素
〔解説〕エタノールを作らない酵母に酔いしれる/
Candida utilis のゲノム解析
冨田康之・生嶋茂仁:化学と生物,51(7)432~
434(‘13)
栄 養 ・ 健 康
〔解説〕特集―発芽食品の新展開/発芽素材の健康機能
と食品への応用―
関口絢子・近藤(比江森)美樹・金内 誠・落合孝
次・津志田藤二郎:食品と科学,55(7)57~64(‘13)
〔解説〕伸びる企業の安全確保・品質管理/ホテル厨房
など「プロの料理」の受託製造業で日本惣菜協会の
HACCP 認定(JmHACCP)取得/~ HACCP が“広
告塔”として効果発揮! 商品開発の強化などさら
なる進化を目指す~
(株)富士物産:月刊 HACCP,19(7)65~72(‘13)
〔解説〕特集―新開発の機能性食品/機能性食品で健康
を維持―
酒井重男:食品と科学,55(7)65~76(‘13)
〔解説〕特集―機能性素材とその利用技術―
ジャパンフードサイエンス,52(7)17~43(‘13)
○大豆発酵多糖類の機能特性とその利用分野
………………………………………………鈴木 誠
○機能性アミノ酸「ALA」の可能性と食品への応用
…………………………………甲田岳生・土屋京子
○更年期障害のためのピクノジェノール ®―日本での臨
床試験報告―
………………… ジェフリー マイケル ストロング
○北海道独自の食品機能性表示制度の概要と今後の課題
について………………………………………三浦健人
○各社の機能性食品素材
添 加 物 ・ 副材料
〔解説〕生産コスト急増に対応急ぐうま味調味料市場/
原料相場に為替加わり採算性が急激に悪化
鈴木悠司:酒類食品統計月報,55(4)33~41(‘13.6)
水 産 ・ 畜 産
〔解説〕特集―乳素材によるおいしさ向上技術―
フードケミカル,29(6)33~85(‘13)
○乳製品のおいしさとは―牛乳,バター,チーズの風味―
………………………………………………塩田 誠
○食感性工学による乳製品の「おいしさ」評価システム
の開発/―チェダーチーズの香り評価と設計要因を
話題にして―…………………………………相良泰行
○味覚センサ………………………………………都甲 潔
○筋電図を用いたチーズのテクスチャー評価
………………………………………………金野美紀
〔解説〕壮中年期において野菜摂取の行動変容ステージ
および野菜料理摂取皿数は野菜摂取量の指標となり
得るか
小澤啓子・武見ゆかり・衛藤久美・田中久子・藤井
仁・石川みどり・横山徹爾:栄養学雑誌,71(3)
1~15(‘13.6)
食品と容器
品
519
2013 VOL. 54 NO. 8
最近の技術雑誌から
○「明治ブルガリアヨーグルト LB81そのままおいしい
脂肪0プレーン」の開発……………………堀内啓史
○ GC/MS(ガスクロマトグラフィー/質量分析)を用
いたメタボロミクスに基づくチーズの親水性成分プ
ロファイリング………………………………越智 浩
○特別インタビュー/日本発信で「おいしさと技術」の
リンクを目指す………………………………岩附慧二
○ IDF2013(国際酪農連盟ワールド デイリー サミット
2013)/平成25年10月28日~11月1日 横浜……編集部
○乳製品・乳素材の市場動向………………………編集部
○各社の乳原料・素材,関連製品,機器…………編集部
〔解説〕特別寄稿―コラーゲン含有茶飲料の提案/焼津
水産化学工業株式会社―
Beverage Japan,36(6)91~92(‘13.7)
〔解説〕2012年清涼飲料市場
久保喜寛:缶詰時報,92(7)2~8(‘13)
缶びん詰・レトルト食品
〔解説〕2012年の缶詰輸入/―水産,野菜が増加―
日本缶詰協会:缶詰時報,92(7)28~39(‘13)
〔解説〕連載 食品のおいしさと改質/第1回 肉加工
食品のおいしさと栄養
山﨑勝利:食品工業,56(13)67~73(‘13.7/15)
食
一
般
〔解説〕アンダルシアの風~スペインの裏と表の食事情
第39回/スペイン大不況の裏にある食糧支援と
興味深い地域型ブランドマーケティング
田中富子:食品工業,56(13)90~93(‘13.7/15)
〔解説〕特集1―豚肉及び豚肉加工品等の関税制度につ
いて―
農林水産省生産局畜産部食肉鶏卵課:日本食肉加工
情報,756(6)2~14(‘13)
〔解説〕今月の視点―理想の献立1汁3菜/実現望む
が実践できない調理実態/肉食化で手作り派が増
加?! ―
ニチレイフーズ調査:総合食品,37
(2)26~29(‘13.7)
〔解説〕特集2―畜産の存在意義を考える―
菱沼 毅:日本食肉加工情報,756(6)15~19(‘13)
〔解説〕特集3―中国で発生した鳥インフルエンザの人へ
の感染/日本の食肉関係者が知っておくべきポイント―
伊藤和夫:日本食肉加工情報,756(6)20~24(‘13)
食 品 加 工・保 蔵
〔解説〕特集―発酵による高付加価値食品・素材の開発―
食品と開発,48(7)4~22(‘13)
○麹の高機能食品素材化に関する研究
…………………………………奥津果優・鮫島吉廣
○発酵による三陸イサダ機能性粉末の開発……笠井宏朗
○きのこの発酵能による機能性食品の開発……松井徳光
○醗酵による新規食品素材の開発と機能性の向上
………………………………………………渡邊恵巳
○新規食品素材としての発酵エクオール………工藤眞丈
○発酵技術を用いた付加価値食品素材の開発事例
…………………………………………………編集部
飲 料 ・ 醸 造
〔解説〕12年コーラ飲料,6年連続の増加を達成/ト
クホコーラ飲料登場が市場を活性化
稲野結子:酒類食品統計月報,55(4)65~68(‘13.6)
〔解説〕特集―ミネラルウォーター/ HOD ビジネス―
Beverage Japan,36(6)28~77(‘13.7)
○ウォータービジネス新時代の到来
○日本最古のミネラルウォーターブランドが進む道
……………………………富士ミネラルウォーター
○飲料ブランドの HOD 戦略……………キリンビバレッジ
○直営大型プラントを建設,次世代の標準工場を提示
…………………………………………アクアクララ
○輸出を主体にしたミネラルウォーター事業
…………………………フレッシュアクアジャパン
○主要ブランドの動向
○ HOD の主要サプライヤーの動向
○宅配水ブランド一覧表
〔解説〕冷凍食品市場,技術革新で家庭用拡大/急激な
円安で業務用は値上げに動く
三浦正幹・竹之内友香:酒類食品統計月報,55(4)
2~11(‘13.6)
市場調査 ・ 流 通
〔解説〕市場動向Ⅰ―美容・アンチエイジング食品素材
の動向―
編集部:食品と開発,48(7)49~64(‘13)
〔解説〕特別企画―飲料新製品開発に寄与する機能性素
材―
Beverage Japan,36(6)79~90(‘13.7)
食品と容器
品
〔解説〕市場動向Ⅱ―抗メタボ・ダイエット素材の市場
520
2013 VOL. 54 NO. 8
最近の技術雑誌から
動向―
編集部:食品と開発,48(7)67~78(‘13)
○4年連続の“過去最高”が視野に/容リ法見直しや消
費増税には首尾一貫の業界スタンスで……岩尾英之
○ハイバリア PET ボトル設備を増強へ/ワインほか液
体食品での旺盛な需要背景に11月から平塚工場で
………………………………………………三菱樹脂
○革新的な包装技術の登場にも高まる期待/4年に一度
の飲料技術見本市がいよいよ9月に開催
……………………………………… drinktec 2013
○持続可能性の基準がその重要な役割に/技術者とマー
ケッターの“対話”を演出するイベントも
……………………………………… drinktec 2013
○ガラス製コンツアーボトル入りも近々製造/輸入缶入
り製品も加わり製品ポートフォリオが完成へ
………………………ザ コカ・コーラ カンパニー
○パウチの“エア層”がポイント/欧州で人気の果汁飲
料プチサイズで採用…………………… Ecolean AB
○“ボウタイ”形状の缶導入/開発に16工程を費やしブ
ランドロゴを表現………………………… Budweiser
○ PET ボトルの“内製化”を提案/ブロー成形機がメ
ーカー・ボトラーから引き合い…………ヨーキ産業
○ PET ボトルの厚みを高速・高精度測定/簡単操作,
コンパクトで柔軟な設置対応力……………エビック
〔解説〕市場動向Ⅲ―日持向上剤・保存料製剤/製剤提
案が活発化―
編集部:食品と開発,48(7)79~83(‘13)
〔解説〕ハラル市場の将来展望と認証までのプロセス/
最終回 成功事例とトラブル事例
並河良一:食品と開発,48(7)85~87(‘13)
機
械 ・ 設 備
〔解説〕特集―飲料製造技術と品質保証―
食品機械装置,50(7)60~81(‘13)
○フレスコ ( 株 ) 群馬工場缶無菌充塡設備について
………………………………………………西山重幸
○環境負荷軽減に貢献する設備提案…岩井機械工業(株)
○新しい Brix 計と CO2計によるプロセス管理の可能性
………………………………………………水俣淳一
〔解説〕特集―品質保証のための文字・外観検査機器/
自動外観検査システムについて―
山田吉郎:食品機械装置,50(7)82~85(‘13)
容
〔解説〕異なる“2人”の共・通・点/洋菓子と化粧品,
そのブランディングとパッケージング
井澤初美:食品包装,57(7)34~38(‘13)
器 ・包 装
〔解説〕今日 なに食べた?/500mL 以下のソフトド
リンク/主婦の今どき食生活雑感
ここちよい暮らし探求会 悠:食品包装,57(7)
40~47(‘13)
〔解説〕特集―最新の化粧品・トイレタリー包装―
包装技術,51(7)11~36(‘13)
○これからの時代に問われるパッケージのコミュニケー
ション力/―「置くだけで売れる」を目指すパッケ
ージング手法「感性記憶型パッケージング」―
………………………………………………宮本文幸
○粉末洗剤用つめかえ容器の開発
………………………………藤田実知昭・川口裕次
○デントヘルスリキッドケア洗口剤の新容器開発/―持
ちやすいボトル,開けやすいキャップを目指して―
……………………山田 研・石山 進・井上伸平
○ココンシュペール・リニューアルデザイン…神保圭治
○ブルーレット おくだけ/新カップ開発―最も薄いイ
ンジェクション詰め替え容器を目指して―
……………………吉川 侑・岡本公伸・三原秀人
○ d プログラム パワーバイタルソリューションの容
器開発…………………………………………佐藤照雄
〔解説〕業界別パッケージング動向
食品包装,57(7)58~61(‘13)
環
問
題
〔解説〕特集―排水処理・汚泥除去技術―
食品工業,56(14)40~65(‘13.7/30)
○省エネ・省廃棄物・創エネを実現する嫌気性生物処理
装置~排水処理設備が再生可能エネルギーの供給源
に~……………………………………………小川晋平
○ DHS リアクターによる食品産業排水の低コスト・省
エネルギー処理技術
……………………多川 正・西本 愛・高橋政友
・中尾 均・谷岡道夫
○ 微 生 物 の 力 で COD を 分 解・ 処 理 す る COD 処 理 剤
「COD カッター」
… ……………………………山本一郎
○大気圧プラズマとマイクロバブルの融合による水処理
技術の試み……………………………………吉木宏之
〔解説〕輸送包装の今・・・(その14)/「言い,伝え
たいこと」/―輸送・配送を考える―
橋爪文彦:包装技術,51(7)45~48(‘13)
〔解説〕特集―飲料&液体包装2013年・夏!―
食品包装,57(7)17~33(‘13)
食品と容器
境
521
2013 VOL. 54 NO. 8
最近の技術雑誌から
○ナトリウム削減に前進
海 外 編
Moving Forward on Sodium Reduction
K. Nachay……………………………………………34~44
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
○有害な細菌を殺すバクテリオファージに注目
Bacteriophages : Back to the Future
ご興味のある雑誌・記事がございました
らいつでも閲覧できますので,当会宛ご
連絡ください。
M. Sharma and L. Goodridge………………………46~53
○今日の甘味料ラッシュの全体状況
Why Today’
s Sweetener‘Rush’?
D. E. Pszczola… ……………………………………56~77
○健康に有益な栄養
Wholesome Nutrition
L. M. Ohr… …………………………………………79~85
The World of Food Ingredients (NLD)
Apr./May (2013)
○魚の養殖の進展
Aquaculture Drives Growth in Fish Production
○クリーンラベル製品戦略のアプローチ
N. H. Mermelstein… ………………………………75~77
○過熱蒸気を使用した乾燥と滅菌
How to Clean up Your Label
J. Diaz…………………………………………………10~16
Using Superheated System in Drying and
○減塩の革新
Sterilization
Salt Reduction Innovations
J. P. Clark……………………………………………91~93
○エレクトロニクスを利用した食品パッケージ
S. Osborn… …………………………………………18~20
○レディーミールは健康志向へ
Toward the Electronic Food Package
Ready Meals Take Health Route
A. L. Brody… ………………………………………94~96
M. Hilliam……………………………………………26~29
Prepared Foods (USA) Vol.182 May (2013)
○ナノテクノロジー食品のリスク評価
○チョコレートの世界市場動向
The Small Print on Nanofoods
S. A. Hill………………………………………………40~43
Life by Chocolate
○天然甘味料の伸長
W. A. Roberts, Jr.……………………………………13~21
○加工肉の各種の処方
The Sweet Taste of Nature
Building up Meat and Poultry
Y. D. Groote… ………………………………………44~48
○食品アレルゲンのコントロール
D. Davis………………………………………………29~37
○糖尿病のための製品処方
Food Allergen Management
Designed for Diabetes
F. Hastings… ………………………………………51~52
○エイジング市場における心臓の健康
S. L. Cantor, Ph. D… ………………………………39~48
○天然由来の着色料の使用
Heart Health for an Aging Market
Using Colors Successfully…………………………65~69
G. Dubourg… ………………………………………54~58
○中国における機能性食品規制の状況
Food Processing (USA) Vol.74 May (2013)
Chinese Regulatory Opportunities
○第42回 R&D 調査:2013年の最優先課題は新製品
N. Baldwin and S. Lin………………………………60~62
○EUにおける食品規制と植物品種
Innovation Uncorked
D. Fusaro・……………………………………………28~37
Botanical Change on the Horizon?
○2012年新製品トップブランド
P. Viner………………………………………………63~66
Novelty,Value and Lots of Marketing
Food Technology (USA) Vol.67 May (2013)
D. Fusaro… …………………………………………39~42
○農場から食卓までの食品安全近代化
○ソースやマリネの開発状況
Modernizing Food Safety from Farm to Fork
Hitting the Sauce(S)
T. Tarver… …………………………………………24~32
D. Phillips… …………………………………………43~50
食品と容器
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2013 VOL. 54 NO. 8
最近の技術雑誌から
○合成着色料を上回るナチュラルカラー
Natural Colors Outsell Synthetic Ones
Packaging Digest (USA) Vol.50 May (2013)
D. Fusaro ……………………………………………53~54
○5つの視点から見たパッケージの動向
○蜂蜜は全ての食品に適用できる天然甘味料
5 Top Global Packaging Trends
J. Lucas………………………………………………15~16
Thinking Outside the Hive
○機能的でエコな Gillette かみそりのパッケージ
D. Cassel… …………………………………………58~59
○乳製品の製造はバッチプロセスから連続プロセスへ
Goddess in the Details
K. B. Connolly… ……………………………………20~25
Tanks for the Memories
○3Dプリンティングによる迅速な試作品の製作
K. T. Higgins…………………………………………75~84
○パウチパワーが小売りパッケージングを活性化
The Ins and Outs of 3D Printing and Rapid
Prototyping
Pouch Power : Energizes Retail Packaging
J. McComb… ……………………………………
K. B. Connolly… ……………………………………86~89
26~30
○パッケージ食品における安全なプラズマ殺菌
Food Engineering (USA) Vol.85 May (2013)
Plasma Safely Sterilizes Packaged Foods
○エネルギー管理は数字の分析から
R. Lingle … …………………………………………35~36
Energy Management Crunching the Numbers
Beverage Industry (USA) Vol.104 May (2013)
W. Labs………………………………………………39~44
○食品の安全性と品質を支援するインラインモニタリング
○期待されるスポーツ飲料とプロテイン飲料
Inline Monitoring Aids Food Safety and Quality
Sports and Protein Drinks Share the Glory
W. Labs………………………………………………51~59
J. Haderspeck… ……………………………………12~17
○食品工場における最先端のフォークリフト
○即効性で人気がある液体サプリメント
Making All the Right Moves
A Changing Landscape
J. koel…………………………………………………61~66
J. Jacobsen……………………………………………22~25
○環境に考慮したシュリンク包装
Food Manufacture (GBR) Vol.88 May (2013)
Second to None
○進化するパン
J. Jacobsen……………………………………………38~39
○消化器の健康に効果的な栄養食品,飲料やサプリメント
Layer Bake
A.Magee… …………………………………………23~24
Ingredients Get‘Gutsy’
○異物の意図的混入
S. Cernive……………………………………………42~46
Illegal Entry
Int. Bottler & Packer (GBR) Vol.87 May (2013)
R. Pendrous… ………………………………………33~36
○製品検査機の現状と今後
○新トレンド飲料のココナツウォーター
Visionary Thinking
Coconut Water - A New Trend
P. Gander… …………………………………………37~40
………………………………………22~23
Beverage World (USA) Vol.132 May (2013)
Food & Beverage Packaging (USA) Vol.77 May (2013)
○アルコール飲料のトレンドと新商品
○新しい包装容器
Alcohol Trends & Innovation
New Packages………………………………………10~12
J.Cioletti and J. Cirillo………………………………8~10
Journal of Food Science (USA) Vol.78 May (2013)
○清涼飲料のトレンドと新商品
○食品包装での防虫剤用エッセンシャルオイルのマイク
ロカプセル化
Non Alcohol Trends & Innovation
J. Cirillo ………………………………………………11~12
Microencapsulation of Essential Oil for Insect
○2012年の飲料販売状況の分析
Repellent in Food Packaging System
State of the Beverage Market 2013
S. Chung et al. ……………………………… E709~ E714
J. Cioletti, A. Kaplan and J. Cirillo… ……………32~68
食品と容器
523
2013 VOL. 54 NO. 8
インド諸島,メキシコ,フロリダ,カリフォルニ
野菜・果物を巡って
(第五十六話)
アに至り,19世紀になってハワイへ伝わった。
一方東南アジア一帯にはポルトガル,スペイン,
オランダ,イギリス人などによって各地に伝えら
日本のマンゴーに乾杯
れ,同時にオーストラリアにも伝わり,今やマン
ゴーはぶどう,バナナ,オレンジ,りんご,パイ
ナップルに次ぐ国際的に生産量の多い果物となっ
よし だ
き
よ
こ
ている。しかし,主産地はインド,パキスタン,
吉 田 企 世 子
メキシコ,フィリッピンなどである。
(女子栄養大学名誉教授)
季節は熱帯の夏,つまり北半球では,4~8月,
南半球に入るインドネシア,オーストラリアでは
宮崎在住の友人からマンゴーが届いた。彼女が
9~12月が最盛期になる。
自慢するだけあって,その素晴しい味に,感激し
フィリッピン在住の友人によると現在のフィ
つつ賞味した。ジューシーで甘く,果肉の滑らか
リッピンでは,複雑な地形や気候が幸いして,一
な舌触りが快い。
年中入手できるとのこと。
かつてマンゴーは南方からの輸入果物という認
識であったが,今や日本の誇る果物の一つとなっ
日本に輸入されるフィリッピン産マンゴーは主
ている。その栽培には生産者の丁寧な技術が導入
にカラバオ種といって黄色く平べったい形をして
されていて,一個ずつ網を被せてつるした状態に
いる。
保つ。完熟して網の中に自然落下したところで収
マンゴーはウルシ科に属する樹高10~20mの常
穫するのである。太陽エネルギーとハウスの温度
緑果樹である。すこぶる長命であり,樹齢300年
コントロールとの兼ね合いも配慮されているので
ぐらいのものはざらにあるという。想像しにくい
あろう。
が,大木の林となっているようである。ウルシ科
日本の果物の優れた品質は世界に類を見ないの
なので,日本のうるしやはぜの木のようにその下
ではないだろうか。その背景にある栽培技術の繊
を歩くと樹液が降ってきて,これがかかるとかぶ
細なこと,日本人の国民性を感じる。日本で生産
れることがある。
今は亡き果物の神様のような博識の知人から聞
される農産物すべてに共通する技術であろう。
日本のマンゴー生産地は主に沖縄,宮崎,鹿児
いた話を思い出す。彼がハワイに旅行した折のこ
島県であるが,近年は北海道でも優れた栽培技術
と,同じホテルに日本から来た新婚さんが宿泊し
が生まれている。
ていたのであるが,3日目の夜,新郎が彼の部屋
マンゴーの原産地はインドのアッサムあたりと
をけたたましくノック,実は,今朝から家内の様
されている。特に釈迦との関係から聖なる木とさ
子が変で,顔がぶくぶく紫色に腫れだしたとのこ
れており,すでに紀元前数世紀ごろにはインドに
と。どうしたらよいかとうろたえていたという。
分布していたとの記述がある。かの有名なアレキ
知人は花嫁さんの顔をひとめ見て,これはうるし
サンダー大王が,インダス渓谷に侵入した時にマ
によるかぶれと直感したそうである。前日に新婚
ンゴーを知り,これをマケドニア(バルカン半
さんはマンゴーの木の下で記念写真を撮ったので
島)に持ち帰ったという伝説がある。
ある。知人の診断通り,塗り薬でたちまち快方に
向かったとのこと。
インドからヨーロッパへ伝わったのはポルトガ
ル人のバスコ・ダ・ガマが,15世紀末に喜望峰を
マンゴーの木のこのような性質を,全く知らな
回航してインド航路を発見してからである。ポル
かったので,新婚さんならずとも,大木の木立の
トガル人によってアフリカへ,さらに征服したブ
下でゆっくり思案に耽りたい感じがする。
マンゴーの品種は大変多く200~500種もあると
ラジルへ導入されたようである。ブラジルから西
食品と容器
524
2013 VOL. 54 NO. 8
いう。インドは品種が最も多い国である。しかし,
なった。
マンゴーの季節は限られているので,旅行でイン
生食するのが普通であるが,海外では青いうち
ドに出かけた場合には各種のものを味わうことは
にもぎとり,料理や菓子の材料としても広く用い
不可能であろう。卵程度の小さいものから大き
られている。
家庭でマンゴーを切るときには,いきなり皮を
なものは1kg を超すものもあるが,多くは200~
剥くようなことはしないこと。マンゴーには真ん
500gである。
果皮が緑色,緑に赤が入ったもの,黄色,オレ
中に扁平の種があり,果肉が種にしっかりついて
ンジ色などがあり,日本には果皮の赤いアーウィ
いるので,魚を三枚におろすやり方で三つ切りに
ンという品種が導入され,栽培されている。
する。果肉に碁盤目のように切り目を入れてひっ
くり返すと,亀の甲羅のようにきれいな形になり,
果肉は白,黄色,オレンジ色などがあり,中央
に平たい大きな種がある。種の表面に硬い繊維が
食べやすくなる。真ん中の種のまわりの果肉は
生えていて,これが周囲の果肉の中にのびている
しゃぶりつくのがいちばんで,上品ぶらずにダイ
のが特徴的である。繊維の少ないもの,柔らかい
ナミックに食べるのがよい。
ものほど,果物としての品質がよいといわれる。
ミキサーでとろとろにし,鶏卵と生クリームと
確かに,少々安価なものは繊維が多く感じられ
合わせて凍らせると,美味しいマンゴー・アイス
クリームができる。友人は少し硬めのものを塩・
る。
こしょうしてバターでソテーにするのが定番との
フィリッピンの人がインドマンゴーと呼ぶ緑色
こと。
のマンゴーは熟しても果皮の色が緑色であるが,
インド特産の漬物であるチャツネ(chutney)
果肉は淡黄色である。このマンゴーは未熟で果肉
が硬いものが珍重される。一般に,未熟期のマン
はマンゴーの青いものと熟したものを用い,タマ
ゴーは極めて酸っぱいが,インドマンゴーは酸味
リンド(柔らかな豆さやで多肉質,酸味が強く粘
がおだやかなのでそのまま食べることができる。
性がある),干しぶどう,とうがらし,しょうが,
しかし,料理や漬物に使うのが本命である。
たまねぎ,にんにく,からし,砂糖,塩などと一
緒に漬け込んだもので,味の濃厚な調味料となる。
熱帯アジアはマンゴーの宝庫であるから,マン
カレーとよく合う。
ゴーの旅をしてはどうかと友人から声がかかって
食品成分表に記載されている栄養素ではβ−カ
いるのでいつの日にか実現したいと願っている。
日本では高価な果物というイメージであったが,
最近は手ごろな価格のものが店頭に並ぶように
ロテン,ビタミンE,ビタミンB6,葉酸が多く,
ビタミンCもやや多い。
別刷り合本をご利用下さい
味と香りのサイエンス
本誌は食品の味と香りのヒトによる受容を科学的に解説,また味や香りの評価技術の最新動向についても,専門
の方々に解説をしていただいた。
B5版/本文96ページ 定価2,000円(送料別)
《内容》〔1〕食品の味覚と嗜好,〔2〕味覚の情報伝達,〔3〕味覚を介する食調節・生体機能調節,〔4〕食品物
性が味覚に及ぼす影響,〔5〕分子構造と味覚(アミノ酸・ペプチド),〔6〕分子構造と味覚(タンパク質):甘い
タンパク質と味を変えるタンパク質,〔7〕分子構造と味覚(甘味と糖質),〔8〕味覚センサー,〔9〕味覚センサ
ーによる食品の評価,〔10〕香りと快適性,〔11〕香りと分子,〔12〕食品の香りと嗜好性,〔13〕異臭分析,〔14〕
電子嗅覚システムとそのアプリケーション
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
525
2013 VOL. 54 NO. 8
日頃は本会誌「食品と容器」をご愛読いただき,厚くお礼申し上げます。
さて,会長伊藤哲夫が退任し,この7月から新会長に加藤寛之(大和製罐株式会社取締役総合研究所長:兼任)が
就任することになりました。今後は新会長を迎え,さらに充実した誌面にしていく所存です。
読者の皆様の一層のご支援をお願い申し上げます。 (編集部)
会長就任のご挨拶
今年の梅雨は早々に明け,盛夏の季節となりましたが,皆様におかれましてはご清祥のこととお慶び
申し上げます。また,本会への日頃のご協力ご支援に対しまして,心より厚くお礼申し上げます。
さて,この度2年間にわたり会長として本会の運営と発展のため,ご尽力いただいた伊藤哲夫会長が
退任されることとなり,私が後任会長として選任され就任いたすこととなりました。昭和35年の設立以
来,半世紀以上にわたり諸先輩が積み上げてこられた本会の歴史と伝統を継承し,これまで以上の発展
を担う重責に身の引き締まる思いがいたします。
皆さまご高承のとおり,昨今の食品・飲料業界への関心は年々高まり続けており,中でも「安全性」
についての意識が顕著なものとなっています。容器や食品の原材料から流通過程を含め消費者の手に渡
るまでのトータルの安全性・品質保証の確保という基本的かつ重要な問題に対し,消費者の期待に応え
るべく,関連する各企業がそれぞれに知恵と工夫を凝らして様々な技術・サービスの向上や付加価値創
造といったテーマに真摯に取り組んでいる状況です。
このような状況の中で,本会では会員読者の皆さまの視点に立ち,国内外を問わず広範囲で的確な技
術情報収集とスピーディー・タイムリーな発信を行うことを常に心がけ,少しでも皆さまのお仕事や日
常の関心・疑問点解決のお役に立てる誌面にするべく事務局員ともども,より一層の研鑽と努力を続け
ていく所存でございます。皆様方のより一層のご指導ご鞭撻の程何卒よろしくお願い申し上げます。
最後に皆さまのますますのご健康とご発展を祈念いたしまして,会長就任のご挨拶に代えさせていた
だきます。
平成25年7月
缶 詰 技 術 研 究 会 会 長 加 藤 寛 之
編
集
後
記
●暑い毎日が続いています,今年は7月前半から猛暑で
FOOD & PACKAGING
飲料の荷動きは好調。7月に当会が発刊した別冊「米の
話」の売れ行きも好調で日々注文が入ってきます。売れ
れば嬉しくなるのが人情で何かウキウキします。暑くて
発行所 缶
売れる飲料,関心が高くて売れる「米の話」、アベノミ
だけが似ているのでしょう。もともと金融緩和で経済の
実体が動き出すとは思えず,動き出す切っ掛けくらいの
ものと考えます。団塊の世代が順次退職すれば消費は落
ち込むのは当たり前で,人口構成の変化は最も予測のつ
詰 技 術 研 究 会
発 行 人 きやすいモノです。世界的にも人口と食糧の問題はこれ
食品と容器
平成25年8月 1 日発行
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
定 価
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
1部 800円
Eメール:[email protected]
年間 8,000円
郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5
(消費税・送料込)
井 俊 夫
編 集 人 荒
クスと因果関係はあるのでしょうか,ウキウキすること
からの最大の課題と思われます。
第54巻 第 8号
−禁無断転載−
(雅)
田
嶋
一
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
526
雄
印 刷 所 大和サービス株式会社
2013 VOL. 54 NO. 8