イベント・ベースド・マーケティングによる 住宅ローン既存先へのクロスセル

イベント・ベースド・マーケティングによる
住宅ローン既存先へのクロスセルの推進
∼RAROAに基づく長期的な収益の増強∼
○岡部 雄一郎、小谷田 知行
株式会社 浜銀総合研究所
Cross-Sell approach
to Mortgage loan customers
through Event Based Marketing
Yuichiro Okabe, Tomoyuki Koyata
Hamagin Research Institute, Ltd.
1/32
要旨
近年、収益性が低下しつつある住宅ローンをゲートウェイ商品として捉え
て、イベント・ベースド・マーケティング(EBM)によるクロスセルにより、長期的
な収益を増強していくアプローチを紹介する。なお、収益の観点としては、
RAROAを用いる。
キーワード
住宅ローン,信用リスク,RAROA(Risk Adjusted Return on Asset),
EBM(Event Based Marketing),クロスセル
2/32
構成
1. 住宅ローンビジネスの現況------------------------------------------------- 4
2. 住宅ローンの収益リスク構造---------------------------------------------- 8
3. EBMによる住宅ローン既存先へのクロスセルの推進---------------- 12
4. まとめ-------------------------------------------------------------------------- 28
3/32
1. 住宅ローンビジネスの現況
4/32
法人向け融資の縮小と個人向け融資への傾斜
法人の資金需要の低迷により、金融機関では個人向け融資を強化。
個人向け融資の9割以上は、住宅ローン(融資全体の約3割)。
【住宅ローン貸出残高(期末残)の推移】
2,500,000
【金融機関の住宅ローン比率の分布】
30%
その他
25%
住宅金融支援機構
(直接融資)
2,000,000
生保・損保
︵ ︶
億 1,000,000
円
︵
貸
出 1,500,000
残
高
住宅金融支援機構
20%
構
(買取債権)
住宅金融専門会社 成
比 15%
等
%
︶
10%
信金・信組・労金・
農協等
500,000
5%
国内銀行
50%∼
45∼50%
40∼45%
35∼40%
30∼35%
25∼30%
20∼25%
15∼20%
0∼5%
5∼10%
1989年度
1990年度
1991年度
1992年度
1993年度
1994年度
1995年度
1996年度
1997年度
1998年度
1999年度
2000年度
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
10∼15%
0%
0
住宅ローン比率
出典:住宅金融支援機構
「住宅ローンの新規貸出額及び貸出残高の推移」より作成
出典:金融ジャーナル社
「金融ジャーナル 2010.2」より作成
5/32
リーマンショックを境に急変した住宅市場
2006年度までは、ある程度順調に推移してきた。
しかし、サブプライムローン問題・リーマンショックを境に市場は急激に縮小。
【新設住宅着工戸数の推移】
【分譲住宅着工戸数の推移】
400,000
1,400,000
350,000
1,200,000
300,000
1,000,000
800,000
給与住宅
貸家
600,000
持家
400,000
着 250,000
工
戸 200,000
数
一戸建
マンション
戸 150,000
2009年度
2008年度
2007年度
2006年度
2005年度
2004年度
2003年度
2002年度
2001年度
2000年度
1999年度
2009年度
2008年度
2007年度
2006年度
2005年度
2004年度
2003年度
2002年度
2001年度
2000年度
0
1999年度
50,000
0
1998年度
100,000
200,000
1998年度
戸
分譲住宅
︵ ︶
︵ ︶
着
工
戸
数
(出典:国土交通省「建築着工統計調査」よりいずれも作成)
6/32
住宅ローンビジネスの3つの不安材料
こうした中、住宅ローンビジネスにおいては、以下の3つが不安材料とし
て挙げられる。
① 景気低迷に伴う案件の質の低下
•
返済負荷の重い顧客の増加、勤務先の経営状態の悪化による影響
② 加熱する金利競争
•
基準金利からの引下げ幅の拡大、変動金利利用者の増加
③ 借換および繰上返済の増加
•
借換獲得競争の激化、繰上返済手数料の無料化の流れ
7/32
2. 住宅ローンの収益リスク構造
8/32
金融の収益構造
メーカーと比較した、金融の収益構造は以下のとおり。
<メーカー>
利益=(販売価格−原材料費−人件費)×販売件数
<金融>
利益=(貸出金利−調達金利−人件費−信用コスト)×貸出金額×貸出期間×貸出件数
①不確定なコストが存在する
②当初時点から変動し得る
③期間で捉える必要がある
結果、当初の取引時点では、収益が確定しない(収益は、各時点の収益
×貸出期間という面積の考え方で評価していく必要がある)。
言い換えれば、いくつかのリスクが内在。
9/32
住宅ローンビジネスの3つのリスク
具体的なリスクとしては、以下の3つが挙げられる。
① 信用リスク
•
勤務先倒産や年収低下に伴う返済負荷の増加により、返済が滞るリスク。
•
より具体的には、返済可能性を意味する狭義の信用リスクと、返済不能時の
回収可能性を意味する回収リスクに分けられる。
② 金利リスク
•
市場金利の上昇により、既存貸出債権が含み損を抱えるリスク。
•
より具体的には、貸出金利が調達金利を下回ることにより生じる逆鞘リスクと
考えられる。
③ 繰上返済リスク
•
顧客が融資額の一部ないしは全額を繰上返済することにより、貸出期間中の
キャッシュフロー(資金の流れ)が変化するリスク。
•
より具体的には、毎月返済額の減少もしくは貸出期間の短縮による収益低減
リスクと考えられる。
10/32
低下しつつある住宅ローンの収益性
P7の不安材料は、P10のリスクと密接に関連。
結果、住宅ローンの収益性は低下しつつある。
⇒住宅ローンを単体で収益源とするビジネスには限界。
【住宅ローンの収益リスク構造】
①景気低迷に伴う
案件の質の低下
①信用リスクの増加
②加熱する金利競争
②金利リスクの増加
③借換および
繰上返済の増加
③繰上返済リスクの
増加
信用コストの増加
利鞘(バッファ)の縮小
利益=(貸出金利−調達金利−人件費−信用コスト)
×貸出金額×貸出期間×貸出件数
貸出期間の短縮化
収益性の低下
11/32
3. EBMによる住宅ローン既存先へのクロスセルの推進
12/32
住宅ローンに対する発想の転換
住宅ローンを単体で収益源とするビジネスには限界。
住宅ローンをゲートウェイ商品として捉えて、中長期的な収益を増強して
いくという発想の転換が必要。
13/32
住宅ローン顧客に対する収益増強の方向性
収益増強の方向性としては、以下のとおり。
① 取引内容の増加(クロスセルの強化)
② 取引期間の長期化(リテンションの強化)
【住宅ローン顧客に対する収益増強の方向性】
取引
(各時点収益)
取引内容の増加
(クロスセルの強化)
取引内容を
増やす
住宅ローン
収益
取引期間を
長期化する
取引期間
の長期化
(リテンション
の強化)
期間
(取引期間)
14/32
住宅ローン顧客の実像を知る①
収益増強を実現していくには、住宅ローン顧客の実像に関して、これまで
以上に知る必要性がある(特に新規申込先) 。
– 30代男性が約50%⇒子供が生誕、もしくは小学校入学の年代。
– 口座非保有先が50%超⇒住宅ローンを契機に、取引開始する顧客が多い。
【年齢・性別の住宅ローン先の内訳】
【口座保有・非保有別の住宅ローン先の内訳】
消失
新規
新
規
・
消
失 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75
年齢
男性
口座保有先
非口座保有先
15/32
女性
住宅ローン顧客の実像を知る②
住宅ローン顧客の約半数は30代男性。
– 住宅購入後は、ライフイベントが目白押し。金融取引のニーズあり。
住宅ローン申込時には、各種の顧客情報が入手可能。
– 高精度のマーケティングが実現可能。
【年齢帯別のライフイベントと関連する金融商品のイメージ】
資産
負債
0歳
10歳
ラ
イ
フ
イ
ベ
ン
ト
20歳
30歳
新
社
会
人
子 住
結 供 宅
婚 生 購
誕 入
40歳
50歳
子
供
高
校
入
学
60歳
子
供
大
学
入
学
退
職
70歳
80歳
年
金 相
受 続
給
給振
積立定期
金
融
商
品
積立定期
クレジットカード
カードローン
住宅ローン
リフォームローン
教育ローン
積立型投資信託
分配型投資信託
保険
公共債
16/32
EBMによる住宅ローン先へのアプローチ
住宅ローン顧客の実像(特性および金融機関との関係性)を踏まえて、
マーケティングを実施する場合・・・
⇒情報の収集機会が多く、顧客に一定の均質性が保たれていることから、
顧客ニーズに適応した「Event Based Marketing(P18~19参照)」が有効。他
のローン商品などのクロスセルの可能性を検討する。
その際には、金融業務の特性として、顧客ニーズと合わせて、収益・リスク
の観点も考慮すべき(Potential&Profit)。
⇒「RAROA (P20~21参照)」により、リスク調整後収益を評価。
複数商品の収益評価はどのように行うべきか?
⇒「総合与信管理(P22参照)」により、収益性を一元管理。
17/32
EBMの概要①
EBM(Event Based Marketing)の概要
– 顧客属性や取引内容の変化をイベント(金融トリガー)として顧客ニーズを感
知し、最適な商品を最適なタイミングで提供するマーケティング手法。
– 営業推進に活用できるようなイベントを想定し、それを属性および取引データ
からどのように読み解いていくかが成功のポイント。
– EBMのイベントは、以下の3種類に大別できる。
(1) ライフイベント:就職、子供生誕、子供入学、退職、相続など
⇒住宅購入は、子供生誕もしくは小学校入学の時期が多い。高校および大学入
学の時期を踏まえて、後に教育ローンを展開することが考えられる。
(2) 金融イベント:大口入金、為替変動、他行への大口振込など
⇒住宅ローンでは、ボーナス前など一時的に資金が枯渇する先が存在する。資
金動向を踏まえて、カードローンを展開することが考えられる。
(3) 期日管理:定期預金満期、公共債償還など
⇒住宅ローンの固定金利期間終了時は、借換を検討する先が存在する。期日管
理により、借換抑制を展開することが考えられる。
18/32
EBMの概要②
EBMの枠組み
– EBMのプラットホームとして、SASを使用。
– SAS Enterprise Guideにより、マーケティングイベントの検知ロジックを柔軟
に更新することが可能。
【EBMの枠組み】
イベント検知
施策選択
顧客
商品
リスト作成
チャネル
コンテンツ
属性
データ
取引
データ
実施・検証
リストA
セグメントA
イベント
検知
セグメントB
教育
ローン
明細
データ
文章
スクリプト
E-mail
デザイン
・・・
・・・
カード
ローン
セグメントC
・・・
TEL
DM
効
果
検
証
実
施
リストB
積立投信
リストC
・・・
19/32
RAROAの概要①
RAROA(Risk Adjusted Return on Asset)の概要
– 信用リスクなどの各種リスクを考慮した収益性を示す指標。
– RAROA=(リスク調整後収益÷平均貸出残高)÷貸出期間。
【RAROAの算出のイメージ】
■収支評価
経過年数(年)
項目
20
21
1,000.00
979.14
957.82
936.02
913.74
890.97
…
481.82
449.45
…
0.00
-
A02 約定返済額
0.00
42.65
42.65
42.65
42.65
42.65
…
42.65
42.65
…
0.00
1,407.42
A03 うち利息相当額
0.00
21.79
21.33
20.85
20.37
19.87
…
10.98
10.27
…
0.00
407.42
0.00%
0.60%
1.20%
1.80%
2.40%
3.00%
…
3.00%
3.00%
…
0.00%
301.98
A01 ローン残高
金利リスクを考慮
A04 繰上返済率
A05 繰上返済額
4
5
…
…
35
合計
6.00
11.68
16.93
21.64
25.71
…
4.64
3.32
…
0.00
940.44
901.55
857.10
807.59
…
110.80
67.26
…
0.00
-
A07 繰上返済考慮後約定返済額
0.00
42.65
42.65
42.65
42.65
42.65
…
42.65
42.65
…
0.00
962.16
A08 うち利息相当額
0.00
22.00
21.41
20.69
19.83
18.86
…
3.40
2.44
…
0.00
264.14
0.00%
0.08%
0.17%
0.25%
0.50%
0.67%
…
0.17%
0.08%
…
0.00%
100.00%
99.92%
99.75%
99.50%
99.00%
98.33%
…
90.98%
90.89%
…
90.56%
-
A11 デフォルトリスク調整後約定返済額
0.00
42.61
42.54
42.44
42.22
41.94
…
38.80
38.77
…
0.00
909.54
A12 うち利息相当額
0.00
21.98
21.36
20.59
19.64
18.54
…
3.10
2.22
…
0.00
254.34
A13 デフォルト発生額
0.00
0.82
1.60
2.31
4.41
5.56
…
0.22
0.07
…
0.00
53.87
1,000.00
950.00
902.50
857.38
814.51
773.78
…
358.49
340.56
…
166.08
-
A10 N年後生存確率
A15 デフォルト担保保証額
その他コスト考慮
3
973.35
A14 担保保証額
広義
2
0.00
A09 N年後デフォルト発生確率
狭義
信用リスクを考慮
1
1,000.00
A06 繰上返済考慮後ローン残高
繰上リスクを考慮
0
0.00
0.81
1.55
2.21
4.19
0.61
9.44%
5.31
…
0.29
…
0.00
58.46
A16 デフォルト損失額
0.00
0.01
0.05
0.10
0.22
0.26
…
0.00
0.00
…
0.00
1.01
A17 デフォルト損失率
0.00%
1.18%
3.20%
4.46%
4.93%
4.59%
…
0.00%
0.00%
…
0.00%
-
A18 調達金利支払額
0.00
12.43
12.06
11.60
11.08
10.49
…
1.67
1.12
…
0.00
144.98
A19 団信保険料
0.00
2.96
2.87
2.76
2.64
2.50
…
0.40
0.27
…
0.00
34.52
A20 銀行事務経費1(初年度)
4.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
…
0.00
0.00
…
0.00
4.00
A21 銀行事務経費2(翌年度以降)
0.00
0.99
0.96
0.92
0.88
0.83
…
0.13
0.09
…
0.00
11.51
A22 保証料収入
0.00
1.97
1.91
1.84
1.76
1.66
…
0.27
0.18
…
0.00
23.01
A23 保証会社事務経費1(初年度)
0.50
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
…
0.00
0.00
…
0.00
0.50
A24 保証会社事務経費2(翌年度以降)
0.00
0.10
0.10
0.09
0.09
0.08
…
0.01
0.01
…
0.00
1.15
A25 保証会社事務経費3(DF時)
0.00
0.01
0.04
0.06
0.10
0.15
…
0.01
0.00
…
0.00
1.62
20/32
RAROAの概要②
RAROAの特性
– ローン実行後は、返済に伴い、貸出残高は減少していく。
– ただし、住宅ローンには、デフォルトシーズニング効果があるため、RAROAに
基づく収益性は改善していくことが見込まれる。
• デフォルトシーズニング効果:住宅ローンの場合、貸出直後のデフォルト率は低く、5∼10年目
にかけて上昇。その後は、漸減していく傾向にある。
【ローン経過年数別のRAROAの推移】
【ローン経過年数別の貸出残高・合計利益の推移】
貸出残高
RAROA
リ
ス
ク
調
整
後
収
益
リスク調整後収益(以後合計)
R
A
R
O
A
︵
貸
出
残
高
︶
以
後
合
計
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
0
20
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
経過年数(年)
経過年数(年)
21/32
総合与信管理の概要
総合与信管理
– 債権単位ではなく、個人単位で与信管理を行う考え方。
– 各商品のRAROAを加重平均した個人RAROAにより、与信判断を実施。
【総合与信管理のイメージ】
顧客
申込
審査ロジック
審査結果
住宅ローン
申込
住宅ローン
審査ロジック
応諾
無担保ローン
申込
無担保ローン
審査ロジック
応諾
カードローン
申込
カードローン
審査ロジック
否決
申込
審査ロジック
債権収益評価
住宅ローン
申込
住宅ローン
審査ロジック
住宅ローン
RAROA
無担保ローン
申込
無担保ローン
審査ロジック
無担保ローン
カードローン
申込
カードローン
審査ロジック
カードローン
RAROA
・従来は個別審査の
ため、審査結果が異
なっていた。
総合与信管理を導入
顧客
RAROA
個人収益
審査結果
個人
RAROA
応諾
・総合与信管理により、
審査結果は一致。
22/32
今回のフレームにおけるSASの活用
EBM
– ターゲティングの検知ロジックの構築⇒SAS Enterprise Miner(decision
tree)
– ターゲティングの検知ロジックの実装⇒SAS Enterprise Guide
RAROA
– 信用リスク評価のためのモデル構築⇒ SAS/STAT(proc logistic)
– 繰上返済リスク評価のためのモデル構築⇒SAS/STAT(proc phreg)、あるい
はPSJモデルにて簡易的に処理
– RAROA算出⇒Base SAS
総合与信管理
– 個人RAROA算出⇒Base SAS
23/32
EBMと総合与信管理の連携によるクロスセルの強化①
EBMと総合与信管理の連携により、顧客ニーズと収益・リスクの両方の
観点を踏まえたクロスセル・マーケティングを展開する(P14の「① 取引
内容の増加」に相当)。
具体的には、住宅ローン先に対して、「教育ローンの推進」を実施。
【EBMと総合与信管理の連携のイメージ】
スタート
ターゲティング(Potential評価)
収益リスク管理(Profit評価)
RAROA評価
属性
データ
住宅
ローン先
取引
データ
明細
データ
ニーズ
判定
ロジッ
教育
ローン
ニーズ先
非
ニーズ先
住宅
ローン
RAROA
教育
ローン
RAROA
アプローチ
総合与信管理
個人
RAROA
RAROA
上昇
RAROA
低下
アプローチ
先
ポテンシャル
&
プロフィット先
ポテンシャル
&
非プロフィット先
非ポテンシャル先
24/32
EBMと総合与信管理の連携によるクロスセルの強化②
住宅購入は、子供の生誕もしくは入学の時期が多い。
– 属性や明細データにより、教育ローンのニーズ先および発生時期が予測可能。
住宅ローンに関して一定の返済実績あり。
– デフォルトシーズニング効果により、リスクは低減し、RAROAは向上。
【EBMと総合与信管理の連携によるクロスセルのイメージ】
貸出残高
・時間の経過とともにローン残高は減少。
・結果、常に新規顧客を開拓の必要あり。
・従来は、ローン実行後は別
段フォローせず。
・結果として、顧客ニーズが
把握できず、新たな取引が他
行に流れる場合もあった。
住宅ローン実行
時間
EBMと総合与信管理を連携
個人RAROA
・ローン実行後は、返済実績
に応じてリスク低減。
・EBMと総合与信管理を連携
させることで、新たな顧客
ニーズの取り込みが可能に。
・時間の経過とともに住宅ローンの
RAROAは向上。
教育ローン獲得
・EBMにより教育ローンのニーズを把握。
・結果、既存顧客に対するクロスセルを実
現し、RAROAは更に向上。
住宅ローン実行
時間
25/32
EBMと総合与信管理の連携によるクロスセルの強化③
取引内容の増加により、収益の拡大を実現。
【クロスセル時の収益の増強効果の数値例】
商品
住宅ローン経過年数(年)
指標
貸出残高
住宅ローン
リスク調整後収益(以後合計)
単体
RAROA
0
1
2
3
3,000.0
2,911.4
2,804.0
2,679.1
182.6
161.6
145.3
132.2
0.53%
0.51%
0.51%
0.51%
4
5
6
2,537.9
2,382.2
2,228.1
2,075.6
1,924.8
1,775.5
1,627.9
1,481.8
1,337.2
1,194.2
1,052.7
121.1
110.5
99.9
7
90.0
8
80.9
9
72.2
63.6
55.7
48.0
40.9
34.2
27.9
0.52%
0.54%
0.55%
0.56%
0.58%
0.60%
0.62%
0.65%
0.68%
0.71%
0.75%
0.79%
200.0
170.6
139.7
107.3
貸出残高
10年目に
リスク調整後収益(以後合計)
教育ローン
RAROA
住宅ローン 貸出残高
+
リスク調整後収益(以後合計)
10年目に
教育ローン RAROA
2,228.1
1,775.5
12
13
14
15
73.2
912.7
37.5
20.4
21.0
14.7
9.5
5.5
2.6
2.80%
3.98%
4.11%
4.38%
4.99%
6.86%
1,827.9
1,652.3
1,476.9
1,301.5
1,125.9
950.2
2,911.4
2,804.0
2,679.1
2,537.9
2,382.2
182.6
161.6
145.3
132.2
121.1
110.5
99.9
90.0
80.9
72.2
84.0
76.7
62.7
50.5
39.7
30.5
0.53%
0.51%
0.51%
0.51%
0.52%
0.54%
0.55%
0.56%
0.58%
0.60%
0.86%
0.99%
1.00%
1.01%
1.02%
1.03%
総
貸
出
残
高
1,924.8
11
3,000.0
住宅ローン経過年数別の総貸出残高の推移
2,075.6
10
住宅ローン経過年数別のRAROAの推移
R
A
R
O
A
住宅ローン+10年目に教育ローン
住宅ローン単体
住宅ローン+10年目に教育ローン
住宅ローン単体
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
経過年数(年)
経過年数(年)
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EBMと総合与信管理の連携によるリテンションの強化
EBMと総合与信管理の連携は、リテンション・マーケティングの分野にお
いても活用が可能(P14の「② 取引期間の長期化」に相当) 。
顧客ロイヤルティの醸成を通じて、リテンションの強化を実現。
【EBMと総合与信管理の連携によるリテンションのイメージ】
顧客
ニーズ
判定
申込
審査ロジック
審査結果
住宅ローン
申込
住宅ローン
審査ロジック
応諾
無担保ローン
申込
無担保ローン
審査ロジック
応諾
カードローン
申込
カードローン
審査ロジック
否決
・個別審査のため、
審査結果が不一致。
・追加与信不可先に
も推進し否決。結果、
既存の住宅ローンま
で消失する場合も。
EBMと総合与信管理を連携
顧客
ニーズ
判定
申込
審査ロジック
債権収益評価
住宅ローン
申込
住宅ローン
審査ロジック
住宅ローン
RAROA
無担保ローン
申込
無担保ローン
審査ロジック
無担保ローン
カードローン
申込
カードローン
審査ロジック
カードローン
RAROA
RAROA
個人収益
審査結果
個人
RAROA
応諾
・債権単位ではなく、
個人単位で総合与信
管理の上で推進。
・顧客に対して整合
性のある対応を図り、
リテンションを強化。
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4. まとめ
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まとめ
住宅ローンビジネスの現況
– ①景気低迷に伴う案件の質の低下・②加熱する金利競争・③借換および繰
上返済の増加など、高まる懸念。
住宅ローンの収益リスク構造
– 収益は、各時点の収益×貸出期間の面積で評価(当初時点では不確定)。
– ①信用リスク・②金利リスク・③繰上返済リスクの増加により、収益性は低下。
EBMによる住宅ローン既存先へのクロスセルの推進
– 住宅ローンをゲートウェイ商品として捉え、中長期的な収益増強を目指す発
想の転換が必要。
– 収益増強の方向性は、①取引内容の増加(クロスセルの強化)、②取引期間
の長期化(リテンションの強化)。
– 住宅ローン先は、顧客情報の収集機会が多く、一定の均質性があるため、
EBMによるクロスセル(およびリテンション)の強化が可能。
– ただし、顧客ニーズだけでなく、収益・リスクの観点も踏まえたマーケティング
が必要。RAROAおよび総合与信管理の考え方が有効。
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今後の課題
今後の課題
– 住宅ローン完済先に対するEBMの検討(キャッシュフローの改善による資金
運用の可能性)。
【年齢帯別のライフイベントと関連する金融商品のイメージ】
資産
負債
0歳
10歳
ラ
イ
フ
イ
ベ
ン
ト
20歳
30歳
新
社
会
人
子 住
結 供 宅
婚 生 購
誕 入
40歳
50歳
子
供
高
校
入
学
60歳
子
供
大
学
入
学
退
職
70歳
80歳
年
金 相
受 続
給
給振
積立定期
金
融
商
品
積立定期
クレジットカード
カードローン
住宅ローン
リフォームローン
教育ローン
積立型投資信託
分配型投資信託
保険
公共債
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参考文献
参考資料
[1]日本銀行金融機構局「住宅ローンのリスク管理∼金融機関におけるリスク管理手法の現
状∼」 (2007)
[2]日本銀行「銀行の住宅ローンを巡る最近の動向とリスク管理上の課題:マクロ的視点か
らの検討」(2008)
[3]岸本義之『金融マーケティング戦略』(ダイヤモンド社、2005)
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