executive interview | SAPPHIRE MATERIAL 高輝度 LED 用サファイア市場に参入、 大口径化を着々と進める LED の製造に関わる材料や測定、製造 技術および製品が一堂に会する「 LED JAPAN 」が、2011 年 9 月 28 日か ら 30 日まで、パシフィコ横浜(神奈 川県横浜市西区)で開催された。同展 示会のブースで際立ったキャッチコ ピーを打ち出していた企業が米 GT ア ポール・ボーリュー氏、 米 GT アドバンスト・テ クノロジーズ社、 副社長、 サファイア材 料グルー プ、サファイア材料担当 ドバンスト・テクノロジーズ社( GT Advanced Technologies )で あ る。 「 Growth begins here(成長はここか ら始まる)」というキャッチコピーを掲 げる同社は、 LED基板の元となるサファ イア結晶およびその結晶成長装置を製 造するメーカーだ。結晶を成長させる growthと、here という自社の存在を 強調し、企業の成長と結晶成長を重ね 合わせたキャッチコピーである。同社 は昨年、サファイア結晶で 40 年の実 績 があるクリスタル・システムズ社 ( Crystal Systems )を買収、ここに きて LED 用サファイア結晶の成長装置 を 3 倍に増やし生産能力を拡張した。 来日した同社副社長でサファイア材料 グループ サファイア材料担当のポール・ ボーリュー氏( Paul Beaulieu ) に成長 戦略を聞いた。 Q( LEDs Magazine Japan ):今年に 向けにはポリシリコン成長炉とポリシ イア材料そのものを製造販売していま なって GT ソーラーから GT アドバンス リコン材料を製造販売しています。 す。今や、ソーラー業界向けだけではな ト・テクノロジーズと社名を変更しまし LED 産業向けには 2010 年 7 月にクリ いため、2011年 8 月に社名をGTアドバ たね。会社について簡単に教えていた スタル・システムズ社を買収したことで ンスト・テクノロジーズと変更しました。 だけますか。 LED 用のサファイア結晶ビジネスを手 A( GT アドバンスト・テクノロジーズ に入れました。クリスタル・システムズ Q:ポリシリコンインゴットから切り出す 社、Paul Beaulieu 氏) :わが社は、大 社は 40 年にわたる歴史のある装置メー ウエハサイズはどのくらいですか。 きく分けてソーラー産業と LED 産業に カーであり、実績は十分にあります。 A:顧客によって違います。今の太陽電 向けた部門があります。ソーラー産業 サファイアビジネスも成長炉とサファ 池セル向けのウエハなら、156mm×156 24 2011.12 LEDs Magazine Japan mm の四角いウエハが製造可能です。 いうことも強調しておきたいです。特 A:当社はデュアルフォーカス戦略をと このインゴットを作る装置 DSS ( Direc に、サファイア基板を使った LED ウ っています。一つは高輝度 LED やレ tionalSolidificationSystem ) 炉を製造 エハメーカーの上位 10 社のうち、6 社 ーザ、ハイエンドの光デバイス、各種 販売しています。これまでに世界中の顧 がこの装置で成長させたサファイアの のセンサーなど高品質の光が要求され 客の工場に 3100 台以上設置しました。 ブール ( boule:シリコンではインゴット る市場です。ここでは医用機器やエネ 作製できるインゴットは、従来 450kg に相当する結晶の塊のことで、結晶の ルギー分野、宇宙航空分野などがあり でしたが、現在は 650kg まで可能です。 原石という意味)を使っています。 ます。もう一つは、サファイアがダイ ヤモンドの次に固いという性質を利用 結晶面方位として顧客の望むサイズに 切り出すことができます。 サファイアを新たな柱に Q:そうすると顧客はLEDメーカーですか。 した工業加工用の市場です。 A:正しくはサファイアウエハメーカー です。彼らウエハメーカーはサファイ Q:サファイア基板の応用としてどのよ Q:サファイアについてはどのくらいの アの結晶を購入して、スライスし、ラ うな分野がありますか。 サイズのものを生産していますか。 ッピング、研磨、アニール、洗浄など A:クリスタル・システムズ社は、2000 A:今回は、直径 15 インチの円柱形ブ の工程を使ってウエハに仕上げます。 年以来 900 社以上の顧客を獲得してき ールを展示しています(図 1 ) 。ASF 成 当社はウエハ加工はしません。 ました。医用電子機器や宇宙航空、エ ネルギー、レーザ、先端的な研究所など 長装置で生産できる大きさは、85kg、 100kg、130kg があります。展示品は Q:ではエンドマーケットは? からサファイア結晶の要求がありました。 100kg のものです。 Q:LED 照明に使う青色 LED チップの 基板にはサファイアを使いますが、そ の成長装置の特長は何ですか。 A:高品質で生産性が優れていること です。生産性が高いのは、スケーラビ リティがあるということで、複数の装 置を同時に動かすことができます。ク リスタル・システムズ社を買収した後、 その生産能力を 3 倍に上げました。半 年で工場を拡張し、現在の生産能力は、 2 インチ換算で 600 万枚サファイアウ エハを作ることができます。 このサファイア成長装置 ASF( Ad vanced Sapphire Furnace )の受注額 は 9 億 4400 万ドルもありますが、これ は市場の要求と合っています。装置ユ ーザーがこの装置を気に入っていると 図 1 サファイア結晶のブール 直径は 15 インチ LEDs Magazine Japan 2011.12 25 executive interview | SAPPHIRE MATERIAL Q:どうやって高い生産性を得るので 6.0 競合会社の おおよそのコスト範囲 A:サイクルタイムと歩留まりのコンビ ASF 85 <5.2ドル/mm リリース済 5.0 ドル/mm(2インチコア) しょうか。 ネーションです。生産が速いだけでは なく、歩留まりが高くなくてはいけま ASF 100 <4.1ドル/mm リリース済 4.0 せん。私たちは結晶成長速度の速い a 軸方向の成長を行い、高い成長性を得 3.0 ています。 ASF4000 <2.9ドル/mm ベータ版評価 2,0 また、サファイア結晶の低価格化に ASF6000 ∼2.4ドル/mm 1.0 も挑戦しています(図 2 ) 。例えば、2 イ ンチコアの場合、現在の装置「ASF 85」 で直径( mm )当たりのコストは 5.2 ド 2011年 2012年 2013年 出展:GTアドバンスト・テクノロジーズ経営評価書 図 2 GT 社が想定する COO( cost of ownership )の推移 ル以下ですが、100kg 用の「 ASF 100」 では 4.1ドル /mm 以下に、さらに現在開 発中の ASF4000 だと 2.9 ドル /mm 以 下に下げようとしています。この装置 は現在、ベータ評価中です。 LED はこの 20 年の市場です。2011 年 も含めて研究調査しました。結晶成長 3 月に終了した 2010 年度の生産で見る で特に重要なのは、種結晶を成長させ Q:コストはどのようにして下げるので と、高輝度 LED 用のサファイア基板の るプロセスです。種結晶の底にメルト すか。 市場シェアは10% 以下でしたが、6イン した状態の結晶材料があります。結晶 A:生産性と歩留まりを上げていくこ チ LED ウエハ向けだけで見ると、当社 を成長させる場合、るつぼを加熱し、 と、そしてブールサイズを上げること は 30% 以上のシェアを持っています。 種結晶を冷やす必要があります。メル です。ブールサイズを大きくするとど トスタックを冷やしながら結晶を成長 のような大きさのコアにも加工しやす Q:もっと大口径の LED 向けの結晶は させていくわけですが、種結晶の底に いのです。当社はどのような規模の生 どうですか? はバブルや不純物などが結晶中に入り 産もできるメーカーです。このため早 A:大口径化はもっと難しいですが、 やすくなっています。破壊することな く、新しいレシピなどの新製品を開発 顧客からの要望が極めて強いです。こ く、上から下へ種結晶を成長させてい します。これが大きな特徴です。 れまで 2 インチ、4 インチ、6 インチに加 くことが極めて難しいのです。 え、8 インチのサファイアもサンプル出 特にバブルが最も難しい。いかにバ Q:最後に、サファイア基板の代替とし 荷しています。大口径化の方向ははっ ブルを逃がすかが問題となります。当 てGaN on Siの開発が進んでいますが、 きりしています。2012 年度第 1 四半期 社の装置はガスをうまく逃がす上に、機 これについてどのように考えますか。 には当社の LED 用サファイアの 80% が 械的な稼働部分がない構造をとってい A:現在の高輝度 LED の基板の 85% は 4 インチ以上のウエハ向けに作られて ますので、不純物が入りにくいのです。 サファイアが占めます。将来の可能性 います。 しかも、ブールの形は極めて均一な としては全ての競合材料について真剣 円筒形になります。対称的な形にする に考えています。ただ、当分はやはり と、コア(顧客の望む結晶軸方向、例 サファイアが主流になると思います。 Q:サファイア結晶成長装置の特長と えば c 軸に沿って加工した円柱形の結 お話ししたようにサファイアの低コス して生産性が良いことのほかに品質が 晶)を 2 インチ、4 インチ、6 インチ、8 ト化、さらにSOS( SilicononSapphire) 良いとおっしゃいましたが、どの程度 インチに加工しやすいのです。しかし、 などの新しい応用もありますので、サ になるのでしょうか。 他社の装置ではバブルを逃がそうとす ファイアの可能性は広がると思いま A:最近、そのことについて他社の装置 ると、不均一な形になります。 す。 均一な形状を得られるよう工夫 26 2011.12 LEDs Magazine Japan LEDJ
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