砂塵と瓦礫の世界から来た少女 ID:32437

砂塵と瓦礫の世界から
来た少女
ファベーラ@幽霊
注意事項
このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので
す。
小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を
超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。
あらすじ
昔書いた駄文の手直し。
理想郷にも投稿してます。
目 次 │││││││││││
番外編と言うかネタ
設定
つ ー か、ぶ ん 投 げ 品 こんなん浮かんだぶん投げ品
お 詫 び の 品
ネタ
││││││││││
こんなん浮かんだぶん投げ品
│││││││││││││││
ネタ
の続き
本編
第三話 │││││││││││
r e d z o n e:m
第四話 │││││││││││
地 獄 は 満 員
WANTED 流されて
敢えてタンクウォッ
イス ラポルト
││
マクガイバーとAチーム、バーンノー
退院、ドライブからの大惨事 │
第7話 │││││││││││
閑話とある司書長の語り
らん │││││││││││││
グルの違いでしかない。言ってる俺も解
悲 劇 も 喜 劇 も ア ン
カ 何 言 い た い
oreか
101 91
140 127 117 111
?
砂 塵 と 瓦 礫 の 世 界 か ら 来 た 少 女 ?
テ ィ ス は 面 白 い よ ね。な、8 話 目
?
?
?
?
?
?
?
?
?
?
第二話 │││││││││││
80
?
1
43
50
5
63
│
││││││
││││││││││││││
202
ホテルアグスタwars part2
172
閑話⋮⋮夜天、将軍、流れ者の会合
狩りの前の一時
?
晴れ時々、ガジェット⋮⋮からの
?
???
││││││││││││││
閑話染みたホテルアグスタwar c
│││││││││││││││
ホテルアグスタwar choice
209
221
│││││││││
hoice result │││
コスプレ
没ネタ供養 │││││││││
御知らせ ││││││││││
?
152
164
182
ホテルアグスタwars part3
?
249 244 238 232
│
番外編と言うかネタ
設定
?
S│E2 F│トルネード
S│E1 サウルスポッド
副砲2 緋牡丹バルカン︵4仕様︶
副砲1 22㎜バルカン
主砲 エクスダイキャノン
エンジン2 アシストターボ
エンジン1 ヴィーナスジェットS
Cユニット2 ジーニアス777
Cユニット1 アリス2011
シャシー レッドウルフⅢSSバトーカスタム
レッドウルフ
?
1
設定?
2
あの博士がヒンニューと呼ぶトモダチから戦車作って貰うのではなく、改造してと頼
んだら出来上がった作品。
故にメタ的な事を言うと、システムの限界を越えたチートなクルマ⋮⋮
内部はNBC対策の換気装置やエアコンディショナーや迷彩シールド、消火装置搭
載。表面はミラーコーティングしており、その上にアルカリワックスでワックス済み
だった。
主砲が宇宙砲シリーズで、尚且つアーティストにゲージュツさせれば多分、くぎみー
声の賢者を溶かせるハズなバ火力。
現状は主砲は破損の弾切れ、副砲は弾切れのみ。エンジンはメインが大破一歩手前の
中破、Cユニットは無傷、シャシーは足回りのサスは疲労してるが未だ使える。キャタ
ピラを被う装甲は割れてる⋮⋮
と言う状況⋮⋮
トランスミッションやトルコンは交換しないと大破確定なくらいに疲労してる。燃
料無い
レナ
でハンター生活中︵笑︶
尚、持ち主は替えの部品見付けたぁ とハイテンションになって今日も元気に異世界
!
!!
年齢 17歳
身長172cm 体重︻この項目は9㎜マカロフで孔だらけにされました︼
称号に関しては ︻キャプテン︼
︻海の保安官︼
︻撃墜王︼
︻賞金王︼
︻ネメシスの化身︼
︻紅い悪魔︼︻神をも恐れぬ女︼
等と呼ばれる⋮⋮浪費平気彼女や超大人も有るけど、無い。
武器はSMGグレネード改、プラズマストーム、腹切りソードにマカロフやソードオ
フ仕様のダブルバレル。
防具はサラトガスーツ+バリアビキニ+カリョマント、頭にはブルメット、手はサラ
トガグローブ、足はクラッドブーツと言う或意味でバラバラな装備。
アクセサリーは イルミのペンダントとセシルのミサンガ、マリアのペンダント⋮⋮
小さな村で第二の母親にして師匠であった女性が死んでから2年の歳月を復讐に費
やしたヒヨッコの女の子⋮⋮
本来は明るい性格で、死んだふりする某カッコいい悪党のケツにマカロフ突っ込んで
引き金を引く程度にノリは良い。
基本的に依頼人が裏切り働かない限りは怒らない とは言っても罰当たりな依
⋮⋮
頼で、依頼人騙くらかして罰当たりな行為で得た金を全額せしめたりするのでトントン
?
3
設定?
4
レッドウルフの中には
大破壊
らしい
前のぬいぐるみが幾つも有るし、スプーンとフォー
クにはクマちゃんのイラストが入ってる程度に乙女
"
六課にとっては悩みの種。
デーな金髪巨乳ソルレスに柴犬な猟犬が居る⋮⋮
仲間にはモヒカン頭で超ガラの悪いメカニックアーチス、ナースと脳筋、ナイスバ
?
"
つーか、ぶん投げ品
?
煙草を銜えたままレーダーを時折見てはハッチから頭を出して前に進んで行く。
そんな軽戦車の狭いコクピット内では、若い青年⋮⋮リックと呼ばれるハンターが
かの様にヘコみと焦げ跡や傷が目立っている。
良く見ると、モスキートの両サイドや正面装甲部分には戦闘に参加 したと証明する
るかの様に焦げ跡や塗装の剥がれが勲章の様に映えていた。 砲口部分には消炎器が取り付けられており、それには何度も 砲を撃った事を証明す
体と比べると、少々大きすぎるくらいの砲身が伸びて いた。
だが、このモスキートのシャシー上部には砲塔が搭載されており、 砲塔からは車
挺か軽戦車として扱われていた車輌だった。
その 戦車はモスキートとハンターやソルジャー内から呼ばれる車輌で、 元々は空
キャタピラからは甲高い音を響かせ走って行く。
そ ん な 荒 野 で 1 台 の 小 型 戦 車 の エ ン ジ ン は 吼 え る よ う に マ フ ラ ー か ら 排 気 音 を、
野。風が吹き、人やクルマが移動する度に砂塵が舞っている。
ミサイルや砲弾、戦車等の様々な兵器や建物であった物の残骸が並 ぶ荒れ果てた荒
お詫びの品
5
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
6
彼はモスキートを走らせながら煙草を燻らせて紫煙を吐き出して いると、レー
ダーが未確認反応を捉えたのかアラームを鳴らし始める。
アラームを聞き付けた瞬間、警報を切ってからペリスコープで周囲 の安全を確かめ
ると、ハッチから頭を出してレーダーが示す方向へ に双眼鏡を向けて正体を確認しよ
うとする。 だが⋮⋮その正体を見た瞬間、彼は銜えていた煙草を口からポロ リと落
としてしまった。
│ │ お い お い ⋮⋮ 空 を 飛 ぶ 機 械 が 有 る の は 知 っ て る け ど よ ⋮⋮ 人 が 空 を 飛 ん で
レーザーやらビームやらを撃ちまくってハゲタカボ ンバーと殺り合うなんて何だよ
⋮⋮⋮⋮
うとしたが、彼等が全滅したと言う話は古くない。
賞金目当てのハンター達が対空砲や対空ミサイルを掻き集めてこれ を退治しよ
ターオフィスはこれに5万Gの賞金を掛けてた。
て来るのである。こいつによって 地図から消えた村や街の数は少なくない。 ハン
の爆弾にミサイルをバラ撒いたり、身体中に取り付 けられた重機関銃による掃射をし
これは空を飛び回り、獲物を見付けると⋮⋮空から降下して来て 腹部から9t近く
OAが作り出した兵器として生を受けた生物である。 ハゲタカボンバー⋮⋮巨大な禿鷹に胴体がB29と呼ばれた爆撃機と 融合したN
?
7
今でも空から来る死の恐怖の代名詞と言う事でコイツの影を見た ら逃げろと言
われてる存在であった。
そんな存在を相手にボンバーの胴体や胴の上面、下部のスペリー 銃座と言った多
くの銃座から繰り出される弾幕を防ぎ、避け続けながらダメージを与えてるのが1人の
少女だと言うのには彼自身、驚きを隠せなかった。
空を飛んでると言う自体を差し引いてもだ。
そんな状況を見た彼はモスキートの中に潜ってハッチを閉じると 、コクピットの
コンソールを操作して行く。 ﹃火器管制システム。起動﹄
﹃主砲、副砲チェック⋮⋮異常無し﹄
女性の声で流れるアナウンスを聞き流しながら、男はアクセルを踏 み込みエンジ
ンを唸らせて少女とハゲタカボンバーの戦闘区域へ走 らせて行ったのだった。
││ハゲタカボンバーはダメージを受けている。しかも、飛行高度 も下がってきて
る⋮⋮今、戦えば殺れるかもしれない。 だけど⋮⋮コイツの105mm砲でイケるか 問題無く近付ければ砲弾をブチ込
める事が出来るかもしれない。 でも⋮⋮コイツの装甲じゃ攻撃には耐えられない。
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
8
﹂
一撃で火葬されちまう。 だけど、倒せば賞金が入る。
﹁やったろうじゃねえか
次弾を装填された事をコンソールで確認し た彼は、通信機をオープンチャンネルの
填される。
砲尾から大きな空薬莢が吐き出され専用のバスケットに落ちて行く と、次弾が装
部の筋肉が爆ぜて地面 に降り注ぐのだった。
すると、銃座部分で再び爆発が起こる とハゲタカボンバーの表面を被った装甲や内
する。
信管が起爆すると金属ジェットが無人銃座を焼き尽くして行 き、残った弾薬に引火
榴弾は吸い込まれる様にボンバーの爆弾倉近くの機関銃部分に命中 した。
放たれる。 ながらも砲口からスリップリングに包まれたHEAT│MPと呼ばれる多目的榴弾が
その瞬間、モスキートに搭載された105mm砲が火を吹き、反動で車体を揺らし
に合わさる と同時に彼は主砲発射ボタンに掛けた指に力を入れた。
砲身は上に上がり仰角を取 っていく。そして、レティクルがこちらに見せた下腹部
けて照準を合わせる。
狭いコクピット内で雄叫びを挙げた彼は、段々と近付きつつある ボンバー胴体に向
!!!
こちらはリトル・
まま回線を開いてゴーグル 付きのタンクキャップに付属してるマイクに向けて怒鳴
こちらはリトル・ビッグガン 繰り返す
!
り声を挙げ た。 !
取り敢えず⋮⋮奴から離れろ
﹂
そこでハゲタカボンバー と戦闘中の⋮⋮ソルジャー︵ ︶ に告げ
﹁これより貴君を支援する
?
﹁聞こえるか
ビッグガンだ
﹂ !
!!
る
!! !!
ミサイルが来たからって喚くな
﹂
赤いランプに悪態を吐きながらCユ ニットを操作し始めた。
対戦車ミサイルと無誘導爆弾を降らせて来る。彼は 車内を包み込む警告アラームと
そんなリックが乗るモスキートへハゲタカボンバーは増えた敵 に対して数発の
行く。
ミッション に伝わった動力は動力輪にパワーを与えてキャタピラを回し続けて る。
ら唸り声を挙げてクランクシャ フトを回し、動力をトランスミッションに伝え続け
さを持つ岩に向けてモスキートを 走らせる。 モスキートのエンジンはマフラーか
次弾に装填した徹甲榴弾の安全装置を解除してモ ニターに映し出された1m程の高
自分の乗るモスキートのコールサインを名乗ったリックは、一方 的に通信を切り、
!
!
﹁うるせえ、ポンコツ
!!
!!
9
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
10
モスキートの砲塔左右に装備された10本近くの筒から軽快な音が響 かせながら
宙に何かを射ち上げる。
彼が射ち上げたのは大量のアル ミニウム片と、燃え盛る照明弾、そして催涙成分を
含んだ煙幕弾で ある。 それらは、ミサイルの誘導を妨害する為の物で〟大破壊〟前ではチャ フやフレアと
呼ばれる手段であった。
文明が滅んでも自衛の為の手 段は少し残っており、〟大破壊〟前の遺跡からでる発
掘品を基に作ら れていたのだ。
彼はそんな方法でミサイルの誘導妨害と自分の姿を隠しながら前に 走りつづけ
る。
大半のミサイルを何とか躱したものの、重力に従って落ちてくる爆 弾にはチャフや
フレアと言った行為は無意味であった。
それに対し、彼はFCSを操作して砲塔に装備されたM134ミニガンとKORD1
2, 7mm重機関銃が給弾ベルトをジャラジャラと言わせ、虫の羽音と ドラム音に
も似た異なる二つの銃声を響かせて迎撃して行く。 だが撃ち漏らしが多少有った様で、モスキートに直撃はしないで も近くに着弾した
爆弾が爆発し続ける。
11
爆風はモスキートに衝撃と 焼けた空気、砂や小石、破片を叩き付けただけでなく、コ
クピット に居る彼にも衝撃が伝わり、頭痛や揺れで吐き気が催して来る。
更に、衝撃で剥離した装甲片や機材のパーツがコクピット内を跳 ね回り彼の顔や
腹部に突き刺さる。彼は頭や腹、腕等から血を流し ながらも操縦桿に込めた力を抜か
ない。
ここで逃したら修理代や補給費用と言った経費だけで自分の懐が 無くなる所か、
逃げようとすれば頭上からミサイルか1000ポンド 爆弾が落とされるかも知れな
いからだ。
││多分、奴が本調子なら俺はレーダー圏外から吹っ飛ばされて る筈⋮⋮ それが無いのはクソハゲドリへのダメージが多いからだ。多分。
モスキートのディスプレイに鉄くずと化した大破壊前に戦った戦車 の残骸が映し
出される。
残骸に乗り上げる形で右片方のスタックが浮き上がらせ、そのま まアクセルを踏
﹂
んで進み続けて車体全面が引っ掛ける。
﹁YEAR
て車体が完全に真上へ向くようにしたのだった。 彼は歓声を挙げてギアをシフトダウンさせて最大トルクでキャタピ ラを動かし
!
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
12
ハゲタカボンバーがモスキートの上を飛んで来る。 同時に、ボンバーの腹部に装備
された対地機関砲が火を吹きなが ら近付いて来る。 ボンバーのスペリー銃座から放たれる無数の20mm砲弾は、砂を巻 き上げながら
地面を穿ちながらモスキートに近付いて来る。 同時に、下腹の中心⋮⋮爆弾やミサイ
ルが大量に搭載されてる爆 弾倉にモニターのレティクルが合う。 モスキートが20mm砲弾の雨を浴びながら105mm砲が再び火を 吹く。車体
が反動とハゲタカボンバーの攻撃と通過時に発する衝撃 で揺れ始める。 肝心の105mm徹甲榴弾は爆弾倉のハッチとなってる下腹を貫いた 。 数秒も
せず砲弾は、爆弾やミサイルを何発も貫くとハゲタカボンバ ーの筋肉部分で止まり、
空を飛ぶソルジャーが放った大きな雷光が ハゲタカボンバーを焼いて行く。 ﹂
幾多の人間に恐れられた死の巨鳥は、苦悶の雄叫びを挙げて羽を バサバサとさせて
そのまま焼き鳥になっちまえ
暴れ回りながら地面に墜落して行く。
﹁ざまぁ見ろ
!!
ピット迄貫通した20mm砲弾が掠った事 によって彼が着てるアラミドやケブラー
だが、リックとモスキートの状態は悲惨なモノであった。 彼は腕や肩、腹部がコク
眺めながらリックは歓喜の声を挙げる。 徹甲榴弾が雷撃の影響で爆発を起こしながら、地面へと無残に落 ちたのを満足げに
!!
13
で出来たツナギごと切り裂かれており、血がツナギやシート、床とコンソールと様々な
所に飛び散っていたが、幸いな事に彼自身に直撃する事は無かった。
全身が血に染まりながらも彼は獲物を仕留め、生き残った喜びと賞 金の使い道にワ
クワクと期待する、しかし、エンジンが何時もと違 うアイドリング音を放ち、鼻腔に
突く自分の血以外の異臭に対して 頭を抱えるのだった。
││モスキートのエンジン⋮⋮最強クーリーのシリンダー︽気筒︾、幾つか死んだな
⋮⋮
その証拠にエンジン音が安定してないし、オイルや軽油の臭いがここ迄来る。
装甲貫通して、更に超が付くくらい頑丈な筈のV6ジーゼルエンジンのブロックを貫
通してシリンダーに軽油と空気の代わりに20mm弾をくれやがったか⋮⋮
あのクソハゲめ。
彼が思った通りモスキートに搭載された〟大破壊〟前に存在したアジア系の多国籍
企業︻神話コーポレーション︼が造ったクーリーシリーズと呼ばれる強力な馬力を誇る
V型8気筒ディーゼルエンジンは、ハゲタカボンバーの下部に装備された20mm機関
砲によってラジエターを始めとしたシリンダーヘッドやシリンダーやピストン、ピスト
ンヘッド 等の主要なパーツがが撃ち抜かれ幾つかのシリンダーが役立たずと なっ
た。
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
14
その為、圧縮も着火も出来ずに軽油と空気の混合気が他のシリンダ ーから吐き出
される正常な排気ガスと一緒にエキゾーストパイプや マフラーを通ると、先の二つの
配管の内外で起こるアフターファイ アと呼ばれる小さな爆発を起こしていたし、壊れ
たピストンがクラ ンクシャフトの回転が起きる度に鈍い音を発ててピストンシャフ
ト やヘッドがシリンダー壁と擦れつづけていた。
他にもモスキートの砲塔上部に装備されたKORD重機関銃の銃身 は機関部か
ら先が千切れていたし、砲塔前部は20mm口径の孔が幾 つか空いていた。 他にも損害は有るが、今、全て言うとキリが無いので簡単に言うが ⋮⋮
モスキートは﹁走ってるのが奇跡﹂とも言える鉄屑状態になっ たと言う事である。
良かった探しをするならば、爆弾に直撃しなかったのと機関砲で 撃たれた際に砲
弾を始とした弾薬や燃料の軽油が爆発しなかった事 、そして、コクピットまで貫通し
た20mm砲弾がマーカスに一発も 直撃せず、生きてて良かったと言う事くらいだろ
う。
﹁これで賞金貰えなかったら俺は破産だな、畜生⋮⋮﹂
愚痴をボヤいてから回復カプセルと呼ばれる痛み止めと化膿止め、 治療用ナノマシ
ン等が含まれた薬品を2、3粒摘んでそのまま飲み込 んでから腹や腕に刺さった破片
を手でちまちまと抜き始める。 15
それから、上を向いた状態のモスキートを水平に戻そうとエンジ ンや駆動輪、トラ
ンスミッションから異音が聞こえて来るのを聞こ えない振りしながらギアをリバー
スに入れてゆっくりとアクセルを 踏んで下がって行く。
車体を元の水平に戻した彼は汗や血が染み込んだよれよれの煙草 に火を着けよ
うとする。
﹁ふざけんな、クソ﹂
火の点かない煙草を適当に投げ捨ててからハッチを開けてモスキー トの外に出る
と、未だに爆発音を響かせ派手に燃え盛るハゲタカボ ンバーだったモノを眺めた。
│ │ 生 き て て 良 か っ た。つ く づ く 思 う わ ホ ン ト ⋮⋮⋮⋮ 街 ま で 生 き て 戻 れ る か な
う様な状態には変わりなかった。
だが、出血量が多いのか、彼はフラつき、意識への集中が切れれば直ぐに倒れてしま
も時間が経つに連れて塞がって行く⋮⋮
彼の身体中から流れる血は薬の効果が効き始めたのか、出血は止 まっており、傷口
スターどもが血の臭い嗅ぎ付けて来ないとも限らな い⋮⋮
俺の方は回復カプセルの効果が出てきたお陰で、何とかなってる けど周りのモン
クルマは未だ動いてるのが奇跡な鉄屑。何時止まるか解らない。 ?
││生きて帰れたとしても、賞金はコイツ︽リトル・ビッグガン ︾の修理費用で無
くなるだろうな。 3分の1も残ればラッキーか。まぁ、街へ帰ってから考えるべ⋮⋮ 全く、地獄は今日も満員だぜ。
手に﹃ランサー﹄と呼ばれる〟大破壊〟の最中に造られたチェーン ソー付きのアサ
ルトライフルを携えたリックは、獲物の死骸を眺めながら生きて街に戻れるか、愛車の
﹂
修理がどれぐらい掛かるかでボ ンヤリとする頭を抱えながら﹃生きて居る﹄と言う事
に喜びを感じ るのだった。
﹁あの⋮⋮﹂
﹁うん⋮⋮あぁ、ボンバーと派手にやり合ってたソルジャーか
の前に提げ、声の主の方を見た。 声の主は、ブロンドの髪にスマートな身体だが、胸
リックはランサーの安全装置を然り気なく解除してフルオートに合 わせてから体
?
取り敢えず、ここら辺じゃ見ない顔 だ。 そんで
が意外と大きい 白人の女性であった。
││20⋮⋮それより下かな
もって超美人⋮⋮
?
しかも、育ちが良さそうだな。どこの金持 ちの娘だ
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
16
それに、空を飛んでビームかレーザーを撃ちまくってた。
そんな 事が出来る人間の話なんか聞いた事無いし、武器らしい物は手に持 った斧
だか、槍だかの様な物くらい。 取り敢えず、要警戒。
薬が完全に効いてきたのか、気怠さや痛みが無くなって思考が鮮明 になったと同時
にリックは、目の前の美女に対して警戒を強める素 振りを見せない様に自然な姿で観
﹂
え、ええ、そんな所です﹂
﹂
察を続け、ランサーか腰のホルス ターに差さった大口径リボルバーを撃てる態勢を取
るのだった。
﹁ソルジャー⋮⋮
﹁ヤベェ
突如、モスキートのエンジン部分から炎が挙がる。
﹁俺はリック。ただのハンターだ﹂
﹁改めまして、私はフェイト・テスタロッサと言います。貴方は
?
﹁助かったよ、アンタ等が通り掛かったお陰で街まで歩かずに 済んだ⋮⋮﹂
と慌ててるがリックにとってそれ処の騒ぎでは無かった。
リックは急いで消火器を手にするや、モスキートにブチ蒔ける。フェイトはアワアワ
!!
?
17
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
18
﹁良いって事よ。ハゲタカボンバーを倒したハンターが護衛して くれんなら安い物
さ﹂
リックがフェイト・テスタロッサと出会ってから30分後⋮⋮彼等 は、通り掛かっ
たトレーダーと呼ばれる行商人達のトレーラーに拾 われた。 彼の鉄屑と化したモ
ス キ ー ト は キ ャ リ ア ー と 呼 ば れ る 車 両 輸 送 用 の 大 型 ト レ ー ラ ー に 載 せ ら れ て い る。
彼自身はランサーアサルトライフルと〟大破壊〟から何十、下手す れば100年以
上は前に造られたかも知れない傑作兵器﹃RPG7﹄と呼 ばれる対戦車ロケット砲と
専用のロケット弾を携えてトレーラーの コンテナ上部で見張りとして立つ事になっ
た。
ト レ ー ラ ー の コ ン テ ナ の 上 に は リ ッ ク 以 外 に も A K 4 7 や R P G 7、 M 7 2 等 を
持ったトレーダーや護衛のソルジャー等が人間が土嚢や鉄 板、M2ブローニング重機
関 銃 と 呼 ば れ る 5 0 口 径 の 重 機 関 重 で 造 っ た 自 衛 用 の 銃 座 に 立 っ て 盗 賊 や モ ン ス
ターと言った脅威から警戒を していた。
フェイトはトレーラー上空を飛び、周囲を見張ってくれていたの で敵の発見に遅
れが出る事は無いだろうなと思っていた。 ゴーグルキャップから伸びたインカムで
トレーダー隊と責任者に 礼を言ったリックは、フェイトの方に向き、インカム越しに
19
話し掛 ける。
﹁何か見えるか⋮⋮
て来る。
﹂
空に憧れを抱きながら、灰色の空を眺めて煙草を吸ってると、銃 座から声が掛かっ
俺も何時か、空を飛んで みたいな
砲弾にミサイル、爆弾 が降り注ぐ事が無かったんだろうな⋮⋮
││空を飛ぶって気持ち良さそうだな。 大破壊前は空も気兼ねなく飛べて、空から
見上げる。
ライターをポケットに戻してから紫煙と葉入りの唾液を吐き出した リックは、空を
煙草の葉が口に入ると共に煙草に火が点い た。 草の先を近付けて、息を吸い込むと、煙草の煙とフィルター の無い吸い口から零れる
何度か回すと、火花がガソリンが染み 込んだ芯に引火して炎が上がった。 炎に煙
を回してく。
手で風除けを作ってから右手に握り締めたオイルライターの蓋を 開けてフリント
出すと、1本銜える。 ﹁異常無し﹂と言う意味の言葉を聞いてからトレーダーから買った ばかりの煙草を
﹃今の所は何も⋮⋮﹄
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
20
﹁なぁ、あの空飛んでる綺麗なソルジャーさん⋮⋮アンタの恋人 かい
﹁ちげえよ⋮⋮ついさっき会ったばかりで口もそんな聴いてねえ﹂
と⋮⋮街に着いたら、艦に通信を⋮⋮
﹂
逃しちゃったのは痛かったけど、他の隊員達が無事に脱出できただ け良しとしない
クを持って逃走。 カボンバーっ て名前の巨大な鳥が襲って来て混乱してる間にマセラッティはレリッ
した所で巨大な鳥に学校で見 た事ある爆撃機が融合した様なモンスター⋮⋮ハゲタ
セラッティ﹄の確保が今回の任務だったけど⋮⋮ 彼等を捕捉して追跡、確保しようと
││第91管理外世界﹃メタルマックス﹄に逃走した違法魔導士であ る﹃モデナ・マ
確認していた。
トレーラーから数十m程の高さで飛行を続けるフェイト・テスタ ロッサは任務を再
た。
めてたが、 チェーンソーのエンジン音が不気味だと怒られるのは数分後の事で あっ
たまにランサーのボルト やチェーンソーのスターターレバーを引いて調子を確か
燃えて行く煙草を銜え、紫煙を燻らせる。
えを巡らせ始めた。 視線の先に居る自称ソルジャーを眺めたハンターは、風を受けて
煙草の先に積もった灰を地面に落としながら答えると、噂になった 彼女が何者か考
?
21
﹃フェイト執務官、聴こえますか こちらはクラウディアです ⋮⋮繰り返します、
﹃マセラッティの行方は
﹄
﹃はい⋮⋮武装隊の収容は完了しました﹄
﹃聴こえます⋮⋮武装隊の皆さんは大丈夫ですか
﹄
こちらクラウディア⋮⋮応答して下さい、フェイ ト執務官﹄
?
?
怪 物 や 盗 賊 に 出 会 う 事 無 く ト ゥ ー ム ス ト ー ン と 呼 ば れ る 街 に 到 着 し た リ ッ ク と
アレから数時間後⋮⋮太陽は地平線の彼方に沈み、空は暗くなり始 めていた。
ノ・ハラオウンに伝えた彼女は飛行を続けたのだった 。
念話通信を終わらせ、この地に残って捜査を続ける事を義兄で提督 でもあるクロ
﹃ありがとう、クロノ⋮⋮では、定時連絡は12時間毎に﹄
だ﹄
﹃フェイト、その世界は無政府状態で質量兵器が氾濫してる⋮⋮充 分、気を付けるん
﹃そうですか⋮⋮私はこのまま、ここ︽メタルマックス︾に残っ て捜査を続けます﹄
からマセラッティの反応を傍受する事が出来ません でした⋮⋮﹄
﹃それなんですが⋮⋮巧妙に隠蔽されてるのと、メタルマックスの 環境による影響
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
22
フェイトはトレーダーに礼を言ってからトレーダー達 と別れ、モスキートを修理ドッ
クへ入れた後であった。
クルマ持ちのハンターや修理ドックで働くメカニックで賑わうド ックから出た
この後、ハゲタカの賞金を受 け取って呑みに
﹂
二人は、歩きながら会話を始める。
﹁さて⋮⋮フェイトって言ったけ
﹁賞金ですか⋮⋮
﹂
俺 は 勝 手 に 割 り 込 ん だ だ け だ し
﹁そ、賞金⋮⋮アンタは賞金目当てで派手な戦闘やらかしたんだろ ﹂
ハ ゲ タ カ ボ ン バ ー と 殺 り 合 う 理 由 が 無 い。違 う
⋮⋮6:4でそう
?
﹂
﹁⋮⋮賞金は要りません。代わりに情報が欲しいんです﹂
﹂
﹁逃げた恋人でも追ってるのかい
﹁そんなんじゃありません
じゃなきゃ、
を点して質問する。すると、彼女は、少し考える素 振りを見せてから答える。
顔の左半分を被う火傷跡を持った青年は、笑みを浮かべながら何本 目かの煙草に火
行こうと思うんだけど、どうする
?
?
?
ターオフィスに着いたリックは、フェイトと別れ賞金を受け取っていた。
数分後、修理ドックから少し離れたこの街を守る自警団の宿舎の 隣に建つハン
!
?
?
?
23
﹁やりましたねリックさん。ハゲタカボンバーの賞金5万ゴール ドです。受取証に
サインをお願いします﹂
リックは白いワイシャツに蝶ネクタイをしたオフィスの職員から 賞金を受け取る
と、渡されたボールペンで受領証にサインを書く。 サインを確認した職員は、受領証を棚にしまった。
賞金を受け取って気分の良いリックは、オフィスを出ようとする 。だが、他の職員
が壁に貼り付けた賞金首のポスターに目をやると 足を止めてポスターを見詰め始め
る。
ポスターには鋭く、ギラついた目付きで長い赤髪を持った小柄な 男が写されてい
た。
賞金額は5万G。
これはハゲタカボンバー並みに危険で恐ろしい 、人類の敵と言う意味である。
リックがこのポスターを見てる事に気 が付いた職員は目の前に居る若きヴェテラ
ンハンターに声を掛け始 めた。
﹂
﹁レッド・ジャッカルと呼ばれる最近、売れ始めた〟大物〟 です 。コイツに滅ぼさ
れた所は小さな村も含めたら数えきれません⋮⋮ 今度の標的はコイツですか
冗談混じりに聴いてくる職員に対してリックはポスターから目を 離さず、無表情で
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
24
答える。
﹁俺にはそんな甲斐性無いっての⋮⋮でも、情報は欲しかったり ﹂
﹁規模はそんなでも無いんですよ。ですが、コイツを始め、幹部 クラスの手下は空を
ヘリや飛行機に乗ってか
﹂
飛んで重火器で空から攻撃をするって話だそう です﹂
﹁空を飛ぶ
?
のか 冗談だろ
あのゴリラ共が空から来る なんて悪夢以外の何者でもねえぞ
﹁と言う事は⋮⋮ソルジャーがゴツい武器持ったまま戦車が苦手 な空から来るって
﹁いいえ。それが乗り物には乗ってないんだそうです⋮⋮﹂
他のハンターやソルジャー達もそんな職員の話に耳を傾けてい た。
喋り続け た。
職員はオフィスに来てる 情報で、自分の頭の中に有る話を目の前に居るハンターへ
の続きを聴こうとする。
リックはフェイトがハゲタカボンバーと戦ってた時の光景を思い 浮かべながら、話
?
?
車を鉄屑に変える様を頭の中に思い浮かべた彼は 身震いする。そんな様子を見た他
知り合いの女ソルジャーが空を飛び、戦車相手に自慢の火力を上 からブチ撒けて戦
﹁そうみたいですよ⋮⋮﹂
⋮⋮﹂
?
25
の人々は笑いながらも、空を飛ぶ ソルジャーをイメージして恐怖を浮かべるのだった
﹁絶対、敵に回したくねえ⋮⋮命が幾つ有っても足りねえよ﹂
彼は職員との話を終え、オフィスから出たリックは賞金を片手に 再び修理ドックへ
向かったのだった。
﹁こいつぁ、ヒデェ⋮⋮何と戦ったか知らねえけどよ、完全に直 すんならこれくらい
掛かるぞ﹂
リックはメカニックから渡された請求書を眺めると、表情を曇ら せる。そんな様子
﹂
を横目で眺めながらも、メカニックは自分の部下 か弟子であろう新人メカニックに怒
鳴り声を挙げる。
﹁何してんだ、馬鹿野郎
﹁コイツ︽モスキート︾ は何時、修理完了するんだ
﹂
﹁そうだな⋮⋮1週間って所だな。装甲は、ほぼ全部交換。同軸機 銃のKORDと
?
る。
メカニックは怒り足りないのか未だ顔を赤くしてるが、リックは 気にせず話し掛け
メカニックに目をやる 。
も気にせずに請求書と睨めっこしていた。 少ししてから彼は一通り、叱り付け終えた
隣に居たメカニックが怒鳴り声を耳元で聴いたリックは、そんな メカニックの様子
!!
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
26
対空用のKORDとミニガンのタレット部も修理、トラ ンスミッションとサスペン
ション含めた足回りに転輪、駆動スプロ ケット左右にエンジンは交換しなけりゃなら
ないしな﹂
メカニックから改めて聴いた彼は少し考えると、先ほど受け取っ た賞金から請求書
に書かれた金額分の金を出して直接渡す。
金を受 け取ったメカニックは金を確認した。 金額が丁度であることを確認した
メカニックは、領収書に自分の 名前を書いてからリックに渡す。
領収書を受け取った彼は、胸ポケ ットに無造作に突っ込んでからメカニックに声を
掛けてモスキート に積みっ放しにしてる装備や道具を幾つか下ろして貰ったのだっ
た 。
ランサー突撃銃やRPG7対戦車ロケット砲、銃身とストックを切 り詰めた10番
ゲージのM1100セミオートショットガン等の銃器と 各種弾薬、爆薬や食料、医薬
品を含んだ荷物が詰まったバックを携 えた彼が修理ドックを出る頃には空は完全に
黒く染まっていた。
タタキ︽強盗︾か
賞金手に入れると、それを狙ったタタキ が必ずって言って良い程出るんだよな⋮⋮
?
27
この世界では金持ち程、街中で命を狙われたりする。それがハン ターやソルジャー
であっても同じである。ハンターやソルジャーに 至っては、彼らが持つ装備を転売す
ればチョットした大金に早変わ りする。その金額は数ヶ月は働かなくても生活出来
る程度であるが ⋮⋮ そして、強盗は周りに人が居ない時で、獲物が1人になった時
に 群れで牙を向いてくるのだ。 成り立てのヒヨコは大抵、これで命 を落とす。
生きて大金を掴んで気が緩んだ瞬間、死神に大鎌を振る われてその命を持って行か
れる⋮⋮
それがこの世界の日常なのだ。
他にも、貧困や作物の不作から子供が間引かれ売られる事も有れ ば、売春をさせて
金を稼がせる親も居る。
生きる為に農耕器具から 銃に持ち替えて強盗や盗賊に転職する人々も存在する。
人類は生き る為にはどんな汚い事もする。そんな所が〟大破壊〟の元凶たるNO
A の出した解答の影響を与えたのだろう⋮⋮ 地球を救済する為の手段を考え出す巨大な量子演算装置NOAは、 人類の末梢を地
球を救う答えとして導き出し、それを実行した。
そして、今の世界が有るのだ。
文明が消え、怪物や盗賊、自然の脅威に晒され、絶望してもなお 、人々は汚くも、
逞しく生きる。それは生きてる者全てが持つ本能 故に。
そして、絶望の中に有る希望を信じてるが故に⋮⋮
そんな希望や本能から生きたいと思ったリックは、生きる為に殺 人を行う事を選ん
だ。
人気が無くなり始めた夜のトゥームストーン郊外、自分が宿泊し てる安宿に向かっ
てたリックは、自分を尾けて来る気配が有る事に 気がついた。そして、首から提げた
ランサーの安全装置を解除する 。解除するついでにセレクターをフルオートに合わ
せ、左腿に差し 込んだM1100を固定するストラップを外し、何時でも抜ける様に
戦 闘態勢に移行し始めた。
その頃、フェイトはこの街でハンターやソルジャーの集まるBAR に居た。
﹁よお、ネエチャン⋮⋮俺に酒持って来てくれよ。そしたら、5G やるからよぉ﹂
酒のボトル片手にアルコールと薬剤の効果で気分が良くなってる 酔っ払いは、彼女
を見ると粗雑な声を挙げて手招きする。
君と寝れるんなら 500G出しても
しかし、 フェイトはそれを無視してカウンターに向かって歩みを止めない。
﹁そこのお嬢さん、俺と楽しい事しなぁい
良いぜ﹂ ﹃ギャハハハハハハ⋮⋮﹄
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
28
?
29
店の中はアルコールに吐瀉物、尿、血でむせ返る様な悪臭が広が っているが、フェ
イトはそれを何とか耐える。気分が悪いのを他へ やり、ようやくバーテンダーの居る
カウンターに着いた彼女はバー テンダーに話し掛けた。
﹁あの⋮⋮すいま﹂
﹁ごめんよ⋮⋮マスター、ブレーンバスターお替わり﹂
話し掛けようとした瞬間、彼女にぶつかった大柄の女性は謝ると 、バーテンダーに
追加の酒を注文する。
すると、バーテンダーは彼 女が置いた金をポケットに突っ込むと、指定した酒のボ
トルを手に 取って栓がされたままの状態で無愛想に渡した。
酒を受け取った大柄の女⋮⋮ソルジャーであろう彼女はコルク栓 を右親指のだ
けで抜いてボトルに口を付けて中身を空けながらその 場を後にした。
﹁あの、すいません⋮⋮﹂
フェイトはソルジャーが酒を受け取ってから気を取り直し、再び 、バーテンダーに
声を掛ける。
バーテンダーは殺人アメーバや敏感 バニー、注射鳥、イモバルカン等の比較的食べ
﹂
ても安全なモンスタ ーの肉で料理をしながら、彼女に返事をする。
﹁さっきから聴こえてるよ⋮⋮何が欲しいんだ
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
30
﹁情報が欲しいんです。この男の情報は無いですか
﹂
﹁コイツはここら辺じゃ見ない顔だ⋮⋮アンタ、ハンターか
返り血で茶色く変色し ていた。
コイツが何者か知ら
が、彼が着てるCVCスーツやクラッド ブーツ、ゴーグルキャップ等の衣服は乾いた
なった酒をボトルからグラスに注いで飲んでいた。酒 を飲んでる様子は普通なのだ
リックは、カストリチナヤと呼ばれている蒸留を何度も繰り返し て度数が高く
トリチナヤが美味く感じる。
M1100は準備したものの使わなかったが⋮⋮ 良い事したせいか、気分良くカス
せたり、チェーンソーで刻んだりして二度と強盗被害 が出ない様にした。
賞金を受け取った夜に強盗に出会った俺は、強盗達に308NATO を何発か浴び
り、料理を作る作業に戻るのだった。
バーテンダーは貴重な冷えた真水をグラスに注ぐと、フェイトに 差し出すと肉を切
いからな﹂
コレ飲んだら、とっととウチに帰るんだな⋮ ⋮犯されて殺される所なんか見たくな
んけど、お嬢ちゃんみたいな可愛い娘がこんな 所に来るのは危険だ。
?
デナ・マセラッティの顔を念入りに見てから彼女 に答える。
肉を包丁で斬る作業を中断したバーテンダーは、フェイトと自身 と彼女が見せたモ
?
31
助けてくれ
﹂
これはここに来る30分前に強盗たちを皆殺しにした名残りである 。
﹁お願いだ
!!
﹂
!!
2つの死体はどれも口径が比較的大きなライフルで撃たれてるが 、チェーンソー
右を刈っ たモヒカン頭の男や丸坊主にした男の死体も転がっていた。
チェーンソーで刻まれ、 断末魔を挙げたこの男以外にも頭の中央部以外を残して左
血の鉄臭さに混じって尿特 有のアンモニア臭がモワッと漂って来る。 がら2つに身体を別けて倒れた。
そして 、斜めに切り裂かれた強盗は一部が千切れた大腸や肝臓等の器官を 晒しな
削ってはその欠片と叫び声を撒き散らす。
獣の様に強盗の身体を喰らう刃は肋骨と背骨を削り砕き、肺や心 臓、腹筋や背筋を
散らす様々な物が 雑ざった返り血を浴びながら切り裂こうとする。
リックは肉を喰らうランサーをそ のまま肩から腹部へと下ろして、ランサーが撒き
り、肉を、骨を削りながら奥へ、奥へと血と筋肉片 、骨の欠片をまき散らして行く。
チェーンソーは哀れな強盗の肩と首の付け根に振り下ろされると 、皮膚を突き破
﹁ぎゃあああああああああああ
音を禍々しく響かせると、リックは回転する刃に自 分の体重を乗せて振り下ろした。
助けを乞う強盗に銃身下部に取り付けられたランサーのチェーン ソーのエンジン
!
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
32
で生きたまま刻まれた奴よりは比較的幸運な死因だ ろう⋮⋮ リックは死体が醸し出す悪臭に対して火傷で半分被われた顔を顰 める。火傷で引
﹂
き攣ってる顔が余計に引き攣り不気味な様子を醸し 出しながらボヤいた。
﹁酷い臭いだ⋮⋮何喰えばこうなるんだ
連中は自分達が生きる為に、村や街を襲って食料や水を奪って行 く。 だろう。
言う奴が居るとすれば、この世界の住人では無い。か、殺された盗賊達の仲間ぐらい
い。
〟大破壊〟後のこの世界では、盗賊や強盗は問答無用で殺しても誰 も文句を言わな
盗と言った手合だ⋮⋮
この世界では怪物以外にも脅威が存在する。それは自然環境であ ったり、盗賊や強
寝る事しか無かった ⋮⋮
のならば一切合切持って行き、売り飛 ばすのだが、彼の頭の中にはとっとと酒飲んで
銃や鉈、斧と言った武器には一切、手を触れなかった。 何時もならば、金になるも
前に ランサーを提げたリックは強盗達の死体を漁り、金目の物を頂いて 行く。
たランサーのスリングベルトで首に掛ける。
血と肉片、骨の欠片がベットリと付着し、月明かりで鈍く光るチ ェーンソーを持っ
?
33
大破壊から何十年か経って食料自給が徐々に上がって来たとは 言っても、実際問
題、餓死者は存在する。 自分達の糧を奪われまいと、抗って盗賊に立ち向かったら、気に 入らないとの一言
で殺された者達も含めれば倍以上に膨れ上がるの は間違いないであろう⋮⋮ そして、そんな状況で自分達が作った生きる糧を貰う見返りを払 わず、代わりに暴
力で奪い取る連中生きてる人々から見れば盗賊や 強盗などの輩は殺しても殺し足り
ない存在で、見せしめに殺されて も文句は言えないのだ⋮⋮ 人間、自分の命が一番大事である。自分の命が助かるなら人間は 他の人間を殺して
でも食料を奪って喰らう。
それぐらいの事をしな ければ生きていけない弱肉強食の世界⋮⋮それが管理局が
命名した メタルマックスの世界なのだから⋮⋮
そんなこんなで強盗や盗賊、弱い者は問答無用で殺されても文句 は言えない⋮⋮
その時には既に死んでるから。
人類は人類以外と生 存競争を行ってるにも関わらず、人類は人類同士で争ってるの
だ。 人類は〟大破壊〟前も後も変わらずに人類は人類をしていた。
閑話休題
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
34
マスターに注文した殺人アメーバのぬめぬめとした肉の串焼きを 頬張り、カストリ
チナヤを飲んだリックは漸く一息吐く事が出来た のだった。彼は今日の出来事を振
り返って居る。
今日は悪くない一日だったな⋮⋮
狩りを終えた後に空を飛ぶ美人のソルジャーに遭ったり、クルマ が鉄屑に成り掛け
たものの賞金首を撃墜出来て賞金独り占め出来た 。
そして、生きて酒が飲める⋮⋮死んだら、何も出来ないからなぁ⋮ ⋮
だけど、クルマの修理費で賞金が半分以上飛んだのは痛い。
修理費用とパーツ代も込みなら仕方無いだろうけど、コレで燃料 代に弾薬代、装甲
タイルの補給費用が別だから、実際は自由にでき る賞金は少なくなっちまった⋮⋮
グラスに口を付け、酒精が通る度に襲い掛かる喉が灼かれる感覚 が心地良いのか、
リックはバーテンダーにカストリチナヤをボトル で追加注文する。
基本、ハンターはチームで行動する。人間、1人で出来る事は少 ないし、狩りの負
担を全て己自身が背負わなければならないからだ 。
酒場に居るハンターやソルジャー達から情報を集めようとして いたフェイト・テス
タロッサは、話を聞いて回ったが徒労に終わっ ていた。
真面目に聴いてくれた人も居たけど、マセラッティに関する情報 は全然、得られな
35
かったな。
この後、どうしよう。もう一度、マセ ラッティが居た場所を探ってみようかな⋮⋮
何か手掛かりが有るか も知れないし。
﹄
酒場から出た彼女は、一旦、定時連絡の為にクラウディアへ念話 通信を行う為に回
線を開く。
﹄
﹃こちら、フェイト⋮⋮クラウディア、聴こえますか
﹃聴こえる、フェイト。何か掴めたか
?
だかの疑問の解消に付き合おうとする。
義兄が出した意見に伝えたい事を言って納得する義妹は、彼が何 故この世界を選ん
﹃と言う事はマセラッティは未だこの世界に居る⋮⋮﹄
えば即座に察知して る﹄
今の所、この世界に来てる次元航行 艦はこのクラウディアだけだし、転移魔法を使
ラッティの魔力反応は掴めなかった。奴がこの世界 に居るのは間違い無い筈だ⋮⋮
﹃そ う か ⋮⋮ こ っ ち も サ ー チ ャ ー と セ ン サ ー を 展 開 し て 調 査 を 進 め て る が、マ セ
ントを調べると言う旨を伝える。
は現地民から情報は得られなかった事と明日の朝 にマセラッティ達を捕らえたポイ
クラウディアの艦橋に居るクロノに通信が繋がった事にホッとし ながら、フェイト
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
36
﹄
﹃だが、奴は非管理世界の中で一番危険な世界であるココを︽メ タルマックス︾を選
んだんだ
真偽は定かじゃないけど⋮⋮ もしかすると、この世界にその工場が隠されてる
マセラッティが行って来た犯罪を思い出しながら、彼女はクロノ に大まかな予想を
迎える。
だけど、ソ レが見付る。同時に関与してる証拠が見付ったらマセラッティは破 滅を
?
場とその兵器を大量に保有してるとも言われてる 。
彼が売ったモノで無数の人間が死んでる。噂では、古代ベルカの 質量兵器を造る工
ムで呼び合う中だ⋮⋮ マフィア、反管理局政府、独裁者、テロ組織の殆どのトップが彼 とファーストネー
しかも、普通では考えられない大規模な取引を行う 。
マセラッティは質量兵器やロストロギアの密輸と密売が専門の次 元犯罪者だ⋮⋮
える。
彼女は店や家の明かりで照らされる街中を歩み進みながら疑問を 解消しようと考
有る⋮⋮﹄
して成り済ます事が出来る。ここよりも安全で身 を隠すのに都合の良い場所は沢山
﹃それは私も疑問に思った。非管理世界なら管理世界よりも楽に その世界の住人と
?
37
出して行く。
﹃もしかして、この世界にマセラッティが保有する武器工場かそ れに類する物が有
るのかも知れない⋮⋮﹄
﹃確かに⋮⋮マセラッティは、個人では用意出来ない量の武器を 売り捌いてる。最
初は第97非管理世界⋮⋮つまり、地球の軍の横流 し兵器かと思ったが、実際は違っ
た⋮⋮﹄
回線の向こう側、クラウディア艦橋でクロノが彼女の予想に同意 出来る様な言葉を
出す。彼女はソレを黙って聞き続ける。
﹃それに、奴は地球には無いロストロギア級の兵器も売り歩いて る。ティアマット
と呼ばれる陸上戦艦に、オーバーロードと呼ばれ る空中要塞。ガジェットドローンよ
りも性能が高い無人兵器群⋮⋮ どれもが地球では存在しない質量兵器だが、マセラッ
ティはそれ等 に魔法技術を融合させたものを売り歩いてる⋮⋮﹄
﹃そして、今回は取り引きで得たレリックを代金として受け取って からは、真っ直ぐ
にこの世界に来ている⋮⋮案外、フェイトの予想 が当たってたりするかも知れない
な﹄
それから数分程、念話通信を一通り行った彼女は通信を切った。
街の外に出たフェイトは、待機状態にしてる自身のデバイス、バ ルディッシュを展
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
38
開すると、そのまま月明かりに照らされながら空 を飛んでマセラッティを最後に見た
ポイントまで飛行するのだった 。
ガンヘッドゲッツ
プショ ンアームには8基の大型ミサイルを収めたコンテナと小型のミサイ ルを3
それだけでも、火力は 問題無いのだが、背中のアタッチメントから左右に伸びたオ
れてた。
頭部と思わしき所には主砲が装備され、股間部 には大口径の多砲身機関砲が装備さ
た⋮⋮
それは 5m以上の高さを持って沈黙を保っていた兵器と装甲の塊 の巨人であっ
?
戦車なのか⋮⋮ XMBR│5RA2Cガンヘッド⋮ ⋮コイ
6発装填したランチャーを装備していた。
﹂
﹁なんだこりゃ
ツの名前か
?
?
遺物﹃ガンヘッド﹄ を調べ始めた。
?
まさかな⋮⋮
足にはローラーが幾つも有るな。コレを回して動くのか
?
足回りを見て回ると、ガンヘッドの鋼鉄で出来た巨大な身体を脚 部から胴へとよじ
な機能があるな⋮⋮もしかして、変形するのか
だけ ど、足回りに余計
リックは自身の頭の中に浮かぶ疑問を解消しようと目の前に有る 〟大破壊〟 の
?
39
登り、コクピットハッチと思わしき所からコクピ ット内に滑り込む様に入る。狭いコ
クピットからこの遺物に関して の資料を探し始める。 数分後、彼はこの兵器のマニュアルと思わしき分厚いファイルを 見付けると、それ
を熱心に読み始めた。
MBR│5RA2Cガンヘッド⋮⋮
しかも、変形する⋮⋮ だと
NOAの大型機動兵器に対抗して作られ た大型変形戦車。
コレ、戦車なのかよ
!?
ハイパーリキッドジェネレーターとは、〟大破壊〟前に作られた動 力装置でハイ
動力 ハイパーリキッドジェネレーターMTU3804
行動距離 647km︵タンクモード760km︶
最高速度 140km︵タンクモード180km︶
重量 43.7t︵標準装備の場合︶
全高 5.28m︵タンクモード2.47m︶
全幅 5.76m︵タンクモード5.4m︶
全長 6.12m︵タンクモード8.7m︶
る。
リックはこの謎の物体が戦車である事に驚きながらも、続きに目 を通して読み続け
!?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
40
パーリキッドと呼ばれる石油よりエネルギー効率が良 いエンジンで、動力源としては
原子力エネルギーより安全な物とし て様々な分野で使われていた。
なお、これに使われてるMTU3804 は、補給の観点からガソリンや灯油、軽油
やアルコールでも代謝で きるリアクターを装備してる。 ⋮⋮て事は、コイツは酒でも動かす事が可能って訳かよ
る。
リックはマニュアルを読み終えると、何本目かの煙草 に火を点けて一息吐き始め
2時間後⋮⋮
た。
青年は態度を先ほどのモノから一変して、気分良く分厚いマニュ アルを読み続け
ジャーか⋮⋮ 結構、高火力だな⋮⋮対NOA兵器って言っても過言じゃないな。
ア、スモークのディスチャージャー︽ 発射機︾とクラッカー︽対人榴散弾︾ディスチャー
グフックに両腕の30tプレスパンチと胴体と脚部、背 部に装備されたチャフ、フレ
固定武装は頭部レールガンに股間部の35mmチェーンガン。後は グラップリン
コレを自分の物にする為にSAN 値を削られながらも読み続けた。
ル・ビッグガンが完全に破壊されて鉄屑になった 以上は新しいクルマが欲しいので、
彼は呆れ顔を浮かべて、読むのを辞めたくなっていたが、自身の 愛車であったリト
!?
41
﹁コイツ、とんでもねえクルマだな⋮⋮速度は最高で180km/h出 るわ、ジャン
プしてホバリング出来るわ、重量が50t未満だわ、行 動距離が600kmオーバー
だわ、BC兵器対策もされてる、リンクシ ステム使えば指揮も取れる⋮⋮デタラメに
も程があるぞ﹂
彼は肺に充たした紫煙を吐き出してコクピットから煙を立ち昇ら せながら、この戦
車にボヤく。
そして、咥え煙草のままでガンヘッ ドを起動させようと、Cユニットコンソールを
操作した。 ﹃セルフチェック開始します⋮⋮﹄ ﹃兵装チェック⋮⋮クリア﹄
﹃駆動チェック⋮⋮クリア﹄ ﹃チェック終了⋮⋮﹄ 起動すると、ガンヘッドのCユニット内臓AIが自己診断機能を作 動させた。
﹄
そして、何処にも異常が無い事が解ると、ジェネレータ ーを起動させる。
同時に、コクピットに居るリックに話掛けた。
﹃おはようございます⋮⋮と言うより、こんにちわですな。所で 貴方は
意外と紳士的だな⋮⋮ リックは男の声で紳士的に話し掛けて来るガンヘッドに感
?
お詫びの品?つーか、ぶん投げ品
42
心と驚 きを隠したままで答える。 ﹂
﹁俺か 俺はリック⋮⋮お前を見付けたハンターだ。宜しくな⋮ ⋮所でお前は何
て呼べば良い
﹃私は⋮⋮ガンヘッド507です。宜しく、マスター⋮⋮﹄
?
?
こんなん浮かんだぶん投げ品
?
彼はどうりで眠い訳だと一人納得すると、時計の隣に置かれた写真に目を止めた。
││9時から勉強してるから⋮⋮もう3時間以上勉強してたんだな。
間まで過ぎており、長針は一番下を指していた。
秒針のカチッ、カチッと時を刻む音がBGMに混じって聞こえる。短針は12と1の
た。節々に鈍い痛みを感じながらも彼は机に置かれた時計に目をやる。
それから欠伸をして眠気眼をこすり、首をゴキゴキと鳴らし、腕を回して肩を鳴らし
暫く勉強をすると、シャーペンをノートの上に置いて座ったまま背伸びをした。
優しさに満ちた女性の歌であった。
それは、明日を信じて希望を持って前へ進む様な激しくは無いが、前へと進む意思と
チベーション保持の為か、音楽が流れてる。
は参考書と辞書を開き、ノートにカリカリとシャーペンで板書きしていた。部屋にはモ
夜中の住宅街。一件の2階建の一軒家の小さな一室では、椅子に座ってた独りの青年
クリスマス過ぎたけど、ネタ。尚、クリスマスは関係無︵笑︶
ネタ
43
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品
44
写真には逆さまに立てた赤い髪を横に揃え、横モヒカンとも言える奇抜な髪型の若干
歳上に見える手にスパナを持ってるくわえ煙草の革ジャンを纏った男や背が高く、男の
視線を集めるであろうナイスな胸に6つに割れた腹筋を見せ、右手に持った長くて大き
な銃を肩に乗せた長い金髪の女性がいる。
そんな二人の間には背が少し低く、歳も青年よりも下に見える小柄で幼さを残した顔
だちの少女が居て、その足元には柴犬が、そして脇には青年を少し若くした様な少年が
いた。
だが、一番目を引くのは彼女達の後ろにある深紅の戦車であろう⋮⋮
それに服装もファッション雑誌に載る様な可愛らしい服なんかでは無く、無機質で武
骨⋮⋮まるでSF映画に出て来る兵士の様な出で立ちであった。
そんな写真を手に取ると、青年はカレンダーに目をやる。
││あれから1年経ったのか⋮⋮
あの文明が崩壊して北⃝の拳やマ⃝ドマ⃝⃝ス、タ○ミ○○ターやf○○lo○tを
ブレンドした様な世紀末世界へ転移されて帰って来てから⋮⋮
青年は思い出す。学生にとって最も緊張するであろう高校受験合格発表の日⋮⋮彼
はネット小説やラノベでよく使われる異世界への転移と言うテンプレートを味わった。
その世界は文明が滅び去り、生き残った人類は残された文明の残骸を頼りに細々と生
45
活をしていた。だが、仲良しこよしで協力して生き残ろうと言う優しい考えを持たない
人間は何処にでも居た⋮⋮
更に、ゴキブリやネズミ、白蟻を駆除するかの如くントロールを失った筈の無人兵器
や生態系が作為的にも、自然的にも狂った動植物が生き残った人間達へと牙を向いたの
だった。
そんな世界で只の現代人の青年が生き残るのは不可能に近いだろう。しかし彼は生
き残った⋮⋮それは単に運が良かっただけかも知れない。
そう⋮⋮写真の中心に写った少女が率いるハンターチームに拾われなければ⋮⋮
青年は生き残る為に少女が率いるハンターチームに着いて行った。そして、少年だっ
た青年は弱肉強食の絶望に満ちた世界で生きる術を学び、闘いを学んだ。
同時に人間を殺す罪悪感や復讐と憎悪の炎に身を焼き、その炎が消えた時の虚しさ等
と言った負の感情を⋮⋮
そんな負の感情に負けない人間の心の強さを学んで帰って来たのだった。
青年は自身の冒険譚に思いを馳せながら一つだけ心残りがあった。
﹁レナ達は生きてるのな⋮⋮人間狩りと文明崩壊の元凶だったアイツを倒した後に爆
﹂
発が起こって気が付いたら俺は帰ってこれた⋮⋮﹂
﹁ヲヲ
?
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品
46
奇妙な声を挙げた張本人に青年は目をやる。そこには黒くて大きな生物染てる奇妙
な帽子を被り、ボディースーツの様なピッチリとした白い服を纏い、鉛色にも見える長
い銀髪を持った少女がベッドにチョコンと座っていた。
﹂
﹁起こしちゃったか⋮⋮⋮﹂
﹁ヲヲ
てか⋮⋮ゴメンゴメン、トイレ済ませたら寝るから⋮⋮﹂
!
布団を自分に掛けると、そのまま眠った。因みに少女は青年のベッドに潜り込み、彼
を照らしながらベッドに上がる。
レバーを動かして水を流す。彼は部屋に戻ると電気を消し、携帯電話のライトで部屋
いたわ⋮⋮ふぅースッキリ﹂
⋮⋮人には言えないな。けど、母さんがウチの子として引き取ると言ったときが一番驚
﹁それにしてもイラストでしか見た事無い○これの空○○級が⋮⋮俺になつくなんて
て用を足しながらボヤイタ。
青年は小さな女の子に謝ると部屋を後にする。それから階段を降りてトイレに行っ
﹁寝なさい
それに青年は頬をポリポリと掻くとばつの悪い笑みを浮かべる。
腰に手をやってプンスコ怒ってる様な声を挙げる。
此方も眠気眼で居る少女は立つと、遅い時間まで起きてる青年に対して怒ってるのか
!
47
にしがみつきながら寝た。まるで一昔前に流行ってそうな海外のホームドラマで、小さ
な娘が自分よりも大きな熊のぬいぐるみを抱き締めるかの様だった⋮⋮
坂田隆司は高校一年生である。彼が通ってる公立高校は偏差値は中の下くらいと言
う何の変鉄もない高校で、そこに通ってる坂田隆司自身も一部を除けば普通の高校生で
ある。
彼は高校受験の運命の瞬間を合格で終えた夜⋮⋮それは起こった。 彼は異世界⋮⋮しかも、文明の崩壊した未来世界へと転移してしまった。
その世界は簡単に言うなら、マ⃝ドマ⃝クスに北⃝の拳、メ⃝ルマ⃝⃝スを混ぜ混ん
だ世紀末な世界であった。
その世界では魔法も無ければ、慈悲も無い、優しさは品切れで地獄は満員な世界で
あった。
そんな世界のルールはただ一つ⋮⋮
弱肉強食である。彼はそんな世界で生き残り続けて元の世界へ図らずしも帰る事が
出来た。その時、彼は生き残る為に得た文明の遺物と呼ぶべき物を多数持った状態で
戻ったのだった。
戻った時の時間を見て彼は驚いた。何故なら、彼の運命の日となった合格発表日で、
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品
48
日付が変わる間際だったのだから⋮⋮
彼は物質を量子情報化させて様々なモノをトラックのコンテナ並の量を仕舞える狸
型ロボットのポケットみたいな装置から自分の家の鍵を出して開け、部屋に向かってそ
﹂
のまま眠って元の日常へと戻った筈だった⋮⋮
﹁畜生⋮⋮また異世界かよ﹂
﹁この世界を救って下さい勇者様
しかも、リア充かよ⋮⋮彼女三人も侍らせくさりおって。
校か⋮⋮
あの制服は近くの私立の進学校の制服だったよな。金持ちで頭良い勝ち組様達の学
ゲームや映画でしか見ない様なお姫さまが目の前に居る他校連中三人に嘆願してる。
家に帰るだけだった。
弁った後、彼は途中で見付けた勝手に外に出歩いてた少女の頭を軽く小突いて回収して
早 め の 放 課 後 を 迎 え た 彼 は 友 人 達 と ゲ ー ム セ ン タ ー で 何 時 も の 様 に ゲ ー ム し て 駄
寝れるなと呆れられながら無事に終わった。
坂田隆司は学生の楽しみである夏休みを迎えていた。終業式も寝て過ごし、暑い中で
!!
49
どうやら、俺は異世界へまた来てしまったみたいだ⋮⋮
ファンタジーな世界へ異世界︵弱肉強食の世紀末の無法世界︶ 帰りの青年は未来の
SFチックな武器や無法な世界特有の容赦ない外道でえげつない手段でサバイバル始
めるみたいです。
こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き
?
?
数時間前⋮⋮城下町郊外。
監視してるかと言うと、数時間前に遡る。
何でこの二人は深い森の中で風物詩とも言える生物⋮⋮オーク達の巣である洞穴を
ポンポンと叩いた。
事にしたのか解らないが小さな鉛色の少女は地面に伏せてるサカタの肩を慰める様に
であるサカタが心底ウンザリしてる事に気付いて無いのか、見なかった
﹁ヲーヲ
﹂
自分の主
?
?
でしか見た事無いし﹂
﹁何であんなのと戦う事になるんだ⋮⋮あんな物、ド○○エやらトー○○ンの映画
く。
るファンタジー世界の風物詩とも言える生物の集まる洞穴を眺めると、呆れながら呟
身の身を隠してる。ポケットから出したモノキュラーを右目に当て、初めて戦う事にな
夕焼けに染まる深い森の中⋮⋮サカタは繁みの一つの中に潜み地面に横たわって自
ネタ
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
50
51
﹂
﹁役立たずは要らないって訳か⋮⋮まぁ、そのお陰で制約無くて動けるんだけどねぇ
⋮⋮そー思わん、アニー
?
﹁そう言うなよ⋮⋮お陰で自由に動き回れるから観光も兼ねて元の世界へ帰る方法を
かり乱暴なコミュニケーションを取ってから城を後にしたのだった。
しき老人と偉そうにしてた魔法使いを殴り倒し、近衛兵らしき騎士達を蹴飛ばし少しば
少しイラッと来たサカタは偉そうにしてた王らしき髭を蓄えた男と大臣か宰相ら
見られた時点で役立たず認定され、鼻で笑われた。
その上、偉そうな魔法使いから魔力が無いと言われ、魔力が無く、魔法が使えないと
言う自分の都合を押し付けて来るのだから。
右も左も何も知らない異世界に無慈悲に呼び出され、魔王を、魔族を倒してくれって
それはそうだろう。
アニーと呼ばれた空○○級はジト目になりながらサカタに言う。
と言うモノダ﹂ ﹁サカタが暴レテ、兵士達ヲ殴り倒シタカラダロウ タタキダサレルノハ自業自得
ワンピース姿の女性をアニーと呼び、女性に振り向いて言う。
サカタは自分くらい背が高く、鉛色にも見える長い銀髪を持つ胸が存在感を表す白い
?
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
52
探せる。後、話しながらVLS撃とうとしないイイネ
とうとするのを止め、 呆れ顔を浮かべると思い出す。
﹂
それにアニーはグラニートと呼ばれるちょっとヤバい級なクルージングミサイルを撃
そ ん な 不 安 も 何 処 吹 く 風 で サ カ タ は 飄 々 と し た 雰 囲 気 で 不 安 を 感 じ さ せ な か っ た。
?
あの人達の同類扱いすなや。俺は人間⋮⋮あの人達
﹁チッ⋮⋮ソウダッタ、オマエハアイツラと同じ非常識だった﹂
﹂
﹁おうコラ⋮⋮誰が非常識だ
は異能生存隊だからな
?
﹁飯にするか⋮⋮﹂
サカタが言おうとした時、二人のお腹から虫の鳴き声がした。
﹁ヒデェな⋮⋮まぁ良い。取り敢えず⋮⋮﹂
て裏方に徹して居ながらも、戦い生き残ってたのだから当然だろう。
三人と一匹、三台のクルマが揃えば戦艦と撃ち合って勝ってしまうチームの一人とし
能生存隊であった。
だが、空母ヲ級であったアニーからすれば目の前でおチャラけるサカタも非常識な異
﹁ワタシから見ればオマエモ異能生存隊の一人ナンダガ⋮⋮﹂
る。
サカタはそれに少し怒りながらも目の前の女性が言う人達と一緒にするなと軽く怒
?
53
﹁ソウダナ⋮⋮﹂
﹁此処が食堂つーかバーみたいだな﹂
﹁ヲヲヲ﹂
アニーはエネルギーロスの少ない幼体モードになって普段の姿に戻った。トテトテ
と歩いてサカタの後を着いて行く。
店内は現代の様に蛍光灯やLEDと言った明かりでは無く、窓から射し込む日の光や
蝋燭だけで取ってるせいか若干、薄暗かった。
店を利用してる人間は大半が、特に革製のプロテクターや金属製の鎧に身を包んだ男
達と建築や土木作業をするであろう屈強な労働者達が居た。
他に居るとすれば、そんな男達の懐具合に左右されながらお金を稼ぐ汚らわしくも美
しく神聖である最古の職業であろう女性と言った具合に店は満員であった。
言葉が通じる理由は解らなかったがこの世界の人間が喋る言葉を理解出来たサカタ
は街の人間に酒場も兼ねた食堂が無いか聴いてこの店へと来た。
││客は剣を下げてる所から見て兵士⋮⋮イヤ、傭兵だな。それを客にする娼婦に労
働者が客層て所か。
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
54
何処の酒場も雰囲気は変わらないんだな⋮⋮
サカタは然り気無く周りに視線を這わせ、客や店内を観察する。その足元をアニーが
てとてとと歩く。空いていた隅の席に座る。それからベルトに差し込んで上着で隠し
た45口径の拳銃を何時でも抜ける様に上着のボタンを外し、右手を掛けた。
アニーは首を傾げてテーブルに置かれた革袋を指差す。
﹁ヲっヲ⋮⋮﹂
と、不安が少しばかり混じった疑問の声にも聴こえる。
それに気付いたサカタは革袋の口を縛る紐を解いて中を覗き込む。
お金は大丈夫なのか
﹁ハァイ
今行きまーす
﹂
にせず、看板娘であろう赤毛の少女に声を掛ける。
さらっとトンでも無い事を言うサカタにアニーは呆れ顔を浮かべる。そんなのを気
﹁多分、大丈夫だろ⋮⋮駄目だったら皿洗いか食い逃げだな。スイマセーン﹂
?
!
﹂
﹂
﹁君可愛いね。君のオススメ料理って有るかい
?
﹁そうね⋮⋮チキンソテーかしら、女将さんのチキンソテーは絶品よ﹂
?
﹁いらっしゃいませぇ⋮⋮何か御注文かしら
年下に見えるメイド服姿の少女はサカタ達の居る席へと来た。
溌剌とした元気な声で返事がされる。それから少ししてサカタよりも一つか2つ程
!
55
﹂
﹁なら、それをパンとスープを二つずつ。後、水もらえる
﹁解りました
﹂
?
それがこの世界の現状⋮⋮詰みじゃね
サカタはこの世界の現状を整理する。席に戻り、手が付けられて無い焼き魚をアニー
?
狙うバクチを打った。
その二つが現在、絶賛戦争中⋮⋮敗北間近の人類軍は異世界から勇者を読んで逆転を
心の魔界の勢力。
それに対するのは世界各地に拠点を持った魔族の将軍達とその軍勢を率いる魔王中
中心の人類軍。
││敗け戦一歩手前なローマ法皇の様な宗教シンボルを神輿とする主要各国の王が
た店で良い酒を振る舞ったのだった。
そこで気の良さそうな傭兵、商人や娼婦と思わしき女性に近付くや、手切れ金で買っ
か、幸せそうに料理を頬張ってる。
情報を集める為に酒場へ人混みに入った。アニーは席に座って他の料理を頼んだの
食事を終わらせたサカタは、元の世界へ帰る為の手掛かりを探す事にした。
!
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
56
の皿から取って口に入れると、商人らしき男から得た情報の整理を始める。
││人類側で様々な研究をしてるのは学術都市である﹃ミネルバ﹄ ソコは此処から
近道でもある道路使えば馬で約二週間。
問題はミネルバ周辺が激戦区になってて出入りを人類側が一部除いて禁止してる。
﹂
﹁どーしたもんかね⋮⋮問題は山積みだー﹂
﹁ヲヲヲ
ありがとうな⋮⋮﹂
?
ガスボンベであった。
に握られた大型スプレータイプ殺虫剤と同じくらいの大きさのピンとレバーの着いた
サカタは攻略に使う小道具を見せた。アニーのつぶらな瞳に映ったのはサカタの手
﹁計画としては⋮⋮真夜中に始める。洞穴にコイツを流し込む﹂
で、現在はオーク退治と言う新人の登竜門の突破に取り掛かって居る⋮⋮
言っても流れ者のハンターとして活動する事にしたのだった。
報を頼りに賞金稼ぎと言うか国家が後ろ楯の﹃何でも屋﹄もといギルドの傭兵⋮⋮とは
暫く時間を潰してからサカタ達は勘定を済ませた。それから傭兵の一人から得た情
﹁慰めてくれるのか
垂れるのを見て小さな手で頭をポンポンと軽く叩く。
食べようとしてた川魚の塩焼を取られて少しばかりジト目を向けてたが、サカタが項
?
57
サカタは陽気に攻略の概要説明を続ける。
﹁流し込んだら静かに中へ入って地道にザクザクと永遠に眠らせる⋮⋮て、所かな﹂
﹁ヲ∼﹂
﹂
﹁てな訳で監視宜しく。2時間交代で﹂
﹁ヲ
!
ン、ア⃝ター等のにSF映画に出る兵士の様な出で立ちであった。
サカタは洞穴の入口まで静かに、慎重に近付いて行く。心臓が緊張でバクン
バクン
それが終わる。サカタの服装は学生服では無く、スターシ⃝プト⃝⃝ーズやエ⃝⃝ア
ハイテクなカラクリ仕掛けの刃渡りが40センチ程あるコンバットナイフを点検する。
サカタはあの世界から持ち帰った無数の土産である拳銃にサプレッサーをネジ込み、
日付は変わって月が雲に隠れながらも空の上で存在を示している。
既に時計の時間は元の世界の時間から今居る異世界の時間へ大まかに合わせていた。
4時間が過ぎた。サカタは腕時計に眼をやると真夜中の1時を指している。
に入って眠りに着いた。
アニーの返事を聴くとサカタはそのまま鞣された革製の外套で作った即席のテント
!
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
58
と絶え間無く鼓動する。
動物の脂が燃える臭いが鼻に着く。サカタは拳銃を下に向け、慎重に歩みを進める。
してアニーを入口に残して洞穴⋮⋮オークの巣へと静かに突入するのだった。
秒針が2週した所でサカタは被ってたサラトガメットに被せてたガスマスクを装着
時計に眼をやり、秒針が時を刻むのをただ静かに見守る。
洞穴の奥からシューっと言う空気が抜ける様な音が微かに聞こえて来た。
サカタはソレを洞穴に投げ込む。金属と岩肌のぶつかる甲高い音がして少しすると、
げて引っ掻けるや力を込めてピンを抜いた。
右手に握りしめられたスリープグレネードのピンに指が通される。そのまま指を曲
﹁ありがとな⋮⋮さぁ始めよう﹂
て子供をあやす様に軽く叩く。
不安に際悩まされてるのに気付いたのか、足元に居るアニーがサカタの脚を抱き締め
サカタは不安を打ち消す様に首から前にスリングで掛けてた大きな銃に眼をやる。
が、この時間なら寝てる。駄目なら⋮⋮
イミンDXをメインに作ったスリープグレネードがオークに効果有るか解らない。
││一年ぶりの荒事だ⋮⋮機械や植物以外の人間や世紀末のナマモノに効果あるス
!
59
視界はガスマスク越しで狭い上に松明で照らされてるとは言え薄暗く全てを見通せ
るとは言い難い。前を凝視し、耳を研ぎ澄まして全神経を安全確認に費やしては静かに
歩みを進めると、言うのを何度も繰り返して前へ、前へと進むのだった。
││オークの巣には人は居ない。数は34⋮⋮子供を含めて。
一匹、一匹始末して帰ろう。
1時間程経っただろうか⋮⋮サカタは緊張と装備の重さで汗を流し、喉が渇きを覚え
ていた。
ガスマスクを外し、水筒の水を飲みたいのを堪えながら拳銃を太股に取り付けたホル
スターへと戻す。
それから左肩の前に取り付けた鞘から大振りのコンバットナイフを右手で抜く。ナ
イフを逆手に持つと、スヤスヤと眠るオークの首筋に刃先を近付ける。
喉をゴクリと鳴らし、左手をオークの食べ滓や酒で汚れる口元へ近付ける。深呼吸す
るや、一気に左手をオークの口元にやる。手袋越しに生きようとするオークの息遣いが
伝わって来る。そして、刃がオークの首へと突き立てられた⋮⋮
血が噴水の如く勢い良く噴き出し、ガスマスクやヘルメット、ボディアーマーに赤い
飛沫が飛び散る。ガスマスクのレンズが紅く染まった事でサカタの視界は紅く染まる
中、コヒュー、コヒューと言う掠れた空気音を聴きながらもがくオークの首へ更に深く
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
60
突き刺す。血がダラダラと地面を赤く染めて行く。左手からオークの息遣いを感じな
くなり、白目を向いたまま動かなくなった。
サカタは自分があの世界で覚えた卑怯な殺しをした事に罪悪感は感じられない事に
ま た だ ま た 殺 し て る 何 だ よ 俺 は 殺 し 合 い し な い で 済 む 生
心の中で悪態を吐いた。
│ │ 畜 生
活をしたかったのに
!?
!
なんでまた殺してるんだよ畜生
!
!
それから地面に幾つも横たわる屍から耳を淡々と削いで行くのだった。
ガスマスクのまま深呼吸する。
ガスマスクでくぐもった声を出し、ガスマスクを紅く染める血を手で拭う。
提出すれば良いか⋮⋮後、オークの親玉の首も持ってくか﹂
﹁お、終わった⋮⋮はぁ、心臓がバクバク言ってる。後はオークの耳を集めてギルドに
30分もするとガスは消え、オークは一人も残す事無く屍と化したのだった。
れから寝てるオーク達をまた一人、また一人と殺して行く⋮⋮
そして、同じ様にナイフを突き立て返り血を浴びながら命をまた一つ奪って行く。そ
と近付く。
としてる。物言わぬ肉塊と化したばかりのオークを見ると左手を離して次のオークへ
心と裏腹に思考は冷静であったのか汚れた左手でガスマスクのレンズを拭い、血を落
!!
!
61
﹁終わったのね⋮⋮﹂
﹂
血がじんわりと紅く染めるスイカ程の膨らみを持つ皮袋を片手に提げて洞穴の入口
へと戻ると、大人姿のアニーがサカタへ声を掛ける。
けど、臭ぇ
サカタはそれに気付くやガスマスクを外して外へと出る。
﹁あぁ、首尾良く終わった。かぁ空気がウメェ
!
来る。
返り血がベットリ着いたせいなのか、サカタから濃厚なヘモグロビンの臭いが漂って
!
﹂
それに悪態を吐くと、ガスマスクをヘルメットへと再び被せる。
﹁リュウジオツカレ⋮⋮コノ後ドウスル
?
と言う質問に時計を見てから返す。すると、アニーが洞穴
﹁そうだな⋮⋮何か天気が怪しそうだからその穴蔵で一夜明かしてからギルドに行こ
う﹂
アニーがどうするのか
﹂
の中へと入って行く。
﹁おい
?
﹁⋮⋮悪いがそうする。ゴメンなアナスタシア⋮⋮御言葉に甘えさして﹂
﹁リュウジ、疲れてル⋮⋮死体は私が外へ出シテオクカラ休んデテ﹂
?
62
ネタ? こんなん浮かんだぶん投げ品 の続き?
﹁ワタシハアナタノモノダカラ⋮⋮﹂
本編
その賢者とも言えるコンピューターは何百、何千、何万、何億⋮⋮
が進み続け、終
那由多とも言
尽くしたメギドの炎と
った。その結果、人類の大半が死滅
大破壊〟と呼ばれる様になり、神から箱舟を作れと命じ
"
られた者の名と同じ名を持つ人類を救う為の人造の賢者が巻き起こしたのであった
それは生き残った人類から
し、文明は瓦礫と砂塵に帰してしまった⋮⋮
も言える兵器を己を産み出した人類に向けて放
そのコンピューターは人類が産んだソドムとゴモラを焼き
える程の演算を続けて世界、否、惑星を救う答えを導き出した⋮⋮
た。
同で世界を救う為の答えを見つけ出せる最後の叡智とも言える人造の賢者を作り出し
それを防ごうと、1人の天才が築き上げた大企業は企業の垣根を越えて敵対企業と合
焉を向かえつつあった。
その世界では文明が崩壊していた。文明が崩壊する前には環境汚染
砂塵と兵器、屍溢れる世界から来た少女
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
63
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
64
⋮⋮
皮肉と言う他無い。
そして、賢者は世界を救う為、惑星が終焉を迎えるに至った元凶たる人類を滅亡させ
だが人類は文明の栄華が無
る為にバイオテクノロジーと兵器を組み合わせた怪物の軍勢を作り上げ、人類へトドメ
を刺そうとするのであった。
それから長い時が過ぎた。人類は死滅しなかった⋮⋮
くなってからは賢者の作り出した怪物の恐怖に晒されながら、僅かに残った文明の遺産
と言うべき物を細々と喰い潰し、緩やかな終焉を向かえつつあった。
だが人類は希望を棄てて無かった。
が居た
凶暴なモンスターがさ迷うこの危険な世界にも村や町が出来上がり、人々はささやか
この時代であるがゆえに光を放つ荒々しい人間たち
ながらも活気を取り戻していた。
それは、強力な戦車を駆ってモンスターどもを狩る情け無用の賞金稼ぎ⋮⋮
モンスターハンターと呼んだ
人々は、尊敬と恐怖の念を込め⋮⋮
!
攫って人体実験を続ける様になった賢者を産み出した狂気の天才へ復讐を果たしたハ
の両親を殺され、元凶である死の恐怖から不老不死を叶える為、人々を作物を刈る様に
これはそんな世界のアシッドキャニオンと呼ばれる地域で育ての親である女性と実
!!
65
ンターの後日談であ
る。
ある砲身、砲塔上部に
草木が1つも見えない閑散とし、何も無い荒野に1台の戦車が静かに佇んで居た。
その戦車は巨大な車体と車体に載せられた砲塔も戦車の象徴で
装備されたランチャーであろう大型のコンテナに装填手用のハッチが有った所には
真っ赤な花の様なペイントがなされた防盾の着いた大口径の重機関銃が装着されてる。
その隣の戦車長用のハッチ脇には3本の砲身を持った22mm機関砲が設置されて
た。
それも含め武装は全てが紅く染め上げられていた。
出し
い黒く変色した肉片が挟
紅い戦車は敵の返り血で染まり上がった様にも見えて不気味さと歪さを醸し
ていた。
、
景を確認する
戦車を操る操縦
他にも乾いた血の後が転輪や装甲板にコビリ付いてるのが弾痕や傷
よく見れば、履帯と履帯の間には人間だったかも知れな
まっていた。
ヒビ割れや焦げ痕に混じってるのが解る。
そんな紅い悪魔と言える戦車の中では悪魔を鎧として手足の様に
戦車の中で目を覚ました操縦者は、モニターに映し出される外の風
士が目を覚ました。
と、自分が今まで居た場所では無い事に気が付いた。
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
66
﹁ここ何処⋮⋮
﹂
結論が出ない以上、現状の確認をして行く事にした。
要な項目が映し出され
緋牡丹と22㎜は100発切ってて、バトー博士から貰ったF│トルネードとサウル
0発、APFSDSが2発。
弾はエクスダイキャノン︵最大レベル迄改造済み。NOTゲージュツ︶は通常榴弾1
それ以前にエンジンが掛かるか謎⋮⋮
だけど燃料が少ない。予備のジェリ缶4つで走れる距離はせいぜい20km。
││エンジンは中破。
少女はモニターに映し出される情報を目で追って行き状態確認を勧めて行く。
て行く。
モニターに戦車の損傷具合や燃料や弾薬の残量と言った重
行く。
車内のコンピューターユニットのコンソールを弄り、自己診断プログラムを走らせて
だが、何回も考えた所で結論が出る事は無かった。
手を当てながら、状況の確認をして行く。
は無く何故か見慣れた荒野に居る事に疑問を感じた操縦者の少女は未だフラつく頭に
今まで居た工場と軍事基地を兼ねた地下研究所の冷たく、冷酷な印象の金属製の床で
?
67
スポッドは大破&弾切れ。
タイルパックの方は完全に無い。
一応、自己診断プログラムが作動してるから電子装置の故障は無い
後は足回りや外観チェックして装甲の状態を確認しないと⋮⋮
筈。
戦車の電子的な状態にあまり問題が無い事を確認しながら少女は通信機のインカム
へ話しかけながらコンソールを操作して行く。
用すれば自分の居場所がハッキリする。
現在地を確認する為にiゴーグルに繋いだBSコントローラーとリンクしてる軍事
衛星からのGPSデータを利
そんな思いに馳せながら、iゴーグルを起動させる。
同時に仲間の居場所も解る。1人よりも2人や3人と1匹の方が心が休まる。
しかし、iゴーグルのGPSは起動したものの﹃NoSignal。OffLine﹄
としか表示されない。何度操作しても結果は変わらなかった。
ポチ
アクセル
ミシカ
応答しろ
今度は車内に設置した通信機を起動させ、仲間が答える事に期待しつつ少女は周波数
ミシカ
繰り返す
!
を確認してインカムに話し掛け続ける。
て
!
﹁こちらレナ⋮⋮アクセル
!
!!
誰でも良い応答し
!!
!
!
!
勝った後パーティーするって言ったじゃん
!!
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
68
私を1人にしないでよ⋮⋮⋮⋮
一人はヤダよ⋮⋮﹂
スピーカーから空虚な雑音が流れる。
レナと名乗った少女の瞳から涙が零れる。
だが、あの最強の仲間、最高の友達が簡単に死ぬ訳無いと気持ちを切り替え、レナは
外に出る事にした。
外へ出る為に操縦席から砲塔へ上り、ハッチに手を掛ける。
その途端、レーダーがアラートを響かせる。
とイグニッション・キー回してエンジンを始動させた。
その位置をディスプレイに映し出されるレンジ内の輝点から方角や位置、速度を確認
する
戦車に搭載されたガスタービンエンジン﹃ヴィーナスジェット﹄は金属が擦れる様な
耳障りな音を立てながらも猛々しい、咆哮を挙げて未だ動ける事を自身の主に猛獣の様
エンジンが問題無く動いた事にホッとしながらレナは、緋牡丹と22㎜をレーダー
に伝える。
の輝点の居る方向へ向ける。
を向けて何時でも戦闘
同時に砲塔を90度左へ回し、左右のアクセルペダルとシフトを操作し、左右のス
タックを交互に回転させる。
紅い戦車はその場で向きを変えて輝点の方へと主砲の砲身
69
が出来る状態に移行したのだった。
││プリップは二つ。先に来てるのは生物。その次はヘリかしら
射程圏内入るまで2分くらいね⋮⋮
その証拠にレナの頭から汗がだらりと流れて目に入
喉はカラカラと乾いてる。
死の恐怖を思った瞬間、レナは自
││私も人の事言えないや⋮⋮人間狩りしてるグラップラーの親玉みたいに死ぬの
嘲する。
壊れた際に炎上すれば、自分は間違いなく死ぬ。
を直撃すれば装甲板の損傷が激しい戦車﹃ウルフ﹄だろうと破壊される。
水を飲みたくとも、水を飲む、目に入った汗を拭うと言う一瞬の隙が原因で敵の攻撃
りそうになり、
そんな表情でも緊張が走る。
に見えた。
に汗が伝わり、滑り そうになり握り直す。レナの表情は猛獣を狩ろうとする女豹の様
生き残ってる兵器の安全装置を解除すると、コントロールグリップを握り締める。手
準備を終わらせる。 二人目の母親とも言える女性から教わった鉄則を踏まえ、今から来る飛行物体と戦う
意を突く。
確実に当てないと、此方が殺られる。なら、確実に当てられる距離まで近付かせて不
?
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
70
が恐いんだから。
だけど、死ぬって何だろう
死んだらマリアやママに会えるのかな
死ぬと人はどうなるのかな
﹄
?
ルを操作して何を言って来てるのか確認しようとする。
﹁繋がってよ⋮⋮﹂
ボヤキながらダイヤルを調整する。段々と声がハッキリ聴こえて来た
聞いた事の無い組織に戸惑いながらも取り敢えず撃って来ない所から殺しに来た訳
それとも、グラップラーみたいな組織
ハンターオフィスじゃないの
││時空管理局
投降して下さい﹄
﹃こちらは時空管理局執務官のフェイト・テスタロッサです。速やかに武装解除して
。
その発信先はレーダーに写し出される輝点からだと解ると、レナは通信機のチャンネ
に戻すには充分だった。
スピーカーから声が聞こえて来る。変な思考のスパイラルに飲まれてたレナを正気
﹃⋮⋮き⋮⋮えます⋮⋮
?
?
?
?
?
?
71
では無いと仮定する。インカムに話掛け、
フィスでやって
通信先の女性と会話を行おうとする。
﹁此方はハンターチームのメタルマックス。身元照会はハンターオ
⋮⋮それと、ソチラが何者か解らない限りは武装解除しての投降は拒否させて貰うわ
﹂
﹃⋮⋮⋮⋮解りました。私が行く迄、現在地で待機して下さい⋮⋮﹄
﹁解ったわ⋮⋮﹂
緊張感漂わせながらも一息吐く。それから、宇宙海兵隊が使ってそうな見た目である
ヴラド・コングロマリット軍事部門が製造したSMGグレネードを手に取る。慣れた手
付きで弾が装填されてるのを確認する。
それから、マリアから貰った拳銃のスライドを軽く引き弾が装填されてるのを確認す
厚いゴーグル
分になった。同時に瓦礫や火薬、血の臭いがしな
ると、右腿のホルスターへと戻した。
外の空気の匂いを嗅ぐと新鮮な気
い事に疑問も感じた。
戦車の砲塔から降り立ったレナの髪は燻んだ金髪は後ろに流され、分
っていた。
ンズ部分にヒビや傷が目立
ラホラと見える。
を装着してた。そのゴーグルは長い間使ってたのか、レ
ち、フレームに至ってはヒビや焦げ跡がチ
風が吹くと、少女が纏った埃避けの赤い外套が翻り、旗の様に目立
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
72
そんな物語によく出て来る流浪の旅人の様な少女は旅人と言うよりは兵士に近い物
があった。
人影は荒野のど真ん中で戦車の前で佇むレナ
様に頑丈そうな装甲板が爪先や踵、足首を守るよう取り付けられ
服装に至っては地球の軍隊がよく着る様な野戦服の上に装甲板で鎧われ、履いてる靴
。
に至っては服と同じ
てた
制服の様な物を着ており、手には斧の様にも見える先
える胸元が大きな金髪の女性であった。
そんなレナに近付く人影が見える。
よりも2、3年上にも見
彼女の姿は白いマントに黒い
端が黒くて長い機械的な杖を持って居た。
ンは自分の所
それにポチ⋮⋮あのモフモフした感触
レナは安全装置を外したSMGグレネードのグリップに手を添え、戦闘が出来る状態
で目の前の人物と話す事にしたのだった。
││胸大きいな⋮⋮ミシカくらい大きい。
あぁ、ミシカ やアクセルはどうしてんだろ
が味わいたい⋮⋮
る事に疑問を感じながらも、職務を果たそうとする。
属する組織が否とする戦車や銃と言った質量兵器を何故、自分よりも若い少女が持って
彼女⋮⋮時空管理局本部所属の執務官であるフェイト・T・ハラオウ
?
73
﹂
﹁改めまして、時空管理局執務官フェイト・テスタロッサです⋮⋮
くれるかな
﹁私は⋮⋮﹃フェイトさん そちらにガジェットドローンが多数
ここから早く離れて
らレナへ声を掛ける。
﹁ここは危険です
﹂
!!
﹄
君の名前を教えて
向かって来ます
ゴーグルのイヤ
自分の状態を自覚しながらレナはiゴーグルを目に嵌める。それから
﹁人間て空飛べるんだ⋮⋮﹂
!
││数は20って所かな⋮⋮
大きい。
ズを幾つか備え
もしかすると、偵察UFOみたく応援を呼ぶ可能性も
?
と飛んでいる。
た球体の無人兵器であった。他にも巨大蟻の卵のような形をした無人兵器がチラホラ
ゴーグルの望遠機能越し、彼女の目に映ったのは中央にカメラレン
認する。
ズーム機能を使って通信から聞こえて来た﹃ガジェット ドローン﹄とやらの正体を確
、ゴーグルの
フェイトは自分の杖であるデバイスの﹃バルデ ィッシュ﹄を構えて浮かび上がりなが
そ れ を 聞 い た 途 端、
レナは自分の名前を告げようとする。だが、レナの名前を遮る様に
!
ホ ン か ら、フ ェ イ ト へ の 通 信 が 叫 び 声 に も 近 い 声 が 響 き 渡 る。
!!
?
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
74
マリアだったら、逃げろとか言いそう。
い、あの時の
レナはウルフに乗り込むと、教えを誠実に守ろうと 、フェイトが飛んで行った方向
とは逆の方角へ走り出そうとする。
った。
だが、その時の少女の表情は脳裏にコビリ付いて離れず、忘れられな
事を思い出した時と同じ苦渋と悲しみに満ちた表情であ
だから⋮⋮
││ゴメン、マリア⋮⋮マリアが決めた鉄則は守れそうに無いや。
また、あの光景を繰り返すのだけは嫌だ。
斯くして、ヒヨッコハンターは鉄則を破り、フェイト・テスタロッサを援護しに行く
のだった。
左右の駆動輪が2本の履帯を力強く素早く回し、紅い戦車は現段階で出せる最大の速
イトへ集中砲火
ジェットドロー
度でガジェットドローンと呼ばれる無人兵器と戦うフェイトへ砂塵靡かせる。
レナは緋牡丹バルカンに装備したガンカメラを介し、フェイトとガ
ンの戦いを見詰めながら砲身の仰角を挙げた。
砲口部のレーザー射出機から射出される不可視のレーザーが、フェ
はそこ迄の射程距離と風向き、風速と言った周囲環境をレ
を仕掛けようとする編隊の中心に当たる機体へ照射される。砲塔上部のレンジファイ
ンダーを介し、モニターに
ナへ伝える。
75
││距離5200。風速は5km/hで風向きは東⋮⋮向かい風。
各センサーから得たデータを元に、レナは頭の中で修正を行うと、主砲の安全装置を
解除する。
それからFCS︵火器管制システム︶を操作して砲弾を選び始めた。
││弾種は通常榴弾。伝達迄に1、2秒。信管VT。が妥当かな
コイツに搭載してるのは、金ぴかのダイダロスが搭載して
する。
そして、照準に合わさる機体よりも1度だけ
ンを押した。
た主砲。威力は榴弾の
砲弾が放たれる。同時にビリビリっとした振動が車体に伝わり、戦
だった。
その砲声は約5000m先⋮⋮
車の下の地面
つまり、5km先に居るフェイトの耳にも響くの
は主砲を放った時の衝撃でヒビ割れて行く。
レティクルを上に上げると、発射ボタ
砲弾の信管へプログラムを打ち込み、レーザーロックした標的の手前で爆発する様に
爆風だけで偵察UFOを倒せる。
ない⋮⋮
機体のサイズから言えば偵察UFOくらい。装甲も偵察UFOくらい頑丈かも知れ
?
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
76
フェイト・T・テスタロッサが愛用のデバイスから展開する黄金色
の光刃で近付い
て来るガジェットを切り裂いてると、地球で聴いた様な遠雷が聞こえる。
体に当たり、
周囲に形成した魔力スフィア
同時に何かが物凄い速度で通り過ぎた時の音がする。その時の風が
何が起きたのかをマルチタスクで並行的に考えてると、
それに先刻の轟音は一体
を自分へ向けて魔力弾を放とうとして居たガジェットの群れは爆発を起こした。
││何が起きたの
?
成してると、
力スフィアを別のガジェットへぶつけて行く。
群れが2つの爆
気が付けば、最初の轟音から1分も
が撃墜されていた。
気を取り直して通信を繋ごうとすると、目的の相手から通信が入って来る。
桁ましい音ともに目の前でガジェットが千切れ飛ぶのには流石に驚いた。
ガジェットが真っ二つに千切れ飛ぶ。
それを行ったのは恐らく、あの少女だろうと考えたフェイトの目の前へと迫って来る
しない内に半数近いガジェット
発に巻き込まれ、ボロボロになって落ちて行く。
今、浴びた突風と同じ風が吹くと、3機で行動してたガジェットの
再び、轟音が鼓膜を刺激する。しかも、1度では無く続けざまに2回連続で⋮⋮
周囲に発生させた魔力スフィアが無くなり、次弾を装填する様に形
を破壊しようと、周囲に幾つもの魔
目の前でバラバラと塵の様に墜ちて行くガジェットに驚きながらも他のガジェット
?
77
﹃今のが最後⋮⋮
﹄
﹁攻撃は君の仕業なの
﹂
﹃余計な事しちゃったかな⋮⋮
﹄
来る。フェイ
﹂
それからハッチの開く音がすると、先程とは違ってヘルメットとゴーグ
ルを装着した少女が砲塔から飛び降りて来た。
話を詳しく聴きたいから、一緒に来てくれるかな
﹁改めて⋮⋮私はレナ、ハンターよ﹂
﹁レナで良いのかな
﹁良いけど⋮⋮
彼女は手を添えてた銃の持ち手を握ると、私に向けて引き金を引いた。
?
え無くなる。
戦車はフェイトの前で止まると、エンジンが止まったのか排気音とエンジン音が聞こ
物だと言う事がハッキリした。
戦車の砲口から陽炎が立ち昇ってる。さっきの轟音はこの戦車の大砲から放たれた
トは地面へ降下してレナと合流するのだった。
次元漂流者の少女が乗って居た戦車であろう重い排気音が聞こえて
?
?
?
その前に邪魔なの片付けましょうお姉さん﹂
?
砂塵と瓦礫の世界から来た少女
78
﹁いやぁ⋮⋮初めて見る敵に一瞬、驚いたけど大した事無かったね﹂
目の前の少女は鉄屑と化した未確認のガジェットの残骸を漁りながら暢気に呟いて
る。
目の前の少女は私の背後に居たガジェットに逸早く気付くや、地球で見た映画の女優
が持ってた銃を撃った。
飛んでくる無数の魔力の奔流を舞うかの様に避け、何十発もの銃弾を浴びせて大半の
ガジェットを平然と壊したかと思えば、近くでアームを伸ばして来るガジェットを蹴り
抜いた。
彼女が﹃あの男﹄
魔法おろか、魔力による強化もせずに純粋な体力と筋力で無人兵器の装甲をシールド
ごと蹴り抜いたのだ。
その際にバルディッシュに念話で本当に魔力が使って無いのか
転送された20機のガジェットをたった一人で、3分も掛からずに壊したレナは赤い
発か当たったのに﹃大した事無かったで﹄ですましてるんだもん⋮⋮
だって、生身でガジェットを魔法も使わずに蹴り砕いたり、殺傷モードの魔力弾を何
に造られた戦闘機人では無いかと何度も聴いた私は悪く無いと思う。
?
79
外套の下から弾倉を取り出して弾を詰め替えてた。その時の彼女は観察してみると、常
に周囲に視線を走らせ辺りを警戒してた。
それから彼女は素直にヘリに乗ってくれた。ヘリに乗るのが初めてなのか、彼女のハ
シャギぶりは子供の様だった。
﹁すまない⋮⋮﹂
だったモノが居た。
後ろを振り替えると、ソコには幼き子供だったモノを抱き締めたまま焼け死んだ母親
チンクはレリックを受け取ると、手を振って先にモヒカンを先に歩かせた。チラりと
カンにした青いボディースーツに大きなボンベを背おう巨大な男であった。
と唸り声を上げる子供が見たら泣きそうな傷だらけの白い顔、血の様に紅い髪をモヒ
﹁ふしゅるる⋮⋮ガガガー﹂
械仕掛けの杖を持つ少し背と胸のある金髪の少女と⋮⋮
チンクの目に映るのは自分よりは手に管理局のエースと呼ばれる一等空尉の様な機
地獄を作り上げた張本人達が帰って来た。
焼き殺され、調査チームの乗った航行艦は至る所から炎が上がってる⋮⋮
チンクは目の前に広がる地獄を眺めてた。左目に映る光景は管理局員が惨たらしく
﹁これ程とはな⋮⋮﹂
第二話
第二話
80
81
﹁これで5件目や⋮⋮何者かによって多数の管理局員が殺され、レリックが奪われた。
しかも、今度は近くの街も焼き払われ生存者は一名だけ⋮⋮だけど、その子はショック
で何も話せん状態⋮⋮﹂
八 神 は や て は レ リ ッ ク に 関 す る 報 告 書 を 読 ん で た。他 の 世 界 で 発 生 し た 強 奪 事 件
⋮⋮
管理局員、民間人、老若男女問わずガジェットとは違う無人兵器によって虐殺され、
燃やされてレリックが奪われた。確認される死者は増える一方。
死因の大半は質量兵器によるモノ。
他にも一酸化炭素による中毒死や生きたまま焼かれた事によるショック死と言った
残酷な死因であった。犯人に関するデータは一切見付かって無い。
調査は難航し、犯人の手懸かりすら見付かってない状況にはやては苛つきを覚えた。
││犯人は見付けたらこの手で逮捕したる。絶対赦さへん⋮⋮
質量兵器で思い出したはやては自分の親友である執務官が保護した少女のデータを
見た。
レナと名乗る少女が保有してると思わしき真紅の戦車を用いてガジェットの群れを
射程距離外から砲撃。その大半を撃破。
更に保有してた質量兵器を用いて 召喚されたガジェットを短時間で破壊。そ
第二話
82
の際に魔力による強化もせずにガジェットを蹴り壊した事も確認されてる。
下手すると、プロテクション含めたら戦車並みに頑丈なガジェットを自分よりも若く
華奢︵しかも胸が自分より大きい︶少女が何の補助も無く蹴り砕いたなんて信じられな
かった。
だが、親友である執務官⋮⋮フェイトが詰まらない嘘を着く理由が無いと同時に記録
映像として撮影したバルディッシュがジョークを言うなんて考えられなかった。
質量兵器使わず、魔法抜きで戦える人間はそうは居ない。 ﹁檻の中ナウ⋮⋮﹂
留置されたレナのお腹から音が鳴る。
││お腹すいた。バイアスシティへ突入してから何も食べて無かったな⋮⋮
BSコントローラーの量子化格納領域⋮⋮ぶっちゃけ道具袋からイリットが作って
くれた弁当を取り出すと、可愛いクマちゃんのイラストが描かれたフォークで食べ始め
た。
││やっぱり美味しい⋮⋮
道具袋あるし、アレ使って出ちゃおうかな⋮⋮
83
﹁ロックハッカ∼⋮⋮﹂
何処ぞの青い狸型ロボットの様に出した端末をBSコントローラーに繋ぐと、レナは
扉の端末にロックハッカーを取り付ける。そして、タッチパネルを操作すると 5秒も
しない内にカチャっと言う音がした。
﹁おー簡単に開いた。流石ロックハッカー先生⋮⋮さて、探検しようかな﹂
独房から出たレナは鼻歌混じりに人気の無い廊下を歩いて行く。歩きながら彼女は
自分が拘束されて独房にブチ込まれたか思い出して行く。
彼女の手に嵌められた手錠は職務を果たしてた。見た目に反し、軍用サイボーグやア
ンドロイド等を蹴り壊し、素手でガジェットを殴り壊せる力に耐えきれない迄は⋮⋮
問題は山積み。私が来るなり悲鳴を挙げた子供。それからの対応に白いフリフリの
服着た女に赤い服着たチッコイ子、指揮官らしき少し大きな胸の女⋮⋮
連中は私を見るなり敵意丸出しで臨戦態勢取った。
私を此所に連れてきた金髪の女性、それからヒヨッコ何人かは困惑しながら私に手錠
を掛けてここに放り込んだ。
SMGグレネード、プラズマストーム、腹切りソード︵MMRとMM2:Rを足して
2で割った性能な妖刀︶にマリアから貰った拳銃は没収された。オマケにレッドウルフ
とも離れ離れ⋮⋮
何でこうなったか⋮⋮手掛かりは悲鳴を挙げた子供。子供はシャマル先生と呼ばれ
る女性の所に連れてったと言ってた。
なら、直接話を聞く方が早い⋮⋮
そう考えるや、レナは地上階へと上がって行く。途中で制服を着た女性を見付ける
と、レナはその女性の背後から羽交い締めにするや加減し、軽く壁に叩き付けた。それ
から、向こうではナマモノを眠らせるのに役立ってくれた睡眠薬⋮⋮スイミンDXを注
射して眠らせると、近くの部屋に入った。
部屋は無人で誰も居ない。
それを良い事にレナは職員の制服を脱がせて行く。黒い下着姿にひん剥くと、レナは
今着てるサラトガシリーズや赤い外套⋮⋮カリョマントを脱いでてに入れた制服を着
た。
﹁ちょっと胸キツイ⋮⋮﹂
愚痴溢しながら制服を着ると、職員をロッカーの中に入れて扉を閉めた。それから管
理局の職員に化けたレナは平然と廊下を歩いて探索を始めるのだった。
医務室へと着いたレナは中へと入る。中には金髪の優しそうな雰囲気を持つ白衣の
どうしたの
?
﹂
女性が端末を操作してる。
﹁あら
?
第二話
84
85
﹂
白衣の女性が優しい笑みを浮かべて入ってきたレナに振り替える。すると、レナは
困った感じの顔を浮かべて口を開く。
﹁急に気持ち悪くなって⋮⋮診察して貰って良いですか
故か存在するバリアを貼るある意味あの世界の混沌を示す防具だ。それなりに大きな
制服を脱いで行く。下から覗くのは下着代わりのバリアービキニだ。あの世界で何
てるレナにとってシャマルは珍しくマトモな人間だと思えた。
狂った実験をするデビルズアイランドに居たクソ共と言った白衣=マッドを思い出し
事を見るなりゴキブリーと呼ぶ戦車製作するメガネさん、そして、狩り集めた人間へ
アシッドキャニオンで出会った白衣の人⋮⋮あの世界で死者蘇生を試みる老人、人の
それに白衣着てる人の部屋にしては片付いてるし、珍しいなぁ。 ││白衣の人にしてはマトモだなぁ⋮⋮
シャマルが見てる間、レナは回りの観察を始める。
﹁ごめんね﹂
﹁解りました。急ぎじゃないので⋮⋮構いません⋮⋮﹂
的の子供を確認した。
白衣の女性⋮⋮シャマルが示した所にはベッドで眠ってる男の子が居る。レナは目
﹁上着脱いで少し待ってて⋮⋮ちょっとあの子を見る所だから﹂
?
胸を納めるブラの下には大きな火傷跡が残ってる。
レナが全てを喪った頃の火傷であった。上半身ブラにスカート姿で椅子にチョコン
青い服に赤い鶏冠頭⋮⋮炎を操るアイツとママ達を殺した女が
と座って診察を待った。が、子供が突如叫ぶ。
﹁あ、アイツが来る
⋮⋮﹂
﹁ちょっと
﹂
譫言の様に叫ぶ子供の言葉にレナは目の色を変えて子供に掴み掛かる。
!
﹂
﹁青い服に鶏冠頭って言ったわね
イラーの事
教えなさい
アンタが言ってるのはテッドブロ
!
出来ない⋮⋮>
﹀
<はやてちゃん急いで来て⋮⋮見覚えの無い人が子供に詰めよってて私じゃどうも
たじろぎ、念話通信ではやてに連絡をした。
見ると子供は泣き出しそうになり、シャマルはレナから醸し出される殺気と憎悪に身を
レナの表情は怒りと憎しみに満ちた憤怒の形相であった。子供は目を開けてレナを
!!
にレナは見た目に反して物凄い力で子供に迫ってた。
シャマルが止めようとしてもレナは止まらない。それなりに力を込めて抑えてるの
!?
!?
︿その詰め寄ってるのてフェイトちゃんより年下なくらいの金髪な娘か
?
第二話
86
87
<そ、そうだけど⋮⋮何ではやてちゃん解るの
た。
>
士服に姿を変えて指先を向けた瞬間、レナは子供がたまたま手に取った花瓶で殴られ
シャマルはレナが脱走を図ろうとした犯罪者だと認識すると白衣から薄い緑色の騎
<わ、解ったわ⋮⋮>
房から逃げ出したんや﹀
︿今、ザフィーラとシグナム、ヴィータに行かせたから留めさせといて⋮⋮ソイツは独
?
それに私は貴方の仲間
レナの頭から花瓶の水に混じって血が流れる。が、気にする訳でもなく彼女は子供か
﹂
私はアンタなんて知らない
ママ達を返せ人殺し
ら手を離さず話続ける。
﹁離せ
﹁訊きなさい
!
!!
の
﹂
よ⋮⋮私もアイツに家族を殺された だから教えてコイツがアンタの家族殺した
!
!
!!
た。
それを見ると、シャマルはレナを引き剥がして子供に魔法を使って状態を調べ始め
は意識を落とした。
レナはBSコントローラーを取り出してテッドブロイラーの写真を見せた瞬間、子供
?
第二話
88
その間、レナは乾いた笑いを浮かべてた。
﹁アハハ⋮⋮生きてるんだあの腐れモヒカン⋮⋮殺したのに。二度と目覚めない様に
首も手足も斬り落として奴のバーナーで燃やしてやったのに⋮⋮﹂
狂気に満ちた笑みに変わる瞬間、レナは医務室へと踏み込もうとする3つの殺気に気
付いた。
医 務 室 の 扉 が 開 く と 同 時 に 椅 子 を 投 げ 付 け る。赤 い ゴ ス ロ リ 服 を 着 た ハ ン マ ー を
持った小さな少女は椅子をハンマーで弾き返すと、剣を持った長身の女がレナへと肉薄
する。
青い髪の筋肉質の男はシャマルとベッドに眠る子供の前に立って護りに入ってる。
剣がレナへ降り抜かれる。が、レナは後ろに転がり避けるとBSコントローラーから
賞金首退治の良き友達である煙幕花火を何本か取り出すとそれをばら蒔いた。
アイツ窓から逃げやがった
﹂ ﹂
黒煙が医務室を包み込む。同時に窓が割れる甲高い音がした。
﹁ゲホッゲホッ
赤いゴスロリの少女、ヴィータが悪態を吐く。
﹁その様だ⋮⋮ザフィーラ、シャマル。子供は無事か
!!
<申し訳ありません主はやて⋮⋮例の少女を取り逃がしました。私とザフィーラで
長身の女、烈火の将は仲間の無事を聴くと大丈夫だと答えが返ってくる。
?
!?
89
追跡します>
︿子供無事ならええよ⋮⋮此方からもなのはちゃんとフェイトちゃん出して捜索させ
るわ⋮⋮﹀
││危なかった。とりあえず、身を隠して警戒が弛むのを待とう⋮⋮
制服からサラトガシリーズに着替え、外套変わりのカリョマントを羽織るとレナはマ
リアから貰った拳銃⋮⋮マカロフと比べ、二回り程大きな大口径の軍用オートを抜い
た。
ワンハンドガリルと呼ばれるそれは、50口径で弾頭がラウフォス並の性能を持って
る。生身の人間に当たれば手足をもぐことも出来るし、ちゃちな軽装甲車両や兵器なら
容易く壊せる。
恐らくだがプロテクションを纏ったガジェットも壊せるだろう。
メルトタウンで買ったのは良いが、結局の所、小さい頃にマリアから貰ったマカロフ
の方が使いやすかったし、今までの危機に助けてくれた信頼感によって道具袋の肥やし
になってたりする。憎きテッドブロイラーに掴まれ、生きたまま焼き殺されそうになっ
た際もレナはマカロフをテッドブロイラーの右目に突っ込み何度も引き金を引いて抜
第二話
90
け出せた。
なので、レナとして威力も弾数も性能も格段に高いワンハンドガリルに不安しか残ら
なかった。
脱いだ制服の下に先程使った煙幕花火とパニック缶を幾つかとピンの抜けたとDD
パイナップルを忍ばせて罠を仕掛ける。
それだけでは無い。レナは足跡をわざと残すや木にDDパイナップルを括り着けて
ワイヤーを張った。
即席の罠を仕掛けるとレナは自分の半身である紅い悪魔と武器を取り戻す為に六課
の隊舎へともどるのであった。
罠が仕掛けられてる。
罠が仕掛けられていたせいか、二人の歩みは先程と比べて遅いモノとなった。
制服には手を触れず、ザフィーラが見付けた足跡を辿って歩みを進める。
かったな⋮⋮﹂
﹁や は り な ⋮⋮ ど う や ら テ ス タ ロ ッ サ が 連 れ て 来 た あ の レ ナ と 言 う 娘 は 只 者 じ ゃ な
﹁シグナム⋮⋮その制服には触るな爆薬の臭いがする﹂
る。
目の前に脱ぎ捨てられた管理局の制服が置かれてる。ザフィーラは更に鼻を利かせ
﹁解ってる⋮⋮これは罠だ﹂
﹁ザフィーラ⋮⋮﹂
シグナムは剣を握り締めると、念話でザフィーラに話し掛ける。
導する。
蒼い毛並みを持った大きな狼⋮⋮ザフィーラが周囲の臭いを嗅ぎ取り、シグナムを先
﹁此方だ⋮⋮﹂
第三話
91
第三話
92
仕 掛 け ら れ た 罠 が 此 だ け と 思 い 安 心 し て 進 む の は 死 に た が り か バ カ し か や ら な い。
罠が一つ仕掛けられてるならば、他にも罠が仕掛けられてると考える心理が働いても可
笑しくない。
100個仕掛けた
と、どれぐらい、何処に仕掛けられたか
﹁気を付けろ⋮⋮ソコにワイヤーが張られてる﹂
パイナップルが6個に煙幕花火が4本にニトロビールDXが3本、フリーズビールは
弾は36発で、そのうちの7発はアクセルお手製のスペシャル弾⋮⋮
ワンハンドガリル1丁。
が叩かれるのであった。
ヤーが引っ掛かり、反対側の木の裏側に固定されたパイナップルのピンが抜かれ、信管
それに掛からぬ様にシグナムがワイヤーを踏み越えた。すると、シグナムの頭にワイ
張られた先の茂みを漁ると、ピンが抜け掛かった手榴弾が木に括られてた。
ザフィーラの鼻先にワイヤーが張られてる。ザフィーラが器用に前足でワイヤーの
?
仕掛けた側は一個しか仕掛けてなくとも、ヤられた側は真実を知らない。
故に10個仕掛けた
?
解らないが故に慎重に歩みを進めざる終えないのであった。
?
93
2本⋮⋮あ、スイミンとパニック缶、麻痺ガス缶があったっけ。
攻撃アイテムはこれだけ⋮⋮
回復アイテムは満タンが3本、エナジー注射10本、ゲンキデルZは15本⋮⋮後は
タブが幾つか。
今の手持ちを確認したレナは隊舎に3階の窓から忍び込んだ。
忍び込んだ時に男性職員に見られるや、近くに置かれた大きな植木鉢を手に取るなり
投げ付けた。
大きな鉢は放物線を描いて背を向けて逃げる職員の頭にゴスッと言う鈍い音を立て
﹂
て命中した。
﹁シャー
港町で100G寄越せと抜かした検問中のグラップラー達をレナとミシカはお金の変
医務室では何故か煙幕花火だけに留めた。何時だったか、イスラポルトと言う小さな
普段のレナならば、首を折るなり、頭をカチ割る等をして殺してる。
が見たら未だ優しい、加減してる方だと言うだろう。
レナの行いは容赦無い暴力に見えるが、横モヒカンのメカニックや山猫なソルジャー
掃ロッカーに気絶した職員を突っ込んで閉めた。
ガッツポーズをすると、職員を右手に職員、左手に植木鉢を取って植木鉢を戻すと、清
!
わりに鉛弾をグラップラーに喰わせ、メカニックは頭を抱えながらバギーから重機関銃
で掃射すると言った方法で中に居た連中を皆殺しにした。
他にも仲間と共にグラップラーが建てた駐屯地を幾つも戦車で蹂躙する事も有れば、
宵闇に乗じて刃物やサプレッサー装着したマカロフ等を使ってコッソリと皆殺しにも
した。
この時、命乞いして来たグラップラーを有無も言わさずに殺した。
時には人間狩りされた人達を乗せたトラックや船を襲って解放もした。
と言った具合にファーでクライな主人公ばりにグラップラーへ人間狩りをかました。
たまに盗賊や功名心に刈られた挑戦者を何人も何人も殺して行き、何時しか紅い悪魔や
死神等と呼ばれる様にもなった。 そんな無慈悲な彼女ならば殺る気になって追い討ちするならばパイナップルやニト
ロビールDX、毒ガス缶等を床に転がすなりして被害をジャンジャン増やすのも言わず
もがなだ。
弱かったヒヨッコだったからこそ、師匠にして二人目の母であった女性の教えである
⋮⋮
︻殺られる前に殺れ、ヤバくなったら逃げろ︼
︻敵を叩く時は徹底的に容赦無く最大火力で殺れ︼
第三話
94
95
と、言った具合にレナと言う少女は狂気と屍、鉄屑の弱肉強食な世界を生き延び、ハ
ンターとして最強と謳われる様にもなった。
閑話休題。
レナは気配を消し、時にはワンハンドガリルに取り付けられたレーザーサイトでカメ
ラのレンズにレーザーを浴びせてカメラの受光部を焼いて先へと進む。
途中で外から爆発音がする。
││罠に引っ掛かった。
あの周辺に私が潜んでると思わせる。そして、罠が仕掛けられてると考えれば追跡者
達は警戒の為に速度を落とさざる得ない。
そして、引っ掛かった連中がパニックガスを吸って味方へ攻撃してくれるなら時間は
それなりに稼げる⋮⋮
その間、私は調べものしたり、お話を出来る。
狡猾な腹黒突撃少女はそのまま歩みを進めると、静かに部屋へと入る。それから、中
にあったコンピューターにBSコントローラーを繋ぐと操作を始めた。
││古代遺物管理部機動六課。
ロストロギア関連の事件や回収を行う部署で、主な確保対象はレリックと呼ばれるロ
ストロギア。
第三話
96
指揮官の名前は八神はやて、スターズ分隊はポニーテールの女、高町なのは。ライト
ニング分隊は私が最初に出会ったフェイトが隊長か⋮⋮
で、副隊長は医務室に踏み込んで来た赤いドレスのチビっこと剣を持ってた長身の女
⋮⋮ヴィータとシグナムて言うのか。
BSコントローラーに内蔵されてるソフトウェアでロックを解除すると、レナは自分
を拘束した相手の正体を探ると、今度はあの子供の事を探り始める。
5分程探しても子供に関するデータは見付からない⋮⋮
﹁無 い ⋮⋮ 何 処 に も 無 い の は 可 笑 し い ⋮⋮ 消 さ れ た の か、未 だ 提 出 さ れ て な い の か
⋮⋮﹂
少し考えてると、BSコントローラーを戻してコンピューターの電源ケーブルを抜
き、強制的に電源を落として部屋を後にした。
それからBSコントローラーにダウンロードした隊舎の地図を元に工作室を目指し
て行く。暫く歩いてると前から気配がする。レナは天井へ飛び上がると、蜘蛛の様に張
り付いて通り過ぎるのを待った。
眼鏡掛けた技術者らしき女性が通り過ぎるやシュタッと床へ飛び降りる。
そして、背後から足音立てずに近付いて右腕を女性の首に絡ませ、左手は女性の後頭
部を前へと押した。
ジタバタと暴れるが、暫くするとパタリと動きが止まる。
首に絡めた右腕から鼓動が伝わって来てる⋮⋮生きてる証拠だ。
﹂
レナは見付からない様に人気の無い備品倉庫迄、引き摺るのだった。
﹁私はレナ⋮⋮貴女の名前は
﹁ヒィ
﹂と言う短い悲鳴を挙がる。
それに気付くと、レナは拳銃の撃鉄をガチャっと起こす。すると、目の前の女性から
のか、歯をガチガチと鳴らしてる。
介をしてる。女性は少女が笑顔で向けて来る感情の無い質量兵器の銃口に恐怖してる
普段の人の良い笑顔でレナは目の前で恐怖に襲われてる年上であろう女性に自己紹
﹁しゃ、シャリオ・フィニーノ⋮⋮逃げられませんよ。レナさん⋮⋮此処は⋮⋮﹂
?
の仲間と言う事にされてるか
それを知りたいのよ⋮⋮﹂
目の前のレナと名乗る少女は六課に配属されたばかりの新人達と同じくらいの年な
笑顔で告げるや、シャリオはビクッとして目の前の少女を見詰める。
?
そして、何であの子は私を親の敵として見、尚且つテッドブロイラーが生きていて、私
﹁恐がらせて御免なさい⋮⋮私は私の持ち物を返して貰いたい。
!
97
第三話
98
のに彼女から醸し出される威圧感や自信と言った雰囲気も有る。
お話は10分くらいで終えた。すると、パイナップルを取り出して目の前の彼女⋮⋮
シャリオに握らせる。
因みにパイナップルのピンは抜けてる。
﹁助けを呼んでも良いわよ。コレは胸ポケットに入れとくから、助けに来た人に差し
て貰ってね⋮⋮﹂
パイナップルのピンをシャリオの制服の胸ポケットへ差し込むや笑顔で言う。シャ
リオの口には倉庫で見付けたガムテープが貼られ、何を言ってるか解らない。
そんなシャリオを尻目にレナは倉庫を後にする。
││情報を整理しよう。あの子はテッドブロイラーに家族を殺された。そして、私の
ソックリな奴がテッドブロイラーの仲間として街を幾つも焼き払ってレリックと言う
アイテムを強奪してる。
レナは歩きながら得た情報を整理する。更に最近はガジェットと呼ばれる無人兵器
の中にキャタピラを履いた戦車が様なタイプも居たと聞く。
シャリオに今までに遭遇したあの世界の車輌モンスターの画像見せたら驚いてた。
因みにレナも驚いた。
││画像の奴であってるなら、ポリタンにトレーダー殺し、ホッパーがたまに現れて
99
人を襲ってる。で、巨大な殺人アメーバも居る。
あの崩壊した世界には人工の賢者が造り出した黙示録騎士の如き群れが生き残った
人類を襲ってる。
他にも生態系が狂った事によってガソリンを初めとした石油類を生成する植物や魚
の様に意思を持った魚雷に自動車サイズの蟻が彷徨き始めた。
何で世界がそんな可笑しくなったのかレナは知っている。
バイアスシティや残った軍事基地からそう言う情報を手に入れていた。
だからこそ彼女はグラップラーだけでなく、人工の賢者によってもたらされたモンス
ターを狩る事にも力を注いだのだった。
││さて、六課の会議室とやらに向かうかな⋮⋮ソコに私の武器が置かれてて調べら
れてるみたいだし。
確保したら、司令官さんとお話し⋮⋮一発カマしてやるかー
レナは呑気に考えると、先へ進むのだった。
とある隠された研究所⋮⋮その一室では金髪の少女が自身の武器である杖タイプの
デバイスのメンテナンスを終えると、壁から出てるパイプに飛び付くや懸垂を始めた。
第三話
100
そんな彼女の部屋へ一人の白衣の男が入って来た。 ﹁相変わらずトレーニングしてるね⋮⋮﹂
男の問い掛けを気にする事無く、少女は懸垂を続ける。
溜め池を吐いた白衣の男はそのまま話を続ける。
﹁君のオリジナルがミッドチルダヘ来たよ﹂
その言葉を聞いた瞬間、少女は動きをピタリと止める。
その様子に白衣の男が薄ら笑いを浮かべると、更に続ける。
﹁1時間前の事だ⋮⋮君のオリジナルはガジェットを生身で壊した。しかも、その内
の一機は何の魔法も仕掛けも無く蹴りで壊してる⋮⋮
﹂
全く、あの世界の生物はデタラメだね。そう思わないかい⋮⋮
り、1番目と4番目の娘が必死で止める声がするのだった。
金属がひしゃげる音やバチバチッと言う電子部品が壊れる音が廊下に何度も響き渡
部屋から出て数分後⋮⋮
少女は懸垂を辞めると、ベッドに掛けてたタオルで汗を拭くと部屋を後にする。
?
そして、頭のイッちゃった透明人間の居たり、連続殺人事件の現場にもなったリゾー
を填める。
人の気配が一切しない事に疑問を感じながらレナは周囲を入念に見回し、iゴーグル
禍々しい日本刀と言ったあからさまに曰くのありそうな武器が並んでる。
子電池、斬られたモノの生命エネルギーを持ち主に還元し、清関兼元と銘が刻まれた
的榴弾が10発近く、個人携行型の荷電粒子砲たるプラズマストームと燃料代わりの原
クロムカイル合金製7.62│51㎜徹甲弾が詰まった弾倉が20近くに、40㎜多目
目の主人公宜しくスニーキングして進んでた。愛用のSMGグレネードに100発の
武器が置かれてた鑑識のラボへ、ワンハンドガリル片手に蛇かファーでクライな3番
時間は3分前くらいに遡る⋮⋮
本来ならば、没収された護身用の武器を回収してる筈だった。
眺めながら考えてる。
レナは拳を振りかざし、迫って来る鉢巻きをした自分より年下か同じくらいの少女を
││何でこうなったし⋮⋮
第四話
101
第四話
102
トホテルでダウンロードしたサーモグラフィーを起動した。
サーモグラフィーならば赤外線レーザーが仕掛けられても、透明人間がカッポーン、
カッポーンと待ち構えて様が丸見えだ。肉眼では見えず、iゴーグルで見えるならばソ
レは隠れた敵だ。話し合いするなら、両手を挙げて透明人間にならずに姿を現してる筈
だ。
容赦なく、掌に収まる象撃ちライフルばりの殺傷能力を持ったワンハンドガリルでミ
ンチにすれば良い。
︻殺られる前に殺れ︼
あの世界で生きる為の最低限のルール、小さな子供でも解ってる。
﹁有った⋮⋮良かったぁ∼﹂
レナは自分の武器を見てホッとする溜め息を吐いた。すると、一丁の小さな拳銃に目
がつく。
その表情は無くした玩具を見付けた幼い子供の様に喜びに溢れる物であった。
拳銃は傷だらけで、塗装が何ヵ所も剥げており、銃口は若干長く、ネジが切られてた。
何故か、銃口や銃口近くのフレームには赤黒い染みや肉片が着いてて硝煙とオイルに
混じって生臭かったが気にしない。
年相応の少女の様な笑顔でレナは小さな拳銃⋮⋮あの世界ではマカロフと呼ばれる
103
駆け出しのハンターや町の人間が護身用に持つ程度のモノだ⋮⋮
だが、正面から撃ち合って装甲車の装甲を貫通する30口径のライフルと40tクラ
スの戦車を破壊出来るグレネードを持った銃や重装甲すらも融解させ、掠っただけでも
電子機器を駄目にする荷電粒子砲より、レナにとってはこのマカロフが大事なモノで
あった。
││私の命を何度も救ったマリアから貰った大事な御守り⋮⋮⋮⋮
これが有ったから私は何度も死にかかっても生きてこれた。
レナがマカロフを手に取り、スライドを引いて中の撃針や銃口を調べる。大した損傷
も細工もされてなかった。
マカロフに弾倉を差し込み、スライドを引いてセフティを掛けると、ホルスターに
突っ込んで弾倉の詰まったパウチをリンクでベルトへと取り付ける。
その瞬間、部屋が突如光るとレナの姿が消えていた。
そして、今に至る⋮⋮
その少女の右手に着いた機械めいたグローブもとい籠手の手首を左手で掴むや突っ
込んで来る少女の勢いそのままに引っ張る。外から見れば目に着かぬ速さで繰り出さ
れる正拳突きである。
レナの目にはゆっくりと見えてた。
第四話
104
目の前の少女はレスラーにしては化物じゃない事に疑問を感じる。
レナの知ってるレスラーは、素手での戦いの専門家で、ハッキリ言って化物だ⋮⋮
ある時は軽自動車並の大きさを持つ巨大な蟻やネズミにアルゼンチン・バックブリー
カー決め、またある時は鋼鉄の塊である戦車をドロップキックで木端微塵にしたり、装
甲板を空手チョップでカチ割る事も有れば、ラリアットで軍用サイボーグや盗賊の首を
もぎ取る。
挙げたらキリが無いが、常識や法則があの世界の人間の中でも、レスラーは化物の筆
頭に挙がるのであった。
そんなキチガイ、異能生存体の代名詞足るレスラーを知り、倒した事も有るレナだか
らこそ目の前の少女が繰り出す正拳は恐るるに足りなかった。
その拳を左手で引っ張ると、右手に握ったワンハンドガリルのグリップの底を少女の
と言う音がする。レナはその少女の後ろで援護射撃をしようとしてたデリ
顔面⋮⋮否、鼻へ叩き付けた。
ゴキッ
色の髪をした少女はレナを撃つ事が出来なかった。
両手に持った拳銃を向けて来るが、レナに鼻を潰された少女が居るせいか、オレンジ
せる。
ンジャー拳銃を大きくした様な武器を向けるオレンジ色の髪をした少女に視線を走ら
!
105
││何で突っ立ったまま移動しないのかな⋮⋮
﹁キャッ
﹂
飛ばす。すると、青髪の少女が勢いよく2丁の拳銃を向ける少女へ飛んで行く。
目の前の少女をレベルメタフィンと呼ばれる悪魔の薬で強化された力で乱暴に押し
から得たやり方で始める。
師にして第二の母から学んだ事を思い出し、逆にヤられた際の反撃を学んだ事と経験
へ弾幕叩き付けて動きを抑え込む⋮⋮
それか、ソルジャーならレスラーの突撃を成功させる為に命中精度無視で乱射。相手
戦う。
射線が取れないなら移動は当たり前。殺る時は射線が味方に掛からない様な位置で
?
ドゴン
と言う砲声にも似た銃声がすると共に鉄球が銃弾によって粉々に
!
れてる⋮⋮
武器を回収しようとしたら、転送されて気が着いたらこんなだだっ広い荒野に放り困
││やーっぱし、コイツ等陽動か⋮⋮
砕け散る。
ドゴン
ず、後ろから飛んで来る幾つもの鉄球へ向けて撃った。
短い悲鳴が挙がる。すると、レナはセフティ外したワンハンドガリルを二人に向け
!?
!
第四話
106
読まれてるだろうと思ってたけど、待ち伏せの代わりに転送されるてのは驚き⋮⋮
だけど、この荒野は⋮⋮私の知ってる荒野じゃない。砂の匂い、酸の匂い、血と硝煙、
腐った肉の匂いがしない⋮⋮仮想現実にしてはリアリティーが有りすぎ。
訳が解らない⋮⋮
困惑しつつ、鉄球は飛ばして来た相手を見るやそこにはハンマーを持った紅いドレス
を着た小さな少女が居た。少女は何時の間にかハンマーを振りかざしながら突撃して
来た。
と、言う甲高い音と共に⋮⋮ ハンマーが勢い良く降り下ろされる。同時にワンハンドガリルが火を吹き、銃弾は少
女の顔面へ飛んで行く。
だが、銃弾は当たる事は無かった。
少女はハンマーで叩き落とした。ガキィン
少女は経験から弾を詰め直すのに約2、3秒と考えると更に急ぐ。
地面に空の弾倉がカタリと落ちる。左手は腰へと行く。
のか、一気に距離を詰め様とする。
弾が切れたのか、スライドが後退したまま止まる。すると、少女はチャンスと思った
けて何度も引き金を引いた。
更に少女は距離を詰め様とする。だが、レナは後ろへ翔び距離を取りながら少女へ向
!
107
今なら隙だらけだ⋮⋮弾を詰め直す前にブッ叩いて終わらせる
﹁カハッ⋮⋮
二発当たった。
﹂
少女⋮⋮ヴィータのプロテクションとバリアジャケットを貫いて腹部⋮⋮胃の辺りに
ちっぽけな9㎜口径の十数グラムの銃弾がリミッターを掛けられてるとは言え、赤い
タンタンと言う軽い銃声がした。
刹那な程止まってた短い間に刹那にも満たない一瞬で銃口が顔から離れ、下を向くと
﹁ゴメンね⋮⋮﹂
銃口が目の前にあるせいか、ほんの刹那程動きが止まる。
少女の顔面に左手に握られたマカロフの銃口が有った。
と、意気揚々とレナの目の前でハンマーを再び振るおうとした瞬間⋮⋮
!
取り付けられた装甲板が尋常じゃない脚力を推進力とし、爪先が顎をゴギッと言う音と
そんなヴィータをレナは目に見えない速度で蹴りを繰り出した。クラッドブーツに
したのか理解出来なかった。
ヴィータは何で地球のチッポケな拳銃がプロテクションやバリアジャケットを貫通
吸困難に際悩ませるだけに終わった。
皮膚は貫通出来なかったのか、肌に青々とした痣を与え、ヴィータを吐き気と痛み、呼
!?
共に的確に打ち抜いた⋮⋮
ヴィータ自身、放物線を描きながら翔び、意識を闇に堕とすと地面を二回転がる。そ
のまま意識を闇に堕としたヴィータを尻目にレナはワンハンドガリルに弾を詰め直す。
入れ替わる様に左手には火の点いた3本の煙幕花火が指の間に挟み込まれてる。
すると1本を足元に落とし、残りを槍を持った赤毛の少年とピンク色の弱気そうな少
女へ向けて投げ付けた。
レナとその周囲を黒い煙が包み込む。iゴーグルを掛け直し、サーモグラフィーで次
の獲物である少女を確認すると、駆け抜ける。
ケホッ、ケホッと咳き込み白いトカゲ を抱いてた少女の首筋に道具袋から取り出
した注射器を射した。
ル、2丁拳銃してたのがティアナで、ハンマー振り回して来たのがヴィータに今眠らせ
この時点で確認出来たのはハッキングした情報が正しいなら、ハチマキしたのがスバ
││順番が変になったけど、バックアップは潰した。
様にその場に倒れ込んだ⋮⋮
プランジャーを押して薬液を少女へ流し込む。すると、少女は糸の切れた操り人形の
?
してた六課の人間を確認すると、レナはエリオの首を一気に締め上げる。
たのがキャロ、そして、槍を持った男の子はエリオて言ったかしらね⋮⋮
待ち伏せ
?
第四話
108
109
それとも⋮⋮時間稼ぎ
単なるぐーぜん
﹂
呻き声を挙げながら苦しみに満ちた表情を浮かべてもがく。そのままクタッとしたら、
ンドロイドとソックリだった。
スバルは頑丈な盾になりそうね、わを殴った時の感触はデビルズアイランドに居たア
││ティアナは投げ付けるに丁度良い重さ⋮⋮
レナはそれを見る事せず、未だ意識の有るスバルとティアナの近くに立った。
そして、その二人がたった今来た。
単なる偶然だ。
で、六課で最も強力な暴力の持ち主に当たるフェイトやなのはが居なかったのは⋮⋮
今はシャマルが処置して最中してる⋮⋮
が、セットで仕掛けてた麻痺ガスによって声すら挙げる事が出来て無かった。
メージは無かった。
シ グ ナ ム と ザ フ ィ ー ラ は レ ナ の 仕 掛 け た ト ラ ッ プ に 引 っ 掛 か っ た。爆 風 に よ る ダ
?
レナは乱暴に地面へ棄てた。
﹁これは私を疲れさせる為の陽動
?
指揮官クラスはヴィータくらいで、残りはヒヨッコだった。
確認出来たのは今挙げた面子⋮⋮
上からの気配に気付くと、静かにボヤく。
?
第四話
110
て、事で盾に使う。
サラリとトンでも無い事を考える。左手をティアナとスバルの二人近くに配置し、右
手にはワンハンドガリルが握られてる。
﹁レナ、何で逃げたの⋮⋮ ︵なのは、気を付けて⋮⋮彼女はガジェットの攻撃を受け
﹂
!
⋮⋮﹂
﹁酷い
殺してないんだから酷くないと思う⋮⋮よ
﹁だ か ら っ て、皆 に 酷 い 事 す る 理 由 に は な ら な い よ ⋮⋮︵解 っ た よ フ ェ イ ト ち ゃ ん
起こしたの⋮⋮﹂
﹁いきなり牢にブチ込まれたら逃げたくなるし、情報が欲しかったから敢えて行動を
すると、レナはワンハンドガリルを持った右手で頭を掻きながら答える。
フェイトは少し悲痛な表情を浮かべて聞く。
ても平然としてるし、ソニックムーヴみたく高速で動ける﹂
?
第二ラウンドの始まりだ。
球体を幾つも展開してる。
の早さで突っ込んで来て、なのはと念話でフェイトに呼ばれた女性は周囲に桜色に光る
それが開始のゴングであるかの様にフェイトがバルディッシュ携え、見えないくらい
いきなりレナはワンハンドガリルを二人に向けるや引き金を引く。
?
地獄は満員
WA
?
敢えてタンク
red zone:moreか
NTED 流されてイス ラポルト
?
?
ウォッカ 何言いたい 悲劇も喜 劇もアングルの違
?
111
る。
﹁カハ
﹂
右手に有る弾の切れたワンハンドガリルで刃を受け止めると、空いた左手で拳を作
レナがそれをしゃがんで避けると、返す刀で斜めに振るう。
の魔力刃を展開されたのを横凪ぎに振るう。
50口径のイカれた弾をかわしながらフェイトが肉薄し、バルディッシュから黄金色
いでしかない。言ってる俺も解らん
?
フェイトの鳩尾にメリ込んだ。
バルディッシュがプロテクションを展開した。だが、プロテクションはブチ抜かれ
勢い良く拳を突き出し、フェイトの鳩尾に叩き込んだ。
!?
﹂
!?
だが⋮⋮レナの打った手はこれだけでは無かった⋮⋮
がってる。
その結果 、なのははティアナを受け止めざる得なくなった。そのせいで手が塞
末的思考によるモノだ⋮⋮
その後にしたのは敵の仲間と言うよりは部下を砲弾代わりに投げ付けると言う世紀
フェイトを殴り倒した後、レナはパイナップルを投げ付けた。
飛んで来たのはティアナであった。
﹁ティアナ
空で花火が上がる。その途端、なのはへ向かって人影が飛んで来る。
ピンを抜いた状態で投げ付ける。
差し、道具袋からDDパイナップルを展開すると、低い高度で滞空してる高町なのはへ
レナの髪にフェイトの血が着くが気にしない。右手のワンハンドガリルをベルトに
⋮⋮鼻に直撃する。 それと同時に下へ引っ張り、接近させると立ち上がったレナの頭がフェイトの顔面
レナは拳を開き、再び拳を作ってフェイトのバリアジャケットを掴んで立ち上がる。
え、レナの拳はフェイトの鳩尾に強烈な一撃を入れる事に成功していた。
幾らフェイトのバリアジャケットが防御力が低く、リミッターが掛けられてるとは言
112 地獄は満員? red zone:moreか? WANTED? 流されてイス ラ
ト? 敢えてタンクウォッカ 何言いたい? 悲劇も喜 劇もアングルの違いでしかない。
てる俺も解らん
113
﹂
﹃マスター、手榴弾と火炎ビンです
﹁な
﹄
!?
スキャンレーザー
﹂
!?
﹂
を掴んだ。
レナは直ぐ様、立ち上がろうとしてたスバルの背後へと走るとバリアジャケットの襟
しかし、なのはが放ったアクセルシューターはフェイトを避けてレナへ向かう。
﹁な
シューターへ向かってフェイトを突き飛ばす。
桜 色 の 魔 力 弾 は レ ナ へ と 無 数 に 飛 ん で 行 く。炎 の 先 で レ ナ は 飛 ん で 来 る ア ク セ ル
指をレナへ差し、アクセルシューターが幾つも無数に放たれる。
で何とか防ぐ事が出来てる。酸素に関しても何とかなってる。
戦車すらも焼き尽くす強烈な爆炎が二人を包み込む。炎はバリアジャケットのお陰
論、ティアナにも被害が出ない様に包み込むかの如く展開するのも忘れない。
マルチタスクを使い、プロテクションの出力を最大にすると共にシールドを張る。無
プで無理矢理括り付けられてたのだった。
ティアナのバリアジャケットにはDDパイナップルとニトロビールDXがガムテー
あの世界の修羅はただ部下を投げ付けるだけで済ませる程優しくない。
!?
!?
﹁離せ
!!
しかし、スバルに当たらず⋮⋮
どんだけの誘導性能よ
全ての魔力弾はレナを蹂躙した。
││な
!?
確かに誘導が有るのは解ってたけど、いきなりスバルをかわして全弾私に当たるなん
!!
そして、なのはが放ったアクセルシューターが目の前に来る。
当たった手応えは有るが、殺った感触は無かった。
ズルフラッシュがスバルの目を眩ませ、火薬ガスはスバルの鼻を犯して行った。
スバルの耳元で爆発と金属のぶつかり合いが耳をつんざき、銃口から吐き出されるマ
なのは達を包み込むマーカー代わりの炎を頼りに何度も引き金を引く。
装填する。
それからワンハンドガリルのグリップを握ると、 スライドストップを押して初弾を
たワンハンドガリルの弾倉をワンハンドガリルへと右手だけで突っ込む。
歯車達の戦争、外道の名物たるミートシールドをレナはすると、ベルトに差し込んで
﹁あー、少しだけ手伝ってよ⋮⋮﹂
を気にする事無く持ち上げた。
スバルの叫びも空しく、襟を強く握り締めたレナはそのままジタバタと暴れるスバル
114 地獄は満員? red zone:moreか? WANTED? 流されてイス ラ
ト? 敢えてタンクウォッカ 何言いたい? 悲劇も喜 劇もアングルの違いでしかない。
てる俺も解らん
115
て⋮⋮
30発近くの桜色の魔力弾はレナを滅多撃ちした。
一発一発の威力はレナの様な肉弾戦を主軸としないハンターから見れば何とか耐え
られるが、殺られる可能性は高いモノだった。
それが30発⋮⋮絶え間無く全弾命中すれば⋮⋮
サラトガシリーズと呼ばれるヴラドコングロマリット、軍事部門が産んだ強化スーツ
の高い対衝撃、防弾性能が無ければショック死しても可笑しく無かった。
魔力弾の物理破壊には耐える程の性能はサラトガスーツには無かった。が、レナがブ
ラジャー代わりにしてるバリアビキニと言う、あの世界の携帯式のバリア並の防御力の
お陰でサラトガスーツは何とか壊れずに済んだ。
だが、なのはが放ったアクセルシューターの衝撃は、解りやすく言うならば、マイク・
タイソンばりのヘヴィ級ボクサーのラッシュを無防備で受けてるのと変わらない。 普段ならばレナは気にしない。平然と遣り返して敵を︻見せられないよ︼な肉片か燃
え盛る鉄屑を作るだけだ。
更にフェイトから飛び切りの一撃を貰ったのだからレナは完全に意識を手離したの
だった。
ここへ、このミッドチルダへ来る前にレナはグラップラーの本拠地へカチ込み掛けて
この戦いは紅い悪魔の敗北に終わったのだった。
故に⋮⋮レナは不完全なコンディション、不完全な武装であった。
た。
幾ら回復カプセルや満タンドリンクを飲んだとしても疲労迄は消す事は不可能だっ
るには足りなかった。
独房に入れられてからはイリットの手作り弁当を食べたが、蓄積された疲労を解消す
整え、常に観察を怠らなかった。
ヘリの中でもはしゃいでる様に見えたが、何時でも殺し合いが出来る様に臨戦態勢は
激戦に次ぐ激戦を終えたレナがこの世界に来てから休んでは居なかった。
り上げた。
ラーの親玉を殺す為の戦いを3日3晩眠る事無く戦い、無数の鉄屑を伴う屍山血河を造
文字通りの戦争だ⋮⋮親の敵を殺し、人間狩りをする大破壊前から生きるグラップ
戦争をしてた。
116 地獄は満員? red zone:moreか? WANTED? 流されてイス ラ
ト? 敢えてタンクウォッカ 何言いたい? 悲劇も喜 劇もアングルの違いでしかない。
てる俺も解らん
?
⋮⋮
?
﹂ ?
この戦車は管理局で最も有名な女性が保護した少女が乗ってたモノで、5000メー
ニックはレッドウルフをボンヤリと眺めてるユーノに聞く。
六課のヘリパイロット兼メカニックで気の良い兄貴分的な男⋮⋮ヴァイス・グランセ
﹁この戦車知ってるんですかい
文字通り木端微塵にする少女の鎧であれば尚更だ。
しかも、それが知り合いの中でも最も過激で、しょっちゅうドンパチし、笑顔で敵を
るミッドチルダに於いては至極当然だろう。
そう六課の整備工場の一角を占領してる真紅の重戦車を見れば質量兵器を否として
﹁コレって⋮⋮もしかしてレッドウルフ
﹂
関する考察や原文を翻訳した文書を仕事の息抜きがてら六課の隊舎へ来てたのだが
そんな彼は自分の親友達が立ち上げた部隊へレリックやとある女性が行った予言に
な次元世界に足を運ぶフィールドワーカーであった。
ユーノ・スクライアは苦笑いを浮かべてた。彼は無限書庫の責任者で考古学者で様々
閑話とある司書長の語り
117
閑話とある司書長の語り?
118
トル先からガジェットの群れをプロテクションやらバリアフリーやら無視して粉砕し
た兵器だった。
これを運ぶ時は苦労した。何せ重さが100トン近く有ってヘリでは持ち上がらな
い。
自走させようにもエンジンが掛からない。調べたらバッテリーが駄目になってる、エ
ンジンが掛かったとしても燃料が殆ど無いからコレも不可。
で、本部に問い合わせてみても陸上部は首都防衛隊が戦車保有してるが、100トン
もの戦車までは無かった。
で、やったのは大型の輸送ヘリを何機も用意してワイヤーケーブルで吊り下げると言
う方法だった。 操縦が偉く大変だった。
この戦車にも驚いたが、戦車の持ち主の少女にはもっと驚かされた。
質量兵器を使ったとは言え、魔法も無いのにガジェットの群れを生身で壊して、攻撃
を受けても平然としながら蹴り砕いたのだから⋮⋮
ヘリに乗った時の子供っぽい姿が嘘みたいだ。
ユーノはヴァイスに気付くと、レッドウルフと関わった時の事を話し始める。 ﹁三ヶ月くらい前にある世界で調査した時にね⋮⋮だけど、何でこの世界に有るんだ
119
ろ
﹂
﹂
?
﹁え
レナ⋮⋮﹂
﹁ええ⋮⋮レナって娘で⋮⋮さっきまでなのはさん達と戦ってんたんでさぁ⋮⋮﹂
皆元気にしてるかな⋮⋮
ターのレナ⋮⋮
身で戦車や戦闘機とか壊すミシカさん、犬のポチ、そして、チームのリーダー的なハン
││見た目は恐かったけど、意外と話が解ってくれるメカニックのアクセルさんに生
頭の恐そうなメカニックに生身で戦車を体当たりでひっくり返す犬を思い出す。
この戦車の持ち主が女の子だと聞くと、三ヶ月前に出会った二人の女戦士とモヒカン
﹁女の子
﹁フェイトさんが保護した次元漂流者の女の子が乗ってた戦車なんすよ⋮⋮﹂
?
から一転したんですよ⋮⋮﹂
に、先日保護した被害者の子供が彼女を見るなり狂乱して家族を返せ人殺しって叫んだ
﹁ええ、最初は次元漂流者として保護したんですがね、大量に質量兵器を持ってる上
そんなユーノの表情に気付かずヴァイスは更に続ける。
だった。
はやてがユーノの元へ来る頃にはユーノ・スクライアは間抜けな表情を浮かべてたの
?
閑話とある司書長の語り?
120
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
ユーノは沈黙したまま聞く。
﹁で⋮⋮一旦、独房に入れたんですよ。そしたら、独房から抜け出した上に職員に化け
て情報収集を行ってたらしいんですよ⋮⋮シグナムの姐さんやザフィーラさんを罠に
掛けたりもしてましたね⋮⋮
新人達もヤられましたが、誰も死んでないのが唯一の救いですわ﹂
││誰も死んでない
ナと際どい服装をしたソルジャーのミシカが立った。
モヒカンの男⋮⋮テッドブロイラーが口を開く。
!?
それを聴いた瞬間、レナはマカロフの引き金を思い切り力を込めて引く。マリアから
﹁不老不死になる前に死んだら御仕舞いじゃねぇか
﹂ だが、そんな満身創痍のモヒカンの前に同じ様に満身創痍で煤にマカロフを携えたレ
いにある。 け、全身からも血が流れてたり、凍傷が起きて居たり、炭化した箇所が数えきれぬくら
目玉の無くなった右目から血を流し、全身を包む特殊繊維のタイツ的なスーツは所々破
無機質で冷たい雰囲気の地下施設で真っ赤なモヒカンをした男が両膝を着いて口と
?
121
の教えである優しく引き金を引けと言うのは今回だけは無視だ。隣でバカデカイ拳銃
を持ったミシカも同様だ。
テッドブロイラーに殺されたハヤブサのフェイの妹も復讐の怨念を乗せてた。
ちっぽけなマカロフからちっぽけな鉛が撃ち出される。
となりからは50口径の焼夷炸裂徹甲弾が吐き出された⋮⋮
二人は何度も、何度も引き金を引いた。二人の拳銃のスライドが後ろに下がったまま
になる頃にはテッドブロイラーの首から下は惨たらしい状態になっていた。
﹁マリア⋮⋮私殺ったよ⋮⋮勝ったよ⋮⋮﹂
レナはそう言うや、グロウィンで手に入れた妖刀化してる大業物の刀を鞘から抜く
や、テッドブロイラーの首を跳ねた。更に手足を切り落とすと、転がった首に唾を吐い
てその場を後にしたのだった。
場面が変わる。
今度は小さな村であった⋮⋮
赤い髪をボーイッシュに短くした女性が未だあどけなさを持った少女の前に立って
る。その向こう側にはテッドブロイラーが立ち、暴虐の炎を撒き散らしてた。
女性と少女以外は炎に包み込まれ動きはしない。脇には炎上するバギーとバギーの
持ち主だったモノが転がってた⋮⋮
閑話とある司書長の語り?
122
﹁レナ逃げなさい
い炎に包まれた。
生きて⋮⋮﹂
﹁イヤアァァァァァ
﹂
女性が後ろに居る少女に何かを言おうとした瞬間、女性は暴虐の限りを尽くす凄まじ
!!
﹂ ?
﹁良くないわ⋮⋮彼女は危険な状態よ⋮⋮﹂
﹁どやシャマル⋮⋮状態は
下にして友人である高町なのはとフェイト・テスタロッサを伴い現れた。
シャマルは魔法でレナを眠らせる。丁度、主にして六課の司令である八神はやてが部
﹁大丈夫だから⋮⋮テッドブロイラーは居ない⋮⋮だから安心して眠って﹂ を奪われ、親を喪って泣いてるヒヨコであった⋮⋮
のは六課の機能を大半奪い、凄まじい戦闘能力を持った恐るべき敵では無く、大事な者
医務官であるシャマルは悲鳴に驚きながらもレナのベッドへと向かう。そこに居た
﹁グスッ⋮⋮ヒグッ⋮⋮マリアぁ⋮⋮﹂
き始めた。
六課の医務室で少女の悲鳴が響く。起き上がった少女⋮⋮レナは顔に涙を浮かべ、泣
!!!
123
シャマルは空間にモニターを映し出すと、映し出されたレナのメディカルデータを説
明し始める。
﹁専門的な説明は省くけど⋮⋮彼女の血中には異常な量の薬物が検出された。それだ
﹂
けじゃない⋮⋮彼女の身体には常人では死んでても可笑しくない火傷や銃傷、裂傷、刺
傷と言ったモノが夥しく残ってる⋮⋮﹂
﹁幾らなのはちゃんの攻撃でもそうは成らへんやろ
の隊舎すらも巻き込んでの暴力を振るう存在なのだと今更ながらに理解してしまった。
つまり、完全な武装とコンディションならばあの程度では済まない。下手すれば六課
制圧する事が出来た⋮⋮
彼女は本気で戦ってたのでは無く、本気を出せなかったからこそ、自分達は呆気なく
シャマルは説明を終えると、溜め息を吐く。六課の面々も同様だ。
出来たモノよ﹂
﹁ええ、傷は詳しく調べたらなのはちゃん達と戦う前⋮⋮具合から言って数時間前に
?
どうしたの
﹂
そんな重苦しい雰囲気の中、ユーノ・スクライアが医務室に現れる。
ユーノくん
?
﹁やぁ皆⋮⋮久しぶりだね﹂
﹁あれ
?
自分が魔法と触れあう切欠である青年が現れた事に高町なのはは少し驚く。フェイ
?
閑話とある司書長の語り?
124
ト・テスタロッサも珍しくユーノが来た事に同じ様に驚いてる。
ただ、八神はやては若干、バツの悪そうな顔で頭を抱えてた。
﹁さっきのゴタゴタでユーノくん来るん忘れてたわ⋮⋮ゴメンなぁユーノくん⋮⋮﹂
な の は と フ ェ イ ト は 少 し 苦 笑 い を 浮 か べ な が ら も 仕 方 無 い よ ⋮⋮ と 言 う。す る と、
ユーノはベッドに眠ってるレナを見ると、やっぱりと言った。
ユーノくん、そのこ知ってるの
﹂
﹁皆⋮⋮そのゴタゴタの原因に関して僕が知ってる範囲で話すよ⋮⋮﹂
﹁え
!?
査データであった。
ユーノは古代ベルカと何かしらの接点がその世界に有ったのではないか
?
⋮⋮
りをするグラップラーに追い回されて捕まりそうになった所をレナ達に救われた事
到着した初日、現地の怪物に襲われ、キャンプが台無しにされた。その翌日、人間狩
疑問を解消する為に足を伸ばしてその世界へと向かった。
と言う
内容は無限書庫で見付けた殉職した職員の手記や確保したサンプルを初めとした調
ユーノは当時の事を交えて話を進めた。
﹁3ヶ月前に僕は彼女と一時的に行動を共にして居たんだ⋮⋮﹂
﹁どういう事や⋮⋮﹂
!?
125
それから一月程、彼女達と行動を共にした事だった。
すると、はやてがユーノに質問する。
﹂
﹁質問なんやけど、レナはハンターと言う賞金稼ぎで、凄腕なんやな⋮⋮で、グラップ
ラーやテッドブロイラーは何なん
﹁彼女の目の前で母親とも呼べる女性を焼き殺した男でもある⋮⋮﹂
レナを指し、一言告げる。
⋮⋮﹂
﹁で、テッドブロイラーはグラップラー四天王と呼ばれる幹部の筆頭なんだ。そして
話してるユーノ自身、良い気分では無かった。
ざめた。 人間狩りと言う現実離れし、尚且つ非道極まりない言葉を聴いた瞬間、四人の顔は青
⋮⋮﹂
⋮⋮浚った人間は人体実験されるとか、売り飛ばされて奴隷にされるとか言われてるよ
﹁グ ラ ッ プ ラ ー は そ の 世 界 で 街 を 襲 っ て は 人 間 狩 り と 称 し て 人 間 を 浚 う 組 織 な ん だ
四人はそれでも構わないと言う様に無言で続きを促した。
﹁僕もそんな詳しくは無い⋮⋮けど﹂ ユーノは少し考えてから答える。
?
閑話とある司書長の語り?
126
部屋は完全なる沈黙に包み込まれたのだった。
それに何か点滴されてる⋮⋮
サラトガ⋮⋮それに下着も違う⋮⋮脱がされて着替えさせられてる。
胸と頭に取り付けられてるコードは何だろ
?
﹁目覚めたんだ⋮⋮良かったシャマル先生、心配してたんだよ
﹂
女性の声がする。レナはそっちを見ると、そこには管理局の白い魔王が居た。
?
気絶して負けて捕まったんだと改めて認識した。
右の手首からジャラッと言う金属の音がする。レナはそれを見ると、自分はあの時に
れた⋮⋮
││iゴーグルもコントローラーも取り上げられてる。完全に何もかも取り上げら
ても脱がされており、服の下には清潔な何の事は無いパンツとブラが着せられて居た。
の作った特殊戦闘服であったサラトガスーツと呼ばれる服は無く、バリアビキニに関し
そう⋮⋮レナの服装は患者が着る様な清潔な服であった。ヴラドコーポレーション
?
││アレ
が、直ぐに異変に気付いた。
あの騒動の翌日の朝⋮⋮レナは目を醒ました。
第7話
127
第7話
128
序でにテッドブロイラーの居場所も
シャマルは後ろでレナのバイタルデータを確認してる。
﹂
﹁お陰さまでね⋮⋮私の荷物を返してくれない
教えて
?
して情報を寄越せと宣う。
当然だが、その要求はやんわりと跳ね退けられた。
?
かを見せ始める。
レナは何でなのはが
ソレ
を見せるなり真剣な眼差しで居るのかが解らなかった。
"
それも痛みを伴う事も無ければ、リハビリの必要も無い程に⋮⋮
これの効能はハラワタが飛び出そうが、腕が千切れ様が治してしまう。
では無く、新陳代謝や細胞分裂を過剰に助長して回復させる画期的な治療薬である。
これらは痛み消し去り、怪我した箇所を内包されるナノマシンによって治療するだけ
あの世界では重宝され、貴重な回復アイテムである薬剤である。
なのはが見せたのはカプセルやドリンク剤に使い捨ての注射器と言った物であった。
"
なのははその要求に関してもやんわりと断ると無数とも言えるレナの持ち物の幾つ
﹁レナで良い⋮⋮なら、私が着てた服とマカロフだけでも返して﹂
﹁それは出来ないよ⋮⋮ねぇ、レナさんで良いかな
﹂
六課に大打撃を与えた少女は自分のヤらかした事を棚上げしながら平然と武器を返
?
129
大破壊前の
あの世界
で死の恐怖によって狂気に犯された科学者にして企業家、政
"
だ⋮⋮﹂
﹁レナ⋮⋮この薬を使うのは辞めた方が良いよ。レナには病院に入院して貰いたいん
一つに入る。
そんな治療薬である物を複数見せて来たなのはに疑問を持ちながらなのはは本題の
していた。
これのお陰で怪我人の治療は爆発的に進み、あの世界では必要不可欠なアイテムと化
治家でもあった文字通りの天才が産み出した薬品であった。
"
﹁何でさ ダメージはグッスリ眠れたから無くなってるし、疲れも取れた。それに
アイツ
が生きてるのに呑気に寝てられないんだけど⋮⋮﹂
?
"
なのよね⋮⋮﹂
﹁へぇ⋮⋮サクランHiみたいな感じ
アレは使う︵敵に︶とラリッちゃうから便利
﹁これ等の薬全てに麻薬と同様の成分が含まれてるの⋮⋮﹂
更に自分は大変危険な状態で生きてるのも奇跡だとも言われて訳が解らなかった。
録の騎士のごとき軍勢と戦い、勝つ為に生きる為に必要不可欠な治療薬を使うな。
倍、下手すれば10を自乗した様な程の圧倒的な強さを持つ人造の賢者が産み出す黙示
レナには解らなかった。レナに、否、人類にとっては人間のままで人間の何倍、何百
"
?
第7話
130
回復カプセル、回復ドリンク、エナジーカプセル、エナジー注射に満タンドリンクと
言った服用すれば死体一歩手前の怪我⋮⋮例えハラワタが飛び出ようが、肺が潰れよう
が、肝臓に穴が空こうが関係無く治してしまう奇跡の薬である。
だが、薬は毒にもなれば、その逆も有り得るのが世の常だ⋮⋮
痛み
を消し去る効能を持つ奇跡の薬品である。
これ等の薬にはオイホロトキシンと呼ばれる薬品が多かれ少なかれ含まれてるのだ
が、コレが問題であった。
コレはほんの微量ながら人間から
"
しかし、そんな奇跡の薬は 大量服用
無いのだから⋮⋮
と
"
常用
"
と言った行為をしなければ問題は
故に大破壊前のナノマシンによる医療は爆発的に躍進したのだった。
リットを無くす。
通常の麻酔であれば運動能力を削いでしまう。だが、オイホロトキシンはそのデメ
手術する⋮⋮
その為に大規模な手術の際には麻酔で痛みを麻痺させて痛みを感じさせる事が内容に
人 間 の 脳 は 許 容 範 囲 の 外 に 当 た る 痛 み に 耐 え れ る 程 の 頑 丈 さ は 持 ち 合 わ せ て な い。
"
真剣に聞かないレナになのはは思わず⋮⋮
破れば待ち受けるモノは⋮⋮ "
"
131
復讐なんて辞めて
﹂
﹁貴女の身体はボロボロで、本来であれば死んでても可笑しくないんだよ
テッドブロイラーは私達が捕まえるから
!
!?
ブチン
と言う金属が引き千切れる音がしてなのはが着てる制服が乱暴に捕まれ
レナは顔を俯かせ何か言ってる。なのはが耳を近付け、聞き取ろうとした瞬間⋮⋮
﹁ふ⋮⋮けるな⋮⋮﹂
己自身の命を投げ出せる事に怒りを覚え、怒鳴ってしまう。
優しく、人の命を助ける者としてなのはは目の前の少女が真剣に取り合わず、平然と
!
はしゃあないとしよう⋮⋮
しかも、横から獲物をカッ浚います
﹂
一息吐くと、再び慟哭を挙げる。
ふざけんな
それが同時
仇は必ず執るってね
私の
標的はテッドブロイラーです
不幸な行き違いから戦いになって負けた⋮⋮良くある事だから気にしない⋮⋮
!
?
﹁私はマリア、フェイさん、アパッチさん達に誓ったのよ
!!
?
代わりに、私を救って死んだマリア達に恩を返す為に私はテッドブロイラーを殺してや
!
?
﹁良く聴きなさい、高町なのは 保護すると言われて、牢屋にブチ込まれた。コレ
ナが居た。
物凄い力で引っ張られた。目の前には今までに見た事が無い程の憤怒の形相を表すレ
!
!!
る
﹂
ルジャーを頼ってた無力な自分。そして、
あの日
を迎えて再び絶望と無力で惨めな
"
少女にとって筆舌に絶えないモノだ。
そんな少女に⋮⋮⋮⋮
復讐を捨てろ
無駄だから辞めろ
﹂
そんな言葉を⋮⋮部外者に言われて当事者はどう思うだろうか
復讐は何も生まない
?
船長だけじゃない、裏切り者の親友へ復
﹁少なくとも奴に焼き殺される人間は居なくなる
?
?
?
!
特に船長は荒々しく、生きる気力に満ちてたのに鮫を殺した途端、無力で惨めな姿に
された兄弟も見た⋮⋮
讐したハンターも見て来た⋮⋮それ以外にも復讐する為に裏切り、皆殺しにした直後殺
││そんな事、船長を見たから知ってる
!!
気持ちと大事なモノを一切合切奪われた憎しみと怒り、哀しみを15になったばかりの
"
両親は殺された。それから荒野をさ迷い、母の親友であった不死身の女と呼ばれるソ
!!
﹁復讐に何の意味も無いよ⋮⋮﹂
第7話
132
133
変わってた⋮⋮
ユーノと出会う1週間前、レナ達はビイハブと言う船乗りと出会った。彼はUシャー
クと呼ばれる巨大な鮫に愛する妻や子供を殺された。
老人とは思えない執念を持って復讐する為に何度も何度も挑み、弟すらも死なせた男
であった。
Uシャークに掛けられた賞金は要らない、それを報酬としてレナ達を雇った彼は最終
的には鮫は海の藻屑と消えた⋮⋮
そして、死んだ様に寂しく余生を惰性で過ごす老人と化して居た。
話を戻そう。 なのははレナの殺意に満ちた瞳を真っ直ぐ見据えながら説得を続ける。
﹁レナ⋮⋮ユーノ君からレナのお母さんが目の前で焼き殺された事は聴いたよ。マリ
アさんて言うんだよね⋮⋮レナが死んだらマリアさんは哀しむし、イリットさんやナイ
ルさん、アズサの人達が哀しむだけじゃない⋮⋮アクセルさんやミシカさん、ポチに
だって迷惑が掛かるんだよ﹂
イリット、ナイル、アズサの人達⋮⋮命の恩人と自分を受け入れてくれたマリアの生
まれ育った村⋮⋮レナにとっては大事な存在だ。
彼女はソレ等の名前を聴いた瞬間、ピクリとして腕に込めてた力が緩み始めた。
第7話
134
なのはは直感的にレナが大事な人達を悲しませたくない、人殺しはなるべくしない優
しい性格だと思って居た。
例えば、医務室でもレナは子供を人質にして盾を作らずに煙幕だけ使って窓から飛び
下りたり、シグナムやザフィーラを罠に嵌めた際にも荷物にあったイペリットやサリン
と言った致死性の高いモノを使わず、
幻覚剤と気化した麻酔薬の詰まったガス缶を使って無力化した。
他にもヴィータやフェイト達を殺す事が出来たのに殺さなかった。
ヴィータに対しては顔面を撃てたのに敢えて、下へ向けて腹部を撃ってた。妙な話で
ある⋮⋮
ユーノから彼女がグラップラーと呼ばれる集団やNOAと言う巨大な人工知能が産
み出した怪物達と言った敵に対して毒ガスや一方的な砲撃で虐殺と言った事を行う聞
いた瞬間、なのはは説得を試みようと思ったのだった。
なのはは更に続ける。
﹁この世界ではルールが有るの⋮⋮本来ならルールに従ってレナを処分しなきゃ行け
﹂
ないんだけど、レナの居た世界の文化や環境と言った状況を鑑みて処分はしないことに
したの⋮⋮ルールは守るべきなのはハンターとしても常識だよね
なのはは更に続ける。まるで癇癪起こす子供を諭すかの様に⋮⋮
?
135
﹁レナを元の世界に戻してあげる事を約束するから⋮⋮﹂
少しすると、レナはなのはの制服から手を離して俯きながら口を開いた。
﹁テッドブロイラーはバイアスグラップラー⋮⋮いいえ、バイアス・ヴラドと言う男が
何人かの科学者と共に産み出した改造人間⋮⋮いや、兵器と呼べる存在⋮⋮﹂
﹁奴の写真は私のBSコントローラーのデータに収まってる⋮⋮アイツが操る炎は戦
車の頑丈な装甲ですら蝋燭みたいに溶かす程強力、炎だけじゃない、アイツの髪は特殊
生体金属で出来ていてそれをブーメランの様に投げて来る⋮⋮﹂
レナが言うと、なのはの脇に八神はやてが立っていた。
﹂
﹁レナやったか⋮⋮レナはテッドブロイラーを殺した筈と言ったなぁ それは何時
の話や
?
程の残虐な行為をしたと言うのだから⋮⋮
言え、人間の頚を跳ねただけでは無く、手足を斬り落とすと言う普通では考えられない
レナが、レナ達が行った行為に流石の二人も絶句した。目の前の少女は生物兵器とは
⋮⋮﹂
二 度 と 蘇 ら な い 様 に し た ら ミ シ カ ⋮⋮ 仲 間 の 一 人 が ア イ ツ の 火 炎 放 射 機 で 燃 や し た
達はアイツと長い時間戦って何とか殺せた。私はトドメとして刀で頚を、手足を跳ねて
﹁私が此処に来てから何日経ったか知らないけど⋮⋮あの世界では二日前。私⋮⋮私
?
第7話
136
更にレナは話を続ける。
﹂
﹁それから、怪我を治し、少し休んでから再び闘いを始めた⋮⋮﹂
﹁仇を討てばソコで話は終わりや無いのか
﹁真実
どう言う事や⋮⋮﹂
る迄は⋮⋮﹂
﹁私はグラップラーのボスがテッドブロイラーだと思ってた⋮⋮あの場所で真実を知
ず目の前の少女は はやては疑問を感じて居た。敵討ちはその時点で終えてる筈であった⋮⋮にも関わら
敵討ち⋮⋮テッドブロイラーを殺す事が人生の目標だと、ユーノの話から推測してた
?
畜を集める様に狩り、それを実験台にする人間や組織など聴いた事は無いのだから。
確かに管理局で様々な犯罪者を見て来た。だが、不老不死を実現させる為に人間を家
は思わなかった⋮⋮
レナの話を聞く内にはやてやなのはは吐き気を催す邪悪な存在が実際に存在すると
指示し、おぞましい実験をひたすらに続けて来た⋮⋮﹂
も言える時間繰り返して来た。その実験台の補充の為にヴラドは人間狩りを行う様に
病から死の恐怖に襲われたの⋮⋮ソコでソイツは不老不死を叶える為に実験を永遠と
﹁奴等⋮⋮いえ、バイアス・グラップラーの産みの親であるバイアス・ヴラドは不治の
?
137
﹁私達はバイアス・ヴラドを殺した⋮⋮二度と人間狩りが起きない様に⋮⋮哀しむ子
供の顔を見たくないからバイアス・グラップラーを潰したのよ⋮⋮﹂
レナは言い終えると、ベッドに横になった。
﹁辛い事を聴いてすまんな、レナ⋮⋮身体治したら故郷に帰したるから養生してな﹂
はやてとなのはが医務室を後にしようとした途端、後ろから呼び止められる。
﹁一 寸 待 っ て ⋮⋮ お 願 い が あ る の ⋮⋮ テ ッ ド ブ ロ イ ラ ー を 捕 ま え る な ら 私 も 手 を 貸
す﹂
﹁それはアカン⋮⋮レナにはリンカーコアがあらへん。それだと魔法は使えんのや。
それに実弾を使わない武器なら
﹂
それにこの世界は質量兵器⋮⋮簡単に言えば実弾を放つ銃は禁止されとるんよ﹂
﹁なら刀や剣は
?
になって眠ったのだった⋮⋮
?
﹁はやてちゃん、レナは大人しくしてると思う
﹂
なのははハッキリと駄目だと言う。それを聴いた途端、レナは諦めると、ベッドに横
なの⋮⋮それに怪我人は足手まといになる﹂
﹁レナ⋮⋮八神三佐が言ってるのはね、魔法を使わない武器は禁止してると言う意味
?
第7話
138
﹁そ れ は 無 さ そ う や。問 題 は 山 積 み や な ⋮⋮ テ ッ ド ブ ロ イ ラ ー に レ ナ そ っ く り の 少
女。それに何故かミッドチルダに発生したガジェットと別種の無人兵器⋮⋮そうや、無
人兵器の事を聴くん忘れてた﹂
はやてはレナの語った壮絶な闘いの顛末やテッドブロイラーに関する話で無人兵器
に関する話を聴き損ねた事に自分自身呆れた。
なのはは苦笑いを浮かべながらもレナが逃げ出さないかと少しばかり不安が有った。
二人は廊下を進み、六課へ出向してるシャーリーの居る技術ラボへと着いた。
﹂
﹁はやてさん、彼女の端末何ですが⋮⋮﹂
﹁何か解ったんか
﹁それが⋮⋮﹂
ソコに写し出されたのはジェリ缶に脚が6つ生えたモノやミサイルを何発も吊り下
﹁これが今までに確認された無人兵器です⋮⋮既に地上本部には送信しました﹂
れた無人兵器を抜き出したのを写し出した。
シャーリーは言うと、空間モニターにレナのBSコントローラーから今までに確認さ
ました。他にも彼女が経験した戦闘データや武器に関する情報が多数存在してました﹂
﹁彼女の端末⋮⋮BSコントローラーから無人兵器に関するデータが膨大に残されて
シャーリーが言葉を濁すと、はやては構わへんから言ってと言う。
?
139
げたUAV、砲身を幾つも備えた小さな戦車等と言った管理局が存在すらも否定するで
あろう兵器のデータであった。
更にシャーリーはレナのコントローラーを操作して彼女の保有してる武器に関して
解説を始めた。
﹁彼 女 の 保 有 し て る 武 器 は 様 々 な モ ノ が 有 り ま し た ⋮⋮ 先 ず 始 め に グ レ ネ ー ド ラ ン
チャー付のアサルトライフル、大型電源使用の収束荷電粒子砲、それに日本刀です⋮⋮﹂
﹁初めましてレナさん⋮⋮私はオーリス・ゲイズ。少し出掛けません
とか言われてハイそうですか
有り得ないでしょ
﹂ ?
﹂
?
キャビネットに置いた。
﹂
オーリスはバッグからレナにとって大事な拳銃であるマカロフを出すと、それを脇の
貴女の信用を獲るのに足り得るかしら
﹁確かにその通りね⋮⋮でも来てくれたら貴女の持ち物を返せるのよ⋮⋮先ずコレは
?
﹁オーリスさんだっけ⋮⋮私は貴女の事を知らないのよねーいきなり出掛けましょう
だろう⋮⋮
更に制服の襟に取り付けられた階級章らしきモノが八神はやてと同じモノなら尚更
る。
迄に自分に接触するのは大抵は何かしら裏がある。特に何かしらの提案や好意を見せ
レナとしては覚えの無い人間で何かしら腹にイチモツ抱えてるんだろうと思う。今
イズと名乗る管理局の制服を来た女性はレナの居る個室へ来るなり自己紹介をする。
面会として来た眼鏡を掛けた真面目でキツそうな性格に見える女性⋮⋮オーリス・ゲ
?
退院、ドライブからの大惨事
退院、ドライブからの大惨事
140
141
私弱い女の子に何させたいの
﹂
レナはソレを見て飛び付きたくなるが、目の前の女性を警戒しながら視線だけやると
再びオーリスに視線を戻す。
﹁足りない⋮⋮貴女の目的は
?
の子だよ
戦車で暴れねぇし、ミートシールド作って撃ち合いも
﹄とガチの突っ込みが来てミシカは笑うだろう。
か弱い女の子はなぁ
因みにコレをアクセルと言う仲間のメカニックが聴いたら﹃オメェの何処がか弱い女
えずに事実を全て並べ始めた。
年相応の可愛らしい仕草で困った様にオーリスに言うが、オーリスは取り付く島を与
?
!
﹂
?
?
であり、弾倉には8発の拳銃弾がキチンと詰め込まれて居た。
﹁⋮⋮⋮⋮これはオバサンが怪しい真似したら撃って良いて意味
﹂
かった。更に薬室には9│18㎜口径の拳銃弾が装填されており、何時でも撃てる状態
撃針に細工はされておらず、内部のスプリングやカムと言った機械部にも異常は無
し、弾が薬室に装填されてるのを確認する。
オーリスに見詰められながらレナはマカロフのスライドを後ろに引くと撃針を確認
も上位クラスの魔導師と張り合えないでしょう
魔法を使わずシールドごと蹴り砕く、更にリミッターを掛けられてるとは言え管理局で
﹁か弱い女の子はガジェットの群れを質量兵器を使って破壊するとしても⋮⋮生身で
しねぇよ
!! !?
退院、ドライブからの大惨事
142
言うやレナはマカロフをオーリスの目と鼻の先で構え、何時でも撃てる体勢に入って
る。
﹁そうとって貰っても構いません⋮⋮しかし、私を殺せば貴女は元の世界に戻る方法
が無くなると、共にテッドブロイラーに関する手掛かりが無くなります⋮⋮そして﹂ 銃口を向けられても平然とするオーリスが言い終えると共にレナの頭に赤い光点が
﹂
当たる。窓越しに赤い光点を当てた相手を確認すると、レナは少し考え、マカロフを患
者服の中⋮⋮パンツに挟んで隠した。
﹁さて、連れていって貰いましょうかお姉さん
何故なら、街を照らすネオンや街灯は煌々と明るく、レナが今までに見てきたビルは
にも思えた。
臭いもしない。更にミッドチルダはレナにとって、否、あの世界の住人にとっては天国
ミッドチルダには銃声や砲声が一度も聞こえない、砂の香りも血の臭いも鉄や硝煙の
景色に戸惑いを感じていた。
廊下を歩いてる間、否、病院へ搬送される間からレナはこの世界⋮⋮ミッドチルダの
廊下を歩いて行く。
レナの言葉と共に赤い光点は消える。そして、オーリスに導かれるままに病室を出て
?
143
あの世界の廃墟と違って綺麗で、みすぼらしくなく、浮浪者が住み着いてる事も無けれ
大破壊
前ならこんな感じの天国みたいな世界だったのかな
ば見た事の無い店が多数溢れており、人々は絶望を表してないのだから。
│ │ 私 達 の 世 界 も
⋮⋮
"
﹁こっちだとクルマ多いんだね⋮⋮だけど、柔そうね。これじゃ、砲弾でイチコロされ
の自動車であった。
エレベーターに乗り、地下駐車場へと出る。オーリスが乗ってきたのはセダンタイプ
けないのだから。
だからこそ、新鮮で汚染されてない水は貴重なのだ⋮⋮水が無ければ人類は生きて行
の液体を無理矢理飲める様に調整して飲むのが常識だ。
だが、あの世界では水を確保するために強烈な酸性雨を貯めなければならないし、そ
されたコンクリートも溶かして行き、台無しになる。
火傷するだけじゃない、土壌も汚染されて作物は育たなくなる。それ以外にも鉄や残こ
あの世界では雨は強酸性で、とある薬品が無ければ酸で溶かされてしまうのだ。酸で
は無かった⋮⋮
物も沢山あった。それにアシッドレインも降らない。昨日の夜の雨見たら、溶けてる所
ご飯は美味しかったし、新鮮な水が簡単に手に入る事もあれば、飲んだ事の無い飲み
"
退院、ドライブからの大惨事
144
るわよ
﹂
﹂
!!
動六課の面々とやり合って大損害を叩き出した
怪物
とは思えなかった。
"
集秘話回線を使って連絡を取った。
その時の会話は覚えてる⋮⋮
﹃おや、珍しい⋮⋮貴方から連絡が来るとは﹄
?
い
﹄
﹃黙れイカレ科学者め⋮⋮毎度、ワシがどれだけ尻拭いをしてると思っている
﹄
﹃酷いね⋮⋮大抵の事件が起こると君は僕のせいにするんだから⋮⋮根拠はあるのか
﹃今日の午後、機動六課が何者かに襲われたそうだ⋮⋮貴様のナンバーズの仕業か
﹄
実の父であるレジアス・ゲイズ将軍へSから得た報告を挙げると、彼は協力者へと特
"
そんな少女がガジェットの群れを無傷で粉砕し、更に管理局で最も戦力を保有する機
オーリスは後ろの席ではしゃぐ少女が幼く見えた。
﹁すごぉい、クッションふわふわぁ
押しただけでヘコむ事に呆れながらも後ろに乗った。
レナはオーリスのセダンを眺め、タイヤやボディを触れてみて金属が薄い、更に軽く
?
たよ⋮⋮
﹃僕の作ったクローンのオリジナルだよ、六課で暴れたのはね。僕も正直言って驚い
?
?
145
あ、そうそう⋮⋮オリジナルにはリンカーコアは無いよ⋮⋮純粋な体力と質量兵器だ
けだ﹄
それから父の行動は早かった。権限を最大限に利用して彼女の持ち物全て陸上本部
の管轄として回収した。無論、鉄屑になりかけの真っ赤な戦車もだ⋮⋮
私も好奇心から試しに彼女のライフルらしき銃を撃ったが、反動がキツかった。連射
速度が異常に速く、ほんの少し引き金を引いただけで20発の弾が出た。私はひっくり
返って尻持ちを突いてしまった⋮⋮
人型の的には5発くらいしか当たって無いにも関わらず当たった箇所は胴から上は
粉々、壁は小さなクレーターが幾つも出来ていた。
プロテクションによるシールドを介したにも関わらずだ⋮⋮紙を破く様に貫いた銃
弾に私は驚いた。
更に大砲が取り付けられたので撃ってみたら⋮⋮訓練所の壁が粉々になって外が見
えた。反動は全然無く、砲撃専門のSSランク魔導師による砲撃にも耐えうる攻撃が容
易く行えるのには唖然とした。
もう1つの武器に関しては重くて持ち上がらなかった⋮⋮
退院、ドライブからの大惨事
146
一体どんな世界から来たのだろうか
一体どんな体験をすればいたいけな少女が
﹂
質量兵器は恐ろしい武器であると納得出来た。
﹁ねぇ、御姉さん⋮⋮護衛て居るの
﹂
オーリスの思考がレナの質問で遮られる。
﹁はい、居ますけど⋮⋮何か
怪物
"
になるのか疑問に感じると共に
ら﹁あの小娘、俺達の居場所気付いて睨んでやがる⋮⋮﹂と漏れたのを聞いて納得した。
念話通信でスナイパーにデモンストレーションして貰った時にスナイパーチームか
と聞いた時は驚きを隠せなかった。
を連れてくる事になるからと言って父の周囲を護衛する手練れの部下達が護衛に回す
質量兵器によって荒廃した魔法の無い世界から来たとは父から聴かされ、危険な相手
?
?
"
?
更に3台のSUVが爆発を起こす⋮⋮その3台には目の前を先導するSUVも含ま
者が居ると言う報告が来る。だが、それは爆発音と共に消えた。
レナの言葉が終えると、それを裏付ける様に護衛チームから念話通信でバイクの不審
﹃三佐、不振なバイクが居ます⋮⋮如何居た⋮⋮﹄
なんだけどさ⋮⋮﹂
﹁護衛にバイク使ってる奴は⋮⋮ クルマならコレを守る様に配置してるから納得
?
147
﹂
れており、オーリスのセダンにぶつかりそうになる。
﹁ハンドル切ってアクセル全開
﹁な
﹂
バイクはその間にセダンの後ろに着くや、ヘルメットを取って後ろに投げた。
エンジンが咆哮を挙げ、タイヤは軋む音を響かせながら加速する。
するSUVを避けると共にアクセルを力一杯踏んだ。
オーリスは言われるがままにレナと共にステアリングを右に切り、転がりながら横転
右に切ったらぶつかる。
突如、レナが前に乗り出しハンドルを取って無理矢理左に切る。右脇には塀が有って
!!
﹁御姉さん、運転そのまま
私が合図したらブレーキを思いっきり踏んで
﹂
!!
レナはマカロフをパンツから抜いて後ろに再び移る。後ろに移ったレナはマカロフ
!
リスは頭をぶつけながらも運転を続ける。
サスペンションが上下に激しく揺られる振動がオーリスとレナに襲い掛かる。オー
前輪を叩き付けた。
少女は淡くて長い金髪を靡かせながらバイクをウィリーさせるやセダンのテールへ
様にと言ったレナと瓜二つの少女なのだから⋮⋮
オーリスは驚いた。何故ならソコに居たのは父であるレジアス・ゲイズが連れてくる
!?
退院、ドライブからの大惨事
148
をしっかりと握るやウィンドウにグリップの底を叩き付けた。
﹂
ウィンドウは粉々に砕ける。レナは身を乗り出すと、マカロフをバイクに乗る少女へ
向けてセフティを外した。
﹁漸く⋮⋮漸くお前を殺せる⋮⋮お前を殺して私は私になる
!!
丁 度 良 い わ ⋮⋮ ア ン タ か ら テ ッ ド ブ ロ イ
バイクに乗った少女は叫び声を挙げる。それを聞いたレナは怒鳴り返した。
﹂
﹁訳 解 ら な い 事 を 抜 か す な ク ソ ッ タ レ
ラーの居場所を吐かせてやる
!!
﹁マジで
﹂
ると共に浮遊し、高度を取る。
怒鳴り返すと、レナはマカロフを撃った。すると、少女はバイクから飛んで弾を避け
!!
﹂
!
けて来る。
﹁ブレーキ
そしたらも一回アクセル
そして、驚くレナを尻目に深紅の魔力スフィアを幾つも造るやセダン目掛けてブチ蒔
!?
オーリスは慌てながらアクセルを目一杯踏んで再び走らせる。レナがバックミラー
るが、ドアをしっかり掴んで耐えると、右手にマカロフを握ったまま屋根に上がる。
輪である後輪が空転を始め、僅かに進んで一気に減速されて行く。レナは落ちそうにな
レナの叫び声に気付くと、オーリスはブレーキを蹴る様に踏む。すると、セダンの動
!
149
に写ると、怒鳴る様な大きな声で叫んだ。
﹂
狙いはアタシみたいだから引き離す
﹁何する気ですか
﹁武器が無い
﹂
!!
!?
﹂
!
て叫ぶ。
﹁来なさい
アンタの獲物は此処よ
そして、バイクがセダンから離れるとレナは平行して飛ぶ少女へ向けて中指を突き立
大に吐き出しエンジンが吠える⋮⋮
使ってる様にアクセルグリップを一気に握って捻ると、エキゾーストをマフラーから盛
レナは叫び返しながら、テールに食い込んだバイクに飛び写る。そして、元の世界で
!
少女はレナを上空から追跡しながら魔力弾をアパッチのチェーンガンも真っ青な弾
クを走らせながらクルマとクルマの隙間をすり抜けて行く。
自分の手札はほぼ何も無い事に焦りを感じる。だが、敗ける気は毛頭無いレナはバイ
どうする
こっちはマカロフだけ、弾はマグに残った8発だけ⋮⋮
││奴は飛べて、こっちは飛べない⋮⋮向こうは武器が沢山、弾もタップリ。
マを速度を緩める事無く避けて逆走して行く。
それから、勢いよく飛び出して隣のレーンへ移る。前から来るクルマ、クルマ、クル
!
!?
幕を道路へ向けて吐き出す。だが、レナに当たる事は無く、クルマを破壊し、道路を壊
すだけであった。
﹁やーいヘタクソ∼﹂
レナは前を見ないで片腕だけでバイクを操りながらからかう。操縦を一歩間違えれ
ば死に直面する状況にも関わらず余裕を見せ、自分をからかってくるレナに少女は更な
る苛立ちを覚えた。
﹂
││嘗めやがって⋮⋮だったら
﹁だったらこれはどうだ
今すぐに戦闘行為を辞めて、此方の指示に従いなさい
﹄
それでも少女は攻撃の手を緩める事無く、魔力弾のシャワーを噴炎が挙がる場所へと
起こした⋮⋮
タンク内の揮発性の工業薬品は一気に化学反応を起こして道路が崩れる程の爆発を
直撃する。
レナがタンクローリーとすれ違う直前⋮⋮魔力の砲弾はタンクローリーのタンクに
きな魔力弾が光の速さでタンクローリーへと飛んで行く。
少女は滞空するや杖の先をレナよりも先⋮⋮タンクローリーへと向ける。すると、大
!!
!!
降り注がせようとすると⋮⋮
﹃時空管理局だ
!!
退院、ドライブからの大惨事
150
151
思い切り舌打ちすると、少女は展開したスフィアを管理局の空戦魔導師に向けて放っ
た。
プロテクションで防いだ魔導師達は少女の居た所を見るが姿は見えない。探そうと
した次の瞬間、ガジェットが10機現れる。
ガジェットはある機能を発動させた⋮⋮
すると、魔導師達は次々と地面へ落ちて行く。まるで殺虫剤でコロリと逝く蝿の様に
⋮⋮
混沌とする道路や地面からベチャ、グチャッと言う生々しい音がする。
﹁鉄屑にすら敗ける雑魚は引っ込んでろての⋮⋮﹂
少女は悲鳴や怒声、炎や煙に包み込まれる道路へと立っていた。目の前で手を伸ば
し、助けようとする魔導師に気付く事無く潰れた蛙の様に内蔵が飛び出た腹を踏み、越
えて行く。
大惨事を起こした切っ掛け⋮⋮目的はレナ、ただ独り⋮⋮
少女はレナを殺す為なら何でもヤろうと決意して居た。故に少女は死んでないまで
も多少の怪我をしているであろうレナにトドメを刺せると思うと、期待と喜びで胸が一
杯であった。
ゲホッ
ウプ⋮⋮ゲエェェェェロロロロ⋮⋮﹂
?
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよ
﹁ゲホッ
!
﹁痛い
痛い
痛い
!
痛い
!
痛い⋮⋮﹂
!
血がボタボタと落ち、立ち上がるものの、レナは周りの光景に足が若干震える。視界
覚に悲鳴を挙げながらも立ち上がる。
普段から使用してる回復カプセル系の治療薬は何処にも無い。久し振りに感じる痛
を挙げるのは至極当たり前だろう⋮⋮
未だ16になったばかりの少女なのだ、脳のキャパシティギリギリの苛烈な痛みに悲鳴
痛みと炎や熱による火傷で全身が痛みに悲鳴を挙げる。歴戦の猛者とは言え、レナは
!
か、血が滲んで赤く染まる。
ゼーハー、ゼーハーと荒く息する。患者服は炎で焼けてボロボロ、服は怪我してるの
そして、胃の内容物を焼けた地面にぶちまけた。
たレナは血へど混じりの咳をしてると、いきなり横へ向く。
謎の少女からの攻撃によって道路の大半が吹き飛んだ。謎の少女の攻撃目標であっ
!
ね。な、8話目
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
152
153
はボヤけ、目は頭から滴る血と噴煙で痛み続ける。
骨はレベルメタフィンによって密度が尋常じゃないお陰でアダマンチウムの骨格と
爪を持ったヒーローばりの強度と耐久性によって折れてない。
││流石に爆心地一歩手前で転べば全身痛いわ。破片が色々刺さってるけど何時も
の事⋮⋮
問題はアイツをどうやって捕まえるか⋮⋮
武器はマカロフ、弾はワンマガジンのみ。弾は幸いアクセルのお手製だから何とかな
りそう⋮⋮当たればだけど。
呼吸を整え、戦場と化したハイウェイに並ぶクルマだった鉄屑や焼けた死体と言った
残骸に身を隠しつつ相手の考察し、ボロボロ患者服を破いて包帯を作り怪我の処置を始
める。
││向こうの速さは大体200以上。下手すると音速行くタイプ⋮⋮此方で言うな
らソルジャー。しかも空飛べるから余計タチ悪い。
光学兵器かミサイルが欲しい所だけど、そんな都合の良いモノ有る訳ない⋮⋮ せめて回復カプセル有ればな⋮⋮
傷口に指を突き入れ、車の破片を抜いたり、押し込んで逆から突き出させて外に出す。
他にも肌から突き出た破片を引き抜き地面に投げ棄てる。破片を抜き取ると破いて包
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
154
帯にした患者服を巻き付けた。
レ ナ の 姿 は 怪 我 し た 箇 所 に 処 置 す る 内 に 白 い ブ ラ ジ ャ ー と パ ン ツ だ け と な っ た の
だった。
││落ち着かないな。誰かの服を借りようかな⋮⋮
レナは目の前に見えるトラックのコンテナに目をやる。
││何か使えそうな物無いかな。何も無くても着替えくらいは欲しい⋮⋮
コンテナまでフラフラとした足取りで歩み寄る。幸い、
﹃謎の少女﹄は管理局に囲まれ
て居た。気が自分から逸れてる間にレナは体制を立て直すなりコンテナへ滑り込む様
に入ったのだった⋮⋮
謎の少女はガジェットを周辺に展開してレナの居る地点の半径3㎞を包囲して邪魔
が来ない様にするのと、レナを逃がさない様にしたのだった。
そして、地上に降り立ち彼女はデバイスを変形させ、バーレットM82A1と呼ばれ
る大型のライフル型にする。銃口の下には刃渡りが長く、背が鋸状の銃剣が取り付けら
れていた。
ジリジリと慎重に歩みを進める。気配と物音がするや彼女は素早く砲口とも呼べる
155
銃口を向け、引き金を二回引いてダブルタップを決めた。
魔力弾は目に見えない速度で飛び、物音と気配がしたファミリーワゴン車のハッチを
ブチ抜いた。すると、中から首の無い女性の胴と右腕のみが壊れたハッチと共に落ちた
⋮⋮
﹁チッ⋮⋮﹂
彼女は舌打ちするや再び歩みを進め、小さな光の珠を幾つも展開した⋮⋮
光の珠⋮⋮サーチャーと呼ばれるソレは主である彼女の為に獲物を探す猟犬の如く
遠くへ飛んで行く。
サーチャーから送られる映像を脳とデバイスで処理して自分と同じ顔の獲物が見付
かるのを周囲に視線を走らせながら待つのだった。
その頃、レナはコンテナの中で着替えを済ませてた。コンテナに有ったのはアウトド
アレジャー用の衣類やキャンプ道具に非魔導師用に作られた殺虫剤や虫除け、燃料のボ
ンベやランタン、望遠鏡等であった。
レナの姿は灰色のカーゴパンツにトレッキングシューズ、それにブラジャーの上から
直接薄手のジャケットを羽織ると言う動きやすい格好であった。
レナはアウトドア用のコンロの燃料の詰まったガスボンベに発煙筒をダクトテープ
で留めた即席の焼夷弾を幾つか作ると、斜めがけ式の大きめのバッグに詰めれるだけ詰
め込んだ。他にもマチェットと呼ばれる大振りの鉈や何本ものの発煙筒をカーゴパン
ツを留めるベルトに差して居た。
││コレで少しはマシになった。後はどうやって捕まえるか⋮⋮
体調や持ち物が先程よりもマシになったレナは冷静に獲物である自分と同じ顔の敵
をどうやって捕まえるか考えながら慎重にコンテナから出ようとする。
右手にはマカロフを持ち、静かにコンテナハッチを押して音を立てない様に開ける。
それから足音を立てる事無く、外へ出ると目の前に仄かに光る小さな深紅の珠が浮かん
でいた。
││何かしら⋮⋮
それに触れようとした瞬間、背筋にタイシャーの氷室にある冷たい氷が入れられた様
な悪寒が首筋に走る。
レナは直ぐ様、深紅の珠に目もくれず走り出す。すると、上から深紅の魔力弾の群
れが流星の様に降り注ぎ始めた。
││アレは偵察UFOみたいな偵察機能を持った魔法みたいね⋮⋮全く、魔法はデタ
ラメ過ぎ
!
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
156
157
それに狙いが正確。だから解る⋮⋮
あのガキ、嘗めてるわね⋮⋮安く見られたわ。ハンターとして締めてやらないと⋮⋮
レナは後ろから追い掛けて来るかの様に降り注ぎ来る光線の雨が自分を狙わずに自
分の僅か後ろに律儀に照準を合わせて弾幕をブチ蒔けてると気付いた。
嘗めてるのか、敢えて慌てさせて消耗させようとしてるのか等⋮⋮レナからすればど
うでも良かった。
だが、レナは今までに様々なモノと戦い、殺し、生き抜いて来たハンターのプライド
が傷着けられた事で完全にキレた。
少女へ向けてマカロフを撃ちつつベルトから発煙筒を取り、点火する。発煙筒から赤
い煙が勢い良く噴き出してレナを包み込む。
少女は舌打ちしてからタンクローリーを吹っ飛ばした魔法よりも若干強力な砲撃を
撃とうとしていた。
その証拠にデバイスから硝煙を吹いた大型の薬莢が地面に落ちてカランカランと言
う渇いた音がした。
そして獲物を跡形も無く消し飛ばそうと引き金へ細い指を掛けた瞬間、赤い煙から何
かが飛び出して来た。
少女は直ぐ様、魔力弾でそれを撃ち落とそうと小さな魔力弾を形成する。そして、ソ
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
158
て事は来る
レへ向けて放つと爆発が起こった。そして、赤い煙がもうもうと少女を包み込んで行っ
た。
││目眩まし
!
女に告げる。
無慈悲にもデバイスはオーバーヒートの為、冷却開始しますと感情の無い電子音で少
﹃Over Heat⋮⋮Cool Down Process Start﹄
だが、弾は出なかった。
た。それを撃ち落とそうと引き金を引いた。
すると、今度は大きなバッグがメジャーリーガーの豪速球も真っ青な勢いで飛んで来
煙幕が晴れる頃には⋮⋮そこに道路は無かった。
い、地面へと力無く落ちて行く。
たった道路の部分は崩落を起こし、クルマの残骸や幾つものの死体は衝撃波で宙を舞
倍返しで礼する様に少女は引き金を引いた。地面に当たるとキノコ雲が上がり、当
んでる所であった。
ションをチッポケな9㎜の銃弾が貫き、少女の顔を掠る。顔を横へ反らして無ければ死
更 に 間 髪 入 れ 無 い 様 に す る 様 に パ ン パ ン と 言 う 小 さ な 銃 声 が す る と 共 に プ ロ テ ク
?
159
少女はデバイスに取り付けられた銃剣を横に払い、バッグを弾き返そうとする。銃剣
と言う銃声が響き渡る。
がバッグを突き破った。
パン
﹁お目覚め さて、アンタが何者かなんてどうでも良い。私が知りたいのは只一つ
そんな少女へレナは気にする事なくインタビューを始めるのだった。
少女はレナを殺す様な視線で睨みながら敵意を露にして居た。
る。
ロープで縛られて動かせない様にして、しかもデバイスは自分から遠くへと投げられて
殴ろうとしたら、両手は手首をトラックのフレームに縛り付けられ動かせない。足も
のマカロフを向けて居る。
少女は目を醒ます。目の前には自分と同じ顔の敵がチッポケな質量兵器である拳銃
そして、少女は糸の切れた操り人形の様に崩れ落ちた⋮⋮
ける様に犯す。
そして、爆発が起こり炎が少女に襲い掛かり爆風による衝撃波が少女の全身を叩き付
!
?
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
160
⋮⋮
テッドブロイラーは何処だ
﹂
戦う力が無いと考えるのは当たり前だろう⋮⋮
それにグラップラーの拠点は
﹂
?
だからこそ少女は納得が行かなかった⋮⋮
﹂
﹁もう一度聞くわ⋮⋮テッドブロイラーは何処
﹁ペッ
?
更に身体は非常に危険な状態で、武器は一切持っていない、戦車も回収されて完全に
少女だと高を括って居た。
少女は自分が狙ったのはリンカーコアの無いひ弱な少女で、自分と比べて遥かに劣る
?
﹂
!!?
﹁テッドブロイラーは何処
グラップラーの拠点は
﹂
?
少女は涙を浮かべ、悲鳴を挙げながらもレナを睨み続ける。
?
悲鳴が挙がる。マチェットを突き立てた本人は左手で顔を叩くと再び質問を続ける。
﹁嗚呼ァァァァ
血飛沫がレナの顔や手に飛び散る。
てた。
げるとソレを少女の頭に勢い良く落とし、叩く。更にマチェットを抜くや左手に突き立
少女の答えにレナは何度も頷く様に首を縦に動かす。そして、マカロフを上に持ち上
!
161
その様子にレナは溜め息を吐いてマカロフを少女の頭に向け直した。
﹂
﹁なら⋮⋮アンタを殺してテッドブロイラーへのメッセージ代わりにするね⋮⋮
ダイジョーブ、寂しくないから後でオトモダチが沢山来るから安心して
﹁チッ
﹂
へと向かう。
ロケットモーターに点火されてミサイルは徐々に加速して音速へと近付きながらレナ
ガジェットドローンからウェポンベイが開いてミサイルがパイロンから切り離され、
ローンがレナの背後上空に現れる。
少女は絶体絶命にも関わらず不適な笑みを浮かべる。すると、1機のガジェットド
し指に 力を徐々に込めて行く。
マカロフのセフティを親指で外し、引き金に指を掛ける。細いがごつごつとした人差
!
を起こすのだった。
が、爆風による粉塵や炎がレナの視界を遮り、爆音は鼓膜を強烈に叩き着けて耳鳴り
が当たる直前に両手と腕で受け身を取って地面に伏せた。
レナはスライドが後退したままのマカロフを握ったまま前へと倒れ込む。地面に顔
サイルの先端に当たり、点火する為のピエゾ抵抗菅を撃ち抜くと爆発が起きた。
今度はレナが舌打ちし、マカロフをミサイルに向けて撃った。レナの放った銃弾はミ
!
マクガイバーとAチーム、バーンノーティスは面白いよね。な、8話目?
162
││人の気配
る⋮⋮
地面の中から
それに空からミサイルより嫌なモノが来る予感がす
?
くっつくな気持ち悪い
イヤァ
服ん中ぁ入るな
うげ
!
口
!?
虫はレナに集ったまま離れようとしない。
﹁今度は蟲ぃ
に入った⋮⋮﹂
!
﹂
!!
良く抜かれ、少女の頭に当たろうとした。
左手で確保してたハンディサイズの手斧をベルトから抜くや投げ付ける。斧は勢い
噛み潰すが今のレナには気にしてられない⋮⋮
物を取ろうとする水色のセミロングの髪をした少女を怒鳴る。口を閉じた瞬間、羽虫を
蟲に集られ、身体中を走り回られおぞましい気持ちに晒されながらもレナは自分の獲
﹁人の獲物を盗るなぁ
たボディースーツ見る。が、ソコには誰も居なかった。
悪態を吐いて暴れ、蟲を払い落として行く。すると縛った獲物に近付くピッチリとし
!
レナはもがきながらも、発煙筒をベルトから出して点火して虫を燻そうとする。が、
すると、無数の羽虫の軍勢がレナを包み込み始めた。
かに聴こえて来る。
粉塵が収まった直後⋮⋮ブブブ⋮⋮と言う不気味な音が耳鳴りするレナの耳にわず
?
!?
163
ガキィン
と言う金属同士のぶつかり合いが起こると、レナに左手をマチェットで
﹁また檻の中は嫌ね⋮⋮逃げよかな⋮⋮﹂
て、此方に向かってるのが見える。
それから、この後はどうしよと考えてると管理局の人間らしき部隊が数キロ先に居
を仕舞った。
ハンターとして復讐者として獲物を逃がした事にレナは自分自身呆れると、マカロフ
﹁逃げたか⋮⋮⋮⋮はぁ、ホント駄目ね。詰めが甘いなぁ﹂
体と燃え盛るクルマの残骸や道路だった瓦礫等であった。
虫の軍勢が居なくなり、煙幕が晴れた頃には誰の姿も無かった。あるのは幾つもの死
と、煙幕が張られてレナの視界を完全に潰すのだった。
すると、セミロングの少女がスプレー缶程の大きさの缶を幾つも転がして来た。する
弾いたのだった。
張り付けられた少女が左手に刺さったマチェットを刺さったまま、レナの投げた手斧を
!
?
ジアスはレナの手を握り、握手をして同じ様な笑顔をする。
レナは緊張感を微塵も見せず、平然と人の良い笑顔で自己紹介して握手を求める。レ
軍﹂
﹁自 己 紹 介 ど う も ⋮⋮ 私 の 名 前 は 知 っ て る だ ろ う け ど レ ナ よ。よ ろ し く レ ジ ア ス 将
結論、相当な悪党。しかも、自分でも手を下す事に躊躇いも無いタイプ⋮⋮
れにオッサンの護衛も私が何かしらの攻撃を加えた際に防げる様に備えてる。
私の後ろに控えてる奴は私から距離を離して然り気無く殺せる位置取りしてる。そ
││部下はキチンと仕事してる⋮⋮
レナは目の前の男は単なるデブのオッサンだとは思えなかった。
チルダで最も影響力を持つ者であった。
中年の男⋮⋮レジアス・ゲイズ中将と言う時空管理局首都防衛隊のトップにしてミッド
場を越えた者特有の自信に満ち、相手を射殺す様な力強さを持った瞳の若干お腹が出た
髭の生えた厳つい顔ながらも浮かべる友好的な笑みとは裏腹に幾つもの死線や修羅
﹁初めましてMissレナ⋮⋮私がレジアス・ゲイズだ⋮⋮﹂
閑話⋮⋮夜天、将軍、流れ者の会合
閑話……夜天、将軍、流れ者の会合?
164
165
﹁レジアスで構わん。君は管理局員でも私の部下でもない⋮⋮が、はやて三佐はキチ
ンと中将と敬意を込めて呼ぶように﹂
対照的にレナの隣に座る八神はやて三等空佐は自分の事を嫌う管理局内の最大の敵
とも言える男が目の前で人の良い笑み見せ、他愛も無い冗談を言ってるのに驚いた。顔
が怖いのに笑顔だから余計だ⋮⋮
それを置いとくとしても、レナと自分を執務室へと呼んだ理由が解らなかった。その
﹂
証拠にはやての顔はポーカーフェイスを保っては居るものの、緊張感が身体中から醸し
出されて居る⋮⋮
﹁レジアス中将、私を呼んだ理由をお尋ねしても宜しいでしょうか
はやてが手に取って表紙を開いた瞬間、隣で振る舞われた紅茶を飲もうとしてたレナ
前へと置いた。
レジアスが言うと、オーリスはプリントアウトした書類を机の上⋮⋮レナとはやての
﹁失礼します⋮⋮﹂
するテロ、攻撃を行った二名の容疑者確保を一任したい⋮⋮﹂
﹁はやて三佐⋮⋮君、否、君達、機動六課の面々に高速道路襲撃テロ列びに管理局に対
リッとした表情で口を開いた。
はやてが質問する。すると、レジアスは人の良い笑みを辞めるや真剣な眼差しとキ
?
の手がピクッと止まった。
﹁これは⋮⋮﹂
﹁二日前、サーチャーで撮影成功した物だ⋮⋮その男は仲間と共にベルカ自治区に於
いてレリック強奪及び管理局員殺害を行った﹂
それを聞いた瞬間、はやては二日前にフェイトが急行した頃にはベルカ自治区に在る
小さな街が地獄の業火に包まれながらガジェットとは違う幾つもの無人兵器やレナが
持っていた質量兵器と似た銃を使うSFチックなプロテクターを装着した何人もの兵
隊達が街の人々を淡々と殺して居た報告を受けた事を思い出して居た。
フェイトは地獄を作った者達の兵器を破壊し、何人かを確保した。が、確保した兵隊
は爆発してミートソースになったり、投棄された兵器は自爆して組織に繋がる証拠や痕
跡は見付かる事は無かったのだった。
﹁こないだの事件ですね⋮⋮しかし、サーチャーで撮影出来たと言う情報は初めて伺
いましたが、それは⋮⋮﹂
はやては二日前に起きた事件の首謀者が撮された画像が今になって出て来たのか疑
問に思った。それに対してレジアスは答える。
﹂
﹁⋮⋮昨日の夜に判明した被害者の所有するデバイスのデータに遺された物だ﹂
﹁
!?
閑話……夜天、将軍、流れ者の会合?
166
167
はやては気分が少し悪くなった。が、レジアスははやての気分が悪くなった事に気に
する事無く話を続けようとすると、ガシャン と言う音と共に何故か圧力を感じる。
それははやてにも感じ取れた圧力であった。
﹁Missレナ⋮⋮君はこの者達を知ってる様だ。済まないが教えてくれるかな
?
﹂
は本題に入る。レジアスは平然を浮かべるが、はやてやオーリス、それに護衛の局員達
16、7の少女が浮かべるには常軌を逸した笑みに戸惑いを浮かべながらもレジアス
没収した荷物全て返せ⋮⋮今すぐにでも皆殺しにしてあげるわ﹂
笑いたくなったわ⋮⋮ねぇレジアス将軍、コイツ等の居場所教えて そして、私から
﹁あの腐れモヒカンだけじゃなく⋮⋮塵屑共もセットなんて⋮⋮最高ね。面白過ぎて
かに押し殺しながら穏やかな表情を浮かべる事に若干引いていた。
レジアスも内心、自分の三分の一くらいしか生きてない少女が危ない狂気と怒りを静
表情で口調もしっかりとしてる⋮⋮
はやてはゾッとした。目の前の少女の瞳は狂気に満ちて居た。しかも、顔は穏やかな
はね⋮⋮くふふ、アハハハ⋮⋮﹂
﹁ええ、知ってるわ⋮⋮私が皆殺しにした筈のクズ共よ⋮⋮まさか、本当に生きてると
?
器の破片を握り締めるレナが居た。
圧力の元を見ると、ソコには手から紅茶と血が滴り落ちる手で砕けたカップだった陶
!
閑話……夜天、将軍、流れ者の会合?
168
は背筋を撫でる冷たいモノにゾッとし、恐れを抱いて居た⋮⋮
彼女⋮⋮レナから濃厚な殺気が静かにしかも着実に醸し出され、それが部屋を包み込
んで強烈なプレッシャーになってるのだから当然だろう。
﹁私の要件はまさにそれだ⋮⋮八神はやて三佐﹂
﹁はい⋮⋮﹂
﹁君達は御互いに協力して事件の首謀者確保に尽力を尽くして貰いたい﹂
はやては自分の築いた機動六課を最も潰したがってる男が命じるだけでは無く、頭を
下げて頼んだ事に戸惑いを覚えながらも真剣な眼差しで答える。
﹁解りました﹂
﹁Missレナ⋮⋮君は彼等に関する情報を全て開示すると共に彼女指揮下の機動六
﹂
課に入って貰う。君の保有してた質量兵器は全て君に返す。同時に使用に関しても私
﹂
が全責任を請け負う⋮⋮﹂
﹁レッドウルフも
﹁無論だ⋮⋮だが、あの車輌は壊れてるが大丈夫なのか
﹁そこは⋮⋮何とかなるわよ、多分。﹂
気染みたモノから年相応の子供らしいモノであった。そんな彼女にホッとしながらも、
具体的な根拠が無いのにあっけらかんと笑いながら言うレナの表情は先程見せた狂
?
?
169
その何とかなると言う根拠の無い言葉に何故か二人は不安は感じなかった。
﹁なら良い。正式な命令は文書にして発刊する⋮⋮はやて三佐、下がって宜しい﹂
はやては立ち上がると、レジアスに敬礼して部屋を後にする。レナもはやての後に続
いて応接室から去ろうとソファーから立ち上がろうとした所で声を掛けられた。
はやては応接室から去る間際にレナが呼び止められた事に疑問を感じながらも部屋
を後にする。レジアスははやてが応接室から去ったのを見ると、手配せして護衛や娘の
﹂
オーリス、そしてもう一人の秘書である女性に退室する様に無言で命じた。
﹁Missレナ⋮⋮君は音楽が好きかな
﹁ええ、大破壊前の音楽は好きよ⋮⋮急に何
キューレの騎行が近いだろう⋮⋮
﹂
オ ー ケ ス ト ラ に よ る 合 奏 で あ っ た。曲 と し て は 地 球 で ワ ー グ ナ ー が 作 曲 し た ワ ル
スピーカーから流れて来るリズムはクラシックで、ベルカ時代に作曲された雄大で
音楽を再生した。
アスは気にする事無くコーヒーを淹れると、脇に置かれた私物のオーディオを操作して
レナは腑に落ちない問い掛けに疑問を感じながらレジアスの動きを観察する。レジ
?
とゆっくり歩いて行く。
レジアスは冷めたコーヒーを飲み干してから立ち上がると、コーヒーメーカーの前へ
?
閑話……夜天、将軍、流れ者の会合?
170
﹂
それを再生したレジアスは部屋を音楽が包み込むと、淹れたばかりのコーヒーをレナ
の前に置いてから自分のカップに口を着けた。
﹁私を呼び止めたのは何か理由が有るんじゃない
﹂
?
﹁レジアス中将はレナと何を話したん
﹂
たはやてはコーヒーを飲む手を止め、レナのもとへ歩み寄った。
レナは応接室から出た後、廊下を少し歩いて休憩スペースへと着いた。レナに気付い
30分ぐらい経っただろうか⋮⋮
それからレジアスがレナへ話を始めるのだった⋮⋮
﹁秘密は守る⋮⋮私の命とハンターとしての名誉に賭けて﹂
利きハンターである君にだけ話す。決して他には漏らさないと誓ってくれるか
﹁ああその通りだ⋮⋮今から話す事は他言無用だ。紅い悪魔、ネメシスと呼ばれる腕
?
うのかしら⋮⋮とにかく人は殺すなって話よ⋮⋮﹂
﹁ウルフの⋮⋮私の戦車の修理に関しての細かい話となるべくで良いから容疑者て言
聞かれたレナは気の良い笑みのまま答える。
?
171
﹁そうかぁ⋮⋮レナ、人は殺しちゃアカンよ
といてな﹂
ダンに乗って後にするのだった⋮⋮
なるべくじゃなのぉて絶対に殺さん
共に首都防衛隊本舎から出ると、念話で出る迄の間に呼んで居た 管理局の保有するセ
はやては何か引っ掛かるモノを感じながらも一応納得はしておく事にした。レナと
?
?
﹂
!
﹂
!
それからフックにチェーンを括り着けると、パワーパックに繋いで行く。
フックを手元に引いた。
コンで操作してレナの頭上へと下ろして行く。レナはチェーンの先に取り付けられた
それを聴いた六課の機材整備員は天井のレールに吊るされたクレーンを手元のリモ
﹁下ろしまーす
﹁チェーン下ろして
レッドウルフから出ると、大声で叫び始める。
エンジンスペース内で固定していたボルトを外し、駆動輪との接続部を外したレナは
そして、ラチェットハンドルをボルトへ差し込むと手際よくを外して行った。
ンチでトルクを緩めて回りやすくする。
ミッションのセットとなっているパワーパックを固定するボルトやナットをメガネレ
メガネレンチやソケットを装着したラチェットハンドルを用いてエンジンとトランス
レになった青いツナギ姿になりながらレナはレッドウルフのエンジンスペースに入り
額に汗し、オイルやフルード、グリスと言った油汚れが何ヵ所もコビリ着いたヨレヨ
狩りの前の一時
狩りの前の一時?
172
173
﹂
5分もすればフックへとチェーンによってパワーパックが繋がれ、レナは再び叫ん
だ。
﹁チェーン上げろぉ
一日で終わっただけでも御の字だったりする⋮⋮
に掛かる。
とアイドリングさせるのにも、エンジンスペース上部の装甲板を外すのにも時間が非常
その作業の前には燃料タンクから燃料を抜いて配管に残った燃料を無くす為にずっ
燃料供給、吸気、排気等言った配管を外すのに手間取って昨日は一日終わった。
そう、エンジン外す作業は時間が非常に掛かる。エンジンに繋がる電気系統の配線や
日潰す事になったし。
││やっぱりエンジン外すのって時間掛かるわ⋮⋮ 燃料抜いて、配線外しとかで一
れた。
ヴァイス・グランセニックによる誘導が始まりパワーパックは整備スペースへと下ろさ
レナの誘導でエンジンスペースから上げられると、今度はパイロット兼整備員である
添えて不安定に揺れるソレを抑えた。
げて行く。パワーパックがエンジンスペースから離れるとレナはパワーパックに手を
レナの言葉と共に天井のウィンチが唸りを上げながらチェーンをゆっくりと巻き上
!
狩りの前の一時?
174
レナはレッドウルフから飛び下りると、パワーパックを眺めるヴァイスへと近付い
た。ヴァイスはレナに気付くと、レッドウルフの現状を話始めた。
﹁エンジンは掛かったから大した故障は無い筈ですよ⋮⋮とは逝っても中身をバラし
てみない事には何とも言えないですがね⋮⋮﹂
﹁そう⋮⋮あー、アクセルがこんな時に居たらなぁ⋮⋮﹂
レナは仲間である革ジャンに横モヒカンにしてる見た目が世紀末世界の消毒大好き
なチンピラを思い出して居た。
その男はレナとは愛犬のポチを除いて一番長い付き合いで、レナのレッドウルフや山
猫と呼ばれる女ソルジャーのバイクや自分の愛車でもある対空車輌の整備を一手に引
き受けてくれた凄腕のメカニックで、レナや山猫の背を任せる事も出来る最高の仲間で
あった。レナは彼が居なかったら自分は思う様に暴れられないと解ってるからこそ彼
⋮⋮アクセルが居ない事に嘆いてた。
﹂
そんなレナのボヤキにヴァイスは好奇心からかどんな人間なのか聞いて見る事にし
た。
﹁レナさん、そのアクセルさんて言う人はメカニックなんですかい
る凄腕のメカニックよ。バカデカイ戦車や戦艦恐竜に砲撃されまくって壊された時に
﹁レナで呼び捨てにして良いってば⋮⋮アクセルはねぇ、何でも直して何でも解体す
?
175
身を危険に晒しても完璧に直してくれたり、そっちで言うガジェットと同じ様な敵から
戦車を一瞬でボルト、ナットの1本に至る迄綺麗に解体したり、私とミシカ⋮⋮仲間が
暴れた時に背中を守ってくれる最高の仲間よ⋮⋮﹂
﹁す、凄い人なんすね⋮⋮﹂
仲間を思い出して穏やかな笑みを浮かべて語るレナにヴァイスは内心退いていた。
魔法を一切使わないでガジェットを一瞬で分解する腕を持つ、更に砲撃に晒され、命
が無くなるかも知れない状況でも戦車を直す事が出来ると言ったら本当に人間なのか
と疑いたくなるのは当たり前だ。
だが、目の前の少女は六課の新人を倒しただけでは無く、ヴォルケンリッターである
ヴィータと戦って倒したのだ。魔法を使わずに⋮⋮
だからこそ、レナの言葉に嘘は無いと確信が持てた。
ヴァイスはふと、年端も行かない六課の新人達と変わらない少女がそんなメカニック
にどうやって出逢ったか聞いてみたくなった。
すると、レナは平然と答える。
﹁グラップラーのクルマをムシャクシャしてタイヤ全て外して、エンジンもミッショ
ンもサスもマフラーもシートも武装も外して売り飛ばして捕まって牢屋にブチ込まれ
たのを助けたのが出会いね⋮⋮﹂
狩りの前の一時?
176
他の機材を整備しないと行けないんすよ⋮⋮﹂
﹁そ、そうなんですか⋮⋮あ、申し訳ないんすけど、コイツの修理は後にしても良いす
かね
手伝ってくれるだけでも御礼しきれないよ⋮⋮﹂
﹁申し訳ないのは私の方よヴァイスさん⋮⋮だって私は部外者で元々は敵だったのよ
?
﹁どうしたんです
﹂
﹂
﹂
!
﹁走ると危ないですよ⋮⋮て行っちゃったか⋮⋮だけど、人間てスバルのマッハキャ
レナはレッドウルフから飛び下りると、整備工場を走って後にするのだった。
﹁じゃあねヴァイスさん
ダナが巻かれた姿でハッチから現れた。
ダント、靴は装甲板が取り付けられたゴツいブーツが履かれており、足首には赤いバン
少しすると、黒いボディースーツの様な服に赤い外套を纏い、首には傷だらけのペン
レナは慌ててレッドウルフへ跳び乗ると、ハッチを開けて中へ入った。
﹁そう言えば今夜は護衛任務がありましたね⋮⋮あー、俺も準備しないとな﹂ !
?
﹁今夜仕事が有ったんだった
しかも、急がないとブリーフィングに間に合わない
わったレナにヴァイスは疑問の声を挙げる。
レナは左腕に取り付けたBSコントローラーに目をやると、ハッとした。様子が変
?
!!
177
リバー並の早さで走れるものなのか
﹁ごめんなさい、遅くなった
﹂
﹂
愛機を飛ばす準備へと向かうのだった。
レナの後ろ姿が消えたのを見てヴァイスは疑問をボヤき、考えるのを辞めると自分の
?
復讐劇の舞台となったホテルを思い出してすこしメランコリックな気持ちになったの
はやての説明を聴きながらレナはホテルアグスタを見て透明人間をブチのめしたり、
局が許可したロストロギアも出品される⋮⋮﹂
﹁ホテルアグスタでオークションが行われるやけど、オークションの出展物品に管理
ターには森に囲まれたビルが映し出される。
はやての言葉と共にメガネの女性⋮⋮シャリオが空間にモニターを写し出す。モニ
﹁ほんじゃま、全員揃った所で今回の護衛任務のブリーフィング始めるで⋮⋮﹂
睨んで居た。
ナと戦った時に感じた恐怖を思い出して若干退いていたし、ヴィータに至ってはレナを
笑いを浮かべ、フェイトは時間に余裕を持って行動するようにと注意する。新人達はレ
レナは肩で息をしながら六課のオフィスへと駆け込んで来た。はやてやなのはは苦
!
狩りの前の一時?
178
を追いやると、ホテルアグスタを護る手段を仮定して居た。
│ │ 周 辺 は 森 ⋮⋮ 結 構 深 い か ら 攻 め 混 む 側 か ら し た ら 隠 れ る に は 充 分 過 ぎ る 地 形。
だけど、守る側にとっては待ち伏せするには充分過ぎる地形でもある⋮⋮
なんやレナ
攻めるより守る方が人員少なく済むけど、人が足りないのは決定的⋮⋮火力はなのは
達が居ればなんとかなる筈⋮⋮
レナが思考を続けてると、ブリーフィングが終わる。
﹁任務の概要説明はコレで終わる。詳しい編成はヘリで話す⋮⋮質問
⋮⋮﹂
﹁グラップラーが出た場合は
ちで口を開いた。
﹂
レナが手を挙げた事にはやては気が付くと、レナの質問を待った。レナは真剣な面持
?
攻兵器や生物兵器を投入する事だって考えられた。
更に向こうは素体が有れば兵力を追加する事も出来て、なおかつ戦闘機人と言った特
無く、対物火器や迫撃砲に戦車と言った兵器を維持、運用してくる連中なのだ⋮⋮
軍隊。装備も管理局が捕らえるマフィアやテロリストとは違って自動小銃ばかりでは
相手は単なる烏合の集である犯罪者の集まり等では無く組織だって作られた無法の
それは六課にとって懸念事項であった。
?
179
﹁そうなった場合、私とスターズ及びライトニング隊長が前線へ行く。スターズ、ライ
﹂
トニング1、2は後方へやる。レナ⋮⋮ハンターはスターズ、ライトニング1、2の援
護⋮⋮異論有るか
﹁無いわ﹂
量兵器をロックしてるチェーンの鍵を開けて行った。
?
た。しかも、レーヴァテインで防いで勢いを殺したのにだ⋮⋮
シグナムは獣のごとき動きに翻弄され、プロテクションごとバリアジャケットを斬られ
ルールは剣のみで、シグナムはレーヴァテインで、レナは腹切りソードで立ち合って
る。三日ほど前、シグナムはレナと手合わせした。
レナがチェーンの外されたSMGグレネードに手を掛けた時にシグナムが聴いて来
﹁レナ⋮⋮グラップラーと言うのはそんなに厄介なのか
﹂
た部屋の鍵をザフィーラが開けると、レナとシグナムは中に入る。シグナムはレナの質
狼形態のザフィーラを前にレナの後ろにはシグナムが歩いて居る。1階の倉庫だっ
この世界で言うなら質量兵器を取り出すのだった。
隊長陣が管理しており、基本的にはシグナムかザフィーラが立ち会って中から銃器⋮⋮
はやてが言うと静かに頷いてオフィスを後にする。レナの銃器は基本的に副隊長や
﹁そうか⋮⋮なら、レナ準備したらヘリポートへな⋮⋮﹂
?
だが、剣技は素人も同然であった。最初はレナが押してたがシグナムはレナの動きに
馴れると、レナの手をレーヴァテインで弾いて腹切りソードと読んでた刀を飛ばしてレ
ナはギブアップと言ってシグナムの勝利で終わった。
と、こんな具合にレナと戦って苦戦したシグナムはそんなレナがグラップラーへ非常
に危機感を感じてるのが疑問であった。
﹁一人一人は大した事は無いよモヒカンとかケロケロとかプリケツとか除いて⋮⋮だ
げど、奴等は群れで来る。兵隊はクローンだから作り放題、弾も武器もクルマもバカみ
たいに保有してるから余計にね⋮⋮﹂
レ ナ は 8 0 発 の 7.6 2 H E I A P 弾 と 1 1 発 の 曳 光 弾 が 込 め ら れ た S M G グ レ
ネードの弾倉を叩き込み答える。
それから、ウルフに積んでた予備の弾薬箱の1つから40㎜砲弾を取り出すと、それ
と言う音共に薬室へと砲弾が装填された。
を1発目をマガジンチューブに押し込んでフォアグリップも兼ねたスライドを引くと、
ガシャン
﹂
言ったのを覚えてて納得するが、ケロケロやプリケツは意味が解らなくて質問する。
シグナムは納得すると、モヒカンは夜天の主であるはやてが絶対に捕まえてやると
﹁成る程⋮⋮圧倒的な物量による波状攻撃を警戒してるのか⋮⋮﹂
!
﹁ケロケロとプリケツとは何だ
?
狩りの前の一時?
180
181
﹁ケロケロはクルマバラしてくるカエル野郎、プリケツは変態ナルシストでジャ⃝⃝
ンも真っ青な音痴で歌って超音波発生させたり、死んだフリして騙し討ちしようとする
アホったれ⋮⋮死んだフリしたから因みにプリケツのケツにマカロフを突っ込んだら
慌ててのがウケたわ﹂ ﹁そうか⋮⋮﹂
シグナムは表情を崩さぬままレナを見詰めた。レナの準備の手際は話しながらにも
関わらず無駄やミスが見えなかった。彼女はバンダリアを腰に巻き、右の太股にはマカ
ロフが収まったニーホルスターが取り付けられ、左には腹切りソードと呼ばれる日本刀
が差され、背中にはプラズマストームと呼ばれる落雷の威力をそのまま放電するSF兵
器が背負われていた。
過剰な予備弾薬はコントローラの格納領域に収まり、他にも何使うか解らない道具や
大振りのナイフに左股のニーホルスターに銃身が切り詰められたダブルバレルが差し
込まれた姿になったレナは赤い外套を上から纏ったのだった。
﹁お待たせ⋮⋮行きましょう。狩りの時間だわ⋮⋮﹂ ???
して行く。設置が終わると、砲兵の役割をする者達はゼウスとゼウスの弾を点検し、残
森の中へ運び入れると、所定の位置にたどり着くなり彼等はゼウスを組み立て、設置
弾の詰まったケースである⋮⋮
構成する砲身、支える為の照準器付の二脚にめり込み防止の底板、そしてそれに使う砲
る⋮⋮彼等が運んでるのは130㎜ゼウスと呼ばれる重迫撃砲であった⋮⋮ゼウスを
それを運び入れている人間は森林管理事務所から見えるだけで40人くらいは見え
える金属製の板や頑丈そうなボックスを車輌を使わずに森の中へ運び入れてる。
森林管理事務所の外では幾つもの太い筒と金属製の大きな二脚に鉄の固まりとも言
いように兵士達は作業をする。
物の臭いが充満していたのだった。そんな屍達を隅へと乱暴に積み上げ、邪魔にならな
死体が幾つも転がっており、部屋中に血のヘモグロビンや飛び出て破けた腸からは排泄
だしくも静かに世話しなく動いてた。彼等の回りには森林管理事務所の人間であろう
では所々に防弾装甲が取り付けられた戦闘服にヘルメット、ゴーグルと言う様相で慌た
夕暮れ時⋮⋮⋮ホテルアグスタから南へ数キロ離れた地点にある森林管理事務所
晴れ時々、ガジェット⋮⋮からの
晴れ時々、ガジェット……からの???
182
183
りは周辺の警戒地で警戒するのだった。
﹁砲撃チーム配置完了⋮⋮残りの所定は予定通り進んでおります﹂
森林管理事務所のオフィス、責任者の座る椅子に座る指揮官へ兵士の一人が報告す
る。指揮官の男の姿は青いタイツの様なボディースーツに赤いブーツ、白い手袋姿で、
一番目を引くのは、真っ赤なモヒカンにボルト等が埋め込まれた傷だらけの頭、背中に
背負った巨大なボンベ、そして、2メートル以上の巨体であろう。
男は無言のまま頷くと腕を組んだまま静かにパーティーの時間を待つ⋮⋮いつの間
にか日は沈み、闇が空を染めて森を包み込もうとする。
同じ頃、ホテルアグスタへ向かうヘリがその上空を飛んでた。ヘリの中では指揮官で
あるはやてが改めて説明して居た。レナはそれを聴きながら今回用意した銃の点検を
続けて居る。
説明が終わり、配置確認すると、今度はフェイトから幾つかの事件に関与してると思
われる容疑者の説明を始めた。
﹁Dr.ジェイル・スカリエッティ⋮⋮﹂
フェイトが名前を言うと同時に、レナを除いた全員の前にモニターが展開される。モ
ニターにはスカリエッティが関与してると目される複数の事件とスカリエッティに関
晴れ時々、ガジェット……からの???
184
する現在知りうるデータが記述されてた。
レナは手を止めるとBSコントローラーに写ったスカリエッティの顔を見た。その
顔を見ると自分が殺害した[悪魔達の島]の住人であった狂気の科学者達を思い出した。
││コイツの目⋮⋮あの島で見た酔っ払ったクズ共と同じね。人の命を何とも思わ
ない人種⋮⋮自分の快楽の為なら何人でも殺して平然とゴミの様にしか思わないイカ
れた科学者⋮⋮
﹁この男はドクターの異名の通り、人体実験に異様な熱意を持ってる男で、これまでの
事件関連で広域指名手配されてる次元犯罪者だよ﹂
フェイトがスカリエッティに関して捕捉的な事を言う。その顔は真剣そのものだが、
目には複雑な感情が入り混じった光が満ちている様にレナは感じた。
﹄
﹁今後⋮⋮この男中心に捜査するからそのつもりでな⋮⋮﹂
﹃はい
﹂
?
フフフ⋮⋮はやてちゃん達のお仕事着♪﹂
?
キャロからの質問に、シャマルは笑みを浮かべて、楽しそうに返答した。キョトンと
﹁あ、これ
﹁あのぉシャマル先生⋮⋮そのケースは
に積まれているケースを見ると、指差して質問する。
はやての言葉に六課の新人達は全員は返事する。そんな中、キャロはシャマルの足下
!
185
するキャロを初めとした六課の新人とは正反対にレナは苛つきを感じた。
その証拠にレナはSMGグレネードのチャージングハンドルに手を掛けると乱暴に
引き、そのまま弾く様に薬室へ初弾を送り込んだ。
││今回の狩りは間違いなく最低な気分になれるわね。
それにしても何だろうな⋮⋮この苛つきは⋮⋮六課のヒヨッコ達の訓練も隊長陣に
も余計に苛つく⋮⋮
レナは恋人を優しく抱く様にSMGグレネードを抱える。足元に置かれたプラズマ
ストームは原子力電池のお陰でチャージは済み、セフティ解除すれば何時でも撃てる状
態であった。手をポンポンと子供をあやすかの如くSMGグレネードを軽く叩きなが
らレナは最も苛つく対象に視線をやる。
そこに居たのはスターズ分隊のティアナ・ランスターであった⋮⋮
他のハンターカンパニーと合同で大規模な狩りをする時にも彼女は苛立ちを感じる
事は無かった。無論、ハンターオフィスやオカマバーテンダー経由で組む事になったヒ
ヨッコやハンターではない子供とも組んでもだ⋮⋮
それだけじゃない。騙されたとしても彼女は笑って済ます。睡眠薬を
盛られ、船を勝手に使われた時に犯人である三兄弟の生き残りを助ければ、大金払う
から敵討ちしてくれと子供から依頼され、支払いに5000Gとミミズがのたくった様
晴れ時々、ガジェット……からの???
186
な文字で書かれた紙を渡された時にも笑って済ます程にレナは御人好しだった⋮⋮
そんな経験しても腹が立っても苛つきを感じなかったレナはティアナ・ランスターが
何で自分をイラつかせるのかが解らなかった。
味方に苛つきを感じ様が狩りとは関係無い。レナは苛つきを頭の隅へと追いやると、
ホテルアグスタへ到着する迄の間寝る事にしたのだった⋮⋮
﹁今日は八神部隊長の守護騎士団全員集合かぁ⋮⋮﹂
スバルがティアナに念話チャンネルを繋げる。近くではレナが不機嫌なのを隠そう
としてるのか、作り笑いのまま無言を通して居た。そんなレナから発散される圧力に二
人は若干辟易していた。
八神部隊長や副隊長達の事﹂
それ故にティアナはスバルからの回線に内心で感謝するのだった。
﹁そうね⋮⋮スバルは結構詳しいわよね
ティアナは周辺に視線を走らせつつもスバルに問いかける。
?
﹁うーん、父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど、 八神部隊長が使っているデバ
イスが魔導書型で、それの名前が夜天の書って事。副隊長達とシャマル先生、ザフィー
ラは八神部隊長個人が保有しついる特別戦力⋮⋮ で、それにリイン曹長を合わせて、
六人揃えば無敵の戦力って言われてる事⋮⋮まあ、八神部隊長達の詳しい実状とか能力
の詳細は特秘事項だから、私も詳しくは知らないけどね⋮⋮﹂
聞いた話と言いながらも、かなり詳しくスバルは説明した。
﹁レアスキル持ちは皆そうよね⋮⋮﹂
スバルの説明を聞いたティアナの声はトーンが先程と比べて低く、自虐が若干混じっ
ていた。
﹁ティア、何か気になるの
そんな彼女の変化に気付いたのか、スバルが問いかける。
?
八神部隊長がどんな裏技を使ったのか知らないけど、隊長格全員がオーバーSラン
││六課の戦力は無敵を通り越して明らかに異常だ⋮⋮
﹁そう⋮⋮じゃあ、また後でね⋮⋮﹂
かった。スバルが一言残して離れると、ティアナは思考する。
ティアナは素っ気なく返す。スバルは少し気に成りながらも深く詮索する事はしな
﹁別に⋮⋮﹂
187
晴れ時々、ガジェット……からの???
188
ク、副隊長でもニアSランク。他の部隊員達だって、前線から管制官まで未来のエリー
ト達ばっかり⋮⋮
あの歳でもうBランクを取ってるエリオとレアで強力な竜召喚士のキャロ⋮⋮二人
共フェイトさんの秘蔵っ子。
それに危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性の塊で優しい家族のバックアップ
もあるスバル⋮⋮
ティアナは一旦思考を止めると、視線をチラリと横へ向けた。ソコには左腕に取り付
けられた端末のモニターを操作するレナが居た。
││質量兵器を使うとは言え、私やスバル、チビっこ達やヴィータ副隊長を手玉に
取った上に素手でフェイト隊長を殴り倒した謎の次元漂流者⋮⋮
しかも、年上と思ったら私とそんな変わらない年齢で、魔導師として必要なリンカー
コアを持たない非魔導師だった⋮⋮
ランスターの弾丸は全てを撃ち抜
彼女がリンカーコアを持ったないと聴いた瞬間、私は非魔導師以下で凡人以下なのか
!
!
と悩んだ。
だげど、そんなの関係ない 証明するんだ
くってことを
!!
189
﹁陸戦1型50⋮⋮陸戦3型25⋮⋮﹂
そこでは、状況整理と把握を終えたシャマルが通信画面を
開いていた
﹁前 線 各 員 へ ⋮⋮ 状 況 は 広 域 防 衛 戦 で す。ロ ン グ ア ー チ 1 の 統 合 管 制 と 合 わ せ ⋮⋮
﹄
私、シャマルが現場指揮を執ります﹂
﹃スターズ3了解
﹄
!
﹃スターズ4、了解
﹄
ライトニング分隊はエリオが一括して返した。
﹃ライトニングF了解
シャマルからの通信を聞いて、スターズ3⋮⋮スバル・ナカジマが応答する。
!
﹃シャマル先生
私も状況を知りたいんです
前線のモニター貰えませんか
!
﹄
?
る事を要請した。
発射して高い位置へスーパージョーやスパイディーの様に着地するなりシャマルへ或
ホテル周囲を警備していたティアナは通信に答えると、魔力アンカーをホテルの壁に
!
﹃解ったわ⋮⋮クラールヴィントのセンサーをクロスミラージュと直結するわね⋮⋮
!
晴れ時々、ガジェット……からの???
190
お願いね、クラールヴィント﹄
︿Jawohl﹀
クラールヴィントはシャマルの命令を承服する。白衣から若草色を基調とした騎士
﹄
甲冑を展開したシャマルは合流しているだろうシグナム達へ回線を開く。
﹃シグナム、ヴィータちゃん⋮⋮お願い
指から伝わる感触が急に固くなればそのまま保持してACOGに刻まれたレティク
と慎重に絞られて行く。
細く、しなやかなレナの人差し指がSMGグレネードの引き金を静かにかつゆっくり
覗き始めた。
ドに取り付けられた口径は約70㎜、倍率は4倍と言うACOGと呼ばれるスコープを
レナは伸縮式のストックに取り付けられたチークピースに頬を当て、SMGグレネー
く添えられ、右手はグリップを握った姿勢でしゃがんで居た。
左肘は左膝の上に乗せられ、左手はSMGグレネードのフォアエンドを支える様に軽
レナは右脚を折り畳んで屋根に着け、左膝を立ててる。
そんな通信内容をホテルアグスタのエントランスに作られた屋根の上で聴きながら
!
191
ルが先頭を進むガジェットに合わさる⋮⋮
レナは練気の呼吸の如くゆっくりと呼吸し、身体の揺れを無くして行く。
身体の揺れが安定した⋮⋮
﹁ハンター、これより攻撃開始する⋮⋮﹂
その言葉と共にレナは引き金を引いた。ズドンと言う重い銃声と共に7.62mm
HEIAP弾が銃身を通って吐き出される。
初速が約900m/s⋮⋮マッハ約3で放たれた魔弾とも言える銃弾は800m先
に居たガジェットドローンのボディに孔を穿った。
レ ナ は 追 い 討 ち を 掛 け る 様 に 今 度 は 引 き 金 を 2 回 引 い た。放 た れ た 2 発 の 弾 は ガ
ジェットドローンの装甲を貫き、弾に仕込まれた僅かな炸薬と燃焼剤によって内部を台
無しにされて地面へと墜ちた⋮⋮
││やっぱり、ワンショットじゃカメラアイはブチ抜けないか⋮⋮
マリアやアクセルならワンショットでカメラアイをブチ抜くんだろうなぁ⋮⋮
800mの距離を初弾で命中させたにも関わらずレナは満足して無かった。それで
も彼女はセミオートに合わせたSMGグレネードの引き金を淡々と引いては銃身を響
かせ、ガジェットドローンを撃ち落として行くのだった。
晴れ時々、ガジェット……からの???
192
ホテル西側ではザフィーラが接近してきたガジェットを鋼の軛と呼ばれる魔法で大
﹂
量のガジェット串刺しが出来上がる。
﹁纏めてブチ抜け
粉砕する。
﹁紫電⋮⋮⋮⋮一閃
﹂
上空からはヴィータが全域をカバーする様に複数の鉄球を打ち出し、 ガジェットを
!!
﹁副隊長達とザフィーラ、凄ぉい
スバルは目を輝かせながら言う。
﹂
!
!?
⋮⋮3つの感情がティアナの心中で渦巻くと、拳を握り絞めるのだった。
そう言いながら向ける視線は味方に対して向けるものでは無く、嫉妬と羨望、焦想
﹁これで、能力リミッター付きっ
﹂
アグスタへ前進するガジェットドローンを破壊して居た。
そんな3人の撃ち漏らしをレナが淡々と撃ってトドメを刺すと言った具合にホテル
斬り棄ててはまた別のガジェットを斬り棄てる。
森の中、ホテル南側ではシグナムがガジェットを獲物を狩るしなやかな肉食獣の如く
!
193
何か
であった。
暫くすると、ガジェットドローンが半分近く破壊された。ACOG越しにレナの目に
映るのは暗闇に紛れる紫色に光る
"
"
と共に木を撃ち砕くだけに終わった⋮⋮
レナ以外にもザフィーラやヴィータの放った魔法による攻撃が紫色に光る
と接触したガジェットに当たらず、全て回避される。
何か
"
その途端、レナはSMGグレネードのセレクターを親指で弾いてセフティをONにす
││なら、セミオートでバンバンは辞めね。
人タイプの遠隔操作へと変わったと言う内容の言葉を叫んだ。
良くなったのがガジェットのコントロールがプログラムによるルーチンワークから有
iゴーグルのインカムからヴィータの悪態が聴こえる。それからシグナムが動きが
"
だが⋮⋮レナの放つ弾は当たる事は無く、ソレは後ろに有った木に小さな孔を空ける
虫
ソレは生き残ってるガジェットへと入って行く⋮⋮
││何が来たのかしら
?
が入り込んだガジェットを撃った。
何か
"
﹂
レナは気にする事無く
?
﹁な
"
!?
晴れ時々、ガジェット……からの???
194
当た
る。それからグレネードランチャーのセフティを解除するなりフォアエンドから中身
ライトニング2へ此よりハンターは火力支援を開始する
!!
が半分近く減った弾倉へと右手を移した⋮⋮
﹂
﹁こちらハンター
るなよ
!
﹂
﹁ハンター
﹁了解
そっちに抜けたぞ
﹂
!!
ヴィータの怒鳴り声にレナは応答するや、木々や鉄球、シグナムから潜り抜けたガ
!
﹁此方ライトニング2、ハンター支援を感謝する⋮⋮﹂
へと送り込んで装填を終わらせた。
させて3発目を放った所でバンダリアから40㎜砲弾を手に取ってマガジンチューブ
遠くで起こった爆発を聴きながらレナは2発目を放った。フォアエンドをスライド
の甲高い音を響かせると共に薬室へ次弾が送り込まれた。
フォアエンドを激しく前後させる。砲弾の空薬莢が足元の空薬莢の山に落ちて金属
に紛れて飛んで行った。
シャンパンからコルクが弾ける様な音と共に40㎜砲弾が白い尾を曳きながら暗闇
グレネードランチャーの引き金を引いた。
レナはSMGグレネードの銃口を空へと向け、銃身を仰向ける。仰角を取ると彼女は
!!
!!
195
ジェットの群れが現れた。
レナは立ち上がると、屋根の縁に迄駆けるやSMGグレネードを腰だめに構える。セ
レクターをフルオートに弾くなり現れたガジェットの群れへ銃弾のシャワーを浴びせ
た。
上から降り注ぐ銃弾のシャワーが避ける暇も無く、ガジェットの群れを叩き着けられ
る。
ガジェット達は瞬く間に孔だらけになり、中から火を噴いて爆発した。
ヴィータが喚起したガジェットの群れを破壊したレナは深呼吸しながら軽くなった
弾倉を外して下に落とす。
﹁此方ハンター⋮⋮スターズ1及びライトニング1の支援を求む﹂
﹁此方ロングアーチ⋮⋮ハンターの要請は受理しかねます⋮⋮﹂
﹁ハンター了解⋮⋮あー、腹立つぅ⋮⋮﹂
悪態を吐きながら予備の弾倉をベルトから外す。紅い外套の裏から予備の弾倉を左
もっと攻めないと
﹂
手で取るやマガジンハウジングへ叩き込もうとした所でトラブルが起きた⋮⋮ ﹁守ってばかりじゃ行き詰まります
!
の声が響く。それと共にスターズ3であるスバル・ナカジマがティアナに先行して森を
レナのインカムだけでなく、六課全体の回線にスターズ4⋮⋮ティアナ・ランスター
!
晴れ時々、ガジェット……からの???
196
﹂
潜り抜けたガジェットを殴り着ける。
﹁退がれバカ共
﹁クソ
﹂
スバルが映った⋮⋮
ACOG越しに映るガジェットへ向けて引き金を引き絞ろうとした所でレティクルに
レナは肩着けでSMGグレネードを構える。スバルが突っ込んだ側から反対方向へ
装填をしたでレナは眼下を望むなり、怒鳴った。
チャージングハンドルを引いてマガジンハウジングに叩き込まれた弾倉から初弾を
!!
﹂
!!
乱暴な口調で痛みを訴えながらレナは左腕を振って痛みを紛らわせて居た。
﹁痛ッぇなぁ
る事は無かった。
ヴィータはそれに気付いて突っ込もうとした瞬間、ティアナの魔力弾はスバルに当た
ティアナの放った一発がスバルへと向かう⋮⋮
⋮⋮
だが、ヒヨッコ達の快進撃はトラブルのキッカケとなる油断を誘うには充分であった
トを壊して行く。
本格的に苛立ちに際悩まされるレナとは裏腹にスバルとティアナは着々とガジェッ
!!
197
スバルとティアナの間へ屋根から飛び降りた事によってレナは自身を壁としてスバ
ルを庇ったのだった。
﹂
﹁謝らなくて良い⋮⋮後で話するだけだから。二人は後ろ下がってろ⋮⋮次、勝手に
出たらドタマブチ抜くぞ
と気を抜いた所で口笛の様な甲高い風切り音が幾つ
?
レナは上から聴こえて来るこの音に覚えがあった。レナにとってこの音は観客へ奏
﹁この音は⋮⋮﹂
も聴こえて来た⋮⋮
六課の面々が終わったのか
ガジェットの増援は無くなり、レーダーに反応もしなくなった⋮⋮
アレからどれだけの時間が経っただろうか⋮⋮
⋮⋮今は目の前の敵をブッ潰して安全を確保するのが優先なのだから⋮⋮
レナは警告するやガジェットの群れを撃ち壊して行く。二人の返事を聞く事は無い
!!
砲撃よ
﹂
でた事も自分が客として何度も何度も聴かされた。
﹁伏せて
!!
レーターが作り上げる。
途絶えると砲弾が森を吹き飛ばし、ホテルアグスタの地面に爆発と共に幾つものク
!
晴れ時々、ガジェット……からの???
198
﹁慌てるな
地面に伏せてろ
レナ
!
この攻撃が何なのか解るのか
!
﹂
?
る。 だが、砲弾の雨は止まる事は無かった。
デカイ迫撃砲
﹂
爆発音に負けじとレナは大声で叫んで答える。
﹁130㎜ゼウス
!
!!
の象徴とも言われ、人々の憧れにして恐怖をもたらす鋼の猛獣が向かう足音と唸り声が
レナの言葉を裏付ける様に腹の底へ伝わる振動が来る。世紀末な荒野の世界にて力
厄介な奴等が来る⋮⋮﹂
﹁敵が来るわよ⋮⋮なのは達を呼んで それから此処からはガジェットなんかより
そんな道路が爆発によって5箇所も造り上げられた。
路の様であった⋮⋮レナはそれを見ると、舌打ちをする。
木々は爆風で薙ぎ倒され、その直線上だけは幅が3m程の開けた状態となり、まるで道
シ グ ナ ム が 言 う と 同 時 に 森 で は ホ テ ル ア グ ス タ へ 向 か っ て 直 線 上 に 爆 発 が 起 き た。
?
!
﹁成る程⋮⋮ガジェットは時間稼ぎと言う訳か⋮⋮レナ、お前だったらどうする
﹂
とするかの如く降り注ぐ物⋮⋮130㎜迫撃砲弾を撃ち落として被害を抑えようとす
ヴィータは鉄球を幾つも生成する。反対側ではザフィーラが盾の騎士の名を誇示せん
再 び 風 切 り 音 が す る。六 課 の 新 人 は パ ニ ッ ク に 陥 り そ う に な る が、副 隊 長 で あ る
!
199
聴こえて来る。
道路の横幅を埋め尽くす程の大きな鋼鉄の獣⋮⋮戦車が姿を現した。
その戦車はレナが乗るレッドウルフと同じデザインで、違うとしたら砲身や砲塔上部
の副砲やS│Eくらいだろう⋮⋮
その後ろにはATVピューマと呼ばれる120㎜迫撃砲を装備した兵員輸送装甲車
や兵士達が追従してた⋮⋮
レナは敵の正体が何なのか直ぐに解った⋮⋮
前方は10時、12時、2時、後方は5時と7時方向と木々を薙ぎ倒して作られた即
席道路から来る機甲混成部隊⋮⋮文字通り真正面は12時方向から来てる部隊にレナ
の視線は釘付けであった。
上空ではヴィータがホテルアグスタへ向けて放たれる砲弾を迎撃に区切りが着いた
のか、眼下の進軍する敵を見た。映画で見る様な地球の軍隊的な敵に流石の彼女も驚い
た⋮⋮
特に正面から来る部隊の先頭を走る戦車の上で両の腕を組んで仁王立ちする特徴的
な頭の巨人に目が止まった。
﹁アハハ⋮⋮﹂
笑い声がした。シグナムや六課のヒヨッコ達は砲撃に晒され、目の前に広がる質量兵
晴れ時々、ガジェット……からの???
200
器で文字通り身を固める敵が大量に来てると言う絶望を誘う状況にも関わらず笑える
人間が目の前に居る事に若干、目を反らしたくなった⋮⋮
笑い声の主はレナであった。
﹁シグナム、ヴィータ⋮⋮私が前に出て奴等を殺る。私が撃ち漏らした奴等を頼むわ。
なのはが来たら最大火力で⋮⋮私の事は気にしなくて良いから⋮⋮それと、対ショック
姿勢しといて﹂
狂気の入り雑じった笑い声とは違って至って冷静な口調でレナは言うと、背負ってた
プラズマストームを構えると、砲身の下に取り付けられたイオンレーザーが放たれる。
レーザーはATVピューマに当たると同時に空気中の抵抗が一気に減衰される。レ
ナが引き金を引くと、砲身からプラズマの奔流が吐き出された。なのは達、魔導師が放
つ砲撃魔法と似たプラズマの塊は特徴的な頭の巨人⋮⋮⋮⋮
テッドブロイラーが乗る戦車の後ろに居たピューマの装甲を融かし て貫くと、中の
人間をほんの一瞬で悲鳴を挙げさせる事無く黒焦げにし、内部の電装品を全て焼き尽く
した。無論、砲弾は電流によって雷管や信管が誤作動を起こして爆発した。
故にレナに撃たれたピューマは大爆発を起こし、過剰な電気の塊は周りへ暴虐を振り
撒いた事によって森が燃え始める。
未だ戦いは始まったばかり⋮⋮復讐の女神の化身は復讐相手へ宣戦布告しただけで
201
あった⋮⋮
﹁じゃあ行ってくるね⋮⋮﹂
レナは散歩する様に敵が群がる道路へと脚を進める。
﹂
息を吸って肺や腹に溜め込むと一気に吐き出した⋮⋮
﹁テッドブロイラアアアアアァァァァッ
!!
?
﹂
!?
た。
シグナム達は前に出てグラップラー達をブチのめしたくても出来る状況では無かっ
鳴らす様な騒音が聴こえて来る⋮⋮
グラップラー達の居る向こうからは散発的に銃声無数の蝗の群れの発する羽を打ち
音とビリビリっとした衝撃が伝わる。
側では黙々とザフィーラが降り注ぎ、放物線描いて飛来する砲弾をシールドで防ぐ爆発
シグナムは砲弾をレーヴァテインで切り捨てながらヴィータの問いに答える。反対
﹁恐らく奴等がグラップラーなんだろう⋮⋮﹂
えて居た。無論、シグナムもだ⋮⋮
がら悪態を吐く。反対側では同じ様にザフィーラが砲弾を防いでホテルへの被害を抑
ヴィータは飛んでくる砲弾をグラーフアイゼンで弾き跳ばした鉄球で撃ち落としな
﹁アイツ等何なんだ
ら延々と砲撃が繰り出されている⋮⋮
ホテルアグスタから離れた森の中から、造られた5つの道路に居る幾つものクルマか
ホテルアグスタwars part2
ホテルアグスタwars part2?
202
203
グラップラー達は距離を取ったまま延々と砲撃を加えてるだけで、前進はして来な
い。
自分達が前に出て攻め込めば砲撃は新人達へ降り注ぐ。更に、前線を押し上げれば伏
兵による奇襲が来る可能性が大きくなる。
と言ってこのまま防御に徹してれば何時しか防御が破られ、考えたくない結果が目に
見えている⋮⋮
故にヴォルケンリッターの面々は苛立ちを覚えながらもひたすらに防御に徹するし
か無く、勝手に前へ出てグラップラー達と戦闘するレナが或意味、頼みであった⋮⋮
﹄
それに兵隊が30てとこ
﹃ハンター、状況報告して下さい⋮⋮繰返します。ハンター、状況を﹄
掠った
!
敵の編成は戦車が2台と装甲車3台
頭に掠った
!
﹃今 取 り 込 み 中
⋮⋮⋮危な
!
!
││砲声が減った
?
それに、さっきと比べて砲撃の数が減ってる⋮⋮
干減ったのにシグナムが気付いた。
まぎする。通信先のレナからも森の奥からも銃声は止まない。すると、砲撃の規模が若
通信は音声のみでレナの状態や敵の装備を始めとした状態が解らずシャマルはどぎ
声や肉に何かがメリ込み、抉る生々しい肉を射つ音が通信に流れて来る⋮⋮
シャマルの呼び掛けにハンター⋮⋮レナが応答する。レナの声に混じって様々な銃
!?
ホテルアグスタwars part2?
204
シグナムはレナが敵のど中で暴れた事によって撹乱され、砲撃から防衛に回らざる得
付き合ってぇ。あ、さっきの続きなんだけど⋮⋮﹄
なくなったと把握した。無論、シャマルもだ⋮⋮
﹃アンタ防弾仕様
﹄
た事無いや⋮⋮ブツン
﹄
応答して下さい 繰返します。ハンター、ハンター
下さい
﹂
砲撃は未だに止まらない。
﹁皆、遅れてゴメン
応答して
!
平手で弾き消した⋮⋮
だが、桜色の魔力に戦車は壊される事は無く、テッドブロイラーに関しては魔力弾を
反対側では落雷が降り注いだ。
降り注ぐ。
声と共に無数の桜色な魔力弾が正面3つの仮設道路で停滞するグラップラー達へと
!
!
﹃ハンター、ハンター
﹃言った編成が5つ。敵の武器は質量兵器にガジェットが幾つか⋮⋮ガジェットは見
編成情報故にシャマルは話を遮る事は無かった。
レナから再び通信が来た。何をしてるんだと突っ込みたい内容の質問だったが、敵の
?
レナの報告が爆発音と共に途切れた。
!
!
!
205
此方、ロングアーチ
敵ガジェットから高濃度のAMF
そんななのはさんのアクセルシューターが効かないなんて⋮⋮﹄
!
﹃AMF濃度が急上昇した
反応を確認
!?
﹃イィィヤッホォー
﹄
歓喜の叫びが聴こえる。そして、
﹁ハンター、現在の状況を送って
﹂
ロングアーチから良いニュースが来た。
!
!
﹃AMF濃度が20%低下しました
﹄
すると、今度は木々を薙ぎ倒し、踏み潰す音がした。それから⋮⋮
を留めない人だった死体が転がって居た。
ば、踏み潰されたのか、無惨にひしゃげて鉄屑と化したモノも有った⋮⋮周りには原形
居たATVピューマは幾つもの孔が穿たれ沈黙してるものや炎に包まれるモノも有れ
に居た戦車が爆発した。砲塔は爆発の衝撃で吹き飛び、炎上する。よくみると、両脇に
砲撃は止まない。ハンター⋮⋮レナから応答も無い。そんな時にホテル入り口、左側
永遠とも言える長い時間を感じながらも5分が経っただろうか⋮⋮
㎜徹甲榴弾のシャワーが集中的に撃たれる。
雷を落としたフェイトへ戦車が搭載する205㎜キャノンや120㎜迫撃砲弾が、25
ロングアーチから悲鳴にも似た報告が来る。それと共に桜色の魔力を放ったなのは、
!
!
ホテルアグスタwars part2?
206
﹄
現場管制をするシャマルはAMF濃度を低下させたであろうレナへ通信を送る。少
しして返答が来た。
﹂
グラップラーの戦車を確保して現在、残りの敵へ向け前進中
!
あー、ジャマーみたいなもんの事ね⋮⋮了解。ハンターは此より陽動と敵
!
﹃こちらハンター
﹃AMF
﹁ハンター、敵の保有するAMF発生装置の破壊を要請します
!
!
と、ドラム缶を何度も殴り着ける様に砲声
!
臓物が飛び散り、科学によって作られた異形な人間の兵士達の命は惨たらしく命を散
を響かせる度にグラップラーの兵士の腕が千切れ飛び、首が跡形無く消し飛ぶ。
砲身が火を吹かせ、ドンドンドンドン
砲がドンドンドンとドラム缶を殴る様な砲声を響かせる。
いた。時には砲塔に取り付けられた機関砲⋮⋮チェーンガンタイプの25㎜単装機関
レナが乗ってると思わしき戦車は銃を撃って反撃するグラップラー達を轢き潰して
シャマルの目に映ったのは一方的な戦い⋮⋮否、虐殺であった⋮⋮
﹁こんなのって⋮⋮﹂
シャマルはは管制を取る為にサーチャーを飛ばした。
た。ジャマー⋮⋮﹄
﹃小火器じゃ戦車壊せまへーん⋮⋮ハッハー、ゴミを轢き潰すのって楽しい あ、居
ジャマー破壊を実施する⋮⋮ハイ、邪魔邪魔∼﹄
?
207
らされ、轢き潰されて逝った。すると、機関砲が沈黙するや砲塔が動き出す⋮⋮
履帯が地面を抉り、掘り起こしながら歩みを止めない。そんなレナの乗ってる戦車へ
砲弾が飛来した。
砲 弾 が 戦 車 に 当 た る。表 面 に 貼 り 付 け ら れ た 装 甲 タ イ ル が 当 た っ た 箇 所 で 粉 々 に
なって行く。ダメージは浸透せず、進みは止まる事は無かった。
﹃コイツは御礼よ⋮⋮﹄
そんなレナの声と共に砲塔の両側に取り付けられたスモークディスチャーヂャーか
ら白燐入りの煙幕弾がぶちまけられた。煙幕弾が弾けると、中に詰め込まれた白燐が降
り注ぎ、道路が白く染まった。
シャマルは⋮⋮否、シャマルだけでは無い⋮⋮現場でレナと戦闘するグラップラー達
と言う轟音と共に晴れる。その音は砲声であっ
は見えない状況に苛立ちを感じ得なかった。
すると、煙幕の一部がズバババン
た。
装甲車は爆発を起こして炎上した⋮⋮
く。装甲は衝撃で皸割れ、大きな穴が穿たれる。
れた砲声であった⋮⋮それは、キャタピラを履いた砲塔の無い装甲車のボディをブチ抜
マッハ5オーバーで飛ぶ205㎜徹甲榴弾がバースト射撃によって3発連続で放た
!
ホテルアグスタwars part2?
208
その間に放たれた2発目の徹甲榴弾はレナへ向けて砲撃した戦車の砲塔と車体の間
に命中して爆発を起こした。
そして、3発目はモヒカン頭の巨漢の乗る戦車へと向かってた。モヒカン頭の巨漢
引き続き敵の
⋮⋮テッドブロイラーは砲弾を見詰めるや両の瞳が輝き始めた。それから、光線が放た
﹄
シャマル、敵のジャマーと戦車、歩兵は始末出来た
アブねぇ
!
れて砲弾が爆発したのだった⋮⋮
﹃やっぱりな
ジャマー破壊をおこな⋮⋮ウワウワ
!
⋮⋮
遺伝子の欠片も残さぬ程の炎がレナの乗る戦車を包み込む。未だ戦闘は終わらない
!
!?
数分後⋮⋮死体が見付かり騒ぎが起こると、オークション出展物の鑑定が行われてる
彼等は無言のままオークション会場へと向かう⋮⋮
プレッサー付の5.7㎜口径のSMGで殺した男は弾倉を新しいのと入れ替えて居る。
警備員を殺した男は太股に取り付けられたホルスターに拳銃を収めると、従業員をサ
が響いた。
ホテルの従業員が悲鳴を挙げようとした瞬間、再び空気が抜ける音がして、床に金属音
そして、空気が抜ける音と共に質量を持った弾が警備員の眉間を貫いた。居合わせた
あった。拳銃は先頭を歩いてる男の手に握られて居た。
警備員が声を掛ける瞬間、警備員の目に入ったのは太い筒が取り付けられた拳銃で
﹁御客さ⋮⋮﹂
か、声を掛けようとする。
そんな彼らの姿に気付いたホテルの警備員はオークションを狙った襲撃の関係から
たサングラス姿の数人の男達が歩いて居た。
ホテルアグスタ⋮⋮一階ホール廊下では黒いスーツの上にボディアーマーを纏っ
ホテルアグスタwars part3 209
部屋へと彼らは辿り着いて居た。
先程、警備員を射殺した男が手振りで部下達に指示を送る。すると、彼の部下と思わ
しき男達の内、2人はその場から離れた⋮⋮MINIMIと呼ばれた分隊支援火器を携
えた二人と共に⋮⋮
残った4人は扉の前に居た警備員をナイフで静かにさせ、その内の二人は扉とは反対
の壁へと静かに移動した。扉の前に居る二人は扉に板状の何かを張り付け、壁の前に居
る二人も壁に同じ様なプレートを取り付けて居た⋮⋮
伏兵やと
﹄
ヴェロッサ
避難させるんだ﹄
数秒後⋮⋮扉と壁が外から起きた爆発と共に爆破されるのだった⋮⋮
!!
僕がシールド張るから反撃を頼む
!
﹃な
﹃はやて
!
!?
ライトニング1はライト
スターズ2もスターズ3、4と共に
﹁スターズ1、ライトニング1の援護に向かって下さい
ニング3、4ホテルへ向かって部隊長の救援に
!
ね⋮⋮今、ホテルに近くて接近戦が出来るのは⋮⋮
││敵⋮⋮グラップラー達は既にホテルの中に居た。今、表に居るのは陽動だったの
シャマルははやて達から来た通信に困惑しながらも状況を整理して居た。
!
!
ホテルアグスタwars part3 210
211
ライトニング1と同様に部隊長の援護願います﹂
││クラールヴィントからの情報だとグラップラー達は数を減らしてる。それに迫
﹄
と、戦車の攻撃を止めさせるんなら⋮⋮砲身とキャタピラをぶっ壊せ
なくなっから
﹄
﹂
その代わりオマケもセットになるわよ
﹁了解ハンター⋮⋮此方に戻ることは可能でしょうか
そしたら動け
﹁と は 言 っ て も S E は 吹 っ 飛 ん だ。チ ェ ー ン ガ ン は 一 応 生 き て る。主 砲 も 無 事 ね
﹃ハンター了解⋮⋮さて、もっぺん地獄に送ってやるわよ⋮⋮﹄
﹁ハンターは引続き遅滞戦闘を継続して下さい⋮⋮﹂
﹃戻れるわよ
?
それ
此方は粗方削った 今、楽しい鬼ごっこしてる
撃砲による砲撃も止まって増援も来てない。だけど、割ける人員は出したら守りが薄く
なる⋮⋮
今取り込み中
﹁ハンター、現在の状況を﹂ ﹃だーかーら
!!
あ、雑魚なら後ろから火を噴いてはモヒカンが殺ってくれたから大丈夫よ
!
!?
!
!
!
?
!
!
ホテルアグスタwars part3 212
⋮⋮﹂
炎によって所々溶けかかった戦車のコクピットでレナは独りごちる。状況としては
正面右の履帯を破壊して格座させて動けなく
後ろから追い回して来る怨敵は代名詞とも言える炎を撒き散らすのを辞めて静かに歩
みを進め、戦車を睨み付けていた。
テッドブロイラーが乗ってた戦車
したらテッド様、降りるなり追い回して来たんだよ
そこはテッド様だから仕方無い。
﹁わぁ⋮⋮向こうも殺る気満々ね⋮⋮﹂
た空気や熱が漂って居る⋮⋮
その空間だけまるで古代の闘技場の様で、レナとテッドブロイラーの間には張り詰め
るかった⋮⋮
森は燃え盛り、炎は今も森の木々を喰らい続け、夜にも関わらず周りは昼間の様に明
け目なく徹甲榴弾が撃ち込まれた事によって鉄屑と化していたのだった。
戦車もテッドブロイラーによって投げ付けられ引っくり返され、底を晒すやレナが抜
されと言った具合に死体と化していた。
居たグラップラー達はレナとテッドブロイラーの鬼ごっこによって轢き潰され、焼き殺
コントロールレバーを交互に操作して車体をテッドブロイラーへと向ける。周りに
!
?
213
戦車の動輪が回り出す。マフラーから獣の咆哮と共に排気ガスが吐き出され、履帯が
引っ張られて地面を掘り起こしながら走り出す。それを見るやテッドブロイラーは炎
を辺り一面に撒き散らす。
炎が地獄の業火と化し、纏り着いた炎が戦車を再び燃やして行く。炎に包まれながら
も戦車は前進を辞めない。
レナはレバーを操作し、チェーンガンのレティクルにテッドブロイラーを納めるやト
リガースイッチを引いた。チェーンガンの砲口から25㎜徹甲榴弾が吐き出される。
吐き出された弾は地面を穿ち、炎を纏った燃料の混じった土を巻き上げ、燃え盛る
﹂
木々を砕く。テッドブロイラーは横に飛んで避け、自分に当たろうとする砲弾を眼から
コイツはオマケよ
放ったビームで撃ち落として行く。
﹁相変わらず出鱈目ね
!
﹁うわマジか
﹂
き渡る。数百メートル先で爆発が起こった。
レナは主砲のトリガーを引いた。闘技場と化した森から衝撃と砲声がホテルまで響
!
超進地旋回と呼ばれるソレをする。
くやレナは左を後ろへ、右を前へと同時に回して車体を回転させる。
爆風で視界が阻まれる。ぺりスコープを覗くと或物が飛んできていた。それに気付
!?
ホテルアグスタwars part3 214
それからテッドブロイラーに右側面を晒すと、今度は両の履帯を前へと回して前進し
﹂
ようとするが⋮⋮
﹁キャッ
﹁うるせぇ
火傷鶏
とっとと降りやがれ
!!
﹂
が疼く⋮⋮遺伝子の欠片も残さず燃やし尽くしてくれるわ﹂
﹁フシュルル⋮ガガガ⋮⋮小娘、今度は貴様が死ぬ番だ⋮⋮貴様に突っ込まれた右目
出していた。そして、飛び上がるやレナの乗る戦車の砲塔に力強く着地した⋮⋮
飛んできたモノによって出来たレナの僅かな隙に乗じてテッドブロイラーは走り
無く、本物であると改めて認識した⋮⋮
突き刺さって居た。突き破ってるモノを見たレナは呆れながらも相手がニセモノでは
戦車が僅かに浮き上がる程の衝撃がレナを襲う。戦車の砲塔の右側面、上部に或物が
!?
!!
モヒカンを手に取るなりテッドブロイラーは砲塔へと乱暴に降り下ろした。金属を
クである鋼鉄のモヒカンを手に取った。
テッドブロイラーは身体をふらつかせながらも砲塔を突き破った自身のトレードマー
を勢いよく回転させて上に取り着いたテッドブロイラーを振り落とそうとする。だが、
レナが左右のレバー、アクセルペダルを巧みに操作すると戦車はその場で車体や砲塔
復讐の女神の化身と炎と殺戮の化身たる男女の営みは始まったばかりだ⋮⋮
!
215
落ちろ
落ちろ
落ちろ
!
落ちろ
!
﹂
突き破る甲高い耳障り音が何度も、何度も、排気音や履帯のデュエットに混じってレナ
落ちろ
!
!
の耳に聴こえて来る。
﹁落ちろ
!
死にたくない⋮⋮どうする
どうすれ⋮⋮アレだ
それから手を伸ばして裂け目に手を突っ込んだ。
││嫌だ
!?
も残さず焼き尽くし、戦車の装甲すらも融かす業火の元となるガソリンを主体にした
そして、裂け目に手が突っ込まれ手の上に付けられたノズルから人間を遺伝子の欠片
未だ落ちる事は無く、再び砲塔にしがみついて登って行く。
その間にはテッドブロイラーは再び姿勢を崩して地面へと落ちそうになった。だが、
塔も同時に回って砲身が後ろへ向けられて行く。
レナの目に残骸が止まる。それからアクセルをベタ踏みして全速力で前進する。砲
!!
暫くして粗方装甲が削れると、テッドブロイラーはモヒカンを自分の頭へと戻した。
タに斬り裂くのを辞めない。
叫びともがきも虚しくテッドブロイラーは砲塔にモヒカン振りかざし、装甲をズタズ
に同じ言葉を何度も繰り返す。
破壊される恐怖と逃げ出したくなる情けない自分を叱責するかの様にレナは狂った様
生きたまま焼かれる、逃げ場の無い密室の車内、生身でモヒカン振りかざして装甲を
!
!
ホテルアグスタwars part3 216
サーフィン大好きな中佐のナパームも真っ青な特製ブレンド燃料が車内へと勢いよく
流し込まれた。
車内を燃料が汚染して行く。燃料は車内の隅々へと染み渡り、マッチ一本、静電気一
つで戦車を火葬場へとジョブチェンジ出来る状態と化した。
が、その間にもレナはコクピットに映る戦車だった鉄屑の前へ来るやアクセルペダル
を話してブレーキペダルを蹴る様に踏んだ。戦車のブレーキは間に合わずフロントは
勢い良くぶつかった。
すると、テッドブロイラーの巨大な身体は慣性の法則によって投げ飛ばされる様に前
へと飛んで、鉄屑にぶつかったのだった。
レナは後ろへと戦車を下げて砲塔を前へと回して砲身をテッドブロイラーへと向け
た。
だが、テッドブロイラーは全然ダメージを負ってないのか起き上がるなり炎をぶちま
けた。
戦車は一気に燃え上がる。レナ自身も炎に包み込んで火葬場が出来上がる。
﹁LOVEマシン無かったら死んでたわ⋮⋮﹂
火葬場と化した車内で炎に包まれたレナは何も無かったかの様に平然としたままコ
ン ト ロ ー ル レ バ ー を 操 作 し て 再 び 前 へ と 突 っ 込 む。砲 身 が テ ッ ド ブ ロ イ ラ ー へ と 当
217
たって身体を突き破って貫いた。
レナが何故生きたまま燃やされても平気なのか
レナはハッチを開けて酸素を確保すると共に外へ出て行く。換気装置や消火装置は
た有毒ガスや酸欠からは身を守る訳では無かった。
とは言っても、熱や炎から守るだけで燃え上がる燃料から出る一酸化炭素を始めとし
ア﹄ これによってレナの身は守られた事によって炎と熱に耐えて居たのだった⋮⋮
子力学を利用した装置の恩恵であった。それのNo.3322の機能である﹃熱バリ
歌って踊れる双子の姉妹の科学者が作ったオカルト染みたLOVEマシンと言う量
?
﹂
ねぇねぇ 遺伝子の欠片も残さず燃やせなくてどんな
既に壊れて使い物にならない故に火葬場と化した爆薬庫から離れる為に⋮⋮
どんな気持ち
﹁ふうー⋮⋮空気マズっ
気持ち
?
!
!
﹁今度こそ死ね﹂
左手に握られたシリンジに気付かないままレナはマカロフを抜いた。
た。
党顔を更に悪党顔にしながらレナを睨み付けるや腰から大きめのシリンジを抜き取っ
がら悪戯の成功した子供の様に聞く。テッドブロイラーは子供が見たら泣きそうな悪
地面に降り立ったレナはじたばたともがくテッドブロイラーへイイ笑みを浮かべな
?
ホテルアグスタwars part3 218
ギガムカつく
ホテルアグスタ内部ではフェイトとヴィータがグラップラー達と戦闘して居た。
﹁コイツ等、何発も喰らってるのに何で平気なツラしてんだよ
﹂
!
﹁な
﹂
スマートボムを投げ付ける。
プロテクションで護られ、何とか耐えるヴィータへ体勢を立て直したグラップラーが
がヴィータへと襲い掛かる。
うとする。が、目の前の男は床へベタッと伏せて避けると5.56㎜高速弾のシャワー
ヴィータは悪態を吐きながらアイゼンを振るい、目の前に居るスーツの男へと当てよ
!
﹁ヴィータ副長
﹂
﹂
﹁待ちなさいスバル
ル へ 無 数 の 銃 弾 を 浴 び せ る。プ ロ テ ク シ ョ ン を 削 ら れ、傷 を 負 い な が ら も ス バ ル は
スバルがグラップラーへと突っ込む。が、グラップラー達は無機質な表情のままスバ
!!
!
した。
ヴィータはソレを打ち返そうと再びアイゼンを振るう。が、当たる瞬間に爆発を起こ
!?
219
ヴィータと接近戦してたグラップラーへと肉薄する。
鋼鉄の拳がグラップラーの顔を捉える。が、当たる事は無かった⋮⋮
拳が当たる直前、グラップラーは両の手で持ったSMGの上部へと持ち変えるなりS
MGの下部をスバルの顔面へと叩き付けて居た。
﹂
小銃を用いた軍隊格闘の一つを喰らったスバルは後ろへと倒れそうになる。
﹁オオオオォォォ
﹁ヤらせない
﹂
INIMIを撃とうとしたグラップラーが銃口をスバルへと向けた。
相手がヒヨッコだった故に油断したグラップラーの見事な敗北であった。そこへM
ばされたのだった。
プラーの顔面へと突き刺さり、サングラスと鼻の骨が砕けグラップラーは後ろへ殴り飛
スバルは力強く前へ一歩踏み出し、腰を捻るやそのまま拳を突き出した。拳はグラッ
!!
!
ごそうとする。
﹁お前ら良くやった
﹂
グラップラーは何発か当たりながらも即座に壁の裏へ隠れ、ティアナの弾幕をやり過
ナーの役割をしてるグラップラーへシュートバレットのシャワーを浴びせ掛ける。
テ ィ ア ナ は ミ ス シ ョ ッ ト を 挽 回 す る か の 如 く 両 手 に 携 え た ク ロ ス ミ ラ ー ジ ュ で ガ
!
ホテルアグスタwars part3 220
﹂
と思える程
その言葉と共に廊下の奥へとヴィータがアイゼンを構えながら勢い良く突っ込み、ガ
ナーの顔面へアイゼンをフルスイングした。首が折れたんじゃないか
急いではやての所へ行くぞ
な衝撃を食らい、グラップラーは吹き飛んで昏倒したのだった。
﹁良し
﹂﹂
!
スターズ分隊ははやての元へと駆け抜けるのだった。 ﹁﹁ハイ
!! !
?
﹁シャマル、此方は何とか片付いた。そっちの状況は
﹃此方ハンターァァ
此処に砲撃しろぉ
﹂
﹂
速ァクッ
﹁こちらはやて⋮⋮ハンター、何があったんや
!!
﹄
!!
﹂
ゴチャゴチャ要ってないで砲撃しろクソッタレ 今から照明弾打ち
上げるからソコにブチ込め
!!
!
はやてが言う前にスターズ1⋮⋮高町なのは一等空尉が声を挙げる。
!
﹁ウルセェ
が、状況説明は無くレナは怒鳴り声を挙げるだけであった。
はやてはレナの鬼気迫る怒鳴り声に驚きながらも状況を掌握しようと聞き返す。だ
?
!!
二人の通信を割り込むかの様に通信に怒鳴り声がする。
﹁スターズ1は制圧に成功あり。だけどハンターから返信有りません⋮⋮﹂
?
況確認の為に通信を繋ぐ。
せられたまま拘束されて居た。それにホッと胸を撫で下ろしたはやてはシャマルに状
突入して来たグラップラー達は後ろから挟まれる形で六課の面々に制圧され、気絶さ
﹁伏兵の制圧は何とか終わった⋮⋮後は外だけやけど⋮⋮﹂
ホテルアグスタwar choice
221
ホテルアグスタwar choice
222
﹃スターズ1、ハンターの救援に向かいます
﹃了解スターズ1⋮⋮﹄
⋮⋮
﹄
そうだ⋮⋮ストーブに使う灯油やガソリンが燃える臭いだ。それに血の臭いがする
││何の臭い何だろう⋮⋮だけど、何処かで嗅いだ事が有る。
モグロビンの鉄臭い匂いがなのは鼻腔を刺激する。
地面から熱気によって立ち上る肉の腐る酸っぱい臭いや油脂燃料が焼けた刺激臭、ヘ
めとする弾薬が爆竹が弾ける様な音を響かせ燃え盛る鉄屑が散乱している。
や肉片、その屍から出されたどす黒く変色した血が染み込んだ地面、引火した砲弾を始
それだけでは無い⋮⋮戦場には必ず転がるモノ。原形を留めぬ人だった物言わぬ屍
少しすると、戦火によって焼き尽くされた戦場と化した森だった場所が見えて来る。
衝撃波で木々が暴れ葉を撒き散らす。
速力で飛行してるのか、なのはが通り過ぎた後の下の森ではソニックブームと呼ばれる
高町なのはは通信を切ると、ザフィーラに警戒を任せて森の上空を飛行している。全
!
223
だけど⋮⋮この酸っぱい臭いは解らない。それに地面に散らばってるのは
闘してると理解する。
ラーとレナが呼んだグラップラーのボス
と思わしき男⋮⋮ テッドブロイラーと戦
マルチタスクのお陰か、呑気な思考を走らせても別の思考で敵の戦力はテッドブロイ
と言う事はレナが戦ってる相手はテッドブロイラーと言う事⋮⋮
反応は無くなってる。それに追加されたと言う話も出てない⋮⋮
ロングアーチから送られた情報によれば、ガジェットと戦車、装甲車と言った兵器の
││銃声がするならレナは未だ無事で戦ってる⋮⋮
感じた。
戦場と荒野と化した森から漂う幾つもの臭いに一つだけ解らなかった物になのはは
?
たいに身体が重い⋮⋮
ラム缶︵200リットル容量に砂とオイル染み込ませた鬼畜仕様︶を押し往復してるみ
││目が霞んで来る。炎で熱い筈なのに身体が寒い、それにデスクルスで満タンのド
ぐ様、レナが居ると思われる炎上する森へと飛んで行くのだった。
何せ銃声が耐えま無く響き、炎が巻き上がり森が燃え上がるのだから⋮⋮なのはは直
?
ホテルアグスタwar choice
224
なのはが上空を飛んでる間、木に背を預け、レナは荒い息を整える。しゃがみ込みた
いし、このまま地面に寝そべって眠りたい程に疲労は溜まり息も荒い。
それもその筈、約2.5kmを全速力10分で走り、最初に始末した装甲車と戦車の
部隊の兵員輸送スペースから降りて来た兵士⋮⋮32人と戦い、半分を蹴散らした。そ
れから、一台の戦車を奪ってからの蹂躙劇。
敵の放つ銃弾はともかく、戦車や装甲車から放たれる砲弾や待ち受けてた別の防衛部
隊の兵士が放つ対戦車HEATロケット弾による槍ぶす間を受けながらの強行軍。
強行軍はたった独りで戦うレナにとって戦車の頑強な装甲、その装甲の上に重なる装
甲タイルで守られてるとは言え、飛来する無数の砲弾は非常に不快であった。
重ねられた装甲タイルは瞬く間に壊れ、剥き出しになった装甲を何時貫かれて自分を
派手な葬式にするか解らない状態で、大半の敵の攻撃を一手に受けながら鋼鉄の棺桶に
乗り続ける恐怖は幾ら歴戦の猛者と言えど筆舌にし難いものである。
だが、彼女はそんな恐怖よりも復讐への執念が勝っていたのか、恐怖に晒されて続け
た故の感覚の麻痺のお陰か⋮⋮一歩も退く事は無く敵を殺し続けた。
そんな勝ち目の無い戦いを制したかと思えば、次に来たのは彼女が最も恐怖する存在
にして、最大の脅威であった。
通常であれば満身創痍である状況ならば逃げるのが当たり前だろう。しかし、レナは
225
逃げる事無かった。
復讐を今度こそ果たす為
ヴェテランハンターのプライド
そうでは無い⋮⋮
六課の隊員としての命令遂行の為
?
も使いモノに成らなくなっていたのだった⋮⋮
る。自慢の銃は鋼鉄すらも容易に融かす炎で破壊され、頼みの綱でもあった荷電粒子砲
スーツはよく見ると、所々融けておりその下から焼け爛れた無惨な火傷痕が覗いて
傷となって止めどなく血が流れ続ける。
耐えきれずに廃棄された。サラトガスーツの腹部には分厚い刃で抉られた孔が大きな
その証拠にレナのトレードマークである特殊繊維で編み上げられた赤い外套は熱に
しかし、レナはあの時に決着を着けようとして失敗した⋮⋮
た。
同じ哀しみと喪失が終わらないと、解ってるからこそレナは戦場に立ち続けるのであっ
ラーが生きてる限り、自分の⋮⋮否、この世界に来た当初に出逢った同じ境遇の子供と
な け れ ば 防 衛 目 標 で あ る ホ テ ル に 居 る 人 間 が 焼 き 尽 く さ れ る。同 時 に テ ッ ド ブ ロ イ
レナはテッドブロイラーの恐ろしさを身をもって理解してるからこそ、この場で倒さ
?
?
ホテルアグスタwar choice
226
レナは自分の状態を息を整えながら確認する。
│ │ 武 器 は マ カ ロ フ と 刀 だ け ⋮⋮ L O V E マ シ ン は バ ッ テ リ ー 切 れ。手 榴 弾 と フ
リーズボトルも使いきった。
防具は意味無し。身体は⋮⋮
レナは未だ無事なBSコントローラーの格納領域から一本のシリンジを右手で握る
や其を左腕の静脈に突き立てる。シリンジ内の薬液が空気の力で血管に流し込まれる
と、レナの身体から脳へと激しく訴えられる痛みが一気に消えて行く。
それだけでは無い⋮⋮
レナの身体からテッドブロイラーの手刀で突き刺さった傷、鋼鉄すらも容易に断ち切
るモヒカンで作られた深い傷や無惨な火傷がAV機器の逆再生の如くみるみる内に塞
がり、元の傷の無い肌へと戻って行く。傷を癒し、痛みを無くし、薬の麻酔作用で疲労
が誤魔化される事で先程までの満身創痍な身体は戦えるまでに回復はした。
だが、レナはテッドブロイラーに刺された傷から流れ出た血迄は戻す事は出来なかっ
た。
﹂
呼吸を整え、傷を癒したレナヘ炎が襲い掛かる。
﹁っ
舌打ちをし、前に飛び出し横から来た炎を避ける。と、炎の奔流は木々を焼き払いな
!?
227
がらレナを追い掛ける様に横へ横へと奔流はずらされて行く。
一旦、炎の奔流が止まるやレナは炎の奔流の元へ駆け抜ける。炎上する森の先でテッ
ドブロイラーは両手を伸ばし、両手に取り付けられた火炎放射器のノズルをレナヘと向
けて居た。ノズルから再び地獄の業火とも言える炎が吐き出される。
炎が迫ろうとも女豹の如く素早く疾走するレナの足は止まらない。
何時の間にか抜いたダブルバレルを左手だけで構え、テッドブロイラーの身体へ向け
て引き金を引く。
大砲の砲声にも思える銃声と共に10発の9㎜程の鉛ペレットと象と言う陸上で最
も大きく頑強な肉体を持った動物を撃つ為に作られた約18㎜の表面にタングステン
がメッキされ、先端に切れ目の入った鉛弾が撃ち出された。
テッドブロイラーは左腕を心臓部分に重ね、迫り来る散弾を防いだ。が、散弾の後に
飛んで来た象撃ち用ライフル弾はテッドブロイラーの腹筋へと当たった。
既に地面に落ちる様に着地したレナは自身の髪が焼けた臭いと頭上を通り過ぎた炎
の奔流を形成する有毒な燃料の臭いにうんざりしながらもテッドブロイラーが僅かな
隙を見せた事に笑みを浮かべ、立ち上がる。
利き脚を蹴り出し、再び全速力で走るや、ダブルバレルの銃身を固定するラッチに親
指を掛け、押し込む。バレルの固定が外されるやレナは右手で上下二本の銃身を下に押
ホテルアグスタwar choice
228
し込んで空薬莢の底を覗かせると、指で空薬莢を掴み乱暴に棄てる。
テッドブロイラーはレナヘ再び火炎放射を行う。炎がダブルバレルへ2発の700
ニトロエクスプレス弾を突っ込んでる所へと迫る。
今度は左横へと飛ぶ。炎に身体を炙られながらも地面に落ちたレナは息着く暇も無
く左へ左へと転がって炎から逃げると共に引火した右腕の炎を消そうとする。
炎は何とか消える。が、右腕は綺麗な皮膚が無く、殆ど火傷に覆われ脳にズキズキと
痛みを訴えて来る。 動かす度に痛みが走る。それでもレナは動かすのを辞めず、テッドブロイラーから逃
げる事を辞めなかった。
││アイツと私の距離は後100メートル。私は私の間合いに奴を入れてない。が、
奴は私を間合いに入れてる⋮⋮そろそろヤバい。
一気に蹴りを着けるしかない
炎の奔流が止まる。レナは先程よりも力強く地面を蹴りだし、駆け抜ける。息苦しさ
ジンの如く激しく鼓動する。
が、痺れも無くなる。それと共に頭に花火が上がり、心臓はニトロを流し込まれたエン
すると、新たに出来た激しい火傷の痛みが嘘の様にすっと消えて身体が若干、痺れる
一本の大木の裏に隠れたレナは右手に取った5つの錠剤を口に含んで呑み込む。
!!
229
を感じず、地面を馬の様に力強く蹴り出し続けてテッドブロイラーへと一直線に走る。
薬物の恩恵なのか、5秒もしない内にテッドブロイラーが目の前に居て手の届く距離
まで近付いた。
レナはダブルバレルの引き金を一気に引いて2発吐き出させると、地面に棄てて刀の
柄に手を掛ける。
テッドブロイラーの身体に象撃ち用ライフル弾がめり込む。それでもテッドブロイ
ラーは倒れず、弾も貫通する事は無かった。
テッドブロイラーは御返しと言わんばかりに右の太い腕を後ろへ下げ、鋼鉄すらも容
易に砕く拳を繰り出す。
レナの顔面へ拳が飛来する。が、拳が当たる直前にレナの抜いた刀がテッドブロイ
ラーの身体へと突き刺さる。レナはそのまま身体ごと当たって刃を押し込んで深く突
き刺して行く。刀が鍔の近くまで突き刺さる。 御互いの身体が密着するレナはテッドブロイラーの叫び声に興奮しながら刀の手に
力を込めて傷を深くして行く。しかし、テッドブロイラーは大きな巨体が暴れてレナの
顔面へ一撃が入った⋮⋮鼻が折れたのか鼻血を流し、折れた歯が口内をズタズタにす
る。それでもレナは刀から手を離す事は無かった。
殴られ続けて意識が朦朧とするなか、レナは左手をマカロフとダブルバレルのホルス
ホテルアグスタwar choice
230
ターとは別のホルスターに近付ける。中からマカロフよりも小さいが、照明弾を放つ銃
と言う銃声と共に白い尾を引きながら赤い光の弾が空で輝き、段々と地面へ落
⋮⋮フレアガンを抜いて真上に向けて引き金を引いた。
ポン
の肉片に死体、燃え盛る鉄屑や木々であった。
応答して下さい
﹄
ハンター
ハンター
!
そんな中、木々の上で赤い光がふわふわと地面へ落ちて行く。
ハンター
フレアを確認したか⋮⋮
!
﹁確認しましたハンター﹂
た。なのは、それに不安を覚えながらも返す。
今までとは打って変わってレナの声は今にも消えそうな蝋燭の火の様に弱々しかっ
!
なのはは、通信を開く。
﹁ハンター
!
﹃ゲホッゲホッ⋮⋮此方ハン⋮⋮
!
?
﹂
く。サーチャーに映るのは目を覆いたくなる程に惨たらしく殺された人間だった無数
なのははレナを探そうと燃え盛る森の上空を飛び、サーちゃーを幾つも展開して行
ちて行く。
!
231
﹃⋮⋮しろ⋮⋮⋮﹄
今すぐにだ
﹂
﹁聞き取れません。再送して下さいハンター﹂
﹁ほ、ほう⋮⋮砲撃しろぉ
!!
﹁え
﹂
﹃マスター、ハンターとテッドブロイラーと思わしき反応が密着してます﹄
!
解した。
殺傷設定でぇ
!!
レナは自分ごと撃てと言ったのだ。
私がコイツを抑え込んでる内にィ
!!
﹁ハンター離れて下さい。砲撃の被害範囲に入ってます⋮⋮﹂
﹃撃て⋮⋮早くしろぉ
!
高町なのはは選択を迫られた⋮⋮
﹄
相棒からの報告になのはは、一瞬だけフリーズする。が、何を言ってるのか直ぐに理
?
閑話染みたホテルアグスタwar choice re
魔法を放とうとしてるにも関わらず相棒を持つ手が震える。
﹃マスター、ハンターのバイタル低下を端末から確認﹄
?
無情な答えになのはは顔を青ざめさせる。撃てば首謀者の一人であるテッドブロイ
可能性大⋮⋮﹄
﹃非殺傷設定で攻撃した場合もハンターの身体はそのショックに耐えきれず死亡する
機械仕掛けの不屈の心は主の意図に気付くと、瞬時に答えを出す。 ﹁レイジングハート、レナが言った通りに撃ったらどうなる
﹂
なのははレイジングハートをテッドブロイラーへと向ける。普段と変わらない敵へ
て押さえ込んで私ごと撃てと叫ぶ。
そんな彼女は首謀者の一人である男の腹に刀を突き刺すなり、後ろの木へと叩き付け
いと言う事で六課の一員になった娘⋮⋮
その少女と不幸な行き違いで戦う事になってしまったが、事件の首謀者に関して詳し
高町なのはは決断に迫られて居た。出会った次元漂流者の少女。
sult
閑話染みたホテルアグスタwar choice result
232
233
ラーを逮捕出来る。同時にレナが死んでしまう。
撃たなければレナは何れ死に、テッドブロイラーに逃げられてしまう。
撃っても、撃たなくても新しい仲間となったレナが死ぬと言う結果になのは愕然とす
る。が、法を司る管理局員としては引き金を引かなければならない。
なのはは自分に言い聴かせるとレイジングハートを握り直す。それから、照準をテッ
ドブロイラーとレナへと合わせる。
撃ったら取り返しの付かない事になる
だけど、撃たなければテッド
だが、レイジングハートを握るなのはの手は震え、魔法が放たれる事は無かった。
││駄目
ブロイラーを逮捕する事が出来ない
!
る事が出来た。
そんな彼女が何故引き金を引けないか
?
学校教育を受けていて、犯罪を犯すのは悪い事だと理解してると前提で普通の人は人
人を殺したくない。
答えは単純明快⋮⋮
その数年後にも魔法と類する事件と関わり、地球滅亡の危機を別れを伴いながら免れ
した。
尉は10代を向かえる以前に魔法と関わり、親友とも呼べる人達と協力して事件を解決
人に向けて砲撃は数えるのが馬鹿らしくなる程にした事がある。高町なのは一等空
!
!
閑話染みたホテルアグスタwar choice result
234
を殺すと言う行為は最もしてはいけない大罪だと理解してる。
某総理大臣も﹃人命は地球よりも重い﹄と発言してテロリストの要求を呑んだ程に人
命はかけがえの無いモノである。それが普通の思考だ。
更になのはが体験した最初の事件の真犯人にして、親友である女性の産みの親が起こ
した事件の全容を目の当たりにしたが故に高町なのは普通の人以上に人名の尊さを
﹄
知ってるからこそ、レナの叫びに答える事が出来ないで居た。
私が抑え込んでる内に速くしろぉ
そんななのはへ叫び声が再びする。
﹃とっとと撃て
!!
なのか
それはなのは本人にしか解らない。
アクセルシューターで誘導して当てれば⋮⋮
どうすれば良い
それでも構え直すのは無意識からの逃避なのか、外したら後が無い故のプレッシャー
るディバインバスターは当たる。構え直さずとも当たるのだ⋮⋮
距離は数百m先、なのはの技量であれば目を瞑ってても慣れ親しんだ自慢の魔法であ
レナの魂の慟哭になのははハッとしてまた構え直す。
!!
││撃たなきゃ、だけど、撃ったらレナが死んじゃう。どうする
の
そうだ
?
?
なのははレイジングハートを構えたままで桜色に輝く無数の魔力スフィアを周りに
!
?
235
展開する。
アクセルシューターが放たれる。
疾風の如く飛ぶ数えきれぬ程の魔力弾がテッドブロイラーへと向かう。ほんの数秒
でテッドブロイラーの元へと来た。
その瞬間、意識を失ったのかピクリとも動かずテッドブロイラーに凭れ掛かるレナの
髪を引っ掴むやレナを右手だけで持ち上げ振り回した。
﹄
サーチャーから送られる映像になのはは間抜けにも声を挙げた。
ハンターのバイタルレベル低下
﹁そんなのって⋮⋮﹂
﹃マスター
!
を睨み付ける。
としたまま盾と化したレナを片手にアクセルシューターを放った遠くに浮かぶなのは
数発だけ当たったが、テッドブロイラーにはダメージになっていなかったのか、平然
なのはそれに驚きながらもアクセルシューターを消した。
レナで落とせなかった弾は両目から放つレーザーで撃ち落とし、掻き消す。
が撒き散らされ、赤みがかった茶色の染みを地面に着けて行く。
て叩き落としたのだった。殆どの弾がレナへと追い打ちを掛ける。地面にはレナの血
テッドブロイラーはレナをラケットの様に軽々と振り回し、自分に飛んできた弾を全
!
閑話染みたホテルアグスタwar choice result
236
││そんな酷い方法で防ぐなんて⋮⋮これがレナの世界での戦いなの
戦いじゃない。殺し合いだよ
こんなの
?
て、叫び声を挙げる。
﹁満ターンドリーンク
﹂
テッドブロイラーが腹に刺さってたレナの刀を引き抜き、地面へ投げ捨てる。そし
た。
故に此処が殺し合い前提である戦場であると最初から現在まで解らずに居たのだっ
非殺傷設定があったからこそ、なのはは殺し合いをした事が無かった。
年誌的な思考を心の片隅に持って居た。そらにデバイスの恩恵でもあり弊害でもある
それは高町なのはの歪みでもある。彼女は戦って交流すれば仲良く慣れると言う少
先にも挙げた様になのはは魔法と出合い、戦って親友とも呼べる人達と出会った⋮⋮
合いであると今、初めて理解する。
なのははテッドブロイラーの行為にレナの居た世界での戦いは戦い等では無く、殺し
!
イラーと戦い死んで逝った戦士にとっては絶望の呪文であった。
テッドブロイラーのその叫びはテッドブロイラーには傷を癒す呪文だが、テッドブロ
まるで魔法の様に⋮⋮
その言葉と共にレナとの戦いで負傷したテッドブロイラーの傷は一瞬で癒えて行く。
!
237
﹂
そんな状況になのはは驚きの声を挙げる。
﹁な
﹄
スターズ2、ライトニング1、2はスターズ1の援護に向かって
!
戦いの時間を産むのだった。
逃げる殺戮と炎の権化。追うはエース・オブ・エース。道徳や倫理観の違いは無駄な
下さい
﹃了解スターズ1
逃走したので追跡すると報告する。
なのはは上空からテッドブロイラーを追跡する。同時に通信でテッドブロイラーが
!?
!
﹁誰も居ないわよね⋮⋮ね
?
﹂
!
﹂
を繰り返すと、レナは端末を再び操作する。
それから響かない程度に大きな声で叫んだ。
!
眩い光はしなかった。が、その言葉と共に黒いタンクトップにカーゴパンツと言うラ
﹁リリ狩る★ マジ狩る︵ハート フォームちぇーんじ
﹂
緊張でドキドキと生きてる島のコアの如く脈動する心臓を落ち着かせる様に深呼吸
﹁よし
のだった⋮⋮
思って思案を重ね、今回の実験もといあの世界で憧れてた事を実現させようとして居た
であった。彼女はとあるモノを何度も見て自分もやってみたいと思い、出来ないかと
端末⋮⋮BSコントローラーを操作してるのは六課の協力者であるレナと言う少女
﹁さて、BSコントローラーの設定をこうして、こうで⋮⋮﹂
くして周囲に人が居ない事が解るとホッと一息着いて左腕の端末を操作し始めた⋮⋮
夜の六課隊舎の外⋮⋮独りの少女が周囲を伺う様にキョロキョロと見回してる。暫
?
コスプレ
コスプレ?
238
239
フな格好のレナの姿が変わる。
﹁マジ狩る★ メイド 参上
悪い奴等を片付ちゃうぞ︵ハァト﹂
気にしたら敗けだ。それに可愛らしいメイドさん︵笑︶
その翌日。地球で言う土日に当たる休み⋮⋮
が可愛らしいコロス笑顔を振り撒きながらバットをブンブンしちゃうから⋮⋮ね
何で危ない︽釘︾バットか
ドさん姿になって手には危ない︽釘︾バットを持ってウィンクして居た⋮⋮
カに黒のニーハイソックスに可愛らしい靴と言う大きなオトモダチ受けしそうなメイ
ルが施されたエプロンにカチューシャに髪の色に合わせたくすんだ金色の猫耳、ミニス
様々な称号を持ったハンターの少女の姿は黒を基調としたクラシックなドレスで、フリ
メイドの姿をして居た。紅い悪魔、人間戦車、賞金女王、撃墜女王、浪費平気彼女、等々
!!
?
﹂
﹂
は笑いを堪えるのに必死であった。
﹁ねぇ、どうしたの
﹁な、何でも無いです
﹂
レナが食堂で朝食を食べてると、エリオは目を合わせようとせず、スバルとティアナ
?
お姉さん泣いちゃうよ
?
?
﹁ふーん、エリオ君⋮⋮何で私の顔を見れないのかなぁ
?
!
コスプレ?
240
﹁な、何でも無いんです
本当に何もありません
﹂
!!
﹁何なのかしら
﹂
スバルとティアナも退散した。
そそくさと食器を持って去るエリオ、それを追い掛けるキャロ。それに呼応する様に
﹁エリオくーん、まってよ∼﹂
!?
﹁おっはよー
今日も良い天気ね
﹂
を楽しみにレナは浮き足立って整備場へと入る。
戦車の武装やパーツを手に入れて直したトモダチ戦車⋮⋮レッドウルフに乗れる日
は気に喰わないけど、仕方無いか⋮⋮
││腐れ︻ピー︼どもの戦車から外したパワーパックと副砲、それに主砲を載せるの
朝食を食べ終えたレナはレッドウルフの点検の為に整備場へと向かって居た。
きにする事無くレナはオムレツを頬張るのだった。
?
!
何してる⋮⋮の
﹂
?
その中心に映る空間モニターには
陽気に声を掛け、人だかりに近付くレナ⋮⋮
﹁おっはよー
イスを中心に整備士達が集まってた。
整備場へ入っても返事がしない。それからキョロキョロと整備士を探してると、ヴァ
!
!
241
﹃リリ狩る★ マジ狩る︵ ハート﹄
それを見るやレナの明るかった表情が見る見る内に後ろに停まる愛車の如く赤く染
まって行く。ソレに気付いた整備士達は驚いてレナから距離を取った。
﹁レ、レナさん⋮⋮これはですね﹂
ヴ ァ イ ス は 目 の 前 で 半 端 な い 圧 力 を 醸 し 出 す 紅 い 悪 魔 へ 必 死 に 弁 明 し よ う と す る。
が、
﹂
﹁ねぇ、ヴァイスくぅん⋮⋮ナニモミテナイワヨネ それにその映像も存在シテナ
イワ⋮⋮チガウかしら
?
﹁は、はい
﹂
んが持ってる危ない︽釘︾バットが握られて居る⋮⋮
悪魔はイイ感じのコロス笑みを浮かべ、手にはモニターに映るマジ狩る★ メイドさ
ヴァイス達の目の前に悪魔が降臨した。
?
コレダケジャナイデショウネェ
オシエテ
?
らこそ逆らう事は出来なかった⋮⋮
﹁ネェ⋮⋮他にシッテルヒトイナイ
ヨ⋮⋮﹂
?
居る華奢な彼女は素手でガジェットを壊し、人を容易く殺せるバケモノだと解ってるか
悪魔⋮⋮レナの言葉にヴァイス達は直立不動の姿勢で返事をする。彼等は目の前に
!
﹁ヒヨッコ達と⋮⋮隊長達が知ってます
﹁ケシナサイネ
﹂
次、ミタラ⋮⋮お片付けしちゃうぞ★﹂
ソレを聴くやレナは反芻する様に頷いて口を開いた。
!
おい、ユーノ、コレマジか 腹が、腹がいてぇ
?
砂塵と瓦礫の世界にもレナの秘密のコスプレは広がって多いに笑われた。
わぁ。あの子にも女の子らしい所があって﹄
あら、可愛いじゃないのぉ、良かった
トリチナヤ持って来てくれぇ。後、見ろよこれ﹄
﹃だな、これはイリットちゃん達にも見せてやろう⋮⋮その前におーい、ヌッカー、カス
!
た。
﹄
?
余談だが、これを見た不良メカニックとヤマネコソルジャーは⋮⋮
似合わねぇなオイ
﹃ゲラゲラゲラゲラ⋮⋮
!
﹃暫くはこのネタで弄れるわね⋮⋮あー、お腹痛い⋮⋮﹄
つーか、
局員の密かな人気を呼び、レナの秘密のコスプレ撮影に命を掛ける者が居た程であっ
が、映像はレナのルックスと普段の冷淡な戦闘の激しいギャップによる萌えから男性
は土下座で忘れる様に嘆願した⋮⋮
それからレナは全速力でヒョッコ達にお願いと言う名の脅迫して忘れさせ、隊長達に
?
!!
﹃ハイハイ、カストリチナヤよ⋮⋮何かしら
コスプレ?
242
全てに片が着いて帰って来てソレを知ったレナはマジ狩る★メイドさん姿になるや
不良メカニックにヨコズナオーラ、練気の呼吸からのミサイルキックばりのパンチラ
キックを叩き込んだのは言う迄も無いだろう⋮⋮
その数日後にはユーノ宛の荷物が届いた⋮⋮
﹁何だろう⋮⋮差出人不明⋮⋮メッセージカードだ﹂
中では幾つもの笑い声が聞こえ、次元の海で大爆発を起こしたのだった⋮⋮ それを見たユーノは直ぐ様察して荷物を次元の海へ棄てに行った。
﹃マジ狩る★メイドさんから素敵な詰め合わせ︵ハァト﹄
243
御知らせ
砂塵と瓦礫∼をお読み下さった皆様方、お読みくださり有難う御座います⋮⋮
私、ファベーラまたは幽霊は暫くの間、更新停止を現刻を以て宣言致します。
大変、自分勝手な話で幽霊時代の私をご存知の方々はまたか、このクソバカはとお思
いでしょう。
とは言っても私、自体無名の駄文書きなので知らない方々の方が多数でしょうけど
その街の中心には綺麗な洋館が建っていた。その館の主は長いブロンドの髪を流し
バトー研究所の南にプレシアと呼ばれる町が出来て数年が過ぎていた。
皆様、大変申し訳御座いませんでした。下のはお詫び的な短編擬きです
保出来なくなりました⋮⋮
中的に進めたいのとリアルの方がすこーしばかり忙しくなると言った具合に時間を確
現在、執筆しております︻二回目の異世界はファンタジーでした︼の方を暫くの間、集
さて、言い訳するとしたらオリジナルを書きたいからで御座います⋮⋮
︵笑︶ 御知らせ
244
245
た女性で、彼女はお姉さん先生と呼ばれて居た⋮⋮
﹁今日も良い天気ね⋮⋮さて、御仕事、御仕事⋮⋮﹂
お姉さん先生は庭に出て背伸びをすると、館へと戻る。黒いタンクトップの上にナー
﹂
スの着る白衣を羽織ると、自分の仕事場である母の研究室へと入った。
薬は用意してるけど、お酒は控えなさいね
そんな研究所へ街の人々がやって来る。
﹁あら、マークスさん
?
染みるけど、お兄ちゃんなんだから強い
泣く子供にお姉ちゃんセンセ∼は仕方無いわね。と、言うやアルコールとバンドエイ
﹁お姉ちゃんセンセ∼、足怪我したよー﹂
怪我した子供であった。
参ったやなぁ、と笑う呑んだくれの親父に風邪薬を処方して渡す。その次に来たのは
?
だったら泣かないの
!
ドを棚から出した。
﹂
﹁男の子でしょ
んでしょ
?
センセ∼は溜め息を吐いた。
暫くすると、患者は居なくなって洋館はシーンとし始めた。そんな状況にお姉ちゃん
て充実した生活を迎えて居た⋮⋮
そんな具合に子供の怪我を処置すると言った具合にお姉ちゃんセンセ∼が医者とし
!
﹁医者としては喜ぶべきかしらね とは言っても忙しくなるのは人として嫌なのよ
ねぇ⋮⋮﹂
窓から見えたのは北の外れに住む口の悪すぎる変態ボッチのトモダチになった自分
出た⋮⋮
紫煙を燻らせてると、窓が震える。それに彼女は苦笑いを浮かべるや窓を開けて外に
つやトレーダーから買った煙草に火を点ける。
まぁ、あのバカはケガはするけど、死なないから大丈夫か。と、思いながら窓辺に立
﹁そう言えば、あのバカは何をしてるのかしら⋮⋮﹂
それから常連であった命知らずの少女をふと、思い出した⋮⋮
?
腕千切れた
﹂
よりもバカで命知らずのトモダチの愛車にしてトレードマークである深紅の重戦車で
あった。
足とんだ
?
その戦車は館の前に止まる。
﹁今度は何
?
﹁何時もニコニコミク便でーす
﹂
サインくださーい
﹁アンタ、何時から運び屋になったのよ
!
﹂
!
女はボードに挟まれた紙を差し出して笑顔で言う。
常連客である同い年くらいの少女へ向かってくわえ煙草で悪態を垂れる。そんな少
?
?
御知らせ
246
247
﹁ハイハーイ、そんな事は流れカミカゼボムの如くナガシマショウネー。はよ、サイン
しろしヤブイシャー﹂
変態が名付けたアダ名にカチンと来るや、額に青筋を浮かべる。
﹁黙れヘタレヒンニュー⋮⋮アンタ、ヘタレだから好きな人に告白出来なくて未だに
しょ⋮⋮﹂
﹂
言い掛けた瞬間、お姉ちゃんセンセ∼は固まるや煙草が地面へポトリと落ちる。赤い
アンタの遠回しの嫌がらせ
戦車から降りて来たのは、自分と瓜二つの女性であった⋮⋮
﹁⋮⋮コピードールの送り主誰
?
﹁﹁な
﹂﹂
﹁はい、確かに荷物トドケマシタヨー。後はごじゆーにねー﹂
る。
御互いに沈黙であった。そんな様子にレナは明るい笑みを浮かべて二人に声を掛け
﹁⋮⋮⋮⋮﹂
を押し出した。
少女⋮⋮レナはゴリラばりの力で女性の前にアリシアと呼んだお姉ちゃんセンセ∼
﹁んな事言わない、言わない⋮⋮アリシア・ヤブイシャー﹂
?
二人はレッドウルフに乗って去るレナを呼び止めようとするが、彼女の戦車はモンス
!?
ター対策の柵を踏み潰して去って行った⋮⋮
﹁あんのアーパーがぁ⋮⋮後でオシオキじゃあ
﹁アリシア⋮⋮﹂
﹂
!
立ち話も何だからさ⋮⋮﹂
レナが連れてきた女性、フェイトが自身のオリジナルを呼ぶ。すると、アリシアは振
替って彼女へ返す。
﹁あー⋮⋮とりあえず、中に入らない
こうして、姉妹は再開したのだった。
後日、レナの元へ手紙が届いた。
?
﹄
けど、柵の修理費と道路の修繕費払えゴラァ 払わな
きゃ、直接出向いて生きたまま解体すんぞぉ
?
アリシアもまた、あの世界の住人であった⋮⋮
!
いだから、良かったのかな
﹃ありがとう、妹に会わせてくれて⋮⋮フェイトは母さんの事も踏ん切り付けれたみた
御知らせ
248
!
謎につつまれた
大破壊
の日々。
"
やかながらも活気を取り戻していた。
そしてここに、この時代であるがゆえに光を放つ荒々しい人間たちが居た
人々は、尊敬と恐怖の念を込め、モンスターハンターと呼んだ
リカと呼ばれてた地域の東部。
そんな荒廃した世界の一部⋮⋮ジャッジメント・バレーと呼ばれる大破壊前にはアメ
!!
それは、強力な戦車を駆ってモンスターどもを狩る、情け無用の賞金稼ぎ⋮⋮
!
凶暴なモンスターがうろつく、この危険な世界にも村や町が出来上がり、人々はささ
だが、人類は未だ生きる希望を喪っていなかった⋮⋮
だけであるかのように見えた⋮⋮
人類はその記憶さえも亡くして過去の文明の遺産を喰い潰しながらただ生きている
"
えて暮らす獲物になりさがっていた。
人類はもはや地上の支配者ではなく、どこからともなく現れたモンスター達の姿に怯
文明は崩壊し、平和はがれきの下へ朽ち果てた⋮⋮
没ネタ供養
249
没ネタ供養
250
そこの東部では死から蘇った青年が居た。
彼は全ての記憶を失っていた。目の前には怪しい科学者。
科学者はDr.ミンチと名乗り、電撃蘇生学によって蘇らせた語る。
ミンチと名乗る見るから胡散臭く、狂った科学者と見てとれる老人が言うには、自分
の助手であるイゴールが川上から流れて来た所を拾って電撃蘇生学の実験材料として
扱ったと。
そして、青年は失われた自分の記憶を取り戻す為に旅立つ決意を固めて実行した。
それが物語の始まりであった⋮⋮
その物語が終焉に差し掛かる頃には自分が何者であったかは解ったが、それは他人の
情報からだけで自分が思い出せた記憶は何も無かった。その時に解った事は自分が怪
物として無数の人間を屠り恐れられた賞金首である事と実験体であったと言う事、記録
にあった自分の名前だけであった。
メツィブ・メラハから南東へ数kmの湖に浮かぶ巨大な青い潜水艦の甲板の上に有る
のは戦車だった紅い残骸。と対空車両であるツングースカだったモノと人間の女ソル
ジャーだった肉片と血、臓物で彩られたバイクの残骸。そして、人類が生まれる前に地
球上を群雄割拠して居た古き生物たる恐竜に似た死骸と紅い鬣と鋼鉄にして最強の地
上兵器たる戦車さえも切り裂き、噛み砕く鋭い牙と爪、それらを可能にする筋肉を持ち
251
合わせた獅子が恐竜だった死骸の首を銜えて居た。
獅子は銜えてた首を湖に放り棄てる。同時に、獅子の身体を構成する細胞組織が悲鳴
と煙を上げて激痛を獅子に与えた。少し経つと、獅子は人の姿になってた。現れたのは
獅子と同じ紅い髪を持ち、顔に刺青の様な線が入った10代後半ぐらいの青年であっ
た。
そんな青年はフラつき、膝を甲板に付けて倒れ込んだ。顔を戦車の残骸に向けて自分
の都合で巻き込んだ仲間であったモノが視線に入れるとボヤキ始める。
﹁あーあ⋮⋮俺も死ぬのか。皆、ゴメンな俺の勝手な都合に巻き込んでよ﹂
﹁確かにもう駄目みたいね⋮⋮﹂
そんな青年の元に長く、綺麗に手入れされた髪を持った青年と同い年ぐらいの一人の
﹂
待ってろって言った筈だろうが﹂
少女が近付いて来る。青年はそれを見ると、呆れ顔で溜め息を付いてボヤいた。
﹁コーラ⋮⋮何でここに居る
コイツは吹っ飛ぶ寸前で陸までは遠い⋮⋮行くとしたら、満
!!
?
﹁そんな事より行くわよ、ドラムカン
﹁行くって何処にだ
﹁あの転送装置よ
脱出用にも使われるんだろうから、使える筈だわ﹂
員状態の地獄だけだろうが﹂
?
頭一つ分、小さな背の同年代でサラサラとした長い黒い髪を持った少女は、ドラムカ
!!
没ネタ供養
252
ンと呼んだ青年にコーラと呼ばれた少女は青年を力を込めて引っ張り、立ち上がらせ
る。ドラムカンはふら付きながらも何とか立ち上がると、コーラに支えられながら自爆
が行われようとしてる潜水艦のハッチの中へと入った。
自爆まで数分の間に2人は転送装置の前に立った。コーラは、コントロールボードの
キーを適当に叩き行き先をココではない何処かへ合わせ、転送装置内で倒れてるドラム
カンの元へと駆け寄った。
﹁ホラこれ⋮⋮満タンドリンク。﹂
﹁最初に渡せよ⋮⋮﹂
転送装置が2人の質量、大きさ、形成する物質読み取る。その数秒後、転送装置は2
テンソウジコハッセイ
テンソウジコハッセイ
﹂
人を原子分解させて指定された目的地へと電送した。眩い閃光と共に2人が消える。
エラー
!
!
!
その直ぐ後⋮⋮コントロールボードがアナウンスを流した。
﹁エラー
!