心因性疼痛の診断と治療 (身体化を生じる精神疾患) 疼痛性障害 大うつ病性障害 B群人格障害 静岡市立清水病院口腔外科 井川 雅子 2軸評定 ● Axis I (身体面) Bio-psycho-social model ● ● Axis II (精神面) 身体化 (somatization) • 身体化とはなにか? 心理的葛藤を、身体症状として表出すること (例) 「学校に行きたくない→おなかが痛くなる」 • 身体化を生じる可能性のある精神疾患 身体表現性障害 気分障害(大うつ病性障害など) 統合失調症(旧称、精神分裂病、schizophrenia) 妄想性障害(身体型=心気妄想) 人格障害 米国精神医学会作成 「精神疾患の診断・統計マニュアル」 DSM-IV TR 身体表現性障害(Somatoform Disorders) • “身体表現性障害”とは、身体疾患を模倣する 精神疾患(ただし詐病を除く)をいう。 適切な臨床検査などの検索を行っても、症状を説明できる所見 がないときに診断される精神疾患。 (慢性疼痛、執拗な咬み合わせの異常感、めまい、頭痛、肩こり、 自律神経失調症、不定愁訴、ヒステリー、慢性疲労症候群など と診断されるものの多くも、身体表現性障害に含まれると考えら れる。) • 医学論文では「Unexplained physical symptoms(説明不能な 身体症状)」という言葉で表現されることが多い。 身体表現性障害 • 有病率は非常に高い – 疼痛を訴える患者の40% – 口腔外科受診患者の8%以上 • 脳のセロトニン系神経ネットワークの異常と考え られている – Biological psychiatry(生物学的精神医学) – 「心の病気とはいっても、つまるところ体の病気」 • ストレスと関連して症状が悪化する 身体表現性障害の分類 • 身体化障害(somatization disorder) • 鑑別不能型身体表現性障害(疼痛以外の身体化症 状=咬み合わせがおかしいと執拗に訴える患者) • • • • • 転換性障害 疼痛性障害 心気症(日本の“心気症”とは定義が異なる) 身体醜形障害 特定不能の身体表現性障害 疼痛性障害 (Pain Disorder)の診断基準 • A.1つまたはそれ以上の解剖学的部位における疼痛が臨 床像の中心を占めており,臨床的関与に値するほど重篤 である • B,その疼痛は,臨床的に著しい苦痛または,社会的・職 業的,または他の重要な領域における機能の障害を引き 起こしている • C,心理的要因が,疼痛の発症,重症度,悪化,または持 続に重要な役割を果たしていると判断される • D.その症状または欠陥は,(虚偽性障害または詐病の ように)意図的につくりだされたり捏造されたりしたも のではない • E.疼痛は,気分障害,不安障害,精神病性障害ではう まく説明されないし,性交疼痛症の基準を満たさない 疼痛性障害・慢性疼痛の 第一選択薬は抗うつ薬 抗うつ薬の治療適応 • 精神疾患 – 大うつ病性障害、パニック障害、全般性不安障害、 強迫性障害、摂食障害、疼痛性障害 • 慢性疼痛 – Neuropathic pain、慢性頭痛、慢性症状を持つ TMD 2,うつ病(大うつ病性障害) • 大うつ病性障害患者のほとんど全てが、初期に身体症 状を訴え、身体科を受診する • 「うつは痛い病気」 • うつと統合失調症は、精神科医が得意な(好きな)病気。 疑ったら、精神科へ依頼する。 うつの判定基準 <中心症状> 1日中気分がふさぎ、何をやってもつまらない。 喜びを感じない。そのため、仕事、家事、学業など本来でき ていた生活が果たせなくなっている。 <副症状> 食欲の喪失 眠れない イライラする 検査をしても異常がないのに、身体不調が続く 考えがまとまらず、物事が決められない 死んだ方が楽だと考える 3,人格障害(Personality Disorders) A群人格障害(奇妙、風変わり) B群人格障害(演劇的、 妄想性人格障害(猜疑心が強い) 情緒的、移り気) 分裂病質人格障害(引きこもり) ・反社会性人格障害 分裂病型人格障害(風変わり) ・境界性人格障害 ・演技性人格障害 C群人格障害(不安、恐怖) ・自己愛性人格障害 回避性人格障害(低い自己評価) (身体化症状が強く出るこ 依存性人格障害(他人任せ、無責任) 強迫性人格障害(凡帳面、完全主義) とが多い ) 境界性人格障害 対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性を特徴とする ・不安定で激しい対人関係様式を示す(理想化とこき下ろし) ・見捨てられることを必要以上に避けようとする人格障害 ・総人口の2%、臨床現場でみかける人格障害の30~60% ・性別では女性に多い(男性の約3倍) ・自殺やリストカットなどの自傷行為をくり返す者やアルコール 濫用者などに多い ・医師(または医療関係者)に対しても、ちょっとしたことで怒り 出したり、泣き出したりといった態度がよくみられる ・パラメディカルとトラブルを起こしやすい コケティッシュなふるまい ・特に男性のDr.はだまされやすいので注意!(by山田和男) 患者を観察する目 (疾患に関する知識があるのは、当たり前) 1,2軸で判断する(bio-psycho-social) 2,personalityの問題の有無 3,患者のIQ (理解力) Clinician’s Intuition(臨床家の直観) まとめ(一番大事なこと) 歯科治療の結果は予測できる ↓ 予測した結果にならない場合は、 なにかが間違っている ↓ 立ち止まって考える (同じ治療を延々と繰り返す 愚をおかしてはならない)
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