モロッコ (282KB、2006年)

モロッコ医療情報
以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の
服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ
イスを受けるようにしてください。
最新更新履歴: 2006 年
1.赴任前の準備
(1)予防接種
入国に際し提示を求められる予防接種証明書はない。ただし、黄熱病流行
地区を通過してから入国する場合は予防接種証明を要求されることがあるの
で、注意が必要である。黄熱病の予防接種は、カサブランカにあるパストゥ
ール研究所で受けることができる。(ただし、予約を必要とする)
長期の滞在の場合本邦にて以下の予防接種を受けることを勧めるが、当地
でも一部ワクチン(③、④)の入手は可能である。
①A 型肝炎(A 型肝炎抗体陰性の場合)
②破傷風
③狂犬病(国内で年間20数名の狂犬病による死亡報告があり)
④B 型肝炎(B 型肝炎抗体陰性の場合)
その他腸チフス、髄膜炎のワクチンも入手可能である。ワクチンは薬局に
て入手可能で、医師の処方箋が必要である。また、入手に数日間を要する場
合と当日入手できる場合がある。その際注射器も併せて購入可能、実施は医
師に依頼するので別途クリニック等の予約が必要となる。本邦からの薬品を
持参しても取り扱い説明が日本語の場合、実施できないこともあるので購入
可能なワクチンは当地での入手を勧める。
乳幼児に関しては、BCG 、麻疹、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオワ
クチン、B 型肝炎の接種が可能である。薬品の購入は、処方箋を持参し薬局に
て購入する必要があるが、ラバト市内の薬局で購入する場合は当日もしくは
数日で入手可能である。実施は別途医師に依頼する。
(2)その他の準備
眼鏡、コンタクトレンズはヨーロッパ製、日本製ともに購入可能である。
歯科治療はできる限り赴任前に済ませることを勧めるが、歯科の開業医は
多く矯正治療を含む治療が可能である。
常備薬があれば持参を勧めるが、購入に際し本邦にて処方箋を必要とする
薬品については、当地でもほぼ同様である。また、サロンパス・サロメチー
ル・湿布薬等貼用薬の入手は困難であるので必要に応じ持参を勧める。
3.医療事情
(1)医療機関
モロッコの医療システムは、医薬分業である。また、血液検査等の臨床検
査機関および放射線検査についても、分業となっている。そのため、最終診
断にはかなりの時間と労力が必要になる。また受診に際しては、基本的に予
約が必要である。
ラバト市内には国立イブンシナ総合病院、各科専門医と契約している私立
病院のほか、海外留学の経験のある開業医師が多数いる。使用言語はアラビ
ア語またはフランス語であるが、開業医の中には英語を話す医師もいる。国
立イブンシナ総合病院は、ラバトの中心部にあり心臓移植手術などを行いモ
ロッコ最高の技術を誇っているが、建物は老朽化している。また救急部門は
他施設からの搬送患者等で込み合っているため受診までに時間を要するので、
外国人の受診は少ない。
(一般的に Hopital という表現は公立施設、Clinic は
私立施設を指すもので、病院・開業医の双方を表現している)
外科系系疾患や原因不明の疾患による緊急時の受診は、施設内での検査実
施が可能な私立病院受診を勧めるが、予防接種の実施や風邪等のため各種検
査を必要としないケースでは、開業医への受診を勧める。
外国人の受診の多い医療機関は次のとおりである。
<入院が可能な施設>
・Hopital Sheikh Zayed(シェイク・ザイード病院)
所在地 :Madinat Al Irfane, Hay Ryad, Rabat
電話 :(037)686868,
FAX :(037)683848
診療時間 :8:00~12:00、15:00~18:00
ただし、救急部についてはこの限りではない。
診療科目 :内科、外科、整形外科、脳神経科、泌尿器科、産婦人科な
ど。
備考 :長期入院可。入院費 1 日あたり 250~1000DH。
アラブ首長国連邦の援助により設立された半官半民の病院である。
最新の機材を備えており院内にてほとんどすべての検査を受けるこ
とが可能である(各種内視鏡検査・マンモグラフィー・MRI・CT スキ
ャナー等)。また人工透析・破砕器等の治療機器に加え ICU の設備も
ある。
・Clinique Agdal (クリニック・アグダル)
所在地 :6, Place Talha‐Ave. Ibn Sina,Agdal,Rabat
電話 :(037)777777,677777
FAX :(037)774005
診療時間 :8:00~12:00、15:00~19:00
ただし、救急部についてはこの限りではない。
診療科目 :外科、整形外科、内科、精神・神経科など。
備考 :1992 年設立。循環器系救急が有名。長期入院可。入院費 1 日あ
たり 480~720DH。家族等が付き添う場合は別途ベッド料として 150DH
が必要。
・Clinique Tour Hassan(クリニック・トゥール・ハッサン)
所在地 :Rue Idriss Al Azhar, Tour Hassan, Rabat
電話 :(037)707837, 707905,701723
FAX
:(037)708897
診療時間 :8:00~12:00、14:00~18:00
診療科目 :外科、内科、小児科、産婦人科など
備考 :長期入院可。入院費 1 日あたり 500~700DH。家族等が付き添う
場合は別途ベッド料として 160DH が必要。
・Clinique des Nations Unies(クリニック・デ・ナッションジュニ)
所在地 :Angle Avenue des Nations Unies et Rue Ibn Hanbel, Agdal,
Rabat
電話 :(037)670505
FAX
:(037)673535
診療時間 :8:00~12:00、14:00~18:00
診療科目 :外科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科など
備考 :長期入院可。入院費1日あたり 450~700DH。家族等が付き添う
場合は別途ベッド料として 160DH が必要。1999 年開院。
・Clinique Riad(クリニック・リアド)
所在地 :Avenue Imam Malik, km3.7, Route des 2aers, Rabat
電話 :(037)755900
FAX :(037)758848
診療時間 :8:00~12:00、14:00~18:00
ただし、救急部についてはこの限りではない。
診療科目 :内科、外科、産婦人科、小児外科、その他人工透析可能。
備考 :長期入院可。入院費一日あたり 700DH。家族等が付き添う場合
は別途ベッド料として 150DH が必要。
・Clinique La Menara(クリニック・ラ・メナラ)
所在地 :10, Rue Moulay Abdelaziz (Face R.T.M.), Rabat
電話 :(037)707474
FAX
:(037)706488
診療時間 :8:00~12:00、14:00~18:00
診療科目 :外科、内科、小児科、耳鼻咽喉科、形成外科、眼科など。
備考 :耳鼻咽喉科が有名。入院費 1 日あたり 350DH。家族等が付き添
う場合は別途ベッド料として 150DH が必要。
<開業医>
一般的に一回の診察代は一般医が 100DH、
専門医 200~250DH が相場である。
ただし、検査結果等を持参し診断を受ける場合、初回診察料支払い済みの場
合は再診料が不要となる場合もある。
・Dr. Coulon Najid Josiane
診療科目 :内科、小児科
所在地 :74,Rue Sbou,Avenue de France,Rabat
電 話 :(037)775956
FAX
:(037)775956
備考 :フランス系医師(女医)、邦人の受診が多く子供にも評判がい
い。英語可。
・Dr. Medejel
診療科目 :神経内科
所在地 :6, Rue Moulay Slimane, Rabat
電話 :(037)707318~9
FAX
:なし
備考 :脳波検査設備あり
・Dr. Larhrissi Aboudrar Saloua
診療科目 :神経内科、リウマチ科
所在地 :336, Ave. Mohammed V, Passage Palmeraie, Ler etage, Rabat
電話 :(037)722622
FAX
:(037)730860
備考 :女医。手術が必要な場合はクリニック・アグダルにて実施
・Dr. Bensouda
診療科目 :内科
所在地 :2, Place Moulay Ali Cherif, Rabat
電話 :(037)763611
FAX
:(037)763622
備考 :内分泌を専門とする
・Dr. A. Ismael
診療科目 :外科、整形外科
所在地 :Residence REDA, Im. G. 1er etage, Ave. Hassan II, Rabat
電話 :(037)731223
FAX
:(037)731224
備考 :手術に必要な場合はクリニック・アグダルにて実施。多少英語
可。
・Dr. Missoum
診療科目 :外科、整形外科、スポーツ整形外科
所在地 :489, Ave. Mohammed V, Rabat
電話 :(037)762829
FAX
:なし
備考 :手術に必要な場合はクリニック・ナッションジュニにて実施。
・Dr. Ouammou
診療科目 :脳神経外科
所在地 :Residence Tarfaya, Rue Benghazi, Rabat
電話 :(037)705992
FAX
:(037)706489
備考 :手術は他施設にて実施
・Dr. Elmejjati Nicole
診療科目 :産婦人科
所在地 :13, Rue Benzerte, Rabat
電話 :(037)762122
FAX
:(037)260454
備考 :フランス系医師(女医)、分娩および手術はクリニック・ボー
セジュール、またはクリニック・アグダルにて実施。
・Dr. Benjelloun Hassan
診療科目 :産婦人科
所在地 :11, Rue Ahmed Yazidi, Rabat
電話 :(037)766898、(037)763264
FAX
:(037)769863
備考 :医院と産院を兼ねている
・Dr. Benkhraba Laaboudi Fouzia
診療科目 :皮膚科
所在地 :68, Avenue Al Amir Fal Ould Oumeir, Agdal, Rabat
電話 :(037)674619
FAX
:なし
・Dr.Cbaouini Assia
診療科目 :眼科
所在地 :21, Ave. Allal Ben Abdellah, Rabat
電話 :(037)709596
FAX
:(037)709597
備考 :レーザー手術が可能。その他手術に必要な場合はクリニック・
アグダルにて実施。網膜剥離の治療では有名。多忙のためか検鏡、
子供の治療には時間をかけないので疑問が残る。
・Dr.Abdellaoui Najib
診療科目 :眼科
所在地 :Residence du Minaret, Angle Rues Aman et Yougoslavie,
Rabat
電話 :(037)706711
FAX
:なし
・Dr.M’rabet Zhor
診療科目 :眼科
所在地 :14, Rue Al Qairouane, Residence El
Ghawali, Rabat
電話 :(037)730555
FAX
:なし
・Dr. Benabderrazik Said
診療科目 :眼科
所在地 :6, Ave du Prince Moulay, Abdellah, Rabat
電話 :(037)203654/55
FAX
:なし
備考 :多少の英語可
・Dr. Benjelloun Fouad
診療科目 :小児科
所在地 :3 bis, Ave. Prince Moulay Abdellah, Rabat
電話 :(037)709516
FAX
:なし
・Dr. Dalinger Allioua Hilda
診療科目 :小児科
所在地 :10, Rue Youssef Ben Tachfine, Rabat
電話 :(037)760740
FAX
:なし
備考 :ドイツ系医師(女医)
・Dr. Bennani Abdeljalil
診療科目 :精神・神経科
所在地 :14, Rue Ghazzah, Rabat
電話 :(037)725657
FAX
:(037)730632
備考 :特に小児精神疾患を専門とし出版物も多くある
・Dr. Benchekroun Mohamed Fouad
診療科目 :精神・神経科
所在地 :Residence Elmenzeh, Rue Al Kahira (Caire), Rabat
電話 :(037)705020
FAX
:(037)704697
・Dr. Alami Drideb Souafi Amina
診療科目 :歯科
所在地 :25, Rue Patrice Lumumba, Rabat
電話 :(037)727126
FAX
:なし
・Dr. Granados
診療科目 :歯科
所在地 :18, Rue Kassaldi, Agdal, Rabat
電話 :(037)779607
FAX
:なし
備考 :多少の英語可。
・Dr. Nawal MAMRI
診療科目 :歯科
所在地 :Apt.n°22 Residence Le Minaret, Angle rue Yougoslavie
(シネマロワイヤルの側) , Rabat
電話 :(037)779607
FAX
:なし
備考 :英語、スペイン語での会話可能。邦人の受診が多く子供にも評
判が良い。
(2)緊急時の対応と措置
緊急時公的サービス(救急車)を利用して病院を受診するシステムは存在
するが、日本のように迅速に対応するようなサービスは期待できない。その
ため自家用車またはタクシー等を利用して病院受診するほうが迅速である。
それが不可能な場合は信頼できる人に日本大使館への連絡を依頼する事を勧
める。
<日本大使館>
電話 :(037)631782~4
<民間救急サービス>
・Mondiale Assistance(モンディアル・アシスタンス)
自宅に医師を呼ぶことが出来る救急往診サービス。ただし、事前に年
会費 740DH を支払い会員になる必要がある。利用可能地域はラバト(サ
レを含む)とカサブランカ。
電話 :ラバト 037-202020、カサブランカ 022-444444
備考 :急病の際に電話をすると 15 分以内に医師が自宅に往診してく
れる。重症の場合は診察医が救急車を呼び、患者を希望する病院に
入院させる。しかし、基本的に病院の選択は患者自身が行うことに
なるので、日頃から入院可能な施設等の情報を収集しておくことが
必要である。
・SAMU(Service d’Assistance Medicale Urgence、通称サミュー)
自宅に医師を呼ぶことが出来る救急往診サービス。年会費不要。利用
可能地域はラバト市内。
電話 :ラバト 037-737373
往診料 :250DH、他施設へ移送の場合追加 250DH
備考 :急病の際に電話をすると 15 分以内に医師が自宅に往診してく
れる。重症の場合は診察医が患者を希望する病院に入院させる。し
かし、基本的に病院の選択は患者自身が行うことになるので、日頃
から入院可能な施設等の情報を収集しておくことが必要である。
・Centre Anti-Poison(24 時間)
電話 :037-770137、037-686464(24 時間受付番号)
備考 :薬物、毒物、食中毒に関する電話相談を 24 時間受け付けてい
る。ただし、治療に関しては、しかるべき医療機関を紹介、同施設
では現在のところ行っていない。
<国内旅行時の対応>
地方では大都市(カサブランカ・アガディールなど)を除いて外国人が
利用できるクリニックは少ない。入院等の必要があると判断される場合は、
ラバトまたはカサブランカへ速やかに移動する事を勧める。ただし、どの
ような地方でも公的医療機関は存在するので、医療関係者のアドバイスを
受けることは可能である。
かなりの山間部や砂漠等の訪問の場合は、念のため注射器(針付)や点
滴用注射針を持参すると良い。また注射等の処置が必要な場合は、使い捨
て注射器を使うよう依頼し確認することを勧める(ただし地方でも大方の
医療機関で、使い捨て注射器の入手は可能である)
3.医薬品、衛生用品
(1)携行することが望ましい医薬品
治療中の疾患があれば、当面の薬品は携行したほうが良い。また水質や環
境の変化等により到着時は体調を崩し易いので、胃腸薬・整腸剤・風邪薬な
ど持参すると良い。緊急・当面用として使い慣れたものがあれば持参したほ
うが良い。また小児用の常備薬として、解熱剤・座薬・風邪薬・整腸剤等の
持参を勧めるが、使い慣れた薬がなく医療に明るくなければクリニック等を
受診し医師の指示を受けることを勧める。
特に抗生物質については、医師の指示があれば購入可能なため使用方法に
明るくなければ持参する必要はない。
虫除けスプレーやサロンパス等の貼用薬は入手が困難なので常用のものが
あれば多めに携行したほうが良い。
(2)現地で調達できる医薬品
現地で入手可能な医薬品の多くは、モロッコとヨ−ロッパの合弁製薬会社が
製造しているが、乳幼児用のアスピリン粉末が湿気で固まっている等品質管
理に多少の問題が生じているケースもあるので、購入時に確認が必要である。
またフランス・ドイツからの輸入薬も多く、特殊な薬でなければ入手可能
である。入手困難な薬品については、その必要性が認められれば輸入するこ
とも可能であるが、保健省の許可を必要とする等煩雑な事務手続きが必要と
なるので入手までに時間と労力を要する。
(3)現地で調達できる衛生用品
各種生理用品(ヨーロッパ製、モロッコ製)、ピル、スキン、綿棒、ガーゼ、
脱脂綿、各種消毒液、湿布薬、各種殺虫剤などがある。電気蚊取器は薬局や
スーパーで購入可能である。日本製の耳かきは入手できないので余分に持参
するほうがよい。
その他各種サポーター、コルセットも入手可能である。また、電動ハブラ
シも本邦より安価で入手可能である。ただし、電動血圧計は入手できない。
(4)薬局
薬局は各地区に多数ある。医薬分業システムのため、医師の処方箋をもら
い、薬局で薬を購入することになる。
<医薬品を使用する場合の留意点>
使用方法については、医者や薬剤師から説明があるが、外国語での説明
となるのでメモを取ることを勧める。内服方法等が解らなければ、躊躇せ
ずに質問し納得して内服するよう心がける必要がある。通常、購入薬は薬
剤師が薬の外箱に使い方を記入してくれるが、数字の書き方が日本語と多
少異なり解りにくいことが多いので赤ペン等持参しその場で明確にすると
良い。薬品は通常箱単位での購入となるので買い置きの薬(解熱剤等余る
ことが多い)と重複しないよう受診前に手元にある薬の確認を勧める。
一般的に処方量が日本で処方されるより大目なので、内服時は処方量を
守り、胃腸症状等の副作用がある場合は、再度医師を受診することを勧め
る。また薬の外箱には有効期限が記されているので購入時・内服前に確認
することが必要である。
・Phamacie Hyper Souissi
所在地 :JICA 事務所隣ショッピングセンター内
電話 :(037)755555
備考 :日本人の対応に慣れているので、親切に対応してくれる。(日
本語が解るわけではない)
その他薬局は至るところにあり選択可能である。また、夜間・休日用に利
用できる薬局は新聞紙上に掲載されるので必要があれば情報を入手できる。
また各薬局にその地域での夜間・休日当番表をはりだしている。その他公営
で夜間(22:30~7:00)利用可能な薬局も市内(Centre
Ville)にあるが、
日本人の居住地区からは少し遠い。
4.妊娠、出産、育児
(1)妊娠した場合の対応
産婦人科開業医は、市内に多く存在するので情報収集のうえ、出産まで定
期的に受診経過をみる必要がある。一般的にモロッコ人は出産前検診は異常
がなければ 3 回で終了する。クリニック等を受診する場合でも経過に問題が
なければ分娩まで月 1 回の受診が平均である。経過により各種血液検査の指
示があるので受診にあわせ検査機関にて検査を実施し、結果を持参する必要
がある。検査結果で貧血等が指摘される場合は、鉄剤やビタミン剤等の内服
指示が出ることもあるので、薬局で購入する。
分娩にかかる費用は、血液検査1回 400~500DH、受診料 200DH、分娩料(正
常)を含めても特に異常な経過でなければ日本円で 10 万円以下で可能である。
(2001 年 8 月に当地で第 3 子を出産した専門家のケース)
外国語での対応は不可能なので妊婦のフランス語が堪能でない場合は、受
診・分娩等に際し夫または通訳が必要となる。
またモロッコ人は分娩経過に異常がなければ、24 時間で退院する。帝王切
開の場合も経過に異常がなければ 4~5 日で退院となる。
(2)出産後の対応
日本大使館領事担当官に出生届を 3 カ月以内に届ける。
添付書類は以下のとおり。
・父親が日本人の場合 :医師発行の出生証明書およびその日本語翻訳
・母親が日本人で父親が外国人の場合 :父親の国の出生登録証明書原本お
よびその日本語翻訳
なお、出産費給付申請には下記の書類が必要である。
・大使館発行の出生証明書
・国際協力共済会会長あての出産費給付請求書 1 通(様式国共第 5 号)
・担当医発行の出生証明書および訳文
・入院費などの領収書
母子検診は、生後1週間以内と退院 1 ヶ月後に小児科医で受ける。その
後は、小児科医が指定する時期に検診を受ける。検診項目は、身長、体重、
胸囲、頭囲、反射神経テストなどである。
予防接種は、BCG を生後 1 週間から 1 カ月以内に接種するほか、三種混
合とポリオを 3 カ月目から 1 カ月おきに 3 回、さらに最終回から 1 年後に 1
回接種する。いずれも小児科医の指示に従い、処方箋をもらって薬局で購
入し小児科医に接種してもらう。
(3)育児
育児用品、粉ミルクは外国製・モロッコ製ともに入手は容易である。ミル
クは小児科医の指示に従って薬局で購入する。粉ミルクを溶かす水はミネラ
ルウオーターの湯冷ましを使うほうがよい。
哺乳瓶および哺乳瓶消毒煮沸器、チクビは薬局で、紙おむつ、ベビーパウ
ダー、ベビー石鹸などは薬局でもスーパーでも購入可能である。パンパース
の紙おむつは種類も豊富で入手に問題はない。しかし、トイレトレーニング
のための紙パンツは良質のものが少ないので、必要があれば持参するほうが
よい。また、乳児用に細めの綿棒は持参したほうがよい。
5.手術
(1)現地で可能な手術
現地では全科の手術が行われているが、手術後の入院が長期になる可能性
のある場合は、本邦にて手術することを勧める。また単身者で入院中付き添
い者の確保が困難な場合は、フランス等での入院を勧める。諸外国で教育を
受けた優秀な若い整形外科医師も多くいるが、看護サービスの質は期待でき
ず、手術後の経過に問題が発生する可能性もあるので外国または本邦での治
療を勧める。また医師との意思疎通の問題などで不安を感じる場合は、外国
か日本で受けるのが無難である。過去に当地で盲腸手術を受けたケースはあ
るが特に問題なく経過した。
(2)手術設備の状況
国立イブンシナ総合病院には、日本製内視鏡、各種レントゲン設備、CT ス
キャナー が整備されている。また民間のクリニックにも日本製内視鏡、各種
レントゲン、MRI、Ct スキャナーなどの近代的医療機器が設置されている。
膝内鏡による治療も可能である。
設備的には最新の麻酔装置を完備している施設も多く技術的にもレベルの
高い医師が多数存在するが、問題はむしろ手術後のケア(看護サービスの質
が低い)にある。
(3)その他の留意点
輸血に関しては保健省管轄の血液センターにて、梅毒・B 型肝炎・C 型肝炎・
HIVⅠ/Ⅱ検査を輸血前全血液に実施している。ただし、輸血用血液は日本の
ように入手が簡単ではなく、また B 型・AB 型の血液は入手が難しい。
入院手術に際しての立ち会いは医師でない限りできないが、分娩に際して
この限りでない。家族の付き添いは、ベッド使用料を払えば可能である。入
院時は洗面用具、着替えなど身の回り物を持参する必要があるが貴重品は盗
難に遭うおそれがあるので持ち込まない方が良い。
6.現地での傷病
(1)一般の疾病
最も注意を要する病気は肝炎、次に狂犬病である。また、気温の差が激し
いのでかぜをひきやすく、大西洋沿岸都市のカサブランカやラバトでは喘息
も起こしやすい。山村に行くと眼病、特にトラコーマが多い。特別の皮膚病
はないが、蚊やノミ、ハエに噛まれた後のかき傷による 2 次感染に注意する
必要がある。
インフルエンザはヨーロッパの流行とほぼ同じであり、予防接種を 9 月半
ばから打つことができる。ワクチンは薬局で購入し、クリニックの看護婦に
接種してもらう。はしか、百日咳、風疹、水痘などは、幼稚園や学校で定期
的に流行する。しょう紅熱やジフテリアもまれに発生する。児童が伝染性の
病気にかかった場合は、学校医の許可が出るまで通学できない。
その他慣れない外国暮らしによるストレスや周りとのコミュニケーション
がうまく取れない等の状態に陥ることがあるので、定期的に運動する等上手
に気分転換を図ることが必要である。
(2)風土病、感染症
腸チフス、アメーバ性赤痢、ビルハルツ住血吸虫、破傷風、フィラリア、
狂犬病、脳膜炎、結核、ハンセン病などがある。性病は梅毒などが多い。HIV
感染者はまだ少ないが増加傾向にある(公式には 2001 年末で 963 人の AIDS
患者の報告がある)。
流行性脳膜炎・コレラ等限定された地域のみで時々流行することがある。
しかしこれら感染症は保健省によりコントロールされているので、流行地に
近づかず通常の衛生上の注意を守れば、外国人が罹患する危険は少ない。
なお、モロッコはマラリアの流行地域ではないが、夏季に一部地域で散発
的にマラリアの流行が見られることがある。情報を収集し感染地域に不用意
に近づかない等注意を要する。また止む無く感染地へ近づく場合は、長袖の
衣服の着用や香取線香を使用する等蚊に刺されないよう注意する必要がある。
(予防薬の当地での入手は可能である)
途上国にあっては、基本的衛生管理を守れば重篤な事態に陥る懸念の少な
い衛生環境である。
(3)有害動物、病害虫
蚊、スズメバチ、ハエ、ノミ、シラミ、ダニ、南京虫、毒蛇、クモ、サソ
リ、ムカデ、ブヨ、ネズミなどがいる。マムシやサソリはラバト周辺でもま
れに見られるが、ラバトのアンチ・ポイゾン・センターの発表では、毒性が
弱く、生命に危険を及ぼすことはないということである。
最近ラバト市内においてもネズミが多くワイル病発症によるモロッコ人の
死亡報告もあるので動物には素手で触らない等接触を避ける必要がある。ま
た家畜につく小型のハエに刺されるとかなりの痛みを伴うので注意を要する。
野犬による咬傷が原因の死亡例が全国で年間 20~30 人報告されているで、
動物との接触を極力避けるとともにワクチン等による基礎免疫を確保する必
要がある。また自宅で動物を飼う場合は、定期的に予防接種を受けさせる等
の対策も必要がある。
7.保健衛生
(1)飲料水
ラバト市内では、水道水を沸騰させてから使用すれば問題ない。ただし、
あとに石灰分が残るので、飲料水としては市販のミネラルウオーター(「シデ
ィ・アリ」「シディ・ハラザン」「アイン・セイズ」など)を用いたほうがよ
い。
井戸水や雨水、山の湧き水などは、寄生虫感染等の危険性があるので、外
出時はミネラルウォーター携行すると良い。やむをえず飲む場合は、沸騰あ
るいは薬局で市販されている消毒薬を使用する等の対策が必要である。
(2)濾過器の入手
水道口に取り付ける濾過器は、ラバトのスーパーマーケットなどで販売さ
れており各種選択可能である。日本から持参する必要は特にない。
(3)その他の留意点
生活環境にもよるが、モロッコでは生野菜も安全とされており、日頃から
口にする機会が多いため、年 1 回の寄生虫検査を勧める。
スーパーで売っているテトラパック入りの牛乳も、下痢等の症状を起こす
ことが多いので生で飲むことは避けたほうがよい。