平成 25 年度 国際即戦力育成インターンシップ事業 インドネシアの電力事情 報告書 平成 26 年 2 月 エネルギー鉱物資源省 電力総局 インターン生 島本 和明 目次 1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.4 2. インドネシアの概要 2.1 インドネシアの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.4 2.2 インドネシアの最近のニュース ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.6 3. インドネシアのエネルギー資源とエネルギー政策 3.1 エネルギー資源 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.11 3.2 エネルギー政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.12 3.2.1 国家エネルギー政策(KEN:Kebijakan Energi Nasional: National Energy Policy)2003-2020(2004) ・・・・・・・・・・・・・・・P.13 3.2.2 国家エネルギー管理ブループリント 2005-2025(2005) ・・・・・・P.14 3.2.3 国家エネルギー政策に関する大統領令(2006) ・・・・・・・・・・P.14 3.2.4 エネルギー鉱物資源省ビジョン 25/25(2010) ・・・・・・・・・・P.15 3.2.5 新国家エネルギー政策(KEN) (2014) ・・・・・・・・・・・・・P.16 (参考)経済政策 (1) 国家開発計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.17 (2) 「2011−2025 年におけるインドネシア経済開発加速化及び拡大マスター プラン(MP3EI)」 (2011) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.17 3.3 エネルギー需給 3.3.1 エネルギー生産量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.18 3.3.2 エネルギー国内供給量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.20 3.3.3 エネルギー最終消費の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.22 3.3.4 エネルギー需給の今後の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.24 3.4 主なエネルギー・電力関係の法律 3.4.1 エネルギー法(2007) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.25 3.4.2 新電力法(2009) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.25 3.4.3 省エネルギーに関する政令(2009) ・・・・・・・・・・・・・・・P.27 3.4.4 地熱法(2003) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.29 4. インドネシアの電力セクターの概要 4.1 電気政策の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.30 4.2 電気事業体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.31 4.2.1 エネルギー鉱物資源省(MEMR) ・・・・・・・・・・・・・・・・P.33 4.2.2 国有電力会社(PT. PLN) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.37 4.2.3 IPP(独立発電事業者) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.39 4.2.4 国家エネルギー委員会(DEN) ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.40 2 4.2.5 国家開発企画庁(BAPPENAS) ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.41 4.2.6 国営企業国務大臣府 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.41 4.2.7 財務省(MOF) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.41 4.2.8 国家エネルギー調整委員会(BAKOREN) ・・・・・・・・・・・・P.42 4.2.9 原子力庁(BATAN)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.42 4.2.10 原子力規制庁(BAPETEN) ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.43 4.2.11 協同組合・中小企業担当国務大臣府(SMOC & SMEs) ・・・・・P.43 4.2.12 村落協同組合(KUD) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.43 4.3 電力需給 4.3.1 発電電力量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.44 4.3.2 販売電力量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.45 4.4 電力設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.47 4.5 電力需要の今後の見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.50 4.6 電力開発計画 4.6.1 国家電力総合計画(RUKN)と電力供給事業計画(RUPTL) ・・・・・P.53 4.6.2 2 つのクラッシュプログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.57 4.7 電気料金 4.7.1 電気料金(2013 年 10 月~)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.62 4.7.2 PLN への政府補助金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.65 4.7.3 電気料金をめぐる今後の動き(産業用電気料金値上げ・電気料金自動 調整制度)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.66 4.8 PLN の損益計算書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.67 4.9 地方電化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.69 5. 新・再生可能エネルギー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.71 5.1 地熱・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.73 5.2 水力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.75 5.3 バイオエネルギー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.77 5.4 太陽光・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.81 5.5 海洋エネルギー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.82 5.6 風力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.87 5.7 原子力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.88 5.8 FIT(Feed in Tariff; 固定価格買取制度)・・・・・・・・・・・・・・・・P.92 6. 省エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.94 7. おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.97 3 1.はじめに 私は 2013 年 9 月 18 日から 2014 年 2 月 27 日までの間,インドネシアのエネルギー鉱物 資源省・電力総局にインターンとして派遣された(派遣機関の紹介は4.2.1節参照)。 この報告書では,私がインターンを通じてインドネシアの現在の電力事情について学んで いく中で,いただいた資料,収集した情報,伺った話をまとめ,皆様に紹介することとし たい。 2.インドネシアの概要 2.1 インドネシアの概要 (基礎データ) ・首都:ジャカルタ ・政体:大統領制,共和制 ・元首:スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領(2009 年 10 月 20 日二期目就任、任期 5 年) ・面積:1,904,569km2 (Central Intelligence Agency, The World Fact Book, on January 28, 2014)〔日本の約 5 倍〕 ・宗教:イスラム教 86.1%,プロテスタント 5.7%,カトリック 3%,ヒンドゥー教 1.8%, その他 3.4%(Central Intelligence Agency, The World Fact Book, on January 28, 2014) ・人口:2 億 4447 万人(2012 年 IMF 推定) 〔日本の約 2 倍〕 国家開発企画庁(BAPPENAS)の 2010~35 年の人口推計では 2022 年に 2 億 7100 万人,2035 年には 3 億 560 万人になるとされている。 (参考)在留邦人人口 1 万 4720 人(2012 年 ・名目 GDP:8785 億 US ドル(2012 年 IMF) ・一人当たり GDP:3,594US ドル(2012 年 ・GDP 成長率:6.2%(2012 年 外務省) IMF) IMF) インドネシアは,ASEAN 唯一の G20(主要 20 カ国・地域)のメンバー国として発展を 続け,BRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)と肩を並べるほどの経済成長を見せて いる。現在,インドネシアの経済規模(GDP)は,韓国に次ぎ世界第 16 位(注 1)。外需 依存度が低く,世界金融危機の影響もアジアの他国に比べ限定的で,近年経済成長率は安 定して推移している。数少ない日本の貿易赤字国にして,世界一の親日国家(注 2)。そし て,日本の 2 倍の 2.4 億人の人口(世界第 4 位)を誇るが,驚くことに平均年齢 28.9 歳(日 本 45.8 歳)(注 3)で,30 歳未満が人口の半分を占める大きなビジネス市場である。 2013 年 11 月 29 日国際協力銀行(JBIC)は「わが国製造業企業の海外事業展開の動向」 に関するアンケート結果を発表(注 4)し,中期的な有望国としては,インドネシアが初め てトップとなったことを明らかにした。日本のインドネシアに対する期待が大きいことを 4 改めて示している。 (注 1)IMF - World Economic Outlook Databases (2013 年 10 月版) (注 2)BBC放送世論調査2012年 (注 3)Central Intelligence Agency “The World Factbook” (注 4)株式会社国際協力銀行 http://www.jbic.go.jp/ja/information/press/press-2013/1129-15775 図表2.1:ASEAN諸国のGDP比較(2012 年) 10億USドル GDP (2012) 6000 5000 4000 3000 2000 Japan Vietnam Thailand Singapore Philippines Myanmar Malaysia Laos Indonesia Cambodia 0 Brunei 1000 (出典)IMF - World Economic Outlook Databases (2013 年 10 月版)より作成 5 図表2.2:アジア諸国の GDP 成長率 出典:経済産業研究所講演資料 2013 年 8 月 2.2 インドネシアの最近のニュース この節では主に,私が派遣されている間,新聞等でよく話題になっていた事柄を紹介し たい。 (1)渋滞 インドネシアでは 2012 年現在で,二輪車が1日あたり2万台(年間706万台),自動 車が1日あたり3千台(年間110万台)売れる。ジャカルタには一日 700 万人が流入し, 200 万台の自動車が走る(2014 年 1 月 3 日付じゃかるた新聞) 。2014 年には自動車の占有 面積が道路面積を超える「グリッドロック」になると言われており,ジャカルタでは交通 渋滞が慢性化している。これを受け,2014 年は都市高速鉄道(MRT)の工事が本格化し(1986 年その構想が決まるも 97~98 年のアジア通貨危機による資金難で計画が延期。2013 年よう やく建設が始まった) ,その完成は 2018 年とされている。また,モノレール建設計画(2003 年に始まるも大口投資家が投資計画を凍結したため,運営企業の資金がなくなり 11 年に頓 挫。)も 2013 年 10 月,中国政府の協力で総工費 8 兆ルピアで建設再開が決まった。完成は 17 年とされている。さらに,空港線(スカルノハッタ空港とハリム空港を結ぶ計画)も 2014 年 1 月から着工となる。しかしながら,これら鉄道工事の影響で渋滞の深刻化は確実。ジ ャカルタ州内の車両速度は現在の時速 10~12 キロから 8~10 キロになると予想されている。 これまで工事が進まなかったのは道路用地買収の停滞のためで,民主化の結果により,土 地所有者の反発が強く買収交渉が長期化する傾向がある。 6 (2)洪水 インドネシアでは雨季が本格化する 1~2 月にかけて洪水が頻繁に発生し,渋滞に拍車を かけている。その原因としては, ・緑地の減少(雨水が土中に浸透せず大通りへ流出) ・劣悪な排水システム ・地下水の過剰な汲み上げによる地盤沈下 ・急増している高層ビルからの排水の急増 ・河川へのゴミの不法投棄によるダム状態化 ・貯水池・人口湖の数が減っている上,正常に機能していない ・水上家屋等による河川機能の低下 等様々な原因が指摘されている。これまでも様々な対策が実施されてきたが,十分な効果 を挙げられていない。ジャカルタで最も洪水被害がひどいのは東ジャカルタ区カンプンプ ロなどのチリヌン川周辺で,2007 年の大洪水で川の水位は 7m,2013 年 1 月にも 5m の水 位を記録している。チリヌン川では,改修事業が実施されているが,住民の不法占拠地域 の立ち退きの難航,資金難による工事計画の遅延等,容易には進まない。 (3) 貧困 インドネシアの貧困率について,中央統計局は 1 ヶ月の生活費が 29 万 2951 ルピア (2013 年 9 月時点)以下を貧困層としており,同時点でインドネシア国民の 11.47%が あてはまる。 (ちなみに,世界銀行は 1 日 2 ドル以下を貧困層としており,その基準では 貧困率は約 5 割になる。)ユドヨノ大統領は就任以来様々な対策(米助成「ラスキン」, 低所得世帯補助金(PKH),貧困層向け医療保険(ジャムケスマス),雇用創出目的の地 方自治体への開発資金支給,屋台などの零細経営への小額融資等)を行ってきたが,効 果はいまひとつ。受給者の選定方法や支給遅れが問題となり,政策の実行段階で問題が 生じるケースが少なくない。2010 年には副大統領府に「特別貧困撲滅チーム」を設置し, 省庁間の連携向上を図っている。 7 図表2.3:貧困率*)の推移 26.0 24.0 22.0 20.0 18.0 16.0 14.0 12.0 10.0 24.2 23.4 19.1 18.4 18.2 16.7 17.4 17.8 16.0 16.6 15.4 14.1 13.3 12.4 11.9 11.3 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 *)インドネシア中央統計局による定義の貧困率 出典:じゃかるた新聞 2014 年 1 月4日 (4) 宗教問題 民主化以降,スハルト独裁政権に抑えられてきた過激派組織の活動が活発化した。 少数派への差別・襲撃は増加しており,礼拝所襲撃などは 2010 年の 216 件から 2013 年には 330 件に達した。 例)1998 年末~2001 年 12 月:中部スラウェシ州ポソでキリスト教徒とムスリムの 住民が対立。一千人以上が死亡,正確な避難者数は 不明。 2005 年:イスラム学者会議(MUI)がアフマディヤを「イスラム異端派」との 宗教見解を示し,各地で過激派組織によるモスク閉鎖などが顕著化。 2012 年 8 月 26 日:東ジャワ州マドゥラ島でシーア派信者 2 人がスンニ派住 民に殺害される。 政府は 2014 年の総選挙を見据え,少数派の保護を呼びかける姿勢は見せていない。 マドゥラ島のシーア派襲撃問題でも,宗教相は支持基盤である多数側のスンニ派の求 めに応じ,スンニ派への改宗を提案した。 (5) 汚職 インドネシアは汚職が浸透している。国際機関の世界経済フォーラム(The Global Competitiveness Report 2012 – 2013)はインドネシアでのビジネス上の問題点として, 2 番目に汚職をあげている。(なお,1番目は非効率な官僚制度とされている。 )与党の 党首から司法のトップ,知事,検事まで汚職容疑に問われ,連日のように報道されてい る。2003 年,大型汚職事件専門の捜査機関である KPK(汚職撲滅委員会)の発足以来, 汚職摘発が進んでいる。汚職の原因としては,政党の地方支部のために(改正政党法は 政党に 34 州,約 380 県市以上,約 3400 郡以上に地方支部を作ることを定めた)党本 部が莫大な政治資金を準備する必要があること,中央議員立候補の負担が大きいこと (党への非公式の上納金,選挙活動費等。5 年間の任期の報酬はこれを下回ると言われ 8 ている)などが挙げられる。 (参考)KPK が捜査,立件した汚職事件 ・ アナス民主党前党首,ハンバラン競技場汚職(逮捕,起訴手続き中) ・ アトゥット・バンテン州知事,県知事選憲法裁審査汚職(逮捕,起訴手続き中) ・ ルトフィ福祉正義党前党首,牛肉輸入事業汚職(一審禁固 16 年→控訴) ・ ブディオノ副大統領,センチュリー銀行救済汚職(聴取) ・ ジョコ・スシロ元交通局長,運転教習機材調達汚職(一審禁固 10 年) ・ アキル前憲法裁長官,県知事選憲法裁審査汚職(逮捕,起訴手続き中) (6) 2014 年選挙に関する支持率 インドネシアは 2014 年 4 月に総選挙,7 月には大統領選挙を控えている。インドネ シアの憲法上,大統領の 3 選はなく,7 月の選挙では大統領が交代することとなる。 有力現地日刊紙コンパス(2014 年 1 月 8 日付)による大統領選挙の世論調査の結果 は以下の通り。(調査は 2013 年 12 月実施) 1位 ジョコウィ:ジャカルタ特別州知事(43.5%),2 位 党最高顧問・元陸軍戦略予備軍司令官(11.1%),3 位 閥バクリーグループ代表(9.2%),4 位 プラボウォ:グリンドラ バクリー:ゴルカル党党首・財 ウィラント:ハヌラ党党首・元国軍司令官(6.3%), 5位 メガワティ:闘争民主党党首・スカルノ初代大統領長女にして元大統領(6.1%), 6位 カラ・元副大統領(3.1%),無回答(9.8%)。 ジャカルタ特別州のジョコウィ知事が独走態勢であるが,知事本人は出馬の意思を明 らかにしていない。 コンパス(2014 年 1 月 9 日付)による総選挙の世論調査の結果は以下の通り。 (調査 は 2013 年 12 月実施) 1位 闘争民主党(21.8%),2 位 ゴルカル党(16.5%),3 位 グリンドラ党(11.5%), 4位 民主党(7.2%),5 位 族各政党(5.1%),8 位 国民民主党(6.9%),6 位 ハヌラ党(6.6%),7 位 民 国民信託党(3.2%),9 位 開発統一党(2.4%),10 位 福祉 正義党(2.3%),無回答(15.3%)。 闘争民主党はインドネシアで圧倒的な人気を集めるジョコウィ・ジャカルタ州知事が 所属しており,彼の人気が影響していると考えられる。各党の人気は相次ぐ汚職事件に より大きな影響を受ける。ゴルカル党は所属するアトゥット・バンテン州知事の汚職撲 滅法違反の容疑で逮捕されたことにより,今後の支持率低下が予想されている。選挙前 の時期は政治家の地方行脚が活発化し,新たな政策等の議論が進まないと言われている。 (7) 未加工鉱石の輸出を禁止 インドネシア政府は 2014 年 1 月 12 日,未加工の鉱物・鉱石の輸出を禁じる措置を 発動した。インドネシアは世界的な資源輸出国であり,日本を始め多くの国がインドネ 9 シアの資源を輸入している。今回の措置が各国企業の事業展開や,インドネシア産業, 国家歳入にどんな影響を与えるのか国際的に注視されている。 もともと政府は 2009 年に輸出用の鉱石を扱う企業に対し,「2014 年から国内で精錬 した上で輸出すること」を義務付ける法律を制定。5 年の準備期間を経て 2014 年 1 月 12 日から事実上の禁輸措置を始めた。新法の背景には付加価値が低い精錬前の鉱石輸 出が中国を中心に急速に増え,乱開発が表面化してきたことがある。新法で金属の付加 価値を高め,製造業のサプライチェーンを国内で育てることが狙い。 雇用面の影響が大きいため,米系の鉱山など一部では規制を緩和。銅や亜鉛など 6 種 の鉱石については不純物を取り除いただけの「精鉱」での輸出を容認することとした(た だしその猶予は 3 年)。政府は輸出関税を新たに設け,2014 年の 25%から 2016 年後半 の 60%まで段階的に高めるとしている。 規制によるインドネシアの損失は 8 兆~10 兆ルピアに達するとされている。 なお,後述の新国家エネルギー政策(KEN)(3.2.5節)では化石燃料について 輸出規制を行うことに言及している。 10 3.インドネシアのエネルギー資源とエネルギー政策 3.1 エネルギー資源 インドネシアは天然資源に恵まれ、自国で多くの資源を生産している。その資源量は以 下の通り。 図表3.1:インドネシアの資源量 総埋蔵量 石油(10 億バレル) 56.6 天然ガス(兆・標準 確認埋蔵量(A) 年間生産量(B) 可採年数(A/B) 7.99 0.346 23 334.5 159.64 2.9 55 104.8 20.98 0.254 83 立方フィート) 石炭(10 億トン) 出典:エネルギー鉱物資源省 Country Report: Theme: latest policy and regulation on electric power of World Energy June 2013 (1)石油 インドネシアでは自国で石油の生産が可能であり,取扱いの容易な石油は利用が大きく, 最近まで一次エネルギーの約半分を占めていた。中国に次いでアジア地域第 2 位の原油生 産国であり,アジア唯一の OPEC 加盟国であったが,近年原油生産が減少する中,国内需 要が増加し,2004 年石油の純輸入国に転じたことから,2008 年に OPEC を脱退。2012 年 は 92 万バレル/日と世界の生産量の 1.1%ほどである。インドネシア中央統計局によると, 2018 年にも世界最大の石油製品輸入国となる見込み(2013 年 9 月 30 日じゃかるた新聞, http://www.jakartashimbun.com/free/detail/13647.html)。資源の枯渇と最近の価格高騰に 対処する必要性から、脱石油がエネルギー政策の優先課題となっている。 (2)ガス 天然ガスは後述の図表3.9からも分かるように、脱石油が目指されているにもかかわ らず石炭に比べその生産量は伸びていない。これは小さなガス田が点在していること,ガ スに関するインフラ(パイプライン,貯蔵施設等)が不足していること、石油に関する利 権の存在から石油や石炭より開発が遅れていること等が原因と考えられる。 インドネシアは 2005 年まで LNG の世界最大の輸出国であり,世界消費の 3 割を占める 日本にとって最大の調達元だった。しかし,2012 年からは発電燃料を確保するため LNG の国内消費を始め,また,2013 年 12 月にはインドネシアの国有石油会社プルタミナが, 2018 年から 20 年の契約で年間 80 万トンを米シェニエール・エナジーから LNG の輸入を 始めるという,初の LNG 輸入契約に調印。政府は輸出の制限検討にも言及しており,国内 消費を優先し,輸出を減らす方針である。 11 (3)石炭 2000 年代初頭からの大規模な石炭探査と生産により,石炭の利用は急速に拡大している。 生産量は 2002 年には 0.64 億石油換算トンであったが,2012 年には 2.4 億石油換算トン(世 界生産量の約 6.2%)と 10 年間で約 4 倍となった。現在インドネシアは世界第 5 位の石炭 生産国であり、国内の石炭生産の 75 %が輸出されている。最大の輸出先は日本で,その約 2 割を輸出しているが,最近では中国,インド向けの輸出が急拡大している。PLN の予測 によると,石炭消費がそれまで年間 3,500 万トン程度であったものが,2011 年には 4,200 万トンに急増し,2020 年には 1 億 3,000 万トンに達する見通しである。 インドネシアは資源の豊富な国といわれているが,今後の電力需要の増加を考慮すると 埋蔵が確認されている資源量は決して豊富とはいえない。また、化石燃料価格を低く抑え るために多額の補助金が拠出されており、再生可能エネルギー開発が遅れている一因とな っている。(燃料補助金については4.2.7節参照) 3.2 インドネシアのエネルギー政策 初めにインドネシアのエネルギー政策の概観を以下に示す。国家エネルギー政策(KEN), 国家エネルギー総合計画(RUEN)が政策レベル,国家電力総合計画(RUKN)と電力供 給事業計画(RUPTL)が事業レベルのエネルギー計画である。 図表3.2:エネルギー政策の概観(2013 年時点) 12 3.2.1 国家エネルギー政策(KEN:Kebijakan Energi Nasional: National Energy Policy)2003-2020(2004 年) 2004 年の KEN では「国益を満たすエネルギー供給の保障」をビジョンとし, 「エネルギ ー供給能力の向上」,「エネルギー生産の最適化」,「省エネルギー」を主要政策とし,2020 年までの目標を掲げた。 【目標】 ● 2020 年までに電化率 90%(2013 年現在の電化率は 80.51%) ● 2020 年までに大規模水力を除いた再生可能エネルギーのシェア 5%以上 ● エネルギー強度(単位 GDP のエネルギー消費量,Energy Intensity)でのエネルギ ー消費量を毎年 1%低減 ● 国内資源の利用拡大と国内人材の活用による海外エネルギー源への依存度低減 【主要政策】 ● 国家開発と人口増加に見合うエネルギー供給の強化 ● 最適で経済的なエネルギーミックスを実現するためのエネルギーの多様化 ● 省エネルギーの推進 インドネシアのエネルギー政策の考え方を図で表すと図表3.3のようになる。中で もインドネシアでは,社会(Society)の部分が大変大きい。インドネシアは多民族国家 であり,多数の島が存在するという地政学的要因等から,社会のコンセンサス形成が大 変難しいと言われている。そのため,開発には中央政府がリーダーシップを発揮するこ とが重要となる。 図表3.3:インドネシアのエネルギー政策 (出典:最近の電力事情,http://energy-indonesia.com/03dge/denryokujijo.pdf) 13 3.2.2 国家エネルギー管理ブループリント 2005-2025(2005) 2005 年に,KEN に基づき,一次エネルギー供給の将来予測,個別エネルギー技術の 2025 年までの展開(ロードマップ等)を示した国家エネルギーブループリントが策定され た(エネルギー鉱物資源省令) 。このブループリントによる 2025 年の一次エネルギーミ ックスの目標は図表3.4の通り。 図表3.4 ブループリントによる 2025 年の一次エネルギーミックス (単位:%) マイクロハイドロ, 0.216 ガス, 30.6 バイオ燃料, 1.335 太陽光, 0.020 風力, 0.028 石油, 26.2 燃料電池, 0.000 他, 4.4 バイオマス, 0.766 原子力, 1.993 地熱, 3.8 水力, 2.4 石炭, 32.7 出典:国家エネルギー管理ブループリント 2005-2025(2005) 3.2.3 国家エネルギー政策に関する大統領令(2006) KEN 及び国家エネルギー管理ブループリントが,エネルギー鉱物資源省令であったた め,2006 年大統領令として交付することで法的根拠を高めている。それによると、2025 年にはエネルギー弾性値(エネルギー利用効率:エネルギー消費の伸び/経済成長率) を 1 未満とする他,石炭,天然ガスおよび再生可能エネルギーの開発を推進し,一次エ ネルギー供給量に占める石油の比率を大幅に低下させる予定である。各エネルギー種の 構成比率は,図表3.5の通り。 14 図表3.5 大統領令による 2025 年の一次エネルギーミックス 4)バイオ燃料 5% 3)石炭 33% 5)地熱 5% 新再生可能エネルギー 17% 2)ガス 30% 6)その他 5% 1)石油 20% 7)液化石炭 2% (注)その他とはバイオマス、原子力、水力、太陽光、風力 3.2.4 エネルギー鉱物資源省ビジョン 25/25(2010) ビジョン 25/25 は 2010 年,エネルギー鉱物資源省が独自に発表した計画で,2006 年 の大統領令で 2025 年までに 15%としていた新再生可能エネルギーの割合を,25%にする ことと大幅に上方修正した。また,2025 年のエネルギー消費を,何の対策も講じなかっ た場合(約 33 億石油換算トン)と比べ,省エネとエネルギー多様化により 15.6%低減す る(5 億 1300 万石油換算トン)こととしている。 図表3.6:ビジョン 25/25 による 2025 年の一次エネルギーミックス 再生可能エ ネルギー 25% ガス 22% 石油 30% 石炭 23% 出典:EECCHI,http://www.energyefficiencyindonesia.info/energy/indonesia/vision25 エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 9 月 15 3.2.5 新国家エネルギー政策(KEN)(2014) 2014 年 1 月 28 日,およそ 10 年ぶりとなる新たな国家エネルギー政策が国会で承認さ れた。2013 年 2 月現在大統領の署名待ちである。それによると以下のように定められて いる。 ・ エネルギー供給に占める各資源割合の数値目標 - 石油:2025 年に 25%以下,2050 年に 20%以下にする。 - 天然ガス:2025 年に 22%以上,2050 年に 24%以上にする。 - 石炭:2025 年に 30%以上,2050 年に 25%以上にする。 - 再生可能エネルギー:2025 年に 23%以上,2050 年に 31%以上にする。 図表3.7:KEN(2014)による 2025 年,2050 年の一次エネルギーミックス 2025 2025 年 再生可能エネル ギー, 23 石油, 25 2050 2050 年 再生可能エネル ギー, 6 ガス, 22 石炭, 30 ガス, 20 石油, 49 現在 再生可能エネルギー, 31 石炭, 25 石油, 20 石炭, 25 ガス, 24 ・ エネルギー弾性値(エネルギー消費の伸び/経済成長率):経済成長目標に合う よう,2025 年に弾性値を 1 以下。 ・ エネルギー強度(単位 GDP のエネルギー使用量) :2025 年までに年 1%で減少。 ・ 電化率:2015 年に 85%,2020 年には 100%に近づける。 ・ 家庭用ガスの使用率:2015 年に 85%にする。 ・ 原子力発発電所に対する姿勢: 最終的な選択肢と位置づけ,導入の可能性を残した。長期的には原発の導入が必 要という従来からの政府認識を踏襲した形。 ・ 資源の輸出: 国内で産出する石炭や天然ガスは,国内の需要の増加を見込み,段階的に輸出を 減少,最終的に完全に停止する。 16 この新国家エネルギー政策を基に,今後目標の実現に向けた個別の計画が策定されるこ とになる。 (参考)経済政策 (1)国家開発計画 ここで参考のため,エネルギー政策よりもさらに大きな枠の,国家開発計画について 紹介する。全体像は以下の図の通り。 図表3.8:経済政策の概観 出典:インドネシアの電力事情 http://energy-indonesia.com/data5/kokkakaihatsukeikaku/01.html インドネシアでは,法令 2004 年第 25 号「国家開発システム法」により,長期計画(20 年毎),中期計画(5年毎),短期計画(1年毎)を定めることになっている。長期計画 は国会審議を経て法律により定め,中期と短期の計画は大統領令で定める。 次に最新の国家開発計画である MP3EI を紹介する。 (2)「2011−2025 年におけるインドネシア経済開発加速化及び拡大マスタープラン (MP3EI)」(2011) MP3EI はインドネシア政府が 2011 年 5 月に策定した全国にわたる包括的な開発計画 で,2010~2025 年の長期計画の中心をなすものである。この計画の中で,GDP を 2025 年 には4~4.5 兆米ドルへ増加させて,インドネシアを世界 10 位以内の経済大国に押し上 げることを目標にしており,さらに 2045 年には 15~17.5 兆米億ドルへと一層の高所得 国化を目指すとしている。また,一人当たり国民所得で見ると、2010 年時点での 3000 17 米ドルを 2025 年には1万 4250~1万 5500 米ドルへ,さらに 2045 年には 4 万 4500~4 万 9000 米ドルの達成を目指す,としている。 2013 年 7 月に大統領令を改訂し,2014~2017 年の計画を 56 件(総額 448 億ドル)に 定め,同年 11 月そのうち 33 件を官民協力(PPP;Public-Private Partnerships)の枠 組みで進める考えを明らかにした。 MP3EI の下で,PLN は 2011 年から 2020 年までに消費電力量(kWh)は年率 8.46% で増加し,2020 年までに約 55.3GW の追加発電容量が必要であると見込んでいる。(出 典:インドネシアの電力事情,最近の電力事情 http://energy-indonesia.com/03dge/denryokujijo.pdf) また,MP3EI の特徴として,6 つのインドネシア経済回廊に各政策課題を割り振り, 経済回廊内での従来の産業を生かした発展,経済回廊間の交易,そして諸外国との交易 による空間的な経済成長プランを打ち出していることが挙げられる。それぞれの経済回 廊のテーマは以下の通り。 ・スマトラ:天然資源生産加工センター,エネルギー供給基地 ・ジャワ:国家工業・サービス促進 ・カリマンタン:鉱産資源生産加工センター,エネルギー供給基地 ・スラウェシ:農水産業・石油ガス・鉱産物生産加工センター ・バリ・ヌサトゥンガラ:観光のゲートウェイ及び国家食糧補助 ・パプア・マルク諸島:食糧,漁業,エネルギー,鉱業促進センター (参考:https://www.indonesiasoken.com/pdf/FREE_004_110613.pdf http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_syokuryo/pdf/04asia_indones ia-3.pdf https://www.indonesiasoken.com/pdf/FREE_041_20120702_%E3%82%A4%E3%83%B 3%E3%83%89%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AE6%E3%81%A4% E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%86%85%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%9B%9E%E5 %BB%8A%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E9%95%B7%E6%9C %9F%E7%99%BA%E5%B1%95%E8%A8%88%E7%94%BB.pdf) 3.3 エネルギー需給 3.3.1 エネルギー生産量 図表3.9にインドネシアのエネルギー生産量の推移を示す。国際エネルギー機関 (IEA)のエネルギー統計によると,2010 年におけるエネルギー生産量は約 3 億 8100 万石油換算トンとなっており,これは 2004 年の 2 億 5,9000 万トンの約 1.5 倍,約 1 億 2200 万石油換算トン増加している。これは主に,石炭・泥炭の生産量の増加のためであ るが,燃焼系の再生可能エネルギーの生産量についても約 2.8 倍と大幅に増加している。 内訳は,2004 年に石炭・泥炭 31%,原油 22%,天然ガス 25%,再生可能エネルギー 18 (燃焼系・非燃焼系合計)22%であったものから,2010 年には石炭・泥炭 49%,原油 13%, 天然ガス 20%,再生可能エネルギー(燃焼系・非燃焼系合計)18%となっている。石炭・ 泥炭がこの間に 18 ポイントと大幅に増加し,一方原油は 9 ポイント減となっている。 図表3.9:エネルギー生産量の推移 (石油換算 1000 トン) 450000 381446 400000 350000 300000 250000 258603 再生可能エネルギー (燃焼系**) 再生可能エネルギー (非燃焼系*) 水力 200000 天然ガス 150000 原油 100000 石炭・泥炭 50000 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 *)非燃焼系とは地熱・太陽光発電など。 **)燃焼系とはバイオマス・ごみ発電など。 出典:IEA,2004~2012 年の Balances of Non OECD Countries を元に作成 19 (参考)日本のエネルギー資源 図表3.10の通り,日本は国内にエネルギー資源に乏しく,原子力を除いた場合, 96%は海外からの輸入に依存している。 主要国のエネルギー輸入依存度(原子力を除く) 図表3.10:主要国のエネルギー輸入依存度(原子力を除く) 120% 100% 80% 60% 40% 20% 0% 韓国 日本 フランス イタリア ドイツ アメリカ イギリス インド ブラジル 中国 カナダ ロシア -20% -40% -60% -80% -100% 出典:電気事業連合会 原子力図面集 3.3.2 エネルギー国内供給量 エネルギー国内供給量の推移を図表3.11に示す。エネルギー国内供給量は,2004 年約 1 億 7000 万石油換算トンから,年率平均 3%の割合で増加し,2010 年には約 2 億 1000 万石油換算トンと,約 1.2 倍に増加している。 内訳を見ると石炭・泥炭は 2004 年の 13%から,2010 年には 15%と微増である。年間 生産量は 2004 年の約 8140 万石油換算トンから,約 1 億 8600 万石油換算トンと約 2.3 倍になっており,生産量増加分の多くが輸出に回されている。一方,原油の割合が 30% から 25%に減少しており,石油から石炭へのエネルギーシフトが進んでいることがわか る。また,地熱発電の伸びもあり,再生可能エネルギー(非燃焼系)の割合が 3.2%から 7.7% に倍増している。 20 図表3.11:エネルギー国内供給量の推移 (石油換算 1000 トン) 250000 207849 200000 174040 再生可能エネルギー (燃焼系**) 再生可能エネルギー (非燃焼系*) 水力 150000 天然ガス 石油製品 100000 原油 50000 石炭・泥炭 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 出典:IEA,2004~2012 年の Balances of Non OECD Countries を元に作成 (参考)日本のエネルギー国内供給量 図表3.12:日本の一次エネルギー国内供給量の推移 (1018 J) 25.00 20.00 石炭 石油 天然ガス 水力 原子力 新エネルギー・地熱等19.66 22.00 22.76 22.76 12.6% 11.8% 12.3% 15 .0 0 15.00 14.38 15.92 16.47 9.1% 12.42 9.6% 11.5% 13.8% 21.15 4.0% 11.3% 4.2% 3.4% 19.2% 23.3% 40.0% 43.1% 22.6% 22.0% 14.9% 10.7% 9.7% 10.00 46.5% 6.38 75.5% 64.7% 69.9% 71.6% 29.3% 21.3% 16.9% 17.4% 65 70 73 75 55.4% 56.0% 53.6% 49.0% 5.00 55.9% 17.6% 19.6% 80 85 16.8% 16.5% 18.5% 20.9% 95 00 05 0.00 90 11 (年度) (注)J(ジュール)=エネルギーの大きさを示す指標の一つで、1MJ=0.0258×10^-3 原油換算 kl 出典:エネルギー白書 2013 日本の資源供給量は近年ほぼ横ばいである。また,2011 年に原子力が急減しているが, 21 これは東日本大震災の影響による。 3.3.3 エネルギー最終消費の推移 1997 年のアジア通貨危機の影響で,1998 年にインドネシア経済は急落したが,エネル ギーの最終消費量は 1998 年に対前年比で 0.05%低下したものの全般的には増加傾向にあ る。近年では 2004 年の約 1 億 2800 万石油換算トンから,年率平均約 3.4%で成長し, 2010 年には約 1 億 5600 万トンに達している。 用途別の最終エネルギー消費の構成比率は,2004 年には,工業用 24%,輸送用 20%, 家庭用 44%,商業用 2%であったが,2010 年には工業用 29%,輸送用 23%,家庭用 37%, 商業用 3%に変化している。この間に工業用が 5 ポイント,3080 万トンから 4580 万トン へ約 1.5 倍に増加しており,工業化が進んでいることが読み取れる。 図表3.13:エネルギー最終消費の推移 (石油換算 1000 トン) 180000 156449 160000 140000 128489 その他消費 農林業用 商業用 家庭用 輸送用 工業用 120000 100000 80000 60000 40000 20000 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 出典:IEA,2004~2012 年の Balances of Non OECD Countries を元に作成 22 (参考)日本のエネルギー最終消費 図表3.14:日本のエネルギー最終消費の推移 (兆円、2005年価 18 (10 J) 18 16 商業用 14 19.6% 家庭用 12 9.2% 10 14.2% 8.9% 輸送用 816.4% 23.3% 6 4 産業用 65.5% 42.8% 2 0 73 75 80 85 90 95 00 05 (注1)農林業用は産業用に含まれる。 11 (年度) (注2)構成比は端数処理(四捨五入)の関係で合計が 100%とならないことがある 出典:エネルギー白書 2013 続いて,図表3.15に主要国の一人当たりのエネルギー消費量を示す。インドネシ アは他国と比較すると非常に低い値となっているが,これは約 2 億 4 千万人もの人口を 有しており,日本のようにエネルギーが配分されておらず,エネルギーを十分に利用で きていない人々が数多く存在することを示している。インドネシアは将来のエネルギー 消費の成長について,大きなポテンシャルを有していることが分かる。 23 図表3.15:一人当たりのエネルギー消費量 出典:OECD Factbook 2011: Economic, Environmental and Social Statistics 3.3.4 エネルギー需給の今後の見通し IEA(International Energy Agency)のエネルギー需要の見通しに関する最新の報告 によれば、インドネシアの最終エネルギー消費量の合計は、2011 年から2035 年で年 2.1%上昇、全体で約67%上昇する見込みである。 工業部門のエネルギー消費は、その他のエネルギー消費部門よりも成長が速いと見ら れている。産業用燃料におけるガスのシェアは実質的に増加しており,2011 年の28%か ら2035 年には47%に増加する見込みである。生産技術の向上と供給インフラの改善が石 油からガスの置き換えを促進すると見られているためである。 インドネシアの総一次エネルギー需要の成長率は,2011 年から2035 年の間に年平均 2.5%となり,1 億9600 万石油換算トンから約3 億6000 万石油換算トンに増加する見込 みである。この間,人口は2 億4200 万人から3 億200 万人に拡大し経済は約220%の成 長。一人当たりの消費量は46%上昇し、2011 年の0.8 石油換算トンから2035 年に1.2 石 油換算トンに増加するとされている。しかし,これはまだ2035 年のOECD 平均の30% に過ぎない。 この見通し期間の間,化石燃料はインドネシアのエネルギーミックスの大部分であり 続け,一次エネルギーの消費に占める割合は2011 年の71%から上昇し,2035 年には79% を占める見込み。石炭消費の成長は中期的に急速で,これは2つのクラッシュプログラム (主として石炭火力発電に基づく)の完結に起因するものである。 (Oil, Gas & Electricity, Volume 31, 2013を翻訳・編集) 24 3.4 主なエネルギー・電力関係の法律 3.4.1 エネルギー法(2007) 2007 年までは、エネルギー全体を網羅する法律がなく、「石油・ガス法」、「電力法」、 「地熱法」などにより、エネルギー源ごとに個別に管理する体制(法体系)であった。 政府は、エネルギー部門全体を総括的に管理する必要性から、2007 年 8 月 10 日に「エ ネルギーに関する法律」(エネルギー法)を作成した。エネルギー法の主要な規定事項は 以下の通りである。 ① 政府によるエネルギー資源の管理(統制・規制) ② エネルギーの安定供給(輸出より国内供給を優先) ③ 貧困層に対する政府補助金の供与 ④ 資源開発の促進(国内調達率の拡大) ⑤ 国家エネルギー政策の策定 ⑥ 国家エネルギー審議会(DEN)の設立 ⑦ エネルギー総合計画(RUEN)の作成(全国および地域別) ⑧ 再生可能エネルギーの供給・利用および省エネルギー実施に対する政府援助 3.4.2 新電力法(2009) 「電力に関する法律」(2009 年第 30 号)(新電力法)が 2009 年 9 月 8 日に制定された。 この法律は 1985 年に制定された旧電力法(1985 年第 15 号)を踏襲しているが,電力供給 は国が責任を持つ(「電力供給事業は,国家が管轄し,政府が実施する」)としつつ,「電力供給 における国家能力の更なる向上のために,国益を害さない限り,その他の国有企業,公営 企業,民間,協同組合,市民団体は電力供給事業を実施するための機会を最大限与えられ る」として,民間に参入の道が開かれている。手続き関係では,従来エネルギー鉱物資源 大臣,または大統領の権限であった国家電力総合計画(RUKN)の策定と電気料金の改定 に際して,国会(地方決裁分は地方議会)の承認が必要になった。 もともと 2002 年 9 月に「電気事業に関する法令(新電力法)」が制定され, 「競争市場の 導入」,「電気事業の分割・民営化」,「発電と小売部門の自由化」 ,「PLN による送電・配電 系統の管理」,「電力市場監督委員会の創設と同委員会による送配電料金(託送料金)の決 定」, 「電力システム管理者と電力市場管理者の設置」などの実施が定められていたが,2004 年 12 月 15 日にインドネシア憲法裁判所がこの新電力法は 1945 年の憲法第 33 条(「国家 にとって重要であり,また多数の者の生活に影響を与える生産部門は国家がこれを管理す る」)に抵触するとして無効としていた。違憲判決後は旧電力法が再度使われることとなっ たが,20 年前の法令であり,民間投資による電源開発を促進する上で問題があった。 (暫定 的に補うために IPP の参入手続きや事業許可などに関するいくつかの政令や奨励を制定し 対応が図られていた。 ) 25 図表3.16:新旧電力法の比較(変更事項) 電力法 No.15/1985(旧電力法) 電力法 No.30/2009(新電力法) 電力開発 中 央 政 府 が 国 家 電 力総 合 計 画 中央政府が国会の承認のもとで RUKN を 計画 (RUKN)を策定する。 策定。地方政府は RUKN を基に地方電力 総合計画(RUKD)を策定。 事業責任 事業認可 中央政府の管理下で PLN が実 中央政府の管理下ではあるが、中央政府 施する。 と地方政府が分担する。 国の認可。 国の認可(ただし、グリッドが州を跨ら なければ州、県を跨らなければ県→実態 はほとんど国の認可となる)。 事業の実施 PLN が実施するが、例外的に PLN の他に、公営企業(県の企業局のよ PLN のグリッドの届かない地 うなもの) 、民間企業、協同組合、市民団 域で協同組合等が実施できる。 体が実施できる。ただし、事業は PLN に 優先権がある。 地方電化 中央政府の責任として原則 PLN 公営企業、民間企業、協同組合などが実 が実施する。 施できない時は、PLN に実施を義務付け る。 電気料金 全国一律、国(大統領)の認可。 中央政府は国会の承認のもとで電気料金 を定める。地方政府は、地方議会の承認 のもとで当該地域の電気料金を定めるこ とができる。すなわち、地方毎に異なる 電気料金の設定が可能となった。 出典:経済産業省「インドネシア共和国火力発電所における低品位炭利用の高効率化」報 告書 http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2011fy/E001722.pdf 26 (参考)図表3.17:新電力法に関連する規制 (出典)エネルギー鉱物資源省資料講演資料「Contry Rport」(2013)を基に作成 3.4.3 省エネルギーに関する政令(2009) 省エネルギーに関する政令は,政府が省エネルギー推進のためのインセンティブを設け ることが規定されたエネルギー法を受けて 2009 年に制定された。この政令では,年間 6,000 石油換算トン以上のエネルギーを使用する大規模需要家を対象に,エネルギー管理者の任 命,省エネプログラムの策定,内部または資格認定された外部団体による定期エネルギー 監査の実施,などが義務付けられた。また,省エネ製品に省エネラベルの認証(エネルギ ー鉱物資源省が所管)を与えることになった。以下の図表3.18に省エネルギーに関す る政令の構造,図表3.19にラベリングデザインと,電球型蛍光灯(CFL)のラベリン グ基準を例として示す。 27 図表3.18:省エネルギーに関する政令(2009)の構造 出典:平成 25 年度エネルギー鉱物資源省インターンダナール氏プレゼン資料 2014 年 1 月 図表3.19:現在のラベリングデザインと電球型蛍光灯(CFL)のラベリング基準 (参考)JETRO「省エネ意識と購買行動(インドネシア・ベトナム) 」に関する調査【調査 報告書】 28 3.4.4 地熱法(2003) この法律により,地熱開発への民間事業者の参入拡大のため,蒸気開発供給・発電の一 貫開発もしくは蒸気開発供給の各事業が民間にも認められることとなった。地熱資源の採 掘権(地熱鉱業権),事業活動の方法(開発区設定、探査活動・リスク負担等),地熱事業 認可等がこの法律により規定され,地熱事業に法の確実性が与えられたといえる。 参考:http://energy-indonesia.com/03dge/jinetsudoko1.pdf 29 4.インドネシアの電力セクターの概要 4.1 電力政策の歴史 最近の電力政策の動きについて,時系列にまとめると以下のようになる。 図表4.1:最近のインドネシアの電力政策に関連する動き 国家エネルギー政策(KEN)2003-2020(2004) ・再生可能エネルギー開発と省エネルギーに関する政策(2004) ブループリント国家エネルギー管理ブループリント 2005-2025(2005) ・省エネルギー実施方法に関するエネルギー鉱物資源大臣令(2005) 国家エネルギー政策に関する大統領令(2006) ・第 1 次クラッシュプログラム(2006) エネルギー法(2007) 国家電力総合計画(RUKN)(2008) ※現在改定中。2014 年発表予定。 新電力法(2009) ・省エネルギーに関する政令(2009) ・ 「新・再生可能エネルギー・省エネルギー総局」設立(2010) ・エネルギー鉱物資源省ビジョン 25/25(2010) ・第 2 次クラッシュプログラム(2010) 2011-2025 年におけるインドネシア経済開発加速化 及び拡大マスタープラン(MP3EI)(2011) ・小水力・マイクロ水力,地熱,バイオマス・バイオガス・都市廃棄物発電に ついて新買取価格の導入(2012) ・都市廃棄物発電の買取価格改訂,太陽光発電について新買取価格導入(2013) 新国家エネルギー政策(KEN)(2014) (参考)国家エネルギー政策(KEN)(2004)以前の歴史 ・1945 年 9 月 インドネシア政府が 19 世紀にオランダの民間企業が設置していた発電所を 接収。 ・1945 年 10 月 電力・ガス局設立。 ・1961 年 電力・ガス局が国営企業 BPU PLN となる。 ・1965 年 電力・ガス局が電力の供給を行う PLN,ガスの供給を行う PGN に分割される。 ・1972 年 PLN が公社となる。 ・1992 年 民間による電気事業に関する大統領令(1992 年第 37 号)発行。電力需要の急 増に対応するため,IPP の参入が認められることとなる。 30 ・1994 年 PLN が政府 100%保有の株式会社(PT PLN)となる。 ・1995 年 構造改革の一環で PLN のジャワ・バリの発電資産を分離,発電会社 PJBⅠ,PJB Ⅱ発足。 ・1997 年 アジア通貨危機の対応で「政府・国有企業に関連する政府・国有企業・民間のプ ロジェクトの延期/見直しに関する大統領令(1997 年第 39 号)」発効。多くの政府・民 間プロジェクトが延期,または見直しとなる。 ・1998 年 政府が「電力部門の構造改革政策」発表。関係閣僚からなる「PLN リストラ活 性化委員会」を設置し,PLN 改革に着手。 ・2000 年 PJBⅠはインドネシアパワー社,PJBⅡはジャワ・バリ発電会社(PT PJB)と 社名変更。 ・2000 年 Batam 島の電力供給を行う PT PLN Batam(PLN 子会社)設立。 ・2002 年 新電力法制定。(2004 年違憲判決により無効となる。詳細は3.5.2 新電力 法(2009)を参照) ・2003 年 Tarakan 島の電力供給を行う PT PLN Tarakan(PLN 子会社)設立。 4.2 電気事業体制 現在の電気事業体制は,発電部門を PLN と PLN の子会社,あるいは IPP が受け持ち, 送配電部門を PLN が独占している。なお,PLN では分社化や事業部制を推進しており, 発電子会社や特定地域(第 2 のシンガポールを目指す Batam 島などの特定開発地域)で発 送配電を担当する子会社を設立している他,各部門をビジネスユニット化(独立採算を意 識した事業部制の導入)している。また,地方電化に関しては、 「協同組合・中小企業担当 国務大臣府(SMOC & SMEs)」の管轄下に,「村落協同組合(KUD)」と呼ばれる住民組 織が全国に点在しており,PLN の電力系統から孤立した僻地において電力供給を実施して いる。 電力セクターに関わる行政組織としては,エネルギーの開発政策及び利用分野における 統合的な政策の策定を担当する国家エネルギー審議会(DEN) ,国家大の開発政策の策定や 調整を担う国家開発企画庁(BAPPENAS),PLN を監督し資源エネルギー分野全般を担う エネルギー鉱物資源省(MEMR),PLN を所有・管理する国営企業国務大臣府,予算を承 認する財務省(MOF),エネルギー政策の策定や調整を担う「国家エネルギー調整委員会 (BAKOREN)」 ,原子力発電に関する研究・開発を行う「インドネシア原子力庁(BATAN) 」 などが存在する。 31 図表4.2:電気事業体制 国家エネルギー 審議会(DEN) 国家開発政策等 の策定・調整 国家開発企画庁 エネルギー鉱物 国営企業国 財務省 (BAPPENAS) 資源省(MEMR) 務大臣府 (MOF) 規制・監督 所有・管理 原子力規制業務 原子力の研究・開発 原子力庁 原子力規制庁 (BATAN) (BAPETEN) 予算の承認 協同組合・中小企業担当 国務大臣府 (SMOC & SMEs) PT. PLN 指導 ・発電 (送・給電) (発電) (特定地域の発送 ・送配電 P3B ジャワ・バリ インドネシアパワー社 電) ・顧客サービス P3B スマトラ ジャワ.バリ発電会社 PT PLN Batam 調整 PT PLN Tarakan 電力 電力 卸売 卸売 IPP 地方政府 サポート 余剰電力 村落協同組 自家発電 需要家 合(KUD) 需要家 需要家 需要家 (注)PLN 以外の事業者の発電電力は原則 PLN に卸売りすることとなっているが,旧電 力法の下,工業団地への電力の安定供給の見地から,特例として PT Cikarang Listrindo,PT Krakatau Daya Listrik など 4 社に特定供給が認められている。 (出典:海外電力調査会,海外諸国の電気事業第 1 編追補版 2 アジア主要国のエネルギー・ 電力事情 2011 年を基に作成) 32 4.2.1 エネルギー鉱物資源省(MEMR) MEMR はインドネシアのエネルギー分野全般を所掌する主要機関。国営エネルギー関係 企業の規制・監督を行う。エネルギー部門の開発に加え,エネルギー及び鉱物資源の調査 や研究実施に関するデータ提供および分析も担っている。2010 年,MEMR は再生可能エ ネルギーの開発と推進を進めるために,新たに新・再生可能・省エネルギー総局 (DGNREEC)を設立した。この新総局の形成(旧鉱物・石炭・地熱総局から地熱部門が, 旧電力・エネルギー利用総局からエネルギー利用部門が分離し,DGNREEC に統合された) により,再生可能エネルギー全体の規制監督が強化されている。 MEMR を構成する総局のひとつ,電力総局(旧電力・エネルギー利用総局)が電力部門 を規制・監督することになっており,電力部門の政策策定,基準・手続きや標準の調整, 技術指導・評価の役割を担っている。また,電力需給予測,送電網計画,投資・資金政策, 新・再生可能エネルギー利用政策などを盛り込んだ国家電力総合計画(RUKN)策定の責 任を負っている。図表4.3は、現在のエネルギー鉱物資源省の職員配置。 図表4.3:エネルギー鉱物資源省の職員配置 出典:エネルギー鉱物資源省 矢野 JICA アドバイザー提供資料(2014 年 2 月) 33 図表4.4:エネルギー鉱物資源省組織図(2013 年 8 月時点) 出典:エネルギー鉱物資源省 矢野 JICA アドバイザー提供資料(2014 年 2 月) 図表4.5:電力総局組織図(2013 年 8 月時点) DIREC 電力総局長 Director General of DGE Ir. Jarman M.Sc 事務局長 Functional Secretary of Dir. Gen. Officers Ir. Arief IndartoM.M Totoh Abdul Fatah S.Si 財務 Finance Division Suyanto SE DFl Annex Building 法務 Legal Division Pamuji Slamet, SH, MPA 3rd Fl Annex Building 総務・人事 General and Personnel Affairs Division Drs. Asep Rahman Saepullah 1st Fl (1141) (3091) (3011) 1st Fl (1226)Annex Building 計画/報告 Planning and Reporting Division 電力計画策定 Director of Electricity Program Supervision Ir. Hasril Zahri Nuzahar, MBA 3rd Fl,(1311) 電力計画策定 Deputy Director Electricity Program Preparation (Ir. Wanhar ) 投資/ファイナンス Deputy Director Electricity Investment and Financing Ir. Enita Rosdiana Nainggolan 3rd Fl,(1322) 電力会社監督 Director of Electricity Enterprise Supervision Ir. Satya Zulfanitra, M.Sc ビジネス管理・監督 Deputy Director Management and Oversight of Electricity Business Afrizal, ST, M.Sc,M.Ec.Dev. サービス/ビジネス指導 Deputy Director Electricity Services and Business Guidance Drs. Tri Handoko, MA 4th, FL (1413) 電力協力 Deputy Director Electricity Cooperation 電気料金/補助金 Deputy Director Electricity Price and Subsidy Ir. Benhur Ir. Djoko Widianto 3rd Fl,(1316) 4th FL (1416) 情報 Deputy Director Electricity Information and Government Joint Capital Ir. Mira Suryastuti, M. Eng.Sc 地方電化 Deputy Director Rural Electricity Ir. Zaenul Arief 3rd Fl,(1325) 商業関連 Director of Electricity Commercial Relation Ir. Albert Manurung,MM 4th, FL (1419)) 消費者保護 Deputy Director Electricity Consumer Protection Winsisma Wansyah, SH. Functional Officer 技術/環境 Director of Electricity Engineering and Environment Ir. Agoes Triboesono, M. Eng 2nd Fl Annex Building (2212) 標準化 Deputy Director Electricity Standardization Ir. Jisman P. Hutajulu, MM. 2nd Fl Annex Building 技術/安全 Deputy Director Electricity Engineering and Safety Feasibility Ir. Ferry Triansyah 2nd Fl Annex Building 環境保護 Deputy Director Electricity Environment Protection Ir. Hanat Hamidi, M.Si 5th Fl Annex Building (4079) 技術 Deputy Director Electricity Engineering Personnel Husni Safruddin ST,MT 5th Fl Annex Building (4050) 企業サポート Deputy Director Electricity Supporting Enterprise Ir. Agus Sufiyanto 2nd Fl Annex Building 図表4.6:新再生可能・省エネルギー総局組織図(2013 年 5 月時点) 新再生可能/省エネルギー総局長 Director General of DGNREEC 2nd Fl Ir. Rida Mulyana, M.Sc. 事務局長 Secretary of Directorate General Ir. Tunggal M.Sc. 計画./報告 Planning and Reporting Division Ir. Hendra Iswahyudi, Msi 地熱局長 Director of Geothermal Ir. Tisnaldi 計画策定 Deputy Director Geothermal Program Preparation Drs. Bambang Sediyono MM 探査/開発監督 Deputy Director Geothermal Exploration and Exploitation Inspection Ir. Eddy Hindiarto Judoadi, M.A.B サービス./ビジネス指導 Deputy Director Services and Business Guidance Ir.Yunus Saiful Hak MM.MT 投資/協力 Deputy Director Geothermal Investment and Cooperation Ir. Sjaiful Ruchiyat, M.Sc 技術/環境 Deputy Director Technical and Environment of Geothermal Ir. Eddy Rivai, MT. 財務 Finance Division Luh Nyoman Puspadewi SE, MM バイオエネルギー局長 Director of Bioenergy Dr. Ir. Dadan Kusdiana, M.Sc. 計画策定 Deputy Director Bio Energy Program Preparation Agus Saptono, S.E.MM M.M サービス/ビジネス監督 Deputy Director Bioenergy Services and Business Inspection Drs. Dotor Panjaitan 投資./協力 Deputy Director Bioenergy Investment and Cooperation Dra. Anna Rufaida MM. 技術/環境 Director of Technical and Environment of Bioenergy Ir. Edi Wibowo, MT. 法務 Legal Division Robert A. Jon SH. 再生可能エネルギー局長 Director of Various New Energy and Renewable Energy Ir. Alihuddin Sitompu, M.M 計画策定 Deputy Director Propram Preparation Bambang Purwatmo, ST サービス./ビジネス監督 Deputy Director Services and Business Guidance Agung Prasetyo, ST.MT 投資./協力 Deputy Director Investment and Cooperation Ir. Abdi Dharma Saragih 技術/環境 Deputy Director Technical and Environment Ir. Ida Nuryatin Finahari, M.Eng Functional Officer 出典:エネルギー鉱物資源省 矢野 JICA アドバイザー提供資料(2014 年 2 月) Functional Officers 総務/人事 General and Personnel Affairs Division Yuli Wahono, S.Sos 省エネルギー局長 Director of Energy Conservation Ir. Maritje Hutapea 計画策定 Deputy Director Program Preparation for Energy Utilization Ir. Edi Sartono エネルギー効率監督 Deputy Director Energy Efficiency Supervision Ir. Mustofa Said 経済/技術 Deputy Director Energy Economy Techno Dr. Ir. Arif Heru K,. MT. クリーン技術応用 Deputy Director Clean and Efficient Energy Technology Application Harris, ST. 技術指導/省エネ協力 Deputy Director Technical Guidance and Energy Conservation Cooperation Andriah Feby M., ST. 36MT 4.2.2 国有電力会社(PT. PLN) インドネシアでは発電部門を政府 100%保有の株式会社である PLN とのその子会社,お よび IPP(独立発電事業者)が受け持ち,送配電部門は PLN が独占している。 事業規模が大きいジャワ・バリ地域では,発電部門は 2 つの発電子会社(インドネシア パワー社,ジャワ・バリ発電会社)を所有し,送配電は PLN 内で業務分離(ジャワ・バリ 送電・給電センター(P3B Jawa Bali)と 5 つの配電事務所)して運営している。また,ス マトラ地域では,2つの発電ビジネスユニット(北スマトラ発電 BU,南スマトラ発電 BU) とスマトラ送電・給電センター(P3B Sumatra),7 つの地域支店で運営している。その他 の地域では,地域支店として垂直統合的な業務運営を行っている。その他に PLN の子会社 として特定地域での電力供給を行う,PLN Batam(保税地域バタム島で事業実施)や PLN Tarakan(東カリマンタン州のタラカン島で事業実施)がある。 各地域の発送電・配電体制をまとめると以下のようになる。 図表4.7:PLN の事業体制 発電 ジャワ・バリ スマトラ その他 PLN 各発電所 北スマトラ発電 BU 9 つの地域支店 インドネシアパワー社 南スマトラ発電 BU および ジャワ・バリ発電会社 IPP PLN Batam IPP PLN Tarakan 送変電 ジャワ・バリ送電・給電セン スマトラ送電・給電 給電 ター(P3B Jawa Bali) セ ン タ ー ( P3B Sumatra) 配電・営業 5 つの配電事務所 7 つの地域支店 出典:海外電力調査会資料などを基に作成 PLN は社長の下に 8 名の取締役がおり,5 名は燃料・人事総務,建設,資材,営業・リ スク管理,財務の 6 部門を掌握し,3 名はジャワ・バリ,西インドネシアおよび東インド ネシアの各地域担当となっている。 2011 年 10 月,ユドヨノ政権の内閣改造によるダー ラン・イスカン前社長の国営企業担当相への就任に伴い,ヌル・パムジ前取締役(一次エ ネルギー担当)が新社長に就任することとなった。しかし,2013 年スマトラ地域の発電所 で,老朽化した機材の調達に絡む汚職事件で,同社幹部 5 人が容疑者になったことに関連 し,パムジ社長は辞任の意向を表明した(2014 年 2 月現在辞表は取締役会(国営企業国務 大臣府による)に受理されていない)。 37 図表4.8:PLN の組織図 Internal Resources Supervisory Unit and President Director Corporate Resources Secretary and Director of Business and Risk Management Director of Construction Director of Strategic Procurement Director of Java - Director of West Director of East Director of Human Director of Resources and Bali Operations Indonesia Indonesia Finance General Affairs Operations Operations Head of Java-Bali Power Generation Division Head of West Indonesia Power Generation Division Head of East Indonesia Power Generation Division Head of and Resources General Affairs Organization Development Division Head of Java-Bali Transmission Division Head of West Indonesia Transmission Division Head of East Indonesia Transmission Division Head of Human Resources and General Affairs Resources Development System Division Head of Java-Bali Distribution and Customer Services Division Head of West Indonesia Distribution and Customer Services Division Head of East Indonesia Distribution and Customer Services Division Head of Human Resources and General ResourceAffairs and Talent Development Division Head of General Affair and Head Office Management Division Head of Commerce Resources and General Affairs Division Head of Java-Bali Construction and IPP Division Head of Gas & Oil Division Head of Risk Resources and General Affairs Management Division Head of Renewable Energy Division Head of Strategic Procurement Division Head of Corporate Resources and General Affairs Strategic Planning Division Management Division Head of West Indonesia Construction and IPP Division Head of IPP Procurement Division Head of System Planning Division Head of East Indonesia Construction and IPP Division Head of Utilities Business and Transaction Division Head of Engineering and Technology Strategic Procurement Planning Division Head of Construction Administration Division Head of Coal Division Power Plant Business Units Regional Business PLN Main Project Education and Subsidiaries Unit Business Unit Training Center Units of PLN Center for Load Dispatching Business Units PLN Distribution Supporting Business Units Business Units Head of Resources Corporate Delivery Unit and Head of Corporate Legal Head of Corporate Finance Division Head of Budget Monitoring Planning Division Head of Accounting Tax and Insurance Division Head of Treasury Division Head of Information System Division Center of Utilities Joint Ventures Research and Development 出典:PLN Annual Report 2012 (参考)日本の電気事業体制 図表4.9:日本の電力体制(2005年4月1日∼) 4.2.3 IPP(独立発電事業者) インドネシアでは 1980 年代後半,急増する電力需要への対応が PLN だけでは困難とな ったことから,1992 年より電力事業における民間資本の導入(IPP の参入)が始まった。 現在インドネシアの発電設備容量の 22%を IPP が占めている。 図表4.10:発電設備容量に占める各自業者比率 (注)PPU:自家発電事業者 出典:ジャルマン総局長講演資料 2013 年 11 月 IPP により発電された電力は全て PLN が買い取ることとなっており,IPP 事業を行う民 間事業者が PLN へ電力販売をする際は,原則競争入札を通じて発電所を建設することとな っている。ただし,①再生可能エネルギーを利用した発電(マイクロ水力,地熱,バイオ マス,風力,太陽光),②余剰電力,③電力供給危機地域などへの供給の場合は入札を通さ ずに直接指名ができる(注)。 2014 年 2 月のメディアからの取材においてジャルマン電力総局長は,発電所建設資金の 50%が民間資金によって供給されることを期待している,と発言している。 (注)この他に例外として,実績のある IPP は同一地点の増設(既存の容量より大きい容量 の増設の場合は,より効率が高い,より環境負荷が少ない設備の場合に限る)は入札 を経ず随意契約を認めることとしている。 4.2.4 国家エネルギー委員会(DEN) DEN は 2007 年のエネルギー法により 2009 年に設立された。包括的な国家エネルギー 政策(KEN) ,国家エネルギー総合計画(RUEN)等を策定することとなっており,それら はエネルギー鉱物資源省が施行・実施することとなる。議長は大統領が務め委員は 15 名, うち 7 名が閣僚である。政府関係者とのバランスを保つため,学術機関,環境問題専門家, 消費者団体,および産業や工学分野の代表者を含む非政府会員を 8 名有している。 メンバーは以下の通り(2012 年 5 月)。 ・議長 : (大統領) Susilo Bambang Yudhoyono ・副議長 : (副大統領) Budiono ・総務会長 : (エネルギー鉱物資源相) Jero Wacik ・閣僚委員 1. Minister of Finance (Agus Martowardojo) 2. State Minister of National Development Planning (Armida Alisjahbana) 3. Minister of Transportation (E.E. Mangindaan) 4. Minister of Industry (M.S. Hidayat) 5. Minister of Agriculture ( Suswono ) 6. State Minister of Research and Technology (Gusti Muhammad Hatta) 7. State Minister of Environment (Berth Kambuaya) ・非閣僚委員 1. Ir. Agusman Effendi (Consumer- President Commissaries of PT. Ristia Bintang Mahkota Sejati Tbk/1997-present) 2. Prof. Widjajono Partowidagdo, Ph.D (Technology Expert- Vice Minister of MEMR/ April 2011-April 2012 ) 3. Prof. Ir. Rinaldy Dalimi PhD. (Academics-Dean the Faculty of Engineering, Engineering, University of Indonesia / 2004-2008 ) 4. Ir .Eddie Widiono S.MSc (industry- Secretary of National Team and Director Executive Team of for Energy and Water Saving /2008-Present ) 5. Prof. Dr. Ir. Herman Darnel Ibrahim, Msc (Industry- Director of Transmission and Distribution of PT. PLN/ 2003-2008) 40 6. Dr. Ir.Tumiran M.Eng (Academics-Chairman of Department of Technique Electro of Gadjahmada University / 2003-2007) 7. Prof. Dr. Ir. Mukhtasor, M.Eng. PhD (Environmental Expert- Lecture for Post Graduate Environment Technique, ITS/Surabaya Technology Institute from 2001 to present; Researcher at Center for Demography and Environment, ITS from Lecture for Post Graduate Faculty Marine Technique Study, ITS from 2001present) 8. Prof. Dr. Herman Agustiawan (Consumer- Associate Professor in Electrical and electronic Engineering Department, University Technology Petronas (UTP), Tronoh Perak, Malaysia from 2007-present) 出典:インドネシアの電力エネルギー事情 http://energy-indonesia.com/01esdm/National%20Energy%20Council.%20(May%2028,% 202012)%20(1).pdf 4.2.5 国家開発企画庁(BAPPENAS) BAPPENAS は国の経済計画を定める役割を担っており,エネルギー規制の実施に直接は 関与しないが,エネルギー政策の方向を決定するだけでなく,それを広範な経済計画や規 制と調整する機能を果たしている。開発加速のための現在の指針は,再生可能エネルギー の推進をインフラ整備における重要なポイントとしている。経済計画,特にインフラ開発 に関するものは,エネルギー鉱物資源省の年間予算によって実施されている。 4.2.6 国営企業国務大臣府 国営企業国務大臣府はエネルギー分野における国営企業の運営を管理している。エネル ギー部門は,圧倒的な力をもつ国営企業によって強く規制されているため,国営企業国務 大臣府は,プルタミナ及び PLN 等の株主という立場で,エネルギー政策の方向性と実施を 決定する上での重要な役割を果たすことになる。 4.2.7 財務省(MOF) MOF は投資インセンティブを含む政府支出の用途を承認する権限を持っている。財務省 が作成する政府の年次予算を考慮し,これらの決定は行われる。 41 (参考)インドネシア 2013 年補正予算 2013 年補正予算は以下の通り。 燃料補助金 :199.9 兆ルピア 電力補助金 :99.9 兆ルピア (以上計,エネルギー補助金:299.8 兆ルピア) 地方交付税 :529 兆ルピア 中央政府歳出 :1196 兆ルピア (以上計,歳出:1726 兆ルピア) (出典:2013 年 12 月 3 日じゃかるた新聞) 2013 年補正国家予算は燃料補助金に 199.9 兆ルピア,電力補助金に 99.9 兆ルピアを計上 しており,この 2 つの合計であるエネルギー補助金は 2013 年の中央政府歳出 1196 兆ルピ アの 25%を占め,中央政府歳出を圧迫している。政府は 2013 年 6 月に補助金付き燃料を値 上げしたが,補助金の支出は減らず増加傾向になっている。主な要因としては消費量の拡 大とルピア安,国際原油価格が高値で推移してきたことがあげられる。 (電力補助金につい ては4.7.2節を参照) (参考)インドネシアと日本の国家予算 インドネシアの国家予算(2012 年推定)は,歳入が約 1440 億ドル,歳出が約 1630 億ドルである。一方,日本は歳入が約 2 兆ドル,歳出が約 2 兆 6000 億ドルとなっている。 (出典:CIA The World Fact Book, https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/id.html) 4.2.8 国家エネルギー調整委員会(BAKOREN) BAKOREN はエネルギー開発政策等の策定・調整を行っている。エネルギー法以前は BAKOREN が国家エネルギー政策を策定していたが、エネルギー法により DEN がその機 能を引き継ぐこととなった。 4.2.9 原子力庁(BATAN) BATAN は原子力政策の策定,原子力の研究・開発を行っており,以下の役割を担ってい る。 ①原子力エネルギーの研究,開発,応用による国家開発の実施。 ②原子力エネルギーの研究,開発,応用をサポートする制度の管理 BATAN は現在 3 つの研究炉(ジョグジャカルタ,バンドン,スルポン)を持っており,原 子力エネルギーの利用,放射線の農業・医療への利用,放射線廃棄物の管理技術開発,管 理事業までの原子力全般に関する研究開発を行っている。 42 スルポンの原子炉容量はその最大の 30MW。主として原子力発電関連,安全性研究開発, 放射線廃棄物処理の研究開発を行っており,国内の放射線廃棄物管理・処分センターの役 割も果たしている。 バンドンの研究炉は 2MW(放射線医療利用等の研究開発),ジョグジャカルタの研究炉は 100kW(粒子加速器の研究開発,各物理研究,化学工学などの基礎研究)となっている。 BATAN 職員によると BATAN の 2013 年予算は約 1700 万ドル。職員は BATAN 全体で 約 3700 人。しかしこの 2 年間で新規採用は 0 人であり,政策が不透明なため研究者が減っ ているとのこと。 (原子力政策については5.7節参照) 4.2.10 原子力規制庁(BAPETEN) 1997 年 4 月に制定された新原子力法に則り,BATAN に一元化されていた原子力規制業 務が切り離され,1998 年 5 月に BAPETEN が設立された。以下の役割を担っている。 ①原子力エネルギー使用時の監督に関する国家政策の策定 ②原子力実用化に向けた規制の策定と準備 ③原子力発電に関わるライセンスの発行,建設・運転・防災技術の監督 ④核物質の監視・管理 ⑤BAPETEN 内の人材開発,知識向上 職員数は約 450 名。原子力発電導入に備え,予算は 2012 年に前年度のほぼ倍額となり, 2013 年には福島第一原子力発電所事故の影響で規制強化を図るため,予算額が 5 割増加さ れている。2014 年度には緊急時対応センターが建設されることになっている。 4.2.11 協同組合・中小企業担当国務大臣府(SMOC & SMEs) 大臣の下に 7 部局,その一つの生産部(DeputyⅡ)の下に 5 部門があり,電力関係の業 務はその中の一つである「電気とその他ビジネス部門」が担っている。電気事業に関する 主な業務は,電化の評価・分析など。また,PLN が行う地方電化を補完する役割があり, 村落協同組合(KUD)を指導・監督している。国営企業は利益の 2~3%を SMEs に納め, SMEs はそれを村落協同組合(KUD)及び中小企業振興のために使われることになってお り,この資金の一部は地方電化に使用されている。 (地方電化については4.9節参照。) 4.2.12 村落協同組合(KUD) PLN によって配電線が建設される見込みのない地域の電化事業を行っている。SMEs で 推し進められる分散型太陽光発電や小水力,バイオマスなどの小規模グリッドの事業は, 完成後,設備は KUD に移管され,運営・維持管理及び料金徴収などを行っている。 43 4.3 電力需給 4.3.1 発電電力量 図表4.11にインドネシア全体の発電電力量(PLN による発電+PLN 購入分)の推移 を示す。発電電力量は 2000 年の 93,325GWh から,2011 年には 183,419GWh と約 2 倍に 増加している。2001 年から 2011 年までの平均成長率は約 6.4%となっている。 図表4.11:インドネシア全体の発電電力量(PLN による発電+PLN 購入分)の推移 (GWh) 200,000 183,419 180,000 バイオマス ガスエンジン 風力 太陽光 ディーゼル コンバインド ガス(PP) ガス(汽力) 石油 石炭 地熱 水力 160,000 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 出典:MEMR, Handbook of Energy & Economic Statistics ind 2012 44 (参考)日本の発電電力量 図表4.12:日本の発電電力量の推移 (100GWh) 12,000 2011 年 955,000GWh 10,000 新エネ等 原子力 石油等 8,000 LNG 石炭 揚水 6,000 一般水力 4,000 2,000 1952 1955 1960 1965 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 0 (FY) 出典:エネルギー白書 2013 2011 年にはインドネシアの約 5 倍,955,000GWh の発電量となっている。しかし日本の 2001 年から 2011 年までの平均成長率は約 0.18%と,既に電力需要は飽和状態と言える。 以前は石油火力が主流であったが、1973 年のオイルショック以降は燃料の石油からの脱 却が図られ、原子力や石炭火力,ガス火力の発電量が増えている。 4.3.2 販売電力量 図表4.13に,用途別のインドネシアの販売電力量の推移を示す。 販売電力量は,2004 年の 100,097.47GWh より年平均 7.6%で増加し,2012 年には 173,990.75GWh と,約 1.7 倍となっている。 用途別の比率では,2012 年,家庭用 41%,産業用 35%,商業用 18%,公共用 3%,政府 施設 2%,外灯 2%となっている。2004 年と比較すると一番高い伸びを示したのは家庭用で あり,2.9 ポイント,続いて商業用が 2.6 ポイント上昇している。一方,産業用は 5.7 ポイ ント減少している。 45 図表4.13:インドネシアの販売電力量の推移 (GWh) 200,000.00 173990.75 180,000.00 160,000.00 140,000.00 外灯 政府施設 公共用 商業用 産業用 家庭用 120,000.00 100,000.00 80,000.00 60,000.00 40,000.00 20,000.00 0.00 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 出典:PLN Statistics 2012 (参考) 以下からも分かるとおり,インドネシアの電力の大半は、ジャワ島(特にジャカルタが 位置する西部)で消費されている。2012 年の販売電力量では,ジャワ−バリ地域がその約 74%を占めている。 図表4.14:PLN の販売電力量(GWh) 年 地域 前年 2008 年 比 前年 2009 年 (%) ジャワ−バリ 比 前年 2010 年 (%) 比 前年 2011 年 (%) 比 前年 2012 年 (%) 比 (%) 100,774 5.4 101,319 0.5 110,309 8.9 117,593 6.6 128,513 9.3 外島 28,244 0.9 33,263 17.7 36,988 11.2 40,399 9.2 45,478 12.6 合計 129,018 6.4 134,582 4.3 147,297 9.4 157,993 7.3 173,991 10.1 出典:PLN Annual Report 各年版 46 (参考)日本の電力需要 図表4.15:電灯電力使用電力量の推移 2011 年 (10億kWh) 1,000 931,000GWh 800 600 電力 400 200 電灯 0 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 出典:エネルギー白書 2013 2000 2005 2010 (FY) 電力消費全体は、オイルショックの 1973 年直後に一旦伸びが鈍化したものの,その後 着実に増加し、1973 年度から 2007 年度の間に 2.6 倍に拡大している。1965 年から 2010 年を通してみると,増加率は毎年平均 4.3%。1966 年から 1975 年の平均増加率は 9.8% であるが,2001 年から 2010 年で見ると既に電気は飽和状態となっており,平均 0.9%と 鈍化している。 4.4 電力設備 エネルギー鉱物資源省の資料によると,2013 年 9 月時点でのインドネシアの発電設備容 量は 46,428MW となっており,その内訳は PLN が 74%, IPP が 22%,自家発が 4%と なっている。図表4.16には 2012 年までのインドネシアの発電設備容量の推移を示す。 2001 年から 2012 年までの年平均成長率は 5.1%であり,これは同期間の電力需要伸び率 (約 6.8%)と比べて低くなっている。しかし,逼迫する電力需給を改善するため 2 つのク ラッシュプログラム(注)等の大規模な電源開発を進めており,2010 年から 2012 年の 3 年間の成長率は平均年 12.4%と高い成長を記録している。 図表4.17に PLN の発電設備容量を示しているが,2012 年の PLN の発電設備容量の 割合は,水力 11%,汽力(石油火力,石炭火力,ガス焚き火力)44%,ガス 9%,コンバイン ド 27%,地熱 2%,ディーゼル 8%となっており,汽力が占める割合が非常に大きい。現在 クラッシュプログラムを初め再生可能エネルギーの導入を推進しており,今後の変化が注 47 目される。 (注)急増する電力需要に対応するため,また,非石油燃料発電を加速するため,大統領 令によって推し進められている計画。詳細は4.6.2節参照。 図表4.16:発電設備容量(MW)の推移 1995 2000 2005 2010 2012 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 11 月 48 図表4.17:PLN の発電設備容量(MW)の推移 35,000.00 32,901.48 30,000.00 風力 太陽光 ディーゼルガス ディーゼル 地熱 コンバインド ガス 汽力 水力 25,000.00 20,000.00 15,000.00 10,000.00 5,000.00 0.00 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 出典:PLN Statistics 2012 (参考)日本の発電設備容量 図表4.18:日本の発電設備容量の推移 (万kW) 25,000 新エネ等 2011 年 245,380MW 新エネ等 0.2% 原子力 原子力 20.0% 石油等 LNG 20,000 石炭 揚水 石油等 19.0% 一般水力 15,000 LNG 25.9% 10,000 石炭 15.8% 5,000 揚水 10.7% 一般水力 8.5% 1952 1955 1960 1965 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 0 (年度) 出典:エネルギー白書 2013 49 (参考)最近のジャワ・バリ系統の設備予備力 2013 年 5 月 7 日,PLN はジャワ・バリ系統で過去最大電力(ピーク電力)として所内 電力を含まないネットで 21,968MW,所内電力(2.5%)を含むグロスで 22,517MW を 記録した。現在 PLN のジャワ・バリ系統における設備容量(ネット)は 29,159MW で あり,最大電力(ネット)との比は約 75%,つまり数値上は予備力約 25%程度となる。 しかし,経年劣化による出力減,水力の乾期による出力減さらに定期点検,事故停止等 により電力需給の状況を分析すると以下の様になる。 1.設備容量(ネット) 29,159MW 2.経年劣化による出力減 3.水力の乾期による出力減 △6,702MW 4.定期点検(主に火力) 5.事故停止点検他 当日供給可能出力 22,457MW 最大電力(ネット) 21,968MW 運転中予備力 489MW (出典:日系電力事業関連会社より聞取り) 予備力がほぼ無い状況で電力需給バランスは大変厳しい状況にあることが分かる。 なお,PLN は運転中予備力(当該日の可能供給力−当該日の需要)が最大単機容量(ス ララヤ火力発電所の 600MW)を下回った場合を SIAGA(Emergency)としており,万一 最大単機容量が発電所側の事故で供給不能となった場合,電力需給バランスを維持できな くなるため,その際の一部系統の切り離し(強制停電)の手順を事前確認する。DEFISIT は実際にそのような事態が起こり,一部地域で強制停電を実施する場合のことで,2004 年 は 1 日,2005 年は 42 日,2006 年は 32 日,2007 年は 13 日,2008 年は 35 日,2009 年は 13 日,2010 年は 1 日,2011 年は 59 日,2012 年は 2 日,2013 年は 1 日発生している(2013 年 6 月 30 日時点)。(出典:東電設計株式会社社員様より情報提供) 4.5 電力の今後の見通し インドネシア全域の電力需要予測として,PLN とエネルギー鉱物資源省の予測を以下に示 す。 50 図表4.19:PLN による総販売電力量,最大電力の見通し 400,000 350,000 70,000 総販売電力量(GWh) 最大電力(MW) 60,000 300,000 50,000 250,000 40,000 200,000 30,000 150,000 20,000 100,000 10,000 50,000 0 0 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 年 経済成長率(%) 総販売電力量(GWh) 最大電力(MW) 2012 6.5 172,300 30,237 2013 7.2 187,800 32,770 2014 7.4 205,800 35,872 2015 6.9 225,100 39,209 2016 6.9 246,200 42,796 2017 6.9 266,800 46,291 2018 6.9 287,300 49,891 2019 6.9 309,400 53,611 2020 6.9 333,000 57,606 2021 6.9 358,300 61,752 出典: PLN 電力供給事業計画(RUPTL)2012-2021 年版 経済成長率に対する電力需要の伸びの弾性値は約 1.2 であり,電力供給力の整備は経済 成長率目標の達成の必要条件である。 51 図表4.20:エネルギー鉱物資源省による電力需要の見通し 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料(2013年9月) 図表4.20によると 2013 年から 2022 年の十年間で必要となる電力は,年平均 7.4GW で増加し,2022 年には設備容量が 100GW を超える。また,2013 年から 2031 年までを見 ると,年平均 12.4GW で増加,設備容量は 254GW となる見込みである。これは近年の日 本の発電容量を上回る値である。 (エネルギー白書 2013 によると日本の 2011 年の設備容量 は約 245GW。) 52 図表4.21:2012 年と 2021 年時点での PLN の地域別電力販売量予測 出典:PLN 電力供給事業計画(RUPTL)2012-2021 年版 図表4.21から,上記電力需要の成長のほとんどはジャカルタの存在するジャワ島に よるものであることが分かる。 (ジャワ・バリ系統における 2012~2021 年の電力需要は, 2012 年の 132,400GWh から,2021 年には 259,4000GWh となり年平均 7.9%で増加すると 予測されている。)インドネシアは 13,000 を越える島を有しており,未だ各島の地方電化 が進んでおらず,現在も全世帯の約 2 割が電気なしで暮らしているという実態が,この図 から理解できる。(地方電化については後述) 4.6 電力開発計画 4.6.1 国家電力総合計画(RUKN)と電力供給事業計画(RUPTL) インドネシアの電力開発計画としては,国家電力総合計画(RUKN)と電力供給事業 計画(RUPTL)の2つがある。RUKN がエネルギー政策を踏まえた総合的な電力開発計 画であるのに対し,RUPTL は個別プロジェクトを反映した PLN の電力事業計画である。 RUKN の改定を受けて RUPTL が策定されることになっており,これらは毎年改定され ることになっているが,実情はそうなっていない。RUKN は直近で 2008 年に改定, RUPTL は 2010 年から毎年改定されている。 2009 年に電力法が改正され,RUKN は国会の承認が必要となった。このため,RUKN は国会の審議を受けているところであり,改定されず現在まで来ている。一方で,RUPTL は PLN の施設計画であり,毎年作成されている。2008 年から RUKN が改定されないた めに,RUPTL も公表ができない状況が続いたが,2010 年には 2008 年の RUKN を参照 する形で RUPTL2010 版が公表された。 53 図表4.22:RUKN と RUPTL の特徴 国家電力総合計画(RUKN) 電力供給事業計画(RUPTL) 策定機関 エネルギー鉱物資源省(MEMR) 国有電力会社(PLN) 概要 国が定める電力総合計画。需要 RUKN に基づいて PLN が定め 予測,1 次エネルギー,電力計画, る電力供給計画。期間は 10 年 所要資金など。期間は 20 年間。 間。 更新 毎年改定(本来) 毎年更新(RUKN に基づいて作 成) 現在改定予定の RUKN 案は以下の通りとなっている。 ○電力供給計画の方針 ・MP3EI(2011−2025 年におけるインドネシア経済開発加速化及び拡大マスタープ ラン)支援、電力供給不足の回避、十分なエネルギー備蓄(国産エネルギー利用と 石油燃料の制限)に見合う発電能力の開発。 ・石油燃料の最小化のため、ガス、揚水発電によるピーク電力負荷に向けた発電所の 開発 ・新・再生可能エネルギー利用の発電所の支援、CO2 エミッションの削減と競争力の ある電気料金体系 〇電力エネルギーの多様化 ・持続的な電力供給体制の構築、再生可能エネルギー源利用の優先 ・石油依存の代替として、石炭火力発電の確保とガス発電用のガス供給支援 ・新・再生可能エネルギー源の利用の最適化後の原子力発電所の利用(最後の選択) なお,エネルギー鉱物資源省による電力に関する一次エネルギー割合の将来目標は 2021 年には石炭を 62.8%にまで引き上げ,石油を 0.8%にまで引き下げるという,石油か ら石炭への大幅なシフトを目指している。また,再生可能エネルギーである地熱を 2012 年の 4.75%から 2021 年には 11.0%に増強する計画である。 54 図表4.23:電力に関する一次エネルギー割合の将来目標 2012 2021 出典:エネルギー鉱物資源省電力総局講演資料 2013 年 11 月 また,RUPTL2012-2021 の開発計画は下記の図表4.24,4.25,4.26の通 り。2021 年の電力エネルギー需要は 358,000GWh(2012 年の販売電力量は 173,990GW h)で、年平均 8.65%の増加率という予測がされている。 図表4.24:供給力増強計画 2012 年から 2021 年まで 容量拡大計画 の容量拡大計画 (2012年 – 2021年) : 石炭: 38 GW ・石炭:38GW 地熱 : 6.3 GW ・水力:6.3GW 水力 : 6.3 GW ・地熱:6.3GW ガス : 4 GW ・コンバインド:2.5GW コンバインド : 2.5 GW ・ガス:4GW その他 : 0.28 GW ・その他:0.28GW ■その他 ■ガス ■コンバインド ■地熱 ■水力 ■石炭 出典:PLN 社長講演資料 2013 年 9 月 2012~2021 年の発電容量の増強は,インドネシア全体で約 57.3GW,年平均 5.7GW の追 加となる。 55 図表4.25:送電線開発計画 10,915 9,200 9,191 8,337 6,808 3,895 3,181 2,182 1,326 200 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 9 月 2012~2021 年に行われる送電系統の開発は,ジャワ・バリ系統では 500kV と 150KV, インドネシア東部及び西部地域では,500kV,275kV,150kV,70kV である。2021 年ま での送電線開発計画では,変電所の総容量は 122,331MVA,送電線は亘長約 55,234km に 達する見込みである。送電線のうち 500kV 交流送電線が約 5,241 km,500 kV 直流送電線 が 1,100 km,275 kV 交流送電線が約 6,207 km,250 kV 高圧直流送電線が約 462 km, 150 kV 高圧送電線が 38,664 km,70 kV 高圧送電線が約 3,560 km となっている。 図表4.26:配電線システム開発計画 55,352 51,010 48,104 40,005 34,906 37,745 42,363 36,722 44,843 低圧網 34,744 中圧網 (注)配電電圧は低圧が 220/380V,中圧が主に 20kV(一部の外島部で 12kV,6~7kV 中 圧配電が適用されている)。 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 9 月 配電系統で 2021 年までに必要となる設備はインドネシア全体で,中電圧網が 207,540km, 56 低電圧網が 218,255km,配電用変圧器 33,948MW 分である。 4.6.2 2 つのクラッシュプログラム インドネシアでは急成長する電力需要への対応と石油依存の低減を目指し,非石油燃料 発電所の電源開発を加速させる 2 つの開発プログラムを「クラッシュプログラム」と名づ け,大統領令により推進している。 図表4.27:クラッシュプログラムの概要 第一次クラッシュプログラム 第二次クラッシュプログラム(当初) 開発計画年 2006-2009 2010-2014 開発方式 PLN100% PLN 44%(422 万kW) IPP 56%(531 万 kW) 電源開発量 約 10,000MW 約 10,000MW 内訳:ジャワ・バリ 6,900MW 内訳:ジャワ・バリ 5,070MW その他 背景(目的) 3,100MW 4,452MW その他 ・緊急電源開発(ジャワ・バリ中心) ・緊急電源開発 ・脱石油政策 ・電源の多様化 ・再生可能エネルギーの導入 石炭 100% 電源種別 ・再生可能エネルギー 54% 内訳:地熱 41%,水力 13% ・化石燃料 46% 内訳:石炭 36%, ガス 1%, CC 9% 法的根拠 大統領令(No.71/2006) 大統領令(No,4/2010) 開発所要資金 電源:80 億 US$ 電源 :160 億 US$ 送電設備:4 億 US$ ○ 第一次クラッシュプログラム 迅速性を重視し,技術基準を満たしていれば最先端技術は必要とせず,最低価格 を提示した企業に落札への際優先権を与えるとの当時の PLN の方針により,中国 企業の落札が多くなった。しかし金融危機などの影響で中国からの資金調達面で問 題が発生したり,中国の業者による工期遅延があったりしたため,2009 年中に運 転を開始した発電所は Labuan 発電所 1 号機(32 万 kW)の 1 ユニットのみ。ま た,既に運転を開始した発電所も設備不良による事故停止が頻発している。 ○ 第二次クラッシュプログラム 温暖化ガス排出と石炭輸送インフラ整備の問題がクローズアップされたため,第 57 2 次計画では電源の多様化を図り,地熱(計画の約 4 割を占める)や水力等再生可能 エネルギーの開発に重点を置き,IPP による開発を全体の 55.7%まで導入するとい った特徴がある。 ※第二次クラッシュプログラム改訂 第二次クラッシュプログラムでも政府保証がつかず資金手当の目処が立たないな ど,多くのプロジェクトの進行に遅れが生じ,また,そのいくつかはガス供給不足や 地熱発電所の開発準備不足などの理由により開発が中止された。第二次クラッシュプ ログラムは 2012 年 1 月,2013 年 8 月に見直しがされており,開発容量が約 18,000MW に拡大されている。また,水力に特化した第 3 次クラッシュプログラムも検討されてい るが公表時期は未定である。 58 図表4.28:第一次クラッシュプログラムの進捗状況 出典:エネルギー鉱物資源省ジャルマン電力総局長資料(2014 年 2 月) 59 図表4.29:第二次クラッシュプログラムの案件リスト(PLN 分) (注)PLTP:地熱発電所(Pembangkit Listrik Tenaga Panas) PLTA:水力発電所(Pembangkit Listrik Tenaga Air) PLTU:火力(汽力)発電所(Pembangkit Listrik Tenaga Uap) PLTG:ガス発電所(Pembangkit Listrik Tenaga Gas) 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 8 月 PLN のプロジェクトは 17 件,5,749MW。 以下,2013 年 12 月時点の状況。 ・ 着工準備中(pre-construction)が 5 件,PLTA Upper Cisokan,PLTA Asahan 3,PLTA Parit Baru,PLTU Pangkalan Susu 3&4,PLTG/PLTMG Bangkanai の合計 1,194MW。 ・ 実地踏査(exploration)段階が,4 件,PLTP Sungai Penuh,PLTP Kotamobagu 1,2, PLTP Kotamobagu 3,4,PLTP Hululais の合計 300MW。 ・ その他 FS 準備,EPC 入札などの段階が 8 件,4,255MW。 (2013 年 12 月エネルギー鉱物資源省職員より聞取り) 60 図表4.30:第二次クラッシュプログラムの案件リスト(IPP 分) 59 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 8 月 61 IPP によるプロジェクトは 59 件,12,169MW。 以下,2013 年 12 月時点の状況。 ・ 着工中(construction)が 2 件,PLTA Wampu,PLTP Patuha の合計 210MW。 ・ 実地踏査(exploration)段階が 4 件,PLTP Karaha Bodas,PLTP Sarulla 1,PLTP Ulubelu 3,4,PLTP Lahendong 5,6 の合計 590MW。 ・ その他 FS 準備,着工準備中などの段階が 53 件,11,369MW。 (2013 年 12 月エネルギー鉱物資源省職員より聞取り) 4.7 電気料金 4.7.1 電気料金(2013 年 10 月~) インドネシアはこれまで補助金により電気料金が低く抑えられてきたが,増大する補 助金による財政負担を抑制するため,2013 年 1 月、電気料金の値上げが国会で採択さ れた。電気料金を 3 カ月毎に 3∼4%値上げすることとされ、2013 年 10 月で合計 15% の料金値上げが行われた。PLN の電力基本料金表(2013 年 10 月∼)は以下の通りであ る。 図表4.31:電気料金表(2013 年 10 月∼) 類別 適用 (電圧) 需要家 S-1 小口 (低圧) 需要家 契約電力 公共施設 (低圧) (中小) 従量料金(Rp/kWh) プリペイド (Rp/kVA/月) 220VA 450VA S-2 基本料金 900VA - 10,000 15,000 料金 月契約 14,800 30kWhまで 123 30kWhを超え60kWhまで 265 60kWh超 360 20kWhまで 200 20kWhを超え60kWhまで 295 60kWh超 360 - 325 455 1,300VA - 708 708 2,200VA - 760 760 - 900 900 3,500VA 以上 200kVA 以下 S-3 公共施設 (中圧) (大) 200kVA 超 - ピーク時= K×P×735 オフピーク時= P×735 kVArh= 925 (注) - 62 450VA R-1 小規模 (低圧) 住宅 900VA 360 60kWh超 495 20kWhまで 275 20kWhを超え60kWhまで 445 60kWh超 495 415 605 979 2,200VA - 1,004 1,004 - 1,145 1,145 - 1,352 1,352 3,500VA 以上 (低圧) 住宅 5,500VA 以下 R-3 大規模 (低圧) 住宅 6,600VA 以上 450VA (低圧) 30kWhを超え60kWhまで - 中規模 小規模 20,000 169 1,300VA R-2 B-1 11,000 30kWhまで 900VA 23,500 26,500 業務 1,300VA 2,200VA 以上 30kWhまで 254 30kWh超 420 108kWhまで 420 108kWh超 465 979 535 630 - 966 966 - 1,100 1,100 - 1,352 1,352 5,500VA 以下 B-2 中規模 (低圧) 業務 B-3 大規模 (中圧) 業務 6,600VA 以上 200kVA 以下 200kVA 超 450VA 家内・ l-1 (低圧) 900VA - 26,000 31,500 小規模 工業 ピーク時= K×1020 オフピーク時= 1020 kVArh= 1,117 (注) 30kWhまで 160 30kWh超 395 72kWhまで 315 72kWh超 405 - 485 600 1,300VA - 930 930 2,200VA - 960 960 - 1,112 3,500VA 以上 1,112 14kVA 以下 ピーク時= l-2 中規模 14kVA を超え (低圧) 工業 200kVA 以下 - オフピーク時= kVArh= K×972 972 - 1057 (注) 63 l-3 大規模 (中圧) 工業 l-4 大規模 (高圧) 工業 P-1 政府機関 (低圧) (中小) 200kVA 超 - 30,000kVA 超 - ピーク時= K×803 オフピーク時= 803 kVArh= 864 (注) ピーク時= 723 オフピーク時= 723 kVArh= 723 (注) - - 450VA 20,000 575 685 900VA 24,600 600 760 1,300VA 2,200VA 以上 - 1,049 1,049 - 1,076 1,076 - 1,352 1,352 5,500VA 以下 6,600VA 以上 200kVA 以下 ピーク時= P-2 政府機関 (中圧) (大) 200kVA 超 - オフピーク時= kVArh= K×947 947 - 1026 (注) P-3 公衆 (低圧) 街路灯 ― - T (中圧) 国有鉄道 200kVA 超 30,950 997 ピーク時= K×483 オフピーク時= 483 kVArh= 808 (注) 国有鉄道・ C (中圧) - Q×707 ピーク時= 公益電力 事業許可 997 200kVA 超 - オフピーク時= kVArh= 保持者向 Q×707 - Q×707 (注) け大口 L 臨時使用 ― - 1,650 - (低∼高圧) (注) K=各地域のピーク時間帯とオフピーク時間帯の電力量の比(1.4≦K≦2.0) P=純公共施設(協会,モスク)=1,一般公共施設(学校関係施設)=1.3 Q=工業需要家,非工業需要家によって異なる(0.8≦Q≦2)。 月間の平均力率が 85%を下回る場合に,kVArh(無効電力)分の電気料金が加算 64 インドネシアの電気料金の主な特徴 ●5つの料金区分 S:公共(小口含む) R:家庭 B:商業 I:工業 P:政府機関・公衆街路灯 ●電気料金体系 ・900VA 以下は,基本料金+従量料金で構成 ・900VA 超は基本料金がなく,従量料金のみ。ただし,使用量が所定の水準以下の場合 は,最低料金が発生。 ●電気料金の前払い 低圧電力については電気料金の前払い制度があり,任意に料金の「前払い」か「後払 い」を選択可能。 4.7.2 PLN への政府補助金 以下に PLN への政府補助金の推移を示す。インドネシア政府は電気料金に対し補助金を 支払っているが,これは PLN の電気料金収入等では賄いきれない発電コスト等の赤字分の 補填をしており,PLN は一括してこの補助金を受領する。これにより燃料費が高騰しても 電気料金が安く抑えられるようにしている。なお,政府補助金は財務省令により計算方法 が決められており,料金区分ごとに電力販売価格と発電コストを比較し,電力販売価格が 小さい場合に,その差額に基づき補助金を算定している。 図表4.32:電気料金に対する政府補助金の推移 (10 億ルピア) 120000 103331 100000 93178 78577 80000 60000 53720 40000 32909 20000 58108 36605 12511 4739 4097 3470 2002 2003 2004 0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 出典:PLN Annual Report 各年版より作成 65 2000 年代初頭までは,電気料金を段階的に値上げしたこともあり,政府補助金は 3~4 兆 ルピアで推移していた。その後,石油価格の上昇や政府の石油製品に対する補助金削減の ため燃料価格が大幅に上昇し,政府補助金もそれに伴って増加した。2009 年には燃料価格 が下がったことや,燃料の転換が進んだことなどから一時減少したものの,その後は再び 増加傾向にあり,2012 年には 103 兆ルピアにまで達している。 図表4.33:PLN の平均販売電力量単価の推移(Rp./kWh) 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 ジャワーバリ 634 661 697 709 732 外島 729 681 706 729 717 全体 655 666 699 715 728 5.27 円 6.42 円 6.50 円 6.22 円 6.50 円 地域 (円貨相当額) ※円貨相当額は年度末(各年 12 月末日)レートにより算出。 出典:PLN Annual Report 各年版 図表4.34:発電コスト(2012 年,Rp/kWh) 水力 火力 ディーゼル ガスタービン 地熱 コンバインド 平均 155.87 810.14 3,168.58 2,362,99 1,121.50 1,001.80 1,217.28 出典:PLN STATISTICS 2012 4.7.3 電気料金をめぐる今後の動き(産業用電気料金値上げ・電気料金自動調整制度) エネルギー鉱物資源省は 2014 年 1 月 21 日,工業用の電気料金を 2014 年 5 月 1 日から値 上げすると発表した。 契約容量が 200kVA 以上(契約区分I-3)で 38.9%の値上げで,2∼ 4ヶ月ごとに 8.9%ずつ引き上げていく。 3 万 kVA 以上(契約区分I-4)では 64.7%の値上 げで,2∼4ヶ月ごとに 13.3%引き上げる予定。 産業用の電気料金の値上げ総額が年間で 8 兆 8500 億ルピアになると予測されている。 また同日 2014 年 1 月 21 日,国会は,電力使用者の 4 つの契約区分において電気料金自 動調整制度の政府提案に同意した。 4 つの契約区分とは以下の通り。 ・契約区分 R-3(6600VA 以上の家庭用) ・契約区分 B-2(6600VA∼200kVA の業務用) ・契約区分 B-3(200kVA 以上の業務用) ・契約区分 P-1(6600VA∼200kVA の政府機関) 。 これら 4 つの契約区分は,2013 年 10 月以来補助金を受けていない。この新制度の下で,4 66 つの契約区分の電気料金は,為替レートや石油価格,インフレ率に連動させる計画である。 料金の計算方法などの詳細は今後詰めることになる。 新制度への移行で1兆 4,200 ルピア の支出を抑えることができると試算されている。 (出典:2014 年 2 月 22 日付じゃかるた新聞,Jakarta Post,及びエネルギー鉱物資源省職 員からの聞取り) 4.8 PLN の経営状況 下記の表の通り,PLN の経営は,2008 年から 2012 年の間に営業収入が約 51%増加して おり,毎年順調に収入は増加している。それにもかかわらず燃料価格の高騰などから,政 府補助金がなければ赤字という状況が続いている。 (単位 10 億 Rp.) 図表4.35:PLN の損益計算書(連結ベース)推移 2008 年 営業収入(*1) 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 85,631 91,502 104,267 114,840 129,325 160,598 135,276 149,108 185,640 203,115 20,743 25,448 25,218 (*3) 7,033 9,904 燃料費 107,783 76,235 84,191 131,158 136,535 その他 32,072 33,593 39,699 47,449 56,676 -74,967 -43,774 -44,841 -70,800 -73,790 営業外収支 -8,581 2,257 -1,861 -16,863 -28,509 政府補助金 78,577 53,720 58,108 93,178 103,331 -12,191 12,203 11,406 5,515 1,032 営業費用 購入電力料 (含むリース料) (*2) ・ 保守費 ・ 人件費 ・ 減価償却費 ・ その他 営業収支 経常収支(税引前) (*1):政府補助金を別計上。財務諸表上の収入は本欄に政府補助金を加えれば一致する。 (*2):外貨ベースの購入電力料をルピアに換算し計上している。 (*3):購入先の資本・資産保有関係により分類を見直し(PLN 主のものは購入電力から除外)。 出典:PLN Annual Report 各年版 67 図表4.36:PLN の総販売電力収入(10 億 Rp.) 年 地域 前年 2008 年 比 前年 2009 年 (%) 比 前年 2010 年 (%) 比 前年 2011 年 (%) 比 前年 2012 年 (%) 比 (%) ジャワーバリ 63,884 9.2 66,960 4.8 76,875 14.8 83,411 8.5 94,098 12.8 外島 20,603 16.1 22,678 10.1 26,099 15.1 29,434 12.8 32,624 10.8 合計 84,487 10.8 89,638 6.1 102,974 14.9 112,845 9.6 126,722 12.3 (円貨相当額) 6,800 8,630 9,580 9,820 11,318 億円 億円 億円 億円 億円 ※ 2010 年 7 月に電力料金の 15%の値上げを実施。 出典:PLN Annual Report 各年版 (参考) 図表4.37:PLN の損益計算書(連結ベース)推移(1998∼2007) 出典:日系電力事業関連会社より情報提供 1997 年に起きたアジア通貨危機の影響で支払利息が急激に拡大したことなどから,PLN は 2000 年には約 25 兆ルピアの損失を計上した。2000 年以降に実施された電気料金の値上げ や政府補助金収入,PPA の再交渉合意に伴う債務の減少(特別損益計上)などにより,2001 年 度の経常収支は黒字化された。しかしその後,2002 年度には資産再評価などにより減価償却 費が増加し,再び赤字となっている。 68 4.9 地方電化 インドネシア政府は経済成長のスピードを維持する安定的な電力供給体制を構築すると ともに,地方電化にも注力している。これまでは国土を構成する5島(スマトラ島,ジャ ワ島,カリマンタン島,スラウェシ島,パプアニューギニア島)の中でもジャワ島を中心 に開発が進展してきた。この結果,人口一極集中によるジャカルタ及び周辺地域の環境悪 化を引き起こしているが,豊かな国土開発のためには,国家一体となった均衡かつ持続可 能な成長が必須である。図表4.38は、2014 年 1 月現在の全国 33 州の電化率の状況であ る。エネルギー鉱物資源省によると現在の電化率は 80.51%となっているが,電化率計算に は推測値も含まれており,少し割り引いて考えたほうが良い。一方で,パプアや NTT(東ヌ サトゥンガラ)は未だ低い値となっている。こういった地域では電力消費地が小さく点在 しており,電力の大消費地へつながる送電線からも離れていることが多く,開発が後回し にされてきた。同じ東南アジアでも,ベトナム,タイ,フィリピンよりも電化率が低くな っているのは,こうしたインドネシアの広大な面積,莫大な人口という特徴を反映してい るためである。 図表4.38:地域別の電化率 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料(2014 年 1 月) 69 図表4.39:アジア諸国の電化率 出典:Source: ASEAN Center for Energy (2012) 2009 年の新電力法では地方電化について,中央政府及び地方政府が地方電化の責務を負 うことになり,電化事業は公営企業・民間企業・協同組合などに解放されている。公営企 業,民間企業,協同組合などが実施できないときは,政府は PLN に実施を委任することが 義務付けられるとしている。しかし PLN に対して電力の供給義務があるとまでは明記され ていない。 また,以下は 2031 年までの政府の電化計画を示している。政府は全国の未開発地域,僻 地等での地方電化率を向上し,社会開発を促進する構えである。国家電化率目標は,2014 年までに 80%,2020 年までに 99%としている。 図表4.40:電化率の目標 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 2 月 70 インドネシアは国土が広く,全地域を送電線でカバーするのは困難である。今後の電化 率向上のためには送電線の延長とともに,オフグリッド・マイクログリッドでの開発が必 要と考えられる。そのような小規模発電という点で,電化率向上に対する再生可能エネル ギーへの期待は大きい。 5.再生可能エネルギー 再生可能エネルギーとは一般に,資源が枯渇せず繰り返し使え,発電時や熱利用時に地 球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しないエネルギーのことである(日本で は「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として,太陽 光,風力,水力,地熱,太陽熱,大気中の熱その他の自然界に存する熱,バイオマスが規 定されている)。近年,新興国の経済発展などに伴い,世界規模でエネルギー需要が増大し ており,また,化石燃料の市場価格が乱高下するなど,エネルギー市場が不安定化してい る。さらに,化石燃料の利用により発生する温室効果ガスが重大な課題として指摘されて いる。このような情勢の中,エネルギーを安定的かつ適切に供給するためには,資源の枯 渇のおそれが少なく,環境への負荷が少ない太陽光やバイオマスといった再生可能エネル ギーの導入を一層進めることが必要である。また,再生可能エネルギーの導入拡大は,環 境関連産業の育成や雇用の創出といった経済対策としての効果も期待されている。 図表5.1は世界の再生可能エネルギー容量と予測である。近年世界各国が再生可能エ ネルギーに力を入れており,IEA は 2018 年までに再生可能エネルギー比率が 25%になると 予測している。 図表5.1:世界の再生可能エネルギー容量と予測(GW) 出典:IEA,MEDIUM-TERM RENEWABLE ENERGY MARKET REPORT 2013 国土が広大で,全地域を送電線でカバーするのは困難であるインドネシアにとって,地 71 方の電化率向上のためには,小規模分散型電源として再生可能エネルギーが大きく期待さ れている。エネルギーの安定,国家の持続的成長のためには再生可能エネルギーが不可欠 であるということは国家の共通認識であり,前述の通り 2014 年の新国家エネルギー政策 (KEN)では,エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を現在の約 6%から,2025 年に 23%以上,2050 年に 31%以上にすることとしている。 エネルギー法(2007)によれば,インドネシアにおける再生可能エネルギーの定義は, 地熱,水力,バイオエネルギー,太陽光,風力,海洋エネルギーといった,継続的に算出 されるエネルギーである。一方,新エネルギーは,石炭液化,炭層メタン,石炭ガス化, 原子力,水素,その他メタンといった,新技術によって産出されるエネルギーである。エ ネルギー鉱物資源省によるとインドネシアの再生可能エネルギーの優先順位は,①地熱, ②水力,③バイオ,④太陽光,と考えているとのことである。 政府の再生可能エネルギー導入目標は先述しているが,PLN は小規模再生可能エネルギー (10MW 以下)開発計画として,以下のようなロードマップを作成している。 図表5.2:再生可能エネルギーの開発ロードマップ① (出典:PLN 社長講演資料 2013 年 9 月) 図表5.3:再生可能エネルギーの開発ロードマップ② (出典:PLN 社長講演資料 2013 年 9 月) 72 5.1 地熱 国家エネルギー政策に関する大統領令(2006)では,2025 年の地熱エネルギーの目標 を 9500MW,全エネルギーの 5%としている。 (エネルギー鉱物資源省ビジョン 25/25(2010) では,12,000MW,全体の 5.7%としている。)インドネシアは国中に 28GW 以上 299 箇所の, 豊富な地熱エネルギーのポテンシャルを持っているとされている(図表5.3)が,現在 はまだその 5%以下しか利用されておらず,地熱発電の総容量は 1341MW となっている。 第 2 次クラッシュプログラムの中では, その 4965MW が地熱発電分となる計画であり, その多くを IPP で計画している。 図表5.4:地熱発電の開発可能量(2012 年 12 月時点) ポテンシャル(MWe) No 島 資源 地点数 埋蔵量 理論的 仮説的 資源 資源 予想 推定 合計 開発済容量 確認 埋蔵量 埋蔵量 埋蔵量 1 スマトラ 90 3089 2427 6867 15 380 12778 122 2 ジャワ 71 1710 1826 3708 658 1815 9717 1134 3 バリ ヌサトゥンガラ 28 360 417 1013 0 15 1805 5 4 カリマンタン 12 145 0 0 0 0 145 5 スラウェシ 65 1323 119 1374 150 78 3044 6 マルク 30 545 97 429 0 0 1071 7 パプア 3 75 0 0 0 0 75 299 7247 4886 13391 823 2288 28635 Total 12,133 80 1,341 16,502 28,635 (注)ポテンシャルの定義 ○資源 ・理論値:文献調査,予備試験に基づいた,理論的段階の推定値。 ・仮説:予備試験の結果や更なる調査結果に基づいた推定値。 ○埋蔵量 ・予想開発容量:詳細な調査の結果に基づいた推定値。 ・推定開発容量:掘削,実地踏査(試掘井),F/S の事前調査等の結果に基づいた推 定値。 ・確認開発可能容量:試掘井,探掘井,開発井,F/S によって試験された,詳細な調 査の結果に基づいた推定値。 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 10 月 73 図表5.5:開発済み地熱発電所一覧(2012 年) No 1 2 5 6 7 許認可保有者 Sibayak – Sinabung, PT. 北スマトラ – Parabakti, 西ジャワ 西ジャワ 西ジャワ PT. Pertamina Pertamina KOB - Chevron Geothermal Geothermal Energy (PGE) Salak, Ltd (CGS) Pertamina PT. Pertamina KOB - Star Energy Geothermal Wayang Windu, Ltd (SEGWWL) PT. 西ジャワ PT. Pertamina Dieng, 中央ジャワ Lahendong – Tompaso, 北スラウェシ Ulubelu, ランプン Ulumbu, 東ヌサトゥンガラ PT. Pertamina Pertamina KOB - Chevron Geothermal PT. Geo Dipa Energi Geothermal Energy (PGE) (GDE) PT. Pertamina PT. Pertamina Geothermal Energy (PGE) Geothermal Energy (PGE) PT. Pertamina PT. Pertamina Geothermal Energy (PGE) Geothermal Energy (PGE) PT. PLN Geothermal 合計 PT. PLN Geothermal 容量(MW) Sibayak 12 Salak 377 Windu Geothermal Energy (PGE) Indonesia, Ltd (CGI) Tinggi 発電所 Wayang Geothermal Energy (PGE) Geothermal Energy (PGE) Kamojang – Darajat, 9 Pertamina Geothermal Energy (PGE) Kamojang – Darajat, 8 PT. PT. Pangalengan, Dataran 開発者 Geothermal Energy (PGE) Geothermal Energy (PGE) Cibeureum 3 4 地熱開発地域 227 Kamojang 200 Darajat 270 Dieng 60 Lahendon g 80 Ulubelu 110 Ulumbu 5 1.341 出典:エネルギー鉱物資源省資料 以下は地熱開発のロードマップである。国家エネルギー政策に関する大統領令(2006)に 基づく開発ロードマップは図表5.6のようになるが,エネルギー鉱物資源省は図表5. 7のようなロードマップを作成している。エネルギー鉱物資源省職員によれば,国家エネ ルギー政策に関する大統領令(2006)に基づく開発ロードマップは技術的にまず不可能との ことである。 74 図表5.6:2006 年の大統領令による開発計画 図表5.7:エネルギー鉱物資源省による開発計画 開発計画 追加容量 (MW) 合計容量 (MW) 発 電 容 量 開発(MW) (MW) 2012 2013 2014 2015 2016 37 115 3 1.226 1,341 1,344 1,569 2,004 3,019 3,319 3,744 4,279 5,389 5,636 5,766 5,941 5,981 6,141 225 435 2017 2018 2019 2020 1,015 300 425 535 2021 2022 2023 2024 1,110 247 130 175 40 5.2水力 図表5.8はインドネシアの水力発電の地域別ポテンシャルを表している。1983 年に 実施された調査では,ポテンシャルは 75GW とされたが,1999 年に実施された第 2 次包蔵 水力調査において第 3 次スクリーニングをパスしたのは約 21.5GW,そして 2011 年のイ ンドネシア国水力開発マスタープラン調査(JICA)では約 13.9GW とされている(図表5. 7)。2011 年のこの調査によると,地域別ではジャワ地域が 4,594.5MW と最も大きく,次 いでスマトラ島,スラウェシ島,カリマンタン島となっている。 また PLN によれば,小水力(容量 10MW 以下)発電のポテンシャルは 1000MW∼2000MW と見積もられており(PLN 講演資料 2013 年 9 月 4 日),主にスマトラ島,ジャワ島,スラ ウェシ島に位置しているとしている。 75 2025 160 図表5.8:水力発電のポテンシャル 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 図表5.9は現在運転中の水力発電の状況を表している。水力が約 3600MW,小水力が約 180MW となっている。 図表5.9:水力発電所の現状 地域 PLN 発電所 IPP 容量 (kW) 西インドネシア 10 855,060 東インドネシア 7 ジャワ – バリ 総計 発電所 1 容量 合計 (kW) 180.000 合計容量 (kW) 11 1,035,060 217,380 7 217,380 19 2,335,220 19 2,335,220 36 3,407,660 1 180.000 37 3,587,660 図表5.10:小水力発電所の現状 地域 PLN 発電所 IPP 容量 (kW) 発電所 合計 容量(kW) 合計容量(kW) 西インドネシア 34 15,582 7 21,095 41 36,677 東インドネシア 37 43,430 8 26,340 45 69,770 ジャワ – バリ 36 72,768 8 2,055 44 74,823 総計 107 131,780 23 49,490 130 181,270 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 76 PLN によれば,合計 1,202MW の容量の,IPP による小水力開発のプロポーザルを受け取っ ているという。2013 年 8 月現在の開発状況は運転段階が 68MW,建設中が 172MW,ファイナ ンスの段階が 286MW,PPA 準備の段階が 268MW,提案段階が 408MW としている(出典:PLN 講演資料 2013 年 9 月 4 日)。 また,以下が 2012∼2025 年までのエネルギー鉱物資源省による開発計画である。2018 年には水力発電の容量を合計約 10,000MW とし,2025 年には約 16,800MW にすることを目 指している。 図表5.11:水力発電の開発計画 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 なお,ジャワ-バリ系統のピーク需要を満たすため,合計 2,440MW の揚水発電がこの先 10 年の間に計画されている。計画は以下。 ・UPPER CISOKAN 揚水 : 1,040 MW (建設前段階, 運転開始予定:2016 年) ・MATENGGENG 揚水 : 900 MW (設計段階, 運転開始予定:2019/2020 年) ・GRINDULU 揚水 : 500 MW (運転開始予定 : 2020 年) また,スマトラで 400MW の揚水発電,東ジャワで 800MW の海水揚水発電が将来の研究 対象として,認識されている。 5.3 バイオエネルギー エネルギー鉱物資源省によるとバイオエネルギー発電の総ポテンシャルは 49,810MW,そ のうち都市固形廃棄物(MSW)が 1,870 MW,パーム油廃液(POME)が 500MW,バガス(サト ウキビ・テンサイの絞りかす)が 160MW としている(エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 3 月)。 77 図表5.12:地域別都市固形廃棄物のポテンシャルと発電容量 MSW のポテンシャル(t/day) 廃棄物発電のポテンシャル 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 インドネシアは世界最大のパーム油生産国であり,世界の総生産量の約半数を占めてい る。パームオイルの実の残滓である EFB(Empty Fruit Bunch:パームの空果房)は塩素の含 有量が少なく,4,400kcal/kg-dry の木質バイオマスであり,有望なバイオ燃料として注目さ れている。 78 図表5.13:インドネシアのパーム油工場 ‘注)POMs: Palm Oil Mills(パーム油工場) FFB: Fresh Fruit Bunch(パーム椰子果実) 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 5 月 2013 年 2 月までに送電線に接続されたバイオマス発電所の容量は 75.5MW にとどまる。パ ーム油工場やごみ最終処分場では通常余り電力を必要としないため,余剰電力については PLN に電力を買い上げてもらうか,隣接地に電力を供給できないと事業性が悪い。しかしパ ーム油工場やごみ最終処分場などのサイトは電力需要地から離れたオフグリッドの地域に ある場合が多く,送電線の接続が困難であるなどの課題がある。 79 図表5.14:2013 年 2 月までに送電線に接続されたバイオマス発電所一覧 営 業 運 No 会社名 1 PT Riau Prima 転開始 2001 発電形態 場所 余剰電力 Riau PLN の地域 バイオマスの種類 契約容量 (MW) Riau パーム 5 Bangka パーム 5 Energy 2 PT Listrindo 2006 IPP Bangka Kencana 3 PT Growth 2006 余剰電力 北スマトラ Sumut パーム 6 PT Indah Kiat 2006 余剰電力 Riau Riau パーム 2 Babel パーム 7 パーム 9 Sumatra 4 Pulp & Paper 7 PT Belitung 2010 Growth 2010 余剰電力 北スマトラ Sumut Pelita 2010 余剰電力 Riau Riau パーム 5 Permata Hijau 2010 余剰電力 Riau Riau パーム 2 Navigat 2011 余剰電力 Bali Bali MSW 2 Navigat 2011 IPP Bekasi Jabar MSW 6 13 PT Growth Asia 2011 余剰電力 北スマトラ Sumut パーム 10 14 PT Growth Asia 2012 余剰電力 北スマトラ Sumut パーム 10 15 PT 2012 MSW 6.5 IPP Belitung Energy 8 PT Sumatra 9 PT Agung 10 Sawit 11 PT Organic 12 PT Organic Navigat IPP Bekasi Jabar Organic 総容量(オングリッド) 75.5 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 5 月 また,エネルギー鉱物資源省は 2013 年には 58.2MW,2014 年に 90MW の容量を新規に開発 予定である。 (エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 5 月) 図表5.15は 2015 年から 2025 年のバイオエネルギーの開発計画である。 80 図表5.15:2015 年から 2025 年のバイオエネルギーの開発計画 種類 単位 2015 2020 2025 バイオ燃料 百万 kL 2.69 5.94 13.67 バイオディーゼル 百万 kL 2.35 4.73 9.52 バイオエタノール 百万 kL 0.20 0.80 3.45 バイオオイル 百万 kL 0.13 0.27 0.54 バイオ Avtur* 百万 kL 0 0.14 0.16 バイオガス 百万 m3 7.762 28.821 107.012 バイオマス Mwe 875 2,670 8,149 *)Avtur:航空燃料。2016 年濃度2%で開始。 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 8 月 5.4 太陽光 インドネシアのような群島国では,太陽光発電はオフグリッド地域における地方電化 に有効な手段である。エネルギー鉱物資源省によると,インドネシアの太陽エネルギーの ポテンシャルは,インドネシア西部で 4.5kWh/m2/day,インドネシア東部で 5.1kWh/m2/day, 全体でインドネシアの太陽光発電のポテンシャルは,4.80 kWh/m2/day とされている。また, 以下は太陽光発電の開発計画であるが,現在の発電容量は 13.5MW とされている(エネルギ ー鉱物資源省資料 2013 年 12 月)ことから,目標達成には補助金の導入など様々な対策が 必要になると考えられる。 図表5.16:太陽光発電の開発計画 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 12 月 81 5.5 海洋エネルギー インドネシアは,13,466 の島々(インドネシア地理空間情報局 2013 年 10 月 18 日発表) が,5,800km2 の海域に広がる世界 1 位の島嶼国であり,同時に豊富な海洋エネルギーの ポテンシャルを有している。2013 年インドネシアで開催された APEC の再生エネルギー 関連会議(APCRES 2013)では,地熱に並び,最も発表時間・件数が多かったエネルギー であり,今後海洋エネルギーの開発に力を入れようとするインドネシアの意思が汲み取 れる。 なお,海洋エネルギーには様々な種類のエネルギーが含まれるが,その中でも温度差・ 海流・潮力・波力エネルギーのインドネシアにおけるポテンシャルは以下のようになっ ている。 図表5.17:海洋エネルギーのポテンシャル 種類 理論的資源(MW) 技術的資源(MW) 実質的資源(MW) 海洋温度差 57,000 52,000 43,000 潮力 160,000 22,500 4,800 波力 510,000 2,000 1,200 合計 727,000 76,500 49,000 (出典:DEN,Mukhtasor 氏講演資料 2013 年 12 月) インドネシア海洋エネルギー協会の調査により,多くの場所で海洋エネルギーのポテ ンシャルが調査されている。 (参考)インドネシア海洋エネルギー協会(Indonesian Ocean Energy Association; INOCEAN)(2011 年設立) ・目標:インドネシアの海洋エネルギーの利用拡大を促進する。 ・目的:ステークホルダーを集め,海洋エネルギーにおけるメンバー間の協力を容易 にする。 (出典:インドネシア海洋エネルギー協会 http://www.aseli.co/) 82 潮流 図表5.18:潮流エネルギーの見込まれる地点 出典:DEN,Mukhtasor 氏講演資料 2012 年 11 月 図表5.19:インドネシアの海峡の潮流速度 No 海峡 場所 潮流速度(秒速) 1 Lombok 海峡 Bali・Lombok 島間 0.2 ∼ 2.3 2 Alas 海峡 Lombok・Sumbawa 島間 0.2 ∼ 2.4 3 Sape 海峡 Sumbawa・Komodo 島間 0.2 ∼ 3.2 4 Linta 海峡 Komodo・Rinja 島間 0.3 ∼ 3.2 5 Flores 海峡 Flores・Adonara 島間 0.3 ∼ 3.8 6 Boleng 海峡 Adonara・Lembata 島間 0.3 ∼ 3.6 7 Lamakera 海峡 Solor・Lembata 島間 0.3 ∼ 3.2 8 Alor 海峡 Lembata・Pantar 島間 0.3 ∼ 3.2 9 Pantar 海峡 Pantar・Alor 島間 0.3 ∼ 3.2 出典:PLN 講演資料 2012 年 10 月 83 波力 図表5.20:波力エネルギーの見込まれる地点 出典:DEN,Mukhtasor 氏講演資料 2012 年 11 月 海洋温度差 図表5.21:インドネシアの海水の表面温度 出典:ダルマプルサダ大学 Donny 教授講演資料 2012 年 5 月 84 図表5.22:インドネシア周辺の海の深さ 部分が水深 1000m 以上 出典:ダルマプルサダ大学 Donny 教授講演資料 2012 年 5 月 ※海洋温度差発電は表層の温かい海水と深海の冷たい海水を利用する発電技術であり, 経済性を成立さえるためには平均的に 20℃程度の温度差が必要とされている。表層と深層 1000m との海水温度差は赤道付近で大きく,インドネシアは海洋温度差発電の適地が多い。 85 図表5.23:地域ごとの海の深さ No 島 地域 深さ (km) 1 Sabang Aceh 3 ∼ 5 2 Simeuleu North Sumatra 5 ∼ 15 3 Nias North Sumatra 5 ∼ 15 4 Siberut West Sumatra 5 ∼ 15 5 Pagai West Sumatra 5 ∼ 15 6 Enggano Bengkulu 5 ∼ 15 7 Bali Bali 3 ∼ 5 8 Lombok West Nusa Tenggara 5 ∼ 10 9 Sumbawa West Nusa Tenggara 5 ∼ 10 10 Flores Central Nusa Tenggara 5 ∼ 10 11 Sumba East Nusa Tenggara 5 ∼ 10 12 West Timor East Nusa Tenggara 5 ∼ 10 13 Ambon Center Maluku 3 ∼ 10 14 Seram Center Maluku 5 ∼ 10 15 Buru Center Maluku 5 ∼ 10 16 Morotai North Maluku 3 ∼ 10 17 Ternate North Maluku 3 ∼ 10 18 Miangas North Sulawesi 1 ∼ 5 19 Sangir North Sulawesi 3 ∼ 5 20 Sapiori Papua 5 ∼ 10 出典:ダルマプルサダ大学 Donny 教授講演資料 2012 年 5 月 海洋エネルギーはまだ開発段階で,開発コストは非常に高い。エネルギー鉱物資源 省は以下のような国手動の開発計画を示している。 図表5.24:海洋エネルギー開発計画 No 地域 都市 開発者 開発容量(MW) 2013 2014 2015 1 東ヌサトゥンガラ Alor 国家予算 -- 0.04 0.54 2 バリ Klungkung 国家予算 -- 0.52 1.02 (Nusa Penida) 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 86 5.6 風力 インドネシア赤道に位置しており,天然の風力エネルギーのポテンシャルは比較的小さ い。しかし,隣接する 2 つの島,あるいは山の斜面など,場所によっては地理的に風が吹 く地域が存在する。以下にインドネシアの風況図と風力調査の結果を示す。 図表5.25:インドネシアの風況図 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 12 月 図表5.26:インドネシアの風力調査結果 出典:BPPT 講演資料 2013 年 10 月 インドネシアの風力発電のポテンシャルは 9.29GW とされているが,現在その発電容量は 1.6MW にとどまっている。現在まで,最も大きな風力発電設備はバリの Nusa Penida に位置 87 する,735kW のものであり,続いて北スラウェシの Sangihe,南スラウェシの Selayar で, 合計 540kW となっている。(BPPT 講演資料 2013 年 10 月) 国家エネルギー管理ブループリント 2005-2025 では,風力エネルギーの開発計画を 2025 年までに 970MW としている。しかし「RUPTL 2012-2021」によれば,PLN における 2021 年ま での開発計画は 230MW にとどまっていることから,今後さらに送電線の整備,IPP 導入促進 のための政策が必要になると考えられる。 5.7 原子力 以下に原子力開発の主要な出来事を年代順に示す。 1954 年 放射能調査委員会の設置 1957 年 IAEA(国際原子力委員会)に加盟 1958年 原子力審議会及び原子力研究所の発足 1960 年 アメリカと原子力協力協定調印 1961 年 ソ連と原子力協力協定調印 1964 年 バンドンに建設していた研究炉の臨海を達成 1965年 原子力研究所から原子力庁(BATAN)へ組織替え 1971 年 IAEA の援助の下で原子力発電導入調査 1977 年 イタリアと原発建設に関する事前調査(∼80 年) 1986 年 ソ連でチェルノブイリ事故 1991 年 ニュージェック社が原発建設の事前評価作業(∼96 年) 1997年 原発建設計画の無期限延期決定 1998年 原子力規制庁(BAPETEN)設立 2001年 原子力工科大学設立(ジョグジャカルタ) 2002年 IAEA の協力を得て「発電用エネルギー源に関する総合評価」を実施 2005 年 RUKN 発表 2006年 国家エネルギー政策に関する大統領令発表 2009 年 IAEA による原発導入準備状況の評価 2011年 日本で福島第一原発事故。 訪日したユドヨノ大統領が原発より自然エネルギーを優先すると表明。 BATAN 長官が原発建設準備継続を表明 2012 年 バンカ島(位置は図表5.27参照)で早ければ 2016 年にも原発着工可能との 地元報道 出典:日本原子力産業協会 大和総研 http://www.jaif.or.jp/ja/asia/indonesia_data.pdf http://www.dir.co.jp/consulting/asian_insight/120720.html じゃかるた新聞,日本原子力産業協会 原子力年鑑 2014 88 インドネシアの原子力利用計画は 1950 年代の原水爆実験による影響調査を目的とした放 射能調査委員会の設置に始まり, 1964 年には国内初の研究炉の臨界を達成,1965 年には BATAN が発足した。1989 年 8 月,スハルト大統領が BATAN 長官に 2000 年以降の原子力発 電の導入に向けた準備を指示したが,1997 年にアジア通貨危機が発生したため,原子力発 電所の建設計画は一時棚上げされた。しかし,1997 年 4 月の新原子力法の成立により,原 子力の推進と規制が分離独立し法整備が進められ,1998 年 5 月には BAPETEN が発足した。 その後 2002 年,石油や天然ガスは戦略物質として温存しておくとの立場から,BATAN やエ ネルギー関連機関等が IAEA の協力を得て「発電用エネルギー源に関する総合評価」 を行い, 環境保護と急増する電力需要に対処するためには,2015 年ごろには原子力発電導入が必要 との結論を得た。政府は 2004 年 2 月に策定した国家エネルギー政策(KEN)で,原子力を 新エネルギーの一つとすると定めた。2007 年 2 月には長期国家開発計画法 2005∼2025 (RPJPN)の中で,2015∼2019 年の間に原子力発電の利用を開始,2025 年までに 420 万 kW の原子力発電所を導入することを決定した。BATAN は 2008 年にも初号機(容量 100 万 kW, PWR 型)となるムリア 1 号機の国際入札を実施し,2010 年に着工,2016 年の営業運転開 始を目指していたが,ムリア半島は火山にも近く,地震も多いことから,立地サイトとし て新たにスマトラ島南沖バンカ島が浮上。地方政府による誘致が盛んで地震や噴火の恐れ がほとんどないバンカ島での立地を推進することとなった。しかし,インドネシアは 2011 年 3 月に発生した東京電力福島第一発電所の事故に強い衝撃を受け(バンカ・ブリトゥン 州政府も事故後原子力導入に慎重な態度に転じた) ,今後の各国の動向を見ながら慎重に原 子力の導入を進める態度に転じている。 最近の動きとして,PLN,BATAN では中小型炉(SMR)を導入の 1 号機として検討している。 (2013 年 9 月 30 日∼10 月 2 日に行われた APEC の再生可能エネルギー関連会議(APCRES) では SMR に関する発表が相次いだ。)社会的合意形成のためには国内で原子力発電を実証す ることがまず必要であり,そのためには必ずしも世界で主流の 1,000MW 級の発電炉である 必要はないという考えである。韓国の SMERT 炉が念頭にある。 なお,原子力発電計画は現在,2010 年発足したエネルギー鉱物資源省の新・再生可能エ ネルギー・省エネルギー総局が担当することとなっており,BATAN の原子力発電関連組織は この総局に移管される予定である。 89 図表5.27:原子力発電所の立地サイト調査状況 バンカ:FS(2011~2013) ムリア:1991~1996 年審査。現 在気象,微小地震のモニタリング 中。 バンテン:予備調査 中 出典:エネルギー鉱物資源省資料 2013 年 11 月 (参考)日本との協力 2006 年∼2008 年,経済産業省はインドネシアとベトナムの原子力発電導入支援事業を行 い,日本貿易振興機構(JETRO)がこの事業を受託,人材育成,サイトの地質学的評価等に 関する支援活動を行った。 2009 年度から,経済産業省は対象を世界の新規導入国に広げて原子力発電導入の基盤整 備支援事業を開始し,原子力産業会議原子力国際協力センターがこの事業を受託している。 2006 年 11 月,ユドヨノ大統領が来日した際の共同声明の中で,安倍総理(当時)は専門 家派遣を通じて,原子力発電導入のための制度整備,人材育成等に協力する意図を表明し た。 2007 年,経済産業省とインドネシア・エネルギー鉱物資源省は,インドネシアの原子力 発電導入に関する協力に関する覚書を締結した。 (参考)日本の原子力に関する行政と電力会社 東日本大震災以前は原子力に関する規制について,原子力発電所とこれにかかわる一 連の核燃料サイクル施設については経済産業省が安全規制に責任を持つこととなってお り,経済産業省に「原子力安全・保安院」が設置されていた。また,試験研究用の原子 炉・研究段階にある原子炉(発電用は除く)は文部科学省が責任を持つこととなってい た。そして内閣府に設置された原子力安全委員会が原子力安全保安院や文部科学省など による規制のダブルチェックを行うことになっていた。 90 行政と電力会社(3.11以前) 図表5.28: 日本における行政と電力会社(東日本大震災以前) 原子力安全委員会が原子力安全保安院や文部科学省などによる規制のダブルチェック を行う。 内閣府 資源エネルギー庁 経済産業省 原子力委員会 ダブル 原子力安全 チェック 保安院 規制 許認可 原子力 関連の 規制 原子力 安全委員会 原子力 関連の 規制 文部科学省 ダブル チェック 原子力 関連の 規制 電力会社(民間) そして以下の図表5・29が今の政府と電力会社の関係である。東日本大震災後,原 子力発電を推進する「資源エネルギー庁」と規制する「原子力安全・保安院」が同じ経 済産業省の中にあるため,これまで規制機関がその機能役割を十分に果たしていなかっ たことが福島第一原子力発電所事故の原因の一つと考えられた。この反省に基づき,環 境省に新たに外局として原子力規制に関わる部署,原子力規制委員会を設け、原子力安 全・保安院と内閣府原子力安全委員会,原子炉施設等の規制・監視に関わる部署が一本 化された。これに伴い,原子力安全・保安院および原子力安全委員会は廃止された。(経 産省との電力供給に関する規制関係は変わっていない。) 91 図表5.29:日本の新しい規制体制 新しい規制体制 原子力安全規制に係る事務は、独立性の高い原子力規制委員会が一元的に担うこと となった。 環境省 経済産業省 資源エネルギー庁 原子力規制委員会 原子力 関連の 規制 規制 許認可 電力会社 5.8 FIT(Feed in Tariff; 固定価格買取制度) FIT は、今後の再生可能エネルギー政策に大きな影響を与えるもので,インドネシア政府 はマーケット・インセンティブを付与するエネルギーミックス政策の強力な支援ツールと して,矢継ぎ早に新しい買取価格を公表している。これまでに,地熱,バイオ,水力,太 陽光が既に公表されており,今後はバイオ,水力の改定案が公表される予定となっている。 図表5.30:地熱(2012 年エネルギー鉱物資源省令第 22 号) 価格 (cent US$/kWh) NO 地域 高圧 中圧 1 スマトラ 10 11,5 2 ジャワ, マドぅーラ,バリ 11 12,5 3 南スラウェシ, 西スラウェシ,南東スラウ 12 13,5 ェシ 4 北スラウェシ,中央スラウェシ,ゴロンタロ 13 14,5 5 西ヌサトゥンガラ,東ヌサトゥンガラ 15 16,5 6 マルク,パプア 17 18,5 92 図表5.31:小水力・マイクロ水力(2012 年エネルギー鉱物資源省令第 4 号) NO 地域 1 価格(中圧) 価格(低圧) インセンティブフ (Rp/kWh) (Rp/kWh) ァクター(F) ジャワ,バリ 656 x F 1,004 x F 1 2 スマトラ,スラウェシ 787 x F 1,205 x F 1.2 3 カリマンタン,西・東ヌサトゥン 853 x F 1,305 x F 1.3 984 x F 1,506 x F 1.5 ガラ 4 マルク・パプア 地熱,水力の買取価格について,ともに電圧の低い方の買取価格が高く設定されている が,これは国内事業者の開発を優先した結果である。電圧の高い発電所を作ることができ るのは,資金・技術力をもつ海外事業者ということを意味する。 図表5.32:バイオ(2012 年エネルギー鉱物資源省令第 4 号,2013 年エネルギー鉱物 資源省令第 19 号) No. エネルギー種類 容量 価格 備考 中圧 1. バイオマス 10 MW まで Rp. 975,- / kWh X F 2. バイオガス 10 MW まで Rp. 975,- / kWh X F 3. 都市廃棄物 10 MW まで Rp. 1.450,- / kWh 廃棄物ゼロ*) 4. 都市廃棄物 10 MW まで Rp. 1.250,- / kWh 衛生的埋め立て*) 1 バイオマス 10 MW まで Rp. 1.325,- / kWh X F 2 バイオガス 10 MW まで Rp. 1.325,- / kWh X F 3 都市廃棄物 10 MW まで Rp. 1.798,- / kWh 廃棄物ゼロ *) 4 都市廃棄物 10 MW まで Rp. 1.598,- / kWh 衛生的埋め立て *) 非都市廃棄物 低圧 非都市廃棄物 ジャワ,バリ,スマトラ地域:F = 1 カリマンタン,スラウェシ,西・東ヌサトゥンガラ地域:F = 1,2 マルク,パプア地域:F = 1,3 注 *) 廃棄物管理に関する 2008年の法令第18号に基づく 93 図表5.33:太陽光(2013 年エネルギー鉱物資源省令第 17 号) 番号 種類 価格 1 通常 25 cent US$/kWh 2 国内のコンポーネントのレベルが最低でも40%の 30 cent US$/kWh 太陽光モジュールを使用している場合 出典:インドネシアの電力エネルギー事情 http://energy-indonesia.com/03dge/0130803taiyo.pdf より作成 (参考)太陽光 FIT 価格の特徴 太陽光の FIT はその他の FIT と少し性質が異なっている。 ・ FIT 価格は買取の上限価格である。 ・ 入札は,エネルギー鉱物資源省により実施され,入札委員会は同省とPLNメンバーで 構成される。Administration,技術評価等クリアした企業が価格選考まで進む事ができ, 最も低い売電価格で応札した事業者の価格で買取が行われる。 ・ 応札後は 15 日間以内に総投資コストの 20%をデポジットとして政府に預ける必要が ある。(着工となると返金される。) 6.省エネルギー 図表6.1は GDP 当たりの一次エネルギー供給量を示している。見て分かるように,イ ンドネシアの値は日本の約 5 倍となっており,インドネシアのエネルギー効率の低さを表 している。政府は、2009 年の省エネルギー政令(3.5.3節参照)に基づき省エネルギ ー政策を推進しているが、社会の関心は今一歩で不透明感がある。 図表6.1:GDP 当たりの一次エネルギー 出典:エネルギー白書2013年版(経済産業省) 94 以下はインドネシアの省エネルギーのポテンシャルを示しており,各分野で多くの効率 化の余地があることを示している。 図表6.2:各部門の省エネルギーのポテンシャル 部門 省エネのポテンシャル 各部門の省エネ目標 (2025) 工業 10 – 30% 17% 商業 10 – 30% 15% 運輸 15 – 35% 20% 家庭 15 – 30% 15% その他 25% - 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 9 月 KEN(2004)の中では省エネルギー政策についても規定されている。具体案については 2004 年の「再生可能エネルギー開発と省エネルギーに関する政策」(2004 年第 2 号)により,エ ネルギー利用の効率向上のための方針及び施策が規定された。2006 年の国家エネルギー政 策に関する大統領令,2010 年のエネルギー鉱物資源省ビジョン 25/25 では 2025 年までの 目標を以下の図のように規定している。 図表6.3:2025 年の省エネルギーの目標値 現状維持で成 長した場合 2025年目標: 国家エネルギー 政策に関する大 エネルギー鉱物 統領令(2006) 資源省ビジョン 25/25 (2010) - エネルギー弾性値 < 1 - エネルギー強度年1%減 出典:エネルギー鉱物資源省講演資料 2013 年 9 月 95 2009 年の省エネルギーに関する政令(3.5.3節参照)以外にも,2005 年の省エネル ギー実施方法に関するエネルギー鉱物資源省令では,①エアコンの設定温度を 25℃以上と する②証明照度をさげる③エレベーター,エスカレーターなどの運転時間や運転方法を制 限する④大排気量自動車は補助金が適用されないガソリンを使用する,という具体的方法, 指針を定めている(奨励であり,法的拘束力はない)。 2008 年のエネルギーと水に関する大統領令では,政府関係機関に対し,それぞれの権限 に基づいた省エネ運動の指示を行った。また,この大統領令では経済担当調整大臣を会長 とする「エネルギーと水の節約国家チーム」を結成することとし,各所における省エネル ギー活動の実施を国家レベルで管理・監督することを定めた。 2011 年には省エネ・節水の大統領指示により、政府機関を中心に省エネ率(20%)、燃料 節約(10%)、節水(10%)の目標を定めた。 続いて 2012 年 6 月からエネルギー鉱物資源省は、3M(Mematican 消灯、Mencabut 節電、 Menyesuaikan 適温)キャンペーン活動を開始した。 ←省エネキャンペーンポスター。左上はマスコットキ ャラクターの「バンコンセル」 。 出典:最近の電力事情 また、2013 年 8 月にはエネルギー鉱物資源省・JICA により省エネ啓発ビデオ「Mari Hemat Energi」(www.youtube.com/watch?v=lHoahes5uDM)が作成され、2013 年 11 月∼2014 年 2 月にはその第 2 弾としてジャカルタを中心とした全高校を対象に、省エネルギーをテ ーマとしたショートフィルム・フォトコンペティション(イスラム国際高校(IIHS),エネ ルギー鉱物資源省,JICA 主催。2014 年 2 月表彰式。 http://www.energyefficiencyindonesia.info/news/2013/12/cinegreen-2014high-school-s hort-movie-photo-competition)を実施している。 96 7.おわりに:インドネシアの今後の課題 皆さんはインドネシアにどんなイメージをお持ちだろうか。常夏の国,発展途上国,デ ヴィ婦人,JKT48,世界有数のリゾート地バリ島がある国,そして ASEAN の主要国とい ったところが一般的なのかもしれない。実際,少なくとも私は,インドネシアに来るまで は恥ずかしながらその程度の知識しかなかった。こちらに数ヶ月滞在し,まだまだ知らな いことも多いのだが,現在のインドネシアはとにかく急速な発展を続ける,極めてポテン シャルの高い国ということは間違いない。多種多様な分野で右肩上がりの成長を示し,日 本からの投資が急増,アジアにおける日本の良きパートナーであるということを現地で実 感した。 今後のインドネシアの発展において重要になるのが再生可能エネルギー・省エネルギー である。これには石炭などでベースとなる電源を確保し,経済を支えつつ,徐々に再生可 能エネルギー・省エネルギーの拡大を図るという,計画的かつ確実な実施が強く求められ る。しかしながらその一方で,多くの電力開発計画が遅延,頓挫しているのが実情である。 インドネシアにおけるビジネス上の問題点として,第一に非効率な官僚組織,第二に汚職 が挙げられるが(The Global Competitiveness Report 2012 – 2013, World Economic Forum),省エネ意識と同様に,これはディスシプリンの問題である。また同時に,横の 連携をとることが十分にできておらず,エネルギー開発への包括的な政策を打つことがで きないでいる。計画に実効性が伴わないようでは,今後開発に協力する国際社会の信頼を 得ることはできないだろう。エネルギー鉱物資源省に勤めるJICA政策アドバイザーは、省 内の幹部職員に対してIndonesia’s competitor is Indonesia itself(インドネシアの競争 相手はインドネシア自身である)と諭している。インドネシアの今後の発展はインドネシ ア自身が変わることができるかにかかっている。 しかし日本もまた,インドネシアにおいて今後そのプレゼンスを発揮していくためには, あまりにもインドネシアを知らない人が多いように感じる。インドネシアの信頼を得るた め,インドネシアの独特のコミュニケーションスタイルを理解し,積極的かつ迅速な対応 を行うことが重要である。また,先進技術を追い求めるだけでなく,インドネシアに今求 められている,コストと技術が両立された製品・サービスを提供することを,もう少し目 指すべきではないか。そのためには企業だけでなく,政府・自治体・研究所・学校など多次 元の交流がさらに必要となるだろう。 日本とインドネシアの交流を今後も継続することで,インドネシアのポテンシャル,日 本の文化・技術をかけあわせ,インドネシアが持続可能な発展を成し遂げることを期待し たい。 97 [付記] 本報告書は,経済産業省・JETRO・HIDA「国際即戦力育成インターンシップ事業」 (2013 年度)における成果による。また,本稿を記すにあたり、エネルギー鉱物資源省 JICA 政策 アドバイザーの矢野友三郎氏(経済産業省より出向)を始め,インターン派遣先であるエ ネルギー鉱物資源省電力総局,新再生可能エネルギー・省エネルギー総局,及び東電設計 株式会社様等エネルギー関連企業の社員の皆さまからから多大なご指導・ご協力を受けた。 ここに記し謝意を示したい。 本報告書は、島本がインターン中に知りえた情報に基づいて作成したものであり、電力 会社の公式見解を示すものではなく、文責は筆者個人に帰属する。 98
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