結果の検証と今後の取り組みについて(PDF:209.3KB)

Ⅲ 結果の検証と今後の取り組みについて
本市においては、平成16年度、小学校5年生及び中学校2年生を対象に、初めて全国
的規模の「学習到達度及び学習意識調査」を実施した。また、平成19年度からは、文部
科学省による全国学力・学習状況調査を毎年実施してきた。調査結果を分析する中、①学
習意欲に課題がある。②設問に対する読解力に乏しく、記述力が弱い。③朝食を食べない
児童生徒が多いなど基本的な生活習慣が身についていない。などの課題が明らかになった。
これらの課題の改善に向けて①わかる授業の創造、②学習意欲の向上、③教職員の意識
改革、④生活習慣の確立を大きな4つの柱とし、教育施策を講じてきた。
その結果、平成21年度全国学力・学習状況調査における正答率は、小学校では、全国
平均を上回り、中学校では、全国平均と同等の成果が見られた。
(1)教育施策から見た検証
① 今回の学力及び学習到達度調査において、小学校国語Aの「読む」「言語事項」の領
域では、全国平均をそれぞれ、0.7ポイント、3.3ポイント上回っている。また、国語
Bの「話す・聞く」「言語事項」の領域では、全国平均をそれぞれ、0.4ポイント、0.3
ポイント上回っている。さらに、中学校英語においては、平成16年度は全国と比較
して平均正答率が 1.5 ポイント下回っていたが、平成18年度は全国を 0.9 ポイント上
回り、さらに平成20年度は、2.6 ポイント上回り、平成21年度は、4.4 ポイント上
回っている。
これは、「読む・書く・話す・聞く」ことば文化都市伊丹特区により、平成18年度
より小学校に「ことば科」を設置し、専門的な講師により言語事項の耕しを行い、俳
句、川柳など表現活動を取り入れ、言語活動の充実を図ってきたことと、中学校に「グ
ローバル・コミュニケーション科」を設置し、英語のコミュニケーション活動を取り
入れ、表現力育成を図ってきたことの一定の成果が見られたものと考える。
② 今回の学習状況調査において、「土曜日や日曜日に2時間以上学習する」小学生の割
合が平成16年度から平成21年度にかけて8.4%、24.2%、24.7%、25.5%と漸次増
加している。逆に「全くしない」小中学生の割合が平成16年度から平成21年度に
かけて漸次減少する傾向であることは、「サタデースクール事業」における休日の学習
習慣づくりに一定の成果が見られたものと考える。
③ 読書習慣については、小中学校において平成20年度から平成21年度にかけて「2
時間以上本を読む」児童生徒の割合が、それぞれ、0.4ポイント、1.5ポイント増加し
ている。また、各学校において図書室の利用率、貸出冊数が伸びている。
これは、読書教育推進事業において、平成17年度より、市費で全小中学校に読書
指導員を配置した成果であると考える。
④ 基本的な生活習慣や学習習慣において、「毎日朝食をとる」小学生の割合は、平成1
6年度から平成21年度にかけて、70.5%、83.2%、84.6%、85.1%と漸次増加して
いる。さらに、「平日家庭で2時間以上家庭学習をする」中学生の割合は、平成20年
度から平成21年度にかけて、3.4ポイント増加している。これらは、PTA連合会と
連携のもと、「早寝・早起き・朝ご飯」キャンペーンや、「伊丹市家庭学習の手引き」
策定事業による手引きを活用して、基本的な生活習慣の定着の啓発活動を強化したこ
との成果であると考える。
(2)各学校の取組から見た検証
各学校は、これまでの調査結果を分析し、自校の課題を明らかにするとともに、学力向
上プランを作成し、それをもとに研究を進め、授業改善に取り組んでいる。また、調査実
施教科毎に、小中学校の教員による調査結果分析委員会において、詳細な結果分析を行い、
課題解決の具体的方策を示すとともに、市内全体で授業方法の工夫・改善に努めている。
その中でも特に成果の上がっている学校の取組を紹介する。
① 学習指導・学習規律について
・ 廊下に、国語と算数のプリント棚を設け、難易度別のプリントで、子どもが自由
に学習できるようにしている。身近なところに学習プリントがあり、自分のペース
に合わせて進めることができるので、子ども達は前向きに取り組んでいる。
・ 読解力向上を目指し、夏休みに研修会で学年毎に国語読解の増し刷り可能な問題
集プリントを選択・準備し、朝学習で取り組んでいる。火、水、金曜日の朝に 15 分
間実施し、時間内に担任が答え合わせをする。
・ 「生きる力」を育む基礎としての「国語力の育成」(ことばをとおして思考判断す
ることから)を研究テーマとし、「書く」「長文を読む」ことに対する指導を学校全
体で行っている。
・ 始業時間を8時25分とし、朝学習の充実を図った。
・ プリント作成ソフト「みんなの学習クラブ」を単元のまとめに使った。
・ 基礎基本テストを5・6年生において1月に実施し、課題把握をした。
・ 高学年「脳トレ」(松中ブロックで作成したもの)の繰り返し学習→家庭学習や朝
学習で活用。
・ 宿題量は1時間以上かかるもので、自主的勉強も。できていない児童は休み時間
も利用。
・ 授業力の向上(話す、書く、読むを時間の中に入れる)、考える時間を入れるなど
1時間の授業のねらいを明確にする。
・ 全校朝礼や学年集会において、「立ち方」「並び方」「座り方」等をはじめ、聞く姿
勢の指導をとおし、学習規律の徹底を教師全員で取り組んだ。
・ 6年間を見すえた学習規律づくりとして、毎年、規律について教室掲示をするな
ど、組織で動けるための共通理解をする。
② 教職員の資質向上について
・ 研修会等で学力調査結果の分析をして全教師が自校の課題の共通理解をした。
・ 授業研究テーマ「活用力をつける授業」として校内研修を行った。
・ ベテラン教師を講師とした「学級経営」等について校内研修会を開催した。
・ 通知表の興味・関心の評価のあり方を研修し、興味・関心をもつような授業づく
りについて研修を行った。
・ 校内研究会に向けて、校長、研究担当、生徒指導担当が、学校の指針を明確にし
て助言者と研修の打ち合わせをした。
・ 主に若い教員の研修として「パワーアップ研修」を月1回程度実施している。講
師は、同校のリーダーとなる教員が務め、「ノートの取らせ方」「宿題の出し方」等
についてベテランが経験談や失敗談などもまじえて、若手育成の種まきとしている。
・ 主幹教諭、ベテラン教師が学校運営に積極的に参画し、日頃から若手教員の指導
を行った。
・ 月1回「若い教師を育てる会」(教科、学級経営、保護者会など)を開催。
③ 校内組織について
・ 学力委員会を発足させ、朝学習や生活振り返り週間の企画を行っている。学力委
員会は研究推進のメンバーに国語科担当、算数科担当を加え、学力調査結果の推移
を比較検討し、課題分析している。
・ 生徒指導とタイアップした授業研究を3年間継続して行った。
① 生徒の授業のエスケープをなくす
② 集中できる授業づくり
・
それぞれの分野(国語・特別支援・冒険教育など)で力量のある教員に、役割(学
力分析等)を持たせ、研究推進委員会や生徒指導員会等をとおして全教員で共有で
きるよう、組織として実践できる体制作りをしている。
・ 教育課程部会が中心となり、調査結果及び学校評価を分析し、国語部・算数部・
図書部などで、具体的な取り組みを集約、企画、実行、修正を行った。
④ 家庭・地域との連携について
・ 毎月第1週の期間、児童の生活を親子で振り返り、親子で「生活振り返りカード」
を記入し、自己点検させている。
・ PTAが学力向上委員会を立ち上げ、講演会を実施している。その際、中学校長
が講話をし、中学校の進路説明会に5・6年生の保護者が参加するなど、小中連携
の視点でも活動している。
・ 地域の年長者が、地域の子どもたちを健全に育てる視点で、若い保護者たちを支
援したり、「学校の教職員を信頼し大切にすること、学校任せにせず保護者が責任を
持って子どもを育てる」ことの重要性を説いてくれている。
⑤ その他
・ そうじの徹底を行っている。特に、6年生が見本となるように指導し、下学年に
その態度が見えるようにしている。
・ 部活動・学校行事に積極的に取り組むことにより、教師と生徒の信頼関係が築け
ている。
・ 教師自身も社会人としての基礎や品性を持つよう指導する。(服装、言葉づかいな
ど)
・ 校長が「やれば効果がある」と考える教育活動について発信し、判断は教職員に
委ねる。(例)春休みの宿題の出させ方、「みんなのルールブック」の活用等
・ 「月一守る目標」を設定し、「努力目標でなく、達成目標である」という強い意識
で全員で取り組んだ。
・ 第2・第4土曜日及びまた、夏休み7月いっぱいは図書室を開放し、読書教育を
推進している。
今回の調査において、記述問題の無答率が小学校国語A以外は、全て全国平均を下
回る結果であった。記述力向上のために、学校において、普段から「書く」ことに力
を入れた授業展開がなされている。特に朝学習で書く時間を設けたり、学年に応じて
目標字数を決め、説明文・報告文・意見文等を書く取組等を推進してきた成果である
と考えられる。また、教師の指導により、粘り強く最後まで問題に取り組む子どもた
ちの力が育成されてきたものと考えられる。
小学校において、家庭での学習時間の増加、テレビ・ビデオ視聴時間の減少傾向が
見られる。これは、学校において、「家庭学習月間」や「生活振り返り週間」を設けた
り、PTAと連携して、ノーテレビデー・ノーゲームデー運動に取り組んだりした成
果であると考えられる。
中学校において、国語、数学ともに「活用」に関する問題の正答率が全国平均を上
回っていた。これは、学校において、土曜学習会の開催、放課後学習優先日の設定、
7校時学習等をとおして、基礎・基本の定着を図るとともに、活用力の育成に力を入
れてきた成果であると考えられる。
(3)今後の課題と取組
伊丹市学習到達度調査において、小学校では、社会、理科は、全国平均を下回り、中学
校では、社会が全国平均を下回っている。また、学習状況においては、中学校で、テレビ
等の視聴時間が全国平均より長く、平日の学習時間が全国平均より短いなど、家庭での基
本的な生活習慣が改善されていない状況がうかがえる。
今後は、各学校においては、各校の実態・課題に応じて、昨年度の調査結果をふまえ、
児童生徒の学習意欲の向上、学力の向上を目ざして、基礎・基本の定着に基づいた特色あ
る取り組みを進めていく。そして、各教科担当者は、調査結果を分析し、それに基づく授
業研究を進めていく。
また、教育委員会は、本調査結果のさらなる分析を進めるとともに、各施策の成果を検
証し、改善を進める中で、別添資料の諸施策の着実な実行により、全力をあげて伊丹市の
学力の向上に取り組む。