第 20 回 日本航空医療学会総会 プログラム・抄録集 The 20th Annual Meeting of the Japanese Society for Aeromedical Services メインテーマ 「災害とドクターヘリ」 会 期:平成 25 年 11 月 15 日(金)・16 日(土) 会 場:福島テルサ 福島県福島市上町 4-25 第 20 回日本航空医療学会総会 会 長:田勢長一郎(福島県立医科大学医学部救急医療学講座 教授) 第 20 回日本航空医療学会総会の 開催にあたって 田勢 長一郎 第 20 回日本航空医療学会総会 会長 福島県立医科大学医学部救急医療学講座 教授 第 20 回日本航空医療学会総会を 2013 年 11 月 15 日(金) 、16 日(土)の 2 日間、福島市におい て開催させていただきます。 本学会は平成 6 年にヘリコプター救急の実現に向けて創設された日本エアレスキュー研究会を 前身とし、平成 12 年より日本航空医療学会と改称し現在に至っています。したがって、今年は創 設 20 年を迎えることになります。このような節目の年に学会を担当させていただくことは、教室 員一同大変光栄に存じております。 今回のテーマは「災害とドクターヘリ」といたしました。シンポジウムⅠでは「災害時におけ るドクターヘリ」と題しまして、 “災害時におけるドクターヘリの在り方検討委員会”から出され ました『災害時におけるドクターヘリ参集案』をたたき台にして、討議を展開していただきます。 また、ワークショップ「災害時におけるドクターヘリ─運航会社からの提言─」では、実際に 活動した運航会社の視点に立ち、災害時のドクターヘリの有用性や問題点、これからの災害に対 しての活動の方向性など討議していただきます。災害現場でのドクターヘリ活動には DMAT の協 力体制が不可欠であります。教育セミナーでは、DMAT 事務局長の小井土雄一先生から「DMAT の今後のありかた」についてご講演いただきます。 特別講演として、認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワークの國松孝次会長に「ドクターヘリの 発展の跡をふりかえって」をお願いしました。重症救急傷病者にはドクターヘリ出動ということが、 徐々に認知されてきておりますが、20 年目という節目の年でもありますので、導入の背景、その 歴史や経緯などを振り返りながら、日本におけるドクターヘリの必要性についてお話しいただき ます。招請講演としては、日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長の益子邦洋先生に「ド クターヘリの過去・現在・未来」と題して、ドクターヘリの効果と有用性、効果の実証、将来に 向けた課題などについてお話しいただく予定です。また、学会企画として「ドクターヘリ 20 年を 振り返る」の題で、鼎談を設けました。ドクターヘリ導入から発展にご尽力いただいた方々に、 当時を振り返り自由に討論していただきます。なお、フライトナースの役割を明確にするために 「ド クターヘリにおけるフライトナースの役割」というシンポジウムⅡも企画いたしました。これら の講演ならびに企画はわれわれ現場の者にとり、未来へ向けてのさらなる発展の礎になると確信 しております。 3 現在、ドクターヘリは 35 道府県に 41 機が導入されており、状況に応じてそれぞれの地域で効 果的な運用を行っていると思います。これらの地域の実情、有用性、課題、問題点などにつき、 学会員全体で共有するため、パネルディスカッション「地域におけるドクターヘリの有用性およ び課題」、Pros & Cons「ドクターヘリの要請方式:キーワード方式 対 消防の判断」、全ての基地 病院による「基地病院ポスター発表」を企画しました。また、病院前における内因性疾患「急性 冠症候群」や「脳卒中」の診断・初療についても取り上げております。 一般演題も、今まで最多の 126 題採用させていただきました。会員の皆様には、日中の活発で 熱い議論を交わし、夜の懇親会では、疲れを癒していただくために福島ならではの企画をご用意 いたしました。美酒美食を味わい、アトラクションを堪能していただければと存じます。 また、総会終了後は、 「被ばく医療」のセミナーを設け、翌日は、実際に事故があった東京電力 福島第一原子力発電所の視察も計画しております。市民公開講座では、多くの医療番組を制作し ているフジテレビジョンドラマ制作部主任の増本淳様に医療ドラマ制作について、Texas 大学の 青木則明先生には救急におけるドクターヘリの役割などについてお話しいただきます。時間があ れば、こちらにもぜひ参加していただきたいと思います。 最後になりますが、福島での第 20 回という節目の大会が、明日の日本航空医療学会の発展の糧 になれば幸いでございます。ぜひ、多くの方々の参加をお待ちしております。 4 歴 代 会 長 (第1回〜第6回 日本エアレスキュー研究会) 第1回 小濱 啓次 川崎医科大学救急医学 平成 6 年 10 月 21 日 東京 第2回 滝口 雅博 弘前大学医学部附属病院救急部 平成 7 年 10 月 19 日 東京 第3回 金子 正光 札幌医科大学医学部救急集中治療部 平成 8 年 10 月 21 日 東京 第4回 大塚 敏文 日本医科大学高度救命救急センター 平成 9 年 11 月 6 日 東京 第5回 寺本 成美 国立長崎中央病院 平成 10 年 11 月 5 日 東京 第6回 岡田 眞人 聖隷三方原病院救命救急センター 平成 11 年 11 月 5 日 東京 第7回 飛鳥田一朗 日本航空株式会社健康管理室部長 平成 12 年 11 月 2 日 東京 (ホテル日航東京) 第8回 浅井 康文 札幌医科大学医学部救急集中治療部 平成 13 年 11 月 2 日 東京 (日本都市センターホテル) 第9回 杉山 貢 横浜市立大学医学部附属 平成 14 年 11 月 6 日 横浜 市民総合医療センター高度救命救急センター (パシフィコ横浜) 第 10 回 野口 宏 愛知医科大学医学部附属病院 高度救命救急センター 平成 15 年 11 月 12 日 名古屋 (名古屋国際会議場) 第 11 回 坂本 照夫 久留米大学医学部救急医学講座 平成 16 年 11 月 12 日 福岡 (アクロス福岡) 第 12 回 猪口 貞樹 東海大学医学部専門診療学系救急医学 平成 17 年 11 月 3 日 横浜 (パシフィコ横浜) 第 13 回 篠﨑 正博 和歌山県立医科大学救急集中治療部 平成 18 年 11 月 11 日 和歌山 (和歌山ビッグ愛) 第 14 回 益子 邦洋 日本医科大学千葉北総病院 平成 19 年 11 月 30 日・12 月 1 日 千葉 救命救急センター (幕張メッセ) 第 15 回 石原 晋 公立邑智病院 平成 20 年 11 月 15 日 島根 (くにびきメッセ) 第 16 回 小倉 真治 岐阜大学大学院医学系研究科 平成 21 年 11 月 14 日 岐阜 救急・災害医学分野 (長良川国際会議場) 第 17 回 高橋 功 医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 平成 22 年 11 月 19・20 日 札幌 救命救急センター (ロイトン札幌) 第 18 回 髙山 隼人 独立行政法人国立病院機構 平成 23 年 11 月 12 日 長崎 長崎医療センター救命救急センター (長崎ブリックホール) 第 19 回 北村 伸哉 国保直営総合病院 君津中央病院 救命救急センター 第 20 回 田勢長一郎 福島県立医科大学医学部 平成 25 年 11 月 15・16 日 福島 救急医療学講座 (福島テルサ) 平成 24 年 11 月 9・10 日 千葉 (かずさアカデミアホール) 第 21 回 嶋津 岳士 大阪大学大学院医学系研究科救急医学 (予 定) 平成 26 年 11 月 15 日 大阪 (ホテル阪神) 5 日本航空医療学会 役員等名簿 顧 問 理事長 理 事 大久保 堯 夫 小 濱 啓 次 浅 井 康 文 國 松 孝 次 猪 口 貞 樹 坂 田 久美子 名誉会員 監 事 飛鳥田 一 朗 滝 口 雅 博 神田橋 宗 行 西 川 渉 佐 藤 隆 坂 本 照 夫 杉 山 貢 髙 山 隼 人 野 口 宏 古 澤 正 人 益 子 邦 洋 功労会員 長谷川 恒 夫 評 議 員 饗 場 庄 一 浅 井 康 文 安 達 康 弘 荒 木 恒 敏 井 清 司 石 井 圭 亮 石 黒 健 司 一 戸 良 子 井 上 保 介 猪 口 貞 樹 今 井 寛 岩 㟢 安 博 岩 瀬 史 明 岩 下 具 美 上 田 守 三 卯津羅 雅 彦 遠 藤 重 厚 大 島 裕 岡 田 邦 彦 岡 田 眞 人 緒 方 龍 一 岡 元 和 文 小 川 武 希 荻 野 隆 光 奥 寺 敬 奥 村 徹 小 倉 真 治 小田桐 綾 子 6 小 野 一 之 笠 岡 俊 志 加 藤 正 哉 金 井 大 悟 金 丸 勝 弘 川 谷 陽 子 神 田 正 和 北 村 伸 哉 熊 田 恵 介 小 池 伸 享 合 原 則 隆 小 濱 啓 次 小 林 誠 人 今 明 秀 齋 藤 兄 治 齋 藤 孝 次 斎 藤 由 実 坂 田 久美子 坂 本 照 夫 阪 本 雄一郎 篠 崎 正 博 篠 田 伸 夫 杉 山 聡 杉 山 貢 鈴 木 幸一郎 鈴 木 範 行 須 田 髙 之 住 田 臣 造 説 田 守 道 其 田 一 高 岡 信 髙 羽 謙 哉 高 橋 功 高 橋 毅 高 松 学 文 高 本 勝 博 髙 山 隼 人 滝 口 雅 博 田 勢 長一郎 多 畑 雅 弘 津 越 大 介 土 谷 飛 鳥 堤 晴 彦 豊 田 泉 内 藤 ゆみえ 中 川 隆 中 川 雄 公 中 川 儀 英 中 谷 斉人朗 中 野 実 長 野 良 三 中 道 親 昭 奈 良 理 西 川 渉 丹 羽 政 晴 野 口 宏 野 澤 陽 子 野 田 誠 一 早 川 達 也 日 髙 泰 徳 藤 尾 政 子 藤 田 康 雄 古 澤 正 人 益 子 邦 洋 松 田 明 雄 松 原 康 博 松 本 尚 三 浦 光 政 三 木 靖 雄 三 村 誠 二 村 田 厚 夫 村 松 武 明 森 脇 義 弘 八 木 正 晴 山 崎 早 苗 山 下 典 雄 山 野 豊 横 田 英 己 吉 原 秀 明 五十音順 会場アクセス 7 会場案内図 ※ 会場内は全館禁煙です。 B1F 講師控室 1 講師控室 2 EV EV 1F 第 1 会場 FT ホール 総合受付 クローク 書籍展示 8 2F 基地病院ポスター発表 (東北・北海道) P-34 ∼ P-43 EV EV EV EV 会場出入口 3F 第 4 会場 しのぶ PC 受付 もちずり EV EV 第 2 会場 あぶくま 第 3 会場 あづま 4F 機器展示 つきのわ ドリンクコーナー 休憩室 すりかみ EV EV ポスター 発表受付 学会事務局 ほうらい 基地病院ポスター発表 (東北・北海道を除く) P-1 ∼ P-33 9 学 会 参 加のご案内とお知らせ ◆参加者へのご案内 1.参加受付 時 間:11 月 15 日(金)/ 11 月 16 日(土) 両日ともに 8:45 〜 場 所:福島テルサ FT ホール前エントランス 参加費:8,000 円(会員・非会員) 学生無料(必ず学生証を提示) 2.入会受付 入会の詳細は、日本航空医療学会のホームページをご確認ください。 http://square.umin.ac.jp/jsas/admin.html ※ 演者・共同演者は、当学会員に限ります。未入会の方は必ず入会手続きをお願いします。 3.プログラム・抄録集 会員の皆様には、郵送でお送りしております。忘れずにお持ちください。 お忘れの方や学会員以外の方には、受付で販売いたします。(2000 円) 4.懇親会 日 時:平成 25 年 11 月 15 日(金)18:30 ~(予定) 場 所:ホテル辰巳屋(8 階 大宴会場) 福島市栄町 5-1 福島駅東口徒歩1分 TEL:024-522-5111 FAX:024-522-5116 会 費:2,000 円 5.クローク及びロッカー クロークは、1 階総合受付奥にご準備しております。お荷物と引き換えに番号札をお渡しいたします。 ロッカーは、各階にございます。小さな手荷物などはそちらをご利用ください(コインが戻るので実質無 料です) 。 6.ドリンクコーナー 4 階「すりかみ」にご準備しております。お気軽にお立ち寄りください。 各会場ともに、基本的には飲食は禁止となっております。 7.展示等 FT ホール前で書籍、4 階「つきのわ」で機器展示を行っています。 8.その他 ・会場内では携帯電話の電源をお切りいただくか、マナーモードにしていただきます様お願いいたします。 ・許可なく録音、録画、撮影機材を持ち込まないようお願いいたします。 ・会場内での呼び出し、伝言等は承りかねます。緊急時は総合受付にご相談ください。 ・会場内は禁煙です。 10 ・会場周辺には複数の有料駐車場がございますが、台数に限りがございますので、公共の交通機関をご利 用いただくことをお勧めいたします。 ◆発表者・座長へのお知らせ 1.発表について 資格:一般演題の応募者は、発表者、共同発表者に関わらず、学会の会員に限ります。 未入会の方は、入会手続きをお願いします。 A) 一般演題について 発表時間 6 分 討論 4 分 計 10 分 *発表時間を厳守願います。 発表形式 ⑴ 発表の 10 分前までに『次演者席』にご着席ください。 ⑵ 演題はすべて口演発表です(プロジェクター1面投射になります)。 ⑶ 発表は、事務局準備の PC、またはご自身の PC で行ってください。 データは、PC 受付でお預かりいたします。 持込 PC は受付をすませた後、ご自身でお持ちいただき会場内オペレーターまでお渡しください。 ⑷ 演台には、確認モニター、キーボード、マウスをご準備いたします。 ご自身で操作、進行をお願いいたします。 ⑸ 発表時間が演台上のタイマーに表示されます。時間を超過しないようご注意願います。 ⑹ データは事務局が責任を持って消去いたします。持込 PC は会場オペレーター席でのご返却となりま す。 B) ポスターセッション(基地病院 43 箇所)について 会場は4階のギャラリー及び 2 階ロビーです。 発表時間 5 分 討論 2 分 計 7 分 *発表時間を厳守願います。 ⑴ P-1 〜 P-33 は 4 階、P-34 〜 P-43 は 2 階で受付ます。 ⑵ 受付及び掲示は、11 月 15 日(金)11:30 〜 13:30 にお願いいたします。 ⑶ ポスターは 2 日間通して掲示します。 ⑷ 発表者は 10 分前にパネルの前で待機してください。 ⑸ 会場の都合上、パネルサイズは横 90cm 厳守でお願いいたします。 ⑹ ポスターの撤去は、11 月 16 日(土)12:30 に行います。返却をご希望の方は受付時にお申し出の上、 12:30 にご自身で撤去してくださいますようお願いいたします。 2.データの受付、持込 PC について ⑴ ご発表の 30 分前までに、PC 受付(3 階 小会議室 もちづり)に発表データ、または持込 PC をお持 ちください。受付係が対応いたします。 ⑵ 発表データは、USB メモリー、または CD-R(CD-RW 不可)でお持ちください。 Microsoft Power Point 2003 以降で作成したものに限ります。 ⑶ バックアップの予備データをお持ちいただくことをお勧めいたします。 ⑷ 学会で準備する PC の OS は Windows です。 Mac OS でのデータには対応いたしません。ご自身の Mac PC をお持ちください。 11 ⑸ D-sub-15 ピン以外の機種をご使用の場合は、変換ケーブルを必ずお持ちください。また、AC アダプ タを忘れずにお持ちください。 ⑹ 動画があるデータは、ご自身の PC を持ち込まれることをお勧めいたします。 ⑺ フォントはトラブル回避のために下記フォントを推奨いたします。 日本語:MS ゴシック、MSP ゴシック、MS 明朝、MSP 明朝 英 語:Arial、Arial Black、Century、Century Gothic ⑻ データ名には、演題番号と発表者のお名前を登録してください。 ※ 例:「5 福島太郎」「18 会津花子」 ⑼ 患者の個人情報に抵触する可能性のある内容は、本人あるいはその代理人からインフォームド・コン セントを得た上で、情報が特定されないように十分注意した内容でご発表ください。 3.座長へのお願い ⑴ ご担当のセッション開始 10 分前までに『次座長席』にご着席ください。 ⑵ セッション開始・終了時に場内アナウンスを行います。 進行は座長にお任せいたしますので、プログラム時間の遵守をお願いいたします。 ◆お問い合わせ 第 20 回日本航空医療学会総会について 総会事務局 福島県立医科大学医学部救急医療学講座内 〒 960-1295 福島県福島市光が丘 1 番地 TEL:024-547-1581 FAX:024-547-3399 E-mail:[email protected] 入会・年会費等について 日本航空医療学会事務局 株式会社へるす出版事業部内 〒 164-0001 東京都中野区中野 2-2-3 TEL:03-3384-8042 FAX:03-3380-8627 E-mail:[email protected] 12 会議のお知らせ 【ビジネスミーティング】 11 月 14 日(木) ホテル辰巳屋(福島県福島市栄町 5-1 TEL:024-522-5111) 〈8 階・真珠の間〉 • 安全推進委員会 10:00 〜 11:00 • ドクターヘリ委員会 11:00 〜 12:30 • 評議員選出委員会 12:30 〜 13:30 • ドクターヘリ運航関係従事者委員会 13:30 〜 16:00 〈8 階・琥珀の間〉 • 編集委員会 10:00 〜 10:30 • 用語委員会 10:30 〜 11:00 • ドクターヘリ講習会実行委員会 11:00 〜 11:30 • 認定制度委員会 11:30 〜 12:30 • フライトナース委員会 12:30 〜 13:30 • 理事会 13:45 〜 16:15 〈8 階・瑞雲の間〉 • 評議員会 16:30 〜 18:00 〈8 階・珊瑚の間〉 • 委員控え室 10:30 〜 16:30 • 新理事会 18:00 〜 18:30 【総 会】 11 月 15 日(金) 13:30 〜 14:00 福島テルサ 第 1 会場(FT ホール) 13 日 程 表 第 1 日目 11 月 15 日 (金) 第 1 会場 FT ホール(1 階) 第 2 会場 あぶくま(3 階) 9:00 9:00 〜 11:30 9:00 〜 10:10 シンポジウムⅠ 一般演題 1 /搬送体制 「災害時におけるドクター 座長:荻野隆光 ヘリ」 司会:坂本照夫 松本 尚 10:00 第 3 会場 あづま(3 階) 第4会場 しのぶ(3 階) ギャラリー (4 階) 9:00 〜 9:40 9:00 〜 10:10 一般演題 5 /検証(看護) 一般演題 13 /固定翼 座長:川谷陽子 座長:浅井康文 9:40 〜 10:20 一般演題 6 /安全管理(看護) 座長:野澤陽子 10:10 〜 11:20 一般演題 2 /広域連携搬送 10:20 〜 11:20 座長:須田高之 一般演題 7 /コミュニケー ション(看護) 座長:内藤ゆみえ 11:00 10:10 〜 10:50 一般演題 14 /ドクヘリと コラボレーション 座長:伊関 憲 10:50 〜 11:30 一般演題 15 /地域運用 座長:瀬尾伸夫 11:30 〜 12:30 特別講演 「ドクターヘリの発展の跡 をふりかえって」 12:00 演者:國松孝次 司会:田勢長一郎 12:40 〜 13:30 教育セミナーⅠ 「DMATの今後のあり方を考える」12:50 〜 13:30 鼎 談 講師:小井土雄一 13:00 司会:島田二郎 「ドクターヘリ20 年を振り返る」 共催:マシモジャパン(株)司会:篠田伸夫 レールダルメディカル(株)企画:第 20 回日本航空医療学会 中日本航空(株) 13:30 〜 14:00 総 会 14:00 14:00 〜 15:00 14:00 〜 16:00 14:00 〜 15:00 14:00 〜 15:20 教育セミナーⅡ ワークショップ 一般演題 8 /災害時の活動 一般演題 16 /外因性疾患 1 「循環器疾患の診断・急性「災害時におけるドクターヘ 座長:中野 実 座長:阪本雄一郎 期治療」 リ─運航会社からの提言─」 講師:竹石恭知 司会:横田英己 司会:益子邦洋 兵藤 敬 共催:ノバルティスファーマ (株) 15:00 15:00 〜 16:00 教育セミナーⅢ 「病院前における脳卒中の 診断と急性期の対応」 講師:齋藤 清 司会:遠藤 裕 共催:田辺三菱製薬(株) 16:00 16:00 〜 18:00 16:00 〜 17:00 パネルディスカッションⅠ 一般演題 3 /脳卒中 「地域におけるドクターヘ 座長:杉山 聡 リの有用性および課題」 司会:髙山隼人 今 明秀 17:00 14:30 〜 15:10 基地病院ポスター発表 座長:谷川攻一 15:00 〜 16:00 一般演題 17 /外因性疾患 2 15:10 〜 15:40 座長:長谷川有史 基地病院ポスター発表 15:20 〜 16:10 座長:松原康博 一般演題 9 /教育(看護) 座長:藤尾政子 15:40 〜 16:20 基地病院ポスター発表 座長:加藤正哉 16:00 〜 16:50 一般演題 18 /内因性疾患・ 16:10 〜 16:50 一般演題 10 /現場活動(看護)その他 16:20 〜 17:00 座長:岡田眞人 座長:斎藤由実 基地病院ポスター発表 座長:村松武明 16:50 〜 17:30 16:50 〜 18:00 一般演題 11 /役割(看護)一般演題 19 /一般 17:00 〜 18:00 座長:松島久雄 一般演題 4 / CPA・心疾患 座長:一戸良子 座長:小倉真治 17:30 〜 18:00 一般演題 12 /その他 (看護) 座長:小田切綾子 18:00 18:30 〜 【会員懇親会】ホテル辰巳屋 14 14:00 〜 14:30 基地病院ポスター発表 座長:八木正晴 17:00 〜 17:40 基地病院ポスター発表 座長:岡本 健 第 2 日目 11 月 16 日 (土) 第 1 会場 FT ホール(1 階) 第 2 会場 あぶくま(3 階) 第 3 会場 あづま(3 階) 第4会場 しのぶ(3 階) 9:00 9:00 〜 9:50 9:00 〜 11:00 9:00 〜 10:00 9:00 〜 10:10 Pros & Cons シンポジウムⅡ 一般演題 20 /病院前活動 一般演題 22 /運航管理 「ドクターヘリの要 請 方 式:「ドクターヘリにおけるフ 座長:高橋 功 座長:岩下具美 キーワード 対 消防の判断」 ライトナースの役割」 司会:鈴木幸一郎 司会:坂田久美子 山㟢早苗 9:50 〜 11:10 10:00 パネルディスカッションⅡ 「ドクターヘリの安全管理」 司会:篠㟢正博 西川 渉 4 階ギャラリー 2 階ロビー 9:00 〜 9:40 基地病院ポスター発表 座長:小池伸享 9:40 〜 10:20 基地病院ポスター発表 座長:山田裕彦 10:00 〜 11:00 一般演題 21 /運航システム 10:10 〜 11:00 座長:北村伸哉 一 般 演 題 23 / ヘ リ ポ ー 10:20 〜 11:00 ト・ランデブーポイント 基地病院ポスター発表 座長:滝口雅博 座長:奈良 理 11:00 11:10 〜 12:10 招請講演 「ドクターヘリの過去・現 在・未来」 演者:益子邦洋 司会:嶋津岳士 12:00 12:10 〜 14:40 12:15 〜 12:45 フライトナース勉強会 ドクターヘリ連絡調整委員会 13:00 12:45 〜 14:00 ドクターヘリ連絡調整協議会 福島県立医科大学災害医療センター 14:00 13:30 〜 16:30 被ばく医療セミナー Ⅰ.福島の放射線環境測定実習 Ⅱ.被ばく・汚染を伴う傷病者の救急診療実習 講師:長谷川有史 他 14:30 〜 16:30 市民公開講座 第1部 「医療ドラマと現実の医療の関係」 15:00 演者:増本 淳 第2部 「発症から治療開始までの時 間を短くするための最適搬送 〜救急における情報システム とドクターヘリの役割〜」 演者:青木則明 16:00 17:00 18:00 15 MEMO 企画プログラム 特 別 講 演 第 1 日目(11 月 15 日) 11:30 〜 12:30 司会 第 1 会場(FT ホール) 田勢長一郎(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 「ドクターヘリの発展の跡をふりかえって」 ▶國松 孝次(認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク) 招 請 講 演 第 2 日目(11 月 16 日) 11:10 〜 12:10 司会 第 1 会場(FT ホール) 嶋津 岳士(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター) 「ドクターヘリの過去・現在・未来」 ▶益子 邦洋(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) 鼎 談 第 1 日目(11 月 15 日) 12:50 〜 13:30 司会 第 2 会場(あぶくま) 篠田 伸夫(認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク) 「ドクターヘリ 20 年を振り返る」 ▶小濱 啓次(川崎医科大学) ▶野口 宏(愛知県救急医療情報センター 統括センター) ▶西川 渉(日本航空医療学会 監事) シンポジウム シンポジウムⅠ:災害時におけるドクターヘリ 第 1 日目(11 月 15 日) 9:00 〜 11:30 司会 坂本 照夫(久留米大学病院 高度救命救急センター) 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) S1-1 広域災害急性期におけるドクターヘリの位置づけと運用 ▶松本 尚(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) S1-2 ドクターヘリによる遠隔地からの参入の問題点 ▶山下 典雄(久留米大学病院 高度救命救急センター) S1-3 関西広域連合による災害時の派遣体制構築への試みと課題 ▶中川 雄公(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター) S1-4 南海トラフ巨大地震におけるドクターヘリ対応と高知県の対策 ▶齋坂 雄一(高知医療センター 救命救急センター) S1-5 福島第一原子力発電所事故におけるドクターヘリ運航 ▶塚田 泰彦(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 18 第 20 回日本航空医療学会総会 第1会場(FT ホール) シンポジウムⅡ:ドクターヘリにおけるフライトナースの役割 第 2 日目(11 月 16 日) 9:00 〜 11:00 司会 第 2 会場(あぶくま) 坂田久美子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) 山﨑 早苗(東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター) S2-1 愛知県ドクターヘリにおける隣県ドクターヘリと防災ヘリとの連携 ▶金岡 正枝(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) S2-2 認定指導者の立場からフライトナースの育成を考える ▶北内梨都子(東海大学医学部付属病院 循環器・心臓血管外科病棟) S2-3 災害時におけるドクターヘリの運用と災害教育の実態 ▶宮崎 博之(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) S2-4 スキー場におけるパトロール隊救急隊との活動における模索 ▶岩崎 弘子(JA 長野厚生連佐久総合病院 救急外来) S2-5 岡山県ドクターヘリにおけるセカンド体制の現状 ▶藤尾 政子(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) S2-6 小児救急への取り組み 現状と課題 ▶森島 克明(順天堂大学医学部附属静岡病院) パネルディスカッション パネルディスカッションⅠ:地域におけるドクターヘリの有用性および課題 第 1 日目(11 月 15 日) 16:00 ~ 18:00 司会 第 1 会場(FT ホール) 髙山 隼人(国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター) 今 明秀(八戸市立市民病院 救命救急センター) P1-1 地域におけるドクヘリの有用性および課題―広域運航圏、寒冷地 ▶住田 臣造(旭川赤十字病院 救命救急センター 救急部) P1-2 過疎地における 2 機体制 ▶今 明秀(八戸市立市民病院 救命救急センター) P1-3 防災ヘリ,県警ヘリとの連携 ▶中村 光伸(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科) P1-4 ドクターヘリにおける隣県への出動について ▶岩崎 安博(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座) P1-5 離島からの施設間搬送におけるドクターヘリ活動状況及び課題 ▶中道 親昭(国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター) P1-6 ドクターヘリ夜間運航のあり方について ▶早川 達也(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 19 パネルディスカッションⅡ:ドクターヘリの安全管理 第 2 日目(11 月 16 日) 9:50 ~ 11:10 司会 第 1 会場(FT ホール) 篠﨑 正博(岸和田徳洲会病院 救命救急センター) 西川 渉(日本航空医療学会 監事) P2-1 基地病院全体で安全管理を考える体制づくりの必要性 ▶中川 儀英(東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター) P2-2 ドクターヘリの安全管理─看護師の立場から─ ▶高野 裕子(和歌山県立医科大学附属病院) P2-3 ドクターヘリの安全管理─操縦士の立場から─ ▶小島 鋭久(中日本航空株式会社 ヘリコプター運航部 福島県ドクターヘリ基地) P2-4 整備士が出来る安全管理 ▶永田 正文(セントラルヘリコプターサービス株式会社 運航部 岐阜グループ) P2-5 複数傷病者発生事案におけるドクターヘリ活動の安全管理 ▶花田 勝則(西日本空輸株式会社 運航部 安全推進室) ワークショップ 災害時におけるドクターヘリ─運航会社からの提言─ 第 1 日目(11 月 15 日) 14:00 ~ 16:00 司会 第 2 会場(あぶくま) 横田 英己(朝日航洋株式会社 航空事業本部 営業統括部) 兵藤 敬(中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課) WS-1 広域災害における航空機統括の現状とその課題 ▶兵藤 敬(中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課) WS-2 広域 DMAT におけるドクターヘリの位置付け ▶鶴本浩一郎(朝日航洋株式会社 東日本航空支社運航部 EMS グループ) WS-3 DMAT と CS ▶小野寺貴史(朝日航洋株式会社 東日本航空支社 運航部 運航管理 G) WS-4 ドクターヘリ広域運用の拡大と運航管理システム ▶神田 正和(学校法人ヒラタ学園 航空事業本部) WS-5 ドクターヘリの災害活動に必要な情報の共有 ▶高橋 宏之(中日本航空株式会社 航空管理センター 運行管理室 EMS 課) Pros & Cons ドクターヘリの要請方式:キーワード 対 消防の判断 第 2 日目(11 月 16 日) 9:00 〜 9:50 司会 鈴木幸一郎(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) P&C-1 消防の決断─キーワードにプラス α があればなお良い─ ▶中川 隆(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) P&C-2 ドクターヘリの目的を果たすための方策~キーワード方式は有用~ ▶小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) 20 第 20 回日本航空医療学会総会 第1会場(FT ホール) 教育セミナー 教育セミナーⅠ 共催:マシモジャパン(株)・レールダルメディカル(株)・中日本航空(株) 第 1 日目(11 月 15 日) 12:40 〜 13:30 司会 第 1 会場(FT ホール) 島田 二郎(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 「DMAT の今後のあり方を考える」 ▶小井土雄一(国立病院機構災害医療センター 臨床研究部長・救命救急センター長 厚生労働省医政局災害対策室 DMAT 事務局長) 教育セミナーⅡ 共催:ノバルティス ファーマ(株) 第 1 日目(11 月 15 日) 14:00 〜 15:00 司会 第 1 会場(FT ホール) 益子 邦洋(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) 「循環器疾患の診断・急性期治療」 ▶竹石 恭知(福島県立医科大学医学部 循環器・血液内科学講座 教授) 教育セミナーⅢ 共催:田辺三菱製薬(株) 第 1 日目(11 月 15 日) 15:00 〜 16:00 司会 第 1 会場(FT ホール) 遠藤 裕(新潟大学医歯学総合病院 高度救命救急センター) 「病院前における脳卒中の診断と急性期の対応」 ▶齋藤 清(福島県立医科大学医学部 脳神経外科学講座 教授) 特別企画 ドクヘリと原発事故対応 11 月 16 日 13:30 〜 16:30 福島県立医科大学災害医療センター「被ばく医療セミナー」 Ⅰ 福島の放射線環境測定実習 Ⅱ 被ばく・汚染を伴う傷病者の救急診療実習 11 月 17 日 7:00 福島駅出発 福島第一原子力発電所 視察 帰り 15:00 いわき駅着 16:30 福島駅着 市民公開講座 命をつなぐ救急医療 第 2 日目(11 月 16 日) 14:30 〜 16:30 第 1 会場(FT ホール) 第 1 部「医療ドラマと現実の医療の関係」 ▶増本 淳(フジテレビジョン ドラマ制作部) 第 2 部「発症から治療開始までの時間を短くするための最適搬送 〜救急における情報システムとドクターヘリの役割〜」 ▶青木 則明(School of Biomedical Informatics, University of Texas HealthScience Center at Houston) 第 20 回日本航空医療学会総会 21 MEMO プログラム 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 1 会場( F T ホ ー ル ) 9:00 〜 11:30 シンポジウムⅠ 災害時におけるドクターヘリ 司会 坂本 照夫(久留米大学病院 高度救命救急センター) 松本 尚(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) S1-1 広域災害急性期におけるドクターヘリの位置づけと運用 ▶松本 尚(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) S1-2 ドクターヘリによる遠隔地からの参入の問題点 ▶山下 典雄(久留米大学病院 高度救命救急センター) S1-3 関西広域連合による災害時の派遣体制構築への試みと課題 ▶中川 雄公(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター) S1-4 南海トラフ巨大地震におけるドクターヘリ対応と高知県の対策 ▶齋坂 雄一(高知医療センター 救命救急センター) S1-5 福島第一原子力発電所事故におけるドクターヘリ運航 ▶塚田 泰彦(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 11:30 〜 12:30 特別講演 司会 田勢長一郎(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 「ドクターヘリの発展の跡をふりかえって」 ▶國松 孝次(認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク) 12:40 〜 13:30 教育セミナーⅠ 司会 共催:マシモジャパン(株)・レールダルメディカル(株)・中日本航空(株) 島田 二郎(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 「DMAT の今後のあり方を考える」 ▶小井土雄一(国立病院機構災害医療センター 臨床研究部長・救命救急センター長 厚生労働省医政局災害対策室 DMAT 事務局長) 13:30 〜 14:00 総 会 14:00 〜 15:00 教育セミナーⅡ 司会 共催:ノバルティス ファーマ(株) 益子 邦洋(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) 「循環器疾患の診断・急性期治療」 ▶竹石 恭知(福島県立医科大学医学部 循環器・血液内科学講座 教授) 24 第 20 回日本航空医療学会総会 15:00 〜 16:00 教育セミナーⅢ 司会 共催:田辺三菱製薬(株) 遠藤 裕(新潟大学医歯学総合病院 高度救命救急センター) 「病院前における脳卒中の診断と急性期の対応」 ▶齋藤 清(福島県立医科大学医学部 脳神経外科学講座 教授) 16:00 〜 18:00 パネルディスカッションⅠ 地域におけるドクターヘリの有用性および課題 司会 髙山 隼人(国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター) 今 明秀(八戸市立市民病院 救命救急センター) P1-1 地域におけるドクヘリの有用性および課題―広域運航圏、寒冷地 ▶住田 臣造(旭川赤十字病院 救命救急センター 救急部) P1-2 過疎地における 2 機体制 ▶今 明秀(八戸市立市民病院 救命救急センター) P1-3 防災ヘリ、県警ヘリとの連携 ▶中村 光伸(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科) P1-4 ドクターヘリにおける隣県への出動について ▶岩崎 安博(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座) P1-5 離島からの施設間搬送におけるドクターヘリ活動状況及び課題 ▶中道 親昭(国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター) P1-6 ドクターヘリ夜間運航のあり方について ▶早川 達也(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 25 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 2 会場( あ ぶ く ま ) 9:00 〜 10:10 一般演題 1:搬送体制 座長 荻野 隆光(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) O1-1 「熊本型」ヘリ救急搬送体制の現状 ▶山田 周(国立病院機構熊本医療センター 救命救急・集中治療部) O1-2 広島県の発進基地方式ドクターヘリ始動 ▶廣橋 伸之(広島大学病院) O1-3 宮崎県ドクターヘリによる地域医療支援を支えるシステム ▶金丸 勝弘(宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター) O1-4 山形ドクターヘリの運航実績と問題点 ▶瀬尾 伸夫(山形県立救命救急センター) O1-5 静岡県東部ドクターヘリ再編のための取り組み ▶大森 一彦(順天堂大学医学部附属静岡病院 救急診療科) O1-6 兵庫県南部ドクターヘリの運用について ▶小野 真善(兵庫県立加古川医療センター 救命救急センター) O1-7 施設間搬送から見たドクターヘリの地域における有用性 ▶高橋 功(手稲渓仁会病院 救命救急センター) 10:10 〜 11:20 一般演題 2:広域連携搬送 座長 須田 高之(水戸済生会総合病院 救命救急センター) O2-1 NPO による医療過疎地域における救急ヘリの自主運航の課題 ▶小濱 正博(北部地区医師会病院 救急部) O2-2 当院独自の離島・へき地要請マニュアルの有効性を検証する ▶合原 則隆(久留米大学病院 高度救命救急センター) O2-3 県境を超えたドクターヘリ連携に関する報告 ▶小永田 崇(鹿児島市立病院 救命救急センター) O2-4 医療事情を考慮した病院選定〜医療圏を超えたドクターヘリ搬送〜 ▶岩下 具美(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) O2-5 山口県ドクターヘリ広域運航開始および今後の展望についての報告 助永 佳弘(朝日航洋株式会社 西日本航空支社 運航部 中国グループ) O2-6 ドクターヘリ広域連携・消防防災ヘリとの連携 広島県の取り組み ▶大谷 直嗣(広島大学 救急医学) O2-7 島根県ドクターヘリ:広域連携体制の導入 ▶新納 教男(島根県立中央病院 救命救急科) 26 第 20 回日本航空医療学会総会 12:50 〜 13:30 鼎 談 司会 篠田 伸夫(認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク) 「ドクターヘリ 20 年を振り返る」 ▶小濱 啓次(川崎医科大学) ▶野口 宏(愛知県救急医療情報センター 統括センター) ▶西川 渉(日本航空医療学会 監事) 14:00 〜 16:00 ワークショップ 災害時におけるドクターヘリ─運航会社からの提言─ 司会 横田 英己(朝日航洋株式会社 航空事業本部 営業統括部) 兵藤 敬(中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課) WS-1 広域災害における航空機統括の現状とその課題 ▶兵藤 敬(中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課) WS-2 広域 DMAT におけるドクターヘリの位置付け ▶鶴本浩一郎(朝日航洋株式会社 東日本航空支社運航部 EMS グループ) WS-3 DMAT と CS ▶小野寺貴史(朝日航洋株式会社 東日本航空支社 運航部 運航管理 G) WS-4 ドクターヘリ広域運用の拡大と運航管理システム ▶神田 正和(学校法人ヒラタ学園 航空事業本部) WS-5 ドクターヘリの災害活動に必要な情報の共有 ▶高橋 宏之(中日本航空株式会社 航空管理センター 運行管理室 EMS 課) 16:00 ~ 17:00 一般演題 3:脳卒中 座長 杉山 聡(埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター) O3-1 岩手県における脳卒中疑い患者搬送のドクターヘリ介入の事前検討 ▶大間々真一(岩手医科大学医学部 救急医学講座) O3-2 標高 2400m ! 槍ヶ岳単独登山中の脳梗塞から社会復帰した一例 ▶高山 浩史(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) O3-3 ドクターヘリ搬送後に rt-PA が投与された急性期脳梗塞 15 例の検討 ▶藤井 公一(獨協医科大学病院 救命救急センター) O3-4 脳卒中患者におけるドクターヘリの有用性の検討 ▶井手 善教(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) O3-5 脳卒中が示唆される症例におけるドクターヘリ要請の現状と課題 ▶米盛 輝武(浦添総合病院 救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 27 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 2 会 場 ( あ ぶく ま ) O3-6 ドクターヘリにおける脳卒中の病院前診断と初期診療の問題点 ▶越後 整(久留米大学病院 高度救命救急センター) 17:00 ~ 18:00 一般演題 4:CPA・心疾患 座長 小倉 真治(岐阜大学医学部附属病院 高次救命救急センター) O4-1 心マッサージ下でドクターヘリ搬送し、社会復帰できた一例 ▶新田 憲市(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) O4-2 IABP 装着患者の搬送から得た教訓 ▶林 眞紀(水戸済生会総合病院 看護部 救命救急センター) O4-3 ルーカス 2 ™ 導入と心肺停止患者への対応の変化 ▶金田浩太郎(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター) O4-4 ドクターヘリが出動した CPA 症例に対する有効性の検討 ▶清水 隆文(手稲渓仁会病院 救命救急センター) O4-5 三重県ドクターヘリの現場出動における心疾患症例の現状 ▶石倉 健(三重大学医学部附属病院 救命救急センター) O4-6 急性冠症候群におけるドクターヘリ有用性の検討 ▶前山 博輝(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) 28 第 20 回日本航空医療学会総会 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 3 会場(あ づ ま ) 9:00 ~ 9:40 一般演題 5:検証(看護) 座長 川谷 陽子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) O5-1 事例検討におけるフライトナースの学習効果 ▶吉田 益美(国保直営総合病院 君津中央病院 救命救急センター 看護師) O5-2 フライトドクターとフライトナースのデブリーフィングへの思い ▶三谷佳世子(島根県立中央病院 救命救急センター外来) O5-3 グループディスカッションによる事後検証会の評価 ▶石倉美穂子(順天堂大学医学部附属静岡病院) O5-4 プレホスピタル活動における看護実践行動と思考に関する研究 ▶山本 環(手稲渓仁会病院 救命救急センター) 9:40 ~ 10:20 一般演題 6:安全管理(看護) 座長 野澤 陽子(順天堂大学医学部附属静岡病院 救命救急センター) O6-1 ドクターヘリに関わる病院内地上関係者の安全管理 ▶飛松 典子(国立病院機構長崎医療センター) O6-2 リスクアセスメントによるドクターヘリクルーのリスク管理 ▶坂田久美子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) O6-3 フライトナースのリスク回避志向性と援助規範意識に関する検討 ▶高橋 誠一(埼玉医科大学総合医療センター 看護部) O6-4 ドクターヘリにおける特定看護師業務試行事業実施の現状と課題 ▶川谷 陽子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救急外来) 10:20 ~ 11:20 一般演題 7:コミュニケーション(看護) 座長 内藤ゆみえ(埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター) O7-1 二基地病院の円滑な共同運航を目指して─フライトナース会の役割 ▶竹中 由佳(伊勢赤十字病院) O7-2 二基地病院のフライトナース会の成果と課題 ▶太田 智子(三重大学医学部附属病院 総合集中治療センター) O7-3 医療機関との連携強化を目指して アンケートから得られた課題 ▶佐々木ひとみ(旭川赤十字病院 救命救急センター) O7-4 ドクターヘリ看護記録および申し送りの評価 ▶斎藤 由実(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 29 O7-5 フライトチームにおける情報の共有~情報共有の方法とその変化~ ▶森田 須美(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) O7-6 ドクターヘリの活動におけるフライトナースの情報伝達について ▶宮崎 孝光(手稲渓仁会病院 救命救急センター) 14:00 ~ 15:20 一般演題 8:災害時の活動 座長 中野 実(前橋赤十字病院 高度救命救急センター) O8-1 ヘリコプターが参加する防災訓練時の放射線量計測と安全管理 ▶長谷川有史(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) O8-2 気仙沼災害医療における航空医療搬送 ▶成田 徳雄(気仙沼市立病院 脳神経外科) O8-3 日常時から災害時に対応可能なデジタルペン患者情報伝送システム ▶井上 貴博(川崎医科大学 救急医学) O8-4 災害時でのヘリ活用の一考察~民間救急ヘリ MESH の活動から~ ▶筒井 清隆(北部地区医師会病院 看護部) O8-5 発災時ドクターヘリ派遣に伴う必要運航備品 ▶中田 泰博(朝日航洋株式会社 航空事業本部 東日本航空支社 整備部 EMS グループ) O8-6 被災地拠点空港における民間旅客機の協力・支援についての検証 ▶青木 悟郎(航空医療搬送研究所 /JIAT) O8-7 白鳥は飛べず~広域災害時の民間医療ヘリの役割の考察~ ▶冨岡 譲二(社会医療法人財団池友会 救急搬送システム部) O8-8 県の防災へのドクターヘリとしての関わり~沖縄県ドクターヘリ~ ▶八木 正晴(浦添総合病院 救命救急センター) 15:20 ~ 16:10 一般演題 9:教育(看護) 座長 藤尾 政子(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) O9-1 病棟勤務でのフライトナースへの道 Off-JT スタッフ参加の有効性 ▶河合 梢(釧路孝仁会記念病院) O9-2 フライトナースの育成における活動可視化の試み ▶中澤 弘子(埼玉医科大学総合医療センター 看護部) O9-3 現任フライトナースの看護の質の向上を図るための取り組み ▶横内まゆみ(山梨県立中央病院 救命救急センター) O9-4 プレホスピタルにおける看護活動の実態と教育プログラムの検討 ▶水野 憲宏(日本医科大学千葉北総病院 看護科) 30 第 20 回日本航空医療学会総会 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 3 会 場 ( あ づま ) O9-5 フライトナース委員会におけるフライトナースラダーの作成 ▶山崎 早苗(東海大学医学部付属病院) 16:10 ~ 16:50 一般演題 10:現場活動(看護) 座長 斎藤 由実(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) O10-1 緊急 O 型輸血の持ち出しの現状と今後の課題 ▶埇田 麻衣(東海大学医学部付属病院 看護部) O10-2 ドクターヘリ搬送における保温対策の一工夫 ▶山内 恒平(市立釧路総合病院 救命救急センター) O10-3 サーキットレースにおけるドクターヘリの有効性 ▶田中 裕樹(エビスサーキット) O10-4 岩手県ドクターヘリにおける高速道路事故事例に対する活動報告 ▶佐々木美里(岩手医科大学附属病院 高度救命救急センター) 16:50 ~ 17:30 一般演題 11:役割(看護) 座長 一戸 良子(国保直営総合病院君津中央病院 救命救急センター) O11-1 病院前救急診療に求められる看護師の役割 ▶藤巻ゆかり(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) O11-2 多数傷病者発生時におけるフライトナースの役割、今後の課題 ▶千葉 実(浦添総合病院 救命救急センター) O11-3 フライトナースの役割を家族看護の面から考察する ▶福本 真也(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) O11-4 他医療機関で活動するフライトナースの役割 ▶新 友香子(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) 17:30 ~ 18:00 一般演題 12:その他(看護) 座長 座長 小田桐綾子(八戸市立市民病院 救命救急センター) O12-1 AMTC 学会参加と AIRLIFT NORTHWEST での経験から ▶藤尾 政子(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) O12-2 シアトルにおける AMTC2012 参加、ALNW 研修報告 ▶坂田久美子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) O12-3 教育機関との連携によるドクターヘリ事業推進の試み ▶内藤ゆみえ(埼玉医科大学総合医療センター 看護部) 第 20 回日本航空医療学会総会 31 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 4 会場( し の ぶ ) 9:00 ~ 10:10 一般演題 13:固定翼 座長 浅井 康文(函館新都市病院) O13-1 海上航空医療搬送の実態について 三自衛隊の海上搬送の実態 ▶吉田 泰行(威風会栗山中央病院 耳鼻咽喉科・健康管理課) O13-2 日本初の自衛隊ヘリコプターによる組織的救急救護搬送 ▶滝口 雅博(公益財団法人青森県総合健診センター附属あおもり健康管理センター) O13-3 北海道道南地区における航空医療体制の現状と課題 ▶岡本 博之(市立函館病院 救命救急センター) O13-4 災害時におけるローカル空港への医療優先固定翼機搬送の可能性 ▶籏本 恵介(札幌東徳洲会病院 救急総合診療部) O13-5 奄美群島における航空機搬送の現状 ▶原 純(鹿児島県立大島病院) O13-6 社会医療システムとしての医療優先固定翼機の本格運航を目指して ▶小野寺英雄(手稲渓仁会病院) O13-7 医療優先固定翼機メディカルウイングの今後 ▶丹野 克俊(札幌医科大学 救急医学講座) 10:10 ~ 10:50 一般演題 14:ドクヘリとコラボレーション 座長 伊関 憲(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) O14-1 静岡県西部におけるドクターヘリと消防ヘリの共働について ▶矢野 賢一(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター) O14-2 山間地域における交通救助事案の教訓 ▶鈴木 秀幸(浜松市消防局 北消防署 三ケ日出張所) O14-3 熊本型における防災ヘリ救助活動とドクターヘリの連携について ▶金子 孝行(熊本県防災消防航空隊) O14-4 消防防災航空隊における救急活動について ▶高橋 哲(兵庫県消防防災航空隊 神戸市消防局航空機動隊) 10:50 ~ 11:30 一般演題 15:地域運用 座長 瀬尾 伸夫(山形県立救命救急センター) O15-1 ドクターヘリ運用に関する県医師会のかかわり─県医師会 DH-WG ─ ▶安田 貢(国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター) O15-2 ドクターヘリの円滑で効果的な運用を目指して ▶山田 大輔(手稲渓仁会病院 経営管理部) 32 第 20 回日本航空医療学会総会 O15-3 二基地病院で共有するデータベース構築の試み ▶説田 守道(伊勢赤十字病院 救命救急センター) O15-4 ドクターヘリ潜在需要件数調査によるヘリ配備の有用性について ▶篠崎 正博(岸和田徳洲会病院 救命救急センター) 14:00 ~ 15:00 一般演題 16:外因性疾患 1 座長 阪本雄一郎(佐賀大学医学部附属病院 救命救急センター) O16-1 広範囲熱傷患者の病院間連携にドクターヘリが活用された一症例 ▶寺島 嗣明(愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科) O16-2 ドクターヘリにて航空搬送を行った減圧症の 2 例 ▶田中 真生(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座) O16-3 ドクターヘリ早期介入で救命した日本刀による胸腹部刺傷の一例 ▶大坂 裕通(順天堂大学医学部附属静岡病院 救急診療科) O16-4 複数の重症傷病者の発生に対し、複数の航空搬送を使用した事案 ▶阿部 良伸(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) O16-5 岐阜県ドクターヘリのスポーツ関連傷病者に対する取り組み ▶橋本 孝治(岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター) O16-6 日本外傷データバンク(2004-2012)を利用した、HEMS と GEMS の比較 ▶土谷 飛鳥(国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター) 15:00 ~ 16:00 一般演題 17:外因性疾患 2 座長 長谷川有史(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) O17-1 愛知県ドクターヘリで対応した、農作業機具による事故について ▶青木 瑠里(愛知医科大学医学部 地域救急医療学寄付講座) O17-2 熱中症に対するドクターヘリの有用性の検討 ▶原 文祐(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) O17-3 重症外傷症例に対するドクターヘリの効果の検討 ▶町田 浩志(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科) O17-4 三重県ドクターヘリは外傷例の予後を改善したか ▶藤井 幸治(伊勢赤十字病院 救命救急センター) O17-5 ドクターヘリで対応した外因性傷病者の検討 ▶山田 裕彦(岩手医科大学 救急医学講座) O17-6 山梨県ドクターヘリによる外傷患者の集約と有効性 ▶岩瀬 史明(山梨県立中央病院 救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 33 第 1 日目 (11 月 15 日) 第 4 会 場 ( しの ぶ ) 16:00 ~ 16:50 一般演題 18:内因性疾患・その他 座長 岡田 眞人(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター) O18-1 急性期大動脈疾患に対するドクターヘリ有用性の検討 ▶小林 巌(旭川赤十字病院 救命救急センター) O18-2 ドクターヘリにおける急性胸部大動脈解離患者対応の問題点 ▶荻野 隆光(川崎医科大学附属病院 救急科・高度救命救急センター) O18-3 ドクターヘリによる周産期ドクターデリバリーの導入と効果 ▶平川 英司(鹿児島市立病院 総合周産期母子医療センター 新生児科) O18-4 ドクターヘリによる小児外傷患者の PICU への集約化 ▶志賀 一博(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 救急科) O18-5 新生児救急搬送運用開始に向けた模擬訓練の実施 ▶常川 仁子(青森県立中央病院 救命救急センター) 16:50 ~ 18:00 一般演題 19:一般 座長 松島 久雄(獨協医科大学病院 救命救急センター) O19-1 沖縄県ドクターヘリのレジデント教育~ OJT 開始基準の作成~ ▶北原 佑介(浦添総合病院 救急総合診療科 救命救急センター) O19-2 フライトスタッフの新しい育成方法について─宮崎方式の紹介─ ▶長野 健彦(宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター) O19-3 救急隊員のヘリ搭乗実習は何をもたらすか ▶須田 高之(水戸済生会総合病院 救命救急センター) O19-4 積雪時の活動について ▶中村 伸好(中日本航空株式会社 ヘリコプター運航部) O19-5 山形県ドクターヘリの未出動事案の検討 ▶辻本 雄太(山形県立救命救急センター 救急科) O19-6 北総ドクターヘリを補完する千葉県ラピッドカー~運用の現状 ▶亀山 大介(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) O19-7 徳島県ドクターヘリにおけるバックアップシステムの報告 ▶奥村 澄枝(徳島県立中央病院 ドクターヘリチーム) 34 第 20 回日本航空医療学会総会 第 1 日目 (11 月 15 日) 4 階 ギャラリー 14:00 ~ 14:30 基地病院ポスター発表 座長 八木 正晴(浦添総合病院 救命救急センター) P-1 日本最南端のドクターヘリ ▶波止 綾子(沖縄県ドクターヘリ・浦添総合病院 救命救急センター) P-2 サイドローディング式ドクターヘリ AW109SP についての検討 ▶吉原 秀明(鹿児島市立病院 救命救急センター) P-3 熊本赤十字病院のドクターヘリの活動 ▶桑原 謙(熊本赤十字病院 救命救急センター) P-4 長崎県ドクターヘリ紹介 ▶岸川 貴司(国立病院機構長崎医療センター 看護部) 14:30 〜 15:10 基地病院ポスター発表 座長 谷川 攻一(広島大学病院 高度救命救急センター) P-5 安全運航の面からみた、宮崎県ドクターヘリ運航について ▶白尾 英仁(宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター) P-6 ドクターヘリ基地病院─大分大学医学部附属病院の特徴─ ▶石井 圭亮(大分大学医学部附属病院 救命救急センター) P-7 福岡県ドクターヘリ(Dr ヘリ)の実績と今後の展望 ▶高松 学文(久留米大学病院高度救命救急センター) P-8 広島県ドクターヘリの特徴 ▶大谷 直嗣(広島大学病院 高度救命救急センター) P-9 消防防災ヘリと歩む高知県ドクターヘリ ▶伊藤 敬介(高知医療センター 救命救急センター) 15:10 〜 15:40 基地病院ポスター発表 座長 松原 康博(島根県立中央病院 救命救急センター) P-10 徳島県ドクターヘリフライトナースのストレスはこれ! ▶飯藤 薫(徳島県立中央病院) P-11 山口県ドクターヘリ運航の特徴 ▶金田浩太郎(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター) P-12 島根県ドクターヘリ ▶山森 祐治(島根県立中央病院) P-13 岡山県ドクターヘリ 13 年の軌跡 ▶川田 幸恵(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 35 15:40 〜 16:20 基地病院ポスター発表 座長 加藤 正哉(和歌山県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) P-14 豊岡病院ドクターヘリ 創意工夫とその成果 ▶濱 武(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) P-15 和歌山県ドクターヘリの活動 ▶波元 裕也(和歌山県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) P-16 大阪府ドクターヘリ ▶城戸 靖章(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター) P-17 三重県ドクターヘリ 伊勢赤十字病院の取り組み ▶水野 光規(伊勢赤十字病院) P-18 三重県ドクターヘリ 三重大学医学部附属病院の紹介 ~全県的な救急医療の質の向上を目指して~ ▶石倉 健(三重大学医学部附属病院 救命救急センター) 16:20 〜 17:00 基地病院ポスター発表 座長 村松 武明(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター) P-19 愛知県ドクターヘリの搬送先病院選定についての検討 ▶三木 靖雄(愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科) P-20 岐阜県ドクターヘリの現状と特徴 ▶名知 祥(岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター) P-21 運航開始 2 年、新たな取組み ▶江津 篤(信州ドクターヘリ松本 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) P-22 信州ドクターヘリ佐久の特徴〜再構築に向けての取り組み〜 ▶岡田 邦彦(JA 長野厚生連佐久総合病院 救命救急センター・ICU) P-23 静岡県西部ドクターヘリの特徴 ▶中谷 充(総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 救急科) 36 第 20 回日本航空医療学会総会 第 1 日目 (11 月 15 日) 4 階ギャラリー 17:00 〜 17:40 基地病院ポスター発表 座長 岡本 健(順天堂大学医学部附属静岡病院 救命救急センター) P-24 水難事故事例のドクターヘリ搬送における当院の対応 ▶岡本 健(順天堂大学医学部附属静岡病院 救急診療科) P-25 山梨県におけるドクターヘリ活動報告〜 2 年目の改善と課題〜 ▶大嶽 康介(山梨県立中央病院 救命救急センター) P-26 神奈川県ドクターヘリの特徴 ▶青木 弘道(東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター) P-27 君津ドクターヘリの特徴〜千葉県南部の要、君津ドクターヘリ〜 ▶今野 裕美(国保直営総合病院君津中央病院 救命救急センター) P-28 北総ドクターヘリのご紹介 ▶亀山 大介(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) 第 20 回日本航空医療学会総会 37 第 2 日目 (11 月 16 日) 第 1 会場( F T ホ ー ル ) 9:00 ~ 9:50 Pros & Cons ドクターヘリの要請方式:キーワード 対 消防の判断 司会 鈴木幸一郎(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) P&C-1 消防の決断─キーワードにプラス α があればなお良い─ ▶中川 隆(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) P&C-2 ドクターヘリの目的を果たすための方策~キーワード方式は有用~ ▶小林 誠人(公立豊岡病院 但馬救命救急センター) 9:50 ~ 11:10 パネルディスカッションⅡ ドクターヘリの安全管理 司会 篠﨑 正博(岸和田徳洲会病院 救命救急センター) 西川 渉(日本航空医療学会 監事) P2-1 基地病院全体で安全管理を考える体制づくりの必要性 ▶中川 儀英(東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター) P2-2 ドクターヘリの安全管理─看護師の立場から─ ▶高野 裕子(和歌山県立医科大学附属病院) P2-3 ドクターヘリの安全管理─操縦士の立場から─ ▶小島 鋭久(中日本航空株式会社 ヘリコプター運航部 福島県ドクターヘリ基地) P2-4 整備士が出来る安全管理 ▶永田 正文(セントラルヘリコプターサービス株式会社 運航部 岐阜グループ) P2-5 複数傷病者発生事案におけるドクターヘリ活動の安全管理 ▶花田 勝則(西日本空輸株式会社 運航部 安全推進室) 11:10 ~ 12:10 招請講演 司会 嶋津 岳士(大阪大学大学院医学系研究科 救急医学) 「ドクターヘリの過去・現在・未来」 ▶益子 邦洋(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) 14:30 ~ 16:30 市民公開講座 命をつなぐ救急医療 第 1 部 「医療ドラマと現実の医療の関係」 ▶増本 淳(フジテレビジョン ドラマ制作部) 第 2 部 「発症から治療開始までの時間を短くするための最適搬送〜救急における情報システムとドクターヘリの役割〜」 ▶青木 則明(School of Biomedical Informatics, University of Texas HealthScience Center at Houston) 38 第 20 回日本航空医療学会総会 第 2 日目 (11 月 16 日) 第 2 会場(あ ぶ く ま ) 9:00 ~ 11:00 シンポジウムⅡ ドクターヘリにおけるフライトナースの役割 司会 坂田久美子(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) 山﨑 早苗(東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター) S2-1 愛知県ドクターヘリにおける隣県ドクターヘリと防災ヘリとの連携 ▶金岡 正枝(愛知医科大学病院 高度救命救急センター) S2-2 認定指導者の立場からフライトナースの育成を考える ▶北内梨都子(東海大学医学部付属病院 循環器・心臓血管外科病棟) S2-3 災害時におけるドクターヘリの運用と災害教育の実態 ▶宮崎 博之(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) S2-4 スキー場におけるパトロール隊救急隊との活動における模索 ▶岩崎 弘子(JA 長野厚生連佐久総合病院 救急外来) S2-5 岡山県ドクターヘリにおけるセカンド体制の現状 ▶藤尾 政子(川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター) S2-6 小児救急への取り組み 現状と課題 ▶森島 克明(順天堂大学医学部附属静岡病院) 第 20 回日本航空医療学会総会 39 第 2 日目 (11 月 16 日) 第 3 会場( あ づ ま ) 9:00 ~ 10:00 一般演題 20:病院前活動 座長 高橋 功(手稲渓仁会病院 救命救急センター) O20-1 遠隔地におけるドクターヘリと現場直近病院との連携の検討 ▶山口 征吾(新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター) O20-2 高速道路に対する岩手県ドクターヘリの取組み ▶松本 尚也(岩手医科大学 救急医学講座 岩手県高度救命救急センター) O20-3 沖縄県北部におけるヘリによる初期治療開始時間の短縮効果 ▶田中 浩二(北部地区医師会病院 救急科) O20-4 医師搭乗体制の違いにおける現場滞在時間の分析 ▶菊池 仁(獨協医科大学病院 救命救急センター) O20-5 当院の病院前診療における処置適応、疾患対応コンセンサスの統一 ▶石上 耕司(国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター) O20-6 フライトドクターも共にホイストし医療行為を継続した事案 ▶池田 武史(相澤病院 救護災害医療センター) 10:00 ~ 11:00 一般演題 21:運航システム 座長 北村 伸哉(国保直営総合病院君津中央病院 救命救急センター) O21-1 新潟県ドクターヘリ事業における J ターンが多いわけ ▶本多 忠幸(新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター) O21-2 群馬県において救急現場 9 割,J-turn6 割が意味すること ▶町田 浩志(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科) O21-3 J ターン搬送における申し送り内容の問題点 ▶小田部美子(国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター) O21-4 ドクターヘリ運用におけるキーワード方式導入の効果について ▶増田 幸子(国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター) O21-5 鹿児島県ドクターヘリキーワード方式の改善に向けた取り組み ▶吉原 秀明(鹿児島市立病院 救命救急センター) O21-6 キーワード方式要請基準導入前後での救急現場出動に関する検討 ▶福井 英人(浦添総合病院 救命救急センター) 40 第 20 回日本航空医療学会総会 第 2 日目 (11 月 16 日) 第 4 会場(し の ぶ ) 9:00 ~ 10:10 一般演題 22:運航管理 座長 岩下 具美(信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター) O22-1 消防の広域化とデジタル無線化に伴うドクターヘリ運用への影響 ▶三木 靖雄(愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科) O22-2 医師派遣現場からのスマートフォン動画伝送を用いた情報通信効果 ▶本村 友一(日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター) O22-3 医療福祉用無線アンケート結果に見る混信の現状と提言 ▶緒方 龍一(中日本航空株式会社 航空事業本部) O22-4 搭載性向上型ヘリ運航管理システム研究開発(機上システム開発) ▶船坂 直哉(ナビコムアビエーション株式会社) O22-5 搭載性向上型ヘリ運航管理システム研究開発 ▶小林 啓二(宇宙航空研究開発機構 航空本部 防災・小型機運航技術セクション) O22-6 航空気象情報とドクターヘリ・ドクターカー位置情報一元管理 ▶高森 美枝(株式会社ウェザーニューズ 航空気象コンテンツサービス) O22-7 GIS を用いたドクターヘリとドクターカー運用に関する検討 ▶遠藤 裕(新潟大学医歯学総合病院 高度救命救急センター) 10:10 ~ 11:00 一般演題 23:ヘリポート・ランデブーポイント 座長 滝口 雅博((財)青森県総合検診センター附属あおもり健康管理センター) O23-1 ヘリポート導入による救急医療体制の現況 ▶石川 敏仁(枡記念病院 脳神経外科) O23-2 病院ヘリポートがないためにかかる沖縄県ドクターヘリの引継時間 ▶葵 佳宏(浦添総合病院 救命救急センター) O23-3 当基地病院における格納庫の有用性 ▶酒庭 康孝(埼玉医科大学総合医療センター 救急科(ER)) O23-4 ランデブーポイントの使用状況・現状に関する検討 ▶奥村 澄枝(徳島県立中央病院 ドクターヘリチーム) O23-5 ドクターヘリの広域連携に伴うランデブーポイントの共有について ▶岡澤 祐介(中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室 EMS 課) 第 20 回日本航空医療学会総会 41 第 2 日目 (11 月 16 日) 4 階ギャラ リ ー 9:00 ~ 9:40 基地病院ポスター発表 座長 小池 伸享(前橋赤十字病院 高度救命救急センター) P-29 埼玉県ドクターヘリの近況 ▶有馬 史人(埼玉医科大学総合医療センター 救急科) P-30 栃木県ドクターヘリの場合 ▶魚住 翠子(獨協医科大学病院 救命救急センター) P-31 群馬県ドクターヘリ ▶城田 智之(前橋赤十字病院 高度救命救急センター) P-32 プレホスピタルケア構築への救命救急センターの取り組み ▶飯田 薫(水戸済生会総合病院 救命救急センター) P-33 水戸医療センター(MMC)におけるドクターヘリ運用 ▶皆川 千草(国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター) 42 第 20 回日本航空医療学会総会 第 2 日目 (11 月 16 日) 2 階 ロビー 9:40 〜 10:20 基地病院ポスター発表 座長 山田 裕彦(岩手医科大学附属病院 岩手県高度救命救急センター) P-34 新潟県ドクターヘリの特徴 ▶山口 征吾(新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター) P-35 福島県ドクターヘリの活動状況 ▶鈴木 剛(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) P-36 山形県ドクターヘリ ▶芳賀 圭子(山形県立中央病院 救急室) P-37 岩手県ドクターヘリの紹介 ▶山田 裕彦(岩手医科大学 高度救命救急センター) P-38 秋田県ドクターヘリの特徴 ▶藤田 康雄(秋田赤十字病院 救命救急センター) 10:20 〜 11:00 基地病院ポスター発表 座長 奈良 理(手稲渓仁会病院 救命救急センター) P-39 SPIRITS OF HACHINOHE はサンダーバード作戦と劇的救命 ▶吉岡 隆文(八戸市立市民病院 救命救急センター) P-40 ドクターヘリによる新生児搬送体制の構築を目指して ▶齋藤 兄治(青森県立中央病院 救命救急センター) P-41 道東ドクターヘリの紹介 ▶泉谷 勇(市立釧路総合病院 救命救急センター) P-42 道北ドクターヘリ基地ではこうしている ▶富田 健二(旭川赤十字病院 救命救急センター 道北ドクターヘリコプター基地病院) P-43 道央ドクターヘリ~一人でも多くの命を救うために~ ▶岩倉 由幸(手稲渓仁会病院) 第 20 回日本航空医療学会総会 43 第 2 日目 (11 月 16 日) 福島県立医科大学災害医療センター 13:30 ~ 16:30 被ばく医療セミナー 講師 長谷川有史(福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター) Ⅰ.福島の放射線環境測定実習 Ⅱ.被ばく・汚染を伴う傷病者の救急診療実習 第 3 日目 (11 月 17 日) 東京電力福島第一原子力発電所 7:00 ~ 東京電力福島第一原子力発電所視察 44 第 20 回日本航空医療学会総会 抄録集 特別講演 ドクターヘリの発展の跡をふりかえって ○ 國松 孝次 認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク 我が国のドクターヘリは、2013 年 7 月末現在、35 道府県に 41 機が配備されるに至り、今や、ごく一 部の地域を除きドクターヘリによる救急医療サービスを提供できる全国ネットワークが完成しつつある。 2001 年の運航開始以来、やや停滞気味であったドクターヘリ導入機運を一気に好転したのは、2007 年 の「ドクターヘリ特別措置法」の制定であった。この法律が規定する内容は、それまで、ドクターヘリ 導入促進事業の実施要項を定めていた厚生労働省局長通達の内容と、さほど異なるところはない。ただ、 ドクターヘリの導入とその運航の基本的な事項を、国権の最高機関である国会が制定する法律により明 確に規定したことは、ドクターヘリの導入促進に向けて画期的なインパクトを持つものとなった。また、 各道府県がドクターヘリの導入に二の足を踏む実質的な理由として、ドクターヘリの運航費用を賄う財 政的ゆとりがないことが挙げられていたが、この点に関しては、2009 年、総務省自治財政局の、ドク ターヘリ運航費用を特別交付税交付金の支給対象に含めるという大英断により大幅に改善され、じ後、 全国各地のドクターヘリの導入が急速に進むことになった。 ドクターヘリの全国ネットワークの整備に 伴い、今後は、ドクターヘリの広域運用、周産期・小児医療など他の医療部門との連携の強化、大災害 時におけるドクターヘリの有効活用などの課題が解決を迫られてくるが、いずれも、広く関係部門との 協働なしには対処出来ない課題ばかりである。国民各層の理解と共感を得る努力を重ねながら、幅広い 関係機関を巻き込んで、ドクターヘリを、救急医療の中核に制度的に位置づけていく英知が、一層、求 められるようになると思われる。 46 第 20 回日本航空医療学会総会 招請講演 ドクターヘリの過去・現在・未来 ○ 益子 邦洋 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 我が国のドクターヘリは、阪神・淡路大震災の反省と、救命救急センターにおける外傷診療の反省に 立ち導入が決定した。当初、基地病院の整備は進まなかったが、2007 年のドクターヘリ特別措置法は状 況を一変させ、2012 年度には 40 の基地病院で 17,557 件の出動を達成した。2011 年の東日本大震災では 全国のドクターヘリが被災地に参集し、18 機で 100 人以上の被災者をヘリ搬送して阪神・淡路大震災と の違いを鮮明にした。ドクターヘリの効果は、早期治療開始、救命率向上、後遺症軽減、入院日数削減、 医療費削減等であるが、これらは攻めの救急医療によってもたらされたものであり、ドクターヘリは今 や救急医療の“オプション”ではなく、“スタンダード”としての地位を確立した。日本航空医療学会が ドクターヘリ事業の推進に貢献したことは言うまでもないが、これを強力に支援したのは認定 NPO 法人 救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net) 、ドクターヘリ推進超党派議員連盟、ドクターヘリ普及促進懇 談会である。HEM-Net が推進した研修制度により 2012 年 12 月末までに 120 名の医師・看護師が研修を 受け、現在、全国のドクターヘリに搭乗して地域住民の命と健康を守っている。HEM-Net、官を代表す る超党派国会議員連盟、民を代表するドクターヘリ普及促進懇談会が進めている我が国のドクターヘリ 事業は、21 世紀における「新しい公共」のモデルであり、特にアジア諸国の救急医療関係者から熱い注 目を浴びている。ドクターヘリ事業推進とともに我が国の交通事故統計は改善し、2012 年の 24 時間死 者数は 4,411 人、人口 10 万人当たりの 30 日死者数は 4.5 で世界最高水準である。しかしながら、政府目 標の交通事故死者数 3,000 人以下を達成するためには、ドクターヘリの運航時間延長、ドクターヘリと消 防防災ヘリの連携、ドクターヘリやラピッドカーを活用した 24 時間体制の病院前救急診療、日本版 15 分ルールの制度化等を推進しなければならない。 第 20 回日本航空医療学会総会 47 シンポジウムⅠ S1- 1 広域災害急性期におけるドクターヘリの位置づけと運用 ○ 松本 尚 1,2、原 義明 1、本村 友一 1、益子 邦洋 1、小井土雄一 2,3 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター、2 平成 25 年度厚生労働科学研究小井土研究班、 3 国立病院機構災害医療センター 臨床研究部 1 平成 19 年 7 月の新潟県中越沖地震、平成 20 年 6 月の岩手・宮城内陸地震、平成 23 年 3 月の東日本大 震災の際の実出動を通して、広域災害時急性期においてドクターヘリが、DMAT が主体的に使用できる 移動ツール、搬送ツールとして有用であることが証明された。その後、 (1)所属する道府県の枠を超え て被災地に出動するための根拠について、 「ドクターヘリの災害時運用に関わる要綱案」が作成され(小 井土研究班)、(2)上記 3 度の出動経験から、被災地に参集したドクターヘリを DMAT が統制すること のコンセンサスが得られ、 (3)昨年度には、各地のドクターヘリが被災地に参集する際のルール案が報 告された(本学会「災害時におけるドクターヘリのあり方検討委員会」 ) 。 (1)については、厚生労働省 を介してドクターヘリを運用する道府県に要綱案が示されており、この後、各道府県により対応が検討 されると推察される。 (2)については、参集したドクターヘリの運用に関して、DMAT 事務局内の「統 合部」、被災道府県庁内の「リエゾン」 、DMAT 活動拠点 /SCU 本部内の「指令部」の 3 つによる情報の 集約と発信モデルを策定し、広域医療搬送訓練にて検証作業を行っている(小井土研究班) 。加えて、こ の際の運用情報の管理を目的としたドクターヘリ動態監視システムの導入の検討を進めている。また、 東日本大震災での経験を踏まえ、ドクターヘリが広域医療搬送の一翼を担う可能性も模索している。(3) については、広域災害急性期における「300km ルール」はもっとも単純で実現可能なルールと考えてい る。一方で、急性期後(DMAT 撤収後)や局地災害時における参集については、災害規模と医療ニーズ によりケース・バイ・ケースで対応する方が現実的であろう。この 5 年余りで、広域災害急性期におけ るドクターヘリの運用体制が形として現れてきており、ドクターヘリ事業に係わる医療 / 運航スタッフ 全体への周知と理解を深める時期に来ている。 48 第 20 回日本航空医療学会総会 シンポジウムⅠ S1- 2 ドクターヘリによる遠隔地からの参入の問題点 ○ 山下 典雄 1、宇津 秀晃 1、合原 則隆 1、梅木 道 1、橋本 芳明 2、坂本 照夫 1 1 久留米大学病院 高度救命救急センター、2 西日本空輸株式会社 東日本大震災では当センターから広域医療搬送のための DMAT に加え、ドクターヘリ(以下 DH)に よる出動も行った。しかしながら、福岡県から福島県へという遠距離の出動であるが故に生じた問題点 もあるため、考察を加えて報告する。経過:発災当日、DMAT 第 1 陣の出発準備中に県および DMAT 事務局から DH 出動の可否が打診された。3 月 12 日早朝、DMAT 第 1 陣が福岡空港から自衛隊機で出 発。その後、DH の代替機の存在、DMAT メンバー(4 名)の勤務調整が可能だったことより、DH に よる第 2 陣出動を決定。この時点で DMAT 用資機材は第 1 陣が使用のため、医療資機材は通常の DH 用を追加して積載した。これにパイロット・整備士を含めた 6 人分の飲食料、生活用品などを積み込み、 機内は非常に狭隘となった。BK117C-1 は DH 通常装備に燃料を満タンにし、人員 6 名が搭乗すると新た に積載できる荷物重量は 200kg までであった。各種準備後、12 日 13:10 福岡空港を離陸。岡山市・三 重県津市を経て 17:32 静岡空港到着。翌日の 13 日 9:40 静岡を離陸し筑波ヘリポートを経て 13:18 に 福島県立医大に到着。間もなく被災地内の活動を開始し、14 日 15 時に活動を切り上げ、15:43 福島県 立医大から帰路についた。筑波で 1 泊し、15 日は静岡・三重・高松・北九州の各空港を経て基地ヘリ ポート帰還は 18:19 であった。考察:遠距離からの参集における問題点をまとめると以下のようになる。 1:マンパワー:出動したメンバーの所属では勤務調整による負荷が長時間となった。2:携行資機材: 容量・重量ともに制限を受け不足が生じた。自己完結性に限界あり。 3:移動時間:狭い機内に長時間 の搭乗で疲労が蓄積された。4:DH の不在:代替機がなければ通常 DH 活動不能の時間が長くなる。対 策の提案:災害規模に応じた参集基準と相互支援協定下での地域ブロックからの代表 DH 出動態勢の構 築が必要と考える。また、DH 活動拠点でのロジ機能の充実が求められる。 第 20 回日本航空医療学会総会 49 シンポジウムⅠ S1- 3 関西広域連合による災害時の派遣体制構築への試みと課題 ○ 中川 雄公、大西 光雄、池側 均、入澤 太郎、吉矢 和久、廣瀬 智也、 中村 洋平、嶋津 岳士 大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター 【背 景】 ドクターヘリ(以下、ドクヘリ)はその管轄地域に必要不可欠な救急医療システムとなっている。東 日本代震災(以下、震災)では、16 機のドクヘリが災害医療活動を行った。広範かつ甚大な被害をもた らした災害に対して、ドクヘリの有効性が再認識された一方で、派遣期間中の各々のヘリの管轄地域で は、ドクヘリによる救急医療の提供は不可能となった。震災当時、関西地域では、和歌山県、大阪府、3 府県(京都府・兵庫県・鳥取県)ドクヘリの 3 機が運航していたが、そのうち、大阪府および 3 府県ド クヘリは被災地に出動し、和歌山県ドクヘリのみが関西地域に残った。当時、大阪府および和歌山県は ドクヘリに関して相互補完する協定を締結していたが、遠隔地での災害派遣に関する規定は存在しなかっ た。結果的に、和歌山県と大阪府には、和歌山県ドクヘリによる医療体制が維持されたが、3 府県ドク ヘリは、いずれのヘリとも協定は締結しておらず、通常の救急医療の提供は困難となった。すなわち、 「被災地支援」と「通常の救急医療体制の維持」を両立することが課題となり、その調整を行う体制作り が求められることとなった。 【現時点での対策と課題】 震災後に関西広域連合より発表された関西広域医療連携計画案によれば、今後の災害時には、関西広 域連合が主体となり災害の規模や発災場所に応じた運航調整を行う方針となった。しかし、各々のドク ヘリの運航要領には、災害発生時に基地病院の判断による自主的な派遣が可能であることが明記されて おり、その運航要領との整合性が問題となっている。また、すべてのドクヘリ間で相互補完に関する協 定が結ばれていないこと、ドクヘリの配備が偏在していることから相互補完が困難な地域が存在してい ること、奈良県が関西広域連合に参加していないこと、などが解決すべき課題として残っている。 50 第 20 回日本航空医療学会総会 シンポジウムⅠ S1- 4 南海トラフ巨大地震におけるドクターヘリ対応と高知県の対策 ○ 齋坂 雄一、喜多村泰輔、野島 剛、大森 貴夫、石原 潤子、田中 公章 高知医療センター 救命救急センター 駿河湾から土佐湾にかけての南海トラフを震源とする東海・東南海・南海の 巨大地震の発生確率が切 迫しているなか、内閣府による平成 24 年 3 月と 8 月の被害想定に基づき高知県版の被害想定が公表され た。高知県では 26 市町村で震度 7 の地震が発生し、建物被害は全倒壊数 15 万 3 千棟、津波浸水面積は およそ 1 万 8 千ヘクタール、人的被害は最大で 4 万 2 千人(うち津波による人的被害は 3 万 6 千人) 、直 接経済被害は 9 兆円と予測されている。 そのような被災想定の見直しがはかられるなか、平成 24 年 9 月 1 日の政府主催総合防災訓練では高知 県と徳島県を被災県として想定し、日本 DMAT(災害時医療派遣チーム)と自衛隊機、ドクターヘリに よる広域医療搬送訓練が行われた。東日本大震災において岩手県の花巻空港で展開された地域医療搬送 をひな形に、各機関を横断する運航調整が県災害医療対策本部を中心に行われ、四国における県をまた いだ連携となった。 四国におけるドクターヘリは平成 23 年 3 月に高知県、平成 24 年 10 月に徳島県に導入され、今後は県 境での要請や災害時の相互乗り入れを考慮して協定を結ぶ方向性としている。また災害時には人員や物 資のほかにも各地域からドクターヘリおよび自衛隊、海上保安庁、消防、警察などの回転翼機や固定翼 機が参集する計画がなされているが、支援を受ける側にも相応の体制が必要となる。そのため平成 25 年 3 月に各専門分野からなる「高知県総合防災拠点基本構想」策定委員会が設置され、拠点整備が推進さ れることになった。高知県内の各ブロックに総合防災拠点をおき、参集拠点としての整備、ヘリポート などの駐機場所の確保、ヘリ燃料の確保、県災害対策本部などとの通信機能を整備する計画がなされて いる。以上のドクターヘリの対応とそれを支える総合防災拠点構想について考察を行う。 第 20 回日本航空医療学会総会 51 シンポジウムⅠ S1- 5 福島第一原子力発電所事故におけるドクターヘリ運航 ○ 塚田 泰彦、大久保怜子、鈴木 剛、阿部 良伸、根本 千秋、伊関 憲、 長谷川有史、池上 之浩、島田 二郎、田勢長一郎 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター 福島第一原子力発電所事故において、ドクターヘリ運航上多くの問題が生じました。 【情報の欠如・混乱】 福島第一原子力発電所事故発災後、原発周囲は順次避難地域が拡大されていきましたが、ドクターヘ リや DMAT など病院外医療活動をしている組織に対し国や自治体からの明快な情報はありませんでし た。3 月 15 日に国土交通省航空局から原発周囲 30km は自衛隊機以外飛行禁止との通達を受けましたが、 4 月 27 日には一転し、緊急ヘリ活動は航空法上飛行可能との通達を受けました。福島県ドクターヘリは 3 月 19 日ヘリ運航範囲を原発 30km 圏外、医療活動範囲を原発 20km 圏外と設定しましたが、5 月 9 日 にはヘリ運航範囲を原発 20km 圏外まで変更し、医療スタッフの 20km 圏内突入も可能としました。現 在は、帰還困難区域外を活動範囲としています。 【乗員被ばく・放射性物質による機体汚染の可能性】 原発から生じる放射性プルームを予測する手段も情報もヘリにはありません。空間線量を持続モニター しましたが、ヘリが確実に回避できるか不明でした。 【乗員の体表面汚染・内部被ばく対策】 当初原発周囲出動時に全例防護服装着としていましたが、5 月 9 日の運航範囲変更の際、一般人と同 じ 20km 圏内侵入時に防護服装着と変更しました。 【緊急被ばく医療】 現場に放射線管理要員がいなければ、医師 1 人、看護師 1 人と救急隊員で不安定患者の初期診療と放 射線汚染検査が必要になります。重傷者の被ばく医療を展開するには人員が不足します。 【放射性物質汚染傷病者搬送】 ドクターヘリ出動時に、傷病者が放射線学的汚染の有無は不明なことがありえます。出動に際し、ヘ リ機体内汚染を防ぐ養生の時間はなく、現在も基準を越える放射線汚染傷病者はヘリ搬送しない規定と しています。国難ともいえる原発事故に際し、福島県ドクターヘリは種々の問題を抱えながらも運航し てまいりました。これらの問題点を共有し、今後の航空医療の災害対応を考えていきたい。 52 第 20 回日本航空医療学会総会 シンポジウムⅡ S2- 1 愛知県ドクターヘリにおける隣県ドクターヘリと防災ヘリとの連携 ○ 金岡 正枝 1、坂田久美子 1、三木 靖雄 2 1 愛知医科大学病院 高度救命救急センター、2 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科 【はじめに】 愛知県ドクターヘリでは、救急現場事案において現場直近に着陸し、直接救急現場に入り初療を開始 することがある。その中には複数傷病者、ドクターヘリ 1 機では対応できない救助事案、県内の重複要 請などがある。これらに対して当ドクターヘリは、運航開始時より隣県ドクターヘリ、防災ヘリと互い に連携を図りながら実働していることを報告する。 【対象と方法】 2002 年 1 月から 2013 年 6 月までに愛知県ドクターヘリが連携した隣県ドクターヘリと防災ヘリを対 象とした運航実績を調査し検討した。 【結 果】 ドクターヘリの総出動件数は 5030 件、複数傷病者に対して隣県ドクターヘリとの出動は 22 件、3 機 の同時出動は 3 件、重複要請に伴う隣県ドクターヘリへの依頼は 37 件、防災ヘリとの出動は 37 件であっ た。複数傷病者の場合は、隣県ドクターヘリに応援要請をして現場に同時出動し、医療を開始と共に搬 送先病院に患者が集中しないよう調整し迅速に搬送していた。県境付近を含む県内の重複要請の場合は、 それぞれの患者に早期医療開始ができるように隣県のドクターヘリに要請していた。現場救助事案では、 防災ヘリによって救助された患者とドクターヘリが合流して患者を引継ぎ、医療を開始しながら病院搬 送を行っていた。 【考 察】 複数傷病者に対して隣県ドクターヘリと同時に出動し 2 機で重症患者に初療を開始できたと考える。 また県内の重複要請で県を越えて隣県のドクターヘリに依頼することは、医療圏をカバーしあえるだけ でなく隣県ドクターヘリとより協力体制が得られている。そして、救助を主体とする防災ヘリと医療を 主体とするドクターヘリが、患者にとって最善となるよう相互の機能と役割を有効活用しながら連携す ることは重要と言える。 【結 語】 症例に応じてドクターヘリと複数機が相互の特性を発揮しながら連携を図ることが救命に繋がる。 第 20 回日本航空医療学会総会 53 シンポジウムⅡ S2- 2 認定指導者の立場からフライトナースの育成を考える ○ 北内梨都子 1、峯山 幸子 2、山崎 早苗 2、五十川美惠子 2 1 2 東海大学医学部付属病院 循環器・心臓血管外科病棟、 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 東海大学医学部付属病院では 1999 年よりドクターヘリ試行事業が開始され、これまで質保証のため教 育プログラムの検討を重ねてきた。2008 年よりフライトナースラダーを導入、期待する能力を 4 段階に 分類しステップに応じた教育を行っている。ステップ 1 フライトナースになるための最低条件を満たす レベル ステップ 2 フライトナースとしての実践能力を有するレベル ステップ 3 フライトナースの実 務を実践しているレベル ステップ 4 フライトナース指導者としての能力を有するレベル ステップ 4 のフライトナースは、運行に関わる全てのマネージメントや後輩フライトナースの育成を管理的視点で 見られる者と記されている。当院にはステップ 4 のフライトナースが 3 名在籍しており、フライトナー スの質の保証と向上を図る役割を担っている。そのための具体的な活動として、1)シミュレーション訓 練:ステップ 2.3 を対象に実施し、現場活動のイメージ化を図る、2)OJT:ステップ 2 を対象に実施す ることで、個人にかかる重圧の軽減や緊急時の判断と患者の安全を保証する、3)デブリーフィング:看 護実践の評価・問題点の抽出と安全管理を行いドクターヘリ運行の円滑化を図る、4)指導者間の連携: フライトナースの情報交換をすることで、対象者に合わせた個別的な指導を行うフライトナースの看護 実践は特殊環境にあることで、高度な知識・技術が求められる。そのため、ステップ 4 のフライトナー スは上記の教育を実施することで効果的に質の高いフライトナースを育成する能力が必要と考える。さ らに指導者として自己研鑽や研究活動を通し、卓越したフライトナースとして実践能力を維持・向上す ることも重要な役割である。 54 第 20 回日本航空医療学会総会 シンポジウムⅡ S2- 3 災害時におけるドクターヘリの運用と災害教育の実態 ○ 宮崎 博之 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター 【はじめに】 昨今、災害医療の専門集団 DMAT と機動性のあるドクターヘリの連携は大規模災害時に有効である とされている。福島県立医科大学附属病院は、東日本大震災の際に、全国から多数の DMAT とドクター ヘリ 8 機を受け入れ、災害拠点病院としての役割を果たした。しかし、ドクターヘリの調整には、参集 した DMAT 兼フライトスタッフの協力が不可欠であった。今回の経験から、今後の大規模災害を想定 したドクターヘリの運用ならびにフライトスタッフへの災害教育や訓練が課題と感じ、現状を調査した。 【目 的】 大規模災害時のドクターヘリ運用ならびに教育、訓練の実態を調査し、現状を明らかにする。 【方 法】 全国 44 ドクターヘリ拠点病院を対象に書面にて実態調査を行った。 【結 果】 実態調査の回収率は 63.6%(28 / 44 施設)であった。そのうち、64.2%の施設が大規模災害時におけ るドクターヘリの運用について、運行要領等に具体的に明記されていないと答えた。また、ほとんどの 施設が災害拠点病院に該当するが、ドクターヘリの活用を含めた災害教育や訓練を継続して行うことが 難しいと答えた。特に、フライトスタッフの選考基準のひとつに DMAT 隊員であることは定めていな かった。その理由として、人員確保が困難であることや DMAT 受講が困難であることなどが挙げられ た。DMAT 資格保有者は、医師 4.2 名・看護師 2.9 名であった。 【考 察】 HEM-NET は、災害時にドクターヘリの全国的運用システムを制度化することなどを提言している。 しかし、大震災後であっても未だ災害時の運用については未確立な課題が残っている。また、ドクター ヘリを有する災害拠点病院であっても、全てのフライトスタッフが DMAT などの資格を有していると は限らない。すなわち、大規模災害に対するドクターヘリの運用についてさらなる整備が必要であり、 DMAT 取得に関わらず知識の習得と DMAT 隊員や県内外関係機関との合同訓練など継続した災害教育 が必要である。 第 20 回日本航空医療学会総会 55 シンポジウムⅡ S2- 4 スキー場におけるパトロール隊救急隊との活動における模索 ○ 岩崎 弘子 JA 長野厚生連佐久総合病院 救急外来 平成 24 年 1 月、長野県はスキー発祥 100 周年を迎えた。スキー場の数はおよそ 80 ヶ所で北海道に次 ぎ全国 2 位である。長野県公式ホームページの『スキー再興全国キャンペーン調査報告書』によると、 スキーヤーとスノーボーダーの割合ではスキーヤーの方が多く、長野県のスキー場は地元を中心とした 来場者のほか、関東 70%、東海 35%、近畿 20%の割合での来場者が多くなっている。また、スキー場 での実際の来場者は「学生」 「友人」という結果であった。スキー場での特徴は、外傷での要請が多く、 単独外傷のほかスキーやスノーボーダーでの衝突で加害事故になることもあり、現場に行くと傷病者が 要請時より増えることもある。着陸場所はパトロール隊がゲレンデの中に造った臨時ヘリポート、現場 直近のゲレンデなどもある。傷病者との接触場所は、救急車内、救護室、ゲレンデ、近隣診療所の車内 など様々であり、救護室やゲレンデまでの移動にはパトロール隊が運転するスノーモービルに同乗する こともある。また、傷病者が重傷であってもスキー場の標高の問題から家族や知人が同乗できない場合 もある。スキー場での活動に目を向けると、救急隊が不在の救護室内やゲレンデではパトロール隊や救 護室スタッフ、近くにいる来場者に協力を求めることも必要となる。また、ゲレンデでは傷病者が低体 温になる可能性も考えられ、スキーウェアを着ているため処置が困難なこともある。スキー場における フライトナースの役割のポイントは、救急隊より先着した場合、通常救急隊が行っている活動を自分た ちで行い関係者で情報を共有しながら協働することであろう。今回、演者と、信州ドクターヘリ佐久・ 松本のフライトナースが経験したスキー場での活動について報告し、スキー場における活動の利点・欠 点と将来性について議論を供したい。 56 第 20 回日本航空医療学会総会 シンポジウムⅡ S2- 5 岡山県ドクターヘリにおけるセカンド体制の現状 ○ 藤尾 政子、岡崎 泉、川田 幸恵、寺戸 由加、鼠尾 弘恵、大賀 麻央、 吉峯 由香、佐々木智子 川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター 岡山県ドクターヘリは運航当初よりドクターヘリ受付ナースとフライトナースと称しフライトナース 2 名体制でドクターヘリ活動を行ってきた。しかし、年度毎に現場搬送も増加し出動要請も多様化する 中で業務整理を行い、2004 年度よりセカンド体制として多数傷病者や重複要請、連続出動、出動中の要 請に対応している。 現在岡山県ドクターヘリフライトナースは、日本航空医療学会フライトナース選考基準と細分化した リーダーシップ能力(インチャージ業務ができ周囲のマネジメント及び行動の指示が出せる。看護師と して自分の意見を持ち医師や多職種とディスカッションができる。看護師として自律した責任のある行 動がとれる)を加え基準を満たした 10 名のフライトナースで構成されている。ファーストナースはドク ターヘリ業務を優先的に行うが出動時に即座に対応が出来るように無線を携帯し救急外来の応援や ICU、 SCU、病棟で患者を受け持たないフリー業務を行っている。セカンドナースは所属部署でフライトスー ツの着用と無線を携帯して患者を受け持つか、もしくはリーダー業務を行い日常の看護業務を行ってい る。フライトナースの所属は救急病棟もしくは集中治療室であるためファースト、セカンドナースの選 出は同一部署からではない場合が多いが、セカンドナースが所属部署でリーダー業務を兼任し出動に備 えている事も少なくない。 今後確立したセカンド体制を確保していくためには、フライトナースの質の低下をきたすことなく次 世代のフライトナースの育成を行うとともにセカンドナースがリーダー業務を兼任しない体制を整えて いくことが課題である。 第 20 回日本航空医療学会総会 57 シンポジウムⅡ S2- 6 小児救急への取り組み 現状と課題 ○ 森島 克明 順天堂大学医学部附属静岡病院 静岡東部ドクターヘリは、順天堂大学医学部附属静岡病院(以下当院)を基地病院に 2004 年より運行 を開始しています。静岡県中部から東部、伊豆半島までをカバーし、運航開始から 2012 年度までに 5009 件の搬送がありました。静岡県東部、特に伊豆半島は当院以南に救命救急センターがなく、又救急 車搬送に 1 時間以上要する地域もあります。静岡県は 2 機のドクターヘリが配備されており、PICU を 保有する静岡県立こども病院(以下こども病院)に重症患児を集約するシステムが確立されていること が特徴です。フライトナースは救命救急センター内に配属されていますが、センター内では小児入院患 者は全体の 1%に過ぎず成人と比較して明らかに経験が不足していると言えます。搬送実績でも小児患 者は全体の 8%でその差が明らかになっています。小児救急の標準化コースである PALS・小児 ITLS の 受講者は 10 名中 3 名であり、経験の少なさ故に習得した技能の維持が難しく現場での小児対応に苦手意 識があると考えられました。小児対策として小児バック内に薬剤・処置サイズの早見表、小児用救急シー トを使用し短時間でも処置対応が出来るように工夫していましたが、十分な観察・評価がされているの か疑問に思い過去の搬送記録を振り返ったところ、処置中心の記録になっていました。そこで PALS・ 小児 ITLS に基づいた内容で診察時評価・観察に使用できる記録を作成し、内容は小児科医・こども病 院 PICU の医師にも確認してもらいました。記録が使用できるか現場を想定したシミュレーションを行 い、実際に記録のトレーニングを行いました。2011 年 7 月より小児看護記録を使用開始したことにより 共通認識をもち搬送先病院での必要な情報提供が可能になりました。専門的な機能を迅速に活用する為 にもドクターヘリは有効であり、患児が適切な医療を受けることに繋がります。守られるべき子どもの 命を守るという目的の為活動を行っています。 58 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅠ P1- 1 地域におけるドクヘリの有用性および課題―広域運航圏、寒冷地 ○ 住田 臣造 旭川赤十字病院 救命救急センター 救急部 道北ドクターヘリコプター(ドクヘリ)基地病院は北海道上川盆地の旭川市に位置し、運航圏は南北 300km、東西 220km、その面積は国土の 7.3%、北海道の 33% を占めている。この圏内人口は約 78 万人 であり、上川地方(秋田県面積とほぼ同じ)に 53 万人が集中している。気候は盆地気候、山岳気候、オ ホーツク海気候そして日本海気候と多彩である。最高気温 40℃、最低気温―30 度で豪雪地域でもあり 12 月より 3 月は積雪期間となる。また、地域医療は医師不足による機能低下が進行し、高度専門医療機 関は旭川市に集中して存在している。このため道北ドクヘリは 1. 現場救急医療提供、2. 高度専門医療の 素早い提供、3. 地域医療・救急業務空白の回避という 3 つの使命を掲げて運航している。特に基地病院 から 150km 以上離れた宗谷管内では、平成 23 年以降より地域基幹病院の稚内市立病院より循環器専門 医が不在となり急激に心疾患患者の施設間搬送依頼が増加している。 平成 24 年度 3 月まで要請 1805 件中未出動 538 件(29.8%) 、キャンセル 125 件(7.9%)であった。こ の未出動とキャンセルの理由として天候によるものが 263 件(40%)あった。一方、積雪期(12 月から 3 月)では要請 670 件で未出動 & キャンセル数は 333 件(49.7%) 、天候理由は 167 件(50%)と増加す る。広域運航圏の問題では遠距離出動中の重複要請が増加している。また、医療機関より運航圏外への 遠距離搬送の依頼がある。中には単なる搬送手段として安定している患者搬送が依頼され、最大の使命 である現場活動の応需が不可能な事態も発生している。要請が年々増加していることより出動基準の徹 底化が求められる。 第 20 回日本航空医療学会総会 59 パネルディスカッションⅠ P1- 2 過疎地における 2 機体制 ○ 今 明秀 1、齋藤 兄治 2 1 八戸市立市民病院 救命救急センター、2 青森県立中央病院 救命救急センター 【目 的】 青森県は広大な面積(全国 8 位)で日本海、津軽海峡、太平洋側に辺境地を持つ。日本海地域と津軽 海峡地域へは青森市から 50 km、太平洋地域は八戸市から 50km である。このような青森県にはドク ターヘリが複数機必要なことを証明する。 【対象と方法】 青森県ドクターヘリ 1 機が八戸市 1 基地病院時代 ( 平成 22 年度 ) と1機を青森市と八戸市の 2 基地病 院で交互に運航した時期 (23 年度と 24 年 9 月まで )、2 機を 2 基地病院で運航 (24 年 10 月から 9 か月間 ) の出動件数と、出動地域、重複要請キャンセル数を調査した。 【結 果】 出動件数は、1 基地時代は 352 件 / 年、交互運航時代は、八戸基地 349 件 /10 か月・青森基地 327 件 /8 か月、2 機運航時代は八戸 277/9 か月、青森 213/9 か月。出動地域は八戸 1 基地時代は年間太平洋地 域が 307 件 88%で 70 ~ 130km 離れている青森市、津軽海峡地域、日本海地域は 43 件 12%。交互運航 時代は 23 年度で太平洋地域は 279 件 64% に減ったが、青森市、津軽海峡地域、日本海側が 158 件 36% に増えた。重複要請は 1 基地時代は 8 件 / 年、交互運航時代は 23 年度 1 年間で 23 件と増えた。重複応 援出動は 2 機運航時代に可能となり 24 年 10 月以降 9 件に対応できた。 【考 察】 八戸 1 基地時代では太平洋地域が出動の中心だった。それまで要請しなかった日本海地域、青森市か らも交互運航で初めてドクターヘリを知り要請するようになった。2 機運航では、重複応援出動が可能 になった。 【結 論】 2 機になり出動要請が増え、辺境地もカバーできた。 60 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅠ P1- 3 防災ヘリ、県警ヘリとの連携 ○ 中村 光伸、中野 実、高橋 栄治、宮崎 大、町田 浩志、鈴木 裕之、 藤塚 健次、雨宮 優、原澤 朋史、小倉 崇以 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科 【はじめに】 群馬県は 3 方向を山に囲まれている、そのため、山岳部での事故や急病発生時には、県警ヘリや消防 防災ヘリによる捜索活動や救助活動、救急搬送が行われていた。2009 年 2 月、群馬県ドクターヘリの運 航が開始された。現在、群馬県の救急医療には、ドクターヘリ、消防防災ヘリ、県警ヘリの 3 機が運用 されている。 【群馬県での連携】 群馬県の山岳部では、事故や急病発生時に、119 番もしくは 110 番通報される。そのため、119 番通報 された場合には、消防防災ヘリが、110 番通報された場合には県警ヘリが出動し活動を行っていた。し かし、お互いの連携はシステム化されていなかった。そのため、2011 年 12 月に、消防、警察、医療が 一同に介し、連携のフローを作成するためのワーキンググループが立ち上がった。2012 年 2 月に、1. 山岳部からの通報が 110 番通報であった場合、警察は所轄消防本部に連絡を行うこと、2.原則、傷病者 の捜索・救助は消防防災ヘリが行うこと、3.消防防災ヘリが出動不可もしくは、燃料不足等で救助の継 続が困難となった場合、県警ヘリが捜索・救助を行うこと、4.必要時にはドクターヘリを要請し、災害 点の近隣ランデブーポイントで傷病者を引き継ぐこと、などを盛り込んだフローが作成された。 【合同勉強会】 消防防災ヘリとドクターヘリのコラボレーション事案が多いため、2011 年 9 月から、防災航空隊とド クターヘリ運航会社、医療スタッフによる勉強会を開始した。同年 11 月からは県警ヘリスタッフも加 わった。 【まとめ】 ヘリコプターは、災害時には有効な搬送手段である。災害時に有効に活用するためには、日常の救急 医療から協働し、お互いの特性を理解することが必要である。群馬県には、ヘリコプター部隊を有した 自衛隊基地がある。今後、自衛隊を含めた災害訓練等を計画して行く予定である。 第 20 回日本航空医療学会総会 61 パネルディスカッションⅠ P1- 4 ドクターヘリにおける隣県への出動について ○ 岩崎 安博、田中 真生、中島 強、柴田 尚明、麦生田百代、川副 友、 米満 尚史、木田 真紀、島 幸宏、上田健太郎、山添 真志、加藤 正哉 和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座 和歌山県ドクターヘリは運航開始時から隣県の奈良県、三重県と協定を結び県境を越えた活動を行っ てきた。総出動件数は両県併せて 2012 年までで 155 件(全出動の 5%)であった。両県ともに外傷での 出動が最多で(60%)であった。当初当院への搬送が基本であったが、現在は重症度や社会的要因も考 慮し複数医療機関へ搬送している。要請基準は和歌山県内と同じで、ランデブーポイントの多数設定や 消防防災無線(県波)による連携で円滑に活動できている。だが若干の問題があり、その最たるものは 一回の活動時間が長い事である。特に各県の救命センターへ搬送した場合、平均活動時間は奈良県で 101 分、三重県で 167 分となっており、今後搬送先選定における連携等での改善を行う必要がある。ま たこれら隣県への出動が主因ではないが、ドクターへ出動中の要請重複は年々増加した。2003 年から 2009 年までにドクターヘリ対応不可事例が 250 件あり、その最大の原因が要請重複であった(42%) 。和 歌山県は 2009 年大阪府、徳島県と相互応変協定を結び、互いの救急ヘリが出動中には、応援出動を相互 に依頼できる事とした。本協定に基づき 19 件の応援出動が和歌山県に対してなされた。搬送先医療機関 は予め近隣の救命センターと規定し、応援ヘリが搬送先選定で苦慮しないようにした。この様な県境を 越えた医療活動は、元来救命医療においては望ましい姿であり、今後さらに全国的に展開していく意義 があるものと思われる。その発展形式として、現在関西広域連合の中でドクターヘリの共同運航が部分 的に実行され始めている。和歌山県は県南部をカバーするドクターヘリがないため、現時点ではドクター ヘリ自体の移管は行っていないが、今後隣県ヘリの配備状況では移管される予定である。このような配 備・連携が全国規模で半径 50 〜 70km で達成されることで隙間のない救命医療、災害時の理想的なヘリ 運用ができると考えている。 62 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅠ P1- 5 離島からの施設間搬送におけるドクターヘリ活動状況及び課題 ○ 中道 親昭 1、日宇 宏之 1、増田 幸子 1、高山 隼人 1、山住 和之 2、藤原 紳祐 2 1 2 国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター、 国立病院機構嬉野医療センター 救命救急センター 【目 的】 ドクターヘリの離島救急医療支援活動の有用性、課題について検討する。 【対象・方法】 2006 年 12 月より 2013 年 6 月までに長崎県ドクターヘリが出動した 3763 件を対象とし、離島からの 施設間搬送の活動状況及び問題点について検討した。 【結 果】 2006 年 12 月から 2013 年 6 月 3763 件出動中、施設間搬送は 1362 件(36.2%)であり、このうち 711 件(18.9%)が離島からの搬送であった。年度別にみた離島施設間搬送月平均出動件数は 2006 年度 8.5 件、2007 年 8.8 件、2008 年 9.3 件、2009 年 9.8 件、2010 年度 8.5 件、2011 年度 8.1 件、2012 年度 9.4 件、 2013 年度 10 件と 8 ~ 10 件で推移している。離島からの施設間搬送の疾患分類では、内因性疾患が 1098 件(80.6%)と多く、心血管系 467 件、中枢神経系 273 件であった。外因性疾患は 288 件(16.7%) 、頭頸 部損傷 100 件、四肢骨盤損傷 45 件であった。ドクターヘリにて死亡回避と推測される症例を 76 例認め、 22 例(28.9%)が離島出動症例であった。疾患分類は内因性疾患 19 例(心疾患 10 例、大血管疾患 5 例、 その他 4 例) 、外因性疾患 3 例(重症頭部外傷 3 例)であった。離陸から帰投するまでの所要時間は、本 土施設間搬送では平均 59.5 分に対し遠隔離島、近隣離島からの施設間搬送は各々平均 95.0 分、80.8 分と 長い傾向にあった。現場出動要請応需不能件数は、離島からの施設間搬送出動中 73 件(0.92 件 / 月)認 めたが、これは現場出動中 143 件(1.81 件 / 月)よりも少なかった。 【結 論】 離島医師のドクターヘリ適正利用に関する理解もあり、離島からの施設間搬送の需要は横ばいである。 内因性疾患、特に心大血管疾患に対するドクターヘリの迅速な対応は有用と考えられた。離島への出動 は所要時間が長いため今後増加が予測される現場救急出動への影響が懸念される。 第 20 回日本航空医療学会総会 63 パネルディスカッションⅠ P1- 6 ドクターヘリ夜間運航のあり方について ○ 早川 達也 総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 【はじめに】 静岡県では、2008 年よりドクターヘリの夜間運航を実現するための課題について検討を行なってきた ので経過を報告する。 【経 過】 2008 年の段階では、医療過疎とされた伊豆半島南部地域への夜間の出動を想定したしたが、これを実 現するためには、安全運航を担保するために計器飛行方式を前提とした運航が望ましいものと結論した。 一方、2012 年には、有視界飛行方式により、重症小児患者の静岡県立こども病院 PICU への集約を目的 とした定点間の搬送を、運航時間の延長により実施することについても検討を行なった。また、この間 に、静岡県西部ドクターヘリは、計器飛行方式に対応できるベル 429 の使用を開始した。 【考察及び課題】 上記の運航を実現するためには、いずれの場合も、財源の確保が必要となる。また、計器飛行方式を 行なうためには、2 名の操縦士による運航が必要とされ、相応の機体の確保も必要となる。さらに照明 設備の設置のほか騒音対策も含めて夜間の使用に堪える離着陸場の新たな確保、計器飛行方式を前提と した飛行経路の策定及び関係各機関との調整が必要である。 一方、ドクターヘリは、救急医療における迅速な初期治療の担い手としての役割を果たすことが求め られてきたが、ドクターヘリの夜間運航の役割は、救急現場出動主体の日中とは異なる。即ち、搬送の 適応とされた重症患者の基幹病院への搬送が主体となる。このため、ドクターヘリの夜間運航実現のた めには、ドクターヘリの役割を整理し、消防防災ヘリとの役割分担についても議論されなければならな い。 【結 語】 ドクターヘリの夜間運航を実現するためには、運航における安全性の確保を担保する上で、現在のド クターヘリシステムの延長線上で捉えるだけでは不十分であることに留意する必要がある。 64 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅡ P2- 1 基地病院全体で安全管理を考える体制づくりの必要性 ○ 中川 儀英、山崎 早苗、守田 誠司、青木 弘道、大塚 洋幸、猪口 貞樹 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター ドクターヘリの出動件数は基地病院の増加と相まって、平成 24 年度 17,571 件(42 基地病院)と非常 に多い。ドクターヘリが普及した現在、重要な課題は安全運航である。我々の施設では、毎日の Debriefing を行い、2011 年より安全運航上の問題を含めて搬送に関わる問題があればヒアリハットレ ポートとして報告し対策を講じている。2012 年 11 月から 2013 年 3 月に掲げられたレポートは 42 件で あった。カテゴリー別では、医療機器の問題 28%、救急隊との連携 19%、救急隊の判断 12%、医療機関 間の調整 10%、医療クルー間の連携 10%、医療クルーの判断 10%、物品の問題 6%、機体の問題 4%で あった。対応として医療クルー、運航クルーの問題はそれぞれにフィードバックし考案した解決策を共 有した。消防に関わる問題は消防本部に対応策とともにフィードバックし、救急セミナーや運航調整委 員会等において全消防本部で共有を図った。特に重大航空機事故は離着陸の際に起きやすいといわれて いるため、離着陸に関わる組織間連携については重要視している。大きな事故の発生を未然に防ぐため に、問題事象の小さなうちにその芽を摘み取るべく、些細なことでもヒアリハットレポートとして掲げ、 その原因を解析し、予防策を共有することが肝要と考えている。ドクターヘリの基地病院が増えるに従 い、運航方法も多様化してきた。安全管理の点で、昨年我々が 40 か所基地病院を対象に行ったアンケー ト調査では、ヒアリハットレポートを作成しているのは約 70% の施設だった。これからは各地のドク ターヘリで起きた問題やその解決策、予防策が一施設だけの財産で留まるより、基地病院全体で共有で きることが理想的である。そのためにも学会全体の体制づくりが望まれる。 第 20 回日本航空医療学会総会 65 パネルディスカッションⅡ P2- 2 ドクターヘリの安全管理─看護師の立場から─ ○ 高野 裕子 和歌山県立医科大学附属病院 和歌山県ドクターヘリは、2003 年 1 月から運航を開始し、2013 年 7 月現在で出動回数は約 3700 件を 超えた。10 年間、事故がなく安全運航できたのは、運航スタッフの努力だけでなく、ドクターヘリを活 用する関係各所の協力があってのことだと実感している。 当院のフライトナースは、運航開始時から乗務しているフライトナースは一人のみで、半数以上が看 護師経験 10 年未満である。フライトナースの若返りに伴い、フライトナース教育が課題となっている。 フライトナースのミーティングで困難事例の対応について検討した中で、経験の少ないフライトナース は、新生児搬送、母体搬送時の専門家医師との連携や、ヘリポートへ迎えにくる当該病棟のスタッフの 安全管理について、対応の困難さを実感している。これは、運航マニュアルにそった実践は可能でも、 搭乗した専門家医師やヘリポートの患者引き継ぎに不慣れなスタッフへ配慮する余裕がないことが示唆 されている。運航開始当初のフライトナースは、看護師経験 10 年以上のベテランが多く、臨機応変な対 応が可能であり現場のマネジメントが実践できていた。しかし、今後は、このような困難さを解消でき るシステム作りやマニュアルの作成が急務であると考えている。 今回、新生児搬送、母体搬送に関わるスタッフへ調査を行い、問題点を明らかにし、今後の課題と取 り組みについて報告を行いたい。 66 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅡ P2- 3 ドクターヘリの安全管理─操縦士の立場から─ ○ 小島 鋭久 中日本航空株式会社 ヘリコプター運航部 福島県ドクターヘリ基地 ドクターヘリの運航は有視界飛行方式での飛行のため気象条件に大きく左右される。また低高度や山 間地の飛行では、離着陸の制限や気象要素、立地条件等によりリスクが高い場合が考えられる。そして 航空法 81 条の 2 の適用により多数の離着陸候補地及び現場直近への離着陸が可能となっている。このた め離着陸等、運航の様々な場面で適切な機長判断が必要である。またドクターヘリは航空会社、医療関 係者、消防機関等の多様な機関が係わって運用され、相互理解が安全運航の重要な要素となっている。 福島県ドクターヘリでは日々のミーティング、医療クルーの教育、飛行後の反省会、地域毎に定期的に 行われる症例検討会等の様々な機会を利用し、情報の共有化、疑問の解消及び問題の改善等を図ってい る。また昨年 11 月に福島県立医大で開催されたドクターヘリ安全研修会には多数の消防や病院の関係者 の参加があり、安全に対する意識の共有及び向上に有意義であった。一方、航空会社の取り組みとして 平成 23 年 4 月に航空法に基づく安全管理規程の設定が全ての航空運送事業者へ拡大され、安全管理体制 (SMS)が導入されている。これに基づき安全を最優先とした事業運営の徹底、経営と現場及び部門間の 意思疎通の円滑化、社内での安全情報の共有化とリスク管理の実践等に組織的に取り組んでいる。運航 の様々な場面で起こり得るヒューマンエラーを排除し、適切な機長判断が出来るように十分な事前準備 を行うとともに関係者との良好な意思疎通を図る必要がある。また日頃から安全を優先させる安全意識 の向上に取り組む必要がある。 第 20 回日本航空医療学会総会 67 パネルディスカッションⅡ P2- 4 整備士が出来る安全管理 ○ 永田 正文 セントラルヘリコプターサービス株式会社 運航部 岐阜グループ ドクターヘリの活動にとって安全とは最重要課題です。ドクターヘリは、まだまだ歴史が浅い(2001 年に本格運航が始まる)中で、安全、的確、迅速に活動し、地域に貢献することにより新たな歴史を作 り続ける事が出来ると思います。整備士の立場から安全管理についてどの様に関わり、貢献できるかを 考えます。ドクターヘリを正常に運航出来る状態に保つ事が整備士の主な業務ですが、その他にも待機 中、飛行中、要請現場活動中の様々な場面で整備士としての重要な役目があります。 【整備士が出来る安全管理】 1.機体、使用機材、航空機燃料、周辺環境等の安全を確保し、常にドクターヘリを運航可能状態に保ち ます。 2.機長の意思や意図を汲み取り、機器操作や情報の面でサポートすることで、運航の安全率を高めるこ とができます。 整備士は、副操縦士席に搭乗し出動しますが、消防無線の交信その他の機器操作を代行することで、 操縦士が操縦に専念できる環境を作ることができます。ランデブーポイント情報、天候状況のアドバイ ス、周辺の見張り、その他様々な情報を操縦士に与えることで機長の判断補助とします。 時には、運航上のブレーキ(経路の変更や引き返しアドバイス)をかける時もあります。 3.消防機関からの情報や周囲の観察状況から着陸後の動線に関して、ドクター、ナースへ的確にアドバ イスし危険回避を促します。地面の凍結、強風や降雨に関する情報等は思わぬヒヤリハットや事故を 未然に防ぐことができます。 着陸後の活動をイメージすることにより、危険要素に備え、準備する事が出来る。 *本来の整備士としての業務を遂行しつつ、活動全体を観察し的確な安全管理を行ってゆきたいと思い ます。 68 第 20 回日本航空医療学会総会 パネルディスカッションⅡ P2- 5 複数傷病者発生事案におけるドクターヘリ活動の安全管理 ○ 花田 勝則 西日本空輸株式会社 運航部 安全推進室 はじめに、調査のきっかとなったのは通常ドクターヘリは消防からの要請に対して 1 機を要請するが 場合によっては現場に 2 機飛来することもあることが過去の経験でわかった。 この状況を踏まえ事故に繋がる要因がないか調査することとした。その結果 2 機以上が同じエリアを 飛行していて空中衝突の事故をおこした過去の事故事例を発見し、これを回避するため考察することと した。 今回きっかけとなった事例として、昨年ある消防本部管内にて複数傷病者が発生し、隣県のドクター ヘリ 2 機が要請を受けた事例があった。このときは時間差で同時に同じエリアを飛行することはなかっ たが、2 機以上同時に同じエリアで飛行することを想定し過去の事故事例を参考にした。 この事例から原因は相手の存在に気づいてないことが挙げられています。ではなぜ気がつかなかった のか、それはこれから飛行する場所に他機が飛行している情報が操縦士に入っていなかったことが考え られます。現場近くでは航空無線でお互いの位置を教え、存在をアピールすることが重要です。できれ ば消防の方からドクターヘリへ情報を入れるとき、他機(ドクターヘリ、消防ヘリ等)の情報も積極的 に入れてもらえば助かります。自機の存在を相手に知ってもらうことは、相手がこちらの機体の存在に 注意を払うからです。結果として適切な間隔を保って飛行をすることができます。 CS がこの案件に対応するには、他機の飛行する情報を集め、操縦士他運航スタッフへ早い段階から伝 えることです。消防から要請があった段階に於いて、もし 2 機以上飛来することがわかれば離陸後に伝 えればよいと考えます。消防とのやり取りの中で可能性がありそうな状況をとらえ、こちらから情報を 得る努力が必要かもしれません。いずれにせよ、分かった段階で早く知らせることが他機に注意を払う ことに繋がり安全に寄与すると考えます。 第 20 回日本航空医療学会総会 69 ワークショップ WS- 1 広域災害における航空機統括の現状とその課題 ○ 兵藤 敬 1、丹羽 政晴 1、西村 英喜 2 1 2 中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課、 中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室 EMS 課 大規模災害時における航空機の存在は欠かせないものとなっている。発災時にはドクターヘリ、防災 ヘリ、海上保安庁、自衛隊等、各機関の航空機が災害対応にあたっている。東日本大震災においても、 全国のドクターヘリが花巻空港、福島医大に参集し、被災地内のニーズに応えるべく活動をした。 花巻空港では SCU が立ち上がり、ここを中心に域内・域外航空搬送が行われた。ドクターヘリの主な 任務は、被災地内の各医療機関から重症傷病者の搬出、また SCU から域内医療機関への搬出等が主とな る業務であった。また、福島医大では主に宮城県石巻周辺の傷病者搬出が任務となり、福島医大では複 数飛来するドクターヘリに関する情報収集、医大敷地内への駐機、燃料給油等のコントロールに追われ た。 このように各拠点で複数のドクターヘリ、自衛隊、防災ヘリ、海保等が協力して任務にあたり、一定 の成果を上げたことは揺るぎないものの、その反面、他機関同士の情報共有、無線交信手段、ヘリ統括 資機材、また DMAT における航空会社の立ち位置等の問題点も露呈した。 ヘリを統括する上で欠かせない通信手段として主に無線があげられるが、被災地に持ち込む無線機器 類は簡易なもので、SCU にかなり近いエリア内での交信に留まる。また、携帯電話通信網等のインフラ も崩壊しており、一度出動したヘリとは SCU に戻ってくるまでの間、意思疎通を図れない状態が続いた。 また、他機関ヘリの動向が全く把握できず、どの位の航空機が、どの位の傷病者搬送に携わっているの かさえ不明であった。これは、円滑な DMAT 活動に支障をきたす以前に、我々のドクターヘリチーム、 機体の安全な運航を保証できない非常に危険な状況であったと言わざるを得ない。 今後の発災時でも、DMAT 活動にドクターヘリの存在は欠かせないものである。先に述べた問題点の 解決、そして DMAT の中の航空会社の立ち位置を明確なものとすることが早急に望まれる。 70 第 20 回日本航空医療学会総会 ワークショップ WS- 2 広域 DMAT におけるドクターヘリの位置付け ○ 鶴本浩一郎 朝日航洋株式会社 東日本航空支社運航部 EMS グループ 2011 年 3 月 11 日、東北地方を襲った大地震と大津波は、近年には例を見ない規模の災害を引き起こ し、多数の死傷者を出し、また日本では初めてとなる原子炉格納容器爆発による高レベルの放射能汚染 が発生した。 国内のヘリコプターを有するあらゆる機関のヘリが東北地方に飛来し、傷病者の搬送にあたる中、多 くのドクターヘリもまた DMAT の要請により災害拠点に集まった。災害時にヘリコプターを使用して 活動する組織は、自衛隊をはじめ海上保安庁、消防庁、県警、各都道府県防災機、および DMAT であ る。 これらのヘリコプターは災害救助活動において、航空法第 81 条の 2 項が適用される。これにより、ド クターヘリにも飛行禁止空域内の飛行、最低安全高度以下の飛行、および離着陸の制限の解除が認めら れている。しかしながら同じルールで飛行している自衛隊および各省庁に配属される運航従事者は公務 員であるが、多くの都道府県防災機および DMAT で使用されるドクターヘリに乗務する乗務員は、国 または県からの受託業務として運航する民間人である。加えてドクターヘリは航空法の他の条項で航空 運送事業として取り扱われており、ドクターヘリは本来、航空法の分類上、災害救助機ではなく旅客機 である。 これまでの災害発生時にも、航空医療学会において各種の問題点が指摘されてきたが、東日本大震災 以後にも、特に航空局からの災害時のドクターヘリの運航に関してのアンケート等の調査はされていな い。新聞にも取り上げられていた「どうしてドクターヘリは放射線の影響があると予想される地域には 飛行しないのか?」という問題も実はここにある。今回の出動を参考に、実はグレーゾーン的な運航と なっている DMAT におけるドクターヘリの位置付けについて考えてみたい。 第 20 回日本航空医療学会総会 71 ワークショップ WS- 3 DMAT と CS ○ 小野寺貴史 1、中野 実 2、中村 光伸 2 1 2 朝日航洋株式会社 東日本航空支社 運航部 運航管理 G、 日本赤十字社 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 【はじめに】 局地・大規模にかかわらず災害医療活動においてドクターヘリは必要不可欠な存在となっている。一 度災害が発生したならば DMAT の活動が始まりドクターヘリも DMAT と共に被災地に参集し活動する こととなる。CS は DMAT 及び関係他機関と連携しながら、情報収集・運航調整を行い、参集したドク ターヘリを効率よく運航し、さまざまな問題を乗り越えていかなければならない。これらの活動をする 上での糸口として、東日本大震災及び過去数回実施された広域医療搬送訓練を通じ、経験あるいは検証 してきたことに基づき、DMAT 活動における CS の役割を紹介し、今後の活動に役立てていただければ と考える。また、DMAT 調整本部・ドクターヘリ指令本部を担う DMAT 隊員の方々にも知識事項とし て周知頂き、CS 不在の間におけるドクターヘリ運航に役立てて頂きたい。 【紹介事項】 1.DMAT 調整本部における CS の役割 2.ドクターヘリ指令本部における CS の役割 72 第 20 回日本航空医療学会総会 ワークショップ WS- 4 ドクターヘリ広域運用の拡大と運航管理システム ○ 神田 正和 学校法人ヒラタ学園 航空事業本部 【はじめに】 災害時を想定して、ドクターヘリを自衛艦・巡視船に発着艦(離着船)させることにより、広域運用 を可能とした。また通常のドクターヘリ運航を含め、運航監視強化のために、動態管理システムを導入 し効率的で安全な運航の向上を図った。 【考 察】 2008 年 9 月に大阪府ドクターヘリが、補給艦しもきたにドクターヘリとして初めて発着艦して以来、 沖縄県、和歌山県、長崎県の各ドクターヘリが、自衛艦、巡視船に発着艦等を実施できるようになった。 訓練を実施する上で、航空局との調整、現地調査(自衛艦) 、マニュアルの作成等に時間を要したが、最 終的に運航の許可を受けることができ、ドクターヘリの災害時における広域運用体制が拡大した。社内 無線の弱点を補うため、今年 3 月にウエザーニューズ社の動態管理システム(FOSTER-Cpilot)を導入 し、各運航管理室等では、すべての運航中の航空機の動態を確認できる。主な特徴は、リアルタイムに 航空機の動態が把握できる。機内持ち込み品として修理改造検査が必要なく小型軽量、安価である。緊 急事態が発生した場合、迅速な捜索救難活動を開始できる。今後の課題は、現在ランデブーポイントに 到着予定時刻等の情報が表示されないため、災害時等に多数機が、同一ランデブーポイントに着陸を予 定される場合は、各機の到着予定時刻が含めた、飛行情報が目に見える形で表示されれば、運航調整が 迅速かつ効率的に実施できるものと考える。 【結 語】 自衛艦、巡視船に発着艦(離着船)が可能となり、災害時の広域運用体制が拡大した。動態管理シス テムを導入することにより、常時運航監視が容易となり、目に見える形で機体の動態が確認できるよう になった。また緊急事態発生時、飛行データーは、常に記録されているため、緊急時の迅速な対応が可 能となった。 第 20 回日本航空医療学会総会 73 ワークショップ WS- 5 ドクターヘリの災害活動に必要な情報の共有 ○ 高橋 宏之 1、丹羽 雅晴 2、西村 英喜 1 1 2 中日本航空株式会社 航空管理センター 運行管理室 EMS 課、 中日本航空株式会社 航空管理センター 運行管理室運航管理課 東日本大震災発災時、福島県立医科大学附属病院(以下、福島医大病院)はドクターヘリの参集拠点 となり、全国から 8 機のドクターヘリが参集し、福島医大病院のドクターヘリを含め 9 機のドクターヘ リが福島医大病院を拠点に災害活動を行った。東日本大震災時、福島県ドクターヘリ通信センターで CS 業務を行った経験では、発災直後の被災地内は通信輻輳や機器の喪失による通信機能の麻痺、混乱によ る情報の錯綜が発生し、情報の収集及び発信に忙殺された。福島医大病院への参集を決定した各基地病 院からは多くの問い合わせがあったが、上記の混乱により十分な情報提供を行うことはできなかった。 また、発災翌日からの災害活動は、福島県、宮城県、岩手県を中心に新潟県、山形県、関東地方まで広 範囲に及んだが、被災地内外の情報が十分得られないまま活動することとなった。災害活動においても 通常のドクターヘリ運航と同等の情報があれば、災害活動はより円滑に行えるものと考えられる。しか し、大規模災害での遠隔地への派遣はもとより隣接エリアであっても広域連携の締結がなければドクター ヘリの運航に必要な情報は乏しい現状がある。ドクターヘリの運航に必要な情報は、そのほとんどを平 時に予め準備しておくことが可能である。各基地病院が担当するエリア内での災害活動に必要な情報を 取りまとめ、共通の様式、開示方法で共有しておくことで、被災地に赴くドクターヘリの速やかな出動 と被災地内外での円滑な活動が期待できる。今後発生するであろう災害に備え、災害活動に有効な情報 共有ツールの開発、運用を提言する。 74 第 20 回日本航空医療学会総会 Pros & Cons P & C- 1 消防の決断─キーワードにプラス α があればなお良い─ ○ 中川 隆、竹内 昭憲 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 今やドクターヘリはプレホスピタルケアの一翼を担う最強のツールとして、わが国に広く浸透してお り、その運用については各地域の特性を最大限考慮した工夫がなされている。地域の特性の如何を問わ ず、一刻も早く傷病者のもとへ駆けつけることはドクターヘリに求められる最重要事項の一つである。 ドクターヘリ要請の判断基準として「キーワード方式」が広く受け入れられている。ここで言うキー ワードとは、傷病者自身あるいは通報者が情報伝達の際、用いる表現を予め絞り込んでおき、傷病者の 緊急度・緊急度を推定することにより遅滞なくドクターヘリ要請を行うものと演者は理解している。 市民からの 119 番通報の内容は、それが医学的には簡潔に説明できる状況であったとしても、多様な 表現がなされることが多く、受け手の指令課員に正しく伝わるとは限らない。画一的なキーワードから 更に一歩踏み込んで、通報者からの言葉の深奥を瞬時に読み取ることが通信指令課員に期待される能力 のひとつでもある。 我々の尾張東部地域 MC では数年前より「119 番受信時トリアージプロトコール」を策定し、指令課 員の能力向上を目指し教育、実践、検証に取り組んできた。これは交通事故関係、その他の事故、急病 関係の 3 つの大きなカテゴリーからなり、Closed question 形式で絞り込んでいくものである。本トリ アージプロトコールの有用性については、7 カ月間の調査(対象:2617 症例)の結果、感度 83%、特異 度 65% と概ね良好であった。 119 番通報から緊急度・重症度を読み取るには、キーワード方式はもちろんのこと、 「プラス α」の何 かを感じ取ることが不可欠である。ドクターヘリ、ラピッドレスポンスカー等の出動要請の精度を高め ることは、プレホスピタルケアの一層の充実に繋がるはずである。 第 20 回日本航空医療学会総会 75 Pros & Cons P& C- 2 ドクターヘリの目的を果たすための方策~キーワード方式は有用~ ○ 小林 誠人、佐々木妙子、山本 奈緒、藤崎 修、井手 善教、中嶋 麻里、 前山 博輝、松井 大作、番匠谷友紀、菅 健敬、池田 光憲、原 文祐、 岡 和幸、永嶋 太 公立豊岡病院 但馬救命救急センター ドクターヘリの目的は「早期医療介入」である。早期医療介入が実現してこそ、その有用性が発揮さ れることは論を待たない。 【目 的】 キーワード方式を用いたドクターヘリ要請方式の有用性を検討した。 【対象・方法】 豊岡病院ドクターヘリ(当ドクヘリ)事業開始から 3 年度分の現場要請、出動事案を対象に、出動プ ロセス(要請方法、時間経過など)を検討した。尚、日本航空医療学会ドクターヘリ出動実績の報告を 比較資料とした。 【結 果】 総要請件数は 4338 件、現場出動件数は 3076 件であった。キーワードによる覚知同時要請率の年次推 移は 73%、82%、83%であった。119 番覚知から当ドクヘリ要請までの時間の年次推移は 8 分、6 分、6 分であり、2012 年度の全国平均時間 14 分に比し、早期の要請がなされていた。また、覚知同時要請と 非同時要請の平均時間の差は約 11 分(4.8 分 vs 16 分)であった。現場出動における離陸後キャンセル 率の年次推移は 12.8%、13.6%、17.7%であった。推定医療介入短縮時間は平均 34 分であった。 【考 察】 ドクヘリ要請の簡便化を図り、早期医療介入を果たす方策として、キーワード方式の有効性は明かで ある。また、懸念される要請の「オーバートリアージ(離陸後キャンセルにあたる) 」は 20%以下で推 移しており、概ね許容出来る数字と考える。キーワード方式を真に有効活用するためには、基地病院と 消防との絶対的・日常的信頼関係の構築、消防指令課員への医学教育体制の確立、行政のバックアップ などが必須であり、単に「キーワード」を示すだけでは効果を発揮しないことを追記しておく。 【結 語】 キーワード方式によるドクヘリ要請は、緊急通報時における緊急度を一定の確立で反映し、より早期 の病院前救急診療の提供を可能としている。 76 第 20 回日本航空医療学会総会 教育セミナーⅠ DMAT の今後のあり方を考える ○ 小井土雄一 1、近藤 久禎 1、市原 正行 1、小早川義貴 1、松本 尚 2 1 国立病院機構災害医療センター 臨床研究部、2 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 東日本大震災(以下 3.11)から 2 年半が経過した。この 2 年半で我々は何ができて、何ができていな いのか、またの今後のあり方を DMAT 如何に定めるのか整理する必要がある。 3.11 においては、阪神・淡路大震災の教訓に基づき構築された急性期災害医療体制が試される結果と なった。3.11 では、DMAT は 380 チーム、1,800 人を超える隊員が迅速に参集し出動した。急性期の EMIS も機能し、DMAT の初動はほぼ計画通り実施された。また、津波災害の特徴で救命医療を要する 外傷患者の医療ニーズは少なかったが、本邦初めての広域医療搬送が実施されたことも意義があった。 しかしながら、今回の 3.11 における医療ニーズは、阪神淡路大震災とは全く違ったものであり、新たな 課題も明らかとなった。 3.11 での災害医療に関しては、様々な学会や検討会で論議され、その課題と対応策が示されてきた。 厚生労働省は「災害医療等のあり方に関する検討会」を設置し、報告書(平成 23 年 10 月)が提出され、 災害拠点病院、DMAT、中長期的における医療提供体制に関して、今後の課題と対応策が示された。こ の報告書を受ける形で、平成 24 年 3 月には、厚生労働省医政局長通知「災害時における医療体制の充実 強化について」において、具体的な今後の 9 つの目標が示された。これらにより、東日本大震災の課題 と対応策は大方出揃ったと考えられ、現在はこれら対応策について、如何にスピード感を持って具現化 していくかというフェーズにある。南海トラフ地震が起きた場合は、これまでにはない空前の医療ニー ズが生じると予想される。DMAT は、本部機能の強化、DMAT ロジスティックチームの充実、民間企 業との協定を含むロジスティクスの充実、自衛隊との更なる連携、ドクターヘリの活用を含む地域・広 域医療搬送計画の見直しを急がなければならない。DMAT だけでも多くの課題が山積であるが、本教育 講演では DMAT の未来への抱負も含めてお話しする。 第 20 回日本航空医療学会総会 77 教育セミナーⅡ 循環器疾患の診断・急性期治療 ○ 竹石 恭知 福島県立医科大学医学部 循環器・血液内科学講座 循環器疾患の特徴として、突然の発症や病態の急変する例が少なくなく、初期治療の差、病状の変化 への対応の差がその後の予後に大きく影響する場合が多々ある。特に急性冠症候群や急性心不全、頻脈 性心室性不整脈、肺血栓塞栓症、大動脈疾患など、迅速な診断および適切な急性期治療が大切である。 同乗した医師、看護師が現場で治療を開始し、患者を病院へ運ぶドクターヘリは、一刻を争う急性期の 治療に有用である。私共は福島県立医科大学にドクターヘリが導入されて以来、救急科 / 救急医療学講 座に協力いただき、急性期循環器疾患症例の受け入れをできる限り行ってきた。急性冠症候群に対して は、カテーテルインターベンション(PCI)治療を常時行っている。福島県は面積が広いため陸路での患 者搬送に時間を要する地域が多く、ドクターヘリの運用が益々期待されている。ノースリッジ地震(ロ サンゼルス) 、阪神淡路大震災、中越地震など、震災後に心臓突然死、急性冠症候群、たこつぼ心筋症と いった循環器疾患が増加することが、これまでに国内外で報告されている。東日本大震災後の福島県の 現況を踏まえ、急性冠症候群を中心に循環器疾患の診断・急性期治療について概説したい。 78 第 20 回日本航空医療学会総会 教育セミナーⅢ 病院前における脳卒中の診断と急性期の対応 ○ 齋藤 清 1、渡部 洋一 2 1 福島県立医科大学 脳神経外科学講座、2 福島赤十字病院 脳神経外科 平成 23 年死因別死亡総数において脳血管障害は 12 万人強(脳梗塞 73,273、脳内出血 34,062、クモ膜 下出血 13,460)、悪性新生物、心疾患、肺炎についで 4 番目であった。しかし罹患患者はその 10 倍以上 で、特に生活習慣病や心房細動など心疾患が関与する脳梗塞は年々増加傾向にある。脳卒中に罹患した 多くの方は後遺症のため生活に支障をきたすが、病院前における脳卒中診断と対応は後遺症を最小限に 抑える重要な第一段階である。脳梗塞では、発症 4.5 時間以内の超急性期患者に対する t-PA を用いた経 静脈的血栓溶解療法が脳卒中治療ガイドラインでも強く推奨されている。t-PA の適応になるかは発症か ら来院までの時間に依存しており、患者来院後に各種検査を行い患者・家族からの同意を頂くために 1 時間弱の時間を要するため、発症から 3.5 時間以内(昨年 8 月までは 3 時間以内が適応であったため 2 時 間以内)に来院することが必要である。以前の調査では、 「2 時間以内の来院」 「2 時間以上経過してから の来院」 「発症時間不明」の割合は各々 1/3 であった。一般市民や救急隊員が脳梗塞の神経症状を正しく 認識し迅速に専門病院に搬送することができれば、t-PA 静注療法の施行率が増加して脳梗塞患者の予後 を改善することができる。そこで、脳梗塞の症状をいち早く発見して専門医療機関を受診する「ACTFAST」運動が行われている。 「FAST」とは脳梗塞で起こる 3 つの症状の頭文字 Face「うまく笑顔が作 れますか?」Arm「腕を上げたまま保持できますか?」Speech「短い文がいつも通りしゃべれますか?」 と発症時間 Time を組み合わせた語である。脳梗塞治療における時間との闘いは病院前から始まってい る。脳梗塞に対する t-PA 療法の実際やその他の急性期治療についても紹介する。 第 20 回日本航空医療学会総会 79 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 1 「熊本型」ヘリ救急搬送体制の現状 ○ 山田 周、江良 正、北田 真己、櫻井 聖大、原田 正公、橋本 聡、 木村 文彦、高橋 毅 国立病院機構熊本医療センター 救命救急・集中治療部 これまで熊本県では防災消防ヘリを用いた年間約 300 件の救急活動が行われてきたが、全国的にドク ターヘリ配備が進む中、熊本県でも 2012 年 1 月よりドクターヘリが導入され、防災ヘリとの 2 機体制に よる、 「熊本型」ヘリ救急搬送体制が運用を開始され、2013 年 11 月で 1 年 10 か月が経過する。 「熊本型」 においては、防災ヘリは熊本県内各地域の中核病院で治療中の重篤患者で、さらなる集中治療が必要と 判断された患者の救命救急センターへの搬送事案に対応し、ドクターヘリは熊本赤十字病院が基地病院 として現場出動事案に対応する。当院は地域救急医療体制支援病院として、防災ヘリを用いた病院間搬 送のマネージメントを行い、最終的な患者受け入れも行う。またドクターヘリ出動中の現場救急重複要 請事案には、防災ヘリが当院フライトドクターと伴に、ドクターヘリ的に現場救急事案に対応する事と なる。当院ではフライトドクター 5 名によるシフト制で病院間搬送および現場救急事案に対応しており、 また要請時点で会議通話システムにより得られる情報を周知する事で、院内の受け入れ態勢も整えてい る。2012 年 1 月から 12 月までの 1 年間で、防災ヘリの現場救急事案対応は 20 件を数えており、お互い の役割を補完しあう事で、未出動事案の減少に貢献できていると思われる。 「熊本型」ヘリ救急搬送体制 の運航状況について、防災へリ支援病院の立場から報告する。 80 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 2 広島県の発進基地方式ドクターヘリ始動 ○ 廣橋 伸之 1、大谷 直嗣 1、宇根 一暢 1、津村 龍 1、岩崎 泰昌 1、 太田 浩平 1、山賀 聡之 1、板井 純治 1、大下慎一郎 1、田村 朋子 1、 貞森 拓磨 1、佐々 智宏 1、谷川 攻一 1、多田 昌弘 2、佐伯 辰彦 2、 鈴木 慶 2、楠 真二 2、竹崎 亨 2、小川恵美子 2、山野上敬夫 2 1 広島大学病院、2 県立広島病院 平成 25 年 4 月より、基地病院を広島大学病院、協力医療機関を県立広島病院とし広島県ドクターヘリ の運航が開始された。運航方式は、広島へリポートから出動するもの(ヘリ発進基地方式)とし、同施 設内に基地病院および協力医療機関の医療スタッフ(医師 2 名、看護師 1 名) 、運航スタッフが待機し、 出動要請に応じて速やかに発進する。広島県がこの方式を採用した理由は、1)フライト医療スタッフが ドクヘリ業務に集中できる環境を作ること、2)ヘリ基地におけるより高い安全性を確保すること、3) この事業を一医療機関でなく県全体で支えるのであるという共通の理念を育てること、4)On the job training(OJT)、すなわちフライトドクター・ナースを志すものへの研修環境を整備し、県全体の後進 の育成に繋げるためである。ドクヘリ出動時の重複要請に対しては、基地病院責任者医師、要請消防本 部そして CS などの複数間同時通話システムおよび消防防災ヘリによる医師ピックアップ方式を併用す ることで対応した。試験運航を経て本格始動した 5 月 1 日から 7 月末までの出動要請は 108 件、その内 実出動は 77 件で現場出動 57 件、施設間搬送 12 件、出動後キャンセル 8 例であった。未出動 31 件の理 由内訳は、時間外 5 件、天候不良 11 件、重複要請 6 件、出動前キャンセル 9 件であった。診療人数は 69 人で、受け入れ先は基地病院(大学病院、県立病院)19 人(他施設受入率 72.5%)と少なかった。ヘ リ発進基地方式の利点としては、医療スタッフが通常の医療業務から開放され、ドクヘリ業務に集中で きること、運航フライトクルーとの意思疎通が円滑に行えることであり、課題としては医療スタッフの 出務方法、医薬品や医療材料の補填・管理、汚染物の管理であった。 第 20 回日本航空医療学会総会 81 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 3 宮崎県ドクターヘリによる地域医療支援を支えるシステム ○ 金丸 勝弘、山田 祐輔、宗像 駿、長嶺 育弘、安部 智大、長野 健彦、 今井 光一、白尾 英仁、松岡 博史、落合 秀信 宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター 【はじめに】 宮崎県において救急専従医が常時診療可能な施設は当院のみである。そのため県内全域より重症かつ 緊急度の高い傷病者が、ドクターヘリにより当院へ集約される。さらに僻地と称される山間部の町村の 中には、消防機関を常備しない町村が 7 ヶ所あり、 「現場救急」という前方支援と「病院間搬送」という 後方支援で、僻地医療にもドクターヘリは活躍している。 【課 題】 このような宮崎県の地域医療事情により、ドクターヘリの出動の可否そのものが傷病者の転帰に直結 する状況となることは容易に想像できる。そのため山間部の天候不良時の精度高い出動判断と重複要請 の解決を支援するシステムの構築が課題であった。 【解決策】 宮崎県庁医療薬務課および危機管理局、民間業者、ヘリ運行会社および当院の救命センターと事務部 門が参加し、産・官・学が一体となって課題の解決策を検討した。その結果、重複要請については、防 災救急ヘリコプターによる当院医師のピックアップ出動を迅速に行えるよう、ホットラインの通報段階 での情報共有を行うシステムを設置した。また、天候不良時での出動可否の判断の精度向上に対しては、 県内の 20 ヶ所に天候ライブカメラを設置した。この天候ライブカメラの配備により、パイロットからは 運行可否判断に際してのストレスが減少、運行管理者からは安全なヘリ帰投に有用との感想が得られた。 【結 語】 地域医療を支援する宮崎県ドクターヘリ事業において、新しいホットラインシステムと天候ライブカ メラの二策の整備は、課題解決に有用で、地域医療支援を支えるシステムである。 82 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 4 山形ドクターヘリの運航実績と問題点 ○ 瀬尾 伸夫 1、武田健一郎 1、佐藤 精司 1、辻本 雄太 1、三田 法子 1、 山田 尚弘 1、森野 一真 1、緑川 新一 2、佐藤 光弥 3、山内 聡 4 1 3 山形県立救命救急センター、2 日本海総合病院 救命救急センター、 公立置賜総合病院 救命救急センター、4 東北大学病院 高度救命救急センター 【山形ドクターヘリの概要】 山形の基地病院は東西に 2000m 級の奥羽山脈、出羽山地に挟まれた山形盆地にあり、雪国でのドク ターヘリとして平成 24 年 11 月 15 日より運航を開始した。 【運航実績】 主に冬期間となる平成 24 年 11 月 15 日からの平成 24 年度の運航と、平成 25 年 4 月 1 日から 7 月 31 日までの平成 25 年度の運航を比較すると、平成 24 年度の件数は要請 129 件、出動 93 件、未出動 36 件 で、平成 25 年度は要請 118 件、出動 106 件、未出動 11 件であり、天候理由の未出動が平成 25 年度に激 減した以外、要請件数には大きな変化はみられなかった。要請元消防を地域別にみても、基地病院周囲 の山形・西村山消防の両者で全要請の 50% 強を占め、天候が回復した後も要請元に大きな変化はなかっ た。 【ランデブーポイント管理上の問題点】 山形市隣接の中山町・山辺町は山形市に救急消防業務を委託しており、両町での救急事例発生に際し、 山形市内より救急隊・ランデブーポイント支援隊が出動する方式をとっている。覚知要請でドクターヘ リが同時に出動すると、支援車両が到着するまで上空待機時間が長くなり、安全管理上も、また患者接 触時間も遅くなるという問題が生じていた。山辺・中山の両役場の職員にランデブーポイントの安全管 理上の講習を受講して頂き、消防本部との連絡体制を確立することで、早期にランデブーポイントの保 安管理が可能となるよう現在調整中であり、その効果についても言及できればと考えている。 第 20 回日本航空医療学会総会 83 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 5 静岡県東部ドクターヘリ再編のための取り組み ○ 大森 一彦、大坂 裕通、大出 靖将、柳川 洋一、岡本 健 順天堂大学医学部附属静岡病院 救急診療科 【背 景】 静岡県東部ドクターヘリは、2004 年 3 月から運航を開始し、主に伊豆半島の救急医療を担っている。 運行開始当初、救急専従医が運航範囲内の各消防署にドクターヘリ運航に関する周知を行い、その後 4 年間は運航件数が増加していた。しかし、救急専従医が搭乗しなくなった 2008 年からの 3 年間は徐々に 運航件数が減少傾向にあった。 【目 的】 消防に対するドクターヘリの啓蒙活動の有効性を検討する。 【方 法】 2011 年 8 月以降、救急専従医が 7 地区の消防署を訪問し、 「ドクターヘリの有効活用」についての講 演会や意見交換会を開催した。各地区の消防署訪問日を起点に、訪問直前の 3 ヶ月間(啓蒙前期)、訪問 直後の 3 ヶ月間(啓蒙後早期)、そして訪問後 3 ~ 6 ヶ月の 3 ヶ月間(啓蒙後中期)の 3 期に区分し、そ れぞれの期間中の現場要請数、覚知~要請までの時間、要請方法などを比較検討した。 【結 果】 現場要請数は啓蒙前期で 46 件、啓蒙後早期で 78 件、啓蒙後中期(2 消防除く)で 41 件であった。覚 知~要請までの時間はそれぞれ 12.48 分、14.65 分、15.12 分であった。救急隊現着前の要請数はそれぞれ 9 件(2%)、25 件(32%)、7 件(17%)であった。啓蒙後早期は啓蒙前期に比べ、現場要請数は 1.67 件 / 月 増加し、覚知~要請までの時間は半数の消防で短くなったが、全体的には 2.17 分増加した。救急隊 現着前のドクターヘリ要請数は 6 地区の消防署で増加した。しかし、啓蒙後中期の各パラメーター値は 啓蒙前期と差がなかった。 【考 察】 2010 年以降、再び救急専従医がドクターヘリに搭乗するようになり、現場からの消防へ連携の呼びか けと共に、消防署に出向き、ドクターヘリの有効活用について啓蒙活動を行ったことが、ドクターヘリ の要請件数増加、ドクターヘリ要請までの時間短縮、現着前要請数の増加に寄与したと考えられた。し かし、その効果は時間経過とともに減少したため、継続的な啓蒙活動が必要と示唆された。 84 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 6 兵庫県南部ドクターヘリの運用について ○ 小野 真善、宮本 哲也、小野雄一郎、田原慎太郎、安藤 光宣、宮永 洋人、 国重 千佳、長江 正晴、畑 憲幸、伊藤 岳、高橋 晃、佐野 秀、 当麻 美樹 兵庫県立加古川医療センター 救命救急センター 【はじめに】 本年 11 月より、県立加古川医療センターを基地病院として播磨、丹波南部地域を運航範囲としたドク ターヘリ事業が開始となる。ドクターヘリ事業の主目的は、1.重症傷病者に対する早期医療介入を目的 とした現場出動と現場への医師派遣に加え、2.地域医療の質向上を目的とした重症傷病者の施設間搬送 にあり、基地病院や地域の救急医療事情によりその比率は変化する。今回、兵庫県南部地域における現 場出動と施設間搬送の必要性について検討したので報告する。 【方 法】 1.平成 20 年のデータをもとに作成された関西広域機構のドクターヘリ需要予測を再検討した。2.平 成 23 年の救急搬送事案中、9 時から 17 時までの事案で、搬送に 30 分以上かかった重症例の施設間搬送 件数(運航範囲内の消防機関よりの報告)を検討した。 【結 果】 1.播磨地域におけるドクターヘリ予測需要は西播磨;455、中播磨;84 東播磨;108、北播磨 115、 丹波;155 で 700 件を超える需要があると考えられた。しかし、この調査後に県立加古川医療センター と製鉄記念広畑病院に救命救急センターが設置されているため、現時点で予想される現場出動の件数は、 調査時点と比べ減少していると考えられる。2.平成 23 年の施設間搬送は 403 件であった(県外搬送 22 件を含む) 。これらのうち、搬送中に医師、看護師が同乗できなかった事案が 3 例あり、搬送中に CPA となった事案が 3 例認められた。(結論)以上の結果から、広大な面積を有する兵庫県では、現場出動の みならず施設間搬送・転院業務も重要との認識に立ち、これらを現場出動と同等に扱うこととした。施 設間搬送を積極的に受け入れ、地域医療の質改善を目的として兵庫県南部地域における医療機関の連携 を強化することができればと考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 85 一般演題 1 /搬送体制 O 1- 7 施設間搬送から見たドクターヘリの地域における有用性 ○ 高橋 功、奈良 理、森下 由香、大西 新介、内藤 祐貴、清水 隆文、 大城あき子、羽岡 健史、相坂和貴子 手稲渓仁会病院 救命救急センター 【はじめに】 ドクターヘリの施設間搬送に関する検討は少ない。今回、道央ドクターヘリにおける施設間搬送例に ついて検討した。 【対象と方法】 対象は 2007 年 4 月 1 日から 2011 年 3 月 31 日までの 5 年間の施設間搬送 264 例。重症度を次の二つの 基準で分類した。A.緊急度:1.JCS ≧ 100orGCS ≦ 8、2.BP < 90mmHg 3.SpO2 < 90% or 気管挿 管 or 人工呼吸器管理 or 気道緊急の 3 つ、B.重症疾患:a.CPA、b.ACS(PCI 施行例)c.大血管疾 患(手術例)d.脳血管障害(手術、t-PA 投与例)e.外傷 ISS ≧ 16 又は緊急手術例 f.敗血症 g. 内因性疾患緊急手術例の 7 つに分類した。 【結 果】 緊 急 度 基 準 を 満 た す の は A1:45 例 A2:39 例 A3:69 例 で、 重 症 疾 患 は Ba:2 例 Bb:16 例 Bc:13 例 Bd:23 例 Be:75 例 Bf:13 例 Bg:2 例で、223 例(84.5%)が該当した。一項目も該 当しない非重症例は 41 例(15.5%)で、主な疾患は脳血管障害 14 例、心疾患 9 例、消化器疾患 6 例など の非手術例であった。41 例のうち、37 例は前医での所見、重症疾患との鑑別、疾患の特性から、長距離 陸路搬送による増悪の可能性があり、ドクターヘリ搬送が必要と判断された。残りの 4 例は、緊急度・ 重症度は高くないが、地域特性より、ドクターヘリ搬送もやむを得なかった。ただし、緊急度が高い事 案が発生した場合には対応困難である。 【結 語】 ドクターヘリの施設間搬送では遠隔地の重症患者搬送で重要な役割を担っているだけではなく、医療 過疎地での役割も無視できない。 86 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 1 NPO による医療過疎地域における救急ヘリの自主運航の課題 ○ 小濱 正博 1、田中 浩二 1、吉池 昭一 1、上江洲安勝 2、筒井 清隆 2、 浦谷 幸男 2、神山 和美 2、與座 涼子 2、金城 克 2、塚本 裕樹 3、 藤田 原野 4、高橋 和義 4、臼井 輝美 4、喜納 義哲 4 1 3 北部地区医師会病院 救急部、2 北部地区医師会 看護部、 NPO メッシュサポート 事務局、4 NPO メッシュサポート 運航部 沖縄県北部地域は離島 3 島、本島の半分を占める広大な医療圏でありながら救急救命センターの設置 もなく、県立病院と民間の北部地区医師会病院の 2 次救急病院が基幹病院として地域救急医療を担って いる。遠隔地における救急疾患への対応の必要性から 2007 年 6 月から北部地区医師会病院にて中日本航 空に委託して救急ヘリを運航開始したが、運航資金の不足から 1 年後に運休となった。その後 NPO メッ シュサポート(以下 MESH)を設立し、個人や団体からの協賛や寄付による資金を募り運航を再開した が、2 度にわたり資金不足で運休を余儀なくされた。公的ドクターヘリに準じた運航会社に委託する形 での運航形態では民間での運航資金の確保には限界があり、MESH による運航は継続不能と判断し、 MESH 独自の運航部の設立を目指した。協賛企業の協力により機体リースのコストダウンに成功、パイ ロット、整備士や運航管理者の雇用が可能となり、関連消防・救急隊や地域住民との連携体制も確立さ れたので 2013 年 5 月から運航を再開することができた。我が国で初めての民間組織による救急ヘリの自 主運航が可能となったかげには医療スタッフ、事業推進部や運航部の「救える命を救うために」という 理念に基づく努力があった。地域が求める現場救急、施設間搬送や離島、遠隔地への医療従事者搬送を 安全かつ合理的に行うために、従来の運航形態にとらわれずに取り組んだ。MESH の再開への取り組み から民間救急ヘリの自主運航の課題と医療過疎地域で求められる救急ヘリの運航について検討したので 報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 87 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 2 当院独自の離島・へき地要請マニュアルの有効性を検証する ○ 合原 則隆 1、伊藤久美子 1、吉山 直政 1、中村 篤雄 1、市来 玲子 2、 山下 典雄 1、坂本 照夫 1 1 久留米大学病院 高度救命救急センター、2 福岡大学病院 救命救急センター 【はじめに】 離島・へき地救急医療の問題点として、早期の医療介入、高次救急医療機関への搬送に時間を要する ことが挙げられる。そこで、2009 年より、離島へき地の実態調査を行い、2011 年よりへき地・離島要請 マニュアルを考案し施行した。今回、要請マニュアルを用いることで、離島・へき地救急医療の問題解 決が図れたかを検証したので報告する。 【調査期間】 2011 年 1 月~ 2013 年 4 月 【結 果】 へき地では、11 件の出動があり、陸路で 2 次救急医療機関に搬送し、3 次救急医療機関まで、ヘリで 転院搬送とマニュアルを用いてのヘリ搬送を比較すると、へき地においては、初期治療においては 55.1 分早く初期治療が開始され、高次救急医療機関搬送までには 54 分の時間短縮を認めた。離島では、1 件 の要請であったが、通常の船舶を活用した搬送と比較すると、ヘリ搬送の方が 35 分早く初期治療が開始 され、高次救急医療機関搬送まで 108 分の搬送時間短縮が図れた。 【考 察】 離島の実態調査において「ヘリ要請の仕方が分からない」との声が聞かれた。そこで、離島の看護師 が容易にヘリの要請を行える様に、キーワード方式のマニュアルを考案した。キーワードにしたことで、 診療所受診から短時間にヘリ要請を行うことができたことに加え、ドクターヘリを活用するとの認識に つながったと考える。また、へき地、離島における搬送時間短縮が図れた要因として、マニュアルの作 成時の問題として、ヘリポート確保、傷病者の事故現場の把握がある。その点については、予め、1 ~ 2 箇所のヘリポートの指定をしておくとともに、消防機関以外の行政機関などの活用を行うことで、問題 解決が図れたことが、搬送時間の短縮に繋がったと考える。 【結 語】 当院が考案したマニュアルで、離島・へき地救急医療における問題解決の一助になることが示唆され た。 88 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 3 県境を超えたドクターヘリ連携に関する報告 ○ 小永田 崇、永田千代美、岩切 優子、山口万里子、吉原 郁子、中馬 千秋、 前田 礼子、中島留利子、佐藤 満仁、稲田 敏、勝江 達治、平川 愛、 籾 博晃、下野 謙慎、吉原 秀明 鹿児島市立病院 救命救急センター 【目的・内容】 H23 年 12 月 26 日に鹿児島県ドクターヘリ運航が開始されから、H25 年 6 月末までに、累計 916 件の 出動を行っている。そのうち、宮崎県への患者搬送は 12 件である。県境であるため、隣県の現場直近の ランデブーポイントを使用できず、迅速な患者搬送を困難にしたり、軽症であっても、傷病者の生活圏 から遠い施設へ搬送せざるを得ない状況があった。 H25 年 6 月に宮崎県とのドクターヘリ運航事業の連携が開始となり、3 件の事案が発生している。宮 崎県とのドクターヘリ連携は、県内で発生した救急事案について、現場直近の医療機関がより迅速に対 応できる場合において、自県のドクターヘリが隣県のランデブーポイントを使用して、自県あるいは、 隣県である宮崎県の医療機関への患者搬送が可能となった。また、宮崎県搬送先協力病院を得たことで、 搬送先選定がスムーズに行えるようになった。 連携を結ぶ準備として、両県においては使用する機体の仕様が異なるため、医療、消防関係者と共に 患者移送手順や方法を確認する共同訓練を行い、宮崎県及び鹿児島県ドクターヘリの連携に関する運用 マニュアルを基に運航事業の連携を開始した。 連携を結んだ事はドクターヘリ本来の目的に加え、地域支援、患者家族の負担の軽減に繋がると考え る。また現在、熊本県とも同様に運航事業連携の準備が進められている。今後、南九州 3 県のドクター ヘリ運航事業がより良いものになると期待される。 第 20 回日本航空医療学会総会 89 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 4 医療事情を考慮した病院選定~医療圏を超えたドクターヘリ搬送~ ○ 岩下 具美 1,2、望月 勝徳 1,2、高山 浩史 1,2、新田 憲市 1,2、小林 尊志 1,2、 新 友香子 1,2、江津 篤 1,2、関 昌代 1,2、新井 雅子 1,2、戸部 理絵 1,2、 岡元 和文 1,2 1 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター、2 信州ドクターヘリ松本 【背 景】 長野県は、全国 4 位の面積を有し人口は 16 位で集落が分散している。一方で医師は少なく(33 位)・ 偏在がある。また年間 9 千万人がレジャーで来県するが施設の多くは医療資源の乏しい山間部にある。 医療圏は二次 10 地区・三次 4 地区からなるが、需要と供給の不均衡から傷病者発生地の医療圏で治療が 完結できないことがある。ヘリの迅速性を活かした空路搬送の用途を検討する。 【方 法】 当基地の出動記録から、傷病者発生地と搬送先病院の医療圏・疾患名を抽出した。搬送先病院が、発 生地の二次医療圏内へ搬送した症例を A 群・二次医療圏で対応できず三次医療圏へ搬送した症例を B 群・発生地の三次医療圏内で対応できず他三次医療圏へ搬送した症例を C 群と定義した。調査は運行開 始(2011 年 10 月)から本年 6 月までとした。 【結 果】 総出動 771 件・傷病者 722 例で、現場出動 555 件(72%) ・施設間搬送 155 件(20%) ・キャンセル 61 件(8%)であった。現場出動(567 例)は A 群 65%・B 群 30%・C 群 5% を占めた。当基地が管轄する 二次医療圏 6 地区の内、A 群比率 3 割以下が 2 地区(26% と 5%)あった。二次医療圏外へ搬送した (B+C)群では、内因性(88 例)は脳卒中が最多(34%)で大血管・心疾患と続き、外因性(112 例)は 頭部外傷が最多(35%)で肢指切断・脊髄損傷と続いた。施設間搬送(155 例)は A 群 10%・B 群 24%・ C 群 66% を占めた。C 群は県内唯一の大学病院(85%)とこども病院(12%)で大多数を占めた。大学 病院転送理由は、大血管・肢指切断・多発外傷・重症感染の手術および周術期管理であった。 【考 察】 頭部・大血管・肢指切断・脊髄・小児領域は、医療圏を超えた全県レベルの搬送が必要である。いず れも緊急度は高く迅速性に優れる空路搬送は有用である。救急現場で病態把握し適切に病院選定するド クターヘリの役割は大きい。今後、血管内治療が導入されつつある急性期脳梗塞でも、専門医は過少で 偏在しておりドクターヘリの活用が望まれる。 90 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 5 山口県ドクターヘリ広域運航開始および今後の展望についての報告 ○ 助永 佳弘、濱崎 遵 朝日航洋株式会社 西日本航空支社 運航部 中国グループ 「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」第 5 条 2 項に基づき、2013 年 6 月 17 日より、山口・広島・島根 3 県の間でドクターヘリ広域連携運航が開始されました。これに先 立ち岡山・鳥取も含めた広域連携も開始されており、中国地方 5 県における県境を越えた運航態勢が確 立されつつあります。元々各県とも基地病院の地理的条件により県内での到達時間に格差を生じており、 これを解消する上でも有用な方策と考えられます。更に、山口県にあっては隣接する福岡県北九州市へ のドクターヘリによる県外搬送も可能となりました。7 月 25 日現在、福岡県への搬送先は 1 病院だけで すが、今後症例等の必要に応じ増加することが見込まれます。広域運航の開始に当たっては先ず中国 5 県の知事による協定が締結され、それに基づき運航マニュアルの改訂並びに搬送先病院の選定、長距離 飛行に伴う燃料補給地の設定、転院搬送時の手順の違い等々を医療関係者並びに消防、各県の担当者に 説明を実施しました。7 月 25 日の段階において山口ドクターヘリに対し県外からの出動要請は未だあり ませんが、 (問い合わせが 1 例のみ)過去県外から救急車を絡めた形での転院搬送を実施した実績はある ので、遠からず実出動が発生すると思われます。今回は広域運航及び県外搬送開始に関わる準備と現状 を含めて、運航会社としての視点において今後の課題及び将来展望を含めて考察します。 第 20 回日本航空医療学会総会 91 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 6 ドクターヘリ広域連携・消防防災ヘリとの連携 広島県の取り組み ○ 大谷 直嗣 1、宇根 一暢 1、津村 龍 1、太田 浩平 1、板井 純治 1、 山賀 聡之 1、貞森 拓磨 1、大下慎一郎 1、岩崎 泰昌 1、多田 昌弘 2、 佐伯 辰彦 2、鈴木 慶 2、山野上敬夫 2、廣橋 伸之 1、谷川 攻一 1 1 広島大学 救急医学、2 県立広島病院 救命救急センター ドクターヘリの効率的な運航には、県境を超えた広域的な連携体制、消防防災ヘリとの連携が重要と いわれている。中国地方では、平成 24 年までに岡山県、島根県、山口県でドクターヘリが運用されてい た。県境を越えた運航の実績もあったが、より効果的な運用に向けて、平成 25 年度の広島県ドクターヘ リ運用開始前から協議を重ねた。平成 22 年 5 月に中国地方知事会で相互協力の検討が提案され、平成 24 年 11 月に同知事会で基本的事項に合意したのち、平成 25 年 1 月 23 日に中国 5 県知事およびドクター ヘリ基地病院長により基本協定を締結した。また、広島県では、平成 17 年 8 月から県内 2 機の消防・防 災ヘリコプターを活用したドクターヘリ的事業を行ってきた。ドクターヘリ運用開始後は、基本的に現 場救急はドクターヘリが担当、施設間搬送は消防防災ヘリが担当し、相互に補完する協力体制を構築し た。出動要請と連絡は、県内の救急に関するヘリコプター要請窓口をドクターヘリ基地に一元化し、基 地病院医師、要請消防本部、CS などを複数間同時通話でつなぐシステムを整備した。5 月 1 日の運航開 始から 7 月末までの 3 か月間で 108 件のドクターヘリ出動要請があり、広域連携協定に基づく隣県対象 地域(島根県西部・山口県東部)からの要請が 29 件であった。この地域では自県のドクターヘリ到着ま でに 20 分以上を要する。ドクターヘリ運航範囲の境界付近は医療過疎が進んだ地域も多く、広域連携に よる重層的な救急医療体制の整備は重要である。消防・防災ヘリとの役割分担による施設間搬送(ドク ターヘリ要請件数に含まれない)が 8 件であった。重複要請 7 件のうち 6 件は、広域連携による隣県ド クターヘリ、もしくは、消防・防災ヘリで対応できた。広域連携および消防防災ヘリとの連携により、 より効果的なヘリコプター救急医療体制の構築を図ることができる。 92 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 2 /広域連携搬送 O 2- 7 島根県ドクターヘリ:広域連携体制の導入 ○ 新納 教男、山森 祐治、松原 康博、越崎 雅行、森 浩一、石田 亮介、 石飛奈津子 島根県立中央病院 救命救急科 2011 年 6 月 13 日、島根県ドクターヘリは運航開始となった。2011 年度の総出動件数は 489 件、2012 年度の総出動件数は 695 件であった。島根県ドクターヘリの特徴は、他施設に比べて圧倒的に施設間搬 送が多いことにある。これは島根県にドクターヘリが導入される前から防災ヘリによる患者搬送を積極 的に行われていたこと、地域医療の崩壊および地域による医療格差を反映しているものと思われる。島 根県の地形は東西約 230km、離島の隠岐諸島もあるため、島根県内の地域によってドクターヘリ出動件 数に偏りがでるのは当然の結果である。基地病院である当院から、島根県全域を良く言えば凡そ 45 分で カバーすることができるが、悪く言えばドクターヘリが到着するまでに 40 分以上もかかってしまう。し かし、本年 5 月より広島県ドクターヘリが運航開始となったことを契機に、本年 6 月から島根県西部地 区へのドクターヘリ乗り入れ、即ち県境を越えたドクターヘリ運航が開始された。すでにドクターヘリ が導入されている山口県とも協力し、島根県西部は広島県ドクターヘリおよび山口県ドクターヘリでカ バー、島根県ドクターヘリも鳥取県西部および広島県北部をカバーすることになった。ドクターヘリに よる広域連携体制が整い、多くの命が救われることが期待される。運航 3 年目、広域連携体制が始まっ た今、島根県におけるドクターヘリの現状および今後の課題について報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 93 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 1 岩手県における脳卒中疑い患者搬送のドクターヘリ介入の事前検討 ○ 大間々真一、吉田 雄樹、小守林靖一、山田 裕彦、松本 尚也、井上 義博、 遠藤 重厚 岩手医科大学医学部 救急医学講座 【ドクターヘリと rt-PA 静注療法】 急性期の脳梗塞に対して rt-PA 静注療法開始までの 15 分単位での時間短縮は死亡や脳内出血の減少と 機能予後を改善すること、ヘリコプターによる現場からの搬送は rt-PA 静注療法開始までの時間短縮に なることが報告されている。 【岩手県の脳卒中と rt-PA 静注療法】 岩手県は 47 都道府県の中で脳卒中および脳梗塞の年齢調整死亡率が最も高い県であるが、65 歳以上 人口 10 万人あたりの rt-PA 静注療法施行率は 40(全国平均 90)と最も低い。その原因として、岩手県 の人口高齢化率は 27.9%(全国平均 24.1%)と高く慎重投与の高齢患者が多いこと、高齢者世帯は一人 暮らしや夫婦のみ世帯が多く、異常発生の認識までの時間、および、その認識から消防通報まで時間が かかること、さらに異常発生時間の特定が困難であることが推測される。また、岩手県の人口密度は北 海道に次いで 85.3 人 /km2(全国平均 341.9 人 /km2)と低いため、救急要請場所から救急車の待機場所 まで、および、医療機関まで遠く、消防覚知から医療機関搬入までの時間がかかる山間部が多いこと、 医療機関搬入後も傷病者のキーパーソンの到着が遅く rt-PA 静注療法までのプロセスがタイムリミット 内に完了しないこともみられる。 【岩手県での脳卒中疑い患者とドクターヘリ】 脳卒中を疑う傷病者のドクターヘリ搬送は、病院前での患者の評価と安定化のほかに、脳梗塞の場合 は医療機関搬入までの時間短縮による rt-PA 療法施行率の向上も重要な目的であり、医療の地域格差の 縮小にもつながる。消防覚知から医療機関搬入までの時間短縮を目的として、これまで行ってきた消防 との事前協議とこれから行うべき協議について報告する。 94 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 2 標高 2400m! 槍ヶ岳単独登山中の脳梗塞から社会復帰した一例 ○ 高山 浩史、望月 勝徳、小林 尊志、新田 憲市、岩下 具美、岡元 和文、 新 友香子、江津 篤、関 昌代、新井 雅子、戸部 理恵 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター 北アルプス単独春山登山中に発症した脳梗塞患者を社会復帰させることができたので報告する。 症例は 50 歳台男性、5 月に北アルプス槍ヶ岳に単独登山。標高 2400m 地点の雪上で崩れ落ちたのを通 りがかりの登山者が携帯電話で通報。長野県消防防災ヘリコプター「アルプス」が出動し 51 分後傷病者 機内収容。60 分後信州大学医学部附属病院へリポート着陸。来院時バイタルは安定し意識は GCS E4VAM5。右上下肢の筋力低下を認めた。NIHSS は 25 点で頭部 CT で出血等認めず、発症 2 時間 3 分 でエダラボン投与に引き続き血栓溶解療法施行。症状は速やかに改善し NIHSS 2 点、軽度の構音障害と 失語を残すのみとなった。MRI や翌日の CT で左頭頂葉、放線冠、側頭葉の梗塞巣を確認。症状と画像 所見、WPW 症候群疑いの既往歴から心原性脳塞栓症と診断しタビガトランを開始。日常動作に支障な かったが感覚性失語や注意力障害等高次脳機能リハビリ継続目的に発症 19 日目地元愛知県の病院へ転 院。7 月に退院し出勤予定とお聞きしている。 良好な転帰は以下の理由による。1.通報者目前での発症で、携帯電話が通話圏内であった。NTT に よる北アルプスでの通話エリア拡大の成果でもある。2.北アルプスの玄関口である松本市の空港に長野 県警察、消防防災ヘリコプターが常駐。ヘリコプターによる山岳遭難出動件数で長野県は全国有数であ り経験豊富であった。天候にも恵まれた。3.収容病院の充実。当院は松本市内に位置し敷地内へリポー トがあり槍穂高連峰から 10 分、その他 20 分程度の飛行時間で収容可能である。急性期脳梗塞に対し迅 速な診断と治療が可能であった。 救命の連鎖の結果、3000m 級の単独春山登山中に発症した脳梗塞患者が社会復帰可能となった。好条 件に恵まれたが、日頃のシステム作りが結実した結果と思われた。 第 20 回日本航空医療学会総会 95 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 3 ドクターヘリ搬送後に rt-PA が投与された急性期脳梗塞 15 例の検討 ○ 藤井 公一、和氣 晃司、菊池 仁、小野 一之 獨協医科大学病院 救命救急センター 【はじめに】 急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法は、発症から投与までの時間と施行可能な病院の制限があるが、 ドクターヘリはその適応患者の拡大に寄与すると考えられる。 【方 法】 栃木県においてドクターヘリが配備された 2010 年 1 月から 2013 年 7 月の期間に当院にドクターヘリ で搬送され rt-PA が投与された急性期脳梗塞患者 15 例についてその特徴を診療録により後ろ向きに検討 した。 【結 果】 平均年齢 69.8 歳。男性 9 例、女性 6 例。患者は栃木県消防本部 13 管轄のうち 6 管轄にわたる地区より 搬送された。発症から消防覚知までの平均時間は 17.7 分、救急隊接触からヘリ要請までの平均時間は 7.0 分、発症から病着までの平均時間は 62.3 分、発症から rt-PA 投与までの平均時間は 161.7 分であった。 来院時の NIHSS は 5 点が 1 例、6 ~ 10 点が 6 例、11 ~ 20 点が 7 例、21 点が 1 例であった。転帰は生 存退院 14 例であり退院時において、modified Rankin Scale 0-2(日常生活が自立できるレベル)は 6 例 (40%)であった。 【考 察】 搬送の速さのみならず、消防との連携、早期の医療スタッフの介入および事前準備(CT 室への直入、 早期の神経内科コンサルト)などの工夫によって、当院では rt-PA 投与は円滑に行われていると考える。 今後、投与時間の延長によって急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応患者がさらに増加する事が予 想され、医療過疎地域であっても、ドクターヘリは高度医療の平等な提供を可能とする。 96 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 4 脳卒中患者におけるドクターヘリの有用性の検討 ○ 井手 善教 1、佐々木妙子 1、武井 隼人 1、山本 奈緒 1、藤崎 修 1、中嶋 麻里 1、 三浦 龍馬 1、前山 博輝 1、松井 大作 1、番匠谷友紀 1、管 健敬 2、池田 憲明 1、 原 文祐 1、岡 和幸 1、永嶋 太 1、小林 誠人 1 1 公立豊岡病院 但馬救命救急センター、2 県立塚口病院 【はじめに】 当センターにおけるドクターヘリ症例のうち、脳卒中患者の占める割合は約 20%と多い。脳卒中患者 におけるドクターヘリの有用性を検討した。 【対象・方法】 2010 年 4 月 1 日〜 2013 年 3 月 31 日に救急車およびドクターヘリで搬送されたくも膜下出血(SAH) 、 rt-PA 治療を行った脳梗塞、緊急手術となった脳出血症例を対象に、病院前での処置、推定医療介入短 縮時間、退院時の modified Rankin Scale(mRS) 、予後をドクターヘリ搬送群と救急車搬送群で比較検 討した。また、SAH 症例ではドクターヘリおよび救急車搬送中の再破裂発生率を比較検討した。 【結 果】 SAH、脳梗塞、脳出血症例いずれにおいても両群間で退院時の mRS は有意差を認めなかった。SAH で搬送中の再破裂率はドクターヘリ群 2.2%、救急車群 13.2%とドクターヘリ群の方が有意に低かった (p=0.048) 。しかし、鎮静群と非鎮静群を比較したが、再破裂率および mRS に有意差は認められなかっ た。脳梗塞症例については、推定医療介入短縮時間が 25.6±11.0 分と rt-PA 投与時間が短縮されていた。 脳出血患者において、ドクターヘリ搬送群では病院前で 9 例に対し気管挿管、3 例に降圧、1 例に鎮静が 行われていた。しかし非処置群と処置群を比較したが mRS に有意差を認めなかった。 【考 察】 脳卒中においてドクターヘリ搬送による神経学的予後の改善は認められなかった。しかし、SAH にお ける再破裂の予防に関しては有効であることが示唆された。これは、早期搬送および揺れの少ない環境 が影響していると考えられた。また脳梗塞患者において、早期医療介入による血栓溶解療法適応の判断、 早期搬送という点で有効であることが示唆された。脳出血においては、意識障害に伴う気道の問題に対 し早期に対応することで、二次性脳損傷や誤嚥予防の可能性が示唆された。現場で脳梗塞、脳出血、 SAH の確定診断は困難であるが、脳卒中が疑われる患者においてドクターヘリの有用性が見出された。 第 20 回日本航空医療学会総会 97 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 5 脳卒中が示唆される症例におけるドクターヘリ要請の現状と課題 ○ 米盛 輝武、高田 忠明、屋宜 亮兵、新里 盛朗、北原 佑介、伊藤 貴彦、 福井 英人、那須 道高、葵 佳宏、八木 正晴 浦添総合病院 救命救急センター 当院では、平成 20 年 12 月より沖縄県ドクターヘリを運航しており、平成 25 年 6 月末までの総要請件 数は 1773 件、実搬送件数は 1590 件であった。沖縄県の地域特性もあり、離島からの搬送が多く、1346 件(実搬送件数の 84.7%)に上る。その一方で、現場要請による搬送は 244 件(実搬送件数の 15.3%)に とどまり、キーワード方式の採用による増加傾向はみられるものの、他地域に比較して少ないのが現状 である。また、標準化教育が早くから普及している心停止症例や重症外傷症例については比較的適切な ドクターヘリ要請がなされているものの、脳卒中疑い症例など、他の内因性疾患については要請が遅れ たり、アンダートリアージに陥ったりする症例が散見される。今回われわれは、沖縄県ドクターヘリが 対応した症例の中から、「現場要請」かつ「脳卒中を疑う症例」を抽出し、その現状を分析。今後の課題 について検討を行った。対象期間は 2012 年 1 月 1 日〜 2013 年 3 月 31 日。対象症例は 29 例。ドクター ヘリ搬送記録をもとに、その時間的要素について分析を行った。消防入電からドクターヘリ要請までの 平均時間は 10.57 分。これを意識レベル毎に分析すると、GCS 3 で平均 8.33 分と最も短く、GCS 12 まで は徐々に長くなる傾向を示し、GCS 13 〜 15 で平均 8.8 分〜 9.5 分と短くなる傾向を呈した。これは、明 らかな意識障害を呈する症例や、麻痺や構語障害などを明確に訴えることができる症例では対応が出来 ている一方で、見当識障害など神経学的所見が取りくい症例で的確な観察ができていないことを示唆し ていた。この結果を受け、今後脳卒中や意識障害に主眼を置いた標準化教育を県内各消防において実施 し、適切なドクターヘリ要請につなげる必要があると考えられた。 98 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 3 /脳卒中 O 3- 6 ドクターヘリにおける脳卒中の病院前診断と初期診療の問題点 ○ 越後 整、山下 典雄、吉山 直政、平湯 恒久、永瀬 正樹、鍋田 雅和、 中村 篤雄、宇津 秀晃、高松 学文、高須 修、坂本 照夫 久留米大学病院 高度救命救急センター 【目 的】 脳卒中は出血性病変と虚血性病変に大別される。ドクターヘリでは患者と接触した現場から両者の鑑 別を念頭において初療にあたる。出血性病変に対しては、過度の高血圧を避け、頭蓋内圧亢進に伴う嘔 吐や誤嚥性肺炎に対する気道確保が重要となる。一方、虚血性病変においては、血行再建を目的に迅速 な搬送が求められるが、実際には、現場で両者を鑑別することは困難なことも多い。今回初発症状に片 麻痺や失語など巣症状を伴った脳卒中患者において、ドクターヘリにおける病院前診断と初期診療の問 題点について検討した。 【対象と方法】 2008 年からの 5 年間で巣症状を伴って当センターにヘリ搬送された脳出血患者(出血群)は 46 例、 脳梗塞患者(梗塞群)は 24 例であった。これらにおいて、年齢、性別、患者接触時血圧、不整脈の有無、 嘔吐の有無、現場滞在時間について検討した。 【結 果】 出血群は、年齢は平均 65±13 歳、男性 30 例(65%) 、女性 16 例(35%) 。梗塞群は、年齢は平均 72± 14 歳、男性 10 例(42%)、女性 14 例(58%)で、出血群で男性が多く、梗塞群で年齢が高い傾向にあっ たが両群に有意差はなかった。患者接触時 GCS score は出血群 10.8±3.8、梗塞群 10.7±3.8 と有意差は認 めなかった。患者接触時収縮期血圧は出血群 189±33mmHg、梗塞群で 163±35mmHg と出血群で有意 に高値であった。不整脈の有無は出血群で 5 例(11%)に対し、梗塞群で 12 例(50%)と高率に認めた。 嘔吐の有無は出血群で 13 例(28%)に対し、梗塞群は 1 例(4%)と出血群で有意に多く認めた。現場滞 在時間は両群とも 22 分前後と変わらなかったが、現場で積極的に脳梗塞を疑った症例では、平均 18.5 分 と有意差をもって短時間であった。 【結 論】 脳卒中の病院前診断では、限られた現場滞在時間において出血か梗塞かを確実に見分けることは困難 であるが、接触時血圧や嘔吐、不整脈の有無は、その鑑別の手がかりになることが示唆された。 第 20 回日本航空医療学会総会 99 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 1 心マッサージ下でドクターヘリ搬送し、社会復帰できた一例 ○ 新田 憲市、江津 篤、望月 勝徳、高山 浩史、小林 尊志、新 友香子、 関 昌代、新井 雅子、戸部 理恵、岩下 具美、岡元 和文 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター 偶発性低体温症による心肺停止は、2010 年の AHA ガイドラインでは、通常の蘇生法でよいとされて いる。しかし、心拍再開が認められないときは、PCPS や ECMO を用いた集約的治療が可能な高次医療 機関へ搬送すべきとする報告が多い。 直近病院で心拍再開が得られなかった偶発性低体温症例を高次医療機関へヘリ搬送し、PCPS を含む 集学的治療を行い、社会復帰した症例を経験した。症例は 63 歳、男性。車上生活者で、車内で呼びかけ に反応なく、救急要請。偶発性低体温症疑いで、ドクターヘリ要請となった。救急隊接触時 CPA で心電 図波形は PEA であった。フライトスタッフは支援車で、直近病院に移動した。直腸温は 22 度で、復温 も開始したが、蘇生に反応せず、PCPS による蘇生、加温が必要と判断し、ドクターヘリにて 21km 離れ た基地病院へ搬送とした。ヘリ搬送中は、用手的胸骨圧迫をおこなった。救急隊覚知から 122 分、PCPS 開始し、181 分後に自己心拍再開となった。PCPS による、蘇生後脳症の低体温療法を継続した。PCPS を離脱し、4 病日目の GCS は E4VTM6 となった。長時間の胸骨圧迫による胸骨骨折、肺挫傷、多発肋 骨骨折により呼吸状態の悪化があったが、16 病日抜管、28 病日 NPPV 離脱となった。不安定であるが、 自立歩行が可能で、61 病日リハビリ目的に転院となった。考察本症例は、偶発性低体温症 CPA で、直 近病院にて蘇生を開始したが、蘇生に反応しなかったためドクターヘリにて遠方である高次医療機関へ 搬送した。ドクターヘリ搬送によって、PCPS 開始までの時間が短縮でき、社会復帰できたと考えた。 偶発性低体温症 CPA での高次医療機関への搬送基準やヘリ搬送中の胸骨圧迫の質の確保などの問題点を 検討する必要がある。 100 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 2 IABP 装着患者の搬送から得た教訓 ○ 林 眞紀 1、大津 裕子 1、塚原 卓 1、大友 礼子 1、磯崎登志江 1、 須田 高之 2、遠藤 浩志 2、福井大治郎 2 1 水戸済生会総合病院 看護部 救命救急センター、2 水戸済生会総合病院 救急科 【はじめに】 IABP 装着患者の長距離搬送時、いくつかのトラブルを経験し安全な運航や患者の安全・安楽の確保 について考える機会を得た。その経験を振り返り、問題点や搬送時の注意点を共有する事で今後の対応 を検討した。 【背 景】 AMI で PCI 治療後の患者で IABP 装着中。経過不良のため、LVAD 装着目的で都内大学病院に転院 搬送。要請病院から搬送先まで、直線距離約 125Km、救急車走行距離約 143Km。 【活動内容】 IABP 搭載での搬送が可能か運航スタッフ、ME とミーティングし機内整備を事前に実施。搬送に伴う リスクを検討し、要請病院と情報交換を行った上で要請元の循環器内科医 1 名が同乗。搬送時、装着中 の器械・ライン類、患者の状態や使用薬剤の情報共有を図り、ヘリ収容後は IABP や医療機器の作動確 認とバッテリー使用時間や充電状況を確認。また、状態急変に備えて同乗医師は IABP モニターや挿入 部の観察ができるよう配置した。搬送中、機体からの電気供給がされず、IABP がバッテリー駆動になっ たので患者の循環動態を考慮し、IABP 駆動を 2:1 に変更して節電を図った。また、着陸態勢時には IABP のガス供給チューブが外れたため、上空待機にして同乗医師が対応した。 【考 察】 事前に IABP 搭載に対するシミュレーションは行っていたが、搭載場所の確保や重量を確認しただけ で電波干渉や飛行中の電気使用量などの予測には限界があった。今回の搬送において、運航に問題は生 じていないが患者の安全・安楽の確保の面では問題があったと思われ、特殊機器を使用している患者の 搬送には、搬送リスクやトラブルも考慮して十分に検討する必要がある。また、搬送時には急変に備え て事前の確認や準備は必須であり、患者の状態を熟知している医師の同乗は必要であると考える。 【結 語】 今回のように問題や情報を共有し、医療スタッフと運航スタッフが事例検討をする事は安全な運航と ともに患者の安全・安楽にもつながると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 101 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 3 ルーカス 2 ™ 導入と心肺停止患者への対応の変化 ○ 金田浩太郎 1、荻野 泰明 1、中原 貴志 1、戸谷 昌樹 1、藤田 基 1、金子 唯 1、 末廣 栄一 1,2、山下 進 3、河村 宜克 1、小田 泰崇 1、鶴田 良介 1 1 2 山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター、 山口大学医学部附属病院 脳神経外科、3 綜合病院社会保険徳山中央病院 救急科 【背 景】 山口県ドクターヘリは運航開始時より原則として心肺停止(CPA)患者は出動の対象としていない。 一方で、ドクターヘリ出動後あるいは患者接触後に患者が CPA となり対応に苦慮する事例が存在する。 そのような事例に対応するために 2012 年 12 月 5 日より LUCAS ™ 2 をドクターヘリ内に装備している。 【目 的】 ルーカス 2 導入前後の CPA 患者対応の変化を明らかにする。 【方 法】 2011 年 1 月 21 日から 2013 年 6 月 30 日の間のドクターヘリ出動記録を後ろ向きに調査した。調査項 目は CPA となったタイミング、胸骨圧迫しながらの搬送の有無、胸骨圧迫の方法、搬送方法とした。 LUCAS ™ 2 導入前と導入後で調査項目について比較した。 【結 果】 対象期間中の現場出動件数は 236 件で、CPA 患者は導入前に 20 名、導入後に 7 名の計 27 名認められ た。導入前の 20 名のうち 2 名が不搬送、2 名が現場で心拍再開しており、16 名が蘇生しながら搬送され ていた。導入後はそれぞれ 0 名、4 名、3 名であり、導入前と導入後で有意差が認められた。導入前に搬 送しながら胸骨圧迫を行われていた 16 名のうち 6 名にはオートパルス ® が使用され、10 名には用手的胸 骨圧迫が行われていた。導入後に搬送しながら胸骨圧迫を行われていた 3 名にはすべて LUCAS ™ 2 が 使用されていた。導入前の搬送手段は 7 名が救急車、11 名がドクターヘリであったのに対して、導入後 はそれぞれ 1 名、6 名であり、導入後に救急車で搬送した 1 名は県外への搬送のためドクターヘリが使 用できなかった事例であった。 【考 察】 ドクターヘリ内での用手的胸骨圧迫は困難であり、LUCAS<SUP>TM</SUP>2 を装備することによ り、搬送方法にドクターヘリを選択する事が多くなったと考えられる。また、早期から効果的な胸骨圧 迫を行うことができ高い心拍再開率が得られた可能性がある。 【結 語】 ドクターヘリへの LUCAS ™ 2 の装備は有効と考えられた。 102 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 4 ドクターヘリが出動した CPA 症例に対する有効性の検討 ○ 清水 隆文 1、高橋 功 1、奈良 理 1、森下 由香 1、大西 新介 1、内藤 祐貴 1、 大城あき子 1、相坂和貴子 1、森 和久 2、丸藤 哲 3、牧瀬 博 4 1 3 手稲渓仁会病院 救命救急センター、2 札幌医科大学病院 高度救命救急センター、 北海道大学病院 先進急性期医療センター、4 市立札幌病院 救命救急センター 【目 的】 道央ドクターヘリが出動した心肺停止(CPA)症例を対象とし、ドクターヘリの CPA 症例に対する 有効性を検討する。対象:2005 年 4 月 1 日から 2011 年 3 月 31 日までにドクターヘリが出動した CPA 症例は 325 例であった。その中で蘇生の適応ありと判断し 3 次医療機関に搬送した 193 例を対象とした。 【方 法】 退 院 時 の 神 経 学 的 機 能 を 一 次 評 価 項 目 と し、 調 査 対 象 因 子 を 各 種 選 定 し た。 評 価 は Cerebral Performance Category(CPC)を用い、CPC 1 ~ 2 を予後良好群、CPC 3 ~ 5 を予後不良群をと定義し、 どの因子が神経学的予後に影響を与えるかを検討した。統計学的検討には Mann-Whitney U 検定と χ2 検定を用いた。 【結 果】 年齢の中央値は 64 歳、67.5% が男性で、いずれも 2 群間に有意差を認めなかった。現場と基地病院の 平均飛行距離は 25.7km で、予後良好群で優位に長かった。17 例(8.6%)が神経学的予後良好であり、 統計学的に有意な因子としては発症目撃あり、バイスタンダーによる心肺蘇生(bystander CPR)あり、 初期波形がショック適応リズム、ドクターヘリ合流前の自己心拍再開(ROSC)が挙げられた。3 次医療 機関に搬送された後、10 例に経皮的補助人工心肺(PCPS)を用いた蘇生、23 例に低体温療法が施行さ れ、それぞれ 3 例(30%) 、10 例(43.5%)が神経学的予後良好であった。 【結 論】 早期に ROSC が得られる CPA 症例に対しては、飛行距離に関係なく、ドクターヘリが有効であると 考えられた。 第 20 回日本航空医療学会総会 103 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 5 三重県ドクターヘリの現場出動における心疾患症例の現状 ○ 石倉 健 1、岩下 義明 1、山本 章貴 1、武田 多一 1、今井 寛 1、森 一樹 2、 水野 光規 2、藤井 幸治 2、山川 徹 3、説田 守道 2、渡辺 文亮 3 1 三重大学医学部附属病院 救命救急センター、2 伊勢赤十字病院、3 松阪市民病院 【背 景】 三重県ドクターヘリが運航開始になってから 1 年半が経過し、心血管系疾患の現場出動要請も一定の 割合で存在する。さまざまな状態に接触しており、現場や搬送中での対応は幅広く要求されると考えら れる。 【目 的】 三重県ドクターヘリの現状を評価し、心血管系疾患に対して必要と考えられる処置・対応について検 討する。 【方 法】 三重県ドクターヘリ出動記録から、心血管系疾患件数、通報内容、血行動態、診断名、現場・搬送中 処置内容を分析し、日本救急医学会救急診療指針、日本循環器学会ガイドライン、日本内科学会内科救 急診療指針、アメリカ心臓協会 ACLS プロバイダーマニュアルなどを元に必要と考えられる処置を検討 した。 【結 果】 運航開始の 2012 年 2 月 1 日から 2013 年 7 月 31 日までに、全要請回数 503 件、出動回数 420 回、現場 出動例数 232 例、内因性疾患 86 例、心疾患系疾患 26 例であった。通報内容:意識障害 6 例、胸痛 16 例、 背部痛 3 例、呼吸困難 2 例、冷汗 4 例であった。血行動態:収縮期血圧 90mmHg 以下 6 例、心拍数 50 回 / 分以下 3 例、心拍数 150 回 / 分以上 1 例であった。診断名:急性心筋梗塞 5 例、狭心症 6 例、大動 脈解離 5 例(うち心タンポナーデ 2 例)大動脈瘤破裂 2 例、不整脈 5 例、高血圧 1 例、陳旧性心筋梗塞 1 例、不明 1 例(心肺停止)であった。現場・搬送中処置:静脈路確保、酸素、モニター以外では、 十二誘導心電図 9 例、心エコー 13 例、FAST5 例、硝酸剤投与 5 例、人工呼吸 5 例、経皮ペーシング 1 例、除細動 1 例であった。昇圧剤使用、抗不整脈薬使用はなかった。 【考 察】 典型的な胸部症状以外での要請が 23% を占め、十二誘導心電図、心エコー、FAST などを用いた初療 が有用であったと考えられる。徐脈症例数、急性冠症候群症例数に対して経皮ペーシングパッドの使用 頻度が少なかった。現場滞在短縮と早期安定化の優先度について今後検討していく必要性がある。 104 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 4 / CPA・心疾患 O 4- 6 急性冠症候群におけるドクターヘリ有用性の検討 ○ 前山 博輝、間 崇史、藤原 大悟、菊川 元博、佐々木妙子、山本 奈緒、 井手 善徳、藤崎 修、中嶋 麻里、番匠谷友紀、松井 大作、菅 健敬、 原 文祐、池田 光憲、永嶋 太、小林 誠人 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 急性冠症候群(Acute coronary syndrome:以下 ACS)は不安定狭心症から心臓急死までが包括され た広範な疾患概念であり、時に生命を脅かすような状態に陥る事もある。早期の医療介入、経皮的冠動 脈形成術(percutaneous coronary intervention:以下 PCI)が予後を改善する事は周知の事実である。 【目 的】 ACS 症例におけるドクターヘリの用性を検討した。 【対 象】 2010 年 4 月 1 日〜 2013 年 3 月 31 日に救急車およびドクターヘリで搬送された ACS 症例 252 例中、 緊急 PCI が施行された症例を対象とした。 【方 法】 ドクターヘリ搬送群(以下 DH)と救急車搬送群(以下救急車)に分け、後ろ向きに患者背景、覚知 から病院着までの時間、覚知から PCI 施行までの時間、推定医療介入短縮時間、処置内容、予後を検討 した。 【結 果】 緊急 PCI が施行された症例は 46 例で、DH16 症例、救急車 30 症例であった。患者背景は年齢(DH 63:救急車 68.5)、性別(DH 男:女 14:2 救急車 男:女 21:9) 、APACHE II(DH 10.6:救急車 8.4)、MAX CK(DH 2699:救急車 3470)であり覚知から病院着までの時間(DH 43 分:救急車 41 分)、 覚知から PCI 施行までの時間(DH 2 時間 33 分:救急車 2 時間 50 分)であった。DH による医療介入短 縮時間は 21 分であり、DH では病院前診療で心エコー、12 誘導心電図、薬剤投与、気管挿管、経皮ペー シングなどが行われていた。予後は全身機能カテゴリー(OPC) (DH 1.4:救急車 1.9) 、生存率(DH 93.8%:救急車 96.7%)であった。 【考 察】 DH はより重症の患者に対し、早期医療介入による全身状態の安定化が早期から行われていることが 示唆された。また DH では覚知から PCI までの時間短縮による MAX CK の減少、退院時 OPC の改善の 可能性が示唆された。また覚知から病院到着時間が両群間でほぼ同じであり DH は基地病院からより離 れた地域の患者にも恩恵をもたらしていることも考察された。 【結 語】 ACS 症例においてドクターヘリを用いた診療体制は有用である。 第 20 回日本航空医療学会総会 105 一般演題 5 /検証(看護) O 5- 1 事例検討におけるフライトナースの学習効果 ○ 吉田 益美 1、今野 裕美 1、北村 伸哉 2、宇田川尚美 1、笈川 香織 1、 柴崎 雅也 1、下道眞奈美 1、加古 訓之 2、五十嵐一憲 2 1 2 国保直営総合病院 君津中央病院 救命救急センター 看護師、 国保直営総合病院 君津中央病院 救命救急センター 【はじめに】 君津ドクターヘリは、平成 21 年 1 月より 8 名のフライトナースで活動を開始したが、異動・出産等に より現在は 6 名まで減少。うち半数は経験年数が 2 年未満である。そのため活動中に不安を感じるスタッ フが多く、全ての出動に関して振り返りレポートを作成している。さらに今回、振り返りレポートを利 用した事例検討を行い、経験不足への補完を開始したところ、学習効果が得られたため報告する。 【方 法】 1.事例検討を行う前後でフライトナース 6 名へ意識調査アンケートを実施。 2.フライトナースが出動毎に出動内容・患者状態・アセスメントをまとめた振り返りレポートをもと に事例検討用紙を作成し事例検討を行った。 【結果・考察】 事例検討前のアンケートでは、全てのフライトナースが活動中に不安を感じた事があると回答。「どの ような事例に行き詰ったり悩んだりする事がありますか」という問いに対しては、産科・小児科疾患 83%、2 機要請事案 67%、現場進出・医師派遣の事案 50%という結果がでた。 上記結果をもとに事例 検討を行ったところ、振り返りレポートの紙面上だけでは伝わりにくい現場や医療クルーの活動状況な どが明確にされた。また、事例検討後のアンケート結果では、すべてのスタッフが学習効果を得られた と回答した。 事例検討は、フライトナース間の情報共有や知識の習得に有効であり、学習効果が得られたと考える。 「実際の活動で行き詰まったり悩んだりした際、どのように解決していますか」との問いに対して、振 り返りレポートの活用 33%、他のスタッフへ相談 100%、医師・コメディカルと話し合う 83%であった。 この結果から、医師やドクターヘリに関わる他職種との事例検討を行うことで、さらなる学習効果が得 られるのではないかと考える。 今後は、医師やコメディカル・他施設を交えて事例検討を行い、知識・技術の向上・維持に努めてい く必要があると考える。 106 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 5 /検証(看護) O 5- 2 フライトドクターとフライトナースのデブリーフィングへの思い ○ 三谷佳世子、三島 美幸 島根県立中央病院 救命救急センター外来 【はじめに】 島根県立中央病院では、ドクターヘリの活動を振り返るため、フライトスタッフ(フライトドクター とフライトナースと運航スタッフ)が運航の待機終了前にデブリーフィングを行い、その日の症例の振 り返りを行っている。しかし、消防の覚知から要請、ドクターヘリの患者接触までの時間経過の検討、 患者の対応や治療内容などの医療行為に関する振り返りが十分でなく、次へ活かすための話し合いがで きていないのではないかと感じることがあった。そこで、フライトドクターとフライトナースのデブリー フィングに対する思いを明らかにし、今後の方向性を検討した。 【方 法】 研究者 2 名がフライトドクター 7 名とフライトナース 7 名に個別に半構造的インタビューによる面接 調査を行い、逐語記録を作成しデータを得た。そのデータをコード化、カテゴリー化し分析した。 【結 果】 フライトドクターとフライトナースの思いについて、1641 文が抽出され、59 のコードに分類し、22 のサブカテゴリー、6 つのカテゴリーを導き出した。6 つのカテゴリーは、<成長の場><目的の違 い><現状に対する不満><情報共有の現状と問題点><今後希望するデブリーフィングのあり方>< フライトスタッフ(他職種)への配慮>であった。 【結 語】 フライトスタッフが行うデブリーフィングの方向性としては、1)デブリーフィングは自己とチームに おいての成長の場であり、今後も継続する意義がある、2)デブリーフィングの目的をチームで共有し同 じ価値観で行う、話し合う内容については知識や経験による差が出ないよう、振り返る内容を統一した ほうがよい、3)フライトドクターとフライトナースは医療的な振り返りをデブリーフィング以外の場で 行うほうがよいという 3 項目を導き出すことができた。 第 20 回日本航空医療学会総会 107 一般演題 5 /検証(看護) O 5- 3 グループディスカッションによる事後検証会の評価 ○ 石倉美穂子、石田 桃子、多田 真也、野澤 陽子 順天堂大学医学部附属静岡病院 【はじめに】 ドクターヘリ事後検証会をグループディスカッション形式で開催し、その有効性について検討する。 【方 法】 事前にテーマを多数傷病者対応事例と通知し開催した。1 消防が多数傷病者の事例紹介を行い、フラ イトドクターよりヘリの有効活用に関する講義を行った。その後各グループにフライトナースを交えて グループディスカッションを実施した。終了時参加者にアンケート調査をした。 【結 果】 12 消防機関 45 名、フライトナース 9 名、ドクター 2 名が参加しアンケート回収率 100%であった。消 防側のアンケート結果では「ディスカッション形式は有効であったか」の問いに対して 93%が有効で あったと回答していた。その理由として「他消防や医療者側と意見交換、情報交換ができた」 、「要請に ついて基本的なことが確認できた」 、 「活動を行う上で顔の見える関係が重要だとわかった」などの意見 があった。今後の検証したいテーマとして、特異事例、要請タイミングなどの要望があった。フライト ナース側の結果は「ディスカッション形式は有効であったか」の問いに対して 100%が有効であったと 回答していた。自由回答では「基本的なドクターヘリの活用方法が理解されていなことが分かった」「共 通認識を持って活動していることが確認できた」などの意見があった。 【考 察】 今回、アンケートの結果から、ディスカッション形式による事後検証会は消防、医療者側ともに有用 であったといえる。消防の検証したいテーマである「特異事例」に合致していたことや、事前にテーマ を提示していたことで有意義な意見交換につながった。また、ヘリの有効活用について講義後、フライ トナースを交えてディスカッションを行ったことにより消防ごとの活用上の問題が明確となり、ドクター ヘリの基本的な活用方法の認識につながったと考える。今後はテーマに応じた検証会の開催方法も検討 が必要である。 108 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 5 /検証(看護) O 5- 4 プレホスピタル活動における看護実践行動と思考に関する研究 ○ 山本 環 手稲渓仁会病院 救命救急センター 【研究目的】 フライトナース(以下 FN とする)の看護実践行動がどのような思考の過程によって生じたのかを明 らかにする。 【倫理的配慮】 対象者には研究の目的を口頭と書面で伝え、知り得た情報や内容は個人が特定されないよう抽象化に 努め、プライバシーの保護を約束した。 【研究方法】 印象に残っている事例について、半構成的面接法により自由に語ってもらい、情報・思考・行動の視 点からデータを抽出した。 【結 果】 研究対象となった FN は看護師経験 17 年、FN 経験 8 年の看護師であった。語られたのは“挿管”か “搬送優先”かの医学的判断が求められ、結果的に機内移動の前に挿管実施に至った事例であった。FN の語りで得られたデータから情報を「」 、思考を『』 、行動を[]で表記する。FN は「心筋梗塞疑いの 転院搬送」 「バイタルが不安定」の事前情報から、 『状況によっては挿管、血圧に関しては機内にイノバ ンもある』といった思考のもと[病態の予測と薬品類の準備]の行動をとっていた。さらに断片的な追 加情報から『病態の悪化が予測される』といった思考のもと[所定の位置に物品があることを再確認す る]といった行動をとっていた。患者接触後は情報を取捨選択し、 『挿管してから搬送して欲しい』 『搬 送優先で考えるフライトドクター(以下 FD とする)にどう伝えるべきか』といった思考の中で[具体 的数値と同時に、とにかく切迫した状況を強調して伝える]といった行動へと繋げていた。 【考 察】 患者を取り巻く様々な周囲の変化の中で FN は複数の情報を複合的に取捨選択して捉え、優先順位を 見極めて行動につなげていると考えられる。そこには根拠の提示や、伝達の工夫といった行動が示され ており、FN が主体的に活動し、実践していることが示唆された。 第 20 回日本航空医療学会総会 109 一般演題 6 /安全管理(看護) O 6- 1 ドクターヘリに関わる病院内地上関係者の安全管理 ○ 飛松 典子、山下 美香、高山 隼人 国立病院機構長崎医療センター 【はじめに】 救急医療を行うドクターヘリは安全に運航されなければならず、運航に関わる全ての関係者が安全確 保のために定められた規則を守り、確実に実行する必要がある。当院では、フライトスタッフへの安全 講習は定期的に行っているが、ドクターヘリの病院内地上関係者の安全講習は実施していない。インシ デント事例の検討を通して、当院での病院内地上関係者に対する安全管理について振り返った。 【事 例】 ドクターヘリの搬送患者の受け入れは、救命救急センターの医師と看護師が担っている。事例は母体 搬送で、ドクターヘリが予定時刻より 10 分早く到着した。予定時刻変更の連絡がなく、救命救急セン ターに所属していない医師と看護師がヘリポートに進入し、着陸時のダウンウォッシュの影響で、準備 していた毛布が舞い上がった。 【要因分析】 1.ドクターヘリについての安全教育を受けていない職員の自己判断による行動。2.ドクターヘリ到 着予定時刻変更の連絡ができておらず、担当者が待機できていないことによる専門的な治療の遅れ。3. 担当者以外の者がヘリポート内に進入できた管理体制の不備。 【対 策】 1.ドクターヘリ発着の影響が及ぼす危険性を関係職員に周知する。当院は、母子周産期医療を担てお り、患者受け入れに関わる職員に詳しく教育する。2.担当者以外が進入できないような、ヘリポート管 理体制の見直し。3.ドクターヘリ到着時刻変更等、連絡ルールの見直しおよび、受け入れ病棟職員との 進捗状況の緊密な連携の構築。 【まとめ】 ドクターヘリは医療と航空の連携事業であり、従事するスタッフ全員が常に一体となって安全に業務 しなければならない。それにはスタッフ全員の円滑な意思疎通と情報共有が重要である。また、安全の ためには、安全意識を強化し、知識および技術の向上と標準化をはかる必要がある。 110 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 6 /安全管理(看護) O 6- 2 リスクアセスメントによるドクターヘリクルーのリスク管理 ○ 坂田久美子 1、中井公仁枝 1、三木 靖雄 2、中川 隆 2 1 2 愛知医科大学病院 高度救命救急センター、 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科 【目 的】 愛知県ドクターヘリは運航開始から 12 年目となり、ドクターヘリ出動中に事故を起こすことなく運航 してきた。しかし、事故はいつ起こるかわからず、その原因の一つに疲労がある。安全運航を継続する ために、Survival Flight,University of Michigan Health System で用いられているクルーリスクアセスメ ントシートを用いてドクターヘリクルーのドクターヘリの経験、勤務と休息、健康状態からリスクの程 度を調査し検討した。 【調査期間】 2013 年 7 月 【対 象】 医師・看護師・パイロット・整備士・CS 【方 法】 ドクターヘリ搭乗日の朝にクルーリスクアセスメントシートにて自己評価を行う。自己評価の項目は、 1.ドクターヘリ搭乗経験年数とパートナー(パイロットと整備士、医師と看護師)が 5 年以上の経験者 2.その日の勤務形態・連続勤務日数・休息時間 3.健康状態 があり、これらの総得点で評価する。 【結 果】 勤務年数は、医師・看護師・パイロットは、5 年以上が 60%以上であった。連続勤務は、医師・看護 師・パイロット・CS は 2 日から 4 日が多く、整備士は 5 日以上の勤務が多かった。健康状態は、医師の 一部に体調不良がみられたが、その他のクルーはほとんど健康であった。これらの総得点から、その日 従事可能な状態か評価すると、パイロット・整備士・CS は従事可能、一部の看護師は許容範囲であり、 一部の医師は承認できない状態がみられた。 【考 察】 クルーリスクアセスメントシートによる自己評価により、総得点が高い場合は、疲労が蓄積した状態 と自己判断する必要がある。疲労によりドクターヘリの運航・現場活動で正確な判断ができない状況が 生じたり、状況に対する認識・注意力・判断力が低下していることを意識できずエラーが起こる可能性 がある。そのため、勤務管理や健康管理などのリスク管理が必要である。 第 20 回日本航空医療学会総会 111 一般演題 6 /安全管理(看護) O 6- 3 フライトナースのリスク回避志向性と援助規範意識に関する検討 ○ 高橋 誠一 1、土屋 守克 1、坂上 貴之 2、猿谷 倫史 1、小野 裕美 1、 中澤 弘子 1、内藤ゆみえ 1、臼井美登里 1、杉山 聡 3、堤 晴彦 3 1 3 埼玉医科大学総合医療センター 看護部、2 慶應義塾大学文学部、 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 【目 的】 常に危険を伴う任務を遂行する必要のあるフライトナースは、他の看護師と比べリスクの高い行動を 選好する傾向があると考えられる。このようなフライトナースのリスク志向性には、他者を援助するこ とに対する強い規範意識が関連している可能性がある。本研究においては、フライトナースのリスク回 避志向性と援助規範意識を明らかにすることを目的として質問紙調査を行った。 【方 法】 航空医療学会に所属するフライトナース 60 名と、私立大学の内科病棟に所属する看護師 107 名に対し て、無記名自記式の質問紙調査を行った。質問紙は、楠見(1992)により作成された、生命リスク、一 般リスク、金銭リスクの 3 因子で構成されるリスク回避志向性尺度と、箱井・高木(1987)により作成 された、返済規範意識、自己犠牲規範意識、交換規範意識、弱者救済規範意識の 4 因子で構成される援 助規範意識尺度を使用した。フライトナースと内科病棟看護師に層化した上で、それぞれの因子ごとに 合計点を算出し、その平均値について対応のない t 検定を行った。有意水準は 5% 未満とした。 【結 果】 リスク回避志向尺度の生命リスク、一般リスク、金銭リスクの 3 因子いずれにおいても、両群間で有 意差は認められなかった。援助規範意識尺度の 4 因子のうち、自己犠牲規範意識、弱者救済規範意識で は両群間で有意差は認められなかったが、返済規範意識と交換規範意識において、フライトナースの平 均点が有意に高かった(それぞれ p < 0.03、p < 0.02) 。 【考 察】 リスク回避志向尺度のいずれの因子においても有意差が認められなかった事実から、フライトナース は、リスク志向性が高いわけではないことが示唆される。その一方で、返済規範意識と交換規範意識が 有意に高かった事実は、フライトナースが任務にあたって、一方向的ではなく互恵的・相互交換的に捉 える可能性を示唆している。 112 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 6 /安全管理(看護) O 6- 4 ドクターヘリにおける特定看護師業務試行事業実施の現状と課題 ○ 川谷 陽子 1、坂田久美子 1、野口 裕記 2、三木 靖雄 2、竹内 昭憲 2、中川 隆 2 1 2 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救急外来、 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科 【はじめに】 施設は、平成 23 年度厚生労働省の特定看護師(仮称)業務試行事業の実施施設として指定を受け、平 成 23 年度、24 年度実施した。特定看護師(仮称)とは厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」 報告書において、専門的な臨床実践能力を有する看護師が、医師の指示(場合によっては「包括的指示」) を受けて従来一般的には看護師が実施できないと理解されてきた医行為を幅広く実施できるために構築 する新たな枠組みとされている。特定看護師(仮称)に求められる役割は、煩雑な救急現場において円 滑なチーム医療を実践すること、そして患者の救命と重症化を防ぐための早期介入と、安全で的確な緊 急検査や救命救急処置等についてプロトコールに基づき実施し、医療の効率化を図ることである。今回 ドクターヘリ事案において業務試行事業を実施し検討したため報告する。 【結 果】 特定看護師(仮称)は、臨床推論に基づき必要な処置や検査の判断を医師と確認し、直接指導・助言 を受け実施した。特定行為の実施の決定、実施、結果の一次的評価を行った項目は、1.トリアージのた めの検体検査、2.心停止(心静止、無脈性電気活動)の患者に対する薬剤投与(アドレナリン) 、3.け いれん発作が持続している患者に対する薬剤投与(ジアゼパム注射液) 、4.低血糖時のブドウ糖静脈注 射、5.アナフィラキシー患者に対する薬剤投与(アドレナリン)の 5 項目であった。 【考 察】 特定看護師(仮称)は単に医行為を実施するだけでなく、客観的な臨床判断に基づき包括的指示のも と自立的に実施することが求められる。ドクターヘリの場面においても限られた医療者との円滑なチー ム医療が不可欠である。今回実施した特定行為は、ドクターヘリの場面においても必要であると考えら れる。今年度「特定行為」についての検討およびプロトコール試行事業が実施されるため、さらなる検 証が必要と考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 113 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 1 二基地病院の円滑な共同運航を目指して─フライトナース会の役割 ○ 竹中 由佳、豊田 直美、下村 宜子、東浦 美展、渡司 雄大、森田 栄奈、 説田 守道 伊勢赤十字病院 【背 景】 三重県ドクターヘリ(以下 MIEDH)は平成 24 年 2 月 1 日より三重大学附属病院と伊勢赤十字病院の 二基地病院による共同運航を開始した。全国でも二基地病院による共同運航はまれであり、円滑な共同 運航に必要な情報も乏しいため、運航開始までに多くの不安があった。また二基地病院とも新病院へ移 行した直後であり、極めて多忙な中で運航開始を迎えることとなった。さらに二基地病院とも格納庫を 保有しておらず、機体は毎朝運航会社の格納庫から出動病院へ空輸される必要があった。 【問題点】 出動病院の交替時に、資機材の載せ替えにより、運航開始時刻に遅延が発生するのではないかという 問題が提起され、これを解決する必要があった。まず基地病院の交替回数を減らす事が考えられ、 MIEDH は 2 ヶ月毎に出動病院を交替することとした。さらに 2 基地病院共同でフライトナース会(以 下 FNs、FNs 会)を設立し、ここで効率よく資機材を載せ替える方法を検討することとした。 【報告/考察】 資機材の統一は運航開始に間に合わず、開始当初は載せ替えに時間を要していた。しかし FNs 会で共 通のチェックリストを作成し、両病院のフライトドクターの意向を反映させながら細かな調整を繰り返 した結果、資機材を可能な限り統一することができた。機内の搭載場所も統一し、その結果資機材の載 せ替えは円滑となり、一度も運航開始時刻を遅延させることなく要請に対応することが出来ている。な お、このほかに FNs 会では活動記録用紙の統一、症例検討、勉強会などを行っている。FNs は全員三交 替勤務であり、一堂に会することは負担でもある。しかし会を通して顔の見える関係=相談しやすい関 係を築くことが出来、お互いの良い部分を積極的に取り入れ、情報共有を行うことにより、自施設の問 題点を明確にする機会にもなっている。機内の資機材の統一に留まらず、このこともまた二基地病院で の円滑な共同運航に繋がっているものと考えられる。 114 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 2 二基地病院のフライトナース会の成果と課題 ○ 太田 智子 1、寺村 文恵 1、須崎 真理 1、竹中 由佳 2、豊田 直美 2、 下村 宜子 2、東浦 美展 2、渡司 雄大 2、森田 栄奈 2、強力 陽子 2 1 三重大学医学部附属病院 総合集中治療センター、2 伊勢赤十字病院 救命救急センター 【はじめに】 三重県ドクターヘリは、当院と伊勢赤十字病院(以下伊勢日赤)の二基地病院で 2012 年 2 月から二ヶ 月交代の運航が開始された。フライトナースの質の向上と資器材の同一化を図ることを目的とし、二ヶ 月毎に二病院合同のフライトナースの会合(以下フライトナース会)を行なっている。これまで開催し た 8 回のフライトナース会を振り返り、今後の会合の示唆を得る。 【目 的】 フライトナース会の検討内容を評価することで、今後の会合の課題を明確にする。 【方 法】 フライトナース会の議事録から、会合所要時間、参加率、検討内容、勉強会を分析する。 【結 果】 フライトナースは伊勢日赤が 7 名、当院が 3 名で、フライトナース会の開催場所は、二病院で交互に 行なった。会合所要時間は平均 120 分、参加率は 80%であった。 検討内容は、医療機器・資器材、記録用紙、症例報告・勉強会であった。医療機器・資器材は、第 1 回と 2 回で機内資器材を収納場所も含め統一し、第 7 回で評価した。携行搭載資器材も軽量化を目的に 統一することとなり、携帯バックと内容以外は統一できた。記録用紙は、二病院で違いがあったが、第 5 回目まで約 1 年間検討し統一した記録用紙に変更した。勉強会は、第 5 回までは印象に残った症例報 告を行なっていたが、第 6 回より症例に対して行なった判断と行動を加え報告し、疾患の学習会を行なっ た。症例に対応する知識は深まったが、出動時は一人のため判断や行動の評価が十分でない、フライト ドクターの意見が欲しい等が聞かれている。 【考 察】 機内資器材、記録用紙は統一できたことから同一化は図れたと考える。質の向上は、症例報告や疾患 の勉強会は情報共有、知識の向上に繋がったが、個々の行動の評価が十分ではないため、症例の提示や 検討方法、参加者等について今後、検討が必要であると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 115 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 3 医療機関との連携強化を目指して アンケートから得られた課題 ○ 佐々木ひとみ、本間 香織、越智 明子、三上 淳子 旭川赤十字病院 救命救急センター 道北ドクターヘリは 2009 年 10 月に運航開始し、4 年目を迎えた。南北 300Km、東西 200Km 及び離 島 4 島を含む、広大な運行圏であるため、ヘリ要請から現場到着までに時間を要する場合が多い。その ため、近隣医療機関に患者を一旦収容し、初期治療・検査を施したあと、到着したヘリに引き継ぐ緊急 外来搬送と呼ばれる形態や、地域過疎化に伴う施設間搬送も多い。患者は重症度や緊急度が高く、速や かな搬送を行うためには、初めて会う他施設のスタッフとの協働が重要となる。運航時より緊急外来搬 送や施設間搬送に携わった医療機関数は 55 施設で、救急の受け入れ態勢は様々であることから、戸惑い や不安を感じている施設があるのではないかと考えた。そこで今回、協力医療機関の看護師の疑問や要 望を把握する為、アンケート調査を行い、今後の連携強化のための課題を明確にしたいと考えた。 116 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 4 ドクターヘリ看護記録および申し送りの評価 ○ 斎藤 由実、武藤 博子、渡部智恵子 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター 【はじめに】 福島県ドクターヘリは、2008 年より福島県立医科大学附属病院(以下、基地病院とする)で運行開始 された。基地病院に搬送される患者は全体の 4 割程度であり、6 割は他の医療機関へ搬送される。その ため、患者情報伝達手段としての看護記録や申し送りは重要である。今回、 「ドクターヘリ看護記録」の 記載内容や申し送った情報が、搬送先病院が必要とする情報と合致するか、また何が不足しているか調 査を行った。 【研究方法】 対象:基地病院を含む、ドクターヘリで搬送される患者を受け入れる 4 施設の看護師 方法:無記名自記式質問用紙調査「ドクターヘリ看護記録」の記載や申し送りについて、1(記載が不 十分 / 分かりにくい)~ 4(十分記載されている / 分かりやすい)の 4 段階で評価した。 【倫理的配慮】 本研究は福島県立医科大学附属病院の倫理委員会の承認を得た。アンケートの返送をもって研究への 同意とした。 【結 果】 看護記録用紙の記載、申し送りに関して、全ての項目で 3 以上の評価であった。重要な情報としては 「家族連絡の有無」「バイタルサイン」「処置内容」等の回答が多く、より多くの情報を記載して欲しいと の意見があった。申し送りに関しては、屋外や移動しながらの短時間での申し送りであるため内容が聞 き取りにくい、急いでおり質問しにくい等の問題があったが、看護記録用紙の記載が十分であれば、申 し送りは不要との意見もあった。 【考 察】 搬送先病院の看護師は、ドクターヘリ看護記録から必要な情報を得ており、より多くの情報を記載す ることを求めている。口頭での申し送りは時間的制約などから、フライトナースからの一方的な情報伝 達となってしまう傾向があった。我々は、これまで以上に短時間で効率よく記載する工夫が必要である。 また、申し送りを行うタイミングを考慮する必要がある。 第 20 回日本航空医療学会総会 117 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 5 フライトチームにおける情報の共有~情報共有の方法とその変化~ ○ 森田 須美、米田 勝一、清水真美子、林 詳子、福本 真也、林田 康子、 濱 武、藤巻 ゆかり、西口 環、小林 誠人 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 【目 的】 豊岡病院ドクターヘリ事業におけるインシデントの情報共有の方法とその効果を検討し安全な事業展 開に資することを目的とした。 【対象・方法】 2010 年 4 月から 2013 年 3 月までのひやりはっとレポート(以下レポート)会議録などを対象に報告 方法・検討形式について後ろ向き調査を行い検討した。 【結 果】 検討対象となったインシデントは 43 事案、レポートは 33 事案、会議録は 33 事案であった。2011 年 12 月を境に報告方法、検討形式に変化を認めており、2011 年 12 月以前を初期、2012 年 1 月以降を現在 として示す。提出されたレポートは初期 5 件、現在 28 件。本事業スタッフ間メーリングリスト(以下 ML)への投稿は、初期 13 件、現在 25 件あった。情報共有の方法では、初期はインシデントに関わった スタッフ間で討論を行い、個々人の判断で必要と思われた事案のみ、ML へメール配信、スタッフ会議 で検討が行われていた。現在は、インシデントに関わったスタッフ間で討論を行いレポート提出が全例 に行われ、さらに ML へのメール配信、スタッフ会議での検討が行われていた。現在は、レポート提出 されたものは全例スタッフ会議で事実確認、原因、対応策が検討され、その結果システムの作成あるい は修正が 6 例に行われた。 【考 察】 2011 年 12 月にヘリポート内でガーゼ飛散があり、インシデントの情報共有と検討方法について振り 返りが行われた。これを境にフライトチームでのレポート提出に関する肯定的な姿勢と、情報共有およ び検討方法に関する具体的なフローの作成がなされた。この変化は、原因を追究し改善点を講じ、運航 に関わるスタッフと情報共有することで同じ認識のもと、注意しあえる環境ができ再発防止につながる 変化であると考える。 【結 語】 インシデントおよびその対応策の情報共有の徹底化は、医療事故防止、安全運航を担保する上で重要 であり効果を認めている。 118 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 7 /コミュニケーション(看護) O 7- 6 ドクターヘリの活動におけるフライトナースの情報伝達について ○ 宮崎 孝光、葛西 陽子 手稲渓仁会病院 救命救急センター 【はじめに】 多職種が協働するドクターヘリでは、コミュニケーションをとることが難しい現場と言える。今回 「SBAR」というコミュニケーションツールを用いた実践を行い、その振り返りを行ったため報告する。 【事例紹介】 50 歳代の男性、コンクリート投入用のスクリューに右下腿を挟まれ、救助開始から約 2 時間で救助さ れ近隣の病院に搬送となる。 【実 践】 患者は重機に右膝窩から下を挟まれており、動脈を圧迫止血されていた。患者自身が両手を使って自 分の体勢を維持している状態であった。接触時の初期情報では、患者の状態に緊急性は認められなかっ た。また現場の安全確保も不十分であったため、医師と相談のうえ輸液投与などの必要性はないと判断 した。しかし救出には時間を要し、その後、患者は下肢の痺れの増強を訴え、顔面蒼白、意識レベルや 血圧の低下も認められた。そこで、医師にそれらの情報を伝えるとともに、このままだとショックにな るため救出まで待てないことを伝え、静脈路の確保を医師に提案し実施した。 【考 察】 SBAR とは Situation(状況)Background(背景)Assessment(判断)Recommendation(提案)を意 味し、キーワードで伝達するコミュニケーションを標準化するツールとして活用されている。今回の事 例では、状況として顔面の蒼白や意識やバイタルサインの低下を伝えることはでき、さらに、静脈路の 確保を看護師の提案として伝えることもできたと考える。しかし、提案に至るまでの背景や判断に関し ては実践することができなかった。フライトナースには、短時間で複数の情報を捉え系統立てて判断し、 多職種や患者・家族とコミュニケーションをとることが求められる。そのため、SBAR の様なコミュニ ケーションツールを活用し、日常的にスキルアップを目指し情報伝達のトレーニングを積むことが重要 と考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 119 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 1 ヘリコプターが参加する防災訓練時の放射線量計測と安全管理 ○ 長谷川有史 1、大久保玲子 1、林田 昌子 1、鈴木 剛 1、畑下 智 1、 阿部 良伸 1、塚田 泰彦 1、伊関 憲 1、石井 証 1、島田 二郎 1、 池上 之浩 1、田勢長一郎 1、高橋 宏之 2、小島 鋭久 2、児玉 三直 2 1 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター、2 中日本航空株式会社 【背 景】 福島県内の放射性物質飛散地域では、重機等を使用し防護具を装備した労働環境での除染作業が進行 中であり、周辺交通量増大と相まって外傷・熱中症・同時多数傷病者発生のリスクが危惧されている。 我々は、ヘリコプター数機が参加し、居住制限区域で行った県主催の大規模防災訓練に於いて、訓練中 の環境放射線量、および個人放射線被ばく線量を計測・評価したので報告する。 【目 的】 訓練時の放射線影響を、環境影響と個人影響の両面から計測評価し、今後の活動の参考とすること。 【方 法】 環境影響は、空間放射線量率、ダストサンプリングによる放射能濃度測定、気温、湿度、気圧の変化 を計測した。個人影響は、外部被ばく線量を直読式ポケット線量計、内部被ばく線量は訓練参加前後の ホールボディーカウンター計測を協力者に対して行った。 【結果と考察】 多数傷病者対応訓練は、陸上競技場フィールドを臨時ヘリポートに設定し、ヘリコプター 3 機 10 回の 離着陸を伴った。 空間放射線量率はヘリ離着陸時において変化は明らかではなかった。ダストサンプリングによる放射 能濃度測定では 2 地点 4 回の計測中、一カ所のみ Cs137 が 1.31E-8±0.29E-8 Bq/cm3 検出され、他の 3 計 測は検出感度以下だった。 外部被ばく線量の最大値は 6 時間の現場活動で 6μSv であった。1 時間あたりの外部被ばく線量は活 動地点の土地の性状(コンクリート面か草地か)により差を認めた。 個人の内部被ばく線量測定では γ 線を放出する人工放射性物質はいずれも検出感度以下であった。 ダストサンプリング結果から推定内部被ばく線量は 0.67μSv/ 一年間と評価された。これはサンプリ ング地点で一日 3 時間の活動を一年 365 日毎日行い、同じ大気の状態であったと仮定した場合の推計値 である。粒子径や体内吸収割合は ICRP Publication 71, 72 に基づくものであり、本推計は実際の被ばく 線量を過大評価している可能性がある。 120 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 2 気仙沼災害医療における航空医療搬送 ○ 成田 徳雄 1,2 1 気仙沼市立病院 脳神経外科、2 宮城県災害医療コーディネーター 東日本大震災における気仙沼災害医療活動の中から、被災地災害医療コーディネーターとして関わっ たドクターヘリを含めた航空医療搬送の実例を検証し、考察を加えて報告する。 【目 的】 東日本大震災における気仙沼での航空医療搬送の各事例を検証し、有事における有用性の検討と、平 時における過疎地域型二次医療圏での医療へのより効率的な航空医療の展開について検討する。 【事例 1:緊急医療搬送】 発災 4 日目深夜、市街地火災および病院内自家発電装置の不具合により、東北大学病院への重症患者 24 名の緊急搬送の必要が生じた。使用可能な情報通信ツールを駆使し、東京 DMAT・宮城県災害対策 本部・東北大学病院救命救急センター・各県ドクターヘリ・自衛隊と情報共有し、日照時間内での医療 搬送が可能であった。 【事例 2:慢性透析患者大量広域医療搬送】 慢性透析患者の医療継続が困難となり、患者の圏域外搬送の必要が生じた。東北大学血液浄化療法部・ 透析医会メーリングリストと連携し、自衛隊固定翼機を用い 78 名透析患者を無事に札幌へ医療搬送を 行った。一方、東京都への高速バスを用いた医療搬送を行った 10 例の透析患者の中で、1 例が車中に肺 梗塞による死亡となった。 【結 果】 災害時における航空医療搬送は有用であり、また安全性においても評価された。しかし、被災現地に おいて航空医療搬送ツールの情報収集は困難であり、ミッションを展開する上で災害医療コーディネー ター間の連携が重要であったと認識している。 【考 察】 災害時における航空医療搬送の有用性は、今回過疎地の各被災地で充分認識された。地方都市を中心 としたドクターヘリの展開において、過疎地域における運用を充分に考慮した整備が重要と考える。本 年度より気仙沼において広域的地域間共助推進を目的とした民間ヘリを用いた医療支援整備事業を開始 した。有事に強く平時に役立つ航空医療のあり方を今後検討していく予定である。 第 20 回日本航空医療学会総会 121 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 3 日常時から災害時に対応可能なデジタルペン患者情報伝送システム ○ 井上 貴博 1、大川 元久 2、岡崎 泉 3、野里 順久 4、増成 博志 5、 後藤 英文 6、高橋 治郎 1、藤尾 政子 3、杉浦 潤 1、山田 祥子 1、 竹原 延治 1、堀田 敏弘 1、椎野 泰和 1、荻野 隆光 1、鈴木幸一郎 1 川崎医科大学 救急医学、2 倉敷芸術科学大学 生命科学部救命士コース、 川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター、4 日立公共システムエンジニアリング株式会社、 5 株式会社呉電子計算センター、6 株式会社アイ・ユー・ケイ 1 3 災害時におけるドクターヘリ(以下ドクヘリ)の役割は、救助・救急活動、医療活動等のための重要 な戦力として期待されている。即ち、日常のドクヘリ活動における患者対応から多くの患者搬送が予想 される災害時対応に迅速に切り替える必要がある。通常のドクヘリ活動の患者情報を混乱なく災害時対 応の患者情報として伝達できるかが重要な点であると思われる。ドクヘリ患者情報伝達システムを平常 時から災害時においてそのまま応用できるシステムとして構築する必要があると考える。我々は現行の 手 書 き の 患 者 情 報 記 録 を 手 始 め に デ ジ タ ル ペ ン に よ る ICT(Information and Communication Technology)の導入を行い災害時などに応用可能なドクヘリ患者情報伝送システムの構築・導入を検討 した。ICT 導入の利点としては情報の共有化・可視化、伝達・記録の簡便化である。それにともなう問 題点としては業務負担の増加、導入そのものの人的・経済的・機械的負担、電磁波などの物理的影響が 考えられた。我々は『現在の業務に負荷なく日常の業務と変わらない形で導入したい』という事に重点 を置き、デジタルペンによる記録システムに注目した。手書き入力でスマートフォンなどを利用するシ ステムである。この方法で現行システムのデジタルペンを用いた患者情報システムを試作した。 このシ ステムと患者情報ネットワークが構築できれば、将来、地域の救急医療ネットワークのユビキタス化が 実現出来る。また災害時ドクヘリは、県境を飛び越え被災地に飛来することを考慮、スマートフォンな どの携帯端末や医事無線などでネットワークに接続し各地で患者情報や経時的病状変化、さらに位置情 報などが共有できるシステムとなり、さらに将来的には全国に配備されているドクヘリに導入し DMAT との連携、EMIS や広域患者搬送カルテとのリンクなど、大災害の際には統一した指揮命令系統に基づ き迅速・円滑な運用応用が可能となることを目指す。 122 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 4 災害時でのヘリ活用の一考察~民間救急ヘリ MESH の活動から~ ○ 筒井 清隆 1、浦谷 幸男 1、金城 克 1、神山 和美 1、上江洲安勝 3、 小濱 正博 2、森川 康雄 4 1 3 北部地区医師会病院 看護部、2 北部地区医師会病院 救急部、 北部地区医師会病院 救急救命士科、4 中日本航空株式会社 【はじめに】 民間医療搬送ヘリは、日本では現在複数稼働している。このうち、沖縄の民間救急ヘリ MESH(以下 MESH)では、3 年前の東日本大震災時において人員や物資輸送、情報収集などに貢献した活動が展開 できたため、報告する。 【目 的】 当時の状況を活動記録より検証し、今後の展望を考察する。 【結 果】 2011 年 3 月 28 日、発災の 17 日後より理事会の承認を得てヘリを被災地へ空輸。岩手県花巻空港を拠 点として岩手県庁災害対策本部医療班の指揮下に入り、3 月 30 日よりミッション開始し、4 月 12 日まで およそ 14 日間活動した。MESH 側の医療スタッフは看護師のみであり、岩手県庁に拠点を置き、県災 害対策本部の医療班と行動を共にした。活動範囲は岩手県内の全被災地が対象であった。ミッションは 患者輸送ではなく、主に要人移送や物資搬送、現地の情報収集の業務を展開した。 【考 察】 当時岩手県庁から海岸線の被災市町村までは陸路では 3 時間以上を要するところ、空路ではおよそ 30 分で到達可能となった。そのため災害対策本部員の被災地への日帰り搬送が可能となり、正確できめ細 かな情報がその日のうちに、夜の全体会議で話し合われていた。この対策案は次の日に速やかに実行さ れ、物資輸送、要人の派遣などが被災地で反映されていた。このことは、MESH による被災地での活動 が、県災害対策本部の重要な業務の一端を担っていたと考えられた。以上の事から、ドクターヘリや他 の公的ヘリとの運用の役割を考え、地域性や災害時期のニーズに応じた臨機応変なヘリ運用を行う事が、 発災から亜急性期に至るまでの有効なヘリ運用に繋がるのではないかと考える。 【まとめ】 民間救急ヘリも公的ヘリも、災害時運用の役割分担を考え、ニーズに応じたヘリ運用を、各自治体が 勘案し訓練しておく必要があると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 123 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 5 発災時ドクターヘリ派遣に伴う必要運航備品 ○ 中田 泰博、土川 和三 朝日航洋株式会社 航空事業本部 東日本航空支社 整備部 EMS グループ 第 20 回日本航空医療学会総会開催おめでとうございます。また被災地福島の方々にお見舞い申し上げ ますと共に、一日も早い復興をお祈り致しております。 今回「災害とドクターヘリ」と言うテーマで、私達ドクターヘリ運航会社が広域災害におきまして通 常カバーエリア外へ数日に渡り出動する際の携行装備品と課題について御紹介したいと思います。 発災時の初動として DMAT が消防防災航空隊や自衛隊と共に活動を開始しますが、普段運航を主と して十分な整備資機材等を持たない(基地によっては格納庫すら無い)病院ヘリポートから出動するド クターヘリにとって、活動初期の数日間を乗り切る備えを持つことは救命率の向上にも必要不可欠と考 えます。 具体的には、通常カバーエリア外の目的地へ飛行するための TOOL(地図、GPS など) 、現地で活動 するための燃料確保、夜間に駐機する場所や機材が、人員と同様重要なウエイトを占めて参ります。ま た活動が長期化した場合、追加のドクターヘリ維持管理も考慮しなければなりません。 またこのような場合、ドクターヘリに搭載する医療資機材も追加となるため、最小限の運航機材を選 定・搭載出来るように準備をしております。 124 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 6 被災地拠点空港における民間旅客機の協力・支援についての検証 ○ 青木 悟郎 1、松尾 晋一 1、滝脇 博之 1、島袋 林秀 1,2、北村 伸哉 1,3、 中村 隆宏 1,4 1 3 航空医療搬送研究所 /JIAT、2 聖路加国際病院 小児科、 君津中央病院 救命救急センター、4 関西大学 社会安全学部 東日本大震災では、道路及び鉄道が分断されるなど地上輸送手段が大きな影響を被り、復旧までの間、 航空機(特にヘリコプター)による人員・物資の搬送が有効であることが再認識された。その中で、ド クターヘリをはじめ多くの災害用航空機が集中して運用された被災地およびその周辺の一部の空港では、 民間旅客機も現地で給油を行う事で、災害用航空機への給油の遅れや燃料不足といった問題が発生した。 我々は、大規模災害発生時、被災地およびその周辺にある空港を被災地拠点空港と仮定、民間の旅客機 が行える支援・協力について考察したので発表する。被災地拠点空港では航空会社の定期便、あるいは 救援の人員や物資を搬送するためのチャーター便として民間旅客機が運航することも考えられるが、燃 料タンク容量に余裕があれば、当該空港までの飛行に必要な燃料に加え、次便の飛行に必要な燃料も搭 載可能であり、被災地拠点空港での給油を省略可能である。さらには被災地で活動するドクターヘリな ど災害用航空機のための燃料を、燃料タンクの余裕分に搭載し、被災地拠点空港の備蓄用燃料として輸 送することも物理的に可能である。しかし、支援用の燃料を搭載することは出来たとしても、当該旅客 機が被災地拠点空港に円滑に到着し、速やかに備蓄用の燃料を降ろし、救援機に給油出来なければ最終 的な支援にはつながらない。民間旅客機の導線・駐機場の確保、航空機から燃料を降ろす場合の所要時 間などの問題点、燃料を降ろすための専用のタンクローリーの確保など、空港のインフラ要件などにつ いても検証したので報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 125 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 7 白鳥は飛べず~広域災害時の民間医療ヘリの役割の考察~ ○ 冨岡 譲二 1,2 1 社会医療法人財団池友会 救急搬送システム部、2 社会医療法人緑泉会 整形外科米盛病院 「ホワイトバード」(以下「WB」)は、北部九州を中心に運行している民間救急ヘリで、2008 年 6 月か ら運航を開始し、病院間搬送を中心に現在までに 700 件以上の患者搬送を行うかたわら、地域の災害訓 練にも積極的に参加してきた。2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の際にも、WB は発災直後から 出動準備を行い、翌日にはヘリ運航会社の基地がある神戸市まで移動、待機を行い、派遣の機会をうか がったが、結果的に DMAT・ドクターヘリを中心とした指揮命令系統・航空管制体制の中で、どのよう な運用を行っていいかがはっきりしなかったことと、現地での燃料補給の見通しが立たなかったため、 被災地入りすることを断念した。大規模災害時にヘリコプターが非常に有用であることは、東日本大震 災の際に実証されたが、民間医療ヘリがどのような役割を果たすべきか、またどのように運用されるべ きなのかは、十分議論されてきたとは言えない。最近では、WB も内閣府主催の総合防災訓練に参加さ せていただけるようになったが、その経験も踏まえ、今後、広域災害時に民間医療ヘリが果たすべき役 割について考察する。 126 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 8 /災害時の活動 O 8- 8 県の防災へのドクターヘリとしての関わり~沖縄県ドクターヘリ~ ○ 八木 正晴、米盛 輝武、伊藤 貴彦、葵 佳宏、那須 道高、福井 英人、 新里 盛朗、北原 佑介、高田 忠明、屋宜 亮兵、岩永 航、井上 稔也 浦添総合病院 救命救急センター 沖縄県は、日本の最南端に位置する離島である。隣県とはいえ、最も近い鹿児島県でも約 650km の距 離がある。これは、東京~広島間に相当する距離であるが、問題は陸続きではないことである。そのた め本州地方での災害の場合、簡単に応援に行くことができない上に、県内の災害に対して超急性期から、 場合によっては急性期までを自分たちだけで乗り切らなければならない可能性がある。そのため、年に 一度の沖縄県総合防災訓練には県内のあらゆる機関が参加する。ドクターヘリも例外ではない。平成 20 年に沖縄県ドクターヘリとして運航を開始して以来、平成 22 年度、24 年度と県総合防災訓練に参加し てきた。そのことから、県内外の災害に対する沖縄県ドクターヘリとしての有用性と問題点について考 察した。 総合防災訓練そのものは、他県と変わらず、県内の消防機関、医療機関だけでなく、自衛隊、警察、 電力会社、電話会社、ガス会社、建築業など 80 以上の機関が参加する。ドクターヘリは、医療班の一つ としてだけでなく、搬送ツールとしても参加する。被災地救護所でトリアージされた患者を引き継ぎ、 場合によっては初期治療を行い、訓練地沖合に停泊している海上自衛艦へ収容する。自衛艦内で、待機 している DMAT チームに引き継ぐまでが、訓練内でのドクターヘリの役割である。 訓練ではここまでであるが、ヘリコプターという利点を考慮すると、他にも有効利用する方法はある。 また、沖縄県ドクターヘリの業務には離島搬送があり、活動の 6 割を占める年 300 件以上もの要請があ る。このことを考慮し、東日本震災では災害派遣を見送った。現在 DMAT もドクターヘリも、九州沖 縄ブロックでの活動について検討が始まっている。今後は、県内外に対する運用を考える必要がある。 第 20 回日本航空医療学会総会 127 一般演題 9 /教育(看護) O 9- 1 病棟勤務でのフライトナースへの道 Off-JT スタッフ参加の有効性 ○ 河合 梢、大森 郁子、松岡 美紀、北村 泰宏、加登 譲、斉藤 孝次 釧路孝仁会記念病院 フライトナースは救命センター看護師から選抜されるのが一般的である。二次医療機関の当院では、 病棟勤務看護師の演者が 9 ヶ月のオンザジョブトレーニング(以下 On-JT)後、5 月より自立した。 循環器病棟勤務で、外傷、小児含めた救急患者への対応は前任地勤務の経験だけだった。また同乗指導 するフライトナース 3 名とも勤務部門が別で、関係の作り方は難しかった。 この条件の中で、院内で開催される内因性疾患の研修会、院外の病院前外傷処置研修会に積極的にス タッフ参加し、救急患者、外傷、小児患者への対応を学んだ。またオフザジョブトレーニング(以下 Off-JT)で、他のフライトナースとともに指導することで他メンバーとの関係もより緊密になり、地域 の救急隊員との関係も作る事ができた。 On-JT 期間中、出動は 16 回、現場で 8 回活動した。外傷症例は 2 例、小児は 1 例だった。期間中、 ICLS コースへ 8 回、小児 BLS コースに 1 回、ISLS コースに 2 回スタッフ参加した。JPTEC、ITLS ア ドバンス、ITLS 小児コースにも計 4 回スタッフ参加した。On-JT 中、コースで指導していた内容が実際 に役立った場面は以下の点だった。 1、気道管理や経皮ペーシング時の対応、脳卒中初期診療時の発症時刻や家族の所在、服薬、既往など の情報収集に関して院内コースの内容を確認しながら活動ができた。2、はじめて事故現場に向かった際 には自らの安全確保、MIST を使った申し送り、現場滞在時間の短縮を意識をして対応するよう心掛け た。3、小児症例は 1 件だったが、小児 ITLS で指導していたので小児の年齢別バイタルサインに踏まえ た活動や、発達段階に応じた対応、母親との別離の恐怖を考慮した搬送方法の選択等を考慮することが できた。Off-JT コースを受講するだけでなく、スタッフ参加することで自分の理解不足、実際の対応の 不十分さもよりリアルに自覚でき、On-JT での活動に生かせた。 128 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 9 /教育(看護) O 9- 2 フライトナースの育成における活動可視化の試み ○ 中澤 弘子 1、猿谷 倫史 1、内藤 ゆみえ 1、高橋 誠一 1、小野 裕美 1、 臼井美登里 1、杉山 聡 2、堤 晴彦 2 1 埼玉医科大学総合医療センター 看護部、2 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 【はじめに】 当院のフライトナースは運航当初からの 4 名に新人 1 名を加えた 5 名で活動しており、後任のフライ トナースの育成が当面の課題となっている。しかし、当救命センターの経験年数分布は中間層が少なく、 新たにフライトナースを育成しようとしても適正年齢層の看護師がフライトナースを希望していない現 状がある。そこで、当センターではフライトナースの活動を可視化することによって若い希望者のモチ ベーションを維持することを目的とし、今回当センターで実施されたフライトナース勉強会に希望者を 参加させ、堀野の達成動機測定尺度を用いてその効果を検証した。 【目 的】 フライトナースの活動の可視化によるフライトナース希望者の意識の変化を検証する。 【方 法】 当救命センターのスタッフへフライトナース勉強会に参加可能であることをアナウンスし希望者のみ 参加。参加前と参加後にアンケートにより達成動機測定尺度を測定した。 【結 果】 フライトナース勉強会に参加した救命センタースタッフは 19 名。内フライトナースの希望者は 12 名 であった。フライトナース希望者の平均経験年数は 5.1 年(±5.0) 、救命経験年数 4.4 年(±5.2)であっ た。達成動機測定尺度の自己充実的達成動機は実施前 76.42 点(±8.64) 、実施後 79.67 点(±8.27)であ り、競争的達成動機は実施前 48.42 点(±9.70) 、実施後 49.33 点(±11.59)であった。また、参加者の うち実施後に値が上昇したものは 6 名、低下したものは 4 名、変化の認めなかったものは 2 名であった。 【考 察】 勉強会参加前後では達成動機測定尺度の値に有意差は認めなかった。要因として、対象者がフライト ナース希望者であり、達成動機測定尺度の値が勉強会参加の有無に関わらず先行研究と比較しても高値 であったことや、可視化したことによる影響が推察される。今後の課題として、このような機会を定期 的に開催し、長期的な達成動機測定尺度の推移を検討していく必要がある。 第 20 回日本航空医療学会総会 129 一般演題 9 /教育(看護) O 9- 3 現任フライトナースの看護の質の向上を図るための取り組み ○ 横内まゆみ 山梨県立中央病院 救命救急センター 【目 的】 山梨県立中央病院は、H24 年 4 月 1 日よりドクターヘリの運用が開始され、昨年度は年間 380 件ほど の出動があった。ドクターヘリ開始時はフライトナース 5 名であり、現在フライトナースの育成を行い ながら常時 6 ~ 7 名でローテーションを行っている。ドクターヘリの出動回数が増えていくと共に、そ れぞれのフライトナースはフライト業務としては問題なく活動が行え、医師と共に患者の搬送が行えて きている。しかし、その業務にあまりにも慣れてしまうことで、問題なく搬送が行えたことに満足して しまい、現場での看護の役割を考え行動することが充分に行えていない状況ではないかと考える。そこ で、フライトナース個々が自己の現状を振り返り、フライトで看護師が同乗する意味は何か、看護の役 割は何かを再考し行動していく必要がある。 【方 法】 ・フライトナースへのアンケート調査 ・事例検討会 ・シュミレーションの実施 【結 果】 フライトナース個々が自己の現状を振り返り、お互いに意見交換やシュミレーションを行っていくこ とで現場での看護の役割について再認識し現任フライトナースの看護の質の向上に繋がっていくと考え る。 130 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 9 /教育(看護) O 9- 4 プレホスピタルにおける看護活動の実態と教育プログラムの検討 ○ 水野 憲宏、二俣 美鶴、増渕美恵子 日本医科大学千葉北総病院 看護科 プレホスピタルでの活動は、医療スタッフと救急隊員、運航スタッフが協働し他職種との連携が行わ れており、フライトナースは特殊な状況下で限られた情報と限られた時間、医療資器材を用いて迅速で 安全な活動が必要とされる。A 病院では、視覚的教育や救急車を用いたシミュレーションの初期訓練を 行い、エマルゴの活用やナラティブによる学習を重ねて、経験知とし現場活動に生かす訓練を行なって いる。しかし、フライトナースのプレホスピタルにおける一連の活動は、前述したように限られた情報・ 時間・器材で活動を遂行しなければならず、初めてドクターヘリに乗る看護師は、これらの一連の流れ が上手くいかないという状況があった。 A 病院では、欧州諸国で活動しているラピッドレスポンスカー(以下ラピッドカー)を平成 23 年に導 入し、医師と看護師が同乗し活動を行っている。平成 24 年度の当院ドクターヘリは 1021 件出動し現場 滞在時間は平均 12 分であり、ラピッドカーは 179 件出動し患者接触から病院到着まで平均 23 分であっ た。この結果からプレホスピタルにおける看護師教育プログラムを検討することを目的にドクターヘリ とラピッドカーの活動実態を把握するため、フライトナースに半構成的面接を行った。その結果「現場 到着前」は、ドクターヘリは情報が少ないまま患者接触となるが、ラピッドカーは現場到着まで時間が かかるため救急隊からの情報量が多い。「到着後」では、処置に関しては同じだが、ラピッドカーは家族 対応が難しい。 「搬送中」では、ラピッドカーは処置後そのまま救急車で搬送先病院へ移動する為、時間 的に余裕があり、処置介助やアセスメント、情報収集や物品管理がやりやすいという意見が聞かれた。 したがってラピッドカーからドクターヘリに段階的な教育プログラム可能であると考えたので報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 131 一般演題 9 /教育(看護) O 9- 5 フライトナース委員会におけるフライトナースラダーの作成 ○ 山崎 早苗 1、坂田久美子 2、藤尾 政子 4、野澤 陽子 3、川谷 陽子 2、 大森 章代 5、泉野 真樹 6 1 4 東海大学医学部付属病院、2 愛知医科大学病院、3 順天堂大学医学部附属静岡病院、 川崎医科大学附属病院、5 日本医科大学千葉北総病院、6 国立病院機構長崎医療センター 日本航空医療学会フライトナース委員会は、航空医療にかかわるフライトナースの育成、質の保障を 目的に活動している。 日本におけるフライトナースの育成や質の保障には、フライトナースに求められる能力は何かを検討 し、その能力を備えることができるような教育が必要であると考えた。そこで、フライトナース委員会 では、フライトナースラダーを作成し、求められる能力を段階的に示し、ラダーレベルに応じた能力と 教育を積み重ねていくことを明示していくこととした。ラダーは 4 段階に区分けし、 「フライトナースと しての基礎能力を有する」 「フライトナースとしての実践能力を有する」 「フライトナースとして実務を 遂行できる」 「フライトナースの指導者としての能力を有する」とし、さらに各段階に必要な能力を「看 護実践力」「対人関係力」 「管理力」 「教育力」 「自己教育力」に分けてそれぞれに示した。フライトナー スとしての能力を備えるために、必要な時期に必要な教育ができ、さらにフライトナースが自己研鑽し て質を維持し、ドクターヘリ事業の発展に寄与できることを期待する。 132 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 10 /現場活動(看護) O10- 1 緊急 O 型輸血の持ち出しの現状と今後の課題 ○ 埇田麻衣 1、峯山 幸子 1、山崎 早苗 1、五十川美惠子 1、猪口 貞樹 2 1 東海大学医学部付属病院 看護部、2 東海大学医学部外科学系 救命救急医学 【目 的】 当院では、2011 年 4 月より緊急 O 型輸血(以下 O 型輸血)を院外に持ち出す場合の規定を設け、運 用している。規定には、院外搬送中の輸血の温度管理の方法や O 型輸血投与前の血液型採血を行うなど が記載され、院外で安全に輸血が使用できるように院内の輸血センターと連携を図っている。当院の O 型輸血持ち出しの現状から今後の課題を検討する。 【方 法】 2011 年 4 月から 2013 年 7 月までに、Dr.HELI で出動した患者のうち O 型輸血を投与した患者の件数、 主訴、転帰から現状の問題点と課題を検討する。 【結 果】 期間中 Dr.HELI 出動件数 663 件のうち、O 型輸血を持ち出したのは 14 件であった。そのうち院外で 使用した件数は 2 件、帰院後使用した件数は 2 件であった。また、O 型輸血を持ち出さなかった患者の うち、帰院後使用した件数は 24 件であった。患者の内訳としては、Dr.HELI 要請時の主訴が外傷・意識 障害が 6 件、外傷・ショックが 9 件、外傷性 CPA が 7 件、腹部大動脈瘤破裂が 4 件、吐血・ショックが 5 件、切創・刺創・ショックが 3 件、その他が 4 件であった。 転帰に関しては、O 型輸血を持ち出し投与した患者のうち生存が 1 件、死亡が 1 件、未投与の患者で 生存は 12 件であった。また、O 型輸血を持ち出さず帰院後使用した患者のうち生存が 11 件、死亡が 13 件であった。 【考 察】 O 型輸血を持ち出したが、院外で使用した件数が少なくその有効性については明らかではない。持ち 出したが使用しなかった症例は輸液投与でショックを離脱したケースなどであり、急変対応として輸血 を持参していることは予測性を持った判断であったと考える。しかし、現在、院外出動時の O 型輸血を 持ち出す場合の運用上の規定は設けられているものの、出動時の持ち出し基準については明確にされて いないため、本来輸血が必要であった症例に持ち出しがされていない可能性があることも否めない。 よって、Dr.HELI で O 型輸血を持ち出す基準の整備を検討する必要があると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 133 一般演題 10 /現場活動(看護) O 10- 2 ドクターヘリ搬送における保温対策の一工夫 ○ 山内 恒平、井上 真樹、泉谷 勇、鈴木 克俊、大森 美芽、澤田 淳子、 其田 一 市立釧路総合病院 救命救急センター 私たち道東ドクターヘリの基地病院がある釧路市は、平成 25 年 1 月の最低気温は- 19.0℃であり、ま た、運航範囲内である弟子屈町川湯では- 28.9℃を記録した。冬季間では一日を通して氷点下であり、 - 15℃以下では痛みを感じるほどの寒さといわれている。このような環境下では、傷病者の体温が短時 間で失われ、寒さによる不安や苦痛はもとより、予後にも大きく影響を与える。また、搬送に際しても 救急車からドクターヘリへの搬入、又はヘリポートから病院への移動の際に外気にさらされ、厳寒の地 域においてはより一層の保温対策が重要と考える。当院の保温対策としては、温めた輸液を使用するこ と、毛布を掛けメディラップブランケットで患者を包むこと、そしてヘリコプター内の温度を 25℃に保 つことであった。しかし、患者からは「寒い」との声も聞かれ、保温対策が不十分であると判断した。 そこで体に密着し、再利用が可能でやわらかいジェルタイプのパッドを使用してはどうかという意見が あがった。ヘリ内に搭載されている輸液保温バッグに、ジェルタイプのパッドを入れ、保温した状態で 使用する方法を検証したので報告する。 134 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 10 /現場活動(看護) O 10- 3 サーキットレースにおけるドクターヘリの有効性 ○ 田中 裕樹、熊久保信重、片岡 英一 エビスサーキット サーキットレースにおいてはトラフィックアクシデントの際、通常のトラフィックアクシデントは違 い、特殊性がある。当サーキットにおいて、2 輪レースの際、転倒に伴う、トラフィックアクシデント がしばしば発生する。昨年・今年とフレイルチェストに伴う緊張性気胸 2 例をドクターヘリにて搬送し た。サーキットレースにおいてドクターヘリの有効性が認められた為、この場において報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 135 一般演題 10 /現場活動(看護) O 10- 4 岩手県ドクターヘリにおける高速道路事故事例に対する活動報告 ○ 佐々木美里、生駒 志帆、中村 敬子、村松 敬子、金子 拓、玉熊 陽子、 岩谷 涼子、佐臼智恵子、井上 和子、松本 尚也、山田 裕彦、井上 義博、 遠藤 重厚 岩手医科大学附属病院 高度救命救急センター 【はじめに】 岩手県ドクターヘリは、2012 年 5 月 8 日の運航開始から 2013 年 7 月 31 日までの間に 6 件の高速道路 事故事例に対応した。そのうちの 4 件を経験したため、活動内容を報告する。 【事 例】 (1)ランデブーポイントから消防車両で事故現場に向かった。対向車線が現場であったため、車両か ら降りた後、中央分離帯を越えて対向車線に移動し、本線上で活動した。 (2)ランデブーポイントで救急車と合流し、救急車内で活動した。 (3)高速道路本線上に着陸した。徒歩で事故現場まで向かい、本線上で活動した。 (4)ランデブーポイントで救急車と合流し、救急車内で活動した。 【考 察】 交通事故事例において、現場で活動する際には安全が確保された中で患者に接触しなければならない といわれている。高速道路上でも同様であるが、十分な安全管理がなされていなければ、高速走行の車 両に遭遇など、生命に関わる二次災害も十分に考えられる。今回経験した 4 件のうち 2 件はランデブー ポイントで救急車と合流したため、高速道路以外の事故対応と大きく変わりはなかったが、その他の 2 件では高速道路本線上を徒歩で移動した。事例(1)では通行止めされていない本線上に降り、中央分離 帯を越えて現場に向かったが、安全の 3S の self が欠け、二次災害の危険性も考えられる事例であった。 また、多数傷病者事例でもあったため、全ての傷病者を把握することの難しさも感じた。事例(3)は車 両火災も発生していたため、二次災害の危険性も考えられたが、現場では警察、消防、道路公団による 安全管理が十分行われていたため、安全に活動することができた。高速道路事故事例は、確実な安全管 理が必要であると考えられる。 【結 語】 高速道路本線着陸の 1 件を含む 4 件の高速道路事故事例を経験した。高速道路事故事例への対応は、 ランデブーポイントでの活動に比べ、安全への配慮が最も重要である。 136 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 11 /役割(看護) O11- 1 病院前救急診療に求められる看護師の役割 ○ 藤巻ゆかり、米田 勝一、清水真美子、林 詳子、福本 真也、林田 康子、 森田 須美、濱 武、西口 環、小林 誠人 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 【はじめに】 ドクターカー・ドクターヘリの普及に伴い、病院前救急診療の場で看護師が他職種と協働する機会は 増えている。しかしながら病院前救急診療に関わる看護師(以下、看護師)に求められる役割について 明記されたものは少ない。当センターにおける先行研究では「診療補助」 「患者・家族対応」 「医療資機 材管理」などが看護師に求められる役割と報告されている。今回、より質の高い病院前救急看護の実践 に資することを目的に、他職種が看護師に求める具体的な役割を明確にするため追跡調査を行った。 【対象・方法】 豊岡病院ドクターヘリ事業に関わる医療従事者、運航スタッフ、当医療圏の消防職員を対象に独自で 質問紙を作成し、質問調査を実施・検討した。 【結 果】 看護師に求められる役割は、業務のひとつひとつをこなす事はもちろん、他職種が各々の業務・診療 に専念出来るよう、協働現場における調整役であるという回答が多かった。さらに「連携の強化」 「コ ミュニケーション能力の更なる向上」などを今後に期待する回答も多く見受けられた。 【考 察】 病院前救急診療における適切かつ適時な医療提供、現場滞在時間の短縮、早期搬送の達成などを実践 するため現場の調整役は必須であり、その役割を他職種が看護師に求めていることが示唆された。他職 種が看護師に求める役割を具体化する事で、その詳細を認識する事が出来た。今後も他職種が看護師に 何を求めているかを認識し、他職種が求める役割と相違のない現場活動を実践することで、病院前救急 看護のさらなる質の向上に繋げていきたい。 第 20 回日本航空医療学会総会 137 一般演題 11 /役割(看護) O 11- 2 多数傷病者発生時におけるフライトナースの役割、今後の課題 ○ 千葉 実 1、八木 正晴 2、福井 英人 2、伊藤 貴彦 2、葵 佳宏 2、 窪田 圭志 2、佐久間留美子 1、仲村いづみ 1、波止 綾子 1、花城 育美 1、 日高 志州 1、西銘さやか 1 1 浦添総合病院 救命救急センター、2 浦添総合病院 総合診療部 【はじめに】 浦添総合病院は沖縄県ドクターヘリの運行を平成 20 年 12 月より行なっており、ドクターカーは平成 24 年 4 月より運行開始となった。今回、建設現場において重機のアームが落下による多数傷病者が発生 し、ドクターカー、ドクターヘリの同時要請となる事案が発生した。本症例の活動を通してフライトナー スの役割や今後の課題について報告する。 【症例及び活動内容】 ドクターヘリは建設現場で重機のアームが落下し、3 名の傷病者が発生した。フライトスタッフ接触 時は詳細不明であり、1 名の心肺停止状態(以下 CPA)をドクターカースタッフが対応中であった。他 2 名は救急車内へ搬送中であるとドクターカースタッフより情報があり、CPA の傷病者に関してはその ままドクターカースタッフにて搬送、他の傷病者への対応をすることとなった。我々が対応した傷病者 のうち一過性意識障害の傷病者は、呼吸・循環は安定しており、FAST は陰性であった。もう 1 名の傷 病者は頚椎損傷疑いでありフライトドクターにて搬送と決定され、一過性意識障害の傷病者はフライト ナースのみで搬送することになった。 【まとめ】 今回、多数傷病者が発生し、フライトナースのみでの救急車搬送を経験した。バイタルサインの安定 は得られていたものの、全身観察や経過記録の記入、事故状況の把握、引き継ぎ病院への申し送りなど のたくさんの活動があり、フライトナースに必要とされる能力を改めて振り返る必要があった。知識や 技術などを熟練させるだけでなく、今後のフライトナース教育や選考基準へも反映させることが重要で あると改めて考えることができた。 138 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 11 /役割(看護) O11- 3 フライトナースの役割を家族看護の面から考察する ○ 福本 真也、米田 勝一、清水真美子、林 詳子、藤巻ゆかり、森田 須美、 林田 康子、濱 武、小林 誠人 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 日本航空医療学会が 2008 年に監修したフライトナース実践ガイドでは、フライトナースの役割として、 1.医師の治療処置介助および救急現場での対応、重症患者搬送 2.医療機器・医薬品の点検、維持管理 3.他職種との連携、コーディネート 4.安全管理 があるとしている。 家族についても、 「急病や事故の発生が大きなストレスや不安となることから精神的な援助が必要とな ることもある」と書かれ、その対応について記載されているが、役割の中には挙げられていない。 公立豊岡病院ドクターヘリは、2 フライトドクター制により現場活動時間短縮を実現している。現場 滞在時間は、2010 年度が 17 分、2011 年度は 15 分、2012 年度は 11 分と年々短縮され、2012 年度は全国 平均 21 分と比べ約半分となっている。しかし、使用機体の定員は 6 人で、2 フライト制をとることで、 家族を搬送に同乗させることは出来ないという側面もある。 そのため、フライトナースは、現場では家族(または関係者)の不安や精神的なストレスを軽減し、 家族が安全に搬送先病院に向かうために、必要な情報を提供し、逆に患者や家族についての情報や連絡 先を現場で得る必要がある。ドクターヘリによる搬送は、患者の搬入から家族の到着までに時間差が生 じることが多い。その間の連絡手段を現場で確立しておくことは、患者の救命や予後を改善するための 早期治療方針の決定と開始にとって必要不可欠である。 私たちは、現場での家族看護を実践するために、連絡先の確認の徹底や移動通信手段を持たない家族 に対する対応、広域搬送となる場合の連絡するタイミングの指示など、これまであった事例から検討し、 活動の改善と対応の統一を図っている。 現場活動時間が短縮される中で、効果的に家族介入を行い、家族の不安を和らげ、連絡手段を確保し、 患者の早期の根治的治療開始と救命に繋げることは、フライトナースに必要な役割であると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 139 一般演題 11 /役割(看護) O 11- 4 他医療機関で活動するフライトナースの役割 ○ 新 友香子、増田さゆり、関 昌代、江津 篤、新井 雅子、戸部 理絵、 望月 勝徳、小林 尊志、高山 浩史、新田 憲市、岩下 具美、岡元 和文 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター 【はじめに】 信州ドクターヘリ松本は出動範囲が広大で、要請から現場到着まで 30 分以上かかる場合もある。今回、 フライトスタッフが現場到着に時間を要する為、先に傷病者を直近二次病院へ収容し、病院スタッフと 協働した事案を経験した。慣れない設備やスタッフと円滑に活動を行うことの難しさを感じた。この経 験から、他医療機関で活動する際の問題点とその解決に向けた取り組み、フライトナースの役割につい て考察した。 【方 法】 他医療機関で円滑に活動するためには、消防機関、直近二次病院が傷病者を先に病院へ収容すること の意義や協働時の役割について理解を深めることが必要と考えた。そこで、一時収容先となった病院、 該当消防本部を対象にシミュレーションを実施した。 【結 果】 今回のシミュレーションにより、基地病院と他医療機関での救急対応や資器材の違いを確認すること ができた。また、関係各機関を交えたことで、協働時のそれぞれの役割について確認することができた。 【考 察】 フライトナースの役割の一つに「現場でのコーディネート」がある。他医療機関で活動を行なう際に はさらにこの能力が必要とされる。今後、更なるコーディネート能力を養う努力が必要である。また、 フライトスタッフが少ない情報、慣れない他医療機関で円滑に活動するためには、関係各機関との連携 が不可欠である。連携を深める手段としてシミュレーションの開催は有効であった。 【結 語】 現場到着までに時間を要す事がある当基地病院において、ドクターヘリの目的である、救命率の向上、 後遺症の軽減をさらに高める方策として、傷病者を先に直近二次病院へ収容する方法が挙げられる。円 滑に活動を行なうためには、フライトナースの役割である「コーディネート能力」と、関係各機関との 連携が不可欠である。 140 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 12 /その他(看護) O 12- 1 AMTC 学会参加と AIRLIFT NORTHWEST での経験から ○ 藤尾 政子 1、坂田久美子 2 1 川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター、2 愛知医科大学病院 AMTC(Air Medical Transport Conference)学会はフライトに関わるフライトナース、パラメディッ ク(救急救命士) 、パイロット(操縦士) 、コミュニケーションスペシャリスト(運航管理者)全てが集 まり年に 1 度アメリカのいずれかの州で開催される国際学会である。AMTC2012 学会発表の中で、救命 出来なかった症例や上手くいかなかった症例を細かく検証していた症例について報告する。 アメリカではフライトナースを目指す人は多く門は狭い。AIRLIFT NORTHWEST という民間の救急 ヘリ会社でもフライトナースを目指す人の競争率は高く、 人選基準は 5 年間重症患者に対する経験(ICU、 Burn Unit での経験)があり専門分野でのスペシャリティーがあり資格を有していることとしている。 試験内容は、シミュレーターに入っての状況判断、National Level に沿った筆記テスト、4 人のパネリス トからのインタビューなどであった。インタビューで人選するポイントは、独立型の考えをしていてチー ムとなった時にチームワークがとれること、重症患者に何が必要か判断できること、例として A のプラ ンと B のプランを立てることができ優先順位をつけて状況判断が出来る人としており人選基準の中でも 看護実践レベルに加え対人関係力や管理力を重要視していた。AIRLIFT NORTHWEST での経験から、 人選されたフライトナースの実践はプレホスピタル、インホスピタルでの看護の質の担保につながり今 後人選基準は重要であると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 141 一般演題 12 /その他(看護) O 12- 2 シアトルにおける AMTC2012 参加、ALNW 研修報告 ○ 坂田久美子 1、藤尾 政子 2 1 愛知医科大学病院 高度救命救急センター、2 川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター 今回、シアトルにおける AMTC(Air Medical Transport Conference)2012 に参加した。AMTC と ともに、ALNW(Airlift Northwest)で研修する機会を得たので、その内容について報告する。 【AMTC2012 参加】2012 年 10 月 22 日- 23 日 AMTC の参加者は、クリニカル(医師、看護師、パラメディック、呼吸療法士) 、マネージャー、ディ レクター、アビエーション(パイロット、整備士) 、CS である。クリニカル、セーフティやケーススタ ディなどの教育セッションやポスタープレゼンテーションが行われていた。教育セッションの中で、ミ シガン大学サバイバルフライトの CS が、セーフティに関してクルーリスクアセスメントシートを使用 して評価していた。クルーのストレス、睡眠不足、CRM 不足などを点数評価し、リスク値を示していた。 シフトに入るとき、クルー個人が自己評価し、従事可能な状態か点数で把握することができる。リスク 管理としてリスクアセスメントを使用していることを理解した。 【ALNW 研修】2012 年 10 月 24 - 25 日 ALNW は、7 機(ターボコマンダ 1 機、リアジェット 2 機、EC135 3 機、アグスタ 1 機)で年間 3500 件の事案に対応している。ALNW のフライトナースは、5 年以上のクリティカルケアの経験が必要で、 ER、ICU、外傷、熱傷等の重症患者の対応が要求される。採用試験時は、シミュレーターを用いたシナ リオシミュレーションでのチェック、医療に関するナショナルレベルのテスト、4 人のナースによる面 接を行っている。ALNW には、マネージャー 1 名、クリニカルエデュケーター 3 名、アシスタントマ ネージャー 2 名、セーフティオフィサー 1 名がいる。クリニカルエデュケーターが、各フライトナース の教育を行っていた。各フライトナースのチャートを見て、解析して、状況に応じて改善させる。各自 に適切な研修の紹介や、研修の追加をしていた。研修中、ALNW 内のトレーニングルームで気管挿管の シミュレーションを行った。 142 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 12 /その他(看護) O12- 3 教育機関との連携によるドクターヘリ事業推進の試み ○ 内藤ゆみえ 1、杉山 聡 2、高橋 誠一 1、猿谷 倫史 1、小野 裕美 1、 中澤 弘子 1、臼井美登里 1 1 埼玉医科大学総合医療センター 看護部、2 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 【はじめに】 埼玉県内の緊急離発着場は 553 ヶ所(2013 年 7 月現在)指定されており、そのうち 291 ヶ所は小中高 等学校の教育機関である。しかし、運航開始から 3 年後の実績において、出動件数 515 件中、教育機関 を緊急離発着場として使用した回数は 35 件と少なかった。そこで 2010 年 7 月、緊急離発着場に指定さ れている教育機関の学校長を対象に、意識調査を実施した。その結果、緊急離発着場としての使用経験 のある教育機関は、校庭の使用に関して肯定的であるが、児童の安全面、授業や近隣住民への影響に対 しては不安を示していた。そのため、緊急離発着場の半数以上を占める教育機関へのドクターヘリ事業 推進活動が急務であると考えた。今回、小学校を対象にしたシュミレーション訓練、ドクターヘリ見学・ 説明会を企画し、今季実施が決定したため報告する。 【対 象】 埼玉県内緊急離発着場に指定された小学校のうち、シュミレーション訓練を希望、選考された 2 校の 教職員、児童、近隣住民。 【実施期間】 2013 年 12 月 【方 法】 1.希望小学校体育館にて、児童が理解できる紙芝居方式を用いてドクターヘリシステムを説明。2. 消防機関による散水、救急隊到着までの流れを見学。3.実機を校庭に着陸させ、初期治療、患者搬送の 流れを見学。4.基地病院フライトスタッフ、運航会社によるヘリコプター見学。5.所要時間は 1 時間 30 分程度。6.後日、シュミレーション訓練を実施した教職員、児童、近隣住民に、質問紙調査を依頼 予定。 【考 察】 今回の試みによって、教育機関の不安要素を払拭できる可能性があると考える。教職員、住民に対し、 フライトスタッフや運航会社との接点から救急医療の理解を目指し、児童に対しては道徳心の向上、い じめなどの社会的な問題に関連して、生命の大切さに触れることが期待できると考える。さらに、受傷 現場により近い緊急離発着場の選定が増加すれば、救命率の向上に繋がると考えられる。 第 20 回日本航空医療学会総会 143 一般演題 13 /固定翼 O 13- 1 海上航空医療搬送の実態について 三自衛隊の海上搬送の実態 ○ 吉田 泰行 1、田部 哲也 2、井出 里香 3、山川 博毅 3 威風会栗山中央病院 耳鼻咽喉科・健康管理課、2 島田台病院 耳鼻咽喉科、 3 東京都立大塚病院 耳鼻咽喉科 1 我々は既に第 19 回本学会にて航空医療搬送中の事故例について報告した際、我が国三自衛隊の海上搬 送についても言及し考察を行った。周囲を海で囲まれ離島の多い日本の地理上の状況により海上の搬送 は航空医療搬送の中でもかなりの部分を占める為、今回は此の点に注目し分析を行ったので報告する。 日本は国土が狭いと言いながら本土は南北に長い花綵列島で人口は都市部に集中し、其れ故医療機関 も都会に集中しており、都会を出れば過疎の限界集落となり、救急医療における航空搬送は都会の超救 急医療搬送はドクターヘリで行われるにしても、それ以外の搬送は長距離海上搬送とならざるを得ない。 よって搬送の主体は航続距離の長い大型回転翼機か固定翼機となり自衛隊の航空機に頼る事になる。沿 岸から離れた海難事故の際の出動では世界で唯一の現用の飛行艇の出番であり、その航続性能は優に 1000km を越える距離を無給油で往復でき、海上に直接着水し離水するため救助性能は抜群である。又一 部の飛行艇は巡航高度を高く取れるため与圧可能であり、減圧症症例の搬送には最適でもある。これら の点に鑑み、演者独自に自衛隊の海上航空医療搬送の集計を行い実態の把握に努めた。 144 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 13 /固定翼 O13- 2 日本初の自衛隊ヘリコプターによる組織的救急救護搬送 ○ 滝口 雅博 公益財団法人青森県総合健診センター附属あおもり健康管理センター わが国でも 50 年以上も前からヘリコプターによる救急救護搬送の歴史があった。我が国のヘリコプ ターによる救急患者搬送は、元自治省消防庁消防大学校講師を勤められた故岡村正明氏の資料によると、 自衛隊が昭和 34 年~ 35 年頃から東京都で、当時自衛隊が所有していたベル 47G を用いて患者を機外に 担架を固定して搬送する事を行っていた。昭和 38 年 7 月 5 日訓令によって、東京都及びその周辺地域に おける特別救難を目的として自衛隊のヘリコプター又は艦艇によって実施する小規模かつ緊急の救援を 必要とする災害派遣が行われる事になった。この訓令に基づいて、陸上、海上、航空自衛隊に特別救難 隊が編成され、市ケ谷、霞ケ浦駐屯地、館山航空基地、入間基地、横須賀基地の 5 ヶ所を基地にし、夫々 の基地を中心に半径 100km の円周によって囲まれた関東地域と艦艇による東京湾および伊豆七島周辺の 海域を対象にした。特に陸上でヘリコプターによってカバーされる範囲は、東京都、茨城県、栃木県、 神奈川県、千葉県、群馬県、山梨県、静岡県、埼玉県、長野県、福島県、新潟県までがその対象になっ た。海上は伊豆七島がその対象であった。 特別任務に当たった部隊は、市ケ谷の特別救難隊および市ケ谷支隊、土浦市、霞ヶ浦支隊の陸上自衛 隊第 1 ヘリコプター隊、館山市館山海上自衛隊館山支隊の第 21 航空群、入間郡武蔵町、入間支隊の航空 自衛隊中部航空方面隊の中型ヘリコプターおよび横須賀市横須賀支隊の海上自衛隊横須賀地方隊の駆潜 艇または魚雷艇が使用された。この体制では、昭和 38 年 7 月 5 日から昭和 41 年 6 月 30 日までの 3 年間 に 87 名の救急患者搬送、5 回の医師搬送、11 回の遭難者の捜索・救出、その他の出動(目的不明)3 回、 緊急事態の偵察 24 回の合計 132 回の出動が行なわれた。この自衛隊の特別救難隊体制は東京消防庁にヘ リコプターが導入された事を契機に解散した。 第 20 回日本航空医療学会総会 145 一般演題 13 /固定翼 O 13- 3 北海道道南地区における航空医療体制の現状と課題 ○ 岡本 博之 1、武山 佳洋 1、柿崎隆一郎 1、江濱 由松 1、佐藤 昌太 1、 葛西 毅彦 1、俵 敏弘 1、丹野 克俊 2,4、浅井 康文 3,4 1 3 市立函館病院 救命救急センター、2 札幌医科大学 高度救命救急センター、 函館新都市病院、4 北海道航空医療ネットワーク研究会 【はじめに】 広大な面積を抱える北海道では 6 つの三次医療圏が設定されているが、救命救急・周産期・小児など 高度専門医療資源は札幌に一極集中している。地域較差改善のため、北海道防災航空室他の機関が連携 した回転翼機・固定翼機による航空搬送体制が以前より築かれ、現在ドクターヘリ 3 機、研究運行中の 医療専用固定翼機「メディカルウィング」も加わっている。道南地区における航空医療体制の現状と課 題について検討した。 【方 法】 関係機関に協力頂き、道南地区における平成 24 年度の航空機搬送実績を調査した。 【結 果】 回転翼機での現場救急出場 6 件、回転翼機での転院搬送 10 件、固定翼機での転院搬送 13 件(メディ カルウィング 8 件・回転翼機での空港−病院間搬送 6 件) 。転院搬送は函館−札幌間の医療圏域外への搬 送が多く、域内の転院搬送は奥尻 - 函館間のみであった。函館 - 札幌間でともにヘリポートを有する病院 間の転院搬送は、回転翼機で約 60 分を要した。一方、固定翼機では約 40 分の飛行時間だが、病院 - 空 港間移動があり全体で約 90 分を要した。 【考 察】 現場救急出場や域内転院搬送の少なさは、当地域がドクターヘリ運航範囲外であることや関係機関の 拠点が札幌にあることが考えられた。函館−札幌間の転院搬送では、回転翼機がより速く搬送できるが、 安定した機内環境や航行速度・航続距離を有する固定翼機の利用も多かった。道南ドクターヘリやメディ カルウィングの正式運航により、域内・外の転院搬送での利用増やドクターヘリ連携による固定翼機搬 送の時間短縮が期待される。 【結 語】 道南地区における航空医療体制について検討した。広大な北海道では回転翼機・固定翼機両方の体制 が不可欠であり、メディカルウィング・道南ドクターヘリの正式運航が期待される。 146 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 13 /固定翼 O13- 4 災害時におけるローカル空港への医療優先固定翼機搬送の可能性 ○ 籏本 恵介 1、松田 知倫 2 1 札幌東徳洲会病院 救急総合診療部、2 札幌東徳洲会病院 救急科 【はじめに】 平成 23 年度より北海道では北海道航空医療ネットワーク(Hokkaido Air Medical Network、以下 HAMN)研究会を組織し、医療優先固定翼機メディカルウイングの試験運用を行ってきた。その出動判 断は HAMN コントロールセンターの判断によるが、ドクターヘリとは異なり、固定翼機の長い航続距 離を生かして施設間患者搬送に用いられることが多い。札幌直近の空港としては、東京羽田空港便が発 着する千歳空港の他に、道内便が発着するローカル空港である丘珠空港がある。当院は丘珠空港から車 で 5 分の距離に位置する二次救急病院であり、ドクターヘリ出動例における軽症例やメディカルウイン グによる搬送患者を受け入れてきた。東日本大震災における圏外搬送を振り返ると、北海道における受 け入れのための Staging Care Unit は札幌市内から約 50 分の千歳空港に設置された。今回我々は、市内 中心部に近い丘珠空港にヘリや小型固定翼で傷病者を運び込むことも有用な患者受け入れ方法と考え、 災害時の利用を踏まえて当院の状況を報告する。 【症 例】 平成 24 年 1 月 1 日から 12 月 31 日の間で、航空機搬送にて搬送された症例はメディカルウイング 3 例、 防災ヘリ 7 例、ドクターヘリ 2 例であり、その中で離島からの搬送はメディカルウイング 3 例、防災ヘ リ 6 例、ドクターヘリ 1 例であり、その多くが離島からの症例であった。 【考 察】 離島という限られたリソースで医療を行う場合、広域搬送を行う目的は最大の成果を求めることに他 ならず、その状況は災害時の圏外搬送に重なる。つまり、航続距離の比較的長い防災ヘリやメディカル ウイングによる札幌市内ローカル空港への直接搬送もまた、災害時における圏外搬送のひとつの方法と して有効と考えられる。 第 20 回日本航空医療学会総会 147 一般演題 13 /固定翼 O 13- 5 奄美群島における航空機搬送の現状 ○ 原 純 鹿児島県立大島病院 奄美群島は鹿児島本土、沖縄県ともに 300km 以上離れた文字通りの離島である。しかし、この地域に 11 万以上の人が生活している。奄美群島内から当院へ、もしくは当院から島外への搬送を要する事も多 い。また、奄美大島以南の奄美群島の患者搬送については沖縄県ドクターヘリに依存している部分も多 い。来年度の救命救急センター開設を前に、それらの現状を調査し、この場で報告する。 148 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 13 /固定翼 O13- 6 社会医療システムとしての医療優先固定翼機の本格運航を目指して ○ 小野寺英雄 1,2、高橋 功 1,2、奈良 理 1,2、大西 新介 1、清水 隆文 1、 浅井 康文 2、目黒 順一 2 1 手稲渓仁会病院、2 北海道航空医療ネットワーク研究会 【はじめに】 北海道では、北海道地域医療再生事業により、平成 23 年度から平成 25 年度に亘り、延べ 12 ヶ月間の 医療優先固定翼機「Medical Wings」の研究運航を実施し、広大で医療資源の偏在が顕著な北海道にとっ て有用なツールの一つであることを立証するとともに、運営(運航)形態、運営(運航)資金、運航範 囲、そして搬送基準の設定などに加え、既存事業(ドクターヘリ等)との役割分担、患者搬送以外(医 師派遣等)の活用、24 時間運航に向けた空港施設関係者等との調整など、多くの課題を抽出し、検討す る機会を得たので報告する。 【研究運航概要】 1.事業実施主体及び研究機関 (1)事業実施主体 北海道航空医療ネットワーク研究会 (2)研究機関 主任研究機関:札幌医科大学附属病院高度救命救急センター 分担研究機関:医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 2.運航期間及び運航時間 運航期間: (1)平成 23 年 11 月 15 日~平成 24 年 1 月 14 日、 (2)平成 24 年 6 月 1 日~平成 25 年 1 月 31 日、 (3)平成 25 年 7 月 6 日~平成 25 年 9 月 5 日 運航時間:午前 9 時から午後 5 時までを通常待機時間として、関係機関協力を得て、可能な限り 24 時間体制での緊急運航への対応を図った。 3.運航拠点 札幌丘珠空港(通常)及び新千歳空港(冬期間) 4.運航圏域 医療優先固定翼機(サイテーション V)の離発着可能な滑走路 1,500m 以上を有する北海道内 12 ヵ 所の空港間を基本とするが、メディカルディレクター及びメディカルコミッティの判断で、同機によ る搬送の必要性がある場合は道外も対象とした。 5.運航委託会社:中日本航空 【研究運航の成果と提言(事業管理の視点から) 】 これまでの延べ 10 ヵ月間の研究運航により、医療優先固定翼機が広域搬送に有用性が高いことは、搬 送症例数は少ないものの立証できたとものと考える。医療優先固定翼機を社会的医療システムとして本 格運航するための課題とその対応策などを事業管理者的視点から検討し報告したい。 第 20 回日本航空医療学会総会 149 一般演題 13 /固定翼 O 13- 7 医療優先固定翼機メディカルウイングの今後 ○ 丹野 克俊 1、窪田 生美 1、加藤 航平 1、成松 英智 1、奈良 理 2、高橋 功 2、 目黒 順一 3、浅井 康文 3 1 札幌医科大学 救急医学講座、2 手稲渓仁会病院、3 北海道航空医療ネットワーク研究会 【はじめに】 北海道では「新たな地域医療再生基金」における全道域事業のひとつとして平成 23 年度より医療優先 固定翼機の研究運航を行っており各関係学会において中間報告を行ってきた。当初は、悪天候時におけ る緊急搬送、広域での搬送、振動が比較的少なく安定した搬送が可能であることなどが利点として挙げ られていたものの、冬期間の運航では空港の状態によって飛行できないことがあることがわかった。ま た研究運航の実施が周知されるのに伴い本州を介した搬送が散見されるようになってきた。 【目 的】 既存の航空搬送手段で対応が困難で医療優先固定翼機を必要としている状況があることは明らかであ る。一方でその需要がどの程度あるかは未知数である。今回我々は今後の医療優先固定翼機の将来像に ついて、現在までの研究運航結果から考察する。 【結 果】 これまで平成 23 年 11 月から平成 25 年 1 月までのうち 10 ヶ月間(前期・中期研究運航期間)では 109 件の搬送要請があり、出動 65 件(59.6%) 、未出動 28 件(25.7%) 、キャンセル 16 件(14.7%)で あった。緊急搬送 23 件における要請から搬送元空港到着まで平均 2 時間 18 分で、その病院間搬送距離 は直線で平均 201km であった。準緊急搬送は 22 件、計画搬送は 20 件であった。依頼元医療機関からの 医師搭乗は 50 件(77%) 、研究機関からは 22 件(34%、重複 15 件)であった。本州を介した運航は 7 件 (要請 13 件)であった。 【考 察】 緊急搬送では搬送元空港到着までに時間を要するものの、搬送距離はドクターヘリの運航圏を越えて おり医療優先固定翼機の需要があるといえる。しかし費用対効果を考慮すると諸外国のようにより広域 で道外を含めた準緊急搬送や計画搬送をメインターゲットとした戦略が今後求められる。また運航面の 課題として医療スタッフの確保や、関連機関の調整のために航空医療体制の一元化について引き続き検 討が必要である。 150 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 14 /ドクヘリとコラボレーション O 14- 1 静岡県西部におけるドクターヘリと消防ヘリの共働について ○ 矢野 賢一、早川 達也 総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 【目 的】 平成 22 年 5 月に浜松市消防航空隊は本格運用を始めた。運航開始時より、静岡県西部ドクターヘリと 協力する体制を構築してきた。今回の発表では運航開始から平成 25 年 7 月までの期間で、静岡県西部ド クターヘリと浜松市消防航空隊が連携した全症例を振り返り、航空医療の分野で医療と消防の連携をさ らに向上させるにはどのようなことが挙げられるか検討してみる。 【結 果】 ドクターヘリが、天候や機体不具合で出動不能の事案に消防ヘリで医師同乗し出動した症例が最多で あった。つぎにドクターヘリの要請が重複した事案に消防ヘリにて医師ピックアップを行い対応した症 例、多数傷病者事案にドクターヘリと消防ヘリが同時出動した症例、医療と救助を同時に要した事案と つづいた。 【考 察】 ドクターヘリと消防ヘリの円滑な連携のためには以下の 5 点が必要と考える 1)それぞれの役割の明 確化 2)検証会などによる活動方針の共有化 3)シミュレーションなどでの合同訓練 4)消防航空隊 のみでなく、消防全体としてドクターヘリと消防ヘリの連携に対する理解 5)顔の見える関係の構築 ドクターヘリと消防ヘリが連携を行うことで、消防側は早期より医療の介入があることで、より安全 に救助、搬送が可能になるというメリットがあり、医療側には複数の患者、事案に対応でき、活動のオ プションが増えるというメリットがある。それにより、患者に対し、迅速で的確な医療の提供が可能に なると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 151 一般演題 14 /ドクヘリとコラボレーション O 14- 2 山間地域における交通救助事案の教訓 ○ 鈴木 秀幸 1、石塚 健 2、加藤登志郎 2、若味紳太郎 2、村上 元春 2、 大林 幹夫 3、藤田 仁 3、松浦 克年 3、伊藤 侑気 3、前川 士朗 4、 吉田 亨 5、田中 宏樹 5、早川 達也 6、浅井 精一 6、矢野 賢一 6 1 4 浜松市消防局 北消防署 三ケ日出張所、2 浜松市消防局 北消防署、3 浜松市消防局 天竜消防署、 浜松市消防局 西消防署、5 浜松市消防局 警防課 消防航空隊、6 聖隷三方原病院 救命救急センター 浜松市は静岡県西部に位置し、全国 2 番目の市域(1,558.04km2)を有する。平成 22 年 5 月から、消防 ヘリ「はまかぜ」の運航を開始し、静岡県西部ドクターヘリと共に、遠隔地での救急搬送時間の短縮、 医師派遣による早期の医療活動に貢献している。今回、北部の山間地域での車両転落事故について、地 上部隊、消防ヘリ、ドクターヘリが連携した症例を経験したので報告する。平成 24 年 9 月、国道を走行 中の大型コンクリートポンプ車(総重量 15 トン)がガードレールを突破し、23m 崖下の天竜川河川敷へ 転落した。この際、運転手は車内に閉じ込められ、同乗者が転落中に車外へ投げ出された。現着し、車 外の傷病者をバッグボード固定後、山岳救助隊員とともに川の中州まで搬送し、到着したドクターヘリ 医師、看護師による処置後、消防ヘリがホイスト救助しドクターヘリ医師とともに医療機関へ搬送した。 一方、車内の傷病者へは、高濃度酸素マスクを手渡して酸素投与し、上腕が露出した時点でドクターヘ リ医師が静脈路の確保、輸液及び輸血を実施した。覚知から約 4 時間後に車外救出された傷病者をバッ グボード固定後、バスケット担架に収容し、徒歩搬送にて車両集結場所で待機する後着救急隊へ引き継 ぎ、直近の医療機関へ搬送した。本事案の現場は、車両集結場所から徒歩 10 分程の足場の悪い河川敷に 位置し、車両進入が出来ず、携行可能な資機材も限られ、傷病者救出に時間を要し、その搬送も困難を 極めた。この状況下、消防ヘリによる的確な救出活動、ドクターヘリによる早期の医師派遣、消防山岳 救助隊との連携は、困難な状態を軽減し大変有用であった。また、救急隊、消防ヘリ、ドクターヘリと の日頃の訓練が、円滑な連携活動を可能にした。今後、本事案を教訓に、山間地域の救出困難な場所の 把握や対策を検討しつつ、消防ヘリ、ドクターヘリ、関係機関等との訓練を重ね、更なる連携の強化が 必要と考える。 152 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 14 /ドクヘリとコラボレーション O 14- 3 熊本型における防災ヘリ救助活動とドクターヘリの連携について ○ 金子 孝行 1、西郡 宗大 1、里見 隼 1、高見慎一郎 1、山部 哲範 1、 山本 英之 1、尾方 鉄也 1、堺 憲司 1、江良 正 2、山田 周 2、 北田 真己 2、櫻井 聖大 2、原田 正公 2、木村 文彦 2、高橋 毅 2 1 熊本県防災消防航空隊、2 国立病院機構熊本医療センター 平成 24 年 1 月 16 日に運航を開始した「熊本型ヘリ救急搬送体制」において、熊本県防災消防航空隊 (以下防災ヘリ)の救助活動にドクターヘリと連携した事案を報告する。熊本型の特徴として、消防から の防災ヘリ及びドクターヘリの出動要請は防災ヘリ基地である航空センターにて受付し、それぞれの事 案に応じたヘリが出動する。この特徴を消防が理解していることで、山岳地帯における防災ヘリ救助事 案に最初の要請段階から、ドクターヘリとセットで 2 機出場の要請がなされ、防災ヘリが要救助者を救 助後に近くのランデブーポイントに待機していたドクターヘリにスムーズに引き継ぐことが出来た。ま た、要請内容は「同時通話システム」にてドクターヘリスタッフなどとも共有でき、情報の一元化が実 現され、2 機運用に際しては大きなメリットとなっている。さらには、出動までの動きが速いドクター ヘリが先に離陸し上空より救助現場を特定、後続の防災ヘリへ情報提供を行うなどの活動連携を経験し たので考察を加えて報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 153 一般演題 14 /ドクヘリとコラボレーション O 14- 4 消防防災航空隊における救急活動について ○ 高橋 哲 兵庫県消防防災航空隊 神戸市消防局航空機動隊 兵庫県では平成 19 年より航空隊基地直近の救命救急センターの救急医をピックアップし出動する「医 療スタッフ同乗型救急ヘリコプター」システムを、神戸市においては、それ以前の平成 3 年に神戸市立 医療センター中央市民病院の医師をピックアップし、ドクターカーの延長という形で「ドクターヘリ的 運用」を実施しています。 「医療スタッフ同乗型救急ヘリコプター」 、 「ドクターヘリ的運用」以外に様々な救急の形態があり、 我々が課題としてきたのが、山岳救助現場等からの搬送についてです。 当航空隊には毎年、県下消防本部より救急救命士の派遣がありますが、メディカルコントロール体制 が確立されていなかったため、救急救命士でありながら本来の救急活動が行えず、適切なプレホスピタ ルでの活動ができませんでした。 航空隊のメディカルコントロール体制を確立することが急務であると考え、平成 22 年から平成 24 年 3 月までの間、隊内での検討、協議会での承認などを受けた結果、平成 24 年 4 月から航空隊における救 急業務が神戸市メディカルコントロール体制下で実施されることとなりました。 昨年 1 年間、メディカルコントロール体制下での救急業務を実施してきましたが、体制が確立された ばかりであるため、 1.地上隊のために作成されている救急活動プロトコールをそのまま流用しているため、航空機での活 動において困難な状況がある。 2.指導医等への連絡について、地上救急隊とは異なり通信上の障害が多く、飛行搬送中の連絡方法な どは、明確な対処方法も出ていない。 3.医師が同乗していない全ての搬送事案を事後検証対象としており、負傷なしの道迷い事案であって も事後検証対象となる。などの問題が明確になってきました。 これらの問題点を今後の課題として、消防防災航空隊における救急活動をさらに充実させていかなけ ればならないと考えています。 154 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 15 /地域運用 O15- 1 ドクターヘリ運用に関する県医師会のかかわり─県医師会 DH-WG ─ ○ 安田 貢、土谷 飛鳥、堤 悠介、石上 耕司、阪本 太吾、山田 理仁、 田畑 文昌、古橋 杏輔、粕谷 泰道 国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター 【はじめに】 茨城県ドクターヘリ(以下、茨城 DH)は茨城県が主体となり、2 基地病院で運航され 4 年目となる。 ドクターヘリ(以下、DH)の運用に関しては、全体会議・検証会議など様々な会議があるが、医師会の かかわりが比較的薄く、事業に対する基地病院以外の医療機関の理解度は決して高いとは言えない印象 である。茨城 DH のより円滑な運営のため、基地病院以外の医療機関・医師としての立場から支援・助 言する組織の必要性を検討した。 【方 法】 消防・現場要請事例の J ターン先として、また患者病院間搬送の際の利用方法統一化を図るため、基 地病院以外の茨城県内対象病院(救急標榜医療機関)が、DH システムをより深く理解する必要性から、 茨城県医師会救急災害医療委員会内に、DH ワーキンググループ(以下、DH-WG)を発足した。WG 構 成メンバーは県医師会救急担当副会長・救急担当理事 3 名、茨城県庁担当、基地病院代表者、運航会社 とした。検討内容は県医師会救急・災害医療委員会を通じ、理事会報告事項となった。 【結 果】 茨城県の希少な医療資源の有効活用を目的として現場での医療介入後の地元医療機関での軽症・中等 症の受け入れ依頼、また病院間搬送に関しては県からの複数回の通知にもかかわらず、搬送元病院が利 用方法を熟知していないなどの問題点から、DH 利用に際し、連絡方法の統一化、フローシートの作成 などを県・市郡医師会のネットワークを通じて連絡内容の周知徹底を図った。今後 WG のさらなる活動・ 広報効果が期待できると思われる。 【考察・結語】 県医師会 DH-WG は、市郡医師会を通じて搬送元病院・搬送先病院群の意見集約・情報発信窓口の一 つと成り得る可能性が示唆された。 第 20 回日本航空医療学会総会 155 一般演題 15 /地域運用 O 15- 2 ドクターヘリの円滑で効果的な運用を目指して ○ 山田 大輔 1、高橋 功 2、奈良 理 2、森下 由香 2、大西 新介 2、清水 隆文 2、 大城あき子 2、相坂和貴子 2、小野寺英雄 1、桂 篤史 1、阿部 秀二 1 1 手稲渓仁会病院 経営管理部、2 手稲渓仁会病院 救命救急センター 【はじめに】 ドクターヘリが正式導入された 05 年度からこれまでの間(05 年 8 月~ 13 年 7 月)延べ 48 回の事例 検討会を開催し、通常運航圏内の消防機関、搬送先医療機関、搭乗医師及び看護師、運航スタッフによ る出動症例に係る検討会を実施している。検討会を継続することにより、ドクターヘリ要請基準の標準 化が図られるとともに、組織内はもとより関係する組織間の連携も円滑に図れているものと事務局とし ては評価している。しかし、検討会をさらに発展させるためには現場消防機関の評価が重要であると考 え、アンケート調査を実施した。 【事例検討会の概要】 開催時期:2 ヶ月に 1 回 開催時間:平日 18 時~ 20 時 開催場所:公共施設 参加人数:平均 90 名程度 参加機関:消防機関、搬送先医療機関、札幌医科大学病院、北海道大学病院、運航会社、基地病院など 検討症例:1 回につき平均 4 ~ 5 例(実績:延べ 259 症例) (対象期間(概ね直近 2 ヶ月)出動症例の 中から基地病院医師により選定し、要請消防機関へ発表を依頼) その他: (1)対象期間内で発生した課題(運航的視点、臨床的視点)について検討(2)救急救命士に は参加証明書を発行 【アンケート内容】 1. アンケート方式にて、運航圏内 34 消防本部へ郵送にて依頼 2. アンケートの項目と趣旨(目的):(1)検討会への参加の有無及び参加目的:検討会への参加を促す とともに、検討討会に対するニーズの引き出し、 (3)検討会参加者の所属及び職種:救急隊員のみな らず、通信指令員や救助隊員、現場指揮者などの参加を促す、 (4)出動症例検討以外のニーズ:専門 的臨床症例など検討会という機会を利用した相互研鑽ニーズの引き出し、 (5)連携体制の強化:要請 消防機関とのコミュニケーション円滑化のためのニーズの引き出し、 (6)キーワード方式:昨年度か ら導入したキーワード方式への意識づけ、 (7)基地病院、国、道への要望:現場ニーズの引き出し 【今後に向けて】 アンケート内容を踏まえて事業の円滑化を図り、検討会を更に発展させる。 156 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 15 /地域運用 O 15- 3 二基地病院で共有するデータベース構築の試み ○ 説田 守道、森 一樹、水野 光規、藤井 幸治、山川 徹 伊勢赤十字病院 救命救急センター 【背 景】 ドクターヘリ出動実績など多くのデータ管理のためにデータベースソフトウエア(以下 DB)が有用 と思われるが、標準的な DB は無く各基地病院が工夫して対応しているのが現状である。 【目 的】 2 基地病院がリアルタイムに情報を共有するために開発した DB の有用性について検討する。 【開発工程】 DB 作成には FileMaker Pro 11(FMP)および FileMaker Server 11(FMS)を使用した。先進県の DB(愛知県、静岡県西部、青森県)を参考に入力・出力項目を設定し、入力支援、誤入力対策、誤操作 対策を施した初期バージョンを運航開始までに作成した。運行開始後も医師、看護師、運行管理担当者 の意見を参考に操作性の向上と機能追加を行った。 【特 徴】 入力と出力のモジュールを完全に分離し、誤操作による入力データ喪失の危険性を最小限とし、DB 運用中の部分的修正や機能追加を可能とした。データのバックアップは自動的に行い、同時にクラウド ストレージへ転送した。DB 操作は複数の端末から可能で、仮想プライベートネットワーク(VPN)接 続により、二基地病院で同時にデータ入力・参照を可能とした。ただし現時点では常時 VPN 接続はせ ず、出動病院で DB を運用し、非出動病院はデータを参照するのみとした。また出動現場やランデブー ポイント等の位置情報を保存して地図上に表示させる機能、事案毎の関連画像を保存する機能を作成し た。 【運用結果】 FMP、FMS とクラウドストレージの利用により、出動病院交代時に媒体によるデータの移動が無い ため媒体紛失の危険が無い。直観的な操作が可能であり DB 操作習得の期間を短くできた。地図や画像 を参照した振り返りができた。検証会等に必要な情報出力が容易であった。 【問題点】 複雑な事案への対応は難しく、引き続き検討が必要である。常時 VPN 接続の実現にはセキュリティ確 保のための費用等の課題が多く、病院情報管理部門の協力が必要である。 第 20 回日本航空医療学会総会 157 一般演題 15 /地域運用 O 15- 4 ドクターヘリ潜在需要件数調査によるヘリ配備の有用性について ○ 篠崎 正博 1、岩崎 安博 2、島 幸宏 2、木田 真紀 2 1 岸和田徳洲会病院 救命救急センター、2 和歌山県立医科大学 救急集中治療医学 【はじめに】 関西地域でのドクターヘリの潜在需要件数および実動件数から関西地域のドクターヘリの追加配備に ついて検討する。 【方 法】 関西医療圏 9 府県のドクターヘリ潜在需要件数は平成 20 年 1 月〜 12 月の(1)救急車による出動した 重症・死亡した症例で、 (2)覚知から医療機関 30 分以上を要し、 (3)昼間(9:00 〜 17:00)発生、(4) 救急現場から医療機関まで 30 分以上を要し(ドクターヘリ現場出動) 、 (5)高次医療機関への転院搬送 で搬送時間が 30 分以上を要し、(6)かつ昼間に搬送要請があった件数(ドクターヘリ施設間搬送)とし た。和歌山県は平成 12 年 1 月~ 12 月の和歌山医大調査、大阪府は平成 12 年 1 月~ 12 月の近畿救急医 学研究会の近畿地区救急ヘリ搬送検討委員会調査による潜在需要件数を用いた。ドクターヘリ実動件数 は平成 24 年 4 月~平成 25 年 3 月の日本航空医療学会ドクターヘリ運航実績を用いた。 【成 績】 潜在需要件数は三重県 1699、滋賀県 463、京都府 761、大阪府 119、奈良県 595、和歌山県 304、兵庫 県 2760、鳥取県 429、徳島県 1055 であり、京都府丹後、兵庫県但馬および鳥取県全域は 714 であった。 平成 24 年のドクターヘリ実動件数は三重県 272、兵庫、京都、鳥取の 3 府県共同運航 1055、大阪府 136、和歌山県 355 であった。 【考 察】 和歌山県、大阪府および兵庫、京都、鳥取の 3 府県共同運航は予測件数より実動件数が多かった。一 方三重県では潜在予測件数に対して実動件数が少なく、運航の初年度であったためと考えられる。徳島 県では平成 24 年 10 月から運航、兵庫県播磨地域では平成 25 年 11 月頃運航開始予定である。ドクター ヘリの潜在需要数では滋賀県 463、京都府南部では 368 あり、それぞれにドクターヘリ配備が必要であ ると考えられる。 【結 論】 ドクターヘリ潜在需要件数とほぼ同等あるいはそれ以上のドクターヘリ実動件数があった。ドクター ヘリ潜在需要件数の調査によるドクターヘリの配備が計画されるべきである。 158 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 16 /外因性疾患 1 O16- 1 広範囲熱傷患者の病院間連携にドクターヘリが活用された一症例 ○ 寺島 嗣明、三木 靖雄、岩倉 賢也、熊谷 常康、青木 瑠里、鉄 慎一郎、 梶田 裕加、野口 裕記、竹内 昭憲、井上 保介、中川 隆 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科 はじめに、広範囲熱傷患者の初期治療はショック期の離脱を目的に輸液療法を行う必要がある。それ には、集学的治療を要し、専門施設での治療が欠かせない。特に救急医、集中治療医、形成外科医また は皮膚科医が連携した初期治療が必要である。また、ショック期を脱したとしてもその先にある感染期 を脱するためにさまざまな方法が検討されており、例えば、超早期手術、自家培養表皮の活用、同種皮 膚移植の活用などである。しかし、治療可能な施設は限られる。ドクターヘリの役割としてフライトド クターによる適切な全身状態の把握、熱傷面積推定、適切な病院選定が必要となる。今回、広範囲熱傷 患者の病院間連携がスムーズに行われ、ドクターヘリが有効活用された症例を経験したので報告する。 症例は 90 歳男性、自宅内でたばこの火が衣服に引火し受傷した。救急隊現着前でのドクターヘリ要請と なり、現着後ランデブーポイントにて患者接触した。JCS1 桁、呼吸回数 20/ 分、SpO2 99%(O2 リザー バーマスク 10L/ 分) 、脈拍 45bpm、血圧 80/28mmHg とショック状態であったため初期輸液開始。鼻毛 は焦げているも嗄声はなく気道熱傷は軽微で挿管は必要ないと判断された。熱傷部位範囲は顔面から前 胸部、左上肢、腹部、左大腿部にかけて 2 度熱傷(DDB)の所見を認め、面積は 30 ~ 35% であった。 この時点で Artz 基準により重症熱傷と判断されるが、受傷機転から 3 度熱傷への悪化も十分に考慮し搬 送先を選定。近隣に広範囲熱傷受入病院なく、ヘリにて基地病院へ搬送した。収容後に熱傷ユニットお よび手術室運用に困難を伴うことが判明。今後の治療展開を考えると転院がベストと判断し、輸液軟膏 処置など初期対応の後、広範囲熱傷受入病院へヘリでスムーズに転院搬送した。その後、超早期手術が 施行された。広範囲熱傷においては病院前から集学的治療へとつながる円滑な連携が今後も重要である と考え報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 159 一般演題 16 /外因性疾患 1 O 16- 2 ドクターヘリにて航空搬送を行った減圧症の 2 例 ○ 田中 真生 1、岩崎 安博 1、中島 強 1、柴田 尚明 1、麦生田百代 1、 川副 友 1、米満 尚史 1、島 幸宏 1、木田 真紀 1、上田健太郎 1、 山添 真志 1、辻本登志英 2、加藤 正哉 1 1 2 和歌山県立医科大学 救急集中治療医学講座、 日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部 和歌山県南部はダイビングや水産業が盛んで、減圧症は年間数例発生している。しかし、高圧酸素療 法が可能な医療施設は 100km 以上離れた県北部にしかなく、搬送手段が問題となる。高高度飛行では減 圧症悪化の可能性もあり、長時間での陸路搬送するか、リスクを考慮した上でドクターヘリでの搬送を 選択するか判断に苦慮する。今回、減圧症 2 例のドクターヘリ搬送を経験したので報告する。症例 1: 50 歳代男性。潜水作業後に体幹部皮疹と腹痛、全身の関節痛を訴え、地元の二次病院を受診。CT で全 身の静脈、門脈内のガス像、下肢関節内にもガス像を認めた。減圧症の診断で、治療の迅速性を優先し、 県北部の高次医療施設までドクターヘリで搬送を行った。搬送の前後で神経学的異常所見出現はなかっ た。減圧症 1 型の診断で高圧酸素療法を 2 日間施行し、第 3 病日に退院となった。症例 2:60 歳代男性。 ダイビング中に水深 20m から急浮上した後、下肢のしびれを自覚し、地元の二次病院を受診。両下肢の 麻痺と不随意運動、体幹部の皮疹の出現も認め、減圧症の診断で治療の迅速性を優先し、県北の高次医 療施設までドクターヘリ搬送を行った。搬送中は明らかな症状増悪はなく、減圧症 2 型の診断で、同日 から高圧酸素療法を施行した。しかし、第 2 病日には対麻痺となり、その後も症状の悪化を認め第 14 病 日に県外の専門施設へ転院となった。両症例とも搬送にあたり、山間部を避け、海岸沿いで低高度 (500feet)を維持するようつとめた。マリンスポーツ・水産業が盛んな地域では専門的治療施設と迅速な 搬送システムが必要である。専門施設は限られドクターヘリ搬送は重要な手段である。しかし、その安 全性と手法は今後症例を重ねてさらに検討する必要があると考えられる。 160 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 16 /外因性疾患 1 O16- 3 ドクターヘリ早期介入で救命した日本刀による胸腹部刺傷の一例 ○ 大坂 裕通 1,2、柳川 洋一 1、諏訪 哲 2、宮坂 善和 3、服部 有俊 3、 市之川英臣 3、上野 泰康 3、伊古田正憲 4、水口このみ 4、長屋 直哉 5、 近藤 彰彦 1、竹内 悠二 1,4、大森 一彦 1、大出 靖将 1、岡本 健 1 順天堂大学医学部附属静岡病院 順天堂大学医学部附属静岡病院 3 順天堂大学医学部附属静岡病院 5 順天堂大学医学部附属静岡病院 1 2 救急診療科、 循環器内科 フライトドクター、 呼吸器外科、4 順天堂大学医学部附属静岡病院 外科、 初期臨床研修医 【背 景】 重要臓器周囲に及ぶ鋭的外傷・刺傷は、出血性ショック状態に対し、早期に手術室にて止血が必要で ある。損傷部位が不明な状態での搬送時の急変も多く、受傷早期からの医療介入が極めて重要な疾患で あると言える。今回、自殺目的で日本刀により sauer's danger zone に自傷し、ヘリにてされた症例を経 験したので報告する。 【症 例】 91 歳 男性 生活歴)自立生活で ADL は保たれていた。既往)認知症、前立腺の手術歴、2 型糖尿 病、高血圧症、脂質異常症、統合失調症(うつ症状) 【出動要請内容】 家族が発見し、左上腹部に刀が刺さって倒れていた。頭からも出血しており周囲に多量の血液があっ た。その他詳細不明。 【経 過】 救急外来搬送が、通常 32 〜 34 分程度であるが、覚知から医師の接触まで約 23 分。詳細はランデブー ポイントの町営グラウンド経由であり、救急隊自宅収容から 11 〜 14 分が 23 分に含まれている。刃渡り 46cm の日本刀で全体では 60cm 程度あり、左胸部第四肋間胸骨辺縁から左後腋窩線に至る自損、柄の 30cm 程が体外出ている状態であった。20cm 程度の包丁を用いたと思われる頭頂部の切創、同包丁を用 いたと思われる左上腹部の切創を認めた。包丁は既に抜かれており、日本刀のみ胸部に刺入した状態で あった。現場における意識レベルは JCS300、GCS E1V1M1 で脈拍は微弱でプレショック状態と判断、 バイタルは BP 84/54mmHg HR 84/min であり、末梢点滴ルートを 18G にて 2 本確保し、鎮静をかけ て気管挿管後、穿通物固定、バックボード固定にてヘリ搬送した。 【考 察】 損傷部位が不明な状態で、受傷早期からの医療介入が極めて重要有効であり、さらにスムーズな緊急 手術と各科連携がうまくいった症例である。 第 20 回日本航空医療学会総会 161 一般演題 16 /外因性疾患 1 O 16- 4 複数の重症傷病者の発生に対し、複数の航空搬送を使用した事案 ○ 阿部 良伸 1、根本 千秋 1、島田 二郎 1、塚田 泰彦 1、池上 之浩 1、 長谷川有史 1、石井 証 1、鈴木 剛 1、林田 昌子 1、大久保怜子 1、 武田健一郎 2、伊関 憲 1、田勢長一郎 1 1 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター、2 山形県立救命救急センター 【はじめに】 重症外傷では迅速な搬送と医療機関での迅速かつ適切な処置が救命に不可欠である。しかし、同一の 医療機関に傷病者が集中した場合、個々の症例に本来的にベストな医療を提供することが困難になる。 今回、僻地で複数の重症傷病者が発生し、複数の航空搬送手段を用いて分散搬送した事案を経験したの で、報告する。 【事 例】 福島県南会津町において、自動車と自動車の正面衝突による交通事故が発生した。消防覚知時間は 15 時 53 分であった。重症傷病者 3 名とのことで、16 時 27 分に福島市にある当院のドクターヘリが要請と なった。重症傷病者が複数人発生しており、夕刻も考慮して、本県の防災ヘリに出動を要請した。防災 ヘリは郡山市内の救命救急センターで救急科医師をピックアップして現場へ到着した。また、協力の協 定を結んでいる山形県のドクターヘリにも出動を要請した。重症傷病者 3 名は町内の総合病院に搬送さ れ、同院の医師とともに当院のドクターヘリスタッフが診療に当たった。3 名のうち 2 名は腹腔内出血 を認め、当院ドクターヘリは当院に 1 名、本県の防災ヘリは郡山市の救命救急センターに 1 名搬送した。 いずれも開腹止血術を要する症例であった。もう 1 名は山形県のドクターヘリで会津若松市内の救命救 急センターへ搬送された。 【まとめ】 福島県は本州で 2 番目の面積となる広大な県であり、事故現場の南会津町は、福島県の西端に位置し た山に囲まれた地域である。このような医療資源の乏しい僻地で複数の傷病者が発生した場合は災害対 応が必要となる。今回、3 つのヘリコプターを使用し、単なる搬送手段の確保だけではなく、救急医療 スタッフという医療資源も投入することができた。また、ヘリコプターの使用により、県内の各救命救 急センターへ迅速な分散搬送をすることができ、搬送先医療機関においても迅速かつ適切な処置を施行 できたものと考えられた。 162 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 16 /外因性疾患 1 O 16- 5 岐阜県ドクターヘリのスポーツ関連傷病者に対する取り組み ○ 橋本 孝治、豊田 泉、熊田 恵介、吉田 隆、名知 祥、小倉 真治、 山下 浩司、長藤 有美、白木 大輔、本間千絵美、松尾 美波、辻 俊行 岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター 岐阜県は南北に 180km の広がりをもち、森林率も 82%(全国第 2 位)で県のほとんどが山間部で占有 されている。またスキー場は 30 施設ほど、またゴルフ場は 100 施設ほどあり一年を通じて、これら施設 で発症する傷病者も多い。ゴルフ場やスキー場は山間部に立地することが多く、これら施設で傷病者が 発生した場合、近隣病院まで搬送に時間を要し、初期治療に遅れを生ずることも危惧される。このため 当院では、県内のスキー場関係者、ゴルフ場関係者と、さらには消防と積極的に話し合いの場をもつこ とで、傷病者発生時に迅速に適切な医療が提供できる体制作りに取り組んでいる。これらの試みの一つ として、予め消防と連携して県内のゴルフ場のコース地図を消防、当院ヘリ通信センターに常備し、安 全面を考慮した上で、ゴルフ場コース内にさえランデブーポイントを設定し、より早く傷病者に接触で きる体制を構築している。またスキー場においても、ゲレンデ上は安全面の上からは困難なこともある が、スキー場内の駐車場などに着陸し早期に患者に接触できるように、現地関係者と予め協議し、その 成果をあげつつある。重症患者の場合、一刻も早い医療介入により、患者の救命率の向上や、その後の 生命予後にもたらす影響は大きいと考えられる。一方で現場に離着陸することは安全面や、施設の理解 の必要などの問題点もある。まだ途上段階の取り組みではあるが、今後の課題もふまえて検討する。 第 20 回日本航空医療学会総会 163 一般演題 16 /外因性疾患 1 O 16- 6 日本外傷データバンク (2004-2012)を利用した、HEMSとGEMSの比較 ○ 土谷 飛鳥、堤 悠介、石上 耕司、阪本 太吾、古橋 杏輔、田畑 文昌、 山田 理仁、粕谷 泰道、安田 貢 国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター 【はじめに】 2007/2008 年に救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法や、助成金交付 事業省令が制定されて以来、日本全国で飛躍的にドクターヘリ(DH)の整備が進んでいる。しかしなが ら、DH が救急車と比較して、生命予後に寄与するか否かは不明である。 【目 的】 日本外傷データバンク(2004-2012)を利用して、Helicopter Emergency Medical Service(HEMS) と Ground Emergency Medical Service(GEMS)の、重症例の生存率を比較する。 【方 法】 15 歳以上で、ドクターヘリもしくは救急車で現場から 8:30 〜 17:30 までに病院に搬送された、現 場ショック症例(BP ≦ 90)を抽出し、生存率を比較した。 【結 果】 症例数 778。現場での呼吸数に有意差を認めたが、血圧・心拍数・来院後の RTS に有意差を認めな かった。HEMS の方が ISS は有意に高く、TRISS PS は低かった(ISS:25.6/19.7, P < 0.01、TRISS PS:0.747/0.813,p=0.02)。実生存率には有意差を認めなかった(81.7%/83.7%,P=0.60) 【考 察】 現場ショック症例において HEMS は GEMS に比べて、解剖学的重症例が多く、より予測死亡率が高 かったが、実際の生存率は同じであった。 【結 語】 HEMS は重症例において有用であると考えられた。 164 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 17 /外因性疾患 2 O17- 1 愛知県ドクターヘリで対応した、農作業機具による事故について ○ 青木 瑠里 1、井上 保介 1、寺島 嗣明 2、岩倉 賢也 2、熊谷 常康 2、 野口 裕記 2、三木 靖雄 2、鉄 慎一郎 2、竹内 昭憲 2、中川 隆 2 1 愛知医科大学医学部 地域救急医療学寄付講座、2 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 【はじめに】 農林水産省によると、産業別災害死亡事故は他産業労災では 1971 年の 5,552 人から 2011 年には 1,024 人、18.4%に減少した。危険業種といわれる建設業では 2,323 人から 342 人、14.7%まで減少している。 これに対して農作業災害死亡者数は、1971 年の 364 人から 2011 年の 366 人、100.5%とほとんど変化が ない。現在では建設業の方が農作業死亡事故者数を下回っていると報告されている。農機具はトラク ター・耕耘機・草刈り機など多種にわたり、死亡事故に至らないものの四肢切断という事態を免れない 事例もある。 【調 査】 愛知県ドクターヘリコプターが携わった農作業機具による事故症例について調査・報告する。平成 14 年 1 月 1 日から平成 25 年 7 月 31 日までの要請件数は 5,063 件であった。現場対応(3329 件)のうち当 該事故は 84 件。男性 71 件、平均年齢は 65.5 歳(33-90 歳) 。機具は耕耘機 41 件、トラクター 14 件、草 刈り機 21 件、その他 8 件。緊急度は 1 度 34 件、2 度 31 件で、重症度は、重症 33 件、中等症 32 件で あった。心停止症例は 11 件(13%) 、トラクター 6 件で半分以上を占めた。 【考 察】 農作業中の機具による事故は高齢者が多く殆どが個人・家族経営であるため、四肢外傷であってもリ ハビリを含めた社会復帰までの時間は非常に重大な問題である。愛知県の調査によると年間約 60 件程度 の事故があるとされており約 30% が重傷であるという。実際のヘリ要請は約 10%程度である。この種の 事故は救出されるまでに時間がかかること、感染症の危険性が高いことからもオーバートリアージによ る要請が望ましいと考える。 【結 語】 農作業事故自体の全体像把握ができていないという指摘がある。愛知県でもヘリ要請はごく僅かであっ た。農業形態は、個人・家族経営であり事故が社会問題とされることが少ないといわれる。しかし、重 症例が絶えることがない現状を考えると、社会全体で事故調査体制の確立や安全対策を進めることが急 務である。 第 20 回日本航空医療学会総会 165 一般演題 17 /外因性疾患 2 O 17- 2 熱中症に対するドクターヘリの有用性の検討 ○ 原 文祐、佐々木妙子、山本 奈緒、井手 善教、藤崎 修、前山 博輝、 中嶋 麻里、番匠谷友紀、松井 大作、菅 健敬、岡 和幸、池田 光憲、 永嶋 太、小林 誠人 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 当センターにおける 2010 年 6 月から 2013 年 6 月までの過去 3 年間に外来受診した熱中症症例につい て、搬送方法、重症度、意識障害の有無、冷却輸液の投与開始までの時間、受診前後の合計 GCS、転帰 を後ろ向きに検討した。症例数は 371 例で、うち I 度・II 度が 258 例で III 度が 83 例であった。III 度の 83 例のうち、Walk-in もしくは救急車で搬入されたものは 58 例、ドクターヘリで搬入されたものは 25 例であった。救急要請から冷却開始までの平均時間は、救急車症例では 39.2 分であったのに対し、ドク ターヘリ症例では 26.8 分であった。平均 GCS について、Walk-in・救急車症例では院外で 12.74、病院到 着時では 13.08 であった。それに対し、ドクターヘリ症例では、救急隊現着時は 7.00 であったが、病院 到着時は 11.24 と改善傾向が示唆された。転帰は全例が後遺症なく退院となっている。熱中症の治療には 早期の輸液と冷却が重要である。夏期には高温多湿となる当センター管轄地区内において、早期の医療 介入という点でドクターヘリは熱中症の治療、重症化の防止に有用である。 166 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 17 /外因性疾患 2 O17- 3 重症外傷症例に対するドクターヘリの効果の検討 ○ 町田 浩志 1、中野 実 1、高橋 栄治 1、中村 光伸 1、宮崎 大 1、 鈴木 裕之 1、藤塚 健次 1、雨宮 優 1、高寺由美子 2、小池 伸享 2、 萩原ひろみ 2、城田 智之 2、滝沢 悟 2 1 2 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科、 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 救急外来 【はじめに】 ドクターヘリ運航開始から 4 年が過ぎた群馬県におけるドクターヘリによる早期医療介入の効果を検 証した。 【対 象】 2011 年 4 月 1 日から 2013 年 3 月 31 日までの現場出動かつ U-turn 搬送した重傷外傷症例(TRISS 法 により Ps < 0.05)。小児症例、CPA 症例は除外した。 【方法 1】 救急隊現着前と救急隊現着後要請の 2 群に分けて、RTS、Ps、生存退院率、医療介入時間(消防覚知 から医療スタッフ接触までの時間)について比較検討した。統計学的処理は Welch の t 検定で行い、有 意水準は 0.05 とした。 【結果 1】 RTS は救急隊現着後要請群において有意な低値を認めた。Ps、生存退院率、医療介入時間は両群間で 有意差を認めなかった。 【方法 2】 消防覚知から傷病者接触まで 30 分以内の群と 30 分を超える群に分けて、RTS、Ps、生存退院率につ いて比較検討した。 【結果 2】 両群間で RTS、Ps に有意差を認めなかったが、生存退院率は 30 分以内の群が 60% に対して、30 分を 超える群は 40% 弱で有意差が認められた。 【考 察】 早期医療介入が生存退院率を上げることに寄与している可能性が示唆された。早期医療介入により速 やかに生理学的異常所見を改善することがその要因の 1 つであると考えられた。 【結 語】 ドクターヘリによる早期医療介入は、重傷外傷症例の予後を改善する一つの因子となりうる。 第 20 回日本航空医療学会総会 167 一般演題 17 /外因性疾患 2 O 17- 4 三重県ドクターヘリは外傷例の予後を改善したか ○ 藤井 幸治 1、森 一樹 1、水野 光規 1、山川 徹 1、岩下 義明 2、 山本 章貴 2、石倉 健 2、武田 多一 2、説田 守道 1、今井 寛 2 1 伊勢赤十字病院 救命救急センター、2 三重大学医学部附属病院 救命救急センター 【背景と目的】 三重県ドクターヘリ(以下 MIEDH)は 2012 年 2 月の運航開始から 2013 年 5 月までの 16 か月で約 100 件の外傷例に対し現場出動を行った。県内には搬送時間が 40 分を超える地域が多く、MIEDH の有 効性が期待されるが、劇的救命と言える成果は乏しい。患者予後向上のために運航記録、治療成績を検 討し、改善策を図ることが必要である。 【対 象】 16 か月間の現場出動 198 件のうち、外因性救急で熱傷・溺水などを除いた外傷 100 例(交通事故 36 例、一般負傷 34 例、労働災害 27 例、山岳負傷 3 例)を対象とした。 【方 法】 外傷重症度スコア(ISS) 、生理学的重症度スコア(RTS) 、予測生存率(TRISS)等をもとに治療の妥 当性を検討した。 【結 果】 消防覚知~ MIEDH 要請まで平均 23.5(1 - 113)分、消防覚知~初療開始まで平均 50.8(21 - 179) 分、現場滞在時間平均 20.6(5 - 49)分、消防覚知~病院到着まで平均 87.9(46 - 211)分であった。 患者は幼小児 4 例(1-10 歳、中央値 4.5 歳) 、成人 96 例(23-91 歳、中央値 62 歳)であった。重症度は 重篤 12 例、重症 37 例、中等症 47 例、軽症 4 例であった。搬送方法は、ドクターヘリ搬送 85 例、ドク ターカー搬送 10 例、救急隊搬送 5 例であった。搬送先は 3 次救急病院 86 例、2 次救急病院 14 例であっ た。死亡症例は 18 例(18.0%) 、フライトスタッフ接触時心肺停止症例を除くと 11 例で、全例 ISS 25 以 上であった。予測生存率(Ps)≧ 0.5 の症例は 81 例で、予測外死亡症例は 2 例(2.5%、ISS 30,33)で、 GCS5 以下または年齢 80 歳以上を除いた修正予測外死亡症例は 1 例(ISS 33、慢性肝障害による凝固異 常の既往)であった。また Ps < 0.5 の症例は 19 例で、生存は 3 例(15.8%、ISS 25-36)であった。 【考 察】 Ps < 0.5 で生存した 3 例は、救命救急センターまで陸路で 50 分以上を要する現場であり、MIEDH の 介入が有効だったと考えられた。以上、三重県ドクターヘリの現状と、患者予後改善のための今後の改 善点を考察する。 168 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 17 /外因性疾患 2 O17- 5 ドクターヘリで対応した外因性傷病者の検討 ○ 山田 裕彦 1、大間々真一 1、松本 尚也 1、井上 義博 1、遠藤 重厚 1、 齊藤麻知子 2、佐臼智恵子 2、佐々木美里 2、岩谷 涼子 2、玉熊 陽子 2、 村松 敬子 2、生駒 志穂 2、金子 拓 2、中村 敬子 2 1 岩手医科大学 救急医学講座、2 岩手医科大学 高度救命救急センター 【はじめに】 われわれの県では 2012 年 5 月よりドクターヘリの運用を開始した。そこで、約 1 年間の外因性傷病者 の傾向および今後の課題を検討した。 【対象と方法】 2012 年度の出動件数は 247 件で、そのうちの外因性事例 89 件に関して検討した。 【結 果】 89 件の内容は、現場救急 81 件、転院搬送 8 件で、ヘリ搬送 52 件、陸路搬送 25 件、現場対応のみが 4 件であった。陸路搬送の理由としては、最寄りの医療機関までの搬送時間が短いものが 14 件、CPA 等 で処置の継続を要するものが 11 例であった。いずれも直近の中核の医療機関に搬送されていた。ヘリ搬 送では、17 件(33.0%)が要請消防以外へ搬送しており、17 件中基地病院以外への搬送が 5 件あり、理 由は傷病者の居住地域が 3 件であった。現場対応事例での覚知から要請までの時間は平均 11.6 分で、覚 知から救急隊による情報を待ってからの要請や離着陸支援隊の出動を待ってからの要請が原因と考えら れた。傷病の内訳では、頭部 13 例、胸部 8 例、腹部 5 例、四肢骨盤 21 例、顔面 3 例などで、多発外傷 が 6 例で、5 例が基地病院に搬送となっていた。また、接触時明らかなショック状態は 4 例あり、その うち 2 例はショックの進行を認めた。転院搬送事例は全例専門医等不在によるもので、ヘリ対応事例の 転院搬送はなかった。しかし、ヘリで中核病院へ搬送後、基地病院への紹介・陸路搬送は 5 例あった。 【考 察】 われわれの県ではドクターヘリの要請にはキーワード方式をとっているが、まだキーワードによる覚 知要請が少ないことが分かり今後さらに覚知要請をお願いしていく必要があると思われた。また、専門 的な診療を要するような症例では、全身状態が安定していても中核病院ではなく高次医療機関を選択す るようにフライトドクターにも周知していく必要があると思われた。 第 20 回日本航空医療学会総会 169 一般演題 17 /外因性疾患 2 O 17- 6 山梨県ドクターヘリによる外傷患者の集約と有効性 ○ 岩瀬 史明、井上 潤一、小林 辰輔、宮崎 善史、松本 学、大嶽 康介、 加藤 頼子、池田 督司、木下 大輔、岩瀬 弘明 山梨県立中央病院 救命救急センター 【はじめに】 山梨県の救急患者搬送基準では、多発外傷もしくは重症外傷は救命救急センターに搬送することとなっ ている。山梨県には救命救急センターは 1 ヶ所しかないため、重症外傷は直近 2 次病院に搬送されそこ から転送されるか県外の救命救急センターに搬送されてきた。2012 年 4 月より山梨県ドクターヘリ(DH) の運用が当センターを基地病院として開始され、遠方からも重症外傷を直接収容することが可能となっ た。 【目 的】 山梨県 DH による山梨県内の外傷患者に対する有効性を検証すること。 【方 法】 2008 年度以後、当センターに搬送された外傷症例の DH 運行前後での症例数・重症度・転帰などを比 較した。 【結 果】 当センターの外傷症例数は、2008 ~ 2011 年度(DH 前)では 480 例 / 年だったが、DH 後の 2012 年 度は 760 例に増加した。当センターから遠方である県東部地域からの搬送が 48 例 / 年が 183 例に増加し た。ISS16 以上の重症例は、DH 前は 177 例 / 年だったが、DH 後は 235 例 / 年に増加した。病院前心肺 停止例を除外した生存率は DH 運行前後で 93.9% と 95.7% であり、予測生存率 50% 未満の生存率は DH 前後で 36.2% と 46.3% であった。 【まとめ】 重症外傷は、外傷センターに集約した方が、予後が改善することが報告されている。DH より山梨県 内の重症外傷の集約が可能となってきているので、予後を改善するためには当センターでの外傷診療の レベルアップが求められる。今後の課題として、DH 要請数は消防本部により偏りが認められるので集 約のためにはさらなる啓蒙と当センターでの治療後の退院先の確保と病院間の連携が必要となる。 170 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 18 /内因性疾患・その他 O18- 1 急性期大動脈疾患に対するドクターヘリ有用性の検討 ○ 小林 巌 1、川田 大輔 2、渡辺 明彦 1、浜田 耕介 1、加藤 真 1、 大曾根順平 1、藤田 智 2、住田 臣造 1 1 旭川赤十字病院 救命救急センター、2 旭川医科大学 救急医学講座 【対象及び方法】 2009 年 4 月~ 2012 年 4 月までに当院ドクターヘリにて搬送された胸部大動脈解離及び腹部大動脈瘤 患者を対象にした。搬送時間(要請から搬送先病院着まで) 、搬送中ヘリ内処置、搬送中イベントについ てドクターヘリ診療録を使用して後方的に検討した。 【結 果】 胸部大動脈解離及び腹部大動脈瘤の病名で搬送された症例数は 23 名で、このうち 21 名が対象症例と なった。男性 16 名、女性 5 名で平均年齢は 77.2±8.8 歳であった。発症時期は降雪期間(11 〜 4 月)12 名、非降雪期間(5 〜 10 月)9 名で季節による有意差はなかった(P=0.512) 。搬送時間では、ヘリによ り搬送時間の短縮が図れたと思われる症例は 9 例で、救急車搬送より 23±14.3 分の短縮であった。へり 搬送距離 50km 以内の症例では、ヘリによる搬送時間の短縮は見られなかった。ヘリ内での処置は、薬 剤を用いた血圧コントロール 13 例、鎮痛剤を用いた疼痛コントロール 10 例であった。搬送中イベント としては、ショックあるいは心肺蘇生 2 例であった。 【考 察】 搬送時間をどのように定義するかで評価は異なるが、広大な道北エリアでも搬送時間の短縮効果は限 定的だった。ヘリ搬送中は血圧のコントロールや疼痛管理などの医療経験を必要とする場合が多く、ま た狭空間内で蘇生行為を行える医療技術も必要と思われた。 【結 語】 急性期大動脈疾患に対するドクターヘリの有用性は搬送時間の短縮ではなく、搬送中の患者管理であ ることを念頭にドクターヘリの運用を考慮すべきと考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 171 一般演題 18 /内因性疾患・その他 O 18- 2 ドクターヘリにおける急性胸部大動脈解離患者対応の問題点 ○ 荻野 隆光、竹原 延治、杉浦 潤、辻 英明、山田 祥子、堀田 敏弘、 高橋 治郎、井上 貴博、椎野 泰和、鈴木幸一郎 川崎医科大学附属病院 救急科・高度救命救急センター 【目 的】 ドクターヘリ(以下ドクヘリ)を急性胸部大動脈解離患者に有効活用するための問題点を検討する。 【方 法】 岡山県ドクヘリが 2008 年から 2012 年までの 5 年間に経験した急性胸部大動脈解離で特に消防本部か らの現場要請症例について検討した。検討項目は、現場でのバイタルサイン、処置および病院搬送後の 緊急手術の有無、予後等である。 【結 果】 岡山県ドクヘリが対応した急性胸部大動脈解離は 40 例であった。そのうち現場要請が 9 例で医療機関 の要請が 31 例であった。現場要請 9 例のうち StanfordA は 6 例で 3 例が緊急手術され、そのうち 2 例が 軽快、1 例が術後合併症で死亡し、残り 3 例は緊急手術ができず全例死亡した。StanfordB は 3 例で全例 軽快した。ドクヘリ医療スタッフが患者接触時 CPA が 1 例、患者接触後 CPA が 1 例あり、いずれも病 院収容したが、緊急手術ができず死亡した。現場でショック状態(収縮期血圧 90mmHg 以下)は 2 例で、 そのうち 1 例は緊急手術にて救命された。しかし、他の 1 例は受け入れ医療機関の選定に時間を要し緊 急手術に至らず死亡した。救急現場でショックと片麻痺等の局所神経症状をともなった症例は 3 例であっ た。前胸部痛のみで背部痛を訴えなかった症例が 3 例あった。 【考 察】 急性胸部大動脈解離は症状が多彩で、現場では冠動脈疾患や脳血管障害等との鑑別が困難な場合があ るため、適切な対応のできる医療機関の選定に難渋し緊急手術のタイミングを失する場合がある。また、 ドクヘリ医療スタッフが患者接触前後に病態が急変することがあり、迅速な蘇生処置および適切な循環 管理が患者の予後を左右すると考えられた。 【結 論】 急性胸部大動脈解離患者の現場要請では、現場での診断、蘇生処置および循環管理を適切に行う能力 がドクヘリ医療スタッフに求められる。また、ドクヘリ活動範囲に緊急手術の可能な受け入れ医療機関 を複数確保し、ドクヘリとそれら医療機関間の連携が構築されている必要がある。 172 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 18 /内因性疾患・その他 O18- 3 ドクターヘリによる周産期ドクターデリバリーの導入と効果 ○ 平川 英司 1、茨 聡 1、上塘 正人 2、吉原 秀明 3、前出 喜信 1、 前田 隆嗣 2、鳥飼 源史 1、石原 千詠 1、桑原 貴子 1、佐藤 恭子 1、 内藤 喜樹 1、樺山 知佳 1、山本 将功 1 1 2 鹿児島市立病院 総合周産期母子医療センター 新生児科、 鹿児島市立病院 総合周産期母子医療センター 産婦人科、3 鹿児島市立病院 救命救急センター 【目 的】 鹿児島市立病院は県内唯一の総合周産期母子医療センターであり、県内の周産期医療を担っている。 鹿児島県は薩摩半島北部、薩摩半島南部、大隅半島といった当院へのアクセスに 2 時間以上要する地域 があり、これらの地域には一次医療施設が点在している。一次医療施設で対応困難な症例は高次医療施 設への搬送を考慮するが、常位胎盤早期剥離や産科危機的出血など搬送困難な症例がある。平成 23 年 12 月に鹿児島県ドクターヘリの運用開始以降、当院では新生児搬送、母体搬送にドクターヘリを用いて おり、決定的治療開始までの時間の短縮を認めた。一方、搬送困難な症例では新生児科医、産婦人科医、 救急医をドクターヘリで派遣し、緊急帝王切開などを行い新生児、母体の救命をするドクターデリバリー を行なっている。周産期におけるドクターデリバリーの導入と効果、今後の展開について報告する。 【方法、結果】 救急車やドクターカーによる搬送時間とドクターヘリによる搬送時間を検討し、ドクターデリバリー により初療開始時間が薩摩半島北部では約 1/4、薩摩半島南部では約 1/6 へ劇的に短縮された。 【結 論】 鹿児島県では基地病院に総合周産期母子医療センターが併設されていること、新生児ドクターカーに よる搬送体制が成熟していたことからドクターヘリによる搬送はスムーズに導入され、H24 年度は鹿児 島県ドクターヘリの総出動件数に対し周産期の出動件数は 40 件(7.5%)となった。ドクターヘリによる ドクターデリバリーは初療開始時間の短縮による児、母体への有益性のみならず、1 次医療施設の負担 も軽減できると考えられる。周産期医療にドクターヘリを用いることは、各都道府県の総合周産期母子 医療センターに集約されている人的、物的医療資源を地域の一次医療施設で有効に利用することができ、 新生児予後の改善や母体死亡率の低下だけでなく地域医療崩壊の防止にも有効な可能性がある。 第 20 回日本航空医療学会総会 173 一般演題 18 /内因性疾患・その他 O 18- 4 ドクターヘリによる小児外傷患者の PICU への集約化 ○ 志賀 一博 1、早川 達也 1、植田 育也 2 1 総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 救急科、2 静岡県立こども病院 小児集中治療科 海外では重症小児患者を Pediatric Intensive Care Unit(PICU)に集約することにより、治療成績が 向上することが報告されている。一方でわが国では PICU が不足しており、PICU への搬送手段も確立し ているとは言い難い。 静岡県西部では、ドクターヘリによって小児患者を静岡県立こども病院 PICU に集約する搬送システ ムを構築している。今回、このうち小児外傷患者の治療成績を後方視的に分析し、ドクターヘリと PICU の連携による患者集約の効果を検討した。更に直送群と施設間搬送群とを比較し、搬送形態が治療成績 に与える影響についても検討を行なった。 2007 年 6 月から 2012 年 8 月において、患者は 55 例であった。内訳は直送群 33 例、施設間搬送群 22 例であった。直送群では覚知から平均 6 分でドクターヘリが要請されており、救急隊現場到着前の要請 は 23/33 例(75.7%)であった。覚知から静岡県立こども病院屋上ヘリポートまでの平均所要時間は、直 送群で 65 分、施設間搬送で 140 分であり、直送群で有意に搬送時間が短縮していた(p< 0.05) 。 次に、ISS16 以上の重症小児外傷患者について分析した。患者は 28 例であった。生存率は 85.7%で、 予測生存率 78.1%を上回った(n.s.) 。28 例の内訳は直送群 15 例、施設間搬送群 13 例であった。両群の 患者の重症度は、直送群で平均 ISS34.2、施設間搬送群で平均 ISS22.6 であり、直送群で有意に重症度が 高かった(p< 0.05)。直送群の生存率は 80%で、予測生存率 69%を上回った(n.s.) 。施設間搬送群の生 存率は 92.3%で、予測生存率 87.9%を上回った(n.s.) 。 静岡県西部におけるドクターヘリと PICU の連携は、重症小児外傷患者の救命に一定の治療効果があ るものと考えられた。また、ドクターヘリによって救急現場から PICU に直接搬送することにより、搬 送時間が短縮し生存率が向上する可能性も考えられた。 174 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 18 /内因性疾患・その他 O18- 5 新生児救急搬送運用開始に向けた模擬訓練の実施 ○ 常川 仁子、山内 洋一、二階 春香、山口 智也、會田 悦久、石澤 義也、 小笠原 賢、齋藤 兄治 青森県立中央病院 救命救急センター 青森県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児科では県内で生まれた未熟児のうち、体重千グ ラム未満の約 9 割を受け入れている。これまで重篤な症例はドクターカーで搬送していたが、地域によっ ては搬送に 2 時間以上かかり、容態が悪化する恐れがあった。 2012 年 9 月に国土交通省から保育器を搭載できるロールインマウントが認可され、当院ドクターヘリ での新生児救急搬送が可能となった。運用を開始するにあたり、ドクターヘリによる新生児救急搬送マ ニュアルを作成する目的で、高次搬送、出迎え搬送、三角搬送に区分し、県内の 4 医療施設と 4 回にわ たり模擬訓練を行った。 新生児救急搬送は成人の施設間搬送にくらべ時間がかかり、その間、他のヘリ要請事案に対応できな いという問題があったが、青森県はドクターヘリ 2 機運用、北東北 3 県広域連携運航(試行)を行って おり影響は少ない。 訓練は、県、各消防機関、自衛隊と連携して行われ、新生児救急搬送の連絡体制、チェックリスト、 各施設の着陸場所および退避場所、ヘリ搬送による新生児への影響と対策、容態急変時の連絡方法など について検討した。新生児搬送時に搭乗する予定の NICU 医師 5 名およびヘリポート内に出入りする NICU 看護師 43 名に対してフライトスタッフに準じた安全教育を行うとともに、連携が想定される医療 施設にも安全の手引きを配布し、安全に対する意識の高揚を図った。また、各医療施設にロールインマ ウントと適合する専用ストレッチャーを装備した。 認可を受けたロールインマウントは青森ドクターヘリ機体固有に限定して搭載を認められているもの であり、定期耐空検査期間中における代替機には搭載できないという問題点があるものの、ヘリによる 新生児搬送により移動時間の短縮や搬送時のストレス低減、新生児専門医による早期の治療開始が可能 となり、救命率の向上だけでなく予後の改善も期待できると考えられる。 第 20 回日本航空医療学会総会 175 一般演題 19 /一般 O 19- 1 沖縄県ドクターヘリのレジデント教育~ OJT 開始基準の作成~ ○ 北原 佑介、八木 正晴、米盛 輝武、伊藤 貴彦、葵 佳宏、福井 英人、 那須 道高、新里 盛朗、高田 忠明、屋宜 亮兵、岩永 航 浦添総合病院 救急総合診療科 救命救急センター 当科には現在 9 名の後期研修医が所属しており、その一部がドクターカーおよびドクターヘリの On the Job Training(OJT)を受けている。これまで OJT 開始に当たっての明確な基準はなかった。 近年、アウトカム基盤型教育の重要性が問われている。医師がプレホスピタルに出るにあたり、どの ような能力が求められるか。本基準の目的は、それを明示することで後期研修医の学習 / 教育を促進す ることである。 評価項目設定に当たって、Specific(具体的)かつ Attainable(達成可能)であることを重視した。項 目は、1.各種トレーニングコース受講、2.救急疾患・病態の管理、3.救急手技の実施、4.病院前診 療に関わる知識(MC/ 無線 / 災害) 、5.その他で構成した。 2. で は、 リ ス ト ア ッ プ さ れ た 疾 患・ 病 態 に つ い て、ER/ 病 棟 で 十 分 に Dicision making / Management できることを目標とした。ショック、急性心筋梗塞など、16 項目を盛り込んだ。3.では 各救急手技を、ER/ 病棟で「独立して実施できる」ことを目標とした。 「独立して実施できる」とは、適 応判断→準備 / 介助の指示→手技→実施後の管理、までを独力で行えることと定義した。 より Attainable にするために、ある症例や手技を経験する機会がなく、かつ早く基準を達成したいと いう希望の強い者には、口頭試問やシミュレーションを受けることでクリアできるようにした。また、 公式コースに抽選漏れした者にも、スタッフ医師によるレクチャー / トレーニングで代用できることと した。 現在対象者 4 名のうち 2 名が基準をクリアした。今後は、初期研修医や看護師からのリーダーシップ 及びコミュニケーション能力の評価を取り入れ、学習目標を確立できていない小児・産科領域について 盛り込む。また、OJT での学習目標や、OJT 修了基準の作成も検討中である。 176 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 19 /一般 O19- 2 フライトスタッフの新しい育成方法について─宮崎方式の紹介─ ○ 長野 健彦、宗像 駿、山田 祐輔、安部 智大、長嶺 育弘、今井 光一、 山下 真治、白尾 英仁、松岡 博史、金丸 勝弘、落合 秀信 宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター 【はじめに】 ドクターヘリの運営にフライトスタッフ(医師、看護師)の育成は必須である。現在、フライトスタッ フ育成法は、フライトスタッフ候補がすでにヘリを導入し実績を上げている病院(以下、研修担当病院) で数か月間の実地訓練を行う方法が主となっている。此度、宮崎県ドクターヘリを導入する際に新しい フライトスタッフ育成法を実施し、円滑なドクターヘリ導入に寄与できたためこれを紹介する。 【新しい育成方法について】 私たちは従来の育成方法ではなく、研修担当病院から現役のフライトドクターを指導員として当院に 招き、基地病院と地域医療の実情を踏まえて実地指導して頂く方法(以下、宮崎方式)を行った。実際 には日本医科大学千葉北総病院で活躍しているフライトドクター 1 名を 2 週間交代で招聘し、宮崎県ド クターヘリ運航開始直後から約半年間で、のべ 12 名の指導員を招聘した。 宮崎方式の利点として、1.フライトスタッフ候補と関係者(医師、看護師、救急隊)を同時に指導す ることができる、2.基地病院の医療資源、周辺病院との関係、地域の医療水準などを踏まえて指導でき る、などがある。現場での医療行為はもちろん、クルーや消防隊、救急隊とのコミュニケーションや教 育、患者の搬送先選定、適切な安全管理などは、新規導入病院と周辺地域の実情により大きく変わって くる。これらは、従来の育成法では学習困難な項目と思われたが、宮崎方式では効率的かつ効果的に学 習することが可能で、すぐにでも実践可能な生きた知識として学習することができた。 一方で招聘する際の費用は自施設で負担しなければならず、今後は宮崎方式が新しい育成法として認 知され、HEM-Net による研修システムの一つとなることが期待される。 【結 語】 研修担当病院から指導員を招聘する宮崎方式はフライトスタッフ育成法として有用であった。 第 20 回日本航空医療学会総会 177 一般演題 19 /一般 O 19- 3 救急隊員のヘリ搭乗実習は何をもたらすか ○ 須田 高之、遠藤 浩志、福井大治郎、稲葉 健介、大津 裕子、林 眞紀、 塚原 卓、大友 礼子、山田 知弥 水戸済生会総合病院 救命救急センター 【目 的】 1.ドクターヘリ事業の本質を理解する。2.医療機関、運航クルーとコミュニケーションをより円滑 にする。 【方 法】 1.実際の出動に搭乗し医療クルー、運航クルーの実働を体験する。2.ドクターヘリ通信指令室に滞 在して要請から出動、CS の業務内容を理解する。 【成 績】 茨城県内 15 消防本部計 63 名の搭乗実習を行った。 【結 論】 ドクターヘリの活動についての理解は深まった。上記の如く、試行研究を行った。茨城県ドクターヘ リ事業は昨年度出動 852 件を数え、全国第 3 番目の出動数を記録した。導入 3 年ということを考慮する と、此処までは順調に事業推進が進んでいるものとも言える。昨年度の時点で我々が危惧したのは、運 航する自分達、県内消防機関との運用に関する経験値の不足からくる、安全への配慮の欠如や、双方の 認識のズレなどであった。更なる関係強化と事業全体の円滑化、とりわけ現場活動の円滑を図り滞在時 間の短縮を目指したかった。加えて覚知要請の意義を消防機関側に理解して頂く為にこの試行研究を計 画した。この結果について若干の考察を加え報告し、今後更に継続すべきかどうかも加えて言及したい。 178 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 19 /一般 O 19- 4 積雪時の活動について ○ 中村 伸好 中日本航空株式会社 ヘリコプター運航部 降雪時の運航する場合:雪が降っていても視程(見通し距離)が確保されて、雲の高さが地上から 300m 以上で有れば飛行は可能です。積雪面に着陸は、スノーシュー(かんじき)を装着しているので新 雪で 30cm 以下、圧雪した雪面では無制限で着陸可能です 運航の障害となる天候:着雪・着氷、強風・ 乱気流、雷電・雹(ひょう)・霰(あられ) 、霧・降雨・降雪による視界不良の場合は、運航不可に成り ます。 運航の障害となる現象:ホワイトアウト、ハレーション、雪目、空間識失調など 積雪による活動の障害:積雪状態による救急車のヘリポート進入制限、また患者ストレッチャーの移 動及び搬入の制限 積雪のある場所での対策:ランデブーポイントは除雪又は圧雪された場所を選定(35×35m 以上の広 さの除雪・圧雪が望ましい。 )及び着陸面へのマーキング(着色、目標物の設置) マーキング方法:雪面に H ○ × 等のマークを描く(水性の赤色スプレー、入浴剤「オレンジなどの 雪面で目立つ色」)、マーキングの形状には特に指定はありませんが、入浴剤により 2、3m の H マークな どを描く方法を推奨、他のマーキングの形状でも良好です。その他、赤色に着色した土嚢、ペットボト ル、ポリタンク、石などの重量物を目標物として設置も良好です。 (※ 目標物は、ヘリの吹き卸し風で 飛散せず、且つ高さのないものでお願いします。 )ヘリは、その目標物の手前 1 ~ 2m のところに着陸し ます。利用する物の形状、雪の状態や風向により有効な位置が異なるため、ヘリから消防無線で指示を することあります。 お願い:除雪又は圧雪されたランデブーポイントの確保(数ヵ所) 、着陸面にマーキングの実施、要請 時に現地の天候(降雪、積雪、風など)の情報提供をお願い致します。 第 20 回日本航空医療学会総会 179 一般演題 19 /一般 O 19- 5 山形県ドクターヘリの未出動事案の検討 ○ 辻本 雄太 1、瀬尾 伸夫 1、山田 尚弘 1、三田 法子 1、佐藤 精司 1、 武田健一郎 1、緑川 新一 2、佐藤 光弥 3、山内 聡 4、森野 一真 1 1 3 山形県立救命救急センター 救急科、2 日本海総合病院 救命救急センター 救急科、 公立置賜総合病院総合病院 救命救急センター、4 東北大学病院 高度救命救急センター ドクターヘリ要請の全例に対して応需することが理想である。しかし種々の理由で応需不能 , 離陸前 キャンセルとなる事案がある。その理由を調査し、対策を講じることが必要となる。 山形県ドクターヘリは 2012 年 11 月 15 日に就航し、2013 年 7 月 31 日までに 227 件の出動要請があっ た。そのうち 47 件が未出動となっていた。未出動の理由には「天候不良」 「重複要請」 「オーバートリ アージ / 心肺停止状態による離陸前キャンセル」が挙げられた。 「天候不良」については、12 月~ 2 月の冬季降雪による視程不良が大半であった。東北地方に位置す る山形県の地理・気候特性があらわれる形となった。更に山形県内 4 地域のうち 2 地域が特に「天候不 良」となりやすかった。「重複要請」については、未出動全体の 19%(9 件)であった。その対策として セカンドドクター/ナースの配置や、隣県ドクターヘリとの広域連携が挙げられる。 「天候不良」が未出動の原因である場合には有効な対策を講じ難いが、 「重複要請」に対しては今後も システムの整備を進めることで可及的に減らしていきたい。 180 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 19 /一般 O19- 6 北総ドクターヘリを補完する千葉県ラピッドカー~運用の現状 ○ 亀山 大介、益子 一樹、八木 貴典、原 義明、松本 尚、益子 邦洋 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 【背 景】 当施設はドクターヘリ基地病院であり重症外傷に対する「攻めの医療」として病院前診療に力をそそ いでいでおり、日没や悪天候でうけるヘリの運航制限で発生する空白時間をどのように補うかは常に課 題であった。特に夜間を補完するシステムとして、平成 22 年より医師のみの週 4 日、午後 9 時までの出 動で、ラピッドカーの試験運行を開始。平成 23 年より医師・看護師の医療チームで平日、午後 11 時ま での本格運行へと発展させてきた。 【方 法】 平成 22 年 6 月~ 25 年 5 月の間にラピッドカーが出動した 346 件において MC 地区ごと 4 か所(印旛・ 東葛南部・香取海匝・茨城県南部、総人口 285 万人)の地域別出動件数を算出し、要請件数の分布を調 べた。 【結 果】 運航開始した平成 22 年度は当施設の地元である印旛地区からの要請件数が 18(20%) 、東葛南部 1 (5%)、香取海匝 1(5%)であった。平成 24 年度は印旛 124(69.2%) 、茨城県南部 28(15.6%) 、東葛南 部 21(11.7%)、香取海匝 3(4.2%)と出動件数の増大と茨城県南部への出動が大きな割合を占めた。平 成 22 年 6 月~ 25 年 5 月全体では印旛 254(73.4%) 、茨城県南部 43(12.4%) 、東葛南部 33(9.5%)、香 取海匝(4%)と MC 地区外への出動が全体の 25.9% となった。疾病別にみると外傷 199 人(56.5%)、内 因性 145 人(41.1%) 、その他 8 人(2.4%)であった。 【考 察】 千葉県ラピッドカーはドクターヘリの空白時間を補うためのシステムとして開始された経緯があり、 要請基準もドクターヘリと同一である。要請件数は人口に関わらず夜間の病院機能が希薄な地域におい て増加しており、平均出動距離 13.5km 最大で病院から 55km の距離でのドッキングもあるなど県境や MC 地区にとどまらず、その出動範囲は茨城県にもおよんでいる。対応した疾病は外傷が半数以上を占 めていた。千葉県ラピッドカーはドクターヘリを補完し治療開始時間を早め、外傷センターたる施設へ 症例を集約する trauma bypass system を実現するツールとして期待される。 第 20 回日本航空医療学会総会 181 一般演題 19 /一般 O 19- 7 徳島県ドクターヘリにおけるバックアップシステムの報告 ○ 奥村 澄枝、住友 正幸、三村 誠二、大村 健史、川下陽一郎、神村盛一郎 徳島県立中央病院 ドクターヘリチーム 【はじめに】 徳島県ドクターヘリは平成 24 年 10 月から運航を開始した。ドクターヘリの運航を、フライトクルー (パイロット、整備士、ドクター、ナース)と運航管理者(以下 CS)に加え、バックアップドクターを 配置したシステムで始業し、現在に至る。バックアップドクターの役割とその業務内容を平均化するた めに使用するフローシートについて報告する。 【バックアップドクターの担当者】 救急外来専従医師(平日)とフライトドクターとして勤務経験のある医師(平日以外) 【役 割】 1 ホットライン入電時の電話対応(情報聴取) 2 フライトスタッフへの情報伝達 3 搬送先病院の検 討と調整 4 自施設へ患者収容する場合にはその準備 5 重複要請となった場合の優先順位の決定 【フローシート】 CS が要請内容と要請者、ランデブーポイントを確認した後、バックアップドクターに電話対応を交代 する。以降の情報聴取にフローシートを使用する。4 種類のシート(1 現場出動を司令室が要請している 2 現場出動を救急隊が要請している 3 病院間搬送を消防が要請している 4 病院間搬送を病院が要請し ている)から選択し、設定された質問に沿って情報を聴取する。上記 4 種類以外に、次の要請に最速で 出動可能となる時間を算出するシートも毎回ルーチンで記載している。 【利 点】 患者状態の把握とフライトクルーへの情報提供を的確に行うことが可能。救急隊へのメディカルコン トロールも即時可能。情報を元に搬送先を検討し、収容依頼を事前に行っておくので、フライトドクター が最終的にその病院でよいと判断すれば、フライトドクターが搬送先を一から調整する必要がない。患 者を病院に収容する以前に家族への連絡やかかりつけ医のからの情報聴取、来院後の検査や処置の準備 が可能。 【欠 点】 人員の確保が必要。ホットライン入電時には迅速な対応が求められるため、自然と行動範囲にも制限 がかかってしまう。 182 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 20 /病院前活動 O20- 1 遠隔地におけるドクターヘリと現場直近病院との連携の検討 ○ 山口 征吾、本多 忠幸、遠藤 裕 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター 【背 景】 新潟県は縦に長く、新潟市の基地病院から県全域をカバーするために現場到着まで最高 60 分近くを要 する。フライトドクターが傷病者に接触するよりも直近病院に陸路搬送される方が早い事案がある。ま た県内各地域の中核病院は重症傷病者に対応できないことも多い。これまでに経験した事案より、遠隔 地におけるドクヘリと現場直近病院との連携のあり方を検討をした。 【方 法】 ドクヘリが傷病者に接触するよりも、現場直近病院への収容の方が早かった事案でかつ現場直近病院 でドクヘリとの連携があった事案を検討した。 【実際の事案】 1 急性冠症候群か迷う症例;フライトドクターが直近病院で精査をしたが、完全には否定できずに 3 次病院へヘリ搬送した。2 広範囲重症熱傷;ドクヘリが直近病院へ到着した際には既に直近病院医師ら により気道確保、中心静脈カテーテル挿入、皮膚処置が終了していて 3 次病院への搬送だけをおこなっ た。3 頭部外傷、フレイルチェスト;ドクヘリ到着時には全身 CT が行われており、その結果をみてか ら気管挿管、胸腔ドレナージをおこない 3 次病院へのヘリ搬送をした。4 フレイルチェスト;直近病院 の救急外来で気管挿管、胸腔ドレナージをおこない、安定化したため直近病院に入院した。 【結 果】 1 傷病者が医師と接触するまでの時間が短くなる。2 現場直近病院の救急外来が使用できる(救急車内 より広く、処置もしやすい)。3 レントゲンや CT などの画像検査が使える。4 救急医の緊急応援派遣が できる。5 検査ができることによりオーバートリアージによる不必要な 3 次病院への搬送が減る。 【まとめ】 今後もこのような事案が増えることが予想される。傷病者や直近病院、フライトスタッフにとっても 利点が多く、当該病院とも検討会などを通じて連携を深めていきたい。 第 20 回日本航空医療学会総会 183 一般演題 20 /病院前活動 O 20- 2 高速道路に対する岩手県ドクターヘリの取組み ○ 松本 尚也 1、山田 裕彦 1、大間々真一 1、齊藤麻知子 2、佐々木美里 2、 井上 和子 2、井上 義博 1、遠藤 重厚 1 1 2 岩手医科大学 救急医学講座 岩手県高度救命救急センター、 岩手医科大学附属病院 岩手県高度救命救急センター 2012 年 5 月 8 日から 2013 年 7 月 31 日までの間に、岩手県の高速道路での交通事故事案でドクターヘ リが要請となったのは 8 例であった。そのうちの 1 例が『高速道路本線への着陸』であった。残りの 5 例のうち 1 例は『パーキングエリアへの着陸』 、4 例は『ランデブーポイントへの着陸』 、1 例は『軽症の ためキャンセル』、1 例は『時間外により不対応』であった。本線に着陸した事例は、トラックの横転、 ガソリン漏れ、火災発生により事故発生現場付近の上下線は通行止めとなっていた。また、事故発生現 場からインターチェンジ、ランデブーポイントまで非常に遠い場所であった。そのため、現場の消防、 警察、道路公団の間で安全管理の調整が行われ、消防からドクターヘリに対して本線への着陸要請となっ た。着陸要請があった場所は片側二車線であったが、防音壁などの高い構造物がなかったため、着陸す ることができた。しかし、高速道路本線への着陸は、事故発生場所や事故発生状況により十分な安全が 確保できない可能性があるため、常時可能とは限らない。また、安全管理に時間を要し、長時間上空待 機を強いられる可能性もある。そのため、安全で一刻も早い初療開始を考えた場合、 『高速道路本線外も しくはサービスエリアのヘリポートから事故現場まで消防車両で向かい、事故現場で傷病者と接触する』、 『高速道路本線外のランデブーポイント、もしくはサービスエリアのヘリポートで傷病者と接触する』と いった方法を基本とすることが現実的であると考えられる。岩手県ドクターヘリは運航開始から間もな いことから、高速道路事案に対する出動規定がない。そのため、出動体系について消防との調整を進め ているところであり、高速道路サービスエリアを使用した訓練等も予定されている。 184 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 20 /病院前活動 O20- 3 沖縄県北部におけるヘリによる初期治療開始時間の短縮効果 ○ 田中 浩二 1、吉池 昭一 1、小濱 正博 1、安田 陽子 2、筒井 清隆 2、金城 克 2、 與座 涼子 2、神山 和美 2、浦谷 幸男 2、高畠 孝児 2、上江洲安勝 2 1 北部地区医師会病院 救急科、2 北部地区医師会病院 看護部 【諸 言】 沖縄県北部は、別称「やんばる(山原)」という名の通り、原生林が広がっており、交通の便が極めて 悪い地域である。Medical Evacuation Service with Helicopter(MESH)は、この地域においてヘリを用 いた救急医療を行う組織であり、救急現場に医師や看護師を搬送し、早期に初療を開始することを第一 の目的としている。今回、これまでの症例を振り返り、初期治療開始時間がどの程度短縮できているの か検証した。 【方 法】 2007 年 6 月の運行開始から 2013 年 7 月現在まで(活動休止期間があるため、実質運行期間 3 年 10 か 月)の間に MESH は 609 件の要請を受けた。そのうち 371 件が救急現場への出動要請であるが、これら について、もしヘリがなかったら初療開始までどのくらいの時間がかかっていたかを予想した。現場か ら患者が救急車で搬送され病院に着くまでの「予想救急車搬送時間」と、ドクターカーで医師が出動す るのと並行して救急車が患者を搬送し、その途上で患者と接触する「予想ドクターカー初療開始時間」 の二つを想定し、これらと実際の初療開始時間とを比較した。 【結 果】 時間経過が不確かなものや、離島への出動、山中の搬送を伴うものなど、予想上の計算が不可能なも のを除いた 236 件についての結果は以下の通りであった。ヘリを利用した場合、覚知から初療開始まで に要した時間は平均 27 分 24 秒 ±11 分 7 秒 SD、もしヘリがなかった場合の「予想救急車搬送時間」は 平均 53 分 44 秒 ±18 分 14 秒 SD であった。また、ヘリを利用した場合、ヘリ要請から初療開始までに 要した時間は平均 18 分 6 秒 ±7 分 44 秒 SD、 「予想ドクターカー初療開始時間」は平均 22 分 13 秒 ±8 分 17 秒 SD であった。 【結 論】 沖縄県北部において、通常の救急車搬送と比較すればもちろんであるが、ドクターカーを併用した場 合と比較しても、ヘリの使用は初期治療開始時間を短縮するといえる。 第 20 回日本航空医療学会総会 185 一般演題 20 /病院前活動 O 20- 4 医師搭乗体制の違いにおける現場滞在時間の分析 ○ 菊池 仁、和氣 晃司、魚住 翠子、田崎洋太郎、松島 久雄、小野 一之、 寺内 浩美、横地 瑞、須永 準里、中田 哲也、菱沼 秀一、山崎 礼子、 柏 美由紀 獨協医科大学病院 救命救急センター 【背 景】 ドクターヘリの有用性は、その機動性を利用して救急現場への早期医療介入を可能にすることにある。 一方で、現場での滞在時間を必要最小限にすることも、根本治療の行える医療機関への搬送時間を短縮 する意味で大切なことだと考える。 【目 的】 栃木県ドクターヘリでは医師 2 名体制を基本としているが、諸事情から 1 名体制となる場合がある。 今回、医師搭乗体制の違いが、現場滞在時間に影響を及ぼしうるかどうかを分析した。 【対 象】 平成 25 年 2 月から 7 月までの現場救急事案のうち、搬送先医療機関選定にかかる受け入れ交渉回数が 1 回であった事案で、その通話時間が確認できた 228 症例。 【方 法】 基地病院搬送事案と他医療機関搬送事案について、医師 1 名体制と 2 名体制、および全体での現場活 動時間と搬送交渉通話時間を比較検討した。なお、現場活動時間は傷病者接触からヘリ収容もしくは救 急車出発までの時間と定義した。 【結 果】 基地病院搬送事案の現場活動時間は平均 13 分、通話時間平均 1 分 11 秒であり、他医療機関のそれぞ れ 17 分 16 秒、3 分 59 秒と比べ有意に短かった(共に P<0.01) 。医師 1 名体制と 2 名体制で比較した場 合、基地病院搬送事案では活動時間、通話時間共に有意差を認めなかった。一方、他医療機関搬送事案 では、医師 2 名体制での活動時間は平均 16 分 09 秒であり、医師 1 名の時の 20 分 14 秒と比べて有意に 短縮されていた(P=0.01)。通話時間に関しては両者に差を認めなかった(1 名体制 4 分 09 秒、2 名体制 3 分 56 秒、P=0.70) 。 今回の分析結果に若干の考察を加えて報告する。 186 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 20 /病院前活動 O 20- 5 当院の病院前診療における処置適応、疾患対応コンセンサスの統一 ○ 石上 耕司、土谷 飛鳥、堤 悠介、阪本 太吾、古橋 杏輔、田畑 文昌、 山田 理仁、粕谷 泰道、安田 貢 国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター 【はじめに】 病院前診療での処置は、A;airway、B;breething、C;circulation、D;dysfunction of CNS の蘇生に対し、 迅速に判断し的確に行う必要がある。しかしながら、明確なガイドラインはなく、世界各国で出動形態 がことなることから、エビデンスとしても比較しにくい実情がある。そして日本においても報告が少な い。各種疾患に対しても、地域特性、病院での体制を踏まえて対応を統一する必要がある。 【手段と方法】 処置の項目としては気管挿管、胸腔ドレナージ、開胸心マッサージ、経皮ペーシングとした。疾患と しては、出血性ショックでの血圧コントロール、くも膜下出血や脳卒中疑い、急性冠症候群、大動脈解 離、アナフィラキシー、小児けいれん重積、急性肺水腫に関してまとめた。当院のフライトドクターは、 救急科専門医、外科専門医、循環器専門医、脳神経外科専門医で構成されており、各人の専門分野に応 じて、項目を担当した。各種ガイドラインや文献におけるエビデンスを参考とし、病院前診療における 適応を見出した。これらを議論し共通見解とし、問題がある場合は再度検討することとした。 【まとめ】 今回われわれは、病院前診療での処置適応、疾患対応に関して、各種ガイドライン、文献を踏まえて、 フライトチームでのコンセンサスの統一を図ったので報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 187 一般演題 20 /病院前活動 O 20- 6 フライトドクターも共にホイストし医療行為を継続した事案 ○ 池田 武史 1、岡田 邦彦 2、渡部 修 2、佐藤 栄一 2、蔵野宗太郎 2、渡邊 周介 2 1 2 社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 救護災害医療センター、 JA 長野厚生連佐久総合病院 救命救急センター 【はじめに】 長野県では航空機による搬送手段として 1)長野県消防防災ヘリ(防災ヘリ)2)長野県警航空隊ヘリ (県警ヘリ)3)信州ドクターヘリ(DH)松本(以下松本機)4)信州 DH 佐久(以下佐久機)の 4 機が 活動している。前二者は要救助者のホイストも可能であるが後二者については不可能である。2005 年に 信州 DH が運行開始してから、防災ヘリとの協働は数件経験しているが、県警ヘリとの協働は経験がな く、医療者がホイストされた経験もない。今回、山岳事案において当初 DH が要請され現場で医療介入 を開始した事案で搬出にあたり県警ヘリにホイストを依頼し、FD も患者とともにホイストされ医療行 為を継続しながら医療機関へ搬送した事案を経験した。DH 運行主体と県警ヘリとの協働の協定は存在 せず、現場でごく短時間のうちに各関係機関と協議を行なって FD のホイストを決定した。今回、初の 県警ヘリとの協働を経験し、医療者のホイストの是非など、今後の協働に向けて事後検証会や関係機関 との調整を行った取り組みを報告する。 【症 例】 70 代男 【要請内容】 呼吸苦、その後意識なし。呼吸はしている 【活動内容】 Rp 着陸時に「現場は◯◯山登山道。移動手段は途中まで軽トラックに運んでもらい、その後徒歩で接 触の予定。接触まで 30 分以上かかる予定」との情報を得たため、要請元消防に「搬出手段としてホイス ト可能なヘリの手配」を依頼し FD、フライトナース、救急隊 3 人の 5 人で移動を開始。DH 着陸より 50 分後に患者と接触。接触時、CPA(心静止) 。CPR を開始 . 接触とほぼ同時に上空に県警ヘリが到着 し、航空隊員が降下。医療関係者もホイスト可能とのことで、基地病院と相談し FD がホイストされ CPR しながら搬送する方針とした。 188 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 21 /運航システム O 21- 1 新潟県ドクターヘリ事業における J ターンが多いわけ ○ 本多 忠幸、林 悠介、普久原朝美、大橋さとみ、竹内 一郎、木下 秀則、 本間 宙、山口 征吾、江部 克也、遠藤 裕 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター 【はじめに】 新潟大学医歯学総合病院を基地病院として新潟県ドクターヘリ事業が 2012 年 10 月 30 日より開始され た。県面積の広大な中で豪雪地域、離島を抱えての運用は多くの課題を抱えての船出と考えられた。そ の中で J ターン(他施設受け入れ)が多いことに注目し、その背景を検討した。 【運航実績】 新潟県ドクターヘリは、新潟大学医歯学総合病院を基地病院として県内 20 病院を関連施設として運用 している。運航開始から平成 25 年 5 月 31 日(214 日)までの運航基本データとしては、運航不可日 61.4 日(不可率 29%)、要請件数 214 件(未出動数 79 件) 、出動件数 135 件、搬送件数 107 件で応需率 63% であった。出動の内訳は現場出動 81 件、病院間搬送 26 件、出動後キャンセル 28 件であった。また、疾 患別搬送では、外傷 56 人(50%) 、内科的疾患 44 人(39%)が大半を占めた。 【傷病者受入状況】 傷病者の受け入れ状況においては、基地病院へ搬送する U ターンは 41 人(37%) 、他施設搬送 J ター ンは 71 人(63%)であった。また、病院間搬送においては U ターンが 65%を占めるのに対して、現場 出動では J ターンが 72%を占めていた。 【考 察】 新潟県ドクターヘリ事業における実績データで、離陸から現場着陸まで 23 分間と全国的にも長く飛行 しており、該当する地域、即ち新潟県が非常に大きいことが分かる。新潟県は大きく 3 つに分けられ(上 越・中越・下越) 、それぞれに救命救急センターが設置されている。また、救命救急センター以外にも中 核となる総合病院がいくつかあり、それらが地域の救急医療を担っている。ヘリ搬送傷病者の受け入れ もこれらの積極的な受入があるため J ターン率が高いと考えられる。また、救命救急センターを含む各 施設は、新潟大学の関連施設であることが多く、救急科担当医との「顔が見える関係」が構築されてい ることも大きく寄与していると思われる。地域別の受け入れをさらに検討して報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 189 一般演題 21 /運航システム O 21- 2 群馬県において救急現場 9 割、J-turn6 割が意味すること ○ 町田 浩志 1、中野 実 1、高橋 栄治 1、中村 光伸 1、宮崎 大 1、 鈴木 裕之 1、藤塚 健次 1、雨宮 優 1、高寺由美子 2、小池 伸享 2、 萩原ひろみ 2、城田 智之 2、滝沢 悟 2 1 2 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科、 前橋赤十字病院 高度救命救急センター 救急外来 【目 的】 約 5 年間にわたる活動実績から、群馬県ドクターヘリの現状を検討した。 【方 法】 運航会社、基地病院の出動記録から年度毎の実績を集計した。2013 年度は 4 ~ 7 月の 4 ヶ月の実績を 用いた。尚、初年度の 2008 年度は 42 日のみの運航期間のため除外した。抽出内容は要請数、出動数、 出動種別、J-turn 率とし、年度毎の比較検討を行った。 【結果 1】 1 日平均要請数は 2009 年度 1.08 件、2010 年度 1.85 件、2011 年度 2.49 件、2012 年度 2.75 件、2013 年 度 3.15 件、1 日平均出動数は 2009 年度 0.88 件、2010 年度 1.43 件、2011 年度 1.85 件、2012 年度 2.11 件、 2013 年度 2.35 件で、要請数、出動数ともに約 3 倍の増加を認めた。 【結果 2】 救急現場への要請率は、2009 年度 76%、2010 年度 83%、2011 年度 83%、2012 年度 83%、2013 年度 87% と年々増加していた。 【結果 3】 J-turn 率は 2009 年度 41%、2010 年度 50%、2011 年度 60%、2012 年度 60%、2013 年度 63%と年々増 加していた。 【考 察】 救急現場の要請率が増加しているが、実際には施設間搬送の要請数は毎年度ほぼ横ばいであるため、 全要請数の増加が救急現場の要請率増加の理由と考えられる。さらに群馬県全域をドクターヘリが 20 分 以内にカバーするため、遠隔地で発生した傷病者でもドクターヘリの早期要請で救急科医による医療介 入時間の大幅な短縮を図ることができる。このことを消防本部が認知してきたことが、その割合が増加 する一因となったと考えられる。また運航開始当初は「ドクターヘリ対応症例」という事だけで受け入 れ困難とされる事があったが、ドクターヘリスタッフが直接搬送先病院スタッフに申し送ることで、『初 療によって安定した傷病者はできる限り地元医療圏に還元する』という基本姿勢が各病院に浸透し、 J-turn 率の増加の一因と考えられる。 【結 語】 群馬県ドクターヘリは、現場で初療と搬送トリアージを行うことで、群馬県の救急医療機関としての 役割を十分に担っている。 190 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 21 /運航システム O21- 3 J ターン搬送における申し送り内容の問題点 ○ 小田部美子、田中 愛美、植地 静香、北山 幸子、相馬 裕美子、古田 理恵、 村田 陽子、皆川 千草、山口 剛充、高橋 規子、佐藤 和彦 国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター 茨城ドクターヘリは平成 22 年度 7 月 1 により運航開始し 4 年目を迎えた。当基地病院(以下当院とす る)は医師 2 名・看護師 1 名がドクターヘリに搭乗している。J ターン(現場から当院以外の医療施設 への搬送)の方法として、ドクターヘリ搬送・ドクターカー搬送・救急車搬送がある。ドクターカー搬 送の場合、ランデブーポイント(以下 RP とする)から病院までは医師 1 名が同乗し、もう 1 名の医師 および看護師は次事案に備えるため RP で待機となる。当院が担当した搬送件数のうち平成 22 年度の J ターン件数は 12 件(15%)で、平成 24 年度は 136 件(38%)平成 25 年度 7 月 31 日現在までに 58 件 (29%)までに増加した。それに伴い受け入れ病院の J ターンに対する理解も得られるようになり、J ターン搬送時の受け入れもスムーズになってきた。 しかし、患者からの情報が十分にとれない、現場活動時間の短縮により情報収集や診療録記載時間の 不足、決められたプロトコールが整理されていない、J ターン先病院との意見交換が十分でないなどの 現状がある。その結果、診療録の記載が不十分のまま口頭での申し送りになってしまう、家族情報や所 持品、医療資器材の返却方法に関する混乱などの問題点があった。 そこで、現状の申し送り内容に対する満足度や充実度、受け入れ側としてどのような情報が必要なの かをアンケートを実施することで現状を把握し、結果を分析、考察したので報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 191 一般演題 21 /運航システム O 21- 4 ドクターヘリ運用におけるキーワード方式導入の効果について ○ 増田 幸子 1、中道 親昭 1、窪田 圭史 1、原田 直樹 1、白水 春香 1、 権 志成 1、西元 裕二 1、四元 真司 1、日宇 宏之 1、香村 安健 1、 山田 成美 1、高山 隼人 1、山住 和之 2、藤原 紳佑 2 1 2 国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター、 国立病院機構嬉野医療センター 救命救急センター 【目 的】 ドクターヘリの要請方式に関して従来の要請基準に加えキーワード方式(以下 KW 方式)を追加した 後の変化を検討する。また、キーワード内容について検討する。 【対 象】 2006 年 12 月~ 2013 年 3 月でのドクターヘリ要請件数 4052 件、出動件数 3583 件。KW 方式導入月 (2011 年 7 月)以降で要請内容について調査可能であった 1043 件(2011 年度 500 件、2012 年度 543 件)。 【結 果】 ドクターヘリ要請件数は 2006 年度から年度毎に 112 → 435 → 494 → 622 → 676 → 881 → 832 件と増加 傾向であった。KW 方式導入前後では全体の月平均要請件数は 47.4 件から 72.9 件と増加傾向であった (p=0.07)。病院間搬送を除いた覚知~要請時間は全体では KW 方式導入前:平均 11.7±10.3 分、KW 方 式導入後:11.1±9.2 分と有意差はないものの、消防本部別では 14 の消防本部のうち 2 消防本部で有意に 短縮していた。キーワードの内容としては従来の要請基準(A:生命の危険がある意識、呼吸、循環の 異常、特殊救急)に加え、B:指令課または救急隊出動途中 C:救急隊接触後についてそれぞれキーワー ドを挙げて要請する方式を導入した。要請内容の年度別推移は 2011 → 2012 年度で A 177/500(35.4%) → 147/543(27%) 、B:173/500(34.6%) → 228/543(42%) 、C:128/500(25.6%) → 154/543(28.4%) と B 指令課または救急隊出動途中のキーワード使用が増加している傾向がみられた。使用頻度が高い キーワードとして特殊救急(重症熱傷等)の他に転落の高さや地面の性状など具体的状況を記したもの が挙げられた。 【結 語】 従来の要請基準に加え KW 方式を追加する事で要請件数の増加、覚知~要請時間の短縮を来しうる可 能性が示唆された。キーワード内容については要請内容について振り返り定期的に改訂を検討する必要 がある。 192 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 21 /運航システム O21- 5 鹿児島県ドクターヘリキーワード方式の改善に向けた取り組み ○ 吉原 秀明 1、稲田 敏 1、勝江 達治 1、佐藤 満仁 1、堀田 和子 1、 平川 愛 1、下野 謙慎 1、坂元 千鶴 1、籾 博晃 2 1 鹿児島市立病院 救命救急センター、2 鹿児島市立病院 内科 【背 景】 鹿児島県ではドクターヘリ(DH)要請にキーワード方式を導入し迅速化を図ってきた。しかし、覚知 から DH 要請までの時間は平成 23 年度の 8 分から平成 24 年度の 9 分へと延長した。 【目 的】 キーワード方式の活用状況と活用率に影響を与える因子を調査すること。 【方 法】 1.平成 24 年度の鹿児島県 DH の現場出動のうち特殊事案を除外した 364 件を対象とした。覚知内容 のキーワード含有率、キーワード含有事例における活用率、キーワードによる時間短縮効果について調 査した。2.通信指令員を対象にアンケート調査を施行した。キーワードを DH 要請に活用しているか、 DH 要請をどのように決定しているかを調査した。 【結 果】 1.対象 364 件中、覚知内容には 260 件(71.2%)でキーワードを含有していた。全 364 例中現着前要 請は 206 例(56.6%)であり、覚知から DH 要請までは 8 分 55 秒であった。覚知内容にキーワードを含 有していた 260 例では 154 例(59.2%)で現着前要請されており、覚知から DH 要請までは 8 分 27 秒で あった。このうち、キーワードで DH 要請した 154 例では覚知から要請までは 4 分 43 秒であったのに対 し、活用しなかった 106 例では 14 分 30 秒であった。2.消防通信指令員へのアンケート調査では、覚知 内容にキーワードが存在しただけでは DH 要請に至らない司令員は 146 名中 102 名(69.8%)存在した。 背景因子として DH 要請までの過程で多くは同時勤務者と協議 32.5%、上司の判断 24.3%、出動救急隊員 との協議 23.7% を経て要請しており、キーワードから自分単独で決定する司令員は 11.8% と限定的であ ることが挙げられた。 【考 察】 鹿児島県におけるキーワード方式をより良いものにするのに、覚知内容にキーワードが含まれている 場合の活用率をさらに上げることが重要である。そのために、今後は通信指令員への教育・啓発に取り 組む必要がある。 【結 論】 鹿児島県 DH システムの迅速化には通信指令員によるキーワード活用率を上げなければならない。 第 20 回日本航空医療学会総会 193 一般演題 21 /運航システム O 21- 6 キーワード方式要請基準導入前後での救急現場出動に関する検討 ○ 福井 英人、岩永 航、屋宜 亮兵、北原 佑介、高田 忠明、新里 盛朗、 那須 道高、葵 佳宏、米盛 輝武、伊藤 貴彦、八木 正晴 浦添総合病院 救命救急センター 【目 的】 沖縄県では 2008 年 12 月より社会医療法人仁愛会浦添総合病院を基地病院として沖縄県ドクターヘリ の運行が開始された。沖縄県ドクターヘリでは、病院間搬送に比べ現場救急搬送が極端に少ないため、 2011 年 2 月より、救急現場要請を増やすためにキーワード方式要請基準(以下キーワード)を導入し、 各消防に対しても改めて啓発活動を開始した。キーワードの導入前後で、救急現場出動に関する症例の 比較検討を行い検討する。 【方 法】 2008 年 12 月より 2013 年 3 月までの 4 年 4 ヶ月間の要請症例 1671 件をキーワード導入前後でそれぞ れ 2 年 2 ヶ月ずつに分けて比較し検討した。 【結 果】 要請症例 1671 件の内訳は救急現場要請 352 件、病院間搬送要請 1319 件であった。現場要請件数は、 導入前 77 件から導入後 274 件と約 3.5 倍に増加していた。また、全要請件数に占める救急現場要請の割 合は、導入前 11.6% から導入後 27.6% に増加していた。疾患別では心疾患、呼吸器疾患、溺水、意識障 害、内因性心停止症例が特に増加しており、なかでも内因性心停止症例はキャンセル率も増加していた。 【考 察】 現場要請件数を増やすために、キーワードの導入は有用であったと考える。今後効率運用のためには、 特に心停止症例に関するキーワードの見直しが必要と考える。 194 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 22 /運航管理 O22- 1 消防の広域化とデジタル無線化に伴うドクターヘリ運用への影響 ○ 三木 靖雄 1、寺島 嗣明 1、岩倉 賢也 1、青木 瑠里 2、熊谷 常康 1、鉄 慎一郎 1、 梶田 裕加 1、野口 裕起 1、竹内 昭憲 1、井上 保介 2、中川 隆 1 1 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科、2 愛知医科大学 地域救急医療学寄附講座 消防の広域化に伴う指令センターの統合と消防無線のデジタル化により、ドクターヘリの運用に支障 をきたした事例から今後のドクターヘリ運用について検討した。事例は消防指令センター統合が 25 年度 に始まり、それとともに消防無線のデジタル化も行われた地域での事案である。患者は仕事中に突然の 意識消失と呼びかけ反応ない状況でバイスタンダーによる胸骨圧迫が行われ、救急隊現着時には心拍再 開がしていた症例である。消防覚知と同時にドクターヘリが要請され、施設内の駐車場でのランデブー であった。ドクターヘリ要請は指令センターから行われ、ドクターヘリとの交信はアナログ無線の県内 波にて行われた。ランデブーポイントへの着陸については現場の支援隊との無線交信を行うはずであっ たが、指令センターより指示された場所は車両があり、着陸変更を行う必要があるも支援隊との交信が 出来ない状況であった。そのためドクターヘリの機長は上空より他の駐車場に着陸が可能と判断し、着 陸をしようとしたときに支援隊との交信が可能となった。支援隊との交信が不可能であった原因はアナ ログ無線の切り替えが遅かったためであった。この事例は基地病院から現場上空までがドクターヘリで 3 分程度の場所であり、支援隊はアナログへの切り替えに混乱したと思われる。指令センターでは出動 車両の指示を出すが、現場活動は救急隊・支援隊とドクターヘリにより行われており、指令センターが 入らない状況で行われていた。指令センターの統合により出動消防本部はドクターヘリと現場活動隊と の無線も入らないために現場活動が見えない状況が生じた。このように指令センター化とデジタル化に よりドクターヘリとの情報共有ができない状況が生じた。今後は消防機関ごとにデジタル化が行われる ためドクターヘリのデジタル化をいつ行うか、また機体の整備やその費用負担についてはどのようにす るかは早急に検討しなければならない。 第 20 回日本航空医療学会総会 195 一般演題 22 /運航管理 O 22- 2 医師派遣現場からのスマートフォン動画伝送を用いた情報通信効果 ○ 本村 友一 1、安松比呂志 1、平林 篤志 1、亀山 大介 1、飯田 浩章 1、 益子 一樹 1、齋藤 伸行 1、林田 和之 1、八木 貴典 1、原 義明 1、 松本 尚 1、益子 邦洋 1、豊永 康裕 2 1 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター、2 NTT ドコモ(株) 【はじめに】 医師派遣現場からの情報提供は、病院での受け入れ準備上非常に重要であり、手術等の根治治療まで の時間、治療成績および転機に影響を及ぼしうる。当センターでは(株)NTT ドコモと協同し、医師派 遣現場からのスマートフォンを用いた動画伝送システムを開発している。汎用性の高いデバイスを用い た簡便で現場活動に負担をかけないシステムを目指して改良を重ねている。 【方 法】 2013 年 6 月 14 日~ 7 月 6 日 23 日間の当院ドクターヘリ活動において、実証実験を行った。ミッショ ン毎に送受信者が「接続の可否」、「動画と音声の質の点数化」 、 「不通の原因検討」を行い、 「接続率」お よび「U ターン症例での情報交信の早まり効果」について検討した。 【結 果】 期間中の対象 74 例で、現場活動内容の把握が可能な症例は 69 例(93%)であった。U ターン 63 例の 平均では、要請から基地着陸までに 36 分要しており、従来では要請から 31 分後に U ターン中の機上か らの無線通信で患者情報交信を行っていた。本システムでは、要請から 16 分後(従来より 15 分早い) に、動画・音声を伴った情報通信が可能となった。 【考 察】 本システムは基地からの通信起動が可能なため、現場医療チームに負担をかけない。実証実験では高 い有効通信率が得られ、輸血や手術等の準備のために必要な情報交信が可能であった。今後は、院内で の根治術までの時間短縮効果やこれに伴う救命率の変化の検討も行うべきであろう。また、本システム は、多数傷病者事案やドクターヘリの重複要請対応等で、医療チームやドクターヘリという医療資源を 有効に活用する上でも極めて有用である。さらに、自動録画された動画を使用し現場活動の検証や教育 への活用が可能である。今後も更に医師派遣現場で有用なシステムへの改良を目指す。 196 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 22 /運航管理 O 22- 3 医療福祉用無線アンケート結果に見る混信の現状と提言 ○ 緒方 龍一 1、古澤 正人 2、横田 英己 3、多畑 雅弘 2、中谷斉人朗 2、 神田 正和 4、丹羽 政晴 1 1 3 中日本航空株式会社 航空事業本部、2 セントラルヘリコプターサービス株式会社、 朝日航洋株式会社、4 学校法人ヒラタ学園 【経 緯】 医療福祉用無線(以下医療無線という)混信による不具合は、昨年の日本航空医療学会総会運航関係 従事者委員会において問題提起されたことから、当委員会は全国 43 の基地病院を対象としてアンケート を実施した。この実施結果から医療無線の現状と課題について報告する。 【アンケート概要と結果】 平成 25 年 1 月末日において、医療無線の設備がある病院は 38 病院であり、医療無線の設置を計画中 など医療無線設備が無いと回答したのは 5 病院であった。尚、隣接する県やエリアの医療無線の混信が あると答えた病院は 25 病院となり、そのうち混信により不具合が発生した病院は 10 病院であった。不 具合の内容は、情報入手が困難、医療行為に支障が発生した事例、患者情報の入手や送信が混信により 阻害されたものである。混信あるも不具合なしと回答した病院は 15 病院であった。 【考 察】 医療無線を利用している 38 病院のうち、約 66%に相当する 25 病院において、何らかの混信があると の実態が明らかになった。隣接地域における混信、通信方式に由来する混信、また、現時点で混信が発 生していない基地病院においても、今後のドクターヘリの地理的広がりや活動の活発化に伴い、潜在的 混信に対する危惧も抱かざるを得ない。 【提 言】 今後予想される災害対応や DMAT 出動等ドクターヘリの広域連携や運航がより安全かつ円滑に実施 されるために、医療無線の利用と活用法については、関係機関への働きかけを含め、次の通り提言する。 アナログ医療無線を有効活用するために現在の 2 波単信方式を 1 波単信方式にする。アナログ医療無線 を増波する。尚、医療無線のデジタル化を見据えて適切な仕様を研究する。 第 20 回日本航空医療学会総会 197 一般演題 22 /運航管理 O 22- 4 搭載性向上型ヘリ運航管理システム研究開発(機上システム開発) ○ 船坂 直哉 1、玉中 宏明 1、柏崎 隆 1、遅澤 悟 1、奥野 善則 2、小林 啓二 2 1 ナビコムアビエーション株式会社、2 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 当社では JAXA からの委託契約により搭載性向上型ドクターヘリ用 D-NET 機上システムを開発した。 D-NET システムは JAXA にて研究開発が進められている航空機情報共有システムで、機上システムと 地上局で構成される。D-NET システムはイリジウム衛星通信システムを使用し、航空機の位置情報のほ かにさまざまな情報の双方向通信を可能にしている。 D-NET システムの主な機能として、地上局ではドクターヘリの位置情報がリアルタイムに地図上に位 置を表示されるため現在地を把握できる。また、地上局ではドクターヘリの D-NET 機上システムから 任務開始、終了などさまざまな D-NET ステータスを送信できるため、活動状況を管理できる。機上シ ステムは衛星電話装置が搭載され GPS の位置情報を地上へリアルタイム送信でき、イリジウム衛星電話 とノートパソコンをシリアルケーブルで接続することで、バイタルサインデータや図形データなどさま ざまな情報をやりとりできる。 前回は航空機搭載用 PC を搭載し、タッチパネルディスプレイの採用や、アビオニクス等と接続する 高機能な D-NET 機上システムの開発を行ったが、今回の搭載性向上型システムでは航空機搭載用 PC を 使用せずより搭載を容易にできる D-NET 機上システムの開発を行った。 搭載性向上型機上システムはイリジウム衛星電話 Latitude 社製 S200 およびヘッドセットによる機内 音声通話を可能にするテレフォンアダプタ PTA12 で構成される。イリジウム衛星電話 S200 には GPS が 内蔵されており S200 単体で動態管理が可能である。また、テレフォンアダプタ PTA12 の機能を改修し D-NET ステータスを簡単な操作で地上局へ送信可能にした。また、従来の D-NET 高機能型アプリケー ションをノートパソコンにインストールし、シリアルケーブルでイリジウム衛星電話 S200 と接続できる ようにした。 198 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 22 /運航管理 O22- 5 搭載性向上型ヘリ運航管理システム研究開発 ○ 小林 啓二 1、奥野 善則 1、玉中 宏明 2、柏崎 隆 2、遅澤 悟 2、船坂 直哉 2 1 2 宇宙航空研究開発機構 航空本部 防災・小型機運航技術セクション、 ナビコムアビエーション株式会社 JAXA では、集結した多数のヘリコプタと地上の災害対策本部等の間で情報共有を行い、リアルタイ ムで変化する災害の発生状況や機体の運航状況に応じて、各機体への任務割当や飛行の指示などの運航 管理を行うことにより、救援活動の効率性と安全性を向上するシステム「災害救援航空機情報共有ネッ トワーク:略称 D-NET」の開発を目指している。D-NET に準拠することにより、どの機関・メーカが 開発したシステムでも情報の共有化が可能となる。 JAXA は福島県立医科大学との共同研究により、これまで開発してきた D-NET システムを、より小 型・軽量化することを目指している。本稿では D-NET の全体計画及び新システムの概要について報告 する。従来システムと比較して試作開発中のシステムでは、筐体サイズを約 50%、重量を約 30% 削減可 能である。 搭載した機上機器の説明は別稿「搭載性向上型ヘリ運航管理システム研究開発(機上システム開発) 」 で報告する。 第 20 回日本航空医療学会総会 199 一般演題 22 /運航管理 O 22- 6 航空気象情報とドクターヘリ・ドクターカー位置情報一元管理 ○ 高森 美枝、手柴 充博 株式会社ウェザーニューズ 航空気象コンテンツサービス 2013 年 3 月、 日 本 で 初 め て ド ク タ ー ヘ リ 機 内 持 ち 込 み 型 の「 機 体( 位 置 ) 動 態 管 理 シ ス テ ム (FOSTER-copilot) 」運用が始まった。航空機内で電波を発する電子機器を持ち込んで使用するにあたり、 その安全性を確認するには、機種毎、一つ一つの航法計器に対する電磁干渉試験を行う必要がある。そ れ故、これまでヘリコプターでの動態管理システムの普及が遅れていたが、昨年から今年にかけて、 EC135、BK117、MD900/902 等、ドクターヘリに使用される機種での電磁干渉試験を実施し、日々のド クターヘリ運航においてリアルタイムな飛行位置を病院、消防にて把握できるようになった。 機体位置動態管理システムを機体に修理改造して取り付けるのではなく、 「持ち込み型」とするメリッ トとしては、・機体への取り付けがない=修理改造費がかからない為初期コストがかからない。ランニン グコストも非常に安く抑えられる。・軽量 / 小型である=医療機器を多く搭載するドクターヘリ内でも邪 魔にならない・機体点検で別の機体を使用する際も簡単に取り付け(持ち込み)ができる等があげられ る。 ドクターヘリは 41 機まで展開が広がったが、その展開スピードに合わせて動態管理を配備するには、 低コスト、軽量 / 小型、設置・入替えの携帯性 / 簡便性からも持ち込み型動態管理システムの普及が期 待されている。 更に、ドクターヘリ同士(隣県のドクターヘリ出動状況)が把握できるだけでなく、 ・ラピッドカー / 救急車等、空 - 陸連携して動く車両・ドクターヘリ運航においては天候が大きく左右する為、雨雲レー ダー等の航空気象情報・病院やランデブーポイント、消防エリアデータ・場外離着陸場、管制圏等航空 参照図、送電線といった運航に必要な情報 これらの情報を病院(CS/ 救急外来)消防において常にリ アルタイムに把握する事は平常時、重複要請の際の速やかな運航判断に繋がり、また、大規模災害発生 時にも勿論有効と考える。 200 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 22 /運航管理 O22- 7 GIS を用いたドクターヘリとドクターカー運用に関する検討 ○ 遠藤 裕、林 悠介、山口 征吾、本多 忠幸、呉 聖人 新潟大学医歯学総合病院 高度救命救急センター 【背景と目的】 新潟県ドクターヘリは昨年 10 月 30 日から新潟大学医歯学総合病院を基地病院として運航を開始した。 運航開始から 8 月 7 日現在まで、基地病院が所属する新潟市(人口 81 万人)消防本部の出動要請は僅か 1 件に留まり、昨年度の日本航空医療学会の全国集計では、出動要請からランデブーポイント着陸まで の平均時間は 29 分で、全国最長時間となっている。この理由として、新潟市内でドクターカーが効果的 に運用されていることが大きな要因として考えられる。今回、地理情報システム(GIS)により、ドク ターカー出動場所を解析して、ドクターヘリの有効活用について解析を試みた。 【方 法】 新潟市個人情報審議会の承認を得て、過去 2 年間の救急出動記録における救急ステーションを運用す る救急隊の医師搬送に該当する出動場所について、個人を特定出来ないように町丁レベルまでアドレス マッチングを行い、GIS(ESRI ジャパン、ArcGIS10.2)上に表示した。同時に、Kriging 法による空間 内挿を用いて、出動要請から現着まで 15 分以内、15 ~ 20 分、20 ~ 30 分、30 分以上の地域を GIS 上で 特定した。 【結 果】 ドクターカー出動件数は過去 2 年間で 3402 件であった。要請から現着まで時間は 1 分~ 52 分、平均 値 15.5 分(標準偏差 5.2 分)、中央値 15 分で、半数は 15 分ルールの適応外であった。ドクターヘリ運航 時間に限って検討すると、現着まで 15 分以上の出動は 517 件あり、その GIS 上の分布は距離だけではな く交通事情の要因も大きいこと、重複要請等の理由により近隣地域への出動でも時間を要する場合があ ることが明らかとなった。 【結 論】 GIS により、ドクターヘリの効果的な地域の可視化が可能となり、消防本部の説明等において有用と 考えられた。 第 20 回日本航空医療学会総会 201 一般演題 23 /ヘリポート・ランデブーポイント O 23- 1 ヘリポート導入による救急医療体制の現況 ○ 石川 敏仁、佐藤 直樹、遠藤 勝洋、遠藤 雄司、太田 守 枡記念病院 脳神経外科 【目 的】 当院では福島県救急医療機関ヘリポート設備事業により 12 年 11 月にヘリポートの運行を開始した。 今回ドクターヘリにより当院に救急搬送された症例について検討した。 【対 象】 12 年 11 月から 13 年 7 月まで当院に搬送要請があった 14 例中当科で加療した症例は 11 例で、脳梗塞 4 例、脳内出血 5 例、頭部外傷 2 例であった。搬送元地域は、最短距離で 6km、最長距離で 70km であ り、最長距離地域において当院への搬送要請から病院到着まで 30 分以内で搬送されていた。 【結 果】 脳梗塞の 4 症例は後大脳動脈塞栓症の 1 症例に対し t-PA 静注療法を、内頚動脈閉塞症、椎骨動脈閉塞 症及び脳底動脈閉塞症の 3 症例に対して経皮的血管形成術を施行。脳内出血の 5 症例では、皮質下出血、 混合型出血の 2 症例に開頭血腫除去術を、被殻出血、視床出血脳室内穿破の 2 症例に内視鏡下血腫除去 術、また脳幹部出血による水頭症例の 1 症例にはドレナージ術を施行。頭部外傷で搬送された 2 症例の うち 1 症例の急性硬膜外血腫の症例は当院到着から 15 分で手術を開始することができた。ヘリポート導 入以前に診療圏域外である福島県中、県南地区から当病院に救急車で搬送された患者においても検討を 加えたが発症からの経過時間が重要とされる脳梗塞患者では当院搬送直後の CT でいずれの症例におい て、既に脳梗塞巣を認め、かつ diffusion-perfusion ミスマッチは認めず、t-PA 療法の適応とされる発症 後 4.5 時間以内の急性期治療を行えた症例はなかった。結語:ドクターヘリによる救急搬送は搬送時間が 短く、脳卒中、特に発症から治療までの時間が予後を左右する脳梗塞治療において非常に有用であると 考えられた。当院ではドクターヘリ要請時の院内の搬送時治療体制マニュアルを作成し運用しているが、 ドクターヘリによる救急搬送の際フライトドクターから現地の患者情報が適確に得られる為、到着時ま でに院内の準備体制が更に進んで整えられ、搬送直後より迅速な治療が可能であった。 202 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 23 /ヘリポート・ランデブーポイント O23- 2 病院ヘリポートがないためにかかる沖縄県ドクターヘリの引継時間 ○ 葵 佳宏、米盛 輝武、伊藤 貴彦、那須 道高、福井 英人、新里 盛朗、 高田 忠明、北原 佑介、屋宜 亮兵、岩永 航 浦添総合病院 救命救急センター 2008 年の運航開始以来、要請は年々増加傾向にあり、それに伴い重複キャンセルも増えてきている。 一方、運航圏内において病院ヘリポートは未だ南部徳州会病院の一か所のみである。運航病院の当院も 含め、各地区の拠点病院には近隣ランデブーポイント(RP)から救急車に載せ替えて病院まで同乗を 行っている。需要が増える中でドクターヘリの有効運用に障害になりうる。病院ヘリポートがないこと による運航システムへの影響を調査した。 【対 象】 平成 24 年度の総要請 511 件のうち、重複・軽症・死後変化によるキャンセル、現場死亡確認による不 搬送、天候不良による未出動、救急車同乗による陸路搬送等を除いた 391 件。病院近隣ヘリポートから の救急隊単独搬送も除外した。フライトスタッフが病院まで同行する時間を含めた着陸~離陸までに要 した時間を調査した。 【結 果】 搬送先内訳は北部 60 件、中部 49 件、南部 104 件、浦添総合病院 128 件、南部徳洲会病院 50 件であっ た。北部は平均 RP 滞在時間が 28.3 分であった。中部は搬送先病院医師の RP 引継があった 32 件では滞 在時間が 9.7 分であったが、迎えがなかった 17 件では 35.2 分を要した。南部は迎えあり(72 件)9.7 分、 迎えなし(32 件)33.1 分であった。浦添総合病院への搬送はほぼ全例で医師の迎えがあり引継時間が 10.2 分、病院ヘリポートがある南部徳洲会病院では引継に 14.4 分要した。 (p< 0.01) 【考 察】 近隣ヘリポートまで医師の迎えがある症例は全地区で 10 分程度で引継が可能であり、病院併設ヘリ ポートよりも短時間で済んだ。しかし、曜日・時間帯によっては迎えがこれないこともあり、特に医師 不足が深刻な北部ではほぼ期待できない。この場合はどの地区でもフライトスタッフが 30 ~ 35 分ヘリ を離れる空白の時間が生じてしまう。受入先病院の医師業務の軽減、そして全国でも有数の広範囲をカ バーする沖縄県ドクターヘリの有効活用のためにも各拠点病院でのヘリポート併設が急務である。 第 20 回日本航空医療学会総会 203 一般演題 23 /ヘリポート・ランデブーポイント O 23- 3 当基地病院における格納庫の有用性 ○ 酒庭 康孝 1、高本 勝博 1、有馬 史人 1、原 宏明 1、平松玄太郎 1、松枝 秀世 1、 橋本 昌幸 1、安藤 陽児 1、大貫 学 1、輿水 健治 1、福島 憲治 2、杉山 聡 2 1 2 埼玉医科大学総合医療センター 救急科(ER) 、 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 当院は 2007 年 10 月より埼玉ドクターヘリの運用を開始した。運航当初より病院敷地に隣接する屋外 型のヘリポートを使用していたが、本年 4 月になり、ヘリポート敷地内に専用格納庫を建設した。 ドクターヘリ運用において、専用格納庫は機体の耐久年数をのばし、また、搭載している医療機材に 対しても、気温変化などによる劣化を軽減できることが期待される。反面、天候の変化の大きい日には、 機体が格納庫内に収納された状態からフライト要請を受けることも少なくなく、離陸時間の冗長が懸念 される。今回、当基地病院における格納庫の、ドクターヘリ運航への影響、有用性について考察した。 格納庫運用開始後の 2013 年 4 月から 7 月 16 日までの、当院ドクターヘリの出動件数は合計 102 件。 転院搬送、重複要請をのぞいた 92 件について、通常出動と、格納庫待機からの出動を比較した。通常出 動(エプロン待機)からの出動は 71 件あり、要請から離陸までの所要時間は平均 5 分 47 秒であった。 対して、格納庫待機からの出動は 21 件あり、所要時間は平均 6 分 51 秒かかっていた。 格納庫待機からの出動は通常出動と比較し、離陸までに約 1 分の延長を認める。実際の運航において は格納庫からの出庫がフライトスタッフの搭乗を遅延させた案件はほとんどない。しかし、当院の 1 フ ライト当たりの全活動所用時間は 20 分程度であることを考えると、この影響は決して小さくはない。今 後、運航スタッフ間で改善の方法について検討する必要があると考える。 また、格納庫待機が機体、搭載機材、さらにフライトスタッフに与える影響については、実際の待機 中の機内温度を比較し検討した。プレホスピタルでの活動については、天候、特に気温の影響は決して 少なくないと考える。 204 第 20 回日本航空医療学会総会 一般演題 23 /ヘリポート・ランデブーポイント O23- 4 ランデブーポイントの使用状況・現状に関する検討 ○ 奥村 澄枝、住友 正幸、三村 誠二、大村 健史、川下陽一郎、神村盛一郎 徳島県立中央病院 ドクターヘリチーム 当ドクターヘリの運航開始は平成 24 年 10 月であり、平成 25 年 7 月末現在の運航圏内におけるランデ ブーポイントの設定数は 230 カ所である。傷病者が存在する場所から、より近い場所にランデブーポイ ントを設定することが、より早い診療開始につながるはずである。しかし、ランデブーポイント設定数 が少ないため、消防から指定されたランデブーポイントが、その傷病者にとって最もよいランデブーポ イントとは言い難い事例が発生していると思われる。当県におけるランデブーポイントの使用状況等に ついて報告する。 【目 的】 ランデブーポイントの使用状況・現状を明らかにする。 【検討項目】 平成 24 年 10 月から平成 25 年 7 月までに出動した 243 件について、以下の項目について検討する。 1.既存のランデブーポイント以外に着陸した件数 2.既存のランデブーポイントに着陸したもののうち、さらに近いランデブーポイントが存在したものの 割合 3.救急隊の現場出発からランデブーポイント到着までに 10 分以上要したものの割合 【結 果】 1.13 件 2.23.5% 3.27.4% 【考 察】 実際に着陸したランデブーポイントよりも、もっと近くに着陸可能なランデブーポイントが存在する のに、そこが指定されなかった理由としては、平日の学校グランドであること、散水の不要なランデブー ポイントをあえて選択したため、ドクターヘリでの診療に非常に協力的な 2 次病院が敷地内にヘリポー トを有しており、基地病院や消防があえてその病院へリポートを選択したため、などの理由があげられ た。学校のグランドをランデブーポイントとして使用することが特別なことではなく、日常の出来事と して受け入れられるような啓発活動が必要であることはもちろん、それ以外の場所もランデブーポイン トとして設定数を増やしていくため、県、基地病院、運航担当会社、消防が一丸となって取り組む必要 性が高いことを再認識させられた。 第 20 回日本航空医療学会総会 205 一般演題 23 /ヘリポート・ランデブーポイント O 23- 5 ドクターヘリの広域連携に伴うランデブーポイントの共有について ○ 岡澤 祐介 1、金田 浩治 1、山口 尚久 1、丹羽 政晴 2、西村 英喜 1 1 2 中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室 EMS 課、 中日本航空株式会社 航空管理センター 運航管理室運航管理課 【はじめに】 ドクターヘリの配備数が増加するにつれ、近隣のドクターヘリによる連携の枠組みが増えている。ま た、災害時において遠方に出動する場合もあり、運航を担当しているエリアを超えて出動することは決 して稀ではなくなっている。今回、 「北東北・中国地方」のシステム作りに携わった経験から、CS とし てランデブーポイントの共有について考察したので報告する。 【背 景】 2013 年 4 月 10 日から岩手、秋田、青森の北東北 3 県で広域連携運航が開始。2013 年 5 月から広島の ドクターヘリ事業が始まり、既にドクターヘリが導入されている山口、島根、岡山そして鳥取を含めた 中国 5 県で中国地方広域連携が開始された。前者では自県ドクターヘリが対応できない場合のバックアッ プ的な運航、後者では災害発生点からドクターヘリ拠点までの距離によってプライマリの要請先を消防 機関が選択出来る運航形態となっている。運航会社は北東北では 2 社、中国地方では 3 社が関わってい る。 【考 察】 まず、他県に進出するために行なった作業はランデブーポイントの設定作業である。それぞれの県で 既に運航は開始されており、既存のランデブーポイントの資料を扱う上で、運航会社が同一の場合、資 料のやり取りに問題はない。しかし、運航会社が違う場合には資料のフォーマットやデータの記述方法 など細かい相違点が多く存在する。また、著名な目標物を除いては、資料のみでランデブーポイントの 位置を確認するのに困難な場合がある。これらの理由により、準備作業には多くの手間と時間を要して いるのが現状である。 現在の情報の取り扱い範囲は基本的に自県で完結しており、他県との共有を目的としたものではない。 広域連携に加え災害時における遠方への出動が考えられる以上、現在運航会社それぞれで作成している 自県・自社単位での情報共有の方法を、全国・各社間で共有できるよう変える必要があると考えられる。 206 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 1 日本最南端のドクターヘリ ○ 波止 綾子、八木 正晴、米盛 輝武、伊藤 貴彦、那須 道高、福井 英人、 新里 盛朗、北原 佑介、高田 忠明、屋宜 亮兵、照屋 祐子、佐久間留美子、 千葉 実、仲村いずみ、日高 志州、花城 育美、西銘さやか、岸本 拓馬、 金城 文之、知念 貴子 沖縄県ドクターヘリ・浦添総合病院 救命救急センター 浦添総合病院は、普天間基地の最終進入路の真下にあるため、病院から 30km も北にある読谷村に基 地があります。また、沖縄の空を飛行する為には、米軍基地と那覇空港の管制を受けます。 元々、離島搬送業務が主体であり、運航開始当初は、全要請に対する現場要請は 1 割程度でした。平 成 23 年度に“キーワード要請方式”を導入したところ、平成 24 年度は、要請件数が 503 件に対して現 場要請が 151 件と現場要請が全体の 3 割に増加しました。また、沖縄県は平均飛行時間が最も長いドク ターヘリです。我々は、北は鹿児島県徳之島から、西は久米島までカバーしています。そのため重複要 請や、給油など長距離搬送に伴う問題が生じます。昨年までは、現場要請を増やすことと、離島搬送業 務も今まで通り行うことを目標にしていましたが、今年は、現場での医療活動を適切に、そして現場離 脱を早くすることを目標にしています。最大の問題点は“教育”でした。基地発進方式であるがために OJT が困難でしたが、平成 24 年度からドクターカーを導入したことで、病院前医療のトレーニングを 行えるようになりました。 今後もより消防との連携を強化しドクターヘリを活用してもらいたいと思います。 第 20 回日本航空医療学会総会 207 基地病院ポスター発表 P- 2 サイドローディング式ドクターヘリ AW109SP についての検討 ○ 吉原 秀明 1、稲田 敏 1、勝江 達治 1、佐藤 満仁 1、堀田 和子 1、 平川 愛 1、下野 謙慎 1、坂元 千鶴 1、籾 博晃 2、伊地知 寿 3 鹿児島市立病院 1 救命救急センター、2 呼吸器内科、3 米盛病院 救急科 ドクターヘリは 2013 年 6 月 1 日の時点で 35 都道府県 41 機が配備されている。ドクターヘリとしては 5 機種が存在する。鹿児島県で唯一導入されている AW109SP につきドクターヘリとしての活動状況を 報告する。鹿児島県は南北 600km あり、有人離島人口及び面積は全国 1 位であるため、ドクターヘリ運 航範囲は半径 210km と広範囲に及ぶ。そのため航続距離が長く高速飛行性能を有する AW109SP は大変 適している。AW109SP は他のドクターヘリと異なり、サイドローディング方式、ランディングギアな どの特徴を有する。サイドローディングやアンローディングは 2 時間の運航開始前実働訓練の中で提示 し、その後の実活動で不都合を感じたことはない。IABP 装着下の傷病者搬送の場合はローディングの 工夫をしている。ランディングギアであることで足元の障害がなく、フロアー高は低いので資機材搭載 は楽である。スマートな外観ではあるがキャビンスペースは確保されており、4 席までレイアウト可能 である。母子・周産期救急は件数 44 件/年と活発だが、それらの活動では産科・新生児科の医師を計 2 名同乗させている。AW109SP であることで他のドクターヘリ機種とどのような相違点が生じるのか提 示する。 208 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 3 熊本赤十字病院のドクターヘリの活動 ○ 桑原 謙、井 清司、奥本 克己、山家 純一、渡邉 秀寿、大塚 尚美、 原富 由香、岡野 雄一、大木 伸吾、北村 遼一、来間 裕一、田代 尊久 熊本赤十字病院 救命救急センター 熊本県では消防防災ヘリ(以下防ヘリ)とドクターヘリ(以下 Dr ヘリ)の 2 機の連携体制で、平成 24 年 1 月 16 日より、活動を開始した。今回は平成 24 年 4 月 1 日より平成 25 年 3 月 31 日までの 1 年間 の運行実績を報告する。全要請件数は 783 件、救急事案は 719 件で、出動したのは 644 件、この内、現 場救急は 373 件(防ヘリ 20、Dr ヘリ 353)、施設間転送 232 件( (防ヘリ 140、Dr ヘリ 92) 、出動後キャ ンセル 39 件、未出動 75 件であった。未出動の内訳の中では、重複要請が 15 件で少なく、防災ヘリが運 休している時期に発生していた。(上記の期間、Dr ヘリの運休は無かったが、防ヘリは整備点検に 48 日 と新機材装備のため 52 日間、計 100 日間、活動できなかった)現場救急の傷病者の搬送先では、基地病 院(U ターン)が 38%、国立病院機構熊本医療センターが 20%、済生会熊本病院が 16%、その他の病 院へ 10%(J ターン合計 46%)、現場近隣の病院(I ターン)が合計 16%であった。防ヘリと Dr ヘリの 2 機体制で役割分担し、要請が重複したときの相互補完、多数傷病者事例の場合の同時出動等が熊本県 の大きな特徴であり利点である。 第 20 回日本航空医療学会総会 209 基地病院ポスター発表 P- 4 長崎県ドクターヘリ紹介 ○ 岸川 貴司 1、山下 美香 1、中道 親昭 2、高山 隼人 2 1 2 国立病院機構長崎医療センター 看護部、 国立病院機構長崎医療センター 救命救急センター 長崎県ドクターヘリの実施主体は長崎県であり、当院に常駐しフライトドクター 6 名、フライトナー ス 10 名、専属パイロット 1 名、整備士 1 名、運航管理者 1 名で運航し、ヘリコプターはユーロコプター 社 EC-135P2 +を使用している。 運航範囲は長崎県および佐賀県西部で、消防や病院からの要請だけでなく、海上保安庁からの要請も ある。出動地域の割合は、本土と離島が 3:1 で、一番遠い対馬までの飛行時間は 1 時間を要する。海上 を飛ぶ洋上飛行となるため、エマージェンシーフロートと呼ばれる浮具を装着している。 平成 24 年の出動件数は 719 件であり、診療患者数は 612 名であった。外傷をはじめ虚血性心疾患、脳 血管疾患などの重症患者を搬送している。その中でも当院は、NICU、GCU、MFICU を有し、長崎県の 母子周産期医療を担っているため、切迫早産や、双胎間輸血症候群における母体管理、新生児仮死や先 天性心疾患患者など、母子周産期関連の患者の受け入れも多い。 離島、へき地医療を含む長崎県特有の地域医療の質の確保のため、ドクターヘリ搬送患者の 60% を長 崎県内外の 90 施設に患者の受け入れを依頼し、当院と連携し長崎県の救急医療を展開している。 210 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 5 安全運航の面からみた、宮崎県ドクターヘリ運航について ○ 白尾 英仁、金丸 勝弘、宗像 駿、山田 祐輔、安部 智大、長嶺 育弘、 長野 健彦、今井 光一、松岡 博史、落合 秀信 宮崎大学医学部附属病院 救命救急センター 【はじめに】 平成 24 年 4 月に宮崎県ドクターヘリ事業が開始され、平成 25 年 7 月現在までの要請件数は 630 件と 着実に増加してきた。幸い事故もなく運航出来ているが、安全に関して懸念される事例も数件経験され た。今回、ヘリ運航の安全を如何に担保するのか、宮崎県での取り組みについて紹介する。 【内 容】 ①安全訓練カードの導入:フライトスタッフを対象に、機長および整備士から定期的に安全訓練カード を用いた安全講習を導入した。 ②ヘリポート上の安全講習:ヘリポート内におけるスタッフの動線、患者移動方法、ローター停止の有 無等、様々な場面を想定し、細部にわたりルールを取り決めた。 ③ヘリポート進入の取り決め:当院では、陸上および屋上の 2 箇所にヘリポートを設置している。安全 講習受講済のスタッフのみ立ち入りを許可していている ④検案事例のフィードバックについて:毎日のデブリーフィングの中で発生した懸案事項について、ス タッフ内で共有できるよう記録用紙の見直しを行った。 【結 語】 安全なヘリ運航を今後も継続していくためには、各スタッフ内の安全に関する教育も重要だが、学会 等を通じて各施設の運航方法等の情報共有も必要と思われる。 第 20 回日本航空医療学会総会 211 基地病院ポスター発表 P- 6 ドクターヘリ基地病院─大分大学医学部附属病院の特徴─ ○ 石井 圭亮 大分大学医学部附属病院 救命救急センター 大分県の人口は約 120 万人である。医師・医療機関の地域偏在が顕著で、医療の地域格差が著明であ る。これを是正するため、地域医療再生計画において広域医療体制および遠隔医療体制の整備に取り組 んでいる。当院では、医師派遣システムの構築に精力を注ぎ、2008 年 2 月 27 日、大分県防災ヘリ『と よかぜ』のドクターヘリ的運用,同年 5 月 26 日には、地元消防の支援によるピックアップ方式での医師 派遣を開始した。2010 年 4 月のドクターカー導入(2011 年 10 月には、2 台目ドクターカー)に続き、 2012 年 10 月より基地病院としてドクターヘリの運航を開始した。大分の最大の特徴は、先行するドク ターカーにて培われてきた環境にドクターヘリが加わった点である。医師派遣要請は、会議通話システ ムを取り入れたホットラインに一本化しており、瞬時な医師派遣手段の選択が可能である。ドクターヘ リとドクターカーの緊密な相補関係を構築し、同時出動も実践している。また画像・位置情報伝送も日 常的に行っており、救急医療の更なる効率化に取り組んでいる。ドクターヘリ基地病院としての大分大 学医学部附属病院の創意工夫と特徴ある活動について報告する。 212 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 7 福岡県ドクターヘリ(Dr ヘリ)の実績と今後の展望 ○ 高松 学文 1、宇津 秀晃 1、橋本 芳明 2、郡山 博信 2、山下 典雄 1、坂本 照夫 1 1 久留米大学病院 高度救命救急センター、2 西日本空輸株式会社 【はじめに】 久留米大学では 2002 年 2 月に全国 5 番目の基地病院として Dr ヘリの運航を開始した。今回、これま での活動実績と今後の展望につき報告する。 【実 績】 2013 年 3 月までの総要請件数は 4031 件(現場出動 2476 件、病院間搬送 1027 件、キャンセル 528 件)、 診療患者総数は 3539 名であった。現場要請率は年々増加しており近年では 9 割弱で推移している。疾患 内訳では、現場要請において外傷が約 7 割と多くを占めているのが特徴であり、次いで中枢神経疾患、 心血管疾患が占めた。病院間搬送では心血管疾患、外傷、中枢神経疾患の順であった。 県間の協定により 2003 年 10 月からは佐賀県全域、2006 年 4 月からは大分県西部地域が運航圏に含ま れた。2006 年 12 月には長崎県 Dr ヘリが運航開始されたため、現在、佐賀県東部は当県 Dr ヘリ、西部 は長崎 Dr ヘリが主に出動している。 高速道路での交通事故に対しては、警察・消防・高速道路会社および基地病院・運航会社の合意のも とに本線上着陸マニュアルを作成し、2006 年 10 月より 3 車線区間で運用を開始し、2011 年 2 月からは 2 車線区間を含め運航範囲全域に運用を拡大した。これまで 2 度、高速道路本線上での救急医療活動を 行った。2010 年 11 月には新病棟屋上ヘリポートの運用を開始したが、運航センターとともに給油設備 および格納庫併設という本邦で唯一のヘリポートである。 2011 年の東日本大震災では DMAT として遠隔被災地で、2012 年の九州北部豪雨では Dr ヘリとして 局地被災地での災害医療活動を行った。 【今後の展望】 九州では本年度中に全県配備となる予定である。今後は更なる病院前救急医療体制充実ため、県境に とらわれず北部九州を一体とした相互応援体制の構築を目指している。 第 20 回日本航空医療学会総会 213 基地病院ポスター発表 P- 8 広島県ドクターヘリの特徴 ○ 大谷 直嗣 1、小川恵美子 2、山下 洋平 2、村上 毅 2、山田 裕紀 1、和田 美咲 1、 井上 隆治 1、松本 志保 1、原 茉依子 1、佐々 智宏 1、佐伯 辰彦 2、鈴木 慶 2、 多田 昌弘 2、竹崎 亨 2、楠 真二 2、板井 純治 1、山賀 聡之 1、田村 朋子 1、 太田 浩平 1、宇根 一暢 1、貞森 拓磨 1、大下慎一郎 1、岩崎 泰昌 1、廣橋 伸之 1、 山野上敬夫 2、谷川 攻一 1 1 広島大学病院 高度救命救急センター、2 県立広島病院 救命救急センター 広島県ドクターヘリは 2013 年 5 月 1 日より本格運航を開始した。特徴は、①発進基地方式、②複数医 療機関の協力体制、③消防防災ヘリとの連携、④隣県ドクターヘリとの広域連携である。 広島ヘリポート(広島市西区)という公共用ヘリポートに基地をもち、複数医療機関(現在は広島大 学病院・県立広島病院)の混成でフライト医療チームを構成し、一医療機関でなく県全体で支えるので あるという共通の理念のもとに活動している。 2005 年 8 月 1 日から県内に 2 機配備された消防防災ヘリを活用したドクターヘリ的事業(ピックアッ プ方式)の運用を行っており、ドクターヘリ開始後は、現場救急事案にはドクターヘリが対応し、施設 間搬送事案は主に消防防災ヘリが主に担当することとしている。これら救急ヘリの要請窓口はドクター ヘリ CS に一本化し、ドクターヘリ出動時の重複要請に対して、基地病院医師、要請消防本部、CS など の複数間同時通話とピックアップ方式の併用で対応している。 広域連携については中国地方 5 県知事および基地病院長での広域連携協定の締結がなされ、県境を越 えて現場に近いドクターヘリを要請できる仕組みを構築している。 214 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 9 消防防災ヘリと歩む高知県ドクターヘリ ○ 伊藤 敬介、喜多村泰輔、齋坂 雄一、田中 公章、大森 貴夫、石原 潤子、 徳丸 哲平、野島 剛、上山 裕二、西尾 美紀、盛實 篤史、小笠原恵子、 筒井 三枝、坂野 真美、清岡明日香 高知医療センター 救命救急センター 高知県ドクターヘリが導入され運航開始したのは 2011 年 3 月であり、その後 2 年間の運航状況は要請 1004 件、出動 839 件であった。出動の内訳は現場 416 件、施設間 392 件で出動後キャンセルは 31 件と 少なかった。疾患の内訳は外傷 277 件(33.7%) 、脳血管障害 166 件(20.2%) 、心・大血管疾患 127 件 (15.5%)であり、搬送先は基地病院が 705 件(85.9%)と中央医療圏に集中する高知県の救急医療の現状 を示していた。また当院では 2005 年の開院以来、高知県消防防災航空隊の協力のもと、消防防災ヘリを 利用したドクターヘリ的運用を 2013 年 3 月までに 1204 件行ってきた。ドクターヘリ運航開始後も、重 複要請や救助を伴う事案では消防防災ヘリでの搬送も 2 年間で 102 件あり今後も連携を密に活動してい きたい。さらに平時より関連諸機関(消防機関、海上保安庁、警察、自衛隊など)と連携した搬送体制 を構築していくことにより、今後懸念される南海地震や大規模災害時においても円滑な対応が期待でき ると考える。 第 20 回日本航空医療学会総会 215 基地病院ポスター発表 P- 10 徳島県ドクターヘリフライトナースのストレスはこれ! ○ 飯藤 薫、中井 美幸、磯崎 文、奥村 澄枝 徳島県立中央病院 徳島県ドクターヘリは H24 年 10 月から運航を開始した。現在フライトナース 8 名とフライトドクター 6 名が乗務している。運航開始から 1 年を経て、フライトドクター・ナースになったことで新たなやり がいを実感するようになった反面、これまで考えもしなかったようなストレスも発生した。まず、個々 が抱えるストレスからフライトスタッフとしてのストレス全体像を明らかにして、現時点での解決に向 けた模索状況を報告する。個々の感じるストレスとして、1.排尿・排便に関すること 2.前日からの 緊張状態(睡眠障害など) 3.摂食に関すること 4.日焼け・メイク 5.院内患者の診療に心的・物 理的制限がかかる 6.小児の診療 7.救急隊の介入不足・過多 8.凄惨な現場や状況が記憶に残存す る 9.搬送患者の収容体制(雰囲気) 10.ドクターヘリのシステムやスタッフの業務内容が理解され てないと感じる等があげられた。 フライトスタッフとしての体調管理はもちろん、システムの構築や教育の充実を図っていくことは必 須である。広報・啓発活動に積極的に取り組むことはドクターヘリ事業の浸透を図るだけでなく、フラ イトスタッフとしてのやりがいを広げることにも繋がると思われる。院内にはカウンセリング担当者は 存在するが、ストレス緩和のための外部からのカウンラーを配置することを病院に要望していく予定で ある。 216 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 11 山口県ドクターヘリ運航の特徴 ○ 金田浩太郎 1、藤田 基 1、河村 宜克 1、小田 泰崇 1、相楽 章江 1、 宇多川文子 1、鶴田 良介 1、安永 昭三 2、松永 秀信 2、濱崎 遵 2、 助永 佳弘 2、立石 鉄也 2、青木 達彦 2 1 山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター、2 朝日航洋株式会社 山口県ドクターヘリは全国で 24 機目のドクターへリとして平成 23 年 1 月 21 日に運航を開始した。基 地病院は高度救命救急センターが設置されている山口大学医学部附属病院で県内ほほ全域に 30 分以内に 到着が可能である。現在の医療スタッフはフライトドクター 10 名、フライトナース 9 名である。県土の 約 7 割を中山間地域が占めるとともに、21 の有人離島を有するなどの地理的な特性を考慮した運航が求 められており、県内 5 つの医療機関に整備された救命救急センターを主たる搬送先病院とし、現場から 最寄りの救命救急センターへの搬送を第一選択として U ターン率の抑制に努めている。また通信手段と して医療無線のみならず消防無線を基地病院に設置し県波での通信が可能なことも特徴である。キーワー ドを用いた覚知要請を導入して現場からの早期要請を推進するとともに、消防署の設置されていない離 島への出動体制整備にも活用している。また小児科医の協力のもと新生児搬送も行っている。平成 25 年 6 月 16 日より島根県、および広島県との広域連携運航を開始しており、山口県のみならず中国地方の広 域救命救急医療の重要なツールとして地域医療に貢献していきたいと考えている。 第 20 回日本航空医療学会総会 217 基地病院ポスター発表 P- 12 島根県ドクターヘリ ○ 山森 祐治、石飛奈津子、石田 亮介、新納 教男、森 浩一、越崎 雅行、 松原 康博 島根県立中央病院 島根県は、離島や中山間地、県の西部で医師不足が深刻化し、県内の救急医療体制は大変厳しい状況 でした。島根県は東西に長いため、県の西端から車で東部の病院に患者を搬送すると 3 時間以上かかり ます。救急車には搬送元の病院の医師が同乗してくるため、その間その地域に医師がいなくなるという 深刻な問題がありました。この極めて厳しい医療情勢を解消するため、ドクターヘリ導入の検討が行わ れ、約 2 年間の準備期間を経て 2011 年 6 月に運航がスタートしました。運航開始後、初年度は 10 カ月 で 489 件、2 年目の 2012 年度は 695 件の出動件数となり、予想を大きく上回りました。当施設では、要 請基準にキーワード方式を採用しており、より早期の医療介入ができるよう関係機関にお願いしていま す。また、母体搬送および新生児搬送も行っており、その際には当院の産婦人科医、小児科医が同乗す るシステムになっています。今年 5 月に広島県ドクターヘリが運航開始となったことを契機に、6 月か ら新たに中国 5 県によるドクターヘリ広域連携体制が整いました。これにより、島根県ドクターヘリは 鳥取県西部及び広島県北部をカバー、島根県西部は広島県ドクターヘリ及び山口県ドクターヘリでカバー という、県境を超えた運航が開始されました。 218 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 13 岡山県ドクターヘリ 13 年の軌跡 ○ 川田 幸恵 1、寺戸 由加 1、奥畑 智子 1、大賀 麻央 1、鼠尾 弘恵 1、 皿井 早苗 1、吉峯 由香 1、岡崎 泉 1、藤尾 政子 1、辻 英明 2、 杉浦 潤 2、竹原 延治 2、山田 祥子 2、高橋 治郎 2、堀田 敏弘 2、 井上 貴博 2、椎野 泰和 2、荻野 隆光 2、鈴木幸一郎 2 1 川崎医科大学附属病院 高度救命救急センター、2 川崎医科大学 救急医学 岡山県ドクターヘリは、平成 13 年 4 月 1 日からわが国最初のドクターヘリ本格運航として開始された。 運航開始から平成 25 年 8 月までの累積出動件数は 5126 件で、そのうち一次出動 2839 件、二次出動 2287 件である。本格運航から 13 年目を迎え 5 月 7 日には安全運航 5000 件に達した。その背景には、救 命率向上という同じ目的を持った各機関が、症例検討会や合同訓練、市民への啓発活動等を通して相互 の立場を理解し、信頼関係を構築することができたからである。 また日本航空医療学会認定指導者がフライトスタッフの半数以上を占めており、認定指定施設として 研修者を受け入れ、他県の医療スタッフ育成にも寄与している。 現在全国にドクターヘリが配備され、さらに東日本大震災を契機に、災害医療におけるドクターヘリ の活用は不可欠となっている。また、平成 25 年 1 月には中国地方 5 県ドクターヘリ広域連携に関わる基 本協定が締結された。このことから、ドクターヘリが災害時にも自都道府県内外の被災地内や災害現場 に出動するため、平時から他県とのドクターヘリ同士の連携を踏まえた活動をしていくことが必要と考 える。 第 20 回日本航空医療学会総会 219 基地病院ポスター発表 P- 14 豊岡病院ドクターヘリ 創意工夫とその成果 ○ 濱 武、小林 誠人、間 崇史、藤原 大悟、菊川 元博、佐々木妙子、 山本 奈緒、藤崎 修、井手 喜教、中嶋 麻里、前山 博輝、三浦 龍馬、 菅 健敬、松井 大作、番匠谷友紀、原 文祐、池田 光憲、岡 和幸、 永嶋 太、清水真美子、米田 勝一、森田 須美、福本 真也、林 詳子、 藤巻ゆかり、林田 康子 公立豊岡病院 但馬救命救急センター 豊岡病院ドクターヘリは 2010 年 4 月から運航を開始した。救急医を現場に運び、最短・最速・最高の 救急医療を提供することを当初からの目的としている。 【運航面における創意工夫と成果】 ドクターヘリ事業初の「キーワード方式」による覚知同時要請システムの実現。日本一早いヘリ要請 を実現。 常時 2 flight doctor 制による弾力的な運航。重複事案への臨機応変な対応と現場滞在時間の短縮。 複数傷病者事案ではフライトドクターを増員。 医療スタッフの徹底した on the job training による質の管理と向上。 【医療面における創意工夫】 機内での医療行為(気管挿管、外科的気道確保、開胸など)の実施による現場滞在時間の短縮。 処置・手術器具のディスポキット化。 基地病院診療体制の改変と構築:独立型診療と集中治療体制。時間を意識した診療。 このよう取り組みは救命率向上をもたらした。地域救急医療に大きな効果をもたらしている豊岡病院 ドクターヘリ事業を紹介する。 220 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 15 和歌山県ドクターヘリの活動 ○ 波元 裕也、小林 育代、高野 裕子、小西 香衣、岩崎 安博、加藤 正哉 和歌山県立医科大学附属病院 高度救命救急センター 和歌山県ドクターヘリは 2003 年、3 県(和歌山県、奈良県、三重県)合同運用や新生児・母体搬送、 消防無線搭載など当時全国初の先駆的な試みとともに、全国で 7 番目に運航開始し、国公立大学病院で は初めて導入された。奈良県南部・三重県南部も含めた広い紀伊半島をカバーするために、通常の基地 病院を中心とした半径 50km 圏ではなく、当初から半径 100km 圏の広域を運航範囲としていることも特 徴である。また、2009 年からは大阪府ドクターヘリ、2012 年からは徳島県ドクターヘリと相互応援協定 を締結し、重複要請に対応している。 出動件数は年々増加し、2011 年は年間出動件数が 400 件を超え、総出動件数は 2011 年末で 3,000 件を 超えた。 当院は HEM-Net 医師・看護師研修認定施設に指定されており、他府県からの医師・看護師の研修を 受け入れている。 今後は、都市部・高速道路でのドクターヘリ運用、日没前後の限られた時間での運用、災害医療にお ける航空搬送体制の確立、隣県ヘリとの連携体制構築などをさらに推進し、より充実した救急医療を実 現していきたいと考えている。 第 20 回日本航空医療学会総会 221 基地病院ポスター発表 P- 16 大阪府ドクターヘリ ○ 城戸 靖章、大西 光雄、中川 雄公、池側 均、吉矢 和久、廣瀬 智也、 中村 洋平、嶋津 岳士、梅林 寛人、藤田真理子、岩村 亜樹、沖 英理加、 中谷 安寿、西岡 里織、瀬尾 恵子 大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター 大阪府ドクターヘリ(以下、大阪ヘリ)は、2008 年 1 月から運行を開始しました。重症傷病者に対し て“最後の砦”である大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターで行われている治療を、より早期 に救急現場から実践し、重症傷病者の生命予後や機能予後の改善を目指すこと、これが運航開始当初か らの大阪ヘリの目標です。また、2009 年から和歌山県、奈良県、2012 年から滋賀県、京都府と、段階適 に他府県へ運行範囲を広げており、他府県のドクターヘリとの協力体制の構築も進めています。2012 年 実働件数は 150 件、要請元別実働件数は、大阪府 84 件、京都府 40 件、滋賀県 15 件、和歌山県 5 件、兵 庫県 4 件、その他沖縄県、千葉県から空港経由の施設間搬送要請がありました。 2013 年 4 月より大阪ヘリの事業主体は大阪府から関西広域連合に移管しました。関西広域連合では、 各府県のドクターヘリの一体運用を進めており、救急医療の充実と相互補完、また、災害医療体制の整 備と充実を目指しています。 ドクターヘリの運航には医師、看護師、ME や薬剤師といったコメディカル、搬送先医療機関、運航 会社、行政機関、消防機関、警察など、多くの職種や機関が関わっています。大阪ヘリでは、運航開始 当初から他職種連携も力を入れており、より迅速で安全な医療活動を目指しています。 222 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 17 三重県ドクターヘリ 伊勢赤十字病院の取り組み ○ 水野 光規、説田 守道、山川 徹、渡邉 文亮、藤井 幸治、森 一樹、 豊田 直美、渡司 雄大、竹中 由佳、下村 宜子、東浦 美展、森田 栄奈 伊勢赤十字病院 三重県ドクターヘリは 2 基地病院体制をとり、伊勢赤十字病院(伊勢日赤)と三重大学医学部附属病 院(三重大)が 2 か月毎に出動病院を交代している。出動現場近隣病院への傷病者収容が困難な場合、 通常は出動病院が傷病者を受入れることになるが、三重県では県北部からの要請では三重大が、県南部 からの要請では伊勢日赤が受入れ病院となることが多い。また重症例が重なる場合には 2 基地病院が連 携して受入れ、より確実に根本治療が行えるよう配慮をしている。以下に伊勢日赤独自の特徴を述べる。 始業前や終業時刻後の要請には運行会社の対応が可能な限り出動しており、日没後の帰投もある。救急 科専門医が少なく搭乗医師の確保が問題であったが、運航準備当初より各科の協力が得られ、搭乗医師 6 名のうち 4 名が救急科以外であり、受入れ患者の専門科への引継ぎも円滑に行われている。搭乗医師 はドクターヘリ業務に専念し、通信センターで運行管理者と共に各消防無線を傍受するなど事故発生を 早期に覚知してヘリ要請に備えている。 第 20 回日本航空医療学会総会 223 基地病院ポスター発表 P- 18 三重県ドクターヘリ 三重大学医学部附属病院の紹介 ~全県的な救急医療の質の向上を目指して~ ○ 石倉 健、岩下 義明、山本 章貴、武田 多一、今井 寛、須崎 真理、 太田 智子、寺村 文恵 三重大学医学部附属病院 救命救急センター 三重県では 2012 年 2 月から三重大学病院と伊勢赤十字病院の 2 基地で、2 か月交替で全県を対象に運 航しています。三重県メディカルコントロールの管轄であり、全消防本部に周知徹底され三重県全体で 検証されることで全県的な救急医療の質の向上に貢献しています。多数の基地病院で研修に参加してい るため、それぞれの利点を採用しています。伊勢赤十字病院スタッフとの交流も定期的に行っており、 お互いの経験を共有するようにしています。12 階の屋上ヘリポートと三重大学内のグラウンドを使用し て各種条件に対応しています。十二誘導心電図、経皮ペーシング機能付き除細動器、ETCO2 測定可能で NPPV も可能な人工呼吸器などを搭載して、院内のクリティカルケアにつながる対応ができるようになっ ています。医師は 4 人で救急専門医以上かつ標準化プログラムのインストラクターになっており、 DMAT 受講済みです。看護師は 3 人とまだ少ないですが、救急認定看護師もしくは各種標準化プログラ ム受講済、かつ DMAT や災害対応の研修を受けています。多数傷病者事例が増えつつあり、さらなる 防災ヘリや自衛隊との連携を模索しているところです。 224 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 19 愛知県ドクターヘリの搬送先病院選定についての検討 ○ 三木 靖雄 1、寺島 嗣明 1、岩倉 賢也 1、熊谷 常康 1、青木 瑠里 1、 鉄 慎一郎 1、梶田 裕加 1、野口 裕記 1、竹内 明憲 1、井上 保介 1、 中川 隆 1、橋本 渉 2、加藤十代子 2、浅野永美花 2、大和田幸男 2、 金岡 正枝 2、波多野恭子 2、中井公仁枝 2、川谷 陽子 2、坂田久美子 2 1 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 救命救急科、2 愛知医科大学病院 高度救命救急センター 愛知県ドクターヘリコプターは基地病院への患者搬送率は他のドクターヘリに比較し低く、20 〜 30% 程度である。その理由としては大きく 2 点になると思われる。①県内の救命救急センターが現在 18 箇所 あること。②要請先消防本部は MC で分けた場合には東三河と西三河地区での要請が多いということで ある。 県内の救命救急センターは一部の病院を除けば、病院内にヘリポートが整備され、病院搬送ために消 防機関を利用することなく搬送できている。また運航開始当初は患者収容に関しては問題があったが、 搬送を繰り返す事により顔の見える関係が構築され、現在では病院連絡も短時間で患者収容が行われて いる。東三河と西三河地区は要請件数の 2/3 を占めている。東三河と西三河の一部は愛知県内でも過疎 地域に指定されており、医療機関が少ない事や救急隊による病院収容までに多大な時間を要している。 この地域の患者を収容する病院を選択する場合において患者の利便性を考慮すると直近の救命救急セン ターに搬送することとなる事が多い。このようにドクターヘリによる患者搬送先病院が多いこと、患者 の利便性を考慮しているために基地病院への収容が少ないと言える。 第 20 回日本航空医療学会総会 225 基地病院ポスター発表 P- 20 岐阜県ドクターヘリの現状と特徴 ○ 名知 祥、三宅 喬人、田中 義人、山田 法顕、中野 志保、橋本 孝治、 土井 智章、加藤 久晶、長屋聡一郎、吉田 隆浩、熊田 恵介、白井 邦博、 豊田 泉、小倉 真治 岐阜大学医学部附属病院 高度救命救急センター 岐阜県ドクターヘリは岐阜大学医学部附属病院を基地病院として平成 23 年 2 月から正式運航を開始し た。フライトドクター 14 名、フライトナース 4 名の体制で基地病院から 120km を運航範囲として、岐 阜県内 22 消防本部を要請機関として活動している。 2012 年の活動実績は要請 402 件、うち出動 338 件(現場 155 件、転院搬送 145 件、キャンセル 34 件) であり、少しずつ要請件数は増加中である。 岐阜県の医療環境は全国平均より厳しく、人口 10 万人のあたりの医師数、看護師数、一般病院数は全 て全国 40 位前後であり、それもほとんどが県南部に集中している。岐阜県ドクターヘリの特徴としては、 約 80%が医療環境の厳しい地域からの要請であり、地域医療を補完する活動が多い事である。また、飛 騨・中濃という特に医療環境の厳しい地域からは転院搬送依頼も多くその 8 割以上を占めている。 また岐阜県はスキー場やゴルフ場の数も多く、そこで発生した重症事例に対して有効な活動をするた めに、岐阜県スキー場連絡協議会、岐阜県ゴルフ連盟に現場直近への着陸が可能となるよう協力依頼し スムーズな活動を行っている。 基地病院から 50km 圏内からの現場要請が少ない事が改善しつつあるが今後の課題である。 226 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 21 運航開始 2 年、新たな取組み ○ 江津 篤、関 昌代、新友 香子、増田さゆり、新井 雅子、戸部 理絵、 秋山 絵理、望月 勝徳、小林 尊志、新田 憲市、高山 浩史、岩下 具美、 岡元 和文 信州ドクターヘリ松本 信州大学医学部附属病院 高度救命救急センター 平成 23 年 10 月から長野県 2 機目として運航開始し 2 年が経過。平成 24 年度の出動件数は 460 件(現 場活動 328 件(キャンセル 87 件) 、施設間搬送 45 件)であった。 当施設の特徴は次の 4 点である。①活動範囲が広大で、傷病者接触までに時間を要する。そのため一 旦傷病者を直近病院へ収容しヘリで高次医療機関へ搬送する「緊急外来搬送」を行っている。該当消防 本部、病院を対象にシミュレーション訓練を行い、連携を深めている。②キーワード方式に「心停止」 を入れ、オートパルスを持参しヘリ搬送を行い、社会復帰した症例も経験した。③昨年度作成した「協 働手順」をもとに管轄 7 消防本部を対象にそれぞれでシミュレーション訓練、意見交換を開催。問題点、 疑問点が確認でき、円滑な活動が可能となってきている。④昨年度に引き続き、佐久との一体的運用と して、今年度は複数傷病者事案に対するマニュアル制定に取り組んでいる。 第 20 回日本航空医療学会総会 227 基地病院ポスター発表 P- 22 信州ドクターヘリ佐久の特徴〜再構築に向けての取り組み〜 ○ 岡田 邦彦 JA 長野厚生連佐久総合病院 救命救急センター・ICU 信州ドクターヘリ佐久は、運航開始 9 年目を迎えました。一昨年から運航を開始した、信州ドクター ヘリ松本との連携も一層深まり、重複要請時のカバー体制、複数傷病者に対する 2 機出動事案なども増 えてきています。今後さらなる連携強化に向けた取り組みが必要となってきています。 佐久総合病院は、平成 26 年 3 月より「佐久総合病院 本院」と「佐久医療センター」へと分割移転さ れます。信州ドクターへリ佐久は、佐久医療センターで運航されます。佐久医療センターは、原則とし て救急・急性期医療・専門医療を担う病院となります。運航開始からの 8 年間、格納庫のない屋上ヘリ ポートで待機していたヘリも、もうすぐ格納庫にしまわれます。また、これまでは独立した ER ではな く、ウォークイン救急と救急車対応が同時に行なわれ、院内 ICU と救命救急センターが混在していたが、 再構築により救命救急センターとして独立された機能へと変化します。こうした変化の中での、ハード 面の整備、スタッフ育成のための取り組みに力を入れているところです。 228 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 23 静岡県西部ドクターヘリの特徴 ○ 中谷 充、川崎 磨美、志賀 一博、矢野 賢一、淺井 精一、早川 達也、 岡田 眞人 総合病院聖隷三方原病院 救命救急センター 救急科 当院のドクターヘリの歴史は、1999 年 4 月の浜松救急医学研究会による自主運航開始に始まり、2002 年 10 月のドクターヘリ事業としての本運航開始以来、現在まで約 7000 件(2013 年 8 月現在)の出動を 行なっている。 当施設ドクターヘリの特徴としては、2011 年より日本で唯一の Bell429 を使用したドクターヘリ事業 を行なっており、その機体の特長を生かした活動を行なっている。反面、この数年間の活動を通して問 題点も浮き彫りとなってきており、今後の改善に向けて運航会社や行政との調整を行なっている。 近年の年間要請件数は 400 〜 500 件程度であるが、運航開始から 14 年にわたる経験の中で近隣消防と の連携も濃密となり、本当にドクターヘリが必要な症例に対しての要請が行なわれる様、事後検証会や シミュレーションを定期的に開催し、その精度を高める努力を継続している。 今後の展望としては、機体の特長を生かした夜間運航への挑戦、各消防機関への出前講習を通じた連 携の向上、県立こども病院からの継続的な研修受け入れによる、県内小児重症症例の集約化の向上など の取り組みが行なわれている。 第 20 回日本航空医療学会総会 229 基地病院ポスター発表 P- 24 水難事故事例のドクターヘリ搬送における当院の対応 ○ 岡本 健、矢田 麻夏、大森 一彦、大坂 裕通、近藤 彰彦、大出 靖将、 野澤 陽子、柳川 洋一 順天堂大学医学部附属静岡病院 救急診療科 当院のドクターヘリは、伊豆半島全域を含む半径約 70km の医療圏をカバーする。半島沿岸部には海 水浴やダイビングなどのマリン関連スポットが多数存在するため、水難事故事例のドクターヘリ搬送が 多い点が当院の特徴といえる。当院では、水難事故傷病者に対するプレホスピタルケアの推進とドクター ヘリの有効活用を目的に、伊豆半島全域のマリンショップ関係者や救急隊員を含めた研修会を定期開催 している。専用の搬送プロトコールを作成し、傷病者の必要情報を迅速・的確に入手するためにマリン ショップの事故当事者が記載するチェックリストを作成し活用している。 過去 5 年間にドクターヘリ搬送された水難事故事例を検討した結果、総出動 2,942 件中水難事故による 出動は外傷を除き 107 件であった。内訳は溺水 60 件、減圧症 48 件、低体温症 1 件だった。減圧症では 高気圧酸素治療第二種装置を保有しない当院への収容例は 5 例(10%)で、いずれも軽症か CPA 症例 だった。40 例(83%)は酸素及び輸液投与下高度 300m 以下の低空飛行を行いつつ再圧治療可能な他施 設に搬送された。以上、当院の水難事故用のドクターヘリ搬送プロトコールの適切な運用が確認された。 230 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 25 山梨県におけるドクターヘリ活動報告〜 2 年目の改善と課題〜 ○ 大嶽 康介、木下 大輔、池田 督司、加藤 頼子、松本 学、宮崎 善史、 小林 辰輔、井上 潤一、岩瀬 史明 山梨県立中央病院 救命救急センター 山梨県立中央病院は総病床数 651 床、山梨県甲府市、ほぼ山梨県の中央に存在し、これまで山梨県の 救命救急医療の中核を担ってきた。2012 年 4 月より待望の山梨県ドクターヘリ事業を開始し、初年度の 出動実績は 382 件であった。山梨県は山岳地域が県面積の約 8 割を占め、住居可能面積も少なく、独特 の地形・気候条件を備えた地域である。それゆえ活動自体の制限、特殊性もあり、救急医療体制及び防 災ヘリとの連携・協力も不可欠である。活動 2 年目に入り、当初の予想以上の件数増加とともに初年度 で経験した様々な課題が浮かび上がってきた。今後の活動に向けての改善点を挙げるとともに、山梨県 独自のドクターヘリ事業の将来・理想像を探る。 第 20 回日本航空医療学会総会 231 基地病院ポスター発表 P- 26 神奈川県ドクターヘリの特徴 ○ 青木 弘道、守田 誠司、吉崎智恵美、飯嶋 将史、野口 航、若井慎二郎、 山際 武志、大塚 洋幸、中川 儀英、猪口 貞樹 東海大学医学部付属病院 高度救命救急センター 神奈川県ドクターヘリは平成 14 年 7 月 1 日から実施されています。東海大学医学部付属病院を基地病 院として神奈川県全域と山梨県の東部を運航範囲として概ね 15 分圏内でカバーしています。現在 242 か 所のランデブーポイントがあり平成 19 年 9 月からは、神奈川県内および山梨県内の一部の高速道路(東 名高速道路・中央自動車道)でも離着陸できるようになっております。平成 24 年度の出動件数は 285 件 であり現場出動 245 件、施設間搬送 39 件でありました。 神奈川県ドクターヘリの特徴としては U ターンが多く(平成 24 年度:232/245 件) 、キャンセルが少 ない(平成 24 年度:1 件)ことであります。11 名のフライトドクター、17 名のフライトナースで運航 しており、搭乗は医師 2 名、ナース 1 名で 2nd ドクターとして若手医師や研修医の現場での経験や育成 に貢献しています。また出血性ショックなど輸血投与を必要とする患者も少なくなく、O 型輸血の持ち 出しも行っています。 今後は隣県ヘリとの連携や災害医療における体制の確立などの充実を図っていきたいと考えています。 232 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 27 君津ドクターヘリの特徴〜千葉県南部の要、君津ドクターヘリ〜 ○ 今野 裕美 1、北村 伸哉 2、加古 訓之 2、五十嵐一憲 2、富田 啓介 2、 宇田川尚美 1、笈川 香織 1、柴崎 雅也 1、下道眞奈美 1、吉田 益美 1 国保直営総合病院君津中央病院 救命救急センター 1 フライトナース、2 フライトドクター 君津ドクターヘリは 2009 年 1 月より千葉県 2 機目の基地病院として運航を開始しました。当院では自 施設のフライトドクター 4 名・フライトナース 6 名に加え、県内の主要病院である千葉大学医学部附属 病院・亀田総合病院、旭中央病院の救急科専門医がフライトドクターとして勤務しています。その背景 には受入側としてだけでなく、実際に活動してドクターヘリの有効性を実感してもらう事がありました。 その結果、救急医療体制に対する共通の認識ができあがりました。県南東部は医療過疎地域であり、そ の医療圏の南端に位置する亀田総合病院への搬送件数は年間 587 件中(2012 年度) 、148 件と非常に多い ものとなりました。しかし、フライトドクターとして勤務する事や医師間の交流により円滑な受け入れ が可能です。また、防災ヘリによるドクターピックアップ事業のフライトナース育成の為、千葉大学病 院や千葉県救急医療センターの看護師の同乗訓練(OJT)の受け入れも積極的に行うなどして他施設と の連携を図っています。 当地域は太平洋に面しており、海や山などの自然が多くあります。都心からのアクセスが良いことか ら観光客の傷病者も多いのが特徴です。特に夏場は海での水難事故による要請が多くあり、今年は、夏 期休暇中だけでも海岸線へ 18 回、出動しました。うち 8 名は脊椎損傷も合併しており、海水浴中の事故 は必ずしも溺水だけとは限りませんでした。この他にも工場内での労災事故、蜂によるアナフィラキシー ショックなど当地域での疾患分類は多岐に渡ります。今回、これらの事例も含めて、当基地の特色を報 告したいと思います。 第 20 回日本航空医療学会総会 233 基地病院ポスター発表 P- 28 北総ドクターヘリのご紹介 ○ 亀山 大介 日本医科大学千葉北総病院 救命救急センター 当施設は平成 13 年 10 月にドクターヘリ基地病院となり、病院前で治療開始する「攻めの救急医療」 のパイオニアを自負し、あわせて“病院前診療の質向上と標準化”の取り組みを開始した。特にフライ トドクターの育成は喫緊の課題であり指導医管理下の同乗見学 30 回+主任医師 100 回出動を経て独り立 ちを認める育成プログラムを導入し 4 年間で 13 名が修了した。またスマートフォンを用いた医師派遣現 場からの動画音声伝送システムの導入で治療準備時間短縮を図り、 「現場活動マニュアル」を作成し診療 内容の標準化を行っている。さらに千葉県では 2013 年 3 月から房総・北総地区の消防指令所を統合し人 口 300 万人を管轄する「ちば共同指令センター」が開設され、20 消防本部を一体として運用できるよう になった。現在は医師が共同指令センターへ、指令員がヘリ研修に赴き、互いの視点でさらにヘリを有 効活用する方法を検討中である。人材育成については院外へも協力を惜しまず、HEM-NET 研修の医師・ 看護師や、新たにヘリコプター救急を導入する韓国・タイからも研修医師を受け入れている。千葉北総 病院は病院前救急診療が始まって 10 年を経てなお救命率向上への挑戦を続けている。 234 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 29 埼玉県ドクターヘリの近況 ○ 有馬 史人 1、酒庭 康孝 1、平松玄太郎 1、松枝 秀世 1、橋本 昌幸 1、 高本 勝博 1、安藤 陽児 1、輿水 健治 1、福島 憲治 2、杉山 聡 2 1 2 埼玉医科大学総合医療センター 救急科(ER) 、 埼玉医科大学総合医療センター 高度救命救急センター 埼玉ドクターヘリのヘリポートは、埼玉医科大学総合医療センターの敷地に併設され、水田に囲まれ たヘリポートである。今年、ヘリポートの敷地を拡張しヘリ格納庫が増設された。要請から出動までの 所要時間はほぼ変わらなかった。ヘリポートの周りには、日差しを防ぐ物も風を防ぐ物もなく、格納庫 ができたことは機体の保護に大きな効果を与えるものと考えられる。また、防災ヘリの着陸に際しては、 ドクターヘリを格納庫に格納することで、大きな機体の着陸に十分な広さを提供することができるよう になった。ヘリポートから初療室までは数百 m を車で移動する。地上ヘリポートは、屋上へリポートと 比べると移動時間に負い目があるものの、着陸出来るヘリ重量の制限が広いことや、離着陸の際に風の 影響を受けにくい点など長所も多い。今後救命センター新棟移転に伴ってヘリポートとも近接となり、 より効率的な患者搬送が可能になると思われる。 第 20 回日本航空医療学会総会 235 基地病院ポスター発表 P- 30 栃木県ドクターヘリの場合 ○ 魚住 翠子、唐澤 剛、青木 秀和、菊池 仁、和氣 晃司、小野 一之、 寺内 浩美、横地 瑞、須永 準里、中田 哲也、菱沼 秀一、山崎 礼子、 柏 美由紀 獨協医科大学病院 救命救急センター 1.消防防災部会開催 運航調整委員会の下部組織として開催。運航に関わる種々取り決めや問題点の解決など、その時々で 必要な事項について検討している。 2.ドクターヘリ事後検証 県内 5 ヶ所の地域メディカルコントロール協議会にドクターヘリ検証医が出向く形で開催することで、 より多くの消防職員が参加することが可能となっている。消防機関と基地病院とのさらなる連携構築を 実現させている。 3.ランデブーポイント増設へ向けての民間企業への啓発活動 栃木県には大きな工場やゴルフ場などの遊戯施設が数多く存在する。現在、消防機関が民間企業に対 してランデブーポイントの登録依頼を行っているが、その場にフライトドクターが随行し、同企業に対 して啓発活動を行っている。その結果、ドクターヘリに対する認知度が高まり登録数が増えてきている。 4.ヘリポート 地上へリポート。出動時、救命センターからの動線は約 60m。ヘリポートから約 1 分で初期治療室へ の搬入が可能。スライディング式ヘリパットにて格納庫へ搬入が可能。 5.県内からのフライトドクター研修受け入れ 現在、フライトドクター研修として県内 3 次医療機関の救命センター医師 1 名が当院に週 4 日程度勤 務している。医療機関同士の連携を深める意味でも重要であると考えている。 236 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 31 群馬県ドクターヘリ ○ 城田 智之 1、中野 実 2、高橋 栄治 2、中村 光伸 2、宮崎 大 2、 町田 浩志 2、鈴木 裕之 2、藤塚 健次 2、雨宮 優 2、原澤 朋史 2、 小倉 崇以 2、高寺由美子 1、小池 伸享 1、滝沢 悟 1、萩原ひろみ 1 1 前橋赤十字病院 高度救命救急センター、2 前橋赤十字病院 救急科・集中治療科 群馬県ドクターヘリは、平成 21 年 2 月 18 日より前橋赤十字病院が基地病院となり、全国 15 都道府県 17 機目のドクターヘリとして運行を開始しました。ドクターヘリは、前橋赤十字病院屋上ヘリポートに 常駐し、群馬県全域を概ね 20 分でカバーしています。現在フライトドクター 10 名、フライトナース 5 名にて活動し、出動体型は、フライトドクター・ナース各 1 名で出動しています。常に、最速・最高の 救急医療を提供することを目標に日々努力しています。2013 年 8 月現在出動回数は、約 2700 回に至っ ており、年々出動回数は増加し、出動が重複する場合も多く、ドクターヘリが対応できない場合は、群 馬県防災ヘリはるなにセカンドスタッフが同乗し現場に行く事も多くなっています。また、群馬県ドク ターヘリは、防災ヘリだけでなく群馬県警ヘリあかぎとも連携をとり傷病者の引き継ぎを行っています。 このように、多職種連携を取り合い群馬の救急医療を支えています。今年度からは防災ヘリ・県警ヘリ 3 者合同勉強会に陸上自衛隊第 12 旅団にも加わりよりいっそうの連携を深めています。 前橋赤十字病院は、群馬県の基幹災害医療センターとして位置づけているため、災害時には医療活動 の拠点となります。そのため、多数傷病者や大規模災害時には即座にドクターヘリで現場へ出動出来る 体制も整っています。このように、群馬県ドクターヘリはどのような状況にも対応出来るような体制を 整えています。 第 20 回日本航空医療学会総会 237 基地病院ポスター発表 P- 32 プレホスピタルケア構築への救命救急センターの取り組み ○ 飯田 薫 水戸済生会総合病院 救命救急センター 【はじめに】 当救命救急センターは、平成 22 年 4 月 1 日に指定を受け、同年 7 月 1 日から茨城ドクターヘリ基地病 院として運航開始し、平成 22 年度 289 件・平成 23 年度 580 件・平成 24 年度 852 件の出動回数に至って いる。 ドクターヘリ運航の安全及び迅速、且つ適切な運用に関し、茨城県内 25 全消防本部とのプレホスピタ ルケアの充実「病院前救護体制・顔の見える関係」構築が必要不可欠であり、その為に企画立案し実施 した取り組みを紹介する。 【救命センターの姿勢】 救命スタッフへの意識改革・ 「受け身の救急」から「攻めの救急」への転換 第 1 救命からアクションを起こし、Dr & Ns は外に行き救急現場の声を聴く 第 2 救命救急センターのオープン化(各 MC 地域の枠を越え研修、見学等の実施) 【取り組み企画】 第 1 弾 ドクターヘリ運用意見交換会(全消防本部個別訪問) 第 2 弾 茨城ドクターヘリ&通信センター(CS 室)見学会 第 3 弾 ブルードラゴン・プレホスピタル・カンファレンス開催 第 4 弾 茨城ドクターヘリ消防職員搭乗実習 以上です。 238 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 33 水戸医療センター(MMC)におけるドクターヘリ運用 ○ 皆川 千草、土谷 飛鳥、植地 静香、小田部美子、北山 幸子、相馬裕美子、 田中 愛美、古田 理恵、村田 陽子、山口 剛充、安田 貢 国立病院機構水戸医療センター 救命救急センター 茨城ドクターヘリは、運航開始 4 年目を迎え、昨年度の全出動件数は 856 件と年々増加傾向にあり、 それと共に重複要請も増加している。当院はフライトドクター(FDr)2 名とフライトナース(FNs)1 名の 2 ドクター制で活動をしている。FDr のうち 1 名は救急科医師、もう 1 名は循環器科、脳外科、外 科医師が搭乗する。FDr は全員各科専門医であるため、現場活動では互いの診療をサポートすると同時 に、より的確な専門的判断をすることができ、連続出動や重複要請の際には、医師が二手に分かれるこ とも可能となる。また、ER にも常にもう一人の FNs がセカンドナースとして待機しているため、タッ チ&ゴーや複数傷病者にも対応できるシステムとなっている。 今年度の新たな取り組みを紹介する。まず、現場医療の質を高めることを目的とし、以下の 11 項目に 対し一定のプロトコール(MMC コンセンサス)を定め、それに沿った活動をすることとした。①気管 挿管適応、②外傷性ショックにおける輸液速度及び血圧管理、③現場脱気及び胸腔ドレーン挿入適応、 ④現場開胸適応、⑤頭蓋内病変が疑われるときの現場処置及び血圧管理、⑥急性冠症候群(ACS)が疑 われるときの現場処置+薬剤投与、⑦アナフィラキシーの治療、⑧大動脈解離・瘤の血圧管理、⑨小児 痙攣重積への薬剤投与手順、⑩内因性徐脈への経皮的ペーシング(TCP)手順、⑪急性肺水腫への処置 手順 これにより、現場活動においては全スタッフが共通認識の下で、同じ判断・処置を行うことが期 待できる。また、現場滞在時間目標を外因性 15 分、内因性 10 分と定めた。その結果、昨年度の平均現 場滞在時間が 16 分に対して、今年上半期は 14 分であった。この取り組みの下に、今後さらに質の高い 医療を提供しつつ、時間短縮を図って行きたい。 第 20 回日本航空医療学会総会 239 基地病院ポスター発表 P- 34 新潟県ドクターヘリの特徴 ○ 山口 征吾、本多 忠幸、遠藤 裕 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター 新潟県ドクターヘリは新潟大学医歯学総合病院を基地病院として平成 24 年秋から運行を開始してい る。新潟県の特徴として主に 3 つのことを挙げることができる。まず地理的特徴として、広大な面積を 持ち、かつ細長い地形をしていること。このことはほぼ中心部にある基地病院から県端までが長距離に 達することを意味している。実際に基地病院から離陸し、ランデブーポイントまでの飛行時間がかなり 長いケースがある。次に気候的特徴として、冬期間の積雪量が非常に多い。冬期間の運行日が非常に限 られていることと、飛行可能であっても、着陸できるランデブーポイントが積雪のため限られているこ とが問題になる。次に社会的特徴として、本県の深刻な医師不足があげられる。ドクターヘリが医師不 足の地域中核病院の救急患者に対しての応援診療が必要であったケースもみられる。新潟県ドクターヘ リはまだ運行開始から 1 年未満ではあるが他県にはみられないような独特の活動もしている。今後はさ らに症例を積み重ねてより良い出動を目指していきたい。 240 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 35 福島県ドクターヘリの活動状況 ○ 鈴木 剛、大久保怜子、林田 昌子、阿部 良伸、根本 千秋、塚田 泰彦、 長谷川有史、島田 二郎、池上 之浩、伊関 憲、田勢長一郎 福島県立医科大学附属病院 高度救命救急センター 福島県ドクターヘリは、運用後 5 年を経ようとしている。2011 年には東日本大震災による自然災害と それに続く福島第一原子力発電所(以下、第一原発)の事故による放射線災害を経験してきた。 2012 年度のドクターヘリの運航状況は、全運行数 337 件(現場出動 280 件、病院間搬送 24 件、キャ ンセル 33 件)であった。福島県は全国で 3 番目に広い面積を有しており、僻地に対してドクターヘリに よる早期の救命治療による有用性を示してきた。さらには、2013 年 4 月から山形県と広域連携の協定を 結び、今後は新潟県とも締結することで広域連携体制を構築し南東北地域全体を網羅することとなった。 現在我々に課された使命は、原発事故からの復興にある。これまで第一原発内部での事故に対しては ドクターヘリが近隣に着陸できないため、10km 以上離れたグランドまで原発内の救急車で搬送した後 に、双葉消防により搬送されていた。2013 年 7 月からは除染などの震災対策の結果、避難指示区域の再 編成に合わせて、第一原発より約 3.5km にある双葉海水浴場など双葉町、浪江町、葛尾村、富岡町など 12 カ所にランデブーポイントを開設することになった。原発作業員にたいして、より安全性の確保され た状況で復興に向けた勤務ができるだけでなく、医療施設が減少した被災地において一時帰宅者に対し ても救急医療を施せるようになった。 福島県ドクターヘリは、復興を見据えた明るい未来に向かって羽ばたいていこうとしている。 第 20 回日本航空医療学会総会 241 基地病院ポスター発表 P- 36 山形県ドクターヘリ ○ 芳賀 圭子 山形県立中央病院 救急室 キーワード要請を用い、県内全域をほぼ 30 分でカバーできる山形県ドクターヘリは、平成 24 年 11 月 15 日に運航開始となった。運航開始から 9 か月が経過した 8 月現在、出動数は 310 件を超えたところで ある。最近は近県との広域連携協定も進めている段階である。 山形はいわゆる「雪国」であり、冬期間の運航開始となった為、3 月までは天候不良による未出動が 多かった。また、基地病院は奥羽山脈と出羽山地の間に位置するため、運航範囲の制限があった。その 結果、平成 24 年度は未出動 36 件のうち天候不良による不応需が 19 件と最も多かった。しかし季節が変 わり、今年度は天候不良による不応需は減っている。 冬期間と比較し、今年度は全体の要請件数が増加している。疾患分類別では、冬期間は内因性疾患に よる要請が多かったのに対し、4 月以降は外傷による要請の増加が見られる。 要請消防機関に注目すると、山形県には村山・置賜・庄内・最上と 4 つの二次医療圏が存在するが、 季節には関係なく、基地病院のある村山地域からの要請が圧倒的に多い。基地病院への患者搬送が 6 割 強となっているのは、比較的近距離からの要請が多いこと・村山地域でヘリポートを有する病院が基地 病院だけという点が要因となっている。 242 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 37 岩手県ドクターヘリの紹介 ○ 山田 裕彦、大間々真一、松本 尚也、齊藤麻知子、佐臼智恵子、岩谷 涼子、 金子 拓、井上 義博、遠藤 重厚 岩手医科大学 高度救命救急センター 岩手県ドクターヘリは 2012 年 5 月 8 日より運航を開始しました。ドクターヘリの基地は、救命救急セ ンターから車で約 20 分の附属病院移転予定地にあり、発進基地方式で運航を行っています。フライトス タッフは救命救急センターのスタッフのみでまかなっており、朝 7 時 20 分に救命救急センター前をタク シーで出発し、フライト業務終了後はタクシーで救命救急センター前に戻ってくるといったスケジュー ルで活動しています。2012 年度の実績は、要請件数 306 件(0.93 /日) 、運航回数 256 件、キャンセル 53 件、現場救急 137 件、転院 66 件で、207 名の傷病者に対応しました。盛岡市内の病院への搬送が 60%以上を占めますが敷地内・近隣ヘリポートがなく、警察署屋上ヘリポートを活用しているのが現状 で、ヘリポートから病院まで約 15 分とロスが大きいため新たなヘリポートの整備が検討されています。 また、月 1 〜 2 回運航に関するミーティングと月 1 回のフライトスタッフの意見交換会(ポポポの集い) を行って情報交換を行い、より良い活動を目指しています。 第 20 回日本航空医療学会総会 243 基地病院ポスター発表 P- 38 秋田県ドクターヘリの特徴 ○ 藤田 康雄、東海林則子、鳥海 雄好、津谷 千絵、小笠原美奈、佐藤めぐみ、 中畑 潤一 秋田赤十字病院 救命救急センター 秋田県ドクターヘリは平成 24 年 1 月 23 日に運航開始となった。平成 25 年 8 月 21 日時点で総出動件 数は 293 件である。 院内では 2 名の医師がフライトドクターとして活動しており、土日は他施設からの協力を得ている。 そのため 5 名のフライトナースは他施設の医師とのコミュニケーションを取りながら活動を行っている。 ヘリポートは病院駐車場の一角にあり ER から 120m に位置し、要請から 4 分以内で離陸できている。 ヘリポートは 2 面のヘリパッドがあり、1 面にはロードヒーターを設置している。格納庫はヘリコプター が 2 機駐機可能で、クルー待機室も併設している。燃料庫は地下式で管理給油が容易となっている。 ER・CS センター・クルー待機室が近いことで連携が取りやすく、和気藹々と活動している。 格納庫内には長距離移動や雪道のためタイヤを特注した移動用ストレッチャーを設置し、格納庫内で 患者を乗せ換え引き継ぎし、ER までストレッチャーで移送している。 機内に HT70、MRx(12 誘導心電図装備)を装備し、骨髄針は EZ-IO(成人・小児用)を使用してい る。また CO ヘモグロビンが測定可能な masimo 製 SPO2 モニターを搭載している。 244 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 39 SPIRITS OF HACHINOHE はサンダーバード作戦と劇的救命 ○ 吉岡 隆文、今 明秀、野田頭達也、河野 慶一、軽米 寿之 八戸市立市民病院 救命救急センター 【はじめに】 青森県ドクターヘリは八戸市立市民病院(以下、当院)を基地病院として、2009 年 3 月 25 日から運 航開始となった。2011 年 6 月 1 日から青森県立中央病院との分担運航が開始となり、2012 年 10 月 1 日 から 2 機体制(八戸ドクターヘリ、青森ドクターヘリ)となった。以下、八戸ドクターヘリの特徴につ いて述べる。 【特 徴】 ①当院では八戸ドクターヘリ以外に 2 台のドクターカーを所有している。当院では、ドクターヘリとド クターカーの同一事案への同時出動をサンダーバード作戦と呼んでいる。ドクターカーが運航開始と なった 2010 年 3 月 29 日から 2012 年度までで 61 件の同時出動があった。 ②外傷は TRISS を用いて、内因性疾患は救急専門医 2 名以上で判断し、死亡回避できた unexpected survivor のことを劇的救命と呼んでいる。運航開始から 2012 年度までで 57 件の劇的救命があった。 内因性と外因性はそれぞれ 37 件と 20 件であった。 【結 語】 八戸ドクターヘリのキーワードはサンダーバード作戦と劇的救命である。 第 20 回日本航空医療学会総会 245 基地病院ポスター発表 P- 40 ドクターヘリによる新生児搬送体制の構築を目指して ○ 齋藤 兄治 1、二階 春香 1、山内 洋一 1、山口 智也 1、常川 仁子 1、 會田 悦久 1、小笠原 賢 1、石澤 義也 1、大西 基喜 1、網塚 貴介 2 1 青森県立中央病院 救命救急センター、2 総合周産期母子医療センター 新生児科 青森県では乳児死亡、周産期死亡等の改善を目的として、平成 16 年 10 月に青森県立中央病院に総合 周産期母子医療センターを開設し、青森県周産期医療システムを構築してきた。 本県において、当院が総合周産期母子医療センターとして 1 カ所、地域周産期母子医療センターが 4 カ所、またこれら 5 カ所の総合・地域周産期母子医療センターにおいても治療困難例に対応する高次周 産期医療施設が 1 カ所設置されている。限られた医療資源を有効に活用し、周産期医療体制の更なる連 携充実を目指し、ドクターヘリによる新生児搬送体制を構築することにした。 ドクターヘリによる新生児搬送は前述医療機関の施設間搬送であり、搬送が有用と考えられる医療機 関との搬送訓練を本年 5 月 31 日から 8 月 15 日まで計 4 回行った。8 月下旬現在、これらの訓練結果を 元に、病院毎の特性を考慮した搬送依頼手順、NICU とフライトスタッフとの連携などを纏め、近々新 生児搬送マニュアルを作成し本格的に稼働する予定である。 246 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 41 道東ドクターヘリの紹介 ○ 泉谷 勇、村上 真一、其田 一 市立釧路総合病院 救命救急センター 道東ドクターヘリは 2009 年 10 月 5 日より運航を開始した。 2012 年度の要請件数が 545 件であるものの出動件数は 359 件であり未出動件数が多い。理由は釧路の 気象条件として海霧の発生が多いことによる。基地病院は屋上ヘリポートで海岸に近い高台のため海霧、 強風の影響を受け使用不可のことが多く、運航開始前より待機場所を検討し、連携病院の地上ヘリポー トを活用することで運休を極力減らしている。また、北海道開発局の協力を得て防災情報共有システム を利用することで、気象情報をリアルタイムに細かく入手し、ドクターヘリの安全かつ円滑な運航に活 用している。 疾患割合は医療過疎を反映し急病の割合が多く、遠隔地からの施設間搬送の割合も多い。 運航圏は釧路、根室、北見、網走地域で最大約 150km である。長距離飛行への対応として知床羅臼に は燃料を置き、北見地区では空港で給油を可能にしている。また、現在基地病院に給油施設がなく給油 のための頻回の空輸を行っているが、その頻度を減らし連続出動に迅速に対応するため、今年度中に基 地病院屋上ヘリポートに給油施設が完成予定である。 第 20 回日本航空医療学会総会 247 基地病院ポスター発表 P- 42 道北ドクターヘリ基地ではこうしている ○ 富田 健二、住田 臣造、小林 巌 旭川赤十字病院救命救急センター 道北ドクターヘリコプター基地病院 日本最北の道北ドクターヘリ運航圏は東西 220km、南北 300km、面積 27.500km2(近畿地方と同じ)、 4 つの離島を抱え人口は約 80 万人である。冬季活動のため保温対策を中心に器具の整備、開発を行って いる。この広大な運航圏を安全に運航管理するため北海道開発局のライブカメラ映像システム防災 WAN が基地病院 CS センターに設置し、飛行経路の天候チェックを機長、CS で映像情報確認を行って いる。さらに片道 150km を超える出動も 10%あり、地方自治体によりドクヘリ専用燃料補給施設を 3 か 所(利尻、枝幸町、紋別市)に設置し、燃料補給の体制を確立している。 活動おいては地域完結型医療の提供を主眼としている。消防要請に key word 方式は採用していない。 救急現場出動を最大の使命としているが、医師不足による地域医療維持の施設間搬送も使命として認め ており、出動件数の増加に伴い重複要請による未出動事案が増加する現実にある。 家族・関係者の同乗については原則認めず、離島、小児事案等の特殊な理由時のみ可としている。こ のため、検査・処置・治療についての承諾書を現場で取得している。 248 第 20 回日本航空医療学会総会 基地病院ポスター発表 P- 43 道央ドクターヘリ ~一人でも多くの命を救うために~ ○ 岩倉 由幸、高橋 功、奈良 理、清水 隆文、葛西 陽子、山本 環、 鈴木 裕子、阿式 正敏、畑山 尚子、宮崎 孝光、山口 博基 手稲渓仁会病院 2005 年 4 月 1 日全国で 9 番目に道央ドクターヘリは正式運航を開始した。 道央ドクターヘリは運行範囲が広域であることや、冬期間の降雪の問題など、他府県にはない特徴が ある。それ故、救急患者が発生してから初期治療を開始するまでの所要時間や搬送時間などが症例によ り大きく異なる。また運行範囲のほとんどが医療過疎地であり、内因性、外因性問わず、多種多様な症 例の治療と搬送を担当している。その中で今回は「連携」と「フライトナースの教育」について発表す る。 道央ドクターヘリでは、市内の 3 次病院などとの連携を図り搬送もスムーズになるようにしている。 また、定期的に消防と事例検討会を行い情報共有の場も設けており、11 月には 50 回の開催を迎える。 さらに、災害や複数傷病者の症例に連携が図れるよう道北・道東との連携も強化している。 フライトナースの質の維持に関してはまだまだ課題はあるが、毎月フライトナース会を開催し症例の 振り返りを行い、各個人がスキルアップできるよう努めている。また、OJT 期間中にしっかりとした実 践力が備わるよう、教育プログラムの見直しも定期的に行っている。 第 20 回日本航空医療学会総会 249 ご協賛いただいた企業・団体【広告、セミナー、展示含む】50 音順 アイ・エム・アイ株式会社 トーアエイヨー株式会社 朝日航洋株式会社 鳥居薬品株式会社 旭化成ファーマ株式会社 ドレーゲルメディカルジャパン株式会社 アステラス製薬 ながさき地域医療人材支援センター エアロファシリティー株式会社 西日本空輸株式会社 エーザイ株式会社 中日本航空株式会社 エドワーズライフサイエンス株式会社 ナビコムアビエーション株式会社 MSD 株式会社 ニプロ株式会社 エムピージャパン株式会社 日本製薬株式会社 株式会社大塚製薬工場 日本光電東北株式会社 小野薬品工業株式会社 ネスレ日本株式会社 ネスレヘルスサイエンスカンパニー 株式会社グッドケア 株式会社小池メディカル コヴィディエンジャパン株式会社 コンバテックジャパン株式会社 サンセイ医機株式会社 CSL ベーリング株式会社 塩野義製薬株式会社 一般社団法人全日本航空事業連合会 ヘリコプター部会ドクターヘリ分科会 250 ノバルティスファーマ株式会社 野村ヘルスケアサポート&アドバイザリー株式会社 学校法人ヒラタ学園 ファイザー株式会社 フィジオコントロールジャパン株式会社 株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン フクダ電子南東北販売株式会社 富士フイルムメディカル株式会社 第一三共株式会社 ボーズ株式会社 大正富山医薬品工業株式会社 マシモジャパン株式会社 武田薬品工業株式会社 ユーロコプタージャパン株式会社 田辺三菱製薬株式会社 株式会社 YOU 帝人ファーマ株式会社 レールダルメディカルジャパン株式会社 株式会社東機貿 株式会社ワコー商事 第 20 回日本航空医療学会総会 日本航空医療学会 会則 第1章 総 則 (名 称) 第1条 本会は日本航空医療学会(Japanese Society for Aeromedical Services)と称する。 (目 的) 第2条 本会はわが国における航空機による救急医療システムの確立とその普及を図り、さらには航空機に関連する 医学、医療の向上に貢献することを目的とする。 (事 業) 第3条 本会は前条の目的達成のため、次の事業を行う。 1.総会・学術集会の開催 2.調査、研究、教育、啓発活動 3.機関誌などの刊行 4.その他前条目的達成のために必要な事項 (事務所) 第4条 本会の事務所は下記に置く。 〒164-0001東京都中野区中野2-2-3 へるす出版事業部内 Tel:03-3384-8042 Fax:03-3380-8627 E-mail:[email protected] 第2章 会 員 (構 成) 第5条 会員は次の通りとする。 1.正 会 員:本会の目的に賛同し、本会の規約を守る個人 2.賛助会員:本会の目的に賛同し、本会の規約を守る会社、団体等 3.名誉会員:本 会の会長、理事等の経験者で本会に功績があり、理事会で推薦され、評議員会で 承認された者 4.功労会員:本会に対する功労があり、理事会で推薦され、評議員会で承認された者 (入 会) 第6条 本会に入会しようとする者は、当該年度の会費を添えて入会申込書により本会事務所に申し込むものとする。 (資格喪失) 第7条 会員が次の項目に該当する場合には、その資格を喪失する。 1.会費の滞納(3年以上) 2.退会の申し出 3.死亡または失踪 4.学会の名誉を著しく傷つけたとき 第3章 役 員 (役 員) 第8条 本会に次の役員を置く。 理事11名以上13名以内、監事2名。 (選 出) 第9条 本会の役員は、次の各項によって選任する。 1.選挙理事(7名)および監事(2名)は評議員の中から選挙により選ばれる(選挙の方法は施行細 則に定める) 。 2.理事長は選挙理事(7名)の互選(必要な場合は選挙による)により選出され、評議員会で承認さ れる。 3.非選挙理事(次項に定める非選挙理事を除く。 )は看護師関係者1名、運航関係者1名、消防関係 者1名、学識経験者1名とし選挙理事によって推薦され、評議員会の承認、理事長が委嘱した後、 251 総会に報告される。 4.会長、次期会長は理事会の議を経て理事長が推薦し、評議員会の承認を得て、非選挙理事となり、 総会に報告される。 (職 務) 第10条 本会の役員は、次の職務を行う。 1.理事長は、本会を代表し、本会の会務を統括する。 2.理事は、理事長のもとに理事会を組織し、会則にしたがって会務を執行する。 3.監事は、会務を監査する。 4.会長は、本会の学術集会を主催する。 5.次期会長は、本会の次期学術集会を主催する。 (任 期) 第11条 本会役員の任期は次の通りとする。 1.理事の任期は、選出された日の翌日から3年後の評議員会の日までとする。但し、再任を妨げない。 2.理事長の任期は3年とする。但し、再任を妨げないが、連続して2期を超えてはならない。 3.監事の任期は、選出された日の翌日から3年後の評議員会の日までとする。但し、再任を妨げない。 4.会長の任期は、前回総会・学術集会終了の翌日から、当該学術集会終了の日までとする。その後、 次期会長が会長となる。 第4章 評 議 員 (評議員の資格) 第12条 評議員は原則として以下の資格を有していなければならない。 1.引き続いて3年以上本学会の会員であること 2.航空医療についての知識、業績、もしくは実績を有していること (職 務) 第13条 評議員は評議員会を組織し、本会の議事について意見を述べる。 (選 出) 第14条 評議員は会員の中から評議員選出委員会が審査して選出し、理事会の議を経て理事長が委嘱する。 評議員の数は会員数のおおむね10%以内とする。 (任 期) 第15条 評議員の任期は、選出された年の定時評議員会から3年後の定時評議員会の前日までとする。但し、再任 を妨げない。 (資格の喪失) 第16条 評議員は正当な理由なくして評議員会を3年運続して欠席した場合は、評議員としての資格を喪失する。 第5章 顧 問 (顧 問) 第17条 本会は顧問をおくことができる。顧問は会員でなくてもよい。理事会で推薦され、評議員会の承認を得て、 理事長が委嘱し、総会で報告される。 第6章 会 議 (会 議) 第18条 本会の会議は理事会、評議員会、総会とする。 (理事会) 第19条 理事会は役員をもって構成する。 1.理事長は理事会を招集し、その議長を務める。 2.理事長は理事の2分の1以上、または監事からの請求があるときは、理事会を招集しなければならない。 3.理事会は、理事の3分の2以上の出席がなければ、議事を行い議決することはできない。委任状が 提出された場合は、これを出席とみなすことができる。 4.監事は、理事会において意見を述べることはできるが、議決に加わることはできない。 252 (評議員会) 第20条 評議員会は評議員、名誉会員、功労会員をもって構成する。 1.理事長は総会前に評議員会を招集し、その議長を務める。 2.名誉会員、功労会員は、評議員会において意見を述べることはできるが、議決に加わることはできない。 (総 会) 第21条 総会は会員をもって構成する。 1.総会は年1回開催し、次の事項を報告する。 ⑴ 会務 ⑵ 収支決算 ⑶ 収支予算 ⑷ その他理事会、評議員会で必要と認めた事項 2.総会の議長は会長が行う。 (議事録) 第22条 理事会・評議員会の議事録は作成され、議長および出席した理事2名が署名して事務所に保管される。 (委員会) 第23条 本会にはその事業の円滑な実施を図るため、次の各項に従って委員会を設置することができる。 1.委員会の設置および解散は理事会の議決による。 2.委員会の定員は7名を原則とし、必要に応じて増員することができる。 3.委員会の委員長および委員は、理事会の承認を得て理事長が委嘱する。 4..委員長および委員の任期は3年とする。再任を妨げないが、委員長の任期は2期までとする。任期 途中で選任された委員の任期は、同委員会委員の残存期間とする。 5.委員会の設置・解散および委員長・委員の委嘱ならびに委員会の活動状況は理事会・評議員会およ び総会に報告しなければならない。 第7章 会 計 (会 費) 第24条 本会の経費は会費をもって充てる。 1.本会の年会費は次の通りとする。 正会員 8,000円 賛助会員 50,000円 2.名誉会員、功労会員は会費の納入を免除される。 (会 計) 第25条 会計は、年度毎に理事会、評議員会で議決され、総会に報告される。 (会計年度) 第26条 本会の会計年度は毎年その年の10月1日より翌年の9月30日までとする。 第8章 補 則 (会則の改定) 第27条 本会の会則は理事会および評議員会の議決を経た上、総会に報告しなければ変更することはできない。 附 則 ・この会則は平成6年9月2日から施行する。 ・この改正は平成11年11月6日から施行する。 ・この改正は平成13年11月2日から施行する。 ・この改正は平成14年11月6日から施行する。 ・この改正は平成18年11月10日から施行する。 ・この改正は平成19年11月29日から施行する。 ・この改正は平成20年4月1日から施行する。 ・この改正は平成21年11月13日から施行する。 ・この改正は平成22年7月30日から施行する。 ・この改正は平成23年11月11日から施行する。 253 日本航空医療学会 施行細則 第1章 評議員の選出 第1条 評議員になるための審査を受けようとする者(以下、「評議員候補者」という。 )は、当該審査の行われる 期日において、会則第12条に定める資格を全て具備していなければならない。 第2条 評議員は会員であることを前提として、理事会が必要と認めた場合には、会則第12条に定める資格を具備 していなくても、評議員に理事会が推薦することができる。 第3条 理事長は、評議員選出が行われる年の6カ月以前に発行される機関誌に、以下の各項を含む公告を記載 する。 1.選出する評議員の総数 2.審査申請書類の交付請求締め切り期日 3.審査申請書類の受理締め切り日 4.その他、立候補に必要な条件 第4条 評議員候補者は、受理締め切り日(当日発送まで有効)までに審査申請書類を郵送(書留)にて評議 員選出委員会(以下、「選出委員会」とする。)に提出しなければならない。 第2章 評議員候補者が具備すべき資格 第5条 評議員候補者は会則第12条に定めるものの他、以下の資格を具備すべきものとする。 1.連続して3年以上本学会の正会員であり、かつ会費を完納していること 2.評議員1名の推薦があること 3.航空医療に関しての業績(論文、学会発表等) 、実績(業務経験、役職等)を有していること 第3章 選出委員会 第6条 選出委員会は、評議員候補者から申請された審査申請書類を審査し、その結果を理事会に報告する。 第7条 選出委員会は、以下の人員により構成する。 1.選出委員会は理事4名、評議員3名、合計7名によって構成される。 2.委員の選考においては、関係する各領域から選考するよう配慮する。 3.委員長は理事とし、委員は理事会で決定され、評議員会に報告される。 第8条 選出委員の任期は3年とする。再任を妨げないが2期を超えてはならない。交代は半数交代を原則とする。 第4章 評議員選出の手順 第9条 選出委員会は、以下の各項に従う。 1.選出委員会は委員長が招集する。 2.選出委員会は、選出委員の3分の2以上の出席をもって成立する。 3.文書による出席の表示は出席と認めない。 4.選出委員会の議長は、委員長がこれを務める。 5.選出委員会で審議する議事は、出席者の過半数をもって決す。可否同数の場合は、委員長が決する。 6.選出委員会の議事録は、議長が作成し、議長および出席者代表2名が署名してこれを事務所に保管 する。 7.選出委員会の議事録は原則として公開しない。 第10条 理事長は理事会の議を経て評議員候補者に審査の結果を文書にて通知する。 第11条 評議員の再任候補者も通常の手続きを経て、評議員とし再任される。 254 第12条 評議員選出に関して疑義が生じたときは、理事会で審議する。 第5章 評議員の任期 第13条 評議員の任期は、選出された年の定時評議員会から3年後の定時評議員会の前日までとする。 第6章 監事・選挙理事の選出 第14条 理事長は、選挙が行われる年の4月末までに発行される機関誌に、以下の各項を含む公告を掲載する。 1.監事・選挙理事立候補に必要な書類の種類 2.立候補書類の請求と送付の仕方 3.立候補書類の受理締め切り日 4.その他、その必要な条件 第15条 監事・選挙理事候補者になろうとする者は、前条に示された各項によって屈出をしなければならない。 第16条 監事・選挙理事は、選挙が行われる年の定期評議員会に出席した評議員の投票によって選出される。欠 席する評議員の委任状による投票は認めない。 第17条 監事2名・選挙理事7名の投票は監事2名連記・選挙理事7名連記とし、監事上位2名・選挙理事上位7 名を監事・選挙理事とする。 第18条 監事・選挙理事に欠員が生じた場合は、選挙前は欠員が判明した時点で評議員に欠員を連絡し、2週 間を限度として再募集を行う。選挙後は、監事・選挙理事の場合は、選挙で次点の者が追加される。 次点が不在の場合は、次回の選挙まで欠員のままとする。追加された役員の任期は、定められた期間の 残存期間とする。 第19条 選挙の手統きは、この細則に定めるものの他、監事・選挙理事選出に関する細則内規により行う。 第20条 監事・選挙理事候補者数が定数のときは、候補者全員を監事・選挙理事とし、投票は行わない。 第21条 監事は、選挙理事の選出管理に参加し、意見を述べることができる。 第22条 監事・選挙理事選出に関して疑義が生じたときは、理事会で審議し決定する。 第7章 非選挙理事の選出 第23条 非選挙理事は、会則第9条により4名とし、任期は3年とする。 第24条 非選挙理事は、関係団体の推薦を原則とするが、推薦のない場合は、選挙後の理事長を決める新選挙 理事による理事会において合議され、推薦、決定される。 第25条 非選挙理事に欠員が生じた場合は、理事会で推薦、決定される。追加された非選挙理事の任期は、定 められた期間の残存期間とする。 附 則 ・この細則は、平成21年11月13日から施行する。 ・この改正は、平成22年7月30日から施行する。 255 【会則・施行細則の改正について】 平成25年1月9日に開催されました理事会で、規則・施行細則が下記の通り追加承認されました。 平成25年11月14日に開催される評議員会で承認された後、正式に変更される予定です。 日本航空医療学会 会則 第4章 評議員 第15条 評議員の任期は、選出された年の定時評議員会から3年後の評議員会の前日までとする。 但し、再任を妨げない。 【下記を追加】 理事会で推薦された評議員の任期は、評議員選出委員会で選出された評議員の任期に準じる。 日本航空医療学会 施行細則 第6章 監事・選挙理事の選出 【下記を第23条として追加。現在の第23条を第24条、第24条を第25条、第25条を第26条とする】 第23条 監事、理事に同一人が同時に応募することはできない。 日本航空医療学会雑誌 2013 Vol.14 No. 2(通巻 32 号) 第 20 回 日本航空医療学会総会 プログラム・抄録集 2013 年 10 月発行 発 行:第 20 回日本航空医療学会総会事務局 会 長:田勢長一郎 〒 960-1295 福島県福島市光が丘 1 番地 福島県立医科大学医学部 救急医療学講座 TEL:024-547-1581 FAX:024-547-3399 日本航空医療学会事務局 〒 164-0001 東京都中野区中野 2-2-3 株式会社へるす出版事業部内 TEL:03-3384-8042 FAX:03-3380-8627
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