テニストレーニングガイド (日本語版) サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 ー 目次 ー 1.はじめに 5 本テキストの対象 6 トレーニングは何故必要か 8 2.身体運動の機能を知ろう 12 運動発生のメカニズム 13 肩関節 21 股関節 28 膝関節 33 足関節 36 手関節 38 肘関節 40 体幹部 43 3.テニスに必要な体の動き 45 リストワーク 46 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 フォアハンドストローク 56 片手バックハンド 62 両手バックハンド 70 ボレー 73 スマッシュ 76 サーブ 80 4.トレーニングメニュー 85 基礎知識 86 体幹部のトレーニング 94 上肢帯関節のトレーニング 95 肩関節のトレーニング 96 肘関節のトレーニング 97 手関節のトレーニング 98 股関節のトレーニング 99 膝関節のトレーニング 100 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 足関節のトレーニング 101 自重トレーニング 103 ダンベルエクササイズ 112 バーベルエクササイズ 133 トレーニングマシン 154 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 はじめに サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 本テキストではテニスのプレーを向上させるために筋肉 トレーニングの必要性と、具体的にプレーに必要な筋肉の 解説及びトレーニングの手法について解説を行います。ま たストローク、ボレーなどの各ショットでの代表的な フォームについて、現代テニスで用いられている身体動作 の特徴を解説し、それぞれに必要な筋肉とその動きを明確 にします。 本テキストの対象 一般テニス愛好家、ジュニア選手、選手、コーチ、テニ ス研究者を想定しています。そのため、レーニング入門者 にも分かりやすいように、第2章では筋肉トレーニングにつ いての基礎的な考え方と、各部位ごとの運動の仕組みにつ いての説明します。各パーツごとの運動を理解すること で、第3章で開設する具体的なショットごとの体の働きを理 解することが出来るでしょう。 第3章ではショット別の身体動作の特徴について説明し ます。トップ選手のフォーム映像を3次元解析した結果を元 に、これまでのテニス指導書には説明されることのなかっ サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 た、具体的な身体動作について説明します。一般愛好家お よび選手など学習者の他にも、テニス研究者、指導者にも 新しい知見をもたらすことでしょう。 第4章では筋肉ごとに適したトレーニング方法をいくつ か紹介します。専用のマシンを使う方法、バーベルやダン ベルを使う方法、器具を使わずに出来る方法なども紹介し ます。その中にはジム以外の場所、自宅でも手軽に行える 方法を見つけることができるでしょう。簡単なトレーニン グ方法はトレーニング入門者でも気軽にはじめることがで きるでしょう。 選手など専門的にトレーニングを行う方には、トレーニ ングによる効果の対象部位が明確になることで、正しいト レーニング意識を持つことができること、そしてトレーニ ングを行うことへのモチベーションの向上につながること でしょう。 ぜひ本テキストを参考に、テニスの技術を磨いてくださ い。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 トレーニングは何故必要か プレーを持続するための基礎体力 テニスのプレー中に、高いレベルを持続しながら数時間 続けるのには、それにふさわしい基礎体力は必須であると 考えます。 プレーの質を維持するだけの体力が続かなければ、試合 の序盤は調子が良くても中盤以降は失点を繰り返すばかり になることもあるでしょう。一日のプレーを通して、自分 の持っているテニスのレベルを高い状態で維持し続けられ るだけの基礎体力を備えておくべきだと考えるのです。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 理想のフォームを実現するための基礎筋力 テニス指導においては、理想的なフォームがなかなか再 現できない場合が少なからず見られます。指導者の示すと おりのフォームを再現できる人と出来ない人との差はどこ にあるのでしょうか。基礎的な筋力の不足が、この要因の 一つに考えられます。フットワークの力強さ、素早さ、リ ズミカルな動きは、年齢が上がる従って難しくなる傾向が あります。脚力の低下が原因となっているのでしょう。肩 関節の動きについて特に女性では投球動作のように特定の 動作への苦手が存在します。これも多くは特定の筋肉の筋 力や可動域の範囲が不足していることに起因するでしょ う。 理想とするフォームを自分のものにするためには、それ ぞれの身体部位を適切に動かすだけの基礎的筋力が不可欠 であると言えるのです。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 トレーニングを通して個々の筋肉への意識を養う 第四章では各ショットで必要な筋肉を説明します。それ ぞれの筋肉がショットでどのような役割を持っているのか を明確に知ることは、プレー中にそれぞれの筋肉の発揮す るタイミングや力量へ意識を注ぐこととが出来るようにな ります。そして理想的なフォーム動作をより確実に再現す ることが出来るようになるでしょう。 筋肉トレーニングを通して、それぞれの筋肉の働きを体 感を持って理解することが出来るようになります。また意 識的にそれぞれの筋肉を動かすことへの感覚を磨くことも 出来るでしょう。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 筋肉は大きく伸ばしてから収縮することで大きな力を発 揮します。そのためにも筋肉トレーニングとストレッチン グを積極的に取り入れることは運動のパフォーマンスを向 上させるために効果的と言えるでしょう。 テニスのパフォーマンスを向上するために是非トレーニ ングに取り組んでみてください。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 身体運動の機能を知ろう サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 運動発生のメカニズム 筋肉は収縮するときに力を発揮する 一般的に筋力の発生は筋肉の収縮する動きによって力が 発揮されるとされています。筋肉が収縮するときにそれが 付着する骨格を動かすことで、実際の運動となって目に見 える形となって表れてきます。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 動かない壁を押すような動作では力を入れても骨格の動 きは目に見えませんが、筋肉が隆起する様子によって力が 発揮されていることを確認することができます。 縦軸に筋肉によって発揮される筋力の大きさ、そして横 軸に筋肉のリラックスしている時の長さを100%とした時 の長さとして、筋肉の収縮の度合いによって筋力がどのよ うに変化するかをグラフにして表しています。 Thompson&Floydによれば、筋肉の長さが100%から 130%の範囲で最大の筋力を発揮し、長さが50%から60% サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 に短縮されるとその筋力は本質的にゼロになると報告され ています。つまり筋肉はその長さが長い区間で使うほうが 筋力としては大きな力を得ることが可能だということにな ります。ストレッチングによって最大伸長を得ることと、 運動中はできるだけ筋肉を伸ばした状態から動かし始める ことが、より大きな力を発揮するためのヒントとなりま す。 体の中のてこ 筋肉の収縮によって骨格を動かす時に、「てこの原理」 によって考えることが多い。テコの原理には3つの種類があ ります。それぞれの支点、力点、作用点の位置関係によっ て区別されます。 肘関節、膝関節などで見られる大きく力強い動作では第 3種のテコの原理によると考えることができます。この時に 同じ負荷でも関節の屈曲角度によっては筋力の大きさに違 いが生じます。トレーニング時に筋肉へ負荷を与える時 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 や、プレー中でパワーを得るために適正なフォームを作る ときに、この角度と負荷の関係が重要になります。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 図のように関節角度が狭くなる(下)と肘関節を開こう と働く力は小さくなります。特にダンベルやバーベルを使 うトレーニングではこの原理を考えながらフォームやス ピードを調節して効果的なトレーニングを行う必要があり ます。より負荷を感じるフォームとそのフォームを長い時 間かけるほど筋肉への刺激が高まりトレーニングの効果が 向上するのです。 旋回力(トルク)の発生 筋肉そのものが伸びたり縮んだりする動きは、直線運動 になります。筋肉の直線運動は骨格構造と てこの原理 の作 用で屈曲運動に変換されます。腕を曲げたり膝を曲げたり 擦る動きがこれにあたります。この他にプロネーションや 体を捻ったりという旋回運動があります。直線運動を旋回 運動に変換する原理を学ぶことで、体の使い方も変わるで しょう。ここでは旋回運動が発生するメカニズムについて 説明します。まずは旋回運動についてのビデオを見てくだ さい。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 肩関節、上腕骨の内旋運動は大胸筋および広背筋による ところが大きいと考えます。ピンクのベルトは大胸筋に相 当すると考えてください。最初はピンクのベルトつまり大 胸筋が収縮することで上腕が内旋します。その結果、手の ひらが手前に向かって動くのが分かります。 次に肘が肩よりも上になった場合です。大胸筋が収縮し ても上腕の内旋が小さいことが分かりま す。これは上腕骨 に対する大胸筋の付着している角度に依存しています。上 腕と大胸筋の角度が180度に近くなるほど、いくら大胸 筋が収縮しても上腕を内旋させる力は弱いものとなりま す。サーブやスマッシュで肘が上がりすぎたフォームにな ると上腕は内旋しにくい、いわゆる手打ちになりやすいの はこれが原因となるのです。肘が上がりすぎたまま無理に 運動を続けることは、場合によっては肩関節を痛めてしま うかもしれません。 次に肩関節の固定力が弱く上腕骨の位置が自由に動く場 合です。この時に大胸筋が収縮すると上腕骨が内転するこ とが分かりま す。上腕骨が内旋できるためには上腕骨の位 置が変化しないことが不可欠と言えます。フォアハンドス トロークで腕が胸よりも前に出てしまうケースでも同様に サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 上腕骨は内旋されにくいでしょう。インパクトの直前まで 上腕骨の位置は胸よりも後方に保ったまま上腕の内旋運動 を発揮させるようにします。肘を出来るだけ後ろに 引っ 張ったままボールを打つように意識してもよいでしょう。 そして最後に、大胸筋の緊張が続いている状態で肩関節 が上昇する場合です。ここでも上腕骨が内旋することが分 かります。大胸筋の骨格への付着部両端の距離が長くなる ことで、上腕骨を内旋する作用が働きます。これは大胸筋 が更に収縮したのと同じ効果が得られたことになります。 このメカニズムは対象とする骨格と筋肉の角度によって も、発揮する旋回力の大きさに影響を及ぼします。筋肉の 向きと骨格の長軸の向きが近づくほど、筋肉の収縮による 旋回力は小さいものとなります。骨格と筋肉がほぼ直角の 関係を保つことで、旋回力は最大となるでしょう。 このようなメカニズムは肩関節の他に股関節でも見るこ とが出来ます。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 二関節筋の綱引き運動 2つの関節にまたがる筋肉を二関節筋と呼びます。二関 節筋肉の収縮は2つの関節の屈曲に作用します。他の一つだ けの関節をまたぐ筋肉にはない、二関節筋独特の働きがあ ります。ここでは腓腹筋を例にとって説明します。 腓腹筋が収縮することで、足関節が背屈しているときに は膝関節が屈曲します。反対に膝関節が伸展しているとき には足関節が底屈します。一つの筋肉を通して2つの関節が まるで綱引きのような関係で動作しているのが分かりま す。例えばサーブのトロフィーポーズのように膝関節が屈曲 してかつ足関節が背屈しているフォームから、腓腹筋の長 さを変えずに膝関節だけが伸びた場合には、綱引きの綱の 反対側にある足関節は自動的に底屈へと動かされていくの です。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 肩関節 ここでは肩関節における動きの中で、特にテニスのプ レーを向上するのに有効なものを取り上げます。 内旋と外旋 ストロークやサーブの動作では特に上腕骨の内旋運動が 重要になります。肩関節を外旋状態にしたあと、これを中 立に戻すように内旋方向に旋回させます。このときの旋回 力の発生メカニズムは次の2つが考えられます。 • 筋肉の収縮によるもの 前節でも説明したように、肩関節では上腕骨に付着して いる大胸筋、広背筋の収縮によって上腕骨の旋回力が発生 します。大胸筋と広背筋の収縮だけでは上腕骨の内転動作 が大きくなりますが、ここに上腕骨と肩甲骨の位置を保持 する他の筋肉との協調動作が必要になります。上腕骨の位 置を保ちながら大胸筋と後背筋の収縮が進むことで、肩関 節は力強く内旋へと動作することが出来るのです。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 上腕つまり肩関節の内旋力を大きくするためには、事前 に肩関節をの大きく外旋させておくことにあります。これ によって大胸筋および広背筋が大きくストレッチされま す。大きく引き伸ばされた筋肉ほどその収縮時にはより大 きな力が発生します。それゆえフォアハンドストロークや サービスのバックスイングでは肩関節を大きく外旋させる のがよいでしょう。例えばサーブの動作ではラケットヘッ ドが大きくダウンすることで肩関節がよく外旋されます。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99 この時の外旋の角度は、トップ選手ほど非常に大きなも のであることがわかります。一般では下図左側のポーズで すが、選手達は下図右側に示すような肩関節が過外旋の状 態になるまで上腕がねじられているのが見られます。 サンプル版 Copyright, Tennis Resort 99
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