お客様事例:株式会社 ゴルフダイジェスト・オンライン

Case Study
SAP AWARD OF EXCELLENCE 2012
プロジェクトアワード 優 秀 賞 受 賞
SAP® ERP Solution
株式会社 ゴルフダイジェスト・オンライン
写真:Golf course : kawana hotel golf course / fuji course 16H par3 185Y photographer : tsukasa kobayashi
日本最大級のゴルフ総合サイト運営で知られるゴルフダイジェスト・オンライン。
2000 年の創業以来、急成長を遂げてきた企業である。しかし、急成長にともなう弊害もあった。
今後10 年の事業拡大を見据えたとき、従来の基幹システムが足かせとなることが予期し得たのである。
経営判断に必要な情報の粒度・タイミングともに足りず、これでは一層の成長戦略の妨げになる。
そこで主要システムを一新するため、SAP® ERPを軸に複数のシステムを統合する大規模プロジェクトが
立ち上がった。プロジェクトは後に「G10」と呼ばれた。
課題
●
「グローバル化」
「イノベーション」をキーワードとする今後 10 年の成長戦略を実現する
ほぼすべての社内システムの再構築
●
必要な粒度、タイミングで情報の蓄積が可能になる経営情報の見える化
●
主要なものだけでも 7 つのシステムの連携、十数社のベンダーが関わる複雑なプロジェクトの推進
ソリューション
● SAP® ERP をコアシステムとして採用
● EC 、
顧客管理などのパッケージ製品と SAP® ERP を EAI 製品で統合しトータルソリューションを構築
成功のポイント
●
推進チームによる各個別プロジェクトの独自性を配慮した上でのプロジェクト全体推進
●
システム全機能・IF を明記したグランドデザインを策定した後で、
各システムの設計を開始することで個別調整負荷を削減
●
方法論 (ABeam
●
内部オフショア拠点を活用することでの効率的な開発
Method) および業界テンプレート (Industry Framework for Retail) の活用
Case Study
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
SAP® ERP Solution
基 幹 業 務 シ ス テ ム の 全 面 刷 新 に より 、
成 長 を 続 け る GD O の 経 営 改 革 を 支 援 。
SAP® ERP を中心に複数のシステムを統合。
事業という3主要事業領域で連携する必要がある。ABeamはまずこ
企業の成長のスピードに見合う
システムの刷新が必要に
の全領域を対象に、課題抽出および改革テーマの定義を行った。
「その作業は膨大で、我々
GDO情報活用推進部部長の志賀智之氏は、
にとっても初めてのこと。しかし、ABeamさんはそれを短期間で
ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)のビジネスモデル
は、ゴルフ関連用品の販売を行う「リテールビジネス」
、ゴルフ場
やり遂げてくれました」と振り返る。
の予約を中心に行う「ゴルフ場ビジネス」
、情報サービス・広告を
時を同じくして、GDOでは中期経営計画が策定されていた。キー
行う「メディアビジネス」の3つの事業で、ゴルフのワンストップ・
ワードは「グローバル」と「イノベーション」である。グローバル
サービスを展開している点に特徴がある。GDOでは、これをトライ
化に関しては、今後急拡大が予想される中国を含めた東アジアのゴ
シクルモデルと呼ぶ。集客は日本最大級のゴルフ総合サイトで行う。
ルフ市場での事業展開、世界最大のゴルフ市場である米国で「GDO
2000年の創業以来、急成長を続けてきたGDOだが、2008年の
トライシクルモデル」展開を目指す。イノベーションに関しては、
後半から、レガシーシステムによる業務の効率低下が問題視される
グローバル化に伴うリテールビジネスの展開、ゴルフ場向けの新規
ようになった。現場で特に懸念されたのが、会計システムとの連携
ビジネスの立ち上げ、既存・新規アライアンス先との提携効率化な
だった。WEBサイトやリアル店舗での売上げについては個々のシス
どが必要となる。
これらを踏まえ幾度もミーティングを繰り返した結果、大日氏は
テムが自動化されているものの、会計システムへは経理担当者が手
で再入力していた。しかもデータは膨大かつ煩雑なため、複数の売
今後10年の成長戦略を実現する上では、すべてのシステムを刷新
上げをまとめて月次で処理するしかない。これでは日々の売上デー
する必要があると理解するに至ったという。
タなど詳細でリアルタイムな経営情報の把握はできない。入力ミス
「それで、まずは事業の中心でもあるリテール事業のシステムも
も懸念された。
刷新することになりました。ABeamさんには大手家電量販店の実
「我々は急成長したため、その場その場でシステムを継ぎ足して
績があることがわかっていたので、すぐにリテール事業システムの
きました。いつ、誰が、何の目的で入れたのかさえ曖昧、という状
プロジェクト、GR(ゴルフリテールシステム)プロジェクトにも関
態です。これでは、今後の成長戦略を妨げてしまうという危機感が
わってもらうことにしました」
(大日氏)
。
ありました」とGDO上級執行役員兼システム戦略担当の大日健氏
こうしてMS、GRなど各プロジェクトはGDOの全システムを刷新
はいう。
するG10プロジェクトとして生まれ変わった。2009年11月のこと
そこで、2009年6月に経営情報システムを刷新するMS(マネジ
である。
メントシステム)
プロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトが、
グランドデザインの策定が
プロジェクトの成否を握る
後の全システム刷新という大規模な「G10」プロジェクトの発端と
なる。
一方、基幹システムのベンダーについては9社コンペが行われた。
10 年後の成長戦略を見据えた
全システム刷新プロジェクト「G10」スタート
選ばれたのはSAP ERPを提案したABeamだった。SAP ERPを導入
する企業規模としては、現時点のGDOでは時期尚早、との声もあっ
当初、MSプロジェクト推進を支援したのがABeamだ。マネジメ
た。しかし、急成長するリテールビジネスを中心とした事業、そし
ントシステムは、リテール事業、ゴルフ予約事業、メディア・広告
て10年後までを見据えると、SAP ERPが必要だった。企業の成長ス
スケジュール
Project
Management(MS)System
Golf Retail(GR)System
Customer Support(CS)System
9
2010
10 11 12
1
2
基本構想策定
3
4
要件定義
基本構想策定
グランドデザイン
要件定義
要件定義
5
9
10 11 12
J-SOX 支援
2
基本設計
開発、テスト、移行、稼働
基本設計
基本
設計
基本設計
3
4
5
開発、テスト、移行、稼働
開発、テスト、移行、稼働
開発、テスト、移行、稼働
開発、テスト、移行、稼働
マスターチーム構想支援
移行計画
策定支援
移行チーム支援 開発、テスト、移行、稼働
運用設計
運用サポート
8
1
開発、テスト、移行、稼働
Membership Management(MM)
クロスファンクション チーム支援
2011
8
基本設計
基本構想策定
Golf Start(GS)System
7
6
構想支援
要件定義支援
開発フェーズ対応
6
7
8
稼動後サポート
PMO 支援
2009
8
9
Case Study
株式会社
ゴルフダイジェスト・
オンライン
情報活用推進部
部長
株式会社
ゴルフダイジェスト・
オンライン
システム部
部長
株式会社
ゴルフダイジェスト・
オンライン
リテールビジネス
ユニット事業戦略部 部長
大日 健氏
志賀 智之氏
渡邉 信之氏
木村 暁氏
ピードに素早く対応し、主要事業のリテール部門に対応でき、将来
邉信之氏は「当初ABeamさんには、プロジェクト体制の中でも主
の拡張性に対応し、かつ安定性が期待できると考えられたからだ。
な推進セクションにのみ入ってもらうつもりでしたが、結果的には
調整役としてすべてのセクションに入ってもらいました」という。
この複雑なプロジェクトの推進にはABeamの知見が必要とされ
た。大日氏は「ABeamさんには単なるシステム導入ベンダーとし
ABeam製造/流通統括事業部リテール/サービスセクタープリン
てではなく、プロジェクト推進のパートナーとしての役割を期待し
シパル・執行役員の梶浦英亮は「システム間の調整をどうとるか、
ました」と語る。
またさまざまなクオリティーのベンダーの足並みをどう揃えるか。
プロジェクト推進の要となったのがグランドデザインだ。ここで
そういったノウハウに関しては、現在までの経験が蓄積された
ABeamは業務やシステムの可視化をサポートした。この作業で明
らかになったシステムの機能数は実に100を超えた。また、システ
ム間のインターフェースは、社外とのシステム連携を含め500本ほ
ABeam Methodという独自の方法論があるため、プロジェクト推
どあった。
ションも必要になる。GDOリテールビジネスユニット事業戦略部
進についても最適なソリューションが提供できました」と語る。
特に大規模プロジェクトであれば、時に丁々発止のコミュニケー
部長の木村暁氏は、
「ABeamさんとの初顔合わせのとき、
“私はコ
MSプロジェクト、GRプロジェクトの基本構想から、G10のグラ
ンドデザインと、この一連の基本プランの策定が今後のプロジェク
ンサルティング・ファームを信用していない”と宣言しました(笑)
。
トの成否を決めると判断、各システムの設計に入る前に、機能とマ
最初の報告書で、型どおりのものがあがってきたのを読んで、担当
スターデータの洗い出し、ならびにそれぞれの連携を定義した。
の橘さんに“自分の言葉ではっきりと表現してほしい、遠慮せずに
このグランドデザインの結果を踏まえ、最終的には要件定義が完
良い悪いも明確にして欲しい”と注文をつけました。それ以来、
成した頃、GDOは大幅なスケジュールの見直しを決断した。複数
ABeamが感じた問題点を明確に指摘した報告書があがってくるよ
のシステムが密接に連携するプロジェクトであるため、一つの工程
うになりました。そのため、それを解決する対策が理解しやすく、
が遅れただけで計画通りに進まなくなるリスクが高いと判断した。
また現場にそれを伝えることが容易になりました」という。その
「しかも、
テストに充てられる期間も十分ではありませんでした」
(大
ABeamプロセス&テクノロジー事業部SCMセクターシニアマネー
日氏)
。推進チームは急遽、各システム間の整合性を十分に確認で
ジャーの橘知志は、
「表現は時にきつくなりますが、こちらも思い
きる調整期間を設けること、結合テストに当初の予定通り3カ月か
切って仕事ができるようになりました。私にも、プロジェクトを成
けることなど、スケジュールの後ろ倒しを決めた。無理に強行すれ
功させたいという強い思いがありましたから」と当時を懐かしむ。
ば失敗してしまうリスクを、未然に防いだのである。
現地の視察でオフショア開発の不安を解消
低コスト・短期化に貢献
複数業態・多企業参画の大規模プロジェクトを
ABeam Methodにより効率的に管理・推進
開発フェーズでも大きな決断がなされた。オフショア開発だ。
プロジェクトの体制づくりにも、細心の注意が払われた。G10プ
SAP ERPを利用する販売・在庫管理、会計システムのアドオンは上
海の ABeam・ グロー バル・ ディ ベロッ プ・ センター(ABeam
GDC)で開発した。
実は、GDOはオフショア開発で過去に失敗したトラウマを持っ
ていた。木村氏は当時の懸念をこう語る。
「ABeam GDCは能力成
ロジェクトは、主要なものだけをとっても7つのシステム、そして
10社以上のベンダーが関わる。したがって意思疎通のしかたひとつ
をとっても、細かくルールを設定していく必要があったのだ。G10
推進チームのプロジェクトマネージャーであるシステム部部長の渡
プロジェクト全体概要図
Webフロント
My GDO
口コミ
スコア管理
ゴルフ場予約サイト
ゴルフマガジン
会員・ポイント管理システム
予約売上、
ゴルフ場債権
モバイル
SNS
ポイント付与使用実績
ゴルフショップサイト
マスタ、
注文、
決済
SAP ECC
ワークフローシステム
従業員経費、各種申請
FI
BI/DWH
CO
倉庫管理システム
SD
マスタ、
入出荷、
棚卸
SAP BPC
MM
店舗管理システム
マスタ、予算・実績
マスタ、
店舗販売、
買取
EAI
外部連携
カード会社
外部チャネル
仕入先
アフィリエイト
ゴルフ場
ポイント提携先
SAP® ERP Solution
株式会社
ゴルフダイジェスト・
オンライン
上級執行役員 兼
システム戦略担当
Case Study
ABeam の中心メンバー
SAP® ERP Solution
製造 / 流通統括事業部
執行役員 /プリンシパル
梶浦 英亮
プロセス&テクノロジー
事業部
SCMセクター
シニアマネージャー
プロセス&テクノロジー
事業部
CRMセクター
マネージャー
橘 知志
加治 達也
熟モデルのCMMIレベル5を達成していることはわかっていました。
プロセス&テクノロジー
事業部
プロセス&テクノロジー
事業部
FMCセクター
FMCセクター
守屋 英樹
藤田 晋
マネージャー
マネージャー
そこでまず、全体で約500本あるシステム間インターフェースご
それでも過去のトラウマから、こちらの要望や意図が正しく伝わっ
とに主管チームを明確にし、その一方で、業務フローやWebサイト
ているか、開発チームのモチベーションはどうか、などさまざまな
における顧客の動きをシミュレーションしたテストケースを作成し
不安がありました。そこで、志賀部長とともに上海の現場に視察に
た。 その数は優に 3,000 を超えた。 単なる疎通テストではなく、
行くことにしたんです」
。
実践に近い結合テストを行ったのだ。
上海では、約20人の中国人エンジニアがGDO向けの開発を行っ
「結果的に、プロジェクト早期の段階でリスケジュールを敢行し
ていた。 スキルはもちろん、 日本語も堪能な精鋭だ。 さらに
たのは正解でした」と大日氏。この後の総合テスト、
ユーザートレー
ABeam本社のスタッフが常駐し、設計と開発のズレが起こらない
ニング、稼働後の運用設計などといった怒濤のスケジュールも、
よう管理していた。
おかげで粛々と進んだ。3.11の震災も、ABeamの知見を活用し2日
GDOはエンジニアと直接、面談をした。ABeam担当コンサルタ
間でリカバリー案を作成、乗り切った。
ントは抜き、である。設計書の理解度や、仕事に対する意識やモチ
4月からは全社員をテスターに、ユーザー受け入れテストが始まっ
ベーションを確認するためだ。どのエンジニアも知識は高く、わか
た。現場ユーザーにとって、全システムの刷新とは、すなわち業務
らないことはわからないとはっきり述べた。志賀部長は「わかった
フローの刷新をも意味する。それはG10の狙いでもある。現場への
ふりや臆測が引き起こす開発ミスが怖い。みんな正直に応えてくれ
啓蒙活動・トレーニングも重要だった。
「現場には、新しい職場に
たので安心しました。それどころか、テクニカルな能力は日本人よ
転職したつもりでやってくれといいました」と木村氏。
り高いと感じたほどです」と視察の印象を語る。
膨大なテストケースを作成した結合テスト
現場ユーザーサポートを乗り越えて
2010年12月、各機能領域のシステムはそれぞれ開発・単体テス
こうして幾多の困難を乗り越え、新システムは2011年7月に稼働
した。
「現在は、今後10年間へ向けた成長戦略の土台がやっとできたと
ころです。10年後は売上げ2,000億円の達成を目指しており、今が
スタート地点です。刷新した基幹システムを、どう使いこなしてい
トを終えた。次に各システムをつなぐ結合テストに入る訳だか、
くのか。また使いこなさないと今回のG10プロジェクトの意味があ
他システムとのデータ受け渡しが正しく行われているかを確認する
りません。ABeamさんには、活用面でもサポートしてもらいたい」
。
作業は、難航が予想された。期限は2011年2月末である。複数ベン
ダーが開発に関わるマルチベンダー体制では、責任の所在が曖昧に
そう抱負を語る大日氏の目には、未来の成長戦略が確かに見えて
いる。
なりがちだ。バグや機能漏れが発覚した際の対策に遅れが出る危険
もある。
● VOICE(ABeam への評価)
「 スケジュ ー ルの見直しの時、 本音で ABeam さんと話ができました。
そうした積み重ねによって、パートナーシップとしての信頼関係が築けた
●ユーザーカルテ
会社概要
会社名
と思います。我々のニーズやウォンツを的確に把握し、スタッフを巻き込
みながらプロジェクトを効率的に推進してくれました」
(GDO 大日氏)
「我々もこれほど大きなプロジェクトは初めて。ABeam さんは一つひとつ
所在地
〒105-0001 東京都港区虎ノ門3-4-8
設 立
2000年5月
事業内容
リテールビジネス、ゴルフ場ビジネス、
メディアビジネス
の案件に丁寧に、最後まできちんとサポートしてくれました。まだまだ、
資本金
今後もこのシステムを効率的に運用するための業務改革や現場の教育が
売上高
必要になってきます。ABeam さんのサポートに期待したいですね」
社員数
を、 先に空気を読んで提案してくれました。 フェ ー ズごとにさまざまな
Methodを持っている強みもありますね。マネージャー部門と現場スタッフ
の統制や管理のさじ加減もうまくコントロールしてくれました」
(GDO 渡邉氏)
8億2400万円(2011年7月31日現在)
131億6500万円(2010年12月期)
378名(2011年3月31日現在※)
※臨時雇用者数含
(GDO 志賀氏)
「プロジェクト推進の手法は一つではないと思いますが、僕がやりたいこと
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン
(GDO)
プロジェクト概要
概要
今後10年を見据え、SAP ERPを
基幹システムとする全システムの刷新。
期間
2009年8月∼ 2011年7月
最大27名、開発メンバー約12名
ソフトウェア SAP® ERP他
スタッフ数
「G10プロジェクトへの熱意は誰にも負けないつもりでいましたが、まさか、
社外(ABeam)に僕以上の熱意の人がいたことに驚きました。ある意味よい
ライバルでもあり、システムをどう構築するのがベストか、常にABeam の
橘さんと戦っていましたね(笑)
。良い経験ができました」
(GDO 木村氏)
※本リーフレットに掲載の情報(企業情報・部門名・タイトルなどを含む)は、初版製作時のものです。
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