海外漁業協力 № 75 2016.9 公益財団法人 海外漁業協力財団 世界の魚市場 パプアニューギニア独立国モロベ州レイ レイ中央市場 パプアニューギニア独立国の第二の都市であるモロベ州レイは、人口の多いハイランド地方を横断 するハイランド・ハイウェイの起点にあり、また、ニューギニア島の東端に位置することから島嶼地 域への便も良く、昔から山岳部/沿岸部の人々の交流が盛んで、陸海交通の要地として栄えてきた。 そのレイにある中央市場は、同国最大級の生鮮市場であり、毎日山岳部から新鮮な野菜や果物が運 び込まれるとともに、その日に獲れた魚や燻製魚なども並び、常に多くの人々で賑わっている。同国 では、沿岸漁業やコールドチェーンが発達しておらず、鮮魚の市場流通量が極端に少ないため、鮮魚 の需要が高く、鮮魚はいつも市場開場後真っ先に売り切れとなってしまう。 現在レイでは、大規模な港湾開発が進行中の他、日本の支援による空港の改修も決まっており、商 業都市としての整備が着々と進められている。一方で、レイやその周辺地域の人々の生活を基礎から 支え、街に活力を与えているこの中央市場の役割は益々重要になってきている。 多くの人々で賑わうレイ中央市場内部 色鮮やかな野菜・果物類売場 市場への出荷の前に計量・選別する 地元の漁民 (カスミアジ、ギンカガミ、イワシ類などが見える) 満面の笑みでパイナップルを買って!と No75 目 次 世界の魚市場 パプアニューギニア レイ中央市場 特集 太平洋島嶼国への技術協力 技術協力の概要��������������������������� 1 研修事業������������������������������ 4 第23回太平洋島嶼国漁業局長会議������������������� 7 太平洋島嶼国各国漁業局長へのインタビュー��������������12 連載 キリバス共和国離島訪問記(第2回)…………………………………………………21 財団ニュース パラオ シャコガイプロジェクトの進捗状況… ………………………………………23 セーシェルIOTC-OFCFプロジェクト フェーズⅣを終えて…………………………28 まき網漁船への科学オブザーバー乗船記……………………………………………37 小笠原での海亀調査体験と海外漁業協力財団でのインターンシップについて…43 海外漁業協力財団でのインターンシップを終えて…………………………………45 モロッコ要人招請………………………………………………………………………47 主な動き����������49 専門家派遣等��������51 外国要人等の招請������51 海外派遣専門家リスト����52 国際会議等支援�������51 政府ベースの漁業協力 水産無償����������53 漁業交渉・国際会議�����53 調査団の派遣��������53 プレスリリース�������53 ご案内 海外漁業協力事業のための賛助会員・寄附の募集 海外派遣水産専門家の登録募集について 貸付制度について 財団案内 表紙の写真:パプアニューギニア レイ中央市場 特集 太平洋島嶼国への技術協力 特集 太平洋島嶼国への技術協力 技術協力の概要 開発協力課長 堀之内 康宏 海外漁業協力財団は、海外漁業協力事業と我が 1981年に海外水産開発協力研究調査事業が加 国海外漁場の確保とを一体的に推進するため、 わったがこれは、同事業は施設建設、資機材供与、 1973年に財団法人として設立され、設立当初、 専門家派遣、事業実施に必要な運営費に至るまで 「資金の貸付」、「専門家の確保・養成」及び「情 総合的に協力するものであり、現在のプロジェク 報の収集・提供」の 3 本の柱でスタートした。 ト方式の協力の端緒となる事業であった。 1985年に当時のソ連がキリバス共和国と、1986 設立当時の1970年代は海洋法の時代であった。 年にバヌアツ共和国と協定を結んで多額の援助を 第 3 次海洋法会議は1973年から11会期、延べ10年 提供し、米国も1988年にFFA※ 1 (南太平洋諸島 にわたり開催された。領海は低潮時の水際線を起 フォーラム漁業機関)諸国との間で、米国籍漁船 点とし、 3 海里説が伝統的であったが、12海里を の操業と多額の援助をリンクさせる入漁協定を結 主張する国が増加し、領海の外側に距岸200海里 ぶなど、漁場確保競争が激化する様相を呈してき の排他的経済水域が設定されていくことになる。 た。 沿岸国の200海里の排他的経済水域は、漁業関 このような中で、1988年に南太平洋諸国等沿岸 係者に大きな変化を与えることになり、日本の漁 漁業振興特別対策事業が新設された。この事業は 船は厳しい制限を受けることになった。 太平洋島嶼国に対し、生産から加工・流通・販売 その後、沿岸国の様々な協力要請に応じていく に至る総合的な技術協力を実施し、関係沿岸国の 必要から、財団の事業に年々新しい事業が加えら 零細漁業振興に資することを目的としていた。 れてきた。 1995年に漁業開発普及事業として再編されたが、 1974年に漁業協力交渉等の協議及び日本の漁業 それは現在の事業形態(水産振興・資源管理推進 への理解を深め、協力関係を促進するための「要 事業)に至ったものである。 人招請」、沿岸国の水産開発に資するための技術 1989年に太平洋島嶼国に対する沿岸漁業振興を 向上を目的とした「海外研修生受入」の 2 つの事 図るための協力として、特定地域漁業振興推進事 業を開始した。初めての海外研修生は 7 か国から 業が新設された。既存の施設の有効利用を図るた 10名を受入れ、このうち太平洋島嶼国からの研修 めの施設・設備の修理修復やこれらに関する技術 生はパプアニューギニア独立国 3 名、ソロモン諸 移転を行うことにより、メンテナンス不足、災害 島 1 名の計 4 名であった。 による破損等で遊休化している水産関係施設の再 1976年に漁業交渉や合弁事業の進出に際して、 活性化を推進すること及び対象国が施設の維持管 沿岸国から技術協力に対する要請が増大、多様化 理を自力で行える体制作りを支援するものである。 してきた状況に対応して、専門家の確保・養成に 特定地域漁業振興推進事業は現在実施している地 加え、技術専門家の派遣を開始した。 域巡回機能回復等支援事業(略称「FDAPIN※2」) 1977年に「機材供与」事業が加わり、金額、規 に引き継がれている。本事業を円滑に実施するた 模は大きくはないが、漁業交渉の円滑な推進にお めに1990年に、フィジー共和国スバに海外駐在員 いても効果的な役割を果たしており、南方海域の 事務所を設置し、1997年にはミクロネシア連邦ポ 交渉において特に効果をあげてきた。 ンペイに出張所を設置した。 ※ 1 Pacific Islands Forum Fisheries Agency ※ 2 The Fisheries Development Assistance for Pacific Island Nations 1 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 パラオ共和国 (1979年 1 月締結) ミクロネシア連邦 (1979年 4 月締結) マーシャル諸島共和国 (1979年 7 月締結) ツバル (1986年 6 月締結) ナウル共和国 (1994年 7 月締結) フィジー共和国 (1998年 6 月締結) 本年度(2016年度)に財団が実施している太平 洋島嶼国に対する技術協力の概要は以下のとおり である。 1.関係沿岸国の漁業振興 建物右端 フィジー事務所 ( 1 )地域巡回機能回復等支援事業(FDAPIN) 太平洋島嶼国の関係沿岸国の水産業振興に資す るため、専門家を派遣するとともに資機材を供与 し、水産関連施設の修理・修復及びメンテナンス に関する技術移転並びに漁民組織等の活性化を図 るための助言等を、太平洋地域のフィジー共和国、 キリバス共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロ ミクロネシア出張所が入居している建物外観 ネシア連邦、ナウル共和国、パラオ共和国、パプ こうした系統的な協力事業のほか、1985年に、 の 9 か国において実施している。この事業はフィ 日本と関係の深い太平洋島嶼国の国々と南太平洋 ジーの海外駐在員事務所が中心となって実施して 漁業開発シンポジウムを日本で開催し、共通する いる。フィジー事務所に職員及び専門家が、ミク 地域の一員として、それぞれの漁業開発や資源の ロネシア出張所に専門家が駐在しており、日本か 有効利用・管理について情報、経験を共有し、共 ら派遣する短期専門家とともに太平洋島嶼国を巡 存互恵の方策を集団で話し合う、従来行われてい 回しながら技術指導を行っている。 アニューギニア独立国、ソロモン諸島及びツバル なかった新しい試みも開始された。このような取 組みは、現在、年 1 回開催している日・FFA漁 ( 2 )水産振興・資源管理推進事業 業協力協議会に引き継がれている。 太平洋島嶼国の関係沿岸国の水産振興に資する 漁業アドバイザーの派遣は、1989年にソロモン ため、沿岸漁業振興、資源管理、増養殖等に関す 諸島ホニアラにあるFFAとミクロネシア連邦漁 る専門家を派遣し、必要な技術普及等をキリバス 業公社(NFC)に派遣したのが始まりであり、 共和国、パラオ共和国、パプアニューギニア独立 現在もFFAとキリバスに漁業アドバイザーを派 国及びソロモン諸島の 4 か国において実施してい 遣している。 る。 現在、日本との漁業協定を締結している太平洋 具体的には、キリバス共和国では漁業開発を助 島嶼国は 9 か国であり以下のとおりである。これ 言し、パラオ共和国ではシャコガイ種苗生産振興 らの協定に関する入漁交渉は毎年行われている。 及び資源管理強化のためのプロジェクトを、パプ アニューギニア独立国では定置網漁業の開発のた パプアニューギニア独立国 (1978年 5 月締結) めにプロジェクトを、ソロモン諸島ではナマコ資 キリバス共和国 (1978年 6 月締結) 源管理のためのプロジェクトを実施している。 ソロモン諸島 (1978年 9 月締結) また、関係沿岸国の水産業開発・振興に必要な 海外漁業協力 第75号 2016.9 2 特集 太平洋島嶼国への技術協力 機材供与及び技術指導をキリバス共和国、ミクロ 嶼国 9 か国及びFFA事務局等を対象として、入 ネシア連邦及びソロモン諸島の 3 か国において実 漁交渉に役職員等を派遣し、入漁条件等の協議や 施している。 相互理解を深めるための意見交換を支援している。 ミクロネシア連邦、パラオ共和国、ナウル共和国、 ( 3 )国際資源管理対策事業 FFA事務局(ソロモン諸島)との協議が実施済 FFA諸国に対して、まぐろ産業振興あるいは みであり、今後、キリバス共和国、パプアニュー 沿岸漁業振興・開発に関する助言を行うため、ソ ギニア独立国及びソロモン諸島等との協議が予定 ロモンのFFA事務局に専門家を派遣している。 されている。 2.海外漁業交流の促進支援 これらの事業は、現在、事業部の 3 つの課で実 ( 1 )地域水産業人材育成事業(研修生受入れ) 施している。上記「 1 .関係沿岸国の漁業振興」 我が国の民間ベースによる海外漁業協力事業の を開発協力課が行い、上記「 2 .海外漁業交流の 効果的な推進を図るため、関係沿岸国政府又は関 促進支援」を交流促進課が行っている。これらに 係団体や企業等からの推薦を得て、太平洋島嶼国 係る専門家の登録・確保を業務支援課が行ってい の研修生を受け入れ、水産に関する技術の研修を る。 実施している。 太平洋島嶼国の多くが1970年代から1980年代に かけて独立しており、財団は1974年から研修生受 ( 2 )漁業協力協議会 入れを皮切りに40年以上にわたり、海外漁業協力 2016年 9 月に我が国水産庁が事務局となり開催 ※3 事業を行い、太平洋島嶼国の漁業振興と共に歩ん されたWCPFC (中西部太平洋まぐろ類委員会) できた歴史がある。 第12回北小委員会の機会を捉えて、「第12回 日・ 近年、ナウル協定(PNA※ 4 )加盟国(キリバ FFA漁業協力協議会」を福岡にて開催した。同 ス共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア 協議会にはクック諸島、フィジー共和国、キリバ 連 邦、 ナ ウ ル 共 和 国、 パ ラ オ 共 和 国、 パ プ ア ス共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア ニューギニア独立国、ソロモン諸島及びツバルの 連邦、ナウル共和国、パラオ共和国、パプアニュー 8 か国)が漁船の隻日数管理の導入を推進してお ギニア独立国、ソロモン諸島、ツバル及びバヌア り、日本漁船の操業の環境が大きく変化している。 ツ共和国の11か国とFFA事務局が参加した。 財団は、これまで長年にわたって、太平洋島嶼 国で実施してきた海外漁業協力の蓄積及び各国と 3.要人招請 の信頼関係をベースに、入漁環境の変化に応じた 我が国漁業の実情視察、関係機関との意見交換 新たな展開も含め、共存共栄の立場に立って、我 及び漁業者との交流等により相互理解を深めるた が国海外漁場の確保に努めていく必要があると考 め、関係沿岸国政府の要人を日本に招請している。 えている。 2016年度は 7 か国から要人を招請する計画で、こ のうち太平洋島嶼国からは 4 か国から招請する予 定であり、ミクロネシア連邦については実施済み である。 4.交渉支援 現在、日本との間で漁業協定を有する太平洋島 ※ 3 Western and Central Pacific Fisheries Commission ※ 4 The Parties to the Nauru Agreement 3 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 特集 太平洋島嶼国への技術協力 研修事業 交流促進課長 市野 孝典 海外漁業協力財団は、1973年の設立の翌年度か 独立国から研修生を10名受け入れている。 ら、海外からの研修生受入事業を開始した。これ 本コースの研修プログラムは、我が国の海外ま 以降、我が国の漁業を取り巻く環境に著しい変化 き網漁船に乗船し、甲板作業を中心に研修する約 が見られ、また、近年は国際的な資源管理意識の 2 か月の技術研修と、この技術研修を受けるため 高まりも見られるなどの環境変化の下、時代に則 に必要な日本語、漁撈、漁船機関・船体保守、海 した様々な研修コースを設定して実施している。 難救助技術等を研修する約 3 か月の一般研修で構 成されている。来日から乗船までの一般研修期間、 2016年度は、①漁船員養成(乗船)コース(以 研修生は福岡県北九州市にあるニッスイマリン工 下「乗船コース」という。 )、②水産技術者養成 業株式会社(以下「ニッスイマリン工業」とい (実習・運営管理)コース(以下「実習・運営管 う。)で知識・技術を身に着け、その間は同社の 理コース」という。)、③水産指導者養成(資源管 社員寮に滞在することとなる。 理)コース(以下「資源管理コース」という。)、 ④水産指導者養成(漁業管理)コース(以下「漁 業管理コース」という。)⑤水産指導者養成(持 続的利用)コース(以下「持続的利用コース」と いう。)の計 5 コースを実施している。 これらの研修コースは推薦機関毎に 2 つに分け られる。①乗船コース及び②実習・運営管理コー スは、漁業関係団体、水産会社等が推薦する者が 参加する研修コースで、③資源管理コース、④漁 業管理コース及び⑤持続的利用コースは、地域漁 乗船コース サバイバル訓練(一般研修) 業管理機関、関係沿岸国政府が推薦する者が参加 する研修コースとなっている。 研修生の年齢は概ね20歳代前半である。この中 太平洋島嶼国が対象となる研修コースは、①乗 には、海外生活経験が初めての者も少なくなく、 船コース、②実習・運営管理コース、④漁業管理 自国とは全く違う日本での生活になかなか慣れず、 コース、⑤持続的利用コースの 4 コースだが、持 また、朝から夕方まで決められたスケジュールを 続的利用コースは本誌74号にて既報のため、今回 こなす研修生活にストレスを感じ、ホームシック は他の 3 コースの概要を以下に紹介する。 になる研修生も少なくない。 このため研修内容と同様に彼らの内面にも気を 1.乗船コース 配り、研修生が早く日本の生活を受け入れること 本研修コースは優良な部員クラスの漁船乗組員 ができるように支援することが重要な研修監理業 を育成することを目的に実施しており、2016年度 務の一つとなっている。ニッスイマリン工業の は一般社団法人海外まき網漁業協会からの推薦に 方々には、研修生への技術指導に加え、日常生活 より、ミクロネシア連邦及びパプアニューギニア 面についても助言・指導を依頼しており、本コー 海外漁業協力 第75号 2016.9 4 特集 太平洋島嶼国への技術協力 スが成功裏に終了するための重要な役割を担って 太平洋島嶼国からの研修生は、先方政府水産局 頂いている。 職員となることが多く、技術協力プロジェクトの 研修生は来日当初、初めての海外経験に不安そ 現場では設備面等の制限から指導が難しい技術を うにしている者、しっかりと目標を見据えている 学ぶこととなる。過去には、無線技術、定置網漁 者、特に深く思慮を巡らす様子も無く日々を楽し 業技術、冷凍・製氷機の修理・維持管理技術等の く過ごそうとする楽天的な者等々の個性豊かな若 分野で充実した施設、設備の下、日本の第一線級 者の集団で、その多様さに日本側関係者が不安に の技術者による指導が行われ、研修生は自国の漁 感じることがある。しかし、約 2 か月間の船上で 業振興に将来役立つ技術を研修することとなる。 の技術研修を終えた研修生は、日に焼けた逞しく 精悍な顔立ちの若者に成長することとなる。 研修を終え自宅に帰った際に立派になった息子 を見つめる家族の喜びと、今後の彼らの活躍を想 像することが、研修事業に携わる者の充実感と達 成感となっている。 2.実習・運営管理コース 本研修コースは、国内漁業関係団体及び水産会 社から推薦される研修生を対象に、優良な生産現 場の技術者及び管理者を育成することを目的とし ており、近年は財団の技術協力プロジェクトに参 実習・運営管理コース 冷媒配管の溶接実習 (技術研修) 加する太平洋島嶼国のカウンターパート等を受入 れ、研修事業とプロジェクト事業の相乗効果を企 画していることもある。 本コース研修内容の構成は、水産関係講義、日 本語講座及び水産関連施設の視察等を主とした約 1 か月間の一般研修と、各々の研修生に最適とな るように各推薦元が手配した 1 か月程度の技術研 修となっている。 本コースの研修生は、自国での一定の職務経験 があり、専門分野の知識・経験を有する者で構成 定置網補修(技術研修) され、その中には職位の上位者も含まれている。 このため、一般研修及び技術研修ともに、日本で 研修する利点を最大限に生かした研修内容となっ 一般研修では、日本語会話の基礎講座を用意し ている。海外の合弁会社等からの研修生であれば、 ており、研修期間中に覚えた片言の日本語の挨拶を 合弁会社の商品が販売される日本のマーケットや 帰国後に話してもらえれば、合弁会社の日本人や 親会社のマネージメント等を学ぶことなる。既に 財団専門家とのより円滑な関係構築の一助となる 身に着けている知識・技術を基に、より実践的か と考えている。研修の最後には、日本の文化と習 つ即効性を持った、研修を実施することにより、 慣が色濃く残る京都への研修旅行を実施しており、 知識・技術力の更なるレベルアップを図っている。 研修生自身の世界が広がることを期待している。 5 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 3.漁業管理コース 研修の最後に京都に研修旅行を行っているが、 本研修コースは、関係沿岸国政府の漁業管理部 この頃になると日本語を積極的に話す者もおり、 署又は水産研究機関から研修生を募り、将来、同 修学旅行中の学生や観光旅行の年配者と片言の日 国の中・上級職の業務を担う指導者の育成を企画 本語で交流する姿を見るにつけ、日本での研修期 するものである。研修コースは 5 か国から各 1 名 間中に得た知識もさることながら、日本を今まで の 5 名で構成され、毎年多くの応募者から審査・ 以上に理解し好きになって帰国していただくこと 選定されており、太平洋島嶼国もその対象となっ が研修事業のもう一つの大きな意義ではないかと ている。 痛感する次第である。 本コースは、乗船コースに並んで研修期間が長 く、水産関係講義、日本語基礎講座及び水産関連 財団が研修事業開始以来これまで、太平洋島嶼 施設の視察を主とした一般研修を東京で約 1 か月、 国等から受け入れた研修生の総数は800余名とな その後、鹿児島大学で大学院生受講レベルの専門 り、研修生OBは自国の水産分野で活躍してきた。 講義、演習、水産関連施設の見学及び技術実習で 特に漁業管理コースへ参加した研修生は、自国に 構成される技術研修を約 3 か月実施している。 戻った後、政府機関の要職に就き、財団プロジェ クトの相手方カウンターパートの責任者や我が国 との漁業交渉の相手方としての役割を担う者もお り、研修事業は将来に大きな花を咲かせるために 大きな役割を担っているとも考えられる。 今後も研修生OBには、我が国と自国との懸け 橋となっていただけることを期待してやまない。 漁業管理コース 鹿児島大学水産講義(技術研修) 技術研修先である鹿児島に移動した後は、ア パートで暮らし、食事の用意、掃除、洗濯等の 日々の生活は自分で行うこととなる。このため研 修生は、難易度の高い研修内容を習得するための 努力に加え、日本で生活するためのスキルも必要 となる。研修生 5 名は、東京での一般研修期間 を団体生活で過ごす過程で友好関係を深め、相互 扶助関係を築くことにより、彼らにとっては容易 ではない鹿児島でのアパート生活を乗り越えてい るようである。また、新たに同大学の学生や留学 生との交流関係を築き、大学生活を楽しんでいる 例も見られるところである。 海外漁業協力 第75号 2016.9 6 特集 太平洋島嶼国への技術協力 特集 太平洋島嶼国への技術協力 第23回太平洋島嶼国漁業局長会議 フィジー事務所長 細川 明快 2016年 2 月 1 日~ 4 日までの間、海外漁業協力 5 日間にわたる局長会議は、前半 3 日間を各国 財団において、第23回太平洋島嶼国漁業局長会議 との個別協議とし、 4 日目に全体会議を、 5 日目 を開催した。以下、その概要と結果を紹介したい。 には築地市場及び地方漁協の視察を行った。結果 は、次のとおりである。 漁業局長会議は、例年、財団フィジー事務所に 太平洋島嶼国 9 か国(フィジー共和国、キリバス 共和国、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア連 1.会議日程等 ( 1 )日 時: 邦、ナウル共和国、パラオ共和国、パプアニュー ア. 2 月 1 日から 2 月 3 日 ギニア独立国、ソロモン諸島、ツバル)から漁業 個別協議 局長級の代表者を招いて実施しているものであり、 イ. 2 月 4 日 今年で23回目を数えた。2015年度は、地域巡回機 全体会議 能回復等支援事業(以下「FDAPINプロジェク ウ. 2 月 5 日 地方視察 ト」という。)第Ⅵフェーズで最初の局長会議で 静岡県沼津市内浦漁業協同組合 あること、2000年に東京で開催した後は毎年フィ キリンビール横浜工場太陽光発電施設 ジーで実施しており、参加者がフィジー以外での ( 2 )場 所:財団会議室 開催を強く希望するようになってきたことから、 ( 3 )参加者: 東京で開催することとした。後述するが、財団の 太平洋島嶼国漁業局長他 14名 第 1 ・第 2 会議室をつなげて会場を確保したため、 財団関係者 16名 財団関係者のみならず日本開催ということから幅 (本部役職員12名、フィジー事務所長、 広い参加者が得られ、盛況となった。 専門家 3 名) この会議の主たる目的は、財団が太平洋地域で 外務省 4 名 展開する事業の一つであるFDAPINプロジェク 水産庁 6 名 トを円滑に実施するため、プロジェクト対象国か オブザーバー 1 名 ら参加者を招集し意見交換を行うことである。 (在京PNG大使館事務官) FDAPINプロジェクトは、水産庁の補助事業で ある水産振興・資源管理協力事業の一事業であり、 財団が実施している。 2.結果 ( 1 )個別協議 FDAPINプロジェクトとは、ごく簡単に言えば 個別協議は、小さく区切った会議室で、各国代 水産関連施設の修理・修復及びメンテナンスに関 表( 1 ~ 5 名)と、財団から役員 1 名、職員 4 名、 する技術の移転や技術移転の受入れ組織の活性化 フィジー事務所長が参加して行われた。 を図るために、専門家の派遣、資機材の供与及び 個別協議では、各国の置かれた状況、背景など 資機材の利用・管理方法について指導等を行うも の相違から全体会議では共通話題になり得ない個 ので、太平洋地域で日本が入漁協定を結んでいる 別の具体的事項を協議するものである。各国に 9 か国(前述)がその対象となっている。 とっては、自国の案件について詳しく協議する機 7 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 会となる。 だまだ少数派であるが、たとえ各国の担当者が変 まず、2015年度に実施中(あるいは実施済み) わったとしてもこの種の自助努力が今後継続され のFDAPINプロジェクトに関する問題点等を確 るよう、働きかけたい。 認し、次に各国からFDAPINプロジェクトに対 する2016年度要請案件についての説明を受けた。 ( 2 )全体会議 円滑なプロジェクトの実施のためにはこうした協 会議開始時間は 9 時30分を予定していた。島嶼 議が非常に重要である。各要請案件については、 国ルールで時間開始には始まらないだろうと予想 各国の沿岸漁業振興上の必要性、プロジェクト実 していたが、参加者全員、開始時間10分前には集 施後の施設の有効利用と効果の持続性、技術移転 合し、規律ある会議の始まりとなった。また、会 への寄与などの観点から議論され、将来の案件候 場には40名を超える業界関係者を始めとする参加 補として今後検討することとした。 者に足を運んで頂き、非常に寒い時期にもかかわ 次に、 これまでFDAPINプロジェクトやFDAPIN らず、熱気に包まれた会場の雰囲気であったこと 以外の財団プロジェクトを通じて、財団が事業を が印象深かった。 行った施設に関し、その後の状況確認を行った。 今年は日本開催ということもあり、また、太平 過去に財団が対象国で行ったプロジェクトは、 洋サミット(PALM 7 )が開催された直後とい それぞれの対象国に根付き、自立的に発展してい うタイミングから、外務省及び水産庁から講師を くことが理想である。こうした確認を通じ、財団 招き、日本からの島嶼国に対する支援についての プロジェクトの終了後も施設が有効に活用されて 講演も行った。特に島嶼国に対するODAの予算 いることを確認するプロセスである。 増額というニュースには太平洋島嶼国の局長から この結果、ほとんどの国で現在も有効活用され も強い反応が見られ、日本からの支援を受ける機 ていることが確認できた。また、国によっては独 会が増加するということにつき、ひしひしと熱い 自に施設の状況確認及びメンテナンス等をしっか 期待を感じることとなった。また、質疑応答の場 りと行う国も出てきている。島嶼国ではこうした 面では、決してこちらから求めたわけではないが、 状況確認及び対処、メンテナンスができる国はま 局長達から順番に自然と日本政府や財団に対する 全体会議 財団会議室にて 海外漁業協力 第75号 2016.9 8 特集 太平洋島嶼国への技術協力 感謝の意が述べられていた。 であり、局長達の関心は高かった。定置網漁業の 全体会議の締めとして、財団側から、藤井資己 実態をはじめて知る局長もおり、局長達からは、 専門家による「定置網漁業に係る基礎調査プロ 定置網導入にかかる費用等の質問があった。パプ ジェクト」の進捗と成果について発表が行われた。 アニューギニアのカス水産公社総裁は本プロジェ 2013年度から財団がパプアニューギニアで実施し クトの有用性と今後の展開への期待を述べていた。 ている、沿岸漁業振興を目的としたプロジェクト 全体会議を終えて 前列左から シアオシ(Ms. Fulitua Siaosi)ツバル天然資源環境省水産局長代理、チャーリー(Mr. Charleston Deiye)ナウル漁業海洋資源局(NFMRA)局長、カス(Mr. John Kasu)パプアニューギニア水産公社(NFA)総 裁、カリバナン(Mr. Karibanang Aram)キリバス漁業海洋資源開発省水産局長代理、バレンティン(Mr. Valentin Martin)ミクロネシア連邦政府資源開発省次官補、竹中理事長、バティバサンガ(Mr. Waisake Batibasaga)フィ ジー漁業林業省水産局長、フローレンス(Ms. Florence Edwards)マーシャル資源開発省海洋資源局(MIMRA)沿 岸部長、レメンゲサウ(Mr. Leon E. Remengesau)パラオ天然資源・環境・観光省海洋資源局長代理、ベン(Mr. Bennie Buga)ソロモン漁業海洋資源省首席漁業官 レセプション風景 左 ソロモン ベン首席漁業官 9 右 2人目在京PNGドゥサヴァ特命全権大使 海外漁業協力 第75号 2016.9 ( 3 )地方視察 特集 太平洋島嶼国への技術協力 また、漁船向けの製氷施設(我々FDAPINプロ 全体会議の終了後、レセプションが開かれ、総 ジェクトで修理する数十倍の規模で、コンピュー 勢で100名近くが集まる大きな会となった。一部 タ制御されている)を見て、その規模の違いに驚 の参加者は深夜までカラオケを楽しみ、開放感を いたり、マアジの養殖生け簀で自動給餌器による 楽しんでいたが、翌朝は集合時間に遅れることな 給餌を見た上で、漁協直営の「いけすや」で新鮮 く勢揃いし、早朝の築地市場視察から静岡県沼津 な真アジの刺身に舌鼓を打ち、満足の様子であっ 市の内浦漁協、太陽光発電システムの見学を兼ね た。また、漁業組合員向けのカード式無人燃油ス たキリンビール横浜工場の視察と、精力的に地方 タンドにも強い興味を示し、「こうした施設が 視察を行った。 我々も欲しいなぁ」というつぶやきに対し、某F 築地市場視察では、テレビ出演でもおなじみの 国から参加していた局長が、大きな声で「自国で マグロを釣る芸能人が競り場におり、局長達に日 これをやったら、誰もお金を払わないので成り立 本のセレブである旨説明したが、義理で写真を撮 たない」と大笑いしながら返したことから、参加 るだけで歓声は上がらなかった。局長達には日本 者全員が苦笑いとなったことが印象深い。 のセレブよりマグロに価値があるのである。マグ ロの競り以外では、活魚に興味を示し、よほどお いしく見えたのか本能のまま生け簀に手を入れて しまう参加者もいた。 続いて、内浦漁協では、多角的な運営による収 益確保策の説明を受け、真剣に聞き入る局長達の 表情が印象的であった。 カード式無人給油スタンドの説明 内浦漁港 製氷施設からの氷 各視察先で大小ハプニングはあったが、会議場 で頭を突き合わせている雰囲気とはまた一味違う 島嶼国参加者の一体感、日本の技術、漁業への取 組み好事例を吸収しようとする意識の高さを垣間 見た視察となった。母国に帰った後、この経験が 活かされ、漁業振興に役立つことが期待される。 マアジの養殖生簀で自動給餌器による給餌の見学 海外漁業協力 第75号 2016.9 10 特集 太平洋島嶼国への技術協力 また、フィジー事務所長を拝命し 1 月より赴任 したが、フィジーに居ることをメリットとし、財 団の一員として日本の漁業界発展のため微力なが ら潤滑油として力を尽くすという思いを再確認す る良い機会となった。 毎度最後になってしまい恐縮であるが、今次局 長会議がスムーズに進行したのは参加者全員のご 理解とご協力があったからに他ならず、各国から 内浦漁協加工場の見学 の参加者、外務省、水産庁などの来賓の方々に紙 面を借りて感謝申し上げたい。寒い中であっても 島の雰囲気そのままに、温かい雰囲気と時に熱い 議論で、会議を成功に導きたいとする思いをその 準備の姿勢からも強く感じられた会議であった。 改めて参加者の皆様に敬意を表し、また、感謝を しつつ筆をおくこととしたい。 組合直営店でマアジの刺身に舌鼓 3.所感 慣例により、不肖私フィジー事務所長が会議の 司会を行ったが、日本人の参加者も多く、局長に 語りかける際には英語、日本人にもよく聞いてほ しい時には日本語と意図的に使い分けたことが、 逆に参加者にとって不評だったようである。不得 手な英語を一切使わなかった方が参加者の方々に は分かり易かったのかもしれない、とまずは反省 するとともに、お詫びしたい。 さて、今次局長会議では、限られた時間の中で はあるが、プロジェクトを円滑に実施するため意 見交換を行うことができ、また、各国局長も会議 場の他、視察先においても様々な情報を持ち帰る ことができ、実り多い会議となったと思う。 一方で、 2 年前、機関誌68号で局長会議につい て寄稿をさせて頂いた際、各国共通の課題として 知識の共有化、技術力の底上げという 2 点を生意 気にも指摘させて頂いたが、 2 年を経た今でもこ の 2 点は引続き取り組むべき優先度が高いものと 感じられた。 11 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 特集 太平洋島嶼国への技術協力 太平洋島嶼国各国漁業局長へのインタビュー 前記事の第23回太平洋島嶼国漁業局長会議に際し、忙しい日程の合間を縫って、漁業局長の方々に協力 をいただき、個別にインタビューを行った。直接各国漁業局長より聴取した太平洋島嶼国の漁業事情やア ピールポイントを紹介します。 (インタビュアー 安久 誠司、久保 厚子) から支援を得て、ふ化場の設置などを検討した フィジー共和国 いと思っています。 バティバサンガ 漁業林業省水産局長 Q.他国からのプロジェクトは A.韓国政府からは、トビー(地名)で多目的の Q.漁業振興で成功した施策や 港湾設備の設置に関して 2 年間の実施可能性調 成功案件は 査(フィジビリティスタディ)が行われていま A.我が国EEZ(排他的経済水域)内のマグロ資 す。また、中国政府の支援を受けて小規模な漁 源は多くはないものの、この10年間で輸出が 7 業以外の陸上施設のインフラプロジェクトを ~ 9 %伸びました。FFAが資源の研究調査に 行っています。 関わっており、SPC(太平洋共同体)は地域の 研究機関に技術支援しています。冷凍マグロ加 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は 工技術の改善により、品質レベル要求の高い日 A.疾病・疾患や公害も少なく、漁業及び養殖の 本、衛生基準の厳格なEUへの輸出も伸びてき 開発に環境が適しており、漁業を含めたエコ ています。 ツーリズムなど観光業も進めています。アイチ (地名)などに設けた海洋保護区で、フィジー Q.現在最も重点を置いている漁業振興案件は の固有種であるサンゴとかラビットフィッシュ、 A.財 団やJICA(国際協力機構)のような援助 サージャンフィッシュ、パロットフィッシュな 機関からサポートを得て、養殖施設・技術を開 どが生息するようなところは生物多様性が高い 発し、持続可能な漁業生産を目指しています。 エリア、「ホットスポット」として保護してい 海水がきれいという長所を生かして、収益性 きたいと考えています。 の高い黒真珠を効率よく生産しようとクロチョ 2020年までにEEZの30%を、100%保護区に ウガイの養殖技術を開発中で、小規模ですが既 するかは別として、きちんと管理された景観保 に黒真珠を出荷しています。黒真珠生産に関し 護区域として管理をしていきたいと考えていま ては、日本はエキスパートですが、幸運にも日 す。フィジー政府は「モーリシャス戦略文書」 本の高度な技術を持つ方々がフィジーで活動し の「小島嶼開発途上国(SIDS)の持続可能な ていますので、更に発展できると期待していま 開発」を、今年を含む今後 4 年間、2020年まで す。 に進めていきたいと考えています。 他に、ミルクフィッシュ、ナマコ、マング ローブクラブ、コーラルリーフグルーパーなど Q.現在海洋保護区は何か所ありますか に開発の可能性があるので、財団やJICAなど A.沿岸のコミュニティが管理している小規模の 海外漁業協力 第75号 2016.9 12 特集 太平洋島嶼国への技術協力 保護区は275カ所ほど、大規模は 7 ~ 8 か所で す。EEZのうち10%を保護区にするという目標 に向けて増やしていきたいと考えています。 Q.投資の可能性のある事業について A.保護区を設定すると食料を確保する手段が制 限されます。それでFAD(Fish Aggregating Device:集魚装置)漁法やコミュニティベー スの養殖といった方法が考えられています。コ ミュニティベースでは例えば、キリンサイ(海 キリバス共和国 (左)カリバナン漁業 海洋資源開発省 水産局長代理 (右) カウトア同省 政策開発部長 Q.漁業振興で成功した施策や成功案件や現在最 も重点を置いている漁業振興案件は 藻)を植えて、中国やインドネシア、スイスな A.2013年に制定した漁業政策により、ドナーで どから需要のあるカラギナン(ゲル化剤)を生 はなく、キリバス政府主体で漁業政策を主導す 産しています。 ることとしました。この制定により成長戦略の 目標がクリアになり、例えば外国漁船の入漁料 Q.特に離島では、漁獲収入より海藻栽培で得る 収入の方が多いのではないですか 収入が増加したことが挙げられます。入漁料収 入は過去 4 年間は 3 千万米ドルから 4 千万米ド A.南方の離島ですと海藻は簡単に乾燥し長期保 存が可能なので、財団の支援を受けている製氷 機の必要はなく(笑)コストは安くすみますが、 ルでしたが、今回初めて 1 億 4 千万米ドルにな りました。 他にコミュニティレベルで、たくさんの漁業 販売できるまで 6 週間かかります。魚はその日 プログラムが実施されています。例えば持続的 にすぐ現金収入になる強みがありますね。ただ、 資源管理のため法律を新しく制定し、計画を立 海藻はフィリピンなどで、売上げが何百万ドル 案し、人々がプログラムに参加できるように もの規模をコミュニティベースで生産している なっています。もう一つ、この政策の下では食 ので、その方法は学びたいと思っています。 料安全保障を確保する目的があります。コミュ ニティレベルでの漁業への参加者が増え、収入 Q.離島の場合、コプラ(ココナッツの内部の白 も増加し雇用も増えたという結果が出ています。 い脂肪層を乾燥させた物)の販売はどうですか 企業レベルでは、海外漁業とのパートナーシッ A.コプラは、昔はナマコなどと並んで大きな産 プはそのまま維持されており、今後は特にマグ 業でした。しかし、最近価格が 1 トン当り300 ロの漁獲・加工、輸出を促進することを目指し ~400フィジードル、たまに100フィジードルま ています。 で下がっているので収益性が低いです。ただ、 一方で、気候変動の影響が良否の両面で現れ 最近はタイやインドネシアから学んで、プレミ ていて、良いことはキリバスEEZ水域に多くの アムバージンココナッツオイルが新たな成長産 マグロが集まること、悪いことは、環礁内のサ 業として注目されています。 ンゴに悪影響が出て、魚資源の減少につながり、 沿岸漁業の維持が困難になっていることで、そ のため新たな漁業政策により、コミュニティレ ベルでの雇用機会の創出・収入の増加を目指し、 次の世代への食料確保の道をつなげていきたい と思っています。 13 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 Q.財団は古くから貴国とミルクフィッシュ養殖 ります。その時に海洋保護区を制定し、それが などのプロジェクトを行っていますが、現在は コミュニティベースの漁業計画を確固たるもの どのような状況ですか にする土台となりました。その海洋保護計画の A.ミルクフィッシュプロジェクトは継続してい 青写真として2012年に作られた、コミュニティ ますが、 5 年前に導入された機材の劣化が進ん が漁業管理計画を策定するガイドブック、それ だため生産量も減っており、今回は新たな機材 がレイマンロックです。漁業管理計画をガイド の補充要請を財団に出しています。(2016年度 ブックに沿って作っている地域を海洋資源局と の養殖施設案件の一部として採用済み。) 環境省が援助します。 現在の管理カバー率は、陸上資源の20%のう Q.貴 国 漁 業 公 社(CPPL) が 中 国 と パ ー ト ち16%、海洋資源の30%のうち18~19%くらい ナーシップを組んで合弁企業になったと聞いて だと思いますが、2020年になったらもう少し上 おりますが、うまくいっていますか がってくるでしょう。 A.CPPLはそのままで、別組織で合弁会社を作 この活動は、トップダウンではなくコミュニ り、機械を備えた加工場を作るプロジェクトを ティからのボトムアップで行うものです。先ほ 立ち上げています。 どのガイドブックは、漁業関係の専門家だけで なく、資源管理の専門家も参加して経験に裏付 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は けられた教訓が詰め込まれており、漁業者、農 A.キリバスは、離島ごとに異なる魅力があり、 家、コプラ採集家であれサラリーマンであれ、 特にクリスマス島はハワイから近く、スポーツ より効果的な資源管理の方法、そしてコミュニ フィッシングが楽しめます。ギルバート諸島の ティに提供できるサービスを効率的に行うため ノノウス島は首都のタラワに近く、やはりス のプロセスをまとめたものです。 ポーツフィッシングが観光客にとって魅力にな り得る可能性があります。また、観賞魚、シャ コガイ等他の島の水産物も輸出物になる可能性 があり、ドナーを捜しています。 マーシャル諸島共和国 フローレンス 資源開発省海洋資源局 (MIMRA)沿岸部長 Q.漁業振興で成功した施策や成功案件は レイマンロック8つのステップ A.レ イマンロック(REIMAANLOK)と呼ば 8 つのステップにより、各コミュニティが漁 れる国のプログラムです。背景には2006年に太 業管理計画を作り、得られた成果を継続し関係 平洋島嶼国のリーダーが協議し、2008年に正式 を保ち一緒に成長していくといったことも含ま に発足した、今はミクロネシアチャレンジと呼 れています。その結果、得られた資源を保護し ばれる、海洋資源の30%と陸上資源の20%を ていくことが義務として課されています。 2020年までに管理するプロジェクトの開始があ 私はコミュニティを含む沿岸漁業部門を担当 海外漁業協力 第75号 2016.9 14 特集 太平洋島嶼国への技術協力 しており、この部門は 8 つのステップすべてに それぞれから関係者が関与しているという点で 関与しています。 す。地域のレベルではSPCが主導してパイロッ また、黒真珠を生産するクロチョウガイ養殖 トプロジェクトの候補が 3 つ選定されました。 がナムルーク(地名)地域のコミュニティで継 1 つ目はコミュニティベースのエコアプロー 続しているという意味では成功したプロジェク チによる漁業管理システム(Community base といえるのではないでしょうか。ただ、種苗生 Ecosystem approach Fishery Management) 産などの技術が不足しているので、タヒチから で、様々な魚種、貝類に対して気候変動が与え 専門家を呼んでコミュニティをトレーニングし る影響を研究します。 ています。 2 つ目は漁業管理、生態系及びコミュニティ また、MIMRAがこの漁業管理計画に沿って の視点から海洋の生態系を踏まえたアプローチ 漁業計画を作成し成功した例として、リキエッ で漁業管理を行い、コミュニティが国際的な プ環礁で漁業を行い、運搬船でクワジェリン環 パートナーと共同で実施します。沿岸漁業にお 礁のイバイ島の市場に持ち込み、販売していま ける資源の過剰利用、破壊的な漁法(ダイナマ す。漁業管理計画のプロジェクトとして、次は イト漁業)への対応も含まれます。 シャコガイ養殖などの活動を支援していきます。 3 つ目は地上の現象や気候変動により影響を 受けた海洋の生態に対応した漁業活動を提案す Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は ることです。このプロジェクトによってその地 A.首都マジュロでスポーツフィッシング大会が 域は恩恵を受けますが、近隣のコミュニティに 毎年開催され日本の方々も参加しています。ま もプラスの波及効果があることが期待されます。 た、第 2 次世界大戦のレック(沈船)ダイビン これらのプロジェクトは次の 3 つの原則に基 グの素晴らしいスポットが近くにあります。現 づいて行われます。 1 つ目は最大限の動機付け 地の伝統的な生活をしている人々、文化も紹介 を行い参加者を増やすことで、地域ぐるみの活 したいと思います。現地を訪れ彼らの生活を体 動とし、漁場を管理する責任は、政府主導でな 験すると昔の漁法を習ったり、島独特の伝統文 く地元にあるということを地元コミュニティに 化を学べます。ツナジャーキーや貝のネックレ 理解してもらうことです。 ス等の生産・販売も考えています。 2 つ目はFAD作成や設置のトレーニング、 漁業データのモニタリングと収集です。 3 つ目はキャパシティビルディング(組織の 能力強化)です。 ミクロネシア連邦 Q.FAD作成はミクロネシア連邦政府が関与し バレンティン 連邦政府資源開発省次官補 ているのですか A.ドイツ政府が支援しているプロジェクトなの Q.漁業振興で成功した施策や で、資金面はカバーされていますが、FADの 成功案件及び日本以外の国からのプロジェクトは 作成や設置はSPCの専門家が行っています。 A.沿岸漁業コミュニティベースで生態系に沿っ SPCは太平洋地域でラグーン用、沿岸用、沖合 たアプローチで行う漁業管理プロジェクトが、 用といくつかのタイプのFADを開発していま ドイツ政府の支援によって、資源開発省が中心 すが、今回は沖合用FADをヤップ州に設置し となって実施されています。プロジェクトの長 ました。 所は国際的、国内的、地域、コミュニティのレベル 15 具体的な成果としては、このFADを利用し 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 た漁業のデータを収集し解析した結果、漁獲率 A.船外機付ボートを漁業者が購入した場合、購 が上がったことが確認され、また、沖合にFAD 入代金の半額を政府が補助するというプロジェ を設置したことで結果的に沿岸の漁獲努力量を クトです。小型ボートの数が増えたことで、漁 減らすことが出来るようになりました。 獲量が増え、漁業データの収集も進みました。3 FADの設置コストや、沖合までエンジン付 か年計画で24隻のうち、現在12隻供給済で、 2 きボートで運ぶための運搬コストもありますが、 隻がワークショップで準備中です。来年(2017 それをはるかに上回るメリットがありますし、 年)の予算が決まれば、残りの隻数も供給でき 漁獲物から得られる収入も増えています。漁業 ると思います。 データを収集する地域の担当者の技術レベルを 上げるトレーニングをヤップ州で2015年の12月 Q.日本以外からのプロジェクトは に実施し、コスラエ州からも参加者がありまし A.ミルクフィッシュの養殖を計画しており、キ た。今年も同じトレーニングをチューク州及び リバスから幼魚を調達する予定です。 ポンペイ州で実施する予定です。 2016年 3 月に各州から関係者を集め、沿岸漁 業振興のプロジェクトの各州のニーズを把握す るための評価を行います。 Q.それはNFMRA単独のプランですか A.オーストラリア及びニュージーランドから施 設等への支援があり、2015年のジャパン・ファ 他には気候変動、貿易、食料安全保障などに 関係するプロジェクトを検討しています。 ンドからの資金もあり、これを利用し2016年中 に古い養殖場を復活させてミルクフィッシュの 養殖をスタートする予定です。アニバレの新し Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は A.連邦議会で予算を付けて、各州政府が歴史的、 いNFMRA事務所は支援利用の 1 つです。 NFMRAには50人くらい働いていますが、ア 伝統的な場所をリストアップして魅力的な観光 フガニスタン難民収容所で働く方が給料がいい 地を開発中です。具体的にはポンペイ州には有 ので人が取られています。 名なケプロイの滝がありますので、周辺の山に 遊覧道路を整備して観光客を誘致したいと思っ Q.難民を現在何人くらい受けいれていますか ています。またポンペイ州には世界遺産のナ A.2,000人弱で、施設の外で働いている人たち ン・マドールという13~15世紀の人工島の巨石 もいます。正式に難民として認定されたら、収 海上遺跡もあります。ミクロネシアには豊富な 容所を出て現地の人と同じように働けます。 観光資源があるので整備して、たくさんの方に オーストラリア政府から資金が出ています。 来て頂きたいと思っています。 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は A.観光のメインはフィッシングですが、まだ観 光客向けに充分施設が整備されていません。魚 ナウル共和国 そのものは太平洋の中でも非常に新鮮で味が良 いと我々は信じています。漁場は船付き場から (左)チャーリー漁業 海洋資源局 (NFMRA)局長 (右) カマラス首席 漁業官 5 分の近さなので、観光客の皆さんにはぜひ太 平洋の真ん中で釣りを楽しんでいただきたいと 思います。 ナウルはたくさんの観光客を受け入れられる、 Q.漁業振興で成功した施策や成功案件は 魅力あるスポーツフィッシング、ドライブやウ 海外漁業協力 第75号 2016.9 16 特集 太平洋島嶼国への技術協力 オータースポーツが出来る可能性に満ちていま が対象です。また、シャコガイの輸出は、天然 すが、残念ながら現状では開発への投資が足り 物は禁止して養殖物だけにしました。貝殻は金 ていません。 額を支払えば国外に持ち出すことができます。 この収入は天然資源省が養殖場を設置するため に使っています。 パラオ共和国 レメンゲサウ 天然資源・環境・観光省 海洋資源局長代理 Q.漁業振興で成功した施策や成功案件や現在最 も重点を置いている漁業振興案件は A.シャコガイのプログラムは2002年にスタート しましたが、一時衰退したために再活性化中で す。現在は種苗はできるだけ輸出せず自国内で シャコガイ 育てるという方向になっています。 5 年後には シャコガイが成熟し、食用に給すことができる 海中育成を水中ペン(魚囲い)やケージで行 うことによって捕食魚の被害から守っています。 と考えています。 JICAの調査チームに、日本の観光客は魚の刺 来年実施されるJICA支援のシャコガイ種苗生 身だけではなく、シャコガイも刺身で食すので 産施設の建設は、非常にタイムリーであり期待 生産施設は非常に重要だと幾度も伝えたところ、 しています。また財団から供与されたボートで、 来年、水産無償で約200万米ドルを投じてシャ シャコガイの母貝を採取して養殖場に運んだり、 コガイ種苗生産施設の建設が予定されています。 モニタリングや水中ペン、ケージ作りの時に使 現在は、パラオの天然シャコガイはほとんど 用しています。 枯渇してしまっている状態です。養殖シャコガ イを食用とし、天然シャコガイを保護して資源 回復を待ち、来年建設される種苗生産施設で シャコガイの稚貝を育て、大きくし、輸出を増 やし、利益を出すことを計画しています。 現在PMDCは財団の曽根専門家の協力を得 Q.リボルビングファンドはどのぐらいの収入を 見込んでいますか A.パラオ人は 1 人 5 ドル、外国人は 1 人10ドル でひと月あたり約 3 千ドル、 1 年だと 4 万ドル の収入になり、シャコガイ養殖施設の建設資材 て、プロジェクト実施計画に基づきシャコガイ に充てる予定で、充分な収入と見込んでいます。 の生産及び施設のメンテナンスを学んでいます。 1 つの養殖場に 1 つの生簀を設置するのに約 以前は、政府が無料で提供した種苗を、養殖業 2,500~3,000ドルかかりますが、このリボルビ 者は輸出していました。2013年に大臣と私とで、 ングファンドを利用すれば自分で投資せずに済 国会にシャコガイ・リボルビング・プランとい み、輸出もできることから、基金に参加希望の う基金を作る法案作成を呼びかけました。これ 人々がたくさんいます。2015年 1 年間で、養殖 はパラオの海産物を輸出する者に対して、許可 業者約40社のうち 4 社が積極的に観賞用を輸出 申請に課金して基金を作るというものです。許 していて、トータルで約 7 万ドルの収入を得て 可証はマグロ類ではなくて、リーフフィッシュ います。 17 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は チ)で漁獲から加工まで大きな産業として成功 A.まず美しい島や自然が手つかずのまま残って しています。加工工場は 5 つあり、ウェワクに いる国であることです。世界でトップ10に入る 1 つ、マダンに 1 つ、レイに 3 つあります。新 ダイビング・スポットとしても有名です。昔は たに今年(2016年)中に 4 番目の加工工場がレ アメリカ人、日本人、韓国人、台湾人などが多 イで始動しますし、さらに 2 つの工場の建設が かったのですが、今は多数の中国人がパラオを 計画されています。 訪れています。あまりにも多すぎるので、資源 また、2001年から開始されたADB(アジア 保護や食料確保のため入国制限を考えるほどで 開発銀行)による水産公社の再編成が最も成功 す(笑)。おかげで観光客の出国料で昨年は 9 億 を収めたと考えています。私は2001年から勤務 ドルもの余剰金が出ました。観光業は盛況で、 していますが、公社の事業内容が大きく変わり 日本人も観光業、水産業、ホテル、レストラン ました。具体的には各国との漁業交渉が増えて、 やダイビングショップ等を経営しています。 マグロ漁業関連の収入が増えました。PNGは いくつかの二国間協定を結んでおり、それぞれ Q.近くマリンサンクチュアリ計画が始まります ね (韓国、日本、フィリピン、台湾、中国)の国 の入漁料の支払いが、PNGの大きな収入源に A.実施されても日本の漁業者、会社は操業可能 なっています。 です。財団は資源管理強化のための巡視船の燃 料購入を支援してくれています。サンクチュア Q.現在最も重点を置いている漁業振興案件は リが実施されると我が国のEEZ内の 8 割で漁業 A.沿 岸・内水面漁業にはPNGの 7 割の人々が ができなくなりますが、その時の監視のために 関わっており、この分野を 5 年間かけて発展さ 巡視船を派遣したり、法執行するための人材育 せていきたいと考えています。沿岸漁業の漁獲 成が必要になってきます。 の対象はリーフフィッシュ、ナマコ、ロブス サンクチュアリによりEEZの 2 割しか操業で ター、バラマンディなどです。内水面は主に養 きなくなりますが、それでも広いから、日本の 殖を中心に展開していますが、今はかなり初期 はえ縄船が来ても大丈夫ですよ。 の段階でこれから注力しなければいけません。 対象魚種はティラピア、ニジマス、コイなどで す。財団から協力を得て実施している定置網の プロジェクトも重要です。 パプアニューギニア独立国 実際の漁業の他に、これを支える冷蔵設備、 市場などインフラの整備も重要で、大規模なも のはJICA、小規模なものは財団のプロジェク トで建設されています。また、漁協の運営につ いても色々検討していて、漁獲から流通そして 販売という一連のシステムの作成、ハイランド カス水産公社 (NFA)総裁 左からムカイシ監視評価官 マタイナホ長官秘書 アメ事業調整官 Q.漁業振興で成功した施策や成功案件は A.商業的なマグロ漁業(キハダ・カツオ・メバ 地区の販売ルートの構築や、海外マーケットも 開発する必要があると思います。 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は A.多様な文化を反映する伝統行事やお祭りが各 地にありますので、楽しんで頂けると思います。 海外漁業協力 第75号 2016.9 18 特集 太平洋島嶼国への技術協力 また、植物、動物、素晴らしい自然を皆様に見 があるかもしれないので、財団機関誌にソロモ て 頂 き た い。 太 平 洋 に は 珍 し く 内 陸 部 に は ンへの投資も含めて、支援募集中とでも書いて 4,000m級の急峻な山があるため、昔は人々の 頂くと嬉しいです。省では、盗難や破壊を防ぐ 往来が困難だったことから、国内には言語が ため、中層型FADを検討しています。設置場 700語くらいあります。沿岸部では自然のまま 所をGPSでわかるようにしておくのもアイデア のサンゴ礁もありますし、ダイバーの方々は大 かもしれません。 いに楽しんでもらえると思います。 また、貿易面では、日本から鰹節工場に投資 を検討して頂けないかと思っています。また、 海水がきれいなので海藻栽培も適しており、水 産公社がミリンベイ州に地元と立ち上げたプロ ジェクトがあり、もう収穫が始まっています。 ソロモン諸島 SPCデザインの表層型FAD ベン漁業海洋資源省 首席漁業官 Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力は A.スポーツフィッシングの周辺環境が整い、日 Q.漁業振興で成功した施策や 成功案件は 本製の質の良い漁具などがあれば観光客に来て A.現在、FADプロジェクトは、ほぼ成功と言っ もらえるのではと思っています。また、資源管 ていいと思います。選挙区 1 つにつき、漁業省 理の一環として、場所を特定して自然保護プロ が作成したSPCモデルの表層型FADを設置す グラムを立ち上げ、観光客の視察を含めたエコ るもので、既に2014~2015年の間に48カ所に 1 ツーリズムに繋げられないかと計画中です。ド 基づつ敷設しました。このプロジェクトは先ず ルフィンウオッチングは、外国の環境保護団体 地元のコミュニティまたは議員が州政府に申請 Earth Island Instituteから干渉があったので今 し、漁業海洋資源省に申請が提出されてきたと は止めています。 ころで省は州と協議をして実施場所を決めます。 実際のFADの設置は省が行いますが、その前 に地元の人たちに啓蒙し、FADに関する理解 を深めてもらいます。場所は手漕ぎカヌーでた どり着ける範囲のリーフの外側です。大成功と 言っていいほど魚が釣れていることから、FAD が13基も盗まれたり、他の地域の船によって壊 されたり、希望する地域に全部行き渡っていな ツバル シアオシ天然資源環境省 水産局長代理 Q.漁業振興で成功した施策や いなど問題もありますが、リーフ外で効率的に 成功案件や現在最も重点を置いている漁業振興 漁ができることで漁民が増え、漁獲量が上がる 案件は など、かなりの成果が出ています。 FADには、もっといいデザインやアイデア 19 A.2014年にFAOプロジェクトに対しSPCから 技術支援を得て、FADを全島に 2 基ずつ、財団 海外漁業協力 第75号 2016.9 特集 太平洋島嶼国への技術協力 から維持管理の支援を受けている水産局のマナ Q.観光や輸出の促進に繋がる貴国の魅力 ウイ号を使って設置しました。今、マナウイ号は A.魅力というには複雑ですが、日本を含めて海 動いていませんけど。 (2016年度FDAPINプロ 面上昇等のドキュメンタリーを作るためにやっ ジェクトで対応し 9 月には再稼働済)FADは てくる人が大勢います。環境問題、気候変動を フナフチ島のみ中層型で、他は表層型ですが、 各々違う視点でレポートして、いかにツバルが 様子を見て他も中層型に変更していく予定です。 脅威にさらされているかなどを報道しています。 現在とても有用であり、漁業者も利用していま 観光客は海洋保護区を見に来ることもあります。 す。 Q.海面上昇などに関してツバルに来るジャーナ Q.他国からのプロジェクトは リストがレポートした内容と地元の人々が実感 A.ニュージーランドの支援による「ツバル水産 していることは一致していますか 業サポートプログラム」による天然資源省の新 事務所の建設が2016年 4 月から始まっています。 また、世界銀行の支援でPROP(太平洋地域 海洋協力) 4 地域 6 年計画の気候変動対応及び A.色々ですね。地元の人々にインタビューする 場合は、ツバルの人々の気持ちが伝わりますけ ど、全く接触なしで作られた番組は現実とは別 物ですね。 海洋資源保護プロジェクトがスタートしました。 NAPA(国別適応行動計画)は、NAPA 1 及 びNAPA 2 と別れていて、NAPA 2 は環境部の 下で実施されており、漁業関係のプロジェクト Q.ではツバルを知るためには、ツバルに来ても らい地元の人と話すことが一番ですね 日本でもキリバスやツバルの海面上昇など、 深刻な環境問題のドキュメンタリーがたくさん が含まれます。 報道されていますが、具体的にそういった脅威 Q.FADの材料はどこから調達したのですか を感じたことはありますか A.天然資源環境省が負担しています。省と地元 A.2015年のサイクロン・パムは、離島では高波 漁協の間で、FAD設置後のメンテナンスを含 などでかなりの被害が出ました。また、同じく むMOUを締結しています。漁協側にはメンテ クリスマスやニューイヤーの時もハリケーン級 ナンスを行う道具や技術が不足しているので、 のサイクロンが来て、死者は出なかったけれど、 省がダイバーを使って実施することになってい 影響を受けました。 ます。それにもマナウイ号が必要です。 Q.漁 民がFAD設置場所へ行く際に船外機付き ボートは必要ですか A.フナフチ環礁は大きなラグーンなので船外機 付ボートを使いますが、その他の環礁では手漕 ぎカヌーを使っているようです。漁業者の支援 要請に応え、2014年12月ワークショップを開催 し、操業技術、船外機の修理等の技術的トレー ニングをしました。 海外漁業協力 第75号 2016.9 20 連載「キリバス共和国離島訪問記」 シリーズ キリバス共和国離島訪問記 第2回クリスマス島 その1 キリバス漁業開発アドバイザー 高橋 啓三 キリバス共和国地図 (右黄色枠がクリスマス島) 出典:国際機関 太平洋諸島センター (http://blog.pic.or.jp/) を加工して作成 左の地球図のほぼ中 にはくぼみが増えたが補修の跡はみえない。人家 心がクリスマス島であ や新しい建物が増えているようには感じなかった。 る。ホノルルの2,000㎞ 真南に位置する。周囲 は太平洋でどの大陸か らも離れている。キリ バス共和国独立前、英 出典:University of Texas Libraries 米の政治家・軍人はこ の地の隔離性に注目して1950年代から60年代にか けてここで水爆を含む大気圏内核実験を繰り返し 行った…。 2016年 3 月空路クリスマス島に向かった。2011 クリスマス島の白い一本道 年以来 2 度目の訪問である。再訪の第一印象は 「なにも変わっていない」だった。突き抜ける青 空、厳しい紫外線、広すぎる不毛の平坦地。背の 過密化する首都タラワ 低い灌木のブッシュが続く。車が少ない割に道路 2015年センサスによればクリスマス島の人口は 21 海外漁業協力 第75号 2016.9 連載「キリバス共和国離島訪問記」 2010年と比べて5,586人から6,447人へと15%増え 台風地震津波などの天災が少ない。カツオ・マグ ている。キリバスの多くの離島で人口は微増ある ロ類など回遊性魚類の宝庫。子供が多い。政府の いは減少しているなかで、タラワとクリスマス島 開発促進政策の支援が期待できる。海洋水産資源 は国内移住と自然増の結果人口は増え、殊にタラ 開発を軸とした漁業、水産加工基地の設置。宇宙 ワでは 5 万人から 5 万 6 千人と 5 年間で 6 千人の 航空研究開発機構の衛星追跡用レーダーステー 増加となった。キリバス全体で人口は 7 千人増え ションのような宇宙航空技術開発施設の誘致。マ 11万人となっている。 リンレジャーによる観光開発。島の隔離性と水産 クリスマス島の面積は福岡市とほぼ同規模の 加工廃棄物を利用した養豚、養鶏などのファーム 388平方㎞でキリバスの全国土面積の約半分を占 と加工施設の設置。世界で最も早く一日を迎える めている。対してタラワの面積は16平方㎞しかな 時差を利用した金融センターの設置等々が期待さ い。国はこの狭い首都タラワへの人口集中を抑止 れる。 し、クリスマス島開発を促進するため同島への移 マイナス面は、社会的インフラ、特に海上輸送 住を奨励している。キリバス独立(1979年)前、 と通信、上下水道の未整備。市場から隔離してい 同島に定住者はおらず、島全部が国有地となった。 る。労働人口が少ない。年間降雨量が少ない。暑 島への移住を希望する国民には国が住宅地をリー い。水産資源以外の資源に乏しい。島の全土が標 スしている。 高 5 m以下で気象災害に対して著しく脆弱。医療 機関の未整備などがある。 クリスマス島の開発可能性 珊瑚礁だけでできた島としては、クリスマス島 望まれる新運搬船の就航 は世界最大であるという。広大な陸地だが山も川 タラワと同島を結ぶ運搬船は、キリバス漁業公 もなく、塩混じりの白茶けた砂とサンゴばかりの 社(CPPL)に所属するモアモア号ただ一隻であ 固い大地は全くの耕作不適地である。移住者が食 る。本船は1985年に日本の無償援助で供与された べて行くための経済開発を考えるに当たり、同地 600トンの冷凍運搬船で、既に激しく老朽化して の利点と欠点を列挙してみた。 いる。タラワを過密化から救い、クリスマスの経 済的発展を促すためには新しい貨客船の導入とそ の定期運航化が必須である。さらに言うなら、キ リバスの未来のためにはクリスマス島への首都移 転も考慮されなければならない。(以下次号) JAXA(宇宙航空研究開発機構)クリスマス島 衛星追跡用レーダーステーション プラス面は、広い未利用の平坦地がある。赤道 キリバス漁業公社に所属するモアモア号 直下の貿易風海洋性気候で気象が安定している。 海外漁業協力 第75号 2016.9 22 財団ニュース パラオ シャコガイプロジェクトの進捗状況 シャコガイ養殖プロジェクト 曽根 重昭 太平洋諸島地図 左上端パラオ 出典:国際機関 太平洋諸島センター 2014年 6 月、パラオ共和国天然資源環境観光省 近年これらのシステムがうまく噛み合わなく の海洋資源局(Bureau of Marine Resources なっていた。観光客が増大しているにもかかわ (BMR) )付属の水産試験研究所(Palau Mari-culture らず稼動している養殖場が減り、PMDCの種苗 Demonstration Center(PMDC))のシャコガイ 生産活動自体も低迷していた。本プロジェクト 部門に対する、技術協力の覚書がパラオ政府と財 (シャコガイ養殖振興プロジェクト:Giant Clam 団で取り交わされた。これに従い、筆者は、同年 Mariculture Promotion Project)は、それら既 11月に専門家としてパラオに赴任した。本誌第72 存のシステムを再構築することで、パラオにお 号(2015年 4 月)ではパラオにおけるシャコガイ けるシャコガイ養殖を活性化することを目的と 養殖の概要を報告したが、今回はプロジェクト開 している。 始から現在(2016年 8 月)までの活動の経過状況 2.プロジェクトの実施スケジュール を報告する。 本プロジェクトは、実施期間を 5 年として各 1.プロジェクトの背景 年次の活動内容を以下のように策定した。 パラオは観光立国を標榜しており、日本を含 むアジア人を中心とする観光客向け食用シャコ ガイの大きな国内市場を有している。そのため、 早くから養殖の必要性が叫ばれ、世界に先駆け てシャコガイの大量種苗生産技術が確立される とともに、数多くの養殖場が作られた。しかし、 23 ( 1 ) 1 年次(2014年11月~2015年 3 月) 現行のシャコガイ種苗生産技術の問題点 を洗い出し、改善する。 ( 2 ) 2 年次(2015年 4 月~2016年 3 月) 改善した種苗生産技術を用いてシャコガ イ種苗を増産する。 海外漁業協力 第75号 2016.9 ( 3 ) 3 年次(2016年 4 月~2017年 3 月) 財団ニュース 建設工事が行われる2017年度は、陸上で行われる 種苗生産施設を改修する。その間、種苗 種苗生産活動をすべて停止することになった。こ 生産は休止し、養殖普及活動を行う。 れらによって、本プロジェクトの実施スケジュー ( 4 ) 4 年次(2017年 4 月~2018年 3 月) 新しい施設での種苗生産手法を確立し、 運営計画を策定する。 ルは、当初計画から丸 1 年後ろにずれ込む見通し である。新施設完成後のプロジェクトの活動内容 については、無償案件の進捗状況をみながら再度 ( 5 ) 5 年次(2018年 4 月~2019年 3 月) 検討する必要がある。 新しい施設で本格的に養殖用シャコガイ 3.プロジェクトの進捗状況 の種苗生産を行う。 本稿の執筆時点(2016年 8 月)で、着任から 1 年半が経過し、プロジェクトは 3 年次に入ってい た。 1 年次と 2 年次の活動は、ほぼ計画通りに遂 行された。 3 年次は、 3 月でシャコガイの採卵を 終了し、陸上施設では稚貝の中間育成のみが行わ れている。以下に業務の進捗状況を活動項目に 沿って報告する。 ( 1 )種苗生産施設の改修及び維持管理手法の確立 PMDCの基本施設は老朽化が目立ってい た。これが直接・間接的に種苗生産活動に悪 影響を及ぼしており、特に飼育海水の供給に 問題があった。本プロジェクトは、 3 年次に 予定していた本格施設改修とは別に、まず喫 緊の課題を解決することから始めた。取水ポ ンプの修理・交換、高架水槽の清掃・水位制 御システムの改善、配水管内部の清掃、エ アーブロワーの修理・交換、給気管の漏れ修 理等を行った。さらにこれらのメンテナンス 出典:国際機関 太平洋諸島センター を ル ー テ ィ ン 化 し た。 こ れ と 平 行 し て、 BMRが独自に予算を確保し、コンクリート 本プロジェクトでは、 3 年次に何らかの形で老 水槽の漏水修理、古い給水管の交換、一部水 朽化した施設の抜本的な改修を行うことを計画し 槽の遮光屋根設置、事務所棟の屋根トタン葺 ていた。パラオ政府及び関係機関と協力し、プロ き替え等を行った。 ポーザルを作成したところ、2017年度の無償資金 協力案件「パラオ海洋養殖普及センター施設改善 ( 2 )種苗生産技術の改善 計画」として採択される見通しとなった。同時に PMDCでは、平常の業務としてシャコガイ パラオ側は、無償案件実施の条件として、2016年 の種苗生産を行っており、本プロジェクトは 12月末までにPMDCの現状施設をすべて撤去し、 それを支援することが主たる活動である。特 更地にすることが求められることとなった。また、 に、親貝の採集、繁殖生態の解明、産卵誘発 海外漁業協力 第75号 2016.9 24 財団ニュース 手法の改善、幼生管理・稚貝飼育手法の改善、 下表 1 では、2013年度がプロジェクト開始 中間育成手法の改善について、スタッフの能 前、2014年度が施設改修技術の改善期、そし 力向上を目指して重点的に技術指導を行った。 て2015年度がプロジェクトによる生産実績と PMDCが現在種苗生産を行っているシャ なる。在庫の状況で次年度の生産調整を行う コガイ類は、下表 1 に示す 5 種である。前回、 ので、単純に比較はできないものの、2015年 本誌72号で紹介した種苗生産数は、BMR側 度は、PMDCの現行施設における生産限界に から提供された数値をそのまま掲載したもの 近い数量まで回復できたと思われる。なお、 だが、プロジェクトが始まり過去の生産記録 2016年度は10月以降に施設の解体が行われる を精査・再集計したところ、数値がかなり異 ことを見越して新規の種苗生産活動は休止し なっていた。データ管理をきちんとできるよ ている。 ⇨ うにするのがプロジェクトの課題でもある。 表1 PMDCにおける過去3年のシャコガイ種苗生産数(単位:個体) 種 類 2013年度 2014年度 2015年度 プロジェクト 開始前 施設の改修 技術改善中 プロジェクト で種苗生産 Tridacna derasa(ヒレナシジャコ) 174,659 2,908 28,792 T.squamosa(ヒレジャコ) 187,529 8,701 23,236 T.maxima(シラナミ) 0 37,053 258,092 T.crocea(ヒメジャコ) 1,451 149,632 28,565 Hippopus hippopus(シャゴウ) 4 ,356 0 213,645 367,995 198,294 552,330 合 計 注 1 )種苗生産数とは第 1 回目(生後 4 ~ 6 ヶ月)の取り上げ個体数、取り上げ年度ベース してきた。本年は、これから陸上水槽が解体撤去 表 2 に示した。2014年 7 月に種苗を有償化したこ される前に在庫を全て民間の養殖所へ配布、また とが影響し、本プロジェクト開始直後は出荷数が は放流するなどして分散させるため、出荷数はプ 落ち込んでいた。2015年には、新規のファーマー ロジェクト開始前の2013年レベルに達すると思わ が参入してきたこともあり、出荷数は徐々に回復 れる。 ⇨ PMDC の近年のシャコガイ種苗出荷実績を下 表2 2013年~2016年の養殖用シャコガイ種苗出荷数(単位:個体) 年 次 合 計 2013 58,224 2014 41,276 2015 2016 ヒレナシジャコ シャゴウ ヒレジャコ ヒメジャコ 31,979 8,303 7,382 9,060 1,500 27,125 3,600 6,175 500 750 1,550 854 722 0 0 32,869 7,775 17,500 973 0 6,621 25,185 10,700 13,825 330 330 0 注 1 )2013年:プロジェクト開始前 注 2 )2014年上段までは無償配布、2014年下段以降は有償配布 注 3 )2016年は 8 月 5 日現在の販売実績 25 シラナミ 海外漁業協力 第75号 2016.9 ( 3 )海中育成技術の改善 財団ニュース 施設では、小型ケージを使った観賞用シャコ PMDCは、地先に大規模な海中育成施設 ガイの海中育成技術の開発を行っている。 を持たない。そのため、シャコガイ種苗を陸 上水槽で養成する期間が長引きがちであった。 ( 4 )養殖普及活動 PMDCでは、その間に施設の不備からくる 本プロジェクトが始まってから、現在まで トラブルを主因として、シャコガイの大量へ に 7 州、14ヵ所に新規ファームを建設し、 2 い死を繰り返してきた。これがプロジェクト 州、 5 ヵ所の既存ファームを修復した。前項 実施以前に種苗生産数が安定しなかった最大 ( 3 )の「海中育成技術の改善」から引き継 の理由である。なるべく稚貝が小さなうちに いだ活動項目として、ファームのデザインを 安全に海に出すことで、陸上水槽の回転を良 いろいろ変えて建設コストと耐久性を試験し くすることが種苗の大量生産を可能にするポ たところ、20ft×30ft( 6 m× 9 m)の水中 イントになると考えられた。そのような観点 ペン(魚囲い)が最も優れていた。そのため、 から、当初は大型ケージによる稚貝の海中育 現在はこれをファームの標準規格としている。 成をイメージしており、ここでは海中育成 ケージの改良、稚貝の早期沖出し手法の開発、 モニタリングの実施、ケージの維持管理など を活動項目としていた。 20ft×30ftの水中ペン(魚囲い) また、小型種苗の海中育成や観賞用シャコ ガイの養殖には、 5 ft× 5 ft(1.5m×1.5m) 小型ケージを使った海中育成 の懸架(海底から浮いている状態)式ケージ を標準規格とした。 しかし、実際にプロジェクトが始まってみ ると、パラオの民間ファームは比較的天敵の 少ない藻場の潮間帯に設置されているという 特有の事情があり、稚貝は民間ファームに直 接持ち込んだほうが合理的なことがわかった。 そのため、この活動はそのまま次項( 4 )の 養殖普及活動に引き継ぐことにして、PMDC の海中育成施設ではなく民間ファームの現場 で試行錯誤を繰り返し、実戦的な海中育成技 術を開発している。一方、PMDCの海中育成 5ft×5ft(1.5m×1.5m)の懸架式ケージ 海外漁業協力 第75号 2016.9 26 財団ニュース これらファームの建設資材費は、シャコガ では現在50ヵ所前後の民間ファームが稼動して イ種苗の売上金等から拠出している。新規の いると思われるが、PMDCでも実態は完全に把 ファームは、養殖普及の実証試験に協力して 握していない。2017年は工事によって陸上作業 もらう形としBMRが無償で提供しているが、 がなくなるため、モニタリングや巡回指導と シャコガイ種苗についてはファーマーが いったこれまで手薄であった野外活動を集中し PMDCから購入している。 て行う予定である。 これまでパラオでは、シャコガイファー マーのほとんどが他に本業を持つ兼業者で ( 2 )シャコガイ流通に関連する法規の整備 あった。そのため当初 2 年次に計画していた パラオのシャコガイ養殖で最も深刻な問題は、 養殖ワークショップ(技術研修会)は、参加 養殖中のシャコガイが盗難の被害に遭うことで 者の都合がつかず実施できなかった。そこで ある。BMRではこの解決策として、レストラ 本年は、方針を変えて養殖経験の無い新規 ンでシャコガイを供する場合に必要なライセン ファーマーに対する養殖開始時講習会の開催 スの導入を計画している。ライセンスを発給さ とした。第 1 回目は、ガラロン州(地図では れたレストランは、誰からシャコガイを購入し アルコロン州と表記)オルレイ地区に新たに たか記録・報告する義務があるというものであ 組織された北部リーフ漁協に属するシャコガ る。その際、購入できるのは養殖物に限るとい イファーマーを対象に、漁協と共同で講習会 う条項も含まれる。もちろんライセンスの無い を開催した。 レストランは、シャコガイをメニューに載せる ことはできなくなる。これは法案として、すで に国会に提出されている。ファーマーの側から もシャコガイ養殖をライセンス制にして、ライ センスのないファーマーによるシャコガイの販 売を禁じて欲しい、あるいは養殖シャコガイの 公定価格を設定して、密漁品流通による市場価 格下落を防止して欲しいという要望がある。 PMDC種苗生産施設の工事期間中に、これら シャコガイ流通関連のルール整備に協力し、パ ラオのシャコガイ養殖の新しいフェーズに備え 新規ファーマー講習会 たい。 4 今後の活動方針 ( 1 )ファームのモニタリング及び巡回指導 シャコガイファームのモニタリングは、当初 4 半期ごとに実施する計画であったが、実際は 非常に手間のかかるもの( 1 回の全数調査に 1 週間が必要)で、これまで2015年 3 月と2016年 5 月の 2 回しか実施できていない。特に2015年 は、パラオ近海での台風の発生が多く、調査を 計画しても実行できない状態が続いた。パラオ 27 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース セーシェルIOTC-OFCFプロジェクト フェーズⅣを終えて IOTC-OFCF プロジェクト 左近充 浩一 皆さんはセーシェルと聞いて、何を思い起こさ 1976年に独立しましたので、今年(2016年)は れますか?昔、松田聖子さんの歌で、 「セーシェル 独立40周年の記念の年です。首都ビクトリアのあ の夕陽」という歌がありましたが、その歌で名前 るマヘ島は、種子島くらいの大きさと言われてい だけは知っているけど、実際何処にあるのかは分 ます。人口は全部で 9 万人余りで、インド人や中 からないという答えが返ってくるかもしれません。 国人などの外国人も雑貨商や建設労働者などとし て多数働いています。セーシェルは、大昔無人島 だったようですが、商売などで航海するアラブ人 や、大航海時代に入ってヨーロッパ人などが訪れ るようになりました。フランス統治時代には、プ ランテーション開発のために、アフリカの人々が 奴隷として連れてこられました。現在の住民の多 くは、クレオール(ヨーロッパ人とアフリカ人の 混血)です。独特のクレオール文化として、言語 や食事・生活習慣・音楽・民族ダンスなどを伝え 守っています。 主な産業は観光と漁業です。 5 つ星クラスのリ セーシェルは、アフリカ大陸のケニアから東へ ゾートホテルがビーチ沿いに立ち並び、離島のリ 1300㎞離れた、115の島からなる島嶼国です。南 ゾート開発も進んでいます。観光客の主な国は、 緯 5 度、東経55度付近に位置しています。 フランス・ドイツ・イタリア・UAE・中国・ロシ アなどですが、最近は中国からの直行便(チャー ターベース)を増やすなど、中国が力を入れてい ます。 ここで一番有名なものは、ココデメールという ヤシ科の植物で、和名が双子椰子です。ココデ メールの原生林は、マヘ島から東へ連絡船で 1 時 間のプララン島にあります。その実は、重さ20㎏ 長さ50㎝にもなり、世界一の大きさ・重さの種と び やく 言われています。昔は、その形から媚薬と信じら れ、珍重されたそうです。この双子椰子の実が海 を漂って 同じインド洋の島嶼国モルジブの海岸 で見つかったのが初めて人の目にふれた時らしく、 この実がなるヤシの木が付近で見当たらないので、 海の底に生えてるヤシだと思われたことから「コ セーシェル地図 出典:外務省ホームページ (http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/seychelles/) コ・デ・メール」 (海のヤシ)と呼ばれたそうです。 海外漁業協力 第75号 2016.9 28 財団ニュース 統計によると、毎年ビクトリア漁港で平均20万 トンのマグロ類が水揚げ・転載されており、年間 370百万㌦(約370億円)の収入をセーシェル経済 に貢献しています。漁業種は、はえ縄漁業や大型 まき網漁業が主ですが、合弁企業や遠洋漁業国の 漁船(はえ縄漁船約100隻、まき網漁船・運搬船 約50隻など)が操業しております。 「ココ・デ・メール」(海のヤシ) さらに陸上のゾウガメも有名です。昔は、食用 や油用、動物園の展示、剥製、ペット目的による 乱獲で生息数は激減したそうです。化石から推定 すると、セーシェル広域に分布していたと考えら れていますが、20世紀初頭にはアルダブラ諸島を 除く地域では絶滅したようです。セーシェルでは ビクトリア漁港の水揚げ 法的に保護され、生息地は1982年に「アルダブラ 環礁」として世界自然遺産に登録され、アルダブ ラ諸島での学術調査以外の採集禁止、アルダブラ IOT(インド洋マグロ会社)はこの地域で最も 諸島への上陸が規制されているなど厳重に保護さ 大きい缶詰会社で、2,300名を雇用し、最大で日産 れてきたようです。現在は、政府で保護されなが 150万缶のマグロ缶詰をJohn WestやPetit Navire ら一部輸出も認められ、セーシェル国内での頭数 などの主要ヨーロッパ缶詰会社向けに製造してい は人口よりも多いとさえ言われています。セー ます。 シェルはゾウガメにとって天国になっています。 地域漁業管理機関のIOTC(Indian Ocean Tuna Commission-インド洋まぐろ類委員会)の目的 は、インド洋におけるマグロ類の資源保存及び最 適利用を確保することで、1996年にセーシェルに 事務局が開設されました。対象魚種は、マグロ 類:(キハダ,カツオ,メバチ,ビンナガ,ミナ ミマグロ,コシナガ,マルソウダ,ヒラソウダ, スマ,ヨコシマサワラ,タイワンサワラ,メカジ キ,シロカワカジキ,クロカワカジキ,マカジキ, バショウカジキ)です。2016年の現時点で、条約 加盟国は31か国、協力的非加盟国は 5 か国です。 IOTC事務局では、 7 か国の専門家スタッフが集 ゾウガメ 29 まり仕事をしています。 まき網漁業では、混獲魚が一定量を占めていま 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース れています。 アイゴ塩干品の真空パック製品 す。セーシェルの企業が、同国EEZ内で漁獲され た混獲魚を有効利用する方法を見つけました。プ セーシェルの様々な漁獲物 ロビデンス漁港の水産会社が、ブルーエコノミー (自然生態系に着目した経済モデル)の観点から このリーフフィッシュの中のアイゴに注目し、 も、混獲魚をターゲットにするビジネスに取り組 塩干・真空パックの魚がプララン島で生産されて んでいます。 います。多数の魚種の中からアイゴが選ばれて、 この会社は、既に水産加工品をスリランカ、イ 美味しい産物になっています。アイゴは伝統漁業 ンド、南アフリカ、ガーナ及びベナンへ輸出して の竹籠で漁獲されていますが、ベストシーズンは います。混獲魚は、まき網漁船から品質・魚種に 10月から 3 月の北西モンスーンシーズンの満月前 より 1 ㎏当り日本円で15~30円で購入され、サワ 後の 4 日間で、その頃親魚が産卵のためリーフに ラ、ツムブリ、シイラは、 2 ㎏のブロックにカッ 遣ってくるからです。他のリーフフィッシュとは トされマイナス25℃の冷凍コンテナに保管されま 異なり、塩干のアイゴは日持ちが良く、島の土産 す。傷んだ魚体は、同様に処理されドッグフード として観光客に買われているようです。海外に住 用となるそうです。SFAによると、ビクトリア むセーシェル人の郷愁として、この塩干品は故郷 漁港を基地に操業しているフランスやスペインの を思い出させるセーシェルの海産物の優れた味と まき網漁船40隻からの混獲魚は投棄されているそ なっているそうです。 うです。混獲魚は、まき網漁船の漁獲の 5 %を占 めており、缶詰用サイズより小型のカツオを含む ハガツオ・シイラ、カジキ、サワラ、サメ、ツム ブリ等の混獲魚の有効利用が求められています。 この水産会社の取組は、資源の有効利用という観 点から注目されると思います。 セーシェルでは、リーフフィッシュと呼ばれる 多種多様な魚(ブダイ、フエフキダイ、アイゴ、 ヒラアジ、シマアジ、カワハギ、アオチビキ、ヒ メジ、サメ、サバ、タカサゴ、ハタ、タコなど) が地元漁民により漁獲され、道端や公設市場で販 アイゴ塩干品の製造 売されています。一部は塩干魚に加工して販売さ 海外漁業協力 第75号 2016.9 30 財団ニュース 上述したブルーエコノミーのモデルは世界の海 の探索と救助、海賊対策パトロール警備並びに港 洋、水産、気候変動、炭化水素、海上交通、その 湾・海洋の環境保護の役目を担っています。SCG 他全ての海洋資源の管理に関与するものであり、 はパトロールボートを 6 隻保有しています。 セーシェルを含むSIDS(小島嶼開発途上国)に とって長期間の存続可能性を秘めるものです。ブ ルーエコノミーは、セーシェルが国際会議の場で 積極的に宣伝している概念で、2012年の持続可能 開発に関するリオ・サミットなどで紹介された他、 サモアで開催された第 3 回小島嶼開発途上国会議 や2014年 1 月にアブダビで開催されたブルーエコ ノミー・サミットで紹介されました。ミッシェル 大統領は、2014年12月にセーシェルで開催された ブルーエコノミーに関する国家公開討論会の中で、 パトロール船上の警備活動の様子 「祖父母から両親や子供に到るまで海はセーシェ ル人にとって生活の糧であった。ブルーエコノ セーシェル海域の問題といえば、ソマリア沖の ミーによって我々は新しい機会を創出することが 海賊問題があります。EUCAP NESTERはEUの できる。」と述べ、「また、さらなるブルーエコノ 海賊対策プログラムで、コーストガード・海事法 ミーの開発は、漁業以外にも、再生可能エネル 陪審員システム・沿岸警察のための訓練や助言を ギーの潜在性・観光の多様化・原油や天然ガスの 主に行っており、ソマリア、ジブチ、セーシェル、 潜在性・セーシェルが貨物配送のハブになる可能 タンザニアにおける活動を実施しています。活動 性などの機会を創出する。」と強調されました。 拠点をセーシェルに置き、2013年11月から2014年 2 日間のフォーラムでは、地元漁師・環境科学 10月の期間に、16百万米ドル(約16億円)の予算 者・セーシェルコーストガード(SCG、海上保安 で開始され、このミッションは2016年まで延長さ 局)の代表者・観光セクター・公務員・私企業並 れました。EUCAP NESTERは、アフリカの角 びにセーシェル海域で資源開発を行っている外国 (インド洋と紅海に向かって角のように突き出た 企業が参加しました。セーシェル漁船船主協会の アフリカ大陸東部)と西部インド洋の国々が、彼 会長は、「ブルーエコノミーの開発がセーシェル らの領海の効果的な監視ができるように、海賊と 人の雇用機会を創出する助けになる。」と述べ、 の闘いの助けになるように活動しています。ソマ また「セーシェル人には潜在性の開発の全ての分 リ ア 沿 岸 の 海 賊 襲 撃 数 は、2011年 の236件 か ら 野でトレーニングが必要で、それらの資源管理の 2014年の 2 件の不成功と激減したことが報告され 中でリーダーシップを取る準備をするべきであ ています。これは、この海域での国際的海賊対策 る。」と述べています。セーシェルは、国際会議 協力の賜物であるといえます。海賊発生数は極端 の度にこの考えを紹介し、海洋開発や海洋資源管 に減少しているものの、公海での別の形の犯罪が 理の分野でリーダーシップを取るべく活動してい 起こってきていると問題視されています。それら ます。 は、漁業違反操業、人身売買、武器と麻薬、銃火 器強盗などが含まれています。これらの犯罪によ SCGは、セーシェル人民防衛軍(SPDF、1992 る地域安全保障への脅威は、テロリストの活動と 年創立)の部局の一つです。主な業務は、海事・ 同様です。これらの活動のコントロールと封じ込 軍事・多目的任務の実施ですが、最近は船舶事故 めは難しくなっているといわれています。これら 31 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース の犯罪は周辺国にも波及しており、セーシェルで 善に関するワークショップの実施、モーリシャス も麻薬問題やマネーロンダリングのような犯罪が の漁獲量統計のデータ収集と加工の査定、コモロ 根深く発生しています。セーシェルがインド洋の の漁船センサスの実施(2011年~2012年)並びに 最後の楽園であると楽観している場合ではないの 漁獲量推計の訓練と水揚げ場での漁獲量査定調査 が現状です。海賊問題については、後で詳しく説 のための財政支援、イランのデータ収集の変化へ 明致します。 の対応と水産データの加工と検証の改善のための データベースシステムとデータベースデザインの 私は、2013年 7 月にIOTC-OFCF プロジェクト 改善、スリランカのデータベース管理システムの に従事するためにセーシェルへ派遣されましたが、 中央集権化並びに水揚げ場のサンプリング範囲の セーシェルへは 2 回目の赴任でした。第 1 回目は、 強化に関する財政支援などの活動が行われました。 2002年 4 月から2007年 3 月までの 5 年間でした。 当時は、日本漁船が多数セーシェル沖で操業して そしてフェーズⅣでは、インドネシアのはえ縄 いました。 漁船の漁獲量モニター活動のフォローアップ・ IOTC-OFCFプロジェクトのフェーズⅠでは、 ミッションの派遣、インドネシアのデータ収集と 実態調査ミッションの派遣(2002年インドネシア、 管理のワークショップの開催、タイとマレーシア タイ、オマーン、2003年スリランカ、イラン、イ ンド、モルジブ、モザンビーク、モーリシャス、 セーシェル、2005年タンザニア・ケニア)とカン トリーリポートの作成、IOTC地域のデータ収集 と統計システムに関するワークショップの開催 (2004年 3 月セーシェル)、タイ沿岸まき網漁業の 特に沿岸性マグロの漁獲量・漁獲努力量・体長組 成データ収集の改善に関する支援、IOTC-FINSS を使用したデータ加工・データ管理に関するワー クショップの開催(2002年 8 月セーシェル、2004 年12月インドネシア)などの活動を行いました。 第 2 回目の赴任時には、IOTC-OFCF プロジェ クトはフェーズⅣになっていました。ちなみに インドネシアのデータ収集と管理のワー クショップの開催、魚種同定訓練の様子 フェーズⅡでは、藤原俊司専門家を中心に、実態 調査ミッションの派遣(2007年モーリシャス、タ イ、2008年イエメン、2009年コモロ)、アラビア 海における零細刺網漁業と一本釣り漁業のサンプ リング調査の実施、インドネシアを基地とする生 鮮マグロはえ縄漁業の漁船マーク計画を実施する インドネシア漁業総局の支援、インドネシア漁業 のログブック計画に関するワークショップの開催 とその後のフォローアップ報告書の出版(2009年 5 月)などに取り組み、フェーズⅢでは、インド ネシアで漁獲量推計並びにサンプリング計画の改 インドネシア・パイロットプロジェクトの サンプリング活動の様子 海外漁業協力 第75号 2016.9 32 財団ニュース の沿岸まき網漁業から収集される漁獲努力量と体 名が行われました。 長組成データのレビュー、SFAが実施している 科学オブザーバー計画への活動支援、インドネシ 2014年 1 月にソマリア海賊がタンカーを襲撃し ア・パイロットプロジェクト(西部・北部スマト た事件の第 1 発見者(証人)として、海上自衛隊 ラ州での沿岸性マグロのサンプリング調査と漁獲 から 4 名の自衛官が裁判へ出頭するため、セー 量推計のワークショップの開催)などの活動を シェルを来訪されました。2015年 7 月には、CTF- 行ってきました。 151の司令官に日本人として初めて任命された海 将補の方が英国海軍少佐を伴い、セーシェル及び 2008年頃から発生したソマリア沖の海賊問題は、 ケニアを訪問され、CTF-151の活動と海上の安全 2011年には発生件数が236件となり、出没する海 航行保全に関する現状並びに今後の展望について、 域もセーシェルEEZ南部へと広がってきたために、 セーシェル政府及びケニア政府に説明されました。 セーシェル沖に出漁する日本漁船は皆無となりま セーシェル政府は海賊対策に対する日本の貢献に した。ハイリスクエリアでの操業を自粛するよう 感謝を表明しました。 に、との指導が水産庁より日本漁船に対してなさ 次頁の図でも説明されているように、海賊の発 れ、同エリアに北上する漁船もVMSの位置情報 生件数は2014年には未遂が 2 件、2015年は発生な により注意喚起を受ける事態となりました。その しと激減しています。特にセーシェルEEZ内では、 間に、米国やヨーロッパを中心とする海賊対策プ 地元漁船は武装ガードマンを乗船させずに操業を ログラムが各種実行され、 EUのEUCAP NESTOR しております。 プログラムにおいて東アフリカ近隣国を対象に訓 練が行われ、また、アデン湾を中心にCTF(連 合任務部隊)という取組みが行われています。 CTFには150、151、152という部隊があり、海賊 対策は主にCTF-151で実施されています。 2014年12月には海上自衛隊第 6 護衛隊の護衛艦 2 隻(たかなみ、おおなみ)がセーシェル港に寄 港し、在ケニア日本大使館特命全権大使とセー シェル政府の内務・運輸大臣との間で、沖で逮捕 した海賊の陸上引き渡しに関し、二国間覚書の署 護衛艦たかなみ・おおなみ 33 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース ソマリア海賊事案の発生海域の推移 出典:「2015年海賊対処リポート」(内閣官房ホームページ) (http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/siryou2/report2015.pdf)を加工して作成 2014年及び2015年にセーシェルEEZ内での操業 から、日本漁船にセーシェル沖漁場に戻って来て 許可を取得した漁船数は、2014年(はえ縄船135隻、 欲しいとの要望が出ています。 まき網船46隻、運搬船16隻)、2015年(はえ縄船 そこで私はこの情報を基に、日本の遠洋漁業者 94隻、まき網船46隻、運搬船15隻)となっており、 の考えを聞かせていただくことが大切だと考え、 はえ縄船は、台湾、セーシェル、中国、まき網船 休暇一時帰国の際(2015年 8 月 7 日)に鹿児島県 はスペイン、フランス、セーシェル、韓国、運搬 串木野漁港を訪ね、遠洋はえ縄漁業の船主さんら 船は、スペイン、セーシェルの籍漁船が主なもの とセーシェル沖入漁の可能性に関して、話を聞い となっています(SFAの情報)。セーシェル政府 てみることにしました。鹿児島まぐろ同友会の 海外漁業協力 第75号 2016.9 34 財団ニュース 方々から遠洋漁業者の生の声を聞くことができた させられ、海賊に乗り込まれた)、乗組員の ことは貴重な経験でした。 金品全てを強奪された。また、インマルサッ ト通信を破壊され日本との通信は不可能と なった。海賊のゴムボートが燃料不足のため、 岸近くまで本船でゴムボートを曳航し、ゴム ボートを放して解放された。死傷者が出な かったのは幸いであった。その後、僚船とハ ム無線が通じたので、その僚船から日本の会 社に連絡を入れた経緯がある。そのような経 験のため、海賊のリスクが全くないという状 況でないと怖くて出漁できない。 5 .現在アンゴラのEEZから外国漁船は締め出し にあっているので、出漁できる漁場が狭まっ 鹿児島まぐろ船主協会の方々 左端筆者 てきている。セーシェル沖に入漁できるのは、 漁場のオプションが広がるので歓迎するが、 話の概要は次の通りです。 安全面での確約がないと難しい。 6 .当方説明によりソマリア沖やセーシェル沖で の海賊発生件数が激減していることは理解し 1 .年間の操業パターンは各社で異なっている。 たが、個別で出漁するには危険度が高く実行 アフリカ関係では、モザンビーク操業が終了 できない。 してから、ミナミマグロ操業に向かう漁船や 7 .水産庁はIMO(国際海事機関)のハイリスク ミナミマグロの操業終了後ケープタウンから エリア設定がある限り、同エリアへの日本漁 アンゴラ沖へ北上する漁船などパターンがあ 船の域入には警告を発すると思われる。セー る。 シェル沖が海賊フリーと言えるのであれば、 2 .セーシェル沖の漁場で操業するのは魅力的で セーシェルEEZをハイリスクエリア設定から はあるが、安全面で確証が無い限り入漁は難 外してもらう働きかけが必要と思われる。ハ しいと考える。以前は、セーシェル~モーリ イリスクエリアの設定は2011年に国際海運会 シャス~モザンビークと回って周年操業する 議所などが策定したBMP(ベスト・マネイ パターンも見られたが、それらの漁船も今は ジメント・プラクティス)に紹介されたもの 西経漁場(東太平洋)で操業しているものが で、2011年 の 第89回IMO海 上 安 全 委 員 会 に 見られる。 おいてBMPの履行が推奨された。 3 .マグロ運搬船でハイリスクエリアを航行する 船は、船籍がバヌアツやパナマであるため、 傭兵(武装ガードマン)を乗せることが可能 そ の 後、IMOか ら2015年12月 2 日 付 け 加 盟 国 であり、実際にそのように対応しているよう 宛レターにてハイリスクエリア設定の縮小が回章 だ。 されています。(依然としてセーシェルEEZ北部 4 .今回会合への参加水産会社の漁船の内の 1 隻 水域はハイリスクエリアに含まれています。) は大西洋のナイジェリアの沖で武装した海賊 に襲撃され(投縄中に船体に銃撃を受け停船 35 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース 実際のところ、ビクトリア漁港にはセーシェル のマグロ缶詰工場が隣接・稼働しており、大型ま き網漁船が日常的に水揚げや転載を行っている状 況です。 最後に 私はプロジェクト・フェーズⅣを終了し、2016 年 3 月中旬に帰国しました。今年度はフォロー アップという形で、フェーズⅣの活動でフォロー アップが必要と思われるプログラムに取り組むこ とになりました。現在(2016年 8 月)はインドネ シア・西部・北部スマトラ州のサンプリング活動 への支援を継続すべく準備中です。 今 (2016) 年度になってから、5 月下旬にレユニオ ンで開催されたIOTC年次会合と 6 月下旬にセーシェ ルで開催された沿岸性マグロ作業部会(WPNT 06)へ参加してきました。年次会合では、資源の 保 存 管 理 措 置(Conservation and Management Measures)について、22件もの提案がなされ、 内12件が採択され決議案となり、 3 件が持ち越し、 7 件が否決されましたが保存管理措置の高まりが 大きな流れとなっております。 インド洋の漁業は東南アジアからインド大陸、 中東、東アフリカの沿岸諸国並びに点在する島嶼 国と遠洋漁業国から構成されていますが、人種・ 文化・生活習慣などが全く異なっており、バラエ ティーに富んでいます。それら沿岸諸国を対象と して、IOTC-OFCF プロジェクトの漁業統計整備 の仕事を続けることに、やり甲斐と楽しみを見出 してきました。幸いIOTCスタッフとプロジェク ト対象国政府の積極的な協力を得ることができた ことに感謝致しております。これからも現場との コミュニケーションを大切にして、インド洋沿岸 諸国の漁業統計の精度を上げることに注力し、ま た日本の遠洋漁業の漁場確保についても問題意識 を高めて、現地での情報収集と業界との情報交換 にも励んでいきたいと思っております。今後とも 関係者の皆様のご協力とご鞭撻をお願い致します。 海外漁業協力 第75号 2016.9 36 財団ニュース まき網漁船への科学オブザーバー乗船記 科学オブザーバー 笹尾 信 海外漁業協力財団から科学オブザーバーの仕事 を紹介されたのが 3 年前。その年以降、講習会に ( 3 )科学オブザーバーとして 認定、登録 毎年参加して乗船調査を実施し、単船まき網船に ( 4 )乗船指示あるまで待機 も乗り、今年になってようやく、オブザーバーの ( 5 )関係業界から乗船の打診、 調査内容を理解したつもりでいたが、相変わらず 財団から派遣指示を受け、 調査記録のミスを指摘され発展途上にある。そん 乗船 な私の失敗談を含め、科学オブザーバーの業務を ご紹介したいと思います。科学オブザーバーを希 科学オブザーバー講習会では、オブザーバー調 望される方の参考になれば幸いです。しばしお付 査内容の説明、作業手順、衛生・安全についての き合いください。 講義が行われる。分かっているつもり、知ってい るつもりでも、再履修(学生時代を思い出し懐か 1.事業の背景、目的 しい)の心構えが必要である。 日本近海では、海外まき網船の一部と近海まき 講習会では、日本オブザーバー計画(以下「JOP」 網漁船が毎年 4 月下旬から 9 月上旬にかけカツオ、 という。)事務局よりトピックス的な話題、情報の マグロを対象としたまき網操業を三陸沖で行って 提供が毎年行われてきた。受講 2 年目には、混獲 いる。今般、WCPFC保存管理措置に基づき日本 魚種について、特にサメの判別方法の講義が行わ 近海で操業するこれらまき網漁船にもオブザー れた。漁獲対象魚がカツオ・マグロであるからし バー乗船が義務付けられた。 て、船で呼ぶ混獲魚種名がいかに不正確だったか 一方で本漁業は年々漁獲効率が向上していると と個人的につくづく思い知った。でもこんなこと 考えられており、その解明に、実際に船上で操業 でめげてもしょうがない、デジタルカメラという 状況の詳細を見聞し、漁業の現場から情報の再確 強い武器がある。分からなければ後でいくらでも 認を行う必要があると考えられている。このため 調べられる。とりあえず面相だけでも頭の隅にお 国立研究開発法人 水産研究・教育機構 国際水産 いて置こう。 資源研究所は以下の情報をオブザーバー調査から さて、受講 3 年目の2016年には、WCPFCの最 得ている。 新ルールや日本側の対応などの講義が行われた。 これが非常に有意義で乗組員にも伝えられること ( 1 )魚種別漁獲量及び投棄量 ができ、船側も同じ目線で管理、保護の意識を持 ( 2 )実際の操業から漁獲効率変化の情報 つことが重要だと考える。そんな暇はないと現場 ( 3 )混獲魚の漁獲、生物資料 で無碍にされるかも知れないが、それは現状から ( 4 )主要漁獲物の生物学的資料 目をそらしているに過ぎず、将来に亘り漁業を生 業とする以上、情報の収集は益々重要なことだと 2.科学オブザーバー講習会受講から乗船まで 考える。 ( 1 )関係業界を通じての募集、応募 財団からの派遣指示後、指定された港にて久し ( 2 )科学オブザーバー講習会( 2 日間)受講 ぶりに船に乗る。当初は忙しい思いもするが番数 37 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース をこなせば全く問題ない。とにかくこれが飯の種 だった時期もあり、潮っ気、勘を取り戻せば直ぐ に対応できるようになり、調査野帳も書けるよう になる。 3.まき網漁業について 2016年 5 月下旬から 6 月下旬までオブザーバー 調査のため乗船した近海まき網漁船は、近海まき 近海まき網漁船 網の漁業効率化、省力化を目的に建造された新船 である。詳しくは、北西太平洋でのミニ船団式操 業を確立し、更なるコスト削減を目指した近海ま き網漁船の単船式の実証化をめざして第 2 船とし て建造された船である。本船は長い間、国立研究 開発法人 水産研究・教育機構 開発調査センター (以下「開発センター」という。)の様々な実証化 調査試験に参加し、現在活躍中の単船型まき網船 (海外まき網船以外)のモデルとなった船でもあ る。 従来近海で稼動するまき網船は網船、探索船及 び運搬船で構成された 1 船団( 1 か統と呼ぶ)で まき網漁の様子 操業し、大変大掛り、かつ、水揚げ量も多い。し かし、同時に操業経費も決して安いものではな かった。そこで、大中型まき網漁業を省力化、効 さらに、まき網漁法について解説すると、網は 率化することにより少ない水揚げでも採算の取れ 細長い手ぬぐいを思い描いていただいて、手ぬぐ る漁業にしようというコンセプトで建造されたの いで円を描いてもらいたい。魚群を円の中心付近 が本船である。 に置き、その周囲を手ぬぐいで囲み、下を絞って それでは、まき網漁業とはどういった漁業、漁 中の魚群を漁獲するという漁法である。実際の網 法であるか、この寄稿文を読まれる方の大半は多 の大きさは、浮子の長さ1200m、深さ200mとい かれ少なかれ水産業に関係している読者だと推察 う大規模なものである。対象魚種は、今回のテー され、釈迦に説法の感もあるが、詳しくない方を マであるカツオ・マグロ類の他に、網を交換して 想定し簡潔に述べる。先ず、まき網漁業は、漁船 アジ、サバ、イワシという多獲性浮魚類で、我々 に乗り込む人数が多く、水揚げ量が多いだけでな が日常的に食している魚も漁獲する。まき網漁業 く、また、水揚げした漁獲物の加工、流通、消費 は、マスコミ的イメージでは一網打尽で漁獲して を通じて係わる人が多い、地域に根付いた漁業で しまうと思われがちだが、豈図らんや、漁場、時 ある。 期にもよるが年々漁獲量が減少しており、一網打 あにはか 尽というより、こつこつ小さな群れを漁獲して一 日を終えるのが現状である。 海外漁業協力 第75号 2016.9 38 財団ニュース 時にはいつでも投網できる状態で出て行く。出港 時に盛大な見送りの演歌が流れることもなく、誰 もや かが舫いを放せば当然の如くに船は滑るように港 を出て行く。乗組員は望郷の念にとらわれること もなく、まったく生活の一部に溶け込んだように 携帯電話のチャージのために急いで部屋に戻って いく。だから全く絵にならない。岸壁に佇む人を 見て変に姿勢を正してみたり、思わず手を振れば 漁獲物の取込み 勘違いされるのが関の山である。 以上が見慣れた近海まき網漁船の出船風景で、 この際、実際の操業の現状を報告することでオ ちょっと風情を付ければ、船に立ててある金華山 ブザーバー乗船の成果を示し、一部の方々の疑念 から持ちこみ、しっかり縛って立てている竹注の の払拭につながり、水産研究所のまき網漁業の実 表面の色が変わっていくことぐらいか。この竹に 態調査に貢献できれば幸甚である。 ついてはアメリカ沿岸警備隊から単純に何ですか また、参考までに2016年 7 月上旬から 8 月上旬 と問われたので、こちらも航海安全大漁祈願のた まで乗船した別の近海まき網漁船では日本200海 めとシンプルに答えておいた。 里外にて、WCPFCの委託を受けたアメリカ沿岸 警備船の臨検を受けたが、乗船してきた検査官が 日本漁船にオブザーバーが乗船していることに驚 き、本国で報告すると約束していったことを記し ておく。彼らはJOPオブザーバーを勝手に監督 官・取締官と認識し、好評価(高評価?)したか もしれないが、それはそれでオブザーバー乗船の 成果として当該事業の評価につながるのではない かと思う。 注: 「金華山の竹」に関する金華山黄金山神社の解説 竹を立てている訳ではありません。竹は「招喜旗」 という金華山独自の大漁祈願旗を掲げるための棹で す。漁船が海上安全、大漁満足の御祈祷を受けた後、 授与所にて「招喜旗」を受け、それを付ける棹を金 華山の竹にしたいと希望される方に特別に神社裏山 の斎竹を交付したものです。長い航海のうちに旗が ちぎれ、棹だけになった状態を御覧になったものと 思われます。 出港してからは整理整頓を始める。もちろん 4.船上での日々の業務の流れについて 調査に使う搬入資材の大まかな点検は出港前に済 それでは最後に読者も興味あり、また筆者も最 ませている。とにかくオブザーバー室の広さの大 も力の入る船での生活について解説する。 小に関わらず、収める物は収めてしまい、ノギス 第一声、船員の嫁さん募集。何をいきなりと思 等のデッキで使う物を整理していく。 われるかも知れないが、やはり切実な問題のよう 乗船初日、前の晩ゆっくりホテルで清水風呂に で乗船した船からのリクエストです。この件は言 浸かったから今宵の船内海水風呂はパスしてもよ わずもがな縁の話ゆえ、小生は降ろさせてもらい い。しかし食事だけはしっかり食べておく。以上 ますが、この寄稿文を読んでいただいている皆様 が乗船仕事始まりの業務となる。え~、こんなも にお伝えしておきます。 のでいいのと言うことなかれ、すでに船の幹部乗 第一声でちょっとドン引きされてしまった方を 組員の皆さんには入港中に船主側の担当者を交え、 引き戻す意味で以下、船内生活を紹介する。 業務内容の説明や協力を依頼済みではあるが、改 まずは出港、近海まき網漁業の場合、港から数 めて船橋(ブリッジ)にて挨拶することが古い人 時間のところに漁場が形成される時もあり、出港 間の仁義というものです。同時にオブザーバー調 39 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース 査様式 1 に関する聞き取り調査で軽く仕事をいれ ておきます。 次に翌日の起床、朝食は 3 時頃からとなり、魚 を追って東に航走すれば時差の影響で朝は早くな る。船内では通常日本標準時間を使う。食事は飯 に味噌汁、家の朝食と変わらないが豊か過ぎる。 皆で食べるからといっても別段楽しくもない、朝 からハイテンションでもしょうがない。食事を終 えると若い衆が感心なことに食器を洗っている。 今日の若い衆は云々とよく言われるが、本船の若 い衆は気が利き体もよく動く。ただ後述するが小 鳥群れと小型ボート(チャッカー) 生の後を追いかけるのは止めて欲しい。これは何 という魚ですか? 何を食べるのですか?と、い 魚群を見つけると本船から小型ボート(チャッ ちいち聞かれても正直分かりません。小生はさか カーと呼ぶ)を降ろし、本船とチャッカーで、魚 なクンでも、えびすクンでもありません。 群の動き、どの方向に移動しているか、何トンぐ 若い衆は食事が終わればそれぞれ準備し、ちょっ らいの群れか、魚種はなにか等と投網前に色々確 と着込んで魚群の探索調査を始める。小生も野帳 認するが、それぞれ企業秘密手法もあるのでここ のファイルと雑記帳を兼ねるノートを持って船橋 らで説明は止めておく。 に上がり、まず漁労長他幹部乗組員に挨拶。探索 投網すれば漁獲量にもよるが 2 時間から 3 時間 開始時間位置を野帳に記入後、ひたすら探索調査 ほどで漁獲物を魚艙に取り込みすべての漁労作業 に参加する。 が終了する。魚が見えている限り日没前まで探索、 最近は鳥レーダーなる長波で鳥群れを探すレー 漁労を繰り返す。日中の仕事とはいえ朝早くから ダーも併用し、それぞれが双眼鏡を当て鳥群れ魚 双眼鏡を覗き、ついこっくりこっくりと舟を漕ぐ 群を探す。鳥の数は100羽以上あるいは数十羽の こともある。また一旦仕事が始まると昼食夕食の 場合もある。とにかくこれが仕事で鳥の下にはそ 時間も定時という訳にいかず、食の摂りようはそ れなりに魚の群がいる。またその魚群が流れ物に れぞれの才覚(?)による。そんなこと言い出し 付いているのか、素群れで移動し餌を追いかけて たら小生のように乗船の度にズボンがきつくなる いるのか等とにかく興味が尽きない。 ということは無い筈だ、とお叱りを受けそうなの す むれ で話を業務に戻す。 投網から作業終了までの流れを時系列で記録し ていくのが調査業務なので上述のとおりだが、水 産研究所は実際の作業流れのデータが必要なのか、 調査様式はかなり細かなことまで報告することに なっている。幸い大きなポイントに絞って記録様 式が作成されているようだが、中にはこれからこ れに繋がるか? と独り言を言うような調査様式 も無い訳では無いが、ここでは本来の寄稿文の趣 スキフボート 旨から脱線することなく先に進める。 船上デッキでのオブザーバー業務には生物調査 海外漁業協力 第75号 2016.9 40 財団ニュース の項目があり、体長測定、当歳魚(その年に生ま という訳にはいかない。 れた魚)サンプル採集、胃内容物調査等を行う。 乗組員は、潮のぼり(漂泊中に潮下に流される 測って書くことが基本だが、野帳に記録する時間 のを考慮して事前に潮上に航走すること)時や漁 が無い場合は、観察内容をボイスレコーダーに記 場移動の際に当直のない乗組員は小皿につまみを 録し、後でテープ起こしをして調査用紙に記録す 盛り、またジョッキに氷を入れ、各人の部屋で一 る。船上では結構忙しい。特にデッキでバタバタ 杯やっているようだ。本船ではサロン(食堂)で と跳ねている魚をノギスで測るなど神業だ。魚を の飲酒は禁止だそうだ。深酒することもなくいつ 押える役と測る役の二役を一人でこなさなければ の間にか皆寝ている。さて、沖漁場滞在中には休 ならない。そんな最中にボイスレコーダーのマイ 日は無く、よほどの時化以外に漁労作業が中止と クが外れてカッパに沿って長靴まで落ちたりと以 なり休みとなる日はない。うねりも風も大きく強 前は散々な目にあったが、最近やっとうまく使え くなり時化てくると通常は最寄りの港に避難する るようになった。 ことになる。しかし、三陸沖でカツオ・マグロを 蛇足だが自分の声はカラオケ専用と思っていた。 追っている時期は魚艙の魚種にもよるが、船を陸 しかし、声というのはおもしろいもので、その時 に向けても入港まで日数を要し、また、時化明け の気分や体調がつぶさに分かり、ボイスレコー 後に早々に出港したくないので、沖で碇代わりに ダーは船内生活でも利用価値がある。健康管理の パラシュートアンカーを投入しパラ泊(漂泊)と ための体調バロメーターになり得る。記録された なっている。 音声には、あと何匹?あと何匹?と、若い衆が訊 一般の人は沖で休みのとき何をしているのです いてくる声ばかり記録されていることもある。何 かという質問を、色々な人から聞かれるので、こ 事も仕事は楽しくやっていきたいものだ。 こで紙面を借りてお答えすると、麻雀かテレビゲー 胃の内容物は魚を開いてみないと分からず、不 ム、DVD観賞位しか思い浮かばない。ゆっくり 漁の時は、これもカラ、これもカラと、じゃんじゃ 寝たいという人ももちろんいる。今日衛星携帯電 ん売り物を解剖する勇気がなく 3 尾で止めている。 話が手ごろな利用料金に近づいたが、時化のたび 作業が終了し、デッキまわりを片付け、明日の に家族に電話しているという話はとんと聞こえて 準備をして乗組員は引き上げる。小生は野帳を整 こない。小職は野帳の点検、調査機材の在庫確認 理し、記入漏れがないか等を確認し業務終了とな などを行っている。 る。更に業務日誌という課題がある。JOP事務局 以上、ここまで、ざっと漁労作業の流れ、オブ はボケ防止などの意図はないと全面否定するが、 ザーバーの業務などを記した。操業の間、オブ 今日起きたことを考えても昼・晩の食事メニュー ザーバーは船橋にて時系列にトピックスを記録し ぐらいしか思い出さず、コック長からまさかそん ていくのが主たる業務で、漁労長・船長はもちろ なことまで書いていないよねと、釘をさされたの ん乗組員にもその都度、確認がてら訊き、かつ生 で書かないこととした。 物調査時には手伝ってもらい、また、サンプル魚 一日が終わり、20人からの人間が三々五々に海 などの入港までの保管もお願いしている。 し け 水風呂に入る。ある日、湯の色が変わった時はギョッ として、疲れが溜まったせいかなと思ったが、湯 まとめ 船に入れる入浴剤の種類を変えただけであった。 オブザーバー調査業務はチームワーク第一など 因みにオブザーバーの健康管理はほぼ自己責任と と、船員でもないのに大それたことを言う気はな 強く感じる。講習会では船上で休養日を取っても いが、大いに船側に協力してもらわなければ成し 良いと説明を受けているが、「はい、そうですか」 遂げることができない仕事である。航海が終了す 41 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース れば私自身ホッとするし、船側もやっと戻ってい くかと思うであろう。船側には一人分の居住区の 明け渡しからサンプル魚の送付まで手伝ってもら い、非常に感謝している。ここで紙面を借りて今 まで乗った船の乗組員、船主、職員の皆様に改め てお礼申しあげる次第である。 練習船・調査船は言うまでもなく、多くの船舶 がオブザーバー調査事業に協力することにより、 持続可能な漁業の進展に寄与し、また、様々な資 源管理保護手法を取り入れ、試し、集めたデータ は漁労の現場に何らかの形で還元され、技術移転 されることで、新たな漁業協力の礎となることも 期待し、また小生がこれに寄与できるのであれば 幸甚である。 押忍 最後に講習会の開催、後方支援をしていただい ている日本オブザーバー計画事務局の海外漁業協 力 財 団 業 務 支 援 課 及 び 日 本 エ ヌ・ ユ ー・ エ ス (株)環境管理ユニットの皆様、北部太平洋まき 網漁業協同組合連合会の桜井参事及び國藤氏、快 く資料提供して頂いた開発センター浮魚資源開発 調査グループの伏島グループリーダーはじめス タッフの皆さん。 3 年間お世話になった北部まき網漁船漁労長乗 組員の皆様、各船主の皆様に紙面を借りて御礼申 し上げます。 海外漁業協力 第75号 2016.9 42 財団ニュース 小笠原での海亀調査体験と海外漁業協力財団でのインターンシップについて まし こ ひろひと 日本大学生物資源科学部3年 増子 博仁 私は、国際的な活動に強く関心があり、現在大 法と、産卵場所と他の場所と 学で勉強中である海洋生物資源が、国際関係にど での地面の柔らかさの違いで のように関与しているのか気になり、インターン 見つける方法ですが、後者の シップの参加を希望しました。始めに大学での私 方法は感覚での作業なので私 の活動を紹介します。 がしても見分けがつきません でした。 1 日のほとんどはこ 新しい事に挑戦すること、新しい事を発見する れらの業務でしたが、空いた のが好きであること、それが私の唯一の長所とい 時間は海に潜り魚を捕まえたり、散歩したり、買 えるところです。大学 2 年の夏休み期間を利用し い物をしたり自由な時間を過ごしました。施設内 て約 1 か月、小笠原諸島でウミガメの調査団体の にはテレビがないので、夜は皆で軽くお酒を飲み ボランティア活動に参加しました。行く前には新 ながら夜通しで話すなんてことがよくありました。 しい環境で、初めて出会う方と 1 か月もの間、共 話した内容はよく覚えていませんが、とにかく楽 同で生活することに大きな不安を抱いていました しかったことだけはよく覚えています。私が小笠 が、着いてからは意外にも、すぐ順応できる自分 原に来てすごく驚いたことがありました。それは がいて大変驚きました。結局のところ 3 年の春休 この島ではアオウミガメを食べる習慣があるとい みにも参加する程のリピーターになってしまいま うことです。 したが…。小笠原という土地は東京から1000㎞も 離れた場所に位置しており、緯度は沖縄とほぼ同 じ高さであります。日本でありながら日本らしく ない、暖かい気候とゆっくりとした時の流れを感 じることができる、不思議な場所でした。 この調査団体では主にアオウミガメの調査及び 保全活動をしています。この団体の施設内にはウ ミガメの飼育水槽があり、業務は水槽の掃除や、 カメの甲羅磨き、餌やり、体長の計測などが中心 でした。また夏期はウミガメの産卵のシーズンで もありますので、島中の海岸での孵化率調査、施 稚カメの放流 設内の人工孵化場で生まれた稚ガメの放流も行い ます。 海岸での孵化率調査では孵化した後の卵の殻の 保全活動をしている中で食べることに少し抵抗 個数や殻の状態(シロアリやカニに食べられてい がありましたが、食べてみると、とてもうまいこ ないか、正常に殻から出ることができたか)を確 とにも驚きました。この習慣は昔、小笠原で捕鯨 認し記録します。産卵場所を特定する方法は、産 をしていた事に関係があり、航海中は動物性タン 卵中のウミガメを見つけに行き場所を記録する方 パク質が不足しがちなのでそれを補うために食べ 43 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース 始めたのがきっかけと言われています。また、ウ ンターンシップで多くのことを学ぶことができた ミガメは生命力が強いので備蓄性が高いこと、甲 と思っています。PNG(パプアニューギニア) 羅と骨以外食べることができることが捕獲される 定置網プロジェクトの報告書の内容が特に印象に 要因だと聞きました。小笠原では年間で父島、母 残りました。日本では起こらないようなことがプ 島合わせて135頭と制限を設けることで漁をして ロジェクトの進行を遅らせること、文化や思想の よい事になっています。しかし、父島(私が滞在 違いが引き起こす問題などがとても新鮮に見え、 していた島)で漁を行える方は一人しかいません。 現実に起きていることのようには思えませんでし なぜならこの漁法では銛を使い、甲羅を貫通させ た。 ないように突くのだそうですが、とてもむずかし 財団の中には以前に青年海外協力隊で活動され く、できる人が年々少なくなっているからだそう ていた方も多く在籍しており、多くの体験談を聞 です。また、時に20mも潜る時があるそうで潜る くことができとても刺激を受けました。 技術がないと到底できることではありません。私 本インターンシップでは自分の見聞の狭さに気 はウミガメの解体作業を手伝うこともあったので づくことができ、それと同時に強く好奇心が動か すが、解体の光景はとても生々しく、生物の生き された期間になりました。職員の方には業務のこ ることについて深く考えさせられる機会となりま と以外に、人生の先輩としてのお話も多く聞くこ した。 ともできましたし、また、現場での雰囲気も体験 小笠原の話が長くなってしまいましたが、ここ することができました。この経験を糧に自分の将 からは本インターンシップでの感想を書きたいと 来に活かしていきたいと思います。 思います。 5 日間と短い期間でしたが、私は本イ 海カメ調査船 海外漁業協力 第75号 2016.9 44 財団ニュース 海外漁業協力財団でのインターンシップを終えて くち つ ま ゆ 東京海洋大学 海洋科学部 海洋政策文化学科4年 朽津 真由 まず、私が大学で学んでいることについて少し 留学先のボードは北極圏に ご紹介したいと思います。東京海洋大学は130年 位置し、秋頃からはオーロラ を越える歴史を持った大学ですが、私の所属する を見ることができます。ノル 海洋政策文化学科は比較的新しくできた学科です。 ウェーで受けた授業の中で一 海洋利用をめぐる国際的・国内的な問題が増加す 番印象に残っているのは海産 るなか、「海・人・社会」の望ましい関係のあり 哺乳類についての授業です。 方について考えていくために設置されました。具 授業の中で、世界で最も美し 体的には、国際海洋政策学、海洋利用管理学の専 い場所の一つともいわれるロフォーテン諸島とい 門分野から構成されています。 1 年次は基礎科目 うところへ行き約一週間の実習をしました。 を中心に学び、 2 年次から徐々に専門的な科目を 学んでいきます。 専門科目は海洋産業論、水産物流通論、海洋環 境政策論、水産国際関係論、海洋利用制度論、海 事法規などを選択しました。その他にも様々な切 り口から海洋の利用について学ぶことができます。 さらに、 2 年次の夏休みに参加した海外派遣キャ リア演習では、現地の大学生に加え、現地で活躍 されている政府関係の方や日本企業の方にお会い ロフォーテン港 する機会がありました。そこで語学もさることな がら、国際的な視点を持つことの必要性を感じ、 3 年次夏から約一年間、ノルウェーの大学への交 換留学を決めました。 ロフォーテン諸島での実習 ボートの周りにいるのは灰色アザラシ 実習中はほぼ毎日海へ出て、海中の音を聞いた り、どこで何をどれくらい見たか記録し、また、 留学先のノルウェー 45 鰭の形や傷から個体識別を行いました。残念なが 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース ら大型の鯨類には出会えなかったのですが、貴重 告書の改訂を行った際には、各項目について有効 な体験ができたと思います。 性、インパクト、持続性等細かく評価がされ、事 業の成果を確認するとともに今後の向上につなげ 留学も終盤に差し掛かった頃、海外派遣キャリ ていくのだと知りました。水産業が主な産業と ア演習でお世話になった大学のグローバル人材育 なっている国において、水産技術の向上や漁場整 成室からメールをいただき、海外漁業協力財団で 備は将来の発展において重要な項目です。財団は のインターンシップについて知りました。まだ漠 漁場確保を目的として事業を展開されていますが、 然とではありましたが、国際的な仕事に興味が ただ協力をするだけでなく人を育てるという支援 あったので、すぐに応募させていただきました。 を行い、現地の発展にも大きく寄与しているプロ 一週間のインターンシップを通し、多くのこと ジェクトを実施していると感じました。さらに、 を学ぶことができました。職場体験は今回が初め 実際に現場で活躍されている方にお会いして直接 てだったのですが、実際の職場の雰囲気を体験し、 お話を伺うことができ、自分の将来についても考 社会人になるというイメージをつかむことができ えることができました。今回の経験を今後に生か ました。そしてどの業務においても丁寧に正確に、 していきたいと思います。 手際よく行うことが大切だと感じました。業務の 最後に、今回インターンシップに参加させてい 一部を手伝わせていただき、様々な事業について、 ただくにあたり、最初から最後まで丁寧にご指導 事前準備から事後処理までどのような流れで行わ くださった財団の皆様に、この場をお借りして厚 れているのか垣間見ることができました。評価報 く御礼申し上げます。 所感 増子・朽津インターン生 2 名とも職員と積極的 に課題をこなせるよう真剣にパソコンと向き合う に意思疎通を図り、最終日にはすっかり財団の雰 姿や充実した大学生活・留学経験についていきい 囲気に溶け込んでいた。疑問点を質問するだけで きと語る姿を見て、自分自身も刺激を受けた 5 日 なく、意見を求められたときにも堂々と自分の言 間だった。 葉で答えられていたのが印象的であった。時間内 (受入担当:総務部総務課 森 祥子) 研修生の日本語教室にて(インターン生2名は後列右端) 海外漁業協力 第75号 2016.9 46 財団ニュース モロッコ要人招請 交流促進課長 市野 孝典 我が国と関係諸国との漁業の分野における協力 により実施されました。 関係の維持・促進を図るための当該国との密接な 人的交流は、必要不可欠です。海外漁業協力財団 1.目 的 は、このような観点に立って、国内水産関係団体 同国と我が国との更なる漁業協力関係の構築を の申請に基づいて、当該国の漁業分野における要 図るため、モロッコ海洋資源省担当官等を我が国 人の招請事業を行っています。我が国政府及び関 に招請し、水産関係施設等の視察を通じて我が国 係漁業団体等の関係者と漁業協力問題等に関し意 の漁業の現状と展望に関する具体的・現実的な認 見交換を行うほか、漁業関係施設の視察等を通じ 識を持っていただくとともに、漁業協議による意 て相互理解を深めることによって当該国との友 見交換会を行うことです。 好・協力関係を促進することを目的としています。 毎年、我が国関係沿岸国から多くの要人を招請 2.背景・経緯 していますが、今回は、平成28年 5 月30日から同 1985年 9 月11日に締結された日本・モロッコ政 年 6 月 3 日まで、日本かつお・まぐろ漁業協同組 府間漁業協定の枠組みの中で、我が国まぐろはえ 合(以下「日かつ漁協」という。)からの申請に 縄船は、30隻を限度として同国のEEZに入漁を開 より実施した、モロッコ王国からの要人招請を紹 始しました。(2015年許可枠は15隻)現在、アフ 介します。 リカ諸国水域での漁場確保競争は、EU、台湾と 競合し激化しています。長年に亘り我が国漁船が 同国は、北アフリカ北西部のマグリブに位置す 入漁している貴重なパートナーである同国との相 る立憲君主制の国家であり、この地域には古くか 互理解をより一層促進し、更に長期的な友好・協 らベルベル人が住んでいて、沿岸部にはフェニキ 力関係を構築することが求められています。 ア人の港湾都市が築かれました。 なお、同国招請により期待される効果としては、 また、アラビア語では「マグレブの王国」とい 我が国漁業の実態についてより深い認識を持って われており、この「マグレブ」は〝日の没する地″ いただくことで、一方的な入漁条件の要求を回避 との意味もあるとされている。かたや日本は〝日 し、科学的・合理的な判断に基づく相互理解の上 出ずる国″と言われることもあることから、同国 に長期的協力関係を築くことにあります。我が国 とは不思議な縁を感じるところでもあります。 漁船の入漁確保と同国漁業の振興を同時に進めて この歴史と比べれば、つい先日のような感じが いくことが期待されています。 することは否めませんが、同国と我が国は1985年 今回の招請では、同国農業・海洋漁業省のドォ に締結された政府間協定により我が国漁船が入漁 リオッシュ ザキア事務次官、ジョケール アーメ を開始し、昨年(2015年)はモロッコで30周年を ド部長の 2 名を招き、漁業協議、水産庁長官及び 祝ったところです。日本にとっては重要な入漁国 財団への表敬訪問、京都への視察旅行等、限られ の一つです。 た日数で数多くのスケジュールが組まれました。 同国からの要人招請は、先に述べた日かつ漁協 日・モロッコ協議も滞りなく終了し、水産庁長 からの申請に基づいて、以下の目的、経緯・背景 官への表敬訪問時には、ザキア事務次官から日本 47 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース の協力は漁業分野のみならず教育面等にも及んで また、嵐山では人力車も体験されましたが、大 いて、アフリカ諸国の発展にも広く寄与している 変にこやかな笑顔を浮かべられ、着物については との深い謝意が述べられました。 少々残念であったかもしれませんが、限られた時 東京での協議、各所への表敬訪問の後、日本の 間の中で、日本の文化を垣間見ていただけたので 文化と歴史に触れていただくため、帰国前の時間 はないかと思われます。 を利用し、日かつ漁協及び財団担当者が同行し、 要人招請プログラムは、漁業協議にリンクして 京都を訪問しました。 実施するケースが多く、また、各国の要人も多忙 京都訪問は僅か 1 日半の短い時間ではありまし を極められ限られた期間で様々な要件に対応しな たが、下鴨神社、西本願寺、西陣織会館等の各所 ければならないため、側面的な日本の文化・習慣 の見学の他、嵐山、祇園界隈の散策もされ、先般、 に充分触れて頂く時間が取れないことも多いので 無形文化遺産に登録された日本食も堪能していた すが、漁業分野から離れたところで、今回のよう だきました。 にでき得る限りの機会を通じて関係国の要人に我 ザキア次官は、来日前からチャンスがあれば着 が国への理解をもっと深めて頂くことは、大変重 物の購入を検討されていることを現地で知り、同 要なことであると思います。 行者とともに着物を見に行きましたが、着物は一 特に、来日される要人は、日本の古い文化や習 度も着たことがないとのことなので、まずは試着 慣に大変興味を持たれているケースが多く、今回 からということになりました。早速、レンタル着 のザキア次官のように来日前から着物を購入した 物店の協力を得て、本格的な着物を試着されたと い等、親日的な面を感じられる際は、事業担当部 ころ、着付けが思いのほか大変であることを知り、 署としての喜びとともに、重要性を再認識するこ 泣く泣く購入は見送られました。 とが出来た要人招請となりました。 左 ザキア事務次官 右 アメード農業・海洋漁業省 増養殖協定管理部長 着物を着て人力車体験 海外漁業協力 第75号 2016.9 48 財団ニュース 主な動き 2016年 4 月~ 7 月 (要人往来) 2016年 5 月16日 財団訪問 ギニア共和国 フォファナ統領府顧問(漁業担当)(左 2 人目) ディアロ国際捕鯨委員会(IWC)ギニア政府代表 (左) 2016年 5 月18日 財団訪問 モロッコ王国 ベナブー大西洋沿岸アフリカ諸国漁業協力 閣僚会議(ATLAFCO)事務局長(中央) 2016年 6 月 6 日 財団訪問 中華人民共和国 鄭 志霊 中国水産科学研究院 副院長 (左 2 人目) 邱 麗華 同院南海水産研究所 科研処長(左) 2016年 6 月13日 財団訪問 コートジボワール共和国 クアシ動物・水産資源大臣(中央) 49 海外漁業協力 第75号 2016.9 財団ニュース (研修生受入) 2016年 5 月16日 水産指導者養成(持続的利用)コース開始式 11名 左から ソロモン、ベトナム、グレナダ、 モロッコ、モンゴル、エリトリア、 モーリタニア、ドミニカ国、竹中理事長、 ラオス、カンボジア、スリナム 2016年 7 月20日 水産技術者養成(実習・運営管理)コース(実習訓練グループ)開始式 研修生 中国(4名) 2016年 7 月27日 水産指導者養成(漁業管理)コース開始式 左から 粂専務、モーリシャス、ガーナ、 竹中理事長、ミクロネシア、 インドネシア、高橋常務 タンザニア1名来日遅延 海外漁業協力 第75号 2016.9 50 財団ニュース 対象期間 2016年 4 月~ 7 月 外国要人等の招請 国 名 ギニア モロッコ 目 的 所属等 我が国かつお・まぐろ漁 大統領府顧問 船の同国水域の安定的な (漁業担当) 入漁を確保するため、我 が国政府や漁業関係者と 国 際 捕 鯨 委 員 会 ギニア共和 の意見交換・関連施設の (IWC) 視察等を通じて、我が国 国政府代表同省次官 の漁業の実態や資源管理 農業・海洋漁業省 手法等の理解を促すとと 事務次官 もに、両国の漁業分野に おける友好協力関係の強 農業・海洋漁業省 化を図る。 増養殖協定管理部長 氏 名 期 間 主な訪問先 Mr. Ansoumane FOFANA 5 月16日 ~ 5 月23日 太地町役場 勝浦漁協等 5 月30日 ~6月3日 水産庁等 Mr. Amadou Telivel DIALLO Ms. Zakia DRIOUCH Mr. Ahmed JOUKER 国際会議支援等 国名等 目 的 氏 名 期 間 主な派遣先 太平洋島島嶼国及 びフォーラム漁業 機関(FFA) 日・フォーラム漁業機関(FFA) 漁業協議 北里 良博 4 月18日~23日 ソロモン(ホニアラ) 大西洋沿岸アフリ ワシントン条約(CITES )準備 カ諸国漁業協力閣 会合 僚会議 (ATLAFCO) 高橋 淳 藍澤 輝明 7 月13日~24日 モロッコ(ラバト) パラオ 北里 良博 7 月31日~ 8 月 5 日 パラオ(コロール) 日・パラオ漁業協議 専門家派遣等 ⑴ 地域巡回機能回復等支援事業(太平洋) 国 名 氏 名 期 間 江口 秀伸 4 月30日~ 5 月20日 5 月27日~ 6 月 4 日 ヤップ、チューク コスラエ 坂本 慎司 4 月26日~ 6 月23日 原 由郎 4 月30日~ 6 月 2 日 ヤップ、チューク、 ポンペイ、コスラエ 畑野 実 5 月 5 日~ 5 月23日 6 月21日~ 7 月 1 日 坂本 浩司 5 月 5 日~ 5 月23日 コロール、カヤンゲル、 ペリリュー、 アルモノグイ、 アンガウル 原 由郎 6 月 3 日~ 6 月25日 マジュロ、アルノ、イバイ 坂本 浩司 5 月27日~ 6 月25日 曽根 重昭 6 月 6 日~ 6 月11日 マジュロ、アルノ 畑野 実 5 月29日~ 6 月12日 アニバレ 林 当磨 5 月27日~ 6 月 1 日 パプアニュー ギニア 藤田 克二 5 月 1 日~ 5 月10日 ポートモレスビー、 ケビアン ソロモン 藤田 克二 5 月11日~ 5 月20日 ホニアラ、セゲ、 ヤンディーナ フィジー 左近允 哲郎 5 月19日~ 6 月15日 スバ、ブニセア、ラウトカ ミクロネシア パラオ マーシャル ナウル 51 目 的 事前調査 海外漁業協力 第75号 2016.9 主な派遣先 国 名 キリバス 目 的 事前調査 ツバル 財団ニュース 氏 名 期 間 主な派遣先 林 当磨 4 月21日~ 5 月 9 日 タラワ、北タラワ、 ブタリタニ 高橋 啓三 4 月21日~ 5 月 9 日 タラワ、北タラワ、 マラカイ、ベルー、 林 当磨 5 月12日~ 5 月19日 フナフチ 左近允 哲郎 5 月12日~ 5 月19日 高橋 啓三 5 月12日~ 5 月19日 ⑵ 拠点機能回復等支援事業(アフリカ) 国 名 マダガスカル 目 的 事前調査 モザンビーク 氏 名 期 間 主な派遣先 大和 優一 6 月26日~ 7 月 8 日 アンタナナリボ、 タマタブ、チュレアール 新井 孝彦 7 月 9 日~ 7 月15日 マプート 大和 優一 7 月 9 日~ 7 月16日 氏 名 期 間 藤井 資己 5 月15日~ 6 月 4 日 小松 徹 4 月17日~ 4 月23日 5 月 8 日~ 7 月30日 ホニアラ 新井 孝彦 7 月16日~ 7 月23日 マプート 北之園 禎之 7 月 9 日~ 7 月23日 氏 名 期 間 左近充 浩一 6 月19日~ 6 月25日 ⑶ 水産振興・資源管理推進事業 国 名 目 的 パプアニュー ギニア 沿岸漁業開発 ソロモン諸島 沿岸漁業資源管理 モザンビーク 水産資源持続的利用 主な派遣先 ポートモレスビー、 ウェワク、レイ ⑷ 国際資源管理技術協力事業 国 名 目 的 セーシェル (IOTC) 漁獲情報整備 主な派遣先 セーシェル 海外派遣専門家リスト 合計 5 か国 6 名 2016年 7 月31日現在 氏 名 担 当 国 名 大洋州 4 か国 5 名 藤原 俊司 まぐろ産業アドバイザー ソロモン 江口 秀伸 ミクロネシア出張所 所長 ミクロネシア 原 由郎 巡回普及指導 ミクロネシア 高橋 啓三 漁業開発アドバイザー キリバス 曽根 重昭 シャコガイ養殖振興 パラオ アフリカ 1 か国 1 名 石川 淳司 漁業協力アドバイザー モロッコ 海外漁業協力 第75号 2016.9 52 政府ベースの漁業協力/漁業交渉・国際会議 対象期間 2016年 4 月~ 7 月 水産無償 コートジボワール「ササンドラ市場商業ゾーン開発のための水産施設整備及び中央市場建設計画(詳細 設計)(A国債本体)( 1 / 3 )」( 4 月30日) キリバス「ニッポン・コーズウェイ改修計画( 1 / 4 )」( 7 月11日) 我が国の水産無償、一般無償水産関連案件につきましては、外務省のホームページに「外務省 ODAホームページ」があり、「国別・地域別データ ― 国別約束(交換公文(E/N))データ」に案件 記事が掲載されています。URL(アドレス)は次のとおりですので、ご参照ください。 URL http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/index.html (編集事務局) 専門家の派遣 なし 調査団の派遣 国 名 ミクロネシア 担当業務 所 属 海外水産協力効率化促進事業 水産エンジニアリング株式会社 (FEC) (案件発掘調査) マリノフォーラム21 氏 名 期 間 歳原 隆文 平成28年 4 月 3 日~ 平成28年 4 月10日 井貫 晴介 石谷 論 漁業交渉・国際会議 プレスリリース 発表日 タイトル 2016/ 5 /13 「日ロさけ・ます漁業交渉」(ロシア200海里水域分)の結果について 2016/ 5 /23 「北太平洋溯河性魚類委員会(NPAFC)第24回 年次会議」の結果について 2016/ 5 /23 「第17回 日韓漁業共同委員会 第 1 回 小委員会」の結果について 2016/ 5 /28 「インド洋まぐろ類委員会(IOTC)第20回 年次会合」の結果について 2016/ 6 / 2 「日・モロッコ漁業協議」の結果について 2016/ 6 /29 「第17回 日韓漁業共同委員会 第 2 回 小委員会」の結果について 2016/ 7 / 2 「全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)第90回会合(年次会合) 」の結果について 2016/ 7 /11 「南インド洋漁業協定(SIOFA)第 3 回 締約国会議」の結果について 水産庁のホームページに「新着報道発表」があり、漁業交渉、国際会議資料が掲載されています。 URL(アドレス)は次のとおりですので、ご参照ください。 URL http://www.jfa.maff.go.jp/ (編集事務局) 53 海外漁業協力 第75号 2016.9 ご案内 日本の漁業と水産物の安定供給を支援する海外漁業協力財団 海外漁業協力事業のための賛助会員・寄附の募集 海外漁業協力財団は、海外の地域において技術協力事業と経済協力事業を一体的に実施することにより 関係沿岸国との間の関係強化や国際的な理解の増進を図り、我が国漁船の操業権益と我が国への水産物の 安定供給の確保を支援しています。 当財団がその事業を安定的に継続して行くためには、広く財団の活動に対する国民の皆様からの理解と 支持を頂くとともに、財務基盤の充実が不可欠であり、賛助会員を募集するとともに皆様よりのご寄付を お願いしているところです。 皆様よりお送りいただいた賛助会費および寄付金は法令並びに定款の定めに基づき技術協力事業又は経 済協力事業に充当されます。財団の諸事業を通じた開発途上国の水産振興や漁業資源管理の推進並びに水 産物の安定供給にご支援をお願いします。 太平洋諸国での技術指導 アフリカでの技術指導 1 .賛助会員 (会員期間は納入頂いた年度の 3 月末までです。) 年会費(個人) 1 口 5,000円(何口でも結構です) 年会費(法人・団体) 1 口 50,000円(何口でも結構です) 2 .寄附金 いくらからでも結構です。 3 .賛助会員・寄付金の使途 皆様から寄せられた賛助会費・寄付金は、法令並びに定款の定めに基づき、財団が実施する海外漁業 協力事業に使用します。 4 .賛助会員・寄附については下記にお問合せください。 公益財団法人 海外漁業協力財団 総務部総務課 住 所:〒105-0001 東京都港区虎ノ門 3 - 2 - 2 虎ノ門30森ビル 5 F 電 話:(03)6895-5381 FAX:(03)6895-5388 M a i l:[email protected] 詳細は財団HP http://www.ofcf.or.jp/ をご覧ください。 海外漁業協力 第75号 2016.9 54 ご案内 漁船機関、冷凍・冷蔵分野の 海外派遣水産専門家の登録募集について 当財団では、関係沿岸国からの漁業に関する技 5.登録有効期限 術協力要請に対応するため、海外漁業協力事業に 平成29年 3 月31日( 5 年毎に更新しています) 参加する水産専門家の登録を広く求めています。 特に、太平洋島嶼国、アフリカ諸国等において 漁船機関、冷凍・冷蔵分野の技術協力に携わる専 6.登録に関するお問合せ (公財)海外漁業協力財団事業部業務支援課 門家の登録を募集しています。 e-mail [email protected] 登録された専門家は、案件に応じて選考し、財 電 話 (03)6895-5383 団が実施する事業への海外派遣を行っています。 FAX (03)6895-5388 担 当 安久 誠司 1.登録基準 海外において水産関係の技術協力に従事する意 思を有し、次の各号に該当する方とします。 漁船機関、冷凍・冷蔵分野の専門家の業務内容 ア.当該分野の業務に従事するにふさわしい専 我が国と入漁等の関係を有する途上国の沿岸漁 門的技術を有すると認められること。 業の振興に必要な製氷機、冷凍機、漁船など水産 イ.専門家として必要な技術指導力及び語学力 関連施設及び設備の修理及びメンテナンスに関す る技術移転を行うとともに、これら水産関連施設 があると認められること。 ウ.人格円満で、かつ専門家として適応力があ や設備の運営管理に必要な技術やノウハウを指導 する事業を行っています。 ると認められること。 エ.年齢は、65歳未満であること。 登録専門家の中から専門家を選定し、財団専門 家として役務提供契約を締結し、関係沿岸国に派 2.今回特に募集する登録分野 遣しています。 ・漁船機関(内燃機、船外機、航海計器等) 派遣時期 ・冷凍・冷蔵 ・事前調査 4 月~ 6 月 3.登録の申請方法 対象国での調査 1 か月程度 所定の「専門家登録カード」は、財団ホーム 資機材リスト作成等の国内業務 1 週間程度 ページからダウンロードにより入手し、記入の上、 ・事業実施 10月~ 3 月 業務支援課宛、メールにて申請してください。 対象国での技術移転・指導 4.登録の決定 提出された「専門家登録カード」に基づき登録 手続きを行い、登録手続きが済み次第、登録確認 を通知します。 55 海外漁業協力 第75号 2016.9 ◎貸付制度について 当財団は、我が国漁業者等が海外の地域で、沿岸漁業等 の開発振興、国際的な資源管理の推進、現地合弁法人の設 立等の海外漁業協力事業を行う場合、これらの漁業者等に 対してその事業に必要な資金について融資を行っています。 貸付対象、資金の種類等は次のとおりです。 1.貸付対象となる事業 実施する海外漁業協力事業が次に該当することが必要です。 (1)我が国海外漁場の確保との関係において行われるも のであること。 (2)我が国政府の支持のもとに行われるものであること。 (3)水産関係団体の支持態勢がととのっていること。 2.貸付対象者 本邦法人、本邦人、本邦法人等の出資に係る現地法人、国際機関 3.資金の種類等 (1)無利子融資[手数料 年0.5%以内、償還期限 30年以 内(うち据置期間5年以内)] ① 海外の地域の沿岸漁業開発及び国際的な資源管理 の推進等に寄与するための協力事業で、 (ア)海外の地域の政府、現地法人等に施設等を譲渡 するために必要な資金 (イ)海外の地域で行う事業に必要な資金で相手国政 府、現地法人等に貸付けるために必要な資金 (ウ)海外の地域で行う開発可能性調査その他の技術 協力に必要な資金 (エ)入漁との関連で相手国に支払う漁業協力金等 ② 現地法人の設立等海外投資により行う事業で、そ の効果が主として周辺の住民生活向上に寄与すると 認められる事業に必要な資金等 海外漁業協力 第75号 発行人 粂 知文 編集人 内田 和久 発行所 公益財団法人 海外漁業協力財団 〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目2番2号 虎ノ門30森ビル (TEL) 総務部 (03) 6895-5381 融資部 (03) 6895-5382 事業部 (03) 6895-5383 (FAX) (03) 6895-5388 (URL) http://www.ofcf.or.jp/ 印刷所 松本印刷株式会社 発刊日:2 0 1 6 年 9 月 裏表紙の写真:パプアニューギニア バニモ (2)低利融資[利率は市場実勢に応じて、円貨の場合は 年1.0%以上、外貨(米ドル)の場合は 年3.0%以上、 償還期限20年以内(うち据置き期間5年以内)] 海外の地域において現地法人等の設立等海外投資に より行う協力事業で、 ① 現地法人等に出資し、又はその株式を取得するた めに必要な資金 ② 本邦法人等の出資に係る現地法人等に貸付けるた めに必要な資金で、設備資金その他長期資金に充て られるもの ③ 本邦法人等の出資に係る現地法人等に出資しよう とする海外の地域の政府、現地法人等に対して、こ れに要する資金を貸付け又は施設等を譲渡するため に必要な資金等 4.融資割合 原則として海外漁業協力事業の実施のために必要な資 金の70%相当額 5.担 保 銀行保証、その他物的担保等 公益財団法人 海外漁業協力財団 融資部 審査課 電話:03-6895-5382 Fax:03-6895-5388 No 75 Overseas Fishery Cooperation Foundation of Japan
© Copyright 2026 Paperzz