学校教育における携帯電話・PHSの利用に関する研究 ― 授 業 に お け る 活 用 と 情 報 モ ラ ル 指 導 の 工 夫 教育情報部 田口 裕・江波正善・乙村 湯藤元彦・原田信一 拡・坂 ― 英明・柏原眞治 研究の要約 1 ねらい 現在,携帯できる情報端末として携帯電話・PHSが多く利用されている。携帯 電話・PHSは簡単に情報を受信・発信でき便利で役立つ反面,不適切な使用によ る犯罪やトラブルなどの社会問題をも生み出している。このような二つの側面を持 った携帯電話・PHSは児童生徒の間にも急激に普及している。しかしながら,多 くの学校現場では,その利用の在り方等にかかわる取組みが十分に行われていると は言えない状況がある。 本研究は,学校教育における携帯電話・PHSに対する指導の在り方と,その利 用の可能性について探るものである。 2 成果の概要 研究を通して,次のことが明らかになった。 ○ 携帯電話に内蔵されているテレビ電話機能等を利用すれば,簡単にリアルタイ ムで離れた人々と交流することができる。これを授業等に活用することで児童の 興味・関心は高まり,効果的に学習活動を展開できることが分かった。 ○ 生徒は携帯電話・PHSに対してかなり関心を持っている。そこで,情報化社 会の光と影の理解を図る上で,携帯電話・PHSを題材として扱うことは,生徒 に現実的な問題としてとらえさせることにつながり,効果的であることが分かった。 目 はじめに Ⅰ 研究の概要 1 研究の目的 2 研究の内容と方法 3 研究計画 Ⅱ 研究の基本的な考え方 1 携帯電話の普及と現状 2 情報機器としての携帯電話・PHS (1) コンピュータとの比較 (2) 携帯電話の特徴と学習活動に おける活用 3 情報モラル育成の必要性 (1) 携帯電話にかかわる事件との関連 (2) 情報教育での位置付けと指導の在り方 Ⅲ 携帯電話・PHSの利用に関する 意識・実態調査 1 意識・実態調査の概要 2 調査結果の集計と分析及び考察 94 94 94 94 94 95 95 95 95 96 96 96 96 97 97 97 次 Ⅳ 学校教育における携帯電話・PHS の利用とそれにかかわる教育活動の実際 ○事例1:廿日市市立佐方小学校 ○事例2:黒瀬町立乃美尾小学校 ○事例3:黒瀬町立黒瀬中学校 ○事例4:豊栄町立豊栄中学校 ○事例5:県立呉工業高等学校 ○事例6:県立尾道商業高等学校 Ⅴ 実践授業及び意識・実態調査の分析 と考察 1 意識・実態調査の概要 2 実践授業及び調査結果の分析と考察 (1) 小学校 (2) 中学校及び高等学校 (3) 学校での携帯電話等の活用に向けて Ⅵ 研究のまとめ おわりに ‑ 93 ‑ 99 100 102 104 106 108 110 112 112 112 112 113 114 115 115 はじめに 近年「ユビキタスコンピューティング」や「ユ ビキタスネットワーク社会」という言葉が注目を 集めるようになってきた 。「ユビキタス」の語源 はラテン語で ,「いたるところに存在する」とい う意味である。ユビキタスコンピューティングの 概念は,昭和63年にゼロックス社のパロアルト研 究所の提唱が始まりとされている。 ユビキタスネットワーク社会が実現すると,い たるところにあるコンピュータ同士が情報ネット ワークを介して,自律的に連携動作することによ って,社会生活を強力にサポートする環境が実現 することになる。いつでも,どこからでも,自由 にネットワークを利用してコンピュータにアクセ スすることができる社会の実現は,単に社会シス テムを変えるに留まらず,個人の生活スタイルを も大きく変える力がある。その一方で,ネットワ ークにかかわる新しいタイプのトラブルも数多く 発生し,その内容も複雑化の傾向にある。 このような状況の中で,学校教育にも「教育の 情報化」という波が大きく打ち寄せ,学習環境も 大きく変わろうとしている。時代の流れに即応し , 新しい情報技術を適切に活用する力と態度を児童 生徒に身に付けさせるには,情報機器を積極的に 教育活動の中に取り入れ,光と影の双方を視野に おいた指導を行っていく必要があると考える。 Ⅰ 研究の概要 1 研究の目的 高度情報通信社会の進展に伴い,インターネ ット等の情報通信ネットワークが発達してきた。 この情報端末として,携帯電話・PHSの利用 が急激に増えている。 3 携帯電話・PHSは,簡単な操作で情報の受 信や発信が可能で,情報を容易に扱うことがで きることから,情報機器として多くの分野でこ れまで以上に活用される可能性を秘めている。 その反面,不適切な使用による犯罪やプライバ シーの侵害など,多くの問題も生みだしている。 このような二面性のある携帯電話・PHSが児 童生徒の間にも広く普及し,定着の兆しがある。 多くの学校では,所持や持ち込み禁止などの規 制をしており,その利用等にかかわる指導は, ほとんどされていない現状がある。 そこで,本研究では,携帯電話・PHSに対 する意識や利用実態を把握するため,本教育セ ンターの情報教育関係の研修に参加した教職員, 研究協力校の児童生徒及び保護者を対象とした 意識・実態調査を実施し,学校現場や家庭での 問題点や課題を明らかにする。そして,これら の調査結果及び文献研究を基に授業実践等を行 い,学校教育における携帯電話・PHSに対す る指導の在り方と,その利用の可能性について 考えていくこととした。 2 研究の内容と方法 (1) 研究の内容 ○ 携帯電話・PHSに関する文献研究 ○ 児童生徒,教職員及び保護者を対象とした 携帯電話・PHSに関する意識・実態調査と その分析及び考察 ○ 研究協力校による授業実践とその分析及び 考察 (2) 研究の方法 ○ 文献研究 ○ 調査研究 ○ 実践的研究 研究計画 研 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 究 内 容 研究計画書の作成 携帯電話・PHSに関する文献研究 携帯電話・PHSに関する意識・実態調査票の作成 意識・実態調査の実施 第1回研究協力員会議の開催 意識・実態調査結果の分析及び考察 第2回研究協力員会議の開催 ‑ 94 ‑ 期 4月 4月〜6月 5月〜6月 6 月 〜 11月 7月 10月 〜 11月 11月 間 ○ ○ ○ ○ 研究協力校による授業実践 実践授業の分析及び考察 第3回研究協力員会議の開催 研究のまとめと研究報告書の作成 Ⅱ 研究の基本的な考え方 1 携帯電話の普及と現状 11月 〜 12月 12月 12月 1月〜2月 使用が急激に増えており,卒業後はほとんどの者 が携帯電話・PHSを利用している実態がうかが える。 総務省で実施された平成13年通信利用動向調査 結果の一部を図1に示す。(注1) (%) 携帯電話 (インター ネット対応 型を含む) パソコン 80 70 60 50 44.6 40 インターネッ ト対応型携 帯電話 ファクシミリ 30 26.7 ワープロ 20 10 カーナビ ゲーション システム 0 平成9年末 平成10年末 平成11年末 平成12年末 平成13年末 図1 世帯における情報通信機器の保有状況 これによると,平成13年末の世帯における情報 通信機器の保有率は携帯電話がパソコンを大きく 上回っている。特に,インターネット対応型携帯 電話においては,対前年度比17.9ポイント増とな っており,急激に普及している状況が見られる。 次に,内閣府で実施された第4回情報化社会と 青少年に関する調査の一部をグラフ化し,図2に 示す。(注2) (%) 100 2 (1) コンピュータとの比較 ア 利用する側の視点から 利用する側の視点から携帯電話・PHSをコン ピュータと比較してみた。 ① 使いやすさ ○ 起動及び終了は,簡単な操作で短時間に行う ことができる。 ○ キーの数が少なく,親指で入力することがで きる。 ○ 操作はそれほど複雑でなく,慣れるまでにあ まり時間がかからない。 ② 携帯性 ○ 小型かつ軽量で常に持ち運ぶことができるた め ,いつでも,どこでも利用することができる 。 ③ 価格 ○ 安価で,購入しやすい。 これらのことから,携帯電話・PHSはコンピ ュータよりも手軽で扱いやすく,今後もますます 普及していくと考えられる。 イ 情報機器としての特徴から 携帯電話・PHS及びコンピュータの情報機器 としての特徴を次にまとめた。 表1 80 60 40 20 0 12〜14歳 男性 図2 情報機器としての携帯電話・PHS 15〜17歳 女性 18〜22歳 23〜30歳 ※ 年齢は4月1日現在のものである 年齢・性別の携帯電話・PHSの使用状況 これによると,中・高校生における携帯電話・ PHSの使用は,男子よりも女子のほうが多くな っている。また,男女とも高校生になってからの ‑ 95 ‑ 情報機器としての特徴 携帯電話・PHS ネ ッ ト 不要 ワーク の設定 メ ー ル テキストのみ の形式 メ ー ル 特定の形式の静止画及び で 添 付 動画 できる もの 拡 張 機 ほとんどの機能が本体に 能 内蔵されているので,単 独で使用できる。 例:カメラ GPS コンピュータ 使用環境に適した設定を 個別に行う必要がある。 テキスト及びHTML コンピュータで扱えるす べてのファイル 用途にあった周辺機器を その都度接続する必要が ある。 電 子 決 クレジットカード決済機 ク レ ジ ッ ト カ ー ド の 番 号 済 能付携帯電話を利用すれ や 名 前 な ど 個 人 情 報 を 入 ば,直接電子決済ができ 力する必要がある。 る。 テ レ ビ それぞれの会場にテレビ そ れ ぞ れ の 会 場 に テ レ ビ 会議 電話機能付き携帯電話が 会 議 シ ス テ ム が 必 要 で あ あればできる。 る。 ネットワークに関する専 門的な知識が必要となる。 いる。警察庁が平成14年12月に発表した出会い系 サイトを利用した犯罪・被害状況の一部を表3, 4に示す。(注3) 表3 出会い系サイトを利用した犯罪における携帯電話 の利用率の推移 出会い系サイト 表1から分かるように,携帯電話・PHSは, コンピュータよりも機能的に劣る点はあるもの の,かなりの部分で情報機器として優れていると いえる。 利用犯罪 平成13年 平成14年上半期 59/104 714/888 758/793 (56.7%)( 80.4%) (95.6%) ※ 表4 平成12年 携帯電話利用事件数/当該事件数 携帯電話から出会い系サイトを利用した児童の被 害状況(平成14年上半期) 以上のことから,扱いやすく,情報機器として も優れている携帯電話・PHSは,今後学校現場 でも学習活動に利用されていく可能性が高いと考 える。 (2) 携帯電話の特徴と学習活動における活用 現在,携帯電話は第2世代(ディジタル方式) と呼ばれるものが主流であるが,IMT‑2000(Inte rnational Mobile Telecommunications 2000)と いう国際規格に基づいた次世代携帯電話も登場し ており,今後活用できる分野は広がっていくと思 われる。そこで,これらの携帯電話の特徴を整理 し,学習活動で活用できると思われる場面を表2 にまとめてみた。 表2 携帯電話の特徴と活用例 特徴 学習活動における活用 第 デ ー タ 通信 速 度 は最 大64 ○ 内蔵カメラを利用して撮 2 Kbps(受信側)である。 影した静止画像を保存・再 世 生・送受信する。 代 ○ Webページを閲覧して, 情報を収集する。 ○ 電子メール機能を利用し 交流活動等を行う。 次 デ ー タ 通 信 速 度 は , 最 大 第2世代携帯電話での活用に 世 384Kbps( 受信側 )である。 加え,次のことができる。 代 将来的 には2 Mbps程度に ○ なる予定である。 692人 被害者数(総数) 595人 うち)児童 571人(96.0%) うち)携帯電話利用 ※ 児童とは18歳未満の者をいう これらの表から,出会い系サイトを利用した犯 罪は年々急激に増加しており,近年ではこの犯罪 に携帯電話が大きくかかわっていることが分か る。また,被害者の多くは18歳未満の者であり, 携帯電話の利用によるものがほとんどである。つ まり,現在携帯電話を所持している児童生徒が増 加している中で,いつ事件等に巻き込まれるか分 からない状況にあるといえる。 このような状況においては,児童生徒自らが適 正な判断及び行動を取ることが必要であり,その ためには ,「情報社会で適正な活動を行うための 基になる考え方と態度」つまり情報モラルを身に 付けておくことが不可欠であると考える。 この情報モラルの育成においては,学校・家庭 ・地域の連携が大切であるが,情報モラルは保護 者がこれまで学んだこともない新しい概念や知識 を含むため,当面学校が中心となって行っていく 必要があると考える。 (2) 情報教育での位置付けと指導の在り方 初等中等教育における情報教育では ,「情報活 用能力」の育成が目標とされており,この能力は 次の三つの要素に分類されている。(注4) 動画教材をダウンロード しながら見る。 ○ 出会い系サイトを利用した全犯罪 テレビ電話機能を利用し 交流活動等を行う。 3 情報モラル育成の必要性 (1) 携帯電話にかかわる事件との関連 現在,いわゆる出会い系のサイトやメールをき っかけとしたトラブルや事件等が多く報道されて ○ 情報活用の実践力 ○ 情報の科学的な理解 ○ 情報社会に参画する態度 情報モラルは,情報社会に参画する態度の中に 含まれ,情報教育において必要不可欠な学習内容 ‑ 96 ‑ となっている。 また,新「情報教育に関する手引」では ,「情 報教育は,特定の学校段階で完成するものではな く,小・中・高等学校段階を通じて体系的に実施 することによって,生涯を通じて,情報を活用し て自己の生き方や社会を豊かにするための基礎・ 基本を培うことが必要である 。」と述べられてい る。(注5) つまり,情報モラルを育成していくことは情報 教育の観点からも重要であり,その指導は児童生 徒の発達段階に応じて行っていく必要がある。 そこで,新「情報教育に関する手引」や学習指 導要領解説等で述べられていることを参考にし て,各学校段階における情報モラルの育成に関す る指導上の留意点をまとめてみた。 ① 小学校段階 ○ 情報教育にかかわる特定の教科が設けられて いないので ,「総合的な学習の時間」をはじめ 各教科等で行う。 ○ 情報手段に慣れ,親しませつつ,その適切な 活用体験を持たせることを重視する。 ○ 情報の真偽にかかわること,著作権,プライ バシーの問題などについては,具体的場面が発 生した時に,それを見過ごすことなく,繰り返 し触れる。 ② 中学校段階 ○ 技術・家庭科の技術分野「B情報とコンピュ ータ」を中心に他の教科等でも行う。 ○ 「B情報とコンピュータ」では,情報化が社 会や生活に及ぼす影響を知り,情報モラルの必 要性について考えさせる。 ③ 高等学校段階 ○ 普通教科「情報」を中心に他の教科等でも行 う。 ○ 普通教科「情報」では,各科目で次のように 扱う。 ・「 情報A」では,身のまわりにある事例を通 して,情報化が生活に及ぼす影響を認識させ , 情報モラルを考えさせる。 ・「 情報B」では,情報技術の観点から,情報 化が生活に及ぼす影響を認識させ,情報モラ ルを考えさせる。 ・「 情報C」では,社会で利用されている情報 システムの観点から,情報化が生活に及ぼす 影響を認識させ,情報モラルを考えさせる。 Ⅲ 携帯電話・PHSの利用に関する 意識・実態調査 1 意識・実態調査の概要 (1) 調査目的 携帯電話・PHSの利用状況及び利用に対する 意識を把握し,授業実践に活かすため,アンケー ト調査を実施した。 (2) 調査方法及び内容 研究協力校において,児童生徒及び保護者を対 象に,主に次のような内容で児童生徒用(①〜④), 保護者用(①,②,④〜⑦)のアンケートを作成 し,調査を行った。 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 携帯電話・PHSの所有状況や所有願望 利用状況や目的 利用に対する意識やモラル・マナーの実態 携帯電話・PHSの学習活動への利用 子どもの所有・利用状況 子どもに利用させる利点や悪影響 子どもに対するモラルやマナーの指導主体 (3) 調査時期 平成14年9月から10月 (4) 調査対象 (児童生徒) 小学校 校種 人数(人) 中学校 高等学校 4年 5年 6年 1年 2年 3年 1年 2年 3年 100 101 91 38 38 52 389 404 375 計 1588 (保護者) 小学校 校種 人数(人) 中学校 高等学校 4年 5年 6年 1年 2年 3年 1年 2年 3年 61 71 74 25 32 47 200 132 145 計 787 研究協力校における携帯電話・PHS所持に対 する指導方針は, ○ 小 学 校:特に規制なし ○ 中 学 校:所持禁止 ○ 高等学校:条件付きで許可 となっている。このような指導方針は,後述の教 職員アンケート( p.113図16)の結果から見ても , 特殊な指導状況ではないと考えられる。 2 調査結果の集計と分析及び考察 分析及び考察に当たっては,児童生徒の利用実 態及び意識,そして保護者の意識の二つの側面か ら行うこととした。 (1) 児童生徒の利用実態及び意識について ‑ 97 ‑ ア 携帯電話・PHS所持状況 図3に示すように,児童生徒の所持状況につい ては,小・中学生では少ないが,高校生では大半 の生徒が所持している。また ,「所持している」 と回答した高校生の97%が ,「ほぼ毎日」学校に 持参していることも分かった。また,高校生にお いては,携帯電話・PHSをコミュニケーション の道具として日常的に利用している実態も明らか になった。 イ 携帯電話・PHSの利用状況や意識 利用上のルールやマナーについての設問では, 図5に示すように,高校生の約80%が肯定的に回 答し,大半の生徒が「自分は守っている」という 意識であることが分かった。 また,生徒が実行しているルールやマナーにつ いて,自由記述で回答を求めたところ ,「公共の 施設や交通機関では電源を切る」といった内容の 回答が多かった。 小学校 中学校 0% 高校 20% 全て守っている 0% 20% 40% 60% 所持している 図3 80% 100% 図5 所持していない 児童生徒の所持状況 さらに ,「所持していない」と回答した小・中 学生の中には,保護者の携帯電話やPHSを塾の 送迎の際などに利用している児童生徒が少なくな い,という実態もあることが分かった。また「将 来所持したいか」という小・中学生に対する設問 では,約4分の3の児童生徒が肯定的に回答し, これらの実態を考慮すると,早い段階から利用に 対する指導が必要と考える。 40% 60% ほとんど守っている 80% 時々守っている 守っていない 100% その他 利用上のルール・マナー(高校生) 知らない人からのメールや電話への対応につ いての設問では,図6に示すように,児童生徒 の大半が「 無視する」と回答していた。しかし, このようなケースに最も遭遇しやすい高校生の 中で ,「返信する・返答する」と回答した生徒が 約10%もおり,興味本位の利用意識から抜け出 せていない実態があると考えられる。 小学校 高校生に対して行った所持の時期の設問では, 図4に示すように,購入時期が「高校1年生」と 「中学3年生 」に集中していた。この背景として, 高校入学が一つの節目になっていることが考えら れる。従って,この時期を控えた中学校段階での 指導が効果的であると考える。 中学校 高校 0% 20% 無視する 図6 小学校 40% 内容を読む・聞く 60% 80% 返信・返答する 100% その他 知らない人からのメールや電話への対応 中学1年 中学2年 中学3年 高校1年 高校2年 高校3年 0 10 20 図4 30 40 所持の時期 50 60 (%) 学習活動への利用の可能性についての集計結果 は,図7のとおりである。実際に利用する機会が ほとんどない小・中学生の数値は,低かった。学 習活動で利用する場面をイメージしにくかったこ とが原因だと考えられる。 その一方で,高校生では約40%の生徒が可能性 を認めていた。しかし,実際に利用している携帯 電話・PHSの機能としては,電卓や辞書機能に 偏ったものとなっていることも分かった。 ‑ 98 ‑ その一方で ,「必要性を感じているが,指導を していない 」「指導の必要性を感じていない」を 合わせ約30%の保護者が児童生徒に指導していな いという実態があることも分かった。 次に,児童生徒に対するルールやモラル育成の 場についての設問では,図10に示すように,約半 数の保護者が「家庭で指導すべき」と答えていた 。 その一方で「子ども自身が習得」が約3分の1, 「学校で指導すべき」はわずかであった。 小学校 中学校 高校 0% 20% 40% 60% はい 図7 80% 100% いいえ 学習活動への利用の可能性 (2) 保護者の意識について 保護者アンケートの集計では,校種別による大 きな違いがなかったため,保護者全体を一つの集 団として扱うことにした。 児童生徒に利用させる利点についての設問で は,図8に示すように「緊急連絡できる 」「家庭 との連絡」が大半を占めていた。また「情報化社 会に対応」や「学習に役立つ」など,携帯電話・ PHSを携帯できる情報端末として,学習活動に 活用するという意識は低いことが分かった。 緊急連絡できる 家庭との連絡 情報化社会に対応 学習に役立つ その他 0 10 図8 20 30 40 50 60 70 80 児童生徒に利用させる利点 20% 守っている 図9 40% 60% 守っていない 80% 20% 家庭で指導 図10 40% 子ども自身が習得 60% 80% 学校で指導 100% その他 児童生徒への指導主体 確かに家庭での指導は不可欠である。しかし, 情報モラルは保護者の意識を越えた視点も含まれ ている。また,急速に変化する社会の中で,予想 もしなかった問題が生じる可能性もある。 前述した,保護者の約30%が「子どもに指導し ていない」という実態も踏まえ,まず学校が中心 となって指導を展開していく必要があると考え る。 (%) 児童生徒のルール・マナーの現状についての設 問では,図9に示すように約3分の1の保護者が 「守っていない」 「分からない」と回答していた 。 これらの児童生徒に対して,早急に保護者と学校 が連携し,何らかの指導をする必要があることを 示唆していると考える。 0% 0% 100% Ⅳ 学校教育における携帯電話・PH Sの利用とそれにかかわる教育活動 の実際 ここで紹介する事例は,Ⅱの「研究の基本的な 考え方」及びⅢの「携帯電話・PHSに関する意 識・実態調査」の結果・分析に基づいて,本研究 の研究協力校及び研究協力員によって実践された ものである。 この実践にかかわる分析及び考察は,Ⅴの「実 践事例及び意識・実態調査の分析と考察」でまと めて述べることにする。 わからない 児童生徒のルール・マナーの現状 児童生徒への指導についての設問では ,「指導 をしている」と回答した保護者が約70%であり, かなりの割合で実際に家庭で指導をしていること が分かった。 ‑ 99 ‑ 事例1:廿日市市立佐方小学校 1 エ 学校紹介 佐方小学校は,廿日市市の東に位置した全校児 童425人,13学級の中規模校である。 情報教育の面では,平成12年度パソコン教室が 整備され平成14年度から本格的に学習利用が行わ れている。学年の発達段階を踏まえ,楽しみなが ら慣れ親しませることを通して情報活用能力の育 成に取り組んでいる。児童は,パソコン操作にも 慣れ,高学年では,自分たちでインターネットを 使って調べ学習が行えるようになってきた。 携帯電話・PHSの個人所持率(学習前)は, 4・5・6年生では,平均13%で,学年が上がる につれてその割合も高くなっている。所持したい と思っている児童は71%,所持はしていないが家 族の所有している携帯電話・PHSを利用したこ とがあるという5年生は約40%いた。利用方法と して ,「通話 」「メール」を使いたいと思ってい る児童が多かったが,学習の道具として使いたい と思っている児童の割合は低く18%であった。 目 標 手作りのものに関心を持ち,作り方を調べたり , それをもとに作ったりすることを体験しながら, 人々の努力のすばらしさに気付き,ものを大切に しようとする態度を養う。 (2) 本時について ア 目標 携帯電話のテレビ電話機能を利用し,遠い地域 に住んでおられる名人にスーパー竹とんぼの作り 方を教わりながらいっしょに製作する。 イ 場の設定 今回,テレビ電話機能のついた携帯電話(FOMA) を4台利用した。児童と名人が2台ずつ持ち,操 作が複雑にならないようにそれぞれ送信専用と受 信専用として使用した。学校では,みんなで見ら れるよう受信画面を実物投影機を通してプロジェ クターで拡大投影した。実際の構成を次に示す。 送信用 名人側 学校側 受信用 プロジ 2 取組みの実際 (1) ア イ ウ 学習指導計画の作成 教科等 総合的な学習 単元名 「手づくり文化祭を開こう!」 対 象 第5学年 79名 送信用 スクリーン ェクタ ←携帯電話(受信用) 実物投影機 学習指導計画表(全60時間) 単元等 学習活動 動 機 付 け ○自分たちが植えた稲の成長を見る。 第 (1時間) 1 課題意識 ○テーマを決定する。 次 ・グループ分け ・ウェビング (3時間) ・班ごとにどんな物を作りたいか話し合う 追求1 ○グループでの活動計画を立案する。 第 ○グループごとに活動する。 2 ・インターネットを使っての調べ学習 次 ・図書を使っての調べ学習 ・調べたことをもとにした体験学習 (21時間) ・手作り名人による指導 など 第 共有化 ○中間報告の準備をする。 3 ・調べたことや体験して思ったことを分かりやすく伝 次 える (4時間) ・これからどのような活動をしていきたいか伝える 第 追求2 ○活動の中間報告をする。 4 ・アドバイスし合い,追求2への手がかりをつかむ 次 ○2回目の課題追求活動をする。 (17時間) 本時15/17 まとめ ○どんな手づくり文化祭にしたいか考える。 第 ○手づくり文化祭の準備をする。 5 ○手づくり文化祭を開く。 次 ○お世話になった方にお礼の手紙を書く。 (14時間) ○感想を話し合う。 ‑ 100 ‑ 指導上の留意点 ○自分の植えた稲を観察することで,自分 で作ることへの喜びや愛着に気付かせる。 ○全体を「食 」・「 道具 」・「 刈り取った稲 の利用」の三分野から各自の希望により グループ分けを行い,自分たちの課題を 追求させていきたい。 ○校外での活動や地域の方への連絡など は,活動計画書を提出させ,事前に安全 の確認と相手先へのお願いをしておく。 ○情報機器を扱うときに気を付けることや マナーについては,社会科の学習の中で 指導する。 ○発展的な追求活動の中で,手づくりのよ さや先人の深い知恵,考え工夫すること の大切さに気付くことができるよう毎時 間の活動記録を書かせていく。 ○単なるお祭りではなく,今後の生活に, 学んだことが生かせるような話し合いに させる。 ウ 展開 (2) 児童の反応 100% 「学校 で授業の道 学校で授業 80% の道具とし 具として使いたいか」 60% て使いたい という問いに対して, 40% 右図のよ うに肯定的 20% 回答が増加している。 0% 事前 児童が 事後に書い た具体的な活用例を次に示す。 学習活動 導 前時の学習を想起する。 入 課 題 把 握 携帯電話を利用して,遠くにおられる 名人に,スーパー竹とんぼの作り方を 教わりながらいっしょに作ろう。 ゲストティーチャー 展 を紹介する。 開 1 ・授業で見えにくいものをクローズアップして班で見る ・学校間で意見を言い合う ・複数の異なる地域で同時に交流する ・暗記する ・勉強の大事なところを写し,家で覚える ・校外活動で居場所を知らせる ・意味を調べる ・方言を学ぶ ・班で感想文を交換する ・ページを作って人に見てもらい佐方小を知ってもらう 名人に作り方を教わりながらいっしょに作る。 展 ・分からないところを質問する。 開 ・作る所を見せていただく。 2 ・自分たちが作る ところをカメラ で写し,アドバ イスをしてもら う。 次に児童の感想を載せる。 ○ぼくは,今日実際にけい帯テレビ電話で名人と話しました。 電話や手紙では,動作が分からないけど,テレビ電話で話を すると,ぼくの質問も分かりやすかったと思います。それに, 名人の言われることも分かりやすかったから便利だと思いま した。テレビ電話のおかげで,ぼくの竹とんぼの欠点が直っ たからよかったです。だから,今からも勉強でけい帯テレビ 電話を使ったらいいと思ったし,楽しいと思ったから,けい 帯テレビ電話は,いいものだと思いました。 ○プロの人から教えてもらうということは,むずかしいこと なのに,インターネットで,その人が見つかって,けいたい 電話もインターネットも役に立ったと思いました。 ○今日は,画像付きで名人の動作や表情がよく分かりました。 それに,テレビでも見たけど「スカイヤンマ」が,携帯電話 を通じて見ることができました。竹とんぼの作り方で注意す ること,コツなども知ることができました。しかも,今日は, 竹とんぼ教室で教えてないことも教えてくれました。もしか したら,私達の気持ち,竹とんぼへの熱意が伝わったから教 えてくれたのかも。これからも,携帯電話を通じてすごい人 に色々なことを教えてもらいたいです。 名人から今後の製作でポイントになる所をアド バイスしてもらう。 ま 本時のふりかえりをする。 と ・教えてくださった方に感謝の気持ちを表す。 め ・活動記録を書く。 3 事後 実践の成果と課題 (1) 成果 総合的な学習では,地域の人材を生かして学習 を進めているが,人材をすべて地域からというの には限界がある。携帯電話を利用し,校区外から の人材活用によって,児童の探究活動がより広い 範囲で行えることが分かった。 これまでテレビ電話というと,パソコンが必要 という観念があり,どうしても利用場所が制限さ れていた。しかし,どこにでも持ち歩ける携帯電 話のモバイル性が学習の場を自由に設定すること を可能にした。 携帯電話は操作が簡単で方法がほぼ統一されて いるため,児童もすぐに操作を覚えた。 また,相手に見せたい画像を自分の思いどおり の距離や角度で送信できることから,児童は,相 手との意思の疎通が容易となり,直感的かつスム ーズに思いを伝えることができた。さらに,音だ けでなく映像もリアルタイムで送れるため,児童 にすぐそばで話しているような感覚を与え,相手 に対し親しく心の通った会話を可能にすることも できた。このことは,個の心をはぐくむ意味で大 変貴重な経験となった。 授業前まで,携帯電話を学習の道具として認識 していなかった多くの児童に教育機器としての利 用価値の高さを認識させ,こんな学習に利用でき るのではないかという発展的な意識を持たせるこ とができた。 これらのことから,小学校教育における携帯電 話の利用については,回避することより積極的活 用も有効と考えられる。 (3) 今後の課題 今回は,携帯電話のテレビ電話機能を利用して 名人から助言をもらうという内容だったが,メー ルや他の機能もいろいろな学習場面で活用できな いか模索していきたい。 携帯電話による学習に不安を持っている保護者 に対して,情報機器としての有効性を理解しても らうとともに,児童に対してしっかりとした情報 モラルを身に付けさせる学習を年間指導計画など に取り入れていく必要がある。 ‑ 101 ‑ 事例2:黒瀬町立乃美尾小学校 1 学校紹介 本校の本年度の学級数は,1学年1学級の計6 学級で,児童165名である。また,教職員18名は 一体となって,国際化社会を生きる心豊かな児童 生徒を育てようと取り組んでいる。 保護者へのアンケートによると,携帯電話・PHS の普及は著しく,ほぼ全員が所有している。その 利用方法は,通話,メールの送受信,着メロの取 り込みなどであり,保護者のほとんどが役立って いると答えている。児童の利用については,緊急 連絡については利点があると考えているが,犯罪 に巻き込まれる,集中力が減少するなどの悪影響 を心配している。 児童のアンケートでは,所有している子は数名 であるが,ほとんどの子が持ちたいと答えている 。 2 取組みの実際 (1) ア イ ウ エ ○ 学習指導計画の作成 教科等 総合的な学習 題材名 「英語に親しもう」 対 象 第4学年 34名 目 標 ゲームや歌,外国人との交流など,英語に慣 れ親しむ体験的な活動を通して,日常の簡単な 英語を聞いたり話したりし,英語を使ってコミ ュニケーションしようとする意欲を育てる。 ○ 他国のことに興味・関心をもち,それぞれ異 なる生活や文化があることに気付かせる。 ○ 携帯電話使用上の問題点を踏まえ,よりよい 活用法を考え,互いにコミュニケーションを取 ろうとする態度を身に付けるのに役立てる。 学習指導計画のうち携帯電話を活用した部分のみ を下の表に示す。 (2) 本時について ア 目標 ○ 英語を使って外国の人との交流を楽しむ。 ○ 携帯電話の機能を使って,外国の人とのコミ ュニケーションに役立てる。 イ 実践内容 英語活動の発展学習として,平和公園を訪れて いる外国の人にインタビューを行った。その時に , 携帯電話の活用を取り入れた。 図11に示したように,ALTに学校に設置した 卓上型のTV電話の前で待機してもらい,平和公 園から5台の携帯電話を受けられるようにした。 携帯電話からの画像等は,テレビデオで写し,録画 できるようにした。 学習指導計画表(一部) 単元等 携帯電話の使用 第 法や問題点につ 1 いて知る 次 (1時間) 携帯電話のより 第 よい活用法につ 2 いて知る 次 (1時間) 携帯電話のより 第 よい活用法につ 3 いて考える 次 (2時間) 携帯電話を使っ て情報発信する 第 4 次 (1時間) 第 コンピュータを 5 使って報告文を 次 作る (2時間) 学習活動 ○携帯電話の機能について,知っていること を話し合う。 ○携帯電話の機能について調べる。 ○携帯電話の問題点について話し合う。 指導上の留意点 ○児童の意見を参考に進める。 ○班ごとに,ホームページから携帯電話の機能について調 べ,調べたことを発表し合う。 ○CD「情報モラル研修教材」 ,新聞記事,ホームページから, 問題点について提示する。 ○携帯電話を使って情報交換するときの問題 ○「情報モラル研修教材」CDから,問題点の対処について の対処法について考える。 話し合わせる。 ○携帯電話を使うときの問題の対処法につい ○児童が迷惑を受けたときの思いを参考にし,その対処法 て考える。 について話し合わせる。 ○班ごとに,携帯電話の活用法について,プ ○愛知県扶桑町立山名小学校のホームページや太田市のマ リントを基に話し合い,まとめる。 ナールールコンテストの作品を参考にして,話し合わせる。 ○よりよい活用法について班ごとに発表し, ○プリントを基に,自分たちが考えた活用方法について発 話し合う。 表し合わせる。 ○FOMAの使用方法を知る。 ○カメラ係を中心に,手際よく交代で撮影するよう指導する。 ・プレゼンテーションで活用法を知る ○実際にインタビューする場合を想定して,使い方の練習 ・実際に使ってみる(写真撮影・TV電話) をする。 ○インタビューの時の態度や活動の概略につ ○インタビューの方法,携帯電話の使い方,役割分担,時 いて確認する。 間,場所等を確認する。 ○インタビューをする。 ○安心してインタビューできるように,学校からALTが外 ・外国の方を見つけたら,元気な声で呼び 国の方に説明をしてもらうこと等を確認しておく。 かけるようにする ○担任と分担し,グループ活動の様子を見ておく。 ○記念撮影をする。 ○時間があれば,撮った写真を学校にメールで送るように ○メールに写真を添付し,学校に送る。 (本時) しておく。 ○文書の構成をする。 ○画像の位置,感想を書く場所を示し,配置させる。 ○メールに添付した画像を文書に貼り付ける。 ○画像を所定の位置に貼り付け,グループ名をつけ,感想 ○活動した感想を書く。 を書き,保存をさせる。 ○印刷をする。 ○できあがったグループから印刷をさせる。 ‑ 102 ‑ TV電話通話状況 (学校←→平和公園) テレビデオ デュアルモード テレビ電話 図11 携帯TV電話 TV電話通話状況 児童は5グループに分かれ,カメラ係などの役 割を決め,平和公園の貞子像から噴水までの範囲 内でインタビューするようにした。また,教師が 手分けしてグループについた。 児童は,外国の人にインタビューをすることを 楽しみにしているとともに,大変緊張しているよ うであった。最初は,ためらってインタビューの ために近づくことができなかったり,携帯電話の 操作に少し手間取ったりしていた。 携帯電話がつながったグループは ,「Please」 と携帯電話を渡し,ALTにインタビューの趣旨 を説明してもらった。外国の人には,とても協力 的に応対していただき,楽しく,スムーズにイン タビューすることができた。インタビューの間は , その様子を携帯電話で写し,学校に送っていた。 つながらないときは,そのままインタビューし, 最後にもう一度電話した後,写真だけを撮ることに した。 活動の様子 インタビューが済み,写真を携帯電話で撮るこ とに成功すると,楽しさが増し意欲が高まり,次 にインタビューする人を走って探しに行った。相 手を見つけると,すぐ学校に電話をし,インタビ ューをしていた。あっという間に予定の時間とな り,終わることをとても残念がっていた。30分余 りの間に,4〜5名の人にインタビューしている グループもあった。 3 実践の成果と課題 (1) 成果 校外で,外国の人にインタビューするのは初め てのことなので,児童は大変緊張していた。しか し,一緒に来られないALTに,TV電話を通し て協力してもらえたことは,児童にとってとても 安心感を与えたようだ。またALTは,離れた場 所からでも児童のサポートができてよかったと話 していた。 学校の他の教職員も,TV電話を通して児童が 意欲的にインタビューに向かっていた様子を把握 でき,リアルタイムに指導ができると感じていた ようだ。 携帯電話のこうした使い方は,コミュニケーシ ョンを図る手助けになったと思う。 また,携帯電話で写真を撮れることは,手軽で あり好評であった。撮った写真は,メールに添付 して学校に送った。事後,送った写真の中から気 に入ったものを選び,楽しく報告書を作ることが できた。 児童の感想 ○テレビ電話で,ALTの先生につながったとき,感動しまし た。 ○写真を撮ったり,テレビ電話をしたりするとき,失敗したら どうしようと思っていたけど,ちゃんとつながってうれしかっ たです。 ○写真を撮ったとき,初めてカメラで写真を撮ったので,おも しろかったです。練習の時は,上手にできませんでした。本番 も少し失敗したけど,頑張ってやったら,段々上手になってき たなあと思います。上手にできたからうれしかったです。 ○インタビューの時に,いっぱい撮りすぎて,最後写真が撮れ なくなったけど,FOMAでは,あまりぶれないから,全員でいい 写真が撮れてうれしかったです。 (2) 今後の課題 今回のインタビューでは,一つのグループが携 帯電話で話す時間が長かったため,全グループに はつながらなかった。話す時間を決めたりするな ど,使い方をもう少し工夫する必要がある。 また,今回使用した携帯電話(FOMA)は通話エリ アが狭く,通話エリア外ではTV電話などできな い。機能の面でも,写真の画質が低く,画質を上 げるとメールで添付して送れない等の制限があっ た。今後,通話エリアやこうした機能が改善され ると使用範囲が広がると思う。 保護者は,携帯電話を学習活動に利用すること に対して,マイナスイメージを持っている。今後 , 今回の活用事例など本校で取り組んでいる学習活 動の成果を,保護者にも積極的に伝えていく必要 があると思われる。 ‑ 103 ‑ 事例3 1 黒瀬町立黒瀬中学校 2 学校紹介 本校は,賀茂台地の南部に位置し,学級数27学 級,生徒数963名の県内でも有数の大規模校であ る。また,町内で唯一の公立中学校であり ,「地 域に根ざした魅力的な学校」の創造を目指してい る。学校イメージとしては ,「生き生きと活動す る生徒を育む美しい学校」を揚げ,基礎学力の向 上,社会に役立つ人間形成,真に開かれた学校づ くりに重点的に取り組んでいる。 数年前までは,生徒指導上の問題行動等も発生 していたが,積極的な生徒指導体制の充実や本校 の目指す学校像の具現化により,生徒は明るく落 ち着いた学校生活を送っている。 携帯電話・PHSに関する実態として,近隣の 中学校では所持禁止の指導としている。本校にお いても同様の扱いであるが,年間数件,無断で学 校へ持参していたり,メールによるトラブルや保 護者の都合で所持を容認している実態があり,生 徒指導の面で指導をするケースが絶えない。 取組みの実際 (1) 学習指導計画の作成 ア 教 科 技術・家庭科(技術分野) イ 題材名 「情報通信ネットワーク」 情報通信機器と情報通信社会に 参画する態度の育成 ウ 対 象 第2学年1組 37名 エ 目 標 情報化が社会や生活に及ぼす影響を知り,情報 モラルの必要性について考えさせることを通し て,情報通信社会に参画する態度を育成する。 (2) 授業実践に当たっての事前調査 授業実践に当たり,生徒に情報通信機器につい ての事前調査を実施したところ,多様な情報通信 機器を知っており,その中で携帯電話は所有願望 の1位であった(図12 )。また,ほとんどの生徒 が携帯電話の利用経験があるという実態も分かっ た(図13 )。その理由として,携帯電話を所有し ている家庭が多く,塾などの送迎の連絡のため保 護者等が生徒に使用させているケースが多いこと が明らかになった。 学習指導計画表 単元等 第 ガイダンス 1 次 (1時間) 情報通信ネットワーク 第 と情報通信機器につい 2 て知ろう 次 (1時間) 第 情報通信機器の光と影 3 の部分を考えてみよう 次 (1時間) 私たちの生活と携帯電 第 話について考えてみよ 4 う 次 (2時間) 課題レポートの作成と 第 プレゼンテーション 5 次 まとめ (1時間) 学習活動 ○情報とコンピュータを学ぶ意義,目標, 学習規律,評価観点等を理解する。 指導上の留意点 ○私達の生活の中でコンピュータが身近 に使用されていることを知らせ,情報 化社会に生きる一員として学習する意 義を理解させる。 ○情報伝達の方法を知ろう。 ○日常生活における情報伝達の多様な方 (イメージマップの作成) 法の存在と情報通信ネットワークの仕 ○情報通信機器にはどんなものがあるのか 組みを理解させる。 調べてみよう。 (アンケートの実施) ○インターネット等を活用し,情報社会 ○情報通信ネットワークについて知ろう。 に参画する態度を身に付けさせる。 ○私達と携帯電話について考えてみよう。 ○中学生が携帯電話についてどのような ○グループ学習としてカードを記入する。 価値観を持っているか,グループ学習 で意見を出させる。 ○カードの分析をしよう。 ○将来,生徒が携帯電話を使用すること 〈分析の視点〉 を念頭に,活用上の公私の区別や光と ・携帯電話の光と影について 影の部分を学ばせ,情報社会に参画す ・携帯電話の公私の区別について る態度や倫理観,社会性の育成を図る。 ○光と影・公私の区別についてまとめよう。 ○カード分析等を通して多角的に物事を (本時) 思考する力の育成を図る。 ○情報通信ネットワークについて課題別研 ○情報通信ネットワークについて自分の 究テーマを決定してまとめよう。 興味・関心に応じて課題レポートをま とめることを通して学習内容を理論的 ○プレゼンテーションを通して情報を発信 に整理させる。 し共有・評価しよう。 ○お互いの情報を共有することにより学 習の深化を図る。 ‑ 104 ‑ 性について」が192(95%)であった。また,影の 部分については「ワンギリや迷惑メール等」の犯 罪等に関係するものについてが35(24%),料金に 関することが20(19% ),「車の運転をするときは 電源を切る」など危険だと考えられることが20 (19% ),「目が疲れる」など健康に関するものが 9(8%)であった。 携帯電話 パソコン 0% 20% 40% 60% 80% 持ちたい (所持している者を含む) 図12 100% 0% 20% 持ちたくない 情報通信機器の所有願望 40% 60% ある 図13 80% 100% ない 携帯電話の利用経験 (3) 本時について ア 目標 情報通信機器としての携帯電話活用上の光と影 の部分や公私の区別を考えさせ,情報社会に参画 する態度や倫理観,社会性の育成を図る。 イ 授業内容 「私達の生活と携帯電話について考えてみよう 」 というテーマで,班によるグループ学習を行った 。 模造紙の横軸に「携帯電話の光と影について 」, 縦軸に「携帯電話の公私の区別について」をそれ ぞれとり,その座標上に携帯電話についての意見 を自由にカードに書かせ,貼り付けた。それをま とめたもののうち,A班のものを図14に示した。 生徒の作成したカードの数は,光の部分が201 (66%)で影の部分が107(34%)であった。この うち光の部分においては ,「多様な機能等や利便 3 (1) 成果 将来,携帯電話を使用することを念頭においた 学習であったため,活用上の光と影の部分や公私 の区別について,意欲的に取り組むことができた 。 本学習における具体的な成果を次に示す。 ○ 携帯電話の光の部分である利便性と,その影 にある危険な面を理解することができた。 生徒の感想 ○携帯電話がどんどん便利になっていく中で, やっぱり悪いことは必ず何かあるんだなあと思 いました。 ○ 公的な立場 高い ・高い ・料金が高い(2) ・通話料以外に基 本料金がかかる 水に弱い 危険 ・水に弱い (2) ・車では使えない(2) 緊急時 ・電車ではOFF ・メモリが 消えること がある ・公衆電話がなくても(外にいても)連絡できる ・病院ではOFF ・使いやすい ・機種変更が高す ぎる 多機能で便利であるがゆえに,公私の立場を 考えた責任ある活用が求められる。携帯電話を 利用する者としてのモラルやマナーを学ぶ必要 があると考えた生徒も見られた。 生徒の感想 ○光と影を分けるのはできたけど,私的な立場 に片寄ってしまいました。 ・いつでもかけられるので便利(3) ・飛行機では使えない 実践の成果と課題 ・何かあったら携帯があったら電話できる ・緊急の時にすぐ電話できる 使えない ・急いでいる時に便利(2) ・田舎は電波の強さが弱い 持ってきてはいけない ・学校に持ってきて はいけない ・圏外になったら電話・メール ができない(3) ・一部地域で使えなくなる メール ・メールの方が手紙より安くて早い ・メール交換が楽しい ・メールがいい 影の部分 イタズラ ・出会い系サイト はダメ 犯罪 不便 ・カメラ付き 携帯で盗撮 される ・買うときに身分 証明書とかが いる その他 ・迷惑メール ・イタズラ電話 ・強盗にあったら 犯人の顔を撮る ・いたずらメール ・脅迫電話 光の部分 機能 ・どんどん新しくなる ・色や種類が豊富 ・パソコン並の性能 ・ストラップが付けられる ・画像がきれい ・めざまし機能ができる ・バーコード読みとりが できる ・音がきれい ・ゲームが楽しめる ・カメラで撮れる 充電 ・カメラが付いている ・コンセントがない時,充電に困る ・使わなくても電池が減る 番号 ・通話時間が見れる ・機能がたくさんあって便利 ・いろんなおまけ付き ・3Dで画像が立体的 ・音楽が色々入れられる ・場所がすぐ分かる ・自分の好みに合わせて選 べる ・暗いところでも見れる ・バラエティーに富んでいる ・充電がめんどくさい ・番号を間違える 人がいる ・充電の時間が長い ・番号が長い ・持ち運びが便利 ・好きな画像に設定できる ・1年過ぎたら充電してもすぐなく なる(電池バックがボロクなる) ・番号を覚えるの が大変 ・小さくて軽い ・画像が送れる ・カレンダーになる ・着メロが決められる 健康 ・電波が体に悪い (2) 今後の課題 A班を含む3グループで「 車の運転をするとき 」 「電車内や飛行機の機内 」「病院内」において携 帯電話の電源を切ることを「危険」というキーワ ードで公的な立場としてとらえているが,他の1 グループではこれを「不便」として私的な立場で とらえていた。これは「人の迷惑になるから」と いう相手を思いやる意識と ,「自分が使用したい から」という自己中心的な立場との相違の現れで あると推察される。 このことから生徒は,携帯電話についての光と 影の部分は知っているが,公的な場面で使用する 際のマナーや責任についてはあまり考えていない 状況があると思われ,今後の教育的な課題と考え る。 私的な立場 図14 光と影・公私の区別の関係 ‑ 105 ‑ 事例4:豊栄町立豊栄中学校 1 ウ エ ○ 学校紹介 本校のある豊栄町は広島県の中央部,賀茂郡の 東北部に位置し,人口は約4,600人程の緑豊かな 自然と多くの文化財に恵まれた町である。本校は 6学級,138名の生徒数であり,過疎化の進行と ともに生徒数も減少している。しかし,町はIT 化を重点施策の一つとし,役場を中心としたネッ トワークが構築され,町民対象のIT講習会も盛 んに行われている。本校も3年前にコンピュータ 教室のネットワーク化が完成し,様々な学習活動 においてコンピュータを利用している。 生徒の情報機器活用に関する実態も年々変化し ている。コンピュータでインターネットを利用し ている家庭は半数を超え,保護者の携帯電話の利 用も80%を超えている。生徒の中には3%ほどで はあるが携帯電話を持っている者もいる。また, 携帯電話を所持したいと考えている生徒は70%を 超え,その利用目的はメールが最も多い。 2 取組みの実際 (1) 学習指導計画の作成 ア 教 科 技術・家庭科(技術分野) イ 題材名 「情報を上手に活用して生活に役 立つオリジナル作品を設計しよう」 対 象 第1学年B組 20名 目 標 ものづくりにおける設計やコンピュータなど 情報機器の活用に関する技術について関心を持 ち,生活をよりよくするために学んだ知識や技 術を進んで活用しようとする。 ○ 生活環境の中にある課題を見つけ,既存の技 術を生かした解決策を考え,行動する。 ○ ものづくりや情報機器活用などの基礎的な技 術を身に付け,マナーなどを考えて適切に利用 する。 ○ 生活や産業の中での技術の役割を理解し,も のづくりや情報機器活用に必要な知識を身に付 ける。 (2) 本時について ア 目標 携帯電話を利用した電子メールによる情報伝達 の特徴を理解するとともに,電子メールを送受信 する際のモラルの必要性について考え,適切に情 報を収集,判断,処理,発信することができるよ うにする。 イ 授業内容 携帯電話を利用して電子メールを行う場合の ルールやマナーを考えさせることにより,携帯 電話の便利さの影にある問題点を理解させるこ とを目的に授業を行った。学習における生徒の 学習指導計画表 単元等 第 自分の生活を振り返り, 1 自分が製作する作品を考 次 え決定する (1時間) 第 作品の構想の仕方や表し 2 方を知り,自分の作品の 次 構想図をかく (4時間) 第 インターネットを利用し 3 て同様の作品や製品を調 次 べることで構想を深める 学習活動 指導上の留意点 ○家庭の生活の中で,家族や自分が必要としてい る家具(収納するもの)を考える。 ○自分の製作する作品を決定し,イメージスケッ チを行う。 ○作品を構想する際の手順を知る。 ○等角図やキャビネット図の表し方を知り,簡単 な立体を二つの方法で表す練習をする。 ○等角図により自分の作品の組立図を表す。 ○インターネットによる情報検索の方法を知る。 ○学んだ手順に基づいて,様々な作品を見て自分 の作品の検討を行う。 ○事前にしっかり家族に質問したり,生活し ている場所を観察させたりしておく。 ○作品は構造があって強度を必要とするもの にさせる。 ○必要に応じて個人的にしっかりと練習をさ せる。 ○画像処理や文書作成のソフトを使い,作品の構 想をまとめる。 ○ネットワークを利用して,友だちの作品を見た り,感想をメールで送ることで構想を深める。 ○電子メールを利用(特に携帯電話)する際の注 意点や適切な利用法を理解する。 (本時) ○インターネットで情報検索する際の注意点や適 切な利用法を理解する。 ○等角図により自分の作品の部品図を表す。 ○製作に必要な部品の取り方を,材料取り図に表 す。 ○自分なりに工夫した点を明確に提示させ, それに対する相互評価をしっかりと行わせ る。 ○目的意識をしっかりと持たせ,検索する語 句を明確にさせた上で利用させるようにす る。 (1時間) 第 作品の構想をまとめ,友 4 だちと交流して構想を深 次 める (2時間) 第 インターネットを利用す 5 る際のマナーやルールに 次 ついて理解する (2時間) 第 自分の作品の構想をまと 6 め,製作図を完成させる 次 (4時間) ‑ 106 ‑ ○携帯電話を実際に提示することで,携帯電 話でのメール利用を意識させる。 ○専用のソフトウェアを利用して理解を深め させる。 ○組立図と部品図の寸法のつながりをしっか りと考えさせる。 意見交換の様子を見ると ,「友だちだから」とい う甘い感覚からマナーが守れなかったり,問題 点に気付けなかったりする場合があったため, しっかりと意見を出し合う場を設定した。また, 携帯電話での電子メールの利用を意識させる上 で,実際に携帯電話にメールを送信し,その画面 を提示するなど,実際の利用場面に近い状況で学 習を進めることにより生徒の興味・関心を高める ようにした。さらに,パソコンと携帯電話による 電子メールの利用の状況の違いを明らかにするこ とで,即時性がある携帯電話の便利さの影にある 問題点を理解させるようにした。具体的な展開に ついては次のとおりである。 ○ 生徒の活動 活動への支援 送信されている電子 ○ 事 前 に メ ー ル を 送っ て メールを開き,そのメ おく。 ールの問題点や対処方 ・ メ ー ル の 内 容 は でき る 法を考える。 だ け 現実 性の 高い も の ・チェーンメール にする。 ・スパムメール ・迷惑メール ○ 考えた問題点や対処 ○ 送 ら れ て き た メ ール の 方法を発表する。 種類 ご とに 発表 を促し , 問題 点 や対 処方 法を ま と める。 ○ 教師の携帯電話に送 ○ 協 力 者 か ら 教 師 の携 帯 られてきたメールの内 電 話 に チ ェ ー ン メ ール を 容について,問題性を 送 っ て , 実 際 の 状 況を 想 考えて発表する。 起させる。 ・携 帯 電話 の画 面を 実 物 投 影 機を 用い てスク リ ーンに提示する。 ○ 携帯電話の便利さと ○ 携 帯 電 話 の 進 歩 を知 ら その影に隠れた問題点 せ た り , パ ソ コ ン と比 較 について考える。 させたりすることにより , ・携帯性,即時性 携帯 電 話の 便利 さを 考 え ・情報の判断の必要性 させる。 ・利用のマナーの必要 ○ 携 帯 電 話 利 用 に よる ト 性 ラブ ル を紹 介し て, 便 利 さの 影 にあ る問 題点を 理 解させる。 3 実践の成果と課題 (1) 成果 学習の中に必要感のある場を設定したり,携帯 電話の実物を提示したりすることで,生徒は全体 的に関心や意欲を持って学習に取り組むことがで きた。具体的な成果を次に示す。 ○ 携帯電話の便利さの影にある問題点を理解す ることができた。 生徒の感想 ○パソコンや携帯電話は便利だけど,知らない人から メールが来たり,人を傷つけるメールが来たりして, 便利がいいと思っていたけど,いろんな問題点がある と分かりました。 ○携帯電話は便利だけど,色々な問題点があって難し いなと思いました。将来,携帯電話を使うときにはこ の学習で習ったことをいかして使っていきたいです。 ○ 迷惑メールへの対応など具体的な対処の仕方 について理解が深まった。 生徒の感想 ○知らない人からメールが来て返信することで色々嫌 な目にあったりすることが分かりました。それに,よ く見ると人を傷付けるメールもあるかもしれないから, 人にどんどん送ってはいけないということも分かりま した。携帯電話を使うときは,じっくり見て本当かを 判断したいです。 ○ 自分も実際に携帯電話を利用する一人である という立場に立って,モラルやマナーを守って 利用しようと考えた生徒も見られた。 生徒の感想 ○パソコンも携帯電話もすごい便利で使いやすいけれ ど,一つでも使い方を間違えてしまったら,犯罪にな ったり人を傷付けてしまうから,しっかりと一人一人 がルールを守って使っていかなければいけないと思い ました。1件のメールが広がっていってそのメールの せいでたくさんの人に迷惑がかかることが分かりまし た。だから,使うときは使い方を守るようにします。 ○携帯電話は持ち歩くことが出来てすごく便利ではあ るけど,私以外の人たちだってたくさん利用している んだから,相手の迷惑にならないように注意して使い たいです。いたずらをされないように注意することも 大切だけど,自分はそんなことをしないようにします。 (2) 今後の課題 今回の授業では,不適切な内容を含むメールを 提示しながら,さまざまなメールによる被害につ いて考えさせることが中心となった。そのため, 自分が被害を被らないための利用の仕方の理解に とどまった生徒が多かった。今後は自分も発信者 であるという立場からも考えることができるよう に指導を工夫する必要がある。 また,メールに限らず,携帯電話を利用する場 合のマナーとして,その場にふさわしい方法を考 えて利用する能力や態度も求められるが,今回の 学習内容をこのような事柄に結び付けて理解させ ることができなかった。今後は公共の場や病院な どでの利用の仕方等も具体的に例を挙げて考えさ せていく必要がある。 ‑ 107 ‑ 事例5:県立呉工業高等学校 1 2 学校紹介 本校は,灰が峰山を背に,目の前は瀬戸内海 が広がるすばらしいロケーションにあり,自然 環境に恵まれた学校である。呉市には,旧海軍 工廠の技術・技能を継承し,様々な最先端技術 を持って産業界をリードする企業が多い。これ ら産業界のニーズにこたえるように,呉地域を はじめ,全国各地に多くの卒業生を送り出して いる。 設置学科は,機械科(1学年2クラス ),電気 科(1学年1クラス ),電子機械科(1学年1ク ラス ),材料工学科(1学年1クラス)の4学科 (全15クラス)である。 本校では,情報技術基礎をはじめ各専門科目 を中心に,各教科において高度情報化に対応で きる知識や技術を指導している。特にパソコン によるインターネットや電子メール,携帯電話 ・PHSの利用については,手軽に扱えるとこ ろから,生徒にとって大変興味があるところで あり,技術教育と合わせ,利用するモラルの教 育について模索しているところである。 取組みの実際 (1) 学習指導計画の作成 ア 教科等 教科:情報 科目:情報B イ 単元名 「情報技術の進展が社会に及ぼす 影響」 ウ 対 象 電子機械科第2学年 40名 エ 目 標 ○ インターネットや電子メールによる情報の 発信や収集など身近な利用実態を通して,情 報化が我々の生活に大きく浸透していること を理解させる。 ○ 特に生徒にとって大変興味がある携帯電話 ・PHS等の利用を通して,情報技術の役割 や影響,情報機器を適切に活用する態度を育 てる。 ○ 携帯電話・PHS等の利用についての マ ナー と 責任 を考えさせる。 (2) 本時について ア 目標 情報機器として手軽に扱っている携帯電話・ PHS等が,社会や個人に及ぼしている影響に ついて事例を通して認識させ,利用するモラル を考えさせる。 学習指導計画表 単元等 第 情報技術の進展による生 1 活や産業の変化 次 2 性の向上などについて,様々な事例を 考えさせ,まとめさせる。 ○自分や周囲の携帯電話・PHS等の利 ○携帯電話・PHS等が,社会や個人に 及ぼしている影響から,利用するモラ (1時間) 第 情報技術の望ましい活用 4 ルを考えさせる。 ○自分や周囲の利用実態をまとめさせる。 ○情報モラルの基本は, 「迷惑をかけない」 ことに気付かせる。 (本時) ○個人の生活や社会での情報技術の適切 な活用について考える。 ○情報技術の望ましい活用について,様 々な事例を考えさせ,発表させる。 (1時間) 第 これからの情報技術 5 次 ○生活の利便性,産業の効率化及び生産 がどう変わってきたかを考える。 (1時間) 3 次 ○情報技術によって,自分の生活や産業 用実態を考える。 第 社会や個人に及ぼす影響 次 指導上の留意点 (1時間) 第 情報技術・機器の利用実態 次 学習活動 (1時間) ○これまでの学習内容を確認し,さらに ○さらに進展していく情報技術をどのよ 進展していく情報技術の利用の在り方 うに役立てるか,その心構えを考えさ を考える。 せる。 ‑ 108 ‑ イ 学習過程 時間 学習活動 ○ 導 のような回答結果が得られた。 回 答 指導上の留意点 携帯電話・ PHS等 ○ の利用実態を考える。 前時に提出させ た感想内容をいく 入 つか紹介し,自分 (5分) や周囲の携帯電話 ・PHS等の利用 について振り返ら せる。 ○ グループ討議 ○ ・携帯電話・ PHS等 が社会に与える影響 る。 ・携帯電話・ PHS等 展 ・討議のポイント が個人に与える影響 開 ○ (40分) ○ 8グループに分 かれて討議させ を示す。 発表 ○ 具体的な事 例で,社 ○ 会や個人に与 える影響 携帯電話・ PHS等 ○ の利用者とし ての ラル モ を考える。 具体的な事例を 提示する。 ○ と 本時の学習 内容をま ○ とめる。 め 8グループに分 3 13 人に迷惑をかけないように利用する。 12 18 この回答から,マナーを守ろうと心がける姿勢 が,徐々に向上してきていると思われる。 また,授業実施後の生徒の感想をまとめると次 のようになった。 回 答 件数 (時と場所を考える 。) 自分の携帯電話の利用の仕方について反省する機 14 気付かないところで,人に迷惑をかけていたこと に気付いた。 もやってほしい。 意識してマナーを心がけるようになった。 る。 携帯電話の利用マナーをもっと呼びかける必要が 6 5 5 3 1 もっと話し合う時間がほしかった。 1 携帯電話の電波で事故を起こすことが分かった。 1 今回の取組みにより,ほとんどの生徒が携帯電 話・PHS等を使用する上でどのようにすればよ いかを考えるようになり, 利用者としてのモラ ルは , 迷惑をかけないこと であることを認識 する機会になった。このような気持ちが発端と なり,モラルが守られていくのではないかと考 える。 ある。 利用者としての モラルは, 迷惑 であることを確認 する。 授業風景 8 かれて討議させ をかけないこと (5分) やメールをしない。 このような授業をまたやってほしい。他の学校で ・各グループ発表 ま 電車,バス,飛行機,病院の中で,電話 会になった。 各グループ を知る。 ○ 事前 事後 グループ討議風景 実践の成果と課題 (1) 成果 授業中のグループ討議において,生徒が自分自 身の利用状況の適切でない部分を他の生徒の前で 発表する場面となったときの反応が印象深い。自 分に直接かかわることに触れるとき,徐々に話す 口調が下がってくる。このことは,生徒自身が人 に 迷惑をかけていたことを改めて確認した反応 であったと思われ , マナー に対する意識の向 上につながった。 授業実施前後のアンケート項目「 携帯電話・ PHS等の利用者としての マナー に対し, どのようなことに心がけますか 。」について,次 携帯電話の電源をこまめに切るようになった。 (2) 今後の課題 本校 では,携帯電話・PHS等の不適切な使 用によるトラブルやプライバシー侵害などの問 題は,現在のところ起きていない。しかし,こ れに安心することなく,あらゆる機会を通して 指導を継続しなければならない。 また,携帯電話・PHS等の授業への活用に ついて生徒にアンケートした結果 ,「Webペー ジの利用」 「 国際交流」 「情報収集・情報交換」 「在 宅授業」などの回答を得た。このように生徒は 携帯電話・PHS等を授業に活用することへの 期待を示している。今後,このことも考慮し, 情報技術及び情報手段を適切に活用する能力と 態度を育てる方法を模索していく必要がある。 ‑ 109 ‑ 事例6:県立尾道商業高等学校 1 成に重点を置いた学習内容を構築していかなけれ ばならない状況にある。 学校紹介 本校は1888年に創立され,創立114年を迎える 県内でも最も古い商業高校である 。「商業の町尾 道」にふさわしい歴史と伝統を誇り,未来を築く 人材の育成に向け,取組みを進めている。 現在,商業科(1学年2クラス ),ビジネス会 計科(1学年2クラス ),情報管理科(1学年2 クラス)の3学科,全18クラスの学校である。各 分野のスペシャリストを育成するために,第2学 年より選択科目制を導入し,生徒の多様な進路希 望に対応している。 本校では情報教育に力を入れており,インター ネットは光ファイバーの専用線で接続するととも に,校内のネットワーク化を進め,各教室にもケ ーブルを敷設し,活用している。生徒は,教室を 始め,放課後も開放しているパソコン教室を利用 して ,実習課題への取り組みなどに活用している 。 これまで,情報処理の授業などを通してインタ ーネットの利用に対する指導を行ってきた。しか し,生徒の意識は十分とは言えず,利用上の注意 をしなければならないこともあった。また携帯電 話・PHSの所有も90%を越え,今後,情報通信 機器を有効に活用させるために,情報モラルの育 2 取組みの実際 (1) 学習指導計画の作成 ア 教科等 教科:専門教科「情報」 科目:情報産業と社会 イ 単元名 「情報化と社会」 ウ 対 象 情報管理科第1学年 40名 エ 目 標 ○ インターネットや携帯電話などの利用を通し て,情報や情報技術が果たしている役割と社会 に及ぼす影響について考えさせる。 ○ 自分が考えている,あるいは守っているマナ ーを振り返らせ,グループ協議や発表を通して , 情報モラルとして身につけなければならないも のは何かについて考えさせる。 ○ 電子メールを利用したコミュニケーションを 通して,適正な人間関係を構築するために何が 必要であるかを考えさせる。 (2) 本時について ア 目標 日常利用している携帯電話の利用実態を基に, 利便性及び危険性を考えさせ,グループでの協議 や発表を行うことを通して正しく利用するための 学習指導計画表 第 1 次 第 2 次 第 3 次 第 4 次 第 5 次 単元等 学習活動 情報や情報技術が果た ○高度情報通信ネットワーク社会となり, している役割と社会へ 社会がどう変わってきたのかを考える。 の影響について ○「良くなったこと」「悪くなったこと」の (1時間) 2点について個々にまとめる。 情報通信機器の普及と ○自分や周囲の携帯電話の利用状況を振り 私たちの生活について 返り,「便利なこと」「困ったこと」「気を つけている点」等についてまとめる。 ○携帯電話にかかわる事例を基に,グルー (1時間) プで正しい利用法について協議する。 情報モラルの必要性と ○前時の協議を元に,情報モラルについて 情報のセキュリティ管 資料を集め,グループで話し合う。 理の重要性について ○個人情報の保護やセキュリティについて, 関連サイトを利用して間接体験しながら (1時間) グループで話し合う。 情報通信機器の望まし ○情報通信機器の利用について,グループ い活用方法について でまとめた結果を発表し,相互に評価す る。 ○情報発信の責任の視点から,今後の利用 (1時間) 方法についてについて考える。(本時) 情報通信ネットワーク ○これまでの学習内容を確認し,適正な人 を活用したコミュニケ 間関係を構築していくためのコミュニケ ーションの在り方につ ーションの在り方について考える。 いて (1時間) ‑ 110 ‑ 指導上の留意点 ○様々な事例を提示し,利便性だけでな く,影の部分についても考えさせる。 ○自分の日常生活を通して感じているこ とをまとめさせる。 ○情報通信機器が持つ利便性や危険性を, 実際の体験を通して考えさせる。 ○事例については,負の面を強調するだ けでなく,新たな機能を利用した活用 方法についても紹介する。 ○効率よく調べさせるために,関連する リンク集を作成し,提示する。 ○関連サイトの間接体験を通して,情報 モラルの必要性とセキュリティ管理の 重要性に気付かせる。 ○相互に評価させ,気付いた点をまとめ させる。 ○出された問題点を整理させ,自己の利 用状況に照らして,今後の利用方法に ついて考えさせる。 ○前時の発表の場面と,電子メールでの コミュニケーションを比較させ,これ から必要とされるコミュニケーション 能力とは何かを考えさせる。 モラルを身に付けさせる。 イ 学習過程 時間 導 入 (5分) 学 ○ 習 活 動 指導上の留意点 前時のグループで ○ 自分や周囲の携 の話し合いを振り返 帯電話の利用状況 る。 を振り返らせる。 ○ グループでまとめ た結果を発表する。 ・発表の中で気付い た点をまとめる。 展 ・気付いた点を基に もう一度グループ で話し合う。 ○ 情報発信の責任に ついて考える。 開 ・前時に調べた著作 権や肖像権等を基 に携帯電話の正し い利用方法を考え (40分) る。 ○ これまでの学習か ら自分の考えた「情 報モラル」について まとめる。 ○ 他のグループの 発表内容と自分た ちのまとめを照ら し合わせることで, 学習内容の深化を 図る。 ○ 携帯電話の動画 像の送信機能から, 情報発信の責任を 身近な問題として 取り上げる。 ○ 正しい利用に向 けた自分の考えと してまとめさせる。 ○ ま と め (5分) 情報通信機器を, ○ 情報通信機器を より効果的に利用し 生かして使うため ていくためには,更 には,利用者が情 にどのような学習が 報モラルを遵守す 必要なのかを考える。 ることが不可欠で あることを理解さ せる。 授業風景 3 実践の成果と課題 (1) 成果 これまでの情報モラルに関する指導は,講義が 中心であり,生徒に「実感」として理解させるこ とができていなかった。しかし,日常的に利用し ている携帯電話を通して考えさせることにより, 生徒は問題点を身近に感じ,意欲的に学習した。 生徒の感想の一部を次に示す。 生徒の感想 ○私は,これまで「情報モラル」という言葉はよく耳に していましたが,意味ははっきり知りませんでした。今 回の授業で自分で調べたり,みんなの意見を聞くことで, 今まで気づかなかったことがたくさんあり,本当に身に 付けておかなければならないことだということがよく分 かりました。 ○携帯電話のルールやマナーについて,ただ電源を切っ ておくだけではないということがよく分かりました。携 帯を持つことで,どう使っていくか自分の「責任」につ いて考えながら利用しようと思いました。 ○グループで話し合う中で,改めて自分の情報を周りに 簡単に教えていたことに気付きました。「自分の情報は自 分で守る」ということを意識しながら利用しなければい けないと思いました。 ○これまでプライバシーとか著作権とか考えたことがな かったけど,振り返ってみると思い当たることがたくさ んあり,びっくりしました。また,ウイルスの感染や, 自分の情報が漏れてしまう状況などを実際に見ることが でき,いままで話に聞いていたことがよく分かりました。 今度実習でホームページを作る時に,今回の勉強を生か していきたいと思います。 ○やっぱりメールでは自分の気持ちまでは伝えられない と思います。発表の時もなかなかうまく話せなくて焦り ました。自分の思いをきちんと伝えることができるよう に,日ごろから気をつけたいと思いました。 これらの感想から,具体的な成果を次のように まとめた。 ○ 携帯電話の利用状況を通して,生徒に情報モ ラルについて考えさせたことは,問題点を把握 しやすいなど効果的であった。 ○ グループでの協議や,発表を通して様々なと らえ方や考え方を知ることにより,これまでの 自分の利用状況を改めて見つめ直し,考えさせ ることができた。 ○ 生徒自身が情報モラルを「身に付けておかな ければならないもの」として意識することがで きた。 ○ よりよい人間関係を構築していくためには, 会話などによる自己表現力を高めていく必要が あることも考えさせることができた。 (2) 今後の課題 今回の実践では,学習への動機付けを図ること はできたが,まだ表面的なとらえ方にとどまって いる生徒も多く見られる。様々な場を利用してさ らに生徒に考えさせることにより,モラルを高め ていく必要がある。 また,携帯電話にかかわる事例について,問題 点ばかりを取り上げたために影の部分を強調する ものになってしまった。携帯電話やPHSは有用 な情報通信機器であることから,活用事例など光 の部分を取り入れた展開も模索していきたい。 ‑ 111 ‑ Ⅴ 1 実践授業及び意識・実態調査の分 析と考察 意識・実態調査の概要 (1) 調査目的 学校における,携帯電話・PHSの利用状況や 利用に対する意識を把握するため,アンケート調 査を実施した。このアンケート集計結果を参考に して,学校教育における児童生徒への指導の在り 方と,今後の方向性を考察し,更にその利用の可 能性について検討した。 (2) 調査対象及び方法,内容 当センター教育情報部で実施した研修講座の受 講者に対し,主に次の内容で調査を行った。 (内容) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 携帯電話・PHSの所有状況や所有願望 利用状況や目的 利用に対する意識やモラル・マナーの実態 子どもの利用の利点や悪影響 所属校の状況や指導実態 子どもに対するモラルやマナーの指導主体 詳しく 」「もっと深まりのある活動を」と思った とき,専門家や名人と呼ばれる人のアドバイスは 有効である。今後,継続して展開する総合的な学 習の中で,地域の人材だけに支援を頼れば,内容 が固定化し,運営も難しくなると考えられる。本 実践は,このことを鮮やかに解決する携帯電話の 活用となっている。 乃美尾小学校の実践では,英語活動の発展的内 容として携帯電話を活用している。平和公園での 社会見学の場面をとらえ,班ごとに外国人にイン タビューしている。言語の違いから積極的な活動 になりにくい状況を克服する手段として,自校の ALTが携帯電話の画面に登場することで児童に 安心感を与え,活動を活性化させることに成功し ている。 両校の実践では,実践授業の前後にアンケート を実施し,授業後,児童に携帯電話を授業にどの ように活用できるかというアイデアを自由に描か せた。その中から2点を紹介する。 (教職員の内訳) 校種 人数(人) 小学校 中学校 493 高等学校 195 225 計 913 筆者注 学校間交流に 活用しようとし ている。本格的 な設備が不要で , すぐにでも実現 可能と考えられ る。 (3) 調査時期 平成14年6月から11月 2 実践授業及び調査結果の分析と考察 (1) 小学校 教職員用アンケートの結果では,表5に示すよ うに,携帯電話・PHSを学習活動に利用するこ とについて,ほとんどの教職員が否定的に考えて いる。 表5 全校種 小学校 学習での利用 有効と思う 1.7% 1.4% 筆者注 児童が考えた地図機能付 き携帯電話である。 既にGPS付きの機種が 発売されているが,小学生 のアイデアである点に注目 したい。 近年,児童自ら校外に出 て取材などの活動をする場 面が増えてきた。これらの 活動を安全に実施するため にも本機能を活用した携帯 電話の利用が有効と考え る。 有効ではないと思う 98.3% 98.6% 今回の小学校の実践では,2校とも動画が送受 信できる携帯電話を利用した 。(企業から5台無 償貸与を受けた。) 佐方小学校の実践では,総合的な学習の一環と して,ゲストティーチャーから教えを請うために 携帯電話を利用している。今年度から総合的な学 習が各学校で本格的に始まっているが ,「もっと これらのアイデアは,小学生の豊かな発想が表 現されたものとなっている。このような授業実践 が契機となり,携帯電話の新たな活用への可能性 ‑ 112 ‑ が生まれることも示唆する事例となっている。 このことは,図15に示す携帯電話を授業の道具 として使いたいかという設問の回答状況からも, 児童の意識の変化としてうかがうことができる。 事後 使いたい 使いたくない 事前 0% 20% 40% 60% 80% 100% 図15 授業の道具としての利用 (2) 中学校及び高等学校 ア 中学校 教職員用アンケートによると,図16に示すよう に,中学校だけに現れている特徴的なこととして , ほとんどの学校で所持の禁止,持ち込みの禁止を していることが分かった。 小学校 所持禁止 持ち込み禁止 条件付き許可 その他 中学校 中学校の実践では,両校とも携帯電話の所持を 禁止しているため,直接生徒に利用させるのでは なく,情報化社会の光と影の部分を理解させる題 材として携帯電話を用いている。 黒瀬中学校では,公私,光と影の二つの座標を 基に携帯電話についてイメージを分析すること で,生徒に育成すべき情報モラルの重点項目を明 らかにし,指導に当たっている。 豊栄中学校では,実際に携帯電話に送られてき たチェーンメールを基に,メールの中に潜む問題 点等を考えさせ,情報化社会の影の部分の理解と 情報モラルの育成を図っている。 近い将来,ほとんどの生徒が所持すると考えら れる携帯電話に関して,中学校段階で情報モラル を指導した事例として意義深いものであった。 イ 高等学校 図16にあるように,半数以上の高等学校では携 帯電話の持ち込みが容認されているが,次に示す ような問題点が明らかになった。 図18から,学年が上がるにつれて,生徒の校内 における携帯電話の使用に対して,教職員の指導 が必要になっていることが分かる。 小学校 終始注意が 必要 高等学校 中学校 0% 20% 40% 図16 60% 80% 100% 0% 小学校 中学校 中学校 高等学校 高等学校 0% 20% 40% 60% 図17 80% 100% 20% 40% 60% 40% 60% 小学校 中学校 中学校 高等学校 高等学校 0% 児童生徒に与える影響1 20% 40% 60% 図19 中学校の教職員は他の校種に比べ,生徒の携帯 電話の使用は「非行が増える 」「友人とのトラブ ルが増える」ことにつながると考える傾向が強い ことが分かる 。(有意水準1%で有意差有り) (家庭学習時間が減る) 小学校 80% 100% 80% 100% 80% 100% 校内の状況 (授業中の集中力が低下する) あてはまる あてはまらない 0% 20% 図18 (友人とのトラブルが増える) 小学校 必要なし 高等学校 所属校の方針 また,携帯電話の児童生徒に及ぼす影響につい て,図17に示すような結果も得られている。 (非行が増える) 時々注意が 必要 あてはまる あてはまらない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 児童生徒に与える影響2 図17及び図19から,高等学校では,携帯電話は 非行を助長するものとしてより,むしろ学習を阻 害する要因として考えられていることが分かる。 (有意水準1%で有意差有り) ‑ 113 ‑ また,携帯電話に関する情報モラルの指導の設 問では,次のような結果が得られた。 (家庭で行うべき) (学校で行うべき) 小学校 小学校 中学校 中学校 高等学校 高等学校 0% 20% 図20 40% 60% 80% 100% あてはまる あてはまらない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 携帯電話に関する情報モラルの指導1 年間計画に基 づいて実施 小学校 特設時間で実 施 中学校 必要を感じる がしていない 必要を感じな い 高等学校 0% 図21 20% 40% 60% 80% 100% 携帯電話に関する情報モラルの指導2 図20から,指導の主体者について,大半の教職 員が家庭で行うべきと考えていることが分かる。 これは,携帯電話があくまで個人所有物であり, それに関する指導まで学校がかかわる必要はない という認識が強いからと考えられる。 しかし,校種別に吟味すると,高等学校の教職 員は家庭に任せるより学校で指導すべきと考える 傾向が強いといえる 。(有意水準1%で有意差有 り) 図21のグラフからも,携帯電話に関する情報モ ラル指導の必要性について特に高等学校では切迫 感をもっており,実施されている割合も最も高い ことが分かる。 高等学校の実践について,呉工業高等学校では , 情報Bに情報モラル指導を位置付け,計画的に育 成しようとしている。授業展開の特徴として,グ ループ討議を中心に課題を自ら解決させようとす る内容となっている。 改めて自分の行動を振り返らせることによっ て,生徒一人一人の今後のよりよい行動に結び付 けることができている。教師主導の展開より生徒 に考えさせることが,情報モラルの育成に有効で あることが分かる。 尾道商業高等学校では,専門教科「情報」の科 目「情報化と社会」の内容に取り入れ,生徒の携 帯電話の利用実態を通して,情報モラルの必要性 や情報に対する責任について考えさせる展開とな っている。 情報モラルの育成に関しては,生徒の感性に訴 える面が大きい。生徒に,携帯電話の実体験を通 して考えさせることにより,問題点を具体的にイ メージしやすいなど,効果的に学習活動を進める ことにつながっている。 (3) 学校での携帯電話等の活用に向けて まず念頭に置かなければならないことは,学習 に役立てようとしているものが逆にそれを阻害す る要因として働いては意味がない,ということで ある。携帯電話が学習を阻害する要因として働い ているような実態のもとで,それを授業などで利 用することは危険と言えよう。まして,生徒個人 の携帯電話を授業に使用することは,望ましくな い。このような現状においては,情報モラルの系 統的な育成を図った上で,学校における活用を目 指す必要がある。 現時点では,今回の小学校の実践のように,学 校で準備した携帯電話を使った学習活動が中心に なると考える。 利用形態としては,テレビ電話,Webページ 閲覧,メールなどの各機能を活用することができ る。具体的な利用としては, ○ 普通教室等で,調べ学習の手段の一つとして 利用 ○ 普通教室等と学校外の人々(交流校,ゲスト ティーチャー,名人等)を結んだ幅広い学習活 動の展開 ○ 校外活動における連絡や学習の支援及び記録 などが挙げられる。 今後,ユビキタスネットワーク社会の実現によ り,次のことも可能になると考える。 ○ 授業内容の記録による家庭学習への活用及び 欠席した児童生徒への支援 ○ 授業中,リアルタイムに生徒の反応が把握で き,柔軟な授業展開が可能 ○ グローバル化された人材バンクやWeb上の 最新教材等の利用による学習の多様化,個別化 及び高度化への対応 ‑ 114 ‑ Ⅵ 研究のまとめ おわりに 調査研究及び実践的研究により, 学校教育に おける携帯電話・PHSに対する指導の在り方 とその利用の可能性について模索した。その結 果,次のことが明らかになった。 ○ 事前の情報モラルの指導を十分に行った上 で,携帯電話など携帯できる情報端末を利用す ることは有効である。特に,総合的な学習等の 場面において,児童生徒の活動を支援する道具 として利用すれば,学習効果が期待できる。ま た,授業で携帯電話を利用する際には,校内で の意識統一を十分に行うとともに,保護者への 説明を行う必要がある。 ○ 情報社会の光と影の部分の理解,とりわけ情 報モラルの育成を図る上で,携帯電話・PHS を題材とした学習活動を取り入れることは効果 的である。その際,教師主導ではなく,あくま でも各生徒に考えさせ,互いに討論させること が大切である。 ○ 携帯電話が日常的に利用され,定着しつつあ ることを認識し,携帯電話を利用する際のルー ル及びマナーについて,保護者と学校が十分に 連携した指導が不可欠である。 文部科学省は,平成17年度末を目標にすべての 公立小・中・高等学校等の教室を高速インターネ ットで結ぶと示している。この方針を受けて,各 都道府県では教室から自由に情報を入手したり発 信したりできる環境整備を進めている。 その一方で ,コミュニケーションの手段として , 携帯電話・PHSを利用することが日常的なこと として定着している。しかも,従来の利用に留ま らず,動画の配信,GPSを利用した位置検索, さらには自動販売機と連動した購買などが可能と なる環境を提供するまでになっている。このこと を裏付けるように,生活環境にあるすべての機器 がネットワーク化され,生活の中で活用されるこ とを前提とした実験やシステム開発が行われてい る。ユビキタスネットワーク社会が実現するのも 今や時間の問題になろうとしている。携帯電話に おいてもこれまで以上に多くの機能が組み込ま れ,さらに多くの人が利用することが予測される 。 本研究は,携帯電話・PHSを学校現場で利用 する際に留意する点を整理し,学習活動での利用 及び情報モラルの指導に関する授業を行い,まと めてみた。この研究が,ITを活用した新しい時 代の教育実践の一助となれば幸いである。 最後に研究を進めるに当たり,アンケートに協 力いただいた皆様,また,御多用中研究に協力い ただいた研究協力校及び研究協力員の皆様に,心 から感謝申し上げる。 【研究協力校及び研究協力員】 廿 日 市 市 立 佐 方 小 学 校 教 諭 岡田勝治 黒 瀬 町 立 乃 美 尾 小 学 校 教 諭 真鍋 黒 瀬 町 立 黒 瀬 中 学 校 教 諭 中山勝志 豊 栄 町 立 豊 栄 中 学 校 教 諭 中谷成男 県 立 呉 工 業 高 等 学 校 教 諭 藤原淑都 県 立 尾 道 商 業 高 等 学 校 主幹実習教諭 田谷裕昭 ‑ 115 ‑ 寛 【引用文献】 ( 注 1 ) 総 務 省 『 平 成 13年 「 通 信 利 用 動 向 調 査 」 の 結 果 』 平 成 14年 http://www.soumu.go.jp/s‑news/2002/020521̲1.html ( 注 2 ) 内 閣 府 『 第 4 回 情 報 化 社 会 と 青 少 年 に 関 す る 調 査 』 平 成 14年 http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/14.pdf (注3) 警 察 庁 少 年 有 害 環 境 対 策 研 究 会 『 い わ ゆ る 「 出 会 い 系 サ イ ト 」 の 法 的 規 制 の 在 り 方 に つ い て ( 中 間 検 討 案 )』 平 成 14年 http://www.npa.go.jp/comment/shounen/pubcom3.pdf (注4) 文 部 省 『 情 報 化 の 進 展 に 対 応 し た 初 等 中 等 教 育 に お け る 情 報 教 育 の 推 進 な ど に 関 す る 調 査 研 究 協 力 者 会 議 ( 第 1 次 報 告 )』 平 成 9 年 http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chousa/shotou/002/toushin/971001.htm (注5) 文 部 科 学 省 『 情 報 教 育 の 実 践 と 学 校 の 情 報 化 〜 新 「 情 報 教 育 に 関 す る 手 引 」 〜 』 平 成 14年 p.31 http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/zyouhou/020706.htm 【参考文献】 (1) 文 部 科 学 省 『 情 報 教 育 の 実 践 と 学 校 の 情 報 化 〜 新 「 情 報 教 育 に 関 す る 手 引 」 〜 』 平 成 14年 http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/zyouhou/020706.htm (2) 文 部 省 『 情 報 化 の 進 展 に 対 応 し た 初 等 中 等 教 育 に お け る 情 報 教 育 の 推 進 な ど に 関 す る 調 査 研 究 協 力 者 会 議 ( 第 1 次 報 告 )』 平 成 9 年 http://www.mext.go.jp/b̲menu/shingi/chousa/shotou/002/toushin/971001.htm (3) 文 部 省 『 高 等 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 情 報 編 』 開 隆 堂 出 版 平 成 12年 (4) 財 団 法 人 コ ン ピ ュ ー タ 教 育 開 発 セ ン タ ー 『 文 部 科 学 省 委 託 事 業 イ ン タ ー ネ ッ ト 活 用 の た め の 情 報 モ ラ ル 指 導 事 例 集 』 平 成 13年 (5) 文 部 省 『 中 学 校 学 習 指 導 要 領 解 説 技 術 ・ 家 庭 編 』 東 京 書 籍 平 成 10年 (6) e‑word辞 典 『 第 2 回 : ケ ー タ イ の イ ロ イ ロ 』 http://www.tdk.co.jp/eword/ewo02200.htm ‑ 116 ‑
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