俺様の名は,MJ。もと,(カウンタ−インテリジェンスコ−ポレ−ション)の 日系3世だ。つまり,太平洋戦争時にできた日系人部隊の極東職員だ。 もっとも,俺自身,戦後生まれなので,戦闘には参加していない。 ベトナムや38度線も従軍していない。 で,辞めちまって,リサ−チ業を営なんでいる。 相棒は,典型的金持ちのボンボン。ハロルド長田という,小僧だ。こいつは,横 田基地内の海軍大学に,日本人留学生として,入学してきたやつだ。以前は,J 智大学にいたらしい。当然,日本国籍えある。ところが,外見はどうみても白人。 (日本語をしやべるセイン・カミュ似) 一方,俺様は,胴長,短足の日本人なのだ。 「俺はアメリカ人だぞ−!」 何度,コギャルの前で言ったことか....。 ま,いろいろなことがあった。 「だから,違うっていってるじゃないですか!」 俺様,私立探偵MJは,警察官に,必死で弁明していた。 事の発端は,カルト事件でインサイダ−として,部屋割りを静岡県警,富士宮 署にぶぉしえたのだが。(TV報道で,元信者から事情を聞き,云々∼とかある のがそれだ)。共産党の名簿に俺様の名前があったので,警察は悪党の一人とお もったらしい。 「ほ∼う,ま,話題を変えましょう。自衛隊の派遣なんかどう思います。」 制服警官は,いかにも道徳の先生のような尊大さで俺に接する。 「別にいいんじゃないですか。」 俺様は,何の感慨もなく言う。 この返答に,オヤッという顔をする警官。 (そりゃそうだ,俺様は左翼じゃね−) 「同じ日本人として,国際貢献にガンバッテ見ていてスガスガしいとは思いませ んか。MJさん」 警察学校で,教わった通りの質問で,俺様の様子をみる警官。 「だったら,あなたが行けばいいでしょうが,俺様には関係ないね。」 「イヤ,しかしね。国内は警察が守っておりますしね。」 俺様はキレた。 「違うだろ。警官の役目は,治安・秩序の維持が目的だ。我々は自衛隊の銃後に いるんだ。もし,自衛隊に,一体,誰のいのちでこの国をまもっているんだと問 われたら,あんた,なんと答えるんだ。」 グッ,とつまる警官。目を白黒させる。 私立探偵が,自衛隊の肩をもつには理由がある。 一般人には,探偵も警官もにたようなものだが実際はちがう。 探偵は徴兵されると,軍事探偵にされ,活動に従事させられる。いわゆる情報将 校,スパイである。 (だから,007が情報局員だけど海軍将校で,少佐になったりするのは間違い ではない。欧米,先進国はみなそうなのだ) そうこうしているうちに,もう一人警官がやってきた。 今度は中年おやじで,さっきまでの若手はまあまあと,肩をたたかれる。 俺様MJの対面に若手の警官が,左横に中年がL字型につく。 「どうかしましたか?」 呑気な声をだす。が,目は全然笑っていない。 「MJさん。落ち着いて,君,君もいかんよ。」 俺様をなだめるフリをしながら,話をききだそうとする。 「ところで,何のお話しですか?」 うまいききこみだ。 こいつのおかげで,俺様は最初から話さなければならない羽目に陥った。 だが,ここでくじけるワケにはいかない。 警察には48時間拘留がある。まるごしで二日間泊められたうえに,(留置所は メガネ,ベルト等,自殺に利用されるものは持ち込めない。容疑者が死ぬと担当 警官のマイナス点なのだ。) やっと出てきたら,署の入り口で, 「オッ!こんなところにいたのか,探してたんだよ。ま,中でゆっくりは話そう や。」 と,なってネバ−エンディングスト−リ−になるからだ。 中年おやじが,ググッと睨む。圧迫面接法だ。この際,目線をそらしてはいけ ない。 これは,[神経言語プログラム]の一法で, 視線が右上なら想起,左上なら構成。という心理学上の分析法なのだ。 もっとも,警察官にとって,視線を外す奴は後ろ暗い悪人と教えられる。 ガシャガシャ−ン! 若手が,わざと灰皿を落とし,大きな音をたてる。 おもわずギヨッ!とする俺様。瞬間催眠でよくやる驚愕誘導尋問だ。 チッ,内心舌打ちをする俺様。 警察官は,職務質問や,緊急逮捕の強制権がある。 これは太政官布告と同じで(戦後の新制憲法以前からの法令といういみで),薬 事法とかわらない。 つまり,『国家の秩序を維持し,国家の戦力増強に貢献する』のが目的である。 立法の精神は完全に官尊民卑である。たとえば警官がこいつは怪しいとおもっ たら「何々することができる」と書いてある。「しなければならない。」とはま ったくかいていない。 つまり,警官は,しても,しなくても良いということだ。 しなくても,警官の落ち度にはならない。 もともと,行政官庁(警察は8時間労働の行政である。勤務がおわれば家にか える)には,不作為の罪というのはない。権限規定では,ほとんど「することが できる」になっている。 つまり,しなくてもいいということだ。 「では,共産党員でないということをお教え願いたいのですが......」 低いが重々しい声で,中年おやじが言う。 普通,一般人が秘密共産党員でないことを証明するのは非常に難しい。 せいぜいが,勤務記録と共産党の集会日を突き合わせ,無実を主張するぐらい だ。 探偵は勤務時間がまちまちで,個人営業だとなおさらだ。近所の住人にも受けは 悪い。 だが,これをひっくり返す方法がある。 警察のコンピュ−タ−には,あらゆる個人的情報が入っている。だが,入力する 前に必ず,元になる書類がある筈である。 「だから−,コンピュタ−の原簿と,人別帳(転居すると,巡査がもってくるカ −ド)の筆跡を照合してくださいよ。」 中年おやじが,鼻先で笑う。 「それで,不満なら,潜入捜査員に聞いて下さい。 俺様は必死に言いつのった。 潜入捜査員というのは,警察学校に入学して,3カ月くらいで自主退学したもの である。成績優秀で,警官の匂いがつく前に危険視される団体に投入されている 忍者部隊だ。 結局,中年おやじは,俺様に向けて手をひらひらとふった。 「ヤレヤレ,やっと放免か....。」 俺様は,ほっと一息ついて警察をでた。 どうして,警察が厳しい態度をとるのか,というと制服の刷新とともに,階級 が2つ,増えたため,競争原理が働いたからだ。 さらに,デンバ−サミットでは[悪の勢力]の駆逐を問題にされ,バ−ミンガム サミットでは,日本は,成果を求められる政治判断が加わっているのだ。 私立探偵も,公安調査庁が監督官庁となった。 しかし,これが,警視庁公安部にはきにいらないのだ。 なにがなんでも,実績をつくらねばならない。その至上命令のとばっちりを再び うける羽目になる。 「あ∼あ,疲れた。」 いつものように,俺様MJは安アパ−トの家に戻ってきた。 が,なにか様子がおかしい。 虫の声が一つもしないのだ。犬や猫も静まりかえっている。 「ん∼? なんで子供の声がしないのかな∼。」 普通,近所に子供がいる場合,必ず喧しい。だが,今,アパ−ト全体が静かなの だ。 「ムッ!」 チラリ,と,遠い電柱の陰に,ださいトレンチコ−トの男の影がみえる。 「フン,姿はかくせても気配は消せないか...。」 俺様の部屋は2階の一室 だったので。 俺様の部屋の真下に数人,トレンチ姿の男の仲間ガいるはずである。 ガチャリと玄関をあけ,居間の明かりをつけた途端,十人弱の私服警官がきた。 「すいません,MJさんですか?」 俺様がそうだと答えると, 「こういうものです。」 ちら,と警察手帳を見せる。 しかし,俺様は一瞬,別のことを考えていた。 (拉致されるのか?) 制服警官ならともかく,私服刑事なんか,真偽がわからないのは探偵稼業の俺様 自身が一番よく知っている。 一応,家のなかへ通す。 「あっ,どうも....」 数人が家の中にはいる。しかし,まだ,玄関に2,3人残っていたが,俺様がう ながすまで,中に入ろうとはしなかった。しかも誰一人,雑談を交わすでもなく, タバコをすわない。 (ハ−ン,こりゃ本物の警官だな) 俺様は確信した。 「こういうものです。」 名刺を差し出されると,はたせるかな, 『警視庁.警備課.警部補.望月満夫』 とあった。 安堵しながらも,釈明する俺様。 ボソ,ボソ, ボソ.... ぼそ,ぼそ, ぼそ.....。 小声で説明するのは,他人に知らせるべきことではないからである。 しばらく後, 「わかりました。じゃあ,名刺をおいて行きます。」 説得に成功した。 社会人にとって,名刺は武器だが,警察官にとっては,アキレス腱だ。よく悪用 されるからだ。 しかし,それをおいて行くということは,納得したという証である。 ぶらり,と,一人の制服警官がレンタルビデオ店に現れた。 「いらっしゃいませ。なにか御用でしょうか?」 あいそよく,店員があいさつする。 「店長はどこだ?」 顔の筋肉だけで笑顔を作りながら,警官が言う。 あわてて,店員が奥へ案内する。 「こりゃ,どうも...」 年配の店長が,もみてでむかえる。 「うん,例のものを...」 「はい,エ−っと,レンタルビデオの貸出リストの中からアダルトビデオ利用者 のリストを御要望でしたね。」 「そうだ,変質者リストを作らねばならんからな。」 無愛想に,リストを受け取ると,クルリと背を向けひとりごちた。 「つぎは,パチンコ屋で,賭博常習者か...,巡回も楽じゃないな。」 そんな,警察官の地道な作業を見つめる目があった。 五菱重工,取締重役室 中央のデスクには,男がふんぞり返っていた。 かの,東条英樹の息子である。 「かまわんさ,好きにさせておけ。」 一人の若い男が最敬礼しながら報告している。 東条が来客用のソファに,視線を移すと,一人の老人がいた。 旧関東軍,陸軍参謀だったおとこだ。 「ウム,いずれ警察はボロをだす。 その時こそ,清廉潔白な軍人でなければという声があがる。その時の攻撃材料に でもしておけばよい。 それより.........」 軽く,あごをしゃくって報告者を部屋から追い出すと,東条が言葉を継ぐ。 「ずいぶんきな臭くなったな。」 ソファの老人も頷く。 「しかも,民主党のクリントンから,共和党の大統領への政権移譲もかんがえな くては.....」 左翼が追い払われ,アメリカが単一世界市場をつくるのはかまわんが,日本が戦 いにまきこまれるのは正直言って迷惑だな。」 「まったくだ。戦後の焦土から,ここまで復興させるのは苦労したのに....。 」 「しかし,キッシンジャ−達は必ず,我々と中国を闘わせようとするだろう。」 「一番よいのは,中国共産党がつぶれ,戦前のように軍財閥ができてくれれば良 い。」 デスクのおとこは,うなずく。 「しかし,北朝鮮の動きがよめない。」 「わかっている。だから,自衛隊増強に手を貸しているんだ。」 二人の会話は続く。 「だが,自衛隊は日本軍の伝統を受け継いではいない。存立のために,否定せざ るをえなかったので......。」 「なにが言いたいんだ。」 「だから,もし,伝統を受け継ぐと,非戦闘員の補償問題に必ずなる。」 「心配はいらん。日本の先端産業は既でに,アメリカ経済にくみこまれている。 世界中を探しても,メカトロニクスや,精密機器の優秀なものは我々にしか造れ ん。」 「なるほど,......。 以前のように,厳しい追求をアメリカからうけず に済むわけですな。」 「政治判断は,常に流動事項に左右される。不完全事項が多すぎる。インドやパ キスタンの核武装がどうひびくか...。」 参謀だった男は首をめぐらした。 「だいたいやね∼。この国は,金持ちに税金かけ過ぎやねん。」 一・九わけのヘヤ−スタイルに,パイプかたての評論家が言う。 俺様MJは,殊勝にも,政治討論番組を同業者とみていた。いわゆる勉強会っ てヤツだ。」 だいたいおやじの言葉が続く。 「僕の言いたいのは,コレだけ,金持ちをもっと優遇しなさい。」 (よく言うぜ,あんたが散々あおって作らせた原子炉はナトリウム漏れを起こす は,関西新空港は,ハブ空港どころか,借金で首がまわらないんだぜ) 俺様は,はらのなかでそう思いながら,缶ビ−ルを喉似流し込む。 同業者の一人が,したり顔でだいたいおやじの主張に頷く。 「まったくだ,日本の税金は高すぎる。」 それを横目に,俺様は言った。 「いまのうちに,病院通いをしとくんだな。」 「?」 「わからないのか。」 俺様は苛立った。 「税収が下がると,財政が破錠する。年金や健康保険制度がアウトになったらど うなる? 日本人の平均寿命が下がるのさ。」 同業者は目をパチクリしている。 俺様はかまわず言う。 「子供の寿命が縮んで喜ぶ親はいない。かくて,頭脳流出が本格化するのさ。」 ぐしゃりと,アルミ缶のおビ−ル缶をつぶすと,乱暴にゴミ箱になげ入れた。 既に,TV画面はかわり,だいたいおやじではなく,慎太郎VS小沢になって いた。 「何で,アメリカのグロ−バルスタンダ−ドを日本が受入れなきゃならないんだ ! デリバティブ? 消費者がリスクの負担する銀行なんて,丁半博打とかわらないだろ! ええ!」 慎太郎が息巻く。 「規制緩和は,お前さんが自民党の幹事長だったときにきめたことだ。知らない とは言わせねぇぞ!」 慎太郎の舌峰に,小沢は世界の流れを繰り返すばかりで精彩を欠く。 さっきの同業者が俺様の脇腹を肘でつつく。 意見を言え,というのだ。 いやいや,口をひらく俺様。 「だからといって,アングロサクソンに,日本は再び世界制服の野望を抱いてい るなんておもわれたら事だぜ。この国の生きる道が絶たれる。」 と,警官から探偵になったやつが立ちあがり。 「国がなにをしてくれるかではなく,国民が国家になにを成すべきかかんがえる んだ。」 愛国者然とした態度で,俺様の話をよこどりしたことに,俺様は不快を覚えた。 「フン! だったら,最近まで国をもたなかったユダヤ人は虫けら以下か?」 酔いも手伝って,俺様は露骨に嫌みを言う。 愛国者の顔が歪む。 「そうは言っていない。国体を守ろうと言っているのだ。」 俺様はもっと,嫌みを言うことにした。 「自分の利益のためだろう? 第一,国体が大事なら,昭和から平成になったと き。なぜ,追腹をきらん?」 元警官の顔が真っ赤になり,腕がぷるぷるとふるえだした。 にらみ合い,緊張がたかまる。元警官が左半身から,右半身になる。普通,格闘 家は,肝臓をうたれないように左半身で構えるわけだが,警官は逮捕術を習うた め,右半身に自然と体がなるのだ。 対抗上,俺様も右半身にかまえる。日本狼の動きを写すといわれた拳法の真似事 だ。 はっきり言って,いやがらせだ。 オッ!という顔をする相手。 俺様は両手の掌底を合せた。ポ−ズ的には中途半端なカメハメ波だ。 戦略としては,こうだ。互いに殴りあう瞬間。歩法によって相手の横にでて, ヒップアタックをかましつつ,フリッカ−気味にこぶしを顔に,同時に足払いを 行なうのだ。 俺達,末端が小競り合いをしている頃.....。 「フ−ッ。」 ため息とともに,がっしりとした体格の男が,ネクタイで自分のメガネを磨いた。 「先生,どうでしたか?」 秘書が訊く。 先生とよばれたおとここそ,警察族議員で,建設大臣をもつとめた代議士だ。 関東軍参謀だった老人と,先程,わかれたばかりなのだ。 「フン,総理大臣のイスなど,養老院がわりにあの老人にくれてやれば良いのだ !。」 侮蔑をこめて言う。 「ご冗談を...。」 秘書が慌てる。 「分かっている,いまのところは,あの老いぼれの力が必要だからな。だが,そ の後は返す刀で,ヤツの子孫を根絶やしにしてやる。」 「先生...。」 秘書が頷く。 「行政改革や規制緩和を行なうということは,旧来のル−ルを変えるということ。 旧態然とした奴らを見逃すわけにはいかんんからな。」 ひとしきり笑うと,代議士は秘書と伴に,車で,いずこともなく走りさった。 一方, 老人もただ。手をこまねいてはいない。 「御前,よろしいのですか...」 側近の一人に,質問を発せられたが,老人は重役室での時と同じく,かわらぬぺ −スで答えた。「よい,ヤツがワシの手の上で踊るかぎりはな...」 「しかし,いつまでも続くとは限りませんが...」 「いかに安保闘争で手柄を立てたものでも,政治は別もの。しかも,ヤツは最近, 致命的なミスを犯した。」 「と,いいますと..」 側近が興味津々で訊く。 「土石流だ。」 「ハア?」 やぶから棒の答えに,側近は面くらった。 「わからんのか,ヤツは,建設大臣の時,土石流の二次災害を恐れ,自衛隊や警 察を出動させなかった。自国民の女・子供を見殺しにした卑怯者なのだ。ワシの 頸木を脱しようとしたら,遺族をヤツに差し向ければ良いのだ。」 平然と言ってのける老人。 側近はさらに質問。 「しかし,それでは,すぐに捕まってしまいますが。?」 「それで良い。第一,捕まえてどうする? 同胞を見殺しにしたのはまちがいな い事実だ。弁解の余地はない。それとも,遺族達をつかまえて,毒でももって殺 すかね? それでは誰もヤツの言うことなどきかなくなるぞ。」 側近は,自分の腋の下に冷や汗をながしはじめていた。 「ま,まことにごもっとも。」 「わかったら,手配せい。」 「はっ!ただちに。」 あわてて,老人のもとを辞す側近。 その姿を見送りながら,老人は呟いた。 (ヤツは官憲として純粋すぎた。それが敗因につながったのだ) ふと,シベリヤ捕虜の時代を思い出す。 「まだ,死ねんな。」 「話が違うじゃないですか。」 俺様MJは,望月に苦情を言う。 「名刺を渡すと言うことは,俺様の濡れ衣を理解していただけたものとおってい たのに。」 と,横からパソコンを操作していた若い卒配の警官が口を差しはさむ。 「それは悪いことをしたからコンピュ−タ−に登録されたんでしょ?」 俺様はキレた。 「冗談じゃない。なら,俺様が法律に違反していた証拠をだせ。俺様に,濡れ衣 を着せて,犯罪者にしたてあげようったってそううはいかんぞ! 俺様のことを報告したまぬけ警官の日報があるはずだ。それを出せ!」 望月は,年に似合わぬ老獪な笑みを湛えた。 「私の一存では無理です。警察のコンピュ−タ−に入力されたものが誤記であっ ても,それを取り消すのは警視庁にしかできない。」 大ウソである。 100年コンピュ−タ−(警察の個人コンピュ−タ−は,百年間保存なのでそう 呼ばれている)の情報修正は,警視以上なら,大阪府警だろうが,警視庁だろう が可能なのである。ここに大蔵官僚と同じ体質を俺様はかんじた。 ねずみ取りに,ひっかかって,オ−ビスの数値のみが正しいと信じる警官の頭の 硬さにへきえきした奴らの言葉が頭をよぎる。 だが,泣き寝入りをする気は全然ない。 なんとなら,これでは海外旅行すら行けないからだ。 と,言うのは先進国は相互に旅行者に対するブラックリストがあり,最悪,相手 国の空港で入国拒否に合うからだ。 実例で,いえば,オ−ストリアの前首相.ワルトハイムは,首相にまで昇りつめ ながら,ナチ戦犯の容疑でアメリカに入国できなかったのである。 しかも,あらかじめ相手国に入国拒否の有無を尋ねても教えてくれないのだ。 日本では,まず,ヤクザ関係は無理。あと,重大な犯罪に関わる者とかだ。 それに,審査は,当時国の主権なので,手のうちようがないのだ。 俺様は早速,事務所に飛んで帰り,インタ−ネットをたちあげた。 メ−ルの送り先は,アメリカの国際人権センタ−である。 アメリカは,情報公開の先進国であり,こういう問題を既に経験しているから だ。 フウ−ッ! タバコに火をつけ,一気に吐き出す。 外圧がなければ,動けない。情けない国である。 一息つくと,俺様は手近なTVのリモコンのスイッチをいれた。 たちまち,ニュ−スが流れる。 《では,次のニュ−スです。コンビニ強盗の犯人は,不法入国者と見られ... 》 最近では珍しく無くなった,外国人犯罪のニュ−スだ。 「けっ!相変わらず,政治家はさぼっていやがる。」 俺様は,内心毒ずく。 一般には,知らされていないが,国民を調査できるのは,国政調査だけである。 そして,これは政治家のみが決定できる。 警察は民事不介入の原則があり,犯罪が行なわれなければ,とりあってくれない。 強制捜査ができるのは犯罪の思科あるときだけである。 だから,何でもかんでも自分の手柄にして,犯罪者に仕立てようとする。 松本サリン事件のかりやさんが良い例だ。 なら,外国人犯罪者をどうするか, 簡単だ。国税調査の際,日本国籍を有するものなら,健康保険書や,免許証を提 示させればいい。外国人ならパスポ−トがある。提示できないもののみ,拘留す れば良いのである。 戸籍制度が整備されているのは,日本.韓国.台湾ぐらいなもので,欧米には それにあたるものはない。かわりに教会が出生と死亡の記録をとっており,役所 の一部の機能としてうごいている。(もちろん最近は,病院からのとどけもあり セクションもあるが,古い記録は今なおたよざらるおえない) 「こんちは∼っす。」 バイトの助手がやってきた。 俺様は今までの一件をはなす。 「大変すっね∼。」 簡単な,一言でかたずけられて,俺様はガックリきた。 「でも,インタ−ネットがあって,良かったじゃあないですか。濡れ衣をはらす 機会をもてて。」 脳天気な感想を言う。 「だが,規制緩和も良いことばかりじゃないぜ。」 「と,いうとMJさん?」 「同じ日本人同士で,正社員と日雇い人夫のさがでるのさ。つまり,小数の月給 取りと,日払いのリストラ要員ができる。」 「?」 「日本が戦後発展できたのは,社員間格差をなくし,QCコントロ−ルなどで, 会社一丸となったからだ。それが崩れれば,身分制度が復活するにきまっている じゃあないか。」 「........」 「実際は,食堂や通用門が上級職と一般職では別になる。」 怪訝な顔をするバイト君「ビル・ゲイツが,社長専用の駐車場に,車を止めたら, 守衛におこられたのを,NHKが放送してたぜ。なにせ,BMWは,米国では一 般車だし,当の本人の容貌は十六歳の少年だからな。」 雑談をかわすうちに,俺様自身の心にも余裕がでてきた。 「ところで,将来はどうするんだい?」 俺様はバイト君に訊く。 「ウ∼ン。どうしようかな∼。」 バイト君は,しばし,考え込む。 「それなら,公務員になれよ。」 俺様が,すすめる。 「エ−っ!でも,定年まで人生コ−ス分かっちゃうじゃありませんか−。」 「だから,良いのさ。デフレの時代は金をもったものが勝ちだ。定年まで勤めて, あとは退職金で借家でも建てて貸借すれば,働かずに喰ってゆけるぜ。」 俺様のアドバイスに,不満気なバイト君。 「なら,MJさんはどうするんですか。」 興奮気味に訊く。 「俺様は,一攫千金コ−スだよ。個人が巨人が巨万の富を得るには,国家が勃興 するか,滅亡する時しかない。それは,過去の財閥発生史があきらかにしている からな。」 と,机の上の電話がなった。 お得意先の鴻池さんだ。二言,三言はなすと俺様は電話を切った。 「何です?」 バイト君が尋ねる。 「なに,もっと儲かる投資先を知りたいといったので,そういうことは証券会社 に訊けっていったのさ。」 「どうして,おしえてあげないんです?」 不思議そうに訊く。 「投資顧問法ができたろ,これはファイナンシャルプランナ−の仕事だよ。俺達 がやると総会屋と同じ利益供与罪になっちまう。」 (まったく,ここ数年の間に探偵稼業も情報産業の波に呑まれちまって,一体ど うなることやら) 表情には,だせないが。俺様は内心,頭を抱える。 「さてと,得意先回りでもするかな。」 俺様はふくれあがった鞄を持つと,留守をバイト君に頼む。 「MJさん,なんですそれ。」 「ああ,これは,わがMJカンパニ−の社債だよ。」 「社債?」 「会社の債権。これを売って資金集めをしてるのさ。メインバンク離れの影響で 銀行が潰れるご時世だ。零細企業は大変だ。もっとも,旨味もあって,最悪,会 社がつぶれても金は帰さなくていいしな。」 「それって,あくどくありません?」 「これくらい,常識だよ,じょうしき。」 俺様は,軽くバイト君をたしなめると, 資金を提供してくれそうな投資家達を頭に思いめぐらした。 東京都一丁目一番地一号 「なんだ,このはげどもは!」 あずま家第一王子は,TVをみて,激怒した。 「東家存続を条件に,憲法九条はアメリカと締結されたはず。それをこのハゲは .....」 目は吊り上がり,歯がギリギリと鳴る。 知らず手近なものを投げつけ,調度品が散らばる。 「老礼(ラオリ−),おやめなさい。」 ロマンスグレイの,高貴な紳士がたしなめた。 思わず,赤面する王子。ラオリ−とは,夫人との間の愛称であったからだ。 「恥じることはない。私も幼少のころ,ボビ−と呼ばれたことがある。」 玉座から,諭すようなことば。 「しかし,お上,許せません。財界人なら民意といえましょう。政治家なら選挙 区民の声といえましょう。しかし,彼らは役人ではありませんか,しかも退職し た私人ごとき何ゆえ愚弄されなければならないのですか。」 憤然とくってかかる王子。 「時代の流れだよ,どうしようもない。」 紳士は一言一言噛み締めるように喋る。 「承服いたしかねます。」 王子は,ドアを蹴破る勢いで部屋を出ていく。 深いため息を,一つつくと,玉座の主は侍従を呼んだ。 「東宮寺,そなたの父は内外に厚い人望を得ていた。」 「もったいないおことばです。」 侍従は最敬礼でこたえる。 「そなたはその息子だ。我が,第一王子はあのとうり,気性が激しい。行く末を 頼んだぞ。」 「ははっ。身命に変えましてもお守りいたします。」 菊の紋様の入った床をながめながら,うやうやしく答える。 一方,第一王子は自室にもどると,持卒をよんで命令を下した。 「皇宮警察に命じて,公安調査庁を見張らせよ!」 凄まじい顔で,命令する。 思わず後退りしながら,確認する持卒。 「よ,よろしいのですか。」 「かまわん。牽制にはなる。少しはおとなしくなるだろう。」 「あの二人のご処分はいかがいたしましょうか。」 「二人? ああ,あのハゲどもか,フム。一条寺にやらせよう。」 「京都方面総司令にですか?」 「ヤツは,先頃,退職したばかりだ。私人どうしなら,文句はなかろう。」 グイイッと,持卒を睨む。 「ははっ,かしこまりましたっ。」 王子の怒りが真剣である事を知り,慌てて直命をうけたまわる。 「MJいるかい?」 俺様が缶ビ−ルをあおっていると, 甘いマスクのやさ男が入って来た。 「うんっ? おおっ,ケンジ,なんだエリカもいるじゃないか。」 「知り合いなんですか?」 怪訝そうな顔で,バイト君が尋ねる。 「ああ,ちょっとな。」 俺様は,適当な返事しながら,缶をくずかごに投げ入れる。 ケンジもエリカも,米軍兵との間にできたハ−フだ。 ケンジの母親は日本人で,以前,俺様が相談相手になったことがある。 エリカは父親が黒人兵なので,運動能力が,ズバ抜けており,各大学から,特待 生の照会があったほどだ。 「なに,神戸に行く途中に立ち寄っただけさ。 スグ,帰るよ。」 こともなげに,ケンジは言う。 「MJ,横須賀に用はないよな。」 ケンジの後ろでエリカが暇そうに髪をもて遊ぶ。 「なんだ? 突然,やぶからぼうに。別段,横須賀に行く用なんかないぞ。」 「なら,いい。横須賀に,キティホ−クという新造船が来る。1000キロ以内 の核ミサイルにさえ耐えるってやつだ。」 俺様はピ−ンときた。 「ちょいまち。お前達の行く神戸には,3つの原子力潜水艦があって,それぞれ 多弾頭ミサイルが北朝鮮と北京にロックされているはずだが?」 俺様はかたてで,ケンジを制しながら質問した。 「そのとうり。北朝鮮には,弾道ミサイルを飛ばせても,核弾頭を作る能力はな い。米軍の軍事衛星でそれは確認済だ。」 「では,なんだ。」 「核弾頭を,ミサイルに乗せるには,最低1トン以下の重量にしなければならな い。これはわかるよな,MJ。」 俺様はうなずく。 つられて,バイト君もうなずく。 「と,なると。ミサイルには毒ガスか,細菌兵器しか積めない。だが,これはカ ルト教団で日本も経験済だ。あと,残るのはB−29並みの爆撃機で核を運ぶし かない。」 バイト君が口を挟む。 「日米安保条約で,アメリカは日本を守ってくれるんじゃないんですか?」 「イヤ,日本の防衛は純粋に日本だけの問題だ。」 ハッキリと言うケンジ。 「こういうことか? アメリカは,日本の領土が侵略されても,アメリカ人の財 産上の被害がでない限りうごかない。」 俺様は,核心に切り込んだ。俺様の質問に返事をしないケンジ。 だが,この場合は,YESと言う意味だろう。横須賀の極東軍事中央センタ−入 り口には,等身大の金色の孔子像がかざってある。一瞬,ケンジが金色に光って 見えた。 「ついでだ,もう一つ教えろ。」 俺様は,新しい缶ビ−ルの口をあけながら言う。 「OK」 軽い返事のケンジ。エリカはあくびしている。 「アメリカは,中共軍についてどうおもってるんだ。」 「ノ−プロブレム。問題ない。」 「どういうことだ。」 「まず,第一に,共産党がこれ以上もつとは思えない。ま,長くても5年かな。 時代の流れさ。第二に,一人っ子政策の影響で,軍人の平均年齢が上昇している。 普通,徴兵するのは18∼22歳なんだが,現在でさえ一杯一杯だ。とうとう, 香港のダミ−会社で人集めをし始めたそうだ。」 「アッ。それ,僕もTVで見ました。」 バイト君が手をあげて答える。 「北朝鮮の軍部は,戦うだけ戦って,あとは金 正日に責任をなすりつけた逃げ るつもりだろうが,アメリカはそうはさせんということだな。」 俺様がズバリと言ってのけると,ケンジは白い歯を出して笑った。 と,その時。 「MJ,いるか! どこだ−!」 怒声と伴に,一人の男が飛び込んできた。 その顔を見て,俺様はゲンナリした。 愛国者を自認する,元警察官だったからである。 ケンジとエリカは,何だこいつは,という目で見ている。 「MJ,この間はよくも恥をかかせてくれたな!」 ケンジが,俺様に説明しろと,目で合図する。 「お前は,俺様に日本誰が守っているのか,と論争をしかけて,負けた元警官。 」 「そのとうりだ。おかげで,探偵としての依頼は減るわ,かつての同僚だった警 官からは馬鹿にされるは,とんでもねぇ。」 口角から泡を吹かんばかりにしゃべる。 「それは,自業自得だろ。」 ケンジが,冷ややかに言い放つ。 「なんだ,てめえは!」 殺気をこめて言う,元警官。 「我々は,アメリカ人さ。ほら」 血走った眼前に,グリ−ンカ−ドを示す。 「だから,なんだ。日本は日本人の物だ。売国奴に用はない。」 今度はケンジがキレた。 フン,フンッ,ドス,ドス,ドスッ! 激しい息ずかいと伴に,いきなり,ケンジは元警官にボディブロ−を2,3発か ます。 「貴様ら役人が,俺達に何をしてくれたぁ∼っ!」 海兵隊仕込みの,パンチがたたき込まれる。 「お袋が病気で,生活保護を受けたいって言ったとき,ハ−フだからって断った のはお前ら役人だろうが!」 怒りのパンチ,キックが炸烈する。 しかし,警官だった男も,しっかり両手でブロックしている。 と, ケンジがバックステップして,あいだをあける。 逃すか,という感じで元警官が前へ出ようとした瞬間。 ヒュン! という音とともに,元警官だった男の首に,エリカが投げつけたチェ−ンが巻き つく。 グイッと,ちからまかせにエリカが引く。 たまらず,エリカの方につんのめる。 ケンジは,すかさず男の背後にまわりこみ,つま先で尾底骨を蹴り上げる。 「ウウッ!」 刹那,男の動きが止まる。 その瞬間をのがさず,ケンジは懐から靴べらのようなサップを取りだし, エイ!とばかりに男の頭に打ち付ける。 声もなく,崩れ落ちる元警官。 俺様は,そんな争いをそしらぬ顔でビ−ルをのみ続ける。 「MJさん。いいんですかこのままで。」 バイト君が俺様に尋ねる。 「いいも,なにも,もうけりはついたじゃないか。それに38度線で戦ったのは, ケンジやエリカの父親とその上の世代だろ。アメリカ人の誇りを汚すから痛い目 をみるんだ。」 俺様は,グイッとビ−ルを喉に流し込むと,あごでしゃくってみせる。その先 にはぶざまな姿のおとこが伸びている。 ケンジは,服のチリをパッパと払うと,襟をただした。 「おい,ケンジ。こんなもの,迷惑だ。神戸にゆく途中ですててくれ。」 俺様は,つぶれたひきがえるを指さす。 ニヤリと笑う,ケンジ。 (まったく,しょうがない) 俺様は,心のなかで毒ずきながらTVの電源を入れた。 帰りぎわ,ケンジはTV画面をゆびさして言った。 「よく,見とけよ,MJ。」 (?) 俺様には,なんだかわからない。 ニュ−スは,コンピュ−タ−の2000年問題だったからだ。 間抜けなひきがえる一匹と,男女のカップルを見送りながら,頭脳をフル回転さ せる。 「おい,バイト,これって2000年になると,コンピュ−タ−が誤作動するっ てヤツだよな?」 「ええ,そうですよ。でも,単にそれだけじゃなく,自動車もとまるそうです。 」 「自動車が,なぜだ。」 俺様には理解できない。 エッヘン,と誇らしげにバイト君が俺様にレクチャ−し始める。 「確か−,自動車とかのエンジン部品とかには,コンピュ−タ−制御の直噴エン ジンがあって,そのチップの中には時計の働きをするものがあるらしいのです。 」 自信満々で,話は続く。 「そういう,時計機能のチップは,随所につかわれていて,原子炉とかにもたく さんあるし,海底ケ−ブルのリレ−なんかにも埋め込んであるので,事実上,補 正や,修正ができないってききましたけど。」 「するとなにか,コンピュ−タ−や,その,時計機能の入ったチップが埋め込ま れてる機械は皆,ストップするのか?」 「ええ,たいていは,ただし,パソコンはウインドウズで修正できるかもしれな いそうですが。」 ハッハッハッ。俺様MJは,大声でわらった。 たちまち,バイト君が心配そうな顔になる。 「ハハハ,別にきが違ったわけじゃないよ。なんだ,そういうことか。」 今度は,バイト君が俺様に訊く。 「どういうことです?」 「つまりこういうことさ。アジアの共産圏の国々のハイテク兵器にも当然,その 手合いのチップが入っている。ハイテクになればなるほどな....。そのチッ プはどこから入手したと思う?」 「解かりません。」 「秋葉原あたりさ。しかも,大量にチップを買入たのは80年代だぜ。」 あっと驚く,バイト君。 「だと,したら90年代後半のチップからしか2000年対策はできていない. ...。」 「そういうことだ。一生懸命作った武器がガラクタ同然になるんだ。」 俺様は,笑いながら,アメリカの事実上の規範(デフェクトスタンダ−ド)とい う戦略に薄ら寒いものを感じた。 (頭のいいやつってのは,いつの時代にでもいるもんだな.........) 俺様は,缶ビ−ルえをやめて,タバコに火をつけた。 総理官邸が,まだ,ポマ−ドくさかった頃。 ここにも一人の男が憤然としていた。 「納得いきません。一方の不正を正すのに,どうしてもう一方の不正を見逃すと いうのですか。これでは法の公正さが保てません。」 検事総長の川上は,語気を荒げた。 「フン,文句はこれを見ていいたまえ。」 ポマ−ド大王は,TVのニュ−スをゆびさした。 《−では,第二次組閣の発表です−》 アナウンサ−が,淡々と読み上げる。 「ウッ,先輩。」 川上は,目を向いた。先頃,定年退職した前検事総長が法務大臣になっていたか らだ。 ボ−然,と立ちつくす川上。 「わかったかね。納得したら,とっととけえんな。」 紳士然とした面持ちから急に,べらんめえ口調に変わる。 (三権分立とは言いながら,裁判所の判事は内閣が任命してい。検事までが,法 務大臣として内閣にとりこまれたら,もう,公正さは,教科書のなかにしかない な) 川上はがっくりと肩をおとしながら,総理大臣の執務室を後にした。 と,川上が部屋をでるのと同時に,隣室のドアが開き,川上といれ違いになった。 「総理,いかがいたしましょう。」 声の主は,内閣安全保障室長だった。 「うん,ああ,君か。まったく,検事局の連中は頭がかたくていかんよ。」 ポマ−ド大王は笑う。 「まったく,状況証拠の積み重ねだけで,逮捕できるようにしなくては....。 」 室長は追従をする。 「それはいいとしてだ。貴様の忠誠心はどこにある。」 ポマ−ド大王が訊く。 「はっ,それはもう,国家への忠誠であります。」 室長が答える。 「私への忠誠心はないのか?」 ポマ−ド大王が訊く。 「ご冗談を,国家を体現なされたあなた様をおいて,ほかに誰がいましょうか。 」 あわてて,ハンカチを取り出し,汗を拭うふりをして小心者を装う。 「よかろう,政治は奇麗事だけではないからな。ただし,民主主義の後退といわ れんようにな。期待しよう。」 ポマ−ド大王は,室長をさがれせた。 (これで,取締を強化し,手柄を立てれば,私の代議士への転身も夢ではない。 ) 「腰抜けの二世議員など,蹴散らしてくれるわ。」 官舎へ戻る途中,室長は一人ごちた。 翌日,川上は辞表を出し,当然,受理された。 「うきょきょきょ。」 俺様MJは笑いが止まらなかった。 「MJさん,ホ−ムぺ−ジ開いてよかったですね。」 バイト君も喜んでいる。 「まったくだ。最初は普通のホ−ムぺ−ジだったが,アメリカ向けに日本企業の 調査サイトを作ったら,アクセス件数が増えたよ。」 もっとも,四季報に毛がはえた程度なのだが,.... 「今は,アメリカの企業が日本企業の買収にん熱心だからな。」 おかげで,それだけで喰ってゆける。 ありがたいことだ。と,俺様は思う。 翌日 気分爽快で,散歩していると。 「MJさんですね。」 銀ぶちメガネの贅沢な身なりをした若い男が近寄ってきた。 「?」 俺様は,いぶかった。 「わたしがここにいるということは,あなたに勝つ自信があるからです。」 若い男はきっぱりといった。 「???」 俺様は何のことやらさっぱりわからない。 「加代子のことですよ。」 「ああ...。」 と俺様は理解した。 金井加代子,本名 全(チョン)加代子。韓国系日本人である。 数ヶ月前。俺様の散歩コ−スに,常にすれちがうので,挨拶をかわしたのをキッ カケに人生相談を受ける羽目になったのだ。 軽い気持ちで,ハンバ−ガ−ショップに誘ったのだが...。 「あなたの事は,調べさせてもらいました。あなたも今まできずいてきたものが あるでしょう。」 (こいつ,ヤクザか?) 「あなたのやっていることはセクハラです。」 鼻息荒く,息巻く。 最近,名古屋の恋人専門の探偵が俺様の回りをうろちょろすると思ったのは,そ ういうことだったのか。 男は,俺様が黙っているのを見て,脅しがきいたと思い かさにかかって喋る。 「でるとこでましょう。あなたが首をくくるまでやりますよ。」 (ああ,こいつは素人だな) 俺様はわかった。 ヤクザなら,こんなベタな脅し方はしない。 標的となる人物を決めたら,あらゆる手段を使って事前調査視,そして,一度に 問題を引き起こす。 人間,一つ一つの問題なら処理できても,一度期に会社,家庭,学校,不倫と, 問題がおこったらパニックになって,お手上げになる。企業ヤクザはそうやって, 標的を引き摺り落とすのである。 「土下座でもしてもらわなくては....。」 男がそう言った途端。俺様は土下座した。 こういうときは,素直に謝るのが一番だ。 それに,ちら,と加代子のすがたがみえたからもある。 一瞬,男は呆気にとられた。 まさか,俺様がスグに土下座するとは思わなかったろう。 居丈高野郎には,わからないだろうが,傍からみていると,どちらが善悪か,よ くわかる。 「ひょっとして,結婚しているんですか?」 俺様は,あやまりながら訊いた。 「それは,あなたには関係ない。」 男は,メガネを中指で修正しながらこたえる。 「そうかい。」 俺様は,ニヤリとわらって立ち上がった。 俺様は内心,ホッとしていた。正式に結婚してさえいなければ,なんとでもな る。 二号であれ,妾であれ,射精させて金をもらえば,売春だ。 ソ−プランドでは,あれほど手順を踏むのはそういうことだ。 契約愛人にいたっては,人身売買だと,警察は言うだろう。 「弁護士に相談しても,セクハラだと言ってましたよ。」 男は,毒気を抜かれて,態勢を立て直す。 (当たり前だ,弁護士は裁判に勝っても負けても金が貰えるからだろうが) 俺様は内心毒ずきながら考えた。 「彼女が,迷惑だと言ってるんですよ。」 男がそう言うと,加代子が物陰からでてきた。 「MJさんが,私の話を訊いてくれないから...。」 彼女が喋り始めると間髪いれず俺様は言う。 「俺の愛情より,コイツの愛情のほうがいいんだな!」 俺様の逆襲だ。 「俺様は,男でも女でも金で買われるものじゃないと思っている。」 俺様の探偵としてのモラルハザ−ドだ。 「俺の愛情より,その男のかねのほうが良いのだな。」 俺様は,オ−バ−アクションで見栄をきる。 一瞬のまの後,おんなの泣く声。 「....もう,いい....」 加代子は,泣きながら金持ちの男に身をよせた。 在日韓国人が,差別をうけながらいきて行くには,かねのちからが必要だ。 (賢い選択だな...。だが,人間としては,イヤだな俺様は..) 一週間後。 あいかわらず,TVウオッチでカウチ族の俺様は男の身元を知った。 「ブ−ッ!」 口から,ポテトチップが飛び出す。 「うわぁ!MJさん汚い。」 バイト君があわてて,ぞうきんを取り出す。 俺様は,もう画面に釘ずけだ。 《報道特集 …駅前の地上げ!… 》 と題されていた。 「イヤ∼っ,もう,さかさにふっても鼻血もでません。」 後ろ姿の壮年の男は,駅前一帯の土地の持ち主らしい。 「戦後の農地開放いらい,新興財閥の一角をなしてきたのにざんねんです。」 「なるほど,バブルにおどらされたわけですね。」 インタビュア−が,合いの手をいれる。 「もう,ヤクザに地上げされそうになって,あとは,政治力でつぶしてもらわな いと....。」 TVのテロップには,男には息子がいて,某大物政治家の娘と結婚させ,そのち からによって地上げを押さえようと画策しているとながれた。 俺様は食い入って見た。 そして,次に映ったのは,壮年の男の息子だった。 「おおこいつ,このあいだの!」 俺様は興奮した。 俺様に,セクハラの容疑をかけようとした男だったからだ。 「ええ,M治大学法学部からK西大学経営情報部に編入したんですよ。実家が危 ないってね。」 「それでどうされました。」 インタビュア−が,訊く。 「いや,弁護士にでもなろうかなと思って,勉強中ですよ。はっはっはっは。」 キザったらしく笑う。このあいだとは別人である。 「まったくです。ウチの息子には,良家のお嬢様でないと.....おっほっほ。 」 TV画面が,急に切り替わると,母親が映し出される。 (こいつら,アホだ) 俺様は確信した。 と,同時に (加代子だまされてる) ともおったが,本人が良いと思ってるのに,手の出しようがない。 「グビリ」 俺様は,ビ−ルを飲んだ。ホップの味がやけに苦い味がする。 私立探偵はボランティアではない。只働はできない。 彼女の幸福を祈るだけである。 「ア−メン」 俺様は一人つぶやいた。 「南米大使は,よくやったのにねぇ∼。」 相変わらず,政治番組で,一・九わけのオッサンはパイプ片手にいい加減なこと をのたまう。「まったく,責任をとらされてつめ腹きらされるようなものだ。」 無名の専門家が同調する。 「MJさん。どうして,大使は辞めなきゃならないんです? そりゃあ,テロリ ストに占拠されたけど。」 助手が,俺様に訊く。 「それはだな,海外の大使館には2人の駐在武官,自衛隊員が派遣されていてだ。 ...」 俺様は,缶ビ−ルにてを伸ばす。 「事前調査や,裏工作をになっているのさ。当然,パ−ティ−をひらくのが危険 だってことも大使に報告してるハズなのさ。」 「フンフン,それで...。」 バイトがせかす。 「だから,南米大使が,状況を甘くみずに警備をふやすなり,会場をうつすなり してれば事件は未然に防げたのさ。」 「で....。」 バイト君がもう一つ,カンビ−ルを差し出す。 俺様は,それにも手を伸ばす。 「外務省は,太平洋戦争の時も,ミスをした。最後通牒をせず,アメリカにスネ −クアタック(ふいうち)と真珠湾でいわせた。」 パコン! と缶ビ−ルのくちをあける。 「だから,今度はけじめをつけるためにも,人柱が必要だったのさ。」 「でも,人質が無事だったから,いいじゃあないですか。」 「それは結果論だよ。もし,これで,大使がおとがめなしで,年功序列で出世し てみろ!世界中の物笑いのタネだろうが!」 俺様がにぎりこぶしで机をたたく。 どうやら悪酔いしそうだ。 「そういえば,自衛隊も不祥事続きでしたよね。」 バイトの助手君が,俺様が不機嫌なのをなだめようとして話題をかえる。 「ああ,あれは憲兵隊(MP)がわるいんだ。」 「なんですか,それは?」 「憲兵隊(MP)は,自衛隊内のけいさつみたいなものさ。」 「へぇ−,そんなのがあるんですかぁ。」 バイトのおだてに乗りそうな俺様。 「本来なら,北朝鮮のミサイル問題で,不祥事は不問にされるか,時期をみて裁 決されるハズ。」 「それって,ずるくありません?」 若いバイト助手には,不正がゆるせないらしい。 「どうしてだい。いま,警察と自衛隊がもめても,利益を得るのは北朝鮮だけだ よ。」 俺様は説明する。 「利敵行為を,警視庁はおこなったわけだ。」 バイト君が言う。 「オッ,わかってるじゃねえか。そのとうりだよ。」 俺様のからだには,大分,アルコ−ルがまわってきた。 「じゃぁ,今日はこれまでだな。」 臨時休業の札を玄関にだすと俺様はゴロリと,とソファに横になった。 「あまり政治問題にくびをつっこみたくないな。それに,ここんとこ,不倫とか, 色っぽいお姉ちゃんに飢えてるしな。」 俺様はへそまでそりかえった,ペニスを握り締めながら,TVをアダルトチャン ネルにきりかえた。ちょうど,ケ−ブルTVでは,プレイボ−イチャンネルの時 間だった。 議員会館・自民党室− 「いったいどういうつもりかね。」 かつて,国鉄を分割民営化した老人に,がっしりした体格の元大臣が詰問される。 おもわず,幅広のネクタイでメガネをふくが。 北朝鮮の弾道ミサイルが,太平洋上に落下し,軍事的緊張がたかまったにもか かわらず, 警察は自衛隊の不正をあばくことに力をそそごうとしていたからだ。 「まったく,なにを考えとるんだ。」 別の老人が,叱責する。カミソリとよばれた老人だ。 メガネを拭き終わると,元大臣は,横柄な態度で答える。 「べつに,あなたがたに,そんな非難される筋合いはない。国鉄の不正をただし たように,われわれも,自衛隊の不正をただそうとしただけだ。国内の司直は, 警察の専管事項だ。 それに,自民党以外の議員を警察が見張って情報をながしたればこそ,カミソリ と呼ばれたんでしょうが。」 元大臣は,プイ と横を向いた。 「貴様,この恩知らずめがぁ∼。いったい誰のおかげでここまでになれたと思う か。」 怒声がひびく。 が,元大臣は平然と言ってのけた。 「混迷の時代には,才能あふれる若い人材が必要だ。いい加減,前世紀の恐竜な どにうろつかれてはめいわくですよ。」 「それが,貴様の答えか。」 カミソリ老人がにらむ。 いちぶの隙もない,礼儀正しさで挨拶をしながら,元大臣は言う。 「おいぼれのノスタルジ−に付き合う暇などない。では,失礼します。」 さっさと,部屋からでていった。 早速,あわてて,秘書が元大臣のところにとんできた。 「先生,よろしいのですか。」 顔色が全然ない秘書。 「風任せの人生はイヤだな。」 元大臣がいう。 「はぁ?」 キョトンとする秘書。 「だが,その風を自分がおこすとなれば,べつだ。」 「先生.....。」 「自民党には,分裂してもらわなければならん。そうでないと,俺の出番がまわ ってこないからな。」 「と,いうと....。」 「もちろん,計算の上でだよ。安心しろ。」 ほっと,胸をなでおろす秘書。 と, 議員会館の出口ませの廊下に,ひとりのおとこが立っていた。 すでに,総理大臣はポマ−ド大王から,凡人首相にかわっており,その官房長官 だ。 つくり笑顔で,元大臣をむかえると, 「わたしは,あなたの敵ではありません。自民党は分裂すべきです。」 キッパリといいきった。 「ほう,要職にあるあなたが...。自民党にたいする反逆ではありませんか。 」 相手の真意を,はかりかねて,元大臣はあやぶんだ。 「いいえ,あなたなら,私の能力を存分に発揮させてもらえると思いますが.. .。」 官房長官は,今度もハッキリと言う。 秘書がめくばせしている。 多分,ワナだといいたいのだろう。 が,元大臣の答えは以外にも, 「では,私の役にたて,いいな。」 と,言い。 「わかりました。AにはAの,BにはBの仕事があるのを御理解いただき,あり がとうございます。」 と,言う。 (????) 秘書は,首をかしげるばかり。 「先生,今のはいったい???」 帰りの車中で,秘書は訊いた。 「ああ,おたがい利用してるだけだ。私は,ヤツから長老達の動きを,ヤツは私 を政治の道具としてな。」 あっさり答える代議士。 「それより,北朝鮮の動きをなんとかしなくてはならん。ハゲどもを,よんでく れ。」 思想犯専門刑務所特別室 ハゲあたまで,赤ら顔の元公安調査室長と元警視庁の役人が二人。 と, そこへ,代議士と秘書が到着した。 「ここか。」 がっしりした体格のくせに,ネクタイでメガネを拭く。 ついでに,顔までぬぐう。 「おい,おきろ。」 ハゲ頭が,一人の男のよこっつらをなぐる。 両手,両足に拘束具をつけられ,イスにしばりつけてある。 「くそっ,イルボンジァン(日本人)め!テポドンで滅んでしまえ。」 男はうめきながらも,日本語で答える。 もうひとりの,ハゲ頭が,調書を代議士に差し出すと,手慣れた手つきで,パラ パラとめくり,「フン,自分の命おしさに,仲間のいどころをしゃべった卑怯者 か。」 とののしる。 「.......」 たちまち,男は口をつぐむ。 「いいか,私の命令どうり動け,そうすれば,日本国籍を与えてやる。場合によ っては,アメリカへの出国もみとめてやるぞ。」 男の目に,期待と不安が入り混じる。 「どうしろと,..」 「ふん,北朝鮮にかえり,不満分子を扇動してク−デ−タ−を起こせ。」 「無理だ,不可能だ。」 「ムリではない。今度の事は,軍部がかってに行ない,キム=ジョンイルに全て の責任を押しつけ,自分たちは逃げ出そうという腹だろう。」 ドン!,と警察族出身の元大臣は机をたたく。 「し,しかし,バレたら私の命はない。」 おびえるおとこに,冷然と言い放つ。 「では,死んでしまえ。いまさら,惜しむ名などなかろうが。」 グッッとつまり,男の視線は足下に落ちた。 「国家がなにをしてくれるかではなく,国民が国家になにをできるかをかんがえ るべきだ。」相変わらず,一息つくと,ネクタイでメガネを拭く。 屈強なSPにかこまれながら,警察族出身の元大臣は後援会で熱弁を振るう。 「MJさんつまんないっすよ。後援会だというから,ついてきたのに....。 」 バイト君がブ−たれる。 「誰も,アイドルだって言ってないぜ。」 俺様は代議士の後援会を見ていた。 と,俺様は手をあげて質問した。 「しかし,先生。国家が分裂して個人になるのではなく,個人の集合体が国家だ と思いますがが?」 一瞬,おや,という顔をする議員。だが,スグ,笑顔になると, 「だが,自社連立のようにんまぜこぜにすると,政治の意思決定が遅れる。中途 半端になる。すばやく,やるべきことをやるのが大事じゃないかね。」 真剣な,まなざしで国会議員が俺様を注視する。 「たしかに,時間がかかるのは民主主義のコストです。しかし,コストをショ− トカットすると,民主主義の責任を他人におしつけることになるじゃありません か。」 「ふむ...。」 代議士はくちびるをゆがめた。 自身の過去を思いだしながら,返答した。 「わたしが,警官になったのは単純に正義感からだ。しかし,個人の小さな正義 感など,組織にとってはなんの意味もなかった。自分の望むところのもの自由に する,ちから,だけが必要だった。逆に言えば,キライなヤツの命令をきかずに すむだけのちからがな。」 「なるほど,自分の主張をつらぬきたければ,上に行け!ってヤツですね。」 「そうだ。」 俺様は,いま,代議士先生の私設秘書として働いている。 肩書きは,地域住民健康促進委員長である。 その実,政治資金の調達係だ。 からくりはこうだ。 市民が,病院にいくと,まず,アンケ−ト用紙にどこがわるいかをかいてもらう。 そうすると,看護婦がそれをみて,医師につげる。 アンケ−ト用紙は,整理券がわりにつかわれ,患者は診察をうける。 役目をおえたアンケ−ト用紙兼,整理券は,捨てられ....ずに, コンピュ−タ−により,統計処理され,もっとも効果的なサンプルデ−タ−とし て製薬会社にうられる。というわけだ。 これなら,医者の領分をおかさず,守秘義務違反にならない。 もちろん,頭の固い連中から反対もあった。 「個人情報なら,警察のデ−タバンクがある。免許証から顔写真もわかるし,交 通指導や再教育のテレホン申請から肉声もわかる。」 なにもいまさら,というわけである。 俺様は抗弁した。 「だれが,そんな危ない連中のデ−タをほしがるんです? 市場価値がないじゃ ないですか。不特定多数の一般人だから,デ−タ−になるんです。しかも,いの ちにかかわるから,金をだす気になる。」 しかも,警官は癒着をふせぐため,他府県から採用され,けっして同一府県内か ら採用しないから,現場にはわからない。 また,どの事件を扱うかは,警官の裁量だから,みてみぬふりをしていれば良 い。 もし,住民の不満がでたら,不満がたかまる前に,摘発してきりすてればいい。 責任を追求されない。というてんが彼らにアピ−ルした。 で,もって,俺様がその任についているのだ。 グビリ。 俺様は,代議士先生の事務所でビ−ルをあおった。 事務所のね−ちゃんは,眉をひそめたが,俺様はそんなこときにもとめない。 それから, 俺様にかみついた,土地成金の男は,縁談が破談になったそうだ。この件にかん して,俺様はちかってなにもしていない。俺様はそれほど陰険野郎ではない。 ケンジとエリカは,オペレ−ション507とかいうアメリカさんの仕事のバッ クアップをしているらしい。 そうそう,このあいだ,一条寺とかいうおっさんが,うちの先生となにやら話し ていた。察しはつくが,いまはだまっておこう。 当分,世はこともなくを装うのが得策だ。 小判ざめのように,くっついて,先生がどこまでやるか見て見よ−っと。 「なんだと!」 新しい沖縄知事は,着任早々,沖縄開発庁長官からの電話を受け,めまいをおこ しかけた。 「なにも驚くことはあるまい。知事のちからで 米軍を支持しない住民を拘束しろといているのだ。」 冷徹な長官。 「し,しかしそれでは,暴動がおこってしまう。」 あせをふきふき,知事は言う。 「それは,君の手腕に期待しよう。」 長官はいいはなつ。 「こ,このことは総理もご存じなのだろな。」 沖縄知事が念を押す。 「さて,どうかな。なんなら,直接聞いてみるか?」 「こ,こんなこと,聞けるわけないではないか。」 「では命令に従いたまえ。」 用件のみをつたえると,長官からの電話は一方てきに切れた。 数時間後, このことは総理にしらされ,沖縄開発庁長官は呼び出しをうける。 「どうするつもりなんだ。」 凡人首相は聞いた。 「別に,米軍の軍事に協力しているだけです。」 「バカモノ。日本をつぶすきか。」 「いいえ,逆です。今,ここでアメリカ軍に協力しなければ日本はみすてられる。 」 「しかし,やり方があるだろうが。」 「では,ほかにどんな方法があるのですか。」 「もし,知事が抑えられなければどうする。」 「私が行きます。」 「何,長官自らが?」 「はい。」 「それでも,抑えられなければ......。」 「私の死を口実に,沖縄を制圧してください。」 「............」 さすがに,凡人首相は,長官の決意に反論の余地はない。 総理のもとから,長官が執務室へもどると事務次官が訊く。 「とうてい,知事には抑えられないと思いますが?」 「それがどうした。道を切り開く者と,道を歩く者とが同じでなければならんと いうことはない。」 「では,本当に行かれるので?」 「当然だ,これぐらいしなければアメリカは納得するまい。」 次官は,感心しひきさがった。 いっぽう,俺様MJは,このニュ−スを秘書控え室で訊いた。 「先生。すごいヤツですね。」 第一秘書の男ガ言う。 「ばかもの。」 メガネを,ネクタイで拭きながら,警察族出身の代議士先生は,大喝する。 「皆,どう思ってるんだ。」 かさねて訊く。 ここぞ,とばかりに俺様は点数稼ぎにでる。 「つまんね−な。」 人々の視線が,俺様に向く。 「ホウ,MJ言ってみろ。」 先生は俺様の言を促す。 「これじゃぁ,昔の自民党と同じだよ。血をながすのがイヤだから,人質をとっ ておどす。」 「そのとうりだ,正面きってたたかってこそ,勝利の美酒も最高だ。必要なら私 が前線で指揮をとればよいのだ。それを,ヤツめ,女子供をたてにするとは。私 は違う。自民党の跌はふまんぞ。」 しかし,沖縄開発庁長官の動きもはやかった。早々に,沖縄入り死,辞令を発 する。 「私は,国務の代行者である。周辺有事に際し,アメリカ軍に協力を表明する。 沖縄県知事は,投票により正式にえらばれた市民の代表である。その市民の代表 がめいじるのである。これに反対するものは,国賊とみなし,民主主義をふみに じるものとして弾圧する。」 詭弁だ,俺様MJは辞令の内容をみながらそうおもった。多分,辞令をみた全 ての人間はそう思っただろう。 が, 知事はおしきられ,市民を拘束する方向へむかった。 後日,そのなかには,米軍兵にレイプされた小学生の家族もふくまれていた。 「ばかめ。」 幅広のネクタイ,でメガネをふく,先生。 「知事は,対応をあやまった。沖縄開発庁長官には,なんの権限もない。それを 承知で無理難題をおしつけていることを公開すればよかったものを...。」 ついでに,顔までネクタイでふく。 「しかし,先生。これで,先生にとって状況は有利になったはず。」 俺様は,先生に耳打ちした。 「だまれ,MJ。私はあんなヤツのちからなどなくても総理のイスぐらい座って みせるわ。それとも,貴様,俺には無理だとおもっているのか!」 先生の逆鱗にふれ,俺様は思わず身をちぢめる。 「まあ,いい。MJ,貴様はどうやら掃き溜めの中にダイヤを見つけるのが得意 らしいな。」 が, 沖縄県知事の命令は30分で,凡人総理の権限でとりけされ,箝口令がしかれ, 事件はいっさいおもてにはでなかった。 俺様は先生に言う。 「さすがに,長老たちのうごきは素早いですね。先生。」 あいかわらず,ネクタイでメガネを拭く先生。 「すでに,つぎのてはうってある。」 自信満々にこたえると,側近に水をもってこさせる。 「これじゃぁ,会社の機能がマヒしてしまう。」 超日本電気の,海外取り引き部門はパニックになっていた。 警視庁の電脳部門が,企業取り引きに不法があるとの疑いで連日干渉してくるか らだ。 しかも,コンピュ−タ−セキュリティ−も公務の名目で次々とハッキングされる。 つい,先日も,捜査に非協力的だとして専務以下,3名が逮捕拘束されたばかり だ。 軽井沢の別荘。 「小僧め,やりおるわ。」 関東軍参謀だった老人が言う。 「わたしに,まかせてもらおう。良い考えがある。」 国鉄解体をなした前総理大臣は不適に笑う。 ポンポン! 手をたたくと, 奥のドアがひらき,ひとりの女性がでてきた。 「ほう。」 参謀だった老人が感嘆をもらす。 「わたしが,説得にまいります。」 凛とした声で女性がいった。 「なに,老いぼれの使者だと!」 警察族の元大臣はいった。 しばし,考え。 「あおう。」 ネクタイで顔をぬぐいながらこたえる。 チャッ と,ドアの音とともに,女性があらわれた。 「これはこれは,目白の女帝がなにようで。」 にこりと笑う,女性。 「今度の件について,私どもは,あなたのみかたにつかせてもらいます。」 「しかし,私が勝つとは限らないが,それでも....。」 キングメ−カ−の娘はうなずく。 「立派な見識をおもちだ。」 先生は,ネクタイで顔を拭く。 「つきましては,わが一族に対する保障としての公文書をいただきとうぞんじま す。」 女史のことばにたいし,先生の顔あ用心ぶかくなる。 だが,決断は早く, 「わかりました。今日中に文書にしておきます。」 「ありがとうございます。」 女性は頭をさげた。 「NMD(米国ミサイル防衛網)にたずさわる。ボ−イングロッキ−ドの情報を 提供いたしますわ。」 「期待させてもらおう。ところで,あなたが説得してくださる他の者たちにたい しても,保証書が必要かな?」 「求める者にはおだしください。それ以外のものには必要ないとおもいます。」 キッパリと女史はいう。 「それはそれは,」 先生はわらった。 (恐ろしいほど,シャ−プなおんなだ) 腹のなかで,先生はしたをまいた。 「さしあたり,罪をみとめた者は釈放しよう。これで,企業の業務には影響はで ないハズだ。」 にこりと笑うと,女性は出ていった。 (このわたしと,老いぼれどもを両天秤にかけるとはな) 先生はひとりごちた。 その直後,不審船の進入が報じられ,ただちに防衛ラインの対策がおこなわれ ることとなった。 「官房長官に伺いたい。」 官房長官執務室に,新東京都知事はおとずれて尋ねた。 「うかがおう,ただしてみじかに,かつ論理てきに願いたい。」 論理的にといわれて,小説家でもあった新知事は名誉をキズつけられ怒りがこみ あげたが,全力で自制した。 「ストレ−トに言う。自国は自国の軍隊でまもるべきだ。横田の基地など不要だ。 まして思いやり予算など,東京都への負担は重すぎる。」 官房長官は冷静だった。 「軍事的ロマン主義の夢想など,小説のなかだけにしてもらいたいな。」 しかし,都知事はひきさがらない。 「民族の誇りはないのか?」 「誇り?」 カミソリといわれた老人のもとにいた。現,官房長官が師匠以上の鋭さでにらみ つける。 「実績なきものの大言壮語など,政府の基本方針にするわけにはいかん。」 「実績がないだと。」 新東京都知事は,おおまたに一歩を踏み出す。 「国会議員でもあったこのわたしのどこが....。」 「君の実績はよくわかっている。美濃部に負け,中川のしたでウロウロしていた のもな。NOといえる.....。」 官房長官は最後まで,いいおえられなかった。 「きさま!」 怒号をはっした都知事が,床を蹴って,官房長官になぐりかかった。 室内にいた人々は,東京都知事が内閣官房長官の襟首をしめあげるという前代未 聞の光景を数秒で終わらせた。 秘書官が2人がかりで,都知事を押さえつけたのだ。 官房長官は服のちりをはらうと,わわらぬ冷静さで立ち上がる。 「民族の誇りとやらで,太平洋戦争では数十万の軍人がしんだのを忘れたか。」 「.......」 都知事をおさえつけている秘書官が訊く。 「しかし,あまりにもアメリカ軍にまもられすぎているのでは。」 冷静に答える官房長官。 「横田基地には,国連軍がいる。ちゃんとイギリスとオ−ストラリア将校が派遣 されておる。それを追い返すことは,わがくにが国連を脱退するととられかねん。 」 再び,カミソリのような眼光で都知事をにらむと, 「東京都知事は,都の財政だけを立て直していただこう。国会議員でもないのに 国策への発言など,いったいだれのきょかを得ているのか。」 都知事が,ぐうのねもでないのを確認してから部屋をでようとし,と, 「念のために言っておく,都が私兵をあつめることを禁じる。また,伊豆七島を 含む南鳥島など,領海を他国に売り,それをもって財政をおぎなうことをきんじ る。」 すさまじい形相で,官房長官をにらみつける都知事。 自他ともに愛国者である自分を売国奴よばわりされるとは..., しかし,都知事のいかりのこもった視線を平然と受け,悠然と官房長官はへや をでた。 そのころ,俺様MJは,大阪北込にいた。 旧CIE(民間情報教育局)のたてものにいる。 CIEとは,第二次世界大戦後に日本の教育制度を改革するためにGHQがせつ りつした部局であり,アメリカの文献が閲覧できるのである。もちろん,現在は, 大阪,アメリカ総領事館の所有地である。 「久しぶりだな,MJ」 「おひさしぶりです。ケ−タロ−さん。」 ケ−タロ−とよばれる老人は,やせがたで,身長は180はあろうか,しかしす でに80才はすぎている。 「ここなら,だれにもじゃまされず。おまえとはなせるからな。」 ケ−タロ−老人は,煙草にひをつける。 「デ,わたしを呼び出したわけはなんだ。」 俺様は緊張した。さすがに,死線をくぐりぬけてきた戦中派は,俺様のような後 方勤務とは迫力がちがう。 「実は,最近の日本の国粋化について....。」 俺様にみなまでいわせず, 「わかっておる。軍国主義をつぶすため,教育制度を6・3・3制にしたのが, 半世紀でくずれるとは,...」 感慨深げに,タバコの煙をはく。 「やはり,北朝鮮や中国に対抗するためには仕方ないのでしょうか。」 「たい,中国のカ−ドとしてはな。だが,それ以上のちからを日本にもたせるわ けにはいかん。」 「と,いうと。」 俺様は身をのりだした。 「極東において,東南アジアが鵜飼の鵜であるように,日本は,アメリカが世界 一の軍事力を維持する,技術国でなければならん。」 「はい。」 「今,韓国が一番恐れるのは,38度線の地雷を撤去し,人民下放をされること だ。北朝鮮自体がつぶれれば,ロシアや中国にも人々は逃げるが,半島に逃げ場 はない。」 「...」 「しかも,おなじ民族だから,たすけないわけにもいかず。世界不況のひきがね になりかねない。その時,極東に金がないと,おさえきれん。」 「うう..,」 さすがの俺様も,こうハッキリいわれると反論の余地がない。 「日本は,国としての隆盛はすぎた。貴様も探偵なら知っておろう。どく入りカ レ−事件を。」「リサ−チ業です。」 俺様は訂正した。 「どちらでも良い。呼び方は,日本の保険業者は,事前の調査にパスして契約し た者をも詐欺でうったえて金を出し渋る。これがまともな保健業者か。」 俺様は,灰皿をすすめる。 「わしなら,無罪にする自信はあるがな。」 「と,いわれますと。」 灰皿にはいをおとしながら,老人はしゃべる。 「牛の血を長時間煮詰めると,もっとも安定した青酸カリになる。やつらは,牛 丼や牛鍋が好物だったそうだし,カレ−も寸胴で長時間煮たそうだからな。」 やはり,こわい人だ,警察の盲点をズバリとついてくる。 「ところでMJ,もうひとつ,問題があるのじゃ。」 「は,なんでしょうか。」 「属地主義じゃよ。」 「?」 俺様は首をかしげる。 「フィリピン人とのハ−フの問題で,いままで父親が日本人でなければ国籍が与 えられなかったが,現在では,日本国内でうまれた者に国籍をあたえておる。」 「わかってます。」 俺様はムッとした。 リサ−チ業ならだれでもしっていることだ。 「海上防衛によって,蛇頭による密航はくいとめたが,出稼ぎによる中国政府発 行の正式な海外渡航はとめられん。中国系日本人がふえるぞ。」 「確かに。」 俺様はうなずいた。 「どうした,MJ。おまえのついている先生はどうおもっているのかな。」 「たぶん,予想だにしていないと思います。」 「これ,というのも,好景気の時,外国人労働者を大量にいれたしっぺがえしよ。 」 老人は笑う。 俺様は追従するきにもなれず,ほうほうの体でにげるようにかえった。 「一条寺はどうした....。」 東家の大広間では,第一王子が怒っていた。 「皇子,いかがいたしました。」 持卒がとう。 「これを見よ。」 新聞の一面をゆびさす。 《憲法改正に47%支持》 CX新聞 「コ,これは。CX新聞といえば,鹿取様の企業。」 「そうだ,鹿取がわたしを裏切りおったのだ。」 皇子は吐き捨てるように言う。 「し,しかし民間企業や財閥が政権にこびるのは当然であり,一方的に非を鳴ら すわけには...。」 皇子は不快な顔をしたが,持卒のいうことももっともだと思い,怒りをしずめる。 「すまん,いいすぎた。」 「おわかりいただき,ありがとうございます。」 率直なひとがらの皇子。 「だが,一条寺はなにをしておるのだ。」 「はい,もうまもなくこられると思います。」 持卒が返答すると同時に,定年退官した,元京都方面総司令があらわれた。 「一条寺,ただいまもどりました。」 「儀礼など不要だ。それより,ハゲどもはどうだ。」 「はっ,なかなか手強く。」 「だろうな,そうおもって良いものを与えよう。」 皇子は,持卒にめくばせすると,若い儀杖中隊長があらわれた。 「お久しぶりです。一条寺さま。」 「おお,君は。」 驚く,一条寺。 「伸之助,あれを見せてやれ。」 一冊の報告書を,伸之助とよばれた青年隊長が,一条寺にさしだした。 それは,公安当局がかつて,日本人拉致疑惑に関し,韓国系国会議員を自殺に おいこんだ。 それが,しくまれた冤罪事件である旨を報告したものであった。 長い時間をかけることなく,一条寺は全文をよみ終えると,ため息をついた。 「で,コレをいかがなさいます。皇子。」 一条寺は,訊く。 「検察にわたす。もちろんマスコミにも流す。」 「そ,それはおやめください。」 一条寺がうめく。 「なぜだ,謀略によって国が成り立つわけではなかろう。」 「しかし,政治は奇麗ごとだけではすみません。」 「イヤだ。これ以上,やつらのさしでぐちを許す気はない。情報公開が時代の流 れなら,やつらにもあじあわせてやる。」 皇子は本気で,怒りはじめる。顔が赤く,上気している。 「憲法改正と言うなら,統帥権をかえしてもらおう。日本全国に檄をとばせ。」 「お願いですから,お考え直しください。」 一条寺は哀願する。 「なぜ,私が譲歩しなければならんのか。第一,やつらが私に戦いをしかけたの ではないか。それとも,そんなに,この私に頭をさげるのがイヤか。」 皇子の怒りに,一条寺は絶句した。 と, 伸之助とよばれた青年隊長が言う。 「しかし,このままことをおこせば,内乱のもととなります。しかるべき人物を たて,釈明をさせ,それでも御不満なら,罪をあきらかにすればよろしいでしょ う。」 さすがに,伸之助のいうことが筋のとおったものなので,今度は皇子が答えな い。 返答なしは,同意とおもい。 「よろしくおねがいします。一条寺さま。」 青年は,一条寺に頭をさげる。 「それでよろしいですね。皇子。」 青年は,念を押すのもわすれない。 「わかった。伸之助がそこまでいうなら,一条寺,人選を行なえ。」 ごうぜんと,皇子は命令した。 『沖縄をサミットの開催地とする』 TVにニュ−スがながれる。 大阪からもどり,俺様は先生の事務所にいた。 「あいかわらず,人質作戦とはな...」 先生はネクタイで,汗をふきふきぐちる。第一秘書が訊く。 「人質?」 「わからんのか。サミットをひらくということは,要人が沖縄にくるということ だ。そんなところを攻撃してみろ,世界を敵にまわすことになる。」 「なるほど。」 第一秘書がうなずく。 「ところで,MJどこへ行っていた。」 「.....」 俺様はこたえない。 「まあ,いい。それよりどうだ。かわったことはないか。」 「先生,つきましてはお人払いを。」 「かまわん,ここにいるのは人柄の知れた者だ。」 「ですが....」 「わかった。皆,すこし席をはずせ。」 俺様は手短かに,大阪での事をはなす。 「なるほど,いまだ冷戦は終わらず。ということか...,考えておこう。」 「それから,先生,病院の方ですが。」 「うん? 何か問題でも。」 「いいえ,軍資金は問題ありません。別の問題です。」 「なんだ。」 先生はポケットから,黒ぶちのメガネをとりだし,かけた。 医療記録のことです。ご存じのように,市民デ−タ−をサンプル化するため,コ ンピュ−タ−に繋いでいるのですが。」 「だから,なんだ。」 「全国ネットの医療デ−タ−につないだところ,自民党の大物のカルテもひきだ せるのですが....。」 俺様は,口を濁した。 「政敵を攻撃するのに,個人的欠陥をつくのは常識ですが,先生の判断をあおぎ たくて。」 「で,どうしたいんだ。」 先生は,ハッキリと言い放つ。 「わたしはイヤです。」 「なぜだ。」 「お人が悪い。先生が土石流で人々を助けられなかったのを,後悔しているのと 同じ理由です。」 「わかった,卑怯もののまねはしない。」 先生は快諾した。 俺様はホッとしつつ。 「ですが,あの沖縄開発庁兼.官房長官が見過ごすとは思えませんが。」 「自業自得だ。おいぼれどもを哀れむきもちにはなれんな。」 「ですが,その矛先がこちらにむかないという保障はありません。」 先生はうなずく。 「韓国のことはほうっておいて良い。北と南が一つになて南の経済が崩壊すれば, 安い労働力を供給することになるのはドイツをみれば解かること。」 「ハイ。」 「それ以外は,いちおうの手を打っておけ。」 先生は,メガネを外し,事務所の女の子を呼び入れ,会話は終わった。 BOQ(陸上自衛隊,幹部及び一般客専用宿舎)の一室。 「くそっ! 警官どもめ,思いあがりおって。」 「まったくだ。国に命を捧げたおれたちをなんだと思っている。」 「猟官運動だとわらわせるな!」 数人の士官が憤った会話をしている。 と, ドアの音がして,次席幕僚長がはいってくる。 「なにをしている,きさまら。」 最敬礼の士官たち。 「警察の横暴は見過ごせません。」 「隊の内部には,憲兵や査察官がいらっしゃるではありませんか。」 「三矢参謀!」 参謀とよばれる男は色の浅黒い,中年過ぎの中肉中背の男だ。 男は首をふる。 「だめだ,もう少しキナ臭くなるまでまて。」 「しかし...」 士官がいいつのる。だが,参謀は頑としてきかない。 「軍人が警官ともめると,国家の損失になる。だが,国家命令がでれば,戦車で パトカ−を踏みつぶしても罪にはならん。」 士官たちは目をかがやかせて訊いた。 「なんだと。」 旧国鉄を民営化した老人は問いを発した。 部下が,あわてて説明する。 「ですから,何者かが御前の医療記録んいアクセスしたようです。」 「ウ−ム,それはいけませんな。早速,手をうたないと。」 側近が口を差し入れる。 「いや,まて,わしに考えがある。わしとよくにた身代わりをたてよう。」 「身代わり?」 側近が訊く。 「そうだ,歳,格好,病歴のにた行方不明者のな。」 「.......」 部下はメモる。 老人は続けて言う。 「それでだ,三矢,三矢はどこにおる。」 老人が首をめぐらす。 「はっ,ここにおります。」。 軍服姿の次席幕僚長,三矢参謀がいた。 「三矢,確か,警察のコンピュ−タ−と自衛隊のコンピュ−タ−はつながってお ったな。」 最敬礼の姿勢をくずさず,参謀は答える。 「はっ,自衛隊,採用者の思想をしらべるためにつかわれております。」 「では,何者がわしの病歴をしらべようとするか監視しておれ。判明しだい告げ にこい。」 老人は命令すると, 思索にふけりはじめた。 まことに甘いと自覚してはいるのだが,老人は政府に期待していた。彼に謝罪 し,かえってくるのをもとめることを。 本来なら,期待してよいはずだった。国鉄を分割民営化し,行政改革への道す じをつけたのだから。 しかも,みじかな脅威がたかまりつつあるいま,軍人としての才能をももとめら れる。 また,公安当局もおさえねばならない。 日本人拉致が大きくなればなるほど,金大中事件との対比がうまれる。 彼の不法逮捕,謀殺未遂から日本脱出にいたる経緯があきらかになれば,韓国政 府が法の尊厳をおかしたことが暴露され,民主主義政治の公正さにたいする信頼 をそこねることになる。 まずは,身中の虫をたたかねばならんな。 MJリサ−チカンパニ− 「お−い,もどったぞ−。」 俺様はバイト君も帰りをつげる。 「あっ,MJさん。おかえりなさい。」 バイト君こと,ハロルド長田は,あいかわらず,パソコンの前で返事する。 「仕事は?」 「MJさんが,あんまりひきうけないんで,こなくなっちゃいましたよ。」 「べつに,いいじゃないか。日本企業の会社あんないでもうかってれば。」 バイト君は口をとがらす。 「そのかわり,べつのしごとが増えて,大変です。」 「別のしごと?」 俺様は訊いた。 「ええ,不動産登記の写しをFAXで送ってくれとか。どうします?」 俺様は腕組みした。 「ウ−ン,断れ。法律の一線をこえると面倒だ。」 「わかりました。あと,スイマセンがMJさん,お願いがあるのですが。」 「お願い? 金ならないぞ。」 即座に俺様は返事する。 「ちがいますよ。私の免許証更新についてきてほしいのです。」 「うん?」 俺様はいぶかる。 「最近,なんかマ−クされてるようで。」 「わかった。じゃ,ちょっとまってろ。」 俺様は,再び,外へでた。 行くさきは,海軍基地である 。 身分証明書を提示し,情報機関のレンタルショップへ行く。 「よ−う,MJ。久しぶり,どうだ−。」 現職員のひとりがいう。 「マイク,こっちはあいかわらずさ。それより,コレ,借りるよ。」 太った,典型的アメリカン(ウイルフォ−ド・ブリムニ−似)のマイクが腹の肉 をタプタプさせて,店の中をうごきまわる。 「そんなに太ってたら,勤務にさしさわるぞ。」 俺様がいう。 「いいんだ。あと半年もすれば定年で退役さ。だから,大目にみてもらっている。 」 俺様は,バイト君のことを手早くマイクにはなす。 「たいへんだな。ま,こっちも海兵隊が,北朝鮮攻略の臨戦態勢だがな。」 俺様は,SF映画にでてくるカメラ付のハ−ネスをかりる。もっとも,実際はピ ンカメラでずっと小型だ。しかも,米軍用,超周波数帯だから,衛星通信で映像 だけでなく音もひろえる。 「デ,これだけか。」 マイクが訊く。 「ああ,それと明日一日,モニタ−していてくれ。」 「わかった,当然,ビデオにも撮っておくんだろ。」 「ああ。じゃ,これで。」 俺様は,クレジットカ−ドを差し出した。 「おほっ。ゴ−ルドカ−ドじゃないか。MJ,相当もうかっているな。」 マイクがにやにやする。 「ま∼な。退役したらうちにくるか?」 俺様は一応さそってみる。 「もちろん,行くよ。宝の山をみのがす手はないからな。」 そして,マイクは俺様にウインクした。 翌日.免許更新センタ−。 バイト君が,ハロルド長田の本名で免許証を差し出す 。当然写真も差し出す。 が, 担当の警官が,コンソ−ルのキ−ボ−ドをたたく手がとまる。 チラリと,俺達をみると,無言で別室に行く。 「どうしたんですかね,MJさん。」 ハロルドが心配そうに顔で俺様に訊く。 「な−に,百年コンピュ−タ−に要注意人物と添付してあって,上司に判断をあ おぎに行ったのさ。」 俺様はこともなげに答える。 すると,予想どうり数分後に,担当者がもどり交通映画の上映室を指し示す。 そして,俺達の後ろから,ひとりの屈強な巡査が追尾してきた。 一応,確認のため,書類と更新された免許証をみる。 「あなたは?」 警官は訊く。 「つきそいさ。」 俺様は簡単にこたえると,パスポ−トをみせる。 「ふむ,確認してよろしいですか。」 「どうぞ,映画,みてもいいですか?」 「かまいません。」 というわけで俺様たちふたりは,つまらない映画をみる。 しばらくすると,外務省にでも問いあわせただろう。さきほどの巡査がもどっ て来,パスポ−トをかえしてくれた。 あいかわらず,つまらん交通映画が終わると,ヒステリックなカルト教団のよ うな指導員が,自慢げにはなす。一人一人に今みた映画のなかでの車種や,人の 動きを質問する。 「はい,次。」 「わかりません。」 俺様は憮然としてこたえた。 「わからない,ハズがない。もう一度えいがをみるかね。」 あまりの馬鹿気た質問に,俺様はあっ気にとられた。 「イヤだ。」 「なにっ!」 俺様の答えに,指導員は怒りだした。 「貴様,もう一度いってみろ!」 「おまえにきさまよばわりされる覚えはない。」 俺様は挑発する。 「自動車にのって百年もたたぬ日本人に解釈される気はない。めざわりだ,うせ ろ。」 「MJさん。」 あわてて,ハロルドが止めようとする。 「とめるなハロルド.俺様がアメリカ人であることはさきほど確認したはず。」 俺様は首をめぐらし,さきほどの巡査をみる。 あわてて,巡査は,指導員に耳打ちする。 チッ! 鋭い舌打ちをする指導員。 「なんだ,そのたいどは,それでも警官か,素手の民間人にたいし,権威や武力 で脅し,一体だれにむかって功績をほこるつもりだ。」 俺様はキレた。 東京都一丁目一番一号 謁見の間 高貴な紳士が中央の玉座に座す。 傍らには,持卒たちが,その中に東宮寺の姿もある。 「東宮寺,皇子はどうしておる。」 「ははっ,第一皇子にあらせられては,我が息子の伸之助を付けてありますので, まずは,ご心配なさるようなことは,....」 と, ハデな音をたたて,一人の初老の男が,まろびでる。 「なにごとか,御前であるぞ。」 東宮寺が叱責する。 「ハハッ,申し訳ございません。」 おとこが平身低頭する。 その顔をみて, 「鹿取ではないか。」 玉座の主が声をかける。 「そのとうりです,お上み。」 ふと,声のほうをみると,第一皇子がいる。 「私がつれてまいったのです。鹿取,もう一度,はなせ。」 皇子が詰問すると,初老の男はおびえながらはなす。 「お許しください。お上み,公安当局に味方にならねば営業許可を取り消すとい われ。」 高貴な人は,静かにお尋ねになる 「しかし,そのほうも,大会社の社長ではないか。」 「いいえ,彼らは私の古い過去や子供たちのことまでもちだし,中立的立場はゆ るさない,と...。」 必死にいいわけする鹿取。 このさわぎを,ききつけ,儀杖隊員が数人駆けつける。 「父上,いったいなにごとですか。」 伸之助が,東宮寺に訊く。 だが,東宮寺がはなしているうちに,第一皇子はみるみる怒りをあらわにし,か たわらの儀杖隊員のさ−ベルを奪うと。 「だまれ,恩をあだで返すとはきさまのことだ。手打ちにしてくれるわ!」 大喝する皇子。あわてる東宮寺。 (いかん,伸之助) (はっ) 親子でめくばせすると,伸之助が,皇子のうでを制す。 「いけません,皇子。ご自重下さい。」 「エ−イ。はなせ,伸之助。」 「たとえ皇子でも,刀を抜けば無事では済ません。」 皇子が口をひらいて,なにかいおうとすると。 「なにをしているおまえ達,取り押さえよ。」 東宮寺の命令一下 わ−っ と,儀杖隊員や持卒が二人にのしかかり,重ね餅をつくる。 「あわわわ....」 頭をかかえてうずくまる鹿取。 東宮寺が再び命じる。 「つれてゆけ。」 ズルズルと鹿取は引き摺られて御前をさる。 「まて!」 人垣をはねのけ,憤然とする皇子。 だが,その眼前にたちふさがる伸之助。 「おやめください。」 「どけ,伸之助。」 「いいえどきません。どうしても,といわれるのなら,わたしがお相手いたしま す。」 皇子の顔が悪鬼の形相にかわる。 サ−ベルをにぎる手にちからがはいる。 一瞬,室内の全員に緊張がはしる。 「ふっ,しようのないヤツだな。伸之助。」 「いわせたのは皇子です。」 大きなため息をひとつくと,皇子は手にしたサ−ベルをほうりなげた。 「しかし,これで,我々の負けですね。」 伸之助が言う。 「どうしてだ。」 皇子が訊く。 「マスコミを抑えられては...。」 フフフ,と皇子は笑うと,近くの持卒に命じて,ノ−トパソコンをてこさせる。 「これを,みろ。」 皇宮警察のホ−ムペ−ジをひらく。 と 伸之助の報告書がでてくる。 「これは...」 驚きの表情で,皇子をみる。 「勝利か,より完全な勝利か。」 皇子は自慢げに言う。 「恐れいりました。」 「おまえに感心されるためではない。それより,やつらどうするかな。」 内閣官房長官執務室。 官房長官兼.沖縄開発庁長官は,2人の来客をむかえていた。 元.公安調査庁出身の役人と,元警視庁出身の役人,例のふたりのハゲ頭達であ る。 皇子をおいつめたつもりが,おもいもかけない逆襲をこうむったので,相談にき たのである。 「こ,これは。公安調査庁だけではなく,その正当性をあたえている政府への挑 戦も同様では,ありませんか。」 二人はいいつのる。 が,官房長官は平然と, 「そういう論法は,あまり好かんな。」 冷淡に答え,陰険な扇動に乗らない。 「嫌われるのはかまわぬが,足をひっぱられるのは迷惑だ。」 手をふって,二人を退出させる。 事務次官が訊く。 「いかがいたしましょうか。」 「フム,しおどきか,所詮は使い捨てだ。」 「あのふたりを見捨てるので。」 「これ以上は,害あって,益なしだ。それとも,わたしがあのふたりを助けねば ならん理由があるか。」 「.....」 事務次官はだまってひきさがった。 ひとりになると,冷徹な長官はイスに座り直し,ひとりごちた。 「獅子の子と猫の子を見誤ったか。」 数日後 当局は正式に回答をださねばならなくなり,ハゲ頭達は二度とマスコミに出るこ とはなかった。 「どういうことだ,MJ。」 俺様は先生の事務所で問われていた。 「それは,こちらの言い分です。わたしが悪人でないことは明白なのに,100 年コンピュ−タ−に記録があるのはどういうことですか。」 俺様は,ポイと,望月の名刺を眼前にほうりだす。 「しらん,わしはしらんぞ。」 先生は否定する。 「だったら,今,スグ削除して下さい。」 俺様はつめよる。 「先生は,いまガイドライン法案でお忙しいのだ。」 もったいぶって,第一秘書が言う。 「だまれ,口をはさむな。」 先生が大喝する。 「先生,前線へでるのも結構ですが,彼我の戦力分析をしないで勝利を得られる とおもっているのですか。」 俺様のくりだした矛先は,回避できなかった。 「わかっている。」 憮然と答えると,第一秘書をしかりつけ,即座にやらせた。 俺様はピッタリはりつき,念のため,100年コンピュ−タ−に入力された俺様 の情報が再執行で復元されたりしないで,完全に消滅するのをみとどけてから, 先生に,頭をさげた。 「ありがとうございます。今後,このようなことがないようお願いいたします。 」 先生はニガニガしい顔でこたえると,うなずき,国会へ大慌てで戻っていった。 途中,第一秘書は3番目に降格された。 五菱重工 重役室.東条英樹の息子が,TVで情報公開のニュ−スをみている。 「猟犬は,狩場の獲物をけっしてかりつくしたりはしない。次は自分がにてくわ れるだけだからだな。」 思わず,独白する。 「なんですか。」 若い部下が尋ねる。 「うん,ああ,警察も飯のたねがなくならんということだ。」 「はあ。」 「情報公開で,相手の住所や傍聴で,顔がわかると,もめごとが増えるのさ。」 「?」 若い部下は,理解していないようだ。 「わからんのか,もし,刑事事件の刃傷ざたの結果に不満な時,どうする? 復 讐しようとするだろう。」 部下はうなずく。東条は説明をつづける。 「すると,相手の一族が,仇だとして,報復合戦がつづく。なんのことはない, 江戸時代の敵討ちさ。」 「なるほど。」 「しかも,この平成大不況だ。ヤクザものどもが増えることはあっても減ること はない。」 若い部下は訊く。 「しかし,なぜです。犯罪を防ぐのが警察の仕事なのに。」 「それはな,自由党と自民党が連立するということは,役人をリストラするとい うことだからだ。」 「はあ?」 「しかし,実際.事件が起これば,警官の数を減らすことなどできはしない。」 「.........」 「状況設定のうまいやつだ。」 東条の頭に,よくネクタイで汗を拭く男が思いだされていた。 ディ−プ・インスペクタ−は,主張していた。 「ですから,中国大使館は完全な誤爆です。だって,中国だって,経済援助をは やくひきだしたいわけだし...。」 ここは某TV局内。 ボスニヤの特番だ。 目の細い,シワ顔の司会者が言う。 「ちょっとまってくださいよ。そうすると,なんですか,中国はさわがないほう がいいと?」 なまりのある日本語で,ディ−プ・インスペクタ−が,早口でまくしたてる。元 ABC放送勤務のテロップがはいる。 「ですから,ロシアや,ドイツのように,なることはわかりきっているんですか らね。」 「それはおかしい。」 こちらもなまった日本語。 リ−・リンチェイ少尉。新華社通信のス−パ−が入る。 色白の鼻筋のとおった顔。 「今回のでき事は,クリントン大統領が,冷戦がおわったと,いいふらしつづけ たから,NATO軍は我が大使館を攻撃したのだ。」 「....」 「いいですか,あなたがたアメリカ人は,日本が真珠湾攻撃のとき,不意うちと いったではありませんか。まさしく,今回がそうです。」 てをあげて,目の細い司会者が訊く。 「なに,今回は不意打ちと。」 「イヤ,だから,誤解,誤爆だと,...。」 ディ−プは必死にいいわけする。 すると,リ−少尉は反撃する。 「深夜,しかも,シビリアン(文民)を殺すとは,アメリカは国際法を守ること ができないのか。それが,あなた方の人権ですか。」 「ウウッ。」 つい,と,リ−少尉は,司会者にむきなおると, 「来年,沖縄でサミットがひらかれるそうですね。」 うなずく司会者。 「我々も,参加させてもらおう。それが今回の謝罪だ。」 在日,中国大使館。 事態の始末をつけるため,孫文化相が来日している。 リ−少尉が訊く。 「沖縄サミットに参加するだけで,よろしいのですか。」 孫文化相が,マスメディアにでるときとはちがって厳しい顔で答える。 「よいのだ。」 「し,しかし..。」 「沖縄に人を派遣する名目で,九龍の軍をうごかせばよい。」 「それでは,第三次世界大戦のひきがねに...」 「なりはせん。アメリカが全力え青天白日軍(台湾)をおさえよう。」 「ははっ」 それにしてもと,孫文化相は思う。 首相と同郷としても,損な役割をおしつけられたものだ。 自分が世にでる機会がもうすこし早ければ,少しは楽な戦い方ができるだろうに .....。困ったことに中国共産党は,民主主義に対して屈する膝をもってい ないのだ。 「文化相。交渉である以上,目的を知りたいのですが。」 少尉は訊く。 文化相はうなずくと。 「旧満州域に,共産党の内政自治権をみとめさせる。望なら,平和と共存を,そ うでないときは。」 「そうでないときは,....。」 少尉はごくりとつばを飲み込む。 「そうでないものを。既に,天然痘による生物兵器が完成されておる。」 「天然痘!」 少尉はとびあがった。 「シ,しかし,それでは,世界全人類がほろんでしまう。」 ニヤリと文化相は笑う。 「ワクチンならある。それに,我国には,漢方薬がある。」 「しかし。」 事の重大さに少尉も,慎重にならざるおえない。 「十全大補湯をべ−スにした,免疫活性薬の開発に成功したのだ。もともとは, ガンやエイズ用だったのだが,..」 あばた顔の技官がものかげからすすみで,薬瓶を差し出す。 「それが,現物だ。一年近くもあれば,処方戔もくにじゅうにまわるだろう。す でに,技官自身で人体実験ずみだ。我々も死ぬ気はない。」 別室での,少尉にワクチンと薬の投与を命じると,一人になった。 「果たして,生き残るのは...,オレか....,それとも...,。」 孫文化相の目が鈍く光る。 都内経済研究所。 俺様は,いま,頭を抱えていた。 もと,財務省長官グリ−ンスパンが言っていたように,現在アメリカは債務超過 である。にもかかわらず。経済が好調なのは,株式投資に寄るもので,ニュ−エ コノミ−トよばれている。 いっぽう,社会科学の雄が崩壊したので,アンチテ−ゼである。自由主義の理 論にも亀裂が生じている。これはアメリカの世界戦略市場にマイナスであり,よ り高次の理論体系をみいだすべく,左翼理論の根源である一神教(原始キリスト 教を含む)から,多神教,トロイカ体制や,三位一体の神学論までひもとかねば ならなくなったのだ。 「こういうものこそ,コンピュ−タ−で接点をさがしてほしぜ。まったく。」 ひとり,ぶちぶちとぼやくが,山のようにつまれた原書や,マイクロフィルム閲 覧機。パソコンのインタ−ネットによる検索。コピ−し,プリントアウトし,の 繰り返しである。 いいかげん,地味なしごとなので,イヤになるのだが,個人が組織を出し抜くの は,先行して,詳しくしらべておく必要がある。 「どうだい,MJ。」 ディ−プ・インスペクタ−が訊く。 「やあ,ディ−プ。お先まっくらさ。まったくの手探りだよ。」 俺様は,うんざり顔でこたえる。 「だが,一年以内にみつけないと旨味はないぜ。」 「ああ。」 げんなりする俺様。 「じゃあな,ホワイトハウスへいってくる。」 「ん? 例の中国人少尉の非公式の相談て,やつか?」 「ああ,こういうのは文書だけではつたわらないからな。戻るのは一週間後だ。 」 「へいへい,カナハナ。急げよ。」 「そっちもな。」 「貴様,誰の差し金で御前の医療記録をしらべておっただ。」 官房長官は,かつて風見鶏といわれた老人によびだされ,詰問さえていた。 かたわらの三矢参謀が尋問する。 「答えろ。」 平然と,官房長官はこたえる。 「地下にもぐった,カルト犯罪者をつかまえるためには,架空の人物や行方不明 者の医療記録にあたるほかはありません。」 「うそをつけ。」 三矢参謀がくいさがる。 「では,他にどんな方法があるのか,お教え下さい。」 「信者をいためつけて,吐かせれば良いではないか。」 官房長官は鼻白むと, 「そんなこと,警察でもとうの昔にやっておる。それでラチがあかないから,地 道にやっておるのだ。」 軽蔑の眼差しが,参謀の上におちる。 いまにも,とびかからんばかりの勢いの参謀と,冷然とうける官房長官。 「もうよい,この件はこれで終わりだ。」 風見鶏とよばれた元首相は,声を発した。 が,官房長官は納得しない。 「おことばですが,私は官房長官という公の仕事につくもの,いかに実力があろ うと,官位なき御方に指図されることはありません。」 「ムウ。」 「命令は総理を介して願いたい。」 だが,凡人首相は,中止の命令を下すことはなかった。 ネクタイで,メガネをふきふき,先生は記者達の前でいう。 「獄中の首謀者を極刑にし,人心の混乱を防ぐように上申する。」 先生は,個人的に記者会見を行ない。カルト教団との住人摩擦にたいしての私見 をのべた。 記者たちが質問する。 「一般信者はどうするんです。」 先生はこたえる。 「罰をあたえるのは,国家へ,反逆した重罪犯だけだ。一般はお咎めなしだ。」 すかさず,別の記者がくいさがる。 「ですが,日本各地で問題をおこしていますが。」 メガネをかけなおす先生。 「蛇の頭だけつぶせば良い。信者といっても同じ日本人どうしだ,はなせばわか る。」 「ですが..」 「ではどうするのだ。信教の自由は憲法で守られておる。そんなざぶないヤツは 閉じ込めておけ,というのはアウシュビッツとかわらんではないか。」 さすがに,記者たちも反論できない。 「しかしですね,それは法の裁量で,...」 「では,その裁量を誰がするのだ。絶対間違いを犯さん人間がいるのか。」 「......」 「そんな,いもしない聖人君主論など,議論するにあたいせん。」 いいたいことを言い終えると,先生はさっさと席をたち,黒塗りの車で,議員会 館へむかった。 だが,その影響は内外に,大きく与えた。 外向的には,開明派として,内向きにはわずかのチャンスにも自己の立場を強化 するやりてとして。 「油断ならぬやつ。」 「なかなかやるな,小僧。」 五菱重工.重役室で,関東軍参謀だった老人と,東条の息子は話あっていた。 「まったく,抜け目のないヤツだ。」 「主義主張などというものは,生きるための方便だというのがあやつの主張だっ たはず。」 「それにしても,カルト犯への憎しみまで,おのが票に変えようとは...。」 「凡人首相の続投より,あのネクタイで汗を拭く,小僧の首班ができるかもしれ んて。」 一息つくと,老人は話題をかえ。 「ところで,公安が皇宮にしてやられたと訊く。」 東条の息子はうなずく。 「どうしたものか。」 「ふむ。他人のケンカはハデなほどおもしろいが,火の粉がこちらにふりかかっ ては迷惑。しばらく,おとなしくしておろう。」 「ですが...」 「鹿取の二の舞はごめんだ。それに,いきておれば,再戦の機会もめぐってこよ う。それとも,親子2代で,皇家の憎しみをかうか。」 「ご冗談を,」 「では,死んだふりをしておれ。ワシも,しばらく避難するとしよう。」 財閥は,しばらくのあいだ,政権の成りゆきをみまもることになる。 翌日。 新聞の意見広告欄にデカデカと載る。 一,有事に際し,危機打開という崇高な目的にむかって の挙国一致体制の確立。 二,国益に反する政治活動及び,言論の秩序ある統制。 三,自衛隊員への司法警察権付与。 四,全国のデモ・ストライキを禁止。 五,通信の国営化。 六,反戦・反自衛思想をもつものの公職追放。 七,政治家および公務員の汚職には厳罰をもってのぞむ。 悪質なものには死刑。 八,有害な娯楽の追放,風俗に質実剛健さを回復する。 危機管理愛国会 やれやれ,俺様MJは,探偵事務所(MJリサ−チカンパニ−)で,悪態をつい た。 一は,脅威がたかまったから,皆で戦おうといっている。 二は,主導権を危機管理愛国会がにぎる口実。 三,海上査察.不審船とたたかうために。 四,大陸の陽動防止。 五,NTTを無にして,自分に有利な放送。 六,中立者を排除。 七,政敵排除の理由ずけ。 八,そういえば,ヌ−ド写真をのせる週刊誌が芸術か,と,怒鳴った文部大臣 がいたっけ。 これでは大陸の軍事国とかわらない。 おそらく,キッシンジャ−は,手をうって喜ぶだろう。経済大国は,軍事大国に なる...と。 一体,なにを学んできたのか,これでは,政治体制に異をとなえるものは,ダン プカ−にのせられ,処刑場につれてゆかれる隣国と変わらないではないか。 俺様はわらった。これは,きわめつけの喜劇だ。 もっとも,本人達は大がつくほど,真面目だろうが。 軍事帝国主義を打倒するために,こちらも,軍事帝国になるか...。 こいつらの,頭の構造をみたくなった。 計画経済が,市場経済に負けたことが理解できんのか。 バブルをつぶした,総理大臣が現在の大蔵大臣として,後始末をしているという のに。 俺様は,別のペ−ジをめくる。 視点・論点では,スパイ防止法の制定を叫ぶ。 1960年代ならそれもいいだろう。だが,いまや衛星でみれば軍事施設など一 目瞭然である。論旨は,たくみに,アメリカにも法案があることをさしている。 が, レ−ガン政権でそれをやりすぎ,経済がいきずまりかけたのを,修正し,ゆるや かになったことは報じていない。 まったく, と, バイト君のハロルド長田が俺様を呼ぶ。 「MJさん。警告通知が来てます。」 パソコンのスクリ−ンセ−バ−に,Eメ−ルがひらかれる。 ピンクの熊はろくでもないメッセ−ジをもってくる。 「これは....」 俺様は,うでをくんで考え込む。 「いかがでしょう御前。」 三矢参謀は,老人の前で新聞をひろげ,時代がかったみえをきる。 「これなら,警察族の小僧にも負けません。しかも,直接,我々がおこなったの ではなく,憂国の士が表明したのですから,文句はないはず。」 かつて,国鉄を民営化し,世界中から賞賛をあびた老人は,さして,興味なさそ うに首をめぐらす。 「御前...。」 三矢はあせるが,老人に変化はない。 「ところで御前。」 別の側近が,わってはいる。 「小僧のところの私設秘書に,日系アメリカ人がいるとのことです。」 「ホウ。」 初めて,興味を老人が示す。 「アメリカ人がか。」 「はい,元CICで,今はリサ−チ業。その実,探偵みたいなことをして生計を たてているそうですが....。」 「CIC? CIAのまちがいではないのか?」 三矢がきく。 「いや,CIC(対情報戦略部門)で,正しい。」 かつての,官房長官.切れものでカミソリといわれた老人が奥のへやから歩いて くる。 「どう,思う?。」 風見鶏宰相が訊く。 「はて,なぜいまさらGHQの残党が...。」 首をかしげるカミソリ老人に比して,風見鶏老人は,食人虎の笑みをたたえ, 「良い。アメリカが相手なら,不足はない。世界一の国と再び,張り合えるとは ねがってもない。」 「困ったお人だ。相手が強いと,なお,やる気になられる。」 カミソリ老人も口では,とがめるが,まんざらでもない。 「わたしが,捻りに行ってまいりましょうか。」 三矢が言う。 「いや,現役将校の貴様ではまずい。探偵には探偵をぶつけるのが上策。ミリオ ンのメンバ−をさしむけよ。」 もはや風見鶏ではなく,青年将校の風格がよみがえってきている。 「いやはや,....。」 カミソリ老人が笑う。 「はい,もしもし,こちらMJリサ−チ。」 ハロルド長田が,元気よくこたえる。 「........」 相手は,無言でがちゃりと切る。 ハロルドは,首をめぐらし,肩をすかしてみせる。 「これで,何回目だ。」 俺様は訊く。 「10回目...です。」 ハロルドは答える。 私立探偵がよく使う位置確認だ。相手がセ−ルスのときもあるが,それもカムフ ラ−ジュだ。なんとなれば, 俺様は,そばにいるふとったマイクに訊く。 「どうだ。」 「OK。同じ場所。」 マイクが,ノ−トパソコンの画面をみながらこたえる。 「さすがに,こちらが,発信もとを衛星で監視しているとは思うまい。」 「いえ,最近。そういう映画があったから,わかっているとおもいますよ。」 ハロルドが返事すると,マイクは残念がる。 俺様は警告メ−ルをうけとると,すぐさまディ−プ・インスペクタ−に,連絡を とった。 安全を考え,大使館やべ−スキャンプの横にひっこせ。といわれたが,やめた。 数日後には,ケンジやエリカをまわしてもらえそうだ。 それんまでのあいだ,マイクを特別任務あつかいで,俺様のところへよこしたの だ。 「こういうことは,俺達が冷戦時代,さんざんやってきたことだ。」 マイクが言う。 「そうなんですか?」 ハロルドが訊く。 「ああ,こちらに情報が,9あって,敵に10あれば,情報交換しても差し引き プラス1で,こちらの勝ち。」 俺様が言う。 だが,ここのところをわかっていない日本人が多すぎる。情報は一つもださない もの,知らしむべからず,寄らしむべからずが,最良の方法とおもっているのだ。 と. サイレンの音。 俺達はみがまえたが,ちかくの民家への救急車だった。どうやら,食中毒らしい。 そこへ, 電話のコ−ルがなる。 「はい,MJカンパニ−。え! 警察? MJさんならいますが, ハア? か わりましょうか。」 ハロルドが変な顔をする。 「どうした,ハロルド。」 俺様は心配になって訊く。 「いえね,MJさんはいるかって...」 「それで,」 俺様は次のことばをうながす。 「いる。っていったら,それならいい。かわりましょうか.っていったら,切れ ちゃいました。」 「フム。」 俺様はあごをなでた。 「どうしたんだMJ。」 マイクが訊く。 俺様は,悪党にさせられそうになったことを手短かに話す。 「マイク,わるいが車を貸してくれ。いくらなんでも米軍の公用車を襲わないだ ろう。」 一も二もなく,了解すると,マイクは口笛を鳴らす。 あわてて,衛兵が顔を出す。 「MJの指示にしたがえ。」 命令を発する。 「ありがたいね。涙が出るよ。」 俺様が言うと, 「な∼に.お前さんは,リタイヤ後の金のなる木だからな。」 マイクはこともなげに言う。 俺様は,かたほおを歪めてわらうしかなかった。 ロ−ファット=リ−ジェンシ−。 ホテルの一室。 先生に俺様は,事のしだいを報告する。 「うむ,おいぼれめ。動きだしたか。」 先生は腕組みをして,椅子にふんぞりかえってかんがえる。 「つきましては,もう一度,百年コンピュ−タ−の私の記録を見て下さい。」 「ん? 以前にけしたはずだが。」 先生はいぶかるが,かつての第一秘書.いまは第三秘書に,パソコンを操作させ る。 と, 俺様のデ−タ−がちゃんとある。 「!」 秘書は真っ青になった。 「貴様,わしを騙したな!」 先生は,秘書の魂をにぎりつぶさんばかりにほえた。 あわてて,首をふる秘書。 俺様はイヤミを言う。 「よい,部下をおもちで..。」 ジロリと先生は俺様をみるが,スグに秘書のほうへむきなおると。 「お前はくびだ−!」 土下座してあやまる秘書。 第一,第二秘書がとりなそうとするが,先生の怒りはおさまらない。 やなく,俺様はたすけぶねをだすことにした。 「たぶん,彼ではないでしょう。」 「では,だれだ!」 先生はどなる。 「百年コンピュ−タ−にアクセス記録があるはず。」 あわてて,第三秘書がキ−ボ−ドを叩く。 「これは,警視庁のパスワ−ドです。」 「だれだ。」 先生がメガネの位置を片手で直す。 「それは,わかりません。」 残念そうに秘書が言う。 「警官が全部。先生の味方,というわけでもないようですね。」 俺様が言う。 「ひとごとのような口ぶりだな。」 先生はムッとして言う。 俺様は首をふり。 「いいえ,だからここにいるんです。先生のおちからをおかし下さい。」 「ふん,あなぐらから追い出すか。」 「はい。」 にせの真犯人をつかまえたといううわさをながし,逃げ出す者をつかまえるので ある。 後日,犯人はつかまった。 《警視庁,警備課警部補.望月満男。》 望月は,危機管理愛国会のメンバ−で,銀行口座に金がふりこまれ,海外逃亡寸 前だった。 拘置所。 「わたしは,愛国者だ。くさった政治を正すためにやっただけだ。」 望月はこたえる。 「だまれ,思い上がるな!」 先生は激怒した。 「賄賂をとるのは政治家個人がくさっているのだ。だが,貴様らは,言論統制を かかげた。 いいか,政治がくさるのは,政治がくさっていると非難できないところにあるの だ。」 一瞬,望月と先生の間に火花がちる。 「我々は死をかくごしている。」 望月は言う。 「死ぬ覚悟があればなにをしてもいいのか。」 先生が反論する。 「我々には信念がある。」 胸をはって,望月が答える。 「信念だと。信念がなかったから太平洋戦争に日本はまけたのか? ソ連が崩壊 したのか?」 先生の反論に,望月は作戦をかえる。 「先生,あなただって,学生運動を弾圧したではありませんか。似たもの同士で すよ。」 「ちがう。」 先生は言下に否定する。 「きさまらが,愛国者なら,さっさと朝鮮半島にでも,ユ−ゴにでも義勇軍とし ていけばよい。」 先生は望月の目を真正面からみすえて言う。 「わしがきらいなのは,自分は安全なところにいて,大口をたたいて人を操るや つだ。」 もはや,望月はしゃべらない。 「きさまには,証人になってもらう。一体,だれのために機密をもらしたのかを な!」 望月は石化した。 「貴様の意志など,必要ない。政治問題にかかわる限り,破防法がてきようされ る。おぼえておけ。」 先生はあらあらしく,拘置所を出ていく。 しかし, 翌朝。 望月は拘置所のなかで,首をくくって死んでいた。 「MJだな。」 ゴ−グルに,ア−ミ−スタイルの賊がばらばらと数人,俺様を囲む。 MJカンパニ−をでたところで俺様はつかまった。 「よくも,我々の仲間を。」 賊の一人が言う。 「仲間? なんのことだ。」 俺様は訊く。 「しらをきるな。自殺した望月のことだ。」 別の賊が言う。 俺様はそしらぬフリでとうりすぎようとする。 ツィ−. と,頭目らしき男が俺様の進路にたちふさがる。 あわせて,左右ひとりずつが俺様のうでをとる。 スス..... 両袖から,てのひらに仁丹いれのようなものが俺さまの両手ににぎられる。 ポン! ポン! かるい音がして,左右の賊は下腹を押さえてうずくまる。 じわりと,血がにじんでる。 「!」 一瞬,賊どもが何事か,と思ったとき,ふたたび俺様は賊の頭目にむかって仁丹 ケ−スのスイッチをいれる。 ポポン! 俺様の両手から,二発同時.平行に,弾がでる。 さすがの頭目でも,さけきれず,右腕をおさえて呻く。 「ううっ。」 俺様は無言で,向きをかえ,カンパニ−にむかって猛ダッシュ。 あっというまに玄関口へ。 なにごとかと,衛兵が,ホルスタ−に手をかけてこっちを見る。 大声でなにかさけぶと,俺様にむかって拳銃をかまえる。 (ヤべっ!) ヘッドスライディングの要領で,俺様は地面とキスをする。 ジャリ,ジャリジャリ.....。 アスファルトの小石と,顔がこすれる音。 その俺様の頭上を,タイヤが破裂するような音とともに, ピュンピュン弾がとぶ。 マイクたちがかけつける2,3分がやけに長くかんじられる。 俺様がもっていた仁丹ケ−スは,先頃.ヨ−ロッパで禁止された接近用の殺傷兵 器だ。 こいつは,かるくて小さく,また検査にもひっかかかない優れものなのだ。だが, 一度に一発で,二発しか挿填できないつかいすて。だが,指紋がつかない。 「天誅−っ!」 同じ頃,先生たちも襲われていた。 「死ね−っ! 売国奴ども−っ。」 悲鳴をあげて,逃げ惑う事務所の人たち。 ある男は,鈍器で頭をなぐられ,口から血をはいて倒れ。 女は,背後から首を閉められ,抵抗すると瞬時に反対方向に首にの頸骨をおられ る。 「先生!」 要人警護の屈強なSPが,先生のガ−ドをかためる。 「なにものだ!」 先生がどなる。 「きさまに,名前を教えることは任務には含まれていない。」 圧倒的優位の立場からか,頭目が言う。 「遊んでやれ。」 頭目が指揮する。 手下達が前似でる。 SPの一人が,ふところから拳銃をとりだそうとモ−ションをおこす。 だが,賊達はしっていた。警官が拳銃をうつときは,必ず,最初.威嚇のために 天上方向にうたねばならないことを。 賊はかくしもっていたサバイバルナイフを取り出し,体当たりをぶちかます。肋 骨のしたから心臓にむかって,えぐるように........。 「グわっ。」 身体に刃物がささると全身の筋肉がしまってうごけなくなる。 SPは床に倒れた。 たちまち,乱戦になる。 賊達は,サバイバルナイフで,SP達の手首をきり落とそうと狙う。 先生はゴツイ体格に似合わぬ,合気道で賊を打ち倒す。 が, 賊も,先生に投げられながらも,先生の顔にパンチをたたきこむ。 目がねが真っ二つにわれて飛び散る。 「先生!」 「うろたえるな。これしきどうということはない。」 先生は平然とこたえる。 「さすがです,な。」 賊の頭目は,床にたおれたSPの腹にささったサバイバルナイフを軍靴でける。 「ぐわお。」 悲痛な叫びがこだまする。 ける,ける,ける,ける けって,けって,けって,けりまくる。 SPの腹がさけ,ちがあふれてもける。 敵も味方も,思もわず凍りつく。 SPが,白目を剥いてひくつくのを確かめてから,ようやく頭目は蹴るのをやめ た。 と,...。 「先生−。」 俺様たちが,なだれ込む。 俺様,マイク,ケンジ,エリカ,衛兵達の集団である。 緊張がたかまる。 だが,出し抜けに思わぬ声が..., 「そこまでにしていただこう。」 鋭い声。 窓の外には,私服と制服姿の警官が数十人。 「ここは,私の顔にめんじて引いていただきましょうか。」 内閣安全保障室長だ。隣には,口を真一文字に結んだ,内閣官房長官。 「ク,クソッ!」 あわてる賊ども。 「公安のおでましか。」 賊のひとりが,にがにがしく言う。 「公安ではない,内閣安全保障だ」。 室長が再び言う。 ズイ,と,官房長官が出て。 「さっさと帰れ,バカ者ども。」 すさまじい迫力で迫る。 だが,賊の頭目は, 「きさまらなどもののかずではない。」 それに対し,官房長官は, 「ほう,首都え騒乱をおこせと誰に命令された?」 冷徹な問いに,頭目も鼻白む。 頭目が合図すると,風をくらったかのように賊どもは消える。 賊のきえた方を,ややみやってから,官房長官は,先生に向き直ると 「お怪我は?」 と,訊く。 「ない。」 と,先生が言うと,さっさと撤収する。 俺様たちにはなんのとがめもなかった。 だが,事務所の人が被害にあった事にたいする先生の怒りはすさまじく,十分な 保障を与えるよう。第一,第二,第三の公設秘書に厳命した。 国鉄を分割,民営化にみちびいた老人は,不機嫌だった。 さきほどから,官房長官の不愉快な報告をきいていたからだ。 「難局のときです。ご自重下さい。」 官房長官が言う。 「なぜだ,いち民間人の行動にワシがどうしろといえるかね。」 老人は反論する。 「でしょうね。ですが,このままほうちすれば,ご子息の選挙区に影響がでるか もしれません。」 「....」 官房長官のするどさに,老人はこたえない。 となりにいた,カミソリ老人が訊く。 「だが,警察族の小僧どもになんの咎めもないのはどうしてだ。」 「仕方ありますまい。一方を不問にすれば,もう一方もおなじにしなければ。そ れに,おおやけになれば,選挙の際,不利だと申しあげたはず。」 官房長官の返事に,もと青年将校の老人は 「わかった,こちらで善処しよう。」 「ありがとうございます。では...。」 官房長官は退出した。 と, 官房長官が退出して,しばらくすると. 賊の頭目が入ってきた。 「申し訳ありません。」 最敬礼であやまる。 「よい。初期の目的はたっした。わしの命令あるまでやすんでおれ。」 頭目は,頭をさげて退出する。 ディ−プ・インスペクタ−は客人とともに,日本にもどっていた。 「どうぞ,ホルボック大使。」 「ウム。」 横田基地内のゲストル−ムに宿をとる。 見かけは,ただのサンタクロ−ス似の親父なのだが。 ホルボックはユ−ゴデ,米軍の査察をみとめさせた。やり手の交渉人なのだ。 小一時間もすると,2人の中国人がくる。 孫文化相とリ−少尉だ。 貴賓室へ,将校に案内される。 4人がそろった。 各自席につくと, 「はじめまして,こちらが,ホルボック特使です。。」 ディ−プが,サンタクロ−ス似の白人を紹介する。 「どうも,孫文化相においてはごそうけんにあらせられ....。」 特使が口上を述べようとすると。文化相は片手でさえぎり。 「この際,気色の悪いあいさつはぬきだ。」 かたわらのリ−少尉もうなずく。 「では単刀直入にいう。共産主義の自治権などみとめられない。」 低いバリトンの声で特使は言う。 「だろうな。」 文化相は,落ち着いた声でいった。 最初に張ったりをかまし,徐々に相手との妥協をさぐる。アメリカ人のやりかた だ。」 文化相にいわれ,ムッとする特使。 「ハッタリではない。イラクもユ−ゴも,私のいったとうり攻撃した。」 自慢げに言う。 「だがそうなると,残る道はひとつ。」 孫文化相がこたえる。 「ふん! あなた方の核兵器など。所在がわかっている以上,大使館の二の舞で すよ。」 特使は軽く言う。 今まで黙っていたリ−少尉が口をひらく。 「我々にも,最終兵器がないとお思いか,...」 ゴホン。 と,一つ,咳払いをする。 まともに,ホルボルック特使の顔に咳がかかる。 「失礼。とにかく,大統領にお伝えねがいたい。当方はそんお回答を待ってから にする。」 文化相は,少尉の言葉をつぎ,用件をつたえると,席をたった。 再び,少尉はだまって付き随う。 「ふん。世界一,気の長い念入りな民族か...。」 特使はトンボ帰りで,ホワイトハウスへ帰る。 が, そんなぐちも,元気のあるうちだけだった。 ホワイトハウス。 青の部屋。ホワイトハウス内には,待ち部屋によって,色の調度品がひかえめに おいてある。 その主たる色の名前を部屋名に冠している。 ホルボックは脂汗をながしてまっていた。 横田から,戻って数時間しかしないのに熱っぽいのだ。 「風邪でもひいたかな?」 初めはそうおもったのだが,どうもおかしい。 アスピリンをもらって,のんで見ても,一時的に熱は下がったが足元がふらつく。 「うう....。」 やはり,汗がとまらない。 呼び出されて,大統領執務室へ行こうと,歩をすすめるがよろけて補佐官に助け てもらう。 「うん,どうしたホルボック。」 大統領は,書類にめをとうしながら訊く。 「ハイ。中国共産党が内政自治権をもとめておりま....。」 ドウ,と床に倒れる。 その後,ホワイトハウスは蜂の巣をつついた騒ぎになる。 ホルボックが,天然痘にかかっていることがわかり,ホワイトハウス全体が消毒 され, もちろん,特使が接触した人間すべてが,隔離される。 もっとも,わりをくったのは,特使をささえた補佐官とディ−プで,2週間。病 気観察え,まったくなにもできなかった。 不幸中の幸いは,特使の天然痘が,ごく軽いもので,さしあたっての危機はな いらしいとのことだった。 「どういうことだ。」 大統領は医師に説明をもとめる。 「これは,自然の天然痘ではなく,人為的なものということです。」 国防長官が医師に訊く。 「生物兵器か?」 「いえ,それならとっくに我々は全滅しています。多分,それに対するワクチン を摂取されたと。」 「だが,そんな覚えはないぞ。」 国防長官が語気荒くいう。 「いや,まて...」 大統領が,片手で国防長官を制す。 「たしか,ホルボックは,中国共産党の内政自治権についてはなしあってたハズ。 」 「すると,中国が...」 「ただちに,会議を招集しろ。」 「ハッ」 「わたしは,直接たしかめる。」 大統領は,ホットラインを中国にかける。 統合参謀長.国防長官.中央情報局長官.司法長官.大統領の間で話しあわれる。 「さきほど,わたしが電話でたしかめたところ,中国共産党は,連邦制の制度改 革をおこないたいそうだ。」 大統領の言葉に,一同,あっけにとられる。 ややって,国防長官が, 「ふん,中国人め,ロシヤの真似か。」 司法長官が訊く。 「デ,なんと返答します。」 「認める。あの広い大陸をてばなし,一部の地域にとじこもりたいといならそう すればいい。」 大統領はいう。 中央情報局長官が訊く。 「しかし,細菌兵器がやつらの手段だとしたら,北朝鮮にわたりませんか。」 「それはない。ロシアでさえ,キュ−バに核のボタンをわたさなかった。我々が トルコにボタンをわたさなかったようにな。中国も北朝鮮に細菌の苗床をわたす きはない。」 いちどうが,うなずく。 「おそらく,内政自治権とともに,我々に保障を求めてくるはず。」 大統領がいうと 統合参謀長が。 「恥知らずどもめ,仲間より,自分の命や財産のほうがだいじか。」 「考えちがいするな。降伏するわけではない。はやまって,つめをあやまるな。 」 大統領がたしなめる。 「なるほど,巨大な軍事力が近ずくと,卵はなかからわれるというわけですな。 」 司法長官がいう。 「そうだ。だが,中にはこちら,必要としないものをうりつけるやからがいよう。 ハイエナが喰う腐った肉は人間には喰えないからな。」 手厳しく大統領がいうと, ひとしきり一同が笑い。会議は終わった。 方向はきまったのだ。 東京都一丁目一番一号。 謁見の間。 官房長官は東家第一皇子に,呼び出されている。 「ございません。」 官房長官はハッキリという。 「なに,国旗は良い。だが君が代はわが皇家の歌ではないか。それに,パスポ− ト の菊紋もわが家紋。その使用料を支払うのは当然ではないか。」 皇子はいう。 「ですから,どこにそんな財源があるのです。我々が規制緩和死,行政改革を行 なうのは利権のある特権階級を減じ,それによって,国庫の財政をたてなおすた め,ご容赦ください。」 一分の隙もなく。完璧な礼にのっとって会釈すると,官房長官は皇子のもとを, さっていく。 官房長官は総理府にもどり,執務室で政務に勤しむ。 秘書官がひとりごとのように言う。 「まったく,長老たちにもこまったものですね。なにも,国旗・国歌法案などだ さなくても。」 ジロリと,一瞥をあたえる官房長官。 「あっこれは,ひとりごとです。ひとりごと。」 あわてて,口元をおさえる秘書官。 「口を動かすより,身体をうごかせ,次の決済書類を持ってきたまえ。」 トンでゆく,秘書官。 ペンを置き,ひといきいれる官房長官。 心のなかで思う。そうなのだ,国民保険は破錠寸前。財政をたてなおさなけれ ば国そのものがつぶれるのだ。 敵は多ければ,多い方が良い。 問題は誰に勝たせるか,ということである。 覇業をなしえる人物でなければ,果たして,その選択が正しいはどうか....。 「このおれにマネ−ロンダリングの摘発をやれ,と?」 俺様はびっくりして訊いた。 うなずく,官房長官。 話はこうだ。 首相官邸がまだ,ポマ−ド臭かった頃。組織犯罪を撲滅するのに,先進国ではな しあいがおこなわれ,それなりに成果をあげてきた。 そこで,次は,企業への悪の勢力からのマネ−ロンダリングを防止しようという のだが,日本ではうまくいっていない。 そこで,俺様に白羽の矢があたったのだ。 「俺なんかより,アメリカ財務省の役人をよんで,教えてもらえばいいじゃあり ませんか。」「だめだ。日本とアメリカでは,税体系がちがう。それに,金融監 督庁は,大蔵省の影響からぬけださせていない。」 官房長官は,熱心に俺様をくどく。 「ですが...」 俺様は警察ににらまれていることを話す。 「それなら,こちらでなんとかする。」 俺様はあやぶんだ。なにせ,先生でさえいっぱいくわされたのだ。 「大丈夫だ。現役の官房長官である。わたしにまかせてもらおう。」 迷ったが,結局,引き受けることにした。 早速,官房長官は長老達を説得にまわる。 そのうえで,コンピュ−タ−にイレイサ−をかけた。正式な命令書を発っして。 俺様はかんがえる。 これはデリケ−トな問題だ。当然,政治家にはきくばりをしなければならない これは,カルトだろうが,正統派だろううが,宗教もいえる。 いま,パソコンでわいせつだとして,コンピュ−タ−にスクリ−ンセイバ−をか ける。 これは,表現の自由に反している。 そのくせ,チャイルドポルノが日本ではOKだった。 東洋と西洋の文化的背景の差をもかんがえにんいれねばならない。 財務省の役人には,強制査察の権限がある。 あのアルカポネとて,犯罪ではなく,酒税法違反だったのだ。だが,時の権力者 に悪用さないようにしなければ。 ま,権力者としては秘密警察をつかいたがるが。 それにしても,自己の不満者すべてを,犯罪者名簿に入れるような警察の体制 は少し問題があるのではないか。 この一件にしても,政治とは過程や制度ではなく,結果だといううことがよくわ かる。 一番よくないのは,せっかく獲得した巨大な権力を自己神聖化という愚劣な行為 にしよすることだ。東南アジアの国々をみれば,偏執がいかに進歩を阻害してい ることか。正しく,使用すれば,彼らはもっと,日本にちかずけたハズである。 いずれにせよ。改革にてをかさねばならない。 2010年,と2020年の目標までには....。 しかし,官房長官には気をゆるせない。必要とあれば,幼児や女性を殺害する ことも辞さないであろうから。 多分,彼はかんじているにちがいない。 古代の,海.陸上の交易都市が,あらたに出現した統一王朝の武力と政治力に屈 伏していった。その,歴史を繰り返すことを....。 自民党党大会最終日。 かつての青年将校.風見鶏もと,首相はいった。 「今度の総理は,警察族出身の代議士先生だね。」 バ−コ−ド状の髪の毛をなびかせながら,老人は先生をほめそやす。 先生はおもはゆい表情をしながら,礼をのべる。 カメラマンが,2人の握手のポ−ズを撮る。 パフォ−マンスのきわみだ。 この辺は,政治家の呼吸だ。 「やれやれ,やっと終わったわ。」 老人はひとりごちる。 カミソリ老人が寄る。 「ごくろうさまでした。ですが,本当によろしいのですか。あの小僧と和して。 」 「やりたいなら,やらしておけばいい。そのあとで,一気にわしが,屠ってくれ るワ。」 風見鶏老人が言う。 「しかし,そう,うまくいきますかな。」 カミソリ老人が危ぶむ。 「大丈夫だ。総理大臣など,一時的なもの,すぐに,おいおとしてくれるわ。」 自信満々に答える。 「だが,そん前にヤツは軍事力をにぎらねばならん。みろ,自自連立で公務員の リストラを賛成しておきながら,弱者救済をかかげ,大きな政府を作ろうとして いる。しかも,来年度の予算獲得を理由に,現,政権の予算法案をこばむ。」 「語るに落ちたも同然だな。」 「ウム。」 手近なみずさしから,コップに水をとり,のどをしめらせる。 「それより,いまは,マスコミ対策だ。記者クラブの存続をエサに,支配をつよ めなくては。」2人の老人は,互いにうなずきあった。 「公務員のリストラなど,いつでもできる。」 内閣官房長官は,執務室で秘書に説明する。 「しかし,かれらは,公務員法で守られていますが。」 「簡単なことだ。いまや,電話番号通知システムは使用されている。ストレス相 談などに電話をかければ,番号が通知され記録される。それを,こんきょに精神 的弱者として,排除すれば良い。」 「....」 「いまどき,スパイまがいの盗諜法案など,時代遅れもいいところだ。これだか らどしがたいのだ。」 官房長官は,冷ややかにいってのける。 秘書は内心,ひやあせをながした。 都内某所。 ネクタイで汗をぬぐいながら,先生は新進党の元党首とあっていた。 「長老たちは,記者クラブ制をえさに,都合の良い情報をながそうとしている。 政治とジャ−ナリズムが手をむすべば,民主主義などないも同然出はないか。」 「だが,いまのわたしになにができるというのだ。」 もと党首は精彩をかいた。 「改革を目標にかかげたのはあなただ。私と手をくめないはずがない。」 先生は熱心にしゃべる。 「........」 新進党の元党首は,うでを組んでかんがえた。 「だが,私がうらぎって長老たちの味方につく.とは考えなかったのですかな。 」 なかば,さぐりながら元党首は,問いを発する。 先生はネクタイで,メガネをふくと,掛け直し, 「それも,かんがえた。考えたが,打つ手がないのでやめた。」 「では,私を信用すると,」 「他に適任者がいない。」 「これはハッキリおっしゃる。」 元党首は,歯をみせて笑う。 「これが,私が首相で,あなたが副首相ともちかければ,あなたは信じないだろ う。」 「たしかに,政治家の空手形ほどしんじられんものはないからな。」 「だが,わたしの派閥は,自民党内では劣勢だ。わずかでも,君のちからが加わ れば厚遇せんわけにはいかん。だが,長老たちにとっては,君のちからはないも 同然。」 先生のことばに,元党首は口をへの字に曲げる。認めたくはないが,現在の彼自 身の境遇をものがたっている。 「いいだろう。協力しよう。自分で取材しないジャ−ナリズムなど,存在価値が ないからな。」 先生と元党首は,握手をかわした。 密約はかわされた。 元党首が去ってから,俺様は先生に訊く。 「よろしいのですか。」 「ああ,我々は今は劣勢だからな。要は,最終局面で勝てばいいのだ。」 先生はハッキリという。 と, 首をめぐらし,俺様の方を見ると, 「それより,MJお前の方こそ,大変ではないか。」 たしかに,リサ−チ業は,ハロルドとマイクにまかせっぱなしだ。 また,経済研究所も,断念せざるおえないだろう。 ディ−プは,マネ−ロンダリングの摘発に協力すると約束はしてくれたが,税 制改革には必ず隙間がしょうじる。なぜなら,完全な税制度など存在しないから だ。その隙間をぬって,こぼれるものまでは追跡不可能だ。それをすくうしんど い行為をおこなうのは俺様だ。 また,いまひとつ信頼できない,日本の警察とも手をくまねばならず,気分的に は裸足で逃げたくもある。 といって,なんら成果をあげられなければ,責任をとわれよう。 ふと,俺様はおもう。 これは官房長官のわなではないかと。 彼らに敵対する長老たちの資金源をたたく。 アメリカ人である俺様や,俺様の部下がおこなえば,どこからも文句はでない。 「近からず,とも遠からず,....と,いうところかな。」 俺様は,髪の毛をくしゃくしゃにかきまわす。 「まったく,しんどいことだ。」 俺様はボヤいた。 「さしあたり,この程度でよいかな....。」 先生は,官房長官と,議員会館で,はなしあっていた。 「ハイ,当面の間は.....。」 冷徹な官房長官兼.沖縄開発庁長官は言う。 「つぎは,選挙だが,めったなことはあるまい。」 「ハイ。」 長老たちとのあいだに手打ちはすましてある。 「つぎは,自民党総裁なり,三役を望みたいが,きたいしてもよいのだろうな。 」 「先生をおいて,他にだれがいましょうか。」 メガネをネクタイでふくと,ついでに顔までぬぐう先生。 「では,三役のうち,いずれかになれば。ただちに,有事の後方支援にいくが, 貴様にもついてきてもらうぞ。」 「とうぜんです。」 平然とこたえる。 「その際,わたしに,もしものことがあれば,長老たちの陰謀ということにすれ ば,先生が覇権をにぎる正当な理由になりましょう。」 「ウム。」 先生はうなずく。 「どうせ,おいぼれどもも,ワシが覇権をにぎることはこころよくおもっておる まい。ワシのちからを有事には利用しても,あとはおとしいれるべく,穴をうが つ準備はしているだろうからな。」 今度は官房長官が,うなずく。 「とにかく,民衆の意をえなければ。」 先生歯,とおくをみつめる。 官房長官が言う。 「このままでは,日本はつぶれてしまいます。」 「そのとうりだ。いままで日本が発展してきたのは冷戦下の交易都市としてだ。 だが,冷戦がおわれば,中心はアメリカ一国となる。」 過去の四大文明発祥の地が,いまも世界の中心でありえなかったように。進歩と 発展によって中心はつねに揺れ動く。ただしいかんさつから,正しい結果がいつ もみちびきだされるとはかぎらないのだが。今回は,まちがいないだろう。 欧州統一は,あまり機能していない様子だ。 主張は正しいのだが,どのくにも軍事力をてばなしたりはしない。それは国家の 権力だからだ。医者や弁護士にしろ,各々の国々にそれぞれのなりたちや事情が ある。 第一,いったい何語で試験をうけるのか。 アジアについてはさらに,悲劇的だ。宗教さえもバラバラなのだから。 こんな時代に,ナショナリズムなど迷惑。 もちろん,年をとった死に場所として,生まれたところを選ぶ自由はある。 ひるがえって我国も既に,高い教育費や生活費は核家族をも分断している。 不良どもを,軍事力でしばっても,そのあとになにがくるのか。 「先生,いかがいたしました。....」 官房長官が,ひじをつつく。 「いや,すこし考えていただけだ。今後のことをな。」 先生は,現実にひきもどされわらう。だが,その目はするどかった。 ディ−プ・インスペクタ−は考え込んでいた。 情報部と,軍の一部が結託し,謀殺を主張しているからだ。 危険視国の指導者を暗殺して,害をとりのぞければ,アメリカの世界戦略が楽に なる.というのである。 かれらはわかっていない。お子様むけのTVドラマではないのだ。悪者をやっ つけそれでめでたしめでたしとはいかないのだ。 個人的な謀殺が,歴史のながれをとめたことはない。 そのてんでは,植民地主義が崩壊したことをみればわかる。 共産主義が民主主義に負けたのは,民衆の寿命を縮めたからである。 子供が稼いだ金で贅沢をし,それに文句をいうとぶんなぐる母親みたいなものだ。 議会の面子でもなんでもなく。アメリカが唯一の軍事国であるかぎり,世界のは てまでもでかけて,根きよく,民主主義を教えねばならない。今,民族主義にも どるのは,一時的なゆりもどしであって,進歩ではないと。 もちろん,民主主義も完全ではない。資本主義や自由主義が修正されたように, 次のステップへの理論をもさくしている。本来なら,新の構築に専念しているハ ズなのであるが,........。 「まあ,良い。後の時代の人間の宿題にでもしておこうか。」 どうやら,この間の天然痘事件以来,もう一つの大国の崩壊をみとどけるのが自 分の仕事になりそうな予感がするディ−プだった。 「よろしいのですか御前。」 部下は,かつて関東軍参謀だった老人に訊く。 「よいのだ。」 老人は短く答える。 「できれば,文芸雑誌の筆頭株主になられた理由をおきかせねがいたいのですが。 」 部下は訪ねる。 「それはだな。文芸雑誌で,リべラルの顔をすれば,それにつれて愚かな読者が 投稿してこよう。そやつらの住所を警察に教えてやれば点数稼ぎになる。」 「それはル−ル違反では...。」 「なぜだ,文芸雑誌はニュ−スではない。思想をおしえてやれば,警察もとりし まりやすかろうて.......。ホッホッホッ。」 俺様MJは今までの事の一部始終を手記にして,出版社に送ってみた。 だが,神ならぬ身,まさか元関東軍参謀が,筆頭株主となり,査閲していること まではわからなかった。 原稿をおくると,返事がきた。 《このたびは投稿いただきありがとうございます。投稿作品が多く,ご返事がお くれてもう しわけありませんでした。残念ですが,今回は採用をみをくらせていただきます。 これからもがんばってください。 》「ふん,そういうものか。」 俺様は素直にうなずく。 もう一度,書き直し,同系列の別の雑誌に投稿してみる。 《前略.先日.お送りいただきましたが。本誌は休刊が決定しましたのでご返却 いたします。 内容が盛りだくさんすぎるので,整理してください。 これからの,ご活躍をおいのりしています。 》俺様は,MJカンパニ−の自室にもどると,ごろりと横になる。 いつのまにか,ウトウトしてしまう。金融監督庁のいやな仕事のせいだ。 と, でかい声が,カンパニ−のたてものの角からきこえる。 「居るか.居ないかは,電気メ−タ−をみればわかる。」 俺様は天井をみながら訊く。 外をみなくてもわかる。これは,警官だ。多分,卒配(警察学校出立ての新人) に年長者がおしえているのだろう。 《まったく,日本人は嘘つきだな》 白人の友人がそういうのを俺様は何度きいたか。 原稿を英文になおすと,Eメ−ルで,アメリカのフリ−ペ−ジにおくる。いま は,時代がちがうのだ。情報操作などできはしない。ノ−トパソコン一台あれば なんとでもなるのだ。 俺様は,メ−ルをおくり終えると,TVをつけた。 衆議院第一会議場。 「同じ国民であれば,国と地方と同一のサ−ビスをうける権利があると思うので すが。」 質問者が訊く。 「そのとうりです。国がするべきものと,地方にゆだねるものは,当然,区別さ れねばなりません。」 自治大臣が答える。 (くだらない)。俺様はつぶやく。行政もサ−ビスなら,不都合なところは捨て て,他へ移るのはあたりまえではないか。 自民党は,政治基盤である,票田.農村に金をバラまいて,支持勢力を強化して きた。 東京都民がおさめた税金の何%が自分たち都民に帰ってくるか。 対して,島根県の農民は税金の恩恵をうけているが,不公平ではないのか。 質問者はいう。 「行政者には高い倫理感が。」 俺様は笑いろげた。 倫理など,政治家にもとめたら,アメリカ大統領はとっくにクビになってたろ うが。 最近,政治家が小選挙区制がいかんというのは,自分が勉強しなければいけない からだ。以前なら,党の統一意思にのっかっていればよかった。だが,小選挙区 制なら,自分が判断したものが将来.どう,およぼすのか。原発に賛成か反対か, それが,後援企業にどう響くかを政治家個人が責任をとらねばならないからだ。 自前で,シンクタンクをかかえねばならなくなった。 国会には,投票でえらばれた政治家しかはいれない。公設秘書といえども,いち いち,入り口まで先生にきてもらわねばならない。これでは,日本にロビイスト はうまれない。 評決を電光掲示板にするくらいなら,モバイルぐらいもちこませたらどうだ。 画面をみると,あいかわらず前日にわたした質問の一覧表にしたがって,与党に 質疑応答している。 (いまさら,財政で有効需要なんかつくれるものか) 俺様はぐちる。 (それとも,戦争でもして,インフレにもどすか) それにしてもだれがやるのか。 つづけて,別の質問者がたつ。 「防衛庁を国防省に一刻もはやく格上げをして...。」 (おやおや)と俺様は思う。 はたして,当の本人はわかっているの疑わしい。 省になれば,国防大臣の地位をめぐって,警察族の先生ト,かつての青年将校だ った老人と火花をちらす争いがはじまろう。 俺様は,マイクに意見を求めたが,マイクは肩をすくめると。 「妖怪と化物が戦えば,共倒れを願いたいね。」 ひどいたとえだと俺様は思ったが責任のないフツ−の人間なら,やはりそういう だろう。 極端から極端に動く,日本人の悪い癖だ。アメリカは物資の補給をさせろといっ ているのであって,戦えといっているのではないのに。 (政治部のまぬけめ)俺様はののしる。 プレッシャ−をかけすぎたのだ。 それにしても,このまま,放っておく気はない。経済研究所へ,助手を従えて向 かう。右の頬を殴られたら,倍にして左の頬をなぐりかえすのが,アメリカンス ピリッツというものだ。 俺様はさっそく,ディ−プに相談する。 「悪いがディ−プ,ス−パ−コンピュ−タ−を使わせてくれないか。」 のっけから,いきなりの相談なのでディ−プは面食らう。 「どうするんだ。」 「これだよ。」 俺様はパンパンと,分厚い本を叩く。 助手のバイト君.ハロルド長田が重たそうにキャリ−にのせて,はこんでくる。 《紳士録名簿》5年分だ。 「これをOCRにかけて,デ−タ−処理する。」 俺様は自慢気に言う。 「で...。」 ディ−プが先をうながす。 「紳士録名簿には,文部省だとか,警視庁だとか,役人の現役時代の役職名がか いてあるものがある。」 俺様は,パラパラとぺ−ジをめくり,ディ−プの目の前に突き出す。 「そして,今度は,このCDロムだ。」 俺様は,電話番号と住所の全国判CDロムをポケットから数枚とりだした。 「すると,....。」 ディ−プは興味深々で訊く。 「つまり,省庁別の天下り先の役人の名簿がおおよそできるのさ。」 ディ−プが,うんうん頷く。 「さらに,この天下り先の会社リストと,マネ−ロンダリングの悪党どもの会社 ト照らし合わせればどうなる?」 「ひゅ−ッ!」 ディ−プは口笛をふき,指をぱちりとならした。 「すごいぞ,MJ。そうすれば,日本政府もいいのがれできない。」 俺様は投稿についてのことを喋る。 「多分,MJ.お前さんが邪魔なのさ。安心しろ,私が絶対に保護してやる。」 ディ−プは,手下に命令すると, さっそく手続きをする。 と, ハロルド長田に目を止め。 「君は?」 と,尋ねる。 俺様はハロルドの肩を叩き。 「ついでに,こいつにもグリ−ンカ−ドを発行してくれ。」 ハロルドは礼儀ただしく挨拶し, 「ハロルド長田と言います。国籍は日本人ですう。人種は白人ですけど。」 という。 「ああ君がハロルドか。OK。MJの助手だったな。なんとかしよう。」 (たのみごとは,相手の気分がいいときに限るな) ディ−プがいないところで俺様はハロルド長田に,そっと耳うちした。 次々と,資金源《とばし》をICPOに押さえられ,老人のてしたは苦しむ。 「御前.お助けください。」 「御前.このままではつぶれてしまいます。」 老人のひざにだいの大人がすがりつく。 その数は日に日に,ますばかりだ。 「おのれ−。小僧度もめ−,こどものわるふざけにしてはどがすぎておるわ。」 怒りをくちにするが,有効な手がうてない。 しばらく,思案していたが, 側近をよぶと, 「小僧につたえろ,次の国防大臣に推薦すると。」 「これで,すこしはしずかになるでしょう。」 官房長官は,抑揚のない声で言う。 「さすがだな。MJ。」 先生は,感心する。 議員会館での,2人のランデブ−で,俺様はお誉めにあずかる。 だが,気をゆるすのはまだはやかった。 《銃器・麻薬法案.衆議院が可決》 ニュ−スでさらりと流れる。 一般人には,関係のない法案だとおもわれている。だが,実際はそうではない。 うたがわれただけで拘束されるのだ。 なんら確証がなくても。 つまり,特定の人物があやしいと思えば,ずっと拘留できるのだ。 第一,だれがそれを判断するのか,というところが不明なのだ。 しかも,状況証拠で十分なら,警察の気にくわないものをつかまえられる。 先にのべたように,日本では警察官の自由裁量が多きすぎるのだ。 欧米では,仔細に行動様式が決められているのだが....。 今回,参議院で否決しても,ふたたび衆議院で可決すれば法案は成立する。 「やられた。」 議員会館でこのニュ−スを見た先生は,一気に不機嫌になった。室内をうろうろ 歩くと,テ−ブルの上のコップをなぎ払う。 「まだ,まけたわけではありません。」 官房長官は,落ち着いていう。 だが,状況の悪さにかわりはない。 ましてや,一瞬.にがい敗北感が目をおおったのだ。 俺様は携帯で,カンパニ−に,TELをいれると,ただちに,海軍基地へ,ゆく よう命じた。マイクがたずねる。 「なぜだMJ。」 「一刻を争う。日本の警察が,お前達を拘束しにくるぞ。」 最大級の叱咤で,つたえる。 同時に,ディ−プにも依頼する。軍用車をカンパニ−の警護につけてもらうため に。 俺様がでていこうとすると,官房長官がたちふさがる。 「おまちください。いま,ここであなたにみすてられては........。」 「では,どんな方法があるというのか。」 俺様がたずねると,官房長官はこたえない。 と, 先生が顔をあげ,官房長官に命令する。 「大至急。記者会見をひらけ。」 ニヤリと,俺様の方をみて笑うと。 「ついてこい,MJ。おもしろいものをみせてやる。」 そういうと, 大声で笑う。 数時間後。 議員会館の大広間で,記者発表を先生は行なう。 「東南アジアにたいする,円借款の返済を放棄するように政府に上申する。」 俺様はアッと驚いた。 たしかに,デフレが続くいじょう,ロ−ンがひっぱくするのとおなじように,東 南アジア各国が,日本から開発援助をうけた金は利子をつけてかえさなければな らない。 ところが,あとになればなるほど,物価はさがる。 助力を得て,つくったものが下手をすると原価われになる。 だから,一刻も早く,借金をかえしたい。 もし,日本が,その債券を放棄してれたら,大変たすかる。 そんな政治家を拘束したら,東南アジアの国々はアメリカに直訴するだろう。 「どうだ,MJ。わたしの手腕は。」 記者会見をおえて,先生は胸をはった。 「おみごとです。先生。」 俺様は,先生の技量をみなおすほかはなかった。 「老いぼれめ! 今頃,どんな顔をしているのか,みてやりたいな。」 ネクタイでメガネをふくと, ついでに,顔までふいた。 そして,ひとしきり笑うと,メガネを掛けなおした。 「いかん」 官房長官は,執務室で,TVをみながらうなった。 TV画面では,カルト教団が,警視庁前で,抗議している。 遠巻きに,日本各地の住民団体もいる。 そして,無数の,マスコミが,...。 「だから,わたしたちは,迷惑をかけずに,くらす拠点が欲しいんだ。」 口のうまい,最近受刑者の身分からときはなたれた男がいう。 「だまれ,おらが,村にくうるな。あそこは,先祖代々の土地だ。」 「でていけ!」 口々に,住民団体の人々が言う。 警官達は,住民をおさえるのに,必死だ。 刑罰は,国家の二柄,リンチを警視庁前でゆるすわけにはいかない。 ところが, くちのうまい男は,真にマキャベリストだった。 「おい」 信者に命じると,カルト教団ののってきたバンから,小さな子供がおりてきた。 信者どもが,ひれふしながら,つれてくる。 どうやら,教祖の子供らしい。 「では,混乱のもとである,後継者を当局に引き渡す。」 グイッ,と,子供を,警視庁の役人達にさしだす。 この様子をみて,官房長官は,先のうめきごえを発することになったのだ。 さすがに,事務次官も,真っ青になる。 かれも,役人として,出世のために危ない橋をわたってきた。 TV画面でおこなわれていることが,どういう意味をもつものか,十分理解して いる。 「どうしたのですか?」 秘書だけが,つくねんとしている。 それを無視して, 「はやく,警視庁に電話をいれろ!」 官房長官の声がとぶ。 「いま,やっています。」 あわてて,事務次官が,受話器をとりあげ,コ−ルする。 「さっさと,警視庁につながんか。」 怒号で,交換手のおんなに指示する。 ややあって, 「はい,こちら警視庁.....。」 野太い男の声が, 事務次官は,コンソ−ルのスイッチを拡声タイプにきりかえる。たちまち,ハン ズフリ−で,警視庁と,執務室がつながる。 「おい,わたしだ,官房長官だ。いま,TVで見ている。」 「ははっ,いよいよ,これで,カルト教団も壊滅...」 「そんなことは,どうでもいい。いかん,やめさせろ。」 「はあ?」 「子供をひきうけるんじゃない。」 「と,いわれますと?」 「さっさと,おいかえせ。」 「しかし,それでは...」 うだうだと,ラチもないことをいいあっているうちに, TV画面は,警視庁の役人が,カルト教団のこどもを,ひきうけてしまった。 「やられた。」 事務次官はくちばしる。 「もういい,切れ!」 怒声とともに,官房長官が命じると,次官は,電話をきった。 「どういうことなんです? カルト教団の後継者がいなくなれば,万事めでたし ではありませんか。」 秘書が訊く。 「ばかな,あのくちのうまい奴は,我々に責任をおしつけたのだ。」 イラだつ,官房長官。 「?」 いぶかる秘書。 「まだ,わからんのか。」 プイ,と,横をむく。 事務次官が,言葉をつぐ。 「つまりだ,正面きって,後継者をひきわたされれば,我々は,うけとらざるお えない。教団を危検視している立場上な。」 「....。」 「だが,年齢が問題だ,引き受けてどうする。小学校にもいかさず,住民票も与 えず,これで,子供が病気で死ねば,日本国政府が,幼児殺しの汚名をうける。 」 事務次官は,ギリと唇をかむ。 「逆に,かえってわれわれが危機に陥ったというわけですか...」 ようやく,秘書は納得する。 だが,一般の警官にこのような理解力をもとめるべくもない。 「しかし,沖縄サミットまで時間がないというのに....,最悪,信者どもは 北海道の寒冷地でも収監すれば済む。しかし,幼児殺しの汚名は..。」 官房長官はうなる。 椅子にすわりなおすと,腕組みをして,善後策を考える。 官房長官は,アメリカ大使と応接室で,話し合う。 既にカルトにたいする動揺はない。 アメリカ大使が言う。 「警視庁のステインガ−8による,麻薬分析をやめさせてもらいたい。」 「なぜです。麻薬撲滅は,あなたがたが依頼したのではありませんか。」 官房長官は冷静にいう。 「いや,それはわかっています。」 大使は,ソファをいごこち悪そうに,みを縮める。 「だが,成分比を分析されれば,東南アジアのゴ−ルデントライアングル産とい うのがわかる。これは,我アメリカが,ベトナム戦略としてのかかわりがあると 思われる。」 「迂遠ないいかたですな。」 冷徹なまなざしで,官房長官は言い返す。 「で,やめさせろと。」 官房長官は,姿勢をくずさない。 「YES。そのかわり,日本のシ−レ−ン,マラッカ海峡の海賊をアメリカがな んとかしましょう。」 「ふむ,しかし,警察の意向をわたしひとりでは,...」 「ご謙遜にはおよびますまい。もともと,スティンガ−8は,中性子や過電粒子 ニュ−トリノを研究するための施設。それとも,反物質など,新型爆弾を研究さ れているのですか..。我国のCシステムのように。」 もともと,日本の研究施設は,アメリカのシステムをもしてつくられたのだ,だ から,アメリカができることは,日本にもできるだろうよいう大使の言い分はも っともだ。 「善処いたしましょう。」 官房長官は大使と握手した。 ディ−プ・インスペクタ−は,俺様MJを自室によんだ。 「まあ,らくにしてくれたまえ,少将。」 俺様は,すすめられたソファにすわろうとして,腰をうかす。 俺様は,もともと,CIC,対情報戦略の後方勤務の役人だったが,いまは, 一介のリサ−チ業にすぎない。いわば,はいてすてるほどいる探偵屋だ。 それが,ひょんなことから,日本の政治家にひろわれ,私設秘書みたいになって はいるが,これは,ついでである。 なんとなれば,きままな民間人のほうがよいのだ。 ところが,日本の旧態勢と俺様の付いている政治家先生が,反目しあうにつれ ておかしくなりはじめた。 非協力的だとして,日本警察には左翼リストにいれられ,事実をたしかめもせず。 どんどん警察のコンピュ−タ−に事項はふえるは..。 (この辺,日本警察は独善でゲシュタポ的) 右翼団体,それも特定の個人にのみ忠誠を誓っている,と思えるに,おそわれる は,迷惑である。 で,海軍に応援をもとめたわけだが... 「よろしいのですか,MJなどを少将にしても,」 傍らに,みたこともない奴がいる。黒い髪に,クセのある鼻,一見ラテン風の顔 つき, 「だまれ,機密ランクがC・D級の分際で,AAA級(トリプルエ−)の私に指 図しようというのか。」 ディ−プが怒る。 「いえ...,申し訳ありません。」 即座に非を認める。 「紹介しよう,バハム−ト=アンデルセン.グリム=アンデルセンのひ孫にあた る。当然,ユダヤ系アメリカ人だ。」 「なるほど,キッシンジャ−の秘蔵っ子か,なら,良いニュ−スがあるぜ。」 俺様,バハム−トにウインクした。 交通標識製造会社。 いわゆる,警察の天下り会社である。 日本において,交通標識をつくっているのはせいぜい5社。寡占状態だ。本来な ら独禁法にひっかかるのだが,日本政府はなにもしていない。 そこに, 元公安調査庁のハゲ頭,ギョロリとした目,ごついからだ。先日も,深夜TVの 討論番組に出演したばかりだ。 「まったく,盗聴法がなければ,近代国家とは言えないものを...」 ハゲが勝手なことを言う。 「それには,心配なさらずともよろしいかと。」 標識会社社長がいう。かれも元警官だ。 「なぜなら,標識落下事故を利用し,補助金を目一杯申請しておりますから,盗 聴の費用などひねりだせます。」 「フン,さすが,優良企業。」 ハゲがいうと, 「この不況,利益をだせるのは,我々と,ガ−ドマンしかおりません。」 二人は,ほくそ笑む。 「だから,どうだというんだ。」 バハム−トはじれる。 「まだわからんのか。」 ディ−プが言う。 「警視庁をうごかし,盗聴法を利用し,おのが私服を肥やそうとする。公安ども, アメリカの世界戦略の邪魔だ。」 ディ−プの言葉は明解だ。 「かつて,日本警察は,官僚に対し,アパッチ族の反乱といわれた。ならば,イ ンディアンを狩るのは,我々しかおるまい。」 「.....」 「住民基本台帳法といい,Nシステムによる個人管理といい,やつらは,あまり にナチ的すぎる。」 「なるほど,...」 ようやくアンデルセンが頷く。 彼の曾祖父,グリム=アンデルセンが童話をかいたのだが,孫が,つまりバハム −トの父がヨ−ロッパ戦線でナチと戦い戦死した。そのため,最近まで,童話は, すべてあかされることはなかったのである。 曾祖父にとって,日本は,ナチと同盟の手をくんだ敵国だったのだ。 「CIAは,表向き,公安に協力している。だから,うごけん,三沢基地の特殊 部隊ならいつでもつかっていいぞ。」 三沢基地の特殊部隊は,ブッシュ大統領以来,極東に配備されている。おもて だって,軍をうごかせない場合,投入されるのだ。 『米合衆国大統領。 クリントン閣下。 各国の自由な,かつ民主主義の代表である閣下に,本状を奉呈する光栄を感謝し ます。 貴下が,現代世界における指導者であり,それゆえ,同じ民主主義の同盟国の 蛮行を指導し,そのためにこまっている他国民をすくっていただけるものと存じ ます。 《日本国警察における台湾から日本への送金拒否について》 事態はきわめて,簡単で,なんら複雑事情はありません。私は,かつて京都大学 にまなび,現在は台湾にすんでおります。卒業生として,大学へ寄付をおこなお うとしましたが,拒否されました。 日本警察は,いまだ,京都大学を共産思想の根源とみなし,監視しております。 また,大学内では,国粋思想のみを正当化しようとしております。 大統領閣下,してみると,台湾は一体どうすればよろしいのでしょうか。 長い時間と莫大な金をかけないで,正義をしてあらしめる役所が,貴下の掌中 にあれば,至急ご教示願いたいと思います。 李 登輝 』 台湾総督府からの正式な書簡が,ホワイトハウスにとどけられ,大統領は,す ぐさま指示した。 先の駐日大使のスティンガ−8への圧力は,こういう背景があるのであった。 また,公安当局への圧力も......。 横田. 米空軍OSI(特別調査局) 《アンジェリカ=モンテカルロ。 25才。 女性。 T158cm。 48kg 髪 ブルネット。 目 ブラウン。 白人。 》 「ウム,彼女にしよう。」 俺様は,なれぬ軍服すがたでファイルをみながら人選をおこなった。 ハッキリいって,少将など迷惑なのだが,ディ−プ・インスペクタ−に, 「部下はどうする。それに,サミットの前のりで,各国情報部がくる。そのとき, この大任をほかのものにまかせられるか。」 といわれ,しぶしぶひきうけたのだ。 とはいっても,少将が,他国の大臣の秘書というわけにもいかず,かといって, 日本人スタッフではこころもとない。 で,OSIから,えらぶことになり,あまり,背のめだたない彼女をえらんだ。 それに,調査局である以上,情報がどれほど重要かはわかるだろうという期待も ある。 「大尉。」 彼女は顔をあげる。 「いまから,君は大尉だ。それと,機密ランクはCレベルになる。」 「イエッサ−。」 最敬礼で返す。 「やめろ,君はこれから,わたしにかわって,日本の政治家の私設秘書になり, 彼に協力しなければならん。」 彼女の目が,俺様をみる。 「こんごは私が直接,指示をだす。格闘能力は...。 横田のOSIでは,一 番か...。」 俺様は書類を見.念を押す。 「来年の沖縄サミットんにむけ,各国情報部がまえのりしてくる。」 「と,いわれますと,わたしは情報部に転属されるのですか?」 「そうだ。」 「スパイですか?」 彼女が,不安気に訊く。 「いや,政策立案がおもなしごとだ。情報をとるのではなく,与えるのだ。」 「こちらの意図したものを...」 「いいや,情報操作など必要ない。これは,多分に,政治的範中のものだ。」 やれやれ,俺様MJは思う。 いちからおしえなくては........。 俺様はひとりごちる。 ふとみると,新聞はあいかわらず,不良債権だ。 フン,簡単だろ,軍属の人間を債権回収会社の社員にすれば良い。 いくらやくざがこわいといったって,その国の軍隊が最大・最強なのだ。 なぜ,それをやらないのか。 たぶん,日本の旧勢力は,そこらへんをねらうだろうが...。 「やつが私心のないのはみとめる。だが,奴はそれを武器にしている。」 「そうだ,あんな冷酷なやつに官房長官をやらせておくのか。」 「だが,やつの処理能力はみごとだ。」 「それに,やつの忠誠心を刺激する人材がなかったこともかんがえねば。」 自民党ないにも,官房長官への批判はあるが,いまはまだ,それほどおおきくな い。 「では,2000年対策は問題ないのだな。」 官房長官が念を押す。 「はっ,問題はありません。」 科学技術庁長官,指揮のもと,白衣すがたの技官が言う。 「では,総理府のコンピュ−タ−にいれよ。」 官房長官はは命じる。 「しかし,それでは,いままでの記録の大半をけしてしまいますが。」 「かまわん,やれ。」 くちを真一文字にむすんだ官房長官がめいれいする。 いま,官房長官がめいじたのは,有事にさいして,必要な,航路,気象,海図の 日本を中心とした重要事項のバックアップである。 万が一にそなえ,緊急用のコンピュ−タ−に入力させているのだが,総理府の コンピュ−タ−はそれほど容量が大きくないのだ。 なんとなれば,各省庁につなぎ,必要に応じてよびだせばすむからである。 だが, 《本気でアメリカが有事になれば,偵察衛星や,米軍基地のデ−タ−はつかえる としても,こまかな修正を必要とするだろう。その際,デ−タ−を提供せねばな るまい。》 もちろん,提供した時点で,国防はアメリカ軍にまるはだかにされるわけだが, それはやむおえまい。 たとえ,有事立法で,軍備を増強しても,護衛艦艇の造船に一年,兵器にさら に一年,乗組員訓練にもう一年必要だ。もし,戦闘員としての能力をかんがえれ ば四年は欲しいところだ。これでは,目先の急場に間に合わない。 しかも,...... 「絶対に,日本軍の助けは借りん。」 金大中は明言した。 以前,訪日したとき,ハッキリといわれている。 「万一,自衛隊が韓国の港に入った時点で,わがくにへの侵略とみなし,撃沈す る。」 強い口調で言う。 「しかし,それでは,北朝鮮への脅威が...。」 官房長官はいったが,ガンとして聞き入れない。 「そのときは,自爆かくごで戦う。いかに危機におちいっても,アメリカ軍はと もかく,日本軍とともに戦うことは国民感情からいって絶対にない。」 これには,さすがに官房長官も閉口する。 《その,心意気はかうが,政治は事実を直視せねば》 と思う。 自衛隊が軍隊であることは,武官の交換留学を各国とおこなっていることから世 界では,みとめられている。 だから,すでにこの点で,憲法違反なのだが, ただ,国際条約は,状況にあわせて解釈をいかようにしても良いというル−ルが ある。だから,,占領下に与えられた憲法を一種の国際条約とみなしてもらい, ここまできたのだ。 結局,アメリカ軍が,展開し,現在にいたっている。 アメリカ軍も必死だ。日本が戦争にまきこまれ,基幹部品の供給がとまると,せ っかく世界唯一の軍事立国の優位性がくずれてしまう。あってもなくても良い部 品ではない。必須部品なのだ。 といって,旧勢力の主張のように軍事国家になるにはこのくにの財政がもたない。 環太平洋圏から,確保しても,原材料の備蓄は以前よりまし,とはいえ,エネル ギ−において,8ヵ月で使いつくす。これでは,中東のようにネチネチと戦われ たら,日本経済は崩壊する。 海上交通とておなじこと,現有在庫のみならどうやりくりしても6ヵ月とはもた ない。 ここは是が非でもかちぬかなくては。 官房長官は,国連大使をむかえていた。 「突然の来日,いかなる用向きでしょうか。」 まったく,官房長官にはこころあたりがない。 それにたいして,大使は, 「日本が,カルト犯の被害者への保障制度をつくったとききましたが...」 と訊く。 「ええ,カルト犯への泣き寝入りは国家としての体面にかかわりますからね。」 内心,ホッとしつつ,笑顔で対応する。 「では,本当なんですね。」 国連大使は念を押す。 「せいかくには,できつつある。といったところでしょうか。いまだ国会で承認 されて,法律として施行されていませんので。」 官房長官は,説明する。 すると,国連大使は 「では,第二次世界大戦の被害者保障を請求する。」 「なんですと,いや,しかし,それは,国家間の...」 みなまで言わせず,大使は言う。 「ちがう。民間人への保障だ。50年祭のとき,アメリカは,日系移民にたいし ての保障を発表した。だが,日本はしていないではないか。」 「........」 「外国人移民による日本国籍取得者への保障だ。」 「それは,ここで論議すべき問題ではない。」 官房長官は,即座に反論する。 「では,極東裁判を否定するのか。」 国連大使もつめよる。 さながら,にげるきつねと追う猟犬が数ヤ−ドもはなれていない激論がとぶ。 長官は,国家間の援助プログラムを説明し,対して,国連大使は,民間人保障を 行なっていない点を追求する。 結局,大使は,戦前に各国から日本への国籍取得に関して,国際結婚のとどけで 書類をもちだし,官房長官にとどめをさした。 官房長官としては,不承不承ながら,事実を認めざるおえなくなり,あきらか に,イヤイヤながらも,承知した。 さすがに,国連大使がかえるころには,つかれきっていた。 「めずらしいですね,長官がこんなにおつかれになるのは。」 事務次官が言う。 「さすがのわたしも,そこまではかんがえていなかった。否応なくのむしかなか ったのだ。」 「それでも,北朝鮮の脅威がひとだんらくするまでの猶予をひきだされたのはさ すがです。」「君にほめてもらってもしかたない。」 官房長官にいわれて,事務次官はやや鼻じろむ。 冷徹さはかわらないのだ。 「わたしは首相のもとへいく。留守をたのむ。」 そういうと,さっさと身仕度をととのえる。 「しかし,首相は,選挙用のマスコミ対策では,」 「仕方あるまい。吉事はのばすことができるが,凶事はまってくれんからな。首 相の判断がどうであれ,耳にいれんわけにはいかん。」 相変わらず,シビアな判断能力の官房長官であった。 MJカンパニ− いまは,日米友好センタ−の4階にまがりして,いる。 センタ−じたいは,別段,普通のビルで, 俺達はそのフロア−を借り切っている。 元来,インタ−ネットによる,企業紹介が主だったので,それほどのひろさはい らなかったのだが,安全をかんがえて,,ここにひっこしたのだ。 「日米友好センタ−とはかんがえましたね。」 日本人スタッフのハロルド長田が感心したように言う。 「ああ,それに,アメリカ軍人がいてもおかしくない。」 マイクがこたえる。 退役のちかいロ−トルの軍人なのだが,俺様と知り合いなので,ディ−プにたの んで我がMJカンパニ−にまわしてもらっているのだ。 あと2人,ハ−フの日本人スタッフがいるが,今日は非番だ。 「まあ,案外,良いところではたらいているのね。」 アンジェリカが言う。 「だれですか,その女のひと。」 ハロルドが訊く。 「アンジェリカ=モンテカルロ。空軍特別調査局のひとだ。」 俺様が,紹介する。 「もと,です。いまは,情報局で,MJさんのかわりに,日本人代議士の秘書で す。」 元気にいうと, 「よろしくな,お嬢ちゃん。」 マイクが言う。 「よろしく。」 アンジェリカが握手する。 「当分,君はわがカンパニ−で寝起きすることになる。」 俺様は居住ブロックを指さす。 フロアの半分は事務所としてつかっているが, 残り半分は,従業員の居住スペ−スとして確保(当然,俺様MJの部屋もある) 。家賃,無料。保証人,不要。の天国だ。 しばらくすると, アンジェリカは,タンクトップにア−ミ−パンツ姿で,現れ,建物のまわりをジ ョギングしたいといいだす。 「だめだ。」 俺様は言下に否定する。 「しかし,周囲のをしらべるのは斥候の基本です。」 彼女は言う。 「そんなことのために,君をえらんだのではない。」 俺様が言うと,彼女は自室にもどり,再び長い,スキ−板のようなものをもって でてきた。 ワ−クアウトしたいといったので,許可すると,事務所のあきスペ−スで,なに やら始める。「ボデェイブレ−ドですね。」 ハロルド長田がいう。 「なんだ,それは。」 俺様が訊く。 「ほら,深夜のTVショッピングなんかでよくやっていますよ。」 長田が言うが,俺様には何のことだかわからない。 見ると,アンジェリカは,板を両手ではさみ,そのまま野姿勢でブルブルふるえ ている。 しばらく,様子をみていると,板を頭上にあげたりさげたりしている。 「レイキだな?」 俺様はマイクに意見をもとめる。 「ウム。」 マイクも同意する。 レイキとは,戦前,田中守平という人物が起こした大霊道という現在で言えば医 療気功である。それが,アメリカにわたり,レイキとなり,日本でも支部がある。 つまり,指圧が,欧米でマニュピレ−ションとして渡り,里帰りしたのと同じ だ。 そして,これが,日本の弱点でもある。せっかく良い点をもっていても,関係者 を丸く納めようとして,八方美人てき美辞麗句をならべて,真実をみようとしな い。 俺様が,ウンチクをたれていると,建物の表で,トラックの音がする。 「おい,MJ,幌付きのトラックがきたぞ!」 ツイ,と,窓によりたしかめると,軍用車が一台とまっている。 アッというまに,一個小隊が小銃をかかえて整列する。 「俺様MJも,自室へもどり,少将の軍服をみにつける。 「おい,MJ。いつから少将に出世したんだ。」 マイクが,目をまるくして訊く。 「このあいだからさ。ディ−プの命令だ。」 そうこうしているうちに,アンジェリカが制服姿ででてくる。 「先にいっててくれ,大尉。それから,マイク,公用車を運転してくれ。ハロル ド,お前はナビゲ−タ−をしろ。」 「カンパニ−はどうします。」 ハロルド長田が訊く。 「クロ−ズにして,保安要員にでもまかせておけ。モバイルを忘れるな。」 俺様は指示をだすと,階下に向かう。 俺様MJがつくと,最敬礼でむかえられる。 適当に会釈すると, 小隊長がすすみでる。 「市街戦演習とききましたが。」 と訊く。 「いや,正確ではないな。わがアメリカ系列の銀行が,日本の不良債権を買った。 その際,ヤクザが関係しているの知らずにな。」 俺様が説明する。 「ではヤクザを追い出しに?」 「ウム,だが,殺すなよ。もっとも,死んだほうがまし,の状態にしてやっても 良いがな。」 俺様はいいはなつ。 その後の,攻防は悲惨だった。チンピラやくざは一撃で打ちのめされ,銃床で顔 面をおもいきりよく叩かれれる。 刃物をふりまわしたやつは,さらに悪く,《殺すな》の命令があるために,小 銃で,両足を打ち砕かれた。死なないまでも,一生,車椅子暮らしだろう。 その後も,何度か,仕事の依頼がきた。わがMJカンパニ−のとり分は,契約 金の10%である。 つまり,2億円の買い物なら,2千万円が取り分だ。 一仕事おわると,1000ドル札を十枚ほど抜いて,小隊長にわたす。 これは,取り分に関係なく,一回の出動料金として,その場で払う。いわば, 軍隊のパ−ト出張としての費用だ。 さすがに,ヤクザも,この仕事には文句のつけようもない。おんな,こどもを 居座らせてはみたが,我々は非常だ。 かけつけた警官に,俺様は言った。 「少年法が改正されて,成人とおなじ扱いになったのだから,我々もそれにした がう。」 と, これには,警官も目を白黒させていた。 「これは,我国にたいする挑戦だ。」 中華人民共和国の弁務官が,カンパニ−に怒鳴り込む。 どうやら,不良債権の一つが,蛇頭がらみだったようだ。 「ほう,では,中国共産党崩壊後の,弁務官どのの,生命・財産を保障しかねま す。」 「なに!」 俺様の返事に,驚愕する弁務官。 うっすらと,弁務官の額に汗がにじむ。 思わず,あたりをみわたし,,声をひそめると,真剣な眼差しで訊く。 「信じていいのか。」 俺様は笑ってみせた。 すでに,役人自身が,大陸の政権がいつまでも続くとはしんじていないのだ。 建て前はともかく,共産党や社会党に,あらゆるつてをつかって,接近し,亡命 しようとこころみられていることを俺様MJは,しっていた。 「いかがですか,今回の件は,弁務官のおちからで,おさえていただきたい。今 後も協力いただけるのなら,ご家族を移民として遇してもよろしいのですが.. ......。」 たちまち,弁務官の瞳はきらきらと輝き, 「わかった。うん,そう,彼らは棄民である。祖国をすてたのだ。いかようにな さられても当方は知らない。」 弁務官は,嬉々として帰えっていった。 アンジェリカは,弁務官を出口まで送り,もどってくると, 「MJ,あまり権道をつかうのは,好きではないのですが。」 と言う。 「もちろんだ。」 俺様はこたえる。 折しも,アメリカ議会では,中国スパイ疑惑で大騒ぎしている最中だ。 プチ。 と,TVのスイッチをいれる。 相変わらず,カルト教団のニュ−スだ。 「後先祖様に申し訳ない。」 一人の農夫が言う。 「なにを言う。農地開放で50年前に与えてやった土地だろうが。」 マイクが毒ずく。 ピピッ! チャンネルをかえると, 警官が民間人をなぐる映像がでた。 「敵と戦うのは,軍人の誉れだが,民衆を弾圧するのは犬の仕事だな。」 俺様は,ひとりごちた。 「僕はね,東京都に入ってくる車に税をかけようとおもうんだ。」 TVの座談会で,新東京都知事とタカ派の風見鶏元首相が出演していた。 「国威の発揚ですね。」 キャスタ−がうなずく。 「空艇団を神社やお寺,学校の空き地におろし,救護班を降ろします。」 風見鶏元首相は言う。 フン。 俺様はぼやく。 「首都占領か..., まるで,2・26だな。」 ディ−プ・インスペクタ−が,時計を見る。 午後六時だ。 番組自体は,朝なのだから,いま,みているのはろくが録画だ。 「コ−ル首相のような,強いカリスマを必要とし,それに,中国こそが肝要な. ...。」 風見鶏は言う。 「ふん,わかっとらんな。冷戦終結後はカリスマやイデオロギ−など無用だとい うことが。」 ディ−プ・インスペクタ−が,ぐちる。 そうなのだ。強いカリスマなど不必要。ようは,経済発展さえしてくれればいい といのが,大衆の望みだ。 「MJ,どう思う?」 ディ−プが不快をあらわにして訊く。 「はい,多分。中国に注意をむけ,軍備を整え,その実,北朝鮮を攻略し,その まま中国本土を襲う戦略かと,..。」 「そのへんだろうな。」 ディ−プは言う。 「しかし,それにしても,新東京都知事と手を組むとは...」 俺様がいうと, 「ハッ! いのししが踊るには,ジャッカルが作った曲で十分ということだ。M J。」 ディ−プはこともなげに言った。 翌日。 つまり,月曜日の朝。 俺様MJは,朝一番でディ−プから呼び出しをうける。 ディ−プは朝食中だ。 ク−ラ−病で,俺様はコ−ヒ−のかわりに,しょうが湯をくれといって給仕をこ まらる。 ディ−プがOKすると, 10分もしないうちに,ティ−カップに入ったしょうが湯がでてくる。 「あと,少し,シナモンをちょっといれてくれ。」 つい,俺様がいうと,ふたたび,給仕が,キッチンへ飛んでいく。 俺様が,シナモンをこころまちにしていると, 佐官が来客をつげる。 「だれだ。」 ナプキンで口元をふきながら,ディ−プが訊く。 「フィリピン大統領です。」 佐官がいう。 と, いろぐろの,ひげをはやした,たくましい男がはいってくる。 (チェッ,シナモンが間に合わないじゃないか) と,俺様は思いながらも,ディ−プにつれて, 会釈をする。 来客用のソファをすすめ,俺様とディ−プ,フィリピン大統領と,通訳がすわ る。 「さっそくだが,南沙諸島ではよくやってくれた。さすが,ス−ビックなしでも やれるといっただけのことはある。」 ディ−プは,手放しで喜ぶ。 「ありがとうございます。これで,すこしは,お力になれたでしょうか。」 フィリピン大統領は,ヘタな英語で言う。 どうやら,英語が不得意なようだ。 すかさず,通訳,多分,補佐官だろうが, 「つきましては,農地開放の協力をおねがいたい。」 「わかった,アメリカは,日本で経験済みだからな。」 ディ−プが,快諾する。 「いえ,直接アメリカからだと,ス−ビックの二の舞になります。ですから,ご 相談に。」 ふむ, と,ディ−プは思案する。 そのとき,ちょうど,給仕がシナモンをもってくる。 パラパラと,俺様はかけ, さめたしょうが湯をズズズとすするが,ディ−プは気にもせず。 「では,台湾の李 登輝が書いた,農地改革開放案を提供しよう。もちろん,大 統領にもわかるように,訳したものを。それを,議会に提出されるが良い。」 「感謝いたします。」 通訳が訳すと,フィリピン大統領は喜びをあらわにした。 「ところで,大統領。わたしの部下とすこしあそんでいただきたい。」 ディ−プがポンと,俺様のかたを叩く。 さめた,ショウガ湯の味が一瞬なくなる。 「だめですよ。腕っ節は全然ダメですから。」 しかし,無理矢理,ディ−プは俺様を大統領ときそわせる。 やむおえず, 俺様は,右半身から,中途半端なカメハメ波の形をとる。 いわずとしれた,日本狼の動き写すといわれた拳法のまねだ。 「oh! シラット。」 フィリピン大統領が言葉を発する。 「なに!」 俺様は驚く。 日本拳法は,元来,中国拳法がベ−スである。 当然,その拳法は中国人のためにうみだされた。 対して,昔日の日本は,つい,50年前でさえ,ぬかるんだ道や高低差のある 道,ジャリ道があたりまえだった。 しかも,胴長短足で,肘や,膝間接が弱い。 ひねりの多い拳法の習得は不可能だった。 不安定なところで,ハイキックなどだせば,自滅である。 故に,直線的,身体操法がのこり,また,両足でふんばるのである。 狼のすがたをうつす,といわれる拳法もまた,むかしの身体操法そのままで, 東南アジア特有の後ろ回し蹴りがない。 現代では,空手や,ほかの拳法を習うのはそういう欠点を補うためである。 (ええい,ままよ) とばかりに俺様は,つっこむが, ことごとく,かわされ, 息がきれたところを, 鼻先に,ハイキック......を,寸止めされ, おどろいた。 「ハッハッハッ...」 ディ−プが大笑いする。 「フィリピン大統領は,アクションスタ−出身なのさ。」 ディ−プが言う。 「アクションスタ−?」 俺様MJは大統領に訊く。 「そのとうり。」 お茶目に,ウインクをしてこたえる大統領。 「ヤレヤレ..」 俺様がぐちると,ディ−プはなおいっそう大笑いをする。 フィリピン大統領が帰ると, ディ−プは,俺様をなぐさめながら。 「スハルトの後継者も開放政策を表明している。」 「時代は,変わりつつある。ということですか。」 俺様はこたえた。 「ウム,中国共産党が崩壊すれば,新疆ウイグル自治区は,旧ソ連の回教国家, アフガニスタンやパキスタンと中央アジアの大回教国を結成しようとするだろう。 」 ディ−プが真顔で分析する。 「しかし,そうなると,チベットも,いや,ダライ・ラマをかかえるインドもだ まって見過ごすわけはないはずですが。」 俺様が訊く。 ディ−プが頷く。 「だが,行き過ぎた民族主義など許すわけにはいかん。」 第一次大戦後に,民族自決にまかせ,第二次大戦へのながれの愚はおかさない という決断だ。 もはや,ル−ズベルトのいう,正義と平和なら正義をとるという時代ではないの だ。 俺様MJはある提案をした 翌日。 五菱記念館(ムラオカセイ記念館)わきの, わらぶきの農家。 そのなかのいろりで,俺様MJと,財界の雄。もと関東軍参謀が話し合う。 「どうだ,茶でも一杯。」 老人は,茶人気取りで茶をたてる。 「いや,やめておこう。それより,あぐらをかいてもいいか。」 俺様が訊く。 「ま,よかろう。」 おおようなところをみせる老人。 「さっそく本題にはいる。」 俺様が言う。 「あの迷惑な,青年将校の元総理へのかたいれをやめてもらいたい。」 「...........」 老人は一言も発さない。 「そのかわり,あなたには,ニュ−ジ−ランドの永住審査をうけてもらう。」 「ニュ−ジ−ランド?」 老人が問う。 「そうだ,個人財産に限って,相続税がゼロになる。日本のように,65%もと られ,孫の代には一銭ものこらないよりはマシだろう。」 「わしの金をガラスばりにしようというのか。」 「ロスチャイルドでさえアメリカにくだったのだ。言っておくが,拒否すると, てきにまわったと見なされるぞ。」 「いいたいことはそれだけか。」 老人が,言う。 「そうだ。」 俺様は言うと席をたつ。 「茶ぐらいのんでいかんか。」 老人がたしなめるが, 「いや,今度にしよう。猶予は2週間。俺様のところに.....では.... .....。」 そういうと,俺様は,農家を出,すぐ近くに止めてあった,米軍公用車にのり こむ。 俺様MJはディ−プに進言したのだ。 各個撃破を...,もともと財閥は利益をもってとけばよいのだ。 「フム,オイッ。」 老人は,使用人をよびよせると命じた。 「一族のものをよんでおけ。」 驚く,使用人。 「御前,もうすぐ,友住で集会ですが。」 友住ビルの33階と34階で,旧華族を中心とする,上流階級の会合が例年ある のだ。 「わしは老齢だ病欠にでもしておけ。」 老人は厳しく言う。 「はっ,しかし,」 なおもいいよどむ。 「きさまだれにつかわれておる。」 老人の怒りに,震え上がる使用人。 「奴は,わしの個人財産に限ってといったのだ。交渉次第では,一族のものぐら い助けてくれよう。」 ニタリと笑う老人。 俺様がカンパニ−につくと,すでに,返事がきていた。 《まったく,かわいげのないじいさんだ》 俺様はそうおもうと,ただちに,ディ−プにつたえた。 その後,カンパニ−に顔をだし,ハロルド長田に説明すると,俺様は私服にき がえ家にかえる。 「ご苦労だな。」 俺様MJはひとりつぶやいた。 家にかえり,ひとねむりし,目覚めると,はらが減ったので,買い物にでたのだ が,時々,ひょっこりと巡回を装って,水色の制服がでてくるのだ。 いわずとしれた,警官である。多分,俺様のこうどうを見張っているのだろうが ....。 ポン,ポン。 と, 俺様は,胸ポケットの身分証明書を叩く。 こいつは,一見,証明書だが,その実,小型のビ−コンである。紙ほども薄いの だが,その特殊な発信は偵察衛星でキャッチされおり,俺様の位置をおしえつづ けている。 つまり,逆GPSになっているのだ。 日本では,監視衛星としての使い方しかしらないが,偵察衛星はこういうつかい かたもあるのである。 なぜ,そんなものをもっているかというと,日本警察に対抗するためだ。 つまり,プ−タロ−で,行動予定がわからぬ俺様MJは,(警察の目からみた場 合である),監視対象なのだ。あからさまないやがらせをしないだけましだが. ...。 もし,容疑がかかった場合,非常に不利だ。 よく,日本警察おとくいの, 「フ−ン,お前のような顔はよくあるな∼。」とかいって,他の罪を擦りつけよ うとするやりかたに有効なのだ。 推測で,人を犯罪者にしたてあげる日本警察のやり口を白日のもとにさらけだ すことができる。 偵察衛星の位置デ−タ−ト突き合わせ,俺様がいないところの罪を立証しよう としたら,デタラメぶりがよくわかるというもの。 秘密警察というものは,存在自体が憎しみの対象となることをわからせれば良い。 ついでに言えば,俺様の電話の状態はずいぶんとよくなった。 昨今,盗聴で、 さわいだ議員もいたが,多分,素人のわるふざけだろう。 なんとなれば,もし,警視庁が盗聴するとすれば,電話番号がわかっていれば, NTTの中継基地にいき,リレ−端末に,端子をつなげれば良いからである。 今時,デジタル録音であるから,一週間か十日に,一度回収すれば済む。 会話もTEL番号もすぐにわかるし,きける。必要なら,音声認識システムにつ なげば,ちゃんと,プリントアウトできるのである。 「日本は軍国主義にもどる気だ。」 中国大使の陳大使は,外務省ではげしく抗議する。 「日韓合同演習はその布石だ!」 宮崎の八光一宇の記念塔がのこっているのがその証拠だ。」 八光一宇とは,旧日本軍が世界制覇を目指した記念塔なのだ。 かつて,中国大陸で,戦った際,皇威のおよぶ範囲として,中国各地からキリン のレリ−フをけずりとり,もちかえった物である。 だが,...しかし,.... この声高の 非難難をしると, 俺様MJが,私設秘書をしていた,もと建設大臣で警察族の先生は,反論した。 「不幸な過去があったことは,断腸の念を禁じえない...」 先生は語気強く言う。 「だが,一国二制度といいながら香港市場をつぶし,上海へもってこようとする。 ひるがえって,我国が実行支配している尖閣諸島の海域をおかす,中国の大国と しての矜持はどこへいったのか。」 「それと,これとは関係ない。」 陳大使は,言う。 「では,北朝鮮のミサイルはどうです。拉致事件はともかく,日本人妻の帰郷を ゆるさないのは,中国残留孤児以下ではないか。」 先生の語気に,思わず,大使はことばを失う。 中国が大軍をもって,鴻緑江方面を越えることはたやすい。 だが,武力行使をして,北朝鮮の金 正日政権に干渉することは,中国が,湾岸 戦争直前のイラクのようなたちばにおちいることになる。 ギリリと,陳大使は歯がみする。先生も負けじと,気迫で押し返す。 「あなたがたに,そんなことをいわれる筋合いはない。」 陳大使は,腹からしぼるように言う。 「これは,国連安保理の常任理事国のおことばとも思えませんな。それとも,沖 縄サミットで我国が提案しましょうか?」 先生の痛烈な皮肉が,大使に一撃をあたえる。 のち,米・中・北朝・韓の四カ国がジュネ−ブで,会談することになる。 MJカンパニ−。 俺様MJは,いつもどうり,TVウオッチしている。別段,家にいても良いのだ が,ひとりで食事をとるのはあじけないのと,常にスタンバッておくようにディ −プにいわれているので,ゴロゴロとしている。 「そう,機長は,乗客の安全をまもる為に,自己の命をなげうったのだ! これ ほど崇高の死があるだろうか...。」 凡人総理の顔が紅潮し,自己陶酔にひたる。 航空機ハイジャックの犠牲者のニュ−スだ。 「どうしました。MJさん。」 ハロルド長田が訊く。 「別に,機長はたしかに偉いが,それと,凡人総理と何の関係があるんだ?」 俺様が,ムキツケで訊いたので,ハロルドが言葉にこまる。 「スマン,言っても仕方がなかったな。」 俺様は,ハロルドにあやまる。 画面は,スタジオに変わり,内閣安全保障室長が,空港警備を力説している。 気を取り直したハロルドが俺様に訊く。 「いいんですか?」 俺様は,缶コ−ヒ−を開けながら,適当に答える。 「《古い酒を新しい皮袋に》ってやつだ,かまわんよ。」 「ですが....,」 「なに,ウチの先生でさえ,益にならないとしたら,排除しようとする官房長官 だ。」 「そんな..」 「先生は,やつから友情を買おうとは思わん。頭脳をかっているのだ。むこうも そう思っているハズだ。官房長官の膝下にある限り,内閣安全保障の行動は大目 にみなければ。」 俺様は,一息つくと,新聞に目をとおす。 東京大学で顔相のデ−タ,つまり,職業顔の研究が行なわれているという記事が 目にとまる。(アンデルセンが喜ぶな) 俺様は,そう思う。なんとなれば,これは,ナチスドイツが,ア−リア人の優秀 さを証明するための骨相学と同根のものだからだ。 三面記事では,警視庁がアダルトサイトのホ−ムペ−ジをモザイクはずしができ るとして摘発したとか,麻薬購入を教唆したとかで,ホ−ムぺ−ジやプロパイダ −を逮捕したとか載っている。イギリスが警戒するのも無理はないな,かってに いつでもインタ−ネット規制できるとは,いったいだれが判断しているのか不明 瞭すぎる。 「NSAが?」 俺様は,佐官から,連絡をうけ,あやぶんだ。 報告をしに,ディ−プ・インスペクタ−のもとにきたのだが,ディ−プは留守だ ったので,狭い個室で報告をかいていたら, と言っても,首をコキコキならしながらキ−ボ−ドをたたいているだけだが。 先の報告をうけたのだ。 NSAとは,北米安全保障で,CIAのアメリカ国内版みたいなものだ。 「NSAの連中がくるなんて,ディ−プからきいていないぞ。」 俺様MJは佐官に訊く。 「わたくしも,訊いておりません。MJ少将がご存じかと..」 ウム,と,俺様は,腕組みをしてかんがえる。 ややあって, 「少佐。念のため,武装兵士を10人程,呼べ。」 「はぁ?」 少佐はいぶかる。 「正式な命令ならあらかじめ俺様達になんらかの連絡があるはずだし,時期が時 期だ。大事をとっておくにしくはない。」 「スパイだと?」 少佐が訊く。 「わからん。」 俺様の返答にも自信がない。 「では,少将。これをおもちください。」 少佐はこしから,自分の拳銃を取り出す。 「いらんよ,射撃のうでは悪いから。それより,防弾チョッキでもくれるほうが ありがたい。」 ゲストル−ム 武骨な一見。 殺人犯とならべて,どちらが犯人かわからないような。白人2人。ス−ツ姿。 NSAのエ−ジェント2人が,来賓用のソファにすわらせ, かれら2人を,小銃を機関銃モ−ドに設定した兵士が,かたわらに,銃口をむけ, 10人ほどたっている。 「どういうことだ。」 やや,赤毛がかった男がどなる。 俺様が,到着すると,早速文句を言う。 もう一人の白人の男がたちあがると, 兵士達が,銃のグリップをにぎり直す。 「NSAがくるという命令はきていない。真偽を確かめるまで,拘束させてもら う。」 俺様が言う。 「なんだと!」 たちあがった男が,目を向く。 「MJ。アメリカは純粋に白人のものだ。うすぎたない貴様などに...... .」 「だまれ,少将を侮辱することはゆるさんぞ!」 少佐がどなる。 少佐が首を動かし,指示すると,兵士達が,エ−ジェントと俺様の間にわって入 り,かれらをつれていこうとする。 2人はおとなしくつれてゆかれる....。 と,思ったが, 「MJこれをみろ!」 激しやすい,赤毛のほうがふところに手をいれる。 《ヤバッ》 俺様は,近くの机の影にとびこむ。 「うてっ。」 少佐は仁王立ちで,命令する。 たちまち, 二人のNSAエ−ジェントは,血飛沫をあげて,ボロ雑巾のように絶命する。完 全に,小銃が一連射し,銃口が熱くなってから,少佐が止めの命令をだす。 少佐は注意深く,死体となった二人のエ−ジェントにちかずく。 ヒョイと, 上着をめくると,はたせるかな,ホルスタ−におさまった拳銃が顔をのぞかせる。 「あぶなかったですね。」 少佐が言う。 俺様は,臆病なウサギのように,机の影から這い出すと, 「君がいてくれてたすかったよ。少佐。」 冷戦が終わったとおもったどこかの馬鹿が,主張しはじめたのか,それとも,. ......。 俺様は,あとをまかせると,再び,個室に戻り,報告をしあげると,ディ−プ 宛メ−ルでおくる。 しばらく,なにもすることがないので,モニタ−に,TVをつけ,CNNにあわ せる。 すると,少佐が戻って来た。 「ご苦労だったな少佐。」 「いえ。」 軽くことばをかわす。画面では,スイス系銀行の免許をはくだつがながれる。 フム。 俺様は,むきなおってTVをみる。 「なんですか。」 少佐が訊く。 「いや,かつて,オ−ストリアには北朝鮮のプライベ−トバンクがあった。冷戦 後はスイスにうつしたわけだが。」 俺様は画面をみながら,説明する。 「スイス系銀行には,外国法人なら,届け出をしなくても良いという原則がある のだ。」 そのうち,ディ−プ・インスペクタ−がもどって来たと言う連絡がはいった。 「MJどうして,NSAのエ−ジェントを拘束しようとしたのかね。」 俺様は,いま,軍法会議にかけられていた。 なんとなれば,NSAのエ−ジェントは本物だったのだ。正面に,極東艦隊司令, むかって左にディ−プ,右に事務次官補が居る。 「NSAがくる,と言う連絡はディ−プから,受けておりません。お疑いなら本 人におたしかめください。」 艦隊司令が首を巡らす。 思わず,ディ−プが目頭をおさえ, 「MJに,NSAの一件を教えなかったのはわたしのミスだ。」 独白する。 「では,日本の財閥と取り引きして,我々をうらぎっているのではないか」 事務次官補が,鋭く切り込む。 「いいえ,ちがいます。共産主義が崩壊し,自由市場が確立すれば,世界のGN Pの16%をもつ,日本はそれなりの役目をはたさなければなりません。」 俺様は,3人をみわたす。 「ところが,自由市場のなんたるかを知っているのは,綿紡績からなりあがった, つまり,《投機》といものをこどものころから叩きこまれた戦前の財閥だけなの です。」 ひといきついた。水がほしいところである。 「だが,日本はそれほど弱くはない。かれらのかわりなどいくらもいるではない か。」 事務次官補が言う。 「それでは,太平洋の大七艦隊は,張り子の虎になりますが,お忘れですか,横 須賀にニミッツがいるころ,そのニミッツを修理したのは軍港の横にある友住重 工の造船ドックだったことを。」 全てがそうなのだ。 アメリカ空軍でさえ,自衛隊からの部品提供をおこなわれており,それを支える のは五菱の技術陣だったりするのである。これは,戦後,財閥解体はしたが,従 うものはそのままつかい,日本統治をおこなったGHQの占領政策のつけがその ままきているのである。 その後,ねちねちと,いたぶられたが,憲兵監視のもと軟禁されてしまった。 一週間程,俺様MJは,なすすべもなくゴロゴロしていた。 たぶん,裏をとりにいっているのだろう。 なにせ,食事は3度くれるが,TVも電話もなく,一応,少将なので,客室らし くあしらえてあるが,窓すらないのである。 が, 突然,事情はかわる。 ジュネ−ブでの,四者会談で,北朝鮮がアメリカの提案をけったのである。 後日,ディ−プにきいたところによると, 俺様は,ほとんど有罪になりかけていたのだ。 理由はどうあれ,NSAのエ−ジェントが,死んだことにかわりはないからだ。 だが,北朝鮮のミサイルは,アメリカ本土まで届く。 万一の事態がおきたら,大変だ。 それに,アメリカはなるべく,アメリカ青年の血をながしたくはない。 俺様MJは,再び自由のみになった。 部屋からでると,ディ−プが開口一番に, 「迷惑をかけるなよ,君の有要を上層部に説得するのに骨がおれた。」 「申し訳ありません。」 俺様はあやまる。 「だが,個人的には,君の忠誠心は買っている。」 ディ−プがそういってくれたので,俺様は大変ありがたかった。 国連,東京支部。。 サダコ高等弁務官に,俺様MJは,接触していた。 「わたしに,日本を監視しろと」 「そうです。」 おどろく,サダコ女史を目前に,俺様はことばを続ける。 「すでに,韓国では,北朝鮮の工作員がたいほされています。北朝鮮が滅亡すれ ば,日本でも行なわれるでしょう。」 俺様は,彼女の顔をみる。 「ですが,日本人には,北と南の差はわかりません。無国籍のフィリピン人ハ− フや,中国人,ヘタをすると,欧米人も含めた,外国人排撃運動につながりかね ないでしょう。」 「わかりました。」 彼女は承知した。 これ以後,日本は国連人権擁護センタ−に監視される。 ディ−プにほうこくすると, 「うてるてはうっておくべきだ。」 といわれ,俺様は,久しぶりに,MJカンパニ−にもどることにした。 「なにをやっておるのだ。」 東家第一皇子に,民主党党首はどなりつけられていた。 地方分権の時には,お題目だけとなえて,実行案を出さず。 国旗・国家法案では,分裂というていたらくをみせたふがいなさをなじられたの だ。 「しかし,皇子...」 民主党党首に皆までいわさず。 「では,訊こう,日本やアメリカでさえ,太平洋戦争時には,記録映画をとって いた。日章旗と軍旗はちがうから良い。 だが,君が代は録音されているぞ。」 「...」 「もちろん,敗戦国の日本にどうこうする権利などなかった。アメリカが肩代わ りしてくれたからな。だが,東南アジアの諸国は,政権がかわるたび,我国に謝 罪をもとめるではないか,予はかかわらぬぞ。」 皇子は,党首に訊く。 「賛成したものの名前はわかっているのか。」 「はい,だいたいは。」 「では,そやつらの名簿を東南アジア諸国にながしてやれ,責任をとらせるのだ。 」 思わず,党首は絶句する。 が, それにはかまわず, 第一皇子は,党首に訊く。 「民衆がもとめるものはなにか?」 「はっ?」 突然の質問に,即答しかねる党首。 だが,第一皇子は,かれの意見など訊く気はなかった。 みずから答えを導きだす。 「公平な裁判と税だ。」 第一皇子が無能ではない証拠である。 「10・5・3・1をしっておろう。政治家は一割しか税がかからん。だから, 私服を肥やしているとおもわれる。」 民主党党首は,最近,政治家が,脱税容疑でつかまったニュ−スを思いだしてい た。 「それをつまびらかにする法案をだせ。それと,財界のみかたばかりする弁護士 どもをなんとかする法案もな。」 皇子は,党首にめいじると,さっさと自室にもどっていった。 民主党党首は,驚異をかんじた。自分も政治家としては若いといわれたが,第一 皇子は,30そこそこである。先例だの,習慣だのを,口にするしか能のない者 には不愉快なじだいが到来しつつあるらしい。 「お帰りなさい。」 久しぶりの,MJカンパニ−に,ハロルド長田やマイク達の笑顔がならぶ。 「心配したぜ。今度はだめかと思ったよ。」 マイクが言う。 「うそつけ,俺様がいなくなれば,カンパニ−の儲けを独り占めしようと思わな かったか。」 俺様は,マイクのでっぱった腹に,軽いパンチをおみまいして言う。 「そんなことないよ。 でも,少しだけな。」 愛嬌たっぷりにマイクはこたえる。 「まってたぜ。MJ。」 「MJ,大丈夫?」 日本人スタッフのふたりも心配してくれる。 「ありがとう,もう大丈夫さ。」 俺様は,笑ってこたえる。 「おかえりおまちもうしておりました。」 アンジェリカ大尉が,最敬礼で,むかえてくれる。 ウム,とうなずく俺様。 「《先生》の方は,北朝鮮へわたった日本人妻の一時帰国を示唆しておきました が...」 大尉は俺様がいない間の状況をのべる。 「それで良い。ふっ,しかし,ミサイル発射が問題となった途端,拉致された者 のことなどわすれ,主戦論になる者が多いな。」 「所詮,その程度の政治家が多いのです。」 俺様が,ぼやくと,大尉が即答する。 「今後はいかがいたします?」 大尉が,俺様に指示をもとめる。 「そうだな,ミサイルは,航空条約違反だから,北朝鮮への送金反対がおこるの はやむおえまい。KEDO(北朝鮮経済援助)は,日本人妻のさとがえりと一緒 に交渉させろ。北朝鮮のやつらも日本人が金になるとわかれば,取り引きにおう じるだろう。」 俺様は,大尉に命じると, プライベ−トル−ムにとじこもった。 極東戦略における稟議書を作成しなければならない。 「防衛には,2つの方法がある。第一は,相手より強大な軍事力をもつことであ り,第二は,平和的手段で,相手を無害化することである。前者は,軍備の増強 が経済発展と反比例であることは,近代社会においては当然であり,ついには, 国家そのものを崩壊せしめることは,ソビエト連邦をみればわかることである。 」 パソコンのキ−ボ−ドを一気に叩き,行をかえる俺様。 「自国民を弾圧し,侵略という形で権力を使用すれば,かならず,滅亡するのは, 歴史上証明されており,侵略された側より,侵略した側が,敗北している。いわ く,かつての日本がそうであり,現在では,サダム=フセインが良い例である。 言論の自由化,権力機構の頂点からの腐り。富の不公平分配を是正しないからで ある。ユ−ゴが実例といえる。」 俺様はふたたび行をかえ,ついでに,TVをつける。 「具体てきには,第一の方法より,第二の方法を選ぶべきである。そして,次に うまれるであろう新体制と共存すべきであろう。 では,どうするか,現在,日本のNHKはBS(衛星放送)を日本領域内に限定 している。その角度をほんの少し,北朝鮮にむけてやれば良いのである。韓国で は,日本文化が解禁されつつあり,また北京においても,日本の流行歌がしられ ている。はたして,24時間,膨大な量の情報をあたえられて民衆はだまってい るだろうか。 かつて,アメリカは,ドラスティックに第二次大戦に勝利した。だが,アジアか ら日本の影響力を取り除くという目的は,結果的に失敗した。ならば,逆手にと れば良い。 将来てきには,大陸を含む。東アジア全域に拡大することも考えねばならない。 大貴族支配の旧態制は,自由主義国にとって敵であったというだけではなく。被 支配階級,すなわち平民にとっても敵であるのだ。」 俺様は,おおきく息をつき,両手をのばす。目をTVにてんじると,官房長官 が国旗・国家法案通過をとくいげに,表明している。 (所詮,この程度のおとこか) 俺様はがっかりした。 君が代が,皇帝のうたであることは,万葉研究家の犬飼が公言していた(悲運の 犬飼のまご) 見解の相違とするならば,自衛隊の軍旗はだれが授与するのか。総理大臣が陸・ 海・空の三軍の長とするなら,各国首脳のセレモニ−のとき,皇帝が謁見する必 要はなくなる。統帥権の問題や,戦災補償がでてくる。自衛隊は戦前の日本軍と しての継承をしていにことになっているが,ミズ−リ−艦上の降伏調印式の記録 は,まぎれもなく日章旗と君が代である。 また,沖縄を情報発信のタ−ミナルにするというが,アジア諸国でさえ,インフ ラ整備がままならないのに,どうやって,海底ケ−ブルを沖縄までひくのか。 日本が国債を発行するのか,国内に余力はない。なら,円借款か,いまでさえ, アジア諸国は青息吐息だ。 それとも,通信事業だから,郵政省から金をひねりだすとすれば,財投か,郵貯 の運用だろう。だが,アジア諸国が返済能力があるとはおもえない。 しかも,2001年には一千万円がげんど保障となる。 都心のマンションでさえ,三千万円の時代に無意味だ。 第一,国民に知れた時点で,郵政省は,大蔵省以上の憎しみをもたれ,即日解体 になってしまう。 俺様が郵政OBだったら,担当者はふくろ叩きだ。 画面が自自公連立政権でもめている。 (はっ,くだらない) 2010年に,世界基準に間にあわせるには自自公で強力におしすすめるしかな い。 だから,自由党党首のいうように,議員の定数削減もやむおえない。これ以上, 一票の格差がひらいたら,民主主義ではなくなる。それにしてもへただ。 盗聴法にしても,組織団体のカルト破防法にしても,なぜ,衆議院での会議記録 を公開しないのか。 これでは,,密室政治そのものではないか。 議事録なりを,即座に公表すれば,国民がもっともしりたい情報をあたえること になる。 《事実》を公表すれば,良いのだ。 そして,それに対抗するのは,真実性をもつ虚構しかないが,そんなものは存在 しない。 プチッ 俺様は、TVをきり,腕組みをする。 ディ−プの執務室。 俺様は稟議書をみてもらいOKをもらう。 「ところで,MJ。かわったことはないか。」 ディ−プは,カンパニ−のもどったさいの,俺様のことをきく。 手短かに,俺様は《先生》への示唆のことをはなす。 「あと,コンビニやレンタルビデオによったのですが,どうも,俺様の顔写真が, 要注意人物として,回っているようで,..」 俺様は,よく,これらによるのだが,店にはいってまもなく,警らの連中の巡回 にでくわすので不審に思い,しらべさせたのだ。 「思い上がりおって,日米安保条約違反だ。」 ディ−プは,おこる。 「それに,捜査密行主義にはんしています。」 俺様が言う。 「まったく,この国には,公民権という考え方がないらしいなMJ。」 ディ−プにいわれて,俺様は赤面する。 「まったくもって,お恥ずかしい限りです。」 片方の手で,同邦とたたかい,もう一方の手で外国人ときそわねばならないとは, .... 「よけいなことを...」 先生はメガネをネクタイでふきながら,こたえる。俺様は,ディ−プと同じこと を警察族出身で,建設大臣をも経験した先生の事務所に相談にいっていた。 「中国共産党の一党支配が崩壊すれば,群小の勢力争いがおきよう。中国人どう しであらそうぶんは良い。だが,華僑は動こう。当然,国境問題とからまって印 橋もな。そのとき,アメリカやユダヤのちからをかりずして,どうして,この国 がまもれるのだ。」 先生は椅子にすわりながら,憮然とした,表情ではきすてるように言う。 「おそらく,公安や警視庁のハゲどもがうごいているのだな。」 先生は言う。 「ご明察を,ですが,官僚と政治家の権力はにていますな。」 「だまれ,MJ。オレは,権力を盗もうとはおもわん,奪うのだ。」 「これは,失礼いたしました。」 俺様は,帰りの車のなかでかんがえる。 この国の総理大臣は世襲制ではない。もし,風見鶏元総理の子息が先生の半分, いや,三分の一でも覇気があれば,どうなっていたか。 「満足だな。」 凡人総理は自宅でグラスをかたむけながら,美酒をあじわっていた。 「自自公で法案をとうし,定数削減をも実現しつつある。私の名前は,改革派飲 総理として,世界に名前がのこるな。」 公務員,役人のリストラは全先世的流れである。そのためには,政治家個人が犠 牲をださずして,行なうことはできない。 沖縄返還や,国鉄改革と同じように,あたらしい時代の基礎をつくった偉人と して,賞賛を浴びるのだ。その栄光はおそらく,百年後までかたられるだろう。 総理大臣という,位人身をきわめたうえに,この栄誉。不快であろうはずがない。 それは,凡人といわれた,自分こそふさわしい。名誉はだれにも渡さない。 そこには,大衆操作のうまい,権力者の素顔があった。 「皆,そろいましたね。」 堂々たる女偉丈夫が言う。 オルブライト長官である。 白人女性によくある,でっぷり太った体形にパ−マ頭。 円卓会議をディ−プのところでおこなっているのだ。 メンバ−は,ディ−プ,俺様MJに,アンデルセン,そして,NATO軍最高司 令であり,急きょ,極東にまわされたジョン=ダラガ−少将である。 まず,ダラガ−少将が意見を述べる。 「東シナ海での軍備の増強が,急務です。北朝鮮が有事の際には,全軍をもって たたかねばなりませんから。 オルブライト長官が言う。 「それはいけません。中国を刺激しすぎる。」 だが,ダラガ−はくいさがる。 「それでは,小官は任務を遂行できません。」 「大統領は,戦争権限を発動されていません。ですから,通常飲範囲でおこない なさい。」 「しかし,」 「ではどうするのです。北朝鮮が日本に戦争をしかけたら,中国は動かざるおえ なくなる。第三次大戦の戦端をひらいた愚かものとして,アメリカの名に泥をぬ るきですか。」 ピシャリ といいきられて,ダラガ−はひきさがる。 「外交は問題ありません。議会がもとめれば,委員会になんどでも出席して,証 言していますし,同盟国にたいしても,アメリカの政策を説明しました。」 彼女は,俺様の方を見ると, 「MJ。《政府の行動と国民の議論は別だ》ということもう少し教育しなさい。 」 「....」 「いっておきますが,日本の独自の行動をさまたげるものではありません。交渉 や,工作は,外交権限です。」 オルブライト女史は,議会制民主主義の原則をまげない。選挙でえらばれた者 には,政策を実行する権限がある。 そして,国民には,議論をする自由がある。 ところが,今回の重要法案には新聞の反論に,たいして説明していない。TVで も,大臣が出席して証言しなかった。 これは独裁国とかわらない。 また,周辺諸国に同盟国にも,日本は配慮がかけていた。何度も足をはこんで 説明しなかった。これを,女史は非難しているのだ。 と, そこへ,アンデルセンが口をはさむ。 「そのうえ,すこし,あやしい。有事にそなえるとして,高校生自衛官をつくっ た。これはナチの親衛隊とおなじではないか。」 アンデルセンが,大仰に主張する。 「それは,本当なのですか。」 オルブライト女史が,慎重に訊く。 「はい,もとは,この新聞に載っていた記事ですが,我々が追跡調査をしたとこ ろ。両親の借金を返済するためだとわかりました。」 《ものをいう新聞》を片手にかかげ,アンデルセンは言う。 女史は,メガネをかけ,アンデルセンから,新聞と,訳された書類。そして, 報告書を読む。 「わかりました。少年達の人身売買の疑いがあるというのですね。」 「そのとうりです。ですから早急に..。」 「では,少年達をうってりえきをえる,議員や,関係者のリストを出しなさい。 」 「いや,それは,まだ。」 「だったら,ひきつづき調べなさい。いいですか,《下草苅》はいずれおこない ます。ですが,その時期は,大統領が判断されます。勝手なまねはゆるしません よ。」 アンデルセンが,だまる。 バブルが崩壊し,自己破産するのがふえた。だが,破産できる限度額までいって いないものは,厳しい取り立てにあっている。その取り立てのみがわりを自衛隊 が,隊員となった子供達の給料から,天引きして返済居させる。ていの良い,人 身売買とかんがえられても無理はない。 しかも,高校生なら,15,6才からである。 問題視されるのは当然だ。 それに,入隊したものたちにも,不満はある。 一切,金はいらないと言うことだったのに,記章や,制服のマイナ−チェンジで, 常に購入しなければいけないのだ。 「滅びるならせいぜい華麗にほろびればいいのだ。」 アンデルセンが,つぶやく。 「まだつぶれて,もらっては困る。」 ディ−プが言う。 「しかし,口に民主主義を唱えながら,法や規則を無視する。権力者が尊重しな いのだから,警官や軍が横暴になるわけだ。」 ディ−プの口調は,にがりきる。 俺様は手をあげて,質問する。 「長官。では,自由貿易体制を堅持しろと。」 「そうです,共和党の一部の金持ちや,アイアコッカなど,例外です。保護貿易 など,得るものはなかったのは,現在のアメリカをみればわかること。」 「では,日本の場合は,軍事バランスとしても,繊細なタッチが要求されますが。 」 「当然です。」 オルブライト長官は,簡単に言う。 (いうだけなら,楽なもんだ) 俺様は心の中でつぶやく。 ことは重大だ。中国や北朝鮮にあなどられるほどよわからず,かといって,アメ リカにおそれられるほどつよくなってはいけない。共産主義がなくなれば,イン ドが台頭してこよう。それに,東南アジア諸国の面倒もみなければ... どうやら,オ−ストラリアやニュ−ジ−ランドの白人達を巻き込む必要があるな。 「MJ,いまは目の前の処理に専念することだ。」 俺様の考えをさとったディ−プが,忠告する。 そして,会議はおわった。 MJカンパニ−。 いつもどうり,ゴロゴロいると,長田がショウガ湯をもってくる。当然,俺様は TV飲前の置物状態だ。 「これを見てください。このようなきょだいな地下施設が,..」 いわゆる,専門家といわれるあやしげな軍事評論家がしゃべる。 「MJさん。本当にあんなのあるんですか?」 ハロルド長田が心配そうに訊く。 「大丈夫,ただのでかい体育館か倉庫だと思えばいい。」 俺様はそっけなくこたえる。 ハロルドは,うたがわしそうな目で,俺様をみるので,俺様は注釈をつけくわえ る。 「カ−タ−大統領が,北朝鮮支援をきめて以来,何度も調査団が査察している。 問題があれば,とっくに手をうっているさ。」 「それはそうですが。」 納得しがたい面持ちの長田。 「いいかい,TVのしたり顔の専門家が説明している写真は,どこから出たんだ ?」 俺様が訊く。 「それは,たぶんアメリカからでしょう。」 長田が言う。 「そうだ,君はポ−カ−をするのに,,自分の手のうちをすべてみせるか? 当 然,公表したもの以外の手段もにぎるハズじゃないか。」 俺様が説明する。 「では,あれが全てではないと。」 「当然だ。」 「しかし,なぜ。」 「良い質問だ,そこがポイントだよ。」 ハロルドは考え込む。 傍らにいた,アンジェリカがこたえる。 「日本の国力をけずるためだとおもいます。軍備を拡充する負担は相当なもので すから。」 「そうだ,それもある。そして,視線をそらすためだ。」 「視線をそらす....ですか。」 アンジェリカが訊く。 「主力が要塞にたてこもって,かてるわけがない。それに,TVでコメントして いる連中は,湾岸戦争で,秘密基地があるといってた連中だ,とるにたらん。」 俺様は,ショウガ湯をすすり,もったいをつける。 「で,だ。今,アメリカ経済は好調とはいえ,第一次産業はボロボロだ。これは, 四半期ごとの決算で,設備投資を軽んじた結果といえる。」 「それで,..」 ハロルドが訊く。 「それでだ,その回復には,5年はかかる。日本からの技術導入にな。」 俺様はカップをかたわらの机に置き,指を組む。 「ですが,MJ。第一次産業は,中国や東南アジアも安かろう悪かろうで良いと, いままでアメリカは大量輸入していたではありませんか。」。 アンジェリカが言う。 「そうだ。だが,大陸がいつまでももつわけではない。」 つまり,今,現在,日本では,欧米からの合併や,企業進出が著しい。 例えば,自動車メ−カ−を,フランスの企業が吸収・合併したとしよう。 すると,フランス政府は,議会で,民間会社を強制摂取して,国営企業にする。 その企業を,アメリカが適正価格でかいとれば,労せずして,先端技術が,アメ リカにもたらされるわけである。 多国籍企業としては,税金の国のほうが助かるわけだし,たとえ,日本が訴えて も,もう,その企業が存在しなければ,どうにもならないのである。 無論,全部が全部,そう,うまくいくわけではないが,第一次産業のたてなおし には,役に立つのだ。 「まるで,詐欺ですね。」 ハロルド長田が言う。 「そうだな,やられた方はひどいペテンにかかったような気になるだろうな。」 俺様は,そう答えるが,これが,国際社会における企業の現実である。 白人男性と,中国人が一対一ではなす。 「我国では,すでに,完全水爆を完成させた。」 堂々たる態度で,白人男性は言う。 「わかった,ビル。北には,我々から圧力をかけよう。」 中国人はこたえる。 「そのかわり,我国の...」 中国人にみなまでいわせず。 「わかっている,ミスタ−紅。貴国の面子をつぶすようなまねはしない。ところ で,この国には房中術というのがあるらしいが...」 「興味がおありか,なんの,権力者たるもの,旨味がなくては」 そばで,カンボジアから,ブラックレインのごとく,偽札犯追求の仕事をほうり だして,護衛についた,シ−クレットサ−ビスは,表情をかえないが,内心おお きなため息をついていた。 会談は一時間でおわる。 中国人側の持卒が訊く。 「なぜ,やつらの言うことを訊いたのですか。」 ミスタ−紅はおこる。 「ばかめ,季節を考えんか。これが春先なら,黄砂とともに,放射能は日本や太 平洋側に吹く。だが,これからの秋から冬にかけては,大陸に風吹くのだぞ。し かも,凍った鴻緑紅を歩いてこられたらどうするんだ!」 たしかに,収容所は,もう北の難民で,一杯である 「出過ぎた質問をいたしました。」 持卒は,あやまり,その場をじした。 イタリヤ,バチカン。 ヨハネ=パウロ2世は,フィリピンのカトリック教徒から,日本政府への不満嘆 願書をうけとっていた。 「どうしたものかな。」 老人は側近の司祭達に訊く。 「フィリピンにおいて,カトリックは国教です。その彼らが言うのですから,日 本支部の対応が手ぬるい,といえるのではありませんか。」 司祭のひとりが言う。 「私が極東にまいりましょうか。」 十字軍(ク−ルセイダ−ズ)の子孫が,司祭にはにつかわしくない,筋骨たくま しい二の腕をさすりながら,進みでる。 と,別に一団があらわれる。 「ル−ドヴィック!」 十字軍の子孫が叫ぶ。 黒い髪に,黒い目,ラテンの顔だち,まだ,若い。20∼30才台といったとこ ろか。 「わたしが,協力いたしましょうか。」 慇懃に喋る。 パウロは不快そうに 「フリ−メ−ソンをよんだ覚えはないぞ。」 そうなのだ,この若いラテン男こそ,イタリヤ,フリ−メ−ソンの館長である。 「極東においては,日本より,フィリピンにわが支部がありましたからね。」 ル−ドヴィックが言う。 「ふん,このわたしに圧力をかけようというのか。」 「いいえ,わたしごとき非才の身になにができましょうか。勉強させていただき にまいったしだい。」 「ではだまってみてるがいい。」 パウロは,そういうと手をふって,ル−ドヴィック達を追い払う。 「とうとううごきしたか。」 俺様は,この報告をカンパニ−でうけ,つぶやく。 「デ,どうするんだ。MJ」 マイクが,俺様に訊く。 TVでは,APECで,ふたつの中国でもめ,アメリカが緩和剤になるとのニュ −スがながれている。 「なにも。」 俺様はそっけない。 「なにもって」 ハロルド長田が言う。 俺様が,無愛想に,パソコンのキ−を叩く。 すると,消去されたはずの俺様のデ−タ−が画面にでる。 「これは,以前,消去したはずのデ−タ−じゃないですか。」 ハロルドが,驚く。 「どうやら,日本警察は,俺様をどうしても犯罪者にしたてあげたいらしい。」 俺様は憮然として言う。 「警視庁か?」 マイクが訊く。 「いや,東京や,県警がうごいた様子がない。」 俺様がこたえる。 「なら,大阪警視庁だな。」 マイクが,煙草に,火をつけながら言う。 一般には,警視庁といえば,東京都のものをさすが,実は,大阪にも警視庁はあ るのである。 これは,終戦直前にできたもので,国家の秩序と維持を目的としたもので,悪名 たかい特高と,同一目的である。敗戦後は,GHQの監視下にあったが,冷戦に はいってからは,両陣営のせめぎあいのため,まったく,機能してなかった。だ が,一方がくずれたため,再び,動き出したのだ。Nシステムの導入などが,大 阪からはじまったのは,こういうことである。 これにくらべれば,政令による,免停講習費の値上げなど,かわいいものだ( 法律できめていないので,いくらでもねあげ可能である) バサッ! 俺様は,新聞をひろげる。 官房長官が,辞意をもらしたニュ−スがおどっている。 「ふん,どうせなら,掃除していってくれれば良いものを。」 この場合,完全に,俺様を敵視している警察のことだが,はたして,今の官房 長官に,期待して良いものか疑わしい。 「永遠なる国家というものが存在しないのは,東ティモ−ルをみればわかること。 それすら理解できないならかってにすれば良い。」 承詔必謹−。 上官の命令はすなわち朕が命令とこころえよ。 アメリカは,極東裁判で既に経験済だ。 上官の命令にしたがっただけ,という理屈はなりたたない。 秘密警察というものは,存在しえても,秘密の軍隊というものは存在しない。 だから,こそ,戦犯があのように多かったのであって,平時しかも,秘密警察の 責任は警察庁長官にすべてかかる。 警察といえども,行政官の一組織であるかぎり,その,正当性を与えた責任者が 処罰されるのは当然であり,国際ル−ルである。 かの,ル−マニアの警察庁長官はどうであったか。チャウシェスクと同罪とみ なされ,銃殺になったではないか。忌まわしいかばいあいなどをしている場合で はないと思うのだが, とかげの尻尾きり,ですまされる問題ではないのだ。 特に,インタ−ネットによる規制は,再三,イギリスから警告を発せられ。 −現在,インタ−ネットへのアクセス制限をしているのは,中国,北朝,次いで 日本である− ポルノがいかんというが,では解禁しているアメリカは何なのだ,ということに なる。 世界単一市場が形成されるということは,アメリカンスタンダ−ドにあわせると いうことでもある。 これでは,鬼畜米英時代とどうちがうのか,問われれば,返答に困るのではな いか。 ピピッ。 マイクが,TVのスイッチをいれる。 『はたして,日本は,人的資源を投入しないですむのでしょうか?』 《文句をいう新聞》系列のTVキャスタ−が偉そうに言う。 『まったく,理解できませんね』 あいずちを,女性サブキャスタ−がいう。 マイクがはなをひくひくさせる。 現在,世界中で,デフレが進行中だ。だが,東南アジア諸国の首脳は,インフレ からデフレへの転換をなしえていない。 ハビビにしろ,マハティ−ルにしろ,いま,うまくいかないのんは,日本からの 資金が足りないからだと思っている。これでは話にならない。 そんなところへ,日本が出兵すればどうなるか,全ての責任を日本に押しつけ, 政権の維持をはかろうとするだろう。 まして,東南アジアでは,時効の概念がない。 一族の仇は,一族でうつ。というのがふつうである。戦後50年,金になるから 黙っていただけである。 もし,自衛隊が出兵したとする。 そこで,一般市民をまきこんで,ゲリラが発生すれば,どうしょりするのか。 軍隊としては,自衛のため,掃討しようとするだろう。外見上みわけがつかない 以上,やむおえまい。だが,それは,世界がゆるさない。 オ−ストラリア軍は散々,やりあってきたので,あらゆる階層に,チャンネルが あり,また,白人特有のねばりつよさで,何世代にもわたって,交渉してきた。 はたして,日本にそのまねができるであろうか。 極東においては,アメリカのみが,正義であるのである。 なに,奴らがあいたがっていると。」 ドクタ−は,白磁の顔をさらに怜悧にして言う。 「はい,いかがいたします。」 ディ−プが,訊く。 「おやめになりますか。」 「いや,会おう奴らの蒙を開いてやるためにもな。」 コ−エン国防長官,オルブライト国務長官,ピカリング国務次官,カ−トマン特 別北朝大使の面々である。 「意見具申を許可していただき,ありがとうございます。」 一同を代表して,コ−エン国防長官が述べた。 「諸君らの言いたいことは,わかっている。」 コ−エンの儀礼に形ばかりの答礼をしながら言う。 「中国と戦うな,と言うのであろう。」 ドクタ−は,先手を打って言う。 「わが軍に対し,敵は2倍,しかも3方向よりわが軍を包囲せんとしております ........」 ピカリングが言う。 「ここは矛をおさめ,我々に交渉をお任せください。」 こいつは,無能だ。ドクタ−は,心のなかで思ったが,口にはこう言った。 「沖縄は,地政学上,台湾・北京・北朝から等距離にあたる。つまり,戦場から 戦場への移動は我々のほうが,近路をとることができ,時間と距離において優位 にある。敵がわが軍と,たたかわずに移動するには大きく迂回せねばならない。 」 じろりと,ドクタ−は,一同を見渡す。 「我々は,包囲の危機にあるのではない。各個撃破の好機にあるのだ。また,敵 が,兵力を分散しているいじょう。全体すれば成程,敵軍は優勢だが,一軍とし て見れば,わが軍が優勢である。そんなこともわからんのか!」 激怒しながら,ドクタ−は言う。 「...ですが...」 コ−エンが抗弁する。 「用兵学的には,正しいですが,何も今でなくても...」 さすがに,国防長官であるが,さらにドクタ−は説明をつづけねばならない。 ゴルバチョフは,経済音痴だったが,中国もその点同じである。 インタ−ネットによる,ハッカ−行為をアメリカが許す筈がないのだ。 情報と言うものは,出入りが自由だから,切磋琢磨して,進歩するのである。だ から会社 にも活気があるのだ。企業が一々チェックしていたのでは,外からの情報は,入 らなくなってしまう。当然,そんな企業の未来はしれている。 情報公開のない自由市場はない。 例えば,現在,TVゲ−ムのハ−ドで大人気のプレイテ−ション2がある。 ところが,このゲ−ム機,メモリ−が壊れる,電源が入らない,DVDが動かな い,と言う問題が,発見され。 クレ−ムが,インタ−ネット上で一瞬にとびかった。 土日休日返上で,メ−カ−側は,対応するのかと思いきや,月曜日からの応対で ユ−ザ−への不満が高まり,企業として手際の悪さを露呈した。 故盛田氏は,アメリカ人の見る権利を妨害した,としてアメリカの家電メ−カ −を一敗,地に塗れさせたが,どうやら日本人には,見る権利はないようだ。 かつて,ケネデイは,キュ−バに核兵器をフルシチョフが持ち込もうとして怒 ったが,今回もそれに,匹敵する。 ネットバンキングが崩壊したら,企業はどうやって決済するのか。 《おとなしくしていれば,今少し長生きできたものを....》 「ですが,好機といわれても。」 なおも食い下がるコ−エン。 「では,効率的に,敵の本拠地をたたけば良い。自衛隊は一週間なら北のもぐら どもを支えれるらしいが,そんなに時間はいるまい。」 ドクタ−は,くびを巡らし,ウイロビ−に問う。 「はっ,3,4日もあれば十分かと。」 かしこまって,答えるウイロビ−。 「台湾は,どうします。」 カ−トマンが,訊く。 「心配ない。第一,一国二制度といいながら。台湾は選挙を行ない自前の総統を 選んだ。なぜ,大陸ではできないのかと訊かれたら,中国共産党はなんと答える のかな。」 それにしてもと,ドクタ−は考える。 沖縄の基地問題は,太平洋戦争の国家総力戦にある。 国家総力戦とは,国土が焼かれ,軍人でも軍属でもない一般の市民が負傷,戦死 したはずだ。ところが,日本で補償を受けたのは,軍人,軍属で戦死した人,労 働能力を失ったひとにかぎる。つまり,戦災で死んだ30万人,沖縄の地上戦で 死んだ10万人の一般市民には補償がされていない。 ドイツは,負担均等法により一般の被災者,引き上げ者にも軍人や軍属と同じく 補償をした。もちろん,この中から,ユダヤ人への補償もした。 これは,東京裁判が影響しており,皇家の存続のため,日本は悪のレッテルを張 ったためである。そのうえ,返還前の沖縄は,日本とは異なる独自性をアメリカ が教えて,返還後は,ソ連のプロパガンダに利用された。経緯がある。 たればこそ,日本政府に軍人・軍属以外の補償をさせようとしたのであるが, 自民党内閣部会の連中は..... 目を転じると,相変わらずカ−トマンが戦況の不利を述べている。 《お喋り目》 さすがに,ドクタ−の忍耐が限度を超えた。 思いきり,掌を机に叩き付けると, 「もう良い。諸君は,来年1月で任期ぎれだ。大統領ともどもな。だが,アメリ カの戦略に足踏みはない。だから,私が長老部の命でここへ来た。私に不服なら, 本土に帰るが良い。言っておくが,命令に背けばボロをまとったフ−ドスタンプ の列にいつでもならばせてやる。」 一同は,顔を見合わせ相談する。 任期が終わりしだい,転職できるように閣僚ともども民間にリクル−ト中なのだ。 ドクタ−は,みすえる。 だが,返答はなかった。 「人工衛星すら,所定の位置に打ち上げられない,中国のミサイル技術など花火 同然。」 とは,ウイロビ−の弁だが,相手をあなどってはいない。アメリカ国防白書には 頼りとする数字は公表していないからだ。 と, そこへ,紅潮した顔のパッテンが闖入する。 「あ,あなたはこんな子供だましで,わたしをだまそうと.......」 怒りで,まわりが見えない。 意見具申の4人を無視し,唇を震わせる。 「なんのことかな。」 ドクタ−は鼻白みながら言う。 「おとぼけはよしてもらおう,イリジウムのことだ。アメリカは撤退するそうじ ゃないか。」「そうだ。」 「はっ!こんな詐欺みたいな手をよくも.....」 「だからどうだ,というのだ。日本のイリジウム会社は,アメリカのイリジウム 会社を買収しているではないか。」 「なんだと。」 「鉄鋼にしろ,自動車にしろアメリカが見捨てた産業だ。それを日本人お得意の お家芸でここまでにしたのではないか。」 「では,イリジウムもそうなると?」 パッテンは,ドクタ−の思わぬことばに驚く。 「しかし,我々には時間がないんだ。」 悲痛なパッテンのことば,それはとりも直さず,イギリスの言葉だ。 「それほど利益が欲しければ,リストラされた日本のイリジウム技術者をやとっ て製品開発させればいい。」 「そんなこと言われる迄もない。」 「そこそこ開発できたら,スペックを公開しろ。」 ドクタ−の言葉に, パッテンは目を剥く。 「冗談じゃない。それでは只働きではないか。」 「ほう,オ−プンリ−ルからカセットテ−プを開発したフィリップ社や,IBM がコンピュ−タ−に行なった方法だが。」 パッテンは怒りに上気した体から,今度は変な冷や汗が流れだす。 クルクルとかれの頭脳が目まぐるしく働く。 「取り分であるパイ自体を大きくしようと言うつもりか。」 「そうだ。」 パッテンの問いにドクタ−は頷く。 「後ろを見ろ。」 顎でしゃくって,振り向かせる。 そこには,闖入者であるパッテンに話の腰を折られた,4人の意見具申者がいた。 「彼らが,証人だ。これで満足か。」 ドクタ−は面倒くさそうに言う。 「これは,とんだ早とちりを.....」 そそくさと,パッテンは部屋を出る。その際, 《恐ろしい男,並みの政商など顔色無しだな》 と一人ごちる。 後日,フィッシャ−米通商代表にNTTは,独禁法違反で訴えられる。 デイ−プ・インスペクタ−執務室 俺様MJは,待たされていた。 もちろんパッテンや4人の意見具申は後で教えられるのだが。 部屋の主が戻ってくるまでTVウオッチである。 公安調査庁長官の秘書が,もみ消しと賄賂で疑われている。 必死に対応するが,俺様の目には,ヘタクソに見える。 彼はこう言えば良かったのだ。 「今回のことは,監察庁が,警察にノルマを至上にした害である。警察は犯人を 逮捕するが,過ちを正したりはしない。公安調査庁は法務省の外郭ではあるが, 冤罪と思われたので正当な権利を行使しただけである。」 こうすればどこからも文句のつけようがない。今時,3万円では先のプレステさ え買えず,商品券なので志としてがんばりとうせる。 その上,公安調査庁が,個人情報の誤りを修正する唯一の機関としてのアピ−ル もできよう物を。 「まったく,発想の転換ができないということか。」 俺様はチャンネルをかえる。 カルロス・ゴ−ンが,自動車企業の立て直しをしているが,従業員のやるきのな さが,TV画面をも通して伝わる。 切るべきでない人を切ったからだ。リストラには哲学がいる。単に利益率だけで きってはいけないのだ。 IBMが,メセナにはまり美術品を収集したのとは訳が違うのだ。 「ショウガ湯が欲しいな。」 俺様は,インタ−コムで給仕を呼ぶ。 ところが,シナモンがない,もう一度注文するとシナモンステックを持ってくる。 「パウダ−が,良いんだが....」 俺様MJが,だだをこねているとデイ−プが帰ってくる。 イスタンブ−ル ブル−モスク最上階 西洋とアジアに繋がる細い道が見える。 最近では,この地にまでセガのゲ−ムセンタ−ができるという。 死の商人の笑みをたたえ,ハッサンは,水パイプを燻らせる。 もちろん,日本には部下をのこし,無利子銀行設立の機会を伺わせている。 一息,つくと,彼は一人ごちる。 「艦隊戦などご苦労なことだ。時によれば,流言が100万の軍隊に勝ものを。 」 彼は,ヤレヤレといった表情で,ミスタ−紅にメ−ルを打つ。 「米軍がもっとも最初に攻撃するのは,北京である。それは,攻撃と勝利が容易 であり,それに勝利した後,北朝,台湾近辺(東南アジア含む)のいずれを標的 にするか,なお,選ぶのは米軍の手にあるからである。 これに,対抗するには下記のとうり。 北京軍は,軽く戦った後,ゆっくりと後退。追尾する敵を,紅緑鴻軍と九竜軍が 打つ。敵が反転攻勢に出れば,紅緑鴻軍と九竜軍は,両軍は,軽く戦いつつ後退。 今度は,北京軍が,敵の背後を打つ。これを繰り返し,敵の疲労を誘い,包囲殲 滅する。 もちろん,他の共産国との連携がかかせない.........」 彼は,キ−ボ−ドから,手を外すと,外を見やった。 いつのまにか,星が広がり,夜のとばりが落ちていた。 「MJ,では,どうすれば,...。」 「簡単さ,中央政府からきた候補者が,本気で地方行政を立て直すとは,考えら れないからな.」 エリ−ト行政官は,当選さえすればいいのであってつまり,地方の財政が,ど うなろうともかまわないのである....。 俺様MJは考える。 と,いって,共産主義など真っ平である。平成大不況 のなか, 財産が減るのは耐えられない。お札をするのは,貨幣価値を下げる,..イン フレ−ションを,起こし,政府の借金をちゃらにできるからである。 税金・医療保険・社会保険料の値上げ,後,20年で,倍になる。既に,介護は, ホ−ムヘルパ−により,患者本人の負担を多くする。 多分,恐らく,今後は,食っちゃ寝−,食っちゃ寝−,だけの生活になる。ビ ックバンとは,日本の政府が弾けることと,同意語とは,皮肉だ、、、。 と、いってやらなければ突然,国家制度が崩壊する。 (やれ,やれ,だな。) 俺様MJは,一人ごちた。国民年金だってそうだ, 破産しますよ,といって金をあつめるバカがどこにいる。 横須賀へのドライブの道すがら,アンジェリカの質問に答える。 ラップトップの中の,ディ−プ・インスペクタ−に,俺様は,提案する.アン ジェリカを,少佐に昇進させることを。 「わかった,よくやってくれているからな.海軍情報部に,司令しておく。向 こうで訓令を受け取りたまえ。」 ディ−プは,そう言うと,通信を終える。 「ありがとう,ございます。」 アンジェリカが,言う。 「なに,どうと言うことないさ。」 俺様は,上官として,大容なところを見せる。 IT革命で,日本は,アメリカに遅れをとった。 もう一度,俺様MJは,車の後部座席に身を沈める。 だが,俺様MJは,未 だ,知らない,ドクタ−が,恐るべき男を呼び寄せたことを.....。 口のうまい,カルト教団の幹部は出所後,じっと,部屋に閉じ込もり今後の対 策を考える。東海村の臨界事故は,好都合だった。 「これで,信徒達の転居先にめどが立つ。半径10キロ以内は,残留放射能が あるからな,正確には,中性子分裂による反応だが...。」 「しかし,仕事が,....」 信徒が聞く。 「それなら,ある。原子力発電所の掃除がある」 ウエットと,呼ばれる雑巾駆けは,原子力発電の蒸気パイプ内の掃除である。 当然,危険が伴う。 以前は,関係者がやっていたが,死亡率が高く,外部に発注するようになったの だ。それでも,マスコミにばれるの恐れて,東京なら,三谷,大阪なら尼ヶ崎で, 密かに人集めをしている。 掃除の際には,ビニ−ルのポリエチレンで防護服がわりにすっぽりかぶったりし ているのだが,... 「ですが,警察が,..」 「それも,問題ない,政府にしては,問題にしてほしくない問題だからな。も ちろん,我々は監視されるが,だからといって,拒否できまい。労務者と言えど も,同邦だからな」アメリカや,ヨ−ロッパ,のように,本式にオ−トメション 化すれば,3000万ドルが必要になる。 冷徹な理論化としての頭脳が点滅し始める。 「よく狙はなくては,...」 狙撃手は,冷や汗を流す。ビルの一角から,タ−ゲットをねらう。まさか,シ −ルズの自分が,デイ−プ・インスペクタ−を狙うとは,救いがあるとすれば, 肩を撃つということで,殺さなくてもすむことである。 (どうやら,政権争いに巻き込まれたようだな。) 自分の運のなさを恨むしかない。戦死より悪い運命が彼に微笑みかける。 と、 タ−ゲットが,私邸を出る。 「なに,デイ−プが撃たれた?」 俺様は,愕然とする。 横須賀,米軍基地極東総司令部でろくでもない報を受ける。 (ドクタ−か? いや,あの頭の良いイルミナティ−が,こんな危ないまねを するはずがない。すると,...誰だ?) 中南米高山地帯 とある山奥の家屋 DEA麻薬捜査本部長が,言う。 「まったく,危ないところだったな。デイ−プ。」 「すまんな,コントロ−ル。」 肩から白い包帯が痛々しい。 「まさか,ドクタ−がこんな荒事を指示するとは...。それだけ追いつめら れていると言うことか,」 「いや,ドクタ−だとしたら,とてもここまでにげられない。だろう。」 デイ−プが,弱々しく答える。 そこへ,白人の男が,近ずく,やせた体型,柔軟体操をしながら笑う。 「しばらくやっかいになるよ。ミゲル。」 「ああ,かまわないよ。」 この男こそ,ル−ン文字を解読し,ル−ン体操を考えだした,ミゲル・ネリそ の人である。 「しかし,看過ごせんな。」 「うむ。」 ミゲルと,コントロ−ルは,話し合う。 アメリカ本土 長老部...5∼6人からなる会合,この老人達は,いわゆる良きアメリカ時 代の人達であり,各々も,アメリカンドリ−ムの体現者である。彼ら自身が,成 功者であり,13人賢人会も,彼らがつくったものだ。もちろん,いかにアメリ カの歴史が,200年そこそことはいえ,そんな昔から生きてるわけではない。 中には,大統領経験者もいたりする,ホワイトハウスのご意見番みたいなもの。 直接ものごとにタッチしないが,何事もよく知っている。 「ドクタ−,世界戦略は着々と進んでいる様だな」。 老人の一人が言う。 「恐れ入ります。これも,長老部の後威光の賜物でございます。」 およそ,個性のない応答だが,気の利いたことを言っても理解できる相手では なし,それに,下手に,居合わせた者に聞かれて,反感をかうのもバカらしい。 「にしても,だ。仲間の一人が傷ついたと聞く,その辺はどうなのだ。」 再び問われる。 「多少の犠牲は,やむおえません。これも,アメリカが,世界第一位のリスク とお考え下さい。」 華やかな笑みを,たたえつつ,完璧な礼に乗っ取って答える。 心にもなく,うやうやしく頭をさげると,老人達のもとを去る。 「これで良いかな?」 「お手を煩わせてすみません。」 隣室からの扉が開くと,二人の男が現れる。 一人は,ミゲル・ネリ,もう一人は,カルロス・カスタネダである。文化人類 学者であり,神秘学者にして,アメリカが,世界に誇る知能の一人である。 「ですが...」 「まだ,何か..」 老人が,一瞥を与えながら聞く。 「はい....。」 「言いたいことは,わかっとる。恐れを知らぬものゆえ,重臣として権力を振 るうにとどまらず,図に乗って纂奪を企むかも知れぬ,か。」 「ご明察を。」 柔和なかおをしながら,カスタネダが言う。「ふふふ...」 「楽しみだな。」 「私たちも忙しい,さっさと帰った。」 老人達は,思い思い,の行動に出る。 うち,レイモンド・マンゴ−の,グリ−ンスマイルを読んでいたのには,笑っ た。まったく,この国の老人パワ−は,底知れない。多分,北米大陸で知らない ことはないのではないかともおもえるのだ。 「はて,さて,私は,何をすれば,言いのかな。」 鷹派の元総理は,選挙区 民の訴えを,聞くために,地元に帰っていた。もちろん大臣となった息子に対す る援護でもあるし,未だ現役であると言う意思表示のこうかもある。 「これをご覧下さい。」 料亭の部屋の,片隅にある。テレビデオの,スイッチをいれる。 痩せた,一人の軍人,青年が,簡素な椅子に座らされて,尋問を受けている。 「なんだこれは!」 「あなたですよ。」 服部と,名乗る男が,答える。ビデオが切り替わり場面が変わる。 「有権者,代議士諸君,英霊を,慰めようではないか。彼らは,貴い生命を, 祖国の自由と平和を,守らんがため,捧げたのだ。かれらが散華したのは,いの ちより,貴重なものが存在するということを,のちの吾われに,おしえるためな のだと。」 国会議事堂での演説である。 と, ス−ット,奥の襖がひらき,アメリカ軍人が,出てきた。 「ウイロビ−!」 国鉄改革を,おこなった鷹派の元総理は,飛びあがらんばかりに,驚いた。 「いや,そんなはずわない。彼は,死んだはずだ。」 思わず独り言を言ってしまう。 「そのとうりです。このかたは,息子さんです。」 先の男が言う。ギョッとして男の方を,見る。「服部! そうか,G2の,服 部だな!貴様ら,何を,企んでいる。」 ウイロビ−は,鼻先で笑うと, 「親父に命乞いをした人間の言う台詞ではないな。しかも,政治家への転身の ときにも,恩給局に世話をしてやった。」 G2というのは,GHQ傘下の機関で,警察予備隊設立のとき,効率を,考え て,旧陸軍,旧海軍の正規将校を,採用すべきだと,主張し,吉田首相は,何度 もマッカ−サ−に直訴し,阻止しえたのだ。 「ぐっ...」 「そう,目をむくな。そちらにとってもよい話を持ってきた。 貴様の,かね てからの主張どうり,軍備を,進めろ。」 「なに..」 「この国も,いまは,大変だ。やられるまえに,こちらから仕掛けるのだよ。 」 「中佐,こちらへ,お座りください。話は,それからに.....」 服部が,中佐に,座を,勧める。正座ではなく,あぐらをかく,中佐。 「出過ぎた真似をするな。」 ドクタ−は,厳しい口調で,言った。 「失礼いたしました。」 まったく,悪びれもせず,ウイロビ−中佐は,答える。 アメリカ本土に,急に呼び出しをうけ,長老部の,注意を引いたからではない。 デイ−プ・インスペクタ−を,戦力として,見込んでいたのに当分役にたちそう もない為だ。 「ですが,これで,この国の,再軍備もしやすくなります。」 「もう良いさがっていろ。そんなこと,お前にいわれるまでもない。」 不快そうに,ドクタ−は,いった。 確かに,デイ−プは,従順ではないが,だからといって力ずくでどうにかなる ものでもない。まして,サミット前だ,高度な政治力や,利害調整力がいる。 ドクタ−は,思索に耽る。 MJカンパニ− 「定数是正が,決まりましたね。」 ハロルド長田が,新聞を,広げながら読む。「すると,どうなるのかい?」 マイクが聞く。 「議員間の,格差がなくなる。比例制は,元々,中選挙区からの,はしわたし みたいなものですから。」 「?」 「比例と言うのは,党名による選出ですから。」 「次は,どうするんだ?」 「都道府県の変更ですかね。」 マイクの,質問は続く。 「これがなかなか,大変で,公務員が,まず,反対する。例え,新しい経済圏 に,全部吸収するとしても。」 「打開策は?」 「今,農協が,合從連衡を,くりかえして,経済圏を,作りあげようとしてい ます。多分,それを,元にして,作られるでしょうが...」 「それは,君の,発案かい?」 「残念ながら,ちがいます。MJさんの受け売りです。」 農協のリサ−チを,行ない,経済圏の叩き台にする指標作りを,命令されてい たのだ。 いまさらながら,MJの,存在価値が,思いしらされる。 もっとも,これは, 買いかぶりなのだが。デイ−プのヒントに,俺様MJが,アレンジを加えてハロ ルドに,指図しておいたのだ。 「私は,警官だ,警察手帳を見ろ。」 米軍基地内,取調室で,私服警官は,いいはった。だが,かれにとって,運の 悪いことに,デイ−プは,おらず,ウイロビ−が,取り調べることになったのと, 同時に,3人の,NPA(共産ゲリラ)とともに,基地内部に侵入しようとして 捕まったことである。 3人のNPAは,別室で,既にイギリス人によって,調べられている。 イスに縛りつけられて,後ろ手に,手錠を,はめられている。 「ふん,なるほどな」。 ウイロビ−は,警察手帳を,一瞥すると,ビリビリと引き破りぽいっとゴミ箱 に捨てた。 「なにをする!」 「制服警官ならともかく,アンダ−カバ−(私服警官)などに,ようはない。 」 担当の,兵士に,近ずき,ウイロビ−は,ホルスタ−から,銃をぬくと,ピタ リと,私服警官の額に,あてる。 そして, 「我々,白人には,黄色人種の顔は同じに見えるのでな。...」 まったく,表情を,かえず,引き金を引く。驚く,兵士。 「なにを驚く,こいつが,スパイでないと,どうしていいきれる。」 ウイロビ−は,銃を帰すと, 「いつも通り処理しておけ。」 事務的に,命令する。 その夜 日本から,アメリカ本土に向けて,ヘリコプタ−が飛ぶ。定時の,物資輸送や, 救急医療に,まぎれて,最後尾のヘリから,黒い,死体袋が突きおとされる。 場所的には,サイパンから,ハワイの間の,最も鮫の多い海域にあたる。 輸送部隊の,古参兵が,新米に,教える。 「いいか,こいつらは,存在しない人間なんだ。だから,...」 おもいきりよく,ファスナ−を開く,全裸の死体が,あらわれ,古参兵は,足 をゆびさす。「見ろ,足の指に認識票がない。」 新米が,うなずく。 「確認したら,3分の2までファスナ−をあげて...。いうまでもないが, 頭のほうを開けて,残すんだぞ。その方が,お魚さんが,早く食べてくれるから な。」 先輩は,死体について,レクチャ−が終わると,次に,命綱のフックをひっか ける。 「気をつけるんだぞ,数年に一人落ちる,まぬけがいるが,助けられん」 ヘルメットのマイクを,ONにして,思いきりよくヘリの扉を,開ける。すさ まじいロ−タ−の音と風が吹く。 「ちっ,もうかぎつけやがった。見ろ,やつらだ。」 新米が見ると,海面に白い波のようなものがみえる。 「あれは?」 「あれが,鮫のひれさ。 そうれっと。」 足で,力一杯蹴る。 ドボン,ドボン,ドボン,ドボン。4つの死体が落とされる。 「任務完了。」 「了解。」 パイロットが,応答する。 「これより,基地に帰途する。」 これには,新米が言う。 「ええっ,本土に帰るのでは?」 「そんなわけないだろう。」 若いな,という態度で,答える。 「それから,口は,災いのもとだ。つつしめよ。」 さっさと,基地に帰り,酒でも飲んで,眠るつもりなのだ。 朝から,俺様MJは,唸っていた。横須賀で,あしどめを,くらったままだっ たからである。暇なので,CNNをずっと見ている。相変わらず,ショウガ湯を すすりながら。 「どうしましょう,MJ。」 「どうにもならないさ,デイ−プは,いない。ドクタ−からは,待機命令だ。 君は,部隊を,指揮できるから,はりきっているんだろうが....」 「いえ,別に,...」 アンジェリカは,士官で,軍務は終わると,思っていたのだが,思いがけず少佐 になれたのでつい,はしゃいでしまったのだ。自分のうかつさを,恥いる。 「内憂外患だな。」 俺様は,つぶやく。 相変わらず,諸外国の日本へ,の風当たりは,厳しい。ユダヤ人ジャ−ナリス トからは,カルト教団への対しかたが,ゲット−政策だと,椰されるしまつ。 「何か,良いお考えでも...」 「元来,カルトに宗教法人の人格を与えたのは文部省だ。当時の,担当者の名 前を発表し,責任を,なぜ追求しない? 国家を歌わせるだけが能ではない。少なくとも,その上で,住民表を受け付けれ ば,地方行政の憲法違反のそしりは,まぬがれる。」 新聞に目をとおすが,民族論の強硬が目立つ。 「警官を増やしたのはいいが......」 「サミットのため,とききますが?」 警官や,軍人が,経済政策を,考案すると,多くは,統制と,管理による国家 社会主義になってしまう。外出禁止令によって,一般犯罪と事故は減少するが, まず,物価の騰貴がはじまり,消費物資の不足が目立ってくる。市民の不満と不 安が高まったとき,どうするのか...。 「沖縄は,他の地域と隔絶されている。閉鎖され,一個の経済単位だが,生産 より消費が,大きい。当然,物価は,高騰する。」 「しかも三分の二は,我々の基地です。」 「市場経済体制上,当たり前のことだ。自分の国は,自分で守のも結構だが, 思いやり予算もださず,円もドルも渡さないというなら,B票(軍票,通貨の代 わり)を,発券せざるおえなくなる。」 アンジェリカは,なっとくする。 「これは,日本全体にも言えることだとは, おもわないか?」 首を巡らし,きく,俺様。 アンジェリカは,なぜ,デイ−プが,このさえない男を,採用したのか理解し た。 (それにしても,警官を,増やしたのは,ポマ−ド大王だ。一体,奴は,どう しているのか,岩陰に身を隠し,嵐が,過ぎ去るのを,まって,再び高位高官を, ねらうのか) 俺様MJは,思案する。 「無能は,罪悪だな。」 ドクタ−は,吐き捨てる様に,言い放つ。 北朝鮮が,かつての連合赤軍の一味を,捕まえたが,これは,シリアの真似を したにすぎない,しかし,日本は,これを,理解できなかった。後に,テロ国家 と言うレッテルを,はずしてくれと,要請がきたのだが,もし,日本が,コレを, 正確に理解していたら,拉致問題は,相当有利に,はこんだにちがいない。いく ら,残された家族が,アメリカ大統領に直訴しても,内政干渉になる。ベトナム の人捜しとは,ちがうのである。 「とにかく,デイ−プを,呼び戻さなけれ ば,...」 いらぬ手間を,とられるのが,腹立たしかった。ウイロビ−は,軍人としては, 無能では,ないが政治や,戦略というものが,まるで,欠落している。 「父親とは,違うということか,」 まずは,デイ−プを,狙撃した者を,罰し,権限を回復してやらねばならない。 今後,ある程度の譲歩は,やむ負えないだろう。 こんなところでたちどまる気は,ドクタ−には,なかった。 「ほう,私は,正式にリコ−ルでもされたかね。」 アメリカ大統領は,新年の一般教書演説の後,ギングリッジに,弱腰を,いわ れたので,皮肉でかえした。 詰まる,ギングリッジの横を,笑いながらすりぬける大統領。この,8年間,繁 栄の果実を,思う存分味わえた強い,自負だ。 だが,同時に,それは,レ−ガン,ブッシュと, つづいた経済政策のおかげ でもある。大衆は,どっちつかずの主張ではなく。単純明解なものを好む。とは 言え,自分のあと,だれが,大統領になっても,経済は,落ち込む。それが,マ ケインであっても,ブッシュの息子であっても......。 この後,アメリカ経済の落ち込むときに,大統領候補として,出馬すること事 体が運気の無さである。 念のため,サマ−ズ財務長官にダウ,7000まで,下がるかも知れない,と 言ったが,最悪,万が一にも大統領選挙中にバブル崩壊とならないようにしなけ れば.....。 ル−ビンにも,手伝わせなくては。 科学技術庁庁舎。 めずらしく,ベア−ズ通商代表が,上機嫌でいる。 「どうせ,ダンピングの,泣きをいれてくるに違いない。」 日本は,鉄鋼輸出で非価格や,カルテルの疑いで,度々いためつけてある。ど んな言い訳を,してくるのやら。 しかし,それが,科学技術庁長官の,話を訊き,甘い考えだと,わかるのにさし てかからなかった。 長官は,テ−ブルに着くと,さっそく,交渉に入る。 「ヒト胚性幹細胞(ES細胞)の研究の成果を,パテント,として,申請する。 」 にこやかに,ベア−ズは,言う。 「かまいませんよ。中国にさえ,技術流失しなければ。」 「そうですか,それは,良かった。」 この時点で,べア−ズは,決定的な,過ちを,犯した。ス−ザン・シャ−ク国 務次官補(中国担当)に,クロ−ン技術を,拡散しない様に,釘をさされていた ために,目の前の罠に入らない為に,別のわなに陥ってしまった。 「では。」 科学技術庁長官は,技官に命令する。 すると,一台の,レ−ザ−センシィブ・眼底網膜照合装置を,持って来る。 「うん?」 技官が,小さい桐の箱を,明ける。 すると,一個の,目玉が,...。 「これは,私の,目玉です。」 長官は,言う。 しかし,長官の顔には,ちゃんと両の眼が付いている。 「もちろん,本物ではありません。ある意味本物では,ありますが。」 「どういうことかね?」 「ご覧ください。」 再び,技官が,機械を操作する。 長官が,網膜照合装置を,覗く,当然,OKの,グリ−ンの,文字が,...。 次に,偽物の目玉を検査機にかける。 再び,OKの,文字が。 「これは,....。」 レ−ザ−センシィブを,覗く長官。 彼の,網膜が,静止画で,スクリ−ンに表わされる。 クロ−ン目玉が,調べられる。 通商代表は,驚愕した。 驚くべきことに,網膜パタ−ンが,同じだった。 緊急円卓会議 俺様MJ,ディ−プ,アンジェリカ,アンデルセン,ス−ザン・シャ−ク,ベ ア−ズ,ウイロビ−,フオ−リ−駐日大使。 更に,客員として,パッテンとビエイラ香港・マカオ両総督。 そして,ドクタ−である。 「初めに,言っておく。仲間内の争いを,禁ずる。この命に,逆らう者は大統 領命令に逆らうものとして,即座に,サンクチュアリ送りにしてやる。」 魂を,握りつぶす様な,ドクタ−の怒りが,伝わる。 サンクチュアリとは,一種の監獄で,殺すには,おしい人物を,収監するので ある。もちろん,二度と,外には,出てこれない。と,言われている。 「中国ですが,スホ−イ25型戦闘機を,ロシアから,ライセンス生産するよ うですが。」 ス−ザンが訊く。 「それは,予定の行動だ。NPT(核拡散防止条約)には,通常兵器は,入っ てないからな。」 ドクタ−は,軽く言う。 「ふん,奴らが,どうしたと言うのだ。私が捻りに行って,やろう。」 ウイロビ−が,不敵に笑う。 「その言や,よし。もはや,共産主義と,妥協する気はない。第7艦隊と,イ ンド洋の第2艦隊分隊の両面で,消耗戦にひきずりこむことも可能だ。」 「しかし,湾岸戦争で,通常兵器は,在庫整理してしまいましたが。」 ディ−プが,言う。 ドクタ−は,うなずくと, 「既に,ニュ−トリノ(クエ−サ−パルサ−)による,新型兵器開発は,実験 段階を,終了した。」 トリノは,星からのメッセ−ジと,いわれ,あらゆる物質を,透過し直進する。 その性質を,利用し地球自体を,媒介に,通信できないか,と,考えられたので あるが,それの兵器化である。ちょうど,宇宙空間にシ−ルドのない機械を持っ て行くと,宇宙線病にかかって役に立たないのは,これが,原因である。 ベア−ズは,科学技術庁での出来事を,話す。 「小賢しい,日本人め! アンデルセン,一国主義のナチズムとして,身の程 を,教えてやれ。」 「はっ。ですが,イスラムの,方は,いかがいたしましょうか。」 薄笑いを,浮かべながら,ユダヤ人は聞く。 「それは,我々におまかせください。」 ここぞと,ばかりに,パッテンが言う。 「既に,監視しております。」 ドクタ−は,うむとうなずくと。 「いいだろう。」 「そのかわりに...」 「わかっている。2年後の,イリジゥム携帯電話の利権を,認めよう。」 機先を,制して,言い放つ。 「ビエイラ,スリランカの宗教戦争の事例を,調べて打開策を,ディ−プに教 えてやってくれないか。」 「それは,かまいませんが,宗教戦争ならば,フランスが,アフリカでやけど をしたはず。」 「いや,島国でないとな,...。」 「....つまり,日本における宗教に, 殲滅戦の可能性が,あるとお考え なので? 」 ビエイラは,感銘を,受けたようにきく。 「用がなければ,それに越したことはないが..。この国には,ヒステリ−が, おおいのでな。」 一同が,どっと笑う。 俺様は,薄ら寒いものを覚えた,このなかで,有色人種は,俺様だけなのだ。 「フォ−リ−。ロシアのレメシェフスキ−に連絡をとり,韓国との合同演習を, 急がせろ。」 レメシェフスキ−,というのは,ミサイル早期警戒センタ−の責任者で,大佐 である。ちょうど,NORADの,ペリ−・ルイス大佐と同じことである。 次々と,矢継ぎ早にてを打つ。 俺様が,思考と,策略の迷路を,手探りで,しかも,休み休み歩いてきたのに 比べてなんと,覇気のあること。 MJカンパニ− 不老不死の人間がいるとは,思はないのに,永遠の国家がある。と,思うのは, どうしてだろう。国家というものは人間が,いきるための道具にしかすぎない。 道具に人間が使われるのは,愚かなことだ。正確には,少数の熟知した人間がい るだけなのだが。 TVでは,相変わらず,鷹派の,もと首相が,弁舌を,ふるっている。 俺様は,昨日ディ−プが,言ったことを,思い出す。 「何しろ,選挙が,ある。この不況だ。 勝つためには,市民の注意を,そらす必要がある。」 常套手段だな。 権力者のしいによって,市民の権利と,自由が,侵される社会とは....。 例えば,北朝鮮と戦うとしよう。確かに,自衛隊は,実戦経験がない。まして, 死にもの狂いで来るのにとめられはしない。だが,国力の違いで,最後には勝だ ろう。 しかし,戦いに勝利するより,統治することのほうが,はるかに,難しい。 まず,飢えた市民に食料を,与えねばならない。 衛生兵ならともかく,万 が一,実戦部隊が,一般市民のリ−ダ−を,傷つけたら収拾がつかなくなる。 また,中国は,アメリカのバックアップがあれば,勝てる。太平洋戦争の知識 が,使えるからだ。 多分,首都は,陥落するだろう。そうなると,彼らは,臆面もなく,青天白日 旗を掲げ,こう言う。 共産主義は,捨てました。これからは,将 介石を,信奉しますと。 これでは,自衛隊の将兵は,たまったものでは,ない。 俺様MJは,この点を,ディ−プに質した。さすがの俺様もディ−プの回答に は,色を失ったが....。 「日本の役目は,決まってる。北朝鮮の 『もぐら』どもを,引き摺り出すの だ。その為には,2,3度負けてやらなくては,....。その役目には,自衛 隊が一番だ。図にのって,のこのこでてきたら,アメリカ軍が,全力で叩く。そ うだな,捕虜にした将兵のなかから,何人かは,無傷でかえしてやろう。あの, 疑り深い,金 正日のことだ。必ず,処罰して,分裂を,引き起こすにちがいない。」 ゴクリと,俺様MJは,唾を,のむ。 ちょうど,その時,アンデルセンが,報告にやってきた。 それにもかまわず,ディ−プは,言葉を続ける。 「中国は,少々事情がことなる。一戦ののち,一度は,和平条約を,結ばねば なるまい。 そして,武官を,派遣しなくては。しかし,これは,死間だ。」 俺様がわからない,と,いった顔をしたので,ディ−プは,言葉を,続ける。 「当然ではないか,功のあるものを売る,ひるがえって,アメリカ人を,殺そ うとする。そんな奴らを,許す訳ないではないか...。」 凄まじい,ディ−プとアンデルセンのにらみ合い。気迫と気迫。文字通り眼で 殺し合う。「おおっと,あんたを,狙撃したのは,私の責任では,ないよ。」 いい加減のところで,アンデルセンは,言う。 当然,ディ−プも,わかっている。 これは,アメリカの援助を,受けながら,イスラエルのように妙なまねを,す るなよ,と,いうアメリカ政府の警告である。 ドクタ−が,ディ−プをてばなせないのは,ひとえに,このバランス感覚によ るものが,大きい。 で,あればこそ,後顧の憂いなく,世界戦略に,邁進できるのであって,逆に いえば,ディ−プは,それだけ内政に専念しなければならない。 アメリカの利益と,言うグロ−バルスタンダ−ドに向かって,意見を,まとめ るのは,案外骨の折れる仕事なのだ。 「こうも,簡単に,こちらの手にのってく れるとは,........」 ウイロビ−中佐は,さもがっかりしたように言う。 「いまの間だけだ。直に,もっと楽な相手が,良いと,言い出しなさんな。 」 服部は,年長者らしく,たしなめる。 ウイロビ−の,交渉能力が,優れているのではなく,鷹派の元総理の立場が, 著しく不利だったからだ。 とはいえ,日本の自衛隊も,さして,優れているとも思えない。無論,じぶん の眼で,みたかぎりでは,あるが....。 どうも,日本人の,特性なのか,モラ−ル は,高いが,メンタリテイは,低 い いわく,ある日突然,好戦的な,外敵が,侵略してきたので,平和と,正義を 愛する人々は,戦う。 そのためには,巨大な施設と武器が,必要だ.....。 これでは,幼児向きのTVドラマだ。 マラッカ海峡の地政学など,最低だ。 まるで,人が住んでいないかのごとくだ。 なぜ,オ−ストラリアや,フィリピンに協力を,求めない。ル−トの変更など, 中東からの全行程から比べたら,一∼二割りふえるだけでは,ないか。 「どうやら,ウイロビ−達は,我々とは別の方法で,政治を操ろうとしていま す。」 アンジェリカが,俺様に,報告する。 少佐になっても,副官としての,立場は,かわらない。 「やぶへびにならなければいいがな。」 ほろにがい表情で答える。 日米安保条約は,偏務的だと言われているが,その為に,軍事力を,増員する のにやぶさかではないが,本来,これは,主客が転倒している。 では,どうするのか。 不審船や,正体不明の武装集団を。 かんたん,である。 今後,領域内への侵入は,正当な理由なきものは戦争行為と見做すと,公式の 場で,発言しておけばよい。 宣戦布告を,行なったと,おもわれる行為をしたといえばよいのだ。 大韓航空機の事件で,日本は,ファ−バ −ゾ−ン(危険区域)を,学んだのではないのか。 MJカンパニ− 「何も,こう,あからさまに,邪けにしなくてもいいじゃあないかあ。」 ハロルド長田は,ぼやく。 長田は,最近,オ−プンすると言う,テ−マパ−クに,履歴書を,送ってみた のだが,体よく断られてしまったのだ。 ユニバ−サル・ジャパンに,ジャパン・タイムス,etc........。 ため息しかでてこない。もっとも,会社にしてみれば,長田のような者に来ら れても,迷惑かもしれない。仕方なく,MJに相談に行くと,説明される。 「今は,不況だ。その上,公務員の削減が,大命題だ。現在でさえかたたきや, 再就職の斡旋で人減らしをしているのに。」 「そんなこと,いまさら言われなくても..。」 「一般の公務員は,まだいい。20年努めれば,行政書士の資格が無試験で, もらえる。だが,警官は,そうはいかん。職を,失えば探偵になるか,ガ−ドマ ンになるか,それとも,やくざに転身するかしかない。」 「では,彼らの受け皿になっていると。」 当然だ。雇うほうにしてみれば,一定の質が,みこめる。 だが,アメリカ人,株主にとって利益をもたらすわけでは,ない。 考えてみれば,わかることで,仏頂面の警官もどきに見張られるのは,気持ち の良いものでは,ない。 接客係は,30歳を,定年にすればよいが,職場全部で,できるわけではない。 しかも,かれらは,政治家から見れば,票である。 結局,アメリカの金を,注ぎ込むしかない。 ハロルドは,落胆した。一般公募の形を,とっているものの これでは,偶然にも,採用される確率は,0%だ。 長田は,がっかりしつつも,テレビを,つける。 京都小学生殺人事件の顛末が,ながれる。 事件の概要は,こうだ。 とうり魔てきに,こどもが,刺殺された。だが,警 察は,容疑者を,捕まえる前に,マンションの13階から,飛び降りて死なせて しまった。 「やれやれ,担当の刑事は,左遷で,田舎のお巡りさんだな。」 「なぜです? 彼らは,よくやったとおもいますよ」 ハロルド長田が,きく。 今回の場合,確たる証拠がない。単に防犯ビデオに似ているだけだし,うごか せる物証ばかりだ。 ニュ−スは,死亡した容疑者を,書類送検にとどめる,という。 俺様は,賢明な処置だとおもう。 具合の悪いことに,京都市長選挙の3日前だったからだ。うでのたつ弁護士な ら,容赦なくつっこんでくるだろう。増して,マスコミにでられたら,面目丸潰 れどころか,選挙を,弾圧したといわれる。 こういう,日本政府の失敗を,弾劾することは,アメリカの国益になる。反政 府勢力や,ジャ−ナリズムに,指弾されながら,摘発を,まぬがれた,利権政治 家.経営者を,アメリカ人に告発されるのが望ましい。 裁判所は,胸を,なでおろしているにちがいない。タッチの差で礼状が,遅れ た。もし,まにあっていたら,警察は,裁判所に全ての責任を,押しつける所存 だ。 ちら,と,,,俺様MJは,マイクの方を,見る。 一時的に,復職させ,准将に任じたのだ。これは,ウイロビ−が,階級をたて にカンパニ−の接収や,指揮下に入れられるのを防ぐためだ。 現在この国は,スパイラルに,社会制度の崩壊が,始まっている。大金持は, 既に手をうっているがリストラで,中間層は,没落しつつある。 しかし,どうやら先に,精神の崩壊が起こっているようだ。 ○民族紛争の激化 ○日本の人的資質の極端な悪化 ○日本はアメリカの後追いをしているのでアメリカの10年前になる ○自由放任/犯罪的社会の出現 ○貧富の差が激しくなり社会不安 ○金持ちの富の流失、次いで中間層の金が狙われ最後に貧困層からも金をむしり 取り没落 以上が,プロトコ−ルの,概要だ。 すでに,かつて,世界を,相手に,勇敢に戦った日本というディプロスト−ン (技術国)が,あったといわれつつある。 東欧においては,まるで,聖書におけるバベルの塔の再現だ。 群小の国家 群。 コ−エン国防長官の苦労が,しのばれる 「それは,のめん!」 パッテンは,言う 「絶対に,だめだ。」 インタ−ネット上で,反発する。 相手は,ヨセフ・ボダンスキ−。 連邦下院『テロ及び非通常戦争タスクフォ−ス』のディレクタ−である。服は, よれよれ,頭は,ぼさぼさ,紳士とは,ほどとうい。 かれの主張とは,イスラムのちからに,対するには,日本市民の抵抗が必要だ というのだ。 うまく行くとは,限らない。 うまくいったらいったで,民間人を,盾にし,その罪科は,戦場で,殺しあい をすることの比では,ない。 事実,米国は,管理できず。ユ−ゴ空爆を,する羽目に陥った。 「血を流すもの,流させる者,流れた血を飲んで太る者........か。 」 通商代表は,ル−ビンスキ−になっていた。 〃中国人グル−プの,分析 まず,彼らの最大派閥は,福建省である。正確には,廈門出身によってつくら れた。 次ぎに,潮州で,広東の,東北部の人間。 3番目は,広東,広州中心。 4番目,客,通称(はっか)と,呼ばれている。 5番,海南島のグル−プだ。 それ以外は,無視しても,よいくらいちいさい。この,5大勢力中,特に,力 が,強いのは,はじめの3つである。 彼ら,中国商人達は,他の国の商人達とその形態を,ことにしていた。と,い うのは,その,ときどきの政治権力が,つくり上げた経済圏とは,別にもうひと つの経済社会を,うごかしてきた。 これを,地下経済という。 組織は,3つの構成員からなり。 ひとつは,物資調達組織だ。これは,仲間を,潜り込ませ,よこながしするだ けではなく,時には,強奪することさえした。彼らは,地の理に熟達しており, まず,捕まらないし,捕まるのは,下っ端だけだ。 ふたつは,各地に物資を,運ぶ運び屋の組織で,武術に優れた連中を,抱え, 調達組織を,バックアップした。 みっつめは,権益を,奪われた各地の商人たちで,前述の,ふたつの組織から 運ばれた品物を売りさばく役割を,になう。 白連は,武術に優れ,空手の一派として残っている。 また,中国,東南部沿岸の水運,流通業者がつくった組織が。 いわゆる,青グル−プ,赤グル−プで,この流れをくむ。 〃 パッテンは,レポ−トとともに,ドクタ−に陳情する。 「わかった。ワシントンには,私のほうからいっておく。ディ−プ,このレポ −トを日本警察に流せ。」 実際問題として,全部摘発できるわけではない。 だが,中国商人の憎しみは,確実に日本人に向けられる。狡猾な,策だ。 「自業自得だ。」 香港の民選議会で,パッテン総督への,感謝決議を否決したお返しである。 頭を,下げ退出する,パッテン。 ディ−プが,進み出る。 「インタ−ネットでの,デマや,中傷が,すさまじいですが...。」 「ふん! おかえしは,サミットの時にしてやる。」 ドクタ−の,考えは,こうである。 最初のデマ 『...九竜軍司令は,沖縄サミットに対し,椎意こういを行ない中国の国威を, 発揚すべし!』 翌,デマ 『貴官の,任務は,九竜を,固守することにある。出撃は,これを不可と,す る。米軍は,陽動を,用いることが多い。また,九竜内に,同調者が,ひそみ, 貴官の出撃後,占拠し,水路を,封鎖する可能性がある。繰り返し命ず。うごく な!』 さらに,デマ 『さきの命令に関するが,貴官の部下に,不正を.行なうものがいる。それに よって,米軍を,利する者がいる。』 司令としては,調べないわけにもいかず,当然,何人かは,不正を,働くもの がいよう。そこへ,第四の,デマ 『出撃せよ! 九竜には,守備兵力のみ残し,国威を,発揚せよ。』 この時点で,九竜司令のみならず,北京政府も,心理的陥穽の罠におちいる。 はじめから,九竜など動かさなければ,すんだものを,なまじ,台湾の蠢動を, 掣肘するために,遊撃の位置につけようとしたからである。 北京は,米軍と,戦うのではなく,台湾問題を,国内問題にしておきたいのだ から..。そこへ,またしてもデマの追い討ち 『政府の,命令を無視するのなら,それもよし,貴官の罪は,のちにかならず や質す。』 デイ−プが,きく。 「しかし,軍令を,確認されればわかってしまいますが?」 「だから,よいのだ。」 策略を,していると悟らせてこそ確率は,たかまる。 ドクタ−は,ゆるぎない自信で答える。 台湾軍が,ちらちらすれば,出撃せざるを得ない。 だが,その間に,第7艦隊の潜水艦は,九竜港の水路を塞ぐ。 彼ら,にのこされた道は,ふたつ,正面きって,第7艦隊と,戦うか,他の軍 港に帰るか,である。 戦って,負ければ,あとはなく。その日のうちに政権は,崩壊。かえっても, 分裂を,おこそう。 「しかし,急鼠猫を噛む例もありますが」 デイ−プが,心配顔で聞く。 「そうだな,奴らが,唯一,勝機を見いだすとしたら...。南沙諸島を,突 っ切り沖縄サミットの要人を,人質にとることだが,そんなことをして,世界が, 黙っていると思うか?」 「...恐れ入ります。私の乏しい知恵の及ぶ所では,ありません」 デイ−プは,沈黙する。 インタ−ネットは,ネットバンキングなどで,支払決済の方法を,模索中であ る。 しかも,情報に制限を,加えることは,即座に経済活動に支障を,きたす。 たればこそ,緒外国は,頭をいためている時に,主義主張は,別として,ハッ カ−行為を,許すわけはない。 ちょうど,日本が,先進国が軍縮で相談している頃,英米の独善を排す,とし て,植民地をおこなったのと同じである。 しかも,1テンポも2テンポも遅れて。 だが,こちらも,笑ってばかりも,いられなかった。 防衛大学の現職の教授が,オ−ストリアの,ハイダ−を,認める意見が,新聞 の,正論に掲載された。 俺様MJは,ため息を一つつく。 軍人が,政府に要求できるのは,せいぜい,待遇改善と有給休暇ぐらいなもの だ。 なぜなら,民主主義は,シビリアンによる,軍隊のコントロ−ルしか,認めて いないからである。 3軍の長は,首相なり,総理大臣なりの一身のことであって,.... ときの,最高権力者の,兵権を,犯すことになるからだ。 これは,先進国では,コンセンサスである。 かけてもいいが,防衛大には,交換留学として,各国から将兵が,派遣されて いる。彼らに尋ねれば良い。彼らは,驚き,かつあきれ,真顔できいてくるにち がいない。日本は,いつク−デタ−を起こすのかと。 軍人が,政治にかかわるべきではない。 オ−ストリア,には首都ウイ−ンに,『金聖銀行』があり,冷戦下では,東西 の,緩衝地帯であったオ−ストリアを,経由して。例えば,イランにミサイルを, 売却したりといった取り引きを,金聖銀行を,通じて,決済する必要があった。 いわゆる,工作資金が,プライベ−トバンクとして,あったのである。 イギリス大使館で,パッテンは,激怒する。 「ヌル−ク」 「ヌル−ク」 「ルトゥ−トゥウ」 「ルトゥ−トゥウ」 「ハ−ヌンガ−」 「ハ−ヌンガ−」 「スクイルク」 「スクイルク」 下士官の,頭を殴る。 ハイジャックによる,亡命問題である。 「アメリカの尻拭いを,させられた!」 怒り心頭だが,あたるところがない。 とばっちりを,受けた武官は,災難だが, パッテンも,そのへんは,考えて書記官は,殴らない。 嵐が,静まっても彼のジョンブル魂に火がついたことは,回りの人々には,わ からなった。 「CEOて,なんですか?」 カンパニ−では,ハロルド長田が,マイクに呑気な質問を,していた。 「 チ−フ・エグゼクティブ・オフィサ−, 要するに,でたがり社長の ことさ。スタ−トレックのカ−ク艦長みたいなものさ。内政干渉は,いかんとい いながら口だすし,バンバン,女にも手を,だすし。」 「マイクさん,やっかみはいってません?」 ハロルドが,聞き返す。 「まあな,...。」 二人の,やりとりを,聞いてアンジェリカは,「いい身分ね。あなたたちって。 」 と,ひにくる。 「我々は,ここを守のが,仕事さ,難しい国際情勢に首を突っ込む気は,ない よ。ノウハウなり,なんなりは,MJや,ディ−プが,考えるさ。」 マイクが,さらりと言ったのでアンジェリカは,不満そうだ。 GIジェ−ンが,行ってしまうと, (アンジェリカの仇名だ), マイクは,肩を,すくめてみせた。 ロシア 「では,不満分子を,引き渡していただきたい。」 プ−チン代行は,言った。 KGBだった男のいいそうなことである。 ロシアは,べラル−シと,連邦を,結んだ。 だが,ロシアは,そのさきの,ウクライナとも,結びたい。 これは,覇権では,なくエネルギ−問題のためである。 例えば,カスピ海沿岸では,日本企業も加わって,海底油田が開発されている。 いわゆるバク−油田の沖である。 このままいけば,来年か,数年以内には,生産を,開始し,1日あたり100 万バレルを,生産できるだろう。 また,ロシア自体も,ガスプロム?が,所有する,埋蔵量は,アメリカのガス 田より多い。 地域を,安定させ。ちゃんとした資本が,導入されれば豊かになって,より秩 序が定まるのであって, 在ロシア米国大使は,口を,酸っぱくして,助言するのであった。 「ほう,そいつは魅力的な考えだな。」 自民党の政調会長になった,先生は言う。 がっしりした体格に,幅広のネクタイ,メガネが,汗でくもると,ネクタイで ふく。 「くわしくきこうか。」 党本部に,かつての建設大臣のときの補佐官が,熱弁をふるいにきたのだ。 「....つまり,南沙諸島の要塞の前面に,それに対抗するための拠点とな る我々の要塞をつくるというのか。」 「さようです。」 重重しく,補佐官はうなずく。 「しかし,中国が,黙って見ており,また,東南アジア諸国も領海を主張し, 邪魔しないというじょうけんがあればだ。」 先生は,言う。 「その条件は,不要です。なぜなら,フロ−ト空港を東京港でつくり,船でひ っぱってゆけばよいのですから。」 既に,1000M級は,完成しており,技術的には問題なかった。今度は,実 際の旅客機さえ発着できる大型化問題だけだ。うまくゆけば,大型輸送機のタ− ミナルとして使える。 先生の顔は上気した。かつての部下の案にのるのが気に入らなくもあったが, 興味が上まわったのである。 北京 「成程,その手で来たか。...」 ミスタ−紅は,朝の養生がゆを食べながら,報告をきく。 「いかがいたしましょうか。」 高官が,訊く。 「かまわん,放っておけ。」 「ですが,要塞ができてしまえば,我々が不利に,.....」 高官が,言いつのる。 「確かに,要塞に要塞をぶつければ....」 ミスタ−紅は,両手を叩く,パチンと手のひらから小気味よい音がする。 「相撃ち,それでおしまい。その後に,別の要塞をもってこられたら手のうち ようがない。」 「では,.....」 高官の眉がくもる。 「既に,その手でやられていれば,の話だ。これから,その策でやる,という のであれば方法はある。」 ミスタ−紅は,自信たっぷりに答える。 「というと」 「その前に,台湾軍の軍船を一隻,それと軍服をひとそろい手に入れねばなら ん。」 「?」 「九竜軍に命令しておけ。」 高官は不思議そうな顔をする。 対して,ミスタ−紅は説明する。 つまり,台湾軍をよそおい,中共軍の工作員を潜入させ,日本の要塞をのっと ろうというのだ。 「そう,うまく行きますか。」 心配そうに高官はきく。 「そうだな,信じさせるために,九竜軍に,あてないように,追手をかけさせ ればよい。それぐらいの小細工はできるだろう。」 「いえ,日本が,台湾の船の接近を許すか,という問題です。」 「多分,大丈夫だ。万一,本物の台湾軍が,中共軍に襲われていて,助けなか ったとなったら,アメリカが激怒しよう。それに,台湾と香港は行き来しており, 我々,北京と違い,言葉は同じのハズ。見分けはつかんよ。」 料理長に,朝がゆを下げさせると,ミスタ−紅はゆっくりと立ち上がる。 「権謀術策においては,我々に勝てる者などおらん。」 高官の耳には,自信満々の書記長の声が残った。 エンパイヤステ−トビル 最上階のペントハウス 俺様MJは,車イスの老人と会談している。 「ここに来る日本人は多いが,ペントハウスに入ったのは,君で二人目だよ。 ええと...」 老人の後ろには,若い男が,立っており,老人に耳打ちする。 「そう,タカカネ=カオルとかいう女の子が来て以来だ。」 俺様MJは,後ろの男に興味を持つ, 「ああ,こいつは,ワシの3番目の息子だ。ジョ−イという。長男はワシトン に,次男ハ,ヨ−ロッパに,そして,貿易センタ−ビルは,こいつが,受け継ぐ ことになっておる。」 老人が,そう言うと,男は右手を差し出す。 「ジョ−イです。よろしく。」 「こちらこそ。」 俺様達は握手する。 老人は,胸ポケットから,やおら,マジックペンをとり出すと,俺様にすすめ, 「いつものをお願いする。」 俺様は快諾すると, ビルの一面に,サインをする。これは,なげきの壁に模した誓約の一種であり, たとえ,ビルが解体されても,このサインの壁は,はぎとって保管される。もち ろん,塗り直しなんかはしない。今では老人との約束だったが,代替わりするの で,新しいビルの持ち主とすることになるのだ。 「契約は,我々にとって神に等しいもの,今後ともよろしくお願いする。」 老人は,そういうと頭を下げる。 「いや,こちらこそ,異邦人である私を加えて下さって助かります。」 俺様も,頭を下げる。 日本企業がアメリカに進出した時,いち早く,建物買収の件をお教え下さり, 助かりました。もう少しで,アメリカ市民の憎しみをかうところでした。」 ジョ−イが,サインを見届けて言う。 「それにしても,この辺も随分かわった。昔は眼下にGMの工場が見下ろせた が......」 老人は,昔を,懐かしむ。 と, 鋭い目になり, 「ところでMJ。パソコンの心臓部の裁判は,まだついとらん。日本企業は, ピンチュ−ムタイプ3の製品ばかり造っとるがな。」 「と,いわれますと。」 思わず訊く俺様。 「コンピュ−タ−犯罪をふせぐため,パソコンの発信元を識別できるように, ピンチュ−ムタイプ3は開発されたわけだが,これが,アメリカの憲法,自由の 権利に反する。というわけだ。」 老人が説明する。 「既に,IBMは,低価格パソコンに,セレロンタイプを使用し,どっちに判 決が転んでも良いようにしています。」 ジョ−イが言葉を付け足す。 グキュルル........ だしぬけに,俺様の腹が返答する。 老人は,苦笑すると, 「MJに,エッグマフインでも,もって来てさしあげなさい。」 と,老人は,三男に命じる。 ジョ−イが座をはずすと,老人は, 「十三人賢人会の方は,ワシの目の黒いうちは好き勝手にはさせん。」 と,俺様に宣言する。 十三人賢人委員会とは,大統領や,将軍の経験者等,財界,産業界を含む私的 な会合の事で,時々有益な情報を流してもらっているのだ。十三というのは,ア メリカ発祥の十三州によるもので,委員会のメンバ−がきっちり十三人,という わけではない。 俺様は,その後,日系議員のエンセン井上氏を表敬 して,日本へ帰る。 話は前後する。 日銀総裁が独立性を主張した事について, 太一経済企画庁長官と,大蔵大臣が三者会談を行なっていた。 「これ以上,ゼロ金利政策を続けたら,企業年金制度ガ波錠してしまう。」 日銀総裁は言う。 「それは,こちらも同じだ。2000年4月からの介護保険が始まれば,地方 財政は,完全崩壊する。」 蔵相は答える。 「もとはあんたが首相のときに.......」 日銀が,文句をいって泥仕合になるのを, 太一長官が押し止め, 「それより,円安になって輸出をしても,アメリカは,その分,企業が儲けた 事を知っているから,値切ってくる。 これでは,何のための政策かわからん。 今,我々にできるのは株価を下げないことだ。401Kの私的年金がうまく運ば れるのは,経済成長があればこそ。その辺をご考察いただきたい。」 結局,日銀総裁が折れることになった。 「おめでとうございます。」 国鉄を改革した,青年将校の元総理は,祝いの挨拶を受けていた。 息子が, 大臣となったからだ。 「ご子息には,まことにめでたい。」 後援会の人々が,次々にくる。 だが,大臣となった息子は,よからぬ事をたくらんでいた。 手下である,現 職の自衛官を呼び寄せ,こうささやいたのである。 「三矢,お前こそ,我国の救世主だ。私も大臣となったからには,父のように, 総理総裁を望みたい。そのあかつきには,お前を国防大臣に........」 「本当ですか...」 「だが,いかんせん,お前には,確たる実績がない。そこでだ,近々,恩赦が ある。おそらく,府中にいるカルト犯の首領も一時的に世に出よう。奴を殺せ。 そうすれば,各地で反対運動をしている者の民意を得られる。毒ガスで被害をこ うむった者達も貴様に従おう。」 狂信者に必要なのは,ありのままの事実ではない。彼の好みの色にぬり立てた 幻想である。もともと,信じたがっているものを信じさせればいい。 三矢は,救国の英雄たることを熱望しており,確固たる権力を手中にしたがっ ている。 この点では,カルト犯達と差異はない。 「何だと,妹の婚儀を血で染める気か!」 東家第一皇子は,激怒した。 皇子は,報告を移動中の車内で受けたが, 「東京に戻る! 今日の予定はとりけしだ!」 語気荒く言う。 「おまち下さい。東家の予定は,二年前に既に分刻みできまっております。な にも,皇子が行かなくても, お上みたる,お父上が中央政府にご質問なさいましょう。」 もっともな,侍卒の言葉に,おもいなおし, 「では,真偽のほどを確かめよ。」 と命令し,そのまま行幸を続ける。 当然,政府はあわてふためいた。青年将校だった,元総理は,大臣となった息 子を即座に呼ぶ寄せ,疑惑をただし,ガクゼンとする。 「だが,このままではいかん。」 そう,国鉄改革までなした元総理は,判断すると,三矢をスケ−プゴ−トに仕 立て,息子は知らぬ存ぜぬで押し通し,政府はまったく関わっていないことを示 す段取りをした。 以後,三矢は行方をくらまし,警察の必死の捜査にもかかわらず,ようとして 知れなかった。 「なにゆえ,宮内庁の特別職を10人も増やしたのかお教え下さい。」 侍卒は,緊張した面持ちで第一皇子に訊く。 政府の不手際を指弾したとき,ドサクサにまぎれ,増員を認めさせたのだ。 「なに,院政を始めようと思ってな。」 「院政ですか....」 「官僚も大変だ。リストラでな。今,次官をねらう者は気が気ではないハズ。 たとえ,次官になっても,果たして,何人,政治家に転身できるか...。」 確かに,ちまたでは大さわぎある。 侍卒はうなずく。 「ですが,我々の言う事など従いますまい。」 侍卒がいう。 「当たり前だ。彼らは,東家直属の官吏になるのだ。お前達につかえるわけで はない。」 侍卒は不服そうな顔をする。 「不満か,..だが,これから混乱の時代にアメリカやこの国の政府との交渉 に,専門的知識は必要なものだ。」 そう,皇子に言われると,さすがに反論できない。しぶしぶ,受入れざるおえ ない。 内訳はこうである。採用予定員数−−−大蔵3人,通産1人,郵政1人,自治 (消防)1人<運輸(海上保安)1人。の計7人である。 10人の枠があるとはいえ,最初から目一杯だと政府のはんぱつをまねくので, 手びかえたのである。 「ま,おいおい増員するが,当面は,予算を拡大し,経済基盤を作らねばなら ん。」 皇子は,にやりと笑った。 バラ十字会,東京支部 オスカ−像のように,直立不動で,左手を下に,右手を上にして胸で交差させ ながら,心もち首を右にかたむけ,ユダヤの青年は合い言葉を発する。 「ジャキン」 今度は,左に首を傾げる。 「ボアス」 さらに,左手をヘソの太陽神経に,右手は親指と人差し指,中指をのばし,他の 二指はおりまげ,ピストルの様な形をつくり,各が右肩にふれながら, 「パス・インべレンシアル」 そして,おもむろに,右足から一歩踏み出す。 ゴゴゴゴ....... と音をたてながら,壁が,うちびらきの観音に開く。 青年の名は,バハム−ト。グリム=アンデルセンの曽孫である。俺様MJとデ イ−プ・インスペクタ−がアメリカ本土に渡っている間,留守を守っている。 「おみごと,さすがですな。」 日本人,ロ−ズクルジャンの司祭が声を上げる。 「黙れ!高位僧(ハイプリ−スト)の称号を持つ私をなめているのか。」 アンデルセンは,ぴしゃりと言って,黙らせる。 「今日は,アメリカの意志を伝えに来たのだ。」 豪然と言い放つ。 そう,今は,意見調整の役目をおおせつかっているのだ。 フリ−メ−ソンが,政治局員だとしたら,ロ−ズクルジャンは,科学技官とい われる。 また,よく,儀式がSMの題材のように知られているが,それは本式をかくす カモフラ−ジユともいえる。 重要なのは,脱出口となっている非常通路で,これは,奥に,会議室がしつら えてあり,VIPは,地下通路を通り,ここで重要決議をし,配下に伝えるのだ。 つまり,まったく人目にふれることがない。暗い通路に,非常口の誘導灯が,一 ッケ,天井に貼り付いている。 その下をくぐり,しばらく歩くと,急に,7,8人がけの円卓テ−ブルに出る。 その中に,一人の男がいる。こちらも若い,黒い髪に,黒い目,ラテンの顔だ ち。イタリアフリ−メ−ソンの館長,ル−ドヴィックがひそかに来日していたの だ。 「昨日,君が言ったことは真実か」 挨拶の必要も認めないらしく,糾問する。 「キリスト教とユダヤ教のあらそいを減じ,平和を唱えるミレニアムプロジェ クトなど,アメリカにとっては迷惑だ。」 「なぜだ,今まで,両陣営の間に入り,役に立ってきたではないか...。」 「だが,既に大勢は決した。過激派ですら,故国に帰りたがる時代だ。今後, 経済活動その他について,アメリカに対する協力および援助の比重を重くしろ。 急激にではないが。」 「すると,極東における勢力の均衡がくずれよう。どうするのだ。」 「オ−ストリアやニュ−ジ−ランドを加え,日本を押さえつけ,環太平洋経済 圏をつくればよい。我々は,アメリカの世界経済戦略の優位につけばよいのだ。 」 「.....うまい考えではあろうが,いささか虫がよくはないか。アメリカ もそれほど甘くはない。」 「もちろん。だが,世界単一市場が出現すれば,乗じる隙はあるし,なければ つくることもできる。」 教条主義者というやつはあつかいにくい。我々ユダヤは,世界を経済であやつっ てきた。それは,ユダヤ人にとって,キリストもマルクスもユダヤ人であった からだ。 だが,アメリカの覇権ができつつある今, 両陣営を共倒れさせるのは得策ではない。 よしんば,アメリカを倒せても,後に来るのは全世界的な政治的混乱と治安の 崩壊だ。 東欧を見るように,それをおさめるには,強大な軍事力と長い時間を要する。 そしてその間に,ユダヤの権益は群小の政治的・軍事的勢力によって蚕食しつく される。それでは困るのだ。 ノ−スカロライナ空軍基地 俺様MJは,日本へ発つC−5大型軍用機の発進準備をまっていた。 ワシントンでの所用をすませると,ディ−プ・インスペクタ−と伴に,この基 地に来たのだが,ディ−プはさっさと専用ジェット機で発ち,俺様は,物資と伴 に帰り仕度である。 「ヤレヤレ,俺様は,家畜扱いか。有色人種のつらいところだな。」 俺様は士官に,のりものよいどめをもらい,ぼやきながらタラップを昇る。 と, 「よう,まってたよ。遅かったな。」 ヒョイと, NATO軍最高司令である,ジョン=ダラガ−少将が顔を出す。 「一体何事だ。」 俺様は訊く。 「なに,呼び出しをうけていたのさ。ところで,日本への帰り道,MJに見せ たいものがある。」 ダラガ−は気楽に言う。 チッ,こんなことなら酔い止めなんか飲むんじゃなかった。 俺様は,内心,後悔していた。なぜなら,のりもの酔いを止めるのは,スコポ ラミンという薬剤なのだが,それは自白効果もあるのだ。第二次大戦のとき,ナ チス・ドイツが自白剤に用いた【真理の血清】の正体が,このスコポラミンであ り,同じく大戦中,アメリカ軍兵士が船酔いすることなく大西洋を渡ってヨ−ロ ッパにわたれたのもこの薬のおかげだ。 「デオジカバンデ...」(神の助けで...) 俺様は思わず,ラテン語で,神様に祈る。 ダラガ−は,気にもとめずに, 何食わぬ顔で,俺様を乗客室へ案内する。 一応,内装はホテルほどではないにしても,旅客機程度にしてある。そして, 20インチ程の映像プロジェクタ−が, これは,飛び立つとわかった。 ダラガ−は,C−5が,安定飛行に入ると,眠ろうとする俺様をおこし,プロジ ェクタ−を見 るようすすめる。 映像は,湾岸戦争の舞台裏である。 まず,イラク軍の,膨大な数の兵と戦車がクェ−ト侵攻するところから始まる。 ところが,クェ−トの占領あたりから奇妙な情景がちらちら見えだした。イラ ク軍に関する情報は,はるか上空の偵察衛星からすべて見通されていて,ぶんど ろうとしていた膨大な石油資産は,コンピュ−タ−の回線という奇妙なものに乗 って,わずかの間にどこともなく消え去ってしまった。 まるで,国家の全財産が神かくしにあったようだ。残ったクェ−ト紙幣など,ただ の紙屑でしかない。 その後は,おきまりのTVゲ−ムのような映像だったが........... . 「恐ろしい。...」 俺様MJは,つぶやき,ダラガ−に首をめぐらすと,質問する。 「確か,クェ−トではいち早く,インタ−ネット取り引きが行なわれていたハ ズ。」 「そうだ。」 ダラガ−はニヤニヤ笑って答える。 「ならば,日本も......」 俺様に皆まで言わせず, 「中国が,イラクと同じことをすれば,我々はただちに,日本の資産をクウェ −トと同じようにする。と言ったら」 ダラガ−の意地悪い質問に,スコポラミンが影響し始めているのか,俺様は, 背骨に氷袋をつめられたかのような悪寒を感じ,脂汗が手のひらににじみ出る。 「それでは,日本がつぶれてしまう。」 俺様は,悲鳴に近い声を上げた。 「我々を,裏切るなよMJ。」 ダラガ−は,顔を近ずけ俺様を睨む。 「裏切ってなどいない。旧財閥を手懐けたのは,第七艦隊のバックアップのた めだ。将兵の命よ機械が惜しいというなら,俺様の判断は,まちがっていたが, どうだ。」 俺様は,ストレ−トにダラガ−に訊く。 「そう言うだろうと思った 。......いいよ。合格だ。」 ダラガ−は,一転して愛想よく笑う。 「実はな,上層部から,お前さんをためせと命令されていたのさ。」 あっけらかんと,ダラガ−は言う。 その後,ブロ−クダウンパレスという最新映画を二人で機内で見た。 MJカンパニ− TVで,東海村臨海事故の報が流れている。 俺様がいないので,退役軍人のマイクが,指揮をとり,助手のハロルド長田が 居る。 「マイクさん,えらい事故ですね。」 「ハッ,バケツでウラン濃縮をするとはな。かつて,太平洋戦争の時,ゼロ戦 は兵器というより工芸品に近いといわれたが,今回もその故事を思い出したよ。 」 「というと...」 「....それが日本人のやり方さ。欧米では,完全オ−トマ化されているが, 日本では手作業が多い。一方で,ガス燃焼からダイヤを造り出す技術力をもちな がら,この有り様,どうも我々白人には理解できん。」 白人,というところで,ハロルドが,顔をしかめたので,マイクはあわてて, 言葉を足す。 「お前さんは別だよ。ハロルド。」 ハロルド長田は,ハ−フなのだが,外見は白人なのだ。 「そろそろ,汚物を流してしまわないと,下水がつまるな。」 ディ−プは,臨海事故について,安全対策を述べる。 元,安全保障室長の出 演番組を執務室で見ながらつぶやく。 「では.....」 佐官が問う。 「うむ.東海村は,海ぞいの町だ,昼と夜とでは風向きがかわるだからこそ, 夜には外出禁止令がでたのだが,そんなこともわからず,避難勧告ばかりを強調 する奴にもう用はない。」 ディ−プが冷ややかに言う。 「それに,最近,自衛隊の出入り業者に対しても警察のしめつけがうるさいで すが。」 佐官が答える。 「わかっている。在日米軍が臨戦体制でいるのに,消耗品の供給がとどこおっ ては本末転倒だ。」ディ−プインスペクタ−の心の中で,元安全保障室長は,用 済みの判が押されたのだった。 「これは,どういうことだ。」 新しい,住民票や戸籍の電磁記録のもとで,地方からの上京して来た人々は, 転入届けを出そうと,自分の記録をとりよせったのだが,それには,長年,役所 が内部機密にしてきた,平民,新平民の区分や,在日外国人,主として韓国人の 区別された裏情報が記載されていた。 日本では,表向き,差別はしないことになっているが,役所ではその実,こい う細かな差別登録が行なわれているのだ。 当然,反対運動がおきる。 だが,日本政府は有効な手がうてない。 「やれやれ,やっと,帰って来たぞ。」 俺様は,カンパニ−ではなく,自宅のマンションに帰って寝転がって言う。 たまりにたまった,新聞,雑誌をななめよみすると,ゴロゴロする。 食料は,カンパニ−のスタッフや,ハロルド,それにアンジェリカが助けてく れる。 『大阪府知事,セクハラ疑惑!?』 週刊誌の新聞広告がおどる。 くだらない,アメリカでは20年前にケリがついた問題だ。 ニュ−ヨ−ク,公民権80条,A項によれば,肉体の誘惑による訴訟は却下す るとある。 セクハラと公民権は同時に起こったのを知らないと見える。 『ハト虐殺!血のぬかれた鳩の死体!』 東京都条令で,ペットの虐殺は禁止されているが,野性のド鳩を殺しても罪に なるとはおそれいる。 これでは,キリスト教会はたまったものではない。聖書では,ノアの箱船から, 飛び出し,オリ−ブの枝だをもって帰った平和のしるしだが,それゆえ,神との 誓いには,鳩の血を用いる。反対に悪魔との契約にはカラスの血を用いるのだ。 洋皮紙に,鳩の血によって署名するのをなにゆえ日本政府は禁止するのか。 もっとも,これだけリストラで浮浪者が増えると,焼いて喰うほうがおおいだ ろうが.........。 俺様は,フラフラと,近所に買い物にでかける。もちろん,平服だ。 どうやら,日本警察は,俺様を犯罪者に仕立て上げるため,俺様が立ち寄るで あろうところを巡回と言う名のイヤガラセをしているようだ。たちよった店の主 人達の顔色からよみとれる。 と, 前方に,制服警官と,バイクに乗った少年, 2,3人が,立ち話している。 俺様は,スピ−ド違反だと思ったが,そうではなかった。 「おい,アレがMJだ。」 制服警官が,言う。 「わかりました。やってやりますよ。」 「まかせといて下さい。お巡りさん。」 バイクに,またがった少年達が,チラチラと俺様の方を見ながらいう。 「たのんだぞ,うまくやれ。」 制服警官が,ニヤリと笑う。 少年達をあおりたて,自分は,傷つかない。 これが,警察の通称《ケツをかく》と言う,やり方だ。 もし,俺様が,被害にあえば,現場にいた自分が仲裁に入り,正義の味方の顔 をし,情報をとって手柄にするのだ。 アメリカの場合,容疑者を尋問するにしても弁護士立ち会いの上だが,日本で そんな制度はない。 「行け!」 少年達をけしかけると,警官は,ポケットから煙草を取り出し,うまそうに吸 った。 ギャリギャリギャリ! 少年達のバイクが,砂煙を上げ,俺様に近ずく。 そんなこととは,知らぬ俺様は,カンパニ−への道をたどる。 彼我の差が数メ−トルのところで, 突然,ピザ配達用のバンが飛び出し,俺様と,バイクの少年達の間にわって入 り,カットする。「うわっ,あ,危ない。」 「ちぃっ。」。 少年達は,あわてて,ハンドルを切る。 俺様は,思わず,後ろにとびずさり,ほうほうのていでカンパニ−へ, 「いやぁ−,配達で急いでいて,ゴメンなさいよ。大丈夫?」 ピザ屋は,ニコヤカにあいさつする。 俺様は,偶然,助かったと思ったが,そうではなかった。 「ウム,それでいい,MJをカバ−しろ。」 ディ−プインスペクタ−は,自室で報告をうける。 ピザ屋は,NSAの日本人スタッフだったのだ。 「失礼,何かとたてこんでいてね。」 ディ−プは,デスクで指揮をとりながらいう。 「かまわんよ。MI6は,既に,沖縄入りしているから,今回は,あいさつが わりだ。」 前,香港総督,パッテン総督だ。イギリスが,香港を中国に返還されたので日 本の総責任者としてまわされている。 「我々,英国人は,アジアで骨をうめる気はない。だが,オセアニアは,第二 の故郷にする覚悟はある。」 「わかっている。環太平洋経済圏の成立に力を貸してくれ。しかし,中国は, どうするのかな。香港・マカオの2つを返されて。」 「としても,それは彼らの解決すべき問題だ。私達が心配してやる必要はない。 」 パッテンは,辛辣にいい放つ。 「力量なくして遺産を受け継いだ者は,相応のテストを受けねばなりません。 ムリなら滅びるだけのこと.......。」 「重みのある言葉だな。」 ディ−プはそう言うと,机の上を指ではじいた。 「フン,よく帰ってこれたな。」 アンデルセンが,俺様に向かって毒ずく。 「そういうお前こそ,JFK,の墜落事故に手を貸したのではないか?」 俺様も負けじと,お返しをする。 「なんだと。」 たちまち目を剥く,アンデルセン。 右のストレ−トが,俺様へのびる。 間一髪,十字受けで,受けるが,反動で,背中から床面へ....。 その際,思い切り両足をのばして,俺様はアンデルセンの脇腹をける。 その後,猪木対アリ,のような,寝っ転がりキックを放つが,アンデルセンも, うまく膝を逃がして,蹴らせない。 タバコを半分,吸い終わると,火のついたまま,ディ−プは俺様達の方へ指で ハジキとばす。 「じゃれるのもいいかげんにしろ。MJ,今のは確たる証拠があるのか」 「い,いいえ。」 俺様は,言いよどむ。 「では,二度と,口にするな。バハム−ト。イタリア人に言っておけ,バチカ ンをだしにつかうなと。」 「.........」 ディ−プの強い口調に,アンデルセンは沈黙で答える。 どうやら,ディ−プは,より権力の高みにのぼったらしい。当分,まだ安泰だ。 と, 佐官が,来客を告げる。 シュレ−ダ−,ドイツ首相である。 「やあ,お元気そうで何よりです。」 ディ−プは,さっさと切替え,愛想よく笑う。 「どうかね,沖縄サミットに問題はないな。」 「はい,今のところありませんが......」 ディ−プは,語尾に含みをもたせる。 「なんだ,いいたいことがあれば言いたまえ。」 シュレ−ダ−は,言う。 「実は,この国の司法制度改革にご協力いただきたいのですが...」 「何,ケルンサミットで,経済犯罪の撲滅に合意したはずだが...」 「いえ,やり方が問題なのです。たしかに,カルト犯などを押さえるために, 力を与えるのはよいのですが,いつまで警察が現政権のかしに甘んじているか, 現在でさえ,警察庁は法務省のコントロ−ルや検察庁の言うことを完全に従って いるとはいいがたい。ひとたび野心を抱いたとき,何者が,制することができま すか。」 「ふむ,そういう時のために,公安委員会なり教育委員会なりがあるのではない か?」 「いいえ,占領事はともかく,現在では単なる使い走りになり下がっています。 」 本来なら,役所に対抗するための民間組織としてアメリカが作ったが,少しず つ,逆に役人の言う事をきく人物を派遣し,形骸化した組織が日本には多すぎる。 しかし,欧米では身分階級が,厳しく,政治家も,その階級の支持により,ま た,キリスト教各会派の母体とのかねあいがある。 それゆえ,カルト犯罪,一つとっても簡単にはゆかない。 だがドイツは,同じ敗戦国でありながら,簿価主義から,時価主義の変換に成 功した。 「わかった。日本の政治家達に警告しておこう。」 シュレ−ダ−は,了承した。 「なんだと,アメリカが不信がっていると?」 俺様は,先生にいち早く耳うちする。 「で,どうすれば良いのかな。」 警察族出身で,建設大臣をもつとめ,今は政調会長である先生は,メガネをネ クタイでふきながら言う。 「では,アメリカの気に入る事をすればよろしいではありませんか。」 「?」 先生はいぶかる。 「クリントンは,ベトナム戦争時代の申し子です。ですから,日本としては,ベ トナムで戦ってくれたアメリカに感謝している。 アメリカはまちがってはいなかったと表明すればいいのです。」 「私に追従をしろと,」 先生の口がへの字に曲がる。 「では,タカ派のギングリッジとやり合いますか。」 「..........」 「それでは,意味がないではありませんか。」 しばらく考えると。 「わかった。これも権力を握るステップのひとつだと思えばいい。」 先生は,ハッキリ言う。 「MJめ,生皮をはいで靴の底に張りつけてやる。 毎日,奴の皮を踏みつけ てやる。」 俺様は,警察庁の警官のにくしみをさらにかうことになった。 もっとも原因は彼ら自身にある。つまり,防犯キャンペ−ンを展開したが,そ の実,いわゆる防犯グッズ,など。専門店で売られる。例えば,三段警棒などは, 携帯して持ち歩くと,凶器準備集合罪となる。これは,草野球の金属バットも入 るのだ。つまり,防犯グッズは,家で,自分で,もっているぶんには良いが,護 身用にはもって歩けないのだ。 この事実を知った時,俺様やディ−プは,役人の頭の中を確かめてみたくなっ た。 民主主義を唱えながら,その実,国家社会主義なのではないかとうたがう原因 となったのだ。 ついでに言えば,イギリスが没落したのは,19C末のデフレによる技術開発 に遅れをとったからである。 当時の新興国ドイツと,とうとう戦争になって,戦費調達のため,アメリカ向 けの債券を手放さざるおえなくなったからだ。 もし,日本が,核武装するとすれば, 通常能力が,数倍の進攻能力をもたねばならない。 核弾頭の運搬手段としての長距離ミサイル,長距離爆撃機,航空母艦,さらに 核ミサイル発射艦としての原子力潜水艦,これだけはどうしても必要になる。 果たして,民族の誇りとやらがどれほど高い代償になるか.....。 そんなことより,大都市の土地利用とか,タクシ−運賃自由化とか,海運運賃 引き下げとか,許認可権限も古い,そいうことをなぜ国会で審議しないのか。 どうやら,いましばらく,独自の自力構想がでるまで,先生とはおつきあいせ ねばならないようだ。 「ハッサン!」 ドクタ−は,声を上げて,驚愕の表情をした。 ドクタ−は,ディ−プ=インスペクタ−が極東において,裁量権が大きすぎる と言う,司法長官の報を受け,アメリカの最重要メンバ−として,この日本に乗 り込んできた。 ディ−プは,あっさりと,ドクタ−に全権を渡すこととし,俺様達,子飼いの 部下達も解雇されることになった。 が, 引き継ぎの段階で,ディ−プは,2人の外国人をドクタ−に引き合わせる。 一人は,イギリス,パッテン総督で,パッテンがオセアニアや日本での利権を主 張すると, 「では,アメリカにかわって,世界警察の役目を行なっていただこう。」 と言い放ち, 「また,できもしない無理難題を,我々が,できないことを見越してのイヤガ ラセ,としかおもえませんな。」 と,パッテンを憤慨させる。 だが,もう一人は,そううまくいかなかった。 アラブ,オイルダラ−の雄,ハッサン氏が,白いチャドル姿で現れたからだ。 一瞬にして,ドクタ−の表情が,凍りつく。 あわてて,ドクタ−は,ディ−プインスペクタ−の袖をひっぱり,部屋の隅で, ディ−プに詰問する。 「なぜ,オイルダラ−の事をいわなかった。」 「大統領にはご報告いたしました。しかし,太平洋に新経済圏をつくれとのご 命令でしたので,......」 ディ−プは答える。 「なんとかしろ。」 ドクタ−は命令する「お忘れですか,わたしは,たった今,首になったばかり ですよ。」 「ええい,わかった。取り消す,君らはそのまま,職務に専念したまえ。」 いまいましそうに,ドクタ−は言い捨てる。 イスラムは,既に力ずくの剣かコ−ランか,の方針を転換した。 今,日本にいるのは,無利子銀行設立の事前工作を行なっているためだ。 無利子銀行とは,本当に無利子ではないが,ごく低金利で貸付るのだが,その リスクを銀行がかぶってくれるのだ。 例えば,中小企業が,工場で新商品を造るとする。無利子銀行は,工場の工作 機械の購入代金を支払ってくれる。儲かれば,その利益を企業のものとすること ができる。反対に,損益を出せば機械を引き上げ,銀行が売り払う。その際,銀 行は,損失を自己責任でかぶってくれるのだ。 これは,イスラムが,金を不当に儲けてはいけないという戒律によるもので, リストラで,大不況の日本の現状では,魅力あると踏んだからだ。 ドクタ−は,舌打ちした。 これでは,日本帝国主義を倒したすぐ後に,共産 主義がはびこり,日本の占領政策をオレンジ計画ともども修正しなければならな かったのと同じではないか。 直ちに,緊急会議が開かれる。 俺様MJ。アンデルセン,アンジェリカ,ディ−プ,ドクタ−,それに,フォ −リ−駐日大使,である。 「どうすればよいかな。」 ドクタ−が,口火をきって訊く。 ディ−プが,首を巡らし,俺様に発言しろと,目で促す。 「ええと,まず,東京証券取引所の課税をやめさせ,その後,郵貯の民営化を行 なえばよろしいかと,......」 「なぜだ,郵貯の民営化だけを行なえば良いのではないか?」 ドクタ−が訊く。 「それでは,アメリカが日本の金を吸い上げたとき,当然,オイルダラ−も追 って来ます。彼らは再び,不換紙幣のドルなんかいらない。金に交換しろと騒ぎ 出すに決まっています。」 「フム,ありうることだな。」 ドクタ−が,あごに手をあてる。 「日本を,環太平洋の経済圏の基礎として利用し,オセアニアをひっぱり上げな くては,...」 ディ−プが言う。 「成程,EUのドイツマルクの役割を円にさせ,ドルをッ支えようという考え か。」 ドクタ−が言う。 「そのためには,イギリスの利権も認めてやらなくてはなりません。」 ディ−プは,ちらと,アンデルセンを見やる。 「イギリス政府は,キリスト教徒というバックボ−ンや,ユダヤと,協力して 追い出しましたが,無神論のエコノミックアニマルどもでは望めますまい。」 あいかわらず,俺様を見下したようなアンデルセンだが,ドクタ−の前では, 節度ある紳士的態度を保っている。 うなずくとドクタ−は,アンジェリカの方へ向き,訊く。 「周囲の状況は?」 「ハイ,朝鮮半島は第4師団,パワ−イ−グルの機械化部隊が演習中です。」 アンジェリカが言う。 「それは問題ない。北朝鮮に制空権はない。万一,戦闘状態に突入したら,首 都を日本海とシナ海からトマホ−クの火の海にしてやる。」 「では,戦争権限法が発動されたのですか。」 アンジェリカは,目をしばたたかせる。 「イヤ,戦争状態は回避したい。」 ドクタ−は,目をつぶると,しばらく考え込んでしまった。 「先生,うまくいきましたね」 「うん,ああ,こちらの思惑どうりだ」 かつて,建設大臣をも務めた,現政調会長は,側近とともに笑った。 「野党のバカめ,自分で自分の首をしめたのだ。」 先生はいう。 個人献金を禁止し,パ−ティ−さえ寄付が行なわれないとなると,政治資金は, 銀行口座をとして行なわれる。警察権力さえんにぎっていれば,汚職の疑いでい つでも支払いを止めることができるからだ。また,実弾と称する,現金授受も, 刑事を張り込ませ,贈賄容疑にすれば良い。外国からの資金提供は,外国為替管 理法違反にすればひっつかまえられる。 「要は,疑いを向けれれるようにすれば良い。日本の裁判は,遅い。薬物によ る自白は証拠能力がないからな。どうにでもなる。」 ネクタイで汗をふきながら,先生は笑う。 「それに,新進党の党首が,首都改造を進めていますし,」 側近があいずちをうつ。 「うん,あれは,日本国改造を与党と密約して,実行しているだけのこと。」 先生は,軽くいなす。 「ですが,このリストラ時に,賃借家法改正とは,浮浪者が増えませんか?」 側近が尋ねる。 「だから良いのだ。浮浪者が増え,単純労働者が,外国人労働者と争えば,血 が流れる。我々,警察族議員は,安泰ではないか。」 第一皇子が,皇宮警察親衛隊隊長の伸之助を呼ぶ。 「そろそろ,院政の為の人選を行なう。」 「ハハッ!」 かしこまって,伸之助は最敬礼を行なう, 「TVをつけよ,国会中継をみたい。」 皇子が言う。 待卒が,あわてて,TVのスイッチを入れる。 「今回から,イギリス式の討論が導入されました。」 待卒が,解説する。 「こう都合だ,政治家の追求をかわし,逆に説得できるくらいでないと,モノ の役に立つまい。」 第一皇子は,力強く笑った。 「くそっ。」 在日オ−ストラリア大使は,大使館でいきどうりを隠そうともしない。 「せっかく,インタ−ネット時代に向け,教育改革をすると,言ったから協力 してやっているのに。」 わけは,こうだ。オ−ストラリアの高校のカリキュラムをインタ−ネットによ る授業で行なうという提案を,文部省に出したのだが,文部省は,自前の建物が なければ,学校機関としてはもちろん,専問学校としても認められないというの だ。K応大学のSFC(藤沢キャンパス)の様に,あらかじめ,日本国内に大学 の建物があり,分室としては認めるが,外国の学校は認めないと言うのだ。 「田舎者め,だから政策が遅れるのだ。」 残念なことに,現在の文部大臣は,タカ派の首相の子息だったのだ。 「地方交付税のほうはどうだ。」 元新進党党首は側近に尋ねる。 「ハイ,ホ−ムへルパ−などの補助金として考えておりますが...」 「そうか,いずれ,権限委譲をして,地方に自分で税を考えさせねばいかんな。 」 元党首は言う。 「しかし,それでは,地方は破産してしまいますが。」 側近は訊く。 「それでいい,三千三百にの市区町村は多すぎる。自然淘汰されねばならん。 」 スパッと言い切る元党首。 「しかし,民間企業が,信用金庫で債権処理に回され,倒産が増える今,公務 員が天下りできる道はありません。」 側近が,抗弁する。 「それがどうした。増税もインフレもできん。政府機関を縮小してデフレにす る他,方法がない。生首を切ればよいのだ。」 冷然と言い放つ。 「それにだ,あらかじめ盗聴法がとおっておる。政府に対し,一言でも不満を もらせば,解雇理由にしてやればよい。私が,権力の座につくのももう少しなの だ。誰にも邪魔はさせん。」 狂おしい程の権力欲,もはや何人が止められようか。 ドクタ−は,まだ,判断をしかねていた。 今やアメリカ本土においては,ユダヤ教徒をしのぐ勢いせイスラム教徒が,増 えている。 理由は簡単で,好況を維持するためにリストラをつずけているのと,少数民族 の生活保護を切り捨てたため,低所得の白人や黒人達が,改宗したからだ。 「ここは慎重に判断しなければ.....」 ドクタ−は,つぶやく。 「東京都にカジノを造ろうと思ってね。」 TVでは新東京都知事が,新聞記者達の質問に答えていた。 俺様は,カンパニ−で,リラックスして見ていた。 「MJさん,これって.....」 ハロルド長田が,訊く。 「フン,提案は悪くないが,処理がまずい。」 俺様が言い放つ。 都職員をリストラし,また,税をとるためにカジノを開くというが, 老齢の職員は,いまさら外の社会では生きていけない者が大部分である。 若 い人間なら,体力も適応力も,さらには労働力としての需要もあるから,他の職 業に就いて生活することができるだろう。 「では,どうすれば....」 ハロルドが問う。 「30才以下の者を,カジノ職員にし,それ以上の者を窓口にまわせば良い。 」 「果たして,都職員達が納得するでしょうか?」 「ものは考えようだ。カジノの上がりが大きければ大きいほど,発言力も大き くなる。残され職員達も,効率は多少落ちるが,クビになるよりはマシだ。 それに,今までやってきたことだから,再教育の必要がない。」 俺様は,解説すると,食事をハロルドに運ばせる。冷えたゾッペス−プが運ば れる。 フト,ドクタ−のことを思い出す。 「イルミナティか......」 俺様はつぶやき,TVのリモコンで,チャンネルを変える。 ピピッ 軽い音がする。 文部大臣が,演説していた。 「祖国あっての個人であることを,諸君は想起しなければならない。それが最 も時重要なことだ。自由な社会と,それを保障する国家体制を守るため,死を恐 れず戦う者だけが,真の国民なのだ。その覚悟なき卑劣漢は英霊に恥よ。この国 は我々の祖先によって建てられた。我々は歴史を知っている。各個人には国家に 反対する自由がある。しかし良識ある国民には明らかなはずだ。真の自由とは卑 小な自我を捨てて団結し,共通の目的に向かって前進することだと。」 俺様は,うんざりした。安全な場所に隠れて主戦論を唱える煽動者はいつの時 代もなくならない。 教育委員会は中央政府の思想にそうものだけを採用され,言論封殺を行ないは じめる。 俺様は,ス−プをたいらげるとハロルドに注文する。 「今度は,あたたかいス−プをもってきてくれ。」 「ハイハイ。」 適当にハロルドがあいずちをうつと,TVは,タバコ税の値上げえを,報じる。 「フ−ッ!」 もはや,俺様はため息しか出ない。 勝手に税率を上げるなど,中世に逆戻りだ。何のために,選挙を行なって,投 票しているのかわからない。 タバコの税率を上げるとなると,タバコ業者は潰れよう。 かわりに,諸外国 で税率の低いところから輸入するようになろう。 なんのことはない。同邦の職場をつぶし,路頭に迷わせ,てんとして恥じない, そんな代議士が必要なのか,選挙民は考える必要がある。 翌朝,カンパニ−。 俺様MJは,ため息をつく。 「どうかしましたか,MJ。」 アンジェリカが訊く。 「これを見ろ。」 俺様が指し示した新聞には,先生がフロ−ト空港断念の記事が。 「取り止めで良かったのではありませんか。」 アンジェリカが言う。 「海賊退治はどうするんだい。奴らは一体どこから飲み水を確保してると思っ ているのか。」 「ですが,それではどうしろと。」 重ねてアンジェリカが問う。 俺様はイラだって答える。 「だから,限界だと言っておる。要塞に要塞をぶつければよいのだ。あらかじ めマスコミに教えておけおけば済むこと,サミットの時期に合わせれば世界中の 耳と目を集められる。」 「しかし,戦争になってしまいますよ。」 アンジェリカが言う。 「それはどうかな。戦争になれば,国連が正式に介入してこよう。っだが,紛 争だと言えば,中国は日本から,まだまだ金をしぼりとれる。」 海水から真水をつくるのには,ハイテク技術が必要なのは,高知県知事も知っ ていること。高度の技術をもたない海賊どもが文字通り生命線の水の供給源を断 てば,消え去るのみなのだ。 「しかし,それは危険なかけなのでは?」 いつのまにか,ハロルドが,そばに来て質問する。 「だったら,あらかじめ,アメリカ政府首脳にだけ,紛争だたと教えておけば よいのだ。」 俺様は,言い終わると口をつぐみ。 《だが,先生を選んだ責任は追求されるかな》 と,考えていた。 一方,アンジェリカも 《この黄色い小男,やる。ディ−プが選んだだけのことはある》 と,思っていた。 俺様は,自室に戻り,アナライズ(分析)する。 ドクタ−が,極東に来たのは,単に,サミットの地均しの為ではない。 今,アメリカはバブルの絶頂にいる。 だが,もし,バブル崩壊が起きたら, 当然,景気循環の法則からいって沈静化はしよう。 日本は,ようやく底をうった状態で,これをむかえうつのは厳しい。本来なら, アメリカ債権を手放し,財政を建て直すのがよいのだが,それをさせないために きているのだ。 与党も苦しい。財政を建て直さなければならないが, といって,人頭税など いいだせば,サッチァ−の二の舞を演じなければなれなくなる。 野党とて同じこと,とくに,共産党は政党宣言をしていない。正式に,発表し なければ,大陸の政権が滅びれば,いずれ問題になろう。 「いよいよだな。」 白いチャドル姿で,アラブの雄,ハッサンは,側近に言う。 かしこまって側近は,ハッサンの髭の手入れをおこなう。 嵐のまえの静かな,ひととき。 今後,アメリカの景気が,落ち込めば,この国の政府は,90円台を支えねば ならなくなる。そこがハッサンの付け目でもある。 現在,インタ−ネット取引でおこなわれている 外国に住んでいる,外国人投機家に,どうやって税金をかけ,どうや って税金を徴 収するのか。 外国為替市場なら,閉鎖すれば良い。だがインタ−ネット市場はどうやって押 さえるのか。 しかし,先見の明をもつものは,他にもいた。 ロンドン とある一室。 老人2人が,茶を飲んでいる。 「なかなか,楽しめそうだな,今度のゲ−ムは。」 「まったく,さて,次はどうするかな。」 一人が,ティ−カップをスプ−ンで叩く。 チン! と音がして,ビジネスの話は終わり, かたわらにあった,使用人を呼ぶ,ユリの形をしたガラス製の呼び鈴をつまみ, チリリン と涼やかな音が,広がる。 一人の男が,あらわれ 「御用ですか。」 と訊く。 老人は頷くと, 「ワシらの話は訊いておったな。」 「ハイ。」 「では,極東に行って,様子を見てきてもらおう。」 もう一人の老人が,命令した老人に訊く。 「いいのか。」 「いいも,わるいも,隠居の道楽だ。好きにさせてもらおうか。極東には,M Jとかいうお もしろい奴がいるそうだ。」 アゴをしゃくって,男に命令を下す。 リヒテンシュタイン人が,極東に立つ。 米国は,情報公開法により,既に50年前の太平洋戦争時に押収した資料を公 開している。ワシントンDC図書館には,マイクロフィルム化した資料を見るこ とができる。但し,アメリカ市民にかぎり,閲覧はできるが,コピ−も,国外へ の持ち出しも禁止されている。 インド北東部。 ネパ−ルとの国境近辺 標高3000M級のやまあいの谷間。 ポツリポツリと,原住民の村々から,さらに遠く離れた所に,3,4階建ての, 近代建築物が,少数立っている。 ハテ,なぜこんな所に,と思うが,植物研究所のプレ−トがあり,高山植物の プランタ−が,窓越しに見える。だが,自給自足の宗教法人が運営している。表 面上は,普通の建てものだが,その地下施設には,ヒマラヤ山脈の岩盤をくりぬ いて,巨大な,宗教施設が存在している。 《影の寺院》の一派の,総本山である。 「こんなところにあるとは.」 中共軍,麻薬捜差査官,フェイ女史,大佐がつぶやく。 「まったく,よくやる。」 英国心霊学協会,文化人類 英国心霊学協会,文化人類学者の肩書きをもつ,MI6少尉が,双眼鏡を覗きな がら答える。 「さて,どうしたものかな。」 アメリカ総領事つき,インド駐在武官の一人が言う。彼は臨時の武官であって, 元,DEAの麻薬捜査主任であった。 「プ−ハオ(不好)」 チャイナ女史が言い切る。 「まさか,インドぐるみ,ぐるというワケではないだろうな。」 念の為に,女史が,アメリカ人に訊く。 「それはない。多少,息のかかった連中がいるだろうが,少なくとも上層部に はいない。せいぜい県知事までだ。」 アメリカ人が答える。 この建物自体,ランドサット衛星はいうに及ばず,ステルス機で何度も偵察し て,やっとつかんだものだった。 「こうなると,中国のチベット中華人化政策がありがたいな。」 アメリカ人は,独白する。都市部では,ともかく,アングロサクソンの白人は, 辺境地では逆に目立つ。中華化を推し進め,植民地化したため,チベットや,ネ パ−ルにおいてさえ,中国人化が進み,逆に,原住民との混血が進み,フェイ大 佐の姿は,現地の女性とかわらないのだ。「アメリカ人の言葉とも思えんね。」 イギリス人が冷やかす。 「何を言う,インド会社以来,君たちのやり口ではないのか。」 アメリカ人も反論する。 「よしてくれ,昔のことは,それより,私達は,犯罪を防ぐために協力するの ではないのか。」 イギリス人が,猛烈に抗弁する。 と, フェイが,肩を叩き,仲間割れを諫める。 世界各地で,カルト犯罪が,多いが,その根源を探ると,凶悪化には,一定の パタ−ンが,あることが,わかった。それは,初めは穏健だった宗教団体の幹部 なり,創設者が,インドへ旅行に行くと,途端に,神の啓示を受けたと言って暴 力化するのだ。 当初,インド政府がかかわっているのかとも思われたが,そうではなく,どう やら,悪の宗教とも呼べるべき存在が浮かんできたのである。 事は,宗教上のことでもあり,東方の三賢人を気取るキリスト教の殉教者,新 カルトは皆,そういうに対し,各国政府は,非常な努力を積み重ね,この件に限 り,手を組むことになったのである。 「ここで,いつまでも居てもラチがあかない。潜入する。」 フェイ女史は,言い切る。彼女は,後に,行政官として,有能さを示すのだが, それは未だ,先のことである。 「アメリカ人は,大ざっぱだから,ボロをださないでよ。」 さっさと,身仕度を整える。 あわてて,2人の男どもは,準備をする。 ブチ! ふと,フェイが,アメリカ人のネックレスをひきちぎる。 「何をする!」 アメリカ人が怒る。 「こんなものぶら下げて,どこ行くの。」 目の前に,認識票を差し出され, グッとつまる。 「だから,アメリカ人て,嫌いよ。」 ハッキリ,女史に言われて,返す言葉もない。 イギリス人は,左右に頭を振って,ダメだしをする。 入り口までもうすこし,というところで,3人は立ち止まる。 イギリス人が,言う 「髪の毛は,もちろん,自分達の身体から出たものは,焼却,できなければ, 便所へ流せ。さもないと....」 「さもないと,のろわれる。」 女史が,言葉を継ぐ。 「ヘッ,のろいだってぇ?」 アメリカ人が,笑うが,他の2人が大真面目なので,従うことにした。 バツが悪く,軽く咳ばらいをすると, 「では,使い方を教える。」 アメリカ人が,背嚢の,ファスナ−を開くと,巧妙に一枚のフェルト地のブラ ンケット毛布になる。 「君たちのも,なるはずだ。」 アメリカ人に促されて,2人は,背嚢を次々に変形させ,隙間に,自分達の服 を押し込め,かわりに,信者らしい姿に変装する。 当然,アメリカ人は,自分の認識票も隠し入れる。 信者にまぎれ込み,当分は,何もおこらなかった。 昼間,高地での労働は,きつく,夜は,泥のように眠った。 そのうち,異変がおきた。 巡礼者の一人が,狂った様に,さわぎはじめたのだ。 「しまった。」 アメリカ人が,舌打ちした。あわてて,女史と,イギリス人をひきずるように して,便所へ,と,連れていく。 「あれは,麻薬のアレルギ−反応だ。俺は,中南米で,みたことがある。」 「すると,奴は薬中か。」 「急性のな,いいか食べ物を吐き出せ。おそらく,ここでだされる,水,食事, 全てに入ってる筈だ。」 「何!」 2人が,驚愕する。 「しかし,我々には,わからなかったぞ。」 女史がいう。 「イヤ,まがいない,新薬だ,多分,我々が未だ発見していない。」 現在,アメリカでは,農業穀物DNAデ−タの特許申請が,行なわれようとし ている。 特に,インド産の穀物が,企業に狙われいるが,コシヒカリなども,対応をも さくちゅうだ。 だが,まったく同じ手法で,影の寺院達は,小麦を操作して造りだした。 つまり,麦角菌のDNAを,ライ麦,そのものに入れることに成功したのであ る。これにより,ニユ−タイプの合成麻薬,ネオLSD穀物が誕生することとな った。 「ハッタリだ。」 イギリス人は言う。 「だが,可能性はゼロではない。」 アメリカ人が,沈痛な顔で答える。 「もし,これが,世界各地にばらまかれたら,国家制度そのものが,崩壊する。 」 アメリカ人の顔が,一層,引き締まる。 「ならば,私達のように米を食べればいい。」 中国人女史が,言う。 「ほう,中国人が,日本人の真似か。」 アメリカ人の,強烈な皮肉に女史は怒りに顔が朱に染まる。反論しようとする と, イギリス人が先に,アメリカ人に訊く。 「では,どうする。プランタ−を焼くか。」 「いや,我々,3人だけでは無理だ。一刻も早く,この事実を知らせねば。」 大礼拝堂,納骨堂,主教集会所,大主教集会所,総大主教謁見室,懺悔室,瞑 想室,信徒達の食堂や,個室,ごみ焼却場まであるが,一体,全体はどうなって いるのか定かではない。 言葉自体も,新しく建てられた所だけが,信徒のために,各国語でかかれてあ るが,それ以外は,チベット語のラサ語でかかれてあり,この教団が,チベット 僧侶の破戒僧によってたてられたとも,ブッダに反逆したダイバ・ダッタが源流 ともいわれるゆえんである。 おそらくは,その地下施設には,人類の英知ともいうべきものが,胎蔵あれて るハズだが.....。 影の寺院の場合,目的とするのはエゴイズムの充足でしかない。権利を回復す るのではなく,過去を正当化して,特権の蜜におぼれようというのだ。 北海道,レ−ムダック。 広大な原野の中に,複数の施設と,一面,フラットな敷地。元々は,ミグ21 の亡命さわぎ以来,アメリカが,対ソ連の緊急支援用に買収した土地である。現 在もときたま,飛行場として利用されているが,上級職員の専用ジェット機の離 発着程度であり,もちろん,一般人は入れない。 俺様MJは,その施設の中で,リヒテンシュタイン人と会見する。 「相手がちがうのではありませんか。ドクタ−なり,アンデルセンなら,東京 にいますよ。」 「いや,まちがいない。私は,君という人物を見にきたのだよ。」 「それは,それは...」 俺様MJは,常日頃,ショウガ湯を好むほどだから,寒い所がにがてである。 そのため,北海道まで,呼び出しをうけたのに不満だったのだが,せっかくの機 会なので,日頃の質問をぶつけてみた。 「ところでアメリカ大統領が,アジアに対して強い態度に出ないのは,なにか問 題でも,」 俺様MJは,訊く。 「いや,日本はアメリカの重要なパ−トナ−だ。他意はない。」 リヒテンシュタイン人が,模範生の回答をする。 「そうですか,私はまた,極東からではなく。オセアニアから,アメリカが世 界戦略を進めると思ったものですから。」 「ほう,これはこれは,成程,炯眼ですな。」 戦略とは状況を利用する技術とすれば,アメリカは,自在に使っている。 日本政府は,アメリカの力を巨大視するあまり,対抗勢力さえなければ,国家 の安全がたもてると錯覚している。沖縄が,対抗勢力がなくなれば,単なる田舎 なのと同じく,太平洋に,オセアニア経済が確立すれば,この国の存在意義はう すれる。既に,オ−ストラリアに証券取引所が設立され,運営され始めている。 「なんだと,」 執務室で,ドクタ−は,ディ−プから,《影の寺院》の報告を受けていた。 まったくなんて時にと,ドクタ−は思った。 第一,目前にせまったイスラムのほうが脅威だ。しかも,《影の寺院》のよう な悪しき反動であるがゆえに脅威なのではなく,民主主義制と異なる体制によっ て,改革に成功しつつあるのが脅威なのだ。 法に従うのは市民としての義務だ。しかし,国家が自ら定めた法を無視して, 個人の権利を侵すとき,それに従うのは悪だ。民主国家の市民は,国家のあやま りを批判する権利を有する。これが俺様MJのバックボ−ンだ。欧米では当たり 前のこの考えが,どうも,この国ではあやしい。 いわく,外敵に対し,挙国一致で当たろうとは,50年前のマスコミスロ−ガ ンだ。 奴隷と市民の区別がつかないようでは......。 目の前のリヒテンシュタイン人を,ディ−プに引見するべく,手続きをとる俺 様MJも,あまり,楽しい気分にはなれなかった。 ホワイトハウス 首脳陣達が,新年の挨拶に歓談している。 「話がはずんでるようだな。」 大統領が,言葉をかけると,ペンタゴンの最高司令官が,グラスを空にしなが ら言う。 「もし,中共軍に充分な兵力があれば,中共側の出口に縦深陣をしき,正面か ら決戦を挑むはず。しかし,この方法をとるには,兵力はすでに少ないはず。一 戦して敗れれば後はなく,首都まで無防備になります。そこで,彼らとしては, 我軍を深く領内へひきずりこみ,行動の限界点で補給路を途絶し,通信を妨害し て,各個撃破をかける以外にありえませんが。」 「君の意見は正しい,だが,私は基本的には,オセアニアに経済圏を作り,世 界経済を手中にした上で,アジアに向かうことを考えている。 もし,極東のみを世界戦略の道と想定するなら,太平洋戦争の二の舞で,将兵 の死屍で舗装した愚行を再現することになる。 オセアニアを重視しない,というのは,人間が決めた都合であって,絶対では ない。 アジア人達が,そう思うのは勝手だが,それにつきあう必要はない。」 一同を見渡し,大統領は,意見をハッキリと浸透させる。 「うむ,わかった」 ミスタ−紅は,新年(といっても,中国の暦では本当は2月だが)のあいさつ を高級官僚や,将軍達からうけていた。 《中国は太陰暦だが,政治上,西暦に合わせている》 そこへ,カルマパ17世のチベット自治領脱出の報を受ける。 「責任者のみを罰し,それ以外は,罪はおよばん。」 広間の玉座から,そういうと,さして興味を示そうともしない。 「それで,よろしいのですか。」 あまりのあっけない,軽い処分だったので,報告者が聞き返す。 「よい,それとも私の指図に不服か?」 「い,いいえ,直ちに。」 バネじかけの人形のように,報告者は,部屋を飛び出す。 部屋にいる,高官の一人が訊く, 「何か,お考えでもあるので.....」 ミスタ−紅は,頷く。 別の高官が訊く 「まさか,とは思いますが,総書記においては,事前にお知りになっていたので は?」 恐る恐る質問を発するが,ミスタ−紅は,いとも簡単に認めた。 「念のために言うが,責任者以外の責は問うな,それと,残された家族に不自 由なおもいもさせるな,必要ならば,私の名で発表しても良い。」 高官や将軍達は,以外な成りゆきにどよめく。 赤ら顔の,将軍の一人が進みで, 「しかし,これで,インド攻略の口実が,できましたな。」 居並ぶ高官達も頷き, 「いまや,社会主義と市場経済の矛盾が表われて収拾がつきません。目を外に 転じるよい手段かと.......」 しかし,ミスタ−紅の答えはさらに以外だった。 「それだけではない。《影の寺院》の討伐行なわねばならん。それには,カル マパ17世の協力が必要だ。いうまでもないことだが,私の命令を兵士達にも徹 底させておけ!」 「し,しかし....アメリカの謀略なのでは。」 「だとしても,マイナスにはならん。第一,このまま放置すれば,アヘン戦争 と同じことになる。」 ミスタ−紅は,部下の質問に答える。 さらに,別の将軍が危惧する。 「ですが,南進してから,チベットが蜂起すれば,わが軍は,腹背に敵を受け ることになりますが。」 「心配ない,チベットにそれほどの兵力はない。奴らが思い上がれば,反転し て蹴散らせばいい。」 「まったく,一石三鳥ですな。」 側近が,追笑をする。 「まだ早い,インド政府の対応も決まってはおらん。」 おべっか坊主をたしなめる紅。 高官が訊く。 「果たして,どうするのでしょうか。」 「もし,奴らが,本当にマキヤベリストなら17世を送り返して来るだろう。 そうなったら,こちらとしても打つ手がない。それに,別の問題が生じる。」 「なるほど,共食いをさせるのですな。」 「そうだ,悪の一味に加担していると思われないためには,自分の手で掃除す るしかない。」 一息つき,茶をすすると, 「だが,そうはなるまい,民族感情からいってもな,わかったら,準備を始め よ。」 一同は納得し,己が職務に邁進する。 「案外,早かったな。」 「そうでなければ,教えたかいがないというものだ。」 ポルトガル大使館で,2人の男が話す。もちろん1人は,ビエイラ元マカオ総 督で,もう1人は,パッテン元香港総督である。 「それにしても,あくどいな。」 ビエイラが言う。 「何を言う。自国の利益は最大に守り,難問は他国に押しつける。外交の基本 だよ。」 パッテンが笑う。 「はてさて,どうなるかな。」 「楽しみだ。」 ビエイラは,年代もののワインを取り出し,パッテンに勧める。 検察庁, 「やったな,これで,外国人どもは一網打尽だな。」 「ハイ,我々も思わぬ収穫に喜んでいます。」 大阪府知事は,セクハラで,民事で有罪だったため,当然,刑事事件の捜査が 進んだ。 その際,知事室から押収されたものの中に,届けれられた,外国大使館員の名 簿がある。 検察庁は,外務省の協力を得ずに,自在に,外国人や,日本人職員のリストを 入手することができて,望外の喜びだったのだ。 次々と,マ−クされ,あるいは,別件逮捕を当然ながら警察は行なう。 「クソッ,ジャップめ!」 DIA(アメリカ国防情報局)局長は,ニガニガしく,吐き捨てた。 なぜなら,過日,日本警察が,押収したリストに基ずき,容疑者を捕まえいっ た中に,アメリカへの内通者が含まれていたからだ。 彼らは,アメリカの良き,目と耳でもあったのだ。 「一体,いくらの金と時間をつぎこんだと思っているのだ。」 これでは,まったくの徒労ではないか,それどころか,CIA長官は喜んで報 告にいくだろう。今まで,たいした失敗もなく,ここまできたのに,これで出世 の階段をふみはずすとは,しかも,自分の責任ではなく。 「黄色い猿め,絶対許さんぞ!」 その後,米軍は,,強硬に,日本政府に要求を押しつけることになる。 大阪府知事選挙の候補者に異論がある。 結局,選挙は人気度である。ならば,東京都知事に立候補した人たちを,なぜ押 さないのか。 桝添氏なら,福岡の母親からも近く,大阪経済立て直しを,アピ−ルすればよ く。 陳平氏なら,福祉.税金問題で野党と互角に戦えよう。 栗本氏なら,彼はもと,奈良地方の大学教授だった過去がある。 いかに,実務能力があっても,無名や,それに近い人を選ぶのが,いかに困難 か。 《明石氏》で,自民党は学んだのではなかったのか。同じ愚を犯すのはいかが なものか。 戦局と時局を見れない者は滅ぶしかない。 私見としては, 桝添氏だ。東大出の学者としては,マスコミを前にしての論 客ぶりは買える。 それに反論できる行政官など,ざらにはいまい。おそらく,新たな地方税の名 目を考え,行政の効率化に容赦ないだろう。彼を一種の試薬として使い,有益な もののみを国策とすればよいのである。 かつて,ビル・クリントンとド−ルが,大統領選で戦った時, 《あなたの年は問題ではない,あなたの考え方の古さが問題なんだ》 といったが,現在の自民党ではアメリカは満足ではない。 先生には,今後,アメリカ広告業界が,磨きに磨いた大衆説得術を提供しなくて は......... 俺様は,自室で,考える。 『ある民族の集団的な罪とか,諸民族の内部における一グル−プの集団的な罪と かは 政治的に問われる責任以外には 存在しない。 刑法上の罪としても,道徳上の罪としても,刑而上の罪としても,集団の罪は 存在しない。』(責罪論) ドイツ首相,シュレ−ダ−は,執務室でヤスパ−スの責罪論を熟読する。 顔をあげ,メガネをはずし,目頭を押さえると,一息つく。 『犯罪者は,常にただ個人である,ある民族全体を道徳的に弾劾するのは理に 適っていない。』 これは,ナチスドイツが【ある人種に属している者は,それだけで生存価値が ない】としてユダヤ人やジプシ−を皆殺し,虐殺したことに対して,ドイツ市民 に報復を呼ばないために主張してきた。 ハッキリ言って,一種の詭弁ではある。 だがこの論なくして,今日のドイツはありえなかった。 もちろん,今では,組織犯罪を防ぐ法律もある。 だが,そのため,ドイツは,血のにじむような努力を重ねた。特例として,個 人保障も行ない,スイス銀行に眠る,ナチスの財産はユダヤ人の資産である,と いう主張にも和解金を支払った。 だが, 日本が犯罪組織防止法を成立させれば,再びドイツは危機に陥る。 なぜなら,三国同盟をした日本が,ドイツの罪を指弾したにも等しいからだ。 東京裁判で弁護団長の清瀬一郎博士は,国際法の立場から無効だと声明したが, キ−ナン検事はもとより,ウェッブ裁判長は,頑としてみとめず。逆に,連合国 がどのような被害を与えても,罪にはならないと言った。 それを,五十年たって日本が認めたととられかねないのである。 また,ドイツと日本との違いは,日本には皇帝の一族がいることである。しか も,かつて財閥が戦犯容疑で訴えられたとき, 皇帝みずから《罪の一端は自分にある》と言ったコメントを発した点だ。GH Qは,正式に記録として残している。 ということは,とりもなおさず,アメリカ,ソ連,中国,イギリス,フランス各 国にある,ということだ。 特にフランスは,戦後,ドイツを押さえこむことに失敗してきた。これをテコ に,ここぞとばかりに攻めてこよう。 しばらく考えた末,シュレ−ダ−は,パソコンに向かった。 「SEE・BEEを出動させ,ヒロシマド−ムを解体させよ。」 ドクタ−が命令を発する。 俺様MJは,先生のための選挙対策を考えて,ディ−プの所にもっていったの だが,ドクタ−にそう命令された。 SEE・BEEとは,海兵隊建設大隊(コントラクションバダイヨン)であっ て,頭文字をとって,CB,海軍なのでSEE・BEE,である。 「.......」 俺様は,返答に困った。すると,ドクタ−は,説明を始めた。 「組織犯罪防止法が日本でも施行されようとしている。五十年前には,立憲君 主制でおさめたが,今度こそ,民主共和制にしてくれる。そのためには,めざわ りな,あの,ゲンバクド−ムが邪魔だ。」 俺様は瞬時に理解した。 今朝,シュレ−ダ−からのEメ−ルを確認したばかりだったからだ。 世界遺産に,原爆ド−ムを登録することに,アメリカは反対した。ド−ムは, 日本人がアメリカ人の蛮行を忘れない。という意思表示であり,パ−ルハ−バ− の記念館と同じ意味をもつ。すなわち,ハ−ドの面でも,ソフトの面でも,象徴 としてのよりどころをけしさろうというのだ。 「しかし,...」 「命令だ。」 俺様の反論を許さず,ドクタ−は言う。 俺様は迷い,ディ−プの方を見る。 ディ−プは,俺様のレポ−トを一読すると,再び俺様に返し, 「このレポ−トともどもな。」 と念を押す。 「承知しました。」 俺様は,軽く答えると,部屋を出る。 「奴らは,自分の死刑執行に,自分でサインをしたのだ。」 ミスタ−紅は,言い放つ。 カルマパ十七世が,インドに渡ってから,中国は,最大の注意を払った。にも かかわず,インドは,中国を避難し続けた。 「交渉の余地は。」 高官が訊く。 「ない。奴らの方でそれを閉ざした。いずれ,法皇を帰すと,約束すればまだ しも,我々を中傷するとは。」 書記長の言葉は,明確だ。 「では,作戦は.........」 将軍の一人が,いきおいこんで訊く。 「九竜に軍を集結しろ,いうまでもないが,これは陽動だ。時期をみて,一挙 に南下する。」 そう命令をくだし,一同を見回す。 が, 一瞬,ミスタ−紅は疑念にとらわれる 《まさか,インド政府も,悪の組織に洗脳されているのではないか》 「いかがいたしました。」 側近が不思議そうな顔をする。 「いや,なんでもない。」 ミスタ−紅は,あわててもうそうを消すように,手をふる。 「新たな法皇を決めねばな。」 「ディ−プに感謝しなくては.....」 俺様MJは,議員会館に着くと,一人ごちた。 本来なら,横須賀に行き,CB隊を率いて呉の米軍港入り,広島に向かうので あるが,先生に選挙対策レポ−トを届けるという仕事があるため,立ち寄ること ができたのである。 迎えにでた,第二秘書にレポ−トを投げるように渡すと,先生の居所を訊く。 さいわい,国会議事堂ではなく,会館の自室とのことだったので,勝手知った るごとく,大股で俺様は急いだ。もちろん,片手にはしっかりとノ−トパソコン をかかえて。 途中,警備員が俺様の邪魔をするので,思い切り良く突き飛ばす。 「選挙対策に妙案があるとか.....」 先生は,何も知らずににこやかに俺様を迎え入れる。 しばらくすると,警備員が,ドカドカと入って来て,俺様をつかまえようとする が, 「私の大事なお客様に何をする。」 と,先生は一喝する。 委細かまわず俺様は,ノ−トパソコンをひらき,シュレ−ダ−からのEメ−ル を見せる。 「どういうことだ!」 俺様はつめよる。 「まさか,そんな風にとられるとは....」 先生は,絶句する。 「MJさんのお力でなんとかなりませんか。」 第一秘書が,横からのぞき込み,言う。 「無理だ,五十年前とは状況がちがう。だいいち,アメリカが,君たちの皇帝 を助けて何の得になる。」 五十年前,日本とアメリカは,市場の覇権をかけて戦った。 ところが,日本帝国主義を潰したあと,共産主義がはびこり,これを阻止しな ければならなくなった。 当時のアメリカ首脳も苦悩した。 敵国であった日本を援助しなければならなかったからである。 だが,アジアにおいて工業国と呼ばれるのは,日本しかない。 他に選択の余地がなかったのである。が,いまや共産主義は滅びつつある。 しかも,オセアニアが台頭しはじめた。 勿論,軍事上は守らねばならないが, 政治上の改変は,なんら問題はない。 「では,テロリストどもを放置しろと。」 先生は,腕組みをし,口をへの字にしてふんぞりかえる。 「そうは言っていない。だが,タイミングが悪い。サミットの後なら問題はな い,でないと,足元をすくわれる。」 俺様は言う, 「ですが,遺族達が納得しますまい。」 ようやく,汗をふきふき,第二秘書が帰ってきた。途中,警備員に詫を入れて いたため,戻るのが遅れたのである。 「それなら,毒ガスを撒いた開祖を懲役300年,幹部を懲役200年にすれ ば良い。生きているかどうかは本人の問題だ。」 俺様は言う 。 「そんな無茶な。」 先生が言う。 「では,他に方法があるか。刑の執行もできない,釈放もできない。とすれば, コレしか方法はあるまい。」 俺様は言う。 「...にしても,」 先生と秘書達が,顔を見合わせる。 しかし,実際,他に手段はないのだ。 教祖が,未決である以上,死刑判決を受けた幹部が刑を執行される確立は低い。 第一,これでは主犯より従犯の方が罪が重くなる。 かと言って,全員死刑にすれば,日本政府は二重のあやまりを犯す。 一つは,当時の社会党首相が,法に照らし合わせて,といったのを無視すること となり, いま一つは,先のシュレ−ダ−の指摘,矮小化した東京裁判のカリカチュアで ある。 「くそっ! 社会党め。最後まで奴らにたたられるとは。」 先生はテ−ブルの上のガラス製の灰皿を壁に投げつける。 大きな音と伴に,粉々に砕け散る灰皿。 その様子を見ながら,俺様MJは考える。 だが,不幸中の幸いだとも言える事もある。 数年前,カルト教団が弁護士を雇ったとき,その弁護士は気ずいていたにちが いない。 『毒ガスより,太平洋戦争の方がひどかった』 といってマスコミに叩かれ,クビになったが。もし,責罪論を展開されたら, 日本政府はどうしようもなかったにちがいない。 A級戦犯である,東条英機を靖国神社に合祀してしまった後では。 俺様MJは,この点で,先の昭和の皇帝は,一級の政治家であると認めざるを 得ない。 なぜなら,彼は,自分の死の直前まで,東条の罪を許そうとはしなかったので あるから。 果たして,日本政府は,世界に対し,どんないいわけをするのか。 先生のもとを離れ,駐車場へ行くと,アンジェリカがまっていた。 と,そこへ,金髪の白人女性が,近ずく, 思わず,緊張する,アンジェリカも。 俺様はNSAや,カンパニ−近くの襲撃事件を思い出す。 「失礼,私,こういうものです。」 礼儀正しく,名刺を差し出す女。 …イギリスBBC東京支局, ジュリエット・ヒンデル…とある。 「外国人女性をこの場所で見かけるのはめずらしいもので...」 俺様は,笑顔で答え, 「なに,彼女は,私の秘書ですよ。今日は,陳情です。」 「忙しいので,失礼します。」 アンジェリカが,切上げ,俺様は,車の後部座席に躰をすべりこませる。 車が出ると,俺様は,アンジェリカに質問される。 「A・J・Cの三者の勢力があり,AとCが対立していれば,Jは,AC両者 の抗争を長引かせて両者を共倒れさせる。しかし,Aの勢力が増大し,Cを助け てもAに抗しがたければJとしてはAに協力してCを撃つという選択をするので は?」 「うん」 「ですが,そうすると,巨大化したAは,Cを滅ぼした余勢で,Jをものみこ むのではないでしょうか。」 「そのとおりだ,俺様の考えも実は,そこがネックなのだ。日本が富と戦略位 置をアメリカに提供して何を得るのか,ということさ。」 「物資や打算でなければ,精神?」 「いや,ユダヤ人ならともかく....。」 俺様は,考え込む。 「いつか,ピカチュウが日本の世界戦略だといわれたが,案外,本質を突いて いるかもしれん。」 今や,日本が世界に誇れるのは,最先端のハイテクを盛り込んだ機噐と,ジャ パニメ−ションといわれるアニメだけだ。 かつて,吉田首相は,籐製品で外貨を稼げと言ったが,そのとき,すでに,工 業化がすすんでいた。工業化の次はハイテクコンピュ−タ−,その次が,ピカチ ュウなわけだ。 俺様は,一度背筋を伸ばし,力を抜いて座席に躰をうめこんだ。 「それはそうと,ディ−プに連絡しなければ。」 俺様が言うと, 「ボス,これをどうぞ。」 運転手が,乱数表を出す。 「いや,いらない,それより電源をもらうよ。」 「それなら,隅にあります。」 昔は,ミサイル発射ランチのように,誤動を防ぐため,毎日,暗号を変えるな どしてセキュリティを行なっていたが,今は,そんなことはしない。 カメラアイ付きのパソコンがあれば良い。 まず,端末のパソコンのピンチュ −ム(ペンティアムプロセッサ)で,発信もとが,識別できるし,それと,俺様 が肌身離さずもっている発信機とで,位置を確認すれば,俺様がパソコンを操っ てることがわかる。その上,カメラで,人物確認すれば,本人かどうか確認でき る。 ヒュ−ミント(対人能力)にすぐれたカンパニ−ならではのやり方だ。 とはいえ,何事も得意,不得意はあるもので,エリント(電子装置による監視 )は,NSAの方が優れている。 最近,ペンタゴンのセキユリティ−が甘いとして指導したのが良い例だ。 とはいえ,これは仕方のない事で,軍人の目的は敵を殺傷することであり,情 報の管理は行政官に属する性質のものだからである。 事実,東西の冷戦がつづいていた時代。米ソは軍事機密が外に漏れることを徹 底して防いだ。核兵器やICBM,原子力潛などは市場には出てこない。 だが,軍事技術を機密化すると,結局最先端の開発情報ノ入手を,完全に遮断 することとなった。 結局,軍事技術の開発に重点をおかない日本のほうが,はるかに最新の技術情 報がてにいれられ,高水準を保という皮肉に陥ってしまったのだ。 「ご苦労だったな,そのまま,横須賀へむかってくれたまえ。」 ラップトップの中で,ディ−プが,リアルタイムで指示する。 俺様は報告を終わると,後は,アンジェリカにまかせる。 「クソッ! これでは手柄の立てようがないではないか!」 ドクタ−は,憤りを隠そうともしない。 大統領が,中国をはじめ,インドや東南アジアを回って交渉したからだ。 もちろん,紛争を未然に防ぐ。という意味からは賞賛されて当然の行為なのだが, ....... 「しかたありますまい。大統領御自身とあっては異議の唱えようがありません。 」 ウイロビ−は,慰めるように言う。 「よもや,貴様に慰められるとは思わなかったぞ。ウイロビ−。」 豪然といいはなつ,ドクタ−。 と,ピ−パ−が鳴る。 対日政策担当官の顔がモニタ−にでる。 「どうかな,ドクタ−。」 「ふん,キッシンジャ−が痛めつけられた意趣返しか。そういえば,貴様ら二人 はニクソン以来の補佐官だったな。」 ぐさりと,肺附を短刀で一撃する挨拶。 「いつまで,強気でいられるかな。」 不敵な笑みをたたえながら,担当官の顔が消える。 「ばかどもが,....」 ドクタ−は,吐き捨てるように言う。 「いかがいたしましょうか。」 心配そうにウイロビ−が訊くが,平然とうけるドクタ−。 「こちらには,これがある。」 小さなMDのような,機械を取り出す。 「なんですかそれは?」 「アメリカが,裏工作のために用意した連邦準備銀行の金の記録だ。これがこち らにアル限り,いかにキッシンジャ−達がプレッシャ−をかけようと切り抜けら れる。」 既に,一部は長老部におくって,点数稼ぎはしてある。 国家にしろ,組織にしろ,良いことは公に喧伝するが,表にしたくないものは国 家機密の名のもとに,世間がうわさするにとどまり真実は隠蔽される。 それが,世間に公表されるのはずっと後に,歴史学者が研究するまでねむりにつ くのだ。 かつて,冷戦時代,米ソは取り引きと妥協がかかせなかった。 今,中国は社会主義市場経済を放棄した。統制を強めているのは,時間を逆行さ せて,政権の安定を復活させるためである。 対細菌兵器については,おおおよそ米軍(州兵を含む)にいきわたった。 シュミレ−ションでは,炭素菌にしろ,天然痘にしろ,それほどたくさんはいら ない。 ごくちいさな風薬並みのガラスのカプセルで,もちあるける。 使用方法は,金属製のめざましを現地で買えば良い。できればゼンマイ式を。 カプセルを短針と長針の間にはさむだけ,というシンプルなものだ。 もちろん,これだけでは,人に感染するまでもなく,風で拡散してしまいなんの 効果もない。あまりに,微量だからだ。 そこで,ビルの屋上に設置されている。空調施設。良く,むきだしで水が循環 してるやつがあるでしょう。 そこに放り込むのである。すると,レジオネラ菌とまったく同じ感染経路をた どってひろがるのである。 つまり,空調施設の屋外熱交換機の温水のなかで,繁殖し,一定レベルになれ ば,ビル風にのって,まわりを通行する人々にふりそそぐのである。 これを,やられると感染経路の特定が判別しにくくなる。 そうなったら,米軍は熱処理兵器を使う。 細菌に汚染された空気は熱処理兵器による殺菌しかないからである。 バチカン 「やれやれ,よっぽど貨物にのるのが宿命だな。」 俺様MJは,ぐちる。 イタリア行きを,突然,ディ−プ・インスペクタ−に命令され,観光気分で,き てみれば,法王のお声がかかる。 「このぶんなら,ルルドの泉にでもいくのかな...」 などと,おもうのは神ならぬ身の悲しさ。 一般の観光列車とちがい,本線からはずれ,引き込み線で,食料と郵便運搬用の 単線にのって,バチカンによばれる。 筋骨たくましい,コックが,じゃがいも袋を運び出す。 そんななか,俺様は,これまた,古式ゆかしい騎士すがたの案内人にたすけられ る。 バチカン内は,コックにいたるまで,聖職者だが警備は,違う。 戦うために戦士が選ばれる。 もっとも,入国の際に危険物は厳重にチェックされるから,騎士すがたのかれら には,銃はさげていない。 本部には,あるのだが,観光客をまきこむのを恐れて,拳銃さえ持たないものも いるという。そんなとき,どうするのか訊くと,彼はにやりとおもわせぶりな笑 顔をつくると,背後の一物を指さす。 と,彼のマントの下には,ごつい接近戦用の斧(トマホ−ク)が,...... .。 「ウへっ!」 俺様は思わずくびをちじめる。 郵便物運搬口から入り。 ズンズン進み,階段を上がると, 観光客用のコ−スの最深部にでる。 さらに,騎士について時間の神の間(クロノ−スの間)をとうり,神父につれら れて,これまた,ごつい南京錠をあけてもらい。 宝物庫へ,するとそこには,パソコンが...。 「これは,エルサレムで発見された黒の断章の文献がはいっています。どうぞ, ご覧ください」 」 俺様は,神父に,4連奏CDを手渡す。 もちろん,翻訳ソフトだ。 欧米では,英語やフランス語に訳されてはいるが,第四ウラルアルタイ語である。 日本語でやくされていることは少ない。こういう古文献は,インタ−ネットに繋 がず元々スタンドアロ−ンで(独立して)使われている。 担当者がぐちる。 「もともと,宝物のデ−タベ−ス作成の為だったんですが,こういう根気のいる しごとは,女性むきでね。スタッフをいれるのはよいのですが。ここには,女性 用トイレがなくて,困りました。結局,一般観光客の順路までもどらなくてはな らず。間違いをふせぐため,シスタ−までよんで警備しなければなりませんでし た。」 聖なる場所であるがゆえの,苦悩である。 なにせ,建てもの上部は,修業僧のおつとめ兼生活のばでもある。 「あれ,はなんだい?」 俺様は部屋の隅のシャッタ−を指さす。 「ああ,あれは美術品用のリフトですよ。よこの小さいのは食堂からのパントリ −です。」 「だったら,あそこから来れば良かった。」 俺様がそういうと。 「無理ですよ。警備がげんじゅうですから。」 といわれる。 後でわかったことだが,成程,建物の上層部から見ると,宝物庫の裏側は断崖絶 壁であり,裏道は一本道が市街に向かってのびているだけだった。 【確かにこんなところを通ったら,客がきたことを宣伝するようなものだ】 俺様MJがそんなことを考えていると。 「ところで,MJさん,ラテン語のほうはいかがですか。」 「ビネ,ビデ,....」 俺様は,シ−ザ−の来たり,見れり,....でぜっくする。 だいたい,古文書など,シュメ−ル語だろうがなんだろうがハイエイシェント( 魔術語)にしか俺様にはみえない。 恥ずかしさを隠すため,わざと強気で,CDロムを指さす。 べつに,担当者は気にするふうもなく。 「アメリカ人のかた用のがありますがそれでもかまいませんか。」 ト訊く。 俺様にいやようのあるはずがない。 「ではパスワ−ドを決めます。」 手続きをおこなう。 「どうかな。」 法王が,いきなり現れ, 俺様MJはあわてて最敬礼を,する。 「すまんがMJと話したい,皆のものさがっておれ。」 お付がおともなくさがる。 「感想をききたいな。」 「本当にこれを,おやりになるつもりですか。」 俺様は訊く。 「もちろんだ。だが,この遠征がおわればやめざるおえん失敗しても成功しても な。」 遠征が失敗すれば,キリスト教の首座にある法王は当然,引責辞任を迫られるだ ろう。一方,成功すれば,聖墳墓協会エルサレム本部長の功績にむくいるには, バチカン本部長の地位しかない。 そのためには,現在の法王は勇退というかたちで,その地位をおわれることにな ろう。 どちらにころんでも,彼自身の未来はすでに特定されているのだ。 法王としては,腹をすえる以外ないわけである。。 「ふう∼む」 俺様はうなる。 禁断の黒の章。 これは,もともと,古代にかかれた予言の書である。 予言というと日本人はノストラダムスぐらいしか思いださないが,それはまちが いである。 この書は,3大宗教の元となったものと思えばいい。 ナザレのイエスの山上の訓にしろ,モハメドのプラ−ク通りにしろ,啓示をうけ るということは,修業者達がいた。ということである。(現在でいえば超能力者 か) 彼ら無名の聖者たちがもじどうり心血をそそいでつくりあげたのが,この黒の章 と言われるものである。 《その聖者は5人の将軍にひざまずき,ゆるしをこい。そののち彼は,将軍たち の主人になった》 一読して,わかるとうり,これは,バイブルの悪魔が7つの贖罪に対するくだり とよくにている。 いうより,バイブルが黒の章をもとにした,といっても過言ではない。もちろん, 他の宗教も御同様である。当時の混乱のなか,多数の民族いりみだれ,ロ−マの ちからがよわまり麻のごとくみだれた。その中をいきぬくには,各民族とも強力 なよりどころをもとめなければならなかった。 つまり,黒の章をもとに各民族はおのおの独自のバイブルをつくりあげたのであ る。 実はこれが,アクエリアスのメンバ−の保険である。 メンバ−がきずつけられると,この黒の章を武器に報復がおこなわれる。 ゆえに,だれも手をだしかねていたのである。 この会見の後,法王はエルサレムに旅立ち,聖墳墓協会において,贖罪を表明さ れる。 日本 「−ごくろうだったな。」 ディ−プにいわれる。 「どうも」 嘆息しながら俺様はこたえる。 「なにか変わったことは。」 俺様が訊く。 「総理大臣がたおれたぞ。脳梗塞らしいが。」 「脳梗塞? 」 俺様は考え込む。 【もうかりまっか,くもまっか】 そんな言葉がおもいだされる。 「デ,どうだった。」 ディ−プが訊く。 手短かにバチカンでの出来事をはなす。 「あまり驚いたようすじゃないな。」 ディ−プいう。 「なに,昔からこういうのはどこの国にもあるからな。」 最近,アガステアという,古代ペル−の葉が,人間の運命を予測している。と話 題になったが,日本においても百人一首は,百の人生がある。 単に,解釈する人間がいなくなっただけだ。 「なるほど。」 とはいったものの,必ずしもなっとくした表情のディ−プではなかった。 いつもどうり,カンパニ−にもどり,留守中のできごとの報告を訊く。 デミング対日次官代理や,カ−トキャンベル次官代理(アジア・太平洋担当)達 が,ドクタ−をおさえたことを知る。 「CSIS(戦略国際問題研究所)に礼をいわねばならんかな。」 俺様は,マイクに訊く。 「その必要はないと思う。ドクタ−が,押さえられたならディ−プが知らないは ずはないからな。ディ−プは,いわなかったのか。」 「ウン。」 簡単に答えると 俺様は,自室にもどり,ノ−トパソコンに向かう。 インタ−ネットにつなぎ,バチカンのサイトを開く。 ポン! 軽い音とともに, サイトが開き, 一般の観光案内が.... さらに,内部案内から,時間の神の間へ,さらにシ−クレットへ, 《パスワ−ドを入力してください》 の啓示がでる。 『ブル−ベリ−は目に良い。だが,洗濯が大変だ。』 これが,俺様MJがきめたパスワ−ドだ。 これでも頭をひねったほうだ。すぐに解読されては意味ないし,かといって自分 がわすれてしまってはしかたがない。 で,こうなったわけだ。..... ホイ−ル・オブ・フォ−チュン(運命の輪) が3Dであらわれる。 《黒の章を開示することに賛成しますか。反対しますか。》 質問が表示される。 一端,俺様は,視線を窓の外に転じる。 雲のながれが早い。 時代が動く。 それを確認してから,おもむろに,YESの文字にカ−ソルをあわせる。 −クリックする。 カキュ! グワン! ゴゴゴゴゴゴゴ! 音がすると,グラフイック上の輪がまわる。 英語の音声とともに,画面上では。 《黄金率を超えました》 とでる。 黄金率とは,ユダヤ人なら誰でも知っている。 78&22のことである。 つまり,全世界で何人いるか知らないが,アクエリアスの78%は開示に賛成し たのだ。 これより,次の千年王国がうごきはじめることになった。 「やっこらせっと」 俺様は,マンションにもどってくる。 もっとも,このいえも監視されてはいるはずだが。 留守中のたまった新聞を整理する。 電話ずきのおじさんが,総理大臣の座から急病になり,代行としての地位につ くまでの官房長官の手腕や人格にたいする評価はひくいものではなかった。 政策立案能力や,行政処理能力には非凡なものをみせている。 しかも,官房長官が人格面で非難されたことはない。 そのかれが,おのが政治基盤を固められず。対外的にも凡手をうった。 「平時の人材ではあったが,非常時に際してメッキがはがれた。」 とみられるのである。 東京都知事らしい批評だが,俺様はそれほど酷ではない。 「官房長官の,国家に対する忠誠心と責任感は,疑問のよちがないものだ。ただ, それが徒労におわっただけである。」 もともと,官房長官は肥満したひとではなかったが,連日の苦悩と過労は彼を やせさせた。「こいつはながいことないな。」 側近たちは不謹慎だがささやきあった。 はたして,それは,個人だったのか国家だったのか。 ラガ−マンが,新しい総理の椅子にすわることとなった。 「あたしのパパが,電子レンジ作ったのよ。」 テレビで, さえずり鈴 という名のジャリタレントが威張って言う。 その番組をたまたまみていたW大学の火の玉教授は,怒った。 「なにを言う,もともとマグネトロンの兵器開発は戦前の陸軍の機密だったでは ないか。」 本来,マイクロウエ−ブによる。兵器は日本がせんこうしていたが,敗戦に間に 合わず。 すべての資料とともにアメリカにもちさられてしまったのだった。 なぜ,火の玉教授が知っているかというと, 火の玉が,一種のレンジ効果であることは,うすうすさっしていたのだが,彼が 研究テ−マとして,選んだ当時はいまだ,30年法によるアメリカ情報公開がな されていなかったのだ。 そのため,論文一つまとめるにも敵国条項にひっかかりさんさんたる苦渋をしの ばねばならなかった。 と,そこへ, SPを引き連れたおとこがあらわれる。 「EMP研究はすすんでいるかな。」 鷹派の文部大臣である。 「はっ,ご協力感謝にたえません。」 殺人兵器としては,戦前の科学力ではなしえなかった。 第一,電波を一カ所にあつめられなかったからだ。 だがいまの日本の科学力ならば可能である。 指向性をもたせるのはたやすい。 それだけではなく,電力も小型化した。 だが,それでも完全に人体発火現象を起こし,灰にするのは容易ではない。 なぜなら,近隣の電化製品に影響をおよぼすからだ。 発火だけなら,人間のからだには汗腺とともに油分があるので,簡単だがそれで は生焼けになってしまう。 そんなとき,シ−メンズというステレオダイメイタ−の存在をしった,もとは, リハビリ等の筋肉を鍛えるためのものだが,中周波,5000HeZを使用して いることだ。 マイクロウエ−ブに中周波5000HeZを,のせることで問題を解決したの だ。 「SPをお一人おかしください。」 自信満々で,火の玉教授が言う。 無言で文部大臣が頷くと, 屈強のSPがEMPの前にたつ。 ブゥウウウウウウウゥウウ スイッチをいれると 低い音を微かにだしながら,機械が動く。 たちまち, SPはたこおどりのようなおどりをおどる。 「なんだ,これは。」 大臣が問う。 「気功法の正体です。EMPは人間のあらゆる筋肉をコントロ−ル不能にします。 勿論,指向性がありますので,一キロさきからでも可能です。」 「ばかもの,こんなものにかねをつぎこんだのか」 大臣はおこる。 「おわかりになりませんか,ワンショット発信すれば心臓麻痺をひきおし,運転 中にあびれば事故をおこすことができます。」 「だめだ,完全消滅までもっていけ。」 「ですが,研究費が...」 「かまわん。」 「それにアメリカの方は...」 「通常兵器の開発は条約違反にはならん。それにクェ−サ−パルサ−の開発で, 我々に範をしめしたのだ。拒否はできまい。」 俺様のマンション 久しぶりのTVウオッチである。 東京都知事が,三国人発言で会見する。 どこかの記者が引責辞任を口にすると,鼻先であしらわれる。 当然である。 記者はこのとき,こうきけばよかったのだ。 「知事はどこにいらっしゃるのですか。国民に犠牲の必要を説くあなたは,あな たの家族は。演説には非のうちどころがありません。御自分で実行なさらなけれ ば,PKOやPKFの遺族は納得しないとおもいますが。」 黙って,耐えてばかりいて事態が改善された例はない。 いうべきときに言い。 責任の所在をはっきりさせなければならない。 時代はうごいているのである。 動機さえ正しければ結果はとはないという思想がろくな結果を生まない,のは歴 史が示すとうりである。 「やれやれ。」 俺様MJは,近所に買い物にでる。 近所のス−パ− [川中様,川中様お呼び出しです。] アナウンスが,流れる。 たちまち,俺様めがけて,店員が商品整理にかこつけてあらわれる。 川中というアナウンスは万引きに対する隠語である。 【まったく,卑劣だな】 日本警察は,俺様を万引き犯として手配しているらしい。 かつて,民間人を監視し摘発するという行為にかんしては,占領軍の将兵より, 被占領国の協 力者のほうがはるかに有能である。 事実,最近俺様マンション,階下の住人のいきが良い。 俺様は直ちに,ディ−プに報告する。 「ふん,卑怯者には卑怯ものにふさわしい処遇をしてやる。」 そういうと,ディ−プはなにやら指示した。 都内某所 「すいませ−ん。」 美人女性ドライバ−が,路肩で,困っている。 と,パトカ−が近ずく。 一人の警官がなにごとかととう。 「エンコしちゃって」 女の答えに,そうこうをくずしながら, 「どれドれ,みてあげよう。」 親切に念入りに車を見る警官。 反対車線では,バンがとまっている。 なかの男が,携帯電話で連絡する。 「車体番号は026です。」 「OK」 電話の相手が了解すると,その男はバンとは別の人間に連絡する。 ピピッ! 警視庁から,パトロ−ルカ−026にむかって,警察全般のデ−タ−が送信され る。 と同時に バンの中にすえつけてある。DVDにきろくされる。 もちろん犯罪者デ−タ−ではなく。 警察官名簿である。 人事記録を盗むのは犯罪だが,電波をひろうのは勝手である。 デジタルスクランブルなど,ス−パ−コンピュ−タ−にかかればたちどころに解 析できる。 なまじコンピュ−タシステムを搭載したことによる欠点を利用された形だ。 これは,当然であって 自衛隊が,演習するのは,富士山だけではなく。アメリカ国内でもやる。警察も 相互研修制度がある。 民間の航空ジェット機のライセンスには,アメリカでの演習がかかせない。 同調者がでるのはあたりまえだ。 「こいつは,JAFをよんだほうがいいな。」 警官が判断を下すころにはすっかりデ−タ−は写しとられていた。 報告をうけたディ−プは,満足げに白人特有の長いゆびをデスクの上でくんだ。 重工重役会議室 「なんとか,最悪にはならなかったようだな。」 俺様MJが言う。 「まったく,戦争当事者になれば,今まで築き上げたものが消し飛んでしまう。 」 関東軍参謀だった老人が言う。 「すまなかったな,なにせ,イタリアにいっていたのでな。」 俺様は断わりをいれる。 「それと,戦争準備法が検討されているとか。」 俺様は直球で訊く。 「うむ,ゆゆしき事態だ。」 と, 重役連の一人が,言う。 「御前,なにもこんな奴のちからをかりずとも国家が我々を守ってくれるではあ りませんか。」ちら,と重役のほうをむくと, 「そうか,君の会社が特別区域内にないことを祈るよ。」 俺様が言う。 「?」 「ついでに君の家族もな。」 俺様は念を押す。 なをも重役はいいはる。 「だったらどうだというのだ,この国の軍隊が私たちをまもるのは当然ではない か。」 俺様MJはおかしくなった。 「なにを笑う。」 「自分の会社が強制摂取されないとでも思っているのか,君たちが設定したら我 々アメリカも設定しなけりゃならん。」 軍隊がマ−シャル・ロ−(戒厳令)を公布したら,反論の余地はない。 じゃまものは,くだいて通るだけである。 「いいかげんにせんか。」 老人が怒る。 「しかし,まさかそのようなことが,...」 「だったら,訊いてみるといい。」 俺様のことばに,驚く重役。 信じられない,といった目つきで,老人をみる。 「だまれ,といっているんだ。」 老人は激昂する。 最近の少年法改正も,同等で,戦後まもなくつくられたのは,引き上げ者が多 くなりこども達が飢えて米軍の兵站をぬすみにはいったからである。 軍隊としては,当然射殺するしかない。 しかし,戦勝国として,また,日本の間接統治を遂行する必要上,官権があいだ にはいれば子供を殺さずにすんだのである。 それだけ報復合戦を止めるのは難しい。 フィリピンの戦争さいばんでは,山下泰文が,部下の残虐行為の責任を司令官と して問われ死刑になった。 ところが,これがそのまま,アメリカにベトナム戦で跳ね返り,カ−リ−中尉が 民間人虐殺に直接関与したからだ。 結局,カ−リ−個人の資質の問題にして,終身禁錮,さらに特赦で不名誉除隊に した。 無限に続く報復合戦を合法的な裁判でどう止めるのか, いま,未成年者に,妻と子供を殺された男がよくワイドショウにでてくる。 たしかに,同情はするが,国家としては容認しがたい。 家族の敵討ちだとして,少年をころす。すると,その家族が報復にたちあがる。 なんのことはない,江戸時代に逆戻りである。 そのうち,敵討ちで,一生を費やす人間が出てくるにちがいない。非生産性のこ とこのうえない。 それでも,是とするのか.....。 「第一,異なった価値観があるから民主主義なんだ。ひとくくりにされて損をす るのはきみたちなんだぜ。」 まったく,軍人の俺様が民主主義を唱えることの空しさをいいかげん日本人にも わかってもらいたいものだ。 「ところで,こっちのほうはどうだい。」 俺様はめんどうくさくなって,ゴルフの話題にてんじた。 「いや,このところは..。」 老人は言う。 「俺様もテレビでみているだけだ。もっともNECも最近はけちんぼうだが。」 「?」 「じつは,以前はパソコンのフルセットが視聴者プレゼントだったのだが... 」 「それだけ,不景気ということだ,で,あたったのか?」 「いや」 俺様MJは首をふる。 「贅沢はいわない。中古のlabix,DVD付きのカラ−液晶。あとはインタ −ネットや,Eメ−ルができればいい。プリンタ−があればなをさらいいがな。 」 「十分贅沢だ。」 老人が言う。 「よせやい,携帯電話でさえ,インタ−ネットやEメ−ルができるじだいだぜ。 」 ふと,時計をみる, 「そろそろ,飯どきだな。なにかくわせてくれ。」 「いいだろう,飯ぐらいたやすいことだ。」 オイ,と部下をあごで指図する。 その後は,なごやかに会合は進んだ。 MJカンパニ− ショウが湯をすすりながら,俺様は相変わらず,TVの前の置物状態である。 外務省はODAに際し,東南アジア諸国に工業達成案の指導をすると言う。 「ばかばかしい。」 俺様は言う。 これでは計画経済そのものではないか。悪い言い方をすれば,キュ−バが世界中 にテロを輸出したのと同じことだ。 市場経済とは,各国が競争原理にもとずいて,商品を売る。たとえ,失敗したと しても, そこには,消費者が選択権をもち,だれをうらむこともない。 だが,日本が勝手に水平分業を頭に,業種の振り分けをおこなえば,責任は全 部日本がとらねばならないのだ。 俺様は,シナモン・パウダ−を少しふりかける。 次には,中小企業への援助資金があまりでまわらない,という問題が政治家から あがっていると言う。 完全に選挙向のパフォ−マンスだ。 なぜなら,市場開放をおこない。規制緩和をするということは,中小企業を世界 の荒波に放り込むと言うことであって,新しい大阪府知事もなんらこの件に対し て実際的行動をしていないことから伺いしることができる。 なお,これは政治決定であって,覆らない。 「おかわりを,おもちしましょうか。」 ハロルド長田が,俺様のところに,ポットを持ってくる。 あわてて,カップをさしだす俺様。 「悪いが,もうすこし,生姜を....」 俺様がと,ハロルドはおろしがねで,しょうがをする。 「減税はどうなったかな」 俺様は,インタ−ネットで,しらべる。 税制改革を行なうということは,いままでの税体系をみなをす,ということだ。 もともと,こんなに不況がながびいた一因は,ポマ−ド大王が,消費税を3%か ら5%にねあげしたからである。それだけではなく,健康保険の自己負担率まで あげたからだ。 もっとも,デフレを結果的には促進することになったが。 「MJさん,あんまり糖分をとりすぎると,からだによくありませんよ。」 ハロルドに,忠告される。 「べつに,好きで飲んでるわけじゃない。今回,イタリアくんだりまで行かされ たので,節々が痛い。しかも,時間的余裕がなかったので,F−15にのせられ た。」 俺様は懸命に,説明する。 天を仰ぎ見ると, 「神様∼ッ!いなけりゃ悪魔だっていい。キッシンジャ−,ニクソン,クリント ン,ディ−プ,ドクタ−,誰でもいい! 私は待遇改善を要求する∼っ!」 俺様は職業軍人ではない。 しかも,空軍ではない。サ−カスのまねごとをする飛行機は二度と御免だ。 俺様の叫びが終わると,マイクが, 「以上,日系アメリカ軍人の叫びでした。」 とコメントする。俺様はムッとするが, 「こんどは,わたしが操縦しましょうか。」 アンジェリカが,OSIだったことを思い出し,即座に辞退する。 「いい部下をもって,幸せだよ。」 と言い返すのがやっとで, ほうほうの体で,俺様は自室に逃げ込み,ベットにねころんだ。 あいかわらず,急進派はテレビではいせいのいい扇動の発言が多い。 生と死の狭間で,すべてをすてさることはた易い。 だが,生きようとする力はなにより強い。 罪にさいなまれようと,罰をあたえられようと,いきる意志はけっしてすてない。 その光明を俺様は,法王から与えてもらった。 なるほど,日本は経済力は強くなった。 だが,心はみるかげもなくよわくなってしまった。 靖国の戦死者たちに花としてささげたいというきもちもわからないではない。 だが,心を弱くしてしまった今, 生きることから目をそむけるいいわけでしかない。 否,英霊の責任で,己の狂剣を振るっているにすぎない。 と, ハロルドが,はいってくる。 「どうですか,MJさん。」 「ああ,マッサ−ジでも呼んでくれ。」 「わかりました。」 でていきそうになるのをとめ。 「ところで,ハロルド,この世に絶対の悪は存在するとおもうかね?」 俺様が訊く。 「さあ−? なんかの番組ですか。」 「だな。それこそ,子供番組のなかにしかない。」 たればこそ,そのときどきに,戦争で決着をつけ,利害を調整するしかなかった のだ。 だが,冷戦が終結しつつある現在。 資本主義体制しか,存在できないなか,自由貿易で先進国との協調や制度の擦り 合せをどうとるか.....。 会社の代表権をもったことのあるひとならわかるが,会社が銀行から金をかり ると,個人補償をさせられる。 オ−ナ−経営者だろうが,サラリ−マン社長だろうが,例外はない。 会社をつぶして,借金がかえせなくなったら。経営者個人の資産まで銀行にとら れる。 これは,日本の不文律で,この慣行があるために日本企業は死に物狂いではたら くのである。 だが,考えて,みるとこれはおかしい。 株式会社は,出資した株式の分だけの有限責任ということで,個人にはおよばな い。 それが,経営者の資産までとるというのは,どうかんがえてもおかしい。 ため息をひとつつくと, 俺様は,どうにもならないことはかんがえるのはやめにした。 しばらくすると, ごつい,マッサ−ジ係が,ハロルドに従えられてはいってきた。 俺様は,みをゆだねる。 翌日 議員会館 元警察族で,建設大臣をもつとめた,先生の派閥が勉強会をひらいている。 先生たちが,神妙なおももちで,メモをとる。 講演の主はカ−バイル。大統領にした男である。 アメリカ国内でも忙しいのに,俺様が,ディ−プに無理をいって,選挙対策の方 法論をレクチャ−してもらっているのだ。 ところが,なにやら,入り口が騒がしい。 「おれたちにもおしえろ。」 「おなじ党員だろ,教えろ。」 「ずるいぞ!」 どうやら,他の議員が気ずきはじめた。 だからといって,教える訳には行かない。 国会議員自体,数が減るのだ。 死活問題だからだ。 「一人もいれるな。」 秘書達に命じ,自分達は,吸収する。 講演がおわると,ニンマリと笑い。ネクタイで,汗を拭く。 メモを大切に仕舞い込むと, さっさと,他の出口からでる。 政治家の過当競争がはじまったのだ。 神戸 ポ−トアイランド第二期分譲地 一方,キッシンジャ−たちも,似たような,声をあびていた。 多数の企業かたちによる。 「我々にもビジネスチャンスを与えろ。」 「いくら,献金したとおもっているのだ。」 彼らも必死である。 我々が,オセアニアに肩入れしたため,オリンピックム−ドで,もりあがり。 イギリスは,情報産業で,好景気にわく。カナダはすでに,大口の取り引きを日 本となし,好調だ。 アメリカ自身も大企業は,生き延びるメドがたつ。 だが,?2以下のトップグル−プ以外は,大変である。 日本,統一ドイツ,アメリカで三極構造をつくり,貿易体制を維持しなければ。 だが,ドイツはともかく,日本に発言権をみとめたとたん,第二次対戦を正当化 しようとしたのにはまいった。 俺様,マンション 朝,ゴミをだす。 そのうえで,カンパニ−に顔をだすと, マイクが開口一番, 「これをみろ,MJ。ガ−ボロジ−だ。」 みると,偵察衛星からの映像が,俺様のマンション近辺を写している。 ごそごそ,と背広すがたの男達が,ゴミをあさっている。 「なんだ。」 と,俺様がきく。 「私服警官さ。」 マイクがコンソ−ルを操作すると,ズ−ムアップする。 そのまま,人物照会をおこなうと,あっと言う間に,顔写真と配属がでる。 「ごくろうなことだ。」 俺様は,マイクの肩をたたくと,自室にむかう。 なかには,真新しい畳が四枚。 最近,階下の日米文化交流センタ−で,茶会があった。 ごろごろ,していたら,えらく所長に怒られたので,腹いせに部下をつかい,茶 室の畳をハラキリ用にならべなをしてやった。 以来,サ−ビスとして,もらったのだ。 「えらい戦利品ですね。」 ハロルドが言うが。 「べつに,個人的にもらったわけじゃない。カンパニ−の備品だから,問題ない と思うよ。」 と俺様はどこふく風,である。 軍服にきがえ,所定のいちにつく。 俺様は,自宅に戻ると,再び,外出する。 電車に乗り,県ざかいをこえ,食堂による。 かやくうどん定食をたべていると,一人のいきのいいあんちゃんが,はいってく る。 「おすすめはなに?」 でかい声で言う。 俺様の右手側に座ろうとして,あわてて俺様の左手側にすわる。 チラ,と,俺様は肩越しに他の席を確認する。空だ。 普通,座席が,混んでなければ,人は他人と接触したがらない。 例えば,小便にたつのに,急いでなければ,一つ飛ばしにうまっていく,のとお なじである。 【こいつ,警官だな。】 俺様は,理解する。 警官は,暴徒を鎮圧するため,必ず相手の右腕を制そうとする。 つまり,最初に,俺様の右手側に座ろうとしたのは,無意識にからだがうごいた からだ。だが,俺様が,うどんをすすると,汁がとぶ,それで,あわててうつっ たのだ。 電車のなかでも,労務者風の男がいた。いくらよそおってもダメだ,この不況 時にそんな小 綺麗な労務者がいるか.....第一,車外の風景を見ずに俺様の顔ばかりちら ちらみてや がる。......まあいい,......。 あらゆる組織団体には,一定の行動パタ−ンがある。 アメリカ人が,一つ所にじいっとしていることに苦手なのと同様。ロシアは,や ることが荒っぽく。チャイニ−ズは,面子にこだわる。概して,朝鮮人は,人に よって,いうことがことなり。日本人は,トリックが多い。 最近では,怪人21面相の時効が,とりざたされて,そのときの犯人グル−プ や,警察の対応が週刊誌に掲載されたが,いわく,指定の列車にのらず,犯人を 確認しやすいように別の列車にのったとか,合図を一度目は無視したとか,はた また京都駅で,トイレにいくふりをして,尾行を確認したとか。挙げ句の果てに テ−プの音から,犯人の協力者を捜しだしたが,すでに声変わりして,いたとか .........。 まったく,本筋から離れている。 俺様は,行動パタ−ンから見て,KCIAと見る。 第一に,強白文が,タイプライタ−で作られたこと。 これは,白人的手法である。 第二に,人質を生かして帰したこと。もし,無政府主義者や,地下組織だったら。 政府の反撃を受ける様な真似はしない。 当時,日本には,タイプライタ−は,なじみがうすい。ワ−プロのような漢字変 換ができなかったからだ。 また,アメリカや,ドイツは,脅迫には屈しないので,人質のようをなさない。 アジア人は,日本人の優秀さを知っている。権力者への忠誠心も..。 だが,白人にとって黄色人は,インディアンかヒッナム,まともに相手できない ベトナム人か,メキシカンの不法滞在者,つまり殺しても問題にならない人間に しかみえない。 韓国は,当時,朴大統領以来の軍事政権下,産業政策を押し勧めていた。だが, その反動で金権腐敗を追求しすぎ,韓国そのものが,傾きかけた。 おそらく,大企業としての証言をもとめられた。と,解する。 なぜなら,金大中以来,拉致は,韓国のお家芸だし,日本警察をまく,というの は,腕もさることながら,行動パタ−ンが,研究されつくしている。と,思われ るからだ。 実際,アメリカ当局は,この件にかんしてコメントをひかえている。 冷戦に勝利することが,目的である以上当然だ。 俺様は,マンガ喫茶に入る。 マンガ喫茶とは,その名のとうりマンガばかりを集めた図書館のようなもので, そこで,軽い食事が,取れるのである。本を貸し出したり,売ったりしないので, 飲食代金が,店の収入になる。 「いらっしゃいませ。」 店員が,愛想よく笑う。 ウム,とうなずくと,俺様は,店の奥のVIP待遇の部屋へ,向かう。勿論なか は,レンタル勉強室みたいなのだが,廊下を進と,別の従業員が出てきて俺様を 地下室に案内する。俺様の背後では,追跡者が,店員ともめるが,どうやら納得 したようだ。その間に,俺様は部屋にはいる。 なかでは,俺様そっくりのダブルが,いる。さっさと俺様は,服や,下着をぬい でわたし,よういされた衣服を着る。ダブルは,俺様が脱ぎ捨てた衣服をみにつ け,俺様に成り済ましマンガ喫茶の個室に向かう。 階段をあがり,地下でつながっている,マンガ喫茶と背中合わせの民家にあがる。 「ごくろうさまです。」 手下の雜賀である。ねんのため,発信機のチェックをし,俺様の衣服をただし, 変装用のメガネや付け髭を渡す。 「かわったことは?」 俺様が訊く。 「別にございません。」 「なら,いい。」 俺様は,軽く言う。 「今日の御予定は,」 「いつもどうりだ。」 俺様は,スモ−クシ−ルドをはった,外車にのる。 高速を15分,ほど走ると,スモ−クが解除される。 「まずは,上賀茂神社へ。」 車は,スピ−ドを上げる。 上賀茂神社。 「がおさ」 「がおさ」 「これが,今月の分です。」 【がおさ】とは,俺様の呼称である。 もちろん,きがえたス−ツの胸ポケットには藤林長門の名紙が,あるのだが.. .。 もらっているのは,金包みである。 本質的に,忍者は,3つに分けられる。 例えば,突破・透破・乱破(トッパ・スッパ・ラッパ)。 乱破は,軍事参謀,透破は特殊ないみでの専門技師,突破は,攻撃部隊という具 合にこれらの分担制がある。 『万川集海』では,忍者の統率者の役目として,《天気》《人気》《地気》を測 ると記されている。 《天気》とは,占星に始まり,天候,方角,大気の状態。 《人気》とは,人心,人の健康状態など。 《地気》は,大地や,山,川,海,草木の状態を意味する。 そして,陽忍が,これらの《気》読み,大自然の力を利用する方こうづけを決 定したうえで, 配下たる陰忍が,実行にうつすとされている。 まあ,一種の気による未来予知である。 ただ,気の感覚がわからないとやれない。しかも,感覚主体。兆候を判断材料に 使う。常識的なものでよいから,膨大な情報が必要,もっともなれるとそんなに ひつようではなくなる。 身近なにたとえると, 営業畑のサラリ−マンなら,取り引き相手が,自分の意見と違うとき,拒否され た感覚があるだろう。また,崩御のとき,えらく天候が悪かった。 「二条城へ...。」 俺様が言うまでもなく,車は,走る。 すぐに着くと,貴賓席に。 これまた,骨太の太った男。 「よう,六車。元気かい。」 「あたりまえだ。貧乏暇なしさ。」 「貧乏貴族め!おいあれを。」 俺様が,目配せすると,雜賀が,先程,俺様が受け取った。金包みの一部を差し 出す。 「おお,まってたよ。いつもすまんな,よい,てざわりだ。」 急ににこにこし出す。 「現金なやつめ。」 六車は,懐に包みをねじ込むと,真顔に戻る。 六車は東家の鬼と呼ばれた剛のもの。もとは,門番だったので,戦後,城の管理 人となり細々と生活している。この点,骨法よりましである。 骨法は,東条英樹の身辺警護をしていたため。最近まで不遇をしいられていたの だ。 「ところで,第一皇子は,いかがだ。」 「兄上には,おかわりなく。」 奥から,ひげの皇子が,現れる。 「これは,第二皇子。」 俺様達は,軽く,会釈する。 お付は,不満そうにするが, 「ここで,最敬礼をして,お上みにどの様な挨拶をするのか。」 と,六車にいわれ,はじいる。 それを,楽しそうに見やると, 「今日は,定例会だ。かたぐるしくするな」 第一皇子は,直情的であり,その点,第二皇子は,人徳であろうか外国人には, うけがよい。 学習院の御学友ならわかることだが,第一皇子は,たとえテストで0点でも満点 ノ採点があ たえられる。これは,皇子に傷をつけないためであり,イギリス留学時には,イ ギリス政府 は非常に苦労したと訊く。 「兄上は,ロマンチストだ。」 ひげの皇子は言う。 「そして,唯一,苦手な人。」 俺様が言うと,ニヤリと髭の皇子は,笑う。 「アメリカの方はどうだ。」 六車が,訊く。 「インドネシアに,あのキッシンジャ−が,顧問につくとか。」 東家は,政治に関与できないため,六車が俺様に訊く。 あの,とは,ウオ−タ−ゲ−トで,盗聴問題を起こしたダ−ティ−なニクソンの ことである。 キッシンジャ−は,補佐官だったのだ。日本の盗聴法のためだとしたら,自由の 国,アメリカのイメ−ジダウンだ。ましてや,今は,昔と違い,インタ−ネット で,訊かれたら肯定する大統領候補者は,いない。 「しかし,このまま,というわけには...」 「もちろんだ,2001年から,日本は,新しい制度改革法にもとずき,執行さ れる。さしあたり,コ−スト・ガ−ド(湾岸警備隊)でもサミット警備の名目で 送っても良い。」 「しかし,時間が..」 「問題ない。」 かつて,ベトナム戦争のおり,川を遡るため,スピ−ドボ−ト程度の船を空輸し た経験がある。単一構造のモノコックボデェイの軽量船など,大型輸送機による パラシュ−ト投下など朝飯まえだ。 「確かに,麻薬の水際防止には役立ちそうだが...」 流石に,発想のスケ−ルの大きさで,皆,開いた口が塞がらない。 「雜賀,せいがいはの相手をしろ」 俺様は,手下に命じる。 せいがいは,とは舞踊のことだが,我々のは,もどきだ。元祖気功法ともいうべ きところがあるので,利用している。元来,剣を持つべき手は,気を発し,もち ろんおどるほうは,スタ−ウオ−ズのライトサ−ベルのごとく必死だが,霊視で きるものに言わせると指がのびて妖怪みたいと,ひどいいわれようだ。 5分もすると,玉の汗がでる。我々が,行なっているのは孔明ノ系譜ではなく鳳 統ノ系譜のものだ。 「そろそろ,藤林の役を,雜賀にさせたいのですが。」 俺様は,言う。 俺様は,生まれついての忍者ではない。人よりほんのチョッピリ,気功法の能力 が優れていただけだ。サンフランシスコで,エフィ−・チョ−博士に習ってから である。 「しかし,アメリカとの個人的つながりがなくなるのはいたい。」 六車が,言う。 「当分,2人でやればよかろう。ところで,南都(春日野大社)には行くのか。 」 と,御下問。 「はい。」 「では,和歌山までいく途中まで乗せてやろう。」 南都(春日野大社)。 「これは,これは。」 神主が,来る。こいつが,もみてでくるとろくなことがない。 「じつは,社が,いたみましてな。寄進を,願いたい。」 「わかった。」 「ああ,それに,石畳も。」 「うむ。」 「それに,鳥居も....。」 「こら,いいかげんにしろ。それでは全部じゃないか。うちでの小槌をもってい るわけではないぞ。」 俺様が怒ると,愛想笑いをする。 まったく,位が高くなるほど,寄付の額が大きくなるとは,いったいだれが決め たのか。 カンパニ− 俺様は,いつもどうりにもどると,早速,ディ−プに報告に行く。 「羽根をのばしてきたようだな。」 「悪いが,もう一日休ませてほしい。体が,痛い。」 「そうもいかん。今日は,これから総会が,ある。MJ着いてこい。」 やれやれ,もちろん,東家との非公式のチヤンネルとして,報告したので,忍者 のことはほのめかすぐらいだ。気功法の奥義にいたっては,喋らない。口や態度 には微塵もださないので,せいぜい,感のいい奴,ぐらいにしか思っていない。 極東アクエリアス総会 俺様MJ,ディ−プ,あと,数人の白人と,アジア人が,3,4人。全部でも十 指にみたない。「さて,これから。どうするかだが。」 「勿論,決まっている。アメリカの覇権に手を貸すのだ。」 議長である,ディ−プが,問題提起すると,どこからともなく,声が,答える。 声のするほうを見ると,ドクタ−が,兵士を連れて,あらわれた。 「こいつらを捕まえろ。」 「なにをする。」 ディ−プが,詰問する。 バラバラと兵士が囲む。 「まわりをよく見ろ。質問できる立場か。」 ドクタ−は,言う。 「そちらこそ,よく見ろ。」 俺様が言う。 「何を,している,早くつかまえんか!」 ドクタ−が,命令するが,兵士は動かない,いや,動けないのだ。 兵士に貼り付く影。俺様,直営の忍者たちである 「貴様,アメリカに刃向かうのか。」 ドクタ−の,挑発に,俺様は,やんわり言う。 「いん∼や。そんな気はない。」 「報告してやる」 ドクタ−がほえる。 「その必要も,ない。」 俺様が,顔で監視カメラをみやる。 「まさか」 ドクタ−が言う。 メンバ−の一人が,コンソ−ルのスイッチをいれる。 と,壁掛けTVのモニタ−画面に長老の一人が現れる。 「悪ふざけが,過ぎないかな。」 あわてて, 「今回の事は,長老部の威光を示そうとしたもの,決して翻意ではありません。 」 ドクタ−の切替えのはやさと,弁舌のたくみさにこっちが驚いた。 代議士事務所 「FIU(金融情報機関)については,おおよそ心配なくなった。」 俺様MJは,警察族議員の先生にレクチャ−する。 もちろん,これで終わりではなく,経済に合わせて変化して行くのだが,最初は, 反発を招かないようにし,徐々にやっていけばよい。 「それより,年金制度の改革をしなければ。」 「しかし,これ以上は制度をいじれないとおもうが。」 先生は,メガネをかけなをす。 「いや,海外生活者にも年金需給制度を確立する。」 「移民か?」 「ちがう,日本国籍のまま。他国に移っても,権利を失わないようにするのだ。 」 戦後の一時期,年金生活者は,自動車を買ってはいけないと,いわれた。TV もしかり,だが,今では,TVは,勿論,既に,もっている自動車は,いいこと になっている。生活水準が,ひきあげられたのである。 現在,ODAは,さしたる効果をあげていない。どうしても一部の業者の《利権 》になったしまうからである。これでは,いけない。丁度,戦後多数のアメリカ 人が,日本に住み着き,欧米化をすすめたように,日本もすすめなくては。 中進国と日本では,貨幣水準が違う。年金生活者でもメイドや,看護婦を雇い, じゅうぶん生活できる。結果,その国の地場産業があがる。 「では,防衛庁の,格上げはどうです。」 自信満々で,秘書が,訊く。 「べつに,」 「べつにとは?」 俺様のそっけない返事に,肩透かしをくわされる秘書。 「省になれば,軍隊は,大臣の管轄になる。2001年からの制度改革には,閣 僚による多数決が閣議決定になる。わざわざ,総理大臣の指揮からワンクッショ ン置く,意味があるのか。」 「シ,しかし。」 「まあ,きけよ。大陸国家並みに,兵力を整えるとしたら,陸上自衛隊だけでも, 現在の4倍は,必要だ。日本にそれを支える力があるのか?」 俺様MJは,訊く。 先生は,遠くをながめやって,たたずんだ。 秘書たちは,俺様と先生とをくらべやり,卑屈に手をもんだ。官僚の悪しき習性 で,かれらは,自分より上の人間にたいしては矜持を傷つけることなく,頭と腰 を低くすることができる。 MJカンパニ− 「正気の沙汰とは,思えない。」 ハロルド長田が,言う。 日本人が,オ−ストラリアに旅行した際。 ツ−リストが,麻薬の運び屋にしたてたというニュ−スがながれたからである。 北朝鮮と同じく,中国が糸をひているらしい。 「自分の手足を切りおとして,無事に立っていられるとは思えませんが。」 GIジェ−ン(アンジェリカ)が,訊く。 「そういうものさ,権力者は,自分の手足を切るのでなければ,涙まで流してみ せる。」 俺様MJが言う。 PLOのアラファト,と同じことだ。散々,テロをあおりたて,不要になった から切り捨てる。これでは下のものはたまらない。 では,どうするか,FBIでさえ保護証人プログラムがある。つまり別人のID をあたえ,生計のみちをたててやり,あとは知らぬ存ぜぬでおしとうせばよかっ たのだ。 謀殺は,冤罪同様,忌むべきものである。 国家が,法をつくり,その法にもとずいて,処断するならともかく。それ以外の 手段をとる事自体が,動機の醜さをあらわす。 シリアは,失敗した。外国人でありながら,建国の英雄といわれるものをきりす てようとするからである。はたして,国民は,そんな政府を信じるか? 「まったく.....。」 俺様MJは,コ−ヒ−をすする。 敵国側のことまで,考えてやらねばならないのが,頭痛のたねだ。ほっとければ いいが,そうもいかない。アメリカが,唯一の軍事大国であり,世界各地で争い が,おきれば困るのはアメリカだからである。 つまるところ,アメリカの優位は,その程度でしかないが,これを不動の物にし なければならない。 たとえて言うなら,関ヶ原の合戦直後,と思えばいい。徳川が,アメリカである。 この勝利を,つずけるため,グロ−バルスタンダ−ドと言う。統一基準で,参勤 交代を行なうのである。 ロシアは,その点うまくいっている。 軍備を縮小解体し,一時的混乱はあったが,立ち直った。 これは,KGBを解体せずに正当制をあたえ,職務に忠実たらしめたからだ。 もし,解体すれば,分裂した,新国家群は,独自の警察を作り全ての責任をKG Bにおしつけるだろう。そうなったら,重要文書は,散逸し,民族どうしの殺し 合いが,永久に続く。 :::バサリ 新聞を読む。 あいかわらず,の紙面だ。 「ずいぶん,はっきりと言うようになりましたね。」 長田が,紙面を見て言う。 「なに,年寄りの愚痴さ。」 俺様は,うけながす。 主義主張が,ハッキリするのはけっこうだが,そんなプロパガンダのような記事 が読みたいわけじゃない。 「記者クラブがなくなり,困っている,そうですが。」 「結構。だったら,各官庁のホ−ムぺ−ジの仔細な解説でも載せてくれたほうが, ありがたいがね。」 なまあくびを,ひとつつくと,部屋にむかい。ひとねむりする。 翌朝。 MJカンパニ− 「どうやら,そのままねむってしまったようだな。」 ひどい寝癖頭で,オフィス部に出てくると, 開口一番,マイクに言われる。 「このところ,フルに働かせラれてるからな。」 俺様MJが,ぐちる。 「シャワ−でもあびてこいよ。」 「ああ...。」 俺様は,ピ−ナッツの,(先頃死んだ,スヌ−ピ−の漫画)ライナスのように, ずるずると,歩く。 余談だが,朝,顔を洗う習慣をもつのは,日本人だけである。 シャキッとして,出てくると, ディ−プからの呼び出しである。 「キッシンジャ−!」 ドクタ−が,激怒する。 まさしく,獅子の唸りである。 ドクタ−,ウイロビ−,服部,アンデルセン,キッシンジャ−のメンバ−会議で ある。 「ですが,ウイロビ−中佐と同じく,日本の破綻を早めるため,軍備増強にも理 解を示したではありませんか。」 「ほう,ウイロビ−と同じか,」 ドクタ−が言うと,ウイロビ−の目が光る。 「わたしの心も,おまえとおなじだ。好きにするがいい。」 「はっ。」 小さく答えて,ウイロビ−は,微笑みながらキッシンジャ−に近ずくと,鼻っ柱 にパンチをおみまいする。 「ぐあっ,」 ウイロビ−には,良かれ,悪しかれ軍人としての誇りがある。ディ−プを痛め つけたのは,アメリカの世界戦略上,てぬるい,と,思ったからであって,権力 闘争につかったと思われるのは,不愉快きわまりない。 ドクタ−が,クビをめぐらし, 「割励をうけた者が,砂漠に捨てられていたらどうするのかな?」 と,アンデルセンに訊く。 軽く,一礼をするとグリムの子孫は, 「あなたは,私の恩人だ,だが,ホロコ−ストの悲劇をわすれてはいない。」 思いきり良く,足を救い上げる。 転げるキッシンジャ−。 「今回のことは,先に私が出過ぎたまねをしたことがもと。いかような処分もう けいれる所存にございます。」 うやうやしく,頭をさげ,詫びるウイロビ−。 ドクタ−は,うなずくと 「よかろう。貴様のちからを私に貸せ。世界戦略を一刻も早く,完成させるため にな。」 これより,ウイロビ−は,ドクタ−の忠実な部下として命令を果たしていく。 一方,日本人宇宙飛行士を載せた,スペ−スシャトルは,悪の本拠地を監視す るべく,ヒマラヤ(チョモランマ)一帯の立体写真をとりつづけていた。 「どうかね。」 デイ−プが,俺様に意見を求める。 拉致問題のニュ−スだ。 「彼らには,議会制民主主義が,わかっていません。」 北の反論に対する,俺様の答えだ。 日本は,国内での説明は,もとより,同盟国にも説明した,だからといって,そ れらの国が,独自に外交交渉や,調停工作を行なうのは外交権限だ。その間,国 連では,決議を重ねている。 これは,湾岸戦争のときとまったく同じで,アメリカの国内世論は分裂,同盟国 もバラバラ,大物政治家が,交渉し,ECも調停に動いていた。それで,見くび った。 だが,まったく交渉に応じないとわかると,国連は武力行使をみとめた。 もっとも,この点は,日本人も,議会制民主主義が,わかっているとは,いい がたい。 例えば,台湾の選挙なんか,そうとうえげつない。あえて,逆の政策をあげた り,弱点もつく。ところが,時間がきて,議論が,打ち切られたら採決。それで 決着。議会の決定が,国家の行動の指針となる。 マスコミもわかっていない。 戦前の政治家は立派だというが,では,なぜ,第二次大戦がおこったのか... .。 ゴ−マニズム結構,国民には,議論をする自由がある。 だが,政治家に国家の運営の失敗は許されない。 世襲財産があったから,政治に注ぎ込んだだけではないのか。 『一刻も早く,単一市場経済を作り。企業が競争できる環境を作らねば。』 と,俺様はデイ−プの様子をみる。 「自分の職責をほうり出したわけではなさそうだな。」 デイ−プは,満足げにうなずく。 「だと,したらどんなに楽か。....」 俺様MJは,ぼやく。 深夜,番組で,キヤスタ−が,自自公の連立を,誰が作ったのかと言っていたが, それは,我々アメリカである。 あの頃,日本は,もう少しで,我々にガツン!といわれるところだったのだ。 「しかし,君が忍者マニアだったとはな。」 デイ−プは,さりげなく,強引に話題を変える。 「アクエリアスのメンバ−が,自前の勢力をもってても不思議ではないはず。」 俺様は,当然の慎重さではなす。 ウムとうなずくと,デイ−プは,黙ってしまった。 ややあって,しばらくすると 「今後は,私の警護もしてもらえるかな?」 と訊く。 俺様は,無言で頷いた。 どのみち,デイ−プが,こけると俺様もこけるのだから。 引き受けざるをえなかったのだ。 他人を傷つけ,流血を望む者は,憎悪と悪徳ではなく,愛情と正義の場合である ことも少なくない。 文部大臣は,国歌の吹奏率を,教育委員会に極秘に調べさせる。 旧東ドイツのシュタ−ジェの,キンダ−ガ−デンをまねて。 シュタ−ジェとは,スパイのことで,かつて,東ドイツでは,思想を調べるため, 幼稚園の子供に,親達の職業から,家族構成まで聞きだしていた。 「パ−ルハ−バ−でやった手は,レイテでは通用しないってことをおしえてやら ねば。」とは,マイクの弁だが,アメリカ当局の不快さは,隠しようもない。 コ−ルがどの様な立場か,他山の石とできないようだ。 「それにしても,やどりぎめ。」 現在,警官の不祥事が多いが,これでは,盗聴法が何の為といいたくなるが,そ の遠因は,2階級増やしたことにある。これでは生活設計が狂うのも無理からぬ こと。 参議院選挙では,大敗し,こんどは国そのものを傾かせる。 「まったくたいしたポマ−ド大王だよ。」 先生は,いつか俺様にそういったが,同感である。 《自分だけは,生き抜いてみせる》 だが,それは,この時代の登場人物すべてが,思っているはずだった。 ある日の午後。 いきなりの休暇。 「ところで,いままでのことを知っているのはどれくらいの人数だと思う?」 俺様は,ハロルド長田にきく 「そうですね∼。そう,多くはないのではないでしょうか?全容を知るのはごくわずか,かと。 」 俺様はうなずく。 「犬には,人間には聞こえない音が聞こえるのをしっているかい?」 「確かに。」 一息をつくと,長田は,思案げに 「とはいえ,今後どうするかあな∼?」 不安げに天井を見上げる。 「教師にでもなるか∼?」 ハロルド長田はなげやりに言う。 俺様は,無視して,本をくつろいで読む。 後日,知己を得て,学校で,教えることになる。 「では,パブリックディプロマシ−と,パブリックアフェア−ズの融合理論について.....。」 生徒から,質問の手が上がる。 「融合?ですか?」 俺様は言う 「そうだ,融合理論だ。これにより,アメリカは外交に幅ができた。その理論構成の概論だ。」 生来の教師というのは,ほかの教師が頑張っていると,応援したくなるものさね。 そういえばそんなことばがあったな∼。とか思いだしながら。 おきらく,ごくらく。 世はこともナシ。 当分,本業は休暇。 END 笑う犬の文章掲載です.ええと、何分、私小説の形態の上、書き手も、専門家に推敲されてはいないので、行 き過ぎた表現などがありましたら、ご容赦くださいますよう。おねがいします。作者からのエクスキューズ でした。では、つずきをごらんください。この物語はフィクションです。
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