デジカメで近赤外線写真を撮ろう ~3色のセロファンを使って簡単写真~ 1 はじめに 電磁波の一種である赤外線は、太陽光線がプリズムを通過した際にできる帯(スペク トル)の赤色のすぐ外側にある。目では見ることができないため、日常生活でその存在 を余り意識することはない。しかし、赤外線はリモコンや携帯電話など、身近に利用さ れている電磁波である。ここでは、近赤外線写真を撮影することで、その存在を意識さ せるとともに、身近な近赤外線の活用例について知るきっかけとする。 2 目 的 ディジタルカメラが近赤外線を捉えることを利用して、近赤外線写真を撮影する。撮 影した写真を可視光線のものと比較し、違いを見付け、目に見えない近赤外線の存在を 知るとともに、物体による反射光の特徴を知る。 3 準 備 ・ディジタルカメラ(携帯電話のカメラも可 。) ・赤外線の発信源(テレビやエアコンなどのリモコン、又は携帯電話) ・セロファン3色(赤、緑、青。マウントに固定する 。) ・スライド写真用マウント(外形50 mm ×50mm 内形34mm ×23 mm なくても可 。) 4 実 験 (1)セロファン3枚(赤、緑、青)を重ね、スライドマウントに固定する。スライドマ ウントがない場合は、厚紙などで代用する。 (2)(1)のセロファンを通して明るい景色を見る。可視光線の大半がカットされているこ とを確認する 。 ( 多くの物は見えないが 、光る蛍光灯の形が分かる程度ならばよい。) (3)リモコンのボタンを押し、赤外線の出口(発光ダイオード)が目視で光らないこと を確認する。 (4)ディジタルカメラのディスプレイを通して(3)と同様の操作を見る。発光ダイオード が光る様子がディスプレイに映る。目視できなかった赤外線を、ディジタルカメラ が捉えていることを確認する。(写真1) (5)ディジタルカメラのレンズの前にセロファンを当てて、可視光線をカットした状態 で写真を撮り、そのままカメラを動かさないよう にしてセロファンを外し、同じ場面の可視光写真 を撮る。 (6)撮影は、空(雲を含む)や植物を含む写真がよい。 また、見た目には同じ色で、材質の違う物を比較 できるように撮影する。 写真1 -1 - リモコンから出る赤外線 5 実験レポート (1)赤外線を使って通信をしている機器にはどんなものがあるか、知っているものを挙 げてみよう。 (2)セロファンでレンズを覆ったのはなぜだろうか。 (3)色の濃淡(明るいか暗いか)に注目し、普通の写真と近赤外線写真を見比べ、共通 点や相違点を見付けよう。 注目した物体 普通の写真 近赤外線写真 (4)近赤外線写真で白っぽく写っている部分は、なぜ白っぽいのか。「光の反射」や「光 の吸収」という言葉を用いて説明しよう。 (5)考察・感想 月 日 年 組 番 -2 - 名前 6 実験レポート(例) (1)赤外線を使って通信をしている機器にはどんなものがあるか、知っているものを挙 げてみよう。 携帯電話の テレビや 携帯電話 の赤外線通信 テレビ やエアコンの エアコンのリモコン など (2)セロファンでレンズを覆ったのはなぜだろうか。 目で 見える光 える光 をさえぎるため。 をさえぎるため。 (3)色の濃淡(明るいか暗いか)に注目し、普通の写真と近赤外線写真を見比べ、共通 点や相違点を見付けよう。 注目した物体 普通の写真 近赤外線写真 直射日光が 直射日光 が 当 たっ ている樹木 ている樹木の 樹木の 葉 濃い 緑( 暗い 感じ ) 白 っぽく写 っぽく写 る 直射日光が 直射日光 が 当 たっ ていない樹木 ていない 樹木の 樹木 の葉 暗い (黒 っぽい) っぽい) 暗 い( 黒っぽい) っぽい ) 雲 白 白 青空 明るい 明るい青 るい青 暗い 暗 い( 黒っぽい) っぽい ) (4)近赤外線写真で白っぽく写っている部分は、なぜ白っぽいのでしょうか 。「光の反 射」や「光の吸収」という言葉を使って考えてみよう。 近赤外線を 近赤外線 を多 く反射している 反射している部分 している部分は 部分は 白っぽく、 っぽく 、吸収している 吸収している部分 している部分は 部分は 黒っぽく写 っぽく 写る 。 7 解 説 (1)セロファンのフィルターについて 青、緑、赤のセロファンは、それぞれ主に青、緑、赤の光を中心に透過させるこ とができる。言い換えれば、それ以外の光をカットするフィルターとしての役割を 果たしている。3色のセロファンを使用すれば、可視光線の大半をカットできるフ ィルターとなる。 (2)近赤外線写真が写る仕組み ディジタルカメラの撮像素子(CCD や CMOS)は、可視光線はもちろん、赤外線 にも反応する。そのまま使用すると可視光線と赤外線両方を捉え、見た目と違う色 合いの写真になる可能性がある。それを避けるために、撮像素子の前には赤外線カ ットフィルターが取り付けられており、赤外線の大半をカットしている。しかし、 赤色に近い近赤外線の一部はカットし切れないため、このような写真を撮ることが 可能である。 (3)撮影した写真の色について 撮像素子は捉えた光を電気信号に変え、その信号の強弱をデータとして記録して いる。そのため、撮影した写真には近赤外線の強弱が濃淡となって写る。つまり白 っぽい部分は近赤外線がたくさん出ている(反射している)ところであり、黒っぽ い部分は近赤外線が余り出ていないところである。 -3 - 「赤っぽい 」、「緑っぽい」など写真全体の色合いは、機種によって違いがあるた め、濃淡のみを意識するとよい。 雲や樹木の葉は近赤外線を多く反射する傾向にあり、写真では白っぽく写る。青 空は主に青い光を散乱しているため暗く写る。(写真参照) 8 参 考 ・近赤外線について 近赤外線とは、可視光線(波長4×10-7 m ~7×10-7 m)よりやや波長が長い電磁波 で、太陽光線のスペクトルでは赤色のすぐ外側にある7×10-7 m ~25×10-7 m の電磁 波である。リモコンなどの赤外線通信、夜間撮影の暗視用照明などに利用されている。 ちなみに、遠赤外線とは40×10-7 m ~100×10-7 m の電磁波で、温度分布を可視化 するサーモグラフィーはこの遠赤外線を捉えている。電気ストーブなどは100×10-7 m あたりの電磁波を主に放射している。 -4 -
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