セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 高級金属製品セグメント 高級金属カンパニー 高級特殊鋼[YSSヤスキハガネ](工具鋼、電子材料〈ディスプレイ関連材料、半導体等パッケージ材 特殊鋼 料〉、産業機器材料〈自動車関連材料、航空機関連材料、エネルギー関連材料〉、剃刃材および刃物材)、 精密鋳造品 ※YSS、ヤスキハガネは日立金属の登録商標です。 当セグメントの売上収益は、前年同期比9.6%増の260,794百万円となりました。 ロール 各種圧延用ロール、射出成形機用部品、構造用セラミックス部品、鉄骨構造部品 また、営業利益は前年同期比14,930百万円増加し、34,661百万円となりました。 アモルファス金属材料 アモルファス金属材料[Metglas ® ] 業績概要〈売上収益〉 特殊鋼 冷間ダイス鋼 SLD-MAGIC® 工具鋼は、国内向けは好調な設備投資需要等を背景に堅調に推移したことに加え、海外向け需要も総じて堅 自動 車の軽 量 化 、安 全 設 計のために多く用 いられる高 張 力 鋼 調に推移したことから、前年同期比で増加しました。電子材料は、ディスプレイ関連材料の需要が堅調に推移 の寸 法 変 形が少ない 特 性に加え、金 型 寿 命も向 上 することか 板 (ハイテン)に対 応した金 型 用 鋼です 。削りやすく、熱 処 理 後 ら、金型のトータルコストダウンに貢献します。 し、半導体等パッケージ材料はスマートフォンやタブレット端末を中心とした需要が下期に一部調整があった ものの、総じて好調に推移したことにより、前年同期並みとなりました。産業機器材料は、自動車関連材料に ついては環境親和製品への需要が国内、海外ともに堅調に推移し、増加しました。航空機関連材料および エネルギー関連材料については、好調な需要動向が続いたことに加え、第2四半期連結会計期間から日立金属 CVTベルト材 MMCスーパーアロイ株式会社が連結子会社となったことに伴う業績反映もあり、増加しました。 ト材料です。溶解・冷間圧延技術により、破損の原因となる非金 Business Performance CVT(無段変速機)用に開発された疲労強度に優れた金属ベル 属介在物を防ぎ、変速機の性能と信頼性向上に貢献します。 *CVT: Continuously Variable Transmission ロール 各種ロールについては、海外向け需要が堅調に推移したことに加え、国内向け需要も回復し増加しました。射 出成形機用部品については、スマートフォンやタブレット端末を中心とした需要好調を背景に、国内向け、海外 鉄鋼圧延用ロール 向けともに好調に推移し増加しました。 日立金属の鉄鋼圧延用ロールは、高熱の鋼塊・鉄塊を大きな圧 Review of Operations by Segment 力で押し延ばすために必要とされる耐熱性や耐衝撃性、また高 精度な製品形状を実現するために求められる耐摩耗性に優れ アモルファス金属材料 ています。中でも、新鋳造法によって誕生したハイス系複合ロー ル「HINEX ® 」は、従来のロールに比べ圧延コストの削減を図る 上期後半から主要市場である中国の需要が調整局面となり、減少しました。切削工具については、産業機械 ことができます。 等の国内需要が好調に推移し、海外向けも輸出改善を背景に堅調に推移し増加しました。 アモルファス金属材料 Metglas® 変電所で使用される変圧器や柱上変圧器に用いられるコア材 や太陽電池用インバーター、風力発電用コンバーターなど電力 変換装置用のカットコアとして使用されています。コア部分で 売上収益・営業利益・営業利益率推移 の電力ロスが少なく高効率で省電力化を図ることができます。 環境規制やスマートグリッドなど電力インフラ需要の高まりを背 (億円) 346.6 2,608 13.3 3,000 2,380 2,500 2,000 197 1,500 120 500 60 0 13年度 14年度 I FRS I FRS 売上収益 日立金属株式会社 営業利益 設備投資額・減価償却費・研究開発費 (単位:億円) 180 1,000 32 300 240 8.3 景に用途が拡がっており、国内外で活躍が期待される製品です。 360 0 2013年度 2014年度 設備投資額 118 118 187 減価償却費 120 120 118 研究開発費 57 57 59 平木 明敏 代表執行役 執行役常務 高級金属カンパニープレジデント 営業利益率(%) アニュアルレポート 2015 33 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 高級金属製品セグメント トピックス 安来工場において大型設備投資を実行 「素材の力で、人と地球に、新たな答えを。」 世界のお客様から信頼いただけるベスト・パートナーへ − 工具鋼を中心に製造プロセスを革新 − 成長への翼を拡げる日立金属MMCスーパーアロイ株式会社 工具鋼を中心とする特殊鋼事業の基盤強化を図るため、安来工場(島根県安来市)において、大型の設備投資 2014年7月1日、航空機・エネルギー材料事業の強化を目的とし、日立金属MMCスーパーアロイ株式会社 (以下、HMSA)が、日立金属グループに加わりました。 を行っています。2015年3月にはその第一弾となる日本最大の真空誘導溶解炉(VIM、24トン炉)の竣工火入れ 式が行われました。 また、今後3年間で、1万トン級自由鍛造プレスの導入(2017年度末完成)、高速4面鍛造機の H M S A は、高級金属カンパニーと一体となり、双方が持つ強みを融合させながら、航空機・エネルギーを 大型化(2017年度末完成)等の熱間プロセスの強化のため、総額150億円超にも及ぶ大型設備投資を行います。 はじめとする基幹産業分野におけるグローバル成長をめざしています。 特殊鋼事業では、産業機器材料(自動車材料、航空機・エネルギー材料)を成長ドライバーに位置づけていま 新生・HMSAの経営方針は「スピードと実行」です。これを徹底し、成長への軌道に乗るための準備を、前倒 しで進めていきます。 その1点目が、大型リングミルの投資の実行です。今後、航空機・エネルギー分野市場は、環境性能向上をめ ざし、世界的にさらなる発展が見込まれており、お客様からの需要も日に日に増えています。 これに対応するた めに、主力となる大型リングミルの投資を行います。稼働開始は、2015年10月の量産立ち上げをめざします。 せ、事業を早く立ち上げていきます。この3つの組み合わせは、単なる足し算ではなく、掛け算でのシナジーが 期待できます。それぞれの経営資源を融合させながら、自由闊達な議論を通じてPDCAのサイクルを回し、お 客様のニーズをしっかりと製品に埋め込んでいきます。 の基盤製品です。従って、特殊鋼事業の成長には、工具鋼の競争力強化が不可欠となっています。 1万トン級自由鍛造プレス等の新設備の導入は、工具鋼の製造プロセスを革新するもので、これまで合金設 計によって実現してきた工具鋼の高性能化を、一般規格鋼の成分でも実現することが可能となります。高性能 な一般規格の工具鋼は、特に海外市場で拡販を図るうえで大きな武器になり、工具鋼事業のグローバル化を推 進するとともに、工具鋼のキャッシュカウ化を行い、特殊鋼事業の基盤強化を図ります。 Business Performance ※ 2点目が、シナジーの創出です。高級金属カンパニー+HMSA+Jフォージ 、この3つを効率よく組み合わ す。主力の工具鋼は安来工場の生産物量の6割を占めており、産業機器材料との共有設備も多く、特殊鋼事業 高速4面鍛造機の大型化は、現有鍛造設備能力を約1.5倍にするもので、主に航空機・エネルギー材料の品 質工程能力の向上とともに製品の大型化にも対応できるようになります。 加えてこれらの設備が揃うことで、 「 VIM(真空誘導溶解炉)― 1万トン 級自由鍛造プレス―高速4面鍛造機―ピーリング」による一貫生産を行い、 ※Jフォージ:日本エアロフォージ株式会社 航空機材料の認定等で製品領域を拡大し、高品質・高性能な製品を高効率 で安定生産する体制を構築します。 バル化を強力に推進し、持続的成長をめざしてまいります。 日立金属MMCスーパーアロイ株式会社 概要 名称 所在地 代表者 日立金属MMCスーパーアロイ株式会社 Hitachi Metals MMC Superalloy, Ltd. 埼玉県桶川市上日出谷1230番地 代表取締役 取締役社長 岡 勉 (理事 高級金属カンパニー 航空機・エネルギー統括部長) 設立 2010年7月1日 資本金 38億840万円 売上規模 17,790百万円 (2013年度実績) 事業内容 拠点 社員数 特殊耐熱・耐食合金、耐摩耗合金、特殊銅合金の製造、 3月に行われた真空誘導溶解炉(VIM)の竣工 火入れ式の様子 高効率変圧器用アモルファス合金「Metglas ® 2605HB1M」が 十大新製品賞を受賞 高級金属カンパニー軟磁性材料統括部が、日刊工業新聞社制定の「第56回(2013年)十大新製品賞」に選 出され、本賞を受賞しました。 「十大新製品賞」は、1958年に始まった表彰制度です。新製品に対し贈られる、最も権威ある賞として位置 づけられており、独創的な発明で国内外に反響の大きかったもの、産業、社会の発展に役立つ先導的役割を果 たしたものなど、毎年およそ10点を選んで表彰します。当社は、第53回(2010年)以来の受賞となり、今回の 受賞においては材料分野で唯一の入賞となりました。 研究開発、販売 高効率変圧器用高Bsアモルファス合金「Metglas ® 2605HB1M」は電力供給網で使用する配電変圧器 営業拠点/本社 (桶川) 、 大阪支店、 名古屋支店 を小型・軽量、低騒音化することができます。アモルファス合金は従来材の方向性電磁鋼板と比べ、鉄心(コア) 工場/本社工場 (桶川) 345名(2014年3月末現在) 出資比率 日立金属株式会社 51% 三菱マテリアル株式会社 49% Review of Operations by Segment 工具鋼と産業機器材料の日本でのモノづくりを強化することで、グロー で発生する無負荷損(鉄損)が3分の1程度で、省エネルギー化や二酸化炭素(CO 2 )の排出量を削減できるの が特長です。鋳造性の問題を改善し、高い飽和磁束密度(Bs)を維持しながら、低鉄損化、低励磁電力化が可能 となり、変圧器を小型化、低騒音化が可能です。 34 日立金属株式会社 アニュアルレポート 2015 35 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 磁性材料セグメント 磁性材料カンパニー マグネット 当セグメントの売上収益は、前年同期比0.8%増の135,486百万円となりました。 ソフトフェライト他 軟質磁性材料・応用品 マグネット (希土類磁石[NEOMAX ® ]、フェライト磁石、その他各種磁石およびその応用品) 軟質磁性材料(ソフトフェライト、ナノ結晶軟磁性材料[ファインメット® ])およびその応用品、 アモルファス金属材料[Metglas ® ]応用品、情報通信機器用材料・部品、医療機器用材料・部品 また、営業利益は前年同期比1,434百万円増加し、11,492百万円となりました。 業績概要〈売上収益〉 マグネット Nd-Fe-B系焼結磁石 NEOMAX® 希土類磁石は、国内自動車において需要調整の動きが見られたものの、海外向けハイブリッド車や電動 世界最高クラスの磁気特性を持つ希土類磁石です。自動車分 パワーステアリングなど自動車用電装部品の需要が堅調に推移し、FAおよび家電・エレベータ関連の需要 モーターに使用されており、小型・軽量化、高効率化・省エネル 野 、IT・家 電 分 野 、産 業 分 野 、医 療・環 境・エネル ギ ー 分 野 の ギー化に欠かせない材料として重要な役割を担っています。 も堅調に推移したことから、前年同期並みとなりました。フェライト磁石は、自動車用電装部品および家電用 部品の需要が国内、海外ともに好調に推移し、増加しました。 ソフトフェライト他軟質磁性材料・応用品 ソフトフェライト他軟質磁性材料・応用品 Business Performance ソフトフェライトは酸化鉄を主原料とする軟質磁性材料です。飽 フェライト応用品は太陽光発電用部品向けの需要が下期から低調となったものの、フェライトコアは自動 和磁束密度はやや小さいものの、電気抵抗が大きく、高周波領 域における磁気特性が優れているのが特長です。通信機器や 車用電装部品およびスマートフォン向けを中心に需要が堅調に推移しました。ファインメット は、汎用イン ® テレビ、冷蔵庫、パソコンなどのコイルのコアとして使用されて バータ向けおよびエアコン向け等の需要が堅調に推移しました。 います。 ナノ結晶軟磁性材料 ファインメット® 「ファインメット® 」は、日立金属が開発した世界初のナノ結晶軟 Review of Operations by Segment 磁性材料です。ナノスケールの微細な結晶からなる新しいFe基 軟磁性材料であり、高い飽和磁束密度・透磁率を持つことで温 度特性と経時安定性に優れています。変形が容易で加工しやす いため、磁気ヘッドコア用材料、電源部品、ノイズ対策部品など 幅広く用いられ、電子機器の小型・軽量化、省エネルギー化、低 騒音化に貢献します。 アモルファスカットコア パワーコンディショナーのインバーター用材料として注目され ている製品です。太陽光発電や風力発電では、発電した電気を 高効率で変換することが求められています。アモルファスカット 売上収益・営業利益・営業利益率推移 コアは、優れた磁気特性により電力変換効率の向上に貢献して います。 (億円) 1,500 1,344 1,355 8.5 115 7.5 1,200 150 120 101 900 90 設備投資額・減価償却費・研究開発費 (単位:億円) 600 300 30 0 13年度 14年度 I FRS I FRS 売上収益 36 2013年度 2014年度 設備投資額 73 102 減価償却費 63 65 研究開発費 32 29 60 日立金属株式会社 営業利益 0 諏訪部 繁和 執行役 磁性材料カンパニープレジデント 営業利益率(%) アニュアルレポート 2015 37 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 磁性材料セグメント トピックス 中国におけるネオジム磁石の合弁会社を設立 磁性材料分野で顧客満足度No.1のカンパニーへ 事業規模拡大によりグローバル成長をめざす − 環境負荷低減に貢献する新しい磁性材料を開発 − 磁性材料カンパニーは、ネオジム磁石事業のグローバルな中長期的成長を目的として、中国の磁石メーカー 昨今の環境負荷低減への意識の高まりから、自動車や産業機器、家電などには一層の省エネルギー化、小 北京中科三環高技術股份有限公司(以下、中科三環)と、中国におけるネオジム磁石の合弁会社を設立する 型高効率化が求められています。これに伴い、搭載されるモーターおよび電子部品にもこれまで以上に、同様 ことを決定しました。 の要求が高まっています。また、自動車用電子部品においては、過酷な温度環境下での性能や信頼性の向上、 世界最高レベルの磁力を有するネオジム磁石「NEOMAX ®」は、自動車分野をはじめ、IT・家電分野、産業機 械分野、医療・環境・エネルギー分野など、最終製品の小型・軽量化、高効率・省エネルギー化、環境性能向上に 重要な高性能磁石材料として、幅広く使われています。 今後、世界の各国・各地域で環境規制が強化される中、 ネオジム磁石の需要は、中国を中心としたグローバル 市場において、ますます拡大していくことが見込まれています。特に中国では、ハイブリッド自動車や産業用 モーター関連など幅広い分野での市場拡大が期待されます。 こうした背景から、 このたび磁性材料カンパニーは、中国における現地生産体制を確立するとともに、中国を よびその応用品の磁性材料事業に、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)、シンチレータ、 AITiC基板などの特長あるセラミック事業に加え、自動車、産業機器、家電、情報通信、医療機器用途といっ た幅広い市場を対象に事業展開を図っており、さらなる高効率化、高信頼性化、小型薄型化に向けて、新しい 磁性材料の開発に注力し、新軟磁性材料コア製品および高性能フェライト磁石の量産化を進めています。 新軟磁性材料 2014年度に市場投入 メタルパウダーコア「HRM40」、Mn-Zn系フェライト材料「MB20D」 金属軟磁性材料「メタルパウダーコア」は、当社が有する粉末冶金技術と粉末加工技術によって生み出した 合弁会社の出資比率は、日立金属が51%、中科三環が49%となります。日立金属の連結子会社として、中 新たな磁心(コア)材料です。当社従来品ソフトフェライトと比較して飽和磁束密度を約3倍も向上できただけ 国市場において、ネオジム磁石の原材料調達から製造、販売まで年間生産2,000トン規模で一貫生産体制を ではなく、広い温度領域でも安定な磁気特性を有しています。また機械的強度も優れており、ほかの鉄合金系 担う位置づけとします。2015年12月に中国江蘇省に設立、拡大する市場分野の需要に早期に応えるべく、 軟磁性材料と比較して耐食性も改善しました。 2016年12月よりまずは年間生産1,000トン規模での設備を設置し、量産開始を予定しています。その後もさ Mn-Zn系フェライト材料「MB20D」は、当社独自の粉末配合技術と粉末加工・熱処理技術により、低い磁 らなる需要動向を取り込みながら早い段階で設備増強を継続して行う予定です。 また、売上計画としては2017 心損失と高い飽和磁束密度を両立したコア材料です。特に高温環境下での低磁心損失性と高飽和磁束密度 年度で100億円程度を見込んでいます。 性に優れていることから、消費電力を抑えるとともに発熱量を抑えることも可能で、本製品をインダクターやト 合弁会社設立により磁性材料カンパニーは、中国におけるネオジム磁石事業の原材料調達から製造、販売ま ランスのコア材料として使用することで、自動車に搭載される電気回路基板のさらなる小型薄型化、動作安定 での体制を整備し、 これまでのハイエンドに加え、 より幅広い製品領域をターゲットとしながら、 グローバル市場 性の向上、長期信頼性の向上が期待されます。 Review of Operations by Segment 立することを決定しました。 Business Performance 含めたグローバル市場への拡販を進め、事業規模の拡大を図っていくことを目的に、中科三環と合弁会社を設 安定性が望まれています。磁性材料カンパニーは、希土類磁石、フェライト磁石、磁石応用製品、軟磁性材料お における競争力を強化し、事業規模の拡大を実現していきます。 フェライト磁石として世界最高クラスの磁気特性「NMF® -15シリーズ」を開発 2015 年度中に量産開始 このたび磁性材料カンパニーでは、フェライト磁石において、世界最高 合弁新会社の概要 Nd-Fe-B系焼結磁石NEOMAX 38 日立金属株式会社 クラスの磁気特性を持つ高性能フェライト15材「NMF ® -15シリーズ」を 会社名 日立金属三環磁材(南通)有限公司 他社に先駆けて開発しました。 「NMF ® -15シリーズ」はこれまでのフェラ 所在地 中国江蘇省南通市啓東市 イト磁石と同等以上に低温下でも減磁しにくい温度特性を特長とします。 設立 2015年12月(予定) 代表者 董事長 諏訪部 繁和 これらの優れた特性から、 「NMF ® -15シリーズ」は各種モーターの小型 事業内容 ネオジム磁石の製造販売 化・省エネルギー化に貢献できるとともに、フェライト磁石市場拡大のさら 資本金 4.5億元 なる牽引役として期待されています。 生産能力 2,000トン/年 出資比率 日立金属 51% 中科三環 49% フェライト磁石NMF®-15シリーズ ® アニュアルレポート 2015 39 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 高級機能部品セグメント 高級機能部品カンパニー 自動車用鋳物 当セグメントの売上収益は、前年同期比51.6%増の282,330百万円となりました。 配管機器 自動車用鋳物(高級ダクタイル鋳鉄製品[HNM ® ]、輸送機向け鋳鉄製品、排気系耐熱鋳造部品 [ハーキュナイト® ])、アルミホイール[SCUBA ® ]、その他アルミニウム部品、自動車用鍛造部品 設備配管機器( ® 印各種管継手、ステンレスおよびプラスチック配管機器、冷水供給機器、 精密流体制御機器、密閉式膨張タンク) また、営業利益は前年同期比15,159百万円増加し、28,074百万円となりました。 業績概要〈売上収益〉 高靭性ダクタイル鋳鉄品HNM® 「HNM ® 」シリーズは、高い低温靭性と寸法精度に優れた鋳鉄 部品です。ニアネットシェイプでお届けすることができ、薄肉・ 自動車用鋳物 軽量化に貢献します。 耐熱鋳造部品は、主要市場である欧州において需要持ち直しの兆しが見え始め、米国における需要も堅 調に推移したことから、前年同期並みとなりました。高級ダクタイル鋳鉄製品は、米国をはじめとする、海外 の自動車における旺盛な需要が続き、国内でも消費税率引き上げに伴う需要反動減の明らかな影響は見ら ハーキュナイト® れず、全体として好調に推移したことから増加しました。アルミホイールは、国内は当社製品の搭載車種の 「 ハ ーキュナイト® 」は、耐 熱 性はもちろん 、耐 酸 化 性や 耐 熱 変 一 部に減 産 の 動きがあったもの の 、米 国 の 需 要が堅 調に推 移し、前 年 同 期 比で 増 加しました。これらに 形性、耐熱亀裂性の高い鋳鋼・鋳鉄材と、そうした材料で生産 される排気系部品のシリーズ。世界の自動車の高性能・低燃費 加え、平成26年11月からWaupaca Foundry, Inc.の業績を反映したことにより、自動車用鋳物全体 Business Performance エンジンに採用されています。このほかにも、日立金属は自動 として、前年同期比で大幅増加となりました。 車の安 定 走 行に貢 献 する足 回り部 品や、軽 量 化とデ ザイン性 を追求したアルミホイールなど、自動車の進化に貢献する製品 を提供しています。 配管機器 優めっき®白継手 各種管継手は、国内は消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動による住宅着工戸数減少の影響が 純 度 の 高 い 亜 鉛 めっきで 、鉛 やカドミウムの 含 有 量を大 幅に 削 減しました。主に消 火 配 管 や 空 調 配 管などで 使 用され て い あったものの、米国における需要が堅調に推移し、前年同期並みとなりました。ステンレスおよびプラスチッ ます 。 ク配管機器は、住宅着工戸数減少の影響はあったものの、ガス用製品に対する施工性・耐震性の高評価を Review of Operations by Segment 受け需要が堅調に推移したことから、前年同期並みとなりました。 印ソフレックス®ガス用ステンレス製フレキシブル管・継手 建築部材 「ソフレックス ® 」は、日立金属のガス用ステンレス製フレキシブ 国内における民間設備投資、公共投資等による需要が堅調なものの、工事進行基準の適用範囲拡大等、 ル管および継手の総称です。配管途中の接続が少ないため、施 工性がよく、メンテナンス性にも優れています。 一時的な増加要因があった前年同期と比較すると減少しました。 売上収益・営業利益・営業利益率推移 (億円) 3,000 2,823 281 2,500 300 開発者によって名づけられた「ハーキュナイト®」とは、 「HEat Resisting Cast materials for UNIT of Exhaust 250 ギリシャ神話の英雄ヘラクレス(英語で「ハーキュリー」)の名を冠したのです。 「ハーキュナイト®」は名前にも、金属で parts(排気部品向けの耐熱鋳造材)」の略ですが、由来がもうひとつあります。金属化合物を表す接尾語の「ナイト」に、 9.9 1,863 2,000 200 6.9 1,500 150 129 1,000 100 500 50 0 13年度 14年度 I FRS I FRS 売上収益 40 日立金属株式会社 営業利益 0 多彩なソリューションを提供する日立金属のDNAが埋め込まれています。 設備投資額・減価償却費・研究開発費 (単位:億円) 2013年度 2014年度 設備投資額 64 126 減価償却費 73 107 研究開発費 27 25 中野 英治 執行役 高級機能部品カンパニープレジデント 営業利益率(%) アニュアルレポート 2015 41 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 高級機能部品セグメント トピックス Waupaca Foundry, Inc. の子会社化を発表 鉄鋳物事業の新たな歴史が始まる − 鉄鋳物事業の抜本的強化とグローバルな中長期的成長をめざす − 2014年11月10日、米国鉄鋳物会社の Waupaca Foundry, Inc.(以下、Waupaca社)の株式取得を 2014年8月19日、当社は、北米市場において輸送機向け鉄鋳物事業を展開するWaupaca Foundry, 完 了しまし た 。11月11日 に は ウィスコンシ ン 州 ワ ウ パ カ に て 、盛 大 な セレ モ ニ ー が 開 催 され 、新 生・ Inc.(以下、Waupaca社)のすべての株式を取得し、子会社化することを発表しました。 鉄鋳物事業は、自動車用を中心として長年にわたり培ってきた主力事業であり、その中でも高級ダクタイル 鋳鉄製品は、日本・韓国・米国において生産拠点を展開、2014年4月にはインドの自動車用鉄鋳物製造会社を 子会社化するなど、グローバル供給体制の強化を進めてきました。しかしながら、さらなる成長を実現していく ためには、事業領域を拡げ、グローバル市場において圧倒的競争力のある事業基盤を構築していくことが必要 となっていました。 Waupaca社は、北米市場において輸送機向け鉄鋳物事業を展開しており、自動車用ブレーキ部品を中心 に、産業機械や農業機械、建設機械等、幅広い分野に製品を供給しています。優れた生産技術・生産管理の 下、鉄鋳物における世界最大の生産規模を機動的に運営しており、北米における圧倒的な市場シェアを誇っ また、長年にわたる安定した供給実績によって、強固な顧客基盤を築いており、同社の競争力の源泉となっ ています。世界の輸送機向け鉄鋳物市場は、新興国での自動車需要に牽引され継続的に拡大することが予測 今回のWaupaca社の日立金属グループ入りによって、鉄鋳物事業においては、高級機能部品カンパニー が志向してきた高付加価値ニッチゾーンに加え、Waupaca社が有する競争力のある多量生産ゾーンへと 事業領域を拡大させ、世界最大の鉄鋳物サプライヤーをめざすことが可能となります。 今回の経営統合は、Global No.1の企業集団になるための重要な過程であり、日立金属グループの鉄鋳物 事業における歴史的転換点となります。 両社のビジネスをただ単に合算するのではなく、事業シナジーを早期かつ最大限に発揮し、名実ともに Global No.1の企業集団となり、持続的に成長していくことをめざします。 重要顧客である自動車メーカーが、国境を越えたグローバル化を強力に推し進める中、私たちも市場をボー ダーレスな観点でとらえ、事業展開していく必要があります。今後はグローバルでのシェアにも拘っていきたい Business Performance ています。 Waupaca社の門出を祝いました。 と思います。そして、需要が急拡大する新興国への展開はもちろんのこと、M&Aも経営手法として積極的に 活用し、全世界各地域の拠点・事業構築に取り組んでいきます。 されており、実績に裏打ちされた高い競争力を有するWaupaca社は、今後も安定的に成長することが見込ま れています。 Waupaca社の子会社化により、当社が志向してきた高付加価値分野に加え、Waupaca社が有する優れ Review of Operations by Segment た生産技術および事業領域、顧客基盤を取り込むことで、グローバル市場での競合優位性を確保することが 可能となります。 今後もグローバル市場における事業基盤を強化し、中長期的な成長をめざします。 大きな歓声が上がった鏡開き Waupaca Foundry, Inc. 概要 名称 Waupaca Foundry, Inc. 所在地 1955 Brunner Drive, Waupaca, Wisconsin 代表者 Chief Executive Officer Gary Gigante 設立 1955年5月4日 売上規模 1,735百万米ドル(2013年9月期) 事業内容 42 日立金属株式会社 北米市場における輸送機向け鉄鋳物の開発・製造・販売 (自動車、農業機械、産業機械、建設機械等)年間生産能力157万トン 主要製品 ブレーキ・エンジン・駆動用部品、ナックル・アーム 社員数 約3,900名(2014年5月末現在) 買収価格 1,300百万米ドル 株式取得の実行 2014年11月 アニュアルレポート 2015 43 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 電線材料セグメント 電線材料カンパニー 当セグメントの売上収益は、前年同期比30.2%増の327,992百万円となりました。 電線 電力・産業システム、電子・通信材料、電機材料、工業用ゴム製品 自動車部品 電装部品、ブレーキホース 情報システム 情報ネットワーク、ワイヤレスシステム また、営業利益は前年同期比3,870百万円増加し、19,845百万円となりました。 業績概要〈売上収益〉 電線 鉄道車両用電線・ケーブル 国内建設・設備関連の需要が堅調に推移したことに加え、工作機械向けを中心とした需要が堅調に推移 鉄 道 車 両 用 電 線・ケーブルは、新 幹 線を はじめ 国 内 外 の 数 多くの 鉄 道 車 両 の 運 しました。また、注力分野である鉄道車両用電線が中国市場向けを中心に好調に推移し、医療用プローブ 転室内配線、床下配線、車体間配線など に用いられます。このほか鉄道網向けで ケーブルもグローバル市場で堅調に推移しました。 は、 トロリ線 や 信 号 用ケーブ ルなどを提 供し、鉄 道 の 電 力 供 給・情 報 伝 送を支え ています。 自動車部品 米州を中心とした自動車の旺盛な需要が続いたことにより、車載センサーなど電装部品を中心とした 難燃性ポリフレックス電線 MLFC® 需要が好調に推移しました。 クス電線)は、建物の配電盤内の絶縁電線やモーターの口出線 Business Performance 耐熱性・難燃性・可とう性に優れた「MLFC ® 」 (難燃性ポリフレッ をはじめ電気系統の配線に幅広く活用されています。 情報システム スマートフォンの普及による通信需要が旺盛に推移したものの、下期から通信事業者の設備投資に調整 があったことにより、ネットワーク機器、ワイヤレスシステムは下期の需要が低調に推移しました。 超音波診断装置用プローブケーブル エコー検 査で用 いる超 音 波 診 断 装 置の本 体とプローブ( 探 触 Review of Operations by Segment 子)をつなぐケーブル。軽量で耐屈曲性や可とう性に優れ、かつ 高い電気特性を兼ね備えており、取り扱いやすさと同時に画像 の高精細化を実現し、医療機器の発展に貢献しています。 重電用巻線 売上収益・営業利益・営業利益率推移 発電所の大型発電機や変電所の変圧器、鉄道車両用モーター などで使用されます。求められる耐熱性や絶縁耐力に応じてガ (億円) 3,600 ラスや耐熱紙などの絶縁材料を取り揃え、電力インフラ・交通イ 300 3,280 3,000 ンフラを支えています。 250 2,519 2,400 198 200 160 1,800 6.3 6.1 1,200 50 0 0 13年度 14年度 I FRS I FRS 売上収益 営業利益 (単位:億円) 150 100 600 設備投資額・減価償却費・研究開発費 営業利益率(%) 2013年度 2014年度 設備投資額 56 91 減価償却費 72 99 研究開発費 52 96 長谷川 正人 執行役 電線材料カンパニープレジデント 44 日立金属株式会社 アニュアルレポート 2015 45 セグメント別事業概況 Review of Operations by Segment 電線材料セグメント トピックス メキシコ拠点にてABSセンサーハーネス生産能力拡大 鉄道向け電線ビジネスのグローバル展開を加速 2 014年6月に増設ラインが稼働開始 電線材料カンパニーは、各種電線・ケーブル製造で培った技術を活かし、車体配線および車載機器に用い 電線材料カンパニーはABSセンサーハーネスの需要増加を受け、メキシコ 拠 点HC Queretaro, S.A. られる鉄道車両電線を手掛けています。これまで国内では新幹線・在来線・地下鉄などの車両向け各種電線が de C.V. の生産能力を拡大、2014年6月から増設ラインの稼働を開始しました。 採用され、国内市場において約8割のシェアを獲得しています。また、1980年代より輸出車両向けの鉄道車両 ABS(Anti-Lock Brake System)は、自動車のブレーキ操作時にタイヤがロック(回転停止) してしま うことを防止し、車両を安定して停止させる予防安全装置です。事故防止の有用性から、その需要は年々 高まっています。 電線材料カンパニーでは、ABSの重要部品であるABSセンサーハーネスを製造販売しています。近年、 自動車の安全性追求を背景とした需要が高まっており、このたびABSセンサーハーネスの製造拠点の一つで あるHC Queretaro, S.A. de C.V. に製造ラインを増設、2014年6月から稼働を開始しました。 ABSセンサーハーネスは、タイヤの回転を検知し、ECU(電子制御ユニット)に信号を伝えるハーネスです。 ケーブルには耐屈曲性、温度特 性といったさまざまな状 況 下での 耐 久 性 、センサ ー ヘッド部 分には車 種に のノウハウと、電線・ケーブル素材の配合技術が集約されています。 電線 材 料カンパニーは19 9 6 年からA B Sセンサ ー ハ ーネスの 製 品 化 に 取り組 み 、2008年 からタイ の拠点Hitachi Metals (Thailand) Ltd . で製造を開始、その後、海外2拠点目として2013年6月 よりHC Queretaro, S.A. de C.V. でも製造を展開しています。 今回の製造ライン増設で、HC Queretaro, S.A. de C.V. における生 産 能 力 は 従 来 に比 べ 約 2 倍と の拡大が期待される南米向けの起点としても、HC Queretaro, S.A. de C.V. の重要性は増しています。 今回の生産能力拡大を今後につながる布石として、さらなる拡販を進めていきます。 ABSセンサーハーネス 46 日立金属株式会社 メキシコ中央部のケレタロ州にある HC Queretaro, S.A. de C.V. 量産を開始し、グローバルでの事業展開を進めています。 こうした、これまでの国内外での実績が評価され、電線材料カンパニーはIEP ※ 向け鉄道車両電線を受注 しました。このたび電線材料カンパニーがHitachi Metals Europe GmbH(HME)を通じてHitachi Rail Europe Ltd. (以下、HRE)より受注した鉄道車両電線は、Great Western Main LineならびにEast Coast Main Line向けClass 800/801向け866両分です。2014年3月から出荷を開始し、2019年 ごろまでの納入完了を予定しています。電線材料カンパニーはHREからIEPの主要サプライヤーの一社に 選ばれました。 また、さらなるグローバルでの拡販に向け2014年9月23日から26日までドイツのベルリン国際見本市会 場にて開催された「InnoTrans 2014(国際鉄道技術見本市)」に出展しました。国際鉄道技術見本市は、2年に 一度開催され、電線材料カンパニーは2010年、2012年に続き3回目の出展となりました。今回は、日立金属 として初の出展でもあり、IEP向けに採用された鉄道車両用電線や鉄道車両用ハーネスに加え、磁性材料 カンパ ニーの「ファインメット® 」、鉄道車両製品として今後応用が期待できる高級機能部品カンパニーの 鉄道車両向けダクタイル鋳鉄を展示し、当社の製品・技術をアピールしました。 今後も電線材料カンパニーでは、鉄道車両電線を「世界で勝てる」事業にするべく、さらなる製品開発・海外 Review of Operations by Segment なります。メキシコに代表される北中米は、多くの自動車関連企業が生産・販売において進出しており、今後市場 てきました。加えて、2013年より中国・蘇州のHitachi Cable(Suzhou)Co., Ltd. において鉄道車両電線の Business Performance 応じた多 様な形 状が求められます 。A B Sセンサ ー ハ ーネスには、電 線 材 料カンパニー のブレーキホース 電線の製造を開始し、英国、中国などの高速鉄道車両など、世界各国の鉄道車両に豊富な納入実績を積み上げ 拠点強化を行うとともに、日立金属における鉄道ビジネスの牽引役としてグローバルな事業展開を加速させて いきます。 ※IEP: Intercity Express Programme EN規格対応ノンハロゲン電線 POLYENEX ® アニュアルレポート 2015 47
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