妊娠中の健康管理について - 東京大学男女共同参画室

東京大学の教職員・学生のみなさまへ
妊娠中の健康管理について
-助産師がよくある疑問にお答えします。-
東京大学大学院 医学系研究科 母性看護学・助産学分野
2007 年 12 月作成
Copyright 2007@東京大学男女共同参画オフィス
誰でも初めて妊娠したときは、自分の身体の中に新しい生命が宿った素晴らしさとこれか
らの生活や将来に対する不安の両方が起こるものです。でも心配することはありません。
妊娠中の身体の変化について知識を得て、日常の生活に少し注意すれば、普段と同じよう
に仕事や研究・学業を続けることができます。
東大の母性看護学・助産学分野の教室員が、最新情報と多くの妊婦の方々からのご意見
をもとに、妊娠中の健康管理のノウハウを小冊子にまとめました。皆様の充実したマタニティ
ライフを過ごすための参考にして下さい。
● 妊娠にともなう心配・・・案ずるより相談すべし
Q.
妊娠したかもしれません。どのようなタイミングで、産婦人科にかかればよいですか?
A.
月経周期が規則的な人は、予定の月経が1週間以上遅れたら、妊娠を疑ってみましょう。
(ただし、精神的なストレスや環境の変化などでも月経が遅れることはあります。)
市販の妊娠検査薬を使うと、妊娠かどうかがわかりますが、子宮外妊娠などの異常をチェックすることはで
きません。妊娠判定薬が陽性であれば、早めに産婦人科を受診して正常な妊娠経過であることを確認して
おきましょう。妊娠4~5週(月経が1~2週間遅れたころ)には、超音波検査で妊娠の確定診断ができ、妊
娠6週ごろになると、胎児の心臓の動きが確認できるようになります。
Q.
妊娠したのですが、仕事・学業 (研究) は続けられるでしょうか?
A.
妊娠中は、身体の変化に伴い、妊娠前と全く同じペースで仕事をすることは難しいのですが、妊娠経過
が順調であれば、比較的これまでどおりの仕事や学業を続けることができます。定期的に妊婦健診を受け
ること(スケジュールは後ろの「妊娠中の過ごし方」の表をご参照ください)、無理のない生活スタイルにす
ることが何より大切です。流産・早産や妊娠合併症など、急なトラブルで入院や自宅安静を余儀なくされる
こともあります。日ごろから周囲の理解や協力が得られるように、コミュニケーションをとっておくことが重要
です。
Q.
今後の仕事のことが心配です。
A.
自分の仕事が思うようにできないことに加え、それが上司や周囲に迷惑をかけているのではないかとい
ったストレスを抱えることもあります。出産後復帰する女性が少ない職場であれば、出産後、仕事を続ける
ことができるかどうかの不安もあります。子どもが産まれる喜びを感じる一方で、仕事や職場の人間関係の
ストレス・不安を抱えながら妊娠期を過ごす女性は決して少なくありません。これらのストレスをできるだけ
緩和して安心して働くためには、上司と出産前後、育児期の体制も含めて、早い段階で職場の中での働き
方について話し合うことが必要です。上司は妊娠期の特徴を十分理解し、妊娠した女性労働者の体調に応
じて仕事の分担の見直しや仕事のやり方を工夫するなど、職場レベルで対応することが求められます。
(職場レベルでの対応が困難な場合には東大男女共同参画オフィスまでご相談ください。)
男女共同参画オフィス連絡先: sankaku@ adm.u-tokyo.ac.jp
1
Q.
出産場所にはどんなところがありますか?
A.
出産できる施設は、大きく分けると、総合病院・大学病院、診療所(クリニック)、助産所の 3 つに分かれ
ます。出産施設を選ぶ際には、下の表を参考にしてみてください。
施設の種類
特徴
・合併症などがあるリスクが高い妊婦に対応できる。リスクがなくても出産できる。
総合病院
・NICU(新生児集中治療室)をもつ病院もある。
大学病院
・産科以外の診療科との混合病棟である場合もある。
・産科のみの単科であることが多く、ベッド数は 19 床以下。
診療所
・合併症などがない妊婦が対象。
(クリニック)
・妊娠経過中や分娩中に異常が発生した場合は、病院へ転院となる。
・助産師が開業している。ベッド数は 9 床以下。
・妊娠・分娩経過が正常な妊婦が対象。
助産所
・妊娠経過中や分娩中に異常が発生した場合は、病院へ転院となる。
・家庭的な雰囲気で助産師による継続なケアが受けられる。
Q.
出産場所を選ぶ時にはどんなことに注意すると良いですか?
A.
出産場所を決めるときは、次のようなことを確認してみるとよいでしょう。ここなら安心して産めそうという
直感も大切にしてください。
❒出産方法(フリースタイル、夫立会い出産など)
❒入院中のサービス、母児同室、授乳の方針
❒緊急時の体制や総合病院との連携システム(診療所、助産院の場合)
❒働いている医師や助産師、看護師などの数
❒診察時の対応、説明
❒自宅からの距離、交通手段、分娩・入院費、入院期間など
❒施設や設備の清潔感、個室の有無
❒出産した人からの評判、口コミ
Q.
母親学級に行く時間をとるのが難しいのですが、すべて出たほうがよいですか?
A.
出産する医療施設や市町村の保健センターが開く母親学級があります。両親学級や父親向けのクラス
を開催するところもあります。出産する医療施設での出産準備クラスでは、分娩時の入院方法や過ごし方
についての話がされることが多いので、最低限出ておくとよいでしょう。出席が難しいよう
であれば、外来診察時に助産師に相談するとよいでしょう。地域の保健センターの母親学
級に出席すると、近くに住む同じぐらいの妊娠週数の人と知り合いになることができ、これ
からの育児生活に役立つかもしれません。
【母親学級の主な内容例】
妊娠経過や妊娠中の過ごし方/妊娠中や産後の栄養、生活指導/妊婦体操・ヨガ/分娩経過や分娩時の過
ごし方、分娩室見学/新生児の人形を使っての抱っこ、授乳、沐浴などの練習など
2
● 栄養と食生活・・・1 日 3 食、野菜たっぷりと!
Q.
お腹の赤ちゃんは、母親からの栄養で成長するんですよね。どんな食事をしたらいいですか?
A.
妊婦だからといって、特別なことはありません。妊娠中の食生活のポイントは、1日3回の食事に主食、
主菜、副菜の組み合わせでたくさんの食品をバランスよく、野菜や鉄分をたっぷりとること!です。
Q.
つわりがあるのですが・・・
A.
つわりで食べられなくなったり、嗜好の変化があっても、お腹の赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすことは
ないので心配ありません。食べられるときに、食べたいものをとりましょう。脱水にならないよう、水分をとる
ようにしてください。
Q.
葉酸を摂った方がいいと聞いたのですが・・・
A.
葉酸は、緑黄色野菜、果物などに多く含まれるビタミン B 群の 1 つです。受胎してから 2~4 週間ぐらい
までの細胞分裂が活発な胎児期に十分な葉酸量をとることで、無脳症や神経管閉鎖障害などのリスクを
低減できるといわれています。
Q.
葉酸はどのようにとればいいのでしょうか?
A.
妊娠する 1 か月以上前から妊娠 3 か月までの間に、食品からの葉酸摂取に加えて、サプリメント(栄養
補助食品)から 400μg/日の葉酸摂取が勧められています。葉酸は、ブロッコリー(150μg/3~4 房)、ほう
れん草(150μg/2 株)、グリーンアスパラガス(135μg/3~4 本)などの野菜全般、納豆(50μg/中 1 パッ
ク)などの豆類、いちご(90μg/中 5 粒)などに多く含まれています。食事に加えて、サプリメントからもとる
とよいでしょう。サプリメントをとる際は、1日当たり葉酸摂取量が1mgをこえないように気をつけましょう。
Q.
妊娠中に食べてはいけないものはありますか?
A.
食べ過ぎてはいけないものがあります。妊娠初期のビタミン A の過剰摂取は胎児の奇形をもたらす可能
性があります。妊娠中の上限値は、3000μgRE/日です。妊娠 3 か月以内は、レバー(14000μgRE/100g)
やうなぎの蒲焼(1500μgRE/100g)などのビタミン A 含有量の多い食品やサプリメントの継続した大量摂
取は避けましょう。妊娠中期以降は、貧血予防のためにレバーを食べると良いでしょう。
Q.
魚を食べ過ぎないようにと聞きました。どれくらいなら食べていいのでしょうか?
A.
近年、魚からの水銀摂取が胎児に与える影響を懸念する報告がありますが、この胎児への影響はわず
かなものであり、将来の社会生活に支障があるような重篤なものではありません。魚介類は、良質なたん
ぱく質であり、生活習慣病の予防効果があるといわれています。また妊娠中に魚由来の脂肪酸摂取が少
ないと、早産や低出生体重児出産のリスクが高いという報告もあります。
3
水銀濃度の高い大きい魚(クジラ、キンメダイ、メカジキなど)を偏って多量に食べることは避け、小さい魚
(アジ、サンマ、サケ、小魚、ツナ缶など)を食べて魚食のメリットを活かしましょう!
例)キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ(メバチマグロ)は、1 週間当たり 80g 程度に!
切り身の一切れ当たりが、80g 程度です。
Q.
健診で貧血を指摘されました。食事でどんなことに気をつけたらいいですか?
A.
妊娠中は循環血液量が増えて、血液がうすくなり、さらに鉄の需要が増加するので、妊娠前よりも貧血
になりやすくなります。妊娠中は、1 日におよそ 20mg の鉄が必要となります。赤身の肉や魚などの動物性
食品に多く含まれるヘム鉄は吸収率が高く、ビタミン C と一緒にとると吸収率を高めるので、上
手に取り入れるようにしましょう。また、鶏レバー(4.5mg/焼鳥1串)、あさり(1.1mg/約 10 個)、
乾燥ひじき(8.3mg/大さじ 1)、小松菜(2.0mg/1/3 束)、ほうれん草(1.4mg/1/3 束)などにも
鉄分が多く含まれています。
Q.
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の予防のために、減塩食にした方がよいと聞きましたが・・・
A.
減塩食が妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の発症予防や治療に有効であると信じられてきましたが、そ
れを裏付ける根拠はほとんどありません。しかし、日本人は塩分摂取量が多いので、将来にわたる母子の
健康や家族の健康を考えて、妊娠をきっかけに 1 日 10g 以内の減塩を心がけましょう。
● 飲酒・タバコ・カフェイン・つらいけど止めるのが一番!ひとりで悩まず相談を!
Q.
妊娠中はアルコールは控えた方がいいですか?
A.
妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール症候群(顔面の奇形・発育不全など)や児の発達や行動、学習障
害を引き起こすリスクがあります。1 日に純アルコール(エタノール換算)60ml 以上(ビールでは中瓶 2.5 本、
清酒では約 2 合、ウイスキーではダブル約 2.5 杯、ワインではグラス約 4 杯に相当します)
の飲酒で高頻度の発症が報告されています。
少量飲んでしまったことを心配することはありませんが、安全許容量が個人によって異なり、
わからないため、妊娠中は飲酒を控える必要があります。
*相談機関: http://www.ask.or.jp/index.html ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)
Q.
タバコを吸っているのですが、よくないですよね・・・
A.
タバコには 200 種類の有害物質、60~70 種類の発がん物質が含まれていて、がんや心疾患になりや
すくなるのはご存知のとおりです。また病気にならなくても、喫煙によるしわがれ声や顔のしみやしわがで
きやすくなるのも事実です。
赤ちゃんへの影響としては、低出生体重児の増加や乳幼児突然死症候群(SIDS)、小児期
の肺機能の低下、喘息が起こりやすいことが報告されています。これは、受動喫煙によって
も同様の結果が報告されています。
4
Q.
妊娠前からタバコを吸っていて、止められないのですが・・・
A.
タバコ煙の成分の 1 つであるニコチンは、前頭葉に影響し、快楽を起こさせる作用があり、ニコチンの欠
乏によって起こる、落ち着かない、眠いなどの不快症状は、喫煙することでたちどころに消失します。この
不快症状の回避という経験も禁煙できない要因なのです。妊婦のための禁煙プログラムが、いくつかの病
院や歯科医院で行われています。妊娠中は禁煙のためのニコチンパッチを使用することはできないので、
妊婦が禁煙するためには、社会的、精神的なフォローを個別的にしてくれる禁煙プログラムに参加するの
がよいでしょう。
*http://www.e-kinen.jp/search/index.html 禁煙外来一覧
Q.
日ごろからコーヒーをよく飲むのですが、妊娠したら飲まない方がいいのですか?
A.
妊娠中はカフェインを分解、排泄するのに時間がかかります。またカフェインは胎盤を通って胎児に移
行します。胎児は肝臓の機能が未熟なためカフェインを排泄できずに胎児の体内に高濃度のカフェインが
とどまることになります。
カフェインの赤ちゃんへの影響については、コーヒー1 日 8 杯以上で死産のリスクを高めるという報告が
あります。カフェインは胎盤を流れる血液の量を減少させますが、胎児発育との関連については、はっきり
とした結論がでていません。
妊娠中はカフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶(特に玉露)などの過度の摂取は避けて、カフェインレス
コーヒーやハーブティなどをとるとよいでしょう。麦茶はカフェインを含まないので、妊婦さんや赤ちゃんに
お勧めです。
● 通勤・仕事 ・・・意外につらい通勤電車!夜は仕事を早めに切り上げましょう!
Q.
毎日、電車で通勤をしています。ラッシュ時は混み合うので心配です。
A.
できれば、通勤時間をずらして、通勤ラッシュ時の満員電車を避けることをお勧めします。
乗車時は電車の出入り口付近に立つのは避け、優先席付近に行きましょう。マタニティーマークの付いた
キーホルダー(駅でもらえます)をバッグにつけていると妊婦とわかってもらえます(わかってもらえないこ
ともあります。)。人混みは危険な場合がありますので、階段の昇り降りの時は手すり側を歩きましょう。ま
た、妊娠初期でも貧血やめまいなどをおこしやすいので、思っていた以上に通勤がつらく感じることがあり
ます。時間に余裕を持って出かけましょう。
Q.
オフィスでパソコンを使う仕事が多いのですが、どんなことに気をつけたらよいでしょうか?
A.
パソコンを使う作業そのものが、妊娠経過に影響することはありませんが、ドライアイや肩こり、筋肉痛、
頭痛などが起こらないよう、長時間の作業を避け、目を休めることが大切です。ドライアイ予防に加湿器を
使用したり、目の温湿布をしたりしてもよいですね。時々、部屋の空気を入れ替え、気分転換をしましょう。
また妊婦に冷えは大敵です。締め付けが気にならない方は腹巻をしてお腹が冷えないようにし
ましょう。夏でもエアコンの効いている室内は冷えやすいので、靴下を着用してください。自分で
足先をさわってみると冷えていることがわかります。冬はひざ掛けやカーディガンなどを準備して
おくと良いですね。長時間立っていたり、座っていたりすると足がむくみます。
5
時々足の体操をしたり、動いたりすると良いでしょう。場所があれば、足を床と水平にして休むだけでもず
いぶん楽になります。静脈瘤ができている方は、弾性ストッキングを着用するとよいでしょう。
Q.
実験が多く、夜遅くなることがあります。どんなことに気をつけたらよいでしょうか?
A.
実験の内容にもよりますが、妊娠中は重たいものを持ち上げたり、有機溶媒など有毒なガスを吸ったり
しないで下さい。できるだけ、無理のない実験スケジュールにして、途中で休憩などがとれるとよいですね。
寒すぎるところや暑すぎるところもよくありませんので、注意してください。
● 旅行・出張・・・旅行・出張は無理せずに!
Q.・温泉旅行に出かける予定があるのですが、温泉に入ってもいいですか?
A.・泊りがけなら、1
か所に滞在してのんびりと過ごす旅行がおすすめです。子宮口が開いている場合や膣
炎などのトラブルがあるときは、温泉やスパの利用は避けましょう。入浴時間は適温(40~41℃)で 10 分
以内にしましょう。1 人での入浴は転倒した時や気分不良になった時の対処が遅れるので避けてください。
長距離のドライブはお勧めできません。車に乗る場合は、シートベルトは安全のためにおなかのふくらみ
を避けて着用しましょう。
※シートベルト着用方法
http://www.maternity-seatbelt.jp/ How To_Wear_a_Seat_Belt_During_Pregnancy.htm
❒旅行に必ず持参するもの:母子健康手帳、保険証、かかりつけ病院の住所・電話番号のメモ、
ナプキン、タオル、ひざ掛けやカーディガンなど。
Q.・学会などの出張もあります。海外に出かけてよいでしょうか?
A.・原則的にはあまりおすすめできませんが、出かけるなら、妊娠
5~7 か月の間が望ましいでしょう。渡航
前には主治医に旅行をすることを相談しましょう。渡航先に医療機関があるかを確認しておきましょう。
海外渡航では、出入国に際して必要な書類の提出を求められることがありますので、注意してください。
❒ 妊婦の搭乗条件(航空会社によって異なります)があります。多くの会社は妊娠 9 か月までの搭乗に
は制限がなく、それ以降は医師の診断書や誓約書など様々な条件が設けられていますので、事前に
確認しましょう。
❒ 血栓症予防のために、腕や足の運動を行い、水分をとるようにしましょう。
❒ シートベルトの長さが足りない場合には、延長ベルトを用意してもらえます。
Q.・途上国への海外出張がありますが、予防接種は受けられるのでしょうか?
A.・アジア・アフリカなど地域によっては予防接種が必要な場合がありますので、旅行の予定を立てる時に
は必ず医師に相談しましょう。
6
海外渡航に必要な予防接種は以下のとおりです。
❒妊婦でも接種可能なもの
・A 型肝炎(中南米、アフリカ、中東、アジア、東欧)
・B 型肝炎(アラスカ、カナダ北西部、北極海西半球側、アマゾン川流域、中国、中央・東南アジア)
・髄膜炎菌感染(サハラ砂漠以南のアフリカ北部)
❒妊婦は接種できないもの
・腸チフス(中南米、アフリカ、中東、アジア、東欧)
・日本脳炎(中央・東南アジア、極東)
・黄熱病(南米、アフリカ)
Q.・妊娠中にインフルエンザワクチンの予防接種をしても大丈夫ですか?
A.・妊婦のインフルエンザワクチンの接種に関する国内での調査成績はまだ十分ではありません。妊娠初
期はいろいろな理由で自然流産する可能性が高い時期なので、一般的に予防接種は避けた方がよいと
考えられています。主治医に相談をしましょう。
● 休息・リラクセーション・・・できる妊婦はぼっーとできる!
Q.・妊娠中に最も気をつけることは何ですか?
A.
とにかく、力をぬいてぼっーとする時間をつくることです。夜間の睡眠時間が十分に確保できない場合
は、昼間に休憩時間を作ることも疲労回復に役立ちます。できれば午前と午後に 1 回 15 分程度の休息を
とるとよいでしょう。目を閉じてしばらく横になるか、横になれない場合でも、できるだけ足を床に水平にし
て、ゆっくり呼吸するだけでも効果があります。
Q.・夜も緊張がとれず、寝つきが悪いのですが・・・
A.
深く、ゆっくりとした呼吸を行うと、気持ちが落ち着き、リラックスできます。5 秒間を目安に、ゆっくり鼻か
ら息を吸った後、口から息を吐くのが基本です。息を吸うときは体の中心部に空気を送る
イメージで、息を吐くときは、深いため息をつくようなイメージで吐き出します。吐く息と
一緒に体の力を抜いて、全身をリラックスさせます。できるだけ吸うことよりも吐くことを
意識しましょう。
Q.
よいマッサージ方法を教えてください。
A.
指圧のように押す方法、てのひらや指先で優しく揉みほぐす方法、オイルを使ってさする方法などがあり
ます。自分で手や足、おなかやおしりをゆったりとした気持でマッサージしても良いでしょう。
パートナーなどに、背中、腰、おなかのマッサージをしてもらうことや触れてもらうことは、おなかの
赤ちゃんとのコミュニケーションをとることができ、分娩時のリラックスの予行練習にもなります。
7
Q.・冷え性なのですが何か良い方法はありますか?
A.
冷え性の方には足浴がお勧めです。38~40℃の湯を洗面器やバケツに入れて、
椅子に座り、くるぶしより上までを浸し、5~10 分ほど温めましょう。
Q.・妊娠中のアロマの使い方を教えてください。
A.
ティーカップやボウルに熱湯を注いで、アロマオイル(精油)を 1~2 滴加えるだけで、香りを楽しめます。
入浴時には、ぬるめのお風呂にアロマオイルを数滴入れて入浴することで心身ともにリラックスできます。
温湿布をするときには、洗面器にお湯をはり、アロマオイルを 1~2 滴加え、タオルを入れ、固く絞ります。
香りのついた温かいタオルを両目や首の付け根から左右の肩甲骨の間、仙骨部にあてます。肩こりや頭痛、
目の疲れ、不眠症、足の痙攣などがあるときに温湿布をしてはいかがでしょうか。
*妊娠初期から使えるアロマオイルは以下の通りです。
グレープフルーツ、真正ラベンダー、スイートオレンジ、ティートリー、ネロリ、パルマローザ、
ビターオレンジ、フランキンセンス、ベルガモット、マンダリン、レモン、ローズウッド
※妊娠中に使用してはいけないアロマオイルもありますので、ご注意ください。
● 姿勢・運動・・・好きな運動をしてみましょう!
Q.・お腹が大きくなると腰痛になりそうで心配です。
A.・お腹が大きくなると身体が反り身になりやすく、筋肉にも負担がかかるため、腰背部痛や膝痛などを起こ
しやすくなります。正しい姿勢を心がけて、腰痛を予防しましょう。正しい姿勢は、壁を背にして、足を自然
に開いて、足首、腰、肩、耳が一直線になるように立つ姿勢です。肩の力を抜いて、まっすぐ前を見て、体
重を足の裏全体にかけるようにしてまっすぐ立つのがポイントです。
Q.・運動はウォーキングを勧められましたが、他にどんな運動ならやってもよいのでしょうか?
A.・妊娠前からしていた有酸素運動は続けてもかまいません。有酸素運動には、歩く、走る、泳ぐ、エアロビ
クス等があります。定期的に行う有酸素運動は、妊婦の健康増進や糖尿病予防に有効といわれています。
この他、ストレッチやヨガなどは、だれでもどこでもできるのでお勧めです。運動はつねに呼吸リズムに合
わせて行うのがポイントです。お腹のはり(痛みを伴わなくても、お腹がかたくなるような感じ、生理痛のよう
な鈍痛)を頻繁に感じるような時は中止しましょう。
8
月
第
2
月
週
健
診
検査項目
過ごしかた
★妊娠かな?と思ったら
・市販の妊娠検査薬を使うと、妊娠かどうかがわかりますが、子宮
外妊娠などの異常をチェックできないため、妊娠判定薬が陽性で
あれば、早めに産婦人科を受診して正常な妊娠経過であることを
①超音波検査
確認しておきましょう。
②クラミジア検査
・妊娠4~5週(月経が1~2週間遅れたころ)には、超音波検査で
③子宮頸がん検
妊娠の確定診断ができ、妊娠6週ごろになると、胎児の心臓の動
きが確認できるようになります。
査
4~7
週
★母子健康手帳をもらいましょう。
・妊娠の診断を受けたら、母子健康手帳の交付を受けると良いでし
ょう。申請は住民票のある市町村役場にします。
・申請には、病院からの診断書等は必要ありませんが、在住確認
のため運転免許証・保険証などの提示を求められることがありま
す。
初
第
期
3
月
8~
4
★健診・分娩先の病院を決めましょう。
・正確な出産予定日がわかったら、健診や出産をする病院を決め
①血液検査
ましょう。(最近は出産場所が減っていますので、ぜひ早めに!)
・里帰り出産を予定している人は早めに初診や転院の時期などの
(貧血、血液型、感
予定を立て、主治医に早めに里帰りの希望を伝えましょう。
週
②尿検査:毎回
11 週
間
毎
第
4
月
染症抗体検査等)
★上司と仕事の予定を相談しましょう。
・健診や出産する病院が決まり、大まかな予定が立った時点で、
(尿糖・尿蛋白、尿
仕事について上司と早めに調整しましょう。
潜血等)
★休める場所を見つけましょう。
・妊娠が進むにつれ、お腹が大きくなり、身体がつらくなります。
昼休みや休憩時間に休める場所を早めに見つけておきましょう。
12~
15 週
★戌の日に着帯を。
・犬(戌)のお産が軽い(安産)ことから、妊娠 5 か月の戌の日に岩
田帯といわれる腹帯を巻き安産を祈願する風習があります。
・腹帯をすることの医学的な根拠はありませんが、妊娠を自覚し、
お産に向けての心がまえをするのによい機会となります。
・腹帯の巻き方は病院でも指導してもらえます。
中
期
第
5
月
16~
19 週
尿検査:毎回
★そろそろ胎動を感じます♪
・妊娠19~20週ごろになると、おなかの赤ちゃんの動き感じるよう
になります。これを、「胎動(たいどう)」といいます。
★母親学級に参加しましょう。
・出産する医療施設や市町村の保健センターが開く母親学級があ
ります。助産師や保健師に相談したり、同じぐらいの妊娠週数の
人とお友だちになったりすることは、これからの妊婦生活にいろい
ろ役立つでしょう。ぜひ、積極的に参加しましょう。
9
月
第
6
月
週
健
診
4
検査項目
①血液検査
20~
週
(貧血検査等)
23 週
間
②尿検査:毎回
毎
(超音波検査)
中
期
第
7
月
第
8
月
24~
尿検査:毎回
27 週
2
28~
週
31 週
間
尿検査:毎回
(超音波検査)
毎
①膣分泌物培
後
期
第
9
月
養検査
32~
②血液検査
35 週
(貧血検査等)
③尿検査:毎回
①貧血検査
第
10
月
1
36~
週
42 週
間
毎
②ノンストレス
テスト
(胎児の元気さ、
予備能力、
胎盤機能)
③尿検査:毎回
過ごしかた
★マタニティウエアの準備を始めましょう。
・そろそろ、おなかだけでなく、乳房も大きくなります。また、ウエスト
回りやおしりにも脂肪がつき、身体全体がふっくらしてきます。
・大きくなる腹部を支えるのに、調節のできるマタニティガードルが便
利です。着用すると楽になります。
★里帰り分娩を考えている人は、一度病院受診を!
・遅くとも妊娠 28 週までに里帰り先の病院を受診すると安心です。
・健診に通っている病院から妊娠経過を記した紹介状を持っていき
ましょう。できれば、転院先の母親学級に参加すると良いでしょう。
・妊娠 35 週ごろまでには里帰りし、転院先で数回は健診を受けるよ
うにしましょう。
★入院と赤ちゃん用品の準備を始めましょう。
・そろそろ入院に必要なものや赤ちゃん用品の準備をしましょう。入
院のための準備用品は、病院によって多少違います。リストをもと
に必要品をそろえ、ひとまとめにしてバッグに入れておきます。
・赤ちゃん用品は、お産の入院時に持っていくもの、退院後に必要な
ものなど、最低限のものを準備するといいでしょう。(レンタルできる
ものもあります)
・お産費用および社会保険や国民健康保険からの出産育児一時金
も確認しておくといいでしょう。
★産前休暇に入る調整をしましょう。
・産休は、妊娠 34 週から取ることができます(多胎妊娠の場合は 26
週から)。上司や同僚と相談し、早めに手続きをしておきましょう。
★仕事復帰の予定を立てましょう。
・産後休暇は出産翌日から 8 週間とれます。本人が仕事復帰を希望
しても、産後 6 週までは休むことが法律で定められています。
・産後 6~8 週で仕事に復帰する場合は、妊娠中から育児をサポート
してくれる人を見つけるなど復帰の予定を立てておきましょう。ま
た、子どもを預ける施設を見学し、選んでおくと良いでしょう。病児
保育室や、ファミリーサポートセンター、保育ママなどの情報収集も
しておきましょう。
・産後は育児などで忙しく、復帰の準備に時間をとることは難しいの
で、妊娠中から計画的に準備をしておきましょう。育児休暇をとる
人も、早めに復帰の準備に取り掛かりましょう。
★お産が近づいてきたら・・・
・妊娠 10 か月になると、いつお産が始まるかわかりません。入院の
準備ができているか最終点検をしておきましょ
う。診察券や母子健康手帳、印鑑などの必需品
は、いざという時にあわてないように小さなバッグ
に入れて置き場所を決めておくとよいでしょう。
・昼間と夜間それぞれの病院への連絡方法や、
行き方について、家族と確認しておきましょう。
10