4月号の主な記事:ジョシュア・オファルト インタビュー パリ・オペラ座

4月号の主な記事:ジョシュア・オファルト
インタビュー
パリ・オペラ座バレエ団の新エトワールが、
本誌編集長エマ・マニングに語ります。
オファルトがエトワールに任命されたのは3月7日、バスチー
ユでのヌレエフ版『ラ・バヤデール』で、初のソロル役を踊った
日のこと。驚きましたか?それとも予感はあった?ガルニエの
中の、雑然としてはいても居心地のいい小さなオフィスで、私
の前に坐っている端正で骨ばった顔立ちの長身のダンサーに
尋ねてみました。「両方、でしょうか。去年の12月の『シンデレ
ラ』のときにも噂はあったけど、実現しなかった。だからどうして
も、次の古典であるのかなって期待してしまいますよね。それ
が今回の『ラ・バヤデール』だったんですが、初回なのか最後
の出演日なのか、そもそも任命があるのか、見当もつかなかっ
た。ということは、やっぱり驚きだったのかな」
『ラ・バヤデール』では、どこがいちばん難しかったのでしょ
うか?「何から何まで、僕にはチャレンジでしたよ!ソロルは過
去の時代の男性ダンサーのために作られた役。つまり、筋肉
質で力強く、脚も太いことが前提ですが、僕をはじめ今のダン
サーは細身ですよね。ローラン・イレールから、いろいろ学び
ました。特に苦手だったのはまず、影の王国のマネージュで
すね。それ自体が難しいだけでなく、全幕でこの場面に差し
掛かる頃には、すでに疲れきっているんです。ここが終わると
いつも両脚が攣ってしまっていました」
群舞の一員から十年かけてコリフェ、スジェ、第一舞踊手、
そしてエトワールへ。昇進は着実でしたが、その間には怪我
に苦しんだ時期もありました。入団の三年後には片脚を二度
疲労骨折し、回復までに一年半。「舞台に立てない日々は長
かったです。でもたくさん公演を観て、色々学びました。当時
はマニュエル・ルグリやローラン・イレール、そしてもちろんニコ
ラ・ル・リッシュの黄金時代でした」
観客を笑わせたい?それとも泣かせたい?「両方!」と即断
する彼に、でもどちらか選んでくださいと促すと、「そうだな、ど
ちらかと言えば泣かせたいかな。でも笑わせるのは、本当に難
しいですよね。泣かせるより難しい。でも自分が観る側なら、泣
けるものの方が好きです。去年初めてロミオを踊った時、役柄
と自分の間に共通するものをたくさん感じました。でもそれ以
上に楽しかったのが、僕のためにマッツ・エックが振り付けてく
れた『ア・ソート・オヴ』。舞台上で、完全に自分自身でいられ
ました。僕の他に誰もいなくて、演じるべき役も語るべきストー
リーもなく、複雑なことはなにもなくて、ただ自然にしていれば
いい。すばらしい体験でした」
ジョシュアはオペラ座ですでに、六つもの新作を踊っていま
す。最新のものは、ウェイン・マグレガー振付の『アナトミー・オ
ヴ・センセイション』ですが、マグレガーとの仕事は、「ものすご
く楽しかったですよ!彼はとても知的な人で、舞台の上で数学
『ラ・バヤデール』
でのジョシュア・オファルト Photo: E. Kauldhar/Dance Europe
を解いているような感じだった。ウェインは1分ごとに百のアイ
ディアを持っていて、すべてがすごいスピードで進んでいくん
です」
性格は、激しい方?それとも穏やか?「うーん、かっとするこ
とはあまりないですね、今は。でも以前はもっと、多血質という
か血の気が多いというか(笑)。怒りっぽかったですね」それは
ストレスのせい?「そう。でも今もストレスはありますね。この仕
事にストレスはつきものだから。」リラックス法は読書で、今は村
上春樹に夢中だが、いろいろな作家を読む。それ以外の時間
は、ほとんどバレエに費やしている。「ダンサーのキャリアはと
ても短いから。」好きな共演者はオレリー・デュポン、そして第
一舞踊手で七年来の恋人でもあるミュリエル・ズスペルギーだ
という。
好きな振付家は?「エックやキリアンとはすでに仕事をしてき
たので、あとはフォーサイスですね。この三人は僕にとって、コ
ンテンポラリーの領域で仕事をしている最高のクラシックの振
付家。三位一体の神のような存在です!」
では最後に、エトワールの任務とは?「まず、カンパニーと
外の世界をつなぐ窓として重責を担い、輝いていること!次世
代のダンサーたちの、お手本にもならなくてはいけません。そ
して、自分が楽にこなせる”コンフォート・ゾーン”から大きく外
れた役でも、私情を抑えて踊らないといけない時がある。もち
ろんこれらはそもそも、ダンサーという仕事の一部なんですけ
どね」 (訳:長野由紀)
DANCE EUROPE
April 2012
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