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NEWS LETTER
2016.12月 M科図書委員会
機械工学科4年 中村佑です。実はわたくし1年生のころからこのNEWS LETTERに寄稿しております。
こっそり皆勤賞です。M科版限定ですが。今年はNEWS LETTERの制作を3年生にぶん投げて悠々
と課題に追われる毎日を送るはずが、只今日コミの論文提出に遅れながら図書紹介を書いており
ます。最近本読んでる暇ないよな、とか考えつつ件の論文を書くために読んだ本と、少し前に読んで
面白かった本をご紹介します。
図書紹介
猿の惑星ファイヤーストーム 著 グレッグキース
機械工学科 3年 中下陽平
私が紹介する本は、映画「猿の惑星創世記」直後の話を描いたものです。 本作の主人公である猿のシーザーは、数百頭の猿たちとともに自由を手にいれたが深刻
な食料不足に陥る。一方人類は、原因不明の伝染病が広がり始めた。本作の中には、様々
な人間が描かれている。伝染病への恐怖でパニックになる人々。パニック状態になった社会
を抑え、希望を見せようとする指導者。そして猿に対する執拗な猛攻撃をする部隊。
この話は、科学との向き合い方や、動物への虐待、そして様々な人間の心をリアルに描い
たメッセージ性の強い作品だと思っています。映画を見ていなくても考えさせられる話となっ
ておりますが,「猿の惑星創世記」そして「猿の惑星新世紀」を観てから読んでいただくとより
深く楽しめると思います。是非、手元にとって現実の社会と比べながら読んでみてください。
差別原論
著 好井裕明 出版 平凡社
日本語コミュニケーションの論文課題は要するに社会的な問題を、新聞記事(実例)を出す
ことで提示し、その問題について論を展開するといったところです。テーマは大まかに決め
られておりその範囲内であれば自由にできます。特徴であり、ネックでもあるのが新聞記事
またはそれに代わる何かを用いなければならないという点です。
この本を論文の資料として使ったことには2つの理由があります。ひとつは昨年すでにこ
の本を読んでいて、内容を把握していたことが挙げられます。まあそれはわたくし個人の話
なので傍に置いといて。もうひとつはこの本の持つ守備範囲の広さにあります。わたくしは
論文に取り組む際、明確なテーマ設定をする前からこの本を用いることを念頭に置いてい
ました。差別やそれが付随する問題を取り扱う場合に限りこの本の汎用性は非常に高く、
障害・癩・部落・在日 などなどと取り扱う内容が多岐にわたり、あとは適当な新聞記事を見
つけて資料を集めてしまえばもう準備完了、いつでも書けます。欲しい新聞記事が手に入
るとは限らないので、様々なテーマで扱える「差別原論」は非常に扱いやすい資料です。
かにみそ
著 倉狩聡
出版 KADOKAWA
この本は図書館に置いているのか確認しておりません。もし置いていないのなら興味のあ
る方はご自分でご購入なさるか図書館で入荷されるまで待つか、来年のブックハンティング
にご参加下さい。図書委員でなくとも参加は結構です。
この小説の魅力はなんといっても蟹、彼の身に詰まっています。流星群の翌日、20代無
職の私が浜辺で見つけた小さな蟹。興味が惹かれた私は蟹を拾って自宅で育てることにし
ます。蟹は底知れぬ食欲で、与えられるものをどんどん食べてどんどん大きくなっていき、
やがて人語を解するようになります。奇妙な蟹の食費を稼ぐため、夜型生活を一変し派遣
で働くようになります。新しい人間関係もでき、生活も新たになった私であったが、職場の上
司であり恋人の女性を衝動的に殺してしまう 。
何を言っているか訳がわからないかもしれませんが、この蟹は人語を解すのです。巨大
になった奇妙な蟹のその姿はまるでホラー映画の不気味な怪物のよう、けれどもどこか愛
嬌のある蟹に、わたくし中村はときめきを隠しきれません。もしも、こんな蟹が本当にいるの
なら、わたくしはこの蟹と素晴らしい関係を築きたいと考えております。ところで近頃寒くなり
ましたね、こんな日は蟹の入った鍋でも食べたいものです。
八戸ブックセンターのオープン シャーロック・ホームズの冒険
機械システムデザインコース 井関祐也
金田一耕助、ポアロ、浅見光彦、江戸川コナン・・・多くの探偵物の原点にして頂点で
あり、世界中で最も愛されている探偵が、ロンドンのベーカー街221Bに居を構えるシャー
ロック・ホームズその人だろう。知力、体力、洞察力に優れた変わり者。現代において
「探偵」というイメージを作り上げているのが彼の存在であり、近年の探偵物の多くに、彼
の影響が垣間見られる。
物語は基本的に、シャーロック・ホームズの相棒ワトソンの調査報告書というスタイル
で書かれており、ワトスン視点で執筆されている。世界的に人気を博しているシャーロッ
ク・ホームズであるが、ドイルが生前に残したホームズシリーズはたったの60話である。
これらは、5編の短編集、4編の長編から構成されているが、中でも「シャーロック・ホーム
ズの冒険」は衝撃的で斬新なトリックの数々が集められた良本である。「ボヘミアの醜
聞」、「赤毛組合」、「唇のねじれた男」、「まだらの紐」などホームズを代表する事件が収
められており、私がシャーロキアンとなったきっかけの本でもある。
シャーロック・ホームズはイギリスの医師コナン・ドイルがアルバイトで執筆したもので
あって、執筆業は決して彼の本業ではなかった。シリーズの後半ともなるとドイル自身、
ホームズの執筆に飽きてしまった部分あり、初期の作品ほど衝撃的なトリックは少なくな
いが、しかし面白い。
物語は1話につき40ページ程度なのであっさりと読むことが出来る。文学的な文章の美
しさや比喩表現などは乏しい小説だが、次々と明らかになってくる事件の謎を読み解く
面白さがある。読者はいつしか、自分自身がワトソンになり、ホームズと共に調査を進め、
時には彼にからかわれているような、そんな不思議な感覚に陥るだろう。
シャーロック・ホームズと相棒ワトソンとの冒険が読者を19世紀のロンドンへと時間と場
所を超越して誘ってくれるだろう。
あるいは人はどのようにして本と出会うか
総合科学教育科 戸田山 みどり
八戸市の中心街、はっち(と逆からはパチンコ店ね)の向いに建ったビルのなかに、12月初旬、八戸ブックセ
ンターがオープンした。もうすでに見に行かれた方もおられるだろう。それほど広いスペースではないが、テー
マ別に、「これはなかなかお目が高い」という本が並んでいる。学生時代にお世話になった懐かしい名著もあれ
ば、へえ、こんな本が出ているのか、と思うものまでさまざまで、棚を見ているだけでもけっこう時間が経ってし
まう。お時間に余裕があればちょっと座って読めるスペースもあり、コーヒーを買って腰を落ち着けることも(椅
子が空いていれば)可能だ。だが、私のように、閉店30分前に駆け込むようなお客は、だあーっと眺めて、ここ
で買っておかないときっと二度と手に入らないだろう、という強迫観念に駆られて、ぎりぎりになってカウンター
に本を積み上げることになる。3回行って2回買い物をした。お財布が不安になったので、この一週間は近寄ら
ないようにしている。
初日の夜行った時には、すでにめぼしいものが売れてしまっていたのではないかと危惧したが、だいじょうぶ、
それでも選択に苦労した。その日の収穫は以下の通り: 1)田中禎彦監修 『死ぬまでに見たい洋館の最高傑作』(エクスナレジ) ̶̶ おもに東京周辺の洋館を紹介した
写真集。洋館見学は私の小学生の頃からの趣味(小学生の時には、そういう言葉は知らなかったけど)。
2) イアン・マキューアン 『アムステルダム』(新潮文庫) ̶̶ イギリスの現代作家の小説。久しぶりに大人な
小説が読んでみたくなったのだ。
3) 二宮敦人『最後の秘境 東京藝大』(新潮社) ̶̶ 高校生の頃、一番入りたかったが、才能がないと知って
諦めた大学だ(もちろん入ろうと思ったのは美校のほう。音楽は小学校一年生で諦めた)。これは無理だと実感。
4) スティーブン・ワインバーグ 『科学の発見』(文藝春秋) ̶̶ 「快刀乱麻の科学史」という帯の惹句に負けた。
あとで、この著者の『宇宙創世はじめの3分間』(ちくま学芸文庫)をはじめの30ページで諦めていたことに気が
ついたが、今度は宇宙ではなく人間の歴史なので、なんとかなるかと期待。
5) 石井桃子 『山のトムさん』 (福音館書店) ̶̶ ピーター・ラビットやくまのプーさんの翻訳をした偉大な児童
文学者の、戦後まもない頃の宮城での開墾生活の経験にもとづいた小説。ずいぶんとワイルドな生活だったよ
うだ。トムは一家の雄猫の名前。ずっと、読みそびれていたものに本棚で出会った。
1週間後、ふたたび店内に吸い込まれた。今回手に取ったのは;
1) 宮沢章夫 『演劇は道具だ』(イースト・プレス) ̶̶ 帯に「名著、復刊!」と書いてある。2006年に出た本だ
が、買いそびれていたものだ。ほらね、本はうっかりすると手に入らなくなるのだ。
2) 温又柔 『台湾生まれ日本語育ち』(白水社) ̶̶ 17日にブックセンター主催の講演会が予定されていて、
その講師の1人のエッセイ集。店内に積んであった。結局、講演会には行けなかったが、ことばとか異文化間コ
ミュンケーションとかを考えるのに役にたつかな、と思う。台湾は行ったことがあるし、いいところだし。
3) 五十嵐泰正・開沼博責任編集 『常磐線中心主義』 (河出書房新社) ̶̶ 書棚を眺めていて見つけたもの。
こんな本が出ていたのか。開沼の『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』は刺激的な本だった。そし
て、今月末、演劇部の東北大会を見に行く(残念ながら出場ではない)ために、初めていわきに行く予定だ。そ
のあとは常磐線で東京に帰る。千葉県民時代に縁のなかった常磐線だが、「大都市を下支えする〈言葉なき地
方〉」とか書かれていたら、手に取らないわけにはいかない。それに私は、実はけっこう鉄ちゃんでもある。
こうしてみると、ほんとうに行き当たりばったり、という感じだが、これが良い書店のすばらしいところ。
だが、お気づきのように、ここに紹介したのは「私が読んだ本」ではない(『トムさん』はめでたく読了、『藝大』も
概ね読了、『洋館』は半分くらい、あとは頭の部分やしっぽの部分をつまみ読み)。どちらかというと、「これから
読む本」だ。もしかすると全部は読まない本もあるかもしれない。でも、持っていればいつかは読むかもしれな
い。
本屋で本を買うことは図書館で借りるのとはちょっと違う。それは長い付き合いの始まりを意味する。そしてイ
ンターネットの本屋と違い、リアル本屋は思いがけない出会いの場だ。私は一目惚れなんてあまり信じないほ
うだが、本との出会いだけは別だ。しかも、本はほっておいても待っていてくれる。
そういう出会いの場が、八戸のまちなかに一つ増えたのだ。
どうか、みなさんも冬休みには、地元のあるいは旅先の本屋さんで、すばらしい出会いがありますように。