コンクリート床版の 複合防水材料について

関西道路研究会 技術講演会
コンクリート床版の
複合防水材料について
平成27年9月11日
ニチレキ(株) 森端 洋行
内
容
1.橋梁について
2.床版防水の種類とその役割について
3.コンクリート床版の複合防水材料について
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1.橋梁について(現状)
●供用50年以上となる橋が一気に増える
●道路橋に要求される性能が増える
・長く大事に保全し、安全で安心な道路サービスを提供する
・ライフサイクルコストの縮減等を図る
●橋梁長寿命化計画策定率は80%を超えており、
修繕実施率も上昇し続けている。
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1.橋梁について(防水工法の多様化)
付加価値のある、新しい床版防水が運用されだした。
防水工法も多様化している。
防水工法は大別して、以下の3種類に分類される。
●⼀般防⽔
●⾼性能防⽔
●複合防⽔(⼆重防⽔)
etc…
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1.橋梁について
橋には何が求められている?
①建設した橋は、より長く供用すること
②適切な設計・メンテナンスをして、補修回数を減らす
こと
なぜ?
①建設費用が高く、また景観を損ねることもあるため。
多く造ることができない。
②迂回路が確保できない。(代替道路の確保が困難)
③交通車両が集中するため渋滞が激しい。
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1.橋梁について
床版はどうして破損していくのか?
●床版の主たる損傷は、ひび割れの発生と鉄筋の腐食
ひび割れの
発生原因
・・・・・ 交通荷重
アルカリ骨材反応
セメントコンクリートの乾燥・収縮
鉄筋の腐食原因 ・・・ 塩化物(凍結防止剤、海水)の侵入(塩害)
コンクリートの中性化
損傷の促進要因 ・・・
雨水の浸透
凍結融解作用
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1.橋梁について
舗装はどうして破損していくのか?
●舗装の主たる損傷は、剥離、塑性流動、段差
剥離の発生原因 ・・・ 防水上や舗装内の水の存在
コンクリートの中性化
塑性流動の
発生原因
・・・ 車両の渋滞、車両走行位置の固定化
段差の腐食原因 ・・・ ジョイント部のコンクリートとの硬さの違い
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2.床版防水
防水はなぜ必要か?
●床版に水が入ると乾燥状態に比べて早く床版が破損する。
●床版に塩化物が入ると鉄筋が腐食する。
道路橋示方書(S48)の基準で
作成した床版で
乾燥状態と湿潤状態の疲労
強度が同じ値の時の載荷回
数(N)を比較すると、湿潤状
態では乾燥状態に比べて
50~300倍の速さで破壊する
ことが報告されています。
図.輪荷重走行試験結果
引用:道路橋床版防水便覧
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2.床版防水
防水の種類
●一般防水
・国交省、県市町村、都市高速など全市場に適用
・NEXCOの補修橋
●高性能防水
・高耐久性が要求される箇所に適用
・NEXCO新設橋での適用が多い
●複合防水
・床版の微細なクラックに含浸し、床版自体に防水機能を与
えることが出来る。
・注目、技術開発が進められている工法である
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一般防水とは
シート系床版防水層
流し貼り型
加熱溶着型
常温粘着型
塗膜系床版防水層
アスファルト加熱型
ゴム溶剤型
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シート系床版防水層
工場製品の防水シートを使用した防水層
○基材にポリエステル系やガラス繊維などの
不織布や織布に改質アスファルトを含浸させたシート
○厚さは1.0~3.5mm程度
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シート系床版防水層 流し貼り型
・貼付用アスファルトで防水シートを貼付
・新設時、打換え時ともに使用実績が多い
・舗装時日当たりの施工量
300~500㎡
・防水材舗設後の養生時間なし
・歩道など舗装厚さが薄い場合、供用後ブ
リスタリングが発生することがある
プライマ塗布
舗装
シート系防水材
貼付用アスファルト
溶剤型アスファルトプライマー
コンクリート床版
標準断面
シート系防水材の貼付け
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シート系床版防水層 加熱溶着型
・電気ヒータ、トーチバーナでシートを
加熱しながら施工
・床版の凹凸が大きい箇所には不向き
・舗装時日当たりの施工量
300~500㎡
・防水材舗設後の養生時間なし
施工状況(電気ヒータ)
舗装
シート系防水材
溶剤型アスファルトプライマー
コンクリート床版
標準断面
施工状況(トーチバーナ)
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シート系床版防水層 常温粘着型
・防水シートの持つ粘着力で、
床版に直接シートを貼付ける。
・施工性に優れ、使用実績が多くなって
きている(新設時、打換え時とも)
・舗装時日当たりの施工量
400~600㎡
・防水材舗設後の養生時間なし
施工状況
舗装
シート系防水材
溶剤型アスファルトプライマー
コンクリート床版
標準断面
完成状況
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塗膜系床版防水層 アスファルト加熱型
・加熱溶融し防水材を大刷毛で塗布
・舗装打換え時、歩道部の使用実績が
多い
・舗装時日当たりの施工量
500~700㎡
・防水材舗設後の養生時間なし
・ブリスタリングの発生が比較的低い
施工状況(大刷毛による塗布)
舗装
珪砂
塗膜防水材
溶剤型アスファルトプライマー
コンクリート床版
標準断面
施工状況(珪砂散布)
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高性能防水とは
●一般防水の初期性能に加え、長期的に高い性能が
要求される場合に適用する防水
NEXCOでは30年持つ防水層として、下記の
負荷試験を規定している。
○温冷・薬品負荷
○交通荷重負荷(ホイールトラッキング負荷)
○ひび割れ開閉負荷
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高性能防水とは
○温度変化および薬品負荷試験
右図の1サイクルを1年間相当の負荷とみなし
30サイクル(30年)の負荷を与える
○交通荷重負荷(ホイールトラッキング負荷)
載荷走行時間は、30年間で表層全面打換えを2回と考え、
120分としている
○ひび割れ開閉負荷
繰返しひび割れ開閉回数は、東名・名神の大型車交通量
(1日1方向(2車線)あたり15,000台/日)におけるひび割れ開閉
から算定し、30年に相当する480万回としている
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温度変化および薬品負荷試験
30サイクル=30年(1サイクル=1年)
60
温度(℃)
50℃ 4h
40
水浸(アルカリ溶液) 16h
20
0
-10℃ 4h
-20
(寒冷地 -30℃)
0
3
6
9
12 15 18
21 24
時間(h) 1サイクル=24時間
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温度変化および薬品負荷試験
ホイールトラッキング負荷
低温養生 4hr(-10or-30℃)
薬品に浸漬 16hr
30サイクル後
輪荷重
ホイールトラッキング負荷
ホイールトラッキング負荷
(60℃×2時間)
高温養生 4hr(50℃)
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ひび割れ開閉負荷
①温度変化および薬品負荷(30サイクル)
②ホイールトラッキング負荷
⇒幅15cm(トラッキング方向)にカット
③中央部に切り込み(AS/Co双方)
④防水層を残してAS/COの双方にひび割れ
幅15cm
ひび割れ開閉(前)の供試体作製状況
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ひび割れ開閉負荷
○負荷条件
・試験温度
23℃
・初期ひび割れ幅 0.25mm
・正弦波
10Hz
・供試体寸法 30×15cm
・振 幅
±0.15mm
・開閉回数
480万回
振幅;0.3mm
回数 :480万回(正味6日間)
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ひび割れ開閉負荷
7cm
15cm
7cm
7~8cm
負荷後の供試体
7×7×7~8cmに整形後
防水性試験Ⅱ 照査試験供試体
防水性試験Ⅱを実施
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合否判定;漏水なし
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合否判定(防水性試験Ⅱ)
アスコン
防水層
コンクリート
試験後供試体
(割断面)
蛍光ランプ
照射
漏水なし⇒合 格
アスコン
防水層
Co版
漏水判定
漏水あり⇒不合格
蛍光塗料の浸透を見て合否
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漏水が明らかに判別できる
高性能防水の断面例(1)
HQトップAU(端部保護材)
基 層
HQラバソイドⅡ(防水シート)
HQファルト(貼付用アスファルト)
HQプライマーⅡ(二次プライマー)
5号珪砂
HQプライマー(一次プライマー)
床版部
HQプライマーAUⅡ(端部二次プライマー)
HQハイブレンAU(端部防水材)
HQプライマーAU(端部一次プライマー)
端部
一次プライマー
:HQプライマー
一次プライマー
:HQプライマーAU
〃
:5号珪砂
防水材
:HQハイブレンAU
二次プライマー
:HQプライマーⅡ
二次プライマー
:HQプライマーAUⅡ
貼付用アスファルト
:HQファルト
端部保護材
:HQトップAU
防水シート
:HQラバソイドⅡ
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高性能防水の断面例(2)
床版部
端部
プライマー
:HQプライマーAU
プライマ
:HQプライマーAU
防水材
:HQハイブレンAU
防水材
:HQハイブレンAU
舗装用接着材
:HQコートAU
舗装用接着材
:HQコートAU
付着防止剤
:4号珪砂
端部保護材
:HQトップAU 25
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3.コンクリート床版の複合防水材料について
浸透系材料(床版に浸透して機能を付与する)と,
従来のアスファルト加熱型塗膜系防水材を組み合わ
せた工法。
一般防水とは,プライマーが異なる。
防水層の種類
プライマー
防水層
塗膜系床版防水層
アスファルト加熱型
溶剤型プライマー
アスファルト加熱型
複合防水
浸透系防水材料
アスファルト加熱型
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複合防水とは
●複合防水は、塗膜系防水層(アスファルト加熱型)と
プライマーが樹脂系である。
●プライマー(浸透系防水材料)が床版表面に浸透して
防水機能を付与する。
●床版に発生している細かなひび割れ、舗装切削時に
発生する微細なひび割れに浸透し、補修することで
床版の耐久性を向上させる。
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複合防水とは
第1次防水層 浸透系防水
アクリル系
エポキシ系
エポキシアクリレート系
第2次防水層
塗膜系床版防水層
アスファルト加熱型
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複合防水工法の特徴
①床版の微細なクラックに含浸して補修することで,床
版の耐久性を向上させる
②床版表面に浸透し,塗膜系加熱型防水層の防水性を
向上させる
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施工手順
浸透系材料塗布工
塗膜系防水材塗布工
吹付またはローラー塗布
大刷毛による塗布
4号硅砂散布
4号硅砂散布
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施工手順
床版清掃状況
加熱型塗膜系防水材の施工状況
浸透系材料の塗布状況
4号珪砂散布終了
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施工手順(手順毎の留意点)
①下地調整および清掃
・アスファルト層は残らないよう除去
・清掃は丁寧に行う.
・散水は最小限にする.
②浸透系防水材料の混合攪拌
・所定量塗布する.
・主剤、硬化剤を所定量
計量し均一に混合する.
・気温により、硬化促進剤を添加する.
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施工手順(手順毎の留意点)
③浸透系防水材料の塗布
・表面の乾燥状態を確認する。
・浸透系防水材料は所定量塗布する。
・降雨中は作業しない。
・強風時の施工は飛散するため避ける。
・可使時間を超えた材料は使用しない。
④珪砂散布
・浸透系防水材料塗布後、
珪砂を所定量散布する。
・珪砂が固着するまで養生する。
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施工手順(手順毎の留意点)
⑤アスファルト加熱型防水の
溶解・塗布
・溶解には専用の溶解釜を使用する.
・局部加熱防止のため、適宜攪拌する.
・所定量塗布する.
⑥珪砂散布
・アスファルト加熱型防水施工後
直ちに珪砂を散布する.
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長寿命化のためには 床版をどのように守るか
水、塩化物から床版を守る
床版防水
防⽔
水、塩化物の浸入を防ぐ
止水処理
⽌⽔
⻑寿命化
排⽔
入った水を素早く排出する
排水設備
舗装
快適な走行環境を提供する
舗装技術
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終
ご清聴ありがとうございました
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