Contents 1-2 学部⻑インタビュー 3-4 4つの個性が輝く ⻭学部の学⽣たち 5 副学部⻑インタビュー 6 7 8 9 10 11-12 13 14 Human Mouth to Gateway of Whole Body 15 16 17-18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35-37 38 【⻭学部動向レポート】 臨床と研究の融合-5年⽣合同研究発表 バイオデンタル・コロシアム/ひろしまイニシアティブ Biodentai教育 実践教育の場としての広島⼤学病院 【国際化戦略】 ASEANと⽇本の懸け橋・欧⽶とのクロスサークル Hiroshima Conference 3年⽬を迎えた国際⻭学コース 国際⻭学コース1期⽣インタビュー 【最先端研究紹介】 ⼝腔顎顔⾯病理病態学 ⾼⽥隆教授 ⽣体分⼦機能学 宿南知佐教授 霞キャンパスライフ ⻭学科で学べること 基礎⽣命科学部⾨ 硬組織代謝⽣物学 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔細胞⽣物学 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔⽣理学 基礎⽣命科学部⾨ ⽣体分⼦機能学 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔顎顔⾯病理病態学 基礎⽣命科学部⾨ 細菌学 基礎⽣命科学部⾨ 細胞分⼦薬理学 基礎⽣命科学部⾨ ⽣体材料学 基礎⽣命科学部⾨ 粘膜免疫学 応⽤⽣命科学部⾨ ⻭周病態学 応⽤⽣命科学部⾨ 分⼦⼝腔医学・顎顔⾯外科学 応⽤⽣命科学部⾨ ⼝腔外科学 応⽤⽣命科学部⾨ 先端⻭科補綴学 応⽤⽣命科学部⾨ ⻭科矯正学 応⽤⽣命科学部⾨ ⻭科放射線学 統合健康科学部⾨ ⼩児⻭科学 統合健康科学部⾨ 健康増進⻭学 統合健康科学部⾨ ⻭科⿇酔学 統合健康科学部⾨ 国際⻭科医学連携開発学 病院 ⻭系総合診療科 ⼝腔総合診療科 病院 ⼝腔健康発育⻭科 障害者⻭科 ⼝腔健康科学科で学べること 統合健康科学部⾨ 公衆⼝腔保健学 統合健康科学部⾨ ⼝腔発達機能学 統合健康科学部⾨ ⼝腔保健管理学 統合健康科学部⾨ ⽣体構造・機能修復学 統合健康科学部⾨ 医療システム・⽣体材料⼯学 統合健康科学部⾨ ⼝腔⽣物⼯学 データで⾒る⻭学部 広島⼤学⼤学院 医⻭薬保健学研究科紹介 01 ⻭学部学部⻑インタビュー ⻭学部国際化と超⾼齢社会を⽀える ⼝腔医療教育システムの構築 鍵は「⼝腔は⾝体全体のゲートウェイ」 広島⼤学⻭学部は 1965 年設置された。来年 2015 年は 50 周年となる。次の半世 紀の⼊り⼝に⽴つことになる。おりしも⽇本の社会は超⾼齢化の加速時期に⼊ってい く。広⼤⻭学部は 10 年以上も前から時代を⾒越して「21 世紀型⼝腔医療⼈」の育成 を⼿掛けてきた。⼀⽅で⻭学部が進めてきた国際化-⻭学部国際化戦略と 21 世紀型⼝ 腔医療⼈のクロスポイントが明確な輪郭をもちはじめている。 ―国際⻭学コースが今年で 3 年⽬を迎えます。 アの留学⽣は、インドネシアにしてもベトナム にしてもカンボジアにしても超優秀です。 「⽇ 本 語・英 語 を 併 ⽤ す る(Dual-Linguistic つい先⽇タイのマヒドン⼤学に国際交流協定 Education System)国際⻭学コースですが、学 締結のために⾏ってきました。マヒドン⼤学⻭ ⽣の⽅がはるかに順応が早い。その点ではス 学部も⾒学しました。すると最新式の⽇本製デ ムースにいっているようには⾒えます。むしろ ンタルチェアが 600 台以上も設備されている。 私たち教員の⽅が後追いになっている側⾯があ またヨーロッパ製の最新式コンピュータ制御臨 ります。しかし国際⻭学コースは、21 世紀型 床実習システムを 230 台くらい揃えている。 ⼝腔医療⼈育成の鍵を握るプログラムであり、 ⻭学部には 1 学年 130 ⼈から 140 ⼈くらいの ⻭学部教員全体の並々ならぬ情熱の結晶です。 学⽣がいる。とにかく規模が⼤きい。それとは みんなで頑張って軌道に乗せてきたんじゃない 別に私たちと同じような国際⻭学コース開設を かと思います。 準備していて、1 学年 60 ⼈から 70 ⼈の学⽣ しかし私たちの望みは⾼いのでこれから改 を 募 集 し よ う と し て い ま す。2015 年 か ら 善・発展させていきたいと考えています。 ASEAN 諸国は域内統合を開始しますよね(10 このところ学部⽣の国際交流協定校への留学 ⾴参照のこと)明らかにそれをにらんだ動きです。 派遣や留学受け⼊れが増えて多くの学⽣が出⼊ ASEAN 諸国から学⽣を集めて教育しようとい りするようになりました。(37 ⾴参照のこと)学 うことです。もちろん授業は全部英語です」 ⽣が提出するレポートを読んでみると、やはり ―「アジアに根差した⻭学教育・研究の国際拠 インパクトがあります。まず外国に⾏くとか、 点」作りを⽬指す広⼤⻭学部国際化戦略と競合 英語を使うとか何か特別なことに取り組むとい するんじゃないですか? う気負いがなくなっている。⽇本国内に⾏くの 「もちろん競合しますよ。だからいいんです。 と同じ感覚で、たとえばインドネシアのアイル 競合、競争にないところに発展はないのですか ランガ⼤学へ⾏って交流して学んで帰ってく らね。どこの世界でもこれから必要だ、と考え る分野だからみんな参⼊する、そして競争が⽣ る。 しかし確実にグローバル基準でものごとを評 まれ発展する、これがパターンです。私はマヒ 価するセンスが⾝についていっています。そう ドン⼤学のダイナミックな動きを⾒て、私たち すると今度は、グローバル基準に照らした時の のとってきた国際化戦略は正しかった、と確信 ⾃分への評価、⾃分が⻭学部⽣としてもってい しました。 るものは⼀体なんなのか、と考えざるを得ない。 タ イ は 臨 床 に 関 し て は ⾃ 信 を 持 っ て い る、 イギリスへ⾏っても、カナダへ⾏っても、ベ ASEAN 諸国のリーダーを⽬指しています。ア トナムへ⾏っても⾃分が⻭学部⽣としてちゃん ジアは下で欧⽶は上などという旧来のものの⾒ と通⽤するのか、⾃分がグローバルに通⽤する ⽅で世界を⾒ることはできなくなっています。 ⻭学部⽣なのかという点に思いを馳せることに なります。そこに⼀番⼤きな教育効果を⽣むの 図1 インタープロフェッショナル教育 ではないか、と思います。 〜学部時代から⼀緒に学ぶ専⾨職プロ集団〜 国際⻭学コースも外国⼈留学⽣とクラスメー ⼝腔からの QOL 向上 トとして⼀緒に学んで、英語の⼒がつく効果も さることながら、グローバルな基準で評価でき チ ム医療 チーム医療 るセンスをもった⼈材を育成できるわけです」 (13 ⾴・14 ⾴参照のこと)国際化の進展は? 広島⼤学⻭学部 学部⻑ 菅井 基⾏ 教授 (細菌学) 【写真1】ベトナム:ホーチミン市医科薬科⼤学⻭学部内 に新設された広⼤⻭学部との「Oral Health Collaboration Research Center」写真は開所祝いの様⼦ 【写真2】マヒドン⼤学⻭学部にあるコンピューター制御の 模擬臨床実習装置。1台2,300万円程度。同⻭学部にはこの 装置が約230台装備されているという。 【写真3】マヒドン⼤学⻭学部 は最近研究にも⼒を⼊れはじ めた。(⻭学部研究ユニット内部) 【写真4】マヒドン⼤学⻭学部には⽇本製の最新式デンタル チェアが600台以上⼊っている。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 臨床ではひけをとらなくなっている ASEAN ⼀部先進国 「世界を公平に評価できる⽬をもつことがで きる⼈材を育成できる、といういい⽅もできる でしょう」 欧⽶、アジア、⽇本・・・優れているものは優 れている。先⼊観にとらわれず世界を公平に⾒ る⽬を養うことが重要というのだ。 「実際に、国際⻭学コースにやってくるアジ ⻭科技⼯⼠ ⻭科医師 (オーラル・エンジニア) 患者 管理栄養⼠ ご家族 ⻭科衛⽣⼠ (オーラル・ヘルス ・マネージャー) 作業療法⼠ 理学療法⼠ 介護福祉⼠ 看護師 医師 様々な専⾨職種による対等なチーム医療 ⻭学部学部⻑インタビュー 02 【写真説明】 1960 年代、開設当初の霞キャンパス 学⽣のみなさんには是⾮グローバルにものを⾒ る⼒を養って欲しいですね」 い。これを学部⽣時代から学ぶ必要があるわけ です」 「⻭科医師は、バイオロジーに基づいた⼝腔 インタープロフェッショナル教育 医療の専⾨家(バイオデンティスト)にならない 「し か し ア ジ ア の 諸 国 も ま だ イ ン タ ー プ ロ といけないし、⻭科技⼯⼠はもしかすると⼝腔 フェッショナル教育(Inter-professional 医療の枠も⾶び出した医療⼯学の専⾨家として 医療全体を下⽀えする専⾨家になっていくで Education=IPE)など⻭学教育システムの整 備などと⾔う点ではまだ弱い。広⼤⻭学部では、 しょうし、⻭科衛⽣⼠はそれこそ “ゆりかごか そうした教育・⼈材育成システムをキッチリ構 ら墓場まで” ⼀貫して『⼝腔から全⾝の健康を 築していくかが⼤切な課題、グローバルに通⽤ 管理』する専⾨家として主役の座に躍り出るこ する⻭科医学教育システムを構築していくこと とになります。 もう⻭科医師が経験やカンだけで患者さんの が鍵になると思います」 ⻭を治療している時代ではなくなっています。 -インタープロフェッショナル教育とは? 「患者さんを中⼼にして医療専⾨家がお互い それぞれ専⾨家が、お互いに連携して患者さん に対等の⽴場で医療を展開することをチーム医 の治療にあたる時代です。そうしたインタープ 療といいますが、インタープロフェッショナル ロフェッショナル教育をひとつの体系だった教 教育(IPE)はこのチーム医療を体系的に学んで 育システムとして構築し、グローバル基準に合 ⾝につける教育をいいます。(図1参照のこと) 致した教育システムに仕上げて⾏かなくてはな 学部⽣時代から医療専⾨家がお互いに連携して りません。そうすると私たちがこの教育システ 患者さん中⼼の医療を学んでいく必要がありま ムをアジア諸国などに『輸出』でき、世界の⼝ す。この点では ASEAN 諸国はまだまだ医師、 腔医療の発展に貢献できるようになるわけで す」 ⻭科医師中⼼の医療です」 -なぜ IPE が必要なんですか? 『研究』の重要性と 「いま⽇本はもの凄い勢いで超⾼齢化が進ん アジア諸国からの期待 でいる。そうした社会で私たち医療⼈は、“ゆ りかごから墓場まで” の⼝腔医療全体を⽀える 「それと私たちが世界に、特にアジア諸国に 貢献できる分野は『研究』です。アジアの⼀部 体制を作っていかなければならない。 医療全体ではもちろんのことですが、私たち の国では臨床は相当進んでいます。しかし『研 ⼝腔医療分野に限ってみても、⻭科医師、⻭科 究』分野では欧⽶や⽇本に⽐べまだまだ未発達 衛⽣⼠、⻭科技⼯⼠という 3 つの専⾨職種があ で、国によっては研究の環境そのものが整備さ ります。超⾼齢社会の患者さんの特徴として、 れていない場合もあります。私たちはこうした これまでのような⻭科医師中⼼の医療では⽀え 場合に研究環境整備に協⼒する(1 ⾴写真 1 参照 きれなくなっています。(5 ⾴「副学部⻑インタ のこと)と共に、積極的に⻭学系⼤学院に院⽣ を受け⼊れて⼈材の育成に⼒を注いでいます。 ビュー」参照のこと)3 つの専⾨職種がお互いに 連携して⼝腔医療を⽀えていかなくてはならな 実際、国際⻭学コースに受け⼊れる留学⽣は全 広島⼤学⻭学部の沿⾰ 1965 年 4 ⽉ 昭和 40 年 1966 年 4 ⽉ 昭和 41 年 1967 年 4 ⽉ 昭和 42 年 1967 年 5 ⽉ 1967 年 6 ⽉ 昭和 42 年 昭和 42 年 1968 年 4 ⽉ 1969 年 4 ⽉ 1972 年 4 ⽉ 昭和 43 年 昭和 44 年 昭和 47 年 1973 年 4 ⽉ 昭和 48 年 1978 年 4 ⽉ 昭和 53 年 1979 年 4 ⽉ 1987 年 4 ⽉ 2000 年 4 ⽉ 昭和 54 年 昭和 62 年 平成 12 年 2001 年 4 ⽉ 平成 13 年 2002 年 4 ⽉ 平成 14 年 2003 年 10 ⽉ 平成 15 年 Brief History of the Faculty 広島⼤学に⻭学部設置 ⻭学部学⽣定員 40 名 第1回⼊学宣誓式を⾏い、学⽣ 42 名に⼊学を許可 ⼝腔解剖学第⼀、⼝腔⽣理学、⼝腔⽣化学、⼝腔病 理学の4講座設置 ⼝腔解剖学第⼆、⼝腔細菌学、⻭科理⼯学、⻭科保 存学第⼀、⻭科補綴学第⼀、⼝腔外科学の6講座増 設 ⻭学部運営委員会を廃⽌して⻭学部教授会発⾜ ⻭学部附属病院設置(第⼀保存科、⼝腔外科、第⼀ 補綴科) (外来棟第 1 期⼯事は 5 ⽉に完成) ⻭科薬理学、予防⻭科学、⻭科矯正学の3講座増設 ⻭科保存学第⼆、⻭科補綴学第⼆の2講座増設 ⼤学院⻭学研究科(博⼠課程)設置 第1回⼤学院 ⻭学研究科⼊学式 ⼝腔外科学第⼆の1講座増設、それまでの⼝腔外科 学を⼝腔外科学第⼀に改称 ⻭科放射線学の1講座増設 ⻭学部学⽣定員 80 名 に増員 ⼩児⻭科学の1講座増設 ⻭学部学⽣定員 60 名に変更 ⻭学部学⽣定員 55 名に変更 ⻭科⿇酔学の1講座増設 ⼤学院⻭学研究科2専攻を1専攻に改組 最先端⻭学研究コース、臨床⻭科医学コースの 2 コーススタート ⻭学部 19 ⼩講座を 5 ⼤講座に改組 ⼤学院医⻭薬学総合研究科に改組 医学部附属病院と⻭学部附属病院を統合、広島⼤学 病院となる 2004 年 4 ⽉ 2005 年 4 ⽉ 平成 16 年 平成 17 年 2006 年 1 ⽉ 2007 年 10 ⽉ 2008 年 10 ⽉ 2009 年 4 ⽉ 平成 18 年 平成 19 年 平成 20 年 平成 21 年 2009 年 11 ⽉ 平成 21 年 2010 年 4 ⽉ 平成 22 年 2010 年 10 ⽉ 平成 22 年 2010 年 11 ⽉ 平成 22 年 2011 年 4 ⽉ 平成 23 年 2011 年 9 ⽉ 2011 年 10 ⽉ 2011 年 10 ⽉ 2012 年 4 ⽉ 平成 23 年 平成 23 年 平成 23 年 平成 24 年 2012 年 4 ⽉ 平成 24 年 2012 年 10 ⽉ 平成 24 年 2013 年 10 ⽉ 平成 25 年 員優先的に最先端⻭学研究コースに所属するよ うにしています。 しかしアジアの国々の研究や基礎科学に対す る熱意は凄いですよ。ICDD センター(13 ⾴参 照のこと)でインドネシアのアイルランガ⼤学 やベトナムのホーチミン市医科薬科⼤学と国際 テレビ会議システムを通じてこちらから双⽅向 の講義を送っているんですが、先⽇も⾕本先⽣ (26 ⾴参照のこと)の講義の時には、アイルラン ガ⼤学⻭学部では 160 ⼈以上も参加してくれ て、多くの質疑討論が⾏われていました。私た ちの教育サービスの『輸出』がいよいよはじま るのかな、と感じます」 超⾼齢社会に対応する体制構築 -来年はいよいよ 50 周年です。⻭学部の歴史 を⾒てみると(表 1 参照のこと)はじめの 30 年 間位は総合的な⻭学部基礎構築の時代、次の 20 年間、特にここ 10 年は、⽇本では極めて ユニークなグローバルに通⽤する⻭学部建設急 進展の時代、という感じがします。これからの 課題はなんでしょうか? 「いやぁ、取り組まなければならない課題が いっぱいありすぎて…。⼀⾔でいえば、超⾼齢 社会に対応した全く新しい⼝腔医療体制の構築 とそれを⽀えるシステマティックな教育システ ムの創造、そして新たな時代に対応した⼝腔医 療⼈を、続々、社会に送り出すこと、というこ とになるでしょう。簡単な仕事ではありません が。そのモデルを私たちが今つくっておくこと、 このことが⽇本のみならず、世界に、特にアジ ア諸国に対する⼤きな貢献になるのだと思いま す。やがてアジアの諸国も21世紀後半の遅く ない時期に⾼齢社会、超⾼齢社会に突⼊し、私 たちと同質の問題を抱えていくのですから…」 国⽴⼤学法⼈広島⼤学となる ⻭学部⼝腔保健学科(4 年⽣)設置、⼝腔保健衛⽣ 学・⼝腔保健⼯学の 2 専攻制 広島⼤学⻭学部創⽴ 40 周年 第 1 回 Hiroshima Conference 開催 第 2 回 Hiroshima Conference 開催 ⼤学院バイオデンティスト育成プログラム開始 ⼤学院医⻭薬学総合研究科⼝腔健康科学専攻(修⼠ 課程)設置 ⻭学部⼝腔保健学科から⻭学部⼝腔健康科学科に名 称変更 第 3 回 Hiroshima Conference 開催 ⼝腔健康科学科の専攻名称を、⼝腔保健学専攻、⼝ 腔⼯学専攻に変更 バイオデンタルカリキュラムセンター設置 学部バイオデンタル教育プログラム開始 ⼤学院医⻭薬学総合研究科⼝腔健康科学専攻(博⼠ 課程後期)設置 ⻭学部⻭学科学⽣定員 53 名に変更 国際⻭科医学連携開発センター(ICDD) 設置 学部⽣の短期留学 ( 派遣と受⼊)制度開始 ⻭学部国際⻭学コーススタート 第 4 回 Hiroshima Conference 開催 ⼤学院医⻭薬学総合研究科と保健学研究科を改組 し、⼤学院医⻭薬保健学研究科を設置。⻭学専⾨プ ログラム(⻭学講座)、⼝腔健康科学専攻(クリニ カルコース、リサーチコース) (⼝腔健康科学講座) などを設置 ⻭学部国際⻭学コース授業開始 学部⽣の短期留学(6 カ⽉)受け⼊れ開始 第 5 回 Hiroshima Conference 開催 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 03 4つの個性が輝く⻭学部の学⽣たち 4つの個性が輝く 最先端⻭学研究コース 臨床⻭科医学コース 医学コ ス 病理学に魅せられて 研究コースへ、将来 は専⾨臨床医に 超⾼齢社会―全⾝が 理解できる⼝腔臨床 ⻭科医師に 佐久間さんは⼊学時、研究コース を選択することは考えてもいなかっ た。専⾨科⽬で学んだ⼝腔病理学の ⾯⽩さに魅せられて最先端⻭学研究 コースを選択する… 奥⽥さんは⻭学科 2-3 年の時に、 ⼊学前時に持っていた「町の⻭医者 さん」的⻭科医師像が⼀変したとい う。新たにできあがった⻭科医師像 とは、⼀⾔でいえば⼝腔から全⾝を 理解できる⼝腔臨床⻭科医師、とな ろう。 ⻭学科 5年⽣ 最先端⻭学研究コース 佐久間 美雪さん Miyuki Sakuma ―最先端⻭学研究コースを選択した理由を教えて下さい。 「私は⻭科医師になりたくて浪⼈までしてこの学部に⼊って来た んです。卒業して⻭科医師の資格をとったら、すぐに現場の臨床医 になるつもりでした。ですから⾃分が研究コースを選択するなんて 思っても⾒なかった。ところが専⾨科⽬がはじまって、⼝腔の状態 が全⾝疾患に密接に関連していることを知ってから、⻭科医師とは いったい何かを考えるようになりました。それまで持っていた開業 医のイメージが⼤きく変わるようになりました。臨床⻭科医師にな りたいという気持ちは今でも変わりませんが、考えていた⻭科医師 のイメージが変わったのです。その頃専⾨科⽬で⼝腔病理学の授業 を受けて⾮常に⾯⽩いな、と思って⼝腔病理学の研究ができる研究 コースを選択しました。それと学部⽣時代に研究をやらせてくれる ⼤学はそんなにはない、貴重なチャンスだと考えたのも⼤きな理由 です」 (病理学-pathology:病気の原因、発⽣機序の解明や病気の診断を確定する のが⽬的の学問。⻭科分野では⼝腔病理学という分野) ―現在はどういう研究をしているんですか? 「私の研究室では、⻭周病がひとつの⼤きなテーマです。2つ⼤ きな課題があります。ひとつは⻭周病と早期低体重児出産の関係、 もうひとつは⻭周病と NASH との関係です。 (NASH:Non-Alcoholic Steatohepatitis。⾮アルコール性脂肪性肝炎のこと。 アルコールによらない肝炎のタイプ。肝硬変から肝臓がんになりやすい) 同級⽣ 4 ⼈のグループで研究を進めているんですが、早期低体重 児出産の課題は、私はマウスで実験をしていて、はっきりしたエビ デンスをつかもうとしています。この課題はすでに相当に広く認知 されていて、研究室レベルでは産婦⼈科の先⽣と⼀緒に臨床研究の 段階にすすんでいます。研究室での実験と妊婦さんの協⼒を得て臨 床研究が同時並⾏で進んでいます。また⻭周病学会の Web サイト をご覧になればわかりますが、すでに⻭周病と早期低体重児出産リ スクは項⽬として掲載もされています」 臨床⻭科医師として専⾨性を⾝につけたい 「実験で新しい発⾒をしながらエビデンスを固めていく作業は⾮ 常に楽しい仕事で、私は⼤好きです。といって私が⽬指すのは臨床 ⻭科医師ですから、そのためにもよほどの障害がない限り、⼤学院 にいくつもりです」 ―あれ?臨床の現場に出るんじゃなかったんですか? 「ええ、それは変わりませんが、ここで学んでいるうちにこれか らの⻭科医師は専⾨性をもつべきだ、と思うようになりました。そ れが⼤学院に⾏ってドクターを取ろうと考えた理由です。⼤学院で は、⼝腔外科か⻭周病を研究してみようと思っています。どちらも ⾼度に専⾨性の⾼い分野です。ええ、どちらも基礎系というよりは 臨床に近い研究分野だと思います。 私たちは超⾼齢社会まっただ中の⽇本で、臨床医になるわけで す。⻭科を訪れる患者さんはみんな多かれ少なかれ⻭科以外の有病 ⾼齢者、あるいはなんらかの⽣活習慣病をもっています。そんな中 で⼝腔から全⾝が理解でき、⾼度な専⾨性をもった⻭科医師でない と、患者さんに対して失礼かな、と思うようになりました」 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry ⻭学科 5年⽣ 臨床⻭科医学コース 奥⽥ 哲史さん Satoshi Okuda ―⻭科医師像が⼀変するのはいつごろですか? 「2 年⽣になって専⾨科⽬がはじまってからですね。⼊学したて の頃は、町の⻭医者さんのイメージ。むし⻭を削って、おばあちゃ んの⼊れ⻭を作ってあげて…。2 年、3 年になって専⾨科⽬が増え ていく、そうすると、今⽇本は超⾼齢社会に⼊っていて、しかもそ れがもの凄い勢いで進んでいる、そうすると⻭科医師の役割がどん どん変わっていかざるをえない、患者さんに有病⾼齢者が増えてい く、さらに糖尿病や⾼⾎圧など⽣活習慣病を持った患者さんが当た り前になっている、⻭科医師もこうした有病者を適切に治療してい かなくてはならなくなっている。しかも⼝腔内の病気と全⾝疾患の 関係がさまざまな研究でどんどん明らかになってきている。つまり ⻭科医師は⼈間の全⾝を理解した上で⼝腔内・⻭科診断治療をおこ なわなくてはならなくなっている、ということですね。 こうした状況の⼀⼤変化を学んでくるにつれ、私の中に形作られ る⻭科医師像がどんどん変わっていった、とこういうことだと思い (『超⾼齢社会』 :総⼈⼝に占める 65 歳以上の割合を⾼齢化率というが、 ます」 ⼀般に⾼齢化率によって次のように分類されている。 『⾼齢化社会 』7% 14%、『⾼齢社会』14% - 21%、『超⾼齢社会』21% 以上。⽇本は 2007 年 21.5%で『超⾼齢社会』に突⼊した) ―なるほど。⻭学なり⻭科医師なりのイメージがどんどん変化し た。 「ええ。やはり医学なんだな、と実感します。医学全体の中で⼝ 腔という重要な分野を担っている、先⽣⽅の授業の中でそれを強く 感じますし、私⾃⾝強く共鳴します。そうすると⻭科医師と医師が しっかり連携しなくてはならなくなる、たとえば、⻭周病という病 気がありますが、⻭周病は糖尿病など全⾝の疾患と密接な関係があ る病気です。⻭周病を治そうと思うと全⾝の疾患から診て⾏かなく てはならない、それぞれの専⾨医師と相談して治療を進めて⾏かな くてはいけませんね。⽀援を受けなくてはならない、あるいは逆に 私たち⻭科医師がそうした専⾨医に対して⽀援しなくてはならない かも知れない。(⻭・医連携)私たち⻭科医師側に当然医学全般ある いは薬学全般に関する知識や素養が必要になってくるわけです。そ れがこれからの⻭科医師だと私は思います」 卒業後は⼤学院で研究者の素養を ―⻭科医師の国家試験に合格して、研修医を 1 年経験して、とこ こまでは進路が⾒えていますね?その後どうするんですか? 「医療系の⼤学院に⾏こうと思っています。」 ―え?⻭科医師の臨床医になるんじゃ? 「ええ、それはそうなんですが、やはり研究を学んでおきたいと 思っています。臨床といったって研究なしではなり⽴ちません。私 ⾃⾝臨床コースと研究コース(最先端⻭学研究コース)の選択の時に ⼤いに迷ったぐらいですから、研究の重要性は理解しているつもり です。ですから⼤学院へいって博⼠課程で学んで研究者としての素 養を⾝につけたいと思っています。たとえば、エビデンスに基づい た医療(Evidence Based Medicine=EBM)は常識となっていますが、 エビデンスの出し⽅や評価などはやはり研究者として本格的に学ん で⾝につけなければなりませんし、⻭学分野でもたとえば矯正⻭科 や⼝腔外科などの分野では博⼠号取得者でなければ、診断・治療に タッチできない⾼度な領域もあります。研究者としての素養を⾝に つけ、臨床⻭科医師になろうと、⾃分の進路を決めています」 ⻭学部の学⽣たち 4つの個性が輝く⻭学部の学⽣たち ⼝腔⼯学専攻 ⼝腔保健学専攻 ⻭科技⼯⼠を⼀⽣の 仕事にしたい ⻭科衛⽣⼠として強い 影響を受けた摂⾷嚥下 リハビリの授業 ⻭科技⼯⼠になってみたいと思 ったのが中学⽣の時。そして広⼤ ⻭学部⼝腔⼯学専攻へ⼊学。3年 ⽣後期になって広島⼤学病院の臨 床実習がはじまり、各診療科で患 者さんのために⻭科技⼯物を作る 毎⽇が⼀番楽しいという。 岩崎さんは⻭科衛⽣⼠と養護教諭 の資格の両⽅に魅⼒を感じて広島⼤ 学⻭学部を選択した。⼊学後さまざ まな授業や実習を通じて、求められ ている⻭科衛⽣⼠が⼝腔から患者さ んの全⾝健康管理のできる⼝腔健康 管理者であることを知る。 ⼝腔健康科学科 4年⽣ ⼝腔⼯学専攻 ⼤宅 ⿇⾐さん Mai Ohtaku ―広島⼤学で学ぶことになったいきさつを教えて下さい。 「中学⽣の時に、矯正治療でよく近所の⻭医者さんに通っていま した。私は細かい⼿作業が好きでそれで⻭科技⼯⼠になりたいな、 と思っちゃったんだと思います。⼤学受験の時に、相当下調べをし ました。その時ここのオープンキャンパスにも来ていろいろ説明を 受けました。4 年制で教養課程もあり、CAD/CAM や⼈⼯ボディ、 それから細胞培養の説明も受けました。⻭科技⼯⼠になるなら幅広 く、技⼯を中⼼に科学もテクノロジーも学べるのがいいと思ってこ こに決めました」 ―4 年⽣になると病院実習がはじまりますよね? 「ええ、4 ⽉は補綴の診療科(咬合・義⻭診療科)で実習でした。5 ⽉からは矯正⻭科での実習です。結構やりがいのある仕事だな、と 思いました。私は 4 年⽬の今が⼀番楽しい。技⼯⼠としてやりたかっ たことを今ここでやっているという感じです。今、実際の患者さん の⻭科矯正器具を作っているんです。3 年の時に⽯膏モデルで矯正 器具をつくったのですが、実際の患者さんのために作ってみると全 然教科書通りではありません。⼀⼈⼀⼈患者さんの⼝の中は違うん ですね。難易度が全然違う。ホントの患者さんはむつかしい。先⽣ の指導を受けながら作っているんですが、実際に使ってもらうので プレッシャーがかかっています。器具が完成したら患者さんに装着 しますので、その時⾒学をさせてもらいます。11 ⽉まで各診療科 をまわって実習をします」 ―でも卒業研究もあるんじゃないですか? 「そうなんです。卒業論⽂のための卒業研究をしています。9 ⽉ には発表会があります。ジルコニアとレジンの接着強度の研究をし ています。(ジルコニアは新しい⻭科素材。焼結すると体積が縮むこと、固 いことなどから⼿作業での加⼯はむつかしく CAD/CAM 技術で製作する)ジ ルコニアのディスクにアルミナの粉末を 5 段階の異なる⼒で噴射 し、異なる表⾯の粗さのアルミナ上にレジンを接着させ接着強度を 調べるという実験を⾏っています。すると噴射の⼒がゼロの時とそ うでない時は接着強度に有意な差があるんですが、噴射の⼒をゼロ 以上で段階的に変化させても有意な差がでないんです。恐らく先⾏ 研究論⽂を読んでいってそこから理由を解析し考察を重ねて研究論 ⽂をまとめるという形になると思います。ええ、論⽂は英語で書か れたものが多いです。⻭科技⼯⼠は材料の特性についても科学的に 理解していなくてはならないので私にとっては有益な研究だと思い ます。経験やカンに頼ってはダメですからね」 ⻭科技⼯⼠の仕事は⼀⽣の仕事 ―卒業後の進路は?今は卒業後の進路が多彩ですよね。⻭科技⼯⼠ だけでなく、エピテーゼ(医療⽤具として体の表⾯に取り付ける⼈⼯物。 義⼿や義⾜などが代表的)製造の会社とか⼀般企業に就職する⼈も多 くなっています。教育者になる道も開けています。 「ええ、私もそれは知っています。⼀般⻭科技⼯所の仕事の⼤変 さもよく知っているつもりです。でもやはり私は⻭科技⼯⼠になり たいです。⼤きな総合病院とか⼤学病院の技⼯室に就職したいです ね。やはり患者さんの顔の⾒えるところ、⻭科医師などの⼝腔医療 に携わる⼈たちと⼀緒に働いていたいです。私は患者さんのために ⻭科技⼯物を製作する医療⼈ですから。⻭科技⼯⼠を⽣涯の仕事に したいと思っています」 04 ⼝腔健康科学科 4年⽣ ⼝腔保健学専攻 岩崎 都さん Sato Iwasaki ―⼤学受験の時に抱いていた⻭科衛⽣⼠へのイメージと現在抱いて いるイメージとに⼤きな違いがありますか? 「近所の⻭医者さんに通っていて、そこで⻭科衛⽣⼠さんを⾒て なんとなく⻭医者さんの助⼿というイメージでした。⾼校の進路指 導の先⽣が熱⼼にこれからは⻭科衛⽣⼠が活躍する時代だ、といわ れたこともあって、⻭科衛⽣⼠の資格を取ろうと思ったのですが、 広島⼤学⻭学部を志望したのはむしろ養護教諭になりたい、という 気持ちが強かったのかな、と思います。⼊って授業や実習を受ける うちに⻭科衛⽣⼠像がどんどん変化していきます。先輩の就職先を ⾒ても、⻭科医院はもちろんですが、⼀般総合病院、⾼齢者施設、 保健所に⼊って地域で⼝腔保健⾏政に携わる⼈も出てきています。 また⼤学病院や⼀般企業の研究職になったりする⼈もでています。 ああ、いろんなところで⻭科衛⽣⼠が活躍できるのだな、とわかっ てきました」 ―強い影響を受けた授業か実習はありますか? 「私は専⾨科⽬、特に臨床実習が好きなので毎⽇楽しい思いをし ています。特に 4 年⽣になると 4 ⽉から広島⼤学病院で臨床実習 にでていますので刺激を受けています。障害者⻭科では⻭科治療以 前に患者さんの安全管理が重要だということを学びました。周りを 観察して冷静に判断する⼒が随分ついたと思います。また患者さん に愛情と理解をもつことが治療にとって決定的に重要ということも わかりました。3 年⽣の時『⼝腔嚥下リハビリテーション』という 授業は刺激的でした。⾼齢者になると、⾷べものや飲みものを飲み 込む⼒<嚥下機能>が衰え、誤って⾷品等を気管に⼊れてしまい、 これが今社会問題になっている誤嚥性肺炎の原因になります。また さらにひどくなると⼝から⾷品を摂取することができなくなり、⿐ から胃へ管を通して栄養を⼊れたり<経⿐栄養>、胃に管を通して 直接栄養摂取<胃瘻>したりしなければなりません」 ―⾷べものを味わえないのは随分⾟いことですね。 「そうなんです。でも摂⾷嚥下のリハビリ訓練をすれば、また摂 取する⾷品にいろんな⼯夫を加えれば、⼈によって個⼈差がありま すが、摂⾷嚥下機能を取り戻す可能性があります。少しでも⼝から ものを⾷べる⼒を取り戻そうとする訓練、随分刺激を受けました。 しかもこれが⻭科衛⽣⼠の重要な仕事のひとつだと知って、また⻭ 科衛⽣⼠へのイメージが⼤きく変わりました」 研究は⽣涯続ける ―卒業後はどういう進路を選択するんですか? 「今は卒業研究(ストレスに関連した顎関節症に関する⽂献研究)に全 ⼒をあげています。現在抽出した138本の英語論⽂のアブストラ クトを読み込んで、直接研究対象とする⽂献の絞り込み作業中で す。 9 ⽉に卒業研究発表会があって、その後に卒業論⽂提出、⻭科衛 ⽣⼠の国家試験、となって卒業ですが、進路については迷っていま す。選択肢が多すぎて・・・。⼀般総合病院、保健所、⼤学病院、企 業・・・⾊々迷いますね。 研究ですか?臨床実習の現場で⻭科衛⽣⼠として働きながら、研 究し発表している⽅も⾒てきました。私は、ああ、こんなこともで きるんだ、と勇気づけられました。私も研究は続けていくつもりで す」 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 05 ⻭学部 副学部⻑インタビュー 「⻭学科と⼝腔健康科学科の統合化を進めて」 バイオデンティストリーとデジタルデン ティスストリーに基づく⻭科医療⼈教育 「最先端⻭学研究コース」と「臨床⻭科医学コース」の 2 コース制がスタートしてほぼ 15 年、 4 年制の⼝腔保健学科 (現:⼝腔健康科学科)がスタートしてほぼ 10 年。 この間「臨 床と研究の融合」はいまや広⼤⻭学部の学部⽂化として定着してきた感がある。その背 景には加速化する⽇本の「超⾼齢社会」に対応する⻭科医療⼈育成への取り組みが⾒え てくる。 ―研究と臨床の関係についてお話し下さい。 「まず研究ですが、私たちの⽬指す研究とは、 突き詰めたところ患者さんのための医学研究で す。いいかえれば最終的には臨床の現場で使う 研究なんですから、患者さんのための研究、⼈の ための研究ということです。 ⼀⽅で臨床を考えてみると、⻭科医療の場合 は、これまでともすれば⻭科医師の経験則に基 づいた医療だった。置換医療(わかりやすくいうと ⻭を削って詰める⻭科医療)の時代が⻑らく続きま した。これが今全く通⽤しなくなっている」 ―通⽤しないというと? 「誤解のないようにいっておきますが、置換医 療が役に⽴たなくなっているということではあ りません。それだけでは通⽤しなくなっている、 といっているのです。むし⻭の⼈が少なくなっ た現在、⼀般のニーズは置換医療から次世代の ⻭科医療に完全にシフトしてしまっているので す、実は」 ―それはどんな⻭科医療なんですか? 「⼀⾔でいうと経験則に基づく⻭科医療から エビデンスに基づく⻭科医療ということなんで すが、その前に⽇本の社会の⼤きな変化を考え てみて下さい。超⾼齢社会の到来と加速化です。 (表 1 参照のこと。65 歳以上の⼈⼝が 21% を超えると その社会を「超⾼齢社会」と呼ぶが、⽇本は 2007 年に 超⾼齢社会に突⼊した。そして 2012 年には早くも 24.1% に達している。総務省統計局の推計では 2035 年には 33.4%、すなわち 3 ⼈に 1 ⼈が 65 歳以上とい う⼈⼝構成となる) こういう時代に対応した⻭科医療⼈でなくて はならない、ということです。 65 歳以上の⼈といえば、ほとんどが何らかの 有病者であり、また多かれ少なかれ⽣活習慣病 を抱えている、と考えておかねばなりませんね。 特に近年、⻭科診断と全⾝疾患の関連が様々 な分野で明らかにされてきています。⼝腔内の 代表的な疾患である⻭周病だけでも、糖尿病の 関連、動脈硬化症との関連、⾻粗鬆症との関連、 妊婦さんの⻭周病と低体重児出産の関連など全 ⾝疾患との密接な関連が明らかになってきてい ます。⻭科医師も⼝腔内の状態を診察して、患者 さんの全⾝の状態を判断できるようになってい なくてはなりません。また患者さんの中には、投 薬を受けている⼈、介護を受けている⼈、認知症 になって⾃分で⼝腔の管理ができなくなってい る⼈が数多くいます。今までのようにむし⻭の 治療に専念する⻭科医師では、社会からの⼝腔 医療に対するニーズに対応できないことは明ら かです」 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry バイオロジーに基づく⻭科医療 ―そうするとどんな⻭科医療⼈でなければなら いということになりますか? 「はっきりしていることは、もう⻭科医療は孤 ⽴して存在できない、ということです。医師、看 護師、介護のケア・マネージャーから管理栄養 ⼠まで幅広い医療・介護・福祉分野の専⾨家と 協働して患者さんの治療に当たらなくてはなら なくなっている、ということです。⾔葉でいえば これがチーム医療ということですが、そのため には⻭科医療⼈が幅広い医療・介護・福祉と共 通⾔語をもたなくてはなりませんね。つまり医 療⼈共通⾔語です。この修得に学部⽣時代から 取り組んでおかなければなりません。 3 職種合同の講義・実習は、もうひとつの意 味として『今ある職階ヒエラルキー』を打破した いという思いもあります。 『3 職種を⽬指す学⽣ たちが同じ釜の飯を⾷べながらプロフェッショ ナルに成⻑していく』という過程も今後の⻭科 医療の裾野を広げていくためには是⾮必要なこ とと考えています。職種間の垣根を取り払うあ る意味でのグローバル化です。 次にはっきりしていることは、バイオロジー に基づく医療が要求されている、ということで す。⽣化学、細胞に関する知識と素養が要求され ています。これは⼝腔から全⾝を理解する⻭科 医療⼈という⽴場からは当然です。そしてこの 理解を研究が助けてくれるのです。学部時代に 研究の基礎的⼿法や考え⽅をしっかり⾝につけ ておくことが、こうした⻭科医療⼈となってい くことに必須だと私たちは考え、今現在学部教 育を進めています」 ⼯学・コンピュータ⽀援を受けた ⻭科医療 「こうしたバイオデンティストリー(⽣物学に 基づく⻭科医学) に加えて、デジタル・デンティス トリー(⼯学・コンピュータ⽀援を受けた⻭科医学) がこれからは必要だと私たちは考えています。 これを⾒て下さい」 【写真1】3D プリンターで再現した、⼼臓外科医から依頼 された患者さんの⼼臓動脈瘤モデル。患部が⽴体的に把握 できる。 広島⼤学⻭学部 副学部⻑ ⼆川 浩樹 教授 表1 ⽇本の総⼈⼝と超⾼齢社会の進展 年次 総⼈⼝ (千⼈) 65 歳以上 (⽼年⼈⼝) 65 歳以上 の割合 2000 年 126,926 127,694 127,787 127,768 127,901 128,033 128,084 128,032 128,057 127,799 127,515 126,597 124,100 120,659 116,618 112,124 102,210 91,933 22,005 24,311 24,876 25,672 26,604 27,464 28,216 29,005 29,246 29,752 30,793 33,952 36,124 36,573 36,849 37,407 38,564 36,257 17.3% 19.0% 19.5% 20.1% 20.8% 21.5% 22.0% 22.7% 22.8% 23.3% 24.1% 26.8% 29.1% 30.3% 31.6% 33.4% 37.7% 39.4% 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2015 年 2020 年 2025 年 2030 年 2035 年 2045 年 2055 年 出典:総務省統計局「⽇本の統計 2014」 ※2015 年以降は総務省統計局の推計 ―なんですか?それは? 「⼼臓に動脈瘤ができた患者さんのモデルで (写真 1 参照のこと)CT スキャンデータを送っ す。 てもらって 3D プリンタで製作したものです。 広⼤病院の⼼臓外科医の先⽣から依頼を受けて 作りました。⼼臓の⼿術前にこうしたモデルを 作成して⼿術の段取りを決めたり、あらかじめ 必要な挿⼊プレートを製作して設計図を作って おくことができるようになり、オペ時間の短縮 など⼿術に伴うリスクを極⼩化できるように なっているのです。 【写真2】 3D プリンターで再現し た患者さんの顎関節疾患 モデル。 これを元に⼿術⽅針・⼿ 順を検討する。 こちらは顎の患部のモデルです。(写真 2 参照 のこと)同様な⼿順をたどって顎の⼿術を準備し ます。これらはオーラル・エンジニア(職種でい えば⻭科技⼯⼠)の仕事ですが、⻭科医療⼈がこう したデジタル・デンティストリーの知識や素養 を持っておくことは、これから是⾮とも必要な ことです。私たちはこうした現在から近い将来 にかけて活躍できる⻭科医療⼈育成を⽬標に学 部教育をおこなっています」 【⻭学部動向レポート】臨床と研究の融合-5年⽣合同研究発表 06 「臨床と研究の融合」-⻭学科 5 年⽣ コース別合同研究発表会が開催される 2014 年 3 ⽉、⻭学科 5 年⽣による「臨床/研究コース合同発表会」が⻭ 学部内で開催された。最先端⻭学研究コースと臨床⻭科医学コースの学⽣によ る初めての合同コース発表会だ。この発表会の先には「臨床と研究の融合」と いう広島⼤学⻭学部の⼀⼤テーマが⾒えてくる。 臨床と研究の融合とはいったいどういうこと なのだろうか?⻭学部⻭学科⻑の⾹⻄克之教授 (⼩児⻭科学)は端的に次のように説明する。 「臨床と研究の融合とは、1 ⼈の⻭科医科学 者の頭の中で、基礎系と臨床系の⻭科医学が結 びつくことです。基礎系⻭科医学は細胞レベル のミクロやナノの科学研究です。また臨床系⻭ 科医学は、実際に⽬に⾒える⼈体の病態などマ クロを対象とした科学であり、⻭学部であれば ⼝腔および全⾝疾患です。疾患をもっている患 者さんの体を診て、細胞レベルでいったい何が 起こっているかを、洞察し、症状を確認するこ と、これが研究と臨床の融合ではないでしょう か。病気は何かが機能しなくなったり、バラン スを崩すことですが,その出発点はなんらかの 環境の変化や刺激に対する細胞の変化から始ま ります」 「ここ(広⼤⻭学部)に⼊学した学⽣は,全員 が⽣命科学の基礎知識や素養を厳しく叩き込ま れる。その⼈が今度は臨床の現場に出て患者さ んを診る。そして患者さんの疾患を全⼈的⾒地 からと同時に分⼦⽣物学的にも理解をして治療 にあたる、それができる⻭科医療⼈になって欲 しい、それを若い世代には期待したいですね」 しかし 1 ⼈の⻭科医療⼈の中でそれがすべて 完全にできるかというとそれは不可能だ。 「なにもかも 1 ⼈でやる必要はありません。 それぞれが専⾨分野をもっているわけですか ら、仲間(チーム)で達成することができます。 しかし、それにしても、⼀⼈⼀⼈が、科学的思 考とエビデンスに基づいた医療、経験やカンに 頼るのではなく確実で安全な医療を実現できる ⼒を持っていなくてはなりません。確実なデー タを積み上げていく⼒、科学的思考ができる⼒、 それを養い育むのも研究の役割です。そういう 医療⼈がチームを組んで患者さんの治療にあた る、そのためにはお互いがどんな研究をしてい て、どんな成果をあげているかを知っておく必 要があります。また⾃分の研究を発表する⼒も 必要です。発表しなければ、必要な情報共有も できないわけですからね。 そうした⼒を学部⽣時代から養おうというの が、“臨床/研究コース合同発表会” です。そ の先にある狙いは、臨床と研究の融合ができる ⻭科医療⼈の育成です。」 ⾃分の研究を教員の指導の下に進めている。中 にはプロの研究者(博⼠号取得者)顔負けの成果 をあげる学部⽣も出てきている。第 1 回⽬の合 同発表会をスタートさせた兼松隆教授(前⻭学 科⻑。細胞分⼦薬理学)は次のようにいう。 「研究の世界は、あらかじめ⽤意された答え のない世界です。実験や解析に基づいて⼀歩⼀ 歩答えに近づいていく。それを 3 年間近くやっ てきたんだから、そのアウトプットを是⾮発表 し合おう、ということになったんです。それも 医学会形式でやろうということになった。卒業 して院⽣になっても、あるいは臨床⻭科医師に なっても、必ずいろんな学会に参加して、ある いは発表する機会もあるでしょう。それを学部 ⽣の時代から経験しておくのは⼤きな意味のあ ることです」 コンセプトは学⽣⾃らが主催し、運営する学 会。といっても 1 年⽬は兼松教授が、グランド デザインして雛形を作った。すでに次回は運営 主体は学⽣、ということにしていたので、当時 の 4 年⽣が 10 ⼈ばかり参加した。この 4 年⽣ が 5 年⽣になって、⼀種の運営委員会を作って 第 2 回の合同発表会を企画して実施した。 「2 回⽬はプログラムから、学会に必要な抄 録集(図 1 参照のこと)まで作りました。学会に は⼝演がありますが、座⻑も学⽣が担当しまし た。ほぼ学⽣主体の学会運営でした。それは ちょっと驚きですよ」(兼松教授) ⾹⻄ 克之 教授 兼松 隆 教授 【写真1】⼝演発表の様⼦。進⾏も座⻑も全て学⽣が務める 【写真2】ポスターセッションの様⼦ 【写真3】学⽣主催の学会形式の研究発表、最後に記念撮影 「⻭ 科 は 単 に む し ⻭や⻭周病を治す診 療科ではありませ ん。幹細胞を⽤いた 臨床⻭科医学コースの学⽣も参加 再⽣医療を展開した ところが第 1 回⽬の研究コース合同発表会は り病態遺伝⼦を研究 ⼩さからぬインパクトを⻭学科全体に与えるこ し⻭科疾患と全⾝疾 とになった。要するに臨床コース全体を刺激し 患との密接な関連を たのである。それで第 2 回⽬は臨床コースの学 解 明 す る ⼈ も い れ ⽣も参加することになったのである。臨床コー ば、海外に出て⻭科 スの学⽣の研究発表は、前述の⾹⻄教授の指摘 医療に貢献する⼈も 図1 学⽣が作成した抄録集 するように、⼈体レベル、疾患レベルの研究で いる、様々な領域に ある。なかにはカンボジアの⼦どもたちの⼝腔 活躍の場がすでに⽤意されています。今回の合 内健康状態に関する研究もある。それに対して 同発表会はそうした多彩な⼝腔医科学の縮図で 研究コースの発表は、細胞レベル、動物実験レ す。学⽣の皆さんもあらためて多様な可能性が ある、ということを実感したと思います」 ベルの研究である。 実際に第 2 回発表会では、⼝演が 18 題、ポ さてこの合同発表会の次のステップはどう スター発表が 30 題もあった。テーマが多彩で なっていくのだろうか?兼松教授はいう。 ある。⼀般の医学会とは違って、クラスメート 「現在でも英語による発表が多かったのです 同⼠、先輩・後輩⻭学部⽣、臨床・基礎教員参 が、次のステップは完全英語による発表会運営 加の発表会だから、お互いに気⼼も知れていて、 ですね。特に今の国際⻭学コースの学⽣が 5 年 実は 2 回⽬の合同発表会 遠慮がない。だから時として、議論が盛り上が ⽣になる第 4 回合同発表会は完全英語による運 今回は実は 2 回⽬の合同発表会になる。1 回 る。特にポスター発表会場ではそうした光景が 営になるでしょう。完全英語の運営になると、 ⽬の合同発表会は、同じ “合同” でも、最先端 ⾒られた。(写真 2 参照こと)また服装も正装で 次の展望が⾒えてきます。つまり国際的な⼝腔 ⻭ 学 研 究 コ ー ス の 学 ⽣ に よ る 合 同 発 表 会 で ある。「医学会は正装で参加、が慣例になって 医療⼈を⽬指すすべての学⽣たちに開かれた発 2013 年に開かれている。研究コースの学⽣た います。それも医学会形式にならいました」 表会になるわけです。海外姉妹校とオンライン ちは、ほぼ 3 年間基礎系の研究室に所属して、 また⾹⻄教授は次のようにもいう。 で結んだ “合同” 発表会など楽しみですね」 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 07 【⻭学部動向レポート】バイオデンタル・コロシアム/ひろしまイニシアティブ ⻭学部若⼿教員の間ではじまった バイオデンタル・コロシアム に加え、⻭学部・⽣体分⼦機能学の宿南知佐教 授の『腱・靭帯形成の分⼦機構』 、⻭学部・⻭ 科矯正学の⾕本幸太郎教授の『バイオミネラリ ゼーションによるエナメル質の再⽣』 、そして 広⼤理学部・⽣命理学講座の⼭本卓 教授の『⼈ から 34 ⾴『⻭学部で学べる ⼯ヌクレアーゼによるゲノム編集』の 3 本の講 こ と』-各 研 究 室 紹 介 を 参 照 演を交えて⾏われた。⼭本教授はゲノム編集研 のこと)の間の⼈材交流を 究会を主宰し、国内でのゲノム編集研究の第⼀ 促 進 し、お 互 い の 研 究 成 ⼈者として活躍している。 果 を ぶ つ け 合 い、新 た な バイオデンタル・コロシアムの仕掛け⼈でも 研究の展開を促そうとい ある加藤功⼀教授(⽣体材料学)は次のようにい う と こ ろ に あ る。研 究 が う。「コロシアムは、ローマ時代の闘技場のコ 加藤 功⼀ 教授 ⾼度に専⾨化するにつれ、 ロシアムです。研究者同⼠が協⼒して情報共有 それぞれの研究分野に垣 すると同時に切磋琢磨して競争し合い、刺激し 根ができていることが問題視されてきている あう、という意味をもっています」 が、この垣根を取り払おうとする試みでもある。 若⼿研究者は同時に助教クラスの教員でもあ 第 1 回⽬は 2013 年 1 ⽉、⻭学部内で開催さ り、多くが臨床⻭科医師でもある。若⼿研究者 れた。助教クラスの若⼿研究者 10 ⼈がそれぞ のレベルが上がるということは研究レベルだけ れ⾃分の研究成果を発表する形での発表会。や ではなく、教育レベル・臨床レベルが向上する はり研究者として他の研究内容には興味がある ということでもある。 と⾒えて、30 分の発表に 30 分の質問が続き活 近年⽇本の研究レベルは下降気味といわれて 発な討議内容だったという。第 2 回⽬は 13 年 いる。表 1 は⽇本の研究機関の⼀定レベル以上 の 8 ⽉ 31 ⽇と 9 ⽉ 1 ⽇で連続して⾏った。場 の論⽂の中で⾼被引⽤された論⽂数に基づいた 所は広島近郊の温泉宿舎。つまり泊まりがけで ⼀覧表だ。(この表は⽇本のすべての研究機関・⼤学 が対象の調査。なお、平成25年度の⽂部科学省「研 ある。 なお使⽤⾔語はすべて英語。前回の研究交流 究⼒強化促進事業」で、広島⼤学は研究⼤学として⽇ ⻭学部若⼿教員の間で バ イ オ デ ン タ ル・コ ロ シ アムなる勉強会がスター ト し て い る。も と も と の 意 図 は、各 研 究 室(19 ⾴ 2013 年 8 ⽉ 31 ⽇〜 9 ⽉ 1 ⽇に⾏われた 第2回バイオデンタル・コロシアム 表1 ⽇本の研究機関の⾼被引⽤論⽂数による ランキング 順位 1 機関名 東京⼤学 2 (独)科学技術振興機構 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 京都⼤学 ⼤阪⼤学 (独)理化学研究所 東北⼤学 (独)産業技術総合研究所 名古屋⼤学 東京⼯業⼤学 筑波⼤学 九州⼤学 (独)物質・材料研究機構 広島⼤学 北海道⼤学 岡⼭⼤学 神⼾⼤学 早稲⽥⼤学 ⾃然科学研究機構 ⾼エネルギー加速器研究機構 慶應義塾⼤学 ⾼被引⽤ 論⽂数 ⾼被引⽤論 ⽂数の割合 1,219 771 710 613 523 457 354 340 315 246 241 222 200 193 175 148 147 146 132 125 1.53% 2.41% 1.21% 1.28% 2.25% 0.98% 1.25% 1.11% 1.17% 1.25% 0.76% 1.59% 1.15% 0.61% 1.18% 1.09% 1.41% 1.20% 2.12% 0.79% 出典はトムソン・ロイター「インパクトの⾼い論⽂数による⽇ 本の研究機関ランキング」(2014 年 4 ⽉ 23 ⽇改訂版)なおこ の表の論⽂は Web of Science® Core Collection に収録され ているデータから選別されている。 本の22研究機関の⼀つに選ばれている。 )もちろん これら論⽂は国際レベルの論⽂だ。 「国際的に ⽇本の研究レベルが下降気味といっても私たち がそれでいい、というわけにはいきません。や はり国際的にインパクトのある研究を次々にだ していきたい」と加藤教授はつけ加える。 ⽂部科学省 地(知)の拠点整備事業 採択プロジェクト 「ひろしまイニシアティブ」に⻭学部⽣が参加 「ひろしまイニシアティブ」に⻭学部 「ひろしまイニシアティ 「ひろしまイニシアティブ」はこう答える。 「地 ブ」教育に、今年から⻭学 域や国、年齢、性、⼈種等の違いや障がいの有 部⽣ 1 年⽣が全員参加し 無を越えて、いつでも、どこでも、個々⼈が幸 ている。 福な⼈⽣を享受できる社会」だ・・・。 ⽂部科学省は、問題解決 このプロジェクトの事業担当者で、広島⼤学 型の⼈材育成を狙いとし 理事・副学⻑(社会産学連携・広報・情報担当)の て、地域で中核的機能を果 岡本哲治教授は次のようにいう。(なお岡本教授 たす⼤学の⽀援を開始し は⻭学部教授=分⼦⼝腔医学・顎顔⾯外科学でもある) た。これが平成 25 年度か 「広島⼤学は原爆災害から復興した広島に再 ら開始された「地(知)の ⽣した国⽴⼤学です。建学以来 “平和” は⼀貫 拠点整備事業(⼤学 COC して⼤学理念の⼀つだった。しかし平和な社会 事業) 」である。広島⼤学 とは実は地域社会が抱えている問題に⽬をつ 広島⼤学理事・副学⻑ は「平和共存社会を育むひ ぶっていては実現できない。広島からの平和発 (社会産学連携・広報 ・情報担当) ろしまイニシアティブ」プ 信とともに、過疎地域など条件不利地域対策、 岡本 哲治 教授 ロジェクトを申請したとこ 障がい者⽀援なども重点課題として取り組もう ろ採択された。(319申請課題中52課題が採択) と考えたわけです。実は条件不利地域対策は⻑ つまりこの事業は学部⽣時代から問題解決⼈ 年⽣物⽣産学部が取り組んできているし、障が 材を育成しようとする正規の教育プログラムで い者⽀援も教育学部を中⼼に取り組んできた。 ある。もちろん単位も出される。当然のことな 昨⽇今⽇はじまったことではない。だからこの がらこの教育プログラムは、⻭学部だけではな 蓄積を全学共通の教育プログラムにしていこう く、広⼤全学が取り組むプログラムだ。 というのが “ひろしまイニシアティブ” です」 「ひろしまイニシアティブ」はおおよそ図 1 2014 年度から⻭学部学⽣は教養課程の⼀環 のような概念で構成される。⼀⾔でいえば「平 として、広島平和記念資料館⻑の講義を受講し 和共存社会」実現の重要性を理解し、そこに卒 たり、同館や国⽴広島原爆死没者追悼平和祈念 業後も何らかのかたちで参画して地域が抱える 館に出かけ、ガイド活動、被爆資料の整理やデ 課題を解決できる⼈材を育てようということだ。 ジタル化等を⾏う。恐らくは医療⼈としても重 しかし平和とはいったいなにか?単に戦争や 要な基礎教養となるに違いない。 核兵器のない社会が平和な社会か?この問いに Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 国⽴広島原爆死没者追悼平和祈念館内の研修室で、 被爆者から話を聞く⼝腔保健学専攻の学⽣。軍国少 ⼥時代、戦時や被爆のエピソード、そして現在の話 に。近年インドやアフガニスタンに訪問した被爆者 が、撮影した写真とともに⼦どもたちの状態を報告。 「戦争とは何か、平和とは何か、⼀⼈⼀⼈が考える 必要がある。⼀⼈⼀⼈の⼒が⼤事。」 図1 平和共存社会を育む ひろしまイニシアティブ ひろしまの共通理念-平和- 広島県 広島市 東広島市 広島⼤学 ひろしまイニシアティブ 地域や国、年齢、性、⼈種等の違いや障がいの 有無を超えて、いつでも、どこでも個々⼈が幸 福な⼈⽣を享受できる社会の実現 ひろしま平和発信 条件不利地域対策 障がい者⽀援 地域を学⽣教育のフィールドとして活⽤ 【⻭学部動向レポート】BioDental教育 図1 バイオデンティスト 6 BioDental 教育:バイオロ ジーとテクノロジーはこれか らの⼝腔医療共通基礎知識 ⻭学部でバイオデンタル教育プログラ ムが開始されたのは 2010 年 11 ⽉。学 部が⽬指す次世代型⻭科医療教育のモデ ルを明確に打ち出したといえよう。なぜ、 これが国際化にも対応した次世代型医療 教育のモデルなのか?バイオデンタル教 育の内容とその狙いをご紹介したい。 このプログラムの特徴は⼤きく 3 つある。 ①エビデンスに基づいた診断・治療のできる ⼝腔医療⼈の育成 ②学部時代から⻭学科、⼝腔健康科学科 ( ⼝腔保 健学専攻と⼝腔⼯学専攻 ) の学⽣が学科 の枠を超えて共に学び合う ③これから本格的にはじまる国際化に対応で きる⼈材育成 このため 1 年次ではすでに将来のチーム医療 を念頭に置いたハーモナイゼーション PBL が 教養ゼミとして開始される。 もちろん、⻭学科・ ⼝腔健康科学科の学⽣がともに机を並べて学 (図 1 参照の ぶ。PBL は課題解決型学習のことだ。 こと。以下同じ)次のステップはスタートアップ コースワーク。これは⻭学科 3 年⽣・⼝腔健康 科学科 2 年⽣の学⽣がシャッフルされて、チー ムを組み、細胞培養基礎実習や CAD システム⼯ 学、あるいは ME 機器(医療機器)などを実際体験 (表1参照のこと)次のステップは専⾨コー する。 スワーク。⻭学科 4 年⽣と⼝腔健康科学科 3 年 ⽣の学⽣がこれもシャッフルの上、チームを組 んで 4 つの専⾨コースを回り、最先端の⽣命科 (表2参照のこと) 学研究の現場で学ぶ。 さらに⻭学科 4 年⽣と⼝腔健康科学科 3 年⽣ の学⽣は、実践専⾨英語演習のクラスを受ける。 (表3参照のこと)ここでは⽇常英会話や医療英語 など国際⼝腔医療⼈としての共通⾔語、すなわ ち英語を学ぶ。英語はその意味で外国語ではな く、国際⼝腔医療⼈としても共通⾔語として把 握されており、基礎中の基礎素養として扱われ ている。さらに研究の学会発表を念頭に英語プ レゼンテーション、あるいは英語論⽂の作成法 なども学ぶことができる。 さてなぜこのようなプログラムが組まれ、こ れがなぜ次世代⼝腔医療⼈にとって基礎⼒とな るのか。⻭学部・副学部⻑の⼆川浩樹教授は次 のように説明している。 「このプログラムの出発点は、これからの⼝腔 医療⼈にはバイオロジーの基礎知識、細胞に関 する基礎知識、それから患者さんの⽣体データ に裏付けられたエビデンスに基づく診断や判断 が必要だ、 という考え⽅にあります」 なるほど、⼝腔医療⼈は⼝腔器官を専⾨とす る医療⼈だ、つまり⼝腔から全⾝の状態が洞察 できなくてならない、そのためにはバイオロ ジーや細胞に関する科学の基礎知識は必須とな ろう。また医療分野には今までの医療機器だけ BioDental 教育 概念図 オーラルヘルス オーラル エンジニア マネージャー 5 4 学科、専攻を越え たインタープロフ ェッショナル教育 08 実践専⾨英語演習 3 専⾨コースワーク 2 スタートアップコースワーク 1 教養ゼミ (ハーモナイゼーション PBL) ⼝腔医療⼈ としての基礎⼒ ⼝腔健康科学科 ⼝腔保健学専攻 ⻭学科 表1 スタートアップコースワーク ⼝腔健康科学科 ⼝腔⼯学専攻 対象:⻭学科3年⽣・⼝腔健康科学科2年⽣ 細胞培養基礎実習 細胞培養の歴史や今後の展望を はじめ、細胞培養を⾏うにあた りあらかじめ必要となる基本的 な技術を学ぶ。実習では、実際 に組織培養実習室で 10 ⼈ 1 グ ループに分かれて基本的な操作 を習得する。 クリーンベンチ操作 位相差顕微鏡による培養細胞の観察 CAD システム⼯学 ・ME 機器学実習 ⻭列模型の情報を光学スキャナでコンピュータに取り込み、コン ピュータ上で補綴物を設計し、設計した補綴物を専⽤の機械によっ て⾃動で削りだすなど、補綴物製作までの所要時間や適合精度の実 際を体験し、臨床上 CAD/CAM を⽤いる利点や現在の問題点を学ぶ。 CADシステム⼯学実習で設計したデータからCAM (ミリングマシーン)を使⽤したクラウンの製作。 表2 専⾨コースワーク 対象:⻭学科4年⽣・⼝腔健康科学科3年⽣ 「⼝腔感染学」 ・ 「診断⻭学」 ・ 「再 ⽣ ⻭ 学」・「⼝ 腔 機 能 評 価 学」 の 4 つのコースを⽤意。対象 学⽣が各コースにわかれ、⽣ 命科学に関する最新の知⾒や、 基礎医学研究と⻭学臨床との 関連性を、実際に研究室で実 験を⾏いながら体験する。 診断⻭学実習 再⽣⻭学実習 対象:⻭学科4年⽣ ⼝腔健康科学科3年⽣ 表3 実践専⾨英語演習 でなく、CT スキャン、 CAD/CAM、 あるいは 3D プ 専⾨講師による⽇常英会話指導か リンターなど、コンピュータ ら医療英語、英語プレゼンテー 技術の⽀援を受けた最新の医 ション法や英語論⽂作成法など基 療機器が導⼊され、医療現場 礎英語⼒を培う。 で活躍している。こうしたテ 専⾨講師による英語演習 クノロジーに関する知識や素 す。実は学部⽣の時からこうしたチーム医療に 養も次世代型⼝腔医療⼈には必須の素養となろ 慣れ親しんでおこう、という狙いをもっていま う。⼆川教授は次のように続ける。 「こうした知識や素養は、⻭科医師(バイオデン す」 ティスト) 、⻭科衛⽣⼠(オーラル・ヘルス・マネー さらに、⼝腔医療⼈は⽇本国内だけでその仕 ジャー) 、⻭科技⼯⼠(オーラル・エンジニア)にとっ 事を完結できなくなっている。様々な分野の国 て共通した基礎知識です。医療⼈として必要な 際的専⾨家と協働しなくてはならなくなってい 知識は共通化した教育プログラムにしておいた る。そのためには外国の論⽂も読めなくてはな ⽅がいい。こうした共通基礎知識の上に各⾃の らないし、あるいは外国の専⾨家とも意思疎通 ができなくてはならない。あるいは⾃分の研究 専⾨性が成り⽴つ、と考えています」 それではなぜ⻭学科・⼝腔健康科学科の学⽣ 発表もしなくてはならないし、これから⽇本国 がシャッフルされて、混成チームを組んでバイ 内でも「内なる国際化」が進展していく、と予想 される。 オデンタル教育をうけるのか? 「⼝腔医療⼈はこれから幅広い専⾨分野の医 こうした国際⼝腔医療⼈は、現在英語を共通 療⼈、医師や看護師、あるいは介護⼠やケア・マ ⾔語としてお互いに意思疎通しあっている。国 ネージーなど福祉分野の⼈たちと患者さんを中 際化のためにはその共通語である英語を仕事で ⼼としたチーム医療に参加する必要がありま ⾃由に使いこなせる⼒も必要だ。 す。それは当然ですよね。⼝腔の健康は全⾝の健 その意味でバイオデンタル教育は「国際的な 康に直結しているのですから、患者さんの病気 次世代型⼝腔医療⼈にとって必要な基礎⼒を修 (⼆川教授)といえよう。 を治し健康維持・増進を図ろうとすれば、さま 得するプログラム」 ざまな専⾨家と協働しなければならないはずで Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 09 【⻭学部動向レポート】実践教育の場としての広島⼤学病院 ⽣命科学を基盤として安全・安⼼・最新 の⻭科医療を学ぶ-⻭学教育実践の場と しての広島⼤学病院 2013 年 9 ⽉ 20 ⽇広島⼤学病院に新診療棟が完成オープンした。⼀つの診療棟の中 に⻭科も医科も⼀緒に⼊ることになったのである。このことが⻭学教育実践の場として の広⼤病院の価値をさらに際だたせることになった。その実情を⾒ておこう。 連携⼝腔ケア実習で、毎週学⽣を率いて⼊院 患者さんの⼝腔ケア実習を指導し、学⽣のレ ポートをチェックしている杉⼭勝教授(⼝腔健康 科学科・科⻑、公衆⼝腔保健学)は次のようにいう。 「⼤事なことは、医療全体を⾒る、ということ です。医療全体を⾒て、それを理解し、その上で ⻭科医療の位置づけがキチンとできる、そうい う⻭科医療⼈(⼝腔医療⼈)でなければなりませ ん。⻭科医療だけがわかっているだけではダメ なのです。このことを理解するには連携⼝腔ケ ア実習は優れた臨床実習プログラムだといえま しょう。また⻭科と医科が同じ診療棟にあり,緊 密に連携している広⼤病院は実践教育の場とし て最適な環境です」 医療全体の中で⻭科臨床実習 ⼈間の尊厳を体で学ぶ 質的に充実した連携⼝腔ケア実習 連携⼝腔ケア実習は、臨床実習⽣が、⻭学部教 員・⻭科衛⽣⼠とともに⼊院患者さんや重篤な 全⾝疾患を抱えた外来患者さんに⻭科治療・⼝ 腔ケアを⾏う診療参加型実習だ。3、4 名がチー ムとなり協⼒して患者さんの⼝腔内を検査、⼝ 腔内の状態および全⾝疾患に及ぼすリスクを診 断する。その診断に基づいて最適な⻭科治療・ ⼝腔ケアを実施する。特に病棟では、通常⻭科の 診療室では経験しないような、例えばペンライ トを頼りに意識の無い患者さんの⼝腔内を診察 したり、時には⻭科衛⽣⼠の専⾨的⼝腔ケアの ために開⼝保持したりという、まさにチーム医 療の実習だ。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry ⼝腔健康科学科⻑ ⻭学科臨床実習 総ライター⻑ 栗原英⾒ 教授 杉⼭ 勝 教授 津賀⼀弘 教授 (⻭周病態学) (公衆⼝腔保健学) (先端⻭科補綴学) 医療全体の中で⻭科医療の位置づけが できる ⻭学教育実践の場としての新しい広⼤病院< ⻭科>の特徴を先に⾒ておこう。広⼤病院主席 副病院⻑・栗原英⾒教授(⻭周病態学)は次のよう にいう。 「これは⼀般の診療にも当てはまることです が、学⽣のみなさんが、医療事故もなく安全に学 べる環境作りを徹底的に追求しました」 病院でもっとも⼤切なことは、実は院内感染 など医療事故を徹底的に排することだ。 「病気のリスクを軽減しようとこられる患者 さんに、院内感染など新たなリスクを負わせる ことなどは医療⼈としてもってのほか」(栗原教 授)だ。 そうした安全な医療追求の思想が新病院 (写真 1 及び 2 など参照) の隅々に⾒られる。 さて⻭学部の学⽣は、臨床実習を通して医療 ⼈として成⻑していくわけだが、広島⼤学病院 ではチーム医療の実際を学んでいく。 臨床実習総ライター⻑・津賀⼀弘教授(先端⻭ 科補綴学)はいう。 「広⼤病院は⻭科だけではありません。最新医 療全体の中で、⻭科の臨床実習を⾏う体制にあ ります。全⾝疾患を抱え、⼀般の⻭科医院にかか ることができない外来患者さんの治療が⽇常的 に⾏われています。学⽣はそこに診療参加する のです。⽣半可な知識、技量では許せません。ま た昨年から開始した連携⼝腔ケア実習では、病 棟で重篤な疾患を抱えた⼊院患者さんの⻭科治 療・⼝腔ケアを⾏う。⻭科治療・⼝腔ケアが⼊ 院患者さんの苦痛を減らし、病気からの回復を 早めるのです。周術期(⼿術前後の期間)の⼝腔ケ アは⼿術のリスクや術後の合併症を低減しま す。臨床実習を通じて⼝腔の健康が患者さんの 全⾝疾病リスクをいかに軽減するか、これを学 ⽣⾃⾝も全⾝で学習するのです」 広島⼤学病院 主席副病院⻑ 【写真1】診療チェア。出⾎などわかりやすいよう全て⽩⾊ か透明の素材を使っている。また、⼿が触れる箇所は患者さ ん毎にシールを貼り替え(⻘い箇所)感染予防対策が施され ている。 さらに医療⼈としてもっと⼤切で基礎的なこ 【写真2】⼿術室。抜⻭も⼿術として扱われる。感染対策⽤ とを学ぶことができるのも⻭科と医科が連携し に空気洗浄機能も備えている。診療中の映像をカメラ中継し ながらモニター確認。同時に記録もできる。 て医療を⾏っているからだ。杉⼭教授はいう。 「⻭科は⽐較的⼈の⽣死に関わることが少な い領域です。しかしここではそうではない。毎⽇ “⽣きるため” に必死で闘っている患者さんと接 し、そこから多くのことを学びます」 津賀教授もいう。 「⼝腔ケア実習では様々な状況の患者さんを 診させていただきます。難病に苦しめられ、さら に⼝内炎で⼝腔が爛れた患者さん、⽔すら飲み こめない、うがいもできない患者さんもいらっ しゃる。ご家族がやつれながら付き添ってい らっしゃる意識の無い患者さんも。そういう必 【写真3】広島唯⼀の障害者⻭科。全ての障害患者さんに対 応でき、安⼼・安全な診療を提供するため様々な⼯夫がされ 死で病気と闘っている患者さん、そして家族の ている。写真はデンタルチェアへの移譲を⼝腔健康科学科 4 皆さんに⼼から尊敬の念を抱けるか、座学で学 年⽣が実習中。 ぶことは難しいでしょう。⽣命科学的に正しく 病気の検査・診断・説明と治療ができるのは当 然のこと。さらに医療⼈、⼈間としての対応、⾔ 葉、⽴ち居振る舞い、そうした医療⼈として基礎 中の基礎の素養を実 際に学び、⾝につける ことができるのが広 ⼤病院での臨床実習 です。」 その意味では、医療 【写真4】早期臨床体験実習。患者役は 2 年⽣、⻭科医師役 は 6 年⽣でペアを組む。2 年⽣は患者さんの⽴場を体験、6 ⼈としてもっとも基 年⽣に率直に感想を伝える。 礎的な素養、 「⼈間の 【写真5】⼩児⻭科。⼩さい⼦が喜ぶように、天井⼀⾯に絵が描か 尊厳」を学ぶことがで れている。超⾼齢社会はまた、少⼦化社会でもある。⼩児⻭科の きるのが広⼤病院で 仕事も、障害児・有病児・虐待を受けた児童など、さらに治療が 困難な患者さんが増えているのが現状。写真は⼩児⻭科の診療ス の臨床実習というこ ペース。地域の中核病院として⼀般開業医では治療が難しい患者 とになろう。 さんの紹介率が⾼いのが特徴。 【⻭学部の国際化戦略】ASEANと⽇本の懸け橋・欧⽶とのクロスサークル ASEAN と⽇本の架け橋そして欧⽶ ⻭学研究教育拠点とクロスサークル 広島⼤学⻭学部の国際化への取り組みには⼤きな 2 つの特徴がある。⼀つはア ジアに軸⾜を置いた⻭学教育研究拠点の構築という構想だ。これは欧⽶軸に対す る第三の⻭科学教育研究軸ともいえる。もう⼀つは教員・⼤学院⽣・学部⽣の⼈ 材交流をベースにしている点だ。その国際化への取り組みはまた学⽣のために新 たな可能性を切り拓こうとする取り組みとも⾒える。 ⻭学部の国際化は⼈材交流からはじまってい る。最初は教授など教員レベルの⼈材交流だ。 次にはじまるのが若⼿研究者・⼤学院⽣レベル の⼈材交流である。特に⻭学系⼤学院はアジア や中東諸国から多くの学⽣を受け⼊れてきた。 学部⽣レベルの交流が本格的にはじまるの は、2000 年代後半からである。本ガイドブッ ク 37 ⾴ の「学 部 学 ⽣ 相 互 交 流・国 際 交 流 (2014 年 5 ⽉現在)」を⾒ていただきたい。 2006 年に台湾の台北医学⼤学⽣3名を1年 間⻑期受け⼊れたのを⽪切りに、それまで院⽣ レベルが中⼼だった⼈材交流は本格的に学部⽣ レベルの交流も加わってくる。 2009 年になると受け⼊ればかりではなく、 学部⽣の派遣も徐々に増えていく。 2011 年 9 ⽉にはカナダのブリティッシュ・ コロンビア⼤学⻭学校に 3 名の学部⽣が 1 か⽉ 半の短期留学で派遣された。この頃になると、 受け⼊れ・派遣がめまぐるしく増加していくよ うになった。そして 2011 年 10 ⽉には、翌 2012 年 4 ⽉から正式にはじまる⻭学科国際⻭ 学コースに参加、4 年間の⻑期留学のために、 インドネシアのアイルランガ⼤学から 2 名、ベ トナムの医科薬科⼤学から 1 名の計 3 名が派遣 されてくる。この⻑期留学⽣は 2012 年以降毎 年 3 名がやってくる。 前任の国際⻭科医学連携開発学講座(本ガイ ドブック 29 ⾴参照のこと)担当教授でもある⾼⽥ 隆教授(⼝腔顎顔⾯病理病態学)は次のようにいう。 「これまでアジアを軸とした⻭学教育の拠点 形成という意味合いから、アジアの国際交流校 に派遣するケースが多かったのですが、やはり 学⽣には欧⽶の研究室も⾒せておきたいと考え ています。カナダのブリティッシュ・コロンビ ア ⼤ に 加 え て、2013 年 に は イ ギ リ ス の シ ェ フィールド⼤学との国際交流協定が実現しまし たので、今年からは毎年 1 カ⽉半ほどの短期留 学派遣も開始します。⻭学科の学⽣の半数は何 らかの形で海外の⼤学に短期の留学経験をする ことになりそうです」 こうした欧⽶軸への派遣開始には、アジアと の交流で培った成果を、欧⽶の⻭学教育研究に フィードバックし、相互にクロスサークルを構 築しようという狙いもある。(図 1 参照のこと) 国際的な潮流を 肌で感じさせたい なぜ、⻭学部は国際化を進めたいのか?その 理由の⼀つを⾼⽥教授は次のように説明する。 「これからの⻭科医療⼈は、⽇本国内ばかり を⾒ていてはいけないのだと思います。世界は 図1 アジアと欧⽶を繋ぐ広島⼤学 アメリカ中⼼の ⻭学教育研究拠点 ヨーロッパ中⼼の ⻭学教育研究拠点 ⼈材(教員・院⽣・学部⽣)交流を中⼼と した国際⻭学教育研究ネットワークづくり 刻々動いている、その国際的な潮流を肌 で感じさせたい。そのためには国外へで てみることです。将来、広⼤⻭学部の学 ⽣は全員が海外留学の経験がある、そう いうふうにしたいですね」 学⽣が⻭科医療⼈として⼤きく成⻑するため だ、というのである。2012 年 4 ⽉から本格ス タートした国際⻭学コースも実はその意味が⼤ きい。 「⻭学科 1 クラスには必ず⻑期海外留学⽣ 3 名がいます。それに毎年8名の6ヶ⽉間短期留 学⽣が加わります。さらに10⽇間受け⼊れな どの学⽣が授業に参加してくると、クラスの 1/3 ぐらいが外国⼈留学⽣などということもあ るわけです。こうした国際的な環境を学部⽣時 代から経験することも国際的潮流を肌で感じる きっかけになっていきます。彼らの共通⾔語は 英語ですけどね」(⾼⽥教授) 2015 年から域内統合化が 始まる ASEAN 10 「アジアに根差した⻭科医学・⼝腔健康科学 の教育研究国際拠点」を構築しよう、そしてそ れに対応する⻭学部⽣を育成していくとする⻭ 学部戦略が現実にもますます必要性が⾼まる客 観情勢も⽣まれている。 ASEAN10か国の域内統合化である。わか りやすくいうと欧州共同体(EC)の東南アジア 版で略称も AEC という。表 1 をご覧いただけ ればおわかりと思うが、東南アジアに⼈⼝ 6 億 ⼈の単⼀経済共同体が誕⽣する。いずれも伸び 盛りの国ばかりだ。その第 1 歩が来年 2015 年 に開始されるのだ。特に来年からは医師・⻭科 医師など専⾨職の域内共通資格化(相互認証制度) が開始される。わかりやすくいうと、域内どこ の国でも取得した⻭科医師の資格は域内すべて に通⽤するということだ。さらに ASEAN10 か国に共通した課題は圧倒的な⻭科医師不⾜、 ⻭科医師を育成する教育者、⻭科医科⼤学、衛 ⽣⼠学校、⻭科技⼯⼠学校、研究者・研究施設 なども圧倒的に不⾜している、という点だ。 ⾼⽥教授はいう。 「アジアの、特に⼦どもたちの⼝腔衛⽣の現 状は、私たちから⾒ると深刻な状況です。これ からも⻑い時間がかかるでしょう。私たちもお 互いに対等な⽴場で協働して⻭科医療⼈として 解決にあたらなければなりません。彼らの問題 は私たちの問題です」 そのうち、ASEAN で⻭科医療⼈と活躍する 広島⼤学⻭学部卒業⽣の姿が⾒られるだろう。 広島⼤学 アジアを拠点にした ⻭学教育研究拠点 表1 ASEAN(東南アジア諸国連合) FACT SHEET 構成国 ( )は⼈⼝ インドネシア(2 億 4,700 万⼈)、シンガポー ル(541 万⼈)、タイ(6,717 万⼈)、フィリピ ン(1 億 377 万⼈)、マレーシア(2,933 万⼈)、 ブルネイ(40 万⼈)、ベトナム(9170 万⼈)、 ミャンマー(5,002 万⼈)、ラオス(632 万⼈)、 カンボジア(1,513 万⼈) 動向 域内統合化を 2015 年開始。 域内専⾨職(⻭科医師含む)を共通資格化 オブザーバー国 パプアニューギニア(673 万⼈) 東ティモール(113 万⼈) 本部 インドネシア・ジャカルタ 2009 年以降、アメリカ、中国など 50 か国余 りが ASEAN ⼤使を任命。⽇本も遅ればせな がら 2011 年ジャカルタに⽇本政府代表部を 開設。ASEAN ⼤使を常駐させている。2014 年、 ポーランドが⼤使を常駐させた。 議⻑国 2010 年 ベトナム 2011 年 インドネシア 2012 年 カンボジア 2013 年 ブルネイ 2014 年 ミャンマー ASEAN 下部機構及びセンター ASEAN University Network (AUN)(本部: バンコク)、ASEAN Centre for Energy (ACE)(本部:ジャカルタ)など、11 機構及 びセンターが存在する。 域内共通語 英語 域内⼈⼝ 6 億⼈(EU 域内⼈⼝ 5 億⼈) 名⽬ GDP 2 兆 1,351 億 US ドル(2011 年) 実質 GDP (購買⼒平価 =PPP) 3 兆 800 億 US ドル(2011 年) ※⽇本の約 36% の規模。ASEAN 単独では 世界第 8 位。将来の統合を⽬指している。 貿易額 域外 2 兆 4,000 億 US ドル(2011 年) AEC 域内 5,980 億 US ドル(2011 年) Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 11 【⻭学部の国際化戦略】Hiroshima Conference 表1 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry における⼤学別ポスター発表の推移 国名 「アジアに根ざした⻭科医学・⼝腔健康 科学の教育研究国際拠点」構想の原動⼒ -Hiroshima Conference 「Hiroshima Conference」の正式名称は”Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry”(「⻭学教育と⻭科医学研究に関するヒロシマ国際会議」 ) という。しかしアジアの⻭科医学界では Hiroshima Conference として完全に定着し てきた。 (以下 HC と略)HC こそ広⼤⻭学部国際化戦略の原動⼒だった・・・。 最 初 に Hiroshima Conference (HC) の ス タートのいきさつから⾒ておこう。 2005 年(平成 17 年)は、1965 年(昭和 40 年) 広島⼤学⻭学部が設置されてからちょうど 40 周年にあたる。当時学部⻑だった栗原英⾒教授 ら執⾏部は何を 40 周年記念事業の柱とするか 頭を悩ました。 もちろん式典・祝賀会だけで済ます⽅法も あった。しかし学部執⾏部はそうは考えなかっ た。40 周年は次の 10 年の出発点でもある。次の 10 年に向けて学⽣のために最良の教育環境を 整える事業でなくてはならない、学部執⾏部は そう考えた。学⽣にとってもっとも必要な教育 環境の⼀つは“国際化”である。 今でこそ “国際化” あるいは “グローバル化” は ⽇本の⼤学の共通⽬標であり、世界に通⽤する ⼈材を⽣み出していくことは、⻭学に限らず、⼤ 学教育における基礎課題になっているが、当時 は必ずしもそうではなかった。 学部内では、欧⽶中⼼の⻭学教育・研究拠点 の現状に対して、社会環境や⻭科医療の現状も 全く違うアジアを拠点とした⻭学教育・⻭学研 究拠点の必要性が痛感されていた。またアジア の⻭学教育界ともその必要性について議論がお こなわれていた時である。ニーズは強い。 こうして広島⼤学⻭学部が主催する「アジア に根差した⻭科医学・⼝腔健康科学に関する教 育・研究国際学会」構想が 40 周年事業の柱とし て急浮上した。それが Hiroshima Conference である。今考えてみればとんでもない話である。 広島⼤学の⼀学部が国際学会を主催しようとい うのだから。また⻭学部は他の学部と⽐較すれ ば ⼩ 所 帯 で あ る。し か し 学 部 教 授 陣 は ⼀ 丸 と なってこの構想を⽀持した。また広⼤学⻑の理 解と⽀援も得られてこの構想は実現する。 実際開催されたのは、年も改まった 2006 年 1 ⽉である。この時国際交流協定校の学部⻑会議 もはじまった。各国の⻭学教育・研究の課題と 問題点も話し合われ、お互いにどう協働して問 題解決にあたるか、など真剣に話し合われ、2 年 に 1 回は開催しよう、ということになった。 そして若⼿研究者や学⽣同⼠の⽣⾝の交流が もっとも⼤切、と⾔う点でも意⾒が⼀致した。こ こに集まる学部⻑クラスの教授陣は、広島⼤学 ⻭学部の教授を含め、全員が海外留学の経験を もつ。国境を越えた学⽣同⼠の⽣⾝の交流がい かに⼤切で、専⾨分野に限らず、その学⽣の成⻑ にとっていかに⼤きな影響を与えるか、⾝に沁 みて理解していたのである。 Hiroshima Conference で 学⽣交流 第 2 回 HC が開催されたのは 2007 年 10 ⽉。 第 1 回の翌年と⾒えるが、第 1 回はあくまで 2005 年 40 周年記念事業の⼀環。だから 2005 年を基年とみれば 2007 年は 2 年後となる。 実は 2 回⽬が重要となる。1 回⽬は 40 周年 記念事業だから開催できた。しかし 2 回⽬はあ くまで「2 年に 1 度開催」の約束を守れるかどう かにかかっている。そして開催できた。背景には 教職員の努⼒もあるが、縁の下で、必死で第 2 回 開催を⽀えた事務職員の努⼒を⾒過ごすわけに はいかない。事務職員も学⽣により優れた教育 環境を整備しようという点では教授をはじめと する教員の考えと完全に⼀致していた。 そして第 2 回⽬には⼤挙してアジアの諸国か ら学部⽣クラスの学⽣がやってきて、広⼤⻭学 部⽣と「21 世紀の⻭科医学・医療を考えるアジ ア⻭科学⽣国際交流セミナー」開催にこぎつけ るのである。これ以降、2 年に 1 度 HC 開催に合 わせて、インドネシア、タイ、ベトナム、台湾など から学⽣が短期派遣され、⻭学部の授業に参加 したり、研究室を⾒学したり、⻭学部⽣と交流し たりすることが慣例となるのである。 インドネシア タイ 中国 韓国 ⽇本 計 5カ国(5⼤学) インドネシア タイ ベトナム 中国 マレーシア 台湾 韓国 イラン ⽇本 計 インドネシア タイ カザフスタン 中国 マレーシア 台湾 スリランカ 韓国 ⽇本 計 インドネシア タイ カンボジア ベトナム 中国 マレーシア 台湾 スリランカ 韓国 ⽇本 第 3 回から質的変化、 国際交流から国際協⼒へ 第 3 回⽬から質的に変化が現れる。⼀⾔でい うと国際交流から国際協⼒へ、ということにな ろうか。3 回⽬になるとお互いに気⼼が知れて くる。率直に悩みや課題をぶつけあうようにな る。そして協⼒・協働課題が浮かび上がってく る。その⼀つの表れが HC 学部⻑会議だ。この年 メンバーが中国・東南アジアを中⼼に 10 か国 16 校集まり、積極的に相互協⼒・相互⽀援が会 議の主要テーマとなる。 回次 ⽇程 第 1 回 2006 年 1 ⽉ 8 ⽇・9 ⽇ 会場 補⾜事項 広島国際会議場 ⻭学部 40 周年記念事業 第 2 回 2007 年 10 ⽉ 6 ⽇・7 ⽇ 広島国際会議場 アジア⻭科学⽣国際交流セミナー同時開催 第 3 回 2009 年 11 ⽉ 7 ⽇・8 ⽇ 広島国際会議場 第 23 回⽇本⻭科医学教育学会総会と連続開催 第 4 回 2011 年 10 ⽉ 9 ⽇・10 ⽇ 広島国際会議場 第 59 回国際⻭科研究学会⽇本⽀部総会連続開催 第 5 回 2013 年 10 ⽉ 12 ⽇・13 ⽇ 広島国際会議場 「考えよう⾷と健康」シンポジウム同時開催 第 6 回 2015 年 10 ⽉ 24・25 ⽇(予定) 広島国際会議場 ⻭学部 50 周年記念事業 アイルランガ⼤学 チュラーロンコーン⼤学 ホンコン⼤学 圓光⼤学校⻭科⼤学 広島⼤学 第 2 回(2007 年 10 ⽉) 計 アイルランガ⼤学 チュラーロンコーン⼤学 コンケン⼤学 ホーチミン市医科薬科⼤学 ホンコン⼤学 四川⼤学 マラヤ⼤学 台北医学⼤学 圓光⼤学校⻭科⼤学 マシャッド⻭科スクール 広島⼤学 演題数 1 2 1 2 17 23 3 2 2 1 1 1 1 1 1 1 17 9カ国(地域)11 ⼤学 31 アイルランガ⼤学 チュラーロンコーン⼤学 コンケン⼤学 アスタナ医科⼤学 ホンコン⼤学 四川⼤学 天津医科⼤学 国際医科⼤学 マラヤ⼤学 ⾼雄医学⼤学 台北医学⼤学 ペラデニア⼤学 圓光⼤学校⻭科⼤学 新潟⼤学 徳島⼤学 九州⼤学 北海道⼤学 東北⼤学 東京医科⻭科⼤学 ⼤阪⼤学 広島⼤学 9カ国(地域)21 ⼤学 2 6 10 1 1 1 1 1 1 3 1 1 1 4 1 1 1 1 1 1 17 第3回(2009 年 11 ⽉) 第4回(2011 年 10 ⽉) アイルランガ⼤学 チュラーロンコーン⼤学 コンケン⼤学 王⽴健康科学⼤学 ホーチミン市医科薬科⼤学 ホンコン⼤学 四川⼤学 天津医科⼤学 中⼭⼤学 国際医科⼤学 マラヤ⼤学 ⾼雄医学⼤学 台北医学⼤学 ペラデニア⼤学 圓光⼤学校⻭科⼤学 国⽴慶北⼤学校 北海道⼤学 東北⼤学 新潟⼤学 東京医科⻭科⼤学 ⼤阪⼤学 岡⼭⼤学 徳島⼤学 ⿅児島⼤学 広島⼤学(注) 10 カ国(地域)25 ⼤学 57 3 3 2 1 1 1 1 1 2 2 2 1 1 1 1 2 1 1 4 1 1 1 1 1 34 70 注:広島⼤学の演題数には外国⼈留学⽣による発表、5 演題が含まれている。 第 5 回(2013 年 10 ⽉) インドネシア タイ ベトナム 中国 表2 これまでの Hiroshima Conference Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry ⼤学名 第 1 回(2006 年1⽉) マレーシア 台湾 スリランカ 韓国 ⽇本 計 アイルランガ⼤学 インドネシア⼤学 ジェンベル⼤学 チュラーロンコーン⼤学 コンケン⼤学 ホーチミン市医科薬科⼤学 ホンコン⼤学 四川⼤学 天津医科⼤学 中⼭⼤学 国際医科⼤学 マラヤ⼤学 ⾼雄医学⼤学 台北医学⼤学 ペラデニア⼤学 圓光⼤学校⻭科⼤学 国⽴慶北⼤学校 広島⼤学(注) 9 カ国(地域)18 ⼤学 8 2 1 3 5 1 1 1 1 1 2 2 1 4 2 1 1 29 64 注:広島⼤学の演題数には外国⼈留学⽣による発表、 6 演題が含まれている。 【⻭学部の国際化戦略】Hiroshima Conference 第 4 回は JADR 総会・学術⼤会と連続開催 世界最⼤の⻭学界学術研究組織に国際⻭科研 究学会(International Association for Dental Research-IADR)がある。 その⽇本⽀部が JADR だ。JADR は IADR のアメリカ⽀部に次いで⼤ (なお⻭学部⾼⽥隆教授-⼝腔顎顔 きな組織である。 ⾯病理病態学-が来年の JADR 会⻑に就くことが決 でなく、懇親会にも参加し、広島⼤学の教授陣 やアジアからやってきた教授陣と遅くまで話し 込んでいる姿が⽬についた。⼀昔前の欧⽶から アジアが学ぶ、という姿ではなく、アジアが抱 える⻭科医療の問題を⼀緒に議論し考え合うと いう姿勢である。(現在アジアが抱える⻭科医療問 まっている) 題はすぐに中東諸国やアフリカ諸国が抱える⻭科医療 第 4 回 HC はこの JADR の第 59 回総会・学 術⼤会と連続学会だった。このため国際的にも、 国 内 的 に も 華 や か な 顔 ぶ れ の Hiroshima Conference となった。また⾒過ごせないのは、 この時、アジアの⻭学系⼤学院の学⽣(多くのア ジア諸国では⼤学院⽣は教員でもある)が集まって、 アジアにおける⻭科医療の現状と国際医療⽀援 について討議し、HC や JADR でも討議内容を報 告していることだ。アジア諸国が個別に抱える ⻭科医療の問題点、⼀⾔でいえば⻭科医療⼈の 絶対的不⾜、⼝腔健康科学的アプローチの必要 性、⻭科医療⼈教育システムの構築、について欧 ⽶の⻭科医療関係者ばかりでなく、⽇本国内の 関係者にも認識が深まったことだ。 問題になる)⼀⾔でいえばグローバルな⻭科医療 ⼀層の拡⼤の様相を⾒せる 第 5 回 HC 第 5 回 HC は、第 3 回の第 23 回⽇本⻭科医 学教育学会総会連続開催や第 4 回の JADR 総会 連続開催こそなかったが、いくつかの側⾯で実 質的な進展を⾒せている。 その⼀つは⻭学部⽣の原則全員参加としたこ とだ。もともと HC には⻭学部⽣に国際的な教 育環境を整備しようという意図も濃厚にあっ た。しかし、これまでは関係した⼀部学⽣しか 参加してこなかった。それはやむを得ない。学 部⽣との間に⼤きな乖離があったからだ。しか し、今年は⻭学科に dual linguistic education system の国際⻭学コース(13 ⾴・14 ⾴参照の こと)が開設されて 3 年⽬になる。学部⽣の先 輩たちの発表の機会も増えた。頃合いは良しと 第 5 回から全員参加に踏み切った。中には⽬を ⽩⿊させた学⽣もいたことは事実だ。というの は、HC は 1 回⽬から英語のみが使⽤⾔語だか らだ。しかし国際的な潮流を⽬の当たりに⾒て ⼤きな刺激を受けた学⽣も多かったこともまた 事実である。 濃厚に現れる欧⽶軸との クロスサークル もう⼀つの特徴は、3 回⽬から⽬⽴ってきた 傾向だが、欧⽶を軸とした医科学界からの参加 がはっきりした傾向となってきたことだ。たと えば特別講演では、⽶フォーサイス研究所の T.E.ヴァン・ダイク教授が⻭周病炎症治療の新 たな時代の幕開けを論じたし、またトロント⼤ 学医学部の J.E. オービン教授は⾻芽細胞に関係 する最新研究を発表した。教育セッションでは 英 シ ェ フ ィ ー ル ド ⼤ 学 臨 床 ⻭ 学 部 ⻑ の P.M. シュペイト教授が、カナダのブリティッシュ・ コロンビア⼤学⻭学部⻑の C.F. シューラー教 授が発表した。しかもこうした教授たちは発表 ばかりでなく、討論に積極的に参加したばかり 問題をみんなで考え合うという姿勢が濃厚に⽴ ち現れてきたことが⼤きな特徴だ。 12 第 5 回 HC:⽶フォーサイス研究所の T.E.ヴァン・ダイク 教授の特別講演 第 5 回 HC:ポスターセッションの様⼦ 拡⼤する国際交流協定校 第 5 回 HC で⾒られた新たな展開を⾒ていく とそれこそキリがないが、HC を舞台に広⼤⻭ 学部が新たな国際交流協定校を増加させている ことは是⾮⾒ておかなければならない。本誌 36 ⾴に掲載されている「広島⼤学⻭学部が結 んでいる国際交流協定」を⾒ていただきたい。 2013 年に英シェフィールド⼤学臨床⻭学部、 韓国の釜⼭カトリック⼤学、ミャンマーのヤン ゴン⻭科医学⼤学と協定を結んでいるがこれは すべて第 5 回 HC をきっかけに結ばれたものだ。 単に協定を結んだだけでなく、今年中に1カ⽉ 半などの短期留学で学部⽣を派遣する。学部⽣ にとっては新たに国際的視野を広げる機会が拡 ⼤したわけだ。さらにいえば、2014 年はミャ ンマーのマンダレー⻭科医学⼤学、タイのマヒ ドン⼤学⻭学部とも協定を結んだ。ASEAN 諸 国との結びつきがさらに深まる。 第 6 回 HC は 50 周年記念事業の柱 ⼤急ぎで第 1 回から第 5 回 HC で⾏われたポ スターセッションの変遷をみておこう。(11 ⾴ 表 1 参照のこと)ポスターセッションは若⼿研究 者、⼤学院⽣、場合によれば学部⽣レベルの研 究発表のチャンスである。この中⾝が HC のア ジアにおける重要度を測るバロメータといって も過⾔ではない。第 3 回、第 4 回は連続開催 の重要学会があったので、⽇本の他⼤学からの 参加が多かった。それをのぞいて考えてみると、 東アジア、東南アジアの主要な⻭科系⼤学から の参加が着実に増え、しかも定着してきている 様⼦がよくわかるだろう。同時に広島⼤学の⼤ 学院⽣や学部⽣も積極的に参加し始めている様 ⼦もよくわかる。 以上⾒てきたように、10 年前にスタートし た Hiroshima Conference は、実は⻭学部国 際化のドライブ・エン ジンだったことがおわ かりだろう。同時に⻭ 学部⽣に素晴らしい教 育機会を、直接・間接 に提供し続けてきた。 2015 年に開催予定の 第 6 回 HC は⻭学部 50 周年記念事業の柱 となる。どのような発 展を⾒せるか、楽しみ である。 第 5 回 HC の期間中、⾏われたディーンミーティング。活 発な議論が⾏われ、予定時間を越した 第 5 回 HC 期間中⾏われたインドネシアン・ナイト。インド ネシアの協定校や広⼤⻭学部で学び現在教授や⻭学部⻑を務 める⼈たち、交流を温めた OB が結集した。 第 5 回 HC が終了した翌⽇、広⼤⻭学部、県⽴広島⼤学、⼥ 学院⼤学が共催する「International Symposium on Food, Nutrition and Health」が⾏われ、HC の協定校の教授も参加、 活発な質疑も⾏われた。 International Symposium on Food, Nutrition and Health に参加した各校教授陣による集合写真 第 5 回 HC 集合写真 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 13 【⻭学部の国際化戦略】ICDD:3年⽬を迎える国際⻭学コース ICDD:3 年⽬を迎える国際⻭学コース 2012 年度からはじまった⻭学科国際⻭学コースが 3 年⽬を迎えている。第 1 期 ⽣は今年から 4 年⽣。国際⻭学コースを運営・管理する⻭学部内の部⾨は国際⻭科医 学連携開発(ICDD)センターだ。同センターの業務を直接担当する 2 ⼈の先⽣に国際 ⻭学コースの現状を聞いてみた。 最初に国際⻭科医学連携開発 (International Collaboration Development for Dentistry-ICDD)セ ン タ ー の 概 要 を ⾒ て おこう。センターは⼀⾔でいって⻭学部の国際 教育や研究連携を促進する役割を担うセクショ ンだ。その役割から、ICDD センターには加藤 功⼀教授(⻭学部研究・国際担当)をトップとして、 メンバーには⻭学部⻑、⻭学科⻑、⼝腔健康科 学科⻑が名を連ねている。従って 4 年間の⻑期 外国⼈留学⽣を⻭学部へ受け⼊れる国際⻭学 コースに関わる業務も担当している。といって 国際⻭学コースばかりが仕事ではない。表 2 を ⾒ておわかりのように、国際⻭学コース開始と 時期を同じくして、毎年 6 名以上の 6 カ⽉留学 ⽣を受け⼊れているが、このマネジメントも ICDD センターの仕事である。2014 年 2 ⽉に は 2013 年度 6 カ⽉留学⽣ 6 名の修了発表会兼 修了式が⾏われている。この時は 6 名の出⾝⼤ 学(インドネシア、タイ、ベトナム、台湾)と広島 ⼤学⻭学部の 5 ⼤学を結んだ国際同時双⽅向中 継で式が⾏われた。また 5 年⽣の⼀部講義をイ ンドネシアのアイルランガ⼤学およびベトナム のホーチミン市医科薬科⼤学と3校で結んで実 施もしている。また近年盛んになってきた⻭学 部⽣の交流協定校派遣も ICDD センターがマネ ジメントしている。 ICDD センターの国際⻭科医学連携の実務を 学術的に研究・開発する研究室が「国際⻭科医 学連携開発学 (Department of ICDD)」で、今回 は担当の岡広⼦特任講師とヌーウィン・ティ・ フーン・タオ特任助教にお話しを聞いた。 なおタオ特任助教は協定校であるベトナムの ホーチミン市医科薬科⼤学⻭学部出⾝。⼤学院 ⽣として広島⼤学院に留学、博⼠号を取得、そ の後 2 年間⽇本学術振興会の特別研究員として 実績を上げた後、2013 年に特任助教に就任し ている。 ⼤きな成⻑を⾒せる 国際⻭学コース 1 期⽣ 広島⼤学⻭学部⻭学科の⼤きな特徴は、国際 ⻭ 学 コ ー ス 学 ⽣ 受 ⼊ れ と 同 時 に 開 始 さ れ た、 dual linguistic education system を実施して いることである。 英語を通常授業の中に取り⼊れたのは、英語 を使⽤することが国際的⻭科医療⼈として必須 の能⼒であり、基礎素養だからだ。しかし実際 に学部教育ですべての授業に英語を取りいれる ことは⼤きな決断である。特に国際⻭学コース の第 1 期⽣が加わっている学年(今年から 4 年⽣ になった)には、混乱や学⼒の低下はないのだ ろうか? この問いに岡特任講師は次のように答える。 「確かに国際⻭学コース 1 期⽣を受け⼊れた 学 年 の 学 ⽣ た ち は dual linguistic education Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry system についていくのに相当な努⼒をしてい ると思います。しかし、なにごとも第 1 期⽣の というのは⾃⽴していくものだなぁ、というの が実感です。ここで1期⽣というのは、初めて dual linguistic education system を 導 ⼊ さ れた⻭学科の正規⽣のことです。というのは、 少なくとも学⽣の⾃⼰評価では、⾃主的なホー ムワークに積極的に取り組んでいますし、これ までの学年に⽐べても、学⽣達が⾼い授業理解 度、満⾜度を⽰している、というデータが出て いるからです。(広島⼤学全体や、少なくとも⻭学 教育界では)全く誰もどこも⾏っていない取組 みなので、先⽣⽅もかなりきめ細かく学⽣個々 ⼈の⽀援をした、ということもあるのでしょう が・・・」 そういえば、dual linguistic education system を導⼊した科⽬に臨んで予習・復習を するようになり、結果として勉強量が増えた、 という学⽣の話を聞いたことがある。 岡特任講師「それはその学⽣だけではないと 思います。多かれ少なかれ第 1 期⽣に共通した 努⼒だと思います」 タオ特任助教はつぎのようにもいう。 「それまでの先輩に⽐べると、⻭学科4年⽣ ははるかに英語の能⼒が⾼い、と思います。実 に流暢に英語を使って意思疎通する⼈が多いで すね。というより外国⼈留学⽣と積極的に意思 疎通したいと思っている学⽣が多い、と思いま す。そうなると英語を使わざるをえない、とい うのは英語が唯⼀の共通⾔語ですからね」 表 1 を⾒ておわかりのように、毎年クラスの 中に 3 ⼈の⻑期留学⽣がいる。それに毎年後期 6 カ⽉間は 6 ⼈の短期留学⽣がいる。クラスの ⽇本⼈学⽣の⼈数を 50 ⼈あまりと⾒れば、1 クラス 60 ⼈近い学⽣の中で 9 ⼈が外国⼈留学 ⽣なのだ。もう外国⼈とか⽇本⼈とかいう以前 に同じクラスメートだ。同じ試験を受けて同じ ように苦しめられる。気⼼も知れ仲良くもなる。 友⼈同⼠で英語を使うこと⾃体になんのためら いも構えもなくなってしまうだろうことは容易 に想像がつく。 優秀な外国⼈留学⽣が⼤きな刺激 岡特任講師は次のようにもいう。 「3 ⼈の留学⽣は極めて優秀で前向きです。 クラスメートは刺激を受けている、という側⾯ があるのではないでしょうか」 タオ特任助教も同意⾒だ。 「イ ン ド ネ シ ア で も ベ ト ナ ム で も ⻭ 学 部 に ⼊ってくる学⽣は⾮常に優秀です。その中から 特に優秀な学⽣が選抜されてこちらにやってき ます。その上に彼らには国や⼤学を代表してい るという意識がありますから、こちらに来ても ⼀層努⼒します(try harder)。結果としていい 成績を残しますよ。努⼒していい結果を残して ヌーウィン・ティ・ フーン・タオ 特任助教 岡 広⼦ 特任講師 (Nguyen Thi Phuong Thao) ⻭学科 3 年⽣(国際⻭学コース 2 期⽣)が受講中の杉⼭勝 教授の講義「⼝腔衛⽣学」。テキスト含め全て⽇本語と英語 の併⽤。 ⻭学科 3 年⽣の実習「⼝腔機能学基礎実習」。左でピペット を操作しているのがベトナムから来たタンさん、右から 4 ⼈ ⽬がカンボジアから来たマリナさん、右から 2 ⼈⽬がインド ネシアから来たディーシャさん。カメラを向けると周りの学 ⽣が「タンタンが気負わないように先に俺が失敗しとこう」 と冗談を⾶ばし、笑いを誘って緊張をほぐした。実習は⾒事 全員成功。授業中も英語と⽇本語が交互に⾶び交い、気さく に話が弾む。 ⻭学科 2 年⽣(国際⻭学コース 3 期⽣)の実習「組織学基 礎実習」左からカンボジアのシブメンさん、インドネシアの ヨハナさん、ベトナムのヌーウィンさん。ヌーウィンさんは なぜか周りから「アキちゃん」と呼ばれている。 表1 国際⻭学コース(⻭学科2年〜5年) の外国⼈留学⽣数 外国⼈留学⽣ 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 1年⽬ 2年⽬ 3年⽬ 4年⽬ 2年⽣ 3年⽣ 4年⽣ 5年⽣ 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 ⼈数 3 6 9 12 ※なお各年度の国際⻭学コース留学⽣は前年度に来⽇し、10 ⽉ 〜 3 ⽉の間、準備期間として新年度に備える。 表2 受け⼊れ短期(6ヵ⽉)留学⽣ 2012 年 10 ⽉〜 2013 年 3 ⽉ 6 名 2013 年 10 ⽉〜 2014 年 3 ⽉ 6 名 2014 年 10 ⽉〜 2015 年 3 ⽉ 8 名(予定) ※これ以外に毎年、国際交流学⽣(数⼗名)を受け⼊れている。 いる学⽣がクラスメートにいて、友⼈になって いるわけですから、やはり刺激を受けないわけ にはいかないのではないでしょうか。私はこれ が競争(competition。他⼈をけ落とすという意味で はなく)なのだと思います」 3 年⽬を迎える国際⻭学コース、今のところ いい結果がでているようだ。 【⻭学部の国際化戦略】国際⻭学コース1期⽣インタビュー 14 国際⻭学コース 1 期⽣ 3 名の外国⼈留学⽣に聞く 全員歯学部・国際歯学コース 4 年生 カリナ (カリナ・エルダ・サニンガル =Karina Erda Saninggar) インドネシア アイルランガ⼤学⻭学 部。インドネシア・ジャワ島ジュンバ ル市⽣まれ。⼤学進学と同時にアイル ランガ⼤学のある東ジャワの都、スラ バヤ(⼈⼝約 300 万⼈)に移り住む。 クラブ活動は霞管弦楽団(霞オーケス トラ)でバイオリニスト。 キナンティ (ナディア・キナンティ =Nadiah Kinanthi) インドネシア アイルランガ⼤学⻭学 部。インドネシア・ジャワ島マラン市 ⽣まれ。⼩さい頃から⻭科医師になり たかった。アイルランガ⼤学進学とと もにスラバヤに移り住む。クラブ活動 は⻭学部クッキング・サークル。 ユン (ヌーウィン・ティ・ユン =Nguyen Thi Dung) ベトナム ホーチミン市医科薬科⼤学 ⻭学部。南北に⻑く伸びたベトナム⺠ 主共和国のほぼ中央部クワンガイ(ク ワンガイ省の省都)⽣まれ。⼤学進学 と共にホーチミン市(⼈⼝約 740 万 ⼈)に移り住む。クラブ活動は⻭学部 クッキング・サークル。 今年 3 年⽬を迎える⻭学部国際⻭学コ ース。第 1 期⽣外国⼈留学⽣ 3 名も 4 年 ⽣に進級したのを機会にいろいろとお話 を聞いた。わかってきたことは国際⻭学 コースは⽇本⼈学⽣ばかりでなく、これ らアジアからの留学⽣の将来の可能性を 無限に広げているということだった。 -国際⻭学コース留学のいきさつについては? ユン:1 年⽣を終わった頃、先⽣から成績が⼗ 分なのでこのプログラムに派遣する資格がある といわれました。前から是⾮留学したいと思っ てましたし、特に⽇本に留学したいと思ってい たので、候補者にしていただきました。 キナンティ:私も 1 年⽣を終わる頃先⽣から話 がありました。留学するには⼗分な成績だから と。 -1 年次の成績が問題なんですか? (3⼈声を揃えるように) :もちろんそうですよ! キナンティ:私の⺟校では⼤学側が候補者を選 抜する際、直接呼ばれて、資格があるけど⾯接 を受けるつもりはありますか、と聞かれまし た。もちろん⽴候補しました。最初に⼤学の教 官の⾯接があって候補者が絞られました。それ から広⼤⻭学部の学部⻑と ICDD センターメン バーの⾯接があってやっと選抜されました。(ユ ン、カリナもほぼ同じと⾒えて、うなづいている) カリナ:ああ、私はここにくる運命だったので すね!(3 ⼈とも⼤笑い。超優等⽣と聞いて来たのだ が、その雰囲気はまるでなく、みんな明るく朗らかで とにかくよく笑う) 国際⻭学コースの本当のゴール -広島の印象は? ユン:はじめて広島についた時、街があまりに 静かなのでビックリした。市街も騒⾳が少なく て⾞も少ない。ホーチミン市と⽐べるとなぜこ んなに静かなのかと不思議に思いました。でも 住んでみると便利で快適。いっぺんで好きにな りました。 キナンティ:ほんとに便利で快適。 カリナ:私も同意⾒です。その上すべてがよく できていて(well organized)、無駄がない。 ―国際⻭学コースの授業はよく理解できますか? キナンティ:先⽣が英語と⽇本語で説明してく れます。英語で教えてくれるのでそれは理解で きます。時には理解が追いつかないことがあり ますが、それは英語授業のためではなく、時間 的な制約があるからだと思います。そこはホー ムワーク(予習や復習)で⼗分追いついていま す。恐らく⽇本⼈クラスメートも同じじゃない でしょうか? カリナ:先⽣の話や授業のポイントさえ理解で きれば、後の細部は⾃分で勉強できます。国際 ⻭学コースには、それより⼤切なゴールがある のだと思います。 ―⼤切なゴールというと? ユン:私たち外国⼈留学⽣も⽇本⼈クラスメー トも⼀緒に授業が理解できる。国際⻭学コース の本当のゴールは私たちも⽇本⼈学⽣も共に学 んで共に科⽬の内容を理解していく、共に同じ 授業をシェアリング(共有)するという点にあ るのではないか、と思います。もちろん、時間 不⾜はそれぞれが努⼒して補わなくてはいけま せんけれど。 キナンティ:私も同意⾒です。今の⽅法だと、 ⼀緒に理解できる。⽇本⼈学⽣と外国⼈留学⽣ が同じクラスメートとして同じ授業を⼀緒に理 解していくこれが国際⻭学コースのゴールでは ないか、と私も思います。だから⽇本語と英語 を両⽅使う授業は時間のムダ(90 分の時間を英 語と⽇本語で教えるのだから)というより、ゴー ルを達成するために必要な⽅法論ということに なるのではないでしょうか? それにこれは私の⽇本⼈クラスメートから聞 いた話ですけど、⽇本語の説明で理解できな かったところを、今度は英語で同じ内容を聞 く。そうするとよく理解できることもある、と いっていました。 カリナ:国際⻭学コースの⽬的は、どこの国の 学⽣であれ、⼀緒に授業を受けて⼀緒に理解す る、と⾔う点にあるのではないかと思います。 参加する学⽣がお互いに協⼒(collaborate)し て理解していくという点がもっとも⼤切なんだ と思います。 国際⻭学コースの価値 ―ちょっと想像してみて下さい。もし国際⻭学 コースがなくて皆さんがここにきていなかった ら、と。 キナンティ:ちょっと考えられません。私には このプログラムはとても役にたつ…。 カリナ:第⼀に私はこのプログラムに参加し て、ヒューマンネットワークが拡⼤しました。 いろんな国の⼈と⽂化や知識を共有していま す。いろんな国の学⽣が⻭学部の国際交流に参 加していますから。中国、韓国…。 キナンティ:台湾、ベトナム、インドネシア、 タイ、カンボジア、ブラジル(別プログラムで今 年の 4 ⽉からブラジルの学⽣が 1 年間の留学で国際⻭ 学コースの 4 年⽣のクラスに参加している)、そして ⽇本の学⽣。 カリナ:第 2 に⼤量の知識と研究に関する素養 を⾃分のものとすることができる。それはこの 学部の教育システムのおかげ。(この 3 名は全員 ⻭学科の最先端⻭学研究コースに配属されている)イ ンドネシアでは⻭学研究がまだまだ未発達なん です。ここは研究が進んでいるので⼤いに勉強 になりますし、私の将来を⼤きく広げてくれま した。もし国際⻭学コースがなかったら、⼿に ⼊らなかっただろうと思います。 ユン:もし私がベトナムで勉強を続けていた ら、きっと普通の⻭科医師になっていたでしょ うね。 ―⺟国へ帰られて卒業して将来はどうします? ユン:(キッパリと)研究者になろうと思ってい ます。ここで研究を学んでその⼤切さを実感し ているところです。将来は⼝腔がん(ベトナム は⽣活習慣のため⼝腔がんの患者が多い)撲滅のた めの研究をしたいと思います。 キナンティ:私は普通の⻭科医師になるつもり でしたが、ここで学んでいるうちに考え⽅が拡 がりました。研究者にも魅⼒があるし、⼝腔医 学(Oral medicine)の教育者にも魅⼒がある、 あるいは国際的な機関(たとえば WHO など)で ⼝腔医療⾏政家になる道もある、まだ迷ってい ます。 カ リ ナ:(キ ッ パ リ と)私 は ⺟ 校 で ⼝ 腔 医 学 (Oral medicine)教育者になろうと思っていま す。ここで学んだこと、たとえばスキル(技能) というより哲学とか医療⼈としての姿勢です ね、患者さんを⼀個の独⽴した⼈間として⾒る とか、インドネシアが学ぶことが多いと思いま す。 ―どうも今⽇はありがとうございました。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 15 【⻭学部 最先端研究紹介】⾼⽥隆教授-⼝腔顎顔⾯病理病態学 基礎研究から臨床研究、⼝腔から全⾝へ と幅広い連携研究を展開 ⾼⽥教授の専⾨は⼝腔病理学だ。病理学は病気の原因からその成り⽴ちを明らかにし、 新しい診断法や治療法を開発する科学である。従って遺伝⼦レベルの基礎研究から、臨床 研究までその守備範囲は広い。また⼝腔から全⾝の健康疾患を⾒通す必要もあることか ら、⻭学部のみならず医学部の各専⾨分野とも幅広い連携研究が進んでいる。病理学は基 礎医学と臨床医学、⼝腔の病態と全⾝の健康、⻭学と医学をつなぐ Bridging Science(架 け橋の学問)だ。(なお、⾼⽥教授は現在国際⼝腔病理学会理事⻑でもある) 表 1 を⾒ていただきたい。⼝腔病理学教室が テーマとしている研究分野の表だ。腫瘍関連研 究はわかりやすく⾔うとがんに関する研究。⻭ 周疾患関連研究は⻭周病と全⾝疾患に関する研 究、⾻破壊性疾患に関する研究は⻭周病や関節 リウマチをはじめとする⾻破壊性疾患の治療法 を開発する研究、診断病理学的研究は⼝や顎に できる病気の診断に関する研究だ。右欄はその 研究に関連して連携している⻭学、医学、薬学、 診療の各専⾨分野の⼀覧表だ。⼝腔病理学を基 点に幅広い全⾝専⾨分野と連携研究を進めてい る様⼦がよくわかる。⻭学は⻭や⼝腔内の問題 に限定して研究や臨床を進めていればよいとい う時代は完全に終わっているということでもあ る。またこれからの⻭科(⼝腔)医療⼈は、⼝ 腔から全⾝の健康を管理する必要があるという ことでもある。 その代表例が⻭周病だろう。⾼⽥教授は次の ようにいう。 「(図 1 参照のこと)⻭周病になると⻭周ポケッ トができます。ここに⻭周病原因菌(図の⿊い部 分)が 増 殖 し ま す。デ ン タ ル プ ラ ー ク(⻭ 垢) 1mg あたり 1 億個の細菌がいます。細菌は毒 素や酵素等を作ります。⻭周ポケットに⾯する ⻭⾁の表⾯はポケット上⽪という上⽪で覆われ ているのですが、この上⽪には潰瘍(ただれ) ができて⽳があきます。この⽳を通って細菌そ のものや毒素が⻭⾁の⾎管に⼊り込んで⾎流に 乗って全⾝に運ばれます。これが持続すると全 ⾝の健康に⼤きな影響を与えるようになるので す。」 これまでは⻭周病と糖尿病の関係はかなり明 らかになっている。ところが実はこれだけでは ない。脳⾎管疾患(脳梗塞)、⾻粗鬆症、⼼臓⾎ 管疾患(動脈硬化や⼼筋梗塞)、腎炎、関節リウマチ、 ⽪膚疾患、妊婦トラブル(早産・低体重児出産) などの原因因⼦になってきていることも明らか にされつつある。考えてみれば、細菌やその毒 素が⼝腔内から⾎流に乗って全⾝にめぐるのだ から、これら全⾝疾患の原因になってもおかし くない。これまでそこに⽬が向けられていな かったというに過ぎない。研究が急がれる理由 でもある。また⾎流に乗らなくても、こうした 細菌が誤って、気管に⼊ってしまえばこれは誤 嚥性肺炎の原因にもなる。 ⾮アルコール性脂肪性肝炎 -NASH ⾼⽥教授の研究室の研究を全部紹介している 紙幅はないが、そのうちここでは⻭周病と⾮ア ルコール性脂肪性肝炎(NASH)の関係を⽰す 研究の⼀端をご紹介しよう。飲酒などで肝臓が 障害され肝炎になることは昔からよく知られて いる。ところがアルコールによらない肝炎もあ る。そのひとつが NASH だ。肥満が原因だ。肥 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 満になると肝臓に脂肪が溜まる(脂肪肝)。脂肪 肝から、肝炎、肝硬変さらには肝臓がんへと進 ⾏する。ところが脂肪肝の⼈全部が NASH に 進⾏するわけではない。(⽇本⼈では約 1000 万 ⼈が脂肪肝と⾒られている。うち 10% から 20% の ⼈が NASH に進⾏する)そこには肥満(第 1 ヒット) に加えて、脂肪肝を NASH に進⾏させる因⼦(第 2 ヒット)があるのではないかとはすでに多く (NASH 発症: の医学者が指摘していたところだ。 2 ヒット説) ⾼⽥教授の研究グループの宮内准教授や古庄 助教らはこの第 2 ヒット因⼦に⻭周病からの細 菌が関係しているのではないかと強く疑った。 マウスの実験で、通常⾷マウスと⾼脂肪⾷マウ スのグループをつくって、さらにそれぞれ⻭周 病原因菌に感染と⾮感染のグループに分けた。 したがって A 群:通常⾷⾮感染、B 群:通常 ⾷感染、C 群:⾼脂肪⾷⾮感染、D 群:⾼ 脂肪⾷感染の4つのグループができるわけで ある。結果は? B 群と D 群の感染グループでは、 ⾎清中の内毒素レベルもサイトカインレベルも ⾼かった。⼀⽅、C 群では脂肪⾷の摂取によっ て NASH が起こっていたが、⾼脂肪⾷の摂取 に⻭周病原因菌感染を伴う D 群では NASH の 病態がさらに進⾏し、肝硬変につながる変化が 観察された。⻭周病は NASH の第 2 ヒットの 因⼦として考えられるのだ。 ヒトでもやはり⻭周病菌が 第 2 ヒット因⼦ ⼝腔顎顔⾯病理病態学 ⾼⽥ 隆 教授 Takashi Takata 授(広⼤病院・主席副病院⻑)に依頼して⻭周病 を改善したら肝臓の状態は良くなるかどうかを 調べてもらうことにした。この取り組みは今は じまったばかりである。 ⾼⽥教授は次のようにいう。 「⼊院患者さんの、たとえば周術期(⼿術直前 時期)に⼝腔ケアをすると⼿術の効果が上がる ことはすでに確認済。しかし肝炎のような疾患 にも有効だと確認できれば、⼝腔ケアや⻭周病 治療が NASH の予防法や治療法として科学的 に確⽴できることになります」 そして次のように続ける。 「⻭周病などで⾻が壊されていくメカニズム と関節リウマチで⾻が壊されるメカニズムやが んが⾻を壊しながら浸潤していくメカニズムは よく似ています。⻭学研究で明らかにしたこと を⻭科だけにとどめることなく全⾝の健康につ なげていくことが、⼤変重要でとても⾯⽩い。 これから⻭学を⽬指す学⽣には、⻭科だけにと どまらず広い視野を持った研究者や医療⼈に なって欲しいのです。また、国内だけでなく世 界に⽻ばたいてほしいのです。」 まさに「⼝腔から全⾝へ、local から global」 ということだ。 図1 ⻭周ポケット マウスなどの動物実験で明らかになったこと マウスなどの動物実験で明らかになったこ が、ヒトでもあてはまるのだろうか?ヒトでは 当然実験ができない。しかし確認してみたい。 医学部の消化器・代謝内科学の茶⼭⼀影教授(広 島⼤学病院⻑)の研究グループがこれまでの研究 ポケット上⽪ で NASH 患者の肝⽣検材料をもっていた。そ 上⽪>潰瘍(⽳) こでお願いして⻭周病原因菌の存在を免疫組織 化学染⾊で調べてみた。驚くことに、約半数の 患者さんの肝臓に⻭周病原因菌が観察された。 そして、⻭周病原因 菌が観察された症例 表1 ⼝腔病理学研究室の研究テーマと医⻭薬連携研究 のほうが NASH の病 連携先 教授名 薬学・細胞分⼦⽣物学 ⽥原栄俊 教授 態が進んでいた。マ 腫瘍関連研究 医学・整形外科学 越智光夫 教授 ウスによる実験の結 ●⼝腔癌の発⽣進展に関する病理学的研究 ●⾻⾁腫の発⽣進展におけるアメロブラスチンの役割 広⼤病院・病理診断科 有廣光司 教授 果とヒトの病態が⼀ 解明研究 ⾃然科学研究⽀援開発センター 外丸祐介 教授 ●腫瘍⾎管に関する研究 致していたのであ 栗原英⾒ 教授 ⻭学・⻭周病態学 る。やはり NASH の ⻭周疾患関連研究 茶⼭⼀彰 教授 医学・消化器・代謝内科学 ●Oral systemic disease connection に関する研究 進⾏に、⻭周病が第 ●⻭周炎の発⽣メカニズム解明とサイトカイン療法 ⼯藤美樹 教授 医学・産科婦⼈科学 2 ヒット因⼦になっ に関する研究 医学・リウマチ・膠原病内科 杉⼭英⼆ 教授 ⾻破壊性疾患に関する研究 ていたのだ。 広⼤病院・総合内科 ⽥妻 進 教授 ●ラクトフェリンを⽤いた破壊性⾻疾患の治療法に こ こ ま で わ か る 関する開発研究 医学・外科学 ⼤段秀樹 教授 ●γ-GTP を標的とした⾻疾患の新規診断法と治療法 と、次は実際に治療 の開発研究 で改善が⾒られるか 診断病理学的研究 医・病理学 武島幸男 教授 医・分⼦病理学 どうかである。⻭周 ●⻭原性腫瘍に関する診断病理学的研究 安井 弥 教授 ●唾液腺腫瘍に関する診断病理学的研究 病態学の栗原英⾒教 【⻭学部 最先端研究紹介】宿南知佐教授-⽣体分⼦機能学 16 軟⾻細胞の分化誘導系の構築から テノモジュリンの発⾒へ ⽣体分⼦機能学の宿南知佐教授は分⼦⽣物学者と分類できるだろう。が、その研究対 象分野は実に幅広い。ここではその幅広い研究の⼀端しかご紹介できないのが残念だ が、よく⾒てみると⼤きな特徴がある。それは常に未開のフロンティア分野を⼿掛けよ うとする研究姿勢だ。未開のフロンティアの研究課題を宿南教授は「新しい世界への扉」 と⾔葉で表現している。 宿南教授は実は広島⼤学⻭学部出⾝の研究者 だ。当然のことながら⻭科医師免許ももってい る。しかし 6 年間の学部⽣時代には研究とは無 縁の存在だった。まだ広⼤⻭学部に最先端⻭科 研究コース、臨床⻭科医学コースの 2 コース制 が導⼊される前の話である。もし 2 コース制が 導⼊されていたら宿南先⽣は研究コースを選択 していたに違いない。本格的に研究を開始する のは⼤学院(⼤阪⼤学)に進んでからだ。ここで 担当教官の指導を受けながら、 「軟⾻細胞の分 化誘導系」を構築する業績をあげる。といって も何のことかわからないので簡単に説明する。 図 1 を⾒ていただきたい。個体発⽣のごく初 期、内胚葉と外胚葉の間にある中胚葉の未分化 間葉系細胞から、⾻細胞、⼼筋細胞、軟⾻細胞、 腱細胞などが分化して組織が成⻑していく。図 1 a はそうやって「軟⾻性⾻原基」ができたと ころである。軟⾻には⾎管が貫通していない。 これが⾻に置き換わっていくのだが、軟⾻細胞 は肥⼤化しつつ、⼀⽅で細胞外基質は⽯灰化し ていく。⽯灰化した軟⾻に周囲組織から⾎管が 侵⼊してきて(図1 b)、その⾎管が全体に⾏き 渡って⾻に置き換わっていく(図1 c)。この不 思議な現象の中で軟⾻細胞がたどる多段階の分 化成熟を⼀つの系(システム)として確⽴したの である。この「軟⾻細胞の分化誘導系」は、⼀ つのしっかりした裏付けをもった「誘導系」と して、関連分野を研究する世界中の学者に使⽤ され、また論⽂引⽤もされている。 テノモジュリンの発⾒ 1998 年京都⼤学が再⽣医科学研究所を開所 することになるのだが、宿南教授は⼤阪⼤学で の指導教官とともに再⽣研に移る。この頃、宿 南教授は軟⾻組織が無⾎管であることに興味を もっていた。前述のように軟⾻には⾎管が貫通 していない。それは軟⾻細胞の中に⾎管の新⽣ を抑制する遺伝⼦(分⼦)、コンドロモジュリン -1(ChM-1 と略す)が働いているからだ、とい うことがわかっていた。(ついでにいえば、「軟⾻ いた。宿南教授はポスト・ゲノム時代の⼿法を 使って、ChM-1 と分⼦構造が似ている分⼦の 遺伝⼦をクローニングし、動物実験でその遺伝 ⼦の分布を調べてみると、それまで知られてい ない⾯⽩い組織で特異的に発現していることが わかった。 「最初は筋⾁に分布しているというデータが 得られたので、これは筋細胞に特異的に発現し ているのかな、と思いました。ところが筋⾁は ⾎管が豊富ですよね。だからこの分⼦は、⾎管 新⽣抑制とは関係がないのかな、とも思いまし た」(宿南教授) ところがさらに調べていくと、筋⾁に発現し ていると⾒えたその分⼦は、筋⾁を包む膜、筋 ⾁と⾻、⾻同⼠の接合部に特異的に発現してい ることがわかった。いいかえれば腱や靱帯など といった組織に特異的に発現していた。軟⾻と 同様に、腱や靱帯には⾎管がほとんど貫通して いない。だから⾊も⽩い。宿南教授は、これは 腱や靱帯に特異的に発現する「⾎管新⽣抑制分 ⼦」だと結論し、これに「テノモジュリン」と 命名した。ChM-1 が軟⾻に特異的に発現する ⾎管新⽣抑制分⼦ならテノモジュリンは、腱や 靱帯に特異的に発現する⾎管新⽣抑制分⼦とい うわけだ。 宿南教授は考えている) Chisa Shukunami 構造をもつ分⼦をクローンニングしたのは世界 的にいえば、宿南教授のグループだけではない からだ。ドイツの科学者グループも、フランス のグループも、あるいは企業の研究者グループ も同じことをした。「筋⾁に発現する」、「腱や 軟⾻などに発現する」あるいは「ChM-1 に似 た分⼦」という結論を出し、腱や靱帯に特異的 に発現する⾎管新⽣を抑制する分⼦、という結 論には⾄らなかったのである。 テノモジュリンの発⾒は、それまでほぼ⼿つ かずの腱や靱帯分野の医学研究(たとえば腱や靱 帯組織の修復や再⽣研究)に新たな可能性を開く ことになった。というのは、テノモジュリンが、 健全な腱や靱帯を判定するマーカー(⽬印)と なったからである。 宿南教授は、研究の重要性について次のよう にいう。 「これからの⻭科医療⼈は、臨床に進 んでも、研究によって培えるエビデンス重視の 思考⽅法が必要です。経験やカンに依存する時 代は過ぎ去っています」 未開のフロンティアを ⼿掛ける と、⾔葉で書くと簡単だが、ここにいたるま では細胞培養レベルから動物を使った実験など ありとあらゆる実験を重ねて結論をだしてい る。 「新たな分野で新たな発⾒をした、と思うと 体がゾクッとするほど嬉しい。でも同時にもし 私が間違っていたら、 図1 と思うとゾッとしま すよね。その可能性 は常にあるわけです から。だから結論を 出すにはあらゆる⾓ 度から、いろんな実 細胞の分化誘導系」は確⽴されたが、なぜ関節軟⾻に 験を重ね、時には新 ⾎管がないのかはまだ明らかにされていない。軟⾻組 しい実験法や系を開 織で⾎管新⽣を抑制しているのも ChM-1 だけではな 発しながらデータを いだろう、まだ他にあるはずだ、と様々な実験の結果、 整備していきました」 時代は 2000 年代に⼊り、ゲノム解析が⻑⾜ の進歩を遂げていた。国際的な「ヒトゲノム計 画」(ヒトのゲノムの塩基配列を明らかにする)の終 了が宣⾔されるのは 2003 年のことである。す でに本格的なポスト・ゲノム時代がはじまって ⽣体分⼦機能学 宿南 知佐 教授 【写真1】腱・靭帯に特異的に発現するテノモジュリン 軟⾻細胞の分化誘導系(⻑管⾻形成の例) (宿南教授) もしかするとこの 姿 勢 が「発 ⾒」を ⽣ んだのかも知れない。 というのは、テノモ ジュリンと同じ分⼦ a) 未分化間葉系細胞の軟⾻分化により、軟⾻性⾻原基が形成される。b) 軟⾻性原基中央部分 の軟⾻細胞が肥⼤化。⼀⽅で細胞外基質(細胞の外にある超分⼦構造体)が⽯灰化する。c) 周 囲の結合組織から⽯灰化した軟⾻に⾎管が侵⼊してくる。次いで⾻端部にも⾎管が侵⼊する。こ うして軟⾻から⾻(この例では⻑管⾻)へ置き換わっていく。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 17 霞キャンパスライフ 霞キャンパスライフ ⻭学部の 授業時限 8:00 9:00 ⼊学から卒業まで 1 1時限 2 9:30 10:00 2時限 10:30 11:00 11:30 3 4 3時限 5 4時限 6 12:00 12:30 前期 前期 前期 後期 前期 専⾨教育課程 前期 コース制説明会・コース決定 (最先端⻭学研究コース・臨床⻭科医学コース) コース別教育 臨床・臨地実習、卒業研究 演習・実習・特論 3⽉⻭科衛⽣⼠・⻭科技⼯⼠国家試験・卒業式 ⻭科衛⽣⼠・⻭科技⼯⼠国家試験 合格発表 臨床実習 共⽤試験CBT(知識) 共⽤試験OSCE(技能) 後期 期 前 7時限 15:30 8時限 16:00 17:30 10時限 期 後 17:00 写真で⾒る⻭学部 (各研修施設のマッチング試験) 前期 14:30 9時限 ※霞キャンパス 後期 4 16:30 ※主として東広島キャンパス 後期 5時限 18:00 ※霞キャンパス 専⾨教育課程 早期臨床実習 ※主として東広島キャンパス 後期 13:30 15:00 4⽉⼊学式 教養教育課程 オリエンテーションガイダンス 2⽉⻭科医師国家試験 3⽉卒業式 ⻭科医師国家試験合格発表 4⽉〜翌年3⽉まで受け⼊れ施設で研修 年間スケジュール 6時限 ⼝腔健康科学科 教養教育課程 4⽉⼊学式 オリエンテーションガイダンス 後期 研修医 13:00 14:00 ⻭ 学 科 年次 8:30 学⽣⽀援グループ⻭学部担当 「みなさんこんにちは!学⽣⽀援の⻭学部 担当メンバーです。⻭学部のことでわから ないこと、気になったこと、困ったことな ど、なんでも相談してください。気軽に声 をかけてくださいね!」 ⼝腔健康科学科臨床実習ガイダンス。これから臨床実習のため⼤学病院 へ出ることになる3年後期の学⽣たちに、説明と訓辞が⾏われる。学⽣ から、医療⼈へ。病院へ出れば、患者さんは「学⽣」とは⾒てくれない 1⽇:春季休業(4⽉8⽇まで) 3⽇:⼊学式 9⽇:前期授業開始 中旬:オリエンテーションキャンプ 7 上旬:共⽤試験(CBT) 下旬:前期末試験 31⽇:前期授業終了 8 1⽇:夏季休業(9⽉30⽇まで) 上旬:オープンキャンパス 9 中旬:共⽤試験(OSCE) 30⽇:夏季休業終了 10 1⽇:後期授業開始 11 5⽇:創⽴記念⽇ 中旬:霞祭 12 24⽇:冬季休業(1⽉7⽇まで) 1 7⽇:冬季休業終了 8⽇:授業開始 2 上旬:後期末試験 11⽇:後期授業終了 12⽇:学年末休業(3⽉31⽇まで) 3 23⽇:学位記授与式 31⽇:学年末休業終了 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 臨床実習開始前に実施されるOSCE(客観的臨床能⼒試験)の様⼦。(写真左)その説明会。(写真 右)周りを取り囲んだ試験官の先⽣⽅の中で⾏われる。ダミー⼈形や患者役の⼈を相⼿に、「⻭科医 師」として診療を⾏う。適切な⼿順を踏んでいるか、治療・処置は適切だったか、時間はどうか、説明 は充分か、⾔葉使いはどうかなど様々な視点からチェックされていく 2012年度から始まった⻭学科2年⽣対象の「早期臨床 実習(患者体験実習)」臨床実習中の6年⽣と教員が 臨床現場である休⽇の⼤学病院を使って体験させる。 障害者診療室(写真上)⼝腔総合診療室(写真下) ⻭学科実習室の実習模様 ⻭学科2年の組織学基礎実習。 グループに分かれて発表しあう 霞キャンパスライフ 18 クラブ活動 サッカー部 卓球部 バレーボール部 硬式庭球部 霞JAZZ研究会 ソフトテニス部 霞⽔泳部 剣道部 ⼸道部 霞ラガーズ(ラグビー部) 準硬式野球部 霞上⽥宗箇流茶道部 霞陸上競技部 バスケットボール部 バイオテクノロジークラブ(バイテック) クッキングサークル ハイテック 国際交流クラブ(HUDIC) アーティック dual linguistic education systemを⽤いた 英語・⽇本語併⽤授業 ⼝腔保健学専攻 要介護者の⼝腔ケアを ⼝腔⼯学専攻「顎機能検査」の⼀コマ。 写真は⾝体のバランスの検査の様⼦ ロールプレイング中 ⻭学科の診療実習⾵景 養護教諭養成の講義 最新の設備を整えている デンタルスキルス・ラボ ⼝腔⼯学専攻の組織培養室 ⼝腔⼯学専攻 C⾔語でプログラミングに取り組む学⽣たち Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 19 ⻭学科で学べること-概要 歯学科で学べること 【⻭学科】1年次で教養教育科⽬を学び、3年次後期から2つの専⾨コースへ 【⻭学科】1年次 教養教育科⽬を学び 3年次後 最先端⻭学研究コース 臨床⻭科医学コース 1年次 2年次 教養教育科⽬ 専⾨コア科⽬ 3年次 4年次 5年次 コース別科⽬ 6年次 臨床実習 コース別科⽬ 国際⻭学コース ⺟国にて ⽇本にて 教養教育 準備期間 コース別科⽬ ⺟国にて臨床実習 ⻭学科では、2年次より専⾨共通コア科⽬を履修し、5年次前期まで専⾨科⽬を学びます。3年次後期になると専⾨共通コア科⽬に加え、 最先端⻭学研究コース、臨床⻭科医学コースに分かれ、それぞれのコース別科⽬を修得することになります。 広島⼤学⻭学部⻭学科は、全国の⻭学系⼤学の中で 唯⼀コース制の教育、すなわち最先端⻭学研究コース と臨床⻭科医学コースの2コース制を取り⼊れた⼤学 です。コース制教育を通じて学⽣の個性をのばし、⻭ 科医学医療分野のリーダーとなる⻭科医師、研究者、 教育者の育成を⽬指します。 しかし、コース制教育の導⼊は研究や臨床に特化し た⼈材の育成を⽬指しているのではありません。それ ぞれのコースで最先端⻭学研究と臨床⻭科医学のコラ ボレーションの重要性を実感し、⾃ら新領域を開拓す る熱いハートをもった⻭科医療⼈の育成を⽬指します。 また、グローバリゼーションに対応し、アジアに根 差した⻭科医学、⼝腔健康科学の教育・研究の世界的 ポジショニングとして、新たに国際⻭学コースを設置、 海外の協定校から学⽣を受⼊れ、⺟国で⻭科医療に携 わる⼈材の育成を⾏います。 研究と臨床の統合 先端的研究の成果は、医療現場に還元されなければなりません。また、医療現場 で遭遇する問題点は先端的研究⼿法を⽤いて解決しなくてはなりません。⻭科医 療⼈にとって、『研究』と『臨床』は⾞の両輪のようなものです。この2つが統 合された所に、⾼度な医療技術と学識を備えた⻭科医療⼈が⽣まれます。広島⼤ 学⻭学部⻭学科では、このように研究と臨床がバランスよく統合された教育を実 施しています。 国際化戦略 ハイクオリティな⻭科医療⼈の育成のためには国際化戦略が⽋かせません。国際 化に迅速に対応できる能⼒が必須です。それほど世界はボーダーレス化していま す。このため当⻭学部は2006年・2007年・2009年・2011年に続いて2013年 10⽉に「5th Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry」を開催し、広島⼤学⻭学部と学術交流提携を結んでいる姉妹校(36 ページ参照)からの多くの参加者があり、21世紀の⻭科医学や医療の展開につ いて討論しました。平成23年10⽉から国際⻭学コースを設置し、インドネシ アから4名・ベトナムから3名、カンボジアから2名学⽣を受け⼊れて、⽇本⼈学 ⽣と⼀緒に専⾨授業を受け、将来⺟国で⻭科医療に携わる⼈材の育成を⾏ってい ます。このように広島⼤学では他の⼤学に先んじて国際化戦略を進め、環太平洋 主要⼤学における⻭学教育研究の拠点⼤学となる事を⽬指しています。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 少⼈数教育・PBL教育 こうした教育⽬標を実現するために、⻭学科では多彩で有能な、また幅の広い分 野の教授陣が⽐較的少⼈数の学⽣を指導する、少⼈数教育を実現しています。多 くの授業ではPBL教育(Problem-Based Learning―問題解決型教育)など、最 新の教育⼿法をいち早く取り⼊れて、⼈材の育成にあたっています。とりわけ、 最先端⻭学研究コースでは教員と学⽣がほぼ1対1で⼀緒に研究します。臨床⻭ 科医学コースにおいても⾼度な診療能⼒の習得を⽬標とし、実習やグループ学習 を臨床系教員がサポートしています。 ハイクオリティな⼈材の育成 ⾼度な医療技術と学識を備えた上に、医療⼈は幅広い教養と豊かな⼈間性を備え ている必要があります。そうしたハイクオリティな⻭科医療⼈であってこそ、⻭ 学研究、⻭科医療など各界のリーダーとなり得ます。⻭学科では6年間の教育を 通して、このような質の⾼い⻭科医療⼈の育成を⽬指しています。そのため、専 ⾨共通コア科⽬では、⽣命科学から臨床⻭学までの知識や技術を各研究室の優れ た教授陣による密度の濃い講義と学習によって習得します。さらに総合系臨床科 ⽬として顎機能学、成⼈・⾼齢者⻭科学、診断・検査学、および⼝腔インプラン ト学などを設置し、毎回切り⼝を変えた観点からの講義を⾏います。また、低学 年から臨床⾒学実習を⾏い、臨床の場で柔軟な思考が発揮できるよう教育に配慮 しています。 ⻭学科-硬組織代謝⽣物学/⼝腔細胞⽣物学 20 基礎⽣命科学部⾨ 硬組織代謝⽣物学 □教 育 内 容 組織学、⼝腔解剖学、発⽣学を担当します。組織学は⼝腔領域を 含む⼈体諸器官の顕微鏡的構造を機能と照らし合わせて学びます。 ⼝腔解剖では、⻭の形態や⻭列、咬合を⾁眼的に理解します。発⽣ 学は、⽣殖器官と初期発⽣ならびに顎顔⾯の発⽣を学びます。実習 では、⻭の彫刻、主要組織の顕微鏡観察を⾏います。 □研 究 内 容 吉⼦裕⼆教授 ⾻代謝、⾻と全⾝諸器官の連関に関わる分⼦基盤を明らかにする ため、形態と分⼦解析を⼀本化して研究を進めています。以下は主 な研究テーマです。 1)FGFとKlothoによる⾻代謝制御 2)⾻芽細胞に由来する新しいカップリング因⼦ 3)⾻の臓器間ネットワーク 4)⾻のポストトランスレーショナル制御 5)⽯灰化機構の分⼦基盤 6)硬組織の分⼦イメージング □最近のハイライト ⾻由来⽣理活性ペプチドの国際特許出願 □研究キーワード 【写真説明】⼤腿⾻成⻑板の質量イメージング A. マウス⼤腿⾻マイクロCT B. 成⻑板の組織切⽚ C. 質量イメージングのピーク D. クラスタリング E. 成⻑板におけるクラスタリングマップ ⾻形成、臓器連関、分⼦イメージング、 マイクロRNA、オミックス 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔細胞⽣物学 □教 育 内 容 主に系統解剖学と中枢神経解剖学を担当しています。⻭学においては、 顎⼝腔領域以外は軽視されがちです。しかし、⼈体の様々な構造を知る ことは、これからの⻭科界を担う研究者のみならず、臨床の第⼀線で活 躍する⻭科医師にとってもたいへん重要です。また、実習を重視して、 机上の暗記で終わらない教育を⾏っています。 □研 究 内 容 内⽥ 隆教授 ⻭の発⽣と⾻、脳と脊髄を主な対象としています。完成した⻭のエナ メル質はほとんどが無機質でできていますが、作られる過程ではエナメ ル蛋⽩と呼ばれる⼀群の蛋⽩が重要な役割を果たしています。我々は、 数種類あるエナメル蛋⽩のそれぞれの役割と、どの⼀つが⽋けても、正 常なエナメル質はできないこと等を明らかにしました。⾻については、 産卵期の⿃類に出現する⾻髄⾻という特別な⾻をモデルとして、⾻の形 成に関わる様々な因⼦の働きについて研究しています。脳と脊髄につい ては、慢性的な痛みの発⽣機序を調べ、その治療法の開発を⽬指してい ます。 □最近のハイライト ⻭科領域の慢性疼痛に、神経膠細胞(星状膠細胞)から分泌される炎 症性サイトカイン(IL-1beta)が深く関係していることを⾒いだしまし た(右の写真)。⻭科領域の慢性疼痛に有効な治療法の開発の、⾜がか りが得られました。 【写真説明】 慢性疼痛を発症させたネズミの脳を、炎症性サイトカイン (緑)と神経膠細胞のマーカー(⾚)で⼆重染⾊した。両者 が重なって⻩⾊に⾒え、神経膠細胞が炎症性サイトカインを 分泌していることが分かる。 □研究キーワード エナメル質形成、⾻代謝、慢性疼痛 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 21 ⻭学科-⼝腔⽣理学/⽣体分⼦機能学 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔⽣理学 □教 育 内 容 ⽣理学・⼝腔⽣理学の講義と実習を通して、⽣体が保有する機能と仕組み、およびそれらの発現の法則を学びます。⽣体が外的 環境の様々な変化を感知し、動的に内部環境の恒常性を維持する機構を学び、恒常的状態の破綻である病態を理解するための基礎 を⾝につけます。また顎⼝腔領域における感覚機能・運動機能について理解を深めることを⽬指します。 □研 究 内 容 ⼝腔機能として、唾液分泌機能と味覚機能を中⼼に研究を進めています。唾液腺の細胞がいかに唾液⽔分を分泌するかを分⼦・ 細胞レベルで明らかにしています。味覚識別と味覚誘発⾏動・情動を可能にする神経機構を探究しています。 □最近のハイライト 杉⽥ 誠教授 唾液腺の⽔輸送駆動⼒である陰イオン分泌を細胞単位、実時間で測定する⽅法を確⽴し分泌制御機構の解明を⽬指しています。 味覚情報を伝える神経経路を可視化するマウスを作製し、そのマウスを⽤いて味覚情報の処理機構の解明を⽬指しています。 □研究キーワード 味覚、唾液分泌、嚢胞性線維症 【写真説明】唾液腺細胞での陰イオン分泌機構(左)と緑⾊蛍光タンパク質(GFP)を発現させた味覚受容細胞(右) 基礎⽣命科学部⾨ ⽣体分⼦機能学 □教 育 内 容 ⽣化学・⼝腔⽣化学の講義及び実習を通して、様々な⽣命現象の化学的側⾯を、 ⽣体に関連する機能分⼦やその化学反応から理解することを⽬指します。また、顎 顔⾯領域の形成・維持・再⽣修復に関する幅広い基礎知識を⾝につけ、最新の知⾒ についても学びます。 □研 究 内 容 宿南知佐教授 軟⾻・⾻・⻭や腱・靱帯の形成、再⽣修復のメカニズムを明らかにするために、 組織、細胞、分⼦レベルでの解析を⾏っています。また、時計遺伝⼦であるDEC1 とDEC2が、代謝調節を制御する機構を解析しています。 1.腱・靱帯形成の分⼦機構の解析 2.内軟⾻性⾻形成の分⼦機構の解析 3.⻭周靱帯の形成・維持を制御する分⼦機構の解析 4.⻭髄幹細胞の分化調節メカニズムの解析 5.時計蛋⽩質DECによる代謝調節機構の解析 □最近のハイライト 硬組織と腱・靱帯の連結に関与する前駆細胞の特性を明らかにしました。また、 エネルギー代謝が分⼦時計機構の制御を受けることも⾒出しています。 □研究キーワード 腱、靱帯、軟⾻、⾻、⻭、⻭髄幹細胞、⻭周靱帯、関節、分化、 再⽣、時計遺伝⼦、Tenomodulin、Scleraxis、Sox9、 DEC1、DEC2 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 【写真説明】 Sox9Cre/+;Ai14;ScxGFP マウスの 14.5 ⽇胚の横断 切⽚像。Scx+ 細胞が GFP ( 緑 ) を発現するトランス ジェニックマウスにおいて、tdTomato ( ⾚ ) を発現 する Sox9+ 細胞の系譜解析を⾏った。GFP の発現は GFP 抗体によって検出した。腱の付着部には Sox9+ 細胞由来の Scx+ 細胞 ( ⻩ ) が観察される。 ⻭学科-⼝腔顎顔⾯病理病態学/細菌学 22 基礎⽣命科学部⾨ ⼝腔顎顔⾯病理病態学 □教 育 内 容 病理学は病気の原因やメカニズムなどを明らかにすることによって、新しい診断法や治 療の開発に役⽴てることを⽬的にしています。講義では⻭や⼝の病気だけでなく、全⾝の 病気についても学びます。臨床との関係を⽰しながらわかりやすい講義をし、学⽣の皆さ んが⻭科医学・医療のリーダーとなるためのしっかりとした基礎作りをサポートします。 □研 究 内 容 ⾼⽥ 隆教授 研究を通した社会への貢献を⽬指して、以下のような研究をおこなっています。 1.がんの増殖異常のメカニズムや浸潤転移に関わる遺伝分⼦を解析し、がんの遺伝⼦診 断や遺伝⼦治療法を開発する。 2.⻭周病における組織破壊や再⽣のメカニズムを明らかにすることによって、新しい診 断法や治療法を開発する。 3.⼝腔領域に特有の唾液腺腫瘍や⻭原性腫瘍の細胞分化を明らかにすることによって、 病理組織診断の基準を確⽴する。 【写真説明】 ⾮アルコール性脂肪性肝炎患者の肝組織 に⻭周病原細菌が検出された。 □最近のハイライト 1.エナメル質の形成に関わる分⼦であるアメロブラスチンが⾻の形成や ⾻⾁腫の増殖・ 分化の制御に関わることを明らかにしました。 2.ラクトフェリンが⻭周炎や関節リウマチの予防や治療薬となることを みつけました。 【写真説明】アメロブラスチンの過剰発現によって⾻⾁腫の腫瘍 3.γ-GTPが⻭周炎や⾻粗鬆症のリスクファクターであることを明らかに 増⼤および肺転移を抑制した。 し、γ-GTP活性が⻭周炎の検査に使えることをみつけました。 4.⻭周病原細菌が⾎流にのって肝臓に達し、肝臓の障害を促進することを明らかにしました。 5.⼝腔癌の浸潤や転移に関わる新しい分⼦をみつけました。 6.細胞分裂を制御するタンパクが分解異常により癌化に関わることを明らかにしました。 7.過去5年間に、研究室の教員が7、⼤学院⽣が19、研究コースの学部学⽣が9の賞を受賞しました。 □研究キーワード ⼝腔癌、分⼦病理学、⻭周疾患、組織再⽣、唾液腺腫瘍、⻭原性腫瘍、病理組織診断 基礎⽣命科学部⾨ 細菌学 □教 育 内 容 主に微⽣物学の講義、実習を担当しています。微⽣物学では、まず広く微⽣物の基礎について学びます。その中には医療従事者 として知るべき消毒・滅菌の基礎知識、抗菌化学療法薬なども⼊ります。さらに医学領域で問題となる主な病原細菌、病原ウイル スとその感染症について学びます。これら医学微⽣物学を学んだ後に、最後のセメスターで特に⼝腔領域に特有の細菌ならびに、 ⻭科の2⼤疾患といわれるう蝕、⻭周病の原因微⽣物とその感染症について学びます(⼝腔細菌学)。このセメスターでは⼝腔細 菌を含む様々な微⽣物を実際に培養し、実習を⾏います。 □研 究 内 容 菅井基⾏教授 細菌の病原性や薬剤耐性について、そのメカニズムを明ら かにする研究を⾏っています。私たちの研究の特徴はゲノミ クス、分⼦⽣物学、遺伝学、タンパク⼯学など幅広い研究⼿ 法を使って研究課題にアプローチする点です。また、私たち の研究室を中⼼に院内感染症プロジェクト研究センターを⽴ ち上げており、実際に病院等で⼊院患者さんが感染症に罹患 した際に、原因菌を分析して感染経路や院内感染症の有無に ついて分析し、必要となる情報を提供しています。 □最近のハイライト 細菌がどのような病原遺伝⼦や薬剤耐性遺伝⼦をもってお り、それをどのように利⽤しているのかを明らかにするため、 新型DNAシークエンサーを⽤いて染⾊体やプラスミドの塩基 配列解析をおこなっています。 □研究キーワード バイオフィルム、毒素産⽣制御、細菌付着、ゲノム解析、 分⼦疫学、薬剤耐性 【写真説明】 細菌学研究室で解析され、染⾊体ゲノムとプラスミドの全塩基配列が決定 された例。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 23 ⻭学科-細胞分⼦薬理学/⽣体材料学 基礎⽣命科学部⾨ 細胞分⼦薬理学 □教 育 内 容 薬理学は、薬と⽣体との相互作⽤を学ぶ学問です。⻭科医療に必要な薬物を学び、全⾝の病気とその治療に使⽤される薬物の基 礎を学んで、臨床の現場で必要となる薬物療法に関して総合的に教育しています。 □研 究 内 容 兼松 隆教授 ⽣命科学の神秘にふれ、実験していて「わくわくする」「おもしろい」をモットーに研究展開を図っています。特に教室で⾒出 した新規のタンパク質によって調節される⽣体機能の解明を⽬指し以下の研究を⾏っています。 1.新規分⼦が仲介する脂質・エネルギー代謝調節に関する研究 2.新規分⼦による抑制性神経伝達制御と摂⾷調節に関する研究 3.新規分⼦とインスリン分泌異常に関する研究 4.新規分⼦とオートファジィー(⾃⾷作⽤)に関する研究 5.新規分⼦と痛み制御に関する研究 6.神経因性疼痛発症の分⼦基盤解明と新たな鎮痛薬の開発研究 □最近のハイライト 最先端・次世代研究開発⽀援プロジェクト(JSPS)に採択 され現在メタボリックシンドロームの病態解明に向けた脂質 代謝・エネルギー代謝調節機構の解明研究に取り組んでいま □研究キーワード 脂質代謝、エネルギー代謝、インスリン分泌、 オートファジー、疼痛制御、抑制性神経伝達、 神経因性疼痛 【写真説明】 培養した神経細胞を抑制性神経伝達物質(GABA)受容体の抗体と 新規分⼦の抗体で染⾊した共焦点レーザー顕微鏡像。 基礎⽣命科学部⾨ ⽣体材料学 □教 育 内 容 講義(⻭科理⼯学)および実習(⻭科理⼯学基礎実習)を通じて、⽣体材料として重要な⾼分⼦、セラミックス、⾦属に関する 材料化学的基礎について教育を⾏っています。また、最先端⻭学研究コースにおける演習では、⽣体材料や再⽣医療に関する最先 端研究に触れる機会を提供し、研究マインドをもった⻭科医師や、それらの関連分野で活躍する研究者の養成に努めています。 □研 究 内 容 幹細胞を利⽤した再⽣医療の早期実現を図るため、以下の研究に取り 組んでいます。 加藤功⼀教授 1.神経幹細胞・間葉系幹細胞の⼤量供給を可能にする細胞培養基材な らびに装置の設計 2.iPS細胞・間葉系幹細胞を効率よく分化誘導するための⽅法の確⽴ 3.神経幹細胞・間葉系幹細胞のプロテオーム解析およびそれらの品質 検査⽤バイオチップの設計 4.遺伝⼦組換えによるタンパク質の分⼦デザインおよびタンパク質性 組織再⽣スキャフォールドの設計 5.器官再⽣技術の確⽴に向けた異種細胞間相互作⽤の解析と制御 □最近のハイライト 幹細胞にどのような細胞外微⼩環境を与えればその分化や増殖を思い 通りに制御することができるか。この問題に対する解決の⽷⼝を⾒出す ため、細胞チップを利⽤した細胞外微⼩環境のスクリーニング法を確⽴ しました。 □研究キーワード 再⽣医療、組織⼯学、⽣体材料、幹細胞、 バイオチップ、タンパク質⼯学 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 【写真説明】 細胞チップ分析法を⽤いて各種の増殖因⼦が神経幹細胞の増殖 ・分化に与える影響について調べた例です。このような分析に よって組織再⽣⾜場材料の設計指針を得ることができます。 ⻭学科-粘膜免疫学/⻭周病態学 24 □教 育 内 容 粘膜免疫学教室ではヒトをとりまく⾃然・社会環境と⽣体との細胞 間・分⼦間相互作⽤をふまえ、疾病の予防あるいは健康の増進をめざす 「免疫学」の教育を担当し、"⽣命科学の神秘と不思議"に触発された "知的探究⼼あふれる⻭科医師"の育成に努めています。 □研 究 内 容 ⾼橋⼀郎教授 ⾍⻭や⻭周病などの⼝腔疾患から⽣体を守る免疫学研究に新たなフロ ンティアが登場しました。すなわち消化管や呼吸器などの粘膜において も、免疫細胞が病原体と激しい攻防のドラマを繰り広げていることが明 らかになってきました。私たちはこの粘膜に配備された免疫細胞とその 作動分⼦群のはたらきに興味をもって研究しています。 □最近のハイライト 科学技術振興機構の⽀援(クレスト)のもと、腸管内共⽣細菌による 消化管粘膜恒常性の維持ならびに破綻の機構解明に取り組んでいます。 □研究キーワード 粘膜免疫、環境細菌、腸管常在細菌フローラ 粘膜ワクチン、アジュバント 【写真説明】 ⼤腸常在マクロファージ内に共⽣する環境細菌(緑⾊)の 超解像顕微鏡観察 □教 育 内 容 当講座は、⼤学院で⻭周病および⻭内療法の研究を⾏っており、⻭学教育において⻭周病学および ⻭内治療学を担当しています。 □研 究 内 容 栗原英⾒教授 1.⻭周組織再⽣療法に関する研究 間葉系幹細胞や神経栄養因⼦の有⽤性について研究を⾏っています。 2.⻭周病と全⾝疾患に関する研究 糖尿病、リウマチ、肝炎および低体重児出産と⻭周病の関連についての研究を⾏っています。 3.⻭周病における疾患感受性に関する研究 特殊な⻭周病は宿主側の因⼦が原因であると考えられています。 患者のDNA、⾎清好中球を⽤いて、この機序解明に関する研究を⾏っています。 4.⻭周病増悪因⼦に関する研究 ⾃⼰抗体など種々の因⼦の⻭周病への関与について研究を⾏っています。 5.⻭周病の診断に関する研究 ゲノム情報を基にした⻭周病関連遺伝⼦の特定、および診断への応⽤についての研究を⾏ってい ます。 6.⻭周病予防の研究 宿主の細胞に着⽬した予防法を開発しています。 7.⼝臭に関する研究 ⻭周病原細菌Porphyromonas gingivalisが⼝臭関連ガス(メチルメルカプタン)を産⽣するメ カニズムについての研究を⾏っています。 8.根尖性⻭周炎治療に関する研究 感染細菌除去と細胞機能を制御する新しい治療法確⽴に向けた研究を⾏っています。 【写真説明】実験⾵景 □最近のハイライト 間葉系幹細胞や神経栄養因⼦を⽤いた⻭周組織再⽣療法が全国的に注⽬されており、⻭周病の治療 として期待されています。 □研究キーワード 【写真説明】実験⾵景 組織再⽣、神経栄養因⼦、間葉系幹細胞、⻭周病、侵襲性⻭周炎、⻭周疾患感受性、 ⾃⼰抗体、予防、細胞間接着装置、糖尿病、リウマチ、肝炎、⼝臭 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 25 ⻭学科-分⼦⼝腔医学・顎顔⾯医科学/⼝腔外科学 応⽤⽣命科学部⾨ 分⼦⼝腔医学・顎顔⾯外科学 □教 育 内 容 ⼤学院では分⼦⼝腔医学分野・顎顔⾯外科学分野などを担当し、また⻭学部で は、⼝腔外科学、顎外科学、 応⽤⼝腔医学、および実習を担当、⼝腔・顎・顔⾯ 領域の奇形、変形、発育異常、炎症、外傷、腫瘍(良性・悪性)などの診断・治 療法について教育を⾏っています。 ⼝腔がん幹細胞研究 □研 究 内 容 岡本哲治教授 上記の疾患の新たな診断・治療法を開発するために、次のような研究を⾏って います。 1. ⼝腔癌、唾液腺腫瘍の遺伝⼦・分⼦診断と治療法の研究(癌幹細胞、増殖因⼦、 受容体、浸潤・転移、腫瘍性⾎管新⽣、分⼦標的療法) 2. 頭蓋・顎・顔⾯・⼝腔の先天異常の分⼦・遺伝⼦診断・治療法の研究 3. 遺伝性⼝腔顎顔⾯疾患患者由来 iPS 細胞株の樹⽴とそれを⽤いた発症機序およ び診断・治療法の研究 4. 海洋⽣物由来⽣理活性物質の精製と機能解析 5. ⼝腔癌の光線⼒学療法に関する研究 6. 活性化 NK/LAK 細胞を⽤いた⼝腔癌の免疫細胞治療に関する研究 7. 顎⾻および⻭の再⽣研究(カエル・マウス未分化細胞を⽤いて顎⾻、眼、⻭の 再⽣に成功した。現在、マウス ES 細胞、ヒト⾻髄由来幹細胞および iPS 細胞 を⽤いて顎⾻、眼、⻭の再⽣研究を⾏っている。) 8. 旧ソ連セミパラチンスク核実験場(カザフスタン共和国)周辺住⺠に多発する 頭蓋・顎・顔⾯・⼝腔先天異常の分⼦疫学的研究 疾患特異的iPS細胞研究 □最近のハイライト 2000年から2005年にかけて、旧ソ連邦・カザフスタン共和国・セミパラチンスク核実験場周辺 の成⼈・学童の⻭科・⼝腔検診および治療を⾏い、放射線被ばくの顎・顔⾯・⼝腔系への影響は甚 ⼤であることを明らかにした。また、カエルやマウスの未分化細胞から、顎・顔⾯の軟⾻や⻭・眼 をつくることに成功した。⼝腔癌治療では、活性化NK/リンパ球を⽤いた細胞治療や光線⼒学療法 など、他⼤学では⾏っていない治療法を臨床に導⼊し、⾼い治療効果をあげています。また、⼝腔 癌の幹細胞を明らかにし、同細胞を標的にした診断・治療法の開発(右上図)、および患者由来iPS 細胞を樹⽴し、その発症機序や治療法の開発研究を⾏っています(右下図)。 □研究キーワード ⼝腔癌、癌幹細胞、⾎管内⽪細胞増殖因⼦、⾎管新⽣因⼦、⾃⼰増殖促進因⼦、 光線⼒学療法、遺伝⼦診断、LAK/NK細胞治療、ES細胞、iPS細胞、放射線被ばく 応⽤⽣命科学部⾨ ⼝腔外科学 □教 育 内 容 講義では⼝腔外科領域の疾患学、診断学、治療学に関する様々な基礎知識を修得します。基礎実習では、各種⾎液検査、⽣理検 査やその⼿技、採⾎・静注、感染対策・清潔操作、⼀次救命救急処置(BLS)などを実習します。模型実習では、抜⻭、嚢胞摘出、 切開縫合、⻭⽛結紮などを実際の器具を⽤いて⾏います。また、各種症例に対して診断のための検査法や治療⽅針について⾃主的 に学習し、少⼈数のグループで討論するチュートリアル授業や、学⽣がスライドや発表原稿を作成し学会形式で発表と質疑応答を ⾏う症例報告実習も⾏います。さらに臨床コースでは、実際のインプラントを⽤いた埋⼊⼿術や、顎関節症に対するスプリント作 成なども⾏っています。また、臨床実習では、外来、病棟や⼿術室で、種々の疾患を持つ患者に対する医療⾯接、各種検査、投薬、 周術期管理や⼿術などについて学習します。 □研 究 内 容 連通多孔体ハイドロキシアパタイトセラミックスを⾻芽細胞の担体 (スキャホールド)として応⽤した顎⾻の再⽣医療に関する基礎的実験 を⾏っています。 □研究キーワード 顎⾻⾻幹異形成症、セメント質⾻異形成症、原因遺伝⼦、 ⼝腔癌、浸潤転移、上⽪・間葉移⾏、⼝腔粘膜疾患、 新規⽣体材料、顎⾻再⽣医療 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry p63をノックダウンしたOM-1 びまん性浸潤を呈する □最近のハイライト 扁平上⽪癌細胞OM-1 不死化⻭⾁線維芽細胞 コラーゲンゲル + ⼝腔領域疾患のゲノム研究、各種⼝腔腫瘍の⽣物学的特性と治療に関 する研究、⼝腔癌の浸潤・転移機構に関する分⼦⽣物学的研究、難治性 ⼝腔粘膜疾患に関する細胞⽣物学的研究などを⾏っています。また、最 良のインプラント治療や慢性顎⾻⾻髄炎における治療を⽬的とした新規 ⽣体材料の開発に関する研究を⾏っています。 【写真説明】 三次元培養によるp63をノックダウンした⼝腔扁平上⽪癌細胞の 浸潤様式の検討 ⼝腔癌の多くは扁平上⽪癌で、その浸潤・転移は予後に深く関与 しています。p63は⼝腔扁平上⽪癌における浸潤能を制御する重 要な遺伝⼦であり、p63をノックダウンすると癌細胞の浸潤能が 亢進することを明らかにしました。コラーゲンゲルと不死化⻭⾁ 線維芽細胞を⽤いて⼝腔粘膜上⽪を三次元的に再現した培養系を 確⽴し、⼝腔扁平上⽪癌細胞を培養すると、p63をノックダウン した癌細胞は明らかなびまん性の浸潤様式を⽰しました。 ⻭学科-先端⻭科補綴学/⻭科矯正学 26 応⽤⽣命科学部⾨ 先端⻭科補綴学 本分野は平成21年4⽉1⽇より、旧⻭科補綴学分野と旧先端⻭科補綴学分野が統合して、新しく ⼤きな1つの先端⻭科補綴学分野となりました。 □教 育 内 容 クラウンブリッジ補綴学(クラウン、ブリッジ、CAD/CAMに関する治療学)、義⻭補綴学(総 義⻭、部分床義⻭に関する治療学)、⼝腔インプラント学(⻭が⽋損した顎⾻にインプラントを応 ⽤する治療学)、顎顔⾯補綴学(腫瘍や外傷で失われた顎顔⾯の⽋損に対する補綴治療学)などを 担当しています。また、⾼齢者⻭科学や顎機能学も⼀部担当しています。 □研 究 内 容 津賀⼀弘教授 1.⼝腔インプラントの新素材、⾻再⽣医療のための成⻑因⼦ポリリン酸を⽤いる新しい⾻再⽣材 料などの開発と臨床応⽤を⽬指しています。同時に、⾻再⽣促進のメカニズムについても⽣化 【写真説明】 学的な解析を進めています。 本研究室の研究をもとに、平成23年に⽇本 で初めて医療機器の⾆圧測定器が発売され 2.⼝腔インプラントとその周囲⾻に関するバイオメカニックス解析を⾏っています。 ました。現在、⽇本各地で⼝腔機能検査に 3.補綴治療が⾼齢者のQOL(⽣活の質)や介護予防に与える影響や認知症患者に与えうる影響な 活⽤されています。 どを調べています。 4.⾆圧測定器を開発し、⾆圧リハビリテーションの確⽴に努めています。 bFGF・ゼラチン複合体によるインプラント周囲⾻再⽣ 5.要介護⾼齢者の摂⾷・嚥下機能の診断・リハビリテーションに関する 研究を⾏っています。 6.⾼齢社会に対応した軟質裏装材や義⻭安定剤を開発しています。 7.顎機能障害と⼝腔習癖やストレスとの関連を調べています。 □最近のハイライト 本研究室でのデータや⼝腔外科分野のデータを根拠として⾻補填材や ⾻再⽣のスキャフォールドとしての連通多孔性アパタイトの⻭科での応 ⽤が許可され、のう胞摘出後の⾻補填やインプラント周囲の⾻増⽣に使 えるようになりました。また、⾆圧測定器や安全に嚥下できるパン、訪 問⻭科診療⽤の治療器具なども次々と実⽤化しています。 □研究キーワード ⼝腔機能回復、咬合・咀嚼・嚥下・介護予防、 ⾻再⽣・⼈⼯⾻・インプラント A B C 【写真説明】 ひとつの成⻑因⼦(basic fibroblast growth factor, bFGF)を徐放 (ゆっくりと局所に放出すること)して、インプラント周囲に新しく⾻ 再⽣を促す動物実験の結果です。露出したインプラントのスクリュー(A) をbFGF・ゼラチン複合体で被うと(B)、8週後に新しく⾻が再⽣され ました。(C:⽮印)bFGFは世界で初めて⽇本で開発された成⻑因⼦で あり、⽇本発の新しい⾻再⽣材料として期待されています。 応⽤⽣命科学部⾨ ⻭科矯正学 □教 育 内 容 移植前 移植時 移植3ヶ⽉後 ⾕本幸太郎教授 □研 究 内 容 ⻭の移動開始時 ⻭の移動6ヶ⽉時 マルチブラケット 装置 ⻭科矯正学に関連した⻭科基礎医学を修得した上で、⻭ 科矯正治療、顎整形治療、外科的矯正治療などに関する診断・ 治療を的確に実践できるよう懇切丁寧に教えます。また、 臨床コースでは、マルチブラケット装置を⽤いた⻭の移動 に関する演習・実習を⾏い、実際の臨床を体験していただ きます。なお、⼤学院には、⾼度専⾨医療⼈である矯正⻭ 科専⾨医資格を取得するための授業科⽬を開講しています。 ⼈⼯的な顎裂 1.顎関節症の画像・⽣化学診断に基づく矯正⻭科治療法の確⽴ 2.関節軟⾻の変性と破壊に対する機械的負荷の影響の検討 3.遺伝性エナメル質形成不全症の病態解明とバイオミネラリゼーション によるエナメル質修復に関する研究 4.⾻髄由来間葉系幹細胞を⽤いた⾻再⽣と顎裂閉鎖治療法の確⽴ 5.組織および細胞の⻑期凍結保存法の検討 6.顎顔⾯⾻格の成⻑発育に対する性ホルモンの制御機能 7.⻭根吸収の発症機序の解明と治療法の開発 8.様々な⼝腔機能が不正咬合や全⾝に及ぼす影響についての研究 移植体 ⾻髄由来間葉系幹細胞 + 炭酸アパタイト未焼結顆粒 【写真説明】 ビーグル⽝の上顎⾻に作製した⼈⼯的な顎裂部(⾚⽮ 印)に、⾻髄由来間葉系幹細胞と炭酸アパタイト担体を 移植すると、⽣体内で速やかに代謝され、新⽣⾻に置換 される。移植後、約3か⽉でマルチブラケット装置(⻩ ⽮印)を⽤いた再⽣⾻への⻭の移動が可能となる。 □最近のハイライト ⼤学院⽣を海外の研究機関に派遣し、先進的研究を体験させるとともに、さまざまな国からの留学⽣を受け⼊れ、活発な国際交 流を図っています。研究では、⾻髄由来間葉系幹細胞と新規担体である炭酸アパタイト未焼結顆粒を⽤いて、顎裂部の⾻再⽣に最 適化した治療法を開発しました。⼝蓋裂治療における実⽤化を⽬指しています。 □研究キーワード 矯正⼒、顎顔⾯成⻑、顎関節症、遺伝性エナメル質形成不全症、遺伝⼦診断、再⽣医療 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 27 ⻭学科-⻭科放射線学/⼩児⻭科学 応⽤⽣命科学部⾨ ⻭科放射線学 □教 育 内 容 ⻭科医師の診療にとって必須であるX線画像について、 その成り⽴ちや種々の撮影法についての基礎的な内容を 講義し、X線画像診断学を教育します。また、⼝腔癌へ の放射線治療や、最新画像診断法(コンピュータ断層撮 影法、超⾳波診断法、核磁気共鳴画像法)及びX線の⼈ 体に対する影響と防護に関する専⾨知識についても教育 します。 □研 究 内 容 ⾕本啓⼆教授 放射線を⽤いた基礎及び臨床研究を⾏っています。基 礎研究では、⾻に対する放射線の影響に関する研究を⾏ っています。臨床研究では、摂⾷嚥下機能障害に関する 研究、⾻粗鬆症の早期診断に関する研究、⼝腔機能と脳 に関する研究、顎⾻⾻髄炎を初めとする種々の病変の発 ⽣機序に関する研究等、医学部あるいは⼯学部の講座と 連携を取り⾏っています。 【写真説明】DSA装置 □最近のハイライト 広島県⽴総合技術研究所⾷品⼯業技術センターで開発 された「凍結含浸法」を⽤いた⾷品の介護への応⽤を⾏ うため共同して普及に努めています。 □研究キーワード ⻭科放射線学、嚥下障害 統合健康科学部⾨ ⼩児⻭科学 □教 育 内 容 ⼩児期に関わる⼝腔領域の疾患の治療や予防が対象となります。講義は全⾝と⼝腔の成⻑発達、⼝腔疾患の原因や実態を総論で、 各論では⼩児齲蝕(むし⻭)や⼩児⻭周病の治療と予防、⼝腔外傷や抜⻭を含む外科的処置、咬合誘導、地域⼩児⻭科保健、発達 障害や全⾝疾患の⼩児への対応などを教育します。⼀⽅、基礎実習では⼩児の⻭科治療技術の修得のための模型実習、X 線写真解析、 ⻭列模型分析、咬合誘導装置の作製を⾏い、臨床コースの演習実習では診断技術や治療⽅針の⽴案を学び、問題発⾒・解決能⼒、 ⼩児⻭科治療の基本技術の習熟を到達⽬標としています。⼤学院進学者は、下記に⽰すような研究内容からテーマを選び 4 年間で 博⼠を取得するとともに、その後は⼩児⻭科専⾨医の資格を⽬指します。将来は、国内外で、地域の⼩児⻭科医療や⼤学機関等で ⼩児⻭科学教育・診療・研究のリーダーとして活躍することとなります。 □研 究 内 容 ⾹⻄克之教授 1.⼩児齲蝕の発症機序と予防に関する細菌学的研究 2.児童虐待における⼝腔環境と⻭科疾患に関する研究 3.全⾝疾患を有する⼩児の⼝腔ケアに関する臨床研究 4.⻭科治療が⼩児に及ぼす⼼理学的ストレスの評価 5.⻭列発育評価と診断に関する3次元的分析 6.⼩児の⻭周疾患に関する細菌学的研究 7.カンボジア児童の⼝腔内状況の調査研究 □最近のハイライト 本⻭学部のミッションの⼀つであるカンボジア⻭科⽀援には 2009 年以来、毎年、⼩児⻭科から⼈材を派遣しています。海 外だけでなく、国内においても被虐待児の⼝腔ケア、発達障害 児の⻭科医療、摂⾷嚥下指導、学校⻭科保健など⼩児⻭科医の 専⾨性を求める領域が拡⼤しています。各機関と連携し、様々 な活動を通じて社会貢献できるよう⽇々努⼒を続けています。 □研究キーワード ⼩児齲蝕、ミュータンス菌、家族内伝播、⻭の外傷、 ⼩児⻭周病、⼩児保健 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 【写真説明】 ⻭と⼝の健康週間に⼩児⻭科主催で⾏っている「親⼦のむし⻭予防デ ー」での⻭科健診。今年で35年⽬となるが、ぬいぐるみ劇、仕上げ⻭み がき指導、⻭科相談、むし⻭リスク検査、マイクロスコープを使ったお ⼝の中探検など、若⼿医局員が中⼼となり、⼝腔の健康育成に関する啓 発活動を毎年新たなコンセプトで⾏っている。 ⻭学科-健康増進⻭学/⻭科⿇酔学 28 統合健康科学部⾨ 健康増進⻭学 □教 育 内 容 むし⻭に代表される⻭の病気の予防、診断、治療法について、⻭を保存するための学問という意味から保存修復学と呼ばれる分 野をカバーします。 □研 究 内 容 幅広く下記の研究を⾏っています。 1.齲蝕感受性宿主の宿主因⼦(むし⻭のなりやすさ)の解明 2.⻭科疾患と全⾝疾患の関連性(とくに⻭周病と肥満・糖尿病の 関連性)に関する研究 3.栄養素と⻭科疾患の関連性の解明 4.⻭科疾患(むし⻭や⻭周病)診断への新たな検査法の開発 5.新規検査法に基づいた⻭科疾患に対する新たな予防法の開発 6.⽣体親和性材料の開発と臨床応⽤ 7.変⾊⻭の機序解明と治療法の開発 8.レーザーを⽤いた新たな⽣体⾮侵襲性治療法の開発 9.象⽛質/⻭髄複合体(⻭の神経と⻭質)の⽣物学的再⽣に関する 研究 □最近のハイライト 教室名を従来の保存修復学分野から、⻭科医療が全⾝の健康に寄 与することを追求する学問分野ということで健康増進⻭学分野と変 更しました。 ⼝腔疾患と全⾝疾患の関連性を臨床疫学的に解明するとともに、 その分⼦基盤を確⽴することで、「⻭科医療が健康⻑寿に貢献する」 とした概念をより社会に定着させ、⻭科医療の価値をより⾼める ことを⽬指します。 □研究キーワード ⻭周医学、糖尿病学 統合健康科学部⾨ ⻭科⿇酔学 □教 育 内 容 ⻭科⿇酔学の講義を通して、⻭科医師として⾝に付けておかねばならない患者の全⾝状態評価の仕⽅や全⾝管理⽅法についての 基礎知識を学びます。さらに、実習により、⻭科治療時に突発的に起きた全⾝的偶発症への対応や救急救命処置などについての基 本⼿技を習得させ、安全な⻭科治療を⾏うことのできる⻭科医師の育成を⽬指しています。 □研 究 内 容 ⼊舩正浩教授 1.⿇酔作⽤機序に関する研究 2.全⾝⿇酔薬の興奮作⽤(興奮期)に関する研究 3.全⾝⿇酔薬が引き起こす⿇酔要素における各種神経の役割に関する研究 ⼈⼯的な顎裂 4.鎮静薬の抗不安効果に関する研究 5.笑気の末梢循環動態への作⽤に関する研究 6.慢性疼痛に関する研究 7.⼼肺蘇⽣における胸⾻圧迫の有効性に関する研究 などを⾏っています。 □最近のハイライト 脳マイクロダイアリシス法(このページの写真)を⽤いて、全⾝⿇ 酔作⽤のメカニズムを研究しています。脳内の抑制性伝達物質の増 加や興奮性伝達物質の減少、さらに特定の神経をノックダウンする ことが全⾝⿇酔作⽤に影響を及ぼすか明らかにすることにより、呼 吸や循環に悪影響を及ぼすことのない安全な全⾝⿇酔を実現したい と考えています。 □研究キーワード ⿇酔作⽤機序、GABA、グリシン、グルタミン酸、ドパミン、 サブスタンスP、エンケファリン、セロトニン、 プロテインキナーゼC、鎮静作⽤、鎮痛作⽤、 ⼼肺蘇⽣における胸⾻圧迫 【写真説明】 脳マイクロダイアリシス法の実際。この⽅法は、動物を無⿇酔・無拘束 の状態で、脳内の神経から遊離されるあらゆる物質を脳内に植え込んだ プローブから採取、分析することができる。現在、この⽅法を⽤いて、 全⾝⿇酔作⽤のメカニズムを解明しようとしている。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 29 ⻭学科-国際⻭科医学連携開発学/病院 ⻭系総合診療科 ⼝腔総合診療科 統合健康科学部⾨ 国際⻭科医学連携開発学 □教 育 内 容 急速に進展する⻭科医療の国際化の中で、グローバル化に対応する能⼒が不可⽋となっています。「⽇本 国内はもちろんのこと、現在および今後世界で何が起こり、何が必要とされているのか」-アジアをはじめ とする海外の⼤学との国際共同プログラムの実施を通して、学⽣の皆さんが、将来社会で活躍するために必 要な能⼒を培うサポートをします。 □研 究 内 容 岡 広⼦ 特任講師 ヌーウィン・ティ・ フーン・タオ特任助教 (Nguyen Thi Phuong Thao) 国際的に活躍できる⻭科医療・医学のリーダーを育成する ため、下記の教育プログラムや交流・連携プログラムの開発 およびその評価・改善について研究を⾏っています。 1.アジアと連携した⻭科医学国際プログラム 2.⽇本語と英語によるdual linguistic education system 3.提携校をはじめとする海外⼤学との短期・⻑期的な学⽣ 派遣プログラム 4.⻭学を通した⾃⼰理解と相互理解のための地域との連携 □最近のハイライト 本研究室は、平成23年4⽉に設置されスタートした新しい 研究室です。国際⻭科医学連携開発センターと協⼒して教育 や研究、世界の機関との連携強化を計っています。平成24年 度から広島⼤学⻭学部では全国に先駆けて英語と⽇本語を⽤ いた教育を開始しました。 現在、インドネシア、ベトナム、およびカンボジアの⻭学 部学⽣が広島⼤学で⽇本⼈学⽣とともに専⾨科⽬を勉強して います。 □研究キーワード 広島⼤学⻭学部国際プログラムに関するホームページ http://icdd.hiroshima-u.ac.jp/ 【写真説明】 サーバーシステムを⽤いたセミナーの海外姉妹校との同時中継 病院 ⻭系総合診療科 ⼝腔総合診療科 □教 育 内 容 貴⽅は、将来の⻭科医療者としてのキャリア形成を⾏うために、⻭学 部の卒前教育から、⻭科医師免許取得後の卒後研修(教育)まで、医療 コミュニケーション並びに総合⻭科医療について学びます。これらでは ロールプレイや⾃⼰主導型の学習を通じて、『コミュニケーション』と 『接遇』の違いや患者と家族、医療スタッフとのコミュニケーションの とりかた、予防、治療からリハビリテーションまでを含む『患者中 ⼼』、『問題中⼼』及び『患者の病気の物語』に基づく⻭科医療とは何 か、それをどのように提供するのかを学びます。また、医療の2元論や 医療倫理に基づく臨床判断の実際などについて学びます。 ⻭学科5年⽣ ⼩川哲次教授 □研 究 内 容 ⾼等教育(⼤学並びに⼤学院教育)の質の保証と向上を⽬標として、 ⻭科医療者との卒前・卒後そして⽣涯研修などでの教え⽅や学び⽅、 コーチングとティーチングの使い⽅、学習者の⽀援法(メンタリングな ど)、学習者の習熟程度の評価にはどのような試験を⾏えば良いのか、 また、教育プログラムの良し悪しをどのように評価するのかなどについ ての研究を⾏っています。 □最近のハイライト ⻭科医師臨床初期研修が必修化されましたので、広島⼤学⻭学部⻭学 科卒業後に⻭科医師国家試験合格者(平成18年4⽉1⽇以降に⻭科医師 免許を申請する者)は、臨床初期研修を1年間受けることになります。 □研究キーワード 臨床研修、⻭学教育、ヘルスコミュニケーション Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry SP 【写真説明】 医療⾯接のロールプレイの1場⾯(於⼝腔総合診療科診療室)。 ⻭学科5年⽣は、臨床実験が始まるまでに、模擬患者(SP)と医 療⾯接のトレーニングを⾏います。⻭科医師役の⻭学科5年⽣が、 患者役のSPに対して、検査データ(⼝の中の写真やレントゲン 写真)などを使い、患者さんの病状やそれへの対処法(治療計 画)などを説明しているところです。写真は、わが国を代表する 標準模擬患者のお⼀⼈で、わが国最初のSPである前⽥純⼦さん (岡⼭SP研究会)です。 ⻭学科-病院 ⼝腔健康発育⻭科 障害者⻭科 30 病院 ⼝腔健康発育⻭科 障害者⻭科 □教 育 内 容 講義では障害者⻭科学に関する様々な基礎知識を習得します。臨床実 習では安全・安⼼な障害者への⻭科医療を提供するための基本的臨床能 ⼒(態度、技能および知識)を習得します。また、⼤学院⽣には、⾼度 専⾨医療⼈である障害者⻭科認定医資格を習得することを⽬指し、さら に、障害者⻭科学の研究および臨床能⼒を涵養し、⼤学や地域⻭科医療 の指導的役割を担う⼈材を育成します。 □研 究 内 容 岡⽥ 貢教授 1.障害者の齲蝕(うしょく)発⽣リスクに関する研究 2.プロバイオティクスを応⽤した齲蝕予防に関する研究 3.障害者の⻭周病発症リスクに関する研究 4.発達障害者における⻭科的協⼒度に関する研究 5.障害者の⻭科的問題におけるPBL教育に関する研究 □最近のハイライト 齲蝕発⽣リスクの1つとしてミュータンス菌およびソブリヌス菌の共 存が強く関わっていることを明らかにしました。現在、障害者の齲蝕予 防に活かす研究を⾏っています。 □研究キーワード 障害者⻭科、発達障害、齲蝕、⻭周病、PBL 【写真説明】2012 年度から始まった早期臨床実習(患者体験実習)の様⼦ 診療室で⻭型を取っている様⼦ 別室で⻭型に⽯膏を⼊れている様⼦ 【写真説明】新築された広島⼤学病院内の⻭科のひとコマ。写真は学⽣診療室。 患者さんの診療を学⽣が⾒て学んだり⻭科医師をサポートする。 ⼀度現場に出れば、学⽣ではなく医療⼈としてその姿勢を⾒られる。 障害者⻭科で⾞いすから診療台へ 患者を移し替える様⼦ 【写真説明】改装し最新システムが⼊った デンタルスキルラボ 【写真説明】写真は⻭学部棟と実習棟。 その中で臨床実習や講義が⾏われる。 中庭には被爆地ヒロシマ復興の象徴花、 キョウチクトウがひっそり咲いている ⼝腔総合診療室で器具の説明を 受けている様⼦ 【写真説明】 完全個室の⻭科治療室。 ⼿前は学⽣。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 31 ⼝腔健康科学科で学べること-概要 口腔健康科学科で学べること 【⼝腔健康科学科】1年次は教養教育科⽬を学びます。同時に専⾨基礎科⽬がスタートし、⼝腔保健 学専攻は 1 年次前期、⼝腔⼯学専攻は 1 年次後期より専⾨科⽬もスタートします。 それぞれ 3 年次後期より臨床実習や臨床的実習、及び卒業研究もはじまり、4 年 制で⼝腔健康科学の専⾨家を育成します。 ⼝腔保健学専攻 1年次 2年次 3年次 4年次 教養教育科⽬ 専⾨基礎科⽬ 専⾨科⽬ 臨床実習 卒業研究 ⼝腔⼯学専攻 1年次 2年次 3年次 4年次 教養教育科⽬ 専⾨基礎科⽬ 専⾨科⽬ 臨床的実習 卒業研究 ⼝腔健康科学科は、⻭学部附属の⻭科衛⽣⼠学校と⻭科技⼯ ⼠学校を⺟体とし、平成17年に4年制の⼝腔保健学科として スタートしました。今も4年制学科として、両⽅の⻭科医療⼈ を育成することができる⽇本で最初の学科です。 本学科は、⾼度先進的な⻭科衛⽣⼠や養護教諭を育成する⼝ 腔保健学専攻と、新しい時代のニーズに対応した⻭⼯連携分野 の⼈材育成を⽬的とした⼝腔⼯学専攻の2つの専攻から成り⽴ ちます。いずれも⾼度な専⾨医療技術と学識、さらに豊かな教 養と⼈間性を備えた⻭科医療⼈、医療マインドをもった企業⼈ の育成を⽬指しています。 健康⻑寿と⼝腔の健康への貢献 養護教諭の資格も取れる⼝腔保健学専攻 世界的なオーラル・ヘルス・プロモーションの傾向、「健康⻑寿社会」の形成の 流れの中で、これまでの治療に加えて「疾病の予防」が⼤きなテーマとして登場 して来ました。こうした「健康主導のヘルスオリエンティドな時代」に幅広く活 躍できる⾼度専⾨医療⼈と医療マインドを持った企業戦⼠の育成を⽬指します。 ⽇本でも数少ない4年制の⻭科衛⽣⼠養成専攻コースです。各界のリーダーとな りうる、⾼度先進的な⻭科衛⽣⼠の育成を⽬指しています。またこれからの多様 な⻭科衛⽣⼠の社会的役割を⾒据えて、卒業時には養護教諭(⼀種)の免許も取 得(選択)できるようになりました。もちろん卒業時には⻭科衛⽣⼠国家試験受 験資格も取得できます。 ⽇本のパイオニア、⼝腔⼯学専攻 ⽇本で初めてできた4年制⻭科技⼯⼠養成専攻コースです。従来の⻭科技⼯⼠と しての教育に加えて、コンピュータを使ったシステム⼯学やCTやMRI画像データ 活⽤の知識とスキルなどを持ち、幅広い医療知識と教養を備えたリーダー的存在 となりうる医療⼈・企業⼈・研究者の育成を⽬指します。卒業時には、⻭科技⼯ ⼠国家試験受験資格が取得できます。特別実習として、「かづきれいこ」のリハ ビリメイク実習、⽇本組織培養学会の組織培養実習があり、フェイシャルセラピ ストおよび細胞⼯学⼠の資格が認定される⽇本で唯⼀の専攻です。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 多様な可能性を秘めた将来の進路 4年制の専攻コースを卒業すると、⼝腔保健学専攻では⼤規模病院の⾼度専⾨的 な⻭科衛⽣⼠、保健所・保健センターなどで働く⻭科衛⽣⼠、学校の養護教諭、 ⼤学の教員や企業の研究者など、また⼝腔⼯学専攻では、⼤学・研究機関の再⽣ 医療・細胞治療やITの研究者、製薬・⻭⼯連携企業の研究者、顎顔⾯補綴専⾨ 技術者(メディカル・アーティスト)、あるいは⼝腔保健学・⼝腔⼯学領域の教 育者など、多彩で多様な可能性を秘めた将来の進路が開けます。 ⼝腔健康科学科-公衆⼝腔保健学/⼝腔発達機能学 32 統合健康科学部⾨ 公衆⼝腔保健学 □教 育 内 容 社会⻭科学、保健学、看護学などを担当します。社会⻭科学では、「衛⽣ 学」「⼝腔衛⽣学」「衛⽣⾏政」「社会福祉学」「⻭科衛⽣統計」について、 ⼝腔健康科学科と⻭学科の学⽣に教育します。また「看護学」では、⼩児か ら⾼齢者、即ち、あらゆる健康レベルの⼈の健康の保持増進について学び、 医療職の基本となる看護について学びます。養護教諭課程(⾃由選択)では、 学校保健活動に関する専⾨的知識と技術を学びます。 □研 究 内 容 杉⼭ 勝教授 ⼝腔保健に関するテーマ 「⼝腔ケアについて」 「⾼齢者の⼝腔機能について」 保健活動や教育に関するテーマ 「学校保健活動のあり⽅」 「⻭科保健指導の教育効果」 これらの研究を通して、保健学分野における諸問題を解決するとともに、 科学的・論理的思考のできる医療従事者、教育者、研究者、⾏政者の育成に 努めています。 □最近のハイライト 本年4⽉から、⼝腔健康科学科1期⽣の⻄村瑠美が「教育・研究補助職 員」として、加わりました。 ⼤学院博⼠課程前期(2年)、博⼠課程後期(3年)を修了し、⼝腔健康 科学科(学部)と⼝腔健康科学専攻(⼤学院)での学びを体験した先輩が、 広島⼤学での君達の学びをサポートしてくれます。 □研究キーワード ⼝腔保健、⼝腔機能、学校保健 【写真説明】研究および授業⾵景 統合健康科学部⾨ ⼝腔発達機能学 □教 育 内 容 ⼝腔保健学専攻は医療の強⼒なパートナーとしての⻭科衛⽣⼠、養 護教諭(⾃由選択)を育成します。⼈は⽣まれ育ち、そして⽼いていき ます。それぞれのライフステージの⼈達に元気な⽣活を提供するため、 ⼝腔の発達や機能に深い知識を持ち、技能的にも優れているとともに、 医療⼈としてふさわしい教養や⼈格、思いやりを持った⼈を育てたいと 思っています。 □研 究 内 容 天野秀昭教授 私達の研究室では主に⼩児、障害者や⾼齢者の⼝腔機能とケアについ て研究しています。特に学校⻭科保健も含めた、発育期の⼩児や障害者 の⻭科的マネージメント、また⼝腔ケアについては唾液の機能を活発化 させ⼝の乾燥症を治療する⽅法の研究等、医療や介護の現場につながる 研究を⼼がけています。 □最近のハイライト ノイズキャンセル型ヘッドホンで⻭科治療の時に恐怖を与える⾳を減 少させる研究や、液体を吸って飲み込む時の⼝腔機能を⼝腔内の気圧の 変化で捉える研究等を⾏っています。 また⼝腔保健活動ではデンタルキッズ・プロジェクト (⼩学⽣の体験 実習(写真参照)なども⾏っています。 □研究キーワード 成⻑発育、障害児、介護、⼝腔機能、⼝腔ケア 【写真説明】 デンタルキッズ・プロジェクト(⼦供達に⼝腔衛⽣指導中) Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 33 ⼝腔健康科学科-⼝腔保健管理学/⽣体構造・機能修復学 統合健康科学部⾨ ⼝腔保健管理学 □教 育 内 容 ⼝腔保健管理学分野は、介護医療や健康増進など、いろいろな場⾯での⼝腔の健康管理の教育や研究を⻭科予防処置と⻭科保健 指導という⻭科衛⽣⼠専⾨の分野として取り組んでいます。同時に、⻭科衛⽣⼠が⻭科医療現場の様々な管理を任されることから、 感染対策や職場環境の管理、さらには⻭科衛⽣⼠という職業⾃体の向上を⽬指して、⻭科衛⽣⼠教育やキャリア形成についての教 育や研究を⾏っています。⽵本俊伸(教授)、松本厚枝(講師)、仁井⾕善恵(助教)というスタッフ構成で、⼝腔保健学専攻において、 ⼝腔保健衛⽣学概論、⻭科臨床教育学、⼝腔保健管理学実習、チーム⻭科医療学実習、⼝腔保健カウンセリング実習など、⻭科衛 ⽣⼠に必要な多くの授業・演習・実習を⾏っています。 □研 究 内 容 ⽵本俊伸教授 以下の研究を⾏っています 1.⻭科衛⽣⼠教育に関する研究 2.⻭科衛⽣⼠の職務に関する研究 3.学⽣のキャリア形成に関する研究 4.⼝腔リラクゼーション法に関する研究 5.唾液流出量と情動に関する研究 6.カウンセリング教育に関する研究 7.⻭科医療における感染予防対策に関する研究 8.⼝臭に関する研究 □最近のハイライト 「⻭科衛⽣⼠の離職をもたらす因⼦の解析と、離職防 ⽌の⽅略の策定」をテーマに科学研究費の助成を受け、 中規模な調査研究を⾏っています。 □研究キーワード ⼝腔保健学、⻭科衛⽣⼠教育、感染予防 【写真説明】 ⻭科臨床教育学の授業⾵景:3年⽣が模擬実習を計画⽴案・実施し、 ⻭科における学⽣やスタッフ教育の理論や技法について学習している。 統合健康科学部⾨ ⽣体構造・機能修復学 ⽣体構造・機能修復学分野では、2名のスタッフ(教授:⾥⽥隆博、准教授:下江宰司)で以下の教育・研究を⾏っています。 □教 育 内 容 系統解剖学、⼝腔解剖学、⼝腔解剖学演習、⼝腔解剖学実習、組織学・⼝腔組織学、基礎オーラルサイエンス実習、有床義⻭保健⼯学 実習、⻭冠修復保健⼯学実習などを担当しています。 □研 究 内 容 ⾥⽥隆博教授 1.発⽣学的解剖模型の開発 解剖学教育を発⽣学的観点から⼈体の構造をわかりやすく説明するための模型を開発しています。 2.機能学的解剖模型の開発 機能学的観点から、⼈体の構造をわかりやすく説明し、教育に有⽤な教材を開発しています。 3.審美⻭科複合材料に関する研究 喉頭機能模型 前⻭部の修復では審美性を考慮して⻭冠⾊をし た材料を使⽤するのが⼀般的ですが、そのフ レームとなるジルコニアなどの材料との結合に 効果的な処理⽅法について研究を⾏っています。 4.三次元形状データを応⽤した評価に関する研究 三次元形状データを⽤いて⻭型彫刻や材料の⼨ 法変化について客観的に評価する研究を⾏って います。 □最近のハイライト 喉頭の構造と機能を説明するための喉頭機能模型 (写真参照)を、昨年の4年⽣の卒業研究で学⽣と ともに作製しました。 □研究キーワード 発⽣学、機能解剖学、模型、 ジルコニア、⻭科材料 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 輪状軟⾻(ピンク)と披裂軟⾻(⻘)を紙粘⼟で製作し、前庭 靱帯(⿊)と声帯靱帯(透明)をウレタンスプリングで製作した。 下顎⾻(⽩)、甲状軟⾻(⻩)およ び喉頭蓋(⾚)を輪郭のみ製作 【写真説明】 喉頭を構成する軟⾻および筋の働きを説明できます。喉頭は甲状軟⾻、輪状軟⾻、披裂軟⾻な どよりなり、発声時には声帯靱帯を近接させ、また、低⾳発声時には声帯靱帯を緩め、⾼⾳発 声時には、声帯靱帯をぴんと張り、また喉頭を持ち上げることにより、⾼い⾳を出します。ま た、嚥下時および息こらえ時には、前庭靱帯を閉じます。 ⼝腔健康科学科-医療システム・⽣体材料⼯学/⼝腔⽣物⼯学 34 医療システム・⽣体材料⼯学分野では、2 名のスタッフ(教授:村⼭ ⻑、准教授:⽟本光弘)で、以下の教育・研究を⾏っています。 □教 育 内 容 インレー(詰め物)やクラウン(かぶせ物)などの⻭の修復物の製作にコンピュータを⽤いる CAD/CAM システムや、医療機器、 ⽣体材料、オーラルプロセス⼯学、スポーツ⻭科・顎関節症保健学、審美⻭科学などの講義、実習を担当しています。 □研 究 内 容 村⼭ ⻑教授 1. ⻭科医療のための3D モデリングとコンピュータ・シミュレー ション 2. ⻭の修復物やエピテーゼ・⼈⼯ボディ(顔⾯などの⽋損に対す る修復物)などをコンピュータを⽤いて設計・製作する⾼度な CAD/CAM システムの研究 3. モーションキャプチャーを⽤いた⻭科技⼯作業の動作分析 4. システムバイオロジー(⽣物学へのシステム⼯学の応⽤) 5. 治療⽤・保護⽤⼝腔装具の開発と臨床応⽤ 6. 審美⻭科に関する研究 7. スポーツ⻭科(マウスガード)・⾳楽⻭科(アダプター)に関す る研究 □最近のハイライト システムバイオロジーのためのソフトウエアを導⼊しました。 □研究キーワード CAD/CAM、ラピッドプロトタイピング、 コンピュータ⻭科医学、3Dモデル、⼈⼯ボディ、 審美⻭科、スポーツ⻭科、⾳楽⻭科 【写真説明】モーションキャプチャーにより⻭科技⼯作業時の⾝体の動き を計測し(左)、その動作をコンピュータで再現し(右)、 分析しています。 □教 育 内 容 准教授の⽥地先⽣と2⼈で⻭冠修復保健⼯学、審美修復学、有床 義⻭保健⼯学、顎⼝腔機能学、メディカルデザイン⼯学などを担当し、 ⽇本組織培養学会の組織培養実習(細胞⼯学⼠の資格) 、⼈⼯ボデ ィの実習、 「かづきれいこ」のリハビリメイク実習を担当し、基礎的・ 臨床的な科⽬を教えています。 □研 究 内 容 ⼆川浩樹教授 「固定化抗菌剤の⻭科⽤材料・⼀般⼯業界での応⽤」 「プロバイオ ティクスを応⽤したう蝕・⻭周病予防」「⾃然免疫誘導ガムによる⻭ 周病菌抑制」 「塩基性抗菌性ペプチドを応⽤した間葉系幹細胞の⼤量 増殖」「破⾻細胞の抑制と⾻免疫」「ダイアモンドライクカーボンナ ノ処理による⾻芽細胞の分化促進」「MRIによる顎関節のFEM解 析モデルの構築」の研究を⾏っています。また、かづきれいこさん との共同研究もしています。 【写真説明】(上)かづき先⽣の講義と⾎流マッサージの定量化 (下)組織培養実習の⼀コマ 細胞⼯学⼠の資格が得られる 製薬会社の研究員に⼈気の実習。⽬指せ!製薬研究員! □最近のハイライト 担当の⼆川浩樹教授は、バイオテクノロジークラブ「バイテック」 の顧問をしています。みんなと⼀緒に、遊び気分で研究していま す!!学会賞を⽬指して、世界を⽬指して、頑張りましょう!! バイテックで開発した固定化抗菌・抗ウィルス剤 Etak をチーム ⼆川として東北の震災に 870 万円分寄贈しました。 ゼミのOBは、国⽴研究所、製薬会社、⻭科企業、公務員として 活躍しています。 □研究キーワード 固定化抗ウィルス・抗菌剤、⼝腔保湿剤、【写真説明】 クラブバイテックの学⽣と⽇本防菌防黴学会、⽇本⻭科理⼯学会、⽇ むし⻭・⻭周病予防ヨーグルト、 本⼝腔インプラント学会など⾊々な学会で発表し、学会賞の受賞して ⽣体適合インプラント、⾷品物性 います。(おまけ)バイテックの研究成果から開発された商品です。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 35 【データで⾒る⻭学部】 データで⾒る⻭学部 ■ 2000 年以降の主な動向 年(平成) ⽉ 主要な出来事 4⽉ ⽇本で初めて「最先端⻭学研究コース」 、 「臨床⻭科医学コース」の2コー ス制がスタート 2005 年 (平成 17 年) 4⽉ 4年制⼝腔保健学科設置。これに伴い6年制⻭学科設置。⼝腔保健学科は ⼝腔保健衛⽣学専攻・⼝腔保健⼯学専攻の2専攻制がスタートする。⻭科 衛⽣⼠はオーラル・ヘルス・マネージャー、⻭科技⼯⼠はオーラル・エン ジニアと性格づける。両者4年制教育は⽇本ではじめて 広島⼤学⻭学部創⽴40周年 1⽉ 第1回 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry 開催。世界の学術交流協定校が参加した⻭学教育国際学術会議。 「アジア に根ざした⻭科医学・⼝腔健康科学の教育研究国際拠点」を創設、という 路線がスタート 2007 年 10 ⽉ (平成 19 年) 第2回 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry 開催。 「21世紀の⻭科医学・医療を考えるアジア⻭科学⽣国際交流セミ ナー」を併催し協定校から多くの学⽣・若⼿研究者の参加を得た。教員レ ベルの交流から学⽣レベルの交流へと⼀歩進む 2006 年 (平成 18 年) 10 ⽉ ⼤学院バイオデンティスト育成プログラム開始。次世代型⻭科医師像を 「バ イオデンティスト」とし、 「研究⼒」 「国際⼒」 「貢献⼒」をもった医師と 性格づけた。こうした⻭科医師育成をまず⼤学院レベルで開始した 10 ⽉ ⼤学院ツイニングプログラムスタート。アジアの協定校の中から毎年国費 留学⽣として⼤学院に招聘し、博⼠課程で 3 名が学ぶ。講義は全て英語。 私費留学⽣も多くやってきた 1⽉ 学部⽣のクラブ活動として「国際交流クラブ」が発⾜。⽬⽴たぬ動きなが ら頻繁化する短期留学⽣の窓⼝・受け⽫として機能する 4⽉ 4年制⼝腔保健学科を「⼝腔健康科学科」に名称変更。名称変更によって この学科の⽬指す学問領域と将来像を鮮明に⽰す 4⽉ ⼤学院に⼝腔健康科学専攻(修⼠課程)設置。学部学科名称変更に呼応し た動き。最初の学部学科学⽣が卒業する年であり、専⾨の⼤学院進学の道 があることを⽰した 11 ⽉ 第3回 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry 開催。第28回⽇本⻭科医学教育学会が併設開催。⻭学教育のグローバル 化について検討。アジア太平洋⻭科⼤学ネットワーク会議(事実上参加各 国⻭学部⻑会議)が発⾜してより密接な提携関係に関する話し合いが⾏わ れた 2008 年 (平成 20 年) 2009 年 (平成 21 年) 4⽉ 2010 年 (平成 22 年) ⼝腔健康科学科の専攻名称を、⼝腔保健衛⽣学専攻が「⼝腔保健学専攻」 、 ⼝腔保健⼯学専攻が「⼝腔⼯学専攻」に変更。⻭科衛⽣⼠は「オーラル・ ヘルス・マネージャー」 、⻭科技⼯⼠は「オーラル・エンジニア」という 性格づけを鮮明に 11 ⽉ 学部バイオデンタル教育プログラム開始。学部が⽬指す次世代型⻭科医療 を明確に打ち出す。⻭科医師・⻭科衛⽣⼠・⻭科技⼯⼠融合型教育が特徴 のひとつ 4⽉ ⼤学院に「⼝腔健康科学科」 (博⼠課程後期)開設。2009年4⽉の修 ⼠課程開設に連続した動き。この分野での教育者・研究者の養成を⽬指す 9⽉ 2011 年 10 ⽉ (平成 23 年) (H26.5.1現在) ⻭学部⻭学科 ⼝腔健康科学科 ⼝腔保健学専攻 ⼝腔健康科学科 ⼝腔⼯学専攻 ※( )内は⼥⼦で内数を表す 2000 年 (平成 12 年) 2005 年(平成 17 年) ■学⽣数 短期留学(SV-SS 制度。派遣と受⼊)平成 23 年度開始 国際⻭学コーススタート。インドネシア 2 名、ベトナム 1 名、計 3 名の 留学⽣が来⽇。4 年間の⻑期留学⽣受⼊制度開始 328(160) 88(88) 88(62) ■教員現員数 (H26.5.1現在) 教授 22 2 24 医⻭薬保健学研究院所属 広島⼤学病院所属 計 准教授 10 0 10 ■卒業者数 講師 6 13 19 助教 56 29 85 合計 94 44 138 (H26.3.23卒業) 学科 ⻭学科 ⼝腔健康科学科 ⼝腔保健学専攻 ⼝腔健康科学科 ⼝腔⼯学専攻 卒業者数 58(27) 22(22) 21(13) 卒業者数総計 2,460(743) 125(121) 118(72) ※( )内は⼥⼦で内数を表す ■博⼠学位授与状況(⻭学系) 課程博⼠ 論⽂博⼠ H21 H22 H23 H24 H25 12 0 27 0 23 0 28 0 35 0 ■⼊学試験実施状況 ⻭学科 ⼊学年度 ⼊試区分 募集⼈員 志願者数 志願倍率 3.8 19(11) 5 AO⼊試 3.1 103(57) 33 平成24年度 前期⽇程 12.2 183(85) 15 後期⽇程 5.4 5 27(19) AO⼊試 4.8 33 160(71) 前期⽇程 平成25年度 223(114) 14.9 15 後期⽇程 ◎3(1) AO⼊試 5.2 5 26(15) 前期⽇程 6.2 33 206(79) 平成26年度 272(119) 後期⽇程 18.1 15 ◎5(2) 受験者数 合格者数 2(1) 13(8) 95(51) 36(19) 102(45) 17(7) 4(4) 15(12) 147(63) 34(10) 119(61) 23(15) ◎1(0) ◎1(0) 2(1) 15(10) 184(72) 36(12) 157(71) 19(14) ◎4(1) ◎1(0) ⼝腔健康科学科 ⼝腔保健学専攻 ⼊学年度 ⼊試区分 募集⼈員 平成24年度 AO⼊試 平成25年度 AO⼊試 平成26年度 AO⼊試 前期⽇程 前期⽇程 前期⽇程 5 15 5 15 5 15 志願者数 10(10) 39(38) 17(17) 59(59) 20(20) 47(47) 志願倍率 2.0 2.6 3.4 3.9 4.0 3.1 受験者数 10 (10) 35 (34) 9 (9) 57 (57) 12(12) 41(41) 合格者数 5(5) 19(18) 4(4) 20(20) 5(5) 20(20) ⼝腔健康科学科 ⼝腔⼯学専攻 ⼊学年度 平成24年度 平成25年度 ⼊試区分 募集⼈員 志願倍率 受験者数 合格者数 5 15 3 12 5 8(5) 30(23) 4(3) 43(26) 71(50) 1.6 2.0 1.3 3.6 14.2 8 (5) 28 (22) 4 (3) 40 (24) 34 (24) 2(1) 22(8) 1(1) 18(11) 10(10) 前期⽇程 3 12 0.3 3.6 後期⽇程 5 1(0) 43(21) 51(39) ◎1(0) AO⼊試 前期⽇程 AO⼊試 前期⽇程 後期⽇程 AO⼊試 志願者数 1(0) 1(0) 42(21) 18(10) 8(7) 25(21) ◎1(0) ◎0(0) 10 ⽉ 第4回 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry 開催。第59回国際⻭科研究学会⽇本部会(JADR)が併設開催。また「国 際⼤学交流セミナー」も併設開催 平成26年度 4⽉ ⻭学部に国際⻭学コース本格スタート。これに伴い授業は新カリキュラム で、基本的に⽇本語・英語併⽤制が開始 ※( )内は、⼥⼦を内数で⽰します。 ※◎は私費外国⼈留学⽣を外数で⽰します。 ※合格者数には、追加合格の合格者数を含みます。 ※AO⼊試の受験者数は第1次選考受験者数を、合格者数は最終合格者数を⽰します。 10 ⽉ 2012 年 (平成 24 年) 国際⻭学コース第⼆期、インドネシア、ベトナム、カンボジア、各 1 名来⽇。 2013 年 4 ⽉から本格スタート 10 ⽉ 短期留学(6 か⽉受⼊制度)開始、インドネシア、ベトナム各 3 名来⽇ 11 ⽉ 短期留学(SV-SS 制度。派遣と受⼊)平成 24 年度開始 2013 年 10 ⽉ (平成 25 年) 第 5 回 Hiroshima Conference on Education and Science in Dentistry 開催 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 10.2 36 【データで⾒る⻭学部】 平成25年度 ■卒業後の進路 ⻭学科 卒業後、⻭科医師国家試験合格を条件にほぼ全員が研修医 (1年必修)となります。どの施設の研修医となるかは、6年 ⽣の間に各施設で実施されるマッチング試験により決まります。 1年間の研修が終わった後は、2年⽬の研修(後期研修)の継 続、⼤学院への進学あるいは他の医療施設や⾏政機関への就職 など多岐にわたる進路があります。 その他16% ⻭科研修医84% 区分 ⼈数 臨床研修医 49(22) その他 9(5) ⻭科医師 ⻭科医師国家試験合格率の推移 既卒 既卒 卒業者数 合格者数 受験者数 合格者数 合格率 実施年⽉ (⼈) (⼈) (%) (⼈) (⼈) H17.3 H18.2 H19.2 H20.2 H21.2 H22.2 H23.2 H24.2 H25.2 H26.2 61 62 57 58 61 52 56 57 50 58 59 55 51 49 50 45 56 54 46 49 5 4 8 8 15 13 16 8 9 9 3 3 5 2 12 3 8 2 4 5 93.9 87.9 86.2 77.3 81.6 73.8 88.9 86.2 84.7 80.6 ⼝腔健康科学科 ⼝腔保健学専攻 ⼤学院進学9% 19 20 21 22 23 21 22 20 18 22 21 22 20 18 22 100 100 100 100 100 全国合格率 93.9 87.9 90 80 70 88.9 86.2 74.2 71.1 77.3 67.5 60 97.2 96.5 95.8 96.2 97.1 84.7 80.6 73.8 80.8 74.6 86.2 81.6 68.9 合格率 卒業者数 合格者数 実施年⽉ 実施回数 (⼈) (⼈) (%) 全国平均 H22.3 H23.2 H24.3 H25.3 H26.3 広⼤合格率 100 ⻭科衛⽣⼠ 卒業後は、⾼度専⾨的⻭科衛⽣⼠として地域の⻭科医院の衛 ⽣⼠となったり、総合病院・⾏政機関・学校などの⼝腔保健マ ネージメントを⾏う⻭科衛⽣⼠になったり、あるいは、⻭科衛 ⽣⼠養成機関の教員になることをめざします。 また、養護教諭の免許を取得すれば、学校現場で⼝腔衛⽣を 指導できる養護教諭として、活躍することもできます。 公務員23% ■国家試験合格状況 69.5 71.2 63.3 71.0 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ⻭科技⼯⼠ 実施年⽉ 実施回数 H22.3 H23.3 H24.3 H25.3 H26.3 - - - - - 合格率 卒業者数 合格者数 (⼈) (⼈) (%) 全国平均 19 23 20 20 21 19 23 20 20 20 100 100 100 100 95.2 ⾮公開 ■広島⼤学⻭学部が結んでいる国際交流協定 ニューカッスル・アポン・タイン⼤学⻭学部:連合王国(1994) ポ 病院・⻭科医院68% 四川⼤学華⻄⼝腔医学院:中華⼈⺠共和国(1995) マラヤ⼤学:マレーシア(1995) イエテボリ⼤学⻭学部:スウェーデン王国(1998) 区分 ⼤学院進学 病院・⻭科医院 公務員 職種等 広島⼤学⼤学院 医⻭薬保健学研究科 (博⼠課程前期) (修⼠課程) ⻭科衛⽣⼠ 教員 ⼈数 アイルランガ⼤学⻭学部:インドネシア共和国(1999) 圓光⼤学校⻭科⼤学:⼤韓⺠国(2000) コンセプシオン⼤学⻭学部:チリ共和国(2000) 1 1 15 5 ⾹港⼤学⻭学部:中華⼈⺠共和国(2000) アテネ⼤学⻭学部:ギリシャ共和国(2001) ホーチミン市国⽴⻭科⼝腔病院 チュラーロンコーン⼤学:タイ王国(2003) ⼝腔健康科学科 ⼝腔⼯学専攻 卒業後は、⼤学・研究所の研究者、製薬関連、機器・材料関 連企業の研究者・技術者になったり、あるいは⻭科技⼯所の専 ⾨的⻭科技⼯⼠になったり、⾼度専⾨的顎⼝腔医療技術者や顎 顔⾯補綴専⾨技術者(メディカル・アーティスト)になること もできます。また、⻭科技⼯⼠養成機関の教員として活躍する こともできます。 その他5% 公務員5% ⼤学院進学24% 病院14% 台北医学⼤学:台湾(2005) ワシントン⼤学⻭学部:アメリカ合衆国(2006) コンケン⼤学⻭学部:タイ王国(2007) ホーチミン市医科薬科⼤学⻭学部:ベトナム社会主義共和国(2008) ⾼雄医学⼤学⻭学部:台湾(2009) 国⽴健康科学⼤学⻭学部:カンボジア王国(2009) ペラデニア⼤学⻭学部:スリランカ⺠主社会主義共和国(2010) 慶北⼤学校⻭学部:⼤韓⺠国(2010) 釜⼭カトリック⼤学 ブリティッシュコロンビア⼤学⻭学部:カナダ(2012) 天津医科⼤学⼝腔医学院:中華⼈⺠共和国(2012) ホーチミン市国⽴⻭科⼝腔病院:ベトナム社会主義共和国(2013) 企業52% シェフィールド⼤学臨床⻭学部:連合王国(2013) 釜⼭カトリック⼤学:⼤韓⺠国(2013) ヤンゴン⻭科医学⼤学:ミャンマー連邦共和国(2013) 区分 ⼤学院進学 企業 病院 公務員 その他 職種等 広島⼤学⼤学院 医⻭薬保健学研究科 (博⼠課程前期) 総合職・MR その他 ⻭科技⼯⼠ ⼀般職 ⼈数 マヒドン⼤学⻭学部:タイ王国(2014) マンダレー⻭科医学⼤学:ミャンマー連邦共和国(2014) 5 ヤンゴン⻭科医学⼤学 7 4 3 1 1 ⼤学院(博⼠課程前期)には多くの学⽣が進学してい ますが、⼤学や研究所の研究者を⽬指して博⼠課程 (後期)に進む者、企業の研究者を⽬指す者、⾼度専 ⾨⻭科衛⽣⼠・⻭科技⼯⼠を⽬指す者、公務員試験を 経て地⽅・中央の官僚として⾏政職を⽬指す者、養成 校の教員を⽬指す者たちが進学し、それぞれの⽬標の ために、より⾼度な教育を受けています。 シェフィールド⼤学臨床⻭学部 マヒドン⼤学⻭学部 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 37 【データで⾒る⻭学部】 ■資料:広島⼤学⻭学部 学部学⽣相互留学・国際交流 (2014 年 5 ⽉現在) 年 2006 年 06-07 年 2007 年 (平成 19 年) 2008 年 (平成 20 年 ) 08-09 年 2009 年 (平成 21 年 ) 時期 1⽉ 06 年 10 ⽉ -07 年 9 ⽉ 1 ⽉ー2 ⽉ 8⽉ 8 ⽉ -9 ⽉ 10 ⽉ 1 ⽉ -2 ⽉ 3⽉ 3⽉ 5⽉ 8⽉ 08 年 10 ⽉ -09 年 9 ⽉ 2⽉ 4⽉ 8 ⽉ -9 ⽉ 8 ⽉ -9 ⽉ 9⽉ 9⽉ 11 ⽉ 2010 年 (平成 22 年 ) 2011 年 (平成 23 年 ) 2012 年 (平成 24 年 ) 2⽉ 2⽉ 3⽉ 3 ⽉ -4 ⽉ 6⽉ 8⽉ 8⽉ 9⽉ 11 ⽉ 1⽉ 2⽉ 2 ⽉ -4 ⽉ 4 ⽉ -6 ⽉ 8⽉ 9⽉ 10 ⽉ 11 年 10 ⽉ -15 年 9 ⽉ 11 年 10 ⽉ -12 年 9 ⽉ 11 ⽉ -12 ⽉ 1⽉ 2 ⽉ -3 ⽉ 3⽉ 3⽉ 8⽉ 9⽉ 12 年 10 ⽉ -16 年 9 ⽉ 12 年 10 ⽉ -13 年 3 ⽉ 11 ⽉ 2013 年 (平成 25 年 ) 1⽉ 2⽉ 3⽉ 8⽉ 9⽉ 10 ⽉ 13 年 10 ⽉ -17 年 9 ⽉ 13 年 10 ⽉ -14 年 3 ⽉ (平成 26 年 ) 2⽉ 3⽉ 14 年 4 ⽉ -15 年 3 ⽉ 8⽉ 14 年 10 ⽉ -18 年 9 ⽉ 2015 年 14 年 10 ⽉ -15 年 3 ⽉ 11 ⽉ 3⽉ 2014 年 種別 交流内容 台湾・台北医学⼤学4名 台湾・台北医学⼤学3名の1年間学部留学受⼊れ 台湾・台北医学⼤学3名が親善訪問・学⽣交流 5名が台湾で開かれたアジア太平洋⻭科学⽣⼤会に参加 英国エクスター⼤学に 1 名が英語研修プログラムで留学(単位認定) マレーシア・マラヤ⼤学2名、タイ・チュラーロンコーン⼤学2名、タイ・コンケン⼤学 2 名、中国・ホンコン⼤学2名、台湾・台北医学 ⼤学2名、中国・中⼭⼤学1名、中国・四川⼤学2名、韓国・圓光⼤学校⻭科2名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学2名の学⽣が教員 受⼊れ とともに来⽇、学⽣交流。第2回 Hiroshima Conference に出席するとともに併催の「アジア⻭科学⽣国際交流セミナー」に参加。 台湾・台北医学⼤学12名 受⼊れ タイ・コンケン⼤学 2名 派 遣 JAVDO(⽇本⻭科ボランティア機構)の学⽣ボランティアとしてベトナムで医療⽀援活動。ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学に 派 遣 タイ・コンケン⼤学2名 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学13名 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学3名の1年間学部留学受⼊れ 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学9名 受⼊れ タイ・コンケン⼤学2名 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学1名 派 遣 カナダ・ブリティッシュコロンビア⼤学1名 派 遣 カンボジア⻭科医療⽀援活動に9名が参加。国⽴健康科学⼤学を訪問 派 遣 タイ・コンケン⼤学1名 派 遣 第 3 回 Hiroshima Conference のため外国⼈学⽣が多数来⽇、学部学⽣と交流。⼤学はインドネシア・アイルランガ⼤学、タイ・チュラー ロンコーン⼤学、ガザフスタン・アスタナ医科⼤学、中国・ホンコン⼤学、四川⼤学、天津医科⼤学、マレーシア国際医科⼤学、マラヤ⼤学、 受⼊れ スリランカ・ベラデニア⼤学、韓国・圓光⼤学校など。 台湾・台北医学⼤学15名 受⼊れ カンボジア⻭科医療⽀援活動に3名が参加。国⽴健康科学⼤学を訪問 派 遣 アメリカ・マサチューセッツ⼤学(ボストン)1名 派 遣 タイ・コンケン⼤学2名 派 遣 韓国・圓光⼤学校2名 受⼊れ オーストラリア・グラーツ医学⼤学 1 名 受⼊れ 台湾・台北医科⼤学17名 受⼊れ カンボジア⻭科医療⽀援活動に5名が参加。国⽴健康科学⼤学を訪問 受⼊れ インドネシア・アイルランガ⼤学2名 派 遣 台湾・台北医学⼤学20名 受⼊れ カンボジア⻭科医療⽀援活動 3 名 受⼊れ アメリカ・ワシントンDCの⼤学を 1 名が訪問。期間1ヶ⽉半 派 遣 韓国・圓光⼤学校1名 期間3ヶ⽉ 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学17名 受⼊れ カナダ・ブリティシュコロンビア⼤学3名 期間 1 か⽉ 派 遣 国際⼤学交流セミナー 部局間交流協定締結 9 か国 13 ⼤学院⽣ 受⼊れ 国際⻭学コース参加のため、インドネシア・アイルランガ⼤学 2 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学1名計3名 4 年間 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学 2 名短期留学 受⼊れ インドネシア・アイルランガ⼤学 4 名、タイ・コンケン⼤学 2 名計6名 受⼊れ 台湾・台北医学⼤学 19 名 受⼊れ カンボジア⻭科医療⽀援活動に 12 名が参加 派 遣 カナダ・ブリティッシュコロンビア⼤学 1 名、アメリカ・ワシントン⼤学 2 名 受⼊れ 国際⻭学コースの学⽣3名が⺟国の⼤学へ帰って研修 派 遣 台湾・台北医学⼤学 20 名 受⼊れ カナダ・ブリティシュコロンビア⼤学2名 期間 1 か⽉ 派 遣 国際⻭学コース参加のため、インドネシア・アイルランガ⼤学 1 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学1名、カンボジア・国⽴健 受⼊れ 康科学⼤学1名 計3名 4 年間 インドネシア・アイルランガ⼤学 3 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 3 名 計 6 名 半年間 受⼊れ 韓国・圓光⼤学校 2 名、 タイ・コンケン⼤学 2 名、 タイ・チュラーロンコーン⼤学 2 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 2 名、カンボジア・ 受⼊れ 国⽴健康科学⼤学 2 名、インドネシア・アイルランガ⼤学 2 名 計 12 名 10 ⽇間 台湾・台北医学⼤学 9 名 5 ⽇間 受⼊れ カンボジア⻭科医療⽀援活動 14 名 派 遣 台湾・台北医学⼤学 5 名、インドネシア・アイルランガ⼤学 5 名、韓国・圓光⼤学校 2 名 10 ⽇間 派 遣 台湾・台北医学⼤学 5 名 5 ⽇間 受⼊れ カナダ・ブリティシュコロンビア⼤学 4 名 約 1 か⽉間 派 遣 韓国・圓光⼤学校 1 名、インドネシア・アイルランガ⼤学 3 名、タイ・コンケン⼤学 2 名、タイ・チュラーロンコーン⼤学 2 名、 受⼊れ ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 2 名、カンボジア・国⽴健康科学⼤学 2 名、台湾・台北医学⼤学 2 名、 計 14 名 10 ⽇間 国際⻭学コース参加のため、インドネシア・アイルランガ⼤学 1 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 1 名、カンボジア・国⽴ 受⼊れ 健康科学⼤学 1 名、計 3 名 4 年間 インドネシア・アイルランガ⼤学 2 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 1 名、台湾・台北医学⼤学⼝腔医学院 1 名、タイ・ 受⼊れ コンケン⼤学 2 名 計 6 名 半年間 カンボジア⻭科医療⽀援活動 12 名 派 遣 インドネシア・アイルランガ⼤学 3 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 4 名 台湾・台北医学⼤学 5 名、計 12 名 10 ⽇間 派 遣 ブラジル・サンパウロ⼤学 1 名 1 年間(国境なき科学) 受⼊れ 派遣(予定) 連合王国・シェフィールド⼤学 3 名 1 ヶ⽉半 受⼊れ(予定) 国際⻭学コース参加のため、インドネシア・アイルランガ⼤学 1 名、ベトナム・ホーチミン市医科薬科⼤学 1 名、カンボジア・国⽴ 健康科学⼤学 1 名、計 3 名 4 年間 受⼊れ(予定) 国際交流協定校 8 名 半年間 受⼊れ(予定) 国際交流協定校 18 名 10 ⽇間 派遣(予定) 国際交流協定校 25 名 10 ⽇間 受⼊れ 受⼊れ 受⼊れ 派 遣 派 遣 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry 広島⼤学⼤学院 医⻭薬保健学研究科紹介 38 広島⼤学⼤学院 医⻭薬保健学研究科紹介 専攻等 D 博⼠課程 教育・研究上の⽬的 ⻭学専⾨プログラム ⻭科医学分野における研究を統合・発展させ、より⾼度な先進的⻭学基礎研究を遂⾏すると ともに、これに基づく応⽤研究によって⾼度先進⻭科医療を開発し、これを地域社会から国 際社会まで広く展開できる⼈材を養成することを⽬的としています。 放射線医科学専⾨プログラム 放射線の⼈体影響に関する基礎的研究から臨床放射線医学までの先進的、かつ体系的な教 育・研究を実施し、これを地域社会から国際社会まで広く展開できる⼈材を養成すること を⽬的としています。 受⼊枠27⼈ 医⻭薬学専攻 学位:博⼠(⻭学)・博⼠(学術) 受⼊枠 7⼈ D 博⼠課程後期 ⼝腔健康科学専攻 学位:博⼠(⼝腔健康科学) M ⼊学定員4⼈ 博⼠課程前期 ⼝腔健康科学専攻 ⼊学定員12⼈ 学位:修⼠(⼝腔健康科学) M クリニカルコース リサーチコース 修⼠課程 医⻭科学専攻 ⼊学定員12⼈ 学位:修⼠(医科学)・修⼠(⻭科学)・修⼠(学術) D ⼝腔健康科学分野の教育・研究をリードし、⼝腔健康科学分野の拠点となるべく教育・研 究を展開し、国際的に貢献できる⼈材養成を⾏うとともに、国⺠の健康の維持増進を⽬的 とし、⼝腔から全⾝の健康を維持増進するための⼝腔健康科学の学術分野を構築すべく、 その教育者及び⼤学・企業における研究者を養成することを⽬的としています。 医⻭科学コース 博⼠課程(4年制・5年制)募集⼈員:10名程度 平成23年度⽂部科学省「博⼠課程教育リーディングプログラム」 放射線災害復興を推進する フェニックスリーダー育成プログラム 学位:博⼠(⻭学)他 放射線災害医療コース 放射能環境保全コース 放射能社会復興コース ① ⼝腔保健の⾼度専⾨医療⼈を養成することを⽬的としています。 ② ⼝腔健康科学の確⽴及び普及を担う教育者・研究者となる⼈材を養成することを⽬的と しています。 ③ ⼝腔⼯学の確⽴及び普及を担う教育者・研究者となる⼈材を養成することを⽬的として います。 教育・研究機関において医学・⻭学の学際領域における基礎的・応⽤的研究の推進に貢献し うる⼈材及びバイオテクノロジー、医療、製薬等に関係する企業等において研究開発⼜は医 療関係業務に関わる⼈材を養成することを⽬的としています。 「放射線災害復興を推進するフェニックスリーダー育成プログラム」は、グローバルな放射 線災害復興専⾨家育成の必要性と、原爆からの復興を⽀えた広島⼤学の実績と経験を背景 に、「幅広い学際的な知識を基盤として放射線災害に適切に対応し、明確な理念の下で復興 を指導できる判断⼒と⾏動⼒を有した、国際的に活躍できるグローバルリーダー(フェニッ クスリーダー)」を育成することを⽬的としています。 学位・免許・資格取得のフローチャート 博⼠課程(4年制及び5年制) 放射線災害復興を推進する フェニックスリーダー育成プログラム ⻭学部 ⼝腔健康科学科(4年制) ⻭科衛⽣⼠免許 養護教諭⼀種免許状 ⻭科技⼯⼠免許 ⻭学部 ⻭学科(6年制) 他⼤学⻭学部等 ⻭科医師免許 博⼠課程前期 ⼝腔健康科学専攻(2年) 他⼤学 他学部(4年制) 全国初の⼝腔健康科学専攻の⼤学院 ⼝腔健康科学専攻 博⼠課程(前期・後期) 博⼠課程後期 ⼝腔健康科学専攻(3年) 博⼠課程 医⻭薬学専攻(4年) 修⼠課程 医⻭科学専攻(2年) 放射線災害復興を推進する フェニックスリーダー育成プログラム 博⼠課程4年制及び5年制 全国初のオーラル・ヘルス・マネージャー(⻭科衛⽣⼠)とオーラル・エン 全国初の放射線災害復興の専⾨家・リーダーを育成する博⼠課程プログラム。 ジニア(⻭科技⼯⼠)の臨床・研究のための博⼠課程です。前期は2009年4⽉、 平成23年度⽂部科学省「博⼠課程教育リーディングプログラム」で採択された 後期は2011年4⽉に開設されました。前期のクリニカルコースでは、 「⾼度 広島⼤学初の学内横断型博⼠課程プログラム。幅広い学際的な知識を基礎として 専⾨的医療⼈」として、より⾼度化した⻭科医療の中で⻭科医師と連携し、チー 放射線災害に適切に対応し、明確な理念の下で復興を指導できる判断⼒と⾏動⼒ ム医療を実践できるオーラル・ヘルス・マネージャー及びオーラル・エンジニ を有した、国際的に活躍できるグローバルリーダー(フェニックスリーダー)を アを養成します。リサーチコースでは有資格者だけでなく他学部出⾝者も対象 育成することを⽬的としています。放射線災害から⽣命を護る⼈材育成の「放射 に、国⺠の健康の維持増進を⽬的とし、⼝腔から全⾝の健康を維持促進するた 線災害医療コース」 (4年⼀貫制)、放射能から環境を護る⼈材育成の「放射能環 めの⼝腔健康科学という学術体系を構築すべく、その教育者及び企業・⼤学に 境保全コース」(5年⼀貫制)、放射能から⼈と社会を護る⼈材育成の「放射能社 おける研究者を養成します。我が国の研究をリードし⼝腔健康科学の拠点とな 会復興コース」 (5年⼀貫制)の3つのコースがあります。3ヶ⽉から6ヶ⽉の るべく各分野の⾼度な研究教育を展開し、国際的に活躍できる⼈材の養成を⽬ ⻑期インターンシップで各種国際機関などに出向します。 標とします。 Faculty gazette 2014 - Hiroshima University Fuculty of Dentistry C棟(⻭学部) B棟(⻭学部) ⾄ 広島駅 D棟(⻭学部) 薬⽤植物園 広仁会館 薬学部 医学資料館 ひろしま イノベーション拠点 ⻭学部 霞会館 ⼸道場 テニスコート 薬学部 講義棟 霞体育館 保健学科 研究棟 解剖センター 霞会館 基礎講義棟 (⾷堂・売店) 動物実験棟 霞RI研究棟 基礎・社会医学研究棟 慰霊碑 霞図書館 臨床講義棟 広島⼤学病院 診療棟 臨床管理棟 臨床研究棟 放射線先端医学 実験施設 保健管理センター 霞分室 広島⼤学病院 ⼊院棟 たんぽぽ保育園 原爆放射線 医科学研究所 梁⼭泊 (レジデントハウス) 霞総合研究棟 看護師宿舎 ⾄ 岩国 国道2号線 ⾄ 東広島 A棟(⻭学部) 広島⼤学病院 診療棟 【連絡・問い合わせ先】 国⽴⼤学法⼈ 広島⼤学霞地区運営⽀援部 学⽣⽀援グループ(⻭学部担当) 〒734-8553 広島市南区霞⼀丁⽬2番3号 TEL(082)257-5613 FAX(082)257-5278 E-mail kasumi-gaku@office.hiroshima-u.ac.jp URL http://www.hiroshima-u.ac.jp/dent/
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