システム情報工学研究科修士論文概要 年 度 平成 22 年度 専 攻 知能機能システム 指導教員氏名 学位名 専攻 著者氏名 修士(工学) 小倉 渓 水谷 孝一 論文題目 大型擦弦楽器のウルフトーン発生メカニズム解明に関する研究 論文概要 チェロ等の大型擦弦楽器はその音域や独特の音色からオーケストラや室内楽で音楽の土台を作る 重要な役割を果たしている.しかし,これらの楽器では演奏技術では克服が難しいウルフトーンと 呼ばれる現象が起きることがある.ウルフトーンは特に大型の擦弦楽器において顕著に発生し、特 定の音高を弾いた際に楽器全体が激しく振動して演奏音にうなりが生じてしまうため、多くの演奏 家を悩ませている。これに対し現在, 「ウルフキラー」と呼ばれるウルフトーンを抑圧するための商 品が販売されているが、これを取り付ける事で別の音高でウルフトーンが発生してしまう、楽器の 音色が変化してしまうなどの問題があり根本的な解決には至っていない。こうした理由からウルフ トーンの発生原理を解明し、効果的な抑圧方法を考案することが求められている。本研究では、ウ ルフトーンの効果的な抑圧を行う上での基本的な知見として、発生原理の解明を行うことを目的と している。 本研究は数値シミュレーションと、実際の楽器を用いた実測という2つのアプローチで進めた。 数値シミュレーションを行うにあたり弦楽器は複雑な構造であるため、弦の境界が質点-バネ系で あるシンプルなモデルにモデル化した。このモデルを用い比較的シミュレーションが容易である撥 弦(弦を指ではじく奏法)条件でウルフトーンの再現を行い、その後撥弦を擦弦に変えつつ境界に ダンパを加えることで現実の楽器に近づけた。結果、シミュレーションでは撥弦時と擦弦時それぞ れウルフトーンとみられるうなりが発生し、撥弦時には弾く弦の線密度変化によるうなりの周期変 化が実測と同じ傾向となった。また擦弦時、数値シミュレーションでは実測結果と同様に,基音を 除く周波数成分のうなりが再現されている事が確認された。 本モデルはウルフトーンとみられるうなりを部分的に再現出来ている事から、発生原理を解明す る上で有益である。しかし、未だに実測結果と数値シミュレーション結果が一致していない部分も あり、今後はウルフトーンの制御に向けてさらに発展させていくことが必要である。 審査日 平成 23 年 2月 3日 審査員 (大学名 職名) (学位) (氏名) 主査 筑波大学 教授 工学博士 水谷 孝一 副査 筑波大学 准教授 博士(工学) 若槻 尚斗 副査 筑波大学 講師 博士(工学) 川村 洋平
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