November 2010 - フラストレーションが創る新しい物性

NEWS LETTER
科学研究費補助金
特定領域研究
フラストレーションが創る新しい物性
Vol.10
Vol.10
November 2010
目 次

巻頭言
• 川村

光(大阪大学大学院理学研究科)
··············································· 3
研究紹介
• 星形四面体格子上の遍歴電子フラストレーション······································· 4
中村
裕之(京都大学大学院工学研究科)
• 量子誘電性とスピン液体 ······································································· 6
堀田
知佐(京都産業大学理学部)
• 強磁性シャストリーサザーランド物質? ·················································· 8
陰山

洋(京都大学大学院工学研究科)
第 6 回トピカルミーティング
• 全体のまとめ ······················································································ 10
藤本
• 理論
聡(京都大学大学院理学研究科)
······················································································ 11
求 幸年(東京大学大学院工学系研究科)
• 実験
······················································································ 13
田畑
• プログラム

吉計(京都大学大学院工学研究科)
······················································································ 15
Highly Frustrated Magnetism (HFM2010)
• 報告
······················································································ 18
宇田川 将文(東京大学大学院工学系研究科)
伊藤
哲明(京都大学大学院人間・環境学研究科)
- 1-

17th International Conference
on Solid Compounds of Transition Elements (SCTE2010)
• 報告
······················································································ 22
上田

寛(東京大学物性研究所)
3rd International Symposium on Structure-Properties Relationships
in Solid State Chemistry (SPSSM2010)
• 報告
······················································································ 24
陰山
洋(京都大学大学院工学研究科)

成果論文リスト ··················································································· 26

お知らせ ···························································································· 31

編集後記 ···························································································· 32
- 2-
巻頭言
巻頭言
領域代表
川村光
本特定領域も、残すところあと1年と少し、という時期になりました。本当に早いもの
です。全5周のレースとすれば、そろそろあと1周の鐘が鳴る、というタイミングでしょう
か。いよいよ、最後の1周にかかっていくわけです。年明け早々には、仙台で、本特定のメ
インイベントである国際会議“Frustration in Condensed Matter (ICFCM)”も開催されます。
最後の年というのは、ともすれば、先のことも考えたりでチョッと浮き足立ったりもするわ
けですが、一方どんなレースであっても、実は最後の1周で決まることがほとんどです。そ
の意味では、これからの1年チョッとこそが、本特定の真価を問われる、正に正念場だと思
います。皆さんとともに、悔いのない1年にしたいものです。
と、ここまで書いたところで、実は今回言いたかったことは、あらかた書いてしまいま
した。ところが、まだ、だいぶページの方が残っています。で、以下、少しページつぶしの
おしゃべりをさせてください。
サッカーのイタリアの往年の名フォワードに、ロベルト・バッジョという選手がいまし
た。いわゆる“ファンタジスタ”というタイプの華麗なスタイルのプレーで、サッカーファ
ンの間では広く記憶されている名選手です。
「イタリアの至宝」ないしは「偉大なるポニーテ
ール」。しかし、何と言ってもバッジョと言えば、多くのサッカーファンの脳裏に焼きついて
いるシーンがありまして、1994年ワールドカ
ップ・アメリカ大会決勝のブラジル戦で、0-0
で勝負がつかず突入した最後の PK 戦で、名手の
彼がまさかの PK をはずしてイタリアが敗れ去り、
一人呆然とピッチに立ち尽くしていた場面です。
ご記憶の方もおられるのでは? その彼が、こう
言っているのです。 「PK を外せるのは、PK を
蹴る勇気を持ったものだけだ」 素晴らしいセリ
フではないでしょうか。バッジョは、こうも言っ
ています。 「今を戦えないものに、次とか来年
とかを言う資格はない」 イヤー、しびれますね。
是非、こうありたいものです。というわけで、チ
ョッと脱線気味の巻頭言になりましたが、われわ
れもバッジョに負けずに“今を戦って”、ついで
にわれわれの方は、PK を決めてしまいましょう!
- 3-
研究紹介
星型四面体格子上の遍歴電子フラストレーション
計画研究「フラストレーションと量子伝導」
京大工
中村裕之,和氣剛,寺澤慎祐,田畑吉計
ηカーバイド型とよばれる立方晶構造を持つ遷移金属化合物が数多く存在する
が,これまでその低温物性はほとんど着目されることがなかった,しかし,その
構造に含まれる星型四面体格子は,強相関金属としての条件を備えていると同時
に幾何学的フラストレーションを持つ.新奇物性探索の場として有望である.
遍歴電子系で幾何学的フラストレーション
面体格子(右)を示す。図のように,パイロク
を議論することの是非についてはさておき,
ロア格子の各正四面体(16d)の中に別の小さ
伝導とフラストレーションの関連を理解する
な正四面体(32e)を入れ子にした構造が星型
には新たな物質を開拓し,具体例を増やすこ
四面体格子である.Fe3W3C ではそれら両サイ
とが不可欠である.しかし,現実はなかなか厳
トを同じ元素 Fe が占有する.
しい.金属磁性体で幾何学的効果が前面に出
てくるためには,電子相関が極端に強いか,あ
るいは何らかの臨界点近傍にあることが必要
である.このような条件を満たす構造あるい
は物質群の候補として, 我々はこれまで電子
物性研究の対象としてはほとんどとりあげら
れることのなかったηカーバイド型窒・炭お
よび酸化物に着目している.それらは星型四
面体格子 stella quadrangula lattice とよ
図 1: パイロクロア格子と星型四面体格子
ばれる新たなフラストレート格子を内在する.
N や C や O は電子物性にはほとんど関与し
ないので,ηカーバイド型化合物は典型的な
金属間化合物である.
星型四面体格子とは?
立方晶ηカーバイド型構造のプロトタイプ
は Fe3W3C であり,空間群は Fd-3m である.問
題となるのは磁性を担う Fe 副格子であるが,
図 2: 星型四面体
それが星型四面体格子を形成する.フラスト
レーションのコミュニティ向けにはパイロク
星型四面体格子のユニットを図 2 に示す.
ロア格子と対比させて説明するのがよいであ
この立体は正四面体の各面に別の四面体を貼
ろう.図 1 にパイロクロア格子(左)と星型四
り付けたもので, stella quadrangula という
- 4-
研究紹介
ラテン語名がつけられている[1].stella とは
結果であると解釈できる.その結果として,
「星型の」という意味で,中心の立体(ここで
低温では非フェルミ液体的ふるまい(図 3 の
は正四面体)の各面に出っ張りをつけること
比熱参照)[2]や,極めてシャープな遍歴電子
を意味する.星型四面体が頂点共有でつなが
メタ磁性転移[3]など,興味深い物性が観測さ
った格子が星型四面体格子である.
れる.現在,多数のηカーバイド型化合物の
星型四面体が四面体を基調とする構造であ
ることから,フラストレーションが存在する
合成・測定を進めており,今後の新たな展開
を期待している.
ことが予想されるが,近接相互作用は図 2 に
示す J1 と J2 の2種類があり,それらが同程
度に寄与する可能性が高い.J1 と J2 のみを考
慮するとき,J2 が負でかつ支配的であるとき
フラストレーションが存在し,J1 はむしろフ
ラストレーションを解く方向に作用すること
が予想されている[3].また,J1 が正であって
も J2 が負であれば,フラストレーションは
存在し得る.すなわち,星型四面体格子は
J1-J2 競合型のフラストレート系である.
もう一つのポイントは,実際に存在するη
カーバイド型の物質では,原子間距離が絶妙
図 3: Fe3Mo3N の低温比熱[2]
で,直接の交換結合が期待されると同時に狭
いdバンドをつくる条件をみたしていること
本研究は多数の共同研究者の協力の下に成
である.すなわち,モーメントの不安定点近
り立っている.名前を上げるスペースがない
傍に位置している.
が,全ての共同研究者に深く感謝する.
ηカーバイド型構造遷移金属化合物は,元
[1] H. Nyman, S. Andersson and M. O'Keeffe,
素の組み合わせで,実に多彩な物質が存在し,
J. Solid State Chem. 26 (1978) 123.
今後の展開に希望が持てる.これまで電子物
[2] T. Waki et al., JPSJ 79 (2010) 043701.
性の研究の対象として積極的にとりあげられ
[3] T. Waki et al., arXiv:1007.4599.
なかったのは,主に単相を分離するのが困難
であったことによる.適切な合成法を確立で
きるのであれば,未来は明るい.
Fe3Mo3N の量子臨界現象
具体的な物質の例として,既にデータの蓄
積がある Fe3Mo3N を紹介する.系統的な研究
からこの物質では強い磁気相関を持ちつつも
磁気秩序が抑制されていると考えられ[3],そ
京都大学工学研究科 中村裕之,和氣剛(中央),
れは星型四面体格子のフラストレーションの
寺澤慎祐(左),田畑吉計(右)
- 5-
研究紹介
量子誘電性とスピン液体
公募研究「強相関電荷のフラストレーションがもたらす新奇誘電体・金属の理論的研究」
京都産業大学理学部
堀田 知佐
強いクーロン相互作用と量子揺らぎの狭間で揺れ動く強相関ダイポール (電気
双極子)と、それにつき従うスピン自由度。(反)強誘電 長距離秩序相への転移
寸前の微妙な領域に、ダイポール=スピン相関によってスピン液体が生じうる。
RVB 描像に端を発する三角格子スピン液体
軌道ψ±は、それぞれエネルギー ∓ td をもつ
の探索は, 本領域における基幹テーマの一つ
(td: ダイマー内分子間遷移積分)。もともと
であろう。然しここで敢えてご紹介するのは、
single band Hubbard model はψ±のうち, フェ
幾何学的フラストレーションとはやや縁が薄
ルミ準位に近いψ-のみを取り出した(ダイマ
い、スピン液体の新起源の提案である。問題
ー近似) 模型であり、td が他の相互作用と比
設定は, 鹿野田グループによって最初に提案
べて十分大きい場合を想定している。ところ
されたκ-ET2Cu2(CN)3 における非磁性モット
が最近、中村らの ab-initio 計算によって、ダ
絶縁体をどう理解するか?にある。今田グル
イマー間の電子間相互作用 V がダイマーオン
ープの single band Hubbard model の研究に端
サイトクーロン相互作用 U の4割程度の大き
を発する多くの理論研究とは また一味違っ
な値をもっていておかしくないという報告が
た視点から新たな可能性を提示したい。
なされた。V が td 程度、あるいはそれ以上に
もともと上記 2 次元有機モット絶縁体は、
大きければ、ダイマー近似は破綻する。 ただ
ダイマー(2分子) を単位にした正三角形に
し、系が絶縁体である限り、ダイマー上の二
近い格子をもつ。このことからフラストレー
重占有は相当抑えられているであろうから、
ション由来のスピン液体への期待が高まった。
V のせいで せいぜいψ±が混じることを考え
ところが最近、佐々木-寺崎らの実験グループ
てやればよい。つまり、ψ±ではなく、それを
によって 6~50K の温度領域でリラクサー的
バラした|→> と |←>で電荷の基底を取り直
周波数分散をもつ誘電異常が報告された。こ
してやればよいではないか?という発想が生
れはいわゆる「6K 異常」
(NMR, 格子熱膨張
まれる。
率等で見られる異常)と関係しており、モッ
“ではスピンはどこにあるのか?”という
ト絶縁体内でも電荷の誘電的自由度が残存し
佐々木の疑問に応えるべく、上記のダイポー
ている証拠である。
ル自由度 |→>,|←>に スピン自由度を含めた
図1を見てみよう。孤立したダイマー上の
摂動論を展開してみた。出発点は、2次元有
機系の基本模型、U と V を含む 2 band extended
Hubbard model における強結合極限:ダイマー
内のクーロン相互作用=∞である。一方、ダ
イマー内の td やダイマー間の t, V は摂動項と
して取り扱う。
まず 1 次摂動ではダイポール自由度の”横磁
場”イジング模型が得られる。V によってダイ
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研究紹介
このような直感と相反する結果は、次のよ
うに解釈される:ダイポールが量子力学的に
中途半端に乱れた状態になると(短距離的に
はそろっているが中距離では揃っていない)
J’や J もまた空間的に中途半端に乱れる。こ
の乱れは、V によって量子力学的な揺らぎが
減速した状況における、snap shot としての
ポールは(反)強誘電的に揃いたがるが, “横磁
乱れである。図2で求めた空間的に一様な J’,
場” td がそれを阻み、量子力学的揺らぎをダ
J の値は、あくまでそれらの長(虚)時間平均
イポールにもたらす。電子系の言葉では, V が
に過ぎない。一方、もし td が大きく、量子揺
強いと電荷秩序, td が強いとモット絶縁体で
らぎが激しければ、J’, J も短い(虚)時間内で
ある。面白いのは(反)強誘電相に相転移する
も十分均一(“一様な乱れ”)になり、ダイマ
直前の量子力学的 disorder 領域、つまり電荷
ーモット絶縁体における従来型の J’-J 三角格
秩序相近傍のモット絶縁相内である。V によ
子スピン系の描像が再現される。
って短距離相関が発達しながらも td による
V は従来、モット絶縁体の支配的な
揺らぎは止められない。このような不安定な
1/2-filling 系では有意な役割を果たさないと
状態のダイポールに対して、スピンは 2 次以
信じられてきたが、
上の摂動の高次で追従する。
本系においてはそ
その様を理解するために、スピン間の有効
Heisenberg 相互作用 J’, J を評価してみた
の限りではないこ
とが判明した。
(図2)。V の増大とともに J’/J が減少、つま
このように、V に
り正方格子的になる(これは V の格子上の異
よって量子揺らぎ
方性のパターンに拠らない一般的な結果であ
の時間スケールが
る)。その結果、図の左側の td /V が小さい領
slow down した結
域では反強磁性秩序が期待されるのだが、実
果生じた、「乱れた
際には、逆にスピンの反強磁性相関は著しく
ダイポール+スピ
抑制される (図2のスピン構造因子χQ の減
ン液体」状態は、ま
少)。特にモット絶縁体内の電荷秩序への相転
さに強相関効果に
移点近傍では、電荷(ダイポール)とスピン
よる異常量子状態
の両方が短距離相関の液体状態にとどまる。
の一例といえる。
パラメタ値の比較をもとに、κ-ET2Cu2(CN)3
はまさにこの領域にあると考えている。
京産大理
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堀田
知佐
研究紹介
強磁性シャストリーサザーランド物質?
計画研究「量子フラストレーション」
京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻
陰山 洋
スピン一重項基底状態をもつ S=1/2 層状化合物(CuCl)LaNb2O7 の単結晶を得ること
に成功し、構造解析を行った結果、この物質は二次元正方格子というよりも、強
磁性シャストリーサザーランド格子と見なせる可能性があることがわかってき
た [1]。
S = 1/2 層状化合物 (CuCl)LaNb2O7 の磁化率、
非弾性中性子散乱から、基底状態はスピンシ
ングレット状態であることを報告したのは
2005 年のことである [2]。その後、比熱 [3]、
た、高分解能電子顕微鏡から 2a×2b の超周期
反射が観測された。
単結晶のイオン交換の成功
強磁場磁化 [4]、μSR [5]、NMR [6] の各測定
これらの結果から、本物質の真の構造を特
2+
に単結晶を用いて決定することが、本物質の
は正方格子を形成していることから、スピン
磁性を理解する上では重要である。ただ、
シングレット基底状態を説明するためには、
(CuCl)LaNb2O7 は準安定相であるため、フラッ
J1-J2 模型(J1:最近接相互作用、J2:次近接相
クス法など通常の単結晶育成法は適用できな
互作用)が自然なシナリオである。しかしな
い。まず RbLaNb2O7 の単結晶を育成し、これ
がら、この模型とは相容れない問題点がこれ
を母体として用いたイオン交換反応を行うし
までいくつかあった。列挙すると、
かないが、これまで単結晶でのイオン交換は、
(1) 理論からはスピンギャップの大きさは J1
ゼロライトや MOF のようにポーラス材料に
に比べてかなり小さくなると予想されるが、
限られていた。しかし、試行錯誤の末、1×
実験結果(2.3 meV)は大きすぎる。
1 × 0.1 mm3 程 度 の 単 結 晶 CsLaNb2O7 を
(2) スピン液体状態が現れるのは J2/J1 ~ 0.5
(CuCl)LaNb2O7 に変換することになんとか成
(J1, J2 > 0)、J2/J1 ~ –0.5 (J1 > 0, J2 < 0)の領域で
功した [1]。EDS 測定からは、残留 Cs が存在
あるが、最近の理論では本物質に相当すると
せず、Cu : Cl : La : Nb = 1 : 1 : 1 : 2 であること
考えられる後者ではギャップレスであると考
を確認した 。
もこの結果をサポートした。CuCl 層の Cu
えられている [7]。
(3) 中性子非弾性散乱
(トリプレット励起の Q
依存性)から得られるダイマー距離 0.88 nm
は第四近接に相当するのに対し、J1-J2 模型で
は最近接(0.4 nm)である。また、第四近接
は非現実的な遠さに思える。
(4) Cu 位置の4回対称性が破れていることが
吉田、瀧川らの NMR 測定から見出された。
これは提唱されていた構造とは矛盾する。ま
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精密構造解析と第一原理計算
構造決定は Olivier Hernandez 氏(レンヌ第
研究紹介
一大学)を中心として、単結晶 X 線回折、粉
(CuCl)LaNb2O7 が強磁性 Shastry-Sutherland 模
末中性子回折、放射光粉末 X 線回折を用いて
型で表されるかどうかはまだまだ検討の余地
行った。構造解析のプロの Olivier 氏でも驚く
は多いにあるが、少なくとも理論的にはこれ
程の様々な困難があり二年近くの長い時間を
まで強磁性版は全く検討されていなかったた
要した。最終的に決定した構造(空間群 Pbam)
め、実験とともに今後の理論の発展が楽しみ
を図に示す。(a) a 軸方向からみると NbO6 八
である。余談であるが、基研の戸塚さんとブ
面体が交替して回転しているのに対し、(b) b
リストルの Nic Shannon と五年前、まだ [1]
軸方向には八面体の回転はない。この酸素の
の論文も出版される前に、議論したときに、
変位に Cu(と Cl)が追随し、(c)に示す構造
現象論的に強磁性 Shastry-Sutherland 模型で説
をとる(Cu: 青、O: 赤、Cl: 緑)。Cu と Cl
明できないかという指摘を受けた。それが現
は結晶学的に1サイト(ともに 4h)である。
実になるとは驚きである。
得られた結晶構造を用いて、ノースカロラ
(CuCl)LaNb2O7 の他にも、コリニア型の磁気
イナ大の Whangbo 氏は第一原理計算により
秩序を示す(CuBr)LaNb2O7、1/3 プラトーを示
交換相互作用を評価したところ、Cu-Cl-Cl-Cu
す(CuBr)Sr2Nb3O10 など興味深い物質が数多く
からなる第四近接(赤線)の J4 が 2.2meV(反
存在する。これらの磁性もまだ未知である。
強磁性)が最も強いことが明らかになった。
したがって、今後、これらの物質についても
この結果は、(3)に述べた中性子散乱の結果を
精密構造解析を行うことを計画している。
見事に説明している!また、濃青色で示した
最近接相互作用 J1a と、淡青色で示した次近接
[1] Phys. Rev. Lett. 105, 167205 (2010)
相互作用 J2a はそれぞれ–0.87 meV、–0.84meV
[2] J. Phys. Soc. Jpn. 74, 1702 (2005)
と強磁性的である。これらの相互作用に比べ
[3] J. Phys. Soc. Jpn. 76, 093706 (2007)
てその他のボンドの相互作用は小さい。例え
[4] J. Phys. Soc. Jpn. 74, 3155 (2005)
ば、第四近接にはもう一種類があるが、二個
[5] Phys. Rev. B 80, 174408 (2009)
の Cl が Cu-Cu を結ぶラインから大きく離れて
[6] J. Phys. Soc. Jpn. 76, 104703 (2007)
位置しているため J4 の 18%しかない。
[7] J. Am. Chem. Soc. 121, 10743 (1999)
J1a と J2a は大きさがほぼ等しいので、同じ色
で表現すると Shastry-Sutherland 模型となる。
SrCu2(BO3)2 との違いは、SrCu2(BO3)2 ではダイ
マー内、ダイマー間相互作用は共に反強磁性
的であったのに対し、(CuCl)LaNb2O7 ではダイ
マー間相互作用が強磁性的であることである。
陰山 洋
京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻
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会議報告
第6回トピカルミーティング
「フラストレーションと量子輸送」会議報告
第6回トピカルミーティング「フラストレーションと量子伝導」は10月15日、16日に
広島・宮島の地で開催されました。このタイトルが狙っているテーマの一つは、遍歴電子系に
おいて、幾何学的フラストレーション起源の新奇現象があり得るか?あり得るとしたら、それ
は如何なるものか?という、ある意味チャレンジングなものでしょう。「遍歴系におけるフラス
トレーションとは何なのか?」という基本的な疑問は誰でも抱くとは思いますが、当会議では、
口頭発表20件、ポスター発表23件と多数の講演があり、その中には従来の理論では十分に
解釈しきれない実験の報告がいくつも有って、「フラストレート遍歴系には、確かに何か新しい
物理がある」と思わせる会議内容であったと思います。各発表については求さんと田畑さんの
報告に詳述されている通り、とても充実した内容でした。私自身がいくつかの発表から学んだ
ことの一つは、
(当たり前かもしれませんが)フラストレート遍歴系では、電子が動き回る自由
度を生かして、フラストレーションを解消する方向に電荷や軌道自由度の新たな秩序構造が発
生したり、次元低下が起きたり、という現象が結構、頻繁に起きているのだなということでし
た。フラストレーションを介したスピンと電荷の絡み合いの新しい形がもう尐しで見えてきそ
うな気がします。
(気がするだけでそこに至る知恵は未だありませんが。
)
懇親会では和やかな雰囲気の中で膝詰めで歓談でき、某氏の言葉を借りれば「普段話す機会
の尐ない人と本音の話ができて」
、研究の推進にはこういう側面も大切だなと感じました。会場
となったホテルは厳島神社の直ぐ裏にある絶好のロケーションで、夕食後、皆で外に繰り出し
て、ライトアップされた海に浮かぶ鳥居を鑑賞しながら、物理談義を楽しむことができました。
翌朝の午前セッション開始までのわずか
な時間、潮が引いて鳥居のすぐ近くまで
歩けるようになっているのに誰かが気づ
いて、10分たらずの短い散策。かなり
過密なスケジュールの研究会であるにも
関わらず、最後までエネルギッシュな物
理の議論を続けられたのも、こういう場
所で開催したおかげかもしれません。
最後にすばらしい会議運営をやってい
ただいた世話人の方々、特に花咲先生に
大変感謝します。
(藤本聡)
- 10 -
会議報告
理論
今回のトピカルミーティングのお題は「量子輸送」ということで、これは本特定領域研究に
おける様々なトピックの中でも理論的な取り組みがとりわけ難しい問題である。局在系のフラ
ストレーションでも十分ややこしいのに、そのうえ電子が動き回ってさらにややこしいことを
引き起こす。通常の強相関電子系の輸送特性の計算だって十分難しいのに、そのうえフラスト
レーションの効果を考えなくてはならない。もう出来ることなら頭から布団をかぶって知らん
ぷりしていたいところである。しかし困難だということは、未解明な点が多く残されている挑
戦的な課題だということでもある。そもそも「伝導系におけるフラストレーションの効果とは
何なのか?」「どこにその特徴現れるのか?」という本質的な問いは、おそらく多くの方々が思
い浮かべていることだろう。そのひとつの回答として輸送現象が挙げられるのではないか、特
にフラストレーション系の特質である量子揺らぎが絡んだ量子輸送現象に新しい物理がみられ
るのではないかというのが、本特定領域研究において A02 計画エ班における精力的な研究の推
進剤のひとつであり、またこのトピカルミーティングの企図であろうと思われる。ということ
で理論サイドとしては、今回のトピカルミーティングはこの難題に対し果たして理論は何が出
来るのかが問われる場となった(はずである)。
理論の発表は口頭発表が7件とポスター
発表が9件行われ、どちらも全体の4割弱
を占めていた。まず口頭発表から簡単に振
り返ってみたい。初日のセッション1では、
実験に関する5つの講演のあとで、石原さ
んによる軌道自由度のフラストレーション
に関する講演があった。いわゆる軌道コン
パス模型と呼ばれるモデルを三角格子やチ
ェッカーボード格子といったフラストレー
ションのある格子上で調べた研究が紹介され、転移点直上での揺らぎの様子が相互作用の強さ
に依って定性的に変化するなどといった興味深い振る舞いが報告された。スケジュールの都合
もあって、実験講演との関連が希薄だった点は惜しまれる。続くセッション2では、求(筆者)
による講演のあと、実験の講演を2つはさんで大橋さんと佐藤さんの講演が行われた。求(筆
者)の講演は、フラストレーションのある近藤格子系における部分秩序に関するものであった。
これも関連する実験の講演がなかったことは残念である(関連するポスター発表はあった)
。あ
との大橋さんと佐藤さんの講演は、ハバードモデルにおけるモット転移を含む有限温度相図や、
モット転移近傍での輸送特性に関するもので、どちらも計算にはクラスタ動的平均場法を用い
ており、内容的にもお互いに深く関連したものであった。大橋さんからは、三角格子やカゴメ
格子においてホッピングに異方性を導入することでフラストレーションの度合いを制御した系
に対する計算結果から、スピン相関やフェルミ面の振る舞いに、相互作用の効果として自発的
なフラストレーション解消の傾向が現れることが報告された。続けて佐藤さんからは、三角格
子ハバード模型において光学伝導度を計算した結果が報告された。結果にはやや予備的な部分
が見られたが、フラストレーション系における伝導現象を出来るかぎり真面目に計算しようと
いう取り組みには、今後の進展に大きな期待がもてた。
- 11 -
会議報告
明けて2日目、理論家がみな飲んだくれで朝に弱いからというわけではないだろうが(しか
し実際、ナイトセッションは随分遅くまで行われたようであった)
、理論の講演は全て午後に行
われた。まず桂さんと藤本さんの講演は、フラストレート磁性体におけるスピン流のホール効
果に関するものであった。桂さんの講演では、局在スピン系において熱ホール効果がもたらさ
れる機構がスマートに解説され、その磁場・温度依存性などが具体的に議論された。講演でも
断られていた通り、この講演の本質的な部分は以前のトピカルミーティングにおいて発表され
たものであるが、今回は連続講演として実験研究の進展が小野瀬さんによって報告されたため、
あらためて理論と実験の美しい調和を味わえたのは大変貴重な機会であった。藤本さんの講演
はスピン波のホール効果に関するもので、三角格子系における具体的な議論がなされた。この
内容に関しても、最近の実験的な取り組みについて、続く田畑さんの講演で報告があった。こ
の2件を通じて、理論的に必要とされる条件や実験的な検出におけるハードルなどが活発に議
論された。今後の展開がとても楽しみである。堀田さんの講演は本研究会のトリで、主に分子
性導体などを念頭においた1次元電荷・スピン結合系に関するものであった。1次元といえど
も電荷秩序の生じる状況では磁気的なフラストレーションが生じることが指摘され、電荷ギャ
ップ等の計算結果が実験結果との比較も含めて論じられた。完全に余談だが、思い起こせば春
に理研で行なわれた立ち上げ会議の際にも、ささやかなハプニングから堀田さんがトリの講演
をされ、その時も座長は常次先生であった。軽い既視感をおぼえたのは筆者だけではあるまい。
ポスター発表は2日目の昼食前に1時間半程度時間を割いて行われた。筆者は全てを見て回
ることは出来なかったが、お題目である量子輸送現象に関する報告はもちろんのこと、周辺の
フラストレーション現象に関する報告も含めてブロードな範囲をカバーした理論研究の報告が
行われていた。会場のコンパクトさもあいまって、多くのポスターで実験・理論両サイドの聴
衆が掛け合いながらの熱気溢れる議論が展開され、本特定領域の特徴ともいえる実験と理論の
良いコミュニケーションが各所で見受けられた。
フラストレーションと量子輸送という難題に理論は何が出来るのか、という問いに戻って考
えると、2日目に示された局在系のスピン流に関する研究はひとつの解答を与えつつあるとい
えるだろう。実験研究との相互作用が有効に働いている様子が見受けられ、多くの計画研究班
に実験家と理論家が入り乱れて研究を推進して
いる本特定領域の特色を活かした成果がうまれ
ているようである。一方で、伝導電子をあらわ
に含んだ系における量子輸送の問題に関しては、
まだ決定的な解答は得られていないものの、い
くつかの萌芽的な研究が見られた。現状と問題
点の確認が行われるとともに、近い将来にブレ
ークスルーがもたらされる予感が感じられた。
(求 幸年)
- 12 -
会議報告
実験
今回のトピカルミーティングの発表で目立ったのは、金属絶縁体転移や重い電子系といった、
いわゆる強相関電子系の問題をテーマとした発表であった.本会議のテーマが「量子輸送」と
いう事で、電気伝導のある金属を対象とした話が中心になるが、遍歴性の強い弱相関系ではフ
ラストレーションの効果は期待しにくいので、強相関系がターゲットとなるのだろう.物理学
会の領域の分類で言えば領域 8 に属するものである.個人的な事だが、筆者はこの 2,3 年は物
理学会で主に領域 3 のセッションを中心に聴いているので、領域 8 での発表はフラストレーシ
ョンがらみでも見逃す事が多い.今回の会議で強相関関連の発表をじっくり聴けたのは非常に
有意義であった.全体を通しての感想は、やはり遍歴電子系のフラストレーションの物理は難
しい、ということだった。色々面白い話があって、ディスカッションも盛り上がったものの、
肝心のフラストレーションの話にな
ると、格子点にスピンを置いた局在
スピン描像の話になってしまう。こ
れぞ遍歴電子系のフラストレーショ
ン、という明快な描像が欲しいとい
うのは無い物ねだりなのだろうか?
領域代表の川村先生の「その話でフ
ラストレーションはどう絡んでくる
んですか?」という、いつもの質問
をあまり聞かなかったのは、答えに
くい事が分かっているからなのかどうか。まだこのテーマの研究が芽の段階にある(即ち、これ
から花開く、はず)からこそと言えるだろう.
個別の話に入って行こう.会議最初の瀧川氏による講演と、続く松平氏の講演によると、
Hg2Ru2O7 の金属絶縁体転移は 1 次転移だが、Cd2Os2O7 やパイロクロア Ir 酸化物では 2 次転移らし
い.金属絶縁体転移を示すパイロクロア酸化物として昔から有名な Tl2Ru2O7 の転移が 1 次転移
であったことを考えると、d 電子が 4d か 5d かで転移の次数が変わってる様に思えるが、おそ
らくそう単純でもないのだろう.どの系でも金属絶縁体転移とともに磁気転移が起こっている.
パイロクロア格子上の局在スピン間の磁気相関と金属絶縁体転移は密接に関わっているようで、
フラストレーションが何らかの役割を果たしているであろう事が予想される.今後の研究の進
展が気になるテーマである.
中辻氏の-YbAlB4 の発表は、近藤格子系におけるフラストレーション効果の話(とタイトルに
はあったが、Yb の価数がかなり 3 価からずれているという話なので近藤格子と言えるのかどう
か.基となる物理は同じと考えて良いのかな?)で、フラストレーションによって磁気秩序が抑
制される結果、フェルミ液体でも磁気秩序相でもない新奇なスピン液体的な非フェルミ液体相
が実現しているのでは、という事であった.NiGa2S4 や Pr2Ir2O7 などに続いて面白い物質を次々
と発表されるのには脱帽する.
岡本氏と清水氏(ポスター)による YMn2+Zn20-x-Inx の発表も面白かった.YMn2+Zn20-x-Inx は過剰
Mn のせいで真の物性が隠されてしまうが、過剰 Mn 濃度と In 濃度 x の相関関係を見いだし、
過剰 Mn を極力減らし、YMn2Zn20-xInx の「本当の」性質に迫っていく話には、物性研究で最も重
- 13 -
会議報告
要なのが物質合成にある事を再認識させられた.過剰 Mn が 0 になったときに YMn2Zn20-xInx は重
い電子状態を示すのか、非常に興味深い問題である.私見ではあるが、最後の方に示された電
気抵抗での logT 的な振舞が示唆的であった.この系の最近接 Mn 距離が 5Å程度と離れている
ことから、(LaPd3)8Mn などと同様に、3d 系の近藤格子になっているのかもしれない.つまり、
「近藤フラストレート格子」になっているのではないだろうか.
富安氏による Mn3Pt における部分無秩序状態の話は、遍歴電子と局在電子の実空間上での棲
み分けによるフラストレーションの解消と考える事が出来、遍歴電子磁性体におけるフラスト
レーション効果の発現の典型例ではないかと思われる.
最後のセッションはそれまでの話からうって変わって、局在スピン系の話となった.
「量子輸
送」というテーマと合致したセッション内容で、局在スピン系における輸送現象、熱輸送とス
ピン輸送の話である.ベリー位相によってスピン伝導率の横成分が現れる話で、一世を風靡し
た(ている)フラストレート磁性体の異常ホール効果から派生したテーマと言っていいだろう.
小野瀬氏の Lu2V2O7 のマグノンの熱ホール効果の話は、非常に奇麗な実験結果で、桂氏の理論の
講演とセットになった流れになっており、非常に分かり易かった.一方、今回は異常ホール効
果の発表は意外に尐なかった(異常ホール効果がメインとなっていたのは、木田氏の Fe3Sn2 の発
表と高津氏の PdCoO2 のポスター発表の 2 件のみだった).
上で触れた発表以外にも興味を引かれる発表は多数あり全ては紹介しきれない.最後に尐し
まとめると、全体として、完成された研究の発表というよりも、萌芽的で、従ってまだまだや
るべき実験が残っている、そう強く感じさせる発表が多かった.理論の方でも色々遍歴電子系
のフラストレーション効果に関し示唆的な話があり、これからの実験の指針になるように思え
た。会議が終わってそろそろ 1 ヶ月が経っており、発表時よりも研究の進んだ話も多いと思わ
れる(勿論、筆者自身もバリバリ実験をやっています).次の機会(至近だと仙台での国際会議か
な)に是非また色々話を聞かせて頂きたい.
(田畑吉計)
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特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」
第6回トピカルミーティング「フラストレーションと量子輸送」
プログラム
10月15日(金)
14:00-14:10
はじめに
川村 光(阪大理)
セッション1(座長:伊藤 正行)
14:10-14:40
金属絶縁体転移を示すパイロクロア酸化物の磁気秩序とダイナミクス
瀧川 仁(東大物性研)
14:40-15:00
パイロクロア酸化物 Ln2Ir2O7 における金属絶縁体転移
松平 和之(九工大)
15:00-15:20
ホランダイト物質における新奇な金属-絶縁体転移
上田 寛(東大物性研)
15:20-15:40
伝導電子と局在スピンの相関に起因した競合性と磁気抵抗
花咲 徳亮(岡山大)
15:40-16:00
近藤格子系におけるスピン液体と量子臨界性
中辻 知(東大物性研)
16:00-16:20
フラストレート電荷系における秩序とダイナミクス
石原 純夫(東北大理)
16:20-16:40
コーヒーブレイク
セッション2(座長:初貝 安弘)
16:40-17:05
フラストレート近藤格子系における部分近藤スクリーニング
求 幸年(東大院工)
17:05-17:25
二重層状カゴメ格子金属 Fe3Sn2 の異常ホール効果
木田 孝則(阪大極限セ)
17:25-17:45
パイロクロア格子遍歴電子磁性体"YMn2Zn20"における重い電子状態
岡本 佳比古(東大物性研)
17:45-18:10
有限温度モット転移に対する幾何学的フラストレーションの効果
大橋 琢磨(阪大)
18:10-18:30
幾何学的フラストレートしたハバード模型における輸送特性
佐藤 年裕(東大物性研)
18:30-19:00
休憩
19:00-21:00
夕食・懇親会
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10月16日(土)
セッション3(座長:太田 仁)
9:00- 9:25 Superconductivity competing with the antiferromagnetic insulating
state in alkali-doped fullerides
Denis Arcon(Univ. Ljubljana, Institute "Jozef Stefan"
9:25-9:50 共鳴磁気 X 線散乱によるイリジウム酸化物の短距離磁気相関
藤山 茂樹(理研)
9:50-10:15 μSR で眺めた Y(Sc)Mn2 のスピン揺らぎと重い電子状態との相関
門野 良典(高エネ機構物構研)
10:15-10:35
金属スピンフラストレート系 Mn3Pt の単結晶中性子非弾性散乱研究
富安 啓輔(東北大)
10:35-12:00
ポスターセッション・コーヒーブレイク
12:00-13:30
昼食
セッション4(座長:常次 宏一)
13:30-14:00
強磁性金属および絶縁体における異常熱ホール効果
小野瀬 佳文(東大工)
14:00-14:20
局在スピン系における熱 Hall 効果
桂 法称(学習院大)
14:20-14:40
フラストレート磁性体におけるスピン輸送と熱輸送
藤本 聡(京大理)
14:40-15:00
局在スピン系におけるスピン流のホール効果の観測
田畑 吉計(京大工)
15:00-15:20
1 次元イジングスピン+強相関電子系における磁気的フラストレーションと
電荷ギャップ
堀田 知佐(京産大理)
15:20-15:30
おわりに
常次 宏一(東大物性研)
ポスターセッション
10 月 16 日(土)10:35-12:00
P1
2 次元フラストレート強磁性近藤系におけるスピンカイラリティ秩序と
異常ホール効果
赤城 裕(東大院工)
P2
S = 1/2 フラストレート強磁性鎖化合物 LiCuVO4 の新奇な強磁場相
萩原 政幸(阪大極限セ)
P3
フラストレートした格子上の遍歴電子とトポロジカルな ZQ 不変量
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初貝 安弘(筑波大物理)
P3
三角格子反強磁性体における第二マグノンの解析
服部 一匡(東大物性研)
P5
Pr2Ir2O7 単結晶の低温物性
石川 洵(東大物性研)
P6
二重鎖を持つ混合原子価酸化物における金属絶縁体転移
伊藤 正行(名大)
P7
金属パイロクロア Pr2+xIr2-xO7 における磁性
大田 健雄(東大物性研)
P8
三角格子反強磁性体における動的電気磁気効果
宮原 慎(ERATO-MF)
P9
フラストレーションのある電荷秩序系の動的性質
中 惇(東北大)
P10
軌道自由度を有するフラストレート格子系の動的軌道状態
那須 譲治(東北大理)
P11
擬三角格子における外場敏感な変調構造競合
野上 由夫(岡山大)
P12
パイロクロア格子遍歴電子磁性体 YMn2Zn20-xMx(M = Al, In)の合成と物性
清水 健史(東大物性研)
P13
フラストレート重い電子系 LiV2O4 の軌道状態 - V2O3 との比較
清水 康弘(名大高等研)
P14
パイロクロア反強磁性体における磁気多極子秩序とスピングラス転移
品岡 寛(産総研)
P15
フラストレートしたスピン・パイエルス模型におけるスピン励起とフォノン効果
杉本 貴則(京大基研)
P16
内部自由度のある三角格子 Hubbard 模型におけるスピン・電荷状態
高島 宏和(東北大理)
P17
導電性三角格子磁性体 PdCrO2 の異常なホール効果と磁気抵抗
高津 浩(首都大理工)
P18
電荷アイスの量子融解と非フェルミ液体的挙動
宇田川 将文(東大工)
P19
擬カゴメ格子をもつ重い電子系化合物 YbAgGe の圧力・磁場誘起磁気秩序
梅尾 和則(広島大自然センター)
P20
η-カーバイド型遷移金属炭化物窒化物の磁性
和氣 剛(京大工)
P21
パイロクロア酸化物 Cd2Os2O7 における相転移と磁性
山浦 淳一(東大物性研)
P22
金属ヘリカル磁性体 Gd1-xYx における異常スローダイナミクス
山崎 照夫(東大物性研)
P23
Hg2Ru2O7 の金属絶縁体転移と磁気秩序
吉田 誠(東大物性研)
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会議報告
HFM2010 会議報告
フラストレーションをテーマとする国際会議であるHighly Frustrated Magnetism 2010、通称
HFM2010が8月1日から6日の6日間に渡って、アメリカ合衆国メリーランド州のBaltimoreにて開
催された。HFMは近年、2年おきに開催されており、前回の開催地はドイツのBraunschweigであ
る。フラストレーションをテーマとする本特定領域にとっては非常に関係の深い国際会議である。
Baltimoreはアメリカ合衆国の北東部に位置し、南北戦争当時のエピソードが豊富な歴史情緒豊
かな都市である。最寄りの空港であるBaltimore Washington International Airport (BWI)からのアク
セスは良いが、残念ながら日本からの直行便は無い。ChicagoやDallasなどでの乗り継ぎを経て、
片道最低15時間程度のフライトに耐える必要がある。また、アメリカ行きは入国手続きの煩わし
さが付き物であるが、今回も乗り継ぎ時の時間との戦いに苦労された方が多かったようである。
会場である Johns Hopkins UniversityはBaltimoreの中心地からやや離れたところに位置し、大学
の周りは小規模な商店街が立ち並ぶ落ち着いた住宅街である、、、ように見えたのだが、この第一
印象は初日にして早速打ち破られた。Baltimoreは全米の中でも犯罪率の高い都市として知られて
いる。参加者の多くが宿舎として選んだCharles Commonsという学生寮では、その事実を裏付け
るかのように24時間態勢でガードマンが常駐し、宿泊所への出入りに際してIDカードをチェッ
クする厳戒態勢が敷かれていた。大げさな警備に驚きつつも会場へ向かうと、つい一週間前に宿
舎のすぐ裏の通りで殺人事件が起こった旨が掲示されている。襲われた際の心構えとして、襲撃
者を刺激するな、要求されたものは素直に出せ、などという日本でもよく見られる言葉と並び、
「ヒーローになろうとするな」という楽観的な人向けの注意も見えたのは、アメリカ人の前向き
な国民性を反映したものだろうか?
もっとも、Johns Hopkins Universityのキャンパス内に入ってしまうと、そのような危険な雰囲
気は全く感じられず、緑あふれる健康的な素晴らしいところであった。キャンパス内では、様々
な国籍の学生たちが、語らい、レクレーションを楽しんでいる。木々の間に目を凝らすと、リス
などの小動物が走り回ったりもしていた。Johns Hopkins Universityはアメリカ最高峰の私立大学
として知られているが、キャンパス内の環境からも、確かにこの点が感じられた。
The Johns Hopkins Universityの入り口(左)と会場内の様子(右)
(写真提供: 理化学研究所・佐藤正寛氏)
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会議報告
さて、月曜日からの会議の本体で扱われたトピックは、もちろんフラストレーションという主
題に何らかの形で関係するわけだが、その内容は多岐に渡る。キーワードで見てみると、異方性
(1次元系との接続)、量子臨界性、電荷軌道フラストレーション、スピン液体、ダイナミクス、
カゴメ格子物質、マルチフェロイクス、スピンアイス、電荷やスピン量子数の分数化などが中心
的な話題を構成していたように思える。この多彩な内容を完全に理解するなど勉強不足の著者に
は望むべくも無い事であるが、印象に残った一部の話題について、簡単に振り返ってみたい。
会議はL. Balents氏による、異方的三角格子上反強磁性体についての招待講演で幕を開けた。
講演はBalents氏のここ数年の研究成果をまとめたものであり、Cs2CuCl4やCs2CuBr4などの異方的
三角格子上のspin 1/2 Heisenberg modelで記述される物質群についての研究が紹介された。彼らの
アプローチの特徴は、異方性のために一つの方向の結合が他の二方向に比べて強くなっている事
を利用し、結合の強い方向に伸びる1次元鎖を出発点と取って、弱い鎖間相互作用を摂動的に考
慮するという点にある。三角格子上ではフラストレーションの助けを得て、このようなアプロー
チが比較的大きい鎖間結合まで有効であるらしく、中性子散乱で見られた磁気スペクトルの
fittingをはじめ、最近の成果である磁気秩序、特に磁場中相図の解析結果などが紹介された。な
おこれらについては、最終日にY. Takano氏がBalents氏の理論講演に相補的な実験の講演を行い、
Cs2CuBr4を中心に、実験で見出されている高磁場中相図についての紹介があった。Balents氏の学
生であるSungBin Lee氏もCoNb2O6に対して、やはり一次元鎖から出発するアプローチを試み、一
次元横磁場イジングモデルの量子臨界点近傍に現れる相の分類についての議論を行っていた。
また、同時に、これら三角格子では量子スピン液体実現の可能性も長らく議論されている興味
深いトピックである。Becca氏は三角格子上ハバードモデルにおいて、変分モンテカルロ法で用
いる変分波動関数に新しくバックフローの効果を付け加え、正方格子と三角格子をつなぐ領域に
おいて、斥力Uが無限大の強結合領域につながるスピン液体相を見出したとの報告を行った。ハ
バードモデルに関しては、中間結合領域においてスピン液体相が安定化するとの議論がなされて
いるが、Becca氏の結果は量子Heisenberg模型に接続する強結合領域における別種のスピン液体相
の存在を示唆している。また、Mila氏は従来から議論されている、中間結合領域におけるスピン
液体相について、t/Uの強結合展開を12次まで遂行して有効スピンモデルを構築し、そのスピン
モデルを厳密対角化法によって数値的に解く、という方法によって議論を行った。強結合展開が
収束する絶縁体領域に二つの相が存在し、弱結合側に存在する相がスピン液体相に対応するとい
う主張である。
「高次項を計算せよ」とは近藤効果の歴史を紐解けば得られる教訓であるが、12
次という展開次数は驚嘆すべきものである。スピン液体相を安定化させる摂動プロセスはどのよ
うなものであるのか、理論の更なる進展が楽しみである。
これら、三角格子ハバードモデルにおけるスピン液体の理論研究の進展は、近年見出されてい
る磁気秩序を伴わない有機三角格子磁性体の発見に大きく刺激されている。今回の会議でも、
EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2という有機三角格子物質に対して、理研のR. Kato氏の招待講演をはじめとし
て日本発の実験報告が三件行われ、この物質がスピン液体的挙動を示すことが示され、その低エ
ネルギー励起の構造についての議論が行われた。三角格子における量子スピン液体は、古くから
のテーマでありながら、近年理論・実験とも急激な進展を遂げており、今後の大きな発展が期待
される。
- 19 -
会議報告
フラストレート磁性体の動的応答は興味深い話題である。例えば近年、非弾性中性子散乱の実
験において、広い範囲の磁性体で多量体形成を思わせる短距離相関が励起状態の中に見つかって
おり、注目を集めている。Chalker, Taillefumerの両氏は古典スピンモデルに対し,決定論的な運
動方程式と、熱浴との相互作用を模した確率論的な時間発展とを組み合わせたアプローチを行い、
スピンダイナミクスの議論を行った。個人的には、このようなハイブリッド的な方法がどのよう
なパラメータ領域で正当化されるか、微視的理論との対応が気になるところである。
スピンアイスのモノポールについては前回2008年のHFMにおいて、Moessner氏の招待講演を
初めとした盛んな議論と問題提起があったように記憶している。モノポールとはスピンアイス系
特有のトポロジカル励起を指し、具体的には2-in 2-outルールが破れた正四面体のことを意味する。
今回、Castelnovo氏は高温あるいは高磁場から急激に系を低温/低磁場に下げた時のモノポールの
クエンチダイナミクスを議論した。長距離のdipolar interactionを考慮すると、monopole対が準安
定となるような空間的相対配置が存在し、対消滅が禁止される現象、``dynamical arrest”が起こる
事を指摘し、これがNMRのsignalにあらわれる多ピーク構造の起源であるとの議論を行った。
「モノポール」という概念の導入の意義、あるいは命名には賛否両論と思われるが、現実の実験
結果の見通し良い解釈を与えるならば、このような概念の導入には十分な価値があるのではない
だろうか。
電荷・軌道自由度に関するフラストレーションは理論、実験両面から興味が尽きない話題であ
る。今回、理論面ではスピン軌道相互作用の役割に焦点を当てた興味深い解析が報告された。
Jackeli氏はIrイオンがハニカム格子状に配列したNa2IrO3などの物質では大きなスピン軌道相互
作用のために、Kitaev modelが低エネルギーの有効モデルになっている可能性を指摘した。Kitaev
modelは2次元の量子スピン系でスピン液体的な基底状態を持つ事が厳密に示されているモデル
であり、現実の物質でこのような系が実現しているとすれば大変興味深い。残念ながら、Na2IrO3
の比熱及び帯磁率は有限温度で相転移の傾向を示し、Kitaev modelが実現している可能性は低い
ということだが、類似物質でのスピン液体の実現を模索する事は魅力的な課題であろう。また、
Yong Baek Kim氏はNa4Ir3O8やPr2Ir2O7といったフラストレーションの強い物質を中心に、やはり
大きなスピン軌道相互作用が重要な役割を果たした結果、topological絶縁体相が実現する可能性
を指摘した。Kitaev modelやtopological絶縁体のような新しいトピックが次々と論じられるのを聴
いていると、フラストレーションが物理の様々な分野に埋め込まれている概念だということを改
めて実感する。
最後に、実験的な観点で、興味深い(むしろ「楽しい」というほうが適切か?)と感じた発表
が、最終日のDaunheimer氏とJie Li氏の両者が発表したartificial frustrated magnetsの話題である。
彼らはナノサイズの単一磁気ドメインをもつ強磁性体を2次元面上に人工的に配列させたリソグ
ラフィックパターンを作成し、これら強磁性ドメインを1つのイジングスピンとみなせるような
人工磁性体の研究を展開している。以前に正方格子におけるartificial spin iceの報告がすでに行わ
れているが、今回は様々な二次元フラストレート格子を作成して(まさに“artificial”の面目躍
如!)、これらの格子における人工磁性体の振る舞いを報告した。特に、彼らが磁気力顕微鏡等
を用いて実験的に示した、強磁性ドメイン磁化1つ1つの美しい二次元実空間分布図は、難解な
理論続きで疲れた頭には、一服の清涼剤となった。通常のスピン系では磁気モーメント配列は
NMRや中性子などの実験技術を駆使してもなかなか得られないが、これらartificial frustrated
- 20 -
会議報告
magnetsでは磁気モーメント1つ1つの配向の様子を完璧に実験的に示すことに成功しているの
である。そしてさらに、その配列は確かにフラストレーションを反映した磁気モーメント構造と
なっている。将来的にはこれらartificial frustrated magnetsは、我々が興味を持つようなフラスト
レーション磁性体における特異相転移などの統計力学的な問題にアプローチできる舞台と成り
得るかもしれず、今後の発展が大変楽しみである。
以上、個人的な好みの偏りを恐れずに、講演の内容について簡単にまとめさせて頂いた。多数
の興味深い講演もさることながら、本会議は様々な運営上の工夫が随所に見受けられ、感銘を覚
えることが多かった。例えば、全ての口頭講演は原則的に録画され、web上にupされる。講演者
は余分な緊張を強いられるものの、聴衆にとっては後から講演の聞き逃したところを復習する事
が出来、便利なシステムである。(とりわけ、このような会議報告を書く際には非常に重宝する。)
また、印象的だったのは事情によりBaltimoreに来る事が出来なかったMendels氏がSkypeを通じて
パリから講演を行った事である。このような(おそらくは不測の?)事態にも対処出来る万全の態
勢を整えるために運営委員会の方々が払われた苦労は相当のものであっただろう。この有意義で
充実した国際会議を運営して頂いた主催者の方々に深く感謝し、この小稿の結びに代えさせて頂
きたく思う。
東京大学大学院 工学系研究科 宇田川 将文
京都大学大学院 人間・環境学研究科 伊藤 哲明
- 21 -
会議報告
SCTE2010 会議報告
2010 年 9 月 5 日から 10 日にかけてアヌシー(フランス)で開かれた 17th International Conference
on Solid Compounds of Transition Elements (SCTE2010)に参加しました。SCTE は、文字通り遷移
金属化合物についての固体化学、固体物理、物質科学にわたる学際的分野の国際会議として、
1965 年にパリで第 1 回が開かれ、その後 3 年に一回開かれている従って半世紀に及ぶヨーロッ
パでは伝統的な国際会議といえます。もともとは、金属間化合物、カルコゲナイド、ニクタイ
ド、水素化物などの非酸化物が中心でしたが、高温超伝導酸化物が発見されたあたりから酸化
物も対象物質となっています。私が初めて SCTE に参加したのは、第 13 回(2000 年)のスト
レーザ(北イタリア)で開かれた会議でした。このとき、我班の代表である陰山洋氏がストレ
ーザの古い教会で結婚式を挙げ、私は花嫁のエスコート役を勤めました。ストレーザはマッジ
ョーレ湖畔のリゾート地で、季節は 4 月はじめであったため、湖を囲む周辺の山は冠雪してい
て、湖畔では石楠花や木蓮、桜が咲き乱れ、まさに絵のような光景でした。その後、オースト
リアのリンツ、ポーランドのクラクフ、ドイツのドレスデンを経て、今回は、フランスのアヌ
シーで開かれました。アヌシーはリヨンの東
に位置し、スイスに近く、アヌシー湖に面し
たリゾート地です。湖に連なる運河周辺には
旧市街があり、多くの観光客であふれていま
した。会議の会場は旧市街から歩いて 20 分程
度の湖に面したインペリアルホテル(写真)
で、観光写真にも載るほどの美しい建物と広
大な庭園が印象的でした。
会議は 5 日間で、セッションは、合成、構
造、磁性、伝導性、機能性、水素化物より構
成され、口頭発表が 53 件、ポスター発表が 236 件、参加者は 300 人 程度でした。このうち、
日本人の発表は、口頭発表が 3 件、ポスター発表が 18 件で、アジアからの参加としては突出し
て多く、ほとんどがヨーロッパからです。もともとカルコゲナイドやニクタイドが中心と言う
ことで、鉄砒素系超伝導体関係の発表が多いだろうと予測しましたが、意外と少なく 7 件程度
でした。どちらかと言うと、金属間化合物の構造や磁性、熱電材料や水素吸蔵材料に関連した
発表が多く、本特定領域に関係するフラストレーション関係の発表は私を含めて 6 件程度でし
た。これまで肩身の狭い思いをしながら傍系の酸化物の発表をしてきましたが、今回は、大手
を振って本道のカルコゲナイドである ACr5X8 (A = K, Rb, Cs; X = S, Se, Te)の発表をしました。
ACr5X8 は CrX6 八面体の稜共有で作る三角格子が二重鎖で架橋された擬ホランダイト構造をも
ち、X=S の物質では強いフラストレーション効果を示す反強磁性体ですが、X = Se ではフラス
トレーションが弱まり、X = Te では強磁性体となります。この話は、手前味噌になりますが結
構受け、講演後、共同研究をしたいと言う申し出を幾つか受けました。フラストレーション関
係では他に、三角格子磁性体 TmAgSi(ポーランド Jagiellonian 大学グループ)、Co10Ge3O16(ド
イツ Darmstadt 工科大学グループ)
、スピネル物質 CuRh2O4(日本 AIST グループ)などの発表
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会議報告
がありました。余談ですが、SCTE はこれまでヨーロッパで開かれてきましたが、以前一度日
本でということが検討されたことがありました関係上、講演の始めに日本での開催を望むと言
ったところ、後で、世話人になってくれるかと言われ、私はあと 2 年半で定年退職なのででき
ないが、若い人がいるので、是非、検討してみてくださいといっておきました(そのときは陰
山君頼みます)
。因みに次回はリスボンだそうです。会議には、物性研と研究交流協定を結んで
いるドレスデンの化学物理マックスプランク研究所所長の Yuri Grin 教授も出席していて、懇
親会で研究交流について話す機会が持てたのも収穫でした。
SCTE の歴史的な経緯はよく知りませんが、SCTE は東欧圏や北欧からの参加が多く、Advisory
Committee にも東欧圏や北欧の人が名を連ねています。また、旅費等のサポートも行っている
と聞いたことがあります。そのような資金がどこから出ているのか良くわかりませんが、今回
のスポンサーには NEEL, icmcb, cnrs などの研究所や Grenoble Institute of Technology, Bordeaux
University, Joseph Fourier University などの大学機関、地元企業などが名を連ね、結構豊富な資金
を有しているように見えました。また、開催場所にもいつも感心させられます。日本では国際
会議を開くとなると資金繰りに四苦八苦しますが、このあたりの違いが、さすが国際会議が文
化として根づいているヨーロッパの余裕であり懐の深さということかもしれません。
(上田 寛)
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会議報告
第3回 SPSSM 国際会議報告
2010 年 6 月 27 から 7 月 2 日までドイツ、シュツットガルトのマックスプランク研究所にて、
3rd International Symposium on Structure-Property Relationships in Solid State Materials が開催され
た 。 欧 州 の 化 学者 が 中心 に な っ て 隔 年で 開 催さ れ て い る 会 議で あ る。 第 一 原 理 計 算の
M-H.Whangbo(Sauth Carolina 大)と J. Köhler(MPI Stuttgart 大)が主たるオーガナイザーであ
った 。招待講演者は 24 名で、A. Müller(ETH)
、R. Kniep(MPI Dresden)を始めとする大御所
が何人も名を連ねていたので会えるのが楽しみにしていたが、Müller が自転車でケガしたとの
理由でキャンセルしたのは残念であった。固体化学が中心の会議とはいえ、R. K. Kremer(MPI
Stuttgart)らの物理家も組織委員であったためか、化学に物理が 20%ほどミックスされ、フラス
トレーションの言葉も磁性を中心に随所に聞くことができた。当初は、口頭発表のみの予定で
あったが、連れて行く学生にも機会を与えて欲しいという要望があったようで直前にポスター
セッションも決まった。コーヒーブレークのときにいつでも議論しましょうとはいわれていた
が、実際にはポスターは貼ってあるだけで、学生の履歴書の足しになった以外には意味はない
ように見えた。その一方で良いアイディアだと感心したのが、ブルカー、パナリティカル、キ
ーエンスの三社は 20 分ずつ自社製品を紹介する機会が設けられたことである。会議への寄付金
に対する恩返しと想像している。ブ
ルカーは、北欧の大学との共同開発
している循環させた水銀を使った新
しい粉末 X 線回折について紹介した。
まだ、製品になるかの見通しも全く
たっていない話が聞けて面白かった。
化学寄りの会議ということもあり、
物理の会議では絶対にお目に書かれ
ない面白そうな物質や合成法を学べ
たのは大きな収穫であった。二つだ
け紹介する。一つは、台湾国立中央
大学の K-H. Lii 教授の水熱合成によっ
て一連の五価ウラン系酸化物を作った
という話。通常、ウランは六価や四価
スクリーンの上に巨大な時間とコメントが表示されたた
め、スピーカーには大きなプレッシャーがかかった。写真
は広井先生より提供。
を好むが、U4+の H2O の絶妙のレドックス反応があることから(スペキュレイティブと感じた
が)U5+にしてくれるそうだ。その結果、Nb5+や Ta5+でおなじみの構造もできるそうだ。その中
で、K3(U3O6)(Si2O7)の U は理想的な三角チューブを持っているのには興味を持った。講演後に
磁性のデータをみせてもらったがひょっとしたら面白そうである。ただし、ご本人はフラスト
ーレションのことは御存知でなかった。誰かいかがでしょう?もう一つは、アーヘン工科大の
R. Dronskowski で、NCN2–(carbodiimides)を使った FeNCN などの一連の三角格子系の磁性を
紹介していた。合成はかなり特殊な印象を受けた。彼とは、2008 年の Symposium on Materials for
Frustrated Magnetism という ILL で開かれた会議で会ったことがある。この会議は、招待講演者
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会議報告
は全て合成屋、聴衆者は全て物理屋さんという不思議な会議であった。合成家にフラストレー
ションという概念を少しでも心に留めてもらうと将来何かみつけてくれるかもしれない、とい
う意図があると組織委員長の Andrew Harrison はいっていた。当時、Dronskowski は磁性のこと
をほぼ完全に無視した話をした。それから2年後、Dronskowski の講演が、「Spin-liquid!」な
どと主張するものに変貌していたのは驚きであった。それこそが Harrison らの望んでいたこと
であろう。しかしもっと驚きだったのは、彼の次の講演で、Dresden の物理グループが、同じ
物質で通常の磁気秩序をするという逆の結論をだしたことで、その後の質疑応答は極めて険悪
な雰囲気であった。一見、後者が勝ちだが、ドイツの合成家は、ガスや出発原料まで精製しな
いと気がすまないほど徹底しているので試料の質の差かもしれない。
この会議は、ちょうどワールドカップの真最中に開催されたこともあって、講演時間のあと
の質疑応答時間にスクリーンに途中経過が示されたり、Kremer がコーヒーブレークの終わりを
告げる合図にブブゼラを吹いたり、広井先生がパイロクロアのラットリングとサッカーボール
の共通点についてレクチャーされたりと通常の会議では味わえない楽しさがあった。三日目の
プログラムが終わった直後の、日本-パラグアイ戦の PK はスクリーンで映し出され、みんなで
観戦した(そうだ)
。最終日の前日にはエクスカージョンとしてメルセデスベンツ博物館にいっ
た(下はその後にとった集合写真)
。私は恥ずかしい理由によりこの地を訪れるのは二回目であ
ったが、携帯に転送されたメールによって電話代を9万円請求されたこと以外は、非常に貴重
な滞在であった。
(陰山洋)
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発表論文のリスト
442. “Instability of a quantum spin liquid in an organic triangular-lattice antiferromagnet”, T.
Itou, A. Oyamada, S. Maegawa and R. Kato: Nature Physics 6(9), 673-676 (2010).
443. “High-Field Magnetization and 1 H-NMR Study of the Dimer Compound CoSeO3 ・2H2 O”,
Y. Fujii, H. Kikuchi, T. Arai, Y. Tanabe, K. Kindo, A. Matsuo: J. Phys.: Conf. Series 200,
022009/1-4 (2010).
444. “Monte Carlo studies of the ordering of the one-dimensional Heisenberg spin glass with longrange power-law interactions”, D. X. Viet and H. Kawamura, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 104708
(2010).
445. “Novel spin-liquid states in the frustrated Heisenberg antiferromagnet on the honeycomb
lattice” S. Okumura, H. Kawamura, T. Okubo, Y. Motome, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 114705
(2010).
446. “Intergrain ordering processes of YBa2 Cu4 O8 and related complex ceramic systems” M.
Hagiwara, T. Shima, R. Kitada, H. Deguchi, K. Koyama, Physica C, 470, 1052-1055 (2010).
447. “Spin-chirality decoupling in the one-dimensional Heisenberg spin glass with long-range
power-law interactions”, D.X. Viet and H. Kawamura, Phys. Rev. Letters 105, 097206(1-4) (2010).
448. “Phase transition of the three-dimensional chiral Ginzburg-Landau model: search for the
chiral phase”, T. Okubo and H. Kawamura, Phys. Rev. B, 014404 (2010).
449. “Two models of spin glasses — Ising versus Heisenberg”, H. Kawamura, J. Phys. Conf. Ser.
233, 012012 (2010).
450. “Signature of a Z2 vortex in the dynamical correlations of the triangular-lattice Heisenberg
antiferromagnet”, T. Okubo and H. Kawamura, J. Phys. Soc. Jpn. 79, 084706-(1-6) (2010).
451. “Quantum melting of spin ice: Emergent cooperative quadrupole and chirality”, S. Onoda
and Y. Tanaka, Phys. Rev. Letters 105, 047201 (2010).
452. “Ferromagnetically Coupled Shastry-Sutherland Quantum Spin Singlets in (CuCl)LaNb2 O7 ”,
C. Tassel, J. Kang, C. Lee, O. Hernandez Y. Qiu, W. Paulus, E. Collet, B. Lake, T. Guidi,
M.-H. Whangbo, C. Ritter, H. Kageyama, and S.-H. Lee: Phys. Rev. Lett. 105, 167205/1-4
(2010).
453. “Transverse and Longitudinal Excitation Modes in Interacting Multispin Systems”, M. Matsumoto, H. Kuroe, T. Sekine, and T. Masuda: J. Phys. Soc. Jpn. 79, 084703/1-18 (2010).
454. “Two-Dimensional S = 1 Quantum Antiferromagnet (NiCl)Sr2 Ta3 O1 0”, Yoshihiro Tsujimoto, Atsushi Kitada, Yasutomo J. Uemura, Tatsuo Goko, Adam A. Aczel, Travis J. Williams,
Graeme M. Luke, Yasuo Narumi, Koichi Kindo, Masakazu Nishi, Yoshitami Ajiro, Kazuyoshi
Yoshimura, and Hiroshi Kageyama: Chem. Mater. 22, 4625-4631 (2010).
455. “Structural and Magnetic Properties of the Oxyborate Co5 Ti(O2 BO3 )2 D. C. Freitas, R.
B. Guimaraes, D. R. Sanchez, J. C. Fernandes, M. A. Continentino, J. Ellena, A. Kitada,
H. Kageyama, A. Matsuo, K. Kindo, G. G. Eslava, and L. Ghivelder: Phys. Rev. B 81,
024432/1-7 (2010).
456. “Synthesis, structures and magnetic properties of pseudo-hollandite chromium sulfides”, S.
Yamazaki and Y. Ueda: J. Solid State Chem. 183, 1905-1911 (2010).
457. “Synthesis and Thermal Stability of the Solid Solution AFeO2 (A = Ba, Sr, Ca)”, Takafumi
Yamamoto, Zhaofei Li, Cedric Tassel, Naoaki Hayashi, Mikio Takano, Masahiko Isobe, Yutaka Ueda, Kenji Ohoyama, Kazuyoshi Yoshimura, Yoji Kobayashi, and Hiroshi Kageyama:
Inorg. Chem. 49, 5957-5962 (2010).
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458. “Itinerant electron metamagnetism in η-carbide-type compound Co3 Mo3 C”, T. Waki, Y.
Umemoto, S. Terazawa, Y. Tabata, A. Kondo, K. Sato, K. Kindo, S. Alconchel, F. Sapina,
Y. Takahashi and H. Nakamura: J. Phys. Soc. Jpn. 79;(9), 093703/1-4 (2010).
459. “Magnetizatoion process of a narrow gap semiconductor FeSb2 ”, T. Koyama, H. Nakamura,
T. Kohara and Y. Takahashi: J. Phys. Soc. Jpn. 79;(9), 093704/1-4 (2010).
460. “Giant magnetoresistance response by the π-d interaction in an axially ligated phthalocyanine conductor with two-dimensional π-π stacking structure”, M. Ishikawa, T. Asari, M.
Matsuda, H. Tajima, N. Hanasaki, T. Naito, and T. Inabe: J. Mater. Chem. 20;, 4432-4438
(2010).
461. “Relaxation of geometrical frustration in NbSe3 topological crystals”, T. Tsuneta, K. Yamamoto, N. Ikeda, Y. Nogami, T. Matsuura, and S. Tanda: Phys. Rev. B 82;(1), 014105/1-6
(2010).
462. “Neutron-Scattering Measurement of Incommensurate Short-Range Order in Single Crystals
of the S = 1 Triangular Antiferromagnet NiGa2 S4 ”, C. Stock, S. Jonas, C. Broholm, S.
Nakatsuji, Y. Nambu, K. Onuma, Y. Maeno, and J.-H. Chung: Phys. Rev. Lett. 105;,
037402/1-4 (2010).
463. “Separation between low-energy hole dynamics and spin dynamics in a frustrated magnet”,
K. Takubo, Y. Nambu, S. Nakatsuji, Y. Wakisaka, T. Sudayama, D. Fournier, G. Levy, A.
Damascelli, M. Arita, H. Namatame, M. Taniguchi, and T. Mizokawa: Phys. Rev. Lett.
104;, 226404/1-4 (2010).
464. “High-Field ESR and Magnetization of the Triangular Lattice Antiferromagnet NiGa2 S4 ”,
H. Yamaguchi, S. Kimura, M. Hagiwara, Y. Nambu, S. Nakatsuji, Y. Maeno, A. Matsuo,
and K. Kindo: J. Phys. Soc. Jpn. 79;, 054710/1-8 (2010).
465. “Electron Spin Resonance in a New Triangular-Lattice Mn Layered Oxide”, H. Yamaguchi, S.
Kimura, M. Hagiwara, R. Ishii and S. Nakatsuji: J. Phys.: Conference Series 200;, 012231/1-4
(2010).
466. “High-Field ESR Measurements of S=1/2 Kagome Lattice Antiferromagnet BaCu3 V2 O8 (OH)2 ”,
W.-M. Zhang, H. Ohta, S. Okubo, M. Fujisawa, T. Sakurai, Y. Okamoto, H. Yoshida and Z.
Hiroi: J. Phys. Soc. Jpn. 79;, 023708/1-4 (2010).
467. “Isomorphic structural transition in the β-pyrochlore oxide superconductor KOs2 O6 ”, J.
Yamaura, M. Takigawa, O. Yamamuro and Z. Hiroi: J. Phys. Soc. Jpn. 79;, 043601/1-4
(2010).
468. “Thermodynamic Properties of the Kagome Lattice in Volborthite”, S. Yamashita, T. Moriura, Y. Nakazawa, H. Yoshida, Y. Okamoto and Z. Hiroi: J. Phys. Soc. Jpn. 79;, 083710/14 (2010).
469. “Itinerant-Electron Magnet of the Pyrochlore Lattice: Indium-Doped YMn2 Zn20 ”, Y. Okamoto,
T. Shimizu, J. Yamaura, Y. Kiuchi and Z. Hiroi: J. Phys. Soc. Jpn. 79;, 093712/1-4 (2010).
470. “Metallic and Superconducting Materials with Frustrated Lattices ”, Z. Hiroi and M. Ogata:
in ”Introduction to Frustrated Magnetism” Springer Series in Solid-State Sciences vol. 164
(ed.) C. Lacroix, P. Mendels and F. Mila, pp. 589-630 (Springer, 2011).
471. “Non-Abelian topological orders and Majorana fermions in spin-singlet superconductors”,
M. Sato, Y. Takahashi, and S. Fujimoto: Phys. Rev. B 82;, 134521/1-28 (2010).
472. “Topological Hall effect in inhomogeneous superconductors”, S. Fujimoto: Phys. Rev. B 82;,
060516(R)/1-4 (2010).
473. “Mobile Holes in Frustrated Quantum Magnets and Itinerant Fermions on Frustrated Geometries ”, D. Poilblanc and H. Tsunetsugu: in ”Introduction to Frustrated Magnetism”
Springer Series in Solid-State Sciences vol. 164 (ed.) C. Lacroix, P. Mendels and F. Mila,
pp. 565-588 (Springer, 2011).
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474. “Quantum Dielectric Fluctuation in an Electronic Ferroelectricity studied by Variational
Monte-Carlo Method”, T. Watanabe, and S. Ishihara, J. Phys. Soc. Jpn. 79, (11) 114714
(2010).
475. “Control of the electric polarization flop direction by a canted magnetic field in a magnetoelectric multiferroic MnWO4 ”, K. Taniguchi, N. Abe, H. Umetsu and T. Arima, J. Phys.:
Conf. Series 200, (1) 012203 (2010).
476. “Control of the polarization flop direction in multiferroic RMnO3 (R=Tb, Dy) by a tilted
magnetic field”, N. Abe, K. Taniguchi, H. Umetsu, S. Ohtani, and T. Arima, J. Phys.: Conf.
Series 200, (1) 012001 (2010).
477. “Spin-helicity-dependent magnetic domain growth in a spin-driven multiferroic under applied
electric field”, T. Nakajima, S. Mitsuda, K. Takahashi, H. Yamazaki, K. Yoshitomi, M. Soda,
M. Matsuura, K. Hirota: Phys. Rev. B, 82(6), 064418/1-5
478. “Effect of Mn doping on the leakage current and polarization properties in K 0.14 Na0.86 NbO3
ferroelectric single crystals”, Y. Noguchi and M. Miyayama: J. Ceram. Soc. Jpn., 118[8],
711-716 (2010).
479. “Ferroelectric Phase Transition and Photoinduced Cooperative Phenomena in Bi-Layered
Perovskite Pb2 Bi4 Ti5 O18 Ceramics Studied by Brillouin Scattering”, M. Takesada, A. Ueki,
A. Onoidera, Y. Noguchi and M. Miyayama: Jpn. J. Appl. Phys., 49[9], 09ME05 (2010).
480. “Microstructures Related to Ferroelectric Properties in (Bi0.5 K0.5 )TiO3 -BiFeO3 ”, T. Ozaki,
H. Matsuo, Y. Noguchi, M. Miyayama and S. Mori: Jpn. J. Appl. Phys., 49[9], 9MC05/1-3
(2010).
481. “High-Performance Ferroelectric Bi4 Ti3 O12 Single Crystals Grown by Top-Seeded Solution
Growth Method under High-Pressure Oxygen Atmosphere”, Y. Kitanaka, Y. Noguchi and
M. Miyayama: Jpn. J. Appl. Phys., 49[9], 09MC06/1-4 (2010).
482. “Polarization and Piezoelectric Properties of High Performance Bismuth Sodium Titanate
Single Crystals Grown by High-Oxygen-Pressure Flux Method”, M. Suzuki, A. Morishita, Y.
Kitanaka, Y. Noguchi and M. Miyayama: Jpn. J. Appl. Phys., 49[9], 09MD09/1-5 (2010).
483. “Lorentz TEM observation of magnetic domains in La0.825 Sr0.175 (Mn,Al)O3 ”, S. Mori, K.
Yoshidome, Y. Nagamine, Y. Togawa, K. Yoshii and K. Takenaka: J. Appl. Phys., 107(9),
09D306/1-4 (2010).
484. “Crystalline analysis of Permalloy narrow wires subject to current pulses”, Y. Togawa, K.
Takayanagi, T. Kimura, K. Harada, T. Akashi, A. Tonomura, S. Mori and Y. Otani: J. Appl.
Phys., 107(9), 09A326/1-4 (2010).
485. “Appearance of Magnetization Jumps in Magnetic hysteresis Curves in Spinel Oxide FeV2 O4 ”,
S. Nishihara, W. Doi, H. Ishibashi, Y. Hosokoshi, X.-M. Ren, and S. Mori: J. Appl. Phys.,
107(9), 09A504/1-4 (2010).
486. “Lorentz Microscopy Study on Magnetization Reversal in Nanometer-Sized Ferromagnetic
Regions in Manganite”, S. Mamishin, H. Kasai, W. Xia, Y. Murakami, D. Shindo, S. Mori
and A. Tonomura: Jpn. J. Appl. Phys., 49(6), 063003/1-4 (2010).
487. “Phase transitions and the role of vanadium in t2g states in AV13 O18 (A=Sr,Ba)”, M. Ikeda,
Y. Nagamine, S. Mori, J. E. Kim, K. Kato, M. Takata, and T. Katsufuji: Phys. Rev. B,
82(10), 104415/1-8 (2010).
488. “Isothermal remanent magnetization and the spin dimensionality of spin glasses”, R. Mathieu, M. Hudl, P. Nordblad, Y. Tokunaga, Y. Kaneko, Y. Tokura, H. Aruga Katori and A.
Ito: Philos. Mag. Lett. 90(10), 723-729 (2010).
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489. “Ten Layered Hexagonal Perovskite Sr5 Ru5−x O15 (x=0.90), a Weak Ferromagnet with a Giant Coercive Field Hc ∼ 12 T”, A. Yamamoto, D. Hashizume, H. Aruga Katori, T. Sasaki,
E. Ohmichi, T. Nishizaki, N. Kobayashi and H. Takagi: Chem. Mater. 22(20), 5712-5717
(2010).
490. “Magnetic ground state of pyrochlore oxides close to metal-insulator boundary probed by
muon spin rotation”, M. Miyazaki, R. Kadono, K.H. Satoh, M. Hiraishi, S. Takeshita, A.
Koda, A. Yamamoto and H. Takagi: Phys. Rev. B 82(9), 094413/1-11 (2010).
491. “Loop algorithm for classical Heisenberg models with spin-ice type degeneracy”, H. Shinaoka
and Y. Motome: Phys. Rev. B 82(13), 134420/1-10 (2010).
492. “Electronic phase separation in the pyrochlore double-exchange model”, Y. Motome and N.
Furukawa: Phys. Rev. B 82(6), 060407(R)/1-4 (2010).
493. “Spin Chirality Ordering and Anomalous Hall Effect in the Ferromagnetic Kondo Lattice
Model on a Triangular Lattice”, Y. Akagi and Y. Motome: J. Phys. Soc. Jpn. 79(8),
083711/1-4 (2010).
494. “Partial Kondo Screening in Frustrated Kondo Lattice Systems”, Y. Motome, K. Nakamikawa,
Y. Yamaji, and M. Udagawa: Phys. Rev. Lett. 105(3), 036403/1-4 (2010).
495. “Nonequilibrium Relaxation Study of the Anisotropic Antiferromagnetic Heisenberg Model
on the Triangular Lattice”, T. Misawa and Y. Motome: J. Phys. Soc. Jpn. 79(7), 073001/1-4
(2010).
496. “Chirality-Driven Mass Enhancement in the Kagome Hubbard Model”, M. Udagawa and Y.
Motome: Phys. Rev. Lett. 104(10), 106409/1-4 (2010).
497. “Phase Competition in the Double-Exchange Model on the Frustrated Pyrochlore Lattice”,
Y. Motome and N. Furukawa: Phys. Rev. Lett. 104(10), 106407/1-4 (2010).
498. “Disordered Ground State and Magnetic Field-Induced Long-Range Order in an S=3/2 Antiferromagnetic Honeycomb Lattice Compound Bi3 Mn4 O12 (NO3 )”, M. Matsuda, M. Azuma,
M. Tokunaga, Y. Shimakawa and N. Kumada: Phys. Rev. Lett. 105(18), 187201/1-4 (2010).
499. “Pressure-Induced Spin-State Transition in BiCoO3 ”, K. Oka,M. Azuma, W. Chen, H. Yusa,
A. A. Belik, E. Takayama-Muromachi, M. Mizumaki, N. Ishimatsu, N. Hiraoka, M. Tsujimoto, M. G. Tucker,J. P. Attfield and Y. Shimakawa: J. Am. Chem. Soc. 132(27), 9438-9443
(2010).
500. “Topological quantum phase transition in the BEC-BCS crossover”, M. Arikawa, I. Maruyama
and Y. Hatsugai, Phys. Rev. B 82, 073105 (2010).
501. “Symmetry protected Z2 quantization and quaternionic Berry connection with Kramers degeneracy”, Y. Hatsugai, New J. Phys. 12, 065004 (2010).
502. “Optical Hall conductivity in 2DEG and graphene QHE systems”, T. Morimoto, Y. Hatsugai
and H. Aoki, Physica E 42, 751 (2010).
503. “Landau level broadening in graphene with long-range disorder — Robustness of the n = 0
Landau level”, T. Kawarabayashi, Y. Hatsugai and H. Aoki, Physica E 42, 759 (2010).
504. “Numerical study of quantum Hall effect in two-dimensional multi-band system: single- and
multi-layer graphene”, M. Arai and Y. Hatsugai, Physica E 42, 740 (2010).
505. “Real space observation of a two-dimensional skyrmion crystal”, X. Z. Yu, Y. Onose, N.
Kanazawa, J. H. Park, J. H. Han, Y. Matsui, N. Nagaosa, Y. Tokura: Nature 465, 901-904
(2010).
506. “Observation of magnon Hall effect ”, Y. Onose, T. Ideue, H. Katsura, Y. Shiomi, N. Nagaosa,
Y. Tokura: Science 329, 297-299 (2010).
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507. “Ferroelectricity induced by spin-dependent metal-ligand hybridization in Ba2 CoGe2 O7 ”,
H. Murakawa, Y. Onose, S. Miyahara, N. Furukawa, Y. Tokura: Phys. Rev. Lett. 105(13),
137202/1-4 (2010).
508. “Low-Temperature Heat Capacity Measurements of κ-Type Organic Superconductors under
Pressure”, N. Tokoro, S. Fukuoka, O. Kubota, and Y. Nakazawa, Physica B, 405, S273-S276
(2010).
509. “Heat Capacity Measurements of Chiral and Racemic Molecular Magnets”, S. Fukuoka, S.
Yamashita, T. Yamamoto, Y. Nakazawa, H. Higashikawa, and K. Inoue, Physica B, 405,
S19-S22 (2010).
510. “Low Temperature Heat Capacity Measurements of the Spin-Liquid State of Hydrogenated
and Deuterated κ-(BEDT-TTF)2 Cu2 (CN)3 ”, S. Yamashita, T. Yamamoto, and Y. Nakazawa,
Physica B, 405, S240-S243 (2010).
511. “Thermodynamic Properties of the Kagome Lattice in Volborthite”, S. Yamashita, T. Moriura, Y. Nakazawa, H. Yoshida, Y. Okamoto and Z. Hiroi, J. Phys. Soc. Jpn. ,79(8),
083710/1-4 (2010).
512. “Thermodynamic Investigation of Coordination-Networked Systems of [Mn4 ] Single-Molecule
Magnets under Pressure”, O. Kubota, S. Fukuoka, Y. Nakazawa, K. Nakata, M. Yamashita
and H. Miyasaka, J. Phys: Condens. Matt., 22, 026007/1-5 (2010).
513. “Low-temperature magnetic properties of Heusler compounds Ru2−x Fex CrSi (x = 0.1, 0.3,
and 0.5)”, M. Ito, T. Hisamatsu, T. Rokkaku, I. Shigeta, H. Manaka, N. Terada, and M.
Hiroi, Phys. Rev. B 82 024406/1-4 (2010).
514. “Quantum Spin Nanotubes —frustration, competing orders and criticalities”, T. Sakai, M.
Sato, K. Okamoto, K. Okunishi and C. Itoi: J. Phys. Cond. Matter 22(40), 403201/1-13
(2010).
515. “Magnetization Process of the Kagome Lattice Antiferromagnet”, H. Nakano and T. Sakai:
J. Phys. Soc. Jpn. 79(5), 053707/1-4 (2010).
516. “Spectral Properties near the Mott Transition in the One-Dimensional Hubbard Model”,
M.Kohno: Phys. Rev. Lett. 105(10), 106402/1-4 (2010).
517. “Magnetic phase diagram of the spin-1/2 antiferromagnetic zigzag ladder”, T. Sakai, M. Sato,
K. Okunishi, K. Okamoto, C. Itoi, J. Phys.: Condens. Matter 22, 403201/1-13 (2010).
518. “Anisotropic spin dynamics in the frustrated chain Ca3 Co2 O6 detected by single-crystal 59 Co
NMR”, Y. Shimizu, M. Horibe, H. Nanba, T. Takami, and M. Itoh, Phys. Rev. B, 82(9),
094430/1-8 (2010).
519. “Phase transitions and the role of vanadium t2g states in AV13 O18 (A=Sr,Ba)”, M. Ikeda,
Y. Nagamine, S. Mori, J. E. Kim, K. Kato, M. Takata, and T. Katsufuji: Phys. Rev. B 82,
104415/1-8 (2010).
520. “Crossover behavior of the crystal structure and the relation to magnetism in perovskite
RTiO3 ”, K. Takubo,1 M. Shimuta, J. E. Kim, K. Kato, M. Takata, and T. Katsufuji: Phys.
Rev. B 82, 020401(R)/1-4 (2010).
521. “Field-Induced Tomonaga-Luttinger Liquid Phase of a Two-Leg Spin-1/2 Ladder with Strong
Leg Interactions”, T. Hong, Y. H. Kim, C. Hotta, Y. Takano, G. Tremelling, C. P. Landee,
H.-J. Kang, N. B. Christensen, K. P. Schmidt, K. Lefmann, G. S. Uhrig, and C. Broholm,
Phys. Rev. Lett, 105, 137207 (2010).
522. “Anomalous dielectric response in the dimer Mott insulator κ-(BEDT-TTF)2 Cu3 (CN)3 ”,
Majed Abdel-Jawad, I. Terasaki, T. Sasaki, N. Yoneyama, N. Kobayashi, Y. Uesu, and C.
Hotta, Phys. Rev. B 82, 125119 (2010).
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お知らせ
◇ 「フラストレート系」特定領域・国際会議
International Conference on Frustration in Condensed Matter (ICFCM)
日時: 2011年1月11日(火)~14日(金)
場所: 仙台国際センター
世話人: 有馬孝尚(東北大多元研),川村光(阪大理)他
申込締切:2010年11月30日(火)
(WEB 上より申込)
http://www.issp.u-tokyo.ac.jp/public/icfcm/index.html
◇ The 3rd APCTP Workshop on Multiferroics
(主催:APCTP、共催、協賛:川村特定、理研)
日時: 2011年1月17日(月)~19日(水)
場所: 早稲田大学各務記念材料技術研究所
世話人: 勝藤拓郎(早稲田大理工)他
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/bbs/2011-01-17-waseda-KF.html
◇ 日-加ジョイントフラストレーション・ワークショップ
日時:2011年5月28日(土)~31日(火)
場所:バンクーバー(カナダ)
オーガナイザー: Gingras, 川村光, Taillefer, 高木英典
◇ 第7回トピカルミーティング「複合自由度」
(タイトル未定)
日時:2011年度前半(予定)
世話人:求,香取,川村他
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本来、この項は編集後記なのですが、最近、本
領域の国際会議のことで頭の中が一杯ですので、今
回はそれについての駄文を少し。
この原稿を書いている時点で、会議までちょう
どあと2か月です。仙台での開催ですので、色々と
算段をしなくてはいけません。その際、最も基本的
な情報が参加人数なのですが、これが困ったことに
なかなか読めません。考えてみれば、どんな催しでも参加者の数はふたを開け
るまで分からないものです。それを考えると、今回、参加登録の締め切りから
一ヶ月で会議の本番というのは、少し無茶な設定だったかもしれません 。
それでも、会議参加費を徴収しないので、参加者の読み違いのために赤字にな
るという危惧がないのが救いではあります。
悩みの一方で楽しみもあります。今年の夏、フラストレーション磁性の国
際会議に出席してみて、日本のフラストレーション研究が質・量ともに十分に
高い水準にあることは実感できました。あとは、フラストレーションの分野の
外にいる人からも面白い成果を発信していると認められればしめたものです。
国際会議がそのような場になればいいですね。まずは、年始の忙しい時期に
領域外からそれなりの数の参加があれば、励みになるというものでしょう。
もし間に合えば、お近くの方に宣伝をしていただけるとありがたいです。
事務的な部分は総括班で担当致しますので、ぜひ参加者の皆様には、活発
な国際会議となるように内容のほうでご協力をお願いしたいと思っています。
仙台の一月、おそらく外はかなり寒いと思いますが、会議場の中があつくなり
ますように。
会場には暖房も入れますが、そういう意味ではございません、念のため。
有馬孝尚
特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」
ニュースレター Vol.10
2010年11月発行
発行者
川村 光(大阪大学 大学院理学研究科)
編集担当 有馬孝尚(東北大学 多元物質科学研究所)
陰山 洋(京都大学 大学院工学研究科)
編集協力 菅谷 久仁子(大阪大学 大学院理学研究科)
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