足の下に森を見よ

足の下に森を見よ
宗
田
光
一
悲しい眼差しのニーチェよ
わたしのふるえる細い足をささえてくれ
わたしの神も死にたえた
野の小さな草も風にたえて花をつけた
青い露草はだれにひざまずき
その花と香りをささげるのか
ほんとうにコスモスは宇宙を知っているのか
詩人は自分のために歌い笑い
画人は自分のために色を奏で線を振るわせる
歩く人は考えることの到達点を知り
花をめでる人は枯れることの美しさを知っている
首の長いネコのように
君は愛されよ
他人の中に住む誘惑という地獄に
君はたえよ
山を降りるツァラストラに君は
君の道をたずねよ
楽園の夢をたずねよ
自らの足元を掘り進める
孤独の炎をたずねよ
森は木をため 木は枝をため
枝は葉をため 葉は細胞をため
細胞はふるえる輪をためる
目に見えないふるえる輪は宇宙をため
宇宙は森をためる
その森を見よ
君には見える 山を降りる人がいる
空に悲しみをためるニーチェアンよ
いま君の足の下を掘り始めよ