BSJ-review7C

植物科学最前線 7:97 (2016)
環境刺激による気孔開度制御機構の解明に向けて 木下俊則 1,2, 富山将和 1
1. 名古屋大学大学院理学研究科
〒464-8602 名古屋市千種区不老町
2. 名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所
〒464-8602 名古屋市千種区不老町
Toshinori Kinoshita1,2, Masakazu Tomiyama1
Regulation of stomatal movement in response to environmental stimuli
Key words: Abscisic acid, Blue light, H+-ATPase, Phototropin, Stomata
1. Graduate School of Science, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, 464-8602 Japan
2. Institute of Transformative Bio-Molecule (ITbM), Nagoya University, Furo-cho, Chikusa-ku,
Nagoya, 464-8602 Japan
1. はじめに
陸生植物の表皮に存在する気孔は,1対の孔辺細胞により構成され,その開度を調節することによ
り,植物と大気間のガス交換を行っている。気孔は,植物が光合成を盛んに行っている太陽光下,特
にシグナルとして作用する青色光域の光に応答して開口し,光合成に必要な二酸化炭素の取込み,蒸
散や酸素の放出などを促進する。蒸散は,強い日差しで上昇した葉温を低下させ,同時に根における
水や無機養分の取り込みを促す。一方,植物が乾燥ストレスに曝されると,乾燥ストレスに応答して
産出させる植物ホルモンであるアブシジン酸に応答して閉鎖し,植物体からの水分損失を防いでいる
(Shimazaki et al. 2007, Kim et al. 2010)
。このように気孔孔辺細胞は,陸上植物が生きていく上で不可欠
な働きを担うと同時に,環境刺激に対して明確な細胞応答を示すことから,植物の環境応答のモデル
細胞としても注目され,盛んに研究されてきた(Murata et al. 2015)
。しかしながら、気孔開閉のシグ
ナル伝達の全容は未だ不明の部分が多く,著者らは,そのシグナル伝達機構の解明、さらに気孔開度
の植物の環境刺激・ストレス下での役割について研究を進めてきた。本稿では,これまでの研究成果
と今後の展開について解説する。
2. 青色光による気孔開口
2-1. 青色光による細胞膜 H+-ATPase の活性化
気孔開口は,孔辺細胞へのカリウム取込みと浸透圧増加に伴う孔辺細胞の体積増加により引き起こ
される。孔辺細胞は外側に薄い細胞壁,内側(気孔側)に厚い細胞壁をもつ。孔辺細胞の体積が増加
すると,孔辺細胞は薄い細胞壁のある外側に膨らみ,内側の厚い細胞壁が互いに離れるようにひっぱ
られ,孔辺細胞間の孔が開いて気孔が開口する(Willmer and Fricker 1996)
(図 1)
。カリウムの取込み
は,孔辺細胞の細胞膜に存在する内向き整流性のカリウムチャネルによって担われており,細胞膜の
過分極に応答してカリウム取り込みが行われる。細胞膜の過分極は,同じく細胞膜に存在する起電性
のプロトンポンプ,細胞膜 H+-ATPase の活性化により引き起こされる。細胞膜 H+-ATPase は、動物の
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Na+/H+-ATPase や Ca2+-ATPase らと同じ P 型 ATPase に属し,10 回の膜貫通領域をもつ膜タンパク質で
ある。H+-ATPase に特徴的な領域として C 末端領域に約 110 アミノ酸残基からなる自己阻害ドメイン
を持つことが知られている(Palmgren 2001)
。孔辺細胞における H+-ATPase の青色光に依存した活性
化は、C 末端から2番目のスレオニン残基のリン酸化とリン酸化部位への 14-3-3 タンパク質の結合に
より引き起こされていることが明らかとなった(Kinoshita and Shimazaki 1999, Kinoshita and Shimazaki
2002)
。
図 1,植物における気孔の働き
写真はツユクサ表皮の気孔。気孔は一対の孔辺細胞により構成される。孔辺細胞内の緑の粒は葉緑体
で,一般に表皮組織では孔辺細胞にのみ葉緑体が存在する。基礎研究によく用いられるシロイヌナズ
ナでは,葉の裏側に 1 mm2 あたり約 100 個の気孔が存在する。
細胞膜 H+-ATPase は,気孔開口のみならず,オーキシンに応答した細胞伸長、篩部伴細胞における
ショ糖取り込みや根における無機養分の取込み,さらに細胞内外の pH 調節や細胞の膜電位維持等に
おいて極めて重要な役割を果たしていることから,その活性調節機構については盛んに解析が進めら
れている(Palmgren 2001, Duby and Boutry 2009)
。また,活性制御機構としては,上述した C 末端から
二番目のスレオニン残基のリン酸化に加え,C 末端におけるその他のいくつかのリン酸化部位が活性
に影響を及ぼすことが報告されている(Falhof et al. 2016, Takahashi and Kinoshita 2016)
。実際、ソラマ
メ孔辺細胞の細胞膜 H+-ATPase は、青色光に依存してスレオニン残基のみならず,セリン残基もリン
酸化されることが見出されており(Kinoshita and Shimazaki 1999)
、詳細なリン酸化部位の同定が待た
れる。
細胞膜 H+-ATPase の C 末端から2番目のスレオニン残基のリン酸化に関与するプロテインキナーゼ
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は未だ同定されていないが、生化学的な実験により細胞膜に存在することが示されている(Svennelid et
al. 1999, Hayashi et al. 2010)
。一方,リン酸化されたスレオニン残基の脱リン酸化については、in vitro
での生化学実験により細胞膜に存在するタイプ 2C プロテインホスファターゼ(PP2C)様活性により
引き起こされていることが示された(Hayashi et al. 2010)
。さらに最近の研究により,黄化胚軸におい
て、PP2C の D サブファミリーがリン酸化されたスレオニン残基の脱リン酸化に関与することが示さ
れた(Spartz et al. 2014)
。
2-2. 青色光シグナル伝達機構の分子機構
14-3-3 タンパク質の細胞膜 H+-ATPase への結合解析の過程で,青色光に依存して 14-3-3 タンパク質
と結合する質量約 125 kDa の新たなタンパク質が,ソラマメ孔辺細胞プロトプラストにおいて見出さ
れた(Kinoshita et al. 2003)
。さらなる解析の結果,この 125 kDa タンパク質は,細胞膜に局在し,青色
光によりリン酸化されることやその質量から,1997 年にシロイヌナズナの光屈性の青色光受容体とし
。
て同定されたフォトトロピン 1(phot1)のオーソログであることが推察された(Huala et al. 1997)
フォトトロピンは,質量約 125 kDa の細胞膜結合性タンパク質で,N 末端領域に発色団であるフラビ
ンモノヌクレオチド(FMN)を結合する LOV ドメイン,C 末端領域に典型的なセリン・スレオニン
キナーゼドメインを持つ。青色光を受容すると自身のキナーゼドメイン中のアミノ酸を自己リン酸化
することにより活性化し,下流へシグナルを伝達する(Inoue et al. 2008)
。シロイヌナズナには phot1
に加え,フォトトロピン 2(phot2)も存在する。ソラマメのフォトトロピン抗体を用いた解析の結果,
14-3-3 タンパク質と結合するソラマメ孔辺細胞の 125 kDa タンパク質は抗体により認識された。さら
に,ソラマメの孔辺細胞には 2 つのフォトトロピン(vfphot1a と vfphot1b)が発現していることが明ら
かとなり,孔辺細胞では 2 つのフォトトロピンが重複して機能している可能性が示された(Kinoshita et
al. 2003)
。そこで,2 つのフォトトロピンの二重変異体の作出されたシロイヌナズナを用いた表現型解
析が行われ,フォトトロピン二重変異体では青色光による気孔開口も細胞膜 H+-ATPase の活性化も見
られず,phot1 と phot2 が重複して気孔開口の青色光受容体として機能していることが明らかとなった
(Kinoshita et al. 2001, Ueno et al. 2005)
。
青色光受容体フォトトロピンから細胞膜 H+-ATPase の活性化に至るシグナル伝達については未解
明の部分が多い。これまでの研究により,このシグナル伝達には,タイプ1プロテインホスファター
ゼ(PP1)がポジティブレギュレーターとして関与することが示唆されている(Takemiya et al. 2006)
。
また最近,青色光による気孔開口が損なわれた突然変異体の解析により,フォトトロピンと PP1 の間
で働くセリン/スレオニン・プロテインキナーゼ BLUE LIGHT SIGNALING1(BLUS1)が同定された
(Takemiya et al. 2013)
(図 2)
。BLUS1 は、孔辺細胞の青色光シグナル伝達に必須のシグナル因子と考
えられ,青色光に依存してフォトトロピンにより孔辺細胞内でリン酸化される。一方で,BLUS1 はフ
ォトトロピンの関わる光屈性,葉緑体光定位運動や葉の平坦化など他の反応には全く影響を与えない
ことから,孔辺細胞特有の青色光シグナル伝達の構成因子と考えられる。また,細胞膜 H+-ATPase の
細胞膜への局在化を調節する因子として PATROL1 が同定されている(Hashimoto-Sugimoto et al. 2013)
。
加えて,光周性花成誘導に関与する FLOWERING LOCUS T(FT)
,TWIN SYSTER OF FT(TSF),
SUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CO1(SOC1)などの因子が孔辺細胞にも発現しており,光
による気孔開口のポジティブレギュレーターとして間接的に関与していることも示されている
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(Kinoshita et al. 2011, Ando et al. 2013, Kimura et al. 2015)
。
図 2, 青色光による気孔開口反応の模式図
BLUS1:BLUE LIGHT-SINGNALING1,PP1 : タイプ1プロテインホスファターゼ,P : リン酸化
これまで,孔辺細胞の青色光シグナル伝達,特に細胞膜 H+-ATPase の活性化機構については,孔辺
細胞プロトプラストを用いた生化学的な解析により進められてきた。しかしながら,孔辺細胞プロト
プラストを単離するには多くの植物体(シロイヌナズナの場合数千枚のロゼット葉)と長時間の作業
(6 時間以上)を必要とする。さらに,プロトプラストは等張液に懸濁するため,細胞に浸透圧スト
レスや傷害ストレスなどの負荷がかかることが知られている(Leonhardt et al. 2004)
。こういった中,
私達は、活性化型細胞膜 H+-ATPase である C 末端から二番目のリン酸化スレオニン残基を特異的に認
識する抗体の作出に成功した(Hayashi et al. 2010)
。さらにその抗体を用いた表皮組織における免疫組
織染色法を確立することで、シロイヌナズナのロゼット葉1枚〜数枚で、気孔孔辺細胞における青色
光に依存した細胞膜 H+-ATPase のリン酸化を検出ことが可能となった(Hayashi et al. 2011)
。そこで、
この免疫組織染色法を利用し、青色光に依存した細胞膜 H+-ATPase のリン酸化が見られない突然変異
体の遺伝学的スクリーニングや孔辺細胞の細胞膜 H+-ATPase のリン酸化レベルに影響を与える化合物
のケミカルスクリーニングに着手し、これまでに幾つかの突然変異体や化合物を単離した。今後は、
これら突然変異体の原因遺伝子や化合物の孔辺細胞における標的タンパク質の同定を行い、青色光シ
グナル伝達における機能を明らかにしていきたい。
2-3. 人為的な気孔開口促進の光合成と生産量への影響
植物が太陽光下で盛んに光合成を行っているとき,多くの二酸化炭素を必要とするが,気孔の孔を
通る際に生じる抵抗(気孔抵抗)が二酸化炭素取り込みの主要な制限要因となっており,植物の光合
成が制限されていると考えられている(Taiz and Zeiger 2014)
。しかし,気孔開度が二酸化炭素取り込
みの制限要因であることは実証されていなかった。また,植物の光合成活性をより向上させるために
は,気孔の開き具合を大きくし,気孔抵抗を低下させることが解決法として考えられるが,これまで
に知られている気孔が大きく開いた既知の突然変異体のほとんどは気孔閉鎖を誘導する植物ホルモ
ン・アブシシン酸関連の変異体であり,それらは乾燥条件下でも気孔を閉じることができないため乾
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燥に極端に弱く,表現型が多面的であることから,気孔開度と光合成や生産量との関係を調べるには
不向きであった。
そこで私達は,これまでの研究により明らかとなった光による気孔開口反応に関わる主要因子(青
色光受容体フォトトロピン,細胞膜 H+-ATPase,電位依存性内向き整流 K+チャネル,および FT)をモ
デル植物シロイヌナズナの孔辺細胞だけに発現量を上昇させ,気孔開口を促進することができるかを
調べた。孔辺細胞特異的な発現には,孔辺細胞のみで発現を誘導することが知られている GC1 プロモ
ーターを用いた(Yang et al. 2009)
。その結果,気孔開口の駆動力を形成する細胞膜 H+-ATPase の孔辺
細胞での発現量が約 1.5 倍増加することで,光による気孔の開口が野生株よりも約 25%大きくなって
いた(Wang et al. 2014)
。一方,暗条件や気孔を閉じさせる作用のあるアブシシン酸存在下では,
H+-ATPase 過剰発現株も野生株と同様に気孔が閉鎖しており,光刺激により気孔開口が促進されたと
きのみ,気孔が大きく開口することが確認された。
そこで,光合成蒸散測定装置を用いて二酸化炭素吸収量(光合成活性)の測定を行った結果,
H+-ATPase 過剰発現株の生葉では,光強度 200 µmol/m2/s より強い光条件において,二酸化炭素吸収量
(光合成活性)が約 15%増加していた。一方,弱い光条件(光強度 200 µmol/m2/s 以下)では,有意
な差は認められなかった。この結果は,植物が光合成を盛んに行っている時に気孔開度が二酸化炭素
取り込みの制限要因となることを示している。さらに,植物の生産量について調べたところ,光強度
200 µmol/m2/s の条件において,播種後 25 日目の栄養成長期の植物の地上部の重量は,野生株と比べ,
1.4〜1.6 倍増加しており,種子を付けた播種後 45 日目の植物の種子や莢を含む花茎の乾燥重量は,約
1.4 倍増加していた(図 3)
。しかしながら,光合成活性の結果と一致して,弱い光条件では,生育量
に差は見られなかった。
図 3,孔辺細胞での細胞膜 H+-ATPase の過剰発現による植物の成長促進
光強度 200 µmol/m2/s の白色光(16 時間明期/8 時間暗期)の条件で生育させた播種後 25 日目のシロイ
ヌナズナ(A~C)と播種後 45 日目のシロイヌナズナ(D)
。
興味深いことに,活性化型の細胞膜 H+-ATPase や FT を過剰発現させた場合は,恒常に気孔が開口
した表現型を示したが,水は充分に与えているにも関わらず,生産量は野生株と同じかそれ以下とな
ることが明らかとなった。この結果は,光合成をおこなっていない夜間には,気孔を閉じることが生
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産量増加に重要であることを示している。また,青色光受容体フォトトロピンや電位依存性内向き整
流 K+チャネルの孔辺細胞での過剰発現は,気孔の開口や植物の生産量に影響がなかった。以上の研究
により,気孔開口促進には孔辺細胞における細胞膜 H+-ATPase の過剰発現が有用であること,さらに
気孔開度が光合成と生産量の制限要因となっていることが実証された(Wang et al. 2014)。
Hashimoto-Sugimoto ら(2013)は,細胞膜 H+-ATPase の細胞膜への局在化を調節する因子 PATROL1
の植物体全体での過剰発現株により気孔開口が促進され,植物の生産量が増加することを報告してい
る。
3. 気孔閉鎖のシグナル伝達
3-1. アブシシン酸による気孔閉鎖
植物が乾燥に曝されると,細胞の水分が欠乏し,浸透圧ストレスを生じる。植物が浸透圧ストレス
を受けると植物ホルモンであるアブシシン酸が細胞内に蓄積し,ストレス応答性遺伝子の発現誘導や
気孔閉鎖など様々な生理応答が引き起こされ,植物に乾燥耐性が付与される。アブシシン酸による気
孔閉鎖は,アブシジン酸の初期シグナル伝達を経て,孔辺細胞の細胞膜に存在する陰イオンチャネル
が活性化されることで細胞膜の脱分極が引き起こされ,これに応答して同じく細胞膜に存在する電位
依存性の外向き整流性 K+チャネルが開口して,孔辺細胞から K+が排出されることにより引き起こさ
れる(Kim et al. 2010)
。
アブシシン酸シグナル伝達経路の最上流に位置するアブシシン酸受容体は,近年,Pyrabactin
Resistance / Pyrabactin Resistance 1-like / Regulatory Component of ABA Receptor(PYR/PYL/RCAR)ファミ
リーのタンパク質がアブシシン酸受容体として,種子発芽や根の生育の阻害,気孔閉鎖など様々なア
ブシシン酸応答に関与することが証明された(Park et al. 2009, Nishimura et al. 2010, Cutler et al. 2010)
。
このファミリーのタンパク質は,孔辺細胞においてアブシシン酸を受容すると,アブシシン酸シグナ
ルの負の制御因子である PP2C の A サブファミリーの ABI1 や ABI2 等と直接結合し,PP2C 活性を抑
制する。その結果,アブシシン酸の少ない定常状態では PP2C により抑制されていた OST1 等のサブ
クラス III の SNF-related kinase 2(SnRK2)のプロテインキナーゼ活性の抑制が解除される
(PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路)
(Cutler et al. 2010)
。活性化された SnRK2 は,陰イオンチャ
ネルの実体と考えられる SLOW ANION CHANNEL-ASSOCIATED 1(SLAC1)を活性化し,Cl-等の陰
イオンの細胞外への放出を引き起こし,細胞膜の脱分極を誘導する(Negi et al. 2008, Vahisalu et al. 2008,
Geiger et al. 2009, Lee et al. 2009)
。また,アブシシン酸は,過分極を引き起こす細胞膜 H+-ATPase 活性
を同時に阻害することにより,脱分極を促進していることが示されている(Shimazaki et al. 2007,
Hayashi et al. 2011)
。さらに,気孔開口に関与する内向き整流性 K+チャネル遺伝子の転写を制御する
bHLH 型転写因子である ABA-responsive kinase substrates(AKSs)が,アブシシン酸に応答して孔辺細
胞内でリン酸化され,
内向き整流性K+チャネルの転写を阻害することが示された
(Takahashi et al. 2013)
。
このようにアブシシン酸は,気孔閉鎖に関わる因子への働きかけだけでなく,気孔開口に関与する因
子の活性や発現量を抑制することで効率的に気孔閉鎖を誘導していると考えられる。
これまでの多くの研究により,孔辺細胞におけるアブシシン酸シグナル伝達経路には,カルシウム,
活性酸素種,一酸化窒素,ホスファチジン酸,イノシトール誘導体,スフィンゴ脂質等のセカンドメ
ッセンジャーが関与していることも報告されている(Kim et al. 2010)
。また,近年,クロロフィルの
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生合成に関与する Mg-キラターゼがアブシシン酸による気孔閉鎖に関与することが報告されている
(Shen et al. 2006, Tsuzuki et al. 2011, Du et al. 2012, Tomiyama et al. 2014)
。
3-2. Mg-キラターゼの気孔閉鎖への関与
アブシシン酸に誘導される気孔閉鎖への Mg-キラターゼの影響については,近年複数の報告がなさ
れている。Shen ら(2006)は,アブシシン酸結合タンパク質の解析により,シロイヌナズナの Mgキラターゼの H サブユニット(CHLH)がアブシシン酸による気孔閉鎖に関与することを報告した。
同じく,Tsuzuki ら(2011)もアブシシン酸非感受性の気孔開度変異体の解析から,CHLH がアブシシ
ン酸による気孔閉鎖に関与することを報告した。しかしながら,Shen ら(2006)は CHLH がアブシシ
ン酸の受容体であると報告した一方で,オオムギの CHLH はアブシシン酸とは結合せず(Müller and
Hansson 2009)
,また,シロイヌナズナの CHLH もアブシシン酸との特異的な結合を示さないことが報
告されており(Tsuzuki et al. 2011)
,CHLH がアブシシン酸の受容体であるかどうかについては議論の
余地がある。Tsuzuki ら(2011)は,細胞外のカルシウム濃度を増加させると chlh 変異体の気孔にお
けるアブシシン酸感受性が部分的に回復することを報告しており,CHLH はアブシシン酸シグナル伝
達におけるカルシウム・ホメオスタシスに影響している可能性が示唆されている。
図 4,赤外線サーモグラフィを用いたスクリーニングによって単離された気孔開度変異体 low
temperature with open- stomata 1(lost1)の明視野画像(左)と対応する熱画像(右) lost1 変異体は恒常的に気孔が開口しており、背景植物(BG)と比べて葉面温度が低下している。#1
と#2 は野生型 CHLI1 遺伝子を lost1 変異体に形質転換した相補株 pCHLI1::gCHLI1/lost1 の独立した 2
系統。相補株では,葉が緑色になり,葉面温度も背景植物と同程度にまで回復していることから,ク
ロロフィル生合成と気孔開度の表現型がともに相補されたことがわかる。図中の温度は各系統の典型
的な葉面温度を,スケールバーは 2 cm を示している。
興味深いことに,Tomiyama ら(2014)は,赤外線サーモグラフィにより単離した気孔開度変異体
の解析から,Mg-キラターゼの I1 サブユニット(CHLI1)がアブシシン酸による気孔閉鎖に関与する
ことを報告した(図 4)
。Mg-キラターゼはクロロフィル生合成に関わる酵素であり,CHLH と CHLI
に CHLD を加えた 3 つのサブユニットからなる複合体を形成して働く(Bollivar 2006, Masuda 2008)
。
従ってこれまでの知見は,Mg-キラターゼやそれが関わるクロロフィル生合成がアブシシン酸による
気孔閉鎖に関与することを示唆している。
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加えて,Tomiyama ら(2014)は,クロロフィル生合成経路において Mg-キラターゼの次の反応を
触媒する酵素 Mg-プロトポルフィリン IX メチルトランスフェラーゼ
(CHLM)
の変異体の解析を行い,
chlm 変異体の気孔ではアブシシン酸に対して非感受性を示すことから,CHLM が Mg-キラターゼと同
じくアブシシン酸による気孔閉鎖に関与することを初めて明らかにした。さらに Tomiyama ら(2014)
は,クロロフィル生合成と前駆体を共有するヘム生合成に関わる変異体の解析を進め,ヘム生合成に
関わる酵素であるGUN2 やGUN3 の変異体の気孔もアブシシン酸に対する感受性が低下していること
を示した。これらの結果は,クロロフィルやヘムの生合成を含むテトラピロール生合成がアブシシン
酸による気孔閉鎖に関与する可能性を新たに示唆するものであり,今後,分子機構の解明が待たれる。
一方で,GUN2 と GUN3 については,それらの変異体の気孔では正常なアブシシン酸感受性を示すと
する報告(Shen et al. 2006)や、GUN2 の変異体の気孔応答はむしろアブシシン酸高感受性を示すとい
う報告もあり(Xie et al. 2016)
,これらの結果も考慮した慎重な解析が求められる。
3-3. 気孔閉鎖促進による植物へ乾燥耐性付与
土壌水分が不足してくると,気孔は植物体内で合成された植物ホルモン・アブシシン酸に応答して
すばやく閉鎖し,植物体からの水分損失を防ぐ。アブシシン酸のシグナル伝達が異常になった突然変
異体やアブシシン酸生合成能を欠いた突然変異体は,乾燥条件下でも気孔を閉じることができず,す
ぐに萎れる。Tsuzuki ら(2013)は,アブシシン酸による気孔閉鎖に影響を与える CHLH のシロイヌ
ナズナの孔辺細胞における発現量を調節した形質転換体を作出し,気孔の表現型の観察を行った。そ
の結果,RNAi により CHLH の発現量が低下するとアブシシン酸に対する感受性が低下し,一方,過
剰発現により CHLH の発現量を増加させると,野生株では部分的にしか気孔閉鎖を誘導しない 1 µM
アブシシン酸によっても有意に気孔閉鎖が促進され,アブシシン酸に対する感受性が増加することが
示された。
図 5,CHLH 過剰発現による植物への乾燥耐性の付与 通常条件下で 3 週間生育後,18 日間水やりを停止した時の植物体の写真。#1 と#2 は独立した CHLH
過剰発現株。
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そこで,CHLH 過剰発現株における乾燥耐性が調べた結果,通常,野生株では枯死してしまう乾燥
条件下においても,CHLH 過剰発現株では依然葉が緑で成長していた(図 5)
。以上の結果は,孔辺細
胞のアブシシン酸に対する感受性を高めることで,植物の乾燥耐性が向上することを初めて実証し,
CHLH を孔辺細胞に過剰発現させることが有用であることを示している。
4. 植物の環境応答の統合的解析
気孔孔辺細胞は周囲の様々な環境刺激に敏感に応答して気孔開度を調節するが、これまではもっぱ
ら,単離した孔辺細胞を用いて細胞内における一過的なシグナル伝達(局所的・自律的応答)の解析
に主眼が置かれてきた。しかしながら,本来植物は周囲の様々な環境刺激を全身で受容し,それらの
情報を,長距離シグナル伝達を介して各組織や細胞に伝え,また何らかの形でそれらの情報を記憶す
ることで,巧みに環境応答を行っていると考えられる。気孔孔辺細胞における例としては,土壌の窒
素やリン含量が低下すると気孔コンダクタンスが低下し,再添加すると気孔コンダクタンスが回復す
ることが報告されている(Carvajal et al. 1996)
。これには,維管束を介した根から孔辺細胞への長距離
シグナル伝達が行われていると考えられるが,その分子機構は全く不明である。また,一度乾燥スト
レスを与えた植物では気孔閉鎖が促進されるが,水分状態を戻してもすぐに気孔開度は回復しない。
さらに,このような植物では,2 度目の乾燥ストレスに対してより敏感に応答することが知られてお
り,孔辺細胞は一度目の乾燥ストレスを何らかの形で記憶する機構を備えていると考えられる。
Virlouvet ら(2014)は,サブクラス III の SnRK2 のプロテインキナーゼである SnRK2.2 と SnRK2.3 が
この記憶に重要な役割を果たしていることを報告しているが,具体的な分子機構は明らかとなってい
ない。今後は,これまでの局所的・自律的応答の解析のみならず,上述したような長距離シグナル伝
達や環境刺激の記憶の関与の可能性を含めた統合的な視点から解析を進めることにより,ダイナミッ
クな植物の環境応答の全容が明らかになると期待される。
謝辞 本稿で紹介した研究は,文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究「植物の環境突破力」,及び
「環境記憶統合」の支援を得て遂行した。
5. 引用文献
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植物科学最前線 7:110 (2016)
植物科学におけるトランスクリプトーム解析の最前線
市橋 泰範,福島 敦史
理化学研究所 環境資源科学研究センター
〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町 1-7-22
Yasunori Ichihashi, Atsushi Fukushima
Frontiers of Transcriptomics in Plant Science
Key words: Gene co-expression, Library preparation, Network analysis, RNA-seq,
Transcriptome
RIKEN Center for Sustainable Resource Science, Yokohama, Kanagawa, 230-0045 Japan
1.はじめに
ゲノム配列の解読をきっかけに,多量のデータを体系的に扱う手法であるオミクス解析が
始まった(Fukushima and Kusano 2014)。その中でもトランスクリプトーム解析は,ゲノムか
ら最終的な表現型へと情報を橋渡しする転写産物全体を明らかにすることにより,生命現象
の理解に大きく貢献する(Ichihashi et al. 2015; Ichihashi and Sinha 2014)。次世代シーケンサー
の技術進歩により誕生した RNA-seq は,トランスクリプトーム解析の精度を大幅に引き上げ
るとともに,原理的にどんな生物種においてもトランスクリプトーム解析を適用可能とした
(Wang et al. 2009)。従来のハイブリダイゼーションによるマイクロアレイやサンガー法に基
づくシーケンス技術と比べて,RNA-seq は遺伝子発現の検出範囲が広いためトランスクリプ
トームの複雑性を正確に検出できる(Mader et al. 2011)。さらに新規の転写産物,small RNAs,
alternative splicing variants を検出でき,転写産物の塩基配列を直接読むことにより SNPs,fusion
transcript,転写開始点も同定することが可能となる(Ozsolak and Milos 2011)。このように
RNA-seq によるトランスクリプトーム解析は,生物学分野全般において知識発見を加速して
いる。
次世代シーケンサーのプラットホームは常に改良され,シーケンスデータの量・質ともに
大幅に向上している。そのため,今後さらに大きなスケールで実験が可能となることは想像
に難くない。しかしながら, RNA-seq ライブラリー作成はいまだ労力,時間,コストがかか
り大規模なプロジェクトへの展開の制限要因となっている。加えて,たとえ大規模のデータ
を手にいれることができたとしても,多量でかつ複雑なデータの解析手法についてもスタン
ダードな方法がまだないため,多くのケースで生物学的意味を引き出すことができずにデー
タが埋没する恐れがある。そこで本総説ではこれらの問題を克服できる最新のライブラリー
作成技術および大規模データ解析手法を紹介し,植物科学における新しい研究展開について
考察する。
Y. Ichihashi & A. Fukushima-1
BSJ-Review 7:110 (2016)
植物科学最前線 7:111 (2016)
2.RNA-seq ライブラリー作成技術
ここでは次世代シーケンサーの中でよく使われている Illumina 社のプラットホーム用のラ
イブラリー作成について論じる。
2-1.今までのライブラリー作成技術
現在までの方法として Illumina 社が 2012 年当時に発売したハイスループット用の TruSeq
RNA sample preparation kit をもとに RNA-seq ライブラリー作成の基本的なステップについて
説明する(図 1A)。まず生物組織から total RNA を抽出し,mRNA を精製する。得られた mRNA
について二価陽イオンを用いて断片化する。断片化した mRNA をもとに 2 本鎖 cDNA 合成を
行う。その後,エンドリペアーにより 5’末端がリン酸化された平滑末端の cDNA 断片を得る。
A テーリングにより 3’末端に A を付加し,TA クローニングを利用してアダプターを cDNA
断片の両端に接続させる。上記の酵素反応ごとに,solid-phase reversible immobilization (SRRI)
磁気性ビーズを使い精製し,併せて cDNA 断片のサイズをある一定の大きさに選抜していく。
得られたアダプター付き cDNA 断片を PCR 増幅して,RNA-seq ライブラリーが完成する。こ
の方法は,生物組織からおよそ 3 日間で 24 ライブラリー作成が可能である。このように
RNA-seq ライブラリー作成は,当時の技術でハイスループットを念頭に開発された方法であ
っても,労力・時間・コストがかかっていた。
2-2.High-throughputRNA-seq(HTR)ライブラリー作成技術
そこで著者らはよりハイスループットな RNA-seq を実現するため,簡便・迅速・安価にで
きる方法を開発した(HTR,Kumar et al. 2012)。この HTR では,Illumina 社の方法をもとに
以下の点について大きく改良した:1)組織から直接 mRNA を抽出する,2)mRNA でなく
cDNA を断片化する,3)cDNA 断片の末端修飾反応の全てを SRRI ビーズ上で行う(Fisher et
al. 2011),4)96 バーコードをアダプターに組み込む(図 1B)。これらの改良により,生物組
織から 2 日間で 96 ライブラリー作成が可能となり,従来の方法に比べて 6 倍のハイスループ
ット化が実現した。さらにコストも当時の市場価格において 3-11 倍削減することに成功した。
加えて,ライブラリーの質も Illumina 社の方法とほぼ同等であり,むしろリボソーム RNA の
コンタミネーションが少ない良質のものであった。HTR と Illumina 社のプロトコールを使っ
て同じサンプルセットについて遺伝子発現の差異を解析すると,大半の遺伝子群については
両プロトコールによって検出されたが,プロトコール間で異なる挙動を示す遺伝子群も多く
見つかった。そのため,異なるプロトコールで得たサンプルを一緒に解析する際はプロトコ
ール間の違いに十分注意すべきである。また今回の解析結果からは,HTR のほうが技術的反
復間での誤差が少ないため,統計的検出力が高いデータを出すこともわかった。
この方法は幅広い植物種に応用でき,現在までに多くの草本植物に加えて,水分を多く含
む藻類(Caulerpa taxifolia)やリグニンが蓄積した木本の植物(Gevuina avellana)でも高い精
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植物科学最前線 7:112 (2016)
度のデータを取得している(Ranjan et al. 2015; Ostria-Gallardo et al., unpublished)。またこの方
法を用いることで大規模な RNA-seq を行うことが可能となった。例えば,著者らはトマトと
近縁種間の Introgression line 76 系統において RNA-seq 解析(生物学的反復を加えて,およそ
300 サンプル)を行い, introgression の境界を一塩基レベルで特定した(Chitwood et al. 2013a)。
同時にこのデータを使って,遺伝子発現を量的形質と扱い,それに影響するゲノム領域を特
定する expression quantitative trait locus(eQTL)解析を行うことで,遺伝子発現制御をゲノム
レベルで明らかにすることができた(Ranjan et al., unpublished)。
2-3.BreathAdapterDirectionalsequencing(BrADseq)ライブラリー作成技術
著者らは近年,さらに簡便,高速,超低価格を実現した方法を開発した(BrADseq,Townsley
et al. 2015)。この BrADseq では,上記の HTR にあるステップを改善しただけでなく,アダプ
ター付加を 2 本鎖 cDNA 合成とともに行う方法を独自に開発し,プロトコールに取り入れた
(図 1C)。具体的には 2 本鎖核酸の末端が化学的特性によって開閉する現象を利用して(von
Hippel et al. 2013),5’末端特異的にアダプターを組み込むことに成功した。この BrADseq は,
組織からたった 6 時間で 96 ライブラリー作成が可能となり,コストも HTR よりもさらに 7
倍,従来の方法よりも 21-77 倍削減できた。加えて strand-specificity のあるライブラリーであ
るため,情報量がより充実したデータを取得することができる。HTR と BrADseq のプロトコ
ールで遺伝子発現の差異を比較すると,非常に高い相関が得られたため,HTR と同様に
BrADseq も統計的検出力が高いデータを出すことができる。
一方で上記の方法以外にも数多くの RNA-seq ライブラリー作成方法が開発されてきている。
例えば,dUTP を使った strand-specific ライブラリーや多くのサンプルをプールして 1 反応で
ライブラリー作成を行う方法があり,これらもまた独自にコストダウンやハイスループット
化が実現されている(Shishkin et al. 2015; Wang et al. 2011)。そのため RNA-seq による網羅的
遺伝子発現解析は,個々の遺伝子を対象とした定量的 PCR のような発現解析に取って代わり,
より身近な技術になると著者らは予測している。
Y. Ichihashi & A. Fukushima-3
BSJ-Review 7:112 (2016)
植物科学最前線 7:113 (2016)
図 1. RNA-seq ライブラリー作成方法と要する日数の比較
(A)Illumina 社の TruSeq RNA sample preparation kit,
(B)HTR,
(C)BrADseq ライブラリー作成のワ
ークフロー。近年の技術開発により,通常 3 日で 24 サンプルのところが,6 時間で 96 サンプルという
ハイスループット化が実現された。
3.データ解析
ここでは RNA-seq のデータ解析のうち,上流の配列解析についてではなく,大規模なデー
タセットにより統計的な問題が生じやすい,発現量を算出し正規化した後のデータ解析手法
について論じる(図 2A)。
3-1.単変量・多変量解析
前述したライブラリー作成技術の革新により,従来よりもはるかに大規模な実験が可能と
なる一方で,データの内容が複雑化してくることが容易に想像できる。典型的オミクスデー
タの解析アプローチとしては,2 群間での比較が通常よく行われている。全発現遺伝子につ
いて 2 群間の発現量の平均の差を検出し,t 検定(正規分布からデータが得られていること
が前提)などの仮説検定をある有意水準で行ことにより,対象とする 2 群間で発現様式が異
なる一団の遺伝子群 (differentially expressed genes, DEGs) を同定できる (図 2B)。DEGs
解析にはリード数が負の二項分布に従うことを仮定した手法である edgeR(Robinson et al.
2010)や DEseq(Anders et al. 2013)などの計算ソフト R で利用できるパッケージが現在よく
Y. Ichihashi & A. Fukushima-4
BSJ-Review 7:113 (2016)
植物科学最前線 7:114 (2016)
利用されている。さらに下流解析として,これら DEGs について Gene ontology(GO)解析や
Gene set enrichment(GSE)解析を行うことで,特定の機能や代謝経路に関与する遺伝子群が
DEGs 内に統計的有意に多く存在しているか検定することができ(Hung et al. 2012),2 群間で
の遺伝子発現の違いを特徴づけることができる。
時系列データなどの複雑なデータについては多変量解析を行うことで見通しがよくなる
(図 2C)。例えば,発現パターンを抽出する目的で,k-means clustering や hierarchical clustering
といったクラスタリング解析がよく使われている(Andreopoulos et al. 2009)。また発現パター
ンの全体的な特徴を把握する目的で,主成分分析や多次元尺度構成法がよく使われる。これ
らは多変量データの変数に重みをつけて少数の合成変数を作ることにより,多次元データを
より低次元にすることでデータの解釈を助ける。さらに大きなスケールのデータでは,複数
の要因が入れ子状になった多変量データになるケースが考えられる。最近,そういった多次
元データを解析する手法として後述する ΔPC を用いた superSOM クラスタリング解析が有効
であることが示された(Chitwood et al. 2013b)。SOM は,自己組織化マップ(Self-organizing
maps)という人工神経回路ネットワークの一種で,教師なし学習によって入力データを任意
の次元へ写像することができる(Wehrens and Buydens 2007)。特に superSOM は,変数ごとに
重み付けができるため,多次元データのクラスタリング解析に用いることができる。そこで
多次元データ(例えば,異なる処理条件における時系列の遺伝子発現を比較する)から要因
間の相互作用(例えば,処理 × 時間の相互作用)を抽出するため,まず主成分分析により全
データを低次元空間(PC space)上にマップして,異なる要因の間で変化する遺伝子を PC space
上での変化量(ΔPC)として PC 軸ごとに計算する。全 ΔPC について,変数ごとに重み付け
ができるクラスタリング方法である superSOM で解析することにより,異なる要因間での相
互作用(例えば,異なる処理条件下で時系列の遺伝子発現パターンが変化する特徴)をシス
テムレベルで記述し理解することができる。このような解析によって,従来のペアワイズ
DEGs 解析やクラスタリング解析では検出できない遺伝子発現のダイナミクスが明らかにな
る。例えば Chitwood et al.(2013b)では,トマトと近縁種の異なる組織における RNA-seq デ
ータを使って,ΔPC を用いた superSOM クラスタリング解析を応用することにより,種間で
の組織別の遺伝子発現パターンの変化の特徴を明らかにした。その中で,トマトの遺伝子は
近縁種の相同遺伝子に比べて,メリステムを含む組織で高い発現,分化した組織では低い発
現を示す傾向にあり,これは種間のメリステムの大きさの違いを反映していた。
3-2.ネットワーク解析
生物種が示す様々な現象の多くは,数千から数万の異なる遺伝子群の複雑な制御ネットワ
ークの振る舞いに依存する。このような複雑なシステムを理解するために,遺伝子制御ネッ
トワークの推定とそのモジュール(サブネットワーク)の効率的な同定は,現代のシステム
生物学における中心的課題の一つである。サンプル数が増加したトランスクリプトームデー
Y. Ichihashi & A. Fukushima-5
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植物科学最前線 7:115 (2016)
タは,遺伝子 X―遺伝子 Y 発現パターン間の類似性(共発現)を網羅的に調べる遺伝子共発
現ネットワーク解析(遺伝子を点、遺伝子間関連性を線で表すネットワーク)をさらに強力
にする(図 2D)。その発現パターン間の関連性を調べる類似性尺度については,ピアソン相
関係数 (r は,二変数 X, Y との関係性の指標,-1 < r < 1 の値をとる) が最もよく使われて
いる(de Siqueira Santos et al. 2014)。しかし,ピアソン相関係数は,発現パターン間の直線関
係のみが推定可能であり,外れ値 (他の値に比べて際立って異なる値) にきわめて弱い。
そのため,直線のみならず単調増減に関して推定が可能で外れ値に強いスピアマンの順位相
関係数の適用も有効である。また遺伝子 X と Y との間の相関関係が存在しても,第 3 の遺伝
子 Z を介した見かけ上の相関関係を見ているケースもある。このような影響を除くために,
偏相関係数が利用できる(de la Fuente et al. 2004)。
遺伝子 X―遺伝子 Y 発現パターン間の関係性は直線(線形)関係のみならず様々な非線形
関係が含まれる可能性がある。そのため情報理論に基づき,X と Y とが共有する情報量を測
る相互情報量を使った 2 変数間の関係性の推定がさかんに研究されている(Vinga 2014;Wang
and Huang 2014; Liu 2015)。近年では,最大情報係数,Maximal Information Coefficient(MIC,
Reshef et al. 2011)や Hilbert-Schmidt Independence Criteria(HSIC,Gretton et al. 2005)が変数
間の非線形関係を定量する「21 世紀の相関」などと目されている。また,線形代数手法に基
づいて変数間の直接的依存性を推定する network deconvolution も提案されている(Feizi et al.
2013)。ただ遺伝子共発現関係の推定に限った場合,相互情報量に基づく手法が相関に比べて
必 ず し も 優 れ て い る わ け で は な く , 場 合 に よ っ て は 外 れ 値 に 強 い 相 関 係 数 biweight
midcorrelation が MIC を凌ぐことが示されている(Song et al. 2012)。
上記のようなネットワーク解析から,遺伝子発現のみのデータであるにもかかわらず,遺
伝子制御ネットワークの一部を推定することができる。実際著者らもトマトと近縁種におけ
る葉の異なる発生ステージの RNA-seq データから,葉の形態進化に重要な遺伝子制御ネット
ワークのモジュールを推定し,実験データによってその結果を支持した(Ichihashi et al. 2014)。
加えて,ネットワーク解析から遺伝子機能を推定することも可能である(Hansen et al. 2014)。
発現パターンが似ている遺伝子同士は機能が似ていると期待されるため,機能既知の遺伝子
をガイドとして遺伝子機能予測ができる(Aoki et al. 2007; Usadel et al. 2009)。この方法は,植
物の細胞壁や二次代謝物に関連した遺伝子の機能解析でその威力を発揮してきた(Saito et al.
2008)。ここ 10 年の間に公共利用可能なデータを利用した共発現データを提供するデータベ
ースが格段に増えている。初期の頃はモデル植物シロイヌナズナが中心であったが,最近で
は種間で共発現関係の比較も可能になってきているため(表 1),ネットワーク解析から多く
の重要な生物学的な意味が抽出できるだろう。
3-3.ディファレンシャルネットワーク
さらに複雑な生物現象を理解する上で,異なるネットワークを比較する手法が必要となる。
Y. Ichihashi & A. Fukushima-6
BSJ-Review 7:115 (2016)
植物科学最前線 7:116 (2016)
そこで発現差異(DEGs)と遺伝子共発現とを組み合わせた自然な拡張として,共発現差異を
考えることができる(図 2E)。これは,対照群および実験群の 2 群間で異なる共発現関係を
同定する,すなわち異なるネットワーク間で変化した相互作用をシステムレベルで明らかに
できる(Fukushima 2013; Kayano et al. 2014)。例えば著者らは,トマトの葉と果実から得られ
たマイクロアレイデータを用いた大規模な共発現差異ネットワークにより,代謝経路におけ
るキーステップを明らかにしてきた(Fukushima et al. 2012)。
さらに近年では,共発現差異と転写因子情報とを組み合わせた differential regulation analysis
(DRA)が提案された(Hudson et al. 2012; Yang et al. 2013; Yu et al. 2014)。これは転写因子を
コードする遺伝子について,2 群間での発現差異と共発現差異とをそれぞれ重みづけし組み
合わせることで,ある転写因子のネットワークへの影響を反映した統計量により順位付けを
行う。著者らが知る限り植物科学での例はまだないが,筋肉質なピエモンテ牛と和牛から得
られた複数の発達ステージにおけるマイクロアレイデータより算出した Regulatory Impact
Factor(RIF)統計量は,筋肉質筋肉肥大の原因遺伝子であるミオスタチン(Myostatin; MSTN,
骨格筋分化抑制遺伝子)を正しく推定した(Hudson et al. 2009)。興味深いことに,通常よく
使われる遺伝子発現量,発現差異,共発現に基づくデータ解析のいずれも MSTN の重要性を
示唆できなかったため,DRA はトランスクリプトームデータを使ったキー遺伝子探索におい
て新しいアプローチを提供する。RIF を含めた複数の DRA 手法は,共発現差異を計算できる
R のパッケージ DCGL(Yang et al. 2013)で利用可能である。このことからデータ解析におい
て個々の遺伝子のネットワーク内での役割や細胞内コンテキストをネットワーク全体から評
価することが重要であることがわかり,多量で複雑なデータから有用な情報を得るためには,
最新の統計解析法を実装して挑む必要があることがわかってもらえるだろう。
3-4.オミクスデータ解析における注意事項
上記のデータ解析結果に基づき遺伝子機能実験の計画をする際,注意すべき点を挙げる:
1.
散布図をよく見る −− 遺伝子発現パターン間の関係性構造を把握する意味できわめて重
要である。例えば,外れ値があった場合のピアソン相関係数にさしたる情報はない。
2.
相関関係は因果関係ではない −− よく勘違いされるケースであるが,発現パターンが似
ていても,必ずしも同じ機能とは限らず,偶然似たパターンを示した場合もありうる。
ましてや,直接的な因果関係を必ずしも示すわけでは無いので,データの解釈には十分
な注意が必要である。
3.
データベースや解析手法のポリシーを理解する −− 利用するデータベースや解析手法が
どのような狙いで,どのようなデータから,どのようなアプローチで,遺伝子発現パタ
ーン間の類似性を定量しているか,その背後にある構想や注意点を十分に理解して実験
計画を立てることが重要である。
Y. Ichihashi & A. Fukushima-7
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植物科学最前線 7:117 (2016)
図 2. RNA-seq の遺伝子発現量データからの解析方法
(A)シーケンシングから上流解析の配列解析。リファレンスにマップされたリードをカウントするこ
とにより遺伝子発現量を算出する(通常,遺伝子数 p >>サンプル数 n)。
(B-E)発現量を算出した後の
データの解析手法,(B)DEGs 解析。ある遺伝子 A の発現量に差があるか t 検定などで調べる。(C)
多変量解析のクラスタリング解析と主成分分析。遺伝子発現のパターンを抽出する。(D)ネットワー
ク解析。複数の発現データから遺伝子を点、遺伝子間関連性を線で表すネットワークを構築できる。
遺伝子―遺伝子の関係性は,直線関係(線形関係)を示す場合と,非線形関係を示す場合があり,相
関と情報理論とに基づく類似性尺度がそれぞれ利用できる。
(E)共発現差異解析。2 つの条件間で各々
測定された遺伝子群間の共発現パターンは,2 条件間で異なる場合がある。これら共発現差異遺伝子に
は,鍵酵素遺伝子や転写調節因子などが含まれる可能性が高い。
Y. Ichihashi & A. Fukushima-8
BSJ-Review 7:117 (2016)
Arabidopsis, rice
maize, rice
STARNET2
ECC
Maize-rice
microarray
microarray
microarray
RNA-seq
microarray
the Eukaryotic
Gene Orthologues
database
-
PCC
* PCC, Pearson's correlation coefficient; CLR, Context Likelihood of Relatedness
binary asymmetric
distance
PCC
OrthoMCL
OrthoMCL
Reciprocal Best BLAST
Hit
NCBI HomoloGene
CLR
PCC
PCC
PCC
cosine correlation
correspondense analysis
and Pearson's correlation
coefficient
OrthoMCL
Reciprocal Best BLAST
Hit
PCC and reciprocal rank PFAM
weighted PCC and
microarray and RNA-seq mutual rank
microarray
Arabidopsis, poplar, rice
microarray
Arabidopsis, soybean, barley, rice,
tomato, wheat, grape, maize
PLANEX
microarray
EST presence/absence
profile
conservation
ORTom
tomato, potato, tobacco, pepper
MORPH Algorithm Arabidopsis, tomato
microarray
ComPlEx
PODC
CoP
ATTED-II
PLANET
Arabidopsis, barley, medicago,
poplar, rice, soybean, wheat,
brachypodium
Arabidopsis, field mustard,
soybean, medick, poplar, tomato,
grape, rice, maize
Arabidopsis, barley, poplar, rice,
soybean, wheat, grape, maize
Arabidopsis, rice, Sorghum,
tomato, grape, medicago, potato,
soybean
human, rat, mouse, chicken,
zebrafish, Drosophila, C. elegans,
S. cerevisiae, Arabidopsis, rice
1
Miozzi et al. Plant Mol Biol,
2010
Tzfadia et al. Plant Cell, 2012
Jupiter et al. BMC
Bioinformatics, 2009
Movahedi et al. Plant Physiol,
2011
Ficklin and Feltus, Plant
Physiol, 2011
Netotea et al. BMC Genomics,
2014
Yim et al. BMC Plant Biol,
2013
Ohyanagi et al. PCP, 2015
Aoki et al. PCP, 2015
Ogata et al. Bioinformatics,
2010
Mutwil et al. Plant Cell, 2011
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http://webs2.kazusa.or.jp/kagiana/cop0911/
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URL
植物科学最前線 7:118 (2016)
Y. Ichihashi & A. Fukushima-9
BSJ-Review 7:118 (2016)
植物科学最前線 7:119 (2016)
4.おわりに
今後の植物科学においてトランスクリプトーム解析はどのように利用されていくだろう
か?本総説で示したように,RNA-seq が高度にハイスループット化することで,より大規模
なプロジェクトが可能となる。これにより統計的に高い精度のデータ取得はもちろん,フィ
ールドを対象とする生態学への展開や,一人の研究者で一つの植物種のトランスクリプトー
ムマップを作成できるなど,新規遺伝子の発見が加速するだろう。加えて,より詳細に組織
別の発現解析を行うために組織別プロモーターやレーザーマイクロダイセクションを用いた
発現解析や,近年の流体力学の進展により可能となった 1 細胞のトランスクリプトーム解析
も身近な技術となるだろう(Picelli et al. 2014)。また第三世代シーケンサーである 1 分子シー
ケンサーはより長い配列を読むことができるため,転写産物全長を一度にシーケンスできる
(Tilgner et al. 2014)。この技術がトランスクリプトーム解析に利用されることになれば,よ
り正しく発現量や alternative splicing variants を定量することができる。
本総説では詳述しなかったが,シーケンシング後の配列データ解析ではより高速で正確な
リファレンスへのマッピングや遺伝子発現量推定手法の洗練が求められている。加えて,ト
ランスクリプトームデータのみならず、幅広くメチローム・プロテオーム・メタボローム・
フェノームといった様々なオミクスデータを統合し,いかに新規の生物学的意義を引き出す
かが計算生物学・バイオインフォマティクス分野の中心課題となっている(Cavill et al. 2015)。
特にこれらデータを用いた統合的なネットワーク解析は,重要形質に関与する鍵因子遺伝子
の予測やフィールドでの表現型予測を行う効率的なモデルをもたらす可能性をもち、遺伝型
―表現型関連性の解明に寄与する。このような技術進歩によりトランスクリプトームを含め
たオミクス解析の対象がマクロにもミクロにも拡大し,我々が見ることができる世界が広が
る。今後,その新しい世界を見ることによって,いかに世界観すなわち新しい生物学的知見
を理解できるかが次世代の研究者に求められる課題であろう。
5.謝辞
本稿で紹介した著者らの研究の一部は,理化学研究所・基礎科学特別研究員制度および科
学研究補助金・若手研究 B(15K18589)(市橋 泰範),及び科学研究補助金・若手研究 B
(26850024)(福島 敦史)の支援を得て遂行した。また本研究を進めるにあたり,数々のサ
ポートを頂いた,カリフォルニア大学デービス校・Prof. Neelima Sinha,Dr. Ravi Kumar,Dr. Brad
Townsley,Dr. Jie Peng,ドナルドダンフォース研究所・Dr. Daniel Chitwood に,この場を借り
てお礼申し上げます。
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植物研究における2光子励起顕微鏡の活用
栗原大輔
名古屋大学大学院理学研究科
JST・ERATO 東山ライブホロニクスプロジェクト
〒464-8602 愛知県名古屋市千種区不老町
Daisuke Kurihara
Utility of two-photon excitation microscopy for plant researcher
Key words: auto-fluorescence, clearing, fluorescent protein, two-photon
Graduate School of Science, Nagoya University
Higashiyama Live-Holonics Project, ERATO, JST
Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, Aichi 464-8602, Japan
1.はじめに
生体のなりたちや生命現象を明らかにする上で,直接細胞や分子を観察,解析できる顕微鏡技
術は今日欠かせない技術である。しかしながら,生体の深部で起こっている生命現象を解析する
ためには,顕微鏡の技術的制限からこれまで機械的に切片を作製するなど,サンプルに傷をつけ
て観察する必要があった。しかし,立体的な生体の構造を把握するためには,三次元情報が必要
になるが,機械的に切断した切片から三次元の立体構造を再構築するのは非常に困難である。ま
た,ダイナミックな生命現象を生きたまま解析するためにも,なるべく傷をつけず,そのまま直
接観察できることの重要性は言うまでもない。そのような中,生体の深部を直接観察する「深部
イメージング」を達成するために,近年,2 光子励起顕微鏡と呼ばれる顕微鏡技術が活用されて
いる。本稿では,2 光子励起顕微鏡の特徴を紹介し,植物研究に実際に用いる際の注意点を述べ
たい。
2.2 光子励起顕微鏡を用いた植物組織観察
2ー1.深部イメージングが可能である
2 光子励起顕微鏡のよく知られている特徴は,生体の深部イメージングが可能なことであろう。
共焦点顕微鏡で用いられる光源が,紫外や可視光レーザーであることに比べて,2 光子励起顕微
鏡で用いられる光源は,倍近い波長の近赤外光パルスレーザーである。長波長の光源を用いるた
め,生体内での散乱の影響を受けにくく,光源の深部到達性が高いことより,深部イメージング
が可能となる。動物研究分野においては,1,064 nm のレーザーを光源とした 2 光子励起顕微鏡に
より,生きたマウスの脳を表面から 1,600 µm,すなわち 1.6 mm もの深部まで観察することに成
功している(Kawakami et al. 2015)
。
それでは,植物組織においてはどうであろうか。モデル植物であるシロイヌナズナにおいて,
最も観察が行いやすい組織としては透明な組織である根が挙げられるであろう。図 1 左は細胞核
を H2B-mClover で標識したシロイヌナズナの根を共焦点顕微鏡で観察した像である。透明な組織
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植物科学最前線 7:125 (2016)
で観察が行いやすい組織でありながら,維管束の
細胞核まではかろうじて観察できているが,対物
レンズから遠い側の核は全く観察できていない。
観察しているシロイヌナズナの根の直径は 100
µm であるため,共焦点顕微鏡で観察できている
のは根表面から 50 µm ほどである。そこで同じ根
を 2 光子励起顕微鏡で観察すると,対物レンズか
ら遠い側の細胞核まで全て観察できていることが
分かる(図 1 右)。オーキシンマーカーである
DR5rev::3xVenus-N7 を同時に観察すると,
2 光子励
起顕微鏡で観察した方が,どの領域まで DR5 が発
現しているかはっきりと識別することが可能であ
る(図 1)
。
2ー2.長波長光源を用いることで自家蛍光
が軽減する
植物組織において,2 光子励起顕微鏡を用いる
利点としては,深部イメージングが行えるだけで
はなく,植物細胞特有の自家蛍光を軽減できる点
が挙げられる。植物細胞の自家蛍光としては,光
合成に関わる葉緑体のクロロフィルがまず挙げら
れるが,それ以外にも細胞壁に存在するリグニン
も顕微鏡観察の妨げになる自家蛍光の要因となる。
クロロフィルは強い赤色の自家蛍光を発するため,
赤色蛍光タンパク質の観察の際に妨げとなる。ま
た葉緑体を持たない根や花粉などを観察する場合
でも,細胞壁にリグニンが存在し黄緑色の自家蛍
光を発するため,GFP などの緑色蛍光タンパク質
を用いて発現量の低い目的タンパク質を観察する
際に,自家蛍光との識別が困難となってしまう
(Mizuta et al. 2015)
。また,緑色あるいは赤色蛍
図 1. 共焦点顕微鏡像と 2 光子励起顕微鏡像
の比較
細胞核を RPS5Apro::H2B-tdTomato,
オーキシ
ン応答を DR5rev::3xVenus-N7 で標識してい
る。上段は縦断面,線で示している部分の横
断面を下段に示す。スケールバーは 30 µm。
Kurihara et al. (2015)より改変して転載。
光タンパク質を観察する以外の場合にも,クロロ
フィルやリグニンなどは蛍光タンパク質の励起光を吸収してしまい,十分に目的の蛍光タンパク
質を励起できないため,励起光のパワーを強くする必要があり,細胞にダメージを与えるなどの
恐れもある。このように,自家蛍光を抑えて顕微鏡観察を行うことは非常に重要なことである。
2-1 で述べたように,共焦点顕微鏡に比べて 2 光子励起顕微鏡により観察する際は 700 nm ~
1,100 nm あるいはより長波長のレーザーが用いられている。長波長領域はクロロフィルやリグニ
ンの吸収スペクトルからはずれたところになるため,長波長のレーザーを照射した場合でも,植
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植物科学最前線 7:126 (2016)
物の自家蛍光は劇的に軽減される。2 光子励起顕微鏡の場合でも,800 nm といった比較的短い波
長のレーザーを照射した場合,クロロフィル,細胞壁の自家蛍光両方とも検出されるが,1,000 nm
といったより長波長のレーザーを照射した場合,自家蛍光は検出されにくくなる(Mizuta et al.
2015)
。このため,より弱いレーザーでも蛍光タンパク質が検出できるため,細胞へのダメージも
軽減できる。また,これまでクロロフィルの自家蛍光と重なるため避けられてきた赤色蛍光タン
パク質も利用できるため,蛍光タンパク質の選択肢の幅も拡がる。
2ー3.1 波長同時励起多色イメージングが可能である
もう一つの 2 光子励起顕微鏡の特徴として,一つの励起波長で多色の蛍光タンパク質を励起す
ることが可能となることである。蛍光タンパク質の性質として,2 光子励起できる波長は 1 光子
励起波長の単純に倍になるわけではなく,励起スペクトルは拡がる傾向にある。そのため,1 光
子励起すなわち共焦点顕微鏡で観察する場合,緑色蛍光タンパク質は 488 nm,赤色蛍光タンパク
質は 561 nm というように,
異なる波長のレーザーが必要であり,
2 色を同時に観察するためには,
レーザーを 2 つ照射しなくてはならない。しかし,2 光子励起の場合,900 ~ 1,000 nm の波長で緑
色,赤色蛍光タンパク質ともに励起できるため,一度のレーザー照射で多色イメージングが可能
となるため,細胞へのダメージが軽減できる。図 2 は mTFP1, sGFP, Venus, mApple といった水色
から橙色までの 4 種類の蛍光タンパク質をそれぞれ発現する花粉を集めて,めしべに受粉した様
子である。励起波長 990 nm の 2 光子励起顕微鏡観察により, 4 色全ての蛍光タンパク質が検出
できていることが分かる。
多色イメージングをする際の注意点と
しては,どの蛍光タンパク質を選ぶかと
いう点が挙げられる。何種類同時に観察
したいかによるが,2 種類の場合は,緑
色と橙色あるいは赤色蛍光タンパク質が
良い。これらの組み合わせでは,950 ~
1,000 nm といった長波長の励起光を用い
ることができるため,自家蛍光を抑えな
がら観察することができる。しかし,橙
色,赤色蛍光タンパク質は< 1,000 nm の
励起光では吸収効率が低いため,2 種類
の目的タンパク質のうち,発現量の高い
タンパク質を橙色,赤色蛍光タンパク質
と融合し,発現量の低い目的タンパク質
を緑色蛍光タンパク質に融合するという
図 2. 多色の花粉を受粉しためしべ
工夫が必要である。また,3 種類同時に
LAT52pro::mTFP1,
観察したい場合は,共焦点シアン色蛍光
LAT52pro::mApple でそれぞれ標識した花粉をめしべに受
タンパク質がよく用いられているが,
950
粉し,2 光子励起顕微鏡により観察した。スケールバー
nm 付近ではほとんど励起されないため,
は 100 µm。Kurihara et al. (2015)より改変して転載。
LAT52pro::sGFP,
LAT52pro::Venus,
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植物科学最前線 7:127 (2016)
1 波長同時励起は難しい。著者の場合,シアン色蛍光タンパク質と緑色蛍光タンパク質の間の色
である TFP をよく用いている(図 2)
。
また,多色の蛍光タンパク質を同時に観察する場合,検出側にも気を配る必要がある。TFP,
GFP,YFP といった水色,緑色,黄色蛍光タンパク質は蛍光スペクトルが近接しているため,蛍
光フィルターで区別をつけることが困難である。その場合,プリズムで分光後,多数の検出器で
それぞれの波長のシグナルを検出しイメージングするスペクトルイメージングが有用である。先
に示した図 2 はスペクトルイメージングで撮像したものであるが,mTFP1,sGFP,Venus がそれ
ぞれ異なる色として識別できる。
3.透明化によりさらなる深部イメージングへ
2-1 章において 2 光子励起顕微鏡は深部イメージングが可能であることを述べてきたが,2 光子
励起顕微鏡を持ってしても,植物組織は深部イメージングが難しい組織である。図 3 はシロイヌ
ナズナの葉の細胞核を,共焦点顕微鏡と 2 光子励起顕微鏡を用いて観察したものである。共焦点
顕微鏡では,葉の気孔や表皮細胞といった表面から 1~2 層,深さにして 30 ~ 40 µm しかシグナル
は検出できていない(図 3, 共焦点)
。一方,2 光子励起顕微鏡においても,共焦点顕微鏡と同程
度の深さまでしか,細胞核のシグナルは検出できない(図 3, 2 光子)
。そのため,2 光子励起顕微
鏡を持ってしても,葉の内部にある維管束は観察できない。図 1 で示したように,2 光子励起顕
微鏡を用いると,直径 100 µm の根では全細胞核が,まためしべの中にある胚珠の観察では,175
µm の深部にある胚乳核をはっきり観察することができる(水多と栗原 2015)
。
図 3. シロイヌナズナの葉における共焦点顕微鏡像と 2 光子励起顕微鏡像
細胞核を UBQ10pro::H2B-mClover で標識している。左図は xz 平面への投影図である。上側が対物レ
ンズが存在する側である。右図は xy 平面への投影図である。カラースケールは対物レンズからの距
離を示す。スケールバーは 100 µm。Kurihara et al. (2015)より改変して転載。
これらの違いは何に起因するのであろうか。その違いは組織の構造にある。そもそも,生体組
織の深部が観察しにくいのは,生体組織が均一ではなく,屈折率の異なるさまざまな物質が入り
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植物科学最前線 7:128 (2016)
交じって作られているからである。屈折率が異なる物質の界面では,光が曲がってしまうため,
対象領域が深部になるほど,励起光が焦点に合わなかったり,蛍光タンパク質から発せられる蛍
光が対物レンズまで届かなかったりするため,深部のシグナルは検出しにくい。1 つの細胞でも
細胞質(屈折率 1.36)や細胞壁(屈折率 1.42)と屈折率が異なるため,共焦点顕微鏡では透明な
根の組織でも深部イメージングが難しいが,特に植物の葉は内部に空気(屈折率 1.00)を多く含
んでいるため,より深部イメージングが困難である。元来,葉は光合成を行う器官である。その
ため,葉は内部に細胞と屈折率の大きく異なる空気を含み,また形態の異なる細胞から構成され
ているため,取り込んだ太陽光を各所で屈折させ葉の内部に閉じ込めることによって,効率よく
光合成を行っている(Kumar & Silva 1973)
。そのような組織構造の特徴から,シロイヌナズナで
は葉やめしべが非常に深部イメージングの難しい組織である。
著者らは最近,透明化の技術を用いて,
この困難な植物深部イメージングを可能に
する手法を開発した(Kurihara et al. 2015)
。
植物の透明化でよく用いられているのは,
抱水クロラールを含んだ透明化液であろう。
古くから用いられている透明化液であるが,
抱水クロラールは蛍光タンパク質を失活さ
せてしまうため,蛍光観察を行うことはで
きなかった。そのため,動物研究分野で近
年開発されていた透明化技術(Hama et al.
2011, Susaki et al. 2014)を応用して,植物組
織に最適化した透明化試薬 ClearSee を開発
図 4. 透明化したシロイヌナズナ実生
左は PBS,右は ClearSee で処理している。マス目は 1
mm。Kurihara et al. (2015)より改変して転載。
した(Kurihara et al. 2015)
。ClearSee で組織
や細胞の中を置換し,また満たすことで空気を取り除くことができるため,組織の中を均一化す
ることができる。また,ClearSee は植物細胞からクロロフィルを取り除くことにより,自家蛍光
図 5. 透明化したシロイヌナズナの葉における共焦点顕微鏡像と 2 光子励起顕微鏡像
細胞核を UBQ10pro::H2B-mClover で標識している。図の構成は図 3 と同じである。スケールバーは
100 µm。Kurihara et al. (2015)より改変して転載。
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植物科学最前線 7:129 (2016)
を軽減し,透明度も増す(図 4)
。このように ClearSee で透明化したシロイヌナズナでは,厚さ
100 µm の葉の表面から裏面まで全ての細胞核を観察することができる(図 5, 二光子)
。そのため,
透明化処理をしない葉では観察できなかった維管束の細胞核まで観察することが可能である。ま
た,2 光子励起顕微鏡だけではなく,共焦点顕微鏡においても葉全体の細胞核を観察することが
できる(図 5, 共焦点)
。しかしながら,2 光子励起顕微鏡を用いると,S/N 比の高いイメージン
グが可能であるし,400 µm を超えるめしべのような器官でも丸ごとの観察が可能である(Kurihara
et al. 2015)
。
4.展望
本稿では,植物組織を深部イメージングするための 2 光子励起顕微鏡の特徴および注意点につ
いて紹介してきたが,2 光子励起顕微鏡は観察するだけではない活用法もある。2 光子励起顕微鏡
では,1 つの蛍光分子が 2 つの光子を同時に吸収し 2 光子励起状態へ遷移するために,光源とし
て光子密度を高めることができるフェムト秒パルスレーザーを用いている。フェムト秒パルスレ
ーザーは瞬間的なピークパワーが非常に高いため,細胞に局所的ダメージを与えることが可能で
ある。この特性を利用して,タバコ培養細胞内のアクチン繊維の一部を損傷させたり,受精卵が
不等分裂して生じる 2 つの細胞のうち 1 つの細胞だけにダメージを与えたりすることも可能とな
っている(Hasegawa et al. 2014, Gooh et al. 2015)
。このように,細胞を観察しながら時空間特異的
にフェムト秒パルスレーザーで損傷を与え,その影響をリアルタイムに観察する「ライブセル解
析」は,植物の発生研究において非常に重要な解析法になっていくであろう(Kurihara et al. 2013)
。
2 光子励起顕微鏡により深部イメージングが可能であるため,ライブセル解析が植物の深部で起
こっている生命現象にも適用可能である。まだ植物研究者には 2 光子励起顕微鏡は普及していな
いため,本稿が 2 光子励起顕微鏡を使ってみようというきっかけになれば幸いである。名古屋大
学には植物科学最先端研究拠点ネットワークにより整備された二光子顕微鏡が導入されており、
植物科学研究者への支援を行っている。常駐のチーフコーディネーターが、利用者の研究目的に
合わせた顕微鏡選定および解析方法などの相談にのり、顕微鏡操作についても技術支援を行って
いるので、ぜひ名古屋大学ライブイメージングセンターのウェブサイト
(http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/liveimagingcenter/index.html)をご覧頂き、利用して頂きたい。
5.謝辞
本研究の一部は文部科学省最先端研究基盤事業植物科学最先端研究拠点ネットワークの支援に
より名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)にて実施された。
6.引用文献
Gooh, K., Ueda, M., Aruga, K., Park, J., Arata, H., Higashiyama, T., & Kurihara, D. 2015. Live-cell
imaging and optical manipulation of Arabidopsis early embryogenesis. Dev. Cell 34: 242-251.
Hama, H., Kurokawa, H., Kawano, H., Ando, R., Shimogori, T., Noda, H., Fukami, K., Sakaue-Sawano, A.,
& Miyawaki, A. 2011. Scale: a chemical approach for fluorescence imaging and reconstruction of
transparent mouse brain. Nat. Neurosci. 14: 1481-1488.
BSJ-Review 7:129 (2016)
植物科学最前線 7:130 (2016)
Hasegawa, J., Higaki, T., Hamamura, Y., Kurihara, D., Kutsuna, N., Higashiyama, T., Hasezawa, S., &
Matsunaga, S. 2014. Vacuole subdivision in plant cell growth by the genotoxic stress inducing DNA
double strand breaks. Cytologia 79: 467-474.
Kawakami, R., Sawada, K., Kusama, Y., Fang, Y. C., Kanazawa, S., Kozawa, Y., Sato, S., Yokoyama, H., &
Nemoto, T. 2015. In vivo two-photon imaging of mouse hippocampal neurons in dentate gyrus using a
light source based on a high-peak power gain-switched laser diode. Biomed. Opt. Express. 6: 891-901.
Kumar, R. & Silva, L. 1973. Light ray tracing through a leaf cross section. Appl. Optics 12: 2950-2954.
Kurihara, D., Hamamura, Y., & Higashiyama, T. 2013. Live-cell analysis of plant reproduction: live-cell
imaging, optical manipulation, and advanced microscopy technologies. Dev. Growth Differ. 55: 462-473.
Kurihara, D., Mizuta, Y., Sato, Y., & Higashiyama, T. 2015. ClearSee: a rapid optical clearing reagent for
whole-plant fluorescence imaging. Development 142: 4168-4179.
水多陽子, 栗原大輔 2014. 2 光子励起顕微鏡を用いた生体深部イメージングと光顕微操作. 植物
の生長調節 49: 96-103.
Mizuta, Y., Kurihara, D., & Higashiyama, T. 2015. Two-photon imaging with longer wavelength excitation
in intact Arabidopsis tissues. Protoplasma 252: 1231-1240.
Susaki, E. A., Tainaka, K., Perrin, D., Kishino, F., Tawara, T., Watanabe, T. M., Yokoyama, C., Onoe, H.,
Eguchi, M., Yamaguchi, S., Abe, T., Kiyonari, H., Shimizu, Y., Miyawaki, A., Yokota, H., & Ueda, H. R.
2014. Whole-brain imaging with single-cell resolution using chemical cocktails and computational
analysis. Cell 157: 726-739.
BSJ-Review 7:130 (2016)
植物科学最前線 7:131 (2016)
サリチル酸とジャスモン酸シグナルのクロストーク機構の解明
吉村 亮 1, 野元 美佳 1, 多田 安臣 1,2
1. 名古屋大学 大学院 理学研究科
〒464-8602 名古屋市千種区不老町
2. 名古屋大学 遺伝子実験施設
〒464-8602 名古屋市千種区不老町
Ryo Yoshimura1, Mika Nomoto1, Yasuomi Tada1,2
Reciprocal regulation between salicylate- and jasmonate-responsive transcription factors in
plant immunity
Key words: cofactor, cross-talk, plant hormone, signal network, transcription factor
1. Division of Biological Science, Graduate School of Science, Nagoya University, Furo-cho,
Chikusa, Nagoya, Aichi 464-8602, Japan
2. Center for Gene Research, Nagoya University, Furo-cho, Chikusa, Nagoya, Aichi
464-8602, Japan
1.はじめに
生物は一生のうちに病原菌による感染,虫害,環境の変化による乾燥,冷害や紫外線等の
多種多様なストレスに曝される。しかし,生物がこうした環境下でも生存,成長を維持でき
るのは,多様な環境情報を統合して対応する手段を有しているためである。我々,哺乳類を
含めた動物は逃避によってストレス被害を最小限に留めることができるが,地に根を張って
生きる植物は逃避手段を有していないため,動物とは異なる手段を用いて耐性機構を発揮す
るよう進化した。その代表例の一つとして,植物は環境ストレスを認識すると,各種植物ホ
ルモンシグナルを活性化させる。特に,植物は寄生菌による感染を受けるとサリチル酸(SA:
salicylic acid)と呼ばれる植物固有のホルモンを蓄積し,寄生関係の樹立を阻害する。一方,
腐生菌による感染や虫害に対しては,ジャスモン酸(JA: jasmonic acid)を合成し,JA 依存的
な適応能力を誘導する。現在までに,多くの植物ホルモンシグナルは相互作用することが示
されており,このことは,植物は多様な環境情報に基づき各情報伝達経路のリプログラミン
グを行うことを示唆する。SA と JA の相互作用はその代表例であり,本稿では,この複雑な
情報伝達ネットワークの理解に向けた新奇な取り組みの一部を紹介する。
2.SA,JAシグナル及びクロストーク制御に関するこれまでの知見
2-1.SAが誘導する適応機構
植物は寄生菌の感染を認識すると,感染部位で活性酸素種や SA の生成を伴う過敏感反応
R. Yoshimura, M. Nomoto, & Y. Tada-1
BSJ-Review 7:131 (2016)
植物科学最前線 7:132 (2016)
(HR: hypersensitive response)と称されるプログラム細胞死を誘導し,周辺領域への感染拡大
を阻止する(Mur et al. 2008)。更に,被感染細胞の周辺細胞及び遠隔葉では HR によって伝
播した全身性の緊急シグナルを感知し,SA の生成,蓄積を介した,全身獲得抵抗性(SAR:
systemic acquired resistance)を誘導することで,二次的な感染に対する防御システムを発揮す
る ( Fu & Dong 2013 )。 こ の よ う な SA 依 存 的 な 免 疫 応 答 の 鍵 制 御 因 子 と し て ,
NONEXPRESSOR OF PATHOGENESIS-RELATED GENES 1(NPR1)が同定されており,実際
に本因子の機能欠損型変異体 npr1 では病原菌に対して免疫不全を示すことが報告されてい
る(Cao et al. 1994, Wang et al. 2006)
。NPR1 は,SA 応答性遺伝子の 99%以上を調節すること
から転写因子として機能すると想定されていたが,DNA 結合ドメインを保有せず,一方でタ
ンパク質相互作用に関与する BTB/POZ ドメイン,アンキリンリピートドメイン及び核移行
シグナルを有することから(Aravind & Koonin 1999, Cao et al. 1997)
,転写補助因子として核
内で機能することが予測された。現在までに,NPR1 の発現レベルは病原菌感染等によって
大きな変動は認められず,後述のように,その活性化は翻訳後修飾により調節されることが
明らかになっている(Fu et al. 2012, Spoel et al. 2009)。
図 1 SA シグナルの鍵転写補助因子である NPR1 の活性化モデル
Basal は健常状態であり,NPR1 は Cullin3(CUL3)型 E3 ユビキチンリガーゼ複合体のアダプター
である NPR4 と結合することで,核内で恒常的に分解される。SAR(+SA)誘導時には,酸化還元
状態の変化により細胞質で蓄積した NPR1 オリゴマーは,モノマーへと還元され,核内に移行する。
NPR1 は,TGA 等の標的転写因子(TFs)を介して SA 応答性遺伝子群の発現を誘導する。HR 領域
(++SA)では,SA と結合した NPR3 が CUL3 のアダプターとして機能することで,NPR1 の分解
を誘導する。
++SA は,HR 部位における SA が高濃度に蓄積した状態を示しており,NPR1 は SA と結合した NPR3
によって分解される。
図1で示すように,NPR1 はパラログの SA 受容体である NPR3 と NPR4 を介して,Cullin3
(CUL3)型 E3 ユビキチンリガーゼ複合体により分解制御を受ける。健常状態(Basal)にお
いて,CUL3 のアダプターとして機能する NPR4 は,NPR1 を恒常的に分解誘導する。一方,
R. Yoshimura, M. Nomoto, & Y. Tada-2
BSJ-Review 7:132 (2016)
植物科学最前線 7:133 (2016)
病原菌の感染により SA 濃度が上昇した SAR 部位(+SA)では,酸化還元状態の変化に伴い
酸化型オリゴマーが蓄積する。その後,モノマーへと還元された NPR1 は核内に移行し,
Pathogenesis-related
(PR)
遺伝子をはじめとする SA 応答性遺伝子群の発現を誘導する(Després
et al. 2000, Saleh et al. 2015, Wang et al. 2006, Zhang et al. 1999)
。NPR4 は SA に対する結合能が
高く,SAR により蓄積した SA を認識すると,NPR1 との結合能を失う。一方,NPR3 は SA
と結合することで NPR1 と相互作用するが,SA に対する結合親和性が低いために,SAR 領
域においては NPR1 と強く結合することはない。その結果,SAR 領域において NPR1 は蓄積
することになる。病原菌を認識した HR 部位(++SA)では高濃度の SA が存在するため,SA
を認識した NPR3 は NPR1 の CUL3 のアダプターとして機能し,NPR1 の分解を導く(Fu et al.
2012, Spoel et al. 2009, 野元・多田 2013)
。このように,NPR1 は SA 濃度依存的に分解制御を
受け,標的遺伝子発現を行っていると考えられる。
2-2.JAが誘導する適応機構
腐生菌による感染や虫害に対して,植物は JA 応答性の情報伝達経路を活性化することが
知られている(Howe & Jander 2008)
。生成された JA は,JA 受容体である CORONATINE
INSENSITIVE1(COI1)が,JASMONATE ZIM DOMAIN(JAZ)と結合することで下流へと
シグナルを伝達する(Chini et al. 2007, Thines et al. 2007)
。F-Box タンパク質である COI1 は,
26S ユビキチンプロテアソーム系に関わる SCF 複合体を形成するタンパク質の一つであり,
ユビキチン化された基質を分解へと導く(Pauwels & Goossens 2011, Xie et al. 1998)
(図 2)
。
一方,
JAZ は JA シグナルのアクチベーターである bHLH 型転写因子 MYC2,
MYC3 及び MYC4
と結合し,その転写機能を阻害する抑制因子として機能する(Fernandez-Calvo et al. 2011,
Zhang et al. 2015)
。通常,JAZ は MYC 転写因子群と結合することで JA シグナルを抑制して
いるが,JA 依存的
に COI1 と結合し,
引き続くプロテア
ソーム系を介した
分解制御を受ける。
その結果,MYC 転
写因子群は JAZ に
よる抑制から解除
され,MYC 転写因
子認識配列である
G-box(CACGTG)
に結合することで
JA 応答性遺伝子群
の発現を誘導する。
図 2
JAZ リプレッサータンパク質を介した JA シグナルの活性化モデル
Basal は健常状態であり,JAZ タンパク質はアクチベーターの MYC 転写因
子群を抑制している。+JA は腐生菌感染時であり,JA 受容体である COI
を含む SCFCOI 複合体は JAZ を分解し,それにより活性化した MYC 転写
因子群によって JA 応答性遺伝子群の発現を誘導する。
2-3.SAとJAシグナルのクロストーク機構
R. Yoshimura, M. Nomoto, & Y. Tada-3
BSJ-Review 7:133 (2016)
植物科学最前線 7:134 (2016)
前述のように,植物は各種ホルモンシグナルを活性化させ,病原菌や害虫に対して防御策
を講じる。では,多種多様な病害虫による被害が複合的に生じる自然界において,どのよう
な機構により情報を処理するのであろうか。植物は,病原菌や乾燥といった異なるストレス
に対して,動的にホルモン量やホルモンシグナルを調節し,外部環境に最適な反応を駆動す
る。実際,個々のホルモン間でクロストークの存在が認められており,SA と JA のクロスト
ークに関しても同様である。これまで,SA/JA クロストークは環境次第で相乗的に,またあ
る時には拮抗的に干渉し合うと報告されている(Pieterse et al. 2012)
。特に,SA が JA 応答を
抑制する現象に関しては明らかになりつつあり,SA シグナルの鍵制御因子である NPR1 が
JA 応答の抑制に関与することが示された(Spoel et al. 2003)
。また,SA が JA 応答の正の転
写因子である OCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS AP2/ERF domain protein 59
(ORA59)の分解を促進することで,JA 依存的な遺伝子発現を部分的に抑制するといった機
構も報告されている(Van der Does et al. 2013)
。しかし,SA が NPR1 を用いてどのように JA
シグナルを抑制するか,その大部分の分子機構は未解明である。
本稿では,新奇技術基盤を用いることで明らかになった NPR1 の相互作用因子とそれによ
って解明された SA/JA クロストーク制御機構を紹介する。興味深いことに,JAZ が NPR1 と
同様に SA 応答性遺伝子発現を正に制御することも明らかになったので併せて議論する。
3.SAシグナルはNPR1を介してJAシグナルを抑制する
3-1.NPR1はG-boxを介してJA応答性遺伝子群の発現を抑制する
前述のように,転写補助因子である NPR1 は,SA 応答性遺伝子発現の大部分を制御するこ
とから(Wang et al. 2006),NPR1 が標的とする転写因子は多数存在することが示唆されてい
る。即ち,Yeast Two-Hybrid System(Y2H)等により同定された TGA 転写因子だけでは(Spoel
& Dong 2012)
,NPR1 の機能を全て説明することは困難であり,従来法とは異なる解析手法
を用いた標的転写因子の探索が期待されていた。そこで私たちは,NPR1 依存的な JA 応答の
抑制機構を解明するために,新奇無細胞タンパク質合成系を確立し,NPR1 標的転写因子の
探索を試みた。
Arabidopsis thaliana の野生型植物 Col-0 に JA を処理して発現誘導される JA 応答性遺伝子
群は,SA と JA の共処理時に NPR1 依存的に発現抑制されることが報告されている(Spoel et
al. 2003)
。従って,NPR1 依存的に発現抑制される JA 応答性遺伝子群のプロモーター上には,
NPR1 が標的とする転写因子のシスエレメントが高頻度に出現すると想定される。そこで,
本仮説を検証するために,
JA 処理または SA/JA 共処理を行った Col-0 及び npr1-3 の RNA-seq
解析を行った。その結果,Col-0 に JA 処理をして発現する 1774 遺伝子群のうち,289 の JA
応答性遺伝子群が NPR1 依存的に抑制された(図 3A)。次に,当該 289 遺伝子群のプロモー
ター上に存在する特異的な DNA 結合ドメインを予測するためにプロモーター解析を行った
結果(Yamamoto et al. 2011),JA シグナルの正の転写因子である MYC 転写因子群が認識する
G-box(CACGTG)が NPR1 制御シスエレメントとして検出された。本解析以外にも,シス
エレメント解析プログラムである POBO(Kankainen & Holm 2004)及び Athena(O'Connor et
al. 2005)に供試した結果,同様に G-box が統計学的に有意な配列として検出されることを確
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認している(図 3B)
。このことは,NPR1 が MYC 転写因子と結合し,JA 応答性遺伝子群の
発現制御に関与することを示唆する。
図 3 NPR1 依存的に制御される JA 応答性遺伝子群の選抜とプロモーター解析
A) RNA-seq 解析より,NPR1 依存的に発現抑制される JA 依存的な 289 の遺伝子
群を選抜した。選抜した遺伝子群のうち,Col-0 と比較して npr1-3 において SA/JA
共処理で高発現していた上位 20 の遺伝子群を示す(FDR < 0.01)
。Color Scale は
log2 fold-change values を示す。
B) A で選抜した 289 遺伝子群の転写開始点から上位 1000 bp のプロモーターに対
して Athena analysis を行った。JA シグナルのアクチベーターである MYC 転写因
子群の結合配列(CACGTG)が高頻度に検出された。
3-2.NPR1はプロテアソーム系を介したMYC2の分解を促進する
NPR1 が MYC 転写因子群と直接相互作用するかを検討するために,NPR1 及び MYC2,
MYC3,MYC4 転写因子群を無細胞タンパク質合成系により合成し,NPR1-MYC 複合体形成
の有無をタンパク質-タンパク質相互作用を検証するための手法である AlphaScreen assay 及
び bimolecular fluorescence complementation(BiFC)assay を用いて検証した(図 4A)
。その結
果,NPR1 はポジティブコントロールとして用いた JAZ1 と同様に(Fernandez-Calvo et al. 2011)
,
両解析系で MYC と結合することを確認した。
SA と JA シグナルが共存した場合の植物葉では,JAZ の分解により MYC 転写因子群が抑
制解除される(Van der Does et al. 2013)
。しかし,MYC タンパク質の活性化にも関わらず JA
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応答性遺伝子群は発現しないことから,NPR1 による JAZ 標的転写因子群に対するクロスト
ーク制御機構が存在すると考えられていた。NPR1 が JAZ と同様に MYC 転写因子を標的と
すると示されたが,どのようにして NPR1 は MYCs の機能阻害を行っているのだろうか。
NPR1 が MYC2 の G-box 結合能に影響を与えるかを in vitro pull-down assay により検証したが,
MYC2 の G-box 結合能は NPR1 の有無にかかわらず一定であった。MYC2 はプロテアソーム
系を介した分解制御を受けるタンパク質であり(Zhai et al. 2013)
,NPR1 は E3 ユビキチンシ
ステムに関与する可能性があるといった知見より(Furniss & Spoel 2015)
,次に NPR1 による
MYC2 の分解制御の可能性を調査した。MYC2-GFP を発現させた Col-0 及び npr1-3 に JA 及
び SA/JA 共処理を行い,MYC2 のユビキチン化を評価したところ,NPR1 依存的に MYC2 は
ユビキチン化されることが明らかになった。つまり,NPR1 は MYC2 のユビキチン化とプロ
テアソーム系を介した分解を促すことで JA 応答を抑制することが示唆された(図 4B)
。
図 4 NPR1 は MYC 転写因子群を介して JA シグナルを抑制する
A) AlphaScreen システムの原理:NPR1 はビオチン化タグが付加されており,スト
レプトアビジンビーズ(Donor beads)が特異的に結合する。一方,MYC 転写因
子は FLAG タグを持つので,抗 FLAG 抗体ビーズ(Acceptor beads)が結合する。
Donor beads が 680 nm の光で励起されると,一重項酸素が発生し,これにより
Acceptor beads が 520-620 nm の発光を示す。
B) Basal は JAZ リプレッサータンパク質が MYC 転写因子群を抑制している。
SA/JA 共処理時において,JAZ の分解により MYC タンパク質が抑制解除される
が,活性化した NPR1 と結合し,結果として JA シグナルは抑制される。
4.JAZはNPR1と同様にSAシグナルのポジティブレギュレーターとしても機
能する
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4-1.JAZはSA応答性遺伝子群の発現を促進する
SA による JA 応答の抑制は,転写補助因子である
NPR1 が MYC2 を標的として生じることから,JA シ
グナルにおける転写補助因子 JAZ は,NPR1 と同一
の転写因子を標的とするという仮説を立てた。そこ
で,まず JAZ 依存的な遺伝子発現プロファイルを得
るために,Col-0,npr1-3,JAZ3 タンパク質が JA 依
存的な分解を受けない 35S::JAI3ΔC 及び jai3-1 植物
に SA を処理し(Chini et al. 2007)
,RNA-seq 解析を
行った。その結果,SA 処理によって NPR1 依存的
な発現誘導を示す遺伝子のうち,35S::JAI3ΔC では
109 の遺伝子が,また jai3-1 で 173 の遺伝子が Col-0
より高発現していた。これらの NPR1/JAZ 依存的な
遺伝子群には,PR-1 や PR-2 を始めとする SA 応答
性遺伝子が含まれており,JAZ が SA 誘導性の遺伝
子発現機構を正に調節する可能性が示された。また,
病 原 性 細 菌 で あ る Pseudomonas syringae pv.
maculicola(Psm ES4326)を Col-0,jai3-1 及び npr1-3
に接種し,3 日後に病徴を観察した結果,Col-0 と比
較して jai3-1 では葉の黄化が抑制されていた(図
5A)。更に,jai3-1 及びCol-0 の半葉に Psm ES4326
を接種し,未接種葉での PR-1 発現量を調査したと
ころ,jai3-1 では Col-0 と比較して SA 応答性遺伝子
の発現量の増加が認められた。このことから,病原
図5
JAZ は SA シグナルのコアクチベ
ーターとして機能する
A) Col-0 , jai3-1 及 び npr1-3 に Psm
ES4326(OD600=0.001)を接種し,3 日
後の病徴を観察した。
B) Col-0,jai3-1,jai3-1/npr1-3 及び npr1-3
に 0.5 mM SA を処理し,SA 応答性遺伝
子である WRKY38 の発現を確認した。
エラーバーは SD を示す(n=3)
。
菌感染における SA 依存的な免疫応答にも JAZ はコアクチベーターとして機能することを確
認した。興味深いことに,jai3-1 npr1-3 の二重変異体では,PR-1 や WRKY38 の発現,更には
Psm ES4326 に対する抵抗性は全く誘導されず,npr1-3 と同等の表現型を示した(図 5B)
。以
上の結果より,JAZ のポジティブレギュレーターとしての機能は NPR1 依存的であることが
示唆された。
4-2.JAZはNPR1と同様にWRKYのW-box結合能を阻害する
上述した RNA-seq 解析より,NPR1/JAZ 依存的に制御される遺伝子群のプロモーター上に
は NPR1 及び JAZ が制御する転写因子の認識配列が高頻度に出現すると考えられる。そこで,
選抜した 109 及び 173 遺伝子に対してプロモーター解析を行った結果,WRKY 転写因子が認
識する W-box(TTGAC)が高頻度に出現することを明らかにした。WRKY は植物特有の転
写因子ファミリーであり,いくつかの WRKY は SA や JA 応答性の遺伝子発現の促進や抑制
に関わる重要な転写因子であることが報告されているが(Rushton et al. 2010)
,その転写活性
機構は不明な点が多い。上述のように,NPR1 と JAZ の両制御因子が WRKY の転写活性を調
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節することが示唆されたため,NPR1,JAZ 及び WRKY 転写因子群を用いた相互作用スクリ
ーニングを行った。
Arabidopsis thaliana には,74 の WRKY 転写因子が報告されており(Rushton et al. 2010)
,
その中でも葉で恒常的に発現しているもの,または SA 及び JA 処理により発現誘導される
51 の WRKY タンパク質を無細胞タンパク質合成系により作成し,AlphaScreen assay に供試
した。その結果,NPR1 は SA シグナルのリプレッサーとして知られる WRKY11,WRKY17
及び WRKY70 と結合することを明らかにした(Journot-Catalino et al. 2006, Wang et al. 2006)。
一方,SA 応答のアクチベーターである WRKY18(Wang et al. 2006)とは相互作用する可能
性が低いことが示唆された。
次に,JAZ と 51 の WRKY 転写因子群の相互作用を同手法で検証したところ,興味深いこ
とに,JAZ は NPR1 と同種の WRKY を標的とすることが示された。本相互作用は BiFC assay
を用いた in vivo においても確認していることから,SA シグナルの活性化機構の本質は,
NPR1/JAZ タンパク質によるリプレッサーWRKY タンパク質の機能抑制であることが考えら
れる。
実際に,
NPR1 と JAZ が WRKY の DNA 結合能に与える影響を検討するために,
WRKY70
及び WRKY18 と W-box を用いて,3-2 と同様に in vitro pull-down assay を行った。その結果,
NPR1 及び JAZ1 は WRKY70 の W-box 結合能を量依存的に抑制することが明らかになった。
また,NPR1/JAZ1 は in vitro で WRKY18 に結合しないため,WRKY18 の DNA 結合能にも影
響を与えなかった。図 6 に示すように,NPR1 と JAZ は協調的に WRKY70 等のリプレッサー
WRKY タンパク質の DNA 結合能を阻害することで,SA 応答を正に制御することが示唆され
た。
図 6 NPR1 と JAZ タンパク質を介した SA シグナルの活性化モデル
Basal は健常状態であり,NPR1 は恒常的に分解されている。SA シグナルのリプレッサ
ーWRKY 転写因子群により,SA 応答性の遺伝子発現は抑制されている。+SA は病原菌
感染時であり,活性化した NPR1 は,リプレッサーWRKY の W-box 結合能を抑制する
ことで,SA 応答性遺伝子群の発現を誘導する。大量に存在する NPR1 が MYC 転写因
子とも結合することにより,遊離した JAZ タンパク質も NPR1 と同様にリプレッサー
WRKY を標的としたコアクチベーターとして機能すると示唆される。
R. Yoshimura, M. Nomoto, & Y. Tada-8
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5.まとめと今後の展望
植物は,多様な環境刺激に対応する個々のシグナル伝達経路を,統合制御することで自身
を守っている。この複合的な情報ネットワークの解明は極めて重要な課題であるが,その理
解は不十分である。
本稿では,NPR1 及び JAZ が転写コンテクスト依存的に機能転換し,SA/JA シグナルを制
御する分子機構を紹介した。即ち,SA 応答の鍵転写補助因子である NPR1 は,JA シグナル
のアクチベーターである MYC 転写因子群の機能を抑制し,JAZ リプレッサータンパク質と
同様にコリプレッサーとして機能することを明らかにした。一方,NPR1 と JAZ タンパク質
の両方が,リプレッサーWRKY 転写因子を標的とし,SA 応答性遺伝子発現を促進するアク
チベーターとして機能することも明らかになった。このような主要制御因子を介した各情報
伝達経路のリプログラミングは,SA/JA シグナルのみに見られる特徴的な機構であろうか。
私たちは,ホルモンクロストークの理解の一端として,アブシシン酸(ABA: abscisic acid)
の応答経路に SA が及ぼす作用の検証も行っている。遺伝学的及び生化学的解析から,ABA
応答性遺伝子群の発現が SA 及び NPR1 依存的に制御されることが示唆された。このように
NPR1 及び JAZ を始め,各情報伝達経路の鍵制御因子を介したシグナルネットワークのリプ
ログラミングは,植物における環境応答の分子基盤ではないかと考えられる。
謝辞
本稿で紹介した研究は,文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究「植物の環境感
覚:刺激需要から細胞応答まで」
,及び「植物の成長可塑性を支える環境認識と記憶の自律分
散型統御システム」の支援を得て遂行した。
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