CCD 観測の手引き

CCD 観測の手引き
~ WS による一次処理 ~
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一般的指針
Astromed CCD
カメラによる観測はパソコン(sirius : IP 150.86.40.63)で行われるが観測終
了後は WS で一次処理を施さなくてはならない。sirius のハードディスクの容量は約 150MB しか
なく、2×2 ビンの観測の場合 300 イメージで一杯になって観測の続行が出来なくなってしまう。
そこで、毎日の観測が終わったら、速やかにデータを WS(galaxy2 : IP 150.86.40.191)に転送し、
sirius の HD を掃除しなくてはならない。しかし、誤った転送をして(たとえば、binary 転送を
忘れる)これに気付かずデータを消去すると泣きをみることになるので、確認を怠らないことが大
切である。
galaxy2 の上では/home2/obsdata/okdccd/というディレクトリの下に観測した日のサブディレク
トリ(例
2004 年 10 月 19 日ならば 41019)を作り、そこにデータを保存する。一次処理は、別
のディレクトリ(例
/home/astro/okdccd/ohnishi)を作成し、そこにデータを転送して行う。一
次処理は、観測した日、または数日中に完了すること。データを貯めてしまうと後の処理が大変で
ある。
一次処理とは、①バイアスイメージを作成し、フラット及びオブジェクトイメージからこれを引
くこと、②各バンド(B,V,R,I,Hα)のフラットイメージを作成し、平均を 1 に規格化した後各バ
ンドのオブジェクトイメージを割り算すること、である。
こうしてできたオブジェクトイメージ(天体画像)が後の解析に使用される。従って、どんな場
合でもまず一次処理をしなければならない。一次処理をした場合には、誰が、いつ、何年何月のデ
ータを処理したか、またバイアスを作成するのに用いた元のイメージはどれとどれか、
medeian,average のいずれを使ったか、あるいは、minmax rejection をしたか等の作業メモを必
ず残すこと。
IRAF による処理の基本は手引書(楽しい IRAF などで)学習すること。
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WS での一次処理
WS(galaxy2)で作業をするためには、使用者はまず gakaxy2 にログオンしなければならない。
galaxy2 の電源は常に入っており、使用しないときにはディスプレイのスイッチが OFF になって
いる。ディスプレイのスイッチを ON にすると画面が立ち上がる。普段は X Window が立ち上が
っており、特に意識することはないが、ディスプレイを ON にしたときに画面が真っ黒で以下の表
示が現れているときには、ログオンが必要である。
※コマンド入力例の中にある“□”は、半角スペースを示す。
galaxy2
login:
この場合はここに、userID とパスワードを次のように入力する。
galaxy2
login
passwd
:
astro (CR)
:
ccd3200 (CR)
ここで(CR)はリターンキー(ニューライン)である。二行目の passwd は、WS の保安上ディ
スプレイには表示されないので、入力ミスをしないように気をつける。また、パスワードは関係者
以外には教えてはならない。パスワードを正しく入力すると、
galaxy2%
というプロンプトがでる。これは、galaxy2 が入力待ちの状態であるという意味である。この状態
で、
galaxy2%
startx (CR)
と入力し、X Window を開く。そうすると、Windows のような画面が現れる。
2-1
準備作業
2-1-1
ds9(saoimage)
X Window を開くと、様々なアイコンが表示される。その中で画面下のツールバーの中から、
というアイコンをクリックすると、画面にコンソール画面が現れる。その中で、
galaxy2:ds9□& (CR)
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と入力し ds9 を立ち上げる。これは、バックグラウンドで実行させるので&を最後に付ける。ds9
と&の空白はなくても構わない。&を入れ忘れた場合には ds9 を終了するまでこのウィンドウから
コマンド入力はできない。出てきた ds9 は、画面の右によけておく。
2-1-2
xgterm
xgterm を開く。コンソール上で
galaxy2%
xgterm□& (CR)
と入力する。これもバックグラウンドで実行する。以後の作業は、ここで開いた xgterm 上で行う。
2-1-3
データの転送
観測データを sirius から吸い上げる。まず galaxy2 側で、/home2/obsdata/okdccd に移る。そこで、
観測日ごとのディレクトリを作り、その中に入る。
以下に 2004 年 10 月 10 日の例を示す。(□は半角スペースを示す。)
galaxy2% cd□/home2/obsdata/okdccd (CR) :ディレクトリに移動
galaxy2% ls (CR)
:okdccd の中身を確認
galaxy2% mkdir□41010 (CR)
:41010 という名前のディレクトリを作る
galaxy2% cd□41010 (CR)
:41010 に移動
ここから、ftp で sirius に接続する。この時は、sirius の userID とパスワードが必要なので、そ
れらを要求に従って入力する。(当然のことだが、以下の作業をするときには sirius が運転中でな
ければならない。sirius は観測時以外は動いていないのが普通なので確認が必要である。
galaxy2% ftp□sirius(CR)
user :
passwd :
user32(CR)
:userID
ccd3200(CR)
:パスワード
すると ftp>というプロンプトが出るので
ftp>
binary (CR)
:バイナリ-データ転送モード(必須!!)
ftp>
prompt(CR)
:要求確認 OFF
ftp>
mget□okc04_?.??? (CR)
:ファイルの吸い上げ
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と入力する。mget 後、ファイル名の最初の ? は観測のセッションナンバーで、最後の三桁はファ
イルナンバー(番号:3 桁)である。これらのナンバーは観測原簿により確認すること。? の代わ
りに * を入れると、その時 sirius の HD にある全データが転送されてくる。転送が終了すると、
ftp>というプロンプトがでるので終了(quit)と入力し、sirius との接続を切断する。
2-1-4
変換
イメージデータのフォーマット変換。sirius の HD に蓄積された生データは astromed 社の独特の
フォーマットであって、このままでは iraf による処理(読み込み)ができない。そこで、この形式
のデータを iraf が読める形の FITS フォーマットに変換しなくてはならない。この作業を行うプロ
グラムは卒業生である三分一君が作成したものが原型になっている。(2004 年
松本氏により改
良)
galaxy2%
cd□/home2/obsdata/okdccd/(撮影した日のディレクトリ) (CR)
galaxy2%
ccfits□okc04_?.???□(n1)□(n2) (CR)
:変換プログラムの起動
(n1 は撮影開始番号、n2 は撮影終了番号)
このように入力すると、astromed フォーマットのファイルと FITS フォーマットのファイルの二
種類が HD 上にできている。ls で確認する。
galaxy2%
ls(CR)
okc04_20.100 というファイルは okc0420100.fits というファイルに変換されている。これを確認し
たあと、もとのファイルを消去する。
galaxy2%
rm□okc04_20.*(CR)
:astromed データのファイルを消去
FITS 形式の全てのファイルは、procyon 上にある DVD-RAM にすべて転送して保管する。そのた
め、これらのファイルは作業後も消去せずに残しておくこと。管理者が保存した後に消去する。
以上で準備作業は終了である。
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IRAF による一次処理
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IRAF の起動
IRAF の起動は、login.cl ファイルがあるホームディレクトリで行わなければならない。
galaxy2%
cd (CR)
:ホームディレクトリに移動
galaxy2%
cl (CR)
:IRAF の立ち上げ
IRAF が立ち上がると、まず大本のレベル(cl)に入る。ここで使用できるパッケージが表示され
る。(IRAF の中で UNIX のコマンドを使用するときには先頭に!マークを付ける)
cl >
まず、ds9 にデモイメージ(dev$pix:M51)を表示し使える状態にする。
cl> disp□dev$pix□1 (CR)
:デモイメージの表示
最後の“1”はフレーム番号で、1,2,3,4 の何れかを入力する。通常は 1 でよい。
ここでうまく M51 の絵が出ればそれでよし、もし ds9 が死んだらコンソールウィンドウに戻って
ds9 を改めて立ち上げ、dev$pix の表示を試みる。
うまくいったら、データのあるディレクトリに移動しアーカイブからデータをコピーする。
cl> cd□/home/astro/okdccd/(自分の作成したディレクトリ) (CR)
cl> imcopy□/home2/obsdata/okdccd/*.fits□.(CR)
3-2
:ディレクトリの移動
:データのコピー
トリミング
生の CCD イメージには右と左の端にカバーがあって光を感じない帯がある。この部分を切り取っ
てイメージサイズを小さくする。
イメージの演算・操作を行う images パッケージに入る。
cl> images (CR)
im> sections□okc*.fits[15:397,*]□|□sort□>□obj.t (CR)
im> files□%%t%okc*.fits□>□obj (CR)
im> imcopy□@obj□@obj.t (CR)
これでトリミングされたイメージ(例:tokc0420100.fits)ができる。試しに表示してみて成功し
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ていたら元のイメージ(okc0420100.fits など)を消去する。
im> imdel□okc*.fits (CR)
:IRAF イメージの削除
IRAF イメージは特殊な形式であるので、消去するとき普通の UNIX コマンド(rm)を用いては
ならない!!
3-3
必ず imdel を使うこと。
バイアスの作成
観測原簿の中からバイアスイメージの一覧を作り、10枚程度を合成して(combine)バイアスを
作成する。バイアス値が時間的に変化したときには、値が同じと見なしうる範囲で合成し、複数の
バイアス(例:biasa,biasb 等)を作成する。
バイアスの作成の場合には入力ファイルを作っておくとよい。
im>ls□tokc*.fits□>□input (CR)
im> vi□input (CR)
(esc) i で入力モードに入り、
tokc0420100.fits(CR)
tokc0420101.fits(CR)
tokc0420102.fits(CR)
tokc0420103.fits(CR)
tokc0420104.fits(CR)
tokc0420105.fits(CR)
tokc0420106.fits(CR)
必要な枚数を並べた後、
:wq(CR)
でファイルをセーブする。
バイアスを合成するには imcombine タスクを用いる。使用前にパラメータファイルを編集する。
パラメータファイルとは、各タスクにさせたい仕事に関する情報を持たせるもので、中身は(epar
タスク名)で見ることができる。
im> epar□imcombine(CR)
input
== >
@input
:入力ファイル
output = = >
biasa
:結果のファイル
combine = = >
median
:median,aberage,mode が選べる
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reject
== >
minmax
:rejection の方法
これらを書き込み、:go(CR)と入力すれば実行される。他にも多くの項目があるが、それらについ
ては help を参照すること(im> help□imcombine(CR)とすれば、画面に説明文が表示される。
)
編集を中止するには、:q(CR) と入力する。
終わったらバイアスを表示し、統計量(平均、標準偏差など)を記録しておく。
im> disp□biasa (CR)
im> imstat□biasa (CR)
:統計量の表示
満足できるバイアスができたら、元のバイアスイメージは消去する。
im> imdel□@input (CR)
3-4
バイアスを引く
バイアスができたら、オブジェクトとフラットイメージ全てからそれを引く。バイアスの生イメー
ジを全部消去した後入力ファイル(input)を作る。またこのように、ある一連の複数データを一
括して処理するには、入力ファイル(input)と出力ファイル(output)をあらかじめ作っておくと良い。
im> !rm□input (CR)
:バイアスイメージを作るときの input ファイルを削除
im> ls□tokc*.fits□>□input (CR) :オブジェクト・フラットイメージを input ファイルに出力
im> cp□input□output (CR)
:input を output へコピーする
im> vi□output (CR)
:output を編集し IRAF ファイル名一覧を作成
IRAF のファイル名は単純な方が良いので、例えば tokc0420100.fits は btc20100.fits というファ
イル名にすると良い。そのためには、vi の一括置換の機能が便利である。
output の名前は、btc20100.fits などとする。
◎vi の一括置換
vi のなかで、:(コロン)を打ち込み、
:n1,n2s/ABC/abc/g(CR)のように入れる。ここで、n1 と n2 は置換を始める行と終わる行、s は置
換(substitute)命令、この場合には、文字列 ABC を abc に入れ替える。ということ。最後の g は、
n1 行から n2 行の間で条件に合うものを全部置換せよ(global)ということ。また、n2 の所を行数で
はなく文字“$”にしてもよい。“$”にすると自動的に最後の行まで指定される。
im> imarith□@inputsikaku□‐□biasa.fits□@output (CR) :バイアスを引く
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できたイメージ(btc20100.fits)を表示し、成功なら元のイメージを削除する。
im> disp□btc20100.fits (CR)
im> imdel□@input (CR)
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フラットの合成
フィルター毎(B,V, R, I,Hα)のドームイメージを imcombine で合成(average)し、フラットを作
成する。例えば、V バンドのフラット(domev)が出来たとする。そのイメージの平均値を imstat
で求め、平均値で割って規格化されたフラットにする。
im> !rm□input (CR)
im> ls□btc*.fits > input (CR)
:バイアスを引いたときの input ファイルを削除
:フラット画像のリストを作る
im> epar□imcombine(CR)
imput
== >
@input
:入力ファイル
output = = >
domev
:結果のファイル
combine = = >
average
:median,average,mode が選べる
reject
minmax
:rejection の方法
== >
im> imstat□domev.fits (CR)
:平均値をnとする。
im> imarith□domev.fits□/□n□ndomev.fits (CR)
:平均値=1のフラットを作る。
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フラットフィールド
フィルター毎のフラットが出来たら、フィルター毎のオブジェクトイメージをフラットで割り、一
次処理を完了する。
オブジェクトイメージをフィルター毎に集め、入力ファイル(input)を作る。それを対応するフラ
ットで割る。入力ファイルの編集で間違いがあってはならないので注意を要する。出力ファイル
(output)の中身の名前は f20100.fits などとする。
im> !rm□input (CR)
:フラットを割った時の input ファイルを削除
im> ls□btc*.fits□>□input (CR)
:フラット画像のリストを作る
im> vi□input (CR)
(ここで、vi を使ってフィルター毎の画像リストの編集を行う)
im> cp□input□output (CR)
im> vi□output (CR)
(ここで、vi の一括置換機能を使って出力画像リストの編集を行う)
im> imarith□@input□/□ndomev□@output (CR)
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:フラットフィールドの割り算
結果を表示し、成功なら元のイメージを削除する。
im> disp□f20100.fits (CR)
im> imdel□@input (CR)
ここまでで、一次処理の終了した FITS ファイルは、ftp を用いて他の WS、またはパソコンに転
送して保管する。
galaxy2 での一次処理は迅速かつ統一的な方法で正確に行うことが大切である。処理した後は速や
かにデータを待避させること。仕事が終わったあとには、オリジナルの FITS ファイル以外には何
も残さないよう不要なファイルは消去する。その他にも ds9 の使用法、イメージの統計的性質など
を調べるタスク imexamine などの使用法をマスターしておくことが望ましい。
galaxy2 での作業中にトラブルに遭遇した場合、自分で解決出来ないときには、システム管理者(研
究室の先輩または先生に尋ねる)に連絡する。
Enjoy
iraf
9
safely !!