校長室だより

<平成28年4月号>
平成28年度のはじまりです
校長
稲
葉
守
朗
校長室から見える桜は、大きく枝を拡げた大木に、今を盛りと満開の花が咲き誇っています。
実に見事です。この満開の桜のように、私の心は新年度への希望と期待で熱くふくらんでいます。
さて、今年度の教育方針とも関係することから、三猿について述べさせていただきます。三猿
といえば、日光東照宮が最も有名です。東照宮の神厩舎には、古来の庚申信仰の教えを受け、誕
生から、成人して子供を授かるまでの様子を表した猿の彫刻があります。「見ざる、言わざる、
聞かざる」の彫刻は、連なる8つの作品の2番目に示されています。社会には、純真な子供には
ふれさせたくない情報が満ち溢れています。この三猿の彫刻は、純真な心を大切に育てるために
は、「悪いものは見せない、悪い話は聞かせない、悪口は言わない」ことが大切であると教えて
います。見方を変えれば、「良い話を聞かせ、良いものを見せる」ということになります。子供
たちを健全に成長させていくためにも、あらゆる機会を通して、良い話を聞かせ、良いものを見
せていきたいと思います。
室町時代の禅僧、一休さんにまつわる次のようなエピソードがあります。ある日、一休さんは
一本の曲がった松の鉢植えを玄関の前に置き、「この松がまっすぐに見えた人には褒美をやろ
う」と札を立てました。すると、多くの大人が、褒美欲しさに、「鉢植えの松は、見事なほどま
っすぐですね。」と一休さんに言ってきました。夕方になって、親子が通りかかり、その子供が
「この松は、くねくね曲がっています。」と一休さんに話しました。曲がっている松を、ありの
ままに見ることができたこの子供に、一休さんは褒美をやりました。子供は、その純真さゆえに、
素直で欲のない目で、物事をまっすぐに見ることができるのですね。
埼玉県の秩父神社には、日光東照宮の三猿とは異なる三猿の彫刻があります。「よく見て、よ
く聞いて、よく話そう」という願いが込められており、「お元気三猿」として親しまれています。
これは、本校の教育で力を入れている、「よく見て、よく聞いて、よ
く考える」、そして、「よく表現する」という目標とも繋がります。
これらがしっかりできれば、学習成果も上がり、友人関係も円滑にな
り、楽しく元気に学校生活を送れることは、間違いありません。秩父
神社の三猿にもあやかり、今年1年、健康で元気に過ごしていきたい
と思います。
舎人第一小学校は、4月から宮崎隆司副校長を始め新たな仲間が加わりました。教職員一同、
これまで以上に活気のある舎人第一小学校をつくっていきます。保護者、そして、地域の皆さま、
よろしくお願いいたします。
<平成28年5月号>
心を育てる
校長 稲
葉 守
朗
先日、2校時後の休み時間に、校庭でストレッチをしながら児童の様子を観察していると、3年
生の女児が話しかけてきました。A さん:「校長先生は、中学校の体育の先生だったんだよね。マ
マが言ってた。」B さん:
「なんで校長先生になったの?」一瞬、どのように答えたらいいのか考え
てしまいました。私は、
「勤めていた中学校の校長先生に勧められたから。」と答えました。
人格を作る要因は、80%が環境で、残りの20%が素質と言われています。このことから、家
庭や学校、そして地域社会の生活環境がいかに大切かがわかります。私達大人が、子供を育んでい
く上で大切にしたいものは、情緒的な感覚です。
きれいに咲いている花を見て、子供の関心を引くのが上手なお母さんは、笑顔でやさしく、「お
花きれいだね~」と話します。その言葉は、子供の心にスーッと心地よく浸透していきます。そう
すると、子供は、きれいに咲く花に興味を示し、花を育ててみたいとか、部屋を花で飾ってみたい
という気持ちになります。さらに、
「あの花は何という名前かな。
」と知的な興味も育っていきます。
ある教育熱心なお母さんから聞いた、反省談です。そのお母さんは、夏に満開に咲いたハイビスカ
スの花を見て、息子さんに「この花は、ハイビスカスっていうのよ。言ってごらん。
」と教えまし
た。数日後、
「この花の名前なんだっけ。」と聞きました。息子さんは「うんとね~」と困り顔。お
母さんは「ハイビスカスと教えたでしょう。」と怖い顔で言いました。このような会話が繰り返さ
れた結果、子供は間違うことを恐れるようになり、徐々に自由な発想や質問をしなくなってしまっ
たそうです。
好奇心の旺盛な、1年生のモリオくんがお母さんに聞きました。
「ぼくが歩くとお月さまも動くし、ぼくが止まるとお月さまも止まるよ。
どうして?」お母さんは、
「お月さまはね、モリオのことが大好きだから、
道で転ばないように照らしてくれているのよ。ありがたいね。」と答えました。続けて、モリオく
んは、お母さんに聞きました。
「あったかくなったら、お花がいっぱい咲くのはどうして?」お母
さんは、「寒いときに外に出るとかぜをひくから、暖かくなってから出てくるの。暖かくなると、
モリオだってお外で遊びたくなるでしょう。」と答えました。
子供は、いっぱい質問してきます。まずは、子供と向き合い、
その一つ一つを大切に受け止め、丁寧に答えていきましょう。
心が満たされ、情緒が安定すれば、何事にも意欲的に取り組もうとする
気持ちが芽生え、やがては、知的な能力も向上していきます。
今度、
「何で校長先生になったの?」と質問されたら、
「みんなのことが大好きだし、校長先生に
なると、たくさんの人を幸せにできると思ったから。」と答えようと思います。
<平成28年6月号>
「負け」から学ぶ
校長
稲
葉
守
朗
長年押入れにしまい込んでいた段ボールから、小学校時代の通知表や文集などが出てきました。セ
ピア色に染まった分厚い文集には、当時の思い出がたくさん詰まっていました。当時の担任の先生が、
ガリ版刷りで時間をかけ、真心を込めて作成してくれたことがよくわかります。自分では書いた覚え
がなかったのですが、そこには、6年生の運動会について書かれていました。今でも鮮明に残ってい
る自分の記憶と重なる内容に、当時受けたショックの大きさが伝わってきました。
最終競技の紅白対抗リレーでアンカーに選ばれた私(赤組)は、練習では、いつも3番か4番でバ
トンを受けていて、東京都トップクラスの実力者である I 君(白組)や実力急上昇中の A 君(白組)
を追う立場でした。それが運動会当日のレースでは、なんと、1番でバトンを受けることになったの
です。自分のチームメイトががんばり、1番でバトンをつないでくれたことはうれしかったのですが、
後方から I 君と A 君が私を追ってくることへの恐怖心で、体も心も硬くなっていました。ここまで来
たらやるしかない。大歓声の中、必死になって腕を振り全力で走りました。第4コーナーを過ぎ最期
の直線走路に差し掛かったとき、背後に気配を感じました。ゴールはすぐそこに迫っています。ます
ます盛り上がる歓声。ゴールまであと数歩というところで、並走する2人の姿が視界に入ってきまし
た。3人並んでゴール。着順判定の先生の声が遠くで聞こえました。1位 I 君、2位 A 君、私は3位。
完敗でした。リレーまでの総合得点は、僅差で赤組が勝っていましたが、このレース結果により白組
の逆転優勝となりました。閉会式後に、うなだれている私のところに来て、「もりおだけの責任じゃ
ないよ。」と声をかけてくれたリーダー格の Y 君。本当にありがたかったです。
子供の健全な成長には、「成功した経験」と「成功しなかった経験」の両方を、バランスよく経験
させることが大切だと言われます。世の中は、おもうとおりにいかないことの方が圧倒的に多いのが
現状です。どんなに周到な準備をして臨んでも、想定以上のトラブルが起きて、うまくいかないこと
があります。また、何事にも結果が求められ、その結果で評価されることがあります。しかし、本当
に大切なことは、成功させるためにベストを尽くすことです。そのために今を大切にして努力を続け
ることです。
20年前に同じ大学を卒業した先輩教員から聞いた言葉を思い出します。「俺たちは、スポーツを
通して数多くの勝負をしてきた。勝負を通して、『負ける』という経験もしてきた。この『負ける』
という経験が俺たちの財産となり活力を生んでいるんだ。本気で戦い、悔しい思いをしたからこそ、
相手の痛みがわかるんだ。」
勝者の笑顔と、敗者の涙は、実に対照的です。結果はどうであれ、その経験から学べることや教訓
にできることはたくさんあります。一生懸命に臨んだからこそ得られる喜びや感動を、子供たちに経
験させたいと考えています。
<平成28年7・8月号>
「笑わす前にうんと泣き」
校長
稲
葉
守
朗
役者さんや芸人さんの話によると、人を怒らせたり悲しませたりすることは、さほど難
しいことではないそうです。反対に、人を笑わせることは、とても難しいのだそうです。
「噺家(落語家)は、笑わす前にうんと泣き」という川柳があります。落語家は、高座で
滑稽な表情をしたり、絶妙な話術で私たちを笑わせてくれます。その境地に至るまでには、
師匠の指導の元、稽古に稽古を重ね、相当な苦労を重ねるのだそうです。ベテランの落語
家は、「今演じた落語を、ここまで仕上げるのに、同じ噺を400回以上は高座にかけた。」
と話していました。
落語家になるためには、まず、師匠に弟子入りをし、4年間は前座として修行します。
給料はありません。衣食住の最低限のことは師匠が面倒を見てくれます。師匠の着物をた
たんだり、お茶を入れたり、掃除をしたり等々、下働きをしながら師匠に稽古をつけても
らいます。寄席にも前座として出演させてもらえますが、プログラムに名前は載っていま
せん。つまり、お客さんが支払う代金に、前座の落語は入っていないのです。
4年間の修行を終え、師匠から認められると二つ目になります。
二つ目は、一人前として扱われますので、自分で稼がなくてはなりません。
そして、落語家にとって、最高の資格である真打ちになるまでには、個人差
はありますが、一般的には10年程度かかるそうです。最近では、歌舞伎や
能、文楽と同じように、落語も日本の伝統文化として認められ、人間国宝に認定された落
語家もいます。また、英語版を海外で披露したり、耳の不自由な方にも喜んでいただこう
と、手話を取り入れている落語家もいます。
教師は、採用されたその日から教壇に立ちます。そして、子供たちを前にして授業を行
います。給食や清掃の指導もします。宿泊を伴う自然教室や社会科見学などの校外学習、
運動会などの運営にも携わります。厳しい4年間の前座修行のようなステップは踏みませ
ん。毎日が本番、毎日が真剣勝負です。子供たちにとって、一生に一度しかない「今」を
充実させるためにも、私たち教師は、自分自身を磨き続けていかなくてはなりません。文
科省が求める「学び続ける教師」をめざし、「すべては子供のために」を合い言葉として、
チーム舎人一で、がんばっていきます。
<平成28年9月号>
「澄んだ心」
校長
稲
葉
守
朗
8月上旬、短い夏を競うかのように、山頂付近には、たくさんの高山植物が、今を盛りと咲き
誇っていました。大地が織り成す天空の楽園です。降り注ぐ陽射し、澄んだ空気、水の流れる音
や小鳥のさえずりが響き渡る世界では、心が洗われ、からだの隅々まで澄みきっていきます。大
自然の中にいると、人が本来もっている感覚がよみがえり、鋭さを増していきます。
辺りを一望できる静かな展望台に、親子4人が上がってきました。少しやんちゃな男児(1年
生)は、母親から何度も注意を受けていましたが、手すりに腰掛け、足をぶらぶらと揺らしなが
らご機嫌でした。男児は、「池がキラキラ光ってきれいだね。宝石箱をひっくり返したみたい。
ねえ、お母さん、何でキラキラ光ってるの。」と聞きました。「その感性を褒めてあげたい!」
と思う私の気持ちとは違い、「それはね、太陽の光が反射して・・・。」と、母親は答えました。
わずかな時間でしたが、美しい景色を見ながら語り合う親子とふれあうことができ、心が温かく
なりました。キラキラ光る池の水面を、宝石と受け止められる男児から、素直な心や豊かな感性
の大切さを教えられました。
ある職人が師匠に、「心が落ち着いているときには、いい考えが浮かぶのですが、怒っていた
り、混乱しているときには、いい考えが浮かんでこないのです。」と話しました。師匠は、「こ
こに、水を張った大きな器があったとしよう。中の水が、濁り、波だっていたら、自分の顔を映
しても、ありのままに見ることはできない。人の心も様々なことで乱れているときには、まわり
のものが、色や形を変えて見える。ましてや、水が火にかけられて煮えたぎっていたとしたら、
どうだろうか。」波のない澄みきった水をたたえた池は、周囲の景色をくっきりとその水面に映
し出します。人の心も、平静でなければ、ものごとを正しく見ることも、新しい発想を生むこと
もできません。
3年生の児童が、算数の授業で「48個のみかんを、5人で分けるにはどうしたらいいか。」
という問いに、「大きなジューサーで、ジュースを作って、みんなで飲む。」と答えました。解
答としては、正解にはできませんが、豊かで柔軟な発想は、とても素晴らしいです。この話を、
担任の先生から聞いた母親は、「あなたの答えは、とてもすてきよ。」と笑顔で伝えた後に、こ
の問題の解き方を教えました。この児童は、算数がとても好きになり、意欲的に学習するように
なったそうです。
子供がもっている感覚や思考力を大切にして、自らの力で伸びていくことを助け、支え、励ま
していくことが、教育の役割のひとつです。それを果たしていくためは、大人(教師)自身が、
常に自分の感情と向き合い、豊かで落ち着いた心でいることが大切ですね。
<平成28年10月号>
やりがい
校長
稲
葉
守
朗
ゴジラシリーズの第29作目にあたる「シン・ゴジラ」が、今年の夏に公開され、大ヒットしています。
昭和の時代になりますが、私が小学生の頃は、駅周辺に映画館が数件あり、夏休みなどは、よく映画を見に
行きました。東宝映画の「ゴジラ」や角川映画の「ガメラ」は定番で、ドキドキしながら戦いシーンを見て
いたことを今でも覚えています。もしも、ゴジラとガメラが戦ったらどちらが強いかなど、友人と真剣に話
し合ったものです。しかし、映画会社が違うために、実現することはありませんでした。
今回は、その「ガメラ」についてのお話です。音響担当の方の話がとても興味深かったので紹介します。
映画には、映像と音がありますが、もともと映像には音はついていません。すべて手作りで音を作成してい
くのだそうです。「ガメラ」は、「亀」の形をした怪獣なのですが、この「ガメラ」には役者さんのように
表情や、行動による感情表現がほとんど不可能で、発せられる「叫び声」のみが感情表現なのだそうです。
では、その「叫び声」をどのように作っていくのでしょうか。現代のように、発達した音響機器やPCがな
い時代の話です。基本的には、3つの音を組み合わせて作られているそうです。その3つとは、①自動車の
急ブレーキの音
②男性のいびき
③豚の鳴き声
だそうです。急ブレーキは、後半の音を引き伸ばし作成
しました。男性のいびきは、スタッフが寝ているところに行き、いびきを録音しました。豚の鳴き声は、急
ブレーキといびきに磨きを加えるために工夫して加えたそうです。まっさらで、何も音のないところに、ま
ず、どういう音を入れるかということがとても重要で、難しいところなのだそうです。これを可能にするに
は、多くの材料を持ち、繊細な神経を使っていく必要があります。映画は、他のスタッフとの共同作業なの
で、人間関係にも神経を使う必要があります。目の前に表れた完成品しか見ることのできない私たちにとっ
ては、製作に携わっている方々の苦労や厳しさについては、当事者から聞いてみないと知らないことばかり
です。担当された方は、「音響の仕事は、つらく厳しいことの連続だけれども、だからこそやりがいがある
仕事だ。」と話されていました。
子供たちの豊かな発想力を伸ばしていくために、実体験を通した学習をできるだけ多くさせたいと考えて
います。例年5年生が取り組んでいる「米コメ大作戦」は、今年度も順調に進み、大量のもち米が収穫され
ました。精米機にかけるまでは、すべて昔の農具を使い手作業で行います。保護者合同でおはぎを作り会食
できる日を楽しみにしています。4年生が中心で取り組んでいる古千谷
農園と本校花壇での大根づくりも始まりました。子供たちがこれらの体
験を通して、つらさや厳しさを体感しながらも、やりがいや達成感を実
感できるよう、教育活動を進めてまいります。
<平成28年11月号>
自然界で生きる
校長
稲
葉
守
朗
日光戦場ヶ原の昼食場所でのことです。予告通り、キイロスズメバチの女王様が登場しました。ゆったりと円
を描いて飛んでいます。何ものも恐れない堂々と飛ぶ姿には、風格と威厳が備わっていました。スズメバチを発
見した子供たちは、引きつった表情をしながらも、周遊する蜂を刺激しないように配慮していました。はじめか
ら、恰好のえさ場にしていたかのように、スズメバチは、私の目の前にある弁当箱に入っていた煮豆に、ピタッ
と足を止めました。逆立ちするように前屈みになり、鋭い口先を動かし始めました。厳つい頭を小刻みに上下動
させると、それに連動して黄色い大きなおしりがヒクヒクと動きます。周りのことなどまったく気にせず、ひた
すら煮豆の汁をなめています。鳥や動物は、食事をしているときが一番外敵に狙われやすいことから、常に緊張
感をもち、周りを気にしています。危険を察知したならば、食事を途中でやめて、
安全な距離を保とうとします。しかし、蜂をはじめ、昆虫類は、食事に専念するよ
うです。また、スズメバチの外敵となる生物は、ほとんどいないようです。むさぼ
るようにして汁をなめる一途な行動を見ていると、スズメバチに対する恐怖心は消
え、その可愛らしい仕草に愛着がわいてきました。
秋に羽化した新女王蜂は、交尾後、十分な栄養を蓄え越冬体制に入ります。甘いものも大好きで、果実、花蜜、
樹液を好んで摂食します。共に生活をしていた数百匹の仲間たちは、役割を終え死んでいきます。女王蜂は、た
った一匹で、朽ち木の中に潜み、厳しい冬を越えていかなくてはなりません。無事に春を迎えれば、数百から千
を超える卵を産み、新たな巣作りが始まります。
戦場ヶ原の樹木を見ていると、想像を絶する風雪の厳しさを感じます。幹や枝は、風下に向かって折れ曲がり、
中には根こそぎ倒れている樹木もあります。倒木には苔が生え、緑色に輝いています。女王蜂は、これら樹木の
どこかで、やがて来る春をじっと待つのでしょう。
日光自然教室の出発式のあいさつで、私は、「自然の中へ私たちが行かせてもらうのです。動物たちは、これ
から迎える過酷な冬に備えて、栄養を蓄えるのに必死です。草や木の実を一生懸命に食べている鹿や猿の姿を見
ることができるでしょう。戦場ヶ原では、蜂が飛んでいます。そのときは、怖がって追い払ったり、急に逃げた
りせず、『蜂さん、こんにちは』と言って、仲良くしましょう。」と話しました。
日光の大自然の中で、子供たちは、多くの発見や出会いを経験しました。キャンプファイヤーのフィナーレ
では、真っ暗闇に突然現れた満点の星空に、感嘆の声があがりました。「こんにちは、蜂さん。」「こんにち
は、蛾さん。」と言葉をかける男児がいました。掃除を終えてすっきりした部屋に向かって、「ありがとうご
ざいました。」と深々と頭を下げ、あいさつをする女児がいました。 6年生のみんなが、燃え盛るキャンプ
ファイヤーの炎のように輝いた日光自然教室でした。
<平成28年12月号>
希 望 の 歌
校長 稲 葉 守 朗
12月になると、多くのコンサートホールで「第九(ベートーヴェン作曲)」の演奏会が行われます。オース
トリアのウィーンで生まれた壮大な合唱付きの交響曲が、日本国民に親しまれ、年末の風物詩となっていること
に、ご本人も驚いていることでしょう。世界平和と希望を高らかに歌い上げる曲調が、無事に1年間を過ごせた
感謝の気持ちと、明るい未来を願う日本人の心にマッチしたのだと思います。
20年近く前の話になりますが、当時勤務していた中学校の音楽教師に誘われ、「第九コンサート」の合唱団
として参加することになりました。クラシック音楽にあまり興味のなかった私にとって、このコンサートへの参
加は、大きな転機となりました。生徒と一緒に専門指導員のレッスンを受け、なじみの
ないドイツ語やテノールのパートを覚えました。一生懸命練習したのですが、テノール
は音域が広く、自信をもってしっかり歌いきれるレベルにはなりませんでした。
両国国技館でのリハーサルには、100名を超す演奏者と全国から参加した5000人の合唱団が集まりまし
た。指揮を担当するのは石丸 寛(ひろし)さんです。石丸さんは、地域に根ざした音楽活動を提唱し、198
5年の第九コンサート第1回公演の立ち上げから、10年間にわたり指揮者として活躍してきました。石丸さん
は、初心者にもわかりやすい言葉で、5000人の合唱団による第九コンサートを行う意義や、聴覚を失ったベ
ートーヴェンが苦悩の中で第九交響曲を作曲したこと、また、世界平和を願った詩について説明をしてくれまし
た。これらの話は、とても心にしみました。演奏当日の石丸さんの指揮は、リハーサル以上に熱く豪快になり、
私はぐんぐん引き込まれていきました。無心になって歌いきった達成感は忘れられません。
そのころの私は、毎日のように起こる生活指導上の問題に、常に緊張感が高まった状態でした。学校間トラブ
ルや校内暴力、恐喝などが次々と起きました。教員間でも指導方法について意見が合わず、口論となることもあ
りました。生活指導主任の私は、日々奔走し、心とからだを休めることができませんでした。
このような私の心を癒し、励ましてくれたのが、指揮者石丸さんであり、ベートーヴェンでした。当時、石丸
さんは、がんに侵されながらも、音楽に対する情熱を前面に打ち出し、指揮者として精力的に音楽活動を進めま
した。ベートーヴェンもまた、聴覚を失いながらも作曲活動を続け、
大作をいくつも作り上げていきました。
私たち教師も、どのような困難も笑顔で乗り越え、子供たちに勇気
と希望を与えられる存在でありたいです。
<平成29年1月号>
感謝の心
校長 稲 葉 守 朗
大晦日には、除夜の鐘を聞きながら、1年間の出来事を振り返りました。いろいろなことが思い出されました。苦し
いことや悲しいこともありましたが、すばらしい出会いや感動的な体験もたくさんありました。除夜の鐘について、一
説では次のように言われています。
「世の中は、苦しみや、うまくいかないことが多く、生きていくのに四苦八苦する。
この苦しさの元となるのが、108つの煩悩というもの。この煩悩を取り除く意味を込め
て、除夜の12時をはさんで108回にわたって鐘をつく。
」また、四苦八苦という言葉か
ら、108と言う数字を見出した話もあります。四苦八苦を数字に直して計算すると次の
ようになります。
[4×9+8×9=36+72=108]うまく考えたものです。
新聞や雑誌などを見ると、多くの方が「幸せな生き方」について語っていました。その中で共通しているキーワード
は、
「感謝の心」です。厳しく困難な状況の中で、苦しさに耐え孤軍奮闘しているときに、救いの手をそっと差し伸べ
てくれたり、やさしい言葉をかけてくれたときに、感謝の気持ちが湧いてきます。支援や言葉かけはなくても、自分の
存在を認め、見守ってくれることにも、
「ありがたい」という気持ちは生まれてきます。不自由なく過ごしていた日常
生活が、当たり前だと思っていたけれど、実はそうではなかった。このことに気付けることが、幸せな生き方への第一
歩なのだと思います。東日本大震災から5年と10カ月が経ちました。多くの方々の生活していた家が無くなり、尊い
命が失われました。このような苦しい思いをされた方々が、将来への不安を抱えながらも少しずつ前を向き進んでいま
す。これほどの経験をした方々が、
「ありがたい」という感謝の言葉を幾度となく口にされています。大切なものを失
ったことにより、一番大切なものが分かり、また、悲しい思いをしたからこそ、他の人の苦しみや痛みを思いやること
ができる。被災された方々を通して、そのことを改めて感じました。
1月2日(月)の夕方、近所の公園をジョギングしていたところ、紅く染まった南西の空に、オレンジ色の三日月と
金星が隣り合って輝いていました。今年のテーマを考えていたところなので、この月と金星は、天からのメッセージだ
と思いました。走りながら、何度も見上げては考えました。走り終え、ゆっくりと歩きながら、落ち着いた心で見た月
と金星には、はっきりと映像が浮かびました。三日月は、微笑んだ口の形、そして、金星は、えくぼに見えました。そ
こにはたくさんの子供たちの笑顔が重なりました。私の大好きな「希望の歌」の一節に、
「幸せだから笑うんじゃなく
て、笑ってるから幸せになれる。微笑みを絶やさず、歩き出そう未来に。
」というところがありま
す。この歌を口ずさみながら、月と金星に自分の笑顔を重ね合わせてみましたが、子供たちの笑顔
のようにはいきませんでした。意識して笑顔になること、言葉にして「ありがとう」を相手に伝え
ることを実践して、
「感謝」の輪を広げていきたいと思います。
<平成27年4月号>
平成27年度のはじまりです
校長
稲
葉
守
朗
平成27年度は、本校が創立して30年目の節目となる記念すべき年となります。
11月7日(土)には、30周年記念式典を盛大に行う予定です。今後とも、本校の輝かしい伝
統を引き継ぎ、舎人第一小学校のさらなる発展のために、教職員で一致協力して教育活動を進め
てまいります。今後とも、子供たちの健やかな育成のために、ご支援ご協力をお願いいたします。
子どもこそは大人の父ぞ
子どもこそは大人の父ぞ
校長室の廊下掲示板に、イギリスの詩人
子どもから大人が生まれる。
子どもから大人が生まれる。
ワーズワースさんの詩が掲示してありま
子どもから次の国が生まれる。
子どもから次の国が生まれる。
す。この詩を目にするたびに、教師とし
子どもから新しい世紀が生まれる。
子どもから新しい世紀が生まれる。
て、そして、一人の人間としてのあり方
その子どもを育てるために、
を再認識し、心を引き締めています。
その子どもを育てるために、
この学校があり私たち教師がいます
この学校があり私たち教師がいます
舎一小の「校章」と「校歌」には、躍動感があり、とても
魅力を感じています。本校の校章は、開校の年(1986年)
に大接近したハレー彗星に、本校の未来に向けて限りなく前進
する夢を重ね、舎一の文字を図案化したものです。
校歌は、3番までありますが、その中で大好きな3つのフレーズを紹介させていただきます。
①明るくすなおな仲間たち
②笑顔でやりぬく仲間たち
③学びを愛する仲間たち
私は、この中の「仲間」という言葉が、特に好きです。仲間のためなら、最後まで粘り強くが
んばれます。また、仲間のためなら自分のわがままをグッと抑え、がまんすることができます。
そして、何よりも、仲間に喜んでもらえることなら、我を忘れて一生懸命に取り組めます。
本校に、4月から新たな仲間が加わりました。教職員一同、これまで以上に活気のある、30
周年にふさわしい舎人第一小学校をつくっていきます。保護者、そして、地域の皆さま、よろし
くお願いいたします。
<平成27年5月号>
Players
First!
日本サッカー協会は、世界のトップ10を目指すために、組織的・計画的に選手の育成をして
います。選手育成コンセプトには、以下のように書かれています。
選手育成を考える場合、絶対に忘れてはならない重要な言葉があります。それは「Players
First!」、 すなわち「プレーヤーを第一に考える」です。日々いろいろな次元で何かを判断す
る場合、あるいは改革等で困難なチャレンジが生じる場合、そのとき
に必ず立ち返るべき言葉です。いろいろな問題や困難はあるかもしれ
ません。しかし、子どもたちにとって何が一番良いのか、という基準
で物事を考えて、乗り越えていきたいものです。
質の高い選手の育成は、指導者による日々の指導のレベルが高くな
くしてはあり得ません。つまりは良いユース育成をしようと思えば、
指導者の質の向上が不可欠であるということです。そのために、より多くの、より質の高い指導
者の養成を目指し、コースの増設、再教育の充実に取り組んでいます。
上記の選手育成コンセプトは、学校教育に共通するものであり、学ぶことも多くあります。
舎人第一小学校は、今年度30周年目を迎え、儀式や行事だけでなく、日々の学校生活すべて
について、30周年をさらなる発展の機会と捉え、教育活動の充実に努めています。子供たちの
未来を見据え、小学校6年間の発育・発達に即した様々な力を身に付けさせます。身に付けさせ
たい力には、①気づき、発見する力
②考える力
③判断する力 ④表現する力 ⑤実行する力
.....
などがあります。とりわけ付けさせたい力は、⑤実行する力です。この実行する力を身に付ける
には、多くのことに本気で取り組み、失敗や成功の体験を積み重ねていく必要があります。「失
敗は成功のもと」といわれますが、この場合の失敗は、本気で全力で取り組んだ上での失敗を意
味するものと考えます。失敗して悔しくないようなことは、未来の成功にはつながりません。
本校では、5月31日(日)の運動会に向けて練習が始まっています。5,6年生は、恒例の
組体操に挑戦します。組体操のような非日常的な運動は、危険を伴い
ます。自分だけできても、仲間と力やタイミングを合わせなければ、
技は成功しません。仲間と協力して、困難なことに果敢にチャレンジ
していくことにより、不可能だったことが可能になっていきます。教
職員一同、子供たちの限りない可能性を信じて、全力で取り組んでい
きます。子供たちへの励ましと忚援をよろしくお願いいたします。
<平成27年6月号>
ガラスは、割れるもの
校長
稲
葉
守
朗
(以前勤務していた学校での出来事です)
教室の廊下扉のガラスに顔を押し当て、ゆがんだ顔を見せておどけていた男子がいました。反
対側にいた男子は、顔をつけている男子を脅かそうとして、ガラスをげんこつでたたきました。
勢いよくたたいたわけではないのですが、ガラスが割れ、押し当てていた男子の頬が傷つき出血
しました。たたいた方の手も負傷し、二人は、救急病院に搬送され治療を受けました。幸い傷は
浅く、後遺症が残るようなことにはなりませんでした。
担任と学年主任は、放課後二人を残し、ふざけていたことや公共物を破損したことについて指
導し下校させました。その後、担任は、保護者に電話で状況について説明し、また、ふざけてい
て公共物を破損したことから、ガラスの修理代をお願いしたいと伝えました。すると、保護者は
態度を一変し、担任に対して厳しい口調で、『息子は、軽く叩いたら割れてしまったと言ってる
し、わざと壊したのではない。けがをしたのは、家の子で、こちらが被害者だ。』と主張し始め
ました。担任は、「学校のきまりなので、ご理解をお願いします。」と丁寧に説明しましたが、
保護者は、『日頃から、家の子を問題のある子供と見ているんでしょう。』と話はどんどんこじ
れてしまいました。
翌日、二人の保護者は、ガラスの修理代をもって私を訪ねてきました。『修理代は、支払いま
す。しかし、・・・・。』と次々に主張をはじめました。『子供が生活しているところに、割れ
るようなガラスを入れている学校に問題がある。地震もあることから、割れない素材のものを入
れるべきだ。みんなもそう言っている。』また、『怪我をしたのは息子であって、被害を受けた
のはこちらの方だ。』この他にも、いくつかの話をされました。
私は、保護者の話をじっくり聴いた後に、二人に許しをいただき、自分の思いを伝えました。
「担任の先生は、二人のお子さんをとても大切に思っています。なぜならば・・・。」と具体的
に事例をあげて説明しました。次に、「お母さん、ガラスは割れるんです。彼らはそれを知らな
かったんですかね。けがについては、申し訳ないと思いますが、今回の事故は、彼らにとってと
ても良い経験になったと思いますよ。今の世の中、守られ過ぎて、危険を察知できないことが多
いですから。子供たちには、社会に出て、たくましく生きていくことができる力をつけてあげた
いんです。これまで育ててきた親御さんの思いは、もっと強いでしょうね。」と話すと、保護者
は、『私達の子供の頃と違って、今の子は社会経験が尐ないんです。大けがをしなくてよかった
です。先生、これからもよろしくお願いします。』と言って帰っていきました。
その後、二人の保護者は、学校の心強い忚援団となってくれました。学校も保護者も、そして
地域も、子供たちの健やかな成長を願っている。それを強く実感した出来事でした。
<平成27年7.8月号>
夢は叶えられる
校長
稲
葉
守
朗
超人気グループEXILEのTETSUYAさんと世界さんによる、創立30周年記念「夢の
課外授業」が6月16日(火)に本校で行われました。この事業は、「子供たちに『夢』を与え、
『生きる力』を考えさせ、『勇気をもって立ち向かう大切さ』を知ってもらう」というコンセプ
トで、主に東北地方を中心に実施されています。
夢の課外授業の講師については、二人が登場するまで児童には知らせていませんでした。その
ため、体育館後方から軽快な音楽にのって登場した二人を見て、子供たちは、びっくり仰天し興
奮状態となりました。はじめに披露してくれた「Rising Sun」の激しく華麗なダンス
は、緊張感があり感動そのものでした。その後、全校児童によるダンスの基本ステップ練習、そ
して、5・6年生は「Choo Choo TRAIN」のダンスをマスターし、二人と一緒に
楽しく踊りました。90分はあっという間に過ぎ、みんなで楽しくいい汗をかくことができまし
た。
二人は、華麗なダンスや愉快なトークの中で、「あきらめないで
努力し続ければ、夢は叶えられる。」また、児童がお礼に歌った「ゆ
うき」の歌詞についてふれ、「今は、ちいさなげんこつだけど・・・
・の歌詞のように、失敗してもくじけないでください。そして夢を
叶えてください。」さらに、「EXILEをもっと進化させていき
たい。そして、ダンスをとおして、みんなに勇気や生きる喜び、そ
して感動を与えていきたい。」と話していました。とても印象に残
る言葉でした。
<練習は裏切らない>
シドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子さ
んは、日本卓球界第一人者の石川佳純さんとの談話の中で、世界一になるために大切なことにつ
いて次のように話されています。「その日にすべきことをすべてやり、それを続ける。例えば、
歯みがき、洗顔、腹筋1000回と決めたら、それを生活に組み込んでやり通す。」また、「一
流の選手には、共通点がある。本番から逆算して、自分には何が必要か、何をもって自信を持つ
ことができるのかをしっかりと考えて行動している。」とも言っています。1日80kmを走破
する世界一厳しい練習をこなしてきた高橋さんは、シドニーオリンピックでは、小出監督から「好
きなように走れ、でも出し惜しみだけはするな。」と言われ、「自分から扉を開けてやる!」と
いう意気込みでレースに臨んだそうです。社会人になるまでまったくの無名選手だった高橋さん
は、「金メダリストになれる。練習は裏切らない。」という小出監督の言葉を見事に実現させま
した。
<徹底してやり通す>
洋食料理家としてご活躍の三國清三さんは、18歳の頃、一流の料理人になる夢を持ち帝国ホ
テルで見習いとして働いていました。しかし、何年たっても鍋や皿を洗うなどの雑用ばかりでし
た。もう辞めようかと思った矢先、三國さんは、駐スイス日本大使館の料理長に大抜擢されたの
です。その理由について、帝国ホテル料理長の村上さんは、「あれだけ鍋洗いを、徹底的にやる
やつがいるか。彼は、鍋を洗う一方で、鍋についたソースをなめて味を覚え、料理の段取りを見
極めていった。」と話されています。
当たり前のことや基本的なことを、真心込めて徹底して行うことにより、不可能が可能になっ
ていくのですね。夢は、あきらめないで努力すれば、必ず叶うものと信じています。
<平成27年9月号>
校長
稲
葉
守
朗
当たり前を積み重ねると特別なものになる
[NHKのテレビ番組より
*パティシエ*]
若き日の杉野英実さんは洋菓子に魅せられ、卖身でフランス修行に出かけました。修行中に見
つけた洋菓子店に雇ってほしいと願い出ましたが、答えはNOでした。杉野さんは、あきらめる
ことなく5年間手紙を出し続けました。5年目にして杉野さんの念願は叶い、その店に雇っても
らえることになりました。杉野さんは、こんなに魅力的な洋菓子を作るには、何か特別なレシピ
があるはずと思っていました。しかし、特別なレシピは何もありませんでした。基本通り、当た
り前のことを当たり前にしているだけでした。一切の妥協を許さず、一つ一つのことを徹底する
ことによって、一流の洋菓子は作られていることを知りました。
杉野さんは、その後、世界コンクールに出場し、みごと優勝しました。一流のホテルなどから
多くの声がかかりましたがすべて断りました。小さな自分の店を持ち、よりよいものを作るため
に日々研鑽しています。杉野さんは「私は、他の人より不器用で能力がなかった。だから、今の
自分がいるんです。」と言っています。また、「自分の能力を伸ばし、感性を磨くために、いろ
いろなものを食べ歩きました。そして、引き出しを多く持ち、頭で描けるようにしました。」と
も言っています。卖に口当たりのよい美味しいものを作るのではなく、お客様に、心から幸せを
実感してもらえるものを作っていくことが、パティシエとしての使命と思っているそうです。ク
リームが手の温度で温まらないようにするために、氷水の中に何度も手を浸す姿には感動しまし
た。お客様の幸せを願って、自らの能力を最大限に発揮し続ける杉野さんから学ぶことは多くあ
ります。
[刃を研ぐ]
あるところに与作という木こりがいました。毎日、山に出かける忙しい日々を過ごしていまし
た。ある日、仲間の木こりと一緒に昼食をとっていると「与作さん、あんたの使っている鋸、刃
が丸くなっていますよ。研ぎ直した方がいいですよ。」と言われました。与作はこう答えました。
「仕事が忙しくて、刃を研いている暇がないんだ。」
道具は、職人の命と言われています。当然のことですが、職人は道具をとても大切にします。
例えば、寿司職人は、一日の最後に庖丁を研いで仕事を終えます。日々の仕事の中に、刃を研ぐ
時間が組み込まれています。多忙を理由に、自分の刃を研ぐ時間、学ぶ時間をおろそかにしてい
ることはないだろうか。刃を研がずにいい仕事ができるわけがありません。
教師に求められる基本的な力は、いくつかありますが、その中でも「授業力」はもっとも大切
な力の一つです。また、この授業力においては、子供たちの可能性を信じ、伸ばそうとする使命
感や情熱が不可欠です。本校の教員は、夏休みの期間に、自らの課題を設定し、さらなる向上を
目指して積極的に研修会に参加し、自己の研鑽に努めました。近隣保育園での体験学習には全教
員が参加しました。民間の事業所で職業体験した教員もいます。今後も、子供たちの健やかな育
成をめざし、日々の生活の中で、お互いに研き合い、学び合っていきます。
<平成27年10月号>
校長
稲
葉
守
朗
言ったようには育たぬが、やったように育つ
学校生活では、毎日多くの子供たちと接する機会があります。その中で、気になる女の子がい
ました。その子は、私と出会うと歩みを止め、両足をそろえて手を前に重ね、「校長先生、おは
ようございます。」「校長先生、こんにちは。」と言って笑顔で会釈をしてくれるのです。この
ようなあいさつをされるたびに、とても清々しい気持ちになります。先日、そのルーツがわかり
ました。その子の母親が来校し、廊下を歩いているところに出会ったときのこと。母親は、女の
子とそっくりな姿勢で私にあいさつをしてくれました。
あいさつの大切さを文章に書き表すことや、言葉で相手に伝えることは、容易にできます。し
かし、さわやかなあいさつを、さりげなくできるようにすることは、なかなかできないものです。
私が以前担任をしていたA君は、私の担当するクラスで学級委員をしていました。A君は、礼
儀正しく、誠実で、仲間からの信頼も厚く、弱い立場の人や仲間と上手に関われない人に対して
も優しく接していました。A君が仲裁役になると、どんなトラブルも円滑に解決しました。何事
も肯定的にとらえ、けっして人の悪口を言わないA君について、三者面談のときに、私は母親に
尋ねました。
稲葉:「おかあさん、小さいころから、この子をどのようにして育ててきたのですか。」
母親:「特別何かをしてきたということはないのですが・・・。この子は、一人っ子なので、私
が母と姉の二役をするようにして関わってきました。例えば、一つのケーキを二人で半分
ずつに分けて食べたりして、一人だけのものにしないようにしてきました。」また、「な
るべく、近所の子供同士で遊べる機会をつくってきました。」
恐縮しながら遠慮気味に答える母親の横で、恥ずかしそうにしていたA君の姿を今でもはっき
り覚えています。面談後にも何度か母親と話す機会がありました。その会話の中で、「お蔭様で
・・・。」や、「ありがたい。」という感謝の言葉がよく使われていました。A君の中で、母親
の姿勢が生きていることを実感しました。
私が、スポーツ指導をしているときに、繰り返し子供に伝えることがあります。それは、「で
きるようになるまでには、4つの段階があり、正しい動きを繰り返し練習することによって、尐
しずつできるようになる。」ということです。[第1段階:やろうとしていないから、できない。
第2段階:意識してやろうとしていても、できない。第3段階:意識しているからできる。第4
段階:意識していなくてもできる。]この、最後の第4段階は究極の段階です。第2段階から第
3段階を粘り強く乗り越えてこそ、第4段階へ到達できます。私は、動きを習得するプロセスを
このようにとらえていました。しかし、上記で紹介した子供のあいさつの仕方については、母親
が丁寧に教え、訓練してきたとは思えません。幼いころから、母親の姿を見て学び、真似てきた
のでしょう。
学習の「学」は、真似る。そして、「習」は、幼い雛が親鳥の羽づかいを真似て飛べるように
なる、という意味だそうです。大人のやったように子供は育つのですね。
<平成27年11月号>
校長
稲
葉
守
朗
恩返し、恩送り
<お願いとお礼>
私が中学校の担任をしていたときの話です。私の勤務していた学校は、修学旅行で京都と奈良
に行きました。国宝や重要文化財など、見どころの多い京都・奈良には、法隆寺をはじめ、金閣
寺や清水寺など由緒ある神社や仏閣が多くあります。生徒たちは、高校受験を控えているため、
お寺や神社を参拝すると、「志望校に合格できますように!」と熱心に祈願していました。京都
の北野天満宮は、学問の神様であることから、生徒たちに人気がありました。境内には、「○○
合格祈願」と書かれた絵馬がたくさんつるされていました。
時は流れ3月上旬、何とかクラス全員の進路先が決まり、ほっとしているところでの会話です。
稲葉:「みなさんの進路が決まって、本当によかったです。卒業式まであと2週間です。これま
でお世話になった方々に感謝の気持ちが伝わるよう、しっかり生活していきましょう。さ
て、みなさんは、進路が決まったことについて、報告はすみましたか。」
生徒:ほとんどの生徒が、自信たっぷりな表情でうなずいていました。
稲葉:「修学旅行で行った京都や奈良の神社やお寺には報告をしましたか。」生徒たちの表情は
一瞬固まり、「え!」という声が聞こえました。「京都や奈良には、なかなか行けないか
ら、ここから心を込めてお礼を言いましょう。」
生徒たちは、教室前のベランダに出て西の空に向かい、真剣な表情で報告をしていました。
<長幼の序>
これまでの教員生活を振り返ると、多くの先輩教師から叱咤や激励を受けてきたことが思い出
されます。教員になりたてのころ、給食のことで当時の教頭先生に厳しく叱られたことをはっき
り覚えています。給食の配膳方法は、今も昔もさほど変わりはありません。私の給食は、生徒の
給食係が毎日準備してくれました。私の給食は、最後に配膳するよう指示していました。足りな
くなったときに調整をするためでもありましたが、本音を言うと温かい状態のものを食べたかっ
たからです。職場の親睦会で歓談しているときに、同僚にこの話をしました。すると、近くでそ
れを聞いた教頭先生は、烈火のごとく私を叱り、即刻配膳方法を改めるよう言いました。そのと
きは、「何もそんなにむきになって・・・・」という思いがありましたが、そのあとに教頭先生から
説明された「長幼の序」という話を聴き、自分の愚かさと未熟さを痛感しました。教頭:「物事
をするのにあたって、年長者と年尐者の間には、一定の順序があります。子供は大人を敬い、大
人は子供を慈しむことが大切なのです。あなたが、学級の長であるならば、一番に配膳させなさ
い。これが、生きた教育というものです。」
これまで、お世話になったことについて、心で感謝しありがたいと思っていても、それをどれ
だけ、相手に伝わるように表現してきただろうか。お願いして、してもらったことに、感謝の心
で「ありがとうございます。」と言えただろうか。これまでの自分を内省するとともに、先輩方
からご指導をいただいたことを、もう一度振り返り、若手教員や子供たちにしっかり伝えていく
ことの責任を強く感じています。
<平成27年12月号>
校長
稲
葉
守
朗
後ろ姿で育てる
知り合いのMさんは、毎朝4時に起床し、身支度を済ませたあと、作務衣に着替え、手ぬぐい
で頬かぶりをして、近所の神社に向かいます。「今日もよろしくお願いします。」氏神様に手を
合わせると、境内に散った落ち葉を竹ぼうきで掃き始めます。前日は風が強かったため、いつも
以上に落ち葉は散り、境内の外にまで飛んでいました。Mさんは、「遠くに遊びに行きたかった
んだね。寂しいからみんなと一緒にしてあげるよ。」と落ち葉に話しかけながら一か所に集めま
す。
Mさんは、清掃奉仕を36年間続けてきました。清掃を始めたきっかけは、知人から「子
供は親を見て育つ。良いことをしてその後ろ姿を見せるのよ。」と言われたことだったそうです。
その当時、子育てがうまくいかず、悩んでいたことから、「それならば、清掃をやってみよう。」
と思い立ったのだそうです。当初は、子供たちが気持ちよく歩けるように、そして、我が子と心
が通うようにという気持ちで、通学路の掃除をしていました。やがて転居をし、近所の神社を清
掃するようになりました。神社を清掃するようになって、Mさんはこれまでとは違った喜びを感
じたそうです。境内を守る木々たちが魅せる景色は、独り占めするのはもったいないと思うほど
魅力的なのだそうです。夏は目に沁みるほどの新緑が木陰を作り、寒さの冬にはその葉をすべて
落とし、日の光を入れて暖かさをもたらしてくれる。Mさんは、この感動を友人に伝え、掃除仲
間を増やしていきました。
落ち葉の季節になると、以前勤めていた学校の主事さんの言葉を思い出します。私は、掃いて
も掃いても、次々と落ちる葉と格闘している主事さんに、「大変ですね。」と声をかけました。
主事さんは、「でも、落ち葉を掃いていると、とても気持ちがいいんです。葉っぱは、赤や黄色
に染まってきれいだし、枝の間から差す光も美しく暖かい。葉は枯れて落ちていくけど、枝の先
には、ほら、小さなつぼみができているんですよ。」と微笑んでいました。主事さんも、Mさん
と同じように、喜びや感動を味わっていたのでしょう。
先日、PTA顧問の大熊 久三郎様から、「舎人氷川神社の掃除は、小金井 寛様はじめ、舎人
町会のボランティアの方が、34年前から行っている。」という話を伺いました。30年前の舎
人第一小学校の創立以前から行われていたことになります。このことからも、地域の伝統と絆の
強さ、また、子供たちを温かく支え、見守ってくださった地域の方々の思いが伝わってきます。
本校教員から提出された授業計画ノートに、「してもらって当たり前でなく、してあげて喜べ
る子供に育ってほしい。」と書いてありました。私は、そのノートに「『させていただき、あり
がたい。』のレベルまでいきたいですね。」と書きました。
ある子供の詩の一部を紹介いたします。
私は1本のろうそくです。燃え尽きてしまう前に、何か一ついいことがしたい。
人の心に喜びの灯をともすことのできるような、いいことがしたい。
<平成28年1月号>
校長
稲
葉
守
朗
念ずれば花開く
ひ
ら
い
て
い
っ
た
坂
村
真
民
ひ
と
つ
ひ
と
つ
わ
た
し
の
花
が
ふ
し
ぎ
と
そ
う
し
て
そ
の
た
び
と
な
え
る
よ
う
に
な
っ
た
わ
た
し
も
い
つ
の
こ
ろ
か
ら
か
こ
の
こ
と
ば
を
母
が
い
つ
も
口
に
し
て
い
た
苦
し
い
と
き
花
ひ
ら
く
念
ず
れ
ば
「
念
ず
れ
ば
花
ひ
ら
く
」
この詩は、30代のころに、先輩教師から教えていただき、教師として生きていく上で、大切
にしてきたものです。この冬休みに、私の田舎である福島県浪江町に行ったとき、高速道路のサ
ービスエリアで偶然目にしました。この「念ずれば花ひらく」の詩碑は、全国各地に建っていま
す。最も古いものは、本阿弥光悦と若い宮本武蔵が出会った場所で、京都の鷹峰にある「常照寺」
に建っています。その地で光悦の母は、道場破りをしてきた武蔵に、お茶を点てて飲ませました。
武蔵はそのとき初めて、静かな世界を知ったそうです。つまり、「動」の世界だけに生きてきた
武蔵が「静」の世界というものを知ったのです。そこから武蔵という人間が変わっていったのだ
そうです。その地に、この碑が建てられた意味は、深いと思います。
坂村さんのお父様は、小学校の校長をしていましたが、5人兄弟の長男である坂村さんが8歳
のときに亡くなってしまいました。それからは、なんの蓄えもない中で、女手一つでの子育てが
始まりました。お母様の一生は多事多難の連続だったそうです。そのお母様が苦しいときにいつ
も口にしていたのが、この「念ずれば花ひらく」なのです。自己激励の言葉であり、5人の子供
たちを育て上げようとする悲願の言葉だったのです。お母様の願い通り、5人の子供たちは、健
やかに育っていきました。
坂村さんとお母様が最後に時間を共にしたのは、田舎の小さな駅でのことでした。列車を待つ
2人の前に、ベンチに腰掛けた老夫婦がいました。坂村さんがお母様に話しかけようとすると、
お母様は、「黙っとんなさい、向かいの夫婦の話を聞くんや。世の中のいろんな人の苦しみ、悩
みに耳を傾けるんや。しんみり聞いとくんやぞ。」と話されたそうです。
「念ずれば花ひらく」という詩碑が、全国に建てられ、励みにされていることの意味は大きい
と思います。生きていく上で、厳しさや苦しみに耐え、乗り越えていかなくてはならないことは
多くあります。新たな年を迎え、これまで以上に、子供たちのすこやかな成長を願い、日々の教
育活動を充実させていく所存です。
<平成28年2月号>
校長
稲
葉
守
朗
「できる方法」を考える
小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」から微粒子を採取し、2010年6月に地
球に帰還しました。あのときの感動は、今でも鮮明に心に残っています。地球以外の天体や惑星
からサンプルを採取し地球に持ち帰ることは、世界初の快挙であり、日本の科学技術は、世界の
人々から賞賛されました。夢のプロジェクトは、同じ目的をもった仲間が、最後まであきらめず、
「できる方法」を探り続けたことにより実現しました。その後打ち上げられた「はやぶさ2」は、
生命誕生の謎を求めて、小惑星Ryugu(リュウグウ)へと向かっています。東京オリンピッ
クが開催される2020年末には、地球に帰還する予定です。ミッションを無事に終え地球に帰
還すれば、太陽系の起源や進化と生命の原材料物質を解明することができるかもしれません。
本校の25年度までの足立区学力調査の結果は、厳しい状況にありました。当該学年で履修し
た内容を、しっかり理解できていない状態で進級や進学をしていることもありました。学習内容
がわからないことから、落ち着いて授業を受けられず、秩序が乱れることもありました。26年
度には、足立区教育委員会より学力向上重点校に指定されました。これを機会として、基礎学力
の定着と学習意欲の向上を重点としたプロジェクトが本格的に始まりました。授業はもちろんの
こと、朝学習や放課後の補充教室、また、サマースクールなどについて、抜本的に見直し改善し
ました。全教職員が心を一つにして本気で取り組んだ成果は、27年度の足立区学力調査にしっ
かりと現れました。今後も、さらなる充実・発展を目指して推進していきます。
今年度の健康教育の一環として、「むし歯ゼロ運動」を、全校体制で取り組んでいます。むし
歯の保有率が高い状況は、足立区全体の課題でもあります。足立区の小学生のむし歯保有率は、
東京都23区内で最も高い55%です。今年度は、新たな企画として、学校医や竹の塚総合保健
センターと協力し、歯の健康教室を行いました。学習を通して、児童が主体的にむし歯予防に取
り組むようになりました。現在、むし歯を保有している児童のほとんどは、歯科医院で治療を受
けています。今後、治療を終えて報告に来る子供たちの笑顔が楽しみです。
子供の可能性は無限大です。その可能性を最大限に伸ばすことが、私たち教師にとっての使命
であり喜びです。「できない理由」を自分の周りに見つけて、正当化しているようでは、子供を
伸ばすことはできません。これからも「できる方法」をみんなで考え、勇気をもって行動し、舎
人一小を発展させてまいります。保護者、地域のみなさま、ご協力をよろしくお願いいたします。
<平成28年3月号>
校長
稲
葉
守
朗
豊 か な 心
ボランティア精神とは、どのような精神でしょうか。ボランティアセンターで働く私の知り合
いは、「豊かな心」という言葉をキーワードにしています。また、「身近なことでできることか
らやってみましょう。ゴミを拾うとか、はがれている掲示物をとめるとか。」と言っています。
募金をすれば、自分のお金が減ります。ゴミを拾えば、手が汚れます。お年寄りや支援の必要な
人に手を貸してあげれば、時間が費やされます。荷物を運べば、疲れます。何かをすることによ
って、自分自身の時間やもの・金銭・体力が失われます。
ボランティアは、頼まれたり、強制されてするものではなく、あくまでも自主的に行う行為で
す。ボランティア活動を積極的にする人は、その行為にどのような価値を見いだしているのでし
ょうか。
私の受け持った教え子(当時大学生)は、東日本大震災のあった直後に、自主的に東北地方に
行き、ボランティア活動をしました。私は「どうして行ったの。」と聞きました。「すぐに行っ
て、何かをしないではいられない気持ちだった。」という言葉が返ってきました。現在その教え
子は、保育士として働いています。「何かをしないではいられない気持ち。」大変だとか、きつ
いとかではなく、自分の力を何かに役立てたいという気持ちが、自然と行動を起こさせたのでし
ょう。
近所にある小学校の通学路で、毎朝、黄色い旗を持って児童を見守っている年配の方がいます。
この方は、雤の日も風の日も休まずに、何年もの間、一人一人の児童に、「おはようございます。
行ってらっしゃい。」と元気よく声をかけています。そのときの子供たちから返ってくるあいさ
つの声で、心の様子がわかるのだそうです。
自主的にボランティアをしている人は、共通して豊かな心を持っているのだと思います。この
豊かな心は、ボランティア活動を通して養われていくものなのでしょう。いずれにしても、活動
を通して自分が役立っているという喜びや充実感を得ているのでしょう。
子供が職場体験や職場訪問をしたときに、社会で働く人に、「どのようなときに仕事の喜びを
感じますか。」と尋ねると、ほとんどの人が、「自分の仕事が、社会に役立っていると実感でき
たとき。」「お客様に喜んでいただけたとき。」と答えています。社会で働く人の中にも、ボラ
ンティア精神はしっかりと生きています。
忙しかったり大変だったりすると、つい自分のことしか考えられなくなります。しかし、そう
いうときにこそ、進んで貢献できる、豊かな心を持ちたいものです。
今年度、全校体制で年間を通して活動してきた、①地域クリーン隊
り忚援隊
②あいさつ隊
③花づく
④児童会活動(募金など)が、舎人地区対善行青尐年顕彰式で表彰されました。今後
も、地域に役立ち、貢献できる活動を積極的に行っていきます。
平成26年度のはじまりです。(平成26年度
4月号)
校長
稲
葉
守
朗
平成26年4月1日より、舎人第一小学校の仲間に入れていただきました校長の稲葉守朗で
す。よろしくお願いいたします。
私が、舎一小に来て、はじめに興味を持ったのが「校章」です。一般的に、校章には左右対称
のものが多いのですが、舎一小の校章は違い、躍動感のあるものでした。校章の由来は、「本校
の開校の年(1986年)に大接近したハレー彗星に、本校の未来に向けて限りなく前進する夢
を重ね、舎一の文字を図案化したもの。」ということでした。
さて、今回は、舎一小の校章にあやかり、「宇宙」に関係したことを述べさせていただきます。
夢の超特急と言われた新幹線は、時速300kmくらいで走ります。ジェット旅客機は、機種
によっては時速1,000kmくらいで飛びます。宇宙に行くロケットは、時速4,000kmで
飛びます。公転といって、地球が太陽のまわりを1年かけて回る速度は、時速10万7,000k
m。人間の造った乗り物と、桁が違います。地球は、約46億年前から、規則正しく太陽の周り
を回り続けています。地球は、太陽系の惑星の一つであり、この太陽系がある銀河系には太陽の
ような恒星(自ら輝いている星)が、約2,000億個あるといわれています。この大きな銀河系
のような恒星の大集団は、宇宙の全体では、1,000億個くらいあるといわれています。
宇宙の中では、私たちの暮らしている地球はとても小さな存在です。そして、その地球で生活
している私たち人間は、もっともっと小さな存在です。
宇宙ができたのは、137億年前といわれています。宇宙の歴史に比べると、人の一生は、ま
ばたきよりも短い時間になります。
さて、見方を変えてみましょう。では、地球の公転の速度や銀河系の数を、私たち人間は、ど
のように知ることができたのでしょうか。自動車や電車にはスピードメーターがあるから、何キ
ロとわかるけど、そのような計器はありません。過去の科学者の人たちが、粘り強く研究したり
観測したりしてだんだんわかってきたのです。宇宙においては、とても小さな存在の人間が、宇
宙全体のことまでわかるなんてすごいことですね。科学者たちは、長い年月をかけて宇宙の真理、
自然科学の法則や真理を見つけてきたのです。そして、それをいろいろな技術に応用し、私たち
人間の文明は大変な発展を遂げてきました。人間は、とても偉大な存在です。
人間には、知識と感情と意志があります。高度な思考能力もあります。すばらしい科学技術も
もっています。これらを駆使することにより、この世界を変えていくことができるのです。たっ
た100年前には想像もできないほど、科学や技術が進歩しています。あと100年先には、さ
らに想像もつかないほど科学も技術も進歩しているでしょう。地球環境も改善しているかもしれ
ません。人間は、夢や希望をもち、それを叶えるために辛抱強く努力し続け、一つ一つの難題を
解決してきました。
舎一小の皆さんには、挑戦するたくましい心をもち、未来に向けて突き進んでいってほしい。
どんなに小さな夢でもいい。その夢を大切にして、叶えるために努力してほしい。先生たちは、
皆さんの成長のために精一杯応援します。あきらめずに、辛抱強く努力できる人に育ち、たくま
しく生きていってほしいです。
地域及び保護者の皆様には、今後とも本校へのご支援、ご協力をお願いいたします。
グローバル社会に向けて(平成 26 年度 5 月号)
校 長
稲
葉
守
朗
(財)経済同友会は、「企業が新卒採用者に求める能力や資質」について、アンケート結果を
まとめました。大学院、大学、高校、専門学校では多尐の数値の差はありますが、概ね同じ傾向
を表しています。1位は、「情意と意欲」で、全校種で1位でした。2位は、「行動力と実行力」、
そして、3位は、チームワーク力(コミュニケーション能力と協調性等)でした。4位以降は、
「誠実さ・明るさ・素直さ」、「課題発見と課題解決力」、「論理的思考力」、「粘り強さ」と
続いています。
一方、今年度の4月に行われた大学入学式の学長祝辞では、国際社会で活躍できる人材育成が
求められる中、内向き思考が強いという指摘があることから、グローバル対忚の重要性を説くメ
ッセージが多くありました。多くの学長は、学生について、真面目で協調性はあるが、主体性や
積極性、グローバルな視点に欠けているという印象をもっているようです。グローバル社会でた
くましく活躍できる人材の育成を図るために、授業改善が急速に行われています。例えば、旧来
型の大教室での講義に代わって、体験や社会活動などを取り入れた「グループワーク」や「プレ
ゼンテーション」、「フィールドワーク」などのアクティブラーニングや課題解決学習が行われ
るようになりました。
本校でも、体験型学習を積極的に取り入れ計画的に行っています。4月28日(月)に、3年生
は、「地域めぐり」を行いました。各自が地図を持って、きめられたコースを歩き、相撲部屋や
農園、神社や商店街などを自分の目で確認し地図に記入しました。方位の間違えは若干ありまし
たが、地図と実際の地理について理解を深めることができました。最終地点の公園で、班員同士
で意見交換をしたり、全体の前で見てきたことを主体的に発表する態度はとても立派でした。5
月10日(土)には、地域との共催で「町ぐるみ自転車安全教室」と「田植え」が行われます。
このような体験型学習により、卖なる知識の習得にとどまらず、関心・意欲や、発見などの好奇
心が醸成されます。また、わかる喜びや学ぶ楽しさ、発見した感動などは、学習意欲を向上させ、
粘り強く次のステップへ挑戦する強い心を育みます。
今後も、地域との協働による体験型学習を積極的に取り入れていきます。子どもたちに生きた
体験をさせるためには、保護者及び地域の方々のご支援は欠かせません。今後とも、子どもたち
の健やかな成長のために、ご協力をお願いいたします。
保護者の皆様には、先日通知を配付させていただきましたが、本校は、区教委より「基礎学力
定着重点校」及び「そだち」(個別学習支援)の指定を受けました。放課後の15時30分より
16時00分まで、主に国語と算数の個別学習を行います。また、「そだち」は4年生を対象に
行いますが、学習形態や内容が個々に違いますので担任より個別に連絡させていただきます。な
お、全校児童を対象とした、朝のパワーアップタイムや夏季休業中の学習教室は例年通り行いま
す。
「育てる」
(平成26年度
6月号)
校長
稲
葉
守
朗
先日、山手線に乗っていたときの出来事です。JRのI駅で多くの人が降り、そして多くの人
が乗ってきました。まだ全員が降り切っていないところを、すり抜けるようにして走りこんでき
た小学生の兄弟がいました。二人は、無事に空いた座席を確保し携帯のゲームをはじめました。
尐し離れたところにいた母親は、二人の子供の様子を確認した後、スマホを操作し始めました。
2駅目に停車したときに老夫婦が乗車してきました。それに気づいた二人の尐年は、さっと立ち
上がり老夫婦に声をかけ座席を譲りました。老夫婦は安堵の表情で尐年にお礼の言葉をかけてい
ました。二人の尐年は、はにかみながらも満足そうに母親の方に向かっていきました。しかし、
ここから展開が急変しました。母親:「席どうしたの?」、子供:「譲った。」、母親:「え、
なんで?バカじゃない」子供:「・・・」、母親は、この間ちらっと子供を見ただけで、目線は
ずっとスマホ画面に向けられ指を忙しく動かしていました。あまりにも想像と違う母親の態度、
そして言葉、私は唖然として、しばらく尐年たちの後ろ姿を見つめていました。
「インディアンの教え」の中には、子育てにおいて大切なことがコンパクトにまとめられ書か
れています。国や民族を超えて共通する内容です。その中の一部を抜粋したものを以下に記しま
す。
○心が寛大な人の中で育った子は、我慢強くなります。
○励ましを受けて育った子は、自信を持ちます。
○誉められる中で育った子は、いつも感謝することを知ります。
○人に認めてもらえる中で育った子は、自分を大事にします。
※この4つについて反対の育て方をすると、次のようになる可能性があります。
△心が狭量な人の中で育った子は、我慢をすることができなくなります。
△励ましを受けないで育った子は、自信を持つことができません。
△誉められない中で育った子は、感謝することができません。
△人に認めてもらえない中で育った子は、自分を大事にできません。
教育においては、どんなに社会が変わっても、時代を超えて変わらない価値のあるものがあり
ます。豊かな人間性や正義感や公正さを大切にする心、自らを律しつつ、他人と協調し、他人を
思いやる心、人権を尊重する心、自然を愛する心など、こうしたものを子供たちに培うことは、
いつの時代、どこの国の教育においても大切にされなければならないことです。子どもは、「言
ったようには育たないが、親がやったように育つ」と言われます。日々の生活の中で行われてい
る大人の態度や声掛けの一つ一つが子供のからだの中に染み込んでいきます。子供を良くするも
良くしないも、身近な大人の環境が大きく影響します。ほめ、認め、励ますことによって、子供
は健全に育ちます。ましてや、子供が努力したことや温かい心で行った行いについては、本気で
ほめてあげたいものです。
確かなもの
(平成26年度
7・8月号)
校長
稲
葉
守
朗
テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」にレギュラーとして出演している中島誠之助さんは、
皆さんご存知のとおり古美術鑑定家として活躍しています。インタビューで「鑑定士となるため
にはどういう勉強をするのですか?」という質問に対し、中島さんは、次のように答えていまし
た。「鑑定士は、本物か本物でないかを見極めなくてはなりません。その感覚を磨くためには、
本物を数多く見ることが大切です。本物がどういうものなのかをしっかりと観察して自分の意識
に取り込みます。本物でないものを数多く見ても感覚は磨けません。だから、色々なところに行
って、本物を見る機会をできるだけ多く作っているんです。」この答えは、私の予想とは違い、
とても興味深いものでした。この良いものや本物とより多く接するということの重要さは、芸術
の世界だけではなく、スポーツの世界にも通じるものです。
通信機器や情報機器の急速な発達により、世界の情報が瞬時に得られるようになりました。有
効に活用すればとても便利な道具です。しかし。多くの情報の中には真実と異なる情報も多く流
されています。何が真実で正確な情報かを判断することはとても難しいものです。広く深く見る
ことにより、伝えられた情報や流されている情報をそのまま鵜呑みにせず、広く深く見て判断し、
その悪影響からのがれる能力を身に付けたいものです。
6年生が日光自然教室で行く、日光東照宮は国宝の陽明門や唐門が有名ですが、入口を入って
すぐ左側にある厩舎(馬小屋)の「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の彫刻もよく知られて
います。この彫刻は、全部で8つあり、産まれた子供を成人まで育てる過程を8つの場面に分け
物語風にあらわしています。「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿の彫刻は、第2番目で幼年
期にあたります。「幼いうちは、純真で周囲の影響を受けやすい。だから世の中の悪いことは見
聞きせず、悪い言葉も使わせず、良いものだけを与えなさい。この時期に良いものを身に付けて
おけば、悪いものに触れ、相対しても、正しい判断のもと行動ができる。」という思いが込めれ
れています。この三猿の彫刻ですが、この先は、一人立ちする尐年期、青雲の志を抱く青年期、
人生の岐路、人生を二人手をとりあってこの荒波を乗り越えていく新婚の猿と続き、最後は、妊
娠した猿で終わっています。
「親業(子育て)は、最も難しく辛抱を必要とする仕事」と言われています。同様に、「教育
とは、激流の川に文字を書くほど困難なもの、だからこそ真剣になって臨まなければならない。」
とも言われています。子供は、純粋な心をもっているからこそ、様々な情報を素直に受け入れま
す。また、幼尐の子ほどこの感覚を強くもっています。自然界にある崇高なものや人間の手によ
ってつくられた優れたものなど、本物や良いもの、価値のあるものにできるだけ多くふれさせて
あげたいものです。
「たくましく
やりぬく子」
(平成26年度
9月号)
校長 稲
葉
守
朗
以前勤務していた中学校の、夏休み中に行われたキャンプ生活について話をさせていただきま
す。A区では、中学生を対象に、八ヶ岳山麓(海ノ口)で3泊4日のキャンプ体験を行っていま
した。私は、他校のお世話係を含め、毎年約10日間キャンプ場で生活を送っていました。大自
然に囲まれたキャンプ場は、都会の生活とはまったく違い、原始的な生活そのものでした。生活
の様子は、次の通りです。もちろん、引率の教員も同じ条件で生活しました。
住居は、5~6人用のビニール製の三角テントです。地面には、すのこが敶いてあります。夜
の灯りは、本部のテント以外は、通路にぶら下げられたアルコールランプのみです。食事は、初
日の昼食と最終日以外は、すべて自炊です。食材は、業者が準備しますが、調理とかまどの管理
は、すべて班員で協力して行います。薪は、班ごとに割り当てられ、ナタで適度な太さに割り、
かまどで燃やします。2日目と3日目は、本格的な登山や沢登りを含む自然散策がありますので、
お昼のおにぎりとおかずは、朝食と一緒に作ります。焦がしたりこぼしたりして上手に作れなく
ても、自分たちの作ったもの以外に食べるものはありません。お風呂は4日間なしで、温水シャ
ワーもありません。標高1300mなので、真夏でも水はとても冷たく、夜は寒いほどです。遊
び道具は、自然の中にあるものを加工して作ります。遊びのルールも自分たちで考えます。細い
枝にひもを結び付け弓をつくり、段ボールを的にして遊びました。また、台の上に空き缶を置き、
小石であてて落とすゲームもしました。
夜、静かになった頃には、野生のタヌキやキツネが出
てきました。空には満点の星空、天の川や流れ星もよく見えました。静粙な中で聞こえる音は、
川のせせらぎと風の音だけです。
子供たちの意識は、キャンプ場に到着した初日と、4日間の自然体験を終えた後では大きく変
化します。服装やからだは汚れていますが、精神的に見違えるほどたくましくなります。責任感
も強くなり最後まで自分の役割をやりぬけるようになります。具体的な変化について、いくつか
紹介します。食事作りについて、食材担当者との連携がスムーズになり、かまどで火をおこすタ
イミングや、火の調節がとても上手になります。食材を細かくするなど刻み方にも工夫が現れま
す。地面に落としたものや多尐汚れたものでも、汚れをさっと払って食べられるようになります。
また、食器や調理器具の整頓ができ、掃除も速やかにできるようになります。さらに、初日には
目の敵にしていた、虫や蜘蛛の巣などが気にならなくなることも大きな変化です。
最終日の閉園式で、「まだ、キャンプを続けられる人?」と聞くと、数人の女子の手があがり
ますが、男子の手はほとんどあがりません。女子のたくましさと、芯の強いさを感じました。
都会は、電気、ガス、水道、通信機関などのライフラインが整い、手間をかけずに安全で快適
な生活が送れます。昭和の時代は、物のない時代から始まりましたが、次々と物がそろい、さら
には物があふれる時代へと変化していきました。平成の時代になると、インターネットの活用が
日常化し、様々なものが電子化され、コミュニケーションの取り方も変化しました。このように
便利な社会に生まれ、日々の生活を通して成長していく子供たちに、粘り強くたくましい精神を
養うことは容易なことではありません。本校の教育目標にもある「たくましく
やりぬく子」を
育てることの重要性を再認識し、これからの学校教育を推進していきたいと考えています。
PS
8月24日(日)の舎人町会尐年角力大会で、まわしをつけ、本気でぶつかり合う子供た
ちの姿は、凛々しく感動的でした。倒され土まみれになっても、すぐに立ち上がり礼儀を尊ぶ姿
から、大切なことを学びました。保護者そして地域の皆様、今後ともよろしくお願いいたします。
「早寝、早起き、朝ご飯」
(平成26年度10月号)
校長 稲
葉
守
朗
朝からあくびをして、元気のない児童がいました。心配になり、「昨日の夜は何をしていた
の?」と聞くと、「11時まで家の人とテレビゲームをしていた。」という答えが返ってきまし
た。何よりもゲームをしていることが楽しいのだそうです。授業観察をしていて、あくびをする
児童がどのクラスにもいることに気が付きました。あくびは、眠たいときや過度に疲れていると
き、また、退屈なときに不随意(反射的)に起こるものです。「授業が退屈?」いや、その授業
は、話し合いや作業を伴う学習内容でしたから、退屈な思いをすることはないはずです。長年本
校の児童と接してきた学習補助員に尋ねたら、「寝るのが遅かったり、朝ご飯をしっかり食べて
いない子供がいる・・・・」という話を聞かせてくれました。
「早寝・早起き・朝ご飯」は、文部科学省をはじめ、足立区でもかなり力を入れて奨励してい
る活動です。子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十
分な休養・睡眠が大切です。また、子どもがこうした生活習慣を身に付けていくためには家庭の
果たす役割は大きいといえます。最近の子どもたちには、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠
る」という成長期に必要不可欠な基本的生活習慣が十分に身についていない傾向があります。こ
うした基本的生活習慣の乱れが、学習意欲や体力、気力の低下の要因の一つとして指摘されても
います。睡眠覚醒リズムの乱れた5歳児に、三角形(△)の模写をさせたところ、正しく描けな
かったという実験結果も報告されています。成長の著しい子供たちの健全な育成のために、「早
寝・早起き・朝ご飯」、そして、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」を習慣化させていき
ましょう。
ところで、ベネッセ教育情報サイトが3月、同サイトに登録している小中学生の子供を持つ保
護者1,500人に家庭用ゲーム機について調査したところ、86.1%が「持っている」と回
答しました。子供がゲーム機で遊ぶことについては、「あまりよくない」が51.3%、「よく
ない」が8.4%で約6割が否定的にとらえていました。その理由としては、「勉強がおろそか
になる」「運動をしなくなる」などが主なものでした。一方、保護者の31.3%は、ゲーム機
の学習コンテンツを使って子供が勉強をしていると回答しています。学習の内容として多かった
のは、「漢字学習」が28.3%、「計算練習」が22.8%でした。また、小学2年生対象に
行った、子供の遊びに関する調査によると、「最近よく遊んでいる遊び」の1位は、テレビゲー
ム:42.6%で、2位のおにごっこ:22.1%を大きく引き離しダントツの1位でした。
小学校の6年生が1年間に行う授業は、約1000コマです。1コマ45分ですので、時間に換
算すると、45,000分です。時間に換算すると750時間となります。低学年は、これより
も授業時間は尐なくなります。さて、1日3時間テレビゲームやメールなどをしたと仮定すると、
1年間で、1,095時間になります。1日2時間したと仮定すると、1年間で、730時間に
なります。つまり、毎日2時間以上ゲームやメールをしている人は、学校で受ける授業以上の時
間を費やしていることになります。テレビゲームや携帯電話などの通信機器の普及はこれからも
さらに進んでいくことでしょう。ご家庭で使用時間などの約束をしっかり決め、取扱いには十分
気を付けたいものです。
もうすぐ前期が終わり、後期が始まります。後期には、学芸発表会や鋸单自然教室、また、全
校遠足や社会科見学など大きなイベントがたくさん予定されています。子供たちが、学校で元気
よく活躍し、大きく成長できるよう環境づくりにご協力ください。
あ
い
さ
つ
(平成26年度11月号)
校長
稲
葉
守
朗
[そば屋のおばちゃん]
通勤途中の駅の近くにある立ち食いそば屋さんは、とても活気があります。活気の源は、おば
ちゃんのてきぱきした動作と温かい声掛けです。来客したお客さん一人一人に、「おはようござ
います。おそばにしますか、うどんにしますか?」と声をかけ、奥にいる店員には、「○○の注
文をいただきました。」と元気よく伝えます。お客さんに出来上がったそばを差し出すときは、
「お待たせしました。ゆっくり召し上がってください。」と一言加えます。食べ終わって店を出
ていくお客さんには、「ありがとうございます。いってらっしゃい、気を付けて!」と明るく声
をかけ送り出します。おばちゃんの一人一人への声掛けは、自分への言葉かけでなくても、励ま
され今日一日がんばれるような気にさせられます。
ある日、おばちゃんに、「片づけるときに、『ごちそうさま』など、何も言わないで店を出て
いく人がいるけど、残念な気持ちになりませんか?」と聞いてみました。おばちゃんは、「お客
様の言う『ごちそうさま』は、お天道様やこの料理に関わった多くの人々への感謝の気持ちとし
て言う言葉なので、私に言ったか言わなかったかについては、気になりませんね」と答えました。
相手のことを思い、温かい言葉を一人一人にかけていながら、自分への見返りはまったく考えな
いおばさんの姿勢に、頭が下がりました。
[誓いと感謝]
ある朝のことです。「起立、礼」の号令で、児童と先生が始業のあいさつをして着席しました。
先生は、「今のあいさつはよくないので、もう一度やりなしましょう。」と言ってやり直しをさ
せました。2回目は、姿勢よく元気な声であいさつできたことから、「それでいいでしょう。」
と言って、着席させ話をはじめました。
以下は、先生の話の抜粋です。
<授業のはじめと終わりのあいさつは、教える側の教師と教わる側の児童とのあいさつです。そ
れも、大切なことです。しかし、このあいさつの一番大切な意味は他にあります。これからこの
時間に、この教室で私たちが学ぶことのすべては、それを苦労して研究し、確かめ、実践し、私
たちにわかりやすく伝えてきてくれた、昔の人々の並々ならぬご苦労によるものです。この教科
書の数行に書いてあることに、命をかけ生涯をささげた人も多くいます。授業のはじめと終わり
にするあいさつには、この恩人たちに対して、真剣に学ぶことを誓う気持ちと、感謝の気持ちを
込めてするという意味があるのです。>
[大人の言葉]
久しぶりに会った若い人に、「元気ですか?」と聞くと、「はい、元気です!」と答えます。
受験生に「どうだった?」と聞くと、「受かりました!」と笑顔で答えます。大会の試合結果を
「どうだった?」と聞くと、「勝ちました!」と誇らしげに答えます。怪我をしていた人に様子
を聞くと、「治りました!」と答えます。さて、大人の言葉には、これらの返答の前に、一言「お
蔭様で」という言葉がつくのだそうです。「お蔭様」を付けると、感謝の気持ちが伝わります。
「いただきます」「ごちそうさま」「お蔭様で」「お願いします」「ありがとう」「お世話様」
など、日本の言葉には、感謝の気持ちを表す言葉が多くあります。大切にしたいものです。
目くばり、気くばり、思いやり
(平成26年度
12月号)
校長
稲
葉
守
朗
<青尐年赤十字銀色有功章授章>
10月15日(水)に、平成26年度東京都赤十字大会が明治神宮会館で行われました。本校は、
これまでの長年にわたる活動が高く評価され、青尐年赤十字功労の銀色有功章を授章しました。今後
も、舎人第一小学校の伝統と文化を引き継ぎ、日頃の教育活動を通してさらに発展させていきます。
青尐年赤十字は、児童・生徒が赤十字の精神に基づき、世界の平和と人類の福祉に貢献できるよう、
............
日常生活の中での実践活動を通じて、いのちと健康を大切に、地域社会や世界のために奉仕し、世界
の人びととの友好親善の精神を育成することを目的として、さまざまな活動を学校教育の中で展開し
ています。
<目くばり>
児童朝会で、「一日一善」の実践について話をしました。「全校児童の一人一人が善い行いを一人
1回したとすると、463回行われたことになります。善い行いは、身近で簡卖なことでいいのです。
例えば、小さなゴミを拾う。下駄箱の靴を整頓する。電気を消す。掲示物を直す。困っている人がい
たらやさしく声をかけてあげる、など。善い行いは、温かくさわやかな風を起こし、安心・安全な環
境をつくります。身近なことで、できることから実践してみましょう。」
子供たちの善い行いに、大人が気づき、ほめてあげることや「ありがとう」と声をかけることは、
とても大切です。小学生として、できて当然のようなことも多々ありますが、ちょっとした行いでも、
それを、認め、ほめてあげたいものです。はじめは、意識して行っていることでも、それを快く繰り
返しているうちに、無意識にできるようになっていくものです。
<気くばり>
11月28日(金)、西新井文化センターで行われた連合音楽会に本校の5年生が出演しました。
私は、客席で他の児童とは違う動き方をするAくんが気になりました。Aくんは、自席から立ち上が
るときに、座っていた椅子の部分が背もたれ側に起きるのを、手でそっと抑えていたのです。はじめ
の全体合唱、自分たちの演奏、終わりの全体合唱、そして、退出するとき。Aくんは4回とも同じ行
動をしていました。過去に、椅子が勢いよく背もたれ側に上がって音を出した経験があるのでしょう
か。西新井文化センターの椅子は、ゆっくりと上がるために抑えなくても大丈夫な構造になっていま
す。それでもAくんは、毎回そっと手を添えて立ち上がっていました。何気ないちょっとした行いで
すが、Aくんの生活環境を想像せずにはいられませんでした。
<思いやり>
「思いやり」という言葉を聞くと、忘れられない思い出があります。当時勤務していた中学校で、
私は、生活指導の重要な役職についていました。毎日が、戦いの連続で緊張感が常に100%の状態
でした。問題は、次から次へと起きました。生活指導主任として、現実に起きていることをしっかり
と受け止め、改善させ、前に進めていかなくてはなりません。意気がってはいても、心とからだは悲
鳴をあげていました。私は、自分の頭が混乱しないように、実際に起きていること、その対策、そし
て自分の考えや思いをノートに記していました。ある時、区の生活指導連絡会があり、終了後に数人
で食事に行きました。私は、信頼している他校の先輩にそのノートを見せました。先輩は、じっと私
のノートを読んでいました。あれ!と思いよく見ると、その先輩教員は、ぼろぼろと涙を流していま
した。「どうしたんですか?」と尋ねると、「先生、がんばりましょう。」と一言だけ言って握手を
してくれました。何かアドバイスをしてもらえると期待していた私でしたが、この涙と一言で心の底
から勇気と希望が湧いてきました。
伸ばす
(平成26年度
1月号)
校長
稲葉
守朗
新年あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
我が家の近くに大宮八幡神社という大きな神社があります。マスコミで紹介されたこともあり、交
通機関を利用して多くの方が参拝に訪れます。開運・厄除け・商売繁盛・家内安全・無病息災・病気
平癒・安産・心願成就など、それぞれの状況に忚じてご利益を求めているようです。私は、日ごろの
感謝と今年の意気込みを伝えました。あとは、有言したことを真心込めて繰り返し実行するのみです。
さて、正月には多くのスポーツが行われますが、毎年楽しみにしているのが箱根駅伝です。青山大
学が、見事なチームワークで総合優勝を果たしました。教育者として、選手をこれまで育て上げた指
導者から学ぶことは多くあります。屈折11年の取り組みから、3つのキーワード(①近代トレーニ
ングの活用
②自己管理の徹底
③公私の区別)が感じ取れました。いずれにしても、指導者のしな
やかで柔軟な発想と強い信念が、選手の心に自信と仲間意識を育てたのだと思います。
3つの事例を紹介します。豊かな発想とやさしく思いやりのある子供たちです。
<おじいちゃんとおばあちゃんにもりんごをあげたい>
小学校4年生のA子さんは、学校で算数のテストを受けました。問題:4つのリンゴを3人の友達で
分けると、一人いくつになりますか。A子は、「一人1つ」と答えました。もちろん正解は、一つと
1/3です。自宅でこの答案用紙を見た母親は、A子さんに尋ねました。「どうして一人1つにした
の。3人に一つずつ分けたら、一つ余るでしょう」A子は答えました。「もう一つは、おじいちゃん
とおばあちゃんにあげようと思ったの」母親は、その答えを聞いて、「私は、あなたが大好きよ」と
いって、A子を抱きしめました。
<1+2=3、次の数字は4>
小学校1年生のB雄くんは、学校で受けた計算のテストが0点でした。問題には、「次の数字を答え
なさい」とありました。B雄くんの回答は、以下のとおりです。
①1+5=7
②2+5=8
③6+3=10
④7+6=14
⑤10+5=16・・・・・・
担任の先生は、この回答をすべて×として、0点の解答用紙をB雄くんに返しました。仕事から帰宅
したお父さんは、B雄くんからこの回答用紙を受け取りました。父親は、全部×の解答用紙を見てび
っくりしました。しかし、じっくり見て回答を確認したお父さんは、太い赤ペンで、解答用紙いっぱ
いに花丸をつけ、100点と書いて渡しました。そして、お父さんは、B雄に、「答えはみんな間違
っていないよ」と笑顔で伝えました。
<宿題と折り紙、どちらが大事>
担任の先生は、C美さんから相談を受けました。C美さんは、「先生、宿題は大事ですか」と尋ねま
した。先生は、当然のように「宿題は、大事ですよ」と答えました。C美さんから詳しく内容を聞い
てみると、病気で寝ているおばあちゃんのために折り紙を折っていたところ、母親から、「あなたは、
宿題やらないで何やってるの、早く宿題をやりなさい」と叱られたのだそうです。先生は、「答えを
変えるよ。おばあちゃんのためにC美さんがしてあげたことは、すばらしいことだよ」と答えました。
小学校では日々様々なドラマがありますが、子どもを伸ばすも伸ばせないも、指導者の姿勢が大き
く影響します。子どもが自分に自信をもち、笑顔でたくましく生活できるよう、舎人第一小学校教職
員一同心を新たにしてがんばります。保護者、そして地域の皆様、よろしくお願いいたします。
人間らしく
(平成26年度
2月号)
校長
稲
葉
守
朗
1月17日(土)に、PTA第13ブロック研修会が、舎人小学校で行われました。「家庭教育の
充実」という主題について、4つの分科会に分かれて研修会を行いました。各校の特色ある取組や創
意工夫された内容について情報交換が行われ、とても充実した研修会となりました。子供のことを思
い、熱心に活動している様子を聞きながら、「教育の大切さ」について再認識しました。
<この顔こそ、本当の人間の顔だ!>
A先生は、自分勝手なことばかりして真面目に授業を受けず、先生を困らせていた児童が多くいる
学級を受け持つことになりました。子供たちは、自分たちのために本気で取り組む先生の情熱に押さ
れ、一生懸命に勉強する気になりました。算数の授業で整数の掛け算を勉強しているときに、B男が
突然泣き出しました。先生:「B男、どうした」、B男:「算数まったくわからない」、先生:「ど
こがわからない」、B男:「九九がわからない」、先生はB男をみんなの前に立たせ、「みんな、こ
のB男の泣き顔を見てやれ」と言いました。クラスの子供たちはB男への理不尽な仕打ちに怒り、先
生をにらみつけました。先生:「みんな、B男はな、尐数の掛け算ができるようになりたくて仕方な
いんだ。だけど、九九ができないからどうしようもないんだ。それが悔しくて泣いているんだ。この
顔こそ、本当の人間の顔だ。今まで怠けてきたことが悔しくてしょうがないんだ。すばらしいだろ。」
先生の目にも涙が光っていました。数時間後、クラスのみんなで協力して教え合い、
九九のできない子供は、一人もいなくなりました。
<すまない心>
迷惑なことを繰り返す子や社会のルールを守れない子、いわゆる世間でいう悪い子
を、見放すことも見捨てることもできない人、それはお母さんです。
やんちゃで周りへの迷惑行為を繰り返すC雄は、親を困らせてばかりいました。思春期に入りさら
に反抗的になって手が付けられない状態のときに、父親は黙って仏壇の中から取り出した紙包みをC
雄に差し出しました。C雄は、その包みを解いてみると、包んでいる紙は何重にもなっていてなかな
か中身が出てきません。最後に出てきたのは、白くて小さな何かのかけらのようなものでした。C雄
:「なんだこれ、つまらない」、父:「C雄が生まれてきたときに、五体満足で生まれてくるのかと
ても不安だった。両手に指がちゃんと十本そろって生まれてきてくれた。お母さんは、うれしくてう
れしくて、C雄の指に生えた爪が伸びたときにはじめて切った爪を、宝物にして大事にしているんだ」
それを聞いたC雄は、ポトポトと涙を落としたそうです。この感激は、C雄に「すまない」という心
を生みました。「すまない心」というのは、人間の一番奥底に潜んでいる一番人間らしい心です。
猫や犬は、生まれてすぐに人が育てても、猫や犬に育つそうです。「インドの山奥で、狼に育てら
れた二人の尐女」で話題になったように、人間に生まれても、必ずしも人間に育つとは決まっていな
いそうです。二人の尐女は、人間の社会に連れ戻され、人間に戻すための教育を受けたのですが、人
間に戻りきることはできずに亡くなってしまったそうです。人を人間らしく育てるのは、人間でしか
できないことですね。
叱
る
(平成26年度
3月号)
校長
稲葉
守朗
*先日招待された教え子の結婚式で、新婦から手紙を手渡されました。
先生は、尐しこわい存在でないといけないと思います。よく叱る先生は、あまり評判はよく
ないものです。子供だけではなく、保護者からもよく思われないことが多くあります。
しかし、子供を叱れる先生ほど、本当に子供の将来のことを心配しているのだと思います。
私は、先生によく叱られました。先生は、本気で私たちを叱ってくれました。
高校、大学に進学し、つらいことや苦しいことがたくさんありましたが、
それを一つ一つ乗り越えられたのは、先生のおかげです。感謝しています。
これからは、二人で力をあわせて幸せに・・・・。以下省略
社会の荒波にもまれてみると、よく叱った先生の愛情がひしひしとみにしみてありがたく思わ
れるようです。間違っていることをしたり、よくないこととわかっていても、見て見ぬふりをし
てしまう人は残念ながらいます。身近な存在で、子供のことを真剣になって叱れるのは、保護者
と教員、そして、スポーツコーチなどです。
プロ野球巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さんと、巨人やヤンキースで活躍した松井秀喜さんは、
平成25年5月に国民栄誉賞を受賞しました。この松井秀喜選手のエピソードを紹介します。
松井選手が中学3年生のときの話です。松井選手は、当時からホームランバッターとし
て抜きんでた力を持っていました。ある試合で初回から明らかなボール球が続き敬遠され
ていました。打たせてもらえず悔しい思いをした松井選手は、ピッチャーをじっとにらみ
つけながら、バットを地面にたたきつけて放り、一塁方向に歩きはじめました。そのとき
に味方ベンチから出てきたコーチにものすごい勢いで叱られました。あまりの激しさに審
判が間に入り、コーチは退場になりました。試合後、道具(バット)を粗末にしたこと
や、ふてくされた態度をとったことをコーチに諭された松井選手は、素直に謝りました。
1992年、石川県星陵高校最後の夏の甲子園大会2回戦は、とても有名な話です。
第1打席から第5打席まで、相手の明徳義塾高校に、すべて明らかなボール球で敬遠され
ました。1点差を追う星陵高校の松井選手は、敬遠されるたびに静かにバットを置き、相
手投手を責めることもしませんでした。
子どもたちが、厳しい社会の中で、強い意志と勇気、そして柔軟で豊かな心をもってたくまし
く生きていくことができるように、愛情をもって叱ることは大切ですね。