キャラクター消費者 - Info Shako

キャラクター消費者
―性役割と年齢意識との関連の一分析
指導教員:石井健一
筑波大学第三学群社会工学類
社会経済システム主専攻
200410977
木村綾香
目次
第 1 章研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
1.1 背景
1.2 事前調査
1.3 仮説の設定
第 2 章 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第 3 章 結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
3.1 変数の定義
3.2 結果の概況
3.3 キャラクターイメージに関する分析
3.3.1 イメージの抽出
3.3.2 人気キャラクターに対するイメージ
3.4 仮説の検証
3.4.1 ジェンダー・性役割の尺度と好きなキャラクターのイメージの関係
3.4.2 年齢に関する尺度と好きなキャラクターのイメージの関係
第 4 章 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
参考文献・資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
2
第1章
研究目的
1.1 背景
近年の日本のキャラクター市場規模は約 2 兆円とされている。これは、純粋なキャラク
ター商品の購入実績による額であり、映画収入、テレビの放映権料、漫画の売り上げ、な
ども含めるとキャラクター関連の市場は約 4 兆円にもなるといわれている。この市場規模
から見て、日本はキャラクター先進国であるといえる。(陸川・西川、2002)そんなキャラク
ター先進国の日本では、非常に多くのキャラクターが存在し、常に増え続けている。2007
年に新たに登場し、有名になったキャラクターといえば、滋賀県彦根市の、彦根城築城 400
年を記念して誕生した“ひこにゃん”が例としてあげられる。1 月 10 日の asahi.com によ
ると“ひこにゃん”宛てに、住居の彦根城に届いた年賀状が 100 枚を超えたとされている。
このことは“ひこにゃん”の人気の高さを表している。また、このことがニュースとなっ
ていることから、日本社会が、キャラクターに対し注目していることもわかる。このよう
に、毎年多くのキャラクターが誕生する日本において、どのようなキャラクターが好まれ
るのか、非常に興味を持った。また、キャラクターを好む人には何か特徴があるのではな
いかと考えた。
産業の分野から、キャラクター消費行動について研究をした神澤(2006)は、次のように述
べている。日本のキャラクターは国内のみならず、海外でも高い評価を受けているが、こ
こ最近キャラクター商品のマーケットは 2 割ほど落ち込んでいる。この主な原因は消費者
嗜好の多様化であるとしている。そして、今後、キャラクタービジネスの発展のためには、
多様化した消費者嗜好を精査することが必要としている。また、陸川・西岡(2002)は、キャ
ラクター支持の心理的背景には認知・感覚的要素、情緒的要素、物語的要素の 3 つがあり、
これらの要素をうまく組み合わせることでキャラクタービジネスの発展に繋がるとしてい
る。これらのような、キャラクター消費者の嗜好の研究は未だ少ない。
そこで、キャラクター商品の消費行動の特色や、キャラクターと関連性があると考えら
れるさまざまな要因に関して、あらゆる視点から調査、分析することで、キャラクターが
好まれる要因を把握し、今後のキャラクタービジネスの発展へとつなげていくことを本研
究の目的とする。
1.2 事前調査
事前調査は、キャラクター自体とキャラクターとそれを好む人との関係を詳しく知るた
めの個人面接法による調査と、キャラクターイメージによる知覚マップを作成するための
調査の 2 種類を行った。
個人面接法による調査
個人面接法による事前調査は全 4 回行った。いずれもキャラクターが好きという大学生
を対象とした。2007 年 6 月 17 日、被験者と 1 対 1 の個人面接法にて調査を行った。1 人
当たり約 1 時間程度の調査であった。調査では、キャラクターに対するイメージ、キャラ
クターを好きな理由、などキャラクターに関することと、被験者自身に関することについ
て質問した。表 1.2.1 は調査において注目すべき発言の要点をまとめたものである。
3
表 1.2.1 各被験者の発言の要点
被験者
被験者A
男性・大学院1年
被験者B
男性・大学4年
被験者C
女性・大学2年
被験者D
男性・大学5年
好きなキャラクター 好きな理由
イメージ
将来の夢
リラックマ
心が癒される のんびりしている 家裁調査官
緊張を緩和してくれる
ポジティブ
ドラえもん
しっかりしている やさしい
安定した職業につく
まわりを安心させる力がある 大人っぽい
リサとガスパール かわいい
うさぎ
外国で働く
外国のキャラクターである 外国(フランス)
ドナルドダック
元気がでる
明るい
医師
明るい
騒がしい
被験者 A の将来の夢は、家裁調査官となり、罪を犯してしまった少年少女の心の傷を癒
すことである。被験者 A は、リラックマの心が癒される所が好きとしている。これらより、
被験者 A はリラックマというキャラクターに対し、自分のなりたい姿を重ねていることが
推測される。また、他の 3 名の被験者においても同様の推測をすることができる。被験者 B
の将来の夢は、安定した職業に就き、安定した生活を送ることである。被験者 B は、ドラ
えもんのまわりを安心させる力があるところを好きとしている。被験者 B が安定感のある
ドラえもんに対し、将来の自分の姿を重ねていることがわかる。被験者 C の将来の夢は、
外国で働くことであり、キャラクターの好きな理由も外国のキャラクターであるからとし
ている。被験者 C の外国に対する憧れが、好きなキャラクターとしての自己表現として表
れている。被験者 D は、将来、尊敬される医師になりたいと述べた。被験者 D は、ドナル
ドダックの明るい部分や、元気がでるところが好きとしている。明るく、患者を元気付け
る医師になりたいという将来の姿とドナルドダックを重ねてみていると推測される。これ
らの事前調査を通して、キャラクターの好きな理由と、将来の夢について何らかの関係性
があることがわかった。
知覚マップ
筑波大学ライフセービング部に所属する大学生の男女7名に対し、調査を実施した。
調査は、2007 年 6 月 24 日に行った。質問紙を配布し、回答してもらった。
各 5 種類のキャラクターを 2 つずつ比較し、まったく似ていないものを 1、すごく似てい
るものを 10 とし、10 段階で評価してもらった。男性向けキャラクターと女性向けキャラク
ターの2つについて、類似行列を使い、多次元尺度分析(SPSS の ALSCAL を使用)を行
った。これらを用いて、代表的なキャラクターの知覚マップを作成した。
①男性向けキャラクター
それいけ!アンパンマン、ドラえもん、機動戦士ガンダム、ピカチュウ、ミッキーマウ
スの 5 つを男性向けキャラクターとし、調査を行った。表 1.2.2 は男性向けキャラクターの
知覚マップである。
4
表 1.2.2 男性向けキャラクターの知覚マップ
ユークリッド距離モデル
次
元
2
1.5
ピカチュウ
1.0
0.5
それいけ!アンパンマン
0.0
機動戦士ガンダム
ドラえもん
-0.5
ミッキーマウス
-1.0
-2
-1
0
1
次元 1
知覚マップを作成した結果、機動戦士ガンダムのみ、大きくほかと離れたところに位置
した。機動戦士ガンダムの特徴として考えられることは、大人の男性に人気であるという
ことである。また、他のキャラクターの関係を見てみると、ピカチュウとそれいけ!アン
パンマンが、ミッキーマウスとドラえもんがそれぞれ同じ次元に入った。ピカチュウとそ
れいけ!アンパンマンの共通の特徴といえば、子供に人気があることだと考えられる。ミ
ッキーマウスとドラえもんに共通していえることは、大人にも人気があることだと考えら
れる。そして、ピカチュウ、それいけ!アンパンマン、ミッキーマウス、ドラえもんに共
通しているのは、男性、女性に人気があることだと考えた。以上の考察より、男性向けキ
ャラクターにおいて、縦軸の上に行くほど子供向け、下に行くほど大人向け、横軸の右に
行くほど、男性・女性ともに人気がある、左にいくと男性に人気がある、と解釈した。
5
②女性向けキャラクター
ハローキティ、スヌーピー、くまのプーさん、リサとガスパール、ミッフィーの 5 つを
女性向けキャラクターとし、調査を行った。
表 1.2.3 女性向けキャラクターの知覚マップ
ユークリッド距離モデル
次
元
2
リサとガスパール
1.0
スヌーピー
0.5
0.0
ミッフィー
ハローキティ
-0.5
くまのプーさん
-1.0
-2
0
2
次元 1
知覚マップを作成した結果、表 1.2.3 のようになった。まず、縦軸によって左右に二つに
分断されたキャラクターの特徴を見る。左半分にはスヌーピーとくまのプーさんが、右半
分には、リサとガスパール、ミッフィー、ハローキティが位置した。これらから、左半分
に位置するキャラクターは男女ともに人気があるキャラクター、右半分は女性に人気があ
るキャラクターであると考えた。次に、横軸によって上下に分断されたキャラクターの特
徴を見る。上半分には、スヌーピーとリサとガスパールが、下半分にはくまのプーさん、
ミッフィー、ハローキティが位置した。これらから、上半分のキャラクターは、大人に人
気があるキャラクター、下半分は、子供に人気のあるキャラクターと考えた。以上の考察
より、女性向けキャラクターに関しては、縦軸において上に行くほど大人向け、下に行く
ほど子供向け、横軸において右に行くほど女性向け、左に行くほど男性・女性ともに人気
があるキャラクターであると解釈した。
6
1.3 仮説の設定
キャラクターとキャラクターを好む人との関係について次のような仮説をたてた。
<仮説>「好きなキャラクターはなりたい自分の象徴である」
仮説 1 女性(または男性)らしさを好む人は女性(男性)らしいキャラクターが好きである
仮説 2 子供っぽさを好む人(または大人っぽさを好む人)は子供(大人)っぽいキャラクター
が好きである
「好きなキャラクターはなりたい自分の象徴である」という仮説は、事前調査の個人面
接法による調査結果からたてた仮説である。しかし、今回の調査では、大学生とキャラク
ターとの関係を量的に調査し、キャラクタービジネスに役立てることを目的としていた。
よって、仮説そのままでは様々ななりたい姿があり、量的に分析することが困難であると
考えたため、知覚マップから得られた結果を元に、仮説1と仮説 2 を設定した。知覚マッ
プの結果から、キャラクターに対し性別と年齢によって大きく分類ができることがわかっ
た。
この結果と、キャラクターはなりたい自分の姿であることを踏まえ、仮説 1 と仮説 2 を設
定した。
7
第2章
研究方法
第 1 章で述べた仮説を検証するため、好きなキャラクター、そのキャラクターに対する
イメージ、そして被験者本人の自分に対するイメージを質問紙にて、量的調査を行った。
調査対象者
アンケートは 3 回に分けて行った。
第 1 回目は、2007 年 12 月 5 日、筑波大学 2 学食堂にいた筑波大学の学生にアンケートを実
施した。調査協力をしてくれた学生は 49 名(内、有効回答者数 48(女性 48 名)
、有効回答
率 98%、有効回答)であった。アンケートを依頼した 49 名の学生全員がアンケートに協力
してくれた。
第 2 回目、3 回目は、2007 年 12 月 6 日筑波大学の講義「経済政策分析」
、
「都市防災計画」
の中で実施させていただいた。経済政策分析の講義では 23 名(内、有効回答者数 23(男性
17 名、女性 6 名)、有効回答率 100%)の学生が、都市防災計画の講義では 54 名(内、有効
回答者数 54(男性 37 名、女性 17 名)、有効回答率 100%)の学生が調査に協力してくれた。
以下、調査の詳細である。
回収数
:計 126 部(分析に使用したのは 125 部)
男女別内訳 :男性 55 部、女性 71 部
調査対象年齢:18 歳∼23 歳
学類別内訳 :以下の表を参照。
表 2.1 学類の内訳表
所属
自然学類
社会学類
人間学類
日本語日本文化学類
比較文化学類
生物資源学類
国際総合学類
社会工学類
工学システム学類
理工学群
看護学類
システム情報工学研究科
合計
度数
パーセント
1
1
8
2
10
12
9
77
1
2
1
1
125
0.8
0.8
6.4
1.6
8
9.6
7.2
61.6
0.8
1.6
0.8
0.8
100
学類記入欄に間違えて理工学群と記入した学生が 2 名いた。
また、システム情報工学研究科は筑波大学の大学院であるが、一緒に分析を行った。
方法
食堂にて行った調査では、調査員が任意に
選んだ女性に調査協力を求め、同意してく
れた方に質問用紙を配布し、回答してもらった。経済政策分析、都市防災計画の講義では、
8
女性の人数が少ないことが予想されていたため、女性のみを対象に調査協力の依頼をした。
講義の中で行った調査では、冒頭に調査協力のお願いをし、配布し、回答してもらった。
食堂での調査と講義での調査では調査方法が多少異なってしまった。これらのデータを
一緒に分析して支障がないか、t 検定を行い検定した。検定には、講義で調査に協力してく
ださった方のうち、条件が等しくなるよう、女性のデータのみを使用した。そして、食堂
での調査と講義での調査によって、キャラクターへの好感度に差異が生じるか、検定を行
った。
検定を行う際に、キャラクターへの好感度を以下のように分類した。
①すごく好き
→ 1
②やや好き
→ 2
③どちらかというと好き → 3
④名前を知っている程度 → 4
食堂での調査の平均値(1.56)、講義での調査の平均値(1.91)と多少ばらつきがみられた。
t 検定の結果は、t値(-1.545)有意確率(0.131)であったため、食堂での調査と講義での調
査には差異がないことがわかった。従って、この後の分析ではすべてにおいて区別せず使
用した。
アンケート内容
まず、アンケートでは好きなキャラクターを自由記述にて記入してもらった。キャラク
ター自体の数が多数存在するため、自由記述にした。最初に答えたキャラクターについて
のイメージやそのキャラクター商品に費やす月平均の金額、好きな商品、好きな理由を設
問にした。キャラクターのイメージには SD 法を用いて調査した。そこに用いられた形容詞
対は、事前に行った質的調査の際に出た、キャラクターに対するイメージを元に作成した。
以下、アンケートに使用した形容詞対である。形容詞対は、印象がいいものと悪いもの
を左右にランダムに配置した。
9
表 2.2 キャラクターイメージに使用した形容詞対
古臭い
明るい
静かな
地味な
落ち着きのない
単純な
圧迫感のない
日本風な
良い
さわやかでない
嫌い
下品な
個性的な
豪華な
高級な
親しみにくい
かわいい
かっこ悪い
野暮ったい
醜い
弱弱しい
しっかりした
陰気な
お母さん
意地悪
子供っぽい
消極的な
女性的な
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
⇔
新しい
暗い
騒がしい
派手な
落ち着きのある
複雑な
圧迫感のある
外国風な
悪い
さわやかな
好き
上品な
一般的な
質素な
低級な
親しみやすい
かわいくない
かっこいい
おしゃれな
美しい
力強い
しっかりしていない
陽気な
お父さん
やさしい
大人っぽい
積極的な
男性的な
また 1.3 でキャラクターが好まれる要因には性別と年齢的な要素が関係しているという
仮説をたてた。以下はジェンダー・性役割の尺度に使用した質問項目である。本調査では、
ジェンダー・性役割の尺度 BSRI 日本語版を使用した。(堀洋道 2001)男性性尺度、女性性
尺度、社会的望ましさの 3 つの尺度をした。自己評価による調査であるため、回答をする
際に社会的望ましさがなんらかの影響を与えるのではないかと考え、社会的望ましさも加
え、調査を行った。以下は調査に使用した尺度の項目である。
男性性尺度
・自分の信念を曲げない
・独立心がある
・個性が強い
女性性尺度
・従順な
・明るい
・はにかみ屋の
・おだてにのる
・忠実な
社会的望ましさ
・良心的な
10
・楽天的な
・頼りになる
・誠実な
男性性尺度、女性性尺度、社会的望ましさ、それぞれについて信頼性分析を行った。
女性性尺度の“明るい”
、
“おだてにのる”、社会的望ましさ“楽天的な”は修正済み項目合
計相関の値が負もしくは、0.1 に満たなかったため、省いて尺度とした。
結果、男性性尺度のα係数(0.234) 女性性尺度のα係数(0.468) 社会的望ましさのα係数
(0.692)であった。全体的に低い信頼性となった。この原因として考えられることは、質問
項目の不足が考えられる。BSRI 日本語版(堀洋道 2001)の質問項目が 60 であるのに対し、
今回調査に使用した項目は 12 であった。
次に男性性尺度、女性性尺度、社会的望ましさについての相関関係について分析した。
男性性尺度と社会的望ましさは相関係数(0.186) 有意確率(0.041)であったため、5%水準
で相関関係にあるといえる。
女性性尺度と社会的望ましさは相関係数(0.273) 有意確率(0.002)であったため、1%水準
で相関関係にあるといえる。また、男性性尺度と女性性尺度には、全く、相関関係がなか
った。男性性尺度と社会的望ましさ、女性性尺度と社会的望ましさにおいて、相関関係が
生じたのは、本調査が自己報告による質問であったため、社会的望ましさによるバイアス
がかかっているためだと考えられる。
これらの結果を踏まえ、男性性尺度、女性性尺度を使用して分析を行う際には、独立変
数に社会的望ましさを加え、調整をしながら分析することとした。
また、女性性尺度は女性のみに支持され、男性性尺度は男性のみに支持されており、偏
りが生じているのではないかと考え、男性性尺度、女性性尺度に、性別による差異がある
かどうか、t 検定を行った。
t 検定を行った結果、以下の結果が得られた。
表 2.3 各性的尺度の t 検定の結果
尺度
t値
有意確率(両側)
男性性尺度
0.603
0.547
女性性尺度
0.168
0.867
社会的望ましさ
-0.925
0.385
表 2.3 より、男性性尺度、女性性尺度、社会的望ましさすべてにおいて男女間での差異は
ないという結果が得られた。男性らしさ、女性らしさは性別とは関係がないようである。
また、年齢に関する尺度は、既存の尺度が存在しなかったため、作成した。以下が、年
齢に関する尺度として使用した質問項目である。
・大人っぽい
・風格のある大人に憧れる
・早く一人前になりたい
・いつまでも子供のままでいたい
11
尺度の信頼性をもとめるため、信頼性分析を行った。信頼性分析を行う際には、逆転項
目を修正し、分析をした。
分析の結果、
“大人っぽい”は、修正済み項目合計相関の値が負となったため、省いて年
齢に関する尺度とした。年齢に関する尺度のα係数(0.598)であった。
これらのジェンダー・性役割の尺度と、年齢に関する尺度を使用して、分析を行った。
12
第3章
3.1
結果と考察
変数の定義
結果と考察にうつる前に、この節では、分析に使用した変数について記述しておく。
アンケート結果から変更した変数
アンケートの回答結果を以下のように変更し、分析に用いた。
平均して1ヶ月にキャラクター商品に費やす金額
0~500 円
→250 円
501~1000 円 →750 円
1000~2000 円 →1500 円
2000~3000 円 →2500 円
3000~4000 円 →3500 円
4000~5000 円 →4500 円
5000 円以上
→5500 円
既存調査から算出したキャラクターイメージ
ボイス情報株式会社(ライセンスキャラクター消費者調査 2007)が実施した、各世代別キ
ャラクター好感度ランキング表を使用し、そのキャラクターが女性に人気があるのか、男
性に人気があるのか、子供に人気があるのか、大人に人気があるのか、算出した。
ボイス情報株式会社が行った調査の調査対象であったキャラクターのうち、今回、私が
行ったアンケート調査で名前が挙がったキャラクターは 30 種類あった。30 種類のキャラク
ターにおいて、表 3.1.1 にある各値を算出した。
以下はその各値の算出方法である。
・女性選択率=そのキャラクターを好きと回答した被験者女性数÷そのキャラクター
を好きと回答した被験者数
・子供選択率=(
(そのキャラクターを好きと回答した、幼児+小学校低学年+小学校
高学年+中学生+高校生)÷5)/(そのキャラクターを好きと回答した幼児∼高校
生までの平均 値+そのキャラクターを好きと回答した社会人)
・男性選択率=1−女性選択率
・大人選択率=1−子供選択率
本論文では大学生を対象としているため、大学生より若い、幼児∼高校生までを子供、社
会人を大人として区分した。表 3.1.1 では、数値が明らかなため、男性選択率と大人選択率
は割愛する。
13
表 3.1.1 既存調査から算出した各値
キャラクター名
女性選択率 子供選択率
おでんくん
0.608
0.534
キキララ
0.795
0.301
キューピー
0.644
0.375
くまのプーさん
0.566
0.497
ケロロ軍曹
0.469
0.520
サザエさん
0.537
0.475
スーパーマリオシリーズ
0.463
0.483
スヌーピー
0.601
0.421
スポンジボブ
0.682
0.646
それいけ!アンパンマン
0.564
0.487
チェブラーシカ
0.644
0.183
トイストーリー
0.535
0.448
ドコモだけ
0.553
0.474
となりのトトロ
0.565
0.477
ドナルドダック
0.588
0.436
ドラえもん
0.495
0.517
ドラゴンボール
0.387
0.435
バーバパパ
0.640
0.381
ハローキティ
0.640
0.459
ピングー
0.631
0.400
ピンクパンサー
0.559
0.317
北斗の拳
0.386
0.278
ポケットモンスター
0.472
0.533
ミッキーマウス
0.584
0.502
ミッフィー
0.635
0.433
ムーミン
0.582
0.357
リサとガスパール
0.726
0.266
リラックマ
0.657
0.517
リロ&スティッチ
0.639
0.521
女性選択率の平均値は 0.581 男性選択率の平均値は 0.419 であった。平均して、女性の
方がキャラクターに高い好感を持っていることがわかる。特に顕著に女性に人気があった
ものは、キキララ(0.794) リサとガスパール(0.726) スポンジボブ(0.682)などであった。男
性に人気があったものは、北斗の拳(0.614) ドラゴンボール(0.613) などであった。
子供選択率の平均値は 0.437 大人選択率の平均値は 0.563 であった。本調査の計算方法
によると、大人の方がキャラクターを好む傾向にあることがわかった。大人には、キャラ
クター世代と呼ばれる 30 代、40 代が含まれており、キャラクター世代と呼ばれる所以を示
す結果となった。特に子供に人気があったものは、スポンジボブ(0.646) おでんくん(0.534)
ポケットモンスター(0.533)などであった。大人に人気があったものは、チェブラーシカ
(0.817) リサとガスパール(0.734) 北斗の拳 (0.722)などであった。
子供に人気があるのは、比較的新しいキャラクターであり、大人に人気があるのは、比較
的古くからあるキャラクターであることがわかった。例外的に、比較的新しいキャラクタ
ーであるリサとガスパールは大人に人気がある。リサとガスパールが大人に人気がある理
由として考えられることは、リサとガスパールの人気の火付け役になったものが、阪急百
貨店配布の紙袋であったことである。
“阪急百貨店”という大人向けのデパートから人気が
でたので、現在も根強く大人に人気があると考えられる。
14
3.2 結果の概況
キャラクター人気ランキング
まずは、筑波大学の大学生のキャラクターに対する好感度などをみていく。
表 3.2.1 では自由記述式で質問した、あなたの一番好きなキャラクター名(もし好きなキャ
ラクターがいない場合は、最初に思い浮かんだキャラクター名を記入)について、人気の
分布を記す。
表 3.2.1「一番好きなキャラクター」の結果(%)
好きなキャラクター名
度数
好きなキャラクター名 ドラえもん
14.4 ゴーヤマン
ミッキーマウス
10.4 桜木花道
スヌーピー
6.4 サザエさん
ハローキティ
6.4 サリー(モンスターズインク)
くまのプーさん
4.8 ジーニー
ドナルドダック
4.8 ジジ
ミッフィー
4.8 スーパーマリオブラザーズ
リサとガスパール
3.2 スポンジボブ
それいけ!アンパンマン(カレーパンマン)
2.4 ターフィ
ミニーマウス
2.4 たれぱんだ
カピバラさん
1.6 ダンボ
トイストーリー(リトルグリーンメン)
1.6 チェブラーシカ
ドラゴンボール(クリリン、ピッコロ)
1.6 ドアラ
ピンクパンサー
1.6 ドーモくん
ポケットモンスター(ピカチュウ)
1.6 ドコモだけ
ムーミン(ニョロニョロ)
1.6 となりのトトロ
リラックマ
1.6 バーバパパ
A.オリゼー
0.8 はらぺこあおむし
Care Bares
0.8 ハルヒ
onちゃん
0.8 パンパ
Suicaペンギン
0.8 ピーポくん
おでんくん
0.8 ピングー
カーネルサンダース
0.8 フロッグスタイル
カイジ
0.8 北斗の拳
キキララ
0.8 満鉄
キューピー
0.8 リロ&スティッチ
ケロロ軍曹
0.8 計
度数
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
0.8
100
ドラえもんは全体の 14.4%の好感を集め、筑波大学生の好きなキャラクター第1位とな
った。ドラえもんは 1969 年に藤子不二雄氏が漫画連載を開始、1973 年から日本テレビ系
列でテレビアニメ放送が、1979 年には朝日テレビ系列でテレビアニメの放送が開始(現在
も放送中である)となった長寿アニメである。小学生の野比のび太と 22 世紀からやってき
た猫型ロボットのドラえもんが繰り広げる物語である。ライセンスキャラクター消費者調
査 2007(ボイス情報株式会社)によると幼児から社会人の調査対象者の総合全体での好感度
では第 2 位に、世代別に見ると大学生の好感度としては7位であった。
2 位ミッキーマウス(10.4%)5 位くまのプーさん、ドナルドダック(4.8%)はいずれもディズ
ニーキャラクターである。ミッキーマウスは 1928 年 11 月 28 日、映画、蒸気船ウィリーで
デビュー。「正義感が強くて純粋な心を持つミッキーマウスは、リーダータイプの男の子。
礼儀正しくてちょっとシャイな一面も持つ。職業は俳優で、なんでもこなすエンターテイ
ナー」とキャラクター付けされている。くまのプーさんは 1926 年にクマのプーさんという
本が出版された。この原作を元にくまのプーさんが作られている。ディズニーとしてのデ
15
ビュー作はプーさんとはちみつ(1966 年公開)とされている。
「くまのぬいぐるみのプーさん
は、のんびりやでハチミツが大好き。しばし考え事にふけることがあるが、頭の中はおが
くずが詰まっているので、あくまでもマイペース」とされている。ドナルドダックは、ア
ヒルをモチーフとしたキャラクターで、1934 年映画、かしこいメンドリでデビュー。
「短気
で負けず嫌い、自己中心的でいつも騒がしいドナルドは、人なつっこくて気がいい人気者」
とされている。
(ディズニーストア公式サイトキャラクターブックより一部抜粋
http://www.disneystore.co.jp/amuse/character/index.html)惜しくも、5 位までに入らな
かったが、ミニーマウス(2.4%)、ジーニー、ダンボ、リロ&スティッチなど多数のディズニ
ーキャラクターの名前もあがった。
3 位になったスヌーピーは、1950 年、アメリカで登場した、
「いつも白昼夢を見ている活
発なビーグル犬だ。空想にふけっている時には、何にでも優れた才能を発揮してしまう。
飼い主のチャーリーブラウンをごはん係の「丸頭の男の子」としか思っていない恐れ知ら
ずの犬」である。(日本のスヌーピー公式サイトより一部抜粋 http://www.snoopy.co.jp/)
同じく 3 位になったハローキティにも細かいキャラクター設定がされている。
「明るくて
ハートのやさしい女の子。身長はりんご 5 個、体重はりんご 3 個分」とされている。1974
年に登場した。(サンリオより一部抜粋 http://www.hellokitty.ne.jp/)
筑波大学生に人気のあるキャラクターをみると、いずれも歴史あるキャラクターが上位
にあることがわかる。
ライセンスキャラクター消費者調査 2007(ボイス情報株式会社)によると、大学生全体で
の好感度 top10 は 1 位となりのトトロ、2 位くまのプーさん、3 位風の谷のナウシカ、4 位
ガチャピン・ムック、スーパーマリオシリーズ、ルパン 3 世、7 位ドラえもん、8 位スヌー
ピー、9 位ピングー、10 位ムーミンであった。世間の大学生からは支持されているジブリ
シリーズは筑波大学生にはあまり人気がないようである。しかし、そのジブリシリーズも
公開から 20 年が経っているものであり、筑波大学生も、世間の大学生も、古くからあるキ
ャラクターに好感を持っていることがわかった。
キャラクターに対する好感度
次に、
一番好きなキャラクターに対しどのくらい好感をもっているかを分析した。
表 3.2.2.
は、本調査におけるキャラクターへの好感度を示す表である。
表 3.2.2 キャラクターへの好感度数
度数
すごく好き
やや好き
どちらかというと好き
名前を知っている程度
合計
53
41
24
7
125
パーセント
42.4
32.8
19.2
5.6
100
すごく好きが全体の 42.4%を占めた。また、すごく好き、やや好き、どちらかというと
好きの 3 つをあわせると、全体の 94.4%が何らかのキャラクターに対し、好感を持ってい
ることがわかる。知っているキャラクターがいないという回答はなかったので、これらか
ら、全ての人が何らかのキャラクターを知っており、そして多くの人がキャラクターに対
16
し、好感を抱いていることがわかった。
性別による差異
ここでは、性別による差異について行った分析について記す。
<キャラクターへの好感度と性別との関係>
キャラクターに対する好感度が性別によって異なるか、分析した。
すごく好きを 1、やや好きを 2、どちらかというと好きを 3、名前を知っている程度を 4 と
して、キャラクターへの好感度を独立変数、性別を従属変数として t 検定を行った。
結果、男性平均(2.15) 女性平均(1.68) t値(2.954) 有意確率(0.004)であった。
この結果より、性別によって、キャラクターへの好感度が異なることがわかる。ここで
は、数値が低い方が高い好感度としたので、女性の方がキャラクターに対し、高い好感を
抱いていることがわかる。しかしながら、男性も平均 2.15 と女性程ではないが、キャラク
ターに対し、好感を抱いている。これらより、キャラクターは男女によって差はあるもの
の、どちらからも好かれていることがわかる。
<好みのキャラクター商品と性別との関係>
性別により、好みのキャラクター商品が異なるか、分析を行った。各キャラクター商品
ごとに、男女で分けたクロス表を作成し、χ2 乗検定を行った。
表 3.2.3 好みのキャラクター商品と性別とのχ2 乗検定
男性母数N=54、女性母数N=71
漸近有意確
商品名 男性選択率(%)女性選択率(%) χ2
率(両側)
ぬいぐるみ
24.1
43.7
5.159
0.023*
キーホルダー
20.4
38
4.52
0.034*
文具
9.3
46.5
20.082 0.000***
Tシャツ
1.9
4.2
0.558
0.455
携帯ストラップ
24.1
29.6
0.469
0.493
財布
0
1.4
0.767
0.381
家具
1.9
2.8
0.122
0.727
家電
0
1.4
0.767
0.381
食器
5.6
14.1
2.394
0.122
ゲーム
5.6
1.4
1.703
0.192
有意水準:*5%
**1%
***0.1%
“文具”は 0.1%、
“ぬいぐるみ”
、
“キーホルダー”では、5%水準で、有意であった。有
意になった 3 つにおいては、女性の選択率が男性の選択率を上回っていたため、女性の方
が、キャラクター付きの“文具”、
“ぬいぐるみ”、
“キーホルダー”を好むということがわ
かった。
これらは、ボイス情報株式会社(ライセンスキャラクター消費者調査 2007)の調査結果
と同様の結果であった。ボイス情報株式会社の調査によると、
“文具”は、筆記用具を必要
とする学生世代の女性に大変人気であった。本調査においても、女性の半数近くが、キャ
ラクター付きの“文具”に好感を持っていた。また、ボイス情報株式会社による調査では、
17
“キーホルダーと携帯ストラップ”を一緒のものとしていたが、本調査においては、
“キー
ホルダー”と“携帯ストラップ”を分けて調査を行った。ボイス情報株式会社の調査では、
“キーホルダー・携帯ストラップ”の項目においては、女子大学生の方が、男子大学生よ
りも好むという結果であったが、本調査において、
“キーホルダー”は女性に人気があった
が、“携帯ストラップ”に関しては男女の差はなく、男女から人気があることがわかった。
<キャラクターを好む理由と性別との関係>
性別により、キャラクターを好む理由が異なるか、分析を行った。
男女ごとのクロス表を作成し、カイ 2 乗検定を行った。
表.3.2.3 キャラクターを好きな理由と性別とのχ2 乗検定
男性母数N=54、女性母数N=71
漸近有意確
好きな理由 男性選択率(%) 女性選択率(%) χ2
率(両側)
かわいい
42.6
85.9
26.118
0.000***
おもしろい
25.9
11.3
4.544
0.033*
癒される
25.9
53.5
9.614
0.002**
楽しい
20.4
22.5
0.085
0.771
かっこいい
1.9
0
1.325
0.25
気持ち悪い
1.9
2.8
0.122
0.727
美しい
0
1.4
0.767
0.381
強い
5.6
1.4
1.703
0.192
おしゃれ
1.9
4.2
0.558
0.455
子供っぽい
7.4
21.1
4.479
0.034*
大人っぽい
3.7
0
2.672
0.102
親近感がわく
25.9
42.3
3.585
0.058
古風な
5.6
2.8
0.599
0.439
新しい
1.9
1.4
0.038
0.845
有意水準:*5%
**1%
***0.1%
これらより、“かわいい”、“癒される”は 1%有意水準で、
“子供っぽい”は 5%
有意水準で、“親近感がわく”は 10%有意水準で、女性に支持される、キャラクタ
ーの好きな理由であることがわかった。また、“おもしろい”のみ、男性の選択率
のほうが女性の選択率よりも高かったため、
“おもしろい”は 5%有意水準で、男性
に支持される、キャラクターの好きな理由であることがわかった。
18
3.3
キャラクターイメージに関する分析
3.3.1 イメージの抽出
第 2 章で述べた、SD 法にて調査したキャラクターに対するイメージを因子分析(主因子
法の解をバリマックス回転)にて分析をした。
キャラクター全体に対して、以下のような 9 つの因子が抽出された。
表 3.3.1.1 キャラクター全体の因子分析表(因子負荷量)
第1因子
第2因子
第3因子
第4因子
第5因子
第6因子
第7因子
第8因子
第9因子
上品な女の子
好青年のイ
力強さを表す 子供っぽさを
目新しさを表 内向性を表す 新規性を表す 外国の男性を
メージを表す
不明
形容詞\因子名 らしさを表す 因子
表す因子
す因子
因子
因子
表す因子
因子
因子
新しい
暗い
騒がしい
派手な
落ち着きのある
複雑な
圧迫感のある
外国風な
悪い
さわやかな
好き
上品な
一般的な
質素な
低級な
親しみやすい
かわいくない
かっこいい
おしゃれな
美しい
力強い
しっかりしていない
陽気な
お父さん
やさしい
大人っぽい
積極的な
男性的な
寄与率(%)
-0.125
-0.420
-0.140
0.230
0.119
-0.120
-0.388
0.180
-0.590
0.660
0.392
0.686
0.164
-0.117
-0.169
0.370
-0.569
0.399
0.537
0.637
-0.230
-0.083
0.429
-0.373
0.624
-0.063
0.036
-0.478
15.265
0.042
-0.254
0.647
0.574
-0.586
0.215
0.350
0.036
0.064
0.038
-0.033
-0.138
-0.209
-0.558
-0.098
-0.091
0.022
0.393
0.291
0.102
0.629
-0.443
0.504
0.198
-0.116
0.116
0.735
0.333
12.644
0.173
-0.308
0.417
0.286
-0.401
-0.246
-0.147
0.467
0.049
-0.042
0.105
-0.204
0.242
0.221
0.392
0.282
-0.041
-0.159
-0.083
-0.310
-0.340
0.537
0.410
-0.165
-0.310
-0.545
-0.008
-0.077
8.452
0.026
-0.190
0.129
-0.154
-0.001
0.108
-0.183
-0.004
-0.532
0.117
0.541
0.106
-0.249
0.332
0.219
0.386
-0.049
0.113
-0.423
-0.371
0.137
-0.124
-0.090
0.257
0.053
0.310
0.018
0.524
6.807
0.376
0.358
-0.018
0.113
0.132
0.638
0.350
0.394
-0.138
-0.053
0.348
0.162
-0.276
-0.058
-0.163
0.012
0.254
0.097
0.007
0.098
-0.093
0.335
0.044
-0.212
-0.166
0.058
-0.061
-0.136
5.589
-0.234
0.381
-0.105
0.218
0.223
-0.129
-0.011
0.045
0.005
-0.081
0.381
-0.078
0.169
0.193
0.582
-0.217
-0.099
0.359
-0.020
0.104
0.190
-0.263
-0.183
-0.204
-0.297
-0.170
0.258
-0.168
5.280
0.605
0.125
-0.146
-0.339
-0.174
-0.073
-0.134
0.085
-0.062
0.032
-0.052
-0.149
0.089
0.197
-0.056
-0.178
-0.350
0.333
0.314
0.189
0.087
0.183
-0.124
0.342
-0.089
-0.150
0.088
0.215
4.696
-0.347
-0.027
-0.069
0.131
0.169
-0.088
-0.129
0.589
0.029
-0.013
-0.003
0.141
0.157
-0.279
-0.059
-0.123
0.218
0.217
0.116
-0.032
-0.194
-0.003
-0.106
0.510
-0.093
0.002
-0.200
0.256
4.345
この因子分析においては、表 3.3.1.1 にある形容詞から遠いものを 1、近いものを 5 とし
て定義したため、得点が正であることは、表 3.3.1.1 にある形容詞を強く表すものであるこ
とを示し、得点が負であることは、表 3.3.1.1 にある形容詞と対比する形容詞(表 2.1)を強く
表すものであることを示す。
第 1 因子からは、
“上品な”(0.686) “さわやかな”(0.660) “美しい”(0.637) “やさし
い”(0.624)から比較的高い数値が得られた。これらより第 1 因子は、上品な女の子らしさ
を表す因子と考えられる。
第 2 因子では、
“積極的な”(0.735) “騒がしい”(0.647) “力強い”(0.629) が比較的高
い数値が得られた。これらより、第 2 因子は、力強さを表す因子と考えられる。
第 3 因子では、
“大人っぽい”(-0.545) “しっかりしていない”(0.537) “騒がしい”(0.417)
から比較的高い数値が得られた。
“大人っぽい”がマイナスで出ていたので、逆転させて“子
供っぽい”が(0.5459)となる。これらより、第 3 因子は、子供っぽさを表す因子と考えられ
る。
19
0.132
-0.011
-0.005
0.098
0.189
0.429
0.070
-0.144
0.015
0.234
-0.066
0.076
0.703
0.187
-0.016
0.177
0.104
-0.195
0.050
-0.003
0.108
-0.217
0.115
0.178
-0.148
-0.101
-0.038
0.081
3.907
第 4 因子では、
“好き”(0.541) “悪い”(-0.532) “男性的な”(0.524)から比較的高い数
値が得られた。
“悪い”がマイナスなので、逆転させて“良い”(0.532)となる。これらより、
第 4 因子は、好青年のイメージを表す因子と考えられる。
第 5 因子では、“複雑な”(0.638)“外国風な”(0.394)“新しい”(0.376)から比較的高い
数値が得られた。これらより、第 5 因子は、目新しさを表す因子と考えられる。
第 6 因子では、
“低級な”(0.582)“暗い”(0.381) “好き”(0.381)から比較的高い数値が
得られた。これらより、第 6 因子は、内向性を表す因子と考えられる。
第 7 因子では、
“新しい”(0.605) から比較的高い数値が得られた。よって、第 7 因子は
新規性を表す因子と考えられる。
第 8 因子では、
“外国風な”(0.589) “お父さん”(0.510)から比較的高い数値が得られた。
これらより、第 8 因子は、外国の男性を表す因子と考えられる。
第 9 因子では、
“一般的な”(0.703) “複雑な”(0.429)から比較的高い数値が得られた。
これらの因子からは共通性を見出すことができなかったので、第 9 因子は不明とする。
3.3.2 人気キャラクターに対するイメージ
ここでは、3.3.1 で示した、キャラクターの各因子得点の平均値を算出した。人気のあっ
た上位 5 位のキャラクターについて、各因子の値から、キャラクターイメージについて分
析した。
表 3.3.2.1 人気キャラクターの因子得点表
第1因子
キャラクター名(度数
ドラえもん(18)
平均値
標準偏差
ミッキーマウス(13) 平均値
標準偏差
ハローキティ(8)
平均値
標準偏差
スヌーピー(8)
平均値
標準偏差
ドナルドダック(6) 平均値
標準偏差
くまのプーさん(6) 平均値
標準偏差
ミッフィー(6)
平均値
標準偏差
第2因子
第3因子
第4因子
第5因子
第6因子
第7因子
第8因子
第9因子
上品な女の子
好青年のイ
力強さを表す 子供っぽさを
目新しさを表 内向性を表す 新規性を表す 外国の男性を
らしさを表す
メージを表す
不明
因子
表す因子
す因子
因子
因子
表す因子
因子
因子
-0.279
0.532
0.512
1.213
0.601
1.150
0.201
0.537
-0.204
0.852
0.265
0.548
1.017
0.645
0.007
0.696
1.119
0.475
-0.004
0.742
-0.616
0.624
0.889
0.513
-0.773
0.833
-1.403
0.383
-0.578
0.629
0.124
0.919
-0.003
0.984
0.075
0.801
0.779
0.464
0.253
0.766
0.458
0.887
0.401
0.856
-0.019
0.969
-1.600
1.597
0.017
0.422
0.321
0.419
0.376
0.402
-0.332
0.464
-0.489
1.324
-0.077
1.022
-0.223
1.012
-0.308
0.286
0.489
1.012
0.870
1.332
-0.130
0.504
-0.412
1.323
-0.362
0.675
-0.035
1.096
-0.025
0.577
-0.041
0.826
-0.169
0.707
0.608
0.398
-0.480
1.131
-0.263
0.860
-0.495
0.696
0.132
0.559
0.201
1.478
-0.451
1.070
-0.282
0.742
-0.523
0.663
0.749
0.769
-0.143
1.019
0.544
0.383
0.892
0.586
-0.016
0.818
0.222
0.205
0.253
1.430
-0.225
0.631
0.001
0.721
-0.009
0.715
-0.221
1.257
-0.328
0.978
-0.322
0.602
・ドラえもんに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、子供っぽさを表す因子(-0.578)、外国の男性を表す因子(-0.523)、
目新しさを表す的因子(-0.489)、新規性を表す因子(-0.480)であった。因子得点が負の値
を示したため、ドラえもんに対するイメージは、大人っぽく、目新しくないというイメー
ジであることがわかった。これは、ドラえもんがいかに日本に根付いたキャラクターであ
るかを示す結果であった。
・ミッキーマウスに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、力強さを表す因子(1.119)、外国の男性を表す因子(0.749)、上
品な女の子らしさを表す因子(0.512)の 3 つであった。
20
力強さを表す因子の得点は、かなり高い数値を示した。これらは、色々なことにチャレン
ジする積極性や、元気の良さ、リーダー的存在である部分を強く反映していると考えられ
る。また、外国発のキャラクターであることも因子得点として高い数値を表した。力強さ
を表す因子と異国の男性を表す因子により、男性的な要素を強く表していたが、上品な女
の子らしさを表す因子得点でも高い数値を示した。これは、ミッキーマウスに対し、性別
を超越した、ディズニーキャラクターの象徴的な存在というイメージがあることを示して
いると考えられる。
・ハローキティに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、好青年のイメージを表す因子(-1.600)、上品な女の子らしさを
表す因子(0.601)、新規性を表す因子(-0.495)の 3 つであった。
好青年的因子はかなり高い負の数値が得られたこと、上品な女の子らしさを表す因子が高
い数値を示していることの 2 点から、ハローキティに対して、女性的なイメージが強くあ
ることを示していると考えられる。また、新規性を表す因子が負の数値であるため、ハロ
ーキティは古くからのキャラクターというイメージがあることがわかった。これらより、
ハローキティのイメージは、古くからある、女の子らしいキャラクターであることがわか
った。
・スヌーピーに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、力強い因子(-0.616)、外国の男性を表す因子(0.544)の 2 つであ
った。これらより、スヌーピーは、おとなしく、そして外国の男性的なキャラクターとい
うイメージをもたれていることがわかる。3.2 で述べた、スヌーピーのキャラクター設定で
は、いつも白昼夢にふけっている活発なビーグル犬とされていたが、活発で積極的なこと
を表す、力強い因子はマイナスであった。活発というイメージより、白昼夢にふけってい
るイメージが強いことがわかった。
・ドナルドダックに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、外国の男性を表す因子(0.892)、力強い因子(0.889)、子供っぽ
さを表す因子(0.779)の 3 つであった。 外国の男性を表す因子が高い数値がでたことは、外
国のキャラクターであることに影響を受けていることが考えられる。3.2 で述べたように、
短気で負けず嫌い、自己中心的でいつも騒がしいとされているように、キャラクター設定
通りのイメージを持たれていることがわかる。また、ドナルドダックの自己中心的な部分
から子供のようなイメージを持っていると推測される。
・くまのプーさんに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は、目新しさを表す因子(0.870)、力強さを表す因子(-0.773)の 2 つ
であった。目新しさを表す因子に高い得点が出た理由について推測してみる。くまのプー
さんは、ディズニーキャラクターとしてはミッキーやドナルドダックよりは新しいが、デ
ビューは 1966 年であり、既に 42 年経過しているため、古いキャラクターと言える。しか
し、東京ディズニーランドが 1983 年に開園してから 17 年経過した、2000 年に「プーさん
のハニーハント」というアトラクションが作られたことと関係しているように考えられる。
東京ディズニーランドへの仲間入りが遅かったため、新しいキャラクターとして認知され
たと推測される。
また、威勢の良い因子の得点がマイナスであり、かなりおっとりしているイメージであ
ることがわかった。これらから、マイペース、考え事にふけっているというキャラクター
21
設定通りの印象であることがわかった。
・ミッフィーに対するイメージ
絶対値の高い因子得点は力強さを表す因子(-1.403)、 上品な女の子らしさを表す因子
(1.017)、内向性を表す因子(0.608)の3つであった。これらより、ミッフィーは大変内向的
で、女の子らしいイメージがあることがわかる。ミッフィー公式サイト
(http://www.nijntje.nl/japan/)
では、1955 年、ブルーナが最初にミッフィー(うさこちゃん)
を描いた時、特に性別を気にしていなかったが、絵本化されるときにスカートの似合う女
の子となったとされている。また、ミッフィーの性格は、純真無垢で、活発、どんな時に
も前向き、とされているが、ミッフィーには活発、積極的な印象はまったく見られなかっ
た。あまり絵本やアニメのイメージが定着していない、もしくはアニメの雰囲気自体が落
ち着いた雰囲気を持っているため、おとなしいという印象を得たと考えられる。
3.4 仮説の検証
この 3.4 節では 1.3 で設定した仮説の検証を行う。
3.4.1<仮説1>の検証
仮説 1 を検証するために、全部で8つの分析を行った。
まず、性別に関係するキャラクターの因子、表 3.1.1 で設定した女性選択率、第 2 章で設定
したジェンダー・性役割の尺度との関係性を分析した。性別に関係する因子は、上品な女
の子らしさを表す因子、好青年のイメージを表す因子、外国の男性を表す因子の 3 つを使
用した。
最初に、性別によって区別せず行った回帰分析の結果を 4 つ掲載する。
①
上品な女の子らしさを表す因子と女性性尺度との関係
女性らしさを好む人(女性性尺度の値が高い人)は、女の子らしいキャラクターを選ぶと
考え、分析を行った。独立変数に女性性尺度と、調整のため社会的望ましさを、従属変数
に上品な女の子らしさを表す因子を入れて、回帰分析を行った。この回帰分析において、
上品な女の子らしさを表す因子は、小さければ小さいほど男の子らしいことを、大きけれ
ば大きいほど女の子らしいことを表すと定義したため、回帰係数が正であることは、女の
子らしいキャラクターが好まれることを意味し、回帰係数が負であることは、男の子らし
いキャラクターが好まれることを意味する。
表 3.4.1.1 上品な女の子らしさを表す因子、社会的望ましさと女性性尺度による回帰分析
上品な女の子らしさを表す
キャラクターを好むことに影響 非標準化係数(B)
t値
有意確率
を及ぼす要因
定数項
-1.622
-3.109
0.002
女性性尺度
0.089
1.917
0.058
社会的望ましさ
0.076
1.893
0.061
R2乗:0.078
分析の結果、女性性尺度と上品な女の子らしさを表す因子の関係は 10%水準で有意となっ
た。よって、心理的に女性らしい人は、女性らしいキャラクターを好む傾向にあることが
22
わかった。
②
女性選択率と女性性尺度との関係
女性らしさを好む人は、女性に好まれるキャラクターを選択するのではないかと考え、
分析を行った。表 3.3.1.1 で算出した、女性選択率と、女性性尺度との関係について分析を
行った。独立変数に女性性尺度と、調整のため社会的望ましさを、従属変数に女性選択率
を入れて回帰分析を行った。
表 3.4.1.2 女性選択率、社会的望ましさ、女性性尺度による回帰分析
女性に人気のあるキャラクターを
非標準化係数(B)
t値
有意確率
好むことに影響を及ぼす要因
定数項
0.560
13.571
0.000
女性性尺度
0.002
0.435
0.665
社会的望ましさ
0.000
0.007
0.995
R2乗:0.002
分析の結果、女性性尺度と女性選択率の関係性は有意ではなかった。女性らしさを好む
ことは、女性に人気のあるキャラクターを好むことに影響を及ぼしていないことがわかっ
た。
③
好青年のイメージを表す因子と男性性尺度との関係
男性らしさを好む人(男性性尺度の値が高い人)は好青年のイメージがあるキャラクタ
ーを好むと考え、分析を行った。独立変数に男性性尺度と、調整のため社会的望ましさを、
従属変数に好青年のイメージを表す因子を入れて、回帰分析を行った。
表 3.4.1.3 好青年のイメージを表す因子、社会的望ましさ、男性性尺度による回帰分析
好青年のイメージを表すキャラクター
非標準化係数(B)
を好むことに影響を及ぼす要因
定数項
男性性尺度
社会的望ましさ
R2乗:0.010
t値
-0.070
-0.022
0.033
-0.158
-0.822
0.823
有意確率
0.875
0.413
0.412
分析の結果、男性性尺度と好青年のイメージを表す因子の関係性は有意ではなかった。
男性らしさを好むことは、好青年のイメージがあるキャラクターを好むことに影響を及ぼ
していないことがわかった。
④
外国の男性を表す因子と男性性尺度との関係
仮説1では定義していないが、外国の男性を表す因子も男性的なイメージを表す因子で
あると考え、分析を行った。独立変数に男性性尺度と、調整のため社会的望ましさを、従
属変数に外国の男性を表す因子を入れて、回帰分析を行った。
23
表 3.4.1.4 外国の男性を表す因子、社会的望ましさ、男性性尺度による回帰分析
外国の男性のイメージを持つキャラク
非標準化係数(B)
ターを好むことに影響を及ぼす要因
定数項
男性性尺度
社会的望ましさ
R2乗:0.018
0.341
-0.038
0.009
t値
0.795
-1.474
0.233
有意確率
0.428
0.143
0.816
分析の結果、男性性尺度と外国の男性を表す因子の関係性は有意ではなかった。男性ら
しさを好むことは、外国の男性らしさを表すキャラクターを好むことに対し、影響を及ぼ
していないことがわかった。
①∼④の性別に関する尺度を用いた分析において、これらの結果について考察をしてい
く。①∼④の中で、唯一有意となった①の結果は、仮説 1 として考えていた通りであった。
②の結果は、女性らしさと女性に人気のあるキャラクターを好むこととは無関係であった。
女性に人気のあるキャラクターの指標とした女性選択率は、実際の性別に基づき算出した
ものであり、内面の女性らしさなどから算出したものではないことが、有意な結果が得ら
れなかった原因であると考えられる。男性性尺度に関係する③、④では両方とも有意な結
果が得られなかった。これらの原因として考えられることは、男らしさを好む人はそもそ
も、キャラクターをそこまで好まないのではないかということである。男性にも好まれる
ようになったとはいえ、男女において好感度への差も生じていたので、男性らしさを好む
人は、キャラクター自体を好まないのではないかと考えた。よって、仮説 1 は、女性らし
い人は女性らしいキャラクターを好むのみ、支持されたと考えられる。
次に性別により、分けて行った回帰分析の結果を記す。
表 3.4.1.5 上品な女の子らしさを表す因子、社会的望ましさと女性性尺度による回帰分析
(性別により分けて分析)
上品な女の子らしさを表すキャラク
非標準化係数(B)
t値
有意確率
ターを好むことに影響を及ぼす要因 男性
女性
男性
女性
男性
女性
定数項
-2.144
-0.982
-3.189
-1.337
0.002
0.186
女性性尺度
0.094
0.093
1.441
1.559
0.156
0.124
社会的望ましさ
0.081
0.039
1.380
0.772
0.174
0.443
R2乗(男性):0.122 R2乗(女性):0.048
表 3.4.1.6 女性選択率、社会的望ましさ、女性性尺度による回帰分析(性別により分けて分
析)
女性に人気のあるキャラクターを好
非標準化係数(B)
t値
有意確率
むことに影響を及ぼす要因
男性
女性
男性
女性
男性
女性
定数項
0.467
0.670
9.875
11.479
0.000
0.000
女性性尺度
0.006
-0.003
1.292
-0.559
0.205
0.578
社会的望ましさ
0.001
-0.004
0.177
-0.964
0.860
0.340
R2乗(男性):0.064 R2乗(女性):0.026
24
表 3.4.1.7 好青年のイメージを表す因子、社会的望ましさ、男性性尺度による回帰分析(性
別により分けて分析)
好青年のイメージを表すキャラク
非標準化係数(B)
t値
有意確率
ターを好むことに影響を及ぼす要因 男性
女性
男性
女性
男性
女性
定数項
-0.855
0.802
-1.630
1.098
0.109
0.276
男性性尺度
-0.014
-0.025
-0.532
-0.410
0.597
0.683
社会的望ましさ
0.107
-0.052
2.234
-0.749
0.030
0.456
R2乗(男性):0.094 R2乗(女性):0.017
表 3.4.1.4 外国の男性を表す因子、社会的望ましさ、男性性尺度による回帰分析(性別によ
り分けて分析)
外国の男性のイメージを持つキャラ
非標準化係数(B)
t値
有意確率
クターを好むことに影響を及ぼす要 男性
女性
男性
女性
男性
女性
定数項
0.600
0.009
1.031
0.014
0.308
0.989
男性性尺度
-0.045
-0.027
-1.545
-0.491
0.129
0.625
社会的望ましさ
0.009
0.018
0.164
0.297
0.870
0.767
R2乗(男性):0.046 R2乗(女性):0.004
すべてにおいて有意な結果が見られなかった。男女ともに分析をした場合、10%水準であ
った①の結果も、男女別で分析した場合、有意でなくなった。これらより、実際の性別は
関係なく、女性性尺度が上品な女の子らしさを表す因子に影響を及ぼしていたことがわか
る。
3.4.2<仮説 2>の検証
仮説 2 を検証するために、2 つの分析を行った。
まず、年齢に関係する因子、表 3.1.1 で設定した子供選択率、第 2 章で設定した年齢に関す
る尺度との関係性を分析した。年齢に関係する因子は、子供っぽさを表す因子をした。
①
子供っぽさを表す因子と年齢に関する尺度との関係
大人っぽさを好む人は、大人っぽいキャラクターを好むと考え、分析を行った。
独立変数に年齢に関する尺度を、従属変数に子供っぽさを表す因子を入れて、回帰分析
を行った。この回帰分析において、子供っぽさを表す因子は、小さければ小さいほど大人
っぽいことを、大きければ大きいほど子供っぽいことを表すと定義したため、回帰係数が
正であることは、子供っぽいキャラクターが好まれることを意味し、回帰係数が負である
ことは、大人っぽいキャラクターが好まれることを意味する。
表 3.4.2.1 子供っぽさを表す因子、年齢に関する尺度による回帰分析
子供っぽいキャラクターを好む要因 非標準化係数(B) t値
有意確率
定数項
0.843
1.777
0.079
年齢に関する尺度
-0.060
-1.795
0.076
R2乗:0.034
分析の結果、年齢に関する尺度と子供っぽさを表す因子の関係は 10%水準で有意となっ
た。回帰係数が負であったので、大人っぽさを好む人は、大人っぽいキャラクターを好む
25
ことがわかった。
②
子供選択率と年齢に関する尺度との関係
大人っぽさを好む人は大人に人気のあるキャラクターを好むと考え、分析を行った。
独立変数に年齢に関する尺度を、従属変数に子供選択率を入れて、回帰分析を行った。
表 3.4.2.2 子供選択率と年齢に関する尺度による回帰分析
子供に人気のあるキャラクターを
好む要因
非標準化係数(B) t値
定数項
年齢に関する尺度
R2乗:0.000
0.459
0.000
11.855
-0.146
有意確率
0.000
0.884
分析の結果、年齢に関する尺度と子供選択率の関係性は有意ではなかった。大人っぽさ
を好むことと、大人に人気があるキャラクターを好むことは、無関係であることがわかっ
た。
これらの結果から、年齢に関する尺度は、子供っぽさを表す因子に影響を及ぼすこと、
つまり、大人っぽさを好む人は大人っぽいイメージのあるキャラクターを好むことがわか
った。子供選択率に関しては、有意な結果がでなかったが、この理由として、2 点、考えら
れる。まず 1 点目は、子供選択率が本研究の目指した尺度と異なるものであった可能性が
あげられる。ここで使用した子供選択率は、既存調査のデータから算出したものであるが、
この子供の選択率には子供っぽさというイメージ以外にも、子供向け商品での使用率、親
の好みなど様々な要因が関係しているだろう。このため、有意な結果が得られなかったも
のと推測される。そして 2 点目の理由として、大人に人気があるキャラクターが必ずしも
大人っぽいとは限らないのではないかということが挙げられる。これらの理由から②に関
して有意な結果が出なかったと考えられる。
これらの考察から、自らが抱くイメージと、自らのなりたいイメージは一致していると
考え、仮説2は支持されたとする。
26
第4章
結論
本研究では、キャラクター商品の消費行動の特色や、キャラクターと関連性があると考
えられるさまざまな要因に関して、あらゆる視点から調査、分析することで、キャラクタ
ーの実態を把握し、関連性のあった要因から、今後のキャラクターと日本人の関係性の発
展へとつなげていくことを本研究の目的としていた。これらに基づき、これまでに行った
分析をまとめる。
まず 1 つ目に、
「性差」によるキャラクターへの好みの差異について考察する。性別によ
る分析を行った結果、キャラクターへの好感度、好みの商品、好む理由について男女間で
差が生じた。女性はキャラクターに対し、“かわいい”
“癒される”ことを求めており、男
性はキャラクターに対し、“おもしろさ”を求めていた。これらは、女性が文具、ぬいぐる
み、キーホルダーを好んだのに対し、男性はゲームを好んでいたことからも伺える。
(ゲー
ムは、男女で好みに差は見受けられなかったが、唯一、選択した男性数が女性数を上回っ
た項目であった。)男女ともに人気がでるのは、携帯ストラップであろう。携帯ストラップ
であれば、おもしろいものからかわいいもの、癒されるようなものまでさまざまな商品展
開ができるので、当面の人気商品であることが予測される。また、キャラクターへの好感
度では、男女間で差はあったものの、男女ともにキャラクターに好感を抱いていた。これ
らの結果より、キャラクターは、異なる理由からではあるが、男女ともに好感を抱く存在
であるといえる。
2 つ目に、
「キャラクターに抱いているイメージ」について考察する。キャラクターに対
するイメージについて因子分析を行った結果、全体的にキャラクター設定通りのイメージ
を抱かれていることがわかった。これらから、キャラクター設定は、深く人々に浸透して
いることがわかる。
3 つ目に、
「キャラクターと自己との関係」について考察する。
「好きなキャラクターはな
りたい自分の象徴である」という仮説は条件つきではあるが、支持された。女性らしさを
好む人は、女性らしいキャラクターを好み、大人っぽさを好む人は、大人っぽいイメージ
のキャラクターを好むことがわかった。そして、ここであげられたイメージは主観的なも
のであることがこの仮説が成立する条件である。
上述した 3 つの結果をまとめると、キャラクターに対し求めているものが、性別や、心
理的要因で異なることがわかる。
“おもしろい”キャラクターが登場する“ゲーム”は男性
に人気がでるだろう。
“かわいく”
“癒される”ぬいぐるみ、キーホルダー、文具などは女
性に人気が出ると考えられる。また、ジェンダー的要因の観点からみると、男女の性別に
関係なく、女性らしさを好む人は、女性らしいキャラクターを好むであろう。逆に、男性
らしさが強い人に関しては、男女ともに関係なく、キャラクター自体をそこまで好まない
のではないかとも考えられる。年齢的要因の観点からみると、大人っぽさを好む人は、大
人っぽい印象のあるキャラクターを好むことがわかった。今後、キャラクターを開発する
際には、ターゲットとなる層を決め、ターゲットの層がどんな心理状況であるのか調べる
ことも必要である。女らしさ、男らしさや、子供っぽくいたい、大人っぽくいたいという
ことは実際の性別や年齢で判断することはできないと考えられるからだ。また、本調査に
おいては、被験者数が少なく、男性は 54 名中 52 名が社会工学類の学生であり、結果に偏
りが生じた可能性がある。今後調査を行う際には、キャラクターは、幼児から社会人に至
27
るまでのすべての人に好かれる存在であると考えられるので、大学生だけでなく、さまざ
まな年代において、偏りなく調査をすることが必要であると考える。そして、今回の調査
では、性的な役割と年齢という観点からなりたい姿とキャラクターとの関係を分析したが、
他にもたくさんの観点からなりたい姿とキャラクターを重ねていることが考えられる。キ
ャラクターと私たちの関係はまだまだ研究の余地があるのではないだろうか。
28
<参考文献・資料>
・神澤孝宣「宝塚造形芸術大学紀要
ARTES No.20 2006
二極化するキャラクター消費−マンガ・アニメ産業からみたキャラクター消費行動の考
察−」
・ボイス情報株式会社「ライセンスキャラクター消費者調査 2007」
・堀洋道(2001)「心理測定尺度集Ⅰ
人間の内面を探る<自己・個人内過程>」
サイエンス社
・陸川和男・西岡直実(2002)「キャラクターマーケティング−図解でわかるキャラクターマ
ーケティング−」日本能率協会マネジメントセンター
・asahi.com
人気者「ひこにゃん」に、年賀状 100 枚とどいた
http://www.asahi.com/life/update/0110/OSK200801100080.html?ref=goo
・サンリオ
http://www.hellokitty.ne.jp/
・ディズニーストア公式サイトキャラクターブック
http://www.disneystore.co.jp/amuse/character/index.html
・日本のスヌーピー公式サイト
http://www.snoopy.co.jp/
・ミッフィー公式サイト
http://www.nijntje.nl/japan/
29
<付録>調査に用いたアンケート用紙
2007 年度卒業研究
2007 年11 月
アンケート調査のお願い
筑波大学 社会工学類4 年 木村綾香
連絡先:[email protected]
このアンケート調査は卒業研究の一環として実施するものです。アンケート調査・分析を通じ
てキャラクター商品の調査することを目的としています。回答結果は調査のためのみ使用されるも
のであり、個人情報を厳重に管理し、第三者への編成および目的外使用を一
切行わないことを約束します。ご協力お願いします。
1.あなたの学類、学年、年齢を記入し、性別を○で囲んでください。
学類 :
学年 :
年齢 :
性別 : 男 ・ 女
2.
(1)あなたの一番好きなキャラクター名を記入してください。(もし、好きなキャラクターがいない場
合は、一番最初に思い浮かんだキャラクターを記入してください)
好きなキャラクター名 :
(2)(1)で記入したキャラクターはどれくらい好きですか。
① すごく好き
②やや好き
③どちらかというと好き
④名前を知っている程度
30
3.そのキャラクターに対するイメージをお答えください。
1は非常に左側の形容詞に近い 2はどちらかというと左側の形容詞に近い
3はどちらでもない 4 はどちらかというと右側の形容詞に近い 5は非常に右側の形容詞に近い
ことを意味しています。あてはまる数字に〇をつけてください。
非常に
どちらか
どちらで
どちらか
というと
もない
というと
非常に
古臭い
1
2
3
4
5 新しい
明るい
1
2
3
4
5 暗い
静かな
1
2
3
4
5 騒がしい
地味な
1
2
3
4
5 派手な
落ち着きのない
1
2
3
4
5 落ち着きのある
単純な
1
2
3
4
5 複雑な
圧迫感のない
1
2
3
4
5 圧迫感のある
日本風な
1
2
3
4
5 外国風な
良い
1
2
3
4
5 悪い
さわやかでない
1
2
3
4
5 さわやかな
嫌い
1
2
3
4
5 好き
下品な
1
2
3
4
5 上品な
個性的な
1
2
3
4
5 一般的な
豪華な
1
2
3
4
5 質素な
高級な
1
2
3
4
5 低級な
親しみにくい
1
2
3
4
5 親しみやすい
かわいい
1
2
3
4
5 かわいくない
かっこ悪い
1
2
3
4
5 かっこいい
野暮ったい
1
2
3
4
5 おしゃれな
醜い
1
2
3
4
5 美しい
弱弱しい
1
2
3
4
5 力強い
しっかりした
1
2
3
4
5 しっかりしていない
陰気な
1
2
3
4
5 陽気な
お母さん
1
2
3
4
5 お父さん
意地悪
1
2
3
4
5 やさしい
子供っぽい
1
2
3
4
5 大人っぽい
消極的な
1
2
3
4
5 積極的な
女性的な
1
2
3
4
5 男性的な
31
4.今お答えになったキャラクターについてお答えください。
1)その好きなキャラクター商品をいくつ位持っていますか。
個くらい
2)平均して1ヶ月にどの位そのキャラクター商品にお金を使いますか。当てはまるものを選択し、
○をつけてください。
①0∼500 円
②501 円∼1000 円
⑤3000 円∼4000 円
③1000 円∼2000 円
⑥4000 円∼5000 円
④2000 円∼3000 円
⑦5000 円以上
3)一番お気に入りのキャラクター商品はどのような商品ですか。当てはまるものを選択し、○をつ
けてください。(複数選択可)
①ぬいぐるみ
⑥財布
②キーホルダー
⑦家具
⑧家電
⑬その他(
③文具
⑨洋服
④T シャツ
⑩プラモデル
⑤携帯ストラップ
⑪食器
⑫ゲーム
)
4)そのキャラクターのどのようなところが好きですか。当てはまるものを選択し、○をつけてくださ
い。(複数選択可)
①かわいい
②おもしろい
③癒される
④楽しい
⑦美しい
⑧強い
⑨おしゃれ
⑩子供っぽい⑪大人っぽい⑫親近感がわく
⑬古風な
⑭新しい
⑮その他(
⑤かっこいい ⑥気持ち悪い
)
32
5.あなた自身についてお答えください。
各々の特徴があなたにどれ位当てはまるか、当てはまる数字に〇をつけてください。
ほとんど
ややあて
あてはま
はまらな
らない
い
どちらで
ややあて
非常にあ
もない
はまる
てはまる
従順な
1
2
3
4
5
自分の信念を曲げない
1
2
3
4
5
明るい
1
2
3
4
5
独立心がある
1
2
3
4
5
はにかみ屋の
1
2
3
4
5
良心的な
1
2
3
4
5
おだてにのる
1
2
3
4
5
楽天的な
1
2
3
4
5
個性が強い
1
2
3
4
5
忠実な
1
2
3
4
5
頼りになる
1
2
3
4
5
誠実な
1
2
3
4
5
意思決定がすみやかにできる
1
2
3
4
5
大人っぽい
1
2
3
4
5
風格のある大人に憧れる
1
2
3
4
5
早く一人前になりたい
1
2
3
4
5
いつまでも子供のままでいたい
1
2
3
4
5
33
謝辞
まず、ご指導を引き受けてくださり、研究、論文作成、その他多岐に渡る面において、い
つも丁寧かつ有益な助言をくださった社会工学類の石井健一先生に、心より感謝申し上げ
ます。本当にありがとうございました。
社会工学類の永易淳先生、糸井川栄一先生には、質問表の量的調査に快くご協力いただき
ました。ここに深く御礼申し上げます。
また、私の所属する部活の方々、アンケートにご協力して下さった学生の皆様にこの場を
借りて、感謝の意を表します。
皆様のご協力があり完成した卒業論文です。ありがとうございました。
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