要旨集のダウンロード - 獣医学術近畿地区学会

裕和薬品株式会社
〒 540-0039 大阪府大阪市中央区東高麗橋 2 番 20 号
TEL:06-6942-4531 FAX:06-6943-5445
忠犬ハチ公の紹介
忠犬ハチ公の話は犬好きな人も犬好きでない人も知らない人は居ないと思います。
忠犬ハチ公の物語は有名ですがハチ公の飼い主である上野博士の人物については案外知ら
れていないのでご紹介いたします。博士は三重県津市久居元町の出身で東京帝国大学 ( 現
在の東京大 ) の農業工学教授に就任され明治初期から大正期に至り日本農業の基盤である
水田の耕地整理指導や耕地整理の指導研究を進め農業土木技術者の養成に努めて多くの技
術者を育て大正12年の関東大震災後の帝都復興事業において重要な役割を果たしました。
上野博士は長い間の念願であった秋田犬子犬を購入しハチと名づけました。ハチと同居し
たのは僅か 1 年余でしたが博士は大学で講義中に倒れ不運にも帰らぬ人となり、その後ハ
チは帰らぬ上野博士を東京渋谷駅で毎日10年間も待ち続け、このハチ公の人と犬との絆に
ついて世間の人びとに知れ渡り忠犬ハチ公として今もなお人と犬との愛犬物語として語ら
れております。上野博士の出身地である三重県津市久居元町をご紹介し、第91回近畿地区
連合獣医師大会ならびに獣医三学会の開催に当たり公益社団法人三重県獣医師会が担当す
ることに、人と動物の関わりと絆について、さらに深く記憶にとどめたい。
目 次
三学会タイムテーブル………………………………………………………………………………… 2
三学会会場交通案内…………………………………………………………………………………… 3
三学会会場案内………………………………………………………………………………………… 5
三学会役員……………………………………………………………………………………………… 7
近畿地区学会幹事・運営委員………………………………………………………………………… 8
発表演題数…………………………………………………………………………………………… 10
学会運営上のお願い………………………………………………………………………………… 11
一般講演の発表方法………………………………………………………………………………… 13
学会会長講演挨拶プログラム……………………………………………………………………… 15
情報交換会プログラム……………………………………………………………………………… 17
日本産業動物獣医学会(近畿)プログラム……………………………………………………… 19
日本小動物獣医学会(近畿)プログラム………………………………………………………… 49
日本獣医公衆衛生学会(近畿)プログラム……………………………………………………… 95
第 4 回動物看護に関する学術集会プログラム…………………………………………………… 113
出展・広告・協賛企業名簿………………………………………………………………………… 119
*近畿地区獣医師会会員の学会参加者は、各獣医師会受付(中百舌鳥キャンパス学術交流会館)
で受付を行って下さい。その他の参加者は、総合受付(同会場)で参加登録を行ってください。
―1―
平成25年度近畿地区連合獣医師大会・獣医学術近畿地区学会タイムテーブル
9:00
会場
学術交流会館
多目的ホール
O
学術交流会館
サロン
P
学術交流会館
特別会議室
Q
学術交流会館
小ホール
R
10:00
11:00
12:00
13:00
14:00
総合受付・獣医師会受付
接待室
産業動物一般講演
119 号室
B
(1F 中講義室)
開
会
産業動物一般講演
117 号室
C
(1F 大講義室)
開
会
小動物一般講演
118 号室
D
(1F 大講義室)
開
会
小動物一般講演
会長会議
接待室
産業・公
衛合同
ランチョン
セミナー
産業動物
一般講演
201 号室
F
(2F 中講義室)
開
会
会
小動物一般講演 長
挨
拶
小動物
ランチョン
セミナー
小動物一般講演
小動物教育講演
2
会
公衆衛生 長
一般講演 挨
拶
公衆衛生一般講演
開 看護特別講演
会
1・2
203 号室
G
(2F 中講義室)
看護一般講演
206 号室
H
(2F 中講義室)
情報交換会 1
:大災害時の
動物救護活動と保護
207 号室
I
(2F 中講義室)
情報交換会 2
:野生動物の
保護対策と共生
産業
審査
委員会
205 号室
J
(2F 中講義室)
106 号室
M
(1F 会議室)
107 号室
N
(1F 小講義室)
小動物
審査
委員会
公衛
審査
委員会
会
長
挨
拶
産業一般
講演
小動物教育講演
1
202 号室
E
(2F 中講義室)
産業
合同
動物
幹事会
幹事会
小動物
幹事会
公衆
衛生
幹事会
展示
学会本部
―2―
17:00
18:00 19:00
褒賞
発表
談話会
各獣医師会事務局控室
開
会
210 号室
K
(2F 小講義室)
16:00
大会
116 号室
A
(1F 中講義室)
209 号室
L
(2F 小講義室)
15:00
産業動物審査委員会
小動物審査委員会
公衆衛生
審査委員会
中百舌鳥キャンパス交通案内
―3―
B3 棟
C1 棟
(学術交流会館)
中百舌鳥キャンパス図
―4―
喫
茶
室
012
厨房
100
玄関ホール
事務室
001
中庭(1)
倉庫
―5―
ロビー
002
O 会場
男子トイレ
多目的ホール
多目的ホール
002
会議室
101
サロン
サロン
100
斐文会室 校友会室
006
011
サービス
ヤード
クローク
010
収納庫
P 会場・受付
応接室
005
身障者
トイレ 女子トイレ
中庭(2)
パントリー
007
地階:R 会場
湯沸室
同時通訳室
009
特別会議室
特別会議室
003
003
Q 会場
調整室
008
会場案内 学術交流会館
会場案内 B3 棟 1F&2F
1F
B 会場
D 会場
119
中講義室
118
大講義室
C 会場
A 会場
117
大講義室
116
中講義室
M 会場
106
会議室
N 会場
107
小講義室
2F
I 会場
208
L 会場
209 小講義室
F 会場
201
中講義室
H 会場
207
中講義室
中講義室
206
中講義室
J 会場
205
中講義室
K 会場
210 小講義室 , 211 実習室 1
E 会場
G 会場
202
中講義室
203
中講義室
―6―
204
中講義室
学会役員
獣医学術近畿地区学会
学会会長
三 野 營治郎(近畿連合獣医師会会長、三重県獣医師会会長)
日本産業動物獣医学会
学会長
中 尾 敏 彦(元山口大学)
副学会長
白 井 淳 資(東京農工大学)
佐 藤 繁(岩手大学)
近畿地区学会長
玉 田 尋 通(大阪府立大学)
近畿地区副学会長
久 米 正 彦(神戸市獣医師会)
小 畑 晴 美(三重県獣医師会)
近畿地区学会運営主任
川 手 憲 俊(大阪府立大学)
日本小動物獣医学会
学会長
佐 藤 れえ子(岩手大学)
副学会長
岡 野 昇 三(北里大学)
丸 尾 幸 嗣(岐阜大学)
近畿地区学会長
大 橋 文 人(大阪府立大学)
近畿地区副学会長
中 山 正 成(奈良県獣医師会)
須 藤 和 信(三重県獣医師会)
近畿地区学会運営主任
嶋 田 照 雅(大阪府立大学)
日本獣医公衆衛生学会
学会長
石 黒 直 隆(岐阜大学)
副学会長
山 田 章 雄(東京大学)
丸 山 総 一(日本大学)
近畿地区学会長
三 宅 眞 実(大阪府立大学)
近畿地区副学会長
木 村 明 生(大阪府獣医師会)
永 田 克 行(三重県獣医師会)
近畿地区学会運営主任
星 英 之(大阪府立大学)
―7―
平成25年度獣医学術近畿地区学会幹事
所 属
産業動物
小動物
公衆衛生
三重県獣医師会※
○小畑 晴美
○須藤 和信
○永田 克行
兵庫県獣医師会※
鈴木 忠
安田 和雄
近平 雅嗣
大阪府獣医師会
澤田 勉
尾芝 仁
○木村 明生
京都府獣医師会
西野 洋
松原 利行
安藤 明典
滋賀県獣医師会
清水 信美
河南 明孝
林 賢一
奈良県獣医師会
松田 勇
○中山 正成
遠藤 正
和歌山県獣医師会
松井 望
蓬台 仁志
村上 毅
大阪市獣医師会
石川 尚之
吉内 龍策
宮前 俊一
神戸市獣医師会
○久米 正彦
河口祐一郎
貫名 正文
京都市獣医師会※
男成 良之
山田 昭彦
田邊 輝雄
大阪府 (大学)
◎玉田 尋通
◎大橋 文人
◎三宅 眞実
大阪府 (大学)
川手 憲俊
嶋田 照雅
星 英之
◎学会長 ○副学会長 ※運営委員選出獣医師会
―8―
平成25年度獣医学術近畿地区学会運営委員
所 属
産業動物
小動物
公衆衛生
三重県獣医師会※
小畑 晴美
須藤 和信
永田 克行
三重県獣医師会
谷口 佐富
石田 正弘
南川 藤雄
三重県獣医師会
水谷 将也
佐々木 直
西中 隆道
兵庫県獣医師会※
鈴木 忠
安田 和雄
近平 雅嗣
兵庫県獣医師会
宮奥 正一
宮 豊
吉岡 城拓
京都市獣医師会※
男成 良之
山田 昭彦
田邊 輝雄
副学会長
久米 正彦
中山 正成
木村 明生
副学会長(担当獣医師会)
小畑 晴美
須藤 和信
永田 克行
大阪府大幹事
玉田 尋通
大橋 文人
三宅 眞実
大阪府大幹事
川手 憲俊
嶋田 照雅
星 英之
大阪府大
桑村 充
谷 浩行
安木 真世
大阪府大委員
岩崎 忠
藤本 由香
勢戸 祥介
大阪府大委員
高橋 正弘
鳩谷 晋吾
幸田 知子
動物看護関連
石橋 妙子
※幹事、運営委員を兼任
―9―
平成25年度獣医学術近畿地区学会 発表演題数
産業動物
小動物
公衆衛生
三重県
6
6
4
16
兵庫県
12
7
1
20
大阪府
2
14
6
22
京都府
7
7
2
16
滋賀県
2
2
3
7
奈良県
2
3
0
5
和歌山県
5
0
3
8
大阪市
0
3
0
3
神戸市
0
0
0
0
京都市
0
4
0
4
動物看護
計
36
46
19
― 10 ―
動物看護
計
5
5
5
106
学会運営上のお願い
(参加者の方へ)
①当日、学術交流会館の所属獣医師会の受付にて名札を受け取り、必ず左胸につけて下さい。
参加章をつけていない方は会場への入場をお断りする事があります。
②近畿地区の獣医師会に所属していない参加希望者は、学術交流会館の総合受付にて参加登録
を行ってください。
③質疑、討論される方は、所属と氏名を述べてから発言して下さい。
④討論は発表内容に関連あるものとし、私語等関係のない発言はご遠慮下さい。
⑤追加討論は、座長に一任させていただきます。
⑥会場内では、携帯電話等の電源を切っておいて下さい。
⑦講演内容の撮影(写真、ビデオなど)ならびに録音は禁止します。
(一般講演の演者の方へ)
①一般講演の演者はご自身のノートパソコン(PC)を持込んで発表していただくことになりま
したので、ご注意ください。詳細については、HP または講演要旨集の「一般講演の発表方法」
をよく読んで、ご準備ください。発表時間 7 分、質疑応答 3 分です。
②学会当日は、学術交流会館の所属獣医師会の受付にて参加登録を行ってください。名札を必
ず左胸につけて下さい。
③発表の 60 分前までに各会場の試写受付(要旨集参照)にお越しください。
④試写受付で演者であることを告げてから、演者が持参した PC を試写用液晶プロジェクター
に接続し、試写を行ってください。プロジェクターとの接続用ケーブル;ミニ D-Sub15 ピン
(VGA 端子;外形 16mm × 7mm)
対応ケーブルのみ)
は試写受付に用意しております。ただし、
Macintosh 用の出力端子用アダプターは用意しておりませんので、演者がご持参ください。
⑤液晶プロジェクターの解像度は、XGA(1024 × 768)とさせていただきます。
⑥試写終了後に、配布されたシールに演者の名前を記入して、PC に貼ってください。また、
PC のスリープ設定を解除していることを確認してください。
⑦発表の2演題前に、会場内の演台横の PC 受付に演者の PC を、電源コード(AC アダプター)
を接続した状態で預けてください。その際、スライドをすみやかに開始できるように、ファ
イルを開いた状態にしてから、預けてください。
⑧発表まで、次々演者席、引き続いて次演者席に着席し、待機して下さい。演者は原則として
正面スクリーンに向かって左側、座長は右側の位置になります。
⑨発表時の PC 操作は、演者ご本人により行っていただきます。講演時間は7分の発表と3分
の討論時間を設けてあります。
⑩発表終了後に PC 受付にて PC を返却いたします。
― 11 ―
(座長の方へ)
①当日、所属獣医師会の受付にて参加登録を行ってから、各会場の試写受付にて、座長である
ことを告げてください。
②名札を必ず左胸につけて下さい。
③講演時間を厳守するようにご配慮下さい。講演時間は7分の発表と3分の討論時間を設けて
います。
④次座長の方は前座長の開始とともに次座長席に着席し待機して下さい。
⑤時間延長は認めませんので、中途であっても演者に終了してもらうよう指示して下さい。
⑥進行形式はお任せしますが、発表時間が短いので質疑応答なども時間内に収まるよう簡潔に
お願い致します。
⑦質問者については所属、氏名を述べてから発言するように座長が指示して下さい。
(審査委員ならびに幹事の方へ)
①当日、学術交流会館の所属獣医師会受付にて会議開始時間までに登録処理をして下さい。
②名札を必ず左胸につけて下さい。
③産業動物獣医学会は 8:50 から 9:20 まで、小動物獣医学会は 8:10 から 8:40 まで、獣医
公衆衛生学会は 8:20 から 8:50 まで、
「審査委員会」を各学会の審査委員兼幹事会議室(産
業動物:B3 棟 205 号室(J 会場)
、小動物:B3 棟 209 号室(L 会場)
、公衆衛生:B3 棟 210
号室(K 会場)
、会場平面図参照)にて行いますのでご参集下さい。
④各学会とも会場での審査委員席は特に設けておりません。審査委員は、客席の一ヵ所に集中
しないよう着席して、対象講演について審査にあたって下さい。
⑤最終審査委員会は、各学会の一般講演終了後、直ちに前記の審査委員兼幹事会議室にて行い
ます。
⑥幹事会議は、昼 12 時 10 分から各学会の上記審査委員兼幹事会議室にて行います(弁当を準
備しております)
。なお、三学会合同幹事会議は、各学会の幹事会議終了後、B3 棟 205 号室(J
会場)にて行います。
― 12 ―
発表スライドの作成と発表の要領
1.スライド作成方法
①発表 PC スライド作成に使用する PC の OS は Windows 7、アプリケーションソフトは
Microsoft Power Point 2007 もしくは 2010 を推奨いたします。
②発表 PC スライドは横スライドで作成してください。
③文字フォントは Windows XP の OS 標準フォントをご使用下さい。標準フォント以外で
は正しく表示されない場合があります
④ Microsoft Power Point 2007 または 2010 で作成した PC スライドはプレゼンテーション
形式(拡張子 .pptx)で保存して下さい。Microsoft Power Point 2007 より古いバージョ
ンで作成したスライドは Microsoft Power Point 2007 Viewer をダウンロード(無料)し
て画面を確認して下さい。
⑤動画によるトラブルは対処いたしません。
⑥音声出力は対応いたしません。
⑦液晶プロジェクターの解像度は 1024 × 768(XGA)とさせていただきます。それ以外の
解像度に設定された PC でスライドを作成された場合、見え方が少々異なることがあり
ますのでご了承下さい。
2.発表方法
①発表方法はデジタルプレゼンテーション(パソコン発表)のみです。各会場にはプロジェ
クター 1 台、D-Sub15 端子(外形 16mm × 7mm)および切替器を用意いたします。
②発表される方は、
ご自身の PC
(Windows, Macintosh)
を持参してください。PC のメモリー
は最低 2GB 以上を推奨いたします。Macintosh の一部機種など、変換コネクタが必要な
機種をお持ちの方は、必ず、変換コネクタをご自身でお持ち下さい。
③パソコンとともに、必ず電源ケーブルをご持参下さい。
④発表の 60 分以上前に受付および試写(HP 又は要旨集を参照)を行って下さい。
⑤発表データはすみやかに開始できるようデスクトップ画面上に保存してください。
⑥発表時間は7分、質疑応答時間は3分です。
⑦パソコンは、発表ファイルを開いた状態にし、発表の 2 題前に各会場内演台横の PC 係
席へご自身でお持込みいただきます。それ以前のお預かりはいたしかねます。発表後 PC
係席にてパソコンを返却いたします。
⑧トラブル時のバックアップのため、PC ご持参の場合も同一 PC スライドファイルを USB
フラッシュメモリに保存のうえ、バックアップ用として会場までご持参下さい。尚、会
場に準備するバックアップ用の PC の OS は Windows ですので Macintosh のプレゼンテー
ションファイルは正しく表示されない場合があります。
⑨発表の際は、講演者ご本人によるパソコンの操作をお願いいたします。
⑩ PC の持込が困難な場合は、あらかじめ下記の担当者にご相談下さい。
⑪その他、不明な点は、下記の学会運営会社にご相談ください。
会場設営担当:株式会社タスプ (tel : 03-5970-3990, mail : [email protected])
― 13 ―
平成 25 年度獣医学術近畿地区学会
日本獣医師会 3 学会
会長・副会長講演挨拶
「日本獣医師会学会の今後のあり方と
獣医学術地区学会との連携について」
日本産業動物獣医学会 14:30 〜 14:50 A 会場
白井淳資副学会長
日本小動物獣医学会 14:30 〜 14:50 C 会場
岡野昇三副学会長
日本獣医公衆衛生学会 14:10 〜 14:30 F 会場
石黒直隆学会長
(代理:三宅眞実近畿地区学会長)
― 15 ―
平成 25 年度獣医学術近畿地区学会
特別企画プログラム
情報交換会
1. 大災害時の動物救護活動と保護について
H 会場(B3 棟 2階 206 号室)
時間(13:00 ~ 14:40)
2. 野生動物の保護対策と共生について
I 会場(B3 棟 2階 207 号室)
時間(13:00 ~ 14:40)
― 17 ―
平成 25 年度 日本産業動物獣医学会(近畿)プログラム
A 会場(B3 棟 116 号室)
①開 会 の 辞 (近畿地区学会長挨拶)
(9:30 〜 9:40)
玉田 尋通
②一 般 講 演 (午前の部)
③合同ランチョンセミナー
④一 般 講 演 (午後の部)
(9:40 〜 12:00)
(12:20 〜 13:00)
(13:30 〜 14:30)
No.A1 〜 No.A13
⑤学会長挨拶
(14:30 〜 14:50)
No.A14 〜 No.A19
B 会場(B3 棟 119 号室)
①開 会 の 辞 (近畿地区副学会長挨拶)
②一 般 講 演 (午前の部)
③合同ランチョンセミナー
(9:30 〜 9:40)
(9:40 〜 12:00)
(12:20 〜 13:00)
小畑 晴美
No.B1 〜 No.B13
(A 会場 B3 棟 116 号室)
④一 般 講 演 (午後の部)
⑤学会長挨拶(A 会場 B3 棟 116 号室)
(13:30 〜 14:10)
(14:30 〜 14:50)
No.B14 〜 No.B17
O 会場(学術交流会館 多目的ホール)
⑥閉 会 の 辞 (褒賞演題公表)
(17:00)
玉田 尋通
談話会会場(P 会場・学術交流会館 サロン)
⑦談 話 会
(17:30 〜 19:00)
……………………………………………………………………………………………………
審 査 委 員
A 会 場
B 会 場
森 昌 昭(三重県)
渡 邊 理(兵庫県)
藤 田 若 枝(三重県)
平 井 武 久(兵庫県)
中 西 剛(京都府)
渡 辺 千 春(滋賀県)
松 田 勇(奈良県)
杉 山 善 朗(京都市)
澤 田 勉(大阪府)
石 川 俊 彰(京都府)
佐 伯 和 弘(和歌山県)
道 場 正 和(神戸市)
……………………………………………………………………………………………………
1.産業動物獣医学会(近畿)審査委員会会議 8:50 〜 9:20
会場:B3 棟 205 号室(審査委員兼幹事会議室)
2.産業動物獣医学会(近畿)幹事会会議 12:10 〜 12:40
会場:B3 棟 205 号室(審査委員兼幹事会議室)
昼食を用意しております。
3.獣医学術近畿地区学会合同幹事会会議 12:40 〜 13:10
会場:B3 棟 205 号室
4.審査委員会
各学会の一般講演終了後、直ちに各学会審査委員兼幹事会議室にて実施。
― 19 ―
日本産業動物獣医学会(近畿)一般講演プログラム
A 会場 (B3 棟 116 号室)
—午前の部—
(演題番号 A1 ~ A13)
9:30 ~ 9:40
開会の辞
9:40 ~ 10:10
A1
牛白血病ウイルス(BLV)リアルタイム PCR 検査法の検討
羽岡美智代(大阪府)
A2
管内農家における牛白血病対策の現状と課題
岩尾 基(和歌山県)
A3 「EC の鍵」を活用した牛白血病高リスク牛選定の検討
山田 陽子(和歌山県)
近畿地区学会長挨拶
座長 鈴木 義久(三重県)
座長 井澤 武史(大阪府大)
10:10 ~ 10:30
A4
乳用牛にみられた筋肉内の腫瘍形成を主徴とする牛白血病
万所 幸喜(京都府)
A5
牛白血病の生前診断における生検の活用と今後の課題
矢島 和枝(兵庫県)
10:30 ~ 10:50
A6
大規模養鶏場での発生を想定した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)防疫訓練
山本 哲也(京都府)
A7
鳥インフルエンザウイルス遺伝子検査法の検討
天野恵里子(京都府)
11:00 ~ 11:30
A8
兵庫県内で検出された牛 RS ウイルスの遺伝子解析
名部 美琴(兵庫県)
A9
採卵鶏における腎炎型伝染性気管支炎及びアデノウイルス性筋胃びらんの発生例
竹馬 工(三重県)
座長 岩崎 忠(大阪府大)
座長 種子田 功(京都府)
A10 大規模肥育牛農場に発生した角結膜炎
中山 卓也(兵庫県)
座長 田原 和彦(兵庫県)
11:30 ~ 12:00
A11 牛壊死性腸炎の検査における real-time multiplex PCR 法の有用性の検討
諸岡 剛俊(滋賀県)
A12 熊野牛複合経営農家における壊死性腸炎の発生とその対応(第2報)
楠川 翔悟(和歌山県)
A13 牛クロストリジウム感染症5種混合ワクチン接種後の抗体価測定
および発生状況からの接種時間・間隔・回数の検討
12:20 ~ 13:00
ランチョンセミナー
藤森 芳英(滋賀県)
座長 田島 朋子(大阪府大)
「牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン「スパイロバック®」について」
林 忠嗣(ゾエティス・ジャパン㈱)
協賛:ゾエティス・ジャパン株式会社
― 21 ―
—午後の部—
(演題番号 A14 ~ A19)
座長 桑村 充(大阪府大)
13:30 ~ 13:50
A14 大規模黒毛和種繁殖農場における Mycoplasma bovis 浸潤状況調査
小島 温子(兵庫県)
A15 牛のマイコプラズマ浸潤調査及び薬剤感受性の現状
野間 進(兵庫県)
座長 日根野谷 淳(大阪府大)
13:50 ~ 14:10
A16 籾米給与によるブロイラーのカンピロバクター感染抑制
西井 真理(京都府)
A17 黄色ブドウ球菌(SA)性乳房炎に対する粘膜免疫誘導療法の検討
岡本 隆行(奈良県)
座長 濃添 照雄(京都市)
14:10 ~ 14:30
A18 県内緬山羊の肝蛭保有状況調査および防疫意識向上のための立入
中島 岳人(奈良県)
A19 一養鶏場におけるワクモ生息状況調査
國永 絵美(三重県)
14:30 ~ 14:50
日本産業動物獣医学会 学会長挨拶(A 会場 B3 棟 116 号室)
「日本獣医師会学会の今後のあり方と獣医学術地区学会との連携について」
15:00 ~ 17:00
大会(学術交流会館 多目的ホール)
17:00 ~ 17:30
褒章発表および閉会の辞(学術交流会館 多目的ホール)
― 22 ―
各学会長
日本産業動物獣医学会(近畿)一般講演プログラム
B 会場 (B3 棟 119 号室)
—午前の部—
(演題番号 B1 ~ B13)
9:30 ~ 9:40
開会の辞
9:40 ~ 10:00
B1
ホルスタイン種乳用牛における Ovsynch-CIDR 法の活用成績の検討 宮崎 俊輔(兵庫県)
B2
FSH 製剤単回投与による黒毛和種の過剰排卵処理方法の検討
10:00 ~ 10:20
B3
ポリジメチルシロキサン製マイクロウェルを用いたウシ卵子の成熟培養
B4
摘出卵巣由来卵子 (SPAY 卵子 ) の体外受精胚生産能力に関する検討 島田 浩明(三重県)
10:20 ~ 10:50
B5
黒毛和種子牛における離乳時の牛房移動が発育及びストレスに及ぼす影響
近畿地区副学会長挨拶
座長 億 正樹(奈良県)
藤原 龍司(京都府)
座長 久米 正彦(神戸市)
谷口 俊仁(和歌山県)
座長 出雲 章久(大阪府)
B6 「搾乳立会」による乳質改善指導効果の検討
吉田 恵実(兵庫県)
吉田 裕一(兵庫県)
B7
母子免疫型ワクチンを活用した熱処理初乳による子牛の生産性向上と牛疾病の経乳感染防止 田中 究(京都府)
11:00 ~ 11:20
B8
早期母子分離農場の黒毛和種子牛におけるアミノ酸製剤の給与効果 黒岩 武信(兵庫県)
B9
黒毛和種初産産子の出生体重に関わる要因の検討
11:20 ~ 11:40
座長 野口 浩和(和歌山県)
藤巻 章郎(三重県)
座長 稲葉 俊夫(大阪府大)
B10 肉豚肥育後期飼料へのリジンの上乗せ添加が飼養成績や肉質におよぼす影響 入江 拓也(三重県)
B11 乳牛の血乳症に対するプロジェステロン製剤の投与効果
濱﨑 健太(兵庫県)
座長 高橋 正弘(大阪府大)
11:40 ~ 12:00
B12 粉砕籾米の給与割合の違いが肥育豚の発育および肉質に及ぼす影響 石川 翔(兵庫県)
B13 オレガノ精油の酸化的ストレス反応緩和効果
座長 田島 朋子(大阪府大)
12:20 ~ 13:00
ランチョンセミナー (A 会場 B3 棟 116 号室)
出雲 章久(大阪府)
「牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン「スパイロバック®」について」
林 忠嗣(ゾエティス・ジャパン㈱)
協賛:ゾエティス・ジャパン株式会社
― 23 ―
—午後の部—
(演題番号 B14 ~ B17)
座長 西村 和彦(大阪府大)
13:30 ~ 13:50
B14 牛の乳汁中に認められた数種のプロテアーゼ活性と乳房炎の診断におけるその意義 深瀬 徹(京都府)
B15 乳用牛の蹄底潰瘍への開放性ウエットドレッシング療法の応用
井上 雅介(兵庫県)
座長 川手 憲俊(大阪府大)
13:50 ~ 14:10
B16 和歌山県固有種「龍神地鶏(リュウジンジドリ)
」保存の取り組み
藤原 美華(和歌山県)
B17 Candida kefyr による牛の流産発生の 1 例
小堀実千代(三重県)
14:30 ~ 14:50
日本産業動物獣医学会 学会長挨拶(A 会場 B3 棟 116 号室)
「日本獣医師会学会の今後のあり方と獣医学術地区学会との連携について」
15:00 ~ 17:00
大会 (学術交流会館 多目的ホール)
17:00 ~ 17:30
褒章発表および閉会の辞 (学術交流会館 多目的ホール)
― 24 ―
各学会長
演題番号:A1
牛白血病ウイルス
(BLV)
リアルタイム PCR 検査法の検討
羽岡美智代
大阪府家保
1.はじめに:牛白血病ウイルス(BLV)のリアルタイム
PCR(rPCR)法は、多検体の処理に時間を要する。そこ
で、検体処理法について検討したところ、全血から抽出した
DNA も利用できる可能性が示された。今回、検体数を増や
してさらにデータを集めるとともに、さらなる効率化を図る
ため、検体処理法の改良について検討した。
2.材料および方法:BLV 抗体陽性率 70% 以上の一農家に
おいて、全 88 頭の採血を行い、ELISA と rPCR を実施した。
全血検体は、自動血球計数器で血球数を測定した後、
(1)
全 血 200 μ l か ら 直 接 DNA 抽 出( 全 血 DNA)、(2) 全 血
1ml を溶血処理し、残った白血球から DNA 抽出(白血球
DNA)、という 2 通りの処理により DNA を抽出し、rPCR
を実施した。
3. 結 果:88 検 体 中、 陽 性 は、ELISA;59 検 体、 全 血
DNA;52 検体、白血球 DNA;58 検体だった。全血 DNA
と白血球 DNA のウイルス遺伝子量に有意差はなく、相関係
数 0.957 と高い相関がみられた。
4.考察および結語:全血 DNA で遺伝子が検出されず、陽
性が一致しなかった検体は、白血球 DNA で検出されたウイ
ルス遺伝子はごく微量であり、ウイルス遺伝子量の多い牛を
摘発するという目的には十分利用可能であると思われる。今
後は、検査技術の向上と検査時間の短縮に努め、牛白血病清
浄化を推進していきたい。
演題番号:A2
管内農家における牛白血病対策の現状と課題
○岩尾 基、常田将宏、小谷 茂、尾畑勝吉
和歌山県紀南家保
1.はじめに:当農場は、平成 21 年度に実施した牛白血病
ウイルス(BLV)ELISA 検査において、高い陽性率(15/20)
を示したことから、より詳細な浸潤状況調査を継続的に実施
するとともに、定期的な殺虫剤散布による吸血昆虫対策、分
娩後すぐに母子を離し、リアルタイム PCR(r-PCR)検査陰
性牛の初乳のみを凍結保存後給与する初乳対策を実施してき
た。また、出来る限りの陽性牛の淘汰を行ってきた。そこで
今回、これらの取り組み効果の検証と今後の課題について検
討した。
2.材料および方法:当農場は、酪農と和牛繁殖の複合経営で、
平成 24 年 7 月及び 9 月に子牛を含む乳用牛 ・ 肉用牛計 41 頭
について採血し、検査材料とした。抗体検査として、寒天ゲ
ル内沈降反応(ゲル沈)及び ELISA 検査を実施し、遺伝子
検査として r-PCR 検査を実施した。また、抗体検査の結果
に加え、単核細胞数を測定し、年齢を加味した単核細胞の増
加により判定する「EC の鍵」によりハイリスク牛の特定を
行った。
3.結 果:乳用牛 13 頭については、ELISA 陽性 3 頭、ゲ
ル沈陽性 1 頭、r-PCR 陽性 6 頭、EC の鍵擬陽性 3 頭であっ
た。子牛 12 頭については、ELISA、ゲル沈、EC の鍵擬陽
性 ・ 陽性は認められなかったが、r-PCR 陽性が 5 頭認められ
た。繁殖和牛 16 頭については、ELISA 陽性 12 頭、ゲル沈
陽性 10 頭、r-PCR 陽性 10 頭、EC の鍵擬陽性 4 頭が認めら
れた。加えて EC の鍵陽性が 4 頭認められ、繁殖和牛におい
て BLV 陽性牛が多数認められた。そこで、EC の鍵陽性個
体が感染源となる可能性が高いことから、他の検査結果を踏
まえ、この 4 頭をハイリスク牛と特定した。
4.考察および結語:今回の検査において、r-PCR 検査で乳
用牛 3 頭、繁殖和牛 3 頭の陽転が認められた。また、r-PCR
検査陽性子牛の内 2 頭が陰性母牛の産子であり、繁殖和牛の
抗体陽性率が高く、EC の鍵陽性 4 頭が認められたことから、
当農場の感染の拡大は、繁殖和牛を中心とした水平感染によ
るものと考えられた。このことより、初乳対策は一定の効果
は得られているものの、吸血昆虫対策は不十分であることを
畜主に認識させることが出来た。そこで、今後も定期的な検
査を継続実施し、ハイリスク牛の淘汰、吸血昆虫対策の強化、
人工初乳への切り替え等の実施について指導していきたい。
― 25 ―
演題番号:A3
「EC の鍵」を活用した牛白血病高リスク牛選定の検討
○山田陽子、鳩谷珠希、黒田順史、豊吉久美
和歌山県紀北家保
1.はじめに:和歌山県では、これまで県内の牛白血病ウイ
ルス(BLV)の遺伝子定性検査および抗体検査を実施して
きたが、今回初めて末梢血単核細胞(=リンパ球+単球、以
下 PBMC)数による判定(「EC の鍵」)を併せて実施した。
このことにより、正確な遺伝子定量比較ができなくても牛白
血病高リスク牛の選定が可能かを検討した。
2.材料および方法:県内 7 戸(A ~ G 農場)の肉用牛計
157 頭について、抗体検査として血清について寒天ゲル内沈
降反応(ゲル沈)および ELISA を実施、遺伝子定性検査と
して EDTA 血についてリアルタイム PCR(r-PCR) を実施し
た。PBMC 数の算出は自動血球計算機による白血球数の測
定を行うと共に、血液塗抹標本から白血球中 PBMC の百分
比を算出することにより行った。EC の鍵の判定基準により、
PBMC 数と年齢から陽性、擬陽性、正常の 3 段階に分類した。
3.結 果:ゲル沈、ELISA および r-PCR 陽性はそれぞれ 14 頭、
23 頭、21 頭で、それら 3 検査全て陽性は 2 戸の 10 頭(A
農場 8 頭、B 農場 2 頭)であった。ゲル沈陽性 14 頭の内残
り 4 頭は ELISA 陽性または r-PCR 陽性であった。検査牛全
頭が 3 検査全て陰性の農場は 2 戸(C および D 農場)であった。
EC の鍵の判定結果は 19 頭陽性、24 頭擬陽性、114 頭正常
に分類された。A 農場は 3 検査全て陽性 8 頭のうち EC の鍵
陽性は 4 頭であり、高リスク牛の絞り込みが可能となった。
C 農場は BLV 抗体・遺伝子検査で全て陰性にもかかわらず、
1 頭を除く全てが EC の鍵擬陽性、陽性であった。
4.考察および結語:ゲル沈陽性であれば ELISA と r-PCR
はほぼ陽性で、
ゲル沈の特異性の高さが今回示された。また、
EC の鍵は、BLV 高浸潤農場において抗体・遺伝子検査に併
せて淘汰の優先順位付けのために有用であると考えられた。
しかし放牧農場では白血球数が高くなるという報告もあり、
C 農場の EC の鍵の高陽性率は放牧飼養による影響の可能性
が示唆され、EC の鍵のみで高リスク牛選定を行うべきでな
いと考えられた。
今後の牛白血病高リスク牛選定法について、
まず簡易で特異性が高いゲル沈を行い陽性牛は基本的に淘汰
更新対象牛とする。更に、ゲル沈陽性の多い BLV 高浸潤農
場では、EC の鍵判定、ELISA および r-PCR を実施するこ
とで、非特異反応の見落とし防止、高リスク牛の絞り込みが
可能と考えられる。
演題番号:A4
乳用牛にみられた筋肉内の腫瘍形成を主徴とする牛白血病
○万所幸喜、田中優子、種子田 功
京都府中丹家保
1.はじめに:京都府内で発生した牛白血病ウイルス(BLV)
の感染による成牛型牛白血病は、病変の好発部位や腫瘍細胞
の形態がほぼ同様であったが、最近、従来と異なる症例が散
見される。今回、従来の成牛型牛白血病と病変部位等が異な
る一症例を、リンパ球マーカーを用いた腫瘍細胞の検索によ
る牛白血病の分類について検討した。
2.材料および方法:発症牛はホルスタイン種、雌、74 か月齢。
右側頭部が拳大に腫脹し、右眼球の充血と瞬膜の露出を認め
た。後に、全身に腫瘤が増生し急激に大型化したため、血液
検査所見とあわせて牛白血病を疑い、病性鑑定を実施した。
3.結 果:(1) 血液検査:白血球数 7,600 個 / μ l(リンパ球
83%、異型率 15%)、BLV 抗体陽性。(2) 剖検所見:腫瘤の
形成は全身の筋肉に認め、特に右側の頭頸部から前躯にかけ
て顕著であった。右側頭部から耳下、顎下、頸部等の筋肉の
複数箇所に腫瘤を形成し、右側頭筋はほぼ腫瘍性の異物に置
換していた。胸腔では、肺の間質および心臓の左右心耳に多
数の白色結節と心膜の肥厚を認めた。腹腔では、第四胃壁の
肥厚と漿膜面に拳大の腫瘤を認め、骨盤腔内では空腸腸間膜
リンパ節の腫大と子宮外口付近にウズラ卵大の腫瘤を複数認
めた。(3) 組織所見:心臓、肺、腎臓、第四胃、膣、右下顎
部腫瘤、右頸部筋肉内、左肩胛骨下筋肉内に、中型で粗剛な
核と少量の細胞質を有するものと、中〜大型でやや多型の不
規則な核と少量の細胞質を有するものの2種類の腫瘍細胞に
よる浸潤増殖像と、これら腫瘍細胞が主座する顕著な腫瘍性
増殖像を認めた。
また、
腫瘍細胞の増殖巣周囲にマクロファー
ジが散在的に認められた。リンパ球マーカーを用いた免疫組
織化学的検査を実施したところ、各組織中の腫瘍細胞は類似
する結果が得られ、CD79 α陽性、CD5 陰性、CD11 b陰性、
CD3 陰性および TdT 陰性であり、B2 細胞由来のリンパ球
の特徴を有していた。
4.考察および結語:臨床検査等を含むこれらの検査結果か
ら、成牛型牛白血病(組織診断名:B2 細胞由来リンパ腫)
と診断した。一般的な成牛型牛白血病は B1 細胞由来とされ
ているが、本症例はリンパ球マーカーを用いた腫瘍細胞の検
索により、比較的稀なタイプであることが判明した。今後も
主要病変部位等と腫瘍細胞の形態やリンパ球マーカーとの関
連性についての症例数を重ね、牛白血病の病理組織学的な分
類に資するよう努めたい。
― 26 ―
演題番号:A5
牛白血病の生前診断における生検の活用と今後の課題
○矢島和枝 1)、名部美琴 1)、三宅由利子 2)、小倉裕司 1)
1)
兵庫県姫路家保、2)兵庫県洲本家保
1.はじめに:牛白血病(BL)は、近年発生頭数が増加傾
向にあるが、その診断は剖検後の病理組織検査に頼る場合が
多く、生前診断の報告症例は少ない。今回、当所で実施した
BLの生前診断事例について、方法および成績を検証した。
2.材料および方法:BL発症を疑い、臨床獣医師より病性
鑑定依頼のあった乳用牛 23 頭(H21.9 ~ H25.6 月)について、
目視・触診により臨床症状と腫脹部位を確認し、体表リンパ
節および血液を採取した。リンパ節は穿刺吸引、コア針生検、
外科的摘出のいずれかで採材し、スタンプ標本(ギムザ染色
等)、ホルマリン標本(HE染色)を作製、うち 13 例では免
疫組織化学染色(免染:CD3、CD79a)を実施した。血液検
査は、BLV抗体をゲル内沈降反応、受身赤血球凝集反応、
ELISA のいずれかで検査し、白血球数の測定、塗抹標本で
白血球百分比と異型リンパ球を確認した。
3.結 果:①BL発症と診断されたのは 20 頭 (87%) で、臨
床症状は削痩 9 頭、泌乳低下・停止 7 頭、起立困難 5 頭、眼
球突出 2 頭、無症状 3 頭で、リンパ節の腫脹は浅頚 12 頭、
腸骨下 18 頭、腹腔内 17 頭、乳房上 8 頭、体表ヘモリンパ 9
頭と、全頭で複数か所に腫脹を認めた。組織所見は、全頭が
中〜大型淡明の核を持つリンパ球様細胞の腫瘍性増殖像で、
免染はすべて CD79a 陽性のB細胞由来であった。血液検査
では、BLV抗体は全頭陽性、白血球数は 5,000 〜 207,300/
μ l で、10,000/μ l 以上は 16 頭、末梢血中への異型リンパ
球の出現は 10 頭でみられた。②BL発症が確認されなかっ
た 3 頭の臨床症状は、乳房炎 2 頭、泌乳低下 1 頭で、リンパ
節の腫脹は乳房上 1 頭、腸骨下 1 頭、乳房上と腹腔内が 1 頭
であった。組織所見で腫瘍像は認めず、結合織増生の炎症像
等が確認された。血液のBLV抗体は全頭陽性、白血球数は
8,900 〜 40,600 /μ l で増多傾向にあったが、異型リンパ球は
認めなかった。この 3 頭のうち 1 頭は、と畜検査時に腹腔内
に病変がみつかりBLと診断された。
4.考察および結語:生検によるBLの生前診断は、臨床症
状があり複数のリンパ節に腫脹を認めるが、血液検査で診断
不能な例において有効であった。しかし、生検による生前診
断は、採取可能な組織の範囲や量が限られるため、得られる
組織の情報が少なく診断困難な場合や、内臓型腫瘍は診断不
能など問題点も多いことより、生前診断における補助的診断
法の確立や診断基準の検討が望まれる。
演題番号:A6
大規模養鶏場での発生を想定した高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)防疫訓練
○山本哲也 1)、黒田 鼓 2)、寺石武史 1)
1)
京都府南丹家保、2)京都府農技セ畜技セ
1.はじめに:管内の大規模養鶏場における直列多段鶏舎で
の発生を想定し、初動対応から農場での鶏の殺処分、焼却ま
での防疫訓練を実施するとともに、全庁的な情報伝達、緊急
動員、防疫服着脱等総合訓練を実施し、府の対策マニュアル
を検証した。
2.材料および方法:発生想定農場は、約13万羽規模のウ
インドレス、直列5段ケージ、1ケージ当たり5~6羽収容。
訓練では、5段18列591羽を用いて実施。(1)本部初
動対応訓練:異常家きん通報から対策本部設置までの情報伝
達、連絡会議の開催。(2)輸送・焼却訓練:防疫訓練で殺
処分した鶏500羽を用いて自治体焼却施設で焼却。(3)
農場防疫訓練:動員者の健康診断、防疫服の着脱。異常鶏の
簡易検査陽性時から初動防疫を行うスターターチームの資材
搬入や農場消毒。動員者による鶏舎内での鶏の取り出しから
殺処分、密閉容器への詰替・搬出までの防疫作業における人
数、作業時間について検証。
3.結 果:
(1)本部初動対応訓練:本庁内及び現地機関
との情報伝達を円滑に行うことができた。(2)輸送・焼却
訓練:一般ゴミ焼却量の約20%にあたる処分鶏を混合焼却
し、燃焼状況等に問題が無いことを確認した。(3)農場防
疫訓練:農場での防疫作業班編成は、捕鳥班4名、運搬班8
名、炭酸ガス殺班2名、詰替班7名、搬出班6名の計27名
とした。捕鳥作業は、上部の3段目から5段目までは単管パ
イプ、キャスター、合板(コンパネ)、ボイド管で作成した
捕鳥台車を用いて行った。捕鳥台車を用いることにより、ゴ
ミペールを乗せた運搬用台車が下を通過でき、狭い通路でも
一方向の動線が確保できた。しかし、人数配分が少なかった
密閉容器詰替・搬出作業が滞る結果となった。
4.考察および結語:防疫作業人数は、府のマニュアルでは
1班50名体制であるが、作業が滞った詰替班、搬出班の
配分を考える必要があった。また、27名での防疫作業所要
時間が44分であったことから1時間当たりに換算すると
805羽処理可能であった。この結果を基に、13万羽飼養
農場で試算すると、1班50名を20分毎に動員し、防疫作
業60分、
休憩60分のサイクルで、
動員者延べ2,
050名、
所要時間19時間40分となり、国の防疫指針で定める24
時間以内での殺処分が可能であることが推察された。
― 27 ―
演題番号:A7
鳥インフルエンザウイルス遺伝子検査法の検討
○天野恵里子、種子田 功
京都府中丹家保
1.はじめに:鳥インフルエンザウイルス(AIV)の遺伝子
検出検査は、現在、「高病原性鳥インフルエンザ及び低病原
性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」
(指
針)に、RT-PCR 検査とリアルタイム RT-PCR(rRT-PCR)
検査(輸入、国産)の3種類の検査が記載されている。この
うち、rRT-PCR 検査・国産(指針法)の A 型検出系は、平
成 23 年に新たに指針に追加され、H5・H7 亜型の検出系に
ついても、同時期に農林水産省より配布された「リアルタイ
ム PCR 法操作マニュアル」に記載された。今回、AIV の遺
伝子検出検査法として新たに加わった指針法について、その
手技等を確認するとともに、実際の検査を想定した模擬検体
を作製し、簡易検査と指針法の結果を比較、検討した。また、
結果の検証を踏まえた上で、指針法のプライマー、プローブ
を用い、当所で従来実施していた 1step-rRT-PCR 検査の反
応条件等を変更した改変法についても検出感度等を検討し
た。
2. 材 料 お よ び 方 法: 不 活 化 AIV(H5 亜 型 ) を 試 料 と し、
rRT-PCR 検査は A 型、H5 亜型の遺伝子について実施した。
(1) 簡易検査と rRT-PCR 検査の比較:階段希釈した各試料
50 μ l を綿棒に吸収させたものを模擬検体とし、簡易検査と
rRT-PCR 検査を実施。簡易検査と、指針法及び改変法の結
果を比較した。(2) 検出感度の比較:100 ~ 104 倍に希釈した
試料を用い、指針法と改変法の検出感度の比較を行った。
3.結 果:(1) 指針法では、簡易検査陽性の検体でも、A 型、
H5 亜型の遺伝子を検出しなかったが、改変法では、両遺伝
子ともに検出した。(2) 両遺伝子ともに指針法で 102 倍、改
変法で 104 倍まで検出した。
4.考察および結語:指針法では、簡易検査陽性の検体でも、
ウイルス量等の条件によっては遺伝子を検出できない場合が
あることが示唆された。一方、改変法は、簡易検査陽性の検
体では遺伝子検出可能であり、指針法に比べて検出感度が高
かったことから、AIV 遺伝子検出に有用であると考えられ
た。
演題番号:A8
兵庫県内で検出された牛 RS ウイルスの遺伝子解析
○名部美琴 1)、中条正樹 1)、三宅由利子 2)
1)
兵庫県姫路家保、2)兵庫県洲本家保
1.はじめに:牛 RS ウイルス(BRSV)病は牛の主要なウイ
ルス性呼吸器病の一つであり、主に寒冷期に年齢に関係なく
発生する。兵庫県内において BRSV の関与する呼吸器病は
毎年流行しており、重症化または複合感染すると成牛でも死
亡するなど被害は大きい。今回、BRSV の動向を把握するた
め、2011 年から 2013 年までに県内で検出された BRSV 株の
遺伝子解析を行った。
2. 材 料 お よ び 方 法:2011 年 9 月 か ら 2013 年 3 月 に 県 内
で 呼 吸 器 症 状 を 呈 す る 牛 ( 乳 用 牛 17 頭、 肉 用 牛 72 頭、1
~ 130 か月齢 ) から採取した鼻腔ぬぐい液又は肺の 89 検体
(2011/12 シーズン 38 検体、2012/13 シーズン 51 検体)を材
料とした。検体もしくは検体を接種した Vero 細胞培養上清
から RNA を抽出し、Valarcher らの報告に基づく BRSV の
G 蛋白を標的とした nested PCR を実施した。PCR 陽性で
あった 46 検体のうち 20 検体(同 14 検体、6 検体)について、
増幅産物を用いたダイレクトシークエンス法により遺伝子配
列を解析した。得られた配列と国内外の BRSV の配列とを
比較し、相同性解析、分子系統樹解析を実施した。
3. 結 果:BRSV 陽 性 率 は 2011/12 で 66%(25 検 体 )、
2012/13 で 41%(21 検体)であった。なお、PCR を用いて
他のウイルス検索を併せて実施した結果、牛パラインフルエ
ンザ 3 型との混合感染が 2 検体、牛コロナウイルスとの混合
感染が 2 検体、牛ヘルペスウイルス 1 型との混合感染 3 検体
認められた。BRSV の遺伝子解析の結果、2011/12 検出株間
の相同性は 97.0 〜 100%、2012/13 は 99.8 〜 100%、2 シーズ
ン間は 97.2 〜 99.8%であった。分子系統樹解析では、全検
体が近年国内で流行している subgroup3 に属していた。
4.考察および結語:遺伝子解析から、2011/12 は近縁で
あるものの異なる複数の株が流行したと考えられた。一方
2012/13 は県北部〜県南部まで遺伝子相同性は非常に高く、
ほぼ同一の株の流行と考えられ、牛の導入や人・物の移動等
に起因する流行と推察された。呼吸器症状を呈する牛の検体
から BRSV が高率に検出され、牛呼吸器病への関与が考え
られることから、導入牛の隔離、畜舎消毒、ワクチン接種を
さらに徹底する必要がある。
― 28 ―
演題番号:A9
採卵鶏における腎炎型伝染性気管支炎及びアデノウイルス性筋胃びらんの発生例
○竹馬 工 1)、林 義規 2)、雷 絵理 3)
1)
三重県中央家畜保健衛生所、2)三重県南勢家保、3)三重県中央家保
1.はじめに:アデノウイルス性筋胃びらん(AGE)は鶏ア
デノウイルス(FAdV)が原因となり、血清型 1 によるブロ
イラーの症例が多く、採卵鶏での発生報告は少ない。今回、
採卵育成鶏において腎炎型伝染性気管支炎(IB)及び AGE
が同時に発生した症例に遭遇したので概要を報告する。
2.材料および方法:2012 年 6 月下旬、約 15,000 羽を飼養す
る採卵育成舎 ( ウインドウレス ) で、82 日齢から 1 日あたり
3 ~ 4 羽死亡したことから 87 日齢の死亡鶏 2 羽、衰弱鶏1
羽について病性鑑定を実施した。IB ワクチンはマサチュー
セッツ (M) タイプを使用していた。病理検査は主要臓器を
HE 染色し鏡検。筋胃びらんの認められたものについては抗
グループⅠトリアデノウイルスウサギ血清を用いた免疫組織
化学検査を行った。ウイルス検査は主要臓器の乳剤を発育
鶏卵に尿膜腔内接種、2 代継代しウイルス分離を実施。分離
株について IB ウイルス (IBV) の S1 蛋白遺伝子を標的とした
RT-PCR を行い、制限酵素断片長多型 (RFLP) と分子系統解
析を行った。細菌検査は常法により実施した。
3.結 果:剖検所見として死亡鶏の腎臓に白色点状巣、衰
弱鶏の筋胃に軽度のびらんが認められた。組織学的には腎臓
に尿細管の扁平化や壊死、尿細管腔に尿酸塩の貯留、尿細管
間質に単核系細胞が浸潤。
筋胃にはケラチノイド層の疎性化、
筋胃腺上皮細胞の減数や消失、多数の好塩基性核内封入体の
形成、粘膜固有層に偽好酸球浸潤が認められた。免疫組織化
学染色では筋胃腺上皮細胞の好塩基性核内封入体に一致して
ウイルス抗原が認められた。ウイルス検査では腎臓、直腸材
料から IBV が分離された。分子系統解析結果から JP-Ⅰ型と
確認され、M タイプのワクチン株とは異なっていた。細菌検査
では有意な菌は分離されなかった。終息
(82 日齢〜 105 日齢)
までの死亡率は 0.3% で、その後の産卵率低下や卵質の異常
は認められなかった。
4.考察および結語:死亡鶏は JP-Ⅰ型による腎炎型 IB と診
断され、野外流行株とワクチン接種株の抗原性状が異なった
為に発生したものと考えられた。衰弱鶏については AGE(急
性期)と診断された。直接接触により FAdV が伝搬するこ
とが報告されていることから、ケージ飼育が多い採卵鶏での
発生は少ないものと考えられるが、AGE は消化管疾患であ
ることから採餌量への影響が懸念され、さらなる病態の解明
が必要と思われる。
演題番号:A10
大規模肥育牛農場に発生した角結膜炎
○中山卓也 1)、中条正樹 1)、名部美琴 1)、小島温子 1)、矢島和枝 1)、浦本京也 2)
1)
兵庫県姫路家保、2)兵庫県和田山家保
1.はじめに:牛の角結膜炎は、主として牛ヘルペスウイル
ス 1 型 (BHV-1) の感染による牛伝染性鼻気管炎(IBR)や
Moraxella bovis の感染によって起こる。さらに管内の農場
において伝染性角結膜炎罹患牛から Moraxella bovoculi が分
離されている。平成 24 年 9 月、管内の約 1、600 頭を飼養す
る大規模肥育牛農場で眼病変を主徴とする IBR が発生し、M.
bovoculi との混合感染例が見られたので調査した。
2.材料および方法:3~6ヶ月齢のホルスタイン種の雄又
は去勢6頭、交雑種の去勢1頭の計7頭の肥育牛の発症牛か
ら検体を採取した。7 頭の血液及び内 4 頭の眼のスワブ又は
流涙を分離材料として採材し、ウイルス、細菌検査を実施し
た。血液は生化学検査、ウイルス抗体検査に供した。さらに、
導入直後の牛 6 頭について H24.9.20、10.12、12.14 の 3 回、
血液及び鼻腔又は眼のスワブを採材し、BHV-1 の中和試験
による抗体検査と PCR によるウイルス遺伝子検出を実施し
た。
3.結 果:発症牛は 40℃〜 41℃の発熱、呼吸速拍、目脂
及び眼結膜の充血などが見られ、抗生剤投与に反応しなかっ
た。分離材料の 4/4 検体から BHV-1 の遺伝子が PCR で検出
され、
ウイルス分離により 2/4 検体から BHV-1 が分離された。
しかし、この時点の血清では BHV-1 に対する中和抗体は検
出されなかった。分離材料の細菌検査により 3/4 検体からグ
ラム陰性桿菌が分離され、シークエンスの結果 M. bovoculi
と同定された。分離菌はセファゾリン、エンロフロキサシ
ンに感受性を示した。また、導入牛の調査では、H24.9.20 の
眼のスワブの検体1例で BHV-1 が検出された。分離された
BHV-1 は遺伝子解析の結果、分離株と標準株との間に差は
認められなかった。また H24.9.20 の血清のみ 2/6 頭の割合
で BHV-1 に対する抗体が陽性を示したが、その他の時点で
は中和抗体は検出されなかった。
4.考察および結語:今回の IBR の発生は顕著な鼻汁漏出等
はみられず、眼周囲の臨床症状が特徴的であり、BHV-1 に
対する抗体が上昇していないことから、BHV-1 の眼に限局
した局所感染と推察され、M. bovoculi との混合感染により
眼病変を誘発したものと考えられた。本農場は、肥育素牛を
全国各地から導入しており適切な隔離飼育や牛舎消毒やワク
チン接種等の衛生管理対策が必要と考えられた。
― 29 ―
演題番号:A11
牛壊死性腸炎の検査における real-time multiplex PCR 法の有用性の検討
諸岡剛俊
滋賀県家保
1.はじめに:牛の壊死性腸炎は Clostridium perfringens( 以
下 C. perfringens) の産生する毒素により急死する毒血症で
ある。毒素検査については、マウス致死活性の確認により実
施するが、技術的課題や動物愛護の観点から代替法につい
て検討されている。今回、real-time multiplex PCR 法 ( 以下
rmPCR 法 ) により毒素遺伝子を定量し、本法が診断に有効
か検討した。
2.材料および方法:平成 24 年 6 月から 11 月までの病性
鑑定事例で、牛壊死性腸炎を疑うと判断した 6 例を用い
た。細菌学的検査は定法により行い、同定にはアピ 20A( シ
スメックス・ビオメリュー ) を用いた。毒素型別はα、β、
ε、ι毒素遺伝子について Uzal らの PCR 法により行った。
rmPCR 法は空腸内容物を材料として Gurjar らの方法で行
い、蛍光色素 FAM および VIC の検出によりαおよびβ毒
素遺伝子を検出・定量し、結果の判定も報告に従った。陽性
コントロールは CP23 株 (A 型 ) および CP46 株 (C 型 ) を用い、
260nm での吸光度を測定し濃度を推定した。毒素試験は 2
例 2 株で各 2 匹のマウスの腹腔内接種により行い、解剖およ
び病理学的検査は定法に従った。
3. 結 果: 空 腸 内 容 物 よ り 4 × 104 か ら 4.8 × 108 の C.
perfringens を分離、同定した。それらの毒素型は全て A 型
であった。rmPCR 法ではα毒素遺伝子が 5 例の糞便から
検出され、その遺伝子量は 0.09 から 5.45ng と推定された。
CP23 株のα毒素遺伝子濃度は 2.25ng/μl、CP46 株のβ毒
素遺伝子濃度は 0.4ng/μl と推定された。陽性検体の閾値は
27 から 35 回だった。病理検査で高度死後変化と診断した
事例でも rmPCR 法で陽性と判定できた事例がある一方で、
1.6 × 108 の C. perfringns が分離されているにも関わらず、
rmPCR 法では陰性となる事例もあった。β毒素遺伝子は検
出されなかった。毒素検査でマウスは 48 時間以内に死亡し
なかった。
4.考察および結語:空腸内容物を用いた rmPCR 法は、そ
れぞれの毒素遺伝子の定量と毒素型別を同時に行うことがで
き、診断時間を短縮できる。C. pefringens が相当数分離さ
れているにも関わらず、rmPCR 法では陰性となる事例につ
いては採材箇所が不適当であった可能性も考えられた。牛壊
死性腸炎では 6 種類(α・β・ε・ι・エンテロトキシン・
β 2)の毒素が報告されている。β 2 毒素はα毒素と協働し
て小腸粘膜に病変を形成するという報告もあるが詳細な発症
メカニズムは不明である。rmPCR 法は糞便を材料としてい
るため、腸管内の状況をそのまま現し、複数の C. pefringns
毒素遺伝子を同時に定量可能である点で本病の診断に有用で
あると考える。
演題番号:A12
熊野牛複合経営農家における壊死性腸炎の発生とその対応(第2報)
○楠川翔悟、伊丹哲哉、筒井視有
和歌山県紀南家保
1.はじめに:平成 23 年、管内の熊野牛複合経営農家にお
いて肥育牛に壊死性腸炎が発生した。と畜場でのと畜検査結
果により Clostridium perfringens が原因菌として疑われた。
食肉検査を担当した京都府中丹西保健所との連携のもと、衛
生対策指導ならびに肥育牛への抗生物質・トキソイド接種を
行った。以降、壊死性腸炎の続発は見られなかった。同時に
一部繁殖雌牛の抗体価についても測定したところ、トキソイ
ド未接種であるにも関わらず C.perfringens に対する抗体価
は高値であった。このことから、本農家において本菌が常在
化し繁殖雌牛は野生株の毒素感作を受けていると示唆され
た。このため本年度は、C.perfringens による壊死性腸炎の
再発防止対策を行った。
2. 材 料 お よ び 方 法: 繁 殖 雌 牛 全 頭 の 採 血 を 行 い、
C.perfringens に対する抗体価の測定を微生物化学研究所に
依頼した。放牧地土壌、繁殖雌牛、子牛、肥育牛直腸内糞便
から C.perfringens の分離を試みた。新規に導入された肥育
牛を対象としてペニシリン系抗生物質とクロストリジウム 5
種混合トキソイドを接種した。環境中の衛生対策として牛舎、
放牧地への石灰散布を指導した。
3.結 果:繁殖雌牛の抗体価は全頭が陽性値を示し、月齢
の進んだ牛ほど抗体価は高くなる傾向にあった。一方で肥
育牛や子牛で抗体価は低かった。肥育牛に対するトキソイド
接種により抗体価の上昇が確認された。肥育牛と子牛の糞便
からは一部、本菌が分離されたが繁殖雌牛からは分離されな
かった。調査期間中、本農家において壊死性腸炎を疑う症例
は確認されなかった。
4.考察および結語:菌分離結果、ならびに抗体検査結果よ
り本菌が本農場内に常在し、飼養牛はその毒素に曝露されて
いることが確定した。導入後まもない肥育牛の糞便から分離
されていたことからも、予防的なトキソイド接種は有効であ
ると考えられた。これまでの継続した指導の結果、疾病の低
減や市場成績の改善が認められ、本年度の新たな肥育牛導入
後も疾病の増加はみられなかった。また、本農家の飼養衛生
管理に対する意識も向上し、自主的な畜舎の消毒や乳酸菌を
含むとされる飼料の設計などが効果をあげていると考えられ
た。今後、農家が衛生管理への意識を高く保つことができる
よう、継続した指導を行っていく必要があると考えられた。
― 30 ―
演題番号:A13
牛クロストリジウム感染症5種混合ワクチン接種後の抗体価測定および発生状況からの接種時間・間隔・回数の検討
藤森芳英
滋賀県農業共済組合
1.はじめに:クロストリジウム感染症に対して、キャトル
ウィンC l5‘京都微研’クロストリジウム感染症 5 種混合ワ
クチン(以下CL 5)を異なる接種方法で接種している、3
牧場のCL 5 の抗体価とクロストリジウム感染症の発生を調
査した。
2.材料および方法:3 牧場(以下、A,B,C)の飼養形態は、
和牛素牛導入からの肥育で、飼養頭数および接種方法は、A
牧場 1600 頭規模、23 ヶ月齢で 1 回接種(試験的に 1 ヶ月後
に 2 回目接種牛を設定)した。B牧場 1000 頭規模、18 ヶ月
齢と 28 ヶ月齢で 2 回接種した。C牧場 600 頭規模、18 ヶ月
齢と 25 ヶ月齢で 2 回接種した。また、クロストリジウム感
染症の発生頭数をH 20 年 4 月よりH 24 年 7 月まで調査し、
抗体価を未接種時、1 回接種および 2 回接種後、約 2 ヶ月目
に測定した。
3.結 果:平均抗体価は、未接種時、全牧場で C.perfringens
以外上昇は認められなかった。1 回接種後で、B が一番高
く、平均抗体価の約半数は抗体陽性基準以下であった。2 回
接種後でも、B が一番高く、平均抗体価はすべて抗体陽性
基準以上であった。抗体陽性率(抗体陽性基準より高い比
率)は、未接種時、陰性がほとんどであったが、全農家で
C.perfringens の陽性が 80%以上であった。1 回接種後で、
牧場間で違いはあるものの、
全体的に陽性率は上がっていた。
2 回接種後では、
陽性率はさらに上がり、
ほぼ 80%以上となっ
た。調査期間中のクロストリジウム感染症の発生状況は、A
牧場でワクチン接種牛が 3 頭、未接種牛で 12 頭発生した。
B牧場でワクチン 2 回接種牛が 1 頭、未接種牛で 4 頭発生し
た。C牧場で未接種牛が 4 頭発生した。
4.考察および結語:調査期間中のクロストリジウム感染症
の発生状況より 1 回接種でもある程度の効果は見られたが、
平均抗体価および抗体陽性率からみると、2 回接種のほうが
望ましいと思われた。使用説明書にはない、2 回目の接種間
隔が 7 ヶ月と 10 ヶ月という長い事例でも、効果が認められ
たので、接種間隔があいてしまった場合でも 2 回接種したほ
うが良いと思われた。
演題番号:A14
大規模黒毛和種繁殖農場における Mycoplasma bovis 浸潤状況調査
○小島温子 1)、矢島和枝 1)、浦本京也 2)
1)
兵庫県姫路家保、2)兵庫県和田山家保
1.はじめに:Mycoplasma bovis (Mb)は牛呼吸器病症候
群(BRDC)や中耳炎の原因菌の一つであり、農場における
有効な対策が確立されていない。これらの疾病が多発してい
る大規模黒毛和種繁殖農場で防除対策を検討するため、Mb
の浸潤状況調査と分離株の性状検査を行った。
2.材料および方法:
(1)Mb 浸潤状況調査(H24.7 月)
:1
~ 5 か月齢の 4 群 23 頭の鼻腔からの Mb 分離と 0 ~ 5 か月
齢の 5 群 28 頭の Mb 抗体検査を実施した。(2)病理解剖事
例(H24.10 月)
:肺炎、中耳炎で予後不良の牛 2 頭(5 か月
齢と 4 か月齢)から Mb 分離を実施した。Mb 分離は検体を
変法ヘイフリック培地で培養し PCR で同定した。抗体検査
は分離 Mb 株由来 Tween20 抽出抗原を用いて間接 ELISA
を実施し、E 値 0.2 以上を陽性とした。(3)分離 Mb 株の性
状検査:浸潤状況調査の鼻腔由来 9 株と病理解剖事例の肺、
鼓室胞由来 4 株および当該農場の過去分離 22 株について微
量液体希釈法による薬剤感受性試験とパルスフィールドゲ
ル電気泳動(PFGE)による遺伝子型別(制限酵素 Sma Ⅰ)
を実施した。
3.結 果:(1)H24.7 月の浸潤状況調査では、23 頭中 9 頭
の鼻腔から Mb が分離され、特に発症牛のいる群で分離率が
高かった(5 頭中 4 頭)。Mb 抗体は、2 か月齢以降陽性頭数
が増加し、3 か月齢で全頭陽性になった。(2)病理解剖事例
では、肺の乾酪壊死や鼓室胞の肥大、膿汁貯留が見られ、肺、
鼓室胞などから Mb が分離された。(3)薬剤感受性は、H24
年度、過去分離株ともマクロライド系に耐性、OTC の感受
性が低下していた。PFGE では、H24 年度、過去分離株はそ
れぞれ 4、3 パターンにわかれ、うち 1 パターンは両者で類
似していた。
4.考察および結語:鼻腔からの Mb 分離率は発症牛群で高く、
Mb 抗体は 2 か月齢以降陽性率が高くなったことより、農場
内に Mb が広く浸潤しており、特に発症牛群では濃厚にまん
延していると考えられた。また、PFGE の結果、当該農場に
は過去から存続している株を含め複数種類の株が浸潤してお
り、分離株の薬剤感受性は低下傾向にあることがわかった。
以上より、当該農場の Mb 対策では牛舎消毒による牛群内の
Mb 汚染レベルの低減と定期的な農場浸潤株のモニタリング
とその成績に基づいた治療を行っていくことが必要と考え、
現在、
グルタルアルデヒド剤による煙霧消毒を実施中であり、
今後も調査、対策を継続していく。
― 31 ―
演題番号:A15
牛のマイコプラズマ浸潤調査及び薬剤感受性の現状
野間 進
和田山家保
1.はじめに:近年、但馬・丹波地域においてマイコプラズ
マが関与した肺炎が増加傾向にあり、昨年度(H24.4 〜 12)
当所で病理解剖した牛の半数以上でマイコプラズマが関与し
ていた。そこで、今後の農場対策に活用すべく、管内におけ
るマイコプラズマの浸潤状況及び薬剤感受性を調査した。
2.材料および方法:平成 24 年 9 月~ 11 月、呼吸器症状が
見られる農場を中心に黒毛和種 13 農場、77 頭(1 ~ 8 か月齢)
について、Mycoplasma bovis(M.bo)、M.bovirhinis(M.br)、
M.bovigenitalium(M.bge)、
M.alkalescens(M.alk)、
M.dispar
(M.dis) に関する以下の調査を行った。(1) 鼻腔スワブを液
体培地で 48 ~ 72 時間増菌培養後、マイコプラズマ各菌種に
特異的な PCR を実施した。(2)M.bo 分離株について、タイロ
シン(TS)
、チルミコシン(TMS)、オキシテトラサイクリ
ン(OTC)、マルボフロキサシン(MBFX)、エンロフロキ
M.bo
サシン(ERFX)の最小発育阻止濃度(MIC)を測定し、
基準株(PG45)と比較した。(3)M.bo 特異的エライザ法によ
り、各農場における M.bo 抗体保有状況を検討した。
3.結 果:(1)PCR 陽性の農場数及び頭数は、M.bo :7/13
M.br:13/13(100%)、58/77(75.3%)、
(53.8%)
、
30/77(39.0%)
、
M.alk :2/13(15.3%)、7/77(9.1%)、M.dis :13/13(100%)、
68/77(88.3%)であり、M.bge は検出されなかった。(2) 薬
剤感受性結果は TS、TMS、OTC においてすべての分離株
で MIC が上昇し、MBFX 及び ERFX では、二峰性の分布
を示した。(3)M.bo 抗体陽性又は擬陽性の個体が存在する農
場は 9/13(69.2%)
、個体別では、陽性 18/77(23.3%)、擬陽
性 14/77(18.1%)
、陰性 45/77(58.4%)であった。
4.考察および結語:PCR 及び抗体の高い陽性率からも、今
回採材を優先した「呼吸器症状が見られる農場」については
マイコプラズマの浸潤を十分に考慮しなければならない。さ
らに、薬剤耐性化の傾向からも、抗生物質による個体治療だ
けではなく、徹底した消毒や飼養衛生管理等の環境対策の重
要性が改めて示された。
演題番号:A16
籾米給与によるブロイラーのカンピロバクター感染抑制
○西井真理、安富政治
京都府農技セ畜セ
1.はじめに:近年、全粒小麦や籾付きえん麦など粗大粒子
を一定量以上含む飼料をブロイラーに給与すると、筋胃の肥
大、筋胃内容物の pH 低下、上部消化管での滞留時間の増大、
消化酵素の分泌促進による消化率や飼料要求率の改善などが
はかられるとの報告が多い。演者らは、筋胃内部は pH が低
く、カンピロバクターの殺菌スペクトルの範囲にあるにもか
かわらず、鶏が容易に感染する原因は、筋胃内での飼料粒子
と胃液との接触の不完全さにあると考え、粗大粒子と筋胃内
容物の pH 及び筋胃の肥大に着目し、全粒穀類を給与した場
合の筋胃の変化とカンピロバクター感染抑制効果を調べた。
2.材料および方法:
(試験 1)コマーシャル鶏を初生からト
ウモロコシ主体の飼料を給与して群飼し、14 日齢に 4 群に
分けて、飼料中の穀類を粗挽きトウモロコシ、籾米、全粒小
麦、玄米とした飼料を給与し、28 日齢に各区 4 羽の筋胃重
量及び筋胃内容物の pH を測定した。(試験 2)コマーシャ
ル鶏を初生からトウモロコシ主体の飼料を給与して群飼し、
14 日齢に 2 群に分けて、粗挽きトウモロコシまたは試験 1
で筋胃の発達が顕著であった籾米を主体とした飼料を給与し
た。24 日齢に各区 6 羽を感染動物飼育施設
(BSL2)
に収容し、
30 日齢で全羽に Campylobacter jejuni(GTC No.03263)を
2 × 103 cfu/ml 経口接種した。48 時間後に盲腸内容物を採
取し、C.jejuni の定量及び増菌後に定性を行った。
3.結 果:
(試験1)体重あたりの筋胃重量比は、粗挽きト
ウモロコシ区が 1.6%に対して籾米区が 2.6%と最も高く、次
いで全粒小麦区が 2.1%と筋胃の発達が顕著であったが、玄
米区は 1.6%で粗挽きトウモロコシ区と同じであった。一方、
筋胃内容物の pH は区間に差を認めず 3.0 〜 3.2 の範囲であっ
た。(試験 2)盲腸内容物の C.jejuni は、粗挽きトウモロコ
シ区では 6 検体中 5 検体が陽性で、菌量は 3.77 ± 1.96 log
cfu/g であった。一方、籾米区は増菌しても C.jejuni は検出
されなかった。
4.考察および結語:以上の結果から、籾米を給与すること
でブロイラーのカンピロバクターの感染を抑制できると考え
た。
― 32 ―
演題番号:A17
黄色ブドウ球菌
(SA)
性乳房炎に対する粘膜免疫誘導療法の検討
岡本隆行
奈良農共連家畜診
1.はじめに:粘膜面へ抗原刺激を行う事で誘導される粘膜
免疫は、感染防御に最も効果を発揮する。今回、粘膜に変性
SA を感作して粘膜免疫誘導を試みた。
2.材料および方法:感作粘膜として、抗原流出が少ないと
考えられる鼻腔粘膜を選択した。粘膜免疫は感作困難であ
り、長時間大量の SA 抗原を滞留させる方法を試みた。高吸
水性高分子のポリアクリル酸ナトリウム(商品名:パナカヤ
ク [ 飼料添加物 ])は粉末であるが、水分に触れると粘稠な
ゲルとなり長時間粘着性を保つ。そこで、パナカヤク粉末を
鼻腔内に噴射した後、死菌 SA 懸濁液を噴霧して粘膜に長時
間 SA 抗原を滞留させた。また、鼻粘膜ワクチンアジュバン
トとしてインターフェロンを使用した報告があるので、イン
ターフェロン分泌作用の報告があるカボチャ種子、紫ウコン
などから成る生薬粉末(商品名:インターナチュラル)を同
時に鼻粘膜感作に併用した。(1) 抗原の調製: SA をミューラー
ヒントン平板培地で培養後、20%ホルマリン溶液で変性させ、
精製水で洗浄したものを生理食塩水に懸濁させて免疫源とし
て用いた。(2) 免疫方法:パナカヤク粉末 2g、インターナチュ
ラル粉末 0.5g をシリンジに充填し、約 20㎝に切断した補液
管を鼻腔内に挿入して噴射した。直ちに SA 菌体 0.1g 相当
を懸濁した生理食塩液を注入して死菌 SA を粘膜に付着させ
た。10 日後に同様の処置を実施した。再度 SA が検出され
た症例では、更に 1 回処置を行った。処置後 3 回 SA が検出
されなかった乳房を治癒と判定した。(3)SA の検出:液体増
菌培地で前増菌した後、選択培地で検出する鋭敏な検出方法
で検出した。
3.結 果:(1) 乳房炎発症牛に対する効果:乳房の腫脹や乳
汁にブツが認められている乳房炎発症例では、効果は認めら
れなかった。(2) 潜在性排泄牛に対する効果:乳汁のスクリー
ニング検査によって乳汁所見に異常が認められないにも関わ
らず SA を排菌していた 5 頭(体細胞数約 200 万個 /ml:1
乳房、50 万個 /ml:1 乳房、13 万個 /ml 以下:6 乳房)に処
置した結果、処置後感染が 4 乳房に拡大した 1 頭と体細胞数
が 200 万個 /ml の 1 乳房は効果が見られなかったが、1 頭 2
分房は 2 回の処置で、3 頭 6 乳房は 3 回の処置で SA が消失
した。
4.考察および結語:経鼻 SA 感作処置は、発症した症例で
は効果が見られなかったが、体細胞数が増加していない潜在
性 SA 排菌牛では、SA を消失させるのに有効な手段だと考
えられた。
演題番号:A18
県内緬山羊の肝蛭保有状況調査および防疫意識向上のための立入
○中島岳人 1)、武平有理子 2)
1)
奈良県家保、2)奈良県家保(現:奈良県畜産課)
1.はじめに:現在、牛においては肝蛭の駆虫が進んでいる
が、奈良公園では鹿において肝蛭の感染が維持され、調査し
た鹿の糞の 87.5% から肝蛭卵が検出されたという報告(小林
ら, 2011)がある。一方、緬山羊は肝蛭に感受性が高いと言
われているが、県内での感染実態は不明である。飼育環境に
よっては鹿から感染している可能性もある。また最近は緬山
羊を愛玩動物として飼養する人が増加しているが、その現況
の把握も進んでいない。しかし、そういった緬山羊において
も定期報告書の提出が必要となっている。以上のことから、
県内緬山羊の肝蛭保有状況の調査を行うと同時に、緬山羊飼
養者の把握及び情報の整理を進めた。
2.材料および方法:立入時に飼養者に基本情報(健康状態、
導入元、飼育環境、餌、駆虫状況等)の聞き取りを行い、ま
た口蹄疫についてどれくらい知っているのかを調べるため簡
単なアンケートをとった。それを受けて口蹄疫の注意喚起を
行い、さらに定期報告書の説明を行った。飼育場所にて個体
ごと、それが出来なかった場合は畜舎や放牧地の一区画ごと
に糞を採取し、時計皿法及び浮遊法を用いて内部寄生虫の虫
卵検査を行った。
3.結 果:23 件の飼養者からアンケートをとった結果、口
蹄疫自体は全員の知るところであったが、口蹄疫の症状や、
家畜伝染病予防法に関することについてはあまり知られてい
ないことがわかった。
(観光牧場や、
緬山羊を飼育している牛・
豚農家では、口蹄疫についての知識は十分であった。
)糞便
検査は、計 48 検体(内訳:緬羊 14 検体、山羊 34 検体)に
ついて行った。肝蛭卵は 1 検体で検出された。この山羊は慢
性的な下痢状態であったが、糞便には線虫卵も非常に多く含
まれており、下痢の原因は複合的なものと考えられた。一般
線虫卵は 9 割強、コクシジウムのオーシストは 7 割弱、拡張
条虫卵は 1 割の検体で見られた。他には、
鞭虫卵や毛細線虫、
ネマトジルスといった他の線虫卵も見られた。
4.考察および結語:県内の緬山羊の寄生虫保有状況を調べ、
肝蛭寄生は非常に少ないことがわかった。また、緬山羊に注
目して立入し、緬山羊の飼養状況について情報の整理を行っ
た。立入の機会が少ない飼養者にも、口蹄疫の注意喚起や定
期報告書の説明等を行うことができた。今回の立入により、
県内の緬山羊飼育の現状を知ることができ、より確かな家畜
防疫体制の構築につながると考えられる。
― 33 ―
演題番号:A19
一養鶏場におけるワクモ生息状況調査
○國永絵美 1)、鈴木義久 2)
1)
三重県南勢家保、2)三重県中央家保
1.はじめに:ワクモは作業環境の悪化、産卵率や卵質の低
下などを起こす鶏の外部寄生虫である。ポジティブリストの
制定に伴う殺虫剤使用規制や薬剤抵抗性ワクモの出現などそ
の対策は困難さを増している。管内の一養鶏場においてワク
モによる作業時の不快感が訴えられたので対策の一段階とし
てワクモの生息状況を調査した。
2. 材 料 お よ び 方 法: 当 農 場 は 成 鶏 2 4 0 0 0 羽、 育 成
8000羽飼養の採卵養鶏場で鶏舎構造は2段ケージの開
放型高床式鶏舎である。3棟ある成鶏舎のうち1棟で調査
を行った。鶏舎内9か所から握りこぶし大の埃を採材し検
体とした。この9検体はそれぞれジップ付ビニール袋に入
れ、粘着テープでさらに密閉することでワクモの逃走を抑制
した。検体は室温暗室で保管し7日間観察を行った。調査は
2012年7月から11月下旬まで行った。
3.結 果:6月下旬の殺虫剤散布で9月上旬までワクモの
発生は抑制されていたが、9月下旬からワクモの発生を確認
した。9検体のうち、26週令の鶏群ケージから採材した検
体(検体 No. 1〜3)ではワクモは認められなかった。77
週令の鶏群ケージから採材した6検体(検体 No. 4〜9)で
は飽血状態のワクモが認められた。この飽血ワクモが確認さ
れた6検体のうち3検体(検体 No. 7〜9)は窓際に設置さ
れているケージから採材したものであり、検体 No. 4〜6よ
り多くの飽血ワクモが観察された。検体の観察2日目あたり
から検体 No. 4〜9で未吸血状態のワクモを確認、窓際から
採材した検体 No. 7〜9ではより多くの未吸血状態のワクモ
を確認した。
4.考察および結語:今回実施したワクモの採材方法は容易
でかつ材料費が安価であるため各農家で実施可能と考えら
れた。鶏群の飼養日数と共にワクモもその数を増やしている
と考えられるためオールインオールアウトが困難な農場では
自らがワクモの生息状況を把握することは薬剤散布時の一助
になると考えられた。また、ケージの列によりワクモの生息
数に違いがあったことからワクモはケージに沿って鶏舎の縦
方向への移動は頻繁に行っているが、鶏舎の横方向への移動
は人などの媒介がなければさほど行われていないと推察され
た。今回の調査で同じ日齢でもケージの位置によりワクモの
生息状況が異なることからワクモが好む環境があると考え、
現在も調査を継続中である。
― 34 ―
演題番号:B1
ホルスタイン種乳用牛における Ovsynch-CIDR 法の活用成績の検討
○宮崎俊輔 1)、長谷川弘哉 1)、是枝明博 1)、玉井 登 2)、住 伸栄 1)、曽賀久征 3)、大平正信 3)
1)
兵庫県農共連三原家畜診、2)兵庫県農共連西播基幹家畜診、3)兵庫県農共連淡路基幹家畜診
1.はじめに:近年,発情をコントロールし計画的に授精す
る繁殖管理プログラムが行われている。今回飼養管理の異な
る 2 農場で Ovsynch-CIDR 法 ( プログラム ) を活用して,繁
殖成績を検討した。
2.材料および方法:(1) 供試農場 A 農場は繋留式で経産牛
46 頭を飼養する専業農家,B 農場は繋留式で経産牛 38 頭を
飼養する兼業農家である。2 酪農場の経産牛の平均初回授精
日数,平均初回授精受胎率,平均授精回数,平均空胎日数,
発情発見率,総受胎率,妊娠率をプログラム実施前後で比
較した。(2) プログラム実施牛 A 農場では延べ 9 頭,B 農場
では延べ 23 頭の経産牛にプログラムを実施した。プログラ
ムは CIDR 挿入と同時に GnRH を投与し,CIDR を 7 日間留
置した後,除去時に PGF2 α,その 2 日後に GnRH を投与し,
16-20 時間後に AI を実施した。調査項目は受胎率,分娩後
からプログラム開始までの日数および開始時の年齢とした。
(3) 経済効果 2 農場で分娩後 100 日から全頭にプログラムを
実施した場合の経済効果を試算した。
3.結 果:(1)A 農場,B 農場の平均初回授精日数は 60.4 日,
78.7 日,平均初回授精受胎率は 26.2%,20.0%,平均授精回
数は 3.1 回,2.1 回,平均空胎日数は 137.7 日,175.4 日,発
情発見率は 66.1%,31.9%,総受胎率は 22.0%,32.2%,妊
娠率は 14.1%,10.3%であった。(2)A 農場,B 農場における
プログラム実施群の受胎率は 33.3%,60.9%であり,B 農場
では総受胎率に比べ有意に上昇した (p < 0.05)。B 農場にお
いて分娩後 120-160 日の間の受胎率は 0% (0/5) であった。プ
ログラム開始時の年齢による受胎率に差は見られなかった。
(3)B 農場のプログラムによる経済効果の試算結果は 441,
777 円の経費削減であった。A 農場ではプログラムの経費が
削減経費を上回り,経済効果は見られなかった。
4.考察および結語:今回,A 農場ではプログラムによる受
胎率は上がらなかった。B 農場のように発情発見率の低い農
場でプログラムは効果が高く,受胎率を上げた。また,B 農
場において分娩後 120-160 日に受胎率が低かったことから,
栄養状態の悪い時期や乳量が多い時期などでは受胎率が低下
すると思われる。
演題番号:B2
FSH 製剤単回投与による黒毛和種の過剰排卵処理方法の検討
○藤原龍司 1)、櫻田孝之 1)、石森 裕 2)、杉原達生 3)、山本 稔 4)
1)
京都府農水技セ畜セ碇、2)京都府食の安心・安全推進課、3)京都府中丹振興局、4)京都府丹後家保
1.はじめに:牛の過剰排卵処理(以下 SOV)は、卵胞刺激
ホルモン(以下 FSH)を3〜4日間、朝夕 2 回投与する漸
減法が一般的であるが、牛への疼痛ストレスが大きく、労力
や時間的ロスを伴うために簡略化が求められていた。その
ため、生理食塩水を溶媒とした FSH の単回皮下投与による
SOV について平成 22 年度から平成 24 年度の 3 年間にわた
り調査した。
2.材料および方法:試験は各年度とも当場繋養の黒毛和種
経産牛 3 頭を 3 回採卵し、計 9 回の採卵を供試牛が偏らない
ように試験区に配置した。1 回の SOV における FSH の投与
量は 20AU に統一した。22 年度は溶媒の量を 10ml と 50ml
にして漸減法と比較した。23 年度は溶媒量を 50ml とし、膣
内挿入型黄体ホルモン製剤(以下 PRID)除去時の妊馬血清
性性腺刺激ホルモン(以下 eCG)の投与が採卵成績に及ぼ
す影響を検討した。24 年度は PRID の除去と eCG の投与の
時期について検討した。
3.結 果:正常胚数は、22 年度が漸減法で 17.0 ± 9.2 個、
10ml 区で 11.0 ± 8.9 個、50ml 区で 18.3 ± 8.5 個となり、23
年 度 が eCG 無 投 与 区 で 10.3 ± 5.7 個、 朝 400IU 投 与 区 で
16.0 ± 10.1 個、 朝 夕 200IU 投 与 区 で 13.7 ± 7.1 個 と な り、
24 年度が PRID 除去前 eCG 投与区で 4.3 ± 3.8 個、PRID・
eCG 同時投与区で 9.0 ± 11.3 個、eCG 無投与区で 6.0 ± 3.6
個となった。
4.考察および結語:以上の結果から、50ml の生理食塩水を
溶媒とした FSH 単回皮下投与法は一般的な漸減法とほぼ同
等の採卵成績が得られ、さらに PRID 除去時に eCG を投与
する事によってさらなる成績の向上が期待できる可能性が示
唆された。また、以上の試験結果を受けて、24 年度からは、
府内の一部の農家においても、労力の軽減を目的に FSH の
単回投与法が実施され、成果を上げている。
― 35 ―
演題番号:B3
ポリジメチルシロキサン製マイクロウェルを用いたウシ卵子の成熟培養
○谷口俊仁 1)、岩本太作 2)、岸 昌生 2)、加藤暢宏 2)、佐伯和弘 2)
1)
和歌山県畜試、2)近大生物理工
1. は じ め に: 生 体 内 卵 子 吸 引(OPU)- 体 外 受 精(IVF)
技術により、効率的な子ウシ生産が可能である。しかし
OPU で得られた卵子は卵丘細胞が剥離しているものが多
く、これらは体外受精後の発生率が低い (Hashimoto et al.
1998)。卵子の発生率の改善には、卵丘細胞を添加する共培
養 (Hashimoto et al. 1998) や、卵丘細胞を培養した馴化培地
(Fatehi et al. 2002) などがあるが、簡便かつ安定的な培養方
法の確立が必要である。我々はこれまでにポリジメチルシロ
キサン(PDMS)製マイクロウェル(MW)を用いることで
効率的なウシ胚の個別培養が可能であることを示した(Saeki
et al、2008)。今回、PDMS を素材として卵子の成熟培養用
の MW を作製し、さらにそれらを用いて未成熟卵子の成熟
培養をおこない、成熟、受精およびその後の発生におよぼす
影響について調べた。
2.材料および方法:(実験 1)厚さ 0.5mm の PDMS シート
に生検トレパン(直径 0.5mm)を用いて孔を開け、シャー
レ底面に貼り付けることにより MW プレートを作製した。
食肉処理場由来ウシ卵巣から吸引採取した卵丘細胞層が 4 層
以上の卵子(COC)、1-3 層の卵子(CEO)、裸化卵子(DO)
をそれぞれドロップ内での集合培養(GC 区)あるいは MW
内での個別培養(MW 区)による成熟培養をおこない、成
熟率および体外受精後の初期発生を比較した。(実験 2)厚
さ 0.5mm あるいは 1.5mm の PDMS シートに上記と同様の
方法で直径 0.5mm の孔を開け、MW プレートを作製した。
COC および CEO を GC、0.5mm MW あるいは 1.5mm MW
による成熟培養をおこない、成熟率および体外受精後の初期
発生を比較した。
3.結 果:(実験 1)成熟率、受精率および卵割率は各区
で差がみられなかったが、CEO-MW 区の発生率(46%)が
CEO-GC 区(31%)より高い傾向であった(p < 0.1)
。
(実験 2)
成熟率、
受精率および卵割率は各区で差がみられなかったが、
COC-1.5mm MW 区(53%)が COC-GC 区(31%)より発生
率が高かった(p < 0.05)
。
4.考察および結語:以上より、PDMS 製 MW を用いるこ
とでウシ卵子の成熟培養を効率的にできることが示された。
今後は、MW の容積や作製した胚の受胎性について、さら
に検討する必要があると考えている。
演題番号:B4
摘出卵巣由来卵子(SPAY 卵子)の体外受精胚生産能力に関する検討
○島田浩明1)、大久保幸弘2)、石井利通3)、梅木俊樹4)
1)
三重県紀州家保、2)モーモークリニック・埼玉県、3)三重県畜研、4)三重県畜産課
1.はじめに:牛体外受精胚(体外胚)の生産に必要な卵子
は主に生体卵巣からの経腟採卵あるいは、と体卵巣からの卵
子卵丘細胞複合体(COCs)吸引により採取した卵子を使用
しているが、卵巣摘出(SPAY)手術により取り出した卵巣
由来の COCs を使用した報告例は少ない。近年、牛の産肉
能力等に関係する遺伝資源の確保が重要視される中、これま
で SPAY 時に廃棄されていた卵巣を使った体外胚の生産は、
BSE 検査結果を待つことなく COCs の吸引採取が可能なこ
とから、胚発生率の向上や高品質な胚生産を可能にする新た
な手段となり得ることが期待される。そこで摘出卵巣から採
取した COCs の体外胚発生能について調査した。
2.材料および方法:試験には和牛自家産牛3群(17 頭、
15 頭、
8 頭)と導入牛2群(9 頭、9 頭)の計 58 頭から SPAY 器
具「モーカッター(FHK 製)」を使い摘出した卵巣を使用し
た。摘出後の卵巣を温生理食塩水に浸して実験室に持ち帰
り、18G 注射針付シリンジで卵胞内の COCs を吸引採取した。
卵丘細胞が十分付着した良好な COCs(A 卵子)とそれ以外
の COCs(B 卵子)を区別し、A 卵子のみを胚発生試験に供
した。成熟培養は 10% 子牛血清(NCS)加 M199 培地で 21
時間、体外受精は IVF-100 培地で 5 時間実施した。発生培
養は 5%NCS 加 CR1aa 培地を使用し、5%CO2、5%O2、温度
38.5℃、湿度飽和状態下で実施した。発生成績は媒精日を 0
日とし、媒精後 8 日目までに発生した肉眼的に優良な体外胚
を発生胚とした。なお、SPAY 時の各牛群の平均日齢は 315
日~ 334 日、平均 10.5 ヶ月齢であった。
3.結 果:58 頭のうち 45 頭(77.6%)で機能的黄体の存
在を確認した。各牛群の COCs 採取数は卵巣1個あたり A
卵子が 0.5 ~ 3.6 個、B 卵子が 2.8 ~ 6.7 個となり、導入牛群
において A 卵子の割合が低かった。各牛群の体外胚発生率
は 6.2 ~ 37.5% となり、導入牛の2群間で大きく異なった
(37.5%、6.2%)
。
4.考察および結語:約 10.5 ヶ月齢の和牛 SPAY 卵子を用
いた体外胚発生率は 21.1% となり、性成熟に達していない個
体であるにも係わらず、その卵巣には発生能を有する多数の
卵子が存在することが判明した。また、導入牛群においては
導入後 69 日および 95 日が経過していたが、卵巣1個当りの
A 卵子採取数や胚発生率にばらつきが見られ、輸送による
ストレスや導入後の飼養環境の変化が育成期の卵巣機能発育
に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
― 36 ―
演題番号:B5
黒毛和種子牛における離乳時の牛房移動が発育及びストレスに及ぼす影響
○吉田恵実 1)、小浜菜美子 2)、秋山敬孝 2)、坂瀬充洋 2)
1)
兵庫県農技総セ畜技セ、2)兵庫県農技総セ北部農技セ
1.はじめに:子牛にとって離乳は栄養的なストレスだけで
なく、精神的なストレスが同時に加わる時期である。そのた
め、これらのストレスをいかに軽減するかが子牛の良好な発
育にとって重要である。黒毛和種繁殖農家では子牛を専用の
牛房へと移動させる方法で離乳を行うことが多く、離乳時に
は母子分離と牛房移動という 2 つの環境変化が同時に起こっ
ていると考えられる。そこで、母子分離と牛房移動を同時に
しない離乳方法が、子牛の発育と離乳ストレスに及ぼす影響
を調査した。
2.材料および方法:黒毛和種子牛 48 頭(♂ 22、♀ 26)を
離乳方法の違いにより 2 区に分けた。試験区は子牛をそのま
まで母牛を別の牛房に移動させる方法(母子分離のみ)で、
対照区は子牛を別の牛房に移動させる方法(母子分離+牛
房移動)で、4 か月齢で離乳した。試験は 5 ~ 7 頭の群飼で
実施した。離乳 7 日前から離乳 28 日後まで、体重と採血を
7 日毎、飼料摂取量を毎日調査した。離乳 7 日前から 7 日後
まで歩数を毎日調査した。供試牛のうち 24 頭(各区 12 頭)
は、離乳前、離乳 1、3、7 日後の 7 - 19 時に行動を観察し
た。また、試験区は離乳 28 日後に牛房移動を行い、牛房移
動 5 日後まで歩数を毎日調査した。
3.結 果:離乳後 28 日間の 1 日あたりの増体重は、試験
区(♂ 1.10kg、♀ 0.88kg)が対照区(♂ 0.89kg、♀ 0.69kg)
に比べ大きかった(p < 0.05)。試験区のコルチゾール、好
中球/リンパ球比は対照区に比べ低値を示した。試験区は対
照区に比べ採食時間は長く、歩数および発声回数は少なかっ
た。乾物摂取量は試験区が多かった。また、歩数は対照区の
離乳 1 日後(母子分離+牛房移動)が 40,524 歩だったのに
対し、試験区の離乳 1 日後(母子分離)は 12,018 歩、牛房
移動 1 日後は 9,304 歩であった。
4.考察および結語:母子分離と牛房移動を同時にしない離
乳方法はストレスを軽減させ、子牛の発育を改善させること
が分かった。離乳時に母子分離と牛房移動が重なることで、
ストレスが増幅した可能性が示唆された。ストレス軽減によ
り離乳後の採食時間および乾物摂取量が増加したことが発育
改善につながったと考えられた。
演題番号:B6
「搾乳立会」による乳質改善指導効果の検討
○吉田裕一、出口佳宏、亀山 衛、嶋田雅之
兵庫県洲本家保
1.はじめに:これまでの乳質改善指導は、搾乳機器の点検、
乳房炎検査、聞き取りによる搾乳指導が主であった。2000
年頃より、実際の搾乳時に立会検査を行う「搾乳立会」を取
り入れ、2010 年より泌乳量を経時記録できるラクトコーダー
を立会に利用することで、搾乳手技の具体的な改善に取り組
んできた。今回、乳質改善指導を行った酪農家の体細胞数、
出荷乳量を評価することで、搾乳立会による乳質改善指導の
有効性を検討した。
2.材料および方法:
(1)2009 ~ 2011 年度に乳質改善指導
を実施した酪農家 33 戸を搾乳立会の有無により 2 区(立会区:
14 戸、立会なし区:19 戸)に分け、指導の前後1年間のバ
ルク乳体細胞数の改善効果を検討した。(2)各バルク乳体
細胞数は A 農協の乳価テーブルを基に4段階(A:30 万 /ml
未満、B:30 ~ 50 万 /ml、C:50 ~ 80 万 /ml、D:80 万 /ml 以上)
に評価し、指導前後で比較した。(3)指導前後 1 年間のバ
ルク乳体細胞数と出荷乳量から乳価テーブルに基づく乳代損
失額を算出し、乳質改善指導による経済効果を検討した。
3.結 果:
(1)指導後に体細胞数の減少した農家は、立会
区で 71%(10/14)
、立会なし区で 63%(12/19)であり、指
導後の体細胞数の減少は立会区で平均 6.5 万 /ml、立会なし
区で平均 7.4 万 /ml と大きな差はなかった。
(2)指導前後
1 年間のバルク乳体細胞数を評価した結果、有意に立会区の
C 評価が減少し、A 評価が増加した(p < 0.02)
。また立会
なし区では D 評価が減少し、
A 評価が増加する傾向にあった。 (3)指導前後の 1 頭当りの年間乳代損失額は、立会区で平
均 18,859 円、立会なし区で平均 13,056 円減少し、立会区で
の経済効果が大きかった。
4.考察および結語:今回の結果より、乳質改善指導は搾乳
時間外の技術指導だけでなく、「搾乳立会」により搾乳手順
等の指導を行う方が、より改善効果がみられ、乳代損失額も
大幅に軽減されることが判明した。今後は、
「搾乳立会」に、
ラクトコーダーを活用した総合的な指導を行い、体細胞数の
減少と生乳生産量の向上など酪農経営の安定に寄与していき
たい。
― 37 ―
演題番号:B7
母子免疫型ワクチンを活用した熱処理初乳による子牛の生産性向上と牛疾病の経乳感染防止
○田中 究 1)、田中義信 2)、極山 太 1)、山本 稔 1)
1)
京都府丹後家保、2)京都府南丹家保
1.はじめに:子牛の生産性向上と牛白血病等の経乳感染防
止を目的とした「熱処理初乳バンク」を確立するため、一和
牛繁殖農家をモデル農家としてその有用性を調査した。
2.材料および方法:平成 23 年 11 月から一酪農家のホルス
タイン種母牛 27 頭に 2 種類の母子免疫型ワクチン(下痢 5
種混合不活化、呼吸器病 6 種混合)を分娩前に接種し、分娩
後 1 ~ 4 回目の初乳を回収した。初乳は PL テストを実施後、
比重により 3 種類(前期・中期・後期)に分類し、パスチャ
ライザーで 60℃ 30 分間加熱処理後、フリーザーバッグ(1
リットル)に充填し、凍結保存した。この初乳をモデル農家
の黒毛和種子牛 35 頭(母乳未摂取)に生後 6 日間給与(1 リッ
トル× 2 回 / 日)した。子牛 5 頭について経時的(30・60・
90 日齢)にワクチン抗体価、牛白血病ウイルス(BLV)抗
体及び血中 BLV 遺伝子を調査し、また、せり市出荷前子牛
9 頭について BLV 抗体と血中 BLV 遺伝子を調査した。
3.結 果:初乳バンク開始から 14 か月間に計 605 リット
ルの初乳を処理した。比重による初乳の区分は前期用が 184
リットル、中期用が 96 リットル、後期用が 325 リットルだっ
た。これらの初乳を期間中に出生したモデル農家の和牛子牛
35 頭に合計 420 リットル給与した。給与した新生子牛には
母子免疫型ワクチンの移行抗体が確認され、血中 BLV 遺伝
子は検出されず、出荷前子牛も BLV 抗体と血中 BLV 遺伝
子は検出されなかった。本初乳の給与開始後 1 年間の、子牛
の肺炎および腸炎での治療頭数と死亡頭数は給与前よりも減
少し、治療回数(5.5 回 / 頭→ 3.6 回 / 頭)と治療費(9,000
円 / 頭→ 7,280 円 / 頭)は有意に減少した。せり市の出荷時
の日齢体重と kg 単価も前年比で改善した。
4.考察および結語:母子免疫型ワクチンを活用した熱処理
初乳の給与により子牛の生産性向上効果が見られ、併せて、
牛白血病等の経乳感染も防止することができた。今後は、他
の和牛繁殖農家へも活用し、生産性向上と牛白血病の経乳感
染防止に貢献していきたい。
演題番号:B8
早期母子分離農場の黒毛和種子牛におけるアミノ酸製剤の給与効果
○黒岩武信 1)、佐野 努 1)、山城幸夫 1)、平井武久 1)、芝野健一 2)、嵐 泰弘 1)
1)
兵庫県農共連阪神家畜診、2)兵庫県農共連東播家畜診
1.はじめに:低体重の黒毛和種子牛は,正常体重の子牛に
比べ発育不良となることが多く,また,虚弱なため易感染性
で下痢や肺炎に罹患しやすいことから経済的損失が大きい。
今回,低体重で生まれる個体が散見された,管内の黒毛和種
繁殖農場において,出生子牛にアミノ酸製剤を給与し,血液
性状に及ぼす影響および給与後の疾病発生状況について調査
した。
2.材料および方法:供試子牛は,アミノ酸製剤 10g を出
生日から 14 日間経口給与した給与群(2012 年 3 ~ 5 月生,
n=25)と,アミノ酸製剤を給与せず通常飼養した対照群(2011
年 10 月~ 2012 年 2 月生,n=24)の 2 群とした。両群の子
牛は出生後 7 日以内に母子分離し人工哺乳とした。人工乳お
よび水は自由摂取とし,出生後約 3 ヵ月を経過した時点でグ
ループ飼養とした。両群の雄子牛各 9 頭において,出生日,
14 日齢および 30 日齢に採血を行い,血液生化学検査および
血中 IGF-1 濃度を測定した。また,給与群と,前年度の 4 ~
5 月に出生した子牛の病傷カルテから,出生後 3 ヵ月までの
疾病発生状況を調査した。
3. 結 果: 給 与 群 9 頭 と 対 照 群 9 頭 の 血 中 GGT お よ び
ALP 濃度は出生後高値を示した。血中 Glu 濃度は,14 日
齢において給与群が対照群に比べ有意に高値を示したが
(133.6 ± 28.8 vs.105.0 ± 18.3 mg/dL, P<0.05)
,他の項目
に有意な差は認めなかった。血中 IGF-1 濃度は,14 日齢に
おいて給与群が対照群に比べ有意に高値を示した (215.3 ±
115.5 vs.109.9 ± 56.2 ng/ml, P<0.05)。給与群の肺炎罹患率は
40.0%(10/25 頭)で,前年度同一時期に出生した子牛の肺
炎罹患率 75.0%(18/24 頭)より低かった。
4.考察および結語:IGF-1 は,成長ホルモンの支配により
主に肝臓で産生され,
成長促進に関与する重要な因子である。
体重と正の相関が認められおり,特に雄でその相関が強い。
一方,発育不良子牛の血中 IGF-1 濃度は健常牛より有意に低
いことや,発育不良牛の易感染性は免疫能の低下に因ること
が報告されている。今回,早期母子分離飼養下の子牛へのア
ミノ酸給与により,血中 IGF-1 濃度が有意に高値を示し、肺
炎罹患率も低下したことから,アミノ酸給与によって子牛の
成長が促され,健康状態にも影響を及ぼす可能性が示唆され
た。
― 38 ―
演題番号:B9
黒毛和種初産産子の出生体重に関わる要因の検討
○藤巻章郎 1)、梅木俊樹 2)、石井利通 1)、藤田若枝 1)、島田浩明 3)
1)
三重県畜研、2)三重県農水部、3)三重県紀州家保
1.はじめに:近年、黒毛和種牛は肉用種としての改良が進
み、繁殖牛およびその産子も大型化の傾向があるが、初産分
娩に際して過大産子は特に難産の原因となり、一方で低体重
産子は虚弱子牛となる危険性があることから、適正な出生体
重の制御が求められる。そこで初産分娩の適正化を図るため
に、出生体重に関わる要因について検討した。
2.材料および方法:調査には、黒毛和種繁殖雌牛 12 頭とそ
の初産産子 12 頭を用いた。供試牛は連動スタンチョン付き
牛房で群管理にて飼養し、初産の分娩予定2ヵ月前より分娩
前管理を開始した。分娩前管理として、分娩房で単飼し、日
本飼養標準・肉用牛 (2008 年度版 ) の増体日量 0.3kg および
妊娠末期の胎子発育に要する要求量に対して、分娩予定2ヵ
月前から TDN95%、CP100%、また分娩予定1ヵ月前から
TDN100%、CP115% の充足水準となるようチモシー乾草を
7~8kg、自家配合飼料(TDN:68.7、CP:16.8% FM)を
1.5 ~ 2.8kg 各日量とし、給与は分娩予定2ヵ月前から2週
前までは1日2回、分娩予定2週前から分娩までは1日1回
とした。調査項目は、体型審査得点・体重(分娩予定2ヵ月
前、分娩予定1ヵ月前、分娩予定日、分娩直後)
・体重の変動・
初産月齢・在胎日数および産子の出生体重・性別・血統とした。
3.結 果:産子の出生体重は 34.5 ± 4.9kg で性別、血統に
よる差は認めなかった。体型審査得点、体重、初産月齢、在
胎日数と産子の出生体重に相関は認めなかった。分娩前2ヵ
月(分娩予定2ヵ月前から予定日)
、
および分娩前1ヵ月(分
娩予定1ヵ月前から予定日)の増体と産子の出生体重に有意
な正の相関(P<0.01 および P<0.05)があり、分娩前後の体
重変動と産子の出生体重及び分娩前2ヵ月の増体と分娩前後
の体重変動に有意な負の相関 ( いずれも P<0.01) を認め、分
娩前母牛の増体は、誕生子牛自身の増体を反映していた。
4.考察および結語:初産牛の分娩前2ヵ月の増体は産子の
出生体重に大きく関わる要因であり、出生体重の指標となる
ことが示された。一方、同一の分娩前管理下で、増体および
産子の出生体重にばらつきが認められたことは妊娠末期の飼
料効率、余剰飼料摂取量との関係が伺われる。今後も、妊娠
末期の増体の適正・平準化についてはさらなる検討が必要で
ある。
演題番号:B10
肉豚肥育後期飼料へのリジンの上乗せ添加が飼養成績や肉質におよぼす影響
○入江拓也、市川隆久
三重県畜研
1.はじめに:必須アミノ酸の一つであるリジンは、たんぱ
く質合成に重要な役割を果たしているアミノ酸であり、豚の
成長に必要とされる量が含まれるように豚飼料は調整されて
いる。以前我々は、肉豚後期飼料のリジン含有量を通常量以
下(80% 程度)に制限すると、胸最長筋内の脂肪含有量が
増加し、いわゆる霜降りの豚肉が生産されることを明らかに
している。本研究では、肉豚後期飼料中のリジン含有量を増
やすことにより、飼養成績や肉質がどのように変化するかを
調査した。
2.材料および方法:LWD 交雑種の雌を試験区、対照区と
もに 4 頭ずつ、計 8 頭使用した。試験開始体重は約 60kg、
豚房単飼とし、飼料は不断給餌、自由飲水とした。対照区に
は市販の肉豚用配合飼料(TDN 78%、CP 14%、リジン 0.8%)
を給与し、試験区には配合飼料にリジンを 0.4% 上乗せ添加
した飼料を給与した。体重約 110kg でと畜し、生産性飼養
調査や枝肉検査、生産された豚肉の成分分析と肉質理化学検
査を行った。
3.結 果:試験区は対照区と同等の 110kg 到達日数や一日
増体重を示したものの、試験開始からと畜までの 1 頭当たり
の総飼料摂取量は有意に減少し(平均 30kg ↓)、飼料費の
有意な減少(平均 1,000 円↓)も認められた。と畜後の枝肉
重量や脂肪厚は同等であった。
胸最長筋の理化学調査成績は、
多くの調査項目で同等であったが、試験区では胸最長筋の粗
たん白質の割合が有意に増加し(平均 0.5% ↑)
、粗脂肪の割
合が有意に減少した(平均 1.2% ↓)
。また、胸最長筋の筋肉
内脂肪の飽和脂肪酸割合は有意に減少し(平均 3.8% ↓)、筋
肉内脂肪および皮下脂肪内層の多価不飽和脂肪酸の割合は有
意に増加した(平均 1.1% ↑および 1.5% ↑)
。胸最長筋の食
味試験においては、74% の被験者が対照区をおいしいと評
価する結果となった。
4.考察および結語:本研究ではリジンの上乗せ添加により
飼料摂取量の減少が認められたが、暑熱期に飼料中のリジ
ン含有量を増やした場合、暑熱ストレスによる飼料摂取量の
低下が抑えられたという報告もある。飼料中のリジン濃度が
飼料摂取量におよぼす影響については、今後さらに検討する
必要がある。しかしながら本研究の結果より、肉豚後期飼料
へのリジンの上乗せ添加は、給与飼料の削減や特色を持った
豚肉の生産に活用できる簡便な技術である可能性が示唆され
た。
― 39 ―
演題番号:B11
乳牛の血乳症に対するプロジェステロン製剤の投与効果
○濱㟢健太 1)、中川大輔 1)、笹倉春美 2)、山本直史 3)、藤本修司 1)、畠中みどり 1)、橋本宰昌 3)、喜田利明 1)
1)
兵庫県農共連淡路基幹家畜診、2)兵庫県農共連阪神基幹家畜診、3)兵庫県農共連三原診
1.はじめに:今日、食の安心・安全に対する消費者の意識
は高く、それにともない乳業会社では生乳の検査法がより
厳格となっている。乳業会社の中には遠心分離法により血液
が沈殿する生乳を血乳とする会社があり、出荷不可となる個
体が増えていることから農場の経済的損失は大きい。この血
乳症は抗プラスミン製剤による治療では効果がない場合が多
く、その治療法には苦慮している。本研究ではこれら血乳症
に対してプロジェステロン製剤を投与し治療効果を検証し
た。
2.材料および方法:調査期間は 2010 年 1 月から 2012 年 12 月。
調査対象は遠心分離法による血乳検査を行う乳業会社に出荷
している 2 酪農場。調査項目は血乳発症状況 ( 発症頭数・発
症年齢・発症月 )、治癒日数(最終治療日から出荷までの日数)
、
血乳発症牛と健常牛における分娩後 7 日目での血液生化学検
査値。治療法は抗プラスミン製剤の 3 日間投与後も出荷でき
ないものに対して、(1) 無処置あるいは抗プラスミン製剤の
1 ~ 4 日間追加投与 [6 頭 ] (2) 膣内留置型プロジェステロン
製剤 (CIDR: 日局プロゲステロン 1.9g) の投与 [3 頭 ] (3) 持続
性黄体ホルモン製剤 ( ルテウム ®; デポー:ヒドロキシプロ
ゲステロンカプロン酸エステル 100mg 及びプロゲステロン
10mg) の単回投与 [6 頭 ]。
3.結 果:調査期間内に分娩した 274 頭に対して血乳症の
発症頭数は 36 頭(13.1%)であった。血乳発症に年齢差はな
く、4 月、7 月、12 月に多い傾向がみられた。抗プラスミン
製剤の 3 日間投与で治癒しなかったものは 15 頭(血乳症全
体の 41.7%)であった。このうち①の治癒日数は 12 ± 1.9 日
(平均±標準誤差)
、②は 3.7 ± 0.9 日、
③は 4.2 ± 1.2 日であり、
②・③の方法は①に比べて短かった(p < 0.05)。血液検査
の比較では全体的に低タンパク、低血糖、ヘマトクリット値
の低下が認められたものの、血乳症牛と健常牛において有意
差はみられなかった。
4.考察および結語:今回の結果から抗プラスミン製剤の投
与で治癒しない血乳症に対してプロジェステロン製剤の投与
は有効であった。しかし、膣内留置型プロジェステロン製剤
では悪露の影響をうけることが考えられることから、より安
価で、外的要因に影響されない持続性黄体ホルモン製剤の投
与が有用と考えられた。今後は症例数を増やすとともに、こ
の機序の解明につとめたい。
演題番号:B12
粉砕籾米の給与割合の違いが肥育豚の発育および肉質に及ぼす影響
○石川 翔、龍田 健
兵庫県畜技セ
1.はじめに:現在、日本の食料自給率及び飼料自給率は低
迷しており、それらの向上が重要な課題となっている。当セ
ンターでは、肥育豚への飼料用米多給技術の開発を目的とし
て試験を実施しており、昨年は、粉砕玄米および粉砕籾米は
配合飼料中の輸入トウモロコシと 30%代替可能であること
を報告した。本試験では、粉砕籾米についてトウモロコシと
の代替率を最大 100%まで増やして肉豚に給与し、発育、と
体品質、肉質への影響を調査した。
2.材料および方法:試験には肥育後期(体重 70kg-110kg)
の三元交雑豚を用いた。粉砕籾米を配合飼料中のトウモロコ
シと 30、50、100%代替して給与し(配合飼料中の粉砕籾米
の割合は 21、35、70%)、対照区を含め 7 頭ずつ 4 区に分け
て試験を実施した。体重は出荷まで毎週測定し、試験期間中
の日増体量(DG)および飼料要求率を算出した。と体検査
では産肉能力検定法に準じてと体重、と体長、背脂肪厚およ
び格付けなどを調査した。肉質検査では肉色および皮下脂肪
色、保水性、加熱損失率、加熱後の硬さ、皮下脂肪の脂肪酸
組成、ロース肉中の遊離アミノ酸含量などを測定した。また、
粉砕籾米給与による飼料費への影響についても検討した。
3.結 果:各区とも健康状態は良好であった。試験期間中
の DG は各区間に有意差は認められなかったが、飼料摂取量
は粉砕籾米の代替率が高くなるにつれて多くなり、飼料要求
率は粉砕籾米の代替率が高くなるにつれて悪くなる傾向で
あった。と体成績は、いずれの項目も各区間に有意差は認め
られなかった。肉質成績では、100%代替区の皮下脂肪の明
るさ(L* 値)が 30%代替区と対照区に比べて有意に高くな
り、50%代替区の皮下脂肪のオレイン酸割合が 30%代替区
と対照区に比べて有意に高くなった。
試験期間中の飼料費は、
粉砕籾米給与区がいずれの代替率においても対照区を下回っ
た。
4.考察および結語:粉砕籾米はトウモロコシと 100%まで
代替給与しても増体やと体成績に影響は無く、給与により脂
肪の質が向上する可能性が示された。また、粉砕籾米の給与
により飼料要求率は悪くなるが、飼料費は軽減出来る可能性
が示され、
肥育豚における粉砕籾米給与の有用性が示された。
今後は、肥育前期(体重 30kg 〜)から飼料用米を給与して、
長期間の飼料用米の給与が肥育豚に与える影響について調査
し、飼料用米多給技術を確立する。
― 40 ―
演題番号:B13
オレガノ精油の酸化的ストレス反応緩和効果
○出雲章久、安松谷恵子
大阪府環農水総研
1.はじめに:オレガノ精油には、ストレス負荷時の産卵率
低下を緩和する効果が報告されている。本研究では産卵鶏に
おけるオレガノ精油による酸化的ストレス反応の緩和につい
て検討した。
2.材料および方法:78 週齢のボリスブラウンを、28 日間、
オレガノ精油 12.5ppm 添加(+)と非添加(-)の飼料で
飼育し、産卵率が同一の 10 羽× 3 区の試験区をそれぞれ設
定した。試験区の1~ 3 区はオレガノ精油添加(+)
、4 ~ 6
区は無添加(-)とし、1 区と 4 区は人為的ストレス負荷な
しの対照区、2 区と 5 区には拘束ストレスを負荷し、3 区と
6 区には大腸菌細胞壁 LPS を腹腔内に投与(LPS 区)して、
2 × 3 の 2 元配置で 15 日間の試験を行った。試験期間中は、
固体別の産卵と試験区の平均卵重を毎日測定し、5 日ごとに
集計した。飼料摂取量は試験期間を通じて測定した。Day7
と Day14 に鶏卵の卵質を測定し、卵黄の過酸化脂質濃度は、
day-0,1,3,7,14 に測定した。Day1 と Day3 に血液を採取して
生化学検査とα1酸性糖タンパク質(α 1AG)を測定した。
3.結 果:対照区に対して LPS 区、拘束区の順で産卵率が
低下し、どの区でもオレガノ+が−よりも高い産卵率を示し、
対照区では有意差が認められた。平均卵重は産卵率が低下し
た試験区ほど重くなる結果で、産卵日量は、対照区と LPS
区において+と−の間に有意差が認められた。飼料要求率の
差も大きかった。卵質の結果では、ハウユニットと卵黄係数
で一部の試験区間に有意差が見られたが、この結果とオレガ
ノ精油の給与やストレス負荷とは整合性がなく、試験系から
説明することはできなかった。卵黄中の過酸化脂質濃度は、
ストレス負荷によって Day1 〜 Day3 にかけて増加し、Day7
にはほぼ最初の値に戻っていた。この間の変化では、どのス
トレス負荷においてもオレガノ添加−が+よりも高い値で推
移することが多く、LPS 区の day 3、拘束区の Day 1、対
照区の Day3 では有意差が認められた。血漿の生化学検査で
は試験区間に有意差を認めた項目はなかった。血漿α 1AG
はストレス負荷による増加後に、+では減少傾向、−では増
加傾向が見られた。
4.考察および結語:オレガノ精油はストレス負荷時の、産
卵成績の低下と卵黄中の過酸化資質の増加を有意に緩和し
た。
演題番号:B14
牛の乳汁中に認められた数種のプロテアーゼ活性と乳房炎の診断におけるその意義
深瀬 徹
林屋生命研
1.はじめに:乳房炎は牛の臨床においてきわめて重要な疾
病の1つであり、その発生は酪農に甚大な被害をもたらすこ
とがある。乳房炎の診断には様々な方法が開発されているが、
今回の検討では、牛の乳汁中における数種のプロテアーゼ活
性の存在を確認し、乳房炎罹患牛におけるそれらの活性を測
定する意義を検討した。
2.材料および方法:ホルスタイン種の牛から搾乳した後に
遠心分離によって得た脱脂乳を検体とした。酵素活性の測
定は、0.1 M トリス-塩酸緩衝液を用い、pH 7.5 または 8.5、
37 ℃ の 条 件 下 で N- α -benzoyl-DL-arginine-p -nitroanilide
(Bz-Arg-p NA)、H-D-varyl-L-leucyl-L-arginine-p -nitroanilide
(Val-Leu-Arg-p NA)、N-glutaryl-L-phenylalanine-p nitroanilide(Glt-Phe-p NA)、L-leucine-p -nitroanilide(Leup NA)、L-alanine-p -nitroanilide(Ala-p NA)を基質として実
施した。
3.結 果:供試した牛の乳汁中には、Val-Leu-Arg-p NA と
Leu-p NA、Ala-p NA に対する高いアミダーゼ活性が認めら
れ、Val-Leu-Arg-p NA 水解活性の至適 pH は 8.5、Leu-p NA
水解活性および Ala-p NA 水解活性の至適 pH は 7.5 であるこ
とが確認された。これら 3 種の酵素活性の測定を臨床的に健
康と考えられる牛と慢性乳房炎罹患牛および急性乳房炎罹患
牛から得た乳汁について行ったところ、健康な牛ではいずれ
の酵素活性も低値を示したのに対し、慢性乳房炎罹患牛と急
性乳房炎罹患牛では低値から高値まで様々な測定値が得ら
れ、とくに急性乳房炎罹患牛において高い酵素活性が認めら
れた。
4.考察および結語:乳汁中に認められる Val-Leu-Arg-p NA
水解活性と Leu-p NA 水解活性、Ala-p NA 水解活性は、それ
らが低値であった場合に乳房炎を除外する材料とすることは
できないが、高活性を示した場合には乳房炎を疑う材料とす
ることができ、乳房炎のスクリーニング診断に用いることが
できる可能性があると考えられた。
― 41 ―
演題番号:B15
乳用牛の蹄底潰瘍への開放性ウエットドレッシング療法の応用
○井上雅介 1)、泉 弘樹 1)、図師尚子 1)、小田修一 2)、山崎 肇 1)
1)
兵庫県農共連阪神家畜診、2)兵庫県農共連西播家畜診
1.はじめに:乳用牛の肢蹄疾患は、生産性の低下、淘汰率
の増加による経済的損失は甚大であり、なかでも重度の跛行
を呈する蹄底潰瘍が最も重要と考えられている。今回、人医
療の褥創治療に用いられている開放性ウエットドレッシング
療法を蹄底潰瘍治療へ応用し、効果を検討した。
2.材料および方法:
(1)調査期間 2012 年 4 月~ 12 月(2)
調査対象 管内 2 農場で跛行を呈する肢蹄疾患のうち重度の
蹄底潰瘍を認めた 11 頭に実施。(3)蹄底潰瘍治療手技(開
放性ウエットドレッシング療法)ア . 患肢の両側蹄を削蹄。
潰瘍部の遊離角質を除去。蹄底蹄球接合部から蹄球にかけて
の潰瘍ではヒールレスメッソド実施。イ .OTC 可溶散 50% 0.3
g混入白色ワセリン塗布。ウ . 両側蹄を穴あきポリエチレン
袋(台所用水切り袋)で被覆。エ . 潰瘍部に厚手の生理用ナ
プキン装着。オ . ヴェトラップバンデージングテープでテー
ピング後、テーピングテープで脱落予防。カ . 被覆部全体に
蹄病軟膏塗布。
3.結 果:蹄病処置後 2 〜 3 日で 6/11 頭(54.5%)の跛行
が軽減し、5 〜 7 日後には潰瘍部の上皮化を認め、9/11 頭
(81.8%)において患肢の負重良化を認めた。10 〜 14 日後の
潰瘍部は柔らかい角質でほぼ覆われ跛行は消失し全頭治癒し
た。
4.考察および結語:乳用牛の蹄底潰瘍治療に応用した開放
性ウエットドレッシング療法は、蹄底の湿潤環境を保ち、膿
汁や浸出液を患部から排泄させ、さらに牛床の汚染状況から
の二次感染を予防するとともに、厚手の生理用ナプキンの
クッション効果により牛の疼痛を軽減できるため、早期治癒
転帰を認めた。また、本法は患肢の浮揚を目的とした健肢に
対するギプス包帯、蹄底ブロックおよびレジンブロック等の
高度な技術は必要とせず、臨床現場での応用価値の高い有効
な療法であると考える。
演題番号:B16
和歌山県固有種「龍神地鶏
(リュウジンジドリ)」保存の取り組み
○藤原美華 1)、福島 学 1)、岡 孝夫 2)、豊後貴嗣 2)、都築政起 2)
1)
和歌山県畜試養鶏研、2)広大
1.はじめに:龍神地鶏は、1981 年に比較的新しく存在が確
認された本県田辺市龍神村地域固有日本鶏である。しかし、
300 年以上にわたり特定の地域の愛好家により小数の羽数で
飼養され続けてきたため、近親交配・遺伝的多様性の減少が
進み、絶滅が危惧されていることが報告された。平成 24 年
度から、この遺伝学的・学術的に貴重な龍神地鶏を保護し、
恒久的に保存する取組を開始すべく、個体調査、及び遺伝子
再調査に取り組んだ。
2.材料および方法:
(1)現存する龍神地鶏の現況把握の
ため、確認出来た全飼養者を巡回し、個体に対する形態学的
調査、翼帯装着(個体識別用)及び採血を実施。これを元に
個体管理台帳を作成。遺伝的多様性についてマイクロサテラ
イト DNA 多型解析による再調査を実施、結果に基づき交配
計画を策定。(2)純血種を恒久的に保存すべく集中的交配、
危険分散を実施した。
3.結 果:(1)当初、調査確認できたのは和歌山県 4 件
と奈良県 1 件の計 5 件で飼養されている 68 羽のみであった。
本品種の羽装は、基本的には雛及び成鶏とも赤笹(野生型)
類似であった。雛の頭部及び背部には野生型と同様の縦縞が
存在するが、野生型のそれよりも少し暗色であり、頚部横側
に黒色領域を持つ点が野生型雛とは大きく異なっていた。雄
成鶏は、頚羽及び蓑羽毛の羽軸に添って黒色領域を有し、更
に頚羽では、
羽毛先端部に黒斑を有するのが特徴的であった。
雌成鶏は、背・胸・横腹・翼の羽毛に覆輪様の黒色模様が認
められた。特徴は、雄個体の体重は平均1.2Kg 前後、気性
は非常に荒く、攻撃的。雌個体の体重は平均 1.0Kg であり、
気性は雄とは正反対で非常に穏やかであった。また、マイク
ロサテライト DNA 多型解析により前回調査時から大きくは
遺伝的多様性の低下は認められず、また、遺伝的に和歌山系
と奈良系に分類できることが判明した。(2)龍神地鶏の純
粋種保存のため、集中的交配を実施し、平成 24 年 10 月現在
で 232 羽まで増羽。孵化率は平均 53.55% と低く、また、孵
化雛の 7 〜 8 割が雄個体であった(当所調べ)。また、危険
分散として、広島大学へ種卵を提供し、孵化・育成に成功。
4.考察および結語:今後、
策定した交配計画を基に 3 系統(和
歌山系、奈良系、新内種系)を中心に系統造成及び個体数を
確保し、優良個体の選抜を実施する。また今後、広く県民へ
貢献出来る龍神地鶏の活用法を探索していく。 ― 42 ―
演題番号:B17
Candida kefyr による牛の流産発生の 1 例
○小堀実千代 1)、竹馬 工 2)、植原 陽 2)、若原繁樹 1)
1)
三重県中央家保 伊賀支所、2)三重県中央家保
1.はじめに:2012 年 4 月、管内の酪農場において、流産胎子
(胎
齢7ヶ月齢)1頭の病性鑑定を実施。細菌学的検査で胎盤か
ら Streptococcus acidominimus を分離した。また、病理組
織学的検査で酵母様真菌による胎盤炎と診断した。酵母様真
菌を同定した結果、Candida kefyr と同定した。以上から本
症例は Candida kefyr による真菌性流産と診断された。
2.材料および方法:胎齢 7 ヶ月齢の流産胎子 雌 1 頭
と、その母牛の血清を用いた。微生物学検査、病理検査は
常 法 を 用 い 実 施 し、 分 離 真 菌 に つ い て API20CAUX を 用
いた生化学性状検査及び分子生物学的検査として Internal
transcribes spacer(ITS)遺伝子領域を増幅し、ダイレクト
シークエンスを実施し、得られた塩基配列を BLAST により
解析を行った。
3.結 果:胎盤、胎子肺、直腸便、第1胃内容物より酵母
様真菌を検出した。胎盤からは Streptococcus acidominimus
も分離された。病理組織学的検査において、胎盤絨毛膜絨毛
と腹腔内漿膜で壊死部位より、酵母様真菌が認められた。胎
盤組織壊死部でグラム陽性球菌が検出され同一部位において
PAS 染色で真菌が認められ、グラム陽性球菌は組織間隙に
確認されたが、真菌の仮性菌糸は組織内で認められ、組織の
中で真菌が増殖していたことが示唆された。これらの結果よ
り、酵母様真菌が胎盤炎の原因であると特定した。また、生
化学性状検査では本真菌は Candida kefyr と 91.1% の同定確
率を示した。さらに、ITS 遺伝子領域 DNA 塩基配列解析よ
り本真菌の塩基配列は Candida kefyr と 100%の相同性を有
し、これらの結果から Candida kefyr と同定された。
4.考察および結語:Streptococcus acidominimus は胎盤の
みで分離されたが、Candida kefyr は胎盤と胎子両方で分離
されたこと、また Candida kefyr が組織で増殖していた証拠
として仮性菌糸を確認したので、本症例を Candida kefyr に
よる真菌性壊死性胎盤炎と診断した。獣医学領域において本
真菌による流死産の症例報告はほとんどなく、稀な症例であ
ると考えられる。
― 43 ―
平成 25 年度日本産業動物獣医学会(近畿)・
日本獣医公衆衛生学会(近畿)合同
ランチョンセミナー
A 会場(B3 棟 116 号室)
時 間(12:20 〜 13:00)
講 演
牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン
「スパイロバック ®」について
ゾエティス・ジャパン株式会社
林 忠嗣
座 長
大阪府立大学大学院 獣医微生物学教室
田島 朋子
協賛:ゾエティス・ジャパン株式会社
当セミナーには、弁当がつきます(先着 70 名)
― 45 ―
牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン「スパイロバック®」について
ゾエティス・ジャパン㈱ キャトルビジネス統括部
牛用レプトスピラ病不活化ワクチン「スパイロバック®」の上市に伴い、レプトスピラ症の基
礎知識そして特に血清型ハージョが牛に及ぼす経済的影響について解説する。
【病原体】
レプトスピラはスピロヘータ目に属するグラム陰性・らせん状菌であり、人や動物に対して
病原性を示す病原性レプトスピラは 250 種以上の血清型に分類される。本菌は乾燥・酸に弱く、
淡水中や湿った土壌中では長期間に渡り生存が可能となる。感染動物は、特定の血清型を長期
に渡って腎臓に保有する動物(維持宿主)と、様々な血清型に偶発的に感染して急性症状を呈
する動物(偶発宿主)に分類される。主たる感染源は尿であり、尿や尿に汚染された水、土壌、
敷きわら等と接触することで、表皮・粘膜を通じて感染する。
【牛のレプトスピラ症】
牛は血清型ハージョの維持宿主である。血清型ハージョによる維持宿主感染では、ほとんど
の場合症状を示さないものの、胚死滅、流死産、虚弱子などの繁殖障害を引き起こし、特に妊
娠Ⅰ期の胚死滅や流産等が経済的に影響することになる。また、血清型ハージョの抗体陽性牛
は陰性牛に比べて、空胎日数が長く、受胎までの人工授精回数が多いという報告もあり、総じ
て受胎あるいは受胎率への負の影響が示唆されている。
2002 年に酪農大の菊池らがバルク乳を用いて全国約 250 戸の酪農場にて血清型ハージョの抗
体調査を実施した結果、30%以上の農場が陽性を示し、国内において広く浸潤していることが
明らかとなっている。
【人のレプトスピラ症】
人の症状は風邪様の軽症から黄疸・出血・腎不全を伴う重症型まで多彩である。国内におい
て家畜が原因となった人の感染例はないが、海外では畜産従事者の職業病のひとつとして認識
されており、オーストラリアでは全患者の 23%、ニュージーランドでは 80% 以上が家畜の生産
者や食肉加工従事者であるとの報告がある。
【感染予防ワクチン「スパイロバック®」
】
血清型ハージョを含有抗原とし、感染予防を実現させたことで、牛に対しては受胎率低下の
防止・維持そして従事者へは伝播阻止という 2 つの有用性を併せ持つ国内初となる感染予防ワ
クチンである。海外では既に 23 ヵ国以上で使用され、有用性が確認されている。
― 47 ―
平成 25 年度 日本小動物獣医学会(近畿)プログラム
C会場(B3棟 117 号室)
①開 会 の 辞 (近畿地区副学会長挨拶)
②一 般 講 演 (午前の部)
③ランチョンセミナー
④一 般 講 演 (午後の部)
⑤日本小動物獣医学会学会長挨拶
(8:50 〜 9:00)
(9:00 〜 11:50)
(12:10 〜 13:00)
(13:20 〜 14:30)
(14:30 〜 14:50)
D会場(B3棟 118 号室)
①開 会 の 辞 (近畿地区学会長挨拶)
(8:50 〜 9:00)
②一 般 講 演 (午前の部)
(9:00 〜 11:50)
(12:10
〜 13:00)
③ランチョンセミナー (C 会場 B3棟 117 号室)
④一 般 講 演 (午後の部)
(13:20 〜 14:30)
⑤日本小動物獣医学会学会長挨拶(C 会場 B3棟 117 号室)(14:30 〜 14:50)
E会場(B3棟 202 号室)
教育講演1
教育講演2
(10:20 〜 11:50)
(13:20 〜 14:30)
O 会場(学術交流会館 多目的ホール
⑥閉 会 の 辞 (褒賞演題公表)
(17:00)
談話会会場(P 会場・学術交流会館 サロン)
⑦談 話 会
(17:30 〜 19:00)
須藤 和信
No.C1 〜 No.C16
No.C17 〜 No.C23
大橋 文人
No.D1 〜 No.D16
No.D17 〜 No.D23
大橋 文人
…………………………………………………………………………………………………………
審 査 委 員(○:会場審査会委員長)
C 会 場
D 会 場
宮 豊(兵庫県)
佐 伯 潤(大阪府)
助 川 剛(京都府)
近 棟 稔 哉(滋賀県)
矢 倉 守巳男(和歌山県)
○笹 井 和 美(大阪府大)
○関 口 弘 之(三重県)
田 中 宏(奈良県)
宇 根 智(大阪市)
井 本 昌 司(神戸市)
岩 田 法 親(京都市)
藤 本 由 香(大阪府大)
……………………………………………………………………………………………………………
1.小動物獣医学会(近畿)審査委員会会議 8:10 〜 8:40
会場:B3 棟 209 号室(審査委員兼幹事会議室)
2.小動物獣医学会(近畿)幹事会会議 12:10 〜 12:40
会場:B3 棟 209 号室(審査委員兼幹事会議室)
昼食を用意しております。
3.獣医学術近畿地区学会合同幹事会会議 12:40 〜 13:10
会場:B3 棟 205 号室
4.審査委員会 14:30(一般講演終了直後)〜
会場:B3 棟 209 号室(審査委員兼幹事会議室)
― 49 ―
日本小動物獣医学会(近畿)一般講演プログラム
C会場 (B3棟 117 号室)
―午前の部―
(演題番号 C1 〜 C16)
8:50 〜 9:00
開会の辞
近畿地区副学会長挨拶
9:00 〜 9:40
座長 山下 拡(京都市)
C1
ミニチュアダックスフンドの椎間板ヘルニアにおける逸脱物質にみる 10 年間の変化 米地 謙介(奈良県)
C2
Corynebacterium urealyticum による尿路感染症により高アンモニア血症を来した犬の 1 例梅下 雄介(兵庫県)
C3
猫の前十字靭帯および内側側副靭帯断裂の一例
C4
ミニチュアダックスフンドにおける毛色と眼底色素の関連性に関しての検討今本 成樹(奈良県)
9:40 〜 10:20
C5
低血糖を呈した腎細胞癌の犬の 1 例
大東 勇介(大阪府)
C6
消化管内異物症例における CT 検査の有用性
山本 竜平(大阪府)
C7
大腿骨に発生した血管肉腫の 2 症例
吉田 祐樹(大阪府)
C8
膵疾患関連性結節性皮下脂肪織炎の犬の 1 例
高瀬 奈美(兵庫県)
10:30 〜 11:10
C9
キサンチン尿石症の猫の1例
北中 千昭(京都市)
C10 当院における各種細菌感染症の原因菌と薬剤感受性試験結果
佐伯 潤(大阪府)
佐々木隆博(大阪府)
座長 南 信子(滋賀県)
座長 薮添 賢二(和歌山県)
C11 三重県獣医師会に保管された7年間のレプトスピラの凝集抗体検査結果の考察 春日佐和子(三重県)
C12 膀胱移行上皮癌に対し遊離回腸を用いて新膀胱造設術を行った犬の1例
清水 誠司(京都府)
座長 織 順一(大阪府)
11:10 〜 11:50
C13 大型犬に認められた軸椎の形態異常を伴う環軸亜脱臼の 1 例
王寺 隆(大阪市)
C14 難治性の免疫介在性血小板減少症の犬の 1 例
大前 省吾(三重県)
C15 犬のてんかん症 73 例における病因と長期的帰結
廣瀬 瑤子(兵庫県)
C16 京都府南部の一地域に生息する野良猫における寄生虫の感染状況
中村有加里(京都府)
12:10 〜 13:00
ランチョンセミナー
座長 藤本 由香(大阪府大)
「経営の観点から見た猫の医療市場」
木甲斐守正(メリアル・ジャパン㈱)
協賛:メリアル・ジャパン株式会社
― 51 ―
―午後の部―
(演題番号 C17 〜 C23)
座長 杉村 肇(兵庫県)
13:20 〜 14:00
C17 下垂体・副腎ともに異常を認めたクッシング症候群の犬の 1 例
人見 誠(京都市)
C18 急性骨髄単球性白血病の犬の一例
鍋谷 知代(大阪府大)
C19 積極的な外科手術と分子標的薬で治療するも予後不良であった、犬の肥満細胞腫の 2 例
水谷 到(三重県)
C20 CD20 陽性表皮向性 T 細胞リンパ腫の犬の 1 例
東 一志(滋賀県)
座長 須藤 和信(三重県)
14:00 〜 14:30
C21 網膜剥離の予後に関する調査
小山 博美(大阪市)
C22 常同障害の診断と治療における行動療法の有用性
安田 行子(京都府)
C23 脾臓の変形により食後に異常行動を示した犬の1例
児玉 竜成(大阪府)
14:30 〜 14:50
日本小動物獣医学会 学会長挨拶
「日本獣医師会学会の今後のあり方と獣医学術地区学会との連携について」
15:00 〜 17:00
大会(学術交流会館 多目的ホール)
17:00 〜 17:30
褒賞発表および閉会の辞(学術交流会館 多目的ホール)
― 52 ―
各学会長
D会場 (B3棟 118 号室)
―午前の部―
(演題番号 D1 〜 D16)
8:50 〜 9:00
開会の辞
9:00 〜 9:40
D1
犬の脾臓血管肉腫の多時相造影CT所見
山城 徳之(大阪府)
D2
小型犬の頚部脊髄疾患における動的病変を持つ症例の特徴に関する検討
田中 宏(奈良県)
D3
G シェパードの膵外分泌不全とリンパ球性プラズマ細胞性腸炎を
村田 裕史(京都市)
近畿地区学会長挨拶
座長 米富 大祐(兵庫県)
伴った肛門周囲瘻におけるレーザー治療の 1 例
D4
蛇による咬傷で壊死し始めた患肢に対してフォトバイオモジュレーションを行った猫の1例 山田 優樹(大阪府)
9:40 〜 10:20
D5
肉芽腫性病変組織を用いた RT 〜 PCR により非滲出型猫伝染性腹膜炎と診断し得た猫の 1 例 築澤 寿栄(兵庫県)
D6
排便困難仔猫への人工肛門術 ・術式と術後ケアに関する検討
矢田 敦(三重県)
D7
カスタムメード型チタン製デバイスを用いて治療をおこなった単純性骨のう胞の犬の一例
野尻 紋美(大阪府)
D8
猫の骨端部複雑骨折に対する整復固定
織 順一(大阪府)
10:30 〜 11:10
D9
変性性脊髄症の病中期・前半で突然死し,脊髄病変を調査した犬の1例
石堂 真司(京都市)
D10 腸リンパ管拡張症と診断した犬3例における超音波検査の有用性の検討
今西 貴久(三重県)
D11 神経学的に腰髄病変が疑われた髄膜脳脊髄炎のイヌの1例
松永 大道(京都府)
D12 放射線治療と外科治療を行った鼻腔内軟骨肉腫の 2 例
田戸 雅樹(大阪市)
座長 川田 睦(大阪市)
座長 井尻 篤木(滋賀県)
座長 石田 正弘(三重県)
11:10 〜 11:50
D13 くしゃみ、鼻汁など上部気道症状が認められ全身麻酔下で検査を行った犬 22 症例
鈴木 敏之(滋賀県)
D14 ヒトの食品交換表を利用したイヌ、ネコの糖尿病の手作り食の検討 清水いと世(兵庫県)
D15 前十字靭帯断裂の続発が疑われた頸部椎間板ヘルニアの犬の 1 例
中本 裕也(京都府)
D16 頭部捻転斜頚、眼球震盪などの小脳前庭疾患を発症した犬の MRI 検査結果の検討
大道 嘉広(兵庫県)
座長 藤本 由香(大阪府大)
12:10 〜 13:00
ランチョンセミナー(C 会場:B3棟 117 号室)
「経営の観点から見た猫の医療市場」
木甲斐守正(メリアル・ジャパン㈱)
協賛:メリアル・ジャパン株式会社
― 53 ―
―午後の部―
(演題番号 D17 〜 D23)
座長 長谷 晃輔(京都市)
13:20 〜 14:00
D17 胸腰部椎間板ヘルニアの CT 画像上の特徴と神経学的重症度および予後との関連性
中西 稚菜(京都府)
D18 伴侶犬用の歩行補助器具の開発
三重慧一郎(大阪府大)
D19 磁気共鳴画像(MRI)にて孔脳症と診断した 2 例
武藤 陽信(三重県)
D20 硬膜内に逸脱していた腰部椎間板ヘルニアの犬の 2 例
黒川 晶平(大阪府)
座長 本田 善久(大阪市)
14:00 〜 14:30
D21 フィプロニルの滴下投与用液剤を投与した猫から脱落した
深瀬 徹(京都府)
被毛はネコノミに対する殺虫効果を発現する
D22 犬における皮膚糸状菌症に関連した化膿性肉芽腫性皮膚炎の 1 例
中田 美央(兵庫県)
D23 猫伝染性腹膜炎被疑症例の腹水からの猫コロナウイルス RNA の検出
相馬 武久(大阪府)
14:30 〜 14:50
日本小動物獣医学会 学会長挨拶 (C 会場:B3棟 117 号室)
「日本獣医師会学会の今後のあり方と獣医学術地区学会との連携について」
15:00 〜 17:00
大会(学術交流会館 多目的ホール)
17:00 〜 17:30
褒賞発表および閉会の辞(学術交流会館 多目的ホール)
― 54 ―
各学会長
演題番号:C1
ミニチュアダックスフンドの椎間板ヘルニアにおける逸脱物質にみる 10 年間の変化
○米地謙介、米地若菜
アサヒペットクリニック本院
1.はじめに:椎間板ヘルニア症例の術前診断に X 線 CT(以
下;CT)を利用すると、ヘルニア部の逸脱物質が変性し骨
に近い高 CT 値で描出されている症例を多く経験する。2003
年に本学会で池田ら(ネオベッツ CT センター)は 63 例の
ミニチュアダックスフンド(以下;MD)の椎間板ヘルニア
症例中 49 例(95%)で逸脱物質の顕著な変性が認め脊髄造
影が不要であったと報告しており、他犬種との大きな違いで
あることを指摘している。今回我々は同様の調査を行い 10
年前と比較した。
2.材料および方法:2008 年から 2012 年までの 5 年間でア
サヒペットクリニック本院(以下;当院)に来院し、CT
撮影および手術所見において椎間板ヘルニアと診断された
MD137 例。当院の CT 診断はネオベッツ CT センターの方
法と同様、画像上逸脱物質が骨様の高 CT 値で明瞭に識別で
きた症例には脊髄造影を行っていないが画像上明瞭に逸脱物
質を識別できなかった場合には脊髄造影(CT-M)を行って
いる。
3. 結 果: 137 症 例 中、 逸 脱 物 質 の 顕 著 な 変 性 を 認 め
CT-M が不要であった症例は 58 症例(42%)、変性が少なく
CT-M を必要としたのは 79 症例(58%)であった。
4.考察および結語:10 年前の報告では、MD の椎間板ヘル
ニアにおいては 95%で CT-M なしで診断できていたのに対
し、今回の調査でのその割合は 42% と大幅に減少していた。
過去、MD の椎間板ヘルニアでは CT-M なしで診断できる
という認識があったが現在では脊髄造影が必要である割合の
方が多くなっており現場の認識を改めなくてはならない。 2003 年報告時演者はネオベッツ CT センターに属してお
り椎間板ヘルニアの CT 診断方法自体に現在と大きな変化は
無い。それゆえ評価方法によってこのような大きな差異が出
たとは考え難い。CT-M なしで診断できうる逸脱物質という
のは、硬化や石灰化を伴い軟骨様に変性した髄核であると推
測される。髄核が重度に変性した椎間板は椎間板ヘルニアを
発症しやすいと言われており、生体として好ましい形質では
ない。CT-M なしで診断できた症例の割合が激減したという
のはこの 10 年間で MD の形質が好ましい方向へと変わった
からなのかもしれない。
演題番号:C2
Corynebacterium urealyticum による尿路感染症により高アンモニア血症を来した犬の 1 例
○梅下雄介、中田美央、築澤寿栄、高瀬奈美、舛方祐子、安田和雄
安田動物病院
1.はじめに:犬において、意識障害の鑑別時に、高アンモ
ニア血症は重要な原因病態の一つである。高アンモニア血症
の原因として、肝機能不全、腸内細菌の異常増殖などが挙げ
られるが、尿路感染症が原因で高アンモニア血症を来した例
は、犬においてほとんど報告されていない。今回、我々は、
Corynebacterium urealyticum による尿路感染症を原因とし
て高アンモニア血症を起こし、意識障害を来したと考えられ
る症例を経験したので報告する。
2.材料および方法:10 歳齢、去勢雄、後駆不全麻痺のパグ
で、膀胱結石による尿路閉塞と痙攣発作が認められた。血液
検査では高窒素血症 (BUN135.7mg/dL、Cre3.2mg/dL)、総
白血球数の増加 (50,400/μL)、高 K 血症 (7.9mEq/L)、高アン
モニア血症 (170μg/dL) が認められた。腹部超音波検査では、
膀胱頸部に 2cm 大の結石が陥頓していた。肝臓や消化管に
異常は認められなかった。閉塞解除後のカテーテル採尿にて、
アンモニア臭を呈する膿性の血尿が採取され、赤血球、白血
球、およびグラム陽性桿菌が検出された。
3.結 果:第 1 病日より、フルモキセフナトリウム (20mg/
kg tid)、インスリンおよびグルコースの静脈内点滴、ラクツ
ロース浣腸と膀胱洗浄を実施した。第 2 病日には高カリウム
血症は改善傾向を示したが、ラクツロース浣腸には反応せず
高アンモニア血症は悪化し(315μg/dL)、昏睡状態が続い
た。浣腸を中止し膀胱洗浄を継続した結果、第 3 病日より高
アンモニア血症が改善傾向を示す
(146μg/dL)
とともに徐々
に意識レベルが改善し、尿のアンモニア臭は減少した。第 4
病日には血中アンモニア濃度が正常化し自力摂食可能となっ
た。尿中の桿菌は強いウレアーゼ活性を持つ C.urealyticum
と同定された。以上の所見から、尿路感染による高アンモニ
ア血症と診断した。
4.考察および結語:本症例ではウレアーゼ産生菌である
C.urealyticum が尿路で増殖することにより尿中でアンモニ
アが産生され、
これに排尿困難による尿停留が加わったため、
アンモニアが膀胱静脈叢から吸収され、
直接大循環へ移行し、
高アンモニア血症を来したものと考えられた。今後、高アン
モニア血症の原因として、閉塞性尿路感染症を鑑別診断に入
れる必要があると考えられた。
― 55 ―
演題番号:C3
猫の前十字靭帯および内側側副靭帯断裂の一例
○佐々木隆博、児玉竜成、織 順一
おり動物病院
1.はじめに:前十字靭帯断裂(以下 CCR)は外傷や加齢に
よる靭帯の慢性的な変性や強度の低下により生じる。また、
内側側副靭帯断裂(以下 ACR)は単独損傷はまれで、多く
は膝関節における継続性の損傷に伴って起きる。いずれの場
合も犬では一般的に認められるが、猫では非常に稀で治療法
は保存療法から外科的整復術まで様々で、画一化された治療
法は見出されていない。今回、我々は CCR と ACR を伴う
猫に遭遇し外科的整復術により良好な経過を得たので考察し
た。
2.材料および方法:症例は雑種猫、避妊雌、7 歳齢、体重 5.3kg。
後肢の起立、歩行困難を主訴に来院。身体検査で右膝関節ド
ロアーサインおよび脛骨圧迫試験陽性。また、外反圧力検査
で著しい外反不安定を認めた。心音、股動脈は正常で、後肢
冷感は認められず。レントゲン検査では、ラテラル像で右膝
関節内に遊離骨病変が、外反ストレス撮影で大腿骨内側上顆
と脛骨の外旋が確認された。以上より CCR および ACR と
診断し、外科的整復術を実施した。手術は右膝関節内側関節
包を切開し、断裂した前十字靭帯の損傷部をできる限り切除、
外側支帯鱗状重層術変法(MRIT)による関節外固定術を行っ
た。次いで、大腿骨内側上顆と脛骨内側顆を露出、それぞれ
骨スクリューを挿入し、
ポリアミド非吸収性縫合糸
(ベタフィ
ル)を 8 の字に掛けて固定し、常法に従い閉鎖した。術後は
患肢をロバートジョーンズ包帯による固定を行い、抗生物質
の投与を行った。
3.結 果:術後 23 日目に包帯を除去、
抜糸を行った。その際、
ドロアーサインおよび脛骨圧迫試験陰性、外反圧力検査にお
いても不安定は認められなかった。術後 40 日目には正常歩
行で負重もしっかりしており、レントゲン検査で関節症等の
異常所見は認められなかった。
4.考察および結語:猫の CCR や ACR は非常に珍しく、今
回の症例では、
前十字靭帯と内側側副靭帯の複合断裂のため、
保存療法では半月板損傷や断裂靭帯の二次的変化による関節
障害を発症する可能性が高いと考えられたため、外科的整復
術を行った。それにより、良好な機能回復が得られたことか
ら整復術は早期に行うことが重要であると考えられた。また、
他の手術法として犬では TPLO や TTA などが多数報告さ
れているが、猫ではほとんど報告されておらずそれらと今回
の手術方法の長期的な術後経過を比較はされていないことか
ら、今後検討する必要があると考えられた。
演題番号:C4
ミニチュアダックスフンドにおける毛色と眼底色素の関連性に関しての検討
○今本成樹 1)、今本三香子 2)
1)
新庄動物病院、大阪府大・細胞病態、2)新庄動物病院
1.はじめに:イヌにおいて、毛色に関与する遺伝子は、10
種類が知られているが、まだこれ以上に関連する遺伝子があ
る可能性も否定はできない。その中の一つであるチロシナー
ゼ関連タンパク質 1(以下:TYRP1 :Tyrosinase Related
Protein 1)は、ヒトにおいては TYRP1 遺伝子によってコー
ド化される酵素である。イヌにおける TYRP1 関連遺伝子は、
11 番染色体のエキソン 7 における単一塩基多型(SNP)に
より、黒色の被毛を希釈し茶色の被毛に変えることが知られ
ている。ミニチュアダックスフンドにおいては、黒色の被毛
を希釈し、チョコレート色となる。ヒトにおいては、皮膚、
毛髪、眼における網膜のメラニン色素欠如があり、眼皮膚白
皮 症(oculocutaneous albinism ;OCA) が、TYRP-1 遺 伝
子の変異により発症する。ヒトにおいては、瞳は赤く見え、
まぶしさを訴えることもあり、時に眼振を呈することもある。
しかし、イヌではヒトと同様の遺伝子変異により引き起こさ
れる網膜における色素希釈があるにもかかわらず、色素関連
性の疾患が知られていない。
2.材料および方法:7 ヶ月齢から 16 歳齢の合計 85 頭のミ
ニチュアダックスフンドにおいて、眼底を観察した。本研究
に使用した LHMD は、外観上及および血統書上から以下 14
種類の毛色に分けられた。
3.結 果:ダップルと呼ばれる毛色の個体群においては眼
底が単一色となり観察された。チョコレート色の個体群にお
いては、眼底における色素が他の毛色群と比較し希釈されて
いることが確認された。
4.考察および結語:脊椎動物においては、胚発生の初期の
神経胚の時に胴体部の神経冠から色素細胞の前駆体である色
素芽細胞が背側から体側外周部を移動してくる。また眼の色
素上皮細胞は、その起源は神経冠であるために、目における
色素は、毛色関連遺伝子の影響を受けることもあると考えら
れる。今回、ミニチュアダックスフンドにおいて、毛色に関
連している TYRP1 関連遺伝子により作られるチョコレート
の被毛を呈しているミニチュアダックスフンドは、毛色がそ
の影響を受けているのみならず、網膜にもその影響を受けて
いる可能性が示唆される結果となった。今後、被毛色素と癌
化疾患の関連性についての研究が進むことを期待したい。
― 56 ―
演題番号:C5
低血糖を呈した腎細胞癌の犬の 1 例
大東勇介
おおひがし動物病院
1.はじめに:小動物臨床において、腫瘍随伴症候群として
の低血糖は主に膵臓β細胞腫瘍により発生する。しかし、腹
腔内巨大腫瘍や肝腫瘍による糖新生の低下、インスリン様成
長因子 - Ⅱ (IGF- Ⅱ ) 産生腫瘍においてもみられることがあ
る。今回、低血糖を伴う腎臓腫瘍を治療する機会を得たので、
その治療経過について検討した。
2.材料および方法:雑種犬、11 歳、避妊雌。3 日前から後
肢に力が入らずふらついており、初診日に 5 回の強直性痙攣
があったという主訴で来院。初診時の意識レベルはやや低下
していた。腹部触診で左上腹部に拳大の腹腔内腫瘤を触知。
血液検査において低血糖が認められ、X 線検査、超音波検査
において左腎臓の腫瘤、右肺後葉の腫瘤が認められた。
3.結 果:入院下にて 5%糖液の静脈内点滴投与、デキサ
メサゾンの投与を行った。しかし、夜間に数回の発作が起こ
り低血糖も持続した。10%糖液の静脈内点滴投与を行ったと
ころ血糖値は安定した。入院翌日、腹部正中切開により左腎
臓を腫瘤とともに切除した。肉眼的には腹腔内への転移は認
められなかった。閉腹直後に測定した血糖値は高値であった
ため、肺腫瘤の摘出は行わなかった。病理組織検査では腎細
胞癌であった。術後も血糖値は安定していたが沈鬱状態が続
いた。術後 5 日目には食欲は改善したが、飼い主への反応は
乏しかった。術前に測定した血清インスリン濃度は 0.25ng/
ml であった。術後 37 日目に痙攣の再発により来院した。低
血糖がみられ、超音波検査により肝臓に複数の結節病変が認
められた。飼い主の希望により積極的な治療は行わず、術後
45 日目に自宅で死亡した。
4.考察および結語:本症例の低血糖の原因は腫瘍の場所、
低血糖時の血清インスリン濃度の低値、腎腫瘍切除後の速や
かな血糖値の回復などの状況から考えると IGF- Ⅱによるも
のが最も疑わしいが確定診断には至っていない。IGF- Ⅱの
確定診断には血清 IGF- Ⅱ濃度の測定もしくは病理組織の免
疫染色が必要となるが我が国では一般的に行うことができな
いため、測定系が確立されることが待たれる。本症例はステ
ロイドや等張糖液の静脈内点滴などの内科治療では血糖値の
コントロールができなかった。過去に報告された非β細胞腫
瘍の低血糖の症例では糖液の輸液により低血糖症状は改善し
ており、本症例との相違がみられた。IGF- Ⅱの診断が困難
である以上、IGF- Ⅱ産生腫瘍が疑われる症例に対しては積
極的に手術を行うべきと思われた。
演題番号:C6
消化管内異物症例における CT 検査の有用性
○山本竜平、嶋崎 等、山城徳之、黒川晶平
千里桃山台動物病院・大阪府
1.はじめに:消化管内異物は日常の診療で比較的多く遭遇
する疾患である。その診断法としては、身体検査に加え、単
純レントゲン検査、消化管造影検査、エコー検査、内視鏡検
査などが挙げられる。これら複数の検査を実施した上で診断
を下すことが多い消化管内異物であるが、今回我々は CT 検
査を用いて消化管内異物と診断した症例を回顧的に検証し、
消化管内異物症例における CT 検査の有用性を検討した。
2.材料および方法:2007 年~ 2013 年に当院を受診し、CT
検査を実施して消化管内異物と診断した犬および猫。一部の
症例では CT 検査の 30 分前に 3 ~ 5%に希釈したガストロ
グラフィン ®を体重 1kg あたり 2ml 経口投与し、消化管造
影 CT 検査を実施した。CT 装置は 4 列ヘリカル CT 撮影装
置を使用した。
3.結 果:全ての症例において、CT 検査にて消化管内異
物の存在部位が確認可能であった。異物の存在部位は、食道
内、胃内、十二指腸内(胃内から連続しているものも含む)
、
空腸〜回腸内、結腸〜直腸内であった。異物の種類は、ゴム
類、食物(種、トウモロコシの芯など)、紐状物、プラスチッ
ク類、繊維物(毛玉、化粧品のパフ、スポンジなど)であっ
た。消化管造影 CT 検査を実施した症例では、X 線透過性異
物が存在する場合も、造影剤により異物の輪郭が描出される
ことで異物の存在が容易に確認可能となった。他の検査では
可視的に確認が困難な紐状物の場合でも、胃・腸管内に連続
する X 線不透過物や液体内の X 線透過物を確認したり、胃・
腸管内の液体貯留やガス貯留から、紐状物を疑うことが可能
であった。また、異物による閉塞の有無は、胃・腸管内の液
体貯留やガス貯留の有無を確認することで確認可能であり、
かつ消化管造影 CT 検査を実施した症例では造影剤の停留の
有無を確認することによってより確認が容易となった。
4.考察および結語:CT 検査によって、X 線透過性物を含
めて、消化管内異物の存在部位、またはその可能性を確認す
ることが可能であった。そのことにより、異物摘出のための
内視鏡検査や開腹手術の必要性、またそのプランニングを
スムーズに行うことが可能であった。消化管造影 CT 検査を
用いた場合は、異物の存在や閉塞の有無の診断がより容易と
なった。腹水の有無や消化管穿孔の有無を含め、消化管以外
の組織評価も同時に実施できる点も CT 検査の利点と考えら
れた。このように、消化管内異物症例において CT 検査は有
用であると考えられた。
― 57 ―
演題番号:C7
大腿骨に発生した血管肉腫の 2 症例
○吉田祐樹、岩橋孝泰、鈴來佑介、谷口雄輔、駒井仁史、松岡 聡
まつおか動物病院
1.はじめに:骨に発生する血管肉腫はまれで全骨腫瘍中 5%
未満であると言われている。転移性が高い腫瘍で診断後6ヶ
月以内に転移が認められることが多く、また全身に多発して
いる状態で発見されることもある。手術による完全切除が可
能であっても予後は悪く、1 年生存率は 10%未満である。今
回、大腿骨に血管肉腫が発生した 2 症例に遭遇したので報告
する。
2.材料および方法:症例 1:15 才の雑種、オス、既往歴は
特になし。右大腿骨頚部骨融解および病的骨折を疑い、近医
より紹介来院された。症例 2:1 才 8 ヶ月のラブラドールレ
トリーバー、メス、既往歴は特になし。前日からの左後肢跛
行を主訴に来院された。触診で左大腿部の遠位で軟部組織腫
脹および圧痛が認められた。
3.結 果:症例 1:身体検査で右後肢挙上および浮腫が認
められ、X 線 CT 検査を行なったところ、大腿骨骨幹部から
骨頚部にかけて骨融解像が認められた。FNA では有意な細
胞は採取できなかったが、画像検査所見から腫瘍性病変を疑
い、第 3 病日、股関節離断による右後肢断脚術を行なった。
病理組織診断は血管肉腫であった。第 19 病日よりドキソル
ビシンによる化学療法を行なったが、第 138 病日、肺転移が
認められ、第 166 病日に死亡した。症例 2:レントゲン検査
で左大腿骨遠位に軽度骨融解像、骨膜反応が認められた。鎮
静下でバイオプシーを行なったが、病理組織検査結果は線維
性骨膜炎であった。その後、症状は改善したが、レントゲン
検査所見は変化が認められなかった。そこで第 135 病日、鎮
静下で再度バイオプシーを実施したところ結果は骨肉腫で
あった。第 163 病日、
股関節離断による左後肢断脚術を行なっ
たところ、病理検査結果は血管肉腫であった。第 182 病日よ
りドキソルビシン、シクロフォスファミドを用いた化学療法
を行なった。第 310 病日を経過した現在も生存中である。
4.考察および結語:症例1はレントゲン検査で明らかな骨
破壊像が認められ、
容易に腫瘍性変化を疑うことが出来たが、
症例 2 は診断まで 5 ヶ月あまりを要した。これは2回目のバ
イオプシーを実施するのが遅れたためである。骨の生検では
正確に結果がでない場合があるため、総合的に診断を下す必
要があるが、今回は骨破壊像が軽度で進行が遅く症状も明ら
かではなかったため、
診断に苦慮した。
腫瘍の攻撃性が低かっ
たため、このような経過を辿ったと考えられるのであれば、
長期にわたる生存が期待できるのかもしれない。
演題番号:C8
膵疾患関連性結節性皮下脂肪織炎の犬の 1 例
○高瀬奈美、中田美央、梅下雄介、築澤寿栄、舛方祐子、安田和雄
安田動物病院
1.はじめに:膵疾患関連性結節性皮下脂肪織炎は、血中に
逸脱した高濃度の膵酵素が血管から漏出して皮下脂肪の炎
症性変化や脂肪壊死を引き起こすものと考えられている。し
かしながら、イヌにおける報告例が少ないために、発症機序
や病態、ならびに臨床像は不明な点が多い。今回、膵炎の治
療中に結節性皮下脂肪織炎を呈した症例の臨床経過を調査し
た。
2.材料および方法:症例は 11 歳齢、去勢雄の柴犬で、10
日前からの食欲不振と前日からの嘔吐を主訴に来院した。血
液生化学検査でリパーゼ(LIP)活性(472U/L)および膵
特異的リパーゼ(996μg/L)の高値、ならびに CRP の上昇
(5.1mg/dL)を認めた。腹部超音波検査では、膵臓の低エ
コー源性と膵周囲の高エコー源性が観察された。以上の所見
から急性膵炎と診断した。また第 17 病日には BUN74.9mg/
dL、Cre3.2mg/dL と腎機能障害も認められた。第 46 病日に
左臀部の皮下組織に直径約 5cm の結節が出現し、皮膚に形
成された瘻孔潰瘍部から黄色の油性ゼリー状の排液が認めら
れた。排液の細菌培養は好気・嫌気ともに陰性であり、皮膚
の病理組織学的検査でも真菌や微生物は確認されず、皮下脂
肪組織の壊死と鹸化による弱好塩基性無構造物や、好中球や
マクロファージの浸潤が観察されたため、膵疾患関連性皮下
脂肪織炎と診断した。
3.結 果:第 48 病日より排液が減少し、第 52 病日には結
節も消失した。その後も LIP 酵素活性は高値を推移してい
たため、第 75 病日に膵臓の超音波検査を再度行ったところ、
膵臓の低エコー源性と腫脹ならびに膵周囲の高エコー源性が
依然として観察され、膵炎が持続していると考えられた。第
78 病日に LIP 活性が 14,080U/L を示した際、腹部皮下組織
に複数の結節が再び出現したが、351U/L まで低下した第 84
病日に結節は消失した。
4.考察および結語:膵疾患関連性皮下脂肪織炎は LIP 活性
値の急上昇時に出現したが、低下傾向を示した時には皮膚病
変が消失し、血中 LIP 活性値の増減と脂肪織炎の消長は一
致していた。脂肪織炎の鑑別疾患には深在性膿皮症や深在性
真菌症、SLE や無菌性結節性脂肪織炎があり、それぞれ治
療法が異なる。本疾患は早期に病理組織検査を行うことで確
定診断を下し、膵炎の治療を行うことが最も重要であると考
えられた。
― 58 ―
演題番号:C9
キサンチン尿石症の猫の1例
○北中千昭 1)、坂口 豪 1)、泉 千尋 1)、亀山佳奈 1)、中村知子 1)、滝本 守 2)、徳本一義 3)、土田修一 4)
1)
セナ動物病院、2)たきもと動物病院、3)日本ヒルズ・コルゲート株式会社、4)日獣大
1.はじめに:キサンチン尿石は猫の尿石としては非常に稀
であり、プリン体の代謝に何らかの問題を抱えていることが
原因であると考えられている。今回、若齢で尿路閉塞を呈す
るキサンチン尿石症の猫の 1 例を経験したので、その概要を
報告する。
2.材料および方法:5 ヵ月齢、未去勢雄の雑種猫が排尿困
難を主訴に来院した。腹部レントゲン検査および腹部超音波
検査にて膀胱内に大量の尿貯留を認めた。血液検査にて白
血 球 数 (WBC 22,900/μl)、BUN(71.0mg/dl)、Cre(2.8mg/dl)、
P(10.5mg/dl) の上昇を認め、尿路閉塞よる急性腎不全を確認
した。
3.結 果:尿路閉塞の解除のため、尿道カテーテルを用い
て導尿を実施し、同時に皮下輸液、抗菌剤、消炎剤などの内
科的治療を行った。その後も尿路閉塞が繰り返されたため会
陰尿道造瘻術を実施した。術後、排尿障害は徐々に改善し、
それに伴い一般状態も改善したが、砂粒状尿石の排出は継続
した。採取した尿石の定量分析の結果、キサンチン尿石であ
ることが判明したため過剰な蛋白質を含まない食事を中心と
した食事管理と尿希釈を目的とした週 2 〜 3 回の皮下輸液を
行なっている。
4.考察および結語:今回の症例は、持続的な尿石の排出お
よび度重なる尿路閉塞を特徴とした。また、一時的な尿路閉
塞解除を目的とした治療に対する反応が極めて悪く、このよ
うな症例には早期に会陰尿道造瘻術を実施することが有効で
あると考えられた。尿石分析ではキサンチン 100%という結
果が得られたが、キサンチンはプリン代謝産物であり、ヒポ
キサンチンからキサンチンへ、キサンチンから尿酸への代謝
過程をキサンチンオキシダーゼが触媒する。キサンチン尿症
はプリン代謝異常に起因し、プリン代謝産物であるキサンチ
ンが蓄積するもので、その原因には先天的な酵素異常の他、
尿酸産生抑制を目的としたキサンチンオキシダーゼ阻害薬で
あるアロプリノールの投与により発症する。本症例にはアロ
プリノール投与歴はなく、食餌は発症当時、市販のキャット
フードを給餌されており、同様の尿石を継続して排出してい
ることよりキサンチンオキシダーゼ酵素活性異常が示唆され
た。そのため現在、キサンチンオキシダーゼの遺伝子の解析
を行っているが、酵素活性に影響を及ぼすと考えられるタン
パク質構造を大きく変えるようなホモ接合性の変異は今のと
ころ検出されていない。
演題番号:C10
当院における各種細菌感染症の原因菌と薬剤感受性試験結果
○佐伯 潤 1)、田中彩恵 2)、仮谷亜希 2)
1)
鶴山台動物病院・大阪府、大阪府大・獣医内、2)鶴山台動物病院・大阪府
1.はじめに:近年、薬剤耐性菌が増加し、抗菌剤治療に苦
慮することがある。原因菌の分離同定と薬剤感受性試験には
日数を要し、経験的な抗菌剤の投与が行われることも多い。
今後の抗菌剤使用の目安とするため、当院における各種細菌
感染症の原因菌と薬剤感受性試験の結果について考察した。
2.材料および方法:細菌感染症を疑う症状で受診した犬・
猫で、飼い主の同意が得られた症例及び当初の抗菌剤治療に
反応の良くなかった症例を対象とした。検体はシードスワブ
で採取し、尿、耳垢、膿汁、皮膚掻爬材料、鼻汁を用いた。
菌の分離同定、薬剤感受性試験は、民間臨床検査会社に依頼
した。
3.結 果:38 症例(犬 28 症例、猫 10 症例)、59 検体(犬
43 検 体、 猫 16 検 体 ) で、 膿 皮 症 6 症 例、 耳 道 疾 患 15 症
例、膀胱炎 12 症例、鼻炎・副鼻腔炎 5 症例であった。平
均 年 齢 は 8.8 歳 で あ っ た。 膿 皮 症 で は Staphylococcus
intermedius group(SIG) が、耳道疾患と鼻炎・副鼻腔炎では
Pseudomonas aeruginosa が、膀胱炎では SIG と Escherichia colli が多かった。SIG が検出された 15 検体中、9 検体 (60%)
がメチシリン耐性で、DOXY、MINO、FOM に感受性を示
すものが多かった。P. aeruginosa が検出された 14 検中 3 検
体 ( 約 21%) がフルオロキノロンとアミノグリコシド系薬剤
に耐性であった。E. colli が検出された 13 検中 9 検体 ( 約
70%) が多剤耐性で、うち 1 検体は基質特異性拡張型β - ラ
クタマーゼ(ESBL)産生菌だった。一般に低病原性とされ
るコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNs)が検出された 6 検
体中、4 検体 ( 約 70%) がメチシリン耐性だった。
4.考察および結語:症例数は少なかったが、原因菌は他の
報告とほぼ同様だった。多剤耐性菌が多く検出されたが、当
初の抗菌剤治療に反応の悪かった症例での検査が多かった事
も関連すると思われ、複数回の薬剤感受性試験を行った症例
では、菌交代症や使用していた薬剤への耐性獲得が認められ
た。人の医療でも問題となっている第三世代セファロスポリ
ン系薬に耐性を示す EBSL 産生大腸菌が検出された事やメ
チシリン耐性 SIG やフルオロキノロン系薬剤に耐性を示す
菌が高率で検出された事から、一次診療施設でも薬剤耐性菌
が広がっており、老齢動物の増加も考えると PK-PD 理論に
基づく適切な抗菌剤治療の実施が必要と思われた。
― 59 ―
演題番号:C11
三重県獣医師会に保管された7年間のレプトスピラの凝集抗体検査結果の考察
春日佐和子
フジサト動物病院
1.はじめに:三重県獣医師会では、会員からの依頼で、レ
プトスピラ症を疑う犬の顕微鏡下凝集試験、PCR検査を株
式会社微生物化学研究所、三重県保健環境研究所のご協力の
もと行ってきた。そこで過去7年間の結果を検討した。
2.材料および方法:平成18年度から24年度まで獣医師
会にのこるレプトスピラ症が疑われた犬の162件(ペア血
清は1件とみなす)の顕微鏡下凝集試験とPCRの結果をも
とに検討した。多くがペア血清でないので、既住の感染か、
ワクチンか、現在の感染からの抗体価上昇の鑑別が断定でき
ないので、あえて抗体価 10 以上のものをピックアップした。
3.結 果:急性の肝、腎機能低下を起こし、レプトスピラ
検査依頼があったのは、過去7年間、162件(ペア血清の
場合1件とする)で、9月から 11 月で全体の63.6%を占
めた。平成24年度のレプトスピラの抗体価の上昇がみられ
た16症例で、秋疫Aの抗体価1の上昇がみられたのは、9
例、秋疫C2例、カニコーラは 6 例、イクテロヘモラギーは
9例、ヘブドマティスは6例であった。16症例中、回復は、
5例、死亡は11例(68.8%)で、死亡例のすべてが、
1週間以内に死亡あるいは安楽死された。死亡症例の11例
中8例は秋疫Aの抗体の上昇がみられた。レプトスピラ症の
犬のうち、H24年度、某社のワクチンを 2 カ月から 1 年と
2 カ月前に接種していたものは 4 例で、感染原因として、接
種から 6 か月以上経過していた、感染株とワクチン株が異な
ることなどが考えられた。
4.考察および結語:三重県では9月から11月ごろ、レプ
トスピラを疑う犬が増える。秋疫Aでは、治療に反応せず死
亡率が高い。レプトスピラ感染は、台風など主に大雨の後に
多いが、街中のアスファルトの上の散歩しかしない犬にも感
染があるのはドブネズミなどの維持宿主の活動期とも関係す
るのかもしれない。内科治療に反応しないとことも多く、ワ
クチンは重要である。しかし接種時期、ワクチンの株が地域
の発生状況と合ってなければ効かない。今後温暖化により風
水害が増え人や家畜のレプトスピラ感染の機会も増えること
が予想され、届出の情報が行政を通じて医療機関、畜産、一
般の方に正しく伝わるよう期待したい。
演題番号:C12
膀胱移行上皮癌に対し遊離回腸を用いて新膀胱造設術を行った犬の1例
○清水誠司、清水弘司
清水ペットクリニック
1.はじめに:膀胱移行上皮癌は、膀胱三角部に発生しやすく、
発見したときには広範囲にわたり浸潤していることが多いた
め膀胱全摘除術が最適である。ただ一方で膀胱全摘出を行う
と蓄尿機能が消失して、尿失禁による弊害も生じる。それゆ
え膀胱外科は、膀胱機能が温存できる部分切除術を選択する
ことが少なくない。本症例は、膀胱移行上皮癌に対し1回目
の手術は部分切除術を行い、その後再発のためおよそ 21 ヶ
月後に 2 回目の手術を行った。とくに 2 回目の手術は、膀胱
全摘出を施行したのち遊離回腸を用いて新膀胱造設術 ( 人の
Hautmann 法を応用 ) を行った。そこで今回は新膀胱造設術
における今後の展望を見据え手術手技、膀胱機能の評価、術
後管理について検討した。
2.材料および方法:症例はポメラニアン、9 歳、避妊雌、
体重 3kg。主訴は頻尿および血尿。超音波検査にて膀胱の尿
道移行部におよそ 11.9mm の腫瘤を確認した。第 13 病日に (1)
膀胱部分切除術および尿管膀胱新吻合術を実施した。膀胱を
広範囲に部分切除したのち、あらたに尿管を膀胱体に再移植
した。病理検査の結果は移行上皮癌であった。第 605 病日に
局所再発を認め、徐々に腫大化し多発したため第 655 病日に
(2) 膀胱全摘除術および新膀胱造設術を実施した。膀胱全摘
後に回盲部付近で 15cm の遊離回腸を確保し、脱管状化して
から U 字型の腸管プレートを作製した。つぎに手術顕微鏡
を用い左右尿管および尿道を吻合したのち、腸管プレートを
縫合して新膀胱 ( パウチ ) を完成させた。
3.結 果:(1) 術後 592 日間良好な経過を得ていた。膀胱機
能も正常であった。(2) 術後 3 日目超音波検査にて新膀胱の
3
体積は 28.9cm であった。回腸から腸粘液が発生するため、
尿路閉塞を起こしやすくたびたび膀胱洗浄が必要となった。
退院後オーナーによる報告では、1 日におよそ 100ml の尿量
と 3 〜 4 回の排尿姿勢が確認された。術後 41 日目肺転移に
よる呼吸困難で死亡した。
4.考察および結語:今回の結果より新膀胱造設術の膀胱機
能は、少量ながら蓄尿機能を保持でき、排尿姿勢をとること
も確認できた。また回腸は伸展性があるため将来さらなる蓄
尿量の増加も期待できる。しかしながら腸粘液が新膀胱に貯
留しやすく、膀胱洗浄が不可欠であった。これらより尿路閉
塞を起こしやすい悪条件が重なるため、今後は手術手技のさ
らなる確立と膀胱洗浄を要する場合に備え、オーナーの飼育
環境も十分に考慮しなければならない。
― 60 ―
演題番号:C13
大型犬に認められた軸椎の形態異常を伴う環軸亜脱臼の 1 例
○王寺 隆、宇根 智
ネオベッツ VR センター
1.はじめに:環軸亜脱臼は環軸骨格の先天的形態異常や外
傷に起因する上位頚髄疾患であり、その発生は小型犬種・ト
イ種で一般的である。今回我々は、大型犬に発生した環軸亜
脱臼に対して腹側環軸関節固定による外科的整復を行い良好
な結果が得られたので、その概要を報告する。
2.材料および方法:症例はサルーキー オス、3 歳齢 体
重 27.7㎏である。運動時に転倒し直後より四肢麻痺・起立困
難を呈し、他施設にて環軸亜脱臼と診断され当院へ紹介され
た。画像診断では頚部レントゲン /CT 検査にて環軸関節で
の軸椎変位が観察された。軸椎形態は左右非対称であり、歯
突起は脊柱管内で正中に対しやや左側に変位して観察され
た。MRI 検査では環軸関節部の脊髄灰白質領域で T2 強調画
像での高信号が観察され、環軸亜脱臼および脊髄損傷と診断
した。手術は頚部腹側アプローチによる環軸関節整復固定術
を行い、インプラントにはチタン製皮質骨スクリュウおよび
PMMA(ポリメチルメタクリレート)を使用した。手術直
後に CT/MRI 検査にて、環軸関節の整復を確認した。
3.結 果:手術直後に実施した MRI 検査では脊髄実質性
異常信号の消失が観察された。症例は術後より神経学的異常
の改善が観察され、1 週間の経過にて自力での起立・歩行が
可能な状態に回復した。現在まで約 6 カ月間の経過であるが
臨床症状は観察されず良好に経過している。
4.考察および結語:本例は外傷に起因する急性の頚部脊髄
障害として発症が観察されたものの、軸椎の形態異常から
幼若時より存在する潜在的な不安定症が示唆された。後頭骨
- 環椎軸椎領域の形態異常に伴う環軸亜脱臼は小型犬・トイ
種において散見されるが、大型犬においても急性頚部脊髄障
害の鑑別診断の一つとして環軸亜脱臼を考慮することは重要
である。また、我々の施設では小型犬・トイ種の環軸関節固
定に対して、歯突起切除およびチタン製皮質骨スクリュウ、
PMMA を用いた腹側環軸関節固定を標準術式として実施し
ている。本例においても同術式を適応としたが、大型犬の環
軸関節の荷重に対して強度を得られるものであるか、今後の
経過観察および症例の蓄積が必要である。
演題番号:C14
難治性の免疫介在性血小板減少症の犬の 1 例
○大前省吾、大前良子
小林動物病院
1.はじめに:免疫介在性血小板減少症(IMT)は犬におけ
る自発性出血の最も一般的な原因である。人における同疾患
は特発性血小板減少性紫斑病として難病指定されており、疫
学調査に基づく治療ガイドラインが確立されている。一方、
犬の IMT は、少なくとも本邦においては、特に長期予後に
対する情報が不足していると思われる。今回脾摘が無効で
あった難治性 IMT の症例で5年以上にわたる長期の経過を
観察する機会があったため、その概要を報告すると共に、今
後の治療における課題について検討した。
2.材料および方法:ウェルシュ・コーギー、避妊済みメス、
初診時の年齢 6 歳 7 カ月、体重 8.8kg。他院にて血小板減少
症の疑いありと診断される。来院時、身体一般検査で腹部に
多数の皮下出血を認める。完全血球検査で血小板数 25,000/
μ L。他に画像診断なども行った結果、IMT と仮診断し治
療を開始した。
3.結 果:プレドニゾロン、ビンクリスチン、アザチオプ
リンなどを用いた内科治療では血小板数を安定させる事が困
難であったため、発症からおよそ 1 年後に脾臓摘出術を実施
した。一旦は十分な効果を得て一切の投薬を打ち切れたもの
の、比較的短期間のうちに再発が見られ内科治療を再開。そ
の後は血液検査を繰り返しながら特にステロイドを極力減量
することを試みながら治療を継続。ワクチン接種やマイナー
サージェリーを経験しつつ比較的安定した状態で経過してい
たが、IMT 発症からおよそ 5 年半が経過する頃、肝硬変か
ら肝性脳症を発症し死亡した。
4.考察および結語:IMT は犬では比較的よく遭遇する疾病
である。ただし、その多くは急性で、ステロイド治療に良く
反応し予後も良いことからそれ程治療に苦慮することは無
い。一方、本症例は脾摘が無効であり、難治性と呼ばれるも
のである。長期間にわたる免疫抑制治療が必要であり、その
投薬量はまさに手探り状態であった。最終的な死因である肝
不全と治療との因果関係は不明であるがアザチオプリンの関
与なども考慮する必要がある。長期間に渡る治療を通じで分
かった事は、難治性の犬の IMT に対する治療およびその予
後についての情報は不十分であるということであった。人医
領域では同疾患に対する疫学調査が実施され、診療ガイドラ
インが策定されているという現状を知るにつけ、今後獣医領
域においても同様にデータ集積が行われ診療に活かされる日
が来る事を切に願うものである。
― 61 ―
演題番号:C15
犬のてんかん症 73 例における病因と長期的帰結
○廣瀬瑤子、杉山祐一郎、中 康祐、木村太一、尾形真佑、酒井 治、中川恵里香、長谷川哲也
加古川動物病院
1.はじめに:犬の特発性てんかん症(IE)は慢性神経性疾
患とされている。MRI 検査によって脳の形態検査や病因鑑
別が可能になったが、臨床的には IE は症候性(SE)や原因
不明性てんかん症(CE)との鑑別が容易でない。本研究で
はてんかん症と診断した症例群について病因鑑別と比較を行
い、その診断や生存期間に関わる課題を追求した。
2.材料および方法:2005 年 5 月から 2010 年 5 月までにて
んかん症として画像診断された犬のうち 2 年間以上の追跡が
可能な症例を検証して IE 群と SE 群とした。内科記録から
シグナルメント、神経検査所見、CSF 所見や MRI 所見等を
回収して統計解析を行った。
3.結 果:73 例がクライテリアに適合し、26 例(36%)が
IE、47 例が SE(64%)とされた。初発年齢は IE 群(3.5 歳)
に対し SE 群(7.1 歳)が高かった(P < 0.01)。SE 群の発症
は急性で(P=0.011)、病状進行は早い(P=0.002)特徴があった。
MRI 撮影までの日数は IE 群(438 日)に比べて SE 群(94 日)
は有意に短かった(P < 0.01)。SE を鑑別診断するための多
変量解析モデルには、初発 6 歳以上、神経検査異常、急性発
症と前庭症状の病歴、脳ヘルニアの有無が採用され、外れ値
に病因不明の髄膜脳炎(MUE)症例が示された。治療開始
後の生存日数は IE 群(中央値 1,358 日、95 %CI:693-2,023
日)に対して SE 群(中央値 227 日、95 %CI:0-473 日)は
有意に短かった
(P=0.002)
。SE 群は原因別に炎症性疾患(i-SE
24 例:NME/GME/MUE 21 例、他)
、腫瘍性疾患(n-SE 20
例:リンパ腫 6 例、髄膜腫 4 例、他)、その他(3 例)と分
類された。治療に抗てんかん薬を必要とすることは、IE 群
(20/26 例)
や n-SE 群
(15/20 例)
と比較して i-SE 群
(10/24 例)
では少なかった(P=0.027)
。それぞれの群の生存日数を多重
比較した時、
n-SE 群にのみ有意な差が認められた(P=0.003)。
4.考察および結語:IE 群の生存期間は過去の報告と比較し
て短い傾向にあり、これは緩徐進行性の MUE や検出限界未
満の CE や SE を含めている可能性があった。また、SE 群
から i-SE 群を早期鑑別し、積極的な初期治療を行えば生存
期間はさらに改善できる可能性がある。この生前鑑別のため
には画像診断だけでなく機能的鑑別法の開発が求められる。
演題番号:C16
京都府南部の一地域に生息する野良猫における寄生虫の感染状況
○中村有加里 1)、井口絵美 1)、林屋早苗 1)、林屋牧男 1)、深瀬 徹 2)
1)
林屋動物診療室、林屋生命研、2)林屋生命研
1.はじめに:近年、動物病院に来院する猫に寄生虫の感染
が認められることは少ない。しかし、寄生虫症の症例が皆無
というわけではない。今回、飼い猫における寄生虫症の発生
の背景を検索することを目的として、京都府南部の一地域に
生息する野良猫の寄生虫相の解明を試みた。
2.材料および方法:2012 年 6 月から 2013 年 5 月の 1 年間
に京都市伏見区を中心とする地域において動物愛護団体に
よって捕獲され、避妊手術または去勢手術を受けるために来
院した野良猫 105 頭(雌 70 頭、雄 35 頭)を調査の対象とし
た。寄生虫の検出にあたっては、糞便の肉眼的観察と直接塗
抹法および飽和食塩液浮遊法、ホルマリン・エーテル法によ
る検査のほか、ライト・ギムザ染色を施した血液の薄層塗抹
標本鏡検を行い、また、犬糸状虫に関して、血液の直接塗抹
の鏡検と ELISA を採用した犬糸状虫症成虫抗原検査用キッ
トによる検査を実施した。加えて、外部寄生虫の検出のため、
体表および外耳道を精査した。
3.結 果:調査を行った 105 頭のうち 51 頭(49%)から何
らかの種の寄生虫が検出された。内部寄生虫が検出されたの
は 27 頭(26%)
、外部寄生虫が検出されたのは 35 頭(32%)
で、このうち 11 頭(10%)は内部および外部寄生虫の寄生
を受けていた。検出された寄生虫の種とその検出例数および
検出率は、
内部寄生虫は、
原虫ではコクシジウムが 1 頭(1%)、
吸虫では壺形吸虫が 2 頭(2%)
、条虫ではマンソン裂頭条虫
が 8 頭(8%)、瓜実条虫が 4 頭(4%)、線虫では毛細線虫の
一種が 1 頭(1%)
、
猫回虫が 11 頭(10%)
、
猫鉤虫が 1 頭(1%)、
犬糸状虫が 3 頭(3%)であり、また、外部寄生虫ではマダ
ニが 1 頭(1%)、ミミヒゼンダニが 5 頭(5%)、ネコハジラ
ミとネコノミがともに 17 頭(16%)であった。以上のように、
本調査では猫回虫とネコハジラミ、ネコノミが比較的高率に
検出され、とくにネコハジラミの蔓延が特徴的であった。
4.考察および結語:猫には依然として多種の寄生虫が感染
していることが明らかとなったが、その発生率は以前と比べ
ると減少傾向にあり、野良猫の生息環境が清浄化しているこ
とが推察された。ただし、ネコハジラミは、来院する飼い猫
と比べて著しく高率に検出されており、この寄生虫にとって
の好適な条件が整えば、個体群のなかで蔓延するものと考え
られた。
― 62 ―
演題番号:C17
下垂体・副腎ともに異常を認めたクッシング症候群の犬の 1 例
○人見 誠、伊藤誠文、竹林賢作
ひとみ動物病院
1.はじめに:一次診療における犬のクッシング症候群の診
断は ACTH 刺激試験 (ACTH-ST) および副腎の超音波検査
により下垂体性か副腎性かを診断する.ACTH-ST および高
用量デキサメサゾン抑制試験 (HDDST),超音波検査で副腎
性クッシング症候群 (AT) と診断したが.副腎腫瘍の摘出後
も症状の改善を示さず再検査で下垂体性クッシング症候群と
診断された症例を検討した.
2.材料および方法:トイ・プードル,7 歳 9 ヵ月齢,未避妊雌,
体重 2.8kg.多尿多飲を主訴に低比重尿 (USG:1.011) を認めた.
末 梢 血 リ ン パ 球 数 :720/μl,ALP:742U,TCho:>450mg/dl,
ACTH-ST Cortisol Pre:2.19,Post(1h):33.62μg/dl,HDDST で
抑制を認めず.超音波検査にて右側副腎の腫大および構造の
異常を認めた.これらの所見より AT と診断し,第 25 病日
に右副腎摘出術を実施.病理組織学的検査結果は副腎皮質腺
腫だった.
3.結 果:術後一旦尿量の低下を認めたが術後 3 週間で再
度, 尿 量 の 増 加 を 認 め た た め ACTH-ST を 実 施.Cortisol
Pre:4.95,Post(1h):28.84μg/dl とクッシング症候群と診断.加
えて内因性 ACTH の測定を行った結果 45pg/ml と増加.下
垂体性クッシング症候群 (PDH) と診断された.トリロスタ
ン 1mg/kg bid で治療を開始し 2mg/kg bid で USG:1038, 末
梢血リンパ球数 1004/μl,被毛状態の改善を認めた.
4.考察および結語:本例はヒトで報告のある下垂体および
副腎の同時に発生した腺腫であるか,Teshima ら (2009) の
報告にあるトリロスタン投与におけるネガティブフィード
バックによるネルソン症候群のように,副腎摘出後のネガ
ティブフィードバックによる下垂体腫大が起こったのかを判
断することは難しい.副腎摘出直後に ACTH-ST を行って
いれば下垂体,副腎同時に起こった腺腫であったのか,ネル
ソン症候群だったのかが判断出来たと思われる.犬において
も下垂体および副腎共に異常のあるクッシング症候群や副腎
両側に発生する腺腫が存在することを知っておかなければな
らない.この場合,内因性 ACTH の測定が重要であり,初
期診断に必ず組み入れる必要があると思われる.
演題番号:C18
急性骨髄単球性白血病の犬の一例
○鍋谷知代 1)、鳩谷晋吾 2)、水元 裕 3)、杉浦喜久弥 2)、稲葉俊夫 2)
1)
大阪府大・獣医臨床センター、2)大阪府大・細胞病態学教室、3)小阪動物病院・大阪府
1.はじめに:急性骨髄単球性白血病 (M4) は、骨髄中の造血
細胞が骨髄球系と単球系に腫瘍化する疾患で、予後は非常に
悪い。今回、ミトキサントロン単剤投与により状態改善が可
能であった症例の診断と治療方法について検討を行った。
2.材料および方法:症例はフレンチ・ブルドッグ、避妊雌、
2 歳 10 ヵ月齢。大腸炎と元気食欲減退を主訴に近医を受診。
血液検査にて由来不明の白血球増加を認め、精査のため本学
獣医臨床センターを受診した。初診時の血液検査で白血球数
の増加、非再生性貧血、血小板数の減少を認め、白血球の
50% を単球様細胞と芽球様細胞が占めていた。これらの所
見より、骨髄疾患を疑い第 14 病日骨髄検査を実施した。
3.結 果:骨髄有核細胞 (NEC) 中の芽球比率は 30% を超え
ていた。芽球はペルオキシダーゼ染色 (POD) 陽性、陰性を
示す細胞を含み、非特異的エステラーゼ染色 ( α -NB) に陰
性を示した。末梢血中の単球様細胞は POD、α -NB、リン
パ球クローナリティ検査に陰性を示したが、フローサイトメ
トリーで単球系細胞のマーカーである CD14 陽性を示すこと
が確認された。さらに、その数が 5,000/μl を超えていたこ
とから M4 と診断した。第 26 病日、症例は呼吸困難を呈し、
末梢血に腫瘍細胞の著増を認めたため、第 26、27 病日シタ
ラビンを投与した。しかし効果が認められず、第 28 病日ミ
2
トキサントロン (5 mg/m 、IV) に変更したところ、一般状
態は改善し、末梢血中の腫瘍細胞は減少した。その後 3、4
週間に 1 回のミトキサントロン投与により状態を維持してい
たが、徐々に効果が低下し、第 148 病日死亡した。
4.考察および結語:M4 の診断では、NEC 中の骨髄球系と
単球系細胞の比率または末梢血中の単球系細胞数を確認する
必要がある。一般的に、単球系細胞はα -NB 陽性を示すが、
本症例は骨髄、末梢血いずれの細胞も陰性を示して診断が困
難であった。しかし、フローサイトメトリーにより、末梢血
で増加している細胞が単球系の細胞と判明したことから、同
法は診断に有用であることが示唆された。また M4 の症例報
告は数例あるが、いずれも数日から 60 日で死の転機を迎え
ている。本症例ではミトキサントロン単剤投与で約 120 日
間、生存可能であったことから、今後症例を蓄積し、化学療
法を実施した際の予後について再検討する必要があると思わ
れた。
― 63 ―
演題番号:C19
積極的な外科手術と分子標的薬で治療するも予後不良であった、犬の肥満細胞腫の 2 例
○水谷 到、海津直美
森動物病院
1.はじめに:肥満細胞腫は犬における一般的な腫瘍である
が、その悪性度によって治療成績や予後が異なる。近年、分
子標的薬の使用がこの腫瘍に対して一般的となったが、術後
の化学療法の選択については、その指針が定められていない。
今回、我々は、悪性度の高い犬の肥満細胞腫の症例 2 例に対
して、積極的な外科手術と分子標的薬による併用療法の効果
を検討した。
2.材料および方法:
(1)症例① 雑種(M. ダックスフン
ト×マルチーズ)
、雄、7歳。舌先端の肥満細胞腫(未分化型、
リンパ管浸潤を伴う、c-kit 遺伝子変異 エクソン 11 に認める)
。
第2病日に、舌腫瘍を含む舌部分切除術を実施(完全切除)
。
術後から VBL/Pre プロトコルを実施したが、第 113 病日、右
下顎リンパ節と咽頭後リンパ節へ転移。CCNU(50mg/m2) 投
与の後、第 150 病日から Masitinib(12mg/kg/d) を投与。著
効を示したが、第 201 病日に、再度右咽頭後リンパ節が腫大。
第 208 病日に右下顎リンパ節および右咽頭後リンパ節を外科
切除。術後経過は良好であったが、第 230 病日に再発。その後、
イマチニブ治療(10mg/kg/d)も行ったが、第 245 病日に
呼吸困難で死亡。
(2)症例② チワワ、雌、9 歳齢。左耳
介部の肥満細胞腫(組織学的グレードⅢ、c-kit 遺伝子変異
エクソン 11 に認める)
。初診時から左浅頚リンパ節への転移
が認められたため、第 9 病日に左耳介全切除術と浅頚リンパ
節切除を実施(耳介は完全切除)
。第 35 病日からイマチニブ
治療(10mg/kg)を開始したが、第 86 病日に浅頚リンパ節
領域に再発。イマチニブ投与を倍量にし、やや進行を抑えら
れたが、脱顆粒性のショックが生じ、第 171 病日に死亡。
3.結 果:生存期間:症例①診断から 245 日、症例②診断
から 171 日
4.考察および結語:未分化型あるいはグレードⅢの肥満細
胞腫の場合、積極的な局所治療と全身治療が必要となる。そ
の場合、肥満細胞腫に対する化学療法剤の選択については、
VBL や CCNU といった既存の薬剤を第一選択とするのか、
最初から分子標的薬を使用するのか、文献における大規模な
データがないために術後の転移抑制を考えた化学療法剤の第
一選択をどうすべきなのか、検討の余地がある。また本症例
では、術後に積極的放射線治療(RT)を領域リンパ節に実
施できれば予後が向上した可能性があり、RT 併用の必要性
など様々な議論が必要である。
演題番号:C20
CD20 陽性表皮向性 T 細胞リンパ腫の犬の 1 例
○東 一志 1)、南 信子 1)、中野友子 1)、中野康弘 2)、加藤太司 2)、工藤徹也 2)、浦野充夫 2)、
中川恭子 2)、村上善彦 2)、森田剛仁 3)、南 毅生 2)
1)
甲南動物病院・滋賀県、2)南動物病院・三重県、3)鳥取大
1.はじめに:CD20 および CD3 はそれぞれ B 細胞、T 細胞
の標識であるが、近年、人医療域において CD3 のみならず
CD20 も発現している T 細胞リンパ腫が報告されている。し
かし、獣医領域において CD20 陽性 T 細胞リンパ腫は、筆
者の知る限り過去に報告がなく、今回、犬において本症と診
断された症例に遭遇したため、その病態について検討した。
2.材料および方法:ボーダーコリー、避妊雌、13 歳齢、体
重 15.0kg。2 ヶ月前から直径 5mm の左側胸部皮膚腫瘤が存
在するとの主訴で近医を受診し、切除後の病理組織学的検査
でリンパ腫と診断された。その後、さらなる精査を行うため
当院を受診した。来院時には、口唇および口腔粘膜の発赤・
腫脹、会陰部の痂皮が認められたが、一般状態は良好であっ
た。同日、CT 検査および口唇・会陰部のパンチ生検を行った。
3.結 果:CT 検査では、全身諸臓器において腫瘍の存在
を示唆する所見は認められなかった。口唇および会陰部の病
変は、表皮向性リンパ腫と診断された。免疫染色の結果、腫
瘍細胞は抗 CD20 抗体および抗 CD3 抗体ともに陽性を示し、
口唇部において T 細胞性のモノクロナリティが認められた
ため、本例は CD20 陽性 T 細胞リンパ腫と診断された。皮
膚腫瘤切除日より第 61 病日から近医にてロムスチンの投与
2
2
が行われた(初回:50mg/m 、2 回目:65mg/m )。その後、
口唇および口腔粘膜・会陰部の病変に著変は認められなかっ
たものの、一般状態は良好に経過していたが、第 115 病日か
ら下痢を呈し、第 124 病日に死亡した。
4.考察および結語:人医療域における CD20 陽性 T 細胞リ
ンパ腫の報告では、CD20 が T 細胞に発現する原因として
様々な仮説が提唱されている。また、CD20 陽性 T 細胞リン
パ腫は稀な疾患であるため治療法については確率されていな
いが、人医療域では CD20 陽性細胞を標的とする分子標的薬
が存在し、治療法のひとつとして期待されている。本例にお
いて、ロムスチンに対する反応が乏しかったことから、犬に
おいて本症は化学療法への反応が乏しく、一般的な表皮向性
リンパ腫とは予後が異なる可能性がある。そのため、表皮向
性リンパ腫の症例では免疫染色およびクロナリティ検査を行
うことが推奨されるとともに、CD20 陽性 T 細胞リンパ腫の
さらなる研究が必要である。
― 64 ―
演題番号:C21
網膜剥離の予後に関する調査
○小山博美、宇根 智
ネオベッツ VR センター
1.はじめに:犬の網膜剥離の原因は裂孔性網膜剥離が多い。
裂孔性網膜剥離の治療方法は、外科的に網膜を復位し固定す
ることが必要であるが、外科手術を行うことは困難であるこ
とが多く、現実的には盲目のまま治療されないことが多い。
治療されない場合の予後はぶどう膜炎や緑内障を併発し、眼
球の温存が困難になると報告されている。今回我々は当セン
ターにおける裂孔性網膜剥離の発生とその予後について調査
を行った。
2.材料および方法:2005 年 10 月から 2013 年 6 月までに当
センターに来院され、原発性網膜剥離と診断された症例のう
ち、炎症性や牽引性網膜剥離を除いた症例を抽出した。カル
テ上の情報から、犬種、初診時の状態、予後について調査した。
3.結 果:原発性裂孔性網膜剥離と診断した症例は、44 頭
64 眼で、右眼のみの症例は 9 眼、左眼のみは 15 眼、両眼に
見られたのは 40 眼(20 頭)であった。犬種はシーズー 21 頭
(そ
のうち両側性は 9 頭)、トイ・プードル 9 頭(6 頭)、パピヨ
ン 3 頭(1 頭)、柴犬 2 頭(2 頭)、ミニチュア・ダックスとミッ
クス犬がそれぞれ 2 頭(0 頭)、フレンチ・ブルドックとビー
グルがそれぞれ 1 頭(1 頭)、イタリアン・グレーハウンド、
日本テリア、ミニチュア・シュナウザーがそれぞれ 1 頭(0
頭)であった。初診時に眼圧上昇を示した症例は 15 眼、重
度の眼内出血は 1 眼で認められた。16 眼のうち 4 眼は義眼
挿入術を実施し、その他の症例では経過は不明であった。初
診時に眼圧上昇や眼内出血を認めずに経過を追えた 16 眼で
は、その後の経過観察中に眼圧上昇が 4 眼に、眼内出血が 1
眼に認められた。正常眼圧を維持できたのは 11 眼であった。
眼圧上昇や眼内出血は初診時から 3 年以内に認められた。そ
れ以外の 32 眼は経過が不明であった。
4.考察および結語:シーズーとトイ・プードルに原発性裂
孔性網膜剥離が多く認められた。シーズーは巨大裂孔を伴う
網膜剥離が見られる代表的な犬種であるが、今回の結果では
トイ・プードルにも多くの網膜剥離が認められ、また両眼に
発症する割合がシーズーよりも高率に認められた。網膜剥離
を診断した時点で 1/4 の症例に眼圧上昇や眼内出血が認めら
れ、経過を観察していた症例でも約 1/3 で 3 年以内に同様の
合併症を併発していた。網膜剥離は視覚を消失するだけでな
く、眼球温存が困難になる合併症が出ることなどを考えると
クライアントエデュケーションや経過観察の重要性が感じら
れた。
演題番号:C22
常同障害の診断と治療における行動療法の有用性
○安田行子、安田信宏
西向日動物病院
1.はじめに:問題行動は、それ自体が生命を脅かすもので
はない。しかし人と動物の関係および両者の QOL を著しく
悪化させる場合は、動物を飼い続けることが難しくなる。近
年、人と動物が密接にかかわる中で絆が深まる反面、問題行
動は増加してきている。そのため臨床医は、行動学の知識を
基に系統立てて問題を整理し、解決へと導く準備をしておく
必要がある。今回、ホームドクターとして関わった小型犬に
認められた常同障害の診断と治療における行動療法の有用性
について検討した。
2.材料および方法:トイプードル、雄、2010 年 11 月 8 日
生まれ。生後 2 か月半に当院でワクチン接種。生後7か月で
去勢手術。2012 年 8 月 20 日に皮膚炎で来院の際、「半年前
から月に一度程度、夕食後に変な声で鳴きながら背中を床に
こすり付ける」との稟告があった。その後、上記行動が生じ
る時間帯の変化、頻度の増加と持続時間の延長、程度の悪化
が認められた。同年 10 月 30 日に問診及び各種検査で類症疾
患を鑑別除外し、常同障害と診断した。カウンセリング実施
後、最初に環境整備と行動療法を開始し、12 月 1 日より薬
物療法(クロミカルム内服)を併用した。
3.結 果:徐々に回数減少、時間短縮、程度軽減が認められ、
2013 年 3 月末以降、常同障害を疑う症状は認められていな
い(環境整備、行動療法、薬物療法は継続中)
。
4.考察および結語:問題行動の症例を診察する場合、臨床
医は身体的疾患との鑑別をするだけでなく、行動学の知識に
基づく診断を行う必要がある。治療に薬剤を使用する場合で
も、環境の整備と行動療法を併用することは重要である。ま
た、症例に応じて、そして治療中の症状の変化に応じて、環
境整備や行動療法を具体的に提案すること、そしてそれらを
実践する飼い主のモチベーションをいかに維持するかが治療
成功への鍵となる。本症例では、院内で看護士と共に行って
きたパピークラスでの飼い方やしつけ方の指導、および子犬
の行動を観察する経験が役立った。日々動物と飼い主とに接
する臨床医が行動学を学び、行動学に精通した看護士を育成
することで、行動学的問題に対しチーム医療を実践し、動物
と人とのより良い暮らしに貢献できるであろう。
― 65 ―
演題番号:C23
脾臓の変形により食後に異常行動を示した犬の1例
○児玉竜成、佐々木隆博、織 順一
おり動物病院
1.はじめに:犬の脾臓は収縮能を有しており生理的に大き
さを変化させ、また比較的自由に腹腔内を動くことが可能で
ある。今回我々は食後に異常行動を示した犬に対して、各種
検査で脾臓の腫大および変形を認め、胃拡張時の胃および脾
臓の圧迫と診断し、脾臓部分切除により症状の改善がみられ
た症例について考察する。
2.材料および方法:症例はミニチュア・ダックス、9 歳、
去勢オス、体重 8.1 kg。10 日前より元気がなく、通常量の
食餌を採ると頭を低く下げ後ずさりして、前肢を前に伸ばし
て腰を高く上げる姿勢をとるとのことで来院した。身体検査
および血液検査では特記すべき異常は認められず、腹部 X
線検査および超音波検査にて脾臓の腫大がみられたが、正常
エコー性を示した。上部消化管内視鏡検査で異常はみられず、
腹部 CT 検査にて脾臓は全体的に大きく厚みが増し、背側部
分が腹側に変位して胃の一部を囲むように位置していた。そ
れ以後少量の食餌を複数回に分けて与えると症状は消失し
た。次いで試験的開腹術を行ったところ脾臓は全体的に腫大
していたが特に背側端から約 5 cm の部分に肥厚があり、そ
の部分と接した胃の大弯漿膜面に充血がみられた。背側端か
ら 5 cm で脾臓部分切除すると同時に病理組織検査を行った。
3.結 果:術後良好に経過し、通常量の食餌を採食しても
腹部疼痛からとみられる異常行動は認めなかった。病理組
織検査結果は、脾臓のガムナ・ガンディー小体(以下 GGB)
であった。脾門部の被膜から実質内に線維化および石灰沈着
と出血がみられる加齢性の変化であるとされた。
4.考察および結語:脾臓の GGB は老齢犬にみられる加齢
性の変化として分類されている。脾臓の被膜、脾柱、血管周
囲組織に鉄あるいはカルシウムの沈着により黄色から茶色の
外観を呈する。多くは脾臓縁周囲被膜にみられるが、実質内
にもみられることがある。また脾臓の外傷によって脾内で起
こった出血の続発症として発生することもある。本症例では
脾臓の臓側面の脾門と呼ばれる隆起部に GGB がみとめられ、
それにより脾臓の可動性および伸展性の低下をもたらし、ま
た脾臓の変形および変位も伴って胃拡張時に脾臓と接する部
位での圧痛が強くみられたものと考えられた。今回、各種検
査において明確な異常が認められず診断に苦慮したが、腹部
CT 検査にて腹部臓器の形態や位置関係が明瞭に描写でき、
非常に有用であったと思われる。
― 66 ―
演題番号:D1
犬の脾臓血管肉腫の多時相造影CT所見
○山城徳之、山本竜平、嶋崎 等
千里桃山台動物病院
1.はじめに:犬の脾臓血管肉腫は比較的多く認められる疾
患だが、多時相造影 CT 検査所見に関する報告はごくわずか
である。今回、脾臓血管肉腫と診断された犬の CT 所見の検
討を行った。
2.材料および方法:多時相造影 CT 検査、脾臓摘出術およ
び脾臓の病理組織学的検査を実施し、血管肉腫と診断された
犬 8 症例を対象に検討を行った。全ての症例に対し単純およ
び多時相造影 CT 検査を実施した。症例の状態に応じ、無麻
酔もしくは麻酔下いずれかでの検査を選択した。多時相造
影 CT 検査としては、300 mgI/mℓのイオヘキソール 2mℓ
/kg(600mgI/kg)を 20 秒かけて橈側静脈内に投与した後、
撮影を実施した。麻酔下で検査を実施した症例においては、
造影剤投与開始 20 秒後(動脈優位相)、60 秒後(動静脈相)
、
180 秒後(静脈優位相)の三相撮影を実施した。無麻酔で検
査を実施した症例においては、動静脈相、静脈優位相の二相
撮影を実施した。
3.結 果:犬種はゴールデンレトリバーが 3 例、雑種、ボー
ダーコリー、ミニチュアダックスフント、ヨークシャーテリ
ア、ラブラドールレトリバーが各 1 症例だった。性別は雄が
3 例、雌が 5 例、年齢は 6 〜 12 歳であった。単純 CT では、
全ての症例で病変部が不均一な X 線低〜等吸収を示す腫瘤
性病変として認められた。造影 CT では、全ての症例で病変
辺縁や内部に持続的な造影増強効果を示す不正形の領域が認
められた。さらにこの領域が経時的な拡大を示し、病変内部
には経時的に増大する不均一な淡い造影増強効果が認められ
た。
4.考察および結語:今回検討した 8 症例全てで類似したC
T検査所見が得られた。病変内部の淡い造影増強効果に関し
ては血腫や壊死への造影剤の浸潤が疑われる為、一概に血管
肉腫に特徴的とは判断できないと思われた。一方で、病変辺
縁や内部の不整形の持続的な造影増強効果に関しては、当院
でこれまで経験したその他の脾臓疾患では認められることが
少なく、脾臓血管肉腫に特徴的な所見であると考えられた。
いずれにせよ症例数が限られているため、今後さらに検討し
ていく必要があるが、多時相造影 CT 検査により、犬の脾臓
血管肉腫に関して特徴的な所見が得られるものと思われた。
演題番号:D2
小型犬の頚部脊髄疾患における動的病変を持つ症例の特徴に関する検討
○田中 宏 1)、北村雅彦 1)、栗山麻奈美 1)、中垣佳浩 1)、松本有紀 1)、長田翔伍 1)、糸井崇将 1)、
小関清人 1)、黒川慶一 2)、中山正成 1)
1)
中山獣医科病院・奈良県、2)生光動物病院・大阪府
1.はじめに:頚部脊椎脊髄症は、椎間板、支持靭帯、関節
突起などの変性により脊髄圧迫を起こす症候群である。主に
椎間板関連性のものがみられ、特に中〜高年齢の大型犬に発
症する。脊髄圧迫には、動的・静的要因があり、その区別は
外科的治療法の選択に重要である。同様の病態は小型犬でも
あるが、非常に稀であると言われている。今回、頚部脊髄疾
患と診断した小型犬において、動的病変を持つ症例について
その特徴を検討した。
2.材料および方法:2004 ~ 2013 年の 9 年間に頚部脊髄造
影により圧迫性脊髄症と診断した小型犬 64 例を対象とした。
脊髄造影後のストレス撮影(牽引および屈曲撮影)により脊
髄圧迫に変化のあるものを動的病変、変化のないものを静
的病変とした。年齢、性別、犬種(軟骨異栄養性犬種:C、
非軟骨異栄養性犬種:NC)の関連性、病変数(単一病変:
SL、2 椎体以上の多発病変:ML)、病変部あるいは隣接する
椎体の変形や脊椎症の有無との関連性に関して静的病変の症
例と比較して、動的病変を持つ症例の特徴について検討した。
3.結 果:動的および静的病変の症例はそれぞれ 9 例(14%)
、
55 例(86%)であった。動的病変の症例の平均年齢は 7.9 歳
で、静的病変の症例との有意差は認められなかった。性別は
病変との関連性は認められなかった。犬種では、動的病変の
症例で C が 1 例(11.1%)
、NC が 8 例(88.9%)
、静的病変
の症例で C が 45 例(81.8%)
、NC が 10 例(18.2%)で、動
的病変の発症は NC で有意に高かった。病変数では、動的病
変の症例で SL が 4 例(44.4%)
、ML が5例(55.6%)、静的
病変の症例で SL が 53 例(96.4%)
、ML が 2 例(3.6%)で、
動的病変の症例は有意に ML が多かった。動的病変は C5-6,
6-7 での発生率が高い傾向にあり、また、椎体の脊椎症や椎
骨変形との関連性が認められた。
4.考察および結語:小型犬の 14%が動的病変を示した。こ
の結果は決して稀とは言えないものであった。動的病変の検
出は、伸延固定術、背側椎弓切除術、関節突起固定術など外
科的治療法の選択に重要であると言われている。小型犬でも
動的病変があることを認識し、それを検出する検査をルーチ
ンに実施するべきあると考えられた。特に、非軟骨栄養性犬
種、変形性脊椎症のある部位、もしくはその隣接する部位で
は動的病変が存在する可能性が高いと考えておくべきであ
る。
― 67 ―
演題番号:D3
G シェパードの膵外分泌不全とリンパ球性プラズマ細胞性腸炎を伴った肛門周囲瘻におけるレーザー治療の 1 例
○村田裕史 1)、萩本篤毅 1)、渡邊高司 1)、野田陽一郎 1)、春日部美穂 1)、村田亜希 1)、米丸加余子 2)
1)
京都中央動物病院・京都市、2)(株)岐阜病理ラボラトリー・岐阜県
1.はじめに:肛門周囲瘻は肛門周囲における慢性再発性の
瘻管を特徴とする。今回我々は、膵外分泌不全(Exocrine
Pancreatic Insufficiency: EPI)とリンパ球性プラズマ細胞性
腸 炎(Lymphocytic-Plasmacytic Enteritis: LPE) を 併 発 し
た肛門周囲瘻を発症したGシェパードに対して、従来から報
告のある免疫抑制剤などを中心とした内科療法や外科手術で
はなく半導体レーザー療法を中心に治療し、良好な経過を得
たのでその経過について検討した。
2.材料および方法:G シェパード、避妊雌、9 歳 6 ヵ月、
体重 28.6kg。以前より肛門周囲瘻と診断され治療するが改
善しないとの主訴で来院。第 1 病日の身体検査では痛みから
暴れ詳細な観察はできなかった。第 14 病日に麻酔下にて各
種検査を実施した。血液検査は TLI(ng/ml)1.2 と低下し
EPI との診断が支持された。内視鏡により消化管の観察と生
検を実施し、回腸に最も高度にリンパ球と形質細胞の浸潤が
確認できた。肛門周囲の毛刈りと洗浄を行うと肛門周囲に多
数の瘻管があり、排膿と出血を認めた。瘻管の一部に切除生
検を実施し、慢性化膿性炎を確認した。これらより EPI と
LPE を伴った肛門周囲瘻と診断した。
3.結 果:第 14 病日に瘻管からの出血や排膿に対して、
インドシアニングリーン(ICG)を塗布し、半導体レーザー
によるレーザー治療(ブルーベアファイバー、非接触、出力
10W、CW)を実施した。その後に改善したことから (1) 定
期的な麻酔下でのレーザー治療および肛門周囲の洗浄、毛刈
り (2) 局所治療 : タクロリムス軟膏の塗布 (3) 内服薬 : メトロ
ニダゾール bid。エクセラーゼカプセル(消化酵素複合剤)
bid (4) 低脂肪食を行うことにした。第 64、121、237 病日に
麻酔下での洗浄と毛刈り、レーザー治療を行った。現在、最
後のレーザー治療より約 14 ヵ月経過し良好な状態を保って
いる。
4.考察および結語:肛門周囲瘻に対するレーザー治療とし
て YAG と炭酸ガスレーザーの報告が存在し、良好な結果と
されている。今回、我々は半導体レーザーと ICG を併用し、
経過は満足のいくものであった。レーザー波長はそれぞれ異
なるが ICG 併用した半導体レーザー療法も他のレーザー療
法と同様に効果的である可能性がある。
演題番号:D4
蛇による咬傷で壊死し始めた患肢に対してフォトバイオモジュレーションを行った猫の1例
○山田優樹 1)、中西 等 1)、中西史子 1)、後藤大介 1)、鶴 佳子 1)、和田卓也 1)、菊山 賢 2)
1)
和泉動物病院・大阪府、2)飛鳥メディカル(株)
1.はじめに:蛇による四肢の咬傷では、四肢麻痺、呼吸困
難などの神経症状を呈することや、牙痕周囲の腫脹、疼痛、
チアノーゼおよび組織壊死などがおこる。治療としてはセ
フェム系抗生剤とコルチコステロイドの投与が推奨されてい
るが、組織壊死の進行により断脚が選択されることが多い。
半導体レーザーを用いた創傷治癒の促進や疼痛緩和を促す治
療は、フォトバイオモジュレーションと呼ばれ、近年、この
治療効果が科学的に証明されるようになったことで飛躍的な
進歩を遂げている。今回、蛇による咬傷で患肢が壊死し始め
た猫の症例に対してフォトバイオモジュレーションを行った
結果、断脚を回避でき良好な成績が得られたので、その治癒
過程について考察した。
2.材料および方法:雑種猫、1 歳齢、未去勢雄、体重 4.00
kg。右前肢の腫脹、跛行、元気・食欲の減衰を主訴に来院。
視診および触診にて、右肘関節から末端までの腫脹および熱
感、また指球間に咬傷部位と思われる出血を認めた。抗生剤
およびステロイドの投与を中心とした治療を 8 日間行った
が、治療効果が乏しく、指間部の壊死および手根部までの冷
感を認めた。そのため飼い主に断脚を勧めたが同意を得られ
ず、フォトバイオモジュレーションを提示したところ、翌日、
同意が得られたので治療を開始した。治療には DVL-20( 中
心波長 810 nm、飛鳥メディカル株式会社 ) を用いた。
3.結 果:フォトバイオモジュレーション開始 2 日後には
患肢の熱感が回復し始め、開始 4 日後には完全に熱感が回
復した。その後、壊死していた指と皮膚が脱落し、脱落した
指の骨が露出した状態となったが、脱落から 6 日後には肉芽
が形成され始め、脱落 17 日後には指の再生を認めた。現在、
患肢には毛も生えそろっており、機能的な問題もなく良好に
経過している。
4.考察および結語:今回、蛇による咬傷と思われる部位に
対し、抗生剤とステロイドを中心とした治療を行ったが、治
療効果は乏しかった。そこで、フォトバイオモジュレーショ
ンを行った結果、血管拡張の刺激からの微小循環の増加、ま
た、白血球とマクロファージ浸潤の増大、組織修復細胞の活
性化により、喪失した患肢の熱感の回復および壊死組織脱落
後の良好な治癒が得られた。以上より、フォトバイオモジュ
レーションは蛇の咬傷に対する治療として有用であると考え
られる。今後さらなる症例数の蓄積を行い、有用性を検討し
ていきたい。
― 68 ―
演題番号:D5
肉芽腫性病変組織を用いた RT-PCR により非滲出型猫伝染性腹膜炎と診断し得た猫の 1 例
○築澤寿栄 1)、中田美央 1)、梅下雄介 1)、高瀬奈美 1)、舛方祐子 1)、安田和雄 1)、桑原知江 2)、秋吉秀保 2)
1)
安田動物病院、2)大阪府大
1.はじめに:猫伝染性腹膜炎 ( 以下 FIP) の臨床診断は、猫
の飼育環境、臨床症状、血液検査所見、滲出液の解析などか
ら行われるが、非滲出型 FIP では特異的な症状がなく、非
侵襲的な診断方法が存在しないことから生前の確定診断は困
難である場合が多い。今回、腸間膜リンパ節の肉芽腫性病変
組織を用いた RT-PCR により生前に非滲出型 FIP の確定診
断に至った猫の症例に遭遇したので、その診断方法について
検討する。
2.材料および方法:症例は 10 ヵ月齢の日本猫、去勢雄、体
重 3.4kg で、1 週間前からの元気消失と食欲低下を主訴に来
院した。身体検査では体重減少と発熱が認められ、腹腔内に
腫瘤を触知した。血液検査では、非再生性貧血(Ht 31.4%)
と高蛋白血症(TP 11.8g/dL)、ならびに黄疸(T-Bil 1.8mg/
dL)を認めた。腹部 X 線検査では腹腔中央に軟部組織陰影
が見られ、腹部超音波検査を行うと右腎尾腹側に約 4 cm の
腫瘤状病変が観察され、腹腔内リンパ節の腫大も認められた。
FIP を疑い、第 1 病日よりプレドニゾロン 1mg/kg と抗菌薬
の投与を開始したが症状の改善はなく、血液材料での FCoV
の RT-PCR は陰性であった。第 13 病日に CT 検査を実施し
たところ、腫瘤は腸間膜リンパ節が腫大したものであり、開
腹下で一部を生検した。病理組織検査の結果は壊死性肉芽腫
性炎であり、組織材料での FCoV の RT-PCR で陽性の結果
を得た。このことから、本症例を非滲出型 FIP と確定診断
した。
3.結 果:当初プレドニゾロン 1mg/kg に対して症状の軽
減は認められなかったが、第 22 病日より 2mg/kg に増量し
たところ食欲の改善傾向がみられた。第 31 病日から猫イン
ターフェロンω 1MU/kg の投与を開始したが、効果は認め
られなかった。第 38 病日から流涎などの神経症状が観察さ
れ、再び食欲は低下し、第 51 病日に死亡した。
4.考察および結語:本症例では FCoV の RT-PCR において
血液材料では陰性、組織材料で陽性の結果が得られた。血液
材料で RT-PCR が陰性であっても、他の所見から FIP が疑
わしい場合には、積極的に組織生検を行う必要があると考え
られた。非滲出型 FIP の確定診断には侵襲性を伴う組織生
検が必要となり困難な場合が多いが、致死的な疾患であるか
らこそ、可能な限り、正確かつ早期な診断をすることが必要
であると考えられる。
演題番号:D6
排便困難仔猫への人工肛門術 ・術式と術後ケアに関する検討
○矢田 敦 1)、伊藤久美子 1)、中島寛史 2)、中島尚紀 2)、船津敏弘 3)
1)
矢田獣医科病院・三重県、2)中島獣医科病院・三重県、3)ハーレー動物病院・福岡県
1.はじめに:人工肛門とは、何らかの異常により消化管内
容物の排出が困難となった場合の対処法で、体外に出す消化
管により回腸瘻と結腸瘻に大別される。今回、排便困難から
成長不良がみられた子猫に対し結腸瘻人工肛門術を施し、そ
の術式と術後ケアについて検討した。
2.材料および方法:症例は、排便困難を主訴として来院し
た約6月齢、体重 2.2kg の雑種オス猫で、食欲や活動性に乏
しく便軟化剤などの投与では改善が認められなかったため人
工肛門術を実施した。人工肛門設置位置は左側腹壁で後肢の
干渉を受けない位置を選び、結腸断端を反転縫合せずに皮膚
から離れたままにする術式とした。術後1か月間は、指によ
るブジー処置をほどこした。術後抜糸までは、便により術部
が汚れないように管理し、その後しばらくは皮膚保護剤によ
り、成長後は幼児用ストーマケア製品を使用して管理した。
3.結 果:結腸断端は漿膜側から乾燥収縮し粘膜が外反し
始め 11 日後には漿膜部分はほとんど無くなり、18 日後には
粘膜が適度に盛り上がった人工肛門となった。瘢痕化による
狭窄は起きなかった。手術後、患猫は活発に動き食欲元気良
好となり人工肛門周囲皮膚も良好であったが、術後 36 日か
ら結腸脱を繰り返し起こし、軟便にもなり周囲皮膚が炎症を
おこした。このため追加手術として結腸腹壁固定などを実施
した。追加手術後は、結腸脱はみられなくなった。しばらく
は便汚れに起因する皮膚炎を起こすこともあったが、体格が
大きくなり小児用ストーマケア製品を使用するようになって
からは良好に保たれた。
4.考察および結語:本報告のように結腸断端を切り離した
まま結腸開口部が皮膚から離れた状態とする術式は、手技が
簡易で、結腸引出量の微調整など術者に練度を要求せず、術
創保護も容易なため、選択枝の一つとなると考える。ブジー
処置は、瘢痕化狭窄防止に効果があることを飼主に説明し、
協力を仰ぐべきである。また体力のある動物では過度の腹圧
による結腸脱防止のために結腸腹壁固定術を同時に施すこと
を考慮すべきである。皮膚管理とQOLの観点からは、軟便
化防止の努力が必要であるとともに、小児用ストーマケア製
品を積極的に応用すべきと考える。術式や術後管理について
の情報不足による不安から避けられる傾向にあるが、骨盤腔
内腫瘍などによる強固な排便困難症例において人工肛門術応
用の機会は多いと考える。本報告が、その一助となることを
願うものである。
― 69 ―
演題番号:D7
カスタムメード型チタン製デバイスを用いて治療をおこなった単純性骨のう胞の犬の一例
○野尻紋美 1)、西戸達郎 1)、秋吉秀保 2)、大橋文人 2)、山口 力 1)
1)
ファーブル動物医療センター→ファーブル AM、2)大阪府大
1. は じ め に: 犬 の 単 純 性 骨 の う 胞(Unicameral Bone
Cyst、以下 UBC)の発生はきわめて少なく、既存の報告で様々
な治療がおこなわれているが未だ有効な治療法は定まってい
ない。UBC の多くは長管骨の関節面に近い骨幹端で発生す
るため、ひとたび病的骨折が起こるとその再建は困難となり、
断脚もしくは関節固定等の救済的な治療をおこなうのみとな
る。患肢の機能を温存するためには病的骨折予防を目的とし
た治療が必要である
2.材料および方法:症例は 55 ヶ月齢、シーズー、去勢雄、
7.2kg、左側手根関節腫大を主訴に来院した。レントゲン検
査において左橈骨遠位端に骨皮質が菲薄化し髄腔が顕著に拡
大した骨のう胞の形成を認めた。腫瘍の鑑別のため生検をお
こなったが腫瘍性変化は認めず、CT 検査でその他の部位へ
の転移所見も認めなかったため、UBC と診断した。病的骨
折予防の目的で、骨のう胞切除をおこない、切除により生じ
た橈骨遠位の広範な骨欠損部にカスタムメード型チタン製デ
バイスを挿入した。デバイスは、骨を撮影した三次元画像デー
タを基に、選択式レーザ溶融 (SLM) 法により欠損部位に適
合するよう造形されたデバイスである。UBC 切除後の骨欠
損部にデバイスを挿入し、骨の力学的な強度を上げる本治療
の有用性および術後経過について検討した。
3.結 果:術後 73 日で良好な骨癒合を認めたため、固定
強度を上げるためにおこなった一時的部分関節固定のプレー
トを除去した。術後 28 ヶ月の時点で X 線学的および肉眼的
にも骨のう胞の再発は認めず、術前と比較し運動機能も変わ
りなく良好に経過している。
4.考察および結語:病的骨折予防を目的とした UBC の治
療に、UBC の切除およびカスタムメード型チタン製デバイ
スの挿入は有効であると考えられた。また、カスタムメード
型チタン製デバイスはどのような骨欠損形態にも造形できる
ことから、より積極的な骨のう胞切除を必要とする動脈瘤性
骨のう胞や、現在のところ再建が困難な高エネルギー外傷や
骨腫瘍によって生じた長管骨の骨欠損にも応用できる可能性
が示唆された。今後、症例を蓄積することで UBC の治療法
および長期的な予後についてさらなる検討を行う必要があ
る。
演題番号:D8
猫の骨端部複雑骨折に対する整復固定
○織 順一、児玉竜成、佐々木隆博
おり動物病院
1.はじめに:近年、犬や猫の室内飼いが多くなり交通事故
による骨折が激減した一方、高層階や飼い主の手元からの落
下などによる骨折によく遭遇する。このような場合、長軸圧
迫により複雑な骨折を起こすことがあり、整復固定に苦慮す
る。特に小型犬や猫ではプレート (PL) や創外固定が適応で
ないことがある。今回我々は 2 頭の猫における骨折に対し髄
内ピン、ワイヤー、小 PL を用いて整復固定を行ったのでそ
の方法や結果について考察する。
2.材料および方法:症例 1,猫、去勢雄、4 歳、体重 4kg
が、外出後に左前肢を挙げているとのことで来院した。症例
2 は、猫、去勢雄、6 歳、体重 4.7kg が、3 階ベランダから
落下して左前肢を骨折したようだと来院した。身体検査その
他検査を実施したが、両猫患肢以外に異常は認めなかった。
次いでレントゲン検査を実施したところ、症例 1 は、左上腕
骨骨顆の Y- 骨折を伴った多骨折片楔状骨折がみられ、症例
2 は、左橈尺骨近位 1/4 位における多骨折片楔状骨折であっ
た。次いでこれら症例に外科的整復固定術を実施した。症例
1 では、術野確保のため肘頭骨切り術を行い、骨顆間のラグ
固定として海綿骨ネジを内側から外側に挿入し、そして皮質
骨ネジ 1 本を分離骨片の固定のため挿入し、骨幹部の骨折固
定にはピン 1 本を髄腔内に刺入した。次いで骨幹の分離した
骨片固定のためにワイヤー 2 本にて締結固定した。肘頭骨切
部はテンションバンド法で固定した。症例 2 の橈骨近位骨折
には 1.5mm7 穴 PL を用い、近位と遠位骨片に 2 本ずつネジ
を挿入し、2 本のワイヤーにて両骨片間の遊離骨片を固定し
た。次いで尺骨骨折には髄内ピンを最遠位まで刺入して、骨
折線の圧迫を加えるべく髄内ピンを絡ませた 8 の字テンショ
ンバンド固定を行った。術後両症例にロバートジョーンズ包
帯を施し、運動制限とレントゲン検査による経過観察を行っ
た。
3.結 果:両症例とも術後 3 ヶ月に臨床的化骨確認後抜ピ
ンを行い完治が得られた。その後、跛行や運動機能障害は見
られていない。
4.考察および結語:これら症例は骨サイズが小さく,その
上症例 1 は骨折部位に関節を含めた複数小骨片のある骨折で
あり,症例 2 は橈骨へのピン固定は不適応で最小 PL・ネジ
サイズでの固定が可能であった。尺骨には髄内ピンとテン
ションバンドワイヤーで強固に固定できた。これらの症例に
はピンとワイヤーによる整復固定法が極めて有効であったと
思われる。
― 70 ―
演題番号:D9
変性性脊髄症の病中期・前半で突然死し、脊髄病変を調査した犬の1例
石堂真司
石堂動物病院
1.はじめに:変性性脊髄症(以下 DM)はウエルシュコーギー
に好発する後肢不全麻痺から進行し四肢不全麻痺や呼吸不全
などを呈する慢性進行性の脊髄変性性疾患である.その病態
は,後肢の運動失調を主症状とする病初期,後肢の不全麻痺
と前肢への麻痺の拡大を示す病中期,頭頚部の動きの消失,
呼吸不全を示す病後期に大別される.今回,病中期 ・ 前半の
DM と診断した症例が突然死したので,その脊髄病変の分布
について調査した.
2.材料および方法:症例はウエルシュコーギー・ペンブロー
ク,未去勢雄,年齢 10 歳 9 ヵ月,体重 12.5kg,両後肢不全
麻痺で来院.犬種および脊髄圧迫で圧痛を認めないことから
DM を疑い,MRI 検査および SOD1 遺伝子検査を実施した.
MRI 検査では第 12 胸椎~仙椎において多発性の椎間板ヘル
ニアを認めたが,圧迫の程度も軽症で両後肢起立・歩行不可
能の原因となるものではなかった.SOD1 遺伝子には変異が
認められた.以上の結果から DM と診断した.治療は自宅
での理学療法プログラムの実施による経過観察とした.車椅
子補助のもと前肢を使っての歩行が可能で良好に経過してい
たが,第 423 病日に突然,呼吸速拍状態,高体温,意識レベ
ルの低下の症状を示し,入院治療するも急死した.ご家族か
らの献体の申し出があったので死後剖検を実施した.
3.結 果:死後剖検の結果は,脊髄全体にわたり白質にお
いて様々な程度に変性性病変(白質軸索変性 )が認められ
たので DM と確定診断した.第 1 頚髄〜 7 腰髄まで左右側
策において,LFB 陽性の髄鞘は減少し好酸性領域が増加し
ていた.特に第 1 胸髄〜第 5 腰髄までは側索に加え背索にも
病変が見られた.また,肺にはうっ血と水腫が認められ呼吸
不全が直接の死因であると考えられた.
4.考察および結語:臨床的には病中期 ・ 前半と考えられるが,
すでに頚髄全域の側索背側領域に病変が存在していた.頚髄
の病変は重度でないが重度の胸髄病変の存在により呼吸筋群
の運動は低下・麻痺しており,そこに横隔神経の運動神経が
存在する第 4,5 頚髄に病変が生じたために,呼吸機能はさら
に悪化していたと思われる.そのために熱中症のようなスト
レスによって呼吸不全を発症し,死の転帰をとったと思われ
る.DM の病中期・前半においては,本症例のような脊髄病
変分布が存在することを認識して,十分な監視および介護指
導を行うことで,呼吸不全による不慮の死を避ける事が大切
であると思われた.
演題番号:D10
腸リンパ管拡張症と診断した犬3例における超音波検査の有用性の検討
○今西貴久、今西奈穂子
菜の花動物病院
1.はじめに:腸リンパ管拡張症(以下 IL)とは、腸の炎症
などからリンパ管の閉塞が起こりリンパ液内容が腸管に漏出
する病態のことで、蛋白漏出性腸症の疾患群の一つである。
確定診断は内視鏡による肉眼所見や病理検査を基本としてい
る。近年、超音波診断装置の性能向上により胃腸管の詳細な
評価が可能となった。そして特に腸管粘膜内に高エコー線状
パターンが認められた場合、IL の可能性が極めて高いと報
告されている。今回、重度の低蛋白血症を認めた犬 3 例を超
音波検査で IL と診断したので、その有用性について検討し
た。
2.材料および方法:
(症例 1)ジャックラッセルテリア ,
避 妊 雌 ,3 歳 ,7.7 ㎏。 腹 部 膨 満 で 来 院。 下 痢 症 状 は な し。
TP3.8,Alb1.2。( 症 例 2) ブ ル ド ッ グ , 雄 , 5 歳 , 26kg。2
年前から冬季に小腸性下痢の病歴。大量の水様便で来院。
TP3.3,Alb1.4。(症例 3)ボストンテリア , 雌 , 9 歳 , 5.8kg。
2 年前から軟便~水様便の病歴。来院時水平眼振、横臥状態。
Alb1.0。3 症例共、腹部超音波検査を行い、腸管粘膜に高エコー
線状パターンを認めた為、IL と診断し、プレドニゾロン(以
下 PRE)1mg/kg/ 日で開始した。
3.結 果:
(症例 1)5 日後 TP、Alb 共に増加したが PRE
を漸減すると Alb 値が低下するので、アザチオプリンを追
加するも効果がなかった。そこでメチルプレドニゾロン(以
下 MP)錠に変更したところ徐々に増加し、615 病日現在
Alb3.0 前後で推移している。
(症例 2)PRE 投与 4 日後 TP、
Alb 共に増加し下痢も治まった。その後漸減でき、510 病日
現在 Alb2.2 で推移している。(症例 3)7 日後 TP、Alb 共
に増加し下痢も治まった。1 ヶ月後、不全麻痺を伴うが起立
可能となった。
4.考察および結語:3 症例共、ステロイドによる初期治療
に速やかに反応した。その後漸減すると蛋白の低下が見られ
たが、ステロイドの量や種類を変える事により、症例 1,2 で
は長期間良好に維持できた。症例 3 も神経症状は残るもの
の、初診時より改善した。これら 3 症例の経過の長さと超音
波所見から、IL である事が極めて高いと思われる。重度の
低蛋白血症時における麻酔や生検などの侵襲性の高い処置に
は合併症の恐れがあるが 超音波検査は非観血的に実施でき
る為、麻酔リスクのある個体でも有用と思われた。
― 71 ―
演題番号:D11
神経学的に腰髄病変が疑われた髄膜脳脊髄炎のイヌの1例
○松永大道 1)、中本裕也 2)、鈴木真樹 3)、植村隆司 4)、小澤 剛 5)
1)
4)
おざわ動物病院・京都府、KyotoAR、2)KyotoAR、日本動物高度医療センター、3)さくら動物病院・大阪府、
KyotoAR、5)KyotoAR、おざわ動物病院・京都
1.はじめに:イヌの髄膜脳脊髄炎の多くは免疫介在性疾患
であることが投薬に対する治療反応から推測されており、一
般的に急性進行性とされている。また、長期的な予後は不良
とされている。各種検査所見から多発性の髄膜脳脊髄炎が疑
われた症例を経験し、髄膜脊髄炎を疑う症例に対する髄膜脳
炎の併発確認の重要性について検討した。
2.材料および方法:症例はマルチーズ、1 歳 7 ヶ月齢、避
妊雌、2.5㎏。10 日前からの両後肢のふらつきを主訴に主治
医を受診し、精査を目的に当センターに紹介来院した。症状
は無治療にて改善傾向を示していた。血液検査、X 線検査で
の明らかな異常は認められなかった。神経学的検査では両後
肢の固有位置感覚の低下を伴った上位運動ニューロン徴候が
認められたため、第 3 胸髄から第 3 腰髄(T3-L3)領域にお
ける病変が疑われた。主治医の希望から、頭部および頸胸腰
髄の MRI 検査・脳脊髄液(CSF)検査を行った。
3.結 果:MRI 検査にて、延髄尾側の正中領域に、T2 強
調画像・FLAIR 画像で高信号、T1 強調画像で等〜軽度な低
信号、ガドリニウム(Gd)によって増強されない領域が認
められた。また、第 2 腰髄から第 3 腰髄領域の脊髄正中から
右側寄りに、T2 強調画像で軽度な高信号、Gd による増強効
果が不明瞭な領域が認められた。さらに、第 2 頸髄から第 5
胸髄にかけて脊髄中心管の拡張が認められた。CSF 検査で
は、細胞数および蛋白量の上昇が認められた。検査結果から
原因不明の髄膜脳脊髄炎と診断した。検査結果からプレドニ
ゾロンを 1.5mg/kgSID で開始し、現在漸減中であるが経過
は良好である。
4.考察および結語:本症例は、症状および神経学的検査か
ら T3-L3 領域における病変が疑われた。しかし、MRI 検査
では延髄尾側にも腰髄病変と類似した信号強度異常が認めら
れた。本症例の神経学的検査では前肢における明らかな異常
を検出できなかったことから、神経学的検査が検査者の主観
的検査である点を強く再認識した。頭部 MRI 撮影は主治医
の希望から他疾患の除外を目的に行ったが、結果として髄膜
脳炎併発の発見につながった。本症例から、脊髄病変を疑う
症例において画像検査で症状に合致する病変が認められた場
合でも、炎症性疾患が疑われる場合には脳における病変の併
発の有無を確認することが、診断、症例の予後判定、オーナー
へのインフォームドコンセントにおいて極めて重要であると
考えられた。
演題番号:D12
放射線治療と外科治療を行った鼻腔内軟骨肉腫の 2 例
○田戸雅樹、宇根 智
ネオベッツ VR センター
1.はじめに:イヌの鼻腔内腫瘍は周囲の骨組織に浸潤する
ため、減容積手術を行っても早期に再発し、外科単独では生
存期間の延長は得られない。したがって第一選択は放射線治
療だが、その反応により予後は左右される。しかし軟骨肉腫
は放射線治療に抵抗性である事が多く完全寛解に至ることは
少ない。したがって外科治療との併用が選択されるが、これ
までの鼻腔内腫瘍に対する外科治療と放射線治療の併用の報
告は術後の再発遅延に重きを置いたものであった。今回、鼻
腔内軟骨肉腫に対して、術前放射線治療を行い部分寛解が得
られてから外科手術を行った症例と、術後に補助治療として
放射線照射を行った 2 例を比較検討する。
2.材料および方法:症例1は 15 歳 5 ヵ月齢の雑種犬、去
勢雄で、努力性呼吸の主訴から鼻腔内 CT 検査と組織採材を
行い、鼻腔内軟骨肉腫と診断。常電圧放射線装置を用いて総
線量 40Gy(10 回分割照射、1回 / 週 ) を照射。部分寛解が得
られたが臨床症状の改善はみられず、鼻骨切開にて鼻腔内腫
瘍の摘出を行った。症例 2 は 10 歳 4 ヵ月齢の M. ダックス
フント、未去勢雄で鼻づまりと鼻出血を主訴に来院し CT 検
査と生検を実施。間葉系腫瘍疑いと診断。鼻の閉塞症状が強
いことから、診断確定と臨床症状改善を目的に鼻腔内腫瘤摘
出を実施。術後病理検査にて軟骨肉腫と診断。再発抑制を目
的に放射線治療を同様のプロトコールで実施した。
3.結 果:両症例とも診断時には骨への浸潤が認められ、
進行の程度は同程度であった。症例 1 は診断後放射線治療を
開始し、3 ヵ月後に手術を実施。診断後 6 ヵ月経過した現在
も再発の徴候は認められていない。症例 2 は術後 2 週から放
射線治療を開始。最終放射線治療時の CT 検査では再発は認
められなかったが。診断時より 6 ヵ月後の CT 検査で再発を
確認した。
4.考察および結語:イヌの鼻腔内腫瘍は骨浸潤により外貌
の変形が認められる事があり、その場合の中央生存期間は
133 日である。両症例とも外貌の変化が認められていたにも
かかわらず、症例 1 では 6 ヵ月経過時点で完全寛解が維持さ
れている。軟骨肉腫は腺癌と比較すると進行が遅いが、それ
ゆえに放射線感受性が低い腫瘍である。放射線治療単独では
完全寛解に至らず、外科手術も選択されうる。今回、放射線
治療と外科治療を併用することにより2症例とも既知の報告
と比較して、良好な効果が得られた。さらに今回の 2 例にお
いては術前照射がより良好な腫瘍の抑制が得られたのではな
いかと考えられた。
― 72 ―
演題番号:D13
くしゃみ、鼻汁など上部気道症状が認められ全身麻酔下で検査を行った犬 22 症例
○鈴木敏之 1)、浦野充夫 2)、東尾直樹 1)、猪子景子 1)、鈴木幸恵 1)、南 信子 2)、奥田綾子 3)
1)
甲賀すずき動物病院、2)南動物病院、3)Vettec Dentistry
1.はじめに:くしゃみ、鼻汁などの上部気道症状は、原因
が上部気道に存在する場合と、上顎歯や口蓋に病態が存在し、
二次的に症状を呈している場合がある。鼻腔内原発の原因は、
CT 検査など二次診療施設での検査が必要となるが、口腔内
に原因がある場合は、視診、触診、口腔内 X 検査など一次
診療施設で診断が可能となる例が多いと思われる。犬 22 症
例について、上部気道症状を呈した原因を調査した。
2.材料および方法:2009 年 1 月から 2012 年 12 月までの 4
年間に、くしゃみ、鼻汁、鼻出血で来院した症例のうち、全
身麻酔下での検査を実施した犬 22 症例で、口腔内検査を実
施した。上顎歯周囲で深いポケットがあったものは、24 ゲー
ジ留置針外筒を用いた通水検査を実施し、口腔鼻腔瘻があっ
た場合は、抜歯を含む歯周治療を行った。口腔内に原因とな
りうる病態を認めなかった場合は、頭部 X 線検査、口内法
による X 線検査を実施し、異常が疑われた症例は CT 検査
を行った。
3.結 果:歯周炎と診断した症例は 15 例であった。口腔
鼻腔瘻は 12 例で認め、犬歯が最も多く、次いで、第 2、第
3 前臼歯で多く認められた。悪性黒色腫を認めた 1 例を除
く 11 例は、治療後に症状は改善した。歯周炎は存在しても、
口腔鼻腔瘻を認めない 3 例は、歯周炎治療後に症状は改善し
た。歯肉炎のみの 2 例は、歯科治療後に症状は改善し、更な
る鼻腔内検査には至らなかった。歯周疾患が認められなかっ
た 3 例は、CT 検査、細胞診を実施し、鼻炎と診断した。鼻
出血が認められた 2 例は、X 線検査、CT 検査、病理組織学
的検査にて、悪性上皮系腫瘍と診断した。以上より、上部気
道症状の原因は、歯周炎による口腔鼻腔瘻が 11 例 50%で、
口腔鼻腔瘻はないが、重度の歯周炎が上顎歯に認められる症
例が 3 例 14%、
合わせて 64%の症例が歯周炎と関連していた。
一方、鼻炎や鼻腔内腫瘍が原因であったものは、5 例 23%で
あった。
4.考察および結語:上部気道症状を呈した症例で、歯周炎
が局所でも疑われた場合は、全身麻酔下での口腔内検査が重
要と思われた。口腔鼻腔瘻の診断は、プロービング、24G 留
置針の外筒を用いた通水検査、歯科用 X 線検査など一次診
療施設で実施できる検査で診断が可能であった。プロービン
グと X 線検査のみでは、口腔鼻腔瘻の診断に苦慮した症例
においても、24G 留置針外筒を用いた通水検査は有用と思わ
れた。本調査からは、口腔鼻腔瘻の診断に、CT 検査の必要
性が感じられた症例は認められなかった。
演題番号:D14
ヒトの食品交換表を利用したイヌ、ネコの糖尿病の手作り食の検討
清水いと世
溝口動物病院・兵庫県
1.はじめに:我々獣医師は、イヌ、ネコに対して、総合栄
養食のペットフードを推奨し、疾患時にはそれに応じた療
法食を勧めることが多い。しかしながら、手作り食を希望す
る飼い主や、療法食を利用できない症例には、手作りによる
食事療法の指導を求められることを経験する。『糖尿病食事
療法のための食品交換表』(日本糖尿病学会編、糖尿病食事
療法のための食品交換表第 6 版、日本糖尿病協会、文光堂、
2002 年)
(以下、食品交換表)とは、ヒトの糖尿病患者の食
事療法のテキストであり、日本糖尿病学会が作成している。
この食品交換表がイヌ、ネコの糖尿病の手作り食の献立作成
に利用可能かどうかを検討した。
2.材料および方法:食品交換表が、イヌ、ネコの糖尿病の
手作り食の献立作成に利用できるかどうか、さらに、ペット
フードにおいて推奨されている AAFCO 養分基準を満たす
ことが可能かどうかを検討した。
3.結 果:食品交換表の基本単位である 1 単位はイヌ、ネ
コも 80kcal として計算できると思われた。イヌ、ネコの糖
尿病に推奨される三大栄養素のエネルギー%が指示単位に振
り分けられるか検討した結果、今回検討した 3 推奨のうちひ
とつは食品交換表の細分類を利用する必要があったが、すべ
ての推奨において振り分けは可能であった。実際に献立作成
を行い、AAFCO 養分基準の維持期の栄養要求量と照合する
と、基準を下回る成分があることがわかった。
4.考察および結語:今回、各食品の熱量はヒトで利用され
ている食品成分表の熱量を利用したが、イヌ、ネコでは利用
率やエネルギー換算係数は異なると考えられる。その差を調
査するためには、実際に給餌を行い、代謝率を調べる必要が
あると思われる。また、長期給餌に用いるには、栄養のバラ
ンスも考慮する必要があり、AAFCO 養分基準を満たすよう
に試みた。しかし、手作り食のみでは基準に達しにくい成分
があり、食品で補う努力ができるのか、ビタミン、ミネラル
剤等を併用するのかを検討する必要があると思われる。食品
交換表は、イヌ、ネコに利用するにはいくつかの変更点が必
要であるが、イヌ、ネコの糖尿病の手作り食の献立作成の一
助になると思われる。
― 73 ―
演題番号:D15
前十字靭帯断裂の続発が疑われた頸部椎間板ヘルニアの犬の 1 例
○中本裕也 1)、加仲正彦 2)、作野幸孝 3)、吉田恭治 3)、植村隆司 4)、松永 悟 5)、小川博之 5)、小澤 剛 6)
1)
(株)KyotoAR,(株)日本動物高度医療セン、2)かなか動物病院、3)吉田動物病院、4)(株)KyotoAR、
(株)日本動物高度医療センター、6)(株)KyotoAR, おざわ動物病院
5)
1.はじめに:頸部椎間板ヘルニア(C-IVDD)は犬におい
て好発疾患とされ、ダックスフンド、ビーグル、チワワなど
での発症が多いとされる。主な臨床徴候は急性発症する頸部
痛や四肢の不全麻痺などである。手術後の合併症に関する記
述は認められるが、脊髄軟化症を除く臨床症状発症後の続発
疾患に関する記述は認められない。今回、前十字靭帯断裂の
続発が疑われた C-IVDD の犬について検討した。
2.材料および方法:症例は 8 歳 11 ヵ月齢のチワワ、未去
勢オス、体重 4.5kg で、急性発症した左前肢の跛行・疼痛を
主訴にかかりつけ医を受診した。非ステロイド系鎮痛剤の投
与による治療を開始したが、その 2 日後に左後肢の跛行・左
側への転倒が認められるようになり、当施設へ紹介来院した。
来院時、四肢での起立歩行可能だったが、左側前後肢への負
重は軽度であり、重心の右側変位が認められた。身体一般検
査では、左側膝関節領域における不安定性が認められたもの
の、明らかな疼痛は呈していなかった。神経学的検査では、
左前肢の軽度な下位運動ニューロン徴候・他肢の軽度な上位
運動ニューロン徴候が認められた。明らかな頸部痛は誘発さ
れなかったが、左側への頭位回旋に抵抗を示した。下部頸髄
疾患が疑われたため、頸部 MRI 検査を実施した。MRI 検査
所見・神経学的検査所見などから C5-6 における C-IVDD が
本症状の責任病巣と判断し、外科的治療(C5-6 におけるベ
ントラルスロット術)を実施した。
3.結 果:手術後 2 日目には左前肢における神経学的異常
は消失した。しかし、左後肢の負重の低下・軽度に拳上させ
る症状が持続していたことから、左膝関節部の再度の触診・
X 線検査を実施したところ、前十字靭帯断裂が疑われた。本
症例では内科的維持ではなく、外科的に関節包外縫合術を実
施した。その後、左後肢の症状は改善した。
4.考察および結語:発症時に認められた左前肢における異
常や疼痛の原因は、C-IVDD に起因していたと考えられた。
また、臨床経過を考慮すると、C-IVDD に前十字靭帯断裂が
続発した可能性が考えられた。今回、犬種・臨床症状・神経
学的検査所見などから頸部神経疾患であるという先入観を
持って症例の評価を実施してしまったため、初診時に左側膝
関節部の詳細な評価を怠った。今回の経験から、C-IVDD に
前十字靭帯を含む関節疾患が続発する可能性が考えられると
ともに、身体一般検査にて認められた各種の異常を慎重に評
価する必要性を再認識した。
演題番号:D16
頭部捻転斜頚、眼球震盪などの小脳前庭疾患を発症した犬の MRI 検査結果の検討
○大道嘉広、有里正夫
兵庫ペット医療センター
1.はじめに:頭部捻転斜頚、眼球震盪は比較的よく遭遇す
る神経症状であり、一般的には小脳前庭疾患が疑われる。原
因は様々で、診断には MRI 検査が有用とされている。今回
演者らは小脳前庭疾患が疑われ MRI 検査を行った犬におい
て犬種や年齢などのシグナルメント、臨床症状、画像診断の
結果を検討した。
2.材料および方法:症例は 2012 年 4 月から 2013 年 3 月ま
でに小脳前庭疾患を発症し MRI 検査を行った犬 20 例であ
る。神経学的検査により末梢性と中枢性に鑑別し全身麻酔下
で MRI 検査を行った。
3.結 果:MRI 検査時の平均年齢は 11 才 3 ヶ月 (1 才 9 ヶ
月〜 15 才 9 ヶ月 )、平均体重 9.8kg(2.2 〜 27.5kg)、 性別は
雄 9 例 ( 去勢雄 5 例 ):雌 11 例 ( 避妊雌 8 例 )、犬種はシー
ズー・雑種犬・ミニチュアダックスフンド:各 3 例、柴犬:
2 例、ヨークシャテリア・チワワ・マルチーズ・パピヨン・
シェルティー・ジャックラッセルテリア・ボクサー・ラブラ
ドールレトリバー・チャイニーズクレステッド:各 1 例であっ
た。神経学的検査により末梢性と診断した症例は 14 例、中
枢性は 5 例、奇異性 1 例であった。認められた神経症状は頭
部捻転斜頚 19 例、運動失調 11 例、眼球震盪 8 例、頭部旋回
1 例であった。MRI 検査所見では、前庭、脳幹、小脳に異常
を認めなかった症例 ( 特発性前庭障害 ) は 12 例、中耳・内耳
炎 5 例、小脳梗塞 1 例、小脳炎 1 例、脳幹部腫瘍 1 例であっ
た。また、特発性前庭障害が疑われた症例に、慢性期大脳梗
塞巣が 5 例、大脳鎌から発生している腫瘤が 1 例、大脳炎が
1 例認められた。
4.考察および結語:今回末梢性前庭障害と診断した 17 例
中、中耳・内耳炎は 5 例 (29%)、特発性は 12 例 (70%) であっ
た。以前に報告されている末梢性前庭障害 83 例では中耳・
内耳炎が 49%、特発性は 39% であったとされており今回の
結果と大きな違いが見られた。本研究は画像検査のみで診断
を行っているため、画像で検出できない程度の中耳・内耳炎
が存在している可能性もあるため、耳鏡による鼓膜検査や鼓
膜穿刺、脳脊髄液検査などを行い、より診断精度を高める必
要があると考えられる。神経学的検査により末梢性と診断し
たにも関わらず MRI 検査では中枢に異常を認めた症例もあ
り積極的に MRI 検査を行った方がよいと思われた。また症
例数を増やして治療反応などの予後調査についても今後検討
したいと思う。
― 74 ―
演題番号:D17
胸腰部椎間板ヘルニアの CT 画像上の特徴と神経学的重症度および予後との関連性
○中西稚菜 1)、秋山今日子 1)、中西 中 1)、原崎裕介 1)、真下忠久 1)、安田 準 2)
1)
舞鶴動物医療センター・京都府、2)岩大
1.はじめに:犬の胸腰部椎間板ヘルニア (IVDH) において、
造窓術が再発予防に効果的であるとの報告がある。発症部位
のみの片側椎弓切除における再発率と再発症例の特徴、およ
び逸脱した椎間板物質の脊柱管内圧迫率とグレードおよび予
後との関連について検討した。
2.材料および方法:当院にて、CT 後発症部位のみの片側
椎弓切除を実施し、手術にて IVDH と診断した犬 101 例 (94
頭、135 椎間 )。神経学的検査および CT にて IVDH のグレー
ドおよび部位を確定し、片側椎弓切除 (1 症例にのみ背側椎
弓切除 ) を実施した。術後歩行機能が改善した後に、神経学
的検査によって悪化が認められたものを再発とした。またヘ
ルニア物質長径の L2 椎体長に対する圧迫率 (L1/L2) および
ヘルニア物質の脊柱管内における高さの占拠率 (H1/H2) を算
出し、グレード間と予後との相関関係を比較検討した。
3.結 果:平均年齢 7 歳、M.DAX は 79/94 例 (84%)、術前
のグレードはそれぞれⅡ 12 例、Ⅲ 46 例、Ⅳ 21 例、Ⅴ 22 例
であった。外科手術後の歩行可症例は 83/101 例 (82.1%)、歩
行不可症例は 15/101 例(14.9%)、脊髄軟化症による死亡症
例は 2 例、その他死亡症例 1 例であった。発症部位のみの片
側椎弓切除術後の、G2 以上の内科処置症例は 8/94 例 (8.5%)、
再手術症例は 6/94 例 (6.4%)、さらに再再手術症例は 1/94 例
(1.1%) であった。再手術症例は全て M.DAX であり、6 頭中
4 頭が雄であった。L1/L2 はグレードⅡとⅤ間にのみ有意差
が認められた (p < 0.05)。一方 H1/H2 では、グレードⅡと他
のグレードとの間に有意差が認められた。圧迫率と予後には
関連性は認められなかった。
4.考察および結語:発症部位のみの片側椎弓切除術による
再発率は過去の報告と大きな相違は見られなかった。外科手
術が必要であった再発症例の 1 例を除く全症例において、過
去の発症部位の頭側または尾側の隣接した椎間板での発症で
あった。過去の報告において、予防的造窓術の実施症例の再
発率が本研究よりも低いことからも、予防的造窓術の実施に
より再発防止が可能であった症例もあると考えられた。ただ
し圧迫率と予後には相関がなく、その他の要因が関係してい
ると考える。
演題番号:D18
伴侶犬用の歩行補助器具の開発
○三重慧一郎、林 聡恵、清水純一郎、大橋文人
大阪府大・獣医外科
1.はじめに:伴侶動物として飼育されている犬の頭数は約
1200 万頭であり、そのうち 10 歳以上の高齢犬は約 28%を占
めている(2012 年、一般社団法人ペットフード協会)
。一方、
犬の歩行障害は、高齢化や肥満、筋骨格系および神経系の疾
患などによりもたらされ、これらの疾患は加齢とともに増加
する傾向にある(アニコム家庭どうぶつ白書 2012)
。歩行障
害は犬自身の QOL を低下させるのみならず、飼い主も肉体
的および精神的負担を強いられる。そこで本研究では、様々
な疾患や高齢化、肥満などにより円滑な歩行が困難となった
伴侶犬の健康維持および飼い主の負担軽減のために、支持重
量を調節可能なバネ牽引を利用した伴侶犬用歩行補助器具を
開発した。
2.材料および方法:供試犬 25 頭(体重 4.8 ~ 34.0kg)を用
いて、前肢あるいは後肢の肢端部がわずかに接地する状態で
の牽引力を測定し、前肢および後肢支持重量の回帰直線を求
めた。さらに、健常犬 3 頭(体重 10kg 程度の中型犬 2 頭、
体重 30kg 程度の大型犬 1 頭)および股関節形成不全の大型
犬 1 頭を用いて、歩行補助器具装着時の歩行状況および前肢・
後肢の最適な支持重量を検討した。
3.結 果:前肢および後肢支持重量(y)の回帰直線は、
前肢 y=0.75 ×体重 -0.59(kg)
、
後肢 y=0.33 ×体重 +0.41(kg)
となった。前肢、後肢ともに単回帰分析にて回帰直線は有
意であった(危険率 5% 未満)。歩行補助器具の装着試験に
おいて、体重 10 kg 程度の健常中型犬では、前肢 2kg、後肢
1kg のバネ牽引力により円滑な歩行を妨げることなく四肢
の負重を軽減できた。体重 30kg 程度の健常大型犬では、前
肢 3kg、後肢 3kg のバネ牽引力では四肢の負重軽減に不十
分であると推測された。股関節形成不全の大型犬では、前肢
3kg、後肢 1kg のバネ牽引力により円滑な歩行を妨げること
なく四肢の負重を軽減できた。
4.考察および結語:前肢・後肢支持重量の回帰直線および
健常中型犬の歩行補助器具装着試験結果から、健常犬では後
肢よりも前肢にかかる負重がより大きく、健常犬での前肢・
後肢のバネ牽引力比は 2:1 が適当であると推測された。し
かしながら、様々な疾患で歩行障害を呈している犬では前肢
と後肢の負重の比率が健常犬と異なる可能性が有り、症例ご
とに四肢のバネ牽引力を調整する必要性があると考えられ
た。
― 75 ―
演題番号:D19
磁気共鳴画像
(MRI)
にて孔脳症と診断した 2 例
○武藤陽信、中野康弘、加藤太司、工藤徹也、浦野充夫、村上善彦、中川恭子、南 毅生
南動物病院・三重県
1.はじめに:孔脳症とは、大脳半球全層の欠損を伴う形態
異常である。欠損部は脳脊髄液 (CSF) に置換され、脳室内腔
はくも膜下腔と連絡している。診断は MRI による画像診断
に基づく。人医療領域で、孔脳症は病理組織学的に 2 つのタ
イプに分類されている。タイプ 1 は周産期異常、脳虚血、炎
症、外傷などの原因により生じると定義されており、タイプ
2 は遺伝的な神経細胞の遊走異常により生じると定義されて
いる。獣医療領域では孔脳症の発生原因としてタイプ 1 が考
えられている。今回、発作を主訴に頭部の MRI を撮像した
犬と猫で孔脳症が認められたため、MRI 所見および治療に
ついて検討した。
2.材料および方法:症例 1 はヨークシャー・テリア、3 歳
2 ヶ月齢、未去勢雄で、強直間代性発作と左旋回運動を主訴
に近医を受診した。当院にて頭部 MRI を撮像した(磁場強
度 1.5T)
。症例 2 は雑種猫、3 歳齢の未避妊雌で、2 歳齢時
に初発の強直間代性発作が生じたため近医を受診した。その
後、発作の頻度が上昇してきたため、当院にて頭部 MRI を
撮像した。
3. 結 果:2 症 例 共 に、T1・T2 強 調 画 像、FLAIR 画 像、
ガドリニウム造影 T1 強調画像を撮像した。症例 1 は、左側
嗅脳室・側脳室領域から大脳半球全域にわたり、楔状にくも
膜下腔と連絡のある脳実質の欠損および CSF と等信号の液
体貯留が認められた。造影増強は認められなかった。症例 2
は、左側扁桃核・海馬領域から側頭葉にかけ、側脳室とく
も膜下腔に連絡のある脳実質の欠損および CSF と等信号の
液体貯留が認められた。造影増強は認められなかった。CSF
中の細胞数および蛋白質濃度は正常であった。症例 1 は、診
断後から現在まで約 1 年 6 ヶ月間、フェノバルビタールの内
服を行なっており、発作は良好にコントロールできている。
しかし、左旋回運動は現在も間欠的に認められている。症例
2 は、フェノバルビタールとゾニサミドを併用で内服してい
る。治療への反応は良く、現在まで約 4 ヶ月間、発作や神経
症状は認められていない。
4.考察および結語:今回の 2 症例は共に MRI 所見から孔
脳症と画像診断した。しかし、孔脳症の発生原因は共に不明
であった。現在まで、発作は 2 例共に抗てんかん薬治療に良
好な反応を示している。今後、発作頻度の上昇や、神経症状
の悪化が認められる場合には、頭蓋内圧の低下を目的とした
脳室腹腔シャント術や内科管理が考慮される。今後、更なる
孔脳症の発生原因や治療に関する研究が望まれる。
演題番号:D20
硬膜内に逸脱していた腰部椎間板ヘルニアの犬の 2 例
○黒川晶平、岩松正一、加瀬 純、松田憲児、山本竜平、山城徳之、嶋崎 等
千里桃山台動物病院
1.はじめに:犬の胸腰部椎間板ヘルニアは日常的に遭遇す
る疾患だが、硬膜内に逸脱した胸腰部椎間板ヘルニアの報告
はほとんどない。今回、腰部椎間板ヘルニアと診断して片側
椎弓切除術を実施したが、硬膜外にはヘルニア物質が認めら
れず、硬膜切開を実施してヘルニア物質を摘出した 2 例に遭
遇したため、通常の椎間板ヘルニアとの比較検討を行った。
2.材料および方法:症例 1 はミニチュア・ダックスフン
ド、8 歳、未避妊雌。2 日前からの右後肢優位の両後肢麻痺
を主訴に紹介来院した。神経学的検査と CT・MRI 検査から
Grade3 の L2-3 右椎間板ヘルニアと診断した。症例 2 はミニ
チュア・ダックスフンド、8 歳、避妊済雌。2 年前に椎間板
ヘルニアになり、他院で実施した T13-L1 と L3-4 の右片側椎
弓切除術で改善していたが、前日からの右後肢優位の両後肢
麻痺を主訴に紹介来院した。神経学的検査と CT・MRI 検査
から Grade4 の L2-3 右椎間板ヘルニアと診断した。2 例とも
片側椎弓切除術を実施したが、硬膜外にはヘルニア物質は認
められず、硬膜切開を実施してヘルニア物質を摘出した。2
例とこれまで当院で手術を実施した椎間板ヘルニア 526 例と
臨床症状、画像所見、術後経過を比較した。
3.結 果:2 例とも臨床症状、神経学的検査と画像所見に
て特異的な所見は認められなかった。症例 1 は術後 11 日で
起立、歩行が可能となったが、右後肢の神経学的改善は認め
られなかった。症例 2 は術後 2 週間で左後肢の随意運動が認
められ始めたが、術後 3 カ月でも起立、歩行は不可能であっ
た。排尿障害は完全に改善していた。
4.考察および結語:硬膜内に逸脱したヒトの胸腰部椎間板
ヘルニア発生率は全椎間板ヘルニアの 0.27% と報告されてお
り、ヒトでも稀な病態である。当院での発生率は 526 例中 2
例と 0.38%だった。手術に際しては硬膜切開が必要となるた
め、術前の診断が非常に重要となるが今回の 2 例では臨床症
状、神経学的検査、画像検査所見いずれにおいても特徴的な
所見は認められなかった。ヒトでは長期間の腰痛の既往、急
速に進行する重篤な神経根症状を有することが多いと文献的
に言われているが、2 例とも急性発症であったことからも術
前診断は困難であると思われた。硬膜を切開するかの判断に
は術前検査の信頼性あるいは術中画像検査が必要であると思
われた。術後経過に関しては当院で実施した同程度の椎間板
ヘルニアと比較すると改善までに時間を要する可能性が示唆
された。
― 76 ―
演題番号:D21
フィプロニルの滴下投与用液剤を投与した猫から脱落した被毛はネコノミに対する殺虫効果を発現する
○深瀬 徹 1)、中村有加里 2)
1)
林屋生命研、2)林屋動物診療室、林屋生命研
1.はじめに:フェニルピラゾール系の殺虫薬であるフィプ
ロニルは、獣医学領域においては犬と猫に寄生するノミとマ
ダニ等の駆除薬として製剤化されている。これらのフィプロ
ニル製剤は一般に、投薬を行った動物の体表において薬物が
外部寄生虫に接触することによって、それらに対する駆除効
果を発現すると考えられているが、今回の試験では、投薬を
受けた猫から脱落した被毛もネコノミに対して殺虫効果を示
すことを確認した。
2.材料および方法:フィプロニルを有効成分とする滴下投
与用液剤(マイフリーガード猫用,フジタ製薬株式会社,共
立製薬株式会社)を有効成分として 10 mg/kg の用量で投与
した猫 30 頭の飼育環境から投薬 15 日後に脱落被毛を採取し
た。これらの被毛をシャーレに入れ、各々のシャーレに薬剤
の投与を行っていない犬または猫から採取したネコノミを 5
個体ずつ収容し、25℃の条件のもとで 24 時間にわたってネ
コノミのノックダウン状況を観察した。また、ノミ駆除薬を
投与していない猫 30 頭からも同様に脱落被毛を採取し、こ
れらについてもネコノミとの接触を実施して対照とした。
3.結 果:フィプロニルを投与した猫から得た脱落被毛を
収容した 30 個のシャーレのうち 19 個のシャーレにおいて、
被毛との接触開始から 24 時間以内にネコノミのノックダウ
ンが観察された。ノックダウンしたノミの数は 1 シャーレあ
たり 1 〜 5 個体であり、
シャーレによってバラツキが大きかっ
た。一方、無投薬の猫から採取した脱落被毛と接触させたノ
ミは、30 個のシャーレのうち 1 個のシャーレでノミのノッ
クダウンが認められたにすぎず、ノックダウンしたノミも 1
個体であった。
4.考察および結語:フィプロニルの滴下投与用液剤を投与
した猫から脱落した被毛と接触させたノミにノックダウンが
認められたことから、脱落被毛には、常にではないにしても、
しばしば薬物が付着しているものと考えられた。このことか
ら、ノミの駆除は動物の体表に限らず、その飼育環境におい
ても脱落被毛を介して成立しうることが推察された。
演題番号:D22
犬における皮膚糸状菌症に関連した化膿性肉芽腫性皮膚炎の 1 例
○中田美央、梅下雄介、築澤寿栄、高瀬奈美、舛方祐子、安田和雄
安田動物病院
1.はじめに:犬の皮膚糸状菌症は主に Microsporum canis,
Microsporum gypseum, Trichophyton mentagrophytes の 3
菌種が原因となる皮膚感染症である。通常、病変部には落屑
を伴う脱毛や紅斑、丘疹、脂漏、爪周囲炎、毛包炎が認めら
れる。また、化膿性の組織融解を起こし、二次感染を伴うケ
リオン禿瘡や真皮結節を形成する肉芽腫性皮膚炎(Mayocchi
肉芽腫)がまれにみられる。今回、皮膚生検によって、糸状
菌感染による化膿性肉芽腫と診断され、病変部の切除とグリ
セオフルビンの投与で良好に経過している症例について検討
を行った。
2.材料および方法:症例は 8 歳齢、雌のジャックラッセル・
テリアで、1 週間前からの右前肢肉球尾側の痒感を伴う皮膚
の膨隆性病変を主訴に来院した。病変部の直接鏡検では、細
菌、真菌ともに認められなかった。また、ウッド灯検査でも
陰性であった。プレドニゾロン (0.5-1mg/kg) の投与により
一時的な症状の軽減は認められたが、投与を中止すると痒感
はただちに再発した。第 44 病日、プレドニゾロンの 2 週間
の休薬後、全身麻酔下にて、病変部皮膚の切除生検を行った。
3.結 果:採取された組織の病理組織学的検査では、真皮
内には毛包周囲を主体として多数のマクロファージと好中球
を主体とする化膿性肉芽腫性炎症が認められた。また、形成
された肉芽腫内に認められる毛軸周囲の角質には多数の真菌
菌糸が認められ、真菌感染による化膿性肉芽腫性毛包炎と診
断された。術後、病変は良好に経過し、第 54 病日、グリセ
オフルビンの投与に先立ち、病変部の被毛を採取し DTM 培
地による培養を行ったが、
病原性糸状菌は検出されなかった。
その後、症例は副作用も認められず、良好に経過し、第 87
病日、病変は完全に消失したため、治療終了とした。
4.考察および結語:本症例では、病変部の臨床所見やウッ
ド灯検査、直接鏡検では診断に至らなかったが、皮膚生検を
行ったことで、確定診断および治療につながった。糸状菌感
染による化膿性肉芽腫の形成は、脱毛や丘疹などと比較して
一般的ではないが、皮膚糸状菌症の臨床所見は多彩であるた
め、視診のみで本症を除外することなく、一般皮膚検査にお
いて原因が確定しない場合には積極的に皮膚生検を行う必要
があると考えられた。
― 77 ―
演題番号:D23
猫伝染性腹膜炎被疑症例の腹水からの猫コロナウイルス RNA の検出
○相馬武久 1)、輪田真理 2)、田島朋子 3)
1)
マルピー・ライフテック(株)
、2)大阪府大、谷動物病院、3)大阪府大
1.はじめに:猫伝染性腹膜炎 (FIP) は猫科動物の免疫介在
性進行性感染症で、腸に感染した猫コロナウイルス (FCoV)
の突然変異体である FIP ウイルスに誘引されると考えられ
ており、腹水と胸水中からの FCoV RNA の証明は最も信頼
できる診断方法の一つと言われている。FCoV の感染率につ
いてこれまでに幾らかの報告があるが、わが国での FIP 発
生率に関する成績は見当たらない。そこで FIP 診断の目的
で提出された家猫の腹水中 FCoV RNA の検出率を検討した。
また RNA が検出された材料について遺伝子型 (I 型、II 型 )
も合わせて検討した。
2.材料および方法:2008 年 6 月~ 2013 年 5 月にマルピー・
ライフテックに提出された腹水 950 例について FCoV 3'UTR 遺伝子領域を増幅する RT-PCR を実施した。さらに
本遺伝子が検出された材料について Addie らの遺伝子型別
RT-PCR を実施した。
3.結 果:χ二乗検定により次の 2 群間に有意差が示され
た (p < 0.05)。オス (52.1%) >メス (37.1%)、1 歳未満 (88.0%)
> 1 歳以上 (28.1%)、純血種 (63.5%) >雑種 (35.6%)。そして
純血種の中でもスコティッシュフォールド (79.4%) とノルウ
エジアンフォレストキャット (93.3%) が有意に高く、アメリ
カンショートヘア (33.0%) が有意に低い値であった。さらに
RNA が検出された 431 例について遺伝子型を検討したとこ
ろ I 型の検出率 (83.5%) が II 型 (10.7%) に比べて有意に高く、
II 型が検出された例の 78.3% が 1 歳未満の純血種であった。
4.考察および結語:純血種が雑種に比べ高い検出率であっ
た成績は既報の FIP 発生率と一致する。しかし純血種の中
で高い又は低い検出率を示した品種は海外での成績とは必ず
しも一致しない。むしろわが国で高い又は低い FCoV 抗体
陽性率を示す品種と一致しており、FIP 発生率の品種差は国
や地域により異なることが明らかとなった。また既報では
FCoV の感染率に概して性差がないのに対して本研究ではオ
スで有意に高い検出率を示しており、FCoV 感染により FIP
を発症する頻度がオスの方が高いと推測された。また II 型
検出例が 1 歳未満の純血種に集中した成績は、純血種が幼齢
期にペットショップ等で犬とともに飼育されている可能性が
高いことを考慮すると II 型が I 型と犬コロナウイルスのリ
コンビナントであることを疫学的に示すものである。
― 78 ―
平成 25 年度 日本小動物獣医学会(近畿)
教育講演プログラム
E 会場(B3棟 202 号室)
テーマ:整形外科を極めよう
教育講演1(10:20 〜 11:50)
座長:長谷川貴史(大阪府立大学)
犬の肩関節疾患と肘関節形成不全の病態と治療
山口 力(ファーブル動物医療センター)
教育講演2(13:20 〜 14:30)
座長:秋吉秀保(大阪府立大学)
超小型犬の橈尺骨骨折治療
~キャスティング、髄内ピン法、創外固定法の適応~
米地謙介(アサヒペットクリニック本院)
― 79 ―
犬の肩関節疾患と肘関節形成不全の病態と治療
山口 力
ファーブル動物医療センター
動物スポーツメディスン
はじめに
肩関節、肘関節の疾患は、近年関節鏡技術の進歩によって病態がより理解できるようになり、
また鏡視下手術を行うことで低侵襲治療が可能になった。今回は関節鏡の画像を見ることで肩、
肘関節疾患の病態の理解を深め、外科的治療について解説する。
1.肩関節疾患の治療
肩関節の疾患は関節周囲組織の疾患が多く、一部の疾患を除いて X 線検査では確定診断がで
きない。診断は視診、麻酔下を含む触診、関節液の検査、X 線検査に続いて関節鏡検査を行う。
病態の診断には関節鏡検査が最も有効と考えられ、様々な疾患に鏡視下における低侵襲治療が
可能である。
1)離断性骨軟骨症
関節鏡による診断と治療が最も有効であると考えられる。中には X 線検査では明白な軟骨下
骨の欠損があるにもかかわらず、切開あるいは関節鏡下の視診では病変が見られないケースも
ある。こういった場合には、まだ軟骨が付着しておりフラップを形成していないことが考えら
れる。こういったケースでは関節切開あるいは鏡視下において病変部と思われる部位に数カ所、
先端の鋭い K ワイヤーやマイクロピックを用いて出血が確認できるまで軟骨表面から穿刺し軟
骨下骨との接着を促し軟骨がはがれ、フラップを形成するのを防止する。剥がれてしまった軟
骨フラップは関節切開か鏡視下で切除し、露出した軟骨下骨はシェーバーを用いてデブリドメ
ントを行い線維軟骨の再生を促す。この操作には関節鏡を用いた方法の方がすぐれている。関
節切開であると観察できる範囲が限られており、二頭筋腱の間に軟骨片が入り込んでしまった
場合など、見つけ出すことすらできない。関節鏡を用いた場合には関節内のほぼ全域にわたっ
て観察できるため、関節鏡検査並びに治療がすすめられる。
2)肩関節不安定症
肩関節疾患の中で最も多い原因が肩関節不安定症である。特に内側への不安定症が多い。激
しい不安定症のケースでは肩関節脱臼を引き起こす。外方にも不安定症が発生するが多くない。
臨床症状はあいまいではあるが、明白な跛行をしめす。診断は外転テストを行い、不安定症が
存在すれば、関節鏡検査でどの支持組織に問題があるのかを診断する。問題のある支持組織は
通常肩甲上腕靭帯か肩甲下筋である。診断が確定すれば開創によって支持組織を強化するよう
な方向に、アンカーあるいは骨孔を通じて縫合糸を固定する。
(肩関節内方脱臼と同様の方法)
3)二頭筋腱(部分)断裂、二頭筋腱炎
非常にアクティブなラブラドールに多いのが二頭筋腱部分断裂(図 1)で、レントゲン上に
― 81 ―
は明白な異常は認められないか、あるいは付着部分の小さな遊離状の骨片が見られることもあ
る。部分断裂、
二頭筋腱炎共に診断は関節鏡が最も確実でそのまま鏡視下で腱付着部を切断する。
4)肩関節脱臼(内方、外方)
肩関節脱臼はトイプードルに多発し、内方脱臼が外側脱臼に比べて多い。内方脱臼の場合、
不安定症と同様にアンカーあるいは骨孔を用いて縫合糸を解剖学的な位置に設置し安定化させ
る。
5)棘上筋、棘下筋の拘縮、石灰化
2.肘関節形成不全
1)内側鈎状突起分離症(FCP)
、medial compartment disease
内側鈎状突起分離症(以下 FCP)の原因は完全には分かっていない。しかし橈骨尺骨の長さ
の不一致が関与していることが考えられる(橈骨が短い)
。そのために尺骨内側の鈎状突起に
ストレスがかかり亀裂、分離、軟骨のダメージがおこると思われる。時間の経過した FCP の
症例では物理的に内側が擦れることによって上腕骨内側顆の軟骨が摩擦によって消失し激しい
痛みと変形性関節症が生じる。これは medial compartment disease(内側部分の疾患)と呼
ばれており全世界で治療に苦慮している。
(図 2)外科的には関節鏡あるいは関節切開によっ
て分離した鈎状突起の切除と尺骨骨切り術によって尺骨を短縮し、肘関節での不一致を改善さ
せる。しかしこれを行っても数ヶ月から数年は改善するものの、時間の経過とともに medial
compartment disease に至るケースが多い。上腕骨内側顆のダメージが進行した症例では、尺
骨と上腕骨の関節面で、軟骨が無い状態もしくはダメージを受けた状態で擦れ合うため激しい
疼痛が生じる。こうなってしまうと治療はきわめて困難で理論的には人工関節が理想というこ
とになる。しかし現在のところ安定的に良好な結果が出せる肘関節の人工関節は存在しない。
また現在の人工関節は術式がきわめて煩雑である。こういった状況下でダメージを受けた内側
部への加重を減じ、健常な肘関節の外測部分に加重増大させ疼痛の緩和と機能の改善を目標と
した治療がいくつか開発された。一つは上腕骨骨幹中央部で骨切りし、上腕骨近位骨片を外測
に移動させ、骨切り部分でステップ状に固定する方法(上腕骨スライディングオステオトミー :
SHO)。尺骨近位を骨切りして、ステップ状に固定を行い鈎状突起部分への負荷を減少させる方
法(POUL)。ダメージをうけた上腕骨と尺骨の関節面で、接触部分の一部に人工物を埋入し骨
同士が擦れ合わないようにする方法(CUE)などがある。いずれの方法も一定の効果があると
思われるが完治するものではない。今後の研究に期待しなければならない。
2)肘突起分離症
この疾患は前述したものとは逆の現象で尺骨が何らかの原因で短くなることに起因する。そ
のため肘突起に負荷がかかり分離する。主に大型犬にみられジャーマンシェパードやグレート
デンに多く見られる。5 ヶ月未満の未成熟犬では尺骨骨切り術によって尺骨を伸延させること
で治癒することがある。しかしそれ以上の年齢では切除、あるいはスクリューによる骨片の固
定が治療となる。治療後も変形性関節症は進行し完全な疼痛からの解放には至らないと考えら
れる。もう一つの治療の選択枝は未癒合の肘突起の切除である。切除後肘関節の不安定性は残
― 82 ―
ると思われるが、著者らの経験では症状も改善し、関節液の量も減少することから悪くない治
療法と思われる。
3)離断性骨軟骨症(OCD)
上腕骨内側顆に病変は発生する。肩関節の離断性骨軟骨症と異なり治療後の予後は良好とは
いえない。治療は関節鏡視下あるいは関節切開によって病変部の軟骨フラップを切除し、掻爬
デブライドメントする。
図 1.グレートピレニーズ、2 才、去勢雄
二頭筋腱の肩甲骨付着部における部分的剥離、断裂
図 2.バーニーズマウンテンドッグ、1 才、雄、34kg
medial compartment disease: 上腕骨内側顆の軟骨が失われている。
― 83 ―
超小型犬の橈尺骨骨折治療
~キャスティング、髄内ピン法、創外固定法の適応~
米地 謙介
アサヒペットクリニック本院
はじめに
日本国内ではトイ・プードルやチワワ、ポメラニアンといったいわゆるトイ犬種と呼ばれる
小型犬種が好まれる傾向が強いように思います。さらに最近の傾向ではトイ犬種の中でもより
小さな体格が望まれているようで、成犬体重が 1kg 前後の個体も珍しくなくなってきました。
一方で小動物臨床において最も多く遭遇する骨折はトイ犬種の橈尺骨骨折だろうことは間違い
ありません。このような背景から我々小動物臨床家が体重 1kg 前後の超小型犬の橈尺骨骨折症
例(図 1)に遭遇する機会が増えてきているように感じます。
トイ種の橈尺骨骨折においては橈骨骨折を適切に治療すれば尺骨については自然癒合するこ
とが多いため、通常は橈骨骨折のみを整復固定します(図 2)
。橈骨骨折の治療方法には、大き
く分けてプレート法、創外固定法、髄内ピン法、キャスティングがあります。現在最も多くの
整形外科医が第一選択としているのは DCP プレートやロッキングプレートなどを用いるプレー
ト法だと思いますが、世界的な整形外科グループである AOvet が推奨しているプレート選択図
(図 3)を見ても超小型犬に対して考慮されている様には見えません。超小型犬に対する骨接合
術については日本国内の獣医師が試行錯誤をしながら実践しているのが現状であり、演者は超
小型犬の細い橈骨に対してプレート法が適応しにくいためプレート法以外の骨接合術を選択す
るようになりました。
<図 1 超小型犬>
チワワ、雌、5 歳令、体重 1.3kg
<図 2 トイ犬種の橈尺骨骨折>
最近ではこの子のように成犬でも体重
トイ犬種の橈尺骨骨折では橈骨のみが整復固
が 1kg 前後の個体が増えてきた。
定の対象となる。トイ犬種では尺骨が極めて細
く効果的な固定維持方法が無く直接的な手術対
象とはならない。橈骨骨折を適切に固定維持す
ることで尺骨は骨癒合に向かうことが多い。
― 84 ―
<図 3 プレート選択図>
プレート選択図では体重 1kg 前後の個体についてはあまり考慮されていないようにみえる。
キャスティング
ギブス固定のことで、演者が好んで使用しているのは岸上式プラスチックスプリント(津川洋
行社製;図 4)です。トイ犬種であれば装着可能で超小型犬種においても選択できます。手術後
の補助固定として利用できるだけでなく、症例を選べばキャスティング単独で骨折を癒合に導く
こともできます。もともとあまり強固な固定ができないキャスティングはその設置方法がとても
重要になります。全身麻酔や手術をせずに設置できるとても魅力的な治療法ですがその適応を間
違えると骨癒合不全となりやすく注意が必要です。キャスティング単独で骨折治療に用いる場合、
演者は独自に 4 つのチェックポイントを設けて適応を考えています。4 ポイントの症例が本来の
適応症例です。3 ポイントの場合でも少し変形するかもしれませんが概ね骨癒合に導くことが可
能です。2 ポイントや 1 ポイントしかない症例は適応外としています。キャスティングの適応を
ポイント制で考えるようになると、その適応が案外少ないことに気付きます。
キャスティングによる単独の前腕骨折治療チェックポイント
チェック 1 トイ犬種である
チェック 2 6 ヶ月令未満である
チェック 3 橈骨もしくは尺骨だけの骨折である
チェック 4 骨折端がずれていない
<図 4 岸上式プラスチックスプリント>
― 85 ―
<図 5-1 キャスティングで骨癒合に導いた症例>
合計 3 ポイントであったが家族と相談の上、キャスティングによる骨癒合を目指すことになった。
<図 5-2 キャスティング後 35 日>
橈骨遠位に若干の変形を認めたが癒合
状態は良好で外観も満足いくものであっ
た。家族は手術せずに済んだことをとて
も喜んでいた。
髄内ピン法
超小型犬の橈骨遠位骨折で適応としています。橈骨遠位骨片のワーキングスペースが少なく
後述する創外固定法で遠位骨片に 3 本の創外固定ピンが設置困難な場合に選択します。また橈
骨遠位成長板が残っている若令個体においても好んで実施しています。超小型犬においても直
径 0.7mm のキルシュナーワイアーであれば髄腔に入ることが多く、可能であれば 2 本設置しま
す。肢端が外反しないよう刺入部位に気をつけること、橈骨遠位関節面の障害を最小限にする
ことがコツです。髄内ピンだけでは変形癒合することが多いため必ずキャスティングを併用し
ています。
― 86 ―
<図 6-1 髄内ピン法で骨癒合に導いた症例>
<図 6-2 計測>
チワワ、雄、10 ヶ月令、体重 1.3kg
手術前には X 線写真を用いて各所を計測してお
50cm の高さから落下して右橈尺骨骨折。
く。本例では成長板が残っているため遠位骨片にお
けるワーキングスペースが極端に小さくなってい
る。髄腔が 0.85mm あったため直径 0.7mm の髄内
ピンは適応可能であると判断した。
<図 6-3 術後 X 線写真>
直径 0.7mm のキルシュナーワイアを 2 本
設置した。2 本のキルシュナーワイアは橈骨
遠位関節面をできるだけ避けて設置してい
る。(丸点線)
<図 6-4 術後 55 日インプラント除去>
患肢への負重、外観ともに満足いくもので
あった。
― 87 ―
創外固定法
超小型犬において演者が第一選択としている固定法です。術後管理や安静が重要でプレート
法に比べやや煩雑なイメージがありますが骨癒合の際に骨折部分が太くなる生物学的にとても
優秀な固定方法だと思います。
創外固定ピンとして用いるは IMEX 社製ミニチュアハーフピンで、このシリーズで最も細い軸
径 0.9㎜のハーフピンを利用します。創外固定法においては骨径に対する創外固定ピンの太さは
20%までと言われていますので 0.9㎜ハーフピンを使用すれば橈骨の横径が 3.6㎜までの個体で
使用することが可能です。体重 1kg 前後の個体においても橈骨横径が 3.6㎜より細いことはあま
りありません(図 7)
。ハーフピンの設置本数はこれまでの経験から遠位に 3 本、近位には 4 本
設置しています。遠位のワーキングスペースが少なく 2 本しかハーフピンが入らない時には髄
内ピンを 1 本追加してハイブリッドとします(図 8)
。近位骨片へのピンの刺入本数について、
過去 3 本のみを設置していた際に何例か早期にピンの動揺が認められたり骨癒合の過程で肢端
が外反した症例を経験しました。現在では近位骨片には可能な限り 4 本のハーフピンを設置す
るようにしています。4 本設置するようになってからピンの動揺や肢端の外反はほとんど認め
られないもしくは最小限で済むようになりました。
ピンの固定には歯科用の常温重合レジンであるトレーレジンⅡ(松風社製)を使用しています。
固定強度に再現性の高い IMEX 社製のマイクロクランプや Tubal 創外固定具なども魅力的なの
ですが超小型犬においてはピン刺入の自由度が高くなるレジンを重宝します(図 9)
。
術後は一週間入院ケージレストとし、退院後は二週間に一回のペースで X 線写真を撮影しま
す。ご家族と患者が安静に協力的な場合には外固定は追加しませんが、そうでない場合は岸上
式プラスチックスプリントを装着する場合もあります。
<図 8 創外固定と髄内ピンのハイブリッド>
遠位骨片のワーキングスペースが少なく、
<図 7 超小型犬の橈骨横径>
ハーフピンが 2 本しか設置できない時には髄内
チワワ、体重 1.2kg の橈骨。最も細い部分では
ピンを 1 本追加してこれを創外固定ピンと一緒
3.59mm であった。直径 0.9mm の創外固定用ハー
に固定する。これも難しいようであれば創外固
フピンであればぎりぎり適合する細さである。
定法は諦めて髄内ピン法(前述)を選択する。
― 88 ―
<図 9 ピン刺入角度の自由度>
超小型犬の橈骨にはピンを刺入できるワーキン
グスペースが限られている。レジンによる固定は
リニア型固定具では得ることのできない自由なピ
ン刺入を許容する。好きな角度に全てのピンを刺
入してから最後にレジンでまとめて固定する。
<図 10 術後 X 線写真>
近位骨片には直径 0.9mm のハーフピンを 4 本、
遠位骨片には直径 0.9mm ハーフピンを 2 本と直径
1.1mm のハーフピンを 1 本刺入設置。各々のピン
を曲げてからレジンで固定した。
おわりに
ジャパンケンネルクラブ(JKC)が発表した犬種別登録数では、2008 年から登録頭数の第一
位がミニチュアダックスフンドに代わってトイ・プードルになりました。2012 年ではトイ・プー
ドルの登録数はミニチュアダックスフンドの二倍以上になっています。第二位はチワワです。
演者がこれまでに遭遇した超小型犬の橈尺骨骨折症例のほとんどはトイ・プードルかチワワで
した。今後の小動物臨床において超小型犬の橈尺骨骨折はますます増えそうだと感じています。
骨折治療においては術者それぞれにこだわりがあると思います。それゆえに同一の骨折に対
して様々な術式やインプラントが存在し、術者は自分に合った手術方法を選択します。しかし
超小型犬の橈尺骨骨折においてはその選択肢が少なく、技術的なエラーに対する許容範囲も狭
いように感じます。臨床現場での試行錯誤によって骨接合術はより成績の良いものになってい
くと思います。今回の講演をきっかけに術式や術後管理などが議論され多くの獣医師と知識共
有することができれば幸いです。
― 89 ―
平成 25 年度日本小動物獣医学会(近畿)
ランチョンセミナー
C 会場(B3棟 117 号室)
時 間(12:10 〜 13:00)
講 演
経営の観点から見た猫の医療市場
メリアル・ジャパン株式会社
木甲斐 守正
座 長
大阪府立大学
藤本 由香
協賛:メリアル・ジャパン株式会社
当セミナーには、弁当がつきます(先着 120 名)
― 91 ―
経営の観点から見た猫の医療市場
木甲斐 守正
メリアル・ジャパン株式会社
全国的にみると犬の飼育頭数は減少傾向、猫は横ばい、小動物獣医師数は増加傾向ですので、
獣医師一人当たりの犬猫の飼育頭数は今後減っていくと推測されます。つまり、何らかの努力
をしていかないと獣医師一人当たりの診療数は減少していくことになります。
対策としては動物病院の利用率を上げることがポイントです。そのためには「予防医療」と「定
期健康診断による疾患の早期発見」が重要です。
「ペットは健康なので怪我でもしなければ病院
に行く理由がない」と考えている飼い主様に通院していただくには健康でも必要な「予防医療」
と「健康診断」、とりわけ慢性疾患の早期発見と治療「シニアケア」が重要です。感染症予防、
犬フィラリア症予防、消化管内寄生虫駆除、ノミ・マダニなどの外部寄生虫対策、定期健康診断、
口腔内衛生などの啓発を続けることが必要ではないでしょうか。
獣医師一人あたりの犬・猫の飼育頭数
推定飼育頭数
飼育頭数/獣医師
比率
犬 **
1,186 万頭
683 頭
55 %
猫 **
961 万頭
553 頭
45 %
合計
2,147 万頭
1,236 頭
100 %
就業獣医師数 * 17,374 人
* 農林水産省「就業獣医師数別の施設の状況」
(平成 22 年 12 月 31 日現在)からメリアルで試算
** 全国犬猫飼育実態調査 日本ペットフード協会(2010 年)(データに沖縄を含まず)
*** メリアル・ジャパン
猫の飼育頭数は現在でも犬の 80% 程ですが、今後は相対的に猫の飼育頭数の比率が高まると
推測されます。動物病院経営にとっての「予防医療」や「シニアケア」の重要性は猫も犬と同
じです。つまり、猫の「来院率」が犬よりも少ないことが経営上の課題ということになります。
さらに、動物病院を利用している飼い主様であってもメリアルで実施している飼い主様へのア
ンケート調査の結果(2011)から現在動物病院を利用されている猫の飼い主様は健康管理に関
する意識が高く、動物病院に対する期待も犬の飼い主様とほとんど変わりません。猫では狂犬
病ワクチンの接種が義務付けられていないこと、ワクチン接種率が低いこと、猫の犬フィラリ
ア症予防が普及していないことの 3 点から犬と比較すると予防にかける費用が少なくなってい
ます。一方、「うちの子は健康なので怪我でもしない限り病院に行く理由がない。
」と考えてい
る猫の飼い主様の動物病院利用率(来院率)を上げる対策を考えなければなりません。動物病
院に来院されない飼い主様への啓発は動物病院だけでできることではなく、動物病院に関わる
企業や関係団体が全体として取り組む必要のあることだと思います。
日本ペットフード協会(2010 年)の調査(70 代以上の飼い主様は対象になっていない)によ
― 93 ―
ると猫も犬も飼い主様の世代は 50 代が最も多く、50 代> 60 代> 40 代> 30 代となっています。
世代毎に動物病院利用率に違いがない限り、現在は 50 代の飼い主様に動物病院は支えられてい
ることになります。今後のことを考えると、60 代以上の飼い主様が今後ペットを飼えなくなっ
たり、飼わなくなったりする動向に注意しながら、それを補うために 40 代、30 代の世代でもっ
ともっとペット飼育を勧め、飼い主様を増やしていくことが課題と言えるでしょう。
飼い主様の世代別世帯飼育率
20 代
30 代
40 代
50 代
60 代
計
猫 **
8.6%
9.3%
10.7%
12.7%
11.3%
10.6%
犬 **
16.9%
14.4%
16.9%
22.9%
18.1%
17.8%
** 全国犬猫飼育実態調査 日本ペットフード協会(2010 年)(データに沖縄を含まず)
飼い主様のペットへの支出を調査したアニコム損保とペット総研のデータが毎年公表されて
います。定点調査という訳ではない(調査人数も調査対象者も変わっている)ので明確には言
い難いのですが、東日本大震災があった年であったにもかかわらず 2011 年は 2009 年、2010 年
と比較して犬・猫共に支出は増加傾向にあります。増えている大きな原因は犬・猫共に治療費
の増加でした。これは動物病院を利用する飼い主様を確保していれば自然に病気や怪我をすれ
ば治療のために病院を利用することになり、治療費は増えていくことを示していると考えます。
一方、予防費は猫も犬もほとんど増えていません。猫のワクチン接種率は犬ほど高くないこと
を考えると予防に関してはまだまだ啓発活動が足りないのだと思います。
治療に関して重要なのは猫の疾患を「早くみつける」ことです。みつけないとニーズが生ま
れてきません。ニーズが生まれないと治療の機会が生まれません。着目すべきは病気なのに気
づかないでいる猫の飼い主様です。どんなに可愛くても身体は老齢化していきます。シニア期
の猫に対する健康診断を考えましょう。シニア期に多い疾患には何があるでしょうか。病気を
早くみつけることでたとえ治癒に至らなくとも QOL の低下を防ぎ、重症化を防ぐことができま
す。疾患を早くみつけるための一つの方法が健康診断です。
メリアル・ジャパンで実施している飼い主様へのアンケートで動物病院からダイレクトメー
ルや E メールで知りたい情報として猫の飼い主様同様、40% 以上の猫の飼い主様が健康診断を
あげられました。猫の飼い主様は犬の飼い主様と違うという認識を持っていらっしゃる先生は
多いかも知れませんが、メリアル・ジャパンで実施している飼い主様へのアンケートの結果を
見る限りでは健康管理意識に関する猫の飼い主様の意識は犬の飼い主様との違いはほとんどあ
りません。動物病院からの情報が十分ではないとお考えの猫の飼い主様も犬の飼い主様と同じ
くらいいらっしゃいます。
病院を利用されている猫の飼い主様は健康管理意識が高いことを理解し、飼い主様の期待に
応えるためにも感染症予防、犬フィラリア症予防、消化管内寄生虫駆除、ノミ・マダニなどの
外部寄生虫対策、定期健康診断、口腔内衛生などの啓発を根気強く続けていきましょう。
― 94 ―
平成 25 年度 日本獣医公衆衛生学会(近畿)プログラム
F 会場(B3 棟 201 号室)
①開 会 の 辞(近畿地区学会長挨拶)
(9:00 ~ 9:10)
三宅 眞実
②一 般 講 演(午前の部)
(9:10 ~ 11:40)
No.F1 ~ No.F15
③合同ランチョンセミナー
(12:20 ~ 13:00)
(A 会場 B3 棟 116 号室)
④一 般 講 演(午後の部)
(13:30 ~ 14:10)
⑤学会長挨拶(代読)
(14:10 ~ 14:30)
No.F16 ~ No.F19
O 会場(学術交流会館 多目的ホール)
⑥閉 会 の 辞(褒賞演題公表)
(17:00)
談話会会場(P 会場・学術交流会館 サロン)
三宅 眞実
(17:30 〜 19:00)
⑦談 話 会
……………………………………………………………………………………………………………
審 査 委 員
F 会 場
中 井 康 博(三重県)
内 田 美 枝(奈良県)
福 永 真 治(兵庫県)
中 山 隆 史(和歌山県)
高 橋 知 子(大阪府)
井 川 久 史(大阪市)
安 藤 明 典(京都府)
貫 名 正 文(神戸市)
井 上 剛 彦(滋賀県)
池 田 幸 司(京都市)
……………………………………………………………………………………………………………
1.獣医公衆衛生学会(近畿)審査委員会会議 8:20 ~ 8:50
会場:B3 棟 210 号室(審査委員兼幹事会議室)
2.獣医公衆衛生学会(近畿)幹事会議
会場:B3 棟 210 号室(審査委員兼幹事会議室)
昼食を用意しております。
3.獣医学術近畿地区学会合同幹事会会議
会場:B3 棟 205 号室
4.審査委員会
会長挨拶終了後(審査委員兼幹事会議室)
12:10 ~ 12:40
12:40 ~ 13:10
14:30 〜 15:30
― 95 ―
日本獣医公衆衛生学会(近畿)一般講演プログラム
F 会場(B3 棟 201 号室)
—午前の部—
(演題番号 F1 ~ F15)
9:00 〜 9:10
開会の辞
9:10 〜 9:50
F1
東大阪市内において飼育しているペット鳥類における
近畿地区学会長挨拶
座長 安木 真世(大阪府大)
大西 義博(大阪府)
オウム病クラミジア保有状況調査の 10 年間の成績
F2
関東地方と南九州で飼育されている母豚における
松本 修治(大阪府)
トキソプラズマ抗体陽性率の検討
F3
A(H3N2) 型および B 型インフルエンザウイルスの重複感染例
押部 智宏(兵庫県)
F4
三重県における日本紅斑熱発生リスクの網羅的検討
赤地 重宏(三重県)
9:50 〜 10:20
F5
滋賀県内のイヌ・ネコにおけるジフテリア毒素産生性
座長 勢戸 祥介(大阪府大)
河野 智美(滋賀県)
コリネバクテリウム・ウルセランスの保菌状況
F6
残留抗生物質スクリーニング検査の実施状況について
三谷亜里子(京都府)
F7
豚丹毒菌の選択増菌培地の検討
吉戸あすか(三重県)
10:20 〜 11:00
F8
認定小規模食鳥処理場における細菌汚染の低減対策
岡本 寛之(和歌山県)
F9
大規模食鳥処理場における生鳥かごの消毒効果の検証
小島 裕史(大阪府)
座長 田邊 輝雄(京都市)
F10 全国で初めて養豚農場,
家畜診療所,
製造,
流通,
品質保証,
営業,
管理,
杉山 明(三重県)
販売部門に至る ISO22000 の統括的認証とそれによる効果(第 2 報)
F11 映像化による、病理組織標本作製手順の伝達方法の検討
松本 順也(三重県)
座長 幸田 知子(大阪府大)
11:00 〜 11:40
F12 包丁立ての衛生実態調査
森田 翠(和歌山県)
F13 救援物資のおにぎりが原因となった集団食中毒の発生
岡本 裕行(京都府)
F14 大津市地域ねこ活動支援事業の検討
杉内 正樹(滋賀県)
F15 高大連携事業による学校構内におけるネコの糞害軽減:
星 英之(大阪府)
天王寺高等学校 SSH 課題研究
― 97 ―
座長 田島 朋子(大阪府大)
12:20 ~ 13:00
ランチョンセミナー (A 会場 B3 棟 116 号室)
牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン「スパイロバック®」について
林 忠嗣(ゾエティス・ジャパン㈱)
協賛:ゾエティス・ジャパン株式会社
—午後の部—
(演題番号 F16 ~ F19)
座長 星 英之(大阪府大)
13:30 〜 14:10
F16 元動物取扱業者による生活環境被害の事例解決の検討
武田 雅人(大阪府)
F17 平成 23 年台風 12 号により被災した犬の対応
前島 圭(和歌山県)
F18 警察が押収した 161 頭の犬に対する(社)
大阪府獣医師会の対応
佐伯 潤(大阪府)
F19 福井、和歌山、京都、滋賀の傷病野生鳥獣救護事業への取り組み
河南 明孝(滋賀県)
14:10 ~ 14:30
日本獣医公衆衛生学会 学会長挨拶
「日本獣医師会学会の今後のあり方と獣医学術地区学会との連携について」
15:00 ~ 17:00
大会 (学術交流会館 多目的ホール)
17:00 ~ 17:30
褒章発表および閉会の辞 (学術交流会館 多目的ホール)
― 98 ―
各学会長
演題番号:F1
東大阪市内において飼育しているペット鳥類におけるオウム病クラミジア保有状況調査の 10 年間の成績
○大西義博 1)、松田健治 2)、井澤甲二 3)、大堀和俊 2)
1)
大阪府大・獣医国際防疫学、2)大阪府東大阪市保、3)大阪府東大阪市保、大阪府東大阪市消費生活
1.はじめに:東大阪市では、動物由来感染症対策事業として、
イヌ、ネコや鳥類のペット動物における病原体保有実態調査
を行っている。今回、ペット鳥類におけるオウム病病原体の
保有状況調査のこれまでの成績を報告する。
2.材料および方法:平成 15 年度から平成 24 年度までに、
東大阪市獣医師会所属動物病院に来院したペット鳥類(延べ
240 羽)から、飼い主の了承を得た上で糞便を採取して調査
に用いた。採取した糞便から抽出した DNA を用いて PCR
を行いオウム病病原体の検出を行った。また、飼い主から飼
育状況のアンケートも行った。
3.結 果:10 年間で 15% のペット鳥類からオウム病病原
体が検出された。病原体保有率が高かった年度は平成 19 年
度の 52.4% で、次いで平成 17 年度、平成 16 年度であったが、
近年の保有率は減少傾向にあった。飼育状況では、室外飼育
が室内飼育よりも保有率が高かった。鳥の雌雄による保有率
の差は特になかった。鳥の種類別では、ハトやカナリアなど
で高く、野生鳥類のヒヨドリやスズメも病原体を保有してい
た。成績は東大阪市のホームページに掲載して啓発活動に役
立てている。
4. 考察および結語: オ ウ ム 病 は オ ウ ム 病 ク ラ ミ ジ ア
Chlamydophila psittaci の感染で発症する人獣共通感染症
で、感染症法では四類感染症に指定されている疾患である。
オウム病はヒトではインフルエンザ様症状を呈し、風邪と間
違われやすく、治療法が異なるため診断を誤ると経過が長引
き、時には死亡することがある。一方、熱帯地方などに棲息
していたインコなどの鳥類ではオウム病病原体は元々、常在
菌のように不顕性感染していると考えられているが、我が国
のように夏と冬の寒暖の差が激しいところではストレス下で
発症し、汚染源となり病原体を拡散しやすい。今回のような
モニタリング調査を行うことで、早期に病気を発見し蔓延を
防止できるものと考えられる。今回の調査で明らかなように
ペット鳥類を野外で飼育した場合に、
野生鳥類(スズメなど)
との接触により、これら野生鳥類との病気の移し合いを起こ
している可能性が高い。
また、
これらの検査成績をホームペー
ジに掲載して飼い主を含む市民に還元し、発生予防の対策の
一つとすることが可能であると考える。調査に当たり、ご協
力いただきました東大阪市獣医師会の先生方、並びに動物由
来感染症対策委員会の委員の先生方に感謝いたします。
演題番号:F2
関東地方と南九州で飼育されている母豚におけるトキソプラズマ抗体陽性率の検討
○松本修治 1)、林 純子 2)、和田直子 2)、渡辺一夫 3)、上久保正一 4)、岡田 誠 5)
1)
DS ファーマアニマルヘルス、2)京都動物検査センター、3)ピグレッツ・千葉県、4)上久保家畜病院・鹿児島県、5)岡田家畜病院・鹿児島県
1.はじめに:豚のトキソプラズマ病は、猫由来のトキソプ
ラズマ原虫のオーシストが感染することによって起こる人畜
(人獣)共通感染症の一つで、届出伝染病に指定されている。
感染は、猫の糞便中に排泄されるオーシストを豚が経口的に
摂取することにより起こり、豚から豚への感染は起こらず、
主として、猫の糞便による豚舎、豚房の汚染のほか、飼料の
汚染が発生原因になると言われている。近年日本の養豚界に
おいては、PRRSウイルス、サーコウイルスなどによる感
染症が大きな問題となっている反面、トキソプラズマ病は、
慢性でかつ不顕性のケースが多く、さらに、他の慢性疾病と
の鑑別が難しいという事もあり、日頃忘れ去られている事が
多い。そこで、関東地方と南九州で飼育されている母豚より
採取した血液を用い、トキソプラズマに対する抗体価を測定
して、
「母豚の抗体陽性率」と「抗体陽性率と豚舎の閉鎖性
との関連」について調査した。
2.材料および方法:2011 年 12 月から 2012 年 12 月までに、
関東地方の 11 養豚場と南九州の 7 養豚場で飼育されている
(産歴が)0 産から 12 産までの繁殖用雌豚 459 頭(関東地方:
218 頭、南九州:241 頭)を調査対象の母豚とした。採血は
頸静脈より行い、
血清中のトキソプラズマに対する抗体価は、
㈱京都動物検査センターにて、トキソチェック -MT‘栄研’
を用いてラテックス凝集反応で測定した。
3.結 果:抗体価測定の結果、陽性と判定された母豚は、
459 頭中、18 頭であり、その陽性率は 3.9%【関東:陽性 6
頭 /218 頭(2.8%)
、南九州:陽性 12 頭 /241 頭(5.0%)】で
あった。また、関東地方において猫が(自由に)出入りでき
ない閉鎖的構造豚舎で飼育されている母豚と、猫が出入り可
能な非閉鎖的構造豚舎で飼育されている母豚におけるトキソ
プラズマ抗体陽性率は、前者で 0.0%(陽性は、85 頭中 0 頭)、
後者で 5.0%(陽性は、127 頭中 6 頭)であり、両者間で有意
な差を認めた(p < 0.05)
。
4.考察および結語:関東地方と南九州で飼育されている母
豚に関して、トキソプラズマに対する抗体陽性率を調べた結
果、3.9%の陽性率(疑陽性は 5.0%)であった。また、陽性
率の高い養豚場は、猫が出入り可能な非閉鎖性構造の豚舎が
多かった。
― 99 ―
演題番号:F3
A(H3N2)型および B 型インフルエンザウイルスの重複感染例
○押部智宏、榎本美貴、高井伝仕、近平雅嗣、三村昌司
兵庫県健生研
1.はじめに:2012/13 シーズンに兵庫県内で流行したイン
フルエンザウイルスは、A(H3N2) 型が検出数の 7 割を占め
主体となったが、シーズン後半には B 型が増加し、A(H3N2)
型と B 型の混合流行となった。本シーズンの流行期にイン
フルエンザ様の 3 名の患者から A(H3N2) 型および B 型ウイ
ルスを同時に検出する稀なケースを経験したので報告する。
2.材料および方法:重複感染が確認された 3 検体は、2013
年 1 月 28 日に県内の同じ医療機関が実施した簡易検査で A
型と判定された患者から採取された。検体は、MDCK 細胞
によりウイルスを分離して、ウイルスに対する抗血清(国立
感染研)を用いて HI 法で同定した。遺伝子の検出は、リア
ルタイム PCR 法を用いた。また、ヘマグルチニン遺伝子の
HA1 領域をダイレクトシークエンス法にて塩基配列を決定
した。
3.結 果:簡易検査で A 型と判定された 3 検体は、ウイル
ス分離法では、培養 4 日後に CPE が出現し、B 型(山形系
統)と同定された。さらに B 型の抗血清で中和した上清を
継代培養したところ、A(H3N2) 型ウイルスが分離・同定さ
れた。また、検体から直接遺伝子検査を行った結果、3 検体
全てから A(H3N2) 型及び B 型ウイルス遺伝子が同時に検出
された。リアルタイム PCR 法における A(H3N2) 型遺伝子の
Ct (Threshold Cycle) 値は 15 〜 26 であり、B 型は 34 〜 36
であった。HA1 領域の塩基配列を比較した結果、B 型ウイ
ルスは 3 株共に塩基配列 (978nt) が一致したが、A(H3N2) 型
の塩基配列(987nt)は 3 株のうち 1 株が一致しなかった。
4.考察および結語:2 種類のインフルエンザウイルスの同
時検出例は、過去にも稀なケースとして報告されているが、
今回経験した同じ医療機関で同じ日に採取された複数の検体
から検出されたケースは極めて少ない。A(H3N2) 型ウイル
スの塩基配列は 3 株のうち 1 株は一致せず、3 名の患者は疫
学的な関連性は認められかったことから、感染ルートが異な
るものと考えられた。検体に含まれるウイルス量は、遺伝子
検査により A(H3N2) 型ウイルスの方が多く B 型は少なかっ
たことから、簡易検査では A 型のみが陽性となり、B 型は
検出感度に達しなかったものと考えられた。本シーズンのよ
うに複数型のインフルエンザウイルスによる混合流行が認め
られる場合は、このような重複感染の可能性を考慮して検査
を行う必要があると思われた。
演題番号:F4
三重県における日本紅斑熱発生リスクの網羅的検討
○赤地重宏 1)、片山正彦 2)、田沼正路 3)、永田克行 4)、西中隆道 1)
1)
三重県保環研、2)四日市市食品衛検、3)三重県津保、4)三重県健康福祉部
1.はじめに:日本紅斑熱は感染症法において第 4 類に指定
されているマダニ媒介性感染症である。三重県については日
本紅斑熱患者数が 6 年間連続で全国 1 位の報告数であり、公
衆衛生上の対策が急務となっている。日本紅斑熱の患者発生
時に感染推定地域周辺マダニの調査を実施した文献は多い
が、患者非発生地域等も含めマダニの生態等より網羅的に検
討した報告は少ない。そこで、三重県において日本紅斑熱の
発生要因をマダニ類およびニホンジカを中心とした野生動物
側より調査し、県内における日本紅斑熱発生要因について検
討した。
2.材料および方法:マダニ類の調査対象は平成 23 年~ 25
年に県内にて捕獲した個体を対象とした。環境中マダニ類は
旗振り法により実施した。捕獲したマダニ類は凍結保存し、
形態学的な分類および Takano らの報告に基づく分子生物学
的分類により種別同定を行った。マダニ類のリケッチア保有
状況については Furuya らの報告に基づき PCR 法により実
施した。また、リケッチアの分子生物学的同定には Ishikura
らの報告に基づく gltA 遺伝子配列解析も併用し検討した。
さらに、日本紅斑熱患者発生状況の把握のため、平成 19 ~
24 年における患者発生件数および発生地域についても調査
検討した。ヒト検体の検査については、感染症発生動向調査
事業に基づく国立感染症研究所「紅斑熱群リケッチア検査マ
ニュアル」により PCR 法による抗原検査および蛍光抗体法
による抗体検査を中心に実施した。
3.結 果:過去 6 年間において、患者報告数は若干の変動
があるものの患者居住地域については変化がみられず、患者
居住地域の偏在性が確認された。また、市町別に患者発生率
を検討したところ患者居住地域の偏在性と同様、市町別の発
生率が大きく異なることが判明した。さらに、患者発生市町
4 地点および患者非発生市町 2 地点において採取したマダニ
類において Rickettsia 属保有状況を調査したところ、患者発
生市町で捕獲されたニホンジカ付着個体および環境中捕獲個
体より Rickettsia japonica 特異遺伝子が検出された。
4.考察および結語:過去 6 年間の日本紅斑熱患者発生状況
より発生地域に偏在性があることが確認された。また、患者
発生市町の環境中に R.japonica 保有マダニが生息すること
が確認された。これらより、地域によっては潜在的な日本紅
斑熱発生リスクが存在することを伺わせた。
― 100 ―
演題番号:F5
滋賀県内のイヌ・ネコにおけるジフテリア毒素産生性コリネバクテリウム・ウルセランスの保菌状況
○河野智美 1)、佐野哲也 2)、須藤正之 3)、山本明彦 4)、小宮貴子 4)、梅原成子 1)、青木佳代 1)、
石川和彦 1)、林 賢一 1)
1)
滋賀衛科セ、2)滋賀生活衛生課、3)須藤獣医科病院、4)国立感染研
1. は じ め に: ジ フ テ リ ア 毒 素 産 生 性 Corynebacterium
ulcerans(以下、C.ulcerans Tox+)はジフテリア菌と同じ
コリネバクテリウム属に分類され、ジフテリアが疑われる患
者から分離されることがある。感染源としてイヌやネコの関
与が示唆され、家畜などにも化膿性炎を引き起こす人畜共通
感染症である。2011 年4月に大津市内の患者から C.ulcerans
Tox+ が分離され、国内で9例目の症例となった。このこと
を契機に、県内における感染リスクを評価するため、イヌお
よびネコにおける C.ulcerans Tox+ の保菌状況を調査した。
2.材料および方法:2011 年 11 月~ 2012 年 10 月に県動物
保護管理センターに収容されたイヌ 85 頭・ネコ 42 頭由来の
口腔スワブ 127 件および 2012 年7月~ 12 月に県内の一動物
病院を受診したネコ 31 頭由来の咽頭・口腔等のスワブ 39 件
を検体とした。荒川変法培地で培養後、ジフテリア毒素遺伝
子を検出し、DSS 培地で糖分解および Api コリネを用いて
性状を確認した。
3.結 果:風邪様症状で動物病院を受診したネコ1頭から、
C.ulcerans Tox+ が分離された。このネコは、20 数頭で多頭
飼育されており、同居ネコのうち1頭からジフテリア毒素遺
伝子が検出された。これら2頭にクラリスロマイシンを投与
したところ、ジフテリア遺伝子は検出されず、菌も分離され
なかった。また、動物保護管理センターに収容されたネコ1
頭から、ジフテリア毒素遺伝子が検出された。
4.考察および結語:C.ulcerans 感染症は、感染症法の届出
対象疾患ではなく、国内の発生状況が十分に把握されていな
い。今回の調査で、県内のネコが C.ulcerans Tox+ を保菌し
ており、県内においてヒトへの感染事例が発生する可能性が
あることが明らかになった。感染予防のためには、愛玩動物
が風邪様症状等を呈している場合には、早めに獣医師の診察
を受け、動物との過度の接触を避け、手洗いの励行など基本
的な感染防止対策を行うことが重要である。また、今回はヒ
トへの感染予防に資するため、開業獣医師と協力し飼い主お
よび県内の関係機関へ情報提供を行った。今後は、保健所や
医療機関等の関係機関に対して積極的に情報を提供し、ヒト
への感染防止に努める必要があると考える。
演題番号:F6
残留抗生物質スクリーニング検査の実施状況について
○三谷亜里子、藤塚俊介、河野通大、安藤明典
京都府中丹西保
1.はじめに:平成24年10月に当所が所管する A 食肉セ
ンター(以下:センター)に健康畜として搬入されたウシが
敗血症疑いで保留措置となった。しかし、当該獣畜は参考の
ため実施していた抗生物質スクリーニング検査で陽性となっ
たため、と畜解体申請者等の関係者へ聞き取り調査を実施し
たところ、抗生物質休薬期間中のウシであったことが判明し
た。また平成24年度に同センターでと殺解体されたウシの
中には、投薬歴の申し出がないにも関わらず解体検査時に乳
房軟膏による色素残留を発見する事例も発生している。そこ
で、抗生物質スクリーニング検査キットを用いて、抗生物質
等の残留状況を調査した。
2.材料および方法:平成24年11月9日から平成25年
3月31日の期間にセンターに搬入されたウシのうち、①投
薬歴があり休薬期間終了から2日以上経過してから出荷され
たもの20頭、②病畜で投薬歴がないもの14頭、③健康畜
でも全身状態の悪いもの40頭、④手術痕のあるもの及び乳
房軟膏色素残留があるもの7頭の計81頭について、頸部筋
肉と腎臓を検体としてプレミテスト(アズマックス製)を用
いてスクリーニング検査を実施した。なお、投薬歴があり休
薬期間終了から2日未満の場合は、⑤抗生物質残留疑いによ
る保留検査とした。
3.結 果:スクリーニング検査の結果、5頭(①が1頭、
③が2頭、④が2頭)の腎臓が陽性であった。⑤は期間中9
頭が対象となり、陰性4頭、腎臓のみ陽性が4頭、腎臓と筋
肉共に陽性が1頭であった。
4.考察および結語:乳用種の経産牛では、乳質低下など明
らかな疾病診断がない個体でもと畜場に出荷されてくるが、
一部の農場では畜主が獣医師の指示のないまま乳房軟膏等に
よる治療を行っている場合もあるようである。また、休薬期
間があけていても腎臓からは薬剤が検出されることがあり、
代謝機能低下や腎臓疾患の個体では薬剤残留に注視すべきで
あることが確認できた。と畜検査時に軟膏等の色素残留を認
めた場合、と畜検査員は直ちに申請者や畜主へ薬剤使用状況
の報告を求める体制をとっており、センターへの乳房炎罹患
個体の搬入数は減少傾向にある。今後もと畜場利用者への注
意喚起を促すと共に、枝肉等への抗生物質残留を防止するた
めスクリーニング検査を継続していく。
― 101 ―
演題番号:F7
豚丹毒菌の選択増菌培地の検討
○吉戸あすか、中川涼子
四日市市食品衛検
1.はじめに:豚丹毒は豚丹毒菌が原因の豚の全部廃棄処分
となる疾病である。診断には病変部から菌を分離し同定す
る必要があり、当所では選択増菌培地に GK ブイヨン(以下
GK)を使用している。GK はアジ化ナトリウム、クリスタ
ルバイオレット、ゲンタマイシン、カナマイシンを添加した
培地で、アザイド液体培地(以下アザイド)と抗生物質添加
液体培地(以下抗生物質添加)より選択性が高いと考えられ
る。選択性が高ければコンタミネーションを防ぐ上で有効だ
が、検体中の菌数によっては豚丹毒菌の増殖が抑制される可
能性がある。そこで、各ブイヨンの(1)発育可能な最小菌
数と発育の仕方および(2)選択性について調べた。
2.材料および方法:平成 23 年 7 月~ 24 年 8 月に管内食肉
センターに搬入され、と畜検査で豚丹毒および敗血症疑いで
保留検査対象となった豚 45 頭の病変部(関節液 27 検体、心
内膜炎疣状部 16 検体、内腸骨リンパ節 24 検体、皮膚 5 検体)
を材料とした。
(1)は段階希釈した豚丹毒菌株を各ブイヨ
ンに接種し、24 時間培養後、血液寒天培地に接種して菌数
を測定して求めた。(2)は検査材料を各ブイヨンで培養後、
遠心分離した沈渣を血液寒天培地に接種して、菌の発育が認
められたら同定を行った。
3.結 果:
(1)培養後の各ブイヨンでの菌数を比較すると、
アザイドは初期菌数が少量でも良く発育し、次に抗生物質添
加、GK の順であった。 (2)菌数が最も少ないと考えられ
る関節液で豚丹毒菌が発育した数は、GK3 例、アザイド 5 例、
抗生物質添加 4 例で、他の菌が発育した数は GK1 例、アザ
イド 2 例、抗生物質添加 4 例であった。豚丹毒菌がアザイド
のみで発育した例が 2 例、アザイドと抗生物質添加で発育し
た例が 1 例あった。また、菌数が最も多いと考えられる心内
膜炎疣状部で豚丹毒菌が発育したのは各ブイヨン 1 例(同じ
検体)で、他の菌が発育した数は GK5 例、アザイド 15 例、
抗生物質添加 8 例であった。
4.考察および結語:以上の結果から、アザイドや抗生物質
添加は豚丹毒菌の初期菌数が少量でも増菌したことから、初
期菌数が少ない関節液を検体とした場合には GK より適して
おり、実質臓器等で他菌のコンタミネーションが問題になる
場合には選択性が高く、他菌の増殖を抑える GK が適してい
ることがわかった。より確実で精度の高い検査のためには、
選択増菌培地の選択が重要だと言える。
演題番号:F8
認定小規模食鳥処理場における細菌汚染の低減対策
○岡本寛之 1)、東嶋祐興 2)、森本康弘 3)、坂口勝規 4)、羽津豪人 1)
1)
和歌山県橋本保、2)和歌山県環衛研、3)和歌山県薬務課、4)和歌山県田辺保
1.はじめに:鶏肉による食中毒予防には、鶏肉流通の始点
である食鳥処理場において細菌汚染を低減していくことが重
要である。そこで、処理場において工程ごとにふきとり検査
を実施し、一般細菌数、大腸菌群数、サルモネラ属菌(定性)
、
カンピロバクター・ジェジュニ / コリ(定性)を指標として、
細菌汚染の低減を図った。
2.材料および方法:管内の小規模認定食鳥処理場において
4回にわたり、厚生省生活衛生局乳肉衛生課長通知『食鳥処
理場における HACCP 方式による衛生管理指針について(平
成 4 年 3 月 30 日付け衛乳第 71 号)』に従い検査を行い、指
導及び衛生管理の改善を重ねた。
3.結 果:仕入れ直後の丸と体では一般細菌数及び大腸菌
群数は4回とも大きな差はなかったが、外剥ぎ処理後の胸肉
では回を重ねるごとに菌数が減少した。第3回からチラー槽
を工程別に2つ設置し次亜塩素酸ナトリウムを注入すること
により、以後のチラー水及び冷却後と体では、一般細菌数、
大腸菌群数は検出限界以下、サルモネラ及びカンピロバク
ターは陰性となった。しかし、外剥ぎ処理後の肉では大腸菌
群及びサルモネラは陰性であったが、一般細菌数は103 レ
ベルが検出され、カンピロバクターも陽性になった。その他
全ての検体においてサルモネラについては陰性であったが、
カンピロバクターについては1回目の丸と体1検体を除く全
ての検体において陽性であった。
4.考察および結語:仕入れ時の丸と体が総排泄口周辺や脚
先が糞便で汚染されていたため、コンテナ搬送時に他の丸と
体も二次汚染されていたと考えられる。
それにもかかわらず、
一般細菌数及び大腸菌群数が回を重ねるに連れて減少したの
は、チラー水への次亜塩素酸ナトリウムの注入及び軍手や器
具の塩素消毒の効果と考えられる。
今後は上記指針に基づき、
①養鶏場において 12 時間以上の餌切りを行い糞便汚染のリ
スクを低減すること、②仕入れ先の処理場において汚染ロッ
トを分別管理し、汚染部位のトリミング及び洗浄消毒を適切
に行うこと、③当該処理場においても、丸と体の糞便汚染部
位のトリミング及び洗浄消毒、並びに必要に応じて処理後肉
の洗浄消毒による徹底した二次汚染防止対策が必要と考えら
れる。さらに、従業員の意識向上と現状の衛生管理の問題点
の把握も重要であるため、
「和歌山県食品衛生管理認定制度」
を利用して、
処理場全体の一般衛生管理の取り組みを促した。
― 102 ―
演題番号:F9
大規模食鳥処理場における生鳥かごの消毒効果の検証
○小島裕史 1)、葛城真美子 1)、赤井晶子 2)、山地良彦 1)、岩尾暁美 1)、坂本裕美 1)、和田悠希 1)、
岡田由紀 1)、塩野将巳 1)
1)
大阪府 松原食肉衛生検査所、2)大阪府 食の安全推進課
1.はじめに:養鶏場におけるサルモネラおよびカンピロバ
クター汚染の原因の一つとして、出荷の際に集鶏業者が持ち
込む生鳥かごがあげられている。当所の所管する大規模処理
場でも、養鶏場が実施したふき取り検査でサルモネラが検出
された。この結果を受け当該処理場では高圧水洗浄と消毒薬
の噴霧による従来の洗浄ラインに、温湯槽による消毒工程を
加えたので、変更後の生鳥かごの消毒効果について検討した。
2.材料および方法:当該処理場が保有する運搬用の樹脂製
生鳥かごのふき取りを、70℃・75℃の温度条件において洗
浄前と消毒後に実施し、検体とした。一般生菌数・大腸菌群
数・大腸菌数についてはペトリフィルム法により定量し、サ
ルモネラとカンピロバクターについては増菌培養後定性検査
を行った。
3.結 果:温湯消毒槽の温度が 70℃・75℃の場合とも、一
般生菌数・大腸菌群数・大腸菌数は減少した。またカンピロ
バクターも 70℃・75℃ともに検出されなかった。しかしサ
ルモネラにおいては、
70℃で検出され、
75℃で検出されなかっ
た。
4.考察および結語:生鳥かごの消毒温度は、衛生管理指針
では 83℃以上とされているが、この温度では樹脂製の生鳥
かごの劣化・変形が顕著である。また、労働安全の見地から
も消毒効果のある下限温度を設定することが望まれている。
今回の検査において、70℃の条件ではサルモネラの残存が見
られ、一般生菌についても衛生管理指針の目標水準である 1.0
× 103/cm2 を上回る可能性があった。75℃の条件では、サル
モネラ、カンピロバクターが検出されず、一般生菌数につい
ても衛生管理指針の目標水準に達しており十分な消毒効果が
認められた。サルモネラ・カンピロバクターは食中毒の原因
菌として重要視されており、本研究では温湯消毒槽の温度要
因に着目して比較検討したが、今後は他の要因についても検
討を重ねていきたい。
演題番号:F10
全国で初めて養豚農場,家畜診療所,製造,流通,品質保証,営業,管理,販売部門に至る
ISO22000 の統括的認証とそれによる効果(第 2 報)
○杉山 明、小菅伸一、渡邊義久、樋口恵子、小菅佑真、藤田充孝、牛込洋司、川原健夫、中西運悦、青木 登、木戸利信
(株)大里畜産
1.はじめに:当社では安全で安心な豚肉及びその加工品を
製造し,流通,販売するために,2012 年 3 月,全国で初め
て農場,家畜診療,製造,流通,品質保証,営業,管理,販
売部門までを統括した ISO22000 を認証取得して約 1 年 5 ヵ
月経過した。そこで,この期間に得られた効果及び成果につ
いて報告する。
2.材料および方法:ISO22000 を拡大認証取得するまでは,
農場,管理,家畜診療所,販売部門の従業員を対象として本
システムに関する教育,規定,手順書等の作成を行っていた。
認証後は,規定,手順書に基づいて業務が行われているかの
記録チェック,内部及び外部監査受検へとシフトさせた。不
適合事項は継続的改善が図れるよう有効な是正処置方法を食
品安全チーム会議等で議論した。認証したときの文書総数が
多かったので,文書の見直しを行い,改廃を行った。食の安
全に関する国,三重県,各団体等が実施する事業実施等にも
協力した。
3.結 果:全部門を統括的に認証するまでは,新たに認証
対象となった部門の ISO22000 の基本的教育訓練や手順書作
成が主であったが,認証後は業務ごとに記録を確認し,月 1
回の食品安全チーム会議で,食品安全マネジメントシステム
の妥当性確認,検証を積極的に行うようにした。内部監査の
ほか,農場は家畜保健衛生所,製造,販売部門は,保健所,
食品衛生の専門家に外部監査を受けることにした。外部監査
では,農場における防疫対応法,製造関係では従業員の一般
的衛生対策法に関して指摘があったので,必要な是正処置を
講じて改善を図り当該者に教育訓練を行った。全部で 1,650
種類あった文書は,1,471 種類に整理し直した。代表取締役
の資源再生ネットワーク東海地区役員就任,6 次産業化,循
環型農業への取組みも総合企画部で担当するなど積極的な企
業の社会的貢献も行うようになった。ISO22000 の統括的認
証に加え,これらのことが総合評価され企業の社会的責任
(CSR) 部門で農林水産大臣賞を受賞した。その後,三重県農
水商工部農産物安全課の事業である「食の安全・安心ミニ情
報」提供店の認可も受けた。さらに,
国の食品衛生協会の「食
の安全安心 5 つ星店」認定申請も行っている。
4.考察および結語:ISO22000 認証取得によってシステムの
的確な運営・管理によって,従業員の衛生レベルや知識が向
上し食の安全性を高いレベルで担保できるようになり,それ
が国や県を始め多くの団体から高い評価を受けるようになっ
た。
― 103 ―
演題番号:F11
映像化による、病理組織標本作製手順の伝達方法の検討
○松本順也 1)、庄山剛史 1)、安藤 淳 2)、南川藤雄 1)
1)
三重県松阪食肉衛検、2)三重県食品安全課
1.はじめに:病理組織検査は、と畜検査において肉眼診断
が困難な症例に遭遇した場合に有効な検査法であり、と畜検
査員同士の技術の平準化のためにも果たす役割は大きい。し
かし病理組織検査には、高度な知識と経験を必要とするた
め、大学で病理学教室に所属し、卒業後も病理組織検査の経
験を積んだ熟練者に頼らざるを得ない現状がある。人事異動
や長期の出張などで病理熟練者が不在の場合は、その専門性
の高さゆえに未経験者は病理組織検査に手出しすることがで
きず、当所は病理組織検査の恒常的な検査体制が確立できて
いない。そこで、病理組織検査に必須の HE 染色標本作成に
ついて、画像と動画を活用した手順書を作成し、標本作成の
未経験者でも生臓器の採取から標本の作製までを一人で行え
る体制の整備を試行し、その問題点について検討した。
2.材料および方法:
(1)既存の文書化手順書では理解が
難しい標本作成の行程について、平易に解説した画像・動画
ビデオを作成した。(以下映像化手順書)
(2)これを用いて、
未経験者に標本作製を行わせた。でき上がった標本を、病理
組織検査の熟練者に評価させた。(3)アンケートを実施し
手順書の完成度について評価を行った。
3.結 果:映像化手順書により未経験者が作成した標本に
ついて、(ア)経験者に評価を行わせたところ、弱拡大にて
組織像の大要を把む目的には問題なく使用でき、疾病診断が
可能であった。しかし標本は厚く、細胞が重なって見え、組
織構造の輪郭がはっきりしないため、強拡大による精査には
不適であるとの評価も得られた。(イ)アンケートでは、①
器具の使い方などは、よくわかった②全体の流れが把握でき
たといった意見があった一方で、①実際に作業を行うとうま
くいかない手順がある②動画については、各工程を細分化
し、必要な工程をすぐ見えるようにしてほしいといった意見
があった。
4.考察および結語:今回我々は病理組織検査未経験者でも
組織標本の作製ができるよう、映像化手順書を作成し、これ
を用いれば疾病診断に使用可能な標本の作製ができることが
わかった。一方、組織所見の読み取りについては、未経験者
が検査を行うための体制は整備できていない。当所ではスタ
ンプ標本を用いたリンパ腫診断のためのマニュアルがあり、
今後はこれを参考に病理組織診断のマニュアル作りについて
も進めていき、誰もが病理組織検査を行える体制を確立して
いきたいと考える。
演題番号:F12
包丁立ての衛生実態調査
○森田 翠、光本 豊、矢内英之、青木一人
和歌山県海南保
1.はじめに:包丁等の洗浄消毒や使い分けの重要性につい
ては、食品事業者に広く認知されている。一方で、洗浄消毒
後の包丁を保管する包丁立ての汚れが複数の施設で認められ
たため、包丁立てを介した包丁の汚染による食品の二次汚染
の可能性が考えられた。そこで、包丁立て設置施設に対し衛
生実態調査を行うと共に、包丁立てが汚染されていた場合の
包丁への汚染について検討を行った。
2.材料および方法:20 施設に包丁立ての衛生管理に関する
聞き取りを実施し、各施設の包丁立ての開口部側面を拭き取
り、ペトリフィルムを用いて一般生菌数、大腸菌群数を測定
した。また、包丁立てから包丁への汚染を蛍光ローションを
用いて検証した。
3.結 果:①聞き取りの結果:Q1. 包丁使用後洗浄消毒す
るか 洗浄消毒 (13) 洗浄のみ (7) 消毒のみ (0) 何も行わ
ない (0) Q2. 包丁立てを洗浄消毒するか 洗浄消毒 (10) 洗
浄のみ (7) 消毒のみ (0) 何も行わない (3) Q3. 包丁立て
の洗浄頻度 毎日 (2) 数日毎 (4) 一週間毎 (4) 1ヶ月毎 (3)
数ヶ月毎 (2) 1年毎 (1) その他 (1) Q4. 包丁立ての消毒
頻度 毎日 (1) 数日毎 (3) 一週間毎 (2) 1ヶ月毎 (1) 数ヶ
月毎 (2) 1年毎 (1) Q5. 包丁を使用前洗浄消毒するか 洗
浄消毒 (1) 洗浄のみ (9) 消毒のみ (6) 何も行わない (4) ②拭き取り検査の結果:20 施設中 6 施設で大腸菌群が検出
され、11 施設で 104 CFU/100cm2 以上の一般生菌が検出され
た。 ③検証実験の結果:包丁立てから包丁の刃及び柄への
汚染が確認できた。
4.考察および結語:20 施設全てにおいて包丁を使用後に
洗浄または消毒を行うのに対し、包丁立てを毎日洗浄また
は消毒する施設は 2 施設のみと、包丁立てに対し、衛生管
理上の注意を払っている施設が少ないことが判明した。ま
た、20 施設中 6 施設で大腸菌群が検出され、11 施設で 104
CFU/100cm2 以上の一般生菌が検出されたことから、包丁立
ては高率に汚染されていることが判明した。
検証実験の結果、
包丁立てからの包丁の刃及び柄への汚染が確認できたことに
加え、4 施設において包丁立てから包丁を取り出した後、使
用前に洗浄も消毒も行っていないことを考慮すると、衛生管
理の行き届いていない包丁立てを介した包丁の汚染により、
食品への二次汚染が起こりうると考えられた。
― 104 ―
演題番号:F13
救援物資のおにぎりが原因となった集団食中毒の発生
○岡本裕行1)、足立有佳里 2)、入江祐子 3)、水本美佳 3)、布野千代美 3)、木上照子 3)、
小嶋新也 3)、藤原恵子 4)、浅井紀夫 4)、和田行雄 3)
1)
京都府生活衛生課、2)京都府乙訓保、3)京都府山城北保、4)京都府保環研
1.はじめに : 平成 24 年 8 月 13 日未明、京都府南部地域に
おける記録的豪雨により、宇治市炭山地区等はライフライン
が途絶え孤立状態となった。8 月 15 日にその被災地域へ宇
治市が配布した救援物資のおにぎりを原因とした集団食中毒
事件が発生した。今回、事件の概要や原因を報告するととも
に、災害時における食品衛生管理の課題について検証した。
2.材料及び方法(概要): ①初発日時:8 月 15 日 16 時 ②
有症者:106 名 ③症状:嘔吐、下痢等 ④病因物質:黄色
ブドウ球菌 ⑤原因食品:8 月 15 日に救援物資として提供
したおにぎり ( 被災地提供数 352 個 )
3.成 績 : (1) 製造状況等調査結果 8 月 14 日 23 時~ 15 日 2
時に宇治市内の小規模スーパーのバックヤードにおいて 404
個製造され、9 時 30 分に保冷車で市役所へ納品。その後、
臨時へリポートのグランドに搬送の後、ヘリコプターで空輸
され、14 時頃に住民代表に配布された。しかし、早期喫食
の啓発がなく、住民は 15 時から 22 時にかけて喫食。また、
搬送時は保冷対策はなく、グラウンドに約 2 時間放置されて
いた。なお、この期間中は食中毒注意報発令中(最高気温
33℃)であった。(2) 検査結果 被災地から回収したおにぎり
から 108cfu/g 以上、患者検便から 105cfu/g 以上の黄色ブド
ウ球菌を検出した。調理従事者手指やおにぎり用木型からも
黄色ブドウ球菌が検出された。(3) 行政対応 山城北保健所長
から宇治市長等に対し口頭注意喚起を行った。おにぎり製造
業者には、衛生指導及び原因判明までの 4 日間営業自粛させ
たが、被災地配布以外の同ロット品からは有症者の発生はな
く、行政処分には至らなかった。
4.考 察:今回の食中毒の直接の原因は、製造施設におい
ておにぎりの汚染があったと考えられるものの、炎天下で保
冷等の対策のないままの保管や、早期喫食の啓発がなく、結
果的に住民の喫食まで高温で長時間経過したため、その間に
食中毒発症菌数レベルまで増殖したことによると考えられ
た。背景に、市職員の食品衛生の知識不足や、緊急時におい
ても振り込み可能な業者にしか発注できない行政の出納体制
等にあると考えられた。本府において、救援物資としておに
ぎりを避けることや、災害時に直ちに使用できる食品衛生啓
発資材等も盛り込まれた災害時の食品衛生管理体制マニュア
ル策定予定であり、今回の事件を今後の教訓としたい。
演題番号:F14
大津市地域ねこ活動支援事業の検討
○杉内正樹、中田栄輔
大津市動物愛護センター
1.はじめに:大津市では飼い主の不明な猫(いわゆる野良猫)
による糞尿等の苦情や飼い主の不明な猫が産んだと思われる
子猫の引取依頼が多い。これらに対応するため「大津市地域
ねこ活動支援事業実施要綱」を定め ( 平成 24 年 9 月 1 日施行 )、
地域の生活環境改善を目的に、地域で管理する飼い主不明な
猫に不妊手術を施すことにより、今いる以上に猫が増えない
ようにし、餌の管理やトイレを設置することで周囲に迷惑を
掛けないようにしながら、猫を排除することなく数を減らし
ていく地域が主体となる地域猫活動を支援する事業に取り組
んでいるところであり、その事業について検討した。
2.材料および方法:支援を行う要件は主として① 3 人以上
の協力者によりグループが作られていること②グループで餌
の管理やトイレの設置により糞尿の始末がされていること③
自治会の理解が得られていること等の要件を満たした地域を
「地域猫活動地域」として届出を受理し、その地域が管理す
る猫に当センターにおいて不妊手術を施す等の支援を行うこ
ととした。
3.結 果:13 の地域(活動グループ)からの届出を受理し、
計 60 匹のねこに不妊手術(オス 28 匹、メス 32 匹)を施し、
手術後猫は地域へ戻した(平成 25 年 6 月 30 日現在)
。
4.考察および結語:この支援事業に先立ち「大津市地域ね
こ活動支援事業にかかる内規」を定め、平成 22 年 8 月 1 日
〜平成 24 年 3 月 31 日まで試行的に支援を行い、8 つの地域
から届出を受理し、計 86 匹の猫に不妊手術を施した。後日、
これらの地域のグループにアンケート調査を実施したとこ
ろ、
「猫の行動範囲が狭くなった」
、
「夜鳴きをしなくなった」
等概ね良好な結果であった。
この試行期間の実績等を踏まえ、
要綱を制定し本格的に支援を実施しているところである。こ
の支援事業は手術をした猫は地域に返し、地域で管理しても
らうことから、猫の数が急に減ることはなく、また、設置し
たトイレで猫が糞尿をしない場合も想定されるなどすぐに良
好な結果が出るものではない。しかし、法的に飼い猫の登録
制度や室内飼いの義務付け、飼い主の不明な猫への餌やり禁
止等の規制はないことから、
野良猫の数や苦情を減らすには、
時間はかかるが地域猫活動が有効であると考えられる。今後
も、この支援事業の周知に努め、取組数の拡大に努めたい。
― 105 ―
演題番号:F15
高大連携事業による学校構内におけるネコの糞害軽減:天王寺高等学校 SSH 課題研究
○星 英之 1)、工藤綾佳 2)、中井厳規 2)、野々原洋輔 2)、松井 瞳 2)、宮田かりん 2)、綱澤典子 2)
1)
大阪府大・獣医公衆衛生、2)天王寺高校
1.はじめに:外飼いのネコ及び飼い主がいないネコによる
糞尿被害は、ネコに関する苦情・相談件数の 2 割以上を占め
る重要な問題である。天王寺高等学校でも、構内に侵入した
ネコの糞により、部活動や学校生活に影響が出ている。今回、
高大連携事業の一環として、高校構内で特に被害が多いグラ
ウンドと校舎裏におけるネコの糞害を軽減する目的で、2012
年 10 月から 2013 年 2 月にかけて「課題研究」の指導を行っ
た。天王寺高等学校は、2004 年度からスーパーサイエンス
ハイスクール(SSH)に指定されている。生徒が自ら問題を
発見し、解決する事を目的とする課題研究は、SSH の重要
な活動に位置づけられている。
2.材料および方法:予備試験として、ネコがトイレを認識
する条件を調べる目的で、使用する容器の形状、砂の種類、
ネコを誘引する因子を様々な組み合わせで検討した。本試験
では、予備試験で、ネコが糞をしていた組み合わせのトイレ
をグラウンドと校舎裏に設置し、トイレの使用の有無と糞害
の軽減効果を検証した。また、トイレの使用が認められなかっ
た場合は、糞をする場所を人通りが少ない場所に移動させる
目的で、超音波発生装置(ガーデンバリア、ユタカメイク)
を設置し、糞害軽減効果を検証した。トイレの使用の有無と
糞をしている場所及び回数は 1 日 1 回、構内を見まわり記録
した。
3.結 果:予備試験において、容器としてプランター、使
用する砂として、砂利の上に吸湿性が少なく乾きやすいパー
ライトを重層したもの、誘引因子としてマタタビを用いた組
み合わせが、ネコにトイレとして認識された。本試験では、
トイレを設置することにより、グラウンドの糞害が無くなっ
た。校舎裏については、トイレの使用は認められなかった
が、人通りが多い場所にガーデンバリアーを設置することに
より、ネコが糞をする場所を人通りが少ない場所に移動する
ことに成功した。
4.考察および結語:ネコがトイレを使用する条件として、
容器の大きさ、吸湿性が少なく乾いた状態の砂、マタタビ等
のネコが興味を示す誘引因子が必要だと分かった。トイレの
使用が認められた場所では、糞害を無くす事に成功した。ト
イレの使用が認められない場所については、ガーデンバリア
を設置し、糞をする場所を移動させる事により、糞害の軽減
が可能だった。高大連携事業による課題研究により,高校構
内のネコの糞害を軽減することに成功した。
演題番号:F16
元動物取扱業者による生活環境被害の事例解決の検討
○武田雅人 1)、堀越敬之 2)、佐伯 潤 3)
1)
大阪府動物愛護畜産課、2)大阪府食の安全推進課、3)大阪府獣医師会
1.はじめに:住民から近隣の動物取扱業者に起因する犬の
臭い・鳴き声等による生活環境被害の相談が府保健所等に寄
せられた事例について警察への刑事告発を解決手段として検
討した。
2.材料および方法:当該業者は平成 19 年 5 月動物取扱業
の登録を受けたが平成 20 年 6 月近隣住民から犬の臭い・鳴
き声等に関する生活環境被害の相談が府保健所等に寄せられ
たため当該事業者に対して改善指導を開始した。平成 24 年
11 月までに 57 回の指導及び行政処分を行ったが府の指導内
容に従う意思を示さず、また、登録も自主廃業したため、こ
のままでは問題解決に至らないと判断し、警察の介入による
事例解決を図る事とした。
3.結 果:平成 24 年 11 月 21 日、地元市、大阪府の技術
支援のもと警察による強制捜査が行われた。捜査の結果、犬
167 頭、死体 17 頭が確認されたが、施設内は餌や排泄物が
堆積し、酷い悪臭がするなど劣悪な飼養環境であった。また、
生存犬の殆どが皮膚病に罹患し、著しい削痩が認められた。
この元動物取扱業者はその後の取調により動愛法 44 条 2 項
及び狂犬病予防法 4 条、5 条違反容疑で逮捕された。府は警
察が押収した生存犬 161 頭の飼養管理の依頼を受けたが、多
数の犬で削痩など健康状態が悪く、治療等が必要あると判断
し、(社)大阪府獣医師会に治療・飼養管理・譲渡について
協力を要請した。その後、飼主が犬の所有権を放棄した事か
ら平成 25 年 2 月以降、体調回復、不妊手術、混合ワクチン、
狂犬病予防注射を済ませた譲渡可能な犬から、動物病院より
譲渡を開始すると共に、大阪府からも譲渡を実施した。
4.考察および結語:今回の事例では、立入検査拒否により
事業所内の確認ができないことから警察権を行使し強制捜査
に踏み切った。その結果、動物虐待が発覚し、逮捕・解決に
至った事から、多頭飼育等が原因で動物虐待が疑われる場合
には、早期にかつ強制的に確認・保護できる制度の創設の必
要があると考えられた。また、
動物取扱業の登録を行う場合、
周辺の生活環境や飼養施設の規模や設備の状況により飼養頭
数の制限を行う必要があるため、犬猫1頭あたりの必要飼育
面積基準の制定の必要があると考えられた。さらに、一自治
体による保管量には限度がある事から、近隣自治体あるいは
獣医師会等の団体等と協定を締結すれば、早急な事案解決へ
の選択肢を増やす事ができると考えられた。また、本協力体
制の整備は、災害時の動物救護活動に係る協定としても活用
できると考えられた。
― 106 ―
演題番号:F17
平成 23 年台風 12 号により被災した犬の対応
○前島 圭 1)、福原順子 1)、小寺澄枝 1)、玉置三朗 1)、坂本広典 2)
1)
和歌山県動愛セ、2)和歌山県御坊保
1.はじめに:平成 23 年秋、和歌山県では南部を中心に台
風 12 号による豪雨に見舞われた。本県ではこの豪雨により
被災した地域及びその周辺において収容された所有者不明の
犬及びねこについて、「被災動物」と位置づけて平時とは異
なる取り扱いを行った。今回、被災動物の定義や収容後の対
応(収容期限や譲渡期限、譲渡基準)など課題となった点に
ついて検討した。
2.材料および方法:被災動物に対する和歌山県の方針は、
「公
示期限の延長」と「可能な限り譲渡する」であった。
3.結 果:台風 12 号のあった 9 月初めから避難所が閉鎖
された 10 月中旬までの約 40 日間に、被災地域で所有者不明
で収容された動物は犬 11 頭であった。このうち、3 頭は保
健所にて返還等の対応を行い、8 頭は和歌山県動物愛護セン
ターへ搬入された。センターに収容された 8 頭のうち 4 頭は
飼い主へ返還し、1 頭は収容中にフィラリア症が悪化したた
め安楽死処置とした。残りの 3 頭については全頭譲渡した。
すべての対応が終了したのは平成 25 年 3 月であった。
4.考察および結語:被災動物についての定義や行政の対応
について課題が残った。被災動物の定義については、被災地
域で収容された動物だけが被災動物なのかという点や、明ら
かに飼い犬ではないと思われるものも被災動物として取り扱
うのかという点であった。行政の対応については、いつまで
保管するのか、いつから譲渡を行うのかが明確ではなく、い
たずらに長期保管になってしまった。また、平時では譲渡基
準に適合しない犬についてどのように譲渡するかが決定され
ていなかった。今回の豪雨災害は県南部に限られ、被災動物
は 11 頭だったにもかかわらずこのような課題が浮上した。
平成 24 年度から被災動物救援活動経験者や有識者を含む動
物愛護推進協議会において検討し、体制の構築に着手したと
ころであるが、今後発生が予想される南海大地震などの大災
害時に備えて、明確な基準やマニュアル等の整備を進めてい
くことが急務であると思わる。
演題番号:F18
警察が押収した 161 頭の犬に対する(社)大阪府獣医師会の対応
○佐伯 潤 1)、北原千春 2)、大下 勲 3)
1)
鶴山台動物病院・大阪府、(社)大阪府獣医、2)アルプス動物病院・大阪府、(社)大阪府獣、3)大下動物病院・大阪府、(社)大阪府獣医師
1.はじめに:ブリーダー等犬や猫を多頭飼育している業者
や個人が、経済的な問題等で飼育管理が困難となる事例は多
くなってきている。昨年 12 月、大阪府内で 170 頭もの犬を
飼育していた元動物取扱業者が、大阪府の再三の指導や行政
指導に従わず、周辺住民から臭気や騒音の苦情が相次ぎ、府
と当該市が警察に告発、警察が飼養者を逮捕し、犬 161 頭を
押収するという事件が発生した。犬を管理することとなった
府から獣医師会に協力要請があり、対応を決めるにあたって
犬の健康状態や感染症の有無を調査した。
2.材料および方法:押収後に死亡した犬は、死体の検案を
行った。無秩序な繁殖状況であったことから、マルピーライ
フテック(株)の協力により、全頭の Brucella canis 抗体を
検査した。特に状態の悪い犬は、入院させて血液検査等必要
な検査を実施した。下痢の認められた犬については糞便検査、
糞便中のパルボウイルス抗原、ジアルジア抗原を実施した。
3.結 果:押収後に死亡した犬は、栄養状態が悪く、筋肉
量、皮下脂肪や腹腔内脂肪の量が著しく少なかった。外部寄
生虫は、多くの犬でイヌハジラミの寄生が認められ、衰弱・
健康状態の悪い犬で寄生数が多かった。また、掻痒のためと
思われる脱毛が認められた。B.canis 抗体は全頭陰性であっ
た。糞便中のパルボウイルス抗原は検出されなかったが、ジ
アルジア抗原が検出された。状態の悪い犬では、持続性の下
痢と軽度の貧血と低蛋白血症が認められた。犬達は人に対し
ては従順であったが、他の犬に対して攻撃性を示す個体が多
かった。
4.考察および結語:押収後に死亡した犬については、肉眼
解剖所見等の検案書を作成し、
証拠資料として府に提出した。
栄養状態の悪い犬が多数おり、5 類感染症でもあるジアルジ
アが検出されたこと、周辺住民が非常な苦痛を強いられてい
たこと、警察が飼養者を逮捕し犬を押収した事案であること
などから、大阪府知事からの協力要請もあり、大阪府獣医師
会として有志の会員開業獣医師を募り救護活動を行うことと
なった。96 名の開業獣医師が協力し、約3ヶ月間犬を保管
して必要な治療、健康管理、避妊去勢手術、しつけ等を行い、
保護した全頭を直接又は府を介して譲渡した。ブリーダーの
崩壊等に対して安易に獣医師会が関与するべきではないと考
えるが、今回の事例のように多頭数で、公衆衛生的な問題も
ある場合には関与する必要もあると思われた。
― 107 ―
演題番号:F19
福井、和歌山、京都、滋賀の傷病野生鳥獣救護事業への取り組み
○河南明孝、籠谷泰伸、加藤真由子、工藤善民、藤滝和博、山㟢敦子、山中幾治、和田優子、秋山 達
滋賀県獣医師会野生動物事業委員会
1.はじめに:滋賀県獣医師会では昭和 54 年から県の委託
を受け、野生鳥獣救護ドクターが傷病野生鳥獣の一次治療を
行っているが、長期療養や野生復帰を目指したリハビリを行
う公的な救護施設が存在しない。そこで、近隣府県における
傷病野生鳥獣救護事業への取り組み事例について調査した。
2.材料および方法:獣医師会の傷病野生鳥獣救護事業に加
えて公的な救護施設を有する福井県、和歌山県、京都市を視
察し、獣医師会会員と意見交換を行った。
3.結 果:府県による事業委託は昭和 50 年 ( 京都市獣医師
会 )、昭和 63 年 ( 福井県獣医師会 ) および平成 5 年 ( 和歌山
県獣医師会 ) に開始され、平成 23 年の年間予算は 60 〜 240
万円、小動物開業獣医師における救護ドクターの割合は 30
〜 70%、救護鳥獣は年間 100 〜 300 頭羽であり、80 〜 90%
は鳥類で、ツキノワグマ、クマタカ、オオタカなど絶滅が危
惧される希少種も含まれる。京都市では昭和 50 年に京都市
動物園に野生鳥獣救護センターが設置され、動物園獣医師と
専従の嘱託職員 2 名が年間 500 頭羽を救護している。京都府
からの委託費の他に、光熱費や人件費などは動物園の予算で
補充している。街中なので、リハビリのスペースや機能は十
分ではなく、二次施設の必要性を京都府に申し入れている。
福井県の救護施設は平成 2 年に県の自然保護センターに設置
され、センターの予算で運営されている。治療は獣医師会が
行い、4 〜 5 名のセンター職員と専従の嘱託職員 1 名が年間
150 頭羽の鳥獣の飼養とリハビリにあたっている。理系出身
の職員による自然保護に関する調査研究が充実しており、県
内外からの自然や獣害に関する相談や専門的な質問にも対応
している。和歌山県の鳥獣保護センターは平成 12 年に動物
愛護センターに併設され、手術室や大小の入院室を備え、大
型鳥獣も収容できる施設である。動物愛護センターとは県の
所轄が異なり、独立した予算措置や専従職員の配置がなく、
近年は年間数頭羽の救護である。
4.考察および結語:滋賀県においても救護施設の設立は急
務だが、今回の調査の結果、適切な予算や人員配置、獣医師
会との緊密な連携があってはじめて、公益性の高い機能的な
事業になることが分かった。今後は、野生動物を扱う研究者
や獣医師が常駐し、保護管理のみならず、調査研究や一般市
民の教育・啓発なども行うワイルドライフセンターについて
理解を深めたいと考えている。
― 108 ―
平成 25 年度日本産業動物獣医学会(近畿)・
日本獣医公衆衛生学会(近畿)合同
ランチョンセミナー
A 会場(B3 棟 116 号室)
時 間(12:20 〜 13:00)
講 演
牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン
「スパイロバック ®」について
ゾエティス・ジャパン株式会社
林 忠嗣
座 長
大阪府立大学大学院 獣医微生物学教室
田島 朋子
協賛:ゾエティス・ジャパン株式会社
当セミナーには、弁当がつきます(先着 70 名)
― 109 ―
牛レプトスピラ症と感染予防ワクチン「スパイロバック®」について
ゾエティス・ジャパン㈱ キャトルビジネス統括部
牛用レプトスピラ病不活化ワクチン「スパイロバック®」の上市に伴い、レプトスピラ症の基
礎知識そして特に血清型ハージョが牛に及ぼす経済的影響について解説する。
【病原体】
レプトスピラはスピロヘータ目に属するグラム陰性・らせん状菌であり、人や動物に対して
病原性を示す病原性レプトスピラは 250 種以上の血清型に分類される。本菌は乾燥・酸に弱く、
淡水中や湿った土壌中では長期間に渡り生存が可能となる。感染動物は、特定の血清型を長期
に渡って腎臓に保有する動物(維持宿主)と、様々な血清型に偶発的に感染して急性症状を呈
する動物(偶発宿主)に分類される。主たる感染源は尿であり、尿や尿に汚染された水、土壌、
敷きわら等と接触することで、表皮・粘膜を通じて感染する。
【牛のレプトスピラ症】
牛は血清型ハージョの維持宿主である。血清型ハージョによる維持宿主感染では、ほとんど
の場合症状を示さないものの、胚死滅、流死産、虚弱子などの繁殖障害を引き起こし、特に妊
娠Ⅰ期の胚死滅や流産等が経済的に影響することになる。また、血清型ハージョの抗体陽性牛
は陰性牛に比べて、空胎日数が長く、受胎までの人工授精回数が多いという報告もあり、総じ
て受胎あるいは受胎率への負の影響が示唆されている。
2002 年に酪農大の菊池らがバルク乳を用いて全国約 250 戸の酪農場にて血清型ハージョの抗
体調査を実施した結果、30%以上の農場が陽性を示し、国内において広く浸潤していることが
明らかとなっている。
【人のレプトスピラ症】
人の症状は風邪様の軽症から黄疸・出血・腎不全を伴う重症型まで多彩である。国内におい
て家畜が原因となった人の感染例はないが、海外では畜産従事者の職業病のひとつとして認識
されており、オーストラリアでは全患者の 23%、ニュージーランドでは 80% 以上が家畜の生産
者や食肉加工従事者であるとの報告がある。
【感染予防ワクチン「スパイロバック®」
】
血清型ハージョを含有抗原とし、感染予防を実現させたことで、牛に対しては受胎率低下の
防止・維持そして従事者へは伝播阻止という 2 つの有用性を併せ持つ国内初となる感染予防ワ
クチンである。海外では既に 23 ヵ国以上で使用され、有用性が確認されている。
― 111 ―
平成 25 年度 日本小動物獣医学会(近畿)特別企画
第4回動物看護に関する学術集会プログラム
G 会場(B3 棟 208 号室)
①開 会 の 辞 (10:25 〜 10:30)
②特 別 講 演 (10:30 〜 12:00)
③一 般 講 演 (13:00 〜 14:30)
④閉 会 の 辞 (14:30 〜 14:45)
特別講演
座長 富永 良子(ネオベッツ VR センター・日本動物看護職協会)
10:30 〜 11:30
Ⅰ「専門職としての動物看護師」
横田 淳子(横田動物病院・日本動物看護職協会)
11:30 〜 12:00
Ⅱ「動物看護倫理」
石橋 妙子(大阪ペピイ動物看護専門学校・日本動物看護職協会)
一般講演
座長 安部 里梅(星野動物病院・日本動物看護職協会)
13:00 〜 13:15
G1 当施設における過去 5 年間の患者動物と手術件数の推移 杉井 耕太(ネオベッツ VR センター)
13:15 〜 13:30
G2 子猫譲渡への取り組み
佐藤 明美(もみの木動物病院)
13:30 〜 13:45
G3 動物看護専門学校生における飼育動物の食欲増進に
高橋 茜(大阪ペピイ動物看護専門学校)
関するアンケート調査
座長 富永 良子(ネオベッツ VR センター・日本動物看護職協会)
13:45 〜 14:00
G4 歯みがき指導における動物看護師の役割
朝倉 舞佳(みゅう動物病院)
14:00 〜 14:15
G5 TPLO の術後管理
堀田 直美(藤井寺動物病院)
― 113 ―
演題番号:G1
当施設における過去 5 年間の患者動物と手術件数の推移
○杉井耕太、富永良子
ネオベッツ VR センター
1.はじめに:アニコム損害保険株式会社での新規登録犬件
数 (0 歳 ) は、トイプードルが 4 年連続 1 位である。近年、当
施設の来院頭数はダックスフンドが減少し、トイプードルは
増加している。一方、神経外科手術は減少傾向、整形外科手
術は増加傾向にある。そこで、特定の犬種頭数変動が特定疾
患罹患頭数を変動させ、結果的に手術件数に関与するのでは
ないかと推測される。今回、過去 5 年間に当施設のダックス
フンド、トイプードル初診来院頭数と、特定疾患手術件数を
調査してその関連性を検討した。
2.材料と方法:2008 年 1 月 1 日〜 2012 年 12 月 31 日に当
施設に来院したダックスフンド、トイプードル頭数、同期間
での片側椎弓切除術、橈尺骨骨折整復術、膝蓋骨内方脱臼整
復術の手術件数、片側椎弓切除術を行ったダックスフンド頭
数、橈尺骨骨折整復術、膝蓋骨内方脱臼整復術を行ったトイ
プードル頭数を調査した。
3.結 果:来院頭数は 2008 年から順に、ダックスフンドが
456 頭、479 頭、477 頭、472 頭、409 頭であり、トイプード
ルが 123 頭、152 頭、162 頭、184 頭、222 頭であった。手術
件数は、片側椎弓切除術が 2008 年から 185 件、184 件、
178 件、
153 件、128 件で、その内ダックスフンドが、146 頭、135 頭、
136 頭、112 頭、101 頭であった。橈尺骨骨折整復術が 42 件、
26 件、34 件、53 件、47 件で、その内トイプードルが、19 頭、
10 頭、12 頭、25 頭、27 頭であった。膝蓋骨内包脱臼整復術
が 35 件、34 件、27 件、30 件、47 件で、その内トイプード
ルが、7 頭、11 頭、9 頭、11 頭、18 頭であった。
4.考 察:橈尺骨骨折および膝蓋骨内包脱臼整復術では、
トイプードル手術件数割合(トイプードル手術件数/トイ
プードル来院頭数)がほぼ一定で、
手術トイプードル割合(ト
イプードル手術件数/手術総件数)
が増加していることから、
トイプードル来院頭数増加は手術件数増加に繋がるといえ
る。しかし片側椎弓切除術では、ダックスフンド手術件数割
合(ダックスフンド手術件数/ダックスフンド来院頭数)が
低下で、手術ダックスフンド割合(ダックスフンド手術件数
/手術総件数)がほぼ一定のことから、特定犬種の来院頭数
減少のみが手術件数減少原因とはいい難い。片側椎弓切除術
減少は、ダックスフンド来院頭数減少、ダックスフンド手術
件数割合低下、他犬種手術件数減少が影響しており、とくに
ダックスフンドにおいては、頭数減少および疾患好発年齢が
要因と推測される。今後、調査内容に年齢を加え、検討を続
けていきたい。
演題番号:G2
子猫譲渡への取り組み
○佐藤明美
もみの木動物病院 兵庫県
1.はじめに:全国の行政施設で引き取られ、殺処分される
猫の数は年間 131136 頭(平成 23 年度)、そのうち 82322 頭
が子猫である。神戸市の猫の殺処分頭数は 1929 頭(平成 23
年度)でそのほとんどが生後間もない子猫である。殺処分は
二酸化炭素ガスによる窒息死で、遺体は焼かれその日のうち
に灰になる。当院ではこれらの子猫を神戸市動物管理セン
ター(以下、センター)より団体譲渡の形で引き取り、飼い
主を探す取り組みを行った。
2.材料および方法:センターより団体譲渡の手続きを経て
子猫を譲り受け、当院で飼育しながら飼い主を探した。子猫
の飼育に際して、譲渡可能な週齢・社会化・健康状態などの
項目に沿って「動物の譲渡判定基準」を設けた。またセンター
の譲渡基準を参考に「飼い主の譲渡決定基準」を設け、条件
にあう飼い主を探した。飼い主希望者には子猫との面会の機
会を設け、譲渡可能週齢までの期間に、飼い主希望者やスタッ
フ自宅でのホームステイを行うなどして社会化を図った。譲
渡の際は、
「譲り受け誓約書」の記入および「飼い主の譲渡
決定基準」の確認に加え、室内飼育、不妊去勢手術および問
題行動の予防を含む適正飼養に関して説明した。また同居動
物がいる場合には仔猫との会わせ方の指導を行った。譲渡後
はセンターへ報告の書類手続きを行った。
3.結 果:平成25年4月より6月の2カ月間に、生後2
週齢〜3カ月齢の子猫(♂ 9頭、♀ 5頭)計14頭をセ
ンターより引き取った。このうち10頭は生後約2週齢の新
生子期から移行期の子猫であったため、哺乳および排泄のた
めに集中的なケアを必要とした。また食欲不振や便秘および
下痢などの不調を示す個体が少なくなかったが、動物看護師
と獣医師の連携によって早期に治療が行われ、全頭無事に成
長して新しい家族を見つけることができた。
4.考察および結語:猫の出産ラッシュを迎える 4 月〜 6 月
はフィラリア予防時期と重なっており、動物病院スタッフが
子猫の保育の為に時間を割くことは容易ではなかった。より
十分なケアを行うためには哺乳や排泄、社会化などを行って
くれる院外のボランティアの確保が必要である。またこの取
り組みに伴う経費に関しても今後の課題であろう。今回、こ
の取り組みを通じて動物病院が行政と協力し、子猫の譲渡を
行うことができた。今後も動物病院ができる社会貢献のひと
つとしてこの取り組みを継続したい。
― 115 ―
演題番号:G3
動物看護専門学校生における飼育動物の食欲増進に関するアンケート調査
○高橋 茜 1)、石橋妙子 2)、瀬際 唯 1)
1)
大阪ペピイ動物看護専門学校 動物看護福祉、2)大阪ペピイ動物看護専門学校
1.はじめに:本校では飼育動物の世話を学生主体で行って
おり、全学生が代わる代わる世話をしていても統一したやり
方と継続した観察が行えるよう飼育マニュアルとチェック表
の記入法を徹底している。その中で食欲不振の動物に自主採
食を促す工夫は入院動物の看護に活かすことができる。一般
的な食欲不振の対処法は授業で学んでいるが、実際に動物に
実施しどのような変化があったかを知ることは学生にとって
有意義な経験である。そこで、在校生 (1 年生及び 2 年生 ) を
対象に自主採食がスムーズに行えなかった飼育犬に対し、施
した食欲増進のための工夫とそれによる食欲の変化を調査し
どのように行えばより効果的かを 2 学年を比較し検討した。
2.材料および方法:本校 1 年生 116 名、2 年生 77 名の計
193 名にアンケートを実施した。質問項目は①「飼育動物に
食欲増進のための工夫をしたことがあるか」②「なぜ工夫し
ようと思ったのか」③「どのような工夫をしたか」④「工夫
をした時間帯」⑤「工夫をしたときの環境」及び⑥「工夫を
したときの動物の変化」とした。
3.結 果:①の質問には「はい」と答えた 1 年生が 95 名 (82%)、
2 年生が 66 名 (86%) であった。②では両学年とも「食欲不
振だから」「フードを食べてもらうため」が多く、1 年生で
は「体調が心配」、2 年生では「いつも食べていない」など
の回答もあった。③では「においつけ」や「ふやかし」と答
える者が多かった。④では 12:30 〜 13:00 の回答が圧倒的で、
⑤では 1 年生は「犬舎に人気が無いとき」
、2 年生は「人の
出入りが少ないとき」
「静かなとき」が多かった。⑥の質問
では 2 年生が「工夫後にすぐ食べた」
、1 年生は「少しずつ
食べてくれた」であった。
4.考察および結語:以上から、食欲増進のために「どのよ
うな工夫をしたか」は授業で学んでいる方法がとられている
ことが多く学年による差はなかった。しかし、「工夫をした
ときの動物の変化」は、より短時間で自主採食の効果を上げ
ているのは 2 年生であった。このことは 2 年生の方が動物の
個性を見極める力に長けており、給餌時の環境づくりが適切
であったためと考えられる。これらのことから、食欲増進に
適した工夫と方法を学内で共有することが重要であり、同じ
知識を持っていてもそれを実践し評価を繰り返すことで動物
看護に必要なこと、すなわち自己の観察力を養い様々な要素
を考慮することが大切であるとわかった。
演題番号:G4
歯みがき指導における動物看護師の役割
○朝倉舞佳
みゅう動物病院
1.はじめに:動物看護師の仕事を大きく 3 つに分類すると、
(1)看護(2)検査(3)指導があります。飼い主様と動物看
護師が直接関わるのは、病気の予防や、飼育全般に関して
行う指導です。指導をさらに分類すると、ア . しつけ指導 イ . 栄養管理指導 ウ . 予防指導 エ . 歯みがき指導 オ . リ
ハビリ指導などがあります。当院では歯科診療に力を入れて
いることから、私は歯科に関心をもち、歯みがき指導を担当
しております。高齢の動物が増えてきたことに伴い歯周病の
発生が増加しています。犬・猫の死因で上位を占める心臓病
や腎臓病などの発生にも歯周病が関わっているといわれてい
ます。毎日歯みがきを行うように動物看護師から指導するこ
とで、歯周病は予防可能となります。
2.材料および方法:歯科診療・歯科治療を受けた飼い主様、
新規に動物をご自宅に迎えて来院された飼い主様を対象に歯
みがき指導を行います。飼い主様には(1)食餌内容(2)お
やつ・おもちゃを与えているか、またその種類(3)かじり
癖 ( 石・木・ボールなど ) があるか(4)口の周囲を触る事が
できるか(5)デンタルホームケア実施の有無の確認を行い
ます。歯周病発生の疫学的特徴、歯肉炎から歯周炎への進行、
重度となった場合の症状や抜歯の必要性などについて説明
し、歯みがき指導を行います。歯みがきの方法・注意点、ど
うしても困難な場合にはデンタルケア製品を有効に使って予
防につなげることについてお伝えします。
3.結 果:歯科処置後、デンタルケアを行わなかった場合
には歯垢・歯石が再付着していましたがデンタルケアが十分
出来ていた場合には比較的良好な状態を保っていました。デ
ンタルケアとしては歯みがきがもっとも効果的でした。若齢
時に歯みがき指導を行った場合、動物と飼い主様がより良い
関係を築くことができており、しつけ指導にも有効でした。
また、診察室での口腔内検査もスムーズに行う事ができてい
ました。
4.考察および結語:歯みがき指導を行うことで、飼い主様
とのコミュニケーションが増え、デンタルグッズの売り上げ
も増加しました。さらに定期的な歯科検診だけでなく、歯み
がきの成果を報告しに動物と一緒に来院して頂けるようにな
り、仕事に対してのモチベーションへと繋がりました。歯み
がき指導を例として、動物看護師が専門的な知識を持ち、獣
医師と飼い主様との橋渡しの役割ができればこれからの動物
看護師のあり方や方向性が見えてくるのではないでしょう
か。
― 116 ―
演題番号:G5
TPLO の術後管理
○堀田直美、堀田直美、薮野公子、大野茜子、森本陽子、大野舞子、乾 千恵、田中瑞葵
藤井寺動物病院
1.はじめに:TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)は、前
十字靭帯断裂(部分断裂、完全断裂)に対して欧米では最も
広く普及している骨切り術であり、当院でも本疾患の第一選
択として施術している。当院では術後2週間の入院を推奨し
ており、その期間の適切な術後管理や改善点について検討し
た。
2.材料および方法:
(1)アイシング 炎症や浮腫を軽減す
るため手術直後から行う。熱感や腫脹の程度により1日の回
数を変え、チェック表に記入する。浮腫がある場合は浮腫マッ
サージ後に行う。
(2)感染予防 手術の前日、術野の毛刈
りをした後に抗菌シャンプーで洗浄する。手術直後には防水
性創傷被覆保護用ドレッシング材を貼付し、術創を保護する。
アイシング時、保冷剤に滅菌した手ぬぐいを巻いて術部に当
てる。薬理効果が十分発揮出来るよう、1日2回の抗生剤は
12時間間隔で投与する。3)疼痛管理 デュロテップ MT
パッチ(フェンタニルパッチ)を使用。毛刈り後、アルコー
ルで拭き、十分乾燥させてから貼付する。その上に防水性創
傷被覆保護用ドレッシング材を貼付すると、薬効期間中剥が
れることは少ない。NSAIDs の投与を併用する。(4)エリ
ザベスカラー 決して術創に届かないように、工夫しなけれ
ばならない。(6)運動制限 骨切り部の骨癒合が確認でき
るまでは運動制限を行う。術後1週間は排泄時の引き綱歩行
に止める。その際、後肢に負担をかけないようにスリングで
補助をする。(7)術創の確認 腫脹、浮腫、漿液、茄皮の
有無の確認を行う。(8)負重の確認 鎮痛剤を止めてから
負重が弱くなっている場合は、
痛みによることが考えられる。
また、負重していた患肢を明らかに挙上している場合は、イ
ンプラントに問題が起きていることもある。これらの場合、
すぐに獣医師に報告する必要がある。患肢の着地に時間を要
する患者動物には、関節可動域減少の予防のため細心の注意
を払って関節可動域運動を行う。
3.結 果:上記の管理を実施することで、漿液の量や腫脹
が軽減された。また、チェック表の使用によって、正しく管
理することが可能で、より詳細に観察するようになるため異
常の早期発見にも繋がる。
4.考察および結語:基本の管理方法があっても、患者動物
の性格や状態によって術後管理は異なる。よく観察し、個々
に適した工夫を模索することが重要である。不適切な術後管
理では予後を悪化させる可能性もあり、適切な術後管理を行
うことは術後の機能回復の一助になると考えられる。
― 117 ―
平成 25 年度 獣医学術近畿地区学会
協賛企業ご芳名一覧(50音順)
多くの企業様から企業紹介・広告・展示出展などにご協賛いただきました。
厚く御礼申し上げます。
近畿地区連合獣医師会・獣医学術近畿地区学会運営委員会
1.アークレイマーケティング株式会社
2.アニコム損害保険株式会社
3.MP アグロ株式会社
4.共立製薬株式会社
5.株式会社キリカン洋行
6.有限会社クライエルジャパン
7.シスメックス TMC 株式会社
8.千寿製薬株式会社
9.ゾエティス・ジャパン株式会社
10.DS ファーマアニマルヘルス株式会社
11.東亜テクノ株式会社
12.中北薬品株式会社
13.日生研株式会社
14.日本全薬工業株式会社
15.株式会社ネオ・ベッツ
16.株式会社葉月会
17.株式会社微生物化学研究所
18.富士フイルムメディカル株式会社
19.株式会社フレット三重営業所
20.ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカジャパン株式会社
21.ペットコミュニケーションズ株式会社
22.松研薬品工業株式会社
23.Meiji Seika ファルマ株式会社
24.株式会社メディアート
25.メリアル・ジャパン株式会社
26.株式会社モノリス
27.裕和薬品株式会社
28.株式会社ユニックメディカル
29.ワクチノーバ株式会社
30.和広薬品株式会社
― 119 ―
1.アークレイマーケティング株式会社
大阪府大阪市北区南森町 1-4-19 サウスホレストビル 4F
TEL 050-5533-5585 FAX 06-6312-3813
http://www.arkray.co.jp/
アークレイは動物用検査機器として臨床化学自動分析装置や電解質分析装置を
販売しており、全国の多くの動物病院でご使用いただいております。
また、これらの機器で測定した結果を一元管理して診療に活用いただくための
システムや、装置の故障時における万全のサポート体制も備えております。弊
社はこれからも皆さまのお役に立てるよう、ハードとソフトの両面から院内検
査をトータルでサポートして参ります。
2.アニコム損害保険株式会社
東京都新宿区下落合 1-5-22 アリミノビル 2 階
TEL 03-5348-3777 FAX 03-6863-8257
[email protected]
http://www.anicom-sompo.co.jp/
アニコム損保では、保険金支払データの分析を通じて、どうぶつがケガをしな
い、病気にならないための情報の提供など、飼い主の皆様の『涙』を減らし、
『笑
顔』を生みだす保険会社を目指して、グループをあげてケガや病気の予防促進
に取り組んでまいります。
3.MP アグロ株式会社
大阪府東大阪市新庄東 2-13
TEL 06-4309-9339 FAX 06-4309-9330
http://www.mpagro.co.jp
動物の健康は人の健康につながる
●動物用医薬品販売の全国ネットワークを駆使し、あらゆる動物の健康維持に
貢献します。
●安全な畜水産物の生産をサポートし、獣医療の発展と食の安全・安心に貢献
します。
― 120 ―
4.共立製薬株式会社
大阪府大阪市中央区平野町 3-1-2 島屋ビル 7 階
TEL 06-6203-6991 FAX 06-6222-1249
[email protected]
http://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/
共立製薬は、「人と動物と環境の共生をになう」という企業理念のもと、半世
紀以上の間、日本の獣医療と共に歩み成長してまいりました。小動物用から畜
水産用まで、幅広いニーズに即した確かな品質の製品提供はもとより、幼齢期
から老齢期までのライフケアと疾病管理、病院および農場内の衛生・安全管理
をトータルに考えた様々な提案を展開しております。これからも動物薬のリー
ディング・カンパニーとして理念の実現を目指します。
5.株式会社キリカン洋行
東京都港区芝 2-10-4 電巧社ビル
TEL 03-3457-0128 FAX 03-3457-9669
[email protected]
http://www.kirikan.com
株式会社キリカン洋行は、動物用医薬品、医療機器の輸入販売を行っております。
主な取扱い製品は、犬のマラセチア皮膚炎治療用シャンプー「マラセブ」、犬
猫用スキンケアシャンプー「ノルバサンシャンプー」、世界最高水準の品質と
信頼性を誇る Integra Miltex 社の鋼製器具、Ortho medical 社のインプラント
製品、大人気の電気メス GIMA 社「ダイアテルモ MB122K」です。
製品のご紹介、デモンストレーション等を行っておりますので、ぜひお申し付
けください。
6.有限会社クライエルジャパン
三重県松阪市上川町 3639-21
TEL 0598-28-5196 FAX 0598-28-7881
[email protected]
http://plaza-cleyera.com
医療用不織布製品の製造販売を行っており、特に清潔を完全に確保するため 100%
単回使用の使い捨て商材をご提案させていただいております。
中でも手術用ドレープは患畜の未消毒部位や周辺環境から術野を分離し手術時の感
染の防止を目的に使われる為、バクテリア・ウイルスバリアー性を特に重視した上
で原反から開発しご提案させていただいております。
取扱製品としましては、滅菌ドレープ、オペガウン、ドクター(ナース)キャップ、
ディスポシーツ、各種カバー、マスク、グローブなど院内で必要とするものをディ
スポでご用意させていただいています。
(ドレープなどは穴のサイズ、位置、大きさなどカスタムメイドに対応させていただ
きます)
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7.シスメックス TMC 株式会社
兵庫県神戸市西区室谷 1 丁目 3 番地の 2
TEL 078-992-6921 FAX 078-992-6922
[email protected]
http://www.sysmex-tmc.co.jp/
pocH-100iv Diff は、独自に開発した専用試薬によるスピーディな白血球分画を
可能にし、動物病院の日常診療をより強力にサポートします。コンパクトなボ
ディにさらなる機能を追加して、進化を遂げた新しい“ポチ”は、動物病院に
おける血液検査の新たなステージをお届けします。
8.千寿製薬株式会社
大阪府大阪市中央区平野町 2 丁目 4 番 9 号 武田平野町ビル
TEL 06-6226-1771 FAX 06-6222-2307
[email protected]
動物用抗炎症ステロイド点眼剤「ステロップ」、眼科・耳科用「ロメワン」、眼
科用「ティアローズ」、
「パピテイン」
「ライトクリーン」と耳科用「ミミィーナ」
、
を動物用医薬品として、
「ベストフレンズ シリーズ」としてイヤークリーナー
A とイヤークリーナー G、シャンプー類 2 種類を DS ファーマアニマルヘルス
㈱から販売しています。販売促進物のお申込みをしていただけますので、展示
ブースへのお立寄りを心からお待ちしております。
9.ゾエティス・ジャパン株式会社
東京都渋谷区代々木 3-22-7 新宿文化クイントビル 14 階
TEL 03-5309-7900 FAX 03-5309-9914
2013 年 4 月 1 日、ファイザー株式会社アニマルヘルス事業部門は、新会社「ゾ
エティス・ジャパン株式会社」として独立いたしました。社名の「zoetis」は「生
物の」という意味の「zoetic」に由来しています。また、「zo」は「zoo(動物
園)」など動物に関連し、動植物に特化した会社の性格をあらわしています。
「ゾ
エティス」は、そのすべての製品を受け継ぎ、動植物の健康に特化する形でさ
らに精進してまいります。どうぞ宜しくお願いします。
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10.DSファーマアニマルヘルス株式会社
東京都台東区台東 2-9-4 明治安田生命秋葉原昭和通りビル 3F
TEL 03-5816-0363 FAX 03-3835-2289
[email protected]
http://animal.ds-pharma.co.jp/
私たちは、お客様の満足を第一に考え、研究開発型の動物薬メーカーとして、
質の高い新たな価値を創造することで動物たちの健康を支え、動物たちと共に
暮らす人々の笑顔溢れる社会づくりに貢献していきたいと思います。さらに
“医
食同源”のコンセプトによる食事と動物用医薬品の両面から、コンパニオン・
アニマルの健康増進を願う獣医師の方々にとって有用な製品と情報の提供を継
続してまいります。
11.東亜テクノ株式会社
三重県伊賀市生琉里 3121-9
TEL 0595-26-1789 FAX 0595-26-1790
[email protected]
http://www.touatechno.co.jp
ペット用酸素ハウスのレンタル
酸素濃縮器、関連用品の販売
外科手術用鋼製器具の販売
テルコム製酸素濃縮器(H-12 型)は、0 ~ 10L/m まで自由に酸素の流量を設
定でき、濃度も 45%~ 90%以上まで調整できます。大量酸素を使用する ICU
には酸素のコスト削減を含め最適です。
12.中北薬品株式会社
三重県津市藤方字中興 1000-3
TEL 059-227-6505 FAX 059-227-6589
http://www.nakakita.co.jp
創業から 280 年を超える中北薬品は、医薬品卸売業を中心としながら医薬品・
健康食品等の開発と販売など、医療にかかわる様々な事業を展開する医薬品総
合商社です。
その一端を担う動薬部は動物病院様・畜産業者様などの先生方に対して医療に
関するあらゆる商品やタイムリーな情報を提供し、ユーザー様の経営のサポー
トを行っています。
商品と情報の提供を通じて、人や動物の健康に幅広く貢献して行きます。
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13.日生研株式会社
東京都青梅市新町 9-2221-1
TEL 0428-33-1056 FAX 0428-33-1036
[email protected]
http://www.jp-nisseiken.co.jp
日生研は国内動物用ワクチンメーカーの草分けとして昭和 34 年に設立され、
多くの製品を世に送り出して参りました。
現在、鶏用 20 品目、豚用 14 品目、馬用 7 品目、牛用 3 品目、犬用 1 品目、魚
用 2 品目のワクチン、診断液 6 品目といった動物用生物学的製剤のほか、各種
実験動物と実験動物用飼料、畜産用混合飼料を製造・販売しております。
また、医薬品等の安全性試験の受託を承っております。
14.日本全薬工業株式会社
大阪府伊丹市中野北 3-1-5
TEL 072-770-8223 FAX 0120-70-4875
[email protected]
http://www.zenoaq.jp
ゼノアックは動物用医薬品の開発・製造・輸入・販売までを一貫して行ってい
ます。GMP 対応の生産体制、GLP 対応の研究開発体制(専業メーカーで唯一
の中央研究所と臨床研究牧場を保有)、そして業界で唯一、自社の販売拠点を
全国 14 箇所に展開。国内そして世界の優良企業とも積極的な業務提携を推進
し、強固なパートナーシップを結んでいます。
15.株式会社ネオ・ベッツ
大阪府大阪市東成区中道 3-8-11
TEL 06-6977-0760 FAX 06-6977-0761
[email protected]
http://www.neovets.com
開業獣医師が既成概念にとらわれず、社会のニーズと小動物医療の将来を見据
えて設立した会社です。
ネオベッツは、社会におけるペット(伴侶動物)の重要性の認識や地位の向上
を反映し、確実に大きくなってきている獣医師への期待に応えるべく、ヒュー
マン・アニマル・ボンドの理念を中心に据えた「ネオベッツ VR(Veterinary
Referral)センター」(ER センター併設)を 2005 年 10 月 3 日に大阪市内に開院
いたしました。
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16.株式会社葉月会
大阪府箕面市船場東2-3-55 動物救急医療センタービル
TEL 072-730-8200 FAX 072-730-2470
[email protected]
http://www.hadukikai.co.jp/
事業内容:動物の診療施設経営
獣医学術振興及び獣医師の技術向上のためのセミナー企画・開催
株式会社葉月会は近畿を中心とした開業獣医師が主体となり、出資・運営して
いる組織です。
1998年に大阪府箕面市に北摂夜間救急動物病院を設立致しました。
「人と動物の絆を大切にして相互の健康と福祉の増進に努め、平和で豊かな社
会作りに貢献する」をミッションとし、家庭動物医療における社会のニーズに
応えるべく活動しております。
17.株式会社微生物化学研究所
京都府宇治市槇島町24、16 番地
TEL 0774-22-4519 FAX 0774-22-4568
[email protected]
http://www.kyotobiken.co.jp
動物用ワクチンメーカーの㈱微生物化学研究所(京都微研)です。
私たちは動物自身の免疫を高め、国や地域の防疫を図り、人々が安全で安心し
て過ごせる「社会を考えた会社」でありたいと思っています。すべては、最高
のワクチンを提供することがペットのため、畜産のため、日本のため、世界の
ためになることと信じてこれからも努力していきます。
18.富士フイルムメディカル株式会社
大阪府大阪市淀川区西宮原 1-3-5
TEL 06-6396-5124 FAX 06-6396-5159
[email protected]
http://fms.fujifilm.co.jp/
富士フイルムメディカルは、トータルな製品ラインナップで先生方の日々の診
療をお手伝い致します。
犬 CRP、リパーゼなどの測定ができるドライケムや、簡易操作と高画質にこ
だわった超音波診断装置。
充実した画像処理とクラウドサービスで診療の効率化を実現する X 線画像診
断システム。
今秋には、犬の甲状腺ホルモンを測定できる新製品も発売予定です。
これからも富士フイルムメディカルを宜しくお願い申し上げます。
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19.株式会社フレット三重営業所
三重県津市藤方字茨ク子 1649-2
TEL 059-226-6611 FAX 059-226-6615
[email protected]
http://www.flet.co.jp
当社の発祥の地は「越中富山の薬売り」と称されております富山です。江戸中
期前田家への献上から当社の歴史は始まり、今日では総合医薬品卸として営業
地域は新潟を含む東海北陸全域です。これもひとえに「地域にあって人々と動
物の健康に奉仕する」という当社の社会的使命に共感し、ご支援頂いている先
生方及び地域の皆様あってのことと感謝申し上げます。今後、一層皆様のお役
にたてる企業を目指し精進して参る所存です。
20.ベーリンガーインゲルハイム ベトメディカジャパン株式会社
東京都品川区大崎 2-1-1 Think Park Tower
TEL 03-6417-2800 FAX 03-5435-2950
21.ペットコミュニケーションズ株式会社
大阪府大阪市中央区瓦町 1-6-10 JP ビル 3 階
TEL 06-6228-0873 FAX 06-6228-0872
[email protected]
http://www.ahmics.com
◆動物病院様向け顧客管理・電子カルテソフト
「Ahmics(アーミックス)V4」
・約 30 年の販売実績
・充実の標準機能と、豊富なオプションで病院様毎に最適な使い勝手を実現
◆獣医療向けお薬データベース
日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)
東京大学大学院 獣医薬理学教室 尾崎博 教授 監修
・獣医療に特化した最新お薬データ搭載
(約 3,660 件 2013 年 6 月時点)
・AhmicsV4 とも完全連携
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22.松研薬品工業株式会社
東京都小金井市緑町 5-19-21
TEL 042-381-0075 FAX 042-381-0344
[email protected]
http://www32.ocn.ne.jp/~matsuken/
動物用生物学的製剤の開発、製造、輸入並びに販売。
【製造リスト】
犬猫用狂犬病不活化ワクチン
豚コレラ生ワクチン(輸出のみ)
豚丹毒生ワクチン
ブリ類連鎖球菌症不活化ワクチン
ヒラメ連鎖球菌症不活化ワクチン
ヒラメ連鎖球菌症混合ワクチン
【輸入製品リスト】
豚オーエスキー病生ワクチン
豚胸膜肺炎不活化ワクチン
豚丹毒不活化ワクチン
豚ストレプトコッカス・スイス不活化ワクチン
※販売元:株式会社インターベット
23.Meiji Seika ファルマ株式会社
東京都中央区京橋 2-4-16 動薬飼料部
TEL 03-3273-3430 FAX 03-3271-1460
http://www.meiji-seika-pharma.co.jp/
Meiji Seika ファルマ㈱の動薬飼料部は畜産薬・水産薬・飼料分野ならびに、
コンパニオンアニマル分野での更なる新剤開発・製品改良を進め、研究開発型
の国内メーカーとして更なる発展を目指してまいります。
Meiji Seika ファルマ㈱動薬飼料部は、動物の健康を守ることを通じて、安全・
安心な畜水産物の安定供給と生産性向上に寄与し、畜水産の更なる発展に貢献
してまいります。また、コンパニオンアニマルの健康及び QOL 向上にも貢献
してまいります。
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24.株式会社メディアート
東京都豊島区池袋 1-8-7 サン池袋Ⅰ 2F
TEL 03-5953-7011 FAX 03-5953-7012
[email protected]
現在全国約 850 の動物病院に導入されている弊社のシステムはデジタルサイ
ネージと呼ばれ、様々な情報を表示することで待合室での時間を効率よく飼い
主への告知に活用することができます。多くの情報を待合室で提供することで、
“先生に相談してみよう”という行動につながります。番組は予防啓発などの
共通コンテンツのほか、自由度の高いオリジナルコンテンツを取り混ぜて表示
可能。待ち時間の退屈感解消は勿論の事、多くの先生方より来院頻度・診療単
価向上にも非常に効果があるとのご意見を頂戴しております。
25.メリアル・ジャパン株式会社
東京都新宿区西新宿 3-20-2 東京オペラシティータワー
TEL 03-6301-4710 FAX 03-3378-1533
http://www.merial.jp/pages/default.aspx
26.株式会社モノリス
大阪府箕面市船場東 2-3-55 動物救護医療センター 2F
TEL 072-730-2650 FAX 072-730-2605
[email protected]
http://www.monolis.com
【小動物専門の臨床検査センター】
弊社は動物臨床検査の受託、医薬品開発過程での分析及び試験の受託を主な業
務と致しております。
~秋の健康診断検査キャンペーン実施中!~
① 生化学 12 項目 ② 生化学 16 項目
(オプション項目)
T4、FT4、コルチゾール、炎症、GA 他多数あり。
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27.裕和薬品株式会社
大阪府大阪市中央区東高麗橋 2 番 20 号
TEL 06-6942-4531 FAX 06-6943-5445
28.株式会社ユニックメディカル
静岡県駿東郡清水町堂庭 245-1
TEL 055-981-2011 FAX 055-981-2022
[email protected]
http://www.yunic-vet.jp/
ユニックメディカルは、医薬品(動物用・人体用)・医療材商品を全国の動物
病院様向けにカタログ販売をしております。
商品の種類も豊富に取り揃え、病院様のご要望によっては分割販売も行ってお
ります。
当日発送の受付は 17 時まで行っておりますので、お急ぎの場合も迅速に対応
いたします。是非一度カタログをご覧下さい。
29.ワクチノーバ株式会社
東京都港区浜松町 1-24-8 オリックス浜松町ビル 4 階
TEL 03-6895-3710 FAX 03-6895-3713
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30.和広薬品株式会社
三重県津市下弁財町津興 3016 番地
TEL 059-227-3231 FAX 059-227-3222
[email protected]
http://www.wacoh.gr.jp/
和広薬品は、動物愛護精神のもと、小動物医療に関わる先生方に快適な診療環
境を整えるサービスを通して家族の一員であるコンパニオンアニマルの健康管理
を全面サポートします。
高度化する病気の治療・予防、老齢動物対策など、獣医療のニーズは多様化し
ています。弊社では薬品、医療器具、療法食、サプリメント販売はもちろん、
トリミンググッズなどの関連資材の販売、市場調査も行っており、ソフトとハー
ド両面より獣医療・社会に貢献することを目指しております。
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