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HV809 EL ランプドライバー
アプリケーションノート
HV809 EL ランプドライバー・アプリケーションノート
by Roshanak Aflatouni & Scott Lynch (Supertex)
訳:浅村素子(マイクロテック)
概要
スーパーテックス社の HV809 は大型の EL ランプを高輝度
第 1 部 ポータブルアプリケーション
で駆動させるために開発されました。整流・平滑された
基本的な回路構成は図 1 に示したとおりです。DC-DC コ
AC100∼120V の電源、あるいは 50∼200V の範囲の DC
ンバータを設計するには多くのデバイスが必要ですが、
電源でも動作します。電池電源のアプリケーションには
ここでは安価な 555 タイマーIC を DC-DC コンバータに
外付けの DC-DC コンバータが必要です。
使っています。コンバータの詳細に関しては後述します。
このアプリケーションノートはポータブルアプリケーシ
ョンと商用電源アプリケーションの 2 つを紹介していま
す。
第1部は、電池電源(4AA セル)用アプリケーションで
12.5 平方インチの EL ランプを 15ft-lm(51cd/m)の輝度で
駆動させる方法を解説し、高電圧出力 DC-DC コンバータ
を設計するための詳細説明になっています。PDA や GPS
などの携帯用コンピュータ、その他高輝度 EL が要求され
る携帯機器等に利用できます。
第2部では、100 平方インチの EL を 20ft-lm(68cd/m)の
輝度で 120V の AC 電源で駆動させる方法の説明です。広
ランプドライバー回路と動作
告、看板、誘導灯、インテリア用アクセントライトなど
スーパーテックス社の HV809 は 400Hz で 350nF までの
に利用できます。
EL ランプの動作に最適です。
電源入力は DC50∼200V で動作します。HV809 は EL ラ
ンプに、入力電圧の 2 倍のピーク電圧の矩形波を供給し
ます。
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HV809 EL ランプドライバー
HV809 は、一つの抵抗、REL-OSC によって制御されるラ
消費電力のおよそ 3 分の 1 が EL ランプの等価抵抗で消
ンプドライブ・オシレータを持っています。オシレータ
費され、およそ 3 分の 2 が HV809 のブリッジ・トランジ
はランプドライバーの出力周波数を制御しますが、この
スタで消費されます。ランプ・ドライブ周波数が高い場
部分は図 2 に見られるように 4 個のトランジスタによる
合、ランプが大きい場合、ランプ電圧が高い場合には
フルブリッジ構成となっています。電源は整流 ・平滑さ
HV809 の電力は更に大きくなります。これが、8ピン SOP
れた商用電源か、外部高電圧電源で供給することが出来
パッケージの HV809 を使った場合の制限要素となります。
ます。
8ピン SOP では 500mW が最大定格であり、これを超え
出力トランジスタは図 3 に見られるようにドライブ・オ
て動作させることはできません。TO-220 パッケージです
シレータによって交互にオンし、矩形波を発生します。
と、最大定格は 15W となります。
このデザインは優れたドライブ能力を有しており、上下
図 4、5 は 12.5 平方インチのランプを2種類のランプド
対称のバイポーラ・ドライブ波形によって直流バイアス
ライブ周波数で駆動させた場合の典型的な特性です。こ
の無い駆動を実現します。多くのランプメーカーはマイ
のグラフは特定のランプによる実験に基づいたもので、
グレーションの問題を防ぎランプの寿命を延ばすために
別のランプの特性と全く同じとは限りません。
ゼロバイアス・ドライブを推奨しています。
ランプ・ドライバー部分の設計は基本的にランプドライ
ブ周波数と電圧の設定です。ランプの周波数は REL-OSC
によってコントロールされます。通常この抵抗値の範囲
は 510KΩから 5.1MΩです。抵抗値を大きくすると周波
数が低くなります。ランプドライブ電圧は高電圧電源
(HVout)によって制御されます。
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HV809 EL ランプドライバー
電池電源 DC-DC コンバータ
タイマーIC 555 を図 6 の回路のように使用することで安
コンバーターのデザインは以下の手順で行います。
価な DC-DC コンバータを作ることができます。
1.
要求項目を設定する。
図 6 の回路は、555 タイマーを用いて Qsw を PWM 制御
2.
基本的なコンバーターパラメータを設定する(周波
する基本的なフライバック・ブースト・コンバータです。
デューティ・サイクルを変えることによって出力電力が
数・デューティ・サイクル、インダクタンス(L))。
3.
コントロールされます。通常は RC、RD および CT の時
スイッチング・トランジスタとダイオードを選択す
る(Qsw、D)
。
定数によって周波数とデューティ・サイクルを決定しま
4.
入出力キャパシタを選択する(CIN、C HV)
。
す。この回路ではフィードバック抵抗 RFB とツェナーダ
5.
時定数部品を選択する(RC、R D、CT)
。
イオード ZFB がタイミング回路に順バイアスを加え、出
6.
フィードバック部品を選択する(RFB、Z FB)
。
力電圧が増加すると、それに伴いバイアス電圧が増加し
ます。このバイアスによりタイミングキャパシタ CT の充
要求項目の設定
電速度を上げると共に放電速度を下げ、出力電圧増加の
HV809 用の DC-DC コンバータを設計する際には次の3
際のデューティ・サイクルを小さくします。このメカニ
つのパラメータが最も重要です。
ズムによってレギュレーションに不可欠な負帰還が構成
1. 入力電圧範囲(VIN min/max)
されます。この回路では部品を適切に選択することによ
2. 出力電圧(HVOUT)
り、スイッチング周波数を一定に保つと同時に出力電圧
3. 出力電力(PHV)
を安定化できます。
VIN はあらかじめ決まっていますが、 HV OUT、P HV に
関しては自分で設定しなければなりません。もし、EL ラ
ンプドライブ周波数と電圧が決まっていれば、EL ランプ
の静電容量を充電・放電することによって消費される電
力は下記の式で得られます。
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<数式 1>
1
P lamp = f lamp C lamp V 2 lamp
2
ここで;
flamp = EL ランプ周波数
C lamp = EL ランプ静電容量
V lamp = EL ランプ p − p 電圧
<数式2>
( DVIN ) 2
2 fcL
P HV =
ここで;
P HV = 出力電力
D = デューティ・サイクル
V IN = 供給電圧
fc = コンバータ周波数
この式では、消費電力のおおよその値を算出することは
L = インダクタ値
出来ますが、HV809 のドライバとランプの等価抵抗によ
るパワーロスは計算に入っていません。DC-DC コンバー
EMI(電磁干渉)を避けるため、多くのアプリケーショ
タの要求項目を設定する際は、HVOUT、P HV は実験結果
ンでは周波数を確定することが大切です。従いまして、
によって決定した方がよいでしょう。使用予定のランプ
まずコンバータの周波数から設定することをおすすめし
で HV809 ランプドライバの回路を組んで下さい。ドライ
ます。周波数が高いほどインダクタは小さくてすみます
バに電力を供給するには、市販の実験用高電圧パワーサ
が、スイッチング・ロスの度合いは上がります。逆に低
プライを使用して下さい。要求される色、輝度、消費電
い周波数だとスイッチング・ロスの度合いも低くなりま
力が全て満足されるように、入力電圧と EL ドライブ周波
すが、インダクタは大きなものが必要となります。コン
数を調整して下さい。入力電圧・電流を測定し、その数
バータ周波数は 20∼100kHz が適しています。
値を DC-DC コンバータのデザイン要求項目として使って
コンバータ周波数が決定したら、次はインダクタの選択
下さい。実践的な最大電力の測定のためには、いくつか
です。あらかじめ規定されているスイッチング周波数に
のランプで入力電流を測定したデータをお使いになるこ
関しては、インダクタの値が大きい方がピーク電流も低
とを推奨します。
くなりますが、デューティ・サイクルがかなり大きくな
部品の誤差とコンバータの効率に余裕を持たせるため、
ります。デューティ・サイクルは以下の式で算出します。
実際に要求されるより高めに電力レベルを設定するよう
設計して下さい。通常は要求電力に対して最低 125%のレ
<数式 3>
ベルが適当です。
動作周波数、デューティ・サイクル、インダクタの設定
この数式では、100%より大きなデュー
D=
2 fcLPHV
VIN
ティ・サイクルが算出される可能性が
あります。インダクタの値が高すぎる
次にスイッチング・コンバータの基本的な動作パラメー
場合などです。コンバータを最も効果
タ(周波数、デューティ・サイクル、インダクタ)を設
的に動作させるるためにはデューティ・サイクルは最低
定します。スイッチ抵抗、インダクタのロス、その他の
入力電圧時において 70%程度に押さえて下さい。デュー
寄生成分を考慮に入れなければこれらのパラメータの相
ティ・サイクルが大きいほどコンバータの効率が上がり
関関係は以下の数式で表せます。
ます。
インダクタの定格を決定するためのピーク電流は以下の
式でおおよそ算出できます。
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<数式 4>
<数式 7>
IL( PK ) =
2 PHV
fcL
P SW =
R SW ( 2 PHV )1.5
V IN fcL
正しくインダクタを選択するためには、デューティ ・サ
イクル、インダクタ値、インダクタの定格が適正な値に
ここで;
なるように、数式 3、4 を繰り返し試してみて下さい。も
RSW = スイッチ・オン抵抗
し適当な値が得られなければ、コンバータの周波数を変
コンバータ周波数はトランジスタの電力損失に大きな影
える必要があります。
響を与えません。周波数が高いとインダクタは小さくな
り、fcLは一定の値を保つからです。
QSW と D の設定
スイッチングトランジスタとダイオードの耐圧は、必ず
スイッチングトランジスタ QSW を設定するのに最も重要
出力電圧より高くなければなりません。
なパラメータは耐電圧、オン抵抗、ピーク電流、電力損
失です。ダイオードのために重要なパラメータは、逆方
CIN と CHV の設定
向耐電圧、ピーク反復順電流、平均順電流、逆回復時間
入力キャパシタ CIN は、入力電源インピーダンスを減少
です。
させるためのバイパスキャパシタとして機能します。ま
ピーク・インダクタ電流もまた、スイッチングトランジ
た、高周波電流パスをショートループに制限することで
スタとダイオードを流れるので、以下の式が成り立ちま
EMI も減少させます。従いまして、CIN はコンバータの
す。
近くに配置し、コンバータ周波数では低インピーダンス
でなければなりません。最も効率よく機能させるために
<数式5>
は、CIN のインピーダンスは 1Ω以下でなければなりませ
ん。
ISW ( PK ) = ID( PK ) = IL( PK )
平均ダイオード電流は単にステップ 1 で設定されたでラ
<数式8>
ンプ・ドライバが必要とする電流です。効率を最大に上
げるためには、逆回復時間が 100nS 以内のファーストリ
CIN ≥
1
2π fc ZIN
カバリー・ダイオードを使って下さい。
トランジスタを通る平均電流は、平均入力電流とおよそ
ここで;
同じです。最大平均電流は最低入力電圧の時に発生しま
Z IN = CIN インピーダンス
す。
出力キャパシタ CHV は高電圧エネルギーを蓄積し、また
高周波電流パスをショートループに制限することで EMI
<数式6>
ISW =
PHV
VIN
を減少させます。CIN と同様にコンバータの近くに配置
しなければなりません。CHV の値は HVOUT のリプル電
圧の要求値によって大きく変化します。一般的には、出
力電圧の約 10%のリプルが適切です。
スイッチングトランジスタの平均電力損失は以下の式で
概算できます。入力電圧が最少の時、トランジスタの電
力損失は最大になります。
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<数式 9>
RC/R D 比は 555 タイマーの適切な動作のためには 2/1 以
上でなければなりません。
IHV
CHV ≥
ripple • f LAMP HVOUT
もしそれ以下だとタイミング・キャパシタ電圧が 1/3V CC
以下に放電することが不可能となり、555 の出力は LOW
ここで;
IHV = HV 809の入力電流
ripple = Vripple( p − p) / HVOUT
fLAMP = ELランプ周波数
のままになります。あらかじめ RC/RD 比が与えられてい
る場合、コンバータ周波数は図 8 から求めることができ
ます。コンバータ周波数は CT の値からも調整できます。
CIN と C HV は低 ESR で高周波タイプにして下さい。
時定数 RC、RD、CT の設定
時定数部品 RC、RD、C T は、コンバータ周波数と最大デ
ューティ・サイクルを決定します。算出はプロセスを繰
り返して行って下さい。
RC/RD の比率で最大デューティ・
サイクルをセットします。また、RC 、R D、CT の3つの
値は周波数を決定します。フィードバック回路によって
デューティ・サイクルが最大値よりも小さくなることや、
コンバータの周波数が負荷や供給電圧の状態によって変
化することを考慮する必要があります。負荷が何もない
状況ではコンバータ周波数は出力電圧を維持するために
とても低くなります。
最大デューティ・サイクルは図7のグラフを使って求め
ることができます。RC/R D 比が大きく、グラフの勾配が
急峻な部分の上方で、最大デューティ・サイクルを決定
することで、抵抗値の公差による影響を少なくすること
ができます。一方、RC/R D 比の値が小さいと後述の様に
レギュレーションの範囲が狭くなります。一般に、RC/R D
比は4が妥当です。
最大デューティ・サイクルは下記の式でも求められます。
<数式10>
D (max) =
1
1 .443
1 − 2 NCD 
1+
In 
NCD + 1  2 − NCD 
ここで;
NCD = RC / R D
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コンバータ周波数は下記の式で算出できます。
スタートアップ時に出力が 0V でフィードバックツェナー
ダイオードが順方向にバイアスされている場合、限界状
態になります。もし、RFB が小さすぎると、555 の通常
<数式11>
fc (nom) =
1
動作で必要とされるタイミング・キャパシタの電圧が

1
 1 − 2 NCD  
RC CT  0.693 +
In 
 
N
CD
+
1
 2 − NCD  

2/3Vcc になるのを妨げ、その結果、スイッチングトラン
ジスタ QSW がオン状態のままとなり、過電流となり破壊
繰り返し計算して、前に設定した周波数とデューティ・
に至ります。この状態を避けるためには、RFB/R C が常に
サイクルになるように、RC 、R D、CT の値を決定して下
2 以上になっていなければなりません。
さい。
<数式 15>
<数式12>
RFB
>2
RC
HVOUT = VZ + VBIAS
最適なレギュレーションのためには、RFB/R C が 2 より大
バイアスの値は負荷と入力電圧の状態で大きく変化しま
きい値(抵抗値の公差も含めた最低値)に設定すると同
す。バイアス電圧の限界値は数式 13 及び 14 で算出でき
時に RFB は可能な限り小さくします。ツェナー電圧の選
ます。入力電圧が最少且つ負荷が最大の状態でバイアス
定は、必要な出力電圧−1/2(最大バイアス電圧)として
は最少になります。入力電圧が最大且つ無負荷の状態で
下さい。必要であれば、ツェナーダイオードの電圧は端
バイアスは最大になります。
数を切り下げて、次に近い標準値としてください。
HV809 は定常負荷ですので、通常動作での実際のバイア
ス電圧はこの制限範囲内になります。
<数式13>
1
V BIAS (min) = VIN
3
<数式 14>

1
1
V BIAS (max) = V IN  −
 3 1 + NCD + 1

N FBC


 [1 − NFBC ( NCD + 1) ]


ここで;
NFBC = R FB / R C
NCD = RC / RD
バイアス電圧は RC/R D と、R FB/RC の関数であり、図 9
から求めることができます。VBIAS(min)はレジスタ比と
は関係ありません。
グラフから読みとれるように、RFB/R C が低いとバイアス
電圧も低くなります。しかし RFB には下限があります。
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回路例
このセクションでは、前出の電源設計法で 4AA セルを使
L
D
IL(pk)
って、12.5 平方インチのランプを 15ft-L(51cd/m)の輝度
220μH
43-57%
510mA
で点灯させるための EL ランプドライバ回路の設計に関し
330μH
53-70%
420mA
て説明します。
470μH
63-84%
350mA
330μH のインダクタは、最小入力電圧でのデューティ
必要条件
ー・サイクルが推奨値と合致します(70% )
。電流の定格
必要な電力を決定するために、HV809 ランプドライバを、
値は 520mA、AJ. W. Miller PM105-331K、330μH、1.15
実験用パワーサプライを使って動作させ実験を行います。
Ω、表面実装のインダクタを使用しました。
ランプの寿命とリーズナブルな効率のために、ランプ周
波数は 200Hz とします。
160V の入力電圧で輝度は 15ft-lm
QSW と D
(51cd/m)となります(但し、EL ランプの材料、製法は各
ダイオードには BAV21W がすべての条件を満たします。
メーカーによって異なるため、ランプの特性もそれぞれ
特性
条件
BAV21W
のメーカーで変わります)
。
逆耐電圧
>160V
200V
入力電流は約 3.3mA ですので、入力電源には 528mW が
ピーク反復電流
>420mA
625mA
求められます。25% の余裕を持たせると 660mW となり
平均順電流
>3.3mA
200mA
ます。
逆回復時間
<100ns
50ns
HV809 で入力電力の 528mW の 3 分の 2 が損失により失
スイッチはスーパーテックス社の VN2220N3 MOSFET
われると仮定すると、352mW となり、SO-8 パッケージ
を使用しました。
のスペックの 500mW の範囲に完全に収まります。
特性
条件
VN2220N3
最大入力電圧は新しい電池 4 本で 6V です。最小入力電圧
耐電圧
>160V
200V
は 555 タイマーの最小動作電圧、4.5 ボルトです。
ピーク電流
>420mA
7.0A
必要条件を一覧に表すと下記のようになります。
平均電流
>147mA
900mA
VIN=4.5∼6.0V
オン抵抗
VOUT=160V
電源損失
PHV=660mW
平均スイッチ電流は数式 6 にて、スイッチの電力損失は
1.25Ω
>153mW
1.0W
数式 7 で算出できます。
動作周波数、デューティ・サイクル、インダクタ
コンバータの周波数は 23KHz を選択しました。この周波
CIN と CHV
数はスイッチングのロスを低くし、ノイズは可聴範囲外
コンバータ周波数 23KHz、規定されている CIN インピー
になります。
ダンス 1Ω以下という条件で数式 8 を計算すると、CIN は
次に、何種類かの標準値のインダクタを評価しました。
6.9μF 以上でなければなりません。標準値の中から次に
数式 3 を使って、それぞれのインダクタの値で、入力電
大きい 10μF を選択します。
圧範囲 4.5∼6.0V でデューティ・サイクルを算出しまし
200Hz のランプ周波数、10% のリプル、先に計測した
た。インダクタのピーク電流は数式 4 で求めました。設
HV809 の入力電圧 3.3mA という条件下で、数式 9 で計
計電力レベルは 660mW を採用しました。
算すると CHV は最低 1.0μF でなければなりません。こ
れは標準値ですので、そのまま 1μF を選択します。
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時定数部品 RC、RD、CT
フィードバック部品 RFB と ZFB
ステップ2で算出したように、4.5V での最大デューティ・
最良のレギュレーションのために、RFB は RC の 2 倍よ
サイクルは 70%です。
りわずかに大きい値が望まれます。RC が 51KΩなので、
数式7にこの値を代入すると RC/RD の比は 3.5 となりま
RFB は 102KΩを少し上回るぐらいの値が適当です。この
す。公差を考慮した余裕を持たせて 4.0 をターゲットとし
次に大きな標準値は 110KΩです。5%精度の抵抗を使う
ます。タイミング・キャパシタ CT を 1nF とします。コ
と、
RFB/ RC 比は 1.95 と低くなり、
「どの状態でも RFB/R C
ンバータ周波数 23KHz と規定すると、数式6によって RC
比は 2 より大きい値でなければならない」という条件に
は 45KΩとなります。これに最も近い標準値は 47KΩで
合致しなくなります。次に高い RFB の値は 120KΩで、
す。RC、R D のターゲット比である 4.0 にこれを代入する
この値だと RFB と R C の比率は 2.35 です。更に 5%のレ
と RD は 11.75KΩとなります。これに最も近い標準値は
ジスタを適用すると RFB/R C 比は 2.13 となり、先の条件
12KΩです。これら 47KΩと 12KΩを使うと RC、R D の
に合致するようになります。よって、RFB の値はを 120K
比率は 3.92 となります。5%精度の抵抗を使うとこの比率
Ωを選択することにします。
は 3.54 と低くなり、デューティー・サイクル 70%に適合
RC/R D 比 4.25、R FB /RC 比 2.35 を図 9 に適用すると、
します。これは上記の 70%に対して全く余裕が無い値な
VBIAS(max)は供給電源の約 2.1 倍となります。というこ
ので RC は 51KΩとします。すると RC/R D 比は 4.25 と
とは、ツェナー電圧は VOUT−1/2(V BIAS(max))の値と
なり、最悪でも RC/R D 比は 3.85 で、最大デューティ・
なります(そうでないと 147-152 となり入力電圧範囲を
サイクルは 72%です。51KΩを採用しても約 23KHz のコ
越えてしまいます)
。これに最も近い一般的なツェナーダ
ンバータ周波数が得られることが分かります。
イオードの値は 150V なので、これを採用します。
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最終回路
上記までで決定してきた部品を使って作る回路は、最終的には下記のようになります。
上記回路のテスト結果は以下の通りです。
特性
測定値
状態
通常出力電圧
160.8V
VIN=5.25V、R LOAD=39.65kΩ
ライン・レギュレーション
2.8%
VIN=4.5-6.0V、RLOAD=39.65kΩ
ロード・レギュレーション
3.8%
VIN=5.25V、R LOAD=39.65kΩ-∞
効率
83%
VIN=5.25V、R LOAD=39.65kΩ
周波数
22.67kHz
VIN=4.5-6.0V、RLOAD=39.65kΩ
周波数偏差
±16%
VIN=4.5-6.0V、RLOAD=39.65kΩ
無負荷周波数
2.769kHz
VIN=5.25V、R LOAD=∞
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第 2 部 オフ・ライン EL ドライバ
第 2 部では、スーパーテックス社の HV809K2 を使い、100 平方インチの EL ランプを、整流された 120V
の AC ラインで駆動する回路を解説します。
HV809K2 を使用し、400Hz、ピーク・トゥ・ピーク電圧 340V で EL ランプを駆動します。さらに、EL
ランプはロジック信号でオン・オフが可能です。アプリケーションとしては広告看板、誘導灯、インテリ
ア用アクセントライト等に適しています。
回路解説
は、発熱を最小限に押さえるため、リプル電圧が
供給電圧は 120V の AC ラインで、170V の直流
20V 以下になるものを選んで下さい。CIN は次の
に全波整流します。170V の直流は HV809 の電源
ように求められます。
に使われます。HV809K2 は内部にリニア・レギ
ュレータを持ち、10VDC の Vdd を供給します。
CIN=I IN /(2×V RIPPLLE×f LINE)
Vdd は EL 周波数用の内部低電圧 CMOS オシレ
ここで;
ータ回路の駆動に使われます。EL 周波数は REL-
I IN=C IN キャパシタからの平均電流
OSC とグラウンド間の外付け抵抗で調整できます。
VRIPPLLE=最大リプル電圧 20V
CMOS オシレータは高電圧出力 H ブリッジ、VA
f LINE=ライン周波数、50/60Hz
と VB をコントロールします。
EL ランプは VA-VB 間に接続しますが、外部 R EL
I IN 電流は HV809 の動作電流と負荷電流の合計で、
レジスタによって設定された周波数で、±170V
以下の式でおおよその値が算出できます。
のピーク・トゥ・ピーク電圧で駆動されます。
I IN=I INQ+(2×f EL×C EL ×HVIN)
計算
ここで;
120V の AC ラインはダイオードブリッジ D1、D2、
I INQ=HV809 の動作電流
D3、D4 によって全波整流されます。120V の AC
f EL=EL ランプ周波数
ラインのピーク電圧は 120×1.1414=170V です。
CEL=EL ランプ静電容量
ダイオードブリッジが必要とする耐電圧は 170V
HVIN=入力 DC 電圧
以上です。200V かそれ以上の電圧の製品、例え
ば、1N4003 が適しています。
HV809 の IINQ は 400μA が最大です。典型的な
CIN は 200V 以上の電解コンデンサーです。容量
EL ランプは 400Hz 付近で最も効率が良いので、
日本総代理店
マイクロテック株式会社 〒168-0063 東京都杉並区和泉 2-7-5
TEL:03-5300-5535
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HV809 EL ランプドライバー
f EL は 400Hz を採用しました。CEL は、 1 平方イ
ンチ当たり 3.5nF とすると C EL を概算するのに
大変役立ちます。100 平方インチだと C EL は
350nF です。HV IN は先と同様に算出すると 170V
です。
I IN= 400μA+(2×400Hz×350nF×170V)
=48mA
よって CIN は以下のように概算できます。
CIN=48mA/(2×20V×60Hz)
=20μF もしくはそれ以上
OSC1 入力
CIN は最も近いコンデンサの標準値である 22μF
OSC1 ピンと GND、VDD を接続する事で出力を
を選びました。CIN の電圧波形は図 12 の通りで
イネーブル/ディスエーブルすることができます。
す。
OSC1 ピンを GND に接続するとイネーブル状態
になります。HV809 はスーパーテックス社製の
EL ランプ周波数
TN2106K1 のような低スレッショルド MOSFET
REL 抵抗値が 1MΩだと、EL ランプの周波数は
を、200K Ωのプルアップ抵抗と共に使用するこ
約 400Hz となります。出力両端の電圧波形は図 13
とで、図 14 に示したようにマイクロプロセッサ
に示した通りです。REL 抵抗値を大きくすると、
等の外部ロジック信号で制御が可能となります。
EL ランプ周波数は下がります。EL ランプ周波数
範囲は 100Hz から 1.2KHz まで設定可能です。
電力損失・ヒートシンクについて
高い周波数に調整すると損失も増加します。
入力電流 IIN は交流 170V で 48mA と算出されま
した。入力電力は 170V×48mA=8.16W です。EL
ランプと HV809 が、その 8.16W を分担します。
分担比は EL ランプの等価抵抗と、HV809 の Hブリッジのスイッチ・オン抵抗によって変わりま
す。典型的な例では電力の 3 分の 1 が EL ランプ
で、3 分の 2 は HV809 で消費されます。
HV809K2 は 7 ピンの TO-220 パッケージです。
外気温 25℃で、適切なヒートシンクを使用した場
合、許容電力は最大 15W です。ヒートシンクを
全く使用しない場合、同条件での損失はたったの
1.5W です。電力損失限界は最大許容ジャンクシ
ョン温度、150℃です。ジャンクション温度は以
下の式で算出出来ます。
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HV809 EL ランプドライバー
TJ=P DISS×(θJC+θ CS+θSA)+T A
結び
ここで;
スーパーテックス社の HV809 を利用すると簡単
PDISS=HV809 の電力損失
に、しかも手早く EL ランプドライバーの回路設
θJC=ジャンクション-ケース間熱抵抗
計が行えます。
θCS=ケース-ヒートシンク間熱抵抗
このアプリケーションノートでは、電池電源のア
θSA=ヒートシンク-外気間熱抵抗
プリケーション向けの簡単な DC-DC コンバータ
TA=周囲温度
の設計方法を説明しています。 HV809 は大面積
θJC は 5℃/W です。θCS はデバイスが、どのよ
の EL を高輝度で駆動できる大変パワフルなデバ
うにヒートシンクに接続されているかによって値
イスです。SO-8 パッケージの HV809(HV809LG)
が変わります。シリコン・シートやサーマル・グ
は、薄さと高輝度が求められる、携帯端末等に利
リースがよく使用されます。θSA はヒートシンク
用されるランプの駆動に、ターゲットを絞ってい
のサイズや、冷却方法によって値が変わります。
ます。SO-8 パッケージの HV809 はラージサイズ
雰囲気温度 25℃で、P DISS が 15W、最大ジャン
の EL を駆動する際も、最大 500mW の損失に制
クション温度が 150℃である場合、ケース-ヒート
限されています。
シンク間の熱抵抗とヒートシンク-外気間の熱抵抗
7 ピン TO-220 パッケージの HV809K2 はヒート
は合計で 3.3℃/W 以下でないとなりませんが、8
シンクを付けた場合 15W まで許容されるため、
立方インチの垂直ヒートシンクによる自然な対流
更に大きなサイズで、高輝度のランプに適してい
で十分です。
ます。
ヒートシンクには様々なサイズ、形状のものが有
HV809 は高電圧を扱いますので、感電やショー
ります。ヒートシンクメーカに製品の形状を問い
トに十分注意して下さい。
合わせて、適切なヒートシンクを選んで下さい。
TO-220 パッケージをヒートシンクにネジ止めす
る際は、締め付けトルクは、4kgf・cm 以下で取り
付けてください。
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