「アジア各国IT動向比較」紹介

アジア情報化動向報告会
アジアのIT動向比較
2016年9月8日
一般財団法人 国際情報化協力センター
情報調査部 白倉 裕子(Hiroko SHIRAKURA)
情報化レポートとは、
一般財団法人国際情報化協力センター(以下CICC
)では、2004年より、現地のIT関連動向を国別・テ
ーマ別に調査し「アジア情報化レポート」としてまとめ
、毎年1回発行しています。
現地産学官の豊富な人的ネットワークを通じて収集
した情報、現地政府や国際機関の発表した統計デ
ータ、現地報道の記事などを主な情報ソースとして
アジア各国のIT状況全般を幅広く網羅し、かつコン
パクトにまとめました。
毎年、8月に発行し、会員企業へ無料ダウンロード
形式で配布しております。
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・基本指標一覧:
-基本指標(GDP/成長率、在留日系企業
数等)
-ITインフラ整備状況(固定・携帯電話、イ
ンターネット
の加入者数/普及率(過去3年分)等)
・情報化サマリー:
-近年/特に当該年のIT関連の動き
1 情報化政策・計画及び関連法制度
○基本政策
-IT政策の年表、国家IT計画及びその進
捗状況
○情報産業振興政策
-優遇政策/振興策
(ハード、ソフト、国産品、外国投資)
-中央政府・地方政府等の政策
○IT関連法制度の状況
-電子商取引法、著作権法、知的財産
法、
情報公開法、セキュリティ関連
2 情報化の状況
3 情報化関連機関の状況
4 情報産業・市場の状況
1
「IT動向比較」で扱う基本指標 等のソース元など
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2
目次
1.基礎指標及びITUデータ等による比較
1-1 アジア19ヵ国 GDP成長率(%)比較と日系企業進出状況
1-2 携帯電話普及率から見たアジア (** 線は語る ** )
2.当該政府の動きと国際ランキングの関係は?
2-1 ICT担当省の設立と国際ランキングの関係
2-2 IT施策の策定と国際ランキングの関係
3.アジア各国でのIT関連のトレンド
3-1 各国のIoTへの取り組み
3-2 外資と協業、クラウドコンピューティング
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3
1.基礎指標及びITUデータ等による比較:
1.1 アジア19ヵ国
GDP成長率(%)比較と日系企業進出状況
GDP成長率(%)の推移(2007-2015)
バングラデシュ
20.0
鉱山開発不調
ブルネイ
モンゴル
15.0
各国在留日系企業数(社)の推移(2009-2014)
インド3年で55%増加
カンボジア
中
国
中国
インド
インドネシア
日本
10.0
ミャンマー
韓国
ラオス
マレーシア
5.0
タイ
日
本
0.0
200720082009201020112012201320142015
ブルネイ
-5.0
石油価格の
下落
モンゴル
ミャンマー
ネパール
パキスタン
フィリピン
シンガポール
スリランカ
台湾
タイ
-10.0
ベトナム
300
250
259
ミャンマー3年で
71%増加
200
カンボジア
ラオス
155
150
ミャンマー
ネパール
100
50
ブルネイ
67
65
68
75
パキスタン
スリランカ
0
出典:国際通貨基金(2016.4.12データによる)
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2009
2010
2011
2012
2013
2014
出典:外務省「平成27年海外在留邦人数調査速報版」平成26年10月1日現在
4
1-2. 携帯電話普及率から見たアジア(** 線は語る ** )
携帯電話と固定電話の全世界的傾向
固定電話増加率の推移(2000-2015)
%
携帯電話増加率の推移(2000-2015)
%
出典:国際電気通信連合( ITU)
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5
携帯電話が急速に普及し始める年の共通傾向(CLMV+モンゴル)
CLMV+モンゴルの携帯電話普及率(%)の推移とターニングポイント年
%
?
2006年モンゴル通信事
業者4社体制確立。
価格競争により、通信料
金が3分の1に。
2006年11月ベトナム
WTO加盟
2005年カンボジア
円借款光ファイバー
伝送網プロジェクト
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ラオス
MPT,
MOST
2009年12月通信業
者9社ダンピング防
止で最低料金制度
2006年3月カンボジア
韓国政府による電子
政府計画開始、光ファイ
バー網、DC設置等。
2013年1月ミャンマー通信
事業の自由化。
同年4月低価格SIM販売
ICTマスタプラン2011
出典: ITU, IMF,
「情報化レポート」、ITニュース(CICC)より作成
6
? :カンボジア、ラオス、モンゴルの2012-2013携帯電話普及率の落ち込み
KOICA、CLMVとモンゴル向け無償援助
実績額の推移
35000
KOICAプロジェクト事業の年度別支援実績
単位:100万ウォン
250
30000
25000
20000
200
カンボジア
ラオス
15000
300
支援額(100万ドル)
支援国数
150
モンゴル
事業数
ミャンマー
10000
5000
0
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ベトナム
内新規事業
100
50
0
2008
仮説:韓国からの援助の滞り
2009
2010
2011
2012
出典:「2013KOICA対外無償援助実績統計」の
数値より作成
7
参考:2013年KOICA無償援助額、アジア地域「行政分野」支援国別割合等
ベトナム
スリランカ
アフガニスタン
フィリピン
ミャンマー
総額3,010万
9,000米ドル
バングラデシュ
インドネシア
ネパール
カンボジア
モンゴル
2013年総額4億7,758万5000米ドル
アジア諸国向けは、2億1,062米ドル
で全体の44.1%
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アジア地域向け行政分野支援国別割合
電子政府支援が含ま
れているらしい。
出典:「2013KOICA対外無償援助実績統計」の
数値より作成
8
日本の携帯電話普及率の推移をアジアの他国と比較
日本の携帯電話普及率の推移と他国の比較
%
150%
140.0
133%
125.1
%
120.0
シンガポール
2000
100.0
94.2%
カンボジア2011
カンボジア2011
ベトナム2007
80.0
日本の携帯電話普及率の推移
60.0
タイ 2007
スリランカ 2008
53.1%
40.0
カンボジア2010
56.7%
中国 2009
20.0
0.0
たった1年
ラオス
2015
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
日本は9年かかった。
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出典:ITU数値に基づき作成
【注】カンボジアはプリベ
イド式や音声機能のみ
の時期が長かった。
9
参考:ITU統計では、スマートフォンのユーザ数、普及率がわからないので、
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eMarketer によると、2015年の携帯電話
ユーザの内、アジア太平洋地域におけるス
マートフォンユーザは、約10億2390万人で、
普及率は40.8%
このスマホユーザ数は、2019年には14億
8,340万人、普及率51.5%となると予測。
スマホの普及率が高い国は、シンガポール、
台湾、韓国、香港、オーストラリア・・・
日本は2014年で44%、 2019年でも58.4%
出典:「第5版Global Media Intelligence Report」
eMarketer
10
参考:ブロードバンド普及率と貧困率の各国比較
35
(%)
「ITを活用し、
貧困を撲滅す
る。」by ITU
30
25
20
15
貧困率
ブロードB普及率
10
5
ベトナム2012
2012
タイ2012
台湾
スリランカ2010
フィリピン2012
パキスタン2011
ネパール2011
ミャンマー2007
モンゴル2011
マレーシア2009
2013
2013
ラオス2012
韓国
日本
インドネシア2014
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インド 2010
2013
カンボジア2012
バングラデュ2015
中国
0
出典:ブロードバンド普及率
ITU,
貧困率はCIA World Fact
Bookより作成。
【注】シンガポール、ブルネイには貧困率のデータ無し
11
2.当該政府の動きと国際ランキングの関係は?
各国IT政策と関連省設立の推移
1985 1990
2000
2010
2020
2001総務省
日本
高度情報通信社会推進本部設置(1994)
eJapan戦 eJapan戦略
II(2003)
IT基本法(2000) 略(2001)
シンガポール
Infocomm21(2000)
ベトナム
ConnectSingapore(2003)
ミャンマー
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1996 科技術省
(MOST)
2012.11
情報通信省
Realizing the In2015 Infocomm Media Master
Vison(2010)
plan(2015-2025)
デジタルマレーシア(2011-2020)
2014
軍政
ICT2020(2011-2020)
第2 ICTマスタプラン(2009-2013)
第3 ICTマスタプラン Digital
Economy省??
(2014-2018)
国家情報化計画21(1998-2010) 2011.6科学技術省 フィリピンデジタルストラテジ(20112016)
ICTO
電気通信網整備計画マスタプラン
2003-2015(1990)
1992情報通信技
術省(MICT)
2013 未来創造科学部
MyICMS886(2005-2010)NBP Versin2(2006)
2002国家ICT運営委員
会(NCITC)
1985科学技術
環境省
放送通信委員会
知識経済部
行政安全部、文化体
育観光部
マルチメディア・スーパーコリドー計画(MSC)(1996-2020)
2005年計画(2002)
NIPT, IT2000(1995)
世界最先端IT国家創造宣言(2013、
改定2014,2015,2016)
i-Japan戦略
(2009)
iN2015(2006)
IT2000
2002情報通信技 ICTマスタプラン(2002-2008)
術省(MICT)
(1996-2000)
IT2010 (2001-2010)
国家情報化計画2000(1994)
フィリピン
ラオス
IT2000
(1992)
SingaporeOne
(1996)
Vision2020 1994国家情報技
(1991) 術評議会(NICT)
1992国家情報技
術委員会
タイ
1999情報通信
開発省(IDA)
国家CP化
計画
(1981-85)
マレーシア
IT政策ロード
マップ(2008)
2008 情報通信部
(MIC)解体
1995 情報通信部
(MIC)
韓国(*政策略)
IT新改革戦略
(2006)
2010-2020方針(2005)
2007情報通信技
術省(MIC)
電子政府プロジェクト(2006)
ICT政策(2006-2008)
ミャンマーITCマスタプラン2000-2010(2002)
2016.7情報通信
技術省(DICT)
2009-2010IT利活用方針(2009)
2011-2020Iベトナムを情報通信技術大国にするための決定
ICT政策(2009-2015)
2011郵便・電気
通信省(MPT)
2011科技術省
(MOST)
国家ICT開発戦略(2016-2025)
国家ICTマスタプラン(2016-2020)
策定中
ITCマスタ-プラン2011(2011-2015)
12
ICT担当省の設立と国際ランキングの関係
早稲田大学電子政府ランキングの推移
順位
電子政府の課題評価10項目
1 ネットワークインフラ
韓国
2008 情報通信部
(MIC)解体
2 行政管理の最適化
フィリピン
2011.6科学技術省
ICTO
3 オンラインサービス
4 ホームページ
5 政府CIO
ベトナム
2007情報通信
技術省(MIC)
6 電子政府振興
7 市民の電子参加
8 オープンデータ
9 サイバーセキュリティ
10 先端技術
(明白な関係性は無し。)
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出典:早稲田大学電子政府・自治体研究所の
各国ランキングより作成。
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IT施策の策定と国際ランキングの関係
世界経済フォーラム(WEF)IT競争力ランキングの推移
順位
日本
モンゴル ITC Vision 2021 (2012-2021)
(功を奏する国とそうでな
い国が分かれる。)
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出典:WEF IT競争力ランキングより作成
14
3.アジア各国でのIT関連のトレンド
3-1 各国のIoTへの取り組み
政府主導
韓国
未来創造科学部、IoT活性化
のため周波数規制緩和
2016.06
国際連携系
民間主導
中国
中関村IoT産業連盟
「中国IoT産業第13次五か
年計画ロードマップ」発表
2016.04
インド
インドソフトウェアサービス産業
協会(NASSCOM) IoT Center
of Excellence(CoE)の開所式
2016.03
出典:CICCアジア
各国IT関連ニュース
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マレーシア
デジタルエコノミー公社(MDEC)と
英国貿易投資省(UKTI)はIT
分野でMoU締結IoT含む
2016.06
台湾
米国IICと協力、AsiaIoT
Alliance設立2016.06
フィリピン
農器具会社、オーストラ
リア企業と「IoT農業」
2016.06
インドネシア
国営通信事業者
Telekom社2016年付加
価値サービスにIoT
2016.03
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3-2 外資と協業、クラウドコンピューティング
インド
◆Oracleは、カルナータカ州のバンガロールの拠点を「世界のクラウドセンタ」と呼び4億米ド
ルを投資する。さらに、インドのスタートアップ企業を支援するためインキュベーションセンタを
9ヵ所開設する。 (The Economic Times 2016/04/07)
◆国内大手IT企業のTech Mahindraは、ドイツのソフトウェア企業SAPと連携し、生鮮食品
のサプライチェーンマネジメントプラットフォームを開発した。(The Economic Times
2016/05/18
インドネシア
◆通信事業者のIndosatとIBMは協業しクラウドコンピューティングサービスを開始する。
(Telecom Paper 2016/03/11)
出典:CICCアジア
各国IT関連ニュース
フィリピン
◆通信業者PLDT傘下のITサービス企業であるePLDTは、Amazon Webサービスとパート
ナーシップを締結した。これにより、ePLDTは、AWSからストーレッジやデータベースなどの
様々なWebベースサービスを受けられる上、AWSクラウドの顧客向けトレーニングサービスや
運用サービスも受けることができるようになり、今後は同社のクラウドソリューションの拡大が
見込まれる。(philstar 2016/04/06)
韓国:MSは、韓国とアジアでのクラウドコンピューティングの需要増加に合わせ、ソウルを含
む韓国国内の2ヶ所にデータセンターを構築すると公式に発表した。(news1 2016/05/11)
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2016年9月時点の予測
・既にアジアでは、ネットに接続、ITデバイスを使いこなしての生活が当たり前になっている。
・ASEAN諸国(の企業)とEU諸国(の企業)との結びつきが強くなる。 (例:EU特許庁とアセアン
共同プロジェクト等2016.04)
・大きい企業よりも、小回りの利くスタートアップ(ベンチャー企業)の方が目立った活躍をする。
(ただし、失敗したら引き際も早い。)
特に東南アジアでは政府主導でIT中小企業を育成しようという動きが盛ん。そこに外資も「○×
賞」をあげますよ、という形で参入。
・配達しずらいアジアの地形(島、山)にIT物流が導入される(?)
・世界同時に皆が「おもしろい!」と思うもの(アプリ)が流行る(ポケGなど)。当たれば商機?派
生製品も売れる。流行に国境がなくなる。諸刃の剣?嫌われると、どこでも絶対に売れない。
・そのアプリを使用したいがために、「早く通信環境を整えてください!」という要望が強く政府へ。
・IoT、クラウドなどの新技術はこれからも外資主導でアジアで展開されていく。
・アジアで韓国の影が薄くなる。IT協力はもうやりつくした感あり。KOICA公式サイトでも減少。
中国は違う意味で目立つ。日本は親日国からはますます愛され、インバウンドはまだ望めます。
(文責:CICC 白倉)
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