Half Controlled コンバータによる電池・キャパシタ併用

IIC-10-020
Half Controlled コンバータによる電池・キャパシタ併用システムにおける
キャパシタ電圧調整制御
国枝 佑樹* ,
河島 清貴
,
内田 利之
,
堀 洋一(東京大学)
Capacitor Voltage Regulation for Battery-Capacitor Hybrid System using Half Controlled Converter
Yuki Kunieda*, Kiyotaka Kawashima, Toshiyuki Uchida, Yoichi Hori (The University of Tokyo)
Abstract
Half Controlled (HC) converter can achieve smaller rating of power electronic switches and lighter weight of
inductor than Half Bridge converter. However, HC converter requires a capacitor voltage regulation function. In
this paper, the control method of capacitor voltage regulation circuit is proposed, and the operation of HC
converter is confirmed.
キーワード:電気二重層キャパシタ,DC/DC コンバータ,ハイブリッド電源システム
(Supercapacitor, DC/DC converter, Hybrid Electric System)
1. はじめに
Half Bridge(HB)コンバータが最も良いと分析されている
(4)。DC/DC
近年,地球温暖化やエネルギー問題が世界各国で叫ばれ
コンバータの接続場所についてもいくつか考え
られるが(3),変動の大きいキャパシタの電圧と
DC リンク部
ており,エネルギーを効率的に使用するために,ハイブリ
の電圧を独立にすることが望ましい場合には,一般にキャ
ッド自動車や電気自動車に代表されるような動力源の電動
パシタと DC リンクの間に接続される。ただし,DC/DC コ
化が,盛んに行われている。その鍵となる蓄電媒体として
ンバータを用いることは,重量と体積および充放電におけ
はバッテリーが主流であるが,今注目されているのが電気
る損失の増加を伴うため,小型軽量であることが要求され
二重層キャパシタ(以下,キャパシタとする)である。キャパ
る移動体においては,特に問題となる。そこで提案されて
シタはバッテリーと比較して,(1)寿命が非常に長い,(2)大
いるのが,Half Controlled (HC)コンバータである。G.Guidi
電流での充放電(特に充電)が可能,(3)重金属を用いないため
氏により考案されたこの HC コンバータは,キャパシタの
環境に優しい,(4)端子電圧から残存容量が正確にわかる,
エネルギー貯蔵やパワーフローの制御という点で HB コン
という特長を持っており(1),様々な分野においてその応用が
バータと同等の性能を持った上で,スイッチング素子の省
期待されている(2)。ただし,エネルギー密度は高くないため,
容量化とコイルの大幅な小型化を達成できるという大きな
搭載量に制限のある移動体などにおいては,補助電源とし
特長を持つ(5)。しかし,HC コンバータを使用する場合,充
て別の動力源に組み合わせた使い方が考えられている。そ
放電を繰り返す内に,2 つのバンクに分けられたキャパシタ
の一つがバッテリーとの併用である。キャパシタがパワー
の電圧のバランスが崩れる現象が生じ,それによりキャパ
密度の高さを生かして,負荷電力の急峻な変動に対応し,
シタの充放電能力が損なわれてしまうという問題が発生す
バッテリーへの負担を減少させることで,システムの寿命
る。そこで,これを解決するために,キャパシタの電圧を
や効率の向上が期待されている(3)。
調整する回路を付随させることを行う。
また,このようなハイブリッド電源システムにおいては,
本論文では,HC コンバータの特長および動作を理論的に
DC/DC コンバータが非常に重要である。システム全体のパ
述べた上で,キャパシタ電圧調整回路について,その制御
ワーフローを制御するのに欠かせないからである。DC/DC
法を説明する。そして,シミュレーションおよび実験にて
コンバータの種類はいくつかあるが,シンプルな構成の
その動作の確認を行う。
1/6
SW 1
I Load
I SC
I Load
I SC
I SC ,1
IL
L
C
VSC ,1
I DC
VDC
IL
L
C
I DC
VL
VDC
Load
Load
VSC
SC ,1
CSC ,1
VSW
SW 2
I SC ,0
SC
VSC ,0
SC ,0
CSC ,0
図 1 ハーフブリッジコンバータ
Fig. 1.
Half Bridge (HB) Converter
2. Half Controlled (HC)コンバータ回路
〈2・1〉 HC コンバータの特徴
まず,HC コンバータ
の回路構成を,比較する HB コンバータと共に図 1,2 に示す。
HC コンバータ回路は,直列に接続された 2 つのキャパシタ
図 2 ハーフコントロールコンバータ
Fig. 2.
Half Controlled (HC) Converter
I SW ,rat = I L , Max = I SC , Max
................................ (3)
であり,スイッチング素子の VA 定格 SSW,rat は次式となる。
S SW ,rat = VDC ⋅ I SC , Max ...................................... (4)
バンクの片方にコンバータ回路がつながれた構成となって
一方,HB コンバータにおいては,電圧定格は同じであるが,
おり,キャパシタが制御されるキャパシタバンク SC,1 と,
キャパシタ電圧が半分まで低下した際のキャパシタ SC か
制御されないキャパシタバンク SC,0 に分けられている。
ら流れる電流 IL は,負荷側への電流 ISC の 2 倍になるため,
HB コンバータと比較すると,コンバータを構成する部品の
スイッチング素子及びコイルを流れる最大電流は
数は変わらないが,コンバータに対するバッテリーとキャ
パシタの位置関係が,反対になっている。
I SW ,rat = I L , Max = I SC , Max ⋅
HB コンバータに対する HC コンバータの大きな特長は,
以下の 2 点である。
(1) VA 定格の小さなスイッチング素子を使用できるため,
コンバータにおける損失を低減できる。
(2) コイルを流れる電流の最大値が小さくなるため,コイ
ルを大幅に小型化することができる。
ここで,両コンバータ回路において,キャパシタの電圧を
最大からその半分までの範囲で使用することを想定し,こ
れらの確認を行う。公平な比較のため,バッテリーの電圧
VDC 及び,キャパシタから負荷側へ流れる最大電流 ISC,Max
は両者で等しいものとし,キャパシタの最大電圧は次のよ
うに設定する。
VSC , Max = VSC ,1, Max = VSC , 0,Max = VDC ............. (1)
VDC
= 2 ⋅ I SC , Max
VSC ,min
................................... (5)
となる。したがって,スイッチング素子の VA 定格は
S SW ,rat = 2 ⋅ VDC ⋅ I SC , Max
................................ (6)
と求められ,HC コンバータでは,スイッチング素子の VA
定格とコイルを流れる最大電流が半分になるのである。
HC コンバータの動作
〈2・2〉 HC コンバータの動作
は,フリーホイールダイオードが存在するため,次の条件
によって動作範囲が定義される。
VSC ,1 + VSC , 0 ≥ VDC
VSC ,0 ≤ VDC
.......................................... (7)
....................................................... (8)
これは即ち,次のことを意味する。
・キャパシタ放電の限界: V SC ,1
+ VSC ,0 = VDC
状態の際,キャパシタ SC,1 の電圧がかかるため,その電圧
・キャパシタ充電の限界: V SC , 0
= VDC
定格 VSW,rat は次式となる。
この動作範囲の中で,スイッチング素子のデューティー比
このとき,HC コンバータでは,スイッチング素子にはオフ
VSW ,rat = VSC ,1, Max = VDC .................................. (2)
また,スイッチング素子を流れる電流 ISW の最大値は,コイ
ルを流れる電流 IL 即ち負荷側へ流れる電流と等しく,
を調整することで,キャパシタ電流 ISC が制御される。する
と,それぞれのキャパシタバンクを流れる電流 ISC,1,ISC,0
は,デューティー比 DSC(一周期のうち SW1 を ON する比
率)を用いて次式で表される。
2/6
I SC ,1 = I SC ⋅ DSC
............................................... (9)
14
12
I SC ,0 = I SC
....................................................... (10)
V DC = VL + VSW + VSC ,0 ................................. (11)
Voltage [V]
また,この回路では常に次の電圧方程式が成り立つ。
10
8
Vsc,1
Vsc,0
6
Vsc,1,ref
4
ここで,平滑用コイル L に蓄えられるエネルギーは,キャ
charge
charge
charge
charge
discharge
discharge
discharge
discharge
2
パシタバンクに蓄えられるものより非常に小さいため無視
0
すると,コイルの微小時間での平均電圧はゼロといえる。
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Time [s]
さらにブリッジの出力電圧 VSW をデューティー比を用いて
図 3 理想システムにおける充放電サイクル
表すと,式(11)は次のように書ける。
Fig. 3.
V DC = DSC ⋅ VSC ,1 + VSC ,0 ............................... (12)
Simulated cycles of ideal system
そして,各キャパシタバンクの電圧は,Q=CV の関係から
とができる(6)。ここでは,キャパシタンス比の設計について
次式で表される。
の説明は省略する。
VSC , x (t ) = VSC , x (0) +
1
C SC , x
t
∫I
0
SC , x
(τ )dτ
・キャパシタ電圧初期値: V SC ,1 (0)
x = 0,1 ........................................................... (13)
式(9),(10),(12)を式(13)に代入すると,キャパシタバンクの
・バッテリー電圧: V DC
・キャパシタンス比: x
電圧に関する微分方程式が得られ,
VSC ,1 ⋅ dVSC ,1 =
C SC ,0
C SC ,1
= 12[V ] (一定)
=
C SC ,0
C SC ,1
=
1.566[ F ]
=3
0.522[ F ]
図中の電圧 VSC,1,ref は式(15)から算出した VSC,1 の理論値
⋅ (VDC − VSC ,0 ) ⋅ dVSC ,0
であり,VSC,1 は理論値通りとなることが確認できる。また,
..................................... (14)
この微分方程式を初期条件 VSC,0(0),VSC,1(0)として解くと
キャパシタバンク SC,1 の電圧 VSC,1(t)が,次のように求め
られる。
放 電 と 充 電 の 限 界 は , そ れ ぞ れ VSC,1+VSC,0=12[V] ,
VSC,0=12[V]と読み取ることができ,式(7),(8)の関係となっ
ていることもわかる。
〈2・3〉 HC コンバータの問題点
前節では,理想的な
状態を想定して行ったシミュレーションの結果を示した。
VSC ,1 (t )
= VSC2 ,1 (0) +
= VSC , 0 (0) = 12[V ]
しかし,実際には,コイルやスイッチング素子,配線など
C SC ,0
C SC ,1
(2(V
DC
− VSC , 0 (0) ) ⋅ ΔVSC ,0 (t ) − ΔVSC2 ,0 (t )
with ΔV SC , 0 (t ) = V SC , 0 (t ) − V SC , 0 (0)
)
に抵抗成分が存在するため,充放電の際にその抵抗成分に
よりエネルギーが浪費されてしまう。これにより,実際の
.......... (15)
システムでは,キャパシタ電圧 VSC,1 が式(15)で示した理論
値通りには推移しないという現象が生じる。その結果,第 4
この式において注目すべきは,電圧 VSC,1(t)は電圧 VSC,0(t)
章で示すように,キャパシタが充電限界や放電限界に達す
に一意な関数であり,キャパシタから負荷側への電流 ISC(t)
るのが早くなり,十分な充放電を行うことができないため,
に依らないという点である。
キャパシタを有用に使用することができない。
ここで,キャパシタ充放電におけるキャパシタ電圧の波
したがって,それを解決するよう理想的な電圧軌跡での充
形を図 3 に示す。これは,図 2 の回路において負荷電流を
放電サイクルを実現するために,キャパシタ電圧 VSC,1 が式
ないものとし,キャパシタへの目一杯の充放電を 5 秒毎に
(15)で示す理論値となるよう,電圧を調整する機能が必要と
繰り返すシミュレーションを,以下の条件にて行った結果
なる。
である。キャパシタンス比 x は,キャパシタバンクが満充
電状態から放電限界に達するまでの間に取り出せるエネル
ギー量に影響し,x=3 の時,75%のエネルギーを取り出すこ
3. キャパシタ電圧調整回路
キャパシタ電圧調整回路とは,前章で説明した HC コン
3/6
バータを使用する上での問題点を解決するために用いるも
の実際の値との差分をとり,ゲインを掛けることで得られ
のである。本章では,その動作と制御法について説明する。
る値を電流 Ibal の指令値とし,電流 Ibal の制御には PI 制御
まず,キャ
を用いている。制御一周期の内 SW4 を ON する比率をデュ
パシタ電圧調整回路の回路構成を,図 4 に示す。2 つのスイ
ーティー比 Dbal とすると,PWM への電圧指令値 Vduty は式
ッチング素子とコイルから成り,この回路においては常に
(17),(18)より
〈3・1〉
キャパシタ電圧調整回路の動作
次の電圧方程式に従って電流が流れる。
Vbal = Lbal
dI bal
dt
Vduty =
.............................................. (16)
VSC ,1 + Vbal
VSC ,1 + VSC , 0
....................................... (19)
と表すことができ,これを用いてデューティー比 Dbal を調
整することで電流 Ibal を制御する。正負論理に関しては,例
SW3 が ON の場合は,
Vbal = −VSC ,1 .................................................... (17)
えば,電圧 VSC,1 が指令値 VSC,1,ref より小さければ,電流 Ibal
を矢印方向に大きくするよう,デューティー比 Dbal を高く
となり電流 Ibal が矢印方向に減少するように,SW4 が ON
するという論理となっている。
の場合は
4. シミュレーション結果
Vbal = VSC ,0
...................................................... (18)
〈4・1〉
キャパシタ電圧調整回路なしの場合
本章で
となり,電流 Ibal が矢印方向に増加するように動作し,コイ
は,図 2 に示す回路において負荷は無く,バッテリーとキ
ルを介してキャパシタバンク間のエネルギーの受け渡し(す
ャパシタの間でエネルギーのやりとりを行うことを想定
なわち電圧の調整)が行われる。
し,電圧調整回路の効果を確認する。まず,シミュレーシ
〈3・2〉 キャパシタ電圧調整回路の制御法
キャパシタ
ョンの初期条件を表 1 に,キャパシタ電圧調整回路の無い
電圧調整回路の制御系は,図 5 に示すように電圧 VSC,1 がそ
場合のシミュレーションの結果を図 6 に示す。図 6(a)に示
の理論値に追従するように,電流 Ibal を制御する構造となっ
すよう,電流 ISC に 5 秒毎に 2[A]での充電と放電の指令値
ている。検出した電圧 VSC,0 を用いて,式(15)から電圧 VSC,1
ISC,ref を与え電流制御を行っている。
の理論値を演算し,それを電圧 VSC,1 の指令値とする。電圧
図 6(b)のキャパシタ電圧の波形を見ると,充放電の繰り
返しと共に電圧 VSC,1 は理論値から逸れ,徐々に低下してい
I SC
L
表 1 シミュレーション条件
C
SC ,1
VSC ,1
VDC
I bal
Table 1.
SW 3
Lbal
Load
SW 4
SC ,0 Vbal
VSC , 0
図 5 キャパシタ電圧調整回路
Fig. 4.
HC converter system with capacitor
Simulation condition
Battery voltage : VDC
12[V]
Controlled SC bank voltage : VSC,1
12[V]
Uncontrolled SC bank voltage : VSC,0
12[V]
Controlled SC bank capacitance : CSC,1
0.522[F]
Uncontrolled SC bank capacitance : CSC,0
1.566[F]
Inductor : L
2[mH]
Internal resistance in the circuit
0.2[Ω]
Switching frequency
20[kHz]
voltage regulation circuit
VSC ,1
VSC ,1 (t ) = f (VSC , 0 (t ))
VSC , 0
VSC ,1,ref
Eq.(15)
+
-
I bal ,ref
K
+
-
Vbal ,ref
PI
+
+
Vduty
1
VSC ,1 + VSC , 0
Vbal
PWM
1
I bal
Lbal s
VSC ,1
図 4 キャパシタ電圧調整回路の制御系
Fig. 5.
Capacitor voltage regulatory control system
4/6
Discharging limit
2
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
Isc
0
-0.5
0
5
10
15
20
25
30
35
Isc_ref
40
Discharging limit
2.5
Current [A]
Current [A]
2.5
-0.5
-1
-1
-1.5
-1.5
-2
-2
-2.5
0
5
10
20
25
30
35
-2.5
Charging limit
(a) Current waveform
Charging limit
14
40
Time [s]
(a) SC current waveform
14
12
12
10
10
8
Vsc1
Vsc0
6
Vsc1_ref
4
Voltage [V]
Voltage [V]
15
Charging limit
Time [s]
Isc
Isc,ref
Ibal
0
8
Vsc,1
Vsc,0
6
Vsc,1,ref
4
2
2
Discharging limit
0
0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
0
Time [s]
5
10
15
20
25
30
35
40
Time [s]
(b) SC voltage waveform
(b) SC voltage waveform
図 6 シミュレーション結果(電圧調整回路なし)
図 7 シミュレーション結果(電圧調整回路有り)
Fig. 6.
Simulation results without voltage regulation
Fig. 7.
Simulation results with voltage regulation
き,電圧 VSC,0 は徐々に上昇していることが読み取れる。こ
ISC の 1/8 程度であるため,調整回路は主回路に比べ充分小
れにより充電の際に,電圧 VSC,0 が充電の限界である 12[V]
型に実現することができると考えられる。
に到達する時間が早くなっており,電流波形を見ても,そ
5. 実験による動作確認
れ以上充電できなくなり電流が流れなくなっていることが
確認できる。放電の際についても同様のことがいえ,キャ
同回路の実験装置を製作し(図 8),実験によって動作確認
を行った。実験装置の諸元を表 2 に,そして実験結果を図 9
パシタの充放電能力が明らかに損なわれている。
次
に示す。実験の際は,4 秒毎に 1[A]の充電と放電を繰り返
に,図 4 に示すようにキャパシタ電圧調整回路を用いてシ
した。図 9 よりシミュレーション同様,電圧 VSC,1 の値が低
ミュレーションを行った。条件は,先程のシミュレーショ
下し,電圧 VSC,0 の値が上昇していき,充放電が十分に行わ
ンと同じ(表 1)とし,調整回路のコイル Lbal の値は 0.5[mH]
れていないことが確認された。充電や放電の開始時におけ
とした。その結果を図 7 に示す。
るキャパシタ電圧のステップ状の変動は,キャパシタの内
〈4・2〉 キャパシタ電圧調整回路を使用した場合
図 7(b)より,電圧 VSC,1 が指令値 VSC,1,ref に追従し,電圧
部抵抗による影響と考えられ,この変動ΔV は充放電電流 I
バランスが崩れることなく,理想的な充放電サイクルを示
と内部抵抗 R の積で表される(7)。また,式(7),(8)の関係によ
していることがわかる。電流波形を見ても,調整回路無し
る充放電の限界に達する前から電流を流すことができなく
の場合に多く見られた,充放電の限界に達するために電流
なっており,これには小さくないと思われる回路の内部抵
を流すことができなくなる現象が大きく改善されている。
抗による電位差や損失が影響していると考えられる。
以上より,キャパシタ電圧調整回路の効果が示された。
また,調整回路を流れる電流 Ibal は,主回路を流れる電流
実験による電圧調整回路の動作については,現在確認中
である。
5/6
6. おわりに
本論文では,HC コンバータを使用したハイブリッドシス
テムにおいて充放電を繰り返した際に,キャパシタの電圧
のバランスが崩れ,キャパシタの十分な充放電が行えなく
なるという問題を,キャパシタ電圧調整回路を用いること
で解決できることを示した。
今後は,実際に負荷を接続して使用する場合の検討を行
う。キャパシタからの主回路電流の制御は,負荷電流を検
出し,それに応じて作成した指令値を用いて行うことにな
ると考えられる。そこで,この電流指令値を作成する適切
図 8 実験装置外観
Fig. 8.
なアルゴリズムの検討が課題として挙げられる。特に,移
Experiment system
動体等の実システムにおいては,回生電力のみでキャパシ
タを十分に充電することは困難と考えられるため,バッテ
表 2 実験装置諸元
Table 2.
Specifications of the experiment system
リーからキャパシタへ蓄電補充を行うなど,キャパシタの
Lead-Acid Battery GS Yuasa
電圧を維持するという機能を持たせることを考える必要が
Battery
12[V], 24Ah]
4.7F, 2.7V
SC elementary cell
ある。
nichicon
ESR : 0.4Ω(at 1kHz)
9 series array of cells
Controlled SC bank : SC,1
謝辞
24.3[V], 0.522[F]
本論文にて示した HC コンバータは,Giuseppe Guidi 氏
Initial value VSC,1(0) : 12[V]
9 series by 3 parallel array of cells
Uncontrolled SC bank : SC,0
24.3[V], 1.566[F]
Initial value
Inductor : L
研究の追尾内容である。筆者は研究において,その基礎理
VSC,0(0) : 12[V]
論を使用させて頂いており,ここに深く同氏への感謝を申
3.54[mH]
Switching frequency
により提案されている新しい回路であり,本論文は同氏の
20[kHz]
し上げます。
Charging limt
文
Voltage [V]
12
10
VSC,0
8
6
4
VSC,1
2
0
0
4
8
12
16
20
24
28
32
Voltage [V]
25
VSC,1+VSC,0
20
15
10
Discharging limt
5
Current [A]
0
0
4
8
12
16
20
24
28
32
2
1
ISC
0
-1
ISC,ref
献
(1) Yoichi Hori : “Someday “capacitor dreams” come true”,
JIASC2008, 2-O4-1 (2008.8)
堀洋一:
「いつかはキャパシタ」
,電気学会産業応用部門大会 2-O4-1
(2008.8)
(2) Masakazu Sasaki : “Status and future Prospect of EDLC
Application for HEV and Others”, JIASC2008, 2-O4-4 (2008.8)
佐々木正和:「ハイブリッド車等へのキャパシタ応用の現状,可能
性」,電気学会産業応用部門大会 2-O4-4 (2008.8)
(3) Y.Cheng, ct. al : “Energy Sources Control and Management in
Hybrid Electric Vehicles”, EPE-PEMC 2006, pp.524-530 (2006)
(4) R.M.Schupbach, J.C.Balda : “Comparing DC-DC converters for
power management in hybrid electric vehicles”, in Proc. of
Electric Machines and Drives Conference (2003)
(5) G.Guidi, T.M.Undeland, Y.Hori:「Optimized Power Electronics
Interface for Auxiliary Power Buffer Based on Supercapacitors」,
IEEE Vehicle Power and Propulsion Conference (2008)
(6) G.Guidi, T.M.Undeland, Y.Hori:「An Optimized Converter for
Battery-Supercapacitor Interface」,Power Electronics Specialists
Conference PESC 2007
(7) 岡村廸夫:「電気二重層キャパシタと蓄電システム-第 3 版-」,日刊
工業新聞社, pp.100, 101 (2005.9)
-2
0
4
8
12
16
20
24
28
32
Time [s]
図 9 実験結果(電圧調整回路なし)
Fig. 9. Experimental results without voltage regulation
6/6