意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究

「重要政策課題への機動的対応の推進」プログラム
「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響
の調査研究」
中核機関名:京都大学
研究代表名:福山秀直
研究期間:平成19年度
目次
Ⅰ.調査研究概要
1.調査研究の趣旨
2.調査研究の概要
3.調査研究の全体像
4.調査研究の体制
1
1
1
3
4
Ⅱ.経費
1. 所要経費
2. 使用区分
6
6
6
Ⅲ.調査研究成果
1.調査研究成果の総括
2.調査研究成果の本文
2.1 脳介入技術の安全性の脳生理学的研究
2.2 臨床心理・宗教的・精神的側面の研究
2.3 ニューロエシックス政策の国際動向研究
2.4 国民意識の社会調査法による研究
2.5 国際シンポジウム
3.調査研究成果の発表状況
7
7
29
29
55
136
194
245
276
本報告書は、文部科学省の科学技術総合研究委託
費による委託業務として、京都大学・福山秀直が実施
した平成19年度「意識の先端的脳科学がもたらす倫理
的・社会的・宗教的影響の調査研究」の成果を取りまと
めたものです。
従って、本報告書の著作権は、文部科学省に帰属し
ており、本報告書の全部又は一部の無断複製等の行
為は、法律で認められたときを除き、著作権の侵害に
あたるので、これらの利用行為を行うときは、文部科学
省の承認手続きが必要です。
Ⅰ.調査研究概要
■プログラム名:重要政策課題への機動的対応の推進
■課題名:意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究
■中核機関名:京都大学
■研究代表名(役職):福山秀直(教授)
■調査研究実施期間:1年間
■調査研究総経費(調整費充当分):総額29百万円 (間接経費込み)
1.調査研究の趣旨
1995年地下鉄サリン事件で日本を震撼させたオウム真理教は、信者をマインドコントロール(洗脳)で
支配していた。「こころ」の問題がこうしたネガティブな形で噴出する一方、1990年代は「脳の10年」とし
て「こころ」を研究する脳科学が飛躍的に進歩した時期でもあった。そのなかで、磁気共鳴画像法でのマ
インドリーディング(主観的意識を外部から知る)、電磁気刺激による記憶の操作、ニューロフィードバック
(脳活動を自己コントロールする訓練法)による能力増強などの新しい脳科学技術が実現されている。
こうした新技術は宗教カルトに悪用される危険があるだけではない。近未来には、教育の場で濫用され
て能力増強(ニューロエンハンスメント)の有無による格差社会を生み出しかねない。先端的脳科学の生
命倫理は、こころに関わる倫理観や国民意識に大きな影響を与え得る重要な政策課題であり、すでに欧
米では2002年から、ニューロエシックス(神経倫理学)として議論されている。我が国でも2004年からJS
T社会技術研究開発センターを中心に、とくに脳科学と教育の関連で同様の討論が積み重ねられてい
る。
脳に介入する新技術全般に伴う社会的諸問題に機動的に対応した調査研究を実行し、その結果を総
合科学技術会議などで検討することは、我が国の先端科学技術政策の緊急課題である。このために、本
調査研究では、ニューロエンハンスメントを中心とした先端的脳科学技術の研究開発の現状把握、ニュ
ーロエシックス関連の科学技術政策の国際的動向調査、その倫理的・社会的・宗教的影響に関する国民
の問題意識調査とその分析研究を行い、それらの成果を学際的・体系的に俯瞰・整理することにより脳科
学の安寧な発展に資することを趣旨とした。
2.調査研究の概要
中核機関である京都大学医学研究科においては、先端的脳科学研究を実際に行うと同時に、その研
究の場での臨床心理学者、哲学者、宗教学者(京都文教大学、和光大学)との有機的な連携をもったフ
ィールドワークを実施し、先端的脳科学が含む倫理的・社会的・宗教的影響を「現場」の視点から検討し
た。さらに、米国と欧州における先端的脳科学技術の研究開発の現状調査ならびに先端的脳科学を中
心としたニューロサイエンスに関する各国の倫理政策の現地視察を、脳科学者、臨床医学者、生命倫理
学者、医事法学者らが協力して行うことで、それらの国際的動向を総合的に明らかにした(佛教大学、岡
山大学、京都文教大学、松本大学、就実大学、京都工芸繊維大学)。
また、我が国の今後のニューロエシックス政策立案の基礎データに供するために、先端的脳科学の倫
理的・社会的・宗教的影響についてのアンケートによる国民意識調査を行った(龍谷大学、松本大学、佛
教大学)。こうした研究成果の深化と社会への還元を目的とし、著名な脳科学者、国際的な生命倫理学
1
の専門家、科学技術政策立案者などを招いた公開の国際シンポジウムとワークショップを開催した(京都
大学)。
2
3.調査研究の全体像
3
4.調査研究の体制
実施体制一覧
研 究 項 目
1.
2.
3.
4.
5.
脳介入技術の安全性の脳生理学的研究
臨床心理・宗教的・精神的側面の研究
ニューロエシックス政策の国際動向研究
国民意識の社会調査法による研究
総合統括
担当機関等
研究担当者
京都大学大学院医学研究科
◎福山秀直(教授)
京都大学大学院医学研究科
○長峯隆(准教授)
京都大学大学院医学研究科
美馬達哉(助教)
京都大学大学院医学研究科
植木美乃(研究員)
京都文教大学人間学部
○永澤哲(准教授)
京都文教大学人間学部
濱野清志(教授)
京都文教大学人間学部
金山由美(教授)
追手門学院大学心理学部
馬場天信(講師)
和光大学現代人間学部
西 研(教授)
佛教大学社会福祉学部
○村岡潔(教授)
岡山大学大学院
粟屋剛(教授)
就実大学人文科学部
虫明茂(教授)
京都工芸繊維大学大学院
大林雅之(教授)
松本大学人間健康学部
福島智子(講師)
東海大学健康科学学部
長瀬雅子(講師)
京都文教大学人間学部
○濱野清志(教授)
佛教大学社会福祉学部
村岡潔(教授)
龍谷大学社会学部
中川輝彦(講師)
松本大学人間健康学部
福島智子(講師)
京都大学大学院医学研究科
○福山秀直(教授)
京都大学大学院医学研究科
長峯隆(准教授)
京都大学大学院医学研究科
美馬達哉(助教)
東海大学健康科学学部
長瀬雅子(講師)
◎ 代表者
○ サブテーマ責任者
4
推進委員会
氏
名
所
◎福山 秀直
属
京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター 教授
長峯 隆
京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター 准教授
美馬 達哉
京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター 助教
永澤 哲
京都文教大学人間学部現代社会学科 准教授
濱野 清志
京都文教大学人間学部臨床心理学科 教授
金山 由美
京都文教大学人間学部臨床心理学科 教授
馬場 天信
追手門学院大学心理学部心理学科 講師
西
和光大学現代人間学部現代社会学科 教授
研
村岡 潔
佛教大学社会福祉学部社会福祉学科 教授
粟屋 剛
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
虫明 茂
就実大学人文科学部総合歴史学科 教授
福島 智子
松本大学人間健康学部健康栄養学科 講師
中川 輝彦
龍谷大学社会学部社会学科 講師
(外部有識者)
松田 純
静岡大学人文学部 教授
佐倉 統
東京大学大学院情報学環 准教授
川口有美子
日本ALS協会 理事
高木美也子
日本大学総合科学研究所 教授
下地 明友
熊本学園大学社会福祉学部 教授
倉持 武
松本歯科大学歯学部 教授
◎ 推進委員長
5
Ⅱ.経費
1.所要経費
(直接経費のみ)
(単位:百万円)
所要経費
研 究 項 目
研 究
H19
H20
H21
H22
H23
担当者
年
年
年
年
年
度
度
度
度
度
長峯 隆
2.9
0
0
0
0
2.9
永澤 哲
3.0
0
0
0
0
3.0
村岡 潔
3.2
0
0
0
0
3.2
濱野 清志
1.2
0
0
0
0
1.2
福山 秀直
12.3
0
0
0
0
12.3
22.6
0
0
0
0
22.6
担当部署等
(1) 脳介入技術の安全性の脳生理学的
京都大学大学院医
研究
学研究科
(2) 臨床心理・宗教的・精神的側面の研
京都文教大学人間
究
学部
(3) ニューロエシックス政策の国際動向
佛教大学社会福祉
研究
学部
(4) 国民意識の社会調査法による研究
京都文教大学人間
合計
学部
(5) 総合統括
京都大学大学院医
学研究科
所要経費
(合 計)
2.使用区分
(単位:百万円)
京都大学
京都文教大
佛教大学
計
学
設備備品費
0
0
0
0
試作品費
0
0
0
0
消耗品費
2.2
1.3
0.7
4.2
人件費
0
0
0
0
その他
13.0
2.9
2.5
18.4
間接経費
4.5
1.2
1.0
6.7
計
19.7
5.4
4.2
29.3
※備品費の内訳(購入金額5百万円以上の高額な備品の購入状況を記載ください)
なし
6
Ⅲ 調査研究成果
1.調査研究成果の総括
1.1 はじめに
そもそも、本研究の目的は、脳科学の社会的影響や生命倫理的諸問題を扱うものである。1995年地下
鉄サリン事件で日本を震撼させたオウム真理教は、信者をマインドコントロール(洗脳)で支配していた。
「こころ」の問題がこうしたネガティブな形で噴出する一方、1990年代は「脳の10年」として「こころ」を研
究する脳科学が飛躍的に進歩した時期でもあった。そのなかで、磁気共鳴画像法でのマインドリーディン
グ(主観的意識を外部から知る)、電磁気刺激による記憶の操作、ニューロフィードバック(脳活動を自己
コントロールする訓練法)による能力増強などの新しい脳科学技術が実現されている。
こうした新技術は宗教カルトに悪用される危険があるだけではない。近未来には、教育の場で濫用されて
能力増強(ニューロエンハンスメント)の有無による格差社会を生み出しかねない。先端的脳科学の生命
倫理は、こころに関わる倫理観や国民意識に大きな影響を与え得る重要な政策課題であり、すでに欧米
では2002年から、ニューロエシックス(神経倫理学)として議論されている。我が国でも2004年からJST
社会技術研究開発センターを中心に、とくに脳科学と教育の関連で同様の討論が積み重ねられている。
脳に介入する新技術全般に伴う社会的諸問題に機動的に対応した調査研究を実行し、その結果を総合
科学技術会議などで検討することは、我が国の先端科学技術政策の緊急課題である。このために、本提
案課題では、ニューロエンハンスメントを中心とした先端的脳科学技術の研究開発の現状把握、ニューロ
エシックス関連の科学技術政策の国際的動向調査、その倫理的・社会的・宗教的影響に関する国民の
問題意識調査とその分析研究を行い、それらの成果を学際的・体系的に俯瞰・整理することにより脳科学
の安寧な発展に資することを目的・目標とした。
中核機関である京都大学医学研究科においては、先端的脳科学研究を実際に行うと同時に、その研究
の場での臨床心理学者、哲学者、宗教学者との有機的な連携をもったフィールドワークを実施し、先端的
脳科学が含む倫理的・社会的・宗教的影響を「現場」の視点から検討した。さらに、米国と欧州における
先端的脳科学技術の研究開発の現状調査ならびに先端的脳科学を中心としたニューロサイエンスに関
する各国の倫理政策の現地視察を、脳科学者、臨床医学者、生命倫理学者、医事法学者らが協力して
行うことで、それらの国際的動向を総合的に明らかにした。
また、先端的脳科学の倫理的・社会的・宗教的影響についての国民意識調査を行い、我が国の今後の
ニューロエシックス政策立案の基礎データに供するたたき台とすることを目指した。
こうした研究成果の深化と社会への還元を目的とし、公開の国際シンポジウムとワークショップを成功裏に
開催した。
調査研究の成果を本報告書としてまとめるだけでなく、理系と文系の研究者の有機的な連携によって積
み重ねた議論を、ワークショップや公開の国際シンポジウムによって社会に還元した。先端的脳科学技術
にまつわる諸問題に関して国民を啓発することにより、意識に関わる先端的脳科学がもたらす倫理的・社
会的・宗教的影響に関して世論の注意を喚起し、脳科学技術関連の専門的研究者と一般国民との間で
のコミュニケーションを促進することが可能となるであろう。ライフサイエンスとくに先端的脳科学技術に関
する国民意識・ニーズを把握することは、国際的競争の中で長期的かつ安寧な科学技術振興政策を策
定し、限られた研究資金の適切な配分により先端的脳科学の新技術創成に着実に貢献することが期待さ
れる。このことにより、マインドリーディングやニューロエンハンスメントなどの先端的新技術開発と国民の
倫理的意識やニーズとの間でのバランスのとれた科学技術政策を、先端的脳科学技術分野で将来的に
7
策定するために資すると考えられる。
1.2 脳科学技術の安全性の脳生理学的研究
近年の脳科学では、非侵襲的な手法によって、生きている人間の脳活動を可視化することが可能となっ
た。その代表的な手法には、脳の電磁気的活動を直接に観察する脳波・脳磁図や、脳の代謝活動を観
測する機能的磁気共鳴画像法などがある。こうした脳活動を観測する手法を使えば、人間の考えている
意識内容を外から知ること(マインドリーディング)ができるようになり、人間のこころの自由を侵すという倫
理問題が生じる。また、脳活動モニターしながら訓練をおこなうニューロフィードバックや、脳に電磁気刺
激を与えて機能を高めるニューロエンハンスメントは、教育現場などで乱用された場合には格差社会を強
化する危険性がある。
脳の非侵襲的機能解明に関する研究においては、とくに、国際学会などでの研究調査と京都大学での
実地検証を通じて、MRI を用いた脳研究の進歩に伴って生じた諸問題を検討するとともに、偶発的所見
が発見された場合に備えて米国で行われている生命倫理的議論を紹介した。MRI で正常被験者に対す
る研究が行われ、その結果としてなんらかの重大な異常が見つかるなどした場合の倫理原則に関しては、
本報告において論じるとおりであるが、重要なまとめとなるポイントを次頁以降に示す。
また、脳機能に介入する手法に関する研究については、ニューロエンハンスメントの一例として、経頭蓋
的磁気刺激法(TMS)に関わる諸問題を脳生理学の視点から検討した。TMS に関しては、磁気コイルによ
って脳内に誘導電流を生じさせるという手技の特徴から、安全性に関して研究の蓄積がある。その文献レ
ビューと実際の研究経験に基づいて、本報告で示すとおり、現段階での結論としては次の段落ように述
べることができる。
TMS が本邦で使用され始めて 15 年以上となり、多施設での使用経験が積み重ねられてきている。日本
臨床神経学会からの安全性ガイドラインに準じて TMS を施行した場合には、重大な副作用は報告されて
おらず、おおむね安全であることが証明されている。脳を非侵襲的に直接刺激できる手法は限られており、
TMS はこの特性を生かした分野での発展が期待される。従って、今後も安全性ガイドラインを遵守して、
検査、研究および新たな治療法の開発に携わっていくことで、TMS はヒトの脳機能に介入する新たなツー
ルとして確固たる役割を担うものと期待される。
また、ここでも書かれているとおり、もちろんこれは、本手法の専門学会によるガイドラインに従う限りにお
いて安全であるということは常に覚えておくべき点である。この点で参考となる基本的な国際的ガイドライ
ンおよび国内ガイドラインも次頁以降に示しておく。
8
偶発的所見に対する選択肢
1.インフォームドコンセントにおいて偶発的所見にどう対応するかを触れない
この場合は、研究者は偶発的所見に対してのいかなる義務ももたず、偶発的所見が見つかった場合に
のみ何かを計画する。したがって、研究者は、その脳画像が研究目的であって異常か正常かを診断する
目的ではないことを説明する必要がある。この選択肢は、脳画像が脳の一部しか含んでいなかったり、異
常か正常かを判断するのに十分なものでなかったりする場合に適切である。
2.被験者に対して、疑わしい所見が見つかった場合には告知するが、脳画像を評価するのは訓練を受
けた専門家ではないと説明する。
この選択肢は、研究チームが、脳画像の臨床的評価を行う能力のある医師を含んでいない、あるいは
臨床診断を依頼するための経路を持ち合わせていない場合に適切である。
3.被験者となんらかのコミュニケーションをとる前に、医学的に疑わしい所見の判断を専門医にあおぐ。
インフォームドコンセントの際には、臨床的に重要かもしれない偶発的所見があった場合には、専門家
がチェックし、臨床的フォローが必要な場合には、その旨の連絡があるという内容の説明を被験者は受け
る。研究チームに専門医師が含まれていない、あるいは専門のコンサルタント医師がいない場合にあた
る。
4.ルーチンで医学的に疑わしい所見を専門家が判断する。臨床的に重要かもしれない偶発的所見は
被験者に知らせる。
すべての研究 MRI スキャンについて臨床と同じ読影を行う。3 の場合と異なるのは、偶発的所見が有る
可能性のあるものだけではなく、すべての MRI スキャンをチェックしている点である。これは、専門の臨床
医に対する負担が大きいため、臨床的なセッティングでの研究に適している。
5.研究用と臨床用の脳 MRI スキャンがルーチンで行われる。専門家によって臨床的に重要かもしれない
という判断が下された偶発的所見だけが、被験者に告知される。
この方法では、実験スキャン時間が長くなり、MRI スキャンの回数も増える。もっとも努力を必要としてお
り、臨床的なセッティングでのみ可能である。
9
偶発的所見に関するインフォームドコンセントで重要なポイント
研究計画は、研究目的であって、臨床診断に向けたものではなく、そのために計画されているわけでも
ない。このスキャンは、異常を発見するために適切化されたものではない。
この研究計画の研究者は、神経放射線診断のトレーニングを受けておらず、このスキャンは、異常を発
見するために適切化されたものではない。
研究計画のメンバーの誰かが、MRI スキャンに異常があることを気づくかもしれない。今のところ、その異
常が確認される確率は、被検査者グループによって大きく異なり、数割から数パーセントの範囲である。
所見を聞かされることによって、不安が生じたり、追加的検査が必要になったりして経費が発生するかも
しれない。医療保険の加入などについても、最終的にその所見が臨床的に重要かどうかによって影響を
受ける可能性がある。
もし、なんらかの所見があった場合には、研究者が臨床の専門家すなわち放射線診断医か臨床神経科
医、さらに追加的検査が必要かどうかについてコンサルトする可能性がある。その場合、研究者ないし、コ
ンサルトを受けた医師からの連絡が行く可能性がある。
さらに追加的検査を行うかどうか、また治療を受けるかどうかを決めるのは被験者自身の判断である。臨
床的フォローアップの費用は、この研究計画には含まれていない。
所見の取り扱いに関して疑問があれば、研究チームからさらに詳細な情報提供を行う。
10
実践的ガイドライン
偶発的所見があるかもしれないということを実験計画のなかに組み込んでおく。
偶発的所見を取り扱う上での透明性が高く、施設内審査委員会の指針に沿ったパスとして、しかもイン
フォームドコンセントのプロセスに組み込んでおく。
偶発的所見の取り扱い、被験者選択、フォローアップ時の責任の所在に関して明確に文書化しておく。
偶発的所見に関しては、その被験者ないし代理人にまず伝える。この責任は、研究代表者にある。も
し、研究代表者が医師でない場合には、研究チームのなかの専門家(臨床神経科医やセンシティブな医
療情報の取り扱いに熟達した医師)が、代理として被験者への告知を行う。
偶発的所見については、その重要度に応じて時期を考慮し、口頭にて告知する。その後に、インフォー
ムドコンセントの書式にそった文書で確認する。
被験者選択においては、包含・除外条件を作成する際に、その研究での被験者グループの特性に配
慮する。
11
インフォームドコンセントの文例
この研究の MRI は、研究目的であって、あなたの脳を医学的に検査するものではありません。この MRI
は、医師の指示によってとられる MRI とは異なるものです。医療目的での MRI では発見される以上であっ
ても、この MRI では見落とされる可能性もあります。しかしながら、もしあなたの脳 MRI になんらかの問題
があると私たちが判断した場合には、MRI を診断する専門医師に判断を仰ぎます。放射線科医が、あな
たの脳 MRI に問題があると診断した場合には、連絡して、あなたが医療的フォローアップを受けるお手伝
いをします。かかりつけ医師がいる場合には、あなたの許可を得た上で、その医師に連絡を取り、正しい
フォローアップを受けることができるようにいたします。この研究で得られたあなたの身体に関する個人情
報は、病院の記録にルーチンとして残ることはありません。しかし、もし、MRI での異常が発見された場合
には、その情報は病院記録の一部になることがあり得ます。なんらかの異常の疑いがあって、それが否定
された場合、不必要な恐れを生じさせて、不快な思いをする可能性もあります。
12
経頭蓋的磁気刺激法(TMS)に関するガイドライン
1) 国際基準
1996 年6月に rTMS の安全性に関する国際ワークショップが開催され、1998 年、Wassermann によりガイ
ドラインが作成された。それによれば、1) 倫理的要求 2) 刺激パラメータ 3) 生理学的モニタリング 4)
神経心理学的モニタリング 5) rTMS チーム 6) てんかんの医学的管理 7) 発作の心理的影響の管理
8) rTMS の禁忌 以上 8 つの規定に関しての提言を行っている。1) 倫理的条件に関しては、被験者のイ
ンフォームドコンセントを得ること、rTMS の恩恵が危険に勝ること、研究の負荷と恩恵とが等配分とされる
ことが重要である。また、rTMS 研究は被験者保護の必要性の順位において 3 クラスに分けられている。2)
刺激パラメータに関しては、さまざまな周波数や強度での rTMS の single train の最大安全域が示されて
いる(表 2)。3) 生理学的モニタリングに関しては、刺激場所の対側の手や腕の筋肉を表面筋電図でモニ
ターすることや、実行可能であれば、脳波やビデオによるモニターも行うこととされている。4) rTMS による
治療法の確立まで、神経心理学的影響を調べるためのモニターを推奨している。 5) rTMS は熟練した
医療チームと生命維持装置がある医療施設内でのみ施行されるべきである。6) 被験者がけいれんや他
の医学的緊急事態の際、rTMS 研究室に治療できる場所があり、気道-呼吸-循環ルールに従い、痙攣の
管理をする。 7) rTMS により、てんかんを引き起こした患者や正常被験者に対し、医療的、心理的なサポ
ートを提供する。 8) 絶対禁忌として、頭蓋内の金属、心臓内カテーテル、高い心臓内圧が挙げられ、相
対 的 禁 忌 と し て 、 妊 娠 、 乳 幼 児 、 心 臓 病 、 心 臓 ペ ー ス メ ー カ ー 、 投 薬 ポ ン プ 、 三 環 系 抗 う つ 薬、
neuroleptics, てんかんの家系が挙げられている。
13
経頭蓋的磁気刺激法(TMS)に関するガイドライン
2) 本邦基準
これらの国際的な 2 つのガイドラインに基づき、本邦では 1999 年の「脳波と筋電図」27 巻第 3 号に「経
頭蓋的高頻度磁気刺激法の安全性と臨床応用」に関して提言が行われた(委員長;木村 淳)。一番目
の項目として「経頭蓋的高頻度磁気刺激法のヒトでの応用」が挙げられ、これは次の 6 項目に細分化され
ている。1) 実施する施設での倫理委員会の承認を得る。 2) 患者への informed consent を十分に行い、
文書による承認を得る。 3) 実施者の責任で行う。 4) Wassermann の安全性のガイドラインに従う[89]。
5)高頻度磁気刺激法の定義は 1Hz 以上とする。 6) 単発、二連発磁気刺激の安全性については、現在
のところ特に問題はない。ただし、単発、二連発刺激の inter-train intervals は 2 秒以上とする。二番目の
項目の「経頭蓋的高頻度磁気刺激法の安全性では、以下のパラメータを厳守することが重要である。」で
は、 1) 磁気刺激の強度、頻度、duration of single trains は Wassermann の安全性ガイドラインに従うもの
とし、 2) inter-train intervals にかんしては、Chen らの安全性の検討に従うものとしている。この際、表面
筋電図の monitoring を行い、可能かつ必要な場合は脳波やビデオモニターを行うこととする。三番目の
項目の「臨床応用での患者への利益と危険性」については、高頻度磁気刺激の実施には副作用、危険
性を考慮して行い、利益と危険性、いわゆる evaluation of the risk/benefit ratio を十分に考慮して臨床
応用をすることが重要である。臨床応用に関して、Wassermann のガイドラインでは、rTMS 応用対象者
を、class 1, class 2, class 3 と三群に分けて、最初はうつ病患者のように非常に治療効果が期待できるもの
(class 1), 次にパーキンソン病(class 2)、そして最後に正常人(class 3)に応用することが提言されてい
る。しかし、本邦の提言では正常人より先に患者に応用することに対するリスクへの懸念から、対象者に
関するクラス分けは行っておらず、実施者の判断に委ねられている。さらに、四番目の項目として、「経頭
蓋的高頻度磁気刺激による事故が生じた場合は、日本脳波・筋電図学会「磁気刺激法に関する委員会」
に報告する」ことが義務つけられている。
なお、1 ヘルツ以下の低頻度磁気刺激に関しては、2003 年の「臨床神経生理学」31 巻 1 号に磁気刺激
法に関する委員会報告が行われている(委員長;真野行生)。2000 年の委員会では、低頻度磁気刺激を
治療に応用する際の安全性の基準として、1 週間に 500 回を上限として施行することを提言した(臨床神
経生理学 28: 337, 2000)。その後、1 ヘルツ以下の低頻度磁気刺激が治療や高次脳機能研究に広く使
われるようになり、1,500 回までの刺激による副作用も特に報告されていない。また、世界的な安全性基準
の指針でも、安静時閾値以下の強度の場合、1,800 発までは安全とされている。このような状況に基づい
て、安静時閾値以下の強度で、1 ヘルツ以下の頻度の刺激に関しては、1 週間に 1,500 回を上限として施
行することが提案された。それ以降も副作用があるとの報告を認めず、2006 年の「臨床神経生理学」1 号
に、「安全性に関する委員会」と「磁気刺激法に関する委員会」の両者の名前で、3,000 回までよいという
基準に変更されている。
14
1.3 臨床心理・宗教的・精神的側面の研究
脳科学研究とその臨床応用は、近年、めざましい発展を遂げている。その一方で、マインドリーディング
やニューロフィードバック、ニューロエンハンスメントなど、社会的影響が大きいと考えられる新技術が生み
出されつつある。しかし、新技術が利用される「現場」の実像は、新技術の効果あるいはリスクを含めて、
一般国民に知らされていないのが現状である。また、このような新しい脳介入技術が人々の心理、宗教意
識、精神に与える影響について、専門的科学の領域では未だ明らかにされていない。そこで、ここでは人
文社会系の研究手法であるフィールドワーク技法で、脳科学研究の現状を明らかにすることを目標として
研究調査を行った。
まず、脳計測体験の臨床心理学的検討に関する研究については、TMS による非侵襲的脳機能計測体
験に着目し、被験者がどのようにそれを体験し、体験後の心理的生活の中にその体験を位置づけていく
か、そしてそのことによって個々の被験者に生じるアイデンティティの感覚の変化はどのようなものか、そう
いった点を明らかにするための基礎資料を被験者に対するインタビューを中心に収集・整理を行った。
臨床心理・宗教的・精神的側面の研究については、近年、急速に発達した非浸襲的計測法をもちいた研
究により、瞑想、祈りの持続的実践が脳の構造を変化させること、情動脳の変容をもたらす一方で、先端
脳科学のパラダイムと仏教をふくむ諸宗教の人間観の差異が明らかになっている。このような点について、
主に欧米における最新の研究の動向を明らかにし、人間の未来に及ぼす社会的・文化的影響について
評価する。これらの研究動向の把握は、従来分離、対立するものとされてきた自然科学と宗教、科学者と
宗教者の間を架橋する作業の準備段階として、きわめて重要な意味を持つと考えられる。宗教的ないし
スピリチュアルな実践が人間の心身の健康にもたらす影響について、現在の脳科学・精神神経免疫学か
ら開かれる展望、その社会的意味、宗教的人間観からの批判を明らかにした。
近年、欧米において宗教体験の根源である変性意識状態(altered states of consciousness)や信仰の神
経学的基盤についての研究―いわゆる神経神学(neurotheology)―が進みつつある。神経神学は、宗
教全般について、唯物論的還元主義によって解明する試みであり、専門領域の理論から、社会的言説に
拡大されたとき、従来の宗教観、人間観を大きく変化させる可能性をはらんでいる。神経薬理学、脳生理
学、認知考古学等を統合して行われつつある欧米の神経神学研究の現状についても、本研究報告に示
した。
さて、以上のなかでも、もっとも重要な点として、非侵襲的脳機能研究法のもたらしうる「微妙な副作用」が、
臨床心理学的に無意識的影響と思われる部分に反映していたことを解明したことは、本研究調査の大き
な成果である。この点は、本報告に示すとおり、次頁の通りにまとめることができる。
15
臨床心理学的な観点から見た脳科学研究体験
1)従来の脳科学研究においてもインフォームドコンセントや同意書の手続きをとることは重視されてきた
が、今回の言語的インタビューと心理検査の結果から、インフォームドコンセントや同意書という手続き的
なものでは解消されていない様々な心理状態が明らかになった。したがって、これらの不安や内面の変
化を把握し配慮するためのツールとして、心理検査やインタビューは有用であると考えられる。
その際、主に意識的な心理状態を拾い上げる質問紙検査では、実験に纏わる意識的不安を広く包括し
て捉えることが可能であるが、無意識的な自己イメージの変化などは捉えきれない。意識的不安はそれ
ほど高くなくても自己イメージにかなり大きな影響を受けている事例も今回認められ、それらの無意識的
影響を検討する上では、何らかの投影法検査(今回はバウムテストを使用)が有効である。
2)脳科学の今後の進展において基礎的研究の推進は不可欠であり、一般の健康な被験者が対象となる
ことは避けられない。しかしそれらの被験者は臨床群や患者とは違って、基本的に知識や経験がないこと
が多く、参加動機やそこでの体験も様々である。したがって、個別性をいかに重視していくかが、倫理的
な面も含めて重要になる。
既存の知識や脳科学実験の体験がない者にとって、実験内容や状況をイメージできない未知の経験に
は初めからある程度の不安がつきまとう。その前提で実験に参加するということは、不安の程度は別にし
ても、少なくとも一度実験が開始されれば、実験課題に意識を集中することになり、実験そのものに対す
る不安や疑念については意識的に考えにくい状態に追いやられる。意識的努力は課題遂行に注がれ、
研究者もそちらに意識をとられる結果、被験者は、実際には不安が高かったり苦痛であっても一旦実験
が開始されると課題をやり遂げようとするため、実験に纏わる様々な気持ちを抑制しようとする。このような
心理機制によって不安は一時的に意識しにくくなるが、被験者本人が意識できないところで実際には大
きな変化を体験している場合も考えられる。
脳科学実験はそれ自体、一度開始されると受身的状況でそれを主体的に回避したり、中断しようというこ
とが心理的に難しくなるという構造を有している。また、脳科学研究者の関心は達成課題の成績と「脳」の
関係に必然的に集中されるが故に、「人」としての被験者に纏わるその他の部分への意識的配慮が、倫
理的配慮ということも含めて重要になるであろう。
16
1.4 ニューロエシックス政策の国際動向研究
ライフサイエンスの一翼を担う先端的脳科学の研究やその成果の社会的利用は、今後ますます推進され
ることが予想される。その際にニューロエシックスという、新たな生命倫理の観点は避けて通ることができ
ない。本研究項目の目的は、先端的脳科学が政策的にどのように進められて行くべきか、またどのような
法・規制面の整備が行なわれるべきかについて倫理的法的社会的視点(ELSI)から明らかにした。また、
米国と欧州における先端的脳科学技術の研究開発の現状調査ならびに先端的脳科学を中心としたニュ
ーロサイエンスに関する各国の倫理政策の現地視察を、脳科学者、臨床医学者、生命倫理学者、医事
法学者らが協力して行うことで、それらの国際的動向を総合的に明らかにしたことは、本報告書に示した
通りである。
先端的脳科学の現状調査に関する研究については、とくに宗教学的な観点から、国内外における先端
的脳科学の現状を明らかにした。現在、ライフサイエンスの研究と実用化の分野において先端的脳科学
がどのような位置づけにあるのか、先端的脳科学に対する期待、先端的脳科学がもつ課題や問題点に
ついて整理する。また、瞑想に関して指導的な国際的研究を行っている欧米の大学や研究所を実地に
視察し、脳科学研究者と交流して研究調査を行うことで、「ニューロエシックス政策の国際動向研究」の基
礎資料とした。
ニューロエシックス政策の国際動向研究については、倫理的法的にどのような問題が発生しどのような政
策がとられているかを調査し、その政策について吟味した。また、これまで先端医療技術に対して出され
た諸法律・倫理指針等についてその構造を分析し、ニューロエシックス(脳神経倫理学)政策に重要な論
点を析出した。また、脳科学研究の振興のための社会的なコンセンサス作りも重要であり、その必要条件
についての検討結果をも考察した。
本研究におけるまとめとなる部分を 17 項目として以下に示す。
17
脳科学の生命倫理政策に関して考慮すべき点
1)精神薬理学、神経移植、遺伝子導入、脳神経補綴 neural prosthetics、電気的脳刺激等の手段によっ
て脳に介入する新しい方法は、治療上、個人および社会にとって利益となりうることを認める。これらの技
術は、直接脳に介入するものであるから、しかるべき注意をもって扱う義務がある。
2)脳に介入する新技術では、患者が根本的で明白な仕方で変容する可能性だけに目を奪
われずに、心理一般、特に人格 personality の微妙な変化などに起こりうる懸念すべき副作用も見過ごさ
ないようにしなければならない。
3)研究段階においても、脳に介入するすべての新しい方法に、人格と人格性 personhood に関連する心
的能力とに関わる副作用がないか、細大もらさず組織的に監視すべきである。
4)人格または人格性に関連する心的能力に関わる微妙な副作用がありうることが知られた特定のタイプ
の脳介入が、一定の治療的ないし予防的適用のために倫理委員会等の機関から実施を承認される場合
には、この処置を受ける人はすべて、そのような副作用が処置の後で生じていないか注意深く監視して、
必要ならば適切な治療が受けられるようにしなければならない。
5)副作用として一定の人格変化をもたらすことが予想される脳介入が受容可能なものであるかどうか、ま
たは望ましくさえあるかどうかは、当該処置を受ける人本人のみが、その介入を受ける前に決定することが
できる。
6)神経系障害および精神科的障害をもった患者に実験的介入を行うためには、時間的スケジュールを
組んだ疾患別のコア・アセスメント・プロトコル core assessment protocols(CAPs)を確立して、(1) 有意義
な結果を獲得し、(2) 異なる治療アプローチを比較することができるようにしなければならない。
7)脳への介入が治療 treatment ではなくエンハンスメント enhancement を目指す場合、このことだけでは
まだ「共通の倫理的確信や規則に対する重大な背反」であるとは言えないが、そうした個人的エンハンス
メントが正当化されうるか否かは、そのエンハンスメントを望む人の個人的自由 individual liberty(自治とし
ての自律 autonomy as self-government)に委ねられなければならない。このことが計画されたエンハンスメ
ントの実践に(決定的ではないが)強い有利な論拠を提供するものとなる。
8)精神的エンハンスメントを目指す脳への介入が、当該の個人にとって身体的ないし精
神的リスクがあるというだけの理由で、そのような介入を原則的に倫理的に拒否したり、全面的に法的に
禁止したりすることは適切ではない。しかしながら、単なるエンハンスメントの潜在的な否定的副作用が、
意図された肯定的効果に対して、治療事例の場合と較べて、より重篤であることが強調された場合はその
限りではない。エンハンスメント目的のみのために介入する医師は、クライアント client に十分な情報開示
を行なう大きな義務を負っている。
9)健康な人間をエンハンスすることは、従来の医療従事者 health care professionals の真の責務ではな
い。その真の責務は病気を治療し予防することである。したがって、、エンハンスメントのみを目指す脳介
入は、治療と区別するのが困難な場合もあるが、医療倫理のおける善行原則の義務的な拘束力を必ずし
も受けるわけではない。
10)病気ないしは障害の予防に数え入れることさえできないエンハンスメント(「単なる」エンハンスメント)
は、社会制度としての「本来の医学 proper medicine」の領域に含めるべきではない。
11)脳への介入による精神的エンハンスメントのための手段の開発にのみ向けられた研究は、保健医療と
18
いう社会制度のための公的資金によって助成すべきではない。さらに、そのような研究の産物を、精神的
エンハンスメントを達成するために応用することもまた、保健医療制度によって資金援助すべきではな
い。
12)教育という伝統的な手段を使い、親自身の価値観に従って子供の精神的属性を変容させる法律上の
親権があるが、この権利は、子供の身体的統合性 physical integrity が始まるところで、明確に終わる。さ
らに強い理由で、エンハンスメント目的のみの子供に対する脳侵襲的な処置に関しては、現時点では、
子供本人からの同意も親から代理同意もいずれも無効であるとする。
13)脳に影響を与える処置がもたらす、起こりうる多くの、しかしまだ探索されていない長期的結果に鑑み
ると、現在のところかなり厳密な注意原則 principle of caution の適用が妥当である。特に子供の場合、エ
ンハンスメント目的のみのための外科的介入や電磁気的脳刺激は、現在の法令に従えば、関連する複
雑な規範問題についてのコンセンサスが得られるまで禁止される。
14)医療化 medicalisation の拡大傾向を顧慮して、脳に長期的影響が起こりうる薬理学的介入は、経済的
手段によって(たとえば社会保障制度によって)のみならず、現存する法規範を子供の保護のために十分
に施行することによって、より厳格にコントロールすべきである。
15)重い精神疾患に対する脳侵襲的な治療が(つまり、関連するリスクの受容可能性に関する通常の基
準に沿って)利用可能となり、予防拘禁 preventive detention されている人々が無期限に拘留されることに
代わる唯一最終的選択肢であるとすれば、そのような治療を彼らに提供することを妨げる必然性はない。
16)購入可能な精神的エンハンスメントの利用可能性が増大して、富や機会の配分という点に関して社会
的不平等に油を注ぐという明確な徴候があれば、対抗措置をとるべきである。
17)脳侵襲的なエンハンスメントを控える自由に対する差し迫った脅威の可能性は、所轄の政治当局や
科学組織による特に注意深い監視を受けるべきである。そのような展開の証拠が十分に大きな規模で生
ずるならば、国の関係機関はエンハンスメントを嫌う市民を保護するために介入しなければならない。
19
1.5 国民意識の社会調査法による研究
本研究においては、国民意識の社会調査研究および国民意識のアンケート法による研究を組み合わせ
ることで、脳科学がもたらすさまざまな影響のなかでも、一般の人々、研究者、被験者にあたえる社会的・
心理的な影響について社会調査を実施し、その結果を分析した。その詳細な方法や分析については本
報告中に述べる通りである。その結果を、どのような政策につなげるかの議論のたたき台として、以下に
示すとおりの本研究におけるまとめを利用することができるだろう。
国民意識調査の概要
「脳科学をめぐる国民意識調査」は、単なる憶測ではなく、経験的データにもとづいて、脳科学に関する
人々の意識、特に道徳的・倫理的意識を解明することを目的としている。いうなれば lay neuroethics ない
し popular neuroethics(ないし morality)の解明が、本稿の課題である。いわゆる「専門家」ではないとい
う意味で「一般の」わが国の人々は、脳科学のことをどのように意識しているのか。また脳科学の発展が幸
福、あるいは、逆に危険をもたらすと考えているのか。脳科学研究に規制は必要だと考えているのか。ど
のような脳科学技術の、どのような用途での実用化を望んでいるのか。また、そうした意識を規定している
ものは何か。こうした問題を考えてきたのである。
本調査では、以上の問題を解明するため、2007 年 11〜 12 月に、調査会社登録のモニター2500 人を
調査対象者とするインターネットを利用したアンケート調査を実施した。なお調査対象者の構成は、わが
国住民の人口構成に性別、年齢、居住地で近似するよう調整している(詳細は2.4.1)。ここまで、こうし
て得られた調査結果を分析してきた。以下では、分析結果を振り返りつつ、要約して提示する。
脳科学一般に関する意識
2.4.2では脳科学に関する意識を科学技術に関する意識との比較しつつ分析した。そこから得られた
結果は以下の通りである。
図1 脳科学/科学技術に対する期待
47
44
%
38
32
19
11
5
2
2
0
脳科学の発展は
科学技術の発展は
人々を幸福にする
人々を幸福にする
賛成
どちらかといえば賛成 どちらともいえない
どちらかといえば反対 反対
20
図2 脳科学に対する不安
55
54
%
29
28
9
7
7
6
3
2
脳科学の発展は
人々に危険をもたらす
賛成
どちらかといえば反対
科学技術の発展は
人々に危険をもたらす
どちらかといえば賛成
反対
どちらともいえない
図3 脳科学/科学技術に対する規制の要望
41
%
33
30
26
26
13
14
8
6
3
脳科学の研究は,きびしく規制
されなければならない
賛成
どちらかといえば賛成
科学技術の研究は,きびしく規制
されなければならない
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
(1)脳科学に対して期待する人の割合は、科学技術一般と比較して少ない。(図1)
(2)脳科学に対する不安を持つ人の割合は、科学技術一般とほとんど変わらない。(図 2)
(3)脳科学に対する規制を要望する人の割合は、科学技術一般と比較して多い。(図 3)
(1)~(3)の命題は、あくまで脳科学と科学技術の比較において成立する命題である。換言すると、比較に
対する言及抜きで「脳科学は期待されていない」とか「脳科学に対してはきびしい規制が求められている」
と主張することはミスリーディングである。
21
脳科学の技術的応用・実用化に関する意識
2.4.3では、脳科学の技術的応用・実用化に対する評価を技術別、用途別に検討した。脳科学技術と
してとりあげたのは、次の 3 つである。読心技術、 BMI(Brain Machine Interface)、精神変容物質(向精
神薬など)である。そこから得られた知見は以下の通りである。
(4)脳科学に対する技術的応用・実用化に対する評価は、技術別で比較した場合、技術により変わらない。
(図 4)
図 4 読心技術・BMI・精神変容技術に関する評価
40
40
40
25
25
25
%
18
16
15
15
15
12
5
5
4
読心技術
BMI
意識変容物質
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
(5)脳科学の実用化に対する評価は、用途別で比較した場合、用途により違いがある。最も支持される用
途は、医療・福祉用途であり、次いで法秩序の維持、最も支持されないのは「私的」と見なされるような用
途である。(図 5)
次頁の図 5 について解説する。この図は精神変容物質の実用化に関する用途別評価を表している。ここ
では回答分布のパターンは 3 つに分けられる。第一に、6 割が肯定的に評価するというパターンである。
「病気の治療のため」が、このパターンである。第二に、4 割以上が肯定的評価をしているというパターン
である。「受刑者の矯正のため」「前科者の再犯防止のため」が、このパターンである。第三に、肯定的評
価をする回答者が少なく、1 割前後(最小は 3%)というパターンである。「幸福感を得るため」「宗教的超越
体験を得るため」「社員の労働意欲向上のため」「親による子どもの教育のため」が、このパターンである。
ここから「脳科学の実用化の用途として最も支持されているのは、医療・福祉であり、次いで法秩序の維
持、そして最も支持されないのが『私的』用途である」という命題を導けよう。「私的」とは、公共の利益・福
22
祉に役立つというより、個人や個々の組織の利害や関心にのみ奉仕する、という意味である。実際、この
意味での「私的」関心を連想させるものは、支持されていない。「社員の労働意欲向上」「幸福感を得るた
め」「宗教的超越体験を得るため」も、この意味で「私的」利益の追求を強く連想させる。「親による子ども
の教育」にしても、個別家族の関心、あるいは、「親のエゴ」を連想させるという意味で「私的」といえるだろ
う。
図 5 精神変容技術の実用化に関する評価(用途別)
幸福感を得るため 3
11
宗教的超越体験を
12
得るため
16
8
前科者の再犯防止
のため(出所後)
58
42
19
25
24
26
17
35
22
26
親による子どもの
1 6
教育のため
受刑者の矯正
のため(刑務所内)
24
21
病気の治療のため
社員の労働意欲
1
向上のため
27
44
29
25
7
40
22
24
5
27
13
12
18
17
%
望ましい どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
脳科学に関する意識の規定要因(1)
2.4.4では、脳科学に関する意識の規定要因について検討した。特に本人の属性(性別、年齢、教育
年数、世帯年収)の影響に注目した。以下は、そこから得られた知見である。
(6)性別は、脳科学に対する期待に関連する。女性より男性の方が期待は高い。
(7)年齢は、脳科学に対する不安と関連する。年齢の高い人ほど不安は低い。
(8)年齢は、脳科学に対する規制の要望と関連する。年齢の高い人ほど規制の要望は強い。
(9)教育年数は、脳科学の技術的応用・実用化に対する評価と関連する。教育年数が長いほど、脳科学
の実用化に対する評価は低い。ただし、このことは、「教育の結果、脳科学の実用化に対する評価が低く
なった」という因果関係を、必ずしも意味するわけではない。(図 6)
23
(6)~(9)に関しては、次の点に留意が必要である。何れも 2 つの変数間の関連が指摘されているが、何れ
も相関係数は 0.2 以下であり、関連は「弱い」というべきである。
(7)~(8)に関しては、次の点に留意が必要である。両命題とも「年齢が脳科学に関する意識に与える効
果」について述べているが、年齢がどのように脳科学意識に影響を与えているのかは、本調査結果から
は特定できない。年齢により期待される役割が違うために意識が違うのかもしれないし、発達心理学的な
意味での加齢による変化なのかもしれないし、コーホート(生年の違いによる経験の違いなのか)なのかも
しれない。この点は、何とも言えない。
(9)に関しては、以下の点に留意が必要である(図 6 参照)。「教育年数」が「脳科学に対する規制要望」
を因果的に規定(影響)している可能性はある。しかし、第三の要因が「教育年数」と「脳科学に対する規
制要望」の双方を規定しており、「教育年数」と「脳科学に対する規制要望」の間には実は因果関係がな
い可能性もある。
図 6 「教育年数」と「脳科学に対する規制要望」
脳科学に対する規制要望
教育年数
第三の要因?
脳科学に関する意識の規定要因(2)
2.4.5~6では、人々のある程度持続性のある意識が、脳科学に関する意識に対する影響について検
討した。「持続性のある意識」としては、権威主義的態度(近似的にいえば「権威への靡きやすさ」)と、信
仰の有無、宗教性(「世俗的思考からすると、実在が認められない、あるいは、実在するともしないともいえ
ない対象の実在の存在を認める」意識と操作的に定義している)をとりあげた。
その結果は、以下の通りである。
(10)権威主義的態度(「権威への靡きやすさ」と近似的には理解できる)は、脳科学の技術的応用・実用
化に対する肯定的評価を生みだす(なお 「性別」「年齢」「教育年数」「世帯年収」をコントロールした、両
変数の偏相関係数は 0.311)。
(11)信仰・宗教性は、脳科学に関する意識には影響しない。
(11)については以下の点に注意が必要である。(11)は、あくまで本調査では「影響」を検出できなかったこ
とを意味するにすぎない。したがって宗教的営為が、脳科学をめぐる価値判断・道徳的判断と無関係であ
ることを意味しない。たとえば特定の教団が、その教義上、脳科学の一部あるいは全体を否定したり、肯
24
定したりすることはあり得る。
エンハンスメントに関する意識
2.4.7ではエンハンスメント(病気の治療、健康の維持・回復を越えて、ある人の能力や性質を、その
人や他の人が望ましいと考える方向に変えること)に関する意識を検討した。単なるエンハンスメント願望
だけではなく、薬などの技術を使ったエンハンスメント(技術的エンハンスメント)の願望やそれへの抵抗
感についても分析した。
その結果は以下の通りである。
(12)一般に、子ども(自分の子ども)を対象とするエンハンスメントを望む人は、自己を対象とするエンハン
スメントを望む人より少ない。例外は、子どもの身長のエンハンスメントである。(図 7,8)
図 7 エンハンスメント願望(自己を対象)
性格を変えたい
13
31
43
記憶力を高めたい
0%
そう思う
17
46
29
身体能力を高めたい
身長を高くしたい
39
8
53
17
27
20%
どちらかといえばそう思う
12
24
40%
60%
どちかといえばそう思わない
図 8 エンハンスメント願望(自分の子どもを対象)
25
3
6
31
80%
そう思わない
100%
6
子どもの性格を変えたい
21
33
31
子どもの記憶力を高めたい
46
26
子どもの身体能力を高めたい
11
47
20
子どもの身長を高くしたい
20%
14
21
40%
どちらかといえばそう思う
13
12
37
0%
そう思う
40
60%
23
80%
どちかといえばそう思わない
100%
そう思わない
(13)人々には、技術的エンハンスメント(薬などを使ったエンハンスメント)に対する抵抗感が見られる。こ
れには「技術を使うこと」に対する抵抗感だけでなく、「技術をエンハンスメント目的で使うこと」という行為
に対する抵抗感が含まれている。(図 9,10)
図 9 技術的エンハンスメントへの抵抗感
60
薬で性格を変える
薬で記憶力を高める
薬で身体能力を高める
33
非常に抵抗がある
8
40
37
41
20%
どちらというと抵抗がある
60%
どちらかというと抵抗がない
図 10 用途別「技術(薬)」使用に対する抵抗感
26
6
17
35
40%
3
21
48
薬で身長高くする
0%
32
5
12
80%
4
100%
まったく抵抗がない
問「あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか」
41
40
37
33
21
12
10
6
薬で記憶力を高める
病気によって低下した記憶力を
回復させるために薬を使う
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
どちらというと抵抗がある
まったく抵抗がない
調査結果に関する補足
(1)~(13)の命題を関連して、二点補足しておきたい。第一に、「脳科学に関する意識」が変化する可能
性に注意が必要である。ここで測定された意識は、もちろん永遠不変のものではない。むしろ、それは移
ろいやすいもの――たとえば脳科学を巡りスキャンダラスな事件が起きれば、たちまち変わるようなもの
――かもしれない。
第二に、これらの命題は、第一義的には回答者の集団ないし集合(aggregate)に対して成立するもので
ある。母集団として想定されるわが国の人々に対するサンプル(回答者)の代表性は、割当法——ランダム
サンプリングほどではないものの、意識調査などでそれなりの成果(最も有名なのは、 1936 年の米国大
統領選挙におけるギャロップ社の世論調査であろう)をあげてきたサンプリング方法——が保証する限りに
おいてのものである。その意味では、これらの命題は仮説(それなりの妥当性が見込まれるとはいえ)と理
解しておく方が安全である。
27
1.6 国際シンポジウム
脳科学の急速な発達は、医療を超え、倫理、哲学、宗教、法律といった隣接する学問領域における人間
観の再考をうながすとともに、経済、政治、教育等の社会の諸分野における知識の再編と技術的応用を
もたらしつつある。一方、ニューロマーケティング、ニューロポリティクスをはじめ、脳科学の発達が、その
操作主義的利用や、政治、経済、科学知識における国内的・国際的格差の拡大につながるのではない
かという懸念を抱く国民は多い。本来、ニューロエシックスは、このような先端脳科学や周辺研究領野と社
会の間を架橋するものだといえる。ガザニガは、脳研究と社会倫理の関係について、従来の社会倫理か
ら脳研究を評価する方法と、脳科学から倫理について考える立場が存在することを明らかにしているが、
両者の間に新たな対話の回路を開くことは、緊要な課題である。欧米においては、哲学、倫理、宗教の学
問から脳科学を評価する研究が存在するが、わが国においては、この分野の研究は、いまだきわめて希
少である。
とりわけ、こうした議論を本研究班ですすめていくなかで、重要性が明らかとなったのは、ブレイン・マシ
ン・インターフェース(BMI)に関わる倫理的・法的・社会的な諸問題であった。BMI については、2007 年 6
月に閣議決定された「長期戦略指針イノベーション 25」においても、2010 年までの研究目標として考える
ことで動かせる究極のインターフェース技術の開発がうたわれ、2011 年以降の目標としては、脳情報をシ
ステムレベルで抽出し、リアルタイムでデコーディングし、情報通信機器とつなげる BMI の開発があげられ
ている。こうした政策的要請に添って、脳科学研究の社会への影響について、社会との調和に配慮しつ
つ研究を進めていくことが不可欠である。そうした方向性へと進む第一歩として、BMI に関する国際シン
ポジウムを行った。詳細については、2.5を参照されたい。
28
2.調査研究成果の本文
2.1 脳介入技術の安全性の脳生理学的研究
2.1.1 脳の非侵襲的機能解明に関する研究-とくに、MRI についての生命倫理的諸問題を中心に-
(京都大学:美馬達哉、長峯隆、福山秀直)
2.1.1.1 はじめに
脳を画像すなわちイメージングして、直接に目で見えるかのように表し、その機能をわかりやすく表示する
という技術は近年に長足の進歩を見せた。
そもそも、脳の断面を表示するということが技術的に可能となったのは、1971 年の、X 線写真とそのデジ
タル化および画像再構成法によるコンピュータ断層撮影法(Computed Tomography: CT)による(1)。今日
でも脳卒中や脳腫瘍などの病気の診断に必要不可欠とされる CT のインパクトは大きく、当時としてもきわ
めて高価格だった CT は次々の世界の先端的病院に導入されたという。その発明に功のあったコーマック
とハウンスフィールドは、1979 年にノーベル医学・生理学賞を受賞している。しかし、これは脳の解剖的構
造を画像化するのみで、その機能に迫ることはできなかった
その後に、放射線同位元素を利用して脳機能を画像化する手法であるポジトロン・エミッション断層法
(Positron Emission Computed Tomography: PET)(2)が脳血流の定量的評価などに導入され、1980 年代
の半ばからは、この PET を利用した、脳機能の画像化が盛んとなった。しかし、PET では、微量では放射
性同位元素を使うという健康リスクがあり、正常被験者に対して繰り返し実験を行うなどのことには問題が
あった。
この点を解決したのが、磁気共鳴画像法(Magnetic Resonnce Imaging: MRI)を利用した手法である機
能的磁気共鳴画像法(functional MRI: fMRI)である(3)。MRI の原理自体は古くから知られていたが、それ
を脳の画像化に用いるというアイデアは、ラウターバーらによって、1973 年に出され、その業績は、2003
年のノーベル医学・生理学賞の受賞につながった。この MRI を、脳機能画像に用いることを可能としたの
は、1990 年の小川誠二による BOLD 法の開発である(4)。技術的な詳細は省くが、この成果が、今日の認
知神経科学などの隆盛と、多くの人びとが何度も目にした事があると思われるカラフルな脳画像につなが
ったことはいうまでもない。これは日本が世界に誇るべき成果である。
2.1.1.2 脳科学研究の現状
さて、こうした fMRI の技術がどこまで進むかを知るためのヒントを与えてくれるのは、2008 年 3 月には、
カリフォルニア大学バークレー校の Gallant 教授らによって報告された、一種のマインドリーディングの実
験だ(5)。
この研究では、脳活動の内容つまり心的内容を外部から解読して読み取ることができるかどうかを、視
覚情報を例にして行っている。
4T の高磁場 MRI 装置を用いて正常被験者が、次々に提示される 1750 枚の風景や事物の写真を見て
いるときの脳活動を記録し、図に示したようなモデルで、脳活動のパターンを受容野の一種として解析す
る。この第一段階の後に、今度は、新しく 120 枚の写真を見せ、脳活動だけから何を見ているかを阪大使
用とした研究である。その結果、ある正常被験者では、90%近くの確率で何を見ているかを脳活動だけか
ら判定できたという。こうした研究が示唆するとおり、今後は脳活動を外部から読み取ることで、マインドリ
ーディングが可能になるのかもしれない。
29
また、視覚だけではなく、運動能力に関しても、わたしたちの主催した国際公開シンポジウムでレベデフ
30
研究員が発表したとおり、まだ、動物実験の段階ではあるが、サルの脳内に電極を埋め込むブレインマシ
ンインターフェースを用いることによって、ロボットを使ってサルと同じような動きを再現することが可能とな
っている(国際シンポジウム記録参照)。こうした研究からは、心のなかの見たものの内容だけではなく、意
図までも読み取ることが現実化しつつある。
2.1.1.3 脳科学研究と公衆の態度
fMRI を用いた脳科学研究がいかに急速に増大し、それが人びとの脳に関する考え方に大きく影響を与
えたと言うことをしめしている研究に、Racine らによる 2005 年の総説論文がある。『公衆の目に MRI はどう
みえるか』というその論文(6)のなかで、Racine らは、次のような印象的な図を掲げている。
これは、1991 年から 2004 年の 6 月までで少しデータは古いが、fMRI が印刷メデイアに現れた回数をグラ
フにしたものである。一目で分かるように、1990 年代の後半からの報道回数の増加は著しい。
方法としては、fMRI というキーワードを使って、LexisNexis Academic データベースを、その期間で調査
したもので、General News, Medical News, Legal News, University News を含んでいる。
その内訳は、年齢別にいえば、84%が成人に関するもの、14%が青少年に関するもの、2%が幼児に関
するものであったという。科学報道としてみれば、fMRI という手法の持つ能力や限界にまでふれたものは
67%だった。また、記事のトーンとしては、79%が楽観的で、16%はバランスのとれた内容、5%が批判的
であったという。その報道では科学的意義を強調するものが 18%で、倫理的問題に触れたものは 7%で
あった。
もう少し詳細な内容としては、35%は臨床的なもの、44%は脳科学研究で、のこりはその両方に関係す
31
るものであった。また、利点としてあげられたことは臨床に関わることが 65%で、臨床や健康や病気にかか
わらない研究の利点を触れたものは 17%であった。
こうした研究からは、脳画像というものがいかに現代社会に影響力をもっているかを読み取ることができ
るだろう。こうした点は、しばしば、脳神経本質主義(Neuro-essentialism)つまり、人間の思想や行動のな
かで脳科学によって解明されていることだけが本物である、具体的には主体性やアイデンティティを脳と
同じものとしてみなす傾向を意味している。こうした、あまりに浅薄な理解が横行することは、文化や思想
や宗教の営みを平板化してしまうことにつながりかねない危険性がある。本研究班の重要課題といえよ
う。
さて、この点については、2008 年に McCabe 博士らによって『百聞は一見にしかず』というきわめて興味
深い研究結果が発表された(7)。この内容の一部を紹介しよう。
その研究では、大学生 156 人を対象として、「テレビを見ると数学能力が上がる」、「瞑想で創造性が高
まる」、「ビデオゲームで注意力が上がる」という三つの偽科学データを提示している。これは、前者(テレ
ビ視聴)と後者(数学的演算)では同じ場所の脳が活動しているので、前者をすることで後者の能力が上
がるという、文章をちゃんと読んで理解すれば全く論理学を無視した荒唐無稽な推論を展開する記事と
なっている。あと二つの命題に関しても全く同様である。
その結果を、強く同意しないを 1 点、強く同意するを 4 点として評価させたところ、文章だけの場合や棒
グラフだけの場合に比べて、脳画像データが表示された場合には、統計学的に有意にその記事の内容
に同意する人が増えたのである(図参照)。
こうした研究が示唆しているのは、脳画像とかイメージングという視覚に訴えるデータ提示方法が、科学
的に有用であることはもちろんだが、人を説得するという点での心理的効果が大きく、メディア報道などに
おいては注意が必要であるという点である。
32
メディアにおいて脳科学がどのように扱われるかは、報道や表現の自由が保障されている本邦におい
ては、明らかに公序良俗に反するあるいは詐欺などの犯罪に利用されているもの以外については、もち
ろん規制だけで対応することは不可能である。その問題点や解決法については、ニューロエシックス政策
として考察していくことが必要だろう。
2.1.1.4 MRI 研究における生命倫理の例 米国における偶発的所見についての議論と指針の現状
脳科学研究の生命倫理は、先に指摘したような、脳科学研究の進歩の飛躍的スピードに対して、私た
ちの社会がどのようにそれをマスメディアを通じて受け止め、対応していくかという政策の問題だけで終わ
るわけではない。
研究の現場で生じつつある具体的な問題の一つの例として、MRI 研究の最中に、正常被験者の脳画
像がスキャンされ、それまでの病歴などからは予想することもできなかった偶発的所見(incidental
findings)が発見された場合(8)にどう対応すべきかについての指針を紹介しておこう。
Illes らが、2008 年に『神経学雑誌』に発表した総説(9)によれば、正常被験者を対象とした脳科学研究
の 2-8%になんらかの臨床的結果を招くかもしれない異常が発見されたという。また、これは 65 歳以上の
高齢被験者の場合では、40-50%にまで達するという。しかし、この高齢者の場合は、緊急に医療的介入
が必要ともいえない加齢に伴う変化も含んでいる。
また、重要な点は、被験者となった人びとは、MRI を撮ることによって何かの疾病が見つかった場合に
は、告知を受けるという期待を持っているという点である。しかし、そのためには MRI を特定の臨床的撮像
法でとり、神経放射線医によって読影をうけるということが必須となるだろう。しかし、こうした医学的レビュ
ーがルーチンで行われているかどうかは、施設によってさまざまであり、認知心理学的実験の場合には、
医師が研究に参加しているとも限らない。
正常被験者を対象とした研究において、予想外の医学的に重大と推定される結果が判明した場合には
どのように対応すべきかについては、遺伝子スクリーニングなどにおいて生命倫理研究の蓄積がある。そ
のすべてを、ここで論じることは不可能であるので、Illes らが指摘するいくつかのポイントについて、紹介
し、今後の日本での議論の参考に供する。
33
偶発的所見に対する選択肢
1.インフォームドコンセントにおいて偶発的所見にどう対応するかを触れない
この場合は、研究者は偶発的所見に対してのいかなる義務ももたず、偶発的所見が見つかった場合に
のみ何かを計画する。したがって、研究者は、その脳画像が研究目的であって異常か正常かを診断する
目的ではないことを説明する必要がある。この選択肢は、脳画像が脳の一部しか含んでいなかったり、異
常か正常かを判断するのに十分なものでなかったりする場合に適切である。
2.被験者に対して、疑わしい所見が見つかった場合には告知するが、脳画像を評価するのは訓練を受
けた専門家ではないと説明する。
この選択肢は、研究チームが、脳画像の臨床的評価を行う能力のある医師を含んでいない、あるいは
臨床診断を依頼するための経路を持ち合わせていない場合に適切である。
3.被験者となんらかのコミュニケーションをとる前に、医学的に疑わしい所見の判断を専門医にあおぐ。
インフォームドコンセントの際には、臨床的に重要かもしれない偶発的所見があった場合には、専門家
がチェックし、臨床的フォローが必要な場合には、その旨の連絡があるという内容の説明を被験者は受け
る。研究チームに専門医師が含まれていない、あるいは専門のコンサルタント医師がいない場合にあた
る。
4.ルーチンで医学的に疑わしい所見を専門家が判断する。臨床的に重要かもしれない偶発的所見は
被験者に知らせる。
すべての研究 MRI スキャンについて臨床と同じ読影を行う。3 の場合と異なるのは、偶発的所見が有る
可能性のあるものだけではなく、すべての MRI スキャンをチェックしている点である。これは、専門の臨床
医に対する負担が大きいため、臨床的なセッティングでの研究に適している。
5.研究用と臨床用の脳 MRI スキャンがルーチンで行われる。専門家によって臨床的に重要かもしれない
という判断が下された偶発的所見だけが、被験者に告知される。
この方法では、実験スキャン時間が長くなり、MRI スキャンの回数も増える。もっとも努力を必要としてお
り、臨床的なセッティングでのみ可能である。
34
偶発的所見に関するインフォームドコンセントで重要なポイント
研究計画は、研究目的であって、臨床診断に向けたものではなく、そのために計画されているわけでも
ない。このスキャンは、異常を発見するために適切化されたものではない。
この研究計画の研究者は、神経放射線診断のトレーニングを受けておらず、このスキャンは、異常を発
見するために適切化されたものではない。
研究計画のメンバーの誰かが、MRI スキャンに異常があることを気づくかもしれない。今のところ、その異
常が確認される確率は、被検査者グループによって大きく異なり、数割から数パーセントの範囲である。
所見を聞かされることによって、不安が生じたり、追加的検査が必要になったりして経費が発生するかも
しれない。医療保険の加入などについても、最終的にその所見が臨床的に重要かどうかによって影響を
受ける可能性がある。
もし、なんらかの所見があった場合には、研究者が臨床の専門家すなわち放射線診断医か臨床神経科
医、さらに追加的検査が必要かどうかについてコンサルトする可能性がある。その場合、研究者ないし、コ
ンサルトを受けた医師からの連絡が行く可能性がある。
さらに追加的検査を行うかどうか、また治療を受けるかどうかを決めるのは被験者自身の判断である。臨
床的フォローアップの費用は、この研究計画には含まれていない。
所見の取り扱いに関して疑問があれば、研究チームからさらに詳細な情報提供を行う。
35
実践的ガイドライン
偶発的所見があるかもしれないということを実験計画のなかに組み込んでおく。
偶発的所見を取り扱う上での透明性が高く、施設内審査委員会の指針に沿ったパスとして、しかもイン
フォームドコンセントのプロセスに組み込んでおく。
偶発的所見の取り扱い、被験者選択、フォローアップ時の責任の所在に関して明確に文書化しておく。
偶発的所見に関しては、その被験者ないし代理人にまず伝える。この責任は、研究代表者にある。も
し、研究代表者が医師でない場合には、研究チームのなかの専門家(臨床神経科医やセンシティブな医
療情報の取り扱いに熟達した医師)が、代理として被験者への告知を行う。
偶発的所見については、その重要度に応じて時期を考慮し、口頭にて告知する。その後に、インフォー
ムドコンセントの書式にそった文書で確認する。
被験者選択においては、包含・除外条件を作成する際に、その研究での被験者グループの特性に配
慮する。
さて、以上の点を参考として、研究計画書を策定することが研究者には必要とされるのだが、一例として
Illes らがあげている文例を訳出しておく(10)。日米での医療保険制度の違いや、医師患者関係の文化的
違いもあるため、一概にこれをモデルとするわけにはいかないが、一つの参考ではある。
36
インフォームドコンセントの文例
この研究の MRI は、研究目的であって、あなたの脳を医学的に検査するものではありません。この MRI
は、医師の指示によってとられる MRI とは異なるものです。医療目的での MRI では発見される以上であっ
ても、この MRI では見落とされる可能性もあります。しかしながら、もしあなたの脳 MRI になんらかの問題
があると私たちが判断した場合には、MRI を診断する専門医師に判断を仰ぎます。放射線科医が、あな
たの脳 MRI に問題があると診断した場合には、連絡して、あなたが医療的フォローアップを受けるお手伝
いをします。かかりつけ医師がいる場合には、あなたの許可を得た上で、その医師に連絡を取り、正しい
フォローアップを受けることができるようにいたします。この研究で得られたあなたの身体に関する個人情
報は、病院の記録にルーチンとして残ることはありません。しかし、もし、MRI での異常が発見された場合
には、その情報は病院記録の一部になることがあり得ます。なんらかの異常の疑いがあって、それが否定
された場合、不必要な恐れを生じさせて、不快な思いをする可能性もあります。
2.1.1.4 おわりに
脳科学だけではないが、研究に参加した被験者の健康と生命を危険にさらさないばかりではなく、その
人権を保護することは、研究者の責務である。とくに、医療用にも用いられている機器を使用する研究計
画の場合には、被験者の人権を保護するだけではなく、さらに被験者にとって利益になることをなるべく
行うという責務(善行の原理)も伴うという考え方がある。もちろん、こうした方向性は、研究者が医師の場
合には、パターナリズムとなり、医療者の価値観を一方的に、被験者におしつけ、被験者のプライバシー
権や自己決定権をそこねることになる危険性をも秘めている。
本稿で示したような、いくつかのポイントをおさえつつ、研究の現場で、非医療者が研究責任者になっ
た場合でも実行可能な方策を作り上げていくことが求められている。
参考文献(2.1.1)
1 A. M. Cormack, “Early two-dimensional reconstruction (CT scanning) and recent topics stemming from
it: Nobel lecture, December 8, 1979”, JCAT 4: 658-64, 1980.
G.N.Hounsfield, “Computed Medical Imaging: Nobel lecture, December 8, 1979”, JCAT 4: 665-74,
1980.
2 P.E. Roland, “Brain activation”, Wiley-Liss, 1993.
3 M.E. Raichle, “A brief history of human functional brain maping”, In “Brain Mapping: The systems”
(edited by A.W. Toga and J.C. Mazziotta), Academic press, 2000. p.p.33-75.
4 Ogawa et al., “Brain magnetic resonance imaging with contrast dependent on blood oxygenation”, Proc
Nat Acad Sci USA, 87: 9868-72, 1990.
5 Kay et al., “Identifying natural images from human brain activity”, Nature, 452:352-356. 2008.
6 Racine et al., “fMRI in the public eye”, Nature Reviews Neuroscience, 6:159-164, 2005.
7 McCabe, D.P. and Cstel A.D., “Seeing is believing: The effect of brain images on judgements of
scientific reasoning”, Cognition 107:343-352, 2008.
8 Kim B.S. et al., “Incidental findings on pediatric MR images of the brain”, AJNR 23:1674-1677, 2002.
37
9 Illes J. et al., “Practical approaches to incidental findings in brain imaging research”, Neurology
70:384-390, 2008.
10 Illes J. et al., “Discovery and Disclosure of incidental findings in Neuroimaging research”, JMRI
20:743-747, 2004.
38
2.1.2 脳機能に介入する手法に関する研究 -磁気刺激法の安全性に関して(京都大学:植木美乃・美馬達哉)
2.1.2.1 はじめに
イギリスの Barker らは、1985 年に頭部に経頭蓋的磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation; TMS) を
与え手内筋から誘発電位を記録することに成功し、Lancet に報告した。それ以後、磁気刺激法を用いた
研究はこの 20 年間で飛躍的に進歩し、一次野(運動野、感覚野および視覚野)の生理機能検査法として
のみならず[2, 3, 12, 13]、高次脳機能の新たな機能評価法として応用研究が行われてきた[20 , 25, 44]
[61] (図 1a)。さらに、TMS を連続して脳に与える経頭蓋的反復磁気刺激法(repetitive Transcranial
Magnetic Stimulation; rTMS) を用いることで、中枢神経系の機能変化を長期的に引き起こす、すなわち
脳の可塑性変化を引き起こすことが可能となり[33]、最近では種種の神経・精神疾患での治療法としても
注目されている[77, 92]。TMS の原理は、頭蓋上においたコイルに高電流パルスを流すと、その磁束変化
に応じて、コイルに流した電流とは逆向きの誘導電流(渦電流)が生体に生ずる(図 1b)。渦電流は、それ
と同方向に走行する大脳介在ニューロンを優先的に興奮させ、シナプスを介して錐体細胞を間接的に興
奮させる。すなわち、TMS は磁気を媒介にした電気刺激であるといえる。TMS の生体に対する影響として、
高頻度(1 ヘルツ以上)rTMS を用いた場合、けいれんを誘発する危険性が報告されてきた[68, 91]。この
問題に関しては、1996 年6月に rTMS の安全性に関する国際ワークショップが開催され、1998 年、
Wassermann により安全性ガイドラインが作成された。本邦でも 1990 年、日本臨床神経生理学会(旧日本
脳波・筋電図学会)に「磁気刺激法の臨床応用と安全性に関する研究会」が発足し、安全性に十分配慮
しながらヒトへの応用研究が発展している。
図 1a)
マグスティム社製の経頭蓋的磁気刺激装置
39
渦電流
図 1b)
磁気刺激によって脳に誘導電流が生じるメカニズム
2.1.2.2 単発 TMS の副作用
単発 TMS はヒトの運動野・錐体路の生理機能検査法としてすでに確立しており、安全性に関しても国内
外で広く承認されている。国外の数千人の健常被験者が、単発 TMS 実験に参加しているが、重大な副
作用は報告されていない[14] [51]。少数の被験者で、単発 TMS 刺激中に頭痛や嘔心のような不定愁訴
が報告されている。本邦でも、頭部と頸部に対して、円形、八の字コイルを用いて単発 TMS を与えた後の
副作用調査をしており、1.6%に頭重感、頭部を刺激した部位のぴりぴりした痛み、頸部刺激時の頭のふら
つきが報告されているが、副作用の程度は非常に軽微ですぐに改善している。症状を訴えた際の神経学
的所見は全く異常を認めず、自覚症状のみであった(第四回磁気刺激法の臨床応用と安全性に関する
研究会)。
動物実験においての検討では、松宮らが数百回以上の最大刺激をサルに与えた場合、病理学的に刺激
部位に microvacuolation が出現すると同時に、短期記憶が障害されることを報告した。しかし、その後の
Counter らの実験によると、総計 1,000 回刺激をウサギに 4-12 ヶ月にわたって与えた後の検討で、頭部
MRI では異常所見は見られず、病理学的にも brain injury を示す所見は認めなかった[15]。したがって、
単発 TMS では、重篤な副作用はないとして国内外で広く承認されている。
2.2.2.3 rTMS の副作用
30 年前よりてんかん外科治療の術前評価法として用いられてきた、ヒト硬膜下電極電気刺激法を用いた
場合には、1 cm2 当たり 57μキューリーの電流が流れるのに対して、50 ヘルツの高頻度rTMS の場合は、
2-3μキューリーと推測され、刺激強度としては非常に弱い[90]。ヒト硬膜下電極電気刺激の場合、てんか
ん外科手術で得られる脳標本の病理学的所見でもほとんど異常を認めておらず、rTMS のヒト脳に対する
副作用は少ないと考えられてきた。現在までに、以下のような副作用が報告されているが、rTMS のヒト脳
に対する安全性に関しては未だ検討すべき段階であり、長期間の使用で予期しない副作用が出る可能
性も考えておく必要がある(表1)。
40
報告済み
けいれん
認知
気分
一時的ホルモン変動
一時的リンパ球変動
頭痛
電極皮膚部の熱傷
理論的
細胞毒性
Kindling
長期増強
長期抑制
表1 rTMS の副作用
1) 痙攣発作の誘発
側頭葉てんかん患者に誘発された二次発生痙攣に加えて[18]、偶発的な痙攣が 5 名の健常被験者で報
告されている[12, 68] [65, 89]。健常者における痙攣の最初の報告では、10 ヘルツの周波数で約 10 秒間
の連続刺激(総計 100 パルス)を右側一次運動野に与えた結果、3 日目に痙攣発作を誘発したとされてい
る[68]。痙攣は、右腕から発症して徐々に全身へ広がり、脳波上は、痙攣発作直後に限局性徐波が認め
られたが、一週間後には消失していた。その後、この症例はけいれんの既往をもつ一親等親族を有する
ことがわかった。この症例は、rTMS の安全性の検討研究中に誘発されており、この際、手内筋、前腕筋
や上腕筋より記録された運動誘発電位の振幅が次第に増大し、記録部位の広がりが見られる marching
を認めた。この報告に基づき、初めての rTMS 安全性に関するガイドラインが示された[65]。しかしながら、
その後更に 3 症例で同様の痙攣発作を誘発したことが報告された[91] [13] [12]。3 症例で 2 症例は、
rTMS の強度・周波数が Pascual-Leone らにより提唱されたオリジナルの安全性ガイドライン内で行われた
が[65]、刺激群 train の間隔は基準よりも短かった[91]。1症例では、安全な rTMS 群 train 間隔を調べた
検討において、800ms の rTMS 群、25 ヘルツ、運動閾値の 110%, 群間間隔 1 秒間の一次運動野刺激で
痙攣発作が誘発された[12]。いずれも、単純部分発作から二次性全般化を起こしており、発作直後の脳
波では postictal slowing を示したが、数週間後の脳波の再検査は正常化していた。
動物実験においても、50 ヘルツで運動閾値の 1.8 倍の刺激強度の高頻度磁気刺激をラット脳に 30 日間
連日与えたところ、pentylenetetrazole (PTZ)によって痙攣発作が早期に誘発され易くなったことが報告さ
れている[43]。
2) 認知機能、感情に対する影響
Pascual-Leone らは、9 名の健常者に対し、最大刺激強度・周波数範囲で数箇所の脳部位に rTMS を与
え、直後、20 分後に神経心理学的検査を行った[65]。神経心理学的検査として、Wechsler Memory
Scale-Revised (WMS-R)、選択想起、言葉の流暢さ、Boston naming テスト、連続反射時間テスト、文字テ
ストを行い、どのテストにも rTMS は影響を与えなかった。また、高周波数で多数刺激を受けた被験者では、
逆に運動反射時間の短縮や、語記憶、想起の改善傾向が示された。感情変化に関しては、言語障害研
究で前頭葉に強度の rTMS 刺激を与えた例や[64]、痙攣発作が誘発された例で泣くという感情変化や
[91]、言語障害と共に笑うという感情変化が観察されたと報告されている[21]。
3) 循環器系、ホルモン、免疫系への影響
41
Pascual-Leone らは、さまざまな刺激強度・頻度を用いて健常被験者に対する影響を評価したが、rTMS
により血圧、脈、心電図など循環器系は変化しないことを報告している[65]。プロラクチン、副腎皮質ホル
モン、甲状腺刺激ホルモン、黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモンの血清レベルを rTMS 前後で検討した
が、ホルモン変化は見られなかった[65]。他にホルモンに対する影響として、特に甲状腺刺激ホルモンが
上昇することが指摘されている[27] [83]。また、Amassian らは、左右側の側頭-頭頂-後頭葉皮質を刺激
した結果、T サブセットである CD8+細胞数が左側刺激により 100%増加し、右側刺激により減少し、その変
化が 48 時間以内に正常化することを報告している[2]。
4) 頭痛や不快感など
不快感や頭痛が 10~30%の被験者で認められ、耳鳴りや嘔気が出現したとの報告もある[65] [73]。頭痛
や不快感の発生機序としては、刺激コイルの近くの神経と筋肉が TMS により活性化するためと考えられ
ている。特に前頭葉刺激で多くの頭蓋筋肉が活性化されるため不快となり、この不快感は刺激周波数・
強度を下げると改善される。敏感な例では、筋緊張型頭痛を誘発するが、軽い消炎鎮痛剤によく反応す
る[89]。
5) 聴覚への影響
刺激コイルを通電すると、メカニカルなクリック音が発生する。動物実験では、rTMS によるクリック音が、内
有毛細胞に影響に異常が生じることが報告されており[16, 17]、被験者、験者共に ear protector の使用
が推奨されている。
6) 電極による頭皮の熱傷
刺激コイルの近くにある金属脳波電極は、熱感・熱傷を起こしうる[72]。特に rTMS と同時に脳波のモニタ
ーを行う際、頭部の記録電極が熱を持って火傷を起こした症例が報告されているため、ステンレス製の電
極を用いたり、電極に溝を入れることが推奨されている[72]。最近、記録電極と脳波の記録システムを改
良して、rTMS 中でも安全に脳波等の記録ができることが報告された[41]。これによれば、ヒトに対しては
伝導可能なプラスチックの皿電極を、動物に対してはテフロン加工した皮下への銀ワイヤー電極を使用し、
更に、脳波計を適切に増幅させることで rTMS 中に安全にオンラインの観察と記録が可能である。
7) 組織・細胞への影響
動物研究では、25 ヘルツの rTMS をラットの前頭前野に与えた結果、ドパミンとセロトニンの細胞外濃度
は有意に上昇したが、組織病理学的変化は認めなかったと報告されている[45, 46]。ラットに対して 50 ヘ
ルツ高頻度 rTMS を与えた際、転写因子である c-fos の発現が部分的に増強した報告や、ラットの脳内電
位依存性 Na チャネルの活性を増強させたとの報告がある[34] [95]。また、ラット脳に対する慢性磁気刺
激の影響として、brain-derived neurotrophic factor (BDNF)や cholecystokinin (CCK) mRNA の増加させる
ことが報告されているが、これらは副作用としてよりも治療効果としての可能性が示唆される。
ヒトの組織学的研究では、rTMS を受けたてんかん患者 2 例からの脳標本では、構造上の脳障害は認め
なかった[47]。さらに、5-20 Hz で 1,200-3,800 刺激を健常被験者の視覚野に与えた後の MRI 拡散強調
画像では、明らかな変化は見られなかったことより、局所的脳浮腫を起こす可能性はなく、blood-brain
barrier にも影響を与えないことが明らかとなっている[62]。
42
8) 燃え上がり効果(kindling effects)
燃え上がり効果は、最終的にはてんかんに至る神経活動の進行的増強を示す初期けいれん下刺激の繰
り返し投与で、実験動物にみられる過程である[19]。kindling は、通常はげっ歯類の amygdala や海馬で起
こり、新皮質は相対的に抵抗性を示すことが知られている[19] [70]。また、kindling の出現には 1ms のパ
ルス継続を要し、これは汎用磁気刺激の電流パルスより長い。したがって、一般的に rTMS では kindling
は起こりにくいと考えられるが、長時間の繰り返し刺激では注意を要する。
9) 長期増強や長期抑制効果
高頻度の繰り返し電気脳刺激では、長時間持続するシナプス増強効果や、逆に 1 ヘルツ以内の刺激で
は、シナプス長期抑制効果が誘導され、これらはシナプス効率が変化したことによると考えられている[40]
[54]。同様のシナプス長期増強・抑制効果は rTMS によっても誘導されることが知られている[69]。サルを
用いた動物実験では、rTMS による脳機能抑制効果が、少なくとも 1 週間以上持続することが報告されて
いる[35]。また、ヒトでも脳機能イメージング手法を用いた研究で、rTMS による脳機能増強、抑制効果が
数時間から数日間持続することが報告されているが[5, 78] [79]、近年ではこれらは副作用としてではなく、
治療効果としての可能性が期待されている。
10)小児に対する影響
小児における安全性の検討では、頭蓋骨の違和感、頭頸部痛、手の脱力や痺れ感などの副作用が報告
されているが[24] [30] [59]、重大な副作用は報告されていない。脳波活動や脳血流に与える影響や自律
神経系に与える影響も調べられており、単発 TMS では電気生理学的、組織学的に異常を生じないことが
明らかとなっている[93]。
2.1.2.4 安全性に関するガイドライン
TMS の重篤な副作用を防ぐために、rTMS の安全性に関するガイドラインが、Wassermann[89], Chen ら
[12]によって公表された。さらに、これらに基づき、日本臨床神経生理学会からガイドラインが公表されて
いるため、これらのガイドラインに従って TMS を行うことが望ましい。
1) 国際基準
1996 年6月に rTMS の安全性に関する国際ワークショップが開催され、1998 年、Wassermann によりガイド
ラインが作成された[89]。それによれば、1) 倫理的要求 2) 刺激パラメータ 3) 生理学的モニタリング
4) 神経心理学的モニタリング 5) rTMS チーム 6) てんかんの医学的管理 7) 発作の心理的影響の管
理 8) rTMS の禁忌 以上 8 つの規定に関しての提言を行っている。1) 倫理的条件に関しては、被験者
のインフォームドコンセントを得ること、rTMS の恩恵が危険に勝ること、研究の負荷と恩恵とが等配分とさ
れることが重要である。また、rTMS 研究は被験者保護の必要性の順位において 3 クラスに分けられてい
る。2) 刺激パラメータに関しては、さまざまな周波数や強度での rTMS の single train の最大安全域が示
されている(表 2)。3) 生理学的モニタリングに関しては、刺激場所の対側の手や腕の筋肉を表面筋電図
でモニターすることや、実行可能であれば、脳波やビデオによるモニターも行うこととされている。4) rTMS
による治療法の確立まで、神経心理学的影響を調べるためのモニターを推奨している。 5) rTMS は熟練
43
した医療チームと生命維持装置がある医療施設内でのみ施行されるべきである。6) 被験者がけいれん
や他の医学的緊急事態の際、rTMS 研究室に治療できる場所があり、気道-呼吸-循環ルールに従い、痙
攣の管理をする。 7) rTMS により、てんかんを引き起こした患者や正常被験者に対し、医療的、心理的な
サポートを提供する。 8) 絶対禁忌として、頭蓋内の金属、心臓内カテーテル、高い心臓内圧が挙げら
れ、相対的禁忌として、妊娠、乳幼児、心臓病、心臓ペースメーカー、投薬ポンプ、三環系抗うつ薬、
neuroleptics, てんかんの家系が挙げられている。
表2 いろいろな周波数と強度での single train の最大安全域
さらに、1997 年に Chen らが rTMS の異なる train 間隔の安全性および刺激パラメータの安全範囲の提案
を行っている。10 名の健常被験者に対して 10-25 ヘルツの頻度での刺激を大脳一次運動野に与えたと
ころ、3 名でけいれん発作を誘発している[12]。結論として、20 ヘルツ 以下の rTMS を 10train 投与する
際の、inter-train intervals に関する安全範囲を推奨している(表 3)。
Inter-train
intervals (s)
5
1
0.25
Stimulus intensity (% of MT)
100%
105%
110%
120%
Safe
Safe
Safe
Insufficient
data
Unsafe (3) Unsafe Unsafe (2) Unsafe (2)
Unsafe
Unsafe Unsafe (2) Unsafe (3)
表3 20 ヘルツ以下の rTMS を 10 train 投与する際の各 train 間の時間の推奨
興奮性の TMS 後筋活動を引き起こす最小の train 数を( )内で示した。
刺激回数に関しては、一日ないし一週間にどれくらいまでの刺激回数が可能であるかを検討した報告が
ある[3]。45 歳以下の男性に対して、1,5 および 10 ヘルツの刺激頻度で頭頂葉皮質をさまざまな刺激強
度で刺激した場合には、一日あたり 12,960 回の rTMS で懸念される副作用は出現せず、安全に遂行可
能であると報告されている。
2) 本邦基準
これらの国際的な 2 つのガイドラインに基づき、本邦では 1999 年の「脳波と筋電図」27 巻第 3 号に「経頭
蓋的高頻度磁気刺激法の安全性と臨床応用」に関して提言が行われた(委員長;木村 淳)。一番目の
44
項目として「経頭蓋的高頻度磁気刺激法のヒトでの応用」が挙げられ、これは次の 6 項目に細分化されて
いる。1) 実施する施設での倫理委員会の承認を得る。 2) 患者への informed consent を十分に行い、
文書による承認を得る。 3) 実施者の責任で行う。 4) Wassermann の安全性のガイドラインに従う[89]。
5)高頻度磁気刺激法の定義は 1Hz 以上とする。 6) 単発、二連発磁気刺激の安全性については、現在
のところ特に問題はない。ただし、単発、二連発刺激の inter-train intervals は 2 秒以上とする。二番目の
項目の「経頭蓋的高頻度磁気刺激法の安全性では、以下のパラメータを厳守することが重要である。」で
は、 1) 磁気刺激の強度、頻度、duration of single trains は Wassermann の安全性ガイドラインに従うもの
とし、 2) inter-train intervals にかんしては、Chen らの安全性の検討に従うものとしている。この際、表面
筋電図の monitoring を行い、可能かつ必要な場合は脳波やビデオモニターを行うこととする。三番目の
項目の「臨床応用での患者への利益と危険性」については、高頻度磁気刺激の実施には副作用、危険
性を考慮して行い、利益と危険性、いわゆる evaluation of the risk/benefit ratio を十分に考慮して臨床
応用をすることが重要である。臨床応用に関して、Wassermann のガイドラインでは、rTMS 応用対象者を、
class 1, class 2, class 3 と三群に分けて、最初はうつ病患者のように非常に治療効果が期待できるもの
(class 1), 次にパーキンソン病(class 2)、そして最後に正常人(class 3)に応用することが提言されている。
しかし、本邦の提言では正常人より先に患者に応用することに対するリスクへの懸念から、対象者に関す
るクラス分けは行っておらず、実施者の判断に委ねられている。さらに、四番目の項目として、「経頭蓋的
高頻度磁気刺激による事故が生じた場合は、日本脳波・筋電図学会「磁気刺激法に関する委員会」に報
告する」ことが義務つけられている。
なお、1 ヘルツ以下の低頻度磁気刺激に関しては、2003 年の「臨床神経生理学」31 巻 1 号に磁気刺激
法に関する委員会報告が行われている(委員長;真野行生)。2000 年の委員会では、低頻度磁気刺激を
治療に応用する際の安全性の基準として、1 週間に 500 回を上限として施行することを提言した(臨床神
経生理学 28: 337, 2000)。その後、1 ヘルツ以下の低頻度磁気刺激が治療や高次脳機能研究に広く使
われるようになり、1,500 回までの刺激による副作用も特に報告されていない。また、世界的な安全性基準
の指針でも、安静時閾値以下の強度の場合、1,800 発までは安全とされている。このような状況に基づい
て、安静時閾値以下の強度で、1 ヘルツ以下の頻度の刺激に関しては、1 週間に 1,500 回を上限として施
行することが提案された。それ以降も副作用があるとの報告を認めず、2006 年の「臨床神経生理学」1 号
に、「安全性に関する委員会」と「磁気刺激法に関する委員会」の両者の名前で、3,000 回までよいという
基準に変更されている。
2.1.2.5 rTMS の治療効果と新しい臨床応用
脳を直接刺激できる手法は限られており、TMS はこの特性を生かした分野での発展が期待されている。
特に、rTMS を用いることによって、中枢神経系の長期的な機能変化(可塑性変化)を誘導することが可
能となり、近年、rTMS を用いた治療的応用の可能性が注目されている。うつ病をはじめとする精神疾患、
神経変性疾患、てんかん、脳卒中などで、rTMS の治療的応用が研究されてきている。rTMS は、刺激部
位、刺激頻度、刺激強度、刺激時間、回数などの多くのパラメータがあり、今後、疾患ごとに刺激適正パ
ラメータを確立する必要がある。また、rTMS の治療有効性を確立するためには、シャム刺激を用いたコン
トロール試験やプラセボ効果も考慮しなければならない。シャム刺激は、rTMS のコントロールとして標準
化されているが、実際に頭蓋に磁場がかからない事、クリック音の違いから、実際の刺激と容易に区別で
きうることが懸念されている[55] [6]。このため、磁気刺激時に発生する音、頭皮の電気刺激を伴ったシャ
45
ム刺激を使用した二重盲検試験を施行することが望ましい[63]。
1) うつ病
以前より、電気けいれん療法が行われており、1993 年に Hoflich らがより侵襲の少ない rTMS を用いた治
療を行い、初めてその治療応用への可能性を示した[37]。その後、薬物治療抵抗性うつ病患者に対して、
rTMS とシャム刺激を用いた二重盲検試験を行い、rTMS で有意な改善を認めている[66]。Gershon らはレ
ヴューの中で、より強い刺激強度ほど治療効果が期待でき、治療機関に関しても 11 日以上で有意に効
果的であるとしている。また、一日の回数を 1,200-1,600 回くらいに増やすと有意に効果が高かったと報
告している[28]。刺激部位は、初期には単発 TMS を用いて、頭頂部・両側前頭葉を刺激することが多か
ったが[37]、rTMS を用いるようになってから、左前頭前野(背外側部)への刺激が行われている[66] [26]。
一方、シャム刺激との間に有意差を認めなかった報告もあり、至適刺激条件の更なる検討が必要とされ
る。
2) 神経変性疾患
パーキンソン病では、1994 年、Pascual-Leone らが初めて患者の運動野に 5 ヘルツ rTMS を投与し、課題
の反応時間と運動時間の改善を認めたと報告している[67]。しかし 1999 年に、Ghabra らは 5 ヘルツの
rTMS を運動野に投与し手指機能向上について検討したが、有意な変化は認められず、その後の報告に
おいても治療効果は rTMS の刺激頻度、強度、部位により様々であった[52, 63] [29]。本邦では、
Shimamoto らによる報告が初めてであり、彼らは、両側前頭部に 0.2 ヘルツの低頻度 rTMS を投与するこ
とにより、パーキンソン病症状の著明な改善を認めたと報告している[75]。最近では、運動野への rTMS の
投与だけでなく、運動前野、補足運動野、前頭前野などの部位への投与によりパーキンソン病症状の改
善を示す文献も報告されている[52] [10]。その機序としてはヒトや動物実験にて、線条体でのドパミン濃
度の上昇が報告されており、rTMS はドパミンシステムに直接影響を与え得る[45] [82]。しかしながら、パ
ーキンソン病での治療効果はプラセボ効果による可能性も報告されており[81]、臨床効果に対するはっき
りとした結論は出ていない。
脊髄小脳変性症では、1999 年に Shimizu らが 0.2 ヘルツの rTMS を小脳に投与し、歩行機能が改善した
ことを報告している[76]。さらに、2002 年に Shiga らが同様の低頻度 rTMS を小脳に投与し、歩行機能の
改善と共に小脳・橋の血流が刺激終了 3 週間後まで増加したことを報告している[74]。本邦の大規模調
査では、遺伝性脊髄小脳変性症の一部では、0.2 ヘルツの rTMS を運動野に投与することで小脳失調症
状が有意に改善したが、小脳刺激ではシャム刺激との間に有意な差を認めなかった。
3) てんかん
1999 年に、Tergua らが難治性焦点性てんかん患者 9 名に rTMS 治療を行い、効果を認めたと発表した
[86]。彼らは、頭蓋頭頂部に対して 0.33 ヘルツの低頻度刺激を一日 500 回、5 日間連続で投与した結果、
一週あたりの平均発作回数が半減したと報告している。Menkes らは大脳皮質形成異常症で単純部分運
動発作をきたす患者に、0.5 ヘルツで運動閾値の 95%の強度で左頭頂部の 100 回刺激を週 2 回行った
結果、発作間欠期棘派および発作回数を有意に減少させたと報告している[57]。これら当初の rTMS 有
効性の報告は大きな期待と反響を呼んだ。しかしながらその後の検討で、1 ヘルツで 900 回刺激を二度
行う比較対照試験では、シャム刺激のコントロール群と刺激群で有意差が証明されなかった[87] [23]。現
46
時点では、てんかんに対する rTMS 治療の有効性は結論が出ていないが、刺激条件を探る今後の研究
の進展が期待される。
4) 脳卒中
脳卒中による片麻痺に対して、rTMS 治療による運動機能の回復が期待されている。Khedr らは、急性期
脳卒中患者の患側半球の運動野に 3 ヘルツの rTMS を投与し、Kim らは、10 ヘルツの rTMS を慢性期脳
卒中患者の運動野に投与し、いずれも運動皮質の興奮性の増大と手指運動機能の改善がみられたこと
を報告している[48] [49]。また、1 ヘルツ以下の低頻度 rTMS を健半球の運動野や頭頂葉に投与し、脳梁
線維を介した健側から患側への半球間抑制を低下させることで、運動機能や半側空間無視を改善させる
手法も報告されている[22] [56] [7] [8]。さらに、rTMS に感覚入植などの修飾を組み合わせて運動野の興
奮性を高めたり[80]、rTMS と運動療法の組み合わせによる治療法も考えられており、新たなリハビリテー
ションツールとしての有効性が期待される[88] [94] [11]。
5) その他
それ以外にも、不随意運動(ジストニア、本態性振戦)[60] [31]、急性・慢性疼痛[58] [52] [84] [85]、神経
因性膀胱[9] [53]、片頭痛[1] [4]、幻聴[36]など様々な疾患や症状に対しての rTMS の治療応用が行わ
れており、今後、新たな治療法としての進展が期待される。
2.1.2.6 臨床応用の安全性
異常組織や疾患脳に対する TMS の影響に関する包括的な研究は未だ行われていないが、単発 TMS に
よって、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、てんかん患者で痙攣発作が誘発されたことが報告されている
[32]。特に、脳卒中患者では、大脳皮質の興奮性が増加しており、健常者よりも痙攣発作を誘発する危
険性が高いと考えられている[69]。また、臨床的に無症状であっても、MRI 検査にて偶発的に脳腫瘍や
血管奇形が発見されることがあるため[39]、事前に MRI 検査が施行されていることが望ましい。
脳卒中患者に対してはすでに rTMS の安全性の検討研究が行われている。それによれば、患側半球の
運動野に 5 ヘルツの頻度で運動閾値下の刺激強度を用いた場合は、いずれも痙攣発作等の有害な副
作用や筋電図異常を認めていない。20-25 ヘルツのより高頻度で運動閾値上の刺激強度を用いた場合
では、筋電図上のみ、手内筋から上腕筋まで筋放電が伝播したと報告されており、脳卒中患者では、20
ヘルツ以上の強刺激では痙攣発作を誘発する危険性が示唆されている [9]。また、脳卒中患者に 3 ヘル
ツの頻度で最大出力の rTMS を与えたところ、刺激中に脳波変化が出現し、刺激後平均 200-600 ミリ秒
後まで持続することが報告されている[42]。さらに、動物実験では、急性期脳損傷ラットに麻痺肢を過剰
に使用すると神経損傷が増悪し、特に最初の 7 日間が危険期間であることが報告されている[50] [71]。こ
の過剰運動の影響には興奮性神経伝達物質を介するプロセスが関係していると考えられており[38]、過
剰な強度・頻度の rTMS を脳損傷急性期に用いると神経損傷を増悪させる可能性が否定できない。以上
より脳卒中患者に対して高頻度 rTMS を適応する際には、安全性の検討や動物研究に基づいて、適応
時期、刺激パラメータを十分に配慮することが必要である。
2.1.2.7 おわりに
TMS が本邦で使用され始めて 15 年以上となり、多施設での使用経験が積み重ねられてきている。日本
47
臨床神経学会からの安全性ガイドラインに準じて TMS を施行した場合には、重大な副作用は報告されて
おらず、おおむね安全であることが証明されている。脳を非侵襲的に直接刺激できる手法は限られており、
TMS はこの特性を生かした分野での発展が期待される。従って、今後も安全性ガイドラインを遵守して、
検査、研究および新たな治療法の開発に携わっていくことで、TMS はヒトの脳機能に介入する新たなツー
ルとして確固たる役割を担うものと期待される。
参考文献(2.1.2)
1.
Afra J, Mascia A, Gerard P, Maertens de Noordhout A, Schoenen J (1998) Interictal cortical
excitability in migraine: a study using transcranial magnetic stimulation of motor and visual cortices. Ann
Neurol 44:209-215
2.
Amassian VE, Henry K, Durkin H, Chice S, Cracco JB, Somasundaram M, Hassan N, Cracco
RQ, Maccabee PJ, Eberle L (1994) Human immune functions are differentially affected by left-sided
versus right-sided magnetic stimulaiton of temporo-parieto-occipital cortex. Neurology 44:A133
3.
Anderson B, Mishory A, Nahas Z, Borckardt JJ, Yamanaka K, Rastogi K, George MS (2006)
Tolerability and safety of high daily doses of repetitive transcranial magnetic stimulation in healthy young
men. J ECT 22:49-53
4.
Aurora SK, Ahmad BK, Welch KM, Bhardhwaj P, Ramadan NM (1998) Transcranial magnetic
stimulation confirms hyperexcitability of occipital cortex in migraine. Neurology 50:1111-1114
5.
Bestmann S, Baudewig J, Siebner HR, Rothwell JC, Frahm J (2003) Subthreshold
high-frequency TMS of human primary motor cortex modulates interconnected frontal motor areas as
detected by interleaved fMRI-TMS. Neuroimage 20:1685-1696
6.
Boylan LS, Pullman SL, Lisanby SH, Spicknall KE, Sackeim HA (2001) Repetitive transcranial
magnetic stimulation to SMA worsens complex movements in Parkinson's disease. Clin Neurophysiol
112:259-264
7.
Brighina F, Bisiach E, Oliveri M, Piazza A, La Bua V, Daniele O, Fierro B (2003) 1 Hz
repetitive transcranial magnetic stimulation of the unaffected hemisphere ameliorates contralesional
visuospatial neglect in humans. Neurosci Lett 336:131-133
8.
Brighina F, Bisiach E, Piazza A, Oliveri M, La Bua V, Daniele O, Fierro B (2002) Perceptual
and response bias in visuospatial neglect due to frontal and parietal repetitive transcranial magnetic
stimulation in normal subjects. Neuroreport 13:2571-2575
9.
Brodak PP, Bidair M, Joseph A, Szollar S, Juma S (1993) Magnetic stimulation of the sacral
roots. Neurourol Urodyn 12:533-540
10.
Buhmann C, Gorsler A, Baumer T, Hidding U, Demiralay C, Hinkelmann K, Weiller C, Siebner
HR, Munchau A (2004) Abnormal excitability of premotor-motor connections in de novo Parkinson's
disease. Brain 127:2732-2746
11.
Butefisch CM, Khurana V, Kopylev L, Cohen LG (2004) Enhancing encoding of a motor
memory in the primary motor cortex by cortical stimulation. J Neurophysiol 91:2110-2116
12.
Chen R, Gerloff C, Classen J, Wassermann EM, Hallett M, Cohen LG (1997) Safety of different
inter-train intervals for repetitive transcranial magnetic stimulation and recommendations for safe ranges
48
of stimulation parameters. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 105:415-421
13.
Chen R, Gerloff C, Hallett M, Cohen LG (1997) Involvement of the ipsilateral motor cortex in
finger movements of different complexities. Ann Neurol 41:247-254
14.
Chokroverty S, Hening W, Wright D, Walczak T, Goldberg J, Burger R, Belsh J, Patel B,
Flynn D, Shah S, et al. (1995) Magnetic brain stimulation: safety studies. Electroencephalogr Clin
Neurophysiol 97:36-42
15.
Counter SA (1993) Neurobiological effects of extensive transcranial electromagnetic
stimulation in an animal model. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 89:341-348
16.
Counter SA, Borg E, Lofqvist L (1991) Acoustic trauma in extracranial magnetic brain
stimulation. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 78:173-184
17.
Counter SA, Borg E, Lofqvist L, Brismar T (1990) Hearing loss from the acoustic artifact of
the coil used in extracranial magnetic stimulation. Neurology 40:1159-1162
18.
Dhuna A, Gates J, Pascual-Leone A (1991) Transcranial magnetic stimulation in patients with
epilepsy. Neurology 41:1067-1071
19.
Engel J (1989) Seizures and Eplepsy. FA Davis philadelphia
20.
Epstein CM, Lah JJ, Meador K, Weissman JD, Gaitan LE, Dihenia B (1996) Optimum stimulus
parameters for lateralized suppression of speech with magnetic brain stimulation. Neurology
47:1590-1593
21.
Epstein CM, Lah JK, Meador K, Weissman JD, Gaitan LE, Dihenia B (1996) Optimum stimulus
parameters for lateralized suppression of speech with magnetic brain stimulation. Neurology
47:1590-1593
22.
Fregni F, Boggio PS, Valle AC, Rocha RR, Duarte J, Ferreira MJ, Wagner T, Fecteau S,
Rigonatti SP, Riberto M, Freedman SD, Pascual-Leone A (2006) A sham-controlled trial of a 5-day
course of repetitive transcranial magnetic stimulation of the unaffected hemisphere in stroke patients.
Stroke 37:2115-2122
23.
Fregni F, Otachi PT, Do Valle A, Boggio PS, Thut G, Rigonatti SP, Pascual-Leone A, Valente
KD (2006) A randomized clinical trial of repetitive transcranial magnetic stimulation in patients with
refractory epilepsy. Ann Neurol 60:447-455
24.
Garvey MA, Kaczynski KJ, Becker DA, Bartko JJ (2001) Subjective reactions of children to
single-pulse transcranial magnetic stimulation. J Child Neurol 28:622-626
25.
Gaymard B, Pierrot-Deseilligny C, Rivaud S (1990) Impairment of sequences of
memory-guided saccades after supplementary motor area lesions. Ann Neurol 28:622-626
26.
George MS, al. E (1995) Daily repetitive transcranial magnetic stimulation (rTMS) improves
mood in depression. Neuroreport 6:1853-1856
27.
George MS, Wassermann EM, Williams WA, Steppel J, Pascual-Leone A, Basser P, Hallett M,
Post RM (1996) Changes in mood and hormone levels after rapid-rate transcranial magnetic stimulation
(rTMS) of the prefrontal cortex. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 8:172-180
28.
Gershon AA, al. E (2003) Transcranial magnetic stimulation in the treatment of depression.
Am J Psychiatry 160:835-845
49
29.
Ghabra MB, Hallett M, Wassermann EM (1999) Simultaneous repetitive transcranial magnetic
stimulation does not speed fine movement in PD. Neurology 52:768-770
30.
Gilbert DL, Garvey MA, Bansal AS, Lipps T, Ahang J, Wassermann EM (2004) Sholud
transcranial magnetic stimulation research in children be considered minimal risk? Clin Neurophysiol
115:1730-1739
31.
Gironell A, Kulisevsky J, Lorenzo J, Barbanoj M, Pascual B (2000) Low frequency repetitive
transcranial magnetic stimulation of the cerebellum in patients with essential tremor: double-blind,
cross-over, randomized, placebo-controlled study. Neurology 54:A116-A117
32.
Green RM, Pascual-Leone A, Wassermann E (1997) Ethical guidelines for rTMS research. IRB
19:1-7
33.
Hallett M (1995) The plastic brain. Ann Neurol 38:4-5
34.
Hausmann A, Weis C, Marksteiner J, Hinterhuber H, Humpel C (2000) Chronic repetitive
transcranial magnetic stimulation enhances c-fos in the parietal cortex and hippocampus. Brain Res Mol
Brain Res 76:355-362
35.
Hayashi T, Ohnishi T, Okabe S, al. E (2004) Long-term effect of motor cortical repetitive
transcranial magnetic stimulation induces. Ann Neurol 56:77-85
36.
Hoffman RE, Hawkins KA, Gueorguieva R, Boutros NN, Rachid F, Carroll K, Krystal JH
(2003) Transcranial magnetic stimulation of left temporoparietal cortex and medication-resistant auditory
hallucinations. Arch Gen Psychiatry 60:49-56
37.
Hoflich G, al. E (1993) Application of transcranial magnetic stimulation in treatment of
drug-resistant major depression. A report of two cases. Hum Pshchopharmacol 8:361-365
38.
Humm JL, Kozlowski DA, Bland ST, James DC, Schallert T (1999) Use-dependent
exaggeration of brain injury: is glutamate involved? Exp Neurol 157:349-358
39.
Illes J, Rosen AC, Huang L, Goldstein RA, Raffin TA, Swan G, Atlas SW (2004) Ethical
consideration of incidental findings on adult brain MRI in research. Neurology 62:888-890
40.
Iriki A, Pavides C, Keller A, Asanuma H (1991) Long-term potentiation of thalamic input to
the motor cortex induced by coactivation of thalamocortical and corticocortical afferents. J Neurophysiol
65:1435-1441
41.
Ives JR, al. E (2006) Clin Neurophysiol 117
42.
Izumi SI, al. E (1998) Transcranial magnetic stimulation-induced changes in scalp-recorded
EEG and evoked responses in patients with cerebrovascular disease. Jpn J Rehabil Med 35:738-743
43.
Jennum P, Klitgaard H (1996) Repetitive transcranial magnetic stimulations of the rat. Effect of
acute and chronic stimulations on pentylenetetrazole-induced clonic seizures. Epilepsy Res 23:115-122
44.
Kanayama R, Bronstein AM, Shallo-Hoffmann J, Rudge P, Husain M (1994) Visually and
memory guided saccades in a case of cerebellar saccadic dysmetria. J Neurol Neurosurg Psychiatry
57:1081-1084
45.
Kanno M, Matsumoto M, Togashi H, Yoshioka M, Mano Y (2004) Effects of acute repetitive
transcranial magnetic stimulation on dopamine release in the rat dorsolateral striatum. J Neurol Sci
217:73-81
50
46.
Kanno M, Matsumoto M, Togashi H, Yoshioka M, Mano Y (2003) Effects of acute repetitive
transcranial magnetic stimulation on extracellular serotonin concentration in the rat prefrontal cortex. J
Pharmacol Sci 93:451-457
47.
Keenan JP P-LA (1999) Transcranial Magnetic Stimulation. Science and Medicine 6:8-17
48.
Khedr EM, Ahmed MA, Fathy N, Rothwell JC (2005) Therapeutic trial of repetitive
transcranial magnetic stimulation after acute ischemic stroke. Neurology 65:466-468
49.
Kim YH, You SH, Ko MH, Park JW, Lee KH, Jang SH, Yoo WK, Hallett M (2006) Repetitive
transcranial magnetic stimulation-induced corticomotor excitability and associated motor skill acquisition
in chronic stroke. Stroke 37:1471-1476
50.
Kozlowski DA, James DC, Schallert T (1996) Use-dependent exaggeration of neuronal injury
after unilateral sensorimotor cortex lesions. J Neurosci 16:4776-4786
51.
Krain L KJ, Yamada J, Cadwell J, Sakamaki S (1990) Consequences of cortical magnetoelectric
stimulation. Magnetic Stimulation in Clinical Neurophysiology:157-163
52.
Lefaucheur JP, Drouot X, Von Raison F, Menard-Lefaucheur I, Cesaro P, Nguyen JP (2004)
Improvement of motor performance and modulation of cortical excitability by repetitive transcranial
magnetic stimulation of the motor cortex in Parkinson's disease. Clin Neurophysiol 115:2530-2541
53.
Lin VW, Wolfe V, Frost FS, Perkash I (1997) Micturition by functional magnetic stimulation. J
Spinal Cord Med 20:218-226
54.
Linden DJ (1994) Long-term synaptic depression in the mammalian brain. Neuron 12:457-472
55.
Loo CK, Taylor JL, Gandevia SC, McDarmont BN, Mitchell PB, Sachdev PS (2000)
Transcranial magnetic stimulation (TMS) in controlled treatment studies: are some "sham" forms active?
Biol Psychiatry 47:325-331
56.
Mansur CG, Fregni F, Boggio PS, Riberto M, Gallucci-Neto J, Santos CM, Wagner T,
Rigonatti SP, Marcolin MA, Pascual-Leone A (2005) A sham stimulation-controlled trial of rTMS of the
unaffected hemisphere in stroke patients. Neurology 64:1802-1804
57.
Menkes DL, al. E (2000) Slow-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation in a
patient with focal cortical dysplasia. Epilepsia 41:240-242
58.
Migita K, al. E (1995) Transcranial magnetic coil stimulation of motor cortex in patients with
central pain. Neurosurgery 36:1037-1039
59.
Moll GH, Wischer S, Heinrich H, Tergau F, Paulus W, Rothenberger A (1999) Deficient motor
control in children with tic disorder: evidence from transcranial magnetic stimulation Neurosci Lett
272:37-40
60.
Murase N, Rothwell JC, Kaji R, Urushihara R, Nakamura K, Murayama N, Igasaki T,
Sakata-Igasaki M, Mima T, Ikeda A, Shibasaki H (2005) Subthreshold low-frequency repetitive
transcranial magnetic stimulation over the premotor cortex modulates writer's cramp. Brain 128:104-115
61.
Muri RM, Vermersch AI, Rivaud S, Gaymard B, Pierrot-Deseilligny C (1996) Effects of
single-pulse transcranial magnetic stimulation over the prefrontal and posterior parietal cortices during
memory-guided saccades in humans. J Neurophysiol 76:2102-2106
62.
Niehaus L, Hoffmann KT, Grosse P, Roricht S, Meyer BU (2000) MRI study of human brain
51
exposed to high-dose repetitive magnetic stimulation of visual cortex. Neurology 54:256-258
63.
Okabe S, Ugawa Y, Kanazawa I (2003) 0.2-Hz repetitive transcranial magnetic stimulation has
no add-on effects as compared to a realistic sham stimulation in Parkinson's disease. Mov Disord
18:382-388
64.
Pascual-Leone A, Gates JR, Dhuna A (1991) Induction of speech arrest and counting errors
with rapid-rate transcranial magnetic stimulation. Neurology 41:697-702
65.
Pascual-Leone A, Houser CM, Reese K, Shotland LI, Grafman J, Sato S, Valls-Sole J,
Brasil-Neto JP, Wassermann EM, Cohen LG, et al. (1993) Safety of rapid-rate transcranial magnetic
stimulation in normal volunteers. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 89:120-130
66.
Pascual-Leone A, Rubio B, Pallardo F, Catala MD (1996) Rapid-rate transcranial magnetic
stimulation of left dorsolateral prefrontal cortex in drug-resistant depression. Lancet 348:233-237
67.
Pascual-Leone A, Valls-Sole J, Brasil-Neto JP, Cohen LG, Hallett M (1994) Akinesia in
Parkinson's disease. I. Shortening of simple reaction time with focal, single-pulse transcranial magnetic
stimulation. Neurology 44:884-891
68.
Pascual-Leone A, Valls-Sole J, Brasil-Neto JP, Cohen LG, Hallett M (1992) Seizure induction
and transcranial magnetic stimulation. Lancet 339:997
69.
Pascual-Leone A, Valls-Sole J, Wassermann EM, Hallett M (1994) Responses to rapid-rate
transcranial magnetic stimulation of the human motor cortex. Brain 117 ( Pt 4):847-858
70.
Racine RJ, Ivy GO, Milgram NW (1989) Kindling: clinical relevance and anatomical substrate.
The Clinical Relevance of Kindling T.H. Bolwing and M.R. Trimble (Eds.):15-34
71.
Risedal A, Zeng J, Johansson BB (1999) Early training may exacerbate brain damage after focal
brain ischemia in the rat. J Cereb Blood Flow Metab 19:997-1003
72.
Roth BJ, Pascual-Leone A, Cohen LG, Hallett M (1992) The heating of metal electrodes
during rapid-rate magnetic stimulation: a possible safety hazard. Electroenceph clin Neurophysiol
85:116-123
73.
Satow T, Mima T, Hara H, Oga T, Ikeda A, Hashimoto N, Shibasaki H (2002) Nausea as a
complication of low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation of the posterior fossa. Clin
Neurophysiol 113:1441-1443
74.
Shiga Y, Tsuda T, Itoyama Y, Shimizu H, Miyazawa KI, Jin K, Yamazaki T (2002) Transcranial
magnetic stimulation alleviates truncal ataxia in spinocerebellar degeneration. J Neurol Neurosurg
Psychiatry 72:124-126
75.
Shimamoto H, al. E (1999) Therapeutic effect of repetitive transcranial magnetic stimulation in
Parkinson's disease. 臨床神経学 39:1264-1267
76.
Shimizu H, al. E (1999) Therapeutic efficacy of transcranial magnetic stimulation for hereditary
spinocerebellar degeneration. Tohoku J Exp Med 189
77.
Siebner HR, Auer C, Ceballos-Baumann A, Conrad B (1999) Has repetitive transcranial
magnetic stimulation of the primary motor hand area a therapeutic application in writer's cramp?
Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 51:265-275
78.
Siebner HR, Rothwell J (2003) Transcranial magnetic stimulation: new insights into
52
representational cortical plasticity. Exp Brain Res 148:1-16
79.
Siebner HR, Takano B, Peinemann A, Schwaiger M, Conrad B, Drzezga A (2001) Continuous
transcranial magnetic stimulation during positron emission tomography: a suitable tool for imaging
regional excitability of the human cortex. Neuroimage 14:883-890
80.
Stefan K, Kunesch E, Cohen LG, Benecke R, Classen J (2000) Induction of plasticity in the
human motor cortex by paired associative stimulation. Brain 123 Pt 3:572-584
81.
Stefella AP, al. E (2006) Neuroimage 31:1666-1672
82.
Strafella AP, Paus T, Barrett J, Dagher A (2001) Repetitive transcranial magnetic stimulation
of the human prefrontal cortex induces dopamine release in the caudate nucleus. J Neurosci 21:RC157
83.
Szuba MP, O'Reardon JP, Rai AS, Snyder-Kastenberg J, Amsterdam JD, Gettes DR,
Wassermann E, Evans DL (2001) Acute mood and thyroid stimulating hormone effects of transcranial
magnetic stimulation in major depression. Biol Psychiatry 50:22-27
84.
Tamura Y, al. E (2004) Effects of 1-Hz repetitive transcranial magnetic stimulation on acute
pain induced by capsaicin. Pain 107:107-115
85.
Tamura Y, al. E (2004) Facilitation of A-fiber-mediated acute pain by repetitive transcranial
magnetic stimulation. Neurology 62:2176-2181
86.
Tergau F, Naumann U, Paulus W, Steinhoff BJ (1999) Low-frequency repetitive transcranial
magnetic stimulation improves intractable epilepsy. Lancet 353:2209
87.
Theodore WH, Hunter K, Chen R, Vega-Bermudez F, Boroojerdi B, Reeves-Tyer P, Werhahn
K, Kelley KR, Cohen L (2002) Transcranial magnetic stimulation for the treatment of seizures: a
controlled study. Neurology 59:560-562
88.
Tsuji T, Rothwell JC (2002) Long lasting effects of rTMS and associated peripheral sensory
input on MEPs, SEPs and transcortical reflex excitability in humans. J Physiol 540:367-376
89.
Wassermann EM (1998) Risk and safety of repetitive transcranial magnetic stimulation: report
and suggested guidelines from the International Workshop on the Safety of Repetitive Transcranial
Magnetic Stimulation, June 5-7, 1996. Electroencephalogr Clin Neurophysiol 108:1-16
90.
Wassermann EM (2000) Side effects of repetitive transcranial magnetic stimulation. Depress
Anxiety 12:124-129
91.
Wassermann EM, Cohen LG, Flitman SS, Chen R, Hallett M (1996) Seizures in healthy people
with repeated "safe" trains of transcranial magnetic stimuli. Lancet 347:825-826
92.
Wassermann EM, Lisanby SH (2001) Therapeutic application of repetitive transcranial
magnetic stimulation: a review. Clin Neurophysiol 112:1367-1377
93.
Yasuhara A, Niki T (1999) Autoregressive spectral analysis of EEG changes by transcranial
magnetic stimulation in children with cerebral palsy. Recent advances in Biomagnetism, Tohoku
University Press:944-947
94.
Ziemann U, Corwell B, Cohen LG (1998) Modulation of plasticity in human motor cortex after
forearm ischemic nerve block. J Neurosci 18:1115-1123
95.
松永 薫, 岡田 和, 由比 友, 辻 貞 (2000) ラットでの高頻度連続経頭蓋的磁気刺激の安
全性の検討. 臨床神経生理学 28:409-413
53
54
2.2 臨床心理・宗教的・精神的側面の研究
2.2.1 脳計測体験の臨床心理学的検討に関する研究Ⅰ
(追手門学院大学:馬場天信、京都文教大学:金山由美・濱野清志)
2.2.1.1 目的
非侵襲的脳機能計測体験に着目し、被験者がどのようにそれを感じとり、体験後の心理的生
活の中にその体験を位置づけていくか、アイデンティティの感覚の変化はどのようなものか、そういった点
を明らかにするための基礎資料を、被験者に対する心理検査とインタビューを中心に収集・整理していく。
具体的には、医学研究および臨床上の有用性が確認され、安全性の上で重大な問題がないと考えられ
る、単発刺激、連発刺激、低頻度反復刺激(1Hz 未満)の磁気刺激法(TMS)を用いた、高次脳機能の検
討および治療を目的とした応用研究の研究対象となる体験についての意識を、質的に検討する。
体験前後のインタビューと複数の心理テスト、及び一定の期間をおいてから再度のインタビューを行うこと
により、日数を経て、この体験が被験者の日常生活にどのような影響をもたらしているのかを聞き取り、計
測体験にかかる問題点を明らかにする。
2.2.1.2 方法
被験者 正常被験者で、除外対象は、日本臨床神経生理学会のガイドラインおよび Wassermann (1998)
の基準に準じて以下のように定める。
・絶対的除外基準
1)頭蓋内にクリップなどの金属を有するもの
2)心臓内に留置カテーテルを有するもの
3)明らかに頭蓋内圧亢進状態のもの
・以下の相対的除外基準については、大脳刺激によるてんかん発作などの危険性に関して
十分に説明した上で、被験者本人(または保護者)の書面によるインフォームドコンセントが得られたとい
う条件のもとでのみ、安全性に十分注意しておこなうものとする。
1)妊娠の可能性を除外できない女性
2)18歳未満の若年者
3)ペースメーカーを使用しているもの
4)医療用ポンプを使用しているもの
5)三環系抗うつ剤、抗精神病薬を服用中のもの
6)てんかんの家族歴のあるもの
そのうえで、本実験の趣旨を理解し実験内容についての説明を受け、同意が得られた 9 名を被験者とし
た。平均年齢は 28.3 歳(22 歳~43 歳、男性 3 名、女性 6 名)であった。
実験の実施
・使用機器
1)磁気刺激装置
マグスティム社製マグスティム200一式
同社製バイスティムモジュール一式
同社製マグスティムラピッド一式
55
ダンテック社製マグプロ一式
それと同等と認められた機器
2)刺激コイル
通常用いられている円形、8の字、ダブルコーン型のコイルを用いるものとする。機種およびコイル形状に
よって出力は多少異なるが、最大磁束密度は2Tまで、磁束密度変化率は最大で47kT/sである。
3)記録装置
ニューロスキャン社製スキャンシステム一式
・実施場所
1)TMS 体験、及びその前後に実施するインタビューについては、京都大学医学部付属病院内の臨床脳
生理検査室、神経内科外来検査室、当病院構内で上記に準じており、医学的処置が可能な場所。なお、
研究実施時には、必ず1名以上の医師が立ち会うものとする。
2)後日のインタビューについては、京都文教大学心理臨床センター内面接室を使用する。
実験の流れ 事前に、健康状態のチェックとミネソタ多面人格検査(MMPI)を実施したうえで下記の流れ
で実験を行った。なお、実験前後におけるインタビュー及び、心理検査の実施は 2 名の臨床心理士が担
当した。
1)実験前
①健康状態チェック票
②MMPI 実施
2)計測1回目
①説明・同意書・チェックリストの記入
②状態―特性不安検査(STAI)実施
③バウムテスト実施
④検査前インタビュー(15~30 分程度)実施
⑤経皮的磁気刺激検査(TMS)施行
⑥状態―特性不安検査(STAI)実施
⑦検査後インタビュー(15~30 分程度)実施
⑧バウムテスト実施
3)計測2回目
1回目の計測から 24 時間以上経過した後に、先述の①~⑧の手順を繰り返す。
4)後日のインタビュー
2回目の計測から約1ヶ月後にインタビューを行う。
調査内容 実験参加者が回答した質問紙検査の内容は下記のものである。
①ミネソタ多面的人格目録(Minnesota Multiphasic Personality Inventory;MMPI) MMPI は質問紙による
パーソナリティ検査の代表的なものの一つであるが、もともとは精神医学的診断に客観的道具を提供する
ことを目的に開発された。被検者が各項目に対し、自分に「あてはあまる(true)」、「あてはまらない
(false)」、「どちらとも言えない(cannot say/?)」のいずれかを選択して答える 3 件法の回答形式をとって
いる。本調査では合計 383 項目に回答する MMPI 冊子式Ⅰ型を採用した。
56
②状態・特性不安尺度(State Trait Anxiety Inventory;STAI) 状態不安と特性不安を測定する尺度とし
て各 20 項目ずつに「全くちがう」から「その通りだ」の 4 件法で回答する標準化された質問紙である。不安
の程度については、状態不安、特性不安のいずれもⅠ(非常に低い)、Ⅱ(低い)、Ⅲ(普通)、Ⅳ(高い)、
Ⅴ(非常に高い)といった 5 段階で性別ごとに評価でき、それとは別に素点での評価も可能な尺度であ
る。
また、質問紙検査とは別に描画法検査として③バウムテスト(樹木画テスト)を2回の脳計測実験前後にそ
れぞれ実施し、実験前後には臨床心理士によるインタビューも行った。①については脳計測体験前に1
回のみの実施とし、②と③については合計2回の脳計測体験前後にそれぞれ実施し、実施後に臨床心
理士によるインタビューを行った。インタビューでは、脳科学研究に対するイメージや社会的意義などに
ついて被験者が感じることや脳計測体験前後での変化を尋ねるとともに、特に脳計測体験を経験するこ
とで生じる気持ちの変化について自由に話してもらうように心がけた。
2.2.1.3 結果と考察Ⅰ~質問紙検査とインタビューの結果から~
脳計測体験における状態不安の変化
まず、2 回にわたる実験開始前に実施した STAI における特性不安の素点をもとに性別ごとに 5 段階評価
した結果を表1に示した。若干のばらつきは認められるものの、特性不安に関しては段階Ⅴ(非常に高
い)に該当する者はおらず、本実験の被験者は平均的な特性不安を有している対象者で構成されている
ことが明らかになった。
表1 実験参加者における特性不安段階
不安段階
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅴ
1回目
0
2
5
2
0
2回目
1
0
6
2
0
単位:人数
次に 2 回にわたる実験開始前後における状態不安の変動を図1に示した。1 回目の脳計測実験では、被
験者のうち 4 名(A、C、F、I)が実験前よりも実験後に状態不安が増加(2~4 点)しており、他の 5 名は減
少していた(-2~-12 点)。また、2 回目の脳計測実験では、実験前後で不安が 13 点増と顕著に増加した
者 1 名(D)、やや増加あるいは全く変化のなかった者が 3 名(A、H、I)、他の 5 名は全て実験後に状態不
安が減少していた(-1~-12 点)。以上の結果をまとめると、脳計測という新規な体験(1 回目)の前後では、
状態不安が増加する者と減少する者の 2 群に分かれる傾向が認められるが、2 回目の実験経験前後では
大半のものが、実験前よりも実験後で状態不安の低下を示す傾向が示されたと言える。 一方、4 回にわ
たる状態不安全体の変動をみていくと、9 名のうちの 7 名は 2 回の実験を繰り返すにつれて不安が一定
の状態で維持しているか、経験を重ねるにつれて低下する特徴が示された。しかしながら、C と D の 2 名
の被験者については状態不安の増減が不安定で一定しない特徴を示しており、いずれの被験者とも 1 回
目と 2 回目の実験前に回答した特性不安得点の段階評価がⅣ(高い)の者であった。したがって、新規な
経験を繰り返すことで全体的には状態不安が減少もしくは維持されやすいが、特性不安の高い者につい
ては状態不安が変動しやすいことが明らかになったと言える。
57
70
状態不安得点(素点)
60
A
B
C
D
E
F
G
H
I
50
40
30
20
10
Pre
Post
Pre
実験1回目
Post
実験2回目
図1 脳計測実験前後における状態不安変化
MMPI の結果からみた脳計測体験による状態不安変動に対する影響
実験開始前に施行した MMPI の結果について全被験者 9 名の平均プロフィールを図2に示した(表示
は素点平均得点であり SD をバーで示した)。また、全被験者の MMPI 臨床尺度の得点(素点)を表2に示
した。先の結果に基づき、状態不安得点の変動が大きい 2 名(C、D)とその他の被験者における違いに
ついて図1と表2の得点から比較検討を行うと、Pa 尺度得点と Si 尺度得点の高さが両者とも全被験者に
おける上位高得点者(第 1 位、第 2 位)であることが明らかになったと言える。
いずれの得点も、精神医学的問題を想定する必要のない正常範囲内での得点ではあるが、パーソナリテ
ィ特性としては比較的高い素点を示している。Pa 尺度は関係念慮や被害妄想、誇大な自己概念、猜疑
傾向、過敏といったパラノイド症状をもつ患者を予測するためにもともと作成された尺度である。この 2 名
の素点に該当する標準得点(標準得点に換算して 65~75 点)の解釈によれば、中等度に上昇した得点
を示すこれらの人は、他者の言うことに敏感すぎたり、過度に反応する傾向が高く、疑い深く、警戒的で
用心深いと言われている。また、意見や態度に柔軟性があまりなく、合理性を強調し過ぎる面があると言
われている。一方、Si 尺度得点は社会的内向性尺度と言われており、もともとは社会的接触から身を退き
社会的責任を免れようとする傾向を査定するために作成された尺度である。この尺度得点が高い場合の
特徴としては、全体として社会的に内向的で、内気で遠慮がち、他者が自分をどのように思っているかに
敏感であるとされている。また、統制過剰で自分の感情を率直に表さない傾向があり、対人関係において
は従順かつ素直で、権威を受け入れやすいと言われている。すなわち、これらの 2 尺度において比較的
高い得点を示す者は、人間関係に非常に敏感で従順に振舞う一方で、柔軟性に乏しく、そこで感じた感
情などを表にだしにくい点が性格傾向として共通していると言える。
58
50
34.67
45
40
27.22
35
素点
30
20.44
23.11
13.22
25
20
15
7.00
16.44
16.00
10
11.33
5
12.00
0
Hs
D
Hy
Pd
Mf
Pa
臨床尺度
Pt
Sc
Ma
Si
図2 全被験者におけるMMPI臨床尺度の平均プロフィール
表2 全被験者のMMPI臨床尺度得点
臨床尺度
Hs
D
Hy
Pd
Mf
Pa
Pt
Sc
Ma
Si
A
3
10
12
5
26
6
3
1
8
16
B
9
25
22
16
28
6
7
7
17
25
C
8
23
25
13
35
16
20
15
15
34
D
9
28
24
27
32
15
26
27
22
43
E
4
19
21
13
38
12
7
11
18
24
F
0
17
22
17
22
14
10
9
15
26
G
7
21
26
14
44
9
9
4
15
25
H
1
19
25
16
41
11
3
5
15
24
I
22
22
31
27
46
13
34
29
19
28
インタビュー内容に基づく質的検討
先述した結果では質問紙法による心理検査データから脳計測体験と性格特性との関連性を明らかにし
たが、被験者数の少なさや質問紙法の限界なども考慮すると、インタビュー内容とつき合わせて質的に脳
計測体験による心理的変化を捉えることは重要である。ここでは、脳計測体験に伴う心理的変化の一般
化を図るのではなく、あくまで不安の変化が大きい被験者がどのような体験をそこで行っていたかを明ら
かにすることを目的として、状態不安変化の変動が著しかった2名を抜き出し、どのような要因が状態不
安の変動に大きく関与していたかを質的な観点から検討することにする。そこで、臨床心理士によるイン
タビュー内容の逐語記録をもとに、この 2 名が脳計測実験をどのように体験していたかについての概要を
59
下記に示した。なお、C さんの状態不安得点の変化は図3、D さんの状態不安の変化は図4に示した。C
さんは1回目の実験前から状態不安が高く、2回目の実験前までその不安得点は上昇しているが、2回目
の実験後にはその不安は最も低い得点へと変化している事例である。また、D さんは、C さんと同様に 1
回目の実験前には不安が高く、実験後には多少減少が認められるが2回目の実験前後で大幅な状態不
安得点の増加が認められた事例である。
70
状態不安得点
60
50
40
30
20
10
0
Pre
Post
Pre
実験1回目
Post
実験2回目
図3 被験者Cさんの状態不安変化
1)C さんのインタビュー内容概要
<1 回目の実験前>
研究担当教員にお世話になっているので協力したいと思い参加したと実験への参加動機を話す。脳科
学研究に関する予備知識は全くなく、脳計測の内容について実験担当者から説明があったが、分からな
いことだらけだったため特に質問をしなかった。脳科学実験に対しては、被験者が意図してコントロール
できない反射のようなイメージがあり、自覚できないことが脳科学実験によって分かる点については仮に
それが分かったとしても気にならないと話される。しかし一方で、「リスクではないけど、ちょっとなんか、リス
クに近いような・・」と言葉を濁す。その後、実験当日に実験を行う大学に来た際の脳計測実験担当者側と
のやり取りで感じた疑問や不安を話される。偶然近くにいた実験担当者が、大学病院のシステムや実験と
病院業務の違いに対する説明をする。被験者としては、実験の場所が分からなかった時の不安について
話されるが、実験担当者の説明と多少かみ合わないところがあり、今回の実験が大学病院の許可に基づ
いたものではなく、隠れて行われているのではないかと更に不安を持たれた様子(注:これは実際には大
学病院における倫理委員会の承認を経て実験が行われており被験者の誤解である)。リスクを感じている
実験に対して、大学側が把握していないことへの不安を遠慮気味にだいぶ語られる。このような不安や疑
問が残るなかで同意書へサインしたことについて面接者に尋ねられると、「多分これが全然関係ない人に
頼まれたら、受け容れられなかったですけど、その、先生方に頼まれたんで」と話され、実験への参加動
機(普段お世話になっている先生に協力したい)を理由に不安や疑問を抑制している様子が伺えた。
<1 回目の実験後>
実験中に頭部の皮膚が痛かったという感想を述べられる。また、実験後も名残が残っており、実験
では痛みは感じないものと思っていたが、予想していたものと実験が異なっていたと話される。実験後に
は眠気を感じていることや、一番刺激を受けたところが(右上頭部)が気になっていることを話す。また、「う
60
ーん・・なんか、あんまり人に勧められない感じです」と他者にこの実験は勧めることができない気持ちで
あることや、このような実験であると初めに知っていたら実験は参加しなかったかもしれないと話される。脳
科学研究そのもののイメージについては、何を測られたかということも分からず、結果もどうなっているのか
が分からないため実験後もイメージが湧かない。面接者に何の役に立つのかが分からない状態で脳を計
測される側としての体験について尋ねられ、研究として被験者をお願いする立場として、被験者への依頼
の説明を十分にする必要があることや相手にかかる負担などを知ることができたという点で今回の実験は
一つの経験として役立ったと話される。特にこの研究にどのような意味があり、どのように役立つかなど、
被験者の日常生活や自分を知る上ですくしでも役立つことがフィードバックされるのであれば、今回のよう
な実験は意味があるかもしれないが、一般の被験者にそれを説明するのはそういう利益として得るものが
無いかもしれないので難しいのではないかと話される。最後に、次回の実験が憂鬱であることを話されて
面接を終える。
<2回目の実験前>
脳科学研究については、脳について解明されていないことが多く研究が進めばいいとは思う。脳科学
研究の社会的意義については、実験をやった後に何が分かるのかがイメージできないのでこたえることが
できない。今日の実験に臨む前の気持ちを尋ねられ、「早く終わって欲しい、ちょっと怖い、嫌な感じみた
い、注射の前みたいな」と話される。
<2回目実験後>
2回目の実験に対する感想を尋ねられ、1回目と同様に痛みを強く感じ、実験が終わってほっとしたと話
される。痛みの感じを「ガガ・ガン」と表現し、今回は顎まで響いてきたと笑い気味に話される。実験中には、
ひたすら我慢しており、いつ終わるか時間の経過が分からず(時計が見えにくいため)、我慢するのみで、
なるべく違うことを考えたりして早く時間が過ぎることを願っていた。違うことを考えるという我慢方法をとる
ことで麻痺してくるような感じがし、「これはそんなに辛いことじゃないんじゃないか」と暗示をかけて我慢し
ていた。その時の気持ちを面接者に尋ねられ、「気持ちの動き的には・・もうほんとに、これ、やられてんの
をやめてって言いたいんですけど、言えないので、もう・・でも、もう、手段としては、こう、何にも感じないよ
うに、こう、とりあえず、なんですか、こう、何にも感じないようにすることが一番楽なんで、それに徹するとい
うか、動きはあんまりないです、やだなぁっていう思いを抑える、で、我慢するっていうことだけ」と実験中の
痛みの苦しさとそれを必死で我慢しようとしてきたことを話される。脳科学研究についてどう感じるかにつ
いては、1回目と同様にこの実験が何の意味があるのかが分からないと話され、脳科学研究の社会的意
義についても科学者がやる意味はあると思う反面、被験者側はどうなっているのかが全く分からないと話
される。
<実験体験1ヶ月後>
脳計測実験を体験して1ヵ月後での改めての感想を尋ねられ、検査者と被験者との関係性の話題がだ
される。検査者側は聞きたいことが沢山あるかもしれないが、それが前面に出すぎており、協力者の側が
聞きたいことや疑問などもしっかり聞いてほしいと1回目の実験体験前のやり取りを持ち出して話される。
また、その時に実験者の説明から受けた感じを「引っ掛かられる感じ、えぐられてる感じ」と形容し、「人を
扱っているということを忘れないで欲しい」と話す。実験中には、予めやめて欲しい場合にはそのように言
61
うように言われてはいたが、「なんかもう少し耐えられるみたいな感じで・・・、後何回耐えればデータになる
んやと思うと、耐えたほうがいいかなと思ったり、人によったら痛くないと言われると、私はなんか痛いんだ
けど・・・」と思ったことを話される。実験が終了してから他の被験者の方と話される中で、痛みの感じ方に
だいぶ個人差があることが分かり、痛いと感じるのは自分の責任なのかと思ったりしたと話される。このよう
な実験を行うことの社会的意義については、被験者に質問する内容ではなく、研究者が考えるべきもの
ではないかと話された。その質問をされることそのものが、実験に社会的意味があると思わされているよう
な感じがし、押し付けられている印象を受けるとも。研究に参加してみて思うことについては、実験をする
ということは人によって心の痛みが伴う場合や身体的な痛みを感じる人もいるはずであり、そういったこと
に対するケアの視点を医学や科学の研究者は忘れているのではないかと。なによりも研究に携わる人間
として、実験や調査に協力する人がどのような苦痛を味わう可能性があるかについては、逆の立場で一度
経験しておかないと分からないことだと思い、それが今回研究に協力して収穫だったと話される。最後に、
今回の実験や調査で行った内容全ての意味や理由を知りたいと思っていると話される。
2)D さんのインタビュー内容概要
70
状態不安得点
60
50
40
30
20
10
0
Pre
Post
Pre
Post
実験2回目
実験1回目
図4 被験者Dさんの状態不安変化
<1回目の脳計測体験前>
脳科学研究についてあまり知識はないが、中枢系についてだいぶ解明されてきており、動物実験
でやられていたことが人間でも結構できるようになっているようなイメージがあり、ちょっと怖い感じもするが、
解明していけば臨床的、心理臨床的に考えるところは多いと思うと話される。また、ロボトミーは科学でな
い気がするが、近年の医療技術の進歩でベーシックな安全性がきちんとあるだろうと思っている。現象学
的な脳は客観的に捉えることはできないが、生物学的な脳についてわかることは重要だと思う。それらを
研究できる人がいるのであれば大事なことだと思うとも話される。脳科学研究の社会的意義については、
研究者のための研究になるのであれば意味はないと思うが、困っている人の役に立つのであれば良いの
ではないかと話される。最後に、この回の脳計測実験前の気持ちとしては、あまり不安はないが、緊張し
ていることや痛みが生じないのか、実験後に具合が悪くならないかなど気になっていると話される。
<1回目の脳計測体験後>
実験を受けてみての感想は、反復の動作が眠りを誘い非常に眠かった。実際に磁場をあてると手
62
も動き、人間の脳はいろいろな部位に分かれていて、ここが身体のここに影響するというのを体験できて、
脳科学研究が胡散臭いことでもないと思い、同時に安心した。無条件に身体が動く体験については、呪
術的な体験ではなく、科学的な体験であった。脳計測体験については、最初は痛みが生じないか気にな
っていたが、事前の説明で表面の筋肉を収縮させるときに多少痛くなることを聞いており、計測時はあまり
気にならず、不安はほんの少ししか感じなかったと話される。その一方で、実際には片方の脳だけに刺激
を与えたことが分かったので安心したが、ヘッドギアを最初つけた時には左脳と右脳の両方をやるのであ
れば機能が異なるのでヤバイと思ったと話される。実験そのものはイメージしていたものと違っており、左
脳と右脳の両方を行っていたら怖い感じがしていたかもしれないが、自分がイメージしていたものと現実と
をすりあわすことができて安心したとも話される。実際に体験してみて、両方の脳にアプローチするのは、
そのやり方も含めて危険なことではないかという感じがし、慎重に時間をかけてやっていくものだなあと感
じた。また、身をもって体験してみて理解することは大事であったと思うとも話される。脳科学研究の社会
的意義については、脳科学研究は社会と共有できている部分が少なく社会にとって馴染みがないため、
社会全体がどのように認知しているかを踏まえて、共有している形で広がりを持っていくことが重要になる
のではないかと話される。
<2回目実験前>
脳科学研究の社会的意義についてどう思うか尋ねられ、研究者側の発想で研究のためにやっている
というところと、困っている人のために役立てるために脳を解明するというのは重なっていることがあり、そ
の二つとも社会的な意義はあると思うと話される。今日の実験については、前回の経験で様子が分かって
いるため不安は殆ど無く、前回に眠くなったため実験がうまくできるかだけが不安であると話す。
<2回目実験後>
今回もかなり眠くなったのと、ちょっと痛いところがあったため不安というかちょっとイラッとした。段階的に
強度が増していることで、かなり痛かったのが徐々に増していって、自分では嫌だなと思い、嫌ですと言っ
たところ、やめてくれた。しかし、そこで「これはもうやめますって感じだったので、それからなんとなく不信
感が強くなった気がします」とそこでのやり取りでやや不信感が高まったことを語る。その後の課題は前回
も行った課題だったのでそれほど痛くはなかったが、今回は痛みを感じた課題の後でやったので、大丈
夫だろうかと気になった。痛みは実験後の面接中まで持続しており、変な違和感が残っていると話される。
前回の体験からある程度構えができていたが、異なる課題で痛みがひどかったことで驚き、痛みが非常
に気になった。ある程度許容できる痛みであれば耐性がついてくるが、今回はそれを越えており、危険な
感じがした。その痛みと違和感を「骨が割れるんじゃないか」、「ぐっと入り込んでくるんじゃないかという感
じ」、「太陽に焼かれたというか、ヒリヒリし、重い感じ」と形容する。異なる課題であるとの説明は先に受け
ており、面白そうだとは思って最初は落ち着いてやっていたが、痛みがきてからは完全にふてくされてい
たとも話される。一方で、その課題で最後まで協力できなかったことが残念でもあり、他の痛みを感じない
人であれば協力できたのではないかなどと考えた。前回の実験では頭に磁気を通すことで手が動くという
ので、データに基づいてやっている感じだったが、今回は実験中に実験担当者に足が動いていると言わ
れたが、実感として動いている感じがなく、なによりも痛みがひどかった。今回の実験を経験してみて、研
究段階であるとは思うが、痛みがあったりする場合には倫理というところもきちんとしないといけないのでは
ないかと思った。
63
<実験体験1ヵ月後>
実験に参加した人や参加しなかった人などにどのような体験だったか尋ねられこたえたところ、
様々な反応があった(「脳細胞が死んでいるのでは」、「私だったら絶対やらない」等)。事実関係はどうで
も良いが、自分が知っていて体験するのと知らないで体験するのでは違うということを実験が終わって一
番考えた。自分は興味本位で参加し、筋肉の収縮で痛みが起こるとは事前に説明があったが、自分なり
の準備があった方が実験に参加するにしてももう少し主体的にのぞめたのではないかと思うと話され、な
によりも脳細胞が死んでいるのではないかといろいろ気になって考えることが多かったと話される。脳に対
して詳しく知らないで実験を受けるということがこういう気持ちにさせるということを考えた。1回目の時は、
きちんと説明をしてくれ、実際に受けてみて安心した部分があったが、2回目はわりと構えずに行ったとこ
ろで痛みがあったため逆に構えてしまった。お医者さんの世界は自分が知らない世界で少し怖さがあると
同時に、お医者さんは自分の気持ちを介してというよりも身体的な反応を介してのやり取りが強い印象を
受け、そこでのやり取りによってややもすると不信感へ繋がると話される。その話の関連で、医師と患者と
の信頼関係に関する自身の体験話をされ、医師とのコミュニケーションのあり方から生じる不信感や不安
についてかなり饒舌に話される。全体として、自分自身が何も知識を知らないで実験を受けたが、実験で
生じる身体の変化は変わらないにしても、知っていたほうがこれは駄目だろうときちんと言えると思うと、主
体性や能動性を持つことができるだろうと話される。また、効果がきちんと説明できるところに脳科学研究
の意義があるのではないか、それは様々な過程のなかで更新されていくものではあると思うが、ある程度
使えるところまでいったときに、こういうことがあって、こうなんですときちんと説明できることが重要ではない
かと思う。最後に、フィードバックとして最終的な研究結果の報告をきちんと受け取るとおさまりがつくと思
うと話される。
質問紙検査とインタビュー結果からの考察
先に示した質問紙検査とインタビュー内容の結果からは、特性不安が高い被験者は脳計測実験の体験
によって状態不安が変動しやすいことを明らかにした。また、これらの変化は、単に特性不安が高いこと
だけに帰結されるのではなく、他の性格特性(社会的内向性やパラノイア傾向)が実験担当者や実験協
力依頼者との関係性やそこでのやり取りを通して不安を高めたり、低下させたりしやすいことを示唆したと
言える。
本調査では、特に実験前後の状態不安の変動に注目したが、この尺度は、その時に感じた不安全般に
ついて質問紙法を通して把握したものであり、実際には脳計測実験そのものや課題への苦痛や疲労、そ
して、実験前後や実験中を通しての実験関与者との対人関係による不安など、かなり広範囲な心理的不
安を全て包括していると言える。したがって、被験者がそれを意識しているかどうかに関わらず、状態不安
の増減は、脳計測実験そのものへの不安とそれ以外の不安とが混在していることは明らかである。逆の視
点から言えば、状態不安得点に顕在化される不安は、あくまで実験に纏わる全ての要因によって生じて
いる不安と換言することができる。
Cさんの場合は、実験参加動機において既に実験参加依頼者との関係性(大学教員と大学院生という)
が暗黙のうちに影響しており、脳計測実験という未知の体験についてリスクを感じるものの、協力できるこ
とがあるのであれば是非参加したいという意思を優先して実験へ参加している。また、実験開始前の実験
者とのやり取りで疑問や不安が既に高まったことがインタビューから推察できる。そして、初めての実験を
64
経験するなかで、自分では予期していなかったほどの痛みを感じ、実験に参加したことをやや後悔した感
じを実験後のインタビューで答えている。状態不安得点は実験前後で 4 点ほど増加しており、2 回目の実
験があると思うと憂鬱であると答えている。実際、2 回目の実験前には「注射の前みたいな感じ」と答えて
いるように、前回の経験を踏まえてその不安や恐怖が高まっていることが伺え、状態不安得点においても
54 点と変動の中で最も高い得点を示している。2 回目の実験後には状態不安得点が 42 点と低下してい
るが、これらの変化は次に同様の実験をしなくても良いという安堵感も影響している可能性があると言える
だろう。実験体験 1 ヵ月後のインタビューからは、実験者と被験者との関係性や被験者の反応における個
別性をもっと尊重して欲しいと述べており、今回の脳計測実験の体験によってこれらに対する配慮が少な
いと感じる者も存在することを示している。この事例からは、仮に同意書にサインを行ったとしても、心理的
な不安が解消している訳ではなく、場合によっては実験状況における実験者との関係性によって不安が
高まりうることを明らかにしたと言える。
一方、Dさんの場合は、実験前のインタビューでは「それほど不安はないが・・・」と話されているが、状態
不安の得点では 49 点とやや高値を示しており、言語的コミュニケーションで語られる心理的状態を文字
通り受け取ることには注意が必要であることが明らかである。多くの脳科学実験研究では、本実験のように
状態不安尺度などの心理検査は実施しないと思われるが、言葉だけでは表現されない心理的状態をあ
る程度把握し、その不安を少しでも解消するためには、本実験のような心理検査の実施がそのツールとし
て重要となることが考えられる。Dさんの1回目の実験体験はどうかというと、実験前の説明によって不安
は多少低下しており、更に実験体験で自分がイメージしていた脳科学研究と実際の実験とをすりあわせ
る事ができ、49 点から 44 点へと大幅に状態不安が減少している。2回目の実験前は、前回の体験から今
回の実験のイメージや予測がある程度立てられることから不安が少ないことが語られ、実際に 47 点と 1 回
目の実験前よりも低い状態不安得点を示していた。ところが、2 回目の実験内容は痛みが伴う課題であっ
たことで一気に不信感や不安が高まっている。また、その痛みが自分の許容範囲をはるかに超えており、
実験後の状態不安得点は 60 点と非常に高い得点へと変化している。更に、この予測を超えた実験体験
の心理的影響は実験後もある程度持続していたことが、その1ヵ月後のインタビューからも明らかとなった
と言える。
これらの両方の被験者に共通しているのは、未知の体験を行う際に、予期できないことへの不安が内在
していることと、それらが実験に関与している様々な対象との関係性によって変動しやすいこと、そして、
脳計測実験の課題内容や実体験と自分が予測していた実験イメージとの一致度のズレが許容範囲を超
えると不安が高まることにあると言える。本実験は、実際の臨床群や患者ではないことから、既存の知識
や経験が皆無に近く、更に実験参加動機も様々である。ある程度の知識や経験があり、更にその実験に
参加することが自らの治療の進展に将来的に寄与することを願って実験に参加する患者とは明らかに異
なる被験者層であることは間違いないと言える。しかしながら、その一方で基礎的研究を推し進めていく
ためには、臨床群のみならず、いわゆる健常群と言われる一般成人を対象とした基礎的実験が必要不可
欠であろう。その点を踏まえると、本調査の被験者が感じた様々な心理的状態や不安の高まりは、一般成
人被験者層にも十分生じうるものであり、基礎的研究の被験者の生じうるこれらの心理状態を明らかにし
たという点で重要なデータと言えるであろう。
今後の課題として、実験開始前のインフォームドコンセントや同意書サイン時の被験者を尊重するという
側面だけではなく、実験前後における関係性とそれに纏わる被験者の不安の高まりをどのように配慮して
いくかが重要と考えられる。また、本調査で用いたような様々な心理検査やインタビューを、個々人が実
65
際に感じている不安や内面の変化を配慮するためのツールとして用いることも重要となるであろう。通常
のインフォームドコンセントは言語的な説明とそれに基づく同意書のサインを通して行われる。しかしなが
ら、本調査で明らかなように、それらの手続きを行った被験者でも実際にはかなりの不安を感じていたり、
実験中に不安が高まる者もいることは確かである。実験者との言葉だけでのやり取りでは表現しつくされ
ない様々な心理的状態や質的な変化を把握し、被験者の個別性を尊重した対応をいかに行っていくか
が、先端的脳科学研究の倫理的問題を考えるうえで今後重要となってくるのではないかと思われる。
以上、質問紙法とインタビュー内容をもとに考察してきたが、いずれも被験者の意識的状態の量的・質的
変化を捉えることに主眼をおいており、無意識的な内的変化についてまでは言及することができないとい
う限界がある。バウムテストは、無意識的な側面を含む内的な自己イメージの変化なども捉えられる有用
なツールであり、状態不安得点と言語的インタビューとの突合せだけからは見えてこない個々の内的自
己像への影響については次の結果と考察Ⅱで論じる。
2.2.1.4 結果と考察Ⅱ~バウムテストとインタビューの結果から~
バウムテストに基づく検討
バウムテストは、人格面を測る投影描画法として最も広く用いられているテストのひとつである。今回得ら
れたデータの中で、バウムの変化に際立った特徴を示した 2 名(B、H)について、以下で詳細にみてゆく。
この 2 名は、先述の STAI における特性不安段階ではⅡ(低い)~Ⅲ(普通)に該当し、また状態不安の変
動においても不安の維持あるいは漸減が認められた。MMPI の結果からも、特に目立った特徴を共有し
ているわけではない。この 2 名のバウムの変化を、図5に示す。
66
1回目の実験前
1 回目の実験後
2回目の実験前
2回目の実験後
図5-1 B さんのバウムの変化
67
1回目の実験前
1回目の実験後
2回目の実験前
2回目の実験後
図5-2 H さんのバウムの変化
以上の変化は、同一人物のしかも短期間(数時間~1 ヶ月の範囲内)でのバウムの変化としては通常、
68
考えられないほど大きなものである。
2 人のバウムにおける変化は、特に樹幹部の形態変化として大きくあらわれている。その他にも、枝や幹
においても多少の変化は認められるが、樹幹部の変化に比べればさほど大きなものとは言えず、かつ被
験者間で一定の方向性を示すものではない。しかし全体的印象から言えることは、エネルギーの低下で
ある。いずれの被験者のバウムでも、サイズが小さくなる、遠景化、陰影の出現といった特徴が認められ、
描かれた樹木そのもののエネルギーは低下していることが窺える。
描画上にみられた以上の変化は比較的短時間のものであるため、逆にこの変化が今後どの程度の影響
を及ぼし続けるのかについては、更なる検討を要するところである。とはいえ今回、2 回の脳計測体験を
することでこれ程までにバウムが変化する事例が認められたことは、脳計測体験が個人の心理状況に及
ぼす影響の一端を垣間見せるものであろう。また、この 2 名が質問紙検査においては特に目立った特徴
を示す被験者ではないことも考え併せると、この体験の影響は質問紙検査で測れる意識的レベルのみな
らず、意識的には自覚されにくいレベルにも及んでいた可能性も考えられる。
インタビュー内容に基づく質的検討
次に、以上のバウムテストの結果を各被験者のインタビュー内容とつきあわせて質的に検討してゆくため、
臨床心理士によるインタビュー内容の逐語記録をもとにこの 2 名が脳計測実験をどのように体験していた
かについての概要を下記に示した。
1)B さんのインタビュー内容概要
<1 回目の実験前>
脳科学研究については何も知らないが、興味はあり、楽しそうやなと思って参加した。脳科学研究に対し
ても、頭に線をいっぱい繋いだイメージで、自分もあれを1回やってみたいと思ったくらいで、あまりどうこう
は考えていない。研究の社会的意義も、研究が進んでよりよい暮らしが出来れば、くらい。脳の病気の回
復に繋がれば。それと、脳の使ってない部分を使えたらどうなるのか。人間の未知の部分に入っていくと、
それで開けてくる部分があるのではないか、と考えると楽しい。Bさん自身、未知の領域に行くのが好き、
とのこと。
<1 回目の実験後>
もっと線とか繋がれると思っていたので、腕だけだったのでちょっとがっかり。手がピクピク動いたのは、考
えていた以外の経験ができて面白かった。身体は自然に動くものと思っていたので、動かされる感じが面
白かった。脳科学研究に対しては、知識も無いからどうこう言えず、研究する人が役立ててくれればいい、
頑張ってください、という感じ。これで何がわかるのか、実験が何に繋がるのかは楽しみなので、わかりや
すいようにフィードバックしてくれたら嬉しいな、と。全く壁の向こうで行われてるのは少し不安になるので、
少し見える程度のフィードバックがあれば。壁を越えてどっぷり関与する気は無いが。1回目が終わった
気分を尋ねられ、「明日も今日と同じことならつまらんなー、展開が見えてくると面白くないなぁ」、「参加し
てるていうのと参加させられてるっていう変化に変わった」と話される。
<2回目の実験前>
69
脳科学研究やその社会的意義については、特に前回と変わりない。計測前の気分を尋ねられ、「前回
と同じなら面白くないなぁという不安と、また新奇なことなら嬉しいなぁという期待が入り混じった気持ち」と
話す。
<2回目の実験後>
脳科学研究に対しては、特に変わりない。「こんな短時間ではちょっとかわらないですね」と。
<実験体験1ヶ月後>
1 ヶ月経ってBさんの中で大きく残っていたのは、1回目のインタビューの仕方への不満であった。自分
が話すというより、話させられてるという感じであった。自分も今後面接をするかもしれない立場なので、今
後に活かしたい。
脳科学研究については、その後、茂木さんの本を読んだが、「へぇ、今流行りなのかなぁ」くらいの感じで
ある、と話された。
2)Hさんのインタビュー内容概要
<1回目の実験前>
脳科学研究については特に知っていることはないが、「治療には、そういう研究は大切なことだと思う」と
述べる。また研究の社会的意義に関して、治療に役立てる意味ではすごく意味のあることだと思うが、「あ
まり明らかにされなくてもいい部分もあるような気もする」とも。
体験前の気分を尋ねられ、「こわい」、「自分でも見たことも触れたこともないところに何か手を加えられる
こわさ」、「安全なのかなっていう不安」と述べている。
<1 回目の実験後>
始まってみたら思ったより不安感はなかったが、終わった今は、今後生活する上で何か変化が起きてく
るのでは、という不安に変わった、と話す。自分にどんな変化が起きたのかが見えないことに、何か説明が
欲しい気持ちや、自分が「流され」、「されるがまま」にされる感じを体験している。被検者だけれども始め
には持てていた積極性が、どんどん受身になっていった、とも。また、脳を身体の一部としてそれほど重く
考えてはいなかったが、実際受けてみると他の部分との違い、抵抗感の強さ、自分の思考や感情への影
響が気になり始めた様子である。
H さんは、今回の体験から患者さんたちの体験を連想し、改めて脳科学研究は大事だと感じている。そ
の一方で、治療の役に立つのであれば(研究の)意味はあると思うが、一般人にはあまり解明されなくても
いいのかもしれないとの感想も述べている。
<2回目の実験前>
脳科学研究に関する知識、社会的意義については前回と変わりないが、研究に対してあまりよいイメー
ジを持たなくなった、と話す。治療に活かせるのはよいことだと思うが、脳は誰のものなのか、凄く大切な
部分を操作される、いじられる、中を刺激されることへの抵抗を、言葉になり難い様子ではあるが語ってい
る。
70
<2回目の実験後>
眠くなったこともあり、前回より緊張せずに受けられた。
脳科学研究への意識に特に変わりは無いと話すが、全体に「頭がボーっとして」いる様子が強く窺える。
<実験体験1ヶ月後>
特に計測体験を思い出して振り返ることはなかったが、パチッパチッという頭への刺激の感覚は残って
おり、「こわい」と語る。自分の足を普段は自分で動かすのだが、動かされるという体験が「自分の行動をコ
ントロールされてる感じが、怖いというか嫌な感じというか」。
被験者になった体験は、普段踏み込めない部分に触れられている感じなので、何のために必要な研究
なのかが明確になっていないと。だから、研究が進めば良いというよりも、倫理的なことが大切と感じた、と
話された。脳科学研究は「必要とされている研究というイメージ」と述べると共に、「科学でない部分」も置き
去りにされないように進んでいけばいいと感じた、と述べている。
バウムテストとインタビュー結果からの考察
2例という少ない事例から何らかの明確な結論を導き出すことは難しく、慎重な考察が要されるところであ
るが、先述のように図5でのバウムの変化は、同一人物のしかも短期間でのバウムの変化としては、通常、
考えられないほど大きなものである。バウムテストで描かれた木は「主に被験者が自分自身の姿として、無
意識のうちに感じているものを示し、被験者の基本的な自己像を表すことが多い」(高橋・高橋、1986)とさ
れ、従って、ある程度安定した自己像を持つ個人においてバウム表現が大きく変化することは稀であり、
逆にそのような変化が生じた場合には、自己像に何らかの影響を及ぼすような大きな内的変化が生じて
いるサインとみなされることも多い。
今回、特に大きな変化が認められた樹幹部は、通常、被験者のもっとも現在に近い、かつ意識されている
姿を投影される部分として、①目標、理想、興味などとそれに関する自尊心や自己評価、②内的衝動や
感情を統制する理性や精神生活(空想生活)、③家族、友人、社会などの人間関係への意識的な態度な
どを象徴することが多い(高橋・高橋、1986)とされる。また樹木を人体になぞらえてとらえてみると、樹幹
部は頭部にあたる。短時間ではあるものの頭部に対して新奇な刺激が加えられた体験の心理的影響が、
このような変化に現れているかもしれない。
以上の結果から先ず明らになるのは、言語的コミュニケーションのレベルでは勿論、質問紙法による心理
検査レベルでもさほど大きな不安を示さない被験者において、無意識的なレベルで大きな変化が生じて
いる場合がある、ということであろう。これは逆に、より無意識的なレベルでの影響を受けてしまっている被
験者であるがゆえに、言語レベルでそれを表現することが難しかったと言うこともできる。今回取り上げた
B さん、H さんともに、インタビューでの語りはさほど多くなく、先に結果と考察Ⅰで取り上げた C さん、D さ
んの饒舌さとは対照的である。
更に、細部の多様な変化の方向性を総括した全体的印象からいえることは、描かれた樹木そのもののエ
ネルギーの低下である。個別にみてゆくと、先ず B さんのバウムは、1 回目の実験の前後で大きく遠景化
しており、樹幹部にやや曖昧でフワフワした描線が出現している。インタビュー内容からは、実験前、独自
の研究イメージに基づくかなり高い期待を持って臨み、実際の体験と自分のイメージのズレを体験するこ
とで研究に対する自分のスタンスが客観化され意識されている様子がうかがえる。2 回目の実験には「前
回と同じなら面白くないなぁという不安と、また新奇なことなら嬉しいなぁという期待が入り混じった気持ち」
71
で臨んでいるが、バウムには、1回目実験後と基本は同様ながら不安や抑うつ感情を示すサイン(樹幹部
が黒く塗られる)が生じている。そして実験後のインタビューでは、脳科学研究への意識や体験をふまえ
ての感想等に「特に変わりない」、「こんな短時間ではちょっとかわらない」と述べる一方、バウムは更に陰
影表現が強まり、幹からは枝や実が消え、用紙下端から描き始められるといった表現の縮小が目立った。
1ヶ月後のインタビューで B さんが主に述べたことは、インタビュアーについてのコメントであり、脳科学研
究については特に大きな言及は無く、その後著名な脳科学者の著作を読み「へぇ、今流行なのか」くらい
に感じた、とのことであった。
また H さんのバウムでも、1回目の実験前には1本であった樹が実験後には2本になるという、大きな変化
がみられた。実験前は単線であった樹幹部の描線が、実験後には切れ切れの破線になる等の変化もあり、
全体としての統合性は大きく低下している。H さんは実験前のインタビューで、脳科学研究の意義の大き
さは認識しつつも、体験に対しては「こわい」と述べていたが、実験後には「始まってみたら思ったより不安
感はなかった」が、「終わった今は、今後生活する上で何か変化が起きてくるのでは、という不安に変わっ
た」と述べている。2回目の実験には「研究に対してあまりよいイメージを持たなくなった」と語り、1 回目の
実験前に描いたバウムを基本形としながらも、やや緊張感や表現の硬さが増したバウムを描いている。2
回目の実験後は、眠くなったこともあり緊張しなかったこと、「頭がボーッとしている」ことが主となり、あまり
多くを語ることは無かった。その言葉に呼応するかのように、バウムは著しく遠景化し、樹幹と幹、枝振りと
の繋がりも不明瞭になっている。1ヶ月後のインタビューでは「パチパチッという頭への刺激の感覚は残っ
ており、こわい」、自分の身体を動かされる体験が「自分の行動をコントロールされてる感じが、怖いという
か嫌というか」と述べている。
以上のことから考えられるのは、バウム表現でのエネルギー低下が示す、人格全般の、おそらくは一時的
なエネルギーの低下である。このことは、具体的には、「身体は自然に動くものと思っていたので、動かさ
れる感じが面白かった」(B さん1回目)、「自分が“流され”、“されるがまま”にされる感じ」、「被験者だけ
れども始めは持てていた積極性が、どんどん受身になっていった」(H さん1回目)、「自分の行動をコント
ロールされてる感じが、怖いというか嫌な感じというか」(H さん1ヶ月後)等の報告に示されるように、「受動
性」という形で意識化され、言語化されている。計測体験をする中で、自らの主体性が低下して受け身な
存在になってゆく。そのこと自体を「面白い」と捉えるか「怖い」、「嫌だ」と感じるかは被験者によって異な
るものの、自分の「脳」を「被験者」として提供することで、次第に自分自身のコントロールが自分以外のと
ころに委ねられ、自らは受動的になってゆくという主観的体験が生じていたものと思われる。
しかしながらこのような体験のあり方は、計測場面で実際には被験者達が、与えられた課題の遂行に意識
的に集中していたことを考え併せると、些か奇妙な印象を与えるものである。意識的には課題に集中して
取り組む体験をし続けながら、やや無意識的なレベルでは徐々に受動的になっていく自分を体験してお
り、おそらく一時的な人格エネルギーの低下状態が作り出されていた可能性が考えられるのである。この
ような、異なる意識状態の並存が被験者に生じていたとすれば、それは一時的にせよ、一種の意識解離
が生じていたとみることも可能であろう。そしてそのような視点から再度データを検討してみると、B さんの
バウムが実験 2 回目終了までに不安・抑うつ感の高進とエネルギー水準の低下を来たしながらも言語レ
ベルでは「特に変わりない」と述べた後、1ヶ月後のインタビューではインタビュアーに攻撃の矛先が向い
ていた点には、解離した意識状態への防衛あるはそれを解消する方策として、ダイレクトな相手ではない
攻撃を向けやすいところに不安・不満が向けられた可能性が考えられる。また H さんが2回目の実験後に
「頭がボーッとして」いて多くを語らず、バウムは著しく遠景化している反応も、1回目の体験が無意識レベ
72
ルであまりに強烈だったため、2回目では無意識的防衛が働き、体験を“遠ざけた”とみることもできるだろ
う。
以上に述べた変化は比較的短時間に生じたものであり、ある程度の時間を置くことで再び、被験者毎の
ある程度安定した自己イメージを表すバウム表現に戻ってゆく可能性は高いと予測される。今回、調査デ
ザインの不備で脳計測から1ヶ月後のインタビュー時にバウムを施行していないため、これを実証的に確
かめることはできなかった。この点は今後の課題であるとしても、今回、2 回の脳計測体験をすることでこ
れ程までにバウムが変化する事例が認められたことは、脳計測体験が個人の心理状況に及ぼす影響の
大きさ・深さの一端を垣間見せるものと考えられよう。
2.2.1.5 まとめ
本調査では、先端的脳科学実験を体験した被験者が、その体験によってどのような心理的影響を受けて
いるかについて、複数の心理検査とインタビュー内容をもとに質的に検討していくことが主目的であった。
したがって以上に述べた結果と考察は、あくまでその一般化を意図するものではなく、むしろ、個別性に
重点をおきつつ、脳計測実験を体験することで生じる個々人の心理的影響の多様性や可能性を提言す
ることに主眼をおいている。
今回の結果と考察の要点を、以下にまとめる。
1)従来の脳科学研究においてもインフォームドコンセントや同意書の手続きをとることは重視されてきた
が、今回の言語的インタビューと心理検査の結果から、インフォームドコンセントや同意書という手続き的
なものでは解消されていない様々な心理状態が明らかになった。したがって、これらの不安や内面の変
化を把握し配慮するためのツールとして、心理検査やインタビューは有用であると考えられる。
その際、主に意識的な心理状態を拾い上げる質問紙検査では、実験に纏わる意識的不安を広く包括し
て捉えることが可能であるが、無意識的な自己イメージの変化などは捉えきれない。意識的不安はそれ
ほど高くなくても自己イメージにかなり大きな影響を受けている事例も今回認められ、それらの無意識的
影響を検討する上では、何らかの投影法検査(今回はバウムテストを使用)が有効である。
2)脳科学の今後の進展において基礎的研究の推進は不可欠であり、一般の健康な被験者が対象となる
ことは避けられない。しかしそれらの被験者は臨床群や患者とは違って、基本的に知識や経験がないこと
が多く、参加動機やそこでの体験も様々である。したがって、個別性をいかに重視していくかが、倫理的
な面も含めて重要になる。
既存の知識や脳科学実験の体験がない者にとって、実験内容や状況をイメージできない未知の経験に
は初めからある程度の不安がつきまとう。その前提で実験に参加するということは、不安の程度は別にし
ても、少なくとも一度実験が開始されれば、実験課題に意識を集中することになり、実験そのものに対す
る不安や疑念については意識的に考えにくい状態に追いやられる。意識的努力は課題遂行に注がれ、
研究者もそちらに意識をとられる結果、被験者は、実際には不安が高かったり苦痛であっても一旦実験
が開始されると課題をやり遂げようとするため、実験に纏わる様々な気持ちを抑制しようとする。このような
心理機制によって不安は一時的に意識しにくくなるが、被験者本人が意識できないところで実際には大
きな変化を体験している場合も考えられる。
脳科学実験はそれ自体、一度開始されると受身的状況でそれを主体的に回避したり、中断しようというこ
とが心理的に難しくなるという構造を有している。また、脳科学研究者の関心は達成課題の成績と「脳」の
関係に必然的に集中されるが故に、「人」としての被験者に纏わるその他の部分への意識的配慮が、倫
73
理的配慮ということも含めて重要になるであろう。
参考文献(2.2.1)
高橋雅春・高橋依子 (1994) 「樹木画テスト」 文教書院
74
2.2.2 脳計測体験の臨床心理学的検討に関する研究Ⅱ
(追手門学院大学:馬場天信、京都文教大学:金山由美・濱野清志)
2.2.2.1 目的
非侵襲的脳機能計測体験に着目し、被験者がどのようにそれを感じとり、体験後の心理的生活の中に
その体験を位置づけていくか、アイデンティティーの感覚の変化はどのようなものか、そういった点を明ら
かにするための基礎資料を、被験者に対するインタビューを中心に収集・整理していく。具体的には、医
学研究および臨床上の有用性が確認され、安全性の上で重大な問題がないと考えられる、単発刺激、
連発刺激、低頻度反復刺激(1Hz 未満)の磁気刺激法(TMS)を用いた、高次脳機能の検討および治療
を目的とした応用研究の研究対象となる体験についての意識を、質的に検討する。
計測体験前後のインタビューと、一定の期間をおいてから再度のインタビューを行うことにより、日数を
経て、この体験が被験者の日常生活にどのような影響をもたらしているのか聞き取り、計測体験がどのよう
なものとして体験されていたかを明らかにする。
2.2.2.2 方法
「脳計測体験の臨床心理学的検討に関する研究Ⅰ」に準ずる
2.2.2.3 結果
2回の脳計測体験の前後と1ヶ月後のインタビューにおける9人の被検者のインタビュー内容概略を、質
問ごとに以下に示す。
<1回目の実験前のインタビュー結果>
インタビュー内容の概略を、表 1-1 に示す。
問1「脳科学研究について何をどれくらい知っているか?」への回答からは、殆どの被験者が特に知識
は無く、かろうじて「認知」、「MRI」、「脳波」、「脳に刺激をあたえて何かする、頭に色々つける」といったイ
メージを抱いていたことがうかがえる。
問2「脳科学研究についてどう思うか?」には、「人体に被害が無ければ」、「ちょっと怖い感じもするが」
といったコメントはつけられながらも、殆どの被験者がポジティブな回答をしている。
問3「脳科学研究の社会的意義についてどう思うか?」には、「わからない/思いつかない」が 2 名、「病
気の回復/よりよい暮らし」が5名、脳と心理面の繋がりが分かることを挙げた者が2名であった。
問4「今日の計測に対しての気持ちは?」では「楽しみ」が5名、後の影響への心配を述べた者が3名、
ここに至るまでの経緯も含めて強い疑問を述べた者が1名、であった。
75
表1-1
1 回目の実験前のインタビュー結果
問 1. 脳科学研究について何をどれくらい知っているか?
被験者
A
動物と比較する。認知心理学。
B
何も知らない。
C
知識は全く無し。実験担当者からの説明もわからないことだらけだったため、特に質問
をしなかった。
D
あまり知識はない。
E
認知・視覚からの情報が脳に影響。
F
殆ど何も知りません。
G
殆ど何も分かってないかもしれない。MRI とか脳波。
H
特に知っていることは無い。
I
脳に刺激をあたえて何かする。頭に色々つけるイメージ。最先端科学。
問 2. 脳科学研究についてどう思うか?
被験者
A
興味があるが人体に被害がなければよい。
B
興味はある。頭に線をいっぱい繋いだイメージ。
C
被験者が意図してコントロールできない反射のようなイメージがあり、自覚できないこと
が実験によって分かる点は、仮にそれが分かったとしても気にならない。
D
動物実験でやられていたことが人間でも結構できるようになっているようなイメージがあ
り、ちょっと怖い感じもするが、解明していけば臨床的、心理臨床的に考えるところは多
いと思う。現象学的な脳は客観的に捉えることはできないが、生物学的な脳についてわ
かることは重要。それらを研究できる人がいるのであれば大事なことだと思う。
E
心理的なものを考えるうえで、気質的な面で重要。
F
色々役に立つから、どんどん進めていって欲しい。
G
ぜひ進んで欲しいなっていう思いは大きい。凄い興味がある部分。
H
治療には、こういう研究は大切と思う。
I
身体の方からいろいろ刺激をあたえて、気持ちのほうに作用していくのか、身体の方か
ら考える研究
76
問 3. 脳科学研究の社会的意義についてどう思うか?
被験者
A
思いつかない。
B
研究が進んでよりよい暮らしが出来れば。脳の病気の回復に繋がれば。人間の未知の
部分に入っていくと、それで開けてくる部分があるのではないか。
C
そこまでちょっとわからない。
D
研究者のための研究になるのであれば意味はないと思うが、困っている人の役に立つ
のであれば良いのではないか。
E
医療面での必要性。
F
人類の幸福に貢献できるようなものの基礎研究、ということだと思う。
G
もし研究がうまくいったら、社会的にも意義があるのかな。脳の検査とかする人たちが、
検査して終わりじゃなくて、(患者さんが)どんな体験してるのかがわかって、患者さんに
とって役に立つなら。
H
治療に役立てる意味では凄く意味のあることだと思うが、あまり明らかにされなくてもい
い部分もあるような気もする。
I
どういう風に脳と心が繋がっているのかが分かっていく。精神科治療でお医者さんが気
持ちを理解するのに分かりやすい。数値を見比べることで予測ができるという意味で、
お医者さんも予測できるのかと。データ収集をすることで予測と理解ができる。
問 4. 今日の計測に対しての気持ちは?
被験者
A
どんなものか興味がある。不安はない。
B
楽しみ。
C
ひとつ凄い疑問だったのが・・・(と、今日の実験状況への不安を話し始める)。
D
あまり不安はないが、緊張している。痛みが生じないか、後に具合が悪くならないかが
気になる。
E
ちょっと緊張。楽しみ。怖いとかはない。
F
何が起きるのかと、わくわくした感じ。
G
信頼して来たけれども何か悪いことが自分に起きたらいけない、という不安というのは何
割かはある。楽しみな反面。
H
自分でも見たことも触れたこともないところに何か手を加えられる怖さ。安全なのかなっ
ていう不安。
I
どんなことをされるのか分からない楽しみ。
77
<1回目の実験後のインタビュー結果>
インタビュー内容の概略を、表 1-2 に示す。
表1-2
1回目の実験後のインタビュー結果
問 1. 計測体験に対しての感想は?
被験者
A
機械の画面の方が気になった。(検査者)が必死で何か探しているが、自分に何か問
題があるのかと不安と申し訳ないという感じと。自分の分からないことが話されているの
で、何それって聞きたくなる感じ。
B
もっと線とか繋がれると思っていたので、ちょっとがっかり。手がピクピク動いたのは、考
えていた以外の経験ができて面白かった。
C
皮膚に痛みがあり、痛みは感じないと思っていた予想と実際の実験とが異なっていた。
D
眠かった。実際に体験できて、脳科学研究は胡散臭いことでもないと思い、安心した。
E
疲れた。緊張はなくなった。
F
単調で、退屈した。何を計測しているのか、よくわからなかった。
G
最初は緊張。刺激でこっちがピクッて動いた時に、ホンマに繋がってるんやぁっていう、
何か変な感動があった。検査の全体的な流れが見えるまでは不安あったが、だんだん
慣れてきたら不安はなくなった。やっぱり最初は不安で来て、でもその不安が解ける方
向に(実験体験が)行ったから「あぁ良い体験になった」って思ったけど、もうしそうでな
かったら、自分の関与なしにデータがとられたとか、物事進んでしまったとか、そういう
感じでより遠くなってしまうかな。
H
始まってみたら思ったより不安感はなかったが、終わった今は、今後生活する上で何か
変化が起きてくるのでは、と不安。自分が流され、されるがままにされる感じ。被験者だ
けれども始めには持てていた積極性が、どんどん受身になっていった。
I
脳みそが揺れる感じ。自分の身体だけど自分の身体じゃない感じ。一寸離れてみてい
るような感じ。離れた感じと動かされている感じ。
問1「計測体験に対しての感想は?」への回答は、当然のことではあるが、個々の実験状況と痛みの有
無といった個別要因によって違いが現れた。被験者にとって、事前に説明を受けているとはいえ実際どう
なるかは全く未知の状況に参加することへの緊張や不安は、実験状況が外的・内的にどのように推移し
ていくかによって大きく左右されている。殆どの被験者が様々なレベルで、各自の「予想」と「実際」の一致
感あるいは違和感を体験し、そこから体験後の感想が生み出されている。
78
問 2. 脳科学研究についてどう思うか? 体験による変化はあるか?
被験者
A
知りたいなぁというのは全体的に変わらない。実験に協力したら興味は持てるかなと。
B
知識もないからどうこう言えない。身体は自然に動くものと思っていたので、動かされる
感じが面白かった。
C
あんまり人には勧められない感じ。何を測られたのか、結果もどうなっているのかが分か
らないので、イメージが湧かない。
D
慎重に時間をかけてやってゆくものだなぁと感じた。
E
アルツハイマーなどの治療に役立つことでの嬉しさ。
F
この実験からだけだとわからないんで、特に変わりはない。
G
最初より身近に感じられた。安心感の面で、実際に体験してみて何事もなかったってい
う安心。脳科学研究という響きも最初凄い硬いイメージで、距離感とか親近感とかが変
わってきたり。
H
脳を身体の一部としてそれほど重く考えてはいなかったが、実際受けてみると他の部分
との違い、抵抗感の強さを感じる。自分の思考や感情への影響が気になってきた。
I
あんまり変化はない。脳の中の出来事を形のあるものに残すというのが不思議な感じが
した。生きているものを一回仮死状態にして、動きをとめて静止した状態で何かをみる
感じ。
問2「脳科学研究についてどう思うか? 体験による変化はあるか?」には、基本的に「変わらない」者
が4名、ポジティブに変化(「面白かった」、「慎重に行われている」、「最初より身近に」)した者3名、ネガ
ティブに変化(「あまり人には勧められない」、「抵抗感強まった」)した者 2 名であった。
79
問 3. 脳科学研究の社会的意義についてどう思うか? 体験による変化はあるか?
被験者
A
ただ、社会的意義と言われても何か分からない。実際に経験したらまた違うかんじにな
るかなと。
B
研究する人が役立ててくれたらいい、頑張ってください。実験が何に繋がるのかは楽し
みなので、わかりやすいようにフィードバックしてくれたら嬉しい。
C
被験者に少しでも役立つことがフィードバックされるのならこのような実験は意味がある
のかもしれないが、一般の被験者にそれを説明するのは難しいのではないか。
D
社会にとって馴染みが無いため、社会全体がどのように認知してるかを踏まえて、社会
と共有している形で広がっていくことが重要。
E
アルツハイマーのことで、実際にこういう実験とかを積み重ねていくのが、本当に役に
立つんだなっていうのを思っている。
F
(脳科学研究を)やってるという実感があればまた違うかもしれないが、やったっていう
感じもしないし意図も分からないから、何も変化はない。
G
最初、社会的意義って言ったら漠然として広くて、とにかく研究してもいいんじゃないか
なという感じだったが、実は凄い身近なことなんかなってなると、最初にうまくいって欲し
いと言ったのとは違って、ホントにうまくいって欲しいな、と。
H
患者さんたちの体験を思うと、改めて脳科学研究は大事だと感じた。でも、治療の役に
立つのであれば意味はあると思うが、一般人にはあまり解明されなくてもいいのかもし
れない。
I
見えないところを見える形に残して、それが社会的意義に繋がるのか。心理的にはい
ろいろあることが、あえて一つにまとめて、分かりやすくして他の人にみてもらうもの。
問3「脳科学研究の社会的意義についてどう思うか? 体験による変化はあるか?」には、変化の無い
者が3名、自分や社会との繋がりを意識している者が4名、何らかの役に立つのであれば意味はあるだろ
うが、一般人との繋がりの見出しにくさを感じた者が2名であった。
80
<2回目の実験前のインタビュー結果>
インタビュー内容の概略を、表2-1に示す。
表2-1
2回目の実験前のインタビュー結果
問 1. 脳科学研究について何をどれくらい知っているか?
被験者
A
変わらない。
B
特に前回と変わりない。
C
特に前回と変わりない。
D
特に前回と変わりない。
E
前回と変わりない。
F
前回と同じ。
G
特に前回と変わりない。細胞レベルの細かいことを調べておられるのかな。
H
特に前回と変わりない。
I
脳の中の構造がどういう風になっているのかっていうことを、科学的に考えていく研究な
のかな。
問1「脳科学研究について何をどれくらい知っているか?」に対して7名が「前回と変わらない」と答える
一方で、2 名が「細胞レベルの細かいことを調べておられるのかな」、「脳の構造がどういう風になっている
のかを、科学的に考えていく研究なのかな」と、今回の体験を踏まえての知見を述べている。
81
問 2. 脳科学研究についてどう思うか?
被験者
A
興味関心はある。
B
特に前回と変わりない。
C
脳について解明されていないことが多く、研究が進めばいいとは思う。
D
特に前回と変わりない。
E
色んな人間の営みに脳は凄く重要だと思うので、それを研究するのは凄く必要なこと。
F
将来色々なことに役立つ基礎研究になるだろうなと。(具体的には)今やってることがよ
く分からないんで、コメントの仕様がない。
G
前回みたいに構えたりすることはなくなった。自分が知らない分野で、何やってるかわ
からない恐ろしさはちょっと無くなって、緻密に細かい研究をしていく分野かなぁ、と。
H
前回と変わりない。
I
どういう風に役に立っているのかはよく分かっていないので、どういう風にみるのかなぁ
と思うところはある。分からない分、興味も。
問2「脳科学研究についてどう思うか?」には、「前回と変わりない」が4名、3名が「凄く必要なこと」、「研
究が進めばいいとは思う」、「色々なことに役立つ基礎研究」と述べ、2 名が実際に体験することで「構えた
りすることはなくなった」、「どう役に立っているのかよく分かっていないので、どういう風にみるのかなぁと思
う。その分、興味も」と述べた。
82
問 3. 脳科学研究の社会的意義についてどう思うか?
被験者
A
ちょっとわからない。
B
特に前回と変わりない。
C
実験をやった後に何が分かるのかがイメージできないので、こたえることができない。
D
研究者側の発想で研究のためにやっているというところと、困っている人のために役立
てるために脳を解明するというのは重なっていることがあり、その二つとも社会的な意義
はあると思う。
E
色んな脳の病気などに研究も必要だと思うので、そういう部分で社会に貢献できるのか
な。
F
脳科学研究って言葉だけだと広すぎて、何をやっているのかがよく分からない。でもき
っと社会的に何か貢献できることをやってるんだろうな。脳を扱うことは別の分野でもや
ってるので、脳科学研究もそれの延長でいいんじゃないか。
G
役に立つんだろうなぁ、っていう期待。病気の事とか仕組みが分かっていくんじゃない
かなぁっていう気は凄いしてきて。研究が凄い細かいなぁ、というのも思ったので。
H
前回と変わりない。
I
社会的意義があるんだろうけど、どういうものかはちょっとわからないなぁと思う。
問3「脳科学研究の社会的意義についてどう思うか?」に対して、「前回と変わりない」が 2 名、「わからな
い/こたえることができない」3名、何らかの意義を述べている者が4名であった。
83
問 4. 今日の計測に対しての気持ちは?
被験者
A
困難も無ければ、不安も無し。前と何が違うんやろ。
B
前回と同じなら面白くないなぁという不安と、また新奇なことなら嬉しいなぁという期待が
入り混じった気持ち。
C
早く終わって欲しい。ちょっと怖い、嫌な感じみたい、注射の前みたいな。
D
前回で様子がわかっているので不安は殆ど無い。
E
やることがわかっているので、緊張も不安も無い。
F
別に何ということはない。
G
(実験前の大事な仕事の記録を、実験前に済ませておこうとした自分を通して)やはり、
どんな影響あるかなと気にしている自分がいるからかなぁ、と。
H
研究に対して、あまりよいイメージを持たなくなった。治療に活かせるのはよいことだと
思うが、脳は誰のものなのか。
I
楽しみ。前回で、身体との繋がりの中でも脳の働きを見ることができるんだなというのが
分かったので、今回はどういうことをするんだろうと。
問4「今日の計測に対しての気持ちは?」には、基本的に「不安無し」が 4 名で、その主な理由は「やるこ
とがわかっているから」であった。何らかの「楽しみ」を感じていたのは2名、何某かネガティブな気持ちを
抱いていたのが3名であった。
84
<2回目の実験後のインタビュー結果>
インタビュー内容の概要を、表2-2に示す。
表2-2
2回目の実験後のインタビュー結果
問 1. 計測体験に対しての感想は?
被験者
A
やることがわかってるので安心はしてるし、前よりもちょっと眠たくなってしまった。
B
課題が変わったことで、疲れが残っているくらい。
C
痛みが強く、ひたすら我慢していた。”これはそんなに辛いことじゃないんじゃないか”と
暗示をかけていた。
D
痛いところがあったので不安というかちょっとイラッとした。前回である程度構えができて
いたが、異なる課題で痛みがひどかったことで驚き、非常に気になった。許容できる痛
みの範囲を越えており、危険な感じがした。
E
課題が分かってたぶん、楽に出来た。
F
終わりましたということで、まぁそれだけ。ちょっと痛いんですけど。
G
殆ど緊張もなく。逆に眠気とか。
H
眠くなったこともあり、前回より緊張せずに受けられた。
I
面白かった。
問1「計測体験に対しての感想は?」には、4名が「(前回で)分かっているので安心」、「眠くなった」と答
える反面、課題が変わったり痛みが生じたりと、1 回目からは予測できなかった変化を体験した3名は「疲
れ」、「不安・危険さ」を訴えたり「ひたすら我慢していた」と述べている。
85
問 2. 脳科学研究についてどう思うか? 体験による変化はあるか?
被験者
A
変なことやってるんじゃないかと思われそうだが、自分は興味があるから別に構わな
い。昔の研究とか何やってるんだと思うが、今はちゃんと配慮してやってるから、そうは
思わない。
B
特に変わりない。
C
この実験が何の意味があるのかが分からない。
D
研究段階ではあると思うが、痛みがあったりする場合には倫理というところもきちんしな
いといけないのではないかと思った。
E
特に変化は無い。
F
特に変わりない。
G
細かいことやるんやなぁと。地味にちょっとずつやっていく研究。機械がやるっていう恐
ろしさみたいなものがちょっとは無くなって、人がやってるんだなと。敷居の高さみたい
なところがちょっと低くなったイメージ。自分も検査の流れがわかると、受け身だけでな
く、自分からあぁ次はこれやなっていう気持ちになった。
H
特に変わりない。
I
面白かった。脳について意識することってなかったんで。脳の、身体の中での位置づけ
がちょっと変わってくるような体験。
問2「脳科学研究についてどう思うか? 体験による変化はあるか?」には、基本的に「変わりない」、「別
に構わない」が5名、ポジティブな回答が 2 名(「敷居の高さがちょっと低くなった」、「身体の中での脳の位
置づけが変わってくる体験」)、ネガティブに変化(「実験の意味が分からない」、「痛みがあったりする場合
は倫理もきちんとしないといけないのではないか」)した者2名であった。
1回目の実験後インタビューでポジティブに回答した3名のうち2名が、2回目も引き続きポジティブに答え
ているが、2回目で初めて痛みを感じた 1 名の被験者は、ネガティブな回答に変化している。
86
問 3. 脳科学研究の社会的意義についてどう思うか? 体験による変化はあるか?
被験者
A
ずっと考えてて。ちょっといじるだけで変わったりして、それで助かる人があるんならい
いんじゃないかなと。
B
特に変わりない。
C
科学者がやる意味はあると思うが、被験者側はどうなっているのかが全く分からない。
D
今日の体験で特に変わることは無い。医療に対して自分は一般人なので、どういう風に
貢献する?と聞かれてもわからない。
E
変わらない。
F
特にない。
G
参加したことで、色んな人が関わって凄いデータが積み重なって、初めて社会的意義
みたいなものが後からわかることなんだ、と。社会的意義の背景にいろんな人が関わる
んだというところで、社会的意義といっても、今ははっきりとはわからないかなぁという感
じに変わってきて。意義があるとわかったとしても、どういう経緯でそうなったかが気にな
る。
H
特に変わりない。
I
脳の標準化というか、基準がひとつできるというのと、そこから外れたものがどういう機能
をしているのかをみる事で、脳の機能の働きがみえてくるのかもしれない。それが重な
っていったら、人間の生物学的なありようも分かってくるというところ。脳科学っていうも
のが少しだけ近くなった。
問3「脳科学研究の社会的意義についてどう思うか? 体験による変化はあるか?」には、基本的に「変
わらない」が5名、明確に疑問を述べた者が1名(「被験者側はどうなっているのかが分からない」)であっ
た。あとの 3 名は基本的には容認しながらも、「今ははっきりとはわからないかなぁという感じに変わってき
て。意義があるとわかったとしても、どういう経緯でそうなったかが気になる」など、いずれも計測体験を重
ねる中でいろいろと考えさせられている様子が窺える回答であった。
87
<1ヶ月後のインタビュー内容>
インタビュー内容の概略を、表3に示す。
表3 実験体験から1ヶ月後のインタビュー結果
被験者
A
なんか具体的に、これはこういうのを調べてるとかがわからなくて。(検査の)先生が思ってい
た結果が出てたら、あぁこれだったらいいわ、みたいなことを言われたんで、何か操作されてる
のかなと後で考えてて。不思議っていうか何なんやろうっていう感じですか。脳科学っていうの
が、医療的なとこに関わっていくのかただ自分の興味本位っていう研究対象なのかがわから
ない。だから社会的意義、え?っとなってしまって。(研究している)その個人に意義はあるか
も知れないけど、知らなくていい人は知らなくていいんじゃないかなと。それを知って、全員に
社会的に役に立つことって殆どないと思うんで。医療も言うたら、困ってる人にしか別に意味
はないし。それでなんか凄い薬ができたとかって言われても、薬を使う人は限られてるし手に
できる人も少ないとかで、社会っていう風には捉えられないのじゃないかなって。
B
1回目のインタビューの仕方への不満。自分が話すというより、話させられてるという感じであ
った。自分も今後面接をするかもしれない立場なので、今後に活かしたい。脳科学研究につ
いては、その後、茂木さんの本を読んだが「へぇ、今流行なのかぁ」くらいの感じ。
C
検査者側は聞きたいことが沢山あるかもしれないが、それが前面に出すぎており、協力者の
側が聞きたいことや疑問などもしっかり聞いてほしい(と1回目の実験体験前のやり取りを持ち
出して話される)。検査者の説明から受けた感じ「引っ掛かられる感じ、えぐられてる感じ」、
「人を扱っているということを忘れないで欲しい」。実験中には、予めやめて欲しい場合にはそ
のように言うように言われてはいたが、「なんかもう少し耐えられるみたいな感じで・・・、後何回
耐えればデータになるんやと思うと、耐えたほうがいいかなと思ったり、人によったら痛くないと
言われると、私はなんか痛いんだけど・・・」と思った。実験が終了してから他の被験者と話す
中で、痛みの感じ方にだいぶ個人差があることが分かり、痛いと感じるのは自分の責任なのか
と思ったりした。このような実験を行うことの社会的意義については、「被験者に質問する内容
ではなく、研究者が考えるべきものではないか」。「その質問をされることそのものが、実験に
社会的意味があると思わされているような感じがし、押し付けられている印象を受ける」。研究
に参加してみて思うことについては、実験をするということは人によって心の痛みが伴う場合や
身体的な痛みを感じる人もいるはずであり、そういったことに対するケアの視点を医学や科学
の研究者は忘れているのではないか。なによりも研究に携わる人間として、実験や調査に協
力する人がどのような苦痛を味わう可能性があるかについては、逆の立場で一度経験してお
かないと分からないことだと思い、それが今回研究に協力して収穫だった。今回の実験や調
査で行った内容全ての意味や理由を知りたいと思っている。
88
D
実験に参加した人や参加しなかった人などにどのような体験だったか尋ねられこたえたところ
様々な反応があり(「脳細胞が死んでいるのでは」、「私だったら絶対やらない」等)、事実関係
はどうでも良いが、自分が知っていて体験するのと知らないで体験するのでは違うということを
実験が終わって一番考えた。自分は興味本位で参加し、筋肉の収縮で痛みが起こるとは事
前に説明があったが、自分なりの準備があった方が実験に参加するにしてももう少し主体的
にのぞめたのではないかと思う。なによりも、脳細胞が死んでいるのではないかといろいろ気
になって考えることが多かった。脳に対して詳しく知らないで実験を受けるということが、こうい
う気持ちにさせるということを考えた。1回目の時は、きちんと説明をしてくれ、実際に受けてみ
て安心した部分があったが、2回目はわりと構えずに行ったところで痛みがあったため逆に構
えてしまった。お医者さんの世界は自分が知らない世界で少し怖さがあると同時に、お医者さ
んは自分の気持ちを介してというよりも身体的な反応を介してのやり取りが強い印象を受け、
そこでのやり取りによってややもすると不信感へ繋がる。(その話の関連で、医師と患者との信
頼関係に関する自身の体験話。医師とのコミュニケーションのあり方から生じる不信感や不安
についてかなり饒舌に話される。)自分自身が何も知識を知らないで実験を受けたが、実験で
生じる身体の変化は変わらないにしても、知っていたほうがこれは駄目だろうときちんと言える
と思うと、主体性や能動性を持つことができるだろう。また、効果がきちんと説明できるところに
脳科学研究の意義があるのではないか、それは様々な過程のなかで更新されていくものでは
あると思うが、ある程度使えるところまでいったときに、こういうことがあって、こうなんですときち
んと説明できることが重要ではないかと思う。最後に、フィードバックとして最終的な研究結果
の報告をきちんと受け取るとおさまりがつくと思う。
E
特に思い出すことは無かった。脳科学研究のイメージや社会的意義にも特に変わりは無い。
ただ、今回の調査内容が脳研究とどういうつながりがあるのかな、と。
F
計測体験について思うことは、特にはない。脳科学研究についても、別にそこから勉強していない
ので変わらない。一生懸命やればそれなりの成果はあるんじゃないか。
社会的意義もそれなりに何かあるんじゃないか、具体的にはわからないが。計測体験への感想は
特にないが、同じ事ばかり聞かれて故意にイライラさせてるのかなって気がする。これ、フラストレー
ションテストですか? (体験に対しては)早く終わらないかなってことしか考えてなくて、気持ちの
部分はあまり動かないっていうことですかね。
89
G
2日後位に思い出したとき検査の意義、社会的意義っていうのがどんな感じかと考えてた。検査の
体験を、多分今からの研究に活かしていけるんだろうなと。今日久しぶりに検査のことを思い出す
と、やっぱり自分の生活の中では凄く特異な体験だったんだなぁと。だから2日後に検査のことを
思い出して色々考えてる時はまだ、自分の中では身近な体験として取り入れようと凄いしてたんだ
けど、でも今振り返ったらやっぱり自分の日常生活の中では特別な体験だったんだなぁって実感。
でも取り入れようとしなかったら、やっぱり自分と検査っていうのはちょっと遠いものやなって言う
か。検査の時期は、自分の体験としてはどんな感じなんだろうっていうのを積極的に感じたり、取り
入れようっていう感覚だった。検査を、受けさせられるんじゃなくて自分からやってるんだっていう
意識だったけど、その後しばらく経って今日位になると、いや、でもあれはやっぱりさせられてる体
験やったんだって言うか、自分の意思ではないところで脳とか手が反応するのは日常生活の中で
は考えられないことというか。自分の意思で体を動かしていると思いたいし、主体としての自分と生
理学的な人間としての自分ていうのが、2つ感じられたんかなぁ。自分の意思とは関係なく操作さ
れる人間みたいなところを、やっぱりそこで起こっていることを肯定的に取り入れたい自分というの
が起こるんやなぁと言うか。かと言って実験が自分にとって悪かったとかそういうのでもなく、でもや
っぱり実験受けてた時は、普段の自分とは違う感覚。
H
特に計測体験を思い出して振り返ることはなかったが、パチッパチッという頭への刺激の感覚は残
っており、こわい。自分の足を普段は自分で動かすのだが、動かされるという体験が「自分の行動
をコントロールされてる感じが、怖いというか嫌な感じというか」。被験者になった体験は、普段踏み
込めない部分に触れられている感じなので、何のために必要な研究なのかが明確になっていない
と。だから、研究が進めば良いというよりも倫理的なことが大切と感じた。脳科学研究は「必要とされ
ている研究というイメージ」と共に、「科学でない部分」も置き去りにされないように進んでいけばい
いと感じた。
I
実験は楽しかった。自分が思ってるのと実際に身体が動くのは、ちょっとタイムラグがあって。日常
生活では意識しないことを、実験ていう形で取り出してみてるんだなと。(以前、脳の働きに関する
公演で脳と感情の関係について聞き)昔なら心の内面の動きじゃないかと言われてたようなことも、
もしかしたら脳の働きとか、そういうことも言えるんじゃないかという事も分かってきたら、それはそれ
で面白い感じ。(ニュース等で自分で考えて行動するロボットの開発について聞き)ロボットを使っ
て出来ることも増えてくるというようなことで、社会的意義はあるのかなぁと思った。自分で体験した
から、距離が近くなったかもしれないのと、ロボットとか人工知能の事だとか、少し意識して考えられ
るようになった感じ。
90
2.2.2.4 考察
2回の脳計測体験前後と1ヶ月後のインタビューを通して、9人の被験者の体験を跡づけることを試みた。
その中で、当初から何らかの形で不安のサインを示していた被験者についての詳細な分析は、既に「脳
計測体験の臨床心理学的検討に関する研究Ⅰ」で述べているので、ここでは割愛する。
計測体験そのもの以前の要因(被験者のもともとの性格特性や、計測に至るまでの経緯や関係性の要
因)を別にすると、やはり、計測体験そのものに何らかの苦痛や違和感(具体的には痛みや計測中の検
査者の様子など)が生じた被験者において、ややネガティブな言述が多くなっている。これはある意味、
当然の結果とも言えよう。体験に対してのネガティブな感想は、脳科学研究に対する不安や疑念、そして
研究の社会的意義に対しても一般人がそれを知ったり理解することへの疑問や研究倫理への懸念に繋
がっている。総体的にみると、体験以前の何も知らない段階では、何も知らないが故に、殆どの被験者が
研究に対してポジティブあるいはニュートラルなイメージを抱いていたのが、実際に体験する中で何らか
の苦痛や違和感を感じた被験者においては、具体的な不安や疑念を抱くようになっていったプロセスが
見て取れる。
また興味深いのは、計測体験以前のイメージもよく、計測を通じて期待の持続や不安の軽減を体験した
被験者(G さん、I さん、D さん 1 回目まで)において、脳科学研究の被験者になること自体が研究への理
解を深めている(「面白かった」、「慎重に行われている」、「最初より身近に」、「凄く必要なこと」、「色々な
ことに役立つ基礎研究」)ことがうかがえた点である。先にも触れた「一般人にとっての脳科学研究の意
義」という視点からすれば、一般健常者が脳計測の被験者体験をすること自体に、脳科学研究に関する
教育や啓蒙といった役割・位置づけの可能性も見出せるかもしれない。
ただそのような場合においても、次のような内的体験が生じていたことは注目に値する。「(実験の)2日
後位に思い出したとき検査の社会的意義がどんな感じかと考えてた。検査の体験を、多分今からの研究
に活かしていけるんだろうなと。今日久しぶりに検査のことを思い出すと、やっぱり自分の生活の中では凄
く特異な体験だったんだなぁと。だから2日後に検査のことを思い出して色々考えてる時はまだ、自分の
中では身近な体験として取り入れようと凄いしてたんだけど、でも今振り返ったらやっぱり自分の日常生活
の中では特別な体験だったんだなぁって実感。検査を、受けさせられるんじゃなくて自分からやってるん
だっていう意識だったけど、その後しばらく経って今日位になると、いや、でもあれはやっぱりさせられてる
体験やったんだって言うか、自分の意思ではないところで脳とか手が反応するのは日常生活の中では考
えられないことというか。自分の意思で体を動かしていると思いたいし、主体としての自分と生理学的な人
間としての自分ていうのが、2つ感じられたんかなぁ。自分の意思とは関係なく操作される人間みたいなと
ころを、やっぱりそこで起こっていることを肯定的に取り入れたい自分というのが起こるんやなぁと言うか」
(G さん、1 ヶ月後)。従って、自分の意思ではないところで自分の身体をコントロールされる体験は、たとえ
それが短時間であっても相当な違和感と侵襲性を持っており、そうして影響された自らのアイデンティティ
ーを修復するための内的作業には、無論個人差はありながらも、かなり長い時間を要する可能性が示唆
されたといえよう。
その際、やはり鍵となるのは「主体性」あるいは「能動性-受動性」という視点である。先の G さんや D さ
ん(「自分自身が何も知識を知らないで実験を受けたが、実験で生じる身体の変化は変わらないにしても、
知っていたほうがこれは駄目だろうときちんと言えると思うと、主体性や能動性を持つことができるだろう」)
をはじめ、かなりの被験者がこのことを述べている。従って、先に「脳計測体験の臨床心理学的検討に関
する研究Ⅰ」で述べた「自分の『脳』を『被験者』として提供することで、次第に自分自身のコントロールが
91
自分以外のところに委ねられ、自らは受動的になってゆくという主観的体験」は、一部の特殊な場合に限
ったものではないことが示唆された。
2.2.2.5 まとめ
今回の結果から、脳計測体験が個人に及ぼす影響の特徴として、以下の点が明らかになった。
1)脳科学研究は一般健常者にとって未知の領域であるが故に、実際に体験する中で何らかの苦痛や違
和感を感じた場合は、研究そのものや研究の社会的意義に対しても不安や懸念を抱くようになりがちであ
る。
2)しかし、計測体験が総じて“よい体験”と感じられた場合には、、脳科学研究の被験者になること自体が
研究への理解を深めている。従って一般健常者が脳計測の被験者体験をすること自体に、脳科学研究
に関する教育や啓蒙といった役割・位置づけの可能性も見出せるかもしれない。
3) そのような場合においても、 自分の意思ではないところで自分の身体をコントロールされる体験はた
とえ短時間であっても相当な違和感と侵襲性を持っており、そうして影響された自らのアイデンティティー
を修復するための内的作業には、かなり長い時間を要する場合もあることが示唆された。
92
2.2.3 意識の先端的脳科学が宗教的意識にもたらす影響
(京都文教大学:永澤哲)
脳科学の発達とその言説の流布は、人間の自己理解を大きく変容させつつあるようにみえる。人間の認
知、感情、知性は、脳の機能であり、それをよい状態に保ち、変化しつづける社会に適応し、「有能」な存
在としてあることは、なかば義務として感じられている。そのために、「脳にいい」食べ物を食べたり、場合
によっては、薬を飲む。感情は、神経伝達物質の変化によるものであり、薬によって「再調整」することが
できる。悲しみは「うつ状態」とみなされ、薬によってそれをコントロールすることを、人は疑わなくなりつつ
あるようにみえる。
脳科学の発達にともなって生まれてきた、こうした人間理解を、ニコラス・ローズは、「神経化学的自己」
(neurochemical self)と呼び、かつて精神分析が、無意識、性的欲動、不安、家族といった用語で人間を理
解する時代をもたらしたのと同じように、現在の社会をおおっていることを指摘している。ローズによれば、
このような人間観の変化は、1990 年までに起こっているという。(注1)
本章では、このような脳科学的用語による人間理解が、宗教的意識に、どのような影響を及ぼすか、脳
神経神学(neurotheology)とその周辺を中心に見、それから、脳科学と宗教の対話の試みの例として、神
経科学者フランシスコ・ヴァレラとダライ・ラマによって創設された「精神と生命研究所」(Mind&Life
Institute)の活動について、述べることにしたい。
2.2.3.1 脳神経神学(1)―還元主義的アプローチ
宗教と脳の関連にはじめて注目したのは、宗教心理学者のウィリアム・ジェームズだった。1901 年から
1902 年にかけて行われたエディンバラ大学での講義の一回目は、「宗教と神経科学」と題されており、ジ
ェームズの思考の先駆性を示している。(注2)
ジェームズは、組織や教義ではなく、個人的経験としての宗教、「個々の人間が孤独の状態にあって、
いかなるものであれ神的な存在と考えられるものと自分が関係していることを悟る場合だけに生ずる感情、
行為、経験」としての宗教をあつかうと、宣言する。これらの意識状態経や経験は、突発的なもの、修練に
よるもの、薬物(亜酸化窒素、エーテル、クロロフォルム)によるもの、に分けられるが、身体、神経に基盤
を持っているとされる。ジェームズはもともと生理学を研究し、後に心理学に転じており、薬物の使用が意
識の変容をもたらす事実を知っていたことが、「宗教と脳」への関心の背後にあったと考えられる。
しかし、彼は、身体や脳の物質過程への還元主義的思考は不十分だとし、みずからの立場を「断片的
観念論」と呼んだ。意識状態の評価は、果実―すなわち宗教的意識状態そのもの―から行われるべきで
あり、意識状態の神経的ないし身体的基盤の解明だけでは、問題は解決しない。また、パラサイコロジカ
ルな現象について考えるとき、当時の科学は、理論的に不十分だと、彼は考えたのである。
宗教にかかわる人間の神経生物学的構造を解明しようとする 1970 年代のラフリンたちの例外的な試み
の後、宗教を脳科学的に理解しようとする言説は、1990 年代以降急速に出現した。これは、ローズのいう
「神経化学的自己」理解が、宗教にかかわる領域に浸透しつつあることを示していると考えられるが、すべ
て、一世紀前のジェームズを源泉としているのである。ここでは、それらを三つの大きな傾向に分けて、そ
れぞれの特徴を取り出すことにしよう。
最初は、宗教的意識を、脳の特定の部位や神経伝達物質の生産にかかわる遺伝子に還元する還元主
義的アプローチであり、アルパー、パーシンジャー、ハマーらに代表される。
93
2.2.3.1-1 アルパーの生物神学(bio-theolory)―「脳の内なる神の部位」
1996 年に出版されたアルパーの『脳の内なる神の部位』は、「人間の霊性と神の科学的解釈」と副題を
つけられており、宗教、霊性、神の存在を、生物学的に解釈する還元論―「生物神学」(bio-theology)―
の立場を明らかにしている。(注3)
アルパーの思考形成において、決定的な役割を果たしたのは、LSD を使った青年期の体験だった。精
神、霊性に関心を抱いたアルパーは、世界中のさまざまな宗教について学び、超越瞑想(transcendental
meditation)を実践していた。それに加えて、サイケデリックスを摂取したのだが、それは、彼にひどいバッ
ドトリップと重篤な副作用―人格の解離、離人症、不安をともなう深刻な抑うつ状態―をもたらしたのであ
る。その後、一年半にわたるモノアミンオキシターゼ抑制剤(MAOI)の投与によって、アルパーは、この状
態をようやく脱け出すことができたという。
この体験は、幼いころから教えられてきた、永続する魂、創造主といった彼の信念を、根底から揺さぶり、
科学への信仰に変えた。
「一年半の間に、わたしは、いわゆる「永遠の自己」が、二度、完全に変化する体験をした。、、、、意識
は、精神―不変かつ永遠で、物理的自然に影響されない―に包まれているはずだった。これが真実だと
すれば、わたしの意識経験の核となるものは、どうして、物質の摂取によって、いまや二回も、変化したの
だろう?、、、、、、わたしの意識的自己―不滅の魂とされるもの―が、化学物質の影響を受けるという事
実は、人間の意識は厳密に物理的な過程によって、完全に支配されている物理的な存在だと、わたしに
確信させた。、、、、、科学はわたしの命を救ってくれた。だが、神はそうではない。、、、、多くの人々が宗
教に抱くのと同じ信仰を、わたしは、科学に抱いたのである。、、、、科学は、人間の魂の難問を解いた。
人間の認知、感情、知覚の内容を、それが適切とみなすやり方で、ほとんどいかようにも操作できるような
化学的処方に到達できることを、すでに証明していたのである」(注4)
この信念にしたがって、宗教、霊性を神経生理学の用語で理解することが、『脳の内なる神の部位』の
主題だ。
アルパーによれば、旧石器時代の洞窟芸術以降、人類は、地域や文化の差異を超えたし共通の宗教
的な概念を抱いてきた、と考えられる。不滅の魂、葬儀、誕生や成年儀礼、聖職者、聖なる空間、聖像や
呪具、霊的・超越的・超自然的な力(神や守護者)への信仰。これらの宗教的概念や行為は、人類に普
遍的に見られるのであり、遺伝子にコード化され、脳の特定の部位から生まれるものと考えられる。それは、
プラナリアが光に向かって進み、猫がニャーと鳴き、蜂が六角形の巣穴を作るのと同じように、先天的に
配線されている(hard-wired)のである。
では、このような宗教的信念は、自然選択において、どのような生物学的な利点としてはたらいたのだろ
うか?フロイト、そしてエドワード・ウィルソンの社会生物学を参照しながら、アルパーは、不安の持つ進化
上の利点を重視する。不安は、痛み、死、捕食される状況から、動物を遠ざけることによって、生存の確率
を高める。だが、自己を意識し、未来を予測する人間の知性は、この不安と結合することによって、特有の
不利ないし機能不全をもたらすことになった。自己意識は、同時に、自己が無に帰すること、すなわち死
を意識させ、生存に向かう行為が、結局無意味に終わること、しかも、死はいつ訪れるか分からないという
認識を、人間に与える。ここから生まれる不可避の死に対する恐怖ないし不安は、自己破壊―同じ種同
士の殺し合い、自殺―など、人間に特有の認知、行動の不安定性、混乱を生むことになったのである。
94
アルパーによれば、高度の知性の発達を犠牲にすることなく、このような死の不安を克服する認知回路
を形成したグループが、進化上の利点を得て、生き延びた。それは、物質と異なる、永続する精神の領域
―不滅の魂―、そして、時間を越えて守ってくれる霊的な守護者―「神」―という観念を生むことによって
達成された。後者に祈ることは、ストレスや心理的トラウマなどによって十分に機能しない脳を、緊張から
解放することによって、認知上、さらに、身体の健康を増進することにつながる。こうして、人間は、言語、
音楽といった知的・情動的機能とともに、霊的・精神的認知とそれに対応する神経回路を持つようになり、
また、こうした霊的信仰と親和的な気質を生む遺伝子は、強化されることになった。神は外にあるのでは
ない。脳内の特定の部位から生み出される。そして、その背後には、「霊的遺伝子」(spiritual gene)がある、
とアルパーは述べる。
2.2.3.1-2 パーシンジャーと「神のヘルメット」―側頭葉と「神の脳内部位」
宗教的・霊的体験が、脳の特定の部位と関連するという考え方は、アルパーだけのものではない。霊的
なヴィジョン、神との合一、至福感といった神秘体験の要素は、てんかんの患者にも見られることが多く、
神秘体験や宗教性と精神疾患を結びつける議論は、以前から行われてきた。精神疾患の神経学的機序
が解明されるとともに、特に注目されてきたのは、側頭葉てんかん(ゲシュウィント症候群)である。(注5)
幻影肢などの研究で日本でも有名な神経内科医のラマチャンドランも、宗教性と側頭葉てんかんを結
びつけて論じている一人である。二人のてんかん患者を被験者に、指先の皮膚の電気伝導の変化を測
定した実験(EDR 実験)において、彼らは、他人の写真、エロティックなイメージ、性的な表現などには無
反応だったが、宗教的な用語やイメージには、強く反応したという。(注6)
このような、宗教や霊性にかかわる脳内部位は側頭葉であるとする考えにもとづき、「脳神経神学」
(neurotheology)を主導する代表の一人が、パーシンジャーである。
臨床心理学者であるパーシンジャーは、瞑想中、至福を体験している瞑想者の側頭葉から、小さな発
作をあらわす特異な脳波が発生していることに、強い印象を受けた。そして、1980 年代から、側頭葉が神
の経験にかかわる「神のモジュール」ないし「神の部位」であるという議論を展開してきたのである。
パーシンジャーによると、神の体験は、人間の側頭葉の構造形成をつうじて、生まれたものだとされる。
(注7)
人間的知性は、脳の体積の半分を占める前頭葉の発達とともに生まれた。前頭葉の発達によって、人
間は、衝動の抑制と未来予測の、大きく二つの能力を手に入れることになった。そのうち、未来を予測す
る能力は、人間に自己の死を自覚させることになった。
一方、この前頭葉の発達と並行して、側頭葉が独自の構造として形成された。記憶やイメージ体験の
門といえる海馬と、情動、気分の制御にかかわる扁桃核は、側頭葉の奥深くに移動し、前頭葉と側頭葉
の上部との結合によって、情動は、自己体験と入り混じることになった。
パーシンジャーによると、神体験は、この側頭葉の深部における異常な電気活動に由来すると考えら
れる。海馬の細胞は、脳の他の部分よりも大きい電気的不安定性を示し、刺激がなくなっても、長い時間
にわたって、反復して発火する。また、海馬と扁桃核は、シータ波(4~7 ヘルツ)における同期を示す脳
波を出しやすく、シータ波の出現は、海馬の機能の変化を示している。これらの脳波は、夢、創造的思考、
夜明け時にあらわれ、また、目を閉じ、何かの思考、祈り、マントラを繰り返し、ただ心地よい浮いているよ
うな感覚があるとき、生じているという。瞑想中、側頭葉の小さな発作を示す脳波が出るのは、宇宙的至福
の体験と対応している。
95
一方、側頭葉てんかんの場合、感覚(音、匂い、場面、強烈な感情)や意味感覚の変化、確信、自己と
の分離感、強制思考、強烈な恐怖、不安や苛立ち、抑うつ、逆に至福感、無限の可能性があるという感覚
といった体験が生じる。
この観点からすると、神の体験は、側頭葉てんかんとゆるやかに連続しており、正常範囲にある、側頭
葉のより組織化された活動パターンだと考えられる。個人的ストレス、愛する者の喪失、予期される死のデ
ィレンマは、神の体験の引き金となりうるが、さらに、サイケデリックな薬物の摂取、宗教儀礼も、同じ機能
をもつ。教会での祈りなど、定期的な儀礼によって、この回路は、特定の電気活動を学習すると考えられ
る。
宇宙全体とつながっていると感じる。神と出会い、合一する。自己が肉体と離れる。パーシンジャーによ
ると、側頭葉の短期の異常発火から生まれる、こうした体験は、種としての生存にとって、決定的な意義を
持ったと考えられる。人間は、前頭葉の発達から生まれた、個人としての消滅の恐怖と均衡するものを、
必要としたからである。側頭葉の一時的な発火によって、数秒のうちに、人々は、生の構造と意味を発見
し、真理に対する確信がやってくる。この確信なしに、「自己」は維持されえない。パーシンジャーによれ
ば、その意味で、神の体験は人類の共通の遺産だといえる。
このような仮説を証明するために、パーシンジャーは、脳の両半球側頭葉に微弱で複雑な磁場をかけ
る装置を考案した。この装置は、複数の電極がつけられたヘルメットのような形をしており、コンピューター
制御され、神経細胞や細胞群の活動を模倣した複雑なパターンで、脳を磁気的に刺激する。(注8)磁気
刺激によって神を体験する、この「神のヘルメット」(God’s helmet)は、彼をポップ脳科学の世界のスター
にすることになったのである。
48 人の大学生(男女半々)を被験者に、パーシンジャーが行ったダブルブラインドの実験によると、暗く、
遮音された実験室で、ゴーグルをかけた被験者に、この「神のヘルメット」をつけてもらい、20 分間、側頭
葉―頭頂葉を刺激した結果、3 分の 2 が、誰かが部屋の中にいると感じた。またその比率は、右半球を刺
激した方が、高かった。一方、同じ条件で、刺激されなかった統制対照群は、33 パーセントが、誰か部屋
にいると感じた。
パーシンジャーによると、自分以外の誰かがいると感じること(sensed presence)は、左半球の自己感覚
に対応する右半球の意識(awareness)が、自己感覚に入り込むことを意味し、神体験の原型だとされる。
磁気刺激によって、この感覚を引き出す「神のヘルメット」の実験は、彼の仮説を支持するもののように思
われた。
この「神のヘルメット」は、ポップ科学メディアの注目を引き、CNN、BBC、ディスカヴァリー・チャンネル
などが番組を放映し、多くの新聞や雑誌が取り上げた。「利己的遺伝子」の生物学者リチャード・ドーキン
ス、心理学者で臨死体験の脳科学的解釈や「文化的遺伝子(ミーム)」理論で知られるスーザン・ブラック
モアや、多くの科学ジャーナリストたちが、みずから、「神のヘルメット」を試すために、世界のあちこちから、
パーシンジャーの研究室のあるカナダの小都市サドベリーを訪れた。パーシンジャーによると、現在まで
「神のヘルメット」を試した総数は、約千人で、その 80 パーセントが、何らかの特異体験をしたという。また、
パーシンジャーの共同研究者だったトッド・マーフィーは、携帯可能な消費者向けのヘルメットを開発し、
「霊性を増強するため」(“to enhance spirituality”)の道具として、売り出しており、利用者からの報告は、パ
ーシンジャーに送られているという。(注9)
このパーシンジャーの仮説と「神のヘルメット」について、どう考えるべきか、簡単にコメントしておこう。
まず、一番目は、パーシンジャーの実験について、追試が行われ、結果が否定されていることである。
96
スウェーデンの研究グループは、「神のヘルメット」を借り受け、厳密なダブルブラインドによる追試を行っ
た。その結果、誘発された感覚は、被暗示性にかかわるもので、磁場刺激によるものとして説明しがたい
という結論にいたっている。(注10)
二番目に、パーシンジャーの文明史的観点についてである。それは、彼の徹底した還元主義の背後に
ある動機とかかわっている。それを、ひとことで言うなら、宗教的熱狂が対外的な暴力に転化することに対
する、深い懸念である。すでに、研究の最初期の論文に、神の経験や宇宙との一体感がもたらす人間の
変化が、悪しき方向に向かい、操作されることに対する警戒感が表現されている。1987 年の論文で、彼は、
こう述べている。
「神の経験が、人間の生をこれほどまでに極端に支配できるのだとするなら、それが物や人間によって
管理、操作されるようになったら、いったいどうなるだろう?神の体験が、人間の脳から生まれる作り物 で
あるなら、古に書かれた万巻の経典のなかにある、心安らがせる無数の言葉も、その事実を変えはしな
い」(注11)
このような懸念は、その後―とくに 2001 年 9 月 11 日以降―さらに強められ、彼は、宗教を「認知的ウイ
ルス」(cognitive virus)と呼ぶようになっている。2002 年の論文によると、心理学の講義を取っている大学
一年生の 7 パーセントが、「神が殺せと言えば、神の名の下にそうする」という言明に肯定的に答え、その
率は、頻繁に教会、シナゴーグ、モスクなどに参加する男性において 25 パーセント、同じく女性において
9 パーセントにおよんだ。そして、教会に頻繁に参加し、宗教体験をしたことがあると答え、側頭葉の亢進
を示す兆候のあるもののうち、約 50 パーセントが、神の名のもとに殺すだろう、と答えたという。心理テスト
によると、全員正常の範囲にあり、暗示性、イメージ、自己評価も普通だという。(注12)
パーシンジャーによると、神の体験を誘発する脳の構造とパターン―海馬と扁桃体―は、性的行動、ま
た、攻撃性に特に関係しており、神の体験や信仰は、神に帰せられる「指示」にもとづいて、信仰を共有し
ない他者を攻撃する可能性につながる。人間は、社会的親密感と集団への帰属を必要とする社会的動
物であり、集団の結束は、その集団を定義する信念の正当性が脅かされるとき、そこに所属しない他者を
排除することにもとづくからである。
9.11 以降の世界の状況―それは、誰もが知っているとおり、以前からの歴史の累積の結果に過ぎない
のであるが―を考えるとき、宗教のはらむ暴力性に向けられた、この懸念を単に否定することは、わたした
ちにはとうていできないだろう。霊的領域、精神に向けられるアルパーの否定や、脳科学が人類に平和を
もたらすというラマチャンドランの言葉も、そういう文脈の中で、読まれる必要がある。
だが、その一方、二つの疑問が残る。
一つは、あらゆる神秘体験、宗教体験、霊的体験が、側頭葉の異常発火に帰着するという仮説の妥当
性である。第二節で述べるように、近年行われている SPECT、fMRI をはじめとする非侵襲的計測法を用
いた神秘体験の研究は、異なる体験が、異なる脳のネットワークと対応しており、感情体験にも、側頭葉
のみにも還元できない、多元的な成り立ちをしていることを、強く示唆している。
二番目は、彼らのイメージしている宗教の内実である。端的にいうと、「神が殺せと言えば、神の名の下
にそうする」という表現にあらわれている、ユダヤ=キリスト教的なバイアスである。あらゆる宗教の本質は、
まず、神や超越的権威の命令に服すこと―そういうタイプの宗教を、フーコーにならって牧人司祭型の宗
教と呼ぼう―だと理解することは、とてもできない。もちろん、どんな宗教も、ある状況の中で、教義や象徴
97
体系に新たな解釈をほどこし、暴力や戦争にいたる可能性はある。だが、パーシンジャーたちは、過度の
単純化に陥っているように思われる。
最後に、「神のヘルメット」について、もう一言、述べておこう。それは、技術の支配についてである。す
でに述べたように、この神秘体験誘発装置がどこまで効果があるか、今のところ、不明である。だが、もし、
それか、あるいはそのあとを継ぐ装置が効果を持つなら、「神の経験が、人間の生をこれほどまでに極端
に支配できるのだとするなら、それが物や人間によって管理、操作されるようになったら、いったいどうなる
だろう?」という意識操作への懸念は、逆に、強まることになるだろう。それは、より広く、新しい技術や装
置の開発にあたって、科学研究が満たすべき倫理や対話の条件は何か、という問いでもある。
2.2.3.1-3 ハマーの「神の遺伝子」―神経遺伝学と霊性
アルパーの生物―神学は、神体験にかかわる脳内部位とともに、その背後にある「霊的遺伝子」の存在
を予言していた。神と遺伝子。この組み合わせについて書かれたのが、ハマーの『神の遺伝子』(2004
年)である。(注12)
ハマーは、アメリカの国立癌研究所の研究部長をつとめる神経遺伝学者で、すでに、ゲイやタバコ依
存と遺伝子の関係についてのスキャンダラスな研究によって、知られていた。『神の遺伝子』は、宗教に関
する生物学的還元主義の、一つの極致といえる。
ハマーは、ウィリアム・ジェームズの個人的宗教と組織的宗教の対比にもとづいて、個人的体験として
の霊性(spirituality)をテーマにすると、宣言する。人間の宗教性や霊性と、特定の宗教組織への帰属は、
一致しない。2001 年以降の世界においては、特にそうである。
この霊性の量的指標として、彼が注目したのが、クロニンジャーの「自己超越性」(self-transcendence)
の概念だった。(注14)「自己超越性」指標は、気質・性格検査の一部として生み出された気質・性格類
型であり、ハマーによると、伝統的宗教性(教団への帰属、集会への参加)とは異なる霊性を抽出すること
ができる。
クロニンジャー=ハマーによると、自己超越性は、自己忘却、超個的同一化、精神的受容性という、三
つの独立した、しかし、コヒーレントな要素からなる。
(1)
自己忘却(self-forgetfulness):仕事に熱中して、自分がどこにいるか、分からなくなる。仕事、ス
ポーツ、音楽などにおいて、何も間違うことがないような「ゾーン」にはいる(いわゆる「フロー体
験」)。恋愛において、二人の間に何の境界もないように感じる、など。創造性、独創性と関連す
る。
(2)
超個的同一化(transpersonal identification):動植物を絶滅から救いたいと思う。周囲の事物との
一体感を感じる。世界をよくするために、生命を賭けてもいいと思う。すべては、ひとつの有機的
生命体の一部だと感じる。自然との一体感。社会正義に関する理想主義的傾向。
(3)
精神的受容性(spiritual acceptance)ないし神秘主義への志向:合理的唯物論の逆。詩によって
感動する。他者との言葉にできないようなつながりを感じる。神秘体験は単なる願望思考ではなく、
リアルだと思う。科学によって説明できないものを好む。奇跡を信じる。第六感、超感覚的知覚が
あると思う。直観性と関連する。
クロニンジャーによると、この三つの要素には強い相関があり、彼の検査は、それを33の質問項目によ
98
って明らかにするものである。さらに、他の検査法と比較したハマーの追試によると、自己超越性の指標
にあたるものは、他の性格テストにはあらわれず、オリジナルな発見とされる。また、女性のスコアが有意
に高いという。
ハマーの還元主義的な仮説の核心は、この自己超越性と特定の遺伝子の変異の間に相関があるとい
う点にある。ハマーによると、双生児の比較研究は、共通の環境の影響はきわめて小さいことを示しており、
自己超越傾向は、外部の環境の影響の結果とは考えられない。
ハマーは、この自己超越性指標と VMAT2 と呼ばれる遺伝子の変異の間に、強い相関があると主張す
る。
VMAT2 遺伝子は、神経伝達物質のうち、モノアミンの全種類を包むパッケージとなる蛋白質を生産す
る過程にかかわっている。モノアミンは、カテコールアミンとインドールアミンからなる。前者は、快感と深く
かかわるとされるドーパミン、それに、アドレナリン、ノルアドレナリンからなり、後者は、社会性、親密感、
安定などにかかわるセロトニン
からなる。いずれも、気分、感情や価値の回路に深くかかわっている。
VMAT2 遺伝子は、このモノアミンの移動に深く関与する、とされるのである。
細胞が、モノアミンを生産した後、モノアミンは膜で包まれ、小胞に運ばれる。他の神経伝達物質やホ
ルモンによる電気化学的インパルスによって、カルシウム・イオンが流入すると、小胞と膜の間が開き、モ
ノアミンが小胞から流れ出す。それが、信号となる。VMAT 遺伝子は、この膜のパッケージ生産にかかわ
っており、その変異は、モノアミンの移動に大きく影響する可能性があることになる。事実、VMAT2 遺伝子
を欠いたノックアウトマウスは、無気力で、食欲がなく、きわめて短命であることが知られており、また、セロ
トニン、ドーパミン、ノルアドレナリンが100分の1以下と、極端に少ない。これは、モノアミンが小胞に包ま
れないため、酵素によって急速に劣化するのだと考えられる。
この VMAT 遺伝子の一部分には、シトシン(C)か、アデニン(A)かという変異型がある。前者を持って
いる人は、自己超越性指標の得点が高い、というのがハマーの主張だ。
では、モノアミンと「自己超越性」という性格傾向は、どのようにして結びつくのか?
ハマーは、中核意識と高次意識を区別するエーデルマンの意識論をもとにしながら、そのことを明らかに
しようとする。
中核意識とは、感覚素材から場面を作り上げる能力であり、LSD をはじめとするサイケデリックスの摂取
によって変化する。それに対して、高次意識とは、自己を世界の図の中に統合する能力、「わたし」の意
識であり、この高次意識の変容によって、自己超越体験が生まれると考えられる。
この二つの意識のモードは、視床―皮質ループと辺縁系-脳幹ループ、それぞれの内部、およびそ
れらの相互関係から生まれる。そのうち、視床―皮質ループは、外界からの信号を受け、運動、知覚、カ
テゴリーを調節し、精確さ、速度が重要である。それに対し、辺縁系―脳幹ループは、快感、価値判断に
かかわる。モノアミンは、後者の辺縁系―脳幹ループにおもにかかわっている神経伝達物質であり、快感、
価値判断という情動の要素と結びついている。モノアミンの移動や制御にかかわる遺伝子の違いは、この
ような連鎖をつうじて、自己超越性、さらに信仰と結びつくというのが、ハマーの推論である。
ダギリらによると、神秘体験、ロマンチックな愛、美的体験は、連続的なスペクトラムとしての性格を持っ
ているが、その背景には、辺縁系(視床下部、扁桃体、海馬)があることをハマーは示唆している。視床下
部は、性欲の制御と、神秘体験を支える感情価値の両者にかかわっており、ヴィジョナリーな神秘体験は、
辺縁系への軽い刺激によって、視覚連合野へのアウトプットが減少し、幻覚が生まれることから生じる、と
99
ハマーは考える。
このような遺伝子への生物学的還元主義と、もう一つ、進化心理学の結合が、ハマーの宗教理解を成り
立たせている。ハマーによると、信仰は自己を超えた目的の感覚を与え、困難におけるオプティミズムや
楽観性を生み、生存の確率を高める。また、信仰は、治癒力、健康、長寿と結びつく。アメリカでの調査に
よると、信仰のある人は平均余命が長いことが知られているが、それは、信仰が生活様式に影響すること、
また、ストレスに対処することがより容易になるからだと考えられる。
宗教的なものは、遺伝子に配線されている。人間とは、「袋の中を走り回る一連の化学反応」であり、そ
の自然の基本法則から宗教は生まれると、ハマーは述べる。
このハマーの神経遺伝学的宗教論は、いくつかの興味深い論点をふくんでいる。だが、そのまま受け入
れることは、むつかしい。ここでは、三点述べておこう。
1、 神経伝達物質の生産にかかわる遺伝子が、性格の特性に一定の寄与をするだろうということは、十
分に予想される。しかし、性格特性が、一個の遺伝子によってのみ規定されるかどうかは不明である。
ラットの研究によると、子供の性格は、生みの親ではなく、育ての親の性格と似ることが、知られてお
り、これは、育て方によって、転写要素の活性が変化し、ストレスホルモンの受容体の生産が変わる
からだろうとされている。また、人間についても、生育環境が及ぼす影響についての同様の研究があ
り、この観点からすると、ハマーのような単純な遺伝子決定論は、とりがたいと思われる。(注15)
2、 fMRI および脳波計測を用いたボールガールの研究によって、キリスト教の神秘体験に関連する脳部
位と、愛や至福の感情体験にかかわる脳部位は、同一ではないことがわかっており、宗教体験ない
し神秘体験を感情体験と同一視することはできないことが、明らかである。(注16)
3、 クロニンジャーの自己超越尺度は、宗教体験、神秘体験を理解するうえで、十分でない。宗教体験
は、人格の変容、無条件の愛や慈悲をもたらす。自他や集団、種を区別しない無条件の愛、無差別
の慈悲は、自然選択において、どのような利点を持つのだろうか?
2.2.3.2 脳神経神学(2)―脳を見る
1990年代、脳の非侵襲的計測法―脳電図(EGG)、SPECT、PET、fMRI、脳磁図など―の急速な発達
は、脳内活動を、以前よりも格段に詳細に観測することを可能にした。コンピューターの発達もあいまって、
脳内活動の指標―fMRI の場合、脳内の血流変化―を、画像として「見る」ことが、ある程度可能になった
のである。それとともに、脳の特定の部位のもつ機能よりも、ある認知行為が行われるときにはたらく、より
広範囲の神経ネットワークが果たす重要性が強く認識されるようになった。
このような変化は、おもに、医学や神経科学の現場にいる研究者をつうじて、宗教の脳科学的理解に深
い影響を及ぼすことになった。それが、宗教の脳科学的理解における第二の潮流であり、ペンシルヴァニ
ア大学に所属する医学者であるダキリとニューバーグ、および、モントリオール大学の神経心理学者ルー
ボガールに代表される。ここでは、そのうち、ダギリ=ニューバーグについて、述べることにする。
ダギリは、ペンシルヴァニア大学の精神医学部で臨床を教える一方、神秘体験に深い関心を抱き、人
類学者のラフリンらとともに、1970 年代から、変性意識や儀礼を生物学的、神経学的に理解する「生物発
生論的構造主義」ないし「神経現象学」を提唱していた。
ダキリとラフリンによれば、行動と結びついたイメージによる認知のほうが、言語による認知システムより
も古く、前者は、生命の適応的な知恵を含んでいる。異なる認知システムによって、世界は、多層的なリア
100
リティとしてあらわれ、儀礼によって生まれる変性意識においては、異なる文化的な背景を持った個人が、
同じ非日常的リアリティ―たとえば、精霊―を体験することがある。その背景にある、人類に普遍的な神経
学的な基盤を解き明かすことが、「神経現象学」のプログラムとされる。(注17)
このダキリと核医学の専門家であるニューバーグが、SPECT(単光子放出断層撮影法)を用いて行った
研究とそこから引き出した結論は、宗教の脳科学的理解に、決定的な変化をもたらすものだった。(注1
8)
ダキリ=ニューバーグたちの実験の被験者は、八人のチベット仏教の修行者で、彼らは、一点に意識
を集中する瞑想を行った。
その一人の言葉によると、瞑想によって、しだいに意識は静まり、より深く、単純な要素、「内なる自己」
があらわれてくる。「内なる自己」は、みずからのうちの真実で変わることのない唯一の要素であり、孤立し
ているのではなく、万物と分かちがたく結びついているという鮮烈な直観をともなう。「時間を超越し、無限
が開かれる」「自分がすべてのものの一部になったような感じ」。だが、その素晴らしさは、言葉を超えてい
る。
この禅定に入ったと思ったら、被験者は、糸を引っ張って、隣の部屋で待っている研究者にシグナルを
送り、SPECT による計測が始まる。それによって、禅定の時とほぼ同じ脳の状態を、画像化して見ることが
できる。
実験の結果は、大きく、次の二つのポイントにまとめられる。(注19)
(1)視床―前頭前野の活動増大。思考、計画、意思に関与する前頭皮質(dorsolateral prefrontal
cortices,
inferior and orbital frontal cortices, sensorimotor and dorsomedial cortices)と、情動に関係す
る視床・帯状回の活性化が見られた。
(2)上頭頂葉後部(頭頂連合野)の活動低下。頭頂葉左部は、自己と他者の区別、身体境界に、右部は
空間内の位置に、かかわっている。また、前頭前野左部の活動増大と頭頂葉左部の活動低下に強い相
関がある。
このうち、前者については、瞑想をはじめとする意識集中において、前頭前野の活動に変化が生じるこ
と、また、前頭前野と視床の間には、神経の連絡があり、複雑な情報交換が行われていることは、すでに
知られている。ダキリたちが頭をひねったのは、後者の頭頂葉の活動低下だった。頭頂葉は、ふつう、ど
んなときも、活動を続けている。ところが、その活動が、明らかに低下していたのである。
ダキリとニューバーグは、神経活動の画像と、瞑想者が意識経験を表現する言葉を、照らし合わせて、
考えた。その結果、計測と意識状態の報告の間に一致があるという結論に達した。頭頂葉の活動が低下
するということは、身体境界―内外の区別―や、空間の感覚がはっきりしなくなることを意味する。それは、
主観的には、自他の区別の消滅、無限との絶対的な一体感、絶対に溶融することとして、体験されるだろ
う。こうして、「時間を超越し、無限が開かれる」、「すべてが一つになる」といった、古代から神秘家たちが
語ってきた体験を、神経学的に理解する鍵が得られることになった。
もう一つ重要なのは、これらの瞑想家たちの頭頂葉が損傷を受けたり、機能不全を起こしているわけで
はなく、瞑想中の前頭前野左部の活動増大と、頭頂葉左部の活動低下のあいだに、相関が見られること
である。これは、瞑想によって前頭前野の活動が増大することによって、頭頂葉への情報が入らなくなり、
それによって、頭頂葉の活動が低下したことを示唆する。瞑想の技法が、絶対との一体感を生んだのであ
101
る。神秘体験は、-たとえばフロイトが述べたように―、悲嘆や神経症がもたらす妄想や、各種の病理学
的な状態の産物では、必ずしもないかもしれないのである。
ダキリとニューバーグは、さらに、フランシスコ修道会の修道女を対象とする実験によって、キリスト教の
神秘体験―「神秘の合一」―においても、同様の現象が起こっていることを見出し、それらを包括的に理
解するための理論を提示することになった。(注 20)
神秘体験といっても、仏教の瞑想による「内なる自己」「絶対的一者」の体験と、キリスト教の祈りによる
「神秘的合一」は、異なっている。前者では、自他の区別が完全に消滅し、無限と一体になるのに対し、
後者では、人格神のイメージや表象は残っている。
このような違いを前提にしながら、ダキリ=ニューバーグは、瞑想を受動・能動の二種類に大きく分け、
それぞれに対応する神経学的機序を説明しようとした。
彼らによれば、受動的瞑想は、おもに仏教などに多く見られるもので、思考、感情を除こうとする点に特
徴がある。それは、つぎのようなメカニズムをつうじて、頭頂葉への情報の遮断(求心路遮断)、さらに自他
の境界の消失、融合をもたらす。
感覚や認知にかかわる情報が心に流れ込んでくるのを意図的に防ごうとする→前頭前野の活動増大→
視床、海馬に信号が行き、情報の流れを抑制→頭頂葉に情報がいかなくなる→行き場を失った神経イン
パルスは、大脳辺縁系の視床下部に流入→視床下部の抑制系を支配する部位への神経インパルスによ
って、心を静める強力な感覚が生じる。→強い抑制性のインパルスは、大脳辺縁系を経由して、前頭前
野につたわる→前頭前野は、ふたたび海馬に命令して、情報の流れを抑制させる。→瞑想は深まる。
こうして、前頭前野、視床、辺縁系をつなぐ共振する回路が形成され、頭頂葉への求心路遮断が起こる。
それによって、心は静まり、自他の境界の消失が生じる。
さらに、大脳辺縁系から視床下部にいたる神経パルスが強まると、視床下部の抑制機能が限界に達す
ると、神経学的な「決壊」が起こる。視床下部の興奮系も一気に活性化し、視床下部の抑制、興奮反応の
激しい神経活動のインパルスが、辺縁系を駆け上って前頭前野に達し、その活動レベルは、最高になり、
頭頂葉への求心路遮断は、完全になる。こうして、「絶対的一者」の体験が生じる。
これに対して、能動的なアプローチは、特定の思想や対象に心を集中させるもので、キリスト教などに
多いとされる。キリスト教の祈りとかかわる回路は、以下のとおりだ。
祈りの意図を前頭前野が神経学的な活動に翻訳→イメージ(ex.イエス)への集中によって、前頭前野は
情報の流入を促進→大量の情報が、視覚連合野と結ばれた右脳の頭頂葉にはたらきかけて、イメージを
心に固定→右脳の前頭前野から神経パルスが発生→大脳辺縁系を経由して、視床下部に達する→視
床下部の興奮系を支配する部位を刺激=穏やかで心地よい興奮状態が生じる。→やがて視床下部の興
奮機能が限界に達し、神経学的な「決壊」が起こる→視床下部の抑制機能も最高レベルで活動→視床
下部では、激しい活動が生じる→その刺激は、辺縁系を経由して両半球の前頭前野に到達→前頭前野
の活動は、最大レベルになり、イメージへの集中が強まる→両半球の頭頂葉に重大な影響。
ここで重要なのは、能動的アプローチにおいては、イメージへの集中が行われることによって、左脳と
右脳の頭頂葉に、受動的アプローチの場合とは異なる影響が、もたらされることである。
左脳の頭頂葉は、求心路遮断を受け、自己の感覚があいまいになる。それに対して、右脳の頭頂葉の
ほうは、強力な前頭前野の活動によって、いっそう強くイメージに集中させられ、イメージの瞑想に由来し
ないすべての情報を奪われながら、あくまでも、自己を位置づけるための空間的基礎を構築しようとする。
その結果、イメージは拡大し、心は、そのイメージ(神、イエス)がリアリティのすべてだと感じる。こうして、
102
超越的な存在に吸収される「神秘的な合一」の体験が生じることになる。
宗教研究の立場からは、瞑想をこの受動・能動の二つに還元することは、もともと、無理があると思われ
る。だが、ダギリ=ニューバーグの仮説は、大きく三つの重要な点を示唆している。
一番目は、超越体験と性の神経回路の関係である。超越体験に関連する興奮系、抑制系(視床下部)、
辺縁系などの神経学的構造は、性的なオルガスムと密接に関係する。この構造は、性的オルガスムにお
いては、繰り返されるリズミカルな刺激によって活性化される。超越体験においても、興奮系、抑制系の両
方が、同時に活性化する必要があり、超越体験の神経回路は、性の神経回路から進化したと考えられる。
その一方、超越体験においては、前頭葉やその他の連合野など、高次の認知構造が重大な寄与をして
おり、両者を完全に同一視することはできない。
ここで興味深いのは、仏教タントラの神経理論―これについては、次章で触れる―に、同様の認識が
存在することである。性と超越体験の神経回路は重なり、前者を変化させることが、悟りの前提条件だと考
えられているのである。
二番目は、「神秘的合一」と「絶対的一者」の体験の関係についてである。
ダギリらによると、能動的アプローチにおいて、疲労によって、イメージへの集中の努力が弱まると、右
脳の頭頂葉への唯一の入力であるイメージも失われることになる。それによって、両半球の頭頂葉への入
力が完全に失われ、「神秘的合一」から、さらに「絶対的一者」の体験に至る可能性がある。逆に言うと、
前者は、「絶対的一者」の体験にいたる求心路遮断が、いまだ不完全な状態だということができることにな
る。
「絶対的一者」の体験においては、物質的な存在や主観的な神の経験を超越した、万物の純粋かつ
完全な合一、あるいは無だけが経験される。そこでは、個別の事物もなく、神もない。一切の対立が存在
しない。
これに対して、「神秘的合一」の体験においては、絶対的な合一までは到達せず、主観的な意識は残
る。神秘家は、この経験を、自己と神秘的な他者との合一として解釈し、みずからが絶対的なリアリティの
前に立っていると感じる。そこから、自然界の強力な精霊、や一神教の人格神の観念が生まれ、それに疑
問を向けることは、神経学的基盤にもとづく確信、すなわち合一体験のリアリティに対する攻撃と感じ取ら
れることになる。神がリアルでないなら、希望や救済もリアルでなくなるからだ。そこから、宗教的不寛容―
アルパーやパーシンジャーが直面した宗教の問題―が生じるのだと考えられる。
ダギリたちの仮説は、「神秘的合一」の体験が「絶対的一者」に移行し、超越される可能性を示唆し、そ
れは、一神教的伝統において「異端」とされた神秘家たち―アヴィラのテレサやイスラム神秘主義のスー
フィーたち―の伝統で語り継がれてきた言葉と一致する。超越体験の神経学的解明は、さまざまな宗教
を融和に導く生物学的な枠組みを提供する可能性をもっている。
三番目は、科学と宗教の関係についてである。
ラマチャンドランらが述べるとおり、脳科学は、人間の認識や信念、宗教を支えている神経学的メカニズ
ムと、それらの相対性を明らかにすることができる。だが、同じことは、科学の営みそのものにも向けられう
る。脳の主観性を抜きに、事物のありのままの姿を見ることは不可能であり、科学もまた、その限界をまぬ
かれえないからだ。「リアルなものはすべて、科学的測定によって証明できる。ゆえに、科学的に証明でき
ないものはリアルではない」という仮定は、成り立たない。それは、科学と宗教が協力し、対話する根拠と
なるだろう。ダギリとニューバーグの作業は、その重要な一歩だといえる。
103
2.2.3.3 一人称と三人称―禅、シャーマニズム、音と宗教の始原
三番目の傾向は、みずからの宗教的体験の内観ないし内省と実験や研究、一人称と三人称を統一す
る試みである。ここでは、禅のオースティン、シャーマニズムのウィンケルマン、音と宗教の始原をめぐる大
橋力の作業をとりあげる。
2.2.3.3-1 オースティン―禅と脳
ジェームズ・オースティンの『禅と脳』(1998)の出版は、多くの人々に、新鮮な驚きをもって、迎えられた。
著者のオースティンは、コロラド保健科学センター名誉教授の神経学者で、神経化学、神経薬理学、臨
床神経科学の専門家とみなされていた。その一方、京都をはじめ、各地で 20 年余り参禅した経験を持ち、
みずからの体験をもとに、禅定や見性について、神経学的に論じたのである。MIT から出版された『禅と
脳』は、全体で 840 ページをこえ、最新の神経学の知識と禅の個人的体験がないまぜにされている。(注
21)
オースティンによれば、人類は霊的成長に向かう基本的な傾向を持っている。その傾向―ダイナミック
かつ内的な「永遠の精神生理学」(perennial psychophysiology)―は、ゆっくり進化する一連の過程であり、
例外的な決定的な瞬間、「至高体験」にいたる。目覚め、悟りは、人間の脳が、根本的な変化を経過する
ことによってはじめて起こり、結果として、脳の機能を深く増強し、しかも、単純にする。瞑想は、その方向
に脳が変化することを助けるか?もしそうなら、どのようにしてか?その証拠を提示することが主題とされ
る。
ここでは、そのうち、禅定と見性の神経学的解釈について、述べておこう。
注意の集中+ストレスをもたらす出来事(一時期的な出来事→脳のリズムの不安定化)
|
網様体の興奮
|
|
感覚皮質、連合皮質の
より後ろの領域の興奮
|
視床、辺縁系、およびそれ以外
の皮質下の領域の興奮
|
対応する網様核の最下部の興奮
CRF による初期興奮、ベータ・エンドルフィン、アセチ
ルコリン系における副次的かつ遅い効果
|
視床の感覚中継にかかわる核の抑制
図 1 <禅定のメカニズム>(J.Austin, Zen and the Brain, p.590)
オースティンは、おもに、臨在禅の修行をしており、彼の禅の神経学的理解は、見性にいたる、みずから
の修行のプロセスで起きた、意識体験や生理的変化を、古の禅師の言葉や類似した変性意識状態と比
較しつつ、最新の神経科学的知識によって、解明する試みである。さまざまな推論を重ね、謎解きをして
いく過程は、推理小説を読み進むような面白みをもっている。
そのうち、禅定の神経学的プロセスは、図 1 のようなメカニズムによると、彼は考えている。少しコメントを
104
加えよう。
オースティンによると、禅定は、強度の覚醒と魅惑される感じをともない、しだいに深まる性格を持って
いる。そこから、次のような過程があると推理される。
最初は、注意の集中とストレスをもたらす出来事によって引き起こされる、網様体の興奮である。坐禅で
は、静かな環境で注意集中が行われるが、一方、坐禅の最中、突発的に起こる出来事―風、樹木の作り
出す音、水の流れ、鳥の鳴き声など―は、ストレスとなる。それによって、脳のリズムの不安定化が起こり、
網様体が興奮する。そこからは、二つの並行する回路がはたらく。
一つめでは、感覚皮質、連合皮質のより後ろの領域が興奮し、それが、さらに網葉核の下部に存在す
る対応する領域の興奮を生む。それによって、視床の感覚中継にかかわる核が抑制され、視覚をはじめ
とするさまざまな感覚の新しい入力は、ブロックされる。しかし、その一方、感覚ブロックの起こっているより
も高い領域においては、興奮はつづいており、その結果、視覚、聴覚システムの知覚能力は高まったとい
う印象が生まれる。
二つめでは、網様体の興奮によって、視床、辺縁系、およびそれ以外の皮質下の領域が興奮する。は
じめ、興奮は CRF(コルチコトロピン解放要素)によって起こる。CRF は、覚醒度を上げるはたらきがあるが、
視床下部で、脳内モルヒネの一種であるエンケファリンと共存しており、標的に同時に放出されると、興
奮・抑制の複雑な効果が生じる。禅定においては、まず、魅惑される感じが生まれ、その後で、至福感が
生じる。それは、アセチルコリンとベータ・エンドルフィンを用いている径路の情報伝達のスピードの違い
に関連していると推測される。深い快感と関係するベータ・エンドルフィンは速度が遅く、アセチルコリンは
速い。これらをあわせ考えると、尾状核のあたりで、ベータ・エンドルフィンとアセチルコリンが放出されて
いると考えられる。
持続的な赤裸々な注意+継続的な内省
|
網様体および覚醒システムから、より上位に上昇する自然発生的
(ないし何らかの引き金による)興奮
A.脳幹から生じる興奮
B.連合野(おもに前頭―側頭葉)に選択的に到達→興
奮
|
|
エンケファリン、
ディノルフィン
網様核の抑制
|
対応する視床網様核の興奮
|
系の選択的な興奮
|
|
|
|
|
|
|
視床腹側核上部の脱抑制
|
|
|
|
|
視床腹側上部の抑制
皮質および辺縁系の対応領域における選択的な効果
図2 <洞察(=智慧)のメカニズム>―見性の神経学(J.Austin, op.cit., p.591)
105
これに対して、見性(禅における悟り)は、図2のような過程をつうじて生じると、考えられる。
オースティンによると、見性においては、直観的に「理解」ないし悟りが生れることがポイントであり、それ
は「我」を包んでいる袋の全体が、意識に示されたときに、起こる。そのためには、静寂、持続的な内観、
日常生活に向けられる赤裸々な注意からなる、長い準備の時期が必要とされる。
公案を与えられ、日常に赤裸々な注意を払う毎日をつうじて、見性は起こる。見性は、禅定と違い、素
早い閃光のようなものであり、そのことから、神経伝達物質の中でも、グルタミン塩やアセチルコリンと関連
するスピードの速い経路が、その回路の中心にあることが予想される。また、見性は、特に何かきっかけが
なくて起こる場合もあれば、なにか突発的な出来事をきっかけとすることもある。そのため、見性の始まりに
は、大きく二つのパターンを考えることができる(図2の A と B)。
オースティンによれば、見性の神経学は、多くの領域をまきこんだ、ダイナミックで、きわめて複雑な過
程になると考えられ、じっさいには、図で示すことは困難だという。まず、大脳の表面の皮質は、より原始
的な皮質下や脳幹の機能と結びついており、相互に複雑な関係を持っている。また、見性においては、
ただ、直観的な知恵が生まれるだけではない。その洞察ないし知恵によって、意識から、古い認知的差
別は取り除かれ、悲しむべき、あるいは罪悪感をともなう過去、恐るべき現在、心配に満ちた未来のあらゆ
る束縛のいずれからも、解放される。さらに、言語機能が停止する。それは、通常の側頭葉(言語ほか)、
辺縁系(情動、記憶)、前頭眼窩皮質(判断、不安)などの機能が脱落することを意味すると考えられる。
では、それに深くかかわる神経伝達物質はなにか?禅や悟りは、ドーパミン、セロトニンなどと関連づけ
られることがある。(注23)だが、すでに述べたように、オースティンによれば、見性に関するかぎり、そのス
ピードから、いずれも大きな役割を果たしていないという。
見性においては、意識の場面が新しい解釈へと素早く変化し、共鳴が、全体にいきわたる。そのことから
考えると、見性に関係する回路は、視床のように脳の中心に位置する領域に統合されており、速い大きな
ネットワークをつうじて、その範囲を拡大する必要がある。そのため、グルタミン塩が、この深い中心レベル
において、セットポイントを動かすのに、決定的な寄与をなしていると予測される。さらに、ベータ・エンドル
フィン、エンケファリン、ディノルフィンといったオピオイド(脳内麻薬)も、見性の数秒前に放出され、それ
によって、恐怖が除かれ、深遠な幸福感が生まれるとともに、強い印象が記憶に残る。
重要なのは、禅定、見性のたびに、それと関連する神経回路が増強され、一方、その外部にある部分
は、しだいに力を失うことである。禅は「脳を深く増強し、また、単純化する」。それは、異なる個人をつうじ
て繰り返しあらわれ、霊的成長に向かう人類の精神生理学にもとづいている。それが、禅の修行と神経科
学の研究の結合から生まれたオースティンの結論だ。
2.2.3.3-2 ウィンケルマン―宗教意識の始原と三位一体脳
1960 年代後半から 70 年代にかけて、宗教人類学においては、重要な変化が起こった。それまで、儀礼
の参与観察を行った人類学者は、それを神話の構造分析や社会・政治組織に結びつけて論じるのが普
通だった。ところが、この時期から、長期間シャーマンや呪術師に弟子入りした人類学者が、みずからの
体験した意識の変化をもとに、内側から、その体験やシャーマンたちの修行道程を記述するようになった
のである。このような変化は、環境問題、戦争をはじめ、近代的な技術、社会思想、合理主義の限界が強
く意識されるようになった時代背景と重なっていた。(注24)
ウィンケルマンは、この一人称的な記述によるシャーマニズム研究―カスタネダ、ハーナーらに代表され
る―と、神経化学、脳科学を結びつけることによって、先ほど触れたラフリン=ダギリらの神経現象学の試
106
みを深め、新たな地平を開こうとしている一人である。その土台にあるのは、メキシコ、ブラジルでのシャー
マニズムのフィールドワークやハーナーのネオシャーマニズムの実践体験であり、その思考は、近年、認
知考古学や、特に、幻覚物質のもつ治療効果に関するサイケデリック医学に広がっている。(注25)
1960 年代にかけて行われた LSD の臨床実験、研究は、この強力な幻覚物質のもたらす変性意識状態
(altered states of consciousness)が、古今東西の宗教における神秘体験とよく似ていることを、明らかにし
た。ウィンケルマンは、この事実をもとに、シャーマニズムの変性意識状態を、脳科学用語をつうじて示そ
うとした。(注26)
1980 年代までの研究をまとめたマンデルによると、LSD は、左右の脳半球の融合(fusion)をつうじて、超
越体験をもたらす。(注27)そのメカニズムの中核にあるのは、セロトニンを神経伝達物質とする神経回路
である。セロトニンを生産する縫線核は、橋と脳幹にまたがっており、そこから、中核や海馬など、中枢神
経系の広い範囲に、単一源発散型の軸索が投射されている。LSD をはじめとする幻覚物質は、このセロト
ニンと拮抗的にはたらき、それによって、意識、生理にまたがり、広い範囲に大きな影響をもたらすのだと
いう。
LSD は、海馬の CA3 細胞へのセロトニンによる抑制を失わせ、その活動は増大する。その結果、海馬・
中隔におけるゆっくりした脳波(アルファー波、シータ波)が発生する。この脳波の速度低下は、主観的に
は、リラックスした心の状態をもたらすことになる。さらに、海馬―中核の超同期化や、前頭葉における高
い電圧の徐波(特に3~6ヘルツ)の同期化が起こる。これが、マンデルのいう、左右の脳半球の融合であ
る。
その後、アメリカでは、1990 年代以降、LSD の研究が再開された。ウィンケルマンは、マンデルの研究と、
1990 年代、脳機能画像法の一つである PET を使って行われたフォレンヴァイダーらの幻覚物質研究(注
28)などをもとに、マジック・マッシュルームの幻覚作用の主成分であるサイロシン、サイロビシンなども含
め、幻覚物質を精神統合物質(psychointegrator)と呼び、また、幻覚物質や儀式などによってもたらされる
変性意識状態一般を、統合意識モード(integrative modes of consciousness)と呼んでいる。統合意識モ
ード、精神統合物質は、人類の進化において、決定的な役割をになったと考えられる。
ウィンケルマンによれば、統合的意識モードは、覚醒、夢、熟睡とは別に、人間の神経系のホメオスタシ
スにとって不可欠の要素であり、情動にかかわる辺縁系の優位、副交感神経の優位、異なる神経プロセ
スの同期活動を、特徴とする。
ここで、変性意識状態を、わざわざ、統合意識と呼びかえているのには、それが、人間の心(プシュケ
ー)と脳の異なる階層の統合だという意味がこめられている。
脳科学者のマクリーンは、本能にかかわる脳幹、情動にかかわる辺縁系、知性にかかわる大脳皮質の
三つが、系統進化の過程で、順次積み上げられた構造を持っているとし、それぞれ、爬虫脳、古哺乳類
脳、人間脳とする、三位一体脳の理論をとなえた。この考え方は、脳の構造が、マクリーンの考えたよりも、
はるかに複雑であることが明らかになるとともに、否定されるようになった。だが、ウィンケルマンによれば、
その機能の側面―本能、情動、知性―については、これらの区別は本質的な意味を失わず、変性意識
状態=統合意識モードにおいて、この三位一体脳の統合が起こることが、宗教、および、人間の進化の
本質をなすとされる。
儀式や幻覚物質によって引き起こされる統合意識モードにおいては、古哺乳脳(特に、記憶、快楽にか
かわる海馬―中隔)、視床下部、それと連関する情動と自律神経のバランスを制御する領域が活性化す
る。
107
儀式においては、音楽や踊り、神話の詠唱など、儀式において、視覚、聴覚、体性感覚、嗅覚、言語、
運動機能にかかわるさまざまなインプットによって、異なる脳の部分が、同時に共鳴的にはたらき、身体運
動の共鳴と、親密感を生む神経ホルモンの分泌が起こる。そして、ダギリたちの示したように、最終的に、
副交感神経の活性化が起こる。
精神統合物質、すなわち、幻覚物質の使用は、セロトニンのもつ抑制作用をおさえ、海馬に影響を与
え、側頭葉を刺激する。その結果、辺縁系、視覚野の細胞の脱抑制が起こり、情動、視覚中枢の日常的
ブロックが解放される。それによって、抑圧されていた無意識の情動が浮上し、幻覚体験が生まれること
になる。
このようにして生じる変性意識は、脳の異なる機能領域にまたがる情報の統合、脳のメカニズムの異な
る機能の階層的統合をもたらす。セロトニン作動性神経系による脳―脊髄軸の活性化は、前意識、無意
識の機能や素材を自己意識に統合し、また、脳の深い層から生じる徐波によって、前頭葉の両半球の徐
波におけるコヒーレンスの増大が起こる。それは、認知と情動、直観と分析的知性の、高次の統合をもた
らすだろう。
この統合意識は、重要な意味を人間の文化にもったと考えられる。ここでは、ウィンケルマンの議論をも
参照しながら、ランダムに、三つをあげておこう。
一つめは、自他の心のさまざまな側面を観察する「観察する意識」「メタ意識」―仏教では、これを「憶
念」と呼ぶだろうが―の誕生である。幻覚をもふくむ、統合意識状態において、日常的意識、個別の変性
意識状態を観察し、反省する「メタ意識」が生まれ、この観察する意識によって、意識内容のさまざまな側
面や構造を操作するオプションが増大したと考えられる。それは、心や体の意識的統御をめぐる、人間の
文化の重要な起源だといえる。
二つめは、幻覚物質の人間にとっての意味である。幻覚物質は、その使用において、意図や意識状態
(「セット」)、周囲の環境(「セッティング」)の影響を強く受けることが知られているが、伝統文化では、その
利用は、教育者ないしメンターの存在を不可欠とし、周到な準備がおこなわれる。ウィンケルマンによれば、
このことは、人類がサイケデリックスの体験的知識を積み重ねてきたことを示唆し、他の霊長類との分岐に
おいて、幻覚物質に対する耐性の有無が、重要な意味を持った可能性がある。(注30)その一方、幻覚
物質は変性意識をもたらす手段とはなりえても、それ以上の意味を持たないという反省的認識が、宗教の
進化をもたらした、と考えられる。
三つめは、四万年ないし五万年前にさかのぼる現生人類の認知革命の起源である。この時期、ラスコ
ーに代表される洞窟芸術の開花が起こり、それは、本格的な宗教の発生を意味するとされる。後期旧石
器時代に起きた、この精神革命について、認知考古学のミズンズは、言語、社会(心理)、道具、博物学
的知性の四つの認知モジュールが、共鳴することによって、人類の文化の爆発的な進化が起こったと述
べている。人間どうしの間になりたつコミュニケーションや倫理にかかわる社会(心理)的知性と、それぞれ
の生態環境において蓄積された動物、植物についての有機的知識―博物学的知性―のインターフェー
スから、動物=神=祖先を主人公とする豊かな神話が生まれ、言葉として表現される(言語的知性)。また、
岩の表面に描かれ、ナイフの柄に刻まれる(道具的知性)。こうして、異なる知性のモードを横断する「普
遍的知性」が、この認知革命をもたらした、とミズンズは言う。
だが、このミズンズの考え方は、宗教意識の発生から見ると、知性にかたよったものだといわざるをえな
い。洞窟や岩絵に描かれているモチーフは、現代人が変性意識において体験する光のヴィジョン―「内
視覚」―と共通しており、その背景には、シャーマニズム的な宗教・呪術的実践によって生まれた変性意
108
識状態があったことは、明らかに思われる。シャーマニズムは、異なる知性だけでなく、情動、本能的衝動
の変容、さらにそれとともに生まれるヴィジョナリーな体験を横断する意識、ウィンケルマンの言う「統合意
識」の誕生と不可分だったと考えられるのである。
こうして、ウィンケルマンの神経科学的シャーマニズム論は、数万年来、現代型人類の精神を基本的に
規定してきた構造を明らかにする可能性を持ったものだといえる。
2.2.3.3-3 大橋力―音環境、脳、宗教の始原
大橋力は、情報生物学の専門家であり、同時に、バリ島のケチャ、ブルガリア聖歌など、ユニークな音楽
活動で知られる芸能山城組の指導者―山城祥二―としても知られる。科学と芸術、理性と感性のユニー
クな結合から生まれた、彼の音と意識の関係をめぐる脳科学研究は、宗教の解明を直接目指したもので
はないが、オースティンやウィンケルマンらと同時代に属し、一人称と三人称をつなぐ大きな可能性を示し、
宗教の発生、文明史的展開について大きな示唆を与えるものといえる。
人間が耳で聞くことのできる音の周波数―可聴帯域―は、通常、20 から 20,000Hz であるとされ、現在
使われている音の媒体は、この範囲に限定されている。だが、じっさいには、可聴帯域外の音をカットする
と、音は、「かたく」なると感じられる。この事実をもとに、大橋力たちは、超高周波を豊かに含む音が、人
間の意識―ひいては、宗教的体験の根源であるトランス―にもたらす影響を、脳科学的に検証する作業
を行った。(注30)
大橋力らによると、人類が長らく生活の場とした原生森―ピグミーの生活する熱帯雨林―、農村、街は、
それぞれ異なる音構造を持っている。
アフリカの熱帯雨林の森の音は、可聴帯域を遥かに越える、100,000Hz 以上の超高周波成分を豊富に
含んでいる。また、ミクロにおいて、スペクトルの細部構造の揺らぎが豊富で、時々刻々変化し続ける、高
度の複雑性を持っている。音の強度としては、50~70dBA―都市の騒音レベルを超える―高いレベルであ
るが、音構造としてみると、ゆるやかに起伏しつつ、なめらかに推移する。マクロにおいては、この連続性
の音情報のベースラインのうえに、動物の発声、人間の分節言語がのっており、人間の声の分布は小さ
い、という三層構造をなしている。
これに対し、農村や屋敷林のある場では、音の周波数は、より限定され、60,000Hzくらいまでであるが、
それでも、可聴帯域外の音が、豊かに含まれている。
都市の音は、5,000 から 1,5000Hz 以下の低周波にパワーが偏っており、ミクロにおいては、ゆらぎの乏
しい平坦な波形の反復のなかに、時折突発的に異質のスペクトルが出現する(これは、電車に乗って移
動する体験を想起すると、よくわかる)。単調な構造であり、ほとんど無音から極限的な大音響まで、時間
的・空間的に断絶しつつ、不連続に分布する。マクロにおいて、音情報の分布は時間的、空間的位置に
より、不連続であり、構造のはっきりしない機械騒音、人間の声、歌が支配するものだという。
大橋力によると、人類は、長きにわたる生活の場であった熱帯雨林の音環境に適応しており、そこにお
いて、脳は、最も活性化するという。農村や屋敷林は、熱帯雨林ほどの複雑な音構造を持たないが、都市
よりは多くの高周波成分を持っており、それが、快適さの理由の一つと考えられる。これに対して、最もスト
レスフルなのは、都市の音構造である。同様のことは、ランドスケープについても言える。空間密度が大き
く、多彩な森のランドスケープは、脳の活性化をもたらし、単調な都市は、脳活性の低下をもたらすだろう
ことを、大橋たちは、実証的に示している。
大橋力は、バリ島のガムラン音楽である「ガンバン・クタ」を用いた実験によって、このような脳の活性と音
109
構造、環境の関連について、明快に示すことに成功している。
「ガンバン・クタ」の音構造は、平均スペクトルが 50,000 ヘルツ、上限は 100,000 ヘルツを頻繁に超える音
からなり、複雑なアナログ構造が激しく変容する。熱帯雨林の音構造と近似したものだといえる。大橋たち
は、この「ガンバン・クタ」を聞いた被験者に、どのような変化が起こるか、を神経科学、生理学の観点から、
明らかにした。その結果は、以下のとおりである。
・ 超高周波を含むフルレンジ音によってアルファ波の活性が顕著に高まる(音の到着から平均 7 秒
後以降)。
・ ハイカット音(高周波成分を除いた音)に移行すると、100 秒後に、アルファ波の急速な低下が観察
される。
・ 可聴帯域の音楽成分と非可聴帯域―知覚圏外の超高周波成分の共存―によって、脳幹および
視床の一部(聴覚神経系の中継点である下丘、内側膝状体以外の部分)の活性化が生じる。免疫
活性、対ストレス活性の上昇(NK 細胞、免疫グロブリン A、クロモグラニン A の活性化。アドレナリン
減少)が起こる。
・ 活性化する神経回路
1、 側頭葉の聴覚皮質を含む回路
2、 脳幹―視床・視床下部―前頭葉眼窩皮質―前帯状回・前頭前野の回路(感性脳、生存脳)。
最後の点について、少し説明しておこう。1 の回路は、意識される音の知覚にかかわる。2の回路につい
ていうと、上部脳幹は、モノアミン作動性神経投射系、オピオイド作動性神経投射系の存在する場所で、
報酬系である。この中脳の部位は、食、性を含む基礎的生理的情動に、また、前帯状回は、愛、喜びの
情動にかかわる。視床は、感覚情報の中継点であり、大脳辺縁系の要素である情動にもかかわり、視床
下部は、自律神経系の最高中枢で、内分泌系(ホルモン)を制御する脳下垂体を直接支配する。「ガンバ
ン・クタ」の複雑な音構造は、このような多様な部位を含み、感性と生存にかかわる2の回路をも賦活す
る。
大橋力によると、視床を中心とする脳基幹部ネットワークの活動状態に応じて血流が増減することと、ア
ルファー波の増減に相関があり、超高周波を含む音を聞くことが、視床を含む脳基幹部の血流増大をも
たらすとされる。2 の回路は、超高周波と可聴帯域の両方を含む音を聞くときのみ活性化し、それと、頭頂
葉楔前部の活動に相関がある。そこから、超高周波を含む複雑な構造の音が、頭頂葉楔前部を賦活し、
それが、この回路の活性化の引き金となっていると考えられる。
バリ島は、主に、棚田、田園からなり、60,000Hz を上限とする音構造を持っている。この自然の音環境の
うえに、「ガンバン・クタ」をはじめ、100,000Hz に届く高い周波数の音を含んだ音楽―人間的文化―が存
在する。さらに、舞踏儀礼において、演者は、鈴の音や木の音を打ち合わせる超高周波、16 ビートの音を
直接浴び、トランスに入る。それは、水利をめぐる定住コミュニティの利害対立、軋轢の解消―カタルシス
―をもたらすという。
この大橋力の研究は、環境と宗教の歴史について考えるうえで、きわめて重要な意義を持っていると考
えられる。熱帯雨林から出た人類が、森の外部で生み出す最初の宗教は、どんなものであったか?―こ
の問いに答えるうえで、バリ島の文化を、その洗練された極限の一つとして思考することは、大きな可能性
を持ちうるだろう。
110
ここまで、わたしたちは、脳科学による人間理解が、宗教的意識にどのような影響を及ぼしつつあるか、
両者の接する領域である脳神経神学を中心に見てきた。そこでは、宗教を生物学的に還元し、人類の害
毒であるとする初期の単純な見方―アルパーやクロニンジャーたち―は、しだいに乗り越えられ、実験と
高度な理論的思考を結合し、人類進化における宗教を再評価する傾向が、生まれつつある。さらに、一
人称的な体験の内観と三人称の科学的研究の融合が、大きな可能性を持つだろうことを、最新の研究は
示しつつあるといえる。
では、宗教自体と脳科学の接点はどのようなものか?次の節では、脳科学との対話を積極的に行って
いるチベット仏教について、見ることにしよう。
2.2.3.4 脳科学と宗教の積極的対話―意識と生命研究所
1990年ごろまでに起こった、神経科学的な人間理解への変化に対する諸宗教の反応の中で、チベット
仏教の積極性は、きわだったものである。その背景には、1980年代における神経学者フランシスコ・ヴァ
レラとチベット仏教の指導者であるダライ・ラマの出会いがあった。
ヴァレラは、ウンベルト・マトゥラーナとともに、トポロジカルな発想に貫かれた「オートポイエーシス」の概
念を提示した理論生物学の研究によって知られたが、1973年、故国チリで起こったピノチェットの軍事ク
ーデターによって、アメリカに亡命、さらに1年後、ヨーロッパに渡った。このアメリカ滞在中に、チベット仏
教の導師チュギャム・トゥルンパに出会って、瞑想修行を始めており、後年の神経科学の著作『身体化さ
れた心』には、メルロー・ポンティの現象学とともに、仏教の影響が、色濃く見られる。
一方、ダライ・ラマは、少年期から、実証と論理的吟味、弁証を重視する仏教論理学(因明)の徹底した
訓練を受け、また、科学技術への憧れを抱いて育った。
ヴァレラとダライ・ラマは、1983年、国際会議で初めて会い、科学と宗教の対話という共通の関心を追
求する可能性について、考えるようになった。その後、カリフォルニアの実業家で1974年から瞑想修行を
行っていたアダム・エンゲルが加わって、実務を担当するようになり、1987年、最初の「精神と生命」会議
が、インド・ダラムサラで行われたのである。(注31)
第一回の「精神と生命」会議は、認知科学と仏教の対話をテーマにし、ダライ・ラマ、ヴァレラに加え、ロ
バート・リヴィングストン、エリノア・ロッシュ、ニューコーム・グリーンリーフ、ジェレミー・ヘイワードなど、認知
科学、神経科学、神経生物学、脳の発達、人工知能、進化生物学の一流の専門家を招いて行われた。
午前中は、それぞれの分野の先端的研究が説明され、午後は、自由な討論を行う。以後、このスタイルが
踏襲され、量子力学、宇宙物理学をテーマとした三回を除き、脳科学と生命科学を中心とするゲスト・スピ
ーカーの人選、コーディネーターは、死の間際まで、大半、ヴァレラがつとめた。
2007年まで、15回を数える「精神と生命」会議のゲスト・スピーカーとなった科学者には、チャーチラン
ド(心の哲学)、アントニオ・ダマシオ(脳科学)、ラリー・スクワイア(記憶研究)、カバット・ジン(医学)、ナン
シー・アイゼンバーグ(発達論)、リチャード・デーヴィッドソン(神経心理学)、デーヴィッド・フィンケルスタ
イン(物理学)、ザジョニク(量子テレポテーション)、ピート・ハット(宇宙物理学)、エリック・ランダー(ゲノム
研究)、ウルスラ・グッドイナフ(進化生物学)、フレッド・ゲージ(神経幹細胞研究)、マイケル・ミーニー(神
経生物学)、エヴァン・トムプソン(脳科学)などがおり、そのうち、ダマシオ、ジン、ハットらは、1990年に開
設された「精神と生命」研究所の評議委員を、現在、つとめている。
「精神と生命」会議は、インフォーマルかつ率直な雰囲気のなかで、実質的な議論を行うため、当初、非
111
公開で行われ、毎回の記録が出版されていたが、2003年からは、MIT、ジョージタウン大学医学センタ
ー、ジョン・ホプキンス大学医学部、エモリー大学などを共催者として、部分的に、公開されるようになった。
さらに、2004年から、毎年、一週間の合宿形式で、「精神と生命・夏の研究所」(Mind&Life Summer
Research Institute)が開催され、脳科学、医学、心理学の大学院生、研究者、瞑想修行者、仏教学者、心
の哲学者などが集まり、瞑想の脳への影響をテーマに、発表、討論、瞑想の実修などが、行われている。
また、「精神と生命」会議の副産物として、エモリー大学を中心とし、インドにおいて、脳科学の基本をはじ
め、僧侶の科学教育が行われている。
近年めざましいのは、瞑想の神経科学的、生理学的影響の研究(免疫力の向上、うつ病への治療的適
用など)であり、カバット・ジン、デーヴィッドソンらが、その代表である。その背後にあるのは、一人称の意
識体験の内観と三人称の神経科学の結合から、意識の研究に、新たな局面を開こうとする研究の動向で
あり、このような関心は、初期の「精神と生命」会議におけるヴァレラ、ダマシオらの発言に、はっきり見られ
る。
「精神と生命」研究所について考えるうえで重要なのは、異なるディシプリンが、それぞれの限界を意識
しながら、対話を続けていこうとする姿勢にある。宗教は、伝統に盲従し、外からの批判や新たな知識を
否定する傾向をもつ。そのことの自覚を、科学はうながすことができる。
一方、科学は、特定のパラダイムによって、すべてが説明できるかのような、幻想におちいる危険をはら
む。ヴァレラ、ダマシオの関与の重要な要因は、いずれも、現代の神経科学が、意識そのものを説明する
ことから、ほど遠いという認識にある。
次章で述べるように、ヴァレラは「創発」の概念によって、特定の認知タスクが、マクロなレベルの神経細
胞集団の活動を制御することを表現し、トップダウンの因果性を理論の重要な要素とした。その土台は、
生物学であり、意識の転生を考える伝統的仏教の意識論ではない。ダマシオもまた、物質から意識の発
生を解き明かすことを、夢見ている。だが、その目標からははるかに遠いことを、二人とも認めている。この
ような両者の認識が、生産的な対話を可能にしたのだといえる。
さらに、宗教そのものの内部から考えると、諸宗教の伝統の生まれた時代、地域に特有の限界を認識し、
脱中心化を行うことは、異なる宗教同士が対話するための基本的条件である。「精神と生命」研究所は、
キリスト、ユダヤ、イスラーム、ヒンドゥー、仏教などの対話をテーマに、国際宗教会議を開いているが、そ
こにはデーヴィッドソンらが参加し、対話のツールの一つとして、神経科学を用いる試みが行われている
のである。
2.2.3.5 宗教と脳科学―結びにかえて―
これまで見てきたように、宗教の脳科学的研究は、人類進化、統合意識、環境と人間、人間の精神的欲
求や宗教体験と相関する神経回路の解明などにおいて、重要な成果をあげつつある。また、宗教と脳科
学は、ただ対立するのではなく、それぞれの限界を認識しつつ、対話することによって、新たな実りをもた
らす可能性がある。さらに、諸宗教の相互理解のための方法として、神経科学の知見を用いることは、有
意義であるかもしれない。
その一方、両者のよって建つ基盤の根源的な違いについて、無自覚であることは、やはりできないだろ
う。それは、より広くいえば、意識と身体、意識と物質の関係についてであり、脳科学の文脈においては、
心脳問題である。
脳科学は、心は脳の機能である、あるいは、心は脳から生まれることを、前提として成り立っている。エ
112
ックルス、ペンフィールドら、少数の例外を除くと、一元論が、現在の脳科学の主流のパラダイムであり、こ
れは、死後の意識の存続を中心とする世界宗教と、基本的に異なっている。
この点について、二つの可能性を指摘して、結びにかえよう。
一番目は、臨死体験の研究の進展である。セーボムは、脳死状態の基準を完全に満たしたと判定され
てから後、臨死体験を報告した事例について、述べている。(注32)この女性の場合、32度 2 分まで体温
を下げる低体温療法によって、基底大動脈の動脈瘤を取り除く手術を受けており、脳の血液は、すべて
抜かれ、低体温による心臓停止、心拍、呼吸の停止、平坦脳波、クリック音に対する電位の消失(脳幹の
機能停止)などが、観察された。その後、手術中、手術室で起こった出来事やそこにあった物を観察し、
聞くことができたと報告し、それは、正確であることが確認された(手術中、目はテープされ、耳にはクリッ
ク音を発生するために耳の形にぴったりはまるスピーカーが入れられていた)。また、他の古典的な臨死
体験の要素―トンネルないし渦巻き、明るい光、光の中に家族の姿を見る―をも報告しており、臨死体験
中、光の中で見た家族のなかには、その死について、彼女が知らなかった遠い親戚も含まれていた。この
ような事例について、どのように理解すべきか、考えることは、心脳問題について、理解の進展をもたらす
だろう。
二番目は、チベット仏教におけるトゥクタム(Tib.thugs dam)の研究である。光明のヨーガや、マハームー
ドラ、アティヨーガ(ゾクチェン)と呼ばれる、高度の瞑想を行うようになった修行者は、死のさい、呼吸が停
止してから、「光明」と呼ばれる意識状態に入り、数日ないし、長い場合、数週間にわたって、瞑想のポー
ズを保ち、体液の流出等は起こらないことが知られている。(注33)
この背後には、意識と物質、意識と身体の関係をめぐって、1000 年余り、チベットに伝承されてきた後
期密教の意識論が存在する。密教の理論によれば、生きている間、意識の本体は、身体に存在し、意識
と身体、意識と神経は、相互に、因(主要な原因)と縁(副次的原因)の関係にあるという。種子が因、太陽
や水が縁であるのと同様に、意識の因は
意識であり、それがいかにあらわれるかは、縁としての身体、脳による。一方、身体の因は身体であり、そ
の現象には心が副次的にかかわる。その両者の背景には、完全な対称性が支配する「法界」-真空場と
よく似た性格を持つーがあり、それを直接体験する意識状態が、「光明」である。
死の時、だれもが、一瞬、この光に満ちた意識を体験する。だが、高度の修行を達成し、生きている間、
「光明」を体験することが出来るようになった修行者は、呼吸が停止してから、瞑想の座法がくずれるまで
の間、この「光明」の深い三昧に入っているとされ、それを「トゥクタム」(「聖なる心」)と呼ぶのである。「トゥ
クタム」の期間が終わると、意識と肉体は分離したとされ、瞑想のポーズはくずれる。実は、この「トゥクタ
ム」に入った師の一人を、ヴァレラは、身近に目撃しており、それが、デカルト的二元論か唯物論かという
対立を超えた理解をもたらす可能性をもっていると示唆しているのである。この「光明」についての脳科学
的研究は、心脳問題について、重要な進展をもたらし、意識の理解に、新たな地平を開く可能性を持つ
だろうと思われる。
注(2.2.3)
(1)ローズによると、このような人間観の変化は、規律訓練型社会(フーコー)以降に出現した管理社会
(ドゥルーズ)の現象であるとされる。その背景には、精神医学の研究が、事実上、巨大な資本を投入して
行われる製薬会社の新薬開発のあと追いとなり、治療が投薬と同一視されるようになった事情があるとい
う。Nikolas Rose, Becoming Neurochemical Selves,
113
www.lse.ac.uk/collection/sociology/pdf/Rose-BecomingNeurochemicalSelves.pdf
(2)W.ジェームズ『宗教的経験の諸相』(上、下、桝田啓三郎訳、岩波文庫、1969-1970 年)。
(3)M. Alper, The God Part of the Brain: A Scientific Interpretation of Human Spirituality and God,
Rogue Press, 1996。ここでは、増補版(Sourcebooks, 2006)を参照した。
(4)M.Alper, ibid., pp10-11。
(5)日本において、このような観点から論じた研究として、ドストエフスキーとてんかんの時間感覚につい
ての木村敏の分析、南方熊楠について書かれた近藤俊文のモノグラフなどがある。木村敏『時間と自己』
(中公新書、1982 年)、近藤俊文『天才の誕生―あるいは南方熊楠の人間学―』(岩波書店、1996 年)
参照。
(6)この実験は、1997 年の全米神経学会で発表された。V・S・ラマチャンドラン&サンドラ・ブレイクスリー
『脳の中の幽霊』(山下篤子訳、角川書店、1999 年)。
(7)Michael Persinger,
The Temporal Lobe: the biological basis of the God experience,
Neuropsychological basis of the God beliefs,
Neurotheology : brain,
Praeger,
1987 。
science, spirituality, religious experience,
in The
こ の 論 文 は 、 R.Joseph(ed.),
University Press,
2003,
pp273-278 に再録されている。引用はこの論集による。
( 8 ) Michael Persinger,
Experimental stimulation of the God experience,
in R.Joseph(ed.),
Neurotheology, ibid., pp279-292. Michael Persinger& F.Healey, Experimental facilitations of the
sensed presence: possible interrelation between the hemispheres induced by complex magnetic fields,
Journal of Nervous and Mental Diseases 190(2002):533-41
(9)このあたりの話は、M. Beauregard & D. O’Leary,
The Spiritual Brain: a neuroscientist’s case for
the existence of the soul, HarperOne. 2007, pp79-100 による。
( 1 0 ) Granqvist. Pehr,
suggestibility,
et al.,
Sensed presence and mysitical experiences are predicted by
not by the application of transcranial weak complex magnetic fields,
Neuroscience
Letters, doi:10.1016/j.neulet.2004:10.057(2004)
(11)Michael Persinger,
The Temporal Lobe: the biological basis of the God experience,
(12)Michael Persinger,
Experimental stimulation of the God experience, ibid.,
(13)D. Hamer,
The God Gene, Anchor Books,
ibid., p.276
p.291
2004
(14)C.R.Cloninger, The Tridimesional Personality Quesitionnaire: U.S.Normative Data. Psych Rep
69, 1047-57, 1991
(15)M.J.Meaney et al.,
Neonatal handling alters adrenocortical negative feedback sensitivity in
hippocampal
glucocorticoid
Type
Ⅱ
receptor
binding
in
the
rat,
Neuroendocrinology
50(1989):597-604
D.Liu
et
al.,
Maternal
Care,
hippocampal
hypothalamic-pituitary-adrenal responses to stress,
glugogorticoid
receptors,
and
Science 286(1999):1155-58
A.B.Fries et al., Early experience in humans is associated with changes in neuropeptides critical for
regulating social behavior,
Proceedings of the National Academy of Science 102(Nov.22,
2005):17237-40
A.A.Hane and N.A.Fox,
reactivity,
Ordinary variations in maternal caregiving influence human infants’ stress
Psychological Science 17, 550-56
114
S.Begley,
Train Your Mind, Change Your Brain, Ballantine Books, 2007, pp161-182
(16) M.Beauregard et al.,
Neural correlates of a mystical experience in Carmelite nuns, Neuroscience
Letters 405(2006):186-190
M.Beauregard and D.O’Leary, The Spiritual Brain,
ibid., pp255-288
( 1 7 ) C.Laughlin &E.G. d’Aquilli, Biogenetic Structuralism,
Columbia University Press.
1974.
C.Laughlin, J.McManus & E.G.d’Aquilli, Brain, Symbol, and Experience, Columbia University Press,
1992
(18)A.Newberg, E.d’Aquilli&V. Rose, Why God won't go away, Ballantine Books, 2001. アンド
リュー・ニューバーグ&ユージーン・ダギリ『脳はいかにして<神>を見るか』(茂木健一郎監訳、PHP 研
究所、2003 年)。ニューバーグとアイヴァーセンは、その後、瞑想に関する神経回路、神経伝達物質につ
いて、より詳細な仮説を提示している。Cf. Newberg, A.&Iversen, J.,
mental
task
of
meditation:
neurotransmitter
and
The neural basis of the complex
neurochemical
considerations.
Medical
Hypotheses(2003) 61(2), 282-291
(19)Newberg, A. et al., 1997. The measurement of cerebral blood flow during the complex cognitive
task of meditation using HMPAO-SPECT imaging, Journal of Nuclear Medicine, 38:95P
(20)Newberg A. et al.,
2000. Cerebral blood flow during the meditation: Comparison of different
cognitive tasks. European Journal of Nuclear Medicine.
(21)J. Austin, Zen and the Brain, MIT Press,
ている。J.Austin, Zen-Brain Reflections,
(22)以下の記述は、おもに、J.Austin,
1998。オースティンは、2006 年に、その続編を出版し
MIT Press,
2006
Zen and the Brain,
ibid., pp589-624 による。
(23)セロトニンとの関連については、たとえば、脳幹の研究の専門家である有田秀穂の『セロトニン欠乏
脳』(NHK 出版、2003年)に、平易に説明されている。なお、ニューバーグらによると、一般に、瞑想によ
って、セロトニン、ヴァソプレッシン、GABA、メラトニンは増加し、コルチゾル、ノルエピネフリンは減少する。
またエンドルフィンは、量は不変だが、リズムが変化するという。Cf. A.Newberg&J.Iversen, On the
“neuro” in neurotheology, in R.Joseph(ed.), Neurotheology, ibid.,
pp251-278
(24)この変化は、メキシコのヤキ・インディアンとの師弟関係を主題とするカルロス・カスタネダの「ドン・
ファン」シリーズや、シャーマニズムの普遍的要素を取り出し、生み出されたマイケル・ハーナーの「ネオシ
ャーマニズム」のワークショップに、端的にあらわれている。
( 25 ) そ の 最新 の 成 果 は、 M.Winkelman&T.Robert(eds.),
hallucinogenic substances as treatments(vol.1&2),
Psychedelic Medicine:new evidence for
Praeger, 2007 で読むことができる。
(26)以下、ウィンケルマンのシャーマニズム、サイケデリックス論は、主に次の著作、論文による。
M.Winkelman, Shamanism : the neural ecology of consciousness and healing,
M. Winkelman,
Psychointegrators:
Bergin&Garvey, 2000.
multidisciplinary perspectives on the therapeutic effects of
hallucinogens, Complementary Health Practice Review,
vol. 6(3), 2001, pp219-237
(27)A.Mandell, Toward a psychobiology of transcendence:God in the Brain, in D.Davidson and R.
Davidson (eds.),
The Psychobiology of consciousness,
Plenum Press, 1980, pp379-464.
A.Mandell,
Interhemispheric fusion, Journal of Psychoactive Drugs, 17(4), 257-266
( 2 8 ) F.Vollenweider,
Recent advances and concepts in the search for biological correlates of
hallucinogen-induced altered states of consciousness, The Heffner Review of Psychedelic Research,
115
vol. 1,
1998, pp21-32
(29)ウィンケルマン教授のオーラルコミュニケーション。2007 年 10 月。
(30)以下、おもに、大橋力『音と文明』(岩波書店、2003 年)による。
(31)「精神と生命」会議、および、研究所の歴史については、創立者の一人で、所長であるアダム・エン
グルの解説を参照した。R.Adam Engle,
About the Mind and Life Institute,
in S.Begley,
ibid.,
pp.255-261
( 3 2 ) M.Sabom,
Light and Death:one doctor’s fascinating account of near-death experience,
Zondervan, 1998
(33)ダライ・ラマの師も、この光明の状態に 13 日間入ったという。ダライ・ラマ『ダライ・ラマ 科学への旅』
(伊藤真訳、サンガ、2007 年)206 ページ。
116
2.2.4 チベット仏教瞑想と脳科学
(京都文教大学:永澤哲)
前章で述べたとおり、現在、世界の宗教の中で、チベット仏教は、脳科学を中心とする諸科学との対話
に、とりわけ積極的であり、近年急速に発達した非侵襲的計測法をはじめとする医学的研究において、チ
ベット仏教の瞑想を対象とする研究は、きわめて興味深い成果をもたらしつつある。また、チベット仏教、
医学は、現代の神経科学と共通性の高い神経理論、および、それと結びついた修行、哲学、医学倫理を
持っている。そこで、本章では、今回の研究プロジェクトの一環として行われた研究論文・仏教文献の文
献調査、および、チベット、アメリカの現地調査にもとづいて、チベット仏教の瞑想をめぐる先端的研究の
現状、チベット医学の神経理論、修行、倫理の一端を明らかにし、さらに、今後の意識の脳科学研究の方
向について、考えることにしたい。
2.2.4.1 はじめに―瞑想の人類史
人類の意識の歴史において、瞑想の技法が、いつごろから使われるようになったかについては、推測の
域を超えることはむつかしく、必ずしも明らかではない。だが、比較宗教学者のエリアーデによると、一定
の姿勢で座って行われる瞑想が特別な技法として発達したのは、インドにおいてだとされる。遅くとも、紀
元前 1500 年ごろまで遡るヴェーダ文献の中に、後にヨーガとして体系化される思考、技法の萌芽が見ら
れ、こうした意識の深層に向かう探求が、その文明の出発からきわめて組織的に行われ、伝承されてきた
点に、インド文明の特徴があるといえる。(注 1)
重要なのは、これらの探求は、近代の深層心理学が対象とする無意識の領域を超えていくことを、最初
から強く志向してきたことである。欲望や習慣化されたパターンからなり、人間の行動、認知、意識の表層
を支配している無意識の領域の構造や傾向―「習気」(vāsana)と呼ばれる―を、インド哲学は、熟知してい
る。だが、無意識をめぐる理論は、それらの領域を焼き尽くし、さらに根底にある純粋な叡智―「仏性」「明
知」などと呼ばれる―に到達するための手段の一つだと観念されている。そうした探求の一環として、さま
ざまな瞑想技法が、高度な発達を遂げたのである。
2.2.4.2 チベット仏教の歴史、哲学のサブカテゴリー(九つの乗り物)
チベット仏教は、こうしたインドの精神文明を丸ごと移植しようとしたチベット民族の強烈な情熱と営為の
結果だといえる。チベットは、ヒマラヤをへだて、ネパール、インドと境を接しており、6 世紀から 14 世紀に
かけ、ほぼ 800 年にわたり、インドから直接、仏教を輸入するための巨大な努力が傾けられた。多くの訳
教僧―その総数は 400 人にのぼり、帰国したのは約半数とされる―が雪山を越え、また、多くのインド人
学僧、密教修行僧が、招かれ、精力的な仏典の翻訳、修行の伝授が行われたのである。その仏教招来
の熱意は、インドにとどまることなく、さらに、現在の中国、インドネシア、キルギスタンなどにあたる地域の
仏教の伝統をも、中央アジアの高原にもたらすことになった。
こうして、チベット仏教のユニークさは、インド―および、その周辺―における仏教の発達の歴史を、ほ
ぼ純粋に保ち、その全体が移された点にある。インドの仏教は、度重なるイスラームの侵攻後、次第に衰
微し、14 世紀までに消滅した。あたかも、それを予見していたかのごとくに、チベットでは、インド語からの
きわめて忠実な仏典の翻訳が行われ、また、他のアジア地域には広がらなかったインド後期密教が導入
され、その伝統が現在にいたるまで、続いてきた。
仏教には異なる瞑想がある。それらの特徴を明らかにするために、その全体を、仏教哲学・瞑想の伝統
117
的分類法に従って、示しておこう。チベットには、現在大きく四つの宗派があり、仏教の哲学、修行の異な
る潮流については、いくつかの分類の方法がある。そのうち最もコンプリートなのは、ニンマ派の「九乗」―
「九つの乗り物」:「乗り物」とは、悟りにいたる方法の意味である―の分類法である。それは、次のようなも
のだ(右に、その内容を示す)。
(1)
世俗の神々と人間の乗り物―ヒンドゥー教の諸潮流。
(2)
声聞・独覚乗―ほぼ、上座部仏教(いわゆる「小乗」仏教)に対応する。
(3)
菩薩乗―大乗仏教。「漸悟」および「頓悟」(=「禅」)に分かれる。
(4)
クリヤタントラ―外的行為、浄化、沐浴に重点がおかれる。
(5)
ウパヤタントラ―真言宗の「大日経」=胎蔵界曼荼羅に対応。
(6)
ヨーガタントラ―「金剛頂経」=金剛界曼荼羅に対応。
(7)
マハーヨーガタントラ
(8)
アヌヨーガタントラ
(9)
アティヨーガタントラ
(2)と(3)は顕教、(4)から(9)は密教である。このうち、(7)から(9)が、後期密教であり、ほかと異なる
ユニークな理論と修行を持っている。これらの密教は、チベットにのみ移植されたのである。(注2)
重要なのは、この後期密教において、伝統医学と仏教の間に、強い絆が作られ、独自の神経理論が発
達した点である。後に第 4 節で、少し詳しく見るように、この神経理論は、現代の神経科学といくつかの点
において、深い一致を示しており、意識の科学的研究を行うにあたって、いくつかの示唆を含んでいる。
2.2.4.3 慈悲の瞑想―情動脳の変容
2.2.4.3-1 ヴァレラのエンアクティヴ・アプローチと神経可塑性
R.デーヴィッドソンらが、チベット仏教の修行僧を被験者にして行った研究―その一部は、2004 年、
2007 年に論文として発表されている―は、瞑想をめぐる科学的研究の新たな地平を開いたものと評され、
慈悲や意識の集中といった異なる瞑想が、それぞれ異なる特定の神経回路の賦活パターンと関連してお
り、情動脳の変容や注意、意思決定プロセスの強化をもたらすことを強く示唆している。(注3)
ここでは、そのうち、とくに慈悲の瞑想をめぐるデーヴィッドソンらの研究について、概観したうえで、その
意味するところについて、考えることにしたい。
前章で明らかにしたように、デーヴィッドソンらは、意識と生命研究所と深い結びつきを持つ神経心理学
者であり、その研究の方向には、フランシスコ・ヴァレラの理論と、神経可塑性(neuroplasticity)をめぐる近
年の脳科学の動向が、大きな影を落としている。そのそれぞれについて、まず、少し見ておこう。
ヴァレラの理論の最終的到達点は、死の直前にトンプソンと連名で発表された「ラディカルな身体化」と
いう論文において、明らかにされている。(注4)この論文の中で、ヴァレラは、大きく以下の二つの点を主
張した。
1、 複雑系システムにおける「創発」の一般的な諸特性の帰結として、神経活動と意識との間には、双方
向的、相互的な関係性が存在することが予想される。
2、 意識が成立するために決定的に重要なプロセスは、常に脳にしばられた神経活動イベントだけに限
118
定されるものではない。それは、脳―身体―世界という区分を横断するプロセスである。
1でいう「創発」(emergence)とは、非線形的なシステムにおいて、下位の要素のレベルに還元できない
別のダイナミクスないし法則性が出現し、下位の要素の振る舞いが、上位レベルによってトップダウン的
に規制され、あるいは、それに「隷属」することを意味する。分かりやすい例で言えば、混雑した駅で、どの
ように歩くかは、個々の乗客の意思や好みとは別の、集団の流れのパターンに従うことになる。
この「創発」の理論モデルによれば、意識は、特定の神経細胞群から構成されるクラスや回路レベルで
はなく、脳の広い領域で上位レベルのパターンが過渡的に生成する、「創発」的なダイナミクスのなかで、
とらえる必要があることになる。その結果、意識と局所における神経活動の間には、トップダウンとボトムア
ップの、双方向的ないし相互的な関係が存在すると考えられることになる。
2は、意識を、脳、身体、世界を横断するプロセスとみなす考え方であり、人間の意識を、身体・環境(世
界)との密接な関係の中で、とらえることを意味する。
デーヴィッドソンらの研究との関連において、重要なのは、「創発」と意識のダイナミクスが、広い領域に
おける神経細胞の同期現象(共鳴)に関連すると、この論文が強く示唆している点にある。創発のプロセ
スにおいて、神経細胞の広範囲な同期活動をともなう意識のはたらきは、メタレベルでの秩序を制御する
秩序パラメーターとして機能する。そのため、ヴァレラによれば、脳の神経活動の広域の同期現象が、脊
椎動物の行動、意識の起因となっていることが予測される。デーヴィッドソンらの研究は、そのことを、人間
の慈悲という感情について、示したものと考えられるのである。
もう一つの神経可塑性は、体験や行為の積み重なりの中で、人間の脳が、たえず、ダイナミックに自己
を組織しなおしていることを意味する。脳は、あらかじめ決められたプログラムによって配線された固定し
た構造というよりも、体験や環境との相互作用の中で、たえず変化するプロセスとして存在している。ヘッ
ブの法則にもとづき、同時に発火する神経細胞同士の間に、より持続的な関係、シナプスの配線が形成
される。特に重要なのは、近年の研究によって、注意や意思が、神経ネットワークの形成において、決定
的な意味を持っていることが明らかになりつつある点である。(注5)慈悲の瞑想をはじめ、瞑想は、まさに、
この注意、意思の洗練に深くかかわっているのである。
2.2.4.3-2 慈悲の修習1
2004 年に発表されたデーヴィッドソンらの研究論文は、「長期の瞑想修行者は、精神的修行において、
大きな振幅のガンマー波の同期を自己誘導する」(Long-term meditators self-induce high-amplitude
gamma synchrony during mental practice)と題されている。(注6)この研究の最も重要な特徴は、8 人の熟
達したチベット仏教の瞑想修行者を被験者とした点にある。
瞑想の科学的研究は、1950 年代に始まり、その初期の研究は、ヒマラヤの山中で長期にわたる隠棲修
行を行うインドのヨーガ行者を対象とするものだった。その後、ほぼ 1970 年代に始まる第二期の研究は、
アメリカをはじめ西欧諸国で普及した超越瞑想などを対象とするものが多く、被験者の瞑想体験には、大
きなばらつきがあり、相互に矛盾する結果が出ている場合も多い。これは、ヴァイオリンの演奏が体性感
覚野や運動野にもたらす影響を調べるのに、ヴィルトゥオーゾと練習を始めたばかりの初心者を区別せず、
対象としたのと同じことだったといえる。
それに対し、デーヴィッドソンらの研究の被験者となった 8 人のチベット人修行僧は、平均年齢 49 歳。
15-40 年の修行体験を持ち、隔離された環境の中で、1 万から 5 万時間を隠棲修行に費やしていた。対
119
照統制群は、10 人の学生で、平均年齢 21 歳だった。
チベットにおいて、伝統的な三年三ヶ月の隠棲の場合、午前 3 時前に起きだし、夜 10 時ごろの就寝ま
で、瞑想―ふつう 1 日 12 時間―と、読経、勤行に明け暮れる。被験者を選ぶにあたってデーヴィッドソン
らの採用した基準は、このタイプの隠棲における 1 日の瞑想時間を 8 時間として計算したものであり、1 万
時間は、ほぼ、三年三ヶ月の隠棲修行一回分に相当する。
このような長期の隠棲修行に入った経験を持つ修行者が、「無所縁(対象のない)慈悲」の修習を行っ
た場合、起こる現象を、この論文は対象としている。その瞑想の内容については、「無条件の愛と慈悲」を
修するもので、特定の対象がなく、慈悲が自己の存在に「浸透」するように修習する、「純粋な慈悲」だと
説明されている。
じつは、この「無所縁の慈悲」(compassion without reference. Tib. dmigs med snying rje)が、何をさす
かは、微妙な問題を提起する(アメリカにおける現地調査で、Mind&Life Conference に聴衆として参加す
る機会を得たが、パネリストの一人であるダライ・ラマも、この瞑想の内容について、疑問を呈していた)。
伝統的な仏教のヴォキャブラリーの中で、「無所縁」というのは、特定の対象への意識集中や意図を放
棄した、内容を持たない修習の過程をさす。ダルマキルティによれば、「無所縁の慈悲」は、対象のある慈
悲の修習のあとに、すべて幻であることを認識しながら、同時に慈悲がある状態のことを意味するとされる。
ところが、この研究の土台となる実験において、「無所縁の慈悲」は、特定の対象に向けられるのではない
慈悲と定義されており、慈悲を意図的に生み出すことを意味しているのである。この点について、少し、説
明しておくことにしよう。
慈悲の修習は、九乗のうち、三番目の菩薩乗のなかで、段階的に空性の悟りにいたる「漸悟」の修行に
おいて、重要な瞑想である。デーヴィッドソンたちの論文がいう「無所縁の慈悲」は、この慈悲の修習の最
終段階で、体得されるものだといえる。長期の隠棲修行を行う場合、すでに述べた九種類(「九乗」)の哲
学・瞑想を、一定期間、段階的に修習するのが普通であり、この慈悲の修習は、無常をはじめ、世間への
執着を断ち切る出離の修習―二番目の声聞乗にあたる―のあとで、実践される。
慈悲の瞑想は、大きく、以下の三つの方法からなっている。
1、 心の浄化(Tib. blo sbyong)
2、 四無量心(Tib. tshad med bzhi)
3、 抜苦与楽(Tib. gtong leng)
最初の「心の浄化」は、生きとし生けるすべての感覚を持つ生き物(「有情」)が、かつて母であったと考
え、その恩義に報いようと、決意する瞑想である。仏教をはじめ、インド思想の大半は、輪廻転生を事実と
して認める。そのことをもとに、生命の連続性について、考え抜くことが、この「心の浄化」の眼目である。
その過程は、いくつかに分かれるが、まず、今生の母の恩について、考えることからはじめる。自分が、
現在生きていることは、みずからを生み、はぐくんでくれた母親抜きに考えることができない。母は、妊娠
中、つわりをはじめ、さまざまな苦しみを耐え、出産まで、胎内ではぐくむ。その後の出産は、強烈な痛み
と死の危険すらある。生まれてからは、乳を与え、病気にならないかといつも気にかける。食物が取れるよ
うになると、特別にやわらかく調理したものを、食べさせる。さらに、世間の中で生きていくことができるよう
に、食器の使い方、話し方、などを教えてくれる。それらの自分がこうむった恩について、具体的に」考え
ることが、第一段階である。
120
だが、この恩は、じつは、今生の母に限られるものではない。そのことについて、深く考えるのが、第二
段階である。無始の過去から、輪廻を繰り返してきた。そのなかで、自分の母でなかった生き物は、誰一
人いない。貧しい家に生まれたこともあっただろう。そのとき、母は、手に傷をおおいながら、石を運び、き
つい労働を行うことによって、自分を養ってくれたことがあるだろう。肉食の動物として生まれたとき、母は、
自分に食べさせるために、他の生き物をあやめたことであろう。こうして考えていくと、輪廻の世界をさまよ
っているどんな生き物の苦しみも、自分と無関係には存在しないことになる。そのことを考え抜き、かつて
こうむった恩義を返すために、すべての有情を、苦しみから解き放とうと決意する。
その決意を、どのように実践したらいいか、考えるのがその次の段階である。自分に、他者を救い、助
ける力があるか、考える。すると、煩悩と無知におおわれたままでは、不可能であることが分かる。そこから、
すべての生きとし生けるもののために、修行をしようとする決心が生まれる。
こういう思考を、段階的に積み重ね、意志をはぐくむのが、「心の浄化」の眼目である。
この「心の浄化」のつぎに、二番目の「四無量心」にはいる。
「四無量心」とは、四つの「無限の心」の意味であり、対象を区別せず、すべての有情に向けて、慈(い
つくしみ)、悲(あわれみ)、喜(よろこび)、捨(平等)を育てる修習である。その内容は、次の四行の言葉
によって、簡潔に表現される。
「すべての有情が、幸福と幸福の因を持ちますように。
すべての有情が、苦しみと苦しみの因から離れますように。
すべての有情が、苦しみのない真の幸福から離れることがありませんように。
すべての有情が、近しい者への執着と遠い者への怒りを超えた大いなる平等な心の境地
にとどまりますように。」
この四無量心を、どういう順番で修習するかは、伝統によって異なる。ここでは、ニンマ派を例に、説明
することにしよう。ニンマ派の場合、捨から始め、慈、悲、喜と進む。
捨の瞑想は、すべての生き物に対する平等心を育てることである。友敵、愛着と嫌悪の対象となってい
るものすべては、ただ、さまざまな因縁の結果として、そのように現れているにすぎない。今、友であるもの
が、かつては敵であったかもしれず、あるいは、未来において、敵となるかもしれない。今、敵であるもの
が、かつて自分の母として、大事に自分を育ててくれたかもしれない。そのことを、繰り返し考え、すべて
の生き物に対して、平等な心を抱けるようになるまで、坐り続ける。ここで重要なのは、平等な心は、無関
心と異なるということである。かりに、この瞑想をつうじて、すべての他者に対する無関心が生じたなら、そ
れは過ちであり、次の慈の修習によって、修正される必要がある。
慈は、「いまだ幸福でないものが、幸福になるように」と思うことである。母鳥が巣でひなを抱き暖め、食
べ物を与えるときと同じように、あらゆる生き物が、幸せになるように、と思う心を修習する。
その次は、悲である。悲は「苦しみにあえいでいるものが、苦しみから解き放たれるように」と思うことであ
る。刑場に連れて行かれようとしている罪人、屠殺されようとしている牛が、自分の生みの母であると思い、
苦しみをなんとか取り除こうと思う。あるいは、激しく流れる川に、一人子が流され、おぼれているのを、どう
することもできず、泣き叫ぶ、手のない母親のごとくに、思う。この修習をつづけると、時に、苦しみに耐え
られなくなる。その場合、次の喜にうつる。
最後の喜は、「幸福であるのを見て、そのことを喜ぶ」ことである。母性愛の強いラクダが、迷っていた子
121
供と再会し、感じる喜びにたとえられる。
こうした四つの心の状態を、一つ一つ、順番に、繰り返し瞑想するのである。
三番目の「抜苦与楽」は、慈悲の瞑想の中核であるとともに、思考の消滅した無分別の境地を体験する
ための重要な方法でもある。その核心は、呼吸とともに、他者の苦しみをもらい、みずからの幸福を贈ると
いうイメージを修習することである。
最初に、心臓または喉に、如意宝珠(あらゆる願いをかなえる宝の玉)を観想する。
息を吸うとともに、六道の有情の苦しみ、悪業が、黒い煙となって入ってくる。心臓の如意宝珠の輝く光
によって、消えてなくなる。
息を吐くとともに、心臓の如意宝珠から喜び、幸福、富、善業などが、光となって放たれ、有情の苦しみ
を和らげる。
このイメージを、繰り返すのである。
この「抜苦与楽」の修習を続けていると、あるとき、すべての思考が止まる。その状態を放置し、観察す
ることが、空性を体認するための、重要なステップになる。空性を直接に体験すると、迷いの現象の中で
苦しむすべての生命に対する、強烈きわまりない慈悲が、自然に生まれる。大乗仏教は、空性の悟りを絶
対の菩提心(「勝義菩提心」)と呼ぶが、それは、空性の悟りが、自然にほとばしる慈悲をともなうからであ
る。
伝統的な三年三ヶ月の隠棲修行を行う場合、これら三つの慈悲の瞑想を、数ヶ月から半年、集中的に
修習し、その後、密教の修行に入ってからも、一座の瞑想のはじめに行う。また、人により、慈悲の瞑想を
テーマにきわめて長期間―数十年にわたることもある―、修行することもある。デーヴィッドソンらの論文が
いう「無所縁の慈悲」は、これらの心的訓練の過程をつうじて、生まれるものだと考えられるのである。
さて、実際の測定は、まず、128 チャンネルのセンサーからなる脳波計を用いて、脳波を測定した。その
さい、筋肉の動きによる変化を除くための種々の方法をとった。結果は次のとおりである。
1、基本ライン。ニュートラルで瞑想していないリラックスした状態において、仏教修行者は、統制群と比較
し、徐波に対するガンマー波の比率が、はるかに大きかった。これは、とくに、前頭頭頂内側部(medial
frontoparietal)の電極において、顕著である。
2、ニュートラルな状態に 5 秒から 15 秒とどまったのち、修行僧は「純粋な慈悲」の瞑想にはいった。しだ
いに、力強く、例外的に高い程度のガンマー帯域の同期活動を示した。その同期活動は、個人により、5
分から 10 分に及んだ。
3、この誘導されたガンマー活動の振幅(amplitude)は、瞑想の途中起こりうる頭のまわりの筋肉の収縮を
真似た場合の三倍以上の大きさだった。
4、それ以前に修行した時間数が多いほど、ガンマー波活動の絶対値は大きかった。
5、二人の修行僧において、自己誘導によるガンマー波の振幅は最大だった。その後、異なる型の瞑想
の実験において、聴覚刺激によって引き出される反応について調べたところ、刺激前におけるガンマー
波の振幅が大きいほど、聴覚刺激によって引き出されるガンマー活動の増大幅は大きかった。
6、前頭と頭頂部について、遠距離間の超皮質性の同期は、明らかだった。ある被験者の場合、脳の両
半球の同期活動は、瞑想中、約 30 パーセント増大した。これらの同期活動は、修行僧のほうが大きかっ
た。
7、並行して行われた fMRI の研究によると、線条体尾状核(caudate)、線条体被殻(putamin)、視床、右
122
の島(right insula)、腹側帯状束(anterior cingulated)、前頭
中部左側(left
midfrontal regions)において信号は活発になり、前頭中部右側において信号は減少し
た。
これらの点について、オースティンらの解釈、および、デーヴィッドソンらがアメリカ神経学会で行った発
表をも加え、その意味するところを簡単に書き加えておくことにしよう。(注7)
2から4について。位相同期は、より多くの細胞群が共鳴して働いていることを意味する。すなわち、皮
質間ないし視床皮質における発火が起こっていることを示唆する。これは、意識や高次の認知活動が、
局所的な細胞群にとどまらない、広範囲の細胞の同期による「創発」と関連するとする、ヴァレラの理論が
正しいことを示唆する。
2について。ガンマー波による広範囲の神経活動の同期は、直観的理解やひらめきが生じる、いわゆ
る「アハ体験」のさいにも見られる。通常、ガンマ―波は、2~3 ミリ秒持続し、また、直観的ひらめきの場合、
100 ミリ秒程度の同期が見られるという。ところが、これらの熟達した瞑想者の場合、きわめて強い強度で、
5 分も続いている。これは、「連続的なアハ体験」(デーヴィドソン)にとどまっているようなものだといえる。
1から3について。禅をはじめとする、従来研究の対象となってきた瞑想の場合、遅いアルファー波ない
しシータ波が特異的に見出され、特徴とされてきた。これに対し、慈悲の瞑想は、ガンマー波の速い帯域
での広範囲の同期現象が起こっており、異なる脳の賦活パターンを示している。異なる瞑想は、異なる脳
の活動状態と対応すると考えられる。
1、4 について。ニュートラルなリラックスしている状態においても、修行者はゆったりした徐波に対する
ガンマー波の比率が大きく、また、ガンマー波活動の値は、修行時間の多さに対応している。これは、神
経可塑性により、慈悲の瞑想修行が、一時的ではなく、より長期的な影響を脳の活動に及ぼし、特定の
瞑想や意識状態と関連する神経回路の増強をもたらす可能性を示唆する。
5において用いられた聴覚刺激は、不快を表現する人間の音声(金切り声)であり、慈悲に対応するガ
ンマー波の振幅が大きいほど、他者の不快、苦痛の表現に敏感である可能性を示唆する。
6について。頭頂葉は身体イメージの表象、前頭葉は実行機能にかかわっている。 前頭部と頭頂部の
ガンマー帯域における同期活動は、通常、行動と関連する。すなわち、純粋な慈悲の瞑想は、行動を「準
備」すると解釈しうる。
7 について。他の研究により、右の島と尾状核のネットワークは、共感や母性愛と関連するとされる。こ
のことは、慈悲の瞑想が、共感や母性的な愛を包み込むプロセスであることと対応すると考えられる。(注
8)また、デーヴィッドソンによると、修行者の場合、前帯状皮質、島、体制感覚皮質、小脳と関連する広範
囲の皮質においても、より活発な活動が見られる。このネットワークは「普通、苦痛を感じていたり、誰かが、
苦痛を感じているときに賦活される」。すなわち、慈悲の瞑想により、苦痛に対する感受性が変化する可
能性を示唆する。
7について。線条体尾状核、および(線条体)被殻は、前頭運動野、前運動野、および前頭前野ととも
に働き、より高度の行動、認知を「習慣化する」と見なされる。オースティンによると、この場合、抑制性で
はなく、興奮性の結果をもたらす。すなわち、慈悲の感情は、習慣化されうる可能性がある。
7について。デーヴィッドソンらの神経心理学研究により、前頭前野の左側と右側は、情動との関連に
おいて、非対称的であることが知られている。前頭前野の左側の賦活は、意思、積極性、喜びと対応し、
右側の賦活は、抑うつと対応する。慈悲の瞑想によって、右側の信号が減少し、左側の信号が増大したこ
123
とは、すなわち、慈悲の瞑想が、積極性、喜びの情動を生むことを意味すると解釈されうる。
最後のポイントは、仏教の伝統において、四無量心を始めとする慈悲の瞑想が、六道輪廻の中で最も
幸福な境涯である天(世俗の神)への転生をもたらすとされることを思い起こさせる。
じっさい、この論文に示された脳科学的知見は、慈悲と幸福をめぐる仏教の考え方と、深い一致を示し
ている。仏教は、人間の抱く慈悲、幸福感は、瞑想や社会的実践(六波羅蜜)をつうじて、持続的に成長
し、増大すると説く。慈悲や幸福感は、固定したものではない。慈悲の瞑想や利他的な動機、意志にもと
づいた行為によって、変化するとされる。
これに対し、デーヴィッドソンらの研究は、神経がきわめて大きな可塑性をもっており、慈悲の訓練をつ
うじて、慈悲の情動、意識に対応する神経ネットワークは持続的に成長し、増強されうること、逆に、慈悲
の訓練によって、ネガティブな感情と関連した回路は、しだいに力を失い、消えていくだろうことを、はっき
りと示している。そして、じつは、第四節で説明するように、後期密教の神経理論は、そのことを、現代の
神経科学とよく似た表現で、述べているのである。
2.2.4.3-3 慈悲の修習2(R.Davidson,
2007. Charles L. Raison ,2007)
先に述べたとおり、2007 年 10 月、アメリカにおいて、15 回目の Mind&Life Conference(意識と生命研究
所・エモリー大学共催)が開かれ、現地調査の一環として参加することができた。
今回は、「憶念、慈悲、うつ病の治療」(Mindfulness, Compassion and Treatment of Depression)をテー
マにかかげ、ダライ・ラマ、デーヴィッドソンらに加え、ヌメロフ、へレン・メイバーグをはじめとする専門家が
参加し、うつ病治療における認知療法、瞑想の応用的実践について、発表と議論が行われた。その議論
は、うつ病における遺伝的要因と環境の相互作用、DBS(脳深部刺激療法)と認知療法の意義、憶念や
慈悲の瞑想を、長期間隠棲する修行者に限定することなく、日常的文脈において、脱宗教化・世俗化さ
れたフォーマットにおいて、実践する可能性に及んだ。
ここでは、そのうち、うつ病への慈悲の瞑想の適用の可能性などを論じたデーヴィッドソン、および、脱
宗教化・世俗化された慈悲の瞑想について行われた実験についてのテンジン・ネギ、レーゾンらの発表
について述べ、それによって、2004 年に論文が発表されて以降の研究の最新の状況、さらに、今後の展
開の可能性について、明らかにしたい。(注9)
ウェンらの未発表論文にもとづくデーヴィッドソンのスライド発表は、「心の変容によって、脳を変化させ
る―慈悲の訓練が情動の神経システムにもたらす影響―」(”Changing the Brain by Transforming the
Mind: The Impact of Compassion Training on the Neural System of Emotion”)と題されており、2004 年の
論文以降、解析、および異なる実験によって、明らかになった慈悲の瞑想に関する知見が述べられた。
デーヴィッドソンによると、シェーファーらの研究によって、うつにおいては、社会的・感情的刺激の処
理が異常であることが明らかになっており、慈悲の瞑想によって、それを改善する可能性はないかを探る
ことは、きわめて重要な臨床的意義を持ちうる。また、慈悲の瞑想によって、個人の社会的・経済的行為
を変化させる可能性がある。慈悲の瞑想は、社会的認知、情動の制御にかかわる脳回路を調整し、変化
させると考えられるからである。デーヴィッドソンが、熟達した瞑想修行者、および、瞑想の初心者を対象
に行った次の二つの実験は、そのことを、はっきりと示している。
最初の実験では、「無所縁の慈悲」を行い、きわめて大きな音を立て、それに対する反応を計測した。
すると、島(insula)と側頭―頭頂葉の接合部(temporal-parietal junction(R.D.))が、特に顕著な賦活を示
した。
124
すでに述べたように、島は、慈悲の瞑想により賦活する。ところが、意識統一によって思考を静める静
寂瞑想においては、賦活しないという。また、temporal-parietal junction(特に右側)は慈悲の瞑想により
活性化し、共感と関連することがわかっている。
二番目の実験では、初心者が、毎日 30 分、2 週間の訓練を行った。
瞑想の内容は、対象が、苦しみから解放されるようにと考えることであった。対象は愛しているもの、自
己、他人、関係が難しい人、すべての人間へと拡大する。
その後、心臓の感覚をチェックする(これは、”open one’s heart”という英語の慣用表現が、他者に対す
る関心、愛と結びつくことの神経学的解明とつながる可能性がある)。また、IAPS
Presentation(腫瘍の
ある赤ん坊の写真)を見せ、それに対する反応の変化を見る。
さらに、Ruff Well-Being scale により、心身の健康(well-being)に関する自己評価を測定した。
デーヴィッドソンによると、1 日 30 分の瞑想を 2 週間行うことで、心身の健康に関する自己評価の増進
などの変化が現れたという。
重要なのは、それらの変化と神経活動の変化の間に、相関が見られたことである。島(insula)の活動増
大は、心身の健康(well-being)に関する自己評価の増進と対応していた。
また、この実験においては、被験者の参加報酬(165US$)を寄付することが可能だという条件をつけ
た。すると、個々の被験者がじっさいに寄付する金額と、島(insula)の活動とのあいだには、相関があった
のである。
デーヴィッドソンの発表じたいは、明確な表現を避けるものだったが、これらの実験をあわせて考えると、
慈悲の瞑想は、島および temporal-parietal junction(R.D.)の活動の増大、自己評価の増進をもたらし、苦
痛に対する感受性、共感をより鋭敏にするとともに、利他的な実践的行為に向かう意志や動機を強化す
るといえる。そこから、うつの治療に慈悲の瞑想を適用する可能性、さらに、それにとどまらず、新しい経済
的な方法を生み出す可能性が生じる。
後者について、デーヴィッドソンが展開したのは、富の再配分―贈与についてである。
デーヴィッドソンは、MIT の経済学者らとともに、3 人のプレーヤーからなる経済ゲームを案出した。それ
によると、はじめ、プレーヤー1は 100US$、プレーヤー2は 0US$、プレーヤー3は50US$をもっている。
その後、プレーヤー1が、プレーヤー2に最初の財の移転=贈与を行う。その次に、プレーヤー3 は、プレ
ーヤー2に、第二の移転=贈与を行うことができる。
眼目は、最初の移転=贈与(プレーヤー1からプレーヤー2へ)が「不公正」(unfair)な場合、プレーヤー
3が示す反応にある。この経済ゲームでは、最初の移転=贈与が30US$よりも小さい場合を「不公正」と定
義した。その後、プレーヤー3 がプレーヤー2 に対して、どれだけの額を移転=贈与するか、を調べたので
ある。別の言葉で表現すると、最も富んでいる者が、最も貧しい者に対して行う財の移転=贈与が「不公
正」な場合、中間にある者がどのように行為するか、を調べたといえる。
デーヴィッドソンらの研究によると、この実験は、興味深い結果をもたらした。プレーヤー3の贈与額は、
本人がみずから感じていると報告した慈悲、利他心と対応していたのである。
この経済ゲームについて、Mind&Life Conference では、突っ込んだ議論は行われなかったが、今後、
従来の社会科学、人文科学、自然科学の枠を越えて展開されるだろう新領域の研究において、重要な
意義を持つと思われる。
ここ数年、経済学と脳科学のインターフェースの中から新たに出現した脳神経経済学
(neuroeconomics)の主題は、市場におけるプレーヤーの振る舞い(協働か、競合か)、税負担(ただ乗り
125
問題)、長期・短期の意思決定にかかわる神経回路のちがい、マーケティングなど、多岐にわたり、近代
的・合理的な「経済人」の行為モデルと現実が必ずしも一致しないことを示しつつある。だが、そこでは、
人間の「満足」や「幸福」の意味、特定の振る舞いや心理的なかまえと自己評価、プレーヤーの心身の健
康(well-being)の関連は、いまだ、考察の外部に置かれている。
それに対し、デーヴィッドソンらの発想は、神経可塑性を原点とし、心の訓練による個人の内的変容と
マクロな社会の変化を、大きくつかみ出す可能性を示している。それは、巨額の投機的資金によって市場
が支配され、それを有効に制御する世界的な政策がとれない現状―いわゆる「カジノ資本主義」―を、乗
り越えていくための突破口を開く可能性を―萌芽として―秘めているといえる。
テンジン・ネギとレーゾンの発表は、このような慈悲の瞑想を、より日常的・一般的な文脈―特に教育の
場―において活かすための具体的な方法について、エモリー大学で行われた実験的研究にかかわる
(二人は、現在エモリー大学に所属する研究者である)。そのうち、インド・ラダックの出身で、チベット仏教
の僧としてゲシェ(哲学博士に相当する)の学位を得たテンジン・ネギは、伝統的な慈悲の瞑想を現代的
に作り変え、レーゾンが、それをもとに、学生を被験者とする 6 週間の実験を行った。
テンジン・ネギの作った世俗的瞑想は、すでに述べた「四無量心」の瞑想を部分的に改変し、それに、
呼吸、身体感覚、感情を自覚する「憶念」(自覚)の訓練を組み合わせたもので、その内容はつぎのとおり
である。
・第 1 週―呼吸の自覚。
・第2週―感覚、感情(不幸を感じさせるパターンを自覚)
・第3週―捨:シャンティデーヴァ『入菩提行論』により、「すべては相互に依存している」ことを考える瞑想
を行う。
・第4週―慈
・第5週―悲
・第6週―喜
伝統的な瞑想との主な違いは、第 3 週にある。伝統的な「捨」の瞑想は、輪廻転生を前提とし、友と敵、
愛と憎しみが、一時的なものに過ぎないことを考える中から、すべての生き物の平等の認識にいたる。テ
ンジン・ネギによると、キリスト教を背景とするアメリカをはじめ、輪廻転生を信じない文化において、この瞑
想を行うことは困難である。それに対し、相互依存性についての瞑想は、輪廻転生を前提とせず、すべて
の生命の平等性、連続性の認識にいたることができる。この工夫は、伝統的な四無量心の瞑想を、仏教
の枠から解き放ち、世俗化する第一歩だといえる。
レーゾンらの実験は、この 6 週間のプログラムを用い、慈悲の瞑想が、心理的社会的ストレスに対する有
害な反応を減少させるか、どうかを、調べたものである。
生物は、危険やストレスに対し、生き延びるためのメカニズムを持っている。エネルギーを解放し、心身
を集中するストレス反応システムである。たとえば、炎症に対しては、怪我と戦うように、体を準備するため
の一連の反応が始動する。問題なのは、このとき出る化学物質(いわゆるストレスホルモンなど)が、長期
的には有毒なことである。ストレス反応がのべつまくなしに引き出される傾向のある現代社会においては、
それをコントロールする技法が必要であり、慈悲の瞑想が有効であるなら、うつ病の治療にも役立つ可能
性がある。
126
被験者は、18 歳から 19 歳のエモリー大学の新入生 61 人で、6 週間、上述の瞑想プログラムを実践した。
対照群は、同じ新入生で、健康についての討論を行った。
結果として、瞑想プログラムの実践による心拍数の変化が明らかに見られた。慈悲の瞑想を行ったグル
ープでは、通常時、ストレス時―この実験では、多数の聴衆の前で、10 分間のスピーチをすること―の、
いずれにおいても、心拍数が有意に低くなった。
また、瞑想グループの被験者は、毎日、オンラインで瞑想の指示を受け、どれだけ瞑想したか、報告す
ることを義務付けられた。その結果、実際に瞑想しなかった者は、健康についての討論を行ったグループ
とほぼ同じ結果を示した。これは、瞑想について知識として知るだけでは、役に立たず、実践が重要であ
ることを意味する。
このテンジン、レーゾンらの研究は、デーヴィッドソンを受け、世俗化された瞑想の創造と教育、心理療
法など多方面への本格的応用に向かう道筋を示したものだといえる。特に重要なのは、彼らの研究が、
社会的共感の発達をもたらす慈悲の瞑想が、短期間であっても効果をもたらし、社会的心理的ストレスの
減少につながる可能性を、強く示唆していることである。その後の討論で、ダライラマ、デーヴィッドソンは、
より低年齢―10 歳、15 歳など―において、慈悲を育てる心的訓練ないし瞑想を行う可能性について触れ
た。デーヴィッドソンによると、情動の抑制回路が形成される思春期前期において、これらの心的訓練が
行うことは、きわめて重要な意味を持ちうるという。この点については、最後の結論において、あらためて
考えることにしたい。
2.2.4.4 炎の瞑想
チベット仏教瞑想の科学的研究の歴史において、デーヴィッドソンらとならんで、重要な位置を占めて
いるのは、1980 年代、ハーヴァード大学心身医学研究所のハーバート・ベンソンらが行った後期密教の
瞑想修行の医学研究である。
強烈な熱を発する「トゥムモ」(「憤怒の女神」。Tib.gtum mo)の瞑想を対象に行われたベンソンの研究
は、人体の生理について再考をうながすとともに、後期密教の神経理論について考えるうえで、不可欠な
背景となる。ここでは、ベンソンの論文、今回の研究プロジェクトの一環として行ったベンソンとのインタヴ
ュー調査をもとに、その内容を概観し、さらに密教医学の神経理論と脳科学のインターフェースについて、
考えることにしたい。
2.2.4.4-1 炎の瞑想―ベンソンによる研究
ベンソンは、もともと心臓医としてキャリアを積んだ。だが、1960 年代の末から、心臓疾患とストレスの間
につながりがあると感じ、心理状態と疾病の関連に大きな関心を抱くようになった。当時、アメリカでは、ビ
ートルズのグルでもあった、インドのヨーガ行者シュリーマハリシの超越瞑想(TM)が、簡易化・大衆化され
た瞑想によって、社会に広く受け入れられるようになっており、ボストンはその中心の一つだった(ちなみ
に、その影響は現在におよぶ。ゴアが超越瞑想の実践者であることは、よく知られている)。そのこともあっ
て、ストレスに関するベンソンの心身医学の初期の研究は、超越瞑想の実験研究から始まったのである。
その後、ベンソンは、弛緩反応(relaxation response)の概念を創出し、ストレスの心身医学的研究の土
台を作った。キャノンが明らかにしたように、ストレスフルな状況は、「闘うか、逃げるか」(fight or flight)の選
択を生物にしいる。血圧の上昇、心拍数の増大、ストレスホルモンの増大。野生の自然に生きる原始社会
においては適応的な反応が、騒音、複雑な人間関係、急速な変化、環境汚染などに満ちた現代社会に
127
おいては、たえず引き出され、身体への大きな負荷、病気の原因となる。ベンソンは、東西の宗教伝統か
ら、この「闘争―逃走」反応による心身ストレスを修復・治癒するメカニズムを抽出し、弛緩反応となづける
とともに、きわめて単純な方法―音やマントラへの集中による簡単な瞑想―として示し、大きな成功をおさ
めた。(注10)
わずか二、三十分の瞑想が、ストレスを主因とする病に対して、これほど有益だとすると、一生を瞑想に
捧げる東洋の熟達した修行者たちにもたらされる変容は、どんなものだろうか?―この疑問が、やがて、
ベンソンを、チベット仏教の伝統へと導いたのである。
ベンソンが、チベット仏教に関心を抱くようになった直接のきっかけは、アレクサンドラ・ダヴィッド=ニー
ルの一冊の本だった。14 年にわたってチベットに滞在し、みずから密教の瞑想を実践する幸運に恵まれ
た彼女は、チベット仏教の実践について、多くの記述を残した。その中に描かれた、強烈な熱を発するト
ゥムモの瞑想修行に、ベンソンは、強い興味を抱いたのである。
トゥムモの瞑想修行は、最初に述べた仏教の九つの哲学・修行の階梯(「九乗」)のうち、八番目のアヌ
ヨーガ―ニンマ派以外の伝統では、「母タントラ」と呼ばれる―の修行であり、強烈な熱を発する。輪廻か
らの出離、慈悲といった顕教の瞑想のあとで、心身を浄化し、さらに、何ヶ月も本尊のマンダラを観想し真
言を無数に唱える密教の修行に入る。その後に、トゥムモをはじめとする「脈管と風」の修行に入ることが
できる。
何年にもわたる隠棲修行の後、トゥムモの修行が首尾よく行われたか確認するための試験が行われる。
その一つについて、ダヴィッド=ニールは、こんなふうに書いている。
「霜の降りる冬の夜、首尾よく試験に耐え、勝利できると考える者は、川岸や湖畔に連れて行かれる。流
れの全体が凍っている場合には、氷に穴を開ける。強風の吹きすさぶ月夜を―チベットの冬には、そんな
夜は稀ではない―を選ぶ。
新参の修行者は、裸で、結跏趺坐を組み、地面にすわる。シーツを氷水に漬ける。各人は、濡れた布で、
体を包み、それを乾かさなければならない。シーツが乾くと、再び水で濡らし、乾かすために、新参行者
の体にのせる。この作業は、夜明けまで、続けられる。もっとも多くの布を乾かした者が、競技の勝利者と
認められる。
一晩で、四十枚、乾かす者もあるという。大げさな誇張の可能性もあるし、乾かされる布の大きさがごく小
さく、ただ、象徴的な意味を持つに過ぎないこともありうるだろう。だが、私は、大きなショールほどの大きさ
の布を何枚も乾かしたレパ(訳注:綿布のみを身につけるチベットの隠棲行者)を見たことがある。」(『チ
ベットの魔術と神秘』)(注11)
ほかの試験の方法は、雪中に座ることだ。標高 4000 メートルを超える冬の雪山で、体の下の雪をどれだ
けの量、溶かすことができるか、また、周囲の雪をどれくらいの距離にわたって溶かすことができるか、が
能力の尺度となる。
このような試験の後、トゥムモの達人たちは、薄い綿布をも身に着けることをやめ、人跡を離れた高山で、
長期にわたり―場合によっては一生―、真っ裸で生活するようになる。アレクサンドラ・ダヴィッド=ニール
の本は、そんなチベット人ヨーガ行者の貴重な写真をもおさめている。
1982 年に発表されたベンソンらの論文は、「トゥムモ(熱)のヨーガにおいて、体温は変化する」(Body
Temperature Changes during the Practice of Gtum-mo(Heat) Yoga)と題され、また、一本の記録ヴィデオ
128
が残されている。(注12)
それらによると、まず、インド、ダラムサラで行われた戸外の実験では、トゥムモの瞑想によって、指、爪
先の温度は、最大 17°F(約 9、4℃)上昇した。
シッキムで行われた実験では、意識集中による静寂瞑想(「止」)―これは、トゥムモとは異なる顕教に属
す瞑想である―において、瞑想中の酸素消費量は、安静時と比較して 64%減少した。通常、酸素消費量
の減少は睡眠中で 17%、通常の瞑想で 10~15%程度であり、スタッフは、実験装置に穴が開いているので
はないか、と何回もチェックしたと言う。また、この瞑想では、左脳がアルファー波、右脳がベータ波と、全
く異なる脳波パターンを示し、実験結果は、予測をはるかに超えるものだった。
さらに、ベンソンらは、長期のトゥムモの隠棲から出てきた修行者たちの試験に立ち会い、記録すること
に成功した。
十人のヨーギたちを被験者として行われた実験では、40°F(約 4℃)の室内で、裸の体に 49°F(約
9℃)の水に漬けた布―180×90 センチ―をまきつけた修行者たちは、一晩のうちに、何枚も濡れた布を
乾かしてみせた。ヴィデオ映像は、彼らの全身から、ゆらゆらと白い湯気が立ち上る様子をはっきり記録し
ている。
また、ヴィデオ画像は、標高約 4500 メートルの雪山、0°F(-18℃)にまで下がる戸外で、裸に薄い綿
のショールのみ、震えることもなく、一晩、雪を枕に眠り、明け方起き上がる行者たちの姿も映し出してい
る。
それらは、現代の医学によって説明しがたい謎をつきつけている。
2002 年、ベンソンは、南フランスでさらなる実験を行った。だが、十分に満足できる結果は、いまだ得ら
れていないという。(注13)
2.2.4.4-2 後期密教の神経理論
トゥムモの修行は、呼吸の制御、観想、ヤントラヨーガ(身体的ヨーガ)からなっている。くりかえされる修
練をつうじて、へそ下の丹田に観想された炎は、めらめらと燃え上がり、それとともに、強烈な熱が生まれ
るようになる。それにともない、快楽、思考の消滅、ヴィジョンといった修行体験が生じる。
トゥムモのもたらす楽の修行体験について、11 世紀チベットの聖者ミラレパは、こう歌っている。
「体にはトゥムモの炎が燃え上がっていることの快楽、
風がロマ、キャンマ(左右の脈管)からアヴァドゥーティ(中央の脈管)に入ることの快楽、
上は菩提心の流れが滴り落ちることの快楽、
下は清らかな精粋の滴に満たされることの快楽、
間では白と赤の精がぶつかることの至上の快楽
体は汚れのない(無漏の)楽によって満足することの快楽。
これが、ヨーギの六つの修習体験だ」(注 14)
インドの行者たちに由来する口伝によれば、この楽の体験のあとに、思考は自然に消滅し(「無分別」)、
さらに、煙、蜃気楼、蛍、夜明けの光のヴィジョン、雲のない澄み渡った空のような体験が生じる。
さらに、次の段階では、さまざまなパラサイコロジカルな能力(「世俗の成就」)があらわれてくる。そして、
ついに究極の悟り(「至高の成就」)を達成する。菩薩の地を一つ一つ上がり、ブッダの境涯にいたるので
129
ある。
仏教には、意識と身体、意識と神経、意識と物質について、いくつかの異なるタイプの理論が存在す
るが、興味深いのは、この「脈管と風」のヨーガと結びついて発達した後期密教、アヌヨーガの神経理論が、
現代の脳科学と深い発想の一致を示していることである。ここでは、チベット語経典の文献調査、チベット
医学の医師、チベット人高僧からの聞き取り調査をもとに、そのことを、大まかに示すことにしたい。
後期密教の医学―「タントラ医学」―によると、生きているとき、わたしたちの身体は、目に見える粗大な
肉体(「粗大身」)と不可視の微細な身体(「微細身」)という切り離しがたい二つの側面からなっている。そ
のうち、微細な身体は、脈管(Tib. rtsa)、風(rlung)、精滴(thig le)の三つの要素からできあがっている。
(注 15)
大切なのは、この微細身が、心と密接な関係を持っていることだ。その背景にあるのは、「風=心」
(rlung-sems)という考え方である。心は「照明し、認識する」という意識のはたらきを、風は微細身の脈管
を移動する「運動性」を意味するが、タントラ医学によれば、両者はもともと一つであり、同一のものを、異
なる側面から表現したのにほかならないのである。
全身にはりめぐらされた脈管のネットワークで、もっとも重要なものは、脊椎の中を通る中央の脈管と、
そのすぐ左右にある脈管であり、脳につながっている。脳は、特に無数の脈管が集中する場所で、「脈管
の大いなる海」( rtsa’i rgya mtsho)とも表現される。思考や感情など、さまざまな意識体験は、これらの脈
管の中を移動する「風」の運動と対応しているのである。
興味深いのは、脈管の内部を移動する「風」が、光であり、さまざまな情動や知恵は、風=光の異なる
色彩ないし波動と対応すると考えられてることである。
この風=光の運動のパターンを作りだすのが、精滴である。無数の種類があり、それぞれ異なる部位に
集中し、快楽、情動の異なるニュアンスを生み出す。また、心身の健康と深くかかわっている。食物の栄
養から、数段階の変化をつうじて生み出され、増減するため、身体のみならず、心の健康や情動、意識状
態は、どんな食物を、どれくらい食べるかに影響されることになる。
重要なのは、タントラ医学が、脈管の可塑性を、理論の中心にすえていることだ。もともと、脈管の発生
は妊娠4週目に始まり、出産後 3 ヵ月から、脈管によって「増え」たり、「枯れ」たり、という変化が生じる。興
味深いのは、「枯れる」ことは完全になくなることを必ずしも意味せず、「力が弱まる」ことだと考えられてい
ることである。思考の変化や身体の運動によって、風の動きは変化し、それに応じて、風の通り道である脈
管が変化するとされる。この脈管の可塑性が、瞑想修行の根底にあり、人間の意識と生命を、悟りに向か
って、意識的に方向づけることを可能にする。
密教の神経理論によると、トゥムモをはじめとする「脈管と風」の修行は、ヤントラヨーガ、座法、呼吸法、
意識集中によって、風の運動性を変化させ、精滴を移動させ、さらに、脈管を変化させる。そこでは、次の
ようなロジックがはたらいている。
微細な身体の脈管の中を、精妙な風の運動性が移動する。この風の運動性と心はもともと一つである
ため、心、風、脈管、体のあいだに、トップダウン、ボトムアップの双方向的な因果作用がはたらくことにな
る。心が変われば、風の運動が変化し、それによって、脈管は成長、変化する(トップダウン)。逆に、体、
脈管が変化すれば、移動する風の運動は変わり、心は変化する(ボトムアップ)。そのため、悟りにいたる
道程は、微細な神経管の変化としても、表現できることになる。そのことを、後期密教経典は、「心に根源
の智慧が生じるのは、体の脈管のはたらきによる」と簡潔に表現している。
トゥムモは、とくに、風とともに精滴を制御する。ヤントラヨーガ、座法、呼吸法、意識集中など、さまざま
130
なレヴェルの訓練によって、よき思考と風を通過させる脈管は「増え」、悪しき思考と風の動く脈管は「枯れ
る」。その繰り返されるプロセスにより、智慧の風の移動をさまたげていた「結節」は解き放たれ、原初の知
恵の風の通路が「開く」。タントラ医学は、悟りの決定的瞬間を、脈管の変化として表現するのである。
このようなタントラ医学の神経理論と現代の脳科学の共通性は明らかだろう。両者は、まったく異なる生
命のイメージから出発している。にもかかわらず、深い共通性を持っている。風=心=光という考え方は、
意識・情報の単位を電気信号のパルスと見なす脳科学の基本と一致するし、精滴は、神経伝達物質やホ
ルモンとよく似た性質を持っている。
それにくわえ、脈管の可塑性が人間の変化の可能性の根底にあるとするタントラ医学の神経理論は、
近年の脳科学が見出した神経可塑性の概念と合致している。脈管の変化を表現するタントラの用語は、
ニューロンやシナプスの発生、調節、修復において、ヘッブの法則による「神経ダーウィズム」(エーデル
マン)が支配し、その過程に、意思や注意が大きな役割を果たすという最近の脳科学の知見と、とてもよく
似た考え方にもとづいているのである。
2.2.4.5 仏教と生命医学倫理
それでは、このように、現代脳科学と深い共通性を持つタントラ医学の神経理論は、人間の生命にかか
わる倫理の中に、どのように位置づけられているのだろうか?あるいは、むしろ、仏教の観点から見たとき、
神経可塑性を前提にした生命倫理は、どのようなものでありうるだろうか?
チベット医学は、後期密教の神経理論をも大きく包みこむシステムとして存在しており、人間の生命を、
粗大から微細へ、異なるレヴェルにおいて全体論的に理解しようとする。医学にたずさわる者は、インドの
アーユルヴェーダ医学をもとに発達した一般的な臨床医学と、密教的な医学理論の両方を学び、みずか
らも、顕教、密教の修行を行うことが、すぐれた医師の条件とされる。そこでは、どのような生命倫理ないし
医学倫理がなりたつことになるのか、仏教の基本倫理と医師の職業倫理の二つの側面から、まず、見て
おくことにしたい。
仏教の基本倫理は、哲学・修行体系に応じ、三つの段階からなる、と考えられている。
一番目は、個人の解脱を最も重要だとする声聞乗のレヴェルにおける戒律―「別々解脱」の戒律と呼ば
れる―である。その基本は、他の生命を害さないことであり、そのため、みずからの行為がどのような結果
をもたらすか、精密に反省し、悪をなさないようにする。
二番目は、利他行を強調する大乗における心の訓練である。その基本は、他を利する行為を実践する
ことであり、動機を観察し、よき動機と知恵にもとづいて、他者を利益するように、みずからの心を訓練し、
六波羅蜜を実践する。六波羅蜜の一番目である布施は、財施(財貨の贈与)、無畏施(生命を失うことの
恐怖を除くこと)、法施(説法)の三つからなるが、他者の生命の危機、死の恐怖を除く無畏施は、財貨を
贈ることよりも、重要な意義を持つとされる。
三番目は、密教の三昧耶戒である。その内容は、レヴェルによって異なるが、師弟関係がきわめて重要
とされる。
重要なのは、このいずれのレヴェルにおいても、みずからの感情、状況を観察、自覚することが不可欠
と考えられていることである。仏教倫理は、自覚―「憶念」―や注意の洗練と不可分だと考えられているの
である。
この基本倫理の土台のうえに、医師の職業倫理が成り立つことになる。チベット医学の根本となる『四
部医典』(rgyud bzhi)において、医師の条件は、以下の六項目にまとめられており、その理想に向かうこと
131
が、職業倫理の根幹をなす。(注 16)
1、知恵―仏典、医学書などの文献を広く読み、専門的知識を熟知していること、どんな状況において
も動揺しない冷静沈着な判断力、すべてについてまず分析できる能力の三つを指す。この三つをそなえ
ていれば、容易に治療を行うことができる。それに加え、従来の医学知識の外部の事態にも対処できるよ
うな、透明な知性や、経験知、直観力や創造力も必要とされる。
2、よい動機―すべての生き物は、かつて自分の父母だったという認識と、菩提心を持っている。生は
苦しみに満ちていることをよく知り、すべての生き物を益したいという願いを抱いている。三宝(悟りを得た
仏陀、仏教の教え、共同体)に対する信仰。すべての生命を平等と見、慈悲喜捨の四つの心にもとづい
て行為する。このようなすぐれた動機をもっていれば、容易に患者を治療することができる。
3、密教の三昧耶戒を守る―すべての現象は本来、光に満ちた曼荼羅であるという見方にしたがって、
修行する。深く、広大な慈悲を育てる。普通の慈悲、無所縁の慈悲、ブッダの大いなる慈悲にいたる。
4、鍛錬―手仕事に巧みで外科器具などを作ることができる。やさしく耳に快い言葉でしゃべり、患者の
心を慰め、喜ばせる。心がつねに明晰であるように自己を制する。
5、精進―医学書をよく読み知識を習得する。さまざまな学派の医学の正確な知識、口頭で伝えられた
知恵、体験をかねそなえ、患者と弟子に慈愛をもって接し、ものごとを長い目でみることのできる、すぐれ
た医師を探し出し、熱心に学ぶ。友人からも学ぶ。実践に習熟する。患者を途中で放り出すことなく、心を
注いで治療する。
6、社会道徳、法を熟知する―社会道徳、世俗の価値観、法秩序を熟知し、それらと仏教的価値を融
合する。欲望のとりこになることなく、足ることを知る。貧しいもの、社会的に不浄、低いとされる者を差別、
軽蔑せず、慈愛をもって大切に守る。
このような仏教倫理とそれにもとづく医師の職業倫理は、現代の科学が直面する生命倫理、さらには脳
神経倫理とどのような関係を持ちうるだろうか?
ここでは、リベラルな市民社会の原理から出発して生まれた、ビーチャム、チルドレスらの生命医学倫
理の四つの原則を手がかりにして、考えることにしたい。
ビーチャム、チルドレスらの四つの原則は、1、害をなさないこと(non-maleficience)、2、積極的に利益
をもたらすこと(beneficence)、3、自律性の尊重(respect for autonomy)、4、公正(justice)であり、チルドレ
スによると、脳神経倫理についても、この四つの原則をもとに考察することができるという。(注 17)
このうち、1,2が、別々解脱の戒律、大乗の倫理と、それぞれ基本的に一致することは、比較的容易
に見てとれるだろう。4 の公正については、すでに見たように、大乗仏教の根本は、平等性の認識にあり、
そこから利益、費用、リスクの配分について公正であることが導き出される。
3 の自律性の尊重については、どうだろうか。チルドレスらによれば、個人は、多かれ少なかれ、社会的
関係や共同体の内部に、根拠をおいて存在しているのであり、文化的価値を尊重することが必要である
ことは言うまでもない。だが、共同体の伝統的信条や価値のみによって、個人の選択を決めることはでき
ないし、また、一般的に、個人の自律性を共同体に従属させることは正当化されえない、という。端的にい
えば、行為の自律は、他者からの支配的圧力に屈服させられるべきではない。
この考え方は、仏教倫理と大枠で一致する。別々解脱の戒律の原則は、個人が、みずからの行為のも
たらす結果について吟味し、その結果について、みずからが引き受けることであり、同じ信仰にもとづく共
132
同体である僧伽の内部における権威―たとえば僧院長―の命令であっても、それが、悪しき結果をもたら
すと考えられるならば、したがってはならないとされるのである。
だが、仏教と仏教医学から導き出される生命倫理が、ビーチャムらの生命医学倫理と完全に一致する
かというと、そうともいえないのである。そのことを、今回の研究プロジェクトの一部として、インタヴューした
一人のチベットの医僧の言葉をもとに、考えることにしよう。
A.J.師は、80 歳。医師であり、幼いころから、僧院で厳格な仏教教育を受けた高僧でもある。
脳科学、ナノテクノロジー、遺伝学の飛躍的発展、バイオコンピューターの開発研究などによって、比
較的近い将来、ごく小さいマイクロチップを脳に埋め込み、外部と通信することができるようになる可能性
があるとされること。それをもとに、遠隔の機械を操作したり、遠隔透視やテレパシー的な知覚、コミュニケ
ーションが行われる未来が語られつつあること。それが人間の能力の増強だと考える思想家が存在するこ
と、、、、、。(注 18)
ひととおり、話を聞き終わった A.J.師は、こう答えた。
「遠くのものを動かしたり、空を飛んだり、遠くが見えたり、他人の心を直接知ったり、、、、。そんなことは、
仏教の中では、ごくふつうに考えられている、ありふれていることだよ。チベットに密教をもたらしたグル・パ
ドマサンバヴァや、それ以外にも、そんな力を持っている修行者は、たくさんいたし、今でもいるだろう。け
れども、それは、人間にとって、一番大事なことではない。そういう特殊な能力は、ブッダの悟りにいたる過
程であらわれてくるもので、最終的な目的ではない。
大切なのは、輪廻の中の生が苦しみであると知り、かつて母だったすべての生きとし、生けるものに慈
悲を抱くこと、自分もほかの生きものも、仏性を持っているとよくよく理解し、菩提心にもとづいて修行する
こと、そして、完全なブッダの悟りを得ることだ。ブッダの悟りとは、苦しみのない静寂だ。静寂きわまりない
心と慈悲が、ともにあることだ。
西洋で生まれた科学と技術は、大変面白いものだ。それは経済的な力と結びついている。あなたたち
の日本は、もともと東洋の国だったけれど、今では、科学が発達し、大きな経済的な力を持っているらしい
ね。だが、人間の心はどうだろうか?幸せだろうか?
科学技術の発達は、世界を大きく変化させた。それまで存在しなかった物質が環境に放出されることで、
新しい病気が生まれた。そうなるだろうことは、ずっと昔に書かれたチベット医学の経典の中に、書いてあ
る。それに、どんな薬が必要かも。
さっきの話に出てきたような技術の発達は、人間の心を、静寂から、遠ざけるのではないだろうか?心
の動きや動揺や散失をさらに大きくするのではないだろうか?それは、さらに大きな動きや変化―破壊や
戦争―を外の世界にもたらすことになるのではないか、とわたしは思う。」
A.J.師の言葉を敷衍するなら、こんなふうになるだろう。個人の自律性は、根本的な原理だろう。だが、
みずからの行為のもたらす結果について、考え抜くことと不可分だ。そう、仏教的な生命倫理は語る。破
壊や戦争に結びつくのではない使い方、人間の本質的な可能性を閉ざすのではなく、逆にそれを助ける
使い方はどんなものだろうか?知恵を出し合い、悪しき使い方は、あらかじめ、取り除く努力が必要だ。
その土台には、自己と深くつながっている同胞である他の生命に対する尊敬と、慈悲と、人間の潜在的
可能性をどう開くか、すでにあらわれているよきものをいかに増進するか、文明の行く先に対する長期的
配慮が必要になる。
133
2.2.4.6 終わりに
ここまで、駆け足で見たように、チベット仏教の瞑想についての近年の脳科学的研究は、大きな果実を
生みつつあり、その影響は、臨床医学、教育、経済へと、きわめて広い範囲に及びつつある。また、チベ
ット仏教に特有のタントラ医学の神経生理学と、現代脳科学には、深い共通点があり、今後の対話は、大
きな実りをもたらす可能性がある。さらに、仏教医学の観点からする生命倫理は、現代のリベラルな市民
社会の社会原理や生命医学倫理と深い共通性を持ち、しかも、神経の可塑性の概念を背景にして、文
化と文明の未来に対する、より長期的な配慮を不可欠のものとして求めるものであるといえる。
日本は、すべての存在に生命を見るアニミズムの生命感覚のうえに、仏教の仏性論がそれをより洗練し
た伝統的生命観をもっており、その意味で、チベットとも、深い文化的共通性がある。今後の脳科学の倫
理を考えるうえで、対話を続けていくことは、未来に向かって大きな意義を持つと考えられる。
注(2.2.4)
(1)エリアーデ『ヨーガ』1~2(立川武蔵訳、せりか書房、1975 年)。ただし、私見では、この点については、
オーストラリアのアボリジニーなど、いくつかの例外があり、インドのみに限定することはできないと考えられ
る。
(2)ナムカイ・ノルブ『虹と水晶』(永沢哲訳、法蔵館、1992 年)。その原型は、『明知の自然な現出』タント
ラ(”Rig pa rang shar chen po’i rgyud”)の中に、見出される。
(3)A.Lutz, et al.., Long-term meditators self-induce high-amplitude gamma synchrony during mental
practice, 2004,
Proceedings of the National Academy of Sciences USA 2004;101:16368-16373
(www.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0407401101)
Brefczynski-Lewis et al.,
practitioners,
2007,
Neural correlates of attentional expertise in long-term meditation
Proceedings
of
the
National
Academy
of
Sciences
USA
2007;?:?
(www.pnas.org/cgi/reprint/0606552104)
(4)E.Thompson and F.Varela,
Radical Embodiment: Neurodynamics and Consciousness. Trends in
Cognitive Sciences, vol.5 No.10. pp.418-425. October 2001、「ラディカルな身体化」高畑圭輔訳『現
代思想』vol.34-11
2006 年 10 月号 82~95 ページ。また、「身体化」については、F.Varela et. al.,
The Embodied Mind, MIT Press, 1991.『身体化された心』(田中靖夫訳、工作舎、2001 年)を参照。
(5)神経可塑性については、ルドゥー『シナプスが人格をつくる 脳細胞から自己の総体へ』(森憲作監訳、
みすず書房、2004 年)。注意、意思と神経可塑性については、シュウォーツ&べグレー『心が脳を変える』
(吉田和子訳、サンマーク出版、2004 年)を参照。後者は、f-MRI を用い、ヴィパサナ瞑想と認知療法によ
って行われる強迫神経症の治療について、興味深い知見を示している。
(6)A.Lutz, et al..,ibid.
Zen-Brain Reflections,
your Brain,
この論文については、オースティンによる分析があり、参照した。J.Austin,
MIT Press, 2006, pp.48-50。また、S. Begley, Train your Mind,
Change
Ballantine Books, 2007, pp212-242 に、すぐ
れた解説がある。
(7)J.Austin, ibid., pp48-50.
A.Lutz, J.Brefczynski-Lewis, and R.Davidson, Loving-kindness and
Compassion Meditation Results in Unique Patterns of fMRI Activation and Enhances the Reactivity of the
Insula/Cingulate Neural Circuity to Negative Stimuli in Meditators. slide presentation at the Society for
134
the Neurosciences, 2004. ここでは、S.Begley,
ibid.の要約、引用による。
(8) なお、島をめぐる最新の研究については、オースティンがコンパクトにまとめている。J.Austin,
ibid.,
pp95-99。
(9)2007 年 10 月 20 日に行われた Mind&Life Conference におけるデーヴィッドソン、テンジン・ネギ、レ
ーゾンの発表のタイトルは、以下のとおりである。
R.J.Davidson, Changing the Brain by Transforming the Mind: The Impact of Compassion Training on the
Neural System of Emotion, presentation at the Mind&Life ⅩⅤ,
20/Oct/2007(Weng et al.,
in prep.
による)
Geshe Lobsang Tenzin Negi,
Compassion Meditation: a Cognitive Strategy for Enhancing Social
Empathy, presentation at the Mind&Life ⅩⅤ,
20/Oct/2007
Charles L. Raison, Compassion Training as a Path to Emotional and Physical Wellbeing, presentation
at the Mind&Life ⅩⅤ,
20/Oct/2007
(10)H.Benson, The Relaxation Response, William Morrow and Company,
1975。ここでの記述は、
おもに、新装版(HarperCollins, 2000)の序文による。
(11)Alexandra David-Neel, Magic and Mystery in Tibet, Dover, 1971, p227
(12)H.Benson et al.,
Nature 295,
1982,
Body Temperature Changes during the Practice of Gtum-mo(Heat) Yoga,
pp.234-236.
H. Benson,
Advanced Tibetan Buddhist Meditation,
Mind/Body Medical Institute, 1983。
(13)2007 年 10 月 22 日、心身医学研究所におけるオーラル・コミュニケーションによる。
(14)Rus pa’i rgyan can( alias Gtsang smyon heruka),
Rnal ‘byor gyi dbang phyug chen po mi la ras
pa’i rnam mgur, mtsho sngon mi rigs dpe skrun khang, 2005, p.220 (原著、1488 年)。
(15)Karma rang byung rdo rje& Kong sprul yon tan gya mtsho, Zab mo nang don gyi rtsa ‘grel,
mi
rigs dpe skrun khang, 2006。(原著、14 世紀)
(16)ここでは、『四部医典』釈タントラにおける医師の資質(rgyu)をめぐる説明による。Cf. Zur mkhar blo
gros rgyal po, Rgyud bzhi’i ‘grel pa mes po’i zhal lung (vol.1),
mi rigs dpe skrun khang, n.d., pp.
862-886
(17)四つの原則については、2008 年 1 月 13 日の国際シンポジウム『人間改造の倫理―ブレーン・マシ
ーン・インターフェースの未来―』におけるチルドレスの講演「ニューロエシックス:その原理とジレンマ」、
および、ビーチャム『生命医学倫理のフロンティア』(立木教夫、永安幸正監訳、行人社、1999 年)を参
照。
(18)これらの点については、S.Rose,
Neuroscience,
The Future of the Brain:The Promise and Perils of Tomorrow's
Oxford University Press,
2005,
pp.243-305。また、ラメズ・ナム『超人類へ!』(西尾
香苗訳、インターシフト、2006 年)、レイ・カーツワイル『ポスト・ヒューマン誕生』(井上健監訳、NHK 出版、
2007 年)を参照。
135
2.3 ニューロエシックス政策の国際動向研究
2.3.1 まえがき:研究目標と経過
(佛教大学:村岡潔)
近年、脳神経科学(ニューロサイエンス)の発達によって、非侵襲的な大脳皮質血流量の測定、電磁脳
刺激やニューロフィードバック(脳を自己コントロールする訓練)などに代表されるように、これまでにない
レベルで人間の脳の活動が外部から測定され制御されるような国際的動向になっている。このように、脳
に介入する新技術全般に伴う倫理的法的社会的諸問題(いわゆる ELSI)に機動的に対応した調査研究
を実行し、それを支持ないし制御する脳神経倫理の基盤的構築を行うことは、我が国の先端科学技術の
テクノロジーアセスメントや政策立案においても緊急課題となっている。
こうした動向を受けて、脳神経科学についても、他の先端医療技術のように倫理的・法的・社会的問題
点を総合的に扱う領域が不可避となった。それがニューロエシックス(脳神経倫理)という新たな生命倫理
の分野である。ニューロエシックスの目指すものは、人間のもつ普遍的な倫理・道徳・哲学観などの脳科
学的な探求であり、また、脳科学の手法や研究成果の社会的な適用における倫理問題の検討であり、脳
神経科学のあり方についての医哲学的・倫理学的・社会的探究でもある。
本研究では、佛教大学、岡山大学、松本大学、就実大学、就実大学、京都工芸繊維大学からなる“ニ
ューロエシックス政策の国際動向研究”グループ(以下、「ニューロエシックス班」)が、他のサブグループ
とも有機的に連携して共同研究を行い、先端的脳科学の研究動向とその倫理的・社会的・宗教的影響、
ニューロエシックス政策の国際的動向を明らかにすることに努めてきた。ニューロサイエンスの分野でもグ
ローバリゼーションが進んでいる情況下であるため、この「国際的」という言葉には、当然、国内外という意
味が含まれている。また「ニューロエシックス政策」とは、脳神経科学(ニューロサイエンス)に関する ELSI
(倫理的法的社会的諸問題)の検討から施される政策を意味するが、特に、生命倫理的観点に注目した
立場からの政策を念頭においた言葉である。本研究の目標は、脳神経科学の現状調査(特に、ニューロ
エシックス(あるいは生命倫理)に関わる側面から見た分類)と、ニューロエシックス政策の国内外の調査・
研究から、これらの ELSI 的問題点を明確化し、今後の安寧な科学振興政策の立案のための基礎的デー
タを提供することにあった。
ニューロエシックス班(佛教大学グループ)の構成は、以下のとおりである。
*1-1)組織:サブグループの研究参画者:着任順
村岡 潔(佛教大学):班長
福島 智子(松本大学)
粟屋 剛(岡山大学)
虫明 茂(就実大学)
大林雅之(京都工芸繊維大学)
このニューロエシックス班は、構造上は、名目は、文献・資料収集を行い、脳科学の現状を把握する①
先端的脳科学の現状と、②ニューロエシックス政策とに関する2つの調査研究とにサブテーマが分かれて
いたが、実際は、相互に連携してとりおこなわれた。また、ニューロエシックス班は、他のサブグループ(例
えば、国民意識調査グループとも連携をとりつつ、初期のスケジュールに基づき、以下のような経過で研
究を進めてきた。
136
*1-2)調査研究経過:〔註〕参加者名は専ら本研究班員であるが、下線名は他のサブグループ所属。
①イタリア調査・ローマ市(2007年9月10日)
ローマ・カトリック聖心大学(スパニョーロ教授)にインタビューし、イタリアにおけるニューロエシックスの現
状と問題点について意見交流を行なった(参加者、福島・村岡・美馬)。この成果については、主に本項
の第3章に記載。
②フランス調査・エクサンプロヴァンス市(2007年9月 12 日~9 月 15 日)
南仏エクサンプロヴァンスのポールセザンヌ大学での第4回国際臨床生命倫理学会に参加(粟屋発
表:”The missing face of the discussion on human dignity: approaching the real world”)した。また、その際
に、クロアチア・リエカ大学セゴタ教授ら複数の研究者と情報交換を行なった。この成果については、本項
第 6 章に反映。(参加者、粟屋・福島・村岡・美馬)
③ニューロエシックス班「第 1 回研究会」・岡山県(2007 年 10 月 8 日)
虫明茂・就実大学教授および大林雅之・京都工芸繊維大学教授(この時点では、外部講師)をお招き
して、それぞれニューロエシックスの概説とナノテクノロジーの倫理について講演していただいた。(参加
者、粟屋・福島・村岡・美馬・長瀬)その成果は、それぞれ
本項第 2 章と第4章に記載。
④「サイエンスアゴラ2007」(独立行政法人科学技術振興機構主催)
:2007年 11 月 25 日(日)
セッション「サイボーグに未来はあるか」に参会し、サイボーグとエンハンスメントのニューロエシックスの
工学的哲学的議論と身体サポート技術・人工心臓の最先端事例のパーフォーマンスを見聞した。(参加
者、粟屋・村岡)その成果は、本項第5、6章に反映されている。
⑤VIMS2007 参加:2007年 12 月10日・11 日
香港科学技術大学で開催された VIMS[Visually Induced Motion Sickness, Fatigue, and Photosensitive
Epileptic Seizures](視覚的誘発された映像酔い・眼精疲労・光刺激てんかん)に関する第 1 回国際シンポ
ジウムに参加し、内外の研究者とも交流した。最新情報について収集しつつ、バーチャルリアリティ等の
視覚刺激の副作用に関するニューロエシックス的問題については、研究の緒についたばかりであることを
認識した。(参加者、大林、粟屋、村岡、長瀬)その成果は、第 5 章、第6章に反映されている。
⑦ニューロエシックス班「第 2 回研究会」・長野県:2007年 12月 27―28日
初日は、倉持武・松本歯科大学教授の講演「脳死大概―ニューロエシックスを学ぶ人のために」があり、
2日目には、土屋敦氏(東大・院)氏の講演「Gene Enhancement に対する社会意識の規定要因―“遺伝
子決定論(感)”を中心に」の後、「国民意識調査報告」(村岡・代読)とそれを受けてワークショップ「ニュー
ロエシックス:プロモーションかレギュレーションか」(提題者:村岡、玉井真理子氏[信州大学])が行なわ
れた。(他の参加者、粟屋・虫明・福島・大林・美馬・長瀬)この成果は、本項第 6 章等に反映されている。
⑧国際公開シンポジウム『人間改造のエシックス~ブレインマシンインターフェースの未来』
京都大学百周年記念ホール:2008 年 1 月 14 日
文部科学省科学技術振興調整費「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査
研究」研究班主催で開催され、ニューロエシックス班は全員参加し、うち村岡は、午後のシンポジウムで
「脳科学に規制は必要か」と題した発表を行なった。その内容は本項第 6 章に反映されている。
⑨ニューロエシックス班「第 3 回研究会」・鳥取大学:2008 年 1 月16日~17 日
初日、粟屋剛・岡山大学教授が「テクノエンハンスメントの正当化と能力不平等」との関連について講
137
演し、それに対して、JF チルドレス先生(米国バージニア大学教授・生命倫理学)がコメントを、翌日には、
総合討論が行なわれた。(他の参加者、美馬)この内容は、本項第5章に反映されている。
⑨ニューロエシックス班「第 4 回研究会」・京都佛教大学駅前会議室:2008年3月 13 日
第 4 回研究会では、講師・安藤泰至先生(鳥取大学)が、最近の『バイオエシックスの「世俗化」をめぐっ
て(―J・チルドレス東京講演の報告とコメント―)』を報告され、それを受けて、参加者が脳神経倫理との
関連を踏まえ意見交流した。(参加者、村岡、美馬、長瀬)この成果は、本項第 6 章に反映。
⑩米国調査:2008 年 3 月 19 日-25 日
アメリカン・プログレスセンター(ワシントン)にてモレノ教授らと、及びハーヴァード大にてクリスタキス教
授らと意見交流を行なった。(参加者、粟屋・虫明・村岡・美馬・長瀬)この成果は、本項第 6 章に反映され
ている。
138
2.3.2 ニューロエシックスの諸問題
(就実大学:虫明茂)
この報告では、海外におけるニューロエシックスの研究動向や文献を紹介するとともに、ニューロエシッ
クスの基本的な問題について考察する。まず第Ⅰ節でニューロエシックスの概念を明確にし、第Ⅱ節でニ
ューロエシックスの中でも新しい部分とされる「倫理の脳神経科学」の問題に触れた上で、第Ⅲ節ではニ
ューロエシックスのガイドラインとも言うべき「脳神経科学の倫理」を紹介する1。
2.3.2.1 ニューロエシックスの概念
ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ウィリアム・サファイア William Safire は、2002 年に開催された会
議で「2世紀以上にわたって増大しつつある懸念に関する最初のシンポジウムにようこそ! ニューロエシ
ックスとは、人間の脳の治療ないし完成 perfection、歓迎されざる侵襲および憂慮すべき操作について、
何が正しく何が間違っているか、何が善くて何が悪いかを吟味することです」と述べている[ND ix]2。ニュ
ーロエシックス(脳神経倫理)neuroethics という言葉が人口に膾炙するようになったのはこの頃からである
が、サファイアの造語ではなく、1990 年前後から科学的文献の中で使われていた言葉である[NC 64]。彼
はまた、ニューロエシックスを「人間の脳の治療ないし強化(エンハンスメント)enhancement の是非を論ず
る、哲学の分野」とも規定している[ND v]。また、脳科学者のマイケル・ガザニガ Michael S. Gazzaniga は、
ニューロエシックスとは「病気、正常性、道徳性、人生哲学の社会的問題を、根底に潜む脳メカニズムの
理解に基づいて」取り扱うものであり、「脳に基づく人生哲学 brain-based philosophy of life を見いだそうと
する努力である――ないし、努力たるべきである」と述べている[ND v]。
ニューロエシックスに関する疑問の1つは、そもそもニューロエシックスなるものは必要なのか、ということ
である。つまり、それはバイオエシックス(生命倫理)bioethics の一部にすぎないのではないか、という疑
問である。バイオエシックスとは別にニューロエシックスなるものが必要ならば、器官(系)の数だけ「……
エシックス」が必要だということになるのではないか? たとえば、肺倫理 pulmono-ethics ないし呼吸器倫
理のように[ND v]。こうした疑問に対して、ニューロエシックスの必要性を唱える人々は、脳が特別な器官、
すなわち「精神の座」であることを強調する。
この点を、アディーナ・ロスキーズ Adina Roskies の区別に即して考えてみよう。彼女は、ニューロエシッ
クスを「脳神経科学の倫理」と「倫理の脳神経科学」に分けている。前者の脳神経科学の倫理 ethics of
neuroscience には、脳神経系に関する研究倫理、医療倫理などが含まれる。これは従来の生命倫理とも
重なるところが多い部分であると言えよう。それに対して倫理の脳神経科学 neuroscience of ethics は、倫
理そのものを理解しようとする脳神経科学的アプローチである。倫理的認知・行動の脳基盤に関する科
学的研究が進めば、我々人間の倫理(観)そのものにも影響を与えることになるかもしれない。とはいえ、
両者はまったくの別物というわけではなく、ロスキーズは「ニューロエシックスの2つの主要部門は概念的
に相互に結合し、フィードバックが強いので、両者の区別は概略的にしか、しかも理論上でしかなされな
い」と述べている[DR 15-17]。特に後者の「倫理の脳神経科学」については、今後の研究の進展に俟つ
部分が多い。
1
この報告書は、脳神経倫理国際動向調査班 第 1 回研究会(2007 年 10 月 8 日、岡山)で行った報告
「ニューロエシックスの諸問題」の内容をまとめたものであるが、シンポジウムにおけるチルドレスの基調講
演など、その後の成果を踏まえて加筆修正を加えた。
2
引用文献は、上記「参考文献」表の末尾に掲げた略号とページ数で示す。
139
ニューロエシックスが必要だとする人々も、それがバイオエシックスからまったく独立した別の分野だと考
えているわけではない。ロスキーズも「ニューロエシックスが新奇なまとまった学問分野 novel and cohesive
discipline であることを証明するつもりはない」と述べているし[ND 17]、ニール・レヴィ Neil Levy も「ニュー
ロエシックスは、バイオエシックスと並んで半独立した学問分野 semi-independent discipline としての位置
を占めるだろう」と述べている[NC v]。
ニューロエシックスの重要性を認める人々は、脳神経系に関する研究が遺伝子研究以上に、人間が人
間たるゆえんである精神にとって決定的であると言う。このような考え方を、脳神経本質主義
neuroessentialism ないし脳神経決定論 neurodeterminism と呼ぶ。これが確信、いや信仰にまで強まると、
脳神経科学主義(ないし脳神経科学教)neuroscientism と呼んだ方がいいかもしれない。その結果、一般
の人々の間にも、「最新の脳科学の成果に基づくと……である」と言われると、無批判的にそれを「本当
real」だと信じ込む、ニューロリアリズム neurorealism が生まれつつある。このような社会的背景のもとに、
脳神経神話 neuromyth がはびこりやすい傾向が見られる。脳神経神話とは、「脳科学の成果に基づくと
称する似非科学的言説」である。その際に注意しなければならないのは、いわゆる脳神経神話を振りまく
のは「似非脳科学者」や「タレント脳科学者」に限らないことである。脳科学の分野では立派な業績をあげ
ている「正統派脳科学者」も、一般の人々の「倫理の脳神経科学」への強い関心のもとに、脳科学的研究
の成果を解釈する際に自分の個人的な人生観・倫理観を読み込んでしまう危険性がある。脳神経神話の
蔓延を防ぐためには、脳神経神話を収集・分類して、神話として成立するメカニズムを解明する脳神経神
話学 neuromythology が必要となろう。
とはいえ、「言論の自由」の時代であるから、脳神経神話を一掃するのは困難であろう。一般の人々がニ
ューロリテラシーneuroliteracy(脳神経科学、脳神経倫理学、脳神経神話学に関する基本的な見識)を身
につけると同時に、脳科学者の側にも社会リテラシーsocioliteracy(誤解や過剰な反応を引き起こさない
ように脳科学情報を一般社会に向けて発信する見識など)が求められよう。
レヴィは、ニューロエシックスの問題となりうる、いくつかの具体的な事例をあげている。まずは、身体統
合性同一性障害 body integrity identity disorder: BIID の例である。これは、体の一部(通常は手や足)
を切除したいという永続的な願望を主訴とする「障害」で、「患者」の求めに応じて切断手術に応ずるべき
かどうか、論争の的となっている。性的倒錯 paraphilia の一種だという説や、身体醜形障害 body
dysmorphic disorder の一種だという説がある。また、「(客観的な)身体」と「(主観的な)身体」ないし「(大
脳皮質の)身体図式」の不適合に由来するという説がある。後者だとすれば、性同一性障害 gender
identity disorder の類例と見ることもできよう。いわゆる幻肢 phantom limb や幻肢痛 phantom pain とも関
連する問題である。
また、レヴィは自動症 automatism の例をあげて、法的な責任の問題に触れている。自動症とは、無意識
に近い状態で複雑な一連の行動をすることで、いわゆる夢中歩行 sleep walking、夢遊病 somnambulism
である。ケン・パークス Ken Parks は、車を運転して義理の両親宅に行き、2人を刺してしまう。そして、警
察に行って「誰かを殺したような気がする」と言う。そこで初めて自分の手が重傷を負っていることに気づく。
義理の母に対する殺人罪、父に対する殺人未遂罪で起訴されるが、弁護側は夢遊行動で無罪を主張す
る。この例では、行動における「意識的意図 conscious intention」の有無が問題とされているが、振り返っ
て考えてみると、我々は日常的に明確な意識的意図なしに行動していることが多い。「意識的熟慮
conscious deliberation」の有無だけで、責任ある行動と責任のない行動、自発的(随意的)行動と非自発
的(不随意的)行動を区別できるのか、といったことが問題となる。
140
さらに、レヴィはカプグラ妄想 Capgras delusion の例をあげる。カプグラ症候群の患者は、親しい人の顔
を見て誰であるかわかる(同定する)が、本物ではなく詐称者(替え玉、なりすまし)だとするのである。そし
て、「保険金をねらうペテン師」だとか「敵国のスパイ」だと「妄想」する。このような症状についての説明とし
て、相貌認識には2つの異なる独立した経路があるという考え方がある。姿形などの特徴から知的、意識
的に人物を同定する経路と、親しい人物に対して自律神経的に皮膚伝導反応 skin conductance
response: SCR などを起こして、既知の親しい人物だと無意識的に感じる経
路である。つまり、カプグラ症候群の患者は、(知的、意識的には)親しい人
物の顔を誰の顔だかわかって(再認して)いるが、(自律神経的、無意識的
には)親しい人物として反応して(感じて)いないのである。第1の経路では、
ある顔が妻の顔である(らしい)ことは知的、意識的にわかるのだが、第2の
経路に問題があって親しい人であるという「感じ」がしないので、「妻になりすました他人」と考えるのであ
る。
同様の例として、レヴィはティチェナーの錯覚 Titchener illusion の例をあげる。右図のように、中心部の
円は左右ともに同じ大きさだが、小さな円で囲まれた左の中心円は、大きな円で囲まれた右の中心円より
も大きく見える。ところが、これをプラスチックの円盤に置き換えて実験し、被験者が中心の円盤を手でさ
っとつかもうとするとき、指の開きには差がない。霊長類の知覚神経伝達経路には内的表象を司る「腹側
系 ventral system」と行動の誘導を司る「背側系 dorsal system」があり、両者はある程度独立して働いてい
るからではないか、といった説明がなされる。
このような例からレヴィは、デカルト主義の残滓を批判する。デカルトが「思考するもの res cogitans」とい
うときの「思考 cogitatio」は、知情意を含む広い意味で用いられており、ほぼ「意識 conscientia」と同義で
ある。しかも「共に-知っていること con-scientia」という自覚的意識である3。それに対してレヴィは、心の
働きには無自覚的な構成要素があることを強調する。「パーソナルな(人格的な)レベルとサブパーソナル
(人格下の)subpersonal レベルの区別が、ここでは極めて重要である。我々自身を理解するためには、そ
して我々が誰であるか、何であるかを決めている脳と心の働きを理解するためには、意識的覚知のレベ
ル以下で情報処理が自動的に行われている程度が極めて大きいことを理解する必要がある」。そして、
「我々の行動の多数、おそらく圧倒的多数は、自動的なシステムによって生み出されており、通常我々は
これを意識的に制御せず、また介入することもできないのである。……心の機能や機能不全に関する科
学的知見の増大を鑑みれば、心が非物質的な実体であるなどということは、ありそうにないことである」と
述べている。「にもかかわらず、この実体二元論のテーゼは、日常の思考を導く自己の概念の種類や、認
知科学者でさえ用いている誘惑的な観念のいくつかに、重要な影響を与え続けている。……自己を意識
と同一視する日常的な概念は、デカルト的見解の末裔 distant descendant of the Cartesian view ではな
いかと私は疑っている」と、改めてデカルト主義批判の必要性を唱える4[NC 17-29]。
そしてレヴィは、古典的な謬見としてホムンクルス錯誤 homunculus fallacy をあげる[NC 24]。これは、心
の働きを、頭の中に小人(ホムンクルス)がいると仮定することによって説明しようとする謬見である。たとえ
3
デカルトの流れを汲む哲学においては、たとえば志向性 intentionality について、「意識は対象につい
ての意識であると同時に、(対象についての)意識についての意識である」といった形で表現される。
4
隠れデカルト主義 crypto-Cartesianism 批判は、マクスウェル・ベネットらも徹底して行い、心の「内面」に
あるものと「外面」にあるものという、よく持ち出される二分法 dichotomy にかかわる誤解を清算することから
始めなければならないと述べている[PF 85-88]。
141
ば、脳の視覚野に映し出される映像を、ホムンクルス(=心)が――おそらくカウチに座ってポテトチップス
を食べながら――見ているとする謬見である。ベネットらはさらに一般的に、部分論的錯誤 mereological
fallacy と呼んでいる[PF 29]。部分論 mereology とは、部分と全体の関係に関する理論(論理)である。した
がって部分論的錯誤とは、本来全体(としての人間)にのみ帰しうる述語を、その一部(脳)に帰する謬見
である。たとえば、私(という人間)ではなく「脳が見る」とする謬見である。
レヴィはさらに徹底して、精神=「考えるもの」、身体・物体=「拡がったもの res extensa」とするデカルト
の二元論に真っ向から挑戦して、延長精神仮説 extended mind hypothesis を唱える[NC 29-37]。心は頭
蓋の中に、それどころか体の中にさえ含まれているのではなく、世界の中へと溢れ出ていると言うのである。
そして、クラーク A. Clark らを援用して、「あるものが認知活動において役割を果たし、それが(内在的で
あれば)心の一部であると容易に結論できるようなものであれば、(内在的であろうとなかろうと)心の一部
と見なすべきである」という相等性テーゼ parity thesis を唱える[NC 36]。こうした考え方に基づいて、ニュ
ーロエンハンスメント neuroenhancement(技術による脳機能の強化)についても、たとえば内在的「記憶
力」も外在的「記憶装置」も相等で心的なのだから、「記憶装置」の改良は善くて「記憶力」の改良は悪い
とは短絡できないと主張する5。
2.3.2.2 倫理の脳神経科学
冒頭でニューロエシックスについて、「脳神経科学の倫理」と「倫理の脳神経科学」の2分野があり、人間
の倫理的認知・行動を脳科学的な方法によって解明しようとする後者の研究が、倫理に新たな光と陰を
投げかけていることを指摘した。
後者の例として有名なのが、ジョシュア・グリーン Joshua Greene らによる研究である。彼らは、脳が道徳
的ジレンマを処理する仕方についての画期的な研究において、「個人的な道徳的ジレンマ」を考察して
いるか「非個人的な道徳的ジレンマ」を考察しているかによって、被験者の脳神経過程に重要な違いがあ
ることを発見した。個人的な道徳的ジレンマ personal moral dilemma とは、誰かに直接的に危害や死をも
たらすことを含むケースである。それに対して、非個人的な道徳的ジレンマ impersonal moral dilemma と
は、危害や死がそれほど直接的ではない過程をへて帰結するケースである。具体的な例として、いわゆる
「トロリー問題 trolley problem」の例をとってみよう。
〈トロリー問題1〉
ブレーキのきかなくなったトロリー(トロッコ)が暴走している。線路の先には5人の作業員がいて、放って
おけば5人はトロリーにはねられて死亡する。ところが、あなたの前には線路の転轍機があって、これで線
路を切り替えてトロリーを傍線に誘導すれば、5人の命を救うことができる。しかし、傍線にも1人の作業員
がいて、転轍機を切り替えればこの1人は死亡する。このような場面に直面したとき、あなたは転轍機を切
り替えるべきか?
〈トロリー問題2〉
ブレーキのきかなくなったトロリーが暴走している。線路の先には5人の作業員がいて、放っておけば5
5
ニューロエンハンスメントの問題については、同書第2章「心を変える Changing our minds」、第3章「直
接的操作に反対する前提 The presumption against direct manipulation」でレヴィは詳しく論じている。
142
人はトロリーにはねられて死亡する。ところが、あなたの前には1人の人物がいて、この人物を線路に押し
倒せば、トロリーを止めて5人を救うことができる。あなたは小柄なので、飛び込んでもトロリーを止めること
はできない。このような場面に直面したとき、あなたはこの人物を線路に押し倒すべきか?
功利主義的 utilitarianistic、結果主義的 consequentialistic に考えれば、いずれも5人を救うか1人を救う
かという問題であって、本質的な違いはないことになる。しかし、ジレンマの個人性/非個人性という点か
らみれば、後者は自分が直接的に1人の死をもたらすことになるので「個人的なジレンマ」、前者は自分が
直接的に死をもたらすわけではない(死は間接的に帰結する)ので「非個人的なジレンマ」ということにな
る。
米国での実験によれば、圧倒的に多数の被験者が、前者の場合、転轍機を切り替えることは許容され
る、それどころか義務でさえあると考えるのに対して、後者の場合、押し倒すことは許されないと答えた。
グリーンらによれば、被験者が非個人的なジレンマを考察するとき、作業記憶にかかわる脳領域は活性
化するが、情動にかかわる領域はほとんど活性化しない。しかし、個人的な道徳的ジレンマを考察する際
には、情動にかかわる領域がかなり活性化するのに対して、作業記憶にかかわる領域は休止時の基準値
以下の活動程度しか示さなかった。グリーンらは当初、これを脳科学的に発見された単なる事実として提
示したのであったが、次第にこれが倫理に対して含意をもつと考えるようになった。
人間の高度な理性的認知が主に大脳の新皮質でなされるのに対し、古い皮質である大脳辺縁系は情
動、本能行動、自律神経調節などを司っている。トロリー問題を考える際の脳活動を分析してみると、合
理的な新皮質の判断が感情的な旧皮質によって曇らされているという見方も生まれてくる。そこで、我々
の道徳的判断は、何らかの善い(十分な)理由とは無関係に、我々の脳が進化の過程でたまたまそう構
築されているという偶然に基づいているのではないかという疑念をグリーンは述べている。
ピーター・シンガーPeter Singer は、この疑念をさらに進める。彼によれば、我々が直接的な危害に対し
て特別な反発を感じるのは、これが我々のかつての進化(環境への適応)の過程に存在した唯一の危害
だったからである。今では技術の進歩によって、直接手を下さずに危害を加える可能性が生まれている
が、これには進化が追いついていない。そこで、シンガーによれば、脳科学的証拠が示唆するように、道
徳的直観が情動的反応の産物であり、そして、これらの反応が世界の道徳的構造ではなくて我々の進化
の歴史の産物である可能性が高いとすれば、我々のすべての道徳的直観は、その非合理性を証明する
直接的な脳科学的証拠がなくても、すでに疑わしいものであるという[NC 291]。このようにシンガーは、脳
科学の知見から現在の道徳全体への懐疑を導き出している。動物の権利擁護論者であるシンガーの目
から見れば、現在の人間の道徳は、生存競争による種の保存、さらに言えば弱肉強食という進化の圧力
のもとで生まれたものであるから、根本的に疑ってかかる必要があるということになる。
これに対してロスキーズは、同様の脳科学的知見から、まったく異なった結論を引き出している。彼女
は、腹側正中前頭皮質 ventromedial frontal cortex に損傷を受けた患者(VM患者)の例を取り上げる6。
VM患者の認知能力はほとんど損なわれていないが、情動的な反応が損なわれている。たとえば、普通
の人は緊張すると発汗し、皮膚の電気伝導率が高まるという皮膚伝導反応を起こすのだが、VM患者は
6
VM患者の例として有名なのは、1848 年に脳損傷を受けたゲージ Phineas Gage である。鉄道工事の最
中の事故で鉄棒が脳を貫通し、VM損傷を受けた。幸い健康を回復し、鉄道工事の仕事にも復帰した。
記憶、理性的判断、言語、運動機能などは正常であったが、性格が一変し、責任を全うできず、社会的
慣習を守ることができないようになっていた[ND 19]。
143
このような反応が損なわれているのである。認知能力は損なわれていないので、倫理的認知判断につい
ては普通人とほぼ同じ答えを出す。しかし、感情がからんでくる問題になると、普通人とは違った判断を下
すことがある。先にあげたトロリー問題では、普通人では感情がかかわってくる第2のトロリー問題につい
て、VM患者は第1のトロリー問題と同じ功利主義的、結果主義的な結論を出す。つまり、道徳的認知判
断において感情の影響を受けにくいので、冷徹な判断を下すのである。
このように、まずは道徳的認知の場面で感情が関係してくるのだが、道徳的行動の場面でも感情が関
係する。VM患者は、たいていの道徳的認知判断は普通人と同じように行っても、これに従って行動する
ことができず、反社会的な問題行動を起こすことがある。普通人にとっては、目の前の人間に直接手を下
して危害を加えることには感情的な抵抗が強い。しかし、情動能力の損なわれているVM患者は、感情的
な行動の抑制が働きにくいので、普通人と同じ道徳的判断を下している場合でも、この判断に従って行
動しないケースが増える。このように、情動は道徳的認知のみならず、道徳的行動の場面でも重要な役割
を果たすのである。
レヴィは、感情と道徳的認知・行動について次のように述べている。特殊な状況下で、感情が我々の道
徳的認知を歪める例があることは否定できない。しかし、知覚の場合に、特殊な状況下で錯覚の例がある
からといって、外界についての我々の知覚がすべて疑わしいということにはならず、知覚が一般に信頼で
きる現実への導きであると同じように、感情も信頼できる現実への導きであり、また道徳的行動を促す役
割も担っているのである[NC 293-299]。
感情によって道徳的判断が歪められることがあること、また感情の暴発によって道徳に反する行為が誘
発されることがあることは、我々の普段の経験からも周知の事柄である。そこで、感情の自己制御能力を
身につけることが、一般の学習や道徳教育において重要な課題として位置づけられている。さらに、共感
(共苦)能力が道徳的な認知や行動を実践する上で重要な役割を果たすことも知られている。脳科学の
わずかな知見から飛躍した道徳的帰結を導き出すことを戒め、情動と道徳的認知・行動の関係に関する
研究の進展を慎重に見守る必要がある。
「存在 Sein」と「当為 Sollen」という概念対があるが、科学的事実(存在)から直ちに我々が何をなすべき
か(当為)が帰結するわけではないことを改めて確認しておきたい。スティーヴン・ローズ Steven Rose は、
「脳科学の知識が我々の倫理的理解を豊かにすることはありうるが、これに取って代わることはありえな
い」と述べている[FB 305]。
2.3.2.3 脳神経科学の倫理
第Ⅰ節で述べたように、「脳神経科学の倫理」は脳神経系に関する研究倫理や医療倫理を含み、従来
の生命倫理と連続性の強い部分である。そこで、いわば「生命倫理の4原則に則った脳神経倫理」として、
シンポジウムにおけるジェイムズ・チルドレス James F. Childress の基調講演の要旨と、ラインハルト・メル
ケル Reinhard Merkel らの「結論と勧告」を参考資料として掲げておく。
チルドレスはレヴィの相等性テーゼを引用して、一見新奇に見えるニューロエシックスの問題も、バイオ
エシックスの4原則(自律尊重、無危害、善行、正義)を脳神経科学・技術の文脈で解釈し、特殊化し、比
較考量するすることによって解決できると言う。しかし、レヴィは「脳神経科学の倫理に関するかぎり、この
本はいくぶんデフレ的なテーゼ〔相等性テーゼ〕を擁護する」(下線引用者)としている点に留意する必要
がある。「デフレ的」とは、「脳神経科学や脳神経倫理をめぐる誇張 hype」によるインフレ(問題の新奇さの
誇大宣伝)を抑えるという意味である[NC xi-xiii]。彼がロスキーズの「脳神経科学の倫理」、「倫理の脳神
144
経科学」という区別を援用して、ニューロエシックスをバイオエシックスから「半独立した学問分野」と認め
ている点も忘れてはならない。
また、チルドレスは、前述の4原則に則ったアメリカ流のバイオエシックス/ニューロエシックスに対して、
ヨーロッパには「人間の尊厳」、「脆弱性」、「連帯」などを原則として組み込むべきだという考え方があるこ
とを指摘している。ヨーロッパ、特にドイツでは生命技術に関する慎重論が根強く存在することは周知のと
おりであるが、しかし、リベラルな考え方も存在することを忘れてはならない。メルケルらは、ビーチャム/
チルドレスの4原則に基づくニューロエシックスのガイドラインとも呼ぶべきものを提唱している。
2.3.2.3-1 チルドレス「ニューロエシックス: 脳神経科学における原則とジレンマ」7
James F. Childress, “Neuroethics: Principles and Dilemmas in the Neurosciences”
Ⅰ.ニューロエシックスの本性、可能性、限界
脳科学はエキサイティングな発展を見せており、注目すべき倫理問題やジレンマが生まれている。しか
し、メディアがあまり注目していないので、一般の人々の関心も薄い。これはゲノムの場合と対照的である。
また、メディアは精神疾患の治療や認知エンハンスメントのような潜在的メリットに焦点を合わせているの
で、概して楽観的である。Ellen M. McGee らは、「ブレイン・マシン・インターフェース BMI は、ほとんど社
会的、倫理的精査を受けていない。……〔しかし、〕人間を変え、大きな影響を与える BMI 技術の潜在的
影響力の方が、遺伝子エンハンスメントの潜在的影響力よりもはるかに大きい。なぜならば、遺伝子エン
ハンスメントが生体 biology によって内在的に制約されているのに対して、人間と機械の混成体 hybrid に
はそのような制約がないからである」と述べている。とはいえ、一部には脳神経技術のSF的で遠大な社会
的、倫理的含意を懸念する予言者もいるので、全般的な無視と、少数の芝居がかった histrionic 批判とい
う両極端に分かれているとも言える。
ニューロエシックスにおける1つの問題は、次のようなものである。
1.脳神経科学がもたらす問題はとても新奇でユニークなものなので、分析のための全面的に新しい倫理
的枠組みが必要である。
2.生命技術における既存の問題と同様なので、生命倫理の4原則を脳神経科学・技術の文脈で解釈し、
特殊化し、バランスをとれば、現存の倫理的枠組みで十分である。
疑いもなく、脳神経科学における現在の展開や今後予想される展開は、生命医学や生命技術の領域
ですでに生じている倫理問題やジレンマのいくつかを深め、拡大し、強めるものである。しかし私は、少な
くとも作業仮説としては、脳神経科学技術から生ずる倫理問題やジレンマに取り組むのに、現存の倫理
的枠組みで十分であると考える。
このアプローチには、2つの含意がある。第1に、脳神経科学の発展という文脈で、1つ以上の倫理原
則の枠組みを同定し探索する必要がある。そして第2に、脳神経科学技術の領域において生ずるような
種類の状況と、他の科学技術の領域において生じるような種類の状況との間における重要な類似と差違
を、注意深くかつ想像力豊かに考察する必要がある。このような考察のためには、「決疑法 casuistry」、す
なわち典型的な事例(範例)から新しい事例を類推する推論が必要となる。生命医学倫理においては、
「原則に基づくアプローチ principle-based approach」と「事例に基づくアプローチ case-based approach」
7
このまとめはチルドレスの基調講演原稿に基づくもので、当日は時間の関係等で省略された内容も含
んでいる。
145
という間違った二分法を避けることが重要である。
ニューロエシックスに関する興味深く重要な新著『ニューロエシックス――21世紀の難問』Neuroethics:
Challenges for the 21st Century の中で、ニール・レヴィは倫理的相等性テーゼ・原理 ethical parity thesis
and principle を唱え、「心を変える新しい方法〔脳神経技術〕は、まったく未曾有の〔前例のない〕ものでは
なく、全体として、古い方法とは種類が質的に異なるものと見なすべきではない。そうではなく、心を変え
る新しい方法は、より古く見慣れた方法と同等なのである。……新しいジレンマや難問の大半は、古い問
題の新バージョン new versions of old problems である」と述べている[NC xii]。
我々は、倫理的反省の新しいターゲットを表すために、術語を組み合わせて新語を創るのに慣れてい
る。たとえばバイオエシックス、ジーンエシックス genethics、ナノエシックス nanoethics、ニューロエシックス
などのように。私もこのような新語のいくつかは使用するが、留保付きで使う。なぜならば、これらの新語は
異なった、分離した、あるいは孤立した倫理的反省の領域を示唆するからである。合成新語 synthetic
neologisms は簡便ではあるが、歪曲 distortion の危険に留意する必要がある。倫理的諸問題は、一瞥し
たところ分岐する divergent ように見えるかもしれないが、ナノ・バイオ・インフォ(情報)・コグノ(認知)科学
技術は、新しい統合領域――いわゆる NBIC 収斂 convergence の不可欠の構成要素をなすのである。
私の見るところ、必要なのは、それぞれの領域の「諸倫理」を単一の全体へと結合ないし融合すること
ではなく、むしろ、これらすべての領域を、単独かつ集合的に、同一の倫理原則のもとに観ることである―
―もちろん、それぞれの領域で生ずる特殊で異なった倫理問題やジレンマを無視してはならない。
Ⅱ.倫理原則の枠組み
ビーチャム Tom L. Beauchamp と私は『生命医学倫理』Principles of Biomedical Ethics, 1979-2001(第
1~5版)を出版してきた。この枠組みには、いくつかの一般的な倫理原則と並んで、原則の内容をさらに
特定するいくつかの規則が含まれる。これらの原則や規則は、一応拘束的 prima facie binding なものと見
なされる。4つの主要な原則 major principles は、自律尊重 respect for autonomy、無危害 nonmaleficence、
善行 beneficence、正義 justice である。派生的な規則 derivative rules として、正直 truthfulness、プライバ
シーprivacy、機密保持 confidentiality、誠実 fidelity ないし約束遵守 promise-keeping などをあげることが
できよう。このアプローチは「原則主義 principlism」と呼ばれることもあるが、これは当初、批判者たちから
貼られたレッテルである。
その他、(人間)関係 relationships、共同体 community、信頼 trust なども重要な道徳的概念である。上
述の原則の枠組みに対しては、アメリカで始まったという由来もあって、個人主義的すぎる excessively
individualistic と批判し、アメリカよりもヨーロッパやアジアにおいて顕著であった共同体の原則を加えるべ
きだと提唱する人々もいる。少なくとも、これらすべての原則を、共同体その他の人間関係というレンズを
通して解釈し、道徳的活動や反省の重要な側面を捉えることは必要であろう。たとえば、善行や無危害は
(研究における)共同の利益 communal benefits や(公衆衛生における)害を含むものと一般に理解される。
自律尊重というと個人主義的すぎるように思われるかもしれないが、個人は多かれ少なかれ共同体の中
に組み込まれており、それぞれの共同体には様々な異なった信念・価値・慣習などがある。したがって、
文化的価値(観)の尊重 respect for cultural values は重要である。しかしながら、個人の選好や選択を、
共同体の伝統・信念・価値を参照することによってのみ決定することはできない、ないし正当化できないし、
厳格な正当化条件を満たすことなく個人の自律を共同体の意志に従属させることは、倫理的に許容でき
ない。
146
正義には、様々な技術に関する公共政策の形成に、重要な利害関係者として個人ないし集団が参加
することが含まれる。こうした例が示すように、個人を無視することなく、最小限必要なことは、信頼および
信頼に値すること trustworthiness が重要となる共同体その他の人間関係のレンズを通して、原理をより広
く豊かに解釈することである。
Jacob Dahl Rendtorff と Peter Kemp は「ヨーロッパの生命倫理及び生命法における基本的倫理原則」
という報告書の中で、自律、尊厳 dignity、統合性 integrity、脆弱性 vulnerability をあげている。これらはし
ばしば、連帯 solidarity や責任 responsibility という社会的正義の枠組みの内部に置かれる。生命医学の
研究や実践(臨床)の原則についての多くの国際的定式に見られるもう1つの枠組みは人権 human rights
であり、その基礎は人間の尊厳 human dignity とされる。同様に、ビーチャムと私が提示する生命医学倫
理の原則を理解する1つの方法は、人間の尊厳を原則の序幕・背景幕 preamble and backdrop として見る
ことである。しかしながら、後述するように、人間の尊厳については多くの混乱した相反する解釈がある。
Ⅲ.倫理原則を解釈し、特殊化し、バランスをとること
一応の原則 prima facie principles は、事情によっては衝突(相反)する conflict ことがある。そのような場
合には、第1に、衝突する原則(の1つ)を解釈し特殊化して、衝突を縮小ないし除去することができるかも
しれない。第2に、一方の原則を守るため、他方の原則を無効にすることが必要、可能であるかもしれな
い。これらのアプローチには、倫理原則の異なった、しかし関連する2つの次元が含まれる。一方は原則
の意味・範囲・視野であり、他方は原則の重み・強さ・厳格さである。
一応の原則に対してすべての場合に当てはまるようなアプリオリな序列 a priori rank order はないので、
特定の場合における比較考量 balancing が必要となることがある。ある原則を守るために他の原則を侵す
には、一定の正当化条件 justificatory condition を満たさなければならない。これには、次のようなものが
考えられる。
(1)特定の場合において、一方の原則の方が、侵される原則よりも強い。
(2)道徳的目標を達成できる現実的な見込みがある。
(3)道徳的に優先すべき効果的な代替策がないので、一方の原則を侵さざるをえない。
(4)行為の第一次的な目標を達成することと両立するように、侵害を最小化する。
(5)侵害の否定的影響を最小化する。
(6)すべての当事者に対して公正に対処する。
Ⅳ.臨床やヒトを被験者とする研究における脳神経科学技術の使用
人間の被験者 human subject(今では次第に参加者 participant と呼ばれるようになってきている)を対
象とする脳神経科学研究は、人間を対象とする他の〔脳神経科学以外の〕研究と同じ基準を満たすべき
である。アメリカでは「ベルモント原則 Belmont principles」がこれに相当し、善行(無危害を含む)、パーソ
ンの尊重 respect for persons、正義を原則とし、以下のような内容を含む。研究が価値ある目標を有し、こ
の目標を達成できそうな科学的に妥当な方法を用いるものであること。研究が社会(および被験者)に対
してもたらすことが期待される利益(ベネフィット)が、被験者へのリスクを上回ること。研究が被験者のリス
クを最小化するようデザインされていること。被験者が平等に、公平に、公正に選ばれていること。参加し
てほしい被験者(判断能力のない人の場合には、法的に妥当な代諾者)が参加への自発的なインフォー
ムド・コンセントを与えること。被験者のプライバシーやデータの機密を守る措置がなされていること。
147
これらの基準は、広い倫理原則を特殊化したものとして、人間を対象とする脳神経科学的研究のための
必要にして十分なガイダンスを提供するものである。ある種の介入が脳の内部への介入であるという単な
る事実だけでは、その介入に反対する理由にはならないという、ニール・レヴィのいわゆる倫理的相等性
原則を拒否する理由はない。したがって、研究者や審査委員会は、新しい一連の基準を定式化するので
はなく、脳神経科学研究においてリスク、ベネフィット・リスク分析、インフォームド・コンセントなどに関して
生ずるかもしれない特殊な問題を考察することが必要となろう。たとえば、脳神経インプラントに関する研
究への参加者が同意を撤回した場合、問題が生ずるかもしれない――インプラントはすでに参加者の認
知に影響を与えているかもしれないし、その除去はリスクを伴うかもしれないのである。あるいは、研究の
終了後、参加者がインプラントの除去に許可を与えるのを拒むかもしれない。このような問題は、脳神経
科学研究において、より複雑になるかもしれないが、他の研究分野で生ずる問題と種類が異なるわけで
はない。
Ⅴ.脳神経科学技術のエンハンスメント的使用
生命医学倫理の原則という枠組みに、脳神経科学技術を用いた(人間を被験者とする)研究および治
療は大きな無理なく収まるが、この技術をエンハンスメントのために使用することをめぐっては、より困難な
問題が生ずる。1つの問題は、治療とエンハンスメントの区別が擁護できるかどうかである。
大統領生命倫理評議会 President’s Council on Bioethics の報告書『治療を超えて』Beyond Therapy
によれば、「治療 therapy」が病気や障害を抱えた人を手当(治療)treat して、健康という正常な状態にま
で回復させようとすることであるのに対し、「エンハンスメント(強化)enhancement」とは人体や心の「正常
な」働きを変え、生まれもった能力を増強ないし改善するために直接介入することである。しかし、この区
別は問題であり、擁護できず、機能しないと論ずる哲学者も多い。この区別は「病気」や「正常状態」のよう
な異論の余地のある概念に基づくので、明確さに欠ける。他方、この区別はたしかに不明確であるが、少
なくとも極端なケースでおいては有意義であると論ずる者もいる。
倫理原則の立場から見れば、エンハンスメントの主要な問題は、ベネフィットとリスクのバランス、公平と
平等、自発的なインフォームド・チョイスなどである。公平・平等に関する懸念によれば、エンハンスメント
的介入の利用可能性に関して、裕福な人々のみが利用する経済的余裕があるので、神経学的にエンハ
ンスされた者 neurologically enhanced と神経学的にエンハンスされていない者 unenhanced の間のギャッ
プが新たな社会的階層化 social stratifications を生み出したり、古い社会的階層化をさらに増強したりす
ることになると言う。レヴィによれば、エンハンスメントに伴う社会的不平等は、その他の社会的不平等の
問題とも相等であり、特別な問題ではない。また、大統領生命倫理評議会によれば、より根本的な倫理問
題はアクセスの平等の問題ではなく、提供されている事柄そのものの是非、そのような手段によって我々
の目的を追求することが賢明かどうかである。
評議会は報告書の中で、生命技術のエンハンスメント用法を批判する基準として「人間の尊厳」を持
ち出す。しかし、人間の尊厳には様々な異なる概念があるので、この基準そのものが論争の的となる。
1.「人間の尊厳」の第1の概念: 様々な遵守すべき義務、そして/または、尊重すべき権利に合致して
行為するという基準
2.「人間の尊厳」の第2の概念: 卓越、繁栄、徳の基準 standards of excellence, flourishing, and virtue
評議会やレオン・カス Leon Kass にとって人間の尊厳は、自律尊重・善行・正義のような原則に見られる
よりも「より豊かな生命倫理 richer bioethics」の一部である。人間の尊厳の侵害ないし脅威としてカスは、
148
非人間化 dehumanization、堕落 degradation、品位の低下 debasement などをあげ、ハクスリーAldous
Huxley の『すばらしき新世界』Brave New World で描かれたポストヒューマンな post-human 未来に何度も
言及し、「人間の卓越という基準の自発的侵害」、「自ら望んで行う非人間化」に関する懸念を表明する。
・「自然に与えられたもの」への感謝や敬意が、傲慢 hubris によって脅かされる。
・人間活動の尊厳が、「不自然な」手段によって脅かされる。
・同一性の保持が、自己変革 self-transformation の努力によって脅かされる。
・十全な人間の繁栄が、まがいものの、ないし浅薄な代替物によって脅かされる。
しかし、人間の自然本性 nature、繁栄、そして尊厳に関する評議会の概念が唯一もっともらしい概念と
いうわけではない。別の概念は、たとえば技術を作り使用することにおける人間の合理性 human
rationality、創造性 creativity などを特徴としてあげる。さらに、人間の自己創造 self-creation や自己変容
self-modification に焦点を合わせる概念もある。レヴィによれば、「我々人間は、独特の自然本性を備え
た動物である。すなわち、自己創造し self-creating、自己変容する動物 self-modifying animals である。
我々は自分自身の心を変え、そのために技術的手段を使用する。このことは、ポストモダンな西部の今、
ここ〔技術による人間改造の開拓時代ともいえる現代のアメリカ〕にいる我々についての何か新しいことな
のではない。我々人間は、もともとそのような種類の動物なのである」[NC xiii]。
カスのような批判者たちは、エンハンスメントのための生命技術の一部の用法は、人間の自然本性を超
え、人間の尊厳を侵害する「ポストヒューマンな」未来に導くと主張する。対照的に、トランスヒューマニスト
8
transhumanist たちは、「人間の尊厳」と「ポストヒューマンの尊厳 posthuman dignity」は互換的(両立しう
るもの)compatible であり相補的であると見る。我々が何であるかを決めるのは、我々の DNA のみではな
く、我々の技術的、社会的コンテクストでもある。このようなより広い意味における人間の自然本性は、ダイ
ナミックな、部分的には人間によって作られた、そして改善可能なものである(ニック・ボストロム Nick
Bostrom「ポストヒューマンの尊厳を擁護して」“In Defense of Posthuman Dignity,”Bioethics 19, No.
3(2005))。
たとえ技術が治療目的で使用された場合でも、人間・機械インターフェース human-machine
interface――たとえば、機械装置を身体に組み込むこと――の中には、人間の自己概念に難題をつきつ
けるものがある。しかしながら、そのような装置を受け入れる人々の中には、それによって「より人間的
more human」になると見る人々もいる。たとえば、風疹によって最終的に聴覚をまったく失ってしまった
Michael Chorost は、2001 年に人工内耳の埋め込み手術を受けた体験に基づき、『改造されて: 一部コ
ンピューターとなることによって、いかにして私はより人間的になったか』という書物を著している(Rebuilt:
How Becoming Part Computer Made Me More Human, 2005)。
8
「ポストヒューマン」と「トランスヒューマン」を区別する人々もいれば、ほぼ同義で使う人々もいる。区別す
る用法によれば、「ポストヒューマン」とは「人間-以後」、すなわち「もはや人間とは言えない、別種の存在
者」、「後人」、「超人 superhuman」である。これに対して「トランスヒューマン」とは、人間が自己自身に大規
模な技術的介入を加え始めた時から「ポストヒューマン」にいたるまでの「移行人 transitional human」、「越
人」である。トランスヒューマニズム transhumanism とポストヒューマニズム posthumanism は、ラディカルな
技術推進(による人間改造)論という意味で、ほぼ同義に用いられることが多い。
さらに、「ポストヒューマン」や「トランスヒューマン」の概念を不要と考える人々もいる。すなわち、人間は
もともと「自己変革」する、「自己超越的」な、「自由」な存在者なのであるから(ピコ・デラ・ミランドラ Pico
della Mirandola の「人間の尊厳」概念参照)、たとえどんなに姿形が変わろうとも、「自己変革」するもので
あり続けるかぎり、人間は「人間的」であるという考え方である(グレゴリー・ストック Gregory Stock など)。
149
レイ・カーツワイル Ray Kurzweil は、「今世紀末までに、人間と機械の間に明確な区別はなくなるだろ
う」と書いている。もし彼の予言が正しければ、我々がすでに部分的に素描したような視点から、我々が機
械を人間化 humanize したのか、我々自身を非人間化 dehumanize したのか議論されることになろう。道徳
的地位 moral status の問題も生ずるだろう。すなわち、 特定の存在者〔たとえばサイボーグやロボット〕が、
尊重すべき道徳的地位や尊厳をもつかどうかといった問題である。
Ⅵ.脳神経技術評価: 先行的注意原則か先行的注意プロセスか
開発中の脳神経技術やその他の技術について、ありそうな/ありうる/不確かな
probable/possible/uncertain ベネフィットと、ありそうな/ありうる/不確かなリスクをともに考慮に入れて、
将来を見越して倫理的、社会的に評価すること prospective ethical and social assessment は、どのように
したらできるだろうか? 過去の技術を振り返る歴史的視点に立ってみれば、そのような展望的評価はで
きそうにないと思われるかもしれない。アルコールの例を考えてみても、ベネフィットとリスクの評価が容易
ではないことがわかるだろう。技術には、(善用・悪用といった)二重用法 dual use が付きものである。
ありうる否定的結果 possible negative outcomes の大きさ magnitude や確率 probability を計ることがで
きればよい。リスクを量的に計ることができれば、適切なベネフィット・リスク・コスト分析を行い、害を予防し
たり軽減したりすることによって、(社会的)善行の原則を実現することができよう。しかし、リスクを量的に
計ることができない場合には、善行は先行的注意策 precautionary measures によって実現されるかもしれ
ない。問題は次のようになる。不確かなリスク、たとえば平等や人間の尊厳に対する脳神経技術による脅
威に直面して、どのような社会/政府/専門家の先行的注意活動が正当化しうるだろうか。
先行的注意を促す諺の1つは、「転ばぬ先の杖 Better safe than sorry」である。先行的注意 precaution
には、否定的出来事に先立って気をつけ予防策をとること taking care and using protective measures が
含まれる。
先行的注意原則9〔予防原則〕precautionary principle; Vorsorgeprinzip が明確に定式化され、擁護さ
れ、適用されたのは 1970 年代にまで遡り、特にドイツで顕著であった(UNESCO, The Precautionary
Principle, 2005)。この原則には、十全な科学的確実性がなくても、深刻なないし不可逆的な serious or
irreversible 損害の脅威に照らして正当化しうる justifiable ないし義務的な obligatory 社会的活動に焦点
を合わせるバージョンもあれば、原則の射程を深刻/不可逆的な害を超えて拡張するバージョンもある。
さらに、立証責任 burden of proof を新技術の推進側に負わせ、「無罪」であることが証明されるまでは新
技術を「有罪」とみなすというバージョンまである。
全般的な先行的注意原則は、一貫したガイダンスとはならない。たとえば、ある技術を開発しそこなえ
ば、この技術を止めたり制御したりしそこなった場合と同じようにリスクが生ずることがあるからである。あら
ゆる側〔方面〕にリスクがあるので、先行的注意原則は「まったく方向を示さない」という批判もある。
にもかかわらず、何が価値ある大切なものであり、何がリスクにさらされているかによって、害が深刻か
つ不可逆的な場合には、科学的証拠が不十分であっても、脅威ないし危険を回避ないし軽減するため
に社会が何らかの先行的注意策をとることが倫理的に正当化できる、それどころか義務でさえあると言え
9
これに対抗する原則として、トランスヒューマニスト/ポストヒューマニストと並ぶラディカルな技術推進論
者の一派であるエクストロピアン extropian(「エクストロピー」とは逆エントロピーのことで、科学技術の推進
によって世界の秩序を高めようする思想運動がエクストロピアニズム extropianism と呼ばれる)に属するマ
ックス・モア Max More は、率先的行動原則 proactionary principle を唱えている。
150
るかもしれない。先行的注意原則の批判者の中にも、破局の回避に焦点を合わせた「先行的注意原則の
控えめなバージョン modest version」ないし「破局防止原則 anti-catastrophe principle」なら受け入れると
言う人々がいる。
全か無か――技術を〔全面的に〕許可するか禁止するか――ではなく、破局的ではない脅威に対して
は中間的戦略 intermediate strategies をとりながら、研究その他の手段をとおして追加的な情報を探し求
め、追加情報が手に入れば中間的戦略をモニターして見直すという方策が正当化できるかもしれない。
必要なことは、感知した脳神経技術の脅威に対処するための「公的な先行的注意プロセス public
precautionary process」である。このプロセスは透明であるべきで、たとえば人間の尊厳に対して感知され
た脅威に応じた適切な政策について検討する際に、科学の専門家並びに一般の人々を包含すべきであ
る。民主社会においては、社会の基本的価値観や、一般の人々が熟慮の上優先した事柄に合致するよ
うにリスク回避ないしリスク軽減の政策を展開することが重要である。先行的注意策の受容可能性は大幅
に、様々な社会的、文化的、心理的視点に基づくことになろう。もし我々が公的な先行的注意プロセスを
受け入れるならば、濃淡のある nuanced、〔十把一絡げではなく、個々の事例について〕弁別する
discriminating 社会的判断を展開し、適切な先行的注意策をとることができるかもしれない。
大統領生命倫理評議会は報告書の末尾で、「バイオテクノロジーの時代が何をもたらすであろうか、そ
して、その時代における人間の生がどのようなものになるであろうか」を想像し始めようとする評議会の努
力が、「一般の論議をかき立て、情報を与えて活気づけて、国がどのように進もうとも、目を見開いて進
む」よう希望を表明している。
全体として評議会の報告書は、我々が何者であり、どこに向かっているのかに関する反省にインスピレ
ーションを与えて高めることができる、貴重な思想作品である。報告書はまた、サイエンス・フィクション、科
学報告書、倫理談義、社会・文化的分析などと並んで、我々の社会的対話に貢献している。長期的政策
を立てようとするのは時期尚早だが、真剣で持続する公的な先行的注意プロセスに着手すべき機は熟し
ている。そして、懸念の範囲に鑑みれば、時には誇張されすぎているとはいえ、何らかの控えめな先行的
注意策は是認できるかもしれない――これには、教育プログラム educational programs、専門家の自己規
制 professional self-regulation、そして限定的で的を絞った政府の介入 limited, targeted governmental
intervention などが含まれることになろう。
2.3.2.3-2.メルケルほか「結論と勧告」10
○ 我々著者は、精神薬理学 psychopharmacology、神経移植 neurotransplantation、遺伝子導入 gene
transfer、脳神経補綴 neural prosthetics、電気的脳刺激 electrical brain stimulation などの手段によっ
て脳に介入する新しい方法を吟味した結果、それらが革新的な治療上の応用をもたらすことによって、
個人および社会にとって利益となりうることを認め、支持するものである。もちろん、これらの介入法は
直接脳に手を加えるものであるから、たとえ治療目的のみのために用いられる場合であっても、しかる
べき注意をもって扱う義務がある。
○ 脳に介入する新しい技術によって、患者が根本的 radical で明白 obvious な仕方で変容する可能性に
10
「結論と勧告」の部分は、英語版とドイツ語版が巻末に収録されている。翻訳は英語版によったが、必
要に応じてドイツ語版[IB 471-473]も参照した。
151
一般の強い関心が集まっている。このため、実際にはもっと懸念すべき理由のある副作用から注意が
そらされてしまうことになるかもしれない。すなわち、心(理)一般 psyche in general、特に人格
personality の微妙 subtle な変化が容易に見過ごされてしまうかもしれない。
○ 研究段階においては、脳に介入するいかなる新しい方法も、人格と、パーソン性 personhood に関連
する心的能力とにかかわる微妙な副作用がないか、組織的に監視すべきである。
○ 人格または、パーソン性に関連する心的能力にかかわる微妙な副作用がありうることが知られた特定
のタイプの脳介入が、一定の治療的 therapeutic ないし予防的 preventive な適用のために承認される
場合には、この処置を受ける人はすべて、そのような副作用が処置の後で生じていないか注意深く監
視して、必要ならば適切な治療が受けられるようにしなければならない。
○ 副作用として一定の人格変化をもたらすことが予想される脳介入が受容できるものであるかどうか、ま
たは望ましくさえあるかどうかは、当の処置を受ける人本人のみが、その介入を受ける前に決定しうる
ことである。
○ 神経系障害および精神科障害をもった患者に実験的介入を行うためには、時間的スケジュールを組
んだ疾患別のコア・アセスメント・プロトコル core assessment protocols(CAPs)を確立して、(1) 有意味
な結果を獲得し、(2) 異なる治療アプローチを比較することができるようにすべきである。
○ 脳への介入が治療 treatment ではなくエンハンスメント enhancement を目指す場合、このことだけでは
まだ「共通の倫理的確信や規則に対する重大な背反」であるとは言えない。個人的エンハンスメント
が正当化されうるかどうかという問いに関しては、そのようなエンハンスメントを望む人の個人的自由
individual liberty(自治としての自律 autonomy as self-government)がエンハンスメントに有利な(まだ
決定的ではないが)強い論拠を提供する。
○ 精神的エンハンスメントを目指す脳への介入が、当該の個人にとって身体的ないし精神的リスクがあ
るというだけの理由で、そのような介入を原則的に倫理的に拒否すること、いわんや全面的に法的に
禁止することを我々は支持するものではない。しかしながら、単なるエンハンスメントの潜在的な否定
的副作用は、意図された肯定的作用に対して、治療事例の場合と較べて、より重きをなすものである
ことを強調しなければならない。エンハンスメント目的のみのために介入する医師は、クライアント
client に情報を与えるより大きな義務を負っている。患者に対する医師の義務が増大するだけ、医師
は自分自身のために関連する追加的情報を獲得する義務もある。
○ 健康な人間をエンハンスすることは、保健医療専門家 health care professionals の責任の真の
genuine 部分ではない。それは、病気を治療し予防することである。したがって、エンハンスメントのみ
を目指す脳介入は、治療から区別するのが困難な境界事例があるという事実にもかかわらず、医療
における善行原則の義務的な力を受けることはない。
○ 病気/障害の予防に数え入れることさえできないエンハンスメント(「単なる」エンハンスメント)は、社
会制度としての「本来の医学 proper medicine」の領域に含めるべきではない。
○ 脳への介入による精神的エンハンスメントのための手段の開発にのみ向けられた研究は、保健医療
という社会制度のための公的資金によって助成すべきではない。さらに、そのような研究の産物を精
神的エンハンスメント達成のために応用することもまた、保健医療制度によって資金援助すべきでは
ない。
○ 教育という伝統的な手段を使い、親自身の価値観に従って子供の精神的属性を変容させる法律上
の親権があるが、この権利は、子供の身体的統合性 physical integrity が始まるところで、明確に終わ
152
る。さらに強い理由で、エンハンスメント目的のみの子供に対する脳侵襲的な処置は、現在の法的基
準によれば、子供の親から有効な同意を得ることはできない。
○ 脳に影響を与える処置がもたらす、ありうる多くの、しかしまだ探索されていない長期的結果に鑑みる
と、現在のところかなり厳密な注意原則 principle of caution が適当である。子供の場合、エンハンスメ
ント目的のみのための外科的介入や電磁気的脳刺激は、現在の法令に従えば、関連する複雑な規
範問題についてのコンセンサスが得られるまで禁止される。
○ 医療化 medicalisation の拡大傾向を顧慮して、脳に長期的影響がありうる薬学的介入は、経済的手
段によって(たとえば社会保障制度によって)のみならず、現存する法規範を子供の保護のために十
分に施行することによって、より厳格にコントロールすべきである。
○ 重い精神疾患に対する脳侵襲的な治療が(つまり、関連するリスクの受容可能性に関する通常の基
準に沿って)利用可能となり、予防拘禁 preventive detention されている人々が無期限に拘留される
ことに代わる唯一の選択肢であるとすれば、そのような治療を彼らに提供することを妨げるものは何も
ない。このような事情によって拘留者に圧力が加わるというだけでは、拘留者の決定の自律性も法的
妥当性も侵害されることにはならないであろう。そのような状況において、国は個々の提供を行う権限
があるのみならず、義務さえあると我々は考える。
○ 購入可能な精神的エンハンスメントの利用可能性が増大して、富や機会の配分という点に関して社
会的不平等に油を注ぐという明確な兆しがあれば、対抗措置をとるべきである。
○ 脳侵襲的なエンハンスメントを控える自由に対する差し迫った脅威の可能性は、所轄の政治当局や
科学組織による特に注意深い監視を受けるべきである。そのような展開の証拠が十分に大きな規模
で生ずるならば、国はエンハンスメントを嫌う市民を保護するために介入することが必須と思われる。
[IB 416-418]
参考文献(2.3.2)
Neil Levy, Neuroethics: Challenges for the 21st Century, Cambridge UP, 2007. [NC]
Reinhard Merkel et al., Intervening in the Brain: Changing Psyche and Society, Springer-Verlag, 2007.
[IB]
Maxwell Bennett et al., Neuroscience and Philosophy: Brain, Mind, and Language, Columbia UP, 2007.
[NP]
Maxwell Bennett and Peter Hacker, Philosophical Foundations of Neuroscience, Blackwell Publishing,
2003. [PF]
Walter Glannon (ed.), Defining Right and Wrong in Brain Science, Dana Press, 2007. [DR]
Judy Illes (ed.), Neuroethics: Defining the Issues in Theory, Practice, and Policy, Oxford UP, 2006. [ND]
Steven Rose, The Future of the Brain: The Promise and Perils of Tomorrow’s Neuroscience, 2005. [FB]
153
2.3.3 イタリアにおけるニューロエシックス
(松本大学:福島智子)
2.3.3.0 調査成果の総括
「脳神経倫理国際動向調査」班が行った海外調査(イタリア)の成果および提言について述べる。本調
査は 2007 年 8 月から 12 月にかけて段階的に実施された。調査方法はインタビューによる質的調査で、
対象者はカトリック大学ローマ校医学部生命倫理学研究所に所属するスパニョーロ(Antonio Spagnolo)教
授を中心とした生命倫理学者(兼医師)グループと、トリノ大学ストラータ(Piergiorgio Strata)教授を中心と
した脳神経科学者グループである。後者についてはアンケート調査を行った。
イタリアにおいて、生物医学研究に関連した政策に重大な影響を与えているのが、本調査の主要対象
となったカトリック生命倫理学であり、具体的には国家生命倫理委員会である。たとえば、生殖医療に関
するこれまでの議論(詳細については次節を参照)をみても、個々の具体的政策にはカトリック教会の影
響が認められ、他の欧州諸国に比べてもきわめて厳格な規制が存在している。カトリック生命倫理学の特
徴は、北米のバイオエシックスとは異なり、自律の尊重を第一原理として掲げない点にある。自己決定より
も、ときに人間の尊厳や集団の利益が優先される。
政教分離であるイタリアにおいて、個別政策に対するカトリック教会の影響が強いことに関し、宗教的で
はない、世俗の倫理を主張する陣営が存在する。国家生命倫理委員会には両者の陣営が構成メンバー
として参加しており、それぞれの主張に基づいて議論される。今回、ストラータ教授には世俗的生命倫理
学を主張するコルベッリーニ教授(サピエンツァ大学)との連名でアンケート調査に協力していただいた。
政策における宗教(カトリック)の影響が強すぎるとする世俗的生命倫理学陣営の識者は、生物医学研究
等において「人間の尊厳」概念を用いるのは不適切であるとし、北米のバイオエシックスと同様、自由と自
己決定がもっとも重要であるとする。
脳神経科学分野に関するカトリック生命倫理学、世俗的生命倫理学両者の主張を整理すると、前者は
科学技術一般の発展を「善」として捉えているものの、人間の本質を変化させる技術については規制が必
要であると考え、後者は、エンハンスメントを含めた科学技術について、本人の同意があれば現在以上の
規制は不必要であると考えている。自己決定に基づく自律の原理の尊重のみでは解決が難しい個々の
ケースでは、カトリック生命倫理学が主張する人間の尊厳の尊重や自己決定のある種の制限が説得力を
もつ場合もある。人間の本質を変化させる可能性をもつ脳神経科学技術においては、こうした慎重派の
意見にも耳を傾け、その国の文化や宗教、社会的価値観を考慮しながら、異なる観点からの領域横断的
な議論のプロセスが重要になるだろう。その点では、今回のシンポジウムにおけるチルドレス教授の見解
と同様の調査結果が導き出せたと思われる。
今後の提言としては、脳科学技術の推進派と慎重派の対話の場の設定が必要であり、また科学者の
みならず、倫理学者や社会学者を含めた議論が積み重ねられることが急務であろう。
2.3.3.1 調査の概要
本節では調査概要について述べる。本調査班による「脳神経倫理国際動向調査」の一環としてのイタリ
アを対象地域とした調査は、2007 年 8 月、9 月、12 月に実施された。
8 月下旬に、イタリア、リミニにおいて開催されたカトリック系のシンポジウム(Comunione e Liberazione
が主催する Rimini Meeting:1980 年より毎年開催)に参加し、宗教を軸としたさまざまな啓蒙活動、とくに
人間の身体や生命に介入する科学技術や生物医学に、キリスト者としてどのような姿勢で臨むべきか、と
154
いったテーマを中心に、どのような議論が行われているかを調査した。
9 月 10 日、18 日にはローマ、カトリック大学医学部附属生命倫理学センター11のスパニョーロ教授(医
師・生命倫理学者)、ディ・ピエトロ教授(医師・生命倫理学者)を対象としたインタビュー調査を実施した。
前半では村岡潔教授(佛教大学)、美馬達哉助教(京都大学)、福島(松本大学)の三人がインタビュアー
となり、後半部分では福島がインタビューを行った。インタビュー調査はあらかじめ用意した質問項目(本
章付録参照)にそって行われ、ICレコーダーで録音した。原語でのトランスクリプトを作成し、重要部分の
みを抜粋して翻訳した。インタビュー調査の項目の要点は下記のとおりである。
第一部:生命倫理と政策一般について
① イタリア生命倫理学について
② イタリア以外の欧州の国々に対するイタリア生命倫理学の位置づけ
③ ニューロサイエンスの研究の規制について
第二部:脳神経倫理について
① イタリアにおける「脳神経倫理」の歴史
② 定義・概念
③ 脳神経倫理の普及・現状について
④ 法分野におけるニューロサイエンスの実践的応用について
イタリアにおける中心的な生命倫理学センターに所属する二名の生命倫理学者を対象とした 9 月のイ
ンタビュー結果をもとに、カトリック生命倫理学とは見解を異にする世俗的生命倫理学者の見解を調査す
るべく、トリノ大学医学部教授ストラータ氏にアンケート調査を依頼した。回答は 12 月に、ストラータ教授
(脳神経学科生理学部門に所属)に加え、サピエンツァ大学コルベッリーニ教授(医学史部門に所属)、
マルケ大学コンティ教授(大学附属病院所属)より連名で寄せられた。コルベッリーニ教授は、カトリック生
命倫理学とは対立する世俗的生命倫理学の陣営に属している。三名を対象としたアンケート調査の項目
の要点は下記のとおりである。
① ニューロエシックスの定義と概念、守備範囲
② ニューロサイエンスの展開の現状と予測されるリスク
③ ニューロサイエンスの研究の規制について
④ ニューロサイエンスの発展について
⑤ 法分野におけるニューロサイエンスの実践的応用について
イタリア現地でのシンポジウム参加、インタビュー調査をもとに脳神経科学者、世俗的生命倫理学者に
対するアンケート調査を実施し、イタリアにおける脳神経倫理の現状、研究に対する規制等の政策につ
いて包括的視点から捉えることができた。次節ではイタリアにおける生命倫理学の二つの立場と、生命科
学分野における政策を協議するさいに重要な国家生命倫理委員会について概説する。
11
イタリアにおける生命倫理学の拠点のひとつ。生命倫理学を専門とする大学院レベルの教育プログラ
ムをもち、各種夏期講座を開催、また『生命倫理学事典』の編集、出版などを行っている。また、センター
所属の研究者の何名かは国家生命倫理委員会の構成メンバーとなっている。
155
2.3.3.2 カトリック生命倫理学と世俗的生命倫理学、国家生命倫理委員会
イタリアにおける生命倫理学の主流である Bioetica Personalista(人間を臓器等の部分に還元せず、
unita’(全体)としてひとりの人間という捉え方をする生命倫理学であり、カトリック神学に基づく)は、北米の
Bioethics(またその影響を受ける国々の生命倫理学)とは大きく異なる点がある。北米の生命倫理学は、
「自律の尊重」、「無危害」、「善行」、「正義」を原則とし、なかでも自己決定権に基づく「自律の尊重」が第
一原理として重視されている。一方、カトリックによる生命倫理学は、北米のそれを多元主義的な原理中
心主義として斥け12、個人の決定が公共の利益、その他の大多数の健康や胎児の生命を脅かしたり、そ
の決定が国家に対して過度な経済的負担を強いる場合においては、その自己決定権は制限されるべき
であると主張する13。後述する脳神経倫理に関する議論にもあらわれているのが、カトリックにおける倫理
で重視される人格概念である。人間の生命は単なる生物学的生命とは異なり、「人格は神のかたどりとし
て創造され、神との永久の一致に招かれ、至高の価値と尊厳をもつもの」14であるとされる。人間の生命は、
精神的存在である人格との不可分な結びつきから、他の生物とは区別され神聖化される15。人間の「尊
厳」(la dignita’)、あるいは人間の「本質」(la natura dell’uomo)といった宗教的概念が、具体的な科学技術
の人間への適用に関して、しばしば言及される。
カトリック生命倫理学が政策に与える影響を端的に示すのが、生殖医療分野における規制の現状であ
る。イタリアの生殖医療に関する規制は、他の欧州諸国と比較しても非常に厳格なものである16。2004 年 2
月 19 日に成立した法 40 号では、①第三者からの配偶子提供禁止、②一回に作成できる受精卵の数の
制限、③受精卵凍結禁止等が定められている。
イタリア社会において、人間の身体や生命に介入(あるいは影響)する(医療)技術が導入されるさい、
国レベルでの議論が必要であれば、国家生命倫理委員会(Comitato Nazionale per la Bioetica)によって
議論され、報告書としてまとめられる。国家生命倫理委員会での議論や決定がそのまま政策に直結する
とは限らないが、その影響は少なくないという17。CNB がこれまで扱ったテーマは多岐にわたり、その数も
多いが、その一部をここで紹介しよう。2002 年「ヒト遺伝学に関するプロトコル草案に対する委員会の見
解」、2003 年「ヒト胚と ES 細胞を用いた研究に対する委員会の見解」、2005 年「遷延性植物状態の患者
に対する栄養・水分補給」、2006 年「ナノサイエンスとナノテクノロジー」、「生物医学的研究と臨床におけ
る利益の衝突」等がある18。委員会のメンバーにはカトリック生命倫理学の陣営に属する委員と、世俗的生
命倫理学(Bioetica laica)を主張する陣営に属する委員がおり、議論において対立することもあるという19。
世俗的生命倫理学を主張するメンバーには、フラミーニ教授(ボローニャ大学、産婦人科医)、カポラ
ーレ教授(シエナ大学、ユネスコの生命倫理委員会メンバーでもあり、CNB では副委員長を務める)らが
おり、フラミーニ教授らは 1996 年「世俗的生命倫理のマニフェスト」を発表、2007 年 9 月には、報告書の
12
Spagnolo, Antonio G., “Principios de la bioetica norteamericana y critica del principlismo’,” Bioetica y
ciencias de la salud, 3(1), 1998, pp. 102-110.
13
Sgreccia, Elio, Manuale di Bioetica, Vita e Pensiero, Milano, 1999, pp. 170-71.
14
宮川俊行『安楽死と宗教―カトリック倫理の現状』春秋社、1983 年、98 頁
Pessina, Adriano, Bioetica—L’uomo sperimentale, Bruno Mondadori, Milano, 1999, pp. 84-85.
16
宇田川妙子「イタリアの生殖医療の法制化に見る『生―権力』」上杉富之編『現代生殖医療―社会科
学からのアプローチ』世界思想社、2005 年
17
スパニョーロ氏とのインタビューより。
18
CNB の HP では報告書の詳細等が閲覧可能である。http://www.palazzochigi.it/bioetica/
19
スパニョーロ氏とのインタビューより。
15
156
宗教色が強いとして CNB 委員長に対し抗議文を送っている。今回のアンケート調査の回答者には、この
世俗的生命倫理学の支持者であるコルベッリーニ教授が含まれている。
スパニョーロ教授によると、2007 年 9 月第一回目のインタビュー調査とほぼ同時期に、CNB 内に脳神
経倫理について議論するためのワーキンググループが立ち上がったとのことである。正式な検討委員会
ではないため、現時点で入手可能な資料は存在しないが、今後の CNB の報告書に注目していきたい。
12 月のアンケート調査では、このワーキンググループが「ニューロサイエンスの倫理」をテーマとしているこ
とが分かった。イタリア語で neuroethics は neuroetica と表記されるが、その用語ではなく、etica delle
neuroscienze(ニューロサイエンスの倫理)という表現を用いている。ニューロエシックスには、「ニューロサ
イエンスの倫理」と「倫理のニューロサイエンス」の二側面があると指摘されているが20、イタリア政府はあい
まい性を避け、前者を選択している。
次節では、カトリック生命倫理学と世俗的生命倫理学のそれぞれの立場に留意しながら、脳神経倫理
の捉え方、脳神経科学技術の規制等についてのインタビュー結果、アンケート結果をまとめる。
2.3.3.3 イタリアにおける脳神経倫理(政策・規制)
ニューロエシックスの定義と概念、守備範囲
「ニューロエシックス」という今日的意味での脳神経倫理がイタリアで認知され始めたのは、最近のことで
ある。1992 年、Fondazione Istituto Neurologico Casimiro Mondino という機関が「ニューロサイエンスにお
ける倫理的テーマ(Argomenti di etica in neuroscienza)」という報告書を発行しているが、内容はおもに「脳
死」に関する議論であり、現在のニューロエシックスの内容を含むものではない。
カトリック生命倫理学では、「ニューロサイエンスとニューロテクノロジーに関わる、生命倫理学の下位領
域」との一般的な定義(インタビューではガザニガの定義を借用)とほぼ同様の解釈である。一方、世俗的
倫理学でも、ニューロエシックスがひとつの自律した学問領域になるというよりは、倫理の性質や脳につい
ての知識がもたらす文化的影響に関心を寄せる他領域の研究者が対話し、それぞれの知識や見通しを
比較検討できるような領域、と理解されている。ニューロエシックスの定義や今後の展開に関し、カトリック
倫理学で付言された点は、「治療を超えた」技術等を議論するのであれば、従来の生命倫理学の領域を
超えたより自律した領域になるのではないか、との予測である。カトリック生命倫理学がこれまで照準して
きたのは「治療」(臨床)の倫理であり、「治療を超えた」技術等に関しては従来の枠組みとは別のものが
必要になるだろう、との見解である。世俗的倫理学はこの点に関してカトリックのような見方はしていない。
カトリック生命倫理学に対し、世俗的生命倫理学はやや批判的である。前節でも触れたように、政策に
対する宗教の影響力の大きさへの危惧があるのは確かだろうが、いわゆる生命倫理学者(カトリック)と科
学者との「平等な立場での」対話が困難である、との認識があるようだ。その点に関して以下のように述べ
ている。
分子生物工学の倫理的側面に関する議論において存在しなかった対話、生命倫理学者と科学者の対
等な立場での対話のために必要な状況を再構築することが(ニューロエシックスの)目的となるべきだと考
えます。
20
Roskies, Adina, “Neuroethics for the New Millenium,” Neuron, 35, pp. 21-23, 2002.
157
さらに、生命倫理学者は科学や科学者に対して不信感を抱いているとも述べており、そうした偏った見
方を払拭し、哲学的アプローチと科学的アプローチの再統合を模索することが重要であるとしている。ま
た、哲学者(人文科学者)にとっても、脳研究や脳機能の理解が、倫理的判断の形成過程を理解するうえ
で役立つだろうとしている。
さて、このように理解されている「ニューロエシックス」のイタリアでの現状について述べる。先述したよう
に、国家レベルでの議論は 2007 年 9 月に開始されたばかりである。研究レベルでも、現在のところ専門
学会、専門誌等は存在せず、大学教育レベルでは、ここ数年で「生命倫理学」の講義の一テーマとして
「ニューロエシックス」が扱われる程度である。一方、脳神経科学者らの回答からは、自然科学や生命倫
理学、医学史等の講義のなかで「ニューロエシックス」に関するテーマを扱っていることがわかる。また、さ
まざまな公的事業を企画したり、参加したりし、脳科学研究についてのより一般的な問題についても議論
する場を設けているとのことである。新聞や雑誌への寄稿や、近々の書籍の出版など、メディアを通じた
情報発信を試みている。
最後に、脳に関する教育について次のように尋ねた。「教育制度の観点から、イタリアでは脳機能につ
いては大学レベルでのみ言及されるのか、あるいは脳の解剖学的側面以上の知識について、高校レベ
ルでの教育されるのか。個人を特徴づける臓器としての脳、という理解は、教育のどの段階でなされると
思うか」。三名の回答は次のようであった。「イタリアでは、脳に関する基礎知識は初等教育、およそ 11 歳
で扱われる。脳が個人を特徴づける重要な臓器であるという認識は、なによりもまず教員が持つべきだと
考える。そして教育機関自体も、学習のメカニズムに関する新しい神経生物学的あるいは神経精神的知
識を身につけるべきだと考えます」。こうした意見から、イタリアの教育制度における「脳」に関する教育の
位置づけに、現在脳科学者が満足していないことは明らかである。カトリックの影響については直接的に
は言及していないものの、身体観は自然科学のみならず、宗教や文化とも密接に結びついていると考え
られ、非常にデリケートな問題であると予想される。
ニューロサイエンスの展開の現状と予測されるリスク
ニューロサイエンスが人間に与えうるリスクについて、カトリック生命倫理学陣営と世俗的生命倫理学陣
営では見解が異なる。カトリック側は、脳科学を含めた科学一般の発展は「人間の尊厳の表現である」とし、
個別の科学技術に関しても、大枠では生命倫理学の一原理「与益原理」(善行)に基づき人間を対象とし
て使用されることに問題はないと考える。ただし、科学技術の使用目的によっては、その行為が倫理的に
認められないということも起こりうる。たとえば、「治療」と治療を超えた「エンハンスメント」という二分法21に
従った場合、「治療」目的での科学技術は認められるものの、「エンハンスメント」に関しては、次のような
区別ができるという。まず、①人間の本質(la natura dell’uomo)を強化する(potenziare)もの、そして②人間
の本質を変化させる(alterare)ものである22。人間の本質を強化するものとは、現在議論の中心となってい
る「エンハンスメント」を意味していると考えられるが、カトリックではそれをさらに二分し、人間の本質を変
化させてしまう「エンハンスメント」には慎重であるべきだ(あるいは許容されない)としている。ここでのキー
21
レオン・R・カス編(倉持武監訳)『治療を超えて―バイオテクノロジーと幸福の追求―大統領生命倫理
評議会報告書』青木書店、2005 年
22
インタビュー時に、人間の本質を完全に変えてしまう事例として、スパニョーロ氏は、人間の寿命を限り
なく延ばすことや、生来でない性質を後から得ることを挙げている。そして、こうした問題は遺伝学の領域
にも関わるとしている。
158
ワードは「人間の本質」であるが、神学的な概念であるため、宗教が異なるわが国の場合、それを理解す
るのは難しい。この点に関して、世俗的生命倫理学者に尋ねると、以下のような回答であった。
カトリック生命倫理学側は「人間の本質」を、エンハンスメントの許容範囲を決める基準として用いている
が、世俗的生命倫理学者はそれを「本質主義的に定義された生物学的与件」であるとし、あまり意味がな
いとして斥ける。彼らは「人間の本質」を「進化、そして後生説のメカニズムに関係し、いかなる本質主義
的定義にも収斂不可能な、個体の可変性によって特徴づけられるもの」とする。よって、エンハンスメント
の議論において「人間の本質」を基準とすることが適切であるとは考えない。結果として、脳のエンハンス
メントとたとえば環境のエンハンスメントに倫理的差異を認める必要はないとする。
カトリックと世俗的倫理のこうした見解の相違は、「人間の尊厳」概念についても顕著にみられる。カトリッ
クにおいて「尊厳(dignita’)」概念が重要であることはすでに述べたが、カトリック側が個別具体的な技術を
人間に適用する場合の倫理性について議論するさい、「人間の尊厳」を侵さない範囲で、ということが条
件となる。一方、世俗的倫理学陣営は、「本質的にあいまいな人間の尊厳23という概念」を、生物医学的
研究あるいは脳科学研究における倫理的基盤を定義するための指標として用いることはできないとする。
彼らにとって「人間の尊厳」とは「自由と自己決定」である。「何をすることができるかを、強制されることなく
自由に決めることは、人間の尊厳を侵害するものではない」と述べる。したがって、「同意がある個人から
採取された細胞や遺伝子を24、個人情報の保護を保証して使用すること」は、その個人の尊厳を傷つけた
り、さらには人間一般の尊厳を傷つけることにはならないとしている。世俗的倫理学は、自律の尊重を第
一原理とする北米のバイオエシックスと同様の主張をしているように見受けられる。重要なのは、インフォ
ームド・コンセントの徹底であり、安全性の保証や個人情報の保護である。以下では、それらを条件とした
脳科学研究の規制について述べる。
ニューロサイエンスの研究の規制について
世俗的倫理学陣営は、脳科学研究を含めた自然科学研究の規制は必要ないと考える。彼らによれば、
人権を守るという意味では「世界人権宣言」の原理で十分であり、「自由民主的な」各国憲法の枠組み、
または国際的文書に基づき、生物医学的研究における個人の権利を守ることは可能であるという。それ
に対してカトリック生命倫理学陣営は、ニューロサイエンスの規制については、イタリア国内のみならず、
国際的機関による規制が新たに必要であると考えている。その理由は先にも触れたように、従来の生命
倫理学が対象としてきた「治療」という範囲を超えた技術の使用(エンハンスメント)が問題となるからであ
る。人間存在(カトリックの用語でいえば「人間の本質」)に少なからぬ影響を与えるであろうニューロサイ
エンスの研究については、いわゆる ELSI(倫理的・法的・社会的)問題を考慮することが肝要だという。世
俗的倫理学陣営が主張するような、インフォームド・コンセントの徹底や安全性の保証、個人情報の保護
等はいうまでもなく、カトリック生命倫理学においても重視されている。
ニューロサイエンスの規制についての、カトリック生命倫理学と世俗的倫理学の見解の相違は、「人間の
尊厳」や「人間の本質」をどう捉えるかの相違より生じていると考えられる。なんらかの規制が必要だとする
カトリック側は、ニューロサイエンスが人間の本質を完全に変更したり、人間の尊厳を侵害する可能性があ
23
アンケートでは、カトリックによる人間の尊厳概念は「宗教的あるいは超越論的概念」であるとしている。
具体的事例として、その他にも人体組織や初期胎児の実験的使用、人間の身体に由来する生物学的
素材についての研究の商業的利用を挙げている。
24
159
ると認識している。人間の本質はもともと変化するものであり、人間の尊厳は自由と自己決定であると考え
る世俗的倫理学とはまったく相容れない。イタリアにおいてどちらの見解が国民(統計ではカトリック信者
が 9 割以上を占める25)にとって影響力があるかは、想像の範囲内ではあるが、おそらく宗教的理解の方
であると考えられる26。ここでは実際の国民の意識ではなく、イタリアにおける実際の政策に注目してみる
と、カトリックの影響は非常に強い。また、2007 年 9 月、世俗的倫理学陣営が国家生命倫理委員長へ抗
議文を提出した経緯をみても、生命倫理学に関わる現在の政策がカトリック教会寄りであることがわかる。
政策と世論(国民の意識)について、今回の調査の一環として参加した 2007 年 8 月下旬のシンポジウ
ムの経験から調査者の見解を述べたい。イタリア社会においては、カトリック教会の影響力が大きいことが
知られているが、たとえば生物医学研究や脳科学研究に関連すると思われる身体観や倫理観について、
具体的にどのような教会の活動があるかは、それほど知られていない。もちろん、カトリック教会(教皇)が
折に触れて発表する回勅や日曜礼拝の機会に、先端医療技術や安楽死、中絶の問題などについて触
れている。テレビや新聞といったメディアも、カトリック教会直属のもの以外でも、教会の方針や意向に無
関心ではない。また、教区において行われる日常的な活動(信者の集会やレクリエーション等)が、身体
観や倫理観を醸成する場となりうる。なによりも、こうした宗教的な活動、働きかけの数の多さもさることな
がら、あらゆる年代をカバーし、またヴァリエーションも豊富である。Comunione e Liberazione は、カトリック
系の団体のなかでも活発なものであるが、その団体が主催する Rimini Meeting は、1980 年から毎年 8 月
中旬から下旬にかけての 1 週間にわたって開かれている。主催者はほぼすべてが大学生を中心としたボ
ランティアである。2007 年の延べ来場者数は、70 万人、期間中 118 の会談、20 の公演会、12 の展覧会、
13 のスポーツイベントが行われ、招かれた報告者は 400 名にのぼった27。リミニ・ミーティングは、文化、音
楽、スポーツ、公演会を通じたカトリック信者の交流を目的とした祭典(フェスティバル)であるが、今回直
接的に医療や科学技術の問題をテーマとした会談(シンポジウム)は二つあった。さらに、脳神経科学や
エンハンスメントといった問題に関連するものが、分子生物学・遺伝学者(カトリック大学教授)のコロンボ
(Colombo, Roberto)教授とジャーナリスト兼作家ロチェッラ(Roccella, Eugenia)氏28の「完璧な人間をつくる」
と題された対談である。対談の内容は当然、カトリック生命倫理学の主張と同様、人間が人間をつくる、と
いう考え方自体が間違いであり、どのような「欠陥」があったとしても、すべての子ども(人間)は神に祝福さ
れて(神の意思で)誕生するのだ、という主張である。会場には老若男女、数百名の聴衆がいたと思われ
るが、これまでにコロンボ教授が臨床で出会った(現在治療法がない)重度の障害をもって生まれてきた
子どもの親たちの言葉を紹介すると、会場から大きな拍手が沸き起こった。障害(欠陥)をもって生まれて
くる子どもの意味は、親にとっては、どんな障害をもっていても(どんな状態の子どもであっても)受け入れ
ること、愛することを学ぶことだ、という言葉である。このようなエピソードに含まれるカトリック的な価値観が、
ある一定の説得力をもって語られ、受け入れられている。こうした基盤があってこそ、宗教的な価値観や
倫理的判断が、たとえば中絶や安楽死、クローン等の問題に具体的な形で反映されているのではないだ
25
『世界の社会福祉年鑑』2002 年版、旬報社、73 頁
イタリアにおいて、現在のところ、今回国民意識調査班がわが国において実施したような(脳科学に関
する)意識調査は行われていないため、具体的なデータはない。
27
http://www.riminiconvention.it/uWeb/main.php?elemId=1332&classId=1(2008/03/10 確認)。
28
この対談はその後、『Avvenire』紙上で取り上げられた。ロチェッラ氏は、人間の価値が市場の価値へと
貶められることに対する危惧を表明している(“Generare l’uomo perfetto, la qualita’ umana ridotta a
mercato,” Avvenire, 24-08-2007.)。
26
160
ろうか。
法分野におけるニューロサイエンスの実践的応用について
ニューロサイエンスの実践的応用について、「脳画像による行動予測が可能になること」、「脳画像によ
って陪審員が偏見に左右されやすいかどうかを調べること」、「証言者の記憶を人為的に増強すること」、
「精密な嘘発見器の開発」、「脳が正常でないことによる減刑」の 5 点に関し、アンケート調査(世俗的生命
倫理学者を対象とした)を実施した。アンケート調査の前に、カトリック生命倫理学者を対象としたインタビ
ュー調査のなかで、同様の質問をしているが、スパニョーロ氏の回答は個別具体的というよりも、原則的で
あった。つまり、どのような技術的介入も、その目的が善であれば許容されるというものだ。上記 5 点以外
に、スパニョーロ氏に尋ねた質問がある。兵士の(敵を殺害したことを原因とする)PTSD についてである。
こちら側の意図は、倫理の中枢にあると思われる罪の意識を、薬によって、あるいは外科的介入によって
消し去ることに、生命倫理的な問題があるのかどうか、カトリック生命倫理学の見解を伺いたい、というもの
であった。スパニョーロ氏は、罪の意識は宗教(神)によってのみ解決されると述べており、その領域への
科学技術的介入に関しては、まったく「別物」との見方であった。この点に関しては、聞きたい点をすべて
明らかにできず、反省が残った。
それでは、12 月に実施したアンケート調査の回答を以下に記述する。
① 脳画像による行動予測、とくに犯罪予測が可能になること
脳画像による行動予測、たとえば犯罪の予測にしても、それはつねに確率的なものです。予測の信頼
性については経験的研究の質に左右されますし、とくに放射線学に関するデータの標準化と、ある行動
が生じる因果関係のメカニズムの解明についていえば、今後、どの程度の観察が可能かによります。
② 脳画像によって陪審員が偏見に影響されやすいかどうかを調べること
脳画像を使用したとしても、陪審員が偏見に影響されやすいことをひとりの優秀な弁護士が見抜くのと
同程度の効果しかないでしょう。また、コストの面からもプライバシー保護の観点からも法領域における脳
画像の過剰な利用は避けるべきだと考えます。
③ 証言者の記憶を人為的に増強すること
もし、裁判に有益な記憶を呼び起こすために、インフォームド・コンセントがあり、また副作用なく証言者
に介入できるとしたら、それを控えたり禁じたりする倫理的理由はないと考えます。しかし今のところ、具体
的な問題とはなっていません。
④ 精密な嘘発見器の開発
上述の回答がここでも有効です。ここでなによりも保証されなければならないことは、嘘発見器を使用
するかしないかを決める個人の自由と、この機械が信頼できるデータを提供すること、つまりそれが科学
的に証明されていることです。
⑤ 脳が正常でないことによる減刑
逸脱行動あるいは犯罪行為との関連が認められる脳の異常がある場合、その行為を行った主体の意
思に帰することはもちろんできません。そのため、処罰も意図的に行ったケースと同等ではありえません。
しかしながら問題は、再犯の予防にあります。もし正義がすべての市民の善、一般的には社会の機能の
改善という目的のためであるとすれば、ですが。予防の観点からいうと、病理と犯罪行為のリスクがすでに
その個人に認知され、問題となっている行為や行動を避けるために医学的援助を求めているという事実
に基づいて、責任を段階化する可能性を探ることが必要です。さらに減刑または別の処罰の執行につい
161
ては、犯罪的行為に関連する病理の影響を緩和したり取り除いたりする介入との兼ね合いも必要になる
でしょう。
世俗的倫理学者陣営の回答は、すべて個人の自己決定の尊重が条件となっており、また技術の安全
性、科学的根拠が前提となっている。さらに、彼らが注意を喚起している点として、遺伝子エンハンスメント
の議論でみられた「過剰な期待」である。先端的な科学技術について議論する場合、実現可能性と技術
への国民(人々)の期待のギャップがしばしば問題にされる。それは本プロジェクトにおいて行われた国
際シンポジウムにおいて金森修教授らが指摘しているとおりであり、ストラータ教授らは、実現可能な技術
とそうでないものの区別やその認識が人々に共有されることが重要だと述べている。また、エンハンスメン
トについては、将来的には平等性の確保が課題であるとしている。
2.3.3.4 脳神経倫理国際動向調査(イタリア編)の結論
カトリックの影響が強いイタリア社会を対象とした今回の調査を通じて明らかになった、対立する二つの
生命倫理の立場、カトリック生命倫理学と世俗的生命倫理学の主張を比較しながら、日本におけるニュー
ロサイエンス研究の今後の方向性について、いくつか提言を示して結論としたい。
まず、ニューロサイエンスの発展自体を問題視することはないものの、その人間への使用に関しては、カ
トリック側に憂慮する見方がある。人間の本質を変化させる可能性をもつニューロサイエンス技術におい
ては、こうした慎重派の意見にも耳を傾け、宗教や文化、社会的価値観を考慮しながら、異なる観点から
の領域横断的な議論のプロセスが重要になるだろう。世俗的倫理学の陣営からの意見にあったように、
分子生物工学の分野で科学者と生命倫理学者の間で行われなかった対話が、現在ニューロサイエンス
の分野に求められている。すなわちニューロサイエンスの推進派と慎重派の対話の「場」の設定が必要で
あり、また科学者のみならず、倫理学者や社会学者を含めた議論の積み重ねが求められている。
最後に、個々の政策を組み立てる過程において、一般国民の意識をどう捉え、どう反映させていくべき
かということがとくに重要になると考えられるが、(倫理的・法的・社会的に)望ましい政策は政策立案者と
一般国民との両方向からの支持があってこそ可能である。イタリアの事例では、カトリックという宗教を軸と
した倫理観(価値観)を政策に反映させるために、カトリック陣営がさまざまなチャンネルを通じて数多くの
活動を行っていることが明らかになった。生物医学研究や脳科学研究、それらの技術について、一般国
民レベルでの情報発信が必要であり、科学の専門家と素人をつなぐなんらかのシステム(制度や人材)の
構築が必要だと考えられる。
付録(2.3.3)-インタビュー調査で用意した質問項目
1 ニューロエシックス
1.1
1.1.1
定義と概念
イタリアではニューロエシックスはどのように定義されていますか。また、同様の概念を定義する
別の名称はありますか。
1.1.2
マイケル・ガザニガ(『脳のなかの倫理』)は、ニューロエシックスは生命倫理の諸問題に、これま
での生命倫理を超えた新たな光を与えるもの、つまり下位領域に留まるのではなく、とくにニュー
ロサイエンスとニューロテクノロジーの分野をリードする新しい哲学的領域になりうるとの見解です
が、賛成ですか。
1.2
守備範囲
162
1.2.1
ニューロエシックスの目的とは。
2
イタリア内外におけるニューロサイエンスの展開の現状と予想されるリスク
2.1
ニューロサイエンスの発展は人間の尊厳と人間の単一性(unita’)に対してネガティブに影響すると
思いますか。人間の尊厳とは何を意味しますか。
2.2
脳のエンハンスメントについて規制を設けるべきだと思いますか。どのような規制であるべきですか。
そのさい人間の本性という概念について言及する必要はありますか。
2.3
予想される問題の解決のために、新しい枠組みが必要だと考えますか、それとも今ある(生命倫理
の)枠組みで十分ですか。
3
ニューロサイエンス研究の規制
3.1
この領域において、研究の規制は必要だと考えますか。
3.2
研究の規制はどのようなものであるべきですか。
4
ニューロサイエンスの発展
4.1
制度的観点から、ニューロサイエンスとニューロエシックスを普及させることについてどう思います
か。
4.2
教育制度の観点から、イタリアでは、脳機能については大学レベルでのみ言及されるのか、あるい
は脳の解剖学的側面以上の知識について、高校レベルでも教育されるのか。個人を特徴づける臓
器としての脳、という理解は、教育のどの段階でなされると思いますか。
5
法分野におけるニューロサイエンスの実践的応用(下記 5 つのテーマについて)
5.1
脳画像による行動予測、とくに犯罪予測が可能になること
5.2
脳画像によって陪審員が偏見に影響されやすいかどうかを調べること
5.3
証言者の記憶を人為的に増強すること
5.4
精密な嘘発見器の開発
5.5
脳が正常でないことによる減刑
163
2.3.4 ニューロエシックスへの射程―ナノエシックス・ステムセルエシックスとの比較研究より―
(京都工芸繊維大学:大林雅之)
2.3.4.1 はじめに
ニューロエシックスは近年、目覚しい議論の展開を示し、科学技術についての倫理問題の研究におけ
る新たな領域を開発しているかに見える。それには、脳科学、神経科学研究の発展が大きな一因となっ
ていると共に、ヒトゲノム研究のおける ELSI プログラムに代表される、科学技術のさまざまな分野における
倫理問題検討という社会的要請に対する不可避な状況という背景もある。そのような状況を視野において、
本稿では、ニューロエシックスと共に議論されつつある、新しい分野としてのナノエシックス(ナノテクノロジ
ーの倫理)や、再生医療、特に ES 細胞・iPS 細胞をめぐる倫理問題の議論、ここでは以下「ステムセルエ
シックス」と名づけることにするが、それらの議論をみながら、ニューロエシックスの方法論と、その可能性
について考えてみたい。
2.3.4.2 「…エシックス」の多様化
1970 年代の初頭に出現した「生命倫理(バイオエシックス)」が一つの切っ掛けとなった考えるが、「環
境倫理」、「情報倫理」、またビジネスエシックスなどの「…倫理・エシックス」の多様な分野が開発され始め
た。このような分野の台頭は、いわゆる「応用倫理(applied ethics)」の議論の広がりとされるかもしれない
が、そのような多様化の背景に、それらの分野のおのおのに特徴的な議論が展開されたのかどうかにつ
いては十分 に議論さ れているとは いえない 。また、それと 同 様に、生命 倫理の 内部 においても、
biomedical ethics, clinical ethics, nursing ethics などが生まれ、そして、その延長線上か、別の要因による
のか、neuroethics が生まれ、nanoethics が登場し、もっとも、今日的なものは、stem cell ethics(まだ市民
権を得ている用語とはいえないが使用され始めている(1))というものも議論されている。
以上のような「…エシックス」の多様化、特に、科学技術の発展による成果の応用をめぐる倫理問題の
多様化・複雑化による議論の拡大とも言えようが、それに対する対応にもいくつかの方向性が見られる。
大きく二つ分けると、科学技術を手段として考えて、人間側の使用の問題、つまり使用によって価値が決
まるとする、いわゆる「両刃の剣」論であり、技術自体は価値から独立である、または自由であるとする考え
によって議論するものと、もう一つは、科学技術自体に価値判断が含まれていると考えるものがある。その
場合には、さらに二通りの対応があり、まず、そこに内在する倫理問題を回避するために、その技術を使
わないとするか、または、技術的に倫理問題を回避するか、という議論になる。そのような科学技術の倫
理問題についての議論の方法の内、ここでは科学技術の倫理問題を技術的に回避することは可能かと
いう視点から、現在議論されている、特に科学技術をめぐる「…エシックス」の議論を見ながら、その議論
の方法の可能性を考えていきたい。
2.3.4.3 バイオエシックスの発展と科学技術の倫理問題への対応
生命科学研究の成果が、単にその発展を科学の進歩として賞賛されるだけではなく、その成果が、わ
れわれの生活に及ぼす影響、また、われわれが持っている生命観や生命の価値に関わり、具体的に議
論され始めたのは 1960 年代といってもよいであろう。もちろん、科学の進歩により、その成果が技術となり、
われわれの生活を豊かにする反面、原子爆弾のような技術も生み出し人類の脅威になることなどへの議
論もあったが、われわれの日常生活における医療や産業を通しての具体的な問題として議論することは
別の様相をもたらした。つまり、1960 年代の主にアメリカにおける、遺伝子研究の発展に代表される生命
164
科学研究や臓器移植などの先端医療技術の開発はわれわれに身近な問題を提起してきた。そのような
生命科学や医療の発展に伴い、その成果をめぐる倫理問題の議論はバイオエシックス(生命倫理)の議
論としてアメリカで、従来の科学や医学・医療をめぐる倫理問題についての議論とは異なって発展し、そ
の成果や技術については市民や患者といった非専門家の視点も取り入れざると得ない議論となっていっ
た。このようなバイオエシックスの発展の中で、生命科学や先端医療技術をめぐる倫理問題が議論され、
バイオエシックスという新しい分野を成立させる一因ともなってきたのである。その様な議論の変遷をまず
見ておこう。
1973 年に開発された実験技術に「遺伝子組換え技術(組換え DNA 技術)」があるが、これは、大腸菌の
持つプラスミドとよばれる環状 DNA に他の生物の DNA を組み入れて大腸菌の体内でその遺伝子を発現
させるというものである。この技術は、ヒトのがん遺伝子などの研究に利用できる、また、ヒトの体内で生産
されている貴重な生体物質を大腸菌に大量に生産させることが可能になることより、生物利用の新技術と
してのバイオテクノロジーの先駆的技術として注目された。しかし、何十億年もの進化の過程を経て形成
された、さまざまな生物種のそれぞれに得意な遺伝子の組み合わせを操作してもよいのかというような「生
命操作」に対する正当性の問題や、その技術を利用してつくられた、異なる種の遺伝子を持った生物体
が自然界に放出されたときに生態系を乱さないかというような問題も提起され、どのようにその技術を使う
べきか、というような倫理問題が提起された。そのような問題に取り組むために、遺伝子研究者が一時研
究を停止(モラトリアムといった)し、アメリカのアシロマで会議が開催され、その対応として、遺伝子組換え
実験を行う際には、「物理的封じ込め」と「生物学的封じ込め」という実験操作を行い、実験室の外に遺伝
子を組換え体を漏らさないようにすることを実験指針として提唱した。
その後も、生命科学の成果が先端医療技術として開発されるといろいろな倫理問題が提起され、バイオ
エシックスの名とともに議論されるようになった。
例えば、1970 年代末に、今日では「生殖補助技術」と呼ばれるものの一つである「体外受精」の技術が
できたときも、人間の生命誕生というに人間にとって重要な出来事が人為的になされることの倫理も問わ
れたが、子供に恵まれなかった人たちの幸福への寄与なども議論され、体外受精による受精現象への直
接的な人為的介入を避けるために、「配偶子卵管内移植法(GIFT 法)」という、卵子と精子を卵管内に移
植し、受精の瞬間は人為的に操作しないなどの技術も提案された。
1980 年代末には、組換え遺伝子技術を人間の遺伝病治療に応用する「遺伝子治療」の倫理問題も議
論されるようになり、遺伝子の操作は次世代への影響もあることから、治療を希望する世代の判断だけで
治療がなされてもよいのかという「世代間倫理(次世代の権利の侵害)」も議論され、患者一代限りに影響
を制限することを目的として「体細胞遺伝子治療」は認め、次世代に影響する「生殖細胞系遺伝子治療」
は認めないということが議論され、国際的にもこの方向で遺伝子治療は開始されることになった。しかし、
体細胞遺伝子治療でも次世代への影響はわずかであるとしても可能性はあるとの指摘もある(2)。
以上のことより、バイオエシックスの議論の展開には、一見、科学技術の成果の社会への応用に対して、
それを社会の側、人間の側が倫理原則等に照らし合わせていかにその使用と不使用を判断していくかの
ような議論にも見られるが実は、科学技術をめぐる倫理問題に対して、具体的な議論としては、倫理問題
を技術的に回避する議論となっていたようにも見られる。遺伝子操作に対する対応、体外受精などに対
する議論の実際はそのようなものと見るともできた。
そこで以下では、「…エシックス」の内、特に科学技術の成果の応用における倫理問題への対応として、
倫理問題の技術的回避の議論を、「…エシックス」の方法論として考え、その観点から、最近に議論が始
165
められた、ナノエシックス、ステムセルエシックスに見ていき、最後にニューロエシックスについてもそのよう
な方法論の可能性があるかについて述べることとする。
2.3.4.4 ナノエシックスをめぐる議論
近年、ナノテクノジーの研究・開発は世界的に目覚しく、日本では、カーボン・ナノチューブの開発とい
う先駆的役割を果たしたこともあり、官民挙げての研究・開発振興策が計画、実施されている。ナノ・レベ
ル、すなわち 10 億分の 1 メートル(nm)を基本単位として計測される世界のレベルでの材料・物質科学に
留まらず、ナノテクノロジーは、遺伝子の合成や薬剤の創製などを通して医療・保健分野への応用が期
待され、「バイオ・ナノテクノロジー」と称される分野も出現している。
ナノテクノロジーは、原子・分子の直接的操作を始め、物質生産・食糧生産の方法の変容、機械の微
小化(ナノ・マシーン)など、多方面に亘る技術革新の可能性を秘めている。しかしながら、そのような期待
とともに、ナノテクノロジーを応用した、探知困難な有毒ナノ粒子・細菌兵器などの軍事利用、テロリストに
よる使用などが懸念されており、また最近では、ナノ粒子を使用した化粧品などの安全性についての研
究も進められてきた。
上記のような状況にあるナノテクノロジーについて、単にその個々の成果の安全性等の問題に留まら
ず、これからのわれわれの生活、そして人類の生存基盤にどのような変容をもたらすかという文明論的な
意味も考察し、ナノテクノロジーの健全な発展のあり方を示すことを目的とする。
一般に、ナノテクノロジーが提起する倫理問題については、「ナノスケールの技術革新(生産手段の微
細化と原子レベルでの工作)」、「ナノ粒子の有効性と安全性」、「多領域への応用可能性」、「生命現象
への直接的物理的操作」に関連し指摘されているが、バイオエシックスの基本文献である Encyclopedia of
Bioethics、第 3 版(2004)では、次のような問題が挙げられている。すなわち、①将来的な技術評価と規制、
②ナノテクノロジーの環境への影響、③ナノテクノロジーに起因する利益と有用さに対する公平性とアク
セス、④医療におけるナノテクノロジーによる長寿の倫理的かつ社会的影響、⑤人間の特質と機能の拡
大と強化(エンハンスメント)、である。また、“nanoethics”と呼ばれる議論も登場し、新しい特徴的な倫理
問題を引き起こすのかについても論じられるようになった。例えば、Hastings Report、37(1):22-25,2007
では、nanoethics について、①ナノ粒子・材料の健康や環境への影響、②ナノテクノロジーを応用した医
学・医療(nanomedicine)の発展による問題、③さまざまな社会的・身体的履歴を記録したナノ装置の利用
による、個人のプライバシーへの脅威、④技術革新による経済効果に対する社会的公平性の問題、を指
摘しているが、これらの問題が nanoethics の「独自の問題」として考えられるのかとも論じている。
上記のように、ナノテクノロジーは現在、バイオエシックスの文脈においても、その倫理問題がさまざま
に論じられるようになっている。ナノエシックスという分野が独特の倫理問題を持つかどうかはまだ明確で
はないが、単にナノ粒子のような微細な物質の実態に対する安全性の問題であり、その技術的対策の議
論を強調する向きもある。
2.3.4.5 ステムセルエシックスをめぐる議論
2007 年 11 月 21 日に、「ヒト皮膚から万能細胞」という見出しの記事が新聞の一面を飾った。他紙も同様
な記事を掲載していた。ここでの「万能細胞」は「iPS 細胞」と呼ばれるもので、従来、ヒト胚から作製される
「ES 細胞(胚性幹細胞)」とは異なり、ES 細胞の作製にまつわる倫理問題を解決されるもの、そして、日本
人の研究成果として大々的に報じられたものであった。その後、iPS 細胞に関する研究には緊急に政府
166
から研究資金の支出がなされ、国際競争における日本の研究への支援体制がとられている。また、再生
医療は、臓器移植の臓器不足や拒絶反応、そして、脊髄損傷などによる障害者への治療の可能性を開
くなど大いに期待がもたれていることも、政府の研究支援を急がせている背景にある。
1998 年に米国において、ヒトの「ES 細胞」を作ることに成功した。それまでには、マウスなどの生物にお
いては ES 細胞が作られていたのであるが、ヒトの ES 細胞が作られたことは大きなセンセーションを巻き起
こした。前年の 1997 年の春には、イギリスでのクローン羊ドリーの誕生が発表されており、そのような状況
の中で、ヒト ES 細胞の作製は、さまざまな医療の可能性を期待させるものであった。しかしながら、この技
術には深刻な倫理問題も伴っており、バイオエシックスにおける論争を巻き起こした。
ヒト ES 細胞をめぐる倫理問題として提起されたのは主に次の3点である。
まず、ES 細胞を作製するためには、初期胚である胚盤胞(受精後一週間ほどの胚)の内部の細胞を取
り出さなくてはならない。この操作によって、その胚は破壊されることになる。つまり、そのまま子宮に着床
し発生が継続されれば、一個体になる、つまり人間になることが中断されてよいのか、という問題である。
日本では特に、その胚の存在は「生命の萌芽」とも呼ばれ議論されている。
次の問題は、そのように ES 細胞を作製する場合に、どのような胚を利用するかである。ES 細胞を作る目
的のために受精卵をつくり、胚盤胞にまで発生させ、ES 細胞を作製することはよいのか。どのように卵や
受精卵を入手するかの問題である。
さらなる問題は、ES 細胞は治療の目的にかなう、特定の分化した細胞を得るための細胞であるが、移植
した場合は、拒絶反応の問題があるので、患者と同じ遺伝子の組み合わせを持った ES 細胞が求められ
る。そのためには、患者の体細胞の核を、あらかじめ核を除いた未受精卵に移植し受精卵を作製し、それ
を胚盤胞にしたものから作製する ES 細胞が適している。そこで出てくる倫理問題が「クローン胚」の作製
の是非の問題である。「クローン胚」を個体、すなわち「クローン人間」にまで発生させることはないとしても
作ること自体はよいのかということである。
以上のように、倫理問題は議論されてきたが、日本では ES 細胞の樹立のために使用される受精卵は、
生殖補助医療の一環で体外受精により作製されたが、使用されることのなかった「余剰胚」を使うことが、
クローン胚の作製に関しては、その作製が各国で議論されたが、宗教的な背景の議論もあり、慎重な態
度を取る国も多かった。韓国において作製されたとの発表があり、注目されたが、論文捏造が発覚した。
日本では、クローン実験規制法でクローン胚の作製は禁止されてはいないが、まだヒトの「クローン胚」の
作製はなされていない。
上記のようなヒトの ES 細胞研究には倫理問題がまつわりついていたが、前述したように、研究への期待
と、倫理問題に対するきちんとした解決とは言えないが、倫理問題への配慮を前提に研究は進められて
いた。
そのような中で、ES 細胞の倫理問題を回避する技術の研究が発表された。
まず、2005 年 10 月のことであるが、有力科学雑誌『ネイチャー』に二つの方法が発表された。いずれも
マウスを利用してなされたものであるが、ヒトへの応用も可能なものである。
一つは、胚盤胞を破壊しないようにする方法である。すなわち、体外受精によって得られた受精卵を発
生させ、8 細胞期になった胚から一つの細胞を取り出し、その細胞をすでに存在する ES 細胞と混ぜて培
養すると ES 細胞となるというものである。8 細胞期の胚は一つ細胞が取り出され 7 細胞になっても一つの
胚として発生を続けるので胚盤法を壊す必要ないというのである。
また一つの方法は、同じく胚盤胞を壊すことにはならない方法である。この場合は、体細胞の核を利用
167
する核移植法による受精卵を作る。もちろんヒトの場合は、「クローン胚」を作ることの是非があるが、治療
目的という制限下で行うことも認められるという議論を前提としている。この場合は、この核移植の前にある
処置をしておくことで重要である。核移植する前に、その核に胚盤胞より先の発生ができないように遺伝
子を操作しておくことが重要である。すなわち、胚盤胞より先には発生しないのであるから、個体になる可
能性のある胚盤胞を壊すという倫理問題は回避されるという論理である(6)。胚盤胞を壊すことはつまり、生
物学的には「全能性(個体を構成するすべての細胞に分化し、個体までに発生できる能力)」、または「生
物の細胞や組織が、その種のすべての組織や器官を分化して完全な個体を形成する能力」(岩波生物
学辞典第 4 版、1996 年)を持っていないのであるから倫理問題は回避できるとしているのである。この「全
能性」と区別して、万能細胞の「万能性」とは「発生学において、発生しつつある胚の一部がいくつかの異
なった発生過程をとり、異なった形態形成を示す能力」(岩波生物学辞典第 4 版、1996 年)としている。
はたして、以上の方法は倫理問題を回避しているであろうか。前者は確かに胚盤胞を破壊することはな
いかもしれないが、8細胞期の細胞は一つでも受精卵と同様にまだ未分化であり、「全能性」を持っている
という可能性がある、それ故に「個体になる可能性のあるもの」を人為的に個体にならないようにし、ES 細
胞にしてよいのであろうかという問題が残る。
もう一方の方法はどうであろうか。ここでの論理はいささか注意しなければならない。つまり、確かに胚盤
胞は遺伝子操作により、胚盤胞以上に発生しないように、つまり、全能性がなくしている、それ故に、「全
能性のない胚盤胞」は壊してもよいということになる。しかし、核移植段階で、「全能性を持っている核」を
人為的に「全能性」をなくす操作は、「胚盤胞の破壊」という倫理問題の前提になる「全能性」を奪うことと
同じ倫理問題を持つのではないか。
以上のように見ていくと、これらの ES 細胞の倫理問題は技術的に回避されているとは言えない。
上記のような ES 細胞の倫理問題に対する技術的対応が議論されていた中で、出現してきたのが iPS 細
胞である。ES 細胞が抱えている「胚の破壊」や「受精卵の入手」、「クローン胚の作製」といった倫理問題
を回避しているということで歓迎されている。研究者自身もそのような方向で研究の意義を強調している。
しかし、iPS 細胞は本当に倫理問題を回避しているのであろうか。
iPS 細胞は確かに、胚盤胞を破壊することも、受精卵の入手も問題とすることはないが、iPS 細胞の研究
は、次のような倫理問題の可能性を示している。まだ、マウスでの実験の段階であるが、iPS 細胞の治療
的可能性を考えればマウスでの実験の成果はヒトに利用する場合の倫理問題を提起するのである。
例えば、iPS 細胞から生殖細胞を分化させることができると報告されている。人間に応用すれば、卵と精
子が作製され、それらを受精させれば受精卵、それもクローン胚となる受精卵が作製されることになる。
また、これは iPS 細胞から直接個体を得る方法ではないが、既成の胚に iPS 細胞を導入し当初はキメラ
胚として発生していくが、やがて、細胞はすべて iPS 細胞由来の細胞になり、個体にまで発生させたことが
マウスを用いた実験で成功したとの報告もある。もしこれが、ヒトの iPS 細胞を利用してなされれば、クロー
ン胚、そしてクローン人間の作製の可能性を iPS 細胞の研究が持つことになる。そして、これはまだ研究
報告はないが、iPS 細胞を作製する過程で体細胞に全能性を持たせるような研究はなされないのであろう
か。体細胞を脱分化させ、受精卵と同様な状態にさせることはないのかという懸念も生まれてくる。
こうしてみると、iPS 細胞にも倫理問題は付きまとっていることになる(3)。
2.3.4.6 ニューロエシックスの方法と可能性
ニューロエシックスの登場については他で十分に議論されているので、ここでは、上記の議論を踏まえ、
168
脳科学・神経科学の成果の応用における倫理問題への対応を中心に論じていく。
ニューロエシックスの議論のあり方として、主に次のような区分けがなされている。一つは、「ニューロサ
イエンスの倫理」であり、脳科学や神経科学の研究倫理や成果の応用の倫理問題の議論である。これは、
生命倫理議論の延長線上に考えられ、現代の科学技術研究における不可避な課題であり、それがもう科
学・神経科学分野にも及んできたということである。ここでの独自性については、患者・被験者の精神的能
力への影響の判断や、自己決定をめぐる議論などが挙げられようが、小児や高齢者をめぐる生命倫理問
題とも関連し議論されてきたことに対して、特段に独自性を強調することはできないであろう。
もう一つのニューロエシックスの議論のあり方としては、「倫理のニューロサイエンス」とも呼ばれるもので、
人間の倫理的行動や精神現象に対する脳科学や神経科学による解明が進んできたことを受け強調され
るものである。従来、人間や社会の倫理的な現象については、自然科学ではいわゆる「デカルトの二元
論」を持ち出すまでもなく、解明できないものとされてきたものを科学的に明らかにし、人間行動や社会的
現象を明らかにしようというものである。前述の「ニューロサイエンスの倫理」に対して、こちらの議論はいさ
さか複雑な議論の構造になっている。つまり、人間の「心」や「意識」をニューロサイエンスで議論する多く
の場合は、その「心」や「意識」はすでに「科学化」されており、つまり、科学的概念で意味づけされているこ
とを前提にしている。それ故に、そこでの「倫理問題」は、すでに科学化された「心」や「精神」の倫理問題
であるということになる。もちろん、それでは、科学化されていない「本来の心」や「本来の意識」とは何かを
明らかにすることはこれもまた、かなり困難なことである。その意味では、「倫理のニューロサイエンス」の議
論のあり方は一概に否定できず、その意味において、前述した、ナノエシックスやステムセルエシックスに
おける、倫理問題の技術的回避の議論もニューロエシックスにおいてはある意味で、有効性をもちえるの
ではないかとも考えられる。
例えば、ニューロエシックスの議論において、よく取り上げられる「ブレイン・マシン・インターフェイス」の
議論においても、ALS 患者や他の障害者への有効性も議論されているのであり、その使用の倫理問題と
いうより、技術的に、使用者の精神機能や人格に影響を与えないような技術的歯止めや使用方法が具体
的には議論されることになる。
また、最近、「ウソ発見器」については、機能向上や使用場面の拡大があり、従来の警察などの利用か
ら、一般の会社などや、個人的利用に対する民間のサービスについて議論がなされ始めている。ここでも、
その利用と不使用の倫理問題もあると同時に、どのように利用すればよいか、そのための技術的工夫は
どうすればよいかなどが具体的な問題になっている。
2.3.4.7 まとめ―「…エシックス」の特徴と限界―
以上、ナノエシックス、ステムセルエシックス、ニューロエシックスについてみてきた訳であるが、おのお
のにおける独自性についてはいまだに明確にされてきたわけではない。そして、そこでは、おのおので取
り上げられる倫理問題に内在する生命観や価値をめぐる問題に正面から対峙することも特に示されてい
ることはないといえよう。実際に議論されている具体的なことは、いかに技術的に倫理問題を回避するか
の議論と見えた。そのような対応が必ずしも不適切であるとはいえないとしても、倫理問題への対応として
は皮相的なものであることは否めず、依然として倫理問題は存在し続けているのである。しかしだからとい
って、そのような対応は価値の多様化する、現代の社会で特定の生命観や価値を前提として倫理問題を
解決することにも当然、限界がある。その意味においては、倫理問題の技術的な回避を現実的には模索
しながら、その限界を理解して、研究・技術開発による利益と倫理問題への対応の困難さの緊張感の中
169
で議論を進め、安易な医療や福祉への応用の可能性については慎重に議論を進めていく以外にないで
あろう。
もしそうでなければ、科学技術の推進のための露払いの役目をになう、補完的議論でしかありえないこ
とになってしまうことになる。このことに注意しながら、ニューロエシックスの進展を見ていかなければならな
い。
注(2.3.4)
(1) 例えば、http://www.brown.edu/Courses/BI0032/stemcell/ethics.htm
(2) 大林雅之『生命の淵―バイオエシックスの歴史・哲学・課題―』(東信堂、2005 年)
(3) 本節5)は次の文献に基づいている。大林雅之「先端医療技術の倫理問題は技術的に解決できるか
―再生医療をめぐって―」、作業療法ジャーナル、42(3):209-213、2008
170
2.3.5 エンハンスメントに関する小論―能力不平等はテクノ・エンハンスメントの正当化根拠になるか
-
(岡山大学:粟屋剛)
2.3.5.1 はじめに
人間は生まれつき不平等である(1)。背が高い人と低い人、美しい人と醜い人、遺伝的に長寿の人と
若くして遺伝病で死ぬべく運命づけられている人、頭のよい人と悪い人、運動能力が優れている人と劣っ
ている人、音楽や絵画の才能に恵まれている人とそうでない人、…。この不平等―つまるところ、個体差
(個人差)―がその人の人生のベースの部分を、あるときは恐ろしいほどに、決定する(2)。
人間はさまざまに不平等だが、本稿ではとくに能力の不平等(3)を取り上げ、その能力不平等とテクノ
ロジーによる能力強化ないし増強(エンハンスメント)―テクノ・エンハンスメント―の関係について、具体
的には、「能力不平等はテクノ・エンハンスメントの正当化根拠になるか」という点について、若干の考察を
試みることにする。なお、能力の語の射程には広狭あるが、ここでは、生来の、すなわち、持って生まれた
能力―とくに知的能力や運動能力―のほかに、それらをもとに後天的に獲得される能力をも含むものと
する。
2.3.5.2 能力不平等
能力には個人差がある。その個人差に「不平等」の語をあてはめること自体に異論があるかもしれない
が、その点はここではおく。能力はもともと不平等である。しかし、能力不平等はこれまで人類の歴史にお
いて長い間、一般には、あまりに当然のこと、当たり前のこととして、ほとんど問題にされて来なかった(4)。
これまで基本的には、社会の秩序、とりわけ、社会における人々の役割分担に関する秩序は能力の不平
等を当然の前提として構築されてきた(5)。すなわち、能力不平等は、結果的にではあるが、社会におけ
る人々の役割分担を決定づけ(職業階層の形成)、それが社会に秩序を与えてきた。
これまで、身分不平等は全世界的に漸次、是正ないし解消されてきた(6)。機会不平等(7)は世界的
に見れば未だ是正・解消の途上であるが、とくに先進国では、一定程度は達成されているといってよい。
いずれにせよ、機会不平等は社会ないし国家の問題であり、適正な政策の遂行などにより是正・解消す
ることが可能である。しかしながら、能力不平等自体は基本的には、人間の能力を強化(ないし増強)する
遺伝子操作やサイボーグ化などのテクノロジー(8)を用いない限り、是正・解消することは不可能である。
ただし、そもそも、能力不平等の是正・解消ないし能力の平等化は、目的ではなく、結果―いわば副産物
―である。仮に能力不平等を理由とするテクノ・エンハンスメントが社会的、国家的に容認され、個人の意
思決定としてそれが多くの人々によって実行されるならば、結果的に人々の能力が高水準で平等化(平
準化)しそうだが、そうだとしても、その平等化はあくまでそれらの行為の副次的結果であって、社会として
あるいは国家として能力不平等自体を是正・解消する、すなわち、能力の平等化を目指す(推進する)努
力をする必要は、そのようなテクノロジーが利用可能になるであろう近未来においても、ないだろう。
なお、個人のレベルでは努力によって能力の不足をどの程度かは別にして補うことができるのはいうま
でもない(9)。また、社会ないし国家のレベルでは能力の不平等によって生じた結果の不平等の是正(優
れた能力を駆使した結果として得られる富の再配分など)も考えられなければならない(10)。
2.3.5.3 能力主義社会
能力は不平等であるにもかかわらず、われわれは能力主義社会にいる。それはいわば、能力による輪
切り社会である。能力主義社会の語の厳密な定義はないが、ここでは、「能力によって人間の社会的価
値が測られる社会」としておく。
個人の能力の有無は、ある意味で偶然の結果(産物)である(11)。 その偶然の結果である能力の有
無―正確には、それだけではなく広く個体差(個人差)―が、前述のように、その人の人生のベースの部
分を、その程度は別にして、決定する。親からもらった、あるいは、偶然の遺伝子変異の結果である優れ
た知的能力や運動能力を持つ人は、それらを駆使して偉業を達成でき、富や名誉や権力を手中にし、周
囲からも羨望の眼差しで見られる。もちろん、自分の優れた能力やそれを駆使して手中に収めたものに
自己満足することもできる。
それに対して、そのような優れた能力を持たない大多数の人々は、偉業を達成することもなく、また、富
や名誉や権力を手中にすることもない。それどころか、思い通りの職業につけないことも多い。したがって、
171
思い通りの人生を送るチャンスも少ない。もちろん、「富や名誉や権力などいらない」と達観して、あるいは
自分をごまかして、平凡な人生を生きることもできる。そのような人ももちろんいる。しかし、多くの人は(私
も含めて)、達観もできず、自分をごまかすこともできず、フラストレーションが多い人生を送る。
能力主義社会を公正と見るか不公正と見るかは、おそらくは、立場による。能力主義社会は、優れた能
力のある人にとっては当然のこととなり、そのような能力のない人にとっては酷なものとなろう。なお、そも
そも、能力だけでなく、容貌、健康、性格なども含めて、たまたま生物学的にそれらに恵まれた人のみよい
目にあう(その可能性が高い)―恵まれた人生へのパスポートを持つ―というのは不合理ともいえる。ただ、
それらに恵まれた人からすれば、たまたまであれ、現にそうなのだから、自分たちがよい目にあう(その可
能性が高い)のは当然だ、ということになるであろう。
では、能力主義社会は変更ないし廃止されるべきか。個人のレベルでは、能力のある人がその能力を
駆使して自己実現をし、さらには、富や名誉や権力を手中にする(できる)のは、ある意味で当然のことで
ある。社会のレベルでは、能力のない人が能力のある人の占めるべきポジションを占めるならば、それは
混乱のもととなる。能力のある人がそれにふさわしいポジションを得るのは、社会としても、効率がよい。そ
のような意味で、能力主義社会にはそれなりの合理性があるといえるだろう。
能力の有無にかかわらず万人を同等に扱うのはおそらくは悪平等社会であろう。「運動会、みんな一緒
にゴールイン」、「お遊技会、みんながなれる桃太郎」(筆者作)などというのはやはりナンセンスであろう。
形式的平等は実質的不平等である。なお、平等とは何か、何が平等か、などを論じ始めるときりがないの
でやめておく(その「能力」もないが)。
以上、少なくとも当面は能力主義社会の基本的枠組みをすべき理由はないように思われる。ただし、も
ちろん、その弊害の除去や行き過ぎの是正は必要であるが。
2.3.5.4 能力の市場開放―能力へのアクセス権
能力主義社会が変わらない(変えない)なら、優れた能力のない人はどうすればよいのか。もちろん、
「優れた能力はないが、それは必要ない」、具体的には、「富や名誉や権力を得ることが人生の目的なら
優れた能力が必要かもしれないが、そんなものは人生の目的ではない。したがって、そのような能力など
必要ない」などと考える人は問題はない。しかし、そのように達観できる人はあまり多くはいない。
問題は、「優れた能力はないが、(何かの目的の実現のために)それが必要だ」と考える人々である。も
ちろん、それらの人々は、現実にはそのような能力を手に入れる方法がないので、努力で補うことはある
にせよ、基本的にはあきらめているであろうが。
では、「ないものはないから仕方がない」とあきらめて、それなりの人生を生きるしかないのであろうか。
あきらめるのは早いかもしれない。遺伝子操作やサイボーグ化などのテクノロジーによる人間の能力の強
化―テクノ・エンハンスメント―が可能となる時代が現実になりそうであ(12)。
さて、そのようなテクノ・エンハンスメントが実際に行われ始めるとどうなるか。これまで高い能力は一部
の優れた人々の独占物―究極の独占物―であった(独占禁止法違反ではない)が、その「能力」という武
器を多くの人が獲得するなら、何が起こるであろうか。
まず第一に、個人レベルでは、その能力を駆使して自己実現のチャンスをつかむ人が増えるだろう。誰
もが社会で自己実現できるならそれはすばらしいことである(13)。ただし、能力獲得が必ずしも幸福と直
結しないことはいうまでもない(14)。
第二に、個人のレベルで行われる(かつての軍備拡張競争のような)際限なき能力強化競争の結果、
社会のレベルでは、能力主義社会という名の競争社会がますます加速(激化)するであろう。例えば、東
京大学に入学できる能力はこれまで一部の人しか持っていなかったが、それをみんなが持ち始めると当
然、競争は激化する。
そうして際限なき能力強化競争が起き、競争社会が加速されて行き着く先は、どのような社会か。今で
も十分ぎすぎすしているが、さらにぎすぎすした社会になるだろう。そのような能力強化競争が社会全体
に幸せをもたらすとは誰も考えないだろう。
第三に、同様に社会のレベルで、社会における人々の役割分担に関する秩序―職業階層―が崩壊
する。前述のように、どんな時代でも、どんな社会でも、基本的に、能力不平等が結果的にではあるが社
会における人々の役割分担を決定づけていて、それが社会に秩序を与えてきた。しかし、遺伝子操作や
サイボーグ化のテクノロジーによってエンハンスメントが可能になり、多くの人が同じ職業に殺到するなら
ばその秩序は崩壊する。能力がないゆえに社会の下働きをしていた人々は、優れた能力を得るならばそ
172
のような仕事をする必要がなくなるからそれをやめるだろう(15)。
第一の点はメリットである。しかし、第三の点はおくとしても第二の点は明らかな弊害である(16)。では、
そのような弊害があるがゆえにテクノ・エンハンスメントをやめるべきであろうか。優れた能力のない人々が
そのような能力の獲得に乗り出すのを禁止すべきであろうか。
私は次のように考える。個人のレベルで、かなりの程度に、遺伝的に知的能力や運動能力が決定され
ているのであれば、それらが低い(ないし高くない)人に、せっかくテクノロジーがあるのにそれを利用せず
にそのまま低い能力に甘んじろとはいいにくいだろう(17)。私も、現にそのようなテクノロジーを利用する
かどうかは別にして、そのようにはいって欲しくない。
社会のレベルでは、能力不平等の現実と能力主義社会が存在し、能力不平等を是正・解消するテクノ
ロジーが現れたのに、「社会秩序(職業階層)の維持のために能力不平等のままにしておくべきである」な
どとはやはりいえないだろう。
では、同様に社会のレベルで、「競争社会の加速という弊害を避けるために能力不平等のままにして
おくべきである」といえるであろうか。テクノ・エンハンスメントを認めた上でそれを適切に規制(コントロー
ル)することによってそのような弊害を除去することもおそらくは可能と考えられるので、そうはいえないの
ではないか。
ここでは、「能力へのアクセス権」の平等な保障が問題とされざるをえないだろう。もしそれが実現される
なら一部の人の独占物であった優れた能力が一般人に開放されることになる。これはまさに「能力の市場
開放」といえる。
2.3.5.5 おわりに―近未来版階級闘争
以上のように、能力主義社会を前提とするなら、能力不平等を理由とするテクノ・エンハンスメントを否
定する合理的な根拠は見出せないのではないかと思われる。そうだとすれば、能力不平等はテクノ・エン
ハンスメントの正当化根拠になるといえそうである(18)。ただ、実のところテクノ・エンハンスメントの問題に
は文明論的視野からの深い考察が不可欠であるが、そのような考察によればこの結論は短絡的で間違っ
ている、ということになるかもしれない。もちろん、そのような文明論的な考察からも、同じような結論に至る
可能性がないとはいえないが。
最後に、まさに蛇足ではあるが、次のことを指摘して拙稿を閉じることにしたい。
能力不平等を理由とするエンハンスメントは「持つ者」(優れた能力を持つ者=一種の特権階級)と「持
たざる者」(そのような能力を持たない者)の間の一種の近未来版階級闘争―時代がかった言い方だが
―の様相を呈してくるのではないだろうか。もちろん、そこでは、持たざる者が持つ者の打倒を目指して蜂
起するなどという構図はありえないだろう。持たざる者が持つ者の仲間入りをしよう(させていただこう)とす
るのみである。いずれにせよ、それは、成功するなら、かつてないほどに大きな意味を持つ人類史上のい
わば「静かな革命」になるに違いない。
注(2.3.5)
(1)18世紀、ルソーは人間の不平等性に言及した(ジャン=ジャック・ルソー『人間 不平等起原論』本田
喜代治・平岡昇訳、岩波文庫、1933〔1972〕年)。
(2)中島義道は『不幸論』(PHP研究所、2002年)のなかで次のように書いている。「個人は精神的にも
肉体的にも資質や能力は徹底的に不平等であり、しかもこうし た不平等な個人に待ち構える運命も恐ろ
しく不平等である」(13頁)。
(3)能力不平等はこれまで一般には「素質の違い」で説明されてきた。現代では(脳の器質的・機能的差
異で説明される場合を除いて)遺伝子の違いで説明されるだろう。知 的能力や運動能力に関わる遺伝
子(ないし遺伝子変異)は、もちろんすべてではないが、 すでに発見されている。例えば、高 IQ に関す
るものとしてインスリン様成長因子2受容 体(IGF2R)遺伝子、持続的運動機能に関するものとしてエリス
ロポエチン(EPO)受容体遺伝子の突然変異(遺伝子変異)など(石浦章一『IQ 遺伝子―知性は遺伝する
か』丸善、2002年、19頁、116頁以下)。
(4)ただし、哲学者の間ではアリストテレスの時代から議論があった。
(5)例えば日本の江戸時代のように身分制社会もあったが、それも当初の能力不平等の結果を世代を超
えて固定化する装置であった。
(6)ただし、例えばインドなど、カースト制は法的には廃止されたが、社会的には今でも残っている。
173
(7)斎藤貴男『機会不平等』(文藝春秋、2000年)はこの点を分析している。なお、少なくとも先進国では、
問題は「機会」の不平等にあるのではない。基本的には、まさに「能力」の不平等にある。また、「格差社
会」は結果であって原因ではない。格差の 淵源は能力の不平等にある。
(8)近時の脳科学の急速な進歩からすれば、ここに「脳操作」のテクノロジーを付け加える必要があるかも
しれない。
(9)「努力幻想」もある。努力に価値があるのはいうまでもないが、残念ながらというべきか、当然にという
べきか、「努力に勝る天才はない」とはいえない。
(10)ジョン・ロールズ『正義論』(矢島欽次・篠塚慎吾・渡部茂訳、紀伊國屋書店、 1979年)、アマルテ
ィア・セン『不平等の再検討 潜在能力と自由』(池本幸生・ 野上裕生・佐藤仁訳、岩波書店、1999年)
など参照。
(11) 例えば、優秀な家系を絶やさないための結婚から生まれた優秀な子供の場合な ど、必ずしもそう
はいえない場合もあるが。
(12)遺伝子操作による頭のよいマウスや運動能力の高いマウスはすでに作られている。例えば、天才マ
ウス「ドギー」や「スーパーアスリート・マウス」などである。前者は通常のマウスと比べて格段に記憶と学習
に優れたマウスである(Ya-Ping Tang, et al., "Genetic Enhancement of Learning and Memory in Mice,"
Nature, Sept. 2, 1999, pp.63-69; Michael Lemonick, "Smart Genes?," Time, Sept. 13, 1999, pp.44-48;
生田哲『生殖革命』東京書籍、2000年、218頁以下など参照)。後者は通常のマウスと比べて格段に持
続的運動能力に優れたマウスである(白澤卓二「遺伝子操作による組織酸素供給の制御」
(http://kansai.anesth.or.jp/kako/rinma21/abstracts/gakujutsu_semi/shirasawa.html)、フジテレビ「未来
の人体(タモリの未来予測 TV)」〔2003年2月25日放送分〕など)。ちなみに、これらは、「能力の劣るマウ
スを作り、それを正常に戻す」という研究ではなく、「通常の能力を持った(持つべき)マウスに通常以上の
能力を持たせる」というものである。もちろん、これらのマウスの能力は遺伝する。
(13)この点に関して、グレゴリー・ストックは、遺伝子操作による能力強化(増強) は「人生の可能性の平
等化に向けての大きな一歩」と表現している。(グレゴリー・ス トック『それでもヒトは人体を改変する―遺
伝子工学の最前線から』垂水雄二訳、早川 書房、2003年、258頁)。
(14)高い知的能力はその持ち主に必ずしも幸福―真の幸福(何がそれなのかはおくとして)―をもたらさ
ないということを示唆する小説としてダニエル・キイスの『アルジ ャーノンに花束を』(小尾芙佐訳、早川書
房、1999〔1959〕年)がある。これ は、著しい知恵遅れの青年が脳手術等によって天才になり、そしてま
た知恵遅れに戻っ ていく、という物語だが、青年は天才になっても幸せではなかった。最近では、レオ
ン ・カス氏(編著)の『治療を超えて-バイオテクノロジーと幸福の追求(大統領生命倫理評議会報告
書)』(倉持武監訳、青木書店、2005年)がエンハンスメントは人間 に真の幸福をもたらさないということ
について述べている。ビル・マッキベンの『人間 の終焉―テクノロジーは、もう十分だ!』(山下篤子訳、
河出書房新社、2005年) も同様である。なお、「幸福であればそれでよいのか」という問題もある。オル
ダス・ ハックスリーの『すばらしい新世界』(松村達雄訳、講談社、1974年)に登場する 下層の人々は
一応「幸福」だが、それは余計なことは考えないよう仕組まれているから である。
(15)そうだとすれば誰がそのような仕事を担うのか。ロボットだろうか。SF 的だが、 人型ロボットの開発を
続けていけばいずれ軋轢(ロボットの反乱?)が出てくるだろう。
、、
(16)弊害に関して、フランシス・フクヤマは次のように述べている。「遺伝子増強を認めてしまえば、人類
は『増強された者』と『増強されない者』とに分裂し、人々および国家はいやおうなく『遺伝子競争』に巻き
込まれ、自由で民主的な社会を支える『普 遍的な人間の平等の原則』が危機に陥るおそれがある」
(Francis Fukuyama, "Nietzschean Endgame:Self-enhancement and 'immense wars of the spirit'"
〔http://urielw.com/refs/020323.htm または http://www.reason.com/news/show/32078.html,2002〕)。
訳は霜田求「バイオテクノロジーをめぐる倫理と政治―G・ストックとF・フクヤマの論争を手がかりに」
(http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/mspaper/paper18.pdf)による。
ここで、「遺伝子増強を認めると人類が増強された者と増強されない者とに分裂する (してしまう)」とい
う主張は、リー・シルヴァーの「将来、人類はジーン・リッチ[ジ ェンリッチ]階級とナチュラル階級に二極化
する」という未来予測(リー・シルヴァー『複製されるヒト』東江一紀ほか訳、翔泳社、1998年)と軌を一に
するものである。私には、増強された者とされない者とに分裂するとかジーン・リッチ階級とナチュラル階級
に二極化するとかという言い方は、いかにもアメリカ的発想に基づくもののように思われる。そのような分裂
ないし二極化が起こるとは私には思えない。確かに、遺伝子操作やサイボーグ化のテクノロジーは当初は
174
高価で一部の富裕層しか手が出せないかもしれないが、あらゆるテクノロジー(といっても、核兵器や生
物・化学兵器などの製造技術は別だが)がそうであるように、遺伝子操作やサイボーグ化のテクノロジーも、
やがて市場経済のレール上で半ば必然的に「人々」(大衆)に行き渡るようになるのではないか(『ガタカ』
という SF 映画〔1998年〕はそのような時代を描いていた)。これは、次の例とパラレルに考えることができ
そうである。かつて日本では(日本でも)自動車を持つ者と持たざる者がいた(その差は大きかった―自動
車の所有はステータス ・シンボルだった)が、現在では日本全体が豊かになり、多くの人が自動車を持
つようになった。ただし、ベンツ(メルツェデス)を持つ者とカローラ(トヨタ)を持つ者の差はあるが。
「人々および国家がいやおうなく遺伝子競争に巻き込まれる」という点は、その程度 は別にして、確か
にそうであろう。そして、その結果、前述のように、競争社会の加速 という弊害が現れるだろう。
では、「遺伝子増強を認めると普遍的な人間の平等の原則が危機に陥る」という点は
どうか。ここで、
、、、、、、、、、
「人間の平等」が人間の法的、社会的取扱いの平等を意味するとして、 私は、人間の平等の原則は遺
伝子増強を認めても危機に陥ることはない、と言いたい。 なぜなら、現在でもすでに、優れた能力を持
つ者もいればそうでない者もおり、それに もかかわらず、そのような意味での平等原則は立派に妥当し
ているからである。
(17)たまたま生物学的に優れた能力をもって生まれた人は、そうでない人の能力強化を批判(非難)しに
くいだろう。既得権益が侵されるので批判したいというその気持ち はわかるが。美人が、そうでない人が
行う美容整形を批判(非難)しにくいのと同じで はないか。
(18)私がそう望む、というわけではない。論理的な検討の結果、客観的にそうなりそうだ、ということである。
なお、もちろん、テクノ・エンハンスメントを野放しにはで きない。禁止はできないが、前述のように規制
(コントロール)の必要はあるだろう。 規制の方向性については慎重な検討を要するのはいうまでもな
い。
参考文系(2.3.5)
註で引用したもののほかに以下のものを参照した。
虫明茂「エンハンスメントの倫理問題」『生命倫理』第15巻第1号、2005年
金森修『遺伝子改造』勁草書房、2005年
レオン・カス『生命操作は人を幸せにするのか-蝕まれる人間の未来』堤里華訳、日本教 文社、2005
年
粟屋剛「人間は翼を持ち始めるのか?―近未来的人間改造に関する覚書」西日本生命倫理 研究会編
『生命倫理の再生に向けて―展望と課題』青弓社、2004年
粟屋剛「人間改造(問題集2)」中岡成文編『岩波応用倫理学講義 生命』岩波書店、2 004年
謝辞(2.3.5)
本稿の執筆にあたり、倉持武(松本歯科大学)、虫明茂(就実大学)、浅田淳一(筑紫女学園大学)、霜
田求(大阪大学)の各氏にきわめて有益な示唆をいただいた。ここに謹んで御礼申し上げる。
175
2.3.6 おわりに-まとめと提言に代えて-
(佛教大学:村岡潔)
2.3.6.1 はじめに-ニューロエシックスの位置づけ
近年、生命科学の一翼を担う先端的ニューロサイエンス(以下、脳科学)の研究やその成果の社会的
利用が進められており、その傾向は、今後ますます加速することになろう。とりわけ、非侵襲的な大脳皮質
血流量の測定等、脳科学技術の発達で人間の脳の活動が「外側から」推定可能になってきている。こうし
た情況をふまえて、脳科学についても、他の先端医療・科学技術のように倫理的・法的・社会的問題点
(ELSI:ethical, legal and social issues)を総合的に扱う学際的領域の学問整備が不可避となった。こうした
経緯で、新たなバイオエシックス(生命倫理)の分野として登場してきたのがニューロエシックス
(neuroethics;脳神経倫理)という学問領域である。〔註1〕
脳科学は、急速に、精神疾患や脳疾患についての新薬や脳イメージング(脳の画像化)といったように、
脳について「発見」をおこなっている。この領域は、私たちの日常生活の多方面に影響を与えるものであ
る。だからこそ、科学者、医療者、ジャーナリスト、法律家、政治家、哲学・倫理学者、僧職者・宗教家、教
師など様々な人々が関心をもつべきものであり、また、ニューロエシックスが取り上げる問題にはサイエン
ス・フィクションにみえるような問題もあろうが、そうした脳科学の個々の成果がもたらすであろう問題が現
実のものとなる以前から諸結果・諸影響を検討し、事態をシミュレーションしておくことが望ましい。
ニューロエシックスの定義・概念としては、「脳神経科学の発達(非侵襲的な大脳皮質血流量の測定
[機能MRI;近赤外線分光法NIRS]などで、人間の脳の活動が「外側から」推定可能になった点、等)の
動向を受けて、脳神経科学のELSI(倫理的・法的・社会的問題)を扱う領域」として、「脳科学の手法や
研究成果の社会的な適用における倫理問題の検討する脳科学の倫理」と、「人間のもつ普遍的な倫理・
道徳・哲学観などの脳科学的な探求する倫理の脳科学」といった 2 つの側面が挙げられている〔佐倉統、
玉井真理子ら;「WorkshopV脳神経倫理学(ニューロエシックス)への招待」、『日本生命倫理学会第 18
回年次大会予稿集』pp.48-51、2006 年 11 月〕。
これは A・ロスキーズが提示した定義〔Adina Roskies:A case study of neuroethics:the nature of moral
judgement, In:(Judy Illes edited)”Neuroethics”, Oxford University Press, 2006, pp.17-18〕をふまえたもの
でもある。この報告集3-2:「ニューロエシックス政策に関する国際調査研究」班報告(以下、「ニューロエ
シックス班報告」と略)の第 2 章、虫明茂「ニューロエシックスの諸問題」の第 1 節で示されているように、脳
科学の倫理 ethics of neuroscience には、脳科学に関する研究倫理、医療倫理などが含まれるが、これは
従来の生命倫理とも重なるところが多い。
一方、倫理の脳神経科学 neuroscience of ethics は、倫理自体を理解しようとする脳科学的アプローチ
であり、倫理的認知・行動に関する脳の基盤の科学的研究が進めば、我々人間の倫理観自体にも影響
を及ぼすことになろう。ただし、ロスキーズによれば、両者はまったくの別物というわけではなく「ニューロエ
シックスの2つの主要部門は概念的に相互に結合し、フィードバックが強いので、両者の区別は概略的に
しか、しかも理論上でしかなされない」ものである。
また、ニューロエシックスを「新たな生命倫理の分野」とも書いたが、それはニューロエシックスが従来の
バイオエシックスに完全に包摂されることを意味しているわけではない。なぜなら、ニューロエシックスの目
指すものは、脳科学というテクノロジーやその研究成果の社会的な適用における倫理問題の検討だけで
なく、さらには、人間のもつ普遍的とされた倫理・道徳・哲学観などの脳科学からの探究までもが含まれて
いるからである。
176
2006 年にニューロエシックスの領域で邦訳された M・S・ガザニガの著書『脳の中の倫理~脳倫理学序
説』で〔マイケル・S・ガザニガ(梶山あゆみ訳)『脳の中の倫理~脳倫理学序説』紀伊國屋書店、pp.1-21、
2006 年。原著:Michael S. Gazzaniga: The Ethical Brain, Dana Press, 2005〕も、前者の意味として、
“neuroethics”という言葉を「造語」[あるいは再強調〔註2〕]したという W・サファイヤの「人間の脳を治療す
ることや、脳を強化することの是非を論じる哲学の一分野」であり「生命倫理の問題の内、脳や中枢神経
系が関わるものを扱う」という見かたが示されている。また、後者の意味として、ガザニガの定義がつぎのよ
うに補足説明されている。すなわち、「病気、正常、死、生活習慣、生活哲学といった、人々の健康や幸
福にかかわる問題を、土台となる脳メカニズムについての知識に基づいて考察する分野。個人の責任を、
できるだけ広い社会的、生物学的視点から捉えようとするもの。脳から得られた知見に基づく人生哲学を
模索する研究分野」がニューロエシックスであるという。
ただし筆者(村岡)は、ニューロエシックスには、こうした応用倫理的側面や倫理や哲学的観念を科学
する脳科学的側面だけでなく、さらに、この 2 つの側面をメタレベルから俯瞰するような視点が必要と考え
ている。なぜなら、そうしたメタレベルからニューロサイエンスのあり方について反芻する医哲学的倫理学
的社会的探究が不可欠であり、ここまで到達しなければ到底、「エシックス(倫理)」という看板をかかげる
ことはできまいと直覚するからである。
2.3.6.2 脳科学とニューロエシックスに関する問題系について
この「ニューロエシックス政策に関する国際調査研究」班では、他のサブテーマ班と連動しながら先端
的脳科学の現状を把握しつつ、現在、ライフサイエンスの研究と実用化の分野において先端的脳科学が
どのような位置づけにあるのか、先端的脳科学に対する期待、先端的脳科学がもつ課題や問題点につ
いての整理・検討を行ない、国内外を問わず、脳科学研究に対して、倫理的法的政策的にどのような問
題があるかに調査・検討した。
この節では、こうした検討結果にもとづいて、ニューロエシックスが対象とする脳科学の問題群の概略を
俯瞰する。そこで、脳科学においてニューロエシックス(主として、脳科学の倫理;ethics of neuroscience)
が取り上げる代表的具体的な問題群を例示しつつ、ニューロエシックスの包摂するテーマ群について構
成配置(コンステレーション constellation)を示しておきたい。
A)脳イメージング(脳画像法)の問題
これは、平たく言えば、「脳科学技術で脳(人の心)を読むことができるか」ということである。まず、この問
題を考えてみよう。
無論、すでに開発され活用されている脳イメージング技術(脳画像法)は、「生きている脳」の構造や機
能を研究する重要なツール(道具)になっている。先述した、これら CT スキャン(コンピュータ断層撮影)、
MRI(磁気共鳴画像)、あるいは PET(ポジトロン断層撮影法)などの強力な技術は、治療上、脳の異常が
検出できるので神経疾患や精神疾患の診断に役立っている。〔Walter Glannon: Bioethics and the Brain,
Oxford University Press, pp.45-51, 2007〕
一方、治療以外にも人間の情動・言語・認知などの研究・実験にも使われていることは明らかである。
例えば、「脳指紋法(brain fingerprinting)」なるものは、言語や絵や音声などの特異的な刺激を人間に与
え、脳波の特定の部位の活動状態をチェックし他と比較することで人の行動が異常かどうかを検出できる
とする。脳波によるこの方法は、試験的にだが被疑者のアリバイ証明の要件として実際に使用されたこと
もある。〔Julia Scheeres:Thought Police Peek Into Brains, WIRED NEWS, 10/05/2001;
177
http://www.wired.com/techbiz/media/news/2001/10/47221〕機能的 MRI(functional MRI; fMRI)では、
脳血流を測ることでさらに綿密に「嘘をつくときに活性化する脳の部位」を特定できるようになることが関係
者からは期待されているという。
そこでロスキーズの定義のうち最初の「脳科学の倫理」として問題となるのは、もしこのようなことが蓋然
的に正確なものとみなされて治療を超えて実用化されるようになったとしたら、そうした技術は使われるべ
きなのか、あるいは、使うべきではないとするのか?使用が許容されるのであれば、どのような範囲に限定
すべきなのか、あるいは、無制限とすべきなのかなどの事柄である(言わば、「読心術」の問題点〔Michael
S. Gazzaniga: The Ethical Brain, Dana Press, 2005,pp.108-117。ここでは「読心術」としたが、ガザニガも、
こうした CKA(computerized knowledge assessment)の問題性について言及している)。
例えば、将来、罪を犯すおそれがある者をこうした脳スキャンにかけるべきか?また、入社試験などで、
企業の機密事項を漏洩しないという点で信頼に足る人物かどうかを確認するために応募者を脳スキャン
にかけることが許されるか?などである。
こうした脳科学がもたらす問題に倫理的に挑むのが、確立されるニューロエシックスの内容なのである
が、一方、ロスキーズの二番目の定義である「倫理の脳科学」の立場は、脳スキャンによって、人の話の虚
実、道徳性や意思、音楽の才能や数学の能力などを測定することができるという前提に関わるものである。
ここには、脳スキャンはそういった「倫理」に関係する脳の働きを正確に反映していると考えていいかどうか
という問いも含まれている。
また、将来的には、薬の効果判定(特に、脳に関わる「向精神薬」や「抗精神病薬」など)のエビデンス
(根拠)として脳画像が用いられる可能性も考えられる。例えば、大うつ病(MDD)の患者群に、PET や
QEEG(量的脳波)で計測しながら、向精神薬[抗うつ剤]とそのプラセーボ(製剤の姿形は同じだが、向精
神薬の有効成分が含まれていない「偽薬」)の有効性を比較実験したところ、両者に対する被験者の脳代
謝に違いが見られた。
すなわち、プラセーボに反応した群では脳の前頭前野の活性が高まったが、向精神薬に反応した群で
は、その部位では逆に活性は低下し脳の下部(複数)で活性が高まったという〔Walter Glannon, ibid.,
pp.92-99〕。こうしたパターンの違いが薬効と心理的反応の差を表現していると解釈されるならば、客観的
なエビデンスとして採用されることになろう。
無論、この場合にも、関係する脳の働きを正確に反映しているか否かの問題は残される。
次に、脳科学技術による「発症前診断」、つまり、将来発症する神経疾患・精神疾患に対する予知の問
題点について見ておこう。
1980 年代以降の MRI などの画像診断の研究から、統合失調症の人々は、正常より側脳室が大きく、海
馬が小さく、基底核部の大きさの変化や前頭前野の「異常」を伴うといったことがしばしば示されている〔註
3〕。
このような画像診断が、実際に病気になった人の病中・病後に行なわれる場合には、倫理的問題はさ
ほど大きくないと言えよう。しかし、まだ健康で発病していない人の脳の画像診断からそのような偏差(形
態の違い)を見出して「異常」と見なし、将来の発病を云々する場合には、倫理的な問題は看過できない
ものとなろう。このことは遺伝子診断ですでに行なわれている発症前診断に相当する考え方であるからだ。
ニューロエシックスにおいても、それと同様の倫理的問題を呈するものと思われる。〔註4〕
例えば、脳の画像診断によって神経疾患や精神疾患の予知が可能とされれば、保険会社は、疾病保
険や生命保険の審査に脳スキャン結果の提出を義務付けることになる可能性は高いであろう。これは個
178
人の脳画像情報が、個人の遺伝子情報と違って一般には親族・兄弟姉妹などの情報と重複しているとは
見なされないので、遺伝子診断より、同意(インフォームド・コンセント)が得られやすいだろうからでもあ
る。
こうして、発症前診断で「精神疾患の可能性あり」とされた人々は、半ば強制的に治療策・対応策を講
じられるなどの医療の管理下におかれることになるのだろうか。もしそうだとしたら、それは医療倫理的に
望ましいことなのだろうか? いずれにしろ、こうしたことには医学的のみならず倫理的に法的にも慎重な
対応が不可欠であると言えよう。
また、医学の画像診断上、古くからある問題だが、脳画像検査の場合にも、偶然予期せぬ「異常所見」
(incidental findings)が発見されることがある。これは、例えば、人間ドック(脳ドック)の MRI 検査で(未破
裂)脳動脈瘤[これが破裂すればくも膜下出血を起こし生命に関わる事態を引き起こすもの]が見つかるよ
うなもので、その結果の解釈は被験者には慎重に開示される必要があろう。したがって、脳科学機器の使
用に際して被験者からのインフォームド・コンセントを得るときにも、こうした可能性については十分に告知
しておくことが望ましい。
B)薬物による精神・性格・気分の変調の(脳の薬理学的)問題
これは、平たく言えば、「薬物による精神や性格や気分の変化が可能になったらどうなるか」という問題
である。
薬物、とりわけ「向精神薬」あるいは「抗精神病薬」と呼ばれている薬は、人々に様々な気分変調を引き
起こす。その性質を利用して、抗うつ剤や精神安定剤は現在も多くの人々に服用されている。例えば、統
合失調症には抗精神病薬が投与され、また近年注目されている ADHD(注意欠陥多動性障害)には中
枢神経興奮剤(リタリンなど)が与えられている。これらは、治療の名目で投与される限りでは、多くの場合、
生命倫理的な問題はあまりないか、喚起されないものと言えよう。〔註5〕
他方、まず倫理的問題となるのは、健康者や罪を犯すなど病気以外の社会病理的問題を抱える人々
(いわゆる「逸脱者」)に治療を超えて用いられる場合であろう。
例えば、次のような課題がそれである。
a)「DV(家庭内暴力)」を振るう人を逸脱者として、薬物で興奮を鎮静化することを試みるべきなのだろ
うか?
これは「国民意識調査」(中川輝彦らのサブグループ報告)で調査された内容に類似する。その結果で
は、受刑者の再教育矯正や前科者の再犯防止のために仮に「薬物による精神変容」が可能でそれを行
なうとしたら、それに 40%強が賛同を示し、望ましくないとした者が 30%であった。こうした「社会正義」に反
する逸脱者に関する対処の手段として、薬物使用を考えてよいのかどうかは、医療を超えた部分でのニュ
ーロエシックスの問題の典型と言えよう。あるいは、社会病理ではないのだが;
b)自分や他人が悩んでいる「人見知り」や「高所恐怖症」などのパーソナリティ(性格)を変容させるよう
な薬を開発すべきなのだろうか?
c)また、薬で記憶力や知能を「増強」することができるとしたら、どうすべきだろうか?
後者の2つは、社会病理ではなく、能力増強ないしはエンハンスメントというカテゴリーに入るものである。
周知のように、すでに、アルツハイマー病の患者には、治療として、記憶障害などの症状進行を遅くする
塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)〔註6〕などの薬が用いられている。〔Michael S. Gazzaniga, ibid,
pp.71-74〕
このような薬物を認知症ではない普通の人が記憶力増大を期待して服用したいと希望した場合は、エ
179
ンハンスメントの問題のカテゴリーに含まれるものである。こうした薬は、俗に「スマート・ドラッグ(ピル)」な
どと呼ばれている。ガザニガは、「薬でスマートな脳を形成する」という章の中で、多くの健康な若者がテス
トの成績を上げるためなどの目的でリタリンを服用する問題を取り上げている。
一方、私たちは、すでにコーヒー、紅茶、コーラ(有効成分はカフェイン)やタバコ(ニコチン)や酒類(ア
ル コ ー ル ) を 気 分 変 調 や 行 動 改 善 の た め に 利 用 し て い る 。 こ れ ら は 「 化 学 的 慰 安 剤 ( chemical
comforter)」としてすでに文化的社会的に認められているからだ
(Cecil G. Helman: Culture, Health and Illness, Fourth Edition, ButterworthHeinemann, 2000, pp.142-155)。これらは、有効成分(薬物)そのものを服用するわけではないが、使用
の結果が一種の「エンハンスメント」と位置づけられないこともない。なぜなら、昨今のサプリメントを服用す
る文化形態からは、将来的には、スマート・ドラッグもサプリメント的に利用される可能性はあろう。こうして
みると、スマート・ドラッグの利用と従来からの薬物利用とに倫理的にどのような違いがあるか解釈するのも
ニューロエシックスの役割となるだろう。〔註7〕
梶原は、スマート・ドラッグの使用に関して、個人の問題に限らず、個人の行動の総和がいかなる社会
的帰結をもたらすかを見積もる必要があるという、規則功利主義的な要点を指摘している。そして、その
使用は、自由や公平性において社会に大きな影響をもたらす可能性があり、そのため容認派と反対派の
対立を引き起こすだろうが、両者の根拠の妥当性を見積もる知見や、その薬が価値観や人間性の見方に
及ぼす変化に対する両者の認識の相違の原因追究の必要性に言及している。〔註8〕
C)脳への介入と遠隔操作の問題
これは、「脳への介入と遠隔操作が可能になったらどうなるか」という問題である。
脳の一定の領域は、頭蓋上に置いた経頭蓋磁気刺激装置(TMS; transcranial magnetic stimulator)に
より、刺激ないしは抑制することができる。つまり、頭皮上に置いたコイルから単発磁気刺激(TMS)を与え
ると、大脳皮質表層部に一過性の誘発電流が生じ、これが神経細胞の活動に影響を及ぼす。運動皮質
では主として促進効果が得られるのに対し、視覚皮質(光の知覚)では促進効果の報告もあるが、抑制効
果(たとえば瞬間呈示されたターゲットの検出/弁別成績の低下)が一般的に報告されている〔註9〕。
TMS は、間接的に、頭の外から脳の一定の領域に電磁場を形成し、それに反応して得られる運動・感
覚・記憶を研究するために用いられてきたものであり、うつ病やてんかんの治療にも使われてきている。ま
た、脳深部に細い電極を埋め込み心臓のペースメーカーのように刺激を与え、パーキンソン病の振戦な
どを抑制する脳深部刺激療法(DBS)もある。これは、TMS よりは、やや侵襲的にみえるが、従来の凝固法
と違って脳組織を破壊せず可逆的とされている。〔註 10〕
このように TMS で脳に電磁場を形成したり、DBS で脳を刺激し続けたりすることは、副作用のような形で
人々の行動や思考に影響を与えることは認められないのか、という安全性の問題がある。安全性の問題
は、脳科学に限らず、科学技術を応用するときに第一に考慮すべき問題であるが、脳科学の場合は、特
に重要である。なぜなら、脳には身体の他の臓器に比して未知の部分が多いので、脳科学の介入に対し
てどのような反応が正常でどのような異常ないしは副作用をもたらすのかは短期間では判明しない可能
性もあるからだ。
一方、別の次元では、脳科学の応用が、目的別に議論される場合もある。それは、先述の薬物の利用
の場合とも共通するが、応用が治療の範囲内なのか、治療を超えて何らかの能力の増強を図るのか、と
いった目的によって評価される場合である。後者は、エンハンスメントとして次項で論ずるが、脳科学技術
が治療を越えて、治療以外の他の目的で行なわれるようになった場合についても、当然、ニューロエシッ
180
クスの検討対象となる。
例えば、脳を通じて人間の遠隔的な操作が可能となるとしたら、人権(個人の自律性やプライバシーな
ど)の侵害にならないかという問題や、この脳科学技術が武器として犯罪や軍事に利用されるといった懸
念も生じてくる。この場合には、従来の治療かエンハンスメントかという 2 項対立で包摂しきれない部分を
含んでいる。
なぜなら、治療かエンハンスメントかといった観点が、対象を個々人に絞ったものであり、個人の苦悩・
苦痛を解消したり願望や欲望を成就したりするために脳科学技術を使用することの是非を個人レベルで
論じているのに対し、先述の DV などの逸脱者の薬物による矯正は、社会病理の解決や軍事利用となる
と個人対社会の中での解決方法を意味しているからだ。変容の内容も、必ずしも個人の苦悩や欲望に基
づいたものではない。個人に対する社会的意味付けが中心であって、脳科学の応用によって社会病理
の解決や社会利益の増進が目指されるものである以上、個人―社会関係の変容が目標となっていると言
えよう。
本報告書では、こうした次元の問題について詳しく論ずる紙幅がないが、この章では、この種の問題の
立て方のカテゴリーとして、治療かエンハンスメントという個人的次元からの社会的次元への拡張という意
味で「社会的拡張(social extension)」と呼んでおくことにする。
また、ニューロエシックスは、こうした問題についても、脳科学技術が普及する前に、予見的にシミュレ
ーションして問題点の帰結を検討しておくという役割を担っている。
ちなみに、こうした言動ないし営為は、科学者にしてみれば、研究の自由を奪われかねないと誤解して
ニューロエシックスの展開に危惧をいだく向きも少なくないかも知れない。しかし、脳科学の場合に限らず、
生命倫理がたどってきた経過や歴史をみれば、生命倫理は、研究形態に一定の形式(倫理委員会制度
や様々なガイドラインなどをはじめとする)を与えることで、逆に、個々の研究を承認し、それを科学的に
権威付け、結果的には、多くの先端医療・実験的治療を推進させてきたという側面も持っている。ニューロ
エシックスにも同様の役割期待が存在することはいうまでもないであろう。
2.3.6.3 治療かエンハンスメントか
前節での問題系としては、脳科学の各論に対応する問題配置を具体的に見てきたが、ここでは、ニュ
ーロエシックスでよく問われる「治療なのか?エンハンスメントなのか?」を別の次元の問題系の軸として
みておこう。
脳科学の新たな発見は、現時点(の自然状態で)で脳・中枢神経系等の身体システムに支配されてい
る心身の力をエンハンスメント(増強・増幅)する機械や薬物の開発につながることが期待(あるいは懸念)
される。これらの技術革新に対するニューロエシックスの課題は、こうした薬やテクノロジーに対して私たち
が何をなすべきか、あるいは、私たちがそれらに対応してどう変容すべきかすべきでないかについて論じ
ることである。
つぎに、治療かエンハンスメントかという対立図式に簡単に触れておこう。
例えば;
Q1)人間は向精神薬などの薬を使うことで自分自身という感性(自己ないしはアイデンティティ)を喪失す
るのだろうか?
(この場合、治療で向精神薬を服用している人では(疾患にもよるが)大概は「自己喪失」しているとは思
えない。一方、エンハンスメントなると、そういう危惧をいだく人が多くなる可能性がある。)
181
Q2)記憶のためにコンピューター・チップを体内に埋め込んだりすると人間とは言えなくなるのだろうか?
(この場合、治療で、心臓の人工ペースメーカーや人工内耳を埋め込んでいる患者は人間として認知さ
れているが、一方、エンハンスメントとして行なうとサイボーグなどと呼ばれて「人間」とは区別されるように
なる可能性がある。)
これらの問題のように、ニューロエシックスの討議すべき課題には、治療とエンハンスメントとの問題系
の軸が絡んでくることが少なくない。特にエンハンスメントを取り上げ、まだ実現していない SF(空想科学)
的なテーマをニューロエシックスが現時点で扱うことに時期尚早とする意見の者もいるだろうが、ニューロ
エシックスを議論することは、こうした命題への判断が、実は治療かエンハンスメントかの二分法に影響さ
れていることを示してくれる。
LR カスらの米国大統領生命倫理評議会報告書による通常の理解では、「治療」とは「既知の病気や障
害、損傷を持った人の健康や機能を正常な状態に回復させるための処置としてバイオテクノロジーの力
を使うこと」であり、「増強[エンハンスメント]」とは、対照的に「何らかの疾患に対してではなく、<正常>に
働いている人間の身体や心理に直接介入してそれらを変化させるというかたちで、生来の素質や活動能
力を強化し向上させるためにバイオテクノロジーの力を直接的に使うこと」だとされる。〔レオン・R・カス編
(倉持武監訳)『治療を超えて』青木書店、2005 年、p.15〕
本報告書でも、混乱を避けるためにまず、上記のカスらの「治療」と「エンハンスメント」の区別を標準の
ものとしておこう。しかし、次に、その判別は、そう単純なものではないことを示しておきたい。
例えば、ドイツ連邦のボンにある「生命諸科学における倫理のためのドイツ情報センター(DRZE)」(以
下、生命環境倫理ドイツ情報センター)の報告書によれば、エンハンスメントとは、一般には、改良・増強・
強化すること、高めることを意味するが、時には、悪化や行き過ぎを意味することもある。しかし、生命科学
や医学の文脈では、診断・治療・予防・緩和について現にある可能性を改良ないし拡張するという意味が
ある。
さらに、この概念は、健康の回復と維持を超えて、能力や性質の改良を目指して人間の心身の仕組み
に生物医学的に介入することも指すとしながらも、このドイツの報告書では最後の意味で扱うとしてカスら
の定義に接近している。また、身体的エンハンスメント(身体的諸性質の強化)、知的エンハンスメント(記
憶力のような認知能力の向上)、あるいは、道徳的エンハンスメント(攻撃性のような行動特性の陶冶矯正
をめざすこと)などがあり、薬物使用、外科、遺伝子技術などの利用が考えられるとしている。〔DRZE 編
(松田純/小椋宗一郎訳)『エンハンスメント』(知泉書館)pp.3-4,2007 年。〕ちなみに、ここで言う「道徳的
エンハンスメント」は、上述の「社会的拡張(social extension)」に相当するものと言えよう。
こうした定義のしかたに対して、虫明は次のように補足説明を行なっている。すなわち、「日常語として
の”enhance”は一般に<高める、強める>ことを意味するので、病気の状態を健康にまで戻す<治療>
も本来は含まれてしまうことになるが、生命倫理学上の術語としては、すでに健康な状態をさらに高める
<非治療的介入>に限定して用いられる〔虫明 茂「エンハンスメントの倫理問題」、『生命倫理』第 15 巻
第 1 号、2005 年、pp.12-18〕。このことは、「治療」か「エンハンスメント」かの区別が、「病気」か「健康」か、
あるいは「正常」か「異常」か、という二分法とパラレルな関係にあるので、一見、両者の区別は(少なくとも
医学的には)容易であるかのように思われる。しかし、虫明は、エンハンスメントの定義が「正常/異常」の
区別に基づいてなされていないこともあり、また、正常な状態をさらに改善するのがエンハンスメントだと言
っても、もともと人間の多くの性質(たとえば身長をはじめ)は連続的な曲線[典型的なのが正規分布をな
すベル型カーブ]を描いて分布しているので、どこで正常/異常の線引きをするかの問題には困難が生
182
ずるであろうとしている。
そこで正常/異常(の二分法)について少しく考えてみよう。
D・ランチェラート〔ディルク・ランチェラート「病気と病人」、生命環境倫理ドイツ情報センター(DRZE)編、
前掲書所収、pp.116-128〕の指摘をふまえれば、虫明の後半の解説は、統計的標準に基づいたものとい
える。その一方、ランチェラートは、HT エンゲルハートらの「自然はいかなる基準ないし規準を定めるもの
ではない」という視点の重要性も併記している。つまり、後者では、「健康」や「病気」といった概念は、価値
判断を暗黙のうちに含んでいるので、しかるべく社会文化的文脈においてしか理解できない。結局、後者
では、病気概念は、社会的な行動分野におけるまったく慣習的な取り決めだということになる(むろん、出
鱈目ということではまったくなく、社会的ルールに基づいて構成ないしは形成されるという意味である)。
この種の問題の好個の例としては、いわゆる「小人症」の成長ホルモンによる治療(低身長の改善)があ
る。つまり、低身長は病気なのか、自然の姿なのかという問題であり、成長ホルモン投与というテクノロジー
は変わらないのに、「小人症」の定義から外れるやや背の高い人は病気でないので、治療を超えた行為と
いうことになる。また、小人症でも、およそ全体の 95%以内に入れば治療は終了するようで、平均身長を
超えてもということでもないようである。〔註 11〕
こうした医学概論・医学哲学的観点からすれば、正常と異常、健康と病気の区別は言うまでもなく、そう
単純ではなく、相互に揺れ動くものである。そして、生活世界や社会問題の医療化が進めば、それまでは
「治療を超える」とか「エンハンスメント」とされた対処行動が、立派に医療として位置づけられる可能性が
大きくなる。脳科学ではないが、近年、医療化された「性同一性障害」の「性別適合[性転換]手術」も筆者
の解釈では、「美容形成」に帰属していたはずのテクノロジーが治療(医療)に転化したといえるものであり
〔註 12〕、ADHD も 20 世紀後半に医療化されたものと言えよう。
エンハンスメント問題を語るとき、脳と機械をつなぐ「ブレイン・マシン・インターフェース(BMI・BCI)とサ
イボーグ」という、ニューロエシックスのもう一つの側面のテーマを抜きに語ることはできない時代になって
きている。
つまり、BMI 技術の発展は、難聴(人工内耳)や視力障害(人工網膜の研究中)のような形で、人々の
手助けをするようになってきている。〔「脳を生かす」研究会編『ブレイン・マシン・インターフェース』オーム
社、2007 年、pp.168-197〕こうした BMI 技術や身体障害者用の筋電義手〔朝日新聞「奏でる喜び」2007
年 12 月 28 日関西版〕など、脳科学の分野は、今後の医療やリハビリテーションの形態を大きく変えていく
だろう。
例えば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者が BMI を利用して自らの人工呼吸器を制御したり、外界
の友人たちとインターネットを通じて交流したりしながら、QOL(生活の幅や質)を向上させていく姿が普
通に見られるようになることも期待されよう〔註 13〕。
こうした時代が来ると、もはやこれまでの治療かエンハンスメントかといったカテゴリーでは捉えきれない
事態になっているに相違ない。
金森が例示しているように、事故で片足の膝から下を失ってしまうが、進んだ技術による義足をつけた
結果、その人はかえってそれまでより速く走れるようになった。これは治療なのか、エンハンスメントなのか。
彼は、それを一種「エンハンスメント的効果をもたらす治療」と記述している。また、それを見た友人が脚を
切断手術してその義足を装着して自らを「サイボーグ化」したいと望むことは許されるのか、とも問うている
(金森修『遺伝子改造』勁草書房、244-245 頁、2005 年)。
以上、まとめると、現時点では、カスらが定義した「治療」と「エンハンスメント」の差異を暫定的に採用す
183
ることで混乱をさけることが必要であろう。しかし、早晩、その境界線はシフトし、エンハンスメントとされてき
た脳科学技術の一部の範囲が治療のカテゴリーに変化していく可能性は高いと思われる。したがって、
随時、境界の変動に対して流動的に ELSI の立場、特に法的立場からは「治療」と「エンハンスメント」の再
定義を明示しなおすことが肝要であろう。
2.3.6.4 おわりに-総括と規制論に代えて
以上、脳科学とニューロエシックスに関する問題系のコンステレーション(配置)について略述した。この
節では、最後に、総括と規制論について、主に倫理的アプローチを中心に、ELSI(倫理的法的社会的問
題)の視点から、簡単に述べておきたい。
①すでに、この「ニューロエシックス班報告」第 2 章、虫明茂「ニューロエシックスの諸問題」の第2節「倫
理原則の枠組み」で示されているように、倫理原則としては;
1)自律性の尊重:プライバシー、自発性、自由な選択とその責任の受け入れ等。
2)善行原理:他人に善をなすこと(医療行為はそれ自体、一応、善とみなされている)。
3)無(不)危害原理:危害・悪事をしない;その予防・除去。互いに干渉しないこと。
4)正義・公正:利益・サービス・情報の平等な受益、公平な医療資源の配分等。
同一治療の保証。
がよく知られている〔G・E・ペンス『医療倫理』[第1巻](宮坂道夫・長岡成夫訳)、みすず書房、2001 年、
pp.1-38 を村岡が整理したもの〕。中でも、特に、先端医療・科学技術の推進の際には、注意しなくては
ならないのが1)の自律性の尊重である。ここで専ら個人(患者・被験者・クライエントなどの当事者)の主
権、つまり、インフォームド・コンセントに代表される自己決定権の行使が保障されなくてはならないからだ。
脳科学技術の適用に際しても当事者の同意なくしては事が運べないのである。2)から4)の原則は、患者
よりも、むしろ医療者や研究者の行為に向けられたメッセージなのである。
②次に H・ブロディが挙げている2つの倫理的アプローチについて簡単に述べておこう
〔H・ブロディ:『医の倫理』(舘野之男、榎本勝之訳)、東京大学出版会、東京、1985 年、325-328 頁。村
岡の整理〕。一つは、①義務論的アプローチであり、学会のガイドラインのような規範・規準に照らし合わ
せて、選択した治療行為の是非を決定するといった方法論である。すなわち、行ないたい行為 A を既存
の照合体系(ルール、ガイドライン)に照合させ、行為 A がその規範(照合体系)に合致している場合には、
善(正しいこと)として行為 A を選択・実行する。一方、合致していない場合、行為 A は善ではないので行
なわず、次に、改善した行為 A か、新たな行為 B を立て再度規範に照合させる(フィードバック)ことになる。
このアプローチは、評価の確定した「通常」の医療や科学技術には適しているが、評価の未確定な先端
医療や先端技術の利用に際しては適用しにくい面が多い点が短所と言えよう。
一方、その点で有利なのが、ブロディが②目的論的アプローチと呼ぶ功利主義的方法論である。まず、
行ないたい行為の選択肢 A、B、C(ふつう複数)を列挙する。次に、仮に A、B、C、…の選択肢を行なっ
た場合、各々の結果から生み出される価値や幸福の度合い V(Value)a、Vb、Vc、…を推測(シミュレーショ
ン)して列挙し、それらの価値 Va、Vb、Vc、…を比較検討する。その中で、当事者にとって最も望ましい価
値をもたらす選択肢(最も幸福が予想される行為;あるいは最も不幸が少ないと予想される行為)を最善
のこととして採択する(実行する)。また、価値の比較がうまく行かないときは、最初にフィードバックしてや
184
り直す。
後者の場合には、集団(社会)全体を規制する照合体系は不要であるので、歴史が浅く
て経験の蓄積の少ない先端医療・実験的治療あるいは科学技術の応用の場合の決定に有利
と考えられる。例えば、日本産科婦人科学会会告では「体外受精・胚移植の被実施者は婚
姻しており(体外受精を受ける者は既婚者であり)、挙児を希望している夫婦である」と限
定している。これは義務論的アプローチに相当するが、集団全体の規範よりも「当事者主
権を前面に押し出し「国民は、自己決定権に基づき、生殖補助医療を利用する権利を有するので、卵子
提供や代理出産等も認められるとする立場」をとる、諏訪マタニティクリニック・根津八紘院長らの方法論
は、明らかに、目的論的アプローチと言えよう。
自由主義的立場からは、当事者本人の同意(インフォームド・コンセント)があり、その行為が他者危害
の原則を遵守するものであれば、少なくとも倫理的には、その行為を咎めたり阻止したりすることは正当化
されない。しかし、「インフォームド・コンセント」が当事者本人の「完全な」自発的意思なのか、医師や研究
者のような施術者側からの誘導や合意形成行為などに誘発されたものかの区別も難しい。また「インフォ
ームド・コンセント万能主義」といった方法論を採用すれば、目的論的アプローチでは、どんな脳科学技
術の応用も可能となる事態(例えば行為功利主義)をもたらす危険性もある。これを回避するためには、
目的論的アプローチも、個人のみではなく他者の集団にも善が反映されるような規則功利主義的な立場
にシフトすることが求められよう。
したがって、脳科学技術に対するニューロエシックスにおいても取るべきスタンスとしては、大枠は、義
務論的アプローチで進めるとしても、それでうまく行かない部分は、目的論的アプローチの選択を躊躇す
べきではないものと考えられる。
③G・E・ペンスは、道徳的[あるいは倫理的(村岡、追加。以下[]は同じ意味)]問題の範囲をつぎのよう
に4つの生活範囲の類型を示しながら説明している。〔G・E・ペンス、前掲書、pp.11-13.〕すなわち、①
純粋に私的で他人に影響を与えない行動に関する「個人生活」、②個人間の行動(ある人の行動が他人
に影響を与える [他者危害の原則に関わる] 状況)に関係する「道徳」、③他の人々に好ましくない影響
を与えるので社会は、抑制はするが[不履行を]許容する行動(逆に、他の人々に好ましい影響を与えるの
で社会が奨励するが[実践しなくても罰しない]行動)に関係する「公共政策」、および、④法によって強制
される好ましい行動、および、法によって禁じられる好ましくない行動に関係する「合法性と違法性」(強制
される行動を行なわなかったり、禁じられた行動を行なったりした場合には刑罰が課されるもの)の 4 つの
範疇である。
したがって、脳神経科学に対する公共政策やニューロエシックスが目指すものは、少なくとも、社会が
特定の行動を促進(納税など)または抑制(犯罪など)し、しかも市民の個々人にその方針に従うよう強制
する法律の領域とは異なっている必要があるだろう。
④H・T・グリーリィは、エンハンスメントを規制することは倫理的[道徳的]問題ばかりでなく、法的問題で
もあることを指摘し、その際に直面する法規制の難点をいくつか列挙している〔Henry T. Greely: The
social effects of advances in neuroscience: legal problems, legal perspectives, In:(Judy Illes edited)”
Neuroethics”, Oxford University Press, 2006, pp.254-263〕。
なお、この場合のエンハンスメント(可算名詞 enhancements)という言葉は、多くの場合「人をエンハンス
185
するもの自体(薬やデバイスなど)」を示している。以下、<エンハンスメント>と<>で示すものは、そのも
の自体を指すものとする。同様に、J・ハリスは、エンハンスメントという語の新しい、あるいは複雑な定義は
必要としないとし、「エンハンスメントとは、人間の機能に影響を及ぼす介入の文脈において、明らかにより
よい違いの変化を起こすものすべてである( an enhancement is clearly anything that makes a change, a
difference for the better.)」と「もの自体」を中心とした定義を行なっている。彼は、<エンハンスメント>が
よいのは明白なので、エンハンスメントという概念が疑義やおそれや敵意を引き起こしていることは変だと
している〔John Harris:Enhancing Evolution, The Ethical Case for Making Better People, Princeton
University Press, pp.36-37,2007〕。〔註 14〕
さてグリーリィは法的問題点として、まず、①「いかにして<エンハンスメント>の安全性を制御する
か?」を挙げ、米国では、<エンハンスメント>は、FDA(食品医薬品局)などの機関で安全性や効果の
証明の後、認可されるが、厳格な FDA 基準でも次のような安全性の問題が残るという。例えば、臨床試験
でも、リスク発現が緩慢なものは検出されにくいので、薬が安全とは保証できない。あるいは、疾患治療の
ために承認されるモダフィニル(欧米で「覚醒促進剤」として「睡眠時無呼吸症候群」などに処方される薬
剤)や人工内耳デバイスのような<エンハンスメント>は、一旦、一つの目的で承認されると、以後は、オ
フ・ラベル使用[off-label use(OLU); 一旦市場に登場した薬やデバイスは、その認可理由がどうあれ、医
師の自由裁量で他の目的にも使用することができる]される。こうしたオフ・ラベル使用は、実質的にテスト
されてない使い方になるので安全性が問われることになる。さらには、FDA がどのように<エンハンスメン
ト>の安全性を評価するのかが不透明である(がんなどの重篤な疾患では毒性で危険性の高い薬も承認
されるが、治療目的ではなく、正常機能を増進させる薬では、どの程度のリスクが許容されるべきなのか
は不明)。結局、法体系は、社会が薬物のような記憶のエンハンサーを規制すべきかどうかを決定すべき
なのであろう。
次は②「いかにしたら<エンハンスメント>の強制使用がさけられるか?」である。例えば、問題は、空
軍や病院がそれぞれパイロットや当直医に眠気予防のためにモダニフィルを強制的に飲ませることを決
定したり、雇用主が被雇用者に能力向上のために<エンハンスメント>を使わせたり、法廷が、証人に(う
その検出のため)<エンハンスメント>による検査を強要したりするような場合に起る。また、③「効果的な
<エンハンスメント>利用の公平性」に関する問題であり、④「エンハンスメントが親子関係に与える影響」
の問題(成人で安全でも、子どもでの安全性は保証されないこと。また、使用は代理決定であり、親側の
子どもに対する期待から使用に同意すること)がある。さらに⑤「人間性の維持のために行なう法的介入
の是非」や⑥「脳科学的エンハンスメントの制限をどう遵守させるか」などの問題点も挙げられている。
このように、法的問題点には解決すべき課題はあるものの、エンハンスメントを法的に規制する際に、エ
ンハンスメント技術そのものよりも、そこで用いられる<エンハンスメント>あるいはエンハンサーを規制の
対象として検討することの有用性あるいは有効性が示唆されている。
⑤ グリーリィによれば、脳科学技術によるエンハンスメントに対して多くの人々が不快感をいだくことの
核心には、神ないしは自然が人間性に与えた重要な限界を超えることへの畏れの感性があるという〔H.T.
Greely, ibid.,p.260〕。虫明は、前掲の L.R.カス編『治療を超えて』の終章Ⅲ「本質的心配の種」における
「問題の根源は、世界の『被贈性 giftedness』〔世界が神によって贈られたものであること〕の意義を適切に
理解し尊敬しそこなっていることにある」とする、カスの「所与への敬意」という原理に対して、もう一つの
「与えられたもの」があるとする。すなわち、それは「我々自身の自然本性を変える力」であり、ここにこそ生
186
まれたままの自然本性に甘んずる[他の]動物とは異なった「人間の尊厳」があると指摘している〔虫明 茂
「エンハンスメントの倫理問題」、『生命倫理』VOL.15 NO.1, pp.16-17,2005 年〕。
J・F・チルドレスも、人間の自然的本性の別の概念として、技術を作り使うことにおける人間の「合理性」
「創造性」を挙げている〔本「ニューロエシックス班報告」第 2 章、虫明茂「ニューロエシックスの諸問題」所
収、チルドレス「ニューロエシックス:脳神経科学における原則とジレンマ」Ⅰ〕。また、金森も、次のように
述べる。すなわち、或る一定の限界に押し込められてきた人間たちは、技術的媒介が成熟するのを見て
その限界が凌駕可能なものだと感じた途端に、その限界超克をほとんど義務的なものと感じるようになる。
リスクがあったとしても自分の限界を突き破りたいと考える人は、あのプロメテウスの心性に駆動されている。
上を目指しては挫折し、それでも憧憬や渇望をやめない人間の姿、言わば<プロメテウス・コンプレックス
>を抱えたまま生きていく姿は、人間の根源的な業、または性のようなものである〔金森修、前掲書、
p.237〕。
粟屋は、同様の視点にたち、「個人の能力の有無は、ある意味で偶然の結果(産物)」
であるが、その偶然の結果である能力の有無(個人差)が、その人の人生のベースの部分を決定している
[社会を想定する](偶然の遺伝子変異の結果である優れた知的能力や運動能力を持つ人は、それらを
駆使して偉業を達成でき、富や名誉や権力を手中にし、周囲からも羨望の眼差しで見られる)。このように
遺伝的に知的能力や運動能力が決定され、それが能力主義社会を形成しているとするならば、能力が
低い人が、利用可能なテクノ・エンハンスメントを利用して、能力不平等に立ち向かうことは阻止できない
とし、能力不平等はテクノ・エンハンスメント[利用]を正当化する根拠になると考えている。〔本「ニューロエ
シックス班報告」、第 5 章、粟屋剛「エンハンスメントに関する小論―能力不平等はテクノ・エンハンスメン
トの正当化根拠になるか」参照〕。
テクノ・エンハンスメントのような新しいテクノロジーと人間性との関係は両義的なもので、無条件では、
どちらがより望ましいとは決定しがたい、人間不改造志向と人間改造志向との二分法で議論されることが
少なくない。このことは、福島らのイタリアの調査では、聖俗の対比となって現れている。〔註 15〕
すなわち、政教分離であるイタリアにおける生命倫理では、宗教(カトリック教会)の影響力が強い陣営
と、[宗教色の薄い]世俗的倫理を主張する陣営が存在する。世俗的生命倫理学陣営の識者は、生物医
学研究等において[例えばカスらの『治療を超えて』のような]「人間の尊厳」概念を用いるのは不適切であ
るとし、北米のバイオエシックスと同様、自由[主義]と自己決定がもっとも重要であるとしている。
また、脳科学分野に関する双方の主張は、カトリック生命倫理学者は科学技術一般の発展は「善」とみ
なすが人間の本質を変化させる技術には規制が必要だと考えている。一方、世俗的生命倫理学者は、
エンハンスメントを含めた科学技術について、本人の同意があれば現在以上の規制は不必要だとする。
「自律性の尊重」原理のみでは解決が難しいケースでは、カトリック生命倫理学が主張する人間の尊厳の
尊重や自己決定のある種の制限が説得力をもつ場合もある。〔本「ニューロエシックス班報告」第 3 章、福
島智子「イタリアにおけるニューロエシックス」参照〕。
ところで、今日「人間の尊厳」という言葉には、(個人の尊厳なのか人類・人間性の尊厳なのか;人間の
尊厳の担い手は成人のみか、胎児や同意能力の無い人も含むのか等の)内容の曖昧さ、(ユダヤ・キリス
ト教の伝統的考えだから)政教分離に反する点、(ヨーロッパ文化の伝統に根ざした理念だから)他文化
に強要できないことなどの異議が唱えられている。それに対し、[ドイツの]「現代医療の法と倫理」審議会
は次のような答申を出している。すなわち、人間の尊厳は、すでにカントによる世俗化された理解が付与
されて世俗化されており、また、確かに特定の文化的伝統から生まれたものであるが、同時にあらゆる人
187
間に妥当しうる原理として、また、現代の多元主義的社会において相互尊重の基盤を形成する原理とし
て理解されなければならないとしている。〔松田純『遺伝子技術の進展と人間の未来』知泉書館、
pp.50-71、2005 年〕
もう一つ補足しておくと、島薗は、増進的介入[エンハンスメント]の倫理的問題は、自律性・主体性の過
剰な追求にあり、それが見逃してきた生命の価値にこそあるという。つまり「自己の彼方から訪れる生命の
感受力は痛みの経験とは」不可分で、「痛みを忘れがたいことの経験は、他者の痛みや苦難に対する慈
悲共感の念を育て」、それが「謙虚さや責任感や連帯意識の源泉となる」という。〔島薗進「増進的介入と
生命の価値」、『生命倫理』VOL.15 NO.1, pp.19-27,2005 年〕。
ちなみに、「人間の尊厳」といっても、通常、私たちが意識するのは、遡っても近代 18・19 世紀の概念で
あり、その言葉に、太古の昔ではなく、一昔前の懐かしい感情(ノスタルジー)を抱くのであろう。そこに手
放したくない感性が生じることになる。それが、この項の冒頭で引いた新たなテクノロジーへの違和感の
根拠となっていよう。そのとき私たちは、次のようなテクノロジーと自分との関係性を忘れてしまっている。
だが、柄谷は次のように指摘する。「われわれが『自然的』とよぶものは、きまって一昔前のテクノロジーで
ある。その意味で、われわれが『人間的』とよぶものも、ひと昔前のテクノロジーにすぎない」「“感性”とは、
いわば未発達の(または遅れてしまった)テクノロジーのことだ。その証拠にひとびとが、“感性”というとき、
たとえば蓄音機や初期の映画やラジオについて語っている。それはかつて最先端のテクノロジーではな
かったか。江戸時代の版画はもちろん、奈良時代の和紙もそうではなかったか」と〔柄谷行人『差異として
の場所』講談社学術文庫、pp.313-314、301-302、1996 年〕。
⑥ところで、大林が指摘しているように、遺伝子工学の分野では、1973年にバイオテクノロジーの先駆
的技術としての「遺伝子組換え技術(組換え DNA 技術)」が開発され、それによってヒトのホルモンなどの
生体物質を大腸菌で大量生産することが可能になったが、遺伝子組み換え技術でつくられた生物体の
自然界に放出が生態系を乱す危険性などから、どのようにその「生命操作」技術を使うべきかという倫理
問題が提起された。その問題に取り組むために、遺伝子工学研究者らは、自ら一時研究を停止(モラトリ
アム)した。そして米国のアシロマでの会議で遺伝子組換え実験を行う際には、「物理的封じ込め」と「生
物学的封じ込め」という実験操作を行い、実験室外に遺伝子を組換え体を漏らさないようにすることが実
験指針として提唱された。その後も、体外受精など、生命科学の成果が先端医療技術として開発されると
様々な生命倫理に関わる問題が提起され議論されるようになった〔本「ニューロエシックス班報告」第4章、
大林雅之「ニューロエシックスへの射程」の第3節参照〕。
同様にニューロエシックスでも、脳科学技術研究において、遺伝子組み換え技術に相当するような影
響の大きいことが予測される技術が開発されたときには、研究者自らが、自主規制してこのようなモラトリ
アム的な対応をとることが要請される場合があるかもしれない。
⑦ここでは、虫明が紹介した、ラインハルト・メルケルらの脳科学技術に関する「結論と勧告」を若干、改
編して本研究班サブグループなりの指針案の提言として採用したい〔本「ニューロエシックス班報告」第 2
章、虫明茂「ニューロエシックスの諸問題」Ⅲ参照〕。
1)精神薬理学、神経移植、遺伝子導入、脳神経補綴 neural prosthetics、電気的脳刺激等の手段によっ
て脳に介入する新しい方法は、治療上、個人および社会にとって利益となりうることを認める。これらの
技術は、直接脳に介入するものであるから、しかるべき注意をもって扱う義務がある。
188
2)脳に介入する新技術では、患者が根本的で明白な仕方で変容する可能性だけに目を奪
われずに、心理一般、特に人格 personality の微妙な変化などに起こりうる懸念すべき副作用も見過ご
さないようにしなければならない。
3)研究段階においても、脳に介入するすべての新しい方法に、人格と人格性 personhood に関連する心
的能力とに関わる副作用がないか、細大もらさず組織的に監視すべきである。
4)人格または人格性に関連する心的能力に関わる微妙な副作用がありうることが知られた特定のタイプ
の脳介入が、一定の治療的ないし予防的適用のために倫理委員会等の機関から実施を承認される
場合には、この処置を受ける人はすべて、そのような副作用が処置の後で生じていないか注意深く監
視して、必要ならば適切な治療が受けられるようにしなければならない。
5)副作用として一定の人格変化をもたらすことが予想される脳介入が受容可能なものであるかどうか、ま
たは望ましくさえあるかどうかは、当該処置を受ける人本人のみが、その介入を受ける前に決定するこ
とができる。
6)神経系障害および精神科的障害をもった患者に実験的介入を行うためには、時間的スケジュールを
組んだ疾患別のコア・アセスメント・プロトコル core assessment protocols(CAPs)を確立して、(1) 有意
義な結果を獲得し、(2) 異なる治療アプローチを比較することができるようにしなければならない。
7)脳への介入が治療 treatment ではなくエンハンスメント enhancement を目指す場合、このことだけでは
まだ「共通の倫理的確信や規則に対する重大な背反」であるとは言えないが、そうした個人的エンハ
ンスメントが正当化されうるか否かは、そのエンハンスメントを望む人の個人的自由 individual liberty
(自治としての自律 autonomy as self-government)に委ねられなければならない。このことが計画され
たエンハンスメントの実践に(決定的ではないが)強い有利な論拠を提供するものとなる。
8)精神的エンハンスメントを目指す脳への介入が、当該の個人にとって身体的ないし精
神的リスクがあるというだけの理由で、そのような介入を原則的に倫理的に拒否したり、全面的に法的
に禁止したりすることは適切ではない。しかしながら、単なるエンハンスメントの潜在的な否定的副作用
が、意図された肯定的効果に対して、治療事例の場合と較べて、より重篤であることが強調された場合
はその限りではない。エンハンスメント目的のみのために介入する医師は、クライアント client に十分な
情報開示を行なう大きな義務を負っている。
9)健康な人間をエンハンスすることは、従来の医療従事者 health care professionals の真の責務ではな
い。その真の責務は病気を治療し予防することである。したがって、エンハンスメントのみを目指す脳介
入は、治療と区別するのが困難な場合もあるが、医療倫理のおける善行原則の義務的な拘束力を必
ずしも受けるわけではない。
10)病気ないしは障害の予防に数え入れることさえできないエンハンスメント(「単なる」エンハンスメント)
は、社会制度としての「本来の医学 proper medicine」の領域に含めるべきではない。
11)脳への介入による精神的エンハンスメントのための手段の開発にのみ向けられた研究は、保健医療と
いう社会制度のための公的資金によって助成すべきではない。さらに、そのような研究の産物を、精
神的エンハンスメントを達成するために応用することもまた、保健医療制度によって資金援助すべき
ではない。
12)教育という伝統的な手段を使い、親自身の価値観に従って子供の精神的属性を変容させる法律上の
親権があるが、この権利は、子供の身体的統合性 physical integrity が始まるところで、明確に終わる。
さらに強い理由で、エンハンスメント目的のみの子供に対する脳侵襲的な処置に関しては、現時点
189
では、子供本人からの同意も親から代理同意もいずれも無効であるとする。
13)脳に影響を与える処置がもたらす、起こりうる多くの、しかしまだ探索されていない長期的結果に鑑み
ると、現在のところかなり厳密な注意原則 principle of caution の適用が妥当である。特に子供の場合、
エンハンスメント目的のみのための外科的介入や電磁気的脳刺激は、現在の法令に従えば、関連
する複雑な規範問題についてのコンセンサスが得られるまで禁止される。
14)医療化 medicalisation の拡大傾向を顧慮して、脳に長期的影響が起こりうる薬理学的介入は、経済的
手段によって(たとえば社会保障制度によって)のみならず、現存する法規範を子供の保護のために
十分に施行することによって、より厳格にコントロールすべきである。
15)重い精神疾患に対する脳侵襲的な治療が(つまり、関連するリスクの受容可能性に関する通常の基
準に沿って)利用可能となり、予防拘禁 preventive detention されている人々が無期限に拘留される
ことに代わる唯一最終的選択肢であるとすれば、そのような治療を彼らに提供することを妨げる必然
性はない。
16)購入可能な精神的エンハンスメントの利用可能性が増大して、富や機会の配分という点に関して社会
的不平等に油を注ぐという明確な徴候があれば、対抗措置をとるべきである。
17)脳侵襲的なエンハンスメントを控える自由に対する差し迫った脅威の可能性は、所轄の政治当局や
科学組織による特に注意深い監視を受けるべきである。そのような展開の証拠が十分に大きな規模
で生ずるならば、国の関係機関はエンハンスメントを嫌う市民を保護するために介入しなければなら
ない。
⑧以上、この節では、脳科学技術に対する規制論の試案を述べてきた。上述のように、筆者(村岡)は、
規制というのは単なる抑止ではないと考えている。従来の先端的テクノロジーでも、単なる抑止ではない
管理とかコントロールは行われてきたわけで、このスタンスは脳科学にも適用されると思う。こうしたカテゴリ
ーの問題を考える領域は、私見では、メタレベルでのニューロエシックスと考えている。
例えば、ある場合には、この節の⑥項ですでに述べたが、遺伝子組み換えの技術について科学者が
徹底した物理的生物学的な封じ込めという自主規制策を採用したアシロマ会議のように、抑制的な大き
な振り子が振られる時期もあろう。それに対して、科学者がいろいろ経験を積み上げていく。その努力の
中で、遺伝子組み換え技術の場合も、最初に想定したほどの危険性はないということが認知されてくると、
振り子が推進の方向に戻ってくる。脳科学も、そういうような形で、試行錯誤を繰り返して徐々にひとつの
方向に収斂していくような漸近法的な展開をするのではないか考えられる。この様子は、研究者にとって
も市民や社会にとっても一種「シドロモドロ的な展開」というべきかも知れない。
こうして、現在はまだ空想的なアイデアも実践的な展開の中で形象と意味が付与されるはずである。近
年 EBM(Evidence-Based Medicine; 根拠に基づいた医療)が叫ばれているが、脳科学でも、そういう証拠
や根拠というものに基づいた評価を展開していくことが必要になろう。
結局、その展開の要素を単純化して言えば、その要素の第一は「人間が生物学的に持っている物理
化学的限界でもある<生物学的力量>、さらに、現在から近未来の脳科学テクノロジーが保有する<工
学的力量>が当然考慮される。さらに、非常に寄与が大きいと思われるのは、ニューロエシックスを含め
た<文化的法的社会的要因>であろう。ここには、慣習や宗教などの伝統的価値観も含まれているので、
不確定要素も少なくなく、それがどのくらい効いてくるかは未知の部分と言えよう。また、福島がいうように、
人間の本質を変化させる可能性をもつ脳科学技術においては、慎重派の意見にも耳を傾け、その国の
190
文化や宗教、社会的価値観を考慮しながら、異なる観点からの領域横断的な議論のプロセスが重要にな
るだろう。
したがって、ここで考慮すべきは、専門家も非専門家も相互に交流をはかり学際的にコミュニケーション
をとっていくことであろう。脳科学の情報開示に際して、市民への啓発という上からの喧伝の形をとった場
合、脳科学者も、医学者や他の専門家と同様、非専門家に説明する場合に、自分たちのアイデアが絶対
的に正しいからこの世に実現されなければならないといったニュアンスを一方的に、与えてしまう危険性
があることは否定できないからである。科学者などの専門家とは別に、ニューロサイエンスの優れたジャー
ナリストの存在も必要になろう。彼らは、非専門家がどういうことを考えているのかを探りながら、それを汲
み取り、科学者にも伝えるというインターフェイスとしての役割を果たすことが期待されよう。また、詳細はこ
れからの研究に委ねられるはずだが、JD・モレノのいう、公衆的善のために脳科学がどのようにマネージ
メントされるべきかなどを考察する「ニューロセキュリティ(neurosecurity)」という概念も興味深いものである。
〔J.D.Moreno: Mind Wars, Brain Research and National Defense, Dana Press, pp.162-169, 2006〕。
グリーリィは、生命倫理学者というものは、職業柄、「革命的」に展開している脳科学がもたらすであろう
利益よりも、その利害関心や問題点の方に注目して書いてしまいがちである。脳科学は、患者を苦悩から
解放し、脳の病態を改善する上で多大の恩恵をもたらすであろう。が、同時に、起こりうる問題点や現実
のおそれも存在するので、そうした問題やおそれがどのようにして生じてくるのかを正確に理解し、伝えら
れるべきかにとって法的な視点[ELSI 的視点]は不可欠なのだと述べている〔H.T. Greely, ibid.,p.262〕。
最後に、脳科学の展開には、推進と規制の双方の要素が不可欠であろうという点を繰り返して脳科学の
規制論試論の結論とする。
注(2.3.6)
1)“neuroscience”の訳語には、「脳科学」「脳神経科学」などがあるが、ここでは主に簡単のために「脳科
学」とし必要に応じて「ニューロサイエンス」とカタカナ表記する。「脳神経」という語は、「脳」と「神経」で中
枢神経系を意味するようだが、医学用語では「脳神経」は、脳から出ている末梢神経を意味するので紛ら
わしい。また、“neuroethics”の訳語は、まだ日本語として定まったわけではないが、「脳倫理」「脳神経倫
理」「神経倫理」あるいは「脳科学倫理」などがある。ここでは、脳科学の倫理という広い意味で、「ニューロ
エシックス」とカタカナ表記する。わが国でも 2006 年秋には、日本生命倫理学会第 18 回年次大会(大会
長:粟屋剛・岡山大学教授)でもニューロエシックスのシンポジウムが開催された〔佐倉統、玉井真理子ら;
「WorkshopV脳神経倫理学(ニューロエシックス)への招待」、『日本生命倫理学会第 18 回年次大会予稿
集』pp.48-51、2006 年 11 月〕。
2)スタンフォード大学のニューロエシックスの専門家ジュディ・イレスによれば、その語の初出は 1989 年に
遡る(香川知晶「ニューロエシックスの新しさ」、『現代思想』第 34 巻第 11 号(十月号)、189-191 頁、2006
年)。
3)①大久保 善朗「統合失調症の脳画像解析」東京都精神医学総合研究所、精神研ニュース 第 298 号
(平成 15 年 12 月 10 日発行)
http://www.prit.go.jp/Ja/PS chizo/TSchizo/seminar310.html
②白 川 治「統合失調症の死後脳知見」
http://www.asas.or.jp/jsnp/pdf/topics/10_200801.pdf
マクロの神経病理学的知見として統合失調症では、側頭葉内側部(海馬・海馬傍回・扁桃体)の体積減
191
少があるという。
③National Institute of Mental Health: imaging study shows brain maturing
http://www.nimh.nih.gov/science-news/2004/imaging-study-shows-brain-maturing.shtml
③では、早期発症型の統合失調症患者の十代の若者は灰白質が過度に失われること(思春期前に精神
病にかかった若者は、通常失われる量の 4 倍もの前頭葉灰白質を失っていた)から、児童期に発症する
統合失調症が“正常な成熟プロセス(不要な神経回路の廃棄)の過剰な発現であり、おそらくシナプスが
過度に廃棄されてしまうことに原因がある”
と研究者ら結論している。対照的に、自閉症の子供では後頭部から前頭部へ向かって灰白質が過度の
増加が見られるので“発達の初期段階で特定の欠陥”が起こっていると推定している。ここには、前頭葉
灰白質(大脳皮質の神経細胞)の増減という形態的変化を病気の判別に推測ないしは確定的に結びつ
けている精神医学研究者の姿勢がすでに垣間見られる。
4) 香川知晶は、こうしたニューロサイエンスのあり方について「…究極のプライバシーが侵害される恐
れ・・・それが脳神経倫理の問題としていわれている。脳機能イメージング技術の進歩によって脳機能が
解明され、隠されていた内心の思いといったいい方が意味をもたなくなるかもしれない。そうした可能性に
どのように対処すべきなのか。」と述べ、「こうした究極のプライバシーといった論点は、ヒトゲノム解析計画
との関係で浮上してきた議論、ELSI[倫理的法的社会的問題]の議論が本格的に始まった」頃と類似性
に言及している。このことは、ニューロエシックスでも、これまでの生命倫理の積み上げが有用でることを
示唆している。(「WorkshopV脳神経倫理学(ニューロエシックス)への招待」、『日本生命倫理学会第 18
回年次大会予稿集』pp.48-51、2006 年 11 月)
5)濫用の場合には、倫理的問題となる。例えば、リタリンの使用によって爽快感や多幸感が得られ、また
食欲抑制作用から「やせ薬」として使用されて乱用・依存につながるおそれがある。それによって覚せい
剤乱用と同様の副作用(幻覚妄想など)をひきおこします。リタリンは長期大量投与により耐性を生じます
が、この耐性には、コカインやアンフェタミンとの交叉性があります。(赤城高原ホスピタル:「リタリン乱用」
http://www2.wind.ne.jp/Akagi-kohgen-HP/DR_ritalin.htm)
6)「アリセプト(塩酸ドネペジル)」は、エーザイが独自に合成したアセチルコリンエステラーゼ阻害剤で神
経伝達物質である脳内アセチルコリン濃度を高める作用を持つ、軽度および中等度のアルツハイマー型
痴呆治療剤。(エーザイ ニュースリリース:アルツハイマー型痴呆治療剤「アリセプト」の口腔内崩壊錠を
国内で新発売(2004 年 6 月 28 日)。http://www.eisai.co.jp/news/news200426.html)
7) 記憶力増強のためのスマート・ピルと逆に、記憶を失わせる薬(忘却剤)という興味深い発案もある。
「忘却剤」の使用は、たとえば、精神的なトラウマの記憶に悩んでいる人の解放のためには正当化される
かもしれないが、そうしたトラウマは、人が耐えることで成長するツールであるともみなせるので、それを奪
うということは人間成長にとって問題があるということも指摘できよう。
8)梶原亮「スマートドラッグがもたらす倫理的問題―社会と人間性」、『UTCP 研究論集』第 8 号、2007 年
3 月 1 日発行、pp.37-54。UTCP は、University of Tokyo Center for Philosophy の略。
9 ) 下 條 信 輔 「 知 覚 の 主 観 的 経 験 と 、 視 覚 皮 質 活 動 : 脳 磁 気 刺 激 ( TMS ) に よ る ア プ ロ ー チ 」
http://www.ics.kyoto-su.ac.jp/~fujii/JHomePage6/Shimojo.html
10)共同通信社「脳に“ペースメーカー”;震えの治療に電気刺激;国内の50医療機関」
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0204noha.html。わが国でも日大医学部(片山容一教授)をはじめとし
て、広く臨床応用されるようになりつつある。
192
11)生命環境倫理ドイツ情報センター(DRZE)編「小児医療における成長ホルモンの利用、(松田純/小
椋宗一郎訳)『エンハンスメント』(知泉書館)、pp.41-57。本書では、このほかに、遺伝子[工学]技術、向
精神薬、美容外科、ドーピングなどに関するエンハンスメントの問題を分析している。
12)この「いわゆる性別適合手術」の結果が、脳に与える影響の有無については、今後の研究を待つべき
であろう。しかし、広義の意味で捉えるならば、脳ではなく脳から離れた身体(末梢)に負荷された介入が、
入力情報として間接的には脳に何らかの影響を与えている可能性も否定できないと思われる。
13)シンポジスト・川口有美子(NPO 法人 ALS 他)「ALS の比喩、TLS(Totally Locked-in State)を概観す
る:重篤なコミュニケーション障害をもつ人の在宅介護の体験から」より有益なヒントを得た。国際シンポジ
ウム「人間改造のエシックス:ブレイン・マシン・インターフェースの未来」、京都大学百周年記念ホール、
2008 年 1 月 14 日
14)日本語では、エンハンスメントというと、「エンハンスメントという考え方」(idea of enhancement)や、「エ
ンハンスメントの技術」(enhancement technology)を指すように抽象名詞として使用される傾向にある。ここ
でいう<エンハンスメント>は、(複数形でも使われる可算名詞であり)エンハンスメントを起こすもの自体
(enhancer)を専ら指している。ハリスのエンハンスメントの定義でも、人間を「改善する全てのもの」を<エ
ンハンスメント>と定義しているようだ。また、グリーリィは、[脳科学技術の産物ではない]コーヒー、コカの
葉、チョコレートのように神経学的影響をもたらすものも<エンハンスメント>と見なされるものとしているよ
うだ。
15)フランスでも、1994 年に制定された「生命倫理法」のうち「人体尊重法」では、法は人間の優越性を保
障し、その尊厳に対するあらゆる侵害を禁止し、人間をその生の始まりから尊重することを保障すること
(第2条)、および、人体の尊重にたいする権利、種としての人にたいする加害の禁止、人体やその生成
物の商取引の禁止など (第3条)が決められている。ここでは、人間の尊厳は、人体の保護に象徴される
など、かなり、世俗化されたものになっていると言えよう。
193
2.4 国民意識の社会調査法による研究-国民意識調査-
2.4.1 調査概要
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.1.1 主題
わが国の人々の「脳科学に関する意識」(以下「脳科学意識」)の現状を把握すること、また脳科学意識
の形成についても把握することが、「脳科学をめぐる国民意識調査」(以下「本調査」)の主題である。「脳
科学意識」には、脳科学に対する期待・不安、脳科学研究に対する規制の要望、脳科学の技術的応用・
実用化に対する技術別・用途別の望ましさの評価を含まれる。またそこには、エンハンスメント――病気の
治療、健康の維持・回復を越えて、ある人の能力や性質を、その人や他の人が望ましいと考える方向に
変えること――に関する意識(=エンハンスメント意識)の一部、すなわち脳科学を応用したエンハンスメ
ントに対する願望・抵抗感も含まれる。
どうして脳科学意識を調べなければならないのか。本研究プロジェクトは「意識の先端的脳科学がもたら
す倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究」を主題としている。したがって、脳科学が、人々にどのような
影響を与えるのか、を問うことをその課題(の一つ)としている。ある人々の脳科学に対する期待・不安、そ
の技術的応用に対する評価は、その人々の脳科学に対する態度や脳科学を左右するだろう。脳科学意
識は、脳科学の影響を少なくとも部分的には左右する要因なのである。
2.4.1.2 調査方法(1)―調査設計
「脳科学をめぐる国民意識調査」は、調査会社登録のモニターを対象とするアンケート調査である。以下、
アンケートの作成までの作業について述べる。
本研究はおそらく世界初の「脳科学意識のアンケート調査」であるため、「定番の調査項目」というもの
がなく、調査項目の設定に際しては、広範な関連諸文献を研究し、独自に項目を設定するしかなかった。
具体的には、広範な生命倫理学・脳神経倫理学を中心とする哲学・倫理学の文献、医療社会学・科学社
会学を中心とする社会学の文献を検討した。
次に、上記文献研究に基づいて、作業モデルを立てた。本調査の作業モデルは、図 1 に示される。図
中「心性」とあるのは、日々の社会生活によって形成される、ある程度持続的で安定した意識である。ある
人々の心性を形成する日々の社会生活は、部分的には、その人々の社会構造上の位置により規定され
ると思われる。ここからモデルを構成する第一の前提「社会構造上の位置が心性を規定する」が導かれる。
また、こうした心性は、脳科学に関する諸々の認識・評価の枠組となると考えられる。ここからモデルを構
成する第二の前提「心性が脳科学意識を規定する」が導かれる。
社会構造上の位置
心性
脳科学意識
図 1 作業モデル
次に、そのモデルに基づいて仮説を作成した。そして仮説に対応する調査項目を設定した。「社会構
造上の位置」は、性別、年齢、学歴、世帯年収、職業等の属性により測定することとした。「心性」としては、
脳科学意識に関連すると推測される意識として「健康に関する意識」「科学技術に関する意識」「マスメデ
ィアの利用に関する意識」「所属集団に関する意識」「権威主義的意識・態度」「『競争社会』に関する意
194
識」「『格差社会』に関する意識」「個人主義的傾向」「宗教に関する意識」およびこれらに関連する意識を
測定することとした。「脳科学意識」としては、前に 4-2-1-1 で論じた内容の脳科学・エンハンスに対する
意識を測定することとした。
次に、上述の各調査項目に対応した調査票(以下「アンケート」)を作成した。なおアンケートの作成に
おいては、インターネットを利用したアンケート調査に関して実績のある、未来工学研究所と NTT レゾナ
ント株式会社(goo リサーチ、上述の「調査会社」)の支援を仰いだ。
2.4.1.3 調査方法(2)―サンプリング・実査からデータセットの作成
サンプリング・実査からデータセットの作成は、データセットが満たすべき条件をあらかじめ提示した上で、
未来工学研究所と NTT レゾナント株式会社に依頼した。
サンプリング方法は割当法(quota sampling)である。サンプル数は 2、500 であり、その構成は、わが国
の人口構成(2005 年国勢調査結果を参照した)に近似するよう調整されている。具体的には、この 2500
サンプルの属性の分布は、次の 2 条件を満たす。(A)性別(男/女)×5 歳区分年齢(20~69 歳)で定義さ
れる 20 カテゴリーそれぞれについて、人口の相対度数とサンプルの相対度数の誤差が 9%以内である。
(B)在住地別(47 都道府県)に設定された 47 カテゴリーについて、人口の相対度数とサンプルの相対度
数の誤差が 9%以内である。
サンプリングからデータセットの作成に至る手順は、以下の通りである。回答者に対する回答を依頼する
メールの配信、および、回答 HP 上での回答の受付は、2007 年 11 月 28 日~2007 年 12 月 7 日にかけ
て行った。
(1)モニター12、562 人に、アンケート回答用のホームページ(以下「回答用 HP」)上での回答を依頼す
るメールを配信した。その際、性別×5 歳区分年齢(20~69 歳)×在住地×配偶者の有無により定義され
る 1880 カテゴリーに関して、回答者の分布が近似するよう、モニターの属性別に配布数を調整している。
なお配信対象者の抽出は、調査会社により行われており、その詳細な手順は非公開とされている。
(2)こうして回収された有効回答 3063 件に関して、次の二つの作業を行った。①性別×5 歳区分年齢で
定義される 20 カテゴリーについて「回答者の相対度数/人口の相対度数」を計算した。②。在住地別に
定義される 47 カテゴリーについて「回答者の相対度数/人口の相対度数」を計算した。
(3)(2)の計算の結果、性別×5 歳区分年齢(20~69 歳)で定義される 20 カテゴリーの内の一つのカテゴ
リーにおいて「回答者の相対度数/人口の相対度数」が 0.9 未満(誤差 10%以上)となった。そこで、この
カテゴリーについては回答を追加で募った。具体的には、カテゴリーの属性に対応するモニターのサブグ
ループから無作為抽出したモニター63 人に回答用 HP 上での回答を依頼した。有効回答で 10 件の回答
が集まった時点で回答を締め切った。
(4)こうして得られた有効回答 3073 件から、次の抽出作業を反復し、最終的には前述の条件(A)(B)を満
たす 2500 件の有効回答からなるデータセットを作成した。反復した「抽出作業」とは、(2)の①②で定義さ
れた 20+47 の各カテゴリーについて「抽出された回答者の相対度数/人口の相対度数」を計算し、その
値が最大のカテゴリーに属する回答者の内、最も遅く回答した者一人を除く、全ての回答者を抽出する」
という作業(ただし 1 回目だけ「抽出された回答者」ではなく「有効回答をした回答者」である)である。
2.4.1.3 分析方法
こうして作成されたデータセットを分析した。分析は、図 1 のモデルに、意識・属性等の変数を代入し、そ
195
うして得られた仮説をデータによりテスト――仮説が間違っていないかのテスト――した。そうしたテストに
より反証されなかった仮説を、暫定的に「正しい」ものとして受け入れた。
こうした分析作業に際しては、多変量解析用ソフト(SPSS、AMOS など)を利用した。また、分析の統計
学的妥当性の検討などで未来工学研究所の支援を仰いだ。
2.4.1.4 分析結果の提示、報告書の構成
本節の各項では、以上の分析結果の内、「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影
響の調査研究」および科学技術振興との関係において重要と考えられるものを提示する。したがって以
下の議論は、反証されてしまった仮説(膨大な数に登る)全てに言及しているわけではなく「テストで反証
されなかった仮説の中でも重要なもの」「反証されたが反証されたこと自体が重要である仮説」に関わる分
析結果を提示している。
なお「調査票(アンケート)」、調査結果(「単純集計結果」「性別クロス集計結果」「年齢クロス集計結果」)
に関しては、別冊の資料を参照いただきたい。
2.4.1.5 研究体制
本調査は「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究」班内部に、社会
学専攻者を中心とする「国民意識調査」のためのサブグループ(中川輝彦・福島智子)を作り、同グルー
プが中心となり、調査設計・実査・データ分析・報告書執筆を行った(4-2-1~4-2-6、4-8 は中川、4-2-7
は中川・福島となっている)。
ただし、その調査・研究体制は「国民意識調査」グループ以外の班員も巻き込んだものなっている。公
式(研究推進会議など)・非公式のミーティングおよびメーリングリスト上でのディスカッションを通じて、研
究は進められており、本調査の研究体制は学際的なものである。調査設計の段階では、アンケートの草
案を研究班内メーリングリストで繰り返し回覧し、班員全員が検討する体制をとった。実査後のデータ分
析の段階では、「国民意識調査」グループ内部で研究会(松本大学で 3 日間)を行うだけでなく、随時、他
の班員とメール・電話連絡を取り、情報交換を行いつつ、作業を進めた。
研究班外部では、田代志門氏(東北大学、社会学)から、研究倫理をめぐる意識調査の現状に関する
最新の知見を教授いただいた。また、前述のようにアンケート作成・実査・分析において未来工学研究所、
NTT レゾナント(分析除く)の支援を仰いでいる。
また中川は、第 80 回日本社会学会大会に出席したが、そこで得た知見(「心と社会」を主題とする部会
に出席した)に関する最新の知見は、本調査研究を進めるにあたって示唆的なものが多く、有益であっ
た。
196
3.4.2 脳科学意識の特性――科学技術意識との比較から
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.2.1 主題
脳科学に対して期待を抱いている人は、どのくらいいるのか。脳科学に対して不安に思っている人は、
どのくらいいるのか。脳科学に対して規制を求める人は、どのくらいいるのか。科学技術一般に比べて、こ
うした意識を持つ人は多いのか少ないのか。
以下の主題は、脳科学に対する期待・不安・規制要望の広がりを、科学技術に対する期待・不安・規制
要望の広がりとの比較において考察することである。
2.4.2.2 分析方法
本調査では、「脳科学/科学技術に対する期待」「脳科学/科学技術に対する不安」「脳科学/科学
技術に対する不安・規制要望」を、それぞれ「脳科学/科学技術の発展は人々を幸福にする」「脳科学/
科学技術の発展は人々に危険をもたらす」「脳科学/科学技術の研究は、きびしく規制されなければなら
ない」という意見に対する賛否を「賛成」「どちらかというと賛成」「どちらともいえない」「どちらかというと反
対」「反対」の 5 分位尺度により測定した。
以下では、この結果に基づいて、脳科学に対する期待・不安・規制要望の広がりを、科学技術に対する
期待・不安・規制要望との比較において浮彫にする。
2.4.2.3 分析結果
ここで図示する調査結果は全て、N=2500、図中の数値は小数点第一位を四捨五入した相対度数(%
表示)を表す。なお詳細な集計結果に関しては、資料の「単純集計」を参照いただきたい。
脳科学/科学技術に対する期待に関する調査結果は図 1 の通りである。
図1 脳科学/科学技術に対する期待
47
44
%
38
32
19
11
5
2
2
0
脳科学の発展は
科学技術の発展は
人々を幸福にする
人々を幸福にする
賛成
どちらかといえば賛成 どちらともいえない
どちらかといえば反対 反対
197
脳科学に対して期待する回答者の割合は、科学技術に対して期待する回答者の割合より低い。「脳科
学の発展は人々を幸福にする」という意見に賛成する(「どちらかといえば賛成」を含む)回答者は 49%で
ある。これに対して「科学技術の発展は人々を幸福にする」という意見に賛成する回答者は 66%である。
脳科学/科学技術に対する不安についての調査結果は、図 2 の通りである。
図2 脳科学に対する不安
55
54
%
29
9
28
7
7
6
3
2
脳科学の発展は
人々に危険をもたらす
賛成
どちらかといえば反対
科学技術の発展は
人々に危険をもたらす
どちらかといえば賛成
反対
どちらともいえない
脳科学に対して不安を持つ回答者の割合は、科学技術に対して不安を持つ回答者の割合とほぼ同じ
である。回答選択肢別に相対度数を比較しても、両者の違いは 1-2 ポイントの差にとどまる。
脳科学(および科学技術)に対する規制の要望についての調査結果は、次頁図 3 の通りである。 脳科
学研究に対して規制を求める回答者の割合は、科学技術研究に対して規制を求める回答者の割合を上
回る。「科学技術の研究はきびしく規制されなければならない」に賛成する(「どちらかといえば賛成」を含
む)回答者は 39%にとどまるのに対して、「脳科学の研究はきびしく規制されなければならない」に賛成す
る回答者は 56%にのぼる。
198
図3 脳科学/科学技術に対する規制の要望
41
%
33
30
26
26
13
14
8
6
3
脳科学の研究は,きびしく規制
されなければならない
賛成
どちらかといえば賛成
科学技術の研究は,きびしく規制
されなければならない
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
2.4.2.4 まとめと補足
以上を要約すると、①~③のようになる。
①脳科学に対して期待する人の割合は、科学技術一般と比較して少ない。
②脳科学に対する不安を持つ人の割合は、科学技術一般とほとんど変わらない。
③脳科学に対する規制を要望する人の割合は、科学技術一般と比較して多い。
なお言うまでもなく①~③の命題は、あくまで脳科学と科学技術の比較において成立する命題である。
換言すると、比較に対する言及抜きで「脳科学は期待されていない」とか「脳科学に対してはきびしい規
制が求められている」と主張することはミスリーディングである。
以上の命題を関連して、三点補足したい。第一に、①~③の命題は、第一義的には回答者の集団な
いし集合(aggregate)に対して成立するものである。母集団として想定されるわが国の国民に対するサン
プルの代表性は、割当法――現在では無作為抽出法にとって代わられてきているが、無作為抽出法が
使えないタイプの調査(本調査のようなインターネットを利用した調査を含む)では、有力な抽出方法であ
る――が保証する限りにおいてのものである。その意味では、これらの命題は仮説(それなりの妥当性が
見込まれる)と理解しておく方が安全と判断する。
第二に、キャリーオーバーエフェクトに関する注意が必要である。「キャリーオーバーエフェクト」とは、ア
ンケート調査の際に、前の質問が後の質問に対する回答に影響を与えることである。
本調査のアンケートでは「脳科学に関する期待・不安・規制要望」に関する質問は、「脳科学の実用化
に関する評価」(2.4.3参照)に関する質問の後に配置されている(付録の「調査票」参照)。何の予備知
識もなしに脳科学一般に関する期待・不安・規制要望を尋ねられても回答者は答えようがないため、脳科
学に関する情報提供を兼ねて、このような配置になっている。
199
このように本調査はキャリーオーバーエフェクトを意図的に活用したデザインなのだが、このデザインが
誤差(エラー)の発生という点で「仇」になっている危険性もある。そうした危険性は最小になるよう努力し
たが、「脳科学の実用化に関する評価」に関する質問内容が、過剰に期待を煽る、あるいは、不安や規制
に対する要望を煽る内容になっており、そのことが「脳科学に関する期待・不安・規制要望」の質問に対
する回答に影響している危険性がある。
第三に脳科学に関する意識が変化する可能性に注意が必要である。日々の社会生活の中で維持・再
生産される「心性」(2.4.1参照)とは違い、脳科学意識は相対的に変化しやすいと思われる。したがって
上記結果に示されるような人々の意識が、今後も同じまま維持されるかどうかは不確定である。
200
2.4.3 脳科学の技術的応用・実用化に関する意識
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.3.1 主題
脳科学の技術的応用・実用化に関する意識を考察することが、ここでの主題である。どのような脳科学
の技術的応用が望まれているのか。またどのような用途での実用化が望まれているのか。以下では、こう
した問題を考えていきたい。
2.4.3.2 分析方法
本調査は、脳科学の技術的応用として、読心技術、BMI(Brain Machine Interface)、精神変容技術の 3
つをとりあげ、用途を特定せずに、また(用途を特定して)用途別に、その「望ましさ」に関する評価(「望ま
しい」「どちらかといえば望ましい」「どちらともいえない」「どちらかといえば望ましくない」「望ましくない」の
5 分位尺度を利用)を測定している。
読心技術、BMI、精神変容技術は、アンケートにおいてそれぞれ次のように記述・解説されている。読心
技術は、「脳を計測することにより思考・感情を読む技術」と記述され、「脳科学の研究が進むと、将来、頭
に器具を付けたり、頭の近くから脳内の活動を計測することで、他人の考えていることや感じていることを
読みとる(考えや気持ちがわかる)技術が実現する可能性があります」と解説されている。
BMI は「脳と機械を直接または間接的につなぐ技術」と記述され、「脳科学では、直接脳内に電子チップ
を埋め込んだり、頭の外側に器具を付けるなどして間接的に、脳とコンピュータをつなぐ技術が研究され
ています。この技術により、記憶を機械で補ったり、考えるだけで機械を制御したり、逆に機械によって思
考・感情を制御することが可能になるかもしれません」と解説されている。
精神変容技術は「薬によって精神や意識を変える技術」と記述され「薬により精神や意識を変化させる
技術は、一部実用化されていますが、将来的には、さらに発展し、実用化が進む可能性があります」と解
説されている。
読心技術、BMI、精神変容技術の技術別・用途別評価では、各技術に関して 6 か 7 の用途を想定し、
表 1 のような質問項目を設定した。
表 1 脳科学の応用に関する評価(技術別・用途別質問項目)
親による子どもの教育のため
教師による児童・生徒の教育のため
読心技術
企業の人事管理のため
犯罪捜査のため
法廷での証言の真偽の判定のため
公人の公的発表の真偽の判定のため
病気の治療のため
手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため
BMI
機械を操作するため
記憶を補助する装置を使うため
受刑者の矯正のため(刑務所内)
201
前科者の再犯防止のため(出所後)
幸福感を得るため
宗教的超越体験を得るため
病気の治療のため
精神変容技術
社員の労働意欲向上のため
親による子どもの教育のため
受刑者の矯正のため(刑務所内)
前科者の再犯防止のため(出所後)
2.4.3.3 分析結果
以下で図示する調査結果は全て、N=2、500、図中の数値は小数点第一位を四捨五入した相対度数
(%表示)を表す。なお詳細に関しては、資料の「単純集計」等を参照いただきたい。
読心技術、BMI、精神変容物質の実用化の評価についての調査結果は、図 1 の通りである。脳科学の
技術的応用・実用化に関する評価は、読心技術、BMI、精神変容物質で、ほとんど違いは見られない。回
答者の分布は、どの技術においても、ほぼ同じであり、その差は 3 ポイント(単位はパーセンテージ)を越
えない。したがって「脳科学技術の実用化に対する評価は、技術により変わらない」と言えよう。
図1 読心技術・BMI・精神変容技術に関する評価
40
40
40
25
%
25
25
18
16
15
15
15
12
5
5
4
読心技術
BMI
望ましい
どちらともいえない
望ましくない
意識変容物質
どちらかといえば望ましい
どちらかといえば望ましくない
202
技術別・用途別に実用化の「望ましさ」に関する評価を検討する。読心技術の実用化の用途別評価は
図 2 の通りである。
図2 読心技術の実用化に関する評価(用途別)
親による
子どもの教育のため
4
教師による
児童・生徒の教育のため
4
企業の
人事管理のため
3
犯罪捜査のため
15
32
13
9
27
公人の公的発表の
真偽の判定のため
19
32
24
21
20
25
24
23
法廷での証言の
真偽の判定
25
41
33
27
34
30
29
32
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
9
9
9
10
8
9
%
望ましい
どちらかといえば望ましい
望ましくない
読心技術の実用化に関する用途別評価についての調査結果は図 5 の通りである。回答分布のパター
ンは二つある。一つは肯定的評価をした回答者(「望ましい」「どちらかといえば望ましい」を選択した回答
者)が否定的評価(「望ましくない」「どちらかといえば望ましくない」を選択した回答者)を大きく上回るパタ
ーンである。このパターンをとる用途は「犯罪捜査のため」「法廷での証言の真偽の判定のため」「公人の
公的発表の真偽の判定のため」である。もう一つは、否定的評価をした回答者が、肯定的評価をした回
答者を大きく上回るパターンである。このパターンをとる用途は「親による子どもの教育のため」「教師によ
る児童・生徒の教育のため」「企業の人事管理のため」である。
この結果からは「法秩序の維持を連想させる用途は支持され、それ以外の用途は支持されない」という
傾向が読みとれる。回答分布が第一のパターンをとる用途をみると、「犯罪捜査」は、正に法秩序を守るた
めの行為であり、「法廷での証言の真偽の判定」は正しい判断を司法が下すための行為である。「公人の
公的発表の真偽の判定」は、「公人」が代表する公的組織(政府、公共団体など)が公表した通りに活動
している(いた)のかどうかを判定することであり、監視を通じて組織をコントロールする(法から逸脱しない
ようにする)行為の一部といえる。
これに対して、回答分布が第二のパターンをとる用途は、法的秩序の維持を直接連想させるものでは
ない。「企業の人事管理」は、法秩序の維持とは無関係ではないかもしれないが、第一のパターンをとる
三つの用途に比べると、法秩序の維持を連想する人は少ないだろう。「教育」は順法精神の育成を目標
に掲げることがあるかもしれないが、だからといって「親による教育」「教師による教育」と聞いて「遵法精神
203
の育成」をただちに連想する人は少ないだろう。
BMI の実用化に関する用途別評価の調査結果は、図 6 の通りである。
図3 BMIの実用化に関する評価(用途別)
32
病気の治療のため
手・足などに障害のある人が、
義手・義足などを使うため
機械を操作するため
記憶を補助する
装置を使うため
受刑者の矯正のため
(刑務所内)
前科者の再犯防止のため
(出所後)
45
18
41
13
42
23
11
16
19
14
40
26
14
40
20
35
23
3 2
14
17
33
22
10
9
13
14
11
%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
BMI も、評価の分布が二つのパターンをとる。第一に、圧倒的多数(8 割前後)が肯定的に評価する用
途がある。「病気の治療のため」と「手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため」が、このパタ
ーンである。第二に、肯定的評価者が否定的評価者を数の上で上回るものの、第一のものほど肯定的評
価が多いわけではない、というパターンがある。「機械を操作するため」「記憶を補助する装置を使うため」
「受刑者の矯正のため」「前科者の再犯防止のため」が、このパターンである。
BMI の実用化の用途別評価から、「医療・福祉用途の実用化が、他の用途での実用化に比べて支持さ
れる」傾向を指摘できよう。
精神変容物質の実用化に関する用途別評価は、図 7 の通りである。ここでは回答分布のパターンは三
つに分けられる。第一に、6 割が肯定的に評価するというパターンである。「病気の治療のため」が、この
パターンである。第二に、4 割以上が肯定的評価をしているというパターンである。「受刑者の矯正のた
め」「前科者の再犯防止のため」が、このパターンである。第三に、肯定的評価をする回答者が少なく、1
割前後(最小は 3%)というパターンである。「幸福感を得るため」「宗教的超越体験を得るため」「社員の労
働意欲向上のため」「親による子どもの教育のため」が、このパターンである。
このことから「脳科学の実用化の用途として最も支持されているのは、医療・福祉であり、次いで法秩序
の維持、そして最も支持されないのが『私的』用途である」という命題を導けよう。「私的」とは、公共の利
益・福祉に役立つというより、個人や個々の組織の利害や関心にのみ奉仕する、という意味である。実際、
この意味での「私的」関心を連想させるものは、支持されていない。「社員の労働意欲向上」「幸福感を得
204
るため」「宗教的超越体験を得るため」も、この意味で「私的」利益の追求を強く連想させる。「親による子
どもの教育」にしても、個別家族の関心、あるいは、「親のエゴ」を連想させるという意味で「私的」といえる
だろう。
図4 精神変容技術の実用化に関する評価(用途別)
幸福感を得るため 3
11
宗教的超越体験を
12
得るため
16
8
前科者の再犯防止
のため(出所後)
35
22
58
42
25
26
親による子どもの
1 6
教育のため
受刑者の矯正
のため(刑務所内)
24
21
病気の治療のため
社員の労働意欲
1
向上のため
27
24
26
17
19
5
7
40
22
44
24
29
25
27
13
12
18
17
%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
2.4.3.4 考察
調査結果の分析から得られた命題は、次のように要約されよう。
①脳科学の実用化に対する評価は、技術により変わらない。
②脳科学の実用化に対する評価は、用途により違いがある。
③脳科学の実用化において、最も支持される用途は、医療・福祉用途であり、次いで法秩序の維持
である。最も支持されないのは「私的」用途である。
二点留意すべき点がある。第一に、①~③の命題は、第一義的には回答者の集団ないし集合
(aggregate)に対して成立するものである。母集団として想定されるわが国の国民に対するサンプルの代
表性は、割当法――現在では無作為抽出法にとって代わられてきているが、無作為抽出法が使えないタ
イプの調査(本調査のようなインターネットを利用した調査を含む)では、有力な抽出方法である――が保
205
証する限りにおいてのものである。その意味では、これらの命題は仮説(それなりの妥当性が見込まれる)
と理解しておく方が安全と判断する。
第二に脳科学に関する意識が変化する可能性に注意が必要である。日々の社会生活の中で維持・再
生産される「心性」(2.4.1参照)とは違い、脳科学意識は相対的に変化しやすいと思われる。したがって
上記結果に示されるような人々の意識が、今後も同じまま維持されるかどうかは不確定である。
こうした二点に留意するなら、以上の調査結果は、脳科学の科学技術振興の基礎資料(人々は何を
望んでいるのか)として有益であると思われる。
206
2.4.4 社会的属性と脳科学意識
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.4.1 主題
ある人の性別、年齢、学歴、収集・資産等の属性は、その人の社会構造上の位置付けと結びついてい
る。その意味で、これらは「社会的」属性である。
性別、年齢は、その人に期待される(場合によっては押しつけられる)社会的役割を生涯にわたって規
定する要因となる。ジェンダー論の教えるところによると、「男性」として周囲から認知された人は「男性らし
い」としての役割を、逆に「女性」として周囲から認知された人は「女性らしい」役割を果たすよう期待される。
「年相応」という言葉のあるように、人は年齢に相応しい振舞いをするよう期待され、時には強いられる。
学歴は、学歴を得るまでに体験してきた社会構造上の位置と学歴を得てからの社会構造上の位置に
影響し続ける。社会階層論の教えるように、学歴は親の学歴・職業などの階層的ポジションにより影響さ
れる部分がある。学歴が、学歴を得てからの人生に影響するのは、よく知られている通りである。
年収・資産もまた、その人の体験してきた社会構造上の位置の関数であるといえよう。例えば、どのよう
な資産の家庭に育ってきたのかは現有資産にも反映しているだろうし、収入はしばしば職業的キャリアを
反映している。
ある人の性別、年齢、学歴、収入・資産は、部分的かもしれないが、その人の現在の、あるいは過去に
体験してきた社会構造上の位置と関連がある。そして2.4.1で述べたように、本調査の作業モデルは、
社会構造上の位置付けが、その位置付けに応じた特性の社会生活を人々に経験させ、その経験が人々
の「心性」を形成し、その「心性」が脳科学意識に反映される、というものである。とするなら性別、年齢、学
歴、収入・資産という属性は、脳科学意識を間接的に規定しているという仮説が考えられる。
以下では、この仮説に関して検証(テスト)したい。ただし、詳細な因果メカニズムに関しては問わない。
2.4.4.2 分析方法
ここで検討するのは「社会的属性と脳科学意識は規定している」という仮説である(ここでは因果メカニズ
ムの詳細は問わない)。
脳科学意識
社会的属性
図 1 社会的属性と脳科学意識の関係
ここでは社会的属性として性別、年齢、収入・資産、学歴をとりあげる。脳科学意識として「脳科学に対
する期待」「脳科学に対する不安」「脳科学に対する規制要望」(詳細は2.4.2を参照のこと)「脳科学の
実用化に対する評価」(詳細は後述)をとりあげる。
説明変数・被説明変数ともに 4 つであるため、ここから 16 の仮説が導かれる。これをまとめたのが次頁
の表 1 である。
207
説明変数
被説明変数
性別
年齢
脳科学に対する期待
学歴(教育年数)
収入・資産(世帯収入)
性別
年齢
脳科学に対する不安
学歴(教育年数)
収入・資産(世帯収入)
性別
年齢
脳科学に対する規制要望
学歴(教育年数)
収入・資産(世帯収入)
性別
年齢
脳科学の実用化の評価
学歴(教育年数)
収入・資産(世帯収入)
表 1 社会的属性と脳科学意識についての 16 の仮説
仮説をテストする。なお、ここでは変則的だが、本項 1 で論じた以上に詳細な因果メカニズムに関して
は、さしあたり問わないこととする。
各変数のデータは次のとおりである。性別と年齢に関しては、調査会社提供の回答者データを使用す
る。
学歴については、回答者の最終学歴についてのデータを尋ねており、ここから教育年数を計算して、
それを分析に使用する。なお大学院の教育年数は 2 年で計算している。こうした計算=変換から生じる誤
差はあるが、分析結果を決定的に左右するほどのものではないと推測される。最も学歴のまま、の順位変
数を分析に使用としたとしても、修士過程修了と博士過程修了は同一視されるので、誤差はなくなるわけ
ではない。
収入・資産については、資産の正確なデータはないので(回答者自身も正確に把握していないことが
あるし、把握していても答えてくれないことも少なくないため、きわめて測定が難しい)、調査会社から提供
された各回答者の「世帯年収」のデータを分析に用いる。「世帯年収」は、1000 万未満は 100 万円単位の
10 階級に区分されており、1000 万以上は 1000~1500 万未満、1500 万以上の 2 階級に区分されている。
この 12 区分に年収の少ない順に 1~12 の値を割振り、分析に用いる。なお「世帯年収」に関しては全員
のデータがあるわけではなく、2500 人中 2213 人のデータとなっている。
脳科学意識、すなわち脳科学に対する期待・不安・規制要望は、次のように測定している。「脳科学に
対する期待」は「脳科学の発展は人々を幸福にする」に対する賛否、脳科学に対する不安は「脳科学の
発展は人々に危険をもたらす」に対する賛否、脳科学に対する規制要望は「脳科学の研究は、きびしく規
208
制されなければならない」に対する賛否(全て「賛成」から「反対」までの 5 分位尺度を用いた)を問うことで、
それぞれ測定した。
変数
データ
性別
調査会社から提供されたデータを使用
年齢
調査会社から提供されたデータを使用
教育年数
回答選択肢は「中学校」「高校」「短期大学」「大学」「大学院」の 5 つ
世帯年収
調査会社から提供された回答者属性データを使用
脳科学に対する期待
「脳科学の発展は人々を幸福にする」に対する賛否
脳科学に対する不安
「脳科学の発展は人々に危険をもたらす」に対する賛否
脳科学に対する規制要望
脳科学の実用化の評価
「脳科学の研究は、きびしく規制されなければならない」に対する賛否
合成変数(後述)
表 2 変数とデータ
表 2 で「脳科学の実用化の評価」は「合成変数」となっている。これは技術別・用途別に尋ねた脳科学
の実用化の評価を観測変数とする合成変数である。技術・用途別の脳科学の実用化の評価を尋ねた観
測変数は表 3 の通りである。技術・用途別に「望ましい」「どちらかといえば望ましい」「どちらともいえない」
「どちらかといえば望ましくない」「望ましくない」の 5 分位で評価を測定している。
変数
ワーディング
読心_教育(親)
親による子どもの教育のため
読心_教育(教師)
教師による児童・生徒の教育のため
読心_人事管理
企業の人事管理のため
読心_犯罪捜査
犯罪捜査のため
読心_法廷証言
法廷での証言の真偽の判定のため
読心_公人発表
公人の公的発表の真偽の判定のため
BMI_治療
病気の治療のため
BMI_義手・義足
手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため
BMI_機械操作
機械を操作するため
BMI_記憶補助
記憶を補助する装置を使うため
BMI_矯正
受刑者の矯正のため(刑務所内)
BMI_再犯防止
前科者の再犯防止のため(出所後)
精神変容_幸福感
幸福感を得るため
精神変容_宗教的超越体験
宗教的超越体験を得るため
精神変容_病気治療
病気の治療のため
精神変容_社員意欲
社員の労働意欲向上のため
精神変容_教育(親→子)
親による子どもの教育のため
209
精神変容_矯正
受刑者の矯正のため(刑務所内)
精神変容_再犯防止
前科者の再犯防止のため(出所後)
表 3 脳科学の実用化の評価(観測変数とワーディング)
次に仮説の検証(テスト)の方法を述べる。仮説のテストに際しては、2 変数の関連の強さをみる。具体
的には、相関係数(ピアソンの積率相関係数)を計算し、その絶対値の大きさから関連の強さを検討す
る。
相関係数を用いた仮説のテストにおいて問題となるのは、相関係数がどのような値をとるときに「関連が
ある」と判定するのかである。ここでは相関係数(ピアソンの積率相関係数、偏相関係数)の絶対値が 0.1
以上を「関連がある」と解釈して議論を進めることにしたい。
もう一点問題となるのは、説明変数間の相関関係である(図 2 参照)。これを見過ごすと、説明変数-被
説明変数間に関連がないところに関連を読み取ってしまう誤りを犯す危険がある。これを防ぐためには、
テストの対象となっている仮説を構成している当該の説明変数以外の説明変数をコントロールした上で相
関係数(偏相関係数)を計算する必要がある。
仮説のテストに際して、相関係数を重視し、(多くの意識調査研究がそうしているように)統計学でいう
「検定」を用いないのはどうしてか。サンプリング方法が割当法だからである。母集団を、わが国の人口と
定義するにしても、調査会社モニターと定義するにしても、本調査のサンプリング方法は無作為抽出とは
言えない。というのも、母集団の要素の被抽出確率(サンプルになる期待値)が同一ではないからである。
もう一つ、検定を用いない理由は、データセットを構成するケース数の大きさである。一般にケース数が
大きければ大きい程、検定は「通り易く」なる。関連の有無を検討する場合、ケース数が大きい場合、きわ
めて微弱な関連しかない場合でも、関連ありと判定する傾向が強くなる。そして本調査のデータセットは
原則として 2500 のケースからなる。これは、かなり大きなデータセットである。
性別
年齢
脳科学意識
教育年数
世帯収入
図 2 社会的属性の脳科学意識の関係(属性間の関連に注目したモデル)
210
2.4.4.3 分析結果
まず「脳科学の実用化の評価」の合成変数を作成する。「脳科学の実用化の評価」について技術別・
用途別に測定した 19 の変数に対して、主成分分析を行った(表 4)。こうして抽出された第 1 主成分は、
観測変数の分散の 40.638%を説明し、観測変数全てと正の相関(最低でもその値は 0.436)がある。また、
用途を特定せずに技術別に尋ねた「脳科学の実用化の評価」とも正の相関(最低でもその値は 0.471)が
ある。こうした理由から、第 1 主成分(の主成分得点)を「脳科学の実用化の評価」を表す変数とする(なお
観測変数間の相関に関しては、本項末表 10 を参照)。
固有値
分散の %
主成分 1
7.721
40.638
主成分 2
2.831
14.901
主成分 3
1.824
9.598
主成分 4
1.544
8.124
主成分 5
1.059
5.576
N=2500
表 4-1 「脳科学の実用化の評価」の主成分分析の結果(固有値と寄与率)
主成
主成
主成
主成
主成
分1
分2
分3
分4
分5
読心_教育(親)
0.634 -0.447 -0.140
0.347 -0.112
読心_教育(教師)
0.642 -0.481 -0.147
0.373 -0.125
読心_人事管理
0.607 -0.502 -0.160
0.316 -0.137
読心_犯罪捜査
0.662
0.260 -0.373
0.308
0.207
読心_法廷証言
0.678
0.318 -0.380
0.298
0.234
読心_公人発表
0.657
0.261 -0.384
0.291
0.211
BMI_治療
0.498
0.485
0.503
0.212
0.089
BMI_義手・義足
0.436
0.571
0.484
0.215
0.093
BMI_機械操作
0.588
0.069
0.444
0.195 -0.376
BMI_記憶補助
0.618
0.087
0.449
0.165 -0.347
BMI_矯正
0.736
0.229 -0.190 -0.299 -0.390
BMI_再犯防止
0.732
0.295 -0.196 -0.302 -0.348
精神変容_幸福感
0.616 -0.399
0.272 -0.231
0.281
0.479 -0.592
0.205 -0.200
0.127
精神変容_病気治療
0.543
0.331
0.319 -0.088
0.406
精神変容_社員意欲
0.686 -0.452
0.156 -0.203
0.192
精神変容_教育(親→子)
0.687 -0.502
0.156 -0.188
0.146
精神変容_矯正
0.754
0.240 -0.222 -0.444
0.000
精神変容_宗教的超越体
験
211
精神変容_再犯防止
0.742
0.257 -0.224 -0.451
0.008
N=2、500
表 4-2 「脳科学の実用の評価」の主成分分析結果(因子負荷量)
主成分
読心
BMI
精神変
1
主成分 1
容
1
読心
0.471
1
BMI
0.501
0.484
1
精神変容
0.560
0.409
0.424
1
N=2、500
表 5 第 1 主成分と技術別「脳科学の実用化に関する評価」の相関
次に 16 の仮説をテストする。説明変数(社会的属性)と被説明変数(脳科学意識)の相関係数を計算し
た結果は表 6 の通りである(なお参考までに説明変数間の相関、被説明変数間の相関の分析結果は、本
項末尾表 8-9 に示している)。前述の相関係数の絶対値 0.1 を目安に相関の有無を検討すると、年齢×
不安、年齢×規制要望、性別×期待、性別×規制要望、教育年数×規制要望、教育年数×実用化・評
価の 6 つのペアが相関ありと判定される。
脳科学の応
性別
N=
年齢
N=
教育年数
N=
世帯年収
N=
脳科学に対す
脳科学に対す
脳科学に対す
用・実用化の
る期待
る不安
る規制要望
評価
0.132
-0.030
-0.115
0.010
2500
2500
2500
2500
0.081
0.106
-0.199
0.061
2500
2500
2500
2500
-0.066
-0.021
0.109
0.105
2500
2500
2500
2500
-0.049
0.012
0.019
0.023
2113
2113
2113
2113
表 6 社会的属性と脳科学意識の相関
次に、この 6 つのペアについて、当該の仮説を構成する社会的属性以外の社会的属性をコントロール
した偏相関分析を実施する。その結果は表 7 の通りである。6 つの次の 4 つのペアが偏相関係数 0.1 以
上となり「相関有り」と評価される。4 つとは、年齢×不安、年齢×規制要望、性別×期待、教育年数×実
用化・評価である。
212
仮説(説明変数-被説明変数)
偏相関係数
性別-脳科学に対する期待
0.111
性別-脳科学に対する規制要望
-0.095
年齢-脳科学に対する不安
0.107
年齢-脳科学に対する規制要望
-0.189
教育年数-脳科学に対する規制要望
0.057
教育年数-脳科学の実用化の評価
0.122
df=2108
表 7 6 つの変数ペアに関する偏相関の分析
偏相関分析の結果から、次の①~④の命題が導かれる。
①「性別」は「脳科学に対する期待」と関連する。女性より男性の方が「期待」が高い。
②「年齢」は「脳科学に対する不安に関連する。年齢が高い人ほど「不安」は弱い。
③「年齢」は「脳科学研究に対する規制要望」と関連する。年齢が高い人ほど「規制要望」は強い。
④「教育年数」は「脳科学の実用化」に対する評価と関連する。「教育年数」が長いほど「脳科学の実
用化の評価」は低い。
2.4.4.4 考察
ここでの主題「社会的属性は脳科学意識を規定するのか」を考える。そのためにまず上記命題①~④
は相関関係に関する命題だが、ここから規定-被規定の関係ないし因果関係を考える。
命題①から導かれる「『性別』は『脳科学に対する期待』に影響する(女性より男性の方が『期待』が高
い)」という仮説を考える。
脳科学に対する期待
性別
図 3 「性別」と「脳科学に対する期待」
逆の因果関係は考えられないし、第三の変数が「性別」と「脳科学に対する期待」の双方を(後者だけ
ならともかく)規定しているとも考えられない。因果メカニズムについては、ここでは特定できないが、「『性
別』が『脳科学に対する期待』を規定している」という命題は成立すると思われる。むろん、ここで言われて
いるのは、生得的属性として意識が違うという意味ではなく、本項冒頭に論じたように、「性別」によって割
り振られる地位・役割などの違いに由来するジェンダーによる差異が「脳科学に対する期待」の差異として
現れていると考えられる。
命題②から導かれる「『年齢』は『脳科学に対する不安』に影響する(年齢が高い人ほど「不安」は弱
い)」という仮説について考える。
213
脳科学に対する不安
年齢
図 4 「年齢」と「脳科学に対する不安」
逆の因果関係は考えられないし、第三の変数が「年齢」と「脳科学に対する不安」の双方を(後者だけ
ならともかく)規定しているとも考えられない。「『年齢』が『脳科学に対する不安』を規定している」という命
題は成立すると思われる。ただし「年齢」が、どのように脳科学に影響を与えているのかは、本調査結果か
らは特定できない。年齢により期待される(押しつけられる)役割が違うために意識が違うのかもしれないし、
発達心理学的な意味での加齢による変化なのかもしれないし、コーホート(生年の違いによる経験の違い
なのか)なのかもしれない。この点は、本調査結果からは何とも言えない。
命題③から導かれる「『年齢』は『脳科学に対する規制の要望』に影響する(年齢が高い人ほど『規制の
要望』は強い)という因果仮説について考えたい。
脳科学に対する規制要望
年齢
図 5 「年齢」と「脳科学に対する規制要望」
ここでも逆の因果関係は考えられないし、第三の変数が「年齢」と「脳科学に対する規制要望」の双方
を(後者だけならともかく)規定しているとも考えられない「『年齢』が『脳科学に対する規制要望』に影響す
る」という命題は成立すると思われる。ただし「年齢」が、どのように脳科学に影響を与えているのかは、本
調査結果からは特定できない。年齢により期待される(押しつけられる)役割が違うために意識が違うのか
もしれないし、発達心理学的な意味での加齢による変化なのかもしれないし、コーホート(生年による経験
の違いなのか)なのかもしれない。この点は、本調査結果からは何とも言えない。
命題④から導かれる因果仮説「『教育年数』は『脳科学の実用化の評価』に影響する(『教育年数』が高
いほど『脳科学の実用化の評価』は低い)」つまり「被教育経験が脳科学に対する意識を変える」を考えた
い。
脳科学に対する規制要望
年齢
第三の変数
図 6 「教育年数」と「脳科学に対する規制要望」
ここで注意が必要なのは、この因果仮説とは別の因果仮説も考えられるという点である。すなわち「教
214
育年数」と「脳科学に対する規制要望」の双方を規定している第三の変数が存在する可能性がある。例え
ば「出身階層により学歴も脳科学に対する意識も違うという」という仮説が考えられる。前者の仮説と後者
の仮説(あるいは、それ以外の「出身階層」以外の変数を説明変数とする第 3 の仮説)のどれが正しいの
か(複数の仮説が正しいこともあるし、全て間違っていることもある)に関する判断はペンディングしておき
たい。
性別
性別
年齢
教育年数 世帯年収
1
N=2500
年齢
教育年数
世帯年収
0.013
1
N=2500
N=2500
-0.192
-0.166
1
N=2500
N=2500
N=2500
-0.073
0.088
0.214
1
N=2113
N=2113
N=2113
N=2113
表 8 社会的属性間の相関
脳科学に対
脳科学に対す
脳科学に対す
脳科学の応用・
する期待
る不安
る規制要望
実用化の評価
脳科学に対する期待
1
脳科学に対する不安
-0.007
1
脳科学に対する規制要望
-0.116
0.380
1
0.328
-0.058
-0.084
脳科学の実用化の評価
表 9 脳科学意識間の相関(N=2500)
215
1
読心
読心_教
読心_教
読心_人
読心_犯
読心_法
読心_公
育(親)
育(教
事管理
罪捜査
廷証言
人発表
師)
読心
読心_教育(親)
0.520
読心_教育(教師)
0.509
0.843
読心_人事管理
0.461
0.688
0.786
読心_犯罪捜査
0.307
0.359
0.382
0.378
読心_法廷証言
0.286
0.347
0.346
0.328
0.815
読心_公人発表
0.289
0.385
0.370
0.331
0.697
0.820
BMI
0.484
0.304
0.295
0.280
0.273
0.300
0.294
BMI_治療
0.223
0.139
0.131
0.076
0.318
0.338
0.296
BMI_義手・義足
0.144
0.059
0.050
-0.005
0.308
0.336
0.298
BMI_機械操作
0.297
0.295
0.317
0.322
0.281
0.290
0.273
BMI_記憶補助
0.341
0.339
0.330
0.301
0.282
0.305
0.285
BMI_矯正
0.240
0.328
0.319
0.313
0.453
0.468
0.450
BMI_再犯防止
0.217
0.297
0.288
0.278
0.466
0.490
0.473
精神変容
0.409
0.344
0.337
0.311
0.279
0.288
0.274
精神変容_幸福感
0.319
0.405
0.408
0.386
0.202
0.217
0.224
精神変容_宗教的超越体験
0.291
0.390
0.411
0.451
0.104
0.082
0.094
精神変容_病気治療
0.203
0.156
0.138
0.091
0.335
0.354
0.323
精神変容_社員意欲
0.349
0.464
0.485
0.521
0.278
0.268
0.275
精神変容_教育(親→子)
0.348
0.549
0.548
0.519
0.250
0.240
0.244
精神変容_矯正
0.207
0.292
0.286
0.266
0.476
0.503
0.479
精神変容_再犯防止
0.189
0.276
0.270
0.249
0.471
0.497
0.473
表 10 脳科学の技術的応用・実用化(観測変数間の相関)
216
BMI
BMI_治
BMI_義
BMI_機
BMI_記
BMI_矯
BMI_再
療
手・義足
械操作
憶補助
正
犯防止
BMI_治療
0.446
BMI_義手・義足
0.374
0.821
BMI_機械操作
0.483
0.442
0.426
BMI_記憶補助
0.503
0.469
0.433
0.714
BMI_矯正
0.311
0.315
0.274
0.403
0.430
BMI_再犯防止
0.293
0.340
0.322
0.381
0.414
0.898
精神変容
0.424
0.279
0.217
0.329
0.401
0.330
0.315
精神変容_幸福感
0.323
0.187
0.123
0.331
0.366
0.292
0.275
精神変容_宗教的超越体験
0.249
0.052
-0.047
0.257
0.255
0.222
0.179
精神変容_病気治療
0.322
0.538
0.512
0.297
0.364
0.293
0.329
精神変容_社員意欲
0.309
0.163
0.099
0.359
0.362
0.359
0.336
精神変容_教育(親→子)
0.326
0.156
0.076
0.353
0.363
0.366
0.333
精神変容_矯正
0.268
0.307
0.279
0.276
0.316
0.718
0.715
精神変容_再犯防止
0.251
0.299
0.287
0.268
0.301
0.687
0.732
表 10 脳科学の技術的応用・実用化(観測変数間の相関)(承前)
精神変
精神変
精神変
精神変
精神変
精神変
精神変
容
容_幸福
容_宗教
容_病気
容_社員
容_教育
容_矯正
感
的超越
治療
意欲
(親→
体験
子)
精神変容_幸福感
0.510
精神変容_宗教的超越体験
0.356
0.631
精神変容_病気治療
0.478
0.369
0.115
精神変容_社員意欲
0.465
0.663
0.620
0.305
精神変容_教育(親→子)
0.470
0.675
0.636
0.287
0.815
精神変容_矯正
0.407
0.375
0.227
0.464
0.435
0.426
精神変容_再犯防止
0.400
0.369
0.209
0.466
0.419
0.409
表 10 脳科学の技術的応用・実用化(観測変数間の相関)(承前)
217
0.950
2.4.5 権威主義と脳科学意識
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.5.1 主題
現在、わが国では脳科学は一定の支持を集めているようにみえる。脳科学の啓蒙書・入門書が次々と
出版されている。メディアにおいては「脳科学者」と認知された人に「知識人」や「有識者」としての役割が
与えられている。本調査においても、脳科学に対する期待を持つ人や脳科学の実用化に対する肯定的
評価をする人が、少なからず存在することが確認されている(2.4.2参照)。
脳科学に対する支持は、どのような意識によって支えられているのか。一つには、人々の自律的・理性
的判断に基づいて支えられている可能性がある。もう一つは、仮に「巷で良いと言われているから良いに
違いない」「今流行だから」といった、いわば「付和雷同」的な心情に支えられている可能性がある。
こうした「付和雷同」的心情を考えるときに参考になるのが、権威主義的態度・パーソナリティ研究の蓄
積である。人々の自律が求められ、自由が認められている社会では、逆に「権威」とされるものを求め、
「権威」とされるものへと依存する心理が生じることがある。これは「自由からの逃走」というフレーズで知ら
れる、フランクフルト学派のナチズム研究にまで遡ることのできる権威主義研究のテーゼである。
「権威」ということであれば、「科学」も「科学者」も、現代社会では権威、少なくとも知的権威を有している。
とするなら「脳科学」や「脳科学者」に対する支持もまた、こうした人々の権威主義的意識に支えられてい
る可能性がある。現代社会の自由に耐えがたいとする意識が「脳科学」や「脳科学者」という権威に縋り付
いているのかもしれない(権威主義研究、特に同態度の測定と現代版「自由からの逃走」に関するアイデ
ィアは、吉川徹「現代社会における権威主義的態度尺度の有用性」『ソシオロジ』39 巻 2 号(社会学研究
会、1994 年)、同『階層・教育と社会意識の形成』(ミネルヴァ書房、1998 年)の 4 章に多くを得た)。
以下では、次の問題を考える。人々の脳科学に対する支持は権威主義的態度に支えられた現代版
「自由からの逃走」なのか。
2.4.5.2 分析方法
上記問題を考えるために、ここでは「権威主義的態度は脳科学に対する支持(肯定的評価)を生みだ
す」という因果仮説を、調査データに基づいてテストする。説明変数は「権威主義」、被説明変数は「脳科
学意識」である(図 1)。
権威主義
脳科学意識
図 1 権威主義と脳科学意識
被説明変数である脳科学意識として「脳科学に対する期待」「脳科学に対する不安」「脳科学に対する
規制要望」(詳細は2.4.2を参照)「脳科学の実用化の評価」(詳細は2.4.3を参照)を分析に用いる。
説明変数となる権威主義の測定では、いわゆる F スケール(ファシズム・スケール)の一部を利用する。
すなわち、表 1 の 4 つの質問項目に関して 5 分位尺度(「そう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あ
まりそう思わない」「そう思わない」)で測定したデータを利用する。こうして得られた 4 つの観測変数から合
成変数「権威主義的態度」を作成する(観測変数の度数分布に関する詳細は、本項末の図3ならびに資
218
料「単純集計」を参照いただきたい)。
変数
ワーディング
伝統主義
以前からなされてきたやり方を守ることが、最上の結果を生む
権威主義(親子)
子どもに教えるべきもっとも大切なことは、両親にたいする絶対服従である
権威主義(権威
者)
権威ある人々には、つねに敬意を払わなければならない
権威主義(専門
この複雑な世の中で何をなすべきか知る唯一の方法は、指導者や専門家に頼る
家)
事である
表 1 権威主義の測定
テストの対象となる「権威主義的態度は脳科学に対する支持(肯定的評価)を生みだす」は 1 つの説明
変数と 4 つの被説明変数からなる 4 つの仮説へと変換される(表 2)。
説明変数
被説明変数
脳科学に対する期待
権威主義
脳科学に対する不安
脳科学研究に対する規制要望
脳科学の技術的応用・実用化に対する評価
表 2 4 つの仮説
次に考えなければならないのは仮説のテストの方法である。仮説のテストに際しては、相関係数、偏相
関係数を用いる。0.1 を「目安」に相関の有無を判断する(詳細は2.4.4参照)。なお偏相関の計算に際
しては、権威主義、脳科学意識の双方に影響するかもしれない変数(性別、年齢、教育年数、世帯年収)
を制御する。
権威主義
教育年数
脳科学意識
世帯年収
性別
年齢
図 2 権威主義と脳科学意識、偏相関の計算のためのモデル
2.4.5.3 分析結果
権威主義的態度を示す合成変数を作成する。本調査の権威主義的態度の 4 つの測定変数の主成分
219
分析の結果は表 3 の通りであり、第 1 主成分を権威主義的態度の指標とした。そして同成分の因子得点
を、権威主義的態度の尺度として用いた。
主成分
固有値
寄与率%
1
2.489
62.213
2
0.643
16.069
3
0.481
12.022
4
0.388
9.697
N=2、500
表 3-1 権威主義的態度の主成分分析(固有値と寄与率)
変数名
第 1 主成分に対する
因子負荷量
伝統主義
0.709
権威主義(親子)
0.804
権威主義(権威者)
0.822
権威主義(専門家)
0.814
N=2、500
表 3-2 権威主義的態度の主成分分析(第 1 主成分に対する因子負荷量)
次に権威主義的態度と脳科学意識の相関をみる。表 4 は、両変数のピアソンの積率相関係数の計算
結果である
被説明変数
権威主義的態度との相関係数
脳科学に対する期待
0.036
脳科学に対する不安
-0.018
脳科学に対する規制要望
-0.016
脳科学の実用化の評価
0.305
N=2、500
表 4 脳科学意識と権威主義的態度との相関
ここで「権威主義的態度」との相関が見られるのは「脳科学の実用化の評価」だけであり、正の相関、相
関係数は 0.305 である。
さらに、「権威主義的態度」と「脳科学の実用化の評価」について「性別」「年齢」「教育年数」「世帯年
収」をコントロールした偏相関分析を実施すると、やはり正の相関が確認され、その値は 0.311(N=2113、
df=2107)である。
220
2.4.5.4 考察
以上の分析において因果仮説「権威主義的態度は脳科学の実用化に対する肯定的評価を生みだ
す」は反証を免れた。これ以外の「権威主義的態度」と「脳科学に対する期待」「脳科学に対する不安」
「脳科学研究に対する規制要望」との結びつきを主張する仮説は否定された。
本報告のそもそもの課題は「人々の脳科学に対する支持は権威主義的態度に支えられた現代版『自
由からの逃走』なのか」という問題であった。これに関しては、次のように答えられよう。
「脳科学」という権威に対する「自由からの逃走」的側面も認められる。特に技術的応用・実用化に対す
る支持には、たしかにそうした側面がある。
しかし、脳科学に対する支持ないし肯定的評価の全てが、権威主義的態度、すなわち権威への靡き
やすさによって説明されるわけではない。権威主義的態度の、脳科学に対する期待に対する説明力は大
きなものではないからである。ただし、自律的・理性的判断が、脳科学に対する期待を支えているのか、と
いえばそうとは言い切れない。上記分析は、あくまで権威主義的態度と脳科学意識の結びつきに関する
ものであり、自律的・理性的思考の有無を検討したものではないからである。
問:あなたは、以下のそれぞれについて、どのように思われますか。
以前からなされて
きたやり方を守ることが、 1
最上の結果を生む
8
41
子どもに教えるべき
1 4
もっとも大切なことは、
両親にたいする絶対服従である
権威ある人々には、
つねに敬意を払わなければ 1
ならない
19
26
そう思う
ややそう思う
20%
44
30
26
10%
19
32
9
この複雑な世の中で
何をなすべきか知る唯一の方法は、 1 6
指導者や専門家に頼る事である
0%
31
34
33
30%
どちらともいえない
40%
50%
35
60%
あまりそう思わない
70%
そう思わない
図 3 権威主義(N=2500、図中の数字は%表示)
221
80%
90%
100%
2.4.6 信仰・宗教性と脳科学意識
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.6.1 主題
生命倫理学では、宗教による価値判断・道徳的判断の相違が指摘されてきた。宗教教団も生命倫理
学の争点について自らの立場を明確に示すことがある。
宗教間の価値基準・道徳的規準の違いに注目するなら、次のような推論も成り立つ。ある人が何を信
仰しているのかにより、その人の価値基準・道徳的基準も違うことになる。脳神経倫理学(nueroethics)の
誕生が示すように、脳科学の研究・技術的応用もまた価値判断・道徳的判断の対象となる。とするなら、
脳科学に関する意識もまた、信仰により影響される部分があるのではないか。
この推論の妥当性を検討することが、以下の分析の主題である。
2.4.6.2 分析方法
上記主題を考えるために「信仰は脳科学意識に影響を与える」という仮説を検証する。仮説は図 1 のよ
うに図示できよう。
脳科学意識
信仰
図 1 信仰と脳科学意識
次に「信仰」というコンセプトを検討する。宗教学・宗教社会学でしばしば指摘されるのは、日本社会に
は、信仰の自覚(「私はXを信仰している」という自己認識)を伴わない信仰が観察される(それを「信仰」と
呼ぶか否かは議論の余地があるが、この点は措く)ことである(この点に関するまとまった知見としては、や
や古いが大村英昭・西山茂編『現代人の宗教』(有斐閣、1988 年)が参考になる)。例えば、日本におい
ては、人々は葬礼を仏教に則って行われることが多いが、いざ信仰を尋ねられて「仏教を信仰していま
す」と答える人は少ない。実際、本調査でも「宗教を信じている」と答えた人は 15%に過ぎない(本項末の
図 4 および資料「単純集計」を参照いただきたい)。
そこで本調査では、自覚的な信仰(以下これのみを「信仰」と記述する)の有無とは別に「自覚されざる
信仰」とでもいうべき人々の意識・行動(以下「宗教性」と記述する)について測定している。
こうして仮説「信仰は脳科学意識に影響を与える」は「信仰/宗教性は脳科学意識に影響を与える」と
再定式化できる。この仮説を以下では検証(テスト)する。なお、変則的だが、2.4.6.1で論じた以上の
詳細な因果メカニズムに関しては、さしあたり問わないこととする(相関が確認されたものに関してのみ、因
果メカニズムを考える)。
この仮説において説明変数となるのは「信仰」と「宗教性」である。「信仰」の有無については「あなたは
なにか宗教を信じていますか」(はい/いいえの二者択一式選択)を尋ねているので、ここで測定された
変数をそのまま「信仰」変数として使う。
「宗教性」に関しては、「宗教性」を「世俗的思考からすると、実在が認められない、あるいは、実在すると
もしないともいえない対象の実在の存在を認める」意識と操作的に定義した。そうした対象の実在を認め
る傾向が強ければ強い程「宗教性が強い」ことになり、逆に弱ければ弱い程「宗教性が弱い」ことになる。
このように定義した上で「宗教性」を測定するために 3 つの質問項目を用意した(表 1)。こうした測定され
222
た 3 つの変数を合成して「宗教性」変数を作成する。なお、これらの観測変数の度数分布は本項末の図 5
および資料「単純集計」を参照いただきたい)
質問項目
尺度
神仏を信じている
「あてはまる」「どちらかといえば、あてはま
あの世(死後の世界)の存在を信じている
る」「どちらかといえば、あてはまらない」「あ
神や霊の存在を感じたことがある
てはまらない」の 4 分位尺度
表 1 宗教性の測定
被説明変数となる脳科学意識として脳科学意識として「脳科学に対する期待」「脳科学に対する不安」
「脳科学に対する規制要望」(詳細は 4-2-2 参照)および「脳科学の実用化の評価」(詳細は2.4.4を参
照)をとりあげる。
「信仰/宗教性は脳科学意識を規定する」という仮説には、2 つの説明変数と 4 つの被説明変数が含
まれている。こうして導かれる 8 つの仮説を整理したものが表 2 である。
信仰
脳科学に対する期待
信仰
脳科学に対する不安
信仰
脳科学研究に対する規制要望
信仰
脳科学の技術的応用・実用化に対する評価
宗教性
脳科学に対する期待
宗教性
脳科学に対する不安
宗教性
脳科学研究に対する規制要望
宗教性
脳科学の技術的応用・実用化に対する評価
表 2 信仰・宗教性と脳科学意識に関する仮説
次に考えなければならないのは仮説のテストの方法である。仮説のテストに際しては、相関係数、偏相
関係数を用いる。0.1 を「目安」に相関の有無を判断する(詳細は2.4.4参照)。なお偏相関の計算に際
しては、説明変数(信仰・宗教性)と被説明変数(脳科学意識)の双方に影響するかもしれない変数(性別、
年齢、教育年数、世帯年収、権威主義的態度)を制御する(次頁図 2)。
223
制御変数
信仰
世帯年収
脳科学意識
権威主義
宗教性
的態度
教育年数
年齢
性
図 2 信仰・宗教性と脳科学意識
2.4.6.3 分析結果
まず宗教性に関する 3 つの観測変数から合成変数を作成するため主成分分析を行う(観測変数の度
数分布については本項末の図 5 および資料「単純集計」を参照いただきたい)。3 つの主成分分析の結
果は表 3 の通りである。第 1 主成分に関する主成分得点(各ケースに割り当てられる)「宗教性」を意味す
る変数として用いる。第 1 主成分は、各観測変数と正の相関があり、相関係数も最低でも 0.809 と高い。な
お測定変数間の相関も計算してある。これに関しては本項末の表 5 を参照いただきたい。
固有値
寄与率%
主成分 1
2.126
70.861
主成分 2
0.509
16.955
主成分 3
0.366
12.183
N=2500
表 3-1 宗教性の主成分分析結果
観測変数
第 1 主成分に対する因子負荷量
神仏を信じている
0.844
あの世の存在を信じている
0.871
神や霊の存在を感じたことがある
0.809
N=2500
表 3-2 宗教性の主成分分析結果
次に宗教性との相関係数を求める。正の相関があり、相関係数は 0.408 あるが、完全相関には遠い。
自覚的信仰の水準では無信仰の人も、高い宗教性を示すことがあるという前述の「日本的」な宗教意識・
行動の特性を確証している。
仮説を検証する。表 5 に示したのは、信仰、宗教性と脳科学意識の相関係数の計算結果である。「宗
224
教性」と「脳科学の技術的応用・実用化の評価」の間に正の相関がみられ、相関係数は 0.128 である。
信仰
宗教性
脳科学に対する期待
0.012
0.067
脳科学に対する不安
0.006
0.081
脳科学に対する規制要望
0.039
0.078
脳科学の実用化の評価
0.008
0.128
N=2500
表 4 信仰・宗教性と脳科学意識の相関
さらに「宗教性」と「脳科学の技術的応用・実用化の評価」の偏相関係数を、性、年齢、教育年数、世帯
年収、権威主義的態度をコントロールした上で計算する。その結果の正の相関がみられ、偏相関係数は
0.106(N=2113、df=2106)である。
2.4.6.4 考察
調査データを用いた「信仰・宗教性は脳科学意識に影響する」という仮説のテストの結果は、この仮説
の成立は疑わしいというものである。なるほど 8 つの仮説の内、1 つの仮説は反証を耐えた。
しかし、この「生き残った」仮説、すなわち「宗教性は脳科学の実用化の評価に影響する」に関しても、
その成立を疑わせる次のような事実を指摘できる。「宗教性」と「実用化・評価」の両変数には相関が認め
られるとはいえ、単純相関係数が 0.128、偏相関係数で 0.106 と決して高いとは言えない。しかも、両変数
の因果メカニズムを論理的に考えることは難しい――「宗教性が強いと、どうして脳科学の実用化の評価
を高くなるのか」の答となるような因果連関の「物語」は思いつくことは難しい。とするなら、両者の相関は、
何らかの第三の要因の影響と考えるべきではないだろうか(図 3)。
(擬似)相関?
宗教性
脳科学の実用化の評価
規定
規定
第三の変数
図 3 宗教性と脳科学の実用化の評価の関係
225
もちろん以上の結果から、信仰・宗教性と脳科学をめぐる価値判断道・道徳的判断が無関係とまでは
言えない。例えば、わが国以外に関しては、本調査は何も言えない。国内でも、特定の教団がその教義
上、特定の脳科学やその技術的応用を否定したり(逆に支持したり)する可能性はある。こうした可能性に
関しては、本調査・分析結果は何か主張するものではない。
とはいえ「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究」という本プロジェ
クトの主題から言えば、以上の結果の意義は小さくない。というのも、日本における「意識の先端的脳科
学」の影響(より正確には受容)の度合いが、信仰の有無、宗教性の差違(正確には強度) により違う可
能性は低いことを、少なくとも現時点では示唆するからである。
問:あなたはなにか宗教を信じていますか。
14.92%
はい
いいえ
85.08%
図 4 信仰の有無(N=2500、図中の数字は%表示)
問:以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりません
か。
神仏を信じている
11
あの世(死後の世界)
の存在を信じている
11
神や霊の存在を感じ
たことがある
9
0%
あてはまる
29
28
27
29
20
10%
20%
32
34
27
30%
どちらかといえば,あてはまる
40%
43
50%
60%
70%
80%
どちらかといえば,あてはまらない
図 5 宗教性(N=2500、図中の数字は%表示)
226
90% 100%
あてはまらない
神仏を信じて
あの世の存在
いる
を信じている
神仏を信じている
を感じたことが
ある
1
あの世の存在を信じている
神や霊の存在を感じたことが
ある
神や霊の存在
0.625
1
0.501
0.56
表 5 宗教性(観測変数間の相関)N=2500
227
1
2.4.7 エンハンスメントに関する意識
(龍谷大学:中川輝彦、松本大学:福島智子)
2.4.7.1 主題
本項タイトルの「エンハンスメント」とは「病気の治療、健康の維持・回復を越えて、ある人の能力や性質
を、その人や他の人が望ましいと考える方向に変えること」を意味する。以下では、この意味でのエンハン
スメントに関する意識について考える。
どうしてエンハンスメントに関する意識なのか。「意識の先端的脳科学」はエンハンスメントにも深く関わ
る。「意識の先端的脳科学」は各種能力の回復だけでなく、向上に結びつくような、脳への介入技術(ニュ
ーロエンハンスメントの技術)を生みだすかもしれないからである。とするなら「意識の先端的脳科学の倫
理的・宗教的・社会的影響の調査研究」は、エンハンスメントへの脳科学の応用という文脈における「影響
の調査研究」も含まざるを得ないだろう。以下では、エンハンスメントの需要に関連すると思われる意識―
―どれほどの人々がエンハンスメントを望んでいるのか、またどのくらいの人々がエンハンスメントに対す
る抵抗感を抱いているのか――に関して検討したい。
2.4.7.2 分析方法
分析では、エンハンスメントに関する意識を 3 つの要素に分けて考える。①「エンハンスメントの願望」す
なわち自己の能力・性質を「望ましい」方向に変えたいという意識である。②能力・性質のタイプにもよるが、
多くの能力はエンハンスメントは学習・トレーニングによっても可能である。これ以外に、当人の学習・トレ
ーニングを含まない(除く)という意味での「技術」的介入(例えば薬物や手術、機械の使用)によるエンハ
ンスメントも考えられる。こうした技術的介入によるエンハンスメントの願望(以下「技術的エンハンスメン
ト」)が二つめの要素である。なお「技術」として、ここでは特に薬物を想定している。③三つめは、こうした
技術的エンハンスメントに対する抵抗感である。「わざわざ技術(ここでは薬)によって身体・精神を変える
など不自然だ」とか「良くない」といった意識である。
分析では、エンハンスメントの対象となる能力・性質を、身長、身体能力、記憶力、性格の 4 つに分ける。
身長と身体能力は、脳科学と直接関連するわけではないが、記憶力、性格との比較対象として設定して
いる。
分析では、自己を対象にするエンハンスメントの願望と、自分の子どもを対象とするエンハンスメントの
願望の双方について検討する。後者を検討するのは、未成年のエンハンスメントに関しては、親の意向が
大きく働くだろうと推測されるからである。
表 1 は、エンハンスメントに関する 24 の調査項目と、そのワーディングである。分析においては、調査項
目の単純集計結果を利用する。また「技術的エンハンスメントに対する抵抗感」についてより精緻に議論
するために、治療目的での技術使用に対する抵抗感(質問「病気による記憶力の低下を防ぐために薬を
使う」はであり、尺度は「非常に抵抗がある」「どちらかというと抵抗がある」「どちらかというと抵抗がない」
「まったく抵抗がない」の 5 分位)と比較する。
228
設問
質問項目
尺度
身長を高くしたい
身体能力(筋力・持久力・反射神経
など)を高めたい
記憶力を高めたい
そう思う
性格を変えたい
どちらかといえばそう思う
病気を治療したり、健康を維
薬で身長を高くしたい
どちらかといえばそう思わない
持・回復する目的を越えて、自
薬で身体能力(筋力・持久力・反射
そう思わない
分の能力や性質をより良く改
神経など)を高めたい
善することについてお尋ねしま
薬で記憶力を高めたい
す
薬で性格を変えたい
薬で身長を高くする
薬で身体能力(筋力・持久力・反射
神経など)を高める
薬で記憶力を高める
薬で性格を変える
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
子どもの身長を高くしたい
ご自分の子どもの能力や性質
子どもの身体能力(筋力・持久力・
を、病気を治療したり、健康を
反射神経など)を高めたい
維持・回復する目的を越えて、
子どもの記憶力を高めたい
そう思う
より良く改善することについて
子どもの性格を変えたい
どちらかといえばそう思う
お尋ねします。
薬で子どもの身長を高くしたい
どちらかといえばそう思わない
高校生以下の子どもをおもち
薬で子どもの身体能力(筋力・持久
そう思わない
の方はそのお子さんを思い浮
力・反射神経など)を高めたい
かべてお答えください。お子さ
薬で子どもの記憶力を高めたい
んが、すでに高校生を卒業し
薬で子どもの性格を変えたい
ている方や、お子さんがいない 薬で子どもの身長を高くする
方は「高校生以下の子どもが
薬で子どもの身体能力(筋力・持久
いたら」と考えて、お答えくださ
力・反射神経など)を高める
い。
薬で子どもの記憶力を高める
薬で子どもの性格を変える
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
表 1 エンハンスメントに関する意識(設問、質問項目、尺度)
2.4.7.3 分析結果
まず、自己を対象とする「エンハンスメント願望」「技術的エンハンスメント願望」「技術的エンハンスメント
への抵抗」についての分析結果を示す。ここで図示する調査結果は全て、N=2500、図中の数値は小数
点第一位を四捨五入した相対度数(%表示)を表す。なお集計結果の詳細に関しては、資料「単純集
計」を参照いただきたい。
229
13
性格を変えたい
31
39
43
記憶力を高めたい
46
29
身体能力を高めたい
27
0%
20%
そう思う
8
53
17
身長を高くしたい
17
24
40%
どちらかといえばそう思う
12
3
6
31
60%
どちかといえばそう思わない
80%
100%
そう思わない
図 1 エンハンスメント願望
薬で性格を変えたい 3
9
8
薬で記憶力を高めたい
薬で身体能力を高めたい
5
薬で身長を高くしたい
5
0%
そう思う
28
60
23
32
18
34
10
10%
38
44
26
20%
30%
どちらかといえばそう思う
59
40%
50%
60%
どちかといえばそう思わない
図 2 技術的エンハンスメント願望
230
70%
80%
そう思わない
90%
100%
60
薬で性格を変える
32
33
薬で記憶力を高める
40
37
薬で身体能力を高める
48
非常に抵抗がある
6
17
35
20%
40%
どちらというと抵抗がある
3
21
41
薬で身長高くする
0%
8
60%
5
12
4
80%
どちらかというと抵抗がない
100%
まったく抵抗がない
図 3 技術的エンハンスメントへの抵抗感
図 1「エンハンスメント願望」と図 2「技術的エンハンスメント願望」を比較すると、後者は前者より望む
人々が少なくなることが判る。例えば「記憶力」の場合、単なる「エンハンスメントの願望」は 8 割の人々が
抱いているが、「技術的エンハンスメント願望」となると 3 割にとどまる。おそらくその一因は図 3「技術的エ
ンハンスメントへの抵抗感」(何を対象とするエンハンスメントであれ、8 割以上の人が何らかの抵抗感を抱
いている)であると思われる。
次に子ども(自分の子ども)を対象とするエンハンスメントに関する意識を検討する(図 4~6)。
6
子どもの性格を変えたい
21
31
子どもの記憶力を高めたい
0%
11
47
20
子どもの身長を高くしたい
33
46
26
子どもの身体能力を高めたい
そう思う
40
12
37
20%
40%
どちらかといえばそう思う
21
60%
14
23
80%
どちかといえばそう思わない
図 4 エンハンスメント願望(対象=自分の子ども)
231
13
100%
そう思わない
薬で子どもの性格を変えたい 2 5
薬で子どもの記憶力を高めたい 4
27
14
薬で子どもの身体能力を高めたい 3
11
薬で子どもの身長を高くしたい 3
10
0%
そう思う
66
10%
29
53
31
55
29
20%
58
30%
どちらかといえばそう思う
40%
50%
60%
どちかといえばそう思わない
70%
80%
90%
100%
そう思わない
図 5 技術的エンハンスメント願望(対象=自分の子ども)
67
薬で子どもの性格を変える
薬で子どもの記憶力を高める
53
薬で子どもの身体能力を高める
54
31
32
56
薬で子どもの身長高くする
0%
25
10%
20%
30%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
30
40%
50%
60%
70%
80%
5 3
11
4
10
4
9
4
90%
100%
どちらというと抵抗がある
まったく抵抗がない
図 6 技術的エンハンスメントへの抵抗感(対象=自分の子ども)
まず自己を対象とするエンハンスメントに関する意識と子どもを対象とするものを比較する。単なる「エ
ンハンスメント願望」については、身長以外の項目では、子どもに対する「願望」を持つ人の割合が少なく
なる。「技術的エンハンスメント」となると全般的に「願望」を持つ人の割合が小さくなる。他方、「技術的エ
ンハンスメントへの抵抗感」は子どもを対象とするものへの「抵抗感」が全般的に高くなっている。
232
以上の分析結果から、「技術的エンハンスメントへの抵抗感」が「技術的エンハンスメント願望」を抑制
する要因となっていると考えられるが、ここで問題が一つ残る。ここで測定した「抵抗感」は「エンハンスメン
ト」に対するものなのか、それとも「技術」、特に「薬」を質問項目ではあげているのに「薬」に対するものな
のか、という問題である。
これに関連して、技術=薬を制御変数として、用途(治療かエンハンスメントか)で比較した結果が、次
頁図 7 である。図 7 にも、あるように、治療目的の技術=薬使用に対して抵抗感を抱く人より、エンハンス
メントの技術=薬使用に対する抵抗感を抱く人の方が多い。
ここから「技術的エンハンスメントに対する抵抗感」の「抵抗感」には、単なる技術=薬に対する抵抗感
ではなく「エンハンスメント」という行為それ自体に対する抵抗感も含まれていると推測される。
問「あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか」
41
40
37
33
21
12
10
6
薬で記憶力を高める
病気によって低下した記憶力を
回復させるために薬を使う
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
どちらというと抵抗がある
まったく抵抗がない
図 7 用途別「技術(薬)」に対する抵抗感
2.4.7.4 考察
以上の知見をまとめると、以下のようになる。①技術的エンハンスメントへの願望を持つ人は、エンハン
スメント願望を持つ人に比べて少ない。②技術的エンハンスメントへの願望を持つ人が、エンハンスメント
願望に持つ人に比べて少ないのは、技術的エンハンスメントへの抵抗感が一因となっている。③身長を
例外として、自己を対象とするエンハンスメント願望を抱く人に比べて、子どもを対象とするエンハンスメン
ト願望を抱く人は少ない。④技術的エンハンスメントへの抵抗感を持つ人は、自己を対象とする場合より、
子どもを対象とする方が多い。
233
2.4.8 その他集計結果
(龍谷大学:中川輝彦)
2.4.8.1 主題
本項では、次のいずれかの条件にあてはまるデータに関して、単純集計結果を図示して提示する。す
なわち、①2.4.7までの各項で言及されながらも単純集計結果が図示されていないデータ、②2.4.7
までの各項では言及されていないが、特に重要と思われるデータである。
①に属するものとして、回答者の属性(性別、年齢、世帯年収、学歴)、意識(権威主義的態度、信仰
の有無、宗教性)に関するデータがあげられる。②に属するものとして、BMI の許容度、読心技術・精神変
容技術の強制に対する許容度、メディア利用状況、「脳トレ」の評価・実践があげられる。
以下、これらのデータに関して図示して提示していく。特に断らない限りは、各グラフは N=2500 であり、
図中の数字は小数第一位を四捨五入したパーセント表示の相対度数である。そして度数分布の詳細に
関しては、資料「単純集計」を参照いただきたい。
2.4.8.2 回答者の属性分布(性別)
ここでは回答者の属性分布(属性=性別)について(相対)度数分布および一部に関しては図を示す。
本報告中では、これらのデータは各所で言及されているが、(相対)度数分布およびそれを図示するグラ
フは示されていない。また、資料の「単純集計」にも、一部記載されていない情報がある。よって以下にこ
れを示す。
度数
相対度数(%)
男性
1249
49.96
女性
1251
50.04
合計
2500
100
表 1 回答者の属性分布(性別)(N=2500、図中の数字は%表示)
234
2.4.8.2 回答者の属性分布(年齢)
ここでは回答者の属性分布(属性=年齢)について(相対)度数分布および一部に関しては図を示す。
本報告中では、これらのデータは各所で言及されているが、(相対)度数分布およびそれを図示するグラ
フは示されていない。また、資料の「単純集計」にも、一部記載されていない情報がある。よって以下にこ
れを示す。
年齢
度数
相対度数(%)
20-29
459
18.36
30-39
545
21.80
40-49
464
18.56
50-59
565
22.60
60-69
467
18.68
合計
2500
100.00
表 2 回答者の属性分布(年齢、10 歳区分)(N=2500、図中の数字は%表示)
18%
19%
22%
22%
20-29
30-39
40-49
50-59
60-69
19%
図 1 回答者の属性分布(年齢、10 歳区分)(N=2500、図中の数字は%表示)
235
2.4.8.3 回答者の属性分布(世帯年収)
ここでは回答者の属性分布(属性=世帯収入)について(相対)度数分布および一部に関しては図を
示す。本報告中では、これらのデータは各所で言及されているが、(相対)度数分布およびそれを図示す
るグラフは示されていない。また、資料の「単純集計」にも、一部記載されていない情報がある。よって以
下にこれを示す。
年収
度数
100 万未満
比率
有効比率
95
3.80
4.50
100 万以上 200 万未満
115
4.60
5.44
200 万以上 300 万未満
211
8.44
9.99
300 万以上 400 万未満
284
11.36
13.44
400 万以上 500 万未満
286
11.44
13.54
500 万以上 600 万未満
272
10.88
12.87
600 万以上 700 万未満
192
7.68
9.09
700 万以上 800 万未満
175
7.00
8.28
800 万以上 900 万未満
110
4.40
5.21
900 万以上 1000 万未満
138
5.52
6.53
1000 万以上 1500 万未満
175
7.00
8.28
60
2.40
2.84
2113
84.52
100.00
387
15.48
2500
100.00
1500 万以上
有効回答者数
無回答
回答者総数
表 3 回答者の属性分布(世帯年収)
236
1500万以上
2.84
1000万以上1500万未満
8.28
6.53
900万以上1000万未満
800万以上900万未満
5.21
700万以上800万未満
8.28
9.09
600万以上700万未満
500万以上600万未満
12.87
400万以上500万未満
13.54
300万以上400万未満
13.44
200万以上300万未満
9.99
100万以上200万未満
100万未満
0.00
5.44
4.50
2.00
4.00
6.00
8.00
10.00
12.00
図 2 回答者の属性分布(世帯年収)(N=2113、図中の数字は%表示)
237
14.00
16.00
2.4.8.4 回答者の属性分布(学歴)
ここでは回答者の属性分布(学歴)について(相対)度数分布および一部に関しては図を示す。本報告
中では、これらのデータは各所で言及されているが、(相対)度数分布およびそれを図示するグラフは示
されていない。また、資料の「単純集計」にも、一部記載されていない情報がある。よって以下にこれを示
す。
最終学歴
度数
相対度数(%)
中学
59
2.36
高校
885
35.40
高専・短大
416
16.64
1011
40.44
129
5.16
2500
100
大学
大学院
合計
表 4 回答者の属性分布(学歴)
5.16
大学院
40.44
大学
高専・短大
16.64
35.40
高校
中学
2.36
0
5
10
15
20
25
30
35
40
図 3 回答者の属性分布(学歴)(N=2500、図中の数字は%表示)
238
45
2.4.8.5 BMI の許容度
BMI(Brain Machine Interface)は、脳-機械の接続方法に着目することで二つに分けられる。脳内に
電子チップを埋め込む「直接接続」と、頭の外側に器具を付けるなどの方法をとる「間接接続」である。
人々は、どちらをどれだけ許容しているのか。次の図に示す。
問「脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えます
か。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください」
手・足などに障害のある人が、
義手・義足などを使うため
機械を操作するため
記憶を補助する
装置を使うため
受刑者の矯正のため
(刑務所内)
前科者の再犯防止のため
(出所後)
29
53
16
6
31
47
病気の治療のため
13
5
13
34
26
26
14
34
24
28
25
25
24
28
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
26
24
24
24
間接接続のみ許される
わからない
図 4 BMI の接続法別許容度(N=2500、図中の数字は%表示)
直接接続に対する抵抗感は、間接接続に比べて高い結果になっている。実際、過半が直接接続を許
容したのは「手・足などに障害のある人が、義手・義足を使うため」という用途のみであり、特に「機械を操
作するため」「記憶を補助する装置を使うため」など、利便性やエンハンスメント目的(厳密には、そうとは
言い切れない側面もある)とも理解できるような用途では、許容する人が 1 割台にとどまった。
239
2.4.8.6 読心技術の強制
人々は読心技術の強制を、どこまで許容しているのか。対象ないし用途別に許容度を尋ねた結果が、
次の図である。
問:思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許され
ると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。<この場合
「任意」とは、脳の計測を受けることを求められた人が拒否できることを意味します。>
子ども(親による子の
2
教育のため)
10
54
34
児童・生徒(教師による
1
児童・生徒の教育のため)
27
64
9
社員(企業における
1
人事管理のため)
25
66
8
容疑者など
(犯罪捜査のため)
証人など(法廷での証言の
真偽の判定のため)
38
36
0%
強制してもよい
45
30
政治家など公人
(公的発表の真偽の判定のため)
15
38
39
20%
40%
強制ではなく、任意であればよい
60%
強制、任意いずれであれ許されない
8
17
9
17
9
80%
100%
わからない
図 5 読心技術の強制に対する許容度(N=2500、図中の数字は%表示)
強制的使用まで認めるという人は、最大でも 4 割である。法秩序の維持目的(「犯罪捜査のため」「法廷
での証言の真偽の判定のため」「公的発表の真偽の判定のため」の使用に対しては、比較的強制を認め
る人の割合が高いが、それでも 3 割~4 割である。それ以外の用途「親による子の教育のため」「教師によ
る児童・生徒の教育のため」「企業における人事管理のため」は、強制使用に賛同する人はほとんどいな
い。
240
2.4.8.7 精神変容技術の強制に対する許容度
人々は読心技術の強制を、誰に対して、どこまで許容しているのか。対象ないし用途別に許容度を尋
ねた結果が、次の図である。
問:精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求めた
りすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定
していただきたい用途です。<この場合「任意」とは、薬の服用を求められた人が拒否
できることを意味します。>
患者(病気の治療のため)
5
社員(労働意欲向上のため) 1
子ども(親による教育) 1
73
24
20
0%
強制してもよい
10%
10
67
12
34
29
前科者(出所後の再犯防止)
10
64
28
受刑者(刑務所内での矯正)
12
34
20%
30%
強制ではなく、任意であればよい
40%
50%
60%
24
15
22
15
70%
80%
強制、任意いずれであれ許されない
90%
100%
わからない
図 6 精神変容技術の強制に対する許容範囲(N=2500、図中の数字は%表示)
精神変容技術(この場合は「薬」で尋ねている)の強制使用に賛同する人の割合は、最大でも 3 割を切
る。法秩序の維持目的(「刑務所内での矯正」「出所後の再犯防止」)は比較的賛同する人の割合が高い
が、それでも 3 割に満たない。それ以外の用途(「病気の治療のため」「労働意欲向上のため」「親による
教育」)での強制使用に対する賛同者は、治療目的の 5%を除き、ほとんどいない。
241
2.4.8.8 用途別薬物使用に対する抵抗感
2.4.7では、記憶力を維持・改善する薬物の存在を想定し、その用途別技術使用の抵抗感について
論じたが、その際とりあげたのは、エンハンスメントと病気治療だけであった。ここでは、他の用途に関して
も、その調査結果を提示する。
問:あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
〔病気を治療したり,
健康を維持回復する目的を
越えて〕薬で記憶力を高める
33
40
21
6
病気によって低下した記憶力を
回復させるために薬を使う
12
病気による記憶力の低下を
防ぐために薬を使う
11
老化によって低下した記憶力を
回復させるために薬を使う
12
38
41
10
老化による記憶力の低下を
防ぐために薬を使う
11
38
42
9
0%
非常に抵抗がある
37
41
36
43
20%
40%
どちらかというと抵抗がある
10
60%
どちらかというと抵抗がない
10
80%
100%
まったく抵抗がない
図 7 技術(薬)使用への抵抗感(N=2500、図中の数字は%表示)
エンハンスメント目的(「〔病気を治療したり、健康を維持回復する目的を越えて〕薬で記憶力を高め
る」)の薬物使用に対して抵抗感を持つ人は、他の用途(病気治療「病気によって低下した記憶力を回復
させるために薬を使う」、病気予防「病気による記憶力の低下を防ぐために薬を使う」、老化予防「老化に
よって低下した記憶力を回復させるために薬を使う」、老化からの回復「老化による記憶力の低下を防ぐ
ために薬を使う」に比べて多い。そして、エンハンスメント以外の用途に対する抵抗感を持つ人の割合は、
どの用途もほぼ同じである。
242
2.4.8.9 メディア利用
人々はどのようなメディアから、脳科学に関する情報を得ているのか。以下では用途別(「世の中の動き
や事件をいち早く知るため」「世の中の動きや事件について、信頼できる情報を得るため」「医療について
信頼できる情報を得るため」「科学技術について信頼できる情報を得るため」)に、どのようなメディアを利
用したいのか、希望を調査した。
問:あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用したいですか。それぞれの目的について、
各メディアから一つ選んでください。(相対度数%表示)
テレビ, 51
本, 1
ラジオ, 1
世の中の動きや事件を
いち早く知るため
インターネット, 42
新聞, 5
雑誌, 0
その他, 0
テレビ, 29
本, 3
ラジオ, 1
世の中の動きや事件について、
信頼できる情報を得るため
インターネット, 26
新聞, 38
雑誌, 1
その他, 2
テレビ, 13
本, 18
ラジオ, 0
医療について
信頼できる情報を得るため
インターネット, 43
新聞, 13
雑誌, 6
その他, 6
テレビ, 14
本, 18
ラジオ, 0
科学技術について
信頼できる情報を得るため
インターネット, 40
新聞, 14
雑誌, 10
その他, 4
0
10
その他
20
雑誌
30
新聞
インターネット
40
ラジオ
50
本
60
テレビ
図 8 用途別メディア利用(N=2500、図中の数字は%表示)
脳科学に関する情報は、「医療」ないし「科学技術」情報に含まれると思われる。「医療について信頼で
きる情報を得るため」「科学技術について信頼できる情報を得るため」の回答分布はきわめて似ているが、
両者の特徴は、次のとおりである。
「世の中の動きや事件をいち早く知るため」「世の中の動きや事件について、信頼できる情報を得るた
め」と比べて、①相対的にテレビ・新聞の利用を希望する人の割合が少なく、②相対的に本・雑誌の利用
を希望する人の割合が多い。
243
2.4.8.10 「脳トレ」の評価・実践
いわゆる「脳トレーニング(脳トレ)」は、どのくらいの人々が「効用がある」と評価しているのだろうか。ま
たどのくらいの人々が実際に行っているのだろうか。このことに関する調査結果は図 3、図 4 に示されてい
る。
問「ゲームや書籍などによる『脳トレ』は、脳を鍛えたり、活性
化したりすることに役立つと思いますか、それともおもいませ
んか」
4
6
21
11
そう思う
どちらかといえば思う
どちらかといえば思わない
そう思わない
わからない
58
図9
「脳トレ」の効用の評価
問「あなたは、ふだんゲームや書籍などの「脳トレ」を、
どの程度していますか」
4
9
10
44
12
4
ほとんど毎日
週に数回
週に1回程度
月に1回程度
年に数回
年に1回程度
全くしていない
15
図 10 「脳トレ」の実践頻度
週1回以上、「脳トレ」を実践している人は 23%である。「脳トレ」の効用は、8 割弱の人々が「効用有り」
(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」をあわせた割合)と考えている。
244
2.5 国際シンポジウム
2.5.1 はじめに
(京都大学:美馬達哉、長峯隆、福山秀直)
脳科学の急速な発達は、医療を超え、倫理、哲学、宗教、法律といった隣接する学問領域における人
間観の再考をうながすとともに、経済、政治、教育等の社会の諸分野における知識の再編と技術的応用
をもたらしつつある。一方、ニューロマーケティング、ニューロポリティクスをはじめ、脳科学の発達が、その
操作主義的利用や、政治、経済、科学知識における国内的・国際的格差の拡大につながるのではない
かという懸念を抱く国民は多い。本来、ニューロエシックスは、このような先端脳科学や周辺研究領野と社
会の間を架橋するものだといえる。ガザニガは、脳研究と社会倫理の関係について、従来の社会倫理か
ら脳研究を評価する方法と、脳科学から倫理について考える立場が存在することを明らかにしているが、
両者の間に新たな対話の回路を開くことは、緊要な課題である。欧米においては、哲学、倫理、宗教の学
問から脳科学を評価する研究が存在するが、わが国においては、この分野の研究は、いまだきわめて希
少である。
とりわけ、こうした議論を本研究班ですすめていくなかで、重要性が明らかとなったのは、ブレイン・マシ
ン・インターフェース(BMI)に関わる倫理的・法的・社会的な諸問題であった。BMI については、2007 年 6
月に閣議決定された「長期戦略指針イノベーション 25」においても、2010 年までの研究目標として考える
ことで動かせる究極のインターフェース技術の開発がうたわれ、2011 年以降の目標としては、脳情報をシ
ステムレベルで抽出し、リアルタイムでデコーディングし、情報通信機器とつなげる BMI の開発があげられ
ている。こうした政策的要請に添って、脳科学研究の社会への影響について、社会との調和に配慮しつ
つ研究を進めていくことが不可欠である。そうした方向性へと進む第一歩として、BMI に関する国際シン
ポジウムを行った。
BMI については、2007 年 5 月の「脳科学研究の推進に関する懇談会」の「脳科学研究ルネッサンス
新たな発展に向けた推進戦略の提言」においても、研究推進のために重点的に推進すべき研究領域の
一つである「脳に学ぶ」領域として、脳内情報を解読して制御することによる研究成果を積極的に活用す
ること進展しつつあることが指摘されている。人工内耳や脳深部刺激療法が現在実用化されている技術
だが、臨床応用としては、義肢の制御のような福祉工学分野に広がりつつある。たとえば、その有名な例
は、剣山のような形をした電極を脳に埋め込んで利用する米国でのブレインゲートセンサーだろう
(Hochberg et al., “Neuronal ensemble control of prosthetic devices by a human with tetraplegia”, Nature
442:164-171, 2006.)。
245
246
実際、国内外での BMI に関する研究は、近年に急速に増大しつつある(Kubler et al., “Brain-computer
interfaces in the continuum of consciousness”, Curr Opin Neurol 20:643-649, 2007)。
こうした潮流から考えれば、脳内信号によるロボット制御、製品に関する脳内感性情報評価、脳を介し
た新しいコミュニケーション機器の開発などの、将来の基幹産業を構成する可能性も高いだろう。これらの
政策的要請を踏まえた上で、国際シンポジウムでは、国内外の脳科学、哲学、倫理学、政治学、経済学、
宗教学の先端的研究者とともに、ニューロエシックス研究者のネットワークを形成し、脳科学をめぐる政策
立案上の問題、留意点について検討した。このシンポジウムについて報告するまえに、簡単に BMI につ
いてまとめておこう。
247
2.5.2 ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)
(京都大学:美馬達哉、長峯隆、福山秀直)
ブレイン・マシン・インターフェースすなわち BMI
293031
は、ヒト脳の情報をコンピュータ解析して(可能で
あれば)双方向通信することを目指す技術であり、その点からはブレイン・コンピュータ・インターフェース
(Brain Computer Interfaces: BCI,
Communication: BCC,
32 33
)ブレイン・コンピュータ・コミュニケーション(Brain Computer
3435
)などとも呼ばれる。
ヒトと機械とを直結する技術は大きく、神経調節(Neural Modulation)と神経補綴(Neural Prosthesis)に
分類される36。前者の神経調節は、中枢神経系に介入することで、その異常な神経活動を抑制ないし機
能不全となった神経回路を代償・刺激する技術を指している。たとえば、パーキンソン病治療などに使わ
れる脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)やてんかん治療などに可能性がある迷走神経刺激
療法(Vagus Nerve Stimulation: VNS)などが、その例である。いっぽう、神経補綴は、感覚系や運動系の
機能障害を代償するために中枢神経系にアクセスする技術を指している。感覚系であれば、実用化され
ているものでは、聴覚での人工内耳(Cochlear Implants)や聴覚脳幹インプラント(Auditory Brainstem
Implants)、視覚での人工網膜や視覚野インプラント(まだ実験段階)などがある。そして、運動系での神
経補綴、すなわち脳由来情報によって駆動される義肢などが、狭義で BMI と呼ばれる。
また、狭義の BMI は、頭皮上脳波のように無害な手法で脳の情報を収集する非侵襲的(Non-invasive)
BMI と、外科手術によって中枢神経系に留置されたプローブを用いる侵襲的(Invasive)BMI に分類され
る。非侵襲的 BMI は、脳幹梗塞や筋萎縮性側索硬化症(ALS)によるロックトイン症候群(意識はあるが、
全身の麻痺のため意思疎通が困難な状態)でのコミュニケーション機器として実用化されており3738 、患
者への身体的負担も少ないために倫理的諸問題を生じることはほとんどない。
歴史的には、1999 年に、Chapin, Nicholelis らのグループが、ラットの運動皮質から得られた電気信号
を用いてロボットアームを統御した実験が、BMI に神経科学者の関心を引きつける画期となった39。また、
29
Nicolelis, M.A.: Actions from thoughts. Nature, 409: 403-7, 2001.
Donoghue, J.P.: Connecting cortex to machines: recent advances in brain interfaces. Nat Neurosci 5:
S1085-8, 2002.
31
Lebedev, M.A. and M.A. Nicolelis: Brain-machine interfaces: past, present and future. Trends
Neurosci 29: 536-46, 2006.
32
Wolpaw, J.R. and D.J. McFarland: Control of a two-dimensional movement signal by a noninvasive
brain-computer interface in humans. Proc Natl Acad Sci U S A 101: 17849-54, 2004.
33
Kubler, A. and B. Kotchoubey: Brain-computer interfaces in the continuum of consciousness. Curr
Opin Neurol 20: 643-9, 2007.
34
Kubler, A., et al.: Brain-computer communication: unlocking the locked in. Psychol Bull 127: 358-75,
2001.
35
Kubler, A., et al., Brain-computer communication: self-regulation of slow cortical potentials for verbal
communication. Arch Phys Med Rehabil 82: 1533-9, 2001.
36
Merkel R, et al.: Intervening in the Brain: Changing Psyche and Society, Springer-Verlag, Berlin 2007,
especially Section 3 Central Neural Prostheses
37
Wolpaw, J.R. and D.J. McFarland: Control of a two-dimensional movement signal by a noninvasive
brain-computer interface in humans. Proc Natl Acad Sci U S A 101: 17849-54, 2004.
38
Birbaumer, N., et al.: A spelling device for the paralysed. Nature 398: 297-8, 1999.
39
Chapin, J.K., et al.: Real-time control of a robot arm using simultaneously recorded neurons in the
motor cortex. Nat Neurosci 2: 664-70, 1992.
30
248
2006 年には、脊髄損傷患者への侵襲的 BMI の臨床応用が報告された40。ただし、こうした発想そのもの
は新しいものではない。1929 年、物理学者であり科学史家としても知られる J.D. Bernal は、スペースコロ
ニーの可能性を論じた論文のなかで「遺伝子工学、補綴技術的外科、人間と機械を電気的インターフェ
ースで直接に結線すること」の可能性を指摘している41。また、この分野の研究に対する米国国立衛生研
究所(NIH)を通じた公的資金援助プログラムは、すでに 1971 年から存在し、1994 年から 2003 年の 10
年間だけでも、BMI 関連機器は 19 種類も米国食品医薬局(FDA)の認可を受けているという42。
BMI は、ヒトの感覚ないし運動の機能を代償する機器や技術のなかでも、中枢神経系由来の生体情報
の解読や調整によって作動するものを指している。したがって、典型的な BMI においては、少なくとも次
のような三つの構成要素が共通している。
1. 信号記録モジュール:中枢神経系から情報を検出してデジタル化して記録する(通常は電気信号
であることが多い)。
2. データ解析モジュール:記録されたデジタル情報を解読して、機能的に重要な運動パターンに対応
するコードを抽出する。
3. 出力モジュール:ヒトに接続されたアクチュエータ(スピーカー、画面上のカーソル、ロボットアーム、
義足あるいは本人の筋肉など)が、解読された情報に応じて運動を実現する。
この三要素に加えて、BMI の今後の実用化(とくに義肢の場合)に重要とされるのは、アクチュエータの
実際の運動の結果を、可能であれば自然な感覚情報として中枢神経系にフィードバックして、外界の変
化に即応した自然な運動を実現するシステムの開発である。その意味では、双方向性の通信能力を備え
た BMI が求められるだろう。
現在でも応用が進みつつある治療としての BMI に関わる倫理上の問題は、大筋では従来のバイオエシ
ックスや医療倫理の枠組みで解決可能である。そうした道徳的推論の代表的な方法は医療倫理の四原
理という考え方である43。第一の原理は自律で、実行可能で他人に害を与えない範囲であれば、自分の
身体や人生に関わる決定を、誰にも干渉されずに行う権利を意味している。第二は善行の原理で、専門
家としての医師は患者を援助する義務があることを指す。第三は無危害原理で、患者に害を与えないと
いう医師の道徳である。第四は正義の原理で、同じ病状の患者は同じように扱われねばならず、希少な
医療資源の分配は公正に行われなければならないという意味である。こうした諸原理に基づいて道徳的
推論を行い、諸原理のバランスをとることは、BMI による治療関連の倫理的問題を考える上で不可欠であ
る。
治療という側面では、BMI に特異的ではないもののきわめて重要な論点として「微妙な副作用(subtle
40
Hochberg, L.R., et al.: Neuronal ensemble control of prosthetic devices by a human with tetraplegia.
Nature 442: 164-71, 2006.
41
Bernal JD: The World, the Flesh and the Devil, K.Paul Trench and Trubner, 1929. (鎮目恭夫訳:宇
宙・肉体・悪魔:理性的精神の敵について、みすず書房, 1972)
42
Pena, C., et al.: FDA-approved neurologic devices intended for use in infants, children, and
adolescents. Neurology 63: 1163-7, 2004.
43
Beauchamps TL & Childress JF, Principles of Biomedical Ethics, Third edition, Oxford University
Press 1989.(永安幸正、立木教夫監訳:生命医学倫理、成文堂、1997 年)
249
side effects)」を考慮する必要がある44。これは、BMI が人間精神の本質と関連している脳という特殊な臓
器に介入や改変を加える技術であることに由来している。つまり、通常の副次的な有害作用、たとえば侵
襲的処置に伴う感染や神経損傷による機能障害だけではなく、客観的な測定の困難な人格やその人自
身の個人性に関わる微妙な心的変化が起きる可能性のことである。BMI ではないが、パーキンソン病治
療に使われる DBS が、精神症状(とくに情動の変化など)を生じる場合があることは、そうした微妙な副作
用の例である45。
こうした副作用の生じる最大の原因は、BMI 技術が未完成であるということによる。中枢神経系での情
報伝達は、神経軸索の一つ一つに異なった役割があり、シナプスでの神経伝達物質の種類によって機
能も異なる。また、神経発火頻度だけではなく、それらのアセンブリの同期性も情報伝達の重要な要素で
ある。これに対して、現在での BMI の信号記録モジュールは、神経細胞の数と比較にならないほど少な
い電極が配置されたものであって、中枢神経系の情報のごく一部しか拾い上げることができないばかりか、
脳と直接接触することで、脳機能に影響するリスクがある。また、感覚フィードバックを脳に電気信号として
直接入力する場合には、現在の技術ではターゲットとした神経回路以外にも電気刺激が波及して影響を
与える可能性もある。こうした点を解決して、BMI による治療のリスクを減少させるためには、中枢神経系
での情報伝達メカニズムのさらなる解明と、ナノテクノロジーも含めたインターフェース技術開発が求めら
れる。現状においては、心理学や精神医学的な評価も含めた事後的なアウトカム調査や長期の追跡調
査が重要となる。
44
Merkel R, et al.: Intervening in the Brain: Changing Psyche and Society, Springer-Verlag, Berlin 2007,
especially Section 7 Conclusions and Recommendations
45
Deuschl, G., et al.: Deep brain stimulation: postoperative issues. Mov Disord: S219-37, 2006.
250
2.5.3 ワークショップと国際公開シンポジウム
(京都大学:美馬達哉、長峯隆、福山秀直)
国際シンポジウムは、国際公開シンポジウムと、その前日のワークショップの連携の元に行われた。国際シ
ンポジウムの前日である 2008 年 1 月 13 日には、京都大学百周年時計台記念会館において、「脳を活かす」
研究会と共催で、ワークショップ「脳科学と社会的価値の相克を超えて」を開催した。定員 100 名を超える参加
で、熱のこもった討論が行われた。
京都大学医学研究科の池田昭夫氏は、「臨床神経生理学から脳科学への関連」として、臨床神経学の観点
から、てんかん治療と機能脳外科の現状をまとめられた。
産業技術総合研究所脳神経情報部門の長谷川良平氏は、「BMI・・・。いつ、誰に、何のために使うのか?」
として、医学と工学の連携の現状を、一人称での体験をも交えて報告された。
国際電気通信基礎技術研究所脳情報研究所の神谷之康氏は、「脳情報化社会における『私』」として、マイ
ンドリーディングの現状について、その文明論的意義も含めて解説された。
また、本研究班からは、3 名の発表があった。
龍谷大学社会学部の中川輝彦は、「脳科学をめぐる国民意識 調査結果の概要」を報告した。その詳細に
ついては、本報告に示した通りである。
京都文教大学現代社会学科の永澤哲は、「慈悲と炎 チベット仏教と脳研究」として、チベット仏教での瞑想
の科学的理解と解明の現状を報告した。その詳細は本報告に示した通りである。
京都大学医学研究科の美馬達哉は、「ニューロエシックスの条件」として、精神外科手術法の歴史からはじま
る脳科学のバイオエシックス的問題に関しての問題提起を行った。こうした問題意識は、本報告の基調とも通
底するものである。
その後のワークショップでの討論を踏まえた上で、翌日の 1 月 14 日には、国際公開シンポジウム「人間改造
のエシックス ブレインマシンインターフェースの未来」が、同じ京都大学百周年時計台記念会館にて開催され
た。参加者は、主催の予想を上回る 200 名以上で活発な討議が行われた。「脳を活かす」研究会の共催、また
後援としては、特定領域研究「脳機能の統合的研究」およびグローバル COE プログラム「生存学」創成拠点(立
命館大学大学院先端総合学術研究科)とも連携しつつ、開催された。
ヴァージニア大学のジェイムズ・チルドレス氏は、「ニューロエシックス:その原理とジレンマ」について報告し
た。そこでは、神経科学での研究と臨床応用において生じる倫理的諸問題に焦点が当てられた。考察の対象
となったのは、今日および将来の神経科学の発展によって、「バイオエシックスの」枠組みの修正が必要になる
のかどうか、もし必要であるとすればどの程度の修正なのかという点である。チルドレス氏の主張は、はっきりと
区別され、時には分離された倫理学(エシックス)領域―「バイオエシックス」、「ジ―ン(遺伝子)エシックス」、
251
「ニュ―ロエシックス」―を定式化しようとすることによってではなく、いくつかの一般的な倫理原則―たとえば
人間の尊厳、自律、公正、コミュニティの尊重—を定式化すること、および生物医学―とくに遺伝学と神経科学
の領域―にとって問題となる倫理原則を明確にし、それらの諸原則の間のバランスをとることによって、より多く
の倫理的な洞察や導きが得られるということであった。いかなる原則がとくにこの問題に関連しているかを指摘
し、それらによって、人間の脳をマッピングし、モニタリングし、介入することに関わる倫理問題がどう明確化さ
れるか、神経科学における倫理的ジレンマに取り組むために、そうした倫理原則をどのように明確化してそれ
らの間のバランスをとることができるか、について論じられた。また、さまざまな形式でのモニターや、治療もしく
はエンハンスメントのための直接的操作に関わる論争というトピックに触れながら、こうした論点が明確にされ
た。
デューク大学のミハイル・レベデフ氏は、「ブレイン・マシン・インターフェース:過去・現在・未来」について報
告した。そこでは、皮質ニューロンのアンサンブル活動によって惹起される電気活動を用いて直接的にロボット
のマニピュレータを操作することが可能であるという事実が発見されて以来、ブレイン・マシン・インターフェー
ス(Brain-machine interfaces: BMIs)に関する研究が、動物実験でも人間での臨床研究でも、大きく拡大してい
ることが述べられた。この発展を可能としたのは、神経生物学者、工学研究者、コンピュータ科学者、臨床医な
どの学際的な協力であった。こんにちの BMIs はさまざまな神経信号を運動コマンドに変換し、人工的アクチュ
エータによって腕の到達運動や手の把握運動を実現するものである。この方面での画期的発展によって、麻
痺状態にある被験者の四肢の運動能力を元に戻すことができる可能性がある。しかし、この目標が実現される
までには、いくつかの未解決な問題がある、とレベデフ氏はいう。そこに含まれるのは、脳に義肢からの体性感
覚のフィードバックを戻す方法を導入すること、BMI 技術を下肢のコントロールにまで拡張すること、神経活動
から行動に関連するパラメータをリアルタイムで解読する計算アルゴリズムをさらに開発すること、インプラント
可能な生体親和的な記録装置をデザインすること、人間の四肢と変わらない機能を備えた人工的義肢装具を
設計すること、である。こうしたステップを進んでいくことで、未来の BMIs は、まさに革命的な義肢を駆動してコ
ントロールすることができるようになる。そして、その義肢は、脳に内的な表象として組み込まれ、身体の一部と
して感じられ、作動するものとなるだろう、と氏は論じていた。
自然科学研究機構生理学研究所の伊佐正氏は、「日本における脳科学研究と脳神経倫理」について報告し
た。日本におけるいわゆる「脳神経倫理」の歴史が浅いことを指摘し、これまで脳科学が関係してきた「倫理」の
問題はいわゆる動物福祉に関する倫理問題であったり、また現在の日本神経科学学会の人間を対象とする非
侵襲的脳活動計測実験に関する倫理指針の主題である被験者に対するインフォームドコンセントや安全性に
関する問題であったことを論じた。そうした情勢が、ここ数年大きく変化してきているという。そのひとつには、
fMRI や MEG を用いた非侵襲的脳活動記録法によって、従来は外からは見ることができなかった人の深層心
252
理や個人差・個性やその基盤となる脳活動やその遺伝的背景との関係などがより客観的な指標によって「計測
可能」になってきたことがある。実際に研究の潮流もそのような「心の内部」に踏み込もうという方向に推移して
きているという。その成果が、マーケティングや政策決定などに生かされる可能性や、今後 Brain Machine
Interface の研究が進展するに伴って、脳・脊髄損傷や発達障害などによって脳機能に障害を有する個々人に
対してより介入的な治療が行われる可能性が語られるようになってきている。また、健常人の脳機能を高める
「エンハンスメント」についても今後かなり実用化されることになるだろう、と伊佐氏は述べていた。このような脳
科学の研究がより応用的な側面で展開するようになり、社会との接点が広がってきている情勢に鑑み、このよう
な研究分野を推進するとともに、それに伴って生じる倫理問題に対処していくため、2006年春から有志の研
究者を中心として、「脳を活かす」研究会が組織され、この2年弱の間、様々な啓発活動や研究が展開されてき
た。日本人はその文化背景として身体(たとえそれが遺体であっても)を傷つけることには大変慎重である。過
去においても臓器移植や脳死についての社会的合意形成が、欧米諸国とはかなり異なる経緯を辿った歴史が
ある。倫理問題はこのような文化的土壌と切り離して語ることはできない。一方で、一部の遺伝子治療や再生医
療技術、クローン技術などが、未だ人間への応用にはほど遠い研究のレベルにあるにも関わらず過剰な反響
を社会に及ぼしている状況も冷静に分析する必要がある。今後脳科学が社会とより良好な関係を維持して発
展し、人間の福祉に貢献する道筋を開いていくためにも、過去の歴史を的確に分析し、研究の現状について
正しい情報を社会に発信し、かつ研究の方向性も検討されていかなくてはならない。
仏教大学の村岡潔氏は、「脳科学に規制は必要か」について報告した。そこでは、脳神経科学のように、生
命に関する新たなテクノロジーの開発や展開に対しては、それをどのように規制・管理すべきかという議論がし
ばしば注目されるとした上で、医療思想史の観点から、次の「キーワード」を念頭に、脳科学の規制論を試みら
れた。医療・生命科学には常に「不確定性」(例えば、腎臓の片方を摘出したり、心臓の血管造影のために管を
挿入したりすることは生命に危険だとして最初は反対された)が伴うが、それは「リスク」と同義ではないので、
規制を合理化するものではない。安全性やリスクを確かめるには「人体実験」(臨床試験)が不可欠である。ヘ
ルシンキ宣言では、被験者の保護や「自己決定」を前提条件とした上で、科学的知識を増進し人間の苦痛や
苦悩を救うためには生物医学研究における人体実験の必要性を認めている。それは、今日の「ELSI」(倫理的
法的社会的問題・視点)からの規制論につながるという。ただし、自己決定は、脳科学に対しても両義的な判断
を示すであろうから、規制論においては重要な決定要因とはなりにくい。一方、「治療」的介入か「エンハンスメ
ント」かの論拠とされる「患者」(異常)/「健常者」(正常)の二分法は、暫定的な規制要因としては認められるだ
ろう(「医療化」等による境界のシフトがあるので暫定的)。文化社会的世代間的価値観(何が望ましい性質か、
人間とは何か等々)の相違も、脳科学が目指す「人間」改造の内容に変更を迫る要因になると考えられた。しか
し、脳科学の対象となる人間自体の「生物学的耐久性」(基盤)という要因は看過できない。村岡氏の主張は、
253
脳科学の規制論では、倫理的法的よりも、この自己言及的な性格のものが強く働くというものであった。
東京大学の金森修氏は、「エンハンスメントの哲学」について報告された。人間は、環境が与える不快を黙っ
て堪え忍ぶのではなく、それに対して何とか対応しながら、不快度を減らそうとする能動的な存在である。その
能動性のおかげで自然環境を人工物環境に徐々に置き換え、その変換は現在も続いている。人工物環境と
いう人間と外部との関係をそのまま人体内部に反転させたときも、同じ構図を描くことができる。人間は、自然に
よって与えられた条件を不服と見なし、それを技術的介入によって改善しようとする。いわゆる医療は、その一
環と見なすことができる。その場合、人間の正常・生理的状態を徹頭徹尾客観的に確定することには困難が伴
い、生理・病理の境界線が揺れるという事実がある以上、医療とエンハンスメントとの間の境界を区別し続ける
ことにも原理的な困難が伴う。エンハンスメントは、通常の医療からのなし崩し的な展開によって、ごく自然な流
れの中で成立するものであり、人間の外界制覇や自己凌駕の現代的発現に他ならないのである。
NPO 法人 ALS/MND サポートセンターさくら会の川口有美子氏は、「ALS の隠喩、TLS(Totally Locked-in
State)を概観する:重篤なコミュニケーション障害をもつ人の在宅介護の体験から」について報告した。川口氏
の母は、進行の早い筋萎縮性側索硬化症(以下 ALS)で、1995年3月熱海の梅園で突然足が動きにくくなり、
翌年の1996年2月には HMV(在宅人工呼吸療法)を開始した。1999年秋には意思伝達が極めて困難な状
態(ロックトイン状態)になった。ALS では、長期療養患者の多くに何らかの眼球運動障害が発見されるが、そ
れらはひどくなると Minimal Communication State (MCS)と呼ばれる。しかし、かすかに眼球を動かせるのなら、
介護者は何とか患者の意思を拾うことができる。たとえば、眼球が右を向けば yes、左なら no とルールを決めて
工夫すれば、意思疎通は保たれるのである。ただし、介護側が読み取る努力をしなければ、病人は身体の中
にまるで完全に閉じ込められたように見えるので、Totally Locked-in State(TLS)とも呼ばれる。視覚、聴覚、感
覚神経は原則的に阻害されず脳も正常、知能や感情は保たれるが、意思伝達の方法は絶たれてしまうので、
生きていることさえ残酷とも言われ、家族にとっても患者と対話ができなくなることから、不安定な精神状態に陥
ることもある。川口氏は、母以外の重度コミュニケーション症状に生きる人々に会い、その周囲の人の話を聞い
てきた。その結果、TLS は ALS の隠喩となり、関係者に底知れぬ恐怖を与えていること、治療選択にも影響を
及ぼしていることなどがわかってきた。しかし、一方では民間技術者と当事者による意思伝達装置の開発や改
良の努力は長期人工呼吸療法と共に、たゆまなく続けられてきた。重度のコミュニケーション障害を持つ者は
ALS に限らず、多くの神経性疾患、頚椎損傷、遷延性意識障害、重度の脳性まひ、知的障害、脳梗塞、認知症
にも見られるが、彼ら/彼女らと親しい者との間には言語を介在しない多様なコミュニケーションが存在してい
ることもわかってきた。ここでは、意思表示が困難な者のコミュニケーションについて映像を交えて紹介された。
そして、彼らの体験から、健康な者の脳に限定し集中的な能力強化を行えばエンハンスメントになりえるが、人
体の苦痛や障害を緩和するために最終的に脳にアクセスすることは、リハビリや自律支援の領域でありエンハ
254
ンスメントとは異なるとして、仮説概念図が提示された。川口氏の主張は、今後、脳科学研究は多方向に進む
だろうが、「ケア」を基点にすれば、それぞれのブレインインターフェイスの維持にかかる人手やコストなどの効
率性がそれぞれの社会でどのように評価されるかを監視するのも、脳神経倫理学の課題であるというものであ
った。
指定発言をされた方々は、それぞれの専門領域から討議を深める役割を果たしていただいた。京都大学大
学院文学研究科の苧阪直行氏が意識の脳科学と社会神経科学について紹介され、日本大学総合科学研究
所の高木美也子氏は、自身が現在行っておられる欧米での脳深部刺激療法に関する調査を報告され、東京
大学大学院総合文化研究科の信原幸弘氏は、心の哲学の観点からコメントされた。また、文部科学省研究振
興局ライフサイエンス課の菱山豊氏は、脳科学研究での政策に関わる倫理問題に関して発表された。
こうした議論を通じて、この公開シンポジウムでは、ニューロエシックスの「新しい」問題とされていることがら
を、バイオエシックスにおいて蓄積されてきた議論の文脈のなかに置き直し、二つの連続性と差異について考
察することができた。同時に、ブレイン・マシン・インターフェースの最近の進歩を一つの事例として、人間改造
の可能性と危険性について、神経科学、哲学、倫理学、社会学、「生存学」などの複数の視点から学際的に考
究することができた点は大きな成果である。
次頁以降の付録に、国際公開シンポジウムのプログラム等の資料を掲載する。
255
付録(2.5)
国際公開シンポジウム
人間改造のエシックス
ブレインマシンインターフェースの未来
日時:2008 年 1 月 14 日(月、祝) 午前 10:00 ~午後 6:00
場所:京都大学百周年記念ホール
主催:文部科学省 科学技術振興調整費「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影
響の調査研究」研究班(研究代表者:福山秀直・京都大学)
共催:「脳を活かす」研究会
後援:特定領域研究「脳機能の統合的研究」グローバルCOEプログラム
「生存学」創成拠点(立命館大学大学院先端総合学術研究科)
256
開
催
趣
旨
神経科学は近年に急速な進歩を見せ、これまでになかった技術革新を可能としつつある。たとえば、人間が
考えていることを脳スキャンによって探知する技術や、電磁気による脳刺激やニューロフィードバックによるトレ
ーニングで脳機能を強化する手法(エンハンスメント)や、コンピュータを利用して考えるだけで操作できる機器
などの開発と実用化が目前ともいわれる。それだけではなく、強力でしかも副作用の少ない向精神薬の研究開
発も進められ、容易に感情を変化させたり、認知能力を高めたりすることも可能となりつつあるという。
そうした状況の下では、インフォームドコンセントによる被験者保護という従来のバイオエシックスの考え方だ
けでは取り扱うことが困難な新たな問題群が神経科学をめぐって生じつつある。もし、エンハンスメントの利用
が野放しとなり、裕福で権力を持ったエリートだけが努力無しに知的能力を強化できるようになれば、格差社会
における分裂が修復不可能なまでに拡がってしまいかねない。そんな人間改造による『すばらしい新世界』を、
誰が望んでいるというのだろうか。
ニューロエシックス(脳神経倫理)は、こんにちの神経科学がもたらすかもしれない倫理的・法的・社会的な諸
問題を正面から扱おうとしている新生の学問領域だ。さらには、倫理という現象を神経科学によって解明するこ
とで、神経哲学や神経神学すなわち、哲学や神学の客観的基礎付けなども将来的には可能となるかも知れな
いとまで主張する人びともいる。進歩しつつある科学の未来を確実に予測することなど不可能だが、少なくとも、
心脳問題に客観的科学によってアプローチしようとするとき、人間性に関わる諸問題、たとえばプライバシー、
道徳性、主体性、人格、責任などに関連した微妙なことがらを無視できなくなるだろう。
この公開シンポジウムでは、ニューロエシックスの「新しい」問題とされていることがらを、バイオエシックスに
おいて蓄積されてきた議論の文脈のなかに置き直し、二つの連続性と差異について考察する。同時に、ブレ
インマシンインターフェースの最近の進歩を一つの事例として、人間改造の可能性と危険性について、神経科
学、哲学、倫理学、社会学、「生存学」などの複数の視点から学際的に考究する。
257
プ
ロ
グ
ラ
ム
総合司会:濱野清志(京都文教大学)
午前の部(10:00-12:00)(同時通訳あり)
10:00
開会の辞
福山秀直(京都大学)
10:05
基調講演
“Neuroethics: Principles and Dilemmas”
(ニューロエシックス:その原理とジレンマ)
講師:ジェイムズ・チルドレス
(James F. Childress, University of Virginia)
司会:粟屋 剛(岡山大学)
11:05
特別講演
“Brain-machine interfaces: past, present and future”
(ブレインマシンインターフェース:過去・現在・未来)
講師:ミハイル・レベデフ
(Mikhail A. Lebedev, Duke University)
司会:森本 淳(ATR 脳情報研究所)
258
午後の部(13:30-18:00) シンポジウム
司会:虫明 茂(就実大学)
13:30
「日本における脳科学研究と脳神経倫理」
伊佐 正(神経科学、自然科学研究機構生理学研究所)
14:05
「脳科学に規制は必要か」
村岡 潔(医療思想史、佛教大学)
14:40
「エンハンスメントの哲学」
金森 修(科学哲学、東京大学)
15:15
「ALS の隠喩、TLS(Totally Locked-in State)を概観する:
重篤なコミュニケーション障害をもつ人の在宅介護の体験から」
川口有美子(NPO 法人 ALS/MND サポートセンターさくら会、
日本 ALS 協会)
15:50
休憩
16:30
総合討論
指定発言
苧阪直行
(京都大学)
高木美也子
(日本大学)
信原幸弘
(東京大学)
菱山 豊
(文部科学省研究振興局ライフサイエンス課)
18:00
閉会
259
基
調
講
演
Neuroethics: Principles and Dilemmas in the Neurosciences
James F. Childress, University of Virginia
This lecture will focus on ethical issues that arise in research in and clinical applications of the
neurosciences. It will consider whether and to what extent current and potential developments in the
neurosciences necessitate revisions in “bioethical” frameworks.
In contrast to efforts to formulate
distinct, and sometimes separate areas of ethics, such as “bioethics,” “genethics,” or “neuroethics,” this
lecture will argue that more ethical insight and guidance comes from the formulation of several general
ethical principles, such as respect for human dignity, autonomy, justice and community, and from
specifying and balancing these principles for biomedicine, genetics, and the neurosciences, among other
areas. This lecture will identify several relevant principles, indicate how they together can illuminate
ethical issues in mapping, monitoring, and intervening in the human brain, and how they can be specified
and balanced to address ethical dilemmas in the neurosciences.
It will illustrate these points by
reference to controversies about various forms of monitoring and direct manipulation for treatment or
enhancement, among other topics.
260
ニューロエシックス:その原理とジレンマ
ヴァージニア大学:ジェームス・F・チルドレス
この基調講演では、神経科学での研究と臨床応用において生じる倫理的諸問題に焦点を当てる。考
察の対象とするのは、今日および将来の神経科学の発展によって、「バイオエシックスの」枠組みの修正
が必要になるのかどうか、もし必要であるとすればどの程度の修正なのかという点である。この講演で主張
したいことは、はっきりと区別され、時には分離された倫理学(エシックス)領域—「バイオエシックス」、「ジ
ーン(遺伝子)エシックス」、「ニューロエシックス」—を定式化しようとすることによってではなく、いくつかの
一般的な倫理原則—たとえば人間の尊厳、自律、公正、コミュニティの尊重—を定式化すること、および生
物医学-とくに遺伝学と神経科学の領域-にとって問題となる倫理原則を明確にし、それらの諸原則の
間のバランスをとることによって、より多くの倫理的な洞察や導きが得られるということである。ここでは、い
かなる原則がとくにこの問題に関連しているかを指摘し、それらによって、人間の脳をマッピングし、モニ
タリングし、介入することに関わる倫理問題がどう明確化されるか、神経科学における倫理的ジレンマに
取り組むために、そうした倫理原則をどのように明確化してそれらの間のバランスをとることができるか、を
論じる。ここでは、さまざまな形式でのモニターや、治療もしくはエンハンスメントのための直接的操作に関
わる論争というトピックに触れながら、こうした論点を明確にしてみたい。
261
特
別
講
演
Brain-machine interfaces: past, present and future
Mikhail A. Lebedev, Duke University
Since the original demonstration that electrical activity generated by ensembles of cortical neurons
can be employed directly to control a robotic manipulator, research on brain machine interfaces (BMIs)
has experienced an explosive growth both in animal experimentation and human clinical trials. This growth
was possible due to the efforts of researchers from multiple disciplines: neurobiologists, engineers,
computer scientists and clinicians. Modern BMIs translate different forms of neuronal signals into motor
commands that reproduce arm reaching and hand grasping movements in artificial actuators. These
impressive developments hold promise for the restoration of limb mobility in paralyzed subjects. However,
before this goal can be achieved several issues have to be solved. These include introducing a method for
providing the brain with somatosensory feedback from the prosthetic limbs, extending BMI technology to
lower limb control, further developing real-time computational algorithm for decoding of behavioral
parameters from neuronal activity, designing fully implantable biocompatible recording devices, and
building advanced artificial prostheses capable of reproducing the functionality of human limbs. By
reaching these milestones, future BMIs will be able to drive and control revolutionary prostheses that
integrate in the brain internal representation and feel and act like parts of the body.
262
ブレインマシンインターフェース:過去・現在・未来
デューク大学:ミハイル・A・レベデフ
皮質ニューロンのアンサンブル活動によって惹起される電気活動を用いて直接的にロボットのマニピュ
レータを操作することが可能であるという事実が発見されて以来、ブレインマシンインターフェース
(Brain-machine interfaces: BMIs)に関する研究は、動物実験でも人間での臨床研究でも、大きく拡大し
ている。この発展を可能としたのは、神経生物学者、工学研究者、コンピュータ科学者、臨床医などの学
際的な協力であった。こんにちの BMIs はさまざまな神経信号を運動コマンドに変換し、人工的アクチュエ
ータによって腕の到達運動や手の把握運動を実現するものである。この方面での画期的発展によって、
麻痺状態にある被験者の四肢の運動能力を元に戻すことができる可能性がある。しかし、この目標が実
現されるまでには、いくつかの未解決な問題がある。そこに含まれるのは次のようなことだ。脳に義肢から
の体性感覚のフィードバックを戻す方法を導入すること、BMI 技術を下肢のコントロールにまで拡張するこ
と、神経活動から行動に関連するパラメータをリアルタイムで解読する計算アルゴリズムをさらに開発する
こと、インプラント可能な生体親和的な記録装置をデザインすること、人間の四肢と変わらない機能を備え
た人工的義肢装具を設計すること、である。こうしたステップを進んでいくことで、未来の BMIs は、まさに
革命的な義肢を駆動してコントロールすることができるようになるだろう。その義肢は、脳に内的な表象とし
て組み込まれ、身体の一部として感じられ、作動するものとなるだろう。
263
シ
ン
ポ
ジ
ウ
ム
日本における脳科学研究と脳神経倫理
伊佐 正(神経科学、自然科学研究機構生理学研究所)
日本におけるいわゆる「脳神経倫理」の歴史は浅い。これまで脳科学が関係してきた「倫理」の問題はいわ
ゆる動物福祉に関する倫理問題であったり、また現在の日本神経科学学会の人間を対象とする非侵襲的脳活
動計測実験に関する倫理指針の主題である被験者に対するインフォームドコンセントや安全性に関する問題
であった。ところがここ数年大きく情勢が変化してきている。
ひとつには fMRI や MEG を用いた非侵襲的脳活動記録法によって、従来は外からは見ることができなかっ
た人の深層心理や個人差・個性やその基盤となる脳活動やその遺伝的背景との関係などがより客観的な指標
によって「計測可能」になってきたことがある。実際に研究の潮流もそのような「心の内部」に踏み込もうという方
向に推移してきている。そしてその成果は、マーケッティングや政策決定などに生かされる可能性も広がって
きている。一方、今後 Brain Machine Interface の研究が進展するに伴って、脳・脊髄損傷や発達障害などによ
って脳機能に障害を有する個々人に対してより介入的な治療が行われる可能性が語られるようになってきてい
る。また健常人の脳機能を高める「エンハンスメント」についても今後かなり実用化されることになるだろう。
このような脳科学の研究がより応用的な側面で展開するようになり、社会との接点が広がってきている情勢に
鑑み、このような研究分野を推進するとともに、それに伴って生じる倫理問題に対処していくため、2006年春
から有志の研究者を中心として、「脳を活かす」研究会が組織され、この2年弱の間、様々な啓発活動や研究を
展開してきた。
日本人はその文化背景として身体(たとえそれが遺体であっても)を傷つけることには大変慎重である。過去
においても臓器移植や脳死についての社会的合意形成が、欧米諸国とはかなり異なる経緯を辿った歴史があ
る。倫理問題はこのような文化的土壌と切り離して語ることはできない。一方で、一部の遺伝子治療や再生医
療技術、クローン技術などが、未だ人間への応用にはほど遠い研究のレベルにあるにも関わらず過剰な反響
を社会に及ぼしている状況も冷静に分析する必要がある。
今後脳科学が社会とより良好な関係を維持して発展し、人間の福祉に貢献する道筋を開いていくためにも、
過去の歴史を的確に分析し、研究の現状について正しい情報を社会に発信し、かつ研究の方向性も検討され
ていかなくてはならない。今回のシンポジウムではこのような「脳を活かす」研究会の活動について報告すると
ともに、脳研究に携わる者としての見解を述べて様々な分野の方々と意見交換を行いたいと考えている。
脳科学に規制は必要か
村岡 潔(佛教大学)
脳神経科学のように、生命に関する新たなテクノロジーの開発や展開に対しては、それをどのように規制・管
理すべきかという議論がしばしば注目される。この発表では、医療思想史の観点から、次の「キーワード」を念
頭に、脳科学の規制論を試みる。
264
医療・生命科学には常に「不確定性」(例えば、腎臓の片方を摘出したり、心臓の血管造影のために管を挿
入したりすることは生命に危険だとして最初は反対された。)が伴うが、それは「リスク」と同義ではないので、規
制を合理化するものではない。
安全性やリスクを確かめるには「人体実験」(臨床試験)が不可欠だ。ヘルシンキ宣言では、被験者の保護や
「自己決定」を前提条件とした上で、科学的知識を増進し人間の苦痛や苦悩を救うためには生物医学研究に
おける人体実験の必要性を認めている。
それは、今日の「ELSI」(倫理的法的社会的問題・視点)からの規制論につながる。
ただし自己決定は、脳科学に対しても両義的な判断を示すであろうから、規制論においては重要な決定要
因とはなりにくい。一方、「治療」的介入か「エンハンスメント」かの論拠とされる「患者」(異常)/「健常者」(正
常)の二分法は、暫定的な規制要因としては認められよう(「医療化」等による境界のシフトがあるので暫定
的)。
文化社会的世代間的価値観(何が望ましい性質か、人間とは何か等々)の相違も、脳科学が目指す「人間」
改造の内容に変更を迫る要因となろう。しかし脳科学の対象となる人間自体の「生物学的耐久性」(基盤)という
要因は看過できない。脳科学の規制論では、倫理的法的よりも、この自己言及的な性格のものが強く働くと思
われる。
265
エンハンスメントの哲学
金森 修(東京大学)
人間は、環境が与える不快を黙って堪え忍ぶのではなく、それに対して何とか対応しながら、不快度を減ら
そうとする能動的な存在だ。その能動性のおかげで自然環境を人工物環境に徐々に置き換え、その変換は現
在も続いている。人工物環境という人間と外部との関係をそのまま人体内部に反転させたときも、同じ構図が描
ける。人間は、自然によって与えられた条件を不服と見なし、それを技術的介入によって改善しようとする。い
わゆる医療は、その一環と見なすことができる。その場合、人間の正常・生理的状態を徹頭徹尾客観的に確定
することには困難が伴い、生理・病理の境界線が揺れるという事実がある以上、医療とエンハンスメントとの間
の境界を区別し続けることにも原理的な困難が伴う。エンハンスメントは、通常の医療からのなし崩し的な展開
によって、ごく自然な流れの中で成立するものだ。エンハンスメントは、人間の外界制覇や自己凌駕の現代的
発現に他ならないのである。
266
ALS の隠喩、TLS(Totally Locked-in State)を概観する:
重篤なコミュニケーション障害をもつ人の在宅介護の体験から
川口有美子(NPO 法人 ALS/MND サポートセンターさくら会、日本 ALS 協会)
「私の母は非常に早く進行する ALS(筋萎縮性側索硬化症、以下ALS)を患い、1995 年3 月熱海の梅園で突
然足が動きにくくなったのを発症とするのなら、翌年の 1996 年 2 月には、HMV(在宅人工呼吸療法)を開始し
たので、たった一年で私たち家族の人生は大きく変わったことになる。
そして、1999 年秋には母は意思伝達が極めて困難な状態(ロックトイン状態)に至った。母の随意筋は四肢
筋群はもちろん橋・延髄筋群、外眼筋群も含めてほとんど動かなくなってしまったが、しばらくするとバイタルは
安定し、風邪をひくことも少ない頑健な身体で穏やかにその後の8年間を家族と自宅で過ごした。
ALS では、長期療養患者の多くに何らかの眼球運動障害が発見されるが、それらはひどくなると Minimal
Communication State (MCS)と呼ばれる。しかし、かすかに眼球を動かせるのなら、介護者は何とか患者の意思
を拾うことができる。たとえば、眼球が右を向けば yes、左なら no とルールを決めて工夫すれば、意思疎通は保
たれるのである。ただし、介護側が読み取る努力をしなければ、病人は身体の中にまるで完全に閉じ込められ
たように見えるので、Totally Locked-in State(TLS)とも呼ばれる。視覚、聴覚、感覚神経は原則的に阻害され
ず脳も正常、知能や感情は保たれるが、意思伝達の方法は絶たれてしまうので、生きていることさえ残酷とも言
われ、家族にとっても患者と対話ができなくなることから、不安定な精神状態に陥ることもある。」これは、2003
年 2 月に立命館大学大学院先端総合学術研究科に提出した研究計画書の一部である。タイトルは『「Totally
Locked-in State という現実を越えて」どこも動かせぬ人の介護理論』であった。それ以後、私は母以外の重度
コミュニケーション症状に生きる人々に会い、その周囲の人の話を聞いてきた。その結果、TLS は ALS の隠喩
となり、関係者に底知れぬ恐怖を与えていること、治療選択にも影響を及ぼしていることなどがわかってきた。
しかし、一方では民間技術者と当事者による意思伝達装置の開発や改良の努力は長期人工呼吸療法と共
に、たゆまなく続けられてきたのである。重度のコミュニケーション障害を持つ者は ALS に限らず、多くの神経
性疾患、頚椎損傷、遷延性意識障害、重度の脳性まひ、知的障害、脳梗塞、認知症にも見られるが、彼ら/彼
女らと親しい者との間には言語を介在しない多様なコミュニケーションが存在していることもわかってきた。
報告では、意思表示が困難な者のコミュニケーションについて映像も交えて紹介する。そして、彼らの体験
から、健康な者の脳に限定し集中的な能力強化を行えばエンハンスメントになりえるが、人体の苦痛や障害を
緩和するために最終的に脳にアクセスすることは、リハビリや自律支援の領域でありエンハンスメントとは異な
るのではないかと考え、仮説概念図を提示する。今後、脳科学研究は多方向に進むだろうが、「ケア」を基点に
すれば、それぞれのブレインインターフェイスの維持にかかる人手やコストなどの効率性がそれぞれの社会で
どのように評価されるかを監視するのも、脳神経倫理学の課題と私は考える。
267
プ
ロ
フ
ィ
ー
ル
基調講演
ジェイムズ・チルドレス(James F. Childress)
ヴァージニア大学宗教学科教授
同大学実践倫理研究所所長
略歴:
1940 年生まれ。イエール神学校およびイエール大学大学院宗教学科卒。ジ
ョージタウン大学教授(1975-79)を経て、1979 年より、ヴァージニア大学宗
教学科教授。2000 年より同大学実践倫理研究所所長を兼任。
専門は生命倫理学・宗教学。
Practical Reasoning in Bioethics(単著)、Principles of Biomedical Ethics(ト
ム・ビーチャムとの共著)など著書、論文多数。2004 年、アメリカ生命倫理学
会より生涯功労賞を受賞。
特別講演
ミハイル・レベデフ(Mikhail A. Lebedev)
デューク大学神経科学部上級研究員
略歴:
1986 年、モスクワ物理工科大学卒業。米国テネシー大学にて学位取得。同
大学ポスドク、米国国立衛生研究所精神保健研究所(NIMH)研究員などを
経て、2002 年から現職。BMI研究の第一人者ニコレリス教授のもとで研究
を行う。
関連論文は多数。2006 年には、”Trends in Neuroscience”誌にニコレリス教
授との共著でBMIに関する総説論文を発表した(”Brain-machine
interfaces: past, present and future”, TINS 29: 294-546, 2006)
268
シンポジスト
伊佐 正
自然科学研究機構 生理学研究所
発達生理学研究系認知行動発達機構研究部門 教授
略歴:
1985 年、東京大学医学部卒。同医学系研究科修了。医学博士。
スウェーデン王国イェテボリ大学客員研究員、東京大学医学部助手、群馬
大学医学部助教授を経て、1996 年より現職。
専攻:
神経生理学
金森 修
東京大学大学院教育学研究科 教授
略歴:
1973 年 4 月 東京大学教養学部文科Ⅲ類入学
1986 年 3 月 東京大学大学院人文科学研究科単位取得満期退学
1987 年 4 月 筑波大学現代語・現代文化学系講師
1997 年 4 月 東京水産大学水産学部助教授
2000 年 4 月 東京水産大学水産学部教授
2001 年 4 月 東京大学大学院教育学研究科助教授
2002 年 5 月 現職
269
川口有美子
NPO 法人 ALS/MND さくら会理事、日本 ALS 協会理事
略歴:
1985 年 4 月、東京都足立区立渕江小学校教諭となる。結婚、出産の後、
1988 年に退職し、夫の留学に伴い 渡米(Philadelphia)。1990 年帰国し、そ
の後長男出産。1992 年 10 月、夫の赴任に伴い渡英(London)。1995 年 12
月、ALS を発症した母の介護のために帰国し、翌年 2 月から実家にて在宅
人工呼吸療法を開始する。2000 年、在宅介護において、マクトス(脳波によ
る意思伝達装置)を導入。2006 年、「心語り」(脳血流による意思伝達装置)
を導入するが、使用せず。
1999 年 12 月、介護情報提供のためのホームページを作成する。2003 年 4
月、有限会社ケアサポートモモ設立。2003 年 6 月、在宅介護支援さくら会で
研修事業部を開始。同年 10 月、NPO 法人 ALS/MND サポートセンターさく
ら会設立した。2004 年 4 月から日本 ALS 協会理事就任。
村岡 潔
佛教大学社会福祉学部 教授
略歴:
1949 年群馬県生。
1975 年日本医科大学卒業後、日本医科大学付属病院救命救急センター、
東京労災病院脳神経外科、北村山公立病院脳神経外科勤務。1986 年よ
り、大阪大学医学部大学院医学研究科博士課程(環境医学[主任:中川米
造教授]単位取得退院)、医療文化研究センター主任研究員、大阪大学付
属病院シニア医員(環境医学)を経て、1998 年佛教大学文学部専攻科助教
授(医学概論)。2005 年同大学社会福祉学部教授(医学概論)となり、現在
に至る。
270
指定発言
苧阪直行
京都大学大学院文学研究科 教授
略歴:
1976 年、京大大学院文学研究科博士課程実験心理専攻修了後、1979 年
に文学博士。1977 年、追手門学院大学文学部専任講師に就任し、1981 年
に同大学助教授となる。1987 年、京都大学文学部助教授。1994 年より現
職。
学会・委員会活動:
2000 年、第 64 回日本心理学会会長、日本色彩学会会長。2003 年、日本ワ
ーキングメモリ学会会長。2004 年、日本学術振興会プログラム・オフィサ
ー。2005 年、関西心理学会会長、日本学術会議第 20 期会員。2007 年、文
部科学省脳科学委員会委員。
専門:
ワーキングメモリの認知脳科学・実験心理学、意識と注意の認知科学・認
知脳科学。
高木美也子
日本大学総合科学研究所 教授
略歴:
1979 年、青山学院大学理工学部助手(生化学)に就任。同年 11 月、PARIS
第Ⅶ大学博士課程終了し、理学博士を取得(Docteur de Université des
Sciences)する。1985 年 8 月、国立中央科学研究機関(CNRS)L'Institut
Jacques-Monod に研究留学。1992 年 3 月、オーストラリア、メルボルン市の
モナッシュ大学生命倫理研究所に研究留学(私学振興財団給費)。1981
年、東横学園女子短大一般教養科講師(生化学)を経て、1985 年に助教授
となる。1988 年、東京工業大学講師を併任(生体材料)。さらに、1990 年、
武蔵工業大学講師併任(生命科学)。1993 年、東横学園女子短大一般教
養科教授(生化学)に就任し、1995 年に青山学院大学総合研究所客員研
究員となる。1996 年、慶応義塾大学理工学部講師併任(生命科学)を経て、
2000 年より、現職。
271
信原幸弘
東京大学大学院総合文化研究科 准教授
略歴:
1954 年生まれ、兵庫県出身、博士(学術)。
1977 年 3 月 東京大学教養学部教養学科(科学史及び科学哲学分科)卒
業
1983 年 3 月 東京大学大学院理学系研究科科学史・科学基礎論専攻博
士課程単位取得退学
1985 年 4 月 関東学院大学工学部専任講師
1990 年 4 月 創価大学文学部助教授
1992 年 4 月 筑波大学哲学・思想学系助教授
1995 年 4 月 東京大学教養学部助教授
2007 年 4 月 東京大学大学院総合文化研究科准教授
菱山
豊
文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 課長
政策研究大学院大学客員教授、早稲田大学客員教授
略歴:
1985 年 東京大学医学部保健学科卒業後、科学技術庁入庁。原子力安
全、宇宙開発、海洋開発等の行政に従事。
1992 年 国際連合事務局
1995 年 在ドイツ日本大使館で科学技術・環境担当の一等書記官を務め
る。
1999 年 放射線医学総合研究所企画室勤務
2001 年 1 月~2003 年 6 月 文部科学省で生命倫理・安全対策室長を務
め、各種指針や法案作りに取り組んだ。
2003 年 6 月 政策研究大学院大学教授
2005 年 7 月 日本学術会議事務局参事官
2007 年 1 月 現職
272
司会
濱野清志
京都文教大学人間学部臨床心理学科 教授
同大学心理臨床センター所長
略歴:
1956 年 神戸生まれ(12 月 4 日)。
1979 年に京都大学法学部を卒業し、1982 年に同大学教育学部を卒業す
る。1987 年、京都大学大学院教育学研究科博士課程修了(臨床心理学)
後、1988 年から京都大学教育学部の助手に就任。その後、1989 年に臨床
心理士(日本臨床心理士資格認定協会)資格取得。1990 年、九州大学教養
部助教授に就任。九州大学健康科学センターなどを経て、2002 年から現
職。2007 年、京都大学で博士号(教育学)取得。
粟屋 剛
岡山大学大学院医歯薬学研究科 教授
略歴:
1950 年山口県生まれ。九州大学理学部等卒業。その後、宇部短期大学助
手、徳山大学教授等を経て、2002 年 4 月より岡山大学大学院医歯(薬)学総
合研究科教授。専門は生命倫理及び医事法。現在、日本生命倫理学会常
任理事、日本人権教育研究学会理事、日本医学哲学倫理学会評議員、国
際臨床生命倫理協議会(International Society for Clinical Bioethics)副会
長、インド生命倫理学会永久会員等。
1992 年以降、インド、フィリピンにおける臓器売買、中国における死刑囚から
の臓器移植、アメリカにおける人体商品化などについての実態調査を行う。
中国の死刑囚移植については、1998 年、アメリカ連邦議会(下院)にて証言
及び意見陳述を行う。
2006 年 11 月、岡山大学にて第18回日本生命倫理学会年次大会を主催。
273
森本淳
ATR 脳情報研究所 研究員
略歴:
2001 年 奈良先端科学技術大学院大学 博士後期課程 修了
2001 年 カーネギーメロン大学(米国)ポスドク研究員
2002 年 ATR人間情報科学研究所 研究員
2003 年 ATR脳情報研究所 研究員(組織変更により)
2004 年 (独)科学技術振興機構国際共同研究 計算脳プロジェクト研究員
(併任)
虫明 茂
就実大学人文科学部 教授 (哲学、生命倫理学)
略歴:
1983 年 東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士課程 単位修得満
期退学
1983 年 千葉大学教養部 非常勤講師 (~1984 年 3 月)
1984 年 就実女子大学文学部 講師
1992 年 10 月 フライブルク大学哲学部 客員研究員 (~1993 年 9 月)
1995 年 就実女子大学文学部 教授
2003 年 現職
274
研究代表者
福山秀直
京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター 教授・センタ
ー長
略歴:
1975 年 3 月 京都大学医学部卒業
1975 年、京都大学医学部附属病院にて研修。1976 年、静岡労災病院(現
浜松労災病院)神経内科勤務後、1979 年~83 年、京都大学医学部大学院
にて研究。
1983 年 4 月 京都大学附属病院神経内科 医員
1985 年 4 月 京都大学医学部神経内科 助手
1991 年 7 月 京都大学医学部神経内科 講師
1995 年 6 月 京都大学医学研究科臨床脳生理学 助教授
2000 年 4 月 京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究セン
ター 助教授
2001 年 1 月 現職
主な研究テーマ:
PETを用いた脳循環代謝の研究。
所属学会:
日本神経学会(評議員)、日本脳卒中学会(評議員)、日本自律神経学会
(評議員)、日本老年学会(評議員)、認知神経科学会(理事)、日本内科学
会、日本脳循環代謝学会、日本臨床脳生理学会、日本核医学会、
American Academy of Neurology (fellow)、International society of Cerebral
Blood Flow and Metabolism、Society of Nuclear Medicine。また、雑誌編集
委員(Journal of Neuroimaging, Cognition and Dementia)を務める。
275
3. 調査研究成果の発表状況(全体)
(成果発表の概要)(調整費充当領域分)
1. 原著論文(査読付き)
該当なし
2. 上記論文以外による発表
該当なし
3. 口頭発表
招待講演:該当なし、主催講演:4 回、応募講演:該当なし
4. 特許出願
該当なし
5. 受賞件数
該当なし
1. 原著論文(査読付き)
該当なし
2. 上記論文以外による発表
国内誌(国内英文誌を含む)
該当なし
国外誌
該当なし
3. 口頭発表
招待講演
該当なし
主催・応募講演
中川輝彦:「脳科学をめぐる国民意識-調査結果の概要」, 京都大学百周年時計台記念会館, 脳
科学と社会的価値の相克を超えて, 2008.1.13
永澤哲:「慈悲と炎 チベット仏教と脳研究」,京都大学百周年時計台記念会館, 脳科学と社会的
価値の相克を超えて, 2008.1.13
美馬達哉は:「ニューロエシックスの条件」,京都大学百周年時計台記念会館, 脳科学と社会的価
値の相克を超えて, 2008.1.13
村岡潔:「脳科学に規制は必要か」, 京都大学百周年時計台記念会館, 人間改造のエシックス
ブレインマシンインターフェースの未来, 2008.1.14
4. 特許出願
該当なし
5. 受賞件数
該当なし
276
6. その他の主な情報発信(一般公開のセミナー、展示会、著書、Wwb等)
① Web 公 開: 「 意識 の 先端 的 脳 科学が も た らす倫 理 的・ 社会 的・ 宗 教的 影 響 の調査 研 究」 ,
http://hbrc.kuhp.kyoto-u.ac.jp/nourinri/index.html, 20008.7.1
②新聞発表:「脳科学「歯止め必要」56%(文科省研究班が 2500 人調査)」, 朝日新聞, 2008.1.5
277
「重要政策課題への機動的対応の推進」プログラム
「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響
の調査研究」-資料
中核機関名:京都大学
研究代表名:福山秀直
研究期間:平成19年度
目次
1.チベット修行僧インタビュー(2007.8, チベット)
1
2.臨床心理・宗教的・精神的側面研究会記録
14
2.1 中健次郎氏インタビュー( 2007.10.13, 那智勝浦)
14
2.2 安藤泰至氏インタビュー(2007.10.13, 那智勝浦)
34
3.講演会「ブレイン-マシン・インタフェースの現状と展望」記録(20007.10.31, 京都)
47
4.第3回研究推進委員会記録
53
4.1 AD/HD とリタリン―医療化論の視点から―(20007.12.02, 京都)
53
4.2 エンハンスメントと脳科学技術(20007.12.02, 京都)
62
5.第2回脳神経倫理国際動向調査研究会記録
5.1 脳死大概―ニューロエシックスを学ぶ人のために―(2007.12.27, 安曇野)
81
81
5.2 Gene Enhancement に対する社会意識の規定要因―“遺伝子決定論(感)”を中心に―
(20007.12.28, 安曇野)
95
6.バイオエシックスの「世俗化」をめぐって(20008.01.13, 東京)
111
7.レベデフ対談記(2008.01.13, 京都)
120
8.国際公開シンポジウム記録
124
8.1 基調講演-ニューロエシックス:その原理とジレンマ(2008.01.14, 京都)
124
8.2 特別講演-ブレインマシンインターフェース:過去・現在・未来(2008.01.14, 京都)
136
8.3 午後の部シンポジウム(2008.01.14, 京都)
143
9.モレノ教授インタビュー(2008.03.21, ワシントン)
201
10.クリスタキス教授との会合報告(2008.03.24, ボストン)
206
11.脳科学をめぐる国民意識調査集計結果
209
11.1 単純集計(2007.12)
209
11.2 性別クロス集計(2007.12)
347
11.3 年齢別クロス集計(2007.12)
485
資料 1.チベット修行僧インタビュー(2007.8, チベット)
(京都文教大学:濱野清志,永澤哲)
青海省でのチベット密教修行者へのインタビュー記録
青海省A寺 アニ B さん(尼僧)
2007 年 8 月(通訳は永澤による)
濱野:今日は、青海省A寺の尼僧の人たちが暮らしている場所に来ています。今から、Bさんにインタビュ
ーします。
永澤:Bというのはね、高貴なお姫様みたいな意味の名前で、それに、仏教の教え、灯明というか光という
か、灯りというか、そういう名前ですね。彼女はおこもりを 1 年やって、ちょっとまた休んで、また半年やっ
て、そういうのをずっと続けている、そういう生活をしてきたようですね。
金山:Bさんとお呼びすればいいですか。
永澤:はい。
金山:質問するときにお名前は呼ばないほうがいいんですか。
永澤:アニというのは尼さんという意味でアニBとお呼びすればいいです。
金山:私達は日本の文部科学省によるチベット医学調査グループです。このたびは調査に協力していた
だいてありがとうございます。
金山:このインタビューの内容を録音と録画させていただいてよろしいですか。
アニB:いいですって。
金山:じゃあ、最初に質問しますね、アニBは今どういう生活をしておられますか。
アニB:朝 5 時か 6 時には起きて、1 時間から 2 時間ないしは 3 時間くらいお経を読んで真文を唱える修
行をします。あとお寺の方で仕事ある場合にはその寺の方に仕事に行きます。ない場合には、朝ごは
ん食べた後に、修行をします。それがまあだいだい一日です。
お寺で特に仕事がないときには、朝ごはんの前の修行の後に、お経を読んだりとか、あとは五体投
地をしたりとかですね、後は、マニコムっていう、マニグルマですね、あれを回したりとか、まあそういうこ
とをやりますが特に決まっていません。
おこもりに入るときには朝 4 時には起きます。
金山:どんな経緯でここに来られましたか。
アニB:もともとは、Cというところなんですけども、そこにいたんです。尼さんになりたい、修行したいってい
うふうに思って、最初にそこにいた有名な僧のところに行って最初 1 年間は、ご飯を作ってました。その
後、家に戻ることになったんだけど、どうしても尼さんになりたくて、家族はみんな信仰はない人たちな
ので、3 回か 4 回くらい、お寺に尼になりたいっていうふうに言いに行って、その後しばらくその小さな、
祠にちかい形のお寺にいました。ところがそこは基本的には男の人たちがいるところだったので、これ
以上長くいてはいけないということで、それでこちらに来たんです。
私は、Cというところの出身で、農民のお家です。兄弟は 10 人いて、そのうち、7 人が男で、3 人が女
で、自分は 10 人兄弟の 7 番目です。
金山:じゃあ次に、アニBさんはチベット医学の治療を受けたことがありますか。
1
アニB:治療受けたことあります。あと、Dという車で 6 時間くらい行ったところに有名なお医者さんがいて、
何回かその方の治療を受けたことがあります。
金山:そうですか。チベット医学に対してどのようなイメージがありますか。
アニB:以前に、背骨の中にまた別に骨が出来てくるという病気になったことがあって、そのとき背中も非
常に痛いし、足先とかそういうところにもなんか痛いってそういう状態になりました。中国の病院っていう
か、西洋医学の病院ですけども、そこに行ったんで、そういうふうに診断されたわけなんですが、すごく
お金が高くて。それでどうしようかと思ったんですが、チベット医学のお医者さんのところに行ったら、た
だで薬を出してくれて、そこへ何回か行くうちに完全に治りました。だからチベット医学って非常に、そう
いう意味で、自分はそれによって益されたというふうに思っています。非常に有益なものだというふうに
思っています。
金山:そうですか。じゃあ次に、西洋医学に対してはどのようなイメージがありますか。その、たぶん最初の
病院で受けた治療に対して。
永澤:足の指の関節が痛くなったことがあって、その時に西洋医学の病院に行きました。その時に点滴を
3 回受けましたが、それは有益だといった感じは全然しなかった。もしかしたら将来それが有益だという
ふうになるのかもしれないけども、あんまりそういうふうには今は思っていません。
金山:今その西洋医学では、病気の治療や予防だけじゃなくて、人のもともとの能力をより強めようとする
動きが活発になっています。このような動きや状況についてアニ B さんは何かご存知ですか。
アニB:聞いた事ありません。
金山:例えば、脳を部分的に操作することで、記憶力を高めたり、思考力や集中力を高めたり、嫌な気分
を消したりということなんですけれども。それについてどう思われますか。
アニB:一時的には今は良いように思えると思うけど、たぶん後でひどいことが起こるだろうと思います。そ
うではないですか?
金山:私達は、同じようにとっても危機感を持っています。それに対して、どう思われますか。
アニB:今は一時的にはいいかもしれないけど、長期的にみるとどうかとか、それから歳をとってからどうか
とか考えたときに、非常になんか恐ろしいような感じがします。
金山:あともうひとつ。女性としてチベット仏教の世界に入って、苦労された点、それから、その分実り多い
なと感じておられる点、教えていただけますか。
アニB:尼僧の場合に困るなって思うのは、経済的な問題があります。男の人の場合だと、お寺にいろん
な施主というかスポンサーがつきますが、それに比べて尼寺にはそういうスポンサーや施主がつきにく
い。あと、私には兄弟が 10 人いて、家族が多いので、家からというのも期待できない。そういう意味で、
経済的には不利というか、困るってことがあります。それ以外には特にありません。
自分は、女性として生まれて尼僧になったわけですけども、兄弟というか姉 2 人を見たときにどう思う
かっていうと、尼僧になってすごくよかったなって思います。家が貧しかったので、姉たちも学校には行
っていません。それでもうすぐに結婚しました。夫も両親もいるし、畑を耕したりとか、他の仕事もあるし、
家の中の仕事もあるし、姉はすごく大変そうです。もう一人の姉のこと考えても、夫はやっぱり仕事があ
って、姉の方は仕事はないわけだけども、家の中の仕事が忙しそうです。そういうのを見ると、自分はこ
うやって尼になって良かったなっていうふうに思います。
金山:アニBさんのお歳を聞いてもいいでしょうか。
アニB: 33 歳です。
2
金山:ありがとうございます。
青海省 A 寺 アニ E さん(尼僧)
金山:調査グループです。この度は調査にご協力いただいてありがとうございます。
今はどういう生活をしておられますか。
アニ E:だいたい 3 時に起きて、問答っていう、禅行をやって、五体投地をし、それから普賢菩薩の 7 種類
の供養法というのをやり、そのあと真文を唱えたりとか掃除をしているとだいたい 10 時になります。それ
から、朝のお茶を飲んだり食事をします。それでお寺で、プジャというか、法要があるときにはそこにい
ます。法要がないときには、自分の部屋にいます。だいたい夜寝るのは 10 時頃です。
金山:どんな経緯でここに来られましたか。
アニ E:私は尼さんになりたいと思って、17 歳のときにこちらに来ましたと。今は 41 歳になります。私は小さ
い頃から、昔のお坊さんが作った極楽浄土に生まれ変わるための祈願文を唱えている子どもだったん
です。周りの人たちが、これはもう尼さんになるんじゃないかって言っていて、私は、そうです、尼になり
ます、と言ってなりました。
金山:17 歳からこちらのほうにいらっしゃるんですか。
アニ E:ずーっとこちらにいます。やっぱり、私の場合も、家の人は仏教に信仰がないので、それに対して、
どうしても尼になりますと言って出て来ました。
金山:お家は何をしてますか。
アニ E:5 人兄弟で、男が1人で、女が 4 人の兄弟です。それで、私が一番年上で、生まれは、F というとこ
ろで、農民です。
金山:アニ E さんはチベット医学の治療を受けたことがありますか。
アニ E:病気になったことがないから、返事のしようがない。これから先は分からないけども、生まれてから
一度も病気になってないんです。
金山:かかられたことがないということですけども、チベット医学に対してどんなイメージを持っていますか。
アニ E:チベット医学は有益なものだと思いますので、一番いいものだと思っています。
金山:なぜ一番いいと思いますか。
アニ E:私はチベット人なので、だから自分の心の中でチベット医学がいいものだろうと思っています。
金山:西洋医学は、まあ治療を受けられたことはないと思うんですが、西洋医学に対してはどんなイメージ
をもっていますか。
アニ E:一般的にはチベット医学はいいと思いますけれども、特にひどい病気になったり、手術が必要に
なったりする場合には、西洋医学の方法をとったらいいと思います。
金山:その西洋医学なんですが、今、西洋医学では、病気の治療とか予防だけでなく、人のもともとの能
力をより強めようという動きが活発になっています。このような動きについて、何かご存知ですか。
アニ E:聞いた事はありません。
金山:例えば、脳を部分的に操作することで、記憶力を高めたり、思考力や集中力を高めたり、不愉快な
気分を消したりするなどですが、どう思われますか。
アニ E:それはよさそうですね。
金山:そういう西洋医学の動きに対して、私達はちょっと危ない、怖いかなという印象を持っているんです
が、アニはどう思われますか。
3
アニ E:そういう危険はないだろうと思います。
金山:はい分かりました。ありがとうございます。最後に1つ、女性としてチベット仏教の世界に入って苦労
された点あったら教えて下さい。
アニ E:ないですね。
金山:じゃあ、仏教の世界に入られて、実り多いというか良かったと感じられる点はどんなところにあります
か。
アニ E:私は人間として生まれてきてすごい良かったと思っています。その上、ここで修行することになって、
本当に一番重要な意味を得ることができる、それはすごくいいことだなと思っています。
金山:分かりました。以上でおしまいです。どうもありがとうございました。
青海省 B 寺 G 師(修行僧でもありチベット医でもある)
2007 年 8 月(通訳は永澤による)
濱野:私達は、日本から来た、日本の大学のチベット医学の調査をしているグループです。今日はいくつ
か質問をさせていただくんですけれども、最初にまず、どういう治療をしておられるのか、どんな患者さ
んを診ておられて、ということをお聞きしたいんでけれども。
G 師:まず、病気の根本について考えるのに重要なのは身体です。それについて、西洋の医学とチベット
医学では考え方が違います。西洋医学のことはさておいて、チベット医学においては、身体がどのよう
に構成されているのか、あるいはどのように発育していくかっていうことと、病気がどのように生まれてく
るかということには平行関係があり、結びついて考えられています。
身体のことを考えていく上で非常に重要になってくるのは、3つの身体の構成要素であって、それは
胆汁と粘液と風です。胆汁というのは熱と関係しています。粘液というのは水とかそういうものと関係し、
風というのは身体を動かす上での運動性と関係しています。その3つの要素というのが重要になりま
す。
人間の身体を考えたときに一番重要な元素というか構成要素は何かというと、今申し上げたように3
つになりますが、その内の一番重要なものは何かというと、胆汁と粘液のさらに根本になるのが風であ
るということになります。
今、身体の話をしていますが、初めまでジャンプしないと病気の原因が分からないのでそうしていま
す。風は、外的な世界の構成要素を、たとえというか比喩的に、人間の身体についても使っていること
になります。人間の最初の発生の段階を考えてみたときに、まず最初に動くのは風、心であります。どう
してかというと、男性は女性をみてそれに対して欲望を抱きます。その時に動く心の働きのことを風だと
考えます。女性がまた男性を見ると欲望を抱き、それによって性的な関係が生じて、それが原因となっ
て子どもが生まれますけれども、その時に、精子と卵子の結合ということだけでは足りない。
どういうことかというと、その結合したところに入っていく意識というか、あるいは阿頼耶識にあたります
けれども、それと、非常に微細な風ですね、それは心の働き、前世から引き継いできた心の働きの運動
があるわけです。それがあってはじめて人間としての発生が起こることになります。西洋医学の場合に
は卵子と精子だけの話になっていますが、これはチベット医学から見たときには不十分です。これでは
正しくないと思います。
重要なポイントは何かというと、卵子と精子だけではなくて、前世からきた微細な意識というか阿頼耶
4
識、その中に、リッパって言われる、叡智というふうに日本語では訳している、普通の相対的な現象的
な心の働きを超えた、その背後にある光り輝く意識みたいなものがあって、それがその中に入るわけで
す。そういうことによって、そこからいろいろ、動きによってはじめて、身体が発生するか、それとも展開
が起こってきます。それがなければ、それ以降の粘液とか胆汁とか、それらの活動うんぬんということも
起こらない。そういう意味で、一番重要なものは、前世からずっと続いてきている意識の連動体ともなる
わけですが、それは非常に微細な風、ルンになるわけだけれど、それとつながっている、分けることは
できないものとして存在しています。それがあれば命は存在し、それがなくなってしまう、外に出て行っ
てしまうと、人間の中にある生命、ソックっていうのと、寿命、寿っていうのがなくなってしまう。そうすると
それは死となります。重要なのは、意識の働きが続いてることだということであり、それをはずしては語る
ことができないのです。
そして、さっきの風の話ですが、風というふうにいったとき、地水火風の要素というものもあって、地の
側面からは肉ができてくるし、水の方向からは例えば血ができてくるというふうになっています。風にあ
たる部分は非常に微細な風であって、呼吸と関係しています。そういったかたちで身体の構成要素が
生じてくる基になっているわけです。いわば大麦の種を植えると、それについてはいろんな状況が揃っ
たときに成長していって、できてくる。その時に、例えばそこにある茎には種があるわけではない。ある
いはそこに生えてくる葉には種があるわけではないけれども、しかし、種というものが基になってそれが
出てくる。それと同じようにして、風のエレメント、風の元素が一番根本となった上で、身体の先端、たと
えば手とか顔とかが生まれてくる。そういった意味で、風が一番根本になります。
今の話をもう一度要約しますと、精子と卵子というものがあるだけでは不十分であって、そこに生命の
ソクツィン・ルンというものが入ってくることによって初めて展開していくことになる。それが人間の身体を
作る基であって、それをよく知っていただくことが重要です。
濱野:そうすると、チベット医学では、病気というのはどういう概念なんですか。
G 師:病気といったことを考えたとき、さっき言ったように、粘液と胆汁と風のバランスがよく取れていること
が一番重要であって、それが取れていると健康であります。つまり、例えば、風が非常に増えてしまった
り、あるいは減ってしまったりとか、あるいは粘液が増えすぎたり減りすぎたりとか、胆汁が増えすぎたり
減りすぎたりということがあると、それから、ない状態、ちょうどだという適当な幅があるわけですが、その
なかに収まっていれば病気ではないわけですね。今度はそういう条件がないときにどういったことが起
こりうるかというと、ルンとかティーパとかペーケン、つまり、風とか胆汁とか粘液のバランスが崩れてくる
と、今度は身体のより物質的な構成要素のレベルに障害を与えることになる。
物質的な構成要素には7つの段階があって、まず第1段目は、滋養分ですね。これはチベット語でタ
ンマとうふうにいいますけれども、食べ物を食べてそこのエッセンスを取り入れることですね。この滋養
のところから始まって、最終的には、「クワ」っていう、中国医学では、「精」という、精気とかっていうのに
あたるような概念なんだけれども、7段階を経てこれが変化してくるわけですね。物理的なレベルについ
て、ルン・ティーパ・ペーケンのバランスが崩れてくると、この全体が障害されてしまう。それが病気の原
因になるわけです。だけども、今は、ルン・ティーパ・ペーケンということを考えていくときに、外部との関
係がどうなっているかは見ていない。つまり、風と粘液と胆汁について、今は身体の中だけの話をして
いますが、では外側に原因がないのかといったらあるわけで、実際に病気の原因として考えていくとき
に重要なことは、食べること、消化すること、排泄が上手くいっていること、それから、時の変化に応じて、
このルン・ティーパ・ペーケンというのは変化しているわけだけれども、それに応じて生活していれば大
5
丈夫なわけですね。それに加えて、外部の現象、これは「魔」という概念、これはいろんなレベルである
わけですけれども、僕らは目に見えないから認めてない、分からないと思いますが、その外的が力みた
いなものが働き、それによって、ルンとかティーパとかペーケンというものがその力を伝えるひとつの媒
介になって、その結果として、毒というか、そういうものが身体のなかに回ってくることになります。それに
よって、身体に病気が生じるひとつの原因になることがある。ただこれは、西洋医学では普通は認めて
いないことですね。
濱野:そういう場合、今度は、治るというのは、チベット医学の人間観というのも含めて、どういう状態が治る
という状態なのか教えて下さい。
G 師:さっきの話にちょっと戻ると、バランスの話なんですが、ティーパ、胆汁というのは、熱くって速い。急
な感じがします。胆汁と関係しているような病気のタイプは大きく分けて何種類ある。ペーケンっていう
のは、粘液ですけども、ある一箇所に留まっているとか、動かなくなってしまうとか、慢性のものにつなが
っていく要素である。これについての病気のタイプも何種類ある。あと風に関係しているものとして、冷
たく、そして動くという性質があって、これは例えば、痛みがあったとしてもあちこち移動するような感じ
がする。この3つのタイプに大きく分かれます。チベット医学というのは非常に広い幅があるので、単純
化してしまうとこういうタイプがあります。
例えばそのうちの風の要素をみてみたとき、上昇と下降と全体を動かすような、全体に満ちてくような
風と、それからあと命というか寿命を維持するための風、消化を助けるような火に関係するような風があ
るんだけど、それと同じようにして、ペーケンにもティーパにもそれぞれ 5 種類あります。
ですから、今の考えから言ったときに、例えば消化を例にとってみると 3 つの関連がどうなっているか。
例えば、食べるときに、最初にそれを食べて中に入っていって、消化の出発点にあたるときに働くのが
胆汁になります。それを今度は、混ぜてというか、溶かしてしまうような働きをしていくのが粘液、それぞ
れさっき言ったみたいに 5 種類あるんだけど、その中でもナプチェっていわれるような粘液になります。
そこからあと、今度はそこから栄養分を引き出すときに、さっきの風の中でも火とともにあるっていう消化
に関係しているような風が働くことになりますと。それが全部ちょうどよいような程度になっていて、同時
に働くようであれば、これは病気になりません。そういう状態が成り立っていれば、逆に言えば、病気に
ならない、健康であると、ということになります。
濱野:なるほど、分かりました。ちょっと話しをもう少し聞かせていただきたいんです。G 師はチベット医学
の専門家でおられますけど、西洋医学に対してはご自分の立場からどんなふうに思われているかという
のをお聞きしたいんですけど。
G 師:西洋医学について、特にこれは、見てどういうふうに思うっていうことはありませんと。むしろ、西洋医
学と東洋医学がひとつになることによって、統合できたらいいなと思ってそういう希望を持っています。
どういうことかというと、西洋医学のほうは、風、ルンを認めていない。しかし、それに対して私達には伝
統的、経験的な知識があります。もう片方で、西洋医学の中には、例えば血液とか細胞レベルについ
て非常に細かく分析しているような方法が発達しています。だからその両方が補いあえば、もっとよくな
るんじゃないかと希望を持っています。
身体っていうのは仏教用語でいうと所依です。所依は要するに物質的な基体というような意味で、そ
れを物質的にさせる場所というふうな意味です。そして、そこに付着するもの、それが病です。
そこに何か病が付着する、そこに出来事が起こる場所として身体がある。さっき言ったようなレベルで
いうと、病気の原因になるのは、食べ物、行動、時間とか、外部的な魔というようなものですが、それを
6
直すのをどうしたらいいかというと、食べ物と行動と薬と、それから最終的には手術です。そのうち薬に
ついていうと、これは人間が作った人工的なものではなく、自然の生薬、自然の薬を使います。例えば、
低いところに生じるものは、熱に関係している病気に使うし、逆もあります。どういうところにできるかとい
うのに関係して、薬に選ばれることになります。いずれにせよ、自然のものを使うということが重要であっ
て、そうすると、身体にあんまり障害が生じません。
高いところに行ったりすると、身体が寒くなったり、冷えたり、寒性の病気になります。それはルンとい
う風に関係している。
高いところで採れる素材から作られる薬は、熱が高くなる熱性の病気を和らげ、熱を下げていくような
働きが基本的にあります。そして、低いところでとれるものは、寒性の病気、寒くなってしまうようなものを
暖めるような働きがあるわけです。それから、風に関係した運動が足されるような場合には、土のエレメ
ントに関係するようなものを直接に摂るとそれがおさまってくる。それによってバランスがとれるようになり
ます。
薬を飲むとすると、そうするとそれによって、6つの味があって、入り口の舌を通して中に入っていく感
じになるんだけど、6つの味っていうのは、甘い、すっぱい、塩辛い、辛い、苦い、渋いという6つの味が
あって、これが舌自体で感じないものが、今度は中に入ってくると、変化して、3つの構成要素になり、
それがさらに変化していくと、8つの効能をもつようになる。そこから、17 の徳というのが生まれてきて、そ
れに基づいて、全体のバランスが取れていくように働きます。それを通じてさっきのこのアンバランスが
生じていたのが治っていくことになるわけです。
それでまあ変化していくわけだけれども、薬の形としては、1番目は、タン(湯)といって飲むようなもの
ですね、チェマというのは粉末ですね。それから丸薬と、そしてメンマルというバターと混ぜた薬です。
それと 5 番目は、お粥みたいにしているものですね。そういった薬の摂り方があります。
飲み方はさっき言ったように、処方の仕方は5つあるわけですけども、1 番最初の、タン、お湯で飲む
やり方は、すぐに効きます。中に直接入っているので。2 番目の粉末は、もう少し時間かかる。なぜかと
いうと、舌のところでこうやっていって、味の感触があるわけで、それが最後までなくなるのにある程度時
間がかかるからです。丸薬というのは、お腹のなかに入って、まさにゆっくりと溶けていくということになる。
4番目のバターで作った薬は、片方で、バターっていうのは栄養を補給することになるので身体の栄養
補給っていうことと、それから病気そのものを治療するという両方に働くものです。5番目のカリテル、デ
クっていうのは、いろいろ炊いた後に、エッセンスが残ったものを、そういうものを使って治すやり方で
す。
病気の治療について考えたときに重要になってくる3つの概念があり、1つは病気の治療の対象にな
るもの。これはもう病気そのものですね。それから、2 番目に重要になってくるのは、それをちゃんと分析
してそれについて診断をすること。3 番目は治療することですね。この3つがチベット医学の治療の基本
概念になります。
治療の対象としては、さっき言った風と粘液と胆汁のアンバランスです。あとそれを分析するときには、
尿診とか脈診とかっていうものがあります。そして、治療の方法としては、さっき申し上げたように、食べ
物と行動と薬と手術の4つになります。
濱野:ありがとうございます。じゃあ、もうひとつ別のことなんですけれどもね、今西洋の医学、最先端医学
では、治療とか予防だけじゃなくって、現在もっている人間の能力を高めていこうとする医療が展開しは
じめているんですね。それは特に脳の機能を高めるっていうところがあって、記憶力を高めるとか、感情
7
をコントロールするとかっていうふうなことをやり始めてるわけですけど、そういうことについて何かご存知
かどうか、そしてもしご存知ない、あるいは今日初めて聞かれたにしても、何か考えがあればお聞きした
い。
G 師:聞いたことはありますけども、自分で薬を飲んだことはありません。
濱野:お聞きしたいのは、そういう医療に対してどう思うかっていうのをお聞きしたいわけですけども、つま
り、健康なそれこそお金持ちの人がより自分の能力を高めたいっていうふうに使うのかもしれないけれど
も、そういう、病気でない人が能力を高めようとするようなことをするということについてどんなふうに思い
ますか。
G 師:そういうことが本当にできるんだったら、それ自体は別にいいかもしれないけれども、しかしそれは一
時的なものではないか。後になったら問題になってくるんではないかという疑いを私としては抱きます。
どういうことかというと、チベットの医学の観点からすると、自然であるということが重要であるわけです。
例えば手術とかが発達していて、腎臓をとったりとかいろいろしていますけれども、それで一時的には
病気がなくなるかもしれないけれども、それがないことによって全体的にはバランスが崩れて、それはや
っぱり困る。そういう意味で短期的にはいいかもしれないけれども、長期的には非常に困るんではない
かという疑いがあります。
濱野:私たちもそういうことに対して危機感を持っていて、それについて、先生にいろいろとアドバイスをお
聞きしたいと思っていたんですね。今お話を聞けてとてもよかったです、うれしかったです。
永澤:そういうことについて、短期的にはいいかもしれないけど、あと問題が生じるかもしれないけど、それ
の原因を説明するような理論がチベットにありますか、研究がありますか。
G 師:古い資料が残されていないところがあって、そういう研究は今はないです。
濱野:ありがとうございました。
青海省 B 寺 H 師(チベット密教僧)
2007 年 8 月(通訳は永澤による)
濱野:じゃあ、お願いします。私達は日本から、チベット医学の調査をするチームとしてやってきました。き
ょうは調査にご協力いただいてありがとうございます。
最初にお聞きしたいのは、今どんな生活をなさっておられるのか。どういう修行というか、どういう生活
をなさっておられるのかということです。
H 師:ニンマ派の修行をしているので、その場合、「外」「内」「秘密」の三つのレベルでの修行があり、「外」
「内」の二つについてはお話できるけど、「秘密」については戒律に引っかかるので、お話できません。
濱野:はい。
H 師:まず、朝起きたら、無明の眠りの、そういう名前のお経を読みます。それから、汚れた「エネルギー」
っていうか「気」を浄化するための呼吸法をやり、今度は言葉を、加持を与えるための修行をして、それ
から本格的な修行に入る前の準備の「アデジャテゥーン」という密教体系の修行をします。
それが終わったら今度は、本尊の修行に入りますので、本尊については色々ありますけど、ニンマ派
の場合にはある体系がありまして、その中の、言葉っていう、仏陀の言葉であるところの「ハイグリーバ
8
ー」というか「馬頭観音」ですね。「馬頭観音」の観想をしていきます。
その後に、今、三つの根本があって「ブル」とそれから「デバ」と「ダキニ」って言って、男の姿の、「ラ
マ」と「イダム」と「カンドウ」っていうんですけど、今、二番目のところまで終わったところなので、今度は
女性の姿の本尊の修行に入ります。「カンドウ」ですね。ここでは「チュル」という悪魔祓いの修行を中心
にしてるので、その本尊の修行として「トマナクモ」という修行をします。その「トマナクモ」というのは、さ
っきの「馬頭観音」のパートナーで、「マジオバーラヒ」っていう「金剛」、「猪母」と書く、そういう女神と一
体なので、それの観想をして、それから「トモナクモ」の真言を唱えます。「トモナクモ」の本質というのは
「マジャウリニ」という女神なので、その修行をします。それが終わったあと、三つの根本の修行が終わっ
たので、「スル」という修行をします。「スル」が何かというと、六道の中をまだ迷っているものがいるわけ
で、特に「バルド」で迷っている生き物のために、色々燃やして、供物を捧げるっていうそういう修行で
す。それが終わったら、「ポア」をやります。まだ浄土に行っていないのもたくさんいるわけだから、特に、
誰か、親戚とか家族とかをお願いしますと頼まれたときは、その人の名前を読んだりします。
その後はお茶です。お茶を飲むときに、そのときまた一緒に、自分の前世からの積み重ねてきた負
債を返すための「トルマ」という小さな「サム」で作った人形を作ります。それによって、今まで自分が食
べ物を食べることによって、生き物に対してずっと負債を負ってきてるわけで、それを返済するというか、
まあ、そういうことを行うわけです。そのときに「チュイング」という、「宝の蔵」っていうテキストがあるんで
すけど、それを読みます。そして、チベット人は、観音菩薩と深い因縁のある民族ですので「マニ」という
真言を唱えます。それから普通は、お経についての解説を行います。仏教の教えというものに貢献する
方法としては、論争することと、教えることと、本を書くことと三つありますけど、そのうちの教えることを行
っています。教えを行わないときであれば、本を書くことによって仏教のために貢献します。
その後は、「グルタノサンババ」と「薬師如来」が合体した本尊があって、そこで修行をします。それか
らずっと欠かさずに自分が続ける修行として、「金剛サッタ」という浄化に関わる本尊があるんですけど、
そこで修行をして、それはもう、一日の間に百回はして、長いんですけど、その後は「タモサ」っていう食
事をし、午後になってから患者さんが来たら薬をあげて、真言を使って治療をしたりし、色々な悪霊の
影響があったりしたら、悪霊を追い返したりとか、そういうこともします。それが終わったら、ずっと続ける
ところである金剛サッタの供養を行います。だいたいそういうふうにしてると、昼いっぱい、午後までかか
ります。
その後は、護法尊の修行で、護法尊の中心となるのは「エカヤテ」という護法尊であって、普通の人
には見えないような精霊がいっぱいいて、それによって色々な病気が生まれているわけですが、その
問題の中心となっているのは「マモ」というクラスの生き物であり、そのマモの力を抑えることが出来るの
はエカヤテであるので、エカヤテについての護法尊の修行をします。供養が終わった後、チュウという
本の修行を行います。その後、今日一日自分が行った良い行為、功徳を回向します。それでだいたい
一日の仕事が終わります。
その後で、私自身は全く偉いラマではありません。仏陀でも菩薩でもない一番低いラマであるけれど
も、八つの喜祥が、色んな生き物に生じますようにと祈願を唱えて、そういう祈祷を行います。
今申し上げたのは、外的なレベルでの話になるわけですけど、内的なレベルは、ニンマ派の場合で
あると、心そのものが問題になってくるので、幸、不幸とか、名を得るとかの二項概念はすべてほったら
かしにしてしまって、そういうのは全部考えないで、本尊の修行ですね、空性に飛ばすような修行をやり
ます。
9
心についていうと、一番最初に何をしているかと言うと、四つのことがあって、自分が人間として生ま
れてきたことは、非常にまれな幸運であるわけであり、整った条件の中に存在しているということ、それも
いつかは崩れていく、すべては無常であるということ、無常については、死んだ後どうなるかというと、因
果にしたがって生まれ変わるわけであり、因果の法則というのはあやまつことがない。それから四番目
は、輪廻の苦しみということ、苦しみはずっと続いていくということについて考えていく修行。それから一
切衆生がそういった苦しみから抜け出ることが出来ますようにということを強く考えるという菩提心を起こ
していくような修行になります。その後「ゾクセン」という、ニンマ派の中の見解になるわけですけども、そ
れは仏教の中で、一番レベルの高い見解になるわけで、それについてはいろいろな説明の仕方がある
でしょうけども、基本的には「空性」と「慈悲」が不二である、という見解に入ります。これは内なる凌駕で
す。これだけやると、非常に良いということになります。
濱野:ありがとうございます。では次ですけど、先生は、お坊さんであると同時にお医者さんでもあるとお聞
きしていますが、チベット医学においての「病」とか「治る」とかいうのは、どういうことなのか教えていただ
きたい。
H 師:世界中のことを考えると、科学は大きく分けて西洋の科学と東洋の科学というのがあります。西洋の
科学は物質を中心に見て行く考え方です。そして、東洋の科学の方は、仏教を中心に発達してきたも
のですけれども、心を中心に考えていきます。だから見方が違います。心というものは、鼻でかぐことも、
耳で聞くことも、目で見ることも、触ることも出来ない。そういうものだから、西洋学はこれを認めず、対象
にしません。それに対して東洋の科学は心を問題にするので、そこには大きな違いがあり、チベットの
医学も心を中心に、心の感覚とかを中心にしているということが非常に重要です。そうすると、病気とい
うものを考えたときにどうなるかというと、病気は大きく分類していくとチベット医学では四百四種類ある
わけですが、さらにそれをまとめていくと、風と粘液と胆汁という三つの要素のアンバランスによってくる
わけです。でも、その根本は、さらに一つになってきます。
その一つにまとまるとはどういうことかというと、チベット医学の見解からすると、私達は今までずっと輪
廻転生の中をさ迷ってきたわけですけども、それがどこに行き着くかというと「迷妄」というとこに行き着く
わけです。迷妄の根本は何かというと「無明」であります。つまりすべての病気の根本は無明であるとい
うことになります。
そのうち、人間との関係で見たとき、私という一番の中心について考えたとき、それが身体にあるのか、
言葉にあるのか、心にあるのかということを考えていきます。そして、身体について考えたとき、これは目
で見たり耳で聞いたり、触れたりというのが出来るわけだけれど、これは荒っぽいというか、粗大な顕現
であり、現象である。そうやって見ていったとき、それは粗大なレベルで現れてるにすぎないということが
分かるわけです。次に、言葉というもので見たとき、それは半分現れているけども、半分現れていない。
なぜかと言うと、音とか言葉っていうのは、聞くことは出来るけれども、実在っていうか、物質として存在
するっていうふうには考えられないからです。
心というのはどう考えられているかというと、西洋医学であれば、心は頭の中だとか、脳の中にあると
考えられて、東洋医学では心臓の中にあると考えられていて、どちらにあるにせよ、心というものについ
て考えてみたとき、これについては目で見ることも出来ないし、耳で聞くことも出来ない、だからこれに
ついては顕現というか現象として現れているということはない。じゃあ、それについて、どういうふうに見
ていくことが出来るか、可能になるかというと、心が現れてくる側面、感情とかとして現れてくる側面と、
本質的な側面と、この二つの部分に集められることになります。それで、心の本質というのは見ることが
10
出来ないわけで、じゃあどうして見ることが出来ないかというと、それは無明によるわけで、それは昔から
私たちが自分自身の本質を理解するのを妨げているような無明がある。それを認識することが出来な
いがために、まだ見ることが出来ない。それが病気の根本であります。
今のように話を進めていくと、実質的にこれは、悟りの見解というか、哲学的な見解に近づいていくこ
とになります。大まかな話をしてしまいますと、無明であるところの阿頼耶識に、様々な怒りとか煩悩、嫉
妬とか、そういうものがたくさん積み重ねられて、それを今度は、病気の方はさっきいったように四百四
あるわけですけども、四百四ある病気の根本は、風と粘液と胆汁のアンバランスなんですけど、風と粘
液と胆汁の根本はどこから生じてきてるのかというと、風は貪欲から、粘液は無明、まあこれは無知です
ね、無知から、それから胆汁は怒りから生じてきます。その三つの根本のところに行くことになります
そうすると、病気というのを考えてみると、それは自分の身体に生じるものです。身体に生じるというこ
とは、さっき言った粘液と、風と、胆汁になります。さらに遡ってさっき言ったように、煩悩にたどり着くこと
になって、無明に行き着くことになります。そして、結局、怒りとか、貪欲、嫉妬といったものが出発点に
なってくるということなので、それについては、はっきり見ることは出来ません。それが生じたときに、どん
どんどんどん大きくなっていって、それは結局、さっき言ったような、色んな構成要素の増大ということに
なります。これが病気についての基本的な説明です。
濱野:ありがとうございます。
H 師:今度は、病気の治療についてです。それで、さっきの物質の構成要素について考えてみたときに、
「地」「水」「火」「風」の四つのエレメントがあるわけですけども、さっきの粘液、胆汁、風でいっているとき
は、こちらは三つなわけですね。それは、粘液というのは、「地」と「水」のエレメントから成っている。胆
汁は、「火」のエレメントから生じる。風というのは「風」のエレメントから生じるという関係になっています。
さっき話したのは四つで、これは四つの根本原因になっているわけですけども、今からお話しするのは、
四つが補助的な原因というか、因縁でいった場合の「縁」になってるという話ですね。「縁」の方を、それ
が増えすぎた場合どうするかと、それと対峙するにはどうしたらいいかというと、例えば「風」は動くという
特性があるわけで、あちこち移動するわけですね。そういう運動を抑えるためには、油っぽい食べ物を
採ることが非常に有益になります。それから、胆汁が増えすぎてる場合は、その根本は「火」であるわけ
で、これは熱くなっているので冷ますような食べ物や方法を取ります。そして、粘液の場合は、安定して
いて、なかなか変化しにくいという性格を持っている。その場合、動かすような薬とかを与えたり、となる
わけです。これが基本的な解決策です。
病気というのは、「地」「水」「火」「風」のエレメントが最初から出来ているわけであって、そこから生ま
れてきているわけだから、そのバランスが崩れたら病気になるわけで、そのうち死ぬのは当たり前という
ことになります。病気というのは四百四なのですけど、それを四つに分けて考えます。そのうち百一は、
治療が出来ない、死ぬことが決まっている病気です。これは、前世からの因縁の結果であって、これは
治らない。そして、二つ目の百一の病気があって、これは「魔」というか、悪霊とかの影響によってなるも
のです。これには祈祷をする必要があります。次の百一は、薬を飲んだりすれば治る病気です。そして、
四つ目のカテゴリーの百一は、薬なんかを飲んでも飲まなくっても治るものです。例えば風邪などは、
飲んでも飲まなくても治ります。
今まで話してきましたが、世界中にチベット医学というのがどういうものであるかというのをある程度分
かるようにしたいという気持ちがあります。自分はもう八十歳です。だから今更有名になろうとかは思って
いませんが、チベット医学というのは非常に特徴のあるものだから、分かるようになっていったら良いな
11
と思います。
濱野:そうすると、西洋医学に比べて、チベット医学の特徴というのは簡単にいうとどういうふうになるので
しょうか。それから、そのことと併せて、西洋医学というのをどういうふうに思われているのかお聞きした
い。
H 師:西洋医学はいろんな実験に基づいて人間ではない動物とかの実験に基づいて生まれたものです。
それに対して、東洋の医学は、仏陀が知恵を完成し、その知恵の中から生まれてきたものである。他の
動物とかによって実験とかは行なってない。例えで言いますと、何もない野原に西洋のお医者さんと東
洋のお医者さんが行った場合、西洋の人は何も出来ないですが、東洋のお医者さんは、脈を診たり、
舌を見たりして診断をつけた上で、今度は、その辺に薬草とか生えているわけだから、それで治すこと
ができます。これはまあたとえ話ですけれど、そういうふうな違いがあります。
濱野:もう一つお聞きしたいんですけど、今、西洋の医学では、病気になった人を治すとか、そういうことだ
けではなくて、健康な人が、特にお金持ちの人が、自分の能力を高めるということを、そういうことを医学
の最先端としてしようとしていると、そういう風なことが活発になってきているのですけど、そういうことに
ついて何かご存知でしょうか。脳についてです。
H 師:聞いたことないです。
濱野:そういうことについてですね、脳についてですけど、具体的にどういうふうに思われるかって言うのを
お聞きしたいのですが。
H 師:チベット医学というのを考えてみると、菩提心に基づいて考えられているから、結局どこに行くかとい
うと「ジャリポワジャント」といって、身体が生きてる間に虹になってしまったり、そうじゃなくても、「ジャリ
ュ」といって、虹の身体といって、亡くなるときにすごく小さくなって、虹になってしまう。あるいは、他の修
行をして、原子っていうか微塵のレベルに身体が溶けるというのがある。いずれにしても、菩提心に基
づいて、一切衆生のもとへ向かう。もう片方の西洋医学ではどうなっているかというと、いろんなものをコ
ントロールするために発達しているように思われる。そういう意味では、向かう方向が全く違う。ただし、
チベットの医学のことが分かれば、すべてのことが可能になると思います。
その西洋医学の場合は、軍事的なこととか、科学的な発達によって、世界を破壊するようになってき
ている。だけどチベット医学の場合は、大いなる天意だとか、原子への回帰というのか、世間というもの
がなくなって、生まれて、なくなって、生まれて、そうした全てを越えて、利益ということが出来る。
それから、インドで言うと、「ハチノエインヌマハスッダ」といわれる人たちがいて、そういう人たちはさら
に浮いたり、水の中に潜って行ったりして移動したりとか、山の方にテレポーテーションしたりとかという
ことがある。だから、西洋医学でいろんなことを言っていても、それは特に驚くことではない。
この近くでもね、このあいだ、といっても四十年、もうおよそ五十年近くなるのかな、軍人に捕まえられ
た人がいらっしゃって、その方、馬に乗ってね、ずうっと連れて行かれそうになってたんだけど、急に空
に真言がメロディで流れ始めて、馬がウゥって唸り始めて、軍人が銃で撃とうとしたけどそれが返ってき
ちゃったと、そういうことがありました。そういうこと特に、特別に恐れていない。
濱野:つまり、われわれは、そういう西洋の展開に危機意識を持って、それについて何か教えていただくこ
とがあればと思って来たんですけども。その危機意識を持ってるってことに対して何かお考えを聞かせ
ていただけないしょうか。
H 師:頭が良くなるとか、脳がと言うけども、それは頭の中での動きをたくさんにすることであって、運動を
多くすることである。それに基づいて、全体に不安定になっていく。例えば、SARS という病気があったわ
12
けですけども、SARS もいろんな人間の構造がバランスを崩していくことによって、動きが多くなっていく
ことによって、それに対して、「マモ」という精霊のようなもの、その生き物が怒った、その結果として起こ
っている。鍋とかを作ってる工場があったんだけども、そこからどんどん煙が出てきて、それによって、ま
たいろんな問題が出てくる。だからそういう意味では、これはいろんな動きを増やすだけのことである。
あとね、SARS の場合でいうと、これは自然の中で、もとから存在する病気ではなくて、さっきいったよ
うな人間がもたらしたいろんな環境の破壊であるとか、そういうものに対して自然の力、「マモ」とかが怒
っているのであって、これは昔からチベットにはあった。だから、今は、政府の役人とかが、マスクとか着
けているけども、そんなことしなくても、自分のとこ連れてきたら治すって言ったことがあります。そして、
そのあと、そういう薬を作ってみんなにあげたんです。
濱野:ありがとうございます。
13
資料 2.臨床心理・宗教的・精神的側面研究会記録
資料 2.1 中健次郎氏インタビュー( 2007.10.13, 那智勝浦)
(京都文教大学:濱野清志)
青岸渡寺 中健次郎先生のお話(2007 年)
私は、各地で気功とか、太極拳とか、中国医学的な家庭療法を広めるために、講習会や合宿をさせてい
ただいています。まず、どうしてこうした世界に触れたかをお話させていただいて、また中国の今の治療体
系とか、自分が受けてきた修行体系とか、その経験とか、自分が関わった病人の方々のいろんな経験とか、
どうやって変わっていかれたとか、そういったことをお話させていただいて、あまり学術的でないかもしれま
せんけども、その辺はまた皆様が、ご自分の研究にお役立ちできるところはとっていただければよろしい
かと思っております。
私は、1981 年に中国に渡りました。最初は語学の勉強だったんですけども、中国語を2年間ほど勉強しま
して、いったん日本に帰りました。そして鍼灸師の学校に入って、鍼灸師の資格を取って、日本に帰って
3年後ですけども、今度は、そういう中国医学の専門の大学があるんですけども、広州の中医学院、今は
広州中医薬大学となってますけどもね。広い州ですね、広東の広州の、中医学院。それから、北京中医
学院、等にいたんです。その後、医学の原点といいますか、ルーツがですね、中国の古い哲学にあるとい
うことがだんだんわかってきましたので、それを、古い中国の哲学、道教とか仏教とかですね、儒教とかも
関係ありますけども、そういったものを学ぶためにまた北京大学に入りなおしました。哲学科で、修士課程
とか博士課程の方々と一緒に、研究生みたいな感じで勉強させていただいたんですね。3年ぐらいいまし
たかね、最後は。その後は、自分の好きな先生方のところに毎年通っていって、気功とか太極拳を深めさ
せてもらったりしました。延べ18年以上ぐらい、もう中国にいますかね。青春はずっと中国だったと。今で
も青春だと思っていますが。後半は、中国のことをずっと深めていきますと、またインドに繋がっていくんで
すね、どうしても。そしてインドの方、チベットも含めてですけども、そういった方面の勉強をしようと思って、
インドにも毎年行かせてもらっています。インドはもう13年ぐらい、毎年冬の間に行ってます。のべにした
らもう、2年以上いると思いますね。で、3年前に、中国に一応アパートを借りてあったんですけども、そこも
引き払って日本に帰ってきて、熊野に居を移したわけであります。
最初こんな勉強は全く興味なかったんですけどもね、どうして興味でてきたかといいますと、最初に行っ
たときに、1981 年ですね、行ったときに、中国語を勉強しながら、毎日ですね、体育の先生に朝、気功と
太極拳習ってたんですね、朝もう6時ごろ起きてですね。で、その先生に毎日習っているうちに、その先生
の先生にも会わさせていただいて。で、その方が 98 歳でしたね、ゴトナン先生といいますけども、98歳で。
ちょっと写真お見せしましょうか。前に、『自然生活』っていうのに取材されて、送ってくれたんですけども。
こういった感じの。もう皺がなくて、髪の毛はまぁ、髭も白いですけども、全く皺がなくて、赤子のように肌が
きれいで、頭は冴えてらっしゃるし。その頃の写真ですね、98 歳の時の写真ですから。背筋がしゃんとし
ているし。誰に質問しても、ぱっと答えていただけるし。足腰はしっかりされてましたね。好奇心が旺盛で、
学ぶ姿勢がすごい。もう達人なんですけどもね、気功でも太極拳でも。驚きましたね、こんな元気なおじい
ちゃんがいるかなと。若いときは、日本の学生時代のときは柔道とか空手とかやってたんですけども、先生
は太極拳の達人だったんで、自由にかかってきなさいと言われるんですけどもね、どういってもだめなん
ですね。どんな技もかけられないし。先生曰くですね、お前がいくら力があって、スピードがあっても、その
14
頃は胸囲が1mぐらいありましてですね、筋骨隆々としてました。毎日ジョギングしているし、ウェイト・トレー
ニングしてるし、もう体は今でいう総合格闘技の選手みたいな体してましてね。
ところがそのおじいちゃんには、どうもだめなんですね。お前がその、いくらスピードがあって力があって
も、お前が来る前に、先に生命エネルギーが来るって言うんですね。だから、お前のパンチなんて絶対当
たんないよ、と。そこで、柔道でこう持たしてもらって投げようとしても、力が入んないんです、持った瞬間に、
ふにゃふにゃっとなってしまって。無力化されてしまってですね、どうしてもかなわない。そのうちに、その
おじいさんが、指持たしてやるよと、片方こう指立てて。両方の手でこう、ぎゅっとしろって言うんですね。
最初は遠慮してたんですけどね、このじいちゃんはただ者じゃないから思いっきりやっちゃおうと思って、
ぎゅってやったら、ボキボキっていいましたけどね。でも、ひゅっと緩められて、ふっとやられた瞬間に、私
の体が後ろに何メートルも吹っ飛んじゃって。これは違う、訳わからんし、なんで飛ばされたんか分からん
けども、とにかく違う世界だっていうのがわかってですね、すごい興味を持ちました。なんで私は、こんなじ
いちゃんに負けるのか。今はわかりますよ、なんでかね。
それは意識が違うんですね、意識の違い。意識の状態が違うのと、リラックスの度合いが違うんですね。
どこも緊張点がないんですね。意識も体もですね、感応し合ってますので。相手が緊張があれば、こちら
もその緊張点を押したり引いたりできるんですが、何もなかったら、暖簾に腕押しなんですね。全く力の入
れようがない。意識もそうなんです。相手が対立してきましたら、こちらの意識も対立できるんですけど、全
く対立のない意識、平安でですね、こう広がって、ぱぁーっとね、調和された意識の時は、こちらが対立の
しようがないんですね。戦う前にもう、意識がふわーってひとつにされてますんで、戦えなくなるんですね。
武術の「武」というのは、矛を止めるという漢字なんですね。武術の「武」っていうのは、矛という漢字の下に、
中に、止めるって書いてあるでしょ。矛を止める、つまり、戦いが止まってしまうっていうのが本当の武術だ
と。戦う前に戦えなくなってしまう、というのが武術だという話を聞いたことがありますけど、まさにそれを体
現しているような。
そこで、一生続けなさいと言われましたね。今からはもうハードなトレーニング、息がはぁはぁするようなト
レーニングとかジョギングもやめなさい。筋肉を鍛えるウェイトトレーニングもやめなさいと。それまで毎日
やっていたジョギングもやめたし、ウェイトトレーニングもやめたし。息がはぁはぁするような、例えばバスケ
ットボールでも何でもそうじゃないですか、はぁはぁするじゃないですか。みんなやめましたね。これからは
リラックスを深めていくようなトレーニングに変えなさいと。水泳は良いと言ってましたね、ゆっくり泳ぐのは
良いと言ってました。それから、そのゴトナン先生は、男女の交わりもですね、40過ぎてからやめたって言
ってましたね。夫婦別の部屋にしてですね、全くそれももうやめてしまったとという事を話していました。そ
れは長寿に繋がるとか言ってましたね。で、奥様も長生きされました。二人そろって、百超されました。珍し
いと思いますね。
その内弟子の方に聞いてみたところ、ゴトナン先生は毎日瞑想もされてて。内弟子の方がそーっと夜中
に見に行ったらですね、昔は中国はクーラーとかエアコンとか無かったですから、蚊帳の中にこう、蚊帳を
吊って蚊帳の中で瞑想しているらしいんですけど、その瞑想中にちらっと見に行ったら、先生が体触れて
ないのに、蚊帳がブルブルッブルブルッと震えてたと。なんかその辺でエネルギーを高めてるんじゃない
かなと。ま、そんな感じがしますね。すごく好奇心が旺盛で、お前の柔道の技を教えてくれ、とかね。私は
かけることできないんですよ。向こうの方がレベル高いですから。それでも、教わりたい、どういった技なの
かかけてみなさい、と。いろいろと、すごく聞きましたね、聞かれてきましたね。それから、途中で女の子と
か、公園でお話してたんですけど、若い女の子とか通ると、すぐ声をかけるんです、またね。で、面白いこ
15
と言って、笑わしてですね。ユーモアがあるんですけども。面白いですね、一緒にこう散歩しても、公園歩
くと。水がめみたいなのなんかあるとすぐ覗きにいくしね。とにかくこう、何にでも好奇心を示して、とかね。
そんな感じの方でしたですけども。
ま、私はその方のおかげと言いますかね、影響で、そういった硬い武道とかね、スポーツはもう一切や
めようと決心しましたね。でも、とにかく毎日続けなさい、と。そういった軟らかい気功とか太極拳をですね、
毎日続けなさいっていうことで、そうしますってことで。ま、その方のおかげで、ずっと続けられたような感じ
がします。それから1年北京にいた後に、南京大学に行ったんですけども、南京大学に留学している時、
やはり朝公園に行ったときに、気功しているおじさんがいましてね。顔色がすごく良くて、ほんのり桜色で。
冬なのに、手袋しなくても冷たくないんですね。で、そのおじさんに付いて習ったんですけども、もともと白
血病の患者だった。今の医学では治らないということで、気功を始められて、元気になられた方なんです
けども。その方に、マン・ツー・マンで教わったりとか。それから、もう80近いおじいちゃんがいまして、その
方のところで、また教えてもらったりしたんですけども。その頃でもう、80前だったんで、南京大学の時はも
う25年前の話なんですけども、もう亡くなってると思ったら、最近ですね、ある方がメール打ってくれて、写
真を添付してくれて、生きてるのわかったんですね。105歳ぐらいいってるんじゃないかと思うんですけど。
金イチメイ先生っていう。最近の話なんですよ。びっくりしましたね、もうとっくに亡くなってると思ってたら。
(どこの人ですか?)
南京。また会いに行こうかなと思ってるんですけどね。毎日教わってたんですよね、その先生に。なんと
も言えないですよ、ちょっとまじめな話ね。足がしっかりされてて。一回ね、その先生が90ぐらいの時に一
回お会いしに行ったことがありますけどね、南京に。元気で。なんか中国の雑誌にも載っけてもらってまし
たね。元気な長寿の老人ってことで何人か選ばれて載っかってましたけどね。あれからもっと経って、100
超えてもこんな元気にいるってのはすごいなと思いますけど。
で、南京で1年いて、さっき言いましたように、日本にいったん帰って、鍼灸学校に入って。鍼灸の免許、
持たないとなかなか患者さんに触れることできませんのでね。資格取るために通ってですね。ま、その頃
から、気功とか太極拳ちょっと教え始めたんですけども。で、資格試験取って、広東に行って。広東でも、
またいろいろ良い先生に出会って。広東は中国でもわりと裕福な都市なので、中国の有名な先生方が招
かれて来られるんですよね。気功の、向こうでは「学習班」と言いますけども、合宿みたいの開くんですけ
どもね。で、素晴らしい先生方にも何人かお会いしました。大体、1週間とか、長いのは1ヵ月コースとかね。
これはその頃出会った先生で。楊梅君というね。この頃、92歳。お茶目なすごい元気なおばあちゃんで。
92歳、楊梅君。この方も105、6歳まで生きられましたね。1ヵ月ほど習いましたかね、すごく面白い、弟子
もいっぱいいて、おられましたですけどね。その楊梅君先生は、みんなの前でお話されたときに、ちっち
ゃな剣を持って舞ってくれたんですね、2つ剣を持って。その時に、会場の方は全員に、良い匂いがして
きて。私も嗅ぎました、お花のような匂いがしてきました。やっぱりそういったものも意識に関係があるんじ
ゃないかって今では思いますけども。
あと、その広東にいたときに面白い先生にやっぱり出会って。広州中医学院、今の広州中医薬大学で
すけども、そこが招いたんですけども、大学が招いてくれたんで参加したんですけども。王力平という先生
がいましてね、王様の王に力の平って書くんですけども、王力平先生が来られて。今の楊梅君は、楊貴
妃の楊に梅の君って書くんですね、楊梅君。で、王力平先生が1ヵ月ぐらい開かれたんですね、気功。そ
の方は、道教の龍門派の伝承者だったんですけども。で、その方の気功の会がすごく面白くて。広東の、
もう気功師たちが、有名な気功師たちが学びに来たぐらいですから。道教の伝統的な修行をされてまして
16
ね。大変、興味深かったですね。小さいときは普通の子どもとして育ったんですけども、途中で目が見え
なくなってきた、片目がですね、失明しそうになったんですけども。その頃に、道教の導師たちが2人訪ね
てきて、お前は実はうちの道教の龍門派の次を継ぐ人なんだ、と。そういう、占いで、占星学でわかるらし
いですよ、次の代はどこそこに生まれてこういう子どもだと。で、そんなん信じなくて、嫌だとか言ってたん
ですけどもね。何も教えてないのに、お父さんの名前言われたり、お母さんの名前言われたり、全て当て
られたそうですよ。で、それでも嫌だって言ったら、もう目を治してくれてね。それで信じて、じゃぁ、自分は
その修行をさせてもらいますということで、その道教の修行に連れて行かれたらしいですよ。で、ずっと瞑
想修行とかもさせられながら。最初は、結跏を組めないので、縄で結ばれたらしいですよ。痛い痛いという
ですね。子どもだから我慢できないってわけですね。で、そのうちにそれができるようになってきたら、瞑想
が深まってきたら、今度は洞窟に入れられて。で、入り口から薪かなんかで煙焚いて、煙の中でもちゃんと
呼吸ができるようにさせられたりとか。それもできるようになってきたら、どんどんハードルが高くなっていく
んですけども、籠に吊るされて、上から、木の枝から、揺れる中で瞑想させられたりとか。臭ーい、肥壷の
前でさせられたりとか。いろんな修行をさせられて。そのうちに、目隠しされて、何kmか違うところに、どの
方向かわからないでしょ、置いていかれるんですって、行ったこと無い所に。ひとりで帰って来い、と。お前
の直感を当てにしたら帰ってこれるっていうことで。それがだんだん距離が延びていくらしいですよ。そう
いう修行をしながら、大きくなられて、いろんな力があってですね。私も経験させてもらいましたですけども、
天気も変えられましたね。小雨をぱっと止めたりとか。
それから、面白かったのは、ある山で、中国のある聖地の山で、気功の合宿をしたときに、学者たちの
集まりもあったらしいです。で、皆さん信じないです、中国の学者はみんな唯物論ですから、信じないので。
そうですかー、じゃぁ、今晩楽しみにしてくださいということで、王力平先生が仰られてですね。夜中に、先
生が動物を呼び出すんですって。なんか、そういう特殊な声を出すらしいです。で、山のねずみがみんな
集まってきて、学者たちの部屋の周りで、チュチュチュチュチュチュ、一晩中やって、寝れなくて。もうわか
りましたって、もう帰してくださいとか言って。そういう話もあったとか言ってました。でも、いろんなエピソー
ドがあって。またある時に、どうしても信じないおばさんがいて、そういうのは一回しか使ったことないらしい
ですけども、相手と一体化してですね、離れてるんですけども、自分の心臓を止める事ができるらしいん
ですよね。止めたら、相手も一体化されてますので、止まってしまうらしいですよ。ぎゅっと急に苦しくなっ
てくる。それで、ふっと離してあげて、自分の意識をですね。で、その方は信じるようになって、生きる道を
変えたっていう話を。もう二度としないとか言ってましたけども。ま、いろんな道教のそういう術みたいなの
を持ってらっしゃるんですけども。
別にそういったものを売りにしているわけじゃなくってですね、瞑想をちゃんと教えてくれたりとか、いろ
んな簡単な気功法を、外で気の玉を練ったりするやつとか、いろいろありましたですね。夜中に、大きな木
の前に立って、木と交流する、大木と交流する気功。これは治療に役立つんですけどね。指で木を切って
いくやつとか、手で木を輪切りにしていく練習とか。気でね、自分のエネルギーでこうやっていく練習とか。
こうやってちょっとずつちょっとずつ、木を縦切りにしていくようなことをやったりとか。
(きというのは、樹木ですか。)
樹木。樹木を相手にして、自分の内なる気を練っていくというような修行をさせられて。そういったものを
やったり、先生から学んだ瞑想法とかですね。全ての毛穴から、息を吐くときには宇宙大にエネルギーが
出ていって、そういうときに、宇宙の果てなる遠くから自分の毛穴を通って、丹田まで来る呼吸法もあるん
ですけども、そういったものを毎日やっていますと、いろいろ不思議なことが起こりましたね。最初は驚いた
17
んですけども、空中に浮いてくるんですね、体がね、自然と。で、怖いので、この辺持ちますけどね、ベッ
ドでやってたんで。あんまり浮いたら倒れるんじゃないかと思うから。本当は倒れないんでしょうけどね、あ
んなこと経験なかったんで。何回か経験しましたね。それから、幽体が抜けていくんですね。それも初めて
だったんですけども。こう、ちょっと、肉体と幽体っていうか、なんかエネルギー体がふっとこうずれると、す
ーっと外れていくような経験が何回かさせてもらってですね。今はもう無いですけどね。そういう、もともと道
教の修行法に残っているものをちゃんと地道にやっていけば、そういう体験ができるんだなっていうことが
わかりましたね。で、肉体以外に、自分たちの体っていうのはあるんだなっていうのを、初めて経験をしま
したのでね、わかりましたですね。
ま、そういった、その先生についても話したらもっときりが無いですけども、簡単にちょっといろいろな先
生の話をしました。で、広東でも2、3年いまして、その後また北京に戻って。北京の中国医学の大学、北
京中医薬大学に入ったんですけども、その頃もいろんな先生にお会いしました。ひとりはですね、李和生
先生。ちょっと見せながら話をします。ひとりは、まぁ、李先生っていう、李ワセイっていうんですけどね。ま、
これは去年の写真で、今年82歳ですけどね。その頃は81歳ぐらいですかね。もう力が抜けてますけども、
やっぱり太極拳の達人で。もともとドクターなんですよ、西洋医なんですけどもね。今、定年退職されて、
シンガポールとかマレーシアとかヨーロッパとか、いろいろ招かれて教えに行ってらっしゃいます。ヨーロッ
パのある国の大統領がお呼びになってね、マン・ツー・マンで習いたいとか言って。
(太極拳?)
はい、太極拳の先生。気功も。私もその先生に正式に内弟子に入らせてもらって。中国っていうのは、
外弟子と内弟子っていうのがあって、内弟子に入らないと深いところは学べないんですね。外弟子用の教
え方っていうのがあるんですね、形だけ。内弟子に入ったら、厳しいですけども、深いところまで導いてく
れるような感じがしますけどね。この先生が、私もう知り合って20年ぐらい近く経ちますけども、途中ですご
く変わられたんです。定年退職して、中国全国あっちこっちで、飛んで行かれて、気功を教えたり、太極
拳を教えたりしながら、いろんな方を救ってこられたんですね。病気治療もいっぱいされまし。で、その李
先生が、ある時おっしゃったんですけども、自分の家に60歳ぐらいにしか見えない顔色のいい人が訪ね
てきたと。で、お前は大変良いことをしていると。お前のことはよくわかっているんだよ、私は山の中に住ん
でいるけれども、お前のことはよくわかっているんだと。で、お前に教えたい道教の伝統的なね、秘術とい
いますかね、修行法があると。これをお前に伝えるためにここに来たっていうんです。で、李先生は、会っ
たことない人だしね、でも自分のことよくわかっているみたいだし、そうですかといろいろお話聞いて、そん
だけ言っていただけるんだったらやらしていただきますってなったらしいです。で、その方が、お茶を出し
てもお茶を飲まなかった。食べ物を出しても食べないし。で、自分は山の中に住んでいるから、自分の弟
子がその山の下に、小さな庵みたいなのを建ててですね、住んでるから、何かあったらそこに手紙を出し
なさいと、質問があったら。で、私はたまに山を降りて、弟子のところに行って、その手紙を取って、その弟
子に手紙を託して返事を出すからっていうことで。それで修行が始まったんですよね。
李先生は、自分の部屋、中国人はみんな小さなとこ住んでますけど、部屋の隅っこの方に、ガラスみた
いなのでこう囲ってですね、自分の瞑想場所を作ったんです。祭壇みたいにして。他の人は誰もいれな
いんです。で、それをずっとされているうちに段々変わってこられて。私たち見てても、すごい治療効果も
上がったし、人格もすごくまたよりマイルドになられてきたし。で、あまり変わられてですね、驚いて聞いた
んですけども、その仙人の方にね、お会いした事があるんですか、その後ですけどね。会いに行ったこと
もあるって言ってました。一回弟子をみんな集めてくれて、大仙人が山から下りてきて、何月何日でみん
18
な会いに行ったんですってね。で、また指導してもらったらしいんですけども。その時に、山の下でお守り
してるおじいさんがいてね、仙人との取り次ぎをしている人ですけども、その人に聞いてみたんですよ。あ
の大仙人、今何歳でしょうかねって。そのおじいさんがもう80ぐらいだったらしいです。自分は、十代後半
からこの山の下で、仙人のお守りしているんだけども、今も昔もおんなじだ。私が会ったときも、60歳ぐら
いにしか見えなかったって。その方が、20歳の時に会ったとしても、60年前ですからね。60年前でも、60
ぐらいにしか見えなかったと。最低、120ぐらいはいっているだろうと言ってましたけどね。ま、たぶん、そう
だったんじゃないかなと思ってますけどね。李先生は、嘘をつくような方じゃないし、まじめな方ですので
ね。で、今はもう連絡が取れないと言ってました。もう俗世間のことはもう全く興味なくなってしまって。今は
手紙を出しても、返事もこないし、どこにいるかわからないって言ってましたので。まだどっか山の中で入
ってるかもしれませんけどね。
で、私もその先生にですね、自分もその修行をさせてくださいとお願いしたんですね。でも、自分は許
可は出せないので、その大仙人と取れる頃だったんで、一回手紙を書いてあげましょうっていうことで。何
人か弟子の名前、自分の太極拳の内弟子の名前書いて、希望者だけ、先生のところにお願いしたんで
すけどね。で、返事がきて。私はオッケーがでたんです、どういうわけか。名前を見たらわかるらしいです
ね。他の方で断られた方もいましたけどね。
(名前だけしか書いてない?)
名前だけしか書いてないです、はい。で、その修行させてもらったときに、最初にね、7日間の、1週間
の、反省の行でした。毎日、内省するんですよ。自分の行なったこと、思ったこと、言葉に出したことを、毎
日思い出せることをずっとちっちゃいとこまで。細かいことまでずっとやらされましたね。人にも会わないで。
で、前世まで反省しろって言うんですよ。過去世。そんなのわかりませんでしょ、覚えてないしそんなの。
今のお前の状態を見れば過去世もわかるわけだと言ってました。今の自分の状況をちゃんと考えれば、
過去にどうだったかということもわかってくると言われましてね。で、たぶんこうだったんじゃないかなとか、
はっきりわかりませんけどもね、それも反省させられて。7日間過ぎたら、正式な行に入るんですけども。こ
れは、内緒にしないと怒られるので言いませんけども。道教的な修行でしたね。どういう真言を唱えて、ど
ういう「符」を、「符」を書くっていうんですけどね。道教では「符」って、文字でないふにゃふにゃとしたいろ
いろなものがあるんです。いろんな種類の「符」がありましてね。そういった、どの方向に向かってやるとか、
どの「符」を最後に燃やして、水の中、水も聖水みたいのを作るんですけども。その燃やした灰を入れて、
どの方向に向かって飲むとか。そのときに、どういう呪文を唱えるとか。そういうのは、細かく決まってるんで
す。これを21日間しなさいとか。で、それがまた第1段階、第2段階と上がっていくんですけども。私はもう、
第1段階だけで。その頃またインドに行くことになったんで、もうストップしましたけども。
李先生は今でもお元気で、色んな弟子を育て上げています。で、もう1人、王盧生先生という、ご存知
だと思いますけど。日本にも来られましたけども。この方も実は工学博士なんですね。で、若いときに、ソ
連に公費留学行ったぐらいで。ソ連と中国が仲良かった頃に公費留学いったぐらいで。エリートだったん
ですけども。全身リウマチになってしまって。全ての関節がリウマチで侵されてしまって動けなくなってしま
った。腰までやられたっちゅうんですね。で、肺気腫もある。小さいときから喘息で肺気腫もあって。これは、
この方のお母さんに聞いたら、日本軍が悪いんだとか言ってましたけどね。日本軍に攻められてね、なん
か湿気の多いとこずっと逃げ惑って、そのときになったらしいですけど。上海に住んでたのが、ずっと追わ
れて追われて、ずっと四川の方まで逃げたとか言ってましたけどね。この王盧生先生、これは去年の写真
で、今77歳です。で、あるときに気功の、気功っていうか道教ですね。その頃、気功っていう言葉無いで
19
すから。道教の道士という、修行僧ですね、道教のお坊さんみたいな方にお会いして。あ、道教の道士か
ら教わったという方にお会いして、気功を始めて、治ってしまったんです、全て。清朝の時代の大臣の息
子だったんですね。大臣の息子が、お金があるもんですから、こういう修行法とかすごく興味があって。で、
道教の道士の人に自分の宝石をあげたりしながらですね、いろんな秘術を教えてもらったらしいです。で
も、その道教の道士の方っていうのは、一見修行僧に見えなくて、床屋さん。中国は路上でこう散髪する
ような箱に入れてあって、散髪はどうですかーって旅をしながら修行して回ってる方だったらしいですけど、
その方に教わったとか言ってましたね。で、その方、その大臣なんですけども、その方もですね、最後に、
亡くなったときに遺体を焼くとですね、中から。中国では修行が進むと、舎利といってですね、ちっちゃな
玉がいっぱいこう発見される。5色の玉があったとか言ってましたかね。自分もそれを見たとかおっしゃっ
てましたですけどね。
その先生にお会いしたときに、いろんな不思議な経験されたらしいです。この王盧生先生の先生です
よ。やっぱり道教の方々が、大臣だから宝石あげてもらおうと思ってても、これは本物かなって後で疑った
らしいですよ。で、その先生が顔洗ってるときに、本物かなぁ、なんか胡散臭いなぁって思った瞬間にふっ
とこっちを見てですね、言葉しゃべってないのに、その洗ってる水をですね、固めてね、氷みたいにして、
こう積み上げたらしいです。それでその大臣の息子だった彼は信じきったらしいです。自分もやろうと。そ
れほんとかどうか知らないですけど。積み重ねてくれたとか言って。あるときは模型の飛行機を作って、来
なさーいって、触ってないのにピューっと飛ぶらしいですよ。で、ぽとんとと落ちたらしいですけどね。で、
そのお弟子さんが、先生あれ飛行機飛ばすんだけども、戻すことできないんですかって言ったら、馬鹿も
ん!飛ばすだけでも大変なんだとか言って。そんなのは眉唾だと私も思ってたんですけど、実は3年ほど
前に、北京でこういう先生にお会いして。この真ん中の先生です。この頃80歳、今もう82歳。で、ものすご
い影響受けたんです、久々に。もう中国では学ぶもの無いかなーと思って日本にも帰ってきたんですけど
も、私の向こうでの修行仲間といいますか、兄弟弟子がですね、国際電話かけてきて、お前に会わしたい
人がいるんだ、最近会ってものすごい人に会ったと。で、お前たち夫婦のことも話したら、最初は断ったん
だけども、来れば弟子に取ろうかというぐらいになってきたから来なさい!とか言って。北京に飛んで来い
とか言ってですね。で、会いに行ったんですね。
それがその先生だったんですけどね。真ん中の先生で。80に見えないでしょ。顔の艶とか、全体の雰
囲気とかね。で、早速北京まで飛んでいってですね、お会いさせてもらったんですけども。で、さっき言っ
たように、あんまりそういうのは信じなかったんですけども、私が飲んでるミネラルウォーター、ちょっと貸し
なさいとか言ってですね。お前たちは意識っていうのはすごく力が無いと思ってるけども、意識っていうの
はすごい力なんだよと。ほんとに思った事は実現するんだよって言ってですね。先生がこう意識で、この
水をですね、氷にしたんですよ。カチンって凍ったんですよ。えー!そんなんちょっとこれトリックじゃない
のとか言ってですね、2回やってもらいましたね。で、意識がお前たちはまだ使えてないんだと。ものすご
い本当はパワーがあって、思ったものは本当は全て実現するんだよと。だが、お前たちの頭の中はまだ雑
だって言われましたね。まとまってない。まとまってないからできないだけであって、人間の意識っていうの
はものすごい力があるんだって。で、その後に、英国のコインを3つ持っててですね。銀貨と銀貨と真ん中
銅貨だったかな。3つ握らせてくれて。一瞬ですね、私が握って確かめて持ってるその一瞬で、もういいよ、
一瞬で移動させたからって言うんですよ。瞬間移動させたから、物品移動させたから開けなさいって。本
当に真ん中のコインが無かったんですよ。誰も触ってないし、自分でちゃんと持ったの確かめてますから。
で、どうしたんだろうなって。先生どうしたんですかって。いや、私が思った瞬間にもう移動したと。どこに移
20
動させたんですかって言ったら、隣の冷蔵庫の冷凍室のね、氷の中に入れたって言うんですよ。それ持
って来いって言うんで、隣の部屋に入って冷凍室の中に氷の大きな塊があったんですよ。それ持ってきて。
見えないんですよ、白く濁ってて、氷が。割りなさいって言うから割ったらですね、ど真ん中からさっき持っ
てたコインが出てきましたね。もともともし作らそうとしても、水っていうのはコインが沈んで凍っちゃうから、
真ん中にコインが止まったまま凍らすことできないんですよね。はぁーっと思いました。
で、今度、タバコの銀紙を手に持たせてくれて、私と私の妻と、あとスロベニアの哲学の博士でマヤさん
っていう人、ちょうど学会で来てたんですね、中国哲学の学会で、中国で国際会議開いてて。彼女とも南
京大学のときの親友だったんで、連れて行ってあげたんですけども。3人でこう持たしてくれて、銀紙、タ
バコの銀紙をこう丸めて持たせてくれて。その先生は3、4m離れてますけど。すると妻が熱いあついって
言い出したんです。もう、ころころしだしたんです。熱くて持ってられなくて。馬鹿なことしてるなーと思った
ら、自分のもそのうち熱くなってきて。本当に煙が出てましたから、熱くなって。で、マヤさんのもそのうち熱
いあついって日本語で言い出してね。何十m離しても、物を燃やす事ができるんだよと。癌の細胞なんか
殺すときによく使うとか、こうらいしたり熱を加えたりしながら治すこともあるんだとか言ってましたけども。ま
ぁ、意識でやってるわけですね。
こんな感じで、先生から新しい修行法授かってですね。で、最初はね、まだまだ正式な修行できないっ
て言われましたね。最初準備こうとして、達磨瞑想法っていうのをしなさいって言われました。達磨正座法
って言うんですけど。達磨大師の達磨なんですけど。それを4つの印を組みながら、呼吸法が2通りあって。
誰でもできるんですけど。数を数えながら。昔でいう数息観ですかね、数を数えながらたんでんをお腹の
おへその辺りを意識して、印を結んで。で、ちゃんと呼吸も鼻で吸って口で吐くとかいろいろあるんですけ
どね、口から吸って鼻で吐くとか。それやっていくと段々雑念が減っていくんですよ。雑念出てきても、そ
れに戻ろうとしますから。忘れても、どっかに飛んじゃうんですよね心がね。それでも、段々心がまとまって
くるんですよ。それを7ヶ月ぐらいしましたかね、毎日やりました。多いときは1日7回ぐらいやりました。少な
いときは2回ぐらい。1回につき、45分から1時間、長いときだったら1時間15分ぐらいかかりますね。心が
静まってくると、呼吸もゆったりしてくるので長くなるんですよね、どうしても。それをずっと7ヶ月続けて、そ
れで先生のところに行って。まぁ、準備ができたからよろしいっていうことで、正式な行を授かって。それは
朝5時から7時にやるんですね。で、時間も決まってるんです。で、これは採気法といって、気を採気、採
集するっていう採ですね。こう、気をとり入れるっていうことで。大地の気とか、天の気とか、あるいは樹木、
木とか花とかね、そういう気をとり入れたりとか。朝ですね、太陽の気もとり入れます。そういう仕方があるん
ですけども。それをしながら毎日、そうですね、1時間半から2時間ぐらいかかりましたかね。妻と2人で毎
日しました。1日休んだら最初からなんですよ。100日やらないと次の行に入れないんですね。途中例え
ば、大小便どっちか行きたくなって我慢できなくて休んだら、また最初からなんです。それを毎日どっちの
方向に向かってやんなさいっていうことで100日やって、また北京に飛んでいって、やり終えましたって。
今度、第二部功っていうのがあって。これは夕方なんですね。夕方は5時から7時、やっぱりやるんですけ
ど、これは寝てするやつなんです。で、やっぱり、印を結びながらその印を移動しながら呼吸法もあるんで
すね。呼吸法も何通りかあって、やっていくんですけども。途中でね、よく手足が、なんちゅうかね、末端ま
で痺れるというか、なんともいえない変な感じになってくるんですよ。もう、動けなくなってくるような感じ。そ
ういう感じのときも何回かありましたね。ちょうどこの前、ブレス・ワークっていうのを1回やらせてもらってた
んです。私の気功の合宿のときに、ブレス・ワークで、生まれたときのですね、いろんなトラウマとかあるっ
て言いますよね、バース・トラウマってね、不自然に生まれた方は特にそうらしいですけども。そういったも
21
のとか、いろんなトラウマが取れるっていうんで。ちょうど、吉福さんってね、トランスパーソナルの、あの方
もよくやってるみたいで。その方のところで学んでた方が私の合宿のときに、コラボでそのブレス・ワークを
やってくれたんです、担当してくれて。やったときに、同じ経験しました、やっぱり。呼吸法によって手がこ
う固まってくるような感じと、足がこう固まってくる感じと、指がこうなって冷たくなったりとか。で、あぁよく似
てるなと思ったんですけどね。私たちの修行法もちょっとブレス・ワークに近いものがありましたけども、こう
なんとも言えない感覚になってくるんです。それで、心の中のこびりついたいろんなものが取れていくんじ
ゃないかって言ってましたね。そのトランスパーソナルのブレス・ワークのときには、私も初めてやったんで
すけども、その参加者がいろんな方々が、皆さんも多分詳しい方が何人もいらっしゃると思いますけども、
わめきだしたりとか、うわーって言い出したりとか、悔しがったりとか、2人でがぁーってやったりとか、助け
てーとかいう子もおったし、踊りだす人もおりましたね。歌を唄いだす人もおりましたね。私もそんなん出な
いと思ったら、声がわーっと出てきましたね。2回目のときは笑いが出てきましたね。おかしくて、何も思い
出すわけでもないし、何も面白いこと無いのに、喜びしか湧いてこなくてね。もう1時間ずっと笑ってました
ね。もうとにかくおかしいんですよ。あはは、うわーとかね、寝転がってずっとね。大変面白い経験させても
らいましたけどね。それもだからちょっと、トランスパーソナルそれまで全く経験無かったので、ついこの前、
岩手合宿でやったときに、なんか自分が受けてた修行とちょっと似てるところがあるなって感じがしました
ですね。深いところの意識を変えていくっていうかね。そういう単調なことを繰り返しながら自分の意識改
革みたいな、そんな感じしましたですけどね。
先ほどの話戻りまして、二部功が夕方の5時から7時。それがまた100日終わったら、今度第三部功っ
ていうのはお昼なんですね。11時から1時の間で。これは時間がすごく短かったですね。夕方のも、大体
1時間半ぐらいかかりましたけども。第三部功はお昼に、歩きながら円を描きながら歩きながら、こう木の玉
を回しながら歩きながら、こっち周りこっち周りとしながら、それを何回かも繰り返していく。やっぱり数も数
えながらですけども。それをまた100日間やって。で、最終的に、第四部功っていうのは、夜中の11時か
ら 1 時なんですね。これが一番厳しかったですかね。夜中それまで眠れないですからね。で、1時までや
って、また起きて朝5時からしなきゃいけないから。一番きつかった。それも100日やり終えましたけど。夜
中のは、一箇所に立って、部屋の中でもいいんですけども。数を数えながらやっぱり、いろんな呼吸法を
伴いながらですね、やっていきましたですね。で、それを終えて、先生のところに報告に言ったんですね。
初めて誉めてくれました。今まで誉められたこと無いんですよ。お前はまだ雑だとかね。まだまだまとま
ってないとかね。脳がまとまってないとかね。それまでも、日本にいたときも瞑想というか、永平寺で接心受
けたりとか、宇治の万福寺で接心受けたりとか、そういった事もやってましたし。さっき言いましたようにね、
道教的な瞑想もやってたし、いろんな経験もしてたんですけども、この先生に言わせると、まだまとまって
ないと、雑だって。今回、今回って言ってもこの前、6月に報告に行ったんですね、やっと終えて。随分か
かりましたからね、延べにしたらですね。400日間プラス7ヶ月ですから。そしたら、うん、まぁまぁいいとか
言われて。で、せっかくだからお前たち2人にまたもう少し中を整えてあげようと言って。2人順番に椅子に
座らされて、先生が頭の上に手をかざしてくれたんですね。それまでも第一部功終わったときも1回やって
くれました、背骨に。それが大事なんだって言うんですね。やっぱりそのエネルギーを入れたりしながら修
行を進むようにしてくれるんですけども。第一部功の100日終わったときは、もう一瞬、2、3秒ぴっと触れ
てくれます。熱かったですね。熱っ、うおーってなったんですけどね。妻もそんな感じだったですね。今回、
第四部まで終えて行ったときに椅子に座らせてくれて頭に手をかざしてくれたときは、妻が側に座ってて、
私が先にやってもらったんですよ。驚いてんですよ。どしたの、頭から煙が出てるとか言ってですね。えー
22
とか、自分は見えなかったんですけども。白っぽい煙が出てるということだったんですけども。で、しばらく
してやめてもらって。で、彼女が今度交代してやったんですけど。次側で見てたんですけども、出るかな
ーって思ったら本当に出ましたね。青っぽい感じだったですね、彼女のは。煙が本当に線香のけむりっみ
たいにもやもやーって出ていくんですよ。それで2人ともすごい元気になってしまってね、また。なんかもう、
最初の頃は先生にぴって入れられたりとか、掌熱くしてもらったりだとか、そういったときなんかは、このとき
も邪気を出してくれたらしいです。エネルギーとか濁ったのだしてくれたらしいですけど。それで燃やした
らしいですけども。とにかく眠くて眠くて仕方なかった。もう一日中眠かったですよ、何もしてないのに。と
にかく眠くて眠くて。もう最後のやつはなんか元気になってね。頭から煙出したら。そう、しばらく元気で、
エネルギーに満ち溢れてる。不思議な経験ですけどね。それから、治療もたまにするんですけどね、効果
もものすごい上がりましたね。
中国では伝統的なものの中に、今言ったその先生ですけども、この先生はもともとおじい様が少林寺の
法上さまだったんです。で、おじいさんは118まで生きたと言ってました。途中で還俗されたみたいでね。
もう結婚されて孫もいるんですけども。その孫に小さいときに教えて、118の時に、亡くなるときに孫に全て
を注ぎ込んだらしいですよ。よくね、密教なんかも灌頂するとか言いますけども。全てエネルギーも意識も
全て孫に注ぎ込んだみたいですね。この方がですね、修行したのはですね、7、8歳からですね、おじい
さんに仕込まれて。で、若手、子どもですけどね、子どもを8人選ぶんですって、素質のある子どもを。で、
その8人のうち、男性が7名で女性が1名で、同じような年頃の子を特殊教育みたいな感じで修行させるん
ですね。その8人とも、中国でいう特異功の超能力が出てくるんですけども。神通力ですよね。それを悪い
事には使ってません、すべて。この先生は今は孤児を育て上げてます。今までもう3千人ぐらい育て上げ
て。結婚はされてないんですけど。もう身を隠してますのでね。北京の市内からだったら車で1時間ぐらい
のところに身を隠してて。お若い、18のときに少林寺から還俗されて、毛沢東に呼ばれて、国造りの手伝
いをしてくれって事で。で、呼ばれて、鄧小平の時代まではそういう国家の国造りのお手伝いをされたみ
たいですね。で、そういう力があるので、そういうのを政治家が利用したのかもしれませんね。それで、途
中から政治的なもの嫌いになって、それからちょっと身をくらましたらしいですけども。毛沢東の頃に、毛
沢東っていうのはそういうの信じたんでしょうね、きっとね。自分もよく瞑想されてたみたいですね、野山の
中で座ってね。なんか中国の古い哲学を学ばれてますしね。で、でも他の共産党員みんな信じないんで、
この方が18の時に、行ったときにみんな信じないので、どっかビルのですね、先生に聞いたら、2階でみ
んな会議室で座ってたんですって、その共産党の偉い方々。で、皆さん目を閉じてくださいってこの先生
が言ってですね、いいですよ目開けてくださいって言ったら、全員がですね、3階まで瞬間移動させられ
てたらしいですよ。それでみんな信じたっていうんです。えっ、おっ、とか言って、一瞬で。なんか眉唾に
思えますけども。でも、そうでもしないと信じなかったんでしょうね。そういうなような事とか、貨物列車を北
京から広東まで瞬間移動させたりとか。そういう事でみんな信じてくれたとか言ってましたね。壁抜けの実
験もしたって言ってましたね。昔の仙人に出てくる話はみんな本当だって言ってましたよ。万里の長城を
弟子が抜けられるように気を送ってあげてね。前にマジシャンがやったんですって、万里の長城を抜ける
っていうマジック・ショーでね。で、それを本当にできないかっていうことで、実際にやったみたいですね。
あと、ガラスを抜けるとか、壁を抜けるとか。ある弟子がそしたら、自分だけじゃなくて自分の飼ってる犬も
一緒に抜けさすことできますかとか言って。先生も試してみたらしいですね、本人言ってましたけども。犬
はだめだったとか言って。犬はガツンと当たって、キャンキャンと吠えてたとか言ってましたけど。人はちゃ
んと抜けられたと言ってましたけど。まぁとにかく、先生には先生の用語があって、私たちの用語と全然違
23
いますけども。でも何か大事なとこを掴んでるんですよ。科学的な事を勉強してませんしね、医学的な知
識も無いから血液がおかしいだけしか言えない。でも、何かを掴んでいらっしゃって、相手の意識とか体
がどうやって変わっていくかっていうのはわかるみたいですね。すごく興味持ちましたね。そういったもの
がまだ残ってるんだなということでね。
あと、112 歳の武術家であり、気功士でもあるんですけども、ろしけん先生っていうのがいらっしゃって。
これ、広東省がテレビ番組で作ったんですね。そういうすごい方々を取材して、で、それが映ってるんで
すけども。私の武当派気功と言って、特殊な呼吸法をするんですけども。その呼吸法の教えてくれた友達
がこういう友達で。彼は私の太極拳の兄弟弟子でもあるんですけども。小さいときから、十代のときから、
武当派って、武当山っていう道教の山があるんですね。武術の武に、当選の当、当たるっていう漢字書い
て。その武当山で修行した道士が山から下りてきて。で、人々を治療しながらそういう修行法を教えた。楊、
楊貴妃の楊に、ニックネームが半仙、半分仙人で半仙っていうらしいです。山から下りてきて半分世俗の
中に入っちゃったので、楊半仙という先生に彼は習っててですね。今はものすごい実力があるんですよ、
治療家として。中国でももう、トップクラスじゃないかと思いますよ。国賓が来るときに、クリントンさんが大統
領のときに来たときにも彼頼まれて治療に行ったんですよ。中国の要人たちの治療頼まれたりとかするん
ですけども。私よりちょっと年上で、今53歳ぐらいですけども。もう気が満ちてね、ムチムチってしてますよ。
この方の先生の楊半仙先生も98まで生きられたらしいんですけども。その方の兄弟弟子が、今言った、ろ
しけん先生、112歳。今、115歳ぐらいですよ。
まだ生きてらっしゃる、武漢で。やっぱり、なんで長生き、これ観られたらわかりますけども、何で長生き
して元気かというとですね、2つあるんですね。1つは体をちゃんと自分の思うように動くように毎日鍛錬さ
れてる。この先生は内家拳といって、気を練っていくような拳法、中国ではあるんですね。内なる家の拳法
って書くんですけど、内家拳といって。もう1つは外家拳といって、外の家の拳法といって。これは筋骨を
鍛えていく、筋肉とかね、スピードを速めていく。で、これは内家拳といって、八卦掌という武術をされてた
りとか。他にもいろいろされたみたいですけども、気を練っていく。それがまぁ、動きのある気功法としてや
ってるわけですよね。もう1つは静かな気功法として、やっぱりその武当山の道教の流れのせいざ法をさ
れてるんですね。鍛錬で気を蓄えていって、それがこう回っていく、督脈に回って小周天となっていったり
とか。で、体が変わっていって、頭も冴えてらっしゃるし、ものすごくお元気ですね。毎日朝は、自分の大
きな武術館を持ってらっしゃるんで、そこでいろんな人に教えて自分も練習して。朝ごはんは武術館の前
の路上ですね、道端にテーブル出してそこでごはん食べるんです。朝からすごいですよ、肉まん何個とか
ね、ゆで卵を何個とか、いっぱい食べられる。元気です。それだけ動いてるからですね。だからアナウンサ
ーが、レポーターが、おじいさんそんなゆで卵を毎日3つも食べてたらコレステロール高いのに大丈夫で
すかって言ったら、いや、この前まで5つ食べてたとか言ってましたけど。で、書道が好きで、書道をやら
れたりとか。お昼食べた後はしばらくしてから必ず瞑想されてましたね。自分の師匠から教わった道教武
当派の練習法で鍛錬に気を練っていくっていうのをずっとされてる。文革の時に、そういった師匠から教
わった文献はみんな取られちゃったらしいですけども。覚えてるのをメモにしておいて、それを基にして毎
日修行されてるみたいですね。あんだけ 112 歳で元気なのってのは珍しいと思いますね。顔色もいいし、
体もいう事をきくし。すごいですよ、剣とか太刀とかぱぱぁーって動くしね。
えっと、この先生の男7人女1人で、女の人が1人いるって言ったですよね。この人がそうなんですよ。こ
の方にも昔お会いしたことあるんですね。で、この方に出会う前だったんですけども、後でわかったら兄弟
弟子だったんですね、小さいときに。その3年間ぐらい特殊訓練、虎の穴みたいですよね、特殊訓練を受
24
けたんで。この方も、80ぐらいですけども、なんとも言えないですね、このどっしりした感じが。尼さんです
けどね。せいきんほうしっていいます。聖者の聖に、萩本欽一の欽ですかね、聖欽法師様っていいますけ
どね。中国の武漢から車で4、5時間ぐらいかかったですかね、九宮山っていうお山があって。九つの宮
の山って書くんですけども。そこの中腹にお寺を建てて住んでらっしゃいます。若いお坊さん方を育て上
げてますね、九宮山って。なんでその方にお会いしようかと思ったかというと、さっきの李和生先生って私
の今の太極拳の先生がいるんですけども、その先生とか、あとアメリカに行った有名な張宇先生って気功
の先生がいらっしゃって、その先生方が聖欽法師に会いに行ったらしいんですよ。で、会いに行ったらで
すね、何人かで会いに行ったらしいんですけども、北京をいつ出て、どこそこの町で何時間待たされてと
かね、そこで汽車がどんだけ遅れて、乗り継ぎがどうこうかかって、またどこそこ行って、ここ行くときに武漢
に行って、そっからバスでどんだけかかってとか。今までの北京からの行程をみんな当てられたんですっ
て。で、驚いたとか言ってました。なんで知ってるんかと思うぐらい、全て透視するようにみんな言っていく
んですって。で、そのうちの1人が信じてない人が1人いてですね。で、次の日に聖欽法師様は山に薬草
を採りに行くらしいんですけども。で、信じてない人が一人お寺に残ったらしいですね。で、一緒に法師様
と歩いてて、信じてる方々が、あの残ったやつはもう、唯物論で全然こういう世界を信じないんですよ、な
んとかしてあげてくださいって言ったら、聖欽法師様が山の中腹からですね、山道歩きながら、下のお寺
に向かって手でヒュッヒュッヒュってこうしたらしいですよ。なんかヒュってピュってやったらしいですよ。はい、
いいですよとか言って。で、薬草を置いて、薬草を採って帰ってきたら、その信じてない方がお寺の境内
で、金縛りになって立ったまま動けなくなってたんです。で、また法師様がヒュってやったらパッと解けて動
けるようになって、もう信じますとか言って、急に変わったとか言ってましたね。
私も訪ねていったときに、ちっちゃなお寺で、夕方着いちゃったんですけども。法師様にお会いしようと
思って、おばさんが掃除してたんで、お寺の側で。おばさん、聖欽法師様にお会いしたいんですけどって
言ったら、なんか用事かねとか言うから、いやー、もうお会いするだけでいいんですけどもって言ったら、
そうかーって感じでどっか行っちゃったんですよ。で、若い坊さん方もいたんで話しかけて。で、いろいろ
話しかけてるうちに、患者さんもいっぱい来てるんですね、いろんな人治療してますので。患者さんたちに
インタビューしたんですけどもね。いやぁ、すごい方だとかってみんな言うんですよ。もう何にも言ってない
のにどこの体が悪いかみんな当てていくし、代理で来ても当てられるとか言ってましたね。兄の代理で来
たんだけども、全て当てられたとかね、言ってましたですね。で、若いお坊さん方に話聞いても、面白かっ
たですよ。うちの師匠は、たまに山を飛んでいくって言うんですね。向こうの山まで飛んでいって、しばらく、
食べ物持って行かないで、山の水とか木の実とか食べながら修行して、すごいパワーアップして帰ってく
るとか言ってましたよ。ほんとかなーと思ったんですけども。最初に李和生先生のお師匠様が山でこもって
る大仙人がいたって話をしたじゃないですか。お茶を出してもお茶は飲まないし、食事出しても食事食べ
ないと。やっぱりそういう方々みんなそうみたいですね。山の清水しか飲まないし、食べ物もそんな変な物
食べないらしいです。で、小さいときは孤児だったらしいですね。で、ここの家族がこの人と一緒に子ども
のように育て上げたらしいです。ま、ですから、超能力はおありなんですけども、そういった事を一般には
自分から話されないし。いい事に、この方はそういった若い弟子、お坊さん、出家したお坊さん方を育て
上げてるし、治療を応援したりとか。この楊先生っていうんですけどね、楊先生もそうですよね。孤児を育
て上げたり、たまに中国人来たときに治療してあげたりとか。そんな感じでいらっしゃいますね。
こういった方々は中国でも特異功能者としては有名ではないですけども、密かに自分の力を良き事の
ために使っているような感じがしますね。あとね、もう一つタイプがあって、特異功能者では生まれつきっ
25
ていう方がいるんですよね。そういう方々も何人かお会いしました。中国で昔は人体科学学会っていうの
があったんですよ。今は政府に潰されちゃいましたけど。学者たちの集まりで、こういった超能力とか中国
医学とか気功とかを、そういった目に見えない世界を研究してる学者たちのグループがいたんですよ。で、
その頃日本からもよく来られました、湯浅先生とかね。いろんな学者の方おられて、私も通訳で中国で学
会のときに手伝わせてもらった事もあるんですけども。そういったときにいろんな超能力者に会いました。
中国中から集めてくるんですよ。向こうから売り込みにくるんですって。それで、試しにさせるらしいですね。
それで眉唾物もあるし、いろんなものあるみたいですけど、本物もいらっしゃるみたいで。面白い方々もい
っぱいいましたね。湯浅先生方が来られたときも、何人かの学者の方々と、北京飯店だったかな、どっか
食事したときに、超能力者の、その中国の人体科学学会が呼ばれてね。なんていう名前だったかな、趙
先生だったかな。有名な方がいて、国家がもう放さないで。外に出したら危ないですから。すごい力ある
方なんで。来たときに、何人か並んでるじゃないですか。で、もう一瞬のうちに誰かの財布をぱっとこっち
の中に入れて。わっ、無いって。で、いいホテルだったんで銀製の食器使ってるんですね、フォークでもス
プーンでも。こんなん手で持っても絶対曲らないっていうのをくねくねくねくねって曲げてしまいましたよ。
こんなんぐるぐるぐるぐるとかって、ぴょーんとか放して。学者たちがみんな驚いてましたね。もうなんか、飴
をねじるように。そこに元々置いてあるやつですからね。後で弁償するんですけどね。高いと思うんですよ、
あぁいうのは。もう目を丸くして。で、ある人に、あ、私もやられましたね、2人ぐらいやられましたね。ぱっと
こう指差されたら、バチバチって熱いんですよ。毛糸の部分が燃えてましたね、煙出て。ぱっと火をつけた
りとかね。その人の場合は生まれつきなんで、人格的にはおかしいんですね。もう国家が管理しないと変
なことするかもしれませんから。生まれつきだったらしいですね。ちょっとおかしいなって思いますけどね。
昔車運転して、ガソリン無くなったら満タンの車の側止めて、満タンのガソリン自分の車に瞬間移動させて
ビューってこういっぱいにしたとかね。銀行強盗の振りをして、なんかこんだけお金下ろしたいんだけど、
そんな下ろせませんとか言ったら、勝手に札束がこのかばんの中にドサって入ってたりとか。また返してあ
げたりしたらしいですけど。社会に出せないんですね。それはちょっとあまり賛成できないですよね、そう
いう。中国でもそれをまたなんか利用しようとしてるんじゃないかと。
でもそういった真面目な研究者たちの学者たちのグループがあったんですけども、それが一時はです
ね、科学院とか院が付くのはすごく中国でも大事な組織となっているんですけども、いんたい科学院まで
いったんですよ。そういったものが成立してですね、それがでもそのうちに潰れましたね。やっぱりなんか
問題があったのか、何があったのかわかりませんけどねぇ。それからはそういったものは中国では扱わなく
なってきたですね。そういう学校もあったんですよ。私も一回行った。武漢に体育大学があって、若い十代
のですね、超能力者の子どもたちをみんな集めて、特殊訓練させるんですね、学校の学生に。それで単
位も上げて、卒業もできるんですよ。それを訓練する先生が偉いんですよ、やっぱりね。自分もないとでき
ませんから。その若い先生にお会いしたんですね。自分にも師匠がいて、その彼もそういう力を持ってる
んですけども。私がお会いしたときにはもう断食修行してましたね、自ら。道教的な修行だったのかな。僻
穀というんですけどね、穀物を断って断食していく。やっぱり自分が力がないと生徒たちがついてこない
んですって。みんなすごい力を持ってるから。そのときにちょうど、体育祭があるとかいってですね。で、お
前も参加しないか、今日は予行練習なんだって言うんですよ。その子たちの体育祭ってどんな事するの
かなと思ってですね。超能力のそういう実験もするんですよ。みんな点数つけて。
(ハリー・ポッターやね。)
モデルを作って、この人を透視してどこが悪いかとかね。ちょうどそのときに、北京から人体科学学会の
26
学者も来てたんですよ。私と2人被験者になってですね、若い十代の高校生みたいな大学生みたいなの
が来て透視していくんですね。そしたらその、隣の学者の方も驚いていました。自分が忘れてた昔の頭の
中の怪我したことも当てられたと。なんか怪我してどうのこうので、もう傷跡も無いのにそれが当てられたり。
私もなんか言われましたね。胆のうの胆管のところがどうのこうのとかね。ちょっとこの辺が痛かったんです
けどね、何も言ってないのにやっぱりそういうのを当てられたんで。いやぁ、すごいな、この子たちはと思っ
たですけどね。そういう点数つけていって、競技にしてるんですよね。信じられないですよね。この学校今
どうなったのか知りませんけど。ちゃんと体育大学の中でそういう学科があるんですよ。
(日本で作ったらいいのになあ。)
まあ、普通の中国医学のほうでもですね、いろんないい先生についたんですけども。そういた超能力は
無いですけども、やっぱり不思議な治療をされる方もいっぱいいらっしゃって。で、例えば、ガフジン、賀
正の賀、年賀の賀ですよね、フジンていうのは普通に仁義の仁かな、賀普仁ていう方がいらっしゃって。
今でも生きてらっしゃるかな。ちょっと今、最近何年かお会いしてないんでちょっとわからないですけども。
北京の鍼灸学会の会長もされてましたね。全国でもそういう何か役されてましたね。中国の鍼灸師ってい
うのはすごい単位の数いると思うんですけどね。その方も小さいときから内弟子で、徒弟制度ですね、昔
からね。今はもう中国医学の大学各地にありますけども、もう何百人も一緒に授業受けて、やっぱり良いの
が育ってないんですよね。ある程度は皆さん知識も多いし、ある程度は授業もね、いろいろ実技もその付
属病院でやったりして、レベルはあるんですけど、それ以上はいかないんですよね。そういう徒弟制度で
育った方々はすごい方がいるんですよね。もう、師から弟子へ師から弟子へと伝わってますから、学問は
やってないけどもすごい力があって。賀普仁先生はそういう中で育った方なんですね。で、私はお会いし
て、何回か仕わしてもらったんですね、側に仕わしてもらって。で、1回につき1ヶ月ぐらいとかね。それで2
回ぐらい仕わしてもらったですかね。やっぱりすごいんですよ。午前中はね、何人ぐらい来たかな、50人
から70人ぐらい来ましたかね、午前中だけで。脳がですね、まぁ知恵遅れですね、先天性の脳発育不全
みたいな感じで、6歳とか8歳とか10歳になっても歩けないとか、言葉しゃべれないとか。ダウン症の子ど
ももいたし、いろんな子どもがいたんですけども。その子どもたちを鍼で治していくんですよ。1回では治り
ませんけどね。漢方薬も使ってました。鍼のツボなんかも簡単なツボなんですよ。子どもだから長いこと鍼
を置針といって置かないで、一瞬でぱっぱっぱっぱってやってました。背中から。それをずっと見てますと、
1 ヶ月 2 ヶ月3ヶ月とか経っていきますと、歩けない子が歩けるようになってきたりとか。で、言葉しゃべれな
い子がしゃべれるようになってるんですよ。中国全国から来てましたね。親が連れてきて、毎日泊まりなが
ら先生に診てもらうって。もう奇跡ですよ、みんな。もう子どもたちも喜んでるし、親も喜んでるしですね。も
う驚きましたね。賀普仁先生もやっぱりさっき言った内家拳法、八卦掌とかされてましたね。気がものすご
い満ちてますので、先生に一回試して私も鍼してみるとどう違うかって。日本では鍼管というのを管に針入
れてやりますけど、そのままぷすっとやるんですけども。先生が手をおいて、くっと気を入れると、ビビビビ
ビってくるんです。何もしないとこないんです。自分は気を練ってて、これがあるから効き目があるんだと。
同じツボを使っても効き目は違うとか言ってましたね。で、瞑想もしてるって言ってましたね。仏教に帰依さ
れててね。瞑想もしてるし、ちゃんと八卦掌で全身に気がいくように丹田も作っていくし。その気を鍼を利
用して注いでるだけなんだよっておっしゃってましたね。もう一人、キョ先生っていう名人がいて、その方に
も仕わしてもらったんですけど、両手で鍼してましたね。両手でぷすぷすぷすってしていくんですけど。そ
の方も90超えてたんですね。賀先生は私がお会いしたときには60代だったんですけども。90超してる、
キョっていうのは許可の許っていう、許先生がいらっしゃって。もうなんともいえない、仙人みたいな顔して
27
るんですけどね。ものすごい効くんですよ、また。もういろんな方を治していかれるんですね。やっぱり毎
日瞑想されてるとか言ってました。夜は帰ったら、こう正座して気を練って瞑想してると。だから中国医学
でも、本当の達人・名人っていう方々は修練をされてるんですね。もちろんそういうね、中国医学の理論と
かツボとかももちろん学ばれてますけども、それだけではないみたいですね。その辺が大きな違いみたい
ですね。
老中医っていうんですね、年取った中国医学の中医。老中医がどんどん今少なくなってます。今生きて
る方々も亡くなっていったら、もうその後そういう名人たちは生まれてあんまりこないんじゃないかと思いま
すけどね。老中医に今のうちにね、学んどかないとどんどんそういったものは廃れていくんじゃないかな。
今の現状は中国ではそんな感じしますね。
(それを修練することと、今の新しい人たちの中医学の学習が繋がってない?)
繋がってないですね。
(繋がってないんですか。)
まぁ、ひょっとしたら一部の方々は大学で学びながら、そういう老中医に民間でついて学んでるかもしれ
ません。私も北京大学行ったときには、学校の授業が面白くなくてですね、やっぱり民間の先生方のに行
ったほうがたくさん学べることがありましたもんね。もちろん学問として体系化していくのも素晴らしいことだ
と思いますけども。それぞれタイプがあると思うんですよね。実際に臨床に出ていく方はやっぱり、そういう
民間のいい先生から学んだほうがいいものが身につくような感じしますけどね。
(その意識っていうのがね、話の中に出てきたと思うんですけど、意識の持ち方とか。っていのはそっち
の修練に繋がると思うんですけどね。)
そうですね。
(そういうところはいろんな先生にお会いになって、どう・・・。これは学校で学べるものでは無いですよね、
こういう感じだったら。意識の持ち方ってもう少し別の言い方をするとどうなるのか。ちょっとわかるようなわ
からないような。)
そうですね。だから、心は変わらないじゃないですか、大体ね。だからそれをなんとかして、いろんな方
法とか手段を使って、その意識とか心を変えていくっていうことが大事になってくると思うんですよね。知識
を増やしてもなかなか深いところは変わっていかないと思うんですね。その手段として、今言ったように、
達磨せいざ法っていう瞑想であったり、太極拳であったり、そういったもので深いところの意識を変えてい
こうとしてるっていうことがなんか理解できますね。
そのときはわかんなかったですよ。今はそれがわかります。最初に、気の力っていうビル・モイヤーさん
の番組にも出てくるんですけども、石明先生っていう先生についてたんですね、石に明るいって書くんで
すけども。その先生のところについていたときは、それまでは太極拳は形だけでやってたんですね。いろ
んな先生について、二十四式とか四十八式とか、楊式終わったら陳式習うとか、それ終わったらどうのこう
のとかやってたんですけども。その頃は形だけだったんですけども、石明先生のところについたときはそう
いったものを一切教えてくれなかったですね。で、その頃北京大に通ってたんですけども、朝1時間かけ
て先生が毎日教えてらっしゃる公園があるんですね、紫竹園っていいましたけどね。その紫竹園公園に
行って、自転車で通って。中国人からはお金を集めてなかったと思うんですけども、外人からはきっちりお
金とってですね。私も月謝もちゃんと払ってたんですけども。自分にとっちゃちょっときつい感じだったん
ですけども。で、何かを教えてくれるかと思うと、教えてくれないんですね。ただ立ってるだけ。立ってる瞑
想、立禅っていうんですけどね。ただ立つだけっていうこと。こんな感じです。これ湖の前で立ってるだけ
28
で。
(どのくらいの時間立ってるんですか。)
1時間ぐらい、はい。で、終わったらもう帰るんです。それを何ヶ月もやらされるんです。お金払ってるの
に何も教えてくれない。それまではいかに合理的に、いかに早く学びたいかっていう気持ちがものすごく
あったので、こんなことして無駄だよなとかね、お金払ってるのに何も教えてくれないからもう辞めようかな
とかいろいろ思ったんですよ。でも、それまでいろいろ学んだけども、結局形だけで、深いところまでなん
かいってないよなっていう自分の感じがあったので、この石明先生の言う通りやってみようかなと。それで、
一回信じてやってみようと思ったんですね。
こう立って。場所も決められるんですね、その公園の湖に向かってここでお前は立てって。他の方々も
みんな朝6時から立ってるんですけども。で、途中で先生が弟子を集めて何か話し出すんですよ。何か大
事なこと話してるような感じでみんな集めて、ちっちゃな丸を描いてですね。私は気になるので、自分で行
こうと思っていくじゃないですか。一緒に聞きに行ったら、お前には話してない、お前は戻れとか言って。
余計気になるんですけどね。そんなんしていろいろ試されるんですね。ほんとかなとか思いながらですね、
外人だから教えてくれないのかなとか思いながらですね。全然変わってこないしですね。でもやってるうち
に、なんか変化が出てきたんです。質問したら最初怒りました。お前は質問が多すぎる。お前に今話して
も絶対わかるわけがないし。かえって邪魔になるって。お前の修行の邪魔になるからもう質問するなって
言うんです。こっちは質問したいですからね、いろいろ。なんでこうするんですか、ああするんですかとか、
次どうやったらいいですかとかね。質問しても全然答えてくんないですから。ああ、そうかもしんないなと思
ってですね。で、お前がある程度までいったら、一言いったらみんなわかるって言うんですね。ぱってこう
突付いたらぱっと、一点突付いたらぱって解けるから、もうそれ信じてやりなさとか言ってですね。わかりま
したとか言って。
それから求める気持ちを無くしたんですね。もうやった通りやろうと。今まで大して事学べなかったしね、
いろんなことやっても上辺だけだったからやろうと思って毎日立ってて。そのうちに、たんでんが高くなって
くるんですね。なんか気の玉みたいなのができてきて。で、すごく嬉しくなってくるし。先生に報告に行った
んです。先生、丹田が温かくなってきましたとか言ってね。玉みたいなのできてきましたって。そんなん構う
なって言われましたね。構っちゃだめなんだなって思いまして、またこうやってるんですけども。そのうち命
門って、命の門って、ここがあったかくなってくるんですよ。真冬ですよ。北京の真冬っていったら-10℃
ぐらいありますから。あったかくなってくるし。それも報告に行ったら、構うなって言われましたね。で、はい
とか言って。そのうちにずっとやってたら、こういう内側とか経絡に沿ってあったかいものが流れ出すんで
すよ。なんか液体みたいにばぁーって気持ちよくて。あまり気持ちいいから先生のところに行って、先生、
次になんかこう流れてきましたって言ったら、いちいち報告すんなとか言って。どれ言っても怒られるんで
すよ。言わないほうがいいのかなとか言ってですね。
で、そのうちに浮いてくる感じになってきましたね。立ってるんだけども、ふぁーっとこう。実際浮いてな
いと思うんですけども、体がふぁーっと軽くなって浮いていくような感じで、手がどこにあるかわかんなくな
ってくるんですね。自分の体の感覚が無くなってくるっていうんですかね。どこに体があるんかとかね。で、
ほっとくとこう浮きそうな感じになってきて。あるとき先生がやっぱり言ってくれましたね。みんな空気中で沈
んでるんだって言うんですよ。浮かなきゃだめだって。水泳と一緒だって言ってましたね。水泳のときもま
ず力を抜いて浮く練習をするじゃないかと。太極拳もそうだ。先に浮く練習をして、そうなったときに初めて
型を覚えられると。型をしながらでも浮いてるかどうか。水泳でも最初浮くようになっても、力が抜けても、
29
泳ぎだしたらまた沈んじゃうんですよ。それと一緒だとか言ってましたね。それがもっと上手になって型をし
てそのままでもリラックスして浮いた状態になってきたら、初めて人と触れ合えると言ってましたね。それで
ないと、水泳でも上手に泳げるようになってきてもほんとに完璧でなかったら、溺れてる人を助けにいこうと
しても自分も沈められちゃうじゃないですか。緊張しちゃってね。一緒だって言ってましたね。だから、最
初に何ヶ月も何ヶ月も、たんとうこうっていうんですけども、立禅、立ったままの瞑想をさせられて。
先生はよく見てるんですね。こっちが言わなくても、見たらわかるみたいですね。だいぶ良くなってきた
なとかね。で、こっちが求めないときに、さっき言ったようにいろんな感覚出てきても先生はわかってると思
うんですよね。で、求めないときに、後ろからトントンって肩叩かれて、今日からお前にべつのことを教えて
あげようと。自分は何も秘密が無いけども、教え方に秘密があるって言ってましたね、育て方に。育て方に
秘密があるんだよって言ってましたね。そうでないと弟子は育たないって言ってましたね。それで、やっと
教えていただく段階、やっとこれが3ヶ月も4ヶ月もたった後ですけども。教えてもらったのは股関節を緩め
る練習で、股関節を回すんです、こうやって。この関節と膝とこの辺を回して。まぁ、手も回します。ここが
みんな固いんで、こう下まで気がいかないんですね。これを毎日、最初は大きくしなさいって言われました
ね。関節が固まってますから。病気の方もみんな固まってますね。で、上に気があがってる方多いんです
けども、ここを回す練習を毎日千回します。こっち回りしてこっち回りして。千回ってかなりかかるんですよ。
毎日暇があったらやってましたね。信号待ちでもこう回してたり。千回できないですからね。で、朝6時から
7時まで瞑想をして、その後これを回して、それでまた自転車で北京中医薬大学に帰って授業を受けるっ
ていうのをやってました。これを何ヶ月かやったら、また肩を叩かれて、お前は今日から肩と股関節を同時
に回す練習をしなさいと、同時に。これも肉体で動くんじゃないですね。最初は肉体がもうカチカチになっ
てるんで、肉体をこう開きましたけどね。開きました、ぐーっと大きく。それでないと中が緩んできませんから。
慣れてきたら、肉体で動いたら怒るんですよ。それじゃないって。気で動くんですよ。エネルギーでこう動
かされていく感じですね。自分の中で肉体以外のエネルギー体みたいなのが動いてて、それで肉体がそ
れに沿って動かされる感じ。その後のこれもそうですよ。肩と股関節のこう、エネルギーで動いてる。肩もこ
んだけしか動いてないんです、肩とか。肩甲骨ほとんど動いてないんですよ。肩甲骨もちゃんとエネルギ
ーにして動かないといけないんですよ。難しいですよ。肩甲骨がほとんどの方は意識できてないですから。
ものすごく柔らかくなってくる。股関節もものすごい両方とも緩んできて。これも毎日1時間しなさいと言うん
ですよ。こんなん1時間もずっとできないですから。苦行ですよね。最初はね、10分もできなかったですね。
肩が辛くなって、もう我慢できないんですよ。今はもう、1時間でも2時間でもできますから。緩んでるから。
自分の肉体で動いてませんから。エネルギーで、内なる気でこう動いて。で、これが毎日1時間ぐらいやら
されて、今度はこういう風にやったりとか。とにかくいろんなこのパーツをですね、緩めていくんですよ。緩
めて、緩んだら今度それを気で動かすことできるようになってくるんですね。それちょっとコツがあるんです
けど。で、これができるようになってきたら、今度はこういうもっと複雑な。本当は背骨だって気で動かさなき
ゃいけないんですよ。みんな固まってしまってるんで。ひとつ動けば動かざるところなし、といって、一箇所
動かすときには全部が動いてますよ。
さっきお見せした、李和生先生、元ドクターの太極拳の先生、今80歳超えて82歳ですけど、元いた病
院で検査してもらったらしいですよ。全ての関節がどうなってるか。そしたら、レントゲンとか撮ってもらった
と思うんですけど、全ての全身の関節ですよ、全てが20代だったんです。滑らかで。こういう運動してるか
らですよ。全て動いてますから。一箇所もとまってるところ無いんですよ。足首もこれもここもここも、背骨も
肩も肩甲骨も肘も手首もみんな動いてますから。柔らかい、私よりもっと緩んでますね。全てを気で動かす。
30
それでやっとそれが終わって、今度型に入る、太極拳の。そうした型に入っていくんですけども。型も1週
間で1こぐらいしか教えてくれませんね。それで毎日それやって、できたら次に進んで。はい、今日ここま
でとか言って。しかも教え方も丁寧じゃないんですね、最初の先生なんか、石明先生なんか。7回見せて
くれるだけだったですね。7回見て、はい、やりなさいって。できるわけないですからね、複雑なの。これで
も多いほうだ、自分が師匠から教えてもらったときは7回もやってくれなかったとか言ってましたね。
さっきの話戻りますと、意識、体を通していかに意識を変えていくかっていうほうに秘密があるみたいで
すね、大事にされてて。そこがまあ、目的なんでしょうね。今から思えばですよ、そのときはわかんなかった
ですから、もう。ちょっと文句も出たし、途中やめようかなって何回も思いましたけどね。今から思えばそう
いう感じで、育ててくれたんかなと思いますけどね。
(あの、意識がこう変わってくるっていうことは、そういう感じはどうかわからないですけど、例えば自分の
それまで持ってる意識とは随分違いますよね。外とも繋がるし、人とも繋がるし、ぱぁーっと広がるじゃない
ですか。)
あ、そうですね。
(ねえ。その広がる意識の感じっていうのは、どろどろーっといくとなんか自分のこの元々持っているもの
が揺さぶられるというか、すごい怖ろしい感じのもの、そんなことは、そういう守りみたいのはあるんです
か。)
あ、ありますあります。自分が作り上げた意識が壊されますからね、やっぱりね。どどどどって壊されてる
感じがありますね。そういうときに守ろうとすることもあるし、あるいは瞑想でもそうですけども、こういったも
のもそうですけども、途中でなんともいえない嫌な感覚がくるんですよ。うって、もうやめてくれってな感覚
がきて。で、それが過ぎるとまたふっと意識が変わるんです。その意識は消えたくないんでしょうね、多分。
ビパサナ瞑想っていうのもあってですね、ビルマに伝わってたビパサナ瞑想っていうのがあって、インドで
何回かやってみたこともあるんですけど、その時もそうでしたね。10日間の合宿で、一言もしゃべっちゃい
けないんですね。で、食べるのは朝少しと、昼前少しだけなんですけど。で、夫婦で入っても別の部屋だ
し、瞑想も男女別で。で、そうやっていって、それは感覚をみつめていくんです。最初の3日間ぐらいは鼻
から出る息をみつめるんですね。今の現時点だけで、吸ってくるときと吐いていくときに、鼻とか鼻の下に
感覚がどんな感覚があるか。吸うときと吐くときは温度も違うんですよ。鼻の粘膜で感じるんですよね。そう
いったものをこうみつめていって、3日間ずっとやるんですよ。で、集中力ができたら今度は体をみつめて
いくんですね。ここの感覚がどんな感覚、今現時点であるかとか、ここはどうかとか、ちょっとずつ区切りな
がらここはどうか、ここはどうかとか。そうするとそういうのを毎日頭のてっぺんから足先まで、足先から頭の
てっぺんまで、全ての部位をみつめていくと、その途中で嫌な感覚が出てくるんですよ。もう逃げ出したく
なるような。それでもじっとしなくちゃいけないんですけどね。なんともいえない嫌な感覚ですけども。それ
が過ぎると、はっとものすごいすっきりするんですよ。で、ちょうど玉葱の皮が一枚一枚剥けるように、今ま
でこう潜在意識というか深い意識にこう積み上げてきたいろんな不調和な想いがこう消えていく感じします
ね。うちの妻もそうだったですけども。そうすると、気功も太極拳も一緒です。細かいところを、日頃動かせ
ないところを動かしながら、それをみつめてるわけですから、どうなってるかっていうことを、現実を。そうす
るとですね、玉葱の皮が剥けるように意識の深いところまで達していって、いろんな意識の汚濁というかね、
汚れみたいのが取れていくような感じがして、途中でなんともいえないような気持ちも起こるけども、越える
とすっごいすっきりするんですよ。もうこれでもう大丈夫、すっきりしたなって思って、また10日間瞑想合宿
に入ったりするとまた出てくるんですよ。で、どんどん深まっていって。
31
で、結果としてね、どこが変わっていくかと言いますと、例えば、妻もすごく顕著だったんですけど、今ま
で対立してた想い、例えば誰かに何か言われたりして嫌だなとか、なんでやろうとかね、反発とか対立の
想いが無くなってくるんですよ。うちの妻もそういうの随分無くなりましたよ。最初はよく反発してたんです
けど。こっちが何か言ったら、だってとか、何よ、とかいう感じでね。すごく少なくなってきて、今はもう全然
対立してこない、ほとんど。まぁ、たまにしますけどね。ほとんどしなくなって。自分が一番楽だって言って
ましたね。
それが治療にも関わってきてね。大きな病も、そっから治っていく方が多いですね。深いところが意識
が変わっていって、で、病も変わっていく。まぁ、リパソナ瞑想でも気功でも太極拳でも一緒だと思うんです
けども。感覚というものと、心の中の深いところの汚濁っていうのはすごく関係あるんです。何か心の中の
いろんなものが、まぁちょうどヘドロだと思ったらいいですよね。琵琶湖のヘドロみたいなものがあるとすれ
ば、それが浮かび上がってくるときに何か感覚が出るんですよ。嫌な感覚であったり、痛みであったり、何
かいろんな感覚が出て、それと一緒に消えていくんですよ。でもそのときに、出たときに、普通の方は、病
気の方は、また嫌だなとか、なんとか治さなきゃいけないとか、薬でごまかそうとか、こういろいろ思うじゃな
いですか。また反発の気持ち起こすじゃないですか。で、また新しく深い意識のところに新しい種を植え
てしまってですね、せっかく昔植えた種が消えようとしてるのにまた新しい種を植えるからどんどん逆に増
やしてしまう方が多いですね。感覚に対してまた反発してるし。人間関係でもそうですよね。人間関係でう
まいこと夫婦がいってないとか。病気の原因探っていくとそういう事がいっぱいあるんですよね。親子関係
であったり、夫婦の関係であったり。そこを逃げてるとなかなか治っていかないですね。どんどんそこで新
しい種を心の中に植えてますから、今病気として消えていく姿なのにまたそこで反発してるからですね。
病気に対して反発したり、まだまだ人間関係でいろいろ対立したりこうなんかしてるとですね、どんどん増
やしていって、死ぬときにはもうなかなか消せないぐらいまでなってしまって。死んでいく方も何人もいまし
たけども、最後まで変わらないですね。何かのきっかけがあったら変わっていくんですけども、末期になっ
てもそのままいっちゃう人はいっちゃいますよ。もったいないなって思うんですけどもね。でもそれも、最後
の学びだったのかもしれませんけどね、ひょっとしたらね。でもそれを上手に変えていったときにやっぱり
治癒に繋がっていくといいますか、癒しが起こってくる感じがしますね。その辺は、何かを作り上げるという
よりも、余分なものを少しずつ少しずつ消していくっていうか、落としていくというか。元々はあったですね、
自分の中の平安とか調和とか、純粋な愛とかですね、まぁ思いやりとかね、そういったものに返っていくひ
とつの作業だと思うんですよね。そのためにいろいろな経験積んだり、人生体験したり、いろんな人間関
係の中で悩んだり苦しんだりしてると思うんですけども。そこんとこわかってくると、苦しみが苦しみじゃなく
なってくるんですよね。あ、これによってまた浄化されていくというかね。全てはそこに尽きると思います
ね。
そこの方向性を忘れると治療がかえって邪魔なことがあるんですね。そのときに楽にしてあげることによ
って、本人はその気付きなくなっていきますから。私はだから、今は、治療だけはしないようにしているん
ですね。その人が自立できるようにサポートはしますけどもね。サポートとして、ちょっと楽になるようなこと
もしてあげますけども、本人の気付きが一番だと思ってますので、もう治療だけは専念しなくなって。そうい
う方はいいと思いますよ、そういう職業されて。どれも素晴らしい職業だと思いますけども、私はやっぱり依
存させないで自分が自立していけるように、何か方法を、こういうのやってみたらっていうことで気功を教え
てあげたり瞑想を、簡単なね、さっきの達磨瞑想法なんて簡単ですから、教えてあげたりすることによって、
こうやっていい結果が出てますからね。不思議ですよね。達磨瞑想法なんかも簡単ですけども、この前な
32
んか、82歳のおばあちゃんが、足が固まって曲がんなかったんですよね。片方、もう変形して。医者に言
わせたら、もう手術しないと絶対治らないって言うんですよ。ところがそのおばあちゃん、あるときをきっか
けに達磨瞑想法をちゃんとしてみる。曲がんないままにこう毎日やってくれたらしいですよ。で、呼吸が短
いので、1回につき20分、30分で終わっちゃうらしいですよね。普通だったら1時間ぐらいかかるんですけ
ど。それでも毎日やってくれたんですね。で、一回、熊野の合宿に来られたときに、みんなの前でわぁー
って泣き出したんで、どうしたんですかって言ったら、曲がんない足が曲がるって言ってあぐらかいてたん
ですよ。他の事何にもしてないです。その瞑想法だけで。そのどっかその、心の中のどっかにこう、抑圧さ
れたりとかいろんなこう、汚濁がたまってたりとか、そういったものが瞑想によって多分消えたと思うんです
よね。で、そのときに体もふっと変わってしまった。普通だったら関節が固まったままの方は絶対曲がらな
いですけどもね。で、曲がるようになってあぐらかいてましたからね。そういった事もあるんですね。だから、
なんかこう、意識の力っていうのは大きいですよね。いいほうにも悪いほうにも大きいし。それにみなさん
気付いてないような気がしますけどもね。
33
資料 2.2 安藤泰至氏インタビュー(2007.10.13, 那智勝浦)
(京都文教大学:濱野清志)
安藤泰至先生による生命倫理基礎講義
「生命倫理」という語は、「バイオエシックス」という英語の直訳でして(バイオが生命で、エシックスが倫
理ですから)、一番初めにそう訳したのは、上智大学の青木清先生という方で、それが1985年のことです。
日本生命倫理学会ができたのがその 3 年後の1988年ですから、日本で専門の学会ができてから、来年
でちょうど20年ということになります。
ただアメリカでは現在、生命倫理あるいは生命倫理学に当たる言葉は、「バイオエシックス」だけではな
くて、いろいろあるんです。「メディカル・エシックス」とか「バイオメディカル・エシックス」とか。最近では、
「ヘルスケア・エシックス」という言葉も使われています。人によってやはり少しずつ用語が違うんですけど、
今そういうふうにいろんな形で呼ばれているような領域は、もともとアメリカで大体1960年代の終わりから1
970年代のはじめにかけて芽生えたと言っていいと思います。だから、日本からいうと、歴史的には15年
から20年、アメリカの方が先んじていることになります(もっとも、だからアメリカの方が進んでいる、とは単
純に言えないのですが)。
「バイオエシックス」という語が初めて使われたのは、1970年だと言われています。ヘレガースという人
と、もう一人、ポッターという人が、同時に、(それぞれ違った意味で)この「バイオエシックス」という言葉を
使ったんです。実は、ポッターが使った用語の方は、今でいうと「環境倫理学」に近いような意味がかなり
入っていたのですが、その後、そっちの方の用法は一般化しなかったんですね。どっちかというと、ヘレガ
ースが使った、医療関係の領域を中心にした「バイオエシックス」という語の用法が、現在までつながって
きていると言えます。
実際、1970年前後に、現在アメリカ生命倫理のメッカみたいになっている研究所が二つできているん
ですが、一つは、ワシントン D.C.のジョージタウン大学にあるケネディ倫理研究所、もう一つはニューヨー
クにあるヘイスティングス・センターです。この二つが中心になって、その後アメリカでバイオエシックスとい
うのが、学際的にいろんな学問分野の研究者を呼び込みながら、新しい医療についての根本的な倫理
問題などを議論するための場として出来上がっていったという感じです。
アメリカの場合、その後「バイオエシックス」ははっきり一つの学問体系(生命倫理というよりは「生命倫
理学」ですね)になっていきました。1978年には五巻本の『生命倫理百科事典(Encyclopedia of
Bioethics)』の初版が出ています(今年の 1 月に粟屋剛さんが編集代表になって、この百科事典の第3版
の日本語訳が丸善から出ました)。その翌年、1979年には、トム・ビーチャムという現在(先に挙げた)ジョ
ージタウン大学のケネディ研究所の教授をしている人と、僕のヴァージニア大学での先生だった、ジェイ
ムズ・チルドレスという二人が、『生命医学倫理の諸原則(Principles of Biomedical Ethics) 』という本を書
いたんですけど、これはアメリカのいわゆるバイオエシックスの典型的な教科書、理論書としてロングセラ
ーになっていて、現在第5版まで出ています(来年には第6版が出る予定です。ちなみに成文堂から出て
いる日本語訳はこの本の第3版の翻訳です)。そういうわけで、アメリカではすでに1970年代末に、そうい
う百科事典が出て、その後30年近く読み続けられるような概説書、教科書みたいなのが出ているわけで
すね。このことからすると、アメリカでは1970年代の終わりごろには、バイオエシックス(生命倫理学)は一
つの学問領域としてある程度確立していた、と見なしてよいと思います。
その頃から、アメリカ大学の中でバイオエシックス・センターとか、あるいはバイオエシックスの講座など
34
ができていきますし、はっきりバイオエシックスの専門家を養成するコースが始まっていきます。そうして、1
980年代になると、はっきり「バイオエシシスト(生命倫理学者)」というアイデンティティをもった研究者たち
が巷に溢れていくことになります。ただ、バイオエシックスというのは最初は非常に学際的というか、いろん
な領域の人が入ってきてごちゃまぜみたいな感じだったのが、こうして一つの新しい学問という形で制度
化が進んでくると、少し変わってくるということがあるんです。これはレネー・フォックスという有名な医療社
会学者が言っているんですが、初期のバイオエシックスには社会学者も入っていたのに対し、ある時期か
らどうも社会学の人たちが抜けていって、どちらかというと哲学・倫理学畑の人が中心になってきたようで
す。原因の一つは、(これは日本でも同じようなことがあるんですが)哲学や倫理学の研究者は就職口が
ないからです。それで、とりあえず「バイオエシックス」という新しい流れに乗っかって、哲学や倫理学畑の
人が新しい就職口を作って生き延びようとしたというわけです(笑)。もともと、アメリカの大学の人文思想系
の教育というのは、日本のアカデミズムに比べると、はるかにプラクティカルで、応用の方に傾いていると
いうことがあります。たとえば、日本の哲学や倫理学だったら、たとえばカント哲学の研究をやってる人は
何年もカントばっかり読んでるとか(笑)、そういうことがあるんですが、アメリカではそういうことは絶対なくて、
たとえばそういう古典を読む場合にも、必ず現代の政治問題に引っ掛けるとか、新しい倫理問題に引っ掛
けるとかという形で議論がなされるんです。大学の学部教育からずっとそうですね。そういう点では、バイ
オエシックスというのが応用倫理学みたいな形で進んでいくための土壌が、アメリカにははじめからあった
と言えるでしょうね。
それからもう一つ、アメリカには、いわゆる公民権運動の歴史というのがあって、バイオエシックスという
のは医療における患者の権利運動ということと非常に深いつながりがあります。たとえば、米本昌平さんな
んかは、バイオエシックスというのは基本的には「市民運動」としてアメリカで成立したんだ、というような言
い方をしています。もちろんそれがすべてではないんだけど、そういう側面がかなりあるんですね。アメリカ
の公民権運動っていうのは、要するに、それまで、同じ人間ではあるんだけれど、あるいは同じアメリカの
市民権を持った国民ではあるんだけれど、いろんな意味で差別を受けてたり、あるいは非常にマイノリティ
の立場に置かれていた人、社会の中でどっちかというと割りを食っていた人が立ち上がっていったわけで
すね。おれたちも一人前の人間なんだ、一人前の人間としての権利を認めろ、と。最初に立ち上がったの
が、黒人です。アメリカだと、1950 年代ぐらいからかな。次に、女性ですね。それから、障碍をもった人たち
とか、少数民族、アメリカ原住民とか、あるいは同性愛の人たちとかですね。そういういろんな人たちが立
ち上がっていったんだけれども、その流れのなかで1960年代の終わりぐらいからかな、患者の権利運動
というのが非常に盛んになったわけです。これにもいろんなきっかけがあるんですけれども、アメリカって
いう国はやっぱり訴訟社会ですから、医療でやっかいなことが起こると、すぐに裁判に訴えるわけです。今
や「インフォームド・コンセント」という言葉はすっかり有名になりましたけど、この言葉自体はヘルシンキ宣
言(1964年)の時からあるんです。でも、この概念をこんなにも一般に普及させたのはやっぱり「市民運
動」「患者の権利運動」としてのアメリカのバイオエシックスだと言えます。
この「インフォームド・コンセント」という概念の元になった考え方というか精神は、その言葉が実際に使
われ出すよりももっと古くからありまして、そのきっかけとしては、いわゆる人体実験の問題、戦争中にナチ
スの医師たちがやった人体実験の問題が非常に大きいのです。ナチスに協力した医師たちが、連合国
側から尋問を受けたときに、(素人では医学のことはわかりませんから)尋問する側にやはり連合国側の、
主としてアメリカの医学者がつくわけです。そこで、ナチスドイツの医学者たちがアメリカの医学者たちに
人体事件について尋問されたときに、「そういうお前らだって同じようなことをやってるだろう?」、というよう
35
なことを言うわけですね。で、それに対して、アメリカ側の医学者たちは、「たしかに「人体を使った実験」と
いうのは我々もやってるけど、そういう場合はちゃんと被験者に説明をして、その同意を得た上でやってい
る」というふうに反論したと。今日「インフォームド・コンセント」と呼ばれるような考えは、どうもそういうところ
から出てきたようです。
人体実験の問題については、1960年代の後半に、バイオエシックスの成立へ向けてのいろんな追い
風があったんです。第二次大戦中の人体実験については、ナチスの医学者たちのように戦犯として裁か
れたものもありますし、逆に日本の731部隊が行った人体実験のように、戦犯免責と引き換えにアメリカに
細菌戦のデータを渡したことで、うやむやになってしまったものもあるんですが、医師や医学者の倫理とい
うのがもちろん問題になるとはいえ、「戦時下という特殊な状況だったから」というような言い訳が常に出て
くるわけです。ところが1960年代後半になって、実は、アメリカで、戦時中ではない普通の医学研究の中
で、非常にひどい、人権をまったく無視したような人体実験をやっていたということが、スキャンダルですっ
ぱ抜かれていったのです。この時期に明るみに出た非人道的な人体実験のなかで国民に一番大きなショ
ックを与えたのは、いわゆるタスキーギ研究です。タスキーギというのは地名でアラバマ州にあるんですが、
この研究は、黒人の梅毒患者たちに対して「無料で治療してやる」と言っておきながら、まったく何の治療
もせずに(たぶん梅毒とは何の関係もない注射とかをして、いかにも治療してるようなふりをしたのでしょう)、
ずっと患者の経過を見るというものです。要するに、梅毒の自然経過、つまり梅毒患者を治療も何もせず
に放っておいたらどういうふうになっていくのか、ということを調べたわけですね。
1932年から始まったこの研究が、実は戦後もずーっと続いていて、1970年代になってもまだ行われ
ていた(結局40年間続けられていた)ということが、1972年に週刊誌に暴露されたんですよ。他にはウイ
ローブルックの肝炎研究というのがあります。これは、知的障碍児の施設で行われた肝炎の感染実験で
すが、本人はもちろん、親の同意も何も取らずにやられたわけです。さっきの例だと黒人、この例だと知的
障碍をもった子ども、というように、こういう非人道的な人体実験にはやはり社会のなかで弱い立場の人々
が利用されたわけでして、戦時中に強制収容所の収容者とか、敵国の捕虜が人体実験に使われたのと
同じですね。
もう一つ、患者の権利運動としてのバイオエシックスの背景としては、医療の側の変化というのも見逃せ
ません。いわゆる先進国と呼ばれるような国々では、1950年代ぐらいから、医療現場で主たる対象になる
病気の質が変わってくるんです。やっぱり豊かになってくると、結核とかそういう感染症的な病気で死ぬ人
がほとんどいなくなってくる。そうすると、現在では「生活習慣病」と言われているような病気(当時の言い
方だと「成人病」)とか、あるいは遺伝性の疾患とか先天異常とか、そういう慢性的な病気っていうのが医
療の主たるターゲットになってくるわけです。むかしの感染症とかだと、その病気に対して医療行為をする
っていうのは、その病気の原因になってるものを突きとめて、たとえばその原因が細菌だったら、それをバ
ーンと叩く薬を開発して、治療法として普及させる。そうすると、それが劇的に治るとか、今まで死んでいた
ような人が死なないようになるとかいうことが起こりますから、医療とか医学の力が無前提に善ということに
なっちゃったりするのですが、ターゲットになる病気の質が変わってくるとそうじゃなくなってくるんですね。
慢性的な病気というのは、なんかこう根本の原因を叩いたら治る、というようなものではない。むしろ、治療
をすることによって、かえって害になったり、患者を苦しめたりするものも非常にたくさんあります。特に最
先端の新しい薬というのは、どんどん身体に対する侵襲度が高くなります。抗がん剤なんかがその典型で
すが、がん細胞も叩くけど正常な細胞も叩いてしまうわけです。そうすると、そういう治療をしなかったら、ま
あ4、5年は生きられたような人が、治療をしたために1年以内に亡くなってしまうとか、そういうことが起こっ
36
てくるわけでして。そうすると、何がその患者にとって最善の医療なのか、というのは簡単には決められな
くなってきます。
従来、医療のなかでの意思決定というのは、基本的に医者が全部やっていたわけですよ。生命倫理で
はこういうのを「パターナリズム」とか言うんですけど、全部要するに医者が決めると。患者からすると、「お
医者様にお任せします」という医療だったわけです。でも、そういうやり方では、患者は自分にとって最善
の治療を選ぶということがまったくできないんですね。患者には普通、医学的知識というのはまったくあり
ませんし、「お医者様にお任せします」ですから、向こうは何も教えてくれないまま、治療を進めていくと。
患者はそれが自分のためになると思って治療を受けてるんだけど、本当にためになってるのかどうかとい
うことはわからないですよね。ひょっとすると、治療の選択肢が他にいくつかあるかもしれないのですが、そ
ういうこともわからないわけです。
がんなどのような病気の一つの特色は、治療法が複数あるということなんで、そういう場合、どういう治療
法を選ぶのかという問題が出ています。だけど、その選択肢が最初から与えられてなかったら、そもそも選
びようがないわけですよ。で、この問題が結局、さっきの人体実験の問題とリンクしてくるんですよね。「人
体実験」という言い方をすると、何かそれだけで「非人道的なもの」というイメージを与えるかもしれません
が、結局、現代医学っていうのは、どんな治療法にしても、新しい最先端の医療とかっていうのは、人体実
験的な性格を非常に強く帯びているわけですよ。今まで、動物実験でしかやったことないものを、初めて
人に対して使うわけですから。新しい医療は、そういう実験的な要素を必ずもっていると考えるべきです。
そしたらそこで、「インフォームド・コンセント(熟知した上での同意)」を患者から得ようと思ったら、ちゃんと
説明をしないといけません。治療に実験的な性格があるということをまず説明しないといけません。実際の
ところ、「実験」と「治療」との間には必ずしも明確に線が引けるわけではないのです。そういうことがだんだ
んと明らかになってきて、「患者の権利運動」としてのバイオエシックスというものにつながっていくわけで
す。
次に、1970年代の後半になってくると、一つはいわゆる生殖医療の問題が出てきます。それまでには
なかったようなタイプの医療が出てくるのです。もっとも、人工授精はもう 19 世紀からあるのですが、議論
になったのは体外受精です。さっき、バイオエシックスが新しい学問として確立されたと言いえる年として
『生命倫理百科事典』が出た1978年という年を挙げましたが、この1978年というのは、世界で最初の体
外受精児が生まれた年でもあります。そうすると、それまでは、(将来赤ん坊になるような)受精卵とか胚と
かいうのは、お母さんの母胎の中でしか存在しえなかったわけですが、それが母胎の外にあるということが
可能になると、それを何らかの形で操作できるようになるわけです。そうすると、そういうこと自体、そもそも
人間がやっていいのかどうか、という問題が出てきます。「人間は神の領域に踏み込むべきではない」とい
った反対論も出てくるようになります。
先端医療のもう一つとしては臓器移植ですね。臓器移植の場合、すでに1960年代に、南アフリカのバ
ーナードという医師が世界初の心臓移植(1967年)をやって、その翌年に日本のいわゆる和田移植とい
うのがあったりして、一時期、「臓器移植ができるようになった」というブームが起こったのですが、この第一
次臓器移植ブームみたいなのは、結局すぐにポシャってしまいます。なぜかというと、拒絶反応の問題が
大きくて、せっかく臓器を移植しても患者は1ヵ月以内ぐらいに亡くなってしまうからです。ところが、さっき
言った1978年に(これは生命倫理にとってはものすごく象徴的な年なんですけど)、シクロスポリンという、
今でもかなり効くって言われている画期的な免疫抑制剤が出て、そのことによって、いったん下火になっ
ていた臓器移植ブームにまたワッと火がついたわけです(1980年から第二次臓器移植ブームが始まった、
37
と言われたりします)。こういう臓器移植医療というのもまた、生殖医療と同じで、やっぱり非常に実験的な
性格が強いものです。
日本では1980年代の後半になってから、臓器移植との絡みで、脳死は人の死かどうかという議論が出
てくる(これこそ日本の「生命倫理」で論じられた一番最初の大問題と言っていいかもしれません)のです
が、アメリカの場合はすでに、脳死に関しては1968年にハーバード大学基準(ここでは「脳死」ではなく
「不可逆的昏睡」と呼ばれていますが)というのが出て、その後はもう、1971年のカンザス州を皮切りに脳
死を死と認めるような法律が各州でできていきました。だけど、その流れを決定的にしたのは、1981年に、
いわゆる生命倫理大統領委員会の報告書で、脳死というあり方を、普通に心臓が止まって死ぬという心
臓死とはまた別の、もう一つの死のあり方として正式に認めたことです。先の免疫抑制剤の進歩と合わせ
て、1980年代に臓器移植医療が普及するための地ならしになったわけです。その頃は、脳死が人の死
であるかどうかについてアメリカではほとんど疑問論みたいなものはなかったですね(最近になって、やっ
ぱりそれではまずいんじゃないかという意見が出てきてますけど)。その意味では脳死が人の死かどうかに
ついて侃々諤々の議論がなされた日本とは、本当に対照的だったと言えますね。
生殖医療や臓器移植の問題を中心に、そういう「先端医療の社会的受容」という問題が、生命倫理の
いわば第2期、大体1970年代の終わりから80年代にかけての主たる議論を形作っていきます。つまり、
人のいのちの始まるところと終わるところに関する問題です。ただ、アメリカをはじめとする、いわゆるキリス
ト教世界で一番問題になったのは「いのちの始まり」についての方なんですね。言うまでもなく、妊娠中絶
問題がそこに絡んでいるからです。それまでだったら中絶がマルかバツかというだけの話だったのが、体
外受精ができるようになって、受精卵や胚というのが体の外に存在するという状態が可能になると、「一体
受精卵とか胚というのはどういう存在なのか?」「それをどのように扱うことが許され、どのように扱うことが許
されないのか」という、もっと包括的な問題になってくるわけです。今の ES 細胞の問題とかも全部そうなん
ですけど、受精卵や胚、あるいは中絶された胎児の特定の細胞を、たとえば医学研究に使うとか、他の大
人の患者の治療に使うといったようなことをしていいのか、という問題、もしいいとすればどの段階で線を
引くのか、という問題ですね。これはもう、アメリカではまったく収拾がつかない状態になっています。
こういうわけで、一般に西洋諸国では、そういう「いのちの始まり」の問題が非常に重い。それに対して、
日本では(先ほども言ったように)1980年代後半から90年代前半にかけて、一般市民を巻き込んだ形で、
脳死は人の死かどうか、脳死者からの臓器移植をやっていいかどうかというような議論が行われたわけで、
そこでは「いのちの終わり」の問題の方が重かったんですね。これは、世界的にいうと非常に特異な例で
す。
話が戻りますが、アメリカの場合、臓器移植に関しては、基本的には「脳死は死である」ということがある
意味では前提になっています。ただ、前提になっているからといって、一般の人々の意識がみんなそうか
というと、そんなことはないわけでして(日本ではこのことを誤解している人が多いですね)、アメリカで、普
通のあまり知識のない人に聞いたら、「脳死」なんて知らないしね。脳死がどういう状態か説明してみろっ
て言っても、別に日本の高校生とまったく変わらないわけで、脳死と植物状態は同じだと思っている人が
相当います。普段そういう意識で過ごしていて、ある時に突然自分の家族が、たとえば交通事故で頭を打
って脳死という状態になったとして、それを死と認めるかといったら、ほとんどの人は認めないと言いますよ。
それは日本とほとんど変わらないんだけども、やっぱりアメリカは法律が先行したっていう歴史があるのと、
もう一つは、遺体観みたいなのが日本と違うというところはありますね。
今年の春、まだ僕がアメリカにいた時に、メアリー・ローチさんというジャーナリストがヴァージニア大学に
38
講演に来たので、聴きに行ったんです。ローチさんの本(原題”Stiff”)は『死体はみんな生きている』という
題で日本語訳が出ていますが、人間の死体というものがアメリカでどのように利用されているか、ということ
に関するレポートです。アメリカでは、自動車に死体を乗せて、衝突事故の実験をしています。たとえば車
の横側からどのぐらいの速度でどういうふうに衝突されたら、乗っている人の体(運転手とか助手席に乗っ
てる人とか、その位置ごとに)のどこの部分に損傷が生じて、そのどこが命取りになる可能性が高いかとか、
そういうことを死体でもって実験するわけです。で、こういう実験に参加するために、日本のトヨタとか日産
だとかの技術者たちがみんなアメリカに行っています。日本ではこんな実験絶対できないからです。だか
ら、やっぱり死体に関するイメージというのは日本とアメリカでは全然違うんですね。向こうの方が「死体=
モノ」というイメージが強いわけで、これは脳死臓器移植への抵抗を少なくしていると思います。
次に、アメリカの生命倫理で1980年代後半以降に新しい問題になったのは、医療資源配分の問題で
す。医療資源配分というのはいろんな次元があるんですが、マクロな次元で言うと、たとえば最先端の医
学研究とか先端医療とか、そういうものはすごくお金を食いますから、それに予算をどのくらい配分すると、
医療の公正さを保てるかという問題があります。そもそもアメリカっていう社会は、医療に関しては、もう本
当に「貧乏人は死ね」って言ってるのと同じような社会なので、そんな医療資源配分どころの騒ぎじゃない
んですけど(笑)。まあ、理論的には非常にそういう問題が詰められていったわけですね。その後、最近に
なって、大体1990年代の後半になってから(遺伝子研究がかなり進んでから)かな、この研究班の主たる
テーマでもあるヒューマン・エンハンスメント(人間の能力増強)という問題が、生命倫理の議論の俎上に
上がってきたわけです。この問題はやっぱりそれ以前のいろんな問題と絡んでくるわけで、一つは、どうし
ても遺伝子をいじるとかいうことになると、人のいのちの始まりの段階のものを実験・研究に使わざるを得
ないからです。たとえば、「妊娠中絶には絶対反対」「体外受精にも反対」、人のいのちは受精卵の段階
から(あるいは受精後14日以降は)生きている人と同じ尊厳をもっているというような考えの人たちは、一
切そういうのはダメだと主張します。こういう主張をする人々は、アメリカでは宗教勢力を中心にしてけっこ
う多いです。宗教では特にカトリックと、いわゆる福音派のプロテスタントの一部(「ファンダメンタリスト」と呼
ばれるような人たち)、こういう人たちはもうほとんど絶対反対ですよね。それに対して、いわゆる推進派の
科学者の側とか、極端に合理主義的なバイオエシシストなどは手放しでこういう新しい技術を礼賛したりし
ますから、極論と極論の対立みたいなもので、妥協点のようなものがまったく見いだせない状態です。
それに加えて、アメリカでは生殖医療のビジネス化が非常に進んでいます。たとえば代理母とか卵子提
供なんかについても、連邦単位での法律はないので(州単位では規制があるところもあるんですが)、企
業でビジネスにするのはほとんど自由にできます。精子バンクなんかもいっぱいありますしね。そういうわ
けで、一方ではなんのブレーキもなしにどんどん進んでいっている現状というのがあって、他方で、反対し
ている人たちというのは、ほとんどすべてに反対っていうような状況なんですよね。だから、議論としてはア
メリカは面白いんです。極端と極端で、もうわぁっと、議論のための議論をやるわけですから。でも、日本の
場合はやっぱりそういうのとはまた感じが違うんですよね。その辺が面白いとこではあるんですけどね。だ
けど、この問題はもう、臓器移植にしても何にしてもそうなんですけど、一国で規制できる問題ではないわ
けです。ある国で何らかの厳しい規制をしたとしても、研究者や企業、レシピエントが規制のないところや
ゆるいところへ流れていくだけの話ですから。
だから、エンハンスメントの問題というのも、そういう生殖とか、人のいのちの始まりに対して何らかの操
作を加えるということに絶対反対だという人たちは、当然そういうものにも反対なわけでね。典型的な例とし
ては、アメリカのブッシュ政権下で、レオン・カスという生命倫理学者が中心になって、『治療を超えて
39
(Beyond Therapy)』という大統領委員会の報告書がまとめられました(これは日本語にも訳されています)
が、あれなんかには、アメリカのどちらかというと保守的な人たちの考え方がよく表れています。つまり、現
代医療というのは、治療(セラピー)ということを超えて展開しようとしていると。エンハンスメントというのは、
何かそれだけがまったく異質なものなのではなくて、ある意味では現代の医療と地続きになっている。もち
ろん彼らは批判的な意味で、そう言っているのですが。ただ、彼らはけっして「治療なら良い、エンハンス
メントなら悪い」というような主張をしているわけではないんですね。彼らの場合、最終的に私たちがどうい
う社会を目指したらいいのかっていうときに、何でもかんでも医学の問題にしてしまって「治療」しようという
こと自体、一言で言うと「医療化」という社会の流れ自体に問題があるというふうに見るわけです。そもそも
医療というものがあまりに人の生き死にに関わりすぎている、というか。だから、従来「治療」だというふうに
思われてたものの中に、実は非常に人間の生死を直接コントロールするようなものがたくさんあって、彼ら
の批判はそこにも向けられているわけです。『治療を超えて』という題には二つの意味が込められていて、
一方では治療を超えるエンハンスメントなどの技術を警戒しながら、他方では医療化を批判することによ
って、もっと「徹底的に治療を超える」道が目指されていると言えます。
この点に関しては、僕はある程度彼らと近い意見なんです。つい最近、大阪市大の佐藤光先生という
経済学者が編集された『生命の産業』という本が出たのですが、これは僕や美馬さん、粟屋さんも関わっ
ている、BE研(バイオエコノミクス研究会)という学際的な研究会(経済学、宗教学、倫理学、人類学、社
会学など、いろんな人が集まっています)での議論をもとにして作った本です。その中で、僕が第4章にあ
たる部分(「「先端医療」をめぐる議論のあり方―選択と選別のロジックを中心に」)を書かせていただいた
のですが、先ほど挙げた生殖医療とか臓器移植のような、1970年代後半からの先端医療にはすでに、
エンハンスメントなどにつながっていくような、従来の医療とは異質な側面がいろいろ含まれている、という
ことを強調しました。
たとえば生殖医療は、これはどこの国でもそうだと思うんだけど、いわゆる「不妊治療」としてスタートした
わけです。だけど、生殖医療(正確に言えば、「生殖技術の医療的利用」です)を「不妊治療」として捉える
こと自体がそもそもおかしいんじゃないか、という議論があります。そもそもそれは「治療」なのか、ということ
です。このことを詳しく話していったらそれだけで1時間ぐらい食ってしまいますから、手短にまとめますが、
たとえば、不妊の人が(子どもがほしいのにできない人が)医師のところへ行くとしますね。そして、そこで
不妊の原因みたいなものがある程度つかめたとしますよね。その原因に対して、今の段階では少なくとも
外科手術とかでそれを治すというようなことはできないとします。たとえば女性の卵管が詰まっていて、うま
く受精しないというような場合だったら、卵管を拡げるような手術ができれば一番いいわけでしょうが、それ
はできないから、今だったら体外受精を勧めるという形になるわけですね。要するに、体内で障碍があっ
てできない機能を、体外での操作で代替するわけです。もちろん、体の中でできない機能を人工的なもの
で代替する技術っていうのはいくらでもあって、透析なんかもそうだし、人工骨とかペースメーカーとかもそ
うですね。ところが、体外受精のような生殖技術にはそれらとは根本的に違ってるところがあります。それ
は何かというと、少なくとも生命をもった、人のいのちの萌芽であるものを体の外で扱うことで、そこからい
のちの操作可能性というものが無限に広がっていくということです。不妊治療などということにとどまらない、
いろんな可能性がそこから直接に生じてきます。そうすると、こういう技術に対して「不妊治療」というふうに
最初から規定して、「不妊で困ってる人がいるからそれを治療してあげるんだ」というふうにどんどん進め
ていくと、そこのところが曖昧になってしまうんですね。この技術の本性みたいなものが、非常にこう曖昧な
ままで、「こんなに困ってる人がいて、その人を助けてあげることができるのに、その何がなぜ悪いのか」と
40
いうような理屈で進められていくわけです。先端医療は何でもそうですが、反対派の人たちの理屈、それ
に反対する理由というのはいろいろ違っているわけですけど、推進派の人たちの理屈は一緒なんですね。
つまりその技術を求めている人々がいて、ある程度その求めに応じられるぐらいには技術が成熟していて、
安全性に大きな問題がないのであれば、それを求める人に対してやることの何が悪いか、という理屈です。
求めてない人に無理やりやるわけではないと。いくらその成功率がちょっとぐらい低かろうが、その技術を
求めてる人にそういうこともきちんと情報提供をして、それで本人がやるって決めたのなら、それを止める
理由はどこにあるんだという、そういう理屈になります。
さっき技術の本性ということを言いましたが、生殖医療、生殖技術というのは、つい最近まで人間に対し
てはやられてこなかった技術です。それまでは動物、特に家畜動物に対して使われていた技術なんです。
家畜の場合、何のために生殖の操作、コントロールをするかというのは明らかなんで、つまり、人間の役に
立つ家畜をたくさん効率的に作るっていうのが主目的としてあるわけですね。そうするとたとえば、牛の場
合、乳を搾るための牛だったら、よりたくさん乳が出る牛がいいに決まってますし、肉を食べるための牛だ
ったら、軟らかい肉がたくさん取れる牛がいいに決まっています。そういう価値判断というのは初めから決
まってるわけですよね。家畜動物など(植物ももちろんそうです)に対して生殖上の操作を加えていって、
生命体を人間の都合のいいように(より経済的な利益を生み出すように)作り変えて、種を改良していくと。
当たり前のことですが、動物に対してはもう既にエンハンスメントをやってるわけです。
そういう事実を考えていった時に、もう生殖医療っていうのは、ある意味ではそういう生命操作に一歩も
二歩も踏み込んでしまっているということがわかるわけですよ。もっとも、今の段階ではまだ、人間個体を
何かこうデザインして作っていくというようなところには、技術の水準が達していないわけですが、それに近
いようなこと(いわゆる「デザイナー・ベビー」)はすでに起こっています。たとえば、アメリカで問題になった
例で言うと、何かある種のたんぱく質が全然作れないような病気をもった子どもがいたわけですね。その
子を助けるために臍帯血を移植する必要があるんですが、両親がその臍帯血移植のために別の子どもを
産むことを決意したのです。でも、仮に血を分けた兄弟であっても、移植がうまくいくための遺伝子型がぴ
たっと適合する確率というのは4分の1しかないと。普通にこの夫婦が子どもを産むと、4人産んでもそのな
かの1人しか適合しないわけです。そこで、この夫婦は最初から体外受精をし、受精卵の段階で遺伝子
診断をやって、はっきりその子に遺伝子型が適合する受精卵だけを子宮に戻して産むことにしたというわ
けです。
こういうことはもう実際に起こっているんです。
もっとも、望むような子どもを作るということは技術的にまだまだ難しいわけですが、望ましくないような子
どもを最初から排除するような技術はすでにどんどん進んでいってるんですね。一つは出生前診断。たと
えばダウン症とかの子どもが生まれるだろうというのは、ある程度お腹の中にいる間にわかりますから、妊
娠中にそういう検査をして、そういう障碍をもった子どもが生まれるであろうという診断結果が出た場合、親
が中絶するかしないかっていうことを選択する、という形になるわけです。もう一つは受精卵遺伝子診断と
か着床前診断とか呼ばれているもので、もっと前の段階にさかのぼって、受精卵の段階で遺伝子を調べ
るんです。これは単一遺伝子疾患、たとえばある特定の遺伝子をもっているだけで、相当高い確率である
病気を発病するとか(ハンティントン病など)、あるいは本人は発病しなくても、その遺伝子を伝えてしまうと
子孫の誰かが発病する、たとえば女性だったら発病しないけど男性だったら発病するような病気(デュシ
ャンヌ型の筋ジストロフィーなど)が主たる対象になります。そうすると、両親のどちらかにその病気の遺伝
的な要因があることが明らかな場合、たとえば父親の方が発病していたりとか、そういう場合だったら、体
41
外受精をやって、受精卵診断をやった上でそういう遺伝子をもっていない受精卵だけを子宮に戻して産
むというようなことが行われるようになってきました。
まあ、こういう技術は、ある種の品質管理って言ったら言い過ぎかもしれませんが、生まれてから後の人
生で予想される生命の質みたいなものを初めからカウントして、ある基準に満たない子を全部排除してい
く、事前に生まれてこないようにする、そういう形で使われているわけですね。で、これがどんどん進んで
いくと、今度はマイナスを排除するんじゃなくて何らかのプラスを付け加えていくということが当然出てくる
でしょう。より病気にかかりにくいとか、より運動神経が発達しているとか、より頭がいいとか、そういう子ども
を作りたいと。これはもう完全にエンハンスメントです。そういうことができるようになるのは今の技術レベル
ではまだまだ遠い先のことのように思いますけれどね。
ただ、そういうエンハンスメントみたいなことは今はまだやってないかというと、非常に原始的なレベルで
は今でもすでにやっているんです。普通は治療のために使う薬、つまりマイナスのものを正常に近いとこ
ろまで戻すような薬も、正常の人が使ったら逆にプラスになる可能性があるものも少なくありません。たとえ
ばプロトロピンという、ヒト成長ホルモン。これはいわゆる小人症、大人になっても背が小学生ぐらいにしか
ならない病気があって、そういう病気の患者に使うんですけど、普通の子どもがプロトロピンを打ち続ける
と、やっぱり人よりも背が高くなります。実際そういうことは行われているんですね。いわゆるプロトロピンの
市販後調査みたいな実験に参加するというような形で、普通の(小人症でも何でもない)子どもの親がそ
れに応募して、子どもの背を高くするというようなことが、アメリカなんかでは行われています。あの、これは
ちょっと余談ですけど、アメリカに行った時に、僕が行ったのはシャーロッツビルという人口4万ぐらいの都
市で、まあ、大学しかないところですけど、そのシャーロッツビルの市民新聞を読むと、見開きの裏のところ
に、ヴァージニア大学の医学部がやっている実験に被験者として参加しませんか、っていうような広告が
載ってるんですよね。ちょっと日本では考えられないですね。もちろん日本でもインターネットでは、バイア
グラの臨床試験に応募しませんか、みたいな広告は出てますけど、普通の市民新聞の紙面で、大学の医
学部の研究者が被験者を公募しますっていうのはあまり聞きません。
話がそれましたが、もうすでに、別に病気でもない子どもの背を高くするっていうようなことは行われてい
るわけです。そうすると、もう少し技術の切れ味とでもいうようなものが増していった時に、当然なし崩し的
にエンハンスメントが現実化してくるというようなことになると思うんですよね。現在の、特に「先端医療」と
呼ばれるような医療をめぐる倫理的・法的な議論というのは、ほとんど全部後追いでね。つまり、そんな悠
長な議論をやってる間に、現実はここまで進んでいるぞ、とかいうことはいくらでもあるわけです。まだ法律
や行政指針による規制とかができる以前だと、いくらでも抜け駆け的にできますしね。それから、韓国のフ
ァン・ウソクの例でもわかるように、国を挙げて、倫理みたいなものはちょっと脇に置いといてでも、先端研
究みたいなところへわぁーっとお金を注ぐと、(規制のために)他の国では絶対できないようなことが、ある
国ではできたりするんです。そこへ科学者が全部群がっていったりとか、そういうこともありえるんです。
そうすると、こういう新しい技術の利用に全面的に賛成しない側の人というのは、一体何がその歯止め
になるのか、ということを考えるわけです。もちろん、「歯止め」という発想自体がそもそも時代遅れなんじゃ
ないかっていう議論も当然あるんですね。ただ、細かいレベルのことを無視して言うと、今のところ、世界
的に一応そういう「歯止め」として一つの大きな力になっているのはやっぱり宗教だということ、これはもう、
はっきりしてるんですね。反対反対!って言ってる人のかなりの力は宗教、それも、基本的にはキリスト教
です。ところがですね、一つ一つ細かく調べていくと、いろいろ面白いことがわかってきます。たとえば先
端医療のような何か新しい技術の研究とか開発に反対する時の一種の決まり文句みたいなものとして、
42
「神を演じる(Playing God)」という言葉がよく使われるわけですね。そんなことをしたらもはや、人間は自分
の領分を踏み越えて、神様を演じることになってしまうと。それは通常、非難する意味で、要するに、人間
は、神のみが支配できる神聖な生命に対して手を出してはいけないという意味で使われるわけです。
ところが、この「神を演じる」という言葉がこれまでにどういうふうに使われてきたかという歴史を見てみる
と、実は3通りの違った意味で使われているんですね。最初は、特に生命倫理のまだ萌芽的な時期という
か、1970年ごろ、先に少し触れた医療資源配分の先駆けみたいな問題を議論している際にこの語が使
われているんです。1960年代に、シアトルの人工腎臓センターというところで、透析の機械が5台しかな
い(人工透析の技術が開発されて間もない頃です)のに、それを必要とする患者その何十倍もいる、という
ような事態が起きたのです。そうすると、その中の一体誰に透析機械を使わせるかっていうことで議論にな
りまして、それを審議するための委員会が招集されたということを、『ライフ』という雑誌がスッパ抜いたので
す。この委員会には、「神様委員会 God committee」というあだ名が付けられました。委員会での決定が実
質的に、誰が生きるか、誰が死ぬかを決めるわけですから。
今でも移植臓器なんかが典型的ですけど、いわゆる稀少医療資源の配分という問題です。その議論の
なかで、ポール・ラムジーという倫理学者が、「神を演じる」という言葉を持ち出したのですが、これはさきほ
ど言ったような「神を演じるな」という意味ではないんです。実はラムジーは、選別というのをまったく行わな
いで、全部くじ引きにしてしまうべきだという論を張ったんですね。ラムジーは神学者でもありますが、キリ
スト教の神様というのはけっして人を分け隔てして選別をしたりしないと。だから、人間も誰が助かるべきか
なんていう議論をしてはいけないというわけです。たとえば、こいつは子どもがいっぱいいるから助けてや
らないといかんとかですね、こいつは社会的な功績があるから助けるべきだとか、こいつは若いから未来
に可能性がすごくあるから助けるんだとか、そういう議論を一切やめてですね、くじ引きで決めるべきだと
彼は主張したんです。だから「神を演じる」という言葉は、人間は(けっして人を選別しない)神のように、神
にならって振舞わなければいけないという意味で使われたんです。これが「神を演じる」という言葉の一つ
の使い方ですね。もう一つは、さっき言ったように、生命操作みたいなことに人間は踏み込むべきではな
い、人間は神を演じてはいけないんだという意味で使う、というのが二つ目です(まあ、これが一番多い用
例ではあります)。
実は最近になって、その二つとは違う第三の用法というのが増えてきたんですね。意外に思われるかも
しれませんが、エンハンスメントとか遺伝子操作とか、そういう技術に対して非常に肯定的な、アメリカの一
部のプロテスタント神学者がいまして、そういう人たちが「神を演じる」という言葉を新しい意味で使い出し
たのです。有名な人でいうと、たとえばテッド・ピータース。普通、キリスト教では神を創造主(creator)、人
間や動物、植物など神によって創造されたものすべてを被造物(creature)と言いますが、ピータースは、
人間はただの被造物ではなくて、「神によって造られた、共創造者(created co-creator)」だと言っていま
す。つまり、人間が生命を操作したりして新しいものを作り出すことは、神のわざに反しているのではなくて、
神と共同して行う創造だというわけです。あるいは、フィリップ・へフナーという別の神学者は、人間というの
は、「人間性」という所与(Human being)ではなくて、「ヒューマン・ビカミング(Human becoming)」であると
言っています。「生成しつつある人間」とでも訳したらいいんでしょうかね。要するに人間は生物的にこれと
決まった存在なのではなくて、常に生成変化して、より崇高な存在になろうとしている。それが実は神の意
思そのものであるというわけです。そうすると、人間はもっと進化してですね、いま「これが人間だ」と我々
が思っているようなあり方を超えて、神にならなきゃいけない。だから遺伝子を改造してでも何ででも、人
間は神に近づくべきである、っていうようなそういう論調です。こういう宗教的な立場から先端的な生命操
43
作っていうのを全面肯定するような、そういう議論っていうのも出てきてるのですが、これは日本ではちょっ
と見あたらないですね。特に宗教のほうから、そういうことを肯定する人はちょっといないように思います。
こういう神学者たちは1990年代になってから現れてきたのですが、その元祖みたいな存在はけっこう
前からいまして、たとえば、まだ遺伝子研究が今みたいに現実味を帯びてない1970年代にすでに、ジョ
ゼフ・フレッチャーという神学者がそれに近いようなことを言ってるんですね。「神の似姿としての人間」とい
うのはキリスト教の伝統のなかにもともとある考えですから、それが先端技術礼賛と結びついたときにこうい
う形の思想になって現れてくるわけでしょうね。
さっき言ったように、日本では宗教の側からそういう発想をする人はまずいないのですが、そこにはもち
ろん宗教の違いというのもありますし、日本で、「宗教の立場から発言する」っていっても、何教の一体どう
いう人が発言するのかっていう問題ももちろんあるんですけど、ピータースやへフナーのような神学者の
発言をあまり奇異なものと感じさせないような社会的土壌っていうのが、やっぱりアメリカその他の英米圏
にはあるということに注意しておくべきだと思います。英米圏では、そういう考え方に対して「そうだそうだ」
って言う人が一定数いるから、そういう人の発言がありえるんですね。で、その土壌というのは何なのかっ
て考えた時に、やっぱり大きいのは、戦争で負けたことがない国だということです。そのために、英米圏の
国では「優生学」とか「優生思想」というものに対する根本的な反省というものをしたことがないのです。
逆に、第二次大戦で負けた日本やドイツは、優生学に対して根本的に反省せざるを得なかったわけで
す。戦前は、いわゆる国家レベルで優生政策がとられていたわけで、日本でもたとえばハンセン病者の隔
離政策だとか、障碍をもった人たちへのいろんな差別、たとえば強制的に断種手術をして、子どもを産ま
さないようにしたりとかですね、これはドイツでも非常に例が多いです。また、人間の種の改良だとかいっ
た発想自体も、ナチスに典型的にあったわけですが、それに対して、ああいうのはナチスの特殊な思想で、
自分たちの普段の行いには関係ないんだっていうふうに、おそらく英米圏の勝った側の国の人たちは思
ってたでしょうね。実際には似たようなことが行われていたにもかかわらず、そのことにいやおうなしに直面
させられる機会がなかったわけです。そういう優生思想に対する根本的な反省がないままに、戦後ずーっ
と来てしまった。現代ではよく「新しい優生思想」の危険というようなこと、従来の国家レベルの優生政策で
はなくて、もっと個人主義的な優生思想が跋扈しつつあるというようなことが言われるわけですが、そういう
危惧に対して非常に楽観的というか、かつてはSFのお話だったような生命操作技術が現実に使えるかも
しれないというような状況になってきた時に、やはりそれに対して素朴にというか単純にというか、「ゴー」と
いう人たちっていうのが少なからず存在する、というのが英米諸国の現状ではないかと思います。この辺
が、今後どういうふうに展開していくかというのは、ちょっと予想のつかないところもあります。
最後に私自身の一番の関心事なのですが、底の浅い、短絡的な考えをもとに生命を勝手に操作して
いこうというような動きに対しては、広い意味での宗教がある種の「歯止め」になっているということはたしか
だと思います。とはいえ、何か特定の宗教が自分たちの教義とかそういうものでもって歯止めをかけたりし
ようとしても、ほとんど効果はないような気がします。もちろんキリスト教だったらキリスト教の中で、あるいは
その特定の教派、たとえばカトリックの中ですら、ものすごく意見の対立があるんですけど、その宗教や宗
派を代表するような人が意見を述べると、一応その宗教の内部の人にはある程度届くわけですね。ところ
が、そういう「宗教的立場から」の意見というのは、その信仰をもっていない人にはほとんど意味がないとい
うか、そういう発言自体が耳に入らないし、かえって宗教者がそういう発言をすることによって、その意見に
「特定の宗教を信じる人々が、同じ信仰をもつ人にしか通用しない特殊な考えを持ち出してきている」とい
うようなマイナスのレッテルが貼られてしまうことだってあるのです。いろんな宗教の信者もいれば、まった
44
く無信仰の人たちもいる多元的な社会における公共的な議論の中では、そんな特殊な考えを持ち出して
くるべきではないとか、宗教的な発言は一切禁じるべきだっていうようなところまでいってしまう可能性もあ
るんですね。
だから、もし広い意味での宗教が、今後もある種の歯止めみたいなものになりうるとすると、それはどの
ような形においてなのか、ということをもっとしっかり考えないといけないと思います。僕は次のように考えて
います。つまり、キリスト教とか仏教とか、そういう宗教の別に関係なく、今まで人間のいのちとか(人間だけ
じゃないですけど)そういうものについての、ある種の文化とか作法というようなものを作り上げてきた宗教
的伝統のなかには、ある程度共通の地盤みたいなものがあるように思うんです。たとえば人間が死んだら
どういう弔い方をするかっていうようなことは、文化や宗教によって相当違うんだけど、そういう多様性のな
かにも「死者への思い」とでもいうような、何か相通じるものを感じることがあります。ただそれは、なにか教
義みたいな形で言葉になってるものでもないんですが、そういう文化、宗教的な伝統のなかに受け継がれ
てきたあり方をもう一度きちんと意識化していって、ある種の共通項を探り出していくっていうか、それを新
しい言葉で表現していくっていうこと、そういうことのなかに一つの可能性はあると思うんですね。つまり、
特定の宗教の立場に立って、これはこうだから絶対反対だとか言ったって、一国の国内レベルでは意味
がある場合もあるでしょうが、将来必要となってくるであろう医療や生命科学に対する国際的な規制のあり
方を考えていく上では、ほとんど意味がないでしょう。でも、もともとは特定の宗教に発する考え方であった
としても、その宗教に固有な言葉を超えて、そういう考えにいろんな人が共鳴し合えるような形で表現して
いけたとしたら、そういうものはある程度力になりえると思うんですね。なぜなら、どんなものであれ、人類が
これまでに築いてきた宗教文化というのは、やっぱり人間というのを見る時に、ある部分(たとえば遺伝子
とか)だけに着目していくんではなくて、まさにその、いのちの全体性とでも呼ぶべきものを見ている、とい
うことがあるからです。たとえば人生だったら人生っていう、ある時間的な長さを持ったプロセスがあって、
それも別に個人の人生だけで切れてるんではなくて、実際には先祖にも後世の人々にもずーっとつなが
ってる。そういうふうに実際に生きている、生活をしている人間のスパンで、いろんなものを見るということが
宗教文化の強味ではないかと思うのです。それはやっぱり今まで我々が生きてきた伝統の中に、知恵とし
て眠ってる。それをあんまり過小評価するべきではないと思います。
人間のそういう具体的な生活感覚というか、その辺を捨象してしまうような議論が生命倫理ではけっこう
多かったりするのですが、現代社会においては全部個人が自分の好みでもって取捨選択して自分の人
生を選んでるんだ、選ぶべきなんだっていうような発想は、ほんの一部の人にしか通用しないですよ。たと
えば「インフォームド・コンセント」というような概念にしても、それを杓子定規に医療の現場に持ち込もうと
すると、アメリカでも東海岸の中流以上の人たちで、ある程度知識をもった階層の人たちの医療に対する
関わり方(ある種の特殊な「医療文化」)には適合するかもしれないけど、ちょっとでもそういう医療文化を
共有していない人には、そのままの形では通用しないです。日本では、アメリカ式の(実際にはアメリカ東
海岸中流以上層式の)やり方がアメリカでは全部通用しているのだと誤解されていたりするのですが、本
家のアメリカでは医療倫理の世界もずいぶん変わってきています。なぜかというと、アメリカの有名病院は、
外国人患者を非常にたくさん受け入れますので、イスラム圏の患者とか、いろんなアジアの国の患者とか、
ありとあらゆる文化的、宗教的伝統をもった人たちがやって来るわけです。そうすると、アメリカの医療や、
医療倫理のスタンダードっていうのはまったく通用しないっていうことがもうアメリカでは明らかになってき
ています。また、先端医療の受容云々となってくると、これはみんな同じように進んでいってるわけじゃな
いですし、中国なんかのように公的な議論がほとんどまったく存在しないようなところもあるわけです。そう
45
いう意味では、我々の生活、人生、いのちの繋がりの全体を考えながら、そういう議論を進めていくことが
大切なんで、その際に知恵やイマジネーションを与えてくれるような素材が、伝統的な宗教文化のなかに
まだまだある、というふうに思います。どういうふうにその可能性を引き出していくかっていうことが問われて
いるのではないでしょうか。だから今、人々の生活の実感のなかにはまだ息づいているけれども、はっきり
と言葉になっていないようなものを、どうやって、生命倫理とかそういう理屈上の言葉に引き入れていくか
っていうようなことを僕は考えているんです。
46
資料 3.講演会「ブレイン-マシン・インタフェースの現状と展望」記録(2007.10.31, 京都)
(京都大学:櫻井芳雄)
ブレイン-マシン・インタフェースの現状と展望
福山先生、ご紹介ありがとうございます。それから今回のセミナーをアレンジしてくださいました美馬先生、
どうもありがとうございました。ただいまご紹介いただきましたのが文学研究科の櫻井です。学生時代から
ずっと脳について動物実験で行なってきましたが、現在はブレイン-マシン・インタフェースに大変興味を
持ち研究を進めています。今日はその現状と展望について話せと福山先生からご依頼いただきましたが、
もちろん私にはそれらを正確にきちんとお伝えする力はありません。しかし、私がいま考えております現状
と展望について簡単にお話ししてみたいと思います。
まずブレイン-マシン・インタフェースとは何かということですが、この定義が少し混乱しているようです。
普通は脳の活動で機械を動かすシステムと考えます。その機械には義手義足というものも含まれており、
そのイメージが最近非常に広まっています。しかし、必ずしもロボットのような機械である必要はないわけ
で、身の回りに必要な、例えばコンピュータとか、あるいはいろいろな家電製品とか、あるいは窓のカーテ
ンとか、そういうものを脳の活動で動かすというものも含めます。また、四肢麻痺の患者さんを対象としては、
脳の活動で直接筋肉を刺激し四肢をまた動かせるようにするというシステムも考えられ、現実に外国で試
みられています。
これらはすべて運動出力の利用です。脳の活動を出力として身体の代わりのものを動かすということで
すが、広く考えますと、例えば人工内耳や人工網膜のように、知覚を引き起こす感覚入力のシステム、あ
るいは脳深部刺激のように脳を直接操作するシステムも、全てブレイン-マシン・インタフェースと言われて
います。
ブレイン-マシン・インタフェースの目的ですが、まず脳活動で機械を操作する介護医療システムとして
の活用です。特に医療関係者にとっては、そのような臨床医学的な目的がまず第1にあります。それから
工学部の方にとっては、脳活動を活用する新しいインタフェース技術を開発するという目的があります。こ
ちらは研究者人口としては現在最も多く、それは工学部というものがもともと一番教員も学生も一番多い
わけですから当然ですが、最近非常に増えています。最後は、神経科学的な研究のツールとして使うと
いう目的です。特に脳の情報表現と可塑性を実験的に解明するために、ブレイン-マシン・インタフェー
スを使います。これらの目的は相互作用し協力して、同時に研究が進んでいくことになるわけですが、私
自身は神経科学的な目的に基づいています。脳で機械を動かすということは機械が動くように脳自身が
変わっていくということですから、脳が機械との相互作用でどう変わり得るかということに興味を持ち実験を
進めております。
ブレイン-マシン・インタフェースは、脳の中に電極を刺す侵襲式と、脳には直接触れない非侵襲式に分
けられます。福山先生や美馬先生のご研究は非侵襲計測で世界のトップレベルにありますが、まず脳に
電極を刺す侵襲式について簡単に紹介します。
現在は、脳科学が進展して侵襲式のいろいろな技術が開発され、そこから侵襲式BMIが作られ、その
研究により脳活動の特性がわかっていったことで、さらにBMIが進展するという状態になっているように思
います。これが 1999 年の Chapin の、事実上一番最初の侵襲式ブレイン-マシン・インタフェースの論文
です。これ以前にブレイン-マシン・インタフェースの報告、たとえばサルやヒトに電極を刺してという報告
47
もあるんですけれども、「ネイチャー」のような学術雑誌に載った侵襲式ブレイン-マシン・インタフェース
は多分これが最初であると思います。このラットがレバーを押せば水飲みチューブが出てきますが、その
運動野にたくさんの電極を刺し、レバーを押さなくてもニューロン活動だけで水飲みチューブが出てきま
す。脳の活動だけでも報酬を得ることができるようになると、ラットは何も行動しなくなり、ひたすら脳の活動
でチューブを出し水を飲むようになるという報告です。これはNHKスペシャルでも紹介された非常に有名
な実験です。
その後、霊長類でも実験が進んできまして、アメリカの Nicolelis は Chapin と共同で、ヨザルという小さな
サルを使い、運動野のニューロン活動を使うことで、腕の動きをロボットの動きで再現するというセンセー
ショナルな実験を行いました。霊長類を使った実験としては、昨年の「ネイチャー」にも Santhanam らによ
る論文が出ています。ところが、このような侵襲式のブレイン-マシン・インタフェースできちんとフルペー
パーを出している研究グループとなると、驚くほど少ないです。その背景にある基礎的な神経科学実験の
技術と実績がないと、なかなか難しいということがよくわかります。Nicolelis たちは、例えば「ジャーナル・
ニューロサイエンス」に 2000 年からいくつか基礎的な研究論文を出しており、多数のニューロン活動を解
析しています。それらは、motor skill learning 中の運動野のニューロン活動などを解析したものですが、ニ
ューロン集団の活動は情報にどう関わっていて、どのように情報を表現しているかという問題に関わる基
礎研究があって初めて可能になるわけです。そのため、どの研究室でもすぐに飛びついて結果を出すと
いうわけにはいかないようです。
それでも、いきなりヒトでやってみようという研究者が出てくるのが、アメリカのすごさというか怖さというか、
これはテレビでも何度も紹介されましたので、ご存じの方も多いと思いますが、Cyberkinetics 社の実験で
す。こちらは四肢がマヒしている患者さんで、その運動野に電極をたくさん刺し、その信号でコンピュータ
のカーソルを動かすというブレイン-マシン・インタフェースです。非常に有名な患者さんですね。それでテ
レビのチャンネルを変えることができるようになったということで、この映像はもう4年くらい前にウェブ上で
すでに公開されていました。しかし実際に論文としてきちんと報告されたのは昨年の「ネーチャー」です。
この患者さんの脳の上肢支配領域に剣山型のユタタイプと呼ばれる電極を埋め込みニューロン活動を記
録しています。この論文をご覧になった先生方もおられると思いますが、例えばこういう成績が紹介されて
いいます。これはカーソルを脳の活動で動かしてもらった結果ですが、長期間訓練を経ても、これぐらい
の精度しか実現できていません。侵襲式であることのリスクを考えると、やっぱりまだ実用は難しいという感
じです。このような侵襲式のブレイン-マシン・インタフェースにはさらなる動物実験が必要である、あるい
はまだ動物実験の段階にあると言えそうです。
非侵襲についてですが、特に脳波については、その活動を自身で制御することが可能であるということ
が、もう 30 年以上前からわかってます。そこで脳波の制御を使うことで、最初から実用目的の製品も開発
されています。脳の活動が制御可能であるというのは、脳波のバイフィードバック実験で明らかになってい
ます。バイフィードバックというのは、ご存じの先生方も多いと思いますが、自分では制御できない不随意
的な身体内の活動を、その活動の指標をフィードバックとして与えられることで、自分で自由にコントロー
ルできるようになるという方法です。心理療法の1つとしてよく使われます。脳波を使った場合、たとえば脳
波にα波が出たら電車が動くようにして、ひたすら電車を動かすということだけを一生懸命努力するわけ
です。α波を出せといわれてもどうしていいかわからないですから、電車を動かすように努力する。そして
電車を自由に動かせるようになった時、脳はα波を自由に出せるようになったことになります。
脳波は制御できるとなると、2種類のパターンを出し、例えば脳波スイッチという製品を介してイエス・ノー
48
の合図として使えるわけです。この患者さんはお子さんですけれども、ウェルドニッヒ・ホフマン病という神
経難病です。完全なロックトインの状態で、まばたきもできないし眼球も動かせず、自発呼吸も出来ないの
で人工呼吸器を付けています。この患者さんに脳波スイッチをつけ、イエス・ノーの合図を脳から出すこと
で 50 音を選んでもらい文章を書いていく。そういうことをして初めて、このお子さんとお母さんは言葉を使
ったコミュニケーションがとれるようになったそうです。それが京都のかもがわ出版から出ている『晃一くん
の桜吹雪』という本です。私が大変感動した本です。
脳波の BMI で有名なドイツの Birbaumer さんが去年、私が主催した国際シンポジウムに来ていください
ましたが、大変素晴らしい先生でした。ALSの患者さんに脳波で簡易ワープロのカーソルを操作させ、
70%から 80%ぐらいの割合で正しいスペルで文章を書かせています。アメリカの Wolpaw もずいぶん有名
な研究者ですが、たくさんの電極を頭に張り付けて、脳波でコンピュータのカーソルを制御するという実験
を精力的に進めています。たとえば脳波を使って車椅子を操作させています。また、実際に車椅子を制
御するというのは結構危ないことですから、バーチャルリアリティ空間内を車椅子で動くという実験もありま
す。あるいは、脳波を使ってマヒした腕の筋肉に電気刺激を与え動かすという、FESを応用した方法もあ
ります。もう1度自分の腕を自分でコントロールすることを目指しています。
このように脳波はいま大変な勢いで研究が進められていて、特に工学系で生体工学とかヒューマンイン
タフェースを専門としている研究室のウェブサイトを見ますと、それらの多くにブレイン-マシン・インタフェ
ースとかブレイン-コンピュータ・インタフェースというテーマが挙げられています。しかし脳波には詳細な
神経情報は含まれていませんから、非常に難しいですね、研究者の数は圧倒的に増えていますが、これ
から大変だと思います。
脳波以外ではNIRSがあります。やはり2つのパターンを出力してイエス・ノーの合図として使うわけです
が、イエス・ノー以外の信号をどこまで出せるかが今後の課題だと思います。神経情報の精度が高く情報
量が多いのがfMRIです。指の動きまでも読み取ろうと思えば詳細に読み取れます。ATRとホンダが共
同研究でfMRIの信号からじゃんけんの種類を読みとり、その人がじゃんけんでいま何を出しているかを
予測することに成功しています。これはイエス・ノーのレベルよりも格段に精度が高いわけですが、もちろ
ん実用のためには装置を小型化し計測技術を簡易化するする必要があります。それは もう工学的な研
究ですね。計測機器の小型化、高精度化がこれから次第に進んでいくと思います。
BMIの進み方の予想ですが、これはもう私個人の予想ですから、全然オーソライズされていないのです
が、非侵襲式は近い将来ある程度の実用にもっていけるだろうと思います。厳密にいうとすでに実用化さ
れているわけで、さっきのロックトインのお子さんの脳波スイッチのように、すでに使われているわけです。
侵襲式ですが、これはまだしばらく基礎研究が必要で、特に安全性の確立ですね。脳の中に電極を入れ
るわけですから、電極を入れるというリスクを払ってもそれ以上のメリットがないといけないわけです。そこま
でもっていくのは、まだだいぶ先だろうと思いますが、将来は必ず実現するであろうと考えています。最初
に少しだけお話ししました人工視覚とか人工内耳という入力型と、あるいは脳深部刺激という直接操作型
に関しましては、すでに医療現場で使われているわけです。だから、すでにその実用は始まっていますが、
それがさらに高精度化していくことは間違いないと思います。そして将来はそれらが全て組み合わさり、出
力と入力を備えた統合型のBMIというものが目標となると思います。
非侵襲式BMIの今後の課題というものを考えてみますと、繰り返しになりますが、技術的にはとにかく計
測装置の向上です。また、非侵襲式はどうしても脳を鍛えるというふうにならざるを得ないわけです。検出
できる情報量は決して多くなく、そのままでは細かい情報は取り出せないので、都合のいい信号を出して
49
もらうように脳を訓練する必要があります。どこまで脳活動を訓練で変えることが出来るかという研究、つま
り脳波のバイオフィードバックみたいな実験がさらに進められる必要あると思います。理論的には、神経情
報の同定、すなわち計測された信号から情報を検出する方法ですが、その理論的な研究も当然必要だと
思います。
侵襲式の方ですが、これはさらに将来の技術ですから課題はたくさんあります。技術的には、電極をど
れくらい多くしかも安全に埋め込めるかが重要ですし、完全な無線化はどうしても必須です。神経科学的
には、電極をたくさん刺した状態の脳は当然損傷しているわけですから、その損傷というものがどこまで代
償されて、どのくらいの損傷だったら補償や回復が可能かとか、あるいはそこでロボットを動かすようにな
った時に、ロボットが身体の一部として脳で表象されるというふうに考えられるわけですが、実際そういう可
塑性を示す研究が理化学研究所の入来先生などにより示されています。そのような外部機器の身体表象
化というものの研究とか、あるいは認識とか判断という高次情報をどこまで検出できるかということが神経科
学的な課題です。それらはもうそのまま神経科学的な研究テーマと言えます。理論的には、神経情報をど
こまで同定できるかが問題になります。侵襲式計測で得られる情報量は多分猛烈に多いはずですから、
それをどこまでこちらが整理して引き出せるかという理論的な課題があります。そういうことから、当然、脳
科学と臨床医学とシステム工学と情報工学というような、複数分野の融合的研究というものが必須で、BM
Iは融合研究を必然的に促進すると考えています。
これは最近の昨年の「サイエンス」に出た論文ですが、植物状態の患者さんが示す脳活動です。同じ指
示に対し、健常者と植物状態の患者さんが同じような部位を賦活させています。つまり、植物状態の患者
さんの中には、こちらの指示が全部わかっていて、そのとおりのイメージを頭に浮かべることができる患者
さんがいるかもしれないということです。 この論文に対しては批判もありますが、もしこれが本当であると
いう前提に立つならば、このような脳活動から情報を取り出すことによって、そしてそれをBMIを介して何
らかの行動として表すことによって、植物状態の患者さんの意識を見ることが可能かもしれないと考えてい
ます。
ここまでは、大急ぎで現状と可能性についてお話ししました。ここから先は私の研究の紹介を少しだけさ
せていただきます。今日は私の粗末な研究を紹介することが目的ではありませんので、軽く流していきた
いと思いますけれども、CRESTで4年前から進めているプロジェクトです。目的は神経回路網の可塑性と
学習能力を見るという、もうまさしく神経科学的な研究テーマです。脳は身体との相互作用で変わるんだ
という発想です。別にこれは私独自の発想ではなく、よく言われることで、つまり神経回路網は学習によっ
て変わっていくいうことに過ぎません。そして、脳と身体の相互作用の中で、高齢化つまり老化というのは
何なのかと考えてみますと、それは当然脳の衰えということと同時に、身体の衰えでもあります。特に筋肉
骨格系は非常に衰えて、そういう身体的な衰えというものが、実は脳の活動を抑制しているのではないか
と考えています。脳がいくら活動して命令を出しても、身体が言うことを聞いてくれないとなれば、脳の活
動は当然不活発になるわです。老化の場合は、身体の劣化というものが脳の劣化に少なからず影響して
いるだろうと考えます。だったら身体を置き換えてみればよいというわけで、ブレイン-マシン・インタフェ
ースを使うことにしました。つまり、身体の代わりに高性能の機械につながった時、脳は本当に高性能の
機械を動かすように変わってくれるのかどうか、そして老化した脳でも変化が起こるのかどうか、見てみた
いと考えています。
そのためにはこのBMIを作らなきゃいけないわけですが、そこで2つの実験を進めています。一つは、
情報を表現する神経活動を検出して機械を操作するという、典型的なBMI の構築です。そのためには、
50
ニューロン活動から行動を予測することができればいいわけですが、そこで、サルの運動野のニューロン
活動と同時に、運動野は筋肉を支配していますから筋電位も測定して、高精度なBMIを構築しています。
これはモンキープロジェクトとして、東北大学の飯島先生と東京工業大学の小池先生が中心となり進めて
います。
もう一つは、目的とする課題に合わせてニューロン活動を変えさせる、つまり、機械を操作するために都
合のいいようにニューロン活動を変えさせるという実験です。これはラットの海馬のニューロン活動の条件
づけですが、1970 年代にいわゆるニューラルオペラントと呼ばれていた研究に基づいています。これはラ
ットプロジェクトとして、医学研究科の金子先生と情報学研究家の青柳先生に協力していただいて進めて
います。
これはRASICAという、研究員の高橋晋君がブレイン-マシン・インタフェース用に開発した解析システ
ムですが、このシステムを用いたBMIのシステムをまず作りました。これは京都大学から2件の特許出願を
済ませています。これは私の実験室です。ラットを使い、海馬のニューロン活動だけで餌が出てくるという
課題を行っています。これはかなり年をとっているラットで、毛並みもかなり悪いのですが、自分で行動し
て餌を取るという状況では、なかなかすんなりといかないのですが、ニューロン活動だけで餌が出てくると
いう状況に置いてやると、ニューロン活動を増やして餌を多く取り始めるということがわかります。こういうこ
とができるようになってくれば、このラットは自身の体がマヒした状態になっても、脳の活動を都合よく変え
ることによって報酬を得ることが可能になるわけです。それが若いラットと比べてどう違うのかということを、
現在比較しています。
サルの実験ですが、これは東北大学の飯島先生のラボで進めてもらっています。これまでの成果として、
運動野の少数のニューロン活動で腕の動きを正確に予測するシステムを作りました。はじめは筋電位を
介して予測しますが、次に筋電位は外し運動野のニューロン活動だけで、サルがどういう腕の動きを示す
かを予測することができます。これは昨年の「ニューロサイエンス・リサーチ」に論文として出しました。今は
もっと複雑な運動をやらせていて、その運動も正確に予測できるようになりました。さらに次は、リアルタイ
ムでどこまで正確に予測しロボットアームを制御出来るかを検討する予定です。
最後は展望ですが、まずよくある誤解を正す必要があります。BMIはすでに米国で開発されているから、
今から日本で研究を始めても遅いいうことがよく言われるのですが、それはもう圧倒的に違う。圧倒的に違
うということを、私はいつも強調しています。まず、BMI研究は神経科学的な研究です。これはもう脳の研
究です。ですから、家電メーカーがある製品を開発してしまい、例えばソニーがウォークマンを開発してし
まったから、もう今から開発を始めても遅いという、そういうレベルではまったくないわけです。脳はまだま
だわかっていません。神経科学的な研究の中にBMIというテーマがあるわけですから、今から始めても遅
いとか速いとかいう、そういう発想自体がそもそも間違っています。 それから、その米国でもまだ開発され
てはいません。BMIはまだ基礎研究の、しかも初期の基礎研究の段階です。さらに、そのような基礎研究
で成果を出しているラボはまだ少数です。ですから、決して米国はどんどん先に進んでいるということでは
ないと思います。また、BMIはそもそも非常に難しいテーマですから、先は長い。今後、非常に長期的な
展望だった研究が必要です。マスコミが大げさに報道して、アメリカでは今にも実用化されるかのような紹
介をしていますが、そういう記事を鵜呑みにせず、やはり研究論文をしっかり読んで、「まだ難しいんだ」と
いうことを感することが大切だと思います。
実用化の時期ですが、これはよく聞かれるのですが、もちろん私にはわかりません。ただ、実際に研究
費をもらっている以上、わからないだけではまずいので、実用化は精度と安全性の要求水準次第と答え
51
ています。何を目指すかですね。脳波スイッチのようなシステムであればすでに実現していると言ってもい
いでしょうし、本当に身体と同じ動作と操作性を要求するのであれば、もう次世代にわたるテーマかもしれ
ません。BMIを完全に実現するということは、まさしく脳が完全にわかるということと同意であると考えてい
ます。ですから、まだまだ小さな一歩を踏み出したにすぎないと、いつも言うようにしています。
今日の後半に少し紹介しました研究は、JSTのCREST、総務省のSCOPE、科研費特定領域の「移動
知」から援助をいただきました。以上です。
(この後しばらく、研究内容や今後の展望に関する質疑応答が続く)
(司会) 最後に、倫理的な問題に関してですが、先生が考えられている理想的なBMIというのは、先ほ
ど先生が言われたことから考えると、例えば脳卒中であるとか、何かそういう病気や障害を持った人達へ
のアシストというレベルを目的としているのでしょうか。
(櫻井) はいそうです。もちろん私はそういう臨床医学の方はなかなか関わることはできないのですが、私
が考えていますBMI研究の目的は、まさしくそういうことで、健常者がさらに便利な生活というか、より効率
的な生活を送るために使うのではなく、いま私たち健常者が受けている便利な生活を享受できない人た
ちがいるということを前提にして、その人達のQL、生活の質を改善するために使うべきであると考えていま
す。
(司会) 健常者の利便性をアップする必要はないということですね。
(櫻井) ないと考えています。私たちは今、もちろんいろいろ問題はありますが、自分の子ども時代と比
べると、十分便利な生活をしていると、私自身は感じています。しかし、その便利さを受けられない人たち
がいるということに、BMIの研究は眼を向けるべきであると思っています。
(司会) どうも今日はありがとうございました。
(櫻井) どうもありがとうございました。
〔了〕
52
資料 4.第3回研究推進委員会記録
資料 4.1 AD/HD とリタリン―医療化論の視点から―(20007.12.02, 京都)
(大阪市立大学:佐々木洋子)
AD/HD とリタリン——医療化論の視点から——
0. 本報告の概要
本報告は、「AD/HD とリタリン——医療化論の視点から——」である。
AD/HD(Attention- Deficit/Hyperactivity Disorder:注意欠陥多動性障害)の薬物治療において、メチ
ルフェニデート(Methylphenidate)が有効とされていることは、一般によく知られたことである(同時にこの
薬物が非常に議論を引き起こすものであることもまたよく知られている)。そして、リタリン(Ritalin)は、
AD/HD の治療薬として、もっともよく知られた薬剤である。日本においては、1958 年よりうつ病治療薬とし
て販売が開始され、比較的長い期間にわたって使用されてきた薬剤であった。しかし、AD/HD の治療に
関していえば、日本では保険適用は認められていなかった。
臨床的関心に基づけば、リタリンに関する議論は、こうした薬物が AD/HD 治療における効果の判定、
適正使用のための条件、さらには薬物使用についての倫理的な問題といった点が論じられるであろう。
しかし、本報告では、こうした臨床的観点からではなく、「逸脱の医療化」の観点から AD/HD とリタリンに
ついての議論を紹介したい。つまり、リタリンは、病いが発見されたその帰結として用いられるではなく、病
いの発見を促進−−すなわち医療化−−する一要因であるという観点から検討するのである。
逸脱の医療化の議論について、本報告は、Conrad, P. と Schneider, J.W.による Deviance and
medicalization : from badness to sickness, 1992 (1980), Temple University Press.(=2003, 進藤雄三監
訳,『逸脱と医療化−悪から病へ−』ミネルヴァ書房)をもとに、逸脱の医療化論を紹介する。『逸脱と医療
化』は、1980 年に出版され、1992 年には「10 年後」という章を加えた増補版が出版されている。日本では、
この増補版が 2003 年に翻訳・出版された。
著 者 の 一 人 で あ る コ ン ラ ッ ド は 、 1976 年 に AD/HD と 医 療 化 の 問 題 に 関 す る 著 書 Identifying
Hyperactive Children を出版しており、逸脱の医療化論のパイオニアかつ AD/HD の社会学的研究のパ
イオニアでもある。また、コンラッドは、2007 年に、The Medicalization of Society を出版し、AD/HD につい
ての現代的展開(近年の AD/HD カテゴリーの拡張における製薬企業の役割に関する議論)を論じている。
併せて紹介したい。
本報告は、AD/HD とリタリについて、逸脱の医療化の観点からみた議論を紹介するものであるが、最初
に、逸脱の医療化の基本的な概念や用語について説明し、逸脱の医療化のモデルを紹介する。続いて、
個別の事例となる AD/HD の事例についての検討に入ることとする。
1. 逸脱・病い・社会統制
コンラッドとシュナイダーによる逸脱の医療化論について紹介するにあたり、本節では用語と理論的前
53
提について何点か確認しておく1。
はじめに医療化についてもっとも単純化してまとめておくと、医療化とは、「ある問題を医療的な観点か
ら定義すること」(p.1)である。すなわち、問題の理解に際して医学的なフレームを用い、医学用語で記述
し、医療的介入を行うのである。医療化の範疇として、通常の人生上の過程、逸脱類型、すべての人に共
通する諸問題といったものが挙げられている。
逸脱の医療化
前述の医療化の諸類型のうち、本報告で扱う「逸脱の医療化」とは、「様々な逸脱行動や状態に対して
医療的解決が探求されること」である。すなわち、逸脱行動を医学的な問題として、通常は病として、定義
しラベル化すること、そしてそれに対するある形態の治療を提供することを医療専門職に委任すること。こ
のような医療化に付随して、社会統制機関としての医療利用が増大しているのである(p.55)。
逸脱
逸脱とは、「特定の力のある集団の規則に照らして不適切、あるいはこれに対する不満として定義される
行動や状態」であると定義される(p.3)。すなわち、「特定の社会・文化のもとで、特定の個人や集団が、
社会的標準にそぐわない状態や行動のことで、主に「負」の定義や解釈をうけるような事態」とされている。
社会的な規範から外れ、社会秩序を妨げるという意味においては、犯罪も病いも<同じ>逸脱となる。た
だし、社会統制メカニズムとの関連において、両者は区別が必要であるとされる。すなわち、犯罪は意思
に基づくものと理解され、慣習的生活へと行動を変化させることを目的に犯罪者は処罰される。一方、病
いは、当人の意思によるものではないとされ、病者は慣習的生活を阻害する状態を変化させることを目的
に治療がなされることになる。
社会学的研究の多くは、このような定義がどのように構築されるのか、どのようにして特定の人々に逸脱
者というラベルが付与されるのか、これらのラベルが付与された人々とその決定を下した人々の両者にと
ってどのような帰結がもたらされるか、というところに焦点を当てている。
病い
疾病や病いに対するアプローチには、様々なものがある(pp. 56-61)。
もっとも常識的な観点に近いと考えられる実証主義的な観点からすると、病いとは、生体の生理学的な
器官の機能、「良好な作動」を阻害する生体内の疾病の存在のことである。実証主義的な定義において
は、「客観的な」器官の状態が根拠となり、器官の機能不全のみが疾病とされることになる。また、疾病を
生理学的な状態、病いを疾病によって引き起こされる社会的な状態と二分法で捉え、分析することが可
能となる。
実証主義とは対照的な観点として、文化相対主義者によるものがある。そこでは、「ある実体や状態は、
文化によって疾病ないし病いと認識され定義された場合のみ疾病や病いとなる」という立場をとる。例えば、
スピロヘクター性の皮膚色素異常症は、皮膚上に有色の斑点が表れることを特徴とするが、南米インディ
アンの部族では、それがあまりにも一般的なので、そうでない人々は逸脱とみなされるという例がある。文
化相対主義者の観点は、生理学的現象の定義と解釈における多様性を示している。
1
主に Conrad &Schneider, 1992=2003 第2章を参照。また、以下本稿の引用は、特に注記のないものについては、『逸脱と
医療化』からの引用とする。
54
社会学的観点では、こうした観点に加え、病いが定義される過程——病いの社会的構築——を捉えようと
する。すなわち、病いとは、自然界に存在する状態に対する人間の(否定的な)判断であり、生体の生物
学的な状態に対する効果とは無関係の一定の帰結をもたらす、ということである2。
つまり、社会学的観点で見れば、生物生理学的な現象、すなわちある器官の機能不全などとされる状
態は、それ自体が病いや疾病なのではなく、ある状態を「病いあるいは疾病」とラベリングする際にその根
拠として利用される何か、でしかないのである。繰り返すと、あくまでも、病いは自然界に存在する状態に
対する人間の(否定的)判断であり、そうであるとすれば、病いとして定義される状態は、社会的な価値や
社会の一般的な世界観を反映していると捉えることができる。
社会統制機構としての医療
逸脱行動の概念は変化し、逸脱を統制する権限を与えられた機関も変化する。この逸脱の認定機関は、
宗教的なものから国家・法律的なもの、そして科学・医療的なものへと歴史的に変化している。現代社会
は、医療パラダイムが支配的パラダイムである。
医療による社会統制とは、医療という手段を通じて逸脱行為の軽減、除去、正常化が行われ、社会規範
への忠誠を確保するために医療が(意識的にか無意識的にか)作動する、その行動様式を意味する
(p.458)。医療による社会統制の主要な理念形として、医療技術、医療的提携、医療イデオロギーの 3 つ
がある。
医療技術は、逸脱の医療統制として最もよく使われる手段である。行動を統制するための薬物療法は、
後にリタリンを事例として取り上げるが、効果が絶大であるとともに、相対的に経費が安いため用いりやす
い。他には、脳に外科的治療を施す精神外科手術や、行動変容も医学的治療の一つとして用いられて
いる。
医療的提携は、医療が他の機関と相互依存することによって統制機能を果たすことである。例えば、児
童虐待を児童福祉事務所に報告する義務や、生命保険加入時の健康診断なども医師によって行われる
監視者業務として挙げられている。
医療イデオロギーは、ある行動や状態が医学的に概念化されることによって社会的な利益が生じる時に、
それを病いとして定義する。そうすることで治療方法などとは別の利益、派生利得をもたらすという医療化
の潜在的機能の一つと考えられる。
2. 逸脱の医療化の時系列モデル
医療的認定は社会的な判断であり、行動に対する医療モデルの採用は政治的な判断である。ここでは、
コンラッド&シュナイダーの提案する逸脱の 5 段階時系列モデル(逸脱としての行動の定義、探査、クレイ
ム申し立て、正統性、医療的逸脱認定の制度化)を紹介する(pp. 505-512)。
2
医学的診断は診断を受けた人々の行動、態度に影響を与え、またその他の人々の彼らへの行動、態度に影響を与える。
一般的に、定義上の変化の影響については次の通り。1. 特定の種類の逸脱行動に関する正当な「権威」を変化させる可
能性、2. 変化は行動の意味を変容させる、3. 変化は法律上の地位を変化させる、4. 変化は、逸脱のカテゴリーまたは規
範それ自体の内容を変化させる、5. 変化は、使用される語彙とともに、逸脱の道程とラベリングが生ずる舞台を変化(同性
愛が犯罪の時は、司法上の過程でラベリング/病として定義されると、医療上の過程−精神医療−の舞台でラベリング)、6.
変化から介入の方法における変化が生まれる(法律上の処罰かメタドン処方か)、7. 変化は、何に注意を向けるかについ
て、道路標識と同じ役割を果たす(多動児の子供の心理学的な性格)、8. 変化は、責任の帰属を変化させる(病人は責任
を問われない)。
55
(1)逸脱としての行動の定義
逸脱行動の医療化が起こるには、医学的定義が現れる以前から逸脱が認識され、行動が「望まし
くないもの」と定義されている必要がある。例えば、多動症の場合は、教室で曖昧に逸脱者と定義さ
れていたものが、医学的レッテルが発見・宣伝されることによって、形が与えられることとなる。逸脱
の医療的認定は、すでに人々に共有されている定義を反映し、これに形を与えるのである。
(2)探査:医学的発見
逸脱行動の医学的概念が「発見」されると、新しい診断の記述・医学的病因論の提案・医学的治
療の報告などが医学雑誌に発表される。ただし、これらはあくまでも学術的な「異議申し立て」を構
成しているにすぎず、そのままで社会的認知と受容を保証するものではない。
(3)クレイム申し立て:医療的・非医療的な利害関心
この段階は、逸脱認定が登場する際の鍵となる。この時、逸脱の認定を求めて、医療的・非医療
的利害関心がクレイム申し立て運動に関わる。医療専門職の利害関心は、専門家集団を構成する
とされる。例えば、医学的な研究者や専門職による調査委員会などがそれである。また、非医療関
係者は、経済的、道徳的、管理的、治療的な直接の利害関心を持っており、通常、専門的な医療
的クレイムを利用、提携することで、逸脱の認定を促進する。企業、専門家及び素人による組織、
政府省庁、SHG などがあり、一般に専門職よりも自由である。
(4)正統性:医療的な管轄権の確保
この段階では、逸脱の実践的な異議申し立てが行われる。通常、医療に一定の社会統制の権限
を与えるのは国家である。したがって、逸脱認定の正統性を求め、異議申し立ては議会や法廷へ
持ち込まれる。そして、国家による正統性を勝ち取ることで、社会的に受容されたということができ
る。
(5)医療的逸脱認定の制度化
医療的な観点が正当化され、逸脱認定が制度化されると、それは固定化され半永久的な状態に
達する。一般的な制度化は、成文化と官僚化に見られる。すなわち、成文化されたとき、逸脱は公
式の医学上・法律上の分類システムに受容されたものとなり、大規模な社会統制機構の設立は、研
究費や技術支援などを通じて医療化を支援するものとなる。
以上のように逸脱の医療化が制度化されると、それは支配的パラダイムとなるのである。この時系列モ
デルをふまえ、次節は AD/HD の事例について見ていく。
3. AD/HD とリタリン
AD/HD と薬物療法
以下では、AD/HD の事例を紹介するにあたり、AD/HD とその治療薬であるリタリンについて、簡単に確
認しておきたい。
56
AD/HD は、日本では、90 年代以降認知が高まっている。近年では、政策的にも、2005 年 4 月から「発
達障害者支援法」施行され、2007 年度からは特別支援教育が実施されるなかで、AD/HD に対する社会
的関心はより高まっていると思われる。したがって、すでによく知られているかもしれないが、ごく簡潔にそ
の特徴を述べると、7 歳未満で発症する「不注意」、「多動」、「衝動」を特徴とする行動症候群である3。
もっとも有効な医療上の対処法として、薬物療法が用いられる。主に神経刺激剤、抗うつ剤、抗てんか
ん剤、抗精神病薬などが用いられるが、AD/HD の治療薬として最もよく知られているのが、「リタリン
(Ritalin)」である。「リタリン」は、一般名を「塩酸メチルフェニデート」といい、中枢神経刺激剤に分類され
る。日本でも AD/HD 治療によく用いられていたが、AD/HD 治療でのリタリンの保険適用は認められてい
ない4。
アメリカでは、リタリンの使用について 1970 年代からすでに論争的であったが、90 年以降のリタリン摂取
量が急激に増加しているという(Diller, 1996: p.13)。この急増とともに、議論が活発化している。論争は、
例えば、長期的な研究の不在により副作用の程度が不明であること、薬の服用における抑圧・強制、アス
リートなど公平性の問題、インフォームド・コンセント(投与されるのが主に子ども)、治療法の適切性、社
会的次元での影響について、などがある(Diller, 1996)。
The Discovery of Hyperkinesis
AD/HD(やその前身となる多動症)5は、学校教室でじっとしていることができないという逸脱であり、権
力者である大人(教師や親)による逸脱認定がなされた子どもの医療化の問題であり、当時、医学の診断
カテゴリーとして比較的新しかったので子どもの逸脱行動の医療化過程を研究する上で好都合であった
(Conrad, 1976)。
医療化が進んだことについて、まず、臨床的要因と社会的要因を分けたうえで分析を行っている(pp.
290-299)。
臨床的要因としては、1937 年に行動障害・学習上の問題を抱えた子どもに対するアンフェタミンの「逆
説的」効果6が発見されたこと、1947 年「微細脳損傷」の報告されたこと(診断名ではなく、一般に「子ども
の行動障害」)、1954 年にはメチルフェニデート(商品名:リタリン)の特許がとられ、1957 年「多動的衝動
行動」診断カテゴリーができたこと、1961 年に FDA(食品医薬局)による子どもへの投与の承認されたこと、
などが挙げられている。
社会的要因として、薬物革命、診療行為における動向、政府の行動の 3 つが挙げられている。まず、薬
物革命については、1930 年代以降、向精神薬の合成・製造が進んだこと、そして 1960 年代からは、子ど
3
アメリカ精神医学会の発刊する『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』による定義。DSM-IV-TR による AD/ HD の基
本的な特徴とは、「不注意および/または多動性-衝動性の持続的な様式で、同程度の発達にある者と比べてより頻繁に
みられ、より重症なもの」(高橋ほか, 2000=2005: 96)と定義されている。より詳しい診断基準については資料 1 参照。「不
注意」とは DSM の挙げる「不注意」に関するとされる「症状」9 項目のうち 6 項目以上があてはまるもののことを、「多動性-衝
動性」に関する「症状」とは、「多動性」に関するとされる 6 項目、「衝動性」に関するとされる 3 項目、計 9 項目のうち 6 項目
以上があてはまるものとされる。この二つの「症状」を軸として、「不注意優勢型」「多動性-衝動性型」、さらにその両方を満
たす「混合型」といった 3 つのサブタイプに分けられている。これらの「症状」が 6 ヶ月以上持続して「家庭、学校(職場)など
2 つ以上の状況」で確認され、「社会的、学業的、職業的機能に障害が存在する」場合に診断が下されることとなる。
4 日本においても、保険適用は認められていなかったものの、AD/HD 治療の第一選択薬はリタリンであったが、2007 年 10
月以降、適応症からうつ病が除外され、リタリンの効能は「ナルコレプシー」のみとなり、流通管理の義務化を含めたリタリン
の適正使用が進められた。同時期に、国内初となる小児期の AD/HD を適応症とするコンサータ(Concerta)が承認され、
流通管理が義務付けられている。
5 AD/HD 概念の簡単な歴史的変遷については資料2を参照。
6 大人が服用すると興奮するが、多動の子どもが服用すると落ち着く、また大人には依存性があるが、子どもには依存性は
ない、などと言われていた。
57
もの障害用の薬として、医学雑誌への掲載、ダイレクトメール、販売員などを通じて医療・教育領域へ宣
伝が行われたことが指摘されている。次に、診療行為における動向については、精神保健領域にける「薬
物革命」が挙げられ、治療法としての向精神薬(フェノチアジン)の活用があったこと、また、児童精神医
学領域への関心の増大が挙げられる。政府の行動として、行動障害児への向精神薬の投与についての
会議を設け、そして認可したことが挙げられている。
以上をふまえ、社会学的な分析は、いかにして子どもの逸脱行動は医療問題として概念化されるように
なったのか、なぜこうした事態が特定の時期に生起したのか、医療問題としての多動症は現在いかなる地
位を占めているのかといった問いのもとで進められている。
まず、現在ある障害が明確に概念化される前に、治療法は利用可能であった点が指摘される。つまり、
社会統制のメカニズム(薬物療法)は、ラベル(多動症)に20年先行しており、このラベル(多動症)は、特
定の社会統制のメカニズム(向精神薬)の使用を促進するために考案されたものと考えられる。
特定の時期に医療問題として定義されるようになった理由として、50年代後半になって、診断名と薬物
療法が利用可能になったこと、精神衛生領域における薬物革命とそれを取り扱うことのできる専門家とし
ての児童精神医学への関心の増大が指摘されている。
さらに、「販売促進」に重要な役割を果たした医療専門職外の人の存在として、製薬企業と学習障害児
協会も指摘する。製薬企業は、新しい診断と治療を促すため、薬剤の宣伝を積極的に行った。学習障害
児協会は、学習障害の概念の中に多動症を含めており、学習障害についての情報を広めていったことに
よる。
つまり要約すると、コンラッドによれば、逸脱の医療化のプロセスとして、①すでに逸脱と見なされている、
②伝統的社会統制の方法の効力の低下、③伝統的方法に変わる治療法が有効であることが知られてい
る、④器質的原因を示すデータの存在、⑤医療専門家の(少なくとも)一部が受け容れる、⑥医療以外の
既存の制度に利益をもたらすこと、が挙げられている。つまり、①多動とされる行動は、診断基準のできる
以前から逸脱とみなされており、この逸脱認定も権力となる大人によってなされている、②体罰多用の禁
止、義務教育制度の成立や児童労働の禁止などによって、体罰や学校をやめて働くといった選択肢が受
け入れられなくなった。③伝統的方法にかわる治療方法として、薬物療法が用いられたし、このために製
薬企業や学習障害児協会による宣伝が行われている。④については、「微細脳機能障害」などの概念が
示すように、脳との関わりが指摘されている。⑤は、すでに述べているように、多動症の診断を指示する医
師の存在や、国家による専門調査委員会の設置などにより、正統性が増大していった。⑥の医療以外へ
の利益という点では、学校、両親、製薬企業などが考えられる(黒田, 1989: pp.194-205)。
以上のようなプロセスを経て医療化が進められたが、ここでAD/HDとリタリンの関わりについて医療化論
の観点から検討するという本報告の当初の目的に則し、リタリンに着目したい。コンラッドによれば、リタリ
ン(ならびにそれによる利益を直接得る製薬企業)は、70年代には、医療化の促進要因であったものの、
主要な推進力ではなかった。70年代、中心はあくまでも医療専門職であったという。しかし、90年代以降
は、製薬企業は医師を脇にやり、医療化の主要なプレイヤーの一つとなった、と述べている(Conrad,
2007)。
The Expansion of Medical Categories
本節では、医療化の現代的状況を明らかにすることを目的としたコンラッドによる著書(2007)を参照し
つつ、AD/HDが90年代以降、いかなる地位を占めているかについて確認したい。
コンラッドは、近年の医療化推進の主要なプレイヤーとして、1.バイオテクノロジー、2.消費者、3.マネジ
ド・ケアを挙げている。とりわけ、FDAの「近代化法」(1997年)以降の製薬産業(1)や、製薬会社との連携
や専門家との連携を行う患者団体の動向(2)、マネジド・ケアは、精神療法よりも薬物療法への支払いに
寛大であることが主な理由となっている。
こうした社会的状況を背景に、AD/HDは、成人AD/HDの制度化が進んだ。これまでAD/HD概念は、
特に男の子どもにみられるとされた「子ども期の障害」であったが(アメリカでは、フォローアップ研究はなさ
れていた)、成人のAD/HDという概念の登場により、「一生の障害」と概念は拡張され、成人や女性も診断
を受けることとなった。製薬企業からみれば、このことは、患者の薬物療法が継続して行われることを意味
しており、市場を拡大することとなったのである。こうした状況下で、製薬産業は、薬剤の直接的な宣伝を
58
行うこと、当事者たちを支援することにおいて、医療的カテゴリー(AD/HD)の拡張過程において、積極的
な役割を果たしている。
製薬企業による診断や治療についての当事者への直接的な宣伝は、AD/HDの認知を高めた。診断や
治療についての宣伝は、当事者、患者団体も行っている。また、AD/HDについての論争——先に述べた
過診断と治療批判など——も、AD/HDの認知を高め、間接的に普及に貢献している。これらの宣伝効果
のためか、自己診断に基づいて病院を訪れる人、子どもの治療をしている中で、自分もAD/HDではない
かと疑う親などが、成人AD/HDには多く含まれている。
また、製薬企業は、患者団体の資金援助を行うことで、医療化の推進を助けているとみなすこともできる。
例えば、CHADD(Children and Adults with Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、1987年に設立
された全米で最大規模(会員数15,000人/200の支部)の患者団体で有名な団体ある。CHADDも、成人
AD/HD当事者が入会することによって、会員数が増大している。患者団体が、製薬会社からの資金援助
を受けていることは周知の事実であるが、額も少なくないためか、DEA(麻薬取締局)からの忠告を受けた
こともある。
以上のように、製薬企業は、医療化の過程において一つの役割を担っている。AD/HDについては、カ
テゴリーの成立過程や拡張過程において製薬企業の関与が見られるが、特に90年代以降、成人AD/HD
登場し、カテゴリーの拡張過程における関与がより顕著であると述べられている。
4. 医療化の社会的帰結
最後に、このような逸脱の医療化がもたらす社会的帰結について、紹介して本報告を終えたい。コンラ
ッドらによる医療化の社会的帰結における明るい側面と暗い側面を紹介する(pp.465-477)。
明るい側面は、1. 親や教師といった社会統制のなかでは、処罰よりも治療の方がより人道主義的であ
るということ、また医学的な説明は世間一般で受け入れられやすい。2. 病人役割を拡張することにより、
親や教師といった子どもの逸脱に責任を持つ人々や本人の背金を免除することができるという点。3.治療
が可能であるという希望が持てること、またそのことによる自己成就的側面が指摘される。ただし、治療が
不可能な場合については更に検討が必要であろう。4.問題の解決についての権限を明確にするという意
味において、医療専門職の威信を保つのに貢献している。そして、5.司法による統制よりも柔軟かつ効率
的であり、患者のニーズに合わせることが可能となるという 5 つの側面が指摘されている。
他方、医療化論では、こちらに主眼が置かれているのであるが、暗い側面としては、7 つ挙げられている。
1.病人役割の拡張による責任免除のため、社会的地位が引き下げられること。2.医療は道徳的中立性が
仮定されているため、その実践が実は道徳的価値判断であることが隠蔽されてしまう。3.当該の問題につ
いて、専門家のみによる論議が行われることにより、専門家による統制の支配がなされる。4.診断に続い
て治療が行われるという医療的社会統制。5. 社会問題が個人化されること。AD/HD のケースでは、子ど
もの多動は学校システム等の問題である可能性があるが、それらから目をそらしてしまう。6.政治的抗議
や不満を「症状」と見なすことで中和化し、逸脱行動の脱政治化が行われる。そして、7.医療化により悪の
排除が行われ、悪い結果が事故と見なされることで、現実から目をそらすこととなる。
文献
American Psychiatric Association, 2000, Diagnostic and statistical manual of Mental disorders :
DSM-IV-TR[TM]., 4th ed., American Psychiatric Association.(=DSM-IV-TR )(=高橋三郎ほか訳,
2004『DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院 )
Conrad, P., 1976 , Identifying Hyperactive Children, D. C. Health and Company.
—————, 2007, The Medicalization of Society, The Johns Hopkins University Press.
Conrad, P. and Schneider, J.W., 1992 (1980), Deviance and medicalization : from badness to sickness,
59
Temple University Press.(=2003, 進藤雄三監訳,『逸脱と医療化−悪から病へ−』ミネルヴァ書房)
Diller, Lawrence H., 1996, “The Run on Ritalin: Attention Deficit Disorder and Stimulant Treatment in
the 1990s.” The Hastings Center Report, Vol. 26(2):12-18.**
黒田浩一郎, 1989「医療社会学序説(3)—メディカリゼーション(医療化)をめぐって—」『病の視座 メディ
カル・ヒューマニティーズに向けて』ライフサイエンス研究所.
資料 1:注意欠陥/多動性障害 (高橋ほか, 2000=2004: 96)
A.(1)か(2)のどちらか:
(1)以下の不注意の症状のうち 6 つ(またはそれ以上)が少なくとも 6 カ月間持続したこと があり,その程
度は不適応的で,発達の水準に相応しないもの:
<不注意>
(a)学業,仕事,またはその他の活動において,しばしば綿密に注意することができない,または不注意
な間違いをする.
(b)課題または遊びの活動で注意を集中し続けることがしばしば困難である.
(c)直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える.
(d)しばしば指示に従えず,学業,用事,または職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動,
または指示を理解できないためではなく).
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である.
(f)(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することをしばしば避ける,嫌う,または
いやいや行う.
(g)課題や活動に必要なもの(例:おもちゃ,学校の宿題,鉛筆,本,または道具)をしばしばなくしてしま
う.
(h)しばしば外からの刺激によってすぐ気が散ってしまう.
(i)しばしば日々の活動で忘れっぽい.
(2)以下の多動性−衝動性の症状のうち 6 つ(またはそれ以上)が少なくとも 6 カ月間持続したことがあり,
その程度は不適応的で,発達水準に相応しない:
<多動性>
(a)しばしば手足をそわそわと動かし,またはいすの上でもじもじする.
(b)しばしば教室や,その他,座っていることを要求される状況で席を離れる.
(c)しばしば,不適切な状況で,余計に走り回ったり高い所へ上ったりする(青年または成人では落ち着
かない感じの自覚のみに限られるかもしれない).
(d)しばしば静かに遊んだり、余暇活動につくことができない.
(e)しばしば“じっとしていない”,またはまるで“エンジンで動かされるように”行動する.
(f)しばしばしゃべりすぎる.
<衝動性>
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまう.
(h)しばしば順番を待つことが困難である.
60
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話やゲームに干渉する).
B. 多動性−衝動性または不注意の症状のいくつかが 7 歳以前に存在し,障害を引き起こしている.
C. これらの症状による障害が 2 つ以上の状況〔例:学校(または職場)と家庭〕において存在する.
D. 社会的,学業的,または職業的機能において,臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が
存在しなければならない.
E. その症状は広汎性発達障害,統合失調症,または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるもので
はなく,他の精神疾患(例:気分障害,不安障害,解離性障害,またはパーソナリティ障害)ではうまく
説明されない.
資料 2:簡易歴史
・MBD(AD/HD の前史)
1902 年 Still, J.
落ち着きのない子どもについて Lancet に報告
1957 年 Knobloch、Pasamanic「微細脳損傷症候群(syndrome of minimal brain damage)」
1962 年 微細脳機能障害(Minimal Brain Dysfunction: MBD)の概念が提唱される
・多動性障害
1957 年 Laufer, M. et al., hyperkinetic behavior syndrome, hyperkinetic impulse disorder
1960 年 Chess「多動症候群」
1968 年 DSM-II「児童期障害の多動性反応」として正式に記載
1980 年 DSM-III「ADD(Attention Deficit Disorder: 注意欠陥障害)」:不注意概念導入、対象を成人に
拡大
1987 年 DSM-III-R「ADHD」
1994 年 DSM-IV「AD/HD」
2000 年 DSM-IV-TR「AD/HD」
61
資料 4.2 エンハンスメントと脳科学技術(2007.12.02, 京都)
(静岡大学:松田純)
ニューロテクノロジーによるエンハンスメント
はじめに
Ⅰ
治療としてのサイボーグ技術
Ⅱ
治療を超えて――エンハンスメントとしてのニューロテクノロジー
1
エンハンスメントの諸分野と種類
2
エンハンスメント問題の射程――エンハンスメントによって何がどう変わるか?
3
エンハンスメントと「人間の尊厳」
(1)
『治療を超えて』の懸念
(2)尊厳概念の自然主義化――ビルンバッハーの「尊厳」理解
Ⅲ
サイボーグ化の先にあるもの――境界と人間像への問い
1
サイボーグの定義
2
高度技術の内面化
3
自己の概念の流動化
4
サイボーグ化に「人間の尊厳」原理はどこまで通用するか?
はじめに
近年の脳科学とその技術的応用の進化は眼を見張らせるものがある。人工内耳,人工網膜,脳深
部刺激療法など,医療分野へのサイボーグ技術の導入が画期的な治療効果をもたらし,それへの
期待が高まっている。日本が誇るロボットスーツも,いまは高価でも,やがて福祉現場や家庭に
導入され,大活躍する日が来るだろう。介護補助具も,より生体に密着したものへと進化し,サ
イボーグ福祉が花開くだろう。
BCI(Brain-Computer-Interface 脳にコンピューターを直結する技術)は,新しい技術的地平を切
り拓いた。サイボーグ技術や BCI は治療に奉仕するだけではなく,治療を超える(beyond therapy)
エンハンスメント(Enhancement)にも用いられるだろう。その可能性は広大だ。ニューロテクノロ
ジー は,当面する治療への適用をめぐる倫理問題を投げかけるだけではなく,エンハンスメント
の普及がもたらす倫理問題をも生じさせる。さらに,それらを上回るもっと重大な問いを突きつ
けてくるだろう。それは人間と機械が一体化することによってもたらされる人間そのものの変容
や人間社会の変貌についての問いである。広領域に及ぶこれらの問題群の射程をわれわれはまだ
十分には見極められないところにいる。ここでは,今後の議論の展開を可能な限り予想しながら,
ニューロテクノロジーをめぐる倫理の課題と展望をスケッチしてみたい。
Ⅰ
治療としてのサイボーグ技術
62
ニューロテクノロジーは,例えば人工内耳(cochlear implant),人工眼(visual prosthesis 人工網膜)
などのサイボーグ医療として臨床応用されている。これらは,聴覚情報や視覚情報を電気刺激に
転換して脳へ直接送り込む情報処理装置のデバイスを人体内に埋め込むものである。また脳深
部刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)が,難治性のパーキンソン病や,ジストニアなどの不
随意運動症に対する治療に効果を発揮している。DBS はさらにうつ病にも効果が示されている。
これらのニューロテクノロジーが治療として導入される場合には,医療倫理学的・生命倫理学的
な検討が必要となる。
守るべき倫理原則
例えば人体への ICT インプラント(Information and Communication Technology Implant)(デバイス
装着)について,EU の科学と新技術の倫理に関するヨーロッパ審議会(European Group on Ethics
in Science and New Technologie)は,以下のような倫理原則をまとめている7。
「人間の尊厳」原理に基づき,①非道具化(身体や脳を他者が操作・コントロールすることの
禁止)
②プライヴァシーの保護
③非差別
④インフォームド・コンセント
⑤平等
⑥予防
原則(現にあるリスクだけでなく,身体への長期にわたる影響,将来的なリスクにも十分配慮す
る)を守ること。
これらは,かつてのロボトミー(前頭葉切裁術 1935 年~70 年代)の教訓をふまえれば,当然
必要な配慮であろう。日本では,同意のないままロボトミー手術をされた患者が医師を殺害する
という事件(1979 年ロボトミー殺人事件)まで起こった。脳深部刺激の基盤技術(定位脳手術に
よる電極埋め込み)は,ロボトミー手術の改良の試みから生まれてきただけに,これは昔話とし
て済ますわけにいかない8。ニューロテクノロジーには,人格の中枢に関わる脳への介入という点
で,独特の難しさがあり,他の身体部位を扱う場合よりも一層の配慮を要する。
脳への介入の難しさ
まず,脳の治療にはインフォームド・コンセントが必要だが,脳はインフォームド・コンセント
を遂行する器官でもある。身体に疾患があるが理解力と意志表示が十分な患者であれば,手術に
際して,当該治療法がもたらす利益とリスクに関する医師の説明を理解し,比較考量の上で,み
ずから同意すること(自律的意志決定)が可能だ。ところが脳に障害をもっていて,それを手術
で治療しようとする患者の場合は,そうは行かない。脳の治療を受ける患者は,インフォームド・
コンセントの能力に,情報を理解する認知面と,同意するという意志の働きの面で,障害がある
場合が多い。むしろ,治療によって初めて同意能力を獲得したり,自律能力を改善することがあ
る9。本人の同意抜きに,自律能力を獲得するための介入は,どのような場合に,どの程度正当化
されるのかという問題が生じる。
また脳という器官の特別な機能は単純には数値化できない。質的な精査が必要である。肝臓や
7
8
9
European Group on Ethics in Science and New Technologie 2005, 22-23
橳島次郎 2008
Schmidt 2007, 136-137
63
視力の働きの測定は追試が可能だが,例えば,言語理解力はそうは行かない10。脳への「治療」的
介入にあたって医療倫理一般を適用する際,シュミットは以下の点を考える必要があるという。
脳への介入が他の器官への介入とは違う倫理上の特徴は何か?
既知の医療倫理的基準が,脳への介入という特殊な諸問題に適合しているか?
既知の医療倫理的基準は拡張され補強されなければならないか?
もしそうなら,それはどのようにして可能か?11
ニューロエシックスは応用倫理学の新しい応用領域として,既知の倫理原則を単純に「応用」
すれば済むものではない。「具体倫理学(Konkrete Ethik)」12の実践が求められる。すなわち原理と
経験との間の往復運動,全体への視座と個別諸問題の具体的検討との間のたえざる反省的均衡の
なかで再吟味と修正を繰り返すことが求められる。
これらの検討には,さらに深い人間学的洞察が必要だ。身体と精神との関係,有機体的システ
ム(からだ)と人格的システム(こころ)との関係などが改めて問われるだろう13。精神医学や向
精神薬の扱いをめぐる倫理的議論14を参考にし,これらを同時に深めながらの検討となるであろう。
Ⅱ
治療を超えて――エンハンスメントとしてのニューロテクノロジー
前節のテーマは,これまでの生命倫理学の議論を深めながらの考察が可能なケースであった。と
ころが脳科学とその技術応用は,特定の症状の治療に限定されず,エンハンスメントの手段と
して,もっと多様に用いられる可能性が広がっている。この可能性と問題性を,エンハンスメ
ント論全般のなかで考察する。
1
エンハンスメントの諸分野と種類
エンハンスメントとは,健康の回復と維持という目的を越えて,能力や性質の「改善」をめざし
て人間の心身に医学的に介入することをいう。enhauncer (アングロフランス語:高める,機能強
化)→enhauncen(中期英語)に由来する言葉である。
エンハンスメントの種類はその目的によって,
(1) 肉体的能力の増強(physical enhancement)(例えば遺伝子操作による筋力の増強)
(2) 知的能力の増強(intellectual enhancement)(例えば記憶などの認知力の強化)
(3) 性質・行動の矯正(moral enhancement)(例えば暴力性や攻撃性などの性格・行動特性の矯正)
の三種類に区別できる。
手段および分野としては,遺伝子技術によるエンハンスメント,小児医療における成長ホルモ
ン剤の利用,向精神薬によるこころの改良,形成外科と美容外科,スポーツにおけるドーピング15
10
Ibid.138
Ibid.139
Siep 2004
13 Schmidt 2007, 141
14
薬によるエンハンスメントについては,植原亮 2007(第 1 回社会倫理研究奨励賞)の精緻な研究が参考と
なる。
15
Wissenschaftliche Abteilung des DRZE 2002. 『エンハンスメント――バイオテクノロジーによる人間改造をめ
11
12
64
など,さまざまある。アメリカ大統領生命倫理諮問委員会(The President’s Council on Bioethics)が
2003 年 10 月に発表した Beyond Therapy. Biotechnology and the Pursuit of Happiness(『治療を超えて
――バイオテクノロジーと幸福の追求』)
16
は次の4分野をあげる。
(a)より望ましい子ども(better children)
(例)出生前診断・着床前診断による子の選別,遺伝子操作によるデザイナー・ベビー
(b) 優れたパフォーマンス(superior performance)
(例)スポーツにおけるドーピング,細胞工学・遺伝子技術による筋力増強
(c) 不老の身体(ageless bodies)
(例)アンチエイジング,記憶向上剤,老化遅延技術
(d) 幸せな魂(happy souls)
(例)ドラッグ,記憶鈍麻剤,気分明朗剤(抗うつ薬などの向精神薬等)
ニューロエンハンスメント
上記のうち特に(2)と(3),(c)と(d)がニューロエンハンスメントに直接関わる。知的エンハンスメン
トには,記憶力を高める記憶増強剤,反対に,つらい体験から来る悲しみを消し去るための記憶
鈍磨剤(memory numbing drugs)17の使用などがある。向精神薬,とくに抗うつ薬をうつでもないの
に,気分を明朗にするために乱用すること(アメリカにおけるプロザックの流行)もこれに属す
る。
リタリン(塩酸メチルフェニデート)は注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療に医学的適応
とされているが,アメリカでは学級の「正常化」のために安易に使用され問題となっている。親
や教師がもっと子供に向き合い,子供の思いに寄り添い,接し方や学級運営を改善するのではな
く,個人の脳内の状態を薬で変えて「教育を正常化する」
。医療化の典型的事態である18。
脳深部刺激療法(DBS)はパーキンソン病や,ジストニアなどの治療に効果を発揮して,患者に恩
恵をもたらしているが,これをうつ病の治療に用いる場合には,一層の倫理的配慮を要するため,
現在、指針の検討がなされている。DBS がさらに進化すると,脳を操作することによる行動矯正
や BMI による遠隔操作などに利用される可能性もある。
脳を変えるためのこうした介入は,次のような問いを投げかける。人格の中枢に関わるこうし
ぐる倫理』はこの5分野をあげる。
16
The President’s Council on Bioethics 2003
17
Ibid.224,邦訳 264
18
わが国では,リタリンの適応症として,うつ病患者への使用が認められていた。これは,リタリン
が販売されている 60 ヵ国以上で,日本だけである。リタリンには覚醒効果があり,長期に服用する
と薬物依存になる恐れがある。医師が「患者」の求めに応じて安易にリタリンを処方したり,乱用者
が処方箋を偽造して薬局で入手するケースなどが起こった。製造販売元のノバルティスファーマ社は,
不適切な使用を減らす目的で,うつ病に対するリタリンの効能効果を取り下げた
(2007 年 9 月 20 日)。
この申請は厚労省薬事・食品衛生審議会の部会で承認され,10 月 26 日にリタリンの効能からうつ病
が削除された。現在では睡眠障害・ナル
コレプシーにのみ使用可能となったため,リタリンを本当に必要とする患者が使用できなくなり問題となってい
る。
65
た介入はどこまで許されるか?
どうゆう目的なら許されるか?
その際,配慮すべきことは何
か?
再生医療もエンハンスメント問題をはらむ
京都大学再生医科学研究所がヒトの皮膚細胞から iPS 細胞,いわゆる万能細胞を作り出すことに
成功した(2007 年 11 月 20 日)。再生医療研究が大きく動き出している。iPS 細胞から神経幹細胞
を作製してアルツハイマー病の患者などに移植すれば,大きな治療効果が期待できる。脳を若返
らせ,老化からくる記憶の衰えなどを克服することも期待できそうだ。iPS 細胞研究からの再生医
療が成功すれば,その先には,知能増進やアンチエイジングへの利用,さらには「不老の身体」
の追求というエンハンスメントの広大な領域が拓かれてくるだろう。
全能細胞の作製研究では,これまで ES 細胞研究における「ヒト胚」の扱いと拒絶反応が議論の
焦点だった.これを回避できる見通しが出てきたことで,再生医療の倫理問題は最終的にはエン
ハンスメント問題に収斂していくと予想される。
2
エンハンスメントの問題の射程――エンハンスメントによって何がどう変わるか?
医の変容
現在,医療は第一義的には,病気治療のためのものであり,さらに病気の予防,健康の維持のた
めのものと考えられている。ところが,これを病気治療や健康維持のためではなく,能力アップ
のために用いるとなると,医学の性格は大きく変わってくる。例えば,年を取れば,誰もが記憶
が衰える。これを「年だから仕方がない」と諦めるのではなく,記憶増強剤を飲んで,記憶力の
衰えを阻止する。あるいは今以上に記憶力を向上させる。こうした処置を正当な医学的適応とし,
場合によっては健康保険を適用するには,記憶力の衰えを「病気」と認定しなければならない。
そうなった場合,「病気」の概念は大きく拡大する。「老い」そのものが「病気」となる。日本抗
加齢医学会はすでにそう捉えている。年を取って忘れっぽくはなっても,息災ならば「まずは健
康」などと甘んじてはいられない。
「健康」概念も大きくレベルアップする。かくして「病気」
「健
康」「医療」の概念がいずれも大きく拡大する。
エンハンスメント・サービスが普及すると,医療は患者の要望に基づく「サービス業」に変質
する。患者は「病める人」から「顧客(customer)」となり,医師は人体改造の「請け負い人」に成
り下がる。医療倫理は「患者中心」どころか,
「顧客中心の医療」を謳うことになろう。医療の現
場ではこれまで医師―患者間の信頼関係が重視されてきた。エンハンスメントの普及とともに,
医師―患者関係は倫理的な統制を離れて,健康産業という市場における売り手と顧客との一種の
契約関係が中心となるだろう19。エンハンスメントの普及は医のあり様を根本的に変化させる可能
性をはらむ。
人間の変容
遺伝子の改変,サイボーグ,Brain-Computer Interface などによる人間改造や,向精神薬による人格
19
Wissenschaftliche Abteilung des DRZE 2002.邦訳 7
66
変容などがとめどなく進んだら,人間が人間でなくなるのではないかという懸念がある。
最愛の人の死を体験したとき,これまではその「喪失体験」を乗り越えて人間的にも人格的に
も成長していくことが称賛されてきた。もしも辛い体験とその記憶に苦しむ患者が,苦しみの原
因である辛い記憶を記憶鈍麻剤で消し去り,気分明朗剤で「気分をハイにする」とすれば,ひと
は悲しむ時に悲しむ必要がなく,苦しむ時に苦しむ必要がなくなる。しかし,それは人生に大事
なものがない,最愛の人なんかいない,ということになりはしないか?20
ひとは与えられた才能を学習や訓練によってさらに磨きをかけ,例えば金メダルの獲得や国家
試験合格といった栄光を手にする。人々はその才能に感嘆するとともに,そこに至るたゆまぬ努
力を称賛する。こうした努力に,バイオテクノロジーを用いた近道(biomedical shortcut)が取って
代わったとしたら,人生において「価値ある」と評価する態度はどう変容するだろうか?
これ
は「他者に対する公正(fairness)」という競争や社会のルールの問題であると同時に,
「自分自身に
対する公正」21という点で人間の生き方の問題でもある。
人間や人生にとって大切なもの(conditio humana)は何かという,より根本的な問題もエンハンス
メントははらんでいる。
社会の変容
エンハンスメントが高度な先端技術として提供された場合,かかる技術を利用できる人とそうで
ない人との間で格差が広がり固定するという見方(遺伝子操作をできる「ジーンリッチ階級」の
出現22,映画ガタカ(Gattaca 米,1997)の世界)がある。反対に,初めは高額な先端技術も普及
すればコストが低下し誰もが利用可能となり,障害を背負ったり最も困窮している人々に福音と
なって,真の平等社会が実現するという期待もある23。エンハンスメント問題は「わたしたちがど
んな社会に生きることを望むのか?」という社会選択をも問いかけている。
3
エンハンスメントと「人間の尊厳」
(1)『治療を超えて』の懸念
このような問題射程をもつエンハンスメントについて,
『治療を超えて』は次のような懸念を表明
している。
まずエンハンスメントためにバイオテクノロジーを導入することの安全性について:
治療を超える医の介入には,
「健康全般を増進させる」結果をもたらすものもあろう。反対に,
「人
並みの健康よりもさらに良い状態(better than well)」をめざすことで,かえって「基本的な健康(basic
health)を危険にさらす」怖れもある24。しかし「最も基本的な問題は,さまざまな技術と結びつい
た危険ではなく,技術が完成されて安全に使用できると思い込んで用いることから生じる便益と
弊害に関わる」25。つまり新技術導入時の安全性チェックのさらに先にある問題を示唆している。
20
21
22
23
24
25
The President’s Council on Bioethics 2003, 258, 邦訳 304
Wissenschaftliche Abteilung des DRZE 2002.邦訳 109,植原亮 2008 もこの問題を取り上げている。
Silver 1997
例えば Naam 2005
The President's Council on Bioethics 2003, 280
Ibid. 280
67
これは通常「安全性の問題」と言われるものとは異なる。例えば,スポーツにおけるドーピング
や,受験前に集中力を高めるための覚醒剤使用などが競争の公正を損ねる(不公正 unfairness)。
バイオテクノロジーが可能にした便益が,自由市場のなかで,利用機会の不平等(inequality)をもた
らす。こういった問題である26。
そしてもっと重要な問題として,みなが我先にとエンハンスメントに向かうことによる社会的
な強制力(自由の減少 reduction of freedom)や,エンハンスメントが人間の最も共通な欲求に奉
仕することから結果として生じる画一化・均質化(conformity or homogenization)という問題がある。
つまり各人が思い思いに自己向上をめざした結果が,個性の喪失をもたらす27。これが,『治療を
超えて』が最も懸念する事柄のようだ。本書はそれを「個人的に選択された行動の集積効果(the
aggregated effects)」として捉え,「共有地の悲劇」28に匹敵すると理解している。
自然的な人間性への挑戦
『治療を超えて』はこれらの懸念を挙げたのちに,
「懸念の本質的根源(essential sources of concern)」
を下記の点に探っている。すなわち,エンハンスメントのためのバイオテクノロジーの利用は,
「自然で人間的なものへの挑戦(challenges to what is naturally human)」
「<自然で尊厳ある人間的な
もの>に対する適切な敬意を示す態度への挑戦」である。それは「自然を作り変えようとするプ
ロメテウス的願望」であり,
「神にふさわしい知を欠いた,神のような振る舞い」で,人間の「傲
慢(Hubris)」だと断罪する。こうした傲慢に「生命の恵みへの感謝(acknowledging the giftedness of
life)」を対置し,このような「宗教的感受性(religious sensibility)」が宗教を超えて広がることに期
待を表明している29。人間の自然本性への技術介入に対して,「自然〔神〕から授かった人間的な
自然本性(our own given nature, a given humanness)」の方が「善い(good)」という姿勢である30。
ただし,「人工的な手段が用いられること」自体に,あるいは「手段の不自然さ(unnaturalness)
だけに懸念の原因があるわけではない」と断ってもいる31。むしろ人間としての努力と,努力の果
てに達成した成果を自己の活動の成果として確証する営みに関わる問題と捉えている。
「人間の生
活には,修練と努力(discipline and effort)によってのみ卓越性(excellence)が達成されるような分野が
ある」。こうした分野において筋肉を増やす遺伝子技術や,記憶を向上させる薬剤を利用して成果
を達成しようとすれば,
「多くの人々の眼には,ごまかし(cheating) や安直(cheap)と見えるだろう」
26
Ibid. 280-283
Ibid. 284
28
各人が思い思いに自己利益の最大を求めれば,共有地の生態系が破綻するというハーディンの説。
29
The President's Council on Bioethics 2003, 286-290 こうした集積効果を予想し,それに対して道徳的な懸念
を表明する言説はしばしば見受けられる。しかし,ここから法的規制の根拠を導くのは困難であろう。集積効果
を「共有地の悲劇」に模して捉えていることから分かるように,これは,個人の自由よりも生態系全体の利益を優
先せよという環境倫理学と同様の論理を導くことになる。それは他者に危害を与えなければ各人は自己の幸福
を最大限に追求してよいというリベラリズムの原理と相克することになろう。リベラルな現代国家では,他者に危
害を加えたり迷惑をかけたりしなければ,少なくとも処罰の対象にはしがたい。処罰規定は,恣意的に乱用され
ないために,処罰する行為を明確に限定する(罪刑法定主義)。司法は個別行為を精査し,その違法性(刑
事)や不法性(民事)を特定する。法の乱用を防止するためには,違法な行為Aと違法でない行為Bとを峻別す
る徹底したアトミズムが求められる。司法は一般に,もろもろの個別行為の集積効果を問うのに不向きである。
したがって,個別の諸行為の集積効果によってもたらされる将来の弊害を予測し,個人の諸行為を法的に規
制する論理の構築はしばしば困難に直面する。
30
Ibid. 289
31
Ibid. 291
27
68
32
。自己変容は自己の活動によるものなのか?
できるだろうか?
その成果は「自己の活動の成果」として自ら確証
あるいは他人はそれを称賛できるだろうか?33
人間的活動の尊厳の喪失
こうした問いに対して『治療を超えて』は,エンハンスメントの行き過ぎは人間の努力の価値,
それによって達成される卓越性の価値を損ない,努力の成果を自己の活動の成果として確証する
自己確証・自己実現を不可能にする,と答える。
わたしはより良く,より強く,より幸せになるかも知れない。けれども,どのようにして
そ う な っ た か , わ た し は 知 ら な い 。 わ た し は も は や 自 己 改 造 の 主 体 (the agent of
self-transformation)ではなく,もろもろの改造力の受動的な受け手(患者)(a passive patient of
transforming powers) である34。
そこには「人間主体の自然本性や,自然で人間的な活動様式の尊厳を汚し台無しにする危険(the
danger of violating or deforming the nature of human agency and the dignity of the naturally human way of
activity)」が存する35。
エンハンスメントが進みすぎると,
「人間的活動の尊厳(the dignity of human activity)」が失われ,
行為の責任主体が不明確になり,活動主体そのものが消滅しかねないという危惧。これが大統領
生命倫理諮問委員たちの心情を最もよく表している。アメリカン・ドリームの逆説的崩壊という,
『啓蒙の弁証法』を髣髴とさせる立論と言える。
(2)尊厳概念の自然主義化――ビルンバッハーの「尊厳」理解
倫理の自然主義化
人間自身への過度な技術的介入によって,
「自然から授かった人間的な自然本性」が失われるとい
う懸念に対して,ビルンバッハーは,かかる論述において自然性(Natürlichkeit)が規範性(Normalität)
の意味で使われていると批判する。例えば「同性愛は自然に反するから道徳に反する」,なぜなら
婚姻の自然の目的は生殖にある,それゆえ同性愛は許されない,という主張がなされたとする。
「自然に反する」「自然でない」という言葉が,
「規範にそむく」という意味で最初から使われて
いる。つまり同語反復にすぎない。ある行動様式を「自然でない」という言い方は,その行動様
式が間違っていて受け入れがたいことを繰り返しているだけだ。当該行動様式の拒否をただ強め
ているだけで,この判断を根拠づけてはいないとビルンバッハーは分析する36。
「自然」の脱魔術化と日常道徳的思考
32
Ibid. 291
エンハンスメントによって増強された能力は自分の本当の能力(本物 authenticity)なのかという問いである。
これについては Wissenschaftliche Abteilung des DRZE 2002. 邦訳 19-21, 植原亮 2008 参照
34
The President's Council on Bioethics 2003, 294
35
Ibid. 292
36
Birnbacher 2006, 79
33
69
ビルンバッハーは自然性の価値について現代哲学と日常道徳とが乖離していく傾向についてこう
説明している。19 世紀哲学のペシミスティックで経験的な流れ(ショーペンハウアー,J. S. ミ
ル, W. ジェームズ,A. シュヴァイツァーなど)は,飼いならすことのできない自然の破壊的
でおぞましい側面を強調することによって,
「善き自然」という通俗的な像が構成されたものであ
ることを,イデオロギー批判的に暴き立て,自然的なるものを脱理想化した。哲学のレベルでは
倫理的原則としての自然性が脱魔術化された37〔20 世紀には G. E. ムーアの「自然主義的誤謬」論
が唱えられる〕。ところが,近年の日常道徳的思考は自然を再び規範にまで高めた。これは生物医
学とりわけ遺伝学と生殖医療における介入手法に対する近年の態度のなかに現れている。これら
の分野では,自然なもの(natürlich)と人工的なもの(künsterlich),与えられたものと作られたものと
が対置され,たいていは「自然に(natürlich)与えられたもの」が優先される。
「自然な生殖」
「自然
な親子関係」への好みがしばしば表明される。これらの領域においては,他領域に比べて操作的
介入の可能性が急激に増大しているため,これらが新しい可能性として受け容れられず,技術的
介入に対抗して新しい限界がタブー(例えば代理懐胎の禁止など)として作られる38。
ビルンバッハーは哲学的議論と日常道徳的思考をこのように対比するが,哲学的な議論をも展
開する『治療を超えて』も,前節で見たとおり,まさしく日常道徳的思考と同レベルの議論を展
開している。近年,自然がもたらす「偶然」の価値を強調するハーバマースも同じ傾向と言える。
ただしハーバマースの場合は,
「自然性」の価値をコミュニケィション的行為論のなかでその意義
をとらえ直しているので,日常道徳的思考と同列に扱うのは公正ではないかも知れない。
生殖の偶然性
ハーバマースは『人間性の未来』39のなかで,生殖の「自然性」とそれにつきまとう「偶然性」に
着目している。これまでは一対の男女からどんな子が生まれるかは,人間の思い通りにならない
という意味で「自然の偶然」にゆだねられていた。仮に優生学的な配慮のもとに「優秀な男」と
「美しい女」が結婚しても,
「優秀で美しい子」が生まれる保証は何もない。イギリスの劇作家バ
ーナード・ショウに,ある美人の女優が言った。
「私たちが結婚したらきっと,あなたの頭脳と私
の美貌を併せ持った素晴らしい子供が生まれるわ」。これに
バーナード・ショウはこう答えたと
いう。
「もしわれわれが結婚して,君の頭脳と私の容貌を併せ持った子供が生まれたら,どうする
んだい?」と(この女優の頭脳はいま一つで,ショウは美貌の持ち主とは言えなかった)。生殖細
パーフェクト・ベビー
胞系列への遺伝子技術の介入によって「 理 想 の 子 を製造する」企ては,かかる「偶然性」を最
終的に克服しようとするものである。ハーバマースはしかし,生殖に伴う「自然の偶然」こそが
人間社会の基本的枠組みの前提をなしていると捉える。これまで哲学はこの連関をめったに主題
化してこなかった。そのなかでハーバマースが唯一着目したのが,ハンナ・アーレントの natality
い
ず
(生まれ出ること,出生)という概念である。ハーバマースはアーレントの『人間の条件』から
次の一節を引用する。
誕生のたびごとに世界のなかに生じる新しい始まり(Neubiginn)が実際にものをいうのは,新
37
38
39
Ibid. 81
Ibid. 81
Habermas 2001
70
参者〔子〕が新しい事を始める能力つまり行為する能力をもっているからにほかならない。
新たに事を始めるイニシアチブ(Initiative)という意味で,行為という要素は人間のあらゆる活
い
ず
動のなかに潜んでいる。このことは,人間の活動が,誕生によって世界に到来し生まれ出る
(Natalität)という条件のもとにある存在者たちによって実行されるということを意味している
40
。
人間の創発的な自由は,おのれの始まり(出生)が「他人の意のままを免れている」ことの上
に成り立つという趣旨である。両親が我が子がほしいと思って,子を持つに至ることはよくある。
しかしどのような子を持つかは両親の意のままにはならない。子は親を選べないが,親も子を選
べない。このことは人間社会への「新しい加入者」
(新生児)の「自由」の基盤であるだけではな
く,その新参者を受け入れる社会にとっても新しい始まりである。生まれたばかりの赤ん坊に注
がれる家族や親戚の熱い好奇な眼差しには,
“どんな人間に育って行くのやら”という「予期しえ
ぬものへの期待(Erwartung des Unerwarteten)」がにじみ出ている。
新生児に対するこうした白紙の希望(unbestimmte Hoffnung)に,未来に対する過去の威力は打
ち砕かれる41。
人間の自由と人間社会の新しい可能性は,じつは思い通りにならない出生の自然性によって支
えられている。もしこれが両親の思い通りになったら,どうであろうか?
例えばオリンピック
金メダリストの体操選手が子供にも自分と同じ道を歩ませようとして,体操競技に威力を発揮す
る遺伝子を胚段階で組み込むようなケース。これは,教育・訓練や食生活による人間の改良とい
う昔からの方法とは根本的に違う。生殖細胞への遺伝子的介入は一方的であり,不可逆で修正不
可能である。過去の威力が未来を永久に縛り続けることになる。功名心の強い両親の一方的な期
待に,生まれてきた子は異論をさしはさむ余地がない。これをハーバマースは,プログラマーと
プログラミングとの関係であり,コミュニケィション行為の相互性という条件を外れていると捉
える。
ハーバマースは,エンハンスメント,とりわけ遺伝子技術などの優生学的な利用が普及するこ
とによって,人生ゲームの基本ルールが変容しないか,と問いかける。出生,それは両親の選択
からも独立した「偶然」による「大いなる贈りもの」である。出生後にわかる病気や障害,それ
への体質は,これまでは多かれ少なかれ<人間には責任のない運命>とみなされた。その運命は
ケ
ア
他者の援助と連帯の絆を頼りにすることができた。もしも遺伝子的素質が出生前診断などで選択
の対象となり,遺伝子操作による介入の対象となるならば,人間は平等だという原則,お互いに
人格を認め合う(相互承認)という要求,社会的連帯という倫理的な理念と諸制度はどう変化す
40
Ibid. 2001,102. あえてハーバマースの独訳から引用。アーレント 1973, 11 に対応箇所。
41
Habermas 2001, 102. アーレント『人間の条件』ではこう書かれている。
「言論と活動による新しい<
始まり>は,いつもすでに存在している網の目の中で行われる。言論と活動が始める新しい過程は,
最終的には新参者のユニークな人生物語(the unique life story)として現れる。この過程は新参者が接触す
ることになるすべての人々の人生物語にユニークな形で影響を与える」(アーレント 1997, 210-211)。
71
るだろうか?「われわれの道徳的言語ゲームの文法形式」
〔人生ゲームの基本ルール〕は変化しな
いだろうか?42
ハーバマースはこう問いかけ,生殖の偶然性の保持を人間として超えてはならな
い一線として位置づけている。
神の代理物としての自然
ハーバマースは自然の偶然性を規範的な価値にまで高めようとする。こうした傾向をビルンバッ
ハーは批判する43。
操作的介入の新しい種類の可能性が漠然と恐ろしいものと感じられるところでは,受動的に
万事を任せる態度,介入を断念する態度(「治療を諦めるニヒリズム」
)が復権する。……人
間の外の自然を立法的なレベルにまで高めることは,形而上学的合意を欠いた時代において
は,一種の“神の代理物 Gottersatz”として魅力的であるにちがいない。
神なき時代における神の代用物,それが規範の位置にまで高められた「自然」だと言う。
尊厳原理の自然主義化
倫理的規範としての自然性を,近年は「人間の尊厳」原理が引き受けるようになった。ビルンバ
ッハーは「人間の尊厳」をめぐる近年の議論(とくにヒト胚の地位や生命操作をめぐる論争に典
型的に表れている)特徴を「尊厳原理の自然主義化(Naturalisierung des Begriffs der Menschenwürde)」
と捉えて,次のように批判している。
前面に出てきているのは,自由・プライヴァシー圏・自己尊重・生存保障の不可侵という意
味での尊厳ではもはやなく,生物学的な構造と経過に手を触れないという意味での尊厳であ
る。人間の尊厳概念の核心的内実と見なされるものが,人格の自律ではだんだんなくなり,
むしろ生命や遺伝子的同一性といった生物学的基盤の神聖性になってくる44。
例えば「人と動物との交雑種を人為的に作り出そうとする行為は人間の尊厳に反する」と主張
される。こうした言い方では,
「産出される者や産出した者の個としての人間の尊厳の侵害ではな
く,全体としての類の同一性と明確さへの侵害が問題となっている」とビルンバッハーは見る。
つまり人類としての同一性が侵害され,異質な種との間の境界が不明確になることを阻止したい
という「一種の純血の掟(eine Art ‘Reinheitsgebot’)」が表明されている。人間の生物学的基盤を「類
の尊厳」として捉え,類としての純血を保持する義務が唱えられている,とビルンバッハーは見
る。自然のなかに存在する種の壁を人工的に乗り越えるから尊厳に反するという言説。人間の尊
厳概念のこうした使用が規範的な内実をどの程度まで根拠づけることができるのか疑わしいとビ
ルンバッハーは言う。自然な生殖様式が類としての人間に特有というわけでは決してないのであ
42
43
44
Habermas 2001, 115
Birnbacher 2006, 82. ただしここではハーバマースが明示的に批判されているわけではない。
Birnbacher 2006, 83
72
るから,人間の自然的な生殖様式の何が「尊厳創出的」であるのかが明白ではないとも言う45。
「人間の尊厳」概念の二面性
「人間の尊厳」概念の歴史を振り返りながら,ビルンバッハーの論説にコメントしてみたい。
「人間の尊厳」概念には,ヘレニズム起源の「人間の尊厳(dignitas hominis)」とヘブライズム起
源の「神の像(imago Dei)」という二つの流れがある。前者は,理性の働きとそれにもとづく道徳
的な気高さにこそ人間の価値と尊厳があるとする知性的な伝統である。後者は,人間は神に似せ
て造られ「神の像」を宿しているがゆえに尊いとする宗教的伝統である。人間本性に内在する尊
厳と,神に原型を求める「神の像」とは,もとは本質的に異質な概念である。この二概念が緊張
関係を孕みながら,複雑にからみあって展開し,今日の「尊厳」概念が形成されてきた46。その結
果,人間は①知性(理性)と ②自己完成能力と ③自由意志をもつがゆえに尊厳に値する,と理
解されるに至った47。
ここには,
①人間は「神の像」を宿しているがゆえ尊いという,他の被造物から人間を隔絶する論理
②人間という種の内部においては,すべての人間は等しく不可侵の尊厳を持つという無差別
の論理
という二面が表裏をなしている。すべての人間の尊厳が例外なしに差別なく保証されるという②
の理念が,他者危害を阻止する強力な論理となってきた。それに対して,①はむしろ他の生物種
を人間から排除する論理である。①生物学的種としての人間に与えられた特別な身分,つまり人
間を他の生物種よりも上位に高めるような特別な地位。この絶対差別主義が,②この身分は発達
段階や様々な能力,特別な困窮といった個人的なあらゆる質的特殊性に依存しないという絶対無
差別の倫理を支える,という逆説的構造がある。
他者への侵襲と人権侵害の恐れのあるケースに対して,
「人間の尊厳」という原理は有効に機能
してきたと言える48。しかし,人間の尊厳の保護はどんな内容をもつかについての肯定的な定義は
これまで成功せず,人間の尊厳が侵害された事態からアプローチする試みがドイツ憲法学でも優
勢だ。連邦憲法裁判所も通例この観点から判決を下す。
人間の尊厳が不可侵であるという原則に関しては,人間の尊厳が侵害されうるのはどのよう
な状況においてであるかを確定することにすべてがかかっている。明らかにそれは一般的に
言えることではなく,いつでも具体的なケースについてのみ言えることである49。
当人の自由意志を無視して,脳への外科的介入によって,その者を操作すれば,
「人間の尊厳に
反する」道具化だと非難できる。他者への危害に対して,尊厳論を持ち出すことは分かりやすい。
しかし,他者への危害を含まない自己のエンハンスメントに対して,これは有効か?
45
Birnbacher 2004, 邦訳 98
46
金子晴勇 2002 はこの概念史を見事に解明している。
47
48
49
バイエルツ 2002 参照。
この場合でも,「尊厳」を持ち出す必要はなく,人権の概念で足りるとする意見もある。
ドイツ連邦議会答申 2004, 23 から引用。
73
ここには
リベラル優生主義と類似した議論がある50。自己エンハンスメントとしてのサイボーグ化は,自ら
自由に意志し,知性を働かせて自己完全化(自己実現)をめざすものであって,尊厳の 3 要件の
実現にほかならないと主張できる51。エンハンスメント是か非かは,「人間の尊厳」論では決着が
つかないだろう。
Ⅲ
サイボーグ化の先にあるもの――境界と人間像への問い
1 サイボーグの定義
サイボーグ化を論じるとき,サイボーグの定義を明確にしておいた方がいいと思われる。とこ
ろがサイボーグの定義は意外とむずかしい。サイボーグ(cyborg)は cybernetic organism であり,さ
しあたって「人間と機械との混成物」(Mensch-Machine Hybrid),有機的身体と人工的な機器との
ア ン ド ロイ ド
。この場合の「機
融合体と定義できよう(人造人間はまったくの機械であり,サイボーグではない)
械」や「機器」がどんなもので,混成・融合の状態がどの程度かが,サイボーグか否かのメルク
マールとなる。メガネをかけているだけでは,ふつうサイボーグとは言わない。メガネは簡単に
取り外しが可能であり,視力を高めるための外的な道具にすぎず,生体と融合しているわけで
はない。ではコンタクトレンズはどうであろう?
角膜の上に載せ,メガネよりは密着度が強
まるが,いつでも簡単に取り外し可能だ。白内障の手術によって眼に挿入する眼内レンズ(人
工の水晶体)はどうか?
これはもはや再び手術をしなければ取り外せない。生体と不可分に
なっているという点で,融合度は高い。しかし白内障の手術をしたお年寄りを「サイボーグ」
と呼ぶ人はまずいない。人工の水晶体ではなく,人工の網膜を挿入し,光の刺激を小型コンピ
ューターによって電気信号に転換して脳に送る技術は,サイボーグ技術と呼ばれる。このよう
に「人間と機械との混成」と言っても,その種類と段階はいろいろありうる。
ハイリンガーらは下記のようなメルクマールを挙げて検討している52。
a 機械(非生物的なもの)との親密さ(Intimität)/侵襲性(Invasivität):より生体に密着してい
る。それはより侵襲的(invasiver)であるということ。例えば,補聴器よりは人工内耳の方が
サイボーグ的。
b 生存に不可欠(Notwendigkeit/Existentialität):この基準では,人工内耳よりはペースメーカー
の方がサイボーグ的となる。人工内耳は,なくても生命を維持できるが,ペースメーカー
はそうはいかない。
c
生物学的(有機的)要素(Biofaktizität):有機体の諸部分や諸機能を技術で代用するだけで
はなく,有機体との関わりが必要。この基準では,臓器移植を受けた人もサイボーグとな
る。
d
エレクトロニクスと神経組織との統合(Neurobiologische Integration):有機体と技術とを神経
生物学的に接続し,この接続をスイッチで ON/OFF できる。この基準では,メガネや単純
な義足などははずれる。薬によるニューロエンハンスメントや,消化器の技術的代用もは
50
51
52
原 朔 2008 は ニューロエンハンスメントに対して,生命倫理学の4原則が適用できなくなると指摘している。
バイエルツ 2004, 170 が紹介するエンゲルハートの立場。
Heilinger & Müller 2007, 37
74
ずれる。典型的には人工内耳や BMI などが該当する。しかしサイボーグの基準としては,
やや狭すぎはしないか。
e
自律的な制御可能性(Steuerungsfunktion/Autonomie):人体を技術的に拡張しても,それを主
体が制御できる。有機体の自律と,自己決定による責任ある行為の可能性。この基準では,
他者に操られる「サイボーグ兵士」などは,自律を喪失しているため,該当しなくなる。
f
エンハンスメント(Enhancement):サイボーグは,人間学的基準に比べて際立って改良され
た「人間と機械との混成物」というイメージ。これは,サイボーグについての,概念以前の
メタファーに由来している。例えば,1960 年代からのサイボーグのイメージ(ポーランド
の作家レム(Stanisław Lem,1921-2006)の『ヨン博士の航星日記』など)。ここでもエンハ
ンスメントの程度が問題となろう。人間的な人間改造技術(治療を超えるけれども,サイ
ボーグにはまだ至らない)/トランスヒューマンなサイボーグ技術(人間を明確にサイボ
ーグ化する)。この区別をどこでつけることができるだろうか?
上記のどの要素を採用すべきであろうか?
ハイリンガーらは結論として,サイボーグについ
ての説得力ある定義は困難だと言う。仮に,「自然的要素と人工的要素から合成された自己統御
的システム」と定義したとしても,次の両極端が生じると言う。
①未来学的イメージ:脳と機械との結合によって肉体的・知的諸能力を高め続けている人
間
②広義:与えられたものと作られたもの,生物的なものと非生物的なものとを内的に相互
に結びつけている有機体ないしはシステム
SF 的なヴィジュアル・イメージを思い浮かべるのか,いますでに技術的に可能で実行可能なも
のに限定するのかによって,議論はかなり変わってくる。広く取りすぎては議論が拡散する。狭
くしすぎると,人間学的に重要な問いを捉えそこねる。サイボーグにつきまとう特殊なイメージ
が,人間の自己了解をめぐる議論に影響している。それゆえ,サイボーグの人間学的存在論的身
分についての考察は思考の遊戯ではない。倫理的問題解明の基礎である53。ダナ・ハラウェイもこ
う言う。サイボーグが何者になるか?
この問いはラジカルな問いで,その回答はわれわれの生
54
存いかんに関わる 。
靴やメガネや入れ歯までをサイボーグとして扱うのはばかげている。けれども,服を着る,
メガネをかける,装飾,化粧,美容外科,入れ歯やコンタクト,これらは自己ハイブリッド化
(Self-Hybridation)55であり,自己へ向けられたテクノロジーと言える。その意味で「僕らはもう
既にサイボーグなんだ」という押井守の言葉56には真実味がある。
2 高度技術の内面化
人間はこれまで技術の力で外界を変えてきた。いま高度な最先端技術が人間自身へと向かってい
53
54
55
56
Heilinger & Müller 2007, 37
ハラウェイ 2000, 293
高橋透 2006, 121, 79
NHK 2006
75
る。医療技術は最も古くから技術を人間に向けてきたが,現代の生物医学研究(遺伝子技術,再
生医工学など)は人類の科学技術に新たな次元を切り拓きつつある。そしてついに脳科学技術に
よって,
「心の座」である脳をも操作し変えるところにまで到達した。人類の歩みを,道具や機械
を発明し操り,それらを高度化させてきた歴史と捉えるならば,外界の改変に向けられた技術が
人間自らへ,さらにその最内奥へと向かった結果と捉えることができる。この内面化は同時に,
グローバルな拡大へと展開する
太平洋を越えて電脳と義体をつなぐ
2008 年 1 月 15 日,日米の研究者たちは,米国においてサルの脳信号をコンピュータで解析し,
そのデータを日本に送信して,日本においてリアルタイムで人間型ロボットを,サルが動く通
りに動かす実験に世界で初めて成功した。電脳(コンピュータ)と義体(ロボット)をインタ
ーネットで繋ぎ,ロボットに人間の五感に相当するさまざまなセンサーを取り付け,そのデー
タを脳にフィードバックする技術が確立すれば(すでに部分的には実現している),人間は寝
たきりになっても,世界中を「旅する」ことも夢でなくなる。
録画・検索できるゴーグル開発
東京大学大学院情報理工学系研究科の原田達也講師らのグループは,見た物の画像と名前を記憶
し,最後にどこで見たかを知らせる「サイバーゴーグル」を開発した(2008 年 3 月 3 日)。見た
ものの名前を瞬時に認識し,処理速度は従来の約1万倍という。これは外部装着で携帯可能なコ
ンピューターであって,脳と直結するBCI(Brain-Computer-Interface)ではない。しかし,記憶
は確実に外部化して行く。人工海馬チップを脳内に埋め込んで,これをインターネットと結合す
れば,脳はグーグルなどの検索エンジンにアクセスし,これを自らの記憶とすることができるよ
うになるかも知れない。サイボーグ化の先には,ニューロエンハンスメントの広大な領域が広が
っている。
アメリカの DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency 国防高等研究計画局)はすでに
BMI のさまざまな軍事利用に多額の資金と力を注ぎ,考えるだけで動く兵器や,戦闘能力をア
ップした有能な兵士を生み出そうとしている。将来的には脳がスーパーコンピューターと結合
する可能性も語られている57。それはさながら,スーパー知能の誕生,大文字の<知性>と呼ん
でもいいだろう。そうなったら,「学び」とか「知能」という概念が根底から揺らぐ可能性も
ある。「超人類」(ポストヒューマン)を礼賛するカーツワイルのような論を聴いていると,
人間は人間としての根本的な限界を受け容れることを拒み始めたという感を強くする。これは
より根本的な問題をはらんでいる。
3
自己の概念の流動化
アンサンブル
インターネット以前,BCI 以前から,人間は社会存在論的には,「社会的諸関係の 総 体 」(マル
クス『フォイエルバッハ・テーゼ』)である。これはアリストテレスやへーゲルやマルクスの関係
57
カーツワイル 2007
76
論的人間理解であるが,BCI によってネットワークに繋がれた人間は文字通り,社会的諸関係の
結節点となる。自己の概念は限りなく流動化していく。
記憶の外部化
現在でもすでにわれわれは事典を引くよりも,コンピュータで検索することの方が多い。紙の書
類を捜すよりも,パソコンのなかのファイルやメールボックスを検索する。これは,ネットワー
クのなかに記憶が外部化していることを意味する。言語の発明に始まり,文字化,印刷,出版,
写真,映像,ラジオ,テレビ,録音,そしてコンピュータによるデジタル化を経て,ネットワー
クのなかに膨大な記憶が集積される事態となった。もはや誰の記憶か分からないものになりつつ
ア イ デ ン テ ィ テ ィ
ある。記憶が人格的同一性のより所だとすれば,サイボーグ化はこれを揺るがすことになろう。
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊のなかの草薙素子はこう自問する。
私みたいに全身を義体化したサイボーグなら誰でも考えるわ。もしかしたら自分はとっくに
死んじゃっていて,今の自分は電脳と義体で構成された模擬人格なんじゃないかって。いえ,
そもそも初めから<私>なんてものは存在しなかったんじゃないかって。
この<私>の不在を,コード 2501(人形使い)はこう解説する。
あなたたちの DNA もまた,自己保存のためのプログラムに過ぎない。……生命とは,情報
の流れの中に生まれた結節点のようなものだ。種としての生命は,遺伝子という記憶システ
ムを持ち,人はただ記憶によって個人たり得る。たとえ記憶が幻の同義語であったとしても,
人は記憶によって生きるものだ。コンピューターの普及が,記憶の外部化を可能にした時,
あなたたちはその意味を,もっと真剣に考えるべきだった。
BMIの時代を迎えてから慌てて研究プロジェクトを組んで議論を始めてももう遅いよと言わ
んばかりである。「人はただ記憶によって個人たり得る」とすれば,ネットワークのなかにこそ
自己がある。この言葉は,BCI が普及展開した世界を想像するとき,リアルな響きを帯びてくる。
4 サイボーグ化に「人間の尊厳」原理はどこまで通用するか?
ここまで来ると,問題は生命倫理学には収まりきれないものとなる。治療としてのサイボーグ
技術について,科学と新技術の倫理に関するヨーロッパ審議会は,人間の尊厳を基礎に,6つの
配慮点を挙げていた(Ⅰ参照)。他者への侵襲と人権侵害の恐れのあるケースに対して,「人間の
尊厳」という理念は力を発揮してきた。しかし,サイボーグ化が自己のエンハンスメントとして
展開することに対して「人間の尊厳」原理を持ち出すとき,それは人類としての同一性を守ろう
とする「一種の純血の掟」の意味であった(Ⅱ3(2))。サイボーグ化は人間と機械との混成物(hybrid)
である。将来さらに人間と機械と動物との混成物となる可能性もある58。hybrid はギリシャ語の
58
ハラウェイ 2000
77
hybrida に由来し,雑種を意味する。サイボーグ化とは雑種化である。それゆえ人類純血主義に立
脚する「人間の尊厳」原理とは相容れない。
境界をめぐる議論
道具は使いこむうちに,「手に馴染んでくる」ということがある。脳がきわめて可塑的である
という基盤があるからだ。この脳の可塑性を最大限開発する可能性が BMI によって開けてきた。
身体/機械,内/外の境界は限りなく曖昧になって行くだろう。「機械的」という言葉がネガテ
ィヴに語られるように,機械は融通が利かない冷たいものという印象がある。ロボット技術や
BMI が発展していくと,機械のイメージが大きく変わるだろう。サイボーグ化によって人間自
身も機械的要素を取り入れていく。人間とは何か,機械とは何かを双方から見直す必要が出て
くるだろう。人間/機械,自/他,これらが相互に「反転し合い,互いに入れ子状態となる」59。
とりわけ西洋の思想はこれまで,神と人間との比較に多大なるエネルギーを注ぎ込んできた。
今後は人間とサイボーグとの比較が重要な関心になろう。「人間にとっての他者,兄弟,分身
(Doppelgänger),他我(Alter Ego)を具現するものは,サイボーグにほかならない」からだとハイリ
ンガーらは言う60。
自由にして依存的な存在
Self-Enhancement に「人間の尊厳」原理は機能不全となるかも知れない。けれどもニューロテク
ノロジー(BMI などのサイボーグ技術等)によって人間は「自由にして依存的な存在」61である
ことを超えられるだろうか?
自ら自由に意志し,知性を働かせて自己完全化(自己実現)をめざす者を尊厳ある人間と捉え
る近代の尊厳概念は,
「自立(自律)した主体」という啓蒙主義的人間像のなかで結実した。しか
し,この人間像は健康な成人男性をモデルにしていて,人生全体を眺めて見れば,一面的なもの
にすぎない。誰の人生も,まずは他者の世話なしには一日たりとも生き延びれない無力な赤ん坊
から始まる。人生の途上で事故などにより障害を負うことも稀ではない。その難を逃れたにして
も,老年期や終末期には,ほとんどの人が他人の介護・看護に依存することになる。
将来 BMI 保育器,BMI 看取り機は実現するだろうか?
赤ん坊はおなかがすいても,おしめが
濡れても,ひたすら泣き喚くだけだ。もしも BMI で赤ん坊の脳内信号を読み取り,それを自動保
育ロボットに直結すれば,母親は要らなくなるかも知れない。またコミュニケィションがとれな
くなった末期患者の脳内信号を読み取り,それを自動介護ロボットに直結すれば,看護者も介護
者も要らなくなるかも知れない。しかしその場合でも,最低限,BMI 保育器,BMI 看取り機を装
着してメンテナンスをしてあげる人間は必要かも知れない。このような空想を楽しんでも,人間
が依存性を全面的に脱却するということは考えにくい。
自由にして依存的でもあるわたしたちは,災害や病気,貧困に苦しむ人々に自発的に支援の手
が差し伸べられるような文化と制度を維持することで,初めて自律的な存在として自己を実現で
きる。それが「自由にして依存的な存在」ということの意味である。そこにケアしケアされる文
59
60
61
高橋透 2006, 44
Heilinger & Müller 2007, 39
ドイツ連邦議会審議会答申 2004, 46
78
化の存立根拠,個人の自己決定とそれを支える社会的文脈がある。ニューロテクノロジーによっ
て,他人への依存は減り,ますますBMIなどの技術に頼ろうとするだろう。それと引き換えに,
ケアの文化と制度は衰退して行くかも知れない。ニューロエンハンスメントへの熱中はケアの文
化を危うくするだろう。しかし人間が「自由にして依存的な存在」であることを最終的に脱する
ことができないとすれば,ニューロテクノロジーが社会的連帯の原理,相互支援の文化と両立す
る道を探るしかないと思われる。
脳死からニューロエンハンスメントへ
かつて脳死・臓器移植法が可決される(1997 年)に至る過程で,生命倫理をめぐる日本初の国民
的規模の議論が展開された。脳死は人の死かをめぐる議論である。
「脳死」という概念は,中枢神
経系の死が蘇生限界点であることの発見に由来する。
「シドニー宣言
死に関する声明」
(1968 年
8月9日世界医師会総会)は「どのような措置が講じられたとしても死のプロセスが不可逆とな
るという確実性」を判定することが重要だとした。当時シドニー宣言は現代医療の「敗北宣言」
という受けとめ方すらあった62。脳と人間の絶対的限界がテーマだった。いま再び脳が注目され,
ニ ュ ー ロエ シ ック ス
脳神経倫理学をめぐる活発な議論が始まっている。今度は,脳が,脳と人間の絶対的限界を乗り
越えようとしている。脳をめぐる第2ラウンドの挑発に対して,われわれの倫理力と合意形成能
力のエンハンスメントが求められているであろう。
サイボーグ技術,BMI は遺伝子技術による生命操作よりも早く進み,社会に広がる可能性があ
る。生命という「畏れ多いもの」を技術的に操作し始めたのは,ここ二,三十年のことだ。これ
に対して,機械の発明とその改良は文明の歴史そのものであり,人類の最も得意とするところで
ある。現にコンピューター技術の進化は日々加速し続けている。倫理的な議論のための時間はそ
うないかも知れない。
文献
アーレント,ハンナ 1973:『人間の条件』中央公論社
秋葉悦子 2008:「臓器移植」,甲斐克則編『ブリッジブック
医事法』信山社,158-169
バイエルツ,クルツ 2002: 「人間の尊厳という理念」,ジープほか『ドイツ応用倫理学の現在』山
内廣隆ほか訳,ナカニシヤ出版,150-173
Birnbacher, Dieter 2004: Menschenwürde. abwägbar oder unabwägbar? in: Matthias Kettner (Hrsg.),
Biomedizin und Menschenwürde, Frankfurt a. M., 249-271. ディーター・ビルンバッハー「人間の尊
厳―― 比較考量可能か否か?」忽那啓三訳,『応用倫理学研究』第2号,2005, 88-101
Birnbacher, Dieter 2006: Der künstliche Mensch - ein Angriff auf die menschliche Würde? In: Dieter
Birnbacher: Bioethik zwischen Natur und Interesse. Frankfurt am Main 2006, 77-98.
ドイツ連邦議会審議会答申 2004: 『人間の尊厳と遺伝子情報』松田純(監訳),知泉書館
European Group on Ethics in Science and New Technologie 2005: Ethical aspects of ICT Implants in the
human body. 16 March 2005
62
秋葉悦子 2008,163
79
Habermas, Jurgen 2001: Die Zunkunft der menschlichen Natur. Auf dem Weg zu einer Liberalen Eugenik?
Suhrkamp 『人間の将来とバイオエシックス』三島憲一訳,法政大学出版局,2004
原朔 2008: 「脳神経倫理学の成立とその将来的課題」,『創文』No.505, 2008.2, 10-13
ハラウェイ,ダナ 2000: 「サイボーグ宣言」,
『猿と女とサイボーグ』高橋さきの訳,青土社,285-346
Heilinger & Müller 2007:
Der Cyborg und die Frage nach dem Menschen. Kritische Überlegungen zum
„homo arte emendatus et correctus “ in: Jahrbuch für Wissenschaft und Ethik.
Bd.12. 21-44
金子晴勇 2002: 『ヨーロッパの人間像』知泉書館
カーツワイル,レイ 2007:『ポスト・ヒューマン誕生――コンピュータが人類の知性を超えると
き』井上健監訳,NHK 出版,2007
Naam, Ramez 2005: More Than Human; Embracing the Promise of Biological Enhancement . ラメズ・ナム『超
人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会』 西尾香苗訳,インターシフト,2006
NHK, 2006:「プレミアム 10 サイボーグ技術が人類を変える」2006 年4月放送
橳島次郎,2008 毎日新聞 2008 年 2 月 7 日東京夕刊
押井守(監督)1995: GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊
Schmidt, Matthias C. 2007: Schmidt , Ethische Kriterien für die medizinische Intervention in das
menschliche Gehirn. In: Jahrbuch für Wissenschaft und Ethik. Bd.12. 133-159
Siep, Ludwig 2004: Konkrete Ethik. Suhrkamp
Silver, Lee M 1997: Remaking Eden. リー・シルヴァー『複製されるヒト』東江一紀・真喜志順子・
渡会圭子訳,翔泳社,1998
高橋透 2006:『サイボーグ・エシックス』水声社
The President’s Council on Bioethics 2003: Beyond Therapy, Biotechnology and the Pursuit of Happines.
レオン・R. カス(編著)『治療を超えて――バイオテクノロジーと幸福の追求 大統領生命倫理
評議会報告書』倉持武監訳,青木書店,2005
植原亮 2007:「スマートドラッグがもたらす倫理的問題――社会と人間性」,
『UTCP 研究論集』第
8 号,37-54
植原亮 2008:「認知能力の増強と本来性という理念」,『創文』No.505, 2008.2, 18-21
Wissenschaftliche Abteilung des DRZE , 2002. drze-Sachstandsbericht.Nr.1. Enhancement. Die ethische
Diskussion über biomedizinische Verbesserungen des Menschen. 生命環境倫理ドイツ情報センター
編『エンハンスメント――バイオテクノロジーによる人間改造をめぐる倫理』松田純・小椋宗
一郎訳,知泉書館,2007
80
資料 5.第2回脳神経倫理国際動向調査研究会記録
資料 5.1 脳死大概―ニューロエシックスを学ぶ人のために―(2007.12.27, 安曇野)
(松本歯科大学:倉持武)
脳死大概
―ニューロエシックス研究のための―
Ⅰ.「脳死」の仲間たち
限 外 ( 超 ) 昏 睡 (coma depasse) 、 respirator brain 、 不 可 逆 性 昏 睡 (irreversible coma) 、 brain death
syndrome、脳死(brain death, cerebral death)、脳幹死(brain stem death)、全脳機能死(entire brain death,
whole brain death:全脳髄の全機能の不可逆的停止)、全脳機能死(whole brain death, brain death as a
whole:臨床的に判定された限りでの全脳機能の不可逆的停止)、全脳器質死(血流停止としての脳死)、
完全脳死(total & perfect brain death:脳細胞の死滅)、高次脳死(higher brain death)、大脳死(cerebral
death)、切迫脳死、臨床的脳死、法的脳死、もうすぐ脳死、脳死のような状態、脳死に近い状態、(脳死に
近い状態としての)脳死状態、(脳死と判定された状態としての)脳死状態、一般的脳死、長期脳死、遷延
性脳死、慢性脳死
cf.長期脳死・遷延性脳死・慢性脳死(chronic brain death)
生存率には統計学的に優位な差をもって年齢の影響もみられ、若い患者は高齢の患者よりも生
存期間が長くなっていました。若い身体の方が、年齢を経た身体よりも抵抗性が高いからです。もう
一つ興味深い点として、脳死の原因、病因・病態が多臓器に損傷が渡る方が生存期間が短く、もとも
と脳に出血や脳腫瘍などの原因があった方が、生存期間が長くなっていました。脳死の状態で 21 年
間 生 存 し て い た 少 年 の 例 も あ り ま す 。 (
Alan
Shewmon
2005
年 講 演
http://homepage2.nifty.com/zoukiisyoku/koenroku.htm)
① coma depasse:(persistent vegetative state との区別)人工呼吸器が付けられた昏睡患者に、通
常の昏睡の症状を超えて、低体温、昇圧剤に反応しない低血圧、尿崩症や無呼吸などがでたこ
とが医学雑誌に記載された。(Mollaret, P., Goulon, M., “Le coma depasse” Rev. Neurol. 1959:
3)
② 1967年 世界初例の人から人への心臓移植 南アフリカ クリスチャン・バーナード
(公式発表では脳死患者からの心臓移植ではなく、心停止確認後の心臓摘出)
cf. 67 年に、世界で初めての脳死患者からの心臓移植が、南アフリカでクリスチャン・バーナー
ドによって行われました。また、トーマス・スターツルが、初めての脳死患者からの肝臓移植をピ
ッツバーグで行いました。興味深いことにこの医師両方とも、心臓が停止するまで待って、その
上で死亡を宣言してから、臓器の摘出を行っています。当時は、まだ臓器提供者の死亡を定義
する法律がなかったからです。そのため、生命維持装置を止め、心停止を待ってから死の宣言
を行って移植に入ったということです。(Alan Shewmon 2005 年講演・・・NHBD のはしり?)
③ irreversible coma:ハーバード大学「脳死特別委員会」報告、1968 年
定義;脳が永久に機能を失った状態 ①刺激に対する無反応性 ②呼吸停止 ③反射の消失
④脳波の平坦化
cf. ハーバード大学の臨時委員会では、死の再定義に際し四つの目標を掲げています。 一つ
81
目は、生命維持装置の停止を合法化すること。二つ目は医師が殺人者として糾弾されないよう
にすること。三つ目は、脳死の患者で集中治療室がいっぱいになってしまわないようにすること。
そして四つ目は、臓器移植を促進するということです。・・・概念と基準との間に連続性がなく不
可逆的な昏睡状態と脳死、さらには死を同等のものと考える根拠としては、実利主義のみに拠っ
ています。(Alan Shewmon 2005 年 講演)
④ brain death syndrome:Adam & Jequier, 1969
⑤ (全脳死としての)cerebral death:Zander, et al. 1971
⑥ brain death 及び brain stem death:Mohandas & Chou, 1971
C. Pallis & D. H. Harley, ABC of Brain Stem Death, 1983
⑦ 全脳機能死(entire brain death:全脳髄の全機能の不可逆的停止):シドニー宣言ヴェニス修正
1983 年、厚生省脳死判定基準における脳死の定義 1985 年
⑧ 全脳機能死(whole brain death, brain death as a whole:臨床的に判定された限りでの全脳機能
の不可逆的停止):厚生省脳死判定基準検査項目 1985 年
⑨ 全脳器質死(血流停止としての脳死):立花 隆『脳死』、1986、中央公論社
cf. 脳死の概念についての歴史、つまりその誕生から死までを簡単に振り返りたいと思います。1
950年代から60年代のはじめに、臨床的な脳死という状態が初めて発表されました。64年には、
初めて脳のヘルニア(脳の壊死)を起こした患者からの臓器移植行われました。翌65年に神経内
科医のフィリック・フォルムが腎移植を行いましたが、彼がこのときに脳の死という言葉を使用しま
した。また、同じ 65 年にスウェーデンで、脳死という言葉が採用されました。(Alan Shewmon 2005
年講演)
Ⅱ.「脳死」と「遷延性植物状態(permanent vegetative state)」
1.脳死:全脳髄の全機能の不可逆的消失、残存機能はない(竹内一夫『脳死とは何か』1987、講談
社)。発症から数日以内に診断可能。
2.遷延性植物状態:大脳半球のみの損傷によるものから下部延髄を除く脳幹部までの損傷によるも
のがあり、自発呼吸がある。診断には発症から3ヶ月以上の時間経過が必要。
両者は理論的には峻別可能とされている。しかし、下部延髄を除く脳幹部までの損傷を受けている
患者は、当該時点では自発呼吸を保っているはずであるが、呼吸中枢が位置する下部延髄まで、
二次的にせよ、損傷が及べば自発呼吸も停止する。しかし、人工呼吸器を継続使用中には自発
呼吸の停止を確認できないので、無呼吸テストなしに両者を区別することはできないのではないか。
(cf. カレン・アン・クィンラン・ケース)
Ⅲ.「脳死」と「個体死」
1.1968年ハーバード大学特別委員会報告:無受容性と無反応性を示し、1時間の観察期間中無動
で、3分間レスピレータを取り外しても無呼吸で、脊髄反射を含むすべての反射が消失し、最も診
断価値の大きい脳波が平坦である患者は、永久に機能しない脳をもつが、まだ心臓は動いてい
るヒト、死者である。
cf. 概念と基準との間に不一致があったということ、つまり全脳機能そのものが必ずしも生物全体の
喪失につながるものではない、ということでした。さらに、基準と検査の間にも食い違いがありまし
82
た。臨床的に脳死と診断されたからといって、必ずしもすべての脳のあらゆる機能を喪失している
わけではないということです。・・・ハーバード大学の臨時委員会が提唱しているのは、一つ目が、
人間社会におけるメンバーとしての資格が失われるということ。二つ目は、人としての特質、ある
いは人間性が失われるということ。三つめは、身体的の統合的な調和、生物学的な概念が失わ
れるということです。(Alan Shewmon 2005 年講演)
2.1968年世界医師会シドニー宣言
1)死のポイント・オヴ・ノーリターン説:死は細胞レベルで生じる経時的プロセスであるが、臨床医
は死亡判定に際して、一つひとつの細胞の残存に対してではなく、一人の人間としての運命
(the fate of a person)に関心を向けるべきであり、そのためには「どのような救命措置が講じられ
たとしても死のプロセスが不可逆になるという確実性」を判定することが重要である。
2)脳波計の重要視:医師の総合的・臨床的判断に換え得る死亡判定のための単一の技術はない
が、脳波計はもっとも有用なものである。
3)蘇生努力中止及び臓器摘出の承認:死のプロセスが不可逆になったと確実に判断判定された
ヒトへの蘇生努力の中止及び法で認められている国々での臓器摘出を承認した。
3.1971年 Mohandas & Chou による脳幹死宣言:われわれが一点の疑問の余地なく定義し、確立し
ようとしていることは、脳幹の不可逆的損傷の状態である。それは死に向かう不帰の点である。
4.1983年世界医師会シドニー宣言ヴェニス修正
1)全脳死宣言:脳波計に関する記述が削除され、「脳幹を含む全脳のすべての機能の不可逆的
停止(the irreversible cessation of all functions of the entire brain, including the brain stem)とし
ての 全脳(機能)死説が提唱された。→1985年 厚生省脳死判定基準における脳死の定義
(全脳機能死説、ただし厚生省脳死研究班は脳死が人の死であるかについては判断保留)。
2)脳死診断の臨床性の強調:脳死判定は必要に応じた各種診断装置の補助使用を伴う臨床的
判断(clinical judgement supplemented if necessary・・・)である。
cf. 84 年にはスウェーデンの委員会がモノグラフを発表しました。この内容はアメリカの大統領
委員会の発表とよく似たものとなっていました。89 年には、教皇庁の科学アカデミーが会合を開
いて、脳死は全脳死という考え方への支持を表明し、アメリカの大統領委員会とスウェーデンの
委員会の考え方を支持したわけです。(Alan Shewmon 2005 年講演)
Ⅳ.残生現象
1.三徴候死:脊髄反射、精子運動、爪・髪、角膜・腎臓・皮膚・骨の移植可能時間、外的意識(10 秒
以内とされている)、内的意識
cf. 脳細胞死滅順序(アンモン角錐体細胞→小脳プルキンエ細胞→大脳皮質細胞(15 分以内)→
視床下部細胞(1 時間余生存)→グリア細胞(24 時間くらいは生存)(生田・武田「『脳死』をめぐる
神経病理学」、『神経科学レビュー5』、1991、医学書院)
2.脳死
1)首から下はほぼ正常:首から下の諸臓器・組織が移植可能。
2)健康診断としての脳死判定:脳死判定に耐えて「脳死」と判定された者は、脳死判定中の血圧
低下や呼吸停止の危機などにより脳死判定が中止された者よりも健康。
3.全脳死の臨床的概念
83
現時点においては「医学は脳の生理・病態生理のすべてを解明してはいない」。しかし、それにも
かかわらず脳の臨床医は重症脳損傷の治療に努力しているのである。したがって、脳の臨床は脳
の基礎医学が未だ解明することのできていない分野の問題と日々格闘せざるを得ないのであって、
ここから、基礎医学が未解明としている領域に関しても十分といえるほどの経験的蓄積を獲得して
いるのである。ところで、「全体としての脳の機能」は基礎医学の未だ解明せざる領域であるから、
「全体としての脳の機能の不可逆的停止」を判定することは、基礎医学からの支援を期待すること
のできない領域の問題である。脳死判定に際しては基礎医学からの支援を待たず、臨床独自の経
験的蓄積に基づかざるを得ないけれども、「全脳機能の不可逆的停止」判定は、「神経学的所見
を中心とする臨床診断」によって「可能」であり、「経験のある医師が慎重に行う」かぎり「科学的に
妥当」であると「確信」する。(竹内・武下ら「厚生省「脳死に関する研究班」による脳死判定基準の
補遺」、『日本医師会雑誌』、第 105 巻第 4 号、1991)
4.視床下部細胞
1)神経病理学的所見:(日本脳波学会脳死判定基準(1974 年)による脳死 58 剖検例及び厚生省
脳死判定基準による脳死 26 剖検例に基づき、大脳や脳幹部は明らかな蛋白変性や自己融解
(autolysis)に陥っている症例における)脳死後 24 時間以内に剖検された6例中 5 例は確かに、そし
て 1 例はおそらく確実に、つまり 6 例中6例ではおそらく血流もあり、生存していたと見なされた。ま
た24~48時間での剖検例 10 例のうち 7 例は確実に、1 例もおそらく確実に、すなわち 10 例中 8
例はおそらく、そしてまた48~72時間後に剖検された7例中3例は確実に、そして72~96時間
後の剖検例の4例中2例はおそらく確かに生存していたと考えられた。このように脳死後4日後位
までの時点では症例のほぼ40%位の例の視床下部だけは生存しているもののようにかんがえら
れた。脳死後5日後以降の症例は現時点で検索されてはいないが、さらに長時間生存し続ける例
の可能性もある。(生田・武田「『脳死』の神経病理学」、『神経研究の進歩』、第 36 巻第 2 号、199
2)
2)生理学的検索:(厚生省基準による脳死後24~48時間後の13症例を対象とする、GH、AC、
TH、LH、FSH、PRL、TSH、CRF、GRF、LH-RL、ADH などの視床下部・下垂体ホルモン基礎値
の測定及び下垂体負荷試験に基づく視床下部下垂体系機能評価)脳死を全脳髄の機能の完全
な廃絶と定義する限り視床下部下垂体系の機能停止は不可欠の前提条件のはずである。今回わ
れわれが行った臨床研究はまだ症例数も限られており、検査項目も部分的なものであるが、今回
の研究結果によれば脳死状態において視床下部下垂体系機能が完全に廃絶していると断定す
ることはできないものと考えられる。(有田・魚住ら「脳死患者における視床下部及び下垂体系機
能」、『脳神経外科』、第16巻第10号、1988)
5.脳組織蛋白変性
当初この蛋白変性は「あぶく状変化(status bullosus)とよばれていた。この変性は通常の脳梗塞によ
って生じるものではない。変性細胞群の周囲にも広く血流停止及び組織の死が生じていなければ
生じない細胞死後の細胞変性である。この細胞変性は、広範な血流停止後に生じるものであるが
故に生体反応を欠き、自己融解(autolysis)であり、血流停止後当該組織では赤血球が最も早く自
己融解に陥って行く。(生田・武田、1992)
Ⅴ.脳死の機序
84
1.脳血流停止説:脳動脈閉塞あるいは脳圧亢進により脳血流が停止し、その結果として脳機能の
停止、つまり脳死が生じる。
1)竹内一夫(厚生省脳死判定基準作成メンバー):やはり原因は何であっても、いちじるしい脳圧
亢進がひきおこされ、そのため脳への血流が途絶して脳死状態に移行すると考えることができ
る。そして、いったん脳死に陥った脳は時間の経過とともに自己融解をおこし、やがては「どろど
ろ」と表現されるような状態になってしまう。つまり、「脳死にいたる道すじには必ず脳循環の停
止」があり、「時間がたつにつれて自己融解が始まり」、「病理学検査でも、法医学の鑑定でも、
脳死状態を経過したか否かを後から鑑別することも可能」なのである。(竹内 op. cit.)
2)後藤文男(厚生省脳死判定基準作成メンバー):「例えば完全に脳死と判定されたけれども、血
管撮影でちゃんと造影剤が入って、血管が描出できたとか、あるいは SPECT で血流が測れたと
いう場合には絶対的に脳死を否定することができる。」(「脳死臨調」第 16 回調査会発言)
3)生田房広
(1)脳浮腫・腫大の機序
a.神経細胞の壊死→アストロサイトの壊死:脳死症例の大部分(大脳内に脳梗塞、脳出血あるい
は外傷による病巣などきわめて大きく、万人に肉眼的にすぐに認められる病巣が存在し、そ
のために脳幹部に二次性の出血性病変が生じるような症例におけるもの)。
b.アストロサイトの急激な腫脹・変性→神経細胞の変性・壊死:脳死症例の少数例(大脳、小脳
に極限性病変をもたず、ただ瀰漫性に脳が腫脹するが、脳幹部には一見明らかな変化がな
い様な症例)。
(2)a、b「いずれの場合でも強い脳浮腫や腫大によって急激に頭蓋内圧が亢進し、中脳・脳橋など脳
幹部の被蓋野で脳幹網様体を含む部分の血流が停止したであろうこと、これが例外なく推察
できる共通の所見と考えられた。そしてこの血流停止は、決して同時に全脳に生じているの
ではなく、個々の症例により差はあっても、脳幹から急速に小脳や大脳、そしてその表層部
に波及してゆくものと考えたい。」(生田・武田、1992)
4)Alan Shewmon:脳死とはどういうものか、もう少し詳しく説明しましょう。外傷、溺死、心停止など
により脳が損傷を受けると、脳は腫れ上がります。しかし、脳は硬い頭蓋骨の中に入っています
ので、脳が腫れることによって脳内に圧力が生じます。頭蓋骨の中で圧力が高まることにより血
流が低下するのです。血流が低下することにより、さらに脳に損傷が起き、その結果、また脳が
腫れるという悪循環が発生します。最終的には脳の中に血流がなくなり、全脳梗塞が起きたり、
脳の組織が死滅し、脳死という状態になります。また、脳死になると、脳には血行がなくなり、脳
波の電気活動もなくなります。(2005 年 講演)
2.?説
半田 肇(厚生省脳死判定基準作成メンバー):たとえ脳死になっても脳圧が高くない場合も
あり、脳血流が完全に途絶するわけでもなく、解剖してみてもそこに脳死特有の共通所見が見
つかるわけではない。「脳死になっても心臓が拍動し、血圧、体温が正常に近い状態に維持さ
れているので、脳圧亢進が著明でない限り、脳血流の完全停止は証明できない。X 線 CT の導
入以前は、脳圧亢進が著明な場合、血管撮影を行うと造影剤が脳内に入りにくい現象(非充盈
現象)が見られていた。しかし、最近では X 線 CT により脳圧が亢進しているとわかると、すぐに
脳圧を下げるための種々の処置が施されるので、脳死になっても脳圧は通常高くない。」「私の
85
印象では、この respirator brain の発生率は将来もっと少なくなり、respirator brain の脳を見たら、
これは管理がまずかったと言われるような時期が来るように思われる。このように全脳髄の機能
的不可逆性の出現と、病理学的に見た脳の形態学的な不可逆性変化の出現とは、その病因が
一次性か、二次性か、さらに人工呼吸器をはじめ、生命維持装置をいかにうまくコントロールし
て使用したかによって、かなり異なってくるもので、脳死に特有な共通した形態学的不可逆性を
決めることはきわめて困難である。」(半田 肇「生と死の概念の変遷をどう受け止めるべきか」、
梅原 猛編『「脳死」と臓器移植』1992、朝日新聞社)
Ⅵ.脳死判定
1.脳死判定の目的
1)治療方針の確立
2)死亡判定
3)移植あるいは研究のための臓器・組織摘出可否判定
2.脳死判定の構造
1)前提条件:図像学的検査を通した原疾患の器質的障害性と不可逆性の確認
2)除外例
①脳幹神経核反射は消失するが回復の可能性がある、機能性脳障害(急性薬物中毒、低体温、
内分泌・代謝性障害)患者
②除脳硬直、除皮質硬直、けいれん、自発運動
cf.ラザロ徴候(razarus sign):1984 年に米国の脳神経学者 A・H・ロッパーによって 5 例が報告
された。脳死患者が医師の目の前で、突如両手を持ち上げ、胸の前に合わせて祈るような動
作をする。動作後は自分で手を元の位置に戻す。同様の現象はその後各国で多数確認され、
日本でも医学誌に症例報告がある。動作のビデオも収録されている。ロッパーは「脊髄自動
反射」と理解するが、疑問視する声もある。脳死患者を家族に見せないようにすべきとロッパ
ーは書いている。
③完全両側顔面神経麻痺
④脳細胞の細胞膜が未発達で、障害に対する抵抗力が強く、回復の可能性が高い、小児
a.現行法:6歳未満を除外
b.2000 年厚生省小児脳死研究班脳死判定基準:生後 3 ヶ月未満を除外
⑤妊産婦:脳死後自然分娩を含めて、出産した症例が多数報告されている。
3)神経症状検査
①深昏睡(Ⅲ-3 方式で 300、GCS で 3)
②脳幹反射(対光反射(瞳孔散大)、角膜反射、眼球頭反射、眼球前庭反射、咽頭反射、喉頭反
射、毛様脊髄反射、無呼吸テスト)
注:無呼吸テスト(延髄下部に位置する呼吸中枢反射テスト)
a.人工呼吸器離脱時間:時間規定(10 分間)か PaCO2 濃度規定(60mmHG)
か。
b.二酸化炭素刺激のみでよいか、低酸素刺激も必要か。
86
c.安全(竹内一夫ら厚生省脳死研究班等)か、危険性がある(林 成之日大大学院教授、長
期脳死小児の母親たち等)か。
4)脳電気的無活動確認(electrocerebral inactivity, ECI)
cf. 脳幹死説に基づく脳死判定基準(英国規約)においては含まれない(英、豪)。
5)経過観察時間:一定時間の継続観察時間内での上で確認された状態の無変化確
認(厳密には「1 回目の脳死判定」、「2 回目の脳死判定」という言い方は医学的
に不正確。理念的には、脳死判定は連続した経過観察時間を含めて少なくとも 8 時間以上
かかる 1 回のみの検査)
①厚労省基準では 6 時間以上
②小児脳死研究班小児脳死判定基準では月齢、年齢に応じて6~48 時間
③英国規約では脳死の疑いから脳死判定開始時間までを経過観察時間とする。原疾患ごとに経
過観察時間が定められている。
Ⅶ.脳死判定関連問題
1.反応(刺激応答)検査としての臨床的脳死判定と細胞の生存ステータスとのずれ
1)反応は有無の2段階
2)細胞の生存ステータスは、①機能発揮レベルでの生存(活動)、②機能停止レベルでの生存(休眠)、
③死、の3段階
したがって、反応検査は①レベルの神経核を機能アリと判定し、②及び③レベルの神経核を無差
別に機能ナシと判定する。
統計上は、脳死と判定されるほどにさまざまな部位が機能停止した脳の細胞は死んでいる場合が
多い。しかし、厚生省脳死研究班の集めたデータ(1985 年)によれば、「脳死」と判定されたが心
停止後の剖検時にオートリシスの全く見出されなかったケースが 661 例中 135 例(20.4%)あった。
この場合、661 例中 526 例は細胞死による機能喪失によって脳死と判定されたと考えることもでき
る。しかし、135 例は「休眠」による機能停止によって「脳死」と判定された可能性が非常に高い。
機能テストは早すぎる脳死判定を原理上、防止できない。
2.中枢神経抑制薬
1)脳治療のために使用され、しかも脳死判定の際に意識レベル、脳幹反射あるいは無呼吸テスト
に影響を与える薬剤:中枢神経抑制薬(central nervous system depressant)、筋弛緩薬(muscle
relaxant)、脳幹反射を抑制する薬(brain stem reflex depressant)、瞳孔を散大させる薬(mydriatic
drug)など、28 種類。
2)薬剤の最小有効血中濃度と薬学的有効域:臨床医学的には、薬剤が最小有効血中濃度
(minimum effective blood concentration)の1/2 以下になれば脳死判定に決定的影響を及ぼす
ことはないと言われているが、しかし脳治療に必要な薬剤のうちおよそ 60%は薬学的有効域
(pharmacological effective region)がわかっていない。有効域がわかっていない薬剤の場合、血
中濃度(blood concentration)が測定できたとしてもそれは何の意味ももたない。
3)原薬とその活性代謝物:有効域がわかっている薬剤のうちには、原薬が体内で代謝されて出来
る活性代謝物(active metabolite)が原薬と同様の作用をするものがあるし、その半減期が原薬よ
り長いものもある。たとえば、ディアゼパムの半減期が 3 日であるのに対して、その活性代謝物
87
の半減期は5日である。(船橋市立医療センターの調べ、唐沢秀治『脳死判定ハンドブック』、
2001、羊土社)
4)血中濃度と脳細胞内濃度:同一薬剤の血中濃度と脳細胞内濃度とには大きな隔たりがあること
を示す研究が最近次々と発表されてきている。たとえば、實渕成美は、脳死状態となった3歳女
児における脳細胞内濃度の血中濃度に対する比はディアゼパムで 14.1 であったことを報告し
ているⅰ。また、守屋文夫は、臨床的脳死状態で塩酸エフェドリンを投与され、およそ 72 時間
後に心停止を来たした患者の後頭葉から、血中濃度の 53 倍濃度の塩酸エフェドリンが検出さ
れたことを報告しているⅱ。
ⅰ實渕成美「頭蓋内出血から脳死を経過したと考えられる小児の体内薬物分布」、『日本法医
学雑誌』、1997; 51(2): 181
ⅱ守屋文夫「脳死者における血液及び脳内の薬物濃度の乖離」、『日本医事新報』、2001;
4042: 37-42
5)末梢血での薬物濃度測定:ⅰ及びⅱの研究は、同一薬物の血中濃度と脳細胞内濃度とが大き
く乖離しているために、脳死判定の際に末梢血で薬物濃度を測定することによって中枢神経抑
制剤の影響を避けようとしても、それはできない相談だということを示している。
6)血中濃度測定、脳細胞内濃度測定と中枢神経系抑制の程度:薬学的有効域がわかっている薬
剤で、その血中濃度のみならず脳細胞内濃度の測定に成功したとしても、血中濃度測定及び
脳細胞内濃度測定に基づいて脳死判定から薬物の影響を排除することはできない。なぜなら、
薬物の血中濃度あるいは脳細胞内濃度に対応した中枢神経系の抑制の程度が、そもそも、わ
かっていないのである。
3.意識の問題(脳幹目覚まし時計説(脳幹生命中枢説)・二重目覚まし時計説(視床下部生命中枢説)
1)G. Moruzzi、H. Magoun ら:1949 年 中脳網様体の大脳覚醒作用を発見。
2)M. Jouvet ら:1979(?)年 中脳網様体の細胞だけを破壊しても睡眠・覚醒にはなんら影響を与え
ないことの発見。
3)脳幹目覚まし時計説(C. Pallis、竹内一夫ら):(脳幹を中脳・橋・延髄に限定する)両者が基づく
Magoun の中脳網様体の働きを強調する脳機能論によれば、思考・意志・感情・記憶等の高次
脳機能、いわゆる「意識の座」は大脳にあるが、大脳は自己覚醒力をもたない。脳橋中央部より
より上部に位置する上部脳幹網様体(upper brain stem reticular formation、 上行性網様賦活
系(ascending brain stem reticular activating system)ともいわれる)からの神経活動電位の投射
が大脳機能を覚醒させることによって、意識が保持される。したがってたとえ大脳が健全であっ
ても上部脳幹網様体が機能を喪失すれば、意識は出てこない。つまり不可逆的昏睡に陥る。
4) 二重目覚まし時計説(W. Penfield、花田安弘、中田琴子、時実利彦、立花 隆、大村 裕、川村
浩ら):脳波の覚醒あるいは意識水準の上昇には、C. Pallis、竹内一夫らのいう上行性網様賦
活系からの非特殊投射核を経た大脳皮質への投射という系のみならず、「後視床下野からの
連合野や辺縁系へ投射する覚醒系」という二重の投射系を主張する(脳幹を広く定義して、脳
幹に(視床下部を含めた)間脳を含める、といってもよい)。
ペンフィールドは、ネコでの実験で、上部脳幹以下を切断されたネコは「意識と心」を失うこと
はないが、間脳以下を切断されたネコは「意識と心」を失うことを発見し、意識を可能とする中枢
神経系の統合機能は大脳にあるのではなく間脳にあると考えた。そして大脳と間脳間の神経イ
ンパルスの流れを確認した(立花 op. cit.)。
この理論が正しければ、中脳、脳橋、延髄の脳幹機能が停止した場合にも、間脳が生きて
88
いる限り、大脳機能が存在するなら高次脳機能が、大脳機能が停止していても、間脳の一部
をなす視床下部は情動・本能の中枢であるから、古脳レベルでの意識残存の可能性を否定
することが極めて困難になる。
なお、この二重投射系は、現在では生理学の教科書においても記述されるほど一般的に知ら
れたシステムとなっている(たとえば、大村 裕編著『概説生理学 動物機能編』1991、南江
堂) 。しかし、厚生労働省脳死判定基準は、脳幹目覚し時計説にもとづく機能検査を行なう
のみで、二重目覚し時計説にもとづく間脳、特に視床下部を検査対象としない。
一方、外的意識の覚醒・睡眠のメカニズム、脳幹網様体、脳波の関連もブレーメル、マグウン、
モルッツィ、エコノモ、ナウタ、ゲルホーン、クレメンティ、スターマン、デル、アゼリンスキー、ク
ライトマン、デメント、ジュベー等の研究を通して次第に明らかになってきた。この点に関して
は、ベーツェル、花田安弘、中田琴子の研究、特に時実利彦の視床下部賦活系の考えが重
要である。これによって、「昏睡のため意識が回復しないということは、脳の覚醒の仕組みが
働かなくなってしまったということである。だから中脳より下の脳の部分が働かなくなっても、覚
醒や睡眠の交代が脳波でみて十分におこるとすれば、それは重要なことである。こんな状態
でも自我意識の回復がおこる可能性があることを示しているからである」ということ、そして「本
来の意味の脳幹のうち、視床下部を含んだ間脳と大脳があれば、脳波からみて睡眠と覚醒の
交代が回復する可能性がある。したがって意識が回復する可能性も否定はできない。このこ
とは忘れられてはならない脳生理学のうえの事実である」ことが明らかにされた。それゆえ「中
脳以下のはたらきが破壊されていても間脳と大脳が健全で睡眠と覚醒の交代があるならば、
自我意識もひょっとして残っているかもしれないのである。わが国のこれまでの議論ではこの
ことが無視されているために、脳死の問題に必要以上の不安」がつきまとっているのである。
C. Pallis は「中脳以下の網様体が不可逆的、つまり二度と回復しないほど侵された場合に、
脳幹は死んでしまったのだから意識も回復しない。したがってこのような患者は事実上、ヒトと
して死んでしまったという。この結論は脳幹の定義から見ても、脳生理学の立場からみてもま
ちがっているといわなければならない」のである。
倉持「厚生省脳死判定基準の再検討」から抜粋(この部分は、川村 浩『脳は取り替えら
れるか』1996、共立出版を参考にした)
参考 ①川村 浩『脳は取り替えられるか』における C. Pallis の脳幹死説批判
川村氏によれば、人間の意識には人間と動物とに共通の意識である外的刺激に応答する
意識だけでなく、人間に特有の自我意識がある。前者の活動レベルは、完全な覚醒状態から
昏睡状態までをいくつかの段階に分けた行動のレベルとなって現れるので、外からの観察や
脳波検査によってその活動水準を調べることができる。しかし後者は主観的体験であるからこ
うした方法によっては活動水準を調べることができない。にもかかわらず、神経生理学者や神
経内科の医師の中には「動物の意識と人間の意識とをゴチャまぜにする傾向」の者が多い。
最近 30 年ほどの間にスペリーや和田 淳のテンカンや言語中枢の研究によって、「いまとな
っては主観的体験としての意識、つまり自我意識の研究は、自然科学の対象ではないといっ
て逃げることはできなくなった。これまででも精神科のお医者さんはいろいろな質問にたいす
る患者の答えをきき、またその行動を観察しながら、患者の自我意識の内面を組立てていった。
脳のはたらきを研究する脳生理学も、これからはそのような側面を頭に入れておかねばならな
89
い」ことが明らかにされてきた。
参考 ②視床下部
「この自律神経の中枢は、大脳皮質のはたらきをときに抑制し、ときに促進させて、感情、情緒、
感覚などを鈍らせたり、鋭敏にさせたりする。また下垂体ホルモン分泌を調節し、内分泌と
自律神経とによる身体の不随意的機能を体液性、神経性にコントロールしている。身体の
さまざまな機能のバランスは実に視床下部のはたらきによって保たれている。この中枢のは
たらきは決して単発ではなく、無限にたえまなく連続し、一つの病状の変化は連続的に全
身の変化を誘発する。しかも視床下部の機能は、日照時間、昼と夜、季節、温度、湿度な
どに適応し、あるいは発育や成長とも結びつき、規則正しいリズムを持って発現されてゆく。
このことによって体内機構の平衡、すなわちキャノンのいう動的平衡、ホメオスタシスが保た
れるようになる・・・この部位こそ生命に不可欠の重要な中枢であり、また大脳辺縁系ととも
に、情動的な本能に直結した情熱を湧出させる大切な部分に当たる。従って視床下部は
生命中枢とも目されるのである」佐野 豊『神経解剖学』1982、南山堂
「死とは視床下部と体内臓系の連絡が絶たれた時を意味する」 須田正巳(大阪大学蛋白研
究所)
*この 3.については、①C. von Economo(1931 年論文)の視床下部に睡眠と覚醒を司る中枢
があるとする仮説、②当初、脳幹網様体には間脳の視床非特殊核や視床下部後部も含まれる
と解釈され、解剖学的にも間脳を脳幹の一部として取り扱われていたが、Magoun の中脳網様
体の重視に伴って脳幹が中脳以下に限定され、解剖学的にも同様に扱われるようになり、しか
し、最近再び、視床下部を間脳の一部とした上で、脳幹に間脳を含めるような動きが強くなって
きたといういきさつを踏まえた、脳神経専門家による再検討が必要ではないかと考える。
なお、「脳幹目覚まし時計説」、「二重目覚まし時計説」は倉持の造語
4.大脳深部、小脳、間脳、大脳辺縁系未検査問題
1)聴性脳幹誘発反応・深部脳波
(1)聴性脳幹誘発反応(brainstem auditory evoked potential, BEAP)は厚生省基準では補助検査
ではあるが、必須とされており、無呼吸テストより前に行う。
法施行規則の「聴性脳幹誘発反応の消失を確認するよう努めるものとする」における「消失」
に関する厚労省見解:すべての波形の消失を意味するのかそれともⅠ波は残存していてもよい
のかは、脳死判定医が判断すればよい、脳死判定医の裁量範囲内のことである」(唐沢秀治氏
の質問に対する厚労省からの回答)。
注:聴神経を栄養する内耳動脈は脳底動脈由来であり、Ⅰ波が残存しているということは脳底動
脈血流が保たれていることの推定根拠になる。
(2)深部脳波
脳波(electroencephalogram, EEG)
① 頭皮上脳波(scalp EEG)
② 頭蓋内脳波(intracranial EEG, IC-EEG)
a. 皮膚電図(electrocorticogram, EC0G)
b. 皮質下電図(electrosubcorticogram, ESCoG)
90
c. 脳室電図(electroventriculogram, EVG)
「いわゆる脳波=頭皮上脳波が一見平らに見えても頭蓋内脳波(a 及び b 及び c)に波形が
認められた例がある。またいったん頭皮上脳波が存在しないよう
に見えても、深部で脳波活動が復活し、その後に頭皮上でも脳波活動が出現
した例もあった。」唐沢秀治 op. cit.
2)視床下部の生き残り(フロリダ州オカラ市民病院での臓器摘出)
1991 年 6 月 1 日、NHK スペシャル「脳死・生と死の選択」で、フロリダ州オカラ市民病院での全
臓器摘出が放映された。ドナーの全身状態の悪化あるいは摘出する臓器の機能低下を避け
るために麻酔は使用されなかった。切開が進み、切り開かれた胸からドナーの心臓が力強く
鼓動し続けているのが見える。ふと気が付くと、ドナーの額一面に玉のような汗が続々と吹きだ
してきている。「手術室の内部は空調が施され、手術着一枚を身に付けるだけでも肌寒さは
感じない。しかし、手術室の中でこの男性以外に汗をかいている人間はいなかった。“冷や
汗”“脂汗”といった言葉が頭をよぎる。男性の顔色や表情に変化はないのだが、なぜ汗をか
いているのか。」(立花 隆・NHK取材班『NHKスペシャル 脳死』1991 日本放送出版協会)
他の人が汗をかいていないのだから、このドナーの汗は暑さのためではない。この汗は冷や
汗・脂汗としか考えられない。冷や汗・脂汗は視床下部の情動によって生じる。そして、実際に
汗をかくということは、視床下部が機能しており、かつ、孤立せず末梢まで連絡がなければあ
りえないことである。彼の視床下部は冷汗・脂汗をかく指令を出し得るレベルを維持した状態
で生きていたのだと考えられる。ドナーの額の汗は、彼が内臓を切り裂かれる猛烈な苦悶・苦
痛、どうしようもない不快感に襲われていたに違いないことを示している。ドナーには、玉のよ
うな冷や汗・脂汗を流す以外にその電撃的な苦悶・苦痛、不快感を訴えるすべがない。
3)血圧急上昇問題
臓器移植法施行後第 1 例移植の際、2 月 28 日午後に臓器の摘出手術が始まると、ドナー
の血圧が 120 から 150 へと急上昇した。脳死の人にラザロ徴候が現れたり、摘出のメスが入る
につれてドナーの血圧が急上昇したり、額から汗が玉のように吹きだしたり、あるいはメスを避
けるかのように体を動かしたりすることがしばしば報告されており、これに対して筋弛緩剤や麻
酔という対処法が取られている。例えば、提供第 3 例の古川市立病院の場合筋弛緩剤ベクロ
ニウムが(日本麻酔学会第 47 回報告)、第 8 例の福岡徳州会病院の場合ベクロニウム、血管
拡張剤ニトロプルシド 3y、ガス麻酔イソフルラン(九州麻酔学会第 38 大会報告)が、第 10 例
の昭和大学病院の場合「術前、術中のドナー管理に 2 名づつの麻酔科医が担当し、麻酔管
理」(日本臨床麻酔学会第 21 回報告)が、第 11 例の川崎市立川崎病院の場合「臓器摘出手
術の麻酔を実施」(同上)し、第 14 例の聖路加国際病院の場合ベクロニウムが、使用されている
ⅰ。
こうした問題はイギリスでも起こっている。脳死下のドナーは臓器を摘出されるとき痛みを感
じているのではないかということが議論されているのである。telegraph.co.uk2000 年 8 月 20
日付けのアルダーソン&ブース両名の署名記事“Can ‘‘brain dead’donors respond?”によ
れば、イギリス集中治療学会は 1999 年に移植のための臓器摘出ガイドラインを定め、そのな
かで「ドナーに麻酔をかける必要はない」と規定した。これに対し、ノーフォーク・ノリッジ病院
顧問麻酔専門医フィリップ・キープ博士は「ブレイン・デッドのドナーでも臓器摘出の最中に
91
痛みを感じている可能性が高」く、ガイドラインを改定してドナーに麻酔をかけることを義務づ
けない限りドナーカードは持たない、多くの専門医もこの問題に不安を感じている、という趣
旨の投書を王立麻酔科医協会誌 Anaesthesia に送ったのである。彼はインタビューに答えて
「看護婦たちはもう心底動転している。何しろ体にメスを入れたとたん、患者の心拍と血圧が急
上昇するのだから・・・この状態で放っておけば、患者はやがて動き出し、のた打ち回りだす。
臓器摘出手術などできない状況になってしまう」と話しているⅱ。
ⅰ 脳死・臓器移植に反対する関西市民の News 1
http://fps01.plala.or.jp/~bainx/news16_2.htm#20010909
ⅱ
http://www.telegraph.co.uk/et?ac
6.厚生省脳死判定基準に関するコメント
厚生省脳死判定基準は、表現上は全脳死説の体裁を採っているが、その実質は脳幹死説
プラス頭皮上「平坦」脳波という鵺的折中説である。
単に折中説とせず鵺的としたのは、厚生省基準がとうてい全脳死説と脳幹死説の長所の総
合的統一といえるものではなく、全脳の概念をなし崩し的に矮小化することを通して出来上が
ったものにすぎないからである。厚生省基準は先ず国際脳波学会の定義した「全脳」から第一
頚髄を削除した。それは「全脳死でも脳幹死でも、脳(延髄)・脊髄移行部の障害の範囲や程度
にはかなり症例差があると思われる。・・・特に脳ヘルニアに伴う脳幹の循環障害には、神経症
状や脳幹誘発電位の所見から見ても、症例によりかなりのばらつきがあると思われる。したがっ
て、脳死を定義する場合に、全脳髄の不可逆的機能喪失とすることはできても、下部延髄―第
一頚髄レベルまでを含むというような表現は必ずしも適当でないと考えるⅰ」という理由による。
この理由がもう一つわからないのだが、脳幹死概念に基づく判定基準によって脳死と判定され
た者にも、全脳死概念に基づく判定基準によって脳死と判定された者にも、第一頚髄部の機能
が健全な者と機能を喪失した者との両者がおり、第一頚髄までを全脳の範囲とするなら統一
的な脳死の判定が不可能になる、したがって、脳死を判定しようとするなら、全脳の範囲に第
一頚髄をいれてはならない、ということなのだろうか。
ⅰ竹内・山下ら op. cit.「脳死の概念の整理」の項
次いで、「全脳」機能が「臨床的に検査可能な範囲の」機能に矮小化される。「脳死をあらか
じめ定義することは、状態を明確にするために必要であったが、それをどう理解するかが問題で
ある。全脳機能の不可逆的消失とは、前回報告でも強調したように、すべての細胞がその時点
で同時に死ぬということではなく、脳全体としての機能が不可逆的に消失した状態である。脳
幹死の立場をとる C. Pallis の考えも、その解剖学的領域こそ異なるものの、やはり同様である。
ここでいう脳機能とは臨床的に検査可能な範囲の機能を指している。ⅱ」
ⅱ竹内・山下ら op. cit. 「臨床診断」の項
ところで、頭皮上脳波(scalp EEG)は大脳皮質の活動を 5mm の深さまで記録できるといわれ
ているⅰ。すると、厚生省基準のいう「全脳髄の全機能」とは深さ 5mm までの大脳皮質及び脳
幹(中脳,橋、延髄)の機能ということになるⅱ。大脳ではより深いところの大脳皮質、辺縁系及
び基底核の、小脳の、そして視床下部を含めて間脳の諸機能は全て無視される。「臨床的な
検査」も神経学的検査と電気生理学的検査に限定されているから、脳の内分泌機能は最初か
ら問題にもされていない。脳死と妊娠、脳死と視床下部ホルモン、脳死と体動・感覚・意識とい
92
った問題はこれらの厚生省基準で無視された諸機能との関連で現れてきているのだが、研究
班がこれらの諸機能を無視した理由は何であろうか。一つには、深部皮質、辺縁系、基底核、
小脳そして間脳の神経学的検査はできないということがある。また、内分泌機能が無視される
のは、この機能が意識と自発呼吸能力とは関係がないと考えられていることによる。つまり、研
究班のいう「全脳髄の全機能」とは意識と自発呼吸能力のことなのであり、「全脳髄の全機能
の不可逆的機能停止」とは意識と自発呼吸能力がもう回復しないということなのである。
ⅰ唐沢秀治 op. cit.
ⅱ 脳幹に関してもそのすべてが検査されるわけではないことについては、植村研一「脳外科
医は脳死をこう考える」 中央公論 1987 年 5 月号における C. Pallis の脳幹死批判を参照。
Ⅷ.脳血流(糖代謝、酸素代謝、酸化ヘモグロビン増減、脱酸化ヘモグロビン増減)
三徴候死説は体内酸素供給不可逆的停止を人の死とし、この体内酸素供給不可逆的停止を心拍
停止、呼吸停止、瞳孔散大・対光反射消失とその一定時間継続(「墓地、埋葬等に関する法律」第 3
条では 24 時間)によって判定しようとする。
脳死も脳血流途絶とその一定時間継続によって判定すれば、その不可逆性に関する疑念は解消さ
れる。
1)脳血流測定手段・器機
ガス、超音波、近赤外線(NIRS における)、レーザー、MRI、 fMRI、 SPECT、 PET、
(どれを使えば何が、どれくらいの時間で、どれくらいの精度で測定できるのか?)。
2)脳血流測定を含めて、諸補助検査にかかわる問題については
http://www6.plala.or.jp/brainx/adjuvant_test.htm
参照。
3)脳圧>血圧を直接正確に測定すればよいのではないか。このような測定法は存在しないのか。
Ⅸ.脳死を人の死とすることは
脳死を人の死とする根拠として①全脳死説を採る者は有機的統合機能喪失を、②大脳死説を採る者
は自己の消滅をあげる(脳幹死説を採る C. Pallis は魂の身体からの離脱)。
1.有機的統合機能喪失説:有機的統合機能の座は脳にあり、脳が不可逆的に機能消失すれば有機
的統合機能も失われるがゆえに、脳の不可逆的機能消失は人の死であると考える。
問題
1)除神経心である移植心がレシピエントの体内で一定期間ほぼ正常に働き続ける理由は何か
2)脳死と判定されてから心停止までには時間間隔があり、その間統合機能が働いている理由は何か
① 内分泌機能が働き続けているからなのか:たとえば、視床下部で産生され、神経軸索を伝わって
下垂体を経て血中に分泌される視床下部ホルモン ADH(antidiuretic hormone, vasopressin)
は主として腎臓で代謝され、その半減期は5~10 分である。これが不足すれば尿崩症に陥り、
心停止にいたる。
*神経機能が完全に消失した場合にも、内分泌機能が働き続けるということはあるのか?
② A. Shewmon が指摘している、21 年間生存、発育した青年は 2004 年に死亡し、「死後、剖検をし
たところ、特定できるような脳幹構造も神経細胞もなく、脳半球の残りは、硬い岩のように石灰
化していた、ということが確認されています。器官切開を行えば傷が治りましたし、肺や腎臓
への感染を何度も乗り越えましたが、それらに脳の機能は関わっていなかった。」
*脳が完全に死滅しても有機的統合機能が失われないということは、有機的統合機能には脳
の神経機能も内分泌機能も必要不可欠というわけではないということなのか。
cf. このように、身体の統合化は、必ずしも脳によって媒介されているわけではなく、一般的な
健康状態の改善は、脳機能をなくしても可能であるということがわかります。 脳の身体的病
理生理についていえば、脳死とともに身体機能の異常が起こってきます。たとえば、血圧の
変動、低体温、心停止を起こす傾向、呼吸の低下、また腸管の栄養素吸収運動においても
問題が起こるわけですが、これらは脳死においても、高位脊椎離断の場合でも同じです。で
93
すから、高位脊髄損傷があった場合、脳と脊髄とが切り離されていくとき、身体に起こる状況
は、脳が破壊されている場合とまったく同じになります。
脳死=死亡という主張をするのであれば、高位脊椎離断=死亡ということにもなってくるわ
けです。唯一の違いは意識です。ですから、脳死が深い昏睡なのか、それとも死亡なのかと
いうことは、その人の人格に対する哲学、理念に基づいており、医学的、生物学的な根拠に
基づいているといえます。・・・心臓、肝臓、腎臓などの内臓は、脳がなくても機能し合うことが
できます。身体の統合化というのは局所的ではない特性であり、身体のさまざまな部分からく
る、相互のやりとりによるものですが、心臓や肺、腎臓などがお互いに機能しあうということが
身体の調和を維持しており、脳はこれを強化、改善、あるいは完璧なものにしているのです。
(Alan Shewmon 2005 年講演)
2.人間の「自己」の三つの契機
1)神経系(脳神経系及び末梢神経系)の自己
2)内分泌系の自己
3)免疫系の自己
われわれの「自己」はこの三つの自己のいわばクロストークとして成立している。 厚生省基準によ
って判定された「脳死」を「人の死」とすることは、末梢神経系の自己、内分泌系の自己、免疫系
の自己を無視することによって成り立つ。しかし、これらも重要な自己であって、それらを無視する
ことには賛成できない。自己の消滅とは、これら三者全体の消滅を意味するのであって、脳神経
系のみの消滅を「自己の消滅」と主張することはできない。
cf. 日本は、脳死の患者が臓器提供者になる場合には、脳死が法的に死と認められる唯一の国で
す。・・・ドイツでは脳死判定後の移植が可能になっていても、法律では脳死を明確に死亡として
は定義していないことです。(Alan Shewmon 2005 年講演)
「脳死というフィクションにより安易に臓器移植が行われた」(Alan Shewmon 2005 年講演)
「脳死は神話だ」濱邊祐一(2007 年 6 月 議員会館での倉持との対話)
94
資料 5.2 Gene Enhancement に対する社会意識の規定要因―“遺伝子決定論(感)”を中心に―
(2007.12.28, 安曇野)
(東京大学:土屋敦)
(研究会報告記録)“Genetic Enhancement”に対する社会意識の規定要因
―「遺伝子決定論(感)」を中心に―
○土屋敦、大畑尚子、渡部麻衣子、住田朋久、高田史男
(北里大学大学院医療系研究科臨床遺伝医学教室)
1.科学技術振興調整費「遺伝子診断の脱医療化・市場化が来たす倫理社会的課題」研究班の紹介
(土屋) 今日の報告なのですが、私は北里大学のほうで、こちらと似たような仕事のプロジェクトに関わっ
ておりまして、そのご紹介も兼ねて遺伝学的エンハンスメントに関する一般市民意識調査関連の分析に
関する報告をさせて頂きます。
まず、北里研究班の概略を申しますと、「遺伝子検査の脱市場化・医療化が来たす倫理社会的課題」
と致しまして、基本的には遺伝学的検査は医療機関で行われているという現状がありますが、例えば一部
の生活習慣病であるとか、老化判定とか、肥満になりやすさとか、そうした検査の中にはエビデンスがかな
り危ういものも多いのですが、一部の遺伝学的検査が医療機関を介さずに市場に出てきている現状があ
ります。そういった遺伝学的検査市場化の現状分析、国民意識の把握そして将来的な規制のあり方を提
示することが研究班の目的です。
そうした遺伝学的検査がどういった経路で提供されているかといいますと、例えばインターネットでキット
が買えるわけですね。従来の遺伝学的検査の多くは血液中の白血球細胞から遺伝子を抽出しますけれ
ども、基本的にインターネットで購入したキットをつかってほおの粘膜の組織を綿棒で取って、検体を検
査会社に郵送するわけです。そこで遺伝子抽出を行って検査結果を出して、その検査結果が郵送で返
ってくるというふうな形になるわけです。その検査会社から結果が消費者に届くまでの媒体のあり方という
のは、医療機関を介さないわけですから、いろいろな問題が出てくるわけですね。
基本的には、そうした遺伝学的検査の市場化の問題と、あと我々の班に課された課題が、遺伝学的エ
ンハンスメントといって、遺伝子に関するエンハンスメントであります。この研究班との接点というのも、ある
かと思っております。研究班での私の担当というのは、基本的に社会学が専門なものですから、各種調査
をやってきておりまして、その調査の一つである、国民
意識調査を紹介したいと思います。こちらの研究班でも
国民意識調査をされているということで、きょうは、そのア
ウトプットの一部で、しかも以前生命倫理学会で以前発
表したものに近いものを報告させて頂きます。
2.問題設定および遺伝学的エンハンスメントの定義
報告の流れ的には、最初にエンハンスメント概念の定
義と、遺伝子還元論に内在する問題を遺伝学的エンハ
95
目次
1. エンハンスメント概念の整理
2. 「遺伝子決定論(遺伝子還元主義)」を問う意味
3. 調査設計・使用データ・分析モデル
4. 従属変数/独立変数の作成
5. 分析結果
6. 今後の課題
ンスメントにおいて問う意味ということを簡単に概説させ
て頂き、調査設計、使用変数、分析モデルを提示いた
しまして、分析のアウトプットおよびその結果の解釈と
いう形で報告させて頂ければと思います。
概念整理①:定義
「健康の回復と維持という目的を超えて、能力や性
質の「改善」を目指して人間の心身に医学的に
介入するということ」(松田純:2005)
エンハンスメントの定義としましては、エンハンスメント
の概念というのは、健康と維持という目的を超えて、能
力や性質の「改善」を目指して、人間の心身に医学的
「より望ましい子ども、優れたパフォーマンス、不老
の身体、幸せな魂といったものに対する深くて馴
染みのある人間的欲望」(米国大統領委員会報
告書:2003)
に介入することだと。松田先生の有名な定義がありま
すが。大統領委員会の報告書の中では、これは定義と
言える部分があるかどうか、ちょっと微妙なことがある
わけですけれども、あえて言えばですが、より望ましい
子どもであるとか、優れたパフォーマンスであるとか、
不老の身体であるとか、幸せな魂といったものに対す
る、ある種の人間的な欲望なんだということですね。こ
れがまず大前提として、報告書の中ではある。
(AA) いいですか。今、おっしゃったように、これは
定義として欲望がエンハンスメントであるというのは、
概念整理②
● physical enhancement:
ex.身体能力の向上・老化の遅延・美容整形
● intellectual enhancement:
ex.記憶力・認知力などの向上
● moral enhancement
ex.攻撃性などの行動特性の矯正
(松田純:2006)
ちょっと違いますね。
(土屋) 定義としては適切ではないかも知れませんね。すみません。定義と書いてあるから、いけないわ
けですね。ありがとうございます。
次のスライドの定義も松田先生に乗るわけですけれども、一つは、フィジカル・エンハンスメント
( physical enhancement ) で あ る と 。 も う 一 つ は 、 イ ン テ レ ク チ ュ ア ル ・ エ ン ハ ン ス メ ン ト ( intellectual
enhancement)ということで、もう一つは、例えば、モラル・エンハンスメント(moral enhancement)で、この境
界というものが、かなり難しいところがあるんだろうなということは思いますが、これはドイツの報告書からと
っているんですよね。この三つぐらいの分類をすることが多いですということです。
(AA) ちょっといいですか。この分類なのですが、前の分類のほうは何をエンハンスメントにするかによ
って分類しているので、身体、知能、精神とくるわけですね。これはわかるのですが、後者の分類の方は、
遺伝子とその他を並べると、これは方法による分類になるわけですね。分類のなんか遺伝子エンハンスメ
ントとヒューマン・エンハンスメントとされているのです
が。
どういう観点で分類しているかね。例えば私でした
ら、例えば手術、外科的な手術によるエンハンスメント
と、それから薬の薬学的なエンハンスメントですね。そ
れから、機械とつなぐサイバネティックス・エンハンスメ
ントと、手段によってこれは分類しているんだと。それ
で、やっぱり遺伝子操作による。
(土屋) そのとおりですね、すみません。定義という
のは大切です。何が言いたかったかというと、基本的
96
遺伝子決定論(還元論)と(遺伝学的)エ
ンハンスメントの関係性を問う意味
「遺伝子決定論」:人間の知能や行動は主に遺伝子によっ
て決定されているとする考え方、社会通念
■ エンハンスメント領域に属する人間の性質は多因子遺
伝に属するものであり、科学的エビデンスは不確実。
■多因子遺伝の発現は高度に確率論的であり、決定論的
な発想とは相容れない。
・人間の病気・特徴の複雑さ(複合性)が単純な遺伝子の
基質に還元される形で、社会イメージが形成される危険
性。
・「遺伝子決定論」的な社会認識が、遺伝子技術利用の促
進や遺伝子差別等の問題を加速する可能性。
には、エンハンスメント領域は極めて広いわけですね。
遺伝子(技術)に対する社会意識の位相
広い中で、遺伝問題に関して扱いますという、その1
点だけです。ここでは遺伝子決定論と遺伝学的エン
ハンスメントへの意識の関係性を社会意識分析の位
相で問うということです。
基本的に、この遺伝子決定論は、いろいろな定義
がいろいろな人によってされますけれども、人間の機
能や行動というのは、主に遺伝子において決定され
■ 以下では、遺伝子技術の(エンハンスメント領
域での)利用・遺伝子のイメージ・知識など、遺
伝子(技術)をめぐる社会意識の位相を、社会調
査の中から明らかにする。
■ 以下では、エンハンスメント論の中で議論され
る主題群のうち、代表的なカテゴリーである体力
や身体能力/知能(頭のよさ)/老化の3カテゴ
リーに関する意識の分析を行う。
ているという考え方や社会的な通念を批判的に吟味
する際に使われる概念です。
基本的にエンハンスメント領域に属する人間の性質というのは、その多くが多因子遺伝に属しています
ので、科学的なエビデンスの構築には不確実性が伴いますよね。ということが1点あるのと、あと、もう一つ
の論点として、この多因子遺伝の発現というのは、先ほども言いましたが、確率論的であると。基本的に決
定論的な発想とは相入れないという側面というのがあるわけですよね。遺伝子に関する社会的表象のさ
れ方を見てみると、ある種の単純な遺伝子の基質に還元される形で、社会イメージというのが構成されて
いる場合が多い。肥満というのは、いや、遺伝子でわかるんだよといったかたちでの、すごく単純化された
フォーマットに落とされて、社会言説としては流布するわけですよね。遺伝学的検査の宣伝がなされるとき
もそうですよね。翻って、そうした遺伝子決定論的な社会的価値観の流布の中に、遺伝子差別等々の問
題が加速するというか、生じる可能性というのは恐らくあるんだろうという問題意識があります。
そこで、社会意識調査というフォーマットでこの問題を検証する意味がどこにあるかということがあると思
うんですけれども、以下では遺伝子技術のエンハンスメント領域での受容意識に対して、遺伝子のイメー
ジ・知識等々と遺伝子をめぐる社会意識の位相というのがどのようなかたちで関係しているのかを調査し
ましょうということで、主題群として、「体力や身体能力」「知能」及び「老化」の3カテゴリーを選びました。知
能という言い方はいやなのですけれども、頭のよさに関係する遺伝学的エンハンスメントがもし可能である
のならば利用してみたいかどうかと。この三つのカテゴリーというのは、日本で、いわゆる遺伝子治療、遺
伝子改変等の文脈で出てきているものではないのですが、遺伝子検査のレベルでは既に出てきているも
のをあえて選んで、三つの主題を以下では分析にかけ検証しました。
3.調査設計および作業仮説・分析モデル
続いて調査の設計に関してです。ちょっと細かいこと
が幾つかありますが、基本的に 20~69 歳までの方を 5
歳刻みのセルを作り、男女および既婚/未婚各セル
に関して、2005 年の国勢調査の人口分布に合わせて、
サンプリングをしました。また、全国 47 都道府県があり
ますが、これが均等になるようにサンプリングをして、質
問票を配信し、各セルが充填された時点で集計を打
ち切るということをいたしました。基本的に、ウェブ調査
と郵送調査の合併になります。特に 60 歳代後半の方と
97
作業仮説
【エンハンスメント的主題(体力や身体能力/頭のよ
さ/老化)に関して】
■遺伝子技術利用への意識に対する、人々が有して
いる遺伝学的知識量の影響力とそのベクトル■
知識量大
知識量小
■遺伝子技術利用への意識に対する、人々が有して
いる遺伝子決定論(感)の影響力とそのベクトル■
強い
弱い
いうのは、ウェブを持っている方という
のは、そこまで多くないので、こちらは
分析モデル(ロジスティック回帰分析)
郵送で補填したというふうに形になっ
ています。
モデル間比較
次に作業仮説について説明致しま
す。基本的に検証命題の一つとして、
エンハンスメント的な主題、ここでは
体力や身体能力、頭のよさ、老化に
関して、その遺伝子技術利用への意
識に対する、人々が有している遺伝
の知識の量の影響力が、どういう形と
ベクトルで関係しているのか。例えば
知識がある人ほど、遺伝子技術利用
に対して積極的になるのか、ならないのか、逆なのか。また、どのような知識を持っている人が、遺伝子技
術に対する評価をどういう形で受けとめるのかということが、問いの一つとしてあるわけであります。
ここでご紹介するのは一般市民向けの調査になりますが、研究班で行った専門家向けの調査では、知識
の量というのが技術利用に対して慎重なかたちに働くということがあります。
一方で、では一般市民意識調査では知識量と遺伝子技術受容意識の関係性はどのようにどうなかたち
で構築されているのか、という論点がまずあります。
もう一つは、遺伝子決定感、後で詳しく説明しますけれども、例えば肥満や背丈、うつなどの 12 項目に
対して、どのくらい遺伝で決定していると思うかを聞いた設問を利用しまして、どのトピックに対して決定感
をより強く抱く方々が、遺伝子技術もしくはエンハンスメント領域に対する遺伝技術の利用に対してどのよ
うな態度を取りやすいのか、という遺伝観と遺伝子技術の受容意識との関係性のあり方が、もう一つの論
点になります。
次に分析モデルなのですが、二項ロジスティックモデルを使用して、エンハンスメントに関する体力や身
体能力、頭のよさ、老化の 3 カテゴリーに対して日常的に抱いている意識の強さを従属変数としたモデル、
およびその 3 カテゴリーに関する能力向上に対して遺伝子技術を用いることに関する意識の強さを従属
変数とする 2 つのモデルを比較するというかたちで分析を進めています。
多分この比較分析は、エンハンスメントを解く上では一つ重要な論点になるのかなと思うわけですが、日
常生活の中で体力や老化といったエンハンスメント的な主題に対する関心度というものがそもそもどういう
形で抱かれているのかということと、それではそうした
人間特性を遺伝子技術を使用して向上させたいかどう
か、ということは別の位相に属する問題であるはずです。
この 2 つの主題に対する社会意識の分布がそれぞれ
どのような形で異なるのかという点は、検証に値する論
従属変数(被説明変数)の作成
①各項目に関する日常的な関心度(3項目:体力
や身体能力/頭のよさ/老化)
【意識構造の差異を分析】
②(遺伝学的)エンハンスメントへの需要/忌避感
(3項目:体力や身体能力/頭のよさ/老化)
点であると思います。
4.従属変数の作成
98
関心度に関しては、「あなたは
ご自身に関する以下の事柄に関
【関 心 度 】 Q
あなたはご自身に関する以下の事
柄 に関 してどの程 度 関心 をお持ちですか 。
してどの程度関心をお持ちです
か」という設問を設定して、「容
姿」「背丈」「体力や身体能力」
「頭のよさ」「老化」「性格」といっ
たエンハンスメント領域に属する
老化
頭 のよさ
体力や身体能力
肥満
生活習慣病やがん
性格
容姿
うつ
薬の効きやす さ
背丈
生まれつきの病気
主題に対する日常生活における
0%
20%
40%
大変関 心 が ある
あまり関心が な い
関心度と、「肥満」「生活習慣病
60%
80%
100%
ある程 度 関心が ある
ほとんど関 心がな い
やがん」「うつ」「生まれつきの病
気」「薬の効きやすさ」「犯
罪の起こしやすさ」の 12 項
目に関して 4 尺度でその
【エンハンスメントへの需要/忌避感】
回答者の意識分布
度合いを質問票では聞い
ておりますが、この報告で
は、特に「体力や身体能
力」「頭のよさ」「老化」の各
項目に対する項目を使用
しております。
遺伝子の改善ー老化
遺伝子の改善ー頭のよさ
遺伝子の改善ー体力や身体
薬の服用 -老化
薬の服用 -頭のよさ
薬の服用 -体力や身体能力
外科的手術 -老化
外科的手術 -頭のよさ
外科的手術 -体力や身体能力
0%
20%
40%
60%
80%
「大変関心がある」「ある程
利用してみたい
どちらかといえば利用してみたい
度関心がある」と答えた方
どちらかといえば利用してみたくない
利用してみたくない
を高関心群と致しまして、
「あまり関心がない」「関心
100%
※エンハンスメントに対して、利用してみたい/どちらかといえば利用してみ
たいと回答した方1423/3000(体力や身体能力)、1484/3000(頭の
よさ)、1897/3000(老化)の集計
がない」と答えられた方を
低関心群としまして、この
両者の比率を対数変換したものを従属変数、つまり、説明される側の変数にするというモデルを組み立て
ています。
次に、エンハンスメントに関する設問ですが、「エンハンスメントって何?」ということで加えて、このような
説明を加えています。
(参考)エンハンスメントに関する説明
<エンハンスメントって何?>
■ 病気を治療したり健康を維持・回復したりする目的を超えて、自分の能力や性質をよりよく改善
するために医療技術を用いることを「エンハンスメント」といいます。
■ 「エンハンスメント」の中には、より端正な顔立ちにする目的で美容整形をしたり、低い身長をホ
ルモン治療で伸ばしたり、身体能力を向上させるためにくすりを服用したり、沈み込みがちな自分
の性格を改善したり、記憶能力や思考能力を医療技術を用いてよりよいものにしたり、といったこと
が含まれます。
99
■ また今後の研究次第では、上記のような能力や性質の改善に、遺伝子に関係する医療技術
を利用する動きがあるかもしれません。
【エ ン ハ ン ス メン トへ の 需 要 / 忌 避 感 】
変数作成
続いて設問文ですが、「能力や性質の改善のた
めの方法として、列記された三つの方法全てが同
等に有効・無害で、かつ、同金額で利用可能だとし
た場合、それぞれどの程度やってみたいと思われま
すか」という形で、「列挙した改善方法には、現在技
術的に可能なものとそうでないものが含まれていま
■ 【高 関 心 群 】大 変 関 心 が あ る (利 用 して み た い )・あ
る程 度 関 心 が あ る (ど ちらか とい え ば 利 用 して み た
い )= 1
■ 【低 関 心 群 】あ ま り関 心 が な い (ど ち らか とい え ば 利
用 した くな い )・関 心 が な い (利 用 した くな い )= 0
Log( p / 1-p )
p / 1-p = 高 関 心 群 / 低 関 心 群 の オ ッズ
すが、全て可能と想定してお答えください」というた
だし書きをつけて、三つの方法を聞きます。遺伝子
の改善という方法と、薬の服用ということと、外科手術ということ、これ、三つなんですけれども、を聞いてい
ますということで、こういう分類になっているわけですが。
これは、ちょっと注意しなきゃいけないのは、最初にこの設問の前に、そもそも、エンハンス、こういうもの
ですと、エンハンスメントを説明して、やってみたいと思いますかというふうな4項目を出しているわけです。
その中で、やってみたい、どちらかというとやってみたいという人に対して、この設問をしているわけですね。
なので、例えば、この体力や身体能力であれば、3,000 人いる中の 1,423 人の方が回答していると。その
中の分布がここに出ているわけですね。
次に変数の作成に移ります。先ほども言いましたが、高受容意識群として、上記項目に対して「利用して
みたい」「どちらかといえば利用してみたい」と答えた人を1とコーディングをして、低関心群として、「どちら
かといえば利用したくない」「利用したくない」と答えた人を0としています。Log(p / 1-p)のpというのは、高
関心群の方の出現予測確率ですね。また同様に(1-p)というのは、低関心群の方の出現の出現予測確
率になります。この「高関心群の方の出現予測確率/低関心群の方の出現の出現予測確率」を対数変
換して、これはロジットと言われるモデルなんですけれども。この値が性別や年齢・職業などの変数におい
てどのようなかたちで影響を受けるのか、というモデルをとっているわけです。例えば年齢で、男性だった
場合には、対数変換した「高関心群の方の出現予測確率/低関心群の方の出現の出現予測確率」はど
のくらい変化するか等々のモデルをつくっているということになります。
ここまでが、従属変数、説明される側の変数の作成に関する説明でした。
5.独立変数の作成
次に、独立変数、説明する側の変数の作成に話を
移します。
まず遺伝学の知識量を測るための尺度構成に関し
てですが、調査票では遺伝学に対する知識設問を
独立変数(説明変数)の作成
■遺伝学に対する知識量
(10設問の正答数:1-10)
10 問出して、正誤をとっています。その正答設問数
を加算し点数化して、10 点満点の尺度を作成してい
ます。
100
■遺伝子決定論(感)の強さ/弱さの程度
(遺伝子決定感の傾向の因子分析結果
の得点)
次に、遺伝子決定感の強さ、弱さの程度に関する尺度構成ですが、遺伝子決定感に関する設問の傾
向を因子分析という方法にかけて、得点化しています。
最初に知識量の設
問への正答率ですが、
基本的に正答率が高
【知識量】遺伝学に対する知識量(10設
問の正答数の分布:1-10)
いのは、例えば「イエ
ス」と答えれば正解だ
1
という項目の中では、
0%
「ある種の病気の発生
0点
20%
1点
2点
には、遺伝子と環境、
生活要因がかかわっ
ています」という設問
は、かなり設問への正
答率が高い。その他
は、「病気の原因にな
る遺伝子を持っていて
40%
3点
度
0 点
1 点
2 点
3 点
4 点
5 点
6 点
7 点
8 点
9 点
1 0 点
合 計
4点
数
1
1
3
5
7
6
2
3 0
6
1
3
5
1
8
6
8
6
0
2
0
6
6
4
3
1
4
0
2
4
6
4
0
60%
5点
80%
6点
7点
ハ ゚ー セ
2 .
0 .
1 .
1 .
3 .
6 .
1 2 .
1 9 .
2 5 .
2 0 .
7 .
ン ト
2 0 0
5 3 3
1 3 3
7 6 7
7 0 0
1 3 3
0 0 0
4 0 0
4 6 7
2 0 0
4 6 7
1 0 0
8点
累
100%
9点
10点
積
ハ ゚ー セ ン
2 .2 0
2 .7 3
3 .8 6
得点は6~8点範
5 .6 3
9 .3 3
囲を中心に分布
1 5 .4 6
2 7 .4 6
4 6 .8 6
7 2 .3 3
9 2 .5 3
1 0 0 .0 0
ト
0
3
7
3
3
7
7
7
3
3
0
も、まったく健康に生活している人がいる」という設問などはかなり正答率が高いわけですね。他方で、例
えば「遺伝子のタイプは、人工的には変えることができない」という設問では正答率がかなり下がります。
逆に、「ノー」と答えれば正解だという項目の中では、結構、おもしろいのですけれども、「からだのそれ
ぞれの部分によって、含まれる遺伝子は異なっている」や「ひとの遺伝子というのは生涯の間に少しずつ
変化する」といった設問で正答率が下がります。これを特定分布したのが、次の図です。0~10 点で尺度
構成をしました。全体的に点数が高くて、6 点、7 点、8 点、9 点の方がかなり多いことが分かります。
次に遺伝子決定感に関する設問の尺度構成法についてですが、「以下の事柄に関して、遺伝子が決
定しているとどのくらい感じますか」という設問に対して 12 項目(「容姿」「背丈」「体力や身体能力」「頭の
よさ」「老化」「性格」「肥満」「生活習慣病やがん」「うつ」「生まれつきの病気」「薬の効きやすさ」「犯罪の起
こしやすさ」)の主題を投げかけています。
この結果をこのままだと、どうやって使っていいかわかりませんので、変数の要約をします。因子分析と
いう手法にかけるわけですけれども、この 12 項目の中で、どの項目とどの項目が近いかという項目ごとの
因子分類をしています。
少しテクニカルなことを説明致し
ますと、固有値1以上の4因子を
抽出しました。2つ以上の因子に
因子負荷量 0.5 以上ある項目、頭
のよさというのを省いて、11 項目
で因子分析にかけた結果が、こう
いう結果です。
この分析結果は、結構これはこ
れでおもしろいのですが、これは
【決定感】Q. 以下の事柄は、どれくらい
遺伝子が決定していると感じますか。
遺伝子決定
感の強い順
生まれつきの病気
容姿
背丈
頭のよさ
体力や身体能力
薬の効きやすさ
生活習慣病やがん
性格
老化
肥満
うつ
犯罪の起こしやすさ
0%
すべて遺伝子
半々くらい
すべて生活環境
101
20%
40%
60%
80%
100%
どちらかといえば遺伝子
どちらかといえば生活環境
遺伝子決定感に関してなんで
すけれども、遺伝子決定感に
関しては、「 背丈」である とか
「容姿」であるとか「体力や身体
能力」といった、人間の外見に
関する決定感の強さは近い関
係にあります。この因子をここ
では「身体・外面性因子」と名
づけてあります。
また、「性格」であるとか、「犯
【決 定 感 】変 数 要 約 (遺 伝 子 決 定 感 ):因 子
分析
(主 因 子 法 ・バ リ マ ッ ク ス 回 転 )
第 一 因 子 (身 体 ・
外 面 性因 子 )
第二 因 子 (精 神・
内 面性 因 子 )
第 三 因子 (予 防
医 療 領域 因 子 )
第 四 因子 (医 療
領 域因 子 )
回 転 (バ リマックス回転 )後 の 因子 行 列
背丈
0.710
0.033
0.106
決 定 感 に 関 し0.143
て 、背
丈 ・容 姿 ・体 力0.201
や身体
容姿
0.636
0.016
0.112
能力は近い関係
体 力 や 身体 能 力
0.549
0.350
0.205
0.061
性格
0.243
0.636
0.185
-0.082
決 定 感 に 関 し て 、性
0.560
0.221
犯 罪 の 起こしや すさ -0.028
格 ・犯 罪 の 起 0.184
こしやす
さ ・うつ は 近 0.199
い関係
うつ
0.015
0.517
0.347
肥満
0.153
0.174
0.796
0.017
決0.136
定 感 に 関 し て 、肥
生 活 習 慣病 や が ん
0.204
0.556
0.120
満 ・生 活 習 慣 病 や が
老化
0.504
0.172
ん0.145
・老 化 は 近 い 関0.265
係
薬 の 効 きやす さ
0.091
0.168
0.113
0.640
生 まれ つ きの病 気
0.080
0.563
決0.176
定 感 に 関 し て-0.019
、薬 の
効 き や す さ ・生 ま れ つ き
の病気は近い関係
※ 固 有 値 1 以 上 の 4因 子 を 抽 出 。2 つ 以 上 の 因 子 に 因 子 負 荷 量 0.5以 上 あ る 項 目
(頭 の よ さ )の 削 除 。
罪の起こしやすさ」と「うつ」とい
うのは、実は遺伝子決定感の
中では近い関係にあるわけですね。この因子をここでは「精神・内面性因子」というふうに呼んでいます。
また、遺伝子決定感に関して「肥満」と「生活習慣病やがん」や「老化」というカテゴリーは近い関係にあ
って、ここでは「予防医療因子」と名づけてあります。
最後に、「薬の効きやすさ」と「生まれつきの病気」というのは、かなり似た傾向が決定感の傾向がある。
これを「医療領域因子」というふうに呼んでいます。
この四因子の強さそれぞれが、遺伝子技術の例えばエンハンスメント的利用に対する態度に対して、ど
ういう影響を与えているかというところが、一つ論点になるわけであります。
6.分析結果
ロジスティック回帰分析というのは、先ほど言
いましたが、高関心群の予測確率が分子になっ
回帰方程式(ロジステイック回帰分析)
対数オッズ
て、低関心群の予測確率が分母になる。この比
率を Log でとって、この変化率に対して、例えば
性別であるとか、年齢であるとか、遺伝子の知
識量や認識の程度というものが、どういう関係に
あるかというかたちの関数を組み立てます。基
Log(P(高関心群の予測確率) / 1-P(低関心群の予測
確率))
=β0+β1*X1(性別)+β2*X2(年齢)+・・・・+
βm+*X2(遺伝子に対する知識・認識の程度)
本的にはオッズ比の測定になります。
諸変数の影響力
(オッズ比の測定)
6-1.「体力や身体能力」への関心度・遺伝学的エンハンスメントの受容意識を従属変数とするロジステ
ィック回帰分析結果
この表は「体力や身体能力」に関する「関心度」および「遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識を
従属変数として構成されたモデルです。「関心度モデル」というのは、関心度と諸変数との関係性を図式
化したモデルです。このモデルは、遺伝子技術のエンハ
ンスメント的利用に関する受容意識と比較するためにつくったモデルなので、遺伝子決定感であるとか、
遺伝子の知識の量というのは省いたモデルです。一番右側のモデルが、遺伝学の知識量および遺伝子
決定感に関する尺度を含んだモデルで、それぞれの変数がどのような効果を持っているかということを測
102
分析結果((体力や身体能力)(ロジットモデル)従属変
数 関心度:エンハンスメントへの需要・忌避感)
女性は関心度は高いが、エンハンスメント
(EH)に対しては逆に忌避感が強い
関心
(体 力 や 身 体 能
OR
W a ld
1 .0 0 0
1 .3 0 3
5 .8 2 7
1 .0 0 0
0 .9 6 2
0 .1 3 4
1 .0 0 0
0 .5 0 1 1 4 .0 1 3
0 .4 7 4 1 9 .0 0 7
0 .5 2 5 1 3 .5 4 8
0 .5 8 5
9 .7 4 4
1 .0 0 0
1 .0 7 1
0 .3 3 7
1 .3 3 4
2 .3 8 7
1 .2 1 6
1 .0 9 8
1 .0 0 0
2 .0 4 7
5 .5 7 0
2 .2 6 0
6 .8 8 6
2 .6 9 0 1 0 .5 7 3
2 .8 0 1
7 .7 0 7
1 .0 0 0
1 .1 8 0
2 .8 0 6
基礎属性モデル
遺伝子知識込みモデ
(エ ン ハ ン ス メ ン ト )
ル (エ ン ハ ン ス メ ン ト )
OR
W a ld
OR
W a ld
(男 性 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
性別
女性
*
0 .6 7 1 2 0 .2 4 2 * * *
0 .6 5 4 2 2 .3 2 8 * * *
(未 婚 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
未既婚
既婚
0 .8 9 0
1 .8 4 0
0 .8 8 2
2 .0 9 4
60歳代の方で特に関心度が
(60歳 代 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
高いが、EHへの意識は年齢
20歳 代
***
0 .9 3 9
0 .2 0 0
0 .9 9 9
0 .0 0 0
によって大きな差はない
年齢
30歳 代
***
1 .0 0 2
0 .0 0 0
1 .0 5 4
0 .1 5 5
40歳 代
***
0 .9 6 2
0 .0 8 8
0 .9 7 7
0 .0 3 0
50歳 代
**
0 .7 1 8
6 .4 8 5 *
0 .7 1 1
6 .7 3 0 * *
就業形態で関心度は大
(無 職 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .3 2 4
8 .1 5 2 * *
1 .3きな差はないが、EHへ
40
8 .7 1 3 * *
就業形態 フルタイム就業
パ ー トタイ ム 就 業
1 .1 1 8
0 .5 5 8
1 .1のニーズは毎日外で働
09
0 .4 7 0
自 営 ・家 族 従 業 者
1 .1 9 3
1 .4 3 4
1 .2 1 9
1 .7 7 4
いている方の間で高い
(中 学 校 卒 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
高等学校卒
*
0 .8 5 9
0 .2 7 2
0 .8 4 3
0 .3 3 9
学歴
短 大 ・専 門 学 校 卒
**
0 .8 8 7
0 .1 6 5
0 .8 4 4
0 .3 2 3
遺伝学知識がある人ほどEH
大学卒
***
0 .8 7 6
0 .2 0 8
0 .8 0 0
0 .5 8 0
ニーズが高まる。
大学院卒
**
0 .6 4 8
1 .6 5 5
0 .5 8 1
2 .5 5 2
(文 系 ・な し )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
文理系
理系
1 .0 2 4
0 .0 8 8
0 .9 9 7
0 .0 0 1
外 面 ・身 体 因 子
1 .2 0 0 1 4 .9 8 0 * * *
高学歴であるほど関心度が高まる
遺伝子
内 面 ・精 神 因 子
1 .0 8 9
2 .8 5 2
が、EHへの意識は学歴で差はない
決定感
予防医療因子
1 .1 0 4
4 .5 9 8 *
医療因子
1 .2 0 1 1 2 .2 7 3 * * *
知識
遺伝学の知識量
1 .0 5 1
6 .1 6 2 *
外見や先天異常・薬剤応答性などに決定
定数
2 .9 2 4 感を感じる方に、EHニーズが強い
1 0 .6 0 3 * * *
0 .5 9 8
2 .8 4 4
0 .4 3 6
5 .9 3 9 *
* p < .0 5 * * p < .0 1 * * * p < .0 0 1
力)
定するモデルです。
例えばこの「体力や身体能力」の関心度を従属変数としたモデルの場合ですと、男性が1とした場合の
オッズ比が、女性では約 1.3 という結果が出ておりまして、男性よりも女性の方が日常的に「体力や身体能
力」に関して抱く関心度が 1.3 倍高いわけです。またその結果は5%水準で有意に高いというのがこの部
分の結果です。では、エンハンスメントに関してどうですかというような質問をした場合に、極端に実は女
性においては忌避感が強まるわけです。この結果は 0.1%水準で有意な結果が出ており、オッズ比は約
0.67 です。逆に言えば 0.1%水準で男性に相対的に高い遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識が
存在するということでもあります。
年齢に関しては、「関心度モデル」を見てみると、60 歳代の方を1とした場合に、20 歳代の人はオッズ
比が 0.5 ぐらい、30 歳代の人が 0.47 くらいですから、20 歳代、30 歳代、40 歳代の方は、そんなに実は「体
力や身体能力」に関して日常的な関心度は高くないわけです。翻って、遺伝学的エンハンスメントの受容
意識に関しては、そこまで年齢の差がない。50 歳代を唯一の例外として年齢効果が消えるということが伺
えます。
次に、外でフルタイムで働いている場合、もしくはパートタイムで働いている場合、もしくは自営業で家で
働いている場合を見ていこうと思います。「体力や身体能力」に対する
日常的な関心度に関しては、就労形態に関して有意な差はないわけです。一方で、遺伝学的エンハンス
メントの受容意識に関しては、実は外で働いていると、まさにニーズが高まるということで、ああ、そうなの
かなと。外で働いていると、そうなのかなと思います。
次に、学歴ですけれども、「体力や身体能力」に関する日常的な関心度としては、これもそうなのかなと
103
思うんですが、高学歴の方であるほど関心が高まります。他方で、遺伝学的エンハンスメントの受容意識
に関しては学歴差というのはほとんどないわけです。文理系の差異による意識の違いというものもほとんど
ないということが分かります。
一方で、それでは遺伝子決定感がどういう形で遺伝学的エンハンスメントの受容意識に関係しているか
という論点に関してですが、例えば第1因子、ここでは「身体・外面性因子」と名づけたわけですけれども、
「容姿」ですとか、「背丈」であるといった主題に対してより遺伝子決定感が強い方は、遺伝学的なエンハ
ンスメントに対して需要が高い。0.1%水準で有意であり、かなり強い効果がそこに見て取れます。
一方で、第2因子というのは、ここでは「精神・内面性因子」と名づけた因子ですが、例えば「うつ」である
とか、「犯罪の起こしやすさ」であるとかの主題に関する遺伝子決定感の強さを尺度化した変数に関して
は、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に対して影響力が出ていないということが分かります。
このモデルの中では、「身体・外面性因子」と並んで強い効果が検出されたのは最後の「医療因子」であ
りまして、「生まれつきの病気」であるとか、あとは「薬の効きやすさ」ですよね。この二つに対して、かなり
強い決定感を抱く方というのは、遺伝学的エンハンスメントに対して実はプラス、ポジティブな意識を抱き
やすい。
では、次に遺伝学の知識量と遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識との関係性を見ていきます。
表からも読み取れるように、遺伝学的知識量の多い方は、エンハンスメントに対する遺伝子技術利用への
受容意識を実はポジティブに引き上げる効果があるということが見て取れます。この結果は 5%水準で有
意です。
以上が「体力や身体能力」に関するモデルの分析結果であります。
6-2.「頭のよさ」への関心度・遺伝学的エンハンスメントの受容意識を従属変数とするロジスティック回
帰分析結果
次に、「頭のよさ」に関する「関心度」および「遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識を従属変数と
したモデルに関して見ていきたいと思います。
基本的に、実はエンハンスメントに対する意識の分布というのは、各主題(「体力や身体能力」「頭のよ
さ」「老化」)間で似た構造を持っています。まず、「頭のよさ」に対する日常的な「関心度」に関してですが、
女性のほうが日常的に関心があると答える傾向がかなり高いことが分かります。オッズ比は男性1に対して
女性が約 1.8 であって、性別の効果は 0.1%水準で有意という結果が出ています。一方で、遺伝学的エン
ハンスメントへの受容意識に関しては、逆に女性において忌避感の方がかなり強いことが見て取れます。
オッズ比は男性1に対して女性で 0.713 ですので、男性に比べてかなり低い数値が出ている。逆に言え
ば遺伝学的エンハンスメントに関しては、男性の側に相対的に強いニーズが存在するということも出来ま
す。
104
分析結果(頭のよさ)((ロジットモデル)従属変数関心
女性の方が関心度は極めて高いが、エンハンス
度:エンハンスメントへの需要・忌避感:モデル間比較)
メント(EH)に対しては逆に忌避感が極めて強い
基礎属性モデル
遺伝子知識含モデル
(エ ン ハ ン ス メ ン ト)
(エ ン ハ ン ス メ ン ト)
OR
W a ld
OR
W a ld
OR
W a ld
(男 性 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
性別
女性
1 .8 0 5 2 7 .6 6 0 * * *
0 .7 1 3 1 5 .5 9 3 * * *
0 .6 9 0 1 8 .1 0 9 * * *
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
未 既 婚 (未 婚 )
既婚
0 .8 5 7
2 .0 5 7
0 .8 5 7
3 .4 1 4
0 .8 4 3
4 .0 8 0 *
(60歳 代 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
20歳 代
1 .5 8 6
6 .8 1 0 * *
1 .1 2 4
0 .7 4 0
1 .2 3 8
2 .2 2 6
20歳代で関心度が強い。EH
年齢
30歳 代
1 .1 2 1
0 .5 7 6
1 .1 2 1
0 .8 3 3
1 .2 1 0
2 .1 2 5
40歳 代
1 .2 6 3
2 .2 6 7
1 .1 1 6
0 .7 4 7
1 .1 5 7
1 .2 5 4
への意識は年齢差なし
50歳 代
1 .1 9 9
1 .5 1 2
0 .9 7 9
0 .0 3 0
0 .9 8 4
0 .0 1 6
(無 職 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
就業形態で関心度は大差はない
1 .0 1 0
0 .0 0 7
1 .2 2 4
4 .5 9 8 *
1 .2 3 1
4 .7 2 6 *
が、EHニーズは毎日外で働いて
就 業 形 態 フル タイム 就 業
パ ー トタイム 就 業
1 .2 3 8
1 .2 2 0
1 .3 4 3
4 .4 9 9 *
1 .3 3 2
4 .1 7 0 *
いる方の間で比較的高い
自 営 ・家 族 従 業 者
0 .9 4 1
0 .1 2 5
1 .0 0 0
0 .0 0 0
1 .0 2 0
0 .0 1 8
(中 学 校 卒 )
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
高等学校卒
1 .2 5 5
0 .5 2 6
0 .7 4 2
1 .1 6 7
0大卒以上で関心度が
.7 1 3
1 .4 6 8
学歴
短 大 ・専 門 学 校 卒
1 .5 3 9
1 .7 9 7
0 .7 2 8
1 .2 7 3
0高まる。EH意識の学
.6 7 5
1 .9 1 7
大学卒
2 .2 5 1
6 .5 9 6 * *
0 .6 9 9
1 .6 9 0
0 .6 2 5
2 .8 4 3
歴別の差異はない。
大学院卒
3 .1 2 8
7 .9 7 4 * *
0 .5 3 3
3 .7 9 9
0 .4 7 3
5 .2 5 0 *
1 .0 0 0
1 .0 0 0
1 .0 0 0
文 理 系 (文 系 ・な し )
理系
1 .1 5 0
2 .0 0 2
0 .9 5 8
0 .3 1 2
0 .9 4 0
0 .6 1 4
外 面 ・身 体 因 子
1 .2 6 2 2 5 .6 5 5 * * *
遺伝学知識がある人ほどEH
遺 伝 子 内 面 ・精 神 因 子
1 .1 1 9
5 .3 0 1 *
決定感 予防医療因子
1 .1 1 3
5 .7 6 3 *
ニーズが高まる。
医療因子
1 .1 7 8 1 0 .5 3 4 * * *
外見や先天異常・薬剤応答性などに決定
知識
遺伝学の知識量
1 .0 3 9
4 .0 8 0 *
定数
1 .8 8 4 感を感じる方に、特にEHニーズが強い
3 .6 0 9
0 .7 9 3
0 .6 3 7
0 .6 3 2
1 .9 9 1
* p < .0 5 * * p < .0 1 * * * p < .0 0 1
関心度
次に年齢変数の効果を見ていきますと、「頭のよさ」に関する日常的な関心度は 20 歳代の方で特に高
いわけです。やはり 20 歳代の方というのは、頭のよさに関して問題意識を持つのかなと思うわけですけれ
ども。翻って、それでは遺伝学的エンハンスメントの受容意識を従属変数にとった場合には、これは年齢
効果がなくなることが見て取れます。
次に就業形態に関して見ていきますと、これは「体力や身体能力」に関する分析と似た傾向がありまして、
「頭のよさ」に対する日常的な関心度に関しては、就業形態によっては、大きな意識の差異は見出されな
いわけです。日常的な関心度の位相においては意識の差異はないわけですけれども、遺伝学的エンハ
ンスメントの受容意識に関してはどうかといった場合には、就業形態変数に有意な効果が見出される。つ
まり、外で一日、フルタイムで働いている人、もしくはパートタイムで定期的に働いている人においては、
遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識が高まる、ニーズが高まるということです。このフルタイムダミ
ーおよびパートタイムダミーの効果は 5%水準で有意です。
学歴変数に関して見ていきますと、「頭のよさ」に対する日常的「関心度」に関しては大学卒以上で一気
に上がることが分かります。つまり、大卒以上の方だと頭のよさに関して、かなり日常的には関心を持って
いるわけです。一方で、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に関しては学歴効果は消えています。そう
いう関係があるということです。
先ほども言いましたが、遺伝子決定感と遺伝学の知識量の効果に関しましては、そんなに実は、先ほど
の「体力や身体能力」の項目とは差異がない。同じような意識構造が見て取れます。つまり第1因子(「身
体・外面性因子」)、つまり人間の外見に対して、遺伝子決定感を強めに感じる、遺伝子が決定しているの
ではないかなと、より思う人に、遺伝学的エンハンスメントの受容意識が強いということと、実は、ここで第2
105
因子と第3因子も、この主題に関しては一応、有意差が出ていますけれども、より強いという意味では、第
4因子(「医療因子」)、つまり、「薬の効きやすさ」や「生まれつきの病気」に対して遺伝子決定感が強い方
というのは、遺伝学的エンハンスメントに対するポジティブな意識を抱きやすいということが言えます。遺伝
学的知識量に関しても、遺伝子の知識がある人ほど、遺伝学的エンハンスメントの受容意識が強まるとい
う結果が出ています。これは 5%水準で有意です。
6-3.「老化」への関心度・遺伝学的エンハンスメントの受容意識を従属変数とするロジスティック回帰分
析結果
最後に「老化」カテゴリーに対する日常的な関心度と遺伝学的エンハンスメントの受容意識を比較しま
す。
「老化」に関しても日常的な関心度は、男性よりも女性のほうがはるかに高い。オッズ比にして男性に比
して女性はその関心度が 3.56 倍高まるという結果が出ています。この結果は 0.1%水準で有意です。他
方で、遺伝学的エンハンスメントへの受容意識に関しては性別変数の効果は消えます。この点が「体力
や身体能力」「頭のよさ」カテゴリーに関して分析した結果とは異なる点です。
また年齢変数に関して見ていくならば、やはり年齢を重ねるほど「老化」に対する関心度は高まることが
分かります。20 歳代の方というのは、ほとんど老化には関心がない。60 歳代の方に比して 20 歳代の方の
オッズ比は 0.097 と、かなり低い値になっています。30 歳代、40 歳代と徐々にというか、関心度が上がって
くるわけですが、50 歳代・60 歳代の方の関心度が急激に上がることが見て取れます。このような「関心度」
に対する年齢変数の効果が見出される反面、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に関しては、年齢効
果は消えます。
106
分析結果(老化)((ロジットモデル)従属変数関心
度:エンハンスメントへの需要・忌避感モデル間比較)
基礎属性モデル
(関 心 度 )
(男 性 )
性別
女性
(未 婚 )
未既婚
既婚
(6 0歳 代 )
20 歳 代
年齢
30 歳 代
40 歳 代
50 歳 代
(無 職 )
就 業形態 フル タイム就 業
パ ー トタイ ム 就 業
自 営 ・家 族 従 業 者
(中 学 校 卒 )
高等学校卒
学歴
短 大 ・専 門 学 校 卒
大学卒
大学院卒
文 理 系 (文 系 ・ な し )
理系
外 面 ・身 体 因 子
遺 伝 子 内 面 ・精 神 因 子
決定感 予防医療因子
医療因子
知識
遺伝学の知識量
定数
OR
1.00 0
3.561
1.00 0
1.084
1.00 0
0.097
0.217
0.360
0.648
1.00 0
1.211
1.509
1.643
1.00 0
1.932
2.095
2.652
2.939
1.278
基礎属性モデル
(エ ン ハ ン ス メ ン ト )
W ald
W ald
3.162
3.808
6.960 **
6.423 *
OR
1.0 00
0.869
1.0 00
0.913
1.0 00
0.825
0.938
0.958
0.951
1.0 00
1.309
1.386
1.141
1.0 00
0.921
1.054
1.104
0.910
4.638 *
1.020
0.0 75
92.112 ** *
0.433
92.368 ** *
40.397 ** *
16.480 ** *
2.681
1.978
3.048
4.332 *
2.9 41
1.2 83
2.1 96
0.2 93
0.1 27
0.1 82
8.9 54
6.0 34
0.9 43
0.0 91
0.0 36
0.1 33
0.0 90
遺伝子知識含モデル
(エ ン ハ ン ス メン ト)
OR
W ald
1.0 00
0.84 2
4.203 *
1.0 00
0.90 4
1.538
年齢とともに関心度は増加す
1.0 00
るが、EHへの意識は年齢に
0.83 5
1.729
0.95 1
0.163
よって大きな差はない
0.94 8
0.186
0.92 2
0.457
自営業層で関心度は比較的
1.0 00
高いが、EHニーズは毎日外
**
1.34 3 10.370 * **
で働いている方の間で高い
*
1.39 0
5.938 *
1.17 3
1.333
1.0 00
大卒以上で関心度が
0.90 8
0.123
高まるが、EH意識の
1.00 2
0.000
0.99 4
0.001
学歴別の差異はない。
0.78 7
0.563
遺伝学知識がある人ほどEH
ニーズが顕著に高まる。
外見や先天異常・薬剤応答性などに決定
4.740感を感じる方に、特にEHニーズが強い
14.060 ** *
0.778
0.7 70
* p <.0 5 ** p< .0 1 * * *p <.0 01
0.97 3
1.23 5
1.04 2
1.13 7
1.32 2
1.08 1
0.48 4
0.134
23.270
0.781
8.860
32.600
17.414
5.142
* **
**
* **
* **
*
次に就業形態変数の効果ですが、「老化」に対する日常的な関心度に関しては、自営・家族従業者ダミ
ーにおいて 5%水準で有意に高まることが確認されている一方で、遺伝学的エンハンスメントに関しては、
フルタイムで働いていたり、パートタイムで働いている方においてその受容意識が高まるという結果が出て
います。
学歴変数に関して見ていくと、学歴の高さも「老化」に対する日常的関心度を高める効果が確認出来ま
す。一方で、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に関しては、学歴効果は、先ほどの「体力や身体能
力」や「頭のよさ」での分析と同様に消えます。
遺伝子決定感変数の効果に関しては、この「老化」項目に関してもかなり似た傾向を示しておりまして、
第一因子(「身体・外面性因子」)と第四因子(「医療因子」)の強さが遺伝学的エンハンスメントの受容意
識を高めるという結果が見て取れます。「老化」の場合特徴的なのは、第3因子(「予防医療因子」)の効
果です。例えば肥満であるとか生活習慣病などに対して、多少、遺伝子が決定しているんじゃないかなと
感じる度合いが強い人にとっては、「老化」に限ってはということになりますけれども、遺伝学的エンハンス
メントに対する受容意識が高まるという結果が出ています。
また、遺伝学的知識量に関しては、老化に関しては、かなり強いポジティブな効果が見られます。つまり、
遺伝額の知識がある人ほど、ニーズが高まるという。しかも、その効果も他の主題に比してかなり強く高ま
るという結果が出ています。
107
7.結果要約
以上の分析結果を要約します。ここまで、主題に関する日常的な関心度と遺伝学的エンハンスメントの
受容意識を比較するかたちで議論を組み立ててきました。
7-1.基礎属性
まず基礎属性変数に関して結果を要約していきたいと思います。
性別変数に関しては、これは各主題間でかなり共通した側面があって、日常的な「関心度」というのは、
「体力や身体能力」「頭の
よさ」「老化」の別に関わ
らず、女性のほうが高い。
しかも、かなり高いことが
結果要約① 関心度・EH意識モデルの
比較(基礎属性)
(各主題共通)女性の方が関心度は極めて高いが、エンハ
ンスメント(EH)に対しては逆に忌避感が強い
関心度は年齢により左
右するが(主題ごとに
ベクトルが異なる)、 EH
分析結果からは見て取
への意識は年齢によって
大きな差はない
れました。他方で、遺伝
学的エンハンスメントの
受容意識に関しては女
性の側に忌避感が強まる。
逆に言えば男性の側に
受容意識が高まるという
傾向がありました。
次に年齢変数を見てい
大卒以上で関心度が
高まる。EH意識の学
歴別の差異はない。
(共通)
EHニーズは毎日
外で働いている方
の間で高い(共通)
きますと、日常的な関心
度というのは、年齢によっ
て大きく左右されるわけです。「老化」は年齢が高い方の方が関心度は高まっていきますし、「頭のよさ」は
若年層により強い関心が見いだされます。一方で、年齢変数に関しては、遺伝学的エンハンスメントの受
容意識においては有意差が見出されないという結果が出ています。
学歴変数に関しては、「体力や身体能力」「頭のよさ」「老化」いずれの主題に関しても、高学歴の方ほど
関心が強まる傾向が見出されます。しかしながら、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に対する学歴変
数の効果は、実はいずれの主題に関しても見出されないという結果がみられます。
逆に、就業形態変数に関しては、基本的な主題に関する関心度に対しては、そこまで影響はないわけ
ですけれども、遺伝学的エンハンスメントの受容意識に関しては、特にフルタイム、外で毎日働いている
方にとって、かなり強い。かなりというか、そこそこ強い受容意識が見出されるという結果になっています。
以上、基礎属性に関する分析の要約を述べさせて頂きました。
7-2.遺伝子決定感変数・遺伝学の知識量変数
最後に、遺伝子決定感および遺伝学の知識量の両変数に関して結果を要約させていただきます。
基本的には、遺伝学の知識量、および遺伝子決定感の強さは、ともに、その値が高まれば高まるほど、
遺伝学的エンハンスメントに対する受容意識は高まるという結果が出ています。この両者の関係は一貫し
てプラスです。
108
遺伝子決定感に関しては、特に第1因子(「身体・外面性因子」)と第4因子(「医療因子」)、つまり人間
の外見に関して強い遺伝子決定感を感じる人、もしくは、「薬の効きやすさ」であるとか、「生まれつきの病
気」に対して遺伝子決定感が強い人というのは、遺伝学的エンハンスメントの受容意識がかなり高い傾向
結 果 要 約 ② 関 心 度 ・E H 意 識 モ デ ル の
比 較 (基 礎 属 性 )
※
「遺 伝 学 的 知 識 量 」「遺 伝 子 決 定 感 」と も に 、 符 号 は プ ラ ス
(知 識 量 ・決 定 感 が 高 い ほ ど 、 ニ ー ズ が 高 ま る 。 )
外 見 や 先 天 異 常 ・薬 剤 応 答 性 な ど に
強 い 決 定 感 を 感 じ る方 に 、特 に EH
ニ ー ズ が 強 い (共 通 )
性格や犯罪の起こしやすさなどに強
い 決 定 感 を感 じ る方 の 間 で は 、EH
ニ ー ズ に 大 き な 差 は な い (共 通 )
遺 伝 学 知 識 が あ る 人 ほ ど EH
ニ ー ズ が 顕 著 に 高 ま る 。そ の
傾向は特に老化 に関するエン
ハ ン ス メン トで 顕 著
にあるという結果が出ていまして、これは「体力や身体能力」「頭のよさ」「老化」各主題共通に見られる影
響関係であります。その意味で、遺伝学的エンハンスメントの受容意識と遺伝子決定感の関係性を考える
上では、この第一因子(「身体・外面性因子」)および第四因子(「医療因子」)の二つはポイントなわけで
す。他方で、特に第二因子(「精神・内面性因子」)、つまりは「性格」であるとか、「うつ」であるとかに対す
る遺伝子決定感の強さは、実は遺伝学的エンハンスメントの受容意識に対しては大きな効果がないことが
見いだされました。
また、遺伝学の知識量に関しては、その知識がある人ほど、遺伝学的エンハンスメントの受容意識が高
まるわけですが、その傾向は特に「老化」に関して強い。かなり強いですよね。この遺伝学の知識量と遺
伝学的エンハンスメントの受容意識、両者の関係性に関しては、その関係がプラスであった、ということは
重要な論点の一つだと思います。
その他、ここで報告させて頂いた分析に関して幾つか重要な点が欠けております。一つは、遺伝子決定
感もしくは遺伝学の知識量というのは、誰が、もしくは、どういう特性を持つ人が、そもそも強い決定感を抱
くのかという、遺伝子決定感や遺伝学の知識量自体を従属変数にした場合の内在的な分析というのが、
本来であればなされる必要がある。この点は今後の課題です。加えて、例えばエンハンスメントの受容意
識というのは、例えば、日々の健康実践のあり方、例えば「体重計に毎日乗っていますか」とか「スポーツ
ジに定期的に通っていますか」などの項目を調査内では尋ねていて、そうした日々の健康実践とのどのよ
うな影響関係下にあるのか、といった、日々のプラクティスと意識の関係性を問う視座があってもよいと思
います。これも今後の課題になるかなというふうに思っております。
御清聴ありがとうございました。報告は以上です。
109
付記:本報告は、文部科学省・平成 18 年度振興調整費採択課題『遺伝子診断の脱医療・市場化が来す
倫理社会的課題』研究代表:高田史男(北里大学医療系研究科准教授)の成果の一部です。
〔了〕
110
資料 6.バイオエシックスの「世俗化」をめぐって(2008.01.13, 京都)
(鳥取大学:安藤泰至)
バイオエシックスの「世俗化」をめぐって
―J.F.チルドレス東京講演の報告とコメント―
2008年1月13日、東京大学(文学部法文1号館219教室)において、東京大学大学院人文社会系研
究科グローバルCOE「死生学の展開と組織化」(拠点リーダー:島薗進(東京大学))の主催、文部科学
省科学技術振興調整費「意識の先端的脳科学がもたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究」研
究班(研究代表者:福山秀直(京都大学))の共催によって、ジェイムズ・F・チルドレス(ヴァージニア大学
教 授 ) の 講 演 会 が 行 わ れ た 。 演 題 は 、 「 バ イ オ エ シ ッ ク ス の 世 俗 化 ― 神 話 か 、 現 実 か ― ( The
Secularization of Bioethics : Myth or Reality ?)」(講演は英語で行われ、会場の聴衆には講演原稿の日
本語訳が配布された。質疑応答には通訳がつけられた)。
チルドレスは、1960年代、アメリカにおけるバイオエシックス(生命倫理学)の創成期から今日までずっ
と、生命倫理において中心的な役割を果たしてきた研究者であり、イエール大学大学院在学時代の同級
生でもあったトム・ビーチャムとの共著『生命医学倫理の諸原則(Principles of Bioemedical Ethics)』は19
79年にその初版が出版されて以来、改訂を重ねられ(現在第5版まで出版されており63、今年中に第6版
が出版予定)、生命倫理学における古典的教科書、概説書として世界中で読み続けられている。この本
があまりにも有名なせいもあって、チルドレスの名はもっぱら「ビーチャム&チルドレスの本の共著者」とし
て語られることが多い。他方でチルドレスは、イエール大学大学院に入る前にイエール神学校を卒業した
キリスト教神学者、宗教学者であり、リサ・ケイヒルとの共編著『キリスト教倫理(Christian Ethics)64』などの
神学的な著作、論文も執筆しているのだが、キリスト教的な文化背景をもたない日本では、こうした彼の神
学者、宗教学者としての側面はほとんど知られていない。後で述べるように、「宗教と生命倫理」という問
題領域は、それぞれの文化・社会によって焦点となる問題の位相こそ違うものの、今日至る所で新たな注
目が集まっている領域であり、日本でも本格的な研究が始まりつつある。そうした中で、宗教と生命倫理
の関係をめぐる上記のようなテーマでチルドレスの講演会が行われ、神学者、宗教学者でもある彼が両者
の関係をどのようにとらえているのかを知ることができたのは、たいへん意義深く、貴重であった。また、20
06年9月から2007年7月にかけて渡米し、チルドレスが所長を勤めるヴァージニア大学実践倫理研究所
のフェローおよび同宗教学科の客員研究員として在外研究を行った筆者にとっても、感慨深い講演会と
なった。
以下、チルドレスの講演内容を要約、紹介し、日本における「宗教と生命倫理」の状況をふまえながら、
筆者の簡単なコメントを記すことで、この講演会の報告としたい。
1、バイオエシックスの起源とキリスト教神学の関係をめぐる二つの見方
チルドレスはまず、1960年代末から1970年代初めにかけてアメリカで成立したバイオエシックス(生命
倫理学)がキリスト教神学とどのような関係にあったのかについての、二つの異なった物語を対比させるこ
Tom L. Beauchamp, James F. Childress, Principles of Biomedical Ethics,5thEdition.
Oxford University Press,2001
64 James F. Childress, Lisa S. Cahill(eds.), Christian Ethics : Problems and Prospects. Pilgrim Press, 1996
63
111
とから始めた。すなわち、アルバート・ジョンセン65やダニエル・キャラハンなどによる第一の物語によれば、
バイオエシックスの創設者たちの多くはキリスト教神学者や、宗教的価値観の強い哲学者、科学者、臨床
医たちであった(たとえばジョゼフ・フレッチャー、ポール・ラムジー、ジェイムズ・ガスタフソン、リチャード・
マコーミック、イマニュエル・ジャコボヴィッツ、ウィリアム・メイ、レオン・カス。講演では自分自身の名は省
いたようだが、もちろんチルドレス自身もここに含まれる)。しかし、バイオエシックスが一つの新しい学問
領域として成立し、その制度化が進んでいく過程において、こうした神学者たちをはじめとする宗教的思
想家の影響力が弱くなるとともに、バイオエシックスの領域に含まれるさまざまな問題に対して、宗教の重
要性が低下し、神学者たちの著作においてさえもバイオエシックスに対する宗教的伝統や宗教的信念の
役割が限定されるようになった、と彼らは言う。キャラハンが1990年の論文のなかで「過去20年前後の期
...
間に起きた、バイオエシックスにおける最も顕著な変化は、それが世俗化したことである66」と述べているよ
うに、当初宗教的、神学的色彩の濃かったバイオエシックスがその後、そうした色彩を薄めて「世俗化」し
ていった、というのが第一の物語の骨子である(こちらの方が、「バイオエシックスの歴史」をめぐるこれまで
の一般的な通説と言ってよい)。
この物語に異議をとなえたのが、カーラ・メシコマー、レネー・フォックス、ジュディス・スウェイジーによる2
001年の論文「アメリカのバイオエシックスにおける宗教の関与と影響力67」である。第一の物語とは対照
的に、メシコマーらが提示する第二の物語においては、バイオエシックスの成立当初から、宗教(キリスト
教)や神学はそれほど大きな影響力をもっていなかったとされる。彼らによれば、神学者や宗教的な倫理
学者がバイオエシックスの創設に大きな貢献をしたことはたしかであれ、そうした神学者や宗教的な倫理
学者のほとんどは、すでに世俗的、合理的な思考様式に順応し、個人の権利や倫理原則、公正な手続き
を
通じた公共空間における合意形成といった(その後も主流となる)バイオエシックスの枠組みを受け入れ
ていた。すなわち、彼らの解釈によれば、バイオエシックスはその成立当初からすでに「世俗化」していた
のであり、神学者たちは初めから宗教的な問いを倫理学的な問いへと縮減し、いわば宗教を「倫理学化」
することによってバイオエシックスの議論に参加してきたのだ、というわけである。
こうした二つの物語を対照させた上で、チルドレスはその評価にとりかかった。チルドレスによれば、どち
らの物語もバイオエシックスと宗教をめぐる事態の一面だけを誇張したものであり、十分に満足できるもの
ではない。たとえば、それぞれの物語において、そこで問題になっている「宗教」概念が異なっていること
を彼は指摘する。第一の物語においては、「宗教」は「特定の宗教的伝統」としてとらえられており、バイオ
エシックスにとってのこうした伝統的リソースを発掘する人々として、神学者をはじめとする宗教的思想家
に焦点が当てられている。それに対し、第二の物語においては、「宗教」はそうした伝統的基盤ではなく、
......
人間の起源、生と死の神秘、運命への問い、苦悩の意味といった宗教的な問いに取り組むものとしてとら
えられている。こうした観点から言えば、バイオエシックスはその創始期からすでに、直接にそうした宗教
的な問いを問うことなく「世俗化」していたというメシコマーらの解釈も一理あることになる。
Albert R. Jonsen, The Birth of Bioethics. Oxford University Press, 1994
Daniel Callahan, Religion and the Secularization of Bioethics, Hastings Center Report 20, July/August,
1990
67 Carla M. Messikomer, Renee C. Fox, & Judith P. Swazey, The Presence and Influence of Religion in
American Bioethics, Perspectives in Biology and Medicine 44 No.4, 2001
この論文については、以下の文献も参考になる。
浜野研三「アメリカにおける生命倫理と宗教―リベラルな社会における宗教の位置変化」、
『思想』975号、2005 年
65
66
112
さらにチルドレスは、二つの物語において(異なった次元、意味においてではあれ)肯定されている「世
俗化」という歴史的な流れ(宗教の影響力や宗教的な問題の重要性が減じていくという流れ)もまた、事態
の一面しか表していないことを批判する。バイオエシックスはけっして一枚岩的な分野ではなく、その創始
期からずっと、アカデミックなバイオエシックスには世俗的な視点と宗教的な視点、哲学的な視点と神学
的な視点の両方が含まれていたという事実をチルドレスは指摘する。神学者たちが、公共的な合意形成
に向けての議論に参加する際には、直接に宗教的な概念を持ち出したりすることを控えてきたことはたし
かだとしても、そのことは彼らが一方的に世俗的なバイオエシックスに順応してきた、ということではない。
第一の物語によってバイオエシックスが「世俗化」したと言われる時期以降においても、活気に満ちた宗
教的共同体を中心にバイオエシックスの諸問題をめぐる宗教的、神学的な議論は盛んに行われている。
...
...
したがって、世俗的バイオエシックスが宗教的バイオエシックスを駆逐したのではなく、バイオエシックスの
..
成立当初から今日に至るまで、両者は並存してきたと言える。
また、こうしたバイオエシックスの「世俗化」という物語に反して、今日の状況を全体的に見渡せば、バイ
オエシックスにおいて、宗教的な信念や実践に対する関心はむしろ増加している、とチルドレスは言う。そ
の一つの理由は、多くの個人、共同体、そして社会にとって、今でも宗教が、バイオエシックスの知や指
針の源泉として意識され続けているということにある。もう一つの理由は、それとは裏腹に、宗教がバイオ
エシックスの問題や葛藤を生み出し、複雑化すること、ときにはそれを激化することにある。周知のように
中絶、自殺幇助、ES細胞研究といったバイオエシックスのテーマは、アメリカにおいてはいわゆる「文化
戦争(cultural war)」の主戦場になってきた。しかし、これは「宗教、教派間の戦い」と誤解されるべきでは
ない。社会学者ジェイムズ・ハンターらによる研究68(1991)では、ローマ・カトリック、プロテスタント諸派、
およびユダヤ教におけるリベラル派(ないし保守派)は、自分たちの属する宗教、教派において、自分た
ちとは反対の立場をとる保守派(ないしリベラル派)の人々よりも、むしろ他の宗教、教派に属するリベラル
派(ないし保守派)の人々と多くの信念を共有していることが示されている。また、(マスコミが行いがちな
単純なラベリングに反して)それぞれのグループもけっしてすべての問題について同じ意見をもっている
わけではなく、バイオエシックスによるそれぞれのテーマによって、どのグループが賛成派に与し、どのグ
ループが反対派に与するのかは変わってくるということも重要である。
バイオエシックスと宗教の関係をめぐる以上のような全体的考察を述べた後、チルドレスは、今日宗教が
バイオエシックスにおける葛藤の原因となっている具体的なテーマをめぐって、論を進めた。取り上げられ
たテーマは、(1)臨床的な文脈における患者の便益と患者の自律的な選択の尊重、(2)医療専門職の
良心の保護と患者の利害関心の保護、(3)多元的、民主主義的社会での公共政策の形成における宗教
の役割についての位置づけ、の三つである。
2-1、患者の便益と患者の自律的な選択の尊重
医療専門職の責務のなかには、患者の便益(benefit)を追求する(「患者のためになることをせよ」)ととも
に、患者の自律的な選択を尊重するということが含まれており、宗教はしばしばこの両方の責務に関わる。
医療専門職の人々が、患者のためになることをし、患者の自律的な選択を尊重するためにどのようなこと
をしたらよいのかを決定するためには、それぞれの患者の宗教的な世界観を理解する必要がある場合が
多々あるが、患者のためになることをすることと、患者の自律的な選択を尊重することとの間で葛藤が生じ
68
James D. Hunter, Cultural Wars : The Struggle to Define America. Basic Books, 1991
113
ることも少なくない。
アメリカのバイオエシックスにおいては「自律尊重(respect for autonomy)」の原則が支配的なものとなっ
ている、あるいはこの原則だけが重要視され過ぎていると言って批判する人たちがいるが、(少なくともビ
ーチャムとチルドレスの理論に関しては)そうした批判は間違っている、とチルドレスは主張する。バイオエ
シックスの枠組みにおいては、「無危害」「善行(仁恵)」「公正」といった他の諸原則も同等の重要性をもっ
ており、人間は複雑な存在であるから、自律尊重原則を機械的に適用して済むというものではない。「個
人」の自律を尊重するとはいっても、それぞれの個人は、異なった信念体系や規範、実践をもった複数の
共同体(そのなかには宗教的な性格をもった共同体が含まれる)に同時に参与している。したがって、
個々の人々の選好を見極めるには、彼らが属している宗教的な共同体の信念や世界観に配慮すること
が必要である。他方、宗教的な伝統のなかに身をおく患者であっても、その宗教団体の公式の規範や主
流派の見解とは異なった考えをもっている人々もおり、医療専門職の人々は、当の宗教的伝統で主流と
なっている信念、規範、実践を理解するだけでなく、それぞれの患者に固有な価値観、世界観を理解す
る必要がある。
このように述べた後、チルドレスは二つの具体例を挙げた。一つは、ネイティヴ・アメリカンの一つ、ナヴ
ァホ族の宗教文化の例69である。ナヴァホ族には、たとえば「治療の過程で、強い副作用がある」といった
ような、ネガティヴな出来事に関する情報を聞くことが、そうした出来事を実際に招き寄せてしまう原因に
なる、という信念が見られる。彼らの信念体系においては、言葉は単なる現実の描写や反映ではなく、言
葉自体が現実を作り出すものだと見なされているからである。しかし、こうした場合においても、ナヴァホ族
の患者の治療にあたる医師が、個々の患者に対して、治療過程で生じる可能性のあるリスクに関する情
報提供を差し控えることは間違いであろう、とチルドレスは言う。先に述べられたように、ナヴァホ族の患者
であるからといって、その伝統的な価値観を皆が共有しているわけではない(ネガティヴな情報を伝えら
れても、それによってそうした出来事が実際に生じるなどとは考えない患者もいるかもしれない)。したがっ
て、こうした場合、ネガティヴな情報をどのような形で扱えばよいかについて、事前に医師が患者としっか
り話し合っておくことが適切であるとされる。
次にとりあげられたのは、エホバの証人やクリスチャン・サイエンスのように、特定の医療行為ないしは
医療システムへの参入を、その宗教的信念に基づいて拒否するような宗教的共同体に属する患者の意
思決定を、医師が公正な形で覆すことができるのか、もしくはそれを覆すための判断を裁判所に仰ぐこと
ができるのか、という問題である。患者が成人であれば、一般に患者本人の意思決定が尊重されることが
多いが、患者が子どもであったり、意思決定能力が十分でないと見なされるような場合には、これが大きな
問題となる。
チルドレスが具体例としてとりあげたのは、昨年(2007年)エホバの証人としての信仰上の理由から輸
血を拒否して亡くなった急性リンパ性白血病の少年、デニス・リンドバーグ(当時14歳)の事例である。こ
の事件は多くの論争を巻き起こしたが、問題を複雑にした一つの理由は、デニスの家族環境にあった。
彼の生物学的な両親はデニスが輸血を受けることを望んでいたが、彼らはデニスの法的な保護者ではな
かった。法的な保護者は、彼の叔母ダイアナ・ミンシンであり、デニスは、彼の父親が麻薬所持で刑務所
に収容された後の4年間をその叔母のもとで暮らしていた。叔母もエホバの証人信者であり、輸血拒否に
関するデニスの意思決定を支持した。
69
Joseph A. Carese, Lorna A. Rhodes, Western Bioethics on the Navajo Reservation : Benefit or Harm ?,
Journal of the American Medical Association 274, Sep.13.1995
114
小児病院および地域医療センターの院長はこの事例を州に報告し、州はその後、輸血を指示してよい
かどうかの判断を裁判所に仰いだ。このような未成年者の事例においては、裁判所が両親の反対を覆し
て輸血を許可する命令を出すのが一般的であるにもかかわらず、デニスの事例については、上級裁判所
判事ジョン・メイヤーは州の要請を退けた。メイヤーは、デニスが8年生(14歳)であり、「(輸血を拒否する
ことは)自分自身に死刑判決を下すことになるのだ」ということを理解できる程度には十分に成熟している、
と見なした。また、この判事はデニスが「輸血を不浄で卑しむべきものだと判断した結果、それを拒否した
のであって、自殺をしようとしたのではない」ことも判決の論拠として挙げたが、このことに関しては、チルド
レスが次のような注解を加えている。
すなわち、エホバの証人の信者のなかには、輸血それ自体を宗教的に不浄であると見なす人々と、輸
血そのものが問題ではなく、宗教的に禁じられている輸血という医療行為に同意することが信仰上の悪
(神への背反行為)に当たると見なす人々がいる(エホバの証人全体の中では、後者の方が少数派であ
ろうと思われる)。デニス・リンドバーグの場合は前者であるが、(裁判所の決定の是非についてははっきり
した見解を述べなかったものの)チルドレスは、後者の場合の方がむしろ、医療専門職や病院、裁判所に
とってはより困難な状況を生み出すであろうと示唆している。すなわち、前者の場合、輸血を強行すること
は患者の宗教的信念そのものを踏みにじったり、その後の人生において患者がエホバの証人の共同体
のなかで生きることを困難にしたりする(「輸血によって汚れた人間」というレッテルを貼られながら生きなけ
ればならない)のに対して、後者の場合、本人の同意なしに強行された輸血は、宗教的には何の影響も
ない。それゆえ、患者の便益を図るとともに患者の自律を尊重するためにはどうするべきかを決定する際
に、後者の場合の方が(より微妙な)倫理的ジレンマを生み出すのだ、とチルドレスは述べている。
2-2、医療専門職の良心の保護と患者の利害関心の保護
ここ数十年にわたって、アメリカにおいては、医師や看護師、その他の医療専門職の人々から、「良心
的異議」あるいは「良心的拒否」の権利、すなわち(自らの良心に基づいて)患者が要求した合法的な医
療手続きや医療行為の提供を拒否する権利が主張されてきた。現在アメリカ合衆国の連邦法には、中絶
手術を実行したり、中絶の手続きに手を貸したりすることに対する、医師や看護師の良心的拒否を保護す
る「良心条項」が存在している。
最近の研究(200770)によれば、医師自身が宗教的、道徳的に抵抗のある合法的な医療行為を患者か
ら要求された場合、多くの医師が、「患者に拒否を示すことは倫理的に許容できる」(63%)、「医師はす
べての選択肢を示す義務がある」(86%)、「医師は要求された医療行為に対して拒否をしない別の医師
を患者に紹介する義務がある」(71%)と考えている。ところが、より宗教的な、信心深い医師であればあ
るほど、自分が患者に対して拒否する可能性があると答える割合が増加するだけでなく、すべての選択
肢を患者に提供したり、要求された医療行為に対して拒否をしない別の医師を患者に紹介する、と答える
割合が減少する。チルドレスは、特定の医療行為に対して医師が拒否を示すことは大抵の場合許容でき
るが、すべての選択肢を患者に示そうとしなかったり、(自分が拒否する)合法的な医療行為を拒否しない
医師を患者に紹介しようとしなかったりするのは、倫理的に間違いであると考える。医師のなかには、患者
に(自分の良心に反する)そのような医療行為の情報や選択肢を提示したり、他の医師を紹介したりする
行為によって、自らが、他の医師が悪行を行うことへの共犯者となると考える人々もいるが、医師の良心を
70
Farr A. Curlin, et al.,Religion, Conscience, ad Controversial Clinical Practices, New England Journal of
Medicine 356. 2007
115
保護しつつ、患者のニーズを満たすためには、医師が「自分の良心が許さない医療行為の要求に応える
義務を免除される」だけで十分である、とチルドレスは主張した。
2-3、リベラルで多元的な社会の公共政策における宗教の役割
最後にチルドレスがとりあげたのは、しばしば「公共的バイオエシックス(public bioethics)」と呼ばれるよ
うな領域、すなわち公共政策の形成におけるバイオエシックスの議論のなかで、宗教がどのような役割を
果たすべきであるかという問題である。チルドレスは、彼自身も委員として参加した(米国)国家生命倫理
諮問委員会(National Bioethics Advisory Commision (NBAC))において提示された方針を支持し、追認
する形で彼の見解を述べた。チルドレス自身、委員の一人として、特定の宗教的伝統の内部にいる学者
たちに、生殖目的でのヒトのクローニングおよび、ヒトES細胞研究という二つの問題について、彼らの意
見を聴取する役割を果たしたが、この諮問委員会の基本的な考え方は、リベラルで多元的な民主主義に
おいては、宗教的信念は公共的決定やその正当化から排除すべきだとするような「公共的理性(public
reason)」の概念に暗に挑戦するものであった、と述べている。
NBAC は、ヒトのクローニングに関するその報告書のなかで、宗教的な観点に注意を払う必要がある理
由をいくつか(あまり系統立っていない形で)挙げている。たとえば、宗教的な伝統が米国市民の道徳的
価値観に影響を与え、それを形作っていること。政策策定者は、新しい方法でヒトのクローニングを行うこ
とに関する(人々の)道徳的な考えの多様性を理解し、尊重すべきであること。宗教的な考えは、特定の
宗教的信念とは関係なしに、あらゆる人々に理解可能な、説得力ある形で述べることが可能な場合もある、
などといった理由である。
チルドレスは、公共政策の形成過程のなかで宗教的な観点に注意を払うべき理由として、さらに三つ
のものを挙げている。第一に、公共的な推論には想像力の作用(imagination)が含まれており、そうした推
論は人々が共有している世俗的な前提からの合理的な演繹作業に還元されるものではない、ということで
ある。たとえば、NBAC のヒアリングに呼ばれた神学者のギルバート・マイレンダーは、ヒトのクローニングに
関する議論のなかで、「贈り物」としての子どもと「製品」としての子どもとの間に区別を設ける際に、誕生に
関する聖書の物語やニカイア信条における「授かること」と「作成すること」の間の区別を引用したが、宗教
的な信念を彼と共有しない委員たちのなかにも彼のいう「贈り物としての子ども」という言葉に共感した人も
いれば、彼の宗教的言語を世俗的な言語に翻訳するように求めた委員もいた。このように、私たちの想像
力は、宗教的な観点や物語、宗教的な概念によって刺激されることがある。公共的な推論についてのあ
まりにも厳格な合理モデルの問題点は、公共政策の策定において、想像と再想像というこうした重要な過
程を無視してしまうことにある、とチルドレスは述べた。
第二に、宗教的な共同体や宗教的伝統は、単なる(あるいはもっぱら)宗教的な本性をもった道徳的立
場や議論を超えて、より広く共有されうる道徳的な立場や議論を提示しうるということがある。たとえば、ヒト
のクローニングについての判断は、「自然」や「人間の基本的な価値」「家族の価値」などに訴えかけられ
たが、こうした概念はすべて、特定の信仰共同体に専有されるものではなく、異なる信仰を持った市民に
も、宗教的信仰をもたない市民にも受け入れ可能な概念である。
第三に、公共的推論において宗教的信念に訴えかけることを最も痛烈に批判する人々でさえ、新しい
技術が社会のなかでどのように見られるかということに関する「背景文化(background culture)」として、宗
教が無視できぬ位置を占めていることについては認めざるを得ない。しかし、こうした背景文化と公共的
な政策論議との間に明確な一線を引くことは、とりわけヒトのクローニングのような新しい技術に関する議
116
論においては、しばしば困難である。実際、こうした背景文化が適切な政策についての公共的議論に溶
け込んでしまうことが多いことを考えれば、(宗教的な議論を排除したりするのではなく)あらゆる議論を歓
迎し、それらを公共的に評価していく方が単純に有益である、とチルドレスは述べた。
以上のような考察に基づいて、公共政策の形成過程においては、宗教や宗教的な観点がもつ重要性
に注意し、宗教的な立場の人々の意見を広く聴取すべきであるが、特定の宗教的な観念に基づいた政
策決定は行うべきではない、というのがチルドレスの結論であった。
3、日本の状況をふまえた若干のコメント
以上でチルドレスの講演内容はほぼ紹介できたことと思うが、最後に、宗教および生命倫理をめぐる日
本の状況をふまえた上での、筆者による若干のコメントを付け加え、この報告の結びとしたい。日本で、
「生命倫理と宗教」の問題71を考える場合、チルドレスが跡づけたようなアメリカにおける両者の関係につ
いての歴史や、今後の生命倫理の議論において宗教的な立場からの意見がどのように位置づけられる
べきかについての見解をそのまま当てはめることは不可能である。それは単に、アメリカにおける伝統的
宗教文化が主としてキリスト教のそれであるのに対し、日本における伝統が神道や仏教からきている、とい
う宗教文化的な差異だけに基づくものではない。
日本において、生命倫理ないし生命倫理学という営みが正式にスタートしたのは、1980年代のことで
ある(bioethics の訳語としての「生命倫理」という語の初出は1985年、
日本生命倫理学会の創設は1988年)。その際、日本の学問文化の特性も手伝って、それがまずは「(西
洋的)バイオエシックスの紹介、輸入」という形で始まったということに注意しておく必要がある。もちろん、
このことはそれ以前の日本には「生命倫理」的な営みがなかったということを意味するものではない。実際、
1970年代における日本のウーマン・リブ運動や障害者運動のなかでは、今日の生命倫理で問題になっ
ているようなことがらを先取りしたような議論がすでに行われていた、という側面も見逃すことはできない。
「草の根生命倫理」とでも呼びうる、こうした日本のバイオエシックス以前の思想潮流が、その後の日本の
生命倫理における議論になんらかの影響を及ぼしていることはたしかだとしても、少なくともこれまでの日
本の生命倫理(学)について概観するような際には、そういったところにまで遡って言及がなされることは
稀であり、通常は「(西洋的)バイオエシックスの紹介、輸入」の時点をもって、日本の生命倫理(学)が始
まったと意識されていることが多い。また、「日本的生命倫理」というようなことがうんぬんされる際にも、最
初に紹介され、輸入された「西洋的(特にアメリカ的な)バイオエシックス」との比較対照をもとに、日本に
おける生命倫理(学)の「日本的な」特質が語られることが多い。
さて、チルドレスがこの講演の前半で問題にしたようなバイオエシックスの「世俗化」についての議論は、
そのような日本の生命倫理の歴史や現状を考える上で、どのような意味をもっているであろうか。日本生
命倫理学会の学会員の出自をみてもわかるように、日本においても宗教者や宗教学研究者、あるいは宗
教的背景をもった諸分野の研究者がそこに占める割合は少ないとは言えない。しかしながら、少なくとも
アメリカにおけるバイオエシックスの創成期にキリスト教神学が果たしたような役割を、日本における仏教
の諸宗学や神道学が担ったということはまったくない。また、(ごく一部の人々を除いて)日本の宗教教団
71
「宗教と生命倫理」という問題系の全体については、以下の拙論を参照。
安藤泰至「「宗教と生命倫理」とはいかなる事柄か」、『宗教哲学研究』第 25 号、2008 年
とりわけ、「宗教」および「生命倫理」というそれぞれの語が複数の意味、次元をもっていること、どのような意味における「宗
教」とどのような意味における「生命倫理」の関係に焦点を当てるかによって、問題となる事柄が異なってくるということに注
意すべきである。
117
における生命倫理問題への取り組みはお世辞にも積極的とは言えないし、今日の生命倫理の諸問題に
関して、世俗的生命倫理と並行して宗教的生命倫理が活発に発展しているとはとても言い難い。
このように、教団や教義のレベルにおける宗教が日本の生命倫理にはほとんど影響を与えていないと
見なしうる一方で、「伝統的宗教文化」あるいはそうした宗教文化によって培われてきた人間の生死をめぐ
る「日本人の伝統的エートス」は、日本における生命倫理の議論に少なからぬ影響を与えていると思われ
る。たとえば、脳死臓器移植の是非をめぐる日本の生命倫理に独特な議論には、人の死をめぐる日本人
の意識や死者を遇するための伝統的作法、その身体観や遺体観の影響がうかがえる(もちろん、それを
あまりに強調することは、悪しき文化本質主義に堕してしまう危険を常にはらんでいるが、少なくともその
影響を無視することはできない)。こうした日本人の伝統的エートスは、仏教や神道といった伝統宗教の世
界観や教義に直接基づくものではないし、ほとんどの日本人はそれを「宗教的」なものと意識しないにも
かかわらず、個人主義的アトミズムや功利主義が前面に出た世俗的な生命倫理からみれば、十分に「宗
教的」(あるいは少なくとも「スピリチュアル」)なものと見なしうる。「日本人は「日本教」の信者である」という
........
ような言い方はきわめて雑駁なものであるとは言え、「日本(的)生命倫理」が自覚されざる形で「日本教的
生命倫理」という性質を帯びているということには十分注意しておくべきだろう。
また、日本における西洋の(特にアメリカの)バイオエシックス(生命倫理学)の輸入自体がかなり偏った
ものである、ということにも目を向ける必要がある。この報告の最初に述べたように筆者は2006年から200
7年にかけてアメリカ合衆国に滞在していたが、2006年10月にコロラド州デンヴァーで行われたアメリカ
生命倫理学会(ASBH)などに参加した際に一番感じたのは、アメリカにおける生命倫理(学)の多様性
である。日本では、個人の自己決定権を重視する自由主義的、功利主義的なバイオエシックスが「アメリ
カのバイオエシックス」として多く紹介されており、ともすればそれが「アメリカ的」なものであるかのように誤
解されていることもある。もちろんそうしたタイプの理論や言説がこれまでのアメリカのバイオエシックスに
おいて主流であったとは言いうるかもしれない。しかし、「従来、アメリカのバイオエシックスにおいては、も
っぱら○○が重視されてきた。××という形で問題が論じられてきた」「しかし、・・・・・・・」というようなおき
まりの形で提示される日本の生命倫理の議論には眉に唾をつけてかかった方がよい。「日本的生命倫
....
理」が宗教的な側面を隠しもっているという先の認識をふまえるならば、日本で横行しているような「アメリ
カ的バイオエシックス」(と思われているもの)対「日本的生命倫理」という対比図式のなかには、「世俗的
生命倫理」対「宗教的生命倫理」という対比が見えざる形で含まれているということに注目すべきであろう。
また、上記のような日本の状況を鑑みれば、日本において、(チルドレスが最後に問題にしたような)生
命倫理の公的な議論における宗教の位置と役割を考える際には、かなり違ったアプローチが必要とされ
るように思われる。チルドレスは、公的な議論のプロセスのなかで宗教的な立場からの意見を聞く必要性
があることの根拠として、伝統的宗教が人々の倫理観のリソースになっていること、宗教的な物語などが倫
理的推論に必要なイマジネーションを鼓舞すること、宗教が新しい技術の社会的受容における「背景文
化」となることなどを挙げているが、こうした根拠はもちろん、日本の場合にもかなりの程度当てはまる。し
かしながら、日本の場合、仏教や神道の各教団に属する宗教家の意見を聴取することによって、実際の
日本人の生活において培われてきた伝統的な宗教文化的エートスを汲み上げることができるのか、はな
はだ疑問である。すなわち、アメリカの場合は、キリスト教神学者や宗教的な背景をもった倫理学者によっ
て議論されているような「宗教的バイオエシックス」と、人々の倫理観のリソースになるような宗教文化的基
盤とは、レベルの違いはあれ、ゆるやかな形で連続的につながっていると考えられる。それに対して、伝
統的な宗教文化的エートスが人々に「宗教的」と意識されることは少なく、それを仏教や神道における特
118
定の教義や思想に集約することもできない日本においては、各宗教の教団レベルにおける「宗教的バイ
オエシックス」は(仮に現在よりもそれが活発に展開されたとしても)、社会の宗教文化的基盤からはかなり
遊離したものになってしまう可能性が大きいであろう。
日本において最も必要なことは、人々の実際の人生や生活における実感のようなもののなかに息づい
ている(隠された)宗教文化的なエートスを、できるかぎり表面に出していくこと、それを特定の宗教におけ
る内輪の言葉を超えて、より普遍的な形で言語化していくという作業であると思われる。「倫理」という言葉
すら、なにかしら外来の「よそよそしい」感じを呼び起こす日本において、「日本的生命倫理」と呼びうるよ
うなものがしっかりと根づいていくためには、まずそこから始めなければいけないのではないか。筆者にと
って、チルドレスの講演は、そのような思いを新たにする他に代え難い機会となったことを記して、報告を
終えたい。
119
資料 7.レベデフ対談記(2008.01.13, 京都)
(櫻井圭記)
サイエンスとフィクションの狭間で ~ミハイル・レベデフ対談記~
京都駅に併設されたホテル・グランヴィアのロビーに到着したのは、2008 年 1 月 17 日の夜6時を少し過
ぎた頃だった。この日、僕はアメリカから来日している脳神経学者、ミハイル・レベデフとの対談を控えてい
た。
ミゲル・ニコレリス研究室の所属と言えば、ピンと来る人もいるかもしれない。アメリカのデューク大学に
在籍するニコレリスは、ラットやサルを使った BMI(脳マシン・インタフェイス)に関する先端的な研究を行っ
ていることで世界的に知られている。日本国内では、2006 年末に NHK の立花隆の番組で紹介されたこと
で、一躍、知名度が上がった。レベデフ氏はその研究室に在籍する、ニコレリスの共同研究者である。
レベデフ氏との対談の相手役としての僕に白羽の矢が立ったのは、僕がかつて、近未来 SF アニメーシ
ョン『攻殻機動隊 S.A.C.』の脚本を書いたことがある、という経歴からであろう。本作品は 2030 年を舞台に
し、人間の脳とコンピュータ・ネットワークを直接的に接続する「電脳」技術や、肉体の様々な部位を機械
的に代替する「義体」技術が一般化し、サイボーグが社会進出している世界を描いている。メディアなどで、
BMI 技術は往々にして「サイボーグ技術」などと取り上げられているのを見かける。この技術が今後さらに
発展を遂げれば、「電脳」や「義体」を駆使したサイボーグの出現も、あながち夢ではないというところから
の発想だろう。つまり、この対談企画の趣旨は「サイエンス」陣営のレべデフと「フィクション」陣営の僕との
間に、どのような意気投合や、あるいは齟齬が生まれるのか。「サイエンス」と「フィクション」の間に、新たな
可能性を見出せるかも知れない、という半ば実験的な意図に基づいているらしいということは何となく想像
できた。上記の理由に加えて、僕が幼少をイギリスで過ごしていたために、英語での対談に際して(専門
知識の不足はやむを得ないにしても)せめて語学的な支障はきたさないであろうことも、若干、人選を左
右したかも知れない。
さて、待ち合わせ時間きっかりに現れたレベデフ氏は、かなり上背があり、骨格もたくましい、四十路に
入ったばかりくらいの男性であった。自己紹介を交わした際の第一印象は、絶えず微笑を絶やさない、礼
儀正しい紳士というものであった。そしてその印象は最後まで変わることは無かった。
アニメーションには全くと言っていいほど予備知識のないレベデフ氏に対して、まずは僕が手がけた
『攻殻機動隊 S.A.C.』のプロモーション映像を紹介するところから、徐々に準備運動を開始することにした。
実は、この映像に対する氏のリアクションは、かなり注意深く観察していたつもりであった。これまでの経験
上、専門家であればあるほど、SF 作品内で表現されている架空の技術の実現可能性について、否定的
な見解を持っていることが多いような印象を持っていたからである。果たして氏は、映像が提示している世
界観に対して「十分にありえる未来社会の姿ですね」としきりにうなずいていた。
こうしていよいよ対談が始まったわけだが、僕がまず聞いてみたかったのは、研究内容云々よりも、氏の
生い立ちであった。というのも、個人的に少々気になっていることがあったからである。レベデフという名前
からも伺えるように、氏はロシア系であり、その年齢から逆算すれば、若かりし頃をソ連邦で過ごしていたこ
とは疑いようのない事実であった。科学者として、ソ連で長じ、そして今、アメリカで研究を続けていること
120
に、僕は何がしかのドラマを求めてしまっていた。これも脚本家の悲しい性かも知れない。
いきなり立ち入ったプライベートな質問もいかがなものかと思い、失礼にならないようにあれやこれやと
まわりくどい言い訳をしている中で、察しの良い氏は、僕の意図を理解してくれたようであった。丁寧に応
えてくれた情報を以下に簡潔にまとめてみよう。
ミハイル・レベデフ氏はモスクワで、物理学者の両親の長男として生まれた。そして、21 歳でソ連邦が崩
壊するまで、この街で暮らしたという。11 歳年の離れた妹が一人いて、彼女は今も祖国で銀行員をしてい
るそうだ。子供の時分、モスクワ市内にある博物館にたびたび連れていってもらったことを今でもよく覚え
ている、という。親の影響からだろうか、低学年の頃から数学と物理が得意で、やがて親と同じ研究職を志
すようになった。社会主義的イデオロギーは薄く、宗教心も特になかったという。熱心に教会に通ったこと
もない。
ソ連が崩壊した当時の氏の心理状況を詳しく聞きたかったのだが、その応えは飄々としたものであった。
「まるでひとごとのようで、自分自身はただの傍観者でした」「研究者としては国外に可能性があることは明
白でした」「家族と離れるのはつらかったけど、早く国を出たかったんです」などなど。国を出たいという氏
の意志に、家族も特に反対しなかったという。
その言葉にたがわず、ソ連崩壊の二ヵ月後には、アメリカのテネシーにいたのだというから行動力がある。
当初はカルチュラル・スタディーズ(社会学の一部門)の研究をする名目での渡航だったと聞いて、さらに
驚いた。生命科学出身だった氏がなぜ、と思ったのだが、すぐに納得した。当時の氏には、研究領域にこ
だわらず、ひとまず国外へ脱出することが優先事項だったのだろう。たまたま募集をかけていた研究室を
志望したものだろう。実はレベデフ氏、このとき奇しくも、当時 28 歳のニコレリスと遭っている。
「初対面の印象はどうでしたか?」と聞いてみたが、当時のニコレリスはラットを用いた実験を中心として
おり、その研究に氏はさほど魅力は感じ無かったという。氏がニコレリスと再会し、共同研究をするようにな
ったのは、それから 10 年以上が経過した 2002 年のことだったそうだ。「じゃあ、そのときには彼の研究に
魅力を感じるようになってたんですね?」と笑って尋ねると、氏は肩をすくめた。「ええ。彼の研究対象がラ
ットから、サルに移行していたもので。私は昔からサルを使った実験に、あこがれていたんですよ」
生い立ちを一通り聞いたところで、今度は、BMI にまつわる周辺的な話題について振ってみることにし
た。
例えば、昨今のメディアでは、BMI 技術を「サイボーグ技術」として紹介する傾向が少なからずある。こ
のことについて氏はどう思っているか、聞いてみたかった。というのも、研究者の中には、「サイエンス」と
「フィクション」をキッチリ区別したがる人も少なくないからだ。氏はそうした質問をされるのが初めてだった
ようで少々面食らった様子を見せながらも、おだやかに微笑した。「特に何も思わないですね。メディアは
得てしてキャッチーな言葉を使いたがるものだし、それによって BMI が世間に知ってもらえるのであれば、
単純に嬉しいですよ」氏の微笑は質問をしているこちらの意図をどこか見透かすような力を持っている。
切り出しにくいなぁと思いつつも、せっかくの機会なので、軍事産業との関連についても聞いてみた。
特にニコレリスの研究室は、アメリカ国防省の DARPA から資金的な援助を受けていることが広く知られて
いる。つまり、彼らの BMI 研究は、かなり直接的に、軍事分野に転用される可能性も秘めているわけだ。こ
121
こでもレベデフ氏の応えは非常にシンプル、かつ割り切ったものだった。「我々は主として医療目的のた
めに研究しています。軍事産業のことは考えたことがありません。しかし別の組織の人々がそうしたことを
考えることまでは防げません」と。
今後の BMI 研究は、どのような方向に向かうのだろうか、という正統派の質問も挟んでみる。これにも氏
は即答した。「おそらく、人工感覚でしょうね」
脳に伝達される電気信号をコントロールすることで、擬似的に特定の感情や感覚を起こしたり、あるい
は人工の記憶を追体験できるようになるかもしれない、と氏は語った。あるいは視覚的な刺激を、触覚に
「翻訳」するようなことも可能になるかも知れない、とも。考えてみれば、DBS 療法において、脳の特定の部
位に電気刺激を送ることで、うつ病が治るような例が既に報告されている事実から鑑みれば、「人工感覚」
が実験に移され、そして成功するのも、そう遠い未来のことではないように思えてくる。
一通り、場が暖まったところで、今度は、僕自身の関わっている SF な立場から、あれこれと質問をぶつけ
てみることにした。
もはやクリシェのような質問も、この際なので、あえてしてみた。例えば『攻殻機動隊』のように、肉体を
機械的な部品で代替できる時代が到来し、我々がサイボーグとして社会に進出するようになったとしたら、
人間が人間であるための条件は侵食されないのでしょうか、と。
氏はまたも、迷うことなく即答した。「肉体の代替はどこまでも肉体の代替であり、脳の領域が侵されて
いない限りは、人間性が侵されているとは思えません」
この応えには、実は少々驚いた。デカルト的な心身二元論に基づいているようにも聴こえる、脳の絶対
視とそれ以外の肉体器官の軽視は(あるいはそう聴こえるかのような発言は)ためらわれるのではないかと
いう気が、勝手にしていたからである。そこで、僕はもう少し違ったアプローチを取ってみることにした。
対談当日、僕は京都行きの新幹線の中で、氏が以前に発表した学会論文を読んできていた。そして、
そこに書かれていた一節に興味を抱いたのである。新しいロボットアームを接続されたサルの脳では、再
マッピング機能が観察される、というのである。
そこでこの箇所を引用しながら、さらに聞いてみた。脳が長時間にわたり、人工的な「義体」を操ることに
慣れていく過程において、当然、操っている脳の方も影響を受けて、再マッピングが行われるはずある。し
かし、やがてその脳は、「義体」を使う以前の脳のありようとは大きく変わってしまうのではないか。その変
化は「同一の脳」とはもはや見なせなくなるほど大きくなってしまう可能性があるのではないか、と。
この質問に対して、氏はこの対談中、唯一しばし考えるそぶりを見せた。そして、いくつもの具体例を出
しながら、反証してきた。氏の論旨はこうである。例えば、我々が壊れた時計の部品を直すときも、あるい
は初めてテニスというスポーツを体験するときも、あるいはもっと日常的な一つ一つの動作でさえも、脳の
再マッピングは常に起きている現象である。だから脳が人工的な「義体」を使っていようがなかろうが、そこ
に差異は存在しない、と。
常に断言系で語る氏に対して、僕はより一層、伝統的かつナイーヴな問いを重ねてみることにした。い
つしかロボットが、人間に取って替わる日は来るのでしょうか、と。
この問いに対する氏の応えは僕にとっては非常に興味深かった。「脳の大部分はプログラム的にできて
122
います。自由な意志だと思っているものの多くはプログラム的とみなすことができ、両者の明確な区別は
難しいでしょう。魂や自我の存在をどれだけ重要視するかが、その質問への答えになるでしょうね」
これは奇しくも、僕自身が漠然と考えていたことと一致していた。例えば、20 世紀末にチェス・チャンピ
オンのカスパロフ氏を、IBM 社が開発したコンピュータが破った事実は広く知られているが、僕にとっては、
その具体的事実よりも、このニュースの報道のされかたの方が印象に残っている。
直後は「ついに人間が機械に負けた!」といった、衝撃的な紹介のされ方をしていた。対して翌年には
「電卓よりも暗算が遅いからといって人間が劣っていることにならないのと同じで、チェスだけに特化したコ
ンピュータに知能があるとは到底言えない」というものであった。
僕はこのとき、「知能」という言葉の定義が、人々の意識の中で、気づかぬうちに変わったのだな、と感
じた。何を持って「知能がある」とみなすのか。「何を持って考えている」とみなすのか。あるいはそもそも、
何を持って「生きている」とみなすのか。(よく知られているように、ウィルスが生命体であるかどうかは研究
者によって意見が分かれるところである。「現代科学は未だ生命という言葉の意味すら定義できていない」
という『攻殻機動隊』の某キャラクターの台詞が思い出されることころである。)その定義はたゆまぬ変化に
さらされている。「知能」や「魂」といったものは、機械的技術によって未だ到達されていない領域に、絶え
ず、再設定されなおされるのかも知れない。それは言わば、永遠に手に入れることのできない「青い鳥」の
ようなものではないだろうか。
対談終了後。「いろいろと面白いお話を、どうもありがとうございます」とお礼を述べた僕に、氏は握手を
求めてくれた。「こちらこそ、いろいろと面白い質問をありがとう」その表情にたたえられたおだやかな微笑
は、最後まで消えることがなかった。
―本対談を企画して下さった京都大学医学研究所の美馬さん、対談のためにホテル・グランヴィアの一
室を提供して下さった佛教大学の○○さん、そしていつももろもろお世話になっている未来工学研究所
の小野さん、そして何より、二時間もの貴重な時間を割いていただいたミハイル・レベデフ氏に感謝の意
をこめて―
123
資料 8.国際公開シンポジウム記録
資料 8.1 基調講演-ニューロエシックス:その原理とジレンマ(2008.01.14, 京都)
(ヴァージニア大学:ジェームス・F・チルドレス)
ニューロエシックス:その原理とジレンマ
(ジェイムズ・チルドレス) 粟屋先生、ご紹介ありがとうございます。本日は、このシンポジウムに参加でき
て、大変光栄に思っております。福山先生ほかの方々にも心より御礼を申し上げたいと思います。今日に
おいて非常に重要であり、将来においてはさらに重要になってくるであろう問題についてお話しできること
を、うれしく思っております。 そこで、まずこのシンポジウム全体の文脈を設定するということで、お話をし
てまいりたいと思います。
既に、さまざまな成果がニューロサイエンスの分野で出てきているわけです。そして、今後もっともっとエ
キサイティングな発展があるだろうと私たちは期待しています。こうした技術の発達がいくつかの倫理的な
問題やジレンマをもたらすということ、将来、そうした問題やジレンマがもっと増えていくであろう、ということ
は科学者や生命倫理学者によってすでに指摘されてきました。しかしながら、一般の人たちはまだ、この
重要な問題を深刻にとらえてはいません。
というのも、こうした倫理的問題にメディアがあまり注目していないということがあります。治療あるいはエ
ンハンスメント(能力増強)の領域における非常に有望なこうした技術の可能性について、つまり「こういう
技術でもって何ができるか」については目を向けているのですけれども、そうした技術がもたらす倫理的な
問題やジレンマについては、あまり検討されていないのです。
たとえば、神経刺激技術に関するアメリカと英国における出版メディアについて調査した一つの研究が
あります。この調査によると、1995年から2004年までの期間において、神経刺激について235の文献が
書かれています。たとえば脳深部刺激術(DBS)がパーキンソン病に対する治療法として効果があるので
はないか、といったことを語っているわけです。しかし、そのような出版物のほとんどにおいては、この技術
についてとてもオプティミスティックな視点から語られているだけであります。たとえば、この技術はさまざま
な精神疾患の治療や認知能力のエンハンスメントとして役立つすばらしい大発見だ、などというふうに、よ
い面ばかりを強調して報告しています。ところが、倫理的な問題を扱っているのは、235の文献のうち、た
った14%のみなのです。倫理的な問題に触れている文献でも、単にそういうことが関わってくるのではな
いかということを語っているにすぎません。
それとは対照的に、実際の遺伝学あるいはゲノムの研究においては、その40%近くに、倫理的な内容
が含まれているのです。
さらに、エレン・マッギーとジェラルド・マグワイアという二人の著者が言っているのですが、遺伝子工学
については、もうすでに科学者のコミュニティ、政府あるいは国際的なフォーラムの中で、広く注目され、
吟味されているわけです。それに対して、脳と人のインターフェースといった分野における社会的、倫理
的な観点からの吟味は、ほとんどなされていません。
しかし彼らは、このような人(の脳)と機械のインターフェースの分野においては、研究が進むことによっ
て、人間への影響はずっと大きくなる。すなわち潜在的には遺伝子のエンハンスメントよりもっと影響は強
いだろうと言っています。たとえば遺伝子のエンハンスメントであれば、影響は生物学的な領域、あるいは
個人のある部分だけに限られるわけであります。しかし、人と機械のインターフェースという分野は、生物
124
学にかかわるだけではないし、その影響が個人のある部分だけで済むというものではなく、もっと広範な
側面を持つからです。
それなのになぜ、この分野における倫理の問題に対してはこれまであまり注目されてこなかったのでしょ
うか。人と機械のインターフェースについての社会的、倫理的問題は、このような遺伝学あるいはゲノムの
分野におけるものとは違っているのでしょうか。それにはいくつか理由があると思います。
その中の一つの理由として、20世紀の初頭、ヨーロッパ、ドイツ、アメリカにおける優生学の研究という歴
史的背景があると思います。そこには遺伝子決定論、すなわち遺伝子がすべてを決定するという考え方
が見られます。もし、遺伝子を変えてしまうならば、私たち自身が、人間として私たちがいかなるものかとい
うものが変わってしまうという懸念があるのです。
そしてまた、アメリカにおいては、特にゲノム、遺伝子の分野では、その研究に対する予算の大体3%ぐ
らいの予算が、社会的、法的、倫理的な問題に対して充てられています。このことはやはり、倫理的な問
題が、ゲノムおよび遺伝子の分野で重要視されているということを表していると思います。
そうした中で、ニューロエシックスについて今日ここで行われているようなシンポジウム、会議が行われて
いるということは重要だと思います。また、いろいろな文献でも、こうしたニューロサイエンスに関する倫理
の問題が扱われるようになってきています。こうしたことは次第に現状を変えつつあるというふうに思いま
す。
このテーマをめぐって、2007年にはいくつかのシンポジウムが行われていますし、生命倫理学の分野
でも、三つの本が発刊されています。また、生命倫理学者のコミュニティにおいてだけでなく、その他の分
野においても、倫理的な問題が注目され、取り扱われるようになってきました。最近はビジネスの世界でも
ビジネス・エシックスというようなものに目が向けられるようになってきていますが、現代では、(この漫画の
ように)倫理というのは非常にホットだということで、倫理もビジネスになるのです(笑)。
そしてまた、ニューロサイエンスの分野でこそ、こうした倫理の問題がさらに重要だということが指摘され
なければなりません。「ニューロエシックス」ということが言われているように、ニューロサイエンスやニューロ
テクノロジーの分野で、いろいろな根本的問題が出てきています。現在もそういう状況ですが、今後数年
間においては、こうした問題がさらにホットなトピックになるでしょう。
さて、こうしたニューロサイエンスに関わる倫理的問題は、非常に新しいので、全くこれまでとは違う、異
なった倫理の枠組みが必要なのでしょうか。あるいは、そうした(一見)新しい倫理的問題も、これまでの生
命科学やバイオテクノロジー、あるいは遺伝子、ゲノム研究についての倫理的問題とあまり変わらないの
で、既存の枠組みで十分なのでしょうか。つまり、一方ではこうした新しい問題に対しては新しい倫理的な
枠組みが必要だ、という考え方があり、他方には、倫理的な枠組みそのものは不変であり、従来の枠組み
をきちんと吟味しながらよく精査していけば、今のままでも十分なのではないかという考え方、この二つが
あるというふうに思います。そのどちらかをとるか、ということです。
そこで、私としては、二つ目の考えをとりたいというふうに思います。基本的な問題というのはあまり変わ
らないので、既存の倫理の枠組みを適切に発展させることができれば、それが使えるのではないかという
ことです。しかし、たとえそうだとしても、まだまだ問題はあります。
今後は、これまでの生命倫理的な論拠というものを、もっともっと精査していく、テストしていくということが
必要になってくると思います。ヒューマンテクノ・エンハンスメントという分野では、特にそうだというふうに思
います。
さらにやらなければならないのは、従来の倫理原則に対する解釈の枠組みを構築していく、開発してい
125
くということです。そうすることによって、倫理原則を十分に豊かでフレキシブルなものにしていかなければ
なりません。それによって、さまざまな問題、ニューロサイエンスの分野における倫理的問題をも包括でき
るようなものしていかなければならないでしょう。
さまざまな倫理の枠組みというものがあると思いますけれども、今日はそのうちのいくつかのバージョンに
ついて、述べてみたいと思います。
まず最初に、ネイル・リーヴァイが2007年に書いた『ニューロエシックス』という、興味深く、非常に重要
な貢献をした本のことをとりあげてみます。この本によれば、ニューロサイエンスの技術というのは、新しい
からといって賞賛されたり、非難されるべきものではないのです。ニューロテクノロジーについての倫理的
問題というのは、従来のテクノロジーをめぐる古い問題あるいはパズルというようなものとあまり変わらない、
ものすごく古いテクノロジーと比べても、そう大きくは変わらないのだとリーヴァイは言っています。 ここで
「古いテクノロジー」というのは単に介入的な技術だけではなくて、人間の身体や精神(認知能力、記憶力
など)に影響を及ぼす社会的活動、たとえば栄養なども含めてとらえられています。
リーヴァイはそこで「倫理的同等性の原則(ethical parity principle)」というものを提示しています。それ
は、テクノロジーが違っても、活動が違っても、それに関する倫理や倫理的側面は同じだということです。
たとえば、認知を高める、記憶力を高めるということにおいても、現在行われているもの、あるいは過去に
行ってきたものと、ニューロサイエンスの技術によって行われるであろうものとの間で、倫理の問題というの
は同じだということであります。
そこで、出発点として、この倫理的同等性ということをもとに話を進めていきたいというふうに思います。リ
ーヴァイは、このようなニューロサイエンスの技術についての議論を一つのまとまった「クラス」としてとらえ
るということを言っていますが、そこにはいくつかの例外があるということも認めています。
彼が言っている例外というのは、たとえば記憶を直接操作するというようなことについてであります。こう
いうことができるようになると、何か私たちが現在できること、あるいは古い技術で行ってきたこととは、全く
違う可能性が生まれてくると考えられるからです。
倫理的同等性という考え方に話を戻しますと、ニューロサイエンスの分野、ニューロテクノロジーの分野
において、純粋な倫理的ジレンマや深刻な課題というものがないわけではありません。しかし、これらのジ
レンマや課題というのは、単に古い問題の新しいバージョンにすぎない、とリーヴァイは言っています。で
すから、これは新しい技術だから、古い技術についての問題とは全然違うというのではなく、やはり、倫理
的にはそこに同等性があるのだということを彼は主張しているわけです。古い技術というのは、たとえば脳
に対して外から介入するといったことですが、今、我々が話している新しい技術というのは、脳の内側に直
接介入するような技術だと言えます。しかし、介入が外部からであっても内部からであっても、倫理の問題
については同等であって、変わらないのだということを、彼は主張しているわけです。
さらに、このような倫理的同等性の原則を考える上での一つの問題は、新語をつくっていくという今日の
傾向であります。つまり、新しい倫理的考察において何がターゲットになっているかを語るために、いくつ
かの語をあわせて、合成語がつくられることがあります。「バイオエシックス(生命倫理・生命倫理学)」とい
う語もそうですし、今日では、「ジーンエシックス」、「ナノエシックス」、「ニューロエシックス」などなどという
言葉が、新しくつくられています。もちろん、表現としては、こういう新語は便利なわけです。今なにが重要
な領域、重要なテクノロジーであるのかをパッと示唆してくれるわけですし、その倫理の問題というものを
語ろうとしているわけですから。
しかし、これが誤解を招くということもあると思います。「バイオエシックス」、「ジーンエシックス」、「ナノエ
126
シックス」、「ニューロエシックス」などといった場合、このような新語を使うことによって、それが問題にして
いる領域というものを限ってしまう、あるいは別々の領域として分離してしまうということがあるのではないで
しょうか。
たとえばバイオメディカル・エシックス(biomedical ethics)という言葉と、バイオエシックス(bioethics)という
二つの言葉がありますが、両者は別のものではありません。私は大体、前者(biomedical ethics)の方を好
んで使っていますが、それは、「バイオメディカル・エシックス」という言葉によって、私たちはさまざまな領
域やテクノロジーにかかわる倫理原則を、特定の領域、すなわちこの場合はバイオメディシン
(biomedicine、生物医学)の領域に「応用」しているのだということを示すことができるからです。
同じように、ニューロサイエンス、ニューロサイエンティフィック・テクノロジー、ニューロテクノロジーという
ような別々の言葉もありますけれども、それをめぐる倫理については、同じように包括的に語らなければな
らないときもあるわけです。
そうはいっても、やはり、「ニューロエシックス」のようにせっかくつくられた言葉というのは便利ですので、
それは今後も使っていくことになるでしょう。ただ、そこには誤解を招くような側面があるということを忘れて
はならないと思います。
さて、次に、トム・ビーチャムと私が共著『生命医学倫理の諸原則』のこれまでのいくつかの版で展開して
きた、バイオメディシンのための倫理原則の枠組みについて簡単に要約しておきたいと思います。
その枠組みは、いくつかの「原則(principle)」とともに、そうした諸原則の内容をさらに特定化するいくつ
かの「規則(rule)」から成り立っています。これらの諸原則および諸規則は、「一見自明な(prima facie)」
拘束としてとらえられています。すなわち、これらの諸原則、諸規則は、他の諸原則、諸規則を同等に拘
束するのです。それゆえ、ある行為、あるいは政策が、一つの原則にしたがえば「一見自明に」正しいと見
なされる一方で、別の原則にしたがえば「一見自明に」正しくないと見なされることもあります。こうした葛藤
をどのように解消するのかということについては、後で考察します。
トム・ビーチャムと私は、人間を拘束するさまざまな倫理的責務を、四つの基本原則といくつかの派生
的 な 規 則 に 分 類 し ま し た 。 四 つ の 原 則 と い う の は 、 「 無 危 害 ( non-maleficence ) 」 、 「 仁 恵 ・ 善 行
(beneficence)」、「自律尊重(respect for autonomy)」、「公正(justice)」の四つ、そこから派生する規則と
いうのは、「誠実さ」、「プライバシー」、「秘密保持」、「忠誠」あるいは「約束の遵守」です。
もちろん、他の道徳的概念が重要でないというわけではありません。たとえば、「関係性」、「コミュニテ
ィ」、「信頼関係」といったものです。私たちが提示したような諸原則の枠組みについて、それが過度に「個
人主義的」なものだと非難する人もいます(ある面では、それが個人主義のとても強いアメリカで生まれた
という出自のせいにされたりしますが)。
こうした人々は、ヨーロッパやアジアにおける議論にもっとはっきり現れているような「コミュニティ」の原則を、
もう一つの原則として追加すべきだと提案してきました。
(別の原則として立てるかどうかはともかく)少なくとも、私たちはこうした諸原則を、「コミュニティ」という
レンズを通しても解釈していかなければいけないことは確かです。たとえば、「仁恵(善行)」や「無危害」と
いった原則の場合も、便益(beneficence)や危害(harm)というのは、個人にだけ与えられるものではなく、
実はコミュニティ全体に対しても与えられるということがあります。「自律尊重」という原則は、ともすれば過
度に個人主義的なものと映るかもしれませんが、個人というのは、程度の差はあれ、信念、価値、習慣な
どにおいてそれぞれ異なったコミュニティ(共同体)に埋め込まれているわけです。ですから、「自律尊重」
といっても単に個人の好みを尊重するということではなくて、コミュニティの文化的な価値を尊重するという
127
ことも重要なのです。また、関係性ということも考えていかなければなりませんし、コミュニティへの参加とい
うことも考えていかなければいけません。
「公正さ」の原則は、より広いコミュニティ、共同体の内部で、その中の個人や集団に対してどのように
便益と負担が配分されているかに焦点を当てているわけですが、「公正さ」ということの中には、重要な利
害関係者としての個人や集団が、さまざまなテクノロジーに関する公共政策の形成に参加する、ということ
も含まれているわけです。こうした例が示しているように、最低限必要なことは、個人を無視することなく、
こうした諸原則を、共同体やその他の関係性というレンズを通して広く、豊かな形で解釈していくことなの
です。
トム・ストッパードという人が『プロフェッショナル・ファウル(故意の反則)』という戯曲を書いていますが、
その中の登場人物の一人にこういう台詞があります。「もし(複数の)道徳原則というのが直線的に機能し
ていて、お互いが交わることがなかったとしたら、道徳的ジレンマは存在しなかっただろう」と。すなわち、
一つの原則を守ろうとしたときに、他の原則に違反してしまうというようなことがなければ、こうした道徳的ジ
レンマというものは生じないわけであります。つまり、それぞれの道徳原則というのが「一見自明な(prima
facie)」拘束なのですが、それらはみな他の道徳原則をも等しく拘束します。それゆえ、ある道徳原則と別
の道徳原則が両立しないということになった場合、私たちは道徳的ジレンマの状況に陥るわけです。
何らかの政策を発案したり、実行しようとする場合、まさにこのことが問題になります。つまり、一つの政
策が、あるところでは非常に有効である。しかしながら、ほかの領域ではそれが害を与える、有効ではない
ということがあるわけです。したがって、そこに道徳的ジレンマが生じるわけですが、こうしたジレンマはど
のようにしたら解消できるかということについて、少しお話をしてみたいと思います。
まず、先に挙げたようなそれぞれの倫理原則(principle)というものは、はっきりとした、より限定された規
則(rule)に基づいて、特定化(specify)していかなければなりません。そして、ある原則と別の原則が両立
しないで葛藤に陥っている場合は、それらの諸原則の間のバランスを図らなければなりません。ここでは
三つの領域、すなわち人を被験者として巻き込んだニューロサイエンスの研究、それから臨床現場にお
ける倫理的な意思決定、たとえば治療のためにニューロテクノロジーを使うかどうかといった倫理的な決
定、判断、そしてエンハンスメント(人間の能力増強)という三つの領域における倫理原則について考えて
みます。
まず初めに、人を被験者とするニューロサイエンスの研究ということを考えてみます。私たちがこれまで
人を被験者とする科学研究をめぐって生命倫理において検討してきたことは、次のようなことだったと思い
ます。これはニューロサイエンスだけではなく、ほかの領域にも応用できるかと思いますが、先に挙げたよ
うな倫理原則を(問題となっている事柄にふさわしいように)特定化することによって、当の問題に特異的
な問いを投げかけることができます。
そうした問いの一つとして、まずその研究が倫理的に正当化できる研究かどうか、ということが挙げられ
ます。まずその研究目的に意義があるということ、そしてそのために科学的に有効な方法が使われている
ことが大前提です。そして、その上でリスク-便益分析をしなければなりません。研究によって社会(およ
び被験者)に得られる便益が被験者にかかるリスクを上回っていなければなりませんし、研究は被験者に
かかるリスクを最小にするようにデザインされなければなりません。それから、公正さということで、たとえば
被験者を選ぶときに、公正な選別をしているかどうかということ、そしてまた、その研究から得られる便益だ
けでなく、負担もきっちりと公正に配分しているかどうかということが問われなければなりません。それから、
被験者の自律(autonomy)を尊重しているかどうか、自己決定を尊重しているかどうかということが大切に
128
なります。つまり、被験者がその研究に自発的に参加をしているかどうかということ、いわゆる「インフォー
ムド・コンセント」、被験者が内容をしっかり理解した上で自発的に同意を与えているかどうか、ということで
す。
こういった基準、それらは(より大まかな)一般的な倫理原則を特定化したものですが、人を被験者とす
るニューロサイエンスの研究に対しても、必要かつ十分な指針を提供していると思います。ニューロサイエ
ンスの研究について、たとえば介入が内的なもの(脳への直接の介入)であるという理由だけではそれに
反対する根拠にはならないということ、このことは、リーヴァイが「倫理的同等性の原則」と呼んでいるもの
の最大公約数的な主張ですが、それを退ける理由はありません。
実際、ニューロサイエンスの領域で生じている多くの倫理的な問題、研究における問題のほとんどは古
いバージョンの問題です。しかしながら、そこにはニューロサイエンスに特別な特徴というのもあります。
たとえば脳内へのインプラント手術に対して同意をした被験者がいたとしましょう。しかしながら、インプラ
ントによって認知に影響が出るかもしれませんし、実験終了後にそのインプラントを取り外す際にリスクが
伴うかもしれないと。したがって、ひょっとしたらそういうことがあり得るかもしれないということを伝えた上で、
被験者がよくそれを承知して自発的に同意を与えるのか、それとも拒否するのか、ということになります。
あるいは、たとえばパーキンソン病の患者にインプラント手術を施して、そういう患者の一群とプラセボ
群による比較対照実験をしたとします。プラセボ群においては、バンホールをあけて、シャム手術をするわ
けです。プラセボ群、対照群の患者たちはニューロインプラントを埋め込まれないわけです。ここでもプラ
セボ比較対照試験の文脈で、インフォームド・コンセントの問題を考えていかなければなりません。
神経インプラントの臨床応用をめぐる実験の倫理的問題について、一つの例を挙げて、もう少しお話を
してみたいと思います。これは脳深部刺激術(Deep Brain Stimulation,DBS)の事例です。FDA(米食品医
薬品局)はこの DBS の処置というものを承認しています。この処置の対象としての適応基準、除外基準と
いうのは一応あるのですけれども、ボーダーラインの被験者候補については、臨床チームが個々の事例
をじっくり検討してしっかりと熟慮した上であれば、FDA はそれを承認するとしています。
この事例は、59歳の既婚男性で、いろいろな障害、いくつか認知に関する問題も抱えていたパーキン
ソン病の患者でありました。この人は、DBS によって運動機能の向上が期待されるという点からは非常によ
い被験者候補で、内科的な禁忌も見あたりませんでした。この DBS によって彼には便益が得られるわけで
す。
この患者には、パーキンソン病の患者に特徴的な認知能力の低下が見られました。患者家族によりま
すと、近頃は判断力も落ちてきて、(自分の現在の運動能力をわきまえずに)はしごに登ろうとしたりするよ
うになってきました。それから、脱抑制の症状、たとえばギャンブルをしたり、性欲が過度に昂進したりとい
う問題が現れてきました。
そこで臨床チームは、この患者の認知能力や判断力を改善しないまま、運動機能を改善したとしたら、
患者が身体的な危害をこうむるリスクが高まるのではないかということを懸念しました。運動機能の改善に
よって患者に便益が得られると思って DBS をやると、 実際には逆に、うろうろと動き回って危険が生ずる
のではないかと考えたのです。また、それと同時に、DBS によって引き起こされるかもしれない神経精神的
な副作用についても考慮いたしました。DBS を行うことによって、その人のアイデンティティの主要な部分
に影響が出るかもしれませんし、たとえば認知等を含めて、そういったところに影響が出るかもしれません。
しかしながら、DBS 処置についてはっきり適応あるいは除外基準に当てはまる患者群とは対照的に、この
患者のような、DBS 処置についてのボーダーラインの事例においては、そうしたリスクがどれぐらいである
129
かを決定するための証拠になるような文献データが存在しなかったのです。
したがって、臨床チームが当の患者に DBS を施すかどうかの意思決定に至るためのプロセスを開発す
ることになったのですが、そこでさまざまな専門家からなるこのチームが取り組んだのは、先ほど話をした
ような倫理原則でした。もっとも彼らは「○○原則」といったような名称、用語をもとに考えたのではないの
ですが、実質的には同じ倫理的考察を行ったのです。
彼らは、この患者にとっての便益(運動機能におけるメリット)と危害を及ぶすかもしれないリスクとのバラ
ンスを考えました。また、こうした臨床試験によって知識が高められるということ、すなわち、この治療法を
同じようにボーダーラインに属する他の患者に使っていっても大丈夫かということについてのデータが増
えるという便益と、この患者に起こる危害ということとの間のバランスもとったわけであります。また、このチ
ームは、患者(そして家族)の自律を尊重しようとしました。この治療法による便益がリスクを上回っている
かどうかの判断を、患者や家族が自分たち自身で行うように勧めたわけであります。
さらにこのチームは、道徳的主体としての臨床医の自律ということについても考えました。たとえ患者の、
あるいは家族の強い希望があったとしても、自分たちが安全ではないと考えた治療を患者さんに施すこと
はないということであります。こういった場合は、患者を保護するという専門職の義務の方が、患者や家族
の希望よりも優先するということです。
そうすると、このような臨床試験におけるボーダーラインの被験者候補に対して治療を否定してしまうと、
それによって運動機能がせっかく高められるのに、そのチャンスを否定してしまうということがいいのかどう
かという問題が出てきます。ボーダーラインの患者が背負うリスクについての知識が少ないことが、その治
療へのアクセスを制限する正当な理由になるかどうかということです。これは公正性の問題であります。特
に、もし公正性ということが、同じようなものは同じように扱われなければならないということを要求するにし
ても、どういう要素でもって「同じようなもの」だと判断すべきなのか、という問題は新たに生じます。この患
者さんの場合、次のような特徴がありました。まず、家族の支援態勢がよかった。これはリスクを最小限に
食い止めるのに役立ちます。また、比較的安全な生活環境、(何かことが起こったときに)よい医学的治療
にアクセスできる態勢もありましたし、コストをカバーするための資金もありました。そこで、彼はこの治療に
よって機能も高められるし、リスクを最小限にするような十分なサポートもあるというふうな、そういうプロセス
を踏んで意思決定がなされまして、最終的に、この患者については DBS を実行するということになりました。
しかし、ここまで述べたように、しっかりと倫理的な側面も考慮した上で意思決定がなされたわけです。より
よい成果が得られるように、さまざまなことが考慮されたわけであります。
以上、ここまで一つの事例を挙げてお話をしてまいりましたのは、ある疾患を治療するために、人を使っ
て実験をするという場合の倫理的問題についてでした。
しかし、次に、実験の目的が治療であるか、あるいはエンハンスメント(能力増強)であるかということで区
別ができるか、ということに話を移します。もちろん、エンハンスメントというのは、いろいろな能力を高める、
クオリティを高めるということに目的があるわけです。ですから、普通によいという状態よりも、よりよくする、
正常な機能以上のものにしていく、というのがエンハンスメントです。このようにとらえた場合、治療とエン
ハンスメントの間にはっきりした線が引けるのかどうか。どうもそれは問題をはらんでいるようです。
まず、いろいろな概念そのものが、まだまだ明確ではないということがあります。健康をどう定義するのか、
疾患はどう定義するのか、正常というのはどういうことなのか。これらを一つの定義として、治療的介入とエ
ンハンスメントを区別するわけですが、その基準があいまいだということです。もちろん、極端な場合を比
べてみれば、たとえばパーキンソン病を治療するというような場合と、スポーツの競技者が、もう今でも非
130
常に強いのに、さらにもっと強くするために、ある技術を使ってエンハンスするような場合といった、極端な
二つの例を比べれば、治療とエンハンスメントの違いははっきりとしています。しかし、もっとファジーであ
いまいな状況は、その中間に多く存在するわけです。
また、単に治療とエンハンスメントを区別しても、倫理的な考察の作業にはあまり役に立たないのです。
治療の意図があるというだけでは、ある行為の倫理的な正当化には不十分です。たとえば先ほどの臨床
医の場合には、それは自明のことでした。治療という目的はあったのだけれども、それだけではダメで、た
とえばリスクのことも考える。あるいは、自律、インフォームド・コンセントという問題、それから公正性につい
ての問題、そういったことをすべて考察していかないと、意志決定はできなかったのです。いろいろな能力
をエンハンスしていくということ、認知能力を高める、記憶力を高めるというふうなこと、そのようなことを考え
ていかなければなりませんが、その中には倫理的に許容できるものも多くあります。したがって、「治療だ
からよい、エンハンスメントだから悪い」などということは言えません。もちろん、すべての倫理的側面を考
察するということは、なかなか難しいわけであります。考えるほど容易なことではありません。
さて、「エンハンスメント」というレッテルが貼られるような介入において、主要な倫理的、社会的問題とい
うのはどのようなものでしょうか。そうした技術の進展によって、どのような懸念が起こってくるのでしょうか。
先ほどお話をした倫理原則に基づいて考えていけば、かなりそうした懸念が解消されると思います。たと
えば、リスク-便益の観点からすると、エンハンスメントにおいては、治療におけるそれよりも高い安全性
の基準をクリアしなければならない、と多くの人が言っています。つまり、エンハンスメントは今の能力をさ
らに高めていくということですから、それは健康上の便益ではないからです。しかし、健康上のものではな
いにしても、もちろんこういった便益を高めていくということも、やはり重要だと考えられます。そこでリスクと
便益をどういうふうに評価するかというところが、やはり問題として残ることになります。
次に自律の問題ですが、ニューロテクノロジーによって自分の能力を高めるというのは、もちろん自分で
自発的に決めることです。しかし、その背景に何らかの潜在的な強制、抑圧ということがないかということは
問題になります。たとえば、人々が「普通」あるいは「正常」だと見なす能力の基準がどんどん上がっていく
と。そうすると、他の人がエンハンスメントを使っているということになれば、自分もそうしなければいけない
のではないか、といった潜在的な強制力が働くというようなこともあり得るわけです。これはこの分野だけで
はなく、他の分野でも同じように考えられることだと思います。
もう一つの懸念事項というのは、このシンポジウムの議題でもあります平等性の問題、公正性ということに
あります。たとえば、ニューロテクノロジーを用いたエンハンスメントに対して皆がアクセスできるかどうかと
いうこと。そういう技術の利用は非常に高くつくので、お金持ちしかそれにアクセスできないということにな
れば、アクセスできる人とできない人、それによって自分の能力を改善できる人と改善できない人の間に
ギャップが生まれてきます。そうすると、社会の階層が新しく生まれてしまうということもあります。もうすでに
認知能力の領域では階層性があるのに、そこにさらにギャップが生じ、新たな層が生まれてくる、あるいは
ギャップが拡大するということがあり得るわけです。親が子どもたちに対してできることにも新しい差が生ま
れてきます。つまり、そういう技術を使って子どもたちの認知能力や記憶力を高めてあげることができる親
とそうでない親、長く勉強していても大丈夫なような能力、しっかりと勉強できるような能力を子どもにつけ
てあげることができる親とできない親がいるという、そういうギャップの問題も生まれてきます。これも倫理の
側面から考えていかなければならないことでしょう。
このような非平等性に対しては、いくつかの異なった反応があります。たとえば、前にも挙げたネイル・リ
ーヴァイは、不平等性がどこに生じるのであれ、あるいはその原因が何であれ、とりわけ急速に社会的不
131
平等が増してしまうような場合には、そのことを憂慮すべきであると言っています。もっとはっきり言うと、精
神(的な能力)のエンハンスメントが、一国家の内部においても国家間においても、不釣り合いなほど富裕
者層のみに利益をもたらしてしまうと恐れる理由は十分にあるのです。しかしながら、リーヴァイは、おそら
く私たちの精神に(そうしたエンハンスメントよりも)もっと大きな影響を与える他の社会的不平等をも同様
に憂慮すべきであると認めています。記憶力だとか認知能力、あるいは情緒の発達といった点に対しては、
生育環境や栄養、(単にお金のあるなしではない)家庭的資源など、いろいろなものが大きく影響します。
たとえば栄養の問題は、子どもたちの能力、彼らが学校でいい成績をとるかどうかにも関係しているので
す。
ここでリーヴァイが投げかけている広範囲にわたる懸念からどのような結論が導き出されるのかははっき
りしません。しかし、たとえこうしたすべての不平等をなくすように取り組むのは無理であるにしても、やはり
問題は残ります。エンハンスメントのためのニューロテクノロジー利用へのアクセスの差に基づいて、人々
の認知能力にさらなる不平等が生じるのを避けるにはどのようなことがなされなければならないか、というこ
とです。
たとえば、私たちはニューロテクノロジーの研究や発展を押しとどめることによって、こうした不平等が生
じるのを回避すべきなのでしょうか。これは倫理的に問題があるでしょう。理由の一つは、このようなエンハ
ンスメントの技術の多くは、疑いなく「治療」という目的をもった技術から生まれてきたものだからです。エン
ハンスメントに利用できるからその技術自体がいけない、などとは言えないのです。
そして、平等性にかかわるもう一つの立場として、2003年に『治療を超えて(Beyond Therapy)』というタ
イトルで報告書を出した、レオン・カスを委員長とするアメリカ大統領の生命倫理諮問委員会あるいは評
議会(President’s Council on Bioethics, PCB)の見解があります。この報告書ではニューロテクノロジーも
含めてさまざまなバイオテクノロジーの問題を扱っていますが、その中でも特に、こういったエンハンスメン
ト(能力増強)に使う技術における問題を大きく扱っています。
報告書を読まれればわかると思うのですが、そこでは、そうした技術へのアクセスに対する不平等や、配
分における不公正さの問題には、ほとんど通り一遍の注意しか払われていません。エンハンスメントの技
術を利用する値段は時とともにだんだんと下がってくるだろうし、それによってアクセスの不平等の問題は
将来的には解消されるだろうというふうにしか言っていません。しかし、アクセスの問題が解消されたとして
も、これを提供することがいいのかどうか。この委員会は、よく論じられている平等性とか公正性といった問
題は、「倫理的に」というよりは、「社会的に」重要なものだと見ています。本来、「倫理的に重要」な問題と
いうのは、提供される技術というものが(本質的に)いいのか悪いのかというところ、たとえば人間の尊厳と
いう観点から見て、それがいいのか悪いのかというところにこそあるのだ、というわけです。
さて、この「人間の尊厳」という概念については、二つの異なった見方があります。
一つ目の見方というのは、次のようなものです。私たちは、人間として権利を持っています。そしてまた、
人間として義務も持っています。こうした人間の権利と義務の背景にあるものとして「人間の尊厳」というも
のをとらえるわけです。つまり、そうした「人間の尊厳」を守るために、先ほどお話したようないくつかの倫理
原則というものが与えられるのです。便益をもたらして、危害を加えないといったこと、こうしたことが人間の
尊厳を守るということです。これはもうすでにお話をしたことで、明らかですね。
しかし、「人間の尊厳」という概念については、もう一つの、別の見方があるのです。先ほどの大統領生
命倫理諮問委員会(PCB)の考え方がそれにあたります。ここでは、「人間の尊厳」というのは、種々の倫
理原則を超えた、それ以上の何かを指しています。レオン・カスによれば、「人間の尊厳」を傷つけること
132
は、人間の権利や義務を冒す以上に憂慮すべきことなのです。ここで問題になっているのは、「非人間化
(dehumanization)」、つまり「人間」あるいは「人間性」そのものを格下げしてしまう、損なってしまうということ
です。「人間性」というのは、人間的な卓越性とか、繁栄とか、徳といったものの中に見られています。そう
いうものを損傷してしまう、それに対して危害が加えられるというようなことはないか、ということであります。
そしてまた、ここでは嫌悪感や不安感といったものが強調され、私たちの倫理的な導きはそこから得られ
るのだと言われています。たとえば先ほどの大統領諮問委員会においても、「嫌悪の知恵(Wisdom of
Repugnance)」という言葉が使われています。バイオテクノロジーの発展によって、将来、私たちの人間性
そのものを損なわれてしまう可能性があると。それに対して私たちは、人間の卓越性、繁栄、徳といったも
のに危害を及ぼさないようにしなければならないということであります。
大統領諮問委員会やカスのバイオテクノロジー批判は、次のようなところに向けられています。つまり、
そういった技術を使うことによって、私たちは人間に与えられたままの自然なものを尊重することができなく
なるのではないか、ということです。たとえば薬を使って、ある能力を高めると。人間の尊厳ということで言う
ならば、こういった能力は人間の活動によって、努力によって高めることが求められているわけであります。
それなのに、そういった自然な形で能力を高めようとしないで、薬その他のテクノロジーを使って不自然な
形で能力を高めようとすること、そしてまた、人間の可能性を十全に開花させることをしないで、その代わり
に非常に浅薄な代用物が提供されてしまうということ、そこが問題なのです。したがって、人間の尊厳、人
間が人間であるということの本質を考えた場合に、このような非人間化の危険ということを憂慮しなければ
なりません。
カスはしばしばオルダス・ハックスレーの未来小説『すばらしき新世界』を引用していますが、それは、こ
の小説の中に描かれた仮想世界が、私たち自身の社会における傾向を表しているとカスが見ているから
です。つまり、『すばらしき新世界』においても、そこで起きている非人間化というのは、上から押しつけら
れたものではありません。自由の欠如が問題なのではないのです。そこで描かれた社会におけるより深い
欠陥というのは、人々が人間の卓越性という基準を自ら進んで冒していっているということ、つまり自ら進
んで「非人間化」を選びとっているということなのです。
ただ、「人間性」ということを考えれば、もう一つ、カスたちが言うのとは別の概念についても見ていかなけ
ればなりません。カスたちは、人間性を人間の卓越性や繁栄、徳といったものと同定し、そこに人間の尊
厳を見るわけですが、それとは違った考え方もあるのです。たとえば、ネイル・リーヴァイが言っているよう
に、人間が人間であるゆえんは、「これが人間だ」というような固定的な性質にあるのではなくて、人間の
「自己創造(self-creation)」、あるいは「自己修正(self-modification)」という本質にあるというような考え方
がそれです。私たちは自分たちの心を自分自身で変えることができると。ここに人間が他の動物と違うゆ
えんがあるのだというわけです。これはけっして新しい考え方ではありません。こうした動物と人間の違い
については、伝統的なキリスト教の中でも広く語られてきたわけですから。
人間性については、レイ・カーツワイルのような考え方もあります。彼は、今世紀の終わりまでに、私たち
は人間と機械の間の差をはっきりとつけることができなくなってしまうであろうと言っています。そこでカー
ツワイルは次のような問いを立てています。もし将来、人間と機械の間の区別がさほどはっきりしたもので
なくなってしまうのであれば、私たちは人間を、すなわち私たち自身を脱人間化、非人間化してしまうのか、
それとも機械の方を人間化してしまうのか、ということです。
さて、こういった将来起こりえる問題に対しては、「警戒原則(precautionary principle)」というようなものを
立てて対処すべきであるという人々がいます。私たちは、技術の発展によって生じるこういった望ましくな
133
い、ネガティヴな出来事が起きる前に、「転ばぬ先の杖(better safe than sorry)」とでも言いましょうか、あ
らかじめ予防的、保護的な対策をとらなければならないということです。こうした「警戒原則」が持ち出され
る場合にもいろんなバージョンがありまして、たとえばある人々は、十分な科学的確実性がない場合であ
っても、重大かつ不可逆な損害をもたらす可能性のあるものに対しては、それを防ぐ社会的行為が正当
化される、あるいは義務となる、というところに焦点を当てています。他方、この原則が適用される範囲を、
重大かつ不可逆な損害よりもっと広げて考える人たちもいます。
しかしながら、こういった警戒原則によって、何らかの一貫した指針が与えられるわけではありません。な
ぜなら、さまざまに異なった脅威や、不確定なリスクがあるので、あるリスクを避けようとすることで、必然的
に別のリスクを呼び込んでしまうことになってしまうからです。また、先ほども言いましたように、エンハンス
メントの技術というのはしばしば治療の技術から発展してくるわけですから、たとえばニューロテクノロジー
のある側面がどういったリスクにつながるのか、それがエンハンスメントの方向に結びつくのかどうか、とい
うようなことも不確定だからです。
こうした警戒原則あるいは反カタストロフィー原則というものを採用する人もいますが、 しかしながら、実
際にニューロテクノロジーによるエンハンスメントの脅威というものが、それほど大きなものかどうかというこ
とも考えなければならないと思います。したがって、新しいテクノロジーに対して、それを全面的に受け入
れるか拒否するか(all or nothing)というようなことではなく、研究を進めながら情報を増やしていき、そうし
た技術をどのように監視していったらよいのかを探っていく方が現実的だと思います。言うならば、私たち
は警戒原則(precautionary principle)ではなくて、警戒プロセス(precautionary process)をとるべきだとい
うことです。さまざまな利害関係者、当事者を招いて、そこからの意見をインプットしていくことが必要でしょ
う。すなわち、必要なことは、人々に公正な参加を促して、社会に開かれた、そして透明性の高い公共的
な意思決定のプロセスをとることです。私たちが広く目を開いてじっくりと物事を見ていくことが重要なので
す。
私たちは、現在発展しつつある技術のアセスメントというものをしていかなければならないわけですが、
こういった技術については私たちが予見できないものがたくさんあるということに十分注意して、そういうフ
ィルターをかけて見ていかなければなりません。
歴史的にもいろんな事例がありますが、たとえばアルコール、これは中世においては治療薬だったので
す。たとえば慢性の頭痛だとか、関節炎、胃腸障害、口臭、脱毛といったものに対して、アルコールが治
療薬として使われていたのです。
ところが、そのうちにすぐ、アルコールは治療ではなくて、エンハンスメントとして使われるようになりました。
そして、中世の大きな都市ではすでにアルコールにまつわるさまざまな問題が起きてきました。今の時代
を考えても、アルコールによる事故、たとえば飲酒運転による交通事故というのがたくさん起きているわけ
であります。実際に何が起きるかを予期せずにやったことによって、こういった問題が起きてきたということ
なのです。
したがって、ニューロテクノロジーについても、このアルコールの場合と同じようなことが言えるのではな
いかと思うわけです。それが将来どのような使われ方をするかを完全に予測することはできないのですが、
そういう可能性に対してたえず注意や警戒を向けるようなプロセスをとることによって、さまざまな対策を考
えることができるだろうと思います。
マイケル・ファン・デル・ロースという人が、次のように言っています。私たちはすでにサイエンスフィクショ
ンの多面的なレンズを通して、ニューロテクノロジーのありうる将来についてさまざまな可能性を見てきた
134
のですが、自分たちが生きることになる未来が実際にどのようなものになるのかはわからない。しかし、社
会の発展、進化のプロセスにおける強い力が、生命倫理のコミュニティによって開発される洞察や監視に
継続されていくであろう、と彼は述べています。生命倫理のコミュニティがもつこうした力が、商業的な力に
拮抗できるぐらいのものになることを願わざるを得ません。
ただ、ここで「生命倫理」という場合、それは専門職としての生命倫理専門家(バイオエシシスト=生命倫
理学者)がやるものだということを言っているのではないのです。生命倫理というのは、もっと広いパブリッ
クなプロセスとして考えていかなければなりません。これまでの(専門的)生命倫理学者たちは、新しいテ
クノロジー全体を俯瞰して批判的な視点を提供するというよりも、新しいテクノロジーを祝福し、促進するよ
うな役割を担ってきた、と言って批判している人たち(たとえばカス)もいます。生命倫理は、生命倫理学
者だけではなくて、科学者、倫理学者、そして一般大衆をも含めて考えていかなければなりません。
アンジャン・チャタジーが言うには、生命倫理学者は、美容整形手術にとっては登場が遅過ぎたのに対
し、遺伝学にとっては登場が早過ぎたそうです。これが本当だとすると、バイオエシックス(生命倫理学)が、
コスメティック・ニューロロジー(ニューロテクノロジーを用いた美容整形)に影響を与えることができるのか
どうか、これは一つの根本的な挑戦だということになりますね。ニューロサイエンスの領域における倫理的
な問題を考える上で、私たちにとって状況はすでに熟しているのか、あるいはまだ熟していないのか。そ
して、今後の生命倫理の基本的な課題は、このような美容整形にあるのか、それともエンハンスメントにあ
るのか。こういったことに対する答えは、まだ出ていません。これからの答えを待つところであります。
135
資料 8.2 特別講演-ブレインマシンインターフェース:過去・現在・未来(2008.01.14, 京都)
(デューク大学:ミハイル・A・レベデフ)
ブレインマシンインターフェース:過去・現在・未来
(森本淳) ATR 脳情報研究所及び科学技術振興機構の森本が司会をさせていただきます。
レベデフ先生は、もともとモスクワ物理工科大学を卒業され、アメリカのテネシー大学で学位を取得し、
続けてポスドクをされています。イタリアのトリエステなどの研究所で研究をされて後に、現在は、BMI 研究
の第一人者の方でありますデューク大学のミゲル・ニコレリス教授の研究グループで、サルを用いた BMI
の研究をされています。
私がレベデフ先生を紹介させていただいているのは、我々の ATR における科学技術振興機構のグル
ープとデューク大学のミゲル・ニコレリス教授の研究グループが共同研究をしておりますからです。我々の
ロボット・デバイスとデューク大学のサルを用いた共同研究を進めております。
近年、レベデフ先生は非常にすぐれた総説論文を『Trends in Neuroscience』で出版されており、それを
もとにして、ブレインマシンインターフェースに関する解説をしていただきます。それでは、レベデフ先生、
よろしくお願いします。
(ミハイル・レベデフ) ご紹介をありがとうございます。お招きをあずかりまして、心より御礼申し上げます。
私の講演ですけれども、サルを使ってのブレインマシンインターフェースを中心に、そのほかの研究につ
いてもお話をしたいと思います。私のほうはサルについて主にお話をしますが、倫理学者の方々にとって
も興味があるものになることを望んでおります。
まず、サルのブレインマシンインターフェースですので、解剖学的に、サルの脳についてお見せします。
これは人間の脳に非常に似ています。中心溝の前が、前頭葉で運動機能をつかさどっているところです。
後ろのほうは頭頂葉と呼ばれておりまして、感覚機能をつかさどっております。そのほかの領域、後頭葉、
側頭葉などがありますが、これについては言及いたしません。
つぎに、人の脳の画像を示しております。ごらんいただきますように、非常にサルの脳に似ています。中
心溝がありまして、そして、同じような分割になっております。前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉になって
おります。そして、たくさんのコミュニケーションがこの中で行われているわけです。前頭葉と頭頂葉の間
でのコミュニケーションが行われており、非常に広範に相互接続されているので、一つのものとして感覚
運動領域と言うことができます。
それでは、サルの脳に戻って、詳細にお話をしてまいりたいと思います。中心溝の前は一次運動皮質、
そして、後ろが一次感覚皮質です。その後ろの後部頭頂葉が PP と呼ばれるところです。そしてまた、一次
運動皮質の前には運動前野、その前方には前頭前野があって、認知機能をつかさどっているます。そし
て、人においては非常に発達しているところです。一次運動野や感覚野は分割されており、下肢、腕、そ
れから顔面、それから目の運動をつかさどっているところがあります。したがって、その情報を抽出すること
ができれば、ブレインマシンインターフェースに使うことができます。
さて、一般的な脳の組織については説明いたしましたので、次に、ブレインマシンインターフェースの説
明をしたいと思います。ブレインマシンインターフェースというのは、現在のビデオゲームのようなものを、
脳の活動で直接コントロールするというものです。この例では、サルがジョイスティックを動かすことによっ
136
てビデオゲームをコントロールしております。そして、サルがそれをしている間に、脳の活動を記録してお
ります。そして、脳の活動の情報を解読することによって、サルは、ジョイスティック持たなくても、ビデオゲ
ームを、脳の活動で直接コントロールすることができるわけです。
これは、フィードフォワードと呼ばれています。脳がこの制御信号を生成して、それが機器を操作するも
のです。フィードバックの方はあまり発達していませんが、感覚信号がゲームから脳に送り戻されるというこ
とです。例えば、これは脳の微小電極刺激で送ることができるわけです。ブレインマシンインターフェース
というのは、これは運動の信号、それからまた感覚信号、この両方を含んでいるということが言えます。
今度は、2003 年の論文の結果を示しております。サルが、ロボットアームをコントロールする実験です。
まず、ジョイスティックを使って、サルの意図を認識するためにデコーディングモデルが使われ、訓練を行
いました。そして、サルが脳の活動を直接、ジョイスティックなしにコントロールできるようになりました。つま
り、自分の腕を動かすことなしに、ロボットアームを動かすことができるというものです。
ブレインマシンインターフェースの作動原理は、ニューロンの変化を抽出して運動指令を読み取ることで
す。もっともよいのは、単一ニューロンです。単一のニューロンの活動は、広範に神経生理学者が 1950 年
代に研究しております。重要なのは、チューニングという概念です。これはまた方向性チューニングとも呼
ばれております。Georgopoulos らが 1980 年代に行った研究です。
例えば、サルが右のほうに行きますと、単一ニューロンがオフになっている。そして、左だとオンになって
いるというような、ニューロンの放電を示しています。この放電を、ブレインマシンインターフェースにおきま
しては、サルの行動をニューロンの活動から予測するために使います。その一つのニューロンがたくさん
発火すれば、ほサルは右に行っただろうと予測することができるわけです。
しかし、高精度の予測をいろいろな行動によって得るためには、たくさんのニューロンの記録を同時にし
なければなりません。それには、多電極のインプラントを使って実験をする必要があります。手順としては、
頭蓋骨をあけまして、硬膜を除去します。そして、電極のアレイを脳の中に挿入して、頭蓋骨に固定しま
す。最終的には、サルには幾つかのコネクターがつきます。そこに、マルチチャンネルの増幅器をつけて、
活動を記録して、ニューロンの活動から行動を予測する研究をしていきます。多電極のアレイは、大体 16
~128 の 20~50 ミクロンの太さのマイクロワイヤーが入ったものです。何カ月、あるいは何年間も埋め込ん
で、記録をとることが可能になります。このサルでは、128 のマイクロエレクトロードが四つの皮質領域に埋
め込まれており、単一のニューロンを分離するソフトウェアを使って、394 のニューロンを同時に記録できま
す。
リニアモデル、あるいはリニアフィルターでは、パラメータを重みづけしたモデルを使うことで、腕の位置
であるとか、速度であるとか、握力あるいは筋肉の電気的な活動などを知ることができます。2003 年の実
験では、腕の位置、X と Y 方向、それから速度、そして、手の握力を記録しています。
サルは、この実験ではジョイスティックを操作して、ロボットアームを動かしています。そして、ジョイスティ
ックハンドルを強く握ることによって、グリッパーの操作をしています。サルは実際にはロボットは見ており
ません。サルが最初はジョイスティックを動かして操作をして、それから、そのモデルを同調させて、ブレイ
ンコントロールという形でジョイスティックを、その脳の活動から直接的に操作をすることになっていきます。
サルは、視覚フィードバックを使って、うまくいくときと、いかないときの影響が出ています。コントロールは、
時々、うまくいかないのですが、サルはこのブレインマシンインターフェースを使って、コントロールを引き
続き行っていくことができます。
ほかのグループで似たようなことをしています。例えば、ピッツバーグ大学のシュワルツらのグループは、
137
ポピュレーションベクターモデルを使いまして、ロボットアームを操作しています。食べ物をサルに示しまし
て、サルが脳の活動を使って、このえさを手にして、自分の口へ持っていくもので、コントロールは直接、
脳から行われています。
ジョン・ダナヒューらのグループは、人に対しまして多極電極のアレイを埋め込みまして、サルと似たよう
な結果を出しています。残念ながら、デコーディングのクオリティがあまり高くないのですが、人がやはりコ
ンピューターのカーソルをオペレーションして、そして、Eメールをあけ、簡単なコンピューターゲームがで
きるといったようなことが行われています。この実験の結論の一つといたしましては、より多くの動物実験が、
この技術を安全に人に応用するためには必要であるということを結論づけています。
また現在、人におきましては、いろいろなアプローチがとられています。例えば、こちらのスライドに示し
ておりますのは、シカゴのリハビリテーション・インスティチュートのものでありまして、EMG の多電極を、こ
れの場合には腕を切除した人に埋め込んでいます。EMG による人工の腕の操作、義手の操作を行うとい
うことで、ブレインマシンのテクノロジーが脳からの非侵襲的な形でデコーディングをする形でもって、この
操作ができるといったようなことです。非常に今後、有望なものです。
ニューロンの活動からデコードされたもの、これを信号として扱うわけでありますけれども、これは運動指
令のみならず、いろいろな幅広い変数が、デコーディングが可能です。最終的には、抽象的な思考もデコ
ーディングが可能ではないかと考えられます。
我々の最近の実験では、時間の表象をサルのニューロンの活動からデコーディングしています。サルは
ボタンを押して、2.5~4.5 秒、それを押したままにしておき、サルがそれをうまくやりますと報償を得るという
ものです。この行動というのは、サルが時間的な長さを計算しているところをニューロンの活動からデコー
ディングをしているわけです。
リニアモデルを使いまして、サルがボタンを押してからの経過時間をデコーディングしています。数百の
ニューロンの活動に基づいたモデルで、いかに脳が時間を表象しているかを示すことができています。将
来的には、このようなアプローチをさらに広げて、さまざまな脳が表象するものについてのデコーディング
が可能になると考えられます。
我々が研究をしています別の方向性といたしまして、ブレインマシンインターフェースの技術を下肢の動
きに拡張していこうというものがあります。この場合は ATR の川人光男先生らのグループと協力いたしまし
て、二本足でサルを歩かせます。トレッドミルでのサルの歩行は、蛍光マーカーで、ビデオでトラッキング
をしています。脳活動ですが、このような運動に関しまして解読するということで、多電極を埋め込んでお
ります。我々の予測は実際の足の動きに追随することに成功していますので、そのうちに、義足の足に利
用できると思います。
次の研究でありますが、フィードバック・ループに関連するものであります。BMI のフィードバックのインタ
ーフェースです。人工的なセンサーを使って、微小電気刺激で脳に情報を返します。非常に有望だという
ふうに思います。返す場所としては、体性感覚ですが、脳の 3A、3B、1、2 という一次感覚野です。それぞ
れ異なった感覚の情報と関係しており、それ以外に視床もあります。
最初に、このような方法で、脳に対しまして十分な情報をもたらすかどうかというのを見ました。実験を、
小さいヨザルを使って行いました。より大きなアカゲザルと比べますと、それほど知的ではないので簡単な
実験です。サルの前に二つのドアがあり、一つのドアの後ろには、おいしい食べ物が隠されています。脳
への微小電気刺激を与えて、このサルに対して、食べ物の位置を知らせるという実験です。サルの脳で
四つの必須領域に電極を埋め込みにして、一次感覚野に微小電気刺激がここに行くようにしました。
138
四つの実験を行いました。まず、この微小電気刺激を使って、サルが適切なターゲットに行くように訓練
します。第二の実験では、サルがこれを学んだ後で、このルールを逆転させます。そして、微小電気刺激
の有無で左右を判断させます。
三番目の実験は、時間的判別試験を行いました。二つの異なったパターンの微小電気刺激で、左右を
選ばせます。パルスの数は、両方とも同じで、パルスの時間的なパターンが違っていたということでありま
す。
サルがこれを習得した後で、四番目は、時間空間的パターンを判別させる実験です。複数の電極の微
小電気刺激のパターンで左右を判別させます。
最初のトレーニングの段階では、非常にサルの学習は時間がかかって、3週間で、やっとこのレベルの
学習に到達しています。しかしながら、後のタスクになりますと、初期の段階よりも非常に早くサルは学習
をしています。この時空間の微小電気刺激のパターンを使うことで、潜在的には我々、脳に対して、その
無限の刺激を与えることができます。すなわち、いろいろな情報を伝えることが可能になるわけです。
今、研究が必要なのは、どのような情報が伝達可能なのか、どのぐらい早くサルはそういった情報を学
習できるのか、そして、それが意識的認識といった問題につながっていくのかどうかといったところです。
微小電気刺激を与えるということに加えまして、ニューロンの活動も同時にサルの皮質から記録をしてい
ます。単一ニューロンの活動を見ますと、非常に興味深いパターンが見られます。多くのニューロンで、微
小電気刺激のパターンに非常にうまく追随していくわけです。さらに、このようなパターンに加えまして、ニ
ューロン活動にはよりゆっくりした変化が見られます。上昇や下降、あるいは全く反応しないといった活動
です。単一ニューロンの活動のアンサンブルによりまして、微小電気刺激によって人工的な感覚を作り出
せると考えています。
サルの意思決定のプロセスを見まして、人為的な刺激を脳に導入することでどうなるのかといった予測
を行っています。フィードフォワード、フィードバックのブレインマシンインターフェースの開発につながる
でしょう。
最終的な目的ですけれども、人用装具を開発することになります。脳に埋め込まれています電極を完全
に皮膚で覆いまして、すべてのトランスミッションはワイヤレスに行います。そして、脳信号データの解析や
ロボット装具の部分のコントロールはコントローラーで行います。そして、大事なのは、義肢に触覚や位置
のセンサーがついておりまして、信号をコントローラーへ戻す。そしてまた、最終的には脳へ戻すという点
です。
結果として、この義肢からの感覚によって、脳が、それをもともとの腕のようにして感じ、また、使うことが
できるというようなものを目指します。これは長期的な目標ですが、最終的にそういったことが実現できれ
ばと考えております。
ブレインマシンインターフェースにかかわるすべての論点を、お話ができたわけではないので、幾つか
の点を追加的にふれておきます。
一つは、非侵襲的、あるいは最小限に侵襲的なブレインマシンインターフェースという点です。これは頭
皮上の脳波での記録が考えられます。こういったものは有望ではありますが、単一ニューロンに比べると、
抽出できる信号の品質がまだ十分ではありません。それから、機能的 MRI では、感覚的な刺激を使いまし
て、ある特定の脳におけるパターンを生じさせて、それをうまくデコーディングをするということが進んでい
ます。数学的なアルゴリズムの分野も急速に発達をしている領域です。
BMI を長期に使っている間に起こってくる問題についても、研究が必要です。特にこのためには、インタ
139
ーフェースで、長期間、何年にもわたって使えるようなものを使うことが必要です。そうすることによって、
脳可塑性が活用できるようになっていくでしょう。
また、マイクロエレクトロニクスの開発も必要です。例えば低電力ワイヤレスのレコーダーや刺激デバイス、
です。ロボット装具のデバイスのようなエンジニアリング面での開発も必要です。それから、素材のバイオ
コンパティビリティの問題もあります。もちろん倫理の問題もかかわってまいります。ですから、まだ、やるべ
きことはたくさんあるということであります。
最後になりますけれども、協力いただいている先生方に感謝します。お名前をあげると Nicolelis,
Fitzsimmons, O’Dohedrty, Peikon, Hanson, Carmena, Crist 先生方です。
それから ATR のグループの川人、チェン、森本先生方にもお礼を申し上げたいと思います。
ご清聴、ありがとうございました。
140
(森本淳) お話、ありがとうございました。私のほうから少し質問をさせていただきたいと思います。
非常におもしろい結果の一つといたしまして、うまく足の運動の予測ができると。脳の活動を使ってでき
たということなのですが、主な違いということですが、難しいところというのは、例えば腕の運動などの解読
とどう違うのでしょうか。難しいところは何ですか。
(ミハイル・レベデフ) 非常にいい質問です。簡単に言えば、例えば腕ができれば、下肢のほうも同じだ
ろうと考えられるかもしれません。しかし、実際には、神経生理というのは、これは腕と下肢は違います。で
すから、このような実験ですが、実際にいいモジュレーションが得られるかどうか、モジュレーション・シグ
ナルが必須から得られるかどうかは、はっきりわかりませんでした。というのは、一般的には、このような運
動のコントロール問題というのは、例えば歩く、あるいは、ゆっくり歩け、あるいは早く歩けと、これぐらいし
かわからないということです。
非常に興味深いことに、この神経生理学、下肢のコントロールに関しましての神経生理学というのは、こ
れは何年間も、腕とは違って、おろそかにされておりまして、したがって、我々、このような足に関しての動
きを探求し始めて、BMI を見てみまして、非常に多くのことがわかりました。また、腕の動きとは随分違うと
いうこともわかりました。
(森本淳) ありがとうございました。
では、次の質問ですが、上肢の何かつかむといった、そういった運動の予測の前に、一次運動野のみ
ならず、別の領域も使われていますよね。例えば前運動皮質なども使って腕の動きの予測をされていま
すけれども、例えば、より高次の脳の部分を使って、例えば歩行中に腕を動かすとか、そういったようなこ
とのデコーディングも可能になってくるのでしょうか。
(ミハイル・レベデフ) 前頭前野皮質はもちろん、個々の足の動きを予測するわけではありません。しかし
ながら、ある一定のプログラムの予測は可能です。あるいは運動の順序、また、一般的に何をしようとして
いるのか、そのタスクの予測ですね。そして、それから今度はロボティックなデバイスをそれに合わせて開
発をし、そして、それをうまく実行できるように、コントロールをされて動くようにというような形で変えていくと
いうことで、そういったことも可能だと思います。
(森本淳) 最後になりますけれども、電極をサルの脳につなぐとき、一種のブレインマップを使われている
と思いますが、各サルはそれぞれの個体差があると思うのです。適切なリージョンを、電極を挿入すべき
場所を見つけるということで、難しくはなかったですか。
(ミハイル・レベデフ) 我々の場合、サルというのは人ほど違わないのです。もちろん、すべてのサルが同
じ脳というわけではありませんけれども、似たような脳の形になっています。ですので、開頭しまして、それ
から、どこで電極を挿入するのかと、埋め込むのかということ。時には驚くことがありますけれども、多電極
のアレイを使うことによりまして、例えば我々のアレイの一部が、あまり興味深くない分野に行っているとい
たしましても、ほかのアレイの部分が、我々が記録したい部分の活動を記録してくれることで、うまくいって
います。
また、脳の機能は埋め込み中にマッピングすることもできます。ただ、その場合には時間をかけ過ぎない
141
ようにすることが必要ですけれども。
(森本淳) レベデフ先生、ありがとうございました。
(濱野清志) どうもありがとうございました。午前中はチルドレス先生の生命倫理、倫理から見た神経倫理
の話と、そういう極めて倫理学的なお話と、それから、今の本当に先端の話で、これは僕なんか全然わか
らないと言っているのですけれども、新しいことがすごく起きているというのが、よく伝わったのではないか
なというふうに思います。
これを受けまして、午後の部は、さまざまな立場から総合討論、ディスカッションをしていきたいというふう
に、討論していきますので、これで午前中の部を終わりにさせていただきたいと思います。
それでは、どうもありがとうございました。午前の部を閉じさせていただきます。
142
資料
8.3
総合司会
午後の部シンポジウム(2008.01.14, 京都)
: 濱野清志(京都文教大学)
【午後の部】
司会
: 虫明 茂(就実大学)
シンポジスト : 伊佐 正(神経科学、自然科学研究機構生理学研究所)
「日本における脳科学研究と脳神経倫理」
村岡 潔(医療思想史、佛教大学)、中川輝彦(医療社会学、龍谷大学)
「脳科学に規制は必要か」
金森 修(科学哲学、東京大学)
「エンハンスメントの哲学」
川口有美子(NPO 法人 ALS/MND サポートセンターさくら会、日本 ALS 協会)
「ALS の隠喩、TLS(Totally Locked-in State)を概観する:重篤なコミュニケー
ション障害をもつ人の在宅介護の体験から」
指定発言
: 苧阪直行(京都大学)
高木美也子(日本大学)
信原幸弘(東京大学)
菱山 豊(文部科学省研究振興局ライフサイエンス課)
【午後の部】
(濱野清志)午後は、シンポジウムということになっておりまして、シンポジウムと総合討論と
いうことで、それには、就実大学教授の虫明茂先生に司会進行をお願いしたいと思っております。
では、虫明先生、よろしくお願いします。
(虫明茂)午後の部の司会をさせていただきます、虫明と申します。
まず最初に4名の方の提題を聞いて、それから休憩の時間に質問をまとめて、後半は指定発言
者の方のコメント、その後で質疑応答の時間を設けたいと思いますので、質問用紙にご記入くだ
さいますようよろしくお願いします。
(虫明茂)まず、自然科学研究機構の伊佐先生に最初の提題をいただきます。昨日、2階のホー
ルで「脳を活かす研究会」の同じくニューロエシックスに関するワークショップがありました。
その結果も踏まえて、伊佐先生にまずご報告いただきます。そのときに、スライドの内容に関し
ては、午前中と同じように、未発表の内容もございますので、撮影等はお控えくださいますよう
にお願いいたします。
では先生、お願いします。
「日本における脳科学研究と脳神経倫理」
(伊佐正)生理学研究所の伊佐と申します。ご紹介、どうもありがとうございました。きょう、
このような場でお話しさせていただく機会をいただきまして、大変感謝しています。
私は実験系の神経科学研究者ですが、ここでは、
「日本における脳科学研究と脳神経倫理」とい
143
うタイトルでお話をさせていただきます。
国際シンポジウムですので、英語のスライドを日本語で説明するという形で説明をさせていた
だきます。
はじめに、私の立場をお話しします。後でもう少し詳しく説明いたしますが、研究者を中心と
して、「脳を活かす研究会」という組織が2年前の 2006 年に発足して活動しております。私はそ
の計画委員長として、この間取りまとめ役をさせていただいてきました。そういう立場がひとつ
めです。それで、実は、きのう、
「脳を活かす研究会」で、脳神経倫理についての、フリーディス
カッションの会をさせていただきました。本日はそこでの議論も踏まえた形で、お話をさせてい
ただきます。
もう一つの立場は、日本神経科学学会の中に動物実験倫理委員会の委員長というものです。こ
の委員会については、実は、これまでは、動物実験に関することがこれまで主な議題でした。従
って、ニューロエシックスをどのように考えていかなければいけないかということについては、
まだまだ議論が始まったばかりでございます。
以上のふたつの立場を踏まえまして日本におけるニューロエシックス、脳神経倫理の現状につ
いてお話させていただきます。今も申しました日本神経科学学会では、2001 年の1月 20 日に「人
に対する非侵襲的な実験研究の倫理的問題に対するガイドライン」というものを出しました。こ
れはそのころ、1990 年代ぐらいから非常に盛んになってきました、MEG――脳磁図、それから
TMS――脳の磁気刺激、それから PET や fMRI などの脳活動計測、それから神経心理学的なテスト
などといった、人間に対する非侵襲的な実験をカバーしようという目的でつくられました。それ
が取り扱う主な問題点というのは、例えばインフォームドコンセントをどう被験者からとるかと
か、安全性の問題、さらにプライバシーをどう取り扱うかといった問題でありました。
実は、こういった問題についても、その後研究を進めていく間に、様々な問題が明らかになっ
てきております。例えば、まだ、すべての研究機関で、倫理委員会が整っているわけではないの
ではないかということが指摘されています。これまで心理学の実験などは必ずしもそういう対象
とはみなされてこなかったというところもありますし、また、医学の専門家がいないところでも
多くの研究が行われているという状況もあります。こういうケースをどう考えていけばいいかと
いうことが、最近問題になりつつあります。それから、研究の過程で例えば脳血管奇形が見つか
った、とかいうような、予期しない個人情報がそこで明らかになった場合に、それをどう取り扱
うかといったようなプライバシーの問題とかが次第に明らかになってきました。そういう意味で、
このガイドラインは、もうできて7年たっていますから、そろそろ改訂が必要であろうというこ
とにはなっています。しかし一方で、こういう問題は、かなり手続論的なことでありまして、粛々
と、実情にあわせて適切な対応をしていけば良いことだと思います。
しかし、他方、最近、より現代的な問題が出てきた、もう少し深刻な神経倫理学的な問題が顕
在化してきたと思います。それは、最近の科学技術のめざましい進展に伴って出現してきた問題
です。
例えば特に本日の話題でありますように、脳の活動を直接操作するということをどう考えるの
かという問題です。この操作方法については、さまざまな手法があります。電気刺激を使うのか、
磁気刺激を使うのか、それから向精神薬のようなものを使うのか、それともまた、より将来の問
題としては遺伝子発現を操作することによって、脳の活動を変えるような手法も考えられるでし
144
ょう。
それから、マインドリーディング等――あまり、聞こえはよくないかもしれませんけれども、
脳の神経活動をデコードする技術の問題。これは、機能的 MRI や脳波、脳磁図といった手法で記
録されたデータを解析する方法論が飛躍的に進展してきたことで生じた新しい要素です。
そして、このような技術を、どういう人を対象として行うのかということも問題です。もちろ
ん障害があるとか、ハンディキャップがある個人の QOL――クオリティ・オブ・ライフを改善す
るために行うようなものがある一方で、健常人の能力をより高めるために行うものはどのように
考えたらよいのかといういろいろな問題が、検討されています。
しかし実際、これらの問題は本当に新しい問題なのでしょうか。実はこれと類似した問題とい
うのは、以前、特に 1960 年代から 1970 年代にかけて既にかなり議論されたことなのです。
どういうことかといいますと、例えば一部の精神疾患に対する治療として電気ショック療法と
いうのが行われていました。その中でも、特に、非常に強い電気刺激を脳に与えて患者をおとな
しくさせる場合もありました。つまり、いわゆる精神病院の閉鎖病棟での、一種の懲罰的な意味
で使われていたという側面もあったとされています。
次に、定位的脳外科の手術で、いわゆるロボトミーとかロベクトミーといった治療がある種の
精神疾患に対してなされて、それがその人の人格を喪失させる、人権侵害になるというふうな問
題も指摘されてきました。
さらにはまた、犯罪者、特に性犯罪者等について強制的な治療をどのように行うかといった議
論というのも、決して新しい問題ではなくて、古くから議論されてきた問題であります。
特に 1960 年代から 1970 年代にかけて、こういう問題はかなり深刻に取りざたされていました。
そして、その流れの一部は、いわゆる反精神医学界的な運動や活動に至り、そういう精神科にお
ける治療法とか定位的脳手術に対する社会的批判が強く巻き起こったのです。
当時の代表的な映画が2つあります。ひとつめは、これは皆さん、ご存知の方も多いと思いま
すけれども、
『カッコーの巣の上で』という映画で、ジャック・ニコルソン扮する主人公が、精神
病を偽って精神病院に入院してしまいます。けれども、そこで電気ショックを含めて、非常に、
ある意味、人権を踏みにじられてしまったというお話です。
あと、もう一つは、これはスタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』とい
う映画です。これは同名の小説を映画化したものですけれども、この主人公の若者は、暴力とセ
ックスに、毎日、身をやつして、犯罪を犯し続けます。ところが、ある日、警察に捕まって、逮
捕されて留置場に入れられます。そして、その留置場の中で、刑期を短くすることを条件に、あ
る種の矯正治療を受けます。その治療というのが、非常に恐ろしいシーン、暴力的なシーンを続
けてずっと見せつけられるということによって、暴力とセックスに対して強烈な拒否反応を植え
つけるというものでした。そのような暴力に対する拒否感が自然にわいてくる人間になって、つ
まり、人間改造によって小羊のようにおとなしくなって、社会にほうり出されます。そうすると、
昔のギャング仲間であるとか、昔、自分が痛めつけた被害者に、逆に、復讐をされてしまうとい
う、内容の映画でした。この映画は既に、犯罪者の治療強制を脳科学的な手段を使って行うとい
う、脳科学の未来を予見した映画です。このように、今日の問題は、必ずしも、最近になって新
たに生じた問題というわけではないのです。ただ、そういう古い問題には、十分な科学的な知識
がないことによって患者の処置が不当に行われたのだという面もあるかもしれません。実際、こ
145
の電気ショック療法というのは、今日では、麻酔下で筋弛緩をかけて行うことで、うつ病の患者
に対しては非常に有効な治療法として現在も用いられています。つまり、対象を限定し、より安
全な方法を用いることによって、この治療法は残っているのですね。
このように十分な科学的根拠が無かったために人権侵害されていたのが過去の問題であるとい
えますが、それに対して、先ほど申しました「より現代的な問題」においては、十分にソフィス
ティケートされた方法で、科学的な根拠にのっとって人権が侵害されてしまう可能性が考えられ
ます。
一方、研究者として申し上げなければいけないことは、
「エシックス」はテクノロジーとともに
変わるということです。ただ、この場合の「エシックス」には、かぎ括弧がついています。とい
うのは、きょうの午前中のチルドレス先生のお話にもありましたように、エシックスの原理とか
フレームワークなどは、それほど、そんなに容易に変わらないだろうし、変わるべきではないか
もしれません。しかし、どこに境界線を置くのかということ自体は、科学技術の進展とともに変
化するであろうということです。
つまり、以前は非常に自明であると思われていたことが、科学技術の進展によってボーダーラ
インのケースになってくる、ということがしばしば起きてきます。そして、問題は、実際に多く
の議論が集中するのが、このボーダーラインをどこに引くべきかという点になるということです。
ここで、具体例をいくつかあげます。例えば脳の活動を「直接」操作するということについて
考えます。これが良いのかどうか。直接的に操作するのは困るけれども、間接的だったらいいの
かもしれないという意見もあるでしょう。では、どこまでは直接的で、どこまでが間接的といえ
るのでしょうか。
例えば電気刺激とひとことに言っても、いろいろな方法があります。直接、電極を差し込んで
刺激するのか、それから硬膜下に表面電極を置いて刺激するのか。ここまでは侵襲的ですね。そ
れとも、頭蓋骨の外から電気刺激するのか。また、頭蓋骨の外から磁気刺激するのか。さらに言
えば、薬を投与するのか。より神経心理学的な訓練を行うのかといったことはどう考えたらよい
のか?一般的には、
「こういう神経心理学的な訓練ならいいけれど、ちょっと薬はどうかな。直接
刺激するのはいやですね。」というふうに思われるかもしれません。けれども、一部の神経心理学
的な訓練の具体例をよく考えてみるとどうでしょうか。例えば自閉症の子供になされる応用行動
分析という治療法では、毎日、毎週何十時間にもわたって、報酬系を刺激するような形の訓練を
繰り返し行います。かなり強い刺激を与えていることになると思います。私ども脳科学者の立場
から見ると、こういう訓練がどういうメカニズムで脳に作用するかということがわかってきます
と、次第に他の刺激方法との差がなくなってくるかもしれません。こういった心理学的な訓練が
脳のどの部位をどのように活性化するのかということがはっきりしてくれば、そこを、直接刺激
により、より選択的に刺激できれば、実際に脳内に引き起こしていることは同じではないかとい
う理解です。さらに、薬であればいいのかと申しますと、薬は、全身のいろいろな無関係のとこ
ろにも作用してしまいます。だから、薬を与えるくらいなら、むしろピンポイントで脳の局所を
直接刺激したほうが、より安全なのではないかという議論も可能です。そういうふうに科学的な
知識が積み重ねられてくると、どこまでが本当の意味で直接の操作で、どこからが直接ではない
のかということも、必ずしも自明でなくなってきます。
それから、チルドレス先生のお話にもありましたけれども、セラピーかエンハンスメントかと
146
いうことも、確かに非常に自明な事例もありますが、例えば犯罪者に対する強制はどちらに属す
るのでしょうか。そういったことも、その時々の科学的知識のレベルによってボーダーラインは
変わってくるだろうと思います。
では実際に、どういうことが可能になりつつあるかについて、少し最近の研究の流れをご紹介
いたします。
これは去年『Nature』に発表された論文ですけれども、その紹介記事に、「Implant boost activity
in injured brain」という紹介があります。これはどういう研究かというと、脳の障害があって、長
年、意識障害があった患者さんがいました。この患者さんの視床に電気刺激を加えることによっ
て意識を改善させたという内容です。これまでは、12 カ月以上、脳の損傷により、意識が低下し
てきた患者さんは、なかなか改善は望めないというふうに考えられていたわけです。けれども、
そういう患者さんでも大脳皮質の構造が比較的保たれているということです。そこで、1例、受
傷後6年たって、意識状態が非常に低下している患者さんの視床に元気刺激を加えたところ、明
らかに意識の改善が見られたという報告です。まだ1例報告ですから、今後、いろいろ検証が必
要になってきますけれども、こういったことは、現在、いわゆる植物状態と言われている患者さ
んの一部においては、刺激を加えることで、ひょっとしたら意識が戻るような事例も出てくるの
かもしれないという期待を抱かせます。
それから、もう一つは、報酬系を刺激するということです。これについては、せっかくですか
ら、少しだけ私自身の研究についても紹介させていただきます。
私は、今、研究テーマの一つとして、脊髄損傷からの回復過程の研究をしています。これはサ
ルの脳でありまして、サルの脳の運動野からは、脊髄に対して皮質脊髄路という投射経路があっ
て、運動ニューロンを駆動しています。そして、この運動ニューロンに対する直接の経路が存在
することによって、非常に細かい運動、器用な運用ができると一般に考えられています。けれど
も、私どもは、その直接の経路に並行して、間接的な経路もあるのだということを最近明らかに
しました。
そして、直接経路は、脊髄の側索の背側部を通っているのに対して、間接の経路はより腹側を
通っています。ですから、脊髄に部分的な損傷を加えることで、この直接経路のみを壊して、間
接経路だけを残すことができます。このように、反対側の脊髄を半分ぐらい壊してしまうのです。
こういったサルはどのような行動になるのでしょうか。まず訓練によって、行動が回復するのか
どうかということを示します。サルを親指と人差し指で器用にイモのかけらをつまむように訓練
します。傷害した直後は、手の末端が麻痺をして取ることができません。しかし、毎日訓練して
いると、1週間後にはとにかくつかむことはできるようになります。しかし、ごらんのように親
指と人指し指は麻痺しています。それが2週間になると、だんだん、つまむ動作が回復をしてき
ますが、まだちょっとぶきっちょです。それが、3週間ぐらいになると、非常に器用に取れるよ
うになってきて、ひと月ぐらいたつと、ほぼ完全に回復します。5頭のサルの回復直線をまとめ
ます。親指と人指し指で器用につまめた成功率をプロットしますと、早いサルで2週間ぐらい、
遅いサルでも1、2カ月で、このようにほぼ回復いたします。
そのときの、傷害する前と、回復の初期と回復の後期における脳の活動を PET(Positron Emission
Tomography)で解析してみました。その結果、これはサルの脳を上から見たものですが、ふだん
は動かしている手の反対側の一次運動野だけ使われています。しかし、回復初期には、同じ側の
147
大脳皮質も使われてきます。それに対して、さらに、後期になると、新しく出現していた同側の
活動はなくなって、反対側の一次運動野の活動が大きく広がってくるとともに、運動前野の活動
も増加してきます。
こういった研究から、機能回復にどこの領域が非常に重要かということがわかってきました。
ところが、こういう一次運動野の活動の増加とともに、実は脳の非常に深いところにあります側
坐核、nucleus accumbens という場所の活動も非常に増加してくることがわかりました。そしてさ
らに、実はこの活動が、一次運動野の活動と非常によく相関していることがわかりました。損傷
する前は活動が相関しないのですけれども、損傷の回復過程において非常に活動の関係が深くな
ってくるということから、ここの活動の増加が、一次運動野に働きかけて、学習を促進している
のではないかというふうに考えています。
ですから、既にアメリカでは一部の人に対する治療として既に行われつつあるようですが、こ
の側坐核に電気刺激を加えると、機能回復をより一層促進できるかもしれません。ただ、問題点
の一つは、やはり報酬系を刺激するということにあって、それがどういう結果をもたらすかとい
うことについては、今後の実験的検証が必要だと思います。
次に、話題を変えて日本における脳神経倫理に対する取り組みについてお話します。ここ数年、
幾つかのプロジェクトが開始されています。一つは、日本の科学技術振興機構――JST の社会技
術研究のプロジェクトで、日立製作所の小泉先生がヘッドになられて、佐倉先生や福士先生など
が活動されているプロジェクトです。それから、きょうもお見えですけれども、日本大学の高木
先生が始められた NEDO のプロジェクトで、深部脳刺激の安全性等に関するプロジェクトです。
それから、もうひとつ、今回の京大の福山先生のプロジェクトなども行われて、進んできており
ます。また、それとは別に、研究者の自発的な組織として、私どもは一昨年、2006 年の春から「脳
を活かす研究会」というものを組織して、この間、活動をしてまいりました。これは、脳科学が
より応用的な側面を持ってきていますが、そのような研究を促進するとともに、それに伴って起
きてくるいろいろな問題も考えていきましょうという、という活動をしてきました。
この会は、三つの部会から構成されております。一つめは「脳をつなぐ」というもので、これ
はいわゆるブレインマシンインターフェースを含めた、脳とコンピューターの相互作用を考える
ような研究をいかに進めていくかといったことを検討しています。
それから、もう一つは「脳を読む」という部会で、脳の活動をデコードして、ニューロマーケ
ティングとか、ニューロエコノミクスという研究を行う、そういった脳の情報を直接取り出す技
術とその応用に関して考えていきましょうという活動です。
それから三番目に、
「脳と社会」という部会がありまして、これは脳科学と社会の関係を考えて
いきましょうと目的のもとに、特に科学的な成果をアウトリーチしていく過程で、どのようにし
て社会と接していくか、特に神経神話といったような問題を、どういうふうに取り扱っていけば
いいのかといったことを検討する。それから、またさらには、ニューロエシックスについても考
えていくという活動です。
その中でいろいろ感じたことがあります。一つは、脳科学に対する社会からのある種、過剰と
も言えるような大きな期待が寄せられているということです。また、一部には、期待だけでなく、
逆に、「非常に心配である」とか、懸念も出されていることもあります。
期待とはどういうものかというと、例えばロックイン――閉じ込め症候群と呼ばれ、脳幹等に
148
出血があって、意識はないけれども上位中枢は比較的無傷であるという患者さんと以前と同様に
コミュニケートできるようになるかもしれないと期待されています。或いは、脊髄損傷の患者さ
んを歩けるようにさせるような技術が、今後、開発されるかもしれないといった期待もありま。
しかし、その一方で懸念もあります。
それは、例えば自分の心が他人によってリモートコントロールされてしまうのではないか、我々
の自己やアイデンティティがなくなってしまうのではないか、それから、我々の心の中での考え
というのが、誰か他人によって読み出されて使われてしまうのではないかといったこと。さらに
は、我々自身の個人的な特性や性格が、遺伝的な背景であるとか、脳活動のある種の反応パター
ンなんかによって、人に読み取られ、わかってしまうのではないかといったプライバシーの問題
に関する懸念も挙げられます。
それからジレンマを覚える問題として、例えば犯罪を頻繁に起こすような性向のある人がいて、
本人が希望した場合に、脳の活動を直接操作するようなことによって矯正を行うようなことが許
されるかどうかといった問題。また、我々の子供を、もし脳の活動を操作することで、もっと賢
い子供にできないだろうかといったようなことを。これは本当にどう考えていいのかと思います。
こういった非常にいろいろな期待とか懸念、もしくはアンビバレントな気持ちというのが表明
されるわけですけれども、でも、実際にはどうなんでしょうか?そのリアリティ――現実的には
どこまで本当に可能なのでしょうかということについて、我々自身、研究者として当惑すること
が少なくありません。
一方で、他のバイオサイエンスの分野ではどうなのでしょうか。例えば、クローン羊のドリー
が、クローン技術の進歩によって 1996 年に生み出されました。つくられたときには、当然すぐに、
きっとクローン人間がつくられてしまうのではないか、と思った人も多いと思います。しかし、
それから 12 年経過しようとしていますけれども、現在では、やはり現状のクローン技術というの
は、人間に対する応用とはとてもほど遠い段階であるということが、一般にも認識されていると
思います。
また、他にも遺伝子治療であるとか、幹細胞による治療といったものについても、どういうふ
うに現状を考えたらいいのでしょうか。本当に明日にもできるような話があると思えば、なかな
か実際には使うところまでいっていないという話もあります。実際の現状はどうなのか?それを
その分野で研究している研究者自身は、本当にどのように把握して、どのような見通しを持って
いるのでしょうか?さらに、日本独自のバイオエシックスに関する独特な文化的な背景について
も考えていかなくてはいけません。
その一例として、脳死と移植ということに関する非常に困難な歴史があります。日本の国内で
は、脳死を死と見なすべきかと、そして脳死状態の患者から移植をしても良いかどうかというこ
とについて、非常に長い議論の歴史がありました。
これは覚えていらっしゃる方も多いと思いますけれども、1968 年に、札幌医科大学の和田教授
が初めて心臓移植をしたときに、和田教授は、当初はすばらしいヒーローとして扱われたわけで
すけれども、その後、脳死の診断が必ずしも適切に行われなかったのではないかということが疑
われて、逆に社会的な非難を浴びてしまったということがありました。それが非常に大きなダメ
ージとなって、長年、脳死診断と移植が行われてこなかったという歴史があります。
そして、実際に2000年に臓器移植法が制定されました。しかし、現在ほぼ8年経過しよう
149
としていますが、その間、行われた脳死後の移植というのは 63 件にしか過ぎません。
ということから、我々日本人というのは、たとえ、死体であっても、それを傷つけるというこ
とに関しては、非常にやはりセンシティブであると言わざるを得ないと思っています。
そこで、このような社会からの過剰な期待がある一方で、日本独自の風土が影響する中で、我々、
研究者が何をしていけばいいのでしょうか?
まず一つは、技術的な問題ですが、BMI の研究を今後展開していく中では、できるだけ、社会
にとってアクセプタブルなテクノロジーの発展ということを、どこかで視野に入れていく必要が
あると思います。例えば、より侵襲の程度が少ないBMIの開発を考えていく必要があるという
ことです。
もう一つは、対社会的な問題です。やはり私たち自身が認めなければいけないのは、我々、研
究者というのは、どうしても到達可能な最大限の目標、すなわち本当はここまでいけばいいなと
か、またはそれ以上の理想について夢を語るという傾向があります。ここまでできたらよいな、
ということをここまでできるかもしれない、できそうだと言ってしまうわけです。その結果、社
会の関心を引くことができるわけですが、これはある意味、ちょっと仕方ないかもしれません。
と申しますのは、それが研究者本来の性質だからです。というのは、研究者は夢があるから研究
をしているわけで、特に、不可能かもしれないところにゴール設定して、不可能をどうやって可
能にするかというところで頑張るというところがあるのです。さらに、自分の研究のフィールド
に、より多くの資金を獲得するために、見込みを強調するということもあるかもしれません、と
いうか、実際、あり得る話だと思います。
ところが、社会の一般の多くの方からすると、実際にその辺のところがよくわからない。つま
り、ここまでできるかもしれないということと、これは今できているということとの境界が必ず
しも明確ではないということになるのではないかと思います。実際、科学的にここまでできたと
いうことを断定することには、かなり慎重な議論が必要です。例えば1本か2本、論文が出ただ
けでは不十分です。トップクラスの研究者でも間違いを起こすことがしばしばあります。ですか
ら、研究の成果の科学的な可否については、研究者のコミュニティの中での十分な議論に堪えた
ものだけが何とか残ることになります。この次元のことと、今後、ここまでできるだろうという
見通しの間には、実は相当なギャップがあるのです。そしてそれが、どういうことなのかという
ことを、正しく社会に対して発信する必要があるのではないかと思います。ですから、やはり現
状と見通しについて、社会の人たちが適切な判断を下せるようにするための情報発信を行ってい
く必要、ないしは義務があるのではないかと思います。
以上が私の研究者としてのメッセージです。
最後に、今日はここまで研究者として考えていることを申しましたが、それは客観的な立場で
の話で、少々他人ごとのように聞こえる部分もあるかもしれません。
では、最後に、私自身がどう考えるかということを述べたいと思います。私が個人として、あ
る種の治療法とか技術を実際に使うべきかどうかということを判断する際には、それを私の家族、
つまり両親とか子供に対して使用してもいいと思えるかどうかということを一つのスタンダード
にしたいと思います。ただし、これは必ずしも私自身に対して使われるかどうかということは想
定しておりません。私自身はむしろ研究者ですから、ひょっとして、それをやることで、何かこ
れまで誰も経験できなかったようなことを経験できるとか、見えないものが見えるというような
150
チャンスがあるとすると、私自身は多少のリスクを冒しても試してみるかもしれません。ですか
ら、私自身がどう考えるかというのは、おそらく適当なスタンダードにはならないでしょう。
以上で、きょうの私の話は終わらせていただきます。ご静聴ありがとうございました。
(虫明茂)伊佐先生には科学者の立場から、現況に関する概説的な問題の説明と幾つかの具体的
なご提言をいただきました。
では2番目に、
「脳科学に規制は必要か」ということで村岡先生にご発表いただくのですが、実
はそれに先立って、昨日のワークショップでも簡単に報告したのですが、我々のグループで一般
社会の人々が脳科学についてどう思っているかというアンケート調査をやりました。規制に関す
るアンケートも含まれておりますので、まず村岡先生の発表に先立って、龍谷大学の中川先生に
このアンケート、脳科学について一般の人がどういう意見を持っているか、これについて報告し
ていただいて、その次に村岡先生の発表をお願いします。
では中川先生、よろしくお願いします。
「脳科学に規制は必要か」
(中川輝彦)ご紹介にあずかりました中川と申します。社会学という社会調査をメインの一つに
する学問をしておりまして、今度の「脳科学をめぐる国民意識調査」を「意識の先端的脳科学が
もたらす倫理的・社会的・宗教的影響の調査研究班」の中で担当させていただいております。こ
の後の村岡先生の報告のベースとなるようなデータ、及び、全体のディスカッションの一つの資
料として、急遽、報告させていただくことになりました。機会をいただき、ありがとうございま
す。
では、時間もあまりないことですし、早速、内容に入っていきたいと思います。
どういうことを調査したかといいますと、脳科学をめぐる期待とか不安とか要望に関して調査
したのですが、調査方法について、まず簡単に述べておきます。
ウェブを利用しました、モニターを対象とする、調査会社の把握しているモニターを対象とす
るアンケート調査です。日本国民のミニチュアのようなもの、バーチャルにつくりまして、その
モニターさんに、ミニチュアに適合するような形で調査対象者となることをお願いしているとい
うことです。スライドには、ややこしい言葉が書いていますが、そういう形でとっているのだと
思ってください。それで、2,500 人の方からきちんとした回答をいただいております。
調査に詳しい方は、どうしてランダムサンプリングではないのかとか、面接による面接ではな
いのかという疑問を持たれるかもしれませんが、近年の調査環境の悪化とか調査内容、かなり込
み入ったことを聞いていますので、モニターの前でゆっくり、パソコンの前でゆっくり考えてい
ただくほうがいいだろうと判断しました。もう一つは、やはり時間的、金銭的、人的コストとい
うものを総合的に判断しまして、ウェブ調査を選びました。
では、早速、内容に入っていきたいと思います。
少し字が小さいので見にくいかもしれませんが、スライドを見ていただきたいと思います。何
を最初に報告するかといいますと「脳科学に対する期待と不安」です。
左側のグラフを見ていただきたいのですが、「脳科学の発展は人々を幸福にすると思いますか」
という質問をしました。これに対して「賛成」、
「どちらかといえば賛成」、つまり幸福にすると考
える人は5割近くいます。ピンク色とオレンジ色のところです、左側のグラフの。一方、幸福に
151
なんかしないよという人は、わずか7%ということになっています。
では、「危険をもたらすと思いますか」と、そういうふうに尋ねたらどうかというと、「やはり
危険もあるんじゃないの」と4割近く人が答えておられるという結果になっています。
では、次にいきます。
「脳科学に対する規制の要望」つまり「あなたは脳科学について厳しい規制を求めますか」と
いう趣旨の設問に答えていただいたのですが、
「賛成だ」と、「どちらかといえば厳しい規制に賛
成だ」という人をあわせて5割を越すと。56%となっています。
これだけですと、5割を超すというだけのことで、意味がよくわからないのですが、科学技術
の研究一般と比較しますとどうか。同じような設問を科学技術一般についても尋ねてみます。そ
ちらですと、厳しい規制の要望というのは4割弱になっています。
どういうことなのかと。あまり過剰な解釈というのは、ここでは慎みたいと思うのですけれど
も、恐らく脳というものが特別なイメージ、もしかしたら、それは神経神話みたいなものかもし
れませんが、そういうものを帯びていて、それがこういう数字として出てきているだろうという
ふうに、ここでは暫定的に解釈しておきたいと思います。
では、次にいきます。もう少し細かい話です。
いわゆるマインドリーディング、つまり思考・感情を読む技術に関して、用途別に、それが実
用化されることは望ましいと思いますか、と尋ねました。グラフの左側のピンク色、オレンジ色
というところが、どちらかといえば肯定的な意見を示しています。寒色系、つまり緑色、黄緑色
と青というのが、どちらかというと望ましくないという意見を示しています。
見ていきますと、非常にきれいに(回答の分布の)パターンが二つに割れています。つまり、
上三つ、「親による子どもの教育」「教師による児童・生徒の教育」、「企業の人事管理」というと
ころは、
「望ましい」とする人が少ないわけです。それに比べて否定派の青色、緑が非常に強くて、
6割程度、5~6割にかけてが否定的に評価していると。
逆に、何が評判が良いのかといいますと、
「犯罪捜査」、
「法廷での証言の真偽の判定」、
「公人の
公的発表の真偽の判定のため」というようなことの用途であれば――ある種のうそ発見器として
使うということでしょうね――そういうことであれば5割程度の方が肯定的に評価されておりま
す。比較すると、下の三つ、どちらかというと非常に公的なイメージがある。あるいは治安・公
安的な、そういうものに関する貢献というイメージのあるものは、比較的――あくまでも比較的
です、用途の中で――比較的、肯定的に評価されているというような結果が出ています。
では、次にいきます。
ブレインマシンインターフェース、これの実用化について尋ねました。これに関しましても、
「そういう実用化は望ましいと思いますか」というのを用途別に聞いています。もちろん、近未
来的な話も聞いていますので、実現可能性云々という点に関しては、ちょっとオミットして聞い
ていますけれども。
これもきれいに(回答の分布が)割れています。
「病気の治療」
、
「手・足などに障害のある人が、
義手・義足などを使うため」という用途ですと、
「望ましい」、
「どちらかといえば望ましい」とい
う方が7割台後半から8割前後おります。一方、
「機械を操作する」、
「記憶を補助する装置を使う」、
「受刑者を矯正する」、「前科者の再犯防止」といったものに関しましては、一応、望ましいとす
る人が望ましくない人を大体上回ってはいるのですが、僅差のものも多いですし、真ん中の黄色、
152
「どちらとも言えない」という方も結構いるという感じの評価になっています。
やはり医療・福祉というところは非常に支持されています。それ以外ですと、支持されてはい
るのだけれども、「うーん、どうかな」という人もいるという感じになっているわけです。
次は、
「薬物による精神変容に関する評価」を尋ねました。いろいろな薬、もともとは治療薬等
をいろいろ転用することで、感情をある種、制御したりできるのではないかとか、認知能力だで
あるとか、記憶能力というのに働きかけることができるのではないのかということが言われてい
ますけれども、そういったものに関して、
「今より、また発展して、さらに実用化が進むというの
はどう思いますか」というようなことを聞いています。
ここでも、やはり一番支持されているというのは「病気の治療」です。
あくまで相対的なものなのですが、では、何が一番支持されていないかというと、
「幸福感を得
るため」と「宗教的超越体験を得るため」、「社員の労働意欲向上のため」、「親による子どもの教
育のため」です。これらは「望ましい」、「どちらかといえば望ましい」をあわせても、1割台あ
るいは1割以下というところです。
「幸せになりたいのだったら自分で努力しろ」というところで
しょうか、というのは、ちょっと読み込み過ぎかもしれませんが、そういう感じになっています。
もう少し支持者がいるのが、「受刑者の矯正」であるとか、
「前科者の再犯防止」というところで
す。これらは「望ましい」、「どちらかといえば」をあわせて4割程度になっております。
次はエンハンスメントに関して尋ねている項目です。これは「一般的に望ましいですか」とい
うのではなくて、「あなたはエンハンスメントをしたいですか」というような形で聞いています。
欲求、どぎつい言葉で言うと、エンハンスメントへの欲望のようなものを聞いているということ
です。
エンハンスメントというのは、ややこしい概念でして、何度か、恐らくここでのディスカッシ
ョンでも議論になると思いますが、定義を非常にしにくいのですが、とりあえず今回調査をする
に当たりましては、こういうふうに定義した上で調査しました。
「病気の治療、健康の維持・回復
を越えて、能力や性質を「改善」ないし「より良い」と信じられている方向に変化させることを
意味する」という定義です。
「信じられている」とは、これは当人が「望ましい」と「信じている」
という意味です。究極的に言えば、記憶力が上がることがいいことなのか、幸せなことなのかど
うなのかというのは、いろいろ議論があると思いますから、そういう究極的な議論を避けて、こ
ういうふうに定義しています。
実際に、では尋ねてみますと、こんな結果になっています。上のほうは性格の話です。下が記
憶力です。私は自分の性格を変えたいんだという方は4割ぐらいいると。「薬で」となりますと、
1割台になってくると。記憶力を高めたい、こちらは非常に多いです。私もその一人ですけれど
も、9割弱います。でも、薬を使ってでもということになると、やはり減ってきます。
これはどういうことなのでしょうか。恐らく一つには、薬というものに対する抵抗感というの
があると思います。ここには出していないのですが「健康のために薬を控えている」という人が、
同じアンケートで尋ねているのですけれども、そういう人が3割ぐらいいます。ですから、薬と
いうのは、なんか悪いものなんだというイメージがついていますから、そういうところがあるの
だと思います。しかし、恐らく、それだけではない。エンハンスメントへの抵抗感というところ
があります。
これと関連して、同じ技術、薬ですね、をとりあげて用途による抵抗感の違いも尋ねています。
153
新しいスライドです。記憶力を高める薬ということで尋ねているのですが、目的により抵抗感が
違うのかを調査しました。治療とエンハンスメントの比較です。治療ないし回復の場合、5割弱
抵抗感を持つ人がいます。やっぱり薬というところが効いているのだと思います。では、エンハ
ンスメントになるとどうかといいますと、抵抗感を持つ人の割合は7割まではね上がると言うと、
ちょっとレトリカルに過ぎますが、増えます。つまり、同じ技術でも、そこに与えられている意
味によって、この場合用途ですが、抵抗感が変わります。
「治療ではなくてエンハンスメントです
よ」と意味が与えますと、抵抗感が少し上がってくるというような結果になっています。
ここで調査結果の要約ということで、まとめさせていただきます。
脳科学に対する規制の要望は、比較すると科学技術一般に対する規制の要望より強いと言える
でしょう。最初の話です。
次に、脳科学に応用に対する評価は用途により異なることが指摘できます。医療・福祉目的、
法秩序の維持という目的は比較的支持されるけれども、
「私的」用途(人事管理)などは、あまり
支持されない傾向がある。幸せになる(ために薬を使う)とか、そういうこともあまり支持され
ないということです。
同じ技術であっても、治療目的かエンハンスメント目的かにより抵抗感が違います。後者が高
くなっています。
最後に、今後の課題です。今後、研究班の中でいろいろ議論した上で報告書にまとめていくの
ですが、その中でいろいろと考えていかないといけないことがあるだろうと思います。
一つは、バイアスの検討というのをしないといけない。調査結果と実際の国民意識一般とにズ
レが生じている可能性というか危険性を検討する必要があります。ウェブ調査ですから、ウェブ
に全然さわれないとか、さわらないという人は、そもそも最初から視野の外に置いてしまってい
るわけです。その問題性というのは、やっぱりあります。その人たちも含めて国民ですから、そ
の人たちがいないふりをしてしまってはいないわけで、その点に関して考えないといけないとこ
ろがある。この調査結果に対して留保しないといけないところがあるわけです。今後、考えてい
かないといけない問題です。
今回、報告しなかったのですけれども、脳科学は国民のどのような層にどのように意識されて
いるのかという問いも残っています。誰がどんなふうに思っているのか。国民といっても均質で
はないですから、性別だってあるし、年齢差だってありますから、その層によって違うはずです。
そうした違いで、脳科学についての意識がどういうふうに変わってくるのか、あるいは、変わら
ないのか。そういうことも考えられるように、アンケートを設計していますので、そういうこと
を考えていきたいと思います。
もう一つは、国民の意識はどのように形成されているのか。例えば神経神話にしても、どうい
うふうな経路でなんか爆発したりする――爆発というか、すごい力を持ったり、持たなかったり
するのかというような話をしないといけないだろうと思います。
最終的には、研究班の報告書として、神経科学・倫理学・哲学・宗教学・心理学・社会学など
の共同研究による、脳科学をめぐる政策提言のための――政策提言そのものというわけではなく、
調査結果というのはあくまで数字ですから――基礎資料を作成していきたいと思います。
この、今、発表しました数字についてどう読むのかというものに関する解釈というお話は、次
に報告なさる村岡先生にお願いします。私の報告はこれで終わらせていただきたいと思います。
154
ご清聴、ありがとうございました。
(虫明茂)中川先生、ありがとうございました。この調査は、一般の人々の脳科学に対するイメ
ージ調査です。アンケートの中であまり BMI とは何か具体的に書き出しますと、これが誘導にな
ってしまいますので、一般の人は必ずしも正確に理解して答えているわけではなくて、脳科学に
一般の人が抱いているイメージの調査ということになります。
では、こうしたアンケートの調査結果も踏まえて、次に佛教大学の村岡先生に「脳科学に規制
は必要か」、ご報告をいただきます。
(村岡潔) 皆さん、こんにちは。佛教大学の村岡と申します。ふだんは医学概論といいまして、
特に近代医学の考え方を中心に、医学というものがどうあるべきかという医療倫理に関して議論
したり、また歴史的な部分で、どんな考え方で医療というものが進んできたのか、あるいは、こ
れから進んでいくのかというような領域で教育・研究をやったりしております。特に今、非専門
家の側から医療というのをどういうふうに考えていくかというような点に関心を持ってやってお
ります。
これからの短い 15 分ぐらいの発表の中で何を申し上げますかというと、今、中川先生が発表に
なった国民意識調査の結果の一つの解釈ということになると思いますが、基本的に非専門家の側
からの解釈ということになると思います。そして、その中で出てきた神経科学と科学一般での差
とか、あるいは治療かエンハンスかという大きな問題がありましたので、その違い、さらに、治
療かエンハンスかの判断に結びついていると思われる正常と異常の関係について述べて、最終的
にこれらに関する規制論として私見を述べたいと思います。
【スライド1】(1)「国民意識調査」にみる規制志向
①脳科学と科学との比較:
*脳科学研究に「きびしい規制」を求める(5割以上)
*科学技術の研究一般への「きびしい規制」の要望(4割弱)
②脳科学への評価の両義性:*脳科学に幸福を期待(5 割)
<=>
脳科学の危険性を警戒(4 割)
③期待される脳科学の役割
*病気治療や障害者支援
<&> 犯罪者の再教育、公言の真偽判
定
④警戒される脳科学
復唱になりますが、もう一度、先ほどの意識調査の中では、脳科学というものと、それから科
学技術一般とに「きびしい規制」の要望がございました。しかし、パーセンテージの上では「き
びしい規制」は、より脳科学のほうに求められていたと思います。このように基本的には、先端
医療では、両方の側面、期待をする面とそれから規制を求めたり、心配や懸念を示したりする二
つの側面を持っていると思います。
さらに、もう一つ、期待される脳科学の役割の中でも、特に病気治療とか障害者支援について
は比較的支持が高かった。それから、これも注目されることですが、比較的、これより支持は少
なかったのですけれども、犯罪者の再教育とか、あるいは公人の発言の真偽判定といったものに
155
もかなりの支持が得られていたところが、私にはちょっと驚きだったわけです。
それから、
「警戒される」と、おどろおどろしく書きましたが、何が問題とされているかという
と、先ほどのアンケート結果では、薬によるエンハンスだったわけです。
【スライド2】脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系-Ⅰ
脳科学と科学一般の差
①脳科学が、従来の科学一般と同様ならば、=>脳科学の処遇も科学全般と同様に
なり、
=>脳神経倫理にも、これまでの生命倫理の積み重ねの成果・経験が十分、応用で
きる。
②一方、脳科学の特殊性(例:「精神の座」)を強調するなら、
それでは、ここからは、脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系としてみていきたいと思います。
まず脳科学と科学一般の捉え方に違いあるかについては、これは先ほどのアンケートの 10%の差
をどう見るかに関わってくると思います。基本的には、従来の科学一般と同様と考えることも可
能で、その場合には、当然、それに伴なう脳神経倫理についても、これまでの生命倫理の蓄積と
いうものが十分応用できるのではないかと考えられます。
一方、脳科学は、
「精神の座」の科学として特殊性を強調することも可能だと思います。特に先
ほど6割ぐらいの回答でちょっと心配だというデータが出ていたのは、おそらく、精神の座とい
ったものが侵犯されるということへの恐れからだと考えられると思います。
さらに、ちょうど遺伝子診断や遺伝子治療について遺伝子決定論の形で議論されたことがある
わけですが、それと同じように、脳を中心的に考えてすべて脳から始まるという、あるいは脳で
説明がつくというような方向に行き過ぎても問題ではないかと考えます。
【スライド3】
(2)脳イメージング(脳画像法)
次に、これは先ほど既に伊佐先生が詳しく
CT、MRI、PET など脳の状態の検出
解説されたことなのですが、それに対して私
=> ①神経・精神疾患の診断・治療
が非専門家として思いましたのは、科学者、
=> ②人間の情動・言語・認知実験。
特に神経科学者と、それから一般といいます
*問題点:
か非専門家とが、結構、歩み寄りができるの
1)所見の解釈・翻訳の不確定性多義性?
ではないかということを感触として得まし
て、非常に先ほどの発表をうれしく拝聴した
画像所見<=>「実態」!?
わけです。
2)神経・精神疾患の予測・予知に?
->保険会社の検査要請も(遺伝子診断同
ここでは、今まで言われてきたようなこと
について、非専門家の代表として、私が大学
様)
で担当としている一般学生のような人たち
がどんなふうに考えているかということを幾つかの脳イメージングとか薬物の話で少し展開して
みたいと思います。
今日では CT スキャンとか MRI などで脳の状態の検出ができるようになってきて、神経疾患、
精神疾患の診断・治療に利用されています。さらにエンハンスの問題に間接的につながってくる
156
と思いますが、人間の情動とか言語、認知実験などの研究も進められてきています。
そのときに一つの問題点として考えられるのは、専門家の方たちには、蓋然性があり当然そう
だと思われていると思うのですが、素人目に見ますと、画像で得られた所見と実態とが、どのよ
うにつながっているのか。つまり、画像所見から実態を見るという、一つのレトリックといいま
すか、論法が成り立っているわけです。私も以前、脳外科にいたときに、CT スキャンがまだでき
たころ、脳梗塞の患者さんなどを CT スキャンにかけて、その場で、リアルタイムで画像が出て
くるのを見ていたわけですが、そういう環境に居ると画像は実態を反映しているものとしてリア
入りティを感じたものです。しかし、それが本当にそうなのかというような疑問が、多分、非専
門家の中にはあるのではないかと思います。これはまた専門家の方から、いろいろなご意見、ご
指摘がいただければと思います。
もう一つは、これは遺伝子診断のときにも行われてきたことですが、こういった脳画像の診断
が、神経・精神疾患の予測とか予知に使われる可能性が、あるいは、拡大解釈すれば危険性も含
めて、出てくるのではないかと思います。
例えば統合失調症の方を調べてみますと、側脳室が大きいとか、海馬が小さいとか、前頭前野
に異常所見があるというようなことが言われています。そうすると、実際に医療の見方としては、
逆に今度は、そういう人たちを発見したときには、逆に統合失調症ではないかとか、あるいは、
統合失調症になるのではないかといった予測ということが成立してくると思うのです。そういっ
たやり方が進んできますと、今度は遺伝子診断で見られたように、保険会社から脳画像検査の要
請が出てくる、そういう可能性もあるわけです。
それから、いわゆる「脳指紋法」の開発が期待されますと、例えばアンケートで公人の発言の
真偽判定に脳科学を利用することにかなり支持が得られたということがあったわけですけれども、
そういった場合にも使われていく。ですから、この場合は嘘をついているとき脳のある部位が活
性化しているとなると、実際に、公言といいますか、公人の発言をチェックしながら、その部分
に活動が見られたら、これは嘘を言っているのではないかということが分かるようになることが
期待される。こうした利用もいろいろな問題をもたらすと思います。
【スライド4】(3-1)薬物で性格の変化?
①
々の気分を変調させる向精神薬は広く治療に服用されている。
統合失調症(抗精神病薬);ADHD(「覚醒剤」
)など
②その応用範囲を拡大することの是非?
例1)人間の困った性格(人見知りや高所恐怖症や性悪など)を変容させる薬を開発す
べきか?
それから、薬物による性格の変化という問題もあると思います。
基本的に①の場合ですと、治療として認められているケースだということがあります。今後、
さらにその応用範囲を拡大していくということも考えられてくると思います。例えば、その場合
に、これはちょっと論点の先取りみたいですけれども、医療化といって、今まで医療の範囲では
なかったものがしだいに医療の中に組み込まれてくる。例えば ADHD(注意欠陥多動性障害)も、
そういうふうな範疇に入ると思うのですが、そういう医療化の結果、エンハンスメントとされて
157
来た脳技術が医療に取り込まれてくると、それは治療ということなり正当化されて行くというこ
とがあります。
そうなってきますと、例えば次のような人間の困った性格ですね。これは自他ともに認めるよ
うな場合があると思うのですが、そういうものを変容させる薬を開発すべきかとどうか。あるい
は、先ほどアンケートのように前科者に対してどうするのか。つまり、そういう暴力行為で有罪
となった人に「更生(治療)」のために投薬すべきかどうか。そういう問題も出てくると思われま
す。
【スライド5】(3-2)薬物で記憶力の変化?
① 「スマート・ピル」:
例1:ドネペジル(アルツハイマー病に伴う記憶障害などの症状進行を遅く
する薬)
=>健常者が利用?
例2:リタリンを飲んで試験の点数を上げる?
②忘却剤(記憶形成保持の妨害)の発案
例:精神的なトラウマの記憶に悩んでいる人のため?
=>一方、トラウマは、人が危険な出来ごとから身を守るツールともみなせ
薬物による変化の問題のもう一つは、記憶力の変化、いわゆるスマート・ピル(ドラッグ)と
呼ばれているものです。どういう問題かというと、例えばアルツハイマーなどで使われるアリセ
プトといった薬を健常者が服用することによって記憶力を増やそうとする。また、リタリンを飲
んでテストの点数を上げようとするといった話です。こういう使われ方はどうなのか?
それから、いわば「忘却剤」といいますか、つまりそれによって、トラウマをもつ人の悲しい
部分の記憶というものを取ってあげるというような目的の薬をつくるということはどうなのかと。
これは、つまり人間性や人間の成長にとって、トラウマのような体験が意味があるという考え方
すれば、こういう薬には大きな問題があると言うことができると思います。
それから、次はサイ
【スライド6】(4)サイボーグ化?
1)患者への対応:
ボーグ化の問題です。
[例]
この場合、<患者>、
難聴(=>人工内耳・聴覚脳幹インプラント)や視力障害(=>人
工網膜)
言い換えれば<病気>
2)クライエントへの対応:心身の能力改造?
に対する対応であると、
(患者/クライエント:「義肢」=>超人化?)
脳科学技術は多くが正
*サイボーグ化の資源:脳は可塑的に対応か!?
当化される、正しい行
① BMI :「意思で動かせる義肢」
為であると言われる。
②TMS(経頭蓋磁気刺激装置):運動・感覚・記憶の研究や、
それに対して、クライ
うつ病やてんかんの治療
アントへの対応は異な
③DBS(脳深部刺激療法)
:パーキンソン病などの治療
ります。ここでのクラ
④
(
実感)
術
的
感
成
158
イアントとは、要するに患者ではないという意味ですが、そういう人たちが自分の心身の能力を
改造しエンハンスメントを図ろうとするといった場合はどうなのかという問題です。
例えば義肢です。義肢をつけてやっていきますと、そのうちに、普通のレベルを超えてしまう
ことも起こりうる。平均のレベルとは何かという点も決めがたいですが、その義肢の能力をアッ
プさせることによって、一般的な人よりは速く歩けるように、あるいは強い力を持つようになる
ことができるかもしれません。そうすると、それは行きすぎなので、くいとめなければならない
のかというような問題も出てくると思うのです。
それから、サイボーグ化の資源と書きましたが、これは午前からこれまでの話でいっぱい出て
きたので詳しいことは述べませんけれども、①BMI、②TMS、③DBS などの代表的な技術が、治
療の場面でも大きく活用されています。
それから、最後の④の人工現実感(VR;バーチャルリアリティ)もかなり開発されています。
VR では、実際に私たちが自然の見るもの聞くもの触るもの嗅ぐものとか、そういう自然発の刺激
ではなくて、外に実体がなくても実行力としての人工的な刺激作成して身体に与えることによっ
て、脳の中で一つの世界(現実)が構成されるという意味ですから、VR も脳に様々な影響を与え
るのではないかと思います。
これらがサイボーグ化のための資源として考えることができるでしょう。そういった機械化に
対して、文献的には、やはり脳は想像以上に柔軟で可塑的にそれらに対応しているということが
あると思います。
あるテレビ放映にもありましたが、左側の元来言語中枢があった大脳半球が脳梗塞で損なわれ
話せなくなった人が熱心な機能回復訓練で話せるようになったが、脳画像診断で右大脳半球に新
たに「言語中枢」ができたことがわかったという話がありますし、また BMI(脳マシン・インタ
ーフェイス)を使っている中で、それに対応して脳の活動領域が変わってきたという話も報告さ
れています。
このように、脳というものは非常に可塑性を持っていると考えられるので、単純に今の段階で
脳の本来あるべき姿はこうだというようなことは言えない気がいたします。
【スライド7】脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系-Ⅱ
<治療>か<エンハンスメント>か?
「治療」:(テクノロジーで)
既知の病気や障害・損傷を持つ人の健康・機能を正常や状態に回復させること。
「エンハンスメント」: (テクノロジーの力で)
正常に働いている人間の身体や心理に直接介入し生来の素質・活動能力を強化し向上させる
こと。
?両者にはどのような差があるか?
◎シンボル効果:=>治療なら OK;
これらを受けて、脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系のⅡとしては、治療かエンハンスかと
いうテーマについて考えます。治療の定義とエンハンスの定義については、これは米国大統領生
159
命倫理評議会の報告書:“Beyond Therapy”(『治療を超えて』)にも書いてあるものです。要する
に「治療」とは、病気や障害や損傷を持つ人の健康機能を正常の状態に回復させること。正常状
態が何かというのはなかなか難しいと思うのですけれども、エンハンスメントは、正常の状態を
超えた状態にすること、あるいは、正常に働いている人間の身体や心身の能力をさらにアップす
ることを意味します。
これら区別に対して、先ほどの国民意識調査では、回答者は、シンボリックなイメージでとらえ
ていると思うのです。そして、
「治療ならば OK である」が「エンハンスならば問題である」とい
うような、一つの公式に従って回答がなされているような気がします。
しかし、これは非研究者・非専門家だけでなく、専門家の中にもこういうような意識があるよう
に思います。
【スライド8】脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系-Ⅲ
正常(健康)vs 異常(病気)
①これらは、文化社会的価値判断:
「自然はいかなる基準を定めるものではない」
=>正常と異常の区別は、経験的なもの(例:苦の有無)
=>両者の境界は変動するもの(医療化など)
②生物学的基準:生物医学モデル、統計学的基準
「機能不全の数値化」~分布(正規分布)
=>正常と異常とは連続的(平均からの偏り)[例]小人症とは?
以上より、①でも②でも 「正常(健康)」と「異常(病気)
」は固定された区別ではない。この
ことは「治療」と「エンハンス」の異同・鑑別に影響する。
続けて、
「脳科学と脳神経倫理にまつわる問題系のⅢ」です。これは、<正常(健康)>vs <
異常(病気)>と区別が、もっぱら文化・社会的な価値判断でよることに関係があることです。
つまり自然は、最初からいろいろな基準を持っているものではない。例えば、よく「障害を持っ
て生まれる」という言い方をする人がいますが、実際、障害かどうかということは生まれてから
その社会で構成された「障害」概念によってと決められてくるわけです。自然は、その意味で、
もともとは、いかなる基準を定めてはいないのです。
そうすると、正常(健康)とか異常(病気)の区別は、結局は経験的なもので、例えば、そこ
に<苦>とか<苦痛>があるかないかで決まるというようなことなのです。このように両者の境
界というのは変動するものであるといえますが、先述の医療化の話はここにも関係してきます。
もう一つ言いたいのは、一方、生物学的な基準から考えても、やはり同じようなことが言える
のではないかということです。
160
検査値などを出して機能不全(異常)を数値化していきますと、理想的には、ベルカーブ的な
正規分布をとるわけですけれども、その場合、正常と異常とは一つのグラフ上に連続して存在し
【スライド9】正規分布の図
ていることになります。(大体、中心(平均値)の周り
が正常で、そこから左右に偏倚するほど異常に位置づけ
られやすい。
)
ですから、文化社会的に見ても、生物学(生物医学)的
統計的基準をとってみても、どちらから考えても、正常
と異常が全く別個な集団に分かれて存在するわけでは
ないことがわかります。こういうボーダーラインをどう
考えるかということにつながってくるのですが、そこを
何らかの形で任意に分けているのが医学だということ
になるわけです。
この図のベル型カーブは、血清コレステロール値の分
布なのですが、正規分布に近い形をとっています。例え
ば、これを身長の分布だとしましょう。すると平均(カ
ーブの山頂から下ろした垂線と横軸との交点付近)から、
一般にこの辺の部分(つまり、平均身長ー2X 標準偏差)以下の場合が小人症と定義されるわけ
ですけれども、そうすると、ここで連続的につながっているものに関して、その切断点以下であ
ればもう病気だ。だから、それに対しては成長ホルモン投与の治療が許されるが、それ以外はそ
うではないというようなやり方を伝統的なオーソドックスなやり方として医学はとっているわけ
なのです。
もう少しで終わります。
【スライド 10】(5)規制の論点
1)「国民意識調査に見る規制の根拠」
①脳科学の特性;②脳科学の危険性;
③薬によるエンハンスの場合
(?<=シンボル効果の影響)
2)治療(病気・障害)かエンハンス(健常者)かの二分法(?<=異常と正常
の連続性)
3)インフォームド・コンセントによる正当化
(患者/クライエントの自己決定・当事者主権)
最後に、規制の論点をまとめます。
国民意識調査では、規制の根拠としては、繰り返しになりますが、脳科学の特性・危険性、そ
れと、エンハンスメントの場合を挙げていましたが、そこにはシンボル効果の影響があろうとい
う指摘をさせていただきました。
それから、治療かエンハンスかという二分法に関しては、異常と正常の間の連続性が文化的に
161
も(生物)医学的統計的にも言えるので、その境界は固定したものではなく可変的であると指摘
しました。
もう一つは、インフォームドコンセントによる正当化ということです。当然、これは医療倫理
における大原則ですが、特に日本の文脈の中では、いかにしてインフォームド・コンセントを引
き出すかといった合意形成の「政治的な流れ」が感じられるわけです。
例えば、不妊治療の場合を取り上げてみますと、医療者側がいろいろなオプションを出す。そ
こで医師側が代理母というオプションを出しますと、それならばとクライアントの中には、それ
を希望する人が出てきて不思議ではないわけです。ですから、本当に自己決定なのか誘導なのか
の判断は難しい。脳科学でも、このように患者やクライアントのインフォームド・コンセントが
あったら正当化されるという論理には、こういった問題点も含まれているわけです。
【スライド 11】(6)規制に関する極私的シナリオ
1)脳科学における規制の意味:
①生命倫理学の役割は、単なる抑止ではなく
先端的テクノロジーの管理・コントロール
②このスタンスは、脳科学にも適用される
2)漸近法的展開:シドロモドロ的展開
①空想的アイデアも実践的展開の中で形象と意味をもつ。=>物証に基づく評
価へ
②展開の仕方(関数)=F({生物学的力量}x
最後から2番目のスライドです。このトークは脳科学に規制が必要かというタイトルですが、
私が考えたのは、規制というのは単なる抑止ではないだろうということです。これは先端的テク
ノロジーの中でも、管理とかコントロールは、ずっと行われてきたわけで、このスタンスは脳科
学にも適用されると思います。
ただ、どうやっていくかというのは、なかなか難しいと思うのです。例えば、ある場合には、
遺伝子組み換えの技術について科学者が徹底した物理的生物学的な封じ込めという自主規制策を
採用したアシロマ会議のように、大きな振り子が振られるでしょう。それに対して、科学者がい
ろいろ経験を積み上げてくる中で、遺伝子組み換えも最初に想定したほどの危険性はないという
ことがわかってきますと、振り子が推進の方向に戻ってくる。脳科学も、そういうような形で、
試行錯誤を繰り返して徐々にひとつところに収まっていくような漸近法的な展開をするのではな
いかと思われます。シドロモドロ的な展開というふうに書きましたけれども、こういう意味なの
です。
例えば、神経系自体がそうなのですが、手を一つ動かすにしても、一方的に運動系が働くとか一
方的に感覚系が働くということではなくて、両者が協働してフィードバックとかフィードフォワ
ードという力が相補的に働いて手の位置決めて動かしているわけです。それと同じような漸近的
な形式で、規制――規制という言い方は正しくないかもしれませんが、そういう形で進めていく
162
べきではないかということです。
現在は空想的なアイデアも実践的な展開の中で形象と意味を与えられるでしょう。近年 EBM
(エ
ビデンス・ベースト・メディスン;根拠に基づいた医療)が叫ばれていますが、脳科学でも、そ
ういう証拠や根拠というものに基づいた評価を展開していくことが必要になると思うのです。
結局、その展開の仕方としては、非常に単純化して言えば、その要素としては、これは人間が
生物学的に持っている限界でもある<生物学的力量>、さらに、現在、脳科学のテクノロジーが
保有している<工学的力量>がまず考慮されるべきでしょう。それから、非常に大きいのは、当
然、ニューロエシックスを含めた<文化的法的社会的影響>です。それがどのくらい効いてくる
かわかりませんが。ある場合には 20%とか 30%かもしれません。またある場合には、アシロマ会
議などはそうだと思うのですけれども、半数を超えて大きく影響するでしょう。
そうしますと、ここで考えなければいけないことは、前の発表でも出てきたと思いますが、専
門家も非専門家もいろいろな意味で学際的にコミュニケーションをとっていくことが非常に重要
なことです。医学研究者・医療専門家というものは、概して医学的知識を金科玉条に考えていて、
いつでもそれが実現されることが最善だというふうに考えてしまうきらいがあります。ですから、
脳科学の情報開示に際して啓発という形をとった場合、脳科学者も非専門家に説明する場合に、
そういったニュアンスを一方的に、与えてしまう、そういう問題性があるのではないかと思いま
す。ですから、科学者などの専門家とは別に、ニューロサイエンスの優れたジャーナリストの存
在も必要になってくるでしょう。この場合、非専門家がどういうことを考えているのかを探りな
がら、それを汲み取り、科学者にも伝えるというインターフェイスとしての役割も果たせると思
います。
【スライド 12】
【結語】
1)国民意識調査の結果(部分)に含まれる規制の論点の傾向について指摘し解釈を加えた。
2)規制論では、治療とエンハンスの識別が依拠する正常と異常は、少なくとも生物学的には
連続的とみなすことが重要である。
3) 最後に脳科学の展開には、推進と規制の双方の要素が不可欠であろうという私見を述べた。
最後のスライドです。結語ですけれども、国民意識調査の結果に含まれる規制の論点の傾向に
ついて指摘し、解釈を加えました。
それから、規制論の中では、治療とエンハンスの識別が依拠する正常と異常は、少なくとも生
物学的には連続的と見なすことが重要ではないかと考えます。
それから最後に、脳科学の展開には、推進と規制の双方の要素が不可欠であろうという、ある
意味では、ありきたりなのですが、そういう私見を述べさせていただきました。
以上です。ご清聴、ありがとうございました。
(虫明茂)アンケート調査の結果に基づいて、今、村岡先生から「シドロモドロ的展開」とか、
なかなかユニークな規制に関する議論をしていただきましたが、これは意外と、午前中のチルド
レス先生の非常に手堅い分析と近いところがあるのではないでしょうか。こうしたことは、後に
またお伺いしたいと思います。
163
次に、エンハンスメントに関して東京大学の金森先生にご発表いただきますが、今出てきたよ
うに、エンハンスメントの問題は何も脳科学の専売特許ではなくて、それ以前に遺伝子技術が大
分進歩したころに、遺伝子技術による子供の改造といったことに関しても、よく言われました。
それ以外の技術によるエンハンスメントも可能なのですが、特に脳科学に関して、すぐ頭をよく
するとか、記憶力をよくするということでエンハンスメントが出てきますので、エンハンスメン
トの問題に関して金森先生からご報告をいただきたいと思います。
「エンハンスメントの哲学」
(金森修)東京大学の金森です。よろしくお願いいたします。きのうほとんど寝ていないもので
すから、あまり頭が働かないので、お聞き苦しいところがあろうかと思いますが、どうぞご容赦
ください。
通訳の方には申しわけないのですけれども、早速、パワーポイントファイルとは離れたことを
言わせていただきますと、私はフランス系のある種の認識論、フランス系の主知主義的
Intellectualist で、合理主義的 Rationalist な系列に位置する思想――専門的にはエピステモロジー
というのですが――をやってきた人間なものですから、身体のことに関してなにか言おうとする
と、基本的には若干、言いよどむ部分があるのです。その理由を言う前に、まず申し上げておき
たいのは、哲学を背景にしておりますので、私の話は基本的に大ざっぱでラフな話になるという
ことです。なぜ、ラフな話をするかといいますと、そのほうが皆さん方、それぞれに、詳しい専
門的な知識をもった方々が、それぞれに違うご専門の領域に各自、引きつけながら理解していた
だくことができるからです。ですので、とにかくラフな話をしようと思います。
話を戻します。合理主義的または主知主義的な考え方をとりますと、身体なるものが話の前面
に出てくるなどということはないのです。合理主義に即していうなら、体などはいらないのです。
ただ脳があればいい。脳があって、健やかに活動してもらっていれば、それでいいのであって、
むしろ身体というのは、脳にとってどうも煩わしいところがある。脳が何かに集中しているとき
に、例えば痛いとか、かゆいとか、しびれるとか、余計な擾乱が地の底からワーッとわいてくる
みたいな、脳にとって、身体とは、そういう感じの存在なわけです。今からもう 60 年ぐらい前に
なりましょうか、メルロ・ポンティという人が、
『Phenomenology of Perception』
(『知覚の現象学』)
という本を書いたときに、まさに合理主義と主知主義を目のかたきにしているわけなのですけれ
ども、それはある意味では当たり前のことです。古典的な主知主義的な発想の中で、身体という
ものが、少なくとも哲学的に主要なトピックスになるということにはならないというふうにずっ
と来ていたのを、何とかひっくり返そうと思って、メルロ・ポンティは頑張ったというわけです。
そういう意味での現象学的な身体というものが出てきたということで、その後、メルロ・ポン
ティの影響を受けて、いろいろな豊かな身体論が展開されたわけですけれども、ただ、それから
五、六十年たってみまして、いま改めて考えてみますと、20 世紀半ばぐらい、つまり、メルロ・
ポンティがあの本を書いた時点とは状況が変わっているということがある。例えばいろいろなコ
ンピューターを使ったりとか、遠隔情報のやりとりをしたりとか、我々の社会がやはり技術的に
激変していますので、メルロ・ポンティが何とかして前面に出そうとした現象学的な身体なるも
のも、そのままではなかなか了解しにくいものになっているのではないだろうかという気がしま
す。
164
ですので、ある意味では、もう一度、合理主義的あるいは主知主義的な観点から、今までずっ
と二次的に、つまり、どうでもいいものとして扱ってきた身体なるものを、もう一度、とらえ直
して、何か言うということができるのではないだろうかというふうに考えないわけでもない。
というわけで、きょう、これから申し上げるのは、ある意味では合理主義的な身体論の一つの
バージョンというふうに言ってもいいのではないかと思います。
ただ、いろいろなことで、私がしゃべるのは3番目ということもあり、伊佐さんと村岡さんが
非常に立派なお話をされて、論点も大分、かぶっています。しかも、実はエンハンスメントとい
いましても、私が実際に使うのは、ジーンエシックスといいますか、ジェネティックスといいま
すか、遺伝子に関する話が中心になります。実は二、三年前にその主題に関係する本を出したと
いうこともあります。『遺伝子改造』というものです。それは何かというと、1990 年代初頭ぐら
いから十数年かけて、主にアメリカでいろいろと言われていた生殖系列の人の遺伝子改造に関す
る事象を扱ったものです。もちろん、そんなことはまだできないというか、やっていないわけで
すけれども、それに関するいろいろな思考実験があったので、それを文献的にまとめたものです。
今日は、それをもとにしたお話をしようかなと思います。また、アメリカの公的な委員会が書
いた有名な『ビヨンドセラピー』とかがありますし、また、ごく最近、いまここに出席されてい
る松田さんたちが訳されたドイツの本なんかも出ているわけなのですが、要するに、ジーンエシ
ックスをエンハンスメントに絡めてお話ししたいと思います。
まず、最初に、極めておおざっぱな確認をさせていただきます。我々人間というものは、与え
られた所与、外界あるいは世界と呼んでいいわけですが、それを何らかの意味で非常に不満足な
ものだ、と捉えるということなのです。われわれは世界を、何らかの意味で、もう埋まっている
もの、あるいは十分に充填されたもの、十分に満足がいくものというふうには感じないで、必ず
一種の欠如体として感じるということがある。そして、それを欠如として感じたときに、それを
そのままにしておいて、われわれの方がその欠如に合わせるようにするということはない。つま
り、或るものが例えばこれだけしかないのであれば、それに合わせるように我々がそれで我慢す
べきだというようには考えないで、必ずその欠如を何らかの形で埋めようとする。何らかの形で
埋めようとするということ。つまり、そういう意味での技術的な介入ですね。そういう意味での
技術的な介入、あるいは、そういう意味での技術的な反応をするということが、人間という存在
のむしろ本質の一部なのではないかと思うのです。つまり、そういう意味での外界の改変という
のは、人間の本質の一部だというふうに考えることができるというわけです。
我々人間が例えば非常に寒いと感じたとすれば、何らかの形で衣服というものを考える。材料
としては、動物を使ったり、植物を使ったりしていろいろ手探りするわけです。あるいは雨風を
防ぐために岩の下に隠れたりする、それがやがて家屋になったりするとか、などなどなわけです
が、そのようにしてずっと外界の改変をしてきたわけなのですけれども、その外界の改変の延長
として、それも、ごくごく連続的な延長として自己改変というものが出てくると。
なぜかというと、さっきも言いましたように、これは合理主義的な身体論なものですから、合
理主義的身体論というやつには、或る特徴がある。それは、脳というのが自分の体からちょっと
離れて人間の体を見るという事実からきています。ですから、そういう意味で、脳というのがこ
の辺に、空中に浮かんでいるとしますと、その脳にとっては人間の体というのも、ちょうど外界
の幾つかの風景のうちの一種にすぎないということになりますので、外界の改変をずっとしてき
165
たのであれば、もう一つ、自分の身体というものも外界の一種だとするのだから、それを変える
と思いたいというふうになる。それがごく自然な、当然の流れとして出てくるのではないだろう
かということです。
ですから、もう、さっき言ったことですけれども、不快な、非常に不愉快な外的環境をそのま
まあきらめて受容しようとするのではなくて、何とかしようとする。何とかして立ち向かおうと
する、そういう性向といいますか、テンデンスを持っているということを、そういうふうに感じ
るということを、むしろ我々人間は好ましいと感じると。諦念ではなく、凌駕を求めようとする
ことを好ましいと感じる、そういう存在なのではないかということです。
自分の限界というのは、自分に与えられた世界の限界でもあるわけなのですが、自分の与えら
れた世界の限界を乗り越えようとする欲望というのは、その意味では人間の本当に本質の一部を
形成しているというふうに言ってよい。そして、そのこと自身は、やむにやまれぬ一種の完全性
の探求なのであって、それは医学が問題になる場合には手段が医学なわけですけれども、つまり
手段としては医学は関係するかもしれないのですけれども、本質的には医学的な問題ではないと
いうことです。
これはずっと、さっきも言いました、1990 年代から 2000 年ぐらいにかけて、主にアメリカ系
の人たちの調査しているときに見つけた人なのですけれども、プロテスタント系の進学者らしい
のですけれども、プロテスタントといっても非常にいろいろあるので、私はあまり詳しくないの
ですが、フィリップ・ヘフナーとか、テッド・ピーターズとかというような人たちがいる。19 世
紀的な図式で言うと、宗教と科学というのはお互いに憎み合い、敵対しあう云々という図式がで
きていますけれども、それは実は非常に単純な図式で、これなんかはまさに、それを反駁する図
式だと思います。彼らは神学者なのですが、神学者でありながら、いわば自然科学的な物の考え
方というのをサポートするというか、支持するというか、そういうことをやっている人たちです。
このヘフナーという人は、人間を表す通常表現ヒューマン・ビーイングを微妙に変えて、ヒュ
ーマン・ビカンミングという表現をもちだす。変な言葉ですよね。ビーイングは存在ですが、そ
れに対してビカミングは生成です。人間的な存在、人間存在というものの所与的な性格を読み替
える。つまり、何々であるということを何々になるというふうに読みかえることによって、その
所与的な性格をいわば減衰せしめるという、そういうことです。
つまり人間というのは、既に与えられた、決まった、固定されたものなのではなくて、今でも
いわば生成過程にあるような、そういう存在なのだという、そういうふうなことを言っています。
もっといろいろ言っているのですけれども、時間がなくなりますので。
それから、テッド・ピーターズという人もなかなか興味深い活動をしている。神学者の友人に
聞いたら、もともとは父と子と聖霊に関する専門的な含意をもつらしいコ・クリエーションとい
う概念がある。ピーターズは、それを換骨奪胎して特殊な概念をつくっていまして、クリエイテ
ィッド・コ・クリエーターという表現を出してくる。この場合、コ・クリエーションというのを、
父と子と聖霊が一緒にという意味とは違う意味に使っている。つまり、人間という特殊な存在が
ある。人間は神によってつくられたという意味では、確かに被造物――クリエイティッドなわけ
なのですけれども、しかし、ほかの動物に比べて人間はあまりに特殊な存在者なので、神と一緒
にいわば世界をつくるのだみたいな、そういう意味でのコ・クリエーションです。つまり、つく
られた存在ではあるのですが、同時に自分で自分を、あるいは自分の世界をつくっていくんだと
166
いうような、そういうような概念を前面に出しています。
もっとも、考えてみるならこれは昔からある考え方で、例のギリシャのプロメテウスという、
いわば神的な存在がいますよね。プロメテウス的な人間観を 20 世紀終盤から 21 世紀初頭にかけ
て、いわば換言した、言い換えたものだというふうに言ってもいいのではないかと思うのです。
こういうプロメテウス的な人間観というものの特徴の一つは、未来に関する開放性があるとい
うことです。未来に対する開放性を大枠として置き、その中に人間存在のあり方自体も含めると
いうことになりますので、いわば科学的な冒険主義というのでしょうか、そういう種類の考え方
に非常に親和的、非常にフィットする、そういう人間観になると。こんなようなことも、神学者
たちがサポートしながら、議論をつくっているということがあったので、ここでご紹介したとい
うことです。
これはもう、さっきからさんざん出ている論点ですね。治療かエンハンスメントかというもの
は、極限では区別可能かというと、多分無理でしょう。だから、先ほどの小人症というのでしょ
うか、軟骨形成不全というのでしょうか、軟骨形成不全の人たち、あるいは非常に背が低い、い
ろいろな意味で成長ホルモンが少ないとかというような子供たちに、成長ホルモンを投与してい
いのか、数年間に亘って与えていいのかというときに、それが軟骨形成不全ではなく、ただ、か
なり背が低めという子どもたちにもやっていいのかどうかという、一体、ボーダーライン設定の
ような問題が出てきますよね。その境界線を完全に客観的・科学的に決めるのは多分無理でしょ
う。つまり、文化的に或る種の決断をしないと到底無理なのではないかという気がします。つま
り、生物的な所与としては、その所与自身の中の切れ目というのが出てくるものではないだろう
と思う。
それから、例えばいろいろな理由で筋肉が萎縮する疾患を持つ人に対する薬剤の投与という、
この種の議論でよく使われる事例があります。つまり筋萎縮性の疾患を抱えた人々への治療薬は、
そのまま、セミプロとかプロスポーツの選手の筋肉増強に使われるのではないかというものです。
これはもうさっきの村岡さんとか伊佐先生のお話などにもありましたように、そもそも病理と生
理というものが客観的には画定不可能だ、と。この概念自身が非常に曖昧な暈囲を抱えており、
客観的な画定というのは実はできないというふうに考えた方がいい。だから、筋萎縮性疾患への
投与とスポーツマン増強のような、その曖昧性が露わになる局面が実は予想以上にたくさんある
のではないかといえる。ですから、治療、つまり病理的なものをもとに戻すのか、正常をもっと
強くする、つまりエンハンスメントかというこの二つのものが、実はそう簡単に区別できないの
だということは、多分、それでいいのだろう、間違いないのだろう、と思います。
翻って考えてみますと、そもそも我々の人体というものも最終的な完成品としてとらえるとい
う強い理由は全くないのでありまして、我々はあっという間に老化しますし、40 代過ぎぐらいか
ら目が遠くなったりとか、それから前立腺が肥大したりとか、いろいろあります。それから、自
己免疫疾患という、本来は我々の体を守ってくれるためのシステムのはずなのが、いろいろな意
味で我々の体に苦痛を与えるなどなど。
つまり、現時点で我々が持っている人体というもの自体、パーフェクトなものだというふうに
考える根拠は全くないわけです。しかも、例えば老化というのは、これは病気ではないでしょう。
自然なのでしょう。だけど、そうしますと、老化の遅延というような、これはある意味では昔か
ら人類はいろいろな意味で試みてきているのでしょうけれども、それが今ほどの科学的な知識の
167
中で、より科学的に有効な、いろいろな老化遅延の方法というのが編み出されることになるんだ
ろうとしますと、それは、もう、治療とエンハンスメントの境界を、事実上はもう踏み越え始め
ているというふうに言っていいのではないかという気がします。
ですから、それが人間の根本的な性格だというふうにしますと、つまり……。ちょっと、ごめ
んなさい、話が飛びました。最初に私が申し上げた、人間が受動的なもので我慢しないで、能動
的にプロメテウス的に外界にかかわろうとするというのを人間の根本的な特性だとすると、医学
は単にそれに手段を提供しているだけだということになりますので、そうしますと、もしも、い
ろいろな意味で議論しなくてはいけないとするならば、恐らくそれは二つの位相がまずあるだろ
うと思います。
一つは、医学的な位相。これは当然の話です。つまり、純粋に医学的に見て、それが安全なの
か、それとも安全ではないのかというチェックというのは、これは当然だと思う。そして二つめ
は、先ほどの村岡さんのお話にもありましたように、文化的・社会的・倫理的な位相でのチェッ
クです。この二つというのは、やはり、とても重要です。もっとも、この二つの位相自体が、ひ
ょっとするとその境界線自身が揺れ動くものなのかもしれないですが、とにかく理念型として、
この医学的なフェーズとそれから非医学的なフェーズというのがあって、その両方ともが極めて
重要なものとして、両輪のようにして関与してきているのだということは、これは確認はしてお
くべきだと思う。
ああ、これは『ビヨンドセラピー』なんかで、先ほど言われていたものですね。AID とか IVF
なんかで、すぐれた形質の相手を選択する傾向がどうしてもあると。これは既にもう、今でもや
られているものです。或る事例なんかでは、非常に高い知的能力、あるいは運動能力を持ってい
る人の卵子の提供者に大金を払うというような宣伝。アメリカですけれども。ただ、これ、AID
も IVF も、これは混ざりぐあいという意味では、配偶子の混ざりぐあい、遺伝子の混ざりぐあい
という意味では、通常の性交と同程度の偶然性をはらんでいますので、そう完璧にコントロール
されたものではない。それに比べると、例えば出生前診断とか着床前診断とか、より制御的性格
の高い介入様式がバーッと出てくるということです。
これは『ビヨンドセラピー』で言われているものですけれども、スクリーニング・アウト
(screening out)とチュージング・イン(choosing in)、フィキシング・アップ(fixing up)という
ものが区別可能ですね。実は、私が『遺伝子改造』を出したのは 2005 年の秋なのですが、ちょう
どそのころから、まさにヒト遺伝学の知識自身の進展の中で、フィキシング・アップ、つまり、
いわゆるデザイナーベイビーですよね、そんなのはまず無理だろうと。少なくとも近未来におい
ては無理であろうということがわかりつつあるようですので、この可能性はほとんど議論しなく
てよいと思います。そうなりますと着床前診断をベースにして、スクリーニング・アウトとチュ
ージング・インがあるわけなのですが、このスクリーニング・アウトに関しては、いろいろな意
味で、いろいろな社会運動などで非常に有名な話ですので、ここでは省きます。
むしろ、ここで問題にしたいのは、チュージング・インのほうです。これはもちろん、まだ今、
やっていないわけですし、今すぐできるというものではないのでしょうけれども、私の間違いで
なければ、今、我々が既に持っている科学的な知識と、比較的連続性が高い中で、やる気になれ
ばできるというものです。簡単に言うと、要するに、普通のカップルの例えば何十個かの受精卵
をつくっておいて、その中で着床前診断をする。その際、前提としては、国あるいはひょっとす
168
ると世界規模のものかもしれませんが、或る巨大な遺伝子データの集積センターみたいな機関が
あるとするわけです。その膨大な情報がまず前提としてあり、それが整理・保管・公開されてい
るという条件付きでの話です。例えば比較的寿命が長い人々の遺伝子のデータとか、非常に頭の
いい人の遺伝子のデータとか、あるいは、女性だったら顔が美しい人々の遺伝子のデータとかが
あったとしますよね、仮に。そうしたら、それに対して、或る個別のカップルが数十個の受精卵
の中から、それに比較的近いと見なし得る、そういう意味でベスト、つまり生物的・文化的・社
会的にベストなはずの卵を女性の体に数個戻すようにするというものです。そういう意味で、よ
りよくするというわけです。つまり、人間集団の中から自然にわき上がってくる、或る種の集団
的な軌範がある。寿命が長いとか、顔がきれいだとか、頭がいいとか、そういうものがあったと
して、それとの相関の中で、それから遠いよりは、それに近いゲノムをもった受精卵を選択する
ということになるだろうということで、それをチュージング・インと呼ぶわけです。
そうしますと、これは一体、エンハンスメントと言えるかどうか、ということがある。つまり、
その数十個の受精卵というのは、もともと或るカップルの遺伝物質の枠内に存在していたものな
わけですから、。その中から選ぶわけですよね。
そうしますと、社会的、生物学的などの観点で最良と、いわばベストと思われるものを選択す
るということになりますので、その意味では、これはどうなのでしょうか。これはエンハンスメ
ントなのか、それとも、もともとカップルの自然、いわば自然な受精卵の中にあったのだから、
自然なものと言っていいのか、でも、自然なものとは言いながら、ほかの人間集団との対比の中
でよいと見なされるものを選んでいるわけですから、やっぱりその意味では、それは人為なのか
ということで、ここでもやはり、一体これはエンハンスメントなのか、つまり何らかの人為なの
か、それとも自然――ネイチャーなのかというのは、非常に曖昧になるということです。
そんなわけですから、今までも何人もの方がおっしゃっていたとおりだと思うのですが、治療
とエンハンスメントというのは、どう考えても非常にグラデーションがあって、明確な境界画定
をすることはまず無理だろうと、考えられます。
ただ、もちろん、いろいろな人が言うように、エンハンスメントの場合には治療に比べて相対
的な正当化根拠は希薄になるので、より厳しい倫理的な縛りをする必要があるだろうと、大部分
の人は考えるでしょう。
もちろん、まだこんなことは実施されておりません。ただ、もしも仮にこんなようなことが通
常化するような事態になったとすれば、なんらかの法的な対応は必要になるでしょう。その種の
「ヒト遺伝子保護法」ができたとして、その場合に大原則として設定されるはずなのは、子供の自
立性とか自由とか統合性をまずは絶対に守るんだというようなことになるだろう、と私は拙著で
比較的詳しく論じておきました。もしご関心がおありなら、どうぞ拙著をご覧ください。しかも
その場合、それはガイドラインではなくて、きちんとした法律で、それに違反する場合には、た
だ倫理的に批判されるだけではなくて、刑罰が与えられるという形の、割と厳しい法律的な縛り
が恐らくはあったほうがいいというふうに判断されるようになるのではないかと思います。
いずれにしろ、どれが許されるタイプの介入で、どれが許されないタイプの介入なのかという、
それを弁別する基準というのは、これは自然に基づく基盤には恐らくないと。それは恐らくは、
我々が長いこと蓄積してきた価値的それから審美的な判断の体系、つまり文化ですね、それとの
対応で決まることになるでしょう。つまり、自然ではなくて、文化的な基軸の中に乗っかって、
169
これはふさわしいとか、これはよくないとかという、そういう判断が恐らくはなされるようにな
っていくだろうと考えられます。
ともあれ、われわれは文化的なアイデンティティの中で生きているわけで、生物学なアイデン
ティティというのは別に、どうでもいいと言っては言い過ぎなのですけれども、文化的なアイデ
ンティティよりは重要ではないですよね。それを前提としてますと、例えば老化の遅延だとか免
疫系の改善だとか、などなどというようなものは、特に各個人の文化的なアイデンティティを壊
すとは考えられませんので、おそらくは。ですから、こういうものに関しては、もしも近未来で
技術的に遺伝的な処置が可能になったら、恐らくは踏み切るのではないだろうかというふうに予
想しております。
そもそも遺伝学から離れてみても、例えば生化学的な知識の成熟などで、最初に言いましたよ
うに、自分の身体に対する、いわば対象化的な認識というのが、どんどん精緻になっていったと
しますと、その意味で、当然ながら操作可能性が出てきます。
私がよく使う具体例で、いつものお話なので申しわけないのですけれども、例えば壊血病の例
なんかを思い出していただければいいのです。例えば 18 世紀初頭、つまりわずか 300 年前の時代
でさえ、イギリス海軍にとっての最大の問題というのは、嵐とか海賊よりも、壊血病だったわけ
です。遭難者や戦死者よりも、壊血病で死ぬ人のほうがはるかに多かったのです。壊血病は、た
だのビタミン C 欠乏症にすぎないんですよ。それでも当時の船乗りにとっては大問題だった。そ
れが 18 世紀の半ばぐらいから実験的にライムとかレモンなどを絞ったものをちょっと飲むと、そ
れにかからないみたいなことがわかっていったのです。ただ、ご存じのように、20 世紀の初頭ま
で、ビタミンという概念は成立しませんから、それまでの 100 年以上ですか、根拠はわからない
のだけれども、とにかく船乗りがレモンなんかをなめていたということをやっていたわけです。
ただ、それが今やその根拠がわかっているわけです。なぜなのかということもわかっているし、
ビタミン C の合成もできる。ビタミンの生理もわかっているし、壊血病の病理もわかっているわ
けですから、その意味では我々が例えば極地を探検するときとか、あるいは我々が遠洋航海に出
るときに、自分はひょっとすると 18 世紀初頭の船乗りみたいに壊血病によって死ぬんじゃないか
というようなことは気にしなくてもいいわけです。
その意味で言うならば、我々人間は、壊血病の病理、あるいはビタミンの生理の知識を持つこ
とによって、いわばエンハンスされたと言うこともできるわけです。人間の行為可能性、行動可
能性の広さが広まるわけですから、ということです。
ここでサイボーグの話になります。サイボーグといわれると今までの話とは断絶するじゃない
か、と思われるかもしれません。しかし、私としては或る意味で同じことを言っているつもりで
おりました。念のための歴史的確認になりますが、私の間違えではなければ、サイボーグという
のは、1960 年ぐらいにサイバネティック・オーガニズムという言葉の略語からつくられたもので
す。もともとの原著論文を読んでみると、例えば宇宙飛行士が難しい宇宙船を操縦していますよ
ね。そのときに例えば宇宙人が襲撃してきたとしましょうか。そうしたら、そのときに心がドキ
ドキして、難しい操縦に十分集中できないと。それだったら困るからというので、例えば何か不
測の事態が起きたときに精神がワーッと興奮状態にならないように、興奮状態になりそうになっ
たときに、自動的に精神安定剤が体の中にパーッと注入されるとかですね。ですから、生化学的
な恒常性、ホメオスタシスの正常性を維持・補強するために人工的な補助装置をつけた存在、そ
170
れがもともとのサイボーグの意味です。
ですから、サイボーグというのは、もともと、どちらかというと生化学的な概念枠の中に入る
ものだったようです。それがあっという間に、ご存じのとおりに意味が変わっていく。SF の影響
が大きいのだろうと推測はしておりますが、普通、サイボーグと言いますと、人間と機械との融
合体という意味のものだ、というように語義が変わっていきます。
ただ、ひょっとすると、さっき私が、宇宙船の飛行士が精神安定剤をどうのこうのと言いまし
たけれども、その最初期のサイボーグの構想以降、既に数十年はたっているわけですから、もう
少し精緻化された、いわば現代版のサイボーグ、つまり、生化学的なサイボーグというのも、こ
れから構想されていく可能性はあるんじゃないでしょうか。ところで私がいままでしてきたいろ
いろな議論は、一種のサイボーグ論でもあったのではないか。さきほど私は、例えば壊血病の知
識を持つ、あるいはビタミンCの知識を持つということ自体で人間はエンハンスされているのだ
と言いましたけれども、これが生化学的なエンハンスメントだとするならば、もともとのサイボ
ーグというのが生化学的なものだったという以上、壊血病の知識を備えるに至ったということが
実は、サイボーグを具現していることになるのだ、ということを意味しうるわけです。我々人間
は、一種のサイボーグに近づいているのだというふうに言っていいのです。
ですから、例えば『攻殻機動隊』の押井守さんなんかが時々、いわば警句的に、
「我々は既にサ
イボーグだ」みたいなことをおっしゃっていましたが、私に言わせるならば、その言葉は次のよ
うに言い直されるべきです。実は、我々人間というのは、さっきから言っているように、外界に
対する技術的な介入をずっとやってきた能動的な存在なのであり、その外界というものの一種に、
人間の体自身を含めても構わないのです。そして、人間の体自体も生化学だとか、いろいろな工
学だとか、そういう知識によって、いわばループをつくって、自己言及的に自分の体を変えるよ
うに働いてきているのです。ですから、「我々は既にサイボーグだ」ではなく、実は、「われわれ
はとっくの昔からサイボーグなのだ」ということが許されるのです。そして、緻密なサイボーグ
の実現可能性は今後ますます加速されていくだろうということです。
ですから、そういうふうに考えてみると、エンハンスメントなるものも非常に特殊で、奇矯な、
エキセントリックな話題というよりは、我々人間がずっとやってきた外界に対する反応の仕方が、
連続的に若干強化され、増幅されたものに過ぎないのではないかというふうに考えているわけな
のです。
以上です。どうもありがとうございました。
(虫明茂)金森先生の「人間とは何か」という、非常に哲学的、あるいは神学的な議論を興味深
く聞かせていただきました。
今度は一転しまして、川口先生に、実際に ALS の家族を介護してきた体験、それからまた、今
そうした障害者の方々の団体、援護する会をつくって活躍されているご自身の体験も踏まえた発
表をいただきたいと思います。
では、よろしくお願いします。
「ALSの隠喩、TLS(Totally Locked-in State)を概観する:重篤なコミュニケーション障害をもつ人の在宅介
護の体験から」
(川口有美子)川口と申します。今日は東京から参りました。先ほどの金森先生のお話を受け継
171
ぐ形になりますが、ALS の人は自分たちこそサイボーグだというふうに、名乗りを上げておりま
す(笑)。というのも、身体が動かなくなるにしたがって、補助機械を取り入れて生きていかねば
ならないという疾患ですので。そして、最終的には人工呼吸器や、きょうお話するような、脳と
機械をつなぐということも、日本の患者は10年前から在宅でおこなっています。多分、在宅に
おける人体と器械との関係については、これから世界でも最先端のお話をすることになると思い
ます。というのも、多くのALSの患者が人工呼吸療法に進み、長期在宅療養を実現している国
は世界でも日本が群を抜いているからです。そこで、私はALSも含む、運動神経疾患患者――
MND(Motor Neuron Disease)――の身体と機械の良好の関係について知っていただくために、意
思伝達装置としての BMI の成功例と、それから、その発展に伴い予測される可能性と問題点につ
いて、お話したいと思います。すでに先生方からお話がありましたような、薬物、法制度、教育、
企業における BMI の応用については、私のほうから本日はお話しません。
さてまず、脳マシーンの話に移る前に、全身性障害者に対する福祉機器の導入も、私は広義の
人間機械化と考えていますので説明します。神経疾患を発症した者が、長期人工呼吸療法に移行
するまでに必要な機械に、まず電動ベッドがあり、そして、肺炎の原因となる嚥下障害も起こり、
呼吸筋が弱くなって咳もできなくなり、自力でたんが排出できなくなると、吸引器が要るという
風になり、だんだん身の回りに機械が増えていくようになります。そして、経口摂取が困難にな
れば、経管栄養が必要になります。これは胃瘻ですが、経鼻からの注入もあります。さらに呼吸
困難になれば、人工呼吸器が開始され、そうなると発語ができなくなりますので、ほぼ同時に意
思伝達装置としてコンピューターが導入されます。これで、介護者に意思を伝えることと、ベッ
ド上での社会参加が可能になります。外出のための特別仕様の車椅子は、リクライニング式で、
人工呼吸器も座席の下に搭載できるようになっていて、日本では身体障害者手帳の交付により、
オーダーメイドで給付の対象になっています。
そこで問題になるのが、コンピューターソフトの操作以上に入力の方法です。疾患が進行する
と、だんだん手指も動かなくなってくるので、身体のどこかにスイッチを貼り付けたり、はさみ
込んだりして、コンピューターに入力するための特別なスイッチが必要になってきます。そして、
最終的にはどこも動かなくなった時点で、脳波や脳血流をもちいたスイッチ、ブレインマシンイ
ンターフェースに発展する、ということになります。
-----------*----------これだけの機器を、ALS の人は身体の内や外に接続して、不便や苦痛を緩和し生存機能を介助
していくことになります。在宅療養を補助するこれらの機械は、日本では難病研究事業や介護保
険や障害者の自立支援法などで給付され、人工呼吸器もレンタルできるのですが、このような保
障制度は日本がもっとも整っています。これも 1980 年代以降の患者運動の成果といえ、その結果、
日本のALS患者は3割もが人工呼吸療法を選択し、長期療養しています。海外では、呼吸器を
つける人は1割にも満たず、珍しいです。例えば、アメリカでは、医療も介護費用もほぼ全額自
費になりますから、よほどのお金持ちでなければ、呼吸器は使用せず――鼻マスク程度は普及し
ているみたいですけれども―――呼吸麻痺の治療はしないで亡くなります。また、イギリスなど
では非効率的な医療は排除する政策ですので、多くのケースで長期呼吸療法は望まないよう、ド
クターが一生懸命に患者をなだめて、終末期の緩和ケアに入る。ここで言う緩和ケアというのは
呼吸困難をモルヒネで緩和するケアでやがて死に至ります。このように、治らないのに長期化す
172
るような医療は、政治の影響で治療方針もずいぶん変わってくると考えています。これは日本国
内における地域間格差の問題と同じです。だから、脳科学も倫理面のみならず、当然、政治社会
の影響を考える必要があります。
-----------*----------本来でしたら、ここにいるのは私ではなくて、九州の ALS 患者の山口進一さんだったらよかっ
たのですけれども、残念なことに 2 年前に他界されました。
山口進一さんが最も早く、意思伝達のために「脳と機械をつなぐ」ということを考えておられ、
同病の母をもつ私もメールをやりとりする仲間の一人でした。ありし日の山口さんが、非侵襲的
人工呼吸器(鼻マスク)を利用されている様子をご覧ください。家中が機械だらけなのですが、
これが ALS の人の家庭です。そして、彼は呼吸器をつけても、自分の声が出せるように音声プロ
グラムを開発しました。まず脳と機械の話に行く前に、山口さんのチャレンジをご紹介したいと
思います。
〔ビデオ1〕チャレンジャーRKB 毎日放送 2001 年 1 月 25 日放映
http://blast.subaru.ac.jp/~laconic/VIDEO.htm#1_myTV_houdou.htm
(アナウンサー:女性)運動神経が選択的に侵されることによって次第に全身が動かなくなる
ALS という難病があります。福岡県宗像市のコンピューター技術者、山口進一さんは 62 歳。
6 年前にこの病気を発症し、現在は一人で立ち上がることもできません。
(アナウンサー:男性)しかし、いつか失うであろう声をパソコンの技術で再生しようという
挑戦を続けています。きょうのチャレンジャー、山口さんを記者が取材しました。
(記者)山口進一さんが ALS――筋萎縮性側索硬化症として診断されたのは 96 年 3 月です。ALS
の原因は今も解明されていません。運動神経が冒され、全身が次第に動かなくなっていきま
す。意識は全く影響を受けないまま、最後はまばたき一つ、できなくなる難病で、治療法は
ありません。
(山口進一)長い人は 10 年、20 年、生きられるんですよ。確かに 10 年、20 年、生きられると
いうことが苦しいという人もいるんですけど、私はその反対の考えです。10 年、20 年の間に
自分にできることをどんどんやっていこうと思っております。
(記者)かつて山口さんはコンピューターが専門のエンジニアでした。今もわずかな力で操作
できる特製のコントローラーでパソコンを使いこなします。ALS 患者は必ず自分の声を失う
ときが来ます。呼吸に必要な筋肉が動かなくなるため、患者は病気が進むと、気管を切開し
て人工呼吸器をつけることが必要になりますが、その引きかえに声を失うのです。
(機械音声)こんにちは。きょうはよいお天気ですね。
(記者)音声合成装置も開発されていますが、山口さんにとって機械的な声しか出ない従来の
システムは、到底受け入れられるものではありませんでした。
(山口進一)自分の声で、自分の感情を持って、怒りとか悲しみとかうれしさ、そういうこと
を自分の声で表現したいですね、生きている限り。
(記者)いつまでも自分の声で話したい、講演を続けたいという山口さんの夢が最新のテクノ
ロジーで現実となります。
173
この研究機関では最先端の音声合成システム、チャターの開発が進められています。山口さ
んは講演を聞いた人の紹介で、共同開発者としてユーザーの立場から、このチャターの開発
に参加することになったのです。チャターの特徴は、あらかじめ収録したその人の声をもと
に、音声を合成することです。
山口さんの自宅に開発されたばかりのチャターの入った CD が届く。
(山口さんの機械音声)こんにちは。こんにちは。こんにちは。こんにちは。僕は ALS 患者の
山口進一です‐‐‐。
(山口さんの奥さま)夫が声をなくしても、前と同じように会話できますでしょう?そういう
ことがうれしいですね。
(記者)山口さんがいつ声を失うことになるかわかりませんが、それは決して遠い先のことで
はありません。
(山口進一)私が一生懸命、生きているというあかしですよね。機械の音では私が生きている
ことになりません。私が私の声でしゃべって、初めて私が生きているということです。死ぬ
まで私は、自分の声で発言し、生き続けたいですよ。人の声を借りたくない。
-------------*-------------(川口有美子)山口さんは、人の声を借りたくないとおっしゃっているのですが、それから、し
ばらくして気管切開し本格的な人工呼吸療法に進まれました。しかし幸運なことに、それ以後も
スピーキングバルブの利用によって、呼吸器を利用しながらもしゃべれたのです。山口さんは結
局亡くなるまでずっと、自分の声でお話ができました。ALS では珍しいのですが、呼吸器をつけ
ても会話が長く保たれる方がおられます。
山口さんは自分の声にこだわられたのですが、そうでなくても、意思伝達ができていれば、身
体機能の低下が必ずしも QOL を阻害しないということは証明できると思いますし、意思伝達が患
者のQOLにとって、非常に重要な鍵ということもお分かりになると思います。
さて、これからが本題です。これからお話しするのは、こっち(脳)側の話なのです。山口さ
んは、閉じ込め症候群と言われる「ロックトイン・シンドローム」になるのを恐れて、意思伝達
装置を自分で開発しようとしていたのですが、大変進行の早い患者さんが、完全にコミュニケー
ションが封じ込められてしまうことがあります。それは、
「トータリー・ロックトイン・ステイト
(Totally Locked-in State)」「完全なるロックトイン」というふうに呼ばれて、医師にも患者にも
恐れられている状態です。運動神経が選択的に阻害されるのが ALS ですが、なかには眼球運動ま
でもが阻害されて、全身どこも動かなくなるので、意思伝達ができなくなり、自分の身体の中に
心が閉じ込められたように見える人がいます。そういう人たちのために、2000 年ごろから、脳波
を読み取る意思伝達装置、「マクトス」(EGG)という商品が、患者の自宅で実際に使われてまい
りました。
これは ALS と同じような症状のウェルドニッヒ・ホフマン症候群という、子供の ALS 患者みた
いな方なのです。彼は兵庫県加古川市の自宅で脳波スイッチを使いこなしています。まず、マク
トスが拾った脳波を電気信号に変え、コンピューターやダイナモという音声装置につないでいま
す。その模様を撮影したニュースを山口さんのHPから拝借してきました。
〔ビデオ2〕電撃黒潮隊RKB毎日放送 2001 年 1 月 27 日放映
174
(ナレーション)テクノロジーで、みずから意思を伝えることができるようになった少年がい
ます。頭にとりつけられたのは脳波を感知するセンサーです。
場面は教室。少年が横たわり、前頭部にマクトスをつけている。その脇に先生が座っている。
天井の端から端にワイヤーが渡してあり、ラジコン飛行機が壁際にぶらさがっている。
(養護学級の先生)浦野くん、動かしてみて。
ラジコンが威勢よく動く。
(ナレーション)少年は脳波でラジコンを動かして遊んでいるのです。浦野晃一君は ALS とよ
く似たウェルドニッヒ・ホフマン病で、3 歳のころから完全に体が動かなくなりました。こ
とし、14 歳。わずかに眼球が動くだけ。言葉は一言も発することができません。しかし、脳
波スイッチと出会い、みずから意思を発するだけでなく、これまではできるはずもなかった
おもちゃを動かして遊ぶことも可能になりました。
この装置を開発したのは姫路市の小さなベンチャー企業です。装置の名前はマクトスといい
ます。人間の脳波は大きくα波とβ波に分けられますが、β波は緊張した状態のときに多く
出ます。緊張した状態をつくり出す訓練をすれば、自分の意思で自由にβ波を出すことがで
きるようになります。マクトスはこのβ波を感知して作動するスイッチなのです。
(女性の声)体の調子はいかがですか。
マクトスをつけた人がコンピューターを脳波で操作している。
(機械音声)体はだるいです。
(大西社長)この人間の脳波というのは、意識がある限り、つまり人間の脳が動いている限り
使えるわけですから、これは究極の使える信号かなということに着目したんですけれどもね。
(母親)テレビを見ようか。テレビ、見たいの?
(晃一)シュー、シュー。
(ナレーション)この音は晃一君の切開した気管から漏れる音を録音したものです。晃一君は、
マクトスでこの音を出して意思を伝えます。マクトスを知るまでは、母親の浦野明美さんは、
いつしか晃一君に語りかけることも減っていたと振り返ります。
(母親)給食、食べた?家族も話しかけないですよね、晃一は返事しないし。だんだん話しか
けなくなるじゃないですか。目ではするけど、問いかけが少なくなってくる。
(ナレーション)しかし、マクトスを使い始め、すべてが一変しました。晃一君が自分から積
極的に意思を伝えるようになってきたのです。家族が最初に驚いたのは、バレーボールの世
界大会のときです。家族が応援に熱中していると、晃一君がマクトスを何度も何度も鳴らし
てきたのです。
(母親)ああ、そうなんや。みんなと一緒にしゃべりたいんやと思って。やっぱり今までも言
っていたかもしれないけど、わからない。でも、言ってたんでしょうね、目とか気持ちでは。
これがあることによって伝わるから、よく話しかけるし。今までは話しかけられるだけの人。
自分からあんまり話しかけない、訴えない‐‐‐けど、すごい積極的に。子供らしい、積極
的に「もっともっと」とか、「もっとしたい、これ」とか、そんな感じだったと思うんです。
(男の先生の声)オリンピックはおもしろかった?一番応援したのは?柔道?ソフトボール?
マラソン?
(晃一)シュー、シュー。
175
(ナレーション)全く変わらない表情の奥底に、少年のあふれんばかりの感情が潜んでいまし
た。
(母親)これをつけたからといって、全部が全部は、全然、とてもじゃないけど、何分の 1 を
伝えられているのかわからないけど。さっきおっしゃっていたみたいに、これが確実になっ
てきて、パソコンとかにつないで会話なんかができるようになったら、いいやろうなと。最
終目標は、そこなんですけど。
----------------*--------------(川口有美子)話しによれば浦野くんは、最近好きな人ができて、この装置を使ってラブレター
を書いて送ったそうです。間違えもかなりあるらしいのですけれども、青年らしい脳波スイッチ
の使い方をするようになってきました。
私がお宅を訪問したときには、お母さんは、彼が近くのスーパーマーケットにお買い物に行く
ようになったとおっしゃっていました。お母さんはスーパーのレジのところに彼を置いて隠れち
ゃうそうなんです。音声発生装置のダイナモに「そや、そや」とか、
「おもろ」とか、「そんなや
つ、おらんで」とか、関西弁の言葉を先に録音しておくと、彼がそれを脳波スイッチのマクトス
で鳴らすそうです。すると、その声に合わせてレジのおばちゃんが合いの手を打ってくれるので、
会話は不思議と成立してしまいます。たまに何日も買い物に行かないと、スーパーの人たちは、
「きょうも来ないね。どうしたんだろう」と心配をするそうで、お母さんは「こうして、この子
が受け入れられ、街の人々の中に溶け込んでいってほしい」と願っているそうです。街の人々に
見守られる存在になってほしいと。また、東京で同じ病気のお子さんをもつお母さんも子どもを
小学校に通学させていました。そして、通学途中では信号は青で渡るなどの社会ルールを学んで
ほしい、という風にもおっしゃっていました。
どんどん、いきます。
この方は ALS 療養者の仙台在住の和川次男さん。この番組は、2001 年 8 月 18 日に放映された
NHK スペシャル「空白の二年間からの記録」で、アメリカでも放映され大絶賛されたそうです。
今日は国際シンポジウムに相応しく、アメリカで放映された英語バージョン”Vital Sings”を持って
まいりました。インタビュー部分は、もちろん日本人なので、日本語で答えていらっしゃいます。
ではごらんください。
〔ビデオ3〕
(英語のナレーション)
(妻)(熱が)あるの?それは大変だ。ちょっと、(マクトス)やってみようか。やってみる?
(次男)ぴっ。
(妻)さ、じゃあ、やってみます。いいですか。はい。あ、「あ」。あ、か、さ、た、た、ち、
つ、「つ」。あ、あ、「い」、い。あつい。……。暑いの?ごめんなさいね。どれ体温、はかっ
てみようか。すごく暑い?さっき水枕、変えたんだけどねえ。
(和川次男は、小さな長方形の箱のような機械、マクトスを前頭部にゴムバンドで固定してい
る。妻、初美の五十音の読み取りに反応してマクトスを鳴らす。初美は、最初に五十音を「あ
かさたな」と横に読み上げ、次男が確定した行を「かきくけこ」という風に下に下る。ひら
がな一文字を確定するために、和川は二回マクトスを鳴らすことになる。)
176
(英語のナレーション)次男は体温調節ができず、夏の暑さに対応できない。
(妻)気持ちいい?
(次男)・・・
(妻)そうでもない。
(次男)ぴっ。
(妻)寒いより大変よだね。
(次男)ぴっ。
--------場面が変わる--------(英語のナレーション)ある日、障害者の意思伝達サポーターの坂爪進一が、ベンチャーで開
発されたばかりの意思伝達装置をもってきた。次男は世界で最初に使用に成功した患者であ
る。
(坂爪新一)使い方は患者さんが自分で理解するまで1カ月ぐらい試してみましたけどね、な
かなか難しいものだなという感想です。私がやって五分五分ぐらいだったですからね。
(英語のナレーション)練習を開始して二時間が経っていた。何の反応もなかった。
(妻)もう、すぐ反応を試した。イエスだったら鳴らしてみてという感じにして。なかなか、
その、ピッと鳴る音が、本当に彼の言いたいことに、合っているかどうかというのが、ちょ
っと疑問だったんですけど。
(英語のナレーション)初美のアイディアで五十音を読み上げることにした。それは、まだ次
男が目を動かせた時におこなっていた会話の方法である。
4 時間後に読み取った、
「ホンタイ」。
本体、マシーン。これがマクトスを使った最初の言葉であった。次男はコミュニケーション
を復活させる機械を見たいと言ったのだ。最後の会話から2年が経っていた。
(坂爪新一)最初のまとまった言葉は「ホンタイ」という言葉でした。これが出てきたのは、
私は奇跡だと思っているんですよ。よくまあ、やれたなと思うんですけどね。彼の執念でし
ょうね。自分が意思を出そうと思わなかったら、やらないと思うんですよね。それをサポー
トした奥さんも偉いですけれども、やっぱり一番大事なのは本人の信念だと思うんですが。
(妻)もう、その日は本当に真っ暗になるまでやり尽くして、
(この人の)おでこがちょっと変
になっちゃったんですけど、次の日もまた夢中になって、ずっとやってという感じで、もう
楽しかったというか、夢中でした。
(英語のナレーション)読み取った言葉が記録されている。「あつい」「寒い」「痛い」「妻を愛
している」15 日後。6 月 19 日の記録。
(妻)これ、
「愛している」だな、と。
「いつも愛している、なの?」とか言って、
「のろけてい
る」とヘルパーさんに言われて。そんな記憶があります。まさかそんなことを、何ていうの、
冗談まじりで言うとは全然思っていなかったので、なんか介護のことだけを必死にしゃべる
のかなと思っていたので、みんなでもう、なんか喜んだというか、大笑いしたというか、脳
波のスイッチでコミュニケーションできて、本当に一番私が救われたというか、生きてきて
よかったなとか、あきらめないでよかったとか。思いました。
-------場面が変わる----------散歩にでかける次男と初美。木立の間から日光が差し込む小道に優しい風が吹く。二年の沈黙
の後、二人の間に会話が蘇った。次男はやがて歌も詠むようになった。
177
Allowed live on
The brilliance increases so,
I could write a poem
---------------*------------------(川口有美子)もっと見ていたいのですけれども、時間が押していますので、先に行かせていた
だきます。和川さんのご自宅を先々週、久しぶりに訪問してみましたが、お元気でマクトスをピ
ー、ピー、鳴らしておられました。
そして、さっき画面に出てこられた坂爪先生にもお会いしてお話を伺いました。マクトス導入
にはコツがあるということです。まず和川さんは、機械の導入時に 4 時間半びっちりやったそう
で、その後は毎日必ず 1 時間は練習するように宿題を出したそうです。他の患者さんにも試して
みた結果、ほぼ 1 カ月間でその人がマクトスを利用できるようになるかどうかが、わかるとおっし
ゃっていました。でも使いこなせる人はごくわずかしかいないそうです。今現在、使いこなせる
ALS の人は 2 人ほどだそうです。それでも皆さん頑張ってトライしています。そして、練習の最
中は、だれかが必ずそばにいて励まし、訓練をすること、本人の意志と介護者の意志がとても大
事です。
それから、もっとも重要な坂爪先生の活動費なのですけれども、手弁当のボランティアという
ことです。「全く全部、手弁当ですか」とお聞きしたら、「いや。神経難病医療連絡協議会から年
間 100 万円の活動費をいただいている」とおっしゃっていました。ただし、1 年間のうち県内を
縦横無尽に 112 日間も稼働されているそうで、ボランティアの域を越しています。件数では年に
のべ 137 件訪問して、対象者は 35 人。そのうちの 32 人が ALS 患者だそうです。支援の経験から、
訓練しても、
「ダメならダメ」
「トータリー・ロックトインの人と協力しないとできない」
「業績を
求めてはいけない」
「論文にならなくても最後までやれ」とおっしゃっていました。また昨今、こ
のような状態になった人の治療停止の議論がありますが、そのこともお聞きしたところ、「安楽
死?他人が決めることじゃない」
「まずは患者にどうしたいのか、聞き出すことが先だ」と信念を
もっておられました。
-----------*----------次に、アメリカにも同じようにマクトスや脳血流の装置を使って、脳と機械をつなげた意思伝
達を試みた、在宅療養の ALS の方がおられました。このドナのストーリーもとても素晴らしく涙
を誘います。ドナの夫が作ったホームページがありますので、いつかごらんになっていただきた
いと思いますが、ざっと説明させていただきますと、彼女の場合も、ご主人が一生懸命に在宅介
護をされていました。(http://www.ddrf.org/donnastory.htm)
アメリカでは ALS の医療も介護も保険の適応外で自費ですので、お金がたくさんかかります。
でも、この夫妻はお金持ちのカップルなので、人工呼吸器もつけられたし、在宅療養もできたの
ですね。初めはマクトスで EEG を試したのですが、あまり効果がなくて、その後、脳血流を使っ
た装置「心語り」に変えて、わざわざ日本から開発者の日立の小澤さんを呼び寄せました。小澤
さんはまだ開発したばかりの「心語り」の日本語バージョンを持ってアメリカに飛び、うまく行
ったので、ドナはしばらく「心語り」を使っていたようです。最終的には、多分、はっきりは書
いていないのですけれども、ドナの脳の萎縮のことをドクターから聞かされて、ご主人の同意で
178
呼吸器を切ってしまったようです。アメリカでは、カレン事件以来、呼吸器を停止することもお
こなわれていますので。その時の覚悟なども切々と書かれています。
最後に、私の母の療養の様子です。こういうふうに。まぶたも自分であけられないし、眼球運
動ができなくなったので、意志の表出ができない状況なのですけれども、私も母がこうなってし
まった直後は、呼吸器を止めることばかり考えていました。どうやったら母を楽に死なせてあげ
られるかなとか。安楽死法制はぜひ必要だとか。私にもそういう時期があったということです。
-----------*----------BMI は、このように、氷山の一角であると私は思っています。というのも、氷山のてっぺん、
BMI の利用に至れる人は、ほんの少しで、それまでには、多大なお金と介護――介護は今も家族
ばかりですけれども、ヘルパーさんもいなければいけないのですが、もし全額を自費でやったら、
月額 200 万円ものコストがかかるのです。ですから、どんなにすばらしい機械ができても、ケア
や調整のコストが相当かかるので、一般化するのはコスト問題をクリアしないと難しいだろうと
考えます。
日本 ALS 協会会長の橋本操に言わせると、りっぱな TLS の患者になれるのはごくわずかで、よ
ほどケアがよくないとそこまでには至れない。そういわれると本当にそうで、意志が伝えにくく
なれば、たいていの患者は放置されすぐ死んでしまいますが、ケアがよいと何年も生きるのです。
だから TLS でも長生きの人はよほどケアがよく、バイタルを見ては落ち着くまでケアされている
ので、本人にとってもさほど悪い状態ではないだろうと、母や他の方々のケアの様子を長いこと
観察してみた結果、私はそう考えるようになりました。
-------------*-------------そして、これは身体とマシーンの関係概念図です。先ほどからこれはエンハンスメントなのか、
それとも治療なのかということで、先生方の話題になっていました。機械(呼吸器)を治療とい
うふうには考えずに、呼吸緩和というふうに考えれば、こういう図が書けるのではないかなと私
は思ってきました。そこに昨今、BMI が出てきて、私たち ALS の支援者が積極的に考えてきたの
は、ここの部分(図の右側)だとわかりました。難病ケアの延長に最終的に出てくる領域で、そ
れは苦痛を緩和し自立をもたらすものですが、サイボーグや超人と混同されるようになると困り
ます。強制的な労働力増進とか強化教育ということは、健常な者をより強くして利用しようとす
る他者による、優生学的なエンハンスメントであろうと思います。だから、エンハンスの目的が
優生学的かどうか。言い換えれば脳へのインプットなのか、脳からのアウトプットなのかが論点
になると思います。
そろそろ、申し上げたいことをまとめます。まず、確かに意思伝達が難しい人にとって、これ
は期待できる技術になると思われます。ただ、浦野君のお母さん明美さんの言葉ですが、
「機械さ
え使えればコミュニケーションができるかといえば、そうではなく、そこに伝えたいと思える生
活がなければなりません。」おっしゃるとおりで、これが原理原則。
それから、脳科学倫理ということで、私が不安に思っていることを幾つか挙げますと、第一に、
人体との接続にあたって必要なコストをどうするかということです。人工呼吸器は、その導入時
に失敗している機械です。というのも、人体に装着する際、その微調整や利用者の心身に必要な
日常的な介護にかかる人件費を予測して、算定しなかったため、結局、病院では呼吸器本来の効
果を得ることができていない。BMI に必要な長時間のケアは介護の領域で、医療や看護とは別で
179
す。それで、今でも介護のない施設では呼吸器は無駄な延命装置などと言われています。だから
肺と機械との接続での痛い経験を活かして、同じ轍を踏まないようにしないといけません。さも
ないと、障害者に対する脳マシーンは有益だと言えなくなるでしょう。たまに、人工呼吸器は無
駄という方が、脳マシーンは有益だという。それはどのような観点からそう言えるのだろうかと
考えてしまいます。
第二に、脳から直接意思を読むことができると、新たな差別やパターナリズムが出てくるでし
ょう。コミュニケーションが困難な人たちでも、意思伝達装置をあのように使える人と、使えな
い人が出てきます。そこでは、必然的に、できる/できないで、差別化が生じます。するとそこ
からまた新たな基準がでてくる。たとえば、脳を直接調べて呼吸器や治療の差し控えについて判
断するということなどです。すぐ不吉なことを言うのが、医療の悪い面で、母の MRI の画像を見
た先生が、
「これはトータリー・ロックトインになる可能性が強いから、呼吸器はつけないほうが
いい」というようなことを、私にだけおっしゃったんです。先生は母には言わなかったのですが。
治療しても効果が予測できないとわかれば、医者は治療したがらない傾向があります。これは、
ゲノムによる遺伝子診断の持っている危険性と同じで、こういうことは当然、脳科学を応用した
医療でもあります。これが行き過ぎれば、新たな死の基準も生じるのではないでしょうか。相当
悪い予感なのですけれども、当事者の悪い勘というのは大抵当たるのです。ちょっと文献を読ん
でいたらデューク大学のミゲル先生が、患者の心をコンピューターにダウンロードできるように
なるだろうとおっしゃっていますが、そうなれば、脳から何もダウンロードできなければ、脳は
機能しないので死んでいるも同然、脳の中身はからっぽだから何をしても感じないし痛くない、
というふうにして、新しい死の定義というのが出てくることも十分に考えられると思いました。
脳科学倫理は医療経済と結びついて、パーソン論にさらなるエビデンスを与えることもできるで
しょう。
実際、ドナのケースでは、脳が満足に機能していないと言われた時点で、家族が呼吸器を外す
ことを決めてしまったようです。私の母も同じようなことを日本の医師に言われたことがありま
したが、私たち娘や孫にとっては、母の脳機能不全と母の存在理由とはまったく別の話でした。
でも父は娘たちとは違う考えを持っていたと思います。このように、ブレインマシンインターフ
ェースは、それを利用する者の倫理観や人生体験によって、まったく別の方向に発展するもので
す
-----------------*--------------この図はブレインマシーンも含む人体改造の私の考え方を整理したものですが、縦軸に緩和と
強制、横軸に自立と依存を配置して、機械と人体との接続について表してみました。ここでは、
医療とエンハンスメントとは対置せず、強制強化と対置するのはパリエーション(緩和)です。
この図は各人の倫理観によって当然大きく変わり、その多様性は認められると思われます。その
国の政治や文化によっても違うものになるでしょう。たとえば、呼吸器の位置を、ALSの長期
在宅療養に慣れてきた私たちはパリエーションと考えていますが、人命に対する強制とする場合
もあるでしょう。私たちは、治療やリハビリでは、よくならない障害や病気の人のための技術に、
右上のパリエーション+自立の理念を用います。パリエーションも自立ではなく依存の方向にい
けば、安楽死もあるでしょう。障害の補助具もパリエーションではなく、強制強化の方向に行け
ば超人サイボーグですし、そのまま依存方向にいけば指揮系統が別人にあるサイボーグ兵士や労
180
働者、国家のためのサイボーグのような天才児の誕生です。
このように、医療や科学技術をパリエーションを主軸に考えるためには、人間のあるがままの
生を認め合う倫理観が前提にあります。障害や病気をもっている人に対する科学機械技術という
ことになりますから、さまざまな理由でそれらを有効に利用できる人もいればできない人、最初
はできていても次第にできなくなる人もいるからです。そして極論を言えば、人間の都合などで、
そうそう機械や技術が上手に使えないのは当然だという話に舞い戻るであろうと思われます。こ
れは、生命維持にかかわる場合とは異なる点で、脳とマシーンとの接合の場合は、万が一うまく
行けば良いという程度の期待値で考えるのがいいでしょう。むしろ、人体や脳と機械を接続する
に際しては、非言語的コミュニケーション能力を、機械を使う以前にもっと磨いておかなければ
ならないと私はいつも思うのです。浦野くんや和川さんの機械を利用した療養生活が成功してい
るのはまさに、本人と周囲の人々に、コミュニケーションセンスが豊富にあったからこそで、機
械ではなく人間の勝利です。科学の発展は人間の不完全性をあらわにしますが、私たちは人間が
不完全な存在であることを肯定しそれを楽しむくらいでなければならないでしょう。機械と人体
の隙間を埋めるのが人間性だからです。だから、脳科学者や神経内科医には、末端の利用者であ
る患者やその家族の生活に、いつも想像力を働かせ、深い洞察力をもってお仕事をなさって欲し
いと願っています。サルで成功しても人間の生活への応用までには、まだまだ多くの課題があり、
たんに機械と脳を繋ぐだけでは、効果がなければ外そうだけでなく、死なせようという短絡的な
結末へと発展してしまいます。何度もしつこく申し上げていますが、世界中で人工呼吸器の導入
で侵した過ちを二度と繰り返さないように、機械と人体の接続調整(ケア)にかかる費用を先に
しっかり確保しておくことは、科学を人間の生活に応用していくために非常に大事です。科学技
術の水面下にこそ、重要なお仕事は膨大にあるのです。そしてまた、それを誰が担うのか、その
コストについても、考えておかなければなりません。以上です。長くなりましたが、ご清聴あり
がとうございました。
(虫明茂)川口先生、非常にたくさんの具体的な動画を使っていただきまして、ありがとうござ
います。百聞は一見にしかずというところで、
「BMI とは何か」を抽象的に聞くよりも、非常に具
体的な一つの用法について理解できたと思います。
これで、午後前半の 5 名の方の提題は終わりました。ほぼ予定どおり進んでおります。したが
って、このパンフレットにあるとおり休憩をとりまして、4時半から後半を始めます。今度は指
定質問者の方のコメントと、その後で、ぜひ会場の皆様方の質問を扱いたいと思います。皆さん
方に質問用紙を配ってあると思います。休み時間は今からでも 35 分たっぷりありますので、ぜひ、
きょうの提題者の方々に、午前中の先生も含めて、ご質問を書いていただきたいと思います。そ
れで、お出になるときに、ドアの外に回収の者が待っておりますので、ぜひ会場の皆様方の提題
者に対する質問をお書きいただきたいと思います。指定発言者のコメントの後、できるだけ多く
の会場の方々の質問を取り上げたいと思います。
それから、午前中レシーバーをお貸ししていたのですけれども、レシーバーが2台、未返却と
のことです。午前中は英語から日本語にしましたが、午後は外国人の先生方のために日本語を英
語に通訳しているだけで、ほとんどの日本人の方は、もう必要ないと思います。レシーバーが2
台未返却ということなので、お気づきの方は受付のほうに返却していただくようにお願いします。
では、予定どおり、次は 4 時半から後半の指定発言、それから皆様方の質問を取り上げます。
181
これで休憩に入ります。
総合討論
(虫明茂)それでは、フロアの方々からいただいた質問を含めて、ディスカッションの部に入り
たいと思います。
では、まず苧阪先生から、「社会脳のニューロエシックス」についてコメントをお願いします。
(苧阪直行)虫明先生、どうも紹介をありがとうございました。京都大学の文学研究科、実験心
理学をやっております、苧阪と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
簡単なコメントと自分の研究を話すようにということでしたので、お話をさせていただきます。
私のトピックスは社会脳(Social Brain)にかかわることです。社会脳とエシックスがどう関係があ
るかということを申し上げてみたいと思います。
社会脳、ソシアルブレインと呼んでいますが、これはここに示しますように(図1)、社会的な
存在としての脳を考えます。意識を覚醒、アウェアネス(気づき)とリカーシブな社会意識と考
える 3 階層モデルです。
前 2 者は生物的脳の特徴ですが第 3 層は社会脳の特徴を反映しています。
ふつう、脳はまず生物的存在として考えることが多いのです社会の中の脳ということを考えます。
BMI では生物的存在としての脳を考えることが多いのですが、実は社会的存在としての脳を考え
るとさまざまな重要問題が浮き上がってきます。たとえば、心の理論問題(マインド・リーディ
ング)とか道徳・倫理的問題(欺きなど)は自己と他者のあいだをとりもつ社会脳のはたらきで
す。ヒトの意識の統一的な理解に欠かせない生物的な脳の主要なはたらきは前頭前野(Prefrontal
Cortex)が担っていると考えられておりますが、この領域がまた、自己と他者の心の推定にかか
わる心の理論の座の一部を形成している点でソシアルブレインであるといえるのです。先ほどの
最後の発表の患者さんの話などとかかわってくるのではないかと思います。ソシアルブレインに
注目が集まっていることは Social Neuroscience や Social Cognitive and Affective Neuroscience などの
専門誌が最近相次いで刊行され始めたことでもわかります。社会的なスタンスから脳を見るとい
う位置づけです。社会的といいますと、やはり自己と他者、一人称と二人称(三人称)の心とい
う問題を通して、エシックスの問題とかかわってきます。
ちなみに、学術会議でも「脳と意識」の分科会というのがありまして、私が委員長を務めてお
りますが、社会脳に関して昨年は東大でシンポジウムをやりました。脳とエシックスの問題も社
会脳の問題を通して「神経科学」や「脳と心」分科会と共催でテーマとして取り上げてゆこうと
考えているところです。
さて、社会脳を考えるときに、生物脳というものをまず考える必要があるかと存じます。私自
身は計算論的な機能主義という立場に立って、これを考えるとき、まず、この図(図 2)の下の
ほうにありますように、生物脳として脳のニューロンがいろいろなネットワークを作っています。
これが部分だと考え、そこから全体としての創発的なシステムの特性があらわれると想定します
と、そこに社会脳の基盤というものが生まれるのだろうと思われます。生物脳とか社会脳の分け
方というのは、そういう意味で社会脳に認められる創発的な機能に本質的な相違いがあると考え
られます。例えば、部分が酸素と水素だとしますと、それが組み合わされて出てくる水の性質と
いうのは、酸素と水素の二つの性質とまったく異なり、全体としての別の性質を獲得します。こ
のいわば創発的な特性というものを担っている社会脳というものを考えていこうということです。
182
少し話は飛びますけれども、コンシャスネス(consciousness)には意識という訳語が当てはめ
られておりますが、フランス語では「良心」であるとか、
「社会的規範」であるとかそういう意味
も含まれているそうです。この語源をさらにギリシャ語にさかのぼるとシュンエイデーシスとい
い共に知っているという意味が含まれているそうです。意識が社会的な規範であるとか、良心で
あるとか、道徳であるとか、そういったものから生まれてきており、社会的意識であるとすると
社会脳もこのような視点からも考える必要があると思われます。
1997 年から 2007 年まで 10 年間は脳の世紀との掛け声の下に、我が国の脳科学研究の研究に多
大な予算が投入されました。この中に研究スケジュールに戦略目標のタイムテーブルというのが
ありました。たとえば、
「脳の世紀ニュース」の 1997 年版には、1997 年から始まって、5年後や
10 年後には、例えば、「感覚、知覚、運動の解明」や「記憶学習の解明」などがあげられていま
す。一方、もっと遅れて 15 年か 20 年後に、社会意識とか自己意識などの研究(ここで言う社会
脳の研究)のプログラムがあがっています。
昨年の 2007 年には、これから先 10 年の脳の新しい研究(脳研究ルネサンス)のタイムテーブ
ルと、ロードマップが文部科学省を中心にして策定されておりまして、今年から、研究がスター
トします。ここでおもしろいのは、20 年後に設定されている、社会脳と意識の解明が、私の個人
的な感想では逆ではないかと思われることです。社会脳の問題は一見複雑に見えますが、研究自
体はかなり早く解明されるものと考えられます。覚醒やアウェアネスレベルでの脳研究は無意識
で自動的な部分が多いのに対し、社会脳は意識的方略的であるので認知脳科学研究に向いている
のです。別の言い方をすれば、知情意の研究の中で、情と意の研究というのは、かなり早い速度
で進んでゆくだろうという予想です。
さて、社会脳の研究というものを考えたときに、その新たな展開として、四つほど考えること
ができるかと思います。まず、生物脳から社会脳へ、でありこれには視点の変換が必要です。次
に、社会的存在としての脳というものを考え、今日少しお話しさせていただく自己知や他者知と
いう心の理論の問題です。さらに、今日は触れませんが、共感する脳として芸術脳であるとか神
経美学的脳であるとか、こういった問題が社会脳研究のロードマップの先に見えてきたというよ
うに思います。
ニューロエシックスとのかかわりでは、心の理論の問題が出てきます。心の理論というのは、
皆さんご存じのように、他者の心や行為を予測したり説明するには、信念とか欲望とか意図、あ
るいは意思といった心的状態(mental state)を他者に帰属させることにより可能となるというこ
とです。他者の心の状態を予測するには、心の理論が必要となると。こういう構造になっていま
す。自己とか他者の心という、心的状態というものをどういうふうに脳科学的な探求の目標にす
るかということになりますと、難しい問題が出てくるとは思いますが、その探求の道というのは、
神経心理学的な症例研究と比較できるので、必ずしもイバラの道ばかりではないと思われます。
意識の三階層モデルに戻ります。意識の基盤は生物学的な意識つまり覚醒(Arousal)です。次
の中間的な意識段階はすでに述べましたようにアウェアネスの意識です。これには知覚性と運動
性のものが考えられます。このうち、運動的なアウェアネスですが、これは BMI なんかとかかわ
る運動を制御することと関連します。ただし、その運動の制御は人形のように自動性のものでは
なくて、もう一つ上の自己意識であるとか、リカーシブな意識と言われているようなソシアルな
ブレインがコントロールしています。自己意識(自己の意識)や他者の意識(心の理論)といっ
183
た社会脳がかかわっています。リカーシブ――再帰的な意識―というものがあって、これが自己
と他者の二つの間に倫理的な問題を伴うのではないかと思います。運動だけではなくて、もちろ
ん知覚的・認知的なアウェアネスも社会脳が作動する背景として切り離すことはできません。先
ほどの患者さんの意思の伝達には脳波のスイッチングを使っていますが、あれは運動性のアウェ
アネスなのか、認知的アウェアネスなのか、ちょっと区別がつきませんでしたが、こういう人間
の高次な心の状態というものをつなぐ、インターフェースとしての社会脳の役割というのが見え
てくるように思います。
では、社会脳を機能的にはどういうふうに解釈すればいいのか。ミンスキーが 1985 年に発表し
ています考え方の一つででは、メタ脳というものを考える必要があるということです。メタ脳と
いうのは、私の解釈では社会脳の別称ことでありまして、他者の心と自己の心をむすびつける、
広い意味での社会適応という脳の役割というものを含んでいると思います。彼のモデルを簡単に
説明しましょう。
外界があります。ここでミンスキーが、A脳というのは知覚脳で、先ほどの三角形の3階層モ
デルでは中間的意識に対応し外界を認識します。これに結ばれたB脳は脳の内部モニター用にあ
り分散的に表象や高次表象を目的に応じて束ねる領域であります。
B脳が何をやっているかというと、A脳が何をやっているかをモニタリングするのです。その
見張り方はいろいろあると思うのですけれども、相互の情報のフィードバックやフィードフォワ
ードの循環的な経路がありまして、B脳はA脳を見張りながら、あまり強い指令を出さずに、や
わらかくこれを見守っているといいますか、かかわっているのです。脳内に表現されたその人固
有の社会表象があり、これを支えるのが社会脳というふうに考えるのです。実際の心理学的な用
語で表現しますと、これはメタ表象というものをベースにした高次な分散表象群であると考える
ことができます。他方、A脳は中間的な意識で1次的な表象を維持します。何かに気づく、例え
ば色で言えば、赤に気づくとか、オブジェクトでいえば消防車に気づくとか、そういった外界の
事象に気づくアウェアネスの意識です。それをベースにして、2次的、3次的なメタ表象の形成
が考えられるのです。
その脳内表現というものを考えてみますと、ごく最近の研究では、内側の前頭前野(Medial
Prefrontal Cortex)というものが、その中心的な役割を担っているようだということが言われてお
ります。
いろいろな諸研究をクロスして共通して言えることは、心の理論を初めとするメンタライジン
グ機能や高次な表象を形成する機能があって、これが自己と他者、それから広く社会の認知とか、
もうちょっと心理学的な意味で言いますと、社会的な流動的知性、そういったものとかかわって
いるのではないかと思います。さらに、社会脳がなぜ作動するのかという疑問については、ここ
では何かの目標がありその目標を達成することで報酬系が活性化される、あるいは報酬期待が動
くことがドライブの要因となっているとおもわれます。目的に応じたいろいろな高次表象の役割
は、認知的な心的状態のなかでの動作以外にも、身体的な動作や、その操作や動き内部モニター
し、あるいはアクションプランを前頭葉で表象する、つまりプランを練るということにまでかか
わります。高次な表象を形成することによって、自己から他者、あるいは他者から自己の意識と
いうものを推測というのが可能になると考えられます。
つまり、社会脳というのは、メタ表象を統合して可能な心的操作、身体行為や予期された結果
184
を推測するためのシミュレーション・システムだということができます。
社会脳に関してちょっと面白いジョークがあります。10 年以上前になりますが、私がアメリカ
の意識のツーソン会議というものに出たときに、ディナーパーティーで出てきたのがゼリーでつ
くった脳です。よくできていますが実際の人の脳ではありません。食べるように友人のハメロフ
が持ってきたのですけれども、私は「いただきます」とか言ったのですけれども、ちょっと食べ
られなかったのでやめました。目をつぶって食べると結構おいしかったとか、いろいろ感想を後
で聞きました。社会脳というのは、どういうふうにこれを味わうのかというと、やはり目をつぶ
ってまず味わってみることでしょう。そこから社会脳とBMIそれからエシックスの問題がより
鮮明に見えてくるように思われます。
ここで、BMI との関連を意識と無意識から見てみます。無意識な脳の処理で注目されるのは、
高い計算の効率です。相互干渉が例えばないとか、モジュール的であるとか、コンテクストから
独立している、半ば自動的、それから容量限界は持たないなどの性質を持っております。意識的
な注意がなくても処理が進行するのがその特徴です。BMI に比較的マッチしたような機能として、
無意識の処理との結合を考えることができます。一方、社会的な意識というのはおおむね方略的
な意識で作動している上に、個人差が大きいので意思の生成という点でも別途の配慮が必要でし
ょう。とくに、私が重要だと思うのは、意識化には容量限界が伴うという点です。例えばワーキ
ングメモリは非常にアクティブな目標志向的な記憶ですが、これはもう容量限界を持つというこ
とが心理学の実験、あるいはニューロメイジングの実験で明らかになっています。厳しい容量限
界を持った中で外界、それから自己や他者の認識、こういったものと BMI の関連というものが興
味があります。個人差もBMIやエシックスにとって重要な問題であることはいうまでもありま
せん。社会脳は、当然個人差が必然的につきまとうものですが、例えば fMRI の研究で社会脳にか
かわるあるいは倫理にかかわる課題を実施する場合、そこから得られる個人の善悪や好悪の判断
は個人情報に入ります(グループ・データとして平均化したときは別野問題でしょうが)。ソクラ
テスは「汝自身を知れ」
(Look into our self)といいました。これは 21 世紀の生物(生命)科学の
大きな研究目標の一つでもありますし、fMRI などで研究する必要があり倫理的にも問題がないと
思います。しかし、「Look into other’s mind」ということになると、先ほど述べた問題も含めて、
ちょっと問題が起こってくると思われます。
一例ですが、社会脳の特徴として、うそをつくということがあります。うそをつくにはメタ表
象が必要ですが、メタ表象を作るのが得意な人とそうでない人がいたらどうでしょうか。私ども
がやっていますワーキングメモリという課題では、高い能力を持つ人とそうでない人とを心理的
課題で分けて社会脳の実験を行いますが、もしメタ表象とワーキングメモリが関連していれば、
やはりここでも個人差を問題にする場合、エシックスの問題が関係してくると思われます。個人
差を科学的なデータとしてどう扱うのかという問題です。先ごろIPSという多能細胞が作られ
ましたが、これは自身の皮膚から作るので倫理的問題がかなりクリアできるとされていますが、
自身の前頭葉を(あるいは社会脳の複製)をつくることができるようになると話はまったく別の
問題になってきます。SF的な話もまだいろいろありますが、そろそろ時間が参りましたのでこ
れで終わらせていただきます。
ご発表の先生方にコメントを出すようにいわれましたので以下に簡単にお聞きしたいと思います。
伊佐先生には、先ほどの話を伺っていて、日本独自の規範が必要なのか。特に日本人の宗教観
185
という点から見たら、どういうことをお考えになるのかお伺いいたします。
中川先生には、マインドリーディングについて否定的な理由を述べておられますが、これはど
ういう理由に基づくのか、お伺いしたいと思います。
村岡先生には、脳科学の特殊性、精神の座ということですが、これは決定論的な自我への脅威
と考えていいのかどうかお伺いいたします。
金森先生には、お話が自己認識とどうかかわるのかという点をお伺いいたします。
川口先生には、意思伝達の問題と関係して、β波の脳波のスイッチが前頭葉の機能と関係して
いるのかどうか、また個人差とかかわるのかについてお伺いいたします。どうもありがとうござ
いました。
(虫明茂)では、せっかく提題者への質問のスライドが出ていますので、ちょっと前後しますが、
伊佐先生から、簡単にこれについてご返答があれば、お願いします。
(伊佐正)日本独自の規範といった場合には、どのレベルで規範にするかということが問題です。
倫理基準を日本で独自につくるかどうかということもありますけれども、金森先生がおっしゃっ
たみたいに、我々はやはり文化の中で生きている存在ですから、当然、日本独自の考え方、つま
り日本の社会でより受け入れられやすいものの考え方というのは、やはり必要ではないかなと思
います。
確かにサイエンスは、ユニバーサルなものではありますが、日本人らしい研究というのでしょ
うか、日本から発信するには、やはり日本らしい研究というのがあったほうがいいと思いますし、
それには文化的な日本人の宗教観みたいなものが、うまく、おもしろく反映されていると、より
良い独自の研究ができるのではないかと考えます。
規範を実際にどう考えるかということには、議論が必要かと思いますけれども、やはり日本人
らしい脳神経倫理のあり方というものは、当然、あっていいし、また、あるべきではないかと私
自身は思っています。
(虫明茂)ありがとうございました。では、中川先生、お願いします。
(中川輝彦)中川です。否定的な理由といいますと、もう、あくまでここになりますと、もう少
し分析をしてみないと、きちんとしたデータに基づいたお話というのはできないと思います。で
すから、あくまで仮説ということでお答えしたいと思います。
恐らく教育では否定的で、あるいは、私的用途ではマインドリーディングの技術の応用という
のは割と否定的で、犯罪とかでは肯定的だと。犯罪とか証言の真偽判定とか、公人の公的発表と
か。
一つ、考えられる仮説としましては、もともとマインドリーディングされるということは、あ
んまりよくないことだみたいな意識が前提としてあって、教育程度あるいは人事管理というのも
出ていましたけれども、人事管理程度でそんなことをされるのは嫌だと。しかし、犯罪をした人
に対してというか、犯罪を疑われる人というか、犯罪捜査ということであれば、どっちが望まし
くないかというと、捜査がうまくいかないこととマインドリーディングというものを、やっぱり
嫌なんだけれども、やること、どっちかといったときに、シーソーをとったときにマインドリー
ディングの害のほうが少ないだろうということで、肯定的になっているのではないかというよう
なふうに、一つは考えられます。
もう少しうがった見方をしましと、教育とか人事管理というのは自分が読まれる可能性のある
186
技術なわけです。自分が読まれるのは嫌だと。でも、犯罪捜査で自分がそんなのになることはな
いだろうと。自分が容疑者になるなんて大半の方は想像しないでしょうから、ある意味、人ごと
だから、気楽に肯定したというようなストーリーも考えられるかと思います。あくまで、これは
仮説です。
もう一つ、記憶力を高めたい、89%、薬を使ってでも、3割、というのが出ているのですが、
一つには、やはり薬に対する抵抗感という形で5割ぐらい低下しているだろうというところがあ
るのだろうというような。これは一応、データ上からも恐らく言えるのではないかなというふう
に考えております。
(虫明茂)ありがとうございました。では、村岡先生。
(村岡潔)村岡です。脳科学の特殊性、精神の座の決定論は自我への脅威か、??ジュウイッシ??。
ちょっと最後が本当はよくわからないのですが。基本的にこれは国民意識調査の中で、一般的な
科学よりも脳科学に対して規制を求めるパーセンテージが高かった、その理由の一つとして考え
たというわけで、私自身の意見というよりは、中川先生の発表していただいた国民意識調査に関
すると意味づけということです。
それで、ですから、脳決定論というのは、基本的にこの流れの中で見ていくと、自分に返って
くるものというよりは、先ほどちょっとスライドであったと思うのですが、他者の脳をどう見る
かというようなことにつながっているのではないかと思うのです。ですから、それは自我への直
接的な脅威というよりは、他人を介して自分に返ってくるということはあると思うのですけれど
も、そういう意味づけがあると思うのです。
それから、精神の座が脳というふうに言うのは、ともかく今日では常識的なわけですが、例え
ば養老孟司先生かなんかの「中枢は末梢の奴隷」なんていう言葉もありますので、その辺はいろ
いろまた教えていただければと思います。
ちょっと??ジイシキ??な質問が、ちょっとよくわからなかったのですが。すみません。
(虫明茂)では、金森先生。
(金森修)少し回り道を通って、お答えさせていただきます。人間が与えられた外界に対して欠
如を感じて、それを埋めようとするというので、私にとってはそれは技術の一般的定義なわけで
すけれども、すぐにお答えする前に、ここで技術と科学との関係という一般的なことを申し上げ
たいと思うのです。相変わらず大ざっぱな話で恐縮ですが。よく「技術というのは応用科学であ
る」というように定式化される場合がありますよね。確かに、それは必ずしも間違いではないか
もしれません。しかし、もし技術が応用科学だとするならば、あくまでも科学が原基的、もとに
あって、それの派生が技術だという考え方になるはずです。でも、私は、それは間違いだと思っ
ているのです。それが歴史的に間違いだというのは自明なことですが――科学よりもはるかに昔
から、いろいろな技術はあるわけですから。それに内燃機関の構想と熱力学の前後関係などを考
えてもらっても構いません――歴史的にだけではなくて、恐らく存在論的にも間違いなのではな
いかと思っています。
私は、むしろ技術のほうが根っこにあるのだと思っているのです。技術のほうが根っこにある。
とにかく人間は外界の中にほうり出されて、欠如を埋めようとして、あがきます。そのあがきの
中で、いろいろな技術がバーッと出て行って、その技術的行為がうまくいっている限りにおいて
は、そのまま行くだけなのです。ところが、不思議なことに、或る局面で、それまでうまくいっ
187
ていた技術がうまくいかない場合が出てくるのです。そういうときに、なぜ、それがうまくいか
ないのかという反省のループができます。その反省のループが技術的行為の連鎖の中に組み込ま
れて一体化するということが起こる。そうやってできた一種特殊な技術、それこそが科学なので
はないかというふうに考えています。
また話を戻しますが、欠如充填体として人間は存在するというふうに私はいいましたよね。つ
まり、私に言わせるなら、人間は科学的存在というよりも、本性的に技術的な存在なのです。本
性的に技術的な存在として、まず、いろいろな外界のことを自分にいいように変えていきます。
例えばさっき私は衣服の例を挙げましたが、恐らくは綿とか羊とかを見つけるまでに、ほかのい
ろいろな試行錯誤もあったはずです。でも、それが非常に有効だったので、我々はそれを基本的
に受け継いでいます。
そのような形で基本的に技術的な存在として存在している。その技術的な存在の中で、さっき
も言ったつもりだったのですが、では人体、人間自身も外界の一部に入らないのかといいますと、
当然、入るのです。当然、入るのですが、技術的な試行錯誤の段階においては、身体に関する科
学的な知識というまでには、まだいかないわけです。あるいは、意識に関する科学的な知識とか、
そういうレベルにまではいかない。
だから、基本的には技術的な存在としての人間が身体を見るとき、技術的なまなざしで身体を
見るときには、社会の中での行動調整の観点から見ますので、倫理とか政治とか宗教とかのほう
が、身体に関する知識としては主導的なものになるだろうと考えられます。そして、事実、それ
はそのようになってきました。ところが、それが、ここ 100 年、150 年ぐらいでしょうか、或る
種の歴史的な成熟の中で、身体でさえ、いわゆる特殊なループの入った特殊な技術としての科学、
その科学のまなざしで見ることができるようになったのだ、ということです。ですので、我々の
身体も、大ざっぱに言うなら、この 150 年ぐらい前から、科学的な自己認識の対象になっている
のではないかというふうに思います。
以上です。
(虫明茂)少しマイクのハウリングが生じているようなので、発言が済みましたらスイッチを切
っていることをご確認ください。
では、川口先生、お願いします。
(川口有美子)先ほどお話しできなかった脳血流のスイッチもあるので現在2種類。さっきから
話題になっています前頭前野というところで脳血流が増えるとのことで、脳波もそこでとるのだ
と思いますけれども、もっと詳しい方がおられると思うので、私は説明できないのですが。マク
トスも、あと「心語り」という脳血流をはかる装置も、ここに、おでこのところに機械をくっつ
けてやっています。
個人差は非常にあります。さっきの坂爪先生のようなトレーナーが必要だと思います。うちの
母は実は両方の機械を購入して、私たち姉妹も母と一緒に訓練したのですけれども、私がトレー
ナーだったということは、非常に母には運の悪いことをしたと思います。あきらめの早いトレー
ナーだとだめだということです。
でも、母もあそこまで症状が進んでしまうと、コミュニケーションをとるよりも、むしろゆっ
くり寝ていたいという気持ちのほうが強くなっているように見受けられました。
だから、ここは和川初美さんと私で意見の異なるところですが、私は言語はほかのコミュニケー
188
ション方法で代用できると考えています。肌に触るとか、一方的に語りかける、そばにいて同じ
空気を吸っているということもコミュニケーション。バイタルチェックでも病人は相当のことを
伝えます。そう思えば、言葉で何を考えているのかを聞き出すということをしなくてもいいかな
というふうに捉えるようにして、昏睡しがちな母を起こしてまで、言葉を求めなかったのです。
要するに、脳波や脳血流では満足なコミュニケーションができなかったので、絶望しそうになる
気持ちをこうして変えました。また親子と夫婦とではコミュニケーションもかなり違うかもしれ
ないです。言語的な交感は親子関係にはさほど必要がないのです。和川さんの場合は一生懸命、
初回に4時間半、訓練をやったと言っていましたけれども、ギューッと、おでこに機械を当てる
のは痛いのですが、それによく堪えたなというのと、あとやっぱり坂爪先生や奥さんのご努力は
素晴らしいと思います。ずっとそばにいて、
「あ、い、う、え、お」と言い続けるわけです。現在、
坂爪先生のような活動をなさっている方は本当に少ないです。でも、できたら患者1人に対して
1人、ああいう方がおられると、BMIも使えるようになるだろう、という気はします。
(虫明茂)ありがとうございます。
では、高木先生のほうから指定発言と、場合によってはコメントに引き続いて提題者へのご質
問があれば、今されても結構です。
(高木美也子)日本大学の高木です。先ほど伊佐先生のほうからご紹介いただきましたけれども、
現在、経済産業省、NEDO のほうから研究資金を得まして、DBS の安全性といいますか、DBS が
――Deep Brain Stimulation、脳深部刺激ですけれども――この両方を精神疾患に利用することにつ
いての安全性ということを調査しております。ですから、まだ今、現在進行形なのですけれども。
実は日本大学の医学部は、先ほど伊佐先生も紹介していらっしゃいましたけれども、「Implant
boost activity in injured brain」の論文を紹介していらっしゃいましたけれども、日本大学の坪川・
片山というグループが、植物状態の患者さんに DBS 治療を施すというようなパイオニア的な治療
を行って、ある程度の結果を、実績を出していたということがあります。
そして、現在、パーキンソン病とか、あるいはジストニアというような DBS 治療も日本の中で
一番、手術例が多いということです。
現在、アメリカのほうでは、欧米のほうでは、この DBS を精神疾患、特にうつ病がターゲット
なのですけれども、うつ病をターゲットにして治療を行うということが、治験的にいろいろなと
ころで始まっております。
これを日本にどういう形で導入していくかということなのですけれども、パーキンソン病と違
いまして、精神疾患を DBS で治療するというのは、きのう??ミマ??先生のほうから発表があ
りましたけれども、脳に手術をして、そして精神疾患を治療するという、ロボトミーというよう
な、そういうものが、またもしかしたら始まるのかというような恐怖感を例えば世間の人に与え
ないようするためにはどうすればいいかとか、あるいは精神疾患、いわゆる脳をさわって、その
人の人格あるいは人間性というものを変えるということに関して、こういうことを行っていいの
か、あるいは、どういうガイドラインのもとに、こういうことを始めているのかというのを調査
の対象としているわけです。
まず、例えばカナダのほうでは、例えば、ある装置が脳の刺激に関して承認されますと、これ
は治験に関係するのは病院の規制委員会だけでして、いずれの疾患に関しても病院の規制委員会
がゴーサインを出せばやっていいと。しかし、アメリカ――日本もそうでしょうけれども、DBS
189
の装置は例えば疾患ごと、いわゆるパーキンソン病として承認されれば、それしか使ってはいけ
ない。別の疾患に関しては、別の申請が要るということになります。
まず精神疾患に関しまして、現在では OCD――強迫性障害、これに関して DBS の治験をやっ
ているということがありまして、これは FDA の申請が簡単になると。患者数が少ない場合、年間
4,000 人以下の患者数であるというような少ない場合は、ヒューマニタリアン・デバイス・イグザ
ンプション、いわゆる人道主義的な治験医療機器の適用免除措置というのが適用されまして、こ
の場合ですと、一部の基本的なデータだけを提示すれば、その装置の承認に対して FDA に申請が
できるということで、STN 刺激――視床下核刺激の治験として結構出されていまして、2008 年、
ですから、ことしにはこれが治療として始められるように進められているということです。これ
でもし、第一段階としてうまくいけば、次に、うつ病というステップに移っていくということで
す。
うつ病としましては、USA のマーケットとして年間 10 万人ぐらいはいるだろうと。年間 10 万
人ぐらいの需要があるのではないかということなのですけれども、これに関しても、うつ病患者、
現在、これは治験ということですけれども、病院によりましては、多くは非常に重篤なうつ病患
者のみを対象とすると。ですから、いろいろな投薬治療とか、あるいは ECT とか TMS とか、こ
ういうような治療、電気痙攣法とか磁気刺激、こういうものに全く無反応であったと。これによ
っても全く改善が見られなかったという重篤な患者のみを対象にするというところが、二つぐら
いあったのですけれども、もう一つのところでは、自殺リスクの非常に高いような重篤な患者は
治験に含めないという病院もありました。
というのは、これは患者が手術によって状況が非常に改善されるのではないかということを非
常に期待し、これは人によってはあまり効果がないこともありますので、そういう場合に、それ
に失望して自殺の危険性が高まるということがあるので、重篤な患者は治験に選ばないという病
院もありました。
DBS の安全基準としましては、IRB ですね、研究活動を承認するかどうかということで、まず
は IRB の取得を得なければいけないということと、それから、もちろん、未承認のものに関して
は FDA の許可が必要です。さらには、未承認の装置を使う場合は、多くは病院の法務部門、ここ
に確認することが必要であると。でないと、もし病院とか医師と患者の間に訴訟が起きた場合に
困るので、そういうところでちゃんと確認をとると。
さらには治験を行っていることに関しまして、調査が、治験が十分に安全的に進められている
かどうかということを確認するデータ安全性監視委員会というのが、さらに設けられていると。
この委員会は危険を拒否する権限を持っているので、かなり、二重にも三重にも安全性というこ
とが治験に関して見られているということです。
インフォームドコンセントに関しましては、非常に強度のうつ病の患者さんでも、これは本人
のみのインフォームドコンセントで受け入れるということで、もちろん、家族のサポートという
ことが必要なのですけれども、家族の署名とかそういうことは一切求めないというのが、すべて
の病院のやり方でした。
エンハンスメントということに関しましては、先ほどからも話題になっておりますけれども、
実際にそういうことがもし始まった場合に、非常にどこからが治療で、どこからがエンハンスメ
ントなのか、その境目というのが非常に難しい。ですから、患者の選択基準というのは、これは
190
もしかしたらものすごく難しいことになるだろうということを一様に述べていらっしゃいました。
時間だということで、そんなことで、まだ調査途中なので正式な報告はまだですけれども、こ
んなお話、こんなところまで調査が進んでいるということです。
では、どうもありがとうございました。
(虫明茂)何か今のコメントと関連して、他の先生への質問があればどうぞ。後でよろしいです
か。
(高木美也子)はい。
(虫明茂)では、引き続いて、信原先生にコメントをお願いします。
(信原幸弘)東京大学の信原です。私の専門は科学哲学で、中でも心の哲学を長いことやってき
ました。最近は、脳科学や、あるいは神経科学を参照しながらの、いわゆる神経哲学と言われる
ような分野がありますけれども、そういう形での心の哲学とか、あるいはさらに脳科学をめぐる
倫理的な問題とか考察しています。
きょうは、
「脳科学の倫理と倫理の脳科学」という題で、持ち時間が5分ですので、本当にワン
ポイントだけの話ですけれども、話をさせていただきます。
問題として設定したいのは、果たして脳神経倫理というものに、これまでの倫理にはないよう
な独自性があるのかどうかという問題です。
具体的には脳神経倫理というのは生命倫理の一部ではないのか、生命倫理とは異なる新しい学
として果たして存在しうるのかという問題です。この問題について、一言、申し上げるという形
で発表させていただきます。
脳科学というのは生命科学の一部だと考えられますので、当然のことながら脳神経倫理も生命
倫理の一部だという考え方がおのずと出てくるかと思います。
しかし、その一方で、脳科学は他の生命科学とは異なる独自な面があるというふうに言うこと
ができると思います。というのは、脳を研究することは、同時にまた、我々の心を理解すること
でもあるからです。我々の心の働きには、その重要な一部分として、当然のことながら我々の倫
理的思考も含まれる。したがって、脳を研究するということの一部に我々の倫理的思考の解明と
いうことも含まれてくるわけです。
この側面は、脳神経倫理の中で、特に「倫理の脳科学」と呼ばれている側面です。もともと、
脳神経倫理には大きく分けて二つの側面があると言われていますが、それは「脳科学の倫理」と
「倫理の脳科学」です。
脳科学の倫理は、脳科学という研究活動にまつわる諸々の倫理的な問題を扱う倫理です。それ
に対して、倫理の脳科学は我々の倫理的な思考の仕組みを脳科学的に解明しようとするものです。
この倫理の脳科学を含んでいるという点に、私は特に脳科学が生命科学の中でも他の分野には見
られない、非常に大きな独自性があるというふうに言いたいと思います。
そうしますと、脳科学について倫理的な考察を行うときに、脳科学の研究で、こういうことは
倫理的に許容できるとか、こういうことは倫理的に許容できないから研究してはいけないとかと
いうふうに、いろいろな倫理的な議論や決定がなされるわけですが、脳科学というのは、そのよ
うな倫理的な考察に対して、いわば一方的に裁かれるだけの立場にいるわけではないということ
になります。倫理といういわば法廷において脳科学は、たんに一方的に裁かれるだけの存在では
なくて、逆にそのような脳科学についての倫理的な議論なり、あるいは判断なりに対して、それ
191
は脳科学的には、かくかくしかじかのものであって、果たして本当に妥当性があるのかという形
で、逆に脳科学の側から従来の倫理的な考察に対して、いわば逆襲していくというふうな側面を
持ち得るわけです。
その一つの例といたしまして、例えばマインドリーディングをめぐる倫理的な議論を考えてみ
ますと、やがて脳科学が発達していけば、我々は自分や他人の気持ちとか好み、あるいは性格と
かいったものをかなりよく読み取れるようになるのではないかと予想されます。
そうすると、そのようなマインドリーディングの成果に基づいて、例えばある人がどんな商品
が好みなのかを読み取り、その人にそのような商品をうまいぐあいに提示して、その人の購買行
動を操作するというふうなことが実現する可能性が出てきます。そういうふうになってきますと、
それは我々の自律性に対する重大な侵害であり、それゆえマインドリーディング研究は規制され
るべきだという議論が起こってくるでしょう。しかし、このような議論に対して、脳科学は、た
だ、ただ、それを拝聴して、
「わかりました。マインドリーディング研究はやめます」と言わざる
を得ないのかというと、必ずしもそうではないのです。
脳科学は、そのような議論に対して、自律性とは何なのかという疑問を突きつけ、自律性につ
いての脳科学的な研究を行うことができます。そして、我々が自律的な行動をしていると思うと
きに、果たして自由意志というのが我々が想定するような仕方で働いているのか、あるいは、意
識というものが我々の行動を本当にちゃんとコントロールできているのか、我々が想定するよう
な仕方では、実は自律的な行動というものもなされていないのではないかということを脳科学が
明らかにする、そういう可能性もあるわけです。
自律性についてそのようなことが脳科学的に明らかになったとすると、少なくとも、マインド
リーディングによって人間を操作すると言われているような事柄も、決して我々にとって自律性
の侵害であり、倫理的に許容できないというふうには必ずしもならないという可能性が出てきま
す。
このようにして、脳科学というのは、倫理的な議論に関して一方的に裁かれる立場ではなくて、
それに対してそれ相応の逆襲する力を秘めている、そういうふうな学問だということが言えるだ
ろうと思います。この点に脳科学の独自性があると思います。そしてそれと同時に、脳科学をめ
ぐる倫理が、そのような脳科学からの倫理への逆襲という点も考慮に入れて倫理的な考察を行わ
なければならないというところに、脳神経倫理が従来の生命倫理にはないような独自性があると
いうふうに言えるのではないかと思います。
そういうふうになってきますと、結局、脳科学をめぐる倫理的な議論、そして脳科学だけでは
なく、一般に倫理的な議論というのは、どういう仕方で進んでいくのかといいますと、結局、倫
理というのは根拠のないところから議論を立ち上げ、根拠のない結論をつけていかなければいけ
ない、というふうにならざるをえないということを、最後に一言、申し上げておきたいと思いま
す。
善の根拠を、自律性とか幸福、宗教的な啓示といったところに求めようとすることは、これま
でしばしば行われてきたことでそれらがいずれも、どうもうまくいかないというところを見ます
と、やっぱり、これらはいずれも絶対的な根拠ではないというふうに言わざるを得ません。
そしてまた、倫理の脳科学もそれなりに倫理に対して影響を及ぼすことができると思いますが、
だからといって、それが何か他のものにない、絶対的な根拠になるかというと、そうはならない
192
だろうと思います。そうすると、倫理的な判断というのは結局のところ、もろもろの相対的な根
拠を、その都度、その都度、比較考慮して、その都度、その都度、決断していくという、原理的
にはそのような判断にならざるを得ないだろうと思います。この点を最後に申し上げて終わりに
したいと思います。
どうもご拝聴、ありがとうございました。
(虫明茂)ありがとうございました。では、最後に菱山先生、コメントをお願いします。
(菱山豊)文部科学省のライフサイエンス課長をしております菱山と申します。きょうは、この
ような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。特に、きょうの準備、いろいろ大
変だと思いますが、準備をしてくれた方々に感謝を申し上げたいと思います。
また、海外からチルドレス先生とレベデフ先生の講演も聞かせていただきまして、大変、勉強
になりました。特にチルドレス先生には、バイオエシックスを勉強する方なら、だれでも持って
いる『Principles of Biomedical Ethics』の著者でもあり、直接、お話をする機会もありまして、大変
感激をしたところでございます。これで、きょう来た甲斐があったかなという感じもするのです
が、最後のちょっとお務めをしなければいけませんので、少しお話をさせていただきます。
私は、ここ最近、IPS 細胞が非常に、ここ、京都大学でできたということで、その対応に追われ
ていて、
「脳科学はどうしたの?」と脳科学の先生方に寂しがられているのですけれども、きょう
は一日、脳科学のために尽くしましたので、少し免じていただきたいなというふうに思います。
それで、まず、倫理、倫理と、きょうもほぼ一日じゅう、お話がありましたけれども、脳科学
がそれほど大したことなければ、倫理問題も大して起きないわけでありますが、そもそも、では、
脳科学がどのくらい政策的に取り上げているのかということが、もしかしたら最初に本当はお話
をするべきなのかもしれませんが、どういう状況かということをまずお話ししたいと思います。
先ほど、苧阪先生が 10 年前、あるいは 10 年‐‐‐の話を少しされていますけれども、文部科
学省としても脳科学研究を非常に強化したいということで、昨年の 10 月 18 日に文部科学大臣か
らこういう諮問というのをしております。これは野依理先生が会長なので。こっちが渡海大臣で
ありますが、諮問をしたということで、非常に大きく取り上げようということであります。後で
来年度の予算の話も少ししますが、こういうことをしております。
それで、脳科学自体はどうかというと、詳しくは申し上げませんが、19 年度のいろいろな政府
の文書の中でも、いろいろなところに取り上げられていて、最初は「イノベーション 25」ですし、
それから、「自殺総合対策大綱」にも脳科学という言葉が取り上げられています。それから、
「新
健康フロンティア」、これにも取り上げていますし、それから、何と教育再生報告にも脳科学とい
う脳が入っています。別に、これは我々が入れてくださいと言ったわけではなくて、自然にちゃ
んと入るというぐらいに、教育の中でも脳科学というのは大きく、もう普通に重要視をされてい
るというものであります。
それから、また、この諮問の文書は、また、一行だけなのですけれども、諮問の理由というの
があります。脳科学の中でも、きちんと、きょうのメインテーマである、
「倫理的側面など社会と
の調和に配慮して研究を進めていくことが不可欠だ」ということを取り上げておりまして。それ
からあと、脳科学自体は非常に、きょうもいろいろご議論がありましたけれども、社会への影響
が大きいということも触れられているわけでありまして、脳科学研究を進めるとともに、社会的
側面、倫理的側面をしっかりととらえていくことが必要だということも言われているわけであり
193
ます。
それで、20 年度予算のうち、一応、新規で 17 億円ほど政府予算が認められておりまして、特
にきょう、二つの分野、
「脳に学ぶ」というのと「基盤技術開発」、二つの分野で認められていま
して、まさに、こちらの「脳に学ぶ」というのが、きょうのここのテーマでは、ブレインマシン
インターフェースが主なものであります。低侵襲皮質電位とか、人工感覚器と書いてありますが、
非常に大きなテーマになっておりまして、まさにきょうのシンポジウムを非常にタイムリーに開
いていただいているものだというふうに思っております。
次に、きょうたまたま、朝、日経新聞を読んでいたら、気がついた方もいらっしゃるかもしれ
ませんが、経済教室に大竹先生、阪大の経済の先生が書いているものがありまして、これは後で
読んでいただければと思います。
この経済教室には、ちょっと前に川戸先生もこういう脳科学と経済の関係を書いていらっしゃ
ったと思いますが、経済の分野でも非常に大きく脳科学を考えているということだと思います。
あと、きょうの議論の中で幾つか思ったというか、感じた点ですけれども、特に脳科学の規制
がどうかということでありますが、恐らく脳科学の規制が必要かどうかというのは、ちょっと一
般的命題に‐‐‐ないかという感じがするわけでありまして、ここでも幾つか調査とかいろいろ
ありましたが、実際に応用をした場合にどうなのか。それと、研究そのものというよりは、研究
が実際に社会に応用された場合、どうなのかというときに、規制とか、あるいはルールをどうす
るのかということが必要になるだろうと思いますし、これは今からきちんと議論をしていくとこ
ろが必要だろうと思いますし、そこには感情的なというよりは、冷静な議論と対応が必要になっ
ていくのではないかというふうに考えられます。
あと、エンハンスメントとか出ていましたけれども、それもまだまだ、多分、決着がつかない
問題ではないかというふうに思いますが、今後の研究が待たれるのだろうというふうに思います。
あと、それから、国民の調査というのが出ておりましたけれども、ぜひ、しっかりした分析を
していただくことが必要ですし、そこから論理的にこうしたらいいというようなことを導いてい
ただきたいなというふうに思った次第であります。
あと、ルールづくりに当たっては、まさに伊佐先生がおっしゃっていたように、日本人らしい
というのが、あるいは日本らしいというのが、多分、入ってくるのではないかと思います。私、
国連とかユネスコに出たときに思ったのは、科学は共通なのですけれども、こういう問題という
のは多分に、今まで何人かの先生がおっしゃっていたように、文化的あるいは宗教的なとか、い
ろいろなそれぞれの歴史的な背景が絡み合ってくるので、ルールをつくるのは非常に難しいだろ
うと思いますけれども、それも議論の積み重ねをしていくことが必要だろうというふうに思いま
す。
以上でございます。
(虫明茂)ありがとうございました。では最後に、フロアからいただいた質問について、提題者
の方にお答えいただきたいと思います。
まずは4名の日本人の提題者の方に対して、一つずつ質問があります。それから最後に、午前
中、ちょっと機器の不調で質疑応答の時間がとれなかったチルドレス先生に2問、質問がありま
すので、それを最後の締めくくりにしたいと思います。
では、まず伊佐先生です。これはフロアからの質問ですが、この質問に対する答えと同時に、
194
先生ご自身が言い残したことがあったら、関連することも含めてお話しいただいて結構です。質
問用紙にお名前が書いてある方は読んでいいのだと思いますが、東京大学の鈴木先生から質問を
いただいております。
質問内容は、義手の――人工的な手ですね――義手の脳内表現に関する質問です。手ではない
形状の機械でも、直接、神経信号で制御すると、脳内表現ができるのでしょうか。それは従来の
ように手足を使って制御したときとは、本質的に別なものなのでしょうか。他の脳内表現に対し
てもマイナスの影響はないのでしょうか。以上が質問です。お願いします。
(伊佐正)義手ではないですけれども、いろいろな研究が、そういうことについてはなされてお
りまして、一つ有名なのは、今、理研にいらっしゃる、きょうも会場にお見えですけれども、‐
‐‐先生がサルを用いてやられた研究で、サルにくま手を持たせて、そして遠くから物を取らせ
るようにすると。それを繰り返していくと、実は、くま手が体の一部になったような神経活動が
頭頂連合野とか感覚野の中で記録されてきます。それまで自分の手先の近くに物が寄ってくると
反応していたニューロンが、くま手の先に近づいてきたときに反応するようになるということで、
やはり完全にくま手が体の一部になったというふうな形になっています。
そういうことで、実際に道具を使っているときの、道具がどういうふうに体の一部になってく
るかというのは非常に興味深い問題でありまして、まさしく――あと、東大の工学部で横井先生
が実際に義手を使っているときに、脳活動を MRI で記録しておりますけれども、そのときに義手
をちゃんととめるために感覚のフィードバックを入れてやるのですけれども、同じ手に入れてし
まうと、やはり制御が難しくなるので、反対側の手に感覚を戻してやるのです。そうすると、な
んか、その感覚が義手に返ってきたように。要するに自分が運動しようとする信号を出したとき
に返ってきた感覚というのを、何かやっぱり連関させるメカニズムが脳の中にあるみたいで、や
はり、なんか、それがうまく使えるようになってくると。使えるようになってくると、本来、左
手に入ってきた感覚というのは、右の感覚野に表現、応答が出るのですけれども、慣れてくると、
実は動かした右手のほうを表現してくる左の脳にも感覚が生じる――に対する音が生じるように
なってくるという結果を最近出しておられまして、そういうことを考えると、義手を使い慣れて
くると。使い慣れてくるときには、やっぱり自分の意図と、慣らすためには意図とそれに対して
ある種のちゃんとフィードバックが的確に返ってくると。それが学習をうまく進めるための条件
ですけれども、そういう状況が完結してくると、ある意味、義手は体の一部になってくると。そ
れに対するやはり脳の表現が変わってくるということは現実に起きてくるのだろうと思います。
そういう意味で、我々の脳が持っている可塑性というか、学習能力というのは、非常に我々の
これまでの常識を超えたようなものがありまして。それも、でも、では通常はないのかというと、
それもある意味、我々の脳が進化の過程で獲得してきた特質の一つなのではないかと。我々はた
またま今の環境で、二本の手と二本の足を持って暮らしていますけれども、それは今の普通の環
境下において自分が獲得している脳の形質なんかであって、それは要するに非常に環境が激変し
た場合には、それに対して、また可能な限り何か新たな表現が出てくると。それは我々がやっぱ
り何億年の生物の歴史の中で獲得してきた一つの形質なのではないかなと今は思っています。
以上です。
(虫明茂)ありがとうございました。では次に、村岡先生への質問です。これはちょっとお名前
がないのですけれども。お話の中でニューロサイエンスを犯罪者の矯正――更生させるという矯
195
正ですね――矯正に適用することについて肯定的意見が優勢であることについて危惧――心配、
懸念ですね――しているように思われましたが、従来の矯正としての刑罰を支える刑事司法シス
テムが果たして十分に効果を上げているのか。むしろ、上げていないケースもあるとするならば、
あるいはまた、ニューロサイエンスによって人間は自由意志を持つという従来の人間観の転換―
―変化ですね――が生じるならば、脳神経科学的処置が実施されることが望ましいと言えるケー
スもあるのではないでしょうか。というのも、従来のシステムでは、社会からの隔離が長くなる
ほど社会への復帰が困難になるという問題があるように思われます。もし、こうした処置が可能
となるならば、速やかに社会復帰が可能となるのではないでしょうか、という質問です。
実は先日、玉井先生などのグループが、生命倫理学会でニューロエシックスのワークショップ
をされたときにも、こういう報告がありました。従来、人間は刑務所に入れたら反省して更生す
ると思って刑務所に入れるという側面があるのですが、それがもし脳の異常でそうなっているの
だったら、刑務所に入れても意味がないではないか。むしろ、医療施設に送って異常を治療しな
いと意味がないのではないか。このように、脳科学の知見に基づいて、法律的な処置に対する考
え方が違ってくる可能性があります。
村岡先生、この点や関連することに関して、ご意見をお聞かせください。
(村岡潔)村岡です。ご質問をありがとうございました。とても難しい問題だと思います。
私がニューロサイエンスによる、そういう矯正に関して、少しパーセンテージが予想したより
高かったということに対しての危惧みたいなことを言ったことは事実です。ですから、私自身の
ニューロサイエンスに対するスタンスが、そこでちょっとあらわれたのかとは思いますが。矯正
というようなことが、実は、つまり何をベースにする、あるいは何を目標としてやるかというこ
とによっても、大分違ってくるような気がするのです。ですから、今のやり方があまり有効でな
いからといって、では、それをニューロサイエンスによって有効な道が開かれるというような論
理だとすると、それは飛躍ではないかと思います。ですから、その辺がニューロサイエンスによ
って、もし、そういうことができるとなったというところから出発するのであるとするならば、
また話は別になると思いますけれども、少なくとも、まず、そういう段階で考えておくべきでは
ないかと思うのです。
例えば、人間にはいろいろな個性があるというような言い方をされます。それは確かにそうだ
と思います。その中で、いろいろなそういう考え方なりがあって、さらに、その中で人に迷惑を
かけたり、危害を加えたりするような人たちが出てくるというのは、いわばある意味では、そう
いう生態系みたいなものの中にあるわけです。それをどういうふうにしていくべきかということ
は、いろいろな形で今までの歴史的な取り組みの中で行われてきたわけです。ですから、それが
今、日本がうまくいっていないからといって、いきなり、そういう意味でニューロサイエンスに
走るのはどうかなというような感じがあったものですから、そういうふうに述べました。
では、ニューロサイエンスで仮に、ちょっと唐突ですが、そういう矯正ができるとなったらど
うなのかという議論なのですけれども、そのときの矯正というものについては、私はかなり疑問
を持っております。
ですから、先ほどの議論の中で、ちょっと話がずれるようですが、例えば倫理のニューロサイ
エンスといいますか、だから、ニューロエシックスの‐‐‐の特殊性ということで、先ほど??
シノ??原先生が述べられたわけなのですが、基本的に倫理というものは、多分、一番簡単に言
196
うならば、いかに他人を扱うかということだと思うのです。そのことは、では、脳の中にそうい
うものが――もちろん、いろいろな考え方のベースであると思いますけれども、いろいろな考え
方のベースということをニューロサイエンスが発見することはできるとは思うのです、可能性と
しては。しかし、では、実際に人間の関係性というものをそこでコントロールすることができる
のかとなってくると、私はそこには限界があるような気がするのです。
ですから、そういった意味で、もしニューロサイエンスが矯正することができるというふうな
ことになったというようなニュースが流れたとしても、私はそれを疑うだろうというふうに思い
ます。
すみません。答えになっているかどうか、ちょっとわかりませんが、そんな感想です。
(虫明茂)ありがとうございました。次は、金森先生に対する質問です。
知識を持つということはエンハンスメントであるという話がありましたが、人間の本質的な欲
求、知識欲がエンハンスメントに結びつくのだとすると、エンハンスメントを規制するのは人間
の本質と逆行するのでしょうか。ドーピングのようなエンハンスメントを嫌がることと、一方で
は、エンハンスメントにつながる知識を求めることが同等に感じられるのはどうしてでしょうか、
というご質問です。
(金森修)私のようなタイプの話というのは、最初に申し上げたかと思うのですけれども、ラフ
な話なのです、要するに。ラフな話で、どういうコンテクストで使われるかによって判断が微妙
に違ってくると。
今の話で、知識を持つということは、例えば壊血病の例なんかの生化学でもいいと思うのです
けれども、例えば生化学的なアプローチによって、我々の体がどうなっているのかをどんどん調
べていく。それも、現在ではますます分子的に精緻になりつつありますよね。それは、やはり、
広義のエンハンスメントだと思います。
ただ、そのことと、狭義のドーピングというのは、どう繋がるのか。ドーピングは何が悪いの
かというと、ほかの選手に対する公平性の観点から好ましくないとは、まずすぐにいえますよね。
それに、それを行う選手の健康上の問題もあります。ただより微妙なことも関係してきます。昔、
フローレンス・ジョイナーさんっていましたよね。あの方は金メダルをとりましたけれども、40
歳前に死んじゃいましたよね。あれはどうも或る種のドーピングをしていたらしいといううわさ
を聞きますよね。当時は、見つからなかっただけでとか。
もちろん 40 歳前に死んでしまうのは、かわいそうです。でも、ものは考えようなので、そうは
いいながらも、当人は、当時、世界一足の速い女性として、世界中から賞賛を浴び、大いに幸せ
な一時期を過ごしたはずなのです。だから、亡くなるときにおいてさえ、必ずしもその原因とな
ったかもしれないドーピングのことを、後悔しなかったかもしれない。ですから、当人にとって
さえ、それがいいことなのか、悪いことなのか、結構微妙なのかもしれない。
ただ、もう少し常識的に考えて、いかに当人の名誉、当人の自己満足のためとはいえ、やはり、
そうやって寿命を縮めてまでというのはよくないとはいえる。しかも、最初にも言いましたよう
に、ほかの選手との公平性の問題もあるから、だからよくないと。そういう論理が働くだけなの
であって、私が最初に言った、知識全体が一種のエンハンスメントなんだということとは、社会
的文脈といいますか、位置づけといいますか、あまりに話の位相が違い過ぎます。ですから、そ
ういうのをごっちゃにするのはよくない。
197
つまり、私のようなタイプの一般的な話というのは、皆さんがそれぞれのご専門の知識の中に、
どういうふうに位置づけるかというところに、皆さんのセンスを働かせていただきたいことなの
だということです。私の話は、どんな場面にでも、そのまま一律に当てはめたら、うまくいくと
いうような話、そういうタイプの話では全然ないということです。
お答えになっているかどうか、わからないのですが。
(虫明茂)ありがとうございました。では最後に、川口先生への質問です。川口さんは、ご家族
の介護の体験に基づいて、今では企業、団体をつくって援助されているのですが、質問内容は、
在宅介護において企業だからこそできること、企業に望むことは何ですかということです。
(川口有美子)企業ですか。
(虫明茂)そうです。個人ではなくて、団体とか。
(川口有美子)事業所に。
(虫明茂)そうですね。
(川口有美子)これも私の体験になるのですけれども、初めは家族だけで介護をしておりました
ときに、やはり過剰に、患者に対して家族ですから感情移入してしまうので、あまりいい方向に
いかなかったのです。だから、かわいそうになっちゃうと、思わず私の手で楽にしてあげたいと
いうようなことになるし。また、家族だけで介護していると、全員が疲れてくるのです、一遍に。
そこに企業とか事業所の他人介護が入ると、やはり、それは仕事で来ている人なので、患者の
身体に対する集中力が家族とは違いますし、あと、仕事が終わると、その人たちは気分転換がで
きるわけです。家から一歩出たら解放されるわけですから。そうすると、その人たちは、毎日、
家族よりは新しい気持ちで来てくれて、患者の体に接することができる。家族はずっと、たとえ
介護を直接しなくても、自分は病室から離れた部屋で何かほかのことをしていたとしても、気持
ちは常に患者とともにあるので疲れが取れない状況なのです。そうすると、どっちのケアがいい
かというと、クオリティだけだと、他人介護のほうが安定します。
でも、家族愛が強調されて、愛情がイコール介護力みたいに言われますけれども、確かにそう
いう側面もあって、例えば短期決戦型というか、ガンの末期の人の在宅療養なんかは、私はむし
ろ家族だけで十分に燃える尽きるぐらいやってもいいかなと思うところもあります。ただ、神経
難病もそうですが障害者の介護というのは、明らかに本人の自立を家族は損なってしまう面があ
るので、他人が介護したほうがいいというふうに思っています。病気によってケアの供給者も違
うということでいいと思います。
(虫明茂)ありがとうございました。では最後に、午前中の外国人のゲストに対する質問を取り
上げたいと思います。
実は、レベデフ先生への質問もあるのですが、レベデフさんのほうは午前中質問の時間がとれ
たのと、割と専門的な質問ですので、これはこの後で個人的に懇親会のところでやっていただき
まして、チルドレス先生のほうが、ちょっと時間がなくて質問の時間がとれませんでしたので、
チルドレス先生に対する会場からの質問にお答えしていただきたいと思います。
まずは、東京大学の佐倉先生。昨日ワークショップを2階のホールで開催されましたグループ
の佐倉先生からチルドレス先生に、倫理や価値規範と宗教の関係についてどうお考えでしょうか、
というご質問をいただいています。数カ月前、イギリスの友人に「最近、自分は脳神経倫理を研
究している」と言ったら、
「イギリスでは倫理観の基盤にキリスト教があるが、日本人はほとんど
198
が無宗教だ」――恐らく、この「無宗教」というのは、日本人は一応、仏教とか神道に大抵の人
は入っているのですが、明確な信仰、信念を持っているというよりも、日本の宗教は生活習慣的
な形で入っているので、明確な信仰体系をもっているかという点では、日本人はあまり宗教的で
ないという意味ではないかと思うのですが――「日本で生命倫理を考察するときの規範のよりど
ころは何なのか」とイギリス人の友人に聞かれたときに、佐倉先生は答えられなかったそうです。
宗教なき倫理体系、ethical system without religion は、あり得るのか。あるとすればどういうもの
なのか、お考えをお聞かせくださいということです。
(ジェイムズ・チルドレス)(英語)
(虫明茂)ありがとうございました。かいつまんで、多少私が補足的な説明をしますと、もとも
とチルドレス先生がこういう四つの原則を出されたのは、特定の宗教とか倫理がなくても、共通
の倫理を確立できるようにということから出されたわけです。したがって、特定の明確な単一の
宗教がなくても、それ以外のさまざまな価値観、基本的な価値というものが、それぞれ異なった
社会にとってあるわけです。ですから、特定の価値観、倫理システム、あるいは宗教がなくても、
共通の生命倫理に関する考察ができるように、四つの原則を持ち出されているわけですから、必
ずしも宗教がなくても、その社会の特有の価値観、共通の倫理意識、こうしたものがあれば、そ
うしたところから基本的な枠組とか、共通の枠組、こうしたものを出していくことは可能なので
はないかという趣旨でした。
それから、もう一つの質問です。これは英語で書かれております。天理大学の金子先生からで
す。I have an English question from the audience: Professor Childress, please explain your own definition
of “human dignity” and “dehumanization” in your own biomedical ethics theory. What is your original
point?
(ジェイムズ・チルドレス)(英語)
(虫明茂)まず、英語の質問を日本語に訳しておきますと、「チルドレス先生、human dignity(人
間の尊厳)と dehumanization(非人間化)の先生自身の定義を、特に先生の生命医学倫理理論にお
けるこうした言葉の定義をお聞かせください。そして、先生独自のポイントをお聞かせください」
ということでした。
チルドレス先生は、自律尊重、無危害、善行、正義(justice)という四原則を出されるのですが、
ヨーロッパでは人間の尊厳を原理の中に入れる考え方もあります。そうしたヨーロッパ風の考え
方もチルドレス先生は午前中紹介されました。そして、人間の尊厳の考え方にも幾つかあり、人
によってとらえ方が違ってくるわけです。一つの考え方によれば、人間の義務とか権利に基づい
た行動基準を人間の尊厳は指します。
それからまた別の意味で、アメリカのレオン・カスなどのように、人間の卓越とか繁栄とか徳
といった基準を出す人もいます。したがって、人間の尊厳というと、具体的にどういう内容を与
えるか、人によって違うわけです。そこで、午前中にも触れられましたように、技術の推進を唱
える人々は、金森先生も言われたように、人間の創造性とか合理性、こうしたものをむしろ、動
物と違った人間の尊厳だとする定義もあるわけです。
したがって、もちろん先生自身は自律尊重などの四原則という考え方を出されるのですけれど
も、これは決して人間の尊厳はだめだというのではなくて、人間の尊厳という背景に照らして自
律の尊重とか善行、無危害、正義はどう解釈できるのか。そういう四つの原則を解釈するときの、
199
いわばバックグラウンドとして人間の尊厳は役に立つのではないかというお話でした。
では、ちょうど時間となって、最後にチルドレス先生から全体を締めくくるようなお答えがい
ただけたところで、マイクを濱野先生にお返しします。
(濱野清志)では、ありがとうございました。これで総合討論の部の時間も終わりましたので、
終わりにさせていただきまして。きょう一日、たっぷりと脳科学と倫理という問題について、さ
まざまな考えをお聞かせいただき、考える時間を持ったのではないかと思います。
最後に、本当に dignity の問題が出てきて、我々がこういう研究をしながら、なぜ倫理と脳科学
ということを考えないといけないのかというと、やはり一番、ここに個人の dignity をどうとらえ
たらいいのかという問題が出てきているのだろうと思うのです。だから、こういう研究を通じて、
むしろ脳科学が倫理的にどうかというよりも、脳科学の最先端から新しい倫理が生まれてくるの
だろうなというようなことを強く感じました。
これできょうの研究発表会を終わらせていただきますが、この会に当たりましては、共催とし
て、脳を生かす研究会の方々にも大変お世話になりました。それから、特定領域研究「脳機能の
統合的研究」グローバル COE プログラム、それから、立命のほうで行われている生存学創生拠点
という、こういう二つの団体にも後援いただきまして、本当にありがとうございました。無事、
一日のシンポジウムを終えられたことをうれしく思っています。本当にありがとうございました。
これでシンポジウムを終わりにしたいと思います。チルドレス先生とレベデフ先生にも本当にあ
りがとうございました。これで、では、終わりにしたいと思います。どうも。
200
資料 9.モレノ教授インタビュー(2008.03.21, ワシントン)
(就実大学:虫明茂)
モレノ教授とのインタビュー
2008 年 3 月 20 日、アメリカン・プログレス・センター(CAP: Center for American Progress)の一室で、ジ
ョナサン・D・モレノ Jonathan D. Moreno ペンシルベニア大学教授(医療倫理学、科学史・科学社会学)に
インタビューを行った。以下にモレノ教授の最近の著書と、質疑応答の一部を掲げておく。
*
Mind Wars: Brain Research and National Defense, Dana Press, 2006.
Ethical Guidelines for Innovative Surgery, Univ Pub Group, 2006.
Is There an Ethicist in the House? On the Cutting Edge of Bioethics, Indiana UP, 2005.
In the Wake of Terror: Medicine and Morality in a Time of Crisis, MIT Press, 2003.
Undue Risk: Secret State Experiments on Humans, Routledge, 2001.
*
虫明: 私の質問は、1つだけです。
モレノ: とても難しい、哲学的な質問ですね?(笑)
虫明: 日本に小泉英明という著名な科学者がいます。バチカンで教皇にも謁見した方です。彼は日立の
研究者で、fMRI や光トポグラフィーの開発に貢献しました。
モレノ: NIRS(近赤外分光法)ですね。
虫明: ええ。彼が数年前に日本生命倫理学会で講演をしたとき。講演の中で戦争と平和の問題、暴力が
暴力を生む「憎しみの連鎖」の問題に触れました。彼は直接言わなかったのですが、この憎しみの連
鎖を脳科学技術によって断つことについて、モレノ先生はどう思われますか。
モレノ: そのようなことができればいいのですが。私たちは平和のために何かをする必要があります。オ
バマ上院議員も同じことをしようとしているのですが……。(笑)
虫明: しかし、危険も伴うのではないでしょうか。もし独裁者が、独裁に対する人々の憎しみを断つのに
同じ技術を用いたとしたら……。
モレノ: 逆になってしまいますね。
虫明: 同じ技術が、人々を抑圧するために使われてしまいます。
モレノ: 二重用法 dual use の問題ですね。同じ技術が、善用も悪用もされる。
虫明: 先生は著書『マインド・ウォーズ』の末尾で、戦争のためではなく平和のために脳科学技術を利用
する方向について言及されていますね。
モレノ: 最後まで読んでいただいて光栄です。(笑) ご指摘のとおりですが、残念ながらどうしたら平和の
ために利用できるか、私にも妙案があるわけではありません。
虫明: 先生も書かれているとおり、人間の脳は極めて複雑なシステムです。憎しみもある意味では大切な
ものですね。たとえば、抑圧や戦争への憎しみです。憎しみの回路を脳から取り除いてしまったら……
モレノ: 何が起こるかわかりませんね。
虫明: ええ、これは難しい問題です。
モレノ: 確かに、1つの憎しみ回路があるわけではありません。とても複雑な、分散した回路ということにな
201
るでしょう。一連の回路が、一定の条件のもとで働くわけです。とても興味深い問題です。――小泉先
生が生命倫理学会でスピーチされたのですね。彼は何か実験を提案しましたか。
虫明: いいえ。(笑) 講演の中で、小泉先生は歴史上の有名な仏教の僧侶、法然に言及されました。ち
なみに、村岡先生は佛教大です。
村岡: 坊主ではありませんが……。
モレノ: お坊さんのように見えますよ。(笑)
虫明: 法然の父は殺されたのですが、「敵を恨むな」という父親の言葉に従って、彼は復讐を断念しまし
た。
モレノ: そうですか。私の父(Jacob Levy Moreno)は精神科医で、サイコドラマ(心理劇)psychodrama を
提唱しました。日本では、松村という方がサイコドラマを導入したそうですね。
粟屋: 有名な方です。
モレノ: 人々を他の人々の立場に立たせることによって、心の病を治そうという考え方です。父は役割交
代 role reversal と呼びました。
虫明: 序論でお父様のことに言及されていますね。私にとって興味深いのは、「愛と平和」を唱えたヒッピ
ーとペンタゴンの両方が LSD の利用を考えたことです。歴史の皮肉ですね。
モレノ: とても皮肉なことです。ところで、ミラー・ニューロン mirror neuron をご存じですね。これによって、
各自がお互いの体験を追体験することができるのです。私のインターナル・マップの中で、あなたが私
をどのように体験しているか私は考えています。役割交代のような活動テクニックを組み合わせ、また
ニューロサイエンスの情報を学ぶことによって、心の病をより効果的に打ち破ることができるようになる
かもしれません。薬や機器によってではなく、これまでとは違った仕方で交流することによってです。こ
れは古くからある考え方ですが、ニューロサイエンスの知見も役立つかもしれません。
虫明: ご存じのように、オーストラリアのニール・レヴィ Neil Levy がニューロエシックスに関する本を出しま
した。その中に、ピーター・シンガーPeter Singer の話が出てきます。シンガーは現在の人間の道徳を
批判して、次のように述べています。道徳は、進化の過程で、つまり適者生存、さらに言えば弱肉強食
の過程を経て形成されてきたものだから、根本的に信頼できないものだと。これについてどうお考えで
すか。
モレノ: そのとおりですが、他方で人間は他の人々を理解し共感する能力、愛他主義も発達させてきまし
た。
虫明: レヴィも動物における原始的道徳 proto-moral に触れていますね。
モレノ: ええ、霊長類のような高等動物には一種の「文化」があり、同じ集団に属する他の動物が体験し
ていることについて考えているようです。
*
虫明: 『生命倫理百科事典』Encyclopedia of Bioethics の編集者スティーヴン・ポスト Stephen G. Post が
昨年来日したときに、「コンパッション・ピル(同情薬)compassion pill」の話をしていました。脳科学技
術のエンハンスメント的用法については、 頭を良くする「スマート・ピル smart pill」がよく知られてい
ますが、人間を単に「頭がいい」だけではなく「賢明」にしてくれる「ワイズ・ピル wise pill」はどうでしょ
うか。脳科学技術的に可能でしょうか。これができれば、世界平和に近づけるかもしれません。(笑)
モレノ: そのためには知恵 wisdom とは何か、あらかじめわかっていなければなりません。しかし、我々は
知恵の尺度をもっているでしょうか。知能 intelligence の尺度ならたくさんありますが、知恵の尺度はあ
202
りません。知恵については、人々の意見が大きく分かれるところです。これが問題です。
虫明: コンパッション・ピルについてはどうですか。
モレノ: こちらの方が簡単ですね。同情については、たとえば信頼といった尺度があります。その件につ
いては、ペンシルベニア大の同僚の脳科学者と話したことがあります。オキシトシン oxytocin を鼻にス
プレーすると、信頼心が増すようですね。コンパッション・ピルの方は可能でしょうが、ワイズ・ピルの方
は難しいでしょう。ヒッピーのグル、ティモシー・リアリーTimothy Leary は、LSD で知恵が得られると信じ
たようです。実際、彼は死ぬときに、トリップして旅立ちました。究極の LSD トリップですね。残念ながら
彼は、手に入れた知恵を教えに私たちのところに帰って来てはくれませんでしたが。(笑)
粟屋: 悲しみを忘れる「メモリー・ピル memory pill」についてはどうですか。
美馬: 記憶の情動的内容を変えることに関する研究がありますね、特に兵士用に。
モレノ: プロプラノロール propranolol などのベータブロッカーbeta-blocker ですね。
美馬: ええ。
モレノ: ハーバードのピットマン Roger K. Pitman がその研究をしています。昨年彼とディスカッションした
ことがありますが、プロプラノロールにはそれほどの効果がないようです。しかし、後悔、悲しみ、恥、罪
のような感情の固定を妨げるような薬の開発がされています。もしできれば、不安などを抑える効果的
な精神疾患用の薬になりますね。でも、濫用されるかもしれません。スピッツァー知事をご存じですね。
前のニューヨーク州知事スピッツァーのような人物は、罪を感じるべきです。(笑) 罪を感じない薬を彼
に飲んでもらいたくない。
虫明: 技術の二重用法の問題ですね。
モレノ: ええ、それが問題です。生物、化学、核……ご存じのとおりの二重用法問題。
虫明: バイオデフェンス委員会のメンバーもされたそうですね。
モレノ: ええ、委員でした。今は、別の興味深い委員会に入っています。2ヶ月ぐらいで報告書が出ると
思います。国家情報とニューロサイエンスに関する委員会です。ペンタゴンが米国研究評議会に作る
よう要請した委員会です。詳しいことはわかりませんが、たとえばイランにはたくさんの MRI 装置があり
ます。彼らは MRI 装置で何をしているのでしょうか。本当のことを言っているのか嘘を言っているのか
調べるために使うとか。彼らは情報局をもっています、我々と同じようにね。もともと CIA がもっていたア
イデアです。LSD を使って、秘密を探り出すことができるかもしれない。情報を握っている人物を誘拐
すれば、拷問しなくても聞き出せるわけですね。2、3ヶ月後には報告書が出ます。ペンタゴンは深刻
な問題と考えています。また、おかしな時代になりつつありますね。
美馬: サイボーグやその他のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI: human-machine interface)の研
究は、NASA で宇宙飛行士用に研究が始まったと思いますが、今ではむしろ軍事利用に重点が移っ
たのでしょうか。
モレノ: 私の想像では、DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency: 防衛高等研究計画局)
がロボットや補装具 prosthetics に興味を抱く理由は、ロボットを遠隔から利用できることです。これから
どう利用されるかは私もはっきりわかりませんが、たとえば本の中でも触れたように、オペレーターが実
際に飛行機の中に座っているかのように無人飛行機を操縦し意思決定する、といったことですね。ま
た、戦場でのロボットの利用も考えられます。
虫明: 独立したロボットは完成までに時間がかかるかもしれませんが、様々な種類のパワースーツはどう
ですか。
203
モレノ: パワースーツや、腕などに装着して強化する装置ですね。このようなものを作るのは、日本が一
番進んでいるのではないですか。
粟屋: 医療用のパワースーツなど。
モレノ: もちろん開発が進んでいます。――ところで、日本にもトランスヒューマニズム transhumanism に
興味をもつ哲学者はいますか?
虫明: 粟屋先生がトランスヒューマニズムのエキスパートです。(笑)
モレノ: ロボットやヒューマン・マシン・インターフェースは、トランスヒューマニストたちも語っていることです
ね。
虫明: ポストヒューマニスト posthumanist やエクストロピアン extropian もそうですね。
モレノ: そう、そう。
虫明: 科学者の何パーセントぐらいがトランスヒューマニストでしょうか。あるいは隠れトランスヒューマニス
ト crypto-transhumanist、つまり、まだカミング・アウトしていないトランスヒューマニストでしょうか。
モレノ: 彼らはトランスヒューマニズムの言葉では語りませんが、そのような考え方に共感しているでしょう。
科学が我々をよりよくしてくれると思うから、科学をしているのですから。科学者は基本的に、科学が人
類を改善すると思っている。時に誤用されることはあっても、科学は全体として良いことだと。実験室で
働いているときは、そんなことを気にかけませんが。科学者一般にとってトランスヒューマニズムは、もっ
ともらしい哲学に見えることでしょう。
虫明: 多くの科学者は、いわゆる NBIC convergence に関心をもっているでしょうか。ナノ・バイオ・インフ
ォ・コグノ技術の収斂ですね。
モレノ: そのとおりです。それから、シンギュラリティー(特異点)singularity……
虫明: ええ、シンギュラリタリアン singularitarian もいますね。
モレノ: 機械が機械を作り、人間に理解できない問題を解決できるようになれば、シンギュラリティーの瞬
間が近づくという。――バークリーの哲学者、ヒューバート・ドレイファス Hubert L. Dreyfus をご存じで
すか。現象学者、ハイデガー研究者ですね。『コンピューターには何ができないか』What Computers
Can’t Do という本を 1970 年代に書きました。これは古くからの議論ですね、コンピューターに考えるこ
とができるかという……
虫明: 人工知能 artificial intelligence の問題ですね。
モレノ: ええ。ドレイファスからダニエル・デネット Daniel Dennett まで続く議論です。
*
粟屋: 私の質問は、ロボトミーlobotomy の問題です。ロボトミーは、ここ米国で禁止されていますか。
モレノ: いいえ、実のところ、ロボトミーは再び行われています。狙いを精確に定めて行われ、実際に効
果があるようなケースもありますね。ある種の神経障害や抑鬱などの場合です。以前よりもずっと注意
深く実施されています。米国におけるロボトミーの歴史をさかのぼるなら、ここワシントンにフリーマン
Walter Freeman がいて、経眼窩ロボトミーtransorbital lobotomy を行いました。ジョン・ケネディーJohn
F. Kennedy の妹がロボトミー手術を受けたのは有名な話ですね。
粟屋: ええ。
モレノ: また、DBS(脳深部刺激)も、たとえばパーキンソン病に対して使われるようになっています。TMS
(経頭蓋磁気刺激)もそうですね。
粟屋: DBS とロボトミーの違いは……
204
美馬: 違いは、DBS が可逆的でありうるのに対して、ロボトミーは不可逆的であることですね。脳を切って
しまえば、もう元に戻すことはできない。
モレノ: ええ。DBS でパーキンソン病が劇的に改善したケースも知っています。いつまで効果が続くかは、
まだわかりませんが。
*
虫明: ニューロエシックスについて、バイオエシックスとは異なるものなのか、その一部門にすぎないのか
という議論があります。これについては、どうお考えですか。
モレノ: ちょうど脳神経例外主義 neuroexceptionalism 関する論文を読んだところです。タイトルから想像
できるように、個々のケースは違うが、基本的な問題はバイオエシックスと同様だというものです。
虫明: 1月に我々はチルドレス James F. Childress を京都に招きました。彼によれば、一見新奇に見える
ニューロエシックスの問題も、4原則を応用すれば解決できるということでした。
モレノ: もちろん、原則を使えば何でもできます! ジョージ・アナス George J. Annas は、4原則を「バイオ
エシックスのボーグ Borg」と呼んでいました。スタートレックに登場するボーグは、何でも食べて同化し
てしまうのです。(笑) ニューロエシックスの問題がユニークで無比だとは思いませんが、興味深いの
は、ここ 10~15 年のニューロテクノロジーの進歩のスピードです。これほど急激な進歩を見せている分
野は他にありませんね、ジェネティックスを除けば。
205
資料 10.クリスタキス教授との会合報告(2008.03.24, ボストン)
(佛教大学:村岡潔、東海大学:長瀬雅子)
クリスタキス教授との会合報告
2008 年 3 月 24 日、ハーバード大学医学部において N.A.クリスタキス教授――ハーバード大学
医学部医療政策部門に所属していて、医師の資格と社会学の博士号をもっている――と面会した。教授
を訪問した目的は、新しい医療テクノロジーが医師と患者の関係に影響を与えると考えられること、具体
的には脳科学が患者の予後にどのような影響を与え、医師あるいは医療従事者に求められることは何か
ということについて、医療社会学の見地からの意見交換を行った。
この会合のきっかけとなったのは、クリスタキス教授の著書である。
Christakis, Nicholas A., 1999, Death Foretold: Prophecy and prognosis in medical care. The Univ.
of Chicago. (=進藤雄三監訳,2006,『死の予告―医療ケアにおける予言と予後』,ミネルヴァ
書房.)
本書において、彼は医師――特に内科医に焦点を当てている――による予後診断やそれを伝えるという
ことにおいて、予後がどのようなシンボリズムをもち、実践され、感情にいかなる問題を抱えているのかを
明らかにしている。
会合では、我々研究班が日本において実施した「脳科学に関する国民の意識調査」の概要を説明し
た。その後、先進的な脳科学テクノロジーがもたらすであろう患者の予後に関する教授の考えを、質疑を
交えてうかがった。
教授は、先の著書において、予後が医師と患者の双方に対して診断と治療に感情的要素を付与する
と述べている。感情を誘引し、行動を変容させる力を持つという点において、予後は予言と類似しており、
医師は予言者の役割を与えられる。教授がこのように考える理由は、第一に予後を語る医師の役割の諸
側面に光をあてるから、第二に診療行為における予測は「予言者」と「嘆願者」との基本的社会関係を例
示し、その社会関係を解明するから、第三に予後と予言の類似性は予後の道徳的次元と医師の義務を
際立たせるものだからである。
予後診断と治療という臨床的行為の間には、相互関係がある。つまり、治療の可能性があると予後診
断は軽視される。しかし、ここ数十年間は、疾病の種類、保健医療ケアの提供様式、倫理的文化的期待
の変化から、予後の重要性が復権しつつあるという。たとえば、慢性病患者の場合、合併症の種類や出
現時期といった予後が重要になる。
また、保健医療ケア提供と保健医療テクノロジーにおけるいくつかの発展も、予後の重要性の増大に
寄与している。たとえば、終末期患者をホスピスに紹介しようとする際、生存可能性が 6 ヶ月未満であるこ
とを証明しなければ、メディケアを使うことができない。正確で信頼できる予後の評定というものは、患者や
支払機関がどのシステムが良好な結果をもたらすかを決定づけるのに役立つ。
新しいテクノロジーは、無徴候的、「潜在性の」、あるいは「沈黙した」病気を発見し、治癒、予防、発症
を遅らせるための介入ができるというように、予後の意義を変化させている。教授が先の著書で例示して
いたのは遺伝性の疾患についてである。脳科学も遺伝子診断と同様に、症状の改善に使うこともできるが、
予防的あるいはエンハンスメントとして使用することもできる。
医師が予後を利用するのは、治療的・診断的管理、患者との関係、行為と出来事の意味のためである。
206
また、予後を診断する能力、すなわち臨床的洞察力、専門的能力を評定する手段として見られ、同僚・患
者から注目される。さらに、倫理学的意思決定の際にも予後診断が用いられる。たとえば、生命維持装置
の取り外しの選択や移植のための臓器の提供などといった場面においてである。
効果的な予後の診断は、患者に自分の生を効果的に管理させる能力を与える機能をもつ。患者が予
後情報を欲する理由は、実践的・財政的事柄を計画したい、自分の身体になにが起こるのかを知りたいと
いう欲求がある。また、未来を知るということは、患者が自分の状態の意味を理解する方法であり、自分と
自分の家族に及ぼす影響についての不確実性、不安、恐れを緩和する方策なのだと、医師たちは暗黙
裡に語っている。
予後は不確実性の源泉である同時に、不確実性への対処方法にもなりうる。医療における不確実性は、
Fox によって 3 つの主要な源泉を持つと説明されてきた。第一に利用可能な知識に不十分あるいは不完
全にしか精通していない、第二に現在の医学的知識の限界、第三に個人の無知あるいは不適当な行為
と現在の医学的知識の限界とを識別することの困難さである。予後診断における不確実性は、現在にお
いて未来を観察することは経験的に不可能であるという事実に発生する。しかし、予後診断をすることは、
医師が患者の病気に対して一定の合理的理解と一定のコントロールを保有しているかのように感じられ、
予後診断を確実に行う能力は安心を与えてくれるものなのである。同時に、不確実性は、ある意味で救い
の源泉となる。未来が好ましくないものの場合、不確実性が患者と医師の絆の媒介を提供することがある
し、医師に安堵感を与え、患者に希望を与えることがある。
しかし、医師が語る予後は、どのような場合においても正確であるとは言いがたい。医師に言わせれば、
予後診断における誤りは不可避である。しかし、逆説的には、この回避不可能な誤りが存在することで、
患者の治療結果に対する責任を免除するという安心感を医師に与えることができる。
医師が予後において誤りをおかすことは、医師の中にスピリチュアルな感情を発生させることがある。こ
れは、医師の予後診断能力の限界によるものではない。宗教的概念の「神」、医師の理解を超えた力に
対する信念である。宗教は人間の能力の限界と死の脅威から来る緊張を緩和するための根源的方法で
あり、医師がスピリチュアルな感情を発生させることはなんら驚くことではない。
医師は、未来への予測が一種の自己成就的予言として患者の転帰に影響を及ぼす可能性があること
を確信している。予測は、それが口にされることによって現在の行動に影響を与える。また、行動の変化を
通して未来の転帰に影響を与える。
医師には病気の予後、治療の効果を予測し、患者に伝える義務がある。また患者には知る権利がある。
予後の回避は、臨床的責任、道徳的責任を回避することを意味している。予後は、機能的、構造的、象
徴的に使用されるという点で予言に類似している。機能的な使用では、予後診断の評価をすべきか、治
療を行うべきか、情報を伝えるべきか、それらをどのように行うべきかに関する医師の決定がある。意図的
に予後を診断することは、予測不可能性に対する対処法であり、不確実性を減少させ、集合的な行為を
可能にする。また、構造的な機能とは患者-医師関係のヒエラルキーの維持である。未来への見通しを述
べることで、権威の領域は確定され知識体系は是認される。象徴的機能では、予言に従って行動するこ
とで現在において経験し、未来において予見される無秩序や不均衡、無意味性を正そうとする。つまり、
無原則と見える患者の病気の体験のなかに秩序を、悪と思われるもののなかに善を、避けることのできな
い死のなかに希望を見つけようとする。
予後を診断することが義務であることの重要な理由は、一つには、予後に関する情報が患者にとって
重要だからである。患者の希望に沿った死を迎えること、治療法を選択することなどが、そうした情報に左
207
右される。また、もう一つの重要な理由には、予後が超越的な事柄に関与していることである。死は、いつ、
どのように起ころうと、倫理的、宗教的、実存的、道徳的関心を引くものである。医療における予後診断は、
人々が感じ、考え、行うことに影響を及ぼし、結果として生じることに影響を与える。
医師が予後診断をするという義務を果たすなら、予後が必ずしも患者にとって利益になるわけではない
ことに敏感にならなければならない。また、予後を伝えるためのコミュニケーションの方法を学ばなければ
ならない。そして、予後に対する期待を修正する必要がある。より良い予後の診断は、道徳的配慮だけで
はなく、実践的配慮からも求められている。たとえば、ゲノムに関する情報の増加と人々を疾患のリスクに
さらす遺伝子検査の発達は、特に予後的な性質を持つ、まったく新しい水準の医学情報を提供するだろ
う。同様に、脳科学の発展は患者や家族に希望をもたらすかもしれない。しかし、現時点で、そのテクノロ
ジーの効果は不確実であり、未来を確実に予測することは困難である。未来を予測して診断、治療、予防
の方法、あるいはエンハンスメントを選択するということを考えれば、死を予言することと同様の問題を生じ
させうるだろう。
208
資料 11.脳科学をめぐる国民意識調査集計結果
資料 11.1 単純集計(2007.12)
2007年12月
209
◆調査について 調査方法: インターネットアンケート
調査時期: 2007年11月~12月
対象属性: 全国20歳~69歳男女
(年齢、性別、在住都道府県に関し、
国民属性分布に近似させて回収)
回収有効回答数: 2500
210
問1あなたは日ごろ、どの程度健康に気をつけていますか。
N=2500
13.08% 0.80%
32.24%
53.88%
1
2
3
4
いつも気をつけている
ときどきは気をつけている
あまり気をつけていない
まったく気をつけていない
211
いつも気をつけてい
る
ときどきは気をつけ
ている
あまり気をつけてい
ない
まったく気をつけて
いない
806
1347
327
20
32.24%
53.88%
13.08%
0.80%
問2あなたは、ふだん健康のために心がけていることがありますか。次の中からあてはまるものすべてを選んでくださ
い。
0%
ストレスをためない
睡眠を十分にとる
休養を十分にとる
適度な運動をする
タバコをひかえる
お酒をひかえる
食べすぎない
なるべく外食をしない
なるべくファストフードやコンビニ弁当を食べない
食事の栄養バランスに気をつける
野菜や肉などの生鮮食品を買うとき、生産者のわ
かるものを選ぶ
無農薬やオーガニック食品を選ぶ
薬はできるだけ飲まない
メディア(新聞・テレビ・インターネット等)で(よく
ないと)警告されたものを買わない
メディアで(よいと)推奨されたものを買う
病気をうつされる場所・人・物に近づかない
化学物質の含まれない無添加や天然素材のもの
を選ぶ
環境を汚染しないようエコを心がける
その他
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
46.92%
62.56%
44.64%
44.52%
18.04%
24.56%
41.36%
20.24%
31.36%
50.36%
17.28%
10.44%
33.84%
25.12%
7.24%
21.08%
24.32%
32.40%
2.24%
ストレスをためない
睡眠を十分にとる
休養を十分にとる
適度な運動をする
タバコをひかえる
お酒をひかえる
食べすぎない
なるべく外食をしない
なるべくファストフードやコンビニ弁当を食べない
食事の栄養バランスに気をつける
野菜や肉などの生鮮食品を買うとき、生産者のわかるも
のを選ぶ
無農薬やオーガニック食品を選ぶ
薬はできるだけ飲まない
メディア(新聞・テレビ・インターネット等)で(よくないと)警
告されたものを買わない
メディアで(よいと)推奨されたものを買う
病気をうつされる場所・人・物に近づかない
1173
1564
1116
1113
451
614
1034
506
784
1259
46.92%
62.56%
44.64%
44.52%
18.04%
24.56%
41.36%
20.24%
31.36%
50.36%
432
17.28%
261
846
10.44%
33.84%
628
25.12%
181
527
7.24%
21.08%
17 化学物質の含まれない無添加や天然素材のものを選ぶ
608
24.32%
18 環境を汚染しないようエコを心がける
19 その他
810
56
32.40%
2.24%
212
N=2500 ※複数回答
問3臨床心理学などの心理学について、どの程度知りたいですか。
N=2500
非常に知りたい
12.80% 2.36%
23.52%
61.32%
1
2
3
4
非常に知りたい
どちらかというと知りたい
どちらかというと知りたくない
まったく知りたくない
213
どちらかというと知り
たい
どちらかというと知り
たくない
まったく知りたくない
588
1533
320
59
23.52%
61.32%
12.80%
2.36%
問4 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、それとも利用したくな
いですか。
N=2500
とても利用したい
28.44%
4.28%
18.72%
48.56%
1
2
3
4
とても利用したい
どちらかといえば利用したい
どちらかといえば利用したくない
まったく利用したくない
214
どちらかといえば利
用したい
どちらかといえば利
用したくない
まったく利用したくな
い
107
468
1214
711
4.28%
18.72%
48.56%
28.44%
問4 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、それとも利用したく
ないですか。
N=2500
とても利用したい
19.88%
6.28%
36.48%
37.36%
1
2
3
4
とても利用したい
どちらかといえば利用したい
どちらかといえば利用したくない
まったく利用したくない
215
どちらかといえば利
用したい
どちらかといえば利
用したくない
まったく利用したくな
い
157
912
934
497
6.28%
36.48%
37.36%
19.88%
問4 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを
利用したいですか、それとも利用したくないですか。
N=2500
とても利用したい
10.72%
37.00%
1
2
3
4
9.68%
42.60%
とても利用したい
どちらかといえば利用したい
どちらかといえば利用したくない
まったく利用したくない
216
どちらかといえば利
用したい
どちらかといえば利
用したくない
まったく利用したくな
い
242
1065
925
268
9.68%
42.60%
37.00%
10.72%
問5 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
18.84%
4.76%
32.36%
44.04%
1
2
3
4
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
217
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
809
1101
471
119
32.36%
44.04%
18.84%
4.76%
問5 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度抵抗があります
か。
N=2500
非常に抵抗がある
13.04%
37.96%
1
2
3
4
13.36%
35.64%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
218
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
334
891
949
326
13.36%
35.64%
37.96%
13.04%
問5 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用
いることに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
11.20%
38.96%
1
2
3
4
7.96%
41.88%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
219
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
199
1047
974
280
7.96%
41.88%
38.96%
11.20%
問6 病気によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありま
すか。
N=2500
非常に抵抗がある
10.24%
40.72%
1
2
3
4
11.68%
37.36%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
220
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
292
934
1018
256
11.68%
37.36%
40.72%
10.24%
問6 病気による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
10.24%
42.52%
1
2
3
4
11.04%
36.20%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
221
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
276
905
1063
256
11.04%
36.20%
42.52%
10.24%
問6 老化によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありま
すか。
N=2500
非常に抵抗がある
10.20%
40.60%
1
2
3
4
11.56%
37.64%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
222
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
289
941
1015
255
11.56%
37.64%
40.60%
10.20%
問6 老化による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
9.20%
41.52%
1
2
3
4
11.40%
37.88%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
223
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
285
947
1038
230
11.40%
37.88%
41.52%
9.20%
問6 老化によって低下した身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のこ
とがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
9.72%
40.64%
1
2
3
4
11.88%
37.76%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
224
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
297
944
1016
243
11.88%
37.76%
40.64%
9.72%
問6 老化による身体能力の低下(筋力・持久力・反射神経など)を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、
どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
8.76%
41.08%
1
2
3
4
11.48%
38.68%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
225
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
287
967
1027
219
11.48%
38.68%
41.08%
8.76%
問7 身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
31.44%
17.20%
27.36%
24.00%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
226
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
430
684
600
786
17.20%
27.36%
24.00%
31.44%
問7 身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われます
か。
N=2500
そう思う
5.88%
11.52%
29.48%
53.12%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
227
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
737
1328
288
147
29.48%
53.12%
11.52%
5.88%
問7 記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
2.72%
8.20%
43.48%
45.60%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
228
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
1087
1140
205
68
43.48%
45.60%
8.20%
2.72%
問7 性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
16.68%
38.64%
1
2
3
4
13.24%
31.44%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
229
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
331
786
966
417
13.24%
31.44%
38.64%
16.68%
問8 薬で身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
4.56%
9.76%
59.48%
1
2
3
4
26.20%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
230
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
114
244
655
1487
4.56%
9.76%
26.20%
59.48%
問8 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われ
ますか。
N=2500
そう思う
5.00%
43.60%
17.88%
33.52%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
231
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
125
447
838
1090
5.00%
17.88%
33.52%
43.60%
問8 薬で記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
7.56%
37.60%
23.16%
31.68%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
232
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
189
579
792
940
7.56%
23.16%
31.68%
37.60%
問8 薬で性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
2.96%
8.88%
60.32%
1
2
3
4
27.84%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
233
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
74
222
696
1508
2.96%
8.88%
27.84%
60.32%
問9 薬で身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
11.92% 4.48%
48.36%
35.24%
1
2
3
4
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
234
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1209
881
298
112
48.36%
35.24%
11.92%
4.48%
問9 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗があります
か。
N=2500
非常に抵抗がある
17.44%
4.52%
37.08%
40.96%
1
2
3
4
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
235
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
927
1024
436
113
37.08%
40.96%
17.44%
4.52%
問9 薬で記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
21.12%
6.16%
32.56%
40.16%
1
2
3
4
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
236
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
814
1004
528
154
32.56%
40.16%
21.12%
6.16%
問9 薬で性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
3.24%
7.88%
31.96%
1
2
3
4
56.92%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
237
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1423
799
197
81
56.92%
31.96%
7.88%
3.24%
問10 子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
22.88%
20.88%
1
2
3
4
19.52%
36.72%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
238
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
488
918
522
572
19.52%
36.72%
20.88%
22.88%
問10 子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように
思われますか。
N=2500
そう思う
14.40%
26.04%
12.28%
47.28%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
239
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
651
1182
307
360
26.04%
47.28%
12.28%
14.40%
問10 子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
12.96%
30.56%
10.84%
45.64%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
240
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
764
1141
271
324
30.56%
45.64%
10.84%
12.96%
問10 子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
33.20%
5.76%
21.00%
40.04%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
241
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
144
525
1001
830
5.76%
21.00%
40.04%
33.20%
問11 薬で子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
3.00%
10.04%
58.32%
1
2
3
4
28.64%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
242
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
75
251
716
1458
3.00%
10.04%
28.64%
58.32%
問11 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのよ
うに思われますか。
N=2500
そう思う
3.04% 11.44%
54.72%
1
2
3
4
30.80%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
243
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
76
286
770
1368
3.04%
11.44%
30.80%
54.72%
問11 薬で子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
そう思う
4.00% 13.68%
53.40%
1
2
3
4
28.92%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
244
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
100
342
723
1335
4.00%
13.68%
28.92%
53.40%
問11 薬で子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
N=2500
1.56%
そう思う
5.00%
27.16%
66.28%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
245
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
39
125
679
1657
1.56%
5.00%
27.16%
66.28%
問12 薬で子どもの身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
4.12%
8.96%
30.48%
1
2
3
4
56.44%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
246
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1411
762
224
103
56.44%
30.48%
8.96%
4.12%
問12 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗が
ありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
10.00% 3.80%
31.92%
1
2
3
4
54.28%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
247
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1357
798
250
95
54.28%
31.92%
10.00%
3.80%
問12 薬で子どもの記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
非常に抵抗がある
11.20% 4.00%
31.36%
1
2
3
4
53.44%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
248
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1336
784
280
100
53.44%
31.36%
11.20%
4.00%
問12 薬で子どもの性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
N=2500
3.20%
非常に抵抗がある
4.64%
24.72%
67.44%
1
2
3
4
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
249
どちらかというと抵
抗がある
どちらかというと抵
抗がない
まったく抵抗がない
1686
618
116
80
67.44%
24.72%
4.64%
3.20%
問13ゲームや書籍などによる「脳トレ」は、脳を鍛えたり、活性化することに役立つと思いますか、それとも思いません
か。
N=2500
そう思う
4.12%
5.64%
20.56%
11.40%
58.28%
どちらかといえば思
う
どちらかといえば思
わない
そう思わない
わからない
1
2
3
4
5
そう思う
どちらかといえば思う
どちらかといえば思わない
そう思わない
わからない
250
514
1457
285
141
103
20.56%
58.28%
11.40%
5.64%
4.12%
問14あなたは、ふだんゲームや書籍などの「脳トレ」を、どの程度していますか。
N=2500
0%
ほとんど毎日
10%
20%
9.44%
週に1回程度
9.80%
月に1回程度
50%
12.44%
年に数回
15.44%
4.12%
全くしていない
1
2
3
4
5
6
7
40%
4.44%
週に数回
年に1回程度
30%
44.32%
ほとんど毎日
週に数回
週に1回程度
月に1回程度
年に数回
年に1回程度
全くしていない
111
236
245
311
386
103
1108
251
4.44%
9.44%
9.80%
12.44%
15.44%
4.12%
44.32%
問15 科学技術の発展は人々を幸福にする -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反対で
すか。
N=2500
賛成
0.40%
1.60%
31.88%
18.96%
47.16%
1
2
3
4
5
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
どちらかといえば反
対
反対
474
1179
797
40
10
252
18.96%
47.16%
31.88%
1.60%
0.40%
問15 科学技術の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反対
ですか。
N=2500
賛成
2.52%
7.36%
7.32%
27.96%
54.84%
1
2
3
4
5
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
どちらかといえば反
対
反対
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
183
699
1371
184
63
253
7.32%
27.96%
54.84%
7.36%
2.52%
問15 科学技術の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、
それとも反対ですか。
N=2500
賛成
14.24% 5.64%
13.12%
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
26.32%
40.68%
1
2
3
4
5
どちらかといえば反
対
反対
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
328
658
1017
356
141
254
13.12%
26.32%
40.68%
14.24%
5.64%
問16 脳の回路(神経回路)は、成人した後も成長することがある. -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自
身で判断し、お答えください。
N=2500
14.52%
10.24%
75.24%
1 正しいと思う
2 誤っていると思う
3 わからない
正しいと思う
誤っていると思う
わからない
1881
256
363
255
75.24%
10.24%
14.52%
問16 脳の一部が壊され、機能の一部が失われても、脳の他の部分がその機能を補うようになる場合がある. -脳に
関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
N=2500
15.96%
8.08%
75.96%
1 正しいと思う
2 誤っていると思う
3 わからない
正しいと思う
誤っていると思う
わからない
1899
202
399
256
75.96%
8.08%
15.96%
問16 書籍やゲームなどによる、いわゆる「脳トレ」によって、脳細胞(神経細胞)の数が増加する -脳に関する以下の
内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
N=2500
33.00%
38.12%
正しいと思う
誤っていると思う
わからない
28.88%
1 正しいと思う
2 誤っていると思う
3 わからない
953
722
825
257
38.12%
28.88%
33.00%
問16 マスメディアでは「脳年齢」という言葉が頻繁に登場するが、「脳年齢」とは医学的に定義された概念であり、測
定する方法も確立されている -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
N=2500
13.44%
45.80%
40.76%
1 正しいと思う
2 誤っていると思う
3 わからない
正しいと思う
誤っていると思う
わからない
336
1019
1145
258
13.44%
40.76%
45.80%
問17脳を計測することにより思考・感情を読む技術が実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくな
いと思いますか。
N=2500
望ましい
11.88%
5.44% 18.00%
25.08%
39.60%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
259
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
136
450
990
627
297
5.44%
18.00%
39.60%
25.08%
11.88%
問18 親による子どもの教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化されるこ
とは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
24.72%
24.60%
1
2
3
4
5
4.08% 14.92%
31.68%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
260
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
102
373
792
615
618
4.08%
14.92%
31.68%
24.60%
24.72%
問18 教師による児童・生徒の教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化さ
れることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
32.28%
3.72% 12.88%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
26.96%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
24.16%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
261
93
322
674
604
807
3.72%
12.88%
26.96%
24.16%
32.28%
問18 企業の人事管理のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化されることは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
2.60%
8.60%
40.84%
23.48%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
24.48%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
262
65
215
587
612
1021
2.60%
8.60%
23.48%
24.48%
40.84%
問18 犯罪捜査のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化されることは望ましい
と思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
9.40%
9.32%
27.44%
1
2
3
4
5
21.24%
32.60%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
263
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
531
815
686
233
235
21.24%
32.60%
27.44%
9.32%
9.40%
問18 法廷での証言の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化さ
れることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
8.04%
8.80%
29.60%
1
2
3
4
5
19.64%
33.92%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
264
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
491
848
740
220
201
19.64%
33.92%
29.60%
8.80%
8.04%
問18 公人の公的発表の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用
化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
9.32%
10.00%
32.28%
1
2
3
4
5
18.96%
29.44%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
265
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
474
736
807
250
233
18.96%
29.44%
32.28%
10.00%
9.32%
問19 子ども(親による子の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強制した
り、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定していただ
きたい計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
9.72% 1.92%
34.36%
54.00%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
266
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
48
859
1350
243
1.92%
34.36%
54.00%
9.72%
問19 児童・生徒(教師による児童・生徒の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々
に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定
していただきたい計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
8.64%
1.16%
26.68%
63.52%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
267
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
29
667
1588
216
1.16%
26.68%
63.52%
8.64%
問19 社員(企業における人事管理のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強制し
たり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定していた
だきたい計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
7.52%
1.36%
25.16%
65.96%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
268
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
34
629
1649
188
1.36%
25.16%
65.96%
7.52%
問19 容疑者など(犯罪捜査のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強制したり、
任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定していただきた
い計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
8.16%
15.00%
39.04%
37.80%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
269
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
976
945
375
204
39.04%
37.80%
15.00%
8.16%
問19 証人など(法廷での証言の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々
に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定
していただきたい計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
8.88%
29.92%
16.60%
44.60%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
270
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
748
1115
415
222
29.92%
44.60%
16.60%
8.88%
問19 政治家など公人(公的発表の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の
人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は
想定していただきたい計測の用途です。
N=2500
強制してもよい
9.44%
35.60%
16.72%
38.24%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
271
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
890
956
418
236
35.60%
38.24%
16.72%
9.44%
問20脳と機械を直接または間接的につなぐ技術が実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと
思いますか。
N=2500
望ましい
15.48%
5.40% 14.96%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
24.64%
39.52%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
272
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
135
374
988
616
387
5.40%
14.96%
39.52%
24.64%
15.48%
問21 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化することは望ましいと
思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
2.28%
2.92%
32.12%
18.00%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
44.68%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
273
803
1117
450
73
57
32.12%
44.68%
18.00%
2.92%
2.28%
問21 手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下
の用途で実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
1.64%
1.72%
13.76%
40.92%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
41.96%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
274
1023
1049
344
43
41
40.92%
41.96%
13.76%
1.72%
1.64%
問21 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化することは望ましい
と思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
10.24%
13.52%
12.88%
23.20%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
40.16%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
275
322
580
1004
338
256
12.88%
23.20%
40.16%
13.52%
10.24%
問21 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化すること
は望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
9.20%
13.84%
10.60%
26.00%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
40.36%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
276
265
650
1009
346
230
10.60%
26.00%
40.36%
13.84%
9.20%
問21 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化するこ
とは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
13.00%
15.88%
16.60%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
19.72%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
34.80%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
277
397
493
870
415
325
15.88%
19.72%
34.80%
16.60%
13.00%
問21 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化する
ことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
11.04%
19.36%
14.04%
22.52%
33.04%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
278
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
484
563
826
351
276
19.36%
22.52%
33.04%
14.04%
11.04%
問22 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えますか。以下の場
合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
15.92%
6.04%
46.72%
31.32%
1
2
3
4
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
279
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
1168
783
151
398
46.72%
31.32%
6.04%
15.92%
問22 手・足に障害のある人が、義手・義足を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許さ
れると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
13.16%
4.60%
29.28%
1
2
3
4
52.96%
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
280
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
1324
732
115
329
52.96%
29.28%
4.60%
13.16%
問22 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えますか。以下の
場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
26.44%
26.04%
1
2
3
4
13.04%
34.48%
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
281
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
326
862
651
661
13.04%
34.48%
26.04%
26.44%
問22 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えます
か。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
27.72%
24.12%
1
2
3
4
13.96%
34.20%
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
282
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
349
855
603
693
13.96%
34.20%
24.12%
27.72%
問22 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えます
か。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
1
2
3
4
23.68%
25.28%
26.16%
24.88%
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
283
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
632
622
654
592
25.28%
24.88%
26.16%
23.68%
問22 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えま
すか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
N=2500
24.28%
24.24%
1
2
3
4
27.84%
23.64%
直接・間接接続ともに許される
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
わからない
284
直接・間接接続とも
に許される
間接接続のみ許さ
れる
直接・間接接続いず
れであれ許されない
わからない
696
591
606
607
27.84%
23.64%
24.24%
24.28%
問23薬によって精神や意識を変える技術が進歩し、実用化が進むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくな
いと思いますか。
N=2500
望ましい
14.72%
3.84% 16.32%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
24.84%
40.28%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
285
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
96
408
1007
621
368
3.84%
16.32%
40.28%
24.84%
14.72%
問24 幸福感を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望ましいと思いま
すか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
35.36%
2.96% 10.76%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
27.00%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
23.92%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
286
74
269
675
598
884
2.96%
10.76%
27.00%
23.92%
35.36%
問24 宗教的超越体験を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望ましい
と思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
0.80%
望ましい
2.40%
16.48%
58.08%
1
2
3
4
5
22.24%
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
287
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
20
60
412
556
1452
0.80%
2.40%
16.48%
22.24%
58.08%
問24 病気の治療のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望ましいと思いま
すか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
6.76%
5.48%
20.52%
24.96%
42.28%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
288
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
513
1057
624
137
169
20.52%
42.28%
24.96%
5.48%
6.76%
問24 社員の労働意欲向上のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望まし
いと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
1.48%
7.92%
40.28%
26.44%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
23.88%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
289
37
198
661
597
1007
1.48%
7.92%
26.44%
23.88%
40.28%
問24 親による子どもの教育のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望まし
いと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
1.36%
6.36%
26.36%
43.52%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
22.40%
1
2
3
4
5
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
290
34
159
659
560
1088
1.36%
6.36%
26.36%
22.40%
43.52%
問24 受刑者の矯正のため(刑務所内) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望
ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
17.84%
17.00%
12.84%
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
23.76%
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
28.56%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
291
425
594
714
321
446
17.00%
23.76%
28.56%
12.84%
17.84%
問24 前科者の再犯防止のため(出所後) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
N=2500
望ましい
16.76%
19.00%
12.28%
24.56%
27.40%
1
2
3
4
5
望ましい
どちらかといえば望ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
292
どちらかといえば望
ましい
どちらともいえない
どちらかといえば望
ましくない
望ましくない
475
614
685
307
419
19.00%
24.56%
27.40%
12.28%
16.76%
問25 患者(病気の治療のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求めた
りすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用途です。
N=2500
強制してもよい
10.12%
4.72%
11.76%
73.40%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
293
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
118
1835
294
253
4.72%
73.40%
11.76%
10.12%
問25 社員(労働意欲向上のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求め
たりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用途です。
N=2500
強制してもよい
10.48% 0.84%
24.44%
64.24%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
294
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
21
611
1606
262
0.84%
24.44%
64.24%
10.48%
問25 子ども(親による教育) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求めたりす
ることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用途です。
N=2500
強制してもよい
12.36% 0.92%
19.76%
66.96%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
295
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
23
494
1674
309
0.92%
19.76%
66.96%
12.36%
問25 受刑者(刑務所内での矯正) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求め
たりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用途です。
N=2500
強制してもよい
15.00%
27.52%
23.92%
33.56%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
296
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
688
839
598
375
27.52%
33.56%
23.92%
15.00%
問25 前科者(出所後の再犯防止) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求め
たりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用途です。
N=2500
強制してもよい
15.36%
28.96%
22.08%
33.60%
1
2
3
4
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
297
強制ではなく、任意
であればよい
強制、任意いずれで
あれ許されない
わからない
724
840
552
384
28.96%
33.60%
22.08%
15.36%
問26 脳科学の発展は人々を幸福にする -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反対で
すか。
N=2500
賛成
1.72%
4.84%
44.04%
1
2
3
4
5
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
11.44%
37.96%
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
どちらかといえば反
対
反対
286
949
1101
121
43
298
11.44%
37.96%
44.04%
4.84%
1.72%
問26 脳科学の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反対
ですか。
N=2500
賛成
2.12%
5.92%
9.12%
28.84%
54.00%
1
2
3
4
5
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
どちらかといえば反
対
反対
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
228
721
1350
148
53
299
9.12%
28.84%
54.00%
5.92%
2.12%
問26 脳科学の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、
それとも反対ですか。
N=2500
賛成
3.28%
7.76%
25.80%
どちらかといえば賛
成
どちらともいえない
33.16%
30.00%
1
2
3
4
5
賛成
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば反対
反対
どちらかといえば反
対
反対
645
750
829
194
82
300
25.80%
30.00%
33.16%
7.76%
3.28%
問27 世の中の動きや事件をいち早く知るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用したいで
すか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
N=2500
0%
10%
20%
30%
40%
50%
50.88%
テレビ
本
ラジオ
0.56%
1.40%
インターネット
新聞
41.72%
5.04%
雑誌
0.00%
その他
0.40%
1
2
3
4
5
6
7
60%
テレビ
本
ラジオ
インターネット
新聞
雑誌
その他
1272
14
35
1043
126
0
10
301
50.88%
0.56%
1.40%
41.72%
5.04%
0.00%
0.40%
問27 世の中の動きや事件について、信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディ
アを利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
N=2500
0%
10%
20%
30%
29.32%
テレビ
本
ラジオ
40%
3.24%
0.92%
インターネット
25.76%
新聞
雑誌
その他
1
2
3
4
5
6
7
38.04%
0.52%
2.20%
テレビ
本
ラジオ
インターネット
新聞
雑誌
その他
733
81
23
644
951
13
55
302
29.32%
3.24%
0.92%
25.76%
38.04%
0.52%
2.20%
問27 医療について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用したいで
すか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
N=2500
0%
10%
30%
50%
17.72%
本
0.32%
インターネット
43.20%
新聞
13.48%
雑誌
6.12%
その他
5.88%
1
2
3
4
5
6
7
40%
13.28%
テレビ
ラジオ
20%
テレビ
本
ラジオ
インターネット
新聞
雑誌
その他
332
443
8
1080
337
153
147
303
13.28%
17.72%
0.32%
43.20%
13.48%
6.12%
5.88%
問27 科学技術について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用した
いですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
N=2500
0%
10%
20%
18.16%
本
0.28%
インターネット
40.04%
新聞
13.92%
雑誌
その他
1
2
3
4
5
6
7
40%
13.60%
テレビ
ラジオ
30%
9.68%
4.32%
テレビ
本
ラジオ
インターネット
新聞
雑誌
その他
340
454
7
1001
348
242
108
304
13.60%
18.16%
0.28%
40.04%
13.92%
9.68%
4.32%
50%
問28 病気になったり、持病が悪化したりしないか不安である -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思わ
れますか。
N=2500
11.36%
3.92%
26.32%
12.92%
45.48%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
658
1137
323
284
98
305
26.32%
45.48%
12.92%
11.36%
3.92%
問28 自分やパートナー(夫・妻など)の給料が低下したり、失業したりしないか不安である -あなたは、以下のぞれぞ
れについて、どのように思われますか。
N=2500
7.48%
13.24%
24.08%
18.96%
36.24%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
602
906
474
331
187
306
24.08%
36.24%
18.96%
13.24%
7.48%
問28 「負け組」にならないためには、死にものぐるいで努力しなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、
どのように思われますか。
N=2500
12.68%
7.40%
19.96%
26.56%
33.40%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
185
499
835
664
317
307
7.40%
19.96%
33.40%
26.56%
12.68%
問28 いわゆる「負け組」は、幸せになれない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
N=2500
26.04%
3.76% 10.36%
26.96%
32.88%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
94
259
674
822
651
308
3.76%
10.36%
26.96%
32.88%
26.04%
問28 以前からなされてきたやり方を守ることが、最上の結果を生む -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのよう
に思われますか。
N=2500
1.36%
18.72%
8.08%
31.20%
1
2
3
4
5
40.64%
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
34
202
1016
780
468
309
1.36%
8.08%
40.64%
31.20%
18.72%
問28 子どもに教えるべきもっとも大切なことは、両親にたいする絶対服従である -あなたは、以下のぞれぞれについ
て、どのように思われますか。
N=2500
1.08%
4.20%
18.92%
43.76%
32.04%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
27
105
473
801
1094
310
1.08%
4.20%
18.92%
32.04%
43.76%
問28 権威ある人々には、つねに敬意を払わなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思
われますか。
N=2500
1.48%
8.76%
34.04%
26.04%
29.68%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
37
219
651
742
851
311
1.48%
8.76%
26.04%
29.68%
34.04%
問28 この複雑な世の中で何をなすべきか知る唯一の方法は、指導者や専門家に頼る事である -あなたは、以下の
ぞれぞれについて、どのように思われますか。
N=2500
1.00%
5.64%
34.56%
25.52%
33.28%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
25
141
638
832
864
312
1.00%
5.64%
25.52%
33.28%
34.56%
問28 自分の「本当の気持ち」は大切にしなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われ
ますか。
N=2500
0.68%
1.80%
11.72%
43.84%
41.96%
1
2
3
4
5
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
1096
1049
293
45
17
313
43.84%
41.96%
11.72%
1.80%
0.68%
問28 「自分らしく」生きることは大切である -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
N=2500
0.56%
1.52%
10.04%
37.44%
1
2
3
4
5
50.44%
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
そう思う
ややそう思う
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
1261
936
251
38
14
314
50.44%
37.44%
10.04%
1.52%
0.56%
問29 私には人より優れたところがある -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれについ
てお答えください。
N=2500
そう思う
11.44%
34.72%
1
2
3
4
12.24%
41.60%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
315
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
306
1040
868
286
12.24%
41.60%
34.72%
11.44%
問29 私はいわゆる「勝ち組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれについて
お答えください。
N=2500
そう思う
31.80%
2.16%
21.60%
44.44%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
316
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
54
540
1111
795
2.16%
21.60%
44.44%
31.80%
問29 私はいわゆる「負け組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれについて
お答えください。
N=2500
そう思う
26.96%
5.64%
19.12%
48.28%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
317
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
141
478
1207
674
5.64%
19.12%
48.28%
26.96%
問29 私は「本当の気持ち」を大切にして生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれ
ぞれについてお答えください。
N=2500
そう思う
21.24%
4.68%
17.88%
56.20%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
318
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
447
1405
531
117
17.88%
56.20%
21.24%
4.68%
問29 私は「私らしく」生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれについてお答
えください。
N=2500
そう思う
18.28%
5.16%
21.52%
55.04%
1
2
3
4
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
319
どちらかといえばそ
う思う
どちらかといえばそ
う思わない
そう思わない
538
1376
457
129
21.52%
55.04%
18.28%
5.16%
問30 見ず知らずの他人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしても
かまわないと思いますか。
N=2500
0.00%
2.24%
25.52%
18.36%
53.88%
1
2
3
4
5
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
320
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
56
459
1347
638
0
2.24%
18.36%
53.88%
25.52%
0.00%
問30 友人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわないと
思いますか。
N=2500
0.52%
12.44%
27.00%
1
2
3
4
5
6.80%
53.24%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
321
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
170
1331
675
311
13
6.80%
53.24%
27.00%
12.44%
0.52%
問30 家族 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわないと
思いますか。
N=2500
14.28%
9.60%
0.36%
49.40%
26.36%
1
2
3
4
5
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
322
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
1235
659
240
357
9
49.40%
26.36%
9.60%
14.28%
0.36%
問30 親戚 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわないと
思いますか。
N=2500
0.20%
15.24%
27.88%
1
2
3
4
5
7.68%
49.00%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
323
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
192
1225
697
381
5
7.68%
49.00%
27.88%
15.24%
0.20%
問30 暮らしている地域 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしても
かまわないと思いますか。
N=2500
0.00%
16.32%
1.72%
31.56%
50.40%
1
2
3
4
5
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
324
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
43
789
1260
408
0
1.72%
31.56%
50.40%
16.32%
0.00%
問30 勤めている会社 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもか
まわないと思いますか。
N=2500
23.04%
19.24%
1
2
3
4
5
2.36%
20.76%
34.60%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
325
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
59
519
865
481
576
2.36%
20.76%
34.60%
19.24%
23.04%
問30 国 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわないと思
いますか。
N=2500
0.00%
2.76%
28.88%
21.12%
47.24%
1
2
3
4
5
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない
あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
326
犠牲にしてもかまわ
ない
多少なら犠牲にして
もかまわない
あまり犠牲にしたく
ない
まったく犠牲にしたく
ない
いない、あるいは、
勤めていない
69
528
1181
722
0
2.76%
21.12%
47.24%
28.88%
0.00%
問31 見ず知らずの他人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思い
ますか。
N=2500
0.00%
頼りになる
0.56%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
8.00%
56.04%
35.40%
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
327
14
200
885
1401
0
0.56%
8.00%
35.40%
56.04%
0.00%
問31 友人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
N=2500
頼りになる
12.00% 0.60% 10.32%
27.20%
49.88%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
328
258
1247
680
300
15
10.32%
49.88%
27.20%
12.00%
0.60%
問31 家族 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
N=2500
頼りになる
0.32%
3.04%
7.28%
35.00%
54.36%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
329
1359
875
182
76
8
54.36%
35.00%
7.28%
3.04%
0.32%
問31 親戚 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
N=2500
頼りになる
12.44% 0.20% 13.00%
26.40%
47.96%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
330
325
1199
660
311
5
13.00%
47.96%
26.40%
12.44%
0.20%
問31 暮らしている地域 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いま
すか。
N=2500
頼りになる
0.00%
1.68%
27.96%
24.24%
46.12%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
331
42
606
1153
699
0
1.68%
24.24%
46.12%
27.96%
0.00%
問31 勤めている会社 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いま
すか。
N=2500
頼りになる
24.48%
25.48%
2.00%
18.60%
29.44%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
332
50
465
736
637
612
2.00%
18.60%
29.44%
25.48%
24.48%
問31 国 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
N=2500
頼りになる
0.00%
0.68%
11.12%
49.56%
38.64%
どちらかといえば頼
りになる
どちらかといえば頼
りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、
勤めていない
1
2
3
4
5
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
どちらかといえば頼りにならない
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
333
17
278
966
1239
0
0.68%
11.12%
38.64%
49.56%
0.00%
問32あなたは、お子さんに、どの学校まで出て欲しいと思いますか。お子さんが既に学校教育を終えておられる方は、
お子さんが学校に行っていたときにどう思っていたのかお答えください。
N=2500
0%
中学校まで
20%
60%
11.44%
6.52%
69.52%
大学まで
大学院まで
その他
1
2
3
4
5
6
80%
0.52%
高校まで
短大・高専まで
40%
8.88%
3.12%
中学校まで
高校まで
短大・高専まで
大学まで
大学院まで
その他
13
286
163
1738
222
78
334
0.52%
11.44%
6.52%
69.52%
8.88%
3.12%
問33あなたはなにか宗教を信じていますか。
N=2500
14.92%
はい
いいえ
85.08%
1 はい
2 いいえ
373
2127
335
14.92%
85.08%
問34 神仏を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりませんか。
N=2500
あてはまる
31.80%
11.08%
29.00%
28.12%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
336
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
277
725
703
795
11.08%
29.00%
28.12%
31.80%
問34 あの世(死後の世界)の存在を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあて
はまりませんか。
N=2500
あてはまる
10.68%
33.60%
26.72%
29.00%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
337
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
267
668
725
840
10.68%
26.72%
29.00%
33.60%
問34 神や霊の存在を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりま
せんか。
N=2500
あてはまる
9.44%
43.28%
20.24%
27.04%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
338
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
236
506
676
1082
9.44%
20.24%
27.04%
43.28%
問34 自然との一体感を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまり
ませんか。
N=2500
あてはまる
34.12%
7.96%
25.28%
32.64%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
339
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
199
632
816
853
7.96%
25.28%
32.64%
34.12%
問34 瞑想や修行などをしてみたい -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりません
か。
N=2500
あてはまる
5.44%
44.32%
21.24%
29.00%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
340
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
136
531
725
1108
5.44%
21.24%
29.00%
44.32%
問34 宗教にはかかわりたくない -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりませんか。
N=2500
あてはまる
12.12%
15.52%
44.64%
27.72%
1
2
3
4
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
341
どちらかといえば、
あてはまる
どちらかといえば、
あてはまらない
あてはまらない
1116
693
388
303
44.64%
27.72%
15.52%
12.12%
問35あなたの配偶者(妻、夫)は、どのような仕事をしておられますか。
N=2500
0%
公務員・非営利団体職員
会社・団体の経営者・役員
その他給与所得者(管理職)
その他給与所得者(事務職)
その他給与所得者(技術・専門職)
その他給与所得者(販売・サービス)
その他給与所得者(その他)
教職員
医師・医療技術士・医療関係者
自営業
農林漁業
弁護士・公認会計士・税理士
その他自由業(フリーター含む)
専業主婦(主夫)
大学・大学院生・短大・専門学校生
高校生・予備校生
その他
配偶者はいない
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
3.44%
2.64%
4.44%
6.56%
7.72%
5.64%
4.88%
1.56%
1.52%
4.32%
0.44%
0.08%
2.08%
15.16%
0.12%
0.00%
6.44%
32.96%
公務員・非営利団体職員
会社・団体の経営者・役員
その他給与所得者(管理職)
その他給与所得者(事務職)
その他給与所得者(技術・専門職)
その他給与所得者(販売・サービス)
その他給与所得者(その他)
教職員
医師・医療技術士・医療関係者
自営業
農林漁業
弁護士・公認会計士・税理士
その他自由業(フリーター含む)
専業主婦(主夫)
大学・大学院生・短大・専門学校生
高校生・予備校生
その他
配偶者はいない
342
86
66
111
164
193
141
122
39
38
108
11
2
52
379
3
0
161
824
3.44%
2.64%
4.44%
6.56%
7.72%
5.64%
4.88%
1.56%
1.52%
4.32%
0.44%
0.08%
2.08%
15.16%
0.12%
0.00%
6.44%
32.96%
問36あなたの配偶者(妻、夫)の勤め先の会社・団体全体の規模は、どのくらいですか。
N=2500
0%
5%
10%
5000人以上10000人未満
10000人以上
4.96%
2.16%
2.96%
3.60%
1.60%
4.12%
20.00%
どこにも勤めていない
わからない
5.48%
32.96%
配偶者はいない
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
35%
4.48%
100人以上300人未満
1000人以上5000人未満
30%
3.28%
50人以上100人未満
500人以上1000人未満
25%
4.92%
10人以上30人未満
300人以上500人未満
20%
9.48%
10人未満
30人以上50人未満
15%
10人未満
10人以上30人未満
30人以上50人未満
50人以上100人未満
100人以上300人未満
300人以上500人未満
500人以上1000人未満
1000人以上5000人未満
5000人以上10000人未満
10000人以上
どこにも勤めていない
わからない
配偶者はいない
343
237
123
82
112
124
54
74
90
40
103
500
137
824
9.48%
4.92%
3.28%
4.48%
4.96%
2.16%
2.96%
3.60%
1.60%
4.12%
20.00%
5.48%
32.96%
問37あなたの配偶者(夫、妻)が最後に卒業された学校を以下から選んでください。(現在も在学中の場合は、その学
校を選んでください。また専門学校は除いてお答えください。)
N=2500
0%
中学校(旧制の尋常小学校、高等
小学校を含む)
5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%
2.64%
26.20%
短期大学(旧制高等学校、新制高
等専門学校を含む)
12.28%
23.04%
大学院
2.88%
32.96%
1 中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含
2
む)
66
2.64%
655
26.20%
3 短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
307
12.28%
4 大学(旧制高等専門学校)
5 大学院
6 配偶者はいない
576
72
824
23.04%
2.88%
32.96%
344
問38あなたが、最後に卒業された学校はどれですか。(現在も在学中の方は、その学校を選んでください。また、専門
学校は除いてお答えください。)
N=2500
中学校(旧制の尋
常小学校、高等小
学校を含む)
5.16%
2.36%
35.40%
40.44%
16.64%
高等学校(旧制の
中学校、高等女学
校、実業学校を含
む)
短期大学(旧制高
等学校、新制高等
専門学校を含む)
大学(旧制高等専
1 中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含
2
む)
3 短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
4 大学(旧制高等専門学校)
5 大学院
345
59
2.36%
885
35.40%
416
16.64%
1011
129
40.44%
5.16%
問39かりに現在の日本の社会全体を、以下の5つの層にわけるとすれば、あなた自身は、どれに入ると思いますか。
N=2500
8.52% 0.92%
13.12%
35.60%
41.84%
1
2
3
4
5
上
中の上
中の中
中の下
下
23
328
1046
890
213
346
上
中の上
中の中
中の下
下
0.92%
13.12%
41.84%
35.60%
8.52%
資料 11.2 性別クロス集計(2007.12)
2007年12月
347
◆調査について 調査方法: インターネットアンケート
調査時期: 2007年11月~12月
対象属性: 全国20歳~69歳男女
(年齢、性別、在住都道府県に関し、
国民属性分布に近似させて回収)
回収有効回答数: 2500
348
属性4性別
×
問1あなたは日ごろ、どの程度健康に気をつけていますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
70%
53.88%
52.20%
30.82%
55.56%
33.65%
ときどきは気をつけている
全体
男性
40%
32.24%
いつも気をつけている
全体
30%
あまり気をつけていない
90%
100%
13.08% 0.80%
15.61%
1.36%
10.55%0.24%
まったく気をつけていない
ときどきは気をつけてい
まったく気をつけていな
あまり気をつけていない
る
い
806
1347
327
20
32.24%
53.88%
13.08%
0.80%
385
652
195
17
30.82%
52.20%
15.61%
1.36%
421
695
132
3
33.65%
55.56%
10.55%
0.24%
いつも気をつけている
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
349
属性4性別
×
問2あなたは、ふだん健康のために心がけていることがありますか。次の中からあてはまるものすべてを選んでください。※複数回答
65.39%
ストレスをためない
休養を十分にとる
タバコをひかえる
食べすぎない
なるべくファストフードやコンビニ弁当を食べない
野菜や肉などの生鮮食品を買うとき、生産者のわかるものを選ぶ
薬はできるだけ飲まない
メディアで(よいと)推奨されたものを買う
化学物質の含まれない無添加や天然素材のものを選ぶ
その他
全体
全体
男性
女性
ストレスをためない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
1173
46.92%
584
46.76%
589
47.08%
睡眠を十分にとる
1564
62.56%
746
59.73%
818
65.39%
休養を十分にとる
1116
44.64%
549
43.96%
567
45.32%
女性
男性
全体
62.56%
61.31%
70
59.73%
60 46.92%
50.36%
47.08%45.32%
46.76%43.96%
46.04%
44.64%
44.52% 41.36%
43.01% 42.77%
40.93%
50
39.95% 39.39%
37.89%
35.89%
33.84%
32.85% 30.62%
32.40%
31.36%
31.79%
40
30.26%
25.66%
25.50%
25.12% 24.32%
24.56%
24.82%
23.86%
22.02%
21.08%
30
18.86%22.22%
18.04% 20.24% 17.28%
18.25%
18.01%
17.37%16.49%
14.07%
13.99%
20
10.44%
9.05%
9.19%
7.24%
6.89%
5.28%
2.24%
2.56%
1.92%
10
0
適度な運動をする
1113
44.52%
575
46.04%
538
43.01%
タバコをひかえる
451
18.04%
275
22.02%
176
14.07%
お酒をひかえる
野菜や肉などの生鮮
メディア(新聞・テレ
病気をうつされる場 化学物質の含まれな
なるべくファストフード
環境を汚染しないよう
食事の栄養バランス 食品を買うとき、生産 無農薬やオーガニック 薬はできるだけ飲まな ビ・インターネット等) メディアで(よいと)推
所・人・物に近づかな い無添加や天然素材
その他
なるべく外食をしない やコンビニ弁当を食
エコを心がける
に気をつける
者のわかるものを選 食品を選ぶ
い
で(よくないと)警告さ 奨されたものを買う
い
のものを選ぶ
べない
ぶ
れたものを買わない
食べすぎない
614
24.56%
378
30.26%
236
18.86%
睡眠を十分にとる
適度な運動をする
お酒をひかえる
なるべく外食をしない
食事の栄養バランスに気をつける
無農薬やオーガニック食品を選ぶ
メディア(新聞・テレビ・インターネット等)で(よくないと)警告されたものを買わない
病気をうつされる場所・人・物に近づかない
環境を汚染しないようエコを心がける
1034
41.36%
499
39.95%
535
42.77%
506
20.24%
228
18.25%
278
22.22%
784
31.36%
310
24.82%
474
37.89%
350
1259
50.36%
492
39.39%
767
61.31%
432
17.28%
113
9.05%
319
25.50%
261
10.44%
86
6.89%
175
13.99%
846
33.84%
397
31.79%
449
35.89%
628
25.12%
217
17.37%
411
32.85%
181
7.24%
66
5.28%
115
9.19%
527
21.08%
206
16.49%
321
25.66%
608
24.32%
225
18.01%
383
30.62%
810
32.40%
298
23.86%
512
40.93%
56
2.24%
32
2.56%
24
1.92%
属性4性別
×
問3臨床心理学などの心理学について、どの程度知りたいですか。
0%
全体
10%
20%
60%
70%
どちらかというと知りたくない
非常に知りたい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
351
2.36%
3.12%
まったく知りたくない
どちらかというと知りたく
まったく知りたくない
ない
1533
320
59
61.32%
12.80%
2.36%
773
207
39
61.89%
16.57%
3.12%
760
113
20
60.75%
9.03%
1.60%
どちらかというと知りたい
588
23.52%
230
18.41%
358
28.62%
100%
9.03% 1.60%
60.75%
全体
90%
16.57%
61.89%
どちらかというと知りたい
80%
12.80%
61.32%
28.62%
非常に知りたい
女性
50%
18.41%
女性
男性
40%
23.52%
男性
全体
30%
属性4性別
×
問4 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、それ
とも利用したくないですか。
0%
10%
20%
全体 4.28%
18.72%
男性 4.48%
19.46%
女性 4.08%
女性
50%
60%
70%
80%
25.18%
52.76%
どちらかといえば利用したくない
まったく利用したくない
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
31.71%
44.36%
どちらかといえば利用したい
90%
28.44%
48.56%
全体
男性
40%
17.99%
とても利用したい
全体
30%
107
4.28%
56
4.48%
51
4.08%
352
468
18.72%
243
19.46%
225
17.99%
1214
48.56%
554
44.36%
660
52.76%
711
28.44%
396
31.71%
315
25.18%
属性4性別
×
問4 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、そ
れとも利用したくないですか。
0%
10%
20%
全体 6.28%
36.48%
男性 6.16%
36.83%
女性 6.39%
36.13%
とても利用したい
男性
女性
40%
どちらかといえば利用したい
全体
全体
30%
50%
70%
80%
90%
100%
19.88%
37.36%
21.14%
35.87%
18.63%
38.85%
どちらかといえば利用したくない
まったく利用したくない
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
157
6.28%
77
6.16%
80
6.39%
353
912
36.48%
460
36.83%
452
36.13%
934
37.36%
448
35.87%
486
38.85%
497
19.88%
264
21.14%
233
18.63%
属性4性別
×
問4 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、
以下のものを利用したいですか、それとも利用したくないですか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
30%
全体
どちらかといえば利用したい
男性
女性
80%
90%
100%
10.72%
13.53%
34.69%
どちらかといえば利用したくない
7.91%
まったく利用したくない
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
39.31%
45.72%
全体
60%
37.00%
39.47%
11.67%
とても利用したい
50%
42.60%
9.68%
7.69%
40%
242
9.68%
96
7.69%
146
11.67%
354
1065
42.60%
493
39.47%
572
45.72%
925
37%
491
39.31%
434
34.69%
268
10.72%
169
13.53%
99
7.91%
属性4性別
×
問5 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度抵
抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
70%
80%
41.23%
46.84%
31.41%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
44.04%
33.31%
全体
男性
40%
32.36%
非常に抵抗がある
全体
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
18.84%
20.66%
17.03%
100%
4.76%
4.80%
4.72%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
809
1101
471
119
32.36%
44.04%
18.84%
4.76%
416
515
258
60
33.31%
41.23%
20.66%
4.80%
393
586
213
59
31.41%
46.84%
17.03%
4.72%
355
属性4性別
×
問5 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度
抵抗がありますか。
0%
10%
全体
13.36%
男性
12.57%
女性
20%
男性
女性
50%
80%
36.61%
どちらかというと抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
39.31%
36.53%
非常に抵抗がある
60%
37.96%
34.75%
全体
全体
40%
35.64%
14.15%
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
13.04%
13.37%
12.71%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
334
891
949
326
13.36%
35.64%
37.96%
13.04%
157
434
491
167
12.57%
34.75%
39.31%
13.37%
177
457
458
159
14.15%
36.53%
36.61%
12.71%
356
属性4性別
×
問5 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために
以下のものを用いることに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
全体
7.96%
男性
8.97%
女性
20%
男性
女性
50%
80%
39.65%
どちらかというと抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
38.27%
40.53%
非常に抵抗がある
60%
38.96%
43.23%
全体
全体
40%
41.88%
6.95%
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
11.20%
9.53%
12.87%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
199
1047
974
280
7.96%
41.88%
38.96%
11.20%
112
540
478
119
8.97%
43.23%
38.27%
9.53%
87
507
496
161
6.95%
40.53%
39.65%
12.87%
357
属性4性別
×
問6 病気によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程
度抵抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
男性
女性
50%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
42.85%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
70%
38.59%
36.85%
9.59%
60%
40.72%
37.87%
13.77%
全体
全体
40%
37.36%
11.68%
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
10.24%
9.77%
10.71%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
292
934
1018
256
11.68%
37.36%
40.72%
10.24%
172
473
482
122
13.77%
37.87%
38.59%
9.77%
120
461
536
134
9.59%
36.85%
42.85%
10.71%
358
属性4性別
×
問6 病気による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗が
ありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
男性
女性
50%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
45.64%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
70%
39.39%
35.01%
8.95%
60%
42.52%
37.39%
13.13%
全体
全体
40%
36.20%
11.04%
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
10.24%
10.09%
10.39%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
276
905
1063
256
11.04%
36.20%
42.52%
10.24%
164
467
492
126
13.13%
37.39%
39.39%
10.09%
112
438
571
130
8.95%
35.01%
45.64%
10.39%
359
属性4性別
×
問6 老化によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程
度抵抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
男性
女性
50%
36.67%
12.97%
38.61%
10.15%
どちらかというと抵抗がある
全体
全体
40%
37.64%
11.56%
非常に抵抗がある
30%
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
90%
100%
40.60%
10.20%
40.03%
10.33%
41.17%
10.07%
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
289
941
1015
255
11.56%
37.64%
40.60%
10.20%
162
458
500
129
12.97%
36.67%
40.03%
10.33%
127
483
515
126
10.15%
38.61%
41.17%
10.07%
360
属性4性別
×
問6 老化による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗が
ありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
11.40%
12.89%
男性
女性
50%
70%
80%
90%
100%
41.52%
9.20%
35.71%
41.87%
9.53%
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
37.88%
41.17%
どちらかというと抵抗がある
全体
全体
40%
40.05%
9.91%
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
8.87%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
285
947
1038
230
11.40%
37.88%
41.52%
9.20%
161
446
523
119
12.89%
35.71%
41.87%
9.53%
124
501
515
111
9.91%
40.05%
41.17%
8.87%
361
属性4性別
×
問6 老化によって低下した身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を回復させるために薬を使う -あ
なたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
男性
女性
50%
36.59%
13.05%
38.93%
10.71%
どちらかというと抵抗がある
全体
全体
40%
37.76%
11.88%
非常に抵抗がある
30%
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
90%
100%
40.64%
9.72%
40.83%
9.53%
40.45%
9.91%
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
297
944
1016
243
11.88%
37.76%
40.64%
9.72%
163
457
510
119
13.05%
36.59%
40.83%
9.53%
134
487
506
124
10.71%
38.93%
40.45%
9.91%
362
属性4性別
×
問6 老化による身体能力の低下(筋力・持久力・反射神経など)を防ぐために薬を使う -あなたは、以
下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
男性
女性
50%
37.07%
12.81%
40.29%
10.15%
どちらかというと抵抗がある
全体
全体
40%
38.68%
11.48%
非常に抵抗がある
30%
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
90%
100%
41.08%
8.76%
41.23%
8.89%
40.93%
8.63%
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
287
967
1027
219
11.48%
38.68%
41.08%
8.76%
160
463
515
111
12.81%
37.07%
41.23%
8.89%
127
504
512
108
10.15%
40.29%
40.93%
8.63%
363
属性4性別
×
問7 身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
100%
27.70%
35.17%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
90%
31.44%
24.46%
どちらかといえばそう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
23.54%
25.02%
15.35%
70%
24.00%
29.70%
19.06%
全体
男性
40%
27.36%
17.20%
そう思う
全体
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
684
600
27.36%
24%
371
294
29.70%
23.54%
313
306
25.02%
24.46%
どちらかといえばそう思う
430
17.20%
238
19.06%
192
15.35%
364
786
31.44%
346
27.70%
440
35.17%
属性4性別
×
問7 身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのよ
うに思われますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
9.61%
52.84%
32.27%
13.43%
53.40%
26.70%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
11.52%
53.12%
全体
男性
40%
29.48%
そう思う
全体
30%
100%
5.88%
5.28%
6.47%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1328
288
53.12%
11.52%
660
120
52.84%
9.61%
668
168
53.40%
13.43%
どちらかといえばそう思う
737
29.48%
403
32.27%
334
26.70%
365
147
5.88%
66
5.28%
81
6.47%
属性4性別
×
問7 記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
全体
20%
80%
90%
100%
8.20% 2.72%
8.17% 2.96%
44.20%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
47.00%
どちらかといえばそう思う
全体
60%
45.60%
45.08%
そう思う
女性
50%
41.87%
女性
男性
40%
43.48%
男性
全体
30%
8.23% 2.48%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1140
205
45.60%
8.20%
587
102
47%
8.17%
553
103
44.20%
8.23%
どちらかといえばそう思う
1087
43.48%
523
41.87%
564
45.08%
366
68
2.72%
37
2.96%
31
2.48%
属性4性別
×
問7 性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
全体
13.24%
男性
12.09%
女性
20%
男性
女性
50%
70%
80%
15.27%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
100%
18.09%
38.37%
どちらかといえばそう思う
90%
16.68%
38.91%
31.97%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
38.64%
30.90%
全体
全体
40%
31.44%
14.39%
そう思う
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
786
966
31.44%
38.64%
386
486
30.90%
38.91%
400
480
31.97%
38.37%
どちらかといえばそう思う
331
13.24%
151
12.09%
180
14.39%
367
417
16.68%
226
18.09%
191
15.27%
属性4性別
×
問8 薬で身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
30%
全体 4.56% 9.76%
男性 6.08%
そう思う
男性
女性
60%
70%
90%
100%
52.04%
66.91%
23.58%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
59.48%
28.82%
全体
全体
50%
26.20%
13.05%
女性 3.04%6.47%
40%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
244
655
9.76%
26.20%
163
360
13.05%
28.82%
81
295
6.47%
23.58%
どちらかといえばそう思う
114
4.56%
76
6.08%
38
3.04%
368
1487
59.48%
650
52.04%
837
66.91%
属性4性別
×
問8 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、ど
のように思われますか。
0%
10%
全体 5.00%
男性
女性
50%
70%
80%
90%
100%
37.15%
32.75%
50.04%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
43.60%
34.29%
13.27%
全体
男性
40%
33.52%
22.50%
そう思う
全体
30%
17.88%
7.61%
女性 2.40%
20%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
447
838
17.88%
33.52%
281
409
22.50%
32.75%
166
429
13.27%
34.29%
どちらかといえばそう思う
125
5%
95
7.61%
30
2.40%
369
1090
43.60%
464
37.15%
626
50.04%
属性4性別
×
問8 薬で記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
全体
10%
20%
どちらかといえばそう思う
全体
男性
女性
70%
80%
90%
100%
37.60%
31.95%
43.25%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
31.39%
31.97%
19.58%
そう思う
全体
50%
26.74%
9.93%
女性 5.20%
40%
31.68%
23.16%
7.56%
男性
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
579
792
23.16%
31.68%
334
392
26.74%
31.39%
245
400
19.58%
31.97%
どちらかといえばそう思う
189
7.56%
124
9.93%
65
5.20%
370
940
37.60%
399
31.95%
541
43.25%
属性4性別
×
問8 薬で性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体 2.96% 8.88%
30%
そう思う
男性
女性
70%
80%
90%
100%
54.76%
65.87%
24.38%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
60.32%
31.31%
全体
全体
50%
27.84%
男性 3.36% 10.57%
女性 2.56% 7.19%
40%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
222
696
8.88%
27.84%
132
391
10.57%
31.31%
90
305
7.19%
24.38%
どちらかといえばそう思う
74
2.96%
42
3.36%
32
2.56%
371
1508
60.32%
684
54.76%
824
65.87%
属性4性別
×
問9 薬で身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
全体
男性
20%
男性
女性
50%
80%
90%
11.92%
14.01%
33.41%
どちらかというと抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
37.07%
53.48%
非常に抵抗がある
60%
35.24%
43.23%
全体
全体
40%
48.36%
女性
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
100%
4.48%
5.68%
9.83% 3.28%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1209
881
298
112
48.36%
35.24%
11.92%
4.48%
540
463
175
71
43.23%
37.07%
14.01%
5.68%
669
418
123
41
53.48%
33.41%
9.83%
3.28%
372
属性4性別
×
問9 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度
抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
男性
70%
80%
非常に抵抗がある
90%
17.44%
41.57%
どちらかというと抵抗がない
100%
4.52%
6.24%
20.26%
40.35%
どちらかというと抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
40.96%
41.01%
全体
女性
50%
33.15%
非常に抵抗がある
男性
40%
37.08%
女性
全体
30%
14.63%
2.80%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
927
1024
436
113
37.08%
40.96%
17.44%
4.52%
414
504
253
78
33.15%
40.35%
20.26%
6.24%
513
520
183
35
41.01%
41.57%
14.63%
2.80%
373
属性4性別
×
問9 薬で記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
80%
21.12%
41.33%
35.25%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
90%
23.30%
38.99%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
40.16%
29.86%
全体
男性
40%
32.56%
非常に抵抗がある
全体
30%
どちらかというと抵抗がない
18.94%
100%
6.16%
7.85%
4.48%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
814
1004
528
154
32.56%
40.16%
21.12%
6.16%
373
487
291
98
29.86%
38.99%
23.30%
7.85%
441
517
237
56
35.25%
41.33%
18.94%
4.48%
374
属性4性別
×
問9 薬で性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
80%
90%
100%
7.88% 3.24%
9.21% 4.08%
33.71%
30.22%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
60%
31.96%
60.83%
全体
男性
50%
53.00%
女性
全体
40%
56.92%
男性
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
6.55%2.40%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1423
799
197
81
56.92%
31.96%
7.88%
3.24%
662
421
115
51
53%
33.71%
9.21%
4.08%
761
378
82
30
60.83%
30.22%
6.55%
2.40%
375
属性4性別
×
問10 子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
38.35%
17.77%
35.09%
21.26%
どちらかといえばそう思う
全体
男性
40%
36.72%
19.52%
そう思う
全体
30%
70%
80%
90%
20.88%
22.88%
21.38%
22.50%
20.38%
23.26%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
100%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
918
522
36.72%
20.88%
479
267
38.35%
21.38%
439
255
35.09%
20.38%
どちらかといえばそう思う
488
19.52%
222
17.77%
266
21.26%
376
572
22.88%
281
22.50%
291
23.26%
属性4性別
×
問10 子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについ
て、どのように思われますか。
0%
10%
全体
26.04%
男性
25.62%
女性
26.46%
そう思う
20%
男性
女性
40%
50%
47.28%
46.36%
60%
70%
80%
12.28%
どちらかといえばそう思う
11.59%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
100%
14.40%
15.05%
12.97%
48.20%
全体
全体
30%
13.75%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1182
307
47.28%
12.28%
579
162
46.36%
12.97%
603
145
48.20%
11.59%
どちらかといえばそう思う
651
26.04%
320
25.62%
331
26.46%
377
360
14.40%
188
15.05%
172
13.75%
属性4性別
×
問10 子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体
30.56%
男性
29.38%
女性
女性
50%
60%
70%
80%
10.84%
45.64%
11.61%
45.64%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
10.07%
45.64%
どちらかといえばそう思う
全体
男性
40%
31.73%
そう思う
全体
30%
90%
100%
12.96%
13.37%
12.55%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1141
271
45.64%
10.84%
570
145
45.64%
11.61%
571
126
45.64%
10.07%
どちらかといえばそう思う
764
30.56%
367
29.38%
397
31.73%
378
324
12.96%
167
13.37%
157
12.55%
属性4性別
×
問10 子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
21.00%
40.04%
33.20%
男性 5.36%
21.54%
39.55%
33.55%
女性 6.16%
20.46%
40.53%
32.85%
どちらかといえばそう思う
全体
男性
40%
全体 5.76%
そう思う
全体
30%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
100%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
525
1001
21%
40.04%
269
494
21.54%
39.55%
256
507
20.46%
40.53%
どちらかといえばそう思う
144
5.76%
67
5.36%
77
6.16%
379
830
33.20%
419
33.55%
411
32.85%
属性4性別
×
問11 薬で子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体 3.00% 10.04%
女性
70%
80%
90%
100%
56.37%
60.27%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
58.32%
27.18%
全体
男性
50%
30.10%
女性 3.36% 9.19%
全体
40%
28.64%
男性 2.64% 10.89%
そう思う
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
251
716
10.04%
28.64%
136
376
10.89%
30.10%
115
340
9.19%
27.18%
どちらかといえばそう思う
75
3%
33
2.64%
42
3.36%
380
1458
58.32%
704
56.37%
754
60.27%
属性4性別
×
問11 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらに
ついて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体 3.04% 11.44%
男性 3.36%
女性
70%
80%
90%
100%
52.52%
56.91%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
54.72%
29.90%
全体
男性
50%
31.71%
女性 2.72% 10.47%
全体
40%
30.80%
12.41%
そう思う
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
286
770
11.44%
30.80%
155
396
12.41%
31.71%
131
374
10.47%
29.90%
どちらかといえばそう思う
76
3.04%
42
3.36%
34
2.72%
381
1368
54.72%
656
52.52%
712
56.91%
属性4性別
×
問11 薬で子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
全体 4.00%
男性 4.40%
女性 3.60%
10%
20%
女性
50%
80%
90%
100%
55.56%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
51.24%
28.22%
12.63%
60%
53.40%
29.62%
14.73%
全体
男性
40%
28.92%
13.68%
そう思う
全体
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
342
723
13.68%
28.92%
184
370
14.73%
29.62%
158
353
12.63%
28.22%
どちらかといえばそう思う
100
4%
55
4.40%
45
3.60%
382
1335
53.40%
640
51.24%
695
55.56%
属性4性別
×
問11 薬で子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
0%
10%
5.00%
全体1.56%
20%
80%
90%
100%
68.59%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
63.97%
どちらかといえばそう思う
全体
60%
66.28%
25.42%
そう思う
女性
50%
28.90%
4.32%
女性 1.68%
男性
40%
27.16%
5.68%
男性1.44%
全体
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
125
679
5%
27.16%
71
361
5.68%
28.90%
54
318
4.32%
25.42%
どちらかといえばそう思う
39
1.56%
18
1.44%
21
1.68%
383
1657
66.28%
799
63.97%
858
68.59%
属性4性別
×
問12 薬で子どもの身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
80%
31.47%
29.50%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
60%
30.48%
58.59%
全体
男性
50%
54.28%
女性
全体
40%
56.44%
男性
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
8.96% 4.12%
9.69%
4.56%
8.23% 3.68%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1411
762
224
103
56.44%
30.48%
8.96%
4.12%
678
393
121
57
54.28%
31.47%
9.69%
4.56%
733
369
103
46
58.59%
29.50%
8.23%
3.68%
384
属性4性別
×
問12 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、
どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
80%
32.51%
31.33%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
60%
31.92%
56.67%
全体
男性
50%
51.88%
女性
全体
40%
54.28%
男性
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
10.00% 3.80%
11.29%
4.32%
8.71% 3.28%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1357
798
250
95
54.28%
31.92%
10%
3.80%
648
406
141
54
51.88%
32.51%
11.29%
4.32%
709
392
109
41
56.67%
31.33%
8.71%
3.28%
385
属性4性別
×
問12 薬で子どもの記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
80%
31.87%
30.86%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
60%
31.36%
56.27%
全体
男性
50%
50.60%
女性
全体
40%
53.44%
男性
非常に抵抗がある
30%
どちらかというと抵抗がない
90%
11.20%
13.13%
100%
4.00%
4.40%
9.27% 3.60%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1336
784
280
100
53.44%
31.36%
11.20%
4%
632
398
164
55
50.60%
31.87%
13.13%
4.40%
704
386
116
45
56.27%
30.86%
9.27%
3.60%
386
属性4性別
×
問12 薬で子どもの性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
0%
10%
20%
全体
女性
60%
70%
80%
24.72%
22.86%
どちらかというと抵抗がある
非常に抵抗がある
2500
100%
1249
100%
1251
100%
どちらかというと抵抗がない
90%
100%
4.64%3.20%
5.44%3.60%
26.58%
70.50%
全体
男性
50%
64.37%
女性
全体
40%
67.44%
男性
非常に抵抗がある
30%
2.80%
3.84%
まったく抵抗がない
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1686
618
116
80
67.44%
24.72%
4.64%
3.20%
804
332
68
45
64.37%
26.58%
5.44%
3.60%
882
286
48
35
70.50%
22.86%
3.84%
2.80%
387
属性4性別
×
問13ゲームや書籍などによる「脳トレ」は、脳を鍛えたり、活性化することに役立つと思いますか、そ
れとも思いませんか。
0%
全体
男性
10%
60%
70%
80%
12.73%
100%
5.64% 4.12%
7.29% 4.24%
10.07% 4.00%4.00%
59.55%
どちらかといえば思う
90%
11.40%
57.01%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
58.28%
22.38%
全体
女性
40%
18.73%
そう思う
男性
30%
20.56%
女性
全体
20%
どちらかといえば思わない
そう思わない
わからない
どちらかといえば思わな
そう思わない
い
1457
285
58.28%
11.40%
712
159
57.01%
12.73%
745
126
59.55%
10.07%
どちらかといえば思う
514
20.56%
234
18.73%
280
22.38%
388
わからない
141
5.64%
91
7.29%
50
4%
103
4.12%
53
4.24%
50
4%
属性4性別
×
問14あなたは、ふだんゲームや書籍などの「脳トレ」を、どの程度していますか。
0%
10%
20%
全体 4.44% 9.44%
11.03%
ほとんど毎日
全体
全体
男性
女性
9.53%
ほとんど毎日
2500
100%
1249
100%
1251
100%
13.83%
週に1回程度
60%
70%
15.19%
100%
40.53%
4.16%
年に数回
週に1回程度
年に1回程度
月に1回程度
245
9.80%
119
9.53%
126
10.07%
389
90%
48.12%
月に1回程度
236
9.44%
98
7.85%
138
11.03%
80%
44.32%
4.12%
4.08%
15.69%
週に数回
111
4.44%
46
3.68%
65
5.20%
50%
15.44%
11.05%
10.07%
週に数回
40%
12.44%
9.80%
男性 3.68% 7.85%
女性 5.20%
30%
全くしていない
年に数回
311
12.44%
138
11.05%
173
13.83%
年に1回程度
386
15.44%
196
15.69%
190
15.19%
全くしていない
103
4.12%
51
4.08%
52
4.16%
1108
44.32%
601
48.12%
507
40.53%
属性4性別
×
問15 科学技術の発展は人々を幸福にする -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、
それとも反対ですか。
0%
全体
10%
12.39%
全体
男性
女性
40%
60%
80%
90%
0.72%
1.84%
0.08%
1.36%
37.25%
どちらともいえない
どちらかといえば賛成
474
18.96%
319
25.54%
155
12.39%
1179
47.16%
567
45.40%
612
48.92%
390
100%
0.40%
1.60%
26.50%
48.92%
どちらかといえば賛成
70%
31.88%
45.40%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
47.16%
25.54%
賛成
全体
30%
18.96%
男性
女性
20%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
797
31.88%
331
26.50%
466
37.25%
40
1.60%
23
1.84%
17
1.36%
反対
10
0.40%
9
0.72%
1
0.08%
属性4性別
×
問15 科学技術の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、科学についての以下の意見に賛成です
か、それとも反対ですか。
0%
全体
男性
10%
50%
60%
80%
90%
9.53% 3.20%
1.84%
5.20%
57.79%
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば賛成
183
7.32%
123
9.85%
60
4.80%
699
27.96%
319
25.54%
380
30.38%
391
100%
7.36% 2.52%
51.88%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
54.84%
30.38%
全体
女性
40%
25.54%
9.85%
賛成
男性
30%
27.96%
7.32%
女性 4.80%
全体
20%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
1371
54.84%
648
51.88%
723
57.79%
184
7.36%
119
9.53%
65
5.20%
反対
63
2.52%
40
3.20%
23
1.84%
属性4性別
×
問15 科学技術の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、科学についての以下の意
見に賛成ですか、それとも反対ですか。
0%
10%
全体
13.12%
男性
12.73%
女性
13.51%
賛成
全体
全体
男性
女性
20%
30%
50%
60%
70%
80%
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば賛成
328
13.12%
159
12.73%
169
13.51%
658
26.32%
292
23.38%
366
29.26%
392
5.64%
10.55% 2.56%
44.12%
29.26%
100%
8.73%
17.93%
37.23%
23.38%
90%
14.24%
40.68%
26.32%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
1017
40.68%
465
37.23%
552
44.12%
356
14.24%
224
17.93%
132
10.55%
反対
141
5.64%
109
8.73%
32
2.56%
属性4性別
×
問16 脳の回路(神経回路)は、成人した後も成長することがある. -脳に関する以下の内容が正しい
かどうか、ご自身で判断し、お答えください。
0%
10%
20%
30%
40%
全体
75.24%
男性
75.18%
女性
75.30%
正しいと思う
全体
全体
男性
女性
50%
60%
70%
80%
90%
14.52%
10.24%
12.97%
11.85%
8.63%
誤っていると思う
正しいと思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
393
16.07%
わからない
誤っていると思う
1881
75.24%
939
75.18%
942
75.30%
100%
わからない
256
10.24%
148
11.85%
108
8.63%
363
14.52%
162
12.97%
201
16.07%
属性4性別
×
問16 脳の一部が壊され、機能の一部が失われても、脳の他の部分がその機能を補うようになる場合
がある. -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
0%
10%
20%
30%
40%
全体
75.96%
男性
76.86%
女性
全体
男性
女性
60%
70%
80%
8.08%
8.73%
7.43%
75.06%
正しいと思う
全体
50%
誤っていると思う
正しいと思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
15.96%
14.41%
17.51%
わからない
誤っていると思う
1899
75.96%
960
76.86%
939
75.06%
394
90%
わからない
202
8.08%
109
8.73%
93
7.43%
399
15.96%
180
14.41%
219
17.51%
属性4性別
×
問16 書籍やゲームなどによる、いわゆる「脳トレ」によって、脳細胞(神経細胞)の数が増加する -脳
に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
0%
10%
20%
全体
38.12%
男性
37.07%
女性
30%
40%
女性
70%
80%
35.73%
誤っていると思う
正しいと思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
わからない
誤っていると思う
953
38.12%
463
37.07%
490
39.17%
395
100%
30.26%
25.10%
39.17%
90%
33.00%
32.67%
全体
男性
60%
28.88%
正しいと思う
全体
50%
わからない
722
28.88%
408
32.67%
314
25.10%
825
33%
378
30.26%
447
35.73%
属性4性別
×
問16 マスメディアでは「脳年齢」という言葉が頻繁に登場するが、「脳年齢」とは医学的に定義された
概念であり、測定する方法も確立されている -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判
断し、お答えください。
0%
全体
男性
女性
10%
13.44%
20%
30%
40%
女性
70%
80%
15.43%
90%
100%
45.80%
40.51%
48.04%
11.45%
51.08%
33.49%
全体
男性
60%
40.76%
正しいと思う
全体
50%
誤っていると思う
正しいと思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
誤っていると思う
336
13.44%
143
11.45%
193
15.43%
396
わからない
わからない
1019
40.76%
600
48.04%
419
33.49%
1145
45.80%
506
40.51%
639
51.08%
属性4性別
×
問17脳を計測することにより思考・感情を読む技術が実用化されることは望ましいと思いますか、そ
れとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 5.44%
男性
望ましい
男性
女性
40%
38.75%
どちらかといえば望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
25.08%
22.58%
27.58%
40.45%
15.43%
望ましい
50%
39.60%
20.58%
全体
全体
30%
18.00%
7.77%
女性 3.12%
20%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
90%
100%
11.88%
10.33%
13.43%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
136
450
990
627
5.44%
18%
39.60%
25.08%
97
257
484
282
7.77%
20.58%
38.75%
22.58%
39
193
506
345
3.12%
15.43%
40.45%
27.58%
397
297
11.88%
129
10.33%
168
13.43%
属性4性別
×
問18 親による子どもの教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で
実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 4.08%
14.92%
男性 5.36%
男性
女性
30%
12.79%
望ましい
どちらかといえば望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
70%
24.60%
23.54%
31.63%
女性 2.80%
望ましい
40%
31.68%
17.05%
全体
全体
20%
25.66%
31.73%
どちらともいえない
80%
90%
100%
24.72%
22.42%
27.02%
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
102
373
792
615
4.08%
14.92%
31.68%
24.60%
67
213
395
294
5.36%
17.05%
31.63%
23.54%
35
160
397
321
2.80%
12.79%
31.73%
25.66%
398
618
24.72%
280
22.42%
338
27.02%
属性4性別
×
問18 教師による児童・生徒の教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の
用途で実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 3.72%
12.88%
男性 4.48%
14.65%
女性 2.96% 11.11%
望ましい
男性
女性
30%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
24.16%
26.96%
26.02%
25.30%
22.30%
28.62%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
どちらともいえない
70%
80%
90%
100%
32.28%
29.54%
35.01%
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
93
322
674
604
3.72%
12.88%
26.96%
24.16%
56
183
316
325
4.48%
14.65%
25.30%
26.02%
37
139
358
279
2.96%
11.11%
28.62%
22.30%
399
807
32.28%
369
29.54%
438
35.01%
属性4性別
×
問18 企業の人事管理のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用
化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 2.60% 8.60%
男性 2.88% 9.69%
女性 2.32% 7.51%
望ましい
男性
女性
30%
23.48%
22.42%
24.54%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
70%
80%
24.48%
40.84%
24.10%
40.91%
24.86%
40.77%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
90%
100%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
65
215
587
612
2.60%
8.60%
23.48%
24.48%
36
121
280
301
2.88%
9.69%
22.42%
24.10%
29
94
307
311
2.32%
7.51%
24.54%
24.86%
400
1021
40.84%
511
40.91%
510
40.77%
属性4性別
×
問18 犯罪捜査のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化され
ることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
21.24%
男性
20.42%
女性
望ましい
男性
女性
30%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
70%
27.44%
26.42%
31.55%
28.46%
33.65%
どちらかといえば望ましい
望ましい
40%
32.60%
22.06%
全体
全体
20%
どちらともいえない
80%
90%
9.32%
10.09%
8.55%
どちらかといえば望ましくない
100%
9.40%
11.53%
7.27%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
531
815
686
233
21.24%
32.60%
27.44%
9.32%
255
394
330
126
20.42%
31.55%
26.42%
10.09%
276
421
356
107
22.06%
33.65%
28.46%
8.55%
401
235
9.40%
144
11.53%
91
7.27%
属性4性別
×
問18 法廷での証言の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の
用途で実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
33.92%
男性
20.26%
32.35%
どちらかといえば望ましい
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
70%
29.60%
29.06%
30.14%
35.49%
19.02%
全体
女性
40%
19.64%
望ましい
男性
30%
全体
女性
全体
20%
どちらともいえない
80%
90%
8.04%
8.80%
9.29%
9.05%
8.55%
どちらかといえば望ましくない
100%
6.79%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
491
848
740
220
19.64%
33.92%
29.60%
8.80%
253
404
363
113
20.26%
32.35%
29.06%
9.05%
238
444
377
107
19.02%
35.49%
30.14%
8.55%
402
201
8.04%
116
9.29%
85
6.79%
属性4性別
×
問18 公人の公的発表の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下
の用途で実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
男性
10%
18.96%
20.50%
男性
女性
30%
望ましい
どちらかといえば望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
32.28%
30.58%
28.82%
17.43%
望ましい
40%
29.44%
女性
全体
全体
20%
33.97%
30.06%
どちらともいえない
70%
80%
90%
10.00%
10.01%
9.99%
どちらかといえば望ましくない
100%
9.32%
10.09%
8.55%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
474
736
807
250
18.96%
29.44%
32.28%
10%
256
360
382
125
20.50%
28.82%
30.58%
10.01%
218
376
425
125
17.43%
30.06%
33.97%
9.99%
403
233
9.32%
126
10.09%
107
8.55%
属性4性別
×
問19 子ども(親による子の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の
人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思います
か。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
全体 1.92%
男性 2.80%
女性1.04%
強制してもよい
20%
男性
女性
40%
50%
60%
70%
80%
51.64%
37.95%
強制ではなく、任意であればよい
7.61%
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
11.83%
56.35%
30.78%
90%
9.72%
54.00%
34.36%
全体
全体
30%
48
1.92%
35
2.80%
13
1.04%
404
859
34.36%
474
37.95%
385
30.78%
1350
54%
645
51.64%
705
56.35%
243
9.72%
95
7.61%
148
11.83%
属性4性別
×
問19 児童・生徒(教師による児童・生徒の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受ける
ことを、以下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許され
ないと思いますか。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
全体1.16%
女性
50%
60%
70%
80%
10.55%
65.07%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
6.73%
61.97%
23.66%
90%
8.64%
63.52%
全体
男性
40%
29.70%
強制してもよい
全体
30%
26.68%
男性1.60%
女性0.72%
20%
29
1.16%
20
1.60%
9
0.72%
405
667
26.68%
371
29.70%
296
23.66%
1588
63.52%
774
61.97%
814
65.07%
216
8.64%
84
6.73%
132
10.55%
属性4性別
×
問19 社員(企業における人事管理のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下
の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いま
すか。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
全体1.36%
女性
50%
60%
70%
80%
9.59%
66.43%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
5.44%
65.49%
23.18%
90%
7.52%
65.96%
全体
男性
40%
27.14%
強制してもよい
全体
30%
25.16%
男性 1.92%
女性0.80%
20%
34
1.36%
24
1.92%
10
0.80%
406
629
25.16%
339
27.14%
290
23.18%
1649
65.96%
818
65.49%
831
66.43%
188
7.52%
68
5.44%
120
9.59%
属性4性別
×
問19 容疑者など(犯罪捜査のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々
に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。
なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
全体
20%
80%
90%
15.00%
18.01%
11.99%
36.85%
強制、任意いずれであれ許されない
100%
8.16%
6.08%
10.23%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
38.75%
強制ではなく、任意であればよい
全体
60%
37.80%
40.93%
強制してもよい
女性
50%
37.15%
女性
男性
40%
39.04%
男性
全体
30%
976
39.04%
464
37.15%
512
40.93%
407
945
37.80%
484
38.75%
461
36.85%
375
15%
225
18.01%
150
11.99%
204
8.16%
76
6.08%
128
10.23%
属性4性別
×
問19 証人など(法廷での証言の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けるこ
とを、以下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されな
いと思いますか。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
44.60%
男性
30.66%
44.04%
60%
70%
強制ではなく、任意であればよい
18.65%
14.55%
強制、任意いずれであれ許されない
90%
100%
8.88%
6.65%
11.11%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
16.60%
45.16%
29.18%
全体
女性
50%
29.92%
強制してもよい
男性
40%
全体
女性
全体
30%
748
29.92%
383
30.66%
365
29.18%
408
1115
44.60%
550
44.04%
565
45.16%
415
16.60%
233
18.65%
182
14.55%
222
8.88%
83
6.65%
139
11.11%
属性4性別
×
問19 政治家など公人(公的発表の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受ける
ことを、以下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許され
ないと思いますか。なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
全体
20%
強制してもよい
60%
70%
80%
16.72%
38.24%
18.49%
37.71%
14.95%
33.89%
38.77%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
全体
女性
50%
37.31%
女性
男性
40%
35.60%
男性
全体
30%
100%
9.44%
6.49%
12.39%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
890
35.60%
466
37.31%
424
33.89%
409
956
38.24%
471
37.71%
485
38.77%
418
16.72%
231
18.49%
187
14.95%
236
9.44%
81
6.49%
155
12.39%
属性4性別
×
問20脳と機械を直接または間接的につなぐ技術が実用化されることは望ましいと思いますか、それと
も望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 5.40%
男性
20%
男性
女性
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
24.64%
37.95%
21.62%
27.66%
41.09%
どちらかといえば望ましい
全体
50%
39.52%
18.41%
女性 3.04% 11.51%
全体
40%
14.96%
7.77%
望ましい
30%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
90%
100%
15.48%
14.25%
16.71%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
135
374
988
616
5.40%
14.96%
39.52%
24.64%
97
230
474
270
7.77%
18.41%
37.95%
21.62%
38
144
514
346
3.04%
11.51%
41.09%
27.66%
410
387
15.48%
178
14.25%
209
16.71%
属性4性別
×
問21 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化するこ
とは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
32.12%
男性
32.91%
女性
望ましい
男性
女性
30%
40%
50%
45.24%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
どちらともいえない
70%
80%
90%
18.00%
44.12%
どちらかといえば望ましい
望ましい
60%
44.68%
31.33%
全体
全体
20%
16.33%
19.66%
どちらかといえば望ましくない
100%
2.28%
2.92%
3.28%
3.36%
1.28%
2.48%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
803
1117
450
73
32.12%
44.68%
18%
2.92%
411
551
204
42
32.91%
44.12%
16.33%
3.36%
392
566
246
31
31.33%
45.24%
19.66%
2.48%
411
57
2.28%
41
3.28%
16
1.28%
属性4性別
×
問21 手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため -脳と機械を直接または間接的につな
ぐ技術を、以下の用途で実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
40.92%
男性
40.19%
女性
望ましい
男性
女性
30%
40%
50%
41.55%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
80%
90%
13.76%
13.61%
42.37%
どちらかといえば望ましい
望ましい
60%
41.96%
41.65%
全体
全体
20%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
13.91%
100%
1.64%
1.72%
2.40%
2.24%
0.88%
1.20%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
1023
1049
344
43
40.92%
41.96%
13.76%
1.72%
502
519
170
28
40.19%
41.55%
13.61%
2.24%
521
530
174
15
41.65%
42.37%
13.91%
1.20%
412
41
1.64%
30
2.40%
11
0.88%
属性4性別
×
問21 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化する
ことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
男性
女性
望ましい
10%
12.88%
14.25%
11.51%
男性
女性
30%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
40.16%
23.20%
37.07%
24.34%
43.25%
22.06%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
どちらともいえない
70%
80%
90%
100%
13.52%
10.24%
13.37%
10.97%
13.67%
どちらかといえば望ましくない
9.51%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
322
580
1004
338
12.88%
23.20%
40.16%
13.52%
178
304
463
167
14.25%
24.34%
37.07%
13.37%
144
276
541
171
11.51%
22.06%
43.25%
13.67%
413
256
10.24%
137
10.97%
119
9.51%
属性4性別
×
問21 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で
実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
10%
女性
12.97%
全体
男性
女性
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
40.36%
36.11%
26.18%
44.60%
どちらかといえば望ましい
全体
40%
25.82%
8.23%
望ましい
30%
26.00%
10.60%
男性
20%
どちらともいえない
70%
80%
90%
13.84%
14.01%
13.67%
どちらかといえば望ましくない
100%
9.20%
10.73%
7.67%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
265
650
1009
346
10.60%
26%
40.36%
13.84%
162
327
451
175
12.97%
26.18%
36.11%
14.01%
103
323
558
171
8.23%
25.82%
44.60%
13.67%
414
230
9.20%
134
10.73%
96
7.67%
属性4性別
×
問21 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途
で実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
男性
女性
望ましい
10%
15.88%
17.77%
13.99%
男性
女性
30%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
34.80%
19.72%
18.17%
31.95%
37.65%
21.26%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
どちらともいえない
60%
70%
80%
16.60%
16.81%
16.39%
どちらかといえば望ましくない
90%
100%
13.00%
15.29%
10.71%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
397
493
870
415
15.88%
19.72%
34.80%
16.60%
222
227
399
210
17.77%
18.17%
31.95%
16.81%
175
266
471
205
13.99%
21.26%
37.65%
16.39%
415
325
13%
191
15.29%
134
10.71%
属性4性別
×
問21 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用
途で実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
男性
女性
30%
全体
19.36%
22.52%
男性
20.18%
21.30%
女性
18.55%
望ましい
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
33.04%
30.26%
35.81%
23.74%
どちらともいえない
70%
80%
90%
14.04%
14.65%
13.43%
どちらかといえば望ましくない
100%
11.04%
13.61%
8.47%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
484
563
826
351
19.36%
22.52%
33.04%
14.04%
252
266
378
183
20.18%
21.30%
30.26%
14.65%
232
297
448
168
18.55%
23.74%
35.81%
13.43%
416
276
11.04%
170
13.61%
106
8.47%
属性4性別
×
問22 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えま
すか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
10%
20%
30%
40%
50%
48.04%
女性
男性
女性
6.04%
8.09%
30.62%
45.40%
4.00%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
1168
46.72%
600
48.04%
568
45.40%
417
90%
100%
15.92%
11.85%
19.98%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
80%
32.03%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
70%
31.32%
46.72%
男性
60%
783
31.32%
400
32.03%
383
30.62%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
151
6.04%
101
8.09%
50
4%
398
15.92%
148
11.85%
250
19.98%
属性4性別
×
問22 手・足に障害のある人が、義手・義足を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことは
どの範囲で許されると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
10%
20%
30%
40%
50%
55.24%
女性
男性
女性
6.24%
1324
52.96%
690
55.24%
634
50.68%
418
2.96%
100%
13.16%
10.41%
15.91%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
4.60%
30.46%
50.68%
全体
80%
28.10%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
70%
29.28%
52.96%
男性
60%
732
29.28%
351
28.10%
381
30.46%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
115
4.60%
78
6.24%
37
2.96%
329
13.16%
130
10.41%
199
15.91%
属性4性別
×
問22 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考え
ますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
30%
50%
15.85%
36.27%
32.69%
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
90%
20.02%
32.85%
24.22%
326
13.04%
198
15.85%
128
10.23%
419
100%
26.44%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
男性
70%
27.86%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
60%
26.04%
34.48%
13.04%
10.23%
40%
862
34.48%
453
36.27%
409
32.69%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
651
26.04%
348
27.86%
303
24.22%
661
26.44%
250
20.02%
411
32.85%
属性4性別
×
問22 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許さ
れると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
30%
40%
50%
16.25%
35.71%
全体
男性
女性
349
13.96%
203
16.25%
146
11.67%
420
100%
20.82%
34.61%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
27.72%
21.02%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
80%
27.22%
32.69%
11.67%
70%
24.12%
34.20%
13.96%
60%
855
34.20%
446
35.71%
409
32.69%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
603
24.12%
340
27.22%
263
21.02%
693
27.72%
260
20.82%
433
34.61%
属性4性別
×
問22 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許
されると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
10%
20%
26.66%
女性
40%
50%
24.58%
25.18%
23.90%
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
90%
17.77%
29.58%
21.34%
632
25.28%
333
26.66%
299
23.90%
421
100%
23.68%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
男性
70%
30.98%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
60%
26.16%
24.88%
25.28%
男性
30%
622
24.88%
307
24.58%
315
25.18%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
654
26.16%
387
30.98%
267
21.34%
592
23.68%
222
17.77%
370
29.58%
属性4性別
×
問22 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で
許されると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
全体
10%
20%
29.14%
女性
40%
50%
22.90%
24.38%
26.54%
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
422
100%
18.65%
29.90%
19.18%
696
27.84%
364
29.14%
332
26.54%
90%
24.28%
間接接続のみ許される
わからない
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
男性
70%
29.30%
直接・間接接続ともに許される
直接・間接接続いずれであれ許されない
全体
60%
24.24%
23.64%
27.84%
男性
30%
591
23.64%
286
22.90%
305
24.38%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
606
24.24%
366
29.30%
240
19.18%
607
24.28%
233
18.65%
374
29.90%
属性4性別
×
問23薬によって精神や意識を変える技術が進歩し、実用化が進むことは望ましいと思いますか、それ
とも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 3.84%
望ましい
男性
女性
60%
70%
80%
24.84%
23.38%
26.30%
43.80%
どちらかといえば望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
36.75%
14.31%
望ましい
40%
40.28%
18.33%
全体
全体
30%
16.32%
男性 5.44%
女性 2.24%
20%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
90%
100%
14.72%
16.09%
13.35%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
96
408
1007
621
3.84%
16.32%
40.28%
24.84%
68
229
459
292
5.44%
18.33%
36.75%
23.38%
28
179
548
329
2.24%
14.31%
43.80%
26.30%
423
368
14.72%
201
16.09%
167
13.35%
属性4性別
×
問24 幸福感を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望
ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 2.96% 10.76%
男性 3.36%
12.17%
女性 2.56% 9.35%
望ましい
男性
女性
30%
27.00%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
23.92%
23.06%
26.82%
24.78%
27.18%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
どちらともいえない
60%
70%
80%
90%
100%
35.36%
34.59%
36.13%
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
74
269
675
598
2.96%
10.76%
27%
23.92%
42
152
335
288
3.36%
12.17%
26.82%
23.06%
32
117
340
310
2.56%
9.35%
27.18%
24.78%
424
884
35.36%
432
34.59%
452
36.13%
属性4性別
×
問24 宗教的超越体験を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進
むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
2.40%
全体0.80%
16.48%
3.20%
男性0.96%
1.60%
女性0.64%
望ましい
18.33%
14.63%
男性
女性
30%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
58.08%
22.24%
55.72%
21.78%
60.43%
22.70%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
20
60
412
556
0.80%
2.40%
16.48%
22.24%
12
40
229
272
0.96%
3.20%
18.33%
21.78%
8
20
183
284
0.64%
1.60%
14.63%
22.70%
425
1452
58.08%
696
55.72%
756
60.43%
属性4性別
×
問24 病気の治療のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
女性
40%
20.52%
42.28%
男性
20.90%
40.83%
女性
20.14%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
70%
80%
90%
24.02%
5.44%
25.90%
どちらともいえない
100%
5.48% 6.76%
24.96%
43.73%
どちらかといえば望ましい
全体
男性
30%
全体
望ましい
全体
20%
どちらかといえば望ましくない
8.81%
5.52% 4.72%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
513
1057
624
137
20.52%
42.28%
24.96%
5.48%
261
510
300
68
20.90%
40.83%
24.02%
5.44%
252
547
324
69
20.14%
43.73%
25.90%
5.52%
426
169
6.76%
110
8.81%
59
4.72%
属性4性別
×
問24 社員の労働意欲向上のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進
むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体1.48%7.92%
男性
女性
25.10%
26.06%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
22.66%
どちらかといえば望ましい
全体
40%
23.88%
26.82%
女性0.96%7.11%
全体
30%
26.44%
男性 2.00% 8.73%
望ましい
20%
どちらともいえない
60%
70%
80%
90%
100%
40.28%
39.79%
40.77%
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
37
198
661
597
1.48%
7.92%
26.44%
23.88%
25
109
335
283
2%
8.73%
26.82%
22.66%
12
89
326
314
0.96%
7.11%
26.06%
25.10%
427
1007
40.28%
497
39.79%
510
40.77%
属性4性別
×
問24 親による子どもの教育のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で
進むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
全体1.36%6.36%
望ましい
全体
男性
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
70%
80%
90%
100%
43.52%
41.07%
45.96%
23.18%
どちらかといえば望ましい
望ましい
50%
21.62%
27.54%
25.18%
全体
40%
22.40%
26.36%
男性 1.68% 8.09%
4.64%
女性1.04%
30%
どちらともいえない
どちらかといえば望ましくない
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
34
159
659
560
1.36%
6.36%
26.36%
22.40%
21
101
344
270
1.68%
8.09%
27.54%
21.62%
13
58
315
290
1.04%
4.64%
25.18%
23.18%
428
1088
43.52%
513
41.07%
575
45.96%
属性4性別
×
問24 受刑者の矯正のため(刑務所内) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途
で進むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
男性
女性
望ましい
10%
17.00%
19.14%
14.87%
男性
女性
30%
望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
50%
60%
28.56%
23.76%
33.09%
24.30%
どちらともいえない
70%
80%
90%
100%
17.84%
12.84%
12.89%
24.02%
23.22%
どちらかといえば望ましい
全体
全体
20%
20.74%
12.79%
どちらかといえば望ましくない
14.95%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
425
594
714
321
17%
23.76%
28.56%
12.84%
239
290
300
161
19.14%
23.22%
24.02%
12.89%
186
304
414
160
14.87%
24.30%
33.09%
12.79%
429
446
17.84%
259
20.74%
187
14.95%
属性4性別
×
問24 前科者の再犯防止のため(出所後) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用
途で進むことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
男性
10%
19.00%
20.90%
男性
女性
30%
望ましい
どちらかといえば望ましい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
60%
27.40%
23.22%
23.54%
17.11%
望ましい
40%
24.56%
女性
全体
全体
20%
31.57%
25.58%
どちらともいえない
70%
80%
90%
100%
16.76%
12.28%
20.02%
12.33%
12.23%
どちらかといえば望ましくない
13.51%
望ましくない
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
475
614
685
307
19%
24.56%
27.40%
12.28%
261
294
290
154
20.90%
23.54%
23.22%
12.33%
214
320
395
153
17.11%
25.58%
31.57%
12.23%
430
419
16.76%
250
20.02%
169
13.51%
属性4性別
×
問25 患者(病気の治療のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、
任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定
していただきたい用途です。
0%
10%
20%
全体 4.72%
女性
60%
70%
90%
14.17%
9.35%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
100%
10.12%
8.09%
12.15%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
11.76%
75.22%
全体
男性
50%
71.58%
女性 3.28%
全体
40%
73.40%
男性 6.16%
強制してもよい
30%
118
4.72%
77
6.16%
41
3.28%
431
1835
73.40%
894
71.58%
941
75.22%
294
11.76%
177
14.17%
117
9.35%
253
10.12%
101
8.09%
152
12.15%
属性4性別
×
問25 社員(労働意欲向上のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制した
り、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は
想定していただきたい用途です。
0%
全体0.84%
10%
女性
50%
60%
70%
80%
12.47%
63.79%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
8.49%
64.69%
23.34%
90%
10.48%
64.24%
全体
男性
40%
25.54%
強制してもよい
全体
30%
24.44%
男性1.28%
女性0.40%
20%
21
0.84%
16
1.28%
5
0.40%
432
611
24.44%
319
25.54%
292
23.34%
1606
64.24%
808
64.69%
798
63.79%
262
10.48%
106
8.49%
156
12.47%
属性4性別
×
問25 子ども(親による教育) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任
意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定し
ていただきたい用途です。
0%
10%
全体0.92%
女性
50%
60%
70%
80%
14.55%
68.51%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
10.17%
65.41%
16.31%
90%
12.36%
66.96%
全体
男性
40%
23.22%
強制してもよい
全体
30%
19.76%
男性1.20%
女性0.64%
20%
23
0.92%
15
1.20%
8
0.64%
433
494
19.76%
290
23.22%
204
16.31%
1674
66.96%
817
65.41%
857
68.51%
309
12.36%
127
10.17%
182
14.55%
属性4性別
×
問25 受刑者(刑務所内での矯正) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制した
り、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は
想定していただきたい用途です。
0%
10%
全体
20%
32.03%
強制ではなく、任意であればよい
全体
女性
70%
80%
23.92%
27.06%
強制、任意いずれであれ許されない
90%
100%
15.00%
11.45%
18.55%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
20.78%
35.09%
25.58%
強制してもよい
50%
33.56%
29.46%
女性
男性
40%
27.52%
男性
全体
30%
688
27.52%
368
29.46%
320
25.58%
434
839
33.56%
400
32.03%
439
35.09%
598
23.92%
338
27.06%
260
20.78%
375
15%
143
11.45%
232
18.55%
属性4性別
×
問25 前科者(出所後の再犯防止) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制し
たり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内
は想定していただきたい用途です。
0%
10%
全体
20%
31.47%
35.73%
27.34%
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
全体
女性
50%
33.60%
30.58%
女性
男性
40%
28.96%
男性
全体
30%
70%
80%
22.08%
26.26%
17.91%
強制、任意いずれであれ許されない
90%
100%
15.36%
11.69%
19.02%
わからない
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
724
28.96%
382
30.58%
342
27.34%
435
840
33.60%
393
31.47%
447
35.73%
552
22.08%
328
26.26%
224
17.91%
384
15.36%
146
11.69%
238
19.02%
属性4性別
×
問26 脳科学の発展は人々を幸福にする -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、
それとも反対ですか。
0%
全体
男性
女性
10%
女性
40%
50%
60%
90%
どちらかといえば賛成
1.84%
4.32%
37.15%
どちらともいえない
どちらかといえば賛成
286
11.44%
184
14.73%
102
8.15%
949
37.96%
524
41.95%
425
33.97%
436
100%
1.72%
4.84%
1.60%
5.36%
50.92%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
44.04%
33.97%
8.15%
70%
41.95%
14.73%
全体
男性
30%
37.96%
11.44%
賛成
全体
20%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
1101
44.04%
464
37.15%
637
50.92%
121
4.84%
54
4.32%
67
5.36%
反対
43
1.72%
23
1.84%
20
1.60%
属性4性別
×
問26 脳科学の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成です
か、それとも反対ですか。
0%
全体
男性
女性
10%
9.12%
28.84%
10.97%
25.86%
全体
男性
女性
30%
40%
50%
60%
70%
90%
7.37% 2.96%
1.28%
4.48%
55.16%
どちらかといえば賛成
どちらともいえない
どちらかといえば賛成
228
9.12%
137
10.97%
91
7.27%
721
28.84%
323
25.86%
398
31.81%
437
100%
5.92%2.12%
52.84%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
54.00%
31.81%
7.27%
賛成
全体
20%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
1350
54%
660
52.84%
690
55.16%
148
5.92%
92
7.37%
56
4.48%
反対
53
2.12%
37
2.96%
16
1.28%
属性4性別
×
問26 脳科学の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、脳科学についての以下の意
見に賛成ですか、それとも反対ですか。
0%
10%
全体
全体
60%
どちらかといえば賛成
70%
80%
90%
750
30%
354
28.34%
396
31.65%
438
1.76%
5.60%
32.61%
どちらかといえば賛成
645
25.80%
290
23.22%
355
28.38%
4.80%
9.93%
33.71%
どちらともいえない
100%
7.76% 3.28%
33.16%
31.65%
賛成
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
30.00%
28.38%
賛成
女性
40%
28.34%
23.22%
女性
男性
30%
25.80%
男性
全体
20%
どちらかといえば反対
反対
どちらともいえない
どちらかといえば反対
829
33.16%
421
33.71%
408
32.61%
194
7.76%
124
9.93%
70
5.60%
反対
82
3.28%
60
4.80%
22
1.76%
属性4性別
×
問27 世の中の動きや事件をいち早く知るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディア
を利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
10%
20%
全体
30%
男性
女性
テレビ
2500
100%
1249
100%
1251
100%
本
ラジオ
80%
インターネット
雑誌
0.48%
0.00%
4.96%
439
0.32%
0.00%
5.12%
その他
インターネット
35
1.40%
27
2.16%
8
0.64%
100%
0.40%
0.00%
5.04%
35.81%
新聞
ラジオ
14
0.56%
9
0.72%
5
0.40%
90%
47.64%
0.64%
0.40%
本
1272
50.88%
550
44.04%
722
57.71%
70%
41.72%
2.16%
0.72%
57.71%
テレビ
60%
1.40%
0.56%
44.04%
女性
全体
50%
50.88%
男性
全体
40%
新聞
1043
41.72%
595
47.64%
448
35.81%
雑誌
126
5.04%
62
4.96%
64
5.12%
その他
0
0%
0
0%
0
0%
10
0.40%
6
0.48%
4
0.32%
属性4性別
×
問27 世の中の動きや事件について、信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、
どのようなメディアを利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでくださ
い。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
29.32%
全体
男性
女性
70%
インターネット
80%
雑誌
2.24%
0.40%
その他
インターネット
23
0.92%
17
1.36%
6
0.48%
440
2.16%
0.64%
39.81%
新聞
100%
2.20%
0.52%
36.27%
ラジオ
81
3.24%
55
4.40%
26
2.08%
90%
38.04%
22.06%
ラジオ
本
733
29.32%
321
25.70%
412
32.93%
60%
29.46%
0.48%
2.08%
本
50%
25.76%
0.92%
3.24%
32.93%
テレビ
2500
100%
1249
100%
1251
100%
40%
1.36%
4.40%
25.70%
テレビ
全体
30%
新聞
644
25.76%
368
29.46%
276
22.06%
雑誌
951
38.04%
453
36.27%
498
39.81%
その他
13
0.52%
8
0.64%
5
0.40%
55
2.20%
27
2.16%
28
2.24%
属性4性別
×
問27 医療について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディア
を利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
10%
20%
全体
13.28%
17.72%
男性
13.05%
18.49%
女性
13.51%
16.95%
テレビ
全体
全体
男性
女性
テレビ
2500
100%
1249
100%
1251
100%
30%
40%
70%
ラジオ
インターネット
新聞
雑誌
441
6.00%
4.24% 5.76%
その他
インターネット
8
0.32%
6
0.48%
2
0.16%
100%
6.12% 5.88%
8.01%
14.55%
ラジオ
443
17.72%
231
18.49%
212
16.95%
90%
12.41%
44.84%
0.16%
80%
13.48%
41.55%
0.48%
本
60%
43.20%
0.32%
本
332
13.28%
163
13.05%
169
13.51%
50%
新聞
1080
43.20%
519
41.55%
561
44.84%
雑誌
337
13.48%
155
12.41%
182
14.55%
その他
153
6.12%
100
8.01%
53
4.24%
147
5.88%
75
6%
72
5.76%
属性4性別
×
問27 科学技術について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディ
アを利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
18.16%
13.60%
19.30%
12.01%
17.03%
15.19%
テレビ
全体
全体
男性
女性
テレビ
2500
100%
1249
100%
1251
100%
30%
40%
0.28%
40.04%
0.32%
40.67%
本
60%
70%
ラジオ
インターネット
80%
12.01%
新聞
雑誌
442
9.68%
4.32%
11.29%
4.40%
その他
インターネット
7
0.28%
4
0.32%
3
0.24%
100%
8.07% 4.24%
15.83%
ラジオ
454
18.16%
241
19.30%
213
17.03%
90%
13.92%
39.41%
0.24%
本
340
13.60%
150
12.01%
190
15.19%
50%
新聞
1001
40.04%
508
40.67%
493
39.41%
雑誌
348
13.92%
150
12.01%
198
15.83%
その他
242
9.68%
141
11.29%
101
8.07%
108
4.32%
55
4.40%
53
4.24%
属性4性別
×
問28 病気になったり、持病が悪化したりしないか不安である -あなたは、以下のぞれぞれについて、
どのように思われますか。
0%
10%
全体
全体
60%
どちらともいえない
11.99%
あまりそう思わない
ややそう思う
658
26.32%
298
23.86%
360
28.78%
90%
100%
11.36%
3.92%
11.53%
4.24%
11.19% 3.60%
そう思わない
どちらともいえない
1137
45.48%
581
46.52%
556
44.44%
443
80%
13.85%
44.44%
ややそう思う
70%
12.92%
46.52%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
45.48%
28.78%
そう思う
女性
40%
23.86%
女性
男性
30%
26.32%
男性
全体
20%
あまりそう思わない
323
12.92%
173
13.85%
150
11.99%
284
11.36%
144
11.53%
140
11.19%
そう思わない
98
3.92%
53
4.24%
45
3.60%
属性4性別
×
問28 自分やパートナー(夫・妻など)の給料が低下したり、失業したりしないか不安である -あなたは、
以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
全体
男性
60%
20.50%
どちらともいえない
あまりそう思わない
ややそう思う
602
24.08%
265
21.22%
337
26.94%
90%
100%
13.24%
7.48%
14.97%
7.21%
11.51%
7.75%
そう思わない
どちらともいえない
906
36.24%
451
36.11%
455
36.37%
444
80%
17.43%
36.37%
ややそう思う
70%
18.96%
36.11%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
36.24%
26.94%
全体
女性
40%
21.22%
そう思う
男性
30%
24.08%
女性
全体
20%
あまりそう思わない
474
18.96%
256
20.50%
218
17.43%
331
13.24%
187
14.97%
144
11.51%
そう思わない
187
7.48%
90
7.21%
97
7.75%
属性4性別
×
問28 「負け組」にならないためには、死にものぐるいで努力しなければならない -あなたは、以下のぞ
れぞれについて、どのように思われますか。
0%
全体
男性
10%
20%
女性
70%
ややそう思う
80%
10.81%
22.82%
あまりそう思わない
ややそう思う
185
7.40%
128
10.25%
57
4.56%
14.55%
445
そう思わない
どちらともいえない
499
19.96%
289
23.14%
210
16.79%
100%
12.68%
30.30%
どちらともいえない
90%
26.56%
33.81%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
32.99%
16.79%
全体
50%
33.40%
23.14%
10.25%
そう思う
男性
40%
19.96%
7.40%
女性 4.56%
全体
30%
あまりそう思わない
835
33.40%
412
32.99%
423
33.81%
664
26.56%
285
22.82%
379
30.30%
そう思わない
317
12.68%
135
10.81%
182
14.55%
属性4性別
×
問28 いわゆる「負け組」は、幸せになれない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思わ
れますか。
0%
10%
全体 3.76% 10.36%
男性 4.56%
そう思う
全体
男性
女性
30%
40%
60%
70%
どちらともいえない
あまりそう思わない
ややそう思う
94
3.76%
57
4.56%
37
2.96%
21.30%
そう思わない
どちらともいえない
259
10.36%
164
13.13%
95
7.59%
446
100%
30.78%
34.45%
24.22%
90%
26.04%
31.31%
29.70%
ややそう思う
80%
32.88%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
26.96%
13.13%
女性 2.96% 7.59%
全体
20%
あまりそう思わない
674
26.96%
371
29.70%
303
24.22%
822
32.88%
391
31.31%
431
34.45%
そう思わない
651
26.04%
266
21.30%
385
30.78%
属性4性別
×
問28 以前からなされてきたやり方を守ることが、最上の結果を生む -あなたは、以下のぞれぞれにつ
いて、どのように思われますか。
0%
10%
全体1.36%8.08%
50%
60%
70%
全体
ややそう思う
あまりそう思わない
ややそう思う
34
1.36%
15
1.20%
19
1.52%
17.59%
447
そう思わない
どちらともいえない
202
8.08%
115
9.21%
87
6.95%
100%
19.86%
32.45%
どちらともいえない
90%
18.72%
29.94%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
31.20%
41.49%
そう思う
女性
40%
39.79%
女性1.52%6.95%
男性
30%
40.64%
男性1.20% 9.21%
全体
20%
あまりそう思わない
1016
40.64%
497
39.79%
519
41.49%
780
31.20%
374
29.94%
406
32.45%
そう思わない
468
18.72%
248
19.86%
220
17.59%
属性4性別
×
問28 子どもに教えるべきもっとも大切なことは、両親にたいする絶対服従である -あなたは、以下の
ぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
4.20%
全体1.08%
20%
全体
女性
70%
80%
ややそう思う
90%
100%
43.76%
38.51%
49.00%
31.65%
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
32.43%
15.83%
そう思う
50%
32.04%
22.02%
2.40%
女性1.12%
男性
40%
18.92%
男性1.04%6.00%
全体
30%
あまりそう思わない
ややそう思う
27
1.08%
13
1.04%
14
1.12%
どちらともいえない
105
4.20%
75
6%
30
2.40%
448
そう思わない
あまりそう思わない
473
18.92%
275
22.02%
198
15.83%
801
32.04%
405
32.43%
396
31.65%
そう思わない
1094
43.76%
481
38.51%
613
49%
属性4性別
×
問28 権威ある人々には、つねに敬意を払わなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、
どのように思われますか。
0%
10%
全体1.48% 8.76%
女性1.60%6.95%
全体
女性
40%
60%
70%
どちらともいえない
あまりそう思わない
そう思わない
どちらともいえない
219
8.76%
132
10.57%
87
6.95%
449
100%
33.97%
ややそう思う
37
1.48%
17
1.36%
20
1.60%
90%
34.11%
31.25%
ややそう思う
80%
34.04%
28.10%
25.86%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
29.68%
26.22%
そう思う
男性
30%
26.04%
男性1.36% 10.57%
全体
20%
あまりそう思わない
651
26.04%
323
25.86%
328
26.22%
742
29.68%
351
28.10%
391
31.25%
そう思わない
851
34.04%
426
34.11%
425
33.97%
属性4性別
×
問28 この複雑な世の中で何をなすべきか知る唯一の方法は、指導者や専門家に頼る事である -あ
なたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
5.64%
全体1.00%
全体
女性
70%
ややそう思う
どちらともいえない
100%
35.09%
あまりそう思わない
そう思わない
どちらともいえない
141
5.64%
83
6.65%
58
4.64%
450
90%
34.03%
ややそう思う
25
1%
10
0.80%
15
1.20%
80%
34.56%
34.05%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
32.51%
25.02%
そう思う
50%
33.28%
26.02%
4.64%
女性1.20%
男性
40%
25.52%
男性0.80%6.65%
全体
30%
あまりそう思わない
638
25.52%
325
26.02%
313
25.02%
832
33.28%
406
32.51%
426
34.05%
そう思わない
864
34.56%
425
34.03%
439
35.09%
属性4性別
×
問28 自分の「本当の気持ち」は大切にしなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、ど
のように思われますか。
0%
10%
全体
50%
60%
70%
全体
90%
13.45%
どちらともいえない
あまりそう思わない
ややそう思う
1096
43.84%
516
41.31%
580
46.36%
451
そう思わない
どちらともいえない
1049
41.96%
523
41.87%
526
42.05%
0.88%
2.48%
0.48%
9.99% 1.12%
42.05%
ややそう思う
100%
0.68%
11.72% 1.80%
41.87%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
41.96%
46.36%
そう思う
女性
40%
41.31%
女性
男性
30%
43.84%
男性
全体
20%
あまりそう思わない
293
11.72%
168
13.45%
125
9.99%
そう思わない
45
1.80%
31
2.48%
14
1.12%
17
0.68%
11
0.88%
6
0.48%
属性4性別
×
問28 「自分らしく」生きることは大切である -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われ
ますか。
0%
10%
全体
50%
60%
70%
全体
ややそう思う
90%
0.80%
12.01% 2.16%
0.32%
8.07%0.88%
35.41%
どちらともいえない
あまりそう思わない
ややそう思う
1261
50.44%
569
45.56%
692
55.32%
452
そう思わない
どちらともいえない
936
37.44%
493
39.47%
443
35.41%
100%
0.56%
10.04% 1.52%
39.47%
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
37.44%
55.32%
そう思う
女性
40%
45.56%
女性
男性
30%
50.44%
男性
全体
20%
あまりそう思わない
251
10.04%
150
12.01%
101
8.07%
そう思わない
38
1.52%
27
2.16%
11
0.88%
14
0.56%
10
0.80%
4
0.32%
属性4性別
×
問29 私には人より優れたところがある -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下の
それぞれについてお答えください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
70%
29.78%
39.65%
37.57%
10.31%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
34.72%
45.64%
14.17%
全体
男性
40%
41.60%
12.24%
そう思う
全体
30%
90%
100%
11.44%
10.41%
12.47%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1040
868
41.60%
34.72%
570
372
45.64%
29.78%
470
496
37.57%
39.65%
どちらかといえばそう思う
306
12.24%
177
14.17%
129
10.31%
453
286
11.44%
130
10.41%
156
12.47%
属性4性別
×
問29 私はいわゆる「勝ち組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれ
ぞれについてお答えください。
0%
10%
20%
女性
50%
21.60%
44.44%
男性 2.24%
21.38%
45.56%
女性 2.08%
21.82%
60%
70%
80%
どちらかといえばそう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
30.82%
32.77%
どちらかといえばそう思わない
そう思う
90%
31.80%
43.33%
全体
男性
40%
全体 2.16%
そう思う
全体
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
540
1111
21.60%
44.44%
267
569
21.38%
45.56%
273
542
21.82%
43.33%
どちらかといえばそう思う
54
2.16%
28
2.24%
26
2.08%
454
795
31.80%
385
30.82%
410
32.77%
属性4性別
×
問29 私はいわゆる「負け組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそ
れぞれについてお答えください。
0%
全体 5.64%
男性
10%
20%
女性
60%
70%
80%
29.26%
50.12%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
24.66%
46.44%
16.71%
90%
26.96%
48.28%
全体
男性
50%
21.54%
そう思う
全体
40%
19.12%
7.37%
女性 3.92%
30%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
478
1207
19.12%
48.28%
269
580
21.54%
46.44%
209
627
16.71%
50.12%
どちらかといえばそう思う
141
5.64%
92
7.37%
49
3.92%
455
674
26.96%
308
24.66%
366
29.26%
属性4性別
×
問29 私は「本当の気持ち」を大切にして生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われます
か。以下のそれぞれについてお答えください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
23.06%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
4.68%
4.80%
19.42%
56.99%
19.02%
90%
21.24%
55.40%
16.73%
全体
男性
40%
56.20%
17.88%
そう思う
全体
30%
4.56%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1405
531
56.20%
21.24%
692
288
55.40%
23.06%
713
243
56.99%
19.42%
どちらかといえばそう思う
447
17.88%
209
16.73%
238
19.02%
456
117
4.68%
60
4.80%
57
4.56%
属性4性別
×
問29 私は「私らしく」生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞ
れについてお答えください。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
19.46%
55.32%
19.54%
17.11%
54.76%
23.50%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思う
2500
100%
1249
100%
1251
100%
90%
18.28%
55.04%
全体
男性
40%
21.52%
そう思う
全体
30%
100%
5.16%
5.68%
4.64%
そう思わない
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1376
457
55.04%
18.28%
691
243
55.32%
19.46%
685
214
54.76%
17.11%
どちらかといえばそう思う
538
21.52%
244
19.54%
294
23.50%
457
129
5.16%
71
5.68%
58
4.64%
属性4性別
×
問30 見ず知らずの他人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利
益を犠牲にしてもかまわないと思いますか。
0%
全体 2.24%
男性 3.12%
女性1.36%
10%
20%
17.93%
18.78%
全体
男性
女性
40%
18.36%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
全体
30%
60%
70%
80%
90%
100%
53.88%
25.52%
0.00%
52.52%
26.42%
0.00%
24.62%
55.24%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
56
2.24%
39
3.12%
17
1.36%
459
18.36%
224
17.93%
235
18.78%
458
0.00%
1347
53.88%
656
52.52%
691
55.24%
まったく犠牲にしたくない
638
25.52%
330
26.42%
308
24.62%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問30 友人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にし
てもかまわないと思いますか。
0%
全体
6.80%
男性
6.97%
女性
6.63%
10%
20%
女性
50%
60%
51.88%
54.60%
全体
男性
40%
53.24%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
全体
30%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
1331
53.24%
648
51.88%
683
54.60%
459
100%
12.44% 0.52%
28.58%
12.01% 0.56%
12.87% 0.48%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
170
6.80%
87
6.97%
83
6.63%
90%
27.00%
25.42%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
犠牲にしてもかまわない
70%
675
27%
357
28.58%
318
25.42%
まったく犠牲にしたくない
311
12.44%
150
12.01%
161
12.87%
いない、あるいは、勤め
ていない
13
0.52%
7
0.56%
6
0.48%
属性4性別
×
問30 家族 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にし
てもかまわないと思いますか。
0%
10%
20%
全体
49.40%
男性
49.96%
女性
全体
男性
女性
40%
50%
23.46%
29.26%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
26.36%
48.84%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
全体
30%
70%
80%
9.60%
10.81%
8.39%
659
26.36%
293
23.46%
366
29.26%
460
100%
14.28% 0.36%
15.37%
0.40%
13.19% 0.32%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
1235
49.40%
624
49.96%
611
48.84%
90%
240
9.60%
135
10.81%
105
8.39%
まったく犠牲にしたくない
357
14.28%
192
15.37%
165
13.19%
いない、あるいは、勤め
ていない
9
0.36%
5
0.40%
4
0.32%
属性4性別
×
問30 親戚 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にし
てもかまわないと思いますか。
0%
全体
男性
10%
20%
8.81%
60%
70%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
16.15%
461
0.20%
0.24%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
1225
49%
629
50.36%
596
47.64%
100%
14.33% 0.16%
29.42%
192
7.68%
110
8.81%
82
6.55%
90%
15.24%
26.34%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
犠牲にしてもかまわない
80%
27.88%
47.64%
全体
女性
50%
50.36%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
男性
40%
49.00%
7.68%
女性 6.55%
全体
30%
697
27.88%
329
26.34%
368
29.42%
まったく犠牲にしたくない
381
15.24%
179
14.33%
202
16.15%
いない、あるいは、勤め
ていない
5
0.20%
2
0.16%
3
0.24%
属性4性別
×
問30 暮らしている地域 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益
を犠牲にしてもかまわないと思いますか。
0%
10%
全体 1.72%
20%
全体
70%
80%
49.32%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
789
31.56%
405
32.43%
384
30.70%
462
100%
16.32%
0.00%
15.61%
0.00%
0.00%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
43
1.72%
33
2.64%
10
0.80%
90%
17.03%
51.48%
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
50.40%
30.70%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
女性
50%
32.43%
女性0.80%
男性
40%
31.56%
男性 2.64%
全体
30%
1260
50.40%
616
49.32%
644
51.48%
まったく犠牲にしたくない
408
16.32%
195
15.61%
213
17.03%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問30 勤めている会社 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益
を犠牲にしてもかまわないと思いますか。
0%
全体 2.36%
10%
16.23%
全体
男性
女性
40%
60%
70%
80%
19.24%
17.83%
31.65%
90%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
12.73%
33.33%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
59
2.36%
47
3.76%
12
0.96%
519
20.76%
316
25.30%
203
16.23%
463
100%
23.04%
20.66%
37.55%
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
34.60%
25.30%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
全体
30%
20.76%
男性 3.76%
女性0.96%
20%
865
34.60%
469
37.55%
396
31.65%
まったく犠牲にしたくない
481
19.24%
258
20.66%
223
17.83%
いない、あるいは、勤め
ていない
576
23.04%
159
12.73%
417
33.33%
属性4性別
×
問30 国 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしても
かまわないと思いますか。
0%
全体 2.76%
10%
20%
男性
女性
51.16%
多少なら犠牲にしてもかまわない
いない、あるいは、勤めていない
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
43.31%
18.31%
全体
50%
47.24%
23.94%
犠牲にしてもかまわない
まったく犠牲にしたくない
全体
40%
21.12%
男性 4.48%
女性1.04%
30%
70%
80%
90%
28.88%
0.00%
28.26%
0.00%
29.50%
0.00%
あまり犠牲にしたくない
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
69
2.76%
56
4.48%
13
1.04%
528
21.12%
299
23.94%
229
18.31%
464
100%
1181
47.24%
541
43.31%
640
51.16%
まったく犠牲にしたくない
722
28.88%
353
28.26%
369
29.50%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問31 見ず知らずの他人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼
りになると思いますか。
0%
10%
20%
全体0.56%8.00%
60%
70%
全体
どちらかといえば頼りに
なる
14
0.56%
6
0.48%
8
0.64%
200
8%
86
6.89%
114
9.11%
465
100%
0.00%
52.12%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
90%
0.00%
59.97%
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
56.04%
38.13%
頼りになる
頼りにならない
女性
50%
32.67%
女性0.64% 9.11%
男性
40%
35.40%
6.89%
男性0.48%
全体
30%
0.00%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
885
35.40%
408
32.67%
477
38.13%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
1401
56.04%
749
59.97%
652
52.12%
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問31 友人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思
いますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
7.93%
女性
50%
60%
70%
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
258
10.32%
99
7.93%
159
12.71%
1247
49.88%
610
48.84%
637
50.92%
466
100%
14.01% 0.72%
9.99% 0.48%
25.90%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
90%
12.00% 0.60%
28.50%
50.92%
12.71%
80%
27.20%
48.84%
全体
男性
40%
49.88%
10.32%
頼りになる
頼りにならない
全体
30%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
680
27.20%
356
28.50%
324
25.90%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
300
12%
175
14.01%
125
9.99%
15
0.60%
9
0.72%
6
0.48%
属性4性別
×
問31 家族 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思
いますか。
0%
10%
20%
30%
全体
70%
全体
どちらかといえば頼りに
なる
1359
54.36%
643
51.48%
716
57.23%
875
35%
447
35.79%
428
34.21%
467
100%
0.48%
8.01% 4.24%
0.16%
6.55%1.84%
34.21%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
90%
0.32%
7.28% 3.04%
35.79%
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
35.00%
57.23%
頼りになる
頼りにならない
女性
60%
51.48%
女性
男性
50%
54.36%
男性
全体
40%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
182
7.28%
100
8.01%
82
6.55%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
76
3.04%
53
4.24%
23
1.84%
8
0.32%
6
0.48%
2
0.16%
属性4性別
×
問31 親戚 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思
いますか。
0%
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
90%
100%
13.00%
47.96%
26.40%
12.44% 0.20%
男性
12.89%
47.80%
27.46%
11.69% 0.16%
女性
13.11%
48.12%
25.34%
13.19% 0.24%
全体
男性
40%
全体
頼りになる
頼りにならない
全体
30%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
325
13%
161
12.89%
164
13.11%
1199
47.96%
597
47.80%
602
48.12%
468
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
660
26.40%
343
27.46%
317
25.34%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
311
12.44%
146
11.69%
165
13.19%
5
0.20%
2
0.16%
3
0.24%
属性4性別
×
問31 暮らしている地域 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼
りになると思いますか。
0%
10%
20%
女性
50%
60%
70%
80%
90%
100%
24.24%
46.12%
27.96%
0.00%
男性 1.92%
23.86%
45.88%
28.34%
0.00%
女性1.44%
24.62%
46.36%
27.58%
0.00%
全体
男性
40%
全体 1.68%
頼りになる
頼りにならない
全体
30%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
42
1.68%
24
1.92%
18
1.44%
606
24.24%
298
23.86%
308
24.62%
469
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
1153
46.12%
573
45.88%
580
46.36%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
699
27.96%
354
28.34%
345
27.58%
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問31 勤めている会社 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼り
になると思いますか。
0%
全体 2.00%
男性 2.40%
女性1.60%
10%
20%
18.60%
14.79%
全体
男性
女性
40%
60%
70%
80%
25.48%
90%
22.70%
26.06%
50
2%
30
2.40%
20
1.60%
465
18.60%
280
22.42%
185
14.79%
470
14.09%
34.85%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
どちらかといえば頼りに
なる
100%
24.48%
28.26%
32.83%
頼りになる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
29.44%
22.42%
頼りになる
頼りにならない
全体
30%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
736
29.44%
410
32.83%
326
26.06%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
637
25.48%
353
28.26%
284
22.70%
612
24.48%
176
14.09%
436
34.85%
属性4性別
×
問31 国 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思い
ますか。
0%
10%
20%
全体0.68% 11.12%
男性
女性
60%
70%
17
0.68%
12
0.96%
5
0.40%
278
11.12%
145
11.61%
133
10.63%
471
100%
0.00%
50.52%
どちらかといえば頼りに
なる
90%
0.00%
48.60%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
頼りになる
80%
49.56%
38.45%
頼りになる
頼りにならない
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
38.83%
女性0.40% 10.63%
全体
40%
38.64%
男性0.96% 11.61%
全体
30%
0.00%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
966
38.64%
485
38.83%
481
38.45%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
1239
49.56%
607
48.60%
632
50.52%
0
0%
0
0%
0
0%
属性4性別
×
問32あなたは、お子さんに、どの学校まで出て欲しいと思いますか。お子さんが既に学校教育を終え
ておられる方は、お子さんが学校に行っていたときにどう思っていたのかお答えください。
0%
10%
全体0.52% 11.44%
20%
女性0.08%10.15%
男性
女性
60%
70%
80%
高校まで
短大・高専まで
高校まで
13
0.52%
12
0.96%
1
0.08%
9.43% 2.96%
大学まで
大学院まで
短大・高専まで
286
11.44%
159
12.73%
127
10.15%
472
100%
8.33% 3.28%
70.18%
7.19%
90%
8.88% 3.12%
68.86%
5.84%
中学校まで
2500
100%
1249
100%
1251
100%
50%
69.52%
中学校まで
全体
40%
6.52%
男性0.96% 12.73%
全体
30%
その他
大学まで
163
6.52%
73
5.84%
90
7.19%
大学院まで
1738
69.52%
860
68.86%
878
70.18%
その他
222
8.88%
104
8.33%
118
9.43%
78
3.12%
41
3.28%
37
2.96%
属性4性別
×
問33あなたはなにか宗教を信じていますか。
0%
全体
男性
女性
10%
20%
30%
40%
50%
女性
80%
90%
100%
83.11%
16.89%
87.05%
12.95%
全体
男性
70%
85.08%
14.92%
はい
全体
60%
いいえ
はい
2500
100%
1249
100%
1251
100%
473
いいえ
373
14.92%
211
16.89%
162
12.95%
2127
85.08%
1038
83.11%
1089
87.05%
属性4性別
×
問34 神仏を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりま
せんか。
0%
10%
全体
11.08%
男性
10.97%
女性
11.19%
あてはまる
20%
30%
男性
女性
50%
24.42%
80%
27.34%
どちらかといえば、あて
はまる
474
100%
36.27%
どちらかといえば、あてはまらない
277
11.08%
137
10.97%
140
11.19%
90%
31.80%
27.90%
あてはまる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
70%
28.34%
33.57%
どちらかといえば、あてはまる
60%
28.12%
29.00%
全体
全体
40%
725
29%
305
24.42%
420
33.57%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
703
28.12%
354
28.34%
349
27.90%
あてはまらない
795
31.80%
453
36.27%
342
27.34%
属性4性別
×
問34 あの世(死後の世界)の存在を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまります
か、それともあてはまりませんか。
0%
全体
男性
女性
10%
10.68%
9.45%
20%
男性
女性
50%
70%
どちらかといえば、あてはまる
80%
26.86%
どちらかといえば、あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまる
267
10.68%
118
9.45%
149
11.91%
475
100%
40.35%
28.78%
あてはまる
90%
33.60%
29.00%
32.45%
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
29.22%
20.98%
全体
全体
40%
26.72%
11.91%
あてはまる
30%
668
26.72%
262
20.98%
406
32.45%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
725
29%
365
29.22%
360
28.78%
あてはまらない
840
33.60%
504
40.35%
336
26.86%
属性4性別
×
問34 神や霊の存在を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それと
もあてはまりませんか。
0%
10%
全体
9.44%
男性
8.49%
女性
10.39%
あてはまる
20%
男性
女性
40%
50%
60%
70%
24.78%
どちらかといえば、あてはまる
90%
100%
43.28%
47.72%
28.10%
15.69%
38.85%
25.98%
どちらかといえば、あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
80%
27.04%
20.24%
全体
全体
30%
236
9.44%
106
8.49%
130
10.39%
476
506
20.24%
196
15.69%
310
24.78%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
676
27.04%
351
28.10%
325
25.98%
あてはまらない
1082
43.28%
596
47.72%
486
38.85%
属性4性別
×
問34 自然との一体感を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それ
ともあてはまりませんか。
0%
10%
全体
7.96%
男性
8.25%
女性
7.67%
あてはまる
20%
男性
女性
40%
25.28%
25.78%
50%
どちらかといえば、あてはまる
70%
80%
90%
32.64%
34.12%
31.63%
34.35%
どちらかといえば、あて
はまる
199
7.96%
103
8.25%
96
7.67%
477
100%
33.89%
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
33.65%
24.78%
全体
全体
30%
632
25.28%
322
25.78%
310
24.78%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
816
32.64%
395
31.63%
421
33.65%
あてはまらない
853
34.12%
429
34.35%
424
33.89%
属性4性別
×
問34 瞑想や修行などをしてみたい -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それとも
あてはまりませんか。
0%
10%
全体 5.44%
男性 6.00%
女性 4.88%
あてはまる
20%
男性
女性
40%
50%
60%
70%
どちらかといえば、あてはまる
どちらかといえば、あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
100%
46.44%
30.86%
17.83%
90%
42.19%
27.14%
24.66%
80%
44.32%
29.00%
21.24%
全体
全体
30%
136
5.44%
75
6%
61
4.88%
478
531
21.24%
308
24.66%
223
17.83%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
725
29%
339
27.14%
386
30.86%
あてはまらない
1108
44.32%
527
42.19%
581
46.44%
属性4性別
×
問34 宗教にはかかわりたくない -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあて
はまりませんか。
0%
10%
20%
全体
44.64%
男性
44.52%
女性
44.76%
あてはまる
男性
女性
40%
どちらかといえば、あてはまる
全体
全体
30%
50%
70%
80%
どちらかといえば、あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまる
479
12.49%
13.83%
29.66%
693
27.72%
322
25.78%
371
29.66%
100%
12.12%
17.21%
25.78%
1116
44.64%
556
44.52%
560
44.76%
90%
15.52%
27.72%
あてはまる
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
11.75%
あてはまらない
どちらかといえば、あて
はまらない
388
15.52%
215
17.21%
173
13.83%
あてはまらない
303
12.12%
156
12.49%
147
11.75%
属性4性別
×
問35あなたの配偶者(妻、夫)は、どのような仕事をしておられますか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
2.64%
4.44% 6.56% 7.72% 5.64% 4.88%
1.56%
1.52%
4.32%
0.44%
0.08%
2.08%
全体 3.44%
1.52%
1.84%6.73% 3.84%4.72%4.24%
1.60%
2.00%
2.64%
0.32%
0.00%
2.32%
男性 2.80%
女性 4.08%3.76% 7.03% 6.39%
11.59%
15.16%
27.06%
公務員・非営利団体
職員
全体
男性
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
86
3.44%
35
2.80%
51
4.08%
会社・団体の経営者・ その他給与所得者(管 その他給与所得者(事 その他給与所得者(技 その他給与所得者(販 その他給与所得者(そ
教職員
役員
理職)
務職)
術・専門職)
売・サービス)
の他)
66
2.64%
19
1.52%
47
3.76%
111
4.44%
23
1.84%
88
7.03%
164
6.56%
84
6.73%
80
6.39%
193
7.72%
48
3.84%
145
11.59%
141
5.64%
59
4.72%
82
6.55%
70%
80%
0.12%
0.00%
6.44%
122
4.88%
53
4.24%
69
5.52%
90%
100%
32.96%
0.16%
0.00%
4.16%
34.03%
6.55% 5.52%
1.52%
1.04%
6.00%
0.56%
0.16%
1.84%
3.28%
0.08%
0.00%8.71%
公務員・非営利団体職員
その他給与所得者(管理職)
その他給与所得者(技術・専門職)
その他給与所得者(その他)
医師・医療技術士・医療関係者
農林漁業
その他自由業(フリーター含む)
大学・大学院生・短大・専門学校生
その他
全体
60%
31.89%
会社・団体の経営者・役員
その他給与所得者(事務職)
その他給与所得者(販売・サービス)
教職員
自営業
弁護士・公認会計士・税理士
専業主婦(主夫)
高校生・予備校生
配偶者はいない
医師・医療技術士・医
自営業
療関係者
39
1.56%
20
1.60%
19
1.52%
480
38
1.52%
25
2%
13
1.04%
弁護士・公認会計士・ その他自由業(フリー
専業主婦(主夫)
税理士
ター含む)
農林漁業
108
4.32%
33
2.64%
75
6%
11
0.44%
4
0.32%
7
0.56%
2
0.08%
0
0%
2
0.16%
52
2.08%
29
2.32%
23
1.84%
379
15.16%
338
27.06%
41
3.28%
大学・大学院生・短
大・専門学校生
3
0.12%
2
0.16%
1
0.08%
高校生・予備校生
その他
0
0%
0
0%
0
0%
配偶者はいない
161
6.44%
52
4.16%
109
8.71%
824
32.96%
425
34.03%
399
31.89%
属性4性別
×
問36あなたの配偶者(妻、夫)の勤め先の会社・団体全体の規模は、どのくらいですか。
0%
全体
男性
10%
9.48%
20%
30%
10.79%
男性
女性
10人未満
2500
100%
1249
100%
1251
100%
10人以上30人未満
237
9.48%
102
8.17%
135
10.79%
30人以上50人未満
123
4.92%
59
4.72%
64
5.12%
50人以上100人未満
82
3.28%
37
2.96%
45
3.60%
70%
5.48%
28.18%
3.52%
11.83%
300人以上500人未満
124
4.96%
52
4.16%
72
5.76%
54
2.16%
19
1.52%
35
2.80%
481
80%
90%
100%
32.96%
34.03%
7.43%
31.89%
10人以上30人未満
100人以上300人未満
1000人以上5000人未満
どこにも勤めていない
100人以上300人未満
112
4.48%
45
3.60%
67
5.36%
60%
20.00%
5.12%3.60%5.36% 5.76%2.80%
3.60%4.40%
2.00%5.44%
10人未満
50人以上100人未満
500人以上1000人未満
10000人以上
配偶者はいない
全体
50%
4.92%3.28%
4.48%4.96%
2.16%
2.96%
3.60%
1.60%
4.12%
8.17% 4.72%2.96%
3.60%4.16%
1.52%
2.32%
2.80%
1.20%
2.80%
女性
全体
40%
30人以上50人未満
300人以上500人未満
5000人以上10000人未満
わからない
500人以上1000人未満
74
2.96%
29
2.32%
45
3.60%
1000人以上5000人未満
90
3.60%
35
2.80%
55
4.40%
5000人以上10000人未満 10000人以上
40
1.60%
15
1.20%
25
2%
どこにも勤めていない
103
4.12%
35
2.80%
68
5.44%
500
20%
352
28.18%
148
11.83%
わからない
配偶者はいない
137
5.48%
44
3.52%
93
7.43%
824
32.96%
425
34.03%
399
31.89%
属性4性別
×
問37あなたの配偶者(夫、妻)が最後に卒業された学校を以下から選んでください。(現在も在学中の
場合は、その学校を選んでください。また専門学校は除いてお答えください。)
0%
10%
20%
全体 2.64%
26.20%
男性1.52%
28.82%
女性 3.76%
23.58%
30%
40%
50%
12.28%
23.04%
18.98%
5.60%
60%
15.45%
30.62%
70%
2.88%
1.20%
80%
90%
100%
32.96%
34.03%
4.56%
31.89%
中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含む)
短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
大学(旧制高等専門学校)
大学院
配偶者はいない
高等学校(旧制の中学 短期大学(旧制高等学
中学校(旧制の尋常小学
大学(旧制高等専門学
校、高等女学校、実業学 校、新制高等専門学校を
校、高等小学校を含む)
校)
校を含む)
含む)
全体
全体
男性
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
66
2.64%
19
1.52%
47
3.76%
655
26.20%
360
28.82%
295
23.58%
482
307
12.28%
237
18.98%
70
5.60%
576
23.04%
193
15.45%
383
30.62%
大学院
配偶者はいない
72
2.88%
15
1.20%
57
4.56%
824
32.96%
425
34.03%
399
31.89%
属性4性別
×
問38あなたが、最後に卒業された学校はどれですか。(現在も在学中の方は、その学校を選んでくだ
さい。また、専門学校は除いてお答えください。)
0%
10%
20%
全体 2.36%
男性 2.88%
30%
40%
35.40%
29.62%
女性 1.84%
50%
60%
70%
16.64%
80%
40.44%
8.49%
24.78%
100%
5.16%
51.56%
41.17%
90%
7.45%
29.34%
2.88%
中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含む)
短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
大学(旧制高等専門学校)
大学院
高等学校(旧制の中学 短期大学(旧制高等学
中学校(旧制の尋常小学
大学(旧制高等専門学
校、高等女学校、実業学 校、新制高等専門学校を
校、高等小学校を含む)
校)
校を含む)
含む)
全体
全体
男性
女性
2500
100%
1249
100%
1251
100%
59
2.36%
36
2.88%
23
1.84%
885
35.40%
370
29.62%
515
41.17%
483
416
16.64%
106
8.49%
310
24.78%
1011
40.44%
644
51.56%
367
29.34%
大学院
129
5.16%
93
7.45%
36
2.88%
属性4性別
×
問39かりに現在の日本の社会全体を、以下の5つの層にわけるとすれば、あなた自身は、どれに入
ると思いますか。
0%
10%
全体0.92% 13.12%
男性1.12%
14.81%
女性0.72% 11.43%
20%
30%
40%
全体
男性
女性
70%
36.75%
90%
100%
8.52%
10.17%
6.87%
34.45%
46.52%
中の上
80%
35.60%
37.15%
上
2500
100%
1249
100%
1251
100%
60%
41.84%
上
全体
50%
中の中
中の下
中の上
下
中の中
23
0.92%
14
1.12%
9
0.72%
328
13.12%
185
14.81%
143
11.43%
484
中の下
1046
41.84%
464
37.15%
582
46.52%
下
890
35.60%
459
36.75%
431
34.45%
213
8.52%
127
10.17%
86
6.87%
資料 11.3 年齢別クロス集計(2007.12)
2007年12月
485
◆調査について 調査方法: インターネットアンケート
調査時期: 2007年11月~12月
対象属性: 全国20歳~69歳男女
(年齢、性別、在住都道府県に関し、
国民属性分布に近似させて回収)
回収有効回答数: 2500
486
年代(10歳区切り)
×
問1あなたは日ごろ、どの程度健康に気をつけていますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
13.10% 0.80%
53.90%
32.20%
30代
40代
20代
19.70%
60.50%
17.90%
50代
2.00%
60代
30代
23.60%
59.90%
15.90%
0.50%
40代
23.80%
59.80%
15.60%
0.90%
50代
60代
いつも気をつけている
11.00% 0.70%
50.90%
37.50%
58.40%
38.20%
0.00%
3.40%
ときどきは気をつけている あまり気をつけていない まったく気をつけていない
487
いつも気をつけている
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
806
32.20%
82
17.90%
129
23.60%
110
23.80%
212
37.50%
272
58.40%
ときどきは気をつけてい
まったく気をつけていな
あまり気をつけていない
る
い
1347
327
20
53.90%
13.10%
0.80%
277
90
9
60.50%
19.70%
2%
327
87
3
59.90%
15.90%
0.50%
277
72
4
59.80%
15.60%
0.90%
288
62
4
50.90%
11%
0.70%
178
16
0
38.20%
3.40%
0%
年代(10歳区切り)
×
問2あなたは、ふだん健康のために心がけていることがありますか。次の中からあてはまるものすべてを選んでください。※複数回答
80
68.50%
68.00% 68.20%
64.00%
61.70%
60.60%
70 62.60%
58.50%
55.60% 57.30%
53.90%
50.40%
49.80%
49.50%
60 46.90%
47.20%
46.80% 45.10%43.80% 49.80%
46.70%
46.50%
45.90%
45.80%
44.60%
44.50%
43.60%
43.40%
43.30%
43.20%
41.40%
40.10%
50
38.80%
37.70%
37.10%
36.90%
36.20%
36.20%
35.40%
35.30%
34.50%
33.80%
33.40%
32.60%
32.40%
31.40%
31.40%
31.10%
30.80%
30.70%
29.10%29.90% 31.00%
29.00% 25.50%
40
28.80%
28.40%26.90%
26.90%
25.80%
25.10%
24.60%
24.60%
24.50%
24.30%
23.80%
23.10%
22.90% 20.70%
22.50%
22.30%
22.10%
22.10%
21.40%
21.40%
20.70%
20.20%
19.30%
30
18.40%
18.00%
17.90% 17.90%
17.30% 21.10%
17.00% 18.70% 20.10%
17.00%
16.80%
15.90%
15.10%
15.00%
13.80%
13.00% 16.60%
12.30%
11.50%
11.40%
10.40%
9.60% 7.40%
20
8.40%
8.40%
7.20%
7.20%
5.30% 3.10%
5.20% 3.20%
4.60%
3.30%
2.20%
1.10%
0.60%
10
0
2
0
代
全
体
3
0
代
4
0
代
5
0
代
ストレスをためない
睡眠を十分にとる
休養を十分にとる
適度な運動をする
タバコをひかえる
お酒をひかえる
食べすぎない
なるべく外食をしない
なるべくファストフードやコンビニ弁当を食べない
食事の栄養バランスに気をつける
6
0
代
野菜や肉などの生鮮食品を買うとき、生産者のわかるものを選ぶ 無農薬やオーガニック食品を選ぶ
薬はできるだけ飲まない
メディア(新聞・テレビ・インターネット等)で(よくないと)警
メディアで(よいと)推奨されたものを買う
病気をうつされる場所・人・物に近づかない
化学物質の含まれない無添加や天然素材のものを選ぶ
環境を汚染しないようエコを心がける
その他
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
ストレスをためない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1173
46.90%
166
36.20%
236
43.20%
229
49.50%
282
49.80%
259
55.60%
睡眠を十分にとる
1564
62.60%
293
64%
337
61.70%
271
58.50%
343
60.60%
319
68.50%
休養を十分にとる
1116
44.60%
213
46.50%
237
43.40%
202
43.60%
245
43.30%
218
46.80%
適度な運動をする
1113
44.50%
158
34.50%
206
37.70%
164
35.40%
267
47.20%
317
68%
タバコをひかえる
451
18%
101
22.10%
82
15%
57
12.30%
96
17%
114
24.50%
お酒をひかえる
614
24.60%
123
26.90%
123
22.50%
96
20.70%
126
22.30%
145
31.10%
野菜や肉などの生鮮
なるべくファストフード
食事の栄養バランス 食品を買うとき、生産 無農薬やオーガニッ
なるべく外食をしない やコンビニ弁当を食
者のわかるものを選 ク食品を選ぶ
に気をつける
べない
ぶ
食べすぎない
1034
41.40%
141
30.80%
193
35.30%
172
37.10%
260
45.90%
267
57.30%
506
20.20%
82
17.90%
92
16.80%
64
13.80%
125
22.10%
143
30.70%
784
31.40%
130
28.40%
159
29.10%
106
22.90%
178
31.40%
210
45.10%
488
1259
50.40%
169
36.90%
250
45.80%
216
46.70%
305
53.90%
318
68.20%
432
17.30%
44
9.60%
87
15.90%
60
13%
106
18.70%
135
29%
261
10.40%
21
4.60%
46
8.40%
39
8.40%
65
11.50%
90
19.30%
薬はできるだけ飲ま
ない
846
33.80%
123
26.90%
163
29.90%
151
32.60%
205
36.20%
204
43.80%
病気をうつされる場 化学物質の含まれな
メディア(新聞・テレ
環境を汚染しないよう
メディアで(よいと)推
その他
所・人・物に近づかな い無添加や天然素材
ビ・インターネット等)
エコを心がける
奨されたものを買う
のものを選ぶ
い
で(よくないと)警
628
25.10%
82
17.90%
117
21.40%
96
20.70%
146
25.80%
187
40.10%
181
7.20%
34
7.40%
29
5.30%
24
5.20%
41
7.20%
53
11.40%
527
21.10%
78
17%
130
23.80%
85
18.40%
114
20.10%
119
25.50%
608
24.30%
69
15.10%
117
21.40%
77
16.60%
163
28.80%
181
38.80%
810
32.40%
106
23.10%
169
31%
114
24.60%
189
33.40%
232
49.80%
56
2.20%
15
3.30%
17
3.10%
15
3.20%
6
1.10%
3
0.60%
年代(10歳区切り)
×
問3臨床心理学などの心理学について、どの程度知りたいですか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
61.30%
23.50%
12.80% 2.40%
30代
40代
20代
58.70%
28.60%
50代
9.20% 3.50%
60代
30代
24.20%
40代
23.10%
50代
22.40%
60代
60.10%
63.70%
62.20%
62.00%
19.50%
非常に知りたい
どちらかというと知りたい
どちらかというと知りたくない
13.20%
2.60%
10.80% 2.40%
13.30% 2.10%
17.20%
1.30%
まったく知りたくない
489
非常に知りたい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかというと知りたい
588
23.50%
131
28.60%
132
24.20%
107
23.10%
127
22.40%
91
19.50%
1533
61.30%
269
58.70%
328
60.10%
295
63.70%
352
62.20%
289
62%
どちらかというと知りたく
まったく知りたくない
ない
320
59
12.80%
2.40%
42
16
9.20%
3.50%
72
14
13.20%
2.60%
50
11
10.80%
2.40%
75
12
13.30%
2.10%
80
6
17.20%
1.30%
年代(10歳区切り)
×
問4 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、それとも利用
したくないですか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 4.30%
18.70%
48.60%
20代
28.40%
30代
40代
20代
21.80%
6.80%
42.40%
29.00%
50代
60代
30代 4.60%
40代 4.80%
50代 3.00%
60代 2.60%
17.40%
18.40%
19.10%
17.20%
48.70%
49.90%
50.40%
50.90%
29.30%
27.00%
27.60%
29.40%
とても利用したい どちらかといえば利用したい どちらかといえば利用したくない まったく利用したくない
490
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
107
4.30%
31
6.80%
25
4.60%
22
4.80%
17
3%
12
2.60%
468
18.70%
100
21.80%
95
17.40%
85
18.40%
108
19.10%
80
17.20%
1214
48.60%
194
42.40%
266
48.70%
231
49.90%
285
50.40%
237
50.90%
711
28.40%
133
29%
160
29.30%
125
27%
156
27.60%
137
29.40%
年代(10歳区切り)
×
問4 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下のものを利用したいですか、それとも
利用したくないですか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
6.30%
36.50%
37.40%
20代
19.90%
30代
40代
20代
7.90%
37.10%
35.40%
19.70%
50代
60代
30代
5.90%
40代 4.30%
34.20%
39.10%
50代
7.10%
35.70%
60代
6.20%
36.90%
39.00%
38.20%
36.60%
37.60%
20.90%
18.40%
20.70%
19.30%
とても利用したい どちらかといえば利用したい どちらかといえば利用したくない まったく利用したくない
491
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
157
6.30%
36
7.90%
32
5.90%
20
4.30%
40
7.10%
29
6.20%
912
36.50%
170
37.10%
187
34.20%
181
39.10%
202
35.70%
172
36.90%
934
37.40%
162
35.40%
213
39%
177
38.20%
207
36.60%
175
37.60%
497
19.90%
90
19.70%
114
20.90%
85
18.40%
117
20.70%
90
19.30%
年代(10歳区切り)
×
問4 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために、以下の
ものを利用したいですか、それとも利用したくないですか。
臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩み
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
9.70%
42.60%
37.00%
20代
10.70%
30代
40代
20代
11.10%
45.60%
30代
12.10%
42.50%
40代
11.20%
45.40%
34.30%
9.00%
50代
60代
50代
7.20%
39.60%
60代
6.70%
40.80%
36.30%
35.40%
40.80%
37.60%
9.20%
8.00%
12.40%
15.00%
とても利用したい どちらかといえば利用したい どちらかといえば利用したくない まったく利用したくない
492
どちらかといえば利用し どちらかといえば利用し
まったく利用したくない
たい
たくない
とても利用したい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
242
9.70%
51
11.10%
66
12.10%
52
11.20%
41
7.20%
31
6.70%
1065
42.60%
209
45.60%
232
42.50%
210
45.40%
224
39.60%
190
40.80%
925
37%
157
34.30%
198
36.30%
164
35.40%
231
40.80%
175
37.60%
268
10.70%
41
9%
50
9.20%
37
8%
70
12.40%
70
15%
年代(10歳区切り)
×
問5 薬 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度抵抗があり
ますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
32.40%
44.00%
18.80%
4.80%
30代
40代
20代
36.00%
39.30%
18.80%
50代
5.90%
60代
30代
40代
50代
60代
32.80%
30.50%
45.80%
46.80%
29.20%
34.10%
非常に抵抗がある
44.10%
どちらかというと抵抗がある
43.30%
どちらかというと抵抗がない
18.10%
4.90%
19.00%
4.80%
19.60%
4.40%
18.70%
3.90%
まったく抵抗がない
493
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
809
32.40%
165
36%
179
32.80%
141
30.50%
165
29.20%
159
34.10%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1101
471
119
44%
18.80%
4.80%
180
86
27
39.30%
18.80%
5.90%
241
99
27
44.10%
18.10%
4.90%
212
88
22
45.80%
19%
4.80%
265
111
25
46.80%
19.60%
4.40%
202
87
18
43.30%
18.70%
3.90%
年代(10歳区切り)
×
問5 瞑想 -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のものを用いることに、どの程度抵抗があ
りますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
13.40%
35.60%
38.00%
13.00%
30代
40代
20代
14.20%
37.60%
36.50%
50代
11.80%
60代
30代
16.80%
40代
11.00%
50代
11.10%
60代
13.30%
非常に抵抗がある
36.10%
36.70%
34.10%
34.10%
どちらかというと抵抗がある
34.80%
40.00%
40.50%
38.20%
どちらかというと抵抗がない
12.30%
12.30%
14.30%
14.40%
まったく抵抗がない
494
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
334
13.40%
65
14.20%
92
16.80%
51
11%
63
11.10%
62
13.30%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
891
949
326
35.60%
38%
13%
172
167
54
37.60%
36.50%
11.80%
197
190
67
36.10%
34.80%
12.30%
170
185
57
36.70%
40%
12.30%
193
229
81
34.10%
40.50%
14.30%
159
178
67
34.10%
38.20%
14.40%
年代(10歳区切り)
×
問5 臨床心理士などによる心理カウンセリング -何か心の悩みがある時に、それらを改善するために以下のも
のを用いることに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
8.00%
41.90%
39.00%
11.20%
30代
40代
20代
9.80%
42.80%
37.30%
50代
10.00%
60代
30代
40代
50代
60代
7.90%
6.00%
7.20%
9.00%
非常に抵抗がある
39.70%
40.60%
45.20%
40.80%
どちらかというと抵抗がある
40.10%
12.30%
41.90%
11.40%
36.20%
39.50%
どちらかというと抵抗がない
11.30%
10.70%
まったく抵抗がない
495
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
199
8%
45
9.80%
43
7.90%
28
6%
41
7.20%
42
9%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1047
974
280
41.90%
39%
11.20%
196
171
46
42.80%
37.30%
10%
217
219
67
39.70%
40.10%
12.30%
188
194
53
40.60%
41.90%
11.40%
256
205
64
45.20%
36.20%
11.30%
190
184
50
40.80%
39.50%
10.70%
年代(10歳区切り)
×
問6 病気によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗が
ありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.70%
37.40%
40.70%
10.20%
30代
40代
20代
13.80%
39.10%
36.70%
50代
10.50%
60代
30代
11.40%
40代
10.20%
50代
11.00%
60代
38.10%
37.80%
32.30%
12.40%
40.60%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
40.50%
41.50%
45.60%
38.40%
どちらかというと抵抗がない
10.10%
10.60%
11.10%
8.60%
まったく抵抗がない
496
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
292
11.70%
63
13.80%
62
11.40%
47
10.20%
62
11%
58
12.40%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
934
1018
256
37.40%
40.70%
10.20%
179
168
48
39.10%
36.70%
10.50%
208
221
55
38.10%
40.50%
10.10%
175
192
49
37.80%
41.50%
10.60%
183
258
63
32.30%
45.60%
11.10%
189
179
40
40.60%
38.40%
8.60%
年代(10歳区切り)
×
問6 病気による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗があります
か。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.00%
36.20%
42.50%
10.20%
30代
40代
20代
11.60%
34.70%
40.80%
50代
12.90%
60代
30代
11.00%
35.90%
43.00%
10.10%
40代
9.50%
38.20%
41.30%
11.00%
50代
10.10%
60代
47.30%
33.20%
13.30%
39.70%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
39.10%
どちらかというと抵抗がない
9.40%
7.90%
まったく抵抗がない
497
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
276
11%
53
11.60%
60
11%
44
9.50%
57
10.10%
62
13.30%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
905
1063
256
36.20%
42.50%
10.20%
159
187
59
34.70%
40.80%
12.90%
196
235
55
35.90%
43%
10.10%
177
191
51
38.20%
41.30%
11%
188
268
53
33.20%
47.30%
9.40%
185
182
37
39.70%
39.10%
7.90%
年代(10歳区切り)
×
問6 老化によって低下した記憶力を回復させるために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗が
ありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.60%
37.60%
40.60%
10.20%
30代
40代
20代
12.90%
40.60%
36.70%
50代
9.80%
60代
30代
11.20%
40代
10.60%
50代
11.50%
60代
11.80%
非常に抵抗がある
38.30%
36.90%
33.00%
40.30%
どちらかというと抵抗がある
39.60%
42.10%
44.90%
39.10%
どちらかというと抵抗がない
11.00%
10.40%
10.60%
8.80%
まったく抵抗がない
498
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
289
11.60%
59
12.90%
61
11.20%
49
10.60%
65
11.50%
55
11.80%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
941
1015
255
37.60%
40.60%
10.20%
186
168
45
40.60%
36.70%
9.80%
209
216
60
38.30%
39.60%
11%
171
195
48
36.90%
42.10%
10.40%
187
254
60
33%
44.90%
10.60%
188
182
41
40.30%
39.10%
8.80%
年代(10歳区切り)
×
問6 老化による記憶力の低下を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗があります
か。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.40%
37.90%
41.50%
9.20%
30代
40代
20代
12.20%
36.90%
40.20%
50代
10.70%
60代
30代
10.60%
40代
10.60%
50代
11.10%
60代
39.60%
38.00%
34.30%
12.70%
41.20%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
40.10%
9.70%
41.30%
10.20%
46.60%
8.00%
38.60%
7.50%
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
499
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
285
11.40%
56
12.20%
58
10.60%
49
10.60%
63
11.10%
59
12.70%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
947
1038
230
37.90%
41.50%
9.20%
169
184
49
36.90%
40.20%
10.70%
216
219
53
39.60%
40.10%
9.70%
176
191
47
38%
41.30%
10.20%
194
264
45
34.30%
46.60%
8%
192
180
35
41.20%
38.60%
7.50%
年代(10歳区切り)
×
問6 老化によって低下した身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を回復させるために薬を使う -あなたは、以
下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.90%
37.80%
40.60%
9.70%
30代
40代
20代
12.70%
40.00%
38.40%
50代
9.00%
60代
30代
10.80%
40代
8.90%
50代
13.30%
60代
13.70%
非常に抵抗がある
37.50%
37.80%
34.30%
40.10%
どちらかというと抵抗がある
41.00%
10.60%
43.40%
9.90%
42.00%
10.40%
38.00%
どちらかというと抵抗がない
8.20%
まったく抵抗がない
500
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
297
11.90%
58
12.70%
59
10.80%
41
8.90%
75
13.30%
64
13.70%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
944
1016
243
37.80%
40.60%
9.70%
183
176
41
40%
38.40%
9%
205
224
58
37.50%
41%
10.60%
175
201
46
37.80%
43.40%
9.90%
194
238
59
34.30%
42%
10.40%
187
177
38
40.10%
38%
8.20%
年代(10歳区切り)
×
問6 老化による身体能力の低下(筋力・持久力・反射神経など)を防ぐために薬を使う -あなたは、以下のこと
がらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
11.50%
38.70%
41.10%
8.80%
30代
40代
20代
11.60%
40.00%
39.50%
50代
9.00%
60代
30代
10.40%
37.50%
42.90%
9.20%
40代
8.90%
39.50%
42.10%
9.50%
50代
60代
12.00%
14.60%
非常に抵抗がある
36.60%
40.60%
どちらかというと抵抗がある
43.50%
8.00%
36.70%
8.20%
どちらかというと抵抗がない
まったく抵抗がない
501
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
287
11.50%
53
11.60%
57
10.40%
41
8.90%
68
12%
68
14.60%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
967
1027
219
38.70%
41.10%
8.80%
183
181
41
40%
39.50%
9%
205
234
50
37.50%
42.90%
9.20%
183
195
44
39.50%
42.10%
9.50%
207
246
45
36.60%
43.50%
8%
189
171
38
40.60%
36.70%
8.20%
年代(10歳区切り)
×
問7 身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
27.40%
17.20%
31.40%
24.00%
30代
40代
20代
18.80%
28.80%
27.50%
50代
24.90%
60代
30代
19.40%
40代
19.70%
50代
11.10%
60代
9.40%
そう思う
31.30%
23.10%
28.70%
25.60%
22.10%
どちらかといえばそう思う
24.50%
24.70%
28.50%
27.20%
25.10%
36.00%
43.30%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
502
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
430
17.20%
126
27.50%
106
19.40%
91
19.70%
63
11.10%
44
9.40%
684
27.40%
132
28.80%
171
31.30%
133
28.70%
145
25.60%
103
22.10%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
600
24%
86
18.80%
135
24.70%
107
23.10%
154
27.20%
117
25.10%
786
31.40%
114
24.90%
134
24.50%
132
28.50%
204
36%
202
43.30%
年代(10歳区切り)
×
問7 身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思わ
れますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
5.90%
11.50%
53.10%
29.50%
30代
40代
20代
50代
9.20% 3.70%
43.90%
43.20%
60代
30代
30.40%
40代
50代
60代
28.10%
55.50%
58.70%
22.10%
53.90%
25.10%
そう思う
52.60%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
10.40%
6.60%
4.50%
11.90%
13.10%
12.90%
6.20%
8.20%
そう思わない
503
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
737
29.50%
198
43.20%
166
30.40%
130
28.10%
125
22.10%
117
25.10%
1328
53.10%
201
43.90%
287
52.60%
257
55.50%
332
58.70%
251
53.90%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
288
11.50%
42
9.20%
57
10.40%
55
11.90%
74
13.10%
60
12.90%
147
5.90%
17
3.70%
36
6.60%
21
4.50%
35
6.20%
38
8.20%
年代(10歳区切り)
×
問7 記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
43.50%
8.20% 2.70%
45.60%
30代
40代
20代
39.10%
53.10%
50代
2.00%
5.90%
60代
30代
45.60%
40代
44.50%
50代
36.60%
60代
38.80%
そう思う
どちらかといえばそう思う
43.80%
43.00%
7.70% 2.90%
10.80% 1.70%
52.50%
8.00% 3.00%
48.50%
8.80% 3.90%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
504
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
1087
43.50%
243
53.10%
249
45.60%
206
44.50%
207
36.60%
181
38.80%
1140
45.60%
179
39.10%
239
43.80%
199
43%
297
52.50%
226
48.50%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
205
8.20%
27
5.90%
42
7.70%
50
10.80%
45
8%
41
8.80%
68
2.70%
9
2%
16
2.90%
8
1.70%
17
3%
18
3.90%
年代(10歳区切り)
×
問7 性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
16.70%
38.60%
31.40%
13.20%
30代
40代
20代
50代
13.10%
30.80%
35.40%
20.70%
60代
30代
16.80%
40代
16.80%
50代 5.50%
60代
7.50%
そう思う
33.90%
35.90%
23.00%
どちらかといえばそう思う
11.40%
40.20%
31.50%
30.90%
13.40%
43.80%
44.00%
どちらかといえばそう思わない
19.80%
25.50%
そう思わない
505
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
331
13.20%
95
20.70%
92
16.80%
78
16.80%
31
5.50%
35
7.50%
786
31.40%
162
35.40%
196
35.90%
146
31.50%
175
30.90%
107
23%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
966
38.60%
141
30.80%
185
33.90%
186
40.20%
248
43.80%
205
44%
417
16.70%
60
13.10%
73
13.40%
53
11.40%
112
19.80%
119
25.50%
年代(10歳区切り)
×
問8 薬で身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 4.60% 9.80%
26.20%
59.50%
30代
40代
20代
26.20%
13.10%
6.30%
50代
54.40%
60代
30代
5.70%
40代
6.30%
13.00%
27.40%
10.60%
50代 3.00%7.20%
4.90%
60代 1.50%
そう思う
53.80%
27.50%
26.00%
23.80%
どちらかといえばそう思う
55.70%
63.80%
69.70%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
506
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
114
4.60%
29
6.30%
31
5.70%
29
6.30%
17
3%
7
1.50%
244
9.80%
60
13.10%
71
13%
49
10.60%
41
7.20%
23
4.90%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
655
26.20%
120
26.20%
150
27.50%
127
27.40%
147
26%
111
23.80%
1487
59.50%
249
54.40%
294
53.80%
258
55.70%
361
63.80%
325
69.70%
年代(10歳区切り)
×
問8 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように
思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
17.90%
5.00%
43.60%
33.50%
30代
40代
20代
15.70%
6.80%
50代
43.20%
34.30%
60代
30代 5.30%
40代
18.50%
6.90%
50代 3.40%
60代 3.00%
31.00%
16.50%
そう思う
39.70%
34.10%
19.20%
19.10%
45.20%
35.50%
32.60%
どちらかといえばそう思う
42.00%
47.90%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
507
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
125
5%
31
6.80%
29
5.30%
32
6.90%
19
3.40%
14
3%
447
17.90%
72
15.70%
101
18.50%
89
19.20%
108
19.10%
77
16.50%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
838
33.50%
157
34.30%
169
31%
158
34.10%
201
35.50%
152
32.60%
1090
43.60%
198
43.20%
247
45.20%
184
39.70%
238
42%
223
47.90%
年代(10歳区切り)
×
問8 薬で記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
7.60%
31.70%
23.20%
37.60%
30代
40代
20代
8.50%
31.40%
22.30%
50代
37.80%
60代
30代
40代
50代
7.90%
9.90%
6.20%
60代 5.40%
そう思う
29.70%
22.20%
32.00%
34.60%
33.20%
34.50%
23.50%
26.10%
21.20%
32.20%
どちらかといえばそう思う
40.30%
どちらかといえばそう思わない
41.20%
そう思わない
508
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
189
7.60%
39
8.50%
43
7.90%
46
9.90%
35
6.20%
25
5.40%
579
23.20%
102
22.30%
121
22.20%
109
23.50%
148
26.10%
99
21.20%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
792
31.70%
144
31.40%
162
29.70%
148
32%
188
33.20%
150
32.20%
940
37.60%
173
37.80%
220
40.30%
160
34.60%
195
34.50%
192
41.20%
年代(10歳区切り)
×
問8 薬で性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 3.00% 8.90%
27.80%
60.30%
30代
40代
20代 3.90% 10.50%
25.80%
50代
59.80%
60代
30代 4.40%
26.60%
11.50%
40代 4.50% 9.10%
50代 1.10%7.80%
5.40%
60代 1.10%
そう思う
57.50%
54.60%
31.70%
28.80%
26.20%
どちらかといえばそう思う
62.40%
67.40%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
509
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
74
3%
18
3.90%
24
4.40%
21
4.50%
6
1.10%
5
1.10%
222
8.90%
48
10.50%
63
11.50%
42
9.10%
44
7.80%
25
5.40%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
696
27.80%
118
25.80%
145
26.60%
147
31.70%
163
28.80%
122
26.20%
1508
60.30%
274
59.80%
314
57.50%
253
54.60%
353
62.40%
314
67.40%
年代(10歳区切り)
×
問9 薬で身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
35.20%
48.40%
11.90%
4.50%
30代
40代
20代
14.80%
36.70%
44.30%
50代
4.10%
60代
30代
40代
50代
60代
非常に抵抗がある
45.20%
35.30%
41.50%
14.10%
15.10%
37.10%
37.30%
49.10%
62.00%
どちらかというと抵抗がある
5.30%
6.30%
9.70% 3.90%
29.40%
どちらかというと抵抗がない
6.00%2.60%
まったく抵抗がない
510
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1209
48.40%
203
44.30%
247
45.20%
192
41.50%
278
49.10%
289
62%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
881
298
112
35.20%
11.90%
4.50%
168
68
19
36.70%
14.80%
4.10%
193
77
29
35.30%
14.10%
5.30%
172
70
29
37.10%
15.10%
6.30%
211
55
22
37.30%
9.70%
3.90%
137
28
12
29.40%
6%
2.60%
年代(10歳区切り)
×
問9 薬で身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗があり
ますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
37.10%
41.00%
17.40%
4.50%
30代
40代
20代
40.20%
40.20%
15.10%
50代
4.60%
60代
30代
40代
50代
38.50%
31.10%
非常に抵抗がある
41.00%
どちらかというと抵抗がある
16.80%
18.10%
44.50%
35.00%
60代
39.70%
41.50%
38.80%
どちらかというと抵抗がない
20.10%
16.50%
4.90%
6.30%
3.40%
3.60%
まったく抵抗がない
511
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
927
37.10%
184
40.20%
210
38.50%
144
31.10%
198
35%
191
41%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1024
436
113
41%
17.40%
4.50%
184
69
21
40.20%
15.10%
4.60%
217
92
27
39.70%
16.80%
4.90%
206
84
29
44.50%
18.10%
6.30%
235
114
19
41.50%
20.10%
3.40%
181
77
17
38.80%
16.50%
3.60%
年代(10歳区切り)
×
問9 薬で記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
40.20%
32.60%
21.10%
6.20%
30代
40代
20代
40.80%
36.50%
17.20%
50代
5.50%
60代
30代
34.60%
40代
28.30%
50代
29.00%
60代
40.10%
42.50%
39.60%
35.00%
非常に抵抗がある
どちらかというと抵抗がある
38.00%
どちらかというと抵抗がない
19.20%
21.40%
25.60%
21.50%
6.00%
7.80%
5.80%
5.60%
まったく抵抗がない
512
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
814
32.60%
167
36.50%
189
34.60%
131
28.30%
164
29%
163
35%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
1004
528
154
40.20%
21.10%
6.20%
187
79
25
40.80%
17.20%
5.50%
219
105
33
40.10%
19.20%
6%
197
99
36
42.50%
21.40%
7.80%
224
145
33
39.60%
25.60%
5.80%
177
100
26
38%
21.50%
5.60%
年代(10歳区切り)
×
問9 薬で性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
56.90%
7.90% 3.20%
32.00%
30代
40代
20代
59.40%
50代
7.90% 2.60%
30.10%
60代
30代
40代
50代
60代
非常に抵抗がある
55.10%
51.60%
56.90%
61.80%
どちらかというと抵抗がある
8.60% 4.40%
31.90%
10.20% 4.30%
33.90%
8.00% 2.50%
32.70%
31.10%
どちらかというと抵抗がない
2.40%
4.70%
まったく抵抗がない
513
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1423
56.90%
272
59.40%
301
55.10%
239
51.60%
322
56.90%
288
61.80%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
799
197
81
32%
7.90%
3.20%
138
36
12
30.10%
7.90%
2.60%
174
47
24
31.90%
8.60%
4.40%
157
47
20
33.90%
10.20%
4.30%
185
45
14
32.70%
8%
2.50%
145
22
11
31.10%
4.70%
2.40%
年代(10歳区切り)
×
問10 子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
19.50%
36.70%
20.90%
22.90%
30代
40代
20代
17.70%
21.20%
35.60%
50代
25.50%
60代
30代
40代
50代
60代
18.70%
24.00%
17.30%
20.40%
そう思う
34.10%
22.50%
36.10%
39.90%
37.80%
どちらかといえばそう思う
19.00%
20.00%
21.70%
どちらかといえばそう思わない
24.70%
21.00%
22.80%
20.20%
そう思わない
514
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
488
19.50%
81
17.70%
102
18.70%
111
24%
98
17.30%
95
20.40%
918
36.70%
163
35.60%
186
34.10%
167
36.10%
226
39.90%
176
37.80%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
522
20.90%
97
21.20%
123
22.50%
88
19%
113
20%
101
21.70%
572
22.90%
117
25.50%
135
24.70%
97
21%
129
22.80%
94
20.20%
年代(10歳区切り)
×
問10 子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どの
ように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
26.00%
12.30%
47.30%
14.40%
30代
40代
20代
27.50%
43.20%
50代
17.00%
12.20%
60代
30代
27.70%
40代
27.90%
50代
60代
47.10%
51.60%
20.80%
27.00%
そう思う
45.40%
どちらかといえばそう思う
48.50%
どちらかといえばそう思わない
11.70%
15.20%
9.70%
15.30%
14.50%
12.90%
13.10%
11.60%
そう思わない
515
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
651
26%
126
27.50%
151
27.70%
129
27.90%
118
20.80%
126
27%
1182
47.30%
198
43.20%
248
45.40%
218
47.10%
292
51.60%
226
48.50%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
307
12.30%
56
12.20%
64
11.70%
45
9.70%
82
14.50%
60
12.90%
360
14.40%
78
17%
83
15.20%
71
15.30%
74
13.10%
54
11.60%
年代(10歳区切り)
×
問10 子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
30.60%
10.80%
45.60%
13.00%
30代
40代
20代
29.90%
43.20%
50代
16.80%
10.00%
60代
30代
32.10%
40代
32.80%
50代
26.00%
60代
32.60%
そう思う
どちらかといえばそう思う
42.90%
44.10%
50.70%
46.80%
どちらかといえばそう思わない
11.40%
13.70%
9.50%
13.60%
12.00%
10.90%
11.30%
9.70%
そう思わない
516
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
764
30.60%
137
29.90%
175
32.10%
152
32.80%
147
26%
152
32.60%
1141
45.60%
198
43.20%
234
42.90%
204
44.10%
287
50.70%
218
46.80%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
271
10.80%
46
10%
62
11.40%
44
9.50%
68
12%
51
10.90%
324
13%
77
16.80%
75
13.70%
63
13.60%
64
11.30%
45
9.70%
年代(10歳区切り)
×
問10 子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
33.20%
40.00%
21.00%
5.80%
30代
40代
20代 5.50%
18.10%
50代
44.80%
31.70%
60代
30代 4.20%
40代
41.00%
17.40%
7.10%
24.00%
50代 5.50%
23.90%
60代
21.70%
6.90%
そう思う
どちらかといえばそう思う
37.40%
38.90%
30.00%
41.50%
29.20%
46.40%
どちらかといえばそう思わない
25.10%
そう思わない
517
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
144
5.80%
25
5.50%
23
4.20%
33
7.10%
31
5.50%
32
6.90%
525
21%
83
18.10%
95
17.40%
111
24%
135
23.90%
101
21.70%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1001
40%
145
31.70%
224
41%
180
38.90%
235
41.50%
216
46.40%
830
33.20%
205
44.80%
204
37.40%
139
30%
165
29.20%
117
25.10%
年代(10歳区切り)
×
問11 薬で子どもの身長を高くしたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 3.00% 10.00%
28.60%
58.30%
30代
40代
20代 1.70% 10.50%
22.30%
50代
65.50%
60代
30代 2.00%7.10%
40代 4.50% 10.40%
61.90%
28.90%
27.60%
57.50%
50代 3.20% 12.20%
30.60%
54.10%
60代 3.40% 10.10%
33.30%
53.20%
そう思う
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
518
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
75
3%
8
1.70%
11
2%
21
4.50%
18
3.20%
16
3.40%
251
10%
48
10.50%
39
7.10%
48
10.40%
69
12.20%
47
10.10%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
716
28.60%
102
22.30%
158
28.90%
128
27.60%
173
30.60%
155
33.30%
1458
58.30%
300
65.50%
338
61.90%
266
57.50%
306
54.10%
248
53.20%
年代(10歳区切り)
×
問11 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、
どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 3.00% 11.40%
30.80%
54.70%
30代
40代
20代 2.20% 11.80%
50代
63.30%
22.70%
60代
30代 2.40% 8.20%
40代 3.70% 11.40%
50代 3.50%
60代 3.20%
13.30%
12.70%
そう思う
29.30%
60.10%
29.40%
36.00%
35.60%
どちらかといえばそう思う
55.50%
47.20%
48.50%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
519
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
76
3%
10
2.20%
13
2.40%
17
3.70%
20
3.50%
15
3.20%
286
11.40%
54
11.80%
45
8.20%
53
11.40%
75
13.30%
59
12.70%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
770
30.80%
104
22.70%
160
29.30%
136
29.40%
204
36%
166
35.60%
1368
54.70%
290
63.30%
328
60.10%
257
55.50%
267
47.20%
226
48.50%
年代(10歳区切り)
×
問11 薬で子どもの記憶力を高めたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 4.00%
28.90%
13.70%
53.40%
30代
40代
20代 3.30% 11.80%
50代
62.00%
22.90%
60代
30代 3.10% 9.70%
40代 4.50%
50代 4.90%
60代 3.90%
27.90%
14.50%
16.80%
15.70%
そう思う
59.50%
27.70%
33.20%
32.20%
どちらかといえばそう思う
53.10%
45.10%
48.30%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
520
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
100
4%
15
3.30%
17
3.10%
21
4.50%
28
4.90%
18
3.90%
342
13.70%
54
11.80%
53
9.70%
67
14.50%
95
16.80%
73
15.70%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
723
28.90%
105
22.90%
151
27.70%
129
27.90%
188
33.20%
150
32.20%
1335
53.40%
284
62%
325
59.50%
246
53.10%
255
45.10%
225
48.30%
年代(10歳区切り)
×
問11 薬で子どもの性格を変えたい -あなたは、以下のことがらについて、どのように思われますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
5.00%
全体 1.60%
27.20%
66.30%
30代
40代
4.60%
20代 1.50%
50代
73.40%
20.50%
60代
4.80%
30代 1.30%
5.40%
40代 2.20%
5.50%
50代 1.40%
4.70%
60代 1.50%
そう思う
23.10%
26.80%
33.70%
30.70%
どちらかといえばそう思う
70.90%
65.70%
59.40%
63.10%
どちらかといえばそう思わない
そう思わない
521
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
39
1.60%
7
1.50%
7
1.30%
10
2.20%
8
1.40%
7
1.50%
125
5%
21
4.60%
26
4.80%
25
5.40%
31
5.50%
22
4.70%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
679
27.20%
94
20.50%
126
23.10%
124
26.80%
191
33.70%
143
30.70%
1657
66.30%
336
73.40%
387
70.90%
304
65.70%
336
59.40%
294
63.10%
年代(10歳区切り)
×
問12 薬で子どもの身長を高くする -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
56.40%
30.50%
9.00% 4.10%
30代
40代
20代
25.80%
61.40%
50代
8.10% 4.80%
60代
30代
62.50%
40代
51.40%
50代
51.60%
60代
非常に抵抗がある
55.60%
どちらかというと抵抗がある
27.10%
30.90%
34.80%
33.50%
どちらかというと抵抗がない
7.90% 2.60%
11.40%
6.30%
10.10% 3.50%
7.30% 3.60%
まったく抵抗がない
522
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1411
56.40%
281
61.40%
341
62.50%
238
51.40%
292
51.60%
259
55.60%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
762
224
103
30.50%
9%
4.10%
118
37
22
25.80%
8.10%
4.80%
148
43
14
27.10%
7.90%
2.60%
143
53
29
30.90%
11.40%
6.30%
197
57
20
34.80%
10.10%
3.50%
156
34
17
33.50%
7.30%
3.60%
年代(10歳区切り)
×
問12 薬で子どもの身体能力(筋力・持久力・反射神経など)を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度
抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
54.30%
31.90%
10.00% 3.80%
30代
40代
20代
26.00%
60.50%
50代
9.00% 4.60%
60代
30代
40代
50代
60代
非常に抵抗がある
26.60%
62.10%
51.00%
47.20%
51.10%
どちらかというと抵抗がある
32.80%
37.80%
36.10%
どちらかというと抵抗がない
8.60% 2.70%
9.90%
6.30%
12.40% 2.70%
9.90% 3.00%
まったく抵抗がない
523
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1357
54.30%
277
60.50%
339
62.10%
236
51%
267
47.20%
238
51.10%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
798
250
95
31.90%
10%
3.80%
119
41
21
26%
9%
4.60%
145
47
15
26.60%
8.60%
2.70%
152
46
29
32.80%
9.90%
6.30%
214
70
15
37.80%
12.40%
2.70%
168
46
14
36.10%
9.90%
3%
年代(10歳区切り)
×
問12 薬で子どもの記憶力を高める -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
53.40%
11.20% 4.00%
31.40%
30代
40代
20代
25.30%
60.70%
50代
9.40% 4.60%
60代
30代
40代
50代
60代
非常に抵抗がある
62.50%
50.10%
45.10%
49.40%
どちらかというと抵抗がある
25.60%
31.50%
37.60%
36.30%
どちらかというと抵抗がない
9.20% 2.70%
12.30%
14.00%
6.00%
3.40%
10.90% 3.40%
まったく抵抗がない
524
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1336
53.40%
278
60.70%
341
62.50%
232
50.10%
255
45.10%
230
49.40%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
784
280
100
31.40%
11.20%
4%
116
43
21
25.30%
9.40%
4.60%
140
50
15
25.60%
9.20%
2.70%
146
57
28
31.50%
12.30%
6%
213
79
19
37.60%
14%
3.40%
169
51
16
36.30%
10.90%
3.40%
年代(10歳区切り)
×
問12 薬で子どもの性格を変える -あなたは、以下のことがらに、どの程度抵抗がありますか。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
67.40%
24.70%
3.20%
4.60%
30代
40代
20代
20.30%
70.70%
50代
4.80%4.10%
60代
30代
40代
50代
60代
非常に抵抗がある
20.90%
71.80%
64.80%
62.90%
25.10%
30.20%
26.60%
67.40%
どちらかというと抵抗がある
どちらかというと抵抗がない
5.10%
2.20%
5.40%4.80%
4.40%
2.50%
2.80%
3.20%
まったく抵抗がない
525
非常に抵抗がある
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1686
67.40%
324
70.70%
392
71.80%
300
64.80%
356
62.90%
314
67.40%
どちらかというと抵抗が どちらかというと抵抗が
まったく抵抗がない
ある
ない
618
116
80
24.70%
4.60%
3.20%
93
22
19
20.30%
4.80%
4.10%
114
28
12
20.90%
5.10%
2.20%
116
25
22
25.10%
5.40%
4.80%
171
25
14
30.20%
4.40%
2.50%
124
15
13
26.60%
3.20%
2.80%
年代(10歳区切り)
×
問13ゲームや書籍などによる「脳トレ」は、脳を鍛えたり、活性化することに役立つと思いますか、それとも思い
ませんか。
0%
10%
全体
20代
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
11.40%
58.30%
20.60%
11.10%
60.00%
17.90%
90%
100%
5.60%4.10%
7.60% 3.30%
30代
20.30%
59.70%
10.80%
5.10%4.00%
40代
21.40%
58.50%
11.20%
4.30%4.50%
50代
20.80%
60代
どちらかといえば思う
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
12.70%
56.40%
22.30%
そう思う
11.30%
56.70%
どちらかといえば思わない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえば思う
514
20.60%
82
17.90%
111
20.30%
99
21.40%
118
20.80%
104
22.30%
1457
58.30%
275
60%
326
59.70%
271
58.50%
321
56.70%
263
56.40%
526
そう思わない
どちらかといえば思わな
そう思わない
い
285
11.40%
51
11.10%
59
10.80%
52
11.20%
64
11.30%
59
12.70%
6.70% 4.40%
4.30%4.30%
わからない
わからない
141
5.60%
35
7.60%
28
5.10%
20
4.30%
38
6.70%
20
4.30%
103
4.10%
15
3.30%
22
4%
21
4.50%
25
4.40%
20
4.30%
年代(10歳区切り)
×
問14あなたは、ふだんゲームや書籍などの「脳トレ」を、どの程度していますか。
0%
10%
20%
全体 4.40% 9.40%
9.80%
8.50%
14.20%
30代 2.90%7.30%
9.00%
14.70%
40代 1.90%8.00%
11.20%
50代
7.10%
11.80%
60代
7.30%
11.60%
全体
20代
30代
40代
50代
60代
11.80%
週に数回
16.50%
60%
4.40%
10.10%
8.20%
週に1回程度
3.70%
年に数回
週に1回程度
41.70%
39.50%
年に1回程度
月に1回程度
245
9.80%
39
8.50%
49
9%
52
11.20%
50
8.80%
55
11.80%
527
100%
49.10%
10.10% 1.90%
236
9.40%
38
8.30%
40
7.30%
37
8%
67
11.80%
54
11.60%
90%
47.50%
10.80% 3.90%
月に1回程度
80%
43.20%
6.40%
20.50%
70%
44.30%
4.10%
20.30%
週に数回
111
4.40%
12
2.60%
16
2.90%
9
1.90%
40
7.10%
34
7.30%
50%
15.40%
15.10%
8.80%
ほとんど毎日
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
40%
12.40%
20代 2.60% 8.30%
ほとんど毎日
全体
30%
全くしていない
年に数回
311
12.40%
65
14.20%
80
14.70%
70
15.10%
57
10.10%
38
8.20%
年に1回程度
386
15.40%
93
20.30%
90
16.50%
95
20.50%
61
10.80%
47
10.10%
全くしていない
103
4.10%
20
4.40%
35
6.40%
17
3.70%
22
3.90%
9
1.90%
1108
44.30%
191
41.70%
236
43.20%
183
39.50%
269
47.50%
229
49.10%
年代(10歳区切り)
×
問15 科学技術の発展は人々を幸福にする -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反
対ですか。
0%
全体
10%
30%
40%
50%
17.00%
40代
16.80%
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
0.90%
2.00%
0.40%
1.30%
0.00%
0.50%
35.00%
どちらかといえば賛成
474
19%
102
22.30%
93
17%
78
16.80%
102
18%
99
21.20%
1179
47.20%
228
49.80%
257
47.10%
236
51%
263
46.50%
194
41.60%
528
0.40%
1.70%
35.00%
どちらともいえない
賛成
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
0.20%
2.60%
30.50%
41.60%
どちらかといえば反対
どちらともいえない
797
31.90%
115
25.10%
180
33%
141
30.50%
198
35%
163
35%
どちらかといえば反対
40
1.60%
12
2.60%
11
2%
6
1.30%
3
0.50%
8
1.70%
100%
0.40%
1.60%
33.00%
46.50%
どちらかといえば賛成
90%
25.10%
51.00%
21.20%
賛成
80%
31.90%
47.10%
18.00%
60代
70%
49.80%
22.30%
30代
60%
47.20%
19.00%
20代
50代
20%
反対
反対
10
0.40%
1
0.20%
5
0.90%
2
0.40%
0
0%
2
0.40%
年代(10歳区切り)
×
問15 科学技術の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、科学についての以下の意見に賛成ですか、それと
も反対ですか。
0%
全体
20代
30代
40代
10%
7.30%
20%
30%
50%
60%
70%
90%
100%
7.40%2.50%
1.30%
6.10%
44.80%
35.60%
1.80%
5.90%
52.40%
30.00%
9.90%
80%
54.80%
28.00%
12.20%
6.30%
40%
8.60% 2.40%
55.70%
27.00%
50代 4.40%
24.00%
59.90%
8.30% 3.40%
60代 4.10%
23.80%
60.50%
7.90% 3.60%
賛成
どちらかといえば賛成
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらともいえない
賛成
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえば賛成
183
7.30%
56
12.20%
54
9.90%
29
6.30%
25
4.40%
19
4.10%
699
28%
163
35.60%
164
30%
125
27%
136
24%
111
23.80%
529
どちらかといえば反対
どちらともいえない
1371
54.80%
205
44.80%
286
52.40%
258
55.70%
339
59.90%
282
60.50%
どちらかといえば反対
184
7.40%
28
6.10%
32
5.90%
40
8.60%
47
8.30%
37
7.90%
反対
反対
63
2.50%
6
1.30%
10
1.80%
11
2.40%
19
3.40%
17
3.60%
年代(10歳区切り)
×
問15 科学技術の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、科学についての以下の意見に賛成
ですか、それとも反対ですか。
0%
全体
20代
10%
40%
40代
11.40%
30代
40代
50代
60代
80%
14.20%
14.50%
14.00%
10.30%
34.80%
29.40%
どちらかといえば賛成
12.50%
39.00%
どちらともいえない
賛成
どちらかといえば賛成
328
13.10%
39
8.50%
60
11%
53
11.40%
82
14.50%
94
20.20%
658
26.30%
104
22.70%
124
22.70%
123
26.60%
170
30%
137
29.40%
530
どちらかといえば反対
どちらともいえない
1017
40.70%
184
40.20%
251
46%
198
42.80%
221
39%
162
34.80%
どちらかといえば反対
356
14.20%
93
20.30%
79
14.50%
65
14%
71
12.50%
48
10.30%
100%
5.60%
8.30%
20.30%
30.00%
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
90%
42.80%
26.60%
全体
20代
70%
46.00%
20.20%
全体
60%
40.20%
22.70%
14.50%
賛成
50%
40.70%
22.70%
8.50%
11.00%
60代
30%
26.30%
13.10%
30代
50代
20%
反対
反対
141
5.60%
38
8.30%
32
5.90%
24
5.20%
22
3.90%
25
5.40%
5.90%
5.20%
3.90%
5.40%
年代(10歳区切り)
×
問16 脳の回路(神経回路)は、成人した後も成長することがある. -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、
ご自身で判断し、お答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
全体
10.20%
75.20%
20代
14.50%
30代
20代
14.00%
72.50%
40代
13.50%
50代
30代
73.30%
11.90%
14.80%
40代
72.80%
11.90%
15.30%
50代
78.30%
60代
79.00%
正しいと思う
誤っていると思う
6.20%
7.90%
60代
15.50%
13.10%
わからない
531
正しいと思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
誤っていると思う
1881
75.20%
332
72.50%
400
73.30%
337
72.80%
443
78.30%
368
79%
わからない
256
10.20%
64
14%
65
11.90%
55
11.90%
35
6.20%
37
7.90%
363
14.50%
62
13.50%
81
14.80%
71
15.30%
88
15.50%
61
13.10%
年代(10歳区切り)
×
問16 脳の一部が壊され、機能の一部が失われても、脳の他の部分がその機能を補うようになる場合がある.
-脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
全体
8.10%
76.00%
20代
16.00%
30代
20代
10.30%
72.90%
40代
16.80%
50代
30代
75.30%
7.70%
40代
78.40%
6.30%
15.30%
50代
77.90%
7.60%
14.50%
60代
8.80%
74.90%
正しいと思う
誤っていると思う
60代
17.00%
16.30%
わからない
532
正しいと思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
誤っていると思う
1899
76%
334
72.90%
411
75.30%
363
78.40%
441
77.90%
349
74.90%
わからない
202
8.10%
47
10.30%
42
7.70%
29
6.30%
43
7.60%
41
8.80%
399
16%
77
16.80%
93
17%
71
15.30%
82
14.50%
76
16.30%
年代(10歳区切り)
×
問16 書籍やゲームなどによる、いわゆる「脳トレ」によって、脳細胞(神経細胞)の数が増加する -脳に関する
以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
全体
20代
33.00%
28.90%
38.10%
30代
20代
40代
30.30%
40.80%
28.80%
50代
30代
40代
50代
60代
37.10%
32.60%
30.20%
42.90%
47.00%
正しいと思う
60代
33.30%
32.60%
34.10%
35.20%
21.90%
20.00%
誤っていると思う
33.00%
わからない
533
正しいと思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
誤っていると思う
953
38.10%
132
28.80%
186
34.10%
172
37.10%
243
42.90%
219
47%
わからない
722
28.90%
187
40.80%
178
32.60%
140
30.20%
124
21.90%
93
20%
825
33%
139
30.30%
182
33.30%
151
32.60%
199
35.20%
154
33%
年代(10歳区切り)
×
問16 マスメディアでは「脳年齢」という言葉が頻繁に登場するが、「脳年齢」とは医学的に定義された概念であ
り、測定する方法も確立されている -脳に関する以下の内容が正しいかどうか、ご自身で判断し、お答えくださ
い。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
全体
13.40%
40.80%
20代
45.80%
30代
20代
12.20%
40代
38.90%
48.90%
50代
30代
40代
50代
60代
12.80%
14.30%
12.00%
16.10%
45.40%
50.10%
35.60%
37.80%
50.20%
36.10%
正しいと思う
60代
41.80%
47.90%
誤っていると思う
わからない
534
正しいと思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
誤っていると思う
336
13.40%
56
12.20%
70
12.80%
66
14.30%
68
12%
75
16.10%
わからない
1019
40.80%
224
48.90%
248
45.40%
165
35.60%
214
37.80%
168
36.10%
1145
45.80%
178
38.90%
228
41.80%
232
50.10%
284
50.20%
223
47.90%
年代(10歳区切り)
×
問17脳を計測することにより思考・感情を読む技術が実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ま
しくないと思いますか。
0%
全体
20代
10%
20%
30%
50%
39.60%
18.00%
5.40%
40%
34.30%
20.30%
10.30%
30代 4.40%
20.30%
42.70%
40代 4.50%
19.70%
42.50%
50代 3.50%
16.10%
60代 5.20%
13.70%
望ましい
20代
30代
40代
50代
60代
70%
80%
25.10%
23.80%
22.00%
30.50%
36.70%
90%
100%
11.90%
11.40%
9.70%
22.90%
26.30%
40.80%
11.20%
13.30%
13.90%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
60%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
136
5.40%
47
10.30%
24
4.40%
21
4.50%
20
3.50%
24
5.20%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
450
990
627
18%
39.60%
25.10%
93
157
109
20.30%
34.30%
23.80%
111
233
125
20.30%
42.70%
22.90%
91
197
102
19.70%
42.50%
22%
91
231
149
16.10%
40.80%
26.30%
64
171
142
13.70%
36.70%
30.50%
535
297
11.90%
52
11.40%
53
9.70%
52
11.20%
75
13.30%
65
13.90%
年代(10歳区切り)
×
問18 親による子どもの教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化さ
れることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 4.10%
20代
20%
30%
17.00%
30代 3.70%
16.80%
40代 3.50%
50代 3.00% 12.00%
望ましい
20代
30代
40代
50代
60代
26.60%
31.00%
21.60%
21.60%
24.70%
29.00%
28.10%
80%
90%
100%
24.70%
24.90%
26.90%
23.50%
25.30%
22.50%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
70%
25.80%
35.00%
15.70%
60%
24.60%
38.00%
13.40%
60代 4.70%
50%
31.70%
14.90%
5.70%
40%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
102
4.10%
26
5.70%
20
3.70%
16
3.50%
17
3%
22
4.70%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
373
792
615
14.90%
31.70%
24.60%
78
118
122
17%
25.80%
26.60%
92
169
118
16.80%
31%
21.60%
62
176
100
13.40%
38%
21.60%
68
198
140
12%
35%
24.70%
73
131
135
15.70%
28.10%
29%
536
618
24.70%
114
24.90%
147
26.90%
109
23.50%
143
25.30%
105
22.50%
年代(10歳区切り)
×
問18 教師による児童・生徒の教育のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実
用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 3.70%
20%
40%
50%
25.10%
22.10%
16.40%
60%
24.20%
27.00%
12.90%
20代 5.50%
30%
70%
80%
90%
32.30%
31.00%
30代 3.30%
13.20%
29.90%
21.80%
31.90%
40代 3.50%
12.70%
30.70%
20.30%
32.80%
50代 2.50% 10.60%
60代 4.10%
20代
30代
40代
50代
60代
35.00%
30.30%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
29.00%
24.70%
12.00%
望ましい
24.90%
27.00%
100%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
93
3.70%
25
5.50%
18
3.30%
16
3.50%
14
2.50%
19
4.10%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
322
674
604
12.90%
27%
24.20%
75
101
115
16.40%
22.10%
25.10%
72
163
119
13.20%
29.90%
21.80%
59
142
94
12.70%
30.70%
20.30%
60
153
141
10.60%
27%
24.90%
56
115
135
12%
24.70%
29%
537
807
32.30%
142
31%
174
31.90%
152
32.80%
198
35%
141
30.30%
年代(10歳区切り)
×
問18 企業の人事管理のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化される
ことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 2.60% 8.60%
20代 4.60%
20%
30%
26.30%
23.30%
24.60%
60代 2.80%6.40%
21.90%
23.50%
29.40%
20代
30代
40代
50代
60代
60%
70%
80%
90%
100%
40.80%
38.90%
41.20%
39.70%
44.20%
39.50%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
20.30%
26.60%
6.40%
50代 1.40%
望ましい
23.80%
20.10%
30代 1.80% 10.10%
50%
24.50%
23.50%
12.70%
40代 2.80% 7.80%
40%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
65
2.60%
21
4.60%
10
1.80%
13
2.80%
8
1.40%
13
2.80%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
215
587
612
8.60%
23.50%
24.50%
58
92
109
12.70%
20.10%
23.80%
55
145
111
10.10%
26.60%
20.30%
36
108
122
7.80%
23.30%
26.30%
36
139
133
6.40%
24.60%
23.50%
30
102
137
6.40%
21.90%
29.40%
538
1021
40.80%
178
38.90%
225
41.20%
184
39.70%
250
44.20%
184
39.50%
年代(10歳区切り)
×
問18 犯罪捜査のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実用化されることは望
ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
30%
40%
50%
60代
20代
30代
40代
50代
60代
6.10% 5.50%
6.40%
8.20%
9.70%
9.90%
14.80%
8.20%
12.00%
12.70%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
29.40%
25.30%
17.80%
望ましい
33.00%
31.10%
100%
9.40%
9.30%
27.60%
33.90%
14.00%
90%
24.40%
37.40%
20.50%
80%
22.10%
34.90%
23.60%
40代
70%
27.40%
31.40%
30代
60%
32.60%
21.20%
20代
50代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
531
21.20%
144
31.40%
129
23.60%
95
20.50%
79
14%
83
17.80%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
815
686
233
32.60%
27.40%
9.30%
160
101
28
34.90%
22.10%
6.10%
204
133
35
37.40%
24.40%
6.40%
157
128
45
33.90%
27.60%
9.70%
176
187
56
31.10%
33%
9.90%
118
137
69
25.30%
29.40%
14.80%
539
235
9.40%
25
5.50%
45
8.20%
38
8.20%
68
12%
59
12.70%
年代(10歳区切り)
×
問18 法廷での証言の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で実
用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
40%
30代
40代
50代
60代
6.30% 5.50%
22.90%
34.10%
33.30%
100%
8.00%
8.80%
7.00% 4.80%
7.80%
9.30%
28.50%
26.40%
9.70%
9.50%
12.00%
12.70%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
20代
90%
28.40%
33.40%
15.70%
80%
29.60%
34.60%
13.30%
全体
70%
37.40%
19.90%
望ましい
60%
37.60%
22.50%
40代
50%
33.90%
27.70%
30代
60代
30%
19.60%
20代
50代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
491
19.60%
127
27.70%
123
22.50%
92
19.90%
75
13.30%
73
15.70%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
848
740
220
33.90%
29.60%
8.80%
172
105
29
37.60%
22.90%
6.30%
204
155
38
37.40%
28.40%
7%
160
132
43
34.60%
28.50%
9.30%
189
193
54
33.40%
34.10%
9.50%
123
155
56
26.40%
33.30%
12%
540
201
8%
25
5.50%
26
4.80%
36
7.80%
55
9.70%
59
12.70%
年代(10歳区切り)
×
問18 公人の公的発表の真偽の判定のため -脳を計測することにより思考・感情を読む技術が、以下の用途で
実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
30%
40%
19.80%
40代
20.50%
20代
30代
40代
50代
60代
38.70%
32.20%
23.60%
80%
90%
9.00%
29.70%
7.30%
6.80%
8.10%
8.60%
10.40%
9.90%
13.90%
100%
9.30%
10.00%
29.30%
30.70%
27.00%
10.60%
12.40%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
32.30%
29.80%
17.80%
望ましい
70%
35.20%
13.80%
60代
60%
31.20%
23.80%
30代
50%
29.40%
19.00%
20代
50代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
474
19%
109
23.80%
108
19.80%
95
20.50%
78
13.80%
83
17.80%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
736
807
250
29.40%
32.30%
10%
143
134
41
31.20%
29.30%
9%
192
162
40
35.20%
29.70%
7.30%
138
142
48
29.80%
30.70%
10.40%
153
219
56
27%
38.70%
9.90%
110
150
65
23.60%
32.20%
13.90%
541
233
9.30%
31
6.80%
44
8.10%
40
8.60%
60
10.60%
58
12.40%
年代(10歳区切り)
×
問19 子ども(親による子の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強
制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想
定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 1.90%
34.40%
54.00%
20代
9.70%
30代
40代
20代 3.10%
36.20%
52.20%
8.50%
50代
60代
30代0.70%
35.50%
40代 2.60%
32.40%
50代 1.60%
60代 1.90%
強制してもよい
31.30%
36.70%
強制ではなく、任意であればよい
53.30%
53.30%
56.40%
54.50%
強制、任意いずれであれ許されない
10.40%
11.70%
10.80%
6.90%
わからない
542
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
48
1.90%
14
3.10%
4
0.70%
12
2.60%
9
1.60%
9
1.90%
859
34.40%
166
36.20%
194
35.50%
150
32.40%
177
31.30%
171
36.70%
1350
54%
239
52.20%
291
53.30%
247
53.30%
319
56.40%
254
54.50%
243
9.70%
39
8.50%
57
10.40%
54
11.70%
61
10.80%
32
6.90%
年代(10歳区切り)
×
問19 児童・生徒(教師による児童・生徒の教育のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以
下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。
なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 1.20%
26.70%
63.50%
20代
8.60%
30代
40代
20代 2.00%
30.80%
57.90%
9.40%
50代
60代
30代0.50%
29.50%
40代 1.50%
26.80%
50代0.90%
60代 1.10%
62.90%
68.40%
21.00%
26.00%
強制してもよい
60.80%
強制ではなく、任意であればよい
67.20%
強制、任意いずれであれ許されない
9.20%
8.90%
9.70%
5.80%
わからない
543
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
29
1.20%
9
2%
3
0.50%
7
1.50%
5
0.90%
5
1.10%
667
26.70%
141
30.80%
161
29.50%
124
26.80%
119
21%
121
26%
1588
63.50%
265
57.90%
332
60.80%
291
62.90%
387
68.40%
313
67.20%
216
8.60%
43
9.40%
50
9.20%
41
8.90%
55
9.70%
27
5.80%
年代(10歳区切り
×
問19 社員(企業における人事管理のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に
強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は
想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 1.40%
25.20%
66.00%
20代
7.50%
30代
40代
20代 2.60%
58.10%
31.00%
8.30%
50代
60代
30代0.70%
27.10%
63.70%
8.40%
40代 1.50%
25.30%
65.90%
7.30%
50代0.50%
60代 1.70%
71.00%
20.30%
22.70%
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
70.40%
強制、任意いずれであれ許されない
8.10%
5.20%
わからない
544
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
34
1.40%
12
2.60%
4
0.70%
7
1.50%
3
0.50%
8
1.70%
629
25.20%
142
31%
148
27.10%
117
25.30%
115
20.30%
106
22.70%
1649
66%
266
58.10%
348
63.70%
305
65.90%
402
71%
328
70.40%
188
7.50%
38
8.30%
46
8.40%
34
7.30%
46
8.10%
24
5.20%
年代(10歳区切り)
×
問19 容疑者など(犯罪捜査のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下の人々に強制し
たり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。なお()内は想定し
ていただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
20代
8.20%
15.00%
37.80%
39.00%
30代
40代
20代
7.90%
34.30%
50.90%
7.00%
50代
60代
30代
40代
39.50%
50代
60代
36.60%
44.30%
37.80%
38.70%
32.90%
28.10%
強制してもよい
41.60%
強制ではなく、任意であればよい
11.70%
13.80%
19.10%
22.10%
強制、任意いずれであれ許されない
7.30%
8.90%
9.40%
8.20%
わからない
545
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
976
39%
233
50.90%
242
44.30%
183
39.50%
186
32.90%
131
28.10%
945
37.80%
157
34.30%
200
36.60%
175
37.80%
219
38.70%
194
41.60%
375
15%
36
7.90%
64
11.70%
64
13.80%
108
19.10%
103
22.10%
204
8.20%
32
7%
40
7.30%
41
8.90%
53
9.40%
38
8.20%
年代(10歳区切り)
×
問19 証人など(法廷での証言の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以下
の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。な
お()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
44.60%
29.90%
20代
8.90%
16.60%
30代
40代
20代
9.40%
46.10%
37.10%
7.40%
50代
60代
30代
33.00%
40代
32.00%
50代
60代
25.40%
22.50%
強制してもよい
45.60%
42.50%
44.20%
44.60%
強制ではなく、任意であればよい
13.40%
16.00%
20.30%
23.60%
強制、任意いずれであれ許されない
8.10%
9.50%
10.10%
9.20%
わからない
546
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
748
29.90%
170
37.10%
180
33%
148
32%
144
25.40%
105
22.50%
1115
44.60%
211
46.10%
249
45.60%
197
42.50%
250
44.20%
208
44.60%
415
16.60%
43
9.40%
73
13.40%
74
16%
115
20.30%
110
23.60%
222
8.90%
34
7.40%
44
8.10%
44
9.50%
57
10.10%
43
9.20%
年代(10歳区切り)
×
問19 政治家など公人(公的発表の真偽の判定のため) -思考・感情を読むための脳の計測を受けることを、以
下の人々に強制したり、任意で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されないと思いますか。
なお()内は想定していただきたい計測の用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
38.20%
35.60%
20代
9.40%
16.70%
30代
40代
20代
39.10%
30代
38.10%
40代
37.60%
11.10%
41.00%
8.70%
50代
60代
50代
29.90%
60代
強制してもよい
39.70%
35.90%
39.90%
34.10%
強制ではなく、任意であればよい
34.10%
13.40%
16.80%
8.80%
9.70%
19.80%
10.40%
22.30%
9.40%
強制、任意いずれであれ許されない
わからない
547
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
890
35.60%
179
39.10%
208
38.10%
174
37.60%
169
29.90%
159
34.10%
956
38.20%
188
41%
217
39.70%
166
35.90%
226
39.90%
159
34.10%
418
16.70%
51
11.10%
73
13.40%
78
16.80%
112
19.80%
104
22.30%
236
9.40%
40
8.70%
48
8.80%
45
9.70%
59
10.40%
44
9.40%
年代(10歳区切り)
×
問20脳と機械を直接または間接的につなぐ技術が実用化されることは望ましいと思いますか、それとも望まし
くないと思いますか。
0%
全体
20代
10%
20%
30%
40%
30代 4.90%
17.20%
40代
13.00%
6.90%
70%
80%
24.70%
36.50%
19.20%
7.90%
60%
24.60%
39.50%
15.00%
5.40%
50%
22.00%
42.10%
24.60%
43.40%
90%
15.50%
11.80%
13.70%
12.10%
50代 3.70%
12.70%
38.00%
26.50%
19.10%
60代 4.10%
12.70%
37.60%
25.50%
20.20%
望ましい
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
100%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
135
5.40%
36
7.90%
27
4.90%
32
6.90%
21
3.70%
19
4.10%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
374
988
616
15%
39.50%
24.60%
88
167
113
19.20%
36.50%
24.70%
94
230
120
17.20%
42.10%
22%
60
201
114
13%
43.40%
24.60%
72
215
150
12.70%
38%
26.50%
59
175
119
12.70%
37.60%
25.50%
548
387
15.50%
54
11.80%
75
13.70%
56
12.10%
108
19.10%
94
20.20%
年代(10歳区切り)
×
問21 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化することは望ま
しいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
50%
44.70%
32.10%
20代
40.60%
37.10%
30代
32.20%
40代
33.00%
50代
29.00%
60代
29.80%
望ましい
44.30%
44.90%
48.60%
44.20%
20代
30代
40代
50代
60代
70%
80%
90%
100%
18.00%
2.30%
2.90%
16.60%
2.80%
2.80%
1.50%
2.00%
20.00%
1.10%
1.90%
19.00%
3.00%
3.40%
16.10%
18.50%
3.00%
4.50%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
60%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
803
32.10%
170
37.10%
176
32.20%
153
33%
164
29%
139
29.80%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
1117
450
73
44.70%
18%
2.90%
186
76
13
40.60%
16.60%
2.80%
242
109
11
44.30%
20%
2%
208
88
9
44.90%
19%
1.90%
275
91
19
48.60%
16.10%
3.40%
206
86
21
44.20%
18.50%
4.50%
549
57
2.30%
13
2.80%
8
1.50%
5
1.10%
17
3%
14
3%
年代(10歳区切り)
×
問21 手・足などに障害のある人が、義手・義足などを使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、
以下の用途で実用化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
50%
37.30%
43.20%
30代
41.20%
40代
41.70%
50代
39.20%
60代
39.50%
望ましい
20代
30代
40代
50代
60代
80%
90%
13.80%
14.80%
40.30%
15.90%
100%
1.60%
1.70%
2.00%
2.60%
0.70%
1.80%
41.90%
1.10%
14.90% 0.40%
45.90%
2.50%
11.00% 1.40%
43.80%
1.90%
12.40% 2.40%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
70%
42.00%
40.90%
20代
60%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1023
40.90%
198
43.20%
225
41.20%
193
41.70%
222
39.20%
184
39.50%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
1049
344
43
42%
13.80%
1.70%
171
68
12
37.30%
14.80%
2.60%
220
87
10
40.30%
15.90%
1.80%
194
69
2
41.90%
14.90%
0.40%
260
62
8
45.90%
11%
1.40%
204
58
11
43.80%
12.40%
2.40%
550
41
1.60%
9
2%
4
0.70%
5
1.10%
14
2.50%
9
1.90%
年代(10歳区切り)
×
問21 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化することは望
ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
20代
10%
40代
11.90%
50代
11.50%
20代
30代
40代
50代
60代
60%
40.20%
36.50%
41.80%
45.10%
19.90%
38.00%
26.30%
39.70%
24.00%
70%
80%
90%
13.50%
16.40%
100%
10.20%
10.50%
14.50%
9.30%
12.50%
10.60%
12.40%
11.80%
8.80%
12.00%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
50%
23.30%
15.50%
望ましい
40%
21.60%
15.10%
11.20%
30%
23.20%
12.90%
30代
60代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
322
12.90%
69
15.10%
61
11.20%
55
11.90%
65
11.50%
72
15.50%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
580
1004
338
23.20%
40.20%
13.50%
99
167
75
21.60%
36.50%
16.40%
127
228
79
23.30%
41.80%
14.50%
92
209
58
19.90%
45.10%
12.50%
149
215
70
26.30%
38%
12.40%
112
185
56
24%
39.70%
12%
551
256
10.20%
48
10.50%
51
9.30%
49
10.60%
67
11.80%
41
8.80%
年代(10歳区切り)
×
問21 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化す
ることは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
全体
20代
10%
20%
30%
40%
50%
40.40%
26.00%
10.60%
34.70%
25.50%
12.20%
60%
70%
80%
90%
100%
9.20%
13.80%
17.20%
10.30%
30代
11.00%
23.10%
43.40%
14.10%
8.40%
40代
9.70%
24.80%
42.80%
13.40%
9.30%
10.80%
10.40%
50代
60代
20代
30代
40代
50代
60代
7.50%
14.40%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
38.20%
27.00%
12.90%
望ましい
41.90%
29.20%
7.80%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
265
10.60%
56
12.20%
60
11%
45
9.70%
44
7.80%
60
12.90%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
650
1009
346
26%
40.40%
13.80%
117
159
79
25.50%
34.70%
17.20%
126
237
77
23.10%
43.40%
14.10%
115
198
62
24.80%
42.80%
13.40%
165
237
61
29.20%
41.90%
10.80%
126
178
67
27%
38.20%
14.40%
552
230
9.20%
47
10.30%
46
8.40%
43
9.30%
59
10.40%
35
7.50%
年代(10歳区切り)
×
問21 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用化
することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
30%
全体
15.90%
19.70%
20代
16.80%
17.70%
30代
17.00%
40代
16.20%
50代
12.50%
60代
20代
30代
40代
50代
60代
60%
34.80%
35.90%
35.40%
37.10%
20.30%
34.80%
19.70%
70%
80%
16.60%
21.00%
29.90%
19.70%
14.10%
17.30%
14.30%
17.40%
90%
100%
13.00%
14.60%
12.10%
11.40%
15.70%
10.70%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
50%
20.90%
17.40%
望ましい
40%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
397
15.90%
77
16.80%
93
17%
75
16.20%
71
12.50%
81
17.40%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
493
870
415
19.70%
34.80%
16.60%
81
137
96
17.70%
29.90%
21%
114
196
77
20.90%
35.90%
14.10%
91
164
80
19.70%
35.40%
17.30%
115
210
81
20.30%
37.10%
14.30%
92
162
81
19.70%
34.80%
17.40%
553
325
13%
67
14.60%
66
12.10%
53
11.40%
89
15.70%
50
10.70%
年代(10歳区切り)
×
問21 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐ技術を、以下の用途で実用
化することは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
30%
全体
19.40%
22.50%
20代
20.30%
20.10%
30代
20.70%
40代
50代
20代
30代
40代
50代
60代
80%
90%
14.00%
35.20%
36.40%
31.80%
100%
11.00%
12.90%
12.80%
10.10%
8.60%
12.50%
10.80%
14.30%
8.80%
16.70%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
32.60%
20.80%
70%
18.30%
28.40%
23.10%
21.90%
60%
33.00%
24.40%
15.40%
望ましい
50%
23.80%
19.20%
60代
40%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
484
19.40%
93
20.30%
113
20.70%
89
19.20%
87
15.40%
102
21.90%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
563
826
351
22.50%
33%
14%
92
130
84
20.10%
28.40%
18.30%
130
178
70
23.80%
32.60%
12.80%
113
163
58
24.40%
35.20%
12.50%
131
206
61
23.10%
36.40%
10.80%
97
148
78
20.80%
31.80%
16.70%
554
276
11%
59
12.90%
55
10.10%
40
8.60%
81
14.30%
41
8.80%
年代(10歳区切り)
×
問22 病気の治療のため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えますか。以
下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
46.70%
31.30%
6.00%
20代
15.90%
30代
20代
40代
49.30%
28.80%
5.00%
16.80%
50代
60代
30代
40代
50代
60代
47.30%
30.80%
51.00%
44.50%
41.80%
直接・間接接続ともに許される
28.10%
33.90%
34.50%
5.10%
16.80%
4.80%
16.20%
5.50%
16.10%
10.10%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
13.50%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
555
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1168
46.70%
226
49.30%
258
47.30%
236
51%
252
44.50%
195
41.80%
783
31.30%
132
28.80%
168
30.80%
130
28.10%
192
33.90%
161
34.50%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
151
6%
23
5%
28
5.10%
22
4.80%
31
5.50%
47
10.10%
398
15.90%
77
16.80%
92
16.80%
75
16.20%
91
16.10%
63
13.50%
年代(10歳区切り)
×
問22 手・足に障害のある人が、義手・義足を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲
で許されると考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
53.00%
29.30%
4.60%
20代
13.20%
30代
20代
40代
53.50%
28.40%
4.10%
14.00%
50代
60代
30代
40代
50代
60代
52.60%
27.80%
56.40%
27.20%
53.00%
29.90%
49.40%
直接・間接接続ともに許される
33.30%
4.40%
15.20%
3.50%
13.00%
4.40%
12.70%
6.70%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
10.70%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
556
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1324
53%
245
53.50%
287
52.60%
261
56.40%
300
53%
230
49.40%
732
29.30%
130
28.40%
152
27.80%
126
27.20%
169
29.90%
155
33.30%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
115
4.60%
19
4.10%
24
4.40%
16
3.50%
25
4.40%
31
6.70%
329
13.20%
64
14%
83
15.20%
60
13%
72
12.70%
50
10.70%
年代(10歳区切り)
×
問22 機械を操作するため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考えますか。以
下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
13.00%
34.50%
26.00%
20代
26.40%
30代
20代
40代
16.20%
36.90%
21.40%
25.50%
50代
60代
30代
14.30%
40代
13.40%
50代
60代
10.20%
11.60%
34.60%
31.50%
35.00%
34.30%
直接・間接接続ともに許される
23.30%
27.60%
28.60%
29.00%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
27.80%
27.40%
26.10%
25.10%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
557
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
326
13%
74
16.20%
78
14.30%
62
13.40%
58
10.20%
54
11.60%
862
34.50%
169
36.90%
189
34.60%
146
31.50%
198
35%
160
34.30%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
651
26%
98
21.40%
127
23.30%
128
27.60%
162
28.60%
135
29%
661
26.40%
117
25.50%
152
27.80%
127
27.40%
148
26.10%
117
25.10%
年代(10歳区切り)
×
問22 記憶を補助する装置を使うため -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考
えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
14.00%
34.20%
24.10%
20代
27.70%
30代
20代
40代
18.10%
33.20%
21.00%
27.70%
50代
60代
30代
40代
15.60%
13.60%
50代
11.10%
60代
11.80%
32.20%
34.30%
35.00%
36.50%
直接・間接接続ともに許される
22.70%
29.50%
23.10%
28.90%
25.80%
28.10%
27.70%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
24.00%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
558
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
349
14%
83
18.10%
85
15.60%
63
13.60%
63
11.10%
55
11.80%
855
34.20%
152
33.20%
176
32.20%
159
34.30%
198
35%
170
36.50%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
603
24.10%
96
21%
124
22.70%
107
23.10%
146
25.80%
129
27.70%
693
27.70%
127
27.70%
161
29.50%
134
28.90%
159
28.10%
112
24%
年代(10歳区切り)
×
問22 受刑者の矯正のため(刑務所内) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると考
えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
25.30%
24.90%
26.20%
20代
23.70%
30代
20代
40代
25.50%
26.40%
24.90%
23.10%
50代
60代
30代
40代
50代
60代
29.70%
22.50%
27.00%
20.80%
23.60%
21.80%
25.30%
24.90%
23.30%
30.40%
25.80%
直接・間接接続ともに許される
30.00%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
26.00%
24.40%
23.90%
20.60%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
559
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
632
25.30%
117
25.50%
162
29.70%
125
27%
118
20.80%
110
23.60%
622
24.90%
121
26.40%
123
22.50%
117
25.30%
141
24.90%
120
25.80%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
654
26.20%
114
24.90%
119
21.80%
108
23.30%
172
30.40%
140
30%
592
23.70%
106
23.10%
142
26%
113
24.40%
135
23.90%
96
20.60%
年代(10歳区切り)
×
問22 前科者の再犯防止のため(出所後) -脳と機械を直接または間接的につなぐことはどの範囲で許されると
考えますか。以下の場合それぞれに関して許される程度を選んでください。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
全体
27.80%
23.60%
24.20%
20代
24.30%
30代
20代
40代
26.90%
24.00%
24.00%
25.10%
50代
60代
30代
40代
31.90%
21.60%
29.60%
50代
25.10%
60代
25.80%
20.70%
24.60%
22.60%
21.60%
27.90%
26.00%
直接・間接接続ともに許される
26.60%
直接・間接接続ともに許
間接接続のみ許される
される
全体
100%
25.80%
24.20%
24.40%
21.70%
間接接続のみ許される
直接・間接接続いずれであれ許されない わからない
560
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
696
27.80%
123
26.90%
174
31.90%
137
29.60%
142
25.10%
120
25.80%
591
23.60%
110
24%
118
21.60%
114
24.60%
128
22.60%
121
26%
直接・間接接続いずれで
わからない
あれ許されない
606
24.20%
110
24%
113
20.70%
100
21.60%
158
27.90%
124
26.60%
607
24.30%
115
25.10%
141
25.80%
112
24.20%
138
24.40%
101
21.70%
年代(10歳区切り)
×
問23薬によって精神や意識を変える技術が進歩し、実用化が進むことは望ましいと思いますか、それとも望ま
しくないと思いますか。
0%
10%
全体 3.80%
20代
20%
30%
50%
70%
80%
90%
14.70%
30代 3.80%
16.70%
43.40%
24.20%
11.90%
40代 4.30%
16.80%
42.10%
24.80%
11.90%
50代 3.20%
60代 2.40%
20代
30代
40代
50代
60代
17.00%
14.80%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
27.70%
39.90%
15.20%
望ましい
22.40%
40.60%
16.80%
100%
18.10%
25.80%
34.70%
15.70%
60%
24.80%
40.30%
16.30%
5.70%
40%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
96
3.80%
26
5.70%
21
3.80%
20
4.30%
18
3.20%
11
2.40%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
408
1007
621
16.30%
40.30%
24.80%
72
159
118
15.70%
34.70%
25.80%
91
237
132
16.70%
43.40%
24.20%
78
195
115
16.80%
42.10%
24.80%
95
230
127
16.80%
40.60%
22.40%
71
186
129
15.20%
39.90%
27.70%
561
368
14.70%
83
18.10%
65
11.90%
55
11.90%
96
17%
69
14.80%
年代(10歳区切り)
×
問24 幸福感を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望ましいと
思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
全体 3.00% 10.80%
60代
21.70%
25.80%
27.00%
60%
70%
80%
90%
100%
35.40%
38.90%
33.50%
35.60%
35.20%
33.90%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
50代
25.50%
28.40%
60代 3.20% 10.10%
40代
24.50%
25.90%
50代 2.10% 12.50%
30代
22.50%
28.20%
40代 2.40% 10.60%
20代
50%
23.90%
24.90%
30代 2.90% 10.80%
全体
40%
27.00%
20代 4.40% 9.40%
望ましい
30%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
74
3%
20
4.40%
16
2.90%
11
2.40%
12
2.10%
15
3.20%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
269
675
598
10.80%
27%
23.90%
43
114
103
9.40%
24.90%
22.50%
59
154
134
10.80%
28.20%
24.50%
49
120
118
10.60%
25.90%
25.50%
71
161
123
12.50%
28.40%
21.70%
47
126
120
10.10%
27%
25.80%
562
884
35.40%
178
38.90%
183
33.50%
165
35.60%
199
35.20%
158
33.90%
年代(10歳区切り)
×
問24 宗教的超越体験を得るため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
2.40%
全体 0.80%
20%
16.80%
3.10%
30代0.40%
20.50%
1.50%
40代0.90%
望ましい
20代
30代
40代
50代
60代
80%
90%
100%
57.10%
60.00%
57.60%
23.90%
56.90%
26.60%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
70%
59.00%
23.10%
14.80%
60%
58.10%
18.90%
15.40%
1.30%
60代0.40%
50%
19.00%
14.50%
2.50%
50代0.70%
40%
22.20%
16.50%
3.50%
20代 1.70%
30%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
20
0.80%
8
1.70%
2
0.40%
4
0.90%
4
0.70%
2
0.40%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
60
412
556
2.40%
16.50%
22.20%
16
77
87
3.50%
16.80%
19%
17
112
103
3.10%
20.50%
18.90%
7
67
107
1.50%
14.50%
23.10%
14
87
135
2.50%
15.40%
23.90%
6
69
124
1.30%
14.80%
26.60%
563
1452
58.10%
270
59%
312
57.10%
278
60%
326
57.60%
265
56.90%
年代(10歳区切り)
×
問24 病気の治療のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは望ましいと
思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
全体
20.50%
42.30%
20代
21.00%
41.30%
60%
70%
80%
25.00%
24.20%
90%
100%
5.50% 6.80%
5.20% 8.30%
30代
22.90%
41.20%
25.30%
40代
22.00%
41.90%
25.50%
4.30% 6.30%
23.50%
4.80% 7.20%
50代
60代
44.30%
20.10%
望ましい
20代
30代
40代
50代
60代
7.70%
7.10%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
26.40%
42.50%
16.30%
5.50% 5.10%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
513
20.50%
96
21%
125
22.90%
102
22%
114
20.10%
76
16.30%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
1057
624
137
42.30%
25%
5.50%
189
111
24
41.30%
24.20%
5.20%
225
138
30
41.20%
25.30%
5.50%
194
118
20
41.90%
25.50%
4.30%
251
133
27
44.30%
23.50%
4.80%
198
123
36
42.50%
26.40%
7.70%
564
169
6.80%
38
8.30%
28
5.10%
29
6.30%
41
7.20%
33
7.10%
年代(10歳区切り)
×
問24 社員の労働意欲向上のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体 1.50%7.90%
20%
40%
50%
23.90%
26.40%
20代 2.40% 11.60%
27.10%
24.50%
30代 1.60% 8.80%
40代 1.50%6.30%
30%
20.70%
29.50%
24.40%
27.40%
60%
70%
80%
34.50%
39.40%
40.40%
26.50%
22.80%
43.60%
60代 1.10%7.10%
23.80%
25.30%
42.70%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
100%
40.30%
6.20%
50代0.90%
望ましい
90%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
37
1.50%
11
2.40%
9
1.60%
7
1.50%
5
0.90%
5
1.10%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
198
661
597
7.90%
26.40%
23.90%
53
112
124
11.60%
24.50%
27.10%
48
161
113
8.80%
29.50%
20.70%
29
127
113
6.30%
27.40%
24.40%
35
150
129
6.20%
26.50%
22.80%
33
111
118
7.10%
23.80%
25.30%
565
1007
40.30%
158
34.50%
215
39.40%
187
40.40%
247
43.60%
199
42.70%
年代(10歳区切り)
×
問24 親による子どもの教育のため -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むことは
望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
20%
6.40%
全体 1.40%
26.40%
20代 2.00%7.40%
22.30%
6.40%
30代 1.30%
30%
40%
50%
22.40%
23.80%
18.50%
28.60%
60%
70%
80%
44.50%
45.20%
26.60%
22.70%
44.10%
5.70%
50代 1.10%
26.10%
23.90%
43.30%
望ましい
23.60%
27.70%
20代
30代
40代
50代
60代
40.30%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
全体
100%
43.50%
5.40%
40代 1.30%
60代 1.30%7.10%
90%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
34
1.40%
9
2%
7
1.30%
6
1.30%
6
1.10%
6
1.30%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
159
659
560
6.40%
26.40%
22.40%
34
102
109
7.40%
22.30%
23.80%
35
156
101
6.40%
28.60%
18.50%
25
123
105
5.40%
26.60%
22.70%
32
148
135
5.70%
26.10%
23.90%
33
129
110
7.10%
27.70%
23.60%
566
1088
43.50%
204
44.50%
247
45.20%
204
44.10%
245
43.30%
188
40.30%
年代(10歳区切り)
×
問24 受刑者の矯正のため(刑務所内) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進むこ
とは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
20代
50代
60代
28.30%
27.90%
70%
80%
12.80%
14.00%
27.50%
11.90%
30.70%
8.90%
14.30%
15.00%
90%
100%
17.80%
18.30%
14.80%
16.60%
20.50%
18.90%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
40代
28.60%
21.70%
16.50%
30代
28.60%
23.70%
13.30%
20代
60%
24.80%
19.00%
全体
50%
24.90%
20.90%
望ましい
40%
23.60%
15.50%
40代
60代
30%
23.80%
17.00%
30代
50代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
425
17%
71
15.50%
114
20.90%
88
19%
75
13.30%
77
16.50%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
594
714
321
23.80%
28.60%
12.80%
108
131
64
23.60%
28.60%
14%
136
150
65
24.90%
27.50%
11.90%
115
142
41
24.80%
30.70%
8.90%
134
160
81
23.70%
28.30%
14.30%
101
130
70
21.70%
27.90%
15%
567
446
17.80%
84
18.30%
81
14.80%
77
16.60%
116
20.50%
88
18.90%
年代(10歳区切り)
×
問24 前科者の再犯防止のため(出所後) -薬により精神や意識を変える技術の実用化が、以下の用途で進む
ことは望ましいと思いますか、それとも望ましくないと思いますか。
0%
10%
全体
20代
30%
30代
40代
50代
60代
80%
12.30%
11.90%
8.00%
28.50%
90%
100%
16.80%
17.20%
14.10%
15.30%
27.70%
13.40%
18.90%
26.40%
14.40%
18.20%
どちらかといえば望ましい どちらともいえない どちらかといえば望ましくない 望ましくない
全体
20代
26.60%
23.00%
18.00%
70%
13.50%
27.70%
24.20%
15.70%
全体
27.40%
26.30%
21.80%
望ましい
60%
24.00%
23.40%
60代
50%
25.50%
15.90%
40代
40%
24.60%
19.00%
30代
50代
20%
望ましい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
475
19%
73
15.90%
128
23.40%
101
21.80%
89
15.70%
84
18%
どちらかといえば望まし
どちらかといえば望ましく
どちらともいえない
望ましくない
い
ない
614
685
307
24.60%
27.40%
12.30%
117
127
62
25.50%
27.70%
13.50%
131
145
65
24%
26.60%
11.90%
122
132
37
26.30%
28.50%
8%
137
157
76
24.20%
27.70%
13.40%
107
123
67
23%
26.40%
14.40%
568
419
16.80%
79
17.20%
77
14.10%
71
15.30%
107
18.90%
85
18.20%
年代(10歳区切り)
×
問25 患者(病気の治療のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で
求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきた
い用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 4.70%
73.40%
20代
10.10%
11.80%
30代
40代
20代 3.50%
74.20%
11.10%
11.10%
50代
60代
30代 3.80%
40代 5.00%
50代 5.30%
60代
6.00%
強制してもよい
72.50%
76.20%
74.40%
69.70%
強制ではなく、任意であればよい
12.30%
11.40%
9.30%
9.50%
10.40%
9.90%
15.70%
強制、任意いずれであれ許されない
8.60%
わからない
569
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
118
4.70%
16
3.50%
21
3.80%
23
5%
30
5.30%
28
6%
1835
73.40%
340
74.20%
396
72.50%
353
76.20%
421
74.40%
325
69.70%
294
11.80%
51
11.10%
67
12.30%
43
9.30%
59
10.40%
73
15.70%
253
10.10%
51
11.10%
62
11.40%
44
9.50%
56
9.90%
40
8.60%
年代(10歳区切り)
×
問25 社員(労働意欲向上のため) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意
で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただき
たい用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 0.80%
24.40%
64.20%
20代
10.50%
30代
40代
20代 1.70%
54.40%
33.20%
10.70%
50代
60代
30代 1.10%
24.50%
40代0.40%
25.10%
61.90%
63.90%
50代0.50%
20.50%
69.10%
60代0.40%
20.00%
71.00%
強制してもよい
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
12.50%
10.60%
9.90%
8.60%
わからない
570
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
21
0.80%
8
1.70%
6
1.10%
2
0.40%
3
0.50%
2
0.40%
611
24.40%
152
33.20%
134
24.50%
116
25.10%
116
20.50%
93
20%
1606
64.20%
249
54.40%
338
61.90%
296
63.90%
391
69.10%
331
71%
262
10.50%
49
10.70%
68
12.50%
49
10.60%
56
9.90%
40
8.60%
年代(10歳区切り)
×
問25 子ども(親による教育) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意で求め
たりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただきたい用
途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体 0.90%
67.00%
19.80%
20代
12.40%
30代
40代
20代 1.50%
22.50%
63.30%
12.70%
50代
60代
30代0.50%
40代0.40%
19.00%
50代0.70%
18.00%
60代 1.50%
66.50%
20.50%
67.80%
67.80%
19.10%
強制してもよい
69.10%
強制ではなく、任意であればよい
強制、任意いずれであれ許されない
12.50%
12.70%
13.40%
10.30%
わからない
571
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
23
0.90%
7
1.50%
3
0.50%
2
0.40%
4
0.70%
7
1.50%
494
19.80%
103
22.50%
112
20.50%
88
19%
102
18%
89
19.10%
1674
67%
290
63.30%
363
66.50%
314
67.80%
384
67.80%
322
69.10%
309
12.40%
58
12.70%
68
12.50%
59
12.70%
76
13.40%
48
10.30%
年代(10歳区切り)
×
問25 受刑者(刑務所内での矯正) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意
で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただき
たい用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
27.50%
23.90%
33.60%
20代
15.00%
30代
40代
20代
36.00%
28.80%
20.10%
15.10%
50代
60代
30代
33.30%
40代
50代
60代
29.30%
31.50%
37.10%
20.70%
23.80%
強制してもよい
32.80%
32.60%
強制ではなく、任意であればよい
20.90%
21.20%
26.50%
30.70%
強制、任意いずれであれ許されない
16.50%
14.50%
15.70%
12.90%
わからない
572
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
688
27.50%
132
28.80%
182
33.30%
146
31.50%
117
20.70%
111
23.80%
839
33.60%
165
36%
160
29.30%
152
32.80%
210
37.10%
152
32.60%
598
23.90%
92
20.10%
114
20.90%
98
21.20%
150
26.50%
143
30.70%
375
15%
69
15.10%
90
16.50%
67
14.50%
89
15.70%
60
12.90%
年代(10歳区切り)
×
問25 前科者(出所後の再犯防止) -精神や意識を変える薬を服用することを、以下の人々に強制したり、任意
で求めたりすることは許されると思いますか、それとも許されない思いますか。なお、()内は想定していただき
たい用途です。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
29.00%
22.10%
33.60%
20代
15.40%
30代
40代
20代
27.90%
19.20%
37.10%
15.70%
50代
60代
30代
40代
50代
60代
28.20%
35.00%
33.50%
37.30%
22.80%
26.00%
強制してもよい
32.80%
32.80%
強制ではなく、任意であればよい
20.30%
19.00%
23.30%
28.30%
強制、任意いずれであれ許されない
16.50%
14.70%
16.60%
12.90%
わからない
573
強制ではなく、任意であ 強制、任意いずれであれ
わからない
ればよい
許されない
強制してもよい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
724
29%
128
27.90%
191
35%
155
33.50%
129
22.80%
121
26%
840
33.60%
170
37.10%
154
28.20%
152
32.80%
211
37.30%
153
32.80%
552
22.10%
88
19.20%
111
20.30%
88
19%
132
23.30%
132
28.30%
384
15.40%
72
15.70%
90
16.50%
68
14.70%
94
16.60%
60
12.90%
年代(10歳区切り)
×
問26 脳科学の発展は人々を幸福にする -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、それとも反
対ですか。
0%
全体
20代
30代
40代
10%
20%
30%
賛成
20代
30代
40代
50代
60代
1.70%
4.80%
2.00%
5.50%
1.60%
5.10%
0.60%
2.80%
43.40%
1.10%
4.90%
45.90%
5.80%3.40%
48.70%
どちらともいえない
賛成
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
100%
43.20%
33.90%
どちらかといえば賛成
90%
38.60%
39.20%
全体
全体
80%
44.00%
39.50%
13.60%
8.20%
70%
38.10%
11.90%
60代
60%
38.60%
15.30%
8.80%
50%
38.00%
11.40%
50代
40%
どちらかといえば賛成
286
11.40%
70
15.30%
65
11.90%
63
13.60%
50
8.80%
38
8.20%
949
38%
177
38.60%
208
38.10%
183
39.50%
222
39.20%
158
33.90%
574
どちらかといえば反対
どちらともいえない
1101
44%
177
38.60%
236
43.20%
201
43.40%
260
45.90%
227
48.70%
どちらかといえば反対
121
4.80%
25
5.50%
28
5.10%
13
2.80%
28
4.90%
27
5.80%
反対
反対
43
1.70%
9
2%
9
1.60%
3
0.60%
6
1.10%
16
3.40%
年代(10歳区切り)
×
問26 脳科学の発展は人々に危険をもたらす -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成ですか、それと
も反対ですか。
0%
全体
20代
30代
40代
10%
20%
30%
60代
6.20%
賛成
20代
30代
40代
50代
60代
80%
7.40%2.40%
50.50%
1.60%
4.40%
5.80%3.00%
6.90%1.80%
61.00%
24.20%
100%
42.10%
55.50%
27.60%
90%
2.10%
5.90%
54.00%
1.90%
5.20%
59.70%
27.00%
どちらかといえば賛成
全体
全体
70%
32.10%
11.40%
6.20%
60%
33.80%
14.20%
50代
50%
28.80%
9.10%
8.00%
40%
どちらともいえない
賛成
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえば賛成
228
9.10%
65
14.20%
62
11.40%
37
8%
35
6.20%
29
6.20%
721
28.80%
155
33.80%
175
32.10%
128
27.60%
137
24.20%
126
27%
575
どちらかといえば反対
どちらともいえない
1350
54%
193
42.10%
276
50.50%
257
55.50%
345
61%
278
59.70%
どちらかといえば反対
148
5.90%
34
7.40%
24
4.40%
27
5.80%
39
6.90%
24
5.20%
反対
反対
53
2.10%
11
2.40%
9
1.60%
14
3%
10
1.80%
9
1.90%
年代(10歳区切り)
×
問26 脳科学の研究は、きびしく規制されなければならない -あなたは、脳科学についての以下の意見に賛成
ですか、それとも反対ですか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
20.30%
30代
20.70%
40代
20代
30代
40代
50代
60代
7.30% 3.10%
7.60% 4.80%
どちらともいえない
賛成
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえば賛成
645
25.80%
93
20.30%
113
20.70%
107
23.10%
153
27%
179
38.40%
750
30%
103
22.50%
166
30.40%
138
29.80%
187
33%
155
33.30%
576
1.20%
6.70%
32.00%
2.40%
3.40%
22.50%
33.30%
全体
全体
5.50%
14.20%
33.00%
どちらかといえば反対
どちらともいえない
829
33.20%
172
37.60%
210
38.50%
161
34.80%
181
32%
105
22.50%
100%
7.80% 3.30%
34.80%
29.80%
どちらかといえば賛成
90%
38.50%
38.40%
賛成
80%
37.60%
30.40%
27.00%
60代
70%
33.20%
22.50%
23.10%
50代
60%
30.00%
25.80%
20代
50%
どちらかといえば反対
194
7.80%
65
14.20%
40
7.30%
35
7.60%
38
6.70%
16
3.40%
反対
反対
82
3.30%
25
5.50%
17
3.10%
22
4.80%
7
1.20%
11
2.40%
年代(10歳区切り)
×
問27 世の中の動きや事件をいち早く知るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用し
たいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
10%
20%
全体
30%
20代
30代
40代
50代
60代
テレビ
本
本
1272
50.90%
182
39.70%
248
45.40%
217
46.90%
332
58.70%
292
62.70%
0.20%
0.00%
2.80%
0.20%
0.00%
2.60%
47.50%
0.60%
0.00%
4.10%
2.80%
0.00%
ラジオ
インターネット
新聞
ラジオ
雑誌
33.90%
0.40%
0.00%
5.10%
23.00%
0.60%
10.90%0.00%
その他
インターネット
14
0.60%
6
1.30%
5
0.90%
2
0.40%
1
0.20%
0
0%
35
1.40%
7
1.50%
3
0.50%
2
0.40%
10
1.80%
13
2.80%
577
100%
50.40%
1.80%
0.20%
62.70%
テレビ
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
0.40%
0.40%
90%
0.40%
0.00%
5.00%
54.40%
58.70%
60代
80%
41.70%
0.50%
0.90%
46.90%
50代
70%
1.50%
1.30%
45.40%
40代
60%
1.40%
0.60%
39.70%
30代
全体
50%
50.90%
20代
全体
40%
新聞
1043
41.70%
249
54.40%
275
50.40%
220
47.50%
192
33.90%
107
23%
雑誌
126
5%
13
2.80%
14
2.60%
19
4.10%
29
5.10%
51
10.90%
その他
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
10
0.40%
1
0.20%
1
0.20%
3
0.60%
2
0.40%
3
0.60%
年代(10歳区切り)
×
問27 世の中の動きや事件について、信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのような
メディアを利用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
全体
10%
20%
40代
50代
60代
1.10%
1.90%
27.90%
テレビ
全体
20代
30代
40代
50代
60代
テレビ
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
本
35.20%
28.90%
33.30%
28.30%
43.50%
ラジオ
インターネット
新聞
ラジオ
雑誌
23
0.90%
1
0.20%
6
1.10%
1
0.20%
10
1.80%
5
1.10%
578
100%
2.20%
0.50%
2.80%
0.40%
2.70%
0.00%
2.80%
0.40%
1.20%
0.40%
その他
インターネット
81
3.20%
26
5.70%
12
2.20%
17
3.70%
17
3%
9
1.90%
90%
1.50%
1.50%
49.60%
16.50%
本
733
29.30%
128
27.90%
162
29.70%
145
31.30%
168
29.70%
130
27.90%
80%
38.00%
20.50%
1.80%
3.00%
29.70%
70%
35.30%
0.20%
3.70%
31.30%
60%
27.70%
1.10%
2.20%
29.70%
50%
25.80%
0.20%
5.70%
27.90%
30代
40%
0.90%
3.20%
29.30%
20代
全体
30%
新聞
644
25.80%
127
27.70%
193
35.30%
131
28.30%
116
20.50%
77
16.50%
雑誌
951
38%
161
35.20%
158
28.90%
154
33.30%
246
43.50%
231
49.60%
その他
13
0.50%
2
0.40%
0
0%
2
0.40%
2
0.40%
7
1.50%
55
2.20%
13
2.80%
15
2.70%
13
2.80%
7
1.20%
7
1.50%
年代(10歳区切り)
×
問27 医療について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利用し
たいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
10%
全体
13.30%
20代
14.40%
30代
12.80%
40代
13.80%
50代
13.30%
60代
12.20%
20%
全体
20代
30代
40代
50代
60代
50%
17.50%
13.50%
6.10% 5.90%
8.30%
10.30%
12.30%
13.60%
47.90%
20.20%
38.80%
ラジオ
本
332
13.30%
66
14.40%
70
12.80%
64
13.80%
75
13.30%
57
12.20%
90%
46.40%
0.00%
0.40%
本
80%
11.40%
46.50%
14.80% 0.40%
18.70%
70%
34.70%
0.50%
17.00%
60%
43.20%
0.20%
21.40%
テレビ
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
40%
0.30%
17.70%
テレビ
全体
30%
インターネット
新聞
ラジオ
雑誌
8
0.30%
1
0.20%
3
0.50%
0
0%
2
0.40%
2
0.40%
579
9.60%
6.20% 6.60%
5.00%5.00%
6.50%3.50%
4.50%5.20%
その他
インターネット
443
17.70%
98
21.40%
93
17%
81
17.50%
84
14.80%
87
18.70%
100%
新聞
1080
43.20%
159
34.70%
254
46.50%
215
46.40%
271
47.90%
181
38.80%
雑誌
337
13.50%
52
11.40%
56
10.30%
57
12.30%
77
13.60%
94
20.20%
その他
153
6.10%
38
8.30%
34
6.20%
23
5%
37
6.50%
21
4.50%
147
5.90%
44
9.60%
36
6.60%
23
5%
20
3.50%
24
5.20%
年代(10歳区切り)
×
問27 科学技術について信頼できる情報を得るため -あなたは、以下の目的のために、どのようなメディアを利
用したいですか。それぞれの目的について、各メディアから一つ選んでください。
0%
10%
全体
18.90%
13.60%
40代
16.60%
15.10%
50代
13.30%
11.40%
17.50%
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
テレビ
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
本
60%
70%
80%
42.80%
0.40%
ラジオ
インターネット
新聞
ラジオ
雑誌
7
0.30%
0
0%
2
0.40%
2
0.40%
2
0.40%
1
0.20%
580
12.10%
8.00% 5.00%
10.40% 3.00%
7.10% 3.40%
その他
インターネット
454
18.20%
88
19.20%
103
18.90%
77
16.60%
99
17.50%
86
18.50%
8.80% 4.40%
22.70%
36.70%
6.10%
9.50%
15.00%
40.50%
0.40%
100%
9.70% 4.30%
14.20%
10.70%
44.50%
0.40%
90%
13.90%
34.90%
0.00%
本
340
13.60%
68
14.80%
74
13.60%
70
15.10%
75
13.30%
53
11.40%
50%
40.00%
0.20%
18.50%
テレビ
40%
0.30%
19.20%
14.80%
30代
30%
18.20%
13.60%
20代
60代
20%
新聞
1001
40%
160
34.90%
243
44.50%
198
42.80%
229
40.50%
171
36.70%
雑誌
348
13.90%
49
10.70%
52
9.50%
56
12.10%
85
15%
106
22.70%
その他
242
9.70%
65
14.20%
48
8.80%
37
8%
59
10.40%
33
7.10%
108
4.30%
28
6.10%
24
4.40%
23
5%
17
3%
16
3.40%
年代(10歳区切り)
×
問28 病気になったり、持病が悪化したりしないか不安である -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのよう
に思われますか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
26.20%
40代
26.10%
50代
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
14.90%
15.50%
9.70%
45.90%
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
ややそう思う
658
26.30%
139
30.30%
143
26.20%
121
26.10%
123
21.70%
132
28.30%
どちらともいえない
1137
45.50%
185
40.40%
244
44.70%
223
48.20%
270
47.70%
214
45.90%
581
あまりそう思わない
323
12.90%
42
9.20%
79
14.50%
69
14.90%
88
15.50%
45
9.70%
6.30%
10.60% 4.00%
8.90% 1.90%
11.70% 3.40%
12.00%
そう思わない
あまりそう思わない
284
11.40%
63
13.80%
58
10.60%
41
8.90%
66
11.70%
56
12%
100%
11.40% 3.90%
14.50%
47.70%
ややそう思う
90%
13.80%
9.20%
48.20%
28.30%
そう思う
80%
12.90%
44.70%
21.70%
60代
70%
40.40%
30.30%
30代
60%
45.50%
26.30%
20代
50%
そう思わない
98
3.90%
29
6.30%
22
4%
9
1.90%
19
3.40%
19
4.10%
4.10%
年代(10歳区切り)
×
問28 自分やパートナー(夫・妻など)の給料が低下したり、失業したりしないか不安である -あなたは、以下の
ぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
60%
70%
90%
100%
7.50%
13.20%
14.00%
20.10%
33.80%
26.40%
80%
19.00%
36.20%
24.10%
20代
50%
5.70%
30代
28.20%
39.40%
16.80%
10.30%
5.30%
40代
27.90%
39.70%
17.50%
9.50%
5.40%
50代
60代
そう思う
ややそう思う
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
ややそう思う
602
24.10%
121
26.40%
154
28.20%
129
27.90%
120
21.20%
77
16.50%
582
あまりそう思わない
どちらともいえない
906
36.20%
155
33.80%
215
39.40%
184
39.70%
222
39.20%
130
27.90%
14.20%
18.90%
22.50%
27.90%
16.50%
474
19%
92
20.10%
92
16.80%
81
17.50%
104
18.40%
105
22.50%
7.20%
14.00%
18.40%
39.20%
21.20%
そう思わない
あまりそう思わない
331
13.20%
64
14%
56
10.30%
44
9.50%
79
14%
88
18.90%
そう思わない
187
7.50%
26
5.70%
29
5.30%
25
5.40%
41
7.20%
66
14.20%
年代(10歳区切り)
×
問28 「負け組」にならないためには、死にものぐるいで努力しなければならない -あなたは、以下のぞれぞれに
ついて、どのように思われますか。
0%
全体
20代
30代
40代
10%
20%
30%
50代 5.30%
15.90%
60代 5.60%
16.10%
そう思う
全体
30代
40代
50代
60代
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
12.80%
24.00%
17.20%
30.30%
ややそう思う
185
7.40%
53
11.60%
49
9%
27
5.80%
30
5.30%
26
5.60%
583
あまりそう思わない
どちらともいえない
499
20%
99
21.60%
127
23.30%
107
23.10%
90
15.90%
75
16.10%
835
33.40%
129
28.20%
181
33.20%
169
36.50%
212
37.50%
144
30.90%
10.60%
11.30%
30.00%
どちらともいえない
100%
11.80%
21.80%
30.90%
90%
12.70%
26.90%
37.50%
ややそう思う
80%
26.60%
36.50%
23.10%
5.80%
70%
33.20%
23.30%
9.00%
60%
28.20%
21.60%
11.60%
20代
50%
33.40%
20.00%
7.40%
全体
40%
そう思わない
あまりそう思わない
664
26.60%
123
26.90%
119
21.80%
111
24%
170
30%
141
30.30%
そう思わない
317
12.70%
54
11.80%
70
12.80%
49
10.60%
64
11.30%
80
17.20%
年代(10歳区切り)
×
問28 いわゆる「負け組」は、幸せになれない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体 3.80% 10.40%
20代 5.50%
全体
40代
50代
60代
27.70%
21.00%
24.20%
25.80%
35.80%
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
31.90%
35.50%
どちらともいえない
ややそう思う
94
3.80%
25
5.50%
20
3.70%
22
4.80%
15
2.70%
12
2.60%
584
あまりそう思わない
どちらともいえない
259
10.40%
55
12%
59
10.80%
41
8.90%
58
10.20%
45
9.70%
90%
26.00%
32.00%
26.20%
ややそう思う
80%
31.50%
27.40%
60代 2.60% 9.70%
70%
29.30%
33.50%
50代 2.70% 10.20%
30代
60%
32.90%
26.40%
40代 4.80% 8.90%
20代
50%
21.40%
30代 3.70% 10.80%
全体
40%
27.00%
12.00%
そう思う
30%
674
27%
98
21.40%
144
26.40%
155
33.50%
155
27.40%
122
26.20%
そう思わない
あまりそう思わない
822
32.90%
134
29.30%
172
31.50%
148
32%
201
35.50%
167
35.80%
そう思わない
651
26%
146
31.90%
151
27.70%
97
21%
137
24.20%
120
25.80%
100%
年代(10歳区切り)
×
問28 以前からなされてきたやり方を守ることが、最上の結果を生む -あなたは、以下のぞれぞれについて、ど
のように思われますか。
0%
10%
20%
全体 1.40%8.10%
30%
40%
36.00%
30代 1.60%7.00%
38.50%
50代 0.90%9.20%
40.60%
全体
20代
30代
40代
50代
60代
19.20%
22.70%
21.40%
16.30%
33.00%
13.90%
30.30%
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
90%
18.70%
27.20%
45.70%
ややそう思う
80%
30.20%
42.80%
全体
70%
34.90%
40代 1.10%7.60%
60代 1.10%9.00%
60%
31.20%
40.60%
20代 2.20%7.60%
そう思う
50%
ややそう思う
34
1.40%
10
2.20%
9
1.60%
5
1.10%
5
0.90%
5
1.10%
どちらともいえない
202
8.10%
35
7.60%
38
7%
35
7.60%
52
9.20%
42
9%
585
あまりそう思わない
1016
40.60%
165
36%
210
38.50%
198
42.80%
230
40.60%
213
45.70%
あまりそう思わない
780
31.20%
160
34.90%
165
30.20%
126
27.20%
187
33%
141
30.30%
そう思わない
そう思わない
468
18.70%
88
19.20%
124
22.70%
99
21.40%
92
16.30%
65
13.90%
100%
年代(10歳区切り)
×
問28 子どもに教えるべきもっとも大切なことは、両親にたいする絶対服従である -あなたは、以下のぞれぞれ
について、どのように思われますか。
0%
10%
4.20%
全体 1.10%
4.60%
20代 1.30%
3.70%
50代0.90%
30%
30代
40代
50代
60代
70%
46.50%
44.10%
44.30%
31.80%
19.30%
32.80%
38.80%
23.60%
ややそう思う
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
90%
50.40%
33.70%
17.50%
80%
43.80%
28.60%
全体
20代
60%
27.90%
18.50%
そう思う
50%
32.00%
15.70%
4.10%
60代0.60%
全体
40%
18.90%
5.10%
30代 1.30%
3.50%
40代 1.30%
20%
ややそう思う
27
1.10%
6
1.30%
7
1.30%
6
1.30%
5
0.90%
3
0.60%
どちらともいえない
105
4.20%
21
4.60%
28
5.10%
16
3.50%
21
3.70%
19
4.10%
586
あまりそう思わない
473
18.90%
72
15.70%
101
18.50%
81
17.50%
109
19.30%
110
23.60%
そう思わない
あまりそう思わない
801
32%
128
27.90%
156
28.60%
156
33.70%
180
31.80%
181
38.80%
そう思わない
1094
43.80%
231
50.40%
254
46.50%
204
44.10%
251
44.30%
153
32.80%
100%
年代(10歳区切り)
×
問28 権威ある人々には、つねに敬意を払わなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのよう
に思われますか。
0%
10%
全体 1.50%8.80%
20代 2.40%
20%
30%
6.20%
60代 1.30%
27.00%
20代
30代
40代
50代
60代
27.10%
33.70%
37.10%
37.30%
34.30%
31.10%
ややそう思う
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
ややそう思う
37
1.50%
11
2.40%
9
1.60%
5
1.10%
6
1.10%
6
1.30%
あまりそう思わない
どちらともいえない
219
8.80%
69
15.10%
58
10.60%
28
6%
35
6.20%
29
6.20%
587
90%
34.00%
28.60%
全体
全体
80%
31.70%
24.00%
26.90%
70%
28.90%
25.10%
6.20%
50代 1.10%
60%
28.40%
27.10%
30代 1.60% 10.60%
そう思う
50%
29.70%
26.00%
15.10%
6.00%
40代 1.10%
40%
651
26%
124
27.10%
137
25.10%
111
24%
152
26.90%
126
27%
そう思わない
あまりそう思わない
742
29.70%
130
28.40%
158
28.90%
147
31.70%
162
28.60%
145
31.10%
そう思わない
851
34%
124
27.10%
184
33.70%
172
37.10%
211
37.30%
160
34.30%
100%
年代(10歳区切り)
×
問28 この複雑な世の中で何をなすべきか知る唯一の方法は、指導者や専門家に頼る事である -あなたは、以
下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
5.60%
全体 1.00%
20代 2.20%7.40%
6.20%
30代0.50%
20%
23.10%
30代
40代
50代
60代
70%
80%
30.30%
33.70%
32.40%
36.70%
33.50%
38.70%
32.20%
32.60%
33.30%
29.00%
ややそう思う
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
ややそう思う
25
1%
10
2.20%
3
0.50%
4
0.90%
5
0.90%
3
0.60%
あまりそう思わない
どちらともいえない
141
5.60%
34
7.40%
34
6.20%
22
4.80%
29
5.10%
21
4.50%
588
90%
34.60%
35.60%
全体
20代
60%
33.30%
27.10%
5.10%
50代0.90%
全体
50%
24.50%
24.20%
そう思う
40%
25.50%
4.80%
40代0.90%
4.50%
60代0.60%
30%
638
25.50%
112
24.50%
148
27.10%
112
24.20%
131
23.10%
135
29%
そう思わない
あまりそう思わない
832
33.30%
163
35.60%
177
32.40%
155
33.50%
182
32.20%
155
33.30%
そう思わない
864
34.60%
139
30.30%
184
33.70%
170
36.70%
219
38.70%
152
32.60%
100%
年代(10歳区切り)
×
問28 自分の「本当の気持ち」は大切にしなければならない -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように
思われますか。
0%
10%
20%
30%
全体
43.80%
20代
43.00%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
0.70%
11.70% 1.80%
42.00%
0.70%
12.00% 2.40%
41.90%
30代
39.90%
44.00%
13.70%
0.50%
1.80%
40代
40.60%
42.50%
14.90%
0.40%
1.50%
50代
60代
ややそう思う
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1.10%
7.70%1.10%
38.80%
51.30%
そう思う
0.70%
10.20% 2.10%
42.20%
44.70%
ややそう思う
1096
43.80%
197
43%
218
39.90%
188
40.60%
253
44.70%
239
51.30%
どちらともいえない
1049
42%
192
41.90%
240
44%
197
42.50%
239
42.20%
181
38.80%
589
あまりそう思わない
293
11.70%
55
12%
75
13.70%
69
14.90%
58
10.20%
36
7.70%
そう思わない
あまりそう思わない
そう思わない
45
1.80%
11
2.40%
10
1.80%
7
1.50%
12
2.10%
5
1.10%
17
0.70%
3
0.70%
3
0.50%
2
0.40%
4
0.70%
5
1.10%
年代(10歳区切り)
×
問28 「自分らしく」生きることは大切である -あなたは、以下のぞれぞれについて、どのように思われますか。
0%
10%
20%
全体
30%
40%
50%
60%
70%
30代
40代
ややそう思う
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらともいえない
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
0.90%
0.60%
5.40%
32.60%
60.50%
そう思う
0.50%
8.50%1.40%
37.50%
52.10%
60代
0.60%
11.20% 1.10%
40.60%
46.40%
50代
0.40%
13.40% 1.10%
40.50%
44.70%
ややそう思う
1261
50.40%
224
48.90%
244
44.70%
215
46.40%
295
52.10%
282
60.50%
590
あまりそう思わない
どちらともいえない
936
37.40%
163
35.60%
221
40.50%
188
40.60%
212
37.50%
152
32.60%
251
10%
53
11.60%
73
13.40%
52
11.20%
48
8.50%
25
5.40%
100%
0.40%
11.60% 3.50%
35.60%
48.90%
90%
0.60%
10.00%1.50%
37.40%
50.40%
20代
80%
そう思わない
あまりそう思わない
そう思わない
38
1.50%
16
3.50%
6
1.10%
5
1.10%
8
1.40%
3
0.60%
14
0.60%
2
0.40%
2
0.40%
3
0.60%
3
0.50%
4
0.90%
年代(10歳区切り)
×
問29 私には人より優れたところがある -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれ
についてお答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
12.20%
41.60%
34.70%
11.40%
30代
40代
20代
14.00%
41.30%
32.30%
50代
12.40%
60代
30代
40代
11.50%
13.20%
37.00%
38.70%
50代
11.00%
46.10%
60代
12.00%
44.60%
そう思う
どちらかといえばそう思う
39.70%
37.10%
33.40%
30.50%
どちらかといえばそう思わない
11.70%
11.00%
9.50%
12.90%
そう思わない
591
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
306
12.20%
64
14%
63
11.50%
61
13.20%
62
11%
56
12%
1040
41.60%
189
41.30%
202
37%
179
38.70%
261
46.10%
208
44.60%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
868
34.70%
148
32.30%
217
39.70%
172
37.10%
189
33.40%
142
30.50%
286
11.40%
57
12.40%
64
11.70%
51
11%
54
9.50%
60
12.90%
年代(10歳区切り)
×
問29 私はいわゆる「勝ち組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれにつ
いてお答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体 2.20%
31.80%
44.40%
21.60%
30代
40代
20代 2.60%
43.20%
22.70%
50代
31.40%
60代
30代 2.60%
40代 1.70%
50代 1.90%
45.60%
20.00%
そう思う
35.20%
44.10%
19.00%
60代 1.90%
34.40%
44.10%
18.90%
28.30%
どちらかといえばそう思う
32.50%
44.80%
どちらかといえばそう思わない
24.90%
そう思わない
592
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
54
2.20%
12
2.60%
14
2.60%
8
1.70%
11
1.90%
9
1.90%
540
21.60%
104
22.70%
103
18.90%
88
19%
113
20%
132
28.30%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1111
44.40%
198
43.20%
241
44.10%
204
44.10%
258
45.60%
209
44.80%
795
31.80%
144
31.40%
188
34.40%
163
35.20%
184
32.50%
116
24.90%
年代(10歳区切り)
×
問29 私はいわゆる「負け組」である -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれに
ついてお答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
19.10%
5.60%
48.30%
27.00%
30代
40代
20代
48.00%
19.90%
7.90%
50代
24.20%
60代
30代
6.80%
20.90%
43.80%
40代
6.50%
20.70%
45.60%
50代 4.90%
60代 2.10%
18.20%
15.90%
そう思う
50.70%
53.40%
どちらかといえばそう思う
どちらかといえばそう思わない
28.60%
27.20%
26.10%
28.50%
そう思わない
593
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
141
5.60%
36
7.90%
37
6.80%
30
6.50%
28
4.90%
10
2.10%
478
19.10%
91
19.90%
114
20.90%
96
20.70%
103
18.20%
74
15.90%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
1207
48.30%
220
48%
239
43.80%
211
45.60%
287
50.70%
249
53.40%
674
27%
111
24.20%
156
28.60%
126
27.20%
148
26.10%
133
28.50%
年代(10歳区切り)
×
問29 私は「本当の気持ち」を大切にして生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下
のそれぞれについてお答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
56.20%
17.90%
21.20%
4.70%
30代
40代
20代
15.50%
26.60%
53.30%
50代
4.60%
60代
30代
40代
50代
60代
16.70%
13.80%
54.60%
56.20%
22.70%
そう思う
23.50%
55.70%
20.30%
61.40%
どちらかといえばそう思う
5.90%
22.90%
どちらかといえばそう思わない
6.90%
20.50%
12.70%
3.00%
3.20%
そう思わない
594
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
447
17.90%
71
15.50%
91
16.70%
64
13.80%
115
20.30%
106
22.70%
1405
56.20%
244
53.30%
298
54.60%
258
55.70%
318
56.20%
286
61.40%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
531
21.20%
122
26.60%
125
22.90%
109
23.50%
116
20.50%
59
12.70%
117
4.70%
21
4.60%
32
5.90%
32
6.90%
17
3%
15
3.20%
年代(10歳区切り)
×
問29 私は「私らしく」生きている -あなたは、ご自分のことをどのように思われますか。以下のそれぞれについ
てお答えください。
全体
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
全体
5.20%
18.30%
55.00%
21.50%
30代
40代
20代
50代
5.20%
21.20%
52.60%
21.00%
60代
30代
40代
50代
14.70%
そう思う
どちらかといえばそう思う
6.30%
17.80%
54.20%
29.00%
7.50%
21.80%
57.20%
24.20%
60代
21.10%
52.70%
18.70%
58.80%
どちらかといえばそう思わない
3.70%
9.20% 3.00%
そう思わない
595
そう思う
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
どちらかといえばそう思う
538
21.50%
96
21%
102
18.70%
68
14.70%
137
24.20%
135
29%
1376
55%
241
52.60%
288
52.70%
265
57.20%
307
54.20%
274
58.80%
どちらかといえばそう思
そう思わない
わない
457
18.30%
97
21.20%
115
21.10%
101
21.80%
101
17.80%
43
9.20%
129
5.20%
24
5.20%
41
7.50%
29
6.30%
21
3.70%
14
3%
年代(10歳区切り)
×
問30 見ず知らずの他人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲
にしてもかまわないと思いますか。
0%
全体 2.20%
10%
30%
40%
14.50%
50代 1.10%
17.50%
70%
80%
25.50%
0.00%
25.30%
0.00%
56.40%
25.10%
0.00%
54.90%
25.30%
0.00%
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
0.00%
0.00%
犠牲にしてもかまわない
全体
100%
24.60%
58.70%
18.20%
90%
26.90%
48.70%
22.50%
40代 2.20%
60%
51.10%
18.60%
30代 1.80%
50%
53.90%
18.40%
20代 5.00%
60代 1.50%
20%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
56
2.20%
23
5%
10
1.80%
10
2.20%
6
1.10%
7
1.50%
459
18.40%
85
18.60%
123
22.50%
67
14.50%
99
17.50%
85
18.20%
596
1347
53.90%
234
51.10%
266
48.70%
272
58.70%
319
56.40%
256
54.90%
まったく犠牲にしたくない
638
25.50%
116
25.30%
147
26.90%
114
24.60%
142
25.10%
118
25.30%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問30 友人 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわ
ないと思いますか。
0%
全体
10%
20%
30代
50%
60%
70%
60代 4.90%
13.10% 0.90%
15.00% 0.20%
11.90% 0.60%
28.90%
11.10%0.40%
26.30%
56.50%
10.90%0.60%
30.30%
53.20%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
170
6.80%
53
11.60%
41
7.50%
21
4.50%
32
5.70%
23
4.90%
1331
53.20%
239
52.20%
273
50%
250
54%
320
56.50%
248
53.20%
597
675
27%
102
22.30%
149
27.30%
134
28.90%
149
26.30%
141
30.30%
100%
12.40% 0.50%
27.30%
54.00%
5.70%
90%
22.30%
50.00%
7.50%
80%
27.00%
52.20%
11.60%
40代 4.50%
50代
40%
53.20%
6.80%
20代
30%
まったく犠牲にしたくない
311
12.40%
60
13.10%
82
15%
55
11.90%
63
11.10%
51
10.90%
いない、あるいは、勤め
ていない
13
0.50%
4
0.90%
1
0.20%
3
0.60%
2
0.40%
3
0.60%
年代(10歳区切り)
×
問30 家族 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわ
ないと思いますか。
0%
10%
全体
20%
30%
40%
50%
60%
40代
16.20%
18.50%
10.40%
15.30%
10.80%
22.90%
50.80%
100%
14.30% 0.40%
11.10%
27.30%
43.60%
90%
9.60%
33.00%
39.30%
30代
80%
26.40%
49.40%
20代
70%
0.40%
0.20%
0.20%
50代
55.80%
25.30%
7.20%
11.30% 0.40%
60代
56.90%
23.60%
8.80%
10.10%0.60%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
1235
49.40%
180
39.30%
238
43.60%
235
50.80%
316
55.80%
265
56.90%
659
26.40%
151
33%
149
27.30%
106
22.90%
143
25.30%
110
23.60%
598
240
9.60%
51
11.10%
57
10.40%
50
10.80%
41
7.20%
41
8.80%
まったく犠牲にしたくない
357
14.30%
74
16.20%
101
18.50%
71
15.30%
64
11.30%
47
10.10%
いない、あるいは、勤め
ていない
9
0.40%
2
0.40%
1
0.20%
1
0.20%
2
0.40%
3
0.60%
年代(10歳区切り)
×
問30 親戚 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわ
ないと思いますか。
0%
10%
全体
7.70%
20代
7.00%
30代
20%
7.10%
50代
7.40%
60代
8.40%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
15.50%
33.00%
44.10%
18.30%
31.10%
41.90%
16.80%
28.90%
46.90%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
192
7.70%
32
7%
46
8.40%
33
7.10%
42
7.40%
39
8.40%
1225
49%
202
44.10%
229
41.90%
217
46.90%
307
54.20%
269
57.70%
599
697
27.90%
151
33%
170
31.10%
134
28.90%
139
24.60%
103
22.10%
まったく犠牲にしたくない
381
15.20%
71
15.50%
100
18.30%
78
16.80%
77
13.60%
55
11.80%
0.20%
0.20%
11.80% 0.00%
22.10%
57.70%
0.40%
13.60% 0.20%
24.60%
54.20%
100%
15.20% 0.20%
27.90%
49.00%
8.40%
40代
30%
いない、あるいは、勤め
ていない
5
0.20%
2
0.40%
1
0.20%
1
0.20%
1
0.20%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問30 暮らしている地域 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲に
してもかまわないと思いますか。
0%
10%
20%
全体 1.70%
31.60%
20代 3.90%
26.40%
30代 1.60%
30%
40%
50%
90%
0.00%
16.60%
0.00%
0.00%
16.40%
0.00%
13.70% 0.00%
46.40%
38.20%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
43
1.70%
18
3.90%
9
1.60%
3
0.60%
5
0.90%
8
1.70%
789
31.60%
121
26.40%
141
25.80%
143
30.90%
205
36.20%
178
38.20%
600
1260
50.40%
243
53.10%
293
53.70%
245
52.90%
263
46.50%
216
46.40%
0.00%
15.60%
52.90%
46.50%
100%
16.30%
18.90%
53.70%
36.20%
60代 1.70%
80%
53.10%
30.90%
50代0.90%
70%
50.40%
25.80%
40代0.60%
60%
まったく犠牲にしたくない
408
16.30%
76
16.60%
103
18.90%
72
15.60%
93
16.40%
64
13.70%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問30 勤めている会社 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にし
てもかまわないと思いますか。
0%
全体 2.40%
10%
30%
40%
70%
60代0.90% 14.40%
19.90%
18.50%
21.80%
22.40%
18.90%
39.50%
15.00%
30.30%
15.80%
21.00%
32.20%
24.00%
90%
23.00%
19.20%
38.90%
22.00%
80%
19.20%
37.40%
19.60%
50代 2.50%
60%
34.30%
23.40%
40代 2.40%
50%
34.60%
20.80%
20代 3.30%
30代 2.70%
20%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
59
2.40%
15
3.30%
15
2.70%
11
2.40%
14
2.50%
4
0.90%
519
20.80%
107
23.40%
107
19.60%
102
22%
136
24%
67
14.40%
601
865
34.60%
157
34.30%
204
37.40%
180
38.90%
182
32.20%
141
30.30%
まったく犠牲にしたくない
481
19.20%
88
19.20%
119
21.80%
97
21%
107
18.90%
70
15%
いない、あるいは、勤め
ていない
576
23%
91
19.90%
101
18.50%
73
15.80%
127
22.40%
184
39.50%
100%
年代(10歳区切り)
×
問30 国 -あなたは、以下にあげる人々や組織、集団のために、どのくらい自分の利益を犠牲にしてもかまわな
いと思いますか。
0%
10%
全体 2.80%
40代 2.40%
30%
40%
50%
80%
29.90%
0.00%
0.00%
0.00%
24.00%
48.70%
24.90%
0.00%
27.70%
48.40%
22.10%
犠牲にしてもかまわない
多少なら犠牲にしてもかまわない あまり犠牲にしたくない
まったく犠牲にしたくない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
犠牲にしてもかまわない
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
多少なら犠牲にしてもか
あまり犠牲にしたくない
まわない
69
2.80%
22
4.80%
15
2.70%
11
2.40%
10
1.80%
11
2.40%
528
21.10%
98
21.40%
110
20.10%
79
17.10%
125
22.10%
116
24.90%
602
1181
47.20%
201
43.90%
242
44.30%
236
51%
274
48.40%
227
48.70%
まったく犠牲にしたくない
722
28.90%
137
29.90%
179
32.80%
137
29.60%
157
27.70%
112
24%
100%
28.90%
29.60%
51.00%
17.10%
90%
32.80%
44.30%
20.10%
60代 2.40%
70%
43.90%
21.40%
50代 1.80%
60%
47.20%
21.10%
20代 4.80%
30代 2.70%
20%
いない、あるいは、勤め
ていない
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0.00%
0.00%
年代(10歳区切り)
×
問31 見ず知らずの他人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになる
と思いますか。
0%
10%
20%
全体 0.60%8.00%
30%
40%
50%
60%
70%
7.10%
40代0.40%
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
全体
20代
30代
40代
50代
60代
0.00%
0.00%
59.00%
34.10%
全体
0.00%
61.70%
32.50%
6.20%
60代0.60%
0.00%
56.80%
35.60%
5.80%
50代0.00%
0.00%
48.90%
39.60%
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
14
0.60%
4
0.90%
5
0.90%
2
0.40%
0
0%
3
0.60%
200
8%
46
10%
58
10.60%
33
7.10%
33
5.80%
29
6.20%
603
100%
0.00%
53.90%
35.20%
30代0.90% 10.60%
90%
56.00%
35.40%
20代0.90%10.00%
80%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
885
35.40%
161
35.20%
216
39.60%
165
35.60%
184
32.50%
159
34.10%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
1401
56%
247
53.90%
267
48.90%
263
56.80%
349
61.70%
275
59%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問31 友人 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
0%
全体
10%
40%
50代
7.20%
60%
70%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
30代
40代
50代
60代
14.10% 0.20%
15.20%
32.60%
頼りにならない
20代
12.50% 0.40%
29.20%
頼りになる
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
11.20%0.40%
28.70%
45.30%
全体
1.10%
6.60%
25.80%
49.30%
258
10.30%
88
19.20%
67
12.30%
34
7.30%
41
7.20%
27
5.80%
1247
49.90%
246
53.70%
275
50.40%
236
51%
279
49.30%
211
45.30%
604
100%
12.00% 0.60%
19.40%
50.40%
5.80%
90%
27.20%
51.00%
全体
80%
53.70%
12.30%
7.30%
50%
49.90%
19.20%
40代
60代
30%
10.30%
20代
30代
20%
1.10%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
680
27.20%
89
19.40%
141
25.80%
133
28.70%
165
29.20%
152
32.60%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
300
12%
30
6.60%
61
11.20%
58
12.50%
80
14.10%
71
15.20%
15
0.60%
5
1.10%
2
0.40%
2
0.40%
1
0.20%
5
1.10%
年代(10歳区切り)
×
問31 家族 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
0%
10%
20%
全体
30%
40%
50%
60%
70%
0.20%
7.90% 2.80%
0.20%
6.60% 3.80%
35.20%
54.20%
100%
0.30%
7.30%3.00%
30.30%
58.70%
30代
90%
35.00%
54.40%
20代
80%
40代
52.70%
50代
53.50%
35.90%
0.50%
7.20%2.80%
60代
52.80%
38.20%
0.40%
5.40%3.20%
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
0.20%
9.50% 2.40%
35.20%
1359
54.40%
269
58.70%
296
54.20%
244
52.70%
303
53.50%
246
52.80%
875
35%
139
30.30%
192
35.20%
163
35.20%
203
35.90%
178
38.20%
605
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
182
7.30%
36
7.90%
36
6.60%
44
9.50%
41
7.20%
25
5.40%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
76
3%
13
2.80%
21
3.80%
11
2.40%
16
2.80%
15
3.20%
8
0.30%
1
0.20%
1
0.20%
1
0.20%
3
0.50%
2
0.40%
年代(10歳区切り)
×
問31 親戚 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
0%
全体
20代
30代
40代
10%
20%
30%
40%
10.10%
どちらかといえば頼りになる
いない、あるいは、勤めていない
20代
30代
40代
50代
60代
13.00% 0.00%
11.30%0.20%
12.20% 0.20%
28.80%
頼りにならない
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
13.60% 0.00%
27.00%
48.70%
全体
12.20% 0.70%
26.30%
51.40%
325
13%
90
19.70%
78
14.30%
53
11.40%
57
10.10%
47
10.10%
1199
48%
206
45%
246
45.10%
228
49.20%
291
51.40%
227
48.70%
606
100%
12.40% 0.20%
27.10%
頼りになる
全体
90%
22.50%
49.20%
11.40%
80%
26.40%
45.10%
14.30%
60代
70%
45.00%
19.70%
10.10%
60%
48.00%
13.00%
50代
50%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
660
26.40%
103
22.50%
148
27.10%
122
26.30%
153
27%
134
28.80%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
311
12.40%
56
12.20%
74
13.60%
60
13%
64
11.30%
57
12.20%
5
0.20%
3
0.70%
0
0%
0
0%
1
0.20%
1
0.20%
年代(10歳区切り)
×
問31 暮らしている地域 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると
思いますか。
0%
10%
20%
全体 1.70%
24.20%
20代 2.20%
23.80%
30代 2.20%
21.40%
40代 1.10%
22.70%
50代 1.10%
30%
40%
60%
70%
27.60%
48.80%
43.10%
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
20代
30代
40代
50代
60代
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
42
1.70%
10
2.20%
12
2.20%
5
1.10%
6
1.10%
9
1.90%
606
24.20%
109
23.80%
117
21.40%
105
22.70%
138
24.40%
137
29.40%
607
0.00%
0.00%
29.50%
48.60%
100%
0.00%
31.70%
46.90%
全体
90%
28.00%
42.40%
29.40%
全体
80%
46.10%
24.40%
60代 1.90%
50%
0.00%
25.80%
0.00%
25.50%
0.00%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
1153
46.10%
194
42.40%
256
46.90%
225
48.60%
276
48.80%
201
43.10%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
699
28%
145
31.70%
161
29.50%
128
27.60%
146
25.80%
119
25.50%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問31 勤めている会社 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると
思いますか。
0%
全体 2.00%
10%
40%
60%
70%
どちらかといえば頼りになる
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
全体
20代
30代
40代
50代
60代
23.30%
45.10%
頼りになる
全体
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
16.60%
28.10%
23.00%
20.40%
18.50%
26.30%
29.00%
17.70%
50
2%
15
3.30%
8
1.50%
11
2.40%
11
1.90%
5
1.10%
465
18.60%
119
26%
102
18.70%
95
20.50%
100
17.70%
49
10.50%
608
100%
20.10%
24.70%
34.10%
90%
24.50%
24.70%
36.60%
20.50%
80%
25.50%
26.00%
18.70%
60代 1.10% 10.50%
50%
29.40%
26.00%
40代 2.40%
50代 1.90%
30%
18.60%
20代 3.30%
30代 1.50%
20%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
736
29.40%
119
26%
200
36.60%
158
34.10%
164
29%
95
20.40%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
637
25.50%
113
24.70%
135
24.70%
122
26.30%
159
28.10%
107
23%
612
24.50%
92
20.10%
101
18.50%
77
16.60%
132
23.30%
210
45.10%
年代(10歳区切り)
×
問31 国 -あなたは、自分や家族が困ったときに以下にあげる人々や組織、集団が頼りになると思いますか。
0%
10%
20%
30%
40%
全体 0.70% 11.10%
38.60%
20代0.90% 12.90%
34.90%
7.30%
30代0.40%
50%
60%
70%
41.50%
50代0.50% 11.80%
39.20%
60代 1.30% 14.60%
36.30%
頼りになる
どちらかといえば頼りになる
頼りにならない
いない、あるいは、勤めていない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
どちらかといえば頼りに
なる
頼りになる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
90%
17
0.70%
4
0.90%
2
0.40%
2
0.40%
3
0.50%
6
1.30%
278
11.10%
59
12.90%
40
7.30%
44
9.50%
67
11.80%
68
14.60%
609
100%
0.00%
49.60%
40.80%
40代0.40%9.50%
80%
51.30%
0.00%
51.50%
0.00%
48.60%
0.00%
48.40%
0.00%
47.90%
0.00%
どちらかといえば頼りにならない
どちらかといえば頼りに
ならない
966
38.60%
160
34.90%
223
40.80%
192
41.50%
222
39.20%
169
36.30%
いない、あるいは、勤め
ていない
頼りにならない
1239
49.60%
235
51.30%
281
51.50%
225
48.60%
274
48.40%
223
47.90%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
年代(10歳区切り)
×
問32あなたは、お子さんに、どの学校まで出て欲しいと思いますか。お子さんが既に学校教育を終えておられ
る方は、お子さんが学校に行っていたときにどう思っていたのかお答えください。
0%
10%
全体 0.50% 11.40%
20代0.70%
30代0.70%
20%
30%
40%
15.30%
全体
50代
60代
5.70%2.60%
4.40%4.00%
7.10% 3.70%
11.80% 3.50%
15.50%
73.80%
高校まで
短大・高専まで
中学校まで
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
高校まで
13
0.50%
3
0.70%
4
0.70%
3
0.60%
2
0.40%
1
0.20%
大学まで
短大・高専まで
286
11.40%
70
15.30%
92
16.80%
57
12.30%
45
8%
22
4.70%
610
100%
8.90% 3.10%
70.30%
中学校まで
40代
90%
67.40%
8.90%
4.70%4.30%
60代0.20%
30代
80%
66.70%
7.30%
16.80%
70%
69.70%
6.10%
50代0.40%8.00% 6.00%
20代
60%
69.50%
6.50%
40代0.60% 12.30%
全体
50%
大学院まで
大学まで
163
6.50%
28
6.10%
40
7.30%
41
8.90%
34
6%
20
4.30%
その他
大学院まで
1738
69.50%
319
69.70%
364
66.70%
312
67.40%
398
70.30%
344
73.80%
1.50%
その他
222
8.90%
26
5.70%
24
4.40%
33
7.10%
67
11.80%
72
15.50%
78
3.10%
12
2.60%
22
4%
17
3.70%
20
3.50%
7
1.50%
年代(10歳区切り)
×
問33あなたはなにか宗教を信じていますか。
全体
0%
全体
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
全体
20代
85.10%
14.90%
30代
20代
30代
91.90%
8.10%
40代
50代
87.70%
12.30%
60代
40代
50代
60代
16.20%
83.80%
81.80%
18.20%
80.50%
19.50%
はい
いいえ
611
はい
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
いいえ
373
14.90%
37
8.10%
67
12.30%
75
16.20%
103
18.20%
91
19.50%
2127
85.10%
421
91.90%
479
87.70%
388
83.80%
463
81.80%
375
80.50%
年代(10歳区切り)
×
問34 神仏を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりませんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
11.10%
20代
31.80%
28.10%
29.00%
30代
40代
20代
9.60%
30代
10.60%
25.50%
45.00%
19.90%
50代
60代
40代
13.80%
50代
12.70%
60代
8.40%
あてはまる
31.30%
28.90%
29.30%
29.40%
どちらかといえば、あてはまる
25.50%
26.80%
32.20%
35.80%
どちらかといえば、あてはまらない
32.60%
30.50%
25.80%
26.40%
あてはまらない
612
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
277
11.10%
44
9.60%
58
10.60%
64
13.80%
72
12.70%
39
8.40%
725
29%
117
25.50%
171
31.30%
134
28.90%
166
29.30%
137
29.40%
どちらかといえば、あて
はまらない
703
28.10%
91
19.90%
139
25.50%
124
26.80%
182
32.20%
167
35.80%
あてはまらない
795
31.80%
206
45%
178
32.60%
141
30.50%
146
25.80%
123
26.40%
年代(10歳区切り)
×
問34 あの世(死後の世界)の存在を信じている -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それと
もあてはまりませんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
20代
33.60%
29.00%
26.70%
10.70%
30代
40代
20代
11.10%
30代
12.10%
23.80%
28.40%
36.70%
50代
60代
40代
50代
60代
14.50%
あてはまる
31.50%
33.60%
26.00%
22.30%
32.40%
25.90%
28.10%
10.10%
5.60%
26.70%
28.80%
34.30%
どちらかといえば、あてはまる
30.40%
37.80%
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
613
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
267
10.70%
51
11.10%
66
12.10%
67
14.50%
57
10.10%
26
5.60%
668
26.70%
130
28.40%
157
28.80%
130
28.10%
147
26%
104
22.30%
どちらかといえば、あて
はまらない
725
29%
109
23.80%
146
26.70%
120
25.90%
190
33.60%
160
34.30%
あてはまらない
840
33.60%
168
36.70%
177
32.40%
146
31.50%
172
30.40%
176
37.80%
年代(10歳区切り)
×
問34 神や霊の存在を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあては
まりませんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
9.40%
20.20%
27.00%
20代
43.30%
30代
40代
20代
7.60%
19.40%
18.80%
54.10%
50代
60代
30代
11.70%
40代
11.40%
50代
60代
9.20%
6.90%
あてはまる
19.40%
24.90%
24.60%
24.60%
21.00%
17.20%
32.30%
33.00%
どちらかといえば、あてはまる
44.00%
39.30%
37.50%
42.90%
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
614
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
236
9.40%
35
7.60%
64
11.70%
53
11.40%
52
9.20%
32
6.90%
506
20.20%
86
18.80%
106
19.40%
114
24.60%
119
21%
80
17.20%
どちらかといえば、あて
はまらない
676
27%
89
19.40%
136
24.90%
114
24.60%
183
32.30%
154
33%
あてはまらない
1082
43.30%
248
54.10%
240
44%
182
39.30%
212
37.50%
200
42.90%
年代(10歳区切り)
×
問34 自然との一体感を感じたことがある -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあて
はまりませんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
20代
34.10%
32.60%
25.30%
8.00%
30代
40代
20代 4.10%
48.30%
29.90%
17.70%
50代
60代
30代
40代
9.30%
7.10%
50代
8.80%
60代
9.90%
あてはまる
22.90%
27.60%
27.60%
30.30%
どちらかといえば、あてはまる
32.20%
35.50%
32.80%
36.00%
31.50%
どちらかといえば、あてはまらない
32.40%
27.60%
28.30%
あてはまらない
615
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
199
8%
19
4.10%
51
9.30%
33
7.10%
50
8.80%
46
9.90%
632
25.30%
81
17.70%
125
22.90%
128
27.60%
156
27.60%
141
30.30%
どちらかといえば、あて
はまらない
816
32.60%
137
29.90%
176
32.20%
152
32.80%
204
36%
147
31.50%
あてはまらない
853
34.10%
221
48.30%
194
35.50%
150
32.40%
156
27.60%
132
28.30%
年代(10歳区切り)
×
問34 瞑想や修行などをしてみたい -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまり
ませんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
5.40%
20代
44.30%
29.00%
21.20%
30代
40代
20代 5.00%
17.90%
53.10%
24.00%
50代
60代
30代 5.10%
20.00%
40代 5.00%
20.10%
50代
6.70%
60代 5.20%
あてはまる
47.30%
27.70%
44.10%
30.90%
23.30%
24.70%
どちらかといえば、あてはまる
30.90%
39.00%
31.30%
38.80%
どちらかといえば、あてはまらない
あてはまらない
616
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
136
5.40%
23
5%
28
5.10%
23
5%
38
6.70%
24
5.20%
531
21.20%
82
17.90%
109
20%
93
20.10%
132
23.30%
115
24.70%
どちらかといえば、あて
はまらない
725
29%
110
24%
151
27.70%
143
30.90%
175
30.90%
146
31.30%
あてはまらない
1108
44.30%
243
53.10%
258
47.30%
204
44.10%
221
39%
181
38.80%
年代(10歳区切り)
×
問34 宗教にはかかわりたくない -以下の内容はそれぞれ、ご自分にあてはまりますか、それともあてはまりま
せんか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
全体
100%
全体
全体
15.50%
27.70%
44.60%
20代
12.10%
30代
40代
20代
10.70%
11.80%
12.50%
11.20%
24.50%
53.10%
50代
60代
30代
26.60%
49.80%
40代
43.20%
50代
38.70%
60代
38.80%
あてはまる
どちらかといえば、あてはまる
29.80%
30.70%
26.60%
16.20%
17.50%
20.80%
どちらかといえば、あてはまらない
10.80%
13.10%
13.70%
あてはまらない
617
どちらかといえば、あて
はまる
あてはまる
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
1116
44.60%
243
53.10%
272
49.80%
200
43.20%
219
38.70%
181
38.80%
693
27.70%
112
24.50%
145
26.60%
138
29.80%
174
30.70%
124
26.60%
どちらかといえば、あて
はまらない
388
15.50%
49
10.70%
68
12.50%
75
16.20%
99
17.50%
97
20.80%
あてはまらない
303
12.10%
54
11.80%
61
11.20%
50
10.80%
74
13.10%
64
13.70%
年代(10歳区切り)
×
問35あなたの配偶者(妻、夫)は、どのような仕事をしておられますか。
0%
10%
20%
30%
40%
50%
2.10%
0.10%
0.40%
4.30%
1.50%
1.60%
4.40% 6.60% 7.70% 5.60% 4.90%
2.60%
全体 3.40%
60%
3.20%6.50%
40代 3.70%
3.00% 10.10%
50代 4.10%
10.40%
14.10%
11.00%
公務員・非営利団体
職員
全体
20代
30代
40代
50代
60代
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
86
3.40%
11
2.40%
28
5.10%
17
3.70%
23
4.10%
7
1.50%
111
4.40%
1
0.20%
16
2.90%
30
6.50%
57
10.10%
7
1.50%
164
6.60%
13
2.80%
58
10.60%
48
10.40%
37
6.50%
8
1.70%
34.10%
3.20%
1.10% 13.60% 0.00%
0.00%
1.30%
4.30%
2.80%
2.20%
7.60% 6.00%
3.40%
0.40%
1.10%8.30%0.40%
6.50% 5.50% 5.80% 8.30% 2.30%
8.00%
14.80% 0.00%
0.00%
33.50%
23.10%
19.50%
会社・団体の経営者・役員
その他給与所得者(管理職)
その他給与所得者(事務職)
その他給与所得者(技術・専門職)
その他給与所得者(販売・サービス)
その他給与所得者(その他)
教職員
医師・医療技術士・医療関係者
自営業
農林漁業
弁護士・公認会計士・税理士
その他自由業(フリーター含む)
専業主婦(主夫)
大学・大学院生・短大・専門学校生
高校生・予備校生
その他
配偶者はいない
141
5.60%
23
5%
39
7.10%
35
7.60%
33
5.80%
11
2.40%
122
4.90%
9
2%
19
3.50%
28
6%
47
8.30%
19
4.10%
医師・医療技術士・医
自営業
療関係者
39
1.60%
5
1.10%
5
0.90%
10
2.20%
13
2.30%
6
1.30%
618
38
1.50%
0
0%
11
2%
13
2.80%
6
1.10%
8
1.70%
弁護士・公認会計士・ その他自由業(フリー
専業主婦(主夫)
税理士
ター含む)
農林漁業
108
4.30%
5
1.10%
12
2.20%
20
4.30%
47
8.30%
24
5.20%
18.20%
19.10%
公務員・非営利団体職員
193
7.70%
27
5.90%
77
14.10%
51
11%
31
5.50%
7
1.50%
100%
33.00%
1.60%
2.20% 11.50%0.00%
0.00%
2.20%
2.00%
0.90%
7.10% 3.50%
会社・団体の経営者・ その他給与所得者(管 その他給与所得者(事 その他給与所得者(技 その他給与所得者(販 その他給与所得者(そ
教職員
役員
理職)
務職)
術・専門職)
売・サービス)
の他)
66
2.60%
7
1.50%
11
2%
15
3.20%
17
3%
16
3.40%
90%
73.80%
3.40%
0.00%
0.20%
5.20%
1.70%
1.30%
4.10%
2.40%
1.50%
1.70%
1.50%
3.40%
60代 1.50%
全体
80%
6.40%
0.00%
15.20% 0.10%
0.20%
0.00%
0.70%
2.80%
0.00%
0.40%
1.10%
0.00%
1.10%
2.00%
2.80%5.90% 5.00%
0.20%
1.50%
20代 2.40%
2.90% 10.60%
2.00%
30代 5.10%
70%
11
0.40%
2
0.40%
0
0%
6
1.30%
2
0.40%
1
0.20%
2
0.10%
0
0%
0
0%
0
0%
2
0.40%
0
0%
52
2.10%
0
0%
12
2.20%
5
1.10%
19
3.40%
16
3.40%
379
15.20%
13
2.80%
63
11.50%
63
13.60%
84
14.80%
156
33.50%
大学・大学院生・短
大・専門学校生
3
0.10%
3
0.70%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
高校生・予備校生
その他
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
0
0%
配偶者はいない
161
6.40%
1
0.20%
9
1.60%
15
3.20%
45
8%
91
19.50%
824
33%
338
73.80%
186
34.10%
107
23.10%
103
18.20%
89
19.10%
年代(10歳区切り)
×
問36あなたの配偶者(妻、夫)の勤め先の会社・団体全体の規模は、どのくらいですか。
0%
全体
10%
9.50%
20%
30%
40%
50%
4.10%
1.60%
3.60%
3.00%
2.20%
4.50%5.00%
3.30%
4.90%
60%
90%
100%
33.00%
73.80%
2.20%
4.80%
3.80% 7.00% 3.80%5.10%4.80%
7.70% 5.70%3.10%
11.90%
40代
12.50%
5.40%
3.50%
4.50%
1.70%
6.70% 3.90% 6.90% 6.30%2.80%
50代
12.90%
4.60%
2.30%6.00%
2.50%
6.40% 5.10%5.10% 6.40%1.90%
60代
80%
5.50%
20.00%
2.20%
3.10%
1.70%
1.30%
2.40%
1.50%
2.00%
1.30%
3.50%
2.00%
2.20%
20代 3.10%
30代
70%
0.20%
2.10%
1.90%
1.30%
3.00%
2.60%
0.60%
1.90%
10.70% 3.20%
34.10%
6.00%
7.30%
15.30%
20.30%
23.10%
8.30%
2.80%
50.40%
18.20%
19.10%
10人未満
10人以上30人未満
30人以上50人未満
50人以上100人未満
100人以上300人未満
300人以上500人未満
500人以上1000人未満
1000人以上5000人未満
5000人以上10000人未満
10000人以上
どこにも勤めていない
わからない
配偶者はいない
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
10人未満
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
10人以上30人未満
237
9.50%
14
3.10%
42
7.70%
58
12.50%
73
12.90%
50
10.70%
30人以上50人未満
123
4.90%
10
2.20%
31
5.70%
31
6.70%
36
6.40%
15
3.20%
50人以上100人未満
82
3.30%
9
2%
17
3.10%
18
3.90%
29
5.10%
9
1.90%
112
4.50%
16
3.50%
21
3.80%
32
6.90%
29
5.10%
14
3%
100人以上300人未満
300人以上500人未満
124
5%
9
2%
38
7%
29
6.30%
36
6.40%
12
2.60%
54
2.20%
6
1.30%
21
3.80%
13
2.80%
11
1.90%
3
0.60%
619
500人以上1000人未満
74
3%
7
1.50%
28
5.10%
16
3.50%
14
2.50%
9
1.90%
1000人以上5000人未 5000人以上10000人
10000人以上
満
未満
90
40
3.60%
1.60%
11
6
2.40%
1.30%
26
12
4.80%
2.20%
21
8
4.50%
1.70%
26
13
4.60%
2.30%
6
1
1.30%
0.20%
どこにも勤めていない
103
4.10%
8
1.70%
26
4.80%
25
5.40%
34
6%
10
2.10%
500
20%
14
3.10%
65
11.90%
71
15.30%
115
20.30%
235
50.40%
わからない
配偶者はいない
137
5.50%
10
2.20%
33
6%
34
7.30%
47
8.30%
13
2.80%
824
33%
338
73.80%
186
34.10%
107
23.10%
103
18.20%
89
19.10%
年代(10歳区切り)
×
問37あなたの配偶者(夫、妻)が最後に卒業された学校を以下から選んでください。(現在も在学中の場合は、
その学校を選んでください。また専門学校は除いてお答えください。)
0%
10%
全体 2.60%
20%
30%
30代 1.80%
60%
50代 4.20%
90%
33.00%
2.50%
29.00%
12.00%
2.80%
24.50%
12.70%
23.10%
2.40%
27.60%
16.00%
36.30%
34.10%
3.80%
22.70%
34.10%
60代 4.70%
80%
73.80%
14.30%
29.40%
70%
2.90%
23.00%
10.00% 2.80%
23.30%
40代 1.50%
50%
12.30%
26.20%
6.60% 6.10%
20代0.70%
40%
18.20%
19.10%
中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含む)
短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
大学(旧制高等専門学校)
大学院
配偶者はいない
高等学校(旧制の中学 短期大学(旧制高等学
中学校(旧制の尋常小学
大学(旧制高等専門学
校、高等女学校、実業学 校、新制高等専門学校を
校、高等小学校を含む)
校)
校を含む)
含む)
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
66
2.60%
3
0.70%
10
1.80%
7
1.50%
24
4.20%
22
4.70%
655
26.20%
30
6.60%
127
23.30%
136
29.40%
193
34.10%
169
36.30%
620
307
12.30%
28
6.10%
78
14.30%
74
16%
68
12%
59
12.70%
576
23%
46
10%
124
22.70%
128
27.60%
164
29%
114
24.50%
大学院
配偶者はいない
72
2.90%
13
2.80%
21
3.80%
11
2.40%
14
2.50%
13
2.80%
824
33%
338
73.80%
186
34.10%
107
23.10%
103
18.20%
89
19.10%
100%
年代(10歳区切り)
×
問38あなたが、最後に卒業された学校はどれですか。(現在も在学中の方は、その学校を選んでください。ま
た、専門学校は除いてお答えください。)
0%
10%
全体 2.40%
20代 2.20%
20%
30%
40%
50%
33.00%
35.00%
50代 2.30%
35.20%
60代 3.40%
80%
90%
40.40%
10.90%
6.20%
38.80%
20.30%
21.60%
2.40%
38.70%
17.10%
41.20%
4.20%
34.10%
10.50%
49.80%
2.10%
中学校(旧制の尋常小学校、高等小学校を含む)
高等学校(旧制の中学校、高等女学校、実業学校を含む)
短期大学(旧制高等学校、新制高等専門学校を含む)
大学(旧制高等専門学校)
大学院
高等学校(旧制の中学 短期大学(旧制高等学
中学校(旧制の尋常小学
大学(旧制高等専門学
校、高等女学校、実業学 校、新制高等専門学校を
校、高等小学校を含む)
校)
校を含む)
含む)
全体
全体
20代
30代
40代
50代
60代
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
59
2.40%
10
2.20%
9
1.60%
11
2.40%
13
2.30%
16
3.40%
885
35.40%
111
24.20%
180
33%
162
35%
199
35.20%
232
49.80%
621
416
16.60%
59
12.90%
111
20.30%
100
21.60%
97
17.10%
49
10.50%
100%
5.20%
49.80%
12.90%
24.20%
40代 2.40%
70%
16.60%
35.40%
30代 1.60%
60%
1011
40.40%
228
49.80%
212
38.80%
179
38.70%
233
41.20%
159
34.10%
大学院
129
5.20%
50
10.90%
34
6.20%
11
2.40%
24
4.20%
10
2.10%
年代(10歳区切り)
×
問39かりに現在の日本の社会全体を、以下の5つの層にわけるとすれば、あなた自身は、どれに入ると思い
ますか。
0%
10%
20%
30%
全体 0.90% 13.10%
60代0.90% 12.90%
39.90%
上
全体
40代
50代
60代
90%
8.70%
33.80%
10.60%
7.60%
33.00%
8.80%
36.70%
6.40%
39.90%
中の上
中の中
中の下
中の上
23
0.90%
9
2%
4
0.70%
0
0%
6
1.10%
4
0.90%
622
下
中の中
328
13.10%
57
12.40%
64
11.70%
79
17.10%
67
11.80%
60
12.90%
100%
8.50%
34.40%
上
2500
100%
458
100%
546
100%
463
100%
566
100%
466
100%
80%
35.60%
42.30%
17.10%
41.50%
30代
70%
42.50%
50代 1.10% 11.80%
20代
60%
43.00%
30代0.70% 11.70%
全体
50%
41.80%
20代 2.00% 12.40%
40代0.00%
40%
中の下
1046
41.80%
197
43%
232
42.50%
196
42.30%
235
41.50%
186
39.90%
下
890
35.60%
155
33.80%
188
34.40%
153
33%
208
36.70%
186
39.90%
213
8.50%
40
8.70%
58
10.60%
35
7.60%
50
8.80%
30
6.40%