T細胞の異常と慢性炎症の誘導:IL-6アンプの活性化と亜鉛シグナル

T細胞の異常と慢性炎症の誘導:IL-6アンプの活性化と亜鉛シグナル
自己免疫・アレルギー、メタボ、脳・精神疾患のコントロールを目標
免疫発生学 (JST-CREST研究)
に!
1。IL-6アンプと自己免疫疾患 ーT細胞=>非免疫細胞による慢性炎症の誘導ー
私たちは、IL-6の発見以来、その信号伝達を研究してIL-6信号の増強がマウスのリウマチを引き起こすことを見つけました。不
思議なことにその発症には『非免疫系の細胞』へのIL-6信号の増強が重要でした。非免疫系の細胞は、IL-6信号を強く受ける
とIL-7をたくさん産生してヘルパーT細胞を過剰に活性化してIL-17をたくさん出すTh17細胞になります。さらに、非免疫系の細
胞は、IL-17信号を受けるとIL-6の信号が劇的に強くなり、ケモカインやIL-6自体がたくさん産生されます。この機構を『IL-6アン
プ』と名付けました。最近、IL-6アンプの制御分子のゲノムワイド解析が終了して少なくとも1,000個の制御分子が同定できまし
た。それらの内100個ほどは、自己免疫疾患はもとよりアレルギー、メタボ、神経変性疾患、精神疾患の150以上の事象に有意
に関与していると報告されていた遺伝子でした。IL-6アンプは炎症の根源の機構です!私たちは多くの新たな創薬の対象とな
る未知の分子!!すでに50遺伝子ほどはその発現抑制がマウスの自己免疫を抑制し、患者さんの血清で有意に増加している
因子もありました!
2。亜鉛シグナルの解析と自己免疫との関連 ー亜鉛はセカンドメッセンジャーー
2004年にIL-6信号に重要な転写因子STAT3の標的として亜鉛トランスポーターを同定し、亜鉛が細胞内信号のセカンドメッセ
ンジャーとして機能することと言う概念『亜鉛シグナル』を提唱しまし解析を続けています。亜鉛シグナルとT細胞依存性の自己
免疫の関係も追求しています。
楽しく自由に!”をモットウに2つのプロジェクトが進行中です!!
1.
IL‐6アンプと自己免疫疾患
ーT細胞=>非免疫細胞による慢性炎症の誘導ー
Japan PRIZE 2011
Japan
PRIZE
2009
リウマチモデルの開発とIL-6アンプの発見
hIL-6
IL-6 IL-6
gp130
gp130
Jak
YXXQ motif
Y767P
STAT3 Y814STAT3
PY905Y915-
IL-17
Jak
150以上の病気関連の事象と
リンク
Col1+細胞
-Y759
F759
1.
他の炎症性
疾患
mIL-6
自己免疫
疾患
2. 細胞生存
精神疾患
F759マウスは、リウマチ様の
関節炎を自然発症します。
IL-6の産生の低下
生存保持
神経変性
疾患
約1,000遺伝子
IL-17A
IL-6
CD4
CD4
CD4
CD4+T
NF-κB
Col1+細胞
STAT3
正常
可溶性分子X
IL-6アンプ
STAT3
Col1+細胞
ケモカイン/IL‐6 (pg/ml)
IL-7
IL-6とIL-17の相乗効果
自己免疫疾患
(F759-Arthritis, EAE)
***
60
40
***
20
0
関節炎
関節炎+抗体製剤
メタボリック
シンドローム
2. 亜鉛シグナルの解析と自己免疫との関連 ー亜鉛はセカンドメッセンジャーー
CD4+T細胞
亜鉛の授受
Zn
IL-2
Th17
Znt / Zip
TCR complex
CD4
細胞内亜鉛濃度
の変化
亜鉛は必須微量元素の一つであり、細胞増殖、分化、
生存に必須です。生体における亜鉛欠乏は成長障害、
免疫不全等を引き起こすので、亜鉛の恒常性は生体
内の個々の細胞レベルで厳格にコントロールされて
いることが考えられます。亜鉛は免疫系の制御に重
要ですが、どんなメカニズムで免疫系を調節している
のかはよく分かっていません。我々は、亜鉛がカルシ
ウムと同様にセカンドメッセンジャー:『亜鉛シグナル』
として機能していることを証明してきました。
細菌の構成成分(LPS)による刺激が、適応免疫の開
始に必須である樹状細胞において、亜鉛トランスポー
ターを介する細胞内亜鉛濃度の変化を誘導し、抗原
提示機構を調節していることを証明しました。また、樹
状細胞から抗原を提示されるCD4+ T細胞やアレル
ギーに重要なマスト細胞でも、亜鉛シグナルがサイト
カイン産生やその他の機能に重要であるという結果
を発表しています。さらに、亜鉛の投与により自己免
疫に深く関わるT細胞群(Th17)の分化が抑制され、
自己免疫疾患の病態が改善されることを発見しまし
た。
現在、亜鉛シグナルのより詳細な解析と標的分子の
同定を目指し研究を行っています。
Zn
樹状細胞
関連する主な業績
¾Murakami et al. Local microbleeding facilitates IL-6– and IL-17–dependent arthritis in the absence of tissue antigen
recognition by activated T cells. J. Exp. Med. 208: 103-114, 2011
¾Murakami, M. and T. Hirano. A four step model for the IL-6 amplifier, a regulator of chromic inflammations in tissue
specific MHC class II-associated autoimmune diseases. Front. Immun. 2:22. doi: 10.3389/fimmu.2011.00022
¾Kitabayashi et al. Zinc suppresses Th17 development via inhibition of STAT3 activation. Int. Immunol. 22(5): 375386, 2010
¾Nakagawa et al. IL-6 positively regulates Foxp3+CD8+ T cells in vivo. Int. Immunol. 22(2):129-39, 2010
¾Sawa, et al. Hepatic Interleukin-7 Expression Regulates T Cell Responses. Immunity 30: 1, 2009
¾Nishida et al. Zinc transporter Znt5/Slc30a5 is required for the mast cell-mediated delayed-type allergic reaction
but not the immediate-type reaction. . J. Exp Med. 206: 1351, 2009
¾Fukada et al. The Zinc Transporter SLC39A13/ZIP13 is Required for Connective Tissue Development; Its
Involvement in BMP/TGF-beta Signaling Pathways. PLoS ONE 3: e3642, 2008
¾Ogura, et al. Interleukin-17 Promotes Autoimmunity by Triggering a Positive-Feedback Loop via Interleukin-6
Induction. Immunity 29: 628, 2008.
¾Khiong, et al. Homeostatic proliferating CD4 T cells are involved in the pathogenesis of an Omenn syndrome
murine model. J. Clin. Invest. 117: 1270-1281, 2007
¾Yamasaki, et al. Zinc is a novel intracellular second messenger. J. Cell Biol. 177: 637, 2007
¾Nishihara, et al. IL-6-gp130-STAT3 in T cells directs the development of IL-17+T helper cells with a minimum
effect on that of Treg in the steady state. Int. Immunol. 19: 695, 2007
¾Sawa, et al. Autoimmune arthritis associated with mutated IL-6 receptor gp130 is driven by STAT3/IL-7-dependent
homeostatic proliferation of CD4+ T cells. J. Exp. Med. 203:1459 2006
¾Kitamura, et al. Toll-like receptor-mediated regulation of zinc homeostasis influences dendritic cell function. Nature
Immunol. 7: 971, 2006
¾Yamashita, et al. Zinc transporter LIV1 controls epithelial-mesenchymal transition in zebrafish gastrula organizer.
Nature 429: 298, 2004
¾ Atsumi, et al. A point mutation of Tyr-759 in interleukin 6 family cytokine receptor subunit gp130 causes
autoimmune arthritis. J. Exp Med. 196: 979, 2002
連絡は、准教授 村上正晃まで。。06-6879-3881 & murakami@molonc.med.osaka-u.ac.jp