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『Green Journal』2015年度活動報告書

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CONTENTS
巻頭言 「地球温暖化問題 さまざまな視点で」........................................................... 2
座長 茅 陽一
寄 稿
「『パリ協定』時代を生きる」........................................................................................ 3
学界委員 加藤三郎
「日本の先進技術 途上国に」.................................................................................... 4
学界委員 中上英俊
「環境危機への不安」............................................................................................................. 5
資源循環技術委員会委員長 吉田敬史
活動報告
第1回事例研究会.................................................................................................................... 6
「どうつくり、どう運ぶ−これからの水素社会」
第2回事例研究会................................................................................................................. 13
「再生エネ大量導入−諸制度見直し急げ」
第3回事例研究会................................................................................................................. 20
「パリ協定採択−求められる日本の対応・役割」
第4回事例研究会................................................................................................................. 26
「電力小売り全面自由化−エネ市場どう変わる」
第1回環境フィールドワーク ................................................................................. 32
「J パワー・磯子火力発電所」
第 2 回環境フィールドワーク ................................................................................. 35
「富山県」
資源循環技術委員会 .......................................................................................................... 38
「家電リサイクル」
2015 年度委員 ....................................................................................................................... 42
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資 料 2014 年度活動報告紙面................................................................................................... 43
特 集
パリ協定採択−動き出す温暖化対策 ............................................................... 54
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巻頭言
地球温暖化問題
さまざまな視点で
グリーンフォーラム 21 座長
茅 陽一
(地球環境産業技術研究機構理事長、東京大学名誉教授)
2015 年度は地球温暖化問題に大きな進展がみ
出した温室効果ガス排出抑制目標を合わせても、
られた年だった。15 年 12 月に気候変動枠組み
こうした長期目標に向かう排出曲線にはなかな
条約第 21 回締約国会議(COP21)で採択された
かのりそうにない。しかし、だからといって今
「パリ協定」は、世界のほとんどすべての国が参
後の努力をあきらめるのではなく、世界が合意
加してまとめたもので、まだ正式な批准には至っ
したという姿勢を生かして各国が地球温暖化抑
ていないものの、世界が力を合わせて地球温暖
制に努力すべきである。
化対策に取り組む姿勢を示したという意味で画
グリーンフォーラム 21 でも、わが国が、そし
期的である。グリーンフォーラム 21 でも早速、
て企業がどのような努力をすべきか、さまざま
事例研究会でこの協定を取り上げ、いろいろと
な視点から議論したい。地球温暖化問題は自分
議論したが、高く評価する意見が多かった。
たちというより、子々孫々に影響する長期の問
ただ、パリ協定に盛られた世界の平均気温上
題であり、その対応には従来の環境問題とは異
昇を産業革命前に比べて 2 度 C 未満にするだけ
なった抜本的な視点で考えていくことが重要で
ではなく、1.5 度 C に抑えるよう努力するという
ある。グリーンフォーラム 21 がその意味で、思
目標は極めて厳しいものであり、この実現は非
い切った提案をできるようになることを大いに
常に困難であるといってよい。実際、各国の提
期待したい。
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寄稿
「パリ協定」時代を
生きる
学界委員
加藤 三郎
(環境文明 21 共同代表)
2015 年 12 月に気候変動枠組み条約第 21 回締
(IPCC) に 集 結 し た 科 学 者・ 専 門 家 の 長 年 に
約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」
わたる努力を踏まえ、政治・行政レベルでも、
は画期的だ。なにしろ「長期目標として平均気
COP15 のコペンハーゲン会合から少なくとも 6
温上昇を産業革命前に比べて 2 度 C よりも十分
年余の時間をかけてようやくたどり着いた外交
に下回るよう抑え、1.5 度 C にするよう努力する」
文書だ。目標は非現実的との見方もあるが、気
「早期に世界の温室効果ガス排出量を頭打ちと
候変動による破壊がこれまでに経験したことの
し、今世紀後半には実質的にゼロにする」といっ
ないような深刻な現実になっているからこそ、
た環境 NPO の期待も上回るような内容にもか
以前の常識から考えると非現実的と思われる目
かわらず、各国の代表がついに合意したからだ。
標を掲げて大転換に挑戦せざるを得なかったと
パリ協定が意味することは、化石燃料に全面的
見るべきだ。今後は、あらゆる人がパリ協定の
に依存してきた文明社会を転換し、再生可能エ
下で生きることになる。人々は古い衣をかなぐ
ネルギーを主軸にした新しいエネルギー環境時
り捨てて新しい衣に着替える準備を、これから
代を築くことを国際社会が決意したことである。
先 5 年、10 年にわたってすることになる。
もちろん、パリ協定は簡単に合意されたも
その意味でもグリーンフォーラム 21 での見
のではない。気候変動に関する政府間パネル
解と知恵の交換に期待している。
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寄稿
日本の先進技術
途上国に
学界委員
中上 英俊
(住環境計画研究所会長)
地球温暖化問題がなかったら、もっと自由で
れば、なかなか具体的な行動には移れないもの
奔放な将来世界像が描けたかもしれないと思う
だ。温暖化問題の解決に向けた一人ひとりの深
ことがある。特にこれから社会経済が発展する
い理解、行動実践に向けた情報発信と解決策の
であろう途上国の人々にとって、この問題は青
提示が、専門家をはじめ、企業人にも求めらる。
天の霹靂とでもいう事態であるのではと察せら
気候変動枠組み条約第21回締約国会議
れる。地球が数億年かけて創った化石エネルギー
(COP21)により、やっと世界が大きな目標に
を、たかだか数百年で使い切ってしまいかねな
向かって取り組む覚悟が合意を得たようだ。し
いことにより、地球の許容限界を超える環境悪
かし具体的なプログラムや政策はこれからさま
化が起こるということは、今となれば多くの人々
ざまな議論の末に絞り込まれていくことになる。
が納得していると思われるし、納得せざるを得
わが国ですら総意となるにはいまだしの状況で、
ないのも現実だろう。識者の間ではこのような
途上国ではどうなっていくのであろうか。わが
認識が一般的であるように思われるが、日本の
国の先進技術を途上国に展開していくことは極
ような先進国の国民にとっても、このような理
めて意義深いものだと考える。そのような意味
解が行き届いているとも思えないのも現実では
からもグリーンフォーラム 21 に期待される役割
ないだろうか。人は現実的な災難に直面しなけ
はますます大きくなるように思われる。
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寄稿
環境危機への不安
資源循環技術委員会委員長
吉田 敬史
(グリーンフューチャーズ社長)
2016 年 1 月、ダボス会議の主催者として知ら
価は「中(moderate)
」で危機感はまだ薄かった。
れる「世界経済フォーラム」が「グローバル・
16 年 5 月の伊勢志摩サミットの首脳宣言では、
リスク・レポート 2016」を公表した。06 年から
15 年 12 月に気候変動枠組み条約第 21 回締約
毎年、報告書を公表しており、今回で 11 回目で
国会議(COP21)で採択された「パリ協定」の
ある。報告書では世界の産官学の専門家・意思
早期発効、カーボンプライシング、代替フロン
決定者ら約 750 人が、社会、技術、経済、環境、
の削減加速などの気候変動に関する具体的なコ
地政学の 5 分野の 29 リスクに対して、今後 10
ミットがかなり記載されているが、06 年のサン
年スパンでの「起こりやすさ(likelihood)
」と「影
クトペテルブルグサミットではエネルギー安全
響度(impact)
」を評価した結果がリスクマップ
保障の中で少し触れられる程度だった。この 10
で示されている。
年で人々の認識が顕著に変わった。
環境関連リスクでは「気候変動の緩和と適応
実際、
異常気象を肌で感じるようになった。昔、
の失敗」が全リスクの中の影響度で初の首位と
タクシーの運転手との話題は野球が定番だった
なり、起こりやすさも「大量難民」
「水危機」
「国
が、最近は異常気象の話が実に多い。今年も猛
家間紛争」などとともに最も重大なリスクの領
暑が予想されるだけに、
“ゆでガエルの寓話”が
域にプロットされた。06 年の起こりやすさの評
実話になる不安を実感する夏になりそうだ。
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活動報告
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第1回 事例研究会
“どうつくり、 どう運ぶ-これからの水素社会”
第1回事例研究会は7月6日、「これからの水素社会」をテーマに開いた。水素の製造か
ら輸送、貯蔵、利用までの各段階の課題や見通しについて議論した。
グリーン水素社会に向けて
-その意義と課題
アルカリ水電解法が有力
横浜国立大学大学院工学研究院名誉教授
太田 健一郎 氏
■ 水を循環
然の水の蒸発散量を分母で試算しています。地
再生可能エネルギーを利用して製造した水素
球全体で CO2 の環境負荷係数は 0.036 なのに対
のことをグリーン水素と呼んでいます。地球温
し、水素は 0.0001 と小さく、格段に優れている
暖化対策の切り札として再生可能エネルギーの
ことがわかります。
大量導入が掲げられていますが、大量導入する
天然の水素はほとんどないため、製造しなけ
には、どこかでエネルギーを貯蔵しなければな
ればなりません。そこで再生可能エネルギーを
らないし、運ばなければならない。水素エネル
利用し、水から製造する。言い換えると、水を
ギーに対する期待の大きさはここにあると思い
循環させる水素社会の構築が理想だと思います。
ます。
私は地球の二酸化炭素(CO2)と水の存在量、
■ 安価で大量に
大気中の存在量や移動量、平均滞留時間などを
水素の製造方法では水電解法を有望視してい
基にした環境負荷係数を算出しています。人工
ます。水電解法は数種類ありますが、工業用と
生成物量を分子、自然循環量を分母にした比で、
して安価で大量に製造するということになると、
環境負荷係数が大きいと人工生成物が多く、そ
アルカリ水電解が有力です。
れだけ環境に影響を与えているということです。
固体高分子水電解という方法もありますが、
一方、水素は二次エネルギーをすべて水素に
白金族電極が高価だとか、容器はチタンでなけ
するといった仮想の量ですが、グリーン水素エ
ればいけないなどと、工業用としてはコストが
ネルギーシステムで生成する水の量を分子、自
課題になります。水蒸気電解は実験室レベルで
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す。熱化学法は理論に現実が追いついていない。
コストを考えると風力が適しています。新エネ
直接熱分解はちょっと論外ですね。光触媒を使
ルギー・産業技術総合開発機構の再生エネルギー
い太陽光で分解する方法は、いい触媒が見つかっ
技術白書(第 2 版)によると、液化天然ガス火
たら大化けするかもしれません。
力が 10.7 円 / キロワット時。これと比較すると、
アルカリ水電解は実績があり、海外メーカー
風力は 9.9 〜 17.3 円 / キロワット時と近い。世
が小型の電解槽を手がけています。ただ水素を
界市場では 5 円 / キロワット時を切る陸上風車
生成する隔膜にアスベストを使っていることが
もあります。
問題です。スイスの会社がアスベストを使わな
そこで注目しているのが、パタゴニアの風。
い隔膜の電解槽を開発中ですが、うまくいって
アルゼンチンで 10 年ほど調査していますが、風
いないようです。一方、日本メーカーには食塩
況がいい。ほぼ西北西の一方向に吹いており、
電解の高度技術があるので、これを応用するこ
風速もある。風車の稼働率を上げられるため、2
とにより、大型で安価な電解槽を開発できると
円 / キロワット時まで下げられると試算してい
期待しています。
ます。強風に耐えられる風車があるか、水素の
輸送はどうするかといった課題はありますが、
■ パタゴニアの風
可能性を秘めている、パタゴニアの風力を使っ
再生可能エネルギーには太陽光、風力、水力、
てアルカリ水電解で製造したグリーン水素を活
地熱、バイオマスといろいろありますが、発電
用する。こうした水素社会を描いています。
グリーン水素を基盤とした
水素エネルギー社会
ゼロエネルギーハウス
FC コージェネ
システム
水素ステーション
燃料電池
自動車
水素転換システム
(過剰電力→水素)
水素精製
水素タービン
発電所
水素供給
バイオマス工場
(廃棄物→水素)
水素タンカー
(有機ハイドライド or
液化水素)
有機ハイドライド生成
風力発電所
水電解
太陽光発電所
液化水素製造
安全・安心技術
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活動報告
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水素社会を拓くエネルギーキャリア
再生エネの大量導入手段
内閣府 SIP「エネルギーキャリア」サブ・プログラムディレクター
住友化学理事
塩沢 文朗 氏
■ 克服するには
億 N 立方メートルですが、その程度の量であれ
日本が 2050 年に向けて化石燃料への依存を低
ば、国内の製油所などで製造される改質水素で
減し、エネルギー・環境制約を克服するには、
足ります。改質水素で需要を賄っていけるうち
原子力を維持しても再生可能エネルギーを大量
は、本当の水素の効果は見えてきません。
に導入しなければなりません。ただ日本は再生
発電部門については、政府の研究会で水素の
可能エネルギーに質、量ともに恵まれていない
発電所引き渡しコストで 30 円 /N 立方メートル、
ため、海外からどう持ってくるかが課題になり
発電コストで 17 円 / キロワット時ぐらいの価格
ます。
になると水素が導入される可能性があるとされ
エネルギー形態にはいろいろありますが、エ
ています。いったん導入されると、例えば 60 万
ネルギー密度が高く、輸送、貯蔵に適している
キロワットの水素発電所 1 基で同 25 億 N 立方
のは化学エネルギーです。中でも水素は地球上
メートルという大量の水素が必要となります。
に豊富に存在する水から製造できる点で、再生
こうなると大量の CO2 フリー水素を海外から
可能エネルギーの大量導入手段として重要です。
持ってくることが必要になる。こうなって初め
て水素エネルギーの導入効果が出てきます。水
■ 発電部門
素社会を迎えるには、エネファームや FCV の普
日本は水素社会に向け、30 年にエネファーム
及だけではなく、発電分野や産業部門に CO2 フ
530 万台、
燃料電池車(FCV)200 万台程度といっ
リー水素が導入されることが必要です。
た目標を掲げています。しかし、これらの効果
は極めて限られています。日本の化石燃料消費
■ 長所と短所
は、家庭部門と輸送部門に比べて発電などのエ
ただ水素は取り扱いが難しいため、水素エネ
ネルギー転換部門と産業部門が圧倒的に多いの
ルギーの大量輸送、貯蔵を容易にするエネルギー
と、エネファームと FCV 向けの水素は当面、化
キャリアが必要になります。エネルギーキャリ
石燃料から製造された改質水素で十分に足りる
アとしては、液体水素、メチルシクロヘキサン
からです。
(MCH)
、アンモニアの三つが考えられていま
ち な み に FCV1 台 が 使 用 す る 水 素 は 年 間
す。液体水素は気体水素の 800 分の 1 の容積で
1000N 立方メートルなので、200 万台でも同 20
同重量の水素を輸送・貯蔵できますが、マイナ
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ス 253 度 C で液化するため、専用インフラが必
ガスと同じように扱えます。そのまま燃料とし
要です。MCH は 500 分の 1 の容積で、常温で
て使えるため、脱水素のエネルギーが不要です。
運べるほか、ガソリンインフラを使えますが、
SIP では各エネルギーキャリアの長所・短所、
MCH から水素を取り出す際に約 3 割のエネル
価格などの条件を精査するとともに、水素発電
ギーが失われます。意外と知られていないのが、
や水素ステーションに至る各エネルギーキャリ
アンモニア。この三つの中では体積水素密度が
アの供給チェーンのどこにどのような技術課題
最も高く、マイナス 33 度 C か 10 気圧の圧力で
があるのかなどを整理して、実用化に向けた研
液化して 1200 分の 1 の容積となり、プロパン
究開発と施策のあり方を検討しています。
「水素キャリア」と「エネルギーキャリア」
液体化学エネルギーに変換
素
液体水素
脱水素
水素
気化
水素キャリア
熱分解
熱
水素として利用
貯蔵・輸送
水
電気分解
再生可能エネルギー
電気
MCH
化石燃料
エネルギーキャリア
水
改質
CO₂
・ 集中電力システム
大規模火力発電
・ 分散電源システム
・自然エネルギー
備蓄回生システム
・ 水素ステーション
脱水素
アンモニア
利活用
直接利用
・ アンモニア燃料電池等
CCS
水素の輸送、
貯蔵を容易にする
水素エネルギーの輸送、
貯蔵を容易にする
水素キャリア
エネルギーキャリア
藤野さま
燃料電池自動車 MIRAI の
開発と普及に向けて
天地 :40.5B× 左右:66.5B
15.08.18 0:00
返却済み
FD / MO / USBM:
次の 100 年のフロンティア
signature
mizuhata
トヨタ自動車 製品企画本部チーフエンジニア
田中 義和 氏
■ パワーアップ
します。
「MIRAI」は約 3 分間で 4.3 キログラム
燃料電池車(FCV)は水素と空気中の酸素を
を充填でき、航続距離は JC08 という日本のモー
化学反応させて発電した電気でモーターを駆動
ドで 650 キロメートルと、ガソリン車並みを実
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活動報告
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現しました。
見直し、電流密度を 08 年型に比べて 2.4 倍に高
トヨタ自動車は 23 年前から FCV の開発を続
めました。
けてきました。MIRAI には世界トップレベル
高圧水素タンクはプラスチックライナーを炭
の新型 FC スタックを搭載しています。FC ス
素繊維強化プラスチックのリボンで巻き、表面を
タックは、いかにパワーを出せるかが重要です。
ガラス繊維強化プラスチックで保護しています。
2008 年型が体積出力密度 1.4 キロワット / リッ
プラスチックライナーの形状を改良したほか、リ
トル(最高出力 90 キロワット / 体積 64 リット
ボンの巻き方を工夫して強度を確保し、厚さを
ル〈重量 108 キログラム〉)だったのに対し、新
08 年型に比べて 15 ミリメートル薄い 25 ミリメー
型は同 3.1 キロワット / リットル(同 114 キロ
トルにして貯蔵性能の向上と低コスト化を両立
ワット / 同 37 リットル〈同 56 キログラム〉
)を
しました。衝突すると高圧水素タンクのメーンバ
実現しました。単純には比較できませんが、エ
ルブが閉じます。時速 80 キロメートルの衝突試
ネファームなどの家庭用燃料電池は約 700 ワッ
験では車がグシャグシャになりましたが、高圧
トなので、新型はこの約 160 倍のパワーを瞬時
水素タンクは全く変形しませんでした。
に出せるということです。
FC スタックは厚さ 1.34 ミリメートルのセル
■ 災害時に給電
370 枚を直列に並べて小型化し、床下搭載でき
FC スタック、高圧水素タンクなどで構成する
るようにしました。酸素の流路は従来のシンプ
トヨタフューエルセルシステム(TFCS)では、
ルな構造を見直し、複雑形状の 3D ファインメッ
ハイブリッド車(HV)のシステムと同じ考え方
シュ流路を開発して発電性能を向上しました。
の基、
FC 昇圧コンバーターを新規開発しました。
電極は電解質膜の厚さを 08 年型に比べて 3 分の
これにより、HV のインバーター、モーターな
1 に薄膜化し、水素イオンであるプロトン伝導
どを採用できました。リードタイムの短縮、信
性を 3 倍に向上しました。ガス拡散層、触媒も
頼性の確保、低コスト化を実現しました。
トヨタフューエルセルシステム
(TFCS)
FCシステムコスト:材料使用量の削減、部品数削減、量産品の流用等に
より、2008年型比20分の1以下
FCシステム体格: セダンに搭載可能なまでに小型化
高圧水素タンク
・水素貯蔵性能向上
・本数削減
(4→2本)
FCスタック
小型・高性能化
加湿器の廃止
内部循環方式採用
FC昇圧コンバーター
・ FCスタックのセル数低減、
現行ハイブリッド
ユニットを流用するために新規開発
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また外部電源供給システムを搭載しており、
2000 台、17 年に同 3000 台にする計画です。ま
FC スタックを電源として災害などの停電時に給
た新型 FC スタックと高圧水素タンクを搭載し
電できます。供給電力量は約 60 キロワット時、
た燃料電池バスを 16 年に市場投入する準備をし
最大供給電力 9 キロワットで、
「CHAdeMO」端
ています。さらに燃料電池フォークリフトも実
子を採用しています。
証実験しています。
FCV 関連技術を広めて自動車の環境課題の解
■ 引き金に
決に貢献するとともに、MIRAI が水素社会への
MIRAI は次の 100 年のフロンティアになる
引き金となり、水素をクリーンに、低コストで
車にしたいとの思いを込めて開発しました。14
製造するといったイノベーションを加速するな
年 12 月の発売から 1 カ月間で受注 1500 台を突
ど、新しい価値があたりまえの価値になること
破し、現在も増え続けております。16 年に年産
を願っています。
意見
交換
安全性は確保できる-不安招かない規制を
加藤学界委員 水素社会を実現するために
る。仮に爆発したら爆風は上に飛ぶ。画一
は、水素の安全性の確保が求められる。
的な規制ではなく、どのように使ったら安
太田氏 どのようなエネルギー物質にも絶対
全かというアプローチで、リスクの性格に
的な安全はない。だが、例えばアルカリ蓄
電池には体積にして約 100 倍の水素が入っ
適し、かつ住民の不安を招かないような規
制をしている。
ているが、皆がこわいと思いながら使って
田中氏 FCV の安全には大きく三つのポイン
いるかというと、そんなことはない。そう
トがある。まず漏らさない。漏れたら検知
いう社会をつくっていかなければいけない
して止める。そしてためない。漏らさない
し、水素の安全対策技術も進化しており、
については強固なタンクはもとより、衝撃
安全性は確保できる。
を受けるとメーンバルブが閉じる。検知に
塩沢氏 日本は規制の考え方を根本的に変
える必要がある。一例として、ドイツは住
民の不安をあおらないように水素関連機器
の周辺に壁をつくらない。少し掘って、そ
こに水素関連機器を置いて金網で囲ってあ
ついては水素が滞留しそうなところにセン
サーを搭載しており、検知したらメーンバ
ルブを閉じる。さらにキャビン内には一切、
水素が入らないように設計している。よく
「車両火災の時は大丈夫か」と聞かれるが、
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火災の際は特殊な金属の弁が溶けて水素を
利用され、かつ一般の人が触れないような
斜め後方に開放し、火がつくとバーナーの
発電分野などでは有望だが、臭気や毒性が
ように燃えるだけで、決して爆発しない。
あるため、一般の人が触れるような分野、
中上学界委員 パイプラインで水素を供給す
例えば水素ステーションで扱うのには適し
る話もあるが、既存インフラを活用する可
能性はあるか。
太田氏 都市ガスのパイプラインを使える
か使えないかといった見きわめはできてい
ない。既存インフラの活用は難しい。ただ
パイプラインは輸送効率が高く、海外には
800 キロメートルぐらいの水素パイプライン
がある。
塩沢氏 私も既存インフラの活用は無理と聞
いている。近距離のパイプラインであれば
成り立つだろうが、限定的だろう。
茅座長 高温ガス炉で熱化学反応させて水素
製造する方法の可能性をどう見ているか。
ていない。液体水素と MCH は利用が実証
段階に入っているが、アンモニアは開発段
階の技術が多い。こうしたことを総合的に
判断し、適切な資源配分をするようにして
いる。
茅座長 脱炭素ということになると、FCV の
ほか、電気自動車(EV)もある。環境車で
はプラグインハイブリッド車(PHV)とい
う選択肢もある。
田中氏 トヨタ自動車は省エネルギーの観点
と燃料多様化の観点で開発に取り組んでい
る。省エネルギーでは、まだ HV が増える。
また燃料の多様化を考えると、FCV はもち
ろん、EV もパーソナルモビリティや近距
太田氏 熱化学法はいろいろな反応生成物が
離用としてしっかりと開発に取り組まねば
出るので、反応だけではなく、この分離が
ならないと思っている。トヨタは EV に否
課題になる。高温になればなるほど難しい。
定的のように見えるかもしれないが、決し
であれば、高温ガス炉で発電した電気で水
てそうではない。PHV も可能性を秘めてお
電解するほうがよいと思っている。
り、もっと増えると予想している。
産業界委員 水素エネルギーキャリアではア
茅座長 普通、環境問題というと、言葉は悪
ンモニアが有望ということだったが、なぜ
いが、抑制といった後ろ向きな感じの議論
SIP はここに資源を集中しないのか。
になりやすい。だが本日は水素社会を目指
塩沢氏 水素エネルギーキャリアにはそれぞ
れ長所と短所がある。アンモニアは大量に
そうという前向きで気持ちのよい議論だっ
た。ありがとうございました。
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第2回 事例研究会
再生エネ大量導入-諸制度見直し急げ
第2回事例研究会は10月13日、「再生可能エネルギーの開発」をテーマに開いた。賦課
金や電力系統などの課題と解決策、導入先進国であるドイツの政策について議論した。
再生可能エネルギーを
めぐる対策と課題について
太陽光を低コスト化
経済産業省・資源エネルギー庁 新エネルギー対策課長
松山 泰浩 氏
■ 3 つの課題
メガソーラー(大規模太陽光発電所)は世界を
日本は 2012 年 7 月の再生可能エネルギー固定
見渡してもまだ 5 年程度の歴史しかない。長期
価格買い取り制度(FIT)で、再生エネの大量
間、発電を続けるために何が必要か、どれぐら
導入に急速にカジを切った。ただ太陽光一辺倒
いの収益が見込まれるか、経験を積み上げるこ
となり、賦課金などで国民負担が増加した。国
とが必要だ。パネルメーカーなどの 20 年保証に
民負担を抑制し、再生エネ電源をバランス良く
依拠したファイナンスがついているが、今後、
導入することが求められる。このためには「経
施工やメンテナンス不良によるトラブルも懸念
済性」「電力系統」「地域社会・環境との共生」
される。
という乗り越えなければならない課題が三つあ
る。まず太陽光を長期安定的で低コストな自立
■ 更新投資促す
電源とするための基盤を整えることが、再生エ
太陽光のビジネスモデルを確立し、長期安定
ネをしっかりと根づかせるためのカギになる。
電源にするための課題のひとつに低コスト化が
再生エネには①自然変動電源である太陽光・
挙げられる。システムに加え、設計、施工など
風力②ベース電源となる地熱・水力③地域密着
のコストが欧米に比べて高い。太陽電池の高性
型のバイオマスーがあり、それぞれ電源特性が
能化、モジュール化、低コスト製造などの技術
異なる。このうち太陽光は未知数で、このまま
開発のほか、保守・メンテナンスによる発電量
増え続けるかもしれないし、FIT が終わる約 20
減少リスクの回避、事故事例の把握を通じた施
年後にしぼんでしまうリスクもはらんでいる。
工の改善、廃棄時のリサイクルの仕組みなども
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必要になる。FIT の適用期間が終わるまでに、
置するには、環境アセスメントをした上で、地
これらの課題を解消し、更新投資を促すことに
域の理解を得なければならない。
より、低コストで電力供給を長期継続できる仕
組みを構築できれば、エネルギーインフラとし
■ 新から真に
ての“太陽光 100 年構想”も描ける。
「経済性」
「電力系統」
「地域社会・環境との共
次に電力系統の問題。欧州は各国の系統が網
生」という三つのギアが、同時にギアアップし
の目のようにつながっているが、日本はエリア
ていかないとエンストして動きが止まってしま
ごとの独立した系統が数珠つなぎになっている。
う。このギアの違いから生じた最初の問題が、
安定供給が確保できる半面、新しい電源の受け
九州電力に端を発した 14 年の電力保留問題だろ
入れ・融通が難しい。「なぜ欧州には入るのに日
う。事業者側と電力側の意識の差が表面化した
本には入らないんだ」との議論があるが、この
とも言い換えられる。
系統の問題を乗り越えないと限界がある。対策
電力需給への対応と低炭素社会の実現を両立
として出力制御システム導入による受け入れ可
するため、再生エネ導入の課題を乗り越えなけ
能量の拡大、広域融通の推進などがある。
ればならない。電源に応じたビジネスモデルを
地域社会・環境との共生も課題。
「導入は賛成
確立し、新しいという新エネルギーから、真な
だが、裏庭に入れるのやめてほしい」といった
るエネルギーとしての“真エネルギー”に変え
反対運動は珍しくない。風力、地熱、水力を設
たい。
15 年度の賦課金単価
14 年度における想定 15 年度における想定
買取費用
9000 億円
回避可能費用
2480 億円
費用負担調整
機関事務費
2.7 億円
販売電力量
収支の当初見込み
(賦課金総額)
賦課金単価
主な要因
・ 非住宅太陽光の導入量の拡大・稼働
率の向上による買取電力量の増加
1 兆 8370 億円
・ 14 年度までに見込みを上回って導入
が進んだことに伴う不足分
・ 買取電力量の増加
5148 億円 ・ 見直し後の単価の適用拡大
2.7 億円
8670 億kWh 8366 億kWh
ー
・ 前年の販売電力量実績から、近年の
減少傾向を踏まえて算出
12 年度
13 年度
14 年度
15 年度
1306 億円
3289 億円
6520 億円
1 兆 3222 億円
0.22 円 /kWh
0.35 円 /kWh
0.75 円 /kWh
1.58 円 /kWh
(標準家庭月額) (66 円 / 月) (105 円 / 月) (225 円 / 月) (474 円 / 月)
(注)旧制度(余剰太陽光買取制度)の付加金を含んでいない
藤野さま
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ドイツの再生可能エネルギー大量
導入政策の現状と我が国への示唆
ドイツの轍を踏むな
電力中央研究所 社会経済研究所主任研究員
朝野 賢司 氏
■ 世界最高水準
採算性が悪化している。例えば 3 月に電力会社
ド イ ツ は 1998 年 に 電 力 自 由 化 し、2000 年
の E.ON が 10、11 の両年に運転を開始したイル
に再生可能エネルギー固定価格買い取り制度
シング火力発電所の停止を申請し、ドイツ政府
(FIT)である再生エネ法(EEG)を施行した。
は運転継続のために補償金を出すことを決めた。
99 年に 5% に過ぎなかった再生エネ発電比率は、
つまり、太陽光や風力などの自然条件で出力
14 年に 25.8% と 5 倍以上に増えた。
が変動する電源が拡大するほど、変動に対応す
しかし、政府は適切な買い取り価格を設定で
る火力発電が必要になるが、その維持・新増設
きず、コストの高い太陽光を入れすぎた。この
が FIT で困難になる皮肉な状況にある。このた
期間における電気料金支出に占める再生エネ賦
め、卸市場の制度の修正とともに、政府が保証
課金の割合は、家庭で 0.5% から 21.4% に、産業
金を支払って緊急時に必要となる火力発電を確
で 1% から 40.8% に急増した。1 キロワット時当
保しておく容量リザーブ(戦略的予備力)を 16
たり電気料金は、家庭が 29 ユーロセント(約
年に導入する予定だ。これらは 16 年に電力自由
39 円)と、日本の約 1.5 倍に達しており、世界
化を控えた日本が直面する問題でもある。
最高水準である。
■ FIP に移行
■ 火力の停止も
再生エネ起因の卸価格の押し下げ額は拡大す
さらに、再生エネ大量導入は卸電力市場もゆ
ると見られている。そこで 14 年 8 月に法改正し、
がめ、火力発電の維持が困難になっている。欧
フィード・イン・プレミアム(FIP)への移行
州の電力取引所では、卸電力価格は燃料費の安
を推し進めている。FIP は再生エネ事業者が卸
い発電事業から落札し、電力需要を満たす最後
市場に直接販売し、卸価格に市場プレミアム価
の価格で決定される。ところが、FIT には再生
格を上乗せして支払う制度で、市場プレミアム
エネの買い取り義務がある。そこで、再生エネ
は入札して決める。再生エネ事業者も既存の発
は優先的に引き取られるように、値札をつけず
電事業者と同様、発電計画を立て、価格変動リ
に卸市場に投入される。
スクを受けて販売することが求められる。
この結果、液化天然ガス(LNG)などの燃料
FIT は電力価値と環境価値を一緒にして固定
費が高い発電設備がほとんど稼働できなくなり、
価格で買い取っていたが、FIP は二つの価値を
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分けたと言い換えられる。ただ、FIP は卸市場
源が廃止されることを防ぐ意味がある。しかし、
での競争に与える悪影響を完全に解決するわけ
容量メカニズムを卸市場と整合的に設計するこ
ではない。再生エネ事業者も卸価格に応じて発
とにもさまざまな課題があり、各制度ごとに一
電を判断するものの、別途プレミアムが支払わ
長一短がある。
れるため、FIT と比べた悪影響は軽減されるが、
FIT 実施での日本の悲劇は、周回遅れで導入
従来の火力電源を卸市場から押し出すことは変
したにもかかわらず、ドイツの轍を踏んだこと
わらない。ドイツで導入予定の戦略的予備力や、
だ。先行事例を検証し、日本の電力改革の議論
英仏での容量メカニズムは、収益の悪化した電
を深めることが求められる。
FIT 型から FIP 型 /FIT-CfD 型への移行
FIT 型
FIP 型
FIT-CfD 型
環境価値
電力価値
卸電力市場の
価格変動リスクを
受けない
卸電力市場の
価格変動リスクを
受ける
再生エネ事業者は、定めら
れた価格で第三者に売却
⇒第三者は必要に応じ、
卸電力市場で取引
再生エネ事業者は、卸電
力市場に売却
⇒入札で定められた付加
額を第三者から受け取る
(基準値は入札で決定)
卸電力市場の
価格変動リスクは
限定的
再生エネ事業者は、卸電
力市場に売却
⇒定められた価格との差
分を第三者から受け取る
(超過分は返還もある)
再生可能エネルギーの統合拡大に向けた
需給調整力(フレキシビリティー)確保
への取り組みの方向性と課題
藤野さま
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mizuhata
広域化で影響抑える
東京電力 常務執行役経営技術戦略研究所長
岡本 浩 氏
■ パワープール
を低い電圧で結ぶ「配電系統」で構成されている。
電力システムは発電所と変電所を高い電圧で
巨大な貯水池のイメージで、パワープールと呼
結ぶ「送電系統」、配電用変電所から消費者まで
ばれる。だが水と異なり、電気はためられない。
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すべての火力発電所のボイラを停止すると約 10
■ 5 つの選択肢
秒後にはブラックアウトする。このため消費者
需給調整力を確保するための選択肢は五つあ
が電気を使うのにあわせて発電所は同時同量の
る。1 番目は火力発電所などの電源の調整幅を
電気を供給し、貯水池の水位にあたる周波数を
もっと増やす。2 番目はパワープールを統合し
一定に保つ必要がある。
て広域化する。3 番目は再生エネの出力を抑制
日本には北海道、東北、東京、北陸、中部、関西、
する。4 番目は可変揚水発電や多数の蓄電池な
中国、四国、九州、沖縄の 10 電力会社があるが、
どで調整する。5 番目は需要自体をコントロー
沖縄を除いた 9 電力の供給・制御エリアを基本
ルする。
にして需給調整している。パワープールが交流
特に広域化については 4 月に電力広域的運営
でつながっている範囲においては、どこでも周
推進機関が設立された。2016 年に送配電事業者
波数が同じ。北海道と東北・東京、東日本と西
間の連系線潮流をリアルタイムに監視・制御す
日本が直流で分断されているので、北海道、東
るシステムが稼働すると、エリアをまたいだ系
北・東京、西日本 6 社、沖縄の四つのパワープー
統利用の円滑化や再生エネの出力変動の広域調
ルがある。
整が期待できる。
パワープールが大きければ大きいほど、周波
数の変動は小さい。欧州大陸は巨大なパワープー
■ ルール見直し
ルを構成しているので、出力が変動する再生可
五つの選択肢には技術的な課題があるものの、
能エネルギーが流れ込んでも全体ではさほど影
解決へと前進している。一方、広域化して連系
響を受けない。一方、日本はパワープールの需
線を柔軟に活用するには、制度見直しも必要に
給調整力をより高めなければならない。
なる。一例を挙げると連系線の利用ルールがあ
電力システムの構成
地中配電線
送電線
送電線
水力発電所
水圧鉄管
鉄道変電所
送電線・
配電線
送電線
火力発電所
送電線
原子力発電所
一次変電所
送電線・
配電機
送電線
引込線
配電線
住宅
大規模工場
配電線
送電線
引込線
柱上
変圧器
配電用変電所
電柱
地中配電線
商店
引込線
小規模工場
水力発電所
大規模工場
発電
送電線
中間配電所
送電線
超高圧
変電所
大規模ビル
メガソーラー
&風力発電
送電・変電
ビル・中規模工場 ビル・中規模工場
配電
消費者
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る。連系線は登録時刻が先であるものを利用順
し、これに設備の経年劣化が追い打ちをかけて
位の上位とする「先着優先」のため、再生エネ
電力会社の収益が悪化する懸念が強まっている。
の出力変動を吸収するために利用しようとして
電気料金を上げると、さらに需要が減少する。
も容量に空きが乏しい。仮にネットワークを増
こうした悪循環でビジネスが成り立たなくなる。
強するにしても稼働率が低くて無駄になる恐れ
米国ではデス・スパイラルと呼ばれていて、こ
がある。こうした問題を考慮し、全体を調整す
れは日本でも起こりうる。いわば電気事業は構
る仕組みづくりが課題になる。
造不況業種であり、社会インフラを適正に維持
需給調整力を確保するための技術革新や制度
し続けるためには、電力会社もデジタル技術の
の見直しとともに、国民負担のあり方などの議
活用により、バリューチェーンの全体最適化や
論も深める必要がある。一方、分散電源の増加、
強化を図りながら、ビジネスモデルと収益構造
省エネの普及、人口減少などで電力需要が減少
を見直す必要がある。
意見
交換
エネ政策には改善の余地
加藤学界委員 政府は 2030 年度に温室効果
する諸課題に対応することが求められる。
ガス排出量を 13 年度比 26% 減の高い目標
地球温暖化防止の取り組みも 30 年、50 年、
を掲げた。また 30 年度に再生可能エネル
2100 年へと続く。この間、
次なるエネルギー
ギーを 22 〜 24% とするエネルギーミックス
を開発しなければならない。それが水素な
も提示した。現在のコストと技術でこうし
のか、想定していないような新しいエネル
た目標数値を達成し、また地球温暖化を抑
ギーなのか。同時並行で追いかける必要が
制できるのか。
ある。
松山氏 エネルギーミックスは 13 年度 比
朝野氏 まず地球温暖化対策としての再生
26% 減を念頭に置きつつ、安価な電力コス
エネの費用対効果を考えると、非常に低
トでエネルギー自給率を高めることを考慮
い。普及によるイノベーションを信じて、
して策定された。30 年度をマイルストーン
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度
とし、ここから 20 年間、30 年間かけて再
(FIT)などの政策を講じているが、想定通
生エネ社会へとつくり変えていく。コスト
りにコストダウンが進む保証はない。ここ
が安くなり、大量に導入される過程で浮上
で重要なのは、やはり賦課金の問題。国民
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負担を抑制するために、政策の効果を事前
再生エネを積極的に抑制したほうが、結果
と事後に繰り返し検証し、修正していくし
的に導入量を増やせるのではないかといっ
かない。この点で現在の政策は改善の余地
たことを議論している。背景には再生エネ
が多くある。
の優先給電ルールは過保護すぎるというこ
中上学界委員 いつになったら(再生エネ
の発電コストが既存の電力と同等になる)
グリッドパリティになるのか、あるいはな
らないのか、どう見ているか。
松山氏 予測は難しいが、新エネルギー・産
業技術総合開発機構(NEDO)は太陽光
発電開発戦略で 30 年に発電コスト 7 円 /
ともある。日本も社会的なコストを最小化
するための出力抑制のやり方を考えていか
なければならない。
茅座長 バッテリーで需給調整する方法があ
るが、そう簡単にバッテリーのコストが下
がるものではないし、実際、バックアップ
ソリューションになり得るのか。
キロワット時の目標を掲げている。次の投
岡本氏 系統安定化のためだけにバッテリー
資が生まれる 10 年後、15 年後ぐらいの間
に大型投資しても費用対効果が低い。系統
にブレークスルーし、同時にビジネスモデ
の利用ルールを見直し、既存のリソースを
ルを構築できるかが勝負になる。また洋上
うまく使えるようにしたり、再生エネの出
風力は爆発的に拡大する可能性を秘めてい
力抑制をしやすくしたりするほうがいい。
る。50 年先を見据えると海洋エネルギーが
バッテリーは非常用だとか、運輸だとか、
カギになりそうだ。
需要側で価値を生み出す。また、こうした
岡本氏 国際エネルギー機関(IEA)のリポー
トによると、太陽光は今後 20 年間、グリッ
分散型のリソースとしてのバッテリーは、
系統安定化にも使えると見ている。
ドパリティを達成できないが、風力は達成
産業界委員 新興国の再生エネの動向は。
できる地域もあるとしている。ただ太陽光
松山氏 新興国も先進国と同じ問題を抱えて
の事業者らに聞くと、これは非常に保守的
な見方で、
「実際はそんなことない」といっ
た声が多い。私も 20 年以内に達成される
ことを期待している。達成させるには競争
のメカニズムが働く必要がある。
茅座長 需給調整策として太陽光の出力抑
制があるが、どの程度の抑制ができるだ
ろうか。
いる。系統をつくったはいいが、接続でき
ないといったトラブルもあり、日々刻々と変
わる状況に応じて制度を見直している。先
進国とは異なる問題として電化率がある。
それだけに新興国には再生エネ導入の余地
があり、かつ、その必要性も高い。
茅座長 地球温暖化対策の点からも、再生エ
ネの役割が重要になることはあっても、そ
朝野氏 大変に難しい質問。ただ一つ言える
の逆はまずあり得ない。導入の問題点につ
のは、欧州では今、系統増強などのほうが
いて、折に触れて議論したい。本日はあり
再生エネの抑制よりもコスト高になる場合、
がとうございました。
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第3回 事例研究会
パリ協定採択ー求められる日本の対応・役割
第3回事例研究会は2月3日、「パリ協定採択ーこれからの課題」をテーマに開いた。平
均気温上昇を産業革命前に比べて2度C未満に抑えるといった目標を達成するための方策
などを議論した。
COP21 の結果と日本の対応
有志連合で技術革新
東京大学公共政策大学院教授
有馬 純 氏
■ ハイブリッド
と現実的なボトムアップのプレッジ・アンド・
気候変動の枠組みの変遷を見ると、京都議定
レビュー(約束と検証)が併存することだ。2
書はトップダウンの温室効果ガス削減目標があ
度 C 目標を達成するには、各国の INDC(自主
り、達成できないと罰則があった。またカンク
的に決定する約束草案)の削減目標値を合計し
ン合意(COP16)は各国が削減目標を決め、事
ても、2030 年時点で 150 億トンものギャップが
後レビューするボトムアップだった。
あるとされる。このギャップを炭素予算のよう
パリ協定はトップダウンとボトムアップのハ
な枠組みで各国に強制的に割り振る権限を国連
イブリッド。各国が削減目標を決めて提出し、
に与えるといったことを各国が受け入れるかと
事後レビューするボトムアップは同じだが、5
いったら、実現可能性はゼロだろう。
年ごとに各国の実施状況を確認するグローバル・
では日本はどう対応するべきか。まずプレッ
ストックテイクで、トップダウンの 2 度 C 目標
ジ・アンド・レビューの制度設計と実行に貢献す
や温室効果ガスの人為的な排出と吸収を一致さ
る。これからの詳細なルールいかんでは、中国
せるといった長期目標の達成につなげる。グロー
やインドのような大量排出国のレビューが骨抜
バル・ストックテイクの結果を反映し、各国が
きになり、実効性が損なわれる恐れもある。経
温暖化防止強化策や途上国支援策の拡充などを
団連の環境自主行動計画や低炭素社会実行計画
講じる。
などの知見を発信し、国際的に共有してほしい。
また革新的な技術の開発で、日本がリーダー
■制度設計カギ
シップをとってほしい。例えばイノベーション
問題は非現実的なトップダウンの 2 度 C 目標
有志連合を提唱する。リスクの高いイノベーショ
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ンに取り組むには、民間企業が成長で
きる良好なマクロ経済環境を整備する
必要もある。短期的な排出削減にこだ
気候変動枠組みの変遷
京都議定書
(トップダウン)
カンクン合意
(ボトムアップ)
を講じると、イノベーション環境が悪
トップダウンの要素
わって管理経済的、成長政策的な施策
先進国全体の削減目標
化して長期的な削減に悪影響を及ぼ
す。ギャップは技術開発でしか埋めら
パリ協定
(ハイブリッド)
各先進国の削減義務を交渉
グローバルな長期目標
(温度、排出・吸収バランス)
世界の取り組み状況の総括
(グローバル・ストックテイク)
れない。
各先進国の削減義務に合意
■原発も選択肢
日本は 30 年に温室効果ガスを 13 年
度比 26% 減とする目標を掲げている。
これはエネルギーコスト低減と自給
国連が排出枠を管理
全ての国が目標・
取り組みを自国決定
グローバル・ストックテイクを
踏まえた自国決定貢献の提出
取り組み状況の隔年報告
取り組み状況の隔年報告
事後レビュー
事後レビュー
順守・不順守の判定と罰則
ボトムアップのプレッジ&レビュー
率回復を同時に達成するためのエネル
ギーミックスを踏まえて積み上げた結
だが 50 年、100 年に温室効果ガスをさらに削減
果だ。このエネルギーミックスを実現するには、
藤野様
するには、やはり原発オプションは重要だ。17
原子力発電所の再稼働が避けられない。再稼働
年に見直されるエネルギー基本計画にこうした
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して化石燃料の輸入コストを節減し、再生可能
メッセージを盛り込むべきだ。長期的な温暖化
エネルギー導入によるコスト増を吸収する立て
防止のためには、空虚な数値目標の議論で躍る
付けだからだ。
のではなく、イノベーションの促進や原発のリ
原発は運転期間を延長しても 60 年以降に順
プレースといったことを地に足をつけて議論す
次退役し、いずれは原子力ゼロの世界になる。
ることが求められる。
天地 :57B× 左右 :64.3B
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mizuhata
パリ合意の持続可能性
リスクマネジメント重要
地球環境産業技術研究機構参与
山口 光恒 氏
■ 持続は厳しい
と評価できる。ただ「持続」は厳しいというの
パリ合意はボトムアップを実現し、途上国を
が結論だ。
含めた全員参加を達成した。現時点でベストだ
2 度 C 目標とボトムアップのプレッジ(約束)の
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差は埋まらず、ますます拡大するだろう。また
置で腰砕けになることも懸念される。ボトムアッ
プレッジに法的拘束力はないため、順守せずに
プ型もトップダウン型も帯に短しタスキに長し
脱退もできる。他方で法的拘束力があると合意
といった感じだ。
できなかったのが実情で、ここが弱点になって
いる。
■損害額を算出
目標達成に向けた解の一つにクラブという考
地球温暖化問題の本質は不確実性にあり、科
え方があり、おもしろいアイデアとは思うが、
学的にも経済的にもわからないことが多い。
これもなかなか難しい。
科学的には、例えば気候変動に関する政府間
パネル(IPCC)の第 5 次報告書で、CO2 濃度が
■ WTO と衝突
倍増した時に気温がどれぐらい上がるかの指標
クラブにはボトムアップ型とトップダウン型
である平衡気候感度の最良推計値を合意できな
がある。ボトムアップ型はできる範囲で数カ国
かった。経済的には対策の費用対効果、1 度 C
で合意し、加盟国を増やしていく。だが、これ
の上昇によってどれだけの損害があるのかわか
では高い野心には達しない。逆にトップダウン
らないといったことがある。
型は高い野心を掲げて「この指とまれ」とやる。
先に経済協力開発機構(OECD)が、このま
加盟国へのインセンティブと非加盟への貿易制
までは 2060 年に気温が 2.5 度 C 上昇し、世界で
裁措置をセットにして加盟を促す。
GDP の 2% 相当の損害があると公表した。こう
トップダウン型のクラブに関しては、経済学
したことを日本でも検討し、世界に発信するこ
者のウィリアム・ノードハウスが具体的な提案
とが求められる。
をしている。炭素排出 1 トン当たりの損害額を
リスク / リスクトレードオフの視点も重要だ。
ソシアルコストオブカーボン(社会的炭素費用)
例えば対流圏へのエアロゾル散布(SRM)や
とし、非加盟国からの輸入品に対
して炭素税をかけるのが骨子。だ
が実際の炭素排出量はわからない
ため、一律 2% の関税をかけると
(GDP、%)
気候変動による地域別損害額(GDP 比、中央推定値)
0
OECD(欧州)
OECD(太平洋諸国)
OECD(米国)
-1
している。
しかし、こうした貿易制裁措置
は世界貿易機関(WTO)と正面
衝突する。ノードハウスはそれを
受け入れて、むしろ自由貿易と地
ラテンアメリカ
世界
上記以外の欧州と
アジア
-2
-3
中東と北アフリカ
南・東南アジア
サハラ砂漠以南の
アフリカ
-4
球温暖化対策のどちらがどの程
度、重要なのかを議論しなければ
だめだと主張している。
気持ちのいい主張ではあるが、
実際に WTO と整合性をとりなが
ら、こうした貿易制裁条項をつく
るのは厳しい。非加盟国の報復措
22 Green Journal
-5
-6
-7
2010
2020
2030
2040
2050
気候感度の不確実性による
2060 年時点での損害の
不確実性の範囲
2060 年
出典 :The Economic Consequences of Climate Change, OECD 2015
藤野様
天地 :57B× 左右 :62B
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CO2 除去(CDR)といった気候工学(ジオエン
ほしい。
ジニアリング)
、CO2 の回収・貯留(CCS)など
パリ合意の持続可能性は低いというのが結論
には実施するリスク、実施しないリスクがある。
ではあるが、不確実性の下でのリスクマネジメン
日本が先導して国際共同研究チームを形成して
トによる温暖化対策の歩みを止めてはならない。
意見
交換
先進国とは異なる途上国シナリオを
加藤学界委員 2 度 C 目標でも厳しいのは皆
際的だ。こうした中で、日本の産業界はビ
が理解している。それだけに、努力目標と
ジネスチャンスをつかむ好機だし、つかめ
はいえ 1.5 度 C が掲げられたことには、
正直、
るだろうと思っている。
驚いた。島しょ国への配慮もあっただろう
が、現時点で 1 度 C 程度の温度上昇にもか
かわらず世界中が異常気象になっているこ
とを考えれば、やはり「今のままではだめ
なのだ」というメッセージが込められた目標
であり、これまでとは異なる産業構造、エ
ネルギー構造の社会を目指さなければなら
ないとの覚悟があっての合意だったと思う。
非現実的な目標といって切り捨てるわけに
はいかないし、また切り捨てると産業界の
やる気をそぐことにもつながりかねないとの
懸念もある。
有馬氏 現実には 2 度 C ですらできるかどう
かわからない状態にもかかわらず、1.5 度 C
となれば、枠組み自体の信頼性を下げるこ
とになるのでないかと感じている。長期的
に温暖化を防止していかねばならないこと
は誰も否定しない。後はアプローチの問題。
タイムテーブルを決めて数値目標に取り組
むより、数値目標を可能にするような技術
開発目標やコスト削減目標を定めた方が実
山口氏 このまま温暖化が進行しては困ると
いう点で一致している。では、どのような目
標にするかだが、あまりにやり過ぎて破綻
すると、やらないのと同じことになる恐れも
ある。やはり実効性が大切だ。当然、温暖
化対策にはコストがかかる。対策の判断材
料として、温暖化との因果関係を追究し、
ある程度は損害の額を見えるようにする必
要がある。つまり、現状でどれぐらいの損
害があり、それを防ぐためにはどれぐらい
のコストがかかるのか、こうした分析をしな
いと物事は動かない。
中上学界委員 今、途上国のエネルギー事
情を調査している。まきで生活している
人々がいるわけで、まさに低炭素社会とい
える。そして途上国は先進国が歩んできた
道を進み、炭素社会になろうと努力してい
る。脱炭素社会に導くには先進国とは異な
る成長シナリオを描かねばならないが、先
進国もこれまでのシナリオを教えてあげて
いるようなところがある。こうしたことを
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きちんと捉えておかないと、途上国と先進
しれない。産業界はどう覚悟しておけばよ
国で相変わらず齟齬があるまま進んでしま
いだろうか。
うと懸念している。
有馬氏 途上国が提出した INDC は多くが先
有馬氏 どの国も温暖化防止のことだけを考
えて目標数値を設定しているわけではなく、
進国からの支援を条件にしている。やや悲
経済に与える影響、エネルギー情勢などを
観的かもしれないが、5 年後、10 年後に「予
踏まえて総合的に勘案して設定している。
定通り削減できない。それは我々が努力し
ギャップが埋められないからといって「では
ていないからではなく、十分な支援がないか
私たちの目標を倍にしましょう」と手を上げ
ら。だから先進国は支援を上積みするべき
る国はない。ボトムアップでは厳しいし、
トッ
だ」となるのは、火を見るよりも明らか。他
プダウンの強制的な枠組みは無理となると、
方、例えば日本がインドの目標達成に手を貸
技術開発するしかないということに落ち着く
す余地はあると思う。野心レベルで考えると、
と見ている。産業界はこれに備えるべきだ。
インドの目標はあまり高くない。途上国の雄
だけに、インドが目標を高められるように協
力することは大切だし、新たな成長シナリオ
を描くことにもつながる。日本の国際交渉が
目標数値だけに矮小化されないようにするた
めにも重要だ。
山口氏 欧米は途上国も同じような思考をす
るという前提で脱炭素社会を目指している。
一方、途上国の代表も先進国に留学し、欧
米の思考を身につけている。すると国際会
議では話がまとまるが、自国に帰ると実情が
異なるため現実には何も動かないといった面
もある。また欧米はすべての国や個人は全
て自己の利害で動くという考えで、しかも短
期の利害で動いている。だが日本は必ずし
もそうではない。やはり日本は CO2 ゼロエ
ミッション構想や環境技術の成果などを世
界に発信し続けることが重要だ。
産業界委員 5 年おきにグローバル・ストッ
クテイクが実施されると、どうしても目標
を達成できないと判断される時がくるかも
産業界委員 CO2 の回収・貯留(CCS)は 2
度 C 目標達成のカギの位置づけなのに、な
かなか進まない。
山口氏 例えば炭素価格が 100 ドルになった
ら、すぐに CCS ができるかというと、でき
ない。事故があった際の賠償責任の主体は
誰か、賠償額はいくらかといった国際的な合
意がなく、法的に未解決な問題が多い。本
気で進めようと思ったら技術的な議論と合わ
せてこうしたソフトの議論をしなければなら
ないが、全くなされてない。CCS はラストリ
ゾートになっている。
産業界委員 原子力は有力な低炭素エネル
ギーだと思うが、COP では話題にのぼらな
い。
有馬氏 COP は環境 NGO(非政府組織)の
影響力が極めて強い。従って COP の場で原
子力についてポジティブなリファレンス(言
及)は期待できない。一方、ネガティブな
レファレンスをさせないということも重要で、
ポジでもネガでもないということが COP の
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スタンスになっている。
産業界委員 環境 NGO は再生可能エネル
ギーに追い風を、化石エネルギーに逆風を
吹かしており、化石燃料に関わる企業への
投資を撤退するダイベストメントの運動が広
がっている。
有馬氏 ダイベストメントでは石炭を使わず
に地中にとどめておくべきだとの主張もあ
る。COP21 の時にインドの商工会議所の人
と意見交換をする機会があり、
「こういう主
張があるがどう思うか」と聞いたら、
「石炭
をどうクリーンに使うかという議論なら乗る
が、一切使うなという議論には全く乗れない。
石炭は電力の安定供給、生活のために必要
だ。先進国が石炭を使うなと言うのだったら、
『地中の石炭を全て買い取ってくれるなら使
わない』と言い返したい」としていた。ダイ
ベストメントの議論はこうした現実無視の感
が強い。
茅座長 CO2 ゼロエミッションを世界共通の
目標にすることを提唱してきた。CO2 は大気
中に排出されると、その数十 % が何千年間も
大気中にとどまるため、排出を続ける限り濃
度が高くなる。つまり温度が上昇する。温
度を一定にするには、必要条件として CO2
の排出をゼロにするしかない。一方、ほかの
温室効果ガスは、フロン類を別にすると、ラ
イフタイムが十数年から百数十年のため、あ
る程度の排出量であれば、しばらくすると排
出と吸収がほぼ平衡化する。言い換えると
排出ゼロでなくても温度は上昇しない。やは
り排出をゼロにしなければならないのは CO2
となる。パリ協定では長期目標として今世
紀後半までに温室効果ガスの人為的な排出
と吸収を一致させることが盛られた。私は
1000 年単位の長期の取り組みとして提唱し
てきたが、だからといってパリ協定とは矛盾
しない。温暖化の克服に向け、これからも
提唱したい。本日はありがとうございました。
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第4回 事例研究会
電力小売り全面自由化ーエネ市場どう変わる
第4回事例研究会は4月4日、「電力小売り全面自由化」をテーマに開いた。電力システ
ム改革の課題、見通しなどについて議論した。
電力分野の小売り全面自由化と
低炭素化について
垣根なくし切磋琢磨
経済産業省・資源エネルギー庁 電力基盤整備課課長
安永 崇伸 氏
■ 3 つの目的
上だった。地方自治体が主導する地域新電力の
電力システム改革は「安定供給を確保する」
動きも活発だ。
「電気料金を最大限抑制する」「需要家の選択肢
や事業者の事業機会を拡大する」の三つを目的
■ 逆行しない
としている。第 1 段階として広域的運営推進機
新料金プランは「段階別」
「セット割」
「時間
関を設立した。第 2 段階は電力小売り全面自由
帯別」
「その他(節電割引など)
」に大別される。
化で、これに先立ち、経済産業相の直属組織と
電力会社の 3 段階料金は使用量が少ないと安く、
して電力取引監視等委員会を設置した。第 3 段
多いと高く設定し、省エネに逆行しないように
階は 2020 年に送配電部門を法的分離する。また
なっている。一方、新規参入事業者が「使う人
17 年 4 月にガスの小売りも全面自由化する。
ほどお得」といったメニューを打ち出しており、
電力の全面自由化により、一般電気事業者が
逆行するとの批判もあるが、使えば使うほど安
独占していた 8 兆円の市場が開放された。4 月
くなるメニューはない。多く使ったら高くなる
1 日時点で約 280 社が登録しており、ガスや石
ことに変わりはなく、誤解されている。また小
油といったエネルギー関連企業をはじめ、通信、
売り営業に関する指針で標準メニュー、電源構
鉄道、住宅とさまざまな業種の企業が参入して
成などの開示も求めている。
いる。新規参入事業者の本社所在地は三大都市
電気、ガスの市場の垣根を取り払うことによ
圏が多く、首都圏ばかりが盛り上がっていると
り、最適なエネルギーを供給できる事業者が切
の指摘もあるが、三大都市圏以外も 2 割以上を
磋琢磨して強くなることが、国のエネルギー安
占めており、電力需要の分布からすると予想以
全保障の上で重要だ。
26 Green Journal
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■ 厳しい規制
電力の全面自由化により、発電コスト
の安い石炭火力だらけになるとの指摘も
電力システム改革の全体スケジュール
2015 年
4月1日
2016 年
4月1日
ある。実際、新設計画が相次いでいる。 【電力】
石炭火力は液化天然ガス(LNG)火力に
比べて CO2 排出量が多く、低炭素化が課
第 1 段階
2017 年
4月1日
第 2 段階
も LNG 火力の新設計画の方が圧倒的に多
いことはあまり知られていない。従って
事業者は、低炭素化のための自主枠組み
(送配電部門
の法的分離)
(規制料金の経過措置期間)
【都市ガス】
石炭火力ばかりが増えるわけではない。
新電力を含めてシェアで 99% 超の電気
第 3 段階
(広域的運営
(電気の小売り
推進機関設立)
全面自由化)
題となる。ただ、実態では石炭火力より
2020 年 2022 年
4月1日 4月1日
導管部門の
法的分離
ガスの小売り
全面自由化
【市場監視委員会】
事業者ごとに競争
状態を見極め解除
(大手3社)
適正な競争関係が認められない
者に対しては経過措置として
小売料金規制を残す
電力取引監視等 ガスについても
委員会の設立
業務開始
を策定し、30 年度時点で使用電力量 1 キ
ロワット時当たり CO2 排出量である CO2
排出係数を 0.37 キログラムにする目標を
掲げた。これを支えるため、
発電段階の省エネ法、
を目標とした。
小売り段階の供給構造高度化法を見直した。省
エネルギーミックスは自給率改善、電力コス
エネ法で新増設の石炭火力に超々臨界圧(USC)
ト低減、温室効果ガス排出量削減の同時達成を
2016.4.28 0:00
並みの発電効率 42% を求めたほか、既設を含め
念頭に置いて策定された。実現には石炭火力の
た事業者単位の効率基準を設定した。かなり厳し
高効率化が不可欠で、最新設備の新増設によっ
い規制だ。
mizuhata
て効率の悪い設備を淘汰することが経済活性化
一方、高度化法では 30 年度に非化石電源 44%
と低炭素化の両立につながる。
藤野さま
天地 :46.8B× 左右 :49.8B
signature
電力システム改革と電気事業への影響
欧米は電気料金上昇
電力中央研究所 社会経済研究所上席研究員
服部 徹 氏
■ 前提に疑問
こう期待している需要家は多い。しかし、全面
電力小売り全面自由化で新規事業者の参入が
自由化で先行している欧米では、どの国も上昇
相次ぎ、競争原理が働いて電気料金も安くなる。
している。
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再生可能エネルギーの賦課金などの公租公課、
■ 日本も対峙
送配電コストの上昇が最大の理由。また競争で
電力システム改革では 2020 年に送配電部門を
電気料金が下がるロジックには前提が必要。競
法的分離する。この後、地産地消型の再生可能
争的な新規事業者が非効率的な既存事業者より
エネが大量に導入されると、火力などの系統電
も安い料金を提示し、これを受けて需要家は契
力の需要が減る。送配電の利用料金である託送
約先を切り替える。既存事業者も対抗し、より
料は従量料金主体のため、送配電会社の収入が
安い料金を提示する。だが、
そうはならなかった。
減る。仮に託送料を上げると小売り価格も上が
るため、さらなる再生可能エネ導入につながる。
■ 規制料金で
こうして送配電会社の経営が圧迫される恐れが
この背景には規制料金がある。規制料金は需
ある。これは送配電網のデス・スパイラルと呼
要家保護を名目としており、割安に設定されて
ばれる。再生可能エネ導入のほか、スマートグ
いるため、需要家は契約を切り替える必要性を
リット化への対応、老朽設備更新などで投資が
感じていない。欧州各国では全面自由化から 4 ー
増え続ける一方、回収は難しくなる。欧州では
5 年が経過後も変更率 10% 超の国は 7 カ国ほど
この問題が懸念されており、日本も対峙するこ
しかない。欧州委員会は早期撤廃を求めている
とになりそうだ。
が、政治的な理由で踏み切れない国が多い。
また卸電力市場では再生可能エネ起因のミッ
一方、英国は規制料金を全廃しており、競争
シングマネーの問題がある。卸電力価格は発電
原理も働いているとされる。それでも変更率
コストの安い電源の電力から落札するメリット・
は十数 % にとどまる。この理由として、料金メ
オーダーで決まる。このため発電コストゼロの
ニューが多すぎるとの見方
欧米主要国の家庭用電気料金の推移
が あ る。3 つ か 4 つ で あ れ
ば 検 討 す る が、200 や 300
もあると、もうどうでもよ
450
くなる。英国の規制当局は
400
1 社当たり 4 種類程度に絞
350
るよう求めているが、自由
化と逆行しているだけに賛
300
否両論となっている。
250
日本の規制料金は経過措
置後に撤廃の予定だが、撤
廃しないという政治判断が
なされてもおかしくない。
また地域によって差はあ
れ、料金メニューは増え続
けている。それだけに欧州
と同様の問題が顕在化する
可能性がある。
28 Green Journal
米ドル /メガワット時
ドイツ
イタリア
欧州平均
英国
フランス
200
150
米国
100
50
0
全面自由化開始時期
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 年
※公租公課含む、為替レート換算
出典 : IEA のデータに基づいて電力中央研究所が作成
藤野さま
天地 :46.8B× 左右 :49.8B
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再生可能エネが入ると、価格が下落する。既存
の費用を別途手当てする容量メカニズムも練ら
電源の採算が悪化して運転が難しくなり、欧州
れている。もうからないから電源を停止すると
では停止に追い込まれたケースもある。
いった事業者が相次いだ場合、供給力・調整力
日本では広域的運営機関による電源入札制度
を確保できなくなる懸念があるだけに、綿密な
があるほか、欧州のように電源を維持するため
制度設計が求められる。
電力市場自由化と総合エネルギー事業の
進化に向けた東京ガスの取り組み
顧客の省エネ後押し
東京ガス 執行役員総合企画部長
笹山 晋一 氏
■ まず関東圏
■ キーワード
電力小売りの新規参入に際しては「電源」
「販
どのような会社を選ぶかとアンケートしたと
売体制」
「運用ノウハウ・システム」の三つが重
ころ「料金が安い」
「信頼できる」が上位を占めた。
要である。電源は現在、首都圏に新電力として
どのようなメニューを望むかでは「電気、ガス、
最大級の 160 万キロワットを確保している。20
通信などがセットで安い」
「支払いが便利」といっ
年までに 300 万キロワットに増強する計画。販
た回答だった。会社もメニューも「お得」
「安心」
売は「ライフバル」などの 200 以上の店舗網を
「簡単・便利」がキーワードになっている。
生かし、地域密着で展開している。顧客の話
こうしたニーズを反映し、
「お得」なガスと電
を聞いた上で提案するケースが多い。運営ノウ
気のセット割、通信をプラスしたトリプル割の
ハウ・システムは、燃料調達から小売りまでの
ほか、
「安心」な生活まわり駆けつけサービス(水
チェーンを統合する体制・システムを整え、3
まわり、玄関のカギ、窓ガラスの応急対応)
、
「簡
月末までに 20 万件を超える契約を獲得した。
単・便利」な申し込み体制やガスと電気の使用量・
よく「全国展開しないのか」と問われるが、
料金をウェブで確認できるサービス、ポイント
既存の供給エリアや電源立地などを考慮し、ま
交換などを組み合わせた。
ず関東圏で展開する。展開にあたって都市ガス、
サービスメニューはコーポレートメッセージ
LP ガス、住宅、通信などのさまざまな業界との
である「あなたとずっと、今日よりもっと」の
協業も推し進める。すでに都市ガス、LP ガスの
「ずっと、もっと」を縮めて「ずっともプラン」
40 社超と業務提携している。
と名付けた。忙しい共働き世代に人気の料理レ
シピ検索、家計負担の大きい子育て世代にさま
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ざまなセット割、高齢者世帯に駆
総合エネルギー事業の進化
けつけサービスなどと、ライフス
顧客ニーズ
テージに応じて提案する。
経済性
安定供給
多様なサービス …
■ スマート化
「ワンストップ」
で提供
エネルギー供給会社として自由
スマート化の
推進
一方、顧客の省エネを後押しす
える化のほか、使用状況が近い家
…
顧客サポート体制
ギーの導入なども推し進める。
るため、ガス・電気の使用量の見
通信
の活用とともに、再生可能エネル
エネルギー
マネジメント
率電源(コンバインドサイクル)
最適機器
提案
給側の対策として天然ガスの高効
東京ガスグループ
省エネ
サービス
ガス
両立することも重視している。供
電気
化と省エネ化や地球温暖化対策を
さまざまな関係先との連携
エネルギー
業界
通信業界
住宅業界
建築業界 …
族との比較提示、使い過ぎお知ら
せメールの配信、省エネアドバイ
スなども用意する。
再生可能エネ・未利用エネの導入、停電時の電
また暮らしのスマート化の一環で、HEMS(家
藤野さま
力継続供給、電気・ガス・熱の最適化をテーマ
庭用エネルギー管理システム)に節電要請を表
天地 :46.8B× 左右 :49.8B
とし、低炭素で災害に強い街づくりを目指して
示し、節電量に応じてインセンティブを付与す
いる。
るデマンドレスポンス(需要応答)の実証試験
これらを通じ、電力、ガス、高付加価値サー
などを実施している。
ビスをワンストップで提供する総合エネルギー
mizuhata
事業を進化させる。
さらに地域のスマート化にも取り組んでいる。
意見
交換
2016.4.28 0:00
signature
石炭火力の効率化推進 環境政策と整合性を
加藤学界委員 省エネ法で石炭火力に厳し
かりと精査する。既存の効率の悪い設備
い設定をしたが、2030 年度までに残され
を理由なく動かし続けていたり、目標達成
た時間は少ない。どのような手段で達成を
が難しい事業者が改善計画を明らかにしな
目指すのか。
かったりした場合に指導、助言する。省エ
安永氏 毎年、事業者から報告を受けてしっ
ネ法は事業者の努力を促す法律で、違反し
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ても直ちに罰則で懲らしめるわけではない。
スも提供しているが、もっと増やしたいし、
ただ計画を全く明らかにせず、努力もしな
そのためのアライアンスも検討する。さま
い、国の指導に耳も傾けないといった際に
ざまな業界との提携により、顧客に満足し
は命令し、罰則を科すことが可能だ。
てもらえるサービスを提供できるように工
産業界委員 省エネ法や高度化法が負担に
なり、電気料金の上昇を招く懸念はあるか。
安永氏 本来は自由化による競争原理で設備
夫する。
加藤学界委員 電力システム改革は地球温
暖化対策につながるだろうか。
の効率化が進めばいいのだが、市場任せで
服部氏 温暖化対策では原子力をどう位置付
いいのかとの意見もあり、一定の制約を設
けるかが重要になる。欧米では卸電力価格
けている。ただ、エネルギーミックスの目
が下落して原発の原価ですら回収できない
標値は、石炭火力比率そのものを大きく減
という状況で、新設も厳しさを増している。
らすものではないため、省エネ法によって
ただ英国は低炭素目標を実現するには原発
効率化を推し進めることが料金の上昇につ
が必要だと判断し、原子力を含む低炭素電
ながるとは見ていない。
源の価格水準を決め、それを下回ったら政
中上学界委員 これまでは電気とガスの激し
い競争の結果、住宅用の燃料電池などが生
まれた。これからは垣根を越えた開発で、
より消費者が喜ぶ製品を生みだすことが求
められる。
府が補填し、上回ったら返してもらう契約
を提示して新設を促している。
茅座長 自由化のメリットはどこにあるのだ
ろうか。
笹山氏 日本では自由化が競争によって料金
服部氏 確かにエネルギー間の競争があった
を下げるためととらえられがちだが、欧米
からこそ先進の製品が生まれた。今後は電
での自由化は、もっと戦略的な意図があっ
気とガスを組み合わせて、どう最適化する
た。米国はエネルギーセキュリティーの向
かをテーマにして切磋琢磨する時代になる
上を目指し、石油の中東依存を下げるため
だろう。
にガスを自由化して自国のガス田開発を促
中上学界委員 新規参入事業者はどのよう
なビジネスモデルを描いて利潤を得ようと
しているのか。
笹山氏 東京ガスの場合、料金競争による限
られたパイのシェア争いではなく、電気と
ガスに加えてサービスも含めた総合提案に
よる市場のパイの拡大を目指している。こ
のため、駆けつけなどの安心に関わるサー
ビスや料理レシピ検索などのウェブサービ
進した。欧州は欧州連合(EU)として取引
の柔軟性と流動性を高めた上で、市場統合
によって交渉力を高めるためだった。エネ
ルギーセキュリティーや環境などの政策と
自由化の整合性をとることは極めて重要な
ため、定期的に検証する必要がある。
茅座長 電力システム改革、またガスの全面
自由化がこれからどうなるかは大きな問題
だけに、また取り上げたいと思う。本日は
ありがとうございました。
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第1回環境フィールドワーク
クリーンコールテクノロジーの粋を集めた都市型石炭火力
「Jパワー・磯子火力発電所」
第1回フィールドワークは9月30日、Jパワー・磯子火力発電所を視察した。日本が世界
に誇るクリーンコールテクノロジー(環境低負荷型の石炭利用技術)の粋を集めたコン
パクトな都市型石炭火力発電所で、首都圏のエネルギー基地の一翼を担っている。
磯子火力発電所は昭和 40 年代のはじめに国の
どを導入し、徹底的に環境負荷を低減しつつ、
石炭政策に沿って大都市部の横浜に位置する発
世界最高水準のエネルギー効率を実現。世界一
電所として建設された。その後、「横浜市の環境
クリーンな石炭火力発電所として国内外に知ら
改善計画への対応」「電力の安定供給の信頼度向
れており、年間 5000 人を超える見学者が訪れて
上」などを目的として建て替えられ、2002 年に
いる。
新 1 号機(出力 60 万キロワット)
、09 年に新 2
まず ISOGO エネルギープラザの浅野勲館長
号機(同)が運転を開始した。蒸気条件に超々
から磯子火力発電所の概要、高効率石炭火力発
臨界圧(USC)を採用したほか、極限まで環境
電技術の研究開発の歴史などに関して説明を受
汚染物質を低減するための乾式排煙脱硫装置な
けた。磯子火力発電所の最大の特徴は、タワー
新1号機
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型ボイラー、乾式排煙脱硫装置、クローバー型
石炭輸送船やクローバー型石炭サイロなどの構
石炭サイロなどの日本初の設備を採用している
内設備のほか、近隣の日本初の液化天然ガス
ことが挙げられる。これにより、世界最高水準
(LNG)受け入れ基地である東京ガスの根岸工場、
のクリーンコールテクノロジーを採用して環境
東京電力の南横浜火力発電所、JX 日鉱日石エネ
負荷を低減するという目標、限られた敷地内で
ルギーの根岸製油所なども見渡せた。
既存発電所を運転しながら新たな発電所に建て
また経営企画部の中山寿美枝審議役が世界の
替えるという制約の下で発電設備出力を 2 倍以
エネルギー動向や石炭火力と地球環境の共生を
上にするという二つの課題を克服した。
テーマに講演した。酸素吹石炭ガス化複合発電
展示室では構内全体の設備配置、燃料・蒸気・
(IGCC)
、燃料電池、二酸化炭素(CO2)分離・
電気の流れ、主要設備の構造と機能などについ
て各種模型を使った説明を受けた。実際の設備
の全体は外側からは見れないため、見学に先だっ
てこうした模型を見ることは、理解を深めるの
に役立った。
建屋ではタービン発電機、タワー型ボイラー
の下部、ボイラーに微粉炭を吹き込むバーナー、
24 時間 365 日監視の運転センターなどを見学し
た。地上約 100 メートルの建屋の屋上からは、
バーナー周辺部 ISOGOエネルギープラザの大型模型
タービン発電機
タービン発電機の模型
運転センター
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回収を組み合わせたトリプルコンバインド発電
動向や気候変動政策の国際枠組みを踏まえ、日
(IGFC)の開発プロジェクト「大崎クールジェ
本のクリーンコールテクノロジーを活用してサ
ン」、バイオマス系燃料の利用などについて解説
ステナブル(持続可能)な CO2 排出削減に貢献
し、「経済成長著しいアジア地域では石炭火力発
することにより、アジア地域の経済成長と環境
電の新設計画が相次いでいる。世界のエネルギー
保全を両立できる」と強調した。
クローバー型石炭サイロ
講演
■ 乾式排煙脱硫装置 排ガスに含まれる二酸化硫黄
(SO2)などの硫黄酸化物を「吸着〜
再生〜福生品回収」の基本プロセス
で除去する。吸着塔の活性コークス
で硫黄酸化物を反応させて硫酸アン
モニア塩にして吸着。再生塔で活性
コークスを 400 度〜 500 度 C に加熱
して SO2 を脱離し、硫酸として回収
する。活性コークスは循環利用する。
乾式は用水をほとんど使用しない
ため、排ガスの再加熱が不要なほか、
省スペースで設置できる。乾式脱硫
(脱硝)技術は国の支援を受けて J パ
ワーとメーカーが協力して開発した。
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第2回環境フィールドワーク
「環境未来都市とやま」をゆく 「富山県」
第2回フィールドワークは11月19〜21日、富山県を訪問した。スギノマシン(魚津市)
の原子力発電所向けロボット、国の「環境未来都市」に選ばれている富山市の小水力発
電所などを視察した。
■ コンパクトなまちづくり
日本で唯一、国連の SE4All の「エネルギー効率
富山市は次世代型路面電車(LRT)などの公
改善都市」にも選ばれている。
共交通を核とした「コンパクトなまちづくり(コ
富山市環境部環境政策課の関野孝俊課長は講
ンパクトシティ政策)」を推し進めており、11
演で、LRT について「鉄道に比べて平日利用者
年に「環境未来都市」に選ばれた。
「環境」
「超
が約 2 倍となり、高齢者による日中利用も増え
高齢化」「農業・森林・林業」をテーマにした
ている。沿線の居住を促しており、中心市街地
15 プロジェクトを展開している。また 14 年に
の人口が増加傾向にある。また北陸新幹線の開
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掛水車式で、最大出力 9.9 キロワット、年間発
電量 8 万 2600 キロワット時(一般家庭 23 軒分)。
「東町・東新町公民館小水力発電所」は S 型チュー
ブラ水車式で、最大出力 88 キロワット、年間発
電量 63 万 4700 キロワット時(同 176 軒分)。富
山市が推進している小水力発電事業の中核設備
で、12 年 3 月に運転を始めた。電力は全量を北
陸電力に売電している。ただ「日本製で条件に
合う発電機がなかった」
(富山市環境部)ため、
採用しているのはドイツ製とチェコ製。中小企
業のモノづくり力を生かす余地がありそうだ。
■ イタイイタイ病
富山県立イタイイタイ病資料館では公害病の
悲惨さを目の当たりにした。神岡鉱山(岐阜県
飛騨市)から排出されたカドミウムが神通川を
業を受け、富山駅の高架下で南北を接続する」
などと成果をあげた。自転車市民共同利用シス
テム「アヴィレ」、牛岳温泉熱を利用したエゴマ
栽培工場といった事業の説明も受け、会員から
は収支などに関する質問が相次いだ。
■ 小水力発電所
富山県は黒部ダム(立山町)をはじめ、出力
1000 キロワット以下の小水力発電で全国の約 1
割を占めており、“水力発電王国”と呼ばれる。
視察した「常西公園小水力発電所」は開放型下
汚染し、大正時代に下流域の住民が発症した。
特に出産経験のある女性が多く、骨折しやすく
なったり、背中が曲がったりした。
ただ公害病認定は 1968 年。発症から数十年も
たったことについて、米原秀治副館長は「当時
の集落は情報交流が乏しかったため、広く汚染
されていることを知らず、奇病だと思われてい
た。原因追及や裁判にも時間がかかった」とした。
現在も認定患者 5 人、要観察者 3 人が生存して
いる。会員は企業人として環境に関わることの
意義をかみしめている様子だった。
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■ 廃炉作業用多関節ロボ
向け多関節ロボやクローラ型除染ロボを開発し
スギノマシンの早月事業所(滑川市)は、南
ている。多関節ロボは燃料デブリの取り出しな
東に立山連峰を望む自然豊かな場所にある。高
どの廃炉作業に適用できるようにする計画。水
見邦英取締役は「もとは雑木林だった。杉野太
深 30 メートルに対応。7 軸のため作業範囲が広
加良社長は『やみくもに木を切ってはならない』
く、先端ツールを組み換えて多用途で使える。
との考えで、環境に配慮して建てられた」とす
■ 世界文化遺産
1995 年にユネスコの世界文化遺産に登録され
た五箇山(南砺市)の「合掌造り」は、雪深い
厳しい自然に対応した強固な造りだ。100 〜 200
年前に建てられたものが多く、古いものは 400 年
前といわれる。相倉集落には 23 棟、菅沼集落に
は 9 棟が現存しており、約 80 人が生活している。
住民に文化財を保護する苦労を聞くと「屋根
に葺(ふ)くカヤを山で大切に栽培し、15 年か
ら 20 年に 1 回、葺き替えしている。ただ若い人
る。生産のみならず、戦略製品を生み出す”頭
が都会に出てしまったため、住民が共同で作業
脳拠点“の位置づけで、新型の超高圧水発生装
する結(ゆい)が成り立たなくなった。このた
置「AquaServoPump」 を は じ め、 ロ ボ ッ ト や
め森林組合に任せている」とのことだった。貴
微粒化装置などを手がけている。
重な観光資源とはいえ、住民の郷土愛、環境を
ひときわ目立つのが高さ 60 メートルのテスト
守る熱意がなければ維持できないだけに、頭が
タワー。ここで東京電力福島第一原子力発電所
下がる。
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資源循環技術委員会
家電リサイクル-“商品から商品へ”宝探し
「PETEC」 資源循環技術委員会は3月17日、パナソニックの家電リサイクル拠点のパナソニック エ
コテクノロジーセンター(PETEC)を視察した。「商品から商品へ」を掲げ、循環型モ
ノづくりを推し進めている。使用済み家電製品に残されている資源は宝物。これを先進技
術で回収するトレジャーハンティング(宝探し)の現場は、驚くほど清潔だった。
■ 開かれた施設
PETEC は家電リサイクル法の対象である家
山積みの廃家電、騒音・粉じん・悪臭―。家
電 4 製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、
電リサイクルの現場と聞いた時、こうしたイメー
洗濯機・衣類乾燥機)を手がける。酒米「山田錦」
ジを持つ人は少なくないだろう。PETEC の工
で有名な兵庫県加東市に立地しており、眼前に
場は、この対極にある。「リサイクル工場だから
田園風景が広がる。このため排水を再利用する
こそ徹底的にきれいにする。環境を理解しても
循環型水処理装置などを整備。また粉じん、水質、
らえる開かれた施設にして役割を果たしたい」
。
騒音、振動、土壌の環境影響調査項目を定期的
北平吉浩社長はこう言い切る。
に測定し、地区の代表や行政の担当者らと組織
ベルトコンベヤーを流れる洗濯機の部品を手で取り外す
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する環境保全協議会で情報共有している。
現場に悪臭はなく、粉じんも舞っていない。
例えばエアコンの室外機の粉じんは除去装置で
■ 先進システム
取り除いた後、手解体時も作業者の真上から送
解体はローテクとハイテクが混在。コンベヤー
風してラインの脇に吸い込む。また騒音は防振
で運ばれる家電から手作業で部品を取り外す。
型設備を完備して軽減している。
本体を一括破砕して鉄、銅、アルミニウムを回
2001 年操業からこの間、累積 1200 万台を処
収後、残った樹脂片は 3 種混合樹脂同時選別装
理した。回収した資源量(1 台当たり重量比率
置で選別する。ポリプロピレン(PP)の浮沈選
換算)は、16 年 1 月末時点で鉄が自動車約 24
別機などの独自システムも力を発揮している。
万台分(20 万 304 トン)
、銅が奈良の大仏約 124
体分(3 万 1066 トン)
、アルミが航空機約 150
機分(1 万 7400 トン)にも上る。
■ 共感を得る
パナソニックは 13 年に新たに定めた環境行動
指針に「社会の人々から共感を得て、環境取り
組みを拡大します」との一文を盛り込んだ。品
質・環境本部の名倉誠品質・環境渉外総括は「事
エアコンはフロン回収後、室内外機を分解
薄型テレビはプリント基板などを回収
洗濯機のPPを低コストで回収する浮沈選別システム
冷蔵庫は断熱材発泡剤(フロン、シクロペンタン)ごとに破砕
冷蔵庫の断熱材であるウレタンを燃料化するシステム
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業部ごとに二酸化炭素(CO2)削減などの環境
工程や回収技術などを説明するボード、模型を
課題の解決に取り組んでいる。ただ、独りよが
随所に設置している。この 15 年間で累積見学者
りの活動ではダメ。この一文には顧客、サプラ
数は 15 万人を突破した。県内小中学校だけでは
イチェーン、そして地域社会の『共感』を得な
なく、122 カ国・地域から訪れた。
ければならないとの思いが込められている」と
地域の環境保全、5S 活動(整理・整頓・清掃・
説明する。PETEC はこの解の一つ。製品ごと
清潔・しつけ)
、先進技術開発、共感を得るため
に整流化している解体ラインは、見られること
の工夫を一つひとつ積み重ねて“開かれた施設”
を前提にしている。2 階の見学コースには解体
が進化している。
■ 3 種混合樹脂同時選別装置
脂と臭素の結合分子による振動特性から臭素含
使用済み家電を破砕し、金属を回収した後に
有樹脂を識別し、臭素濃度 170ppm 以下の樹脂
残る混合樹脂は従来、廃棄処分されていた。こ
片を分別回収する。
れを選別し、再生樹脂として活用できるように
さまざまな形状の樹脂片は飛行速度に応じて
したのが「近赤外線センサーによる 3 種混合樹
千差万別の空気抵抗を受ける。樹脂片の進行方
脂同時選別装置」だ。
樹脂の分子構造によって光の吸
収特性が異なることに着目して開
発 し た。 ポ リ プ ロ ピ レ ン(PP)、
ポリスチレン(PS)
、アクリロニト
リル・ブタジエン・スチレン(ABS)
の樹脂片の反射光を近赤外線セン
サーで測定し、種類を識別。送風
装置でベルトコンベヤーから飛行
させ、3 連のエアノズルでそれぞ
れの回収ボックスに吹き落とす。
選別純度 99% 以上を誇る。また樹
純度99%以上で混合樹脂を同時選別できる
遠赤外線センサーで樹脂片の種類を判別する
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向に飛行速度の気流を流して空気抵抗をなくし、
2013 年度は年間 820 トンを再生樹脂とし、冷蔵
飛行のバラつきを安定化する必要がある。この
庫の内部部品、エアコンのフィルター枠などに
ため送風装置のほか、整流板で樹脂片の自由落
使用した。これらが評価されて 15 年度の資源
下放物線に沿うように気流を制御する独自機構
循環技術・システム表彰で「経済産業大臣賞」
を採用している。
を受賞した。現在、パナソニック エコテクノ
選別後は近隣に立地するアプライアンス社の
ロジー関東(PETECK)
、中部エコテクノロジー
加東樹脂循環工場に輸送し、乾式洗浄、色彩選
(CETEC)にも導入している。16 年度は外販に
別、異物除去、劣化回復をしてペレット化する。
【総評】国が誇るべき工場
資源循環技術委員会委員長 吉田 敬史 氏
も乗り出す方針だ。
テレビが 3 分の 1 以上を占めていた。2011 年の
地上デジタル放送移行を背景とした家電エコポ
イント制度で、薄型テレビへの買い替えが進ん
PETEC は最先端の家電リサイクル工場であ
だ結果、10 年に大量のブラウン管テレビが一挙
るとともに、見学者を積極的に受け入れて環境
に廃棄され、台数が激減した。
学習の場を提供することも本務としている。こ
PETEC は 3 種類の混合樹脂を同時選別する
のため工場の外観も内部も極めてクリーンで、
システムをはじめ、多くの自社開発設備を導入
とてもリサイクル工場とは思えない。施設の清
している。わが国が誇るべきハイテク工場であ
潔さのみならず、従業員の方々も礼儀正しく実
り、鉄道や発電設備などと同様、今後、新興国
に気持ちがいい。
に技術移転するべきノウハウを蓄積している。
家電リサイクル工場の訪問は実に 10 年ぶりで
アジア諸国では廃電気電子機器による環境汚
あったが、PETEC ではブラウン管テレビの処
染や健康被害が深刻化している。こうした状況
理を移管していると聞いて時代の変化を実感し
を改善するためにも、技術開発へのさらなるチャ
た。昔は家電 4 品目の処理台数で、ブラウン管
レンジを期待したい。
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2015年度委員
座長
茅 陽一
地球環境産業技術研究機構理事長、東京大学名誉教授
学界委員
加藤 三郎
認定 NPO 法人環境文明 21 共同代表
中上 英俊
産業界委員
落合 信賢
鷲尾 修司
(株)住環境計画研究所会長
旭化成(株)環境安全部部長 理事
大阪ガス(株)CSR・環境部長
宮﨑 眞一
住友ゴム工業(株)安全環境管理部長兼 CSR 推進室主幹
中山寿美枝
電源開発(株)経営企画部審議役
実平 喜好
(株)東芝 理事 環境推進室長
根本 恵司
トヨタ自動車(株)環境部部長
鈴木 裕治
日本製紙(株)技術本部環境安全部長
堀ノ内 力
日本電気(株)品質推進本部長代理兼環境推進部長
篠原 弘道
日本電信電話(株)代表取締役副社長 研究企画部門長
名倉 誠
森永 啓詩
坂内 隆
菊地美佐子
パナソニック(株)環境・品質センター 環境・品質渉外室室長
(株)ブリヂストン 環境企画推進部長
本田技研工業(株)環境安全企画室室長
三井物産(株)環境・社会貢献部部長 本社委員
竹本 祐介
日刊工業新聞社 取締役本社編集局長
資源循環技術委員会委員長
吉田 敬史
(合)グリーンフューチャーズ 社長
(敬称略、順不同)
42 Green Journal
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CONTENTS
2014年度 活動報告紙面
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44 Green Journal
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以外の問題も含
め、限られたリ
ソースの効率的
配分が大事だろ
日本は国際交
う。
渉で できないこ
ことは一切ない。
したり、勧告したりする
だ。IPCCが結論を出
い。ここが非常に大事
策を推奨するものではな
するが、特定の目標と政
立案 に役立つ情報を提供
IPCC報告書は政策
いっている﹂などと表現
渉でも﹁IPCCがこう
組み条約締約国会議の交
た。その後の気候変動枠
出量の半減が目標となっ
初めて登場し、世界の排
わゆる﹁2度C目標﹂が
内に抑えようという、い
降の気温上昇を2度C以
う。であれば、大災害に
えると実現は困難だろ
望ましいが、コストを考
べきだと思う。2度Cが
ていたが、一歩先に行く
度C目標に焦点が当たっ
いて 言えば、今までは2
今後の温暖化対策につ
思う。
がやや強くなり過ぎたと
印象ではIPCCの影響
いが守られる合
emen t 強
ak
rong
けない。﹁St
避けなければい
を絞めることは
て後で自分の首
無理な約束をし
がどうであれ、
ではない。他国
とに固執すべき
2007年に第4次報
されるようになり、私の
よる損失の可能性が高ま
見だ。内容的に
意
﹂が私の意
agr e
we
告が 出た後、産業革命以
る。このリスクをどうマ
温暖化対策だけやってい
ともうひとつ、政治家は
重要なポイントだ。それ
ネジメントするかが一番
があるはずだ。目標は自
いう意味で﹁強い合意﹂
意﹂でも、確実に守ると
は厳しすぎない﹁弱い合
暖化対策に取り組む姿勢
能な 成長の一環として温
また、あくまで持続可
くべきだ。
﹁誓約と検証﹂方式で行
重要問題だ。
う。縦は気温、横は他の
スと横のバランス﹂だろ
の言葉だが﹁縦のバラン
を忘れてはいけない。私
いる。
任の差は認めないとして
と途上国の間に限った責
責任は認めるが、先進国
一つ、共通だが差異ある
評価 ﹂を担当し、長期的
私は6章﹁変移経路の
度が平均値となってお
00年に約800億 程
よって幅があるが、21
防止に効果がない。
策を強化しないと温暖化
れる。途上国を含めた対
常に大きな増加が見込ま
る。仮に2度C目標を
成可能という評価にな
00 でも2度Cは達
2100年の濃度が5
するCO 2排出量のベー
策をとらない場合に増加
評価した。まず温暖化対
をどう削減するかを
だろうと見ている。一
しても大きな増加はない
温暖化対策をとらないと
D諸国はほぼ横ばいで、
見込まれる。またOEC
た。にもかかわらず国際
つのシナリオしかなかっ
ながるカテゴリーには六
が、﹁2度C目標﹂につ
7の シナリオを評価した
第4次報告書では17
0年で見ると世界のG
た。 450 で205
対策コストも評価し
ではないか。
し柔軟に考えられるの
据え置いても、もう少
を目標としたコスト
なり豊富に評価できるよ
と1・7%となるので損
550
に目標を下げる
めるので経済的ロスだ。
いだせない。
えないと現実的な解を見
減は重要だが、柔軟に考
回収・貯蔵 をまったく
だが、CCS CO 2の
トを評価している。極端
が我々の認識だ。
する必要があるというの
る。その辺を精緻に研究
使えなければ 年に45
うになった。だが、CO
失を半減できる。排出削
対策技術も含めてコス
2濃度が低レベルで安定
料価格にも影響が出てく
れるが、生物多様性や食
やるという手段が考えら
なければ大規模に植林を
に跳ね上がる。CCSが
は先ほどの2・5倍近く
0
ら設定し、検証を行う
はいない。それからもう
ると本気で思っている人
も2度C以内に抑えられ
に触れていない。米国で
﹁いつから 基準年 ﹂
目 標 は﹁維持﹂するが
米国の提案では2度C
・出来ないことに固執しない。2℃目標棚上げ
(
)
提案
・
日本
の衡平性比較方法の研究
・各国の
・持続可能な成長との関係の明確化
内容提出)
国内(来年3月までに
・エネルギー計画の策定
・国際的に格好をつけない(王道を行く)
・技術開発と普及
・縦のバランス、横のバランス
るわけではない。温暖化
困難になった。世界の
CO 2排出量の増加は
加速されており、安定
化が現実的ではなくな
ったからだ。そこで濃
度や気温がオーバーシ
ュートするシナリオが
に温暖化防止をどう進
り、非常に大きな排出が
評価されたが、すると
CO
め、二酸化炭素
スラインを評価した。世
方、非OECD諸国は非
リカ全体のGDPが世
DPの3・4%ぐらい
界のGDPの2%を占
交渉では2度C目標が認
今回は1000を超え
のロスが生じる。アフ
るシ ナリオが集まり、か
知された。
界から収集したモデルに
2
化するシナリオは評価が
第5次報告書の
章
﹁人 間の安全保障﹂、
章﹁生活および貧困﹂は
以前にはなかった章だ。
温暖化が人間の暮らしや
安全保障に与えるリスク
への注目が集まり、これ
らの章ができた。政策決
定者向け要約 SPM
の構成も﹁複雑かつ変化
しつつある世界において
ぜいじゃく
観測されている影響、
脆 弱 性、適応﹂﹁将来
リスクと適応機会﹂﹁将
来リスクの管理とレジリ
エンスの構築﹂となって
いる。
温暖化問題をリスク管
要となっている。報告書
していくことが非常に重
理の枠組みで捉えて対応
や物が存在するかによ
生じる場所にどれだけ人
で決まる。暴露は危害が
象条件がどう変化するか
る。脆弱性は危害への感
では温暖化リスクは﹁危
害﹂﹁暴露﹂﹁脆弱性﹂
度や適応力だ。
と脆 弱性にあり、危害に
我々がどのような暴露
の三要素によって大き
よってどのような影響を
い、小さいが決まると強
調された。危害は気温、
認識し、直面するリスク
受けるのかをしっかりと
降水量といった気候・気
く必要がある。
リスクを管理してい
適応を組み合わせて
こともある。緩和と
にはバランスを失う
に見えても、長期的
的には安価な有効策
局所的もしくは短期
有効とはいえない。
策が、どの地域にも
ているすべての適応
界もある。想定され
た。だが適応には限
連に4章が割かれ
れる中で、適応の関
高まり知見も蓄積さ
だ。適応への関心が
回の報告書の特徴
に扱 われたことも今
﹁適応﹂が重点的
スクがより大きい。
口が増えており、リ
強まる上に低地に人
上昇で洪水の外力が
・メガデルタは海面
害はあるが、アジア
加。日本でも洪水被
への洪水被害の増
ンフラ、生計、住居
要リスクの一つはイ
リスクは地域によって
異なる。アジアの主
慎重に書かれた。
て推計するのが困難﹂と
世界経済への影響につい
Mには﹁気候変動による
念さ れている。だがSP
世界経済への影響も懸
る。
能性にも触れられてい
を間接的に増加させる可
た。また気候変動が紛争
端現象も取り上げられ
雨など人命が失われる極
影響が大きい。台風や豪
能漁獲量が減ると社会的
る人がいる中で、潜在可
た。漁業に生活を依存す
に比べて幅広に扱われ
洋生 態系への影響が従来
リスクとして今回、海
強調された。
を減らすことが大事だと
「緩和」と「適応」組み合わせ温暖化問題リスク管理
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国際社会に向けた発信(勇気ある発言)
・
厳
し
す
ぎ
な
い
「
弱
い
合
意
」
確
実
に
守
る
目
標
は
自
ら
設
定
・
検
証
を
I
P
C
C
第
5
次
報
告
書
第
2
作
業
部
会
報
告
書
の
概
要
国立環境研究所主任研究員高橋潔氏
日本はどうするべきか
I
P
C
C
第
5
次
報
告
書
と
今
後
の
国
際
交
渉
グリーンフォーラム研究会
地球環境産業技術研究機構主席研究員秋元圭吾氏
東京大学客員教授山口光恒氏
I
P
C
C
第
5
次
報
告
書
第
3
作
業
部
会
の
シ
ナ
リ
オ
・
技
術
・
政
策
の
評
価
非
O
E
C
D
諸
国
で
C
O
2
急
増
排
出
削
減
へ
精
緻
な
研
究
必
要
日刊工業新聞社が主宰する「グリーンフォーラム
」(茅陽一座長 地球環境産業技術研究機構〈R
ITE〉理事長)は6月 日、
年度の第1回事
例研究会を東京・本郷の東京大学伊藤国際学術研究
センターで開いた。総合テーマは「気候変動に関す
る政府間パネル(IPCC)報告書をめぐる課
題」。今春、発表されたIPCC第5次報告書の執
筆に加わった山口光恒東京大学客員教授、秋元圭吾
地球環境産業技術研究機構主席研究員、国立環境研
究所の高橋潔主任研究員の3氏が講演し、柔軟な目
標設定、日本の温暖化交渉戦略、関心が高まる温暖
化リスクなどについて幅広く議論した。
(IPCC)報告書をめぐる課題
水曜日
2014年 平成26年 7月23日
【特別企画】
)
(
Green Journal 45
拠点で調査
この指標は保護したり、
標を決める。
もらってツマグロヒョウモ
芝テリーのスミレをわけて
いうチョウが産卵する。東
慣れない言葉だろうと思う 工場は県の絶滅危惧種であ
生息域に戻す活動だ。聞き 場所に戻した。姫路半導体
間が保護して増やし、元の 株まで増やし、咲いていた
するかもしれない生物を人 植して2年がかりで100
に記されている。
匹を工場の池で749匹
が、生物多様性条約第9条 る淡水魚のカワバタモロコ
ンの呼び込みに成功した工
■希少種を増殖
系ネットワーク構築につな 場が増えている。
げている。
チョウのネットワークづ
害が 絶えない多年草のハマ た。豊前東芝エレクトロニ
カボチャを工場で栽培して
トガルから伝来した三毛門
クスは約450年前にポル
東芝ライテックは盗掘被 まで増殖し、河川に放流し
増や したりする生物。その
カンゾウ 株を工場内に移
二つ目の生息域外保全
本来の生息地では絶滅
る。当社には家庭でユズを は、 く り の事例を二つ紹介す
いる。
育てている従業員が多い。
上で、保護や増殖の成果を
ユズの葉につく芋虫は、ナ
象の 拠点のすべての調査
効果測定する。 年度は対
いいのか、今でも日々、悩 り、工場とその周囲の生態 が完了し、指標選定も %
ミアゲハチョウの幼虫だ。
が望ましいと思う。実際に
企業は自治体とどう関わっ
ているのか、また地域住民
にどのように活動が伝わっ
ているのか。
が確 保されているので第三
者による盗掘、乱獲を防止
できる。天敵や侵略的外来
種から攻撃を受けるリスク
が小さく、希少種が安心し
棄物を排出しているが、一
二酸化炭素 CO
果が出ている。
ると考えており、実際に成
方、動植物の保護区域にな
や廃
通常であれば駆除するが、
2
て生息できる場だ。工場は
芋虫を育ててほしいとお願
場にはユズ畑があり、家庭
いしている。いくつかの工
全拠点で効果測定まで到達
から芋虫を持ってきてもら
■工場に産卵場
したい。
各工場の活動には生態系
って畑にはなしている。す
めた。遠くの山に出かけな
で身近な活動を意識して始
築、 生息域外保全とも手軽
生態系ネットワークの構
ネッ トワークの構築と希少
ると工場、家庭、周辺の森
い。周辺住民と協力して活
くても職場で活動できる。
や川、公園を結ぶチョウの
またグループ会社である
コストもあまりかからな
ネットワークができる。
東芝 テリーの工場を調べて
る。生態系ネットワークと
できる空間が連続する生き
みたら、スミレやタチツボ
は生物が採食や休憩、繁殖
物の回廊だ。例えば川と森
スミレといった在来植物の
生物の生息域外保全があ
の間に工場があると、工場
生息を確認できた。スミレ
にも貢献したい。
の生物多様性保全の主流化
動することも多く、地域で
る。このため工場に必ず生
物の産卵場をつくり、生態 にはツマグロヒョウモンと
で生物の移動が分断され
重要になる。長期間の成果
候変動を意識しなくても、
は限界がある。生態系や気
る。個人の意識に頼る社会
社会的意義の大きい手段を
の把握にITで貢献でき
温暖化であれ
考えるのが重要だろう。
茅座長
当たり前のように対策を講
人でもでき
ば、 節電など個
じられている仕組みが求め
産業界委員 私の会社で
年前から生物 多様性保
も 企業のソリューションだ。
られる。これをできるのが
る対策がある。生物多様性
炭湿地の保全も大切だ。生
たり 、複雑な ので、やるべ
に個人でできる対策はない
態系を再生し、ふたたび炭
きことは一つではない。ま
問題は多岐にわ
稲垣氏 獣害の課題を抱
るべきだろう。行政がプラ える 自治体に 、センサーを
ず知ることが重要だ。また
した製品ではなく、生物多 は地域住民との連携などに
性を脅かすような作り方を なかなか難しいが、担当者
誰もが消費者だ。生物多様 全活動に取り組んでいる。
鷲谷氏
画研 究所会長 生物多様性 ットフォームをつくり、い 活用して鳥獣の接近や侵入
素がたまるようにすること
のか。
保全は自治体など行政がや ろいろな方が参加する形態 を防ぐ情報通信技術 IC
は、緩和策にも生物多様性
中上英俊委員 住環境計
T ソリューションを提案
様性に配慮した製品を選ん 一 生 懸 命 に 取 り 組 ん で い
NEC、東芝
保全にも有効となる。
のように
とも 食品会社 で購入する。こうしたこと る。こうした活動は地域住
加藤委員
したことがある。興味は示
生物資源を加工する事業を
してもらえるが、なかなか
ず、生物多様性保全に取り
していないにもかかわら
生物多様性基本
法に おいて自 治体は生物多 が多い。また東芝では地域 はもちろん重大だが、生物
を可能にするため、製品に 民との共生や地域の環境保
藤枝氏
様性地域戦略を策定する努 から工場見学を受け入れた 多様性の損失も非常に深刻
消費者が選ぶ基準があれば 全にとっては価値がある。
電機や自動車のように生物
組んでいる。この2社の活
いいと思う。
動をどう評価するか。
苦労しながらも
力義務がある。しかし、ま 際、生物多様性保全の活動 になってきた。気候変動と
善に 役立った 行動はあるの は、大気汚染の防止やCO
鷲谷氏
だ策定していない自治体が も見てもらっている。以前 生物多様性との関係性をど
取り 組んでい ることがよく
か。
希少種の保全に 味で、生物多様性保全に貢
茅座長
我々にとって最
献しているとしか言いよう
からない のは、なぜ生
に指定されている5種類の もわ ン社では同国の絶滅危惧種
ほ か に も あ
役 立 った例が
藤枝氏
力している企業が増えてい
2排出削減といった広い意
生物多様性の改 資 源 を 使 っ て い な い 企 業
わかった。確かに本業で何
策として化石燃料の使用を
る。すぐに利益を出そうと
茅座長
とか保全に貢献しようと努
い。住民の意識啓発に貢献
減らすのはもちろんだが、
考えず、ニーズを把握し、 る。東芝情報機器フィリピ がない面もある。
鷲谷氏 気候変動はシナ
滅危惧種になっていること
う。 温暖化を抑える 緩和
できている。
有機炭素を蓄積している泥
加藤三郎委員 環境文明
共 同代表 気候変動問題
木を保護し、サプライヤー 物多様性を考える必要があ
稲垣氏
る。
短期間で結果は ろなことをしている友人が
えてみれば、人間もいろい
や 小 学 校 に 実 を 配 っ て い るかということだろう。考
出な いだろう が、変化をし たくさんいた方がいい。そ
った。
意見をうかがえて有意義だ
この問題について貴重なご
理という気もする。本日は
は単純かもしれないが、真
種類がいた方がいい。これ
っかりと監視する仕組みが う考えると、生物も多くの
環
境
文
明
2
1
共
同
代
表
加
藤
三
郎
氏
採用には至らない。
各工場はセキュリティー
みながら取り組んでいる。 系を自分たちで調査し、指 の拠点で終えた。 年度に
私は生物多様性を担当し
第五次環境アクションプ
て3 年ぐらいになる。当初 ラ ン 2 0 1 2 年 ︱ 年
度 の活動の一つとして国
の整備に取り組んで
た。企業として何をしたら いる。三つのステップがあ
生物学の専門家もいなかっ 空間
メーカーのため、生態学や でビオトープ 生物の生息
からなかった。東芝は電機 内外の主な製造拠点すべて
は生物多様性自体がよくわ
住
環
境
計
画
研
究
所
会
長
中
上
英
俊
氏
が重要だろ
を知って驚く方も少なくな ジー 相乗効果
あり、相談窓口もないこと は地域に多くいた生物が絶 う考えているのか。
グ
リ
ー
ン
フ
ォ
ー
ラ
ム
2
1
座
長
茅
陽
一
氏
16/06/27 14:24
GJ2015.indd 46
東
芝
グ
ル
ー
プ
の
生
物
多
様
性
保
全
活
動
東
芝
環
境
推
進
室
主
務
藤
枝
一
也
氏
工
場
で
動
植
物
保
護
身
近
な
活
動
を
意
識
■
生物多様性の保全と再生
意
見
交
換
)
(
【特別企画】
水曜日
2014年 平成26年 11月19日
46 Green Journal
RITE 理事長 は 月 日、2014年度
複雑なケースが多く、不確
実性が高い。行動と結果を
科学的に検証することが重
化 、窒素循環、生物多様
題だろう。
消えてしまうことが最も問
生物多様性の損失によって
利用価値が大きいだけに、
れらの情報は人類にとって
細構造は、フクロウの羽の には、食糧、燃料、薬など る の協議会が活動してい
日本では自然再生推進法
を発明した。新幹線の騒音 いう言葉で説明されるよう
、多様な主体が参加す
を抑えるパンタグラフの微 になった。生態系サービス の下 空気の渦をあまり大きくし の我々に資源を供給してく る。例えば久保川イーハー
協議会が活動
性の損失が地球の限界を超
フット・プリント﹂。地球 り、すでに気候変動 温暖
名なのが﹁エコロジカル・
えていると指摘した。
生物の機能を採り入れた
■
の表面積と私たちの活動を
要になる。
面積で比較する指標で、人
窒素循環の限界とは、肥
ない微細構造にヒントを得 れるサービス、水の浄化な トーブ自然再生協議会は寺
リエンタールはコウノトリ
また最近、生物多様性の
が飛ぶ姿を見てグライダー 重要 性は生態系サービスと
物多様性の保全と再生﹂。東京大学の鷲谷いづみ
類の活動は地球を ︱ %
拠から 限界 を評価してお
が開催中だったこともあり、活発に
教授、NECと東芝の生物多様性推進担当者が講
超過している。世界中の人
い。ドイツのオットー・リ てつくられた。
生 物 模倣技術の事例は多
この協議会の活動は民間
わっている。
的な充足を与えてくれる文 岩手県一関市、環境省が関
これらのサービスは生態
化的サービスがある。
葬﹂という新しい埋葬法に
低木を墓標とした﹁樹木
のボトムアップ型で、
系の 働き全体が健全であっ から てこそ人間が利用できる。
組んでいる。少し荒れた土
よる里山の自然再生に取り
生物多様性の自然再生への
地を森林や湿地に戻しなが
ら、その自然によくなじん
取り組みは、対象が多様で
だ 墓地 にする。墓地は不
り立つ。墓地の契約者も自
足しており、経済的にも成
企業にとっても多様な主
然再生事業に参加できる。
ることを指す。生物多様性
は、現在、地球上の歴史で
はすべての環境劣化の影響
標準とされる値の1000
体が 協働する活動への参加
て進化してきた。この適応
環境や場所の違いに適応し
史を 積み重ね、その時々の
地球の生命は 億年の歴
るのが良いだろう。
外来種の駆除から始めてみ
健康にも良い。まず侵略的
とが多いので、心と身体の
の中で皆で身体を動かすこ
い。自然再生の活動は自然
ため、善意が無駄にならな
値が認められた取り組みの
う。協働の活動は社会的価
倍になっており、大量絶滅
にはメリットがあると思
進化はDNAに刻まれてお
が、分光スペクトルデータ
からでは同じ緑に見える
り、生物は適応した形、生
定は難しい。その課題解決
クトルを利用した森林保全
違い を分析する 分光スペ
は、人による調査で 年か
をまとめた全国の植生図
見分けられる。樹種の分布
を解析すると樹種の違いを
にITを使える。
りプロジェクト﹂では、復 を保全する﹂といった定量
モニタリングがある。上空
例えば 反射光の波長の
合意された﹁愛知目標﹂に
田前後の生き物の変化を定 的な目標があるが、その測
少なくとも %、沿岸域お
量的に評価しているが、復
よび海域の少なくとも %
配慮する視点を入れる必要 献活動を推進しており、年
田で生き物が増えて生態系
ITによる森林保全モニタ
ら 年がかりで作成する。
間延べ約 万人が何らかの
性﹂と﹁資源循環・省資
度は植林や植樹など生物多
活動に参加している。 年
がある。
当社の事業活動と生物多
■ 従業員の理解
源﹂の視点も加えて総合的
な環境目標を目指した。
どの調節的サービス、精神 院が中心となり、行政から
意見交換。﹁本業で保全に貢献したいが、まだ市
が北米と同じ生活をすると 料製 造のために生物が利用
る。
地球が6個ぐらい必要にな できる窒素が増え続けて水
学の基礎と応用、政策まで
トロ ームら欧米の研究者は
年にヨハン・ロックス
1990年代から生態系
研究している。
論文﹁地球の限界﹂を発表
私は﹁保全生態学﹂とい
う分 野で生物多様性の保全 と生 物多様性に関してさま
した。さまざまな客観的根
■ 保全生態学
から自然再生に関わる生態 ざまな評価が出ている。有
■ 影響 再認識
NECは2010年に
﹁N ECグループ環境経営
うため、東京・三田の本社
画像データを解析し、木が
実験している。衛星からの
インドネシアの森林で実証
と環境省の事業に応募し、
きる 。三菱総合研究所など
森林価値も 見える化 で
リングであれば、短期間で
従業員が休耕田を復田
が豊かになっている。生物
実際の活動は二つに重点
様性 との関連性を調べるこ
いている。まず従業員
とから始めた。資源調達段 を置 様性保全につながる活動に
階から廃棄段階までのサプ の理解を深め、生物多様性
し、 田植えなどの自然体験 で自然観察会も開いた。敷
行動計画2017/203
0﹂を策定した。 年度を
ライチェーン全体を通じ、 に配慮した行動を促してい
を行う﹁NEC田んぼづく 地内には数百本の樹木があ
調査できるようになる。
ターゲットとした前計画で
地球温暖化だけではなく、 る。グループ全体で社会貢
多様性を身近に感じてもら
排
生態系にも影響を与えてい
8417人が参加した。
出を 実質ゼロ にする目標
は二酸化炭素 CO
ることを再認識した。本社
どれだけの量あるかを把握
貢献できるソリューション
る。こうした生物多様性に
定化を評価しようとしてい
して森林によるCO 2の固
を増やしていきたい。
見直した。準絶滅危惧種が
いることがわかり、運用を
環境では気候変動がもたら
価値創造を目指している。
会課題の解決による新たな
ョン 事業﹂に力を入れ、社
当社は﹁社会ソリューシ
る。有識者の説明で、野鳥
生えていることもわかり、
す影響に備える﹁適応﹂策
あり、ITは生態系保全に
で世の中を良くすることで
事業はITソリューション
を通 じた貢献だ。NECの
もう一つ重要なのが事業
保全に貢献したい。
じ、生態系や生物多様性の
会ソリューション事業を通
の損失が進んでいるが、社
洋生態系や生態系サービス
きる。気候変動によって海
の提供で社会価値を創出で
も貢献できる。COP で
■ 事業通じ貢献
保護を始めた。
を、実がつく前に剪定して
せんてい
のエサとなる実がなる木
新
価
値
創
造
事
業
に
生
態
系
配
慮
の
視
点
2
なく、﹁生態系・生物多様
や事業所の土地利用も生物
は﹁陸域および内陸水域の
理、構造を持っている。こ
■ 生物模倣技術
時代に入っている。
い。絶滅率という指標で
を受けるので損失が大き
富栄養化の問題が起きてい
域の生態系に影響を及ぼす
自
然
再
生
の
し
く
み
科
学
的
検
証
が
重
要
場がない﹂といった課題も共有した。
COP
演した。国連の生物多様性条約第 回締約国会議
の第2回事例研究会を開いた。総合テーマは﹁生
生
物
多
様
性
の
保
全
と
自
然
再
生
∼
企
業
の
多
様
な
関
わ
り
方
だったが、CO 2だけでは
多様性と関連している。ま
る。設計段階から生態系に
への影響の大きさも決ま
た製品は設計段階で生態系
NEC環境推進部エキスパート稲垣孝一氏
16/06/27 14:24
GJ2015.indd 47
日刊工業新聞社が主宰する﹁グリーンフォーラ
ム ﹂ 茅陽一座長 地球環境産業技術研究機構
事業戦略との連携模索 グリーンフォーラム21事例研究会
東
京
大
学
農
学
生
命
科
学
研
究
科
教
授
鷲
谷
い
づ
み
氏
N
E
C
グ
ル
ー
プ
に
お
け
る
生
物
多
様
性
へ
の
取
り
組
み
水曜日
2014年 平成26年 11月19日
【特別企画】
)
(
Green Journal 47
がある。この場合の根拠法 ている原因の一つは、リス 面からビジネスを考える経
は﹁景品表示法﹂だが、環 クにはマイナスの影響とプ 営者は少ないと思う。むし
境法のジャンルではないた ラスの影響があると定義さ ろビジネスチャンスという
ISO14001の規格
クと見なしてマネジメント
すでに環境側面を環境リス
格で、多くの取得企業では
面を管理しなさいという規
ら考えよう﹂ではなく、戦
握できると思う。﹁ゼロか
頭指揮するべきリスクを把
すことにより、経営者が陣
境側面を全社レベルで見直
唆されている。それに基づ
解、外部・内部の課題と示 で、課題を漏れなく見つけ
関係者のニーズと期待の理
側面、法令順守義務、利害
S ﹂﹁弱み W ﹂﹁機会
る。また組織の﹁強み
S ﹂﹁技術 T ﹂の視点
P ﹂﹁経済 E ﹂﹁社会
どうだろうか。
MS には戦略的思考が求
リスクを洗い出してみては マネジメントシステム E
になる。リスクの定義から
のかが、戦略的アプローチ
る材料について著しい環境 い る 。 P E S T は ﹁ 政 治 のような視点から全社的な ンスのことだ。今後、環境 スク
00 1では、リスクを決め クを洗い出す研修を開いて 多かっただろうと思う。こ きる。機会はビジネスチャ 害する脅威 マイナスのリ
さてISO/DIS14 内部の課題を整理してリス 01で扱っていない企業が 脅威、後者は機会と表現で すのか、そのチャンスを阻
め、これまでISO140 れている点だろう。前者は プラスのリスクをどう伸ば
改正 では リスク がテーマ
してきたため、﹁いまさら
略視点から﹁既存事業活動
き、PEST分析で外部・
点でリスクを考え、戦略的
見直し、あらためて全社視
ではなく、仕事のやり方を
規定を増やすといったこと
規格改正では事業プロセ
スと EMSの要求事項との
統合も大きなテーマだ。改
正に合わせてマニュアルや
に経営の質を高めることが
﹁本業のリスクを把握でき
本業 との乖離を防止する点
ースでは、消費者庁から指
と誤認してしまうようなケ
消費者が 環境にやさしい
う。
考えるいいチャンスだと思
えているか﹂をあらためて
業の中でEMSが有効に使
期待に応えているか﹂﹁本
ているか﹂﹁利害関係者の
かい り
て浮 き彫りになった一例に
がある。経営者を交えて
改正の背景にはEMSと
重要になる。
﹁広告表現﹂がある。環境
摘を受け、最悪の場合は排
ばいいし、応じられないな
画研 究所会長 経営戦略レ
中上英俊委員 住環境計
だけに、﹁お安くします
っては市場が縮小している
少している。認証機関にと
をどう質問するべきかを検
産業界委員 自らリスク 討している。経営者にはマ
険だ。
ックさせないと、世界から る。それは日本にとって危 ビジネスチャンス 機会
立性を担保して厳しくチェ ね﹂みたいな声も漏れてく タビューにおいてリスクや
る。認証機関の中立性、独 ﹁日本の審査はお手盛りだ 関では審査時の経営者イン
除命令を受けるような脅威
は過剰な環境表現もある。
配慮商品の広告宣伝の中に
これらの分析で脅威とし
■ 仕事の見直し
O ﹂﹁脅威 T ﹂からS
のため操業レベルから経営
戦略レベルにバージョンア
ップする必要があるとの声
が強まっていた。
■ 広告表現
WOT分析を活用して環境
どんどん悪化している。こ
戦略を決めている。
機会を考えてほしい。
事業活動の発想から脅威と
れにくい。そのため通常の
考え始めると社内で理解さ
をいかに封じ込める
の一つになっている。これ
リスクって何?﹂という声
に潜むリスクを洗い出す﹂
のよ うなインプットとアウ
トプットがあるのかを整理
して把握するのが一般的
だ。ただ盲点もある。この
方式だと細やかで抜け落ち
がなくても、経営戦略上の
大きな課題を見落とす可能
性がある。従来の著しい環
大気や水質汚染の防止とい
加藤三郎委員 環境文明
共 同代表 ISOの取得
を厳しくチェックするきめ 証 機 関 は 四 十 数 機 関 も あ
らば理由を説明しろとして
ベルの取り組みをしっかり
グ
リ
ー
ン
フ
ォ
ー
ラ
ム
2
1
座
長
茅
陽
一
氏
社会が求めるステークホル
は思 っていな い。改正には
充 足していると
ダーのニーズをきちんとく
古田氏
る。経営資源が潤沢で対応
み取るプロセスが盛り込ま
りと認識し、﹁キヤノンが
できる会社もあれば、赤字
果たすべき役割は何か﹂
れている。重要性をしっか
待やニーズ、脅威や機会を
を、あらためて洗い出す必
のため対応できない会社も
見る目を養っておくこと
茅座長
要がある。
ある。ただ、日ごろから組
で、このままでいいのかと
改正についてい
疑問を呈する人が社内に一
の形のEMSをきちんと運
が、ISOは各企業が一定
う か が っ た
ろ い ろと話を
たかは問われない。まず受
うな 方法でリ スクを把握し
中川氏 審査ではどのよ
ることを期待したい。
取得しようという風潮にな
した状況が改善し、認証を
には驚いたが、改正でこう
認証取得数が減っているの
に重要だと考える。国内の
営していくことを保証する
審企業は自社のリスクを明
という意味で、やはり非常
確にしていることが求めら
WOT分析で明確化するの
れる。一方、多くの審査機
がポイントになる。
リス クをPE ST分析やS
茅座長 不確定性の高い
った結果になると思う。
人でも二人でも増えると違
織の状況や利害関係者の期
しないことも許容されてい
リスクを認識したまま何も ですか。
影響を緩和する、もしくは なく対応できるという認識
定だ。リスクを回避する、 特別に何かを追加すること
は最終的に経営者の意思決 いる。規格が改正されても
で認 識し、何 を優先するか 略との統合にも取り組んで
ょうか。
加藤委員 キヤノンはE
の先端企業 で、事業戦
吉田氏 リスクをどこま MS な考え方をしたらいいでし るようだ。
と思うのですが、どのよう 確認しやすいとの意見もあ
することにはなっていない 質問したほうが、戦略面を
と、想定外のリスクを担保 り、ビジネスチャンスから
を特 定して運用す る方法だ イナスのリスクから聞くよ
規格の形骸化防ぐ順守義務厳しくチェック
■ 盲点も
までは事業が環境に大きな
というイメージだ。
企業には﹁なぜ
リスクをわかりにくくし められるが、最初に脅威の
もあるだろう。
茅座長
か い り
えて認証を継続する形骸化 が、法規制と整合性をとら
持ちがあると思う。改正に は限られるし、形だけを整 は企業が任意で決めている
至った経緯は。
吉田氏 環境マネジメン や本業との乖離などの問題 なくてはだめだという議論
EMS は国 が顕在化していた。従来の になりつつあるのか、特に
トシ ステム 内外とも生産拠点の操業レ 延長上では規格も認証制度 欧州はどう認識しているの
欧州でも自主的
いとのスタンスは変わって
細かい要求事項が盛り込ま る。ただ世界では認証取得
な取 り組みを ベースにした
吉田氏
ベルでの環境負荷の低減、 も将来がない。一方、環境 かを教えてほしい。
つまり省エネ、省資源化、 は気候変動をはじめとして
いない。ただし、枠組みを
れた。
いる。経営者の言行一致を
よ﹂といった認証機関がシ
化することを懸念してい
と機能させるには審査の問
現在、国内の認
担保する仕組みが機能して
吉田氏
ェアを奪って審査の質が劣
り、改正では法令順守など
い な い こ と も わ か っ て お 題も浮上してきそうだ。
数が伸びる一方、日本は減
与えて、それに応じられれ
住
環
境
計
画
研
究
所
会
長
中
上
英
俊
氏
環
境
文
明
2
1
共
同
代
表
加
藤
三
郎
氏
改正 するのか ﹂といった気 った取り組みだった。成果
P
E
S
T
・
S
W
O
T
分
析
経
営
課
題
を
再
整
理
環境側面は部門ごとにど
影響を与える著しい環境側
ISO14001規格改正
日本能率協会 ISO研修事業部長中川優氏
16/06/27 14:24
GJ2015.indd 48
企
業
の
規
格
改
正
対
応
|
戦
略
視
点
で
リ
ス
ク
を
つ
か
む
|
意
見
交
換
)
(
【特別企画】
木曜日
2014年 平成26年 12月25日
48 Green Journal
日刊工業新聞社が主宰する﹁グリーンフォーラム
﹂ 茅陽一座長 地球環境産業技術研究機構 R
戦略的EMSへの転換が重
要になる。EMS固有の実
証要求事項としてこれまで
機会に関するリスクに取り
織の状況に起因する脅威と
と期待を理解した上で、組
出し、利害関係者のニーズ
には 外部・内部の課題を抽
EMSの目的を達成する
た。
といった趣旨が盛り込まれ
機会は逃さないようにする
対応する、決定的に重要な
め、許容できない脅威には
められる。優先順位を決
機会をどうとらえるかが求
ならない。
った説明責任を果たさねば
戦略で、どう挑むのかとい
経営者は自らがどのような
形骸化を避けるためにも、
ト﹂が盛られた。EMSの
ップおよびコミットメン
にはなかった﹁リーダーシ
組む必要がある。実務的に
とそ の相互作用という考え
また改正規格はプロセス
■ プロセス可視化
方で形成している。プロセ
このため、経営者主導の
スとはインプットをアウト
は脅威をどう認識するか、
ネージする1方向がテーマ
プットに変換するための運
ている。従来のEMSは企
だったが、改正案ではもう
用方法とその評価指標を決
パスの山上会館で開かれ
1方向である環境の変化が
め、計画達成のための物的
し、投票の結果、 %の加
とまり、7月ごろに改正規
企業に与える影響も認識す
全面改正が決まった。 年
格が発行される見込みだ。
ることを出発点にしたのが
業が環境に与える影響をマ
年版は改正規格発行から
ポイントの一つになってい
る。この会合で最終版がま
3年間が経過した時点で廃
盟国の賛同を得て承認され
止されるため、この間が移
に作業会合が始まり、 年
た。
行期間になる。
がいぜん
ることを求めており、固有 生まれるタイミングという
者のニーズと期待を理解す すのに適した特定の状況が
して組織の状況や利害関係 との兆し、機会は何かをな
画・管理プロセス、製品や
スや内部統制などの経営企
スを大別すると、ガバナン
いないことだ。事業プロセ
題は必ずしも可視化されて
セス への統合があるが、問
この延長線上に事業プロ
待されている。
て蓋然性を高めることが期
要求事項として﹁脅威と機 ことだ。そして双方の不確
可視化し、EMSの要求事
援プロセスがある。これを
ロセス、経理などの業務支
サービスを実現する基幹プ
会に関連するリスクへの取 かさの影響がリスクといえ
企業は社会の中にあり、 側面 、つまり環境に大きい
項をどこに、どのように織
リスク源には著しい環境
社 会 は 環 境 の 中 に あ る た 影響を与えるような組織の
り込むかを明確化すること
る﹂などと問われることが したいという思いがある。
め、企業の活動は必ず社会 活動・製品・サービスのほ
増えている。CFPの意義
が求められている。
がなく、研究者がデータを
企 業 に これはCO 2ゼロです
月末時点で 製品が認定 た 製 品 を 展 開 し て い る 。単
め、 CO 2をオフセットし
の評価だったが、何とか事
いる。当初、LCAは結果
各段階でLCAを評価して
現 在 は C F P を 推 し 進 発設計、量産試作、生産の
掲げており、構想設計、開
2
ライフサイクルCO
り、第三者検証の仕組みが りの イクルCO 2にするか﹂な
担保だ。
整ったことによる信頼性の を年率3%改善する目標を
キヤノンは製品1台当た
■ 各製品に目標値
かき集めて計算した。ここ
と環境に影響を与える。一 か、法令や組織が決めたこ
ている。
間 では﹁カーボンフット と言うだけではなく、CO 業プロセスで使えるように
に応じた責任体制で運営し 品はどのぐらいのライフサ さ れ た 。 B ツ ー B
P宣言認定を取得し、 年
月に 複合機で初めてのCF
一方、CFPでは 年
境統括センターがグループ ノ ウ ハ ウ を 積 み 上 げ て き
2
削減などの
製品事業本部ごとの二酸化
の中期環境目標を立案し、 た。
認識し、それ以来、計算の あ る こ と 、 国 際 的 な 広 が
はCO 2が代表的な指標で
方、温暖化などの環境の変 とに対する順守義務などが
の使用、回収・リサイクル
現在の統合認証範囲はキ 流、販売・サービス、顧客
企業はすべての事業領域に 統合認証にカジを切った。 製品設計、調達、製造、物
おいて環境配慮が求められ
EMS でグローバルに
ことを指す。これらによっ
資源、人的資源を供給する
脅威と機会の定義はない
■ 優先順位
る。
トインターナショナルスタ
最終会合は 年2月2︱
に東京大学本郷キャン
ンダード DIS を回付 7日 年にマイナー改訂、 年に
■ グローバル体制
キヤノンは環境への取り ている。エネルギーを含め ヤノ ンおよび世界 カ国・
炭素 CO
織、生産組織、販売組織が 目標を議論する。この目標
組み を﹁資源生産性の最大 て有限な資源を最大活用す 地域のグループ会社127 の 各 段 階 で 、 製 品 事 業 組
化﹂ととらえている。低炭 ることが、企業が果たすべ 社738拠点で、一つの環
素社会、循環型社会、自然 き役割だ。このため、環境 境 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム 連携している。組織が役割 を各製品事業本部が﹁新製
共生型社会の実現に向け、 ビジョンとして製品ライフ
サイクルにおける高機能化 運営する体制を構築してい
している。実績が積み
2をきちんと盛り込
の目標値の達成を目指
を組み合わせて各製品
果などを予測し、これ
実用化、CO 2削減効
を削減する要素技術の
の指 標であるTEC値
上がり、環境配慮設
開発陣は省エネ性能
したいと検討した。
計、ライフサイクルC
2ゼロの価値を顧客と享受
計段階から評価して環境配
む試みが実現してき
O
プリントはどうなってい
慮製品を生み出し、顧客に
事業戦略との統合では環 どと検討して設定する。設
届けるサイクルを回してい
と環境負荷の最小化を同時 る。すなわち、研究開発、
る。
2を既存機種比
例えばライフサイク
た。
イフサイクル分析の発表に
リッジの炭酸ガス排出量ラ
みは、 年にトナーカート
紹介する。LCAの取り組
リント CFP について
と考えている。
し、貢献できればいい
境への取り組みが浸透
より、全社を挙げた環
リーが生まれることに
うしたサクセスストー
合機も製品化した。こ
から約 %削減した複
ルC O
さかのぼる。当時はデータ
CA とカーボンフットプ
サイ クルアセスメント L
続いてキヤノンのライフ
■ ノウハウ蓄積
ラ
イ
フ
サ
イ
ク
ル
C
O
2
設
計
段
階
か
ら
評
価
に達成することを目指して
いる。
当初、ISO14001
は事 業所ごとの個別認証で
スタートしたが、グループ
の統一性や考え方をより確
実に、効率的にマネジメン
トするため、2005年に
で初めてLCAの重要性を
化は経営戦略に影響を与え ある。
る。
り組み﹂などが盛られてい る。
成されている。共通要素と が、 脅威は好ましくないこ
MS の固有要求事項で構
シス テムの共通要素と環境
改正規格はマネジメント
マネジメントシステム E
96 年に初版を発行し、
ISO14001は19 の第8回作業会合でドラフ
■ 2月に最終版
スとの統合などについて活発に議論した。
正のポイントとなるリスクのとらえ方、事業プロセ
フューチャーズ社長の吉田敬史氏らが講演した。改
国内委員会委員長兼日本代表委員を務めるグリーン
01規格改正﹂。ISO/TC207/SC1対応
事例研究会を開いた。総合テーマは﹁ISO140
ITE 理事長 は 月2日に2014年度第3回
事業戦略との統合を グリーンフォーラム21事例研究会
キヤノン環境統括センター所長古田清人氏
16/06/27 14:24
GJ2015.indd 49
I
S
O
1
4
0
0
1
改
正
と
そ
の
意
義
戦
略
的
E
M
S
へ
の
転
換
経
営
者
に
説
明
責
任
グ
リ
ー
ン
フ
ュ
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チ
ャ
ー
ズ
社
長
吉
田
敬
史
氏
キ
ヤ
ノ
ン
に
お
け
る
I
S
O
1
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0
1
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C
A
木曜日
2014年 平成26年 12月25日
【特別企画】
)
(
Green Journal 49
い水準ではありませんでし
率 %の場合でも ︱ %
%、再生可能エネルギー比
試算すると、原子力比率
年の 年比GHG排出量を
用いられたシナリオで、
ネルギー見通し2014で
際エネルギー機関の世界エ
減が限度と見ています。国
シナリオでは4次評価報告 %の確率で達成できます。
推計値は合意できず、長期
書では1・5度︱4・5度 感度1・5度︱4・5度C 例えば最良推定値2・5度
しましたが、5次評価報告 ています。ですが平衡気候 が多くあります。しかし、
度︱4・5度C、3度Cに 度C目標達成確率 %とし
次評価報告書でそれぞれ2
計値2・5度Cでした。4
れます。
合は2000
Cに戻しました。ただ最良 に準拠させると、同500 C、達成確率 %とした場
しかないと説明されること
排出許容量が1000
で %、550 でも
の場合に2
た。インドやロシアなども
5次評価報告書ではCO には 年以降のCO 2累積
があります。ただ万能な 指 原 単 位 は 英 国 が 1 番 、 日 本
よかったですが、GDPが
2濃 度450
標はなく、指標には一長 一 は 4 番 で し た 。 た だ 産 業 構
厳しいことを言っている
とすれば、約束草
2度C目標を450 に
よって達成しよう
変化率では過去 年間のド
ます。CO 2排出原単位の
Uの
年比 %増を上回り
ガス GHG 排出量はE
と、 GDP当たり温室効果
の解釈を正しく行
しかし、気候感度
恐れもあります。
ら交渉が破綻する
に埋めようとした
が実情です。無理
あまりに大きいの
案とのギャップも
イツ、EUと同じ水準の改
事後評価は実績値で評価
革命前の水準に比べて2度
年の 世界の平均気温を産業
長期目標として2100
め、国際的なPD
各国が目標を決
オをベースにして
実感のあるシナリ
能となります。現
議論することが可
うことで、柔軟に
善率で、見劣りしません。
する ため、約束した数値目
Cの上昇に抑える 2度C
■大きいギャップ
標のほか、例えば部門別の
し、各国が新たな
CAサイクルを回
エネルギー原単位の絶対水 目 標 が あ り ま す 。 問 題
削減目標を掲げる
2濃度が倍増した
パネ ル
IPCC の報告
気候変動に関する政府間
ます。
指すべきだと考え
及により達成を目
な技術の開発・普
を構築し、革新的
︱こうした枠組み
格の水準、炭素価格の水準 時に気温がどれぐらい上が
書では、平衡気候感度が4
感度の位置付けです。
次評価報告書以前に1・5
ます。
度︱4・5度Cで、最良推
ョック前までエネルギーを
を示せる。日本もオイルシ
るにはどうしたらいいか﹂
本のように製造業で発展す
かがカギだが、そこで﹁日
る。何をモデルに発展する
経済成長したいと思ってい
ベト ナムもイ ンドネシアも
とで、各国が温暖化問題に
実効ある排出削減をするこ
ろな方策で将来に向かって
って最大限努力し、いろい
したが、やはり現実感を持
た時にどう変わるのかを示
な気候感度の知見を反映し
している。IPCCの新た
て逆効果になることを懸念
破綻し、温暖化問題に対し
現できそうもない。交渉が
年比
日本の約束草案は検討中
たくさん使っていたが、オ
■
に 年比CO 2排出量 %
450 での2度C目標の
イルショック後に資本スト
達成はあまりに遠すぎて実
ック、社会ストックを入れ
対する責任を果たすことが
インドも中国も
替えて効率の高い社会を築
重要だ。
手塚氏
です が、結論を言えば 年
%減
といったデータも活用でき るかの指標である平衡気候
準とか、2次エネルギー価 は、CO
あります。
まで許さ
短があるため、指標を組 み 造 に 依 存 す る 部 分 が 大 き
く、これだけで評価するの 伸びると改善率もよくなる
2
合わせて検証することが 求
2020年以降のCO
排出 削減目標はプレッジ・
書の数値を使用しました。 また2度C目標を達成する
は適切ではありません。ま ため、省エネ努力をしたか
減です。良い数字ではあり
められます。
茅座長 EUは2度C目
年までに温室
標の 順守、 の反発を招き、受け入れ ら
%減とする
ませんが、これが現実的な
アンド・レビュー 約束と
効果ガス排出量を 年比
れるとは思えない。なぜ E
の懸念もある。
た過去 年間のエネルギー というと、そうでもない可
数字です。
事前評価の指標にはG D
Pベ ースのエネルギー原 単 原 単 位 の 改 善 率 と G D P の 能 性 が あ り ま す 。 過 去 に 努
仮に
検証 型になるため、各国
の目標や結果をいかに検証
位の絶対水準や改善率が あ 変 化 率 で も 英 国 が よ く 、 日 力 し て い る と 改 善 率 は 小 さ
%以上削減を盛り込んだパ
Uはここまで主張するの
ス に 働 く と 見 る 向 き が 多 バブル をまとめたら多く
いた。この日本モデルを途
ンを どう見る かはなかな か 力 の あ る 文 書 、 例 え ば パ リ と 思 う 。
高村氏 EUのポジシ ョ
︱
し、評価するかがカギにな
ります。 年のエネルギ ー
本はドイツとほぼ同じで悪 くなるため、こうしたこと
ります。COP の約束草
案は基準年が異なっていた
り、原単位目標やBAU比
だったりと、さまざまな目
標が出てきそうです。これ
では排出削減の努力を公平
に評価できないため、指標
を決めて見える化する必要
リ・プロトコルを発表し
か、目算があるのか。
が、こうした姿勢は途上 国
た。INDC 各国が自主
の問題の解決につながっ
上国の発展モデルに使って
提出国が参加し、法的に規
た。中国や韓国と組んで展
他方、法的拘束力のある目 をかけた重要会議と位置付
標の合意をまとめるのは難 け て い る 。 フ ラ ン ス の 中
しく、最終的にある程度の 東、アフリカ諸国に対する
柔軟性がある結論を見いだ 強い外交力が、交渉にプラ
すのではないか。特に削減
目標に法的拘束力があるか
ないかについては、いろい
ろな書きぶりがある。例え
ば達成のための措置を義務
付け、達成しなくても国際
的には義務を果たしたとす
る書きぶりもある。ここは
法律家の知恵を生かせると
ころで、いろいろな文言を
めぐり、EUも幅のあるや
りとりをするのではないか
経済圏として共 てもエネルギー資源を大量
消費しないで国民に富を与
CO 2の累
えることにつながる。
産業界委員
積排 出量を基にし て中国や
秋元氏
るフ ランスの 代表大使と意
見交換したところ﹁超長期
の技術についてもロードマ
ップをつくりたい﹂と強く
言っていた。これは超長期
に温暖化問題を解決すると
いう本来の姿勢に基づく方
向で、非常に好ましいと思
った。温暖化問題を根本的
に解決するのであれば、C
O 2の累積排出量を増やさ
累積排出量の議 ない。そうしないと温度が
難しい。またこの基準で目 標と言える。こうした目標
日本の産業界 標を配分するとなると米国 を1世紀の範囲で実現する
献が受け入れられるのかと
ていない。このため国際貢
体のCO 2総排出量は減っ
をするのは大切であるが、 うございました。
れてしまう。排出削減努力 うと思う。本日はありがと
ような議論はほとんどつぶ っと議論していくべきだろ
は頑 張っている が、日本全 が乗れず、米国が乗れない にはどうしたらいいか、も
加藤委員
う。
はなかった。私も残念に思 て責任を求めるのかなどが ばならないため、大変な目
チブを発揮してもおかしく の問題がわかっていたとし ると排出をゼロにしなけれ
は、何年 から気候変動 一定にならない。言い換え
るような政治的なイニシア 論で 題はないし、バブルをつく
で目標を配分しても全く問 ると思うが、どう見るか。 ないようにしなければなら
通の基盤を持っている国々 インドと交渉する方法もあ
茅座長 先に議長国であ
開するのは難しいだろう
対し、日本主導で アジア
い。
EUバブ
中上英俊委員 住環境計
加藤三郎委員 環境文明
共 同代表
フランスが
評価が難しいが、法的拘 束 議 定 書 を 結 び た い と の ポ ジ
画研 究所会長
ションは固い。強く主張す
制できるものにするなどと
であるこ
る背景には気候変動問題に COP の議長国 フランスは国威
もらうことが、彼らにとっ
が、残念だ。
べきだという世論がある。
高村氏
高村氏
プ に
ル 共同達成グルー 加藤三郎氏環境文明21共同代表
ついて厳しい対策を講じる とはプラスに働くか。
茅 陽一氏グリーンフォーラム21座長
仏
の
外
交
超力
中上英俊氏住環境計画研究所会長 長 プ
期ラ
にス
問
題
解
決
■指標で見える化
温暖化交渉の今後
的に決定する約束草案 の
地球環境産業技術研究機構システム研究グループグループリーダー秋元圭吾氏
も踏まえて評価する必要が
気
候
感
度
正
し
く
解
釈
柔
軟
な
議
論
が
可
能
に
16/06/27 14:25
GJ2015.indd 50
約
束
草
案
の
見
通
し
と
2
度
C
目
標
の
関
係
お
よ
び
国
際
交
渉
へ
の
含
意
意
見
交
換
)
(
【特別企画】
火曜日
2015年 平成27年 4月28日
50 Green Journal
が、先進国は﹁途上国も含
でもよい﹂とも主張します
減以外の適応策などの約束
度にも影響を与える可能性
要で、市場メカニズムの制
す。目標年は実務上でも重
直しする案を提出していま
気候変動問題は将来的に
■中核のルール
があります。
めてすべての国が削減を約
らないとは誰も考えていま 束する必要がある﹂と主張
国は何らかの法的効果のあ
ローチなどの情報を提出し があるとは限らないとする
第4回事例研究会を開いた。総合テーマは﹁温暖
RITE 理事長 は3月 日に2014年度
日刊工業新聞社が主宰する﹁グリーンフォーラ
ム ﹂ 茅陽一座長 地球環境産業技術研究機構
せん。先進国、途上国とい して対立を深めています。
■深まる対立
う国のグループごとに差異 目標の水準をどう評価する
なければなりません。
化するのか、国情に合わせ か、目標の透明性をどう確
る文書としつつも、中国と
案ですが、各国で国内法の
インドを同じ土俵にのせる
効力が異なりうるといった
ことを重視しています。
課題があります。
化交渉の今後﹂。名古屋大学大学院環境学研究科
間差の問題などを内在して
といった予測の不確実性
た 約 束 草 案 と 一 緒 に 基 準 目標には法的拘束力がある
ことが決定しています。ま す。一方、中国は先進国の
続して前進するものにする を約束すべきだとしていま
是正し、すべての国が削減
ない途上国という二分論を
う先 進国と削減義務を負わ
COP は削減義務を負
るでしょう。
を積み重ねていくことにな
合意を基にしてさらに交渉
のルールについてで、その
く、非常にシンプルな中核
グバンのような合意ではな
る問題への回答となるビッ
意で きるとしても、あらゆ
それだけにCOP で合
変化し、途上国間でも意見
ドの台頭で国際政治力学が
います。近年は中国やイン
にすることを求めています
が対立していることも交渉
や、排出と影響の発現の時
年目標。一方、E
また実は目標年がまだ決
成否を決める大きな争点で
ていません。米国と途
す。インドなどの途上国の まっ どの ような影響が生じるか
務の 差異化も争点です。差
一部は﹁先進国は削減目標 上国は
て差異化するのかは合意の 保するかも争点です。
異化について先進国と後発
法的拘束力と合わせて義
減目標の達成を国際的
につ いては、これまでのC に削 途上国や島しょ国が同じレ
EUは京都議定書のよう
OPで、約束草案を現状の に義務付け、すべての締約
各国が提出する約束草案
の高村ゆかり教授らが講演した。 月にパリで開
での交渉のポイントなどについて活
催される国連気候変動枠組条約第 回締約国会議
COP
発に議論した。
取り組みを超えるもので継 国が法的拘束力のある目標
が、中国やインドは法的拘
を難しくしています。
年目標とし、中間見
束力がある議定書にするか
年、目標年、適用範囲、排 べきだとするものの、途上
Uは
COP での合意をめぐ
どうか、法形式は交渉の結
出量と吸収量の推計などに 国については言及していま
を約束するが、途上国は削
って は、採択する文書の法
果、内容に応じて決めるべ
ベルの努力をしなければな
的拘束性とともに、二酸化
2
関する想定と方法論的アプ せん。米国はこの点を明確
CO
きだと主張しています。米
炭素
効果ガス GHG 削減目
標の法的拘束性が争点にな
っています。文書に法的拘
束力を持たせるかどうか、
つまり国際条約や議定書に
するかどうかはまだ決まっ
ていません。EUは議定書
にしていません。削減目標
恐らく中国、インドが飲め
国際的な法的拘束力があっ
ています。3案目は文書に
を与える︱の3案を提示し
国内措置に国内法上の効力
いが、国際目標を担保する
国際的に法的拘束力はな
国際的に法的拘束力なし
米国は考え方を整理して
国 際的に法的拘束力あり
す。
に合意することが望まれま
の水準を上げる仕組みなど
プロセスと、その中で目標
施︱検証﹂といった一連の
的に提出︱協議︱決定︱実
少なくとも﹁目標案を定期
をつくる絶好の機会です。
し、公正な国際競争の土俵
の取り組みを国際的に約束
ないだろうと判断している
ても削減目標に法的拘束力
では締約国が最 論されます。この枠組みで
の取り組みを約束し、 途上国も削減目標を掲げる
者を決めてエネルギー計画 標達成のために活用できる 大限 な目標に切りかえるプレッ くありません。
競うべきだと思いま
球全体への貢献度を
くより、先進国は地
束と検証 型の枠組みが議 につ いての交渉に時間を割
ですから、削減量の帰属
ト制度が 年以降も使える
す。日本の二国間クレジッ 成した場合はさらに野心的 転に慎重になってもおかし
を立案し、実績を評価する か ど う か は 課 題 の 一 つ で チェックを受けながら、達 となると、クレジットの移
ウを移転し、途上国での排 援をしています。
PDCAサイクルの活動支
ルギーで富をつくることが
出削減を後押しすること
2
︱ 年の世界のCO
求められます。これは高度
官民協力会合を開いて されていません。
が、地球温暖化対策の実効 鉄鋼 ジ・アンド・レビュー 約
排出 量をみると、約210
技術で実現するしかありま
かどうかは国際的には担保
億 から約300億 に増
す。仮にクレジット
鋼業界の活動の三本柱を紹 を報告しました。現在、イ
どこまで義務化する
げるか、目標達成を
心的 な削減目標を掲
各国がどれだけ野
は上がるでしょう。
国際的なステータス
信してもらうことで
け削減できた﹂と発
本のおかげでこれだ
ても、相手国に﹁日
を日本に帰属しなく
会社の首脳らが参加し、I
国際貢献の一例として鉄 国営製鉄所の診断結果など
SO14404を使用した
にはインドの鉄鋼省、鉄鋼
具体的には 年から日印
経団連は2013︱ 年
ます。
性を高めることにつながり います。 年の第5回会合
の役割がある。日本のエネ
せん。ここに日本の産業界
に 取 り 組 ん で い ま ばいなのに対し、途上国が
ルギー原単位は世界最高水
えました。先進国はほぼ横
劇的に伸びた。途上国の人
準を誇っています。国際ル
の低 炭素社会実行計画フェ
す。また 年までのフェー
口増などによるエネルギー
ールに従って技術・ノウハ
ーズ
を策定中で、このほど
消費増で、この傾向はこれ
■省エネ診断も
ズ
からも変わらず、 年には
2
削減目標などを中
CO
約360億 になると見込
政府に各業界の二酸化炭素
間報告しました。実行計画
は﹁国内事業活動からの排 まれています。
それだけに途上国はでき
出抑制﹂﹁主体間連携の強
けCO 2排出を抑えて
化 ﹂ ﹁ 国 際 貢 献 の 推 進 ﹂ るだ し、また、より少ないエネ
ですが、インド鉄
介します。まず日本が主導 ンドの粗鋼生産量は約80
鉄鋼生産のCO 2排出量と
ら、これだけで4億400
2原 単 位 は 約 2
にする計画です。鉄のCO
んと評価し、途上国
よる国際貢献をきち
論と合わせて、日本
るか
00万
原単位の計算方法を定めた
0万 ものCO 2が増える
の削減への協力を拡
か、中国とインドの
もので、製鉄所の省エネ診
ことになる。省エネ型にす
年までに3億 超
断などに活用できます。ま
るかしないかで、億 単位
と思います。
強く発言してほしい
だ﹂といったことを
大、促進させるべき
政府には﹁先進国に
。こうした議
合意をどう取り付け
た各国のエネルギー事情に
ですか
応じた省エネ技術をリスト
の差がつきます。
■クレジットは
01﹂に規定されたエネル
ただ国際貢献による途上
温室効果ガス削減量を
ギーマネジメントの手法に 国の す。さらに﹁ISO500
ドリスト﹂を用意していま
化した﹁技術カストマイズ
規 格 I S O 1 4 4 0 4 。 鋼省は
して 年に発行された国際
経団連環境安全委員会国際環境戦略WG座長(JFEスチール技術企画部理事)手塚宏之氏
﹁革新的技術の開発﹂が四 国 民 に エ ネ ル ギ ー を 供 給
本の柱です。
COP
などの温室
■同じ土俵に
COP21の争点は グリーンフォーラム21事例研究会
■産業界の役割
基づき、事業所ごとに責任 クレジットとして日本の目
と思われます。
の達成を義務付けるのは、
名古屋大学大学院環境学研究科教授高村ゆかり氏
途
上
国
の
C
O
2
削
減
先
進
国
国
際
貢
献
を
16/06/27 14:25
GJ2015.indd 51
気
候
変
動
交
渉
の
到
達
点
と
パ
リ
合
意
の
展
望
法
的
拘
束
性
と
差
異
化
合
意
へ
の
道
の
り
遠
い
気
候
変
動
対
策
へ
の
産
業
界
の
取
り
組
み
と
新
国
際
枠
組
み
へ
の
期
待
火曜日
2015年 平成27年 4月28日
【特別企画】
)
(
Green Journal 51
ある。﹁気候変動に関する政府間
に世 界各地で顕在化する水不足が
水への関心が高まっている背景
が真剣となり、かなり厳しい意見
スク﹂が非常に高まるだろうとい
はじめ、水資源が不足する﹁水リ
欧州
−サプライチェーンを通じた持続可能性の計測・報告システム
−
−ライフサイクルにわたる包括的な環境影響の把握
−気候変動 生態毒性・人間毒性 酸性化 富栄養化 水資源 資源枯渇 土
地改変
(仏)
・グルネル法
−CO2 水資源 富栄養化のラベル表示を試験的に実施
− ウォーターフットプリントの原則・要求事項・指針 の策定
−対象範囲・算定方法の標準化 事例集の作成など
/SC5/WG5
・
−企業の水管理に関する標準化 CDP・
と
の連携
−水リスク低減に向けて拠点単位から流域単位/サプライチェーンへ活
動範囲を広げていく
う予測が出ている。世界人口は2 を実感できない。しかし﹁バーチ
ウォーターフットプリントの活
用方 法・用途は三つあると思う。
一つ目は情報開示。基本的にはラ
イフサイクルアセスメント LC
A、環境影響評価 と同じように
水の量と質の測定法に代表的な
手法 はまだ決まっていない。﹁I
SO14046﹂の規格書とは別
に事例集があり、その中にいろい
ろと評価例がある。代表的なのが
水の使用量と消費量の評価だ。水
源や地域別の影響の違いを係数化
しておき、実際の使用した水量に
応じて係数を掛ける。平均値は1
で、1よりも小さい係数の地域は
が小さい。
活に不便を感じる水不足の状態
雨が多くて、水ストレス 日常生
東芝製ランドリーの節水性能を
水の視点製品評価
ウォ ーターフットプリントで評価
してみた。新製品は洗濯中の水量
がかなり節約できており、 年製
品と比べて %減となった。また
材料調達、製造、流通、使用、廃
棄・リサイクルのライフサイクル
%以上を占めてい
の各段階を比べると、使用段階が
水消費量の
た。買い替えが進み、新製品が普
及すれば水資源への負荷を減らせ
水を使う製品ではない冷蔵庫の
る。
ウォ ーターフットプリントも算出
を環境中に排水すると水源を汚す してみた。最新の冷蔵庫は食品の
ため、使える水が減る。このため 保存性能が高い。長持ちすると食
品をつくる段階で使われる水を節
汚水の排水も消費と捉える。これ 品廃棄物が減るので、間接的に食
が特徴の一つだ。
ウォーターフットプリントはラ 約できる。東芝製﹁GR︱E F
年製品に比べ %低減できた。
イフ サイクル全体で雨水や地下水 X﹂は保存性能の向上によって、
の使用量を測定し、ある係数を掛
自社の製品・活動がどのぐらい水 けて環境に対する悪さを指標化す
カーボンフットプリントでみる
に影響を与えているのかを開示す る。雨水なのか地下水なのかとい と冷 蔵庫は使用段階の電力使用量
る。二つ目はリスク分析・内部改 った水源、国・地域で水リスクが が非常に大きい。このため省エネ
の視点だと省エネだけでなく、食
善。社内やサプライチェーンに水 異なるからだ。これはLCAとも 性能を追求してきたわけだが、水
ているわけだから、間接的に日本
は、日本は農作物の多くを輸入し
出量を表示するカーボンフットプ という影響を分析する。もう一つ
イフ サイクルでの温室効果ガス排 用可能性がどのぐらい減ったのか
ウォーターフットプリントはラ の消費量だ。使用によって水の利
実際に使える方法を検討していく
を参考にしながら製品を評価し、
プリントと言われている。規格書
情報 開示の軸はウォーターフット
カーボンフットプリントに続く
つの カテゴリーがある。一つは水 事ということがわかる。
水へのインパクトの測定には二 品廃棄物を減らす﹁食エコ﹂も大
リスクがあるかどうかを明らかに 違う点だ。
する。三つ目が国民の水環境保全
は海外の水を使っていると考え
リントと似ているが違いもある。 は汚染。富栄養化、生態毒性も定
意識の啓発だ。
﹁サプライチェーンを通じた持続 0 億 人 を 超 え る と 予 想 さ れ て い
る。つまり日本もサプライチェー
水の使用量だけでなく、排水も算 量化し、それらを最終的には統合
で
可能性の計測・測定システム﹂に る。人口増加に伴って水使用が増
ンや貿易を通じて海外の水を使っ
仮想水
水の項目がある。欧州委員会は製 えることは容易に想像ができる。
ているので海外の水リスクは無視
のが今後のステップだろう。
できない。
え方がどの程度決まってい
ーフ ットプリントという考
たというのは、一歩前進と
て、 概念も大枠では決まっ
ただ、あくまでもウォー
いえる。
ということは、非常に大き
とし てISOで合意された
まがりなりにも国際標準
何を使うのかという検証作
る。また、データベースの
せることが大切になってく
のかというのをはっきりさ
の手段で、何のためにやる
ター フットプリントは一つ
な意味を持っている。水と
フューチャーズ社長
吉田敬史委員長 グリーン
ろ害になる。
人歩きするようだと、むし
業を抜きに、単に数字が一
いうものに注目を集めたと
彫りになった気がする。
るかというのが、割と浮き
て、逆に、どんな問題があ
国際的に用語が統一され
果だと思う。
いうことが一つの大きな成
や
る
の
か
が
大
切
質疑のなかで、ウォータ
委何
員の
長た
総め
括に
出のスコープに入るからだ。汚水 化する。
品や企業の環境影響を総合評価す
しかも水資源は偏在する。水が
る﹁環境フットプリント﹂で、気 豊富 な地域・国と、そうではない
050年に 億人、さらには10 ャ ル ウ ォ ー タ ー ﹂
3つの活用方法
・環境フットプリント
日刊工業新聞社が主宰する﹁グリーンフォーラム ﹂は9
月 日、7月に国際規格化された﹁ウォーターフットプリン
ト﹂をテーマに資源・循環技術委員会 吉田敬史委員長 を
開いた。ウォーターフットプリントは生産、使用、廃棄・リ
サイクルまでの製品ライフサイクル 一生分 の水資源への
影響を算出する。世界各地で水不足が進むに連れ、企業が使
IS
での議論に参加した東芝環境推進室の小林由典参事が水
う水に関心が集まるようになった。国際標準化機構
O
資源をめぐる動向やウォーターフットプリントのポイントを
講演し、算出方法などについて活発に意見交換した。
C2 07でのウォーターフットプ
パネル﹂ IPCC の報告書を
予定だ。
リント国際規格﹁ISO1404
私は2012年からISO/T
た。各国のエキスパート 代表者
6﹂の作業部会 WG8 に参加し
も出た議論を生でみられたのはい
い体験だった。規格化が決まった
翌朝、宿泊していたパナマのホテ
ルから外をみると、砂浜に﹁IS
議
O14046 と書かれていた。
論がかなり深刻だったので、よう
やく肩の荷が下りた会議参加者
ISO以外も動き
が、喜んで書いたのだろう。
ISO以外にも水資源の測定や
開示 の動きがある。一つは英NP
OによるCDPだ。大企業に温室
効果ガス排出量の開示を求めてい
たが、今は企業の水使用量も開示
米ウォルマートを中心とした
のスコープ 範囲 に入れた。
﹁ザ ・サステナビリティ・コンソ
(米)
・
候変動や資源枯渇などとともに水 地域・国があって水リスクには地
TSC が運用する
−企業に対してGHGに関する戦略や排出量について公表を求める
−GHGに加えて CDP がスタート
資源への影響も﹁見える化﹂する 域性がある。日本にいると水不足
ーシアム﹂
水管理に関わる国際的な動向
だが、生産での使用後、排水した水
もカウントすると、同じ水でも2度
カウントすることにならないのか。
小林氏 川から取水した量と同じ
量を使用後に川に戻すと、基本的に
は消費はない。同じ水源に同量を戻
すので、その水源に対する影響はな
いからだ。量について言えばそうだ
が、水の質については違う。汚れた
水を排水すると影響があるので、量
とは違う視点で評価する。ダブルカ
ントと言えるかもしれないが、量と
質は分けて考える。
委員 では取水、排水の質はどう
評価するのか。
小林氏 基準は出ていない。環境
基準のようなもので一律に決めるの
が現実的と思う。
委員 対象範囲は温室効果ガス算
定基準のスコープ1、2(工場や事
務所など自社での使用に伴う水量)
なのか。
小林氏 基本的にはスコープ3
(サプライチェーン全体)を含む。
LCAと同じだ。製品だけではな
く、組織も対象にしようと議論され
ている。
委員 通信サービスであれば基本
的には水を使っていない。ただし電
柱のコンクリートは水を使ってつく
る。そういったものまで含めてウォ
ーターフットプリントを考えるの
か。
小林氏 その通りだ。
委員 カーボンフットプリントは
さまざまな議論があって国際規格化
されず、技術仕様書にとどまった。
小林氏 ウォーターフットプリン
トも妥協があった。会議参加者には
国際規格化したい思いがあり、でき
るポイントから合意した。しかしこ
れで終わりではない。事例が蓄積さ
れてくればいろいろな議論も出てく
るだろう。まずは第一歩として国際
規格化できたことが、我々関係者に
は非常に大きな前進だった。
量と質は分けて評価
意
見
交 委員 工場の取水時に
換 水量をカウントするわけ
16/06/27 14:25
GJ2015.indd 52
(英)
・CDP
企
業
の
水
使
小林由典氏東芝環境推進室参事 用
を
「
見
え
る
化
」
・ISO/TC
世
界
各
地
で
水
不
足
進
む
●
●
「ウォーターフットプリント」国際規格にグリーンフォーラム 資源・循環技術委員
金曜日
2014年 平成26年 10月17日
【特別企画】
)
(
52 Green Journal
Green Journal 53
GJ2015.indd 53
16/06/27 14:25
Green Journal
特 集
パリ協定採択-動き出す温暖化対策
米中交渉後押し
認識共有、国際基盤整う
■ 首脳の決意
後の世代だ」と機運を盛り上げた。習近平国家
フランス・パリで開かれていた国連気候変動
主席は「すべてのアクターが参加し、ウィン・
枠組み条約第 21 回締約国会議(COP21)は、地
ウィンの関係を築く必要がある」と合意を促し
球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」
た。安倍晋三首相は「地球は人類のかけがえの
を採択した。先進国に温室効果ガス排出削減を
ないふるさと。今こそ先進国、途上国が共に参
義務づけた京都議定書に代わり、2020 年以降、
画する新たな枠組みを築くべき時だ」と演説を
途上国を含むすべての国が協調して地球温暖化
切り出し、現行約 1 兆円の途上国に対する支援
対策に取り組む体制になる。異常気象による甚
額を 1 兆 3000 億円規模に拡大することを説明し
大な災害が頻発し、共通認識となった温暖化リ
た。会議冒頭の首脳演説は極めて異例だ。
スクが合意を後押しした。
これまでの COP は先進国が大量の温室効果ガ
■ 検証と報告
スを排出してきた経緯から、途上国との間に深
一方、パリ協定の合意文書には拘束力のある
い溝があった。だが、経済発展に伴い途上国側
数値目標がほとんどない。米国は国内法で担保
の温室効果ガス排出量が急増。小島嶼
(とうしょ)
できない内容の条約批准に議会の合意が必要と
国では海面上昇による被害も現実となり、先進
なるため、細心の配慮がなされたのだ。削減目
国の責任だけを追及するだけで済む状況ではな
標達成の義務化は見送られ、各国に温室効果ガ
くなった。
ス削減の目標策定を義務づけて 5 年ごとの見直
京都議定書に調印しながら批准せず、削減に
しと、対策を徹底して報告することを定めた。
参加しなかった米国が合意に向けて積極的に動
まさに「枠組み」だけで、低炭素社会実現に向
いた。米国を抜いて世界最大の排出国となった
けたスタートラインに立ったにすぎない。
中国が前向きな姿勢をみせたことも大きい。初
だが、検証と報告を繰り返しながら、対策を
日には各国首脳が演説し、異口同音に地球温暖
徹底していく永続的な枠組みが整った意義は大
化対策の新しい枠組みづくりの必要性を訴えた。
きい。名古屋大学大学院環境学研究科の高村ゆ
オバマ米大統領は「気候変動の脅威にさらさ
かり教授は「先進国が先導しつつ、すべての国
れない国はない。我々はその脅威を体感する最
が温暖化対策に取り組む国際的基盤が構築され
初の世代であり、対応を進めることができる最
た」と評価する。
54 Green Journal
GJ2015.indd 54
16/06/27 14:25
途上国も合意
“武器なき戦争”の勝者
■ 本気の中国
他の途上国も温暖化対策を始める。パリ協定
「途上国に良い結果だったのではないか」
。国
で CO2 削減目標の達成は義務化されなかったが、
際環境経済研究所の有馬純主席研究員はパリ
国内対策の実施が義務づけられたためだ。排出
協定をこう評価する。有馬氏は経済産業省時
量取引や炭素税など企業が排出する CO2 に価格
代、担当官として COP に計 11 回参加した。国
を付ける「炭素価格制度」を採用する国が増え
と国との駆け引きを目の当たりにし、COP を
るとみられる。世界銀行によるとすでに世界全
「国益をかけた武器なき経済戦争」と表現する。
体の排出量の 12% に価格が付いている。多くの
COP21 では年 1000 億ドルを下限とする先進国
国で事業展開する企業ほど、温暖化対策のコス
から途上国への資金援助が合意され、実施状況
トが積み上がる。
が検証されることが決まった。途上国の主張が
いくつも認められた。COP21 の勝者は途上国か
■ 巨大市場が出現
もしれない。
一方、途上国に出現する低炭素化ビジネスの
中でも評価を高めたのが中国だ。温暖化対策
巨大市場を取り込む機会でもある。中国は 16 年
消極派の急先鋒だったが、COP21 の交渉には積
からの第 13 次 5 カ年計画で 20 年までの累計で
極的に加わり、パリ協定の立役者になった。そ
約 10 兆元(約 200 兆円)の環境投資をする。資
の中国は国内対策に本腰を入れる。温暖化対策
金援助を求めた途上国は、どの国も低炭素化技
よりも実態は汚染対策。健康被害を招く
「PM2.5」
術を必要としている。国際エネルギー機関は、
の排出を封じようと低効率な石炭火力発電所を
すべての国の目標達成にエネルギー分野だけで
廃止し、高効率な発電所を増設する。エネルギー
13 兆 5000 億ドル(1620 兆円)の追加投資が必
効率の低い機器の使用禁止、エネルギー多消費
要と試算する。日本企業にとってはパリ協定に
産業への電力の値上げなどの規制も次々に打ち
参加する 196 カ国・地域がマーケットになる。
出している。日系企業も中国政府の“本気度”
しかし東京大学公共政策大学院の本部和彦特
を感じている。「規制は厳しくなるだろう。二酸
任教授は「途上国で投資回収ができるビジネス
化炭素(CO2)排出量を報告する指針が業界ご
モデルを作るのは難しい」と指摘する。途上国
とに設定されてきた。今度、排出量の少ない業
からの低コスト化の要請に加え、価格競争は厳
界にも広がるだろう」(日系企業の中国工場担当
しい。低炭素化ビジネスの勝者になる戦略が求
者)と予想している。
められる。
素 税
EU/日本(東京都、埼玉県、京都府)/
スイス/ニュージーランド/米国(カリフォ
ルニア州)/カザフスタン/中国(上海、
深圳、北京など2省5市で試行中。201
7年から全国に拡大)/韓国
炭
排出権取引
炭素価格制度を導入する主な国・地域
フィンランド/ポーランド/スウェーデ
ン/ノルウェー/デンマーク/スイス
/日本/フランス/メキシコ/ポルト
ガル/南アフリカ(16年∼)/チリ
(17年∼)
※世界銀行の資料を基に作成
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「脱炭素」へ舵
企業はリスク点検を
■ 海外は前向き
企業が事業で使う電力の全量を再生可能エネル
COP21 の会場にリコーの加藤茂夫執行役員も
ギーにすると宣言している。再生可能エネルギー
詰めていた。会議運営に欠かせない文書の印刷
100% を目指す企業組織「RE100」も結成され、
業務を同社が担当したからだ。最終日前に帰国
イケアや BT、SAP、ネスレ、ユニリーバなど
したため、パリ協定の採択が告げられた歴史的
50 社が参加する。
な瞬間には立ち会えなかったが、会場の空気に
各国の削減目標は引き上げを前提に定期的に
触れた数少ない日本企業関係者の一人だ。
見直されるため、企業への削減圧力は強まる。
現地で会談した海外企業トップは「脱炭素や
米国などでの火力発電への規制強化もあり、化
ゼロエミッション(温室効果ガスの排出ゼロ)
石資源由来の電力の値上がりも避けられない。
にすべきだ」と口々に語っていた。リコーは環
将来、CO2 の排出はコストとして重くのしかか
境問題に取り組む企業姿勢が評価され、国連と
り、経営リスクとなる。再生エネ 100% を宣言し
フランス政府から COP21 の文書印刷を要請され
た企業は、CO2 の排出で増える負担を回避しよ
た。そんなリコーでも海外企業の意識の高さに
うと脱炭素への舵を切った。電力を使う側が再
刺激を受けた。
「脱炭素への流れは止められない。
生エネを大量に導入すると、太陽光発電や風力
取り残されるのではないかと危機感を持った」
発電のコスト低減が、いずれは経済性と環境性
(加藤執行役員)と振り返る。
を両立できるようになると見込む。
産業界は高い排出削減目標の設定にはどうし
ても慎重になる。排出抑制はエネルギー使用を
■ どの国でも
制約し、企業活動の足かせになるからだ。しか
パリ協定では温室効果ガスの排出を実質ゼ
し脱炭素化に前向きな海外企業が増えている。
ロにする目標も共有された。海外企業の環境・
データセンターで大量のエネルギーを消費する
CSR に詳しいサステナビリティ日本フォーラム
アップル、グーグル、マイクロソフトなど米 IT
の後藤敏彦代表理事は「ベクトルチェンジを認
識しない企業は必ず退場を迫られる」と日本企
業に警鐘を鳴らす。
「脱炭素化」へ向けた動向
パリ協定が発効する 20 年以降、ほとんどの国
パリ協定
今世紀後半に温室効果ガスの排出と吸収を均衡させ、排出を
実質ゼロ化
「RE100」(再生エネ100%化を目指す企業)
が削減目標を掲げるため、企業はどの国で事業
を展開しても温暖化対策を求められる。それだ
イケア、オートデスク、
BT、中国・遠大集団、
DSM、グーグル…
けに、パリ協定が事業に及ぼすリスクを点検す
火力発電への規制
べきだろう。中長期的な排出削減計画を検討し
米国 火力発電からの
米国…火力発電か
らのC
CO
O₂
O₂排出を
排出を32%減(30年まで)
英国…石炭火力を全廃(25年まで)
世界銀行、
OECD…石炭火力への融資を抑制
ておくことにより、リスクに早く対処できる。
日本企業
トヨタ自動車、ソニー…省エネと再生エネ活用で排出ゼロ(50年)
リコー…排出を87.5%減(50年)
(2015年12月23日−29日の日刊工業新聞連載を再編集)
渕上さま
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