灰塚小学校校舎大規模改造建築工事(PDF:473.2KB)

大東市監告示第4号
工事監査の結果について
地方自治法(昭和22年法律67号)第199条第5項の規定により工事監
査を実施したので、同条第9項の規定により、その結果を別紙のとおり公表し
ます。
平成19年12月13日
大東市監査委員 北本 慶三
大東市監査委員 中河
昭
1.平成19年度工事監査結果
Ⅰ 監査対象工事(監査実施日)
灰塚小学校校舎大規模改造建築工事(平成19年11月28日)
Ⅱ 監査の概要
この工事監査は,施工工事の中から進捗状況を勘案し、対象工事を抽出のう
え、工事の設計、施工等が適正に行われているかどうかについて調査した。
なお、この監査の執行には、工事技術に関する専門的知識を必要とするため、
社団法人 大阪技術振興協会との間に業務委託を締結した。
監査の実施にあたっては、同協会から派遣された技術士の指導助言を得て関
係職員の説明を聴取しながら、関係書類の調査並びに現地調査を行った。
Ⅲ 監査の結果
1.計画、設計、積算、契約に関わる工事着手前の書類および施工管理、安全・
環境管理、工事監理(監督)に関わる工事着手後の書類について調査を行った結
果、一部に改善が望まれる点はあるものの、概ね必要な書類が作成され、工事
施工に効果的に利用されていることが認められた。書類調査に引き続いて行っ
た現場施工状況調査は、すでに施工出来高が約100%に達しており、工事事務所
で保管している書類も書類調査において確認していることから出来形の確認を
行う形になった。施工出来形の調査により、概ね設計要求品質を確保した工事
施工が実施されていることが認められた。
なお、個々の指摘事項については、十分留意され、より一層適正な施工に努
められたい。
2.監査対象工事の監査結果
別紙のとおり
1.灰塚小学校校舎大規模改造建築工事
2.工事概要
(1)工事場所
大東市灰塚一丁目地内
(2)工事内容
建物規模
工事規模
既存部:鉄筋コンクリート造4階、塔屋1階
新設部:鉄骨造4階
延床面積:7,600㎡
耐震補強工事(壁ブレース補強他)
屋上防水工事
外壁改修工事
外部建具改修工事
アスベスト除去工事
エレベーター新設工事
トイレ改修工事
(3)工事請負業者
冨田建設 株式会社(6業者指名競争入札)
(4)設計業務委託業者
株式会社 総企画設計 大阪支店
(5)事業費(請負金額)
請負金額
189,000,000円
(6)工事期間
平成19年7月2日~平成20年1月31日
(7)工事進捗状況
進捗率 約100%(平成19年11月28日現在)
(8)工事監督員
都市整備部 建築営繕課
山口 剛
1
3.工事所見
1. 書類調査による工事監査の所見
1.1 総括的所見
計画、設計、積算、契約に関わる工事着手前の書類および施工管理、安全・
環境管理、工事監理(監督)に関わる工事着手後の書類について調査を行った結
果、一部に改善が望まれる点はあるものの、概ね必要な書類が作成され、工事
施工に効果的に利用されていることが認められた。
以下に、個々の書類調査結果を示す。
1.2 工事着手前の書類に対する所見
(1) 「計画」について
現在、大東市は、まちづくりのために平成13年度に策定した「第4次大東市総
合計画」を実施中である。そして、この総合計画では、大東市が目指す町の将来
像の実現に向けた4つのまちづくりの展開方針を掲げている。その中のひとつ
である「多様な個性が結び合い、心が通う楽しいまち」に向けたひとつの方策と
して、「豊かな心を育てる、明るく楽しい学校教育を築く」ために平成10年から
耐震化診断を開始し、耐震化を重点に老朽化した校舎などの学校施設の改造・改
修に積極的に取り組んでいる。また、当該事業は文部科学省が推進している「公
立学校施設の耐震化」にも沿うものであり、なおかつ近い将来に発生が予想され
ている南海地震、東南海地震への対応としてもきわめて時宜を得た適切なもの
と認められる。
しかし、どの順序で校舎の耐震化事業を行うかの優先度の設定は、基本的に
は基本調査に続く耐震化優先度調査、耐震診断、耐震設計を経てなされるもの
である。「公立学校施設の耐震化推進について(通知)」平成18年6月2日 に
準拠して再度、耐震化優先度調査および耐震診断のための詳細調査を行い、震
度6強で倒壊が予想される構造耐震指標Isが0.6以下(特に倒壊するとされて
いる0.3以下)の校舎に対して具体的対応を急ぎ講じることが望まれる。
事業計画のために事前協議を行う必要がある教育委員会、財政部局、建設部
局、教職員等の関連部門とは十分な協議がなされたことの報告を受け、適切な
措置がとられたものと認められる。
(2) 「設計」について
1) 設計業務委託先の選定について
耐震診断業務委託先は、一級建築士事務所として市に登録されている業者9
社による指名競争入札で入札価格が最も低かった株式会社総企画設計大阪支店
2
を選定した。つづく、大規模改造工事の設計業務の委託先は耐震診断結果を熟
知している株式会社総企画設計大阪支店を選定し、随意契約を締結した。工事
の特殊性を考慮すると適切な選定がなされたと認められる。
工事監理業務の委託先としては、5社の指名競争入札を行い、入札金額が最
も低かった株式会社総企画設計大阪支店を選定しており、適切な選定がなされ
たと認められる。
2)設計全般について
設計は、「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」、「公共建築改修工事標準
仕様書(建築工事編)」、「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)」、「公
共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)」(以上、平成16年国交省大臣官房官
庁営繕部)、「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同
解説」 「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・耐震改
修設計指針・同解説」(以上、(財)日本建築防災協会) に準拠しており、適切な
準拠資料のもとに耐震診断、耐震改修設計等がなされていることが認められる。
設計ニーズの把握に関しては、設計段階で教職員の要望を受け、この内容を
建築営繕課が委託設計者と設計協議を行い、設計図書に反映したとの説明があ
り、適切な対応がなされたことが認められる。
3) 諸法令への対応について
ⅰ. 当該改修設計ではハートビル法への対応として、大阪府福祉のまちづくり
条例に準拠した多目的便所や身体障害者用付加設備を設置したエレベーターの
整備を行っており、法の趣旨に対する真摯な対応が認められる。しかし、当該
校舎は体の不自由な生徒だけでなく、災害時の緊急避難場所として地域住民が
利用することになっており、これらを考慮するとスロープ、手すり、点字案内
等の設置を更に充実することが望まれる。
ⅱ. シックハウス対策に関しては、特記仕様書に「ホルムアルデヒドおよび揮発
性有機化合物の室内濃度の測定」が特記され、測定法、測定位置、測定手順等が
具体的に記載されており、適切な対応が認められる。
なお、施工中、施工後の換気により有害物質の放散を促すことにより、早期に
室内化学有害物質の濃度を許容値以下にすることを意図して今後は特記仕様書
に「換気」を追記することを指導することが望まれる。
ⅲ. 省エネ法に関しては、エネルギー合理化のために多目的トイレの照明に人
感センサーが採用されており、法の趣旨に配慮した取り組みが認められる。
ⅳ. 再生資源利用促進法に関しては、再生資源利用計画および再生資源利用促
進計画を作成して環境の保全に向けた積極的な取り組みをしていることが認め
られる。
4) 耐震補強設計について
3
耐震設計については、適用する耐震性の分類について委託設計者が大阪府公
立学校施設耐震診断等判定委員会と協議・調整を行った結果を反映しており、
適切な耐震改修設計がなされたものと認められる。
耐震診断・耐震改修設計は「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の
耐震診断基準・改修設計指針 同解説」(財)日本建築防災協会 に準拠して耐震補
強設計をしており、適切な処置と認められる。
既存施設の耐震性は、構造耐震指標Isの最低値が0.32、水平保有耐力係数
CT・SDの最低値が0.43であり、一般的な耐震補強設計における目標となる構造
耐震指標0.7かつ水平保有耐力係数0.3をかなり下回っていた。しかし、耐震補
強後にはこの値がそれぞれ0.70、0.74となり、適切な耐震補強設計がなされた
と認められる。
耐震工法に関しては、5種類の工法について性能、コスト、生徒の安全性、
室内空間性等について分析を行い、総合評価が最も高い鋼管ブレース工法(外
壁面)と鉄筋コンクリート造耐震壁(屋内)が選定されており、適切な工法選
定がなされたと認められる。
(3) 「積算」について
1) 数量積算について
「建築数量積算基準・同解説」建築コスト管理システム研究所 を使用して設計
業務委託者が行い、市建築営繕課の担当者が内容検収をしているとのことであ
り、適切な確認業務がなされていると認められる。
なお、外壁改修工事のひび割れ補修に関する施工数量に関しては、設計額を
算出する段階では外部足場を利用しての詳細調査ができないために目視調査が
可能な1階外壁の数量をもとにして暫定的に数量を計上し、工事着手前に監督職
員の立会の下で行う請負者による施工数量調査で確定するものである。納税者
への責任のみならず請負者への適正な契約の履行のためにも、議会承認が必要
になる契約金額の変更手続きが煩雑であるなどの理由で安易に暫定的な施工数
量を確定数量として計上することのないような対応が望まれる。
2) 設計額の算出について
ⅰ.設計額の算出は、国土交通省大臣官房官庁営繕部推薦・(財)建築コスト
管理システム研究所による営繕積算システム(RIBC)を利用し、これに「建
設物価」や「建築コスト情報」建設物価調査会等の市販資料から得られたデータ
を標準単価として入力しているとのことであり、概ね適切な処理がなされたと
認められる。しかし、これらの市販資料にある単価は原則として全国どこでで
も採算割れになることがない標準的単価であり、大都市近郊に立地している当
市にとっては過大な単価となっていることも考えられるので、日常的に実勢単
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価の把握に努めることが望まれる。
ⅱ.改修工事は特殊な材料や工法等を使用するために一般的な標準単価がない
ので複数の業者見積を徴収して、最低価格の見積金額に歩切り率を乗じて計上
することが通常行われている。しかし、業者見積金額は、施工条件や歩切り率
等の不確定要素をリスクとして見積金額に上乗せするためにかなりの割高にな
るのが一般的である。当該工事の耐震ブレース工事のように全体工事費に占め
る割合が大きな工事に関しては、詳細な工法手順の確認とそれに基づく投入労
務・材料を組み込んだ日程計画をもとに、労務費、材料費、損料、運搬費、諸
経費を要素別に積上げて業者見積と比較・検討し、必要に応じて業者に確認す
るなどにより見積計上金額の適正化へ向けた取り組みが望まれる。
(4) 「契約」について
1) 請負者の決定について
入札は、大東市指名業者等審査委員会での審議により選定した業者による指
名競争入札を行い、6社の入札登録に対して6社が応札し、1回目で冨田建設
株式会社により落札された。契約金額は、工事設計金額の87.4%であり、低入
札価格による施工の品質、安全の確保に支障をきたす懸念を感じさせない適正
なものと認められる。
2) 契約工期について
当該工事は、全体工期が平成19年7月2日から平成20年1月30日まで
の7ヶ月間あるにも拘らず、学校の教育活動に支障が生じないように給食調理
室および耐震補強工事に関する建物内の工事を8月24日までの着工後1.5
ヶ月程度の間に完了すべき旨の特記が現場説明書になされている。外部建具取
替えを含む鉄骨耐震ブレース増設工事11箇所、鉄筋コンクリート造耐震壁増
設工事4箇所等を含む工事に対してこのような厳しい中間工期を設定するにお
いては、安全作業、施工品質の確保等の観点から十分な検討を行い、必要に応
じて外付け耐震ブレース工法の採用による「居ながら施工」が可能な工法の検討
が設計当初の段階からなされていることが望まれる。
3) 契約にかかわる書類について
契約書類としての請負契約書、請負契約約款、設計図書(設計図、設計書、特
記仕様書、標準仕様書、工事説明書、質疑回答書)、請負契約後に提出すること
になっている請負代金内訳書と工程表は整理・保管されており、現場代理人、
主任技術者、監理技術者の届出も規定通りなされていることが確認できた。
また、前払金保証証書、西日本建設業保証㈱の履行保証証書、建設工事保険
証書、火災保険証、損害賠償保険証書、労働災害保険成立票、建退共証紙納付
書、工事実績情報登録、監督員の通知についても、漏れなく処理されているこ
とが確認できた。さらに、施工体制台帳、施工体系図、下請業者届けについて
5
も適正な処理が確認できた。
1.3 工事着手後の書類に対する所見
(1) 「施工管理」について
1) 施工計画書について
総合施工計画書および工事別施工計画書が漏れなく作成されており、適切な
施工管理の実施がなされていることが伺える。
工事管理をより計画的に行うために、総合施工計画書に添付する基本工程表
には官公庁届出(労基署、消防署、市、警察署)、監督員に関連する承諾、報告、
協議、試験・立会い、安全管理活動の各種行事等の予定を記載されており、適
切な施工管理がなされたと思われる。
2) 工程管理について
当工事は、学校施設に関わる工事であり、学校の教育活動に支障をきたさな
いように非常に厳しい短工期での中間工期が設定されていた。品質および安全
を確保した上で適切な工事工程の消化を期すためには、適確な工程管理が必要
である。工程管理は、全般的には基本工程表とこれをもとにした月間工程表、
毎週の定例打合会で使用する週間工程表を作成して行われており、打合記録か
らも適切な工程管理の実施が認められた。しかし、当初の中間工期までの1.5
ヶ月の間については複数の工種が錯綜する状況にあり、特に耐震ブレース工事
と外部建具改修工事に関しては安全作業や施工品質の確保のために日割り工程
による詳細な工程計画とそれを補完するための盛り替えを含む仮設足場計画を
行ったことが認められない。今後はこのような事例については、詳細な検討を
行うよう請負者を積極的に指導することが望まれる。
3) 品質管理について
ⅰ.「使用材料の承諾及び試験・検査等」について
設計図書に指定されている使用材料の承諾記録や試験検査項目に対する報告
書が整理保管されており、適切な監理がなされていることが認められた。
ⅱ. 品質計画について
工事別施工計画書に記載する品質計画は品質確保のために非常に重要であり、
監督員の承諾事項である。管理項目、管理値、測定方法、測定頻度、管理値を
外れた場合の処置法等を整理した施工品質管理表の作成や管理記録の書式、整
理保管について明確にしておく必要がある。請負者に対する積極的な指導が望
まれる。
ⅲ. 承諾、提出、報告、協議等について
これらについては、毎週金曜日に開催される工程会議で確認されていること
が打合記録で認められ、その実施記録も整理保管されていることが確認できた。
6
ⅳ. 工事写真について
工事の出来形や品質を確認し、検査における重要な記録資料となり、工事完
了後においても施工時における問題が生じた場合の重要な証拠資料として利用
されることになる工事写真が適確に撮影され、整理されているのが確認できた。
特に形状・寸法の確認を要するものについてはリボンテープを当てて、黒板に
形状・寸法等の必要事項を明記して撮影されており、適切な撮影がなされてい
ることが認められた。一部において、将来の不具合発生に伴う処置計画の参考
資料とする等の目的で撮影箇所を特定する必要が生じた時に、撮影箇所を特定
することが困難なものがあり、説明書きを充実することが望まれる。
4) 各工事について
当該工事の外壁改修工事、防水改修工事、建具改修工事、塗装改修工事、耐
震改修工事等については、それぞれ工事別施工計画書が作成され、必要事項が
記載されていることが認められた。しかし、監督職員の承諾事項である品質計
画(品質管理方針と管理項目の選定、その管理値、測定方法、測定頻度、管理
値を外れた場合の処置等が記載された施工品質管理と管理記録表およびその運
用)については記載が不十分であり、改善が望まれる。
以下に個々の工事における気付き事項を記す。
1) 仮設工事について
仮設工事に関しては当工事のように工事別施工計画書の作成が省略されるケ
ースが多いが、工事内容(共通仮設、直接仮設)と設置計画、施工図作成・監督員
への提出・工区ごとの設置や解体時期等が記載された実施工程表、管理体制、
工事手順、安全管理計画(安全作業手順等)、有資格者等が明記された仮設工事
施工計画書とそれに基づく総合施工計画図を作成し、周知徹底して作業が行わ
れることが望ましい。
直接仮設工事として施工された外部足場に関しては、特記仕様書に枠組足場
を設ける場合は手すり先行工法とし、施工図は監督職員の承諾を受けることが
明記されていたが、該当する書類が確認できなかった。改修工事における外部
足場は、鉄骨ブレースの吊り込み作業や外部建具改修工事、外装改修工事等の
異なった作業に供せられるので、事前の十分な検討に基づく施工図の作成とそ
れによる工事施工が重要であり、今後の工事での善処が望まれる。
2)耐震補強工事について
鉄筋コンクリート耐震壁増設工事に関しては、生コン工場の選定、計画調合
表、試練り等に関する監督職員の承諾事項が適切に整理・保管されていなかっ
た。今後の工事では善処が望まれる。
鉄骨ブレース補強工事に関して、鉄骨製作工場選定に関わる監督職員の承諾、
溶接部の品質管理記録や試験検査記録の提出、施工図の提出等に関わる文書等
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が整理保管されており、適切な工事管理がなされたことが認められる。
しかし、使用材料の管理については流通段階における商社等による原品証明
書、製作工場による鋼材使用証明書等による小口数量に関わる適切な使用材料
の管理を行うように指導することが望まれる。
3) 防水改修工事について
防水層の施工では、実際の施工段階において監督職員が適切な時期に随時、
検査を行うとともに、請負者は監督職員の随時立会記録を提出することとされ
ている。しかし、この記録が整理保管されていなかった。今後は、いったん漏
水が発生したときに対策を講じることが極めて難しい防水工事の重要性をよく
認識して随時検査を適切に実施し、その記録を整理保管することが望まれる。
4) 外壁改修工事について
ひび割れ処理に関しては、設計図書において、ひび割れ幅に対応する補修工
法の区分の記載がなされているにも拘らず、請負者の施工前調査でその区分ご
とに識別したひび割れ補修施工図の作成と、施工結果(例えば、各々のひび割
れごとのエポキシ樹脂注入量)の報告がなされていなかった。また、鉄筋腐食
による錆汁の滲出した部分についてのひび割れ図の作成や工事写真等の施工記
録の作成が不十分である。これらについては重要な下地処理であることを認識
して今後の施工監理に反映することが望まれる。
5) 外部建具改修工事
施工計画書、製作図の製作要領書等の書類が概ね揃っており、適切に製作・
取り付けがなされたことが認められる。しかし、製作業者から提出される使用
材料の規格証明書に関しては、流通段階の原品証明書が認められたが、製作工
場が作成する鋼材使用証明書が欠落していた。2)耐震補強工事 で既述したよ
うに適切な材料管理を行うことが望まれる。
6) 吹付けアスベスト除去工事について
アスベスト除去工事施工計画書や工事写真、測定記録を含む施工記録により、
適切な工事施工がなされたことが確認できた。具体的には次の事項の確認がで
きた。
・官公署届出事項である吹き付けアスベストの建設工事届、特別管理産業廃棄
物管理責任者設置報告書、特定粉塵排出等作業実施届
・施工業者としての「工事に相応した技術を有することを証明する資料」、除去
作業管理者としての石綿作業主任者証の写し、特別管理産業廃棄物管理責任者
としての講習受講証の写し
・工事写真
・除去処理作業従事者の安全衛生管理に関する法で定める健康診断記録
一般健康診断(6ヶ月以内毎)
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塵肺健康診断(3年以内毎)
アスベスト健康診断(6ヶ月以内毎)
・アスベスト廃材に関わる特別管理産業廃棄物としての収集・運搬、最終処分
委託契約締結書と許可証
7) エレベーター設置工事について
施工計画書、実施工程表、身体障害者用付加仕様書、工事写真、日本エレベ
ーター協会の標準書式による試験成績表等の書類が漏れなく確認でき、適切な
工事施工がなされたと認められる。
竣工引渡しに際して受領することになる完成図書、保全関連図書、保守工具、
付属品・予備品等に関して請負者およびメーカーと詳細な調整・確認を行うこと
が望まれる。なお、保守管理業務の委託に際しては、緊急時の対応(特に、各
所で停止事故が数多く発生することが予想される大地震で、エレベーター内に
児童が閉じ込められた場合の措置)についても対応策を詳細に確認することが
望まれる。
8) 安全・環境管理について
ⅰ. 労働安全管理活動に関しては、総合施工計画書に記載された完全管理の章
に基本方針、重点管理活動項目、安全協議会や安全大会の実施、新規入場者教
育、ツールボックスミーティング等に関して記載されており、その実施記録で
ある安全日誌、ツールボックスミーティング、新規入場者教育を含む実施記録
も漏れなく整理保管されており、安全管理に関する積極的な取り組みが確認で
きる。
外部足場の労働基準監督署への設置届も、法令遵守のもとになされているこ
とが確認できた。
ⅱ. 改修工事に伴う仕上げ材等の除却作業後、施工アンカーのための穿孔作業
等で発生する騒音や粉塵対策としては、主として学校関係者との連絡調整によ
り作業時期の調整や外部足場への防音養生シート張りなどで対処しており、適
切な対応がなされていることが認められた。
ⅲ. 現場周辺への工事災害防止対策については、請負業者決定後に近隣住民・
自治会に対して挨拶文を手渡すと共に、工事車両の誘導員の配置等に関する工
事内容の説明を行い、工事災害防止対策に関する理解を得ており、適切な対応
がなされたことが認められた。
ⅳ.環境管理について
建設廃棄物の処理はマニフェストで確認することとされている。2000年の改
正で確認する範囲がそれまでの中間処理終了時から最終処分終了時までに拡大
され、2005年の改正で記載事項が運搬や処分の担当者の氏名だけでなく受託し
た業者の氏名または名称の記載が義務付けられ、年を追うごとに厳しくなって
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いる。このような規制の強化の中で、当工事においては産業廃棄物処理計画書
が適切に作成され、委託監理者による中間処理場、最終処分場、運搬経路の確
認が現地で実施されていることが記録写真で認められた。また、マニフェスト
による管理も、D票、E票が滞りなく回収され、整理保管されており、廃棄物
の処理及び清掃に関する法律に準拠した適切な産業廃棄物の処理がなされてい
ることが確認できた。
しかし、委託契約書、処分業許可証、収集運搬許可証は完備していたものの、
中間処理の委託契約書に最終処分場の明記と最終処分地の許可証の添付がなか
った。上記の法改正の趣旨に則って適切に処理することが望まれる。
9) 「工事監理(監督)」について
ⅰ.工事監理業務の通知について
監督職員および委託工事監理者の行う工事監理業務については、請負者に対
して書面で通知することになっているが、その書類が確認できなかった。監理
業務指針等を含めて文書での伝達を実施されたい。
ⅱ. 工事監理業務の実施状況について
工事監理業務は、公共建築工事標準仕様書、公共建築改修工事標準仕様書、
建築工事監理指針、建築改修工事監理指針に準拠して実施されている。具体的
には、監督職員、委託工事監理者、請負者および学校関係者が出席して毎週金
曜日に開催する定例会議で、予定されている試験・検査の立会日や調整を要す
る事項の抽出、調整結果の確認等を行っており、円滑な工事の消化に大いに寄
与していることが整理・保管された議事録で認められた。
ⅲ. 工事監理活動は、整理・保管されている監理日報、監理月報で確認できた。
工事監理業務委託契約書では、詳細に監理業務の内容が明記されており、更に
は委託工事監理者の業務日数も概ね現場に常駐できる程度に計上されている。
しかし、請負者の監督職員に対する承諾、提出、報告、協議等に関してその時
期や内容等に適切さを欠く点が認められる。工事監理業務の適切な遂行のため
に監督職員と委託工事監理者は緊密な調整のもとに、効果的かつ効率的に監理
業務の実施に向けた取り組みを行うことが望まれる。
2. 現場施工状況調査における所見
2.1 総括的所見
書類調査に引き続いて行った現場施工状況調査は、すでに施工出来高が約
100%に達しており、工事事務所で保管している書類も書類調査において確認し
ていることから出来形の確認を行う形になった。
施工出来形の調査により、概ね設計要求品質を確保した工事施工が実施され
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ていることが認められた。以下に、現場施工状況調査における気付き事項を記
す。
2.2 現場施工状況調査に関する所見
1) 改修工事に伴って発生する室内既存部分の汚損跡(特に、床面におけるモル
タルの付着跡)は、殆ど見受けられないことから工事着手前の養生および工事完
了後のクリーニングが適切になされたことが認められる。
2) 耐震改修工事に関しては非常に良い仕上がりであり、適切な工事施工が実施
されたことが認められた。なお、鋼管ブレ-ス端部の木工事との取り合いはき
わめて複雑のために仕上がりも良くない。木工事の納まりが簡潔になるように
施工図段階で調整しておくことが望まれる。
3) 屋上の防水改修工事に関しては、パラペット立ち上がり部のトップコート面
にひび割れに沿ったと思われる鉛直方向の線状の変色(白華現象による白色化)
が数箇所認められた。すでに笠木を含めて防水層で覆っているので防水膜の劣
化が進むことは無いと思われるが、経過観察により必要に応じて適切に対処さ
れたい。
4) 外壁改修工事に関しては、吹き付け材の飛散のために校舎一角の屋上防水面
が広範囲に汚損していた。洗浄などのクリーニングは行ったとのことであるが、
トップコートを再度塗布して仕上げの補修をすることが望まれる。今後は、吹
き付け工事区域を局所的にブルーシートで粉塵飛散防止の養生を徹底して行う
ことが望まれる。
また、一部に下地処理が不十分なために下地の凹凸が仕上り面に現れている
箇所が認められた。塗装・吹き付け等の仕上げ工事においては下地処理の程度が
仕上りに大きく影響することに留意して工事監理を徹底することが望まれる。
5) 外部建具改修工事に関しては、シーリング幅も設計寸法どおりに確保されて
おり、開閉、施錠についてもスムーズに行うことが出来た。非常に良い仕上が
りであり、適切な工事施工が認められた。
6) エレベーター新設工事に関しては、試乗により昇降時の動作、停止時の床面
のレベル差、身体障害者用付加設備の取り付け状況を確認したところ、いずれ
も良好な工事施工が認められた。
7) トイレ改修工事に関しては、水栓器具、鏡、トイレブース等の取り付け状況
を確認したところ、いずれも良好な工事施工が認められた。
なお、壁隅角部の縦シールと小便器用立ち上がり壁頂部の水平シールの一部
にシーリングが途切れている箇所が見受けられたので、補修を指示されたい。
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