平成 28 年 3 月|グローバル政策&ストラテジー研究大学院(GPS)| カリフォルニア大学サンディエゴ校|ジャパンフォーカス部|レイノルズ麻矢 1945 年、2014 年、そして 2015 年の年齢制限 の引下げは同明国などの年齢制限と標準化させ る狙いがある。しかし、根本的な理由は日本政 治の展望である。 現在の投票者は 40 代、50 代 以上の国民が大半である。それは、少子高齢化 の問題もあるが、今の若者は政治に対して無関 心だと言われている。 イメージ:ジャパン・タイムズ 年齢引き下げの背景と理由 昨年 6 月 19 日、日本国会は公職選挙法を改正 し、選挙権の年齢制限を 20 歳から 18 歳へ引下 げた。 [1] それにより、選挙権を持つ日本人は 240 万人も増え、 今年の夏の参院選から投票で きる。 [2] 「日本国憲法の改正手続に関する法律」 より、 憲法改正の投票権の年齢制限は 2014 年 20 歳から 18 歳へ引下げられた。今回 選挙権の 年齢制限が引き下げられたのは、憲法改正に関 する投票権の年齢制限と一致させるためである。 選挙権の法律が変わるのは 70 年ぶりとなる。 1945 年、年齢制限は 25 歳から 20 歳へ引下げら れ、女性も選挙権が与えられた。[3] イメージ:読売新聞 2014 年の衆議院の投票率では、60 代の 70% に比べ、20 代は 33%だった。[4] 1990 年の衆議 院の投票率では、20 代は 58%で、現在の 20 代 の投票率は 25%も減った事になる。その結果、 各党の政策は高齢者が興味を持つ年金や介護な どの問題に向けられ、若者に向けた教育や子育 ての政策が不十分となる。その為、若者の投票 率や政治に関しての興味の拡大につながる選挙 権法が変わった。 イメージ:読売新聞 参考文献 : 1. 総務省 (2016) 「選挙権年齢の引下げについて」選挙 ニュース一覧 選挙制度 2. Umeda, Sayuri. "Global Legal Monitor." Japan: Voting Age Lowered from 20 to 18. Web. 14 Mar. 2016. 3. Hueston, Dave. "Will Lower Voting Age Bring Youths to Polls? | The Japan Times." Japan Times RSS. Web. 14 Mar. 2016. 4. 読売中高生新聞 (2015)「18 歳選挙権Q&A・・・有 権者 240 万人増」 選挙権の年齢引下げの是非 法律が変わると、日本社会へ予想外の影響が およぶ可能性がある。選挙権に関する年齢制限 の引下げも同じである。以下に、選挙権の年齢 引下げの是非に関する点を幾つか探る。 イメージ:NHK 解説委員会時論公論 非 イメージ:日本内閣府 是 まず、18 歳と 19 歳の若者は、新しく選挙に 参加できるようになった。[1] 選挙権が与えられ、 若者は以前より政治への興味を持ち、社会への 責任感を持つ事もあり得る。政治や選挙に関し て学ぶ機会が増え 、政治への参加に意欲を持つ 若者が増える確率が上がる。[2] 少子高齢化や政 治に対して無関心な若者が多い為、今の日本の 国内政策は主に高齢者に向けられている。若者 の 無関心がさらに悪循環し、「シルバー・デモ クラシー」と呼ばれるほど日本社会の現象とな っている。年齢の引下げは、少しずつ若者の政 治に対する 関心に繋げ、各党の政策が子育てや 教育など若者の意見が反映される範囲に広がる 事が期待される。[3] 年齢制限の引下げは綺麗事だけではない。ま ず、選挙法違反が疑われる国民は起訴される。 今までの年齢制限は 20 歳の成人だったが、今年 から成人ではない 18 歳や 19 歳の高校生や大学 生も起訴される事になる。選挙権はとても深刻 な権利であることがわかる。その他、日本の若 者は政治に対して無関心だという意見もある。 [4] 20 代や 30 代の投票率が極めて低い為、年齢制 限を変えるだけで投票率は本当に上がるのだろ うか。これは年齢制限の問題ではなく、日本社 会と政治に根本的な問題があるではないのだろ うか。最後に、今まで政治や社会的責任感に対 して無関心だと言われている若者に政治的判断 力を与えていいのか。[5] 参考文献 : 1. "Diet Enacts Law Lowering Voting Age from to18 from 20” Japan Times RSS. Web. 14 Mar. 2016. 2. Hueston, Dave. "Will Lower Voting Age Bring Youths to Polls? | The Japan Times." Japan Times RSS. Web. 14 Mar. 2016. 3. Sugawara, Taku. “Will Lowering the Voting Age Change Japanese Politics?” Nippon.com. Web. 25 Sep. 2015 4. NHK 解説委員会(2014) 時論公論 「政治とどう向き 合う〜若い世代は」安達宜正 5. マジですか。的なニュース (2015)「選挙権を与える年 齢を18歳に引き下げるメリット・デメリット。とい うか引き下げろ。」 仕組み、政治についての話し合いや討論の手法 など広範である。 イメージ:ジャパン・タイムズ 教育への影響 1969 年、大学生や高校生の様々な学生運動 が発生した後、日本の教育者は政治について個 人的な意見を一切教えないよう政府に指示され た。[1] その為、政治的な討論などの教育が禁止 されてしまった。教育の存在がない為、政治や 選挙が分かりにくく、現在の若者の無関心につ ながったと言う意見ある。その結果として新た な選挙権を持つ高校生や大学生に政治や政治討 論についての教育が必要だ。[2] そのため昨年、 文部科学省は国の教育方針として 46 年ぶりに高 校生の政治活動を容認すると発表した。しかし、 学業へ支障とならないよう学校側が責任を持っ て活動を指導する事になる。政治に関する新し いカリキュラムを実施する上、若者の政治や社 会へ対する態度を形作る教育者の責任が重くな る。それだけではなく、受験生でもある高校生 に国政に参加する責任が加わり、その指導を監 督する責任も教育者へ加担するだろう。[3] 去年の9月、選挙権の年齢引下げに対応する 為、総務省と文部科学省の協力により高校生用 の教材が出版された。 [4]「私たちが拓く日本の 未来」は、学生の政治や選挙等のカリキュラム の「一層の充実を図るため」に書かれた。教材 の内容は、権利について考える事、政治と選挙 イメージ:ジャパン・タイムズ 夏の参院選は数ヶ月後に行われる予定であり、 今回初めて投票権を持つ 10 代や 20 代の国民の 投票率が全国的に注目される。若者はどんな理 由で、どんな政党や政策を優先するのだろうか。 しかし、政治教育の影響が実感される前に時間 がかかり、若い国民が政治への興味が深まるま で時間がかかる。時間と共に、政治参加率と年 齢制限の引下げの是非が見えてくるだろう。 イメージ:文部科学省 参考文献 : 1. “Voter Ed for High School Students” Japan Times RSS. Web. 17 Oct. 2015. 2. 民主党トップページニュース (2015) 「18 歳選挙権・ 主権者教育の推進を政府に申し入れ」 3. 産経ニュース(2015)「高校生の政治活動、一部容認 18歳選挙権受けて通知46年ぶり見直し文科省」 4. 文部科学省・総務省 (2015) 副教材「私たちが拓く日 本の未来」
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