わかみず会第295回発表資料 金融世界覗き:確率微分方程式および パワーオプション(Power Option)の価格計算 (その1) 黄 文峰 (Dr.) 2012年2月1日(水) 株式会社アイヴィス東方システムズ 1 目 次 1. 2. 3. 4. 5. 6. 金融デリバティブ、オプション取引 幾何ブラウン運動と金融工学 確率微分方程式、伊藤の補題 ブラック・ショールズモデルとノーベル経済学賞 パワーオプションの価格計算 検証手法:モンテ・カルロ法、その他 2 1. 金融デリバティブ、オプション取引 ー デリバティブ(Derivative) • 派生証券のこと。株式や債券などの原証券の値の変化に依存 してその値が変化する証券である。 例: 日経株価指数300オプション、日経株価指数300の価格を基本 的な変数として、これに依存してオプションの価格が決定される デリバティブである。 サブプライム住宅債券 3 1. 金融デリバティブ、オプション取引 ー オプション(Option)取引 • デリバティブの一種。 ある商品を、将来のある期日までに、その時の市場価格 に関係なくあらかじめ決められた特定の価格 (=権利行使価格)で買う権利、又は売る権利を売買する。 • 売買種類: Call(買う) Put(売る) • 目的:リスク回避(ヘッジ、Hedge) 。 4 1. 金融デリバティブ、オプション取引 ー オプション(Option)取引の例 1. Call: 株現在価格:100円。 6か月後、 130円で買う権利。権利金1円。 シナリオ1: 6か月後株価150円。 130円で買えるので、 1単位の利益: 150-130-1 = 19円 (19倍!) シナリオ2: 6か月後株価70円。 130円で買うより、市場取引のほうが得策 権利放棄による1単位の損失: 1 円 5 1. 金融デリバティブ、オプション取引 ー オプション(Option)取引の例 2. Put: 株現在価格:100円。 6か月後、 80円で売る権利。権利金1円。 シナリオ1: 6か月後株価50円。 80円で売れるので、 1単位の利益: 80-50-1 = 29円 (29倍!) シナリオ2: 6か月後株価120円。 80円で売るより、市場での取引のほうが得策 権利放棄による1単位の損失: 1 円 6 1. 金融デリバティブ、オプション取引 ー オプション(Option)取引の例 3. オプションによるリスク低減 株現在価格:100円。保有株数:20万単位。 総時価: 2,000万円 6か月後、 80円で売る権利(Putオプション)。 権利金1円×20万=20万円。 6か月後株価50円。 80円で売れるので、 損失: (100-80-1)×20万 = 380万円 Putオプションがない場合の損失: (100-50)×20万 = 1000万円 7 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー 株価の実例 • 野村ホールディングス(株) 8 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー 株価変動の一般化: ブラウン運動 X(t) 6 5 4 3 2 1 0 -1 0 200 400 600 800 1000 直線: 時間に安定して依存部分 25 20 15 10 5 0 -5 0 -10 -15 -20 -25 -30 200 400 600 800 1000 曲線: 時間によってランダムな変動部分 青=ピンク(左)+ピンク(右) 9 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 特徴: 動きが正規分布 変動の平均値 0 変動の分散は経過時間 t の倍数 10 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー 標準ブラウン運動: 任意時点 t : 1.正規分布 2.変動の期待値 μ = 0 3.変動の分散 σ2 = 経過時間 t 11 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー ブラウン運動の数式化 X(t) 6 5 Xt = μ t + σ Wt 4 3 2 1 0 Wtは標準ブラウン運動 -1 0 200 400 600 800 1000 12 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー 幾何ブラウン運動 logXt = μt + σWt または Xt = exp(μt + σWt) 13 2. 幾何ブラウン運動と金融工学 ー ブラウン運動の鏡像原理 14 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー ブラウン運動の微分方程式(形式上) dXt = μdt + σdWt Wtは標準ブラウン運動 ー 幾何ブラウン運動の微分方程式(形式上) d logXt = μdt + σdWt 15 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 確率微分方程式の注意点 d logXt = μdt + σdWt dX t dt dWt X 16 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 幾何ブラウン運動の微分方程式(形式上) d logXt = μdt + σdWt dX t dt dWt X × 原因:(dWt)2 = dt ! 17 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー その理由 d logXt = μdt + σdWt y = d logXt とする。 つまり、X = ey。 dy = μdt + σdWt Xをティラー展開すると、 18 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー その理由(続き) となる。 (dWt)2 = dt 19 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 伊藤の補題 確率過程X(t)が dXt = μ(t)dt + σ(t)dWt に従う場合、 X と t の関数である確率過程 Y (X, t) は Y Y 1 2Y Y 2 dY d t dWt 2 X 2 X X t に従う。 20 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 伊藤の補題(補足説明) となる。 21 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 伊藤の補題(補足説明) 特に、先ほどの例で d y = μdt + σdWt y = d logXt とする。 つまり、X (y,t )= ey。 ここでのXは伊藤の補題のY、 yは伊藤の補題のXと読み替えて代 入すると、 となる。 22 3. 確率微分方程式、伊藤の補題 ー 伊藤の補題 数学者。 京都大学 プリンストン高等研究所 コーネル大学 オーフス大学 伊藤清(1915~2008) 23 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー マイロン・ショールズ (Myron S. Scholes) 1941年7月1日 – 現在スタンフォード大学教授。 1997年にブラック-ショールズ方程式を理論面から 完成させたロバート・マートンとともに、ノーベル経 済学賞を受賞。 24 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ブラック・ショールズモデル 株価の確率過程(Sは株価) dS rdt dW S Sに基づいた派生証券 f (S,t) が満たすべき方程式? 25 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ブラック・ショールズモデル 株購入の単位数: f S 派生証券売出の単位数: 1 f (S , t ) 価値: f S 1 f ( S , t ) S 26 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ブラック・ショールズモデル Δt 時間内の価値変動(伊藤の公式利用): f 1 2 f 2 2 S t 2 t 2 S 同値のものが Δt 時間経過後の無リスク金利: f r S 1 f ( S , t ) t S 27 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ブラック・ショールズモデル 無裁定仮説: Δt 時間内の価値変動=無リスク金利 f 1 2 f f 2 2 S t r S f ( S , t ) t 2 t t 2 S 28 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ブラック・ショールズ微分方程式 f 1 f 2 2 f r f (S , t ) S r S 2 t 2 S S 2 29 4. ブラック・ショールズモデル とノーベル経済学賞 ー ショールズ本人の投資実績 ・1997年にブラック-ショールズ、ロバート・マートン ノーベル経済学賞を受賞。 ・1998年、この2人が経営陣に名を連ねた巨大ヘッ ジファンドLTCM(Long Term Capital Management) 倒産。 2008年、ショールズ自身が設立したヘッジファンド が一年間に38%の損失を出し解約を停止、LTCM に続く2度目のファンド運用失敗。 30 5. パワーオプションの価格計算 31 6. 検証手法:モンテカルロ法、その他 32 ご清聴ありがとうございました。 33
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