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巻頭言
今春、現代社会学科は2回目の卒業生を送り出すこととなりました。
昨年3月11日の未曽有の大震災とその後の混乱の中で、粘り強く勉学に励み、こ
の度、その成果を卒業研究という形で纏め上げた現4年生の意思と努力、さらに指導
に当たられた先生方のご尽力に心より敬意を表したいと思います。
また、何よりも学生達の学業生活を支えて下さったご家族の皆様に対して、深く感
謝申し上げます。
しかし、本来であればこの要旨集に名前を連ねるはずであった本学科の学生の一人
が大津波により行方不明となったという哀しい現実もあります。
この機会に、本学科の関係者のみならず、東日本大震災で亡くなられた全ての方々
に現代社会学科として改めて衷心より哀悼の意を表しますと共に、被災された皆様に
対してお見舞いを申し上げます。
さて、本学科は、5年前に現代社会を総合的に学べるカリキュラムをもつ東北で初
めての学科として誕生しました。
その後、関係者の支援に支えられて順調に発展し、本年度は「現代社会を総合的か
つ専門的に学べる」学科に向けて新たな一歩を踏み出したところです。具体的には現
代社会を様々な視点から総合的に理解する能力を学生に身に付けさせるために、幅広
く社会科学全般を教授すると同時に、学問として確立された個別社会科学(法学、経
済学、経営学、社会学)の基本的枠組・理論を徹底して修得させようと考えています。
今日、日本社会自体が急激なグローバル化の中で大きく変化することを求められて
います。その中で、大学教育の目標・内容も社会の変化に応じて修正されていくのは
当然のことです。
しかし、同時に大学教育が一時の流行や思いつき、大勢への迎合にのみ終始するよ
うになれば、それはもはや高等教育とは言えないと考えます。
高等教育はあくまでも高い学識と品格と見識を築くべく努力してきた、そして今も
努力を続けている教師と学生との個人的信頼関係に基づいて初めて成果を挙げるもの
であると考えます。
本学科は、今後も引き続き、少人数教育、学生と教員の家族的関係という特色を生
かしつつ、より高度な学問の教授に努めてまいりたいと考えています。
また、本学科は東日本大震災の被災地の大学として、その経験を前向きに受け止め、
ローカルかつグローバルな「共生社会」の実現に積極的に参画する、強い意志と深い
愛情を持つ人材の育成を目指そうと決意いたしました。
もし、その成果の一端でも、本要旨集に現れているとすれば、望外の慶びです。
しかし、教育は一朝一夕で成果を期待できるものではありません。
まだまだ未熟な、そして不十分な内容・水準の論文も少なくありません。
本学科の今後のさらなる発展のために、皆様の忌憚の無いご意見をお願い申し上げ
て、巻頭の挨拶とさせていただきます。
目 次
木 村 清 ゼミ
- 1 -
杉座 秀親 ゼミ
- 5 -
高 橋 真 ゼミ
- 9 -
小田嶋 充 ゼミ
- 22 -
森田 明彦 ゼミ
- 33 -
黄 梅 英 ゼミ
- 42 -
福井 真司 ゼミ
- 54 -
栗原 由紀子 ゼミ
- 58 -
張 涛 ゼミ
- 70 -
油 川 洋 ゼミ
- 84 -
目次
木村
清 ゼミ
- 1-
インターネット時代の「リアル書店」に関する考察
指導教官 木村 清
現代社会学科 4 年 A クラス 0813112 佐藤 直樹
1. はじめに
インターネットの普及により、書店は『リアル書店』と『ネット書店』に区別され始め
ている。リアル書店とは、商店街や駅の構内など、実際に足で訪れることのできる書店だ。
対してネット書店とは、インターネット上で書物を購入し、後日自宅等に届ける、いわば
通信販売を行うネット上の店舗のことである。どこでもネット環境があれば気軽に書物を
購入でき、目当ての書物の在庫が確認できるなど、ネット書店にはメリットが多く、リア
ル書店を脅かす存在となっている。さらに、スマートフォンの普及、タブレットタイプの
新しい電子機器の登場によって、電子書籍市場も拡大の一途を辿っている。そのような中
で、現在のリアル書店には何が求められているのかということを、実際の店舗を例に挙げ
て考察していく。
2. 調査の概要
本稿では、まずリアル書店の店舗数や、店舗の平均坪数の推移などを過去数年間と比較
する。次に、世界最大の「本の街」とも呼ばれている、東京・神保町の書店街を例として
挙げ、リアル書店存続のための取り組み事例を調査する。神保町では、書店街への客足が
落ちる中、書店間での相互検索サービスを運用するにあたり、タッチパネル式の検索端末
を設置したり、毎年街全体で本のイベントを行ったりと、多くの人を引き付ける試みを行
っている。また、渋谷に展開する出版・編集の機能も備えた新しいタイプの書店や、その
他の書店等も例に出し、今後の展望を考察する。
3. 考察
購入する目的の書物が決まっている場合、検索速度や在庫の確認などの観点からすると
ネット書店を利用した方が、効率が良い。電子書籍も、場所をとらず、文字サイズも変更
でき、劣化することもないので、利便性が高い。どちらもリアル書店から客足を敬遠させ
る要因となりうる。さらに、インターネットに慣れ親しんだ世代が社会の中心となってい
くことで、リアル書店の利用はますます減少すると予測できる。そのような状況下で、い
かに「リアル書店に行かなければいけない理由」を創り上げるかが、存続の課題となる。
そのためには、ただ書物を並べるだけでなく、書店自体に魅力がなければならない。例え
ば、店主独自の観点で選出した書物の区画を設けることや、人目を惹く販促物の設置で、
新しい本との出合いを誘発する場作りが挙げられる。店員とのコミュニケーションがある
ということもリアル書店ならではであり、人材の育成に力を入れることも効果的だ。書物
を購入する楽しみを与えられるような工夫が必要であり、本稿で具体的な提案を試みた。
- 2-
テレワークの現状と課題
指導教官
現代社会学科
第1章
4 年 B クラス
0813217
木村
千葉
清
一樹
はじめに
日本では少子化が続いている。少子化の影響により今後労働力人口の減少が見込まれて
いる。そのため日本が現状のまま進むのであれば、高齢者が増えるばかりであり、一方で
労働者は減少するばかりとなる。その過程で起こりうるのが労働者の負担増加だ。労働者
の負担を少しでも緩和するためには、労働者一人一人の労働生産性の向上が欠かせないの
ではないだろうか。
私は労働生産性の向上に当たって、情報技術を用いた改善方法であるテレワークについ
て取り上げた。
第2章
テレワークとは何か
第 2 章 で は テ レ ワ ー ク と は ど の よ う な も の な の か 、テ レ ワ ー ク の 類 型 な ど に つ い て 取 り
上げる。テレワークとは「離れたところにいながらも、仕事ができる」ことを示す造語で
ある。従来のようなオフィスから離れ、自宅などで働くことを意味している。テレワーク
は、大きく雇用型と自営型という類型に分けられる。さらに雇用型は在宅型テレワーク、
モバイル型テレワーク、そして施設利用型テレワークに分けることができる。
これまで労働の多様化というと、フレックスタイム制やみなし労働制のように「労働時
間」に関するものばかりであった。しかし近年「労働をする場所」について取り上げられ
るようになった。これがテレワークである。
第3章
テレワークの現状
本章ではテレワークを行っている人はどれほどいるのか、テレワークを利用していない
人たちはなぜテレワークを利用しないのか、企業などにおけるテレワークの導入割合はど
れほどなのか、テレワーカーに求められる能力は何かについて記述した。次にテレワーク
を 利 用 す る に 当 た っ て 、労 働 者 、経 営 者 、社 会 、そ れ ぞ れ の メ リ ッ ト に つ い て 取 り 上 げ た 。
第4章
テレワークの課題
第 3 章 で は テ レ ワ ー ク の メ リ ッ ト に つ い て 取 り 上 げ た 。し か し こ の よ う な メ リ ッ ト が あ
るにもかかわらず、日本ではテレワークが一般に活用されていない。それはなぜなのだろ
うか。その理由としてテレワークに課題があるからだ。その課題は主に情報セキュリティ
の問題、労務・業績管理の問題、コミュニケーションの問題、コストの問題である。
第5章
テレワークが日本で普及しない理由
第 4 章 で は テ レ ワ ー ク そ れ 自 体 の 課 題 に つ い て 取 り 上 げ た が 、本 章 に お い て は な ぜ テ レ
ワークを利用しようと思わない人がいるのか、その理由は何かについて述べる。
第6章
おわりに
本 章 で は 第 2 章 か ら 第 5 章 ま で の 結 果 を も と に ま と め た 。そ し て こ れ ま で の 論 文 を 通 じ
て筆者が感じたこと。今後のテレワークのあり方について言及した。
- 3-
アニメによるまちおこし
指導教官
現代社会学科
4 年 D クラス
0813417
只野
木村
清
研一朗
はじめに
観光資源や自治体などに作られた立派な建物がない地域でも内容や中身がしっかりしてい
て 、そ の 内 容 を 周 り に 伝 え る こ と が で き れ ば 、多 く の 人 が 地 域 に 集 ま り 、ま ち お こ し が で き る
可能性がある。その内容の一つとしてアニメによるまちおこしがある。
本研究ではアニメによるまちおこしを分析し比較してこれからアニメを使ってまちおこし
をしていくのに必要なことを取り上げていく。
1章
まちおこしの現状
一般的におこなわれているまちおこしは、祭りや伝統工芸、伝統芸能を主体にした祭りや、
そ の 地 域 し か な い 商 品 の 開 発 な ど を お こ な い 人 々 を 集 め る も の で あ る 。そ の 中 に ア ニ メ を 使 っ
たまちおこしがある。
鳥 取 県 境 港 市 で お こ な わ れ て い る『 ゲ ゲ ゲ の 鬼 太 郎 』や 埼 玉 県 鷲 宮 町 で お こ な わ れ て い る『 ら
き☆すた』というアニメを使ったものである。
2章
アニメを使ったまちおこし
前 章 で 触 れ た 境 港 市 の 「 水 木 し げ る ロ ー ド 」、 と ア ニ メ 『 ら き ☆ す た 』 を 使 用 し た 鷲 宮 町 の
例を詳しく紹介する。
前 者 は『 ゲ ゲ ゲ の 鬼 太 郎 』の キ ャ ラ ク タ ー を 中 心 と し て 日 本 各 地 の 妖 怪 た ち を モ チ ー フ と し
た 銅 像 な ど 、多 数 の オ ブ ジ ェ が 設 置 さ れ て い る 商 店 街 で あ り 、オ リ ジ ナ ル グ ッ ズ な ど も 作 ら れ
ている。
後 者 の 鷲 宮 町 商 工 会 は 、『 ら き ☆ す た 』 の 町 独 自 の オ リ ジ ナ ル グ ッ ズ を 制 作 し た り 、 作 者 や
出演声優の鷲宮神社への公式参拝イベントを開催したりした。
3章
アニメを使ったまちおこしの比較
人 々 を 集 め る こ と に 成 功 し た ま ち お こ し は 、地 元 の 行 政 や 民 間 企 業 な ど に よ っ て 関 連 施 設 の
整 備 や ア ニ メ の キ ャ ラ な ど を 積 極 的 な 活 用 が 行 わ れ た 点 が あ る 。例 え ば 、ア ニ メ の キ ャ ラ ク タ
ー が ラ ッ ピ ン グ さ れ た 列 車 の 運 行 、記 念 館 、ア ニ メ に 登 場 す る キ ャ ラ の 家 を 再 現 し た ギ ャ ラ リ
ー な ど で あ る 。ま た 様 々 な イ ベ ン ト の 継 続 、地 域 住 民 の 積 極 的 な 参 画 な ど や 、ひ っ そ り と 訪 れ
た り す る フ ァ ン の 動 向 な ど を か な り 早 い 段 階 で 察 知 し て 、フ ァ ン と 一 緒 に ま ち を 盛 り 上 げ て い
くということがアニメを使ったまちおこしの秘訣なのだということがわかった。
終わりに
ア ニ メ を 使 っ た ま ち お こ し は 、ま だ ま だ こ れ か ら 成 長 し て い く も の だ と 感 じ た 。ア ニ メ を 使
ったまちおこしを新しく始めているところもあり、これからも増え続けるだろう。
ア ニ メ を 使 っ た ま ち お こ し を 発 展 さ せ る に は 、様 々 な イ ベ ン ト の 継 続 的 な 実 施 、商 工 会 な ど
が、ファンの動向を把握し、ファンと一緒にまちを盛り上げることが必要である。
- 4-
目次
杉座 秀親 ゼミ
- 5-
「自分史」-堆積する時間
指導教員名 杉座 秀親
現代社会学科 4 年 A クラス 0813104 遠藤 優実
「自分史」という「私」のこれまでの生き方を書き終えました。「私はどんな成長をしな
がら今にいたったか」を自分自身に問いかけると同時に、自分に向き合うことがゼミを選
択した目的です。しかし自分と向き合うということは、容易なことではありませんでした。
事実として固定されている過去を思い返しては、後悔することばかりで、何度生きなお
してみたいと思ったことでしょう。今まで避けてきたこと、触れないようにしてきたこと、
受け入れたくない事実等など、全て受け入れなければ私の「自分史」は始まりません。現
在の限られた健康な人間関係に囲まれて、今日が終われば当たり前のように明日も来ると
いう時間感覚が、過去を取捨選択する手段であることに気が付きませんでした。過去の束
を解きほぐす作業があっての今なのです。それゆえ、私の人生が全く個人的な体験である
ようにみえて、たとえば誕生日、父の日や母の日になど、自分も家族も気にとめることに
より、お互いの生き方や経験は他者の影響のもとにあるという社会性に通じていることが
わかりました。
例えば、自分史を書きながら「生」について考えさせられました。特に東日本大震災を
機会にそれを強く考えるようになりました。いま生きている私は、先にも述べたように、
何時までも当たり前のように生きていると信じていました。むしろ当たり前すぎてこんな
ことを考えてみることもありませんでした。しかし、震災に遭い、このあたりまえが覆さ
れました。津波で亡くなった方々の誰が、3 月 11 日に自分の死を確信していたでしょうか。
私自身が私の毎日に関わる人を亡くしたと仮定してみると、周りの人が何時までも健康で
生きているという「思い込み」を捨てなければなりません。寿命という表現は、生きる時
間の量に限界があることを示しています。また高齢化という表現は、時間が後戻りしない
ことを示しています。これらは私達が共通にもっている近代の時間感覚です。これまでの
私の 20 年余りの人生を整理するために書いた「自分史」は、結果的にこの近代の時間感覚
にたどりつくことにありました。
「死」が確実に訪れるその時は誰にもわかりません。それは明日かもしれないし、何十
年後かもしれません。その前に立つ私達は、どうせ死ぬのだから好きなことをして一生を
送ろう、という人生観をもつことができます。しかし、難しいことかもしれませんが、毎
日を出来るだけ後悔の少ないように、大切に過ごすよう心がける、という道も開かれてい
ます。自分の過去を振り返り後悔する。そして生きなおして見たい、と感じてしまうこと
は、時間は後戻りしないというだけでなく、それが記憶のなかに積もっていく性質をもっ
ているということでもあります。これからもふとした瞬間にこのことを思い出し、少しで
も納得できる「私の」物語を書き続けたいと思います。
- 6-
自分史 ―都市と消費―
指導教員名 杉座 秀親
現代社会学科 4年Aクラス 0813106 神野 沙織
卒研ゼミは情報化、都市化、消費化、グローバル化というキーワードを基に23年間の私の人生を自
分史としてまとめることが課題であった。
山形県米沢市で生まれた私は、幼稚園の頃は兄の影響で遊ぶ道具や内容は男の子のものが多かったが、
成長するにつれ家の中で遊ぶことが好きになり、性格もおとなしく引っ込み思案であった。しかし間も
なく仲良くなった友人がクラスの中心になって行動するような存在だったので、私も次第に影響されて
いき、性格も活発になり外で遊びいろいろなことに挑戦することが増えた。中学生になると、小学校の
合併により友人も増え、さらにいろいろな人達との交流を持つようになる。部活はソフトテニス部に入
り、ここで初めて先輩後輩の上下関係を学んだ。思春期ということもあり、「おしゃれな女の子」に憧
れてファッション雑誌などで情報を手に入れ、髪型や服や化粧などおしゃれに興味を持つようになる。
工業高校に進学した私は、それまで考えたこともなかった就職に直結した授業に戸惑った。就職して
社会人としての生活設計を立てなければならなくなったからである。社会人としてのビジョンも見えな
く、地元に工業系の職しかなくそれが嫌だった私は、遠回りをしたがなんとか大学に入学することがで
きた。人口9万人余りの米沢から、100万人を超える仙台で生活することになり、初めてアルバイト
を経験し、働いてお金を得る意味を自分なりに学んだ。しかしアルバイトと遊びに熱中してしまい、加
速的な記号の消費を特色とする都市の文化に、米沢にいたころよりもさらに規模を大きくして浸かって
しまった時期もあった。4年生になると、就職活動に東日本大震災が重なり、その中で思うように就職
活動に志向できなかった。
自分史を書き終え、これまでの経験からつくられてきた「私」という人間は、その時その時で関わっ
てきた他者からの期待、好み、願望の信号に影響されてきたことが分かる。他者の発言や考えを受け入
れ、気がつくと「私」が変わっていた、ということを子供の頃から繰り返してきた。卒業研究で与えら
れた4つのキーワードを反芻しながら、自分史を書き続けようと思っている。
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「自分史」-演技と時間意識
担当教員
現代社会学科
A ク ラ ス 0813123
杉座秀親
目黒有貴
卒業論文では、都市化、消費化、情報化、グローバル化が一層進む中で、私の誕生から
大 学 4 年 生 ま で の 22 年 間 を 自 分 史 と い う 形 で 整 理 す る こ と を 試 み た 。こ れ ら の キ ー ワ ー ド
を理解することで、私の成長が時代とともに変化してきてきたことを改めて認識する。
自 分 史 を 書 い て み る と 、私 た ち の 日 常 生 活 は 劇 場 に 例 え る こ と が で き る 。社 会 環 境 の 様 々
な場面で自分を変化させること、つまり対人関係において演技しながら、人生のストーリ
ーを構築している。例えば、特定の友人との関係一つを取っても、時間や場所、状況に応
じ て 関 係 が 変 わ る 。ま た 、ほ と ん ど の 人 が 学 校 と 家 庭 で は 自 分 の 行 動 の 仕 方 が 違 う だ ろ う 。
これが役割を演ずるということだ。意識しているわけではないが、私を取り囲む人々とそ
の状況に合わせ、自分を集団に適合させている。いかにすれば自分を自分らしくみせかけ
ることができるか、そのためにどのようにみかけとしての自分を演出するか、この連続が
自 分 史 を 貫 い て い る 。 現 代 社 会 に お い て 、「 演 技 」 は 生 き て 行 く 上 で の 戦 略 と も い え る 。
私たちは社会環境に応じて自分という形を変えている。それは中心を二つ持つ楕円の図
形を連想させる。自分を楕円に例えると、演じている私と、演じている私を見ている私と
いう二つの中心があるからこそどんな形に引き伸ばしても、元の形に戻ることが出来るの
である。しかし、私の存在は決して変わらないと思いがちであるが、現代社会は図形のよ
うに基準となる中心を固定させてはくれない。私たちは自分の物語を直接身近な他者と形
成するだけでなく、その多くの部分をメディアに負っている。自分の人生を物語として理
解していく時、誰に向かって語りかけるかによって、現実と幻想の区別がつかないことが
あり、これが現代を生きる難しさではないかと思う。
次に、自分史を書いてわかったことは、近代社会の時間意識は、直線的なイメージで流
れて変化して行くと同時に、限られた人生を生きるので、量として確実に過去は残るとい
うことだ。時間は流れて消えていくだけではなく、流れながら堆積する。私があることを
後悔する時、過ぎ去った時間が、記憶の中に堆積しているということが何よりの証拠だ。
それと、現在の状況によって過去は変わる。例えば解決できないような嫌な出来事が生じ
た 時 は 、ど う し て い い か わ か ら な い と 嘆 く 。し か し 、時 が 経 ち 現 在 か ら 過 去 を 振 り 返 る と 、
何故そんなことで悩んでいたのかと当時の自分の考えが幼く思えたり、笑い話にさえでき
るほどの気持ちになる。
「 現 在 に よ っ て 過 去 は 変 わ る 」と い う こ と も 、自 分 史 を 書 く こ と で
学んだことだ。
現在の私は、これまで関わってきた人がいるからこそ在りうる。ただ「私」を書くこと
で、私が完成したわけではない。私は量としての時間のなかで、これからも様々に変化し
ていくであろう。誰一人、同じ物語はない。皆それぞれ違う人生の物語があるのだ、とい
うことを「自分史を書く」という課題から学んだのである。自分を大切にすることがどう
い う こ と で あ る か 、 本 論 (卒 業 研 究 )を 書 い て 実 感 し て い る 。
- 8-
目次
高橋
真 ゼミ
- 9-
「政権交代が及ぼす経済政策の変更と実際の効果」
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
0813118
高橋
中村
真
彰太
<テーマ設定の理由>
昨 年 、東 北 学 院 大 学 と 行 っ た 合 同 ゼ ミ で は 、
「 政 権 選 択 は 経 済 を 変 え る か 」を テ ー マ と し
て 、 12 人 全 員 で 1 つ の テ ー マ に 対 し て 資 料 を 作 成 し 、 発 表 し た 。
しかし、卒業研究に比べれば、その期間は短い準備期間の中で、最終的には先生の手を
借りてバタバタと「終わらせた」感が強くあったと感じる。
あの時取り組んでいたテーマにより近いテーマを設定し、今度は自らでじっくりと時間
をかけた中で取り組み、今どのような政策が必要とされるのかについて見ていきたいと思
い、このテーマを設定した。
また、合同ゼミの際、調べていた結果として、ニュースや新聞で言われている政治につ
いての話を以前に比べれば理解して聞いている自分がいて、新鮮で面白かった。
これを 1 人で行うとなれば、より知識は増えていくだろうし、政治についての関心もよ
り 高 ま る と 考 え 、自 分 の 今 後 の た め と い う 点 か ら 見 て も 、非 常 に 良 い 機 会 で あ る と 思 っ た 。
<第 1 章>民主党政権の誕生
第 1 章では、政権が交代することとなった衆議院選挙について、実際の選挙前後での議
席数の変化と、世論調査で得ることのできた回答を基にして考察を進め、議席数の大幅な
変化の原因を探った。その結果、政権公約の違いが大きく影響していると考え、民主党が
「 子 ど も 手 当 」「 公 立 高 校 無 償 化 」「 高 速 道 路 の 無 料 化 」 な ど 、 国 民 の 生 活 に 直 接 良 い 影 響
を及ぼすと考えることのできるような政策を政権公約として掲げたことが、大幅な議席数
の変化をもたらし、政権交代につながったと考える。
< 第 2 章 > 参 議 院 選 挙 (2010 年 )に つ い て
第 2 章では、民主党政権発足後、初の全国規模の国政選挙となった参議院選挙について
見ていく。与党、野党での議席数を見ていくと、参議院選挙では改選第 1 党となった自民
党に対し、菅直人の民主党は惨敗を喫したことがわかる。これには、消費税に対する公約
が大きく影響していると考える。自民党がはっきりと消費税の増税について触れているの
に対し、民主党は消費税の増税について、はっきりとしない曖昧な公約を示しており、加
えて、民主党の党首であった菅直人が、公約とは別に個人的な意見ということで消費税の
増 税 を 行 う と い っ た 発 言 を し た こ と が 主 な 原 因 で あ る と 考 え る 。こ こ で も 、1 章 と 同 様 に 、
公約の違いが議席数の変化につながっていることがわかった。
<第 3 章>選挙の際、掲げられた目玉政策
第 3 章 で は 、「 子 ど も 手 当 」「 公 立 高 校 の 無 償 化 」「 高 速 道 路 無 料 化 」 に つ い て 見 て い き 、
それらを費用と便益の観点から考察を進めた。その中で共通して、費用負担をしないのに
も 関 わ ら ず 、税 全 体 で そ の 負 担 を 賄 う と い っ た 不 公 平 感 の あ る 政 策 で あ る こ と が わ か っ た 。
<第 4 章>失敗の解明とこれから
この3つの政策は、共通して本来の政策目的を果たしてはおらず、景気対策にも結び付
いていない。よって、自民党から民主党への政権交代が及ぼしたこれらの政策は失敗であ
ったといえる。そこで、今後の解決策として、二大政党制からの脱却を提案する。
- 10 -
東日本大震災と情報の非対称性
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
0813119
高橋
畠山
真
尚千
情報の非対称性とは「取引される財・サービスの品質やタイプについての情報が、経済
主体間で異なる状態」を言う。
本 研 究 は 、 情 報 の 非 対 称 性 の 視 点 か ら 、 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 が そ
の後の日本経済にどのような影響を及ぼしたか、実際の事象に基づいて考察していく。
本研究に取り組もう考えた理由は、近年の社会は情報技術の進歩によって情報化社会の
道 を 進 ん で い る 。ま た 、経 済 学 の 世 界 で も 情 報 に 関 す る 研 究 は「 非 対 称 情 報 の 下 で の 市 場 」
と し て 、1970 年 以 降 か ら ジ ョ ー ジ ・ ア カ ロ フ や マ イ ケ ル ・ ス ペ ン ス 、ジ ョ セ フ ・ ス テ ィ グ
リッツといった経済学者を中心に研究が進められ、多くの経済問題に対する解決策を提供
しており、
「 新 し い 経 済 学 」と し て 確 立 す る よ う に な っ た 。す な わ ち 、情 報 は 私 た ち の 生 活
と 経 済 学 に お い て 重 要 な 意 味 を 持 つ よ う に な っ た 。 そ の よ う な 中 、 2011 年 3 月 11 日 に 東
日本大震災が発生し、震災から半年以上経った今でも、東日本大震災に関するニュースが
毎日流れている。
今 回 の 震 災 は 情 報 化 社 会 の 一 途 を た ど る 2011 年 に 発 生 し た 。だ か ら こ そ 、情 報 の 非 対 称
性に関する研究を行うことが、震災に関連し発生した問題の解決に役立てることができる
のではないかと考えたのが、本研究に取り組んでいこうと考えた理由である。
本 研 究 第 1 章 は 、情 報 の 非 対 称 性 と は 、ど う い っ た も の で あ る か を 論 じ る 。こ れ に よ り 、
読者が本研究を読みやすくなることを目的としている。
第 2 章は、震災後の日本経済で発生した「コメ価格の高騰」や「被災証明による高速道
路の無料化」という事象を情報の非対称性の視点から考察する。
第 3 章は、石巻市で行われた「食糧配給」について、情報の非対称性における「モラル
ハザード」という問題の視点から、なぜ人は制度に頼ろうとするのか。東日本大震災後に
発生した問題にはどのような特徴があるのかを考察する。
第 4 章 は 経 済 産 業 省 の「 産 業 活 動 分 析 」、河 北 新 報 が 2011 年 9 月 10 日 に 行 っ た 宮 城 県 沿
岸部の被災世帯を対象に行ったアンケートなどを用いて、東日本大震災が人々と日本経済
にどのような影響を及ぼし、それに関連して、情報の非対称性はどのように影響したかを
明らかにする。
終 章 で は 、第 2 章 、第 3 章 で 述 べ た 東 日 本 大 震 災 後 の 日 本 経 済 で 発 生 し た 問 題 に 対 し て 、
経済学における「シグナリング」と「スクリーニング」という考えを用いた対応を提案す
る。
- 11 -
経済人の有効性と限界
指導教員名
現代社会学科
4年 B クラス
0813223
高橋
眞壁
真
和久
合理性が人を動かす根源だと考える新古典派経済学。しかし、本当に合理性だけが人を
左右するのだろうか。本研究ではアマルティア・セン著『合理的な愚か者』を元に、経済
人の疑問と可能性を模索するものである。
第 1章
経済人
第1節
経済人の定義
制約内で自己の利益が最大限になるよう行動する、合理性と利己的な性格を持った人間
像 。私 た ち は 経 済 人 を こ の よ う に 学 ん で き た 。こ の ル ー ツ は ど こ か ら 来 た も の で あ る の か 。
この章では現在主流派である新古典派経済学が唱える経済人がジュレミ・ベンサムの功利
主義から来たものと説明し、起源と定義を述べる。
第2節
合理性
経済人に大きな影響を与える合理性しかし、合理的行動は時として最大限の効用を得る
こ と が 出 来 な い 。 こ の 章 で は 合 理 的 行 動 が 起 こ す 矛 盾 を 説 明 し た 「 囚 人 の ジ レ ン マ 」、「 ア
ローの不可能性定理」を例に合理性が万能でない事を述べる。
第2章
経済人に対す疑問―アマルティア・センの考え―
第1節
経済人に対する否定的な見解
この章では経済学者アマルティア・セン著『合理的な愚か者』をもとに経済人に対して
疑問を投げかける。センは制約内で自己の利益が最大限になるよう行動する新古典派の人
間観に疑問を抱いており、経済人には「共感」と「コミットメント」の要素が足りない事
を述べる。
第3章
経済人の有効性と限界
第1節
経済人の有効性
合理性と利己的な性格を持つ経済人。経済人にかかれば世の中の多くのことを説明でき
る、経済人がどの範囲まで有効なのか。この章では経済人の有効性について述べていく。
第2節
経済人の限界
経済人によって多くの事を説明できるが、すべてを説明することは出来ない。この章で
は経済人では説明することが出来ない、経済人の限界を述べていく。
- 12 -
平成の日本経済と経済政策
指導教員名
現代社会学科
4年Cクラス
0813308
高橋
小玉
真
雄介
現在、日本はリーマン・ショック、震災、政府の政策など様々な要因が重なったことで
経済はよくない状態の不況である。どのような原因で現在の状態に至ったのかを理解し、
経済がよい状態になるために考えられる手段を考える。また、平成の日本経済としたのは
平成のはじめにバブル経済が崩壊し一つの区切りになると考えたからである。
第 1 章 は 昭 和 60 年 ド ル 高 是 正 の た め の プ ラ ザ 合 意 、 昭 和 62 年 の 日 独 の 内 需 拡 大 や 低 金
利政策を柱とするルーブル合意を行ったが、こうした国際的な政策協調路線も世界的なイ
ン フ レ 懸 念 の 台 頭 や ア メ リ カ 発 の 昭 和 62 年 10 月 の ブ ラ ッ ク ・ マ ン デ ー ( 株 価 大 暴 落 ) に
より崩れた。このような海外経済環境のもとで日本の基本的なポリシー・ミックスは財政
の緊縮的運営と金融緩和となった。とくに、円高による輸出産業の低迷による不況の到来
(円高不況)を過度に懸念した金融緩和は結果的に過剰流動性を生み、これが資産市場で
バブルを生む原因の 1 つとなった。
第 2 章は平成 1 年に金融政策の公定歩合の引き上げ、平成 2 年に不動産関連融資の総量
規制などを行ったことにより将来地価の予想形成に影響を及ぼし、その後の地価の反転や
一転した下落をもたらしバブル崩壊へと導いた。平成 4 年に金融機関は不良債権問題が顕
在 化 し 、以 後 の 日 本 経 済 の 低 迷 の 要 因 と な っ た 。景 気 基 準 日 付 の う え で は 平 成 4 年 10 月 に
は拡張期となっており、平成 9 年 4 月まで続くが決して好景気というものではなく、むし
ろ景況実感としては長期不況が続くことになる。
第 3 章はバブル崩壊とともに日本的経済システムが機能不全に陥ったことを受け、日本
的経済システムを改革しようと橋本内閣は、平成 9 年 1 月に 6 大構造改革表明をした。拡
張 期 の 終 わ り を も た ら し た の は 政 策 が 関 係 し て い る 。 第 一 に 平 成 9 年 4 月 に 消 費 税 が 5%
に引き上げと、前年度までの特別減税の廃止、医療費の自己負担など社会保険料の引き上
げ を 行 っ た 。第 二 に 、平 成 9 年 11 月 の 緊 縮 財 政 の 財 政 構 造 改 革 法 が 成 立 し た 。こ の 二 つ が
景気に対してマイナスの影響を与え、さらに、山一證券など金融機関の連鎖倒産、アジア
通 貨 危 機 が 起 こ り「 戦 後 最 大 の 不 況 」と な っ た 。
「 戦 後 最 大 の 不 況 」か ら の 回 復 の も と と な
っ た の は 平 成 10 年 度 に 政 府 が 行 っ た 二 度 に わ た る「 戦 後 最 大 の 経 済 対 策 」で あ る 。さ ら に 、
ゼロ金利政策や金融再生関連法案によって国内の金融システム不安を落ち着かせた。
第 4 章 は 平 成 13 年 4 月 に 小 泉 内 閣 が 成 立 し 、金 融 市 場 で の 操 作 手 段 を 金 利 水 準 か ら 日 銀
当座貯金残高に切り替える量的緩和政策を導入することになった。さらに小泉内閣は平成
13 年 6 月 に 骨 太 方 針 を 決 定 し 、 小 泉 構 造 改 革 と 呼 ば れ る 構 造 改 革 を 実 施 し て い く 。「 改 革
なくして成長なし」のフレーズどおりに、規制緩和や民営化など経済や社会の仕組みを変
え、市場主義政策をとった。
第 5 章 は 、こ れ ま で の 章 で 取 り 上 げ た 経 済 政 策 を 評 価 し 、平 成 20 年 9 月 の リ ー マ ン・シ
ョ ッ ク と 平 成 21 年 8 月 の 政 権 交 代 、 平 成 23 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 と 、 大 き な 波 が 日 本 を
覆い、変わりゆく状況のなかでどのようなことが求められているのか、また、有効なのか
を考える。
- 13 -
少子高齢化と年金
指導教員名
現代社会学科
4年Cクラス
0813312
高橋
佐藤
真
千穂
《テーマ設定の理由》
少子高齢化が急速に進行する中、社会保障制度と財源のあり方は日本経済の活力に関わ
る経済政策上の重要な問題になっている。社会保障の望ましい財源は年金・医療・介護と
いった制度のよって異なる可能性がある。
その中でも私は、生活を支える枠組みとして最も重要なものは年金であると考えた。ニ
ュースなどでは、若者が「私たちが高齢になる頃制度は破綻して年金はもらえないのでは
ないか」など保障に対して不安を抱えていることが話題となっている。
本来この年金制度が私たちの生活にどのような意味を持つのか、また少子高齢化に対応
するような財政のあり方について探っていく。
《第1章》少子高齢化の現状
第1章では、少子高齢化の現状を考察し、日本の将来を考えたときの最大の問題は少子
高齢化であることがわかった。
将来の社会保障を考えるときに最も重要な要因は人口構成比であり、日本における人口
推計と他の主要先進国とを比較し、日本においては、これらから間違いなく人口はさら
に高齢化し、また少子化が進行する。その要因は 2 つ挙げられる。1 つは日本の平均寿
命が高くなり世界一の長寿国となったこと、もう 1 つは日本の合計特殊出生率が長期的
に低下傾向をたどっていることである。人口推計は年金に大きな影響を与えることがわ
かる。
《第2章》年金制度の歴史と現状
少子高齢化により現在の年金制度は不安定なものとなった。そもそも、日本の公的年金
制 度 は 明 治 時 代 に 官 吏 の 恩 給 制 度 と し て 始 ま り 、90 年 代 に 入 り よ う や く 本 格 的 な 年 金 給 付
抑制への機運が高まった。日本の公的年金制度の現状として、現在の日本制度の仕組みで
は制度の維持についてはかなり厳しい状況にあることがわかった。
《第3章》日本の年金受給状態
第3章では、年金給付の現状を見ていく。個々人の受給状態はどのようになっているの
だろうか。実際に国民年金の分布は男女別でどのようになっているのかを見ていく。国民
年金の男女差の理由は、加入期間の長さで説明できる。厚生年金の男女差の理由は、就業
期間の長さや賃金の差によるものである。
急速な人口構造の変化、経済成長の鈍化、世帯構造や雇用環境によって、年金制度は多
くの課題に直面している。
《第4章》年金の抱える課題
そこで、第4章では年金の抱えている課題を大きく 2 つ挙げる。1 つは現行制度の見直
しである。年金の水準を保証するような制度改革が有効な選択肢である。
もう 1 つは次世代育成の強化することが課題である。様々な社会的リスクが若い世代に
集中しつつある。労働者の能力の向上こそが経済成長の源となり、制度の基盤になるので
あ る 。今 後 の 解 決 策 と し て 、社 会 の 変 化 に 対 応 で き る 社 会 保 障 制 度 が 必 要 で あ る と 考 え る 。
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助け合いの経済学
指導教員名
現代社会学科
4年Cクラス
0813319
高橋
沼田
真
理香
<テーマ設定の理由>
2011 年 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 に よ り 、 東 北 の 地 域 社 会 は 破 壊 さ れ 、 徐 々 に 復 興 が 行
われてきているが、未だ復興の見通しがつかないままの地域も多い。私は東日本大震災を
経験したとき、長く続いた停電や原子力発電所の放射能問題、今後の生活などについてと
て も 不 安 を 感 じ た 。被 災 者 の 中 に は 、家 を な く し 、家 族 を 失 い 、仕 事 も な く し た と い う 人 々
が 多 く 存 在 す る 。ま た 、避 難 所 暮 ら し を し て い た 人 や 仮 設 住 宅 に 住 ん で い る 被 災 者 も い る 。
そんな被災者の人々は私以上に大きな不安を抱えて生活をしているにちがいない。これが
このテーマを研究しようとしたきっかけである。
本研究では、東日本大震災が起き日本の中で助け合いは行われていたのかを考察し、社
会保障について調査した。また、被災者の安心・安全をどのように確保するかということ
を研究した。
<第1章>東日本大震災と助け合い
ま ず 第 1 章 で は 、東 日 本 大 震 災 で ど の よ う な こ と が 起 き た の か 概 要 を 知 り 、被 災 し た 人 々
はその地域の中でどのように互いに助け合ったのかについて、実際に新聞記事に取り上げ
られた事例を参考に検討した。被災地の人々は支援物資や食べ物を分け合うといった助け
合いを行ったことがわかった。
<第2章>生活保障としての社会保障
第 2 章では、社会保障とはそもそもどのような保障であるのか概念を理解した上で、社
会保障の中でとても大きな役割を担っている4つの柱である社会保険・社会福祉制度・公
的扶助・公衆衛生をとりあげる。そしてこの4つの柱はそれぞれ昔から行われてきた人々
の助け合いや相互扶助・社会的連帯といった考え方が基盤となった制度であることがわか
った。これらを踏まえ、社会保障とは考え方であり、社会保障はその考えに基づき公的保
障を行っているという密接な関わりがあることがわかった。
<第3章>東日本大震災の被害状況
第 3 章では、東日本大震災の死者や負傷者、地震の影響で経営破綻した企業、失業した
人 数 な ど の 被 害 状 況 を 数 値 で 詳 し く 調 査 し た 。ま た 、断 水 や ガ ス の 供 給 が ス ト ッ プ し た り 、
通信機器の回線が停止していたり、ライフラインがストップしてしまった環境で被災した
人々は地域の人々と食べ物を持ち寄ったり、生活必需品を貸しあったり互いに無いものを
交換したりした。この助け合いが相互扶助そのものであり社会保障の基本の概念である。
<第4章>政府が言う助け合い政策の検証と今後について
第 4 章では、これから政府が行おうとしている助け合いが全面的に出ているという3つ
の制度改革を取りあげる。それらの改革が実際に行われたら、大学生の新卒採用の減少や
年金受給開始年齢の引き上げによる受給者の減少など助け合いを全面的に出している制度
改革であるのに、国民にとってマイナスの影響を及ぼすことになりかねない。では、本当
に国民が助け合い、相互扶助といえるような方法はどのようなものがあげられるのか。助
け合いの方法を2つ提案する。
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経済学における電力産業
指導教員名
現代社会学科
4年Dクラス
0813403
海野
高橋
真
早帆里
私 が 本 研 究 を お こ な っ た 動 機 は 、 2011 年 3 月 11 日 に マ グ ニ チ ュ ー ド 9.0 の 東 日 本 大 震
災が発生し、この影響によって過去に例を見ない、甚大な原子力発電所で事故が発生した
ことからである。日本ではここまで甚大な原子力発電所での事故は起きたことがない、し
かし、世界を見れば過去に実例がある。スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事
故である。これらの事故で原子力発電所が空気中に広めた、放射能物質は現在も人体や海
洋、土壌などに悪影響をあたえ、被害が拡大し続けている。いまだ収束のめどが立たって
はいなく、被害は計り知れないもので、今後どの様な悪影響が発生するのかも分からない
状 況 で あ り 、100% の 解 決 す る こ と は 程 い の で あ る 。人 々 に と っ て 先 が 見 え な い 恐 怖 の 未 来
が待っているのである。私は現在、こういった原子力発電所事故の当事者なのである。福
島原子力発電所事故は現実に起きたことであり、取り戻しの出来ないことで、自分自身に
大きく関わることである。また、私は東日本大震災を体験し、地震直後は情報がなかなか
入 ら な い 中 、 福 島 原 発 か ら は 100 キ ロ 県 内 で 生 活 を し 、 目 に 見 え な い 放 射 能 や 事 故 の 恐 怖
を 体 験 し た の で あ る 。そ し て 、宮 城 県 内 に は 女 川 原 子 力 発 電 所 が あ り 、私 は 60 キ ロ 県 内 で
生活している。この経験から、知らないでは済まされないという思いがある。原子力発電
所で事故が発生して以来、毎日マスメディアで事故の被害状況や、人々に対して国の保障
などの情報を知るたび私は、放射能の影響は外部不経済ではないかという疑問を持つよう
になった。この電子力発電や疑問対し、私は根本的から日本の電力産業について研究する
必要があると感じたため、電力産業の経済的意義を研究しようと考えた。本論文では、電
力産業が他の上下水道やガス、鉄道、電子通信、航空輸送などの公益事業と比べどのよう
に 扱 わ れ て き た の か 、公 益 事 業 と し て の 電 力 産 業 。ま た 、2011 年 時 点 で の 原 子 力 発 電 所 事
故の影響による、放射性物質による被害状況を調べ、外部不経済である事を定義付け、今
後の電力産業のあるべき姿を研究している。
参考文献
① 井堀利宏 【政府と市場
② 高橋真
③ 金森久雄
官と民の役割分担】 税務経理委員会
【経済学を歩く】
荒憲治朗
森口親司
税務経理委員会
【経済辞典】
1999 年 2 月 20 日
2009 年 3 月 20 日
有斐閣
1971 年 9 月 20 月
④ 朝日新聞
⑤ 宮 城 県 http://www.pref.miyagi.jp/gentai/Press/PressH230315.html
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依存効果
指導教員名
現代社会学科
4年 D クラス
0813407
高橋
黒木
真
千尋
私は服・アクセサリー・化粧品などの身のまわりの商品を欲するとき、テレビのコマー
シャルや雑誌などマスメディアを通じた広告・宣伝を見て、欲しいという欲求から購入す
ることが多々ある。私は自らの意思で選択し商品を購入するまでに至っていると思ってい
たが、それは間違っていたのである。これに気付いたのは、高橋真教授の経済の講義でジ
ョ ン ・ K・ ガ ル ブ レ イ ス ( John K.Galbraith) の 「 依 存 効 果 ( dependence effect)」 に つ い
て 学 習 し た か ら で あ る 。「 依 存 効 果 」 を 知 っ て か ら 、 自 ら の 消 費 行 動 を 振 り 返 っ て み る と 、
私が購入していた商品は好きな芸能人がコマーシャルをしている商品であったり、芸能人
が雑誌やブログで紹介している商品などであった。私は日常にはたくさんの商品が溢れて
いるためテレビのコマーシャルや雑誌などを見て、選ぶ基準や参考にしている程度にして
いると考えていた。しかし実際は広告・宣伝に操られ、自らの生活に必要不可欠な生活必
需品ではなく、マスメディアの戦略的広告・宣伝により、欲しいという欲望が創り出され
購入していたことに気が付いた。そしてその欲望は終わることなく、欲望が満たされれば
満たされるほど新しく欲望が生まれてくるのである。しかしこの欲望は、ゆたかな社会で
な け れ ば 生 ま れ て こ な い 。3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 の 時 、広 告・宣 伝 で 紹 介 さ れ て い る 商
品を欲しいと考える人はいなかった。最低限の生活必需品を手に入れるために食料やガソ
リンなどを探し回っていた。災害時には広告・宣伝されている商品は必要ないのである。
依存効果はゆたかな社会で衣食住が足りていなければならない。
私の消費行動はガルブレイスの依存効果によって説明できる。私以外の消費者も広告・
宣伝によって、生産者側に依存しているのではないかと考えた。広告・宣伝によって、消
費者の消費意欲がどのように引き出されているか分析してみたいと思った。
本研究では、ガルブレイスのゆたかな社会や依存効果について述べ、現代の依存効果を
分析し、同じ商品のそれぞれのコマーシャルの比較や広告の心理について調べ、どのよう
な広告・宣伝が消費者に新たな欲望を生み出させているのか、なぜ消費者は広告・宣伝に
依存してしまうのかを研究している。
参考文献
1.ガ ル ブ レ イ ス
鈴 木 哲 太 郎 訳 『 ゆ た か な 社 会 』 岩 波 書 店 2006 年
2.高 橋 真
『 経 済 学 を 歩 く 』 税 務 経 理 協 会 2009 年
3.高 橋 真
『 制 度 主 義 の 経 済 学 』 税 務 経 理 協 会 2002 年
4.仁 科 貞 文 田 中 洋 丸 岡 吉 人 『 広 告 心 理 』 株 式 会 社 電 通 2007 年
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現代女性の消費行動分析
指導教員名
現代社会学科
4年 D クラス
0813411
高橋
佐藤
真
裕美
街を歩くとブランドのバッグや靴や服を着飾った女性を当たり前に目にする。しかし、
本当の顕示的消費をしているのは誰なのか区別がつかなくなった。それは、女性が永遠に
美しくありたいというところからくる欲求だと考えていたが、平等社会になり女性の社会
進出が著しく増加したため、誰が財を誇示しており誰が本当の顕示的消費を見せびらかし
ているのかという見分けが付かないことに疑問を感じた。また、経済活動の上で消費とい
うものは切っても切り離せない。その中でも、ある一種の経済活動として女性の消費行動
に興味を持った。特に、消費行動の中でも人間の見栄からくる財の誇示を見せびらかす消
費行動をとりあげる。本論文は現代女性の消費行動を分析するとともに、本当の女性の顕
示的消費の見せびらかしとはどのようなものかを研究したものである。
まず、第1章ではヴェブレンの顕示的消費の内容を歴史の変遷を通して説明している。
そのためヴェブレンの『有閑階級の理論』を基に、顕示的消費という消費は有閑階級の出
現とともに発生し、また女性(妻)が男性(主人)のために代行的消費を行ってきた時代
の変遷とともにあげている。女性が劣等階級に属しており、男性の地位や名声を誇示する
ためドレスを着用し見せびらかしの消費を行ってきたのである。
第 2 章では今までの歴史の変遷を踏まえて女性が社会進出したことからある程度の収入
を得るようになったことで、女性はこれまで男性(主人)の名声や財を誇示するために、
代行的に消費や閑暇を見栄から見せびらかしていた。しかし、現代は女性も社会進出し、
ある程度の給与を得るようになったため、現代女性の有閑階級(上流階級)と庶民の区別
がつきにくくなったのでる。消費行動を分析する際、顕示的消費を行う商品としてブラン
ドのバッグを例にあげ、同じブランドのバッグを手頃な値段と特に高い値段とを比較し、
素材の違いを論述している。そこから、ある程度働けば手の届く商品もあれば、金持ちで
なければ購入できない商品があり、その際企業側は消費者をわけて消費をさせるための値
段設定を行っている。
第 3 章では結論として、女性の社会進出が広がり、ある程度の収入を得るようにはなっ
たが、現代は見栄だけが残存している。やはり女性の顕示的消費とは、男性(主人)や両
親 か ら 購 入 し て も ら う と い う こ と に な る 。つ ま り 、現 在 も な お 女 性 は 顕 示 的 消 費 で は な く 、
代行的消費をしている。同じブランドのバッグでも、素材によって値段が違うということ
から、街を歩いている女性の本当の見せびらかしの消費を論述している。
【参考文献】
〔 1 〕 ソ ー ス テ ィ ン ・ ヴ ェ ブ レ ン 『 有 閑 階 級 の 理 論 』 ち く ま 学 芸 文 庫 /1998 年
〔 2 〕 高 橋 真 『 制 度 主 義 の 経 済 学 』 税 理 経 理 協 会 /2002 年
〔 3 〕 高 橋 真 『 経 済 学 を 歩 く 』 税 務 経 理 協 会 /2009 年
〔 4 〕 内 田 成 『 見 栄 と 消 費 』 学 文 社 /2011 年
〔 5 〕 R ・ メ イ ソ ン 『 顕 示 的 消 費 の 経 済 学 』 名 古 屋 大 学 出 版 会 /2003 年
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幸福について考える
指導教員名
現代社会学科
4年 D クラス
0813416
高橋
多田
真
朱里
こ の テ ー マ を 設 定 し た 理 由 は 、2 0 1 1 年 3 月 1 1 日 に 東 日 本 大 震 災 が 発 生 し 、人 の「 幸
福」について疑問を持ったからである。
第 1章
幸福の意味
『 広 辞 苑 』を 使 っ て「 幸 福 」の 意 味 を 調 べ た が 、
「 幸 福 」と「 幸 せ 」と い う 言 葉 は 意 味 が
異 な る と い う こ と が わ か っ た 。ま た 、4 冊 の 経 済 辞 典 を 調 べ た が 、
「 幸 福 」と い う 言 葉 は ど
こ に も 載 っ て い な く 、経 済 学 に は 、
「 幸 福 」と い う 言 葉 は 用 い て い な い こ と が わ か っ た 。し
かし、似たような言葉で「効用」という言葉がある。これは、財やサービスから得られる
満足度または幸福感のことである。この「効用」を用いて第 2 章から実際に「幸福」につ
いて考える。
第 2章
結婚による効用
「幸福」を感じる要素は人によりさまざまである。そこで、幸福をはかる一つの尺度と
し て「 結 婚 」に つ い て み て い く 。
「 結 婚 」と は 、男 女 が 夫 婦 に な る こ と で 、結 婚 相 手 に 人 生
の大部分を委ねることであり、プラスの相乗効果があるが、その反面、結婚相手の行動に
より、独身生活よりも惨めな生活になってしまう場合もある。このように、結婚相手とは
お互いに良い影響を与え、悪い影響を受ける関係である。また、女性の高学歴化が進み、
就 業 機 会 が 増 え た こ と に よ り 、シ ン グ ル 化 と 晩 婚 化 が 増 え た 。こ の よ う な 女 性 が 増 え 、
「結
婚 」=「 幸 福 」、結 婚 は 女 性 に と っ て ゴ ー ル イ ン と 考 え は 本 当 な の か 、結 婚 に よ る 効 用 が 本
当にあるのかをみていく。
第 3章
女性の幸福と結婚相手の選択から考える
結婚を遅らせているのは、女性だけでなく男性も同様である。しかし、学歴や就業機会
の大幅な変化は、男性にではなく女性について生じたものであることから、結婚の選択の
変化は、女性行動の変化により引き起こされたとみることができる。そこで、女性の立場
で 、 相 手 に 対 し て の 「 好 き 度 」 と 「 男 性 の 年 収 」 を 用 い て 、「 結 婚 」 と 「 幸 福 」 に つ い て 、
どのように結びつくのか、どのような選択が幸福を感じるのか、6通りの選択肢の中から
幸福と感じる選択を検討していく。
- 19 -
ヴェブレンの顕示的消費は存在するか
指導教員名
現代社会学科
4年 D クラス
0813421
古川
高橋
真
謙太朗
現代社会における私たちの消費行動は、生活に必要最低限の消費以外にもブランド品
の車、時計、衣服などを購入する傾向にある。男性であればロレックスやカルティエとい
っ た 腕 時 計 、ベ ン ツ や フ ェ ラ ー リ と い っ た 高 級 車 、女 性 で あ れ ば エ ル メ ス や CHANEL と い っ
たバックや財布などが挙げられる。金銭的能力が低い私たち学生においても個人差はある
もののブランド品を消費したいという欲望が存在している。
これらのように、物の使用価値としてではなく、他者へ自分の金銭的能力を見せびらか
したい、また他者から良く見られたいと思う見栄から生まれた消費をソースティン・ヴェ
ブレンは顕示的消費と定義している。
顕示的消費は、主に、産業的な労働から免除され、財や地位を所有する有閑階級によっ
てなされる消費としていた。野蛮時代では、戦闘や狩猟などで目に見える形で富をもたら
すことが高評価を得て、産業的な仕事は低く評価された。他人より高価で見栄を張ること
ができる物を所有することが地位やステータスを他人と区別し、見せびらかすことが力の
証拠となった。金銭の見栄として行われる消費には、顕示的消費の他に、生産的な仕事を
せず、非生産的に時間を浪費する顕示的閑暇、自分以外の人が物を消費し、その人の富や
証拠をみせびらかす代行的消費、自分以外の人が時間を浪費する代行的閑暇などがある。
現代の私たちの消費行動は見栄や模倣から生まれる消費が多く、ブランド品などを消費
することで自分自身の価値を高めようとしている。企業がブランド品の車、時計、衣服と
いった商品の差別化を行っており、最近では海外からも有名ブランドが日本に進出してき
ており、芸能人が評価していることもあり人気がある。これは、私たちの消費行動がブラ
ンド志向であることを証明することができる。
ま た 、現 代 で は ブ ラ ン ド 品 を 消 費 す る に あ た っ て 広 告 や 宣 伝 、CM な ど を 目 に し て 購 入 す
る 人 が 多 く 存 在 す る 。こ の よ う に 、生 産 者 側 か ら の 広 告 や 宣 伝 、CM が 大 き な 影 響 を 与 え る
のであれば、消費者の欲望は自ら生み出されたものではなく、生産に依存して生み出され
た欲望による消費であると言える。消費者の欲望を満たすために何を消費するかを消費者
自身が自ら決定するのでなく、生産によって消費者の欲望が作り出され、生産される過程
に 欲 望 が 依 存 し て い る こ と を 依 存 効 果 と 呼 ぶ 。現 代 社 会 に お け る 顕 示 的 消 費 の 特 徴 と し て 、
この依存効果が大きな役割を持っている。
現代社会の大半の人、私自身もそうだがブランド品などを消費し、見栄を張ることので
き る 消 費 と 、広 告 や 宣 伝 、CM な ど で 流 行 し て い る 、流 行 し そ う な も の を 消 費 す る 傾 向 に あ
る。しかし、ヴェブレンの顕示的消費論と比較すると、ヴェブレンの顕示的消費論では自
らが高貴な身分で、金銭的能力が高い者がこのような消費を行っていたが、現代の消費行
動は、金銭的能力が高い者、金銭的能力は低いが、見栄のために消費を行う者とが存在し
ており、ヴェブレンの顕示的消費論の定義とは異なっている。金銭的能力が低いのにも関
わらず、見栄のために高価な物を消費するといった行動をとる者が多く存在する現在、ヴ
ェブレンの顕示的消費論の対象と言われる者がどのような人で、またどのような物を消費
するのかを研究する。
- 20 -
民主党の政策が及ぼす日本経済への影響
指導教員名
現代社会学科
4年 D クラス
0813425
高橋
真
和田
仁
2009 年 9 月 16 日 の 衆 議 院 選 挙 に お い て 、 与 党 で あ る 自 民 党 が 敗 れ 、 民 主 党 政 権 が 誕 生
し た 。 民 主 党 は 、『 子 ど も 手 当 』『 農 業 者 戸 別 所 得 補 償 制 度 』『 高 速 道 路 無 料 化 』『 公 立 高 校
無償化』
『 製 造 業 へ の 派 遣 を 原 則 禁 止 』な ど の 目 玉 政 策 を 掲 げ 、国 民 の 支 持 を 得 た の だ っ た 。
本研究では、民主党が国民から支持を得た政策が日本にとってどの様な効果、影響を与
えたのかを探ったものである。
1章
民主党の躍進
2009年9月16日、与党であった自民党が衆議院選挙で敗れ、民主党政権が誕生し
た 。 民 主 党 は 、『 子 ど も 手 当 』『 農 業 者 戸 別 所 得 補 償 制 度 』『 高 速 道 路 無 料 化 』『 公 立 高 校 無
償 化 』『 製 造 業 へ の 派 遣 を 原 則 禁 止 』 な ど の 目 玉 政 策 を 掲 げ 、 国 民 の 支 持 を 得 た の だ っ た 。
本章では、国民から信頼を得た民主党が掲げるマニフェストと政権交代が起こった背景
を考察する。
2章
政権交代前後の日本経済
2008 年 9 月 の リ ー マ ン・シ ョ ッ ク に よ り 日 本 経 済 は 、大 き な 影 響 を 受 け た 。当 時 の 政 権
で あ る 自 民 党 政 権( 麻 生 内 閣 )は 、2009 年 4 月 に 、家 計 の 救 済 の 名 目 で 国 民 給 付 金( 定 額
給 付 金 )を 施 行 し た 。し か し 、自 民 党 政 権 は 国 民 の 信 頼 を 回 復 す る こ と が 出 来 ず 2009 年 8
月 31 日 の 総 選 挙 に お い て 自 民 党 政 権 か ら 民 主 党 政 権 へ と 政 権 交 代 が 起 こ っ た 。
政権交代後、民主党政権へと政権が移り変わり民主党は目玉政策を基に政策を施行して
いく。
本章では、政権交代前の日本経済と政権交代後の日本経済を比べ、日本経済がどのよう
に変化していったのか見ていき、政権交代における日本経済への影響を考察していく。
3章
農業者戸別所得補償制度から見る民主党政策
2009 年 民 主 党 が 政 権 を 獲 得 し た 総 選 挙 に お い て 、
『子ども手当』
『農業者戸別所得補償制
度』
『高速道路無料化』
『公立高校無償化』
『 製 造 業 へ の 派 遣 を 原 則 禁 止 』な ど の 目 玉 政 策 を
マニフェストとして掲げ国民の信頼を勝ち得た。しかし、これらの政策は、ある特定の限
られた人にしか恩恵がないにも係わらず、これらの政策の財源は税金によって賄われる。
本章では、民主党が目玉政策として掲げた政策の中から『農業者戸別所得補償制度』を
ピックアップし、
『 農 業 者 戸 別 所 得 補 償 制 度 』と い う 政 策 の 効 果 や 、政 策 が 国 民 に ど の 様 に
影響を及ぼすのかを考察していく。
4章
終わりに
本章では、本研究についてのまとめ、制作にあたってのあとがきなどを記述している。
- 21 -
目次
小田嶋 充 ゼミ
- 22 -
尚 絅 学 院 大 学 生 の生 涯 スポーツの現 状
指導教員
現代社会学科 4 年
0713404
宇治川
雄士
0713418
小田嶋
鈴木
充
裕士
【はじめに】
尚絅学院大学生の生涯スポーツに対する興味、関心がどのようになっているのかを、
「 す る 」「 見 る 」「 支 え る 」 の 視 点 か ら ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 い 考 察 し た 。
【調査結果及び考察】
調 査 期 間 : 2011 年 12 月 12 日 ~ 12 月 16 日
調査対象及び方法:尚絅学院大学1,2年生353人を対象にアンケート調査を実施
した。回答を得たのは女子292人、男子85人で回答率は100パーセン
トであった。
「する」スポーツでは、スポーツをする頻度を調べた。一番多かったのが週に1回で1
5 5 人 (4 6 % )、次 に 週 に 2 ~ 3 回 で 7 5 人 (2 2 % )、月 に 1 ~ 3 回 が 4 0 人
(1 2 % )で 毎 日 運 動 し て い る 人 は 4 人 で 2 % と 少 な い 事 が わ か っ た 。 自 由 記
述では、忙しくてスポーツをしている時間が取れないなどさまざまな理由が
挙げられた。
「見る」スポーツでは、観戦した事のあるスポーツを調べた。多かったのがプロ野球の
1 6 9 人 (4 8 % )、プ ロ 以 外 の 野 球 1 4 0 人 (4 0 % )、バ レ ー ボ ー ル 8 8 人 (2
5 % )、 サ ッ カ ー 8 7 人 (2 5 % )で あ っ た 。 プ ロ 野 球 観 戦 は 、 地 元 に 楽 天 イ ー
グルスがある為、観戦した事のある人が多いと思われる。しかし、サッカー
に関してはベガルタ仙台があるにも関わらず、観戦した事のある人が少なか
った。
「支える」スポーツでは、スポーツに関わるボランティア活動を行いたいかを調べた。
ぜ ひ 行 い た い が 5 8 人 (1 5 % )、出 来 れ ば 行 い た い が 1 3 7 人 (3 6 % )、わ か
ら な い が 1 0 8 人 (2 9 % )と 半 数 の 学 生 が 行 っ て み た い と 回 答 し て お り 、 ス
ポーツに関するボランティア活動に興味、関心が高い事がわかった。特にそ
の中でも日常的な団体・クラブの運営や世話を行ってみたいという人が多い
事がわかった。
【おわりに】
今回の調査結果で、ほとんどの学生がスポーツに興味、関心を持ち日常的にスポー
ツ と 関 わ っ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。「 す る 」「 見 る 」「 支 え る 」と ス ポ ー ツ の 関 わ
り方は様々であるが、ほとんどの学生が目的を持って行動していることがわかった。
特に「する」スポーツでは競技としてではなく健康の保持増進や美容の為などといっ
た意見が多くあることから、今後の生涯スポーツの方向性や総合型地域スポーツクラ
ブの種目を設定する上で考慮する必要がある。
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生涯スポーツ社会実現に向けた指導者養成事業
―指導者養成事業の将来展望―
指導教員
現 代 社 会 学 科 4 年 0813110
佐々木和央
0813418
東條龍介
0813322
小田嶋
充
松木健太郎
【はじめに】
これまで、私たちが何気なくしてきたスポーツだが、そこにはスポーツをする環境があ
り、技術を教える指導者の存在があった。その指導者の養成事業は今後どうあるべきか考
察した。
【調査結果】
戦 後 、1946 年 に「 社 会 体 育 の 実 施 に 関 す る 件 」と い う 通 達 と 同 時 に だ さ れ た「 社 会 体 育
実施の参考」が公表され、体育スポーツ復興策の方針がしめされ、体育指導者の充実と強
化 策 が 打 ち 出 さ れ た 。1951 年 に は「 社 会 体 育 実 施 の 参 考 」に 代 わ っ て「 社 会 体 育 指 導 要 項 」
が発刊され社会体育振興策の基本指針が明らかにされた。この要項は市町村の体育と職場
の 体 育 の 二 つ の 社 会 的 場 を 社 会 体 育 振 興 基 盤 と し て い る 。1957 年 に 文 部 省 は 体 育 ス ポ ー ツ
振興上指導者の確保とその活動の充実が重要であるとし、体育指導委員制度を設け、助成
措置を行うこととなった。これにより、全国 で約 2 万名の体育指導委員が委託され、市町
村 ス ポ ー ツ 振 興 に 大 き な 役 割 を 果 た す こ と と な っ た 。1960 年 に は「 社 会 体 育 ― 考 え 方 、進
め 方 」が 発 刊 さ れ 、
「 社 会 体 育 指 導 要 項 」に 代 わ っ て 、社 会 体 育 の 推 進 方 向 に 明 確 な 指 針 を
示 す こ と に な っ た 。 現 在 公 認 ス ポ ー ツ 指 導 者 と し て 登 録 し て い る 指 導 者 は 約 10 万 名 と な
っ て い る 。 ス ポ ー ツ 指 導 者 制 度 は 文 部 省 が 1986 年 に 保 健 体 育 審 議 会 の 建 議 を 受 け 、 1987
年に文部大臣認定「社会体育指導者の知識・技能審査事業」を導入し制度化したものであ
る。
公認スポーツ指導者制度は指導者の資格・ランク別の指導対象・活動の場が明確に
されていない状況にあり、指導者養成事業では受講科目や受講日程が硬直されており受講
しにくいという指摘が多々ある。なお職業を持っており講習を受けたくても受けられない
状況を打開するために、体育系大学などの専門教育機関や広域スポーツセンターと連携し
て受講しやすい養成システムを構築した。また、併せて講習の単位制導入の検討や公務員
が受講する場合、研修扱いでの受講や有給休暇を取得して参加しやすくするよう改善策を
こうじた。現在は検定に合格するとその資格は4年間の有効期間が認められ、大学でも資
格 が 取 れ る よ う に な っ た 。 東 北 地 方 の 大 学 で 資 格 を 取 得 で き る の は 12 校 あ り 、 過 去 と 比
べるとスポーツ指導員の資格は取りやすい状況になっている。
【展望】
指導者養成カリキュラムを見てみると、どの資格を取るにしても「共通科目Ⅰ」を受講
しなくてはならない。このカリキュラムには「ジュニア期のスポーツ」という科目が含ま
れ て い る が 、 そ の 中 で ジ ュ ニ ア 期 の ス ポ ー ツ 指 導 に 課 題 が あ る と 考 え た 。 ス ポ ー ツ は 、「上
手 下 手 が あ り 、ご ま か し が き か な い 。 」と い う 特 徴 を も っ て お り 、 試 合 で は 必 ず ど ち ら か の
チームが負けるという非情性をもっている。勝ちにばかりこだわることによってスポーツ
自体の楽しさを歪める危険性がある。そこでカリキュラムの中に「スポーツマンシップ」
や「相手に対しての礼儀・いたわり」を追加すれば、さらに高い水準でスポーツ指導を行
えるようになるのではないかと考える。私はジュニア期のスポーツ指導は、スポーツが持
つ 楽 し さ を 享 受 し 、社 会 性 に 富 ん だ 人 格 形 成 を 目 標 と し て 行 わ れ る べ き だ と 考 え る 。
- 24 -
生涯スポーツの現状と課題
―生涯スポーツの現状―
指導教員 小田嶋
現代社会
4年
0813201 小竹孝典 0813213 佐藤佑人 0813413 篠原
充
直人
【はじめに】
生涯スポーツとは、生涯を通じて健康の保持・増進を目的に「だれもが、いつでも、どこでも気軽に
参加できる」スポーツをいい、競技スポーツよりも運動強度が低いのが特徴である。文部科学省にはス
ポーツ・青少年局に生涯スポーツに関する行政を管轄する部署として生涯スポーツ課があり、生涯スポ
ーツ社会の実現のための重要施策の1つとして総合型地域スポーツクラブの全国展開を挙げている。そ
こで私は、全国の生涯スポーツの現状と宮城県の現状にどのような違いがあるのか、またどのような課
題があるか調査した。
【調査結果】
文部科学省は生涯スポーツ社会の実現に向けた数値目標として、
「成人の週 1 回以上のスポーツ実施
率が 50%となることを目指す」としている。H21 の全国年齢別調査によると、20 代では男性 24.4%女
性 30.7%、30 代では男性 40.2%女性 32.1%、40 代男性 40.2%女性 42.8%、50 代男性 47.9%女性 48.1%
と年齢が上がるにつれて運動・スポーツを行う割合が増えている。実施率では全国平均 32.7%で、男女
共に 30 代を過ぎると生活習慣病の予防のためにスポーツを行う割合が増えている。
宮城県ではスポーツに対する関心は高いものの、週1回以上の運動・スポーツ実施率は 14.6%とかな
り低い値となっている。理由としては「機会がない」、
「時間がない」
、
「気軽に参加できる行事がない」、
「身近な場所に施設がない」などが挙げられている。またスポーツを行える施設はあるが施設の利用方
法が分からない、さらに大会やイベント情報が少なすぎるといったスポーツを「する」
「みる」うえで
の環境が整っていない現状が明らかとなった。スポーツの基礎づくりは主に学校がその役割を担ってき
たため、卒業後におけるスポーツ活動は、企業と各種スポーツ愛好団体、民間スポーツクラブで一部の
人が行っている状況の為、県民の誰もがスポーツに親しめる環境が整っているとは言いがたい。またこ
れからの生涯スポーツ社会を担う子供達のスポーツ環境を充実するためには、学校スポーツと地域スポ
ーツとの融合が必要であり、地域・学校・行政の連携を強化し新しい仕組みによる生涯スポーツの振興
が求められる。
【考察】
宮城県としては現状のスポーツ実施率に満足せず、県民が身近な場所でスポーツに親しみ、地域の人
と楽しく交流を深め、コミュニティの形成にも資する新しい形態のスポーツ環境を整備するべきだと思
う。また住民のニーズに応えられる情報システムの整備・充実や地域における最も身近なスポーツ施設
である学校体育施設の有効活用を促進する事で、スポーツ人口を拡大し県民の運動・スポーツ実施率の
大幅な向上を図る事が大切である。
- 25 -
生涯スポーツの現状と課題
―指導者の養成・活用―
指導教員 小田嶋 充
現代社会 4 年 0813213 佐藤佑人 0813207 小竹孝典 0813413 篠原直人
【はじめに】
生涯スポーツ社会を実現する為の重点施策として総合型地域スポーツクラブの「だれもが、いつでも、
どこでも気軽に参加できる」を挙げている。総合型地域スポーツクラブは多世代、多種目、多志向型で
あり、地域住民により自主的・主体的に運営されるスポーツクラブである。総合型クラブは、生涯スポ
ーツ社会の実現に寄与することはもとより、地域の子どものスポーツ活動の受け皿としての効果や、ス
ポーツ活動を通じた家族のふれあいや世代間交流による青少年の健全育成、地域住民の健康の維持・増
進,地域教育力の再生などの役割も期待されている。スポーツを行うに当たって、怪我がなく楽しめる
スポーツや、技術のレベルアップを行う為には優秀な指導者が必要になってくる。そこで、宮城県のス
ポーツ指導者の現状を調査し課題はあるのか考察した。
【調査結果】
スポーツを楽しく行うためには、技術指導だけでなくスポーツマンシップを理解し安全管理にも配慮
できる優れた指導者が欠かせない。県民の意見はスポーツ指導者の育成、専門の指導者に教えてもらい
たいなど、指導者の育成と派遣を望む声が多くある。指導者は、日本体育協会や各種スポーツ団体など
の養成制度により育成された有資格指導者や体育指導委員などがいるが、県民の意見や要望から考える
と指導者の配置情報の不備などから指導者が有効に活用されていないのが現状である。また宮城県では
各市町村のスポーツ関係職員、体育指導委員や教職員などを対象として養成講習会を実施し指導者の育
成と資質の向上に努めているが、生涯スポーツの振興を図る上では、スポーツを楽しむ人々のサポート
役として、日常的なスポーツ活動を支援する指導者の配置や質の高い技能を持つ有資格指導者の育成が
課題となっている。さらに財団法人宮城県スポーツ振興財団、財団法人宮城県体育協会、宮城県レクリ
エーション協会、宮城県体育指導委員協議会、宮城県障害者スポーツ協会及びNPOなど地域スポーツ
を支える優れた指導者やスタッフを有する団体があるにも関わらずスポーツ実施率が低いのは、やはり
県民の要望に応えきれていないのが一因と考えられる。
【考察】
私はこれからの宮城県は多様化・高度化する住民ニーズに応えられる質の高い指導者の養成と共に、
指導者の登録と紹介を行うスポーツリーダーバンクをはじめとするスポーツ情報システムの整備、充実
を図る事が必要であると考える。また地域と学校が連携し、高い専門性と指導技術を有する学校教員を
地域スポーツの指導者として活用できる制度を作り、さらに地域におけるスポーツ指導者が学校体育や
運動部活動の指導者として協力するなど、指導者の相互交流を推進する事により地域スポーツの一層の
活性が期待できると考える。
- 26 -
みどり台中学校学区民の運動状況の実態
―運動種目と運動頻度―
指導教員
現代社会学科 4 年
小田嶋
充
0813316 武 内 さ お り 0813321 増 子 実 咲 102430 佐 々 木 香 織
【はじめに】
私 た ち は 、 2010 年 12 月 22 日 か ら 12 月 27 日 の 期 間 、 ゆ り が 丘 ・ 那 智 が 丘 ・ み ど り 台
地 区 に 住 む 小 学 5、 6 年 生 と 中 学 生 お よ び そ の 保 護 者 を 対 象 に 運 動 状 況 の 実 態 に つ い て ア
ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し 、そ の 結 果 を も と に 運 動 種 目 と 運 動 頻 度 と の 関 係 に つ い て 考 察 し た 。
【調査結果及び考察】
体育の授業を除いた運動頻度と、その際どんなスポーツを行っているのか調査結果をも
とに考察を行った。
小 学 生 は 野 球 ( 19% )・ サ ッ カ ー ( 13% )・ 水 泳 ( 13% )・ バ ス ケ ッ ト ボ ー ル ( 12% ) に
人数が集中している。その理由として挙げられるのは、名取市にスポーツ少年団があるか
らである。水泳に関しては、バスでの送迎があるスイミングスクールに通っている児童が
ほとんどであった。また、手軽に運動することができるランニングは、ほぼ毎日実施して
いることがわかった。野球・サッカーに関しては、ほぼ毎日実施している児童が多く、小
学 校 自 体 に ス ポ ー ツ 少 年 団 が あ り 、常 に グ ラ ウ ン ド を 使 え る 状 況 に あ る た め と 考 え ら れ る 。
室内競技であるバスケットボール・バドミントンは、体育館の割り当てなどが運動頻度に
影 響 し て い る も の と 考 え ら れ る 。ま た 、全 く 運 動 を し て い な い 児 童 は 33% み ら れ た 。そ の
理由としては、スポーツ以外の習い事などをしているためであった。
中 学 生 は 部 活 動 に 入 り 、ほ ぼ 毎 日 運 動 し て い る 生 徒 が 83% と 多 い 。バ レ ー ボ ー ル・テ ニ
ス・ソフトテニスは、小学生では人数が少なかったが中学校には部活動があり、新しいこ
とに挑戦したいという生徒がいるため人数が増えたと考えられる。そして、部活動だけで
は物足りない生徒や中学校に部活がなくその種目をしたい生徒は、クラブチームに所属し
て い る 。中 学 生 の 特 徴 と し て 個 人 種 目( 31% )よ り も 団 体 種 目( 69% )を 選 ぶ 生 徒 が 多 く 、
その理由として友人関係が関わっていると考えられる。
保護者は、家事や育児などで自由な時間が少ないため、運動を継続して行ってる人は全
体 の 27% で あ っ た 。そ の う ち 、ほ ぼ 毎 日 運 動 を し て い る 人 は 少 な く 、週 1~ 2 回 が 69% と
多い。種目としてはテニスやバドミントンのような個人競技で、手軽にできる運動をして
い る 人 が 多 い 。全 く 運 動 を し て い な い 人 は 73% い る こ と が 明 ら か と な っ た 。バ レ ー ボ ー ル
に関しては、団体競技であるにもかかわらず実施人数が多かった。その理由として、名取
市はバレーボールが盛んな地域で、ママさんバレーのクラブ数も多く、そこで活動してい
る人が多いためである。
【おわりに】
調査の結果をもとに、尚絅学院大学総合型地域スポーツクラブの開講種目を検討する場
合 、小・中 学 生 対 象 と し て は 室 内 競 技 種 目 を 、成 人 対 象 種 目 と し て は 手 軽 に で き る テ ニ ス ・
バドミントンなどの個人種目とさらにこの地域で盛んなバレーボールを種目に取り入れる
ことが望ましい。
- 27 -
みどり台中学校学区民の運動状況の実態
―運動目的と運動頻度―
指導教員
現代社会学科4年
小田嶋
充
0813321 増 子 実 咲 102430 佐 々 木 香 織 0813316 武 内 さ お り
【はじめに】
私 た ち は 、 2010 年 12 月 22 日 か ら 12 月 27 日 の 期 間 、 ゆ り が 丘 ・ 那 智 が 丘 ・ み ど り 台
地 区 に 住 む 小 学 5、 6 年 生 と 中 学 生 お よ び そ の 保 護 者 を 対 象 に 運 動 状 況 の 実 態 に つ い て ア
ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し 、そ の 結 果 を も と に 運 動 目 的 と 運 動 頻 度 と の 関 係 に つ い て 考 察 し た 。
【調査結果及び考察】
体育の授業を除いた運動頻度と、その際の運動目的について調査し、その結果をもとに
考察した。
小 学 生 に つ い て み る と 、定 期 的 に 運 動 し て い る と 回 答 し た 児 童 は 全 体 の 67% で 、そ の う
ち 運 動 の 目 的 を 競 技 ス ポ ー ツ と 回 答 し た 児 童 は 50% で あ っ た 。し か し 、競 技 ス ポ ー ツ 目 的
で も 運 動 頻 度 に ば ら つ き が み ら れ た 。 週 1~ 2 回 ( 39% ) と 答 え た 児 童 は 塾 や 習 い 事 も し
て お り 、 週 3~ 4 回 ( 41% ) と 答 え た 児 童 は 、 ス ポ ー ツ 少 年 団 や 学 校 の ク ラ ブ 活 動 で 熱 心
に 活 動 し て い る 状 況 が 明 ら か と な っ た 。普 段 運 動 し て い な い と 回 答 し た 児 童 は 全 体 の 33%
であった。
中 学 生 に つ い て み る と 、定 期 的 に 運 動 し て い る と 回 答 し た 生 徒 は 全 体 の 78% で そ の う ち
運 動 の 目 的 を 競 技 ス ポ ー ツ と 回 答 し た 生 徒 は 、83% と 多 い 。競 技 ス ポ ー ツ を 目 的 と し て い
る生徒は技術の向上や大会に向けて毎日部活動をしている。競技スポーツ目的を除いた生
徒は、友人関係あるいは学業や娯楽に重点を置いていた。普段運動をしていないと回答し
た 生 徒 は 全 体 の 22% で あ っ た 。
保 護 者 に つ い て み る と 、全 く 活 動 し て い な い 人 は 全 体 の 73% を 占 め 、保 護 者 の 運 動 不 足
が 明 ら か と な っ た 。運 動 し て い る と 回 答 し た 人 の 運 動 頻 度 に つ い て み る と そ の 69% が 週 1
~2 回と回答しており、その運動の目的は、健康づくり・生きがいづくりがほとんどであ
った。
【おわりに】
調査の結果をもとに、尚絅学院大学総合型地域スポーツクラブの開講種目を検討する場
合 、 小 ・ 中 学 生 に つ い て は 、 普 段 運 動 し て な い と 回 答 し た 小 学 生 33% 、 中 学 生 22% を ど
んな種目で取り込むかが課題となる。健康づくり、生きがいづくりを目的としている成人
をクラブに取り込むためには、トレーニング器具の充実、手軽に取り組めるスポーツを種
目に取り入れる必要がある。ランニングやウォーキングは、手軽にできるのでイベント行
事として行うことで幅広い年齢層の人が気軽に参加でき、親子や近所の人とコミュニケー
ションをとることもできる。様々な年齢層に合わせた運動と指導方法により、スポーツに
対しての考えも変わり、運動頻度があがるだろう。総合型地域スポーツクラブを設立する
にあたって、今回調査した結果が役に立ってほしいと願う。
- 28 -
生涯スポーツ社会実現に向けた指導養成事業
―現代の指導者養成事業の課題―
指導教員
現代社会学科 4 年
0813322
松木健太郎
0813418
東 條 龍 介 0813110
小田嶋
充
佐々木和央
【はじめに】
現在、私たちが何気なくしてきたスポーツだが、そこにはスポーツをする環境があり、
技術を教える指導者の存在があった。その指導者養成事業の課題について考察した。
【調査結果】
養成された有資格者が、力を発揮するためには自らのたゆまぬ研修とともに、活動環境
の整備、指導者の社会的地位の向上が必要不可欠である。そこで、文部省では国民生活の
向上に伴うスポーツの多様化、高度化に対応できる資質の高いスポーツ指導者の養成を目
的 に 、1987 年 「 社 会 体 育 指 導 者 の 知 識 ・ 技 能 審 査 事 業 」を 増 設 、 こ れ に よ り 、地 域 ス ポ ー
ツ指導者、競技力向上指導者及び商業スポーツ施設における指導者の 3 領域が文部大臣認
定 制 度 と し て 定 め ら れ た 。1988 年 7 月 に は 少 年 ス ポ ー ツ 指 導 者 の 領 域 が 追 加 さ れ 現 在 に 至
っ て い る 。 公 認 ス ポ ー ツ 指 導 者 と し て 登 録 し て い る 指 導 者 は 現 在 約 10 万 名 と な っ て い る 。
公認スポーツ指導者制度は指導者の資格・ランク別の指導対象および活動の場が明確に
されていない状況にある。指導者養成事業では受講科目や受講日程が硬直されており受講
し に く い と い う 指 摘 が 多 々 あ る 。2000 年 1 月 に は 、ス ポ ー ツ 文 化 を 豊 か に 享 受 す る 能 力 を
育成することのできる資質の高い指導者が不可欠との考えから、国民のスポーツニーズや
受講者の実態などを考慮して、講習内容を精選し集合講習時間数を削減した。また、職業
を持っている指導者のために、体育系大学などの専門教育機関や広域スポーツセンターと
連携して受講しやすい養成システムを構築した。これまで述べてきたスポーツ指導員の過
去から現在まで調べてみると様々な問題点があることが分かった。まず、行政当局が関係
する公的指導者を見ると、その主な問題は社会体育担当職員の増員並びに派遣スポーツ主
事等の将来的な職務上の処遇、体育指導委員の任命基準並びに身分の保証問題、さらには
他の指導者との役割分担等である。このような問題点を解決するには、行政当局と民間体
育 団 体 が 一 方 で は 協 力 的 に 、他 方 で は 独 立 的 に そ れ ぞ れ の 役 割 を 果 た す 必 要 が あ る 。ま た 、
民 間 体 育・ス ポ ー ツ 団 体 が 養 成 す る 指 導 者 に つ い て は 、そ の 養 成 方 法 と 活 用 に 問 題 が あ る 。
民 間 体 育・ス ポ ー ツ 団 体 で は 約 18 万 人 も の 有 資 格 指 導 者 が 存 在 し て い る が 、そ の 中 で ど れ
ほどの人が資格を生かし実際の現場で機能しているかは定かでは無い。むしろ、地域スポ
ーツ振興の重要な担い手として様々な民間体育・スポーツ団体によって養成された指導者
が、社会において明確に位置づけられ、それを実際の指導現場で活用しなければならない
と考える。
【おわりに】
スポーツ指導員は、スポーツの技術指導ばかりではなく、自らスポーツマンシップの精
神を理解し、スポーツの楽しさや喜びを享受でき、集団活動での様々な問題にも積極的に
取り組む指導者が望ましい。今後は技術指導だけでなく、人格的に優れた指導者が地域で
活用されることを期待したい。
- 29 -
生涯スポーツの現状と課題
―スポーツ情報の提供―
指導教員 小田嶋 充
現代社会 4 年 0813413 篠原直人 0813207 小竹孝典 0813213 佐藤佑人
【はじめに】
生涯スポーツ社会の実現に向けて地域住民がスポーツに関する様々な情報を得られる環境が整備さ
れていることが望ましい。しかし、スポーツ施設の利用、スポーツイベント等の各種事業、さらに質の
高いスポーツ指導者等に関する情報の提供体制は、自治体ごとに整備が行われているが、情報の入手場
所が限定されたり入手の手続きが煩雑であるといった問題がある。このため、スポーツをしたい人にと
っては、スポーツ情報を入手することが困難である為、主体的なスポーツ活動から遠ざかり、しいては
スポーツ実施率が伸び悩む一因となっている。そこで、宮城県民はしっかりと情報を入手できているか、
スポーツ実施率を上げるためにはこれから何が必要なのか調査した。
【調査結果】
宮城県のスポーツ情報の提供体制について調査した。様々なスポーツ情報は、地域住民がそれぞれの
ステージでスポーツに親しむ為の基盤であり、ニーズに応じた情報提供システムの構築を図ることは、
生涯スポーツ社会の実現に必要不可欠である。
スポーツ情報の入手方法としては、
「行政が出す刊行物・パンフレット」からが多いのが現状である。
それぞれの施設の概要及び利用方法、各種大会やイベントの開催情況などを刊行物やパンフレットで分
かりやすく提供し、インターネットを利用して、様々なスポーツ種目、技術レベルに応じた指導者情報
や各種大会などの開催状況、スポーツボランティアに関する情報、さらに施設利用や大会参加の申し込
みなどもできるようなシステムを広域スポーツセンターに構築する事が必要である。
また各地域の総合型地域スポーツクラブやスポーツ団体とネットワークを結び県民がスポーツ情報
を容易に入手でき、活用できる環境整備が必要である事が明らかとなった。
【考察】
行政が出す刊行物やパンフレットの内容の充実、スポーツ情報提供システムの構築及び総合型地域ス
ポーツクラブやスポーツ団体とネットワーク化を図る事は、スポーツの実施意欲やスポーツへの関心を
深め、
「みる」
・
「する」
・
「支える」スポーツ全体の普及発展に繋がり、生涯スポーツ社会の実現に寄与
できると考える。
- 30 -
生涯スポーツ社会実現に向けた指導者養成事業
-指導者養成事業の歴史-
指導教員
現代社会 4 年
0813418
東條龍介
0813322 松 木 健 太 郎
小田嶋
充
0813110 佐 々 木 和 央
【はじめに】
これまで、私たちが何気なくしてきたスポーツだが、そこにはスポーツをする環境があ
り、技術を教える指導者の存在があった。その指導者の養成事業はどうあるべきか過去の
養成事業を調査し検討した。
【調査結果】
戦 後 、1946 年 に「 社 会 体 育 の 実 施 に 関 す る 件 」と い う 通 達 と 同 時 に だ さ れ た「 社 会 体 育
実 施 の 参 考 」が 公 表 さ れ 、体 育 ス ポ ー ツ 復 興 策 の 方 針 が し め さ れ る こ と と な っ た 。
「社会体
育実施の参考」には体育指導者の充実と強化が示され、まさに指導者養成事業の始まりと
い っ て も い い だ ろ う 。1951 年 に は「 社 会 体 育 実 施 の 参 考 」に 代 わ っ て「 社 会 体 育 指 導 要 項 」
が発刊され社会体育振興策の基本指針が明らかにされた。この要項は市町村の体育と職場
の 体 育 の 二 つ の 社 会 的 場 を 社 会 体 育 振 興 基 盤 と し て い る 。市 町 村 の 任 務 と し て 、1、社 会 体
育 を 指 導 す る 人 を 置 き 、育 て る こ と 2、ク ラ ブ や 団 体 を 育 成 し 体 育 組 織 を 確 立 す る こ と 。3、
手 近 に 利 用 で き る 体 育 施 設 を 設 け 、人 々 の 利 用 に 供 す る こ と 。4、適 切 な 体 育 及 び レ ク リ エ
ーションのプログラムを作り、人々の自由な参加を求めることが示された。職場の任務と
して、職場体育を振興することは職場の経営者が分担すべき任務のひとつであるというこ
とがうたわれ。そのため各職場では、職場体育の指導者を置き手近に利用できる体育施設
を設け、適切な行事を計画し、個人およびクラブ活動を促進し、職場の人々が楽しみつつ
健康を増進する機会を与えることが必要であることが示された。以上のように「社会体育
指導要項」は市町村と職場を場として体育、スポーツの振興方策を明らかにし、戦後の社
会体育行政の基礎が築かれた。
1957 年 に 文 部 省 は 体 育 ス ポ ー ツ 振 興 上 、指 導 者 の 確 保 と そ の 活 動 の 充 実 が 重 要 で あ る と
し 、「 体 育 指 導 委 員 制 度 」を 設 け 、助 成 措 置 を 講 ず る こ と と な っ た 。こ れ に よ り 、全 国 約 2
万 名 の 体 育 指 導 委 員 が 委 託 さ れ 、市 町 村 ス ポ ー ツ 振 興 に 大 き な 役 割 を 果 た す こ と と な っ た 。
後 の 1960 年 に は 「 社 会 体 育 、 考 え 方 ・ 進 め 方 」 が 発 刊 さ れ 、「 社 会 体 育 指 導 要 項 」 に 代 わ
って、新たな発展段階に至った社会体育の推進方向に明確な指針を示すことになった。
1961 年 に は 現 在 の「 ス ポ ー ツ 基 本 法 」の も と と な る「 ス ポ ー ツ 振 興 法 」が 制 定 さ れ 、市
町村の教育委員会は、社会的信望があり、スポーツに関する深い関心と理解を持ち、職務
を行うのに必要な熱意と能力を持つ者の中から、体育指導委員を委嘱するものとすると定
めた。体育指導委員は、当該市町村におけるスポーツの振興のため、住民に対し、スポー
ツの実技指導やその他スポーツに関する指導及び助言を行うものとすると示され、わが国
のスポーツ推進に画期的段階をもたらすとともに指導者の質の向上に大きく貢献した。
【まとめ】
戦後、スポーツに対する意識が芽生え、スポーツする場所、指導する人により、高度な
技術、スポーツできる環境が改善され、現在の「日本体育協会公認スポーツ指導者制度」
につながっていると考えられる。人々の健康への意識も高まり、生涯スポーツの振興はま
すます求められていくことになる。
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みどり台中学校学区民の運動状況の実態
―運動目的と今後やってみたいスポーツ―
指導教員
小田嶋
充
現 代 社 会 学 科 4 年 1024301 佐 々 木 香 織 0813316 武 内 さ お り 0813321 増 子 実 咲
【はじめに】
私 た ち は 、 2010 年 12 月 22 日 か ら 12 月 27 日 の 期 間 、 ゆ り が 丘 ・ 那 智 が 丘 ・ み ど り 台
地 区 に 住 む 小 学 5、 6 年 生 と 中 学 生 お よ び そ の 保 護 者 を 対 象 に 運 動 状 況 の 実 態 に つ い て ア
ンケート調査を実施し、その結果をもとに運動目的と今後やってみたいスポーツとの関係
について考察した。
【調査結果及び考察】
今後どんな目的でどんなスポーツをしてみたいかの調査結果をもとに考察を行った。
小 学 生 に つ い て み る と 、 全 体 の 57% が 競 技 を 目 的 と し て ス ポ ー ツ を し た い と 回 答 し た 。
具 体 的 種 目 と し て は 、サ ッ カ ー( 16% )
・野 球( 15% )
・バ ド ミ ン ト ン( 13% )
・テ ニ ス( 13% )
・
卓 球( 11% )な ど で あ っ た 。競 技 目 的 以 外 で 回 答 が 多 か っ た の は 健 康 づ く り の た め で 11%
種目としてはバドミントン、バスケットボール、卓球などの種目が挙げられた。
中 学 生 で は 、全 体 の 77% が 競 技 を 目 的 と し て ス ポ ー ツ を し た い と 回 答 し た 。種 目 と し て
は バ ド ミ ン ト ン( 20% )・ テ ニ ス( 16% )・ バ ス ケ ッ ト ボ ー ル( 15% )と 回 答 し た 生 徒 が 多
い 。中 学 生 の 場 合 、全 体 の 83% が 部 活 動 等 で ほ ぼ 毎 日 運 動 し て い る 現 状 か ら 、現 在 加 入 し
ている部活動以外でしてみたいスポーツ種目を挙げているものと考えられる。小学生同様
競 技 目 的 以 外 で 回 答 が 多 か っ た の は 健 康 づ く り で 12% で あ っ た 。
保 護 者 に つ い て み る と 、73% が 健 康 づ く り 、12% が 生 き が い づ く り と 回 答 し 、種 目 と し
て は 水 泳( 17% )・ テ ニ ス( 16% )・ バ ド ミ ン ト ン( 16% ) と 回 答 し た 人 が 多 か っ た 。 し か
し 、今 後 し て み た い ス ポ ー ツ が あ る と 回 答 し た 人 の う ち 30% の 人 が や る 時 間 や 機 会 が な い 、
あるいは施設が遠いという理由で実際には運動を行なっていない現状が明らかとなった。
さ ら に 全 体 の 12% の 人 は 、興 味 が な い 、運 動 が 嫌 い と 答 え て い る 。一 方 現 在 行 っ て い る ス
ポーツについてみると、男女ともに手軽にできるスポーツをしている人が多く、女性は、
ウォーキング・ヨガ・エアロビクス・ストレッチなど健康の維持増進のための運動をして
い る 人 が 38% お り 、 今 後 こ の よ う な 運 動 を や っ て み た い と 回 答 し た 人 も 多 か っ た 。
【おわりに】
調査の結果、小・中学生は、運動目的を競技スポーツとしている人が多く現在も競技ス
ポーツを実践している。成人は、運動目的を健康づくりとしている人が多く、ウォーキン
グ、ストレッチなど手軽にできる運動を実践しているが、水泳、テニス、バドミントンな
ど施設、用具を用いた種目もしてみたいと考えていることが明らかとなった。
最後にこれら地域住民のニーズを把握し、素晴らしい総合型地域スポーツクラブが尚絅
学院大学に誕生することを願っている。
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目次
森田 明彦 ゼミ
- 33 -
児童虐待問題と現代社会
指導教員名
現代社会学科
4年 A クラス
0813125
森田
明彦
渡邉
遼平
1、問題意識
今、児童虐待は世界中で問題となっている。本研究では、この状況を踏まえて、児童虐
待防止の可能性を探ったものである。
はじめに、私はニュースや新聞等で児童虐待のことを聞くたびに許せないという気持ち
があった。実際に子どもたちの世話をするアルバイト等を通して一人でも多くの子どもた
ちを救いたいという気持ちがありこの研究テーマを設定した。
2、本稿の要約
まず第 1 章で問題提起をし、どのようにすれば児童虐待を減らす事が出来るのか等、研
究に対しての問題を表した。第2章では児童虐待の定義として児童虐待防止法第二条に記
された定義を明確にした。第 3 章で虐待問題の歴史をまとめた。日本では平成以前は国民
の 児 童 虐 待 に 対 す る 関 心 が 低 く 、こ れ が 社 会 問 題 と し て 取 り 上 げ ら れ た の は 、1994 年 に「 児
童の権利に関する条約」が批准、発行されてからであった。第4章では児童虐待の現状を
出 し た 。 日 本 で は 、 平 成 21 年 の 厚 生 労 働 省 の 統 計 に よ る と 全 国 で 44,211 件 の 虐 待 相 談 が
あ っ た 。内 訳 を 見 て み る と 、身 体 的 虐 待 が 約 40% 、ネ グ レ ク ト が 約 38% 、心 理 的 虐 待 が 約
18% 、 性 的 虐 待 が 約 4% と な っ て い る 。 第 5 章 で は こ の よ う な 虐 待 が 起 き て し ま う 理 由 を
述べ、一つが「育児不安」からくる子どもへの虐待、もう一つは親自身の成育歴からおこ
る「虐待」である。前者は子育てがうまくいかなく、親がイライラし、子どもにあたって
しまうというケースである。一方後者は、実際に親が幼いころに虐待経験があり、その影
響で自分が大人になったときに子どもに同じように虐待をしてしまうケースである。第 6
章 で は 、 虐 待 問 題 に 対 す る 、 日 本 の 取 り 組 み を 述 べ て い る 。 虐 待 向 け の 法 律 と し て 2000
年に児童虐待防止法が完成した。戦前にも法律はあったものの考え方が国のための思想で
あ っ た 。児 童 虐 待 に 関 し て は 、自 治 体 や 地 域 で の 対 応 が 重 要 で あ り 、
「 キ ャ プ ネ ッ ト・み や
ぎ 」と い う 市 民 団 体 の 活 動 を 例 と し て 挙 げ 、取 り 組 ん で い る 内 容 等 を 述 べ た 。第 7 章 で は 、
海外の国の児童虐待についてまとめ、今回は、アメリカ、イギリス、韓国の実態を例とし
て挙げ、各国の実態、取り組みを比較してみた。第 8 章では児童虐待問題に対する今後の
課題を述べた。今後一番期待されているのが児童心理療養施設であり、これを含めた施設
の体制整備や専門的な治療援助が必要であるということがわかった。
3、結論
現在の社会では、児童虐待が頻繁に起こってしまっている。日々児童相談所には虐待相
談が持ち寄られている。私たちは、子どもを育てることは当然のことであり義務であると
考えている。しかし実際に子育ての部分に関してはまだまだ知らない部分が多く、私たち
は児童虐待問題に対してもっと深く関心を持つべきである。そして児童虐待が起こってい
るのは、今の社会が生み出しているとも言える。貧困の問題、そして制度の体制が不十分
な面である。児童虐待は尽きることはない。だがこれから国の社会が進歩していく上で今
の子どもたちの力は将来絶対に必要なものである。社会が進化していくためにこの問題を
いかに少ないものにしていくかこそが今の社会には一番必要なことである。
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現代社会学科4―B 0813204 大友美沙
担当:森田先生
人身売買について
まず人身売買とは、一言でいえば人を物と同じように売り買いすることだ。売られた人間
は飼い主に所有され、人格を認められない。その被害者の多くは社会的・経済的に弱い立
場にある女性や子供たちだ。今回私は人身売買の半数以上が被害に遭う性的な買春を主に
調べた。まず人身売買市場は全世界で年間約3兆4100億円にも上る利益が出されてい
る。そして被害人数は大人も含めて1230万人以上に上っているという。
日本人は人身売買なんて外国の話だと思いがちだが、日本は人身売買において多国籍の主
に女性の移送目的となっており、受け入れ国、他の国と比べても特に受け入れ大国となっ
ている。これは国際社会からも厳しい評価を受けている。
そんな人身売買により売られていった子供たちに一体どんなことが待っているのかを説明
したいと思う。タイでの出来事で人身売買により連れてこられた少女たちが鎖で繋がれ、
ベルトや鞭で叩かれさらには電気ショックなどを与えられた。そのショックで死んでゆく
子も大勢おり、こうした酷い扱いを受けた子たちはゴミ捨て場や遺体となって発見されて
いる。鎖に繋げた子供に性的暴行をしたあと、故意に生きたまま火をつけて殺す人もおり、
もし殺したとしてもキャッシュカードなどでお金を払えばそれで済むのだ。
もちろんこれよりももっと軽い扱いを受けている子もいるが、こういったことはまさに現
在にも起きている、ということを知って欲しい。
人の売り買いが現在の日本で起きているといってもピンとこないだろう。人が売り買いさ
れている広場がある訳でも鎖に繋がれてた人が作業をしている姿を見るわけでもない。
だが私たちには見えない形で様々な人権侵害を受けているのだ。その多くが性風俗関連産
業である。日本の経済成長とともに男性の買春ツアーが始まり、ついで女性たちが日本に
連れ込まれるようになった。日本はこういったことをたいしたことではないとあまり活動
を行なってこなかったが、ここ最近急速に人身売買について取り組みが行われている。
世界でもユニセフ、IMO やポラリスプロジェクトといった多くの救助団体が政府や他の機
関と協力し、主に国境を越えた人身売買の被害者支援、加害者の訴追、そして防止に向け
た教育活動を行なっている。近年ではニュースに取り上げられたり、
「闇の子供たち」とい
ったドキュメンタリー映画が作られたりなど、人身売買について聞く機会はだんだんと増
えてきていると思う。だが、貧困や格差、災害などによる親の損失などがある限り、人身
売買はなくならないというのが本当の所だ。日本にいるから安全、というのではなく日本
にいるからこそこういったことに関心を持ち、募金をしたりするなど私たちにできること
をして少しでも人身売買の被害者を救っていけたらと思う。
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要旨 森田ゼミ 卒業研究 「少年非行について」
現代社会学科4年 B クラス 0813214 志村翔平
○非行少年とは・・・・少年法において、家庭裁判所の審判に付されるべき少年、つまり、
「犯罪少年」
「触法少年」
「虞犯少年」の三つを指す。
・「犯罪少年」・・・・14歳以上20歳未満の、罪を犯した少年
・「触法少年」・・・・14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
・「虞犯少年」・・・・その少年の性格または環境に照らして、将来、罪を犯し、または
刑罰法令に解かれる行為をするおそれのある少年
○成人の犯罪と比較した少年非行の特徴
・成人の場合ならば許される行為が、少年の場合には、それが非行とみなされ、検挙、補
導の対象とされること。
・過去の行為ではなく、将来に向けての再非行や、犯罪を犯す可能性のほうが問題とされ
ること。
・行為主義ではなく人格主義の立場に立つこと。
○保護処分について
保護処分とは、家庭裁判所に送致された少年を更生させるためにおこなわれる少年法上の
処分のことである。
成人に対する刑罰は、再犯防止も目的だが、過去の行為の結果責任を問うために処罰する。
これに対して、少年審判の保護処分は、少年を保護した上で教育的・福祉的な措置を講じ
ることにより、再犯を防止し、少年を健全に育成することを目的としている。
その意味で、保護処分は少年自身のためにある処分だといえる。
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世 界 の 子 供 兵 -子 供 達 が 何 故 戦 場 で 使 役 さ れ る か に つ い て 指導教員名
現代社会学科
4年 B クラス
0813216
森田
明彦
髙橋
雄大
何故世界中で精神的・肉体的に未成熟で守るべき存在である子供達が戦場に駆り出され
ているのか。私はこの疑問を解析・解明することを誓い、この卒業論文を作成した。
ま ず 子 供 兵 の 歴 史 を 見 て 行 こ う 。 古 く は 中 世 か ら 、 ま た 17~ 18 世 紀 の こ ろ か ら 始 ま る 。
そのときの子供達の役割は直接戦闘に参加することではなく、戦闘のための支援業務をす
ることだった。そして当時はあくまで支援を行うものとして正当な戦闘員(攻撃対象)と
は認識してはならないという不文律が存在した。このように子供を直接兵士として戦争に
関わらせなかったのには、道義的な理由ももちろん含まれるが単純に訓練を積んだ大人で
なければ近代以前の剣や槍、初期の銃といった兵器類を扱うことができなかったことが挙
げられる。
そして現代、世界中の紛争・内戦で子供兵たちは動員されている。特にアフリカ・西南
ア ジ ア・中 南 米 の 地 域 に 多 く 、世 界 規 模 で み た 場 合 、そ の 数 約 30 万 人 に 達 す る と 見 ら れ る 。
これほど多くの子供が兵として使われる原因をアメリカのブルッキングス研究所のシン
ガー氏は以下の3 点を理由として指摘している。
第 1 は 紛 争 を 取 り 巻 く 環 境 の 変 化 で あ る 。経 済 活 動 の 地 球 規 模 化 (グ ロ ー バ ル 化 )、紛 争 、
疫病による社会の崩壊や経済開発の失敗が、より大きな世界規模の紛争と不安定・世代間
の断絶を招き、結果として新兵予備軍として子供兵を生み出している。
第 2 は 技 術 面 で あ り 、子 供 で も 扱 い や す い 高 性 能 小 火 器 の 開 発 で あ る 。技 術 の 進 歩 に よ
って、兵器の小型・軽量化・殺傷能力の向上が進み、集められた子供達が戦いに加わって
成果を上げることが可能になった。
第 3 は 、 紛 争 そ の も の の 性 格 の 変 化 で あ る 。武 装 勢 力 に と っ て 、 紛 争 は 生 活 の 糧 を 得 る
手段に変化してしまったのだ。ただこれには、カルドー氏が唱える「新しい戦争」の特徴
を 結 び 付 け て 考 え る 必 要 が あ る 。カ ル ド ー 氏 は 新 し い 紛 争 の 行 為 主 体 を 、
「排他的なアイデ
ン テ ィ テ ィ に 基 礎 を 置 く 多 国 間 ネ ッ ト ワ ー ク 」と 形 容 し て い る 。ア イ デ ン テ ィ テ ィ (宗 教 や
民 族 )と い っ た 属 性 は 、イ デ オ ロ ギ ー (政 治 )と 異 な り 他 方 に 屈 し て 変 更 す る こ と が 出 来 な い
あるいは困難であるため争いが過激化し民族浄化や異教徒の大量虐殺に繋がっているのだ。
そして子供兵をなくすため何をしていけばよいのか。私は大きく二つの指針を考えた。
1つめは、小型武器のこれ以上の拡散防止と輸出禁止あるいは制限である。歴史的に見て
子供が戦場で戦果をあげられる兵器が存在しなかったことが結果的に子供を守った事実が
あるからだ。無くすことは出来なくても手に入りにくくすればよいのだ。
2つめは、国家・政府は今後、子供兵使役を戦争犯罪として厳しく取り締まり、厳しい刑
罰を実行するべきというものだ。今までは使役しても刑罰を受けることが稀あるいは無か
った。重い刑罰に処される重罪であるということを認識させていくことが必要なのだ。
この2つを進めていけば、武装組織などが子供達を使役するメリットよりもデメリット
のほうが大きいと感じ、子供兵を減らすことが出来ると私は考えている。
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2011.12.31.(金)
現代社会学科 4-B
専門演習Ⅱ 森田明彦ゼミ
0813219 中村 礼
『国際養子縁組の現状と斡旋問題』
養子制度とは、血縁上の親子関係にないものの間に、人為的に親子関係を創設する制度
で、戦前では『家のための』のものとして設けられたが、戦後の民法改革により『子のた
め』の養子縁組制度へと発展した。子のための国際養子縁組制度とは、ある国で生まれた
子はその国の家庭的環境の中で育つのが最良であるという理念に基づいているが、何らか
の理由によって実親からの養育を受けられない子には、海外の養夫婦の元、新しい家庭を
与える子の保護手段の一つである。
日本において国際養子縁組がなされる場合の法的規制はどうであろうか。実は、日本で
は養子縁組のための子の出国についての法的規制が不十分なために、実親に十分な熟慮の
機会が与えられぬままに私的な養子縁組斡旋業者によって赤ちゃんが国外へと連れ出され
ている。その結果、日本の赤ちゃんが十分なケアもなく、海外へと高額で売られる現状が
ある。これが本論文の問題意識である。
そもそも日本は公的機関による海外斡旋は事実上なく、すべて民間任せで、斡旋事業の
基準も資格もない。また、海外に渡った後どうなったのかの確認もされていない。
そんな野放しの養子斡旋は闇もはらんでいる。赤ちゃんの運命は斡旋事業者たちの「善意」
にゆだねられている。それが日本の海外養子斡旋をめぐる現状である。
日本国内の赤ちゃんが国際養子として斡旋されている数は近年増加している。その原因
の一つには、
『望まない妊娠の増加』が挙げられている。理由は様々だが、十代の妊娠や性
的暴行による妊娠など世間的に好ましくないと思われる妊娠をした母親は、その事実を隠
そうと海外養子縁組を選択することが増えている。
国際養子縁組に伴う問題は、日本だけではない。世界規模でとらえると、世界一の『養
子輸入国』はアメリカである。需要を支える『輸出大国』はかつて韓国であった。しかし、
今では一人っ子政策の陰で女児の捨て子が横行する中国である。一方で、いち早く法改正
に取り組んでいる国も多数存在する。例えば、フィリピンやドイツなどは国際養子斡旋を
行う機関を設け、斡旋に伴う費用や、サービス、手続きなどのガイドラインを国で定めて
おり、違反斡旋を行った場合の罰則も整備している。このように、国際養子縁組によって
起こり得る問題の対処をしっかりと整備しているのである。しかし、日本は未だ法律を含
め十分な制度ができていない。
ではなぜ日本はこの状況を改善できないのか。日本では国際養子縁組の問題はまだ多く
の人々に知られておらず、関心も低い。日本の赤ちゃんたちの人権を守るためにも早急に
現状を改善しなくてはいけない。
- 38 -
ストリート・チルドレンにおける児童労働問題について
担当教員名 森田 明彦
現代社会学科 4 年Dクラス 0813402 井上 貴道
・要旨
ストリート・チルドレン=路上で暮らす子どもたちが、発展途上国において主に深刻な
問題とされてきた。今までは主にこの問題は、タイやカンボジアなどの発展途上国で多い
問題として取り上げられてきたが、しかし調べていくにあたって、私たちが住んでいる先
進国においても、発展途上国とは条件は違うが、違う形で子どもたちが児童労働によって
被害を合うケースが浮き彫りになってきたのである。特に、広大な土地を多く持つアメリ
カ合衆国では、農業が盛んであり、その労働力を補うために低賃金で雇う事ができる、子
どもたちを労働力として利用するなどの、子どもたちにとっては肉体的・精神的にも辛い
仕事をさせているのである。しかし、先進国と発展途上国での児童労働(子どもたちが働
く理由)は異なっている。
最初に説明した発展途上国の子どもの場合、強制的に働かせられているのに、対して先
進国の子どもの場合は、発展途上国に暮らしている子どもたちとは違い、自らのお小遣い
を稼ぐために働きに出ているといった事があり、同じ児童労働と言われてはいるが、働い
ている目的自体も大きく異なっている。発展途上国の場合、主に「貧困」がキーワードと
されており、働いている目的にしても、同じ路上で暮らしている家族を救うために働きに
出ているといったことがあり、お互いに目的も異なっている。また、これらに対しての対
策や取り組みについても世界的な取り組みでは、ユニセフ(国連児童基金)や国際労働機
関(ILO)による各国が児童労働をなくしているための行動計画を作成や、ストリート・チル
ドレンに対してのサービスの提供(教育支援・医療支援・アドボカシー支援)などがおこ
なわれている。これのような世界的な取り組みを実施することにより、今被害を受けてい
る子どもたちを救うのも大切であるが、これから生まれてくる子どもで、家庭が貧しいの
が理由で路上に生活していかなくてはいけなくならないようなことを未然に防ぐように、
していかなくてはいけない。
日本においては、社会的に問題とされていなく、国としては対策があまり取られていな
く、主に各地域間での宣伝活動や救済活動がされており、比較的被害に遭っている子ども
がいることは先進国ではあまり知られていないのである。このように発展途上国や先進国
で子どもたちが児童労働によって苦しんでいるのである。ストリートチルドレンと児童労
働のそれぞれの特徴などについて説明をしていきながら、今抱えている問題を明らかにし
ていきたい。私たち自身がまずこの問題について知ることが必要なことである。
- 39 -
児童福祉法と子どもの権利の関係性
-健全育成と教育について-
指導教員名 森田明彦
現代社会学科 4 年 D 組 0813414 菅井正敏
日本は 1947 年に児童福祉法が制定された。そして、1994 年に子どもの権利条約を批准
することとなった。その中で子どもの権利である子どもの最善の利益は得られているのか
を子どもの健全育成と教育に当てはめて、その関係性を問い直していくこととした。また、
今後、日本が子どもを権利の主体と考えていく重要性について考えていくこととした。こ
れが本稿の問題意識である。
児童福祉法が施行された当時は、子どもの権利条約の考え方である子どもの最善の利益
の保障を子どもの主体では考えていなかった。それが、児童福祉が子ども家庭福祉と考え
方を変え、子どもの保護から子どもの子育て支援と内容が変わった。これにより、これま
での健全育成は大人目線の点があったが、子どもが主体となる育成方針が変わった。今後
の方向性としては、保護的福祉から自己実現や権利保障を目的としたウェルビーイングへ
と福祉の方向性を変換させていくことである。このウェルビーイングを家庭、地域、公な
どで実現していくことが、これからの児童福祉に必要となる。
しかし、それだけではスウェーデンの教育方針と比べると不十分である。スウェーデン
は就学前教育やデモクラシー教育により子どもの主体性・自主性を十分に保障している。
この主体性・自主性を考えると日本は劣っている。現在では平成 22 年 7 月に「子ども・若
者ビジョン」を作成し、それに伴った基本方針により、子ども・若者の最善の利益を尊重
し、大人と子ども・若者が共に生きるパートーナーと考えられるようになってきた。しか
し、このビジョンは作成されたばかりで、今後浸透させていく必要がある。
また、スウェーデンでは自立を目指した教育も実現されており、人生やり直し社会とし
ての社会となっている。つまり、一度落ちこぼれても再就職などが出来るような支援や成
人教育が整っている。こういった面でも、子どもの利益を保障しており、子どもが健やか
に成長できる後押しにもなっているだろう。子どもが将来を考える時、このような支援が
あると人生設計がしやすいのではないか。日本のように人生をやり直すための費用が少な
くてすむのがスウェーデン社会なのである。
日本の児童福祉法と子どもの権利条約の関係性は非常に薄い。それが子ども家庭福祉と
なり関係性は濃くなってきているが、スウェーデンと比べるとそれはまだ不十分である。
これから、子どもが健やかに育つためには子どもの主体性・自主性が重要である。それを
実現するため、家庭、地域、公などは子どもの立場になり考え、子どもの考えも取り入れ
実行していく必要がある。今の日本は子どもが実行するということは難しい。だから、大
人が子どもの考えを聞き入れ、それを伝えることが重要である。以上のような点から子ど
もの幸せを考えることで、児童福祉と子どもの権利条約の関係は深くなっていくであろう。
- 40 -
部落問題について
指導教員名 森田明彦
現代社会学科 4年Dクラス 0813415 高川 啓
人権について学んでいるなかで、私にとっては耳慣れない「被差別部落」という言葉に
出会った。長い年月の間受け継がれてきた「差別」の呪縛から何故逃れることが出来なか
ったのかを調べ、解放のための方策を探ってみた。
- 41 -
目次
黄
梅英 ゼミ
- 42 -
学校から職場への移行における学歴の効用の変化
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年Aクラス 0813114 柴 明宏
大学の講義で学歴社会の問題について触れる機会があり、また私自身の就職活動の中に学歴がどれほ
どの効果をもっているのかについても気になっていたため、このテーマを卒論研究として取り上げ、学
歴が就職への効用に変化したかどうかを明らかにすることが主な目的である。
この論文では、資料分析とインタビューを通して進める。インタビューでは 2012 年卒業見込みの知り
合いの学生(学校はアトランダム)27 人を対象に行なった。調査分析を通して、次のような結果が得ら
れた。
まず、学歴による(後期中等教育修了未満者、高等教育修了者の間)就業比率の差異は諸外国と比べ
て少ない。しかし、これには正規雇用だけでなく非正規雇用も含まれており、非正規雇用に関しては解
雇されてしまった場合、また低賃金労働に就くことしかできないというのが問題を抱えているが、学歴
は就労形態と関連があるとの指摘もあるため、実際に高卒か、大卒かによって就労形態の差異が広がっ
ていると判断できよう。
また、学校歴(出身大学)に視点を変え、以前では指定校制、学校推薦など「学歴主義」が存在して
いた。
「就職協定」により露骨な制約がなくなってからは、次に「OB・OG リクルーター」制により、学校
歴により就職機会の差異があることが注目された。そこで 90 年代の大学ランク別採用比率を見ると、採
用人数における一流大学の占有率が高いことがわかった。これは「OB・OG リクルーター」の慣行が少な
からず影響しているのではないかと指摘されている。しかし近年の調査によれば、大学群別大企業就職
率の変化がみられ、実際の学生の能力を重視する傾向が伺えた。特にランク上位の大学の大企業への就
職率が少し減少し、下位の大学群の大企業への就職率が増加したことが分かった。
具体的には公に大学の学校歴を就職に反映させているということはまずなく、学生側からの認識とし
ては学歴が採用初期段階で少なからず影響いるのではと感じられるという結果が先行研究を基に得られ
たが、私が行なったインタビュー調査では出身大学を伏せる、言わなくても良いという実際面接のケー
スが多く確認され、学歴を問わない事は能力・実力を重視している事を意味しているのではないだろう
か。
さらに調査から採用選考において小論文などのペーパーテストを行う企業が増えていることが分かっ
て、そのテスト成績は能力・実力を示しているため、以前と比べ学校歴の効果がある程度減ったという
結果が得られた。
しかし、全部の企業が出身大学を問わないわけではなく、全面的に学歴社会ではなくなったと言える
ことでもない。学歴が一つの指標としてまだ有効であり、一方的に否定していいものではない。ただ昔
の OB・OG リクルーターのように学校歴によって就職活動の機会に格差があることは防ぎたいと考える。
現在就職において学歴の不問というのは限界があるが、少しずつ学歴に対しての認識は変化してきてい
るのではないだろうか。
- 43 -
日本における外国人との共生について
―「なぜ日本は外国人を合法的に滞在させたくないのか」をめぐる考察
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年Aクラス 0813117 高橋 昌秀
最近グローバル化が進んでいる。経済のみならず異文化との触れ合いも増え、外国人と一緒に仕事を
し、日常生活を送ることも多く見られる。しかし、日本は外国人を出来るだけ合法的に滞在させないよ
うにしていると思われる。その理由について、例えば、社会的に知られている政界・経済界の有名人が
マスメディアで「外国人による犯罪が多い」こと、また、
「日本人の仕事を奪う」ということが挙げられ
ている。このようなことは本当に根拠があるのかについて私は疑問に思うようになった。この論文では、
上記のような外国人を滞在させたくない理由についてそれぞれの実態を考察し、外国人との共生を改め
て考えていきたいことが主な目的である。
この研究は資料分析を通して次のようなことを明らかにした。
外国人による犯罪が多い、日本人の仕事を奪うということを言われていたが、調べてみた結果、これ
らの理由では通りきれないことがわかった。まず外国人による犯罪が多いという事実はありません。実
際は警察庁・法務省のデータを分析した結果、日本国内の犯罪件数のうち外国人による犯罪は約1%前
後にとどまっており、決して多いとは言えないのである。
また、外国人が日本人の仕事を奪うという事実はあるとは言い難い。実際は日本人の仕事を奪ってい
る訳ではなく、日本人が嫌がる3K 労働に従事しているものが多く、こういった「きつい、汚い、危険」
の仕事を嫌がらずに引き受けてくれている。これらの外国人は、日本の特定職種における労働力不足・
少子高齢化にともなう全般的な労働力不足を補っている。そして、日本で活躍している外国人の IT 技術
者・研究者などの高度な人材も多くおり、様々な形で日本への貢献をしている。したがって、外国人を
滞在させたくない根拠が乏しいと私は考える。
しかし、これだけ日本に貢献しているのに、なぜ日本人の仕事を奪うなどと言われているのだろうか。
実際は、多くの日本人も海外に(平成 22 年には 1,143,357 人)滞在し、その多くは現地で働いている。
近年海外で留学している人達がそのまま海外で就労し、不景気だから海外で職を求めるといった日本人
も沢山いる。すなわち、外国人だけではなく日本人も同様に外国で働いているのである。彼らは現地の
人の仕事を奪うような批判はなされていないのに対して、なぜ日本は外国人に対して日本人の仕事を奪
うなどと批判するようなことが起きているのだろうか。
それは日本に島国根性があり、視野が狭く閉鎖的であるという側面をもっていることと関わっている
のではないかと考えられる。異文化を持つ外国人をなかなか受け入れられない者はまだ少なからず存在
し、外国人の一人が問題あるだけでも、外国人全員が問題あるように見られてしまうのである。我々は
もっと心をオープンにし、異文化の良いもの吸収し、問題点について共に解決方法を考えて行き、外国
人と互いにもっと理解していくことで、グローバル化の中で外国人と共に良い刺激を与え合って行くこ
とが大事なのである。
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大学の進学行動に関する分析
~私立大学と公立大学の比較を中心に~
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年Aクラス 0813124 毛内 勇太
この研究の目的は、大学 3 年生のときの授業で親の年収と大学進学率に相関があるということを疑問
に思い、どのようなものが大学の進学行動に影響を与えるのかを知りたいと思ったからです。また親の
年収と大学進学率に相関があるということは、親の年収が低い学生は、大学に進学したくても出来ない
人がたくさんいるのではないかと考えた。
そこで私はインターネットの情報とインタビューを通して研究を進めた。まず、年収が高くなるにつ
れて大学進学率は高くなっているのが確認できた。しかし、大学の設置形態別で見ると年収の増加に応
じて増えるのは私立大学だけということが分かった。都道府県別の平均年収と都道府県別の大学進学率
では、親の年収と進学率の相関は地域別に見ても同じような傾向がみられ、すなわち平均年収が高い都
道府県は私立大学の進学率が高いのである。東京都と宮城県の大学の進学状況の比較では、東京都は宮
城県に比べ、私立大学の進学率が高かったことが分かった。それに両地域の設置形態別の進学率に大学
構成比を加えて比較しても東京都は私立大学の進学率が高いと言えるのではないだろうか。これは、東
京が全国的に平均年収が高いことによるところだと考えられる。
また、私立大学と公立大学の進学行動に影響するものについて(親の年収は聞かなかった)、家庭的要
因と個人的要因の二つにわけて大きな違いが見られた。家庭的要因において、公立大学に進学した者は
親の学歴が大卒は少なく、裕福でないという自分の家庭の経済状況を考え進学する大学を選択した学生
がいた。また、公立大学に進学した者は親になんでも相談したりなど親と意見交換ができる環境が整っ
ていると感じた学生が多くいた。さらに、公立大学に進学した者が毎日新聞を読んでいる学生が多く新
聞を読むのが習慣になっている学生がいて、私立大学に進学した者がこれまでに塾や習い事をしてきた
学生が多くいたが、公立大学に進学した者には、家庭の経済状況を考え塾や習い事はせず勉強は個人で
努力してきた者もいた。個人的要因においては、公立大学に進学した者は 1 日の勉強時間が私立大学に
進学した者に比べ長く、少しの時間でも毎日勉強するのを心掛けている者が多くいた。また、進路選択
の際に私立大学に進学した者は友人の影響があったという人がいたが、公立大学は誰ひとり友人の影響
があった物がいなく進路は自分で決めた者が全員であった。
大学に進学しなかった者に対するインタビューから、進学できなかった要因として学力の欠如と家庭
の経済的要因が挙げることができよう。インタビュー対象の半数が大学に進学したかったけれども成績
が良くなく、学力が不足していたため諦めざるを得なかった人がいた。しかし、中には成績が優秀にも
関わらず自分の家庭の経済状況を考えたうえで大学進学を諦めた人もいた。ここでも進学行動に家庭的
要因が影響していることは明らかである。
この結果を持って、家庭の経済状況が貧しくても努力次第で誰でも大学に進学できるような世の中に
なってほしいと考える。そのためにも、もっと奨学金を充実させたりなどの対応が必要だと感じた。ま
また、裕福でないという家庭の学生でも毎日勉強するなど努力して公立大学に進学した学生がいたため、
大学進学したい人は努力することを怠ってほしくないと考えた。
- 45 -
大学生における学力低下と意欲の関連性
指導教員名 黄 梅英
現代社会学科 4 年 B クラス 0813206 菊地 志乃
ここ数年、大学生をとりまく学習環境は大きく変化し、学力低下のみならず学習意欲にも影響を与え
ていると言われている。我々の世代はゆとり教育世代と呼ばれており、現代の大学生に対する学力への
指摘は、授業で取り上げた文献などを通して知ることができた。これら指摘の通り、実際に大学生の学
力が本当に低下のか。本当に低下したのであれば、学力低下と学習意欲とはどのような関係を持ってい
るのか。本論文では、先行研究の結果や参考資料をもとに大学生の学力低下の実態を調べ、学力低下と
意欲との関連性について考察することは主な目的である。
資料分析を通してし、次のような結果が得られた。
第一に、大学生の学力の実態は、やはり指摘されている通り低いことが確認できた。数学と英語の学
力テストの調査結果からはどちらも他国と比較した場合、相当学力が低いことが明らかになった。また、
数学教師へのアンケート調査から、多くの教師が大学生の学力低下を感じているということがわかった。
第二に、大学生の学力低下の要因については、ゆとり教育の他にも入試制度の変化などが、学生の学
力のみならず学習意欲にも大きく影響を与えているようだ。特に、少子化の影響を受けて拡大を続ける
推薦入試や AO 入試での入学者に対しては、高校側、大学側ともに学生の学力の低さを指摘しており、
学習意欲についても心配の声をあげている。これらの指摘は、AO 入試、推薦入試は受験生活が一般入試
に比べて早い段階で終了してしまうことが原因といえる。受験生活が早期に終了してしまうことによっ
て、一般入学者が一生懸命に勉強に励む期間を、彼らは怠けて過ごしてしまっているのである。
第三に、学習意欲と授業との関係については、意外にも学生は勉強を意識して生活できているようだ。
しかし、自主学習時間をみてみると普段とテスト前などで、あまりにも時間に差が生じている。大学生
活において、勉強は大事とわかってはいるものの、実際には状況に応じて行うか、全く行わないのが現
状である。しかし、これらの全ては学生の責任に当てはまるわけではなく、調査結果によれば課題が多
く出されるほど授業への満足度が高くなるといった学生も多く存在していることが分かった。したがっ
て、全てが学生の学習意欲が低いという問題でもないことがいえるだろう。
今回の調査から、現代の大学生の学力はそう高くなく、多くの教員が学生の学力低下を感じているこ
とがわかった。学力低下には様々な要因があるが、学生自身の学習意欲が大きく関係しており、学習意
欲には大学入試の環境の変化や、授業内容や教員との関わり合いなどが影響を与えていることが明らか
となった。学生の学習意欲を高めるためにも、大学の授業のあり方をもう一度見直すべきではないだろ
うか。例えば、教員は単位取得に対する評価を厳しくすることや、個々の学生の意欲をもっと出すなど
の授業工夫があげられる。そのためには、自分の受け持った学生の能力を磨こうと努力している教員を
正当に評価すれば、教員も学生の意欲を引き出すことのできる授業づくりに励んでいくのではないだろ
うか。学生なりに自分自身の大学の授業環境について考えている者は少なくないため、そういった学生
の意欲をもっと湧いてくるよう、大学・教員を期待していきたい。
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フリーターの生成構造に関する分析
-インタビュー調査をもとに指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年 B クラス 0813209 金野 陽介
大学や高校を卒業しフリーターになった人は、近年増加している。経済不況が大きな社会的背景とな
っているが、果たしてそれだけによるものなのか。単純に世の中が不景気だからフリーターになってし
まったのだろうか。このテーマに関して、数多くの文献でも取り上げられ、フリーターの増加に関して
家庭的環境や親の学歴など様々な要因も明らかにされているが、果たして本当にそうなのか。自らの周
りでも同じような環境でフリーターになったのではないかと見受けられるケースがあるようで、それを
確かめてみたくなり、今回インタビューを通して調べ、フリーターの生成構造を明らかにしたい。
研究方法は主にインタビューの手法を用いて、現在フリーターとなっている男性6人女性4人を対象
に調査を行った。
調査分析によって、フリーターとの関連性について以下の点が指摘できるのではないかと考える。
1、 家庭の文化的環境
親の子供に対する勉強への姿勢があまりできていないのではないかということが見受けられた。ただ
単に勉強しろと言うだけの親や、塾に通わせたからといって安心している親が多く、子供の勉強に対し
て自分の時間を割き一緒に勉強をするという親はいなかった。学歴にも共通点があり、子供の勉強に対
して積極的ではない親は高卒が多かったことも事実であることが分かった。
2、 本人の意欲
生活のためのアルバイトなどにはきちんと熱意を注いでおり、単純に物事への意欲がないわけではな
いことが分かった。しかし、学生時代には勉強を自らするという傾向はあまり見られず、テストなどを
なんとかやり過ごすという方が多く、勉強に対して消極的であると強く感じ、それが必然的に成績にも
現れており、学年で上位の成績の方がおらず全体的に平均から平均以下の成績であった。
3、 本人の交友関係
全体的に友人の数が少なく、内向的な性格の人が多かった。趣味もインドアで、パソコンやゲームな
どに熱中する人が多く、もちろん趣味があり熱中できるものがあるのはいいが、パソコンは顔の見えな
い人との会話や、チャットでの交流などが一般的であるので、コミュニケーションが上手く取れなくな
ってしまい、就職活動においても相手との心が通じ合わなくなってしまうのではないだろうか。
今回の結果をもとに特に勉強への意欲とコミュニケーション能力が重要なのではないかとインタビュ
ーを通して感じた。
「子供の頃から勉強に積極的でない=フリーターになる」とは調査対象者人数の制限
で断言できないが、そのような傾向にあるのではないか。また、部屋に閉じこもり、多くの人と話さな
い環境を自ら作り出したことで、コミュニケーション能力も低下することもフリーターにつながってい
くのではないかと推測できよう。この2点を改善することが今後フリーターを減らすための最も改善す
べき点であると考えた。
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県庁所在地とその他の地域の大学進学率の規定要因に関する分析
-宮城県を中心に指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年 B クラス 0813220 永山 芳徳
以前にふと、自分がもし都会で育っていたら、どんな学歴になっていたかと思ったことがあった。実
際に私が育ったのはコンビニが3軒ぐらいしかない田舎の町だった。学歴が気になるのは理由がある。
学歴によって、今後の進路や所得、ライフスタイルなどが変わってくる可能性が大きいからである。私
のような田舎育ちは不利になるのではないかと考え、地域によって進学の機会がどのように違うのか。
また、地域の大学進学率の規定要因は何なのかを調べようと思った。この論文で、宮城県の県庁所在地
である仙台市とその他の地域である大崎市、白石市、名取市、岩沼市の大学進学率の規定要因を明らか
にすることが主な目的である。
資料分析と統計データを用いた分析を通して、以下の結果が得られた。
まず、宮城県内の地域別の大学進学率について、平成 21 年の時点で仙台市 56.71%、大崎市 41.67%、
白石市 49.64%、名取市 33.91%、岩沼市 21.54%であり、大きな格差を存在していることが分かった。し
かも、この 5 市は平成 18 年から平成 22 年の 5 年間、進学率の増減はあったが、5 市の順位は一貫して変
わってないことも明らかとなった。そのため、構造的な理由があると考えられる。
では、上記の大学進学率はなぜ発生したのか。これについて統計データを用いて重回帰分析を行った。
ここで高等教育の需要側に影響する変数をとりいれ重回帰分析を行った結果、以下の結果が得られた。
各市の大学進学率が各市の平均所得、博物館・美術館数や図書館数と強い相関を持つことが判明した。
平均所得は地域の経済が大学進学率に影響を与えているかを示している。そして、所得が多い家庭の方
が、塾や勉強する補助機材、資料の購入ができ、子どもに対する指導、しつけが行き届いて、結果的に
子どもの学力に大きなプラスになり、また、授業料、宿泊費、生活費、放棄所得など、経済が大学進学
率に与える影響がでることが分かった、とまとめることができる。nikkeiBPnet の調査によると、
「高校
生の進路についての調査」で、親の年収によって大学進学率に大きな格差があることが明らかになった。
これは東京大学大学院教育学研究科・大学経営・政策研究センターで行った「高校生の進路についての
調査」である。これによっても裏付けられるだろう。
図書館大学進学率に影響を与えていることが分かった。図書館があることで、色々な本を読み、知的
好奇心を育んだり、学習する場所になっているのだ。
上記の図書館と共に、博物館・美術館数は地域の文化が大学進学率に影響を与えているかを示してい
る。このような地域の文化的環境は、過程や個人の文化資本の蓄積に影響を及ぼしていると考えられる。
今回の分析で、地域の文化環境が大学進学率に影響があるのがわかったため、政府は文化環境に恵ま
れてない地域に博物館・美術館等の文化施設を増やすべきだと考える。それによって地域の博物館・美
術館等の文化環境を整備し、子どもの内から学ぶということに刺激を与えることが必要があり、幼い頃
から知的好奇心を育む地域の文化環境が必要なのである。文化環境がよくするためにはある程度の地域
の財政力も必要である。政府は地域の進学率の格差を是非するためには地域の平均所得の違いと経済環
境の違いを配慮する政策も行うべきだと私が考える。
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就職活動の早期化の社会的背景と現実的課題
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年 B クラス 0813221 晴山 海
現在学生たちの就職活動は、1990年代に比べ変化してきた。その中で大きく変化したのは活動開
始時期である。本来4年生から始まるべきである就職活動が、現在では3年生後期から始まっている。
実際私自身が就職活動を行った際、活動開始時期が早く感じた。どうして就職活動は早くなったのか、
それによりどのように採用基準が変わったのか、早期化によってどのような課題がのこされているのか
を明らかにしていきたい。この論分は資料分析を用いた。
分析した結果、就職活動の早期化の背景には、就職協定廃止があった。協定が廃止された原因は青田
買いの悪化、有名大学と無名大学との就職機会の格差を是正するためであった。協定廃止前は、有名大
学の OB、
OG 訪問の効果は強く、
無名大学はスタート時点で有名大学に大きな差をつけられていたのだ。
協定が廃止されてから就職活動は年々早くなり、協定廃止前の活動時期と比べ、現在は半年程度早くな
っている。
協定廃止のメリットとして、就職活動の準備が早めの段階からできる、有名大学の価値が下がった、
個人の実力を評価するようになったなどがあげられる。デメリットとしては経済不況と相俟って、就職
活動の早期化により、大学の勉強が疎かになってしまうこと、就職活動が長くなかなか内定がもらえず
精神的に落ちこむ人が増えたこと、企業を選ばず就職してしまい企業とのミスマッチが増えてしまった
ことがあげられる。
このように現在の就職活動、雇用システムのあり方にはまだ残されている課題が多い。これらの課題
には欧州の就職活動、雇用システムを参考できるものもあるのではないかと日欧の比較から分かった。
まず就職活動の早期化に対し、政府は二ヶ月遅らせる政策をだしたが、二ヶ月ではあまり変化はないと
私は思う。この政策の限界に対して終身雇用制度の見直しをする必要であるのではないかと考えており、
欧州には終身雇用制度がなくて、柔軟的・流動的なシステムはより効率がよいという事も示唆的である。
そのため転職したりする人が日本より多く、企業組織の高齢化を防ぐことができる。
また、正規社員と非正規社員の差をなくすことが検討すべきであるのではないかと考える。日本は正
規社員と非正規社員の格差がかなり大きい。それに比べ、欧州の格差はあまりない。非正規社員も正規
社員同様に働いている。こういったことから日本は欧州の雇用システムを参考に変化していかなければ
ならないのである。
さらに、就職活動の面においては、一括採用を見直し。欧州のように通年採用を取り入れ、長期イン
ターシップを行い、働くことの経験をさせることが重要になってくる。
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才能教育の実態関する日韓の比較研究
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4 年 C クラス 0813302 伊藤卓
私が卒業論文としてテーマに決めたきっかけは、外国ではよく飛び級した経験を持つ人がいるのに対
し、日本では海外での飛び級経験者はいるものの、日本で飛び級した経験のある人の話を聞かないとい
うことに不思議に思ったからである。才能教育という概念が存在するとともに、実際に多くの人が飛び
級制度を利用している韓国と、飛び級のような制度が普及していない日本の両国は、隣国であり、多く
の共通点が見られるが、なぜ才能教育のあり方が違うのか、それについて資料収集・分析によって調べ、
その実態と社会的要因を考察することは子の論文の主な目的である。
検討した結果、両国とも義務教育が普及され、学校教育平準化も進められたが、韓国では中学校平準
化に続き高校も平準化が行われ、それによって生じた副作用の対応策として才能教育が生みだされた。
それに対し、日本では中学校段階までの平準化しか行なわれておらず、平準化が高校段階まで進行しな
かったことによって平準化のゆがみという問題が見えにくくなり、才能教育という概念がなく、アクセ
ラレーションが普及していないという現状になったのではないかと考えられる。
分析によって、この日本と韓国の違いの社会的要因として、まず社会に求められている人材の違いで
はないかと指摘できよう。先進国である日本と、発展途上国である韓国とでは、国としての立場が違う。
発展途上国である韓国では、国の経済発展のためにも高度な人的資源、マンパワーが求められ、人材と
してスペシャリストが一つの大きな需要となっている。対して日本では、先進国であることから、個々
人の能力のあるスペシャリストよりも、順応性があり、物事に広く対応できるジェネラリストの需要が
社会的に大きくなっている。
また、要因として 1 人の人材に対する対価の考え方の違いと、教育の機会平等に対する捉え方、理念
の違いがあげられる。韓国には「1 名の英才が数百万名を養うことができる」という信念があり、コストと
手間がかかってでも、多くの子どもの中から才能児を逃すことなく見つけだすシステムを取り入れてい
る。このことからもわかるように、韓国では才能児を国家の財産として国がフォローしている。これに
対して日本では、そのような考え方は社会通念として存在していないため、個人に任せ、大学進学する
まで塾を通う等市場メカニズムによるエリート教育の選抜が行われている。
さらに、平等の考え方に関して、韓国ではできる人にはそれ相応のサポートをすることで平等・公平
であるのに対し、日本ではできない人に対してサポートをして平等とすることが政策的に重視してきた。
この考え方も、日本の学校教育で、有能な子どもに対するフォローがいきとどいていない原因につなが
っていると考えられる。
このような事例を参考に、グローバル社会に乗り遅れず、躓いた社会状況を脱出するため、日本の教
育システムに有能な人を含めた多様なサポートを取り入れるなど、今後の教育展開に役立てていく必要
があると感じた。
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日本における外国人雇用の実態
―留学生を中心に―
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4年Cクラス 0813303 岩永 幸
近年の日本は景気後退の影響を受け就職氷河期となっており就職するにおいて非常に厳しい状況であ
る。そのような社会情勢の中、私たち日本人学生だけではなく外国人留学生は日本人学生以上に就職活
動に苦戦しているという実情をニュースで知った。現在、日本の大学等ではアジアを中心に世界各国か
ら来た留学生が学んでおり、産業のグローバル化に対応するため大手企業を中心に外国人留学生を採用
することが重要視されている。しかし、外国人留学生の日本での就職は日本人学生と比べて厳しいこと
が問題となっている現状があるなら、日本の産業のグローバル化は進展しないだろう。そこで、外国人
留学生の雇用の実態はどのようなものなのか、また就職することが難しい環境であるのはなぜなのか、
その現状と対策を自ら探りたいと考えた。
本研究は資料分析を中心に進めた。その作業を通して外国人留学生の就職の実態や支援の現状を詳し
く知ることが出来た。
現在の日本では社会のグローバル化に向けた高度な人材を受入れることに力を入れている。そのため
政府は「留学生 30 万人計画」を策定し 2020 年を目途に留学生の受入れを 30 万人にすることを目指して
いる。法務省の統計データによると、留学生の数自体は平成 20 年の時点で 11,789 人と決して少なくは
ないが、留学生が実際に日本企業に就職しているのはそのうちの 36,271 人で、割合は全体の約 30%とい
う結果であり、外国人留学生の就職状況そのものに関しては伸び悩んでいるのが現状である。
外国人留学生に対する就職支援として政府は政策を掲げているにも関わらず実際の雇用状況があまり
良くない原因として、大学の支援に問題があるのではないかと考えた。大学側はこれまで、留学生は卒
業したら日本では就職せず帰国するものだと考えており、就職支援の対象外とされてきた。また、大学
の教育カリキュラムにおいても、留学生の教学面のみに目を向けられており、積極的に就職支援を行っ
ていなかったことが明らかになった。
以上の結果から、大学による就職支援は、政府の政策よりも留学生に近い立場で支援を行っていくこ
とが重要なのではないかと感じた。外国人留学生の就職支援は、政府だけでは解決出来ない問題であっ
て、それと同様に大学だけでは解決出来ない問題であることを実感した。留学生が大学を卒業した後に
少しでも日本で就職しやすい環境にするためには、政府と大学が連携を図り、双方で足りない部分を補
い合いながら支援を進めていくことが求められる。そうすれば、
「留学生 30 万人計画」の目標達成によ
り近づき、高度な人材の受入れも可能になることで今後の日本のグローバル化も進展するだろう。
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日本の大学における社会的機能の変遷
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4 年Dクラス 0813422 水野 高大
なぜこの問題を取り上げようと思ったのかというと、当たり前のように大学に進学しなければいけな
い状況に疑問をもったからで、この当たり前のように大学に進学するというこの考えは、いつから生ま
れたのか、大学はそもそもどのようなものなのか。大学の社会的機能の変化を考察し、大学教育のあり
方を改めて考えることがこの研究の主な目的である。
研究方法は文献、資料の収集、分析を基に進めた。それをもとに考察した結果、日本の大学の社会的
機能は時代ごとに明確に分かれていた。
第一に明治期においては日本という国の近代化のためにその道の指導者になる人材を育成しなければ
ならない背景があり、大学というものはエリートのための存在にならざるを得なかった。入学者は主に
士族階級の人たちであった。この当時明確な受験要領もなく、本も高価だったため、前時代の教養が役
に立っていたと思われる。卒業者数も極めて少なく、その殆どは官庁関係に吸収されている。
第二に高度経済成長期においては人々が裕福となり、教育のほうに投資できるようになった結果、エ
リートのみの大学ではその需要に対応できなくなった点と産業界の要望により国立大学の理工系学生の
増募とそれにあぶれた需要を私立大学が受け止めたことにより大学が大衆化された。またこの頃はまだ
大学を卒業すればエリートとみなされる風潮が残っており、多くの人がこの座を狙うために大学進学を
希望したため入学希望者は厳しい受験競争に巻き込まれた。それでも大学の収容人数は増えていたため
卒業者もさまざまな産業に就職しており大卒の存在は前の時代よりありふれたものとなった。
第三に第一次石油危機以後においても進学意欲は上昇し受験競争は激化していた。それを是正すべく
文部省は 1979 年に国公立大学に共通一次試験、1990 年に大学入試センター試験を導入する。その後推
薦入試や AO 入試なども次々と導入されたことそれにより、大学間の序列化さらに鮮明になり、受験科
目に必要の無い教科を勉強しなくなり、勉強さえしなくなった学生も現れた。進学率においても上昇し
続け、大卒の価値はもはや希少性を失ってしまい、その代わりに有名大学とそうではない大学間の格差
は増加した。50%を超えた進学率を有する現在では成熟した市民の育成は大学の機能として課せされた。
その変遷を見ていく過程で、当たり前のように大学に進学しないといけないという考えは、今の時代
の特徴であると言える。それと同時に大学の現代的課題として以下の二点を指摘したい。
第一に大学と社会のギャップについて、これは大学の学問が社会のニーズに合っていないということ
である。理由としては社会の仕組みが複雑かつ高度になったなる一方で学問が専門領域に細分化したこ
とと問題意識がなく学習意欲の無い学生が増えた点が挙げられる。
第二に教養教育の弱さである。高等教育の大衆化や社会の複雑化により教養教育の存在が揺らいでい
る他方、ローカルな出来事がグローバルになる時代に対応できる柔軟な知性・広い意味での教養が必要
とされている。この課題に対しては学生自身問題に対して正解のみを求めるという考えから脱却する必
要性がある。大学はどういうところなのかを入学者に事前に発信することが重要だと考える。そして教
育関係者は従来のような教え方のではなく、時代や学生の特徴に合わせた教育を行わなければならない。
- 52 -
日本の就労システムの再構築
~競争と共生の観点から~
指導教員 黄 梅英
現代社会学科 4 年 B クラス 1024201 竹田 健
この論文は日本社会の雇用システムの問題点を明らかにし、学生の就職難や非正規雇用の増加といっ
た問題を改めて整理して、競争の視点と共生の観点から考察するのが主な目的である。
資料収集・分析の手法を用いて論文研究を進めてきた結果、次のような知見が得られた。
日本型雇用システムについて、まず終身雇用によるメンバーシップ制度という特徴をもち、一度雇用
されてその会社のメンバーになれば、よほどのことが無い限り定年まで保証されるというシステムであ
る。メンバーになれた人間には保護は手厚く、終身雇用を前提とするが、メンバー外の人間への保護は
薄い上にメンバーにステップアップする事も難しい。また、年功序列型賃金制度と退職金制度という特
徴もあり、ある一定の率で賃金がベースアップ率と呼ばれる割合で上昇していくものである。さらに、
近年は非正規労働者が著しく増加している。それは不景気やグローバル化が進み経営環境が悪化した企
業は、給料が安く、都合のいい時だけ流動的に雇用することが出来る非正規労働者の雇用を増やして、
給料が高く、簡単には解雇できない正規雇用者の割合を減らすような行動をとることによる結果である。
これらの日本型雇用システムの特徴の分析から、強い解雇規制で守られている正規労働者を実際に支
えているのは多くの非正規労働者であるということが言え、年功序列賃金と退職金による従業員の囲い
込みをしていることで共生社会から考えれば大きな問題である一方、一度非正規労働者になってしまう
と、正規労働者にステップアップする事が難しいし、正社員はメンバーになってしまうとその後の解雇
されないことは競争原理からみても問題であることは指摘できよう。
これらの問題を踏まえ、現状の日本型雇用システムは再構築をしなければならないと私は考えた。競
争の視点と共生の視点から以下の再構築案を提示したい。
競争原理基づいて、年功序列型賃金と退職金制度を改め、強い解雇規制を緩和し労働市場の流動性を
高めるべきだという事である。次に、公務員の基本給を大幅に引き下げる事と、公務員の人事評価を正
常化する事である。公務員は失業のリスクや競争のリスクにさらされない為、民間と比べて有利な労働
条件にあるといえる。民間では当たり前の失業リスクと人事評価を正当に行い、きちんと差をつけるべ
きだと考える。
共生社会を目指すために、まず社会保険の適用拡大化である。現在のように一定基準を超えたら社会
保険の加入とするのではなく、1 時間でも働いたら 1 時間分の社会保険の加入を義務付けるべきだと考え
る。加入基準の範囲内で働いている一番貧しいはずの労働者が社会保険の加入範囲から外れている現状
を改め、社会保険で保護される範囲を増やさなければならない。また、非正規労働者の賃金を上げる事
である。ヨーロッパでは、同じ労働で同じ賃金、同じ社会保障の「均等待遇」は当たり前とされている
考え方である。正規労働者と非正規労働者の賃金格差を少なくして、仕事の成果で評価するようなシス
テムを構築しなければ、非正規労働者はこのままステップアップも望めず、共生していくのは難しいだ
ろう。
- 53 -
目次
福井 真司 ゼミ
- 54 -
「宮城の若者の雇用」
~ミスマッチをなくすためには~
現代社会学科
4 年 B クラス
指導教員
福井真司
0813224
宮北貴弘
【はじめに】
近 年 、 全 国 の 雇 用 情 勢 は ア メ リ カ の 金 融 危 機 に よ る 不 況 (リ ー マ ン ・ シ ョ ッ ク )以 降 悪 化
し た 。こ う し た 中 、2011 年 3 月 大 学 卒 業 者 の 就 職 内 定 率 は 過 去 最 低 を 記 録 し 、労 働 市 場 も
厳しくなっている。このような中、厳しい就職難を耐えて就職した者にも早期離職といっ
た問題がある。これは以前からも企業と若者とのミスマッチとして問題視されている。こ
れ を 受 け 、本 研 究 は ミ ス マ ッ チ の 原 因 を 追 究 し 、そ の 改 善 策 の 提 示 を 目 的 に 調 査 し て い く 。
【調査結果】
調査によると、雇用の悪化の原因は国際的金融危機不況も大きな影響だ。しかし、表 1
に よ る と 、 企 業 は 若 者 の 「 質 」 (こ の 場 合 の 「 質 」 と は 「 潜 在 的 能 力 ・ パ ー ソ ナ リ テ ィ 」 ※
1
及 び 「 興 味 ・ 志 望 」 の こ と )を 重 視 傾 向 に あ る こ と が う か が え る 。 こ の 「 質 」 の 低 下 に よ
る雇用の悪化も存在する。また、この「質」の低下はミスマッチによる離職にも大きく影
響を与える。企業側は学生の「質」に満足できていないのに、従業員の大幅増員などの理
由で一括採用をする点、学生側は企業及び自分のことをろくに知らずに、学生の間で人気
の企業だから、第一志望の企業で落ちたからといった理由で入社する点である。この二つ
が複合してしまい、ミスマッチによる離職といった問題が発生する。表 2 をみてみると、
特に宮城県では全国の水準と同じかそれ以上に業界・企業研究及び自己分析を行っていな
いというのがよくわかる。ただ、これら業界・企業研究や自己分析を行ってもミスマッチ
を完全になくすというのはほぼ不可能だろう。時代背景、個人の価値観からしても誰もが
企 業 と 100% マ ッ チ す る と い う の は あ り え な い か ら で あ る 。
※1
「 潜 在 的 能 力・パ ー ソ ナ リ テ ィ 」と は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 や 働 き か け 力 な ど の こ と 。
企業側の学生への満足度(表1)
質は満足・量は不満
質は不満・量は満足
11年卒
10年卒
11年卒
10年卒
22.20%
19.50%
24.10%
22.10%
総合評価
質・量とも満足
11年卒
10年卒
46.20%
50.90%
質・量とも不満
11年卒
10年卒
7.50%
7.50%
全国
宮城
求職側の離職理由 ミスマッチだと思われる割合(表2)
収入が少なかった
労働条件が良くなかった 自分に向かない仕事だった
7.60%
13%
7.70%
8.80%
11%
7.20%
【おわりに】
この結果から、ミスマッチを限りなく少なくするためには、深く企業研究・自己分析を
するのは必須だ。その方法として、現在のインターンシップを必修とすれば良いのではな
い だ ろ う か 。 特 に 表 2 か ら 宮 城 で は 27% も 労 働 条 件 な ど の ミ ス マ ッ チ の 離 職 が あ る た め 、
実際に働いてみれば知ることができるからだ。ただ、現在は必修ではなく、企業もそう多
くない。企業側は教育係りに人員を割かなければならないし、企業と学校・地域が連携を
とれていないからである。しかし、これは企業にもメリットがあり、特に中小企業では学
生から人気がなくても、インターンシップで業務内容などを深く知ってもらえるからであ
る 。ミ ス マ ッ チ に よ る 離 職 を 防 ぐ た め 、企 業 と 地 域 が 連 携 し 、必 修 化 し て い く べ き だ ろ う 。
- 55 -
尚絅学院大生の運動の実施状況とその意欲
~運動実施満足向上の為に~
指導教員名
現代社会学科
4年 C クラス
0813306
福井
真司
岸浪
智史
【はじめに】
近 年 、生 活 習 慣 病 の 予 防 と し て 運 動 の 習 慣 化 が 求 め ら れ て い る よ う に な っ て き た 。ま た 、
本学の健康スポーツ・実技の授業は、2 年次以降から一度のみ選択出来る科目となり、学
校で履修出来る授業の時間は限られており、運動と接する時間を学生自らが求めていかな
く て は な ら な い 状 況 に な る 。そ こ で 本 研 究 で は 、尚 絅 学 院 大 学 生 の「 運 動 実 施 状 況 」と「 運
動への意欲」から、運動への意欲を満たすための原因を追究することを目的とする。
【調査方法及び分析方法】
2011 年 12 月 13 日 ~ 12 月 16 日 に 尚 絅 学 院 大 学 内 に お い て 、 学 生 を 対 象 と す る ア ン ケ ー
ト 調 査 を 実 施 し た 。分 析 方 法 は 、週 1 回 以 上 の 運 動 を 行 っ て い る 者 を「 運 動 実 施 群 」、行 っ
ていない者を「非実施群」に分類した。また、健康スポーツ・実技の授業量にこのままで
い い と 答 え た 者 を「 A 群 」、増 や し て ほ し い と 回 答 し た 者 を「 B 群 」、減 ら し て ほ し い と 答 え
た 者 を 「 C 群 」、 わ か ら な い と 回 答 し た 者 を 「 D 群 」 に 分 類 し 、 比 較 検 討 し た 。
【結果及び考察】
ア ン ケ ー ト の 集 計 結 果 、356 名( 男 子 186 名 、女 子 160 名 )で あ っ た 。運 動 実 施 群 は 159
名( 44.7% )、非 実 施 群 は 197 名( 55.3% )で あ っ た 。ま た 、運 動 を し た い と 思 わ な い 者 が
36 人 に 対 し 、運 動 を し た い と 思 っ て い る 者 は 295 名 と は る か に 上 回 り 尚 絅 学 院 大 学 生 の 運
動 へ の 意 欲 の 高 さ が 読 み 取 れ る 。( ど ち ら で も な い と 回 答 し た 者 が 22 名 。)
非実施群に対し、1 人最大 2 つまで回答出来る非実施理由を問う内容のアンケートを実
施 し( 表 1)、そ こ で 上 位 4 項 目 に 絞 り 、運 動 意 欲 の 有 無 を 問 う 内 容 の ア ン ケ ー ト を 実 施 し
た (表 2)。 さ ら に 、 表 2 か ら 意 欲 の あ る 者 を 対 象 に A 群 、 B 群 、 C 群 、 D 群 に 分 け 、 意 欲 の
あ る 非 実 施 群 の 健 康 ・ ス ポ ー ツ 実 技 に 対 す る 意 欲 を 調 査 し た ( 表 3)。
表 2 に よ り 、 非 実 施 群 は 、 約 85% が 運 動 に 意 欲 を 持 っ て い る こ と が わ か る 。 ま た 、 表 3
か ら は 運 動 に 意 欲 が あ る 者 を 対 象 と し 、 B 群 が 平 均 30.7% と 半 数 を 大 き く 下 回 っ た 。 以 上
の結果から、運動意欲のある非実施者の満足度を上げる為には、健康スポーツ・実技の授
業量が増えることが全てではないと考えられる。これは、時間・場所・内容・仲間などが
ある程度指定されることが要因だと思われる。
表1 非実施理由(複数回答)
非実施理由
非実施群(%)
①時間がない(忙しい)
103人(52.3)
②機会がない
71人(36.0)
③面倒
44人(22.3)
④場所がない
38人(19.3)
⑤苦手
23人(11.7)
⑥興味がない
12人(6.1)
⑦仲間がいない
9人(4.6)
表2 非実施理由(意欲別)
運動したい
非実施理由 思っている(%)思わない(%)どちらでもない(%)
①
88人(85.4) 10人(9.7)
5人(4.9)
②
53人(74.7) 14人(19.7)
4人(5.6)
③
25人(56.8) 14人(31.8)
5人(11.4)
④
35人(92.1)
1人(2.6)
2人(5.3)
*①:時間がない(忙しい)
表3 表2で意欲がある者の健康・スポーツ・実技への意欲
非実施理由 A群(%) B群(%) C群(%) D群(%)
①
48人(46.6) 40人(38.9) 2人(1.9) 13人(12.6)
②
40人(56.3) 20人(28.2) 1人(1.4) 10人(14.1)
28人(63.6) 6人(13.6) 1人(2.3) 9人(20.5)
③
16人(42.1) 16人(42.1) 2人(5.3) 4人(10.5)
④
②:機会がない
③:面倒
④:場所がない
【おわりに】
今回の調査により、アンケートに答えた尚絅学院大学生の半分以上の者が非実施群であ
る こ と が 分 か っ た 。そ の 約 85% が 運 動 に 意 欲 的 で あ る が 、健 康 ス ポ ー ツ・ 実 技 に 対 す る 意
欲 は そ れ ほ ど 高 く は な か っ た 。今 回 の 調 査 を 参 考 に 、学 校 の 授 業 及 び 個 人 の 活 動 に つ い て 、
どうすれば運動への意欲を満たせるか調査し、提案することが今後の課題である。
- 56 -
フリーター・ニートへのタイプ別就職支援
~その効果と予防・防止策(キャリア教育)について~
指導教員名 福井 真司
現代社会学科 4年 C クラス 0813320 飯田 直人
【はじめに】
1980 年代後半の所謂バブル経済の時期、日本では高収入のアルバイトも多く、1 つの会社に所属する
のではなく不特定多数の会社と契約を結び、働く若者が発生した。これがフリーターの発生経緯であり、
自分の好きな時間に働くことのできる新しい雇用形態として、アルバイトが若者にとって身近なものと
なった。しかし近年、フリーターを取り巻く環境は賃金・立場ともに厳しくなってきている。また、働
かない若者としてニートも存在する。さらに、企業側はフリーター・ニートの採用を避ける傾向にあり、
彼らの就職は容易ではないのが現状である。本研究では、彼らが仕事を得る手助けとなりうる支援とフ
リーター・ニート化の予防・防止策として早期からのキャリア教育の必要性を示す。
【フリーター・ニートの分類と支援効果】
フリーターは職業を決定するまでの猶予期間としてフリーターを選択した「モラトリアム型」。正規
雇用を希望しながらも、フリーターとして働かざるを得なくなった「やむを得ず型」
。なんらかの明確
な目標を持ったうえで、生活の糧を得るための手段としてフリーターを選択した「夢追求型」
。この 3
タイプに分類できる。これに対しニートは就職を希望しているが求職はしていない「非求職型」と就職
を希望していない「非希望型」に分けられる。
モラトリアム型
やむを得ず型
夢追求型
表1 フリーターのタイプ別支援の効果
ジョブカフェ
地域若者サポートステーション
◎
○
◎
○
○
△
トライアル雇用
○
◎
△
非求職型
非希望型
表2 ニートのタイプ別支援の効果
ジョブカフェ
地域若者サポートステーション
○
◎
△
○
トライアル雇用
△
×
◎:特に効果的
○:効果的
△:あまり効果がない
×:効果がない
ジョブカフェは就職関連のサポートを 1 箇所でまとめて受けられる施設であり、企業側に対しても若
者との接点の提供等、若者と企業とのマッチングを目指しており、正規雇用を希望する働く意思のある
若者に特に効果的である。地域若者サポートステーションは就労機関をはじめ教育機関、若者への支援
を実施している NPO 法人等様々な団体とのネットワークを構築しており、利用者の状況・段階に応じた
サポートが受けられる。このため就職を希望しないニートでも必要に応じた支援が受けられ、ニートの
社会復帰に特に効果的だと言える。
トライアル雇用は概ね 3 ヶ月のトライアル期間が設けられその間に、
仕事を体験でき、3 ヵ月後に雇用者、労働者がお互い合意をすれば、正式に正社員として入社出来ると
いう制度である。まったく業種に経験が無くても応募する事が出来、技術を習得する事が出来るが正規
雇用に到らなかった場合は短い職歴を作るだけというリスクもある。
【おわりに】
これまでフリーター・ニート化してからの効果的な支援を述べてきたが、今後こういった人々をこれ
以上発生させないことがこの問題の根本的な解決策になると考えている。そのためには早期、具体的に
は小学校の中・高学年からのキャリア教育を行い、職場見学等で直接職業に触れ、後にインターンシッ
プ等を行うことで自分の将来を自ら考える力や職業意識を高めることが必要である。これにより若者の
フリーター・ニート化に対する中長期的な予防・防止効果が期待できる。
- 57 -
目次
栗原 由紀子 ゼミ
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名誉毀損的行為におけるプロバイダの責任
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
栗原
0813101 相 澤
由紀子
平一
1940 年 代 に 初 め て 実 用 で き る コ ン ピ ュ ー タ が 登 場 し て 以 来 、コ ン ピ ュ ー タ 技 術 は 劇 的 な
成 長 を 遂 げ て き た 。 そ し て 、 1990 年 マ イ ク ロ ソ フ ト 社 が Windows 製 品 を 発 売 し て か ら イ
ンターネットはたちまち社会に浸透していき、いまやコンピュータを利用したネットワー
ク の 情 報 交 換 に お け る 流 通 は 、世 界 を 大 き く 変 え た 。ネ ッ ト ワ ー ク を 駆 使 し た 経 済 活 動 や 、
文化交流含め、私たちの生活を営む上で不可欠な存在に成長していると言えるだろう。
し か し 、存 在 が 大 き す ぎ る が 故 に デ メ リ ッ ト も 拡 大 し て い く こ と に な る 。利 用 が 増 え れ ば 、
外部との接続機会も増えるのは必然であり、高度な技術を纏った人間によるコンピュータ
ハ ッ キ ン グ の 不 正 な 被 害( 情 報 の 漏 洩 、不 正 な ア ク セ ス に よ る 侵 入 )、ウ イ ル ス の 付 属 し た
電子メールによる感染の可能性がある迷惑メール等である。
ま た 、ネ ッ ト ワ ー ク の 上 で 行 わ れ る 誹 謗 中 傷 や 名 誉 毀 損 は 大 き く 社 会 問 題 と し て 発 展 し 、
様々な訴訟を生んでしまっている。
今日、こういった問題に対しては、加害者に責任を負わせるだけではなく、ネットワー
クの場所を提供しているプロバイダに責任を負わせることもある。これに関連した法律を
プロバイダ責任制限法という。しかし、加害者でもない、いわば第三者に過ぎないプロバ
イ ダ に 、 何 故 、 責 任 を 負 わ せ る こ と が で き る の だ ろ う か 。 本 稿 は 、 2001 年 11 月 22 日 に
可決・成立したプロバイダ責任制限法という法律の内容および、これに関連した判例、学
説を紹介していくことで、いわゆる「プロバイダ責任」の根拠とその中身を明らかにして
いくこととする。
ま と め て 簡 単 に 説 明 す る と 、 今 回 テ ー マ と し た 、 プ ロ バ イ ダ 責 任 制 限 法 と い う 2002 年 に
施行されたばかりの新しい法律は、誰かを罰することを目的とした法律ではない。民事の
問題であるが、プロバイダに対する責任追及を制限すること、プロバイダに対する情報の
開示を請求することの両方を規定したものである。
この法律が制定される以前は、不特定多数の者が閲覧できるインターネットを通して、名
誉侵害とされる書き込みがされた場合、プロバイダがこれを知ったとき、勝手に削除権限
を行使し、実行に移ってしまうと表現の自由の侵害とされ、書き込みを行った発信者から
損害賠償請求をされてしまうという可能性があり、だからといって勝手に書き込みの内容
を修正・変更してしまうと、著作権法に抵触してしまうという恐れがあったそうである。
当たり前のことだが、プロバイダが発言できる場所の提供を行うからこそ、インターネッ
トにおいて発言できるのであり、プロバイダがサービスを提供していなければ名誉毀損問
題に発展するような発言はなかったことになり、被害者は現れない。しかし、提供してい
る以上、管理するものであるが、上記の通り名誉毀損や著作権侵害、表現の自由などさま
ざまな問題が浮かび上がってきてしまう。
この法律により法的責任を負わない旨が明確にされたことで、被害者からの要求によるプ
ロバイダの対処方法も実質的に定められてきているのである。
- 59 -
部活動における安全配慮義務
指導教員名
現代社会学科4年Aクラス
0813103
栗原
越膳
由紀子
陽史
安全配慮義務とは、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間
において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則
上負う義務を指すというものである。ある法律関係とは、教育現場でいうと学校と生徒と
の間で結ばれている「在学契約」である。したがって、一見してみると部活動中の事故に
関しての責任は、生徒の管理者である教師または学校自体にあると考えられる。しかし部
活動とは学校の1つの活動として行われるものであるが、必ずしも生徒1人1人が参加し
なければならないものではなく、参加の有無は生徒の自由でありいわば学外活動である。
このように考えるのであれば、部活動は在学契約外の行為にあたり、学校側の生徒に対す
る安全配慮義務を考慮する余地はない。そこで疑問となるのが、果たして部活動中に生徒
が負傷または死亡した場合の責任の所在はどこにあるのか。部活動の顧問個人または学外
コーチであるのか学校そのものなのか。さらにどんな責任が課されるのか。というところ
である。
判例は色々とあるが判決は様々である。これらの判決に関して主に学説では、高橋説・
小沢説・長尾説があり、それぞれ「担当教諭に注意義務違反・安全配慮義務違反があった
と い え る だ ろ う か 。」「 事 故 を 予 見 す る 義 務 ま で あ っ た と い え る か 、 事 故 の 回 避 可 能 性 が あ
っ た と い え る か 。」と い う 点 に つ い て 疑 問 を 持 ち 学 校 事 故 に お け る 安 全 配 慮 義 務 に 関 し て 述
べている。
結論として部活動という課外活動において、事故が発生した場合は顧問である教諭に対
して課される責任は、基本的にはないのではないかと考える。それは、これまでいくつか
の判例を見てきて、明らかに顧問の教諭に全ての責任があると考えらされたケースはほと
んどなかったからである。やはり、事故を予見することは必ずしも可能ではなく、特に落
雷事故などのように天候に関しては特に不可能なものである。たとえ事故のケースによっ
て担当教諭に注意義務違反・安全配慮義務違反があったとしてもそこに全ての責任がある
とは言い難い。いくつかの判例を見ても明らかに顧問教諭のみに責任が追及されるべきで
あるケースというのは少ない。実際には部活動における学校事故は、責任の方向がどこに
も 向 け 難 い が た め に 1 番 近 く の 担 当 教 諭 に 向 け ら れ る の で は な い か と 考 え る 。だ か ら こ そ
学校事故に関して重要な点は、
「 担 当 教 諭 に 注 意 義 務 違 反・安 全 配 慮 義 務 違 反 が あ っ た と い
え る だ ろ う か 。」と い う 点 で あ る と 言 え る 。様 々 な 学 説 が 存 在 し て い る が ど の 学 説 も 間 違 っ
ているとは言えない。これまで研究してきての最終的な結論は、部活動中に生徒が負傷ま
たは死亡した場合の責任の所在はどこにあるのか。それは、事故が起きるまでの過程次第
で責任の矛先が変わってくる。要は、事故のケース次第で責任の所在は変わり、必ずしも
顧問である教諭や学校側に責任の所在が向けられることはないと考える。
- 60 -
消滅時効の存在と機能について
指導教員名
栗原
由紀子
0813107
小泉
勝弘
現代社会学科4年Aクラス
消滅時効とは、他人に対し債権を長期にわたって行使しなかった場合に権利を失うとい
った権利消滅の効果を認められる民法上の時効制度である。消滅時効の時効期間は一般債
権 で あ る 場 合 そ の 不 行 使 か ら 10 年 で 、 債 権 も し く は 所 有 権 で は な い 財 産 権 に つ い て は 20
年 と さ れ て い る ( 民 法 167 条 )。 所 有 権 と 所 有 権 に 基 づ く 権 利 等 に つ い て は 、 独 立 し て 消
滅 時 効 に か か ら な い 。な お 、一 定 の 債 権 に つ い て 短 期 間 の 消 滅 時 効 が 定 め ら れ て い る( 169
条 以 下 )。
消滅時効には、
「 現 在 果 た す べ き 時 効 の 存 在 理 由 な い し 機 能 」に つ い て「 弁 済 者・未 弁 済
者の両者が利益を得ることを前提としている機能であるのか」という問題点がある。そし
て、権利の消滅という一元的な法的構成のもとで、既に弁済等により債務は消滅している
がその証拠を保持していない者(弁済者)だけでなく、未弁済者も消滅時効の利益を受け
ることになる。このことが、消滅時効制度の意図した、もしくは、現在果たすべき存在理
由ないし機能であるのかも問題となっている。
消滅時効の捉え方は大きく 2 つ存在する。1 つは、権利の不行使という事実状態が長く
継続した時は、債務の履行を強制されないで済むように現状を法的に正当化するために、
権 利 を 消 滅 さ せ る 制 度 と 見 る 立 場 で あ る (権 利 消 滅 説 )。 も う 1 つ は 、 権 利 の 不 行 使 と い う
事 実 状 態 が 長 く 継 続 し た 時 は 、債 務 は 弁 済 等 に よ り す で に 消 滅 し て い る 蓋 然 性 が 高 い の で 、
権 利 の 消 滅 を 推 定 す る 制 度 で あ る と 見 る 立 場 で あ る( 推 定 説 )。考 え が 分 か れ る の は 、消 滅
時効はまだ弁済されていない債権が消滅することを正面から認めたものと考えるのか、そ
れとも、消滅時効は弁済の証拠をもたない弁済者の保護だけを目的とするものであるが、
未弁済者が未弁済であることを隠して消滅時効を援用するときは未弁済者も債務を免れる
と い う 望 ま し く な い 事 態 を 生 じ て し ま う と 考 え る か( 推 定 説 の 立 場 )、で あ る 。権 利 消 滅 説
では不道徳を許すことになり妥当でないと見るならば推定説に傾くことになる。これに対
し、推定説では権利の存在が認定される場合にはいつまでも権利行使ができ権利の永続性
を認めることになり妥当でない、もし永続性までは認めず個別の事案ごとに権利行使を否
定するか否かを判断するというのであれば、時効期間経過後の権利行使の可否につき計算
可能性を奪うことになりこれも妥当でないと考えるときは、権利消滅説に傾くことになり
うる。
消滅時効とは、旧民法の時効制度を受け継がない権利消滅の制度である。しかし、起草
者間で時効の存在理由である社会における法律関係の安定、証拠保全困難の救済、権利の
上に眠っている者を保護しないことについて議論された。それら時効観として様々な見解
があり、時効の個々の制度または具体的な問題の解釈で考え方も変わる。しかし、根本的
には私は推定説が妥当と考えた。それは、未弁済者が債務を免れることがないように弁済
証拠から権利行使の可否について判断することが望ましいからである。すなわち、時効制
度で問われている証拠と保護される者の保護に基づいて推定の立場をとることが妥当であ
る。
- 61 -
シックハウス問題について
指導教員名
現代社会学科
4年Cクラス
栗原
08133110
由紀子
佐藤
翔
近年、化学物質による建物内の空気汚染から生じる居住者の様々な健康障害が問題とさ
れている。
そこでいわゆる、シックハウスに関して、居住者が建築業者や販売業者等に対して瑕疵
担保責任、債務不履行、不法行為等の責任を追及する訴訟が増えている。
裁判例の多くは建物内の室内空気感染により居住者に健康障害が発生した事例であり、
建物販売業者、賃貸人・仲介業者、請負人等の瑕疵担保責任、債務不履行または不法行為
責 任 を 問 う も の で あ る 。し か し 、責 任 を 肯 定 し た の は 一 事 例 の み で あ り 、そ の 他 の 事 例 は 、
室内に揮発した化学物質と健康被害との因果関係は認めたが過失責任を否定、あるいは因
果関係自体を否定している。
このような状況において、シックハウスに関する科学的・医学的分野における研究も進
められているが、住宅業界、行政、法律等の分野でも様々な対策が講じられてきている。
シ ッ ク ハ ウ ス 問 題 が 広 く 浸 透 し 始 め た の は 1990 年 代 前 半 で あ り 、 国 、 自 治 体 レ ベ ル で の
議 論 が 本 格 化 し た の は 1990 年 代 後 半 、そ れ か ら 法 制 化 の 進 展 は 2000 年 代 に 入 っ て か ら で
あ る 。 国 レ ベ ル で は 1997 年 に ホ ル ム ア ル デ ヒ ド の 室 内 汚 染 濃 度 に 関 す る ガ イ ド ラ イ ン が
設 置 さ れ 、 法 律 に お い て も 2000 年 に 住 宅 の 品 質 確 保 の 促 進 等 に 関 す る 法 律 に お い て 性 能
表 示 項 目 と し て 空 気 環 境 等 級 が 規 定 さ れ 、2003 年 の 改 正 建 築 基 準 法 で 住 居 環 境 に お け る 規
制物質が定められた。そこで、本稿では、シックハウス訴訟を紹介検討することで、被害
者にどのような被害が生じているのかを確認し、この被害救済としていかなる方等が用意
されているのか概観した。
まず、シックハウスによる健康被害に対する法的保護をめぐり、関係当事者の責任構造
について検討した。法改正により室内空気汚染の指針値が採用され、数値として法的義務
化されることにより、建築業者等に対する瑕疵担保責任が問いやすくなったといわれてい
る。そして、瑕疵担保責任を判例通りに、より限定された場面でのみ機能するものと解す
るときには、瑕疵が認定される限り免責されず、債務不履行や不法行為構成よりも責任が
肯定される可能性が高いといえる。
しかし、過失論を回避する意味で瑕疵担保責任による法律構成をとった場合には、賠償
の対象となる損害の範囲に治療費や利益等を含めることが困難であることや、提訴期間の
制限等の問題が生じる。したがって、被害者の健康被害については住宅建築業者や販売業
者等の過失が認定されなければならず、その場合の責任構成が問題となる。
今後、さらに議論の蓄積が待たれるところであり、調停や控訴等の手段を駆使しつつ、
最も紛争形態に見合った解決手段を模索し、被害の救済を図っていくことが必要である。
また、シックハウス被害の深刻さについても自分たちが十分に理解を深めていくことが重
要と考える。
- 62 -
非嫡出子の法定相続分の違憲性
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
0813115
栗原
菅原
由紀子
翔
日 本 の 法 律 は 家 族 制 度 を 大 事 に す る よ う に 作 ら れ て い る 。そ し て 、我 が 国 の 民 法 で は 、
婚姻外で子供ができた場合、その子供に婚姻制度を順守してできた子供と同じ権利を与え
ると、結婚制度自体が揺らぐという立場に立っている。したがって、我が国民法には法律
上の夫婦の子(嫡出子)と、婚姻届のない男女の子(非嫡出子)の間で遺産相続分の格差
を 設 け て い る 規 定 が 存 在 す る ( 民 法 900 条 4 項 )。 し か し な が ら 、 こ の よ う な 民 法 の 規 定
が、
「 法 の 下 の 平 等 」を 保 障 し た 憲 法 に 違 反 す る の か ど う か と い う こ と が 問 題 に な っ て く る 。
すなわち、民法の規定では、非嫡出子の相続は嫡出子の半分となっている。この法律が
法 の 下 の 平 等 に 反 す る か ど う か 。 民 法 第 900 条 第 4 項 に は こ う あ る 。『 直 系 尊 属 又 は 兄 弟
姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の
相 続 分 は 、嫡 出 で あ る 子 の 相 続 分 の 2 分 の 1 と し 、父 母 の 一 方 の み を 同 じ く す る 兄 弟 姉 妹
の 相 続 分 は 、 父 母 の 双 方 を 同 じ く す る 兄 弟 姉 妹 の 相 続 分 の 2 分 の 1 と す る 。』 日 本 の 民 法
は婚姻制度を採用し、社会秩序としてこれを尊重しているというのが主たるもので、法律
婚を前提としている。このため、従来は非嫡出子の相続差別には合理的理由ありとされて
き た 。 だ が 、「 差 別 を 認 め て い い も の か 」 と い う 疑 問 も 当 然 あ る 。 憲 法 14 条 1 項 に は 『 す
べて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政
治 的 、経 済 的 又 は 社 会 的 関 係 に お い て 、差 別 さ れ な い 。』と あ る 。同 じ 子 供 で あ る の に 婚 姻
しているか否かだけで半分もの差ができるのは平等ではない。婚姻制度を守るべきは親で
あって子に罪はない。
非 嫡 出 子 の 相 続 分 を 嫡 出 子 の そ れ と 同 等 化 す る 改 正 は 民 法 900 条 4 号 た だ し 書 き 前 段 規
定 が 憲 法 14 条 に 違 反 す る 旨 の 東 京 高 裁 平 成 5 年 6 月 23 日 決 定 等 を う け 、 「婚 姻 制 度 等 に
関 す る 民 法 改 正 要 綱 試 案 」(1994 年 )に よ っ て 提 案 さ れ た も の で あ る 。 し か し 、 最 高 裁 判 所
は 、平 成 7 年 7 月 5 日 大 法 廷 決 定 以 来 、合 憲 の 判 断 を 示 し 続 け 、関 連 規 定 の 整 備 と と も に
立 法 府 に よ る 規 定 の 改 正 を 促 し て い る 。確 か に 、「そ れ ぞ れ の 国 の 伝 統 、社 会 事 情 、国 民 感
情、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律等を総合的に考慮した上で、相続制
度 を ど の よ う に 定 め る か は 、立 法 府 の 合 理 的 な 裁 量 判 断 に ゆ だ ね ら れ て い る 」と い う べ き で
あろう。しかし、婚姻法改正要綱は、嫡出子と非嫡出子の相続分の同等化を提案している
にすぎず、要綱試案で示された認知制度の見直しや生存配偶者の居住の保護の方策につい
ての検討も、今のところ行われている様子はない。そうであるのならば、裁判所がこの問
題について違憲の判断を躊躇する理由はどこにあるのだろうか。その判断は、婚姻法改正
要綱による民法改正と同様の結果をもたらすだけであり、おそらくはこの問題よりももっ
と多様な利益の配慮と制度上の整備を伴うであろう国籍法の規定を違憲としたことを考え
ると、やや釈然としない。
- 63 -
「文化財」における物概念
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
栗原
由紀子
0813116 平 千 華
私たちの身の回りにはたくさんの「物」が存在している。これらの「物」は、私たちが
売 買 で 手 に 入 っ た も の で も あ る が 、「 物 」 で あ る か ら 売 買 が 可 能 と さ れ て い る 。 す な わ ち 、
民 法 で 定 義 さ れ る「 物 」で な け れ ば 、売 買 等 の 処 分 行 為 は 出 来 な い 。そ し て 、民 法 上「 物 」
と は 、有 体 物 と 定 め ら れ て い る 。
「 有 体 物 」と は 、一 般 に は 物 理 的 考 察 に 基 づ く 法 律 上 の 概
念 と し て 把 握 さ れ 、社 会 観 念 上 空 間 の 一 部 を 占 め て 有 形 的 存 在 を 有 す る と 認 め ら れ る も の 、
すなわち液体・気体・固体のいずれかに属するものを意味する。
「有体物」という概念は、形態的に一個の物を意味するから、数多くの物の集合体、こ
とに無形の因素を念む財産の集団のようなものを一個の物とみることはできない、という
の が 通 説 の 考 え で あ る 。し か し 、こ の 字 義 通 り に 民 法 第 85 条 の「 こ の 法 律 に お い て『 物 』
と は 、有 体 物 と い う 。」と い う 理 論 に 対 し 、学 説 も 判 例 も 立 法 も 、し だ い に こ れ を 拡 張 し よ
うとする傾向を示している。
他方、刑法上の物概念はどのようになっているのであろうか。例えば、現行刑法上、電
気 は 窃 盗 の 客 体 と な り う る で あ ろ う か 。旧 刑 法 で は 、有 体 物 で な い 電 気 の 窃 取 は「 所 有 物 」
の窃取とならず、したがって、電気窃盗は窃盗罪を構成しないといってよいかどうかが問
題となった。電気を有体物とした判例があるが、その判決に対しての反対説が多かった。
現行の改正刑法では電気は財物とみなされているが、熱、光、冷気、など、今後問題とな
る 余 地 は あ る 。な お 、生 き て い る 人 の 身 体 は 、有 体 物 で は あ る が 、権 利 の 客 体 と し て の「 物 」
ではない。ただし、歯・毛髪などの切り離された身体の一部、および死体は物である。し
たがって、これらの物に所有権が成立するが、その取扱いについては、公序良俗および葬
祭・供養などに関する慣習に反しないことが必要である。
しかし、こうした定義をすべての「物」に適応していいのだろうか。こうした疑問が想
起される「物」のひとつが文化財である。文化財を民法上の「物」として考えた場合、当
然、売買や処分が可能になる。しかしながら、文化財というものを、私たちの身の回りに
ある「物」と同様に、すなわち「私物」と同じようにして扱われていいのだろうか。その
歴史的および人類史学的なことを考慮して、
「 私 物 」と は 別 個 に 扱 う べ き で は な い だ ろ う か 。
だが、民法上の「物」とされなければ、修理や管理は誰が行うのかといった問題も出てく
るだろう。
文化財についての法律として、文化財保護法や美術品公開促進法などの、いわゆる特別
法という法律が存在する。そのなかで、文化財の、修理、売買、所有権などについて事細
かに定められている。そして、文化財の管理には、全てに文化庁長官か関与してくる。こ
れは、明らかに「私物」と違う扱いがなされている。このような特別な扱いをされている
文化財は、私物と同じように民法上の物といっていいのだろうか。
これらのことを踏まえ、本稿では文化財は民法上で「物」といえるのかを検討する。
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こんにゃくゼリー事件と製造物責任法
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
栗原
由紀子
0813121 本 間 護 人
今 回 、 平 成 22 年 に 神 戸 地 裁 で 行 わ れ た 、 こ ん に ゃ く ゼ リ ー 事 件 の 訴 訟 に つ い て 考 え て
いきたい。このこんにゃくゼリー事件に対し、製造物責任法を適用できるのか、という疑
問がある。本件において、なにが問題なのかというと、こんにゃくゼリーの特性を欠陥と
認めるかどうかである。原告は、被害者がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせ窒息し、死
亡したのはこんにゃくゼリーに設計上の致命的な欠点があるからと訴えているが、硬さが
強く、破砕され難いことや水に溶解しにくいことは、こんにゃく自体の特性であり、それ
を売りにしているこんにゃくゼリーに対し、それらを欠陥と認めるかどうか、それが問題
の所存である。
こんにゃくゼリーとは、ゲル化剤としてゼラチンの代わりにコンニャクの粉末、または
精製された食物繊維を果汁等に混ぜて固めた弾力に富むゲル状の生菓子である。フルーツ
こんにゃくとも呼ばれる。食物繊維が多いコンニャクの特徴に着目したものであり、牛由
来のゼラチン(狂牛病感染の可能性が否定されていない)を原料としたゼリーに比べて、
健康やダイエットによいと宣伝されている。
本 件 は 、亡 A(当 時 1 歳 10 か 月 )が 、被 告 会 社 の 製 造・販 売 す る こ ん に ゃ く 入 り ゼ リ ー を
食べた際にこれを喉に詰まらせ窒息し、その後に死亡したのは、被告らがこんにゃく入り
ゼリーの設計上の致命的な欠点を放置してこれを漫然と製造・販売したことによるもので
ある等として、A を相続した原告らが、被告らに対し、被告会社につき製造物責任法及び
不 法 行 為 法 に 基 づ き 、被 告 Y1 及 び 同 Y2 に つ き 取 締 役 の 第 三 者 に 対 す る 責 任 に 基 づ き 、そ
れ ぞ れ 損 害 金 3120 万 9739 円 及 び こ れ に 対 す る A が 前 記 こ ん に ゃ く 入 り ゼ リ ー を 食 べ た
日 で あ る 平 成 20 年 7 月 29 日 か ら 支 払 い 済 み ま で 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 に よ る 遅 延 損 害
金の連帯支払いを求めた事案である。
判決は、本件こんにゃくゼリーは、それが通常有すべき安全性を備えており製造物責任
法上の「欠陥」はないものであるというべきであるから、これを前提とする被告らの責任
も何ら発生しないとして、原告らの請求をいずれも棄却した。
私見も「こんにゃくゼリーの特性を欠陥として認めるかどうか」という問題に対し、欠陥
で は な い と 考 え る 。な ぜ な ら 、こ ん に ゃ く ゼ リ ー の 独 特 の 弾 力 や 、噛 み づ ら さ な ど が 、
「こ
んにゃくゼリー」という商品としての特性であり、業者側の事故を防ごうとする対応など
も十分行われていたと思われるからである。
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交通事故の種類別の過失相殺の割合について
指導教員名
現代社会学科4年Cクラス
栗原由
08133138
紀子
庄子教平
交通事故により被害者の何らかの損害が生じた場合、その損害発生に対して、常に加害
者が一方的に責任をとらなければならないのだろうか。被害者側にも交通事故そのものを
発生させる、あるいは、事故による損害をより拡大させるような、何らかの過失がある場
合もあるのではないだろうか。たとえば、交差点の事故で車が青で歩行者が赤信号の時に
起こった事故の場合などがそれである。そこで本稿では、交通事故の過失相殺の認定基準
と被害者のどんな過失が認定基準になるのかを以下の5つの事故状況を紹介し、その場合
の加害者の過失と被害者の過失の割合をまとめていこうと思う。
①歩行者と四輪車との事故
この類型の多くは交差点の事故が多い。この場合信号の有無や色で過失割合は変わって
くるのだが、たとえ歩行者が赤で横断を開始したとしても、歩行者が事故にあった場合そ
の被害は甚大であること、車両が危険を内包しているものであることからくる「優者の危
険負担の原則」から、車両の前方注意義務違反を否定することはできず、歩行者の過失相
殺率は基本的に50%~70%と考えられる。
②四輪車同士の事故
事故が起きやすいのは交差点である。この場合、優先がどちらなのかが重要であり、信
号のある交差点では表示に従ったかが絶対的な要素となる。また、信号のないところでは
基本的に左側が優先されるため、どちらにいたかで割合が変わってくる。また一時停止の
標識の有無も関係してくる。基本的に信号のある交差点の場合は赤と青の事故でない限り
過 失 割 合 は 五 分 五 分 で あ る 。た だ 、青 、青 の 場 合 の み 直 進 優 先 の た め 直 進 2 0 % 右 折 8 0 %
と な る( た だ し 明 ら か に 右 折 車 が 曲 が ろ う と あ し て る 時 は 逆 と な る )。信 号 の な い 交 差 点 は
基本的に優先側が20%、劣性側が80%の過失割合になることが多い。
③単車と四輪車との事故
この類型は四輪車同士の相殺率とさほど変わりがないが、やはり単車が被害者となる事
故は、四輪車同士の事故に比べて、被害が甚大であることから、単車の方が5~20%有
利に過失相殺率が修正されている。
④自転車と四輪車・単車との事故
自 転 車 は 、 道 路 交 通 法 上 「 軽 車 両 」 と し て 車 両 と さ れ て い る ( 2 乗 1 項 1 1 号 ・ 8 号 )。
しかし、自転車は免許証が不要であること、四輪車や単車と比べ走行方法や速度において
明らかに異なることからすると、歩行者に準じて考え、歩行者より速度が速いことから若
干責任を重くするという考え方で過失相殺が決定されている。
⑤その他の事故類型における過失相殺
現在、自転車同士の事故、自転車と歩行者の事故は標準化されていない。これは、他の
類型に比べ、損害の程度が軽い傾向にあり、また、損害責任が保険によって担保されてい
ないことが多いため、ここの判断においては、加害者の資力も考慮して過失割合を決定し
ている等の事情が存在するからである。
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推定の及ばない子と近時の学説
指導教員名:栗原
現代社会学科4年Dクラス
0813406
由紀子
小原よし子
現在、民法では、嫡出親子関係については「嫡出推定・否認制度」を、非嫡出親子関係
においては「認知制度」を設けている。しかし、これらの親子関係に関する制度には、時
代に伴い価値観の齟齬が生まれ、現行の親子関係法を見直すべきだという動きも多々見ら
れている。特に、父子関係をめぐる問題において、真の血縁は無いが婚姻関係は良好で父
子関係もともにうまくいっている場合に、子の真の父親が当該父子関係を求め、これらの
関係を壊していいのかというケースと、その逆があり、どちらを支持するかで見解が大き
く変わる。だが、これらの親子関係に関する法の前提としてあるのが、子の福祉、すなわ
ち、子の安全な成長を確保するために定められたものであることである。したがって、こ
の問題は、すでに解釈論の域をはみ出し、積極的に改正が必要であるとまで議論されてい
る。
本 稿 に お い て 、 ま ず 注 目 し て い る の が 、「 子 の 福 祉 」 や 「 子 の 利 益 」 で あ る 。 平 成 12 年
3 月 14 日 判 決 で は 、た と え「 推 定 の 及 ぶ 子 」で あ っ た と し て も 、外 観 上 、明 白 に 父 子 関 係
(親子関係)が崩壊していた場合は推定を排除することが可能とされる。だが、それ以外
の ケ ー ス で は「 子 の 福 祉 」
「 家 庭 の 平 和 」を 守 る こ と を 第 一 と し 、親 子 関 係 不 存 在 確 認 訴 訟
の可否を認めている。たとえ「推定の及ばない子」であったとしても、子の身分が不安定
になることが確定されるわけではなく、真実の父と子の間に父子関係が成立し、子の法的
地位が確保されていれば、何も問題はないと解される。また、母・父・子が身分関係の消
滅を求めた場合は、
「子の福祉」
「 子 の 利 益 」共 に 問 題 は な い と さ れ る 。こ う い っ た よ う に 、
家庭の平和を第一と捉え、1 つの事例を様々な角度から検討していくことが、子の地位を
確保・安定させていくことにもつながるのである。以上のように、各々の学者が創出して
き た 学 説・判 例 を 基 に し て「 子 の 福 祉 」
「 子 の 利 益 」を 確 立 さ せ て い る の が 現 状 で あ る 。だ
が、この分野での裁判は未だ論議が絶えていない。
筆 者 は 、 学 説 ・ 判 例 を 概 観 し た 結 果 、「 子 の 福 祉 」「 子 の 利 益 」 を 確 立 す る に は 多 数 の 説
を視野にいれ、判決を下すべきであると考えた。なぜなら、子の法的地位を保護するには
そ の 方 が 確 か だ か ら で あ る 。し か し 、な か で も 家 庭 破 綻 説 は「 子 の 福 祉 」
「 子 の 利 益 」の 確
立にとって、重要ではないだろうか。外観上、明白に家庭が崩壊し、既に新たな家庭が築
かれていた場合、その家庭を壊すことが必ずしも子にとって、良いことではないからであ
る。また、新家庭が築かれる可能性があるときに、子に対して法律上の父を確保してやる
ことが、法の最低限度の任務だと梶村元判事も語っている。故に、今後も裁判官にとって
は、そういった法的措置を付与しながら、子にとって最適な家庭環境を形成していけるよ
う心がけることが出来るよう、努めなければならないと考える。
- 67 -
過労自殺における使用者の責任
指導教員名
現代社会学科
4年Dクラス
0813409
栗原
佐瀬
由紀子
真人
毎年、多くの労働者が過労自殺をしていて、近年増加の傾向にある。労働者の過労自
殺 の 後 、遺 族 は 使 用 者 に 対 し て 過 労 自 殺 を し て し ま っ た こ と の 賠 償 を 請 求 す る こ と に な る 。
その際に、遺族は過労自殺をしたのは使用者の労働者に対して定期的な休息を取らせなか
ったこと、異常なまでの長時間労働をさせていたことなどの安全配慮義務違反の責任から
使用者に損害賠償請求をすると考えられる。では、安全配慮義務違反によって労働者が過
労 自 殺 を し て し ま っ た 場 合 、使 用 者 は ど の よ う な 責 任 を と ら な け れ ば な ら な い の だ ろ う か 。
損害賠償を支払う場合にはいくら支払う必要があるのだろうか。どのような場合に使用者
責任になり、どのような場合なら労働者の原因になるのだろうか。また、どこまでが使用
者の責任にあたるのだろうか。もし、使用者が責任を取らなければならない場合、労働者
に対して使用者はどのような処置をするべきだったのだろうか。
安全配慮義務違反によって労働者が過労自殺をしてしまった場合、使用者は労働者が生
きていた場合に取得していたであろう金額を支払う責任をとらなければならない。損害賠
償 を 支 払 う 場 合 に は A が 死 亡 し な け れ ば 、 同 人 は 、 Y 社 の 定 年 で あ る 60 歳 に 至 る ま で の
36 年 間 に つ き 、各 年 各 年 の 年 収 を 得 る こ と が で き た 利 益 を 考 慮 し た う え で 算 出 し 逸 失 利 益
を 支 払 う 。ま た 、A が 死 亡 し な か っ た 場 合 60 歳 ま で 勤 務 し 、退 職 し て い た の で あ る か ら 、
そ の 分 の 退 職 金 も 支 払 わ な け れ ば な ら な い 。最 後 に A の 死 亡 に よ り 発 生 し た 精 神 的 苦 痛 を
慰 謝 す る た め と し て 死 亡 慰 謝 料 も 支 払 う 必 要 が あ る 。こ の よ う に A の 死 亡 に よ っ て 発 生 し
た様々な損害の責任を取らなければならない。
会社側が労働者に明らかに過重労働をさせていた場合や、労働者がうつ病など病気にな
っていると認識しながら、なんの対処もせずに放置していたなどの安全配慮義務違反をし
ていた場合にも使用者の責任になる。このように使用者が明らかに安全配慮義務を怠った
ことにより、労働者の健康状態が悪化してうつ病という精神障害に発展し、自殺に繋がっ
てしまったというように安全配慮義務を怠ったことによる過失相殺や、相当因果関係が認
められる場合は使用者の責任になると考える。ただし、上記のように安全配慮義務をしっ
かり行うことで過失相殺がなく、相当因果関係が認めにくい場合は使用者の責任にはなら
ないと考える。
さらに、判例によれば「どこまでが使用者の責任にあたるのだろうか。もし、使用者が
責任を取らなければならない場合、労働者に対して使用者はどのような処置をするべきだ
っ た の か 。」に つ い て 、会 社 等 が す る べ き 処 置 と し て 、指 導 だ け で な く 、し っ か り と し た 休
息を与えたり、長時間にわたる業務だった場合は、周りの社員と手分けして仕事をするな
ど、1 人に対する仕事量を減らすなどの処置が必要である。
以上のことから過労自殺における使用者の責任の線引きとして、労働者に対する安全配
慮義務を怠ると使用者の責任として罰せられる可能性があると考える。過労自殺は近年増
加傾向にあるが、使用者がしっかりと労働者一人一人に目を配らせることで、過労自殺者
を減らせ、労働者が安心して労働に励めると考える。
- 68 -
医療における自己決定権の意義について
指導教員名
現代社会学科
4年Dクラス
栗原
由紀子
0813419 羽賀綾香
近 年 、「 自 己 決 定 権 」 と い う 言 葉 が 世 に 知 ら れ る よ う に な っ て き た 。 こ の 権 利 は 私 た ち
が日常生活を送っていく中で、関わりを持っているものといっても過言ではないだろう。
「 自 己 決 定 権 」と は 、一 定 の 個 人 的 な 事 柄 に つ い て 、公 権 力 つ ま り 国 家 権 力 か ら 干 渉 さ
れ る こ と な く 、自 由 に 決 定 す る こ と を 意 味 し て い る も の だ 。我 が 国 で は 、日 本 国 憲 法 第 1
3条で保障されている幸福追求権の一部と考えられている。
さ て 、こ の「 自 己 決 定 権 」だ が 、中 身 は 大 き く 3 点 に 分 類 す る こ と が で き る 。す な わ ち 、
①個人のライフスタイルに関すること、②出産・妊娠中絶などの生殖活動に関すること、
③ 生 命 や 身 体 の あ り 方 に 関 す る こ と で あ る 。① は 婚 姻・離 婚 の 自 由 、喫 煙・飲 酒 、同 性 愛
などが挙げられる。②は子どもを持つか否か、持つ場合はいつ持つかということ。また、
妊 娠 中 絶 の 場 合 、日 本 で は 母 体 保 護 法 が 定 め ら れ て い る 。③ は 、治 療 拒 否 や 安 楽 死・尊 厳
死 と い っ た 事 柄 に お い て の こ と を 指 す 。と り わ け 、こ の 安 楽 死 や 尊 厳 死 の 場 合 は 家 族 が 患
者の意思を推定し、自己決定権を代行しうるのかということも問題となってきている。
患 者 と 医 師 の 間 に は イ ン フ ォ ー ム ド・コ ン セ ン ト と い う も の が 存 在 し て い る 。こ れ は 情
報・理 解・自 発 性 の 3 つ の 要 素 か ら 成 り 立 っ て い る も の だ 。そ こ で 、医 師 が 患 者 に 与 え な
け れ ば い け な い 情 報 と し て は 以 下 の 5 つ の 点 が 挙 げ ら れ る 。ま ず は 患 者 の 病 名 と 症 状 、予
想 さ れ る 検 査 や 治 療 に つ い て の 目 的 と 内 容 、そ し て そ の 成 功 の 確 率 と 予 想 さ れ る 結 果 な ら
び に そ れ に 伴 う 危 険 性 (副 作 用 な ど )、こ れ と は 別 に 可 能 と 考 え ら れ る 治 療 方 法 、検 査 や 治
療 を 受 け な い こ と に よ り 予 測 さ れ る 結 果 だ 。患 者 は こ れ ら の こ と を 知 る 権 利 が あ り 、医 師
サイドは情報を与える義務がある。
し か し な が ら 、医 療 の 世 界 に お い て は こ う い っ た こ と が し ば し ば 俎 上 に 載 せ ら れ る こ と
が あ る 。そ れ は 、治 療 を し て い く に 当 た っ て 患 者 の 意 思 を 優 先 す る べ き な の か 、そ れ と も
医師としての救命義務を優先するべきなのかということだ。
私 は 、判 例 や 学 説 を 検 討 し た 上 で 患 者 の 意 思 を 優 先 す る べ き で あ る と 考 え る 。冒 頭 に も
記 し た よ う に 、治 療 を し て い く 際 医 師 は 自 身 が 知 り 得 て い る 情 報 を 患 者 に 与 え る 義 務 が あ
る 。患 者 は そ の 与 え ら れ た 情 報 を 基 に し て 、医 師 と 相 談 し な が ら 治 療 方 針 を 立 て て い く が 、
実 際 に 医 療 行 為 を 受 け る の は 患 者 自 身 だ 。し た が っ て 、最 終 的 な 決 断 を 下 す の は 患 者 自 身
ではないだろうか。
時 と し て 侵 襲 的 な 医 療 行 為 を 行 う 際 に 、医 師 が 有 無 を 言 わ さ ぬ 雰 囲 気 を そ の 場 で つ く り 、
患 者 に 同 意 を 仕 向 け る よ う な こ と も 少 な く は な い で あ ろ う 。な お 、こ う い っ た 場 合 に は イ
ン フ ォ ー ム ド・コ ン セ ン ト が な い こ と も 多 々 あ る よ う に 思 わ れ る 。治 療 を 受 け る 患 者 本 人
が 、そ の 行 為 に 対 し て の 治 療 内 容 の 方 法 や 意 味 、効 果 や 危 険 性 な ど を し っ か り と 理 解 し た
うえで同意をしなければ、それはあまり意味を持つものとは思えない。
医 療 行 為 を 受 け る の は 医 師 で は な く 患 者 自 身 だ 。そ の 患 者 が 自 分 ら し く 生 き て い く た め
に 、医 師 と し て ど の よ う な サ ポ ー ト が 可 能 な の か 、そ の 在 り 方 が 問 わ れ て い る よ う に 思 わ
れ る 。医 療 に お け る 自 己 決 定 権 は 、患 者 の 意 思 を 第 一 に 考 え 尊 重 し た う え で 行 わ れ る べ き
であると考える。
- 69 -
目次
張 涛 ゼミ
- 70 -
日本企業の国際競争力について
~日・韓比較の視点から~
現代社会学科
指導教員
張
涛
4年Aクラス 0813102
阿部
渉
日本は1990年代始めにバブル崩壊を期に「失われた20年」と言われる不況が続き、日本企業の
国際競争力が低迷し続けている。スイスローザンヌに本拠を置くIMD(国際経営開発研究所)が、毎
年世界各国の競争力ランキングを発表している。その中で、2010年日本は59カ国中27位となっ
ている。1990年には、1位であった国際競争力が20年後に27位までに後退し、一人当たりの名
目GDPのランキングでも2000年には3位であったものの、2008年には23位に急落した。日
本の競争力だけではなく、経済的なプレゼンスも低下にいたっている。
本研究においては、失われた20年間の中で、日本企業は不況の中でどのように変化を続け、世界市
場に対応しつづけてきたのか。また、アジア金融危機やITバブル、リーマン・ショックが与えた影響
はいかなるものか。日本型経営システムを含めて、競争力をどのように高めていくのか検討していくこ
とにする。日本企業との成長性の違いや不況の対応の違いはどこにあるのか。それを解明するために韓
国企業を例に取り、日本企業と比較をしていきたいと思う。そして、今後日本企業がいかにして国際競
争力を高めていかないといけなくなるか、また、高めていくためにはどのような戦略が必要なのかを提
言していきたいと思う。
以上の研究目的を受け、本論文は以下のように構成されている。第1章では、日本企業の国際競争力
の現状についてまとめる。その中で、新興経済国の国際競争力の高まりや日本企業の内部環境、外部環
境の変化について時系列で整理分析する。第2章では、日本企業の内部環境として、日本型経営システ
ムの変化について分析する。経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報の4つのうち資金調達と生産シス
テムを中心に述べる。第3章では、外部環境として、ITバブルやアジア金融危機、そしてリーマン・
ショックが日本企業に与えた影響を検証する。第4章では、日本企業の国際競争力が低下している中で、
アジア諸国の企業は国際競争力が上昇している。韓国企業のサムスン電子を挙げ、日本企業と比較し内
部環境の違いを明らかにすることにする。日本企業に必要な処方箋を探りだすために、終章では、20
11年に起きた東日本大震災の影響を触れながら今後の日本企業の競争力の強化について提言してい
く。
失われた20年の中で、日本企業は国際競争力が低下したことを検証していった中で、数々の危機を
乗り越えていった韓国企業のサムスン電子に学べることがある。それは、危機感を常にもち、決断力の
あるリーダーである。サムスン電子は、現会長李健熙による「3P革新」と呼ばれるイノベーションに
より、今の競争優位を築き上げた。日本企業もまたこうしたイノベーションを行うことで、強化してい
くことが大切である。
日本企業は今後教える立場から教わる立場に変換していき、日本型経営システムの変化、世界環境の
変化に伴った低下に、サムスンをはじめとしたアジア諸国の企業の発達に日本企業も参考にできるシス
テムを取り入れ、熾烈な国際競争に対応できる危機に強い日本企業が形成されるだろう。
- 71 -
日本企業におけるコーポレート・ガバナンス
―オリンパスの粉飾決算を中心に―
指導教員名 張
現代社会学科
4年 A クラス
0813108
小林
涛
由奈
近年、コーポレート・ガバナンス(企業統治)とはどうあるべきかに関する議論が、各国
で盛んに行われるようになってきた。背景には、粉飾決算、不正会計といった企業不祥事
の多発や経営者の暴走、長期にわたる業績不振があり、不祥事防止や効率的な経営を行う
手段としてコーポレート・ガバナンスが注目を集めている。日本においては、バブル崩壊
後企業の相次ぐ不祥事が明るみになり、コーポレート・ガバナンスが有効に機能していな
いとの批判がなされ注目を集めるようになった。日本企業のコーポレート・ガバナンスに
は 2 つの代表的な特徴がある。それが、株式所有構造の視点からの株式持ち合いと金融シ
ステムの視点からのメインバンク・システムである。この 2 つの特徴によって、企業はス
テークホルダーとの安定的関係を構築し、事業の短期的な視点ではなく中長期的な視点に
立った経済性を重要視して経営を行うことができた。一方で、物言わぬ株主に囲まれた経
営を可能にさせたことから、トップ・マネジメントへのモニタリングを弱体化させ、企業
不祥事の多発へ繋がったとの見方がなされた。
こうした状況の中、アメリカ型コーポレート・ガバナンスの仕組みである社外取締役中
心の取締役会、ストックオプションなどを積極的に導入・推進すべきだという議論が盛ん
になされるようになり、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて商法の改正や会社法の
制定が行われた。しかし、アメリカ型コーポレート・ガバナンスシステムの導入や関連法
制度の整備がなされる中でも企業による不祥事は繰り返し発生しており、企業不祥事を防
ぐという目的を果たしていない。近年の国内事情を見てみると、三菱自動車、カネボウ、
大王製紙、オリンパス等の不祥事が相次いで明るみになっている。これらの不祥事はいず
れもトップ・マネジメントの監視・監督が十分でないために起こった事件である。そこで、
現在の日本企業において有効なコーポレート・ガバナンスシステムとは何かを考察してい
くことを今回のテーマとして設定した。
以上のような問題意識を踏まえて、本研究は以下のように展開していくこととする。ま
ず、コーポレート・ガバナンスとは何か、本論文での定義を明らかにし、異なるコーポレ
ート・ガバナンスシステムについて取り上げる。次に、日本型コーポレート・ガバナンス
の変遷と日本型コーポレート・ガバナンスの特徴である株式持ち合いとメインバンク・シ
ステムについて分析する。最後に、オリンパスの損失隠し問題を取り上げ、当該企業のコ
ーポレート・ガバナンスの問題を明らかにし、不祥事を防ぐためのコーポレート・ガバナ
ンスシステムの構築について提言をまとめていく。
- 72 -
脱コモディティ化の競争戦略
~ブランド戦略の視点からの考察~
指導教員名
現代社会学科
4年Aクラス
0813109
張
涛
今野 貴文
現代の日本の市場に流通している商品の多くはメーカーごとの個性を失い、どのメーカ
ーも似たり寄ったりの商品が多く、消費者にとっては価格の違い以外大差のないように感
じられがちである「コモディティ化」が起こっている。また1980年代から、規制緩和
や金融の自由化を背景に、少しずつ変化していた日本経済もバブル経済の崩壊、90年代
の銀行危機及び21世紀型の世界金融危機の発生により経済成長の低迷へ進んできている。
このような時代の中で、日本企業は、コモディティ化を脱却し、日本市場で優位なポジ
ションを確立し、また世界市場でも競り合うことのできる企業へ成長するために私は「ブ
ランド戦略」を進めることが重要と考え、卒業論文のテーマに設定した。
内容構成として、第1章では、ブランド戦略の仕組みとその仕組みについて、消費者の
視点や、企業の視点から考察していく。そもそもブランドとは何か、ブランドの構造はど
のようになっているのかを定義し、消費者がものを購入する際、どのようにブランドをと
らえているのかを先行研究をふまえて、整理することとする。またその消費者のブランド
に対するイメージを企業はどのように考え、ブランド戦略を実行していくべきなのかとい
う視点からも考察を行っていく。第2章では、日本企業の現状と日本経済の変化について、
ブランド戦略が必要なのはなぜか、コモディティ化が起こる背景は何かという視点から考
察していく。第3章ではブランド戦略を実行し成長する企業の例としてシャープのブラン
ド「AQUOS」を取り上げ、どのようにブランド戦略を行ってきたのか、成功のためには
何が必要なのかを述べる。終章ではシャープのブランド戦略をふまえ、ブランド戦略を成
功させるために何が大切なのかを考察し結論を述べる。
ブランド戦略を進めていくためには、現時点で自社のブランドがどのくらい消費者・購
買者に認識されているのかを把握する必要がある。また、自社のブランドがどのように認
識されているのか知らなければならない。これを把握し、企業は自社のブランドをどの位
置におき、戦略を進めるかを提起することが重要である。シャープのケースでは、利益的
には赤字になっていたが、他社にはない世界ナンバーワンの技術とノウハウの蓄積があっ
た「液晶」の分野を軸にテレビ事業に力を入れ AQUOS のブランドを作り、企業ブランド
を高めていった。このように、自社のブランド価値を把握した後は、他社よりも優れてい
る点にスポットをあて、ブランド戦略を進めていくことが重要である。これを社員一丸と
なって取り組み、ブランドを高めるための取り組みを、その成果が具体的な形となるまで
やり続け、消費者に価値のあるブランドだと認識させることを続けることが、ブランド・
イメージを作り、コモディティ化を脱却し、日本市場で優位なポジションを確立し、また
世界市場でも競り合うことのできる企業へ成長するために必要と考える。
- 73 -
日本企業における戦略的 CSR
~守りから攻めの CSR の確立に向けて~
指導教員 張
現代社会学科 4 年 B クラス
0813122
涛
宮城 純
近年、「CSR」という言葉をよく使われるようになった。日本国内においても認知度・
必 要 性 は 益 々 高 ま っ て い る よ う に 感 じ る 。 様 々 な 企 業 が CSR(Corporate Social
Responsibility,企業の社会的責任)を行っている中、定義としては法令順守が CSR の中心
になる事や、営利活動とは別の、社会貢献や奉仕活動を CSR として捉える事もある。企
業によって意味の取り方も異なり、国内において統一されたものはなく、捉えかたは様々
だ。企業独自の CSR を行う一方で、企業自体のブランドのイメージアップをアピールす
るために CSR を推進しても、長期的に見ても継続していく事は困難である。CSR 活動の
本来の目的は社会的責任を果たすことにより、社会からの評価や信頼を高め、将来的に成
長基盤を整えなければならないと思う。そのため、CSR を企業の「経営戦略」の一環とし
て位置づけて、今後の日本企業を更に成長させていくにはどのようにすべきかを論じてい
く。
本稿では、まず第 1 章では CSR について概要を述べていく。CSR の背景や目的、その
ものの本質やメリットやデメリット、日本での現状や国内外での理解の違いについて、一
般的な視点から整理していく。第 2 章では、日本企業が長期的な利益を継続していくため
の戦略的 CSR について分析する。戦略的 CSR のメリットとこれからの課題について考察
していく。第 3 章では、国内外の CSR を推進している企業をケーススタディとして両者
を比較して論じる。最後に、今後の日本企業が生き残るためにはどのようにすべきか、こ
れまでの分析を踏まえた上で、結論を述べる。
本研究では、経営戦略という視点から日本企業が行っている戦略的 CSR の事例を挙げ
て検証した。日本国内企業では、CSR を行う上で経営理念に「社会の貢献」や「環境保全」
等を目指して推進している企業が多く見られる。企業自体が長期的に成長していくために
は、それを「守り」として位置づけるのではなく、企業活動を優位に行うための「攻め」
の要素に着手していかなければならない。国内企業で推進されているような受動的な CSR
ではなく、CSV(Creating Shared Value,共存価値の創造)のような戦略的視点で取り組み、
社会的な課題の解決と企業における事業の利益、つまり企業と社会の双方が利益を共有で
きるような、いわば「CSR の転換」が今後の日本企業で積極的に取り組むべきだと考える。
- 74 -
日本企業におけるリーダーシップに関する一考察
~ユニクロとサムスンの比較を中心に~
指導教員
現代社会学科
4 年 B クラス
0813205
張
菅野
涛
雄介
日本経済は、バブル経済崩壊後の 1990 年代前半から 2000 年初頭までの「失われた 10
年」を経験してきた。さらにまた、2008 年には世界金融危機が生じ、日本経済にも大きな
影響を受けた。その結果、それまでの経済状況を含め「失われた 20 年」と呼ばれている。
2011 年 3 月 11 日には東日本大震災が発生し、サプラインチェーンの断絶や電力供給不足
などによる二次的被害によって、日本経済と日本企業の業績が低迷してきている。しかし、
不況の影響が色濃い 2008 年度、2009 年度と連続して増益を達成している企業もある。い
わゆる危格強耐性型企業である。これらの企業に関する研究の視点は、主に経営戦略や事
業システムといった研究がなされてきたが、本研究においては、リーダーシップの視点か
ら、日・韓のグローバル企業 2 社を選択していくこととする。
そこで本研究ではユニクロ・サムスンを中心に比較・分析を行い、厳しい競争環境の中
で継続的に業績を伸ばしている企業のリーダーシップあるべき姿を検証する。
本研究では、以上のような問題意識に基づいて、以下のように展開していくとする。
まず、日本経済や日本企業の業績の現状を把握、分析し整理していく。第 2 章でリーダ
ーシップの定義や概念を整理し、リーダーに求められる資質についてまとめる。第 3 章で
は、ユニクロ・サムソンの柳井正氏、李健熙(イゴンヒ)氏の両者に注目し、両者のリー
ダーシップを分析、整理していきたい。終章では厳しい経済環境の中で日本企業が、今後
熾烈な競争を勝ち抜くためには、今どのような、リーダーシップを発揮できる人物が日本
に必要か、また今後そのリーダーシップを発揮できる人物を育成し、分析検証していきた
い。
本研究では、柳井正氏、李健熙氏両者のリーダーシップを比較、分析してきた。李健熙
氏はアジア金融危機からの脱出するための、危機意識の部下に浸透させる力と判断する力
がある。柳井正氏はグローバル社会に対応する柔軟性や海外現地での人材を確保し、育成
させてきた力がある。両者のリーダーシップを第 2 章でとりあげた理論と照らし合わせる
と、柳井氏は「心の柔軟性」
「方針をぐらつかせない」、李氏は「勇気」
「視野の広い判断力」
に該当していると私は考える。
このように、両者のリーダーシップには違いこそあるが、今後、グローバル競争で存続
するためには、両者の優れた能力を兼ね備えたリーダーシップを発揮できる人物が必要で
あると考える。
- 75 -
「コンビニフランチャイズの課題と方向性」
~セブンイレブンを中心に~
指導教員
現代社会学科
4 年 B クラス
0813211
張
涛
佐々木
輝
現在の日本にはどこに行ってもコンビニがある。「小売業」という枠を大きく越え、「生
活総合サービス」と呼ぶのがふさわしい状態だ。このコンビニ経営の大部分はフランチャ
イズ契約だ。コンビニフランチャイズ契約に関して近年多数の問題が噴出して裁判に発展
するようになってきた。素人から見ればコンビニ経営はかなりおいしい商売に思ってしま
う。土地と店舗をコンビニ本部が用意してくれる契約パターンがあり、場所の面では楽々
クリアできる。さらにコンビニ本部が過去の売上げ予測に沿った、商品情報を提供してく
れるので安心して経営できるのかと思ってしまう。私は、コンビニ経営というのは意外に
儲かるのではないかとこの論文を題材にするまでは強く思っていた。ところが現実はそう
ではないようだ。コンビニを経営しても「儲からない」「商品の廃棄が多い」「労働時間が
長い」
「休日がない」
「冠婚葬祭にでられない」
「本部のバックアップ」が少ないなどの加盟
店オーナーからの不満が噴出している。そもそも、フランチャイズは本部と加盟店が平等
でならない形態であるにもかかわらず、加盟店が一方的に不利な立場であることが大きな
問題となっている。本論文では、コンビニ経営の中で何が必要で、不平等なのかを研究、
検証し、改善点を見出していくこととする。
はじめに、アメリカで誕生したフランンチャイズシステムとはとはそもそもどのような
ものなのかを歴史を振り返りながら明らかにし、日本で急速に成長した要因を考察する。
続いて、コンビニフランチャイズ経営の問題とし、加盟店が不利な立場に置かれている要
因、そこから見る解決策を述べていくこととする。そして、最後に改善点を挙げ、コンビ
ニ経営をより良くするためには何を改善すべきなのかを述べていくこととする。
研究の結果、コンビニの内情は実に過酷だというこが明らかになった。「いくら必死に
働いても儲からない」というのが加盟店オーナーの本音のようだ。要因は、「コンビニ会
計」という特殊な仕組だ。廃棄の商品が売上として計算され、高額な上納金として本部の
利益になる。一方的な利益の吸い上げが行われている。また「過酷な労働」があることも
事実だ。従業員の少ない店舗ではオーナーの労働時間が 15 時間という店舗もありオーナ
ーの健康問題も深刻だ。私は、本部と加盟店の真の平等、今後のコンビニ経営をより良く
していく為にはこの特殊な会計システムの見直し、労働環境の整備が最低でも必要だと考
える。
- 76 -
アパレル業界における事業システムの転換
~SPAの有効性と課題に焦点をあてて~
指導教員
現代社会学科
4 年 B クラス
0813212
張
涛
佐藤
駿
現在、不況により消費者の購買力は年々低下している。消費者のニーズも「高くてブラ
ンド物」よりも「安くて良いモノ」へと変わってきている。アパレル業界では不況の影響
を受け、成長している企業もあれば、衰退している企業もあり、明暗がはっきりと出てき
た。そんな中成長している企業の多くが SPA(specialty store retailer of private label
apparel、製造小売業)という事業システムを導入している大手アパレル企業であり、多
くのアパレルメーカーが SPA 導入を図っている。日本のアパレル業界では初めてユニクロ
が新たな形として SPA を導入した。現在では、SPA はユニクロ以外に ZARA やしまむら
などを挙げられる。
そこで本研究ではこのSPAの有効性と課題に焦点をあてて、研究する。委託取引からSPA
と事業システムへと変化した背景を整理し、不況にも負けず売り上げを伸ばしているSPA
とは一体、どのような事業システムなのか、なぜ日本のアパレル業界にこれほどまで影響
をもたらしたのか検証していく。
第1章ではアパレル業界について、過去の業界の歴史について整理する。そして、近年
のアパレル業界の現状を様々な事例を元に検証していく。第2章ではアパレル業界の事業
システムの定義について述べていく。その中でなぜこれほどまで事業システムにSPAが注
目されるようになったのかを調べ、またSPAの概要、展開の背景についても述べていく。
第3章では実際にSPAを事業システムとして導入している企業の実情はどうなのか、国内外
の企業(ユニクロ、H&M)のケーススタディを行い、SPAの実行可能性を分析していく。
最後に、SPAの今後の展望と解決すべき点はどういったことであるのか、またSPAに変わ
る事業システムが今後現れるのか調べることを目的とし、研究する。
本研究では、アパレル業界における事業システムの展開に視点を置き、その中でも、SPA
に注目し、検証した。SPA は商品企画、生産、物流、販売の4つのプロセスを1つの流れ
としてとらえ、効率化しながら、顧客の要求にこたえるシステムである。メーカーと小売
りを合体して流通経路を短縮することにより、高いマージンを得ながら安く販売でき、ま
た小売店頭で、演出や商品構成において一貫したコンセプトでブランドイメージを追求で
きる。そのため、ファッションビジネスの1つの理想像と考えられている。
しかし、品質管理を徹底できなければ在庫過多になってしまい、マーケットのトレンド
に合わなければ商品は売れなくなってしまう。いくら安く商品を作れたとしても売れなけ
れば利益はあがらない。漠然と利益のみを追求したのでは現状を打破する事はできないの
ではないだろうか。だからこそ、SPA は商品企画、製造、物流、販売のそれぞれの工程で
しっかりとした基盤が必要となる。
- 77 -
次世代自動車の課題と戦略の考察
~HV・EV・PHV を中心に~
指導教員
現代社会学科
4年
Cクラス
0813309
張
涛
坂上正和
地球環境やエネルギー問題への関心が高まる中、トヨタとホンダのハイブリッド車(HV)
の熾烈な販売戦争が起こり、また、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)
などの電気利用車両の注目度も高まっている。しかし、このような電気を利用したエコカ
ーの場合、インフラ設備の整備、高性能なバッテリーが必要なため、個人の消費者にとっ
ては非常に高価な自動車となっている。その一方で、既存の内燃機関は進歩を続けており、
電気利用ではなく、既存の技術を徹底的に磨き上げた低燃費車も注目を集めている。日本
のすり合わせの技術は非常に優れているが、エコカーになるとモジュラ型になると日本メ
ーカーの優位性がなくなってしまう。
そこで、本研究では、次世代自動車が普及させるために求められるエコカーの競争力、
また、その次世代車が社会にもたらす影響力について、EV や PHV を中心に検証していく。
本研究では、まず第 1 章では自動車産業を取り巻く外部環境を概観する。モータリゼー
ションがもたらした影響についても考察していく。第 2 章では、エコカーの登場による環
境・経済への影響を分析する。第 3 章では、自動車生産システムを中心にエコカーの課題
を考察する。また、エコカーが自動車産業と社会全体にもたらす影響及び日本企業のエコ
カーの競争力について検証する。
EV や PHV のような次世代自動車を普及させるためには、核となるリチウムイオン電池
の開発、充電インフラの充実が大きな課題である。
リチウムイオン電池は日本が世界をリードして開発してきた。携帯電話やノートパソコ
ンで使われ認知度が高まった技術が現在、EV や PHV の自動車に使われているが、リチウ
ムイオン電池は「熱暴走」という欠点があり、現在の材料設計では安全を保証するために
は性能に限界が出てきた。今後、リチウムイオンの世界は安全と性能を高めるために、新
材料をめぐる研究開発において政府、自動車メーカー、総合電機メーカーの三者が協力す
る必要がある。
充電インフラの整備は、普通充電、急速充電含め、設置数が全国で拡大しており、地方
自治体における補助も広がっているが、個人で充電設備を購入するには、まだ非常に困難
である。次世代自動車を個人が購入するためには、安価で安全かつ高性能な電池の量産体
制を築くことが必要と考える。
また、EV や PHV のような次世代自動車は、現状では低燃費車には競争上の優位性をも
たない。そのため、競争力を高めるためには、ITS(高度道路交通システム)、充電スタン
ドなどのインフラとの両立が必要不可欠であり、地域づくりの一環としてエコ住宅とのシ
ステム化によるスマートシティへの展開も必要であると考える。
- 78 -
東京ディズニーランドのマーケティング戦略
指導教員
現代社会学科
4年
クラス
0813310
張
涛
佐々木裕麻
1983年4月15日に開園した東京ディズニーランドはずば抜けた集客数を誇るテー
マパークである。バブル崩壊の影響下で、レジャー・余暇の出費が減少傾向にある中、連
日数万人という人々が訪れている。
東京ディズニーランドの成功に目をつけ、バブル期には数多くのテーマパークが乱立さ
れた。しかし、いずれも赤字続きで閉鎖に追い込まれたテーマパークも少なくない。私も
幼少期に県内の遊園地に遊びに行ったが、乗り物もあまり時間を待つことなく乗れたこと
を覚えている。しかし、それが東京ディズニーランドになるとだいぶ話が違ってくる。去
年ディズニーランドに行きましたが、平日にも関わらずたくさんの入園者がいて、1つの
アトラクションに乗るのも一苦労でした。この集客力は、どこにあるのだろうか。さらに、
世界の遊園地の入園者数のトップは現在も東京ディズニーランドで、アメリカにあるディ
ズニーランドを抜いて世界一となっている。なぜ本場よりも入園者数が多いのだろうか。
現在、日本のテーマパーク産業は、東京ディズニーランドの1人勝ちであり、テーマパー
ク全体としては右下がりの傾向にある。このようなアジア金融の不況下で、なぜ東京ディ
ズニーランドが日本人から圧倒的な人気を獲得し続け、リピート率90%以上という数字
をたたき出せる要因はどこにあるのかを探っていく。
第一章では、日本人のレジャー感覚とテーマパークについて述べる。それを踏まえたう
えで第二章では他のテーマパークとの相違点を立地とメディア、アメリカというテーマ、
ミッキーのキャラクターとしての強みの三点から考える。第三章では東京ディズニーラン
ドの三つの心理戦略を中心にどのようにしてリピーターを確保していくかを探っていく。
第四章では東京ディズニーランドのサービスの神髄とソフト構築について考える。ここで
のソフト構築は主に人材教育について考え、終章で結論を述べる。
今回、東京ディズ二―ランドのリピーターがなぜ多いかを調べてみて、立地条件の良さ
や様々な心理戦略があったが、他のテーマパークとの一番の違いはソフト構築における人
材教育ではないかと私は考える。東京ディズニーランドは徹底した人材教育をしている。
特に他との相違点は教育をするときに個人個人のトレーニングカルテを作り、マネジャー
や店長クラスのトレーナーがいなくても教育が出来る環境をつくりあげている。このカル
テにより勤務時間が異なったり、トレーナーがいなくても常に教育できる環境になってい
る。この周知徹底した教育により、他のテーマパークの従業員よりもたくさんの来園者に
感動を与え、リピート率の向上に繋がっていると私は考える。
- 79 -
ドラッグストア業界の成長戦略
指導教員
現代社会学科
4年
Cクラス
0813315
張
涛
高橋陽平
日本の小売業は、現状の消費不振による業績悪化に加え、少子高齢化を背景に今後成長
していくことが難しくなるとされている。平成 22 年 3 月時点で小売業界の前年比成長率
は-1.3%と衰退している。さらに少子高齢化により 2055 年の日本の人口はおよそ 9000 万
人まで減少するとされることから、その分、商品や小売業への需要も縮小していくことが
予測されている。
しかし、そのような厳しい小売業界の中で、ドラッグストア業界は成長が確実視されて
いる。これは「高齢社会によるヘルスケア市場の拡大」
「政府によるセルフメディケーショ
ンの推進」
「医薬分業」
「女性の社会進出拡大による健康・美容への関心の高まり」
「医療費
の高騰」などに対し、ドラッグストアが果たすべき社会的役割や機能に期待が高まってい
ることが要因として挙げられ、売上予測は 2008 年の 5 兆円から近々10 兆円産業へ伸びる
とされている。
一方現在、かつての大手企業の倒産・売却やグループ化したドラッグストア同士の不協
和音などによりドラッグストア業界の成長は鈍化傾向にある。また、ドラッグストアは出
店方法や立地、マーチャンダイジングなど、独特の手法で他の業種・業態からマーケット
を奪い成長してきたが、今では同業態間の競争状態にある。さらに 2009 年の改正薬事法
施行によって、医薬品販売へのスーパーやコンビニエンスストアといった他業種の参入が
始まっており、競争相手は同業社だけでなくなってきている。そのため、現在だけでなく、
少子高齢社会のなかでも激しい競争・再編が続くとされる。
このように業態が確立してから急成長を続け、今後も成長が確実視されるなど、小売業
の中でも優良業態といえるドラッグストアであるが、その未来は本当に楽観視できるもの
なのだろうか。
そこで、本研究では以上の問題意識を受け、以下のように構成される。
第 1 章では小売業の変遷についてまとめ、どのような要因で変化してきたかを述べる。
次にドラッグストア業界の変遷と現状を分析する。そのうえでドラッグストア業界のトッ
プ企業であるマツモトキヨシホールディングスの変遷と成長の要因について述べていく。
その内容としてはマツモトキヨシホールディングスを中心に行っている戦略や課題、今後
取り組むことなどを見ていき、激しい競争をどのように生き抜き、そして成長していくこ
とができるのか、そのために考えられる戦略は何かということを探っていくことにする。
最後に以上のことをふまえて、ドラッグストア業界において今後取り組むべきと考えられ
る戦略を挙げることにする。
- 80 -
脱ガラパゴス化する日本企業の成長戦略
〜新興国市場でのシェア獲得戦略〜
指導教員 張
現代社会学科 4 年Cクラス 0813317 手代木
涛
大樹
2000年以降、新興経済国の市場拡大に伴う顧客構造の質的転換が起き、消費者の購買意欲が向上
した。これまでは、高品質が売りで日本や欧米を主要市場とした日本製品の時代から必要なだけの機能
を持った BRICS 市場向けの廉価製品が時代の標準になりつつある。変化があったのにも関わらず日本は
動かなかったため世界市場から孤立してしまった。そして世界ではハイエンドをもつ日本製品とローエ
ンドな機能だけをもった製品のダブルスタンダードが生まれた。この背景には、日本には1億3千万人
の人口がおり GDP は世界第3位であったため国内には、巨大なマーケットが存在し日本人中心の組織・
マネジメントで国内消費者のニーズに合った高機能で高品質の独自仕様の商品を作ってきた。そのため、
海外進出が疎くなってしまった。また、このことから国際競争力が失われグローバル展開を試みるが苦
戦し、海外企業が国内マーケットに進出し政府の規制や保護なしには事業を存続できない状況にある。
しかし、国内市場も少子化が進むにつれ縮小することが考えられる。このように、国内市場だけで成長
し、世界市場から孤立してしまい個性はあるが独自の生態系を持ち、閉鎖的に閉じてしまったガラパゴ
ス諸島のようであることからガラパゴス化と言われるようになった。そのため、日本企業は脱ガラパゴ
ス化を図り、新興経済国市場へ進出することが余儀なくされている。
本稿では、ガラパゴス化の概要を述べ、日本国内の様々な分野においてガラパゴス化が進んでいるこ
とを述べる。次に、携帯電話がガラパゴス化してしまった理由、産業構造の比較をし解決策を述べる。
そして脱ガラパゴス化の必要性について考察し、終章では私なりに解決策を考察し、今後日本企業はど
うするべきか述べたいと思う。
日本企業が新興経済国でシェアを獲得するには、これまでのような日本国内だけでしか通用しないも
のづくりではなく、新興経済国を視野に入れた成長戦略が必要不可欠だと考える。その上で日本企業の
もつブランド力を活かしていかなくてはならないと思う。しかし、問題であるのは日本がこれまで世界
の規格・標準争いにあまり参加しなかったことや技術や利益を独占しようとし市場のパイを大きくしな
かったことがあげられる。また、現地とのコミュニケーション(仲間作り)や販売経路を増やす必要も
あると考える。そのため、日本企業としては、技術や利益を独占しようとするのではなく、技術を他社
に提供することも視野に入れる必要がある。それによって仲間をつくり、視野を広げ、その市場のリー
ダーとして存在する。それにより技術を標準かすることにもつながるのではないかと思う。これにより
日本企業は脱ガラパゴス化をはかる事ができ、新興経済国でシェアを獲得することができると思う。
- 81 -
日本企業におけるコーポレートガバナンス
―株式持合解消のインパクトを中心に―
指導教員名
現代社会学科
4年Cクラス
0813323
宮澤
張
涛
大地
日本企業におけるコーポレートガバナンスの構造は、時代とともに変化してきており、
その変化の中で、様々な問題点や課題が生じてきた。
1980年代より日本企業のガバナンス構造は、規制緩和や金融の自由化を背景に、少
しずつ変化していった。経済成長の低迷、IT 革命の進展といった外部環境の変化になかな
か追いつくことのできなかった日本企業は、
「失われた20年」とよばれる時代を過ごした。
しかしそれと同時に、その「失われた20年」は「改革と実験の20年」ともいわれた。
そして、2008年9月のリーマン・ショックは、1980年代よりはじまった規制緩和
や、資本市場の役割の再検討を促す重要な機会となった。
以上のような外部環境の変化の中で、日本企業の資金調達手段や雇用形態に変化が生じ、
その結果業績が低迷してきた。そしてその変化の中で、日本企業を特徴づける株式持合と
いう株式所有構造が崩れていった。1990年代前半までに保たれていた株式持合比率が
後半に入り減少傾向になった。いわゆる株式持合解消がはじまった。しかしその後、20
00年代になり再び増加傾向にある。この一連の流れの中で、株式持合の目的が変化し、
日本企業のガバナンス構造に影響を与えたことは間違いない。
以上のような問題意識に基づいて、本研究では、株式持合比率の変化による日本企業に
おけるガバナンス構造への影響について検証することとする。
本研究は以下のように展開していく。まず、日本型経営の変遷をみていく。第2章では、
株式持合が日本企業にどのような役割を果たしてきたのかを明確にする。そして、199
0年代の半ばを境にして、株式持合構造を比較して、その違いを明らかにする。第3章で
は、株式持合解消の要因を明らかにするとともに、それによって、日本企業のガバナンス
構造にどのような影響がもたらされたのかをみていく。最後に、株式持合構造の変化によ
り日本企業ガバナンスにもたらす課題や問題点とその解決策を探る。
株式持合は日本型経営システムを特徴づける重要な形態の1つであるが、その形態や構
造は経済環境の変化とともに変わってきた。それはつまり、日本企業自体の株式持合に対
する考え方が変化していると言い換えることができる。1990年代前半までに株式持合
されていた主な目的は、M&A などを防止することであり、グループ企業同士で株式を持
ち合っていた。しかし後半に入り、資金面などの非効率性から、株式持合は徐々に解消さ
れていった。2000年代になり、再び株式持合が増加してきたが、1990年代前半の
時とは目的がやや異なり、資金提携や技術提携が主な目的とされた。そのため、企業同士
がお互いを高め合い、新しい技術の開発などにつながった。
- 82 -
小売業における事業システムの進化
~ユニクロの戦略転換を中心に~
担当教員
現代社会学科
D クラス 0813408
張涛
佐々木一貴
バブル景気崩壊以降、日本経済の低迷や長引くデフレにより、小売業では苦戦を強いら
れている。売上を伸ばし、さらに維持していくためには他社との差別化を図らなくてはな
らないが、商品やサービスによる差別化は他社に模倣されやすく、差別化に成功してもそ
れが短期的なものに終わってしまう可能性が高い。さらにテレビや冷蔵庫といった家電製
品にみられるように、メーカーごとの性能の差もほとんどない商品、いわゆるコモデティ
化が進み、商品による差別化戦略は限界に達しているといえる。
そのような状況にも関わらず、日本を代表するアパレル小売業であるユニクロを展開す
るファーストレイリング社は、従来アパレル小売業にはなかった製造小売業(SPA)と呼
ばれる事業システムに転換したことにより、売上を大きく伸ばすことに成功した。
ユニクロというと、まず商品価格が安いという点が頭を過るだろう。実際にユニクロは
その低価格が消費者の心を掴み、衣料品販売不振といわれる中でも売上を増やし、規模も
拡大している。それに触発された多くの小売業では、
「ユニクロ化」と呼ばれるように低価
格の商品を販売するようになったが、結果としてユニクロのように売上を伸ばすことが出
来なかった。
つまり、ユニクロの成功は、単に低価格の商品を販売したからではなく、従来の日本国
内のアパレル小売業にはなかった SPA と呼ばれる事業システムを確立させたことに要因
があると言える。他の小売業では、ユニクロのような成功を収めることが出来なかったの
は、ユニクロの低価格商品の販売という表面的な部分のみを模倣し、背後にある事業シス
テムに着目しなかったためであろう。
このことから、今後、企業が成長を続けていくためには事業システムによる差別化が鍵
を握っているのではないかと考える。
以上の問題意識に基づいて本研究においては以下の構成で進めていく。まず、事業シス
テムによる差別化で成功したユニクロを事例として取り上げ、どのようにして事業システ
ムを転換してきたのか、事業システムの概要、アパレル業界の現状や変革の必要性を述べ
ていく。次に成功事例であるユニクロを取り上げ、事業システムを分析し、これまでのア
パレル小売業との事業システムの違いを明らかにし、ユニクロの成長の要因を探っていく。
結論として、それぞれの企業の実情に合わせたシステムの転換が必要ではあるが、商品の
差別化戦略が限界に達しているという現状から抜け出すための戦略を提案していきたい。
- 83 -
目次
油川 洋 ゼミ
- 84 -
日本と韓国の若者の雇用をめぐる諸事情
指導教員名
現代社会学科
4年 A クラス
0813120
油川
畠山
洋
美希
1.はじめに
大学入学後に韓国語やアジア社会論などの講義を受講し、アジアの文化について学ぶ機
会があった。そこから日本以外のアジアについても興味を持つようになった。そして、大
学 3 年 時 に 韓 国 に 交 流 実 習 を 通 し 行 く こ と が で き た 。そ こ か ら 私 は 韓 国 に つ い て 知 り た い
と思うようになった。そのなかでも今、私たちが目の前にしている就職・雇用について、
日本と韓国の比較していこうと考えた。
2.研究目的
私たちは、人生の岐路となる就職を経験し、社会人に成長することになる。そこで国で
はどんな対策が行われているのかを調べてみることにした。また、身近な国である韓国で
は若者の就職や雇用についてどんな問題や制度があるのか、日本との比較をする。日本と
同じように韓国でも、ニートやフリーターが増加し、若者の雇用の厳しさは日本と韓国で
共通している点だと分かった。そこで、現状を分析し両国の対策や政策の違い・特徴を比
較する。
3.研究方法
主に文献を読み、厚生労働省や文部科学省など国の調査結果を基に分析をする。
4.研究結果
日本と韓国では、毎年進学率が増加している。それに伴い、就職率については厳しい現
状に置かれている。進学率が高まるにつれ中卒者や高卒者の就職率がさらに厳しくなって
いる。また、ニートやフリーターが両国でも深刻な問題となっていることが分かった。韓
国でのニートの定義は具体的にはされていないが働く意欲がないことは共通している点で
ある。そして、国の対策としては日本では若者の自立や目的発見のためなど自分のやる気
や自己発見に関する対策が多いのに対し、韓国では海外に向け就職先を見つける政策や中
卒者などの支援に力を入れている。
5.結論
韓国と日本の現状を調べていくうちに、高等教育機関への進学率の増加、若者の就職困
難、低所得の若者増加、高卒で働く人の就職が減少、高卒者・中卒者が厳しい状況に置か
れている。などが韓国と日本の共通点であった。共通していない点として、韓国は海外で
の就職を支援、日本は国内での就職を支援していることである。また、韓国は学歴社会と
いわれそのため若者たちは大学に進学するが、正社員になれなかった若者の5割は非正規
社員となっていることが分かった。
国の対策として韓国は、海外に向けて就職口を見つけるように支援しているが、日本で
は、海外に向けて就職口を見つけ出そうという支援は低い。ここが韓国と日本の大きな違
いであった。また、日本は具体的にやりたい事が見つからない者が非正規社員となってい
るのではないのか。そのため日本政府は若者のやりたいことを見つけ仕事に対する意識、
自立への意識を高めることを目的としている対策が主であるということが分かった。
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虎横・稲荷ほろ酔いスタンプラリー
~イベントでの地域への影響と宣伝効果~
現代社会学科
担当教員
油川
洋
4 年 0813201
赤松
涼
研究目的
近年の国分町は、リーマンショック以降、企業の接待や余暇産業への一般顧客の消費が減退し、
閉 店 廃 業 に 追 い 込 ま れ た と こ ろ も 多 く 、当 然 に 空 室 が 増 加 し て い る こ と が 現 状 だ 。東 北 で ト ッ プ ク
ラ ス の 賑 わ い を 誇 る「 国 分 町 」も 例 外 で は な く 、虎 横 ・ 稲 荷 小 路 も 大 き な 影 響 を 受 け た 。国 分 町 と
い う 街 は 、圧 倒 的 な 集 客 が で き る 要 素 を 含 ん で い る 街 で あ る こ と に は 間 違 い は な く 、東 北 を 代 表 す
る 繁 華 街 と し て 地 域 や 経 済 に 及 ぼ す 影 響 は 計 り 知 れ な い も の が あ る 。地 域 本 来 の 独 自 性 や 地 域 の 活
性 化 を す る き っ か け 作 り に 大 変 大 き な 影 響 力 が 持 つ 。ま た 、イ ベ ン ト を 行 う 上 で 宣 伝 、広 告 効 果 が
ど の く ら い の 影 響 力 が あ る の か 、現 状 の 対 策 や 復 興 、活 性 化 を 図 っ た イ ベ ン ト の 一 つ と し て 、本 イ
ベントについて研究することにした。
研究方法
「 虎 横 ・ 稲 荷 ~ ほ ろ 酔 い ス タ ン プ リ ー ~ 」を 主 催 し た“ 虎 屋 横 丁 ・ 稲 荷 小 路 親 交 会 ”に ア ン ケ ー
ト 調 査 を さ せ て い た だ き 、ア ン ケ ー ト 結 果 と 調 査 、研 究 か ら 分 析 を 行 う 。虎 横 ・ 稲 荷 小 路 を 含 ん だ
国 分 町 の 現 状 や こ れ か ら の 経 済 へ の 影 響 、ま た 今 回 は 震 災 後 の 開 催 と い う こ と で 、参 加 者 や 参 加 店
舗の数、傾向や構成などの変化も視野に入れて、本イベントの影響について考察した。
研究内容
「虎横・稲荷~ほろ酔いスタンプラリー~」の概要
本 イ ベ ン ト は 2003 年 に 「 安 心 ・ 安 全 な 美 味 し い 街 、 虎 横 ・ 稲 荷 」 を ス ロ ー ガ ン に 掲 げ 、 今 年 で 第
9 回 目 を 迎 え た 街 と 経 済 の 復 興 を 目 指 し て 開 催 し た イ ベ ン ト だ 。今 年 は 東 日 本 大 震 災 チ ャ リ テ ィ ー
と銘打ち、当日限定のTシャツ、そして募金活動も行い一つのチャリティーイベントともなった。
他 の 地 域 か ら の 参 加 者 も 多 く で 賑 わ う 本 イ ベ ン ト は 、地 域 の 活 性 化 に 大 き く 貢 献 で き る イ ベ ン ト だ 。
イベントの現状
本 イ ベ ン ト は 、ま ず 参 加 者 と 参 加 店 舗 の 割 合 を 見 る と 第 一 回 イ ベ ン ト か ら 順 調 に 増 加 傾 向 に あ る
も の の 、 参 加 店 舗 に 関 し て は 波 が 激 し い の が 現 状 だ 。 主 な 参 加 者 構 成 は 、 30 代 ~ 50 代 の 会 社 員 、
公 務 員 の 方 が ほ と ん ど の 割 合 を 占 め て お り 、毎 年 約 10% を 占 め る 60 代 も 毎 年 ほ と ん ど 変 化 が な い 。
し か し 、 20 代 に 関 し て は 、 少 し ず つ だ が 増 加 傾 向 に あ り 、 幅 広 い 年 代 の 参 加 者 が 参 加 す る こ と で
普 段 味 わ え な い 交 流 の 場 な の が 魅 力 的 な と こ ろ で も あ る 。広 告・宣 伝 方 法 は 、口 コ ミ が 約 6 割 以 上
を占めており、半数以上が知人や友人からの情報で、近年もより高まっている傾向にある。
結論
考 察 も ふ ま え な が ら 述 べ て い く と 、ま ず 、参 加 者 の 構 成 に 関 し て 年 齢 層 に ほ と ん ど 変 化 が な い の
は 広 告 、宣 伝 効 果 に あ る 。口 コ ミ か ら 始 ま る と い う こ と で 、友 人 、知 人 と 参 加 す る 傾 向 で あ る こ と
か ら 、リ ピ ー タ ー も 含 め る と こ れ か ら も っ と 増 加 す る と 予 想 さ れ る 。し か し 、参 加 店 舗 ば ら つ き が
あ る の は 、近 年 で は イ ベ ン ト が な く 特 に 平 日 は 人 通 り の 少 な く な っ た 街 に な っ て し ま っ た こ と か ら
店 の 移 り 変 わ り が 激 し い こ と が 原 因 と し て あ げ ら れ る 。こ の 現 状 を 打 破 す る べ く 一 つ の 手 段 と し て 、
本 イ ベ ン ト も 含 め た 様 々 な イ ベ ン ト が 行 わ れ て い る が 、移 り 変 わ り の 現 状 打 破 に は ま だ 至 っ て い な
い。
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仙台七夕まつりによる地域活性化
~宿泊客数の増加を図る~
指導教員名
現代社会学科
4 年Bクラス
0813203
油川
伊藤
洋
実帆
<目的>
現代社会は過疎化により孤立する村や町が増え、核家族化により地域の交流が減少傾向
に あ る 。そ こ で 本 論 で は 以 上 の 現 状 を 改 善 す る た め 、
「 祭 り 」に よ る 地 域 活 性 化 を 提 案 す る
こ と に し た 。な ぜ「 祭 り 」を テ ー マ に 掲 げ た か と い う と 、
「 祭 り 」に は イ ベ ン ト に よ る「 経
済 効 果 」、 地 域 の 「 認 知 度 の 向 上 」、 そ し て 地 域 の 「 結 束 力 の 強 化 」 と い っ た 大 き く 分 け て
3つのメリットがあるからである。つまり「祭り」とは本来の趣旨以上に大きな役割を果
た し て い る の だ 。そ こ で 自 分 の 生 ま れ 育 っ た 街 で あ る 仙 台 の 祭 り 、
「 仙 台 七 夕 ま つ り 」に 着
目し、より地域活性化に繋がる「祭り」にすることを目的に研究を行なった。
<方 法 >
主 な 資 料 と し て は 、仙 台 七 夕 ま つ り 協 賛 会 実 行 委 員 会 宣 伝 部 が 実 施 し た 、
「仙台七夕まつ
りに関する県外観光客へのアンケート調査」の結果を基に改善点を見つけ、またインター
ネットを利用し他県の祭りの実施データ等を利用して自分なりに対策案を出した。
<結果・考察>
祭 り に よ り 経 済 効 果 が 期 待 さ れ る 一 つ で あ る 宿 泊 に 着 目 し た 。し か し「 仙 台 七 夕 ま つ り 」
で は 観 光 客・来 場 客 数 に 宿 泊 客 数 が 比 例 し て い な い こ と が 分 か っ た 。
「 仙 台 七 夕 ま つ り 」に
訪れる人の多くは観光ツアーバスを利用者だが、ツアープランでは宮城は全て最終日であ
り宿泊せずに帰省する。理由は開催日が一番遅いということ、他県に対し首都圏への交通
の便が良いということが考えられる。そしてもう一つが祭りの行事内容だ。ステージイベ
ントの内容はとても充実、体験コーナー等の設置もされている。しかし内容はどれも宿泊
する必要がなく、日帰りで終える人が多いのは当然である。以上の結果から自分なりに対
策案を考案した。①花火大会を最終日の一大イベントへ移行、②行事内容に観光客・来場
客も参加することのできる「参加型イベント」の導入、③婚活イベント、以上の3つであ
る。②は以前から参加型のイベントはあるが、例えば七夕飾り作り体験をしてもらい、次
の日に仙台の街に飾り観覧してもらう。またコンテストを行なう等といった工夫がもう一
つできるのではないだろうか。また婚活イベントは地域の人が主催することで「仙台七夕
まつり」だけでなく、より宮城を知ってもらえるプランができると考える。ツアーを通し
て共に行動や体験をすることで会話のネタになり、初対面の人同士でも交流を深めること
が で き る の だ 。以 上 の よ う に も う 一 つ 工 夫 す る こ と で 、
「 仙 台 七 夕 ま つ り 」は 地 域 活 性 化 に
繋がるより良い祭りになるのではないだろうか。
<参考文献>
・仙台七夕まつり協賛会実行委員会宣伝部
『 仙 台 七 夕 ま つ り に 関 す る 県 外 観 光 客 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 報 告 書 』 2010 年
・ 日 本 銀 行 青 森 ・ 秋 田 ・ 仙 台 ・ 福 島 支 店 共 同 制 作『 東 北 の 主 要 夏 祭 り の 動 向 』
・株式会社荘銀総合研究所『東北 6 大祭りの経済効果』
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2007 年
2010 年
日本の観光政策の現状と韓国人に頼る訪日外国人数のリスク
指導教員名 油川 洋
現代社会学科 4年Bクラス 0813210 斉藤 多恵
1.研究の背景と意義
2010 年(1 月 1 日~12 月 31 日)における訪日外国人数は、過去最高の 861 万人である。2009 年は
687 万人であったため、比較すると 26.8%増加している。2010 年の 861 万人の内、韓国人は 244 万人
であり、訪日外国人数全体の 28.3%を占めている。訪日外国人を国別にみると 1999 年から 2010 年ま
で韓国からの訪日者が 12 年連続 1 番多く、韓国からの訪日客が飛びぬけて多くなっている。
平成 23 年 3 月には東日本大震災が発生し、訪日数・出国数共に影響は出ているが、観光は被災から
新生した地域を支え、日本全体の元気を回復させる柱となるべき分野である。復興に併せて観光振興へ
の取組を積極的に進めていくべきであり、重要である。
2.研究目的
日本の訪日数は 2003 年からビジットジャパンキャンペーンを始めたことから増加傾向にあり、7 年
で 300 万人以上の増加を遂げている。訪日外国人数の中でも韓国の訪日者の割合が 1 番高くなっている
のだが、円高ウォン安の影響から訪日数が増減を繰り返しているのが現状である。本研究では、その現
状を明らかにし、新たな視点を考究することを目的とする。
3.研究方法
日本の観光への現状・取り組みを観光庁・JNTO などの資料をデータとして活用した。訪日外国人に
焦点を当て、訪日外国人数で1番の割合を占めている韓国について主に取り上げ、訪日数韓国人数の増
時期・減時期について社会情勢を交え考察する。
4.研究結果
日本は観光立国推進基本計画を閣議決定し、観光庁を中心に政府一丸となって、観光立国の実現に向
けた施策を総合的かつ計画的に推進している。またビジットジャパンキャンペーンを推進することによ
り 7 年間で 300 万人を増加させることに成功しており、訪日外国人数 1000 万人という目標に年々近づ
くことができている。また、韓国は訪日外国人数の 25%前後を占めている。訪日外国人数にとても貢献
している国であると言えるのだが、近年人数のウォン高による増・ウォン安による減の波があり、訪日
数が不安定である。
5.考察
日本にとって韓国は大きな市場であり、韓国人訪日客が多いのは良い事である。しかし他の市場にも
さらに日本をアピールし、他国からの訪日数を増加させていかなければならない。
6.結論
現在、韓国人客にターゲットを絞った一部観光地がそのリスクに直面している。ウォンの変動幅も大
きく、異常な状態が続いているのが現状である。韓国に絞りすぎることでリスクが大きくなるのである
ことから発展・訪日数の増を遂げている中国や台湾にも訪日旅行促進事業の重点を置いていく必要があ
ると言える。
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仙台市による環境問題に関する考察
―地元プロスポーツ球団との連携による取り組みを事例に―
指導教員名 油川 洋
現代社会学科 4年 C クラス 0813314 菅原 博幸
1.はじめに
私が何故、環境問題とその中の一つのごみ問題について調べたか。私の住んでいる仙台市青葉区桜ヶ丘は名前の
通りに桜の木がいっぱいあったのですが、地主さんが亡くなり、土地が売られ、そのために桜の木は切り倒された。
翌年の春からは桜が少なくなり、1つ上の学年になった気分はなくなった。私は私の住む地域に一体どのような環
境問題があり、どのような対策等の活動があるのか考えるためにこのテーマで研究することにした。
2.研究目的
仙台市では「100万人のごみ減量大作戦」
(平成11年策定)と言う、仙台市一般廃棄物処理基本計画を言うの
が改定しており、市民と事業者の連携でごみ減量・リサイクルの取り組みを進めている。またこの取り組みの中で
仙台市と共同で活動しているのが宮城県の代表ともいえるプロ3球団との連携である。この球団と共に活動するこ
とでどれくらいの効力を得ることができるのか探っていくことを目的とする。地元球団との活動であれば様々な人
が環境問題に積極的に取り組んでくれると考えられるからである。
3.研究方法
研究方法として、文献やインターネットから情報を収集した。特に文献で紹介されており、今回の主なキーワー
ドである「プロスポーツ球団との連携」についての事例についてはインターネットで仙台市のホームページのデー
タを参考にした。
4.研究結果
ゴミ問題に対する仙台市の取り組みとしてあった、
「仙台市一般廃棄物処理基本計画」によれば前回までの計画で、
平成11年3月に改定され計画対象年度は平成11年度から平成22年度の12年間としました。この経過期間中
には、プラスチック製容器包装の分別収集や、家庭ごみ等の有料化など、ごみの減量やリサイクルの推進等に係る
様々な施策を実施してきました。その結果、この計画で掲げたごみ処理に係る4つの基本目標を全て達成すること
ができていた。その4つの項目とは市民1人1日当たりのごみ排出量・リサイクル率・焼却処理率・最終処分率の
4つであり、これらの項目全てが目標としていたそれぞれの数値を達成することができていた。これはごみ問題に
対する対策の結果ではないかと考えられる。
また地元3球団でもそれぞれの取り組みが実施されている。3球団それぞれに共通していることとして、エコス
テーションの運営がある。特に東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である「日本製紙クリネックス・スタジア
ム宮城」では野球界で初めてとなるエコステーションの設置をした。このエコステーションではスタッフの方々が
ゴミの分別回収を推進してくれ、来場者に対してエコの啓蒙活動を行なっている。他の取り組みとして、球団のマ
スコットキャラクターと共に会場周辺の清掃活動を実施するなど、様々な人が参加できるような取り組みも実施し
ている。
5.結論
人が生活する上で「ごみ」が発生することは避けることができない。依ってごみの発生を0にすることは今は不
可能である。しかし、今回の研究を通して0にすることはできないが減少させていくことは可能である。今回の事
例のように球団等が連携することで人々が参加しやすいシステムを作る。このような企画を仙台市ではいくつかあ
り、お陰でごみの減少や目標数値の達成に繋がっている。今回の仙台市一般廃棄物処理基本計画は改定され、平成
22年度から平成32年度までの目標が設定されているが、今までのごみ問題への対策にプラスされまだまだ対策
が考えられる仙台市ならこの目標も達成できると考える。
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地域のウォークラリーイベントがもたらす広告・経済効果
-「岩沼市ほろ酔いウォークラリー」を事例として-
指導教員名 油川 洋
現代社会学科 4年Cクラス 0813324 吉原 祥平
1.研究目的
近年、各地域の市町村では大手スーパー・ショッピングモール進出などの影響で、中心街のシャッター通りが多
くなってしまった。特に地方部では1980年代後半頃から顕著化しており身近な都市問題として起きている問題であ
る。この事もあり現代では自身の地元地域にはどんなお店・名産品があるのかさえ分からなくなってしまっている
状況である。このような状況を防ぐのにたいして市町村や商工会団体がどのようなイベントで地域の再生を目指し
広告しているのか、またそれらのイベントがもたらす経済効果の有無について「岩沼市ほろ酔いウォークラリー」
を事例に上げ考察を進めるのが本研究の目的である。
2.研究方法
①岩沼ほろ酔いウォークラリーを主催している岩沼市観光物産協会にアンケート調査を行いその結果から分析
を行う。②各回の参加者数・参加店舗数のデータを取りどれくらいの規模で行われているイベントであるかを把握
する。③イベントの広告効果の有無を調べるため参加した店舗の方から聞き取りをしてどのような広告効果・経済
効果があったかを考察した。
3.研究の内容
・ほろ酔いウォークラリーの概要:ほろ酔いウォークラリーとは岩沼市観光物産協会が主催して行い、内容として
イベントの開催時期は年に一回秋季(10月)に行われる。開催時間は18時から22時の間で市内の参加店舗を訪れ計
四か所周り飲食ができる。また飲食の持ち帰りができ、食べ物以外で提供している店舗もあるので飲食以外にも楽
しむ事が出来る。本イベントの開催の目的は参加者に市内を歩いて回ってもらう事により参加店舗を含め市の地域
活性化を図るために初まったと推察できる。
・イベントの現状:イベントの参加者数は観光物
産協会が予算した数を第1回(2004年)から約175%と大幅に上回っている事がアンケート調査によって分かった。
その後も毎回予算を越える参加者が参加し当初の予想していた数値が800人に対して結果は1500人を超える結果と
なり、いかに広告・経済効果があるかが大まかに把握できる結果となった。参加店舗数も第1回では25店しか参加
していないのに対して第3回(2006年)では最大の56店が参加し、本イベントがこの時点で少なからず広告・経済
効果を出しているのではないかと推察できる。イベント後の影響を参加店舗の方に聞き取りしたところ、イベント
に参加したお客さんが後日飲食に訪れるなどのリピーターが増えるという経済効果があった。またイベントに参加
した方々の口コミにより新しいお客さんが増えるなどの広告効果もみられる結果になった。
4.結論
考察もふまえて述べていくと、本イベントがもたらした広告・経済効果の有無について確認する事が出来た。結
論から述べると効果は有であり、イベントを通して市や市内の店舗は参加者を含めたお客様に広告できたと考察で
きる。またイベントに参加したお客様が店舗に訪れたことにより新規のお客さんやリピーターを得るなどの直接
的・間接的な経済効果が生まれたと考察できる。参加店舗数も回を重ねるたびに増え、このように参加店舗数が増
える事により本イベントが地域活性化に繋がる運動になったのではないかと推察できる。しかし考察していく中で
イベントの問題点も明らかになり参加者の意見を見ていると、イベントが 10 月開催のため気温が寒いためにもっ
と早い時期などに開催してほしいという意見があり、春にも開催してほしいという意見もあった。このような参加
者の意見やイベントの持続性を考えると、年に 2 回春秋に行うなど、その他にも主催者のイベントの改善が必要と
考えられる。
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地域農業のブランド化の現状と課題
―福島県新地町ニラ部会を事例に―
指導教員名 油川 洋
現代社会学科 4 年 D クラス 0813405 小野田 友
1 .問 題 意 識
現 代 の 日 本 は 多 く の 問 題 を 抱 え て い る 。そ の ひ と つ が 農 業 で あ る 。こ れ に は 従 事 者 の 減 少 や 食 料 自 給
率 の 減 少 と い っ た も の が あ げ ら れ る 。こ の 問 題 に 対 し 、昨 今 で は 農 業 関 係 者 や 市 町 村 な ど が 物 産 市 に お
い て 農 産 物 の PR 活 動 、 話 題 性 の あ る イ ベ ン ト の 開 催 な ど の 活 動 を 積 極 的 に 行 う よ う に な っ た 。
こ れ ら の 原 動 力 と な っ た の が 「 地 域 ブ ラ ン ド 」 だ 。「 地 域 ブ ラ ン ド 」 と は 、 プ ラ ス の イ メ ー ジ を 商 品
の 付 加 価 値 と し て 付 加 さ せ 他 と の 差 別 化 を 図 る も の だ 。し か し 、イ メ ー ジ は 本 来 そ の 地 域 が 担 っ て き た
歴史や環境など、町が持っている元々の要因から発生し人々に定着しているため簡単に変更できない。
し か し 、そ れ だ け で は な い 何 か に 人 々 が 魅 せ ら れ る か ら こ そ 全 国 で 新 た な ブ ラ ン ド が 作 り だ さ れ て い る
と 考 え る 。で は 何 が 人 々 に ブ ラ ン ド イ メ ー ジ を 与 え て い る の だ ろ う か 。そ し て 、人 々 が 魅 せ ら れ る 町 と
は ど の よ う な ブ ラ ン ド を 持 っ た 町 な の か 。そ れ ら の 違 い や 類 似 点 の 調 査 を 行 い 、そ こ か ら 昨 今 、問 題 と
なっている地域の農業問題に解決の糸口が見つけ出せるのではないかと考えた。
2.研 究 目 的
地域におけるブランド化事業の現状と日本各地の地域ブランドの成功例といわれる町の比較を行い、
課題提起と推進に向けての提案をし、今後の可能性を示す。
3.研 究 方 法
本 研 究 で は 、イ ン タ ー ネ ッ ト・文 献 を 参 考 に 全 国 で 行 わ れ て い る 地 域 ブ ラ ン ド の 事 例 や そ れ に か か わ
る施設などの調査を行い、新地町のブランド化と比較を行った。
4.研 究 結 果
ブ ラ ン ド 化 に 成 功 し て い る 町 は そ の 町 が 元 々 持 っ て い る イ メ ー ジ( 要 因 )を う ま く 拡 張 す る こ と に 成
功 し た 町 と い え る 。そ し て こ れ ら の 町 で は そ の イ メ ー ジ を 壊 さ な い た め に 徹 底 し た 品 質 管 理 や イ メ ー ジ
管 理 を 行 い 現 在 の ブ ラ ン ド を 維 持 、発 展 さ せ て い る 。も ち ろ ん こ れ に は 、住 民 や 地 域 行 政 組 織 な ど の 努
力が必要だが町づくりに成功している地域はどれも住民や地域行政が一体となって活動をしている。
こ の 点 で 新 地 町 の 活 動 は 要 点 は 抑 え て い る も の の PR や 住 民 へ の 意 識 改 革 に は 時 間 が か か る 。
5.考 察
今 後 の 課 題 と し て は 認 知 度 が ま だ ま だ 低 い と い う 点 だ 。ま ず 地 産 地 消 か ら 取 り 組 み 、地 域 に 素 晴 ら し
い も の が あ る と い う こ と を 住 民 に 理 解 し て も ら う こ と が 先 決 だ ろ う 。そ し て 住 民 が 知 り 、住 民 自 ら が 発
信 者 と な る こ と で 地 域 イ メ ー ジ の 統 一 と PR 効 果 の 両 方 が 期 待 で き る 。 そ の 後 は 地 域 行 政 が 協 力 し 東 北
ブロックや全国単位に宣伝やイベントを行い、その名を広めていけばよい。
6.結 論
ブ ラ ン ド イ メ ー ジ の 基 盤 は「 住 民 の ラ イ フ ス タ イ ル 」に あ る 。そ の「 ラ イ フ ス タ イ ル の 認 知 」お よ び
「 補 完 性 」が あ っ て 人 々 は そ の 地 域 に 憧 れ を 覚 え る 。人 々 が そ の 土 地 に い い 印 象 を 覚 え る と い う こ と は 、
そ れ は そ こ に 住 む 住 民 が 憧 れ る 生 活 を し て い る こ と を 無 意 識 に 意 識 し て い る か ら だ と 考 え ら れ る 。そ の
ラ イ フ ス タ イ ル を 住 民 が 自 覚 し 補 完 し て い く こ と で 地 域 ブ ラ ン ド は 輝 き を 増 し 、町 の 発 展 に つ な が っ て
行くだろう。
- 91 -
「被災地域における外国人観光客誘致の現状と課題」
指導教員名
現代社会学科
4 年 D クラス
0813412
油川
宍戸
洋
琢磨
<研究の背景と意義>
外国人観光者の増加は、旅行消費の拡大や関連する産業の振興、雇用の増加による地域
の振興など、日本の経済に様々な波及効果がある。
し か し 、 平 成 23 年 度 3 月 11 日 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 の 影 響 を 受 け 、 平 成 23 年 度 3
月 の 日 本 へ の 訪 問 外 国 人 旅 行 者 数 は 、前 年 同 月 の 71 万 2 百 人 か ら 50.3% 減 少 し た 35 万 3
千人となり、外国人観光客を扱う観光業界は大きな打撃を受けた。
ま た 、 翌 月 4 月 の 訪 問 外 国 人 旅 行 者 数 は 29 万 6 千 人 で あ り 、 前 年 の 同 月 比 62.5% の 減
少 で あ る 。 こ れ は 単 月 の 減 少 幅 と し て は 、 過 去 50 年 間 で 最 大 の 減 少 幅 で あ り 、 深 刻 な 状
況となっている。そのため、早急な対応が求められている。
<研究目的>
本稿では、被災地域における観光復興の現状と、再び被災地域に訪日外国人旅行者を誘
致するための課題を明らかにしていく。
<研究方法>
文献やインターネット等から情報を収集し問題点を分析する。国土交通省観光庁や国際
観光振興機構のデータなどを用い、震災前と震災後の比較や、現在の東北の被災地域にお
ける観光政策の事例や概要についてまとめ、今後の影響について考えていく。
<研究結果>
震災前後の統計データを比較して、観光産業は災害等の要因によって大きく影響を受け
る こ と が わ か っ た 。ま た 、現 在 の 円 高 と い う 状 況 も 外 国 人 観 光 客 減 少 の 要 因 に な っ て い る 。
そのため、今後の被災地域における観光事業は、災害からの復興にだけにとどまらず、
外的な要因による影響があることを認識した上で、対応策を講じることが求められる。
<考察>
被 災 地 域 の 観 光 の 復 活 は 、被 災 地 域 の 復 興 、活 性 化 に 寄 与 す る 重 要 な 項 目 と 考 え ら れ る 。
少しずつではあるが、日本全体では外国人観光客数は増加傾向にある。
し か し 、原 発 事 故 に よ り 東 北 地 方 は 外 国 人 観 光 客 か ら 敬 遠 さ れ 、依 然 厳 し い 状 況 で あ る 。
日本交通公社「東北の観光復興状況に関する調査」によると、海外では、東北地方の震災
の被害情報は多く報道されているが、東北地方が復興してきたという情報はあまり報道さ
れていない。そのため、外国人観光客を誘致するためには、原発事故の早期の収束と正確
な情報発信が重要である。
<結論>
東北地方の津波などで大きな被害を受けた被災地域の宿泊施設等を含めた観光のインフ
ラの整備が整うまでは、被災地までのアクセスが良く宿泊施設が集積している地域と津波
被災地域が連携して進めていくことが重要である。そし津波被災地域の経済の活性化に繋
がる被災地観光の仕組みを築いていくことが必要である。そして、観光地としての魅力向
上 を 練 り 込 み 、震 災 以 前 と は 違 う 新 た な 観 光 地 の モ デ ル を 創 り 出 す こ と が 必 要 だ と 考 え る 。
- 92 -
道の駅で地域づくり
宮城県と千葉県の道の駅の事例から考察
指導教員名
現代社会学科
4 年Dクラス
0813423
油川
嶺
洋
智子
1. 研 究 目 的
道の駅は、道路利用者のための休憩施設として、その地域の情報提供を行う施設であり
2011 年 8 月 25 日 現 在 、全 国 に 977 駅 が 登 録 さ れ て い る 。そ の 道 の 駅 は 、訪 れ る 人 と 地 域
の 人 と の 接 点 の 場 で あ り 、地 域 の 顔 と し て 個 性 的 で 魅 力 の あ る も の と す る こ と が 望 ま れ る 。
そ の た め に は 、休 憩 施 設 の 基 本 的 要 素 以 外 は 地 域 に よ る 自 主 性 に 委 ね る こ と が 重 要 で あ り 、
各地域の主体的な創意工夫が必要である。そこで、本論文では宮城県大崎市の「あ・ら・
伊達な道の駅」と千葉県南房総市の「 道の駅富楽里とみやま 」の 2 駅を取り上げることと
した。道の駅を通じてそれぞれの道の駅ではどのようなコミュニティビジネスを展開し、
地域活性化がもたらされているのか調べこととした。
2. 研 究 方 法
主に文献研究、インターネットなどから情報を収集し、そこから得た情報を基に道の駅
の概要や地域活性化への取り組みを調査し、自分なりの結論をまとめる。
3.内 容
宮 城 県 大 崎 市 に あ る 「 あ ・ ら ・ 伊 達 な 道 の 駅 」 は 2001 年 設 立 さ れ 、 東 北 地 方 の 中 で も
多くの人気を集める道の駅として有名である。この道の駅が所在する宮城県大崎市岩出山
地域は、旧岩出山町にあたり戦国武将の伊達政宗が仙台に築城する以前に居住していた町
として歴史的にも知られている。旧岩出山町は、国道 4 号線沿いの旧古川市から観光地鳴
子温泉、山形方面への通過点という位置づけであったが、伊達家繋がりで商品を集めた姉
妹 都 市 の 物 産 品 コ ー ナ ー や 、 直 売 所 に 携 帯 電 話 POS シ ス テ ム を 導 入 す る こ と に よ り 生 産
者からいつでも新鮮な野菜を揃えることなど、地域の食文化を重視した直売所やその他に
も多様な飲食施設を提供し、道路を通過する人たちの強い印象に残るための戦略を行って
いる。
千 葉 県 南 房 総 市 に あ る 「 道 の 駅 富 楽 里 と み や ま 」 は 2003 年 に 設 立 さ れ 、 有 料 道 路 の 休
憩施設(パーキングエリア等)と周辺地域が一体になった施設であり、有料道路と一般道
路 の ど ち ら か ら で も 利 用 す る こ と が で き る 珍 し い 道 の 駅 で あ る 。施 設 は 2 階 建 て で 1 階 に
は地元でとれた魚、野菜などを販売する直売、物品コーナーがあり、2 階には飲食、情報
コーナーになっている。また、季節によって変わる収穫体験コーナーでは地域をあげて取
り組むなど、地元の人や観光客から人気を集め地域の特色を生かした施設となっている。
4.結 論
今回取り上げた 2 駅の道の駅は、車社会となった地方の特徴をうまく捉え、それぞれの
地域資源を生かし、地元の農産物や特産品を中心に地域住民も意識した取り組みを行って
い た 。道 の 駅 は 、い つ で も 立 ち 寄 れ 地 域 の 情 報 が 得 ら れ る 安 心 と 信 頼 の 場 で あ る と と も に 、
地域の顔としてさらに地域の心を伝えるためには、地域住民の積極的な参加を求めること
が望ましく、地域活性化の拠点としてさらなる発展を期待したい。
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医療再生に向けた今後の課題~医師不足の観点から~
指導教員名
現代社会学科
4 年 D クラス
0813424
宮地
油川
洋
龍太郎
1、研究の背景と意義
現 在 、我 が 国 の 医 療 は 、
「 医 療 崩 壊 」と 呼 ば れ る 危 機 的 状 況 に あ る 。そ の 主 な 原 因 と し て 、
医師の絶対数の不足が指摘されている。高齢化による患者数の増加、医療費の不足などが
それに拍車をかけ、長い待ち時間と短時間診療、患者のたらい回し、救急医療体制や中核
病院の閉院、都市への医師偏在など、数多くの問題を抱えている。
2、研究目的
世 界 保 健 機 構 に よ る 「 World Health Report」 で は 、 日 本 の 健 康 寿 命 、 平 均 寿 命 は 第 1
位、平等性が第 3 位であり、健康達成度の総合評価は世界一となっている。
では、その世界一と言われる日本の医療が、なぜこのような深刻な状況に陥っているの
か。本研究では、その原因を研究し、医師不足が医療業界に与える影響について明らかに
することで、医療構造改革への策を探ることを目的とする。
3、研究方法
主に文献とインターネットから情報収集を行い、日本の医師数の現状を諸外国と比較分
析をし、問題点を浮き彫りにする。
4,研 究 内 容
医 師 不 足 は、「絶 対 数 の不 足 」の問 題 が 特 に大 きい 。医 師 過 剰 による 病 院 間 での 過 当 競 争 を 危
惧 し、1984年 以 降 、大 学 医 学 部 の定 員 が最 大 時 と比 べて7%減 らされたことが始 まりである。政 府 は
2008年 に OECD の平 均 レベルを目 標 に医 学 部 定 員 を増 員 するする方 針 を打 ち出 したが、この20数
年 間 医 師 抑 制 を続 けた重 荷 は大 きい。それは OECD のデータに顕 著 に表 れている。医 師 の絶 対 数
の OECD 諸 国 平 均 で人 口 1000人 あたりの医 師 数 は3人 であるのに対 し、日 本 は2.2人 であり、これは
平 均 よりも12~13万 人 不 足 している計 算 となる。
2010 年 に 厚 生 労 働 省 が 立 てた 見 通 しデ ー タによ れば 医 師 数 は徐 々に増 加 していき 2020 年 に 2.6
人 となる見 通 しだが、それでも平 均 には及 ばない。また、診 療 科 間 の偏 在 の問 題 も深 刻 な状 況 にあ
る。2010年 に日 本 医 師 会 が行 った「医 師 確 保 のための実 態 調 査 」によると、病 理 診 断 科 の必 要 医 師
数 が3.77倍 、婦 人 科 が2.91倍 、救 急 科 が2.07倍 と高 い数 値 を示 している。
5、結論
政府は医療崩壊を防ぐため様々な対策をとっているが、現状を打破できるような対策は
見受けられない。医学部定員の増員を打ち出しても、医師を養成するためには通常卒業後
10 年 以 上 掛 か る と い わ れ て お り 、現 状 が す ぐ に 解 決 に 向 か う こ と は 期 待 で き な い 。医 師 不
足を今食い止めるためには、政府と自治体、病院が連携して医者を必要な病院に配置でき
るような大規模な政策をとる必要がある。
また、医師不足による医師の疲弊を軽減させるために、患者側の了解を得た上でフリー
ア ク セ ス( 受 診 す る 医 療 機 関 を 自 由 に 選 べ る 制 度 )の 制 限 を す る こ と も 効 果 的 だ と 考 え る 。
医療資源や時間の効率化を考えると無駄が生じやすい制度であり、医師の負担をさらに増
大させることになる。医療従事者側の目線に立った政策が医療の向上に必要なのではない
だろうか。
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