こちら - アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院

世界各国の ACT
国際的な広がりへ-APA の暴力防止プログラムを自国のニーズに合うよう改変する取り組み
アリス・G・ウォルトン
児童虐待防止に効果があると示されている APA プログラムが、国際的な広がりを見せている。
この ACT(「親が子どもを安全に育てるためのプログラム(日本語版タイトル「子どもを守り
育む〜ACT すこやか子育て講座」)は、アメリカ国内 18 州の 78 地域に普及しているが、世界
各地の APA メンバーによって、さらにコロンビア、ブラジル、ギリシャ、日本およびペルーで
も実施されている。ACT のリーダーは、数年後には中国への普及を見込んでいる。
ACT は、感情面と実践面のどちらにおいても効果的なツールを親に提供することにより、子ど
もへの暴力を減らす方法として、2001 年に米国で始められたプログラムである。その後、ACT
は体罰を減少させるだけでなく、親のアンガーマネジメント(怒りの感情コントロール)を高め、
社会生活上の問題解決をよい方向に向かわせることが、リサーチにより示されてきた(ジャー
ナル・オブ・プライマリー・プリベンション,2011)。
横浜で初めての日本語版 ACT プログラムを手がけたチームの一人、西澤奈穂子心理学博士によ
ると、このプログラムの有効性は、プログラムによって親が子どもとの接し方を変えるために
自分自身の子ども時代について深く考えるようになるところにあると言う。
「日本の子育て講座の多くは、親自身の感情的な側面や、親が自分の子ども時代から抱えてい
る問題にはあまり焦点を置きません。このプログラムに参加すると、自分自身の経験や子育て
を振り返り、感情にも焦点を置いてプロセスすることが、どれほど重要であるかに気づきます。
それはとても強力なのです。」と西澤氏は話す。
アライアント国際大学カリフォルニア臨床心理大学院の准教授である西澤氏は、横浜での最初
の試験的プログラムで参加者から得たフィードバックは、大変に前向きなものだったと言う。
この正式なプログラムは 2013 年 8 月にスタートした。
このような強い関心をひくのは、ACT プログラムが万国共通のものを含んでおり、世界中の親
たちに適しているからだろう、と米国 ACT プログラムおよび各国への展開を推進するジュリ
ア・ダシルヴァ氏は述べている。「このプログラムはすべての親に向けたものです。多くの貧
しい国々では、親たちには、私たちが持っているようなリソース、法律、公的プログラムがあ
りません。彼らはもっと孤立しています。何かに参加してつながりを持つ機会として ACT に飛
びつき、よりよい親になれるよう学んでいるのです。」
アメリカ国内には 5 カ所の拠点があり、毎年 2,500 名に上る専門家を、ACT プログラムのファ
シリテーターとして養成している。ファシリテーターは、リサーチに裏づけられた ACT プログ
ラムのカリキュラムを地域に還元し、8 週間に渡る 1 回 2 時間のセッションの中で、エビデン
スに基づく ACT による手法を親たちに伝えている。
このプログラムは国の違いを問わず効果がある、とダシルヴァ氏は述べる。ACT 認定を望む海
外にいる専門家が、ACT プログラムのトレーニングを受けるために渡米することも多い。また、
ダシルヴァ氏のチームが、ダシルヴァ氏の祖国であるブラジルにも、ファシリテーター養成の
ために何度も訪問している。
ACT は、内容をより各国の文化の慣習や基準に合うように改変されることもある、とダシルヴ
ァ氏は述べる。また、近年経済的な危機に見舞われているギリシャでは、経済的負担が大きい
ため、ファシリテーターが ACT プログラムのトレーニングを受けるために渡米することができ
ないことが多い。その経験から、ギリシャの ACT プログラムを運営するメンタルヘルスの専門
家、パンテリス・プロイオス氏は、他の 2 人の ACT 専門家とともに、ギリシャ各地の学校や地
域センターに出向き、ファシリテーター志望者の養成を行ったりもした。ギリシャではこのプ
ログラムは順調、柔軟性があってどんな年齢の子どもの親でも利用できる、とプロオス氏。
「これまでのところ、大変うまくいっています。これからもうまくいくだろうと期待していま
す。」
ついこのほど、APA はサンフランシスコにある児童虐待防止組織と提携した。同組織は、ベイ
エリアにいる中国系アメリカ人の親を対象にして、プログラムを翻訳して導入することに関心
を持っている。この試験的プログラムの評価結果は、将来的にこのプログラムを中国で普及さ
せる計画の指針となる。
一方、親の成長の物語、そして子どもがのびのびと花開く物語が、国内外を問わずあちこちで、
日々ハッピーエンドを告げている、ダシルヴァ氏は言う。最近、ヴァージニア州、フェアフォ
ックスから来たある父親に会ったダシルヴァ氏は、彼の妻が ACT プログラムに参加したことに
感謝していると言われ、感動して涙したそうだ。「彼は私にこう言ったのです。『私は、虐待
のある家庭に育ち、自分が受けたことは絶対に繰り返したくないと思っていました。妻も同じ
だったのですが、ほかの方法がわからなかったのです。結婚してずっと彼女を変えようとして
きたのですが、どうしてもうまくいきませんでした。でも、ACT が、私ができなかったことを
してくれました。彼女は変わりました。本当にありがとうございました。』と。」
著者: アリス・G・ウォルトン博士、ニューヨーク市
APA Monitor on Psychology 11 月号から一部抜粋して日本語訳
あなたの国や地域で ACT プログラムを開始することにご興味があれば、ACT ディレクター、ジ
ュリア・ダシルヴァにご連絡ください。[email protected]
日本語訳版にご興味のある方は、ACT 日本語版の事務局までご連絡ください。
[email protected]