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P44-47 Ascent

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[PG IMPRESSION]
懲りないヤツの媚びないグライダーテスト
DHV1のスポーツグライダー登場!
Text:Kaz Nishigaya
シャークフィンと呼ぶ新しい角は、安全に貢献する素晴らしい機能を果たす
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FLYAIR
|
No.47
PG IMPRESSION
西ヶ谷一志
1984年からパラグライダーを始める。1995年FLYAIRの前身CrossCountryJapanを創刊
1997年には、PG世界選手権に日本代表選手として参戦
1990年頃からパラグライダーのテスト記事を執筆。乗ったグライダーは、既に300機を超す
なんといっても特徴的なのは、
Shark Streamlines(鮫の背ビレ)
ストリームライン テクノロジー
アッセントに は 、U P 開 発 チ ームが S h a r k
Streamlinesと名付けた新しい「鮫の背ビレ
(シ
ャーク・フィン)」が付いている。UPでは、これ
をストリームラインテクノロジーと呼んでいる。翼
の上面にスパン方向に用意したバーティカルシ
ールド
(垂直遮蔽板)
を指す。写真を見てもらえ
ば一目瞭然だ。翼の上面に角がある…ツノと
言えば、アドバンスのウイングチップが独特のオ
リジナリティーと共に、パラグライダーのアイデ
ンティティーを放ってきた。そして今回のUPが
開発したものは、アドバンスのそれとは違う機
能を果たすようだ。
アッセントのデザインを手かげたステファン・
ステグラーは、このシャーク・フィンの機能につ
いて、
「翼の上面の気流をコントロールすること
が目的。ブレークコードによる、操縦と共に機
能し、上面の中央に流れる空気をコントロール
することによって、翼に安定感をもたらす。」と
いう。
「アドバンスのウイングチップは、翼の先端
で翼端渦に作用するものだが、我々が開発し
たシャーク・フィンは、翼の中央で重要な機能を
果たす。それは、セーフティーファクターだ。」具
体的には、上面を流れる空気の横滑りを防ぐ
役割を果たす。横滑りとは何か?というと本来
翼の断面に沿って空気が流れるのが理想的な
状態だが、断面から逸脱して空気が流れてしま
うことをいう。その結果、空気が翼から剥がれ
てしまい、潰れや失速を起こしてしまうという
わけだ。
このストリームラインテクノロジーによって、ロ
ーリングの減衰率が改善されるという。これは
ラインの短いDHV1クラスのグライダーにとって
は、革命的なことではないだろうか。シャーク・
フィンがその真価を問われるのは、スパイラル
からスパイラルダイブに移行しづらいという点
だ。深いスパイラルにおいて翼のリーディング
エッジと地面とが平行になり、ブレークコードを
離しても、そのままスパイラルを続けてしまうと
いう特性を抑制する効果があるという。これは、
比較的アスペクトの低い初級機に起こりやすい
現象で、DHVなどでもテスト項目として注視さ
れてきた。初級機だとスパイラルが安定してし
まい、バランスが崩れてつぶれてしまうことの
少ないので、深いスパイラル(スパイラル・ダイ
ブとか、バーティカル・スピン)に移行しやす
い。ステファンが言うように、ストリームラインテ
クノロジーが。この問題のキーテクならば、パラ
グライダーの設計にとって、大きなブレークスル
ーとなることは間違いない。
これがシャークフィンだ
DHV1としてはエアーインテークも小さく、有害効力を低減している
世界チャンプ「ステファン・
ステグラー」というデザイナーの
作ったパラグライダー
1995年にパラグライダー世界選手権が九州で
行われたことを知っている現役のパイロットは
何人ぐらいいるのだろう。その大会で優勝した
のが現UPのメインデザイナーであるステファ
ン・ステグラーだ。当時は、プロデザインのテス
トパイロット兼競技パイロット。初春の北九州を
メイン会場とし20日間近い長丁場の大会で素晴
らしいフライトを見せてくれた。私の印象だが、
デザイナーなどとはほど遠い、どちらかというと
“野生児”という感じのパイロットだった。世界
翼端にかけて後退している翼型はとてもシャープな印象を与える
選手権の最終日、チャンプを確信した瞬間の
ステファンの喜ぶ姿が、昨日のように懐かし
い。そのステファンがプロデザインを去り、UP
の開発チームに席をおき早10余年。今のUPの
ラインナップを全てステファンがデザインしてい
るという。パラグライダーの構造や形がどのメ
ーカーでも似通ってきている中で、独自の開発
体制で随所にオリジナリティーを配し作り上げ
てきている。
ステファンは、Parafoil Simulation(翼型シミ
ュレーター)
とParaLabs(パララボ)
というソフト
を使ってパラグライダーを設計している。前者
はレイアウトと3Dモデルでの設計、後者はエア
ロダイナミック
(航空力学)
を基盤にスピードや滑
バンクのはゆっくり入るので、初級者にとって余裕が持てる
空性能を計算し、翼型や平面型を設計すること
が で きるという。そして プログラム からは 、
1,000点以上にも及ぶカッティングパターンを自
動生成してくれる。研究開発だけでなく、生産
技術的にも優れたシステムだ。
歴代のパラグライダーチャンピオンでパラグ
ライダーの設計を生業にしているのは私の知る
ところ、UPのステファンとAIRWAVEのブルー
ス・ゴールドスミスだ。デザインは地味な仕事
だが、世界チャンプのパラグライダーに対する
思いが盛り込まれていると考えると、他のメー
カーとはひと味違う
“世界チャンピオンが設計
した翼”というのも、かけがえのないパラグラ
イダーではないだろうか。
PG IMPRESSION
No.47
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FLYAIR
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[PG IMPRESSION]
ライザーシステムはオーソドックスなもの。
アクセルは1/2の動滑車になっており、Aライザー
を1引くと少し遅れてBライザーが追随する。翼端
は、Aライザーに連動して1/2引かれ、遅れてBラ
イザー、Dライザーは、Bライザーの動きに連動さ
れて1/4引かれる。アクセルを踏むと対気速度
は、+15km/hほど加速でき、50km/hにも及ぶ。
BTS(ブレークライン・テンションシステム)
UPオーナーに安全とコントロールを提供する
動滑車が効いている間は、ブレークコードの
動滑車として働く
引きしろが1/2となり、重さは2倍になる。
ブレークトグルへ
Aライザーには翼端折りのライザーが
分岐していて機能的だ。
翼端にかけてキュッと後退するする平面型は、
今のUPの全モデルで踏襲されている。
安全と性能に寄与する
BTS(ブレークライン・テンション・システム)
の導入
UPの上級機・コンペ機で積極的に使われて
いるブレークラインの取り出し部分の工夫をこ
のアッセントにも使っている。この構造は、昔
から各社が翼端の部分に使ってきた。目的は、
翼端の引きしろを中央の引きしろに対して半分
にすることで、翼端の引きしろを減らし、翼端
からの失速を防止する目的だった。しかし、剛
性が高まった現代のパラグライダーにおいてこ
の処理の重要性は少ないと考えられる。
UPでは、このシステムを全てのブレークライ
ンの取り出し部分に採用している。前述のステ
ファン・ステグラーによると、
「性能と安全に寄
与している。」
という。このシステムは図にもある
ように、ブレークコードは、リングを通して引か
れるため、1/2の滑車と同じ効果が起きる。ブ
レークを1cm引くとトレーリングエッジは0.5cmづ
つ引かれるというワケだ。逆にブレークコード
を引く重さは、2倍になる。これが機能するの
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FLYAIR
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PG IMPRESSION
は、図からわかるように、数cmの範囲に留まっ
ている。
ちょっと話が長くなるけれど、パラグライダー
コントロールにはプラスの話なので続けて読ん
でほしい。
パラグライダーのピッチングの動きは、両腕の
ブレークコードの重さで感じることができる。ブ
レークコードは、ハンドルの役割だけでなく、ピ
ッチングの動きに対するセンサーの役割をして
いるということなのだ。UPが使っているブレー
クライン・テンション・システムは、まさにこのセ
ンサーの性能を敏感にしている。
(パイロットは、
引かれる長さではなく、重さを感じているの
だ。)パラグライダーのピッチングに対して、パイ
ロットは2倍の重さでその動きを感じとることが
できる。
さらにこのシステムは、パイロットが操作する
ブレークコードの引きしろを、1/2に軽減する。
これは、全ストロークでの引く・戻す時に働くた
め、オーバーコントロールが減る。さらに、ブレ
ークラインの数の倍の取り出し点となり、トレー
リングエッジを絞るように引かれるため、スムー
ズなトレーリングエッジが形成されるという、い
いことずくめのシステム。これがステファン・ス
テグラーの言うところの「性能と安全に寄与し
ている。」その詳細だ。
引きしろが、1/2になったり、重さが2倍にな
ったり…と説明上は理屈っぽいけれど、パイロ
ットはそんなことは気にせず、飛びに専念すれ
ばいい。何の心配もいらない。この原理を理
解して、ピッチングを起こさないフライトを意識
的に行うようにすれば、パラグライダーの性能
を100%引き出すことができるに違いない。
翼端には、ダストホールが標準装備。エアーインテークから進入したゴミが自動的に翼端に集まり、
ここから取り出せるという仕組み。
▲UP自慢のカラーオーダーシステム
グライダーの種類を選び、上面下面の合計8カ所カラーデザインをホームページ上からシミュレーシ
ョンできる。生地の色も8色あり、なんと1600万通り以上のカラーパターンから、オリジナルのカ
ラーデザインを選択できる。
このサイトで気に入ったデザインをじっくり選んでオーダーすればいい。
UPのホームページ(http://www.up-paragliders.com/)のトップページ[DESIGN YOUR OWN
WING]ボタンからサイトに入ることができる。
(別途料金が掛かる)輸入販売元の(有)さんじゅう
では、オリジナルカラーをご希望の方は直接お問い合わせくださいとのこと。
UP ASCENT
サイズ
XS
S
M
L
XL
セル数
42
42
42
42
42
翼面積/投影
(m2)
21.13
23.08
24.99
27.06
29.76
翼面積/実測
(m2)
24.35
26.60
28.80
31.18
34.30
アスペクト/投影
3.6
3.6
3.6
3.6
3.6
アスペクト/実測
4.9
4.9
4.9
4.9
4.9
70-90
80-105
100-125
120-140
スターティングウェイト
(kg)55-80
グライダー重量
(kg)
DHV/AFNOR
5.85
6.25
6.6
7.05
7.65
DHV1
DHV1
DHV1
DHV1
DHV1
標準小売価格
(税込) ¥449,000 ¥454,000 ¥459,500 ¥464,500 469,500
■問い合わせ先:有限会社さんじゅう 商品管理
〒327-0003 栃木県佐野市大橋町3229-10 A-102
TEL : 0283-21-5255 FAX : 0283-21-8570
E-mail:[email protected] URL: http://www.sanjuu.com
シャークフィンが、翼の横滑りを減らす
さあそれでは乗ってみよう
まず、平面型・アーチ・翼型を見てみると、
明らかに練習機の“鈍くささ”はない。翼の滑ら
かさ、大きすぎないエアーインテーク、翼端に
かけて後退している翼平面型など、タルガ3を
頂点とするUPファミリーの血統を受け継いで
いる。
アーチ率13%はこのクラスの標準だ。立ち上
げはどうだろう。ゆっくりだがスムーズな立ち上
がりで、2機目のパイロットには最適だ。急激な
揚力発生や加速性は少ないので、安心してテイ
クオフできるだろう。
巡航スピードは、適正体重のど真ん中(Mサ
イズで装備重量95kg)で36km/hと早からず遅
からず。ブレークコードを引いて、失速寸前で
20km、フルアクセルで52km/hとスポーツパラグ
ライダーの片鱗を見せてくれた。ミニマムシンク
は、1.3m/sをフルグライドで記録。初心者にと
って飛びやすい設定になっている。グライドす
ることを意識しだしたら、アクセルを少し踏んで
加速感を味わってほしい。大きく沈下すること
なくペネトレーションが向上する。
旋回の特性としては、急旋回する傾向はなく、
初心者に優しい設定になっている。ロール安定
は、ステファンが言うように、ストリームラインテ
クノロジーが効いているのか、至って安定して
いる。急なスパラルからの離脱もスムーズで速
い。
潰れからの特性などは、私がテストするまで
もない、DHVのテスト結果を見れば一目瞭然。
フルアクセルからの片翼潰しからも回復も何も
せずにすぐ回復し、正真正銘のDHVクラス1だ。
それでいながら、性能は他のDHV1のパラを凌
駕し、1-2や2が持つ領域に達している。
試して欲しい!
若くて練習熱心なパイロットなら、1機目から
の選択の余地もある。パラグライダーの特性を
理解する上でも、アッセントのグライド性能はメ
リハリがあり分かりやすい。サーマルにも乗り
やすく、
“アッセント:上昇”という名前の如く、
ソアリングを楽しむことができる。上達も早い
だろう。
サイズは、XSからXLまで5サイズ。15kgの
幅で装備重量60∼140kgで自由に選べる。裸
体重では、40kgの小柄な人から飛ばすことが
できる。夏冬で±7.5kgの装備重量トレランスが
ある。これはありがたい。中間サイズの選択に
困らないだろう。
パイロットも高齢化している、団塊の世代の
方がパラグライダーを始めることもあるだろう。
そういう方がレクリエーションで、安心してパラ
グライダーを楽むのに最適だ。DHVのランクを
落とすとスピードが出なくて…とお嘆きのベテ
ランパイロットにもいい。アクセルを踏めば
50kmも出るのだ。
“DHV1=練習機”というイメージを払拭し、
カッコよく高級感もあり、なんといっても
「シャ
ーク・フィン」がセーフティーファクターとしてパイ
ロットのアイデンティティーをアピールする。UP
が打ち出したニューコンセプトパラグライダ
ー・アッセントは、新世代のスポーツパラグラ
イダーとして時代を牽引することになるのかもし
れない。
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