こちら - 公益財団法人食品農医薬品安全性評価センター

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7
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OCeo
,
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研 究 所 報
l
V
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l
.10,
2000
(
財)
食品農医薬品安全性評価セ ンター全景写真
① 事務棟
② 民験研究棟
③汎用試験棟
@生殖試験棟
⑤犬試験棟
呂次
I.安評センタ一平成 1
1年度(第7回)学術講演会
1 細胞社会のホメオスタシス異常とがん
WHO国際がん研究センター (
IARC) 多 段 階 発 が ん 研 究 部 部 長
2
. テ口メレースノ ック アウトマウスと癌・・…・ー
ぃ
山崎
洋
・・ ー
・ 一 一 … … 一一… 一 一… 一
一 … 2
0
東京工業 大 学 生 命 理 工 学 部 教 授 石川 冬 木
1I.原著論文
1
. 動物試験から得られる定量データの適切な統計処理法の選択
3
5
小林
克己
小林
克己
2
. なぜ生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか?・両側検定と片側検定の違い・
4
1
検定結果をどう理解すべきか?
3 ヒト司ラット,マウス友びイヌなどの種差による自然発生がんの違い
45
小林克己,萩原
孝,三浦大作
大堀兼男,竹内宏一,金森雅夫
高崎興平
4. B6C3F,マウスの先天性線毛上皮を有する胃嚢胞の 1
例
5
1
宮島留美子,木原
亨,細井理代
山本 慎 二 , 三 上 真 一 , 山川
誠己
岩田
聖,榎本
長
飯 田 麻 里 , 岩田
聖,榎本
莫
5
. B6C3F,マウスに自然発生する主な非上皮性腫蕩の r
a
s遺伝子の解析
5
7
堀江信之,竹石桂一
6 ラ ッ トおよびマウスの腎糸球体病変におけるコ口イド鉄染色の応用
6
7
城 間 直 美 , 山本 郁 夫 , 杉 浦 ひ ろ 子
磯部香里,萩原
室
宇
m
.研究会・学会発表
1. Ki-67(
MIB-5)
抗体を用いた免疫染色における抗原賦活法の検討…….....・ ・
.
.
.
.
.
・ ・
… ..
・・
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・. ・
-…・
一… 7
1
磯部香里,城間直美,杉浦ひろ子
H
H
H
H
山本郁夫,萩原
孝
2
. F344ラ ッ トと B6C3F,マウスにおける Schwannomaの発生率,発生部位,種差司雌雄差について .
..
.
.
.
.
.
7
3
細井理代,長谷川和成,木原
亨
宮島留美子, 山本
山川
慎二,三上
真一
聖,贋内康彦
誠己,岩田
糞
榎本
3 採血方法の実際と工夫
…
・
.
.
.
.
.
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.
..
.
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.
.
.
.
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.
.
.
..
.
・ ・
.
..
.
…
・一
・
・
一
H
一
.
.
.
.
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.
.
.
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.
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.•••••••• 一 一 ….
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..
..
.
7
4
杉山
豊,北島省吾,勝俣
勇
各務
進,村 田
共治
4 体外におけるマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に及ぼす Carbendazimの影響 ••••••••
田中亮太,笹浪知宏,鳥山
.
.
.
.
.
.
..
7
8
“
優
森 誠
5.全自動免疫化学測定装置によるラット血中ホルモン濃度の測定.… ・・
.
.
.
.
.
・ ・…・・…
H
H
H
一 一 .
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
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.
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.
.
.
.
.
.
7
9
向井大輔,笹浪知宏,大庭耕輔
井上博之
6 体外におけるマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に及ぼす G
r
i
s
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nの影響… ・・
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・・
.
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・ ・
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8
0
田 中 亮太,笹浪 知宏,鳥 山
優
H
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7
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;
本木
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H
:
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1
'
1
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"
両耳
7
. B6C3F,
マ ウスの 自然発生肝腫蕩についての解析 m-p
161
NK4aおよびp1
9ARFの検索 …......
.
.
.
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・
.・
.
.
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8
1
a
飯田麻里,岩田
聖,榎本
虞
竹石 桂 一
8
. B
a
r
t
l
e
t
tとLeveneの等分散検定に対す る有意差検出力 の比較検討
82
小林 克己, 大 堀 兼 男 , 金 森 雅 夫
竹内 宏一
9.TH抗体 を用いたラット 副腎髄質の免疫染色
8
5
萩原
孝
, 山本 郁 夫 , 杉 浦 ひ ろ 子
磯部香里,城間直美
10. 10%中性緩衝ホルマリ ン固定液での長期保存性
8
6
城間直美, 山本 郁夫,杉原ひろ子
磯部 香里,萩原
孝
Ver.
3.
0)とADVIA120における動物血データの比較
1
1.H汁 E(
..
.
.
.
.
. ・・
… ・
・
・
・ 一
ー
… 一 …… … … .
.
.
8
7
杉山
豊
1
2
. F344ラットお よびB6C3F,マウスの 自然発生Schwannomaについて :
発生率,発生部位,種差司雌雄差および組織学的検討…...
.
.
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. ・・ ・・ ・・ ・ … ..
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9
6
細井 理代,長谷川和成,木原
亨
宮島留美子, 山本 慎 二,三 上 真 一
山川
誠己,岩田
聖,廉内 康彦
榎本
虞
13. ラッ ト生殖 ・発生毒性試験における母動物病理学的背景デー タに関する研究
肝肥大について
.
.
9
7
亨,細井 理 代,宮島留美子
木原
山本 慎二,三上真一, 山川
田中 亮 太 , 岩 田
聖,榎本
誠己
民
14.加齢 F344ラッ トの黒質に おける ドー パミン性神経細胞の減少について……...・ .
・.
・. ・
.
.
.
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..
.
.
..
・.
・.
・. ・
.
・
. ・
.
.
.
9
8
岩田
聖,飯田 麻里,長谷川和成
H
木原
H
H
H
H
亨, 細 井 理 代,宮島留美子
山本 慎 二 , 三 上 真 一 , 山川
誠己
庚内 康彦,榎本
虞
N. 望月喜多司記念賞
1. 平成 1
1年度 (
第 14回)望月 喜多司記念賞 要旨
2. 第 1固か らの望月 喜多司記念賞受賞者リ ス ト
1
0
0
1
0
6
V.平成 11年度に実施した特別講演会,海外出張,研修,講師派遣....・・
.
・
.
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・.
.
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.
.
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.……・ ・・
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.
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.
.1
1
2
H
H
H
H
H
H
H
(財)安評センター研究所報
第1
0巻
2000
(
1
9
9
9
.11
.
12
. 於 :ア ク ト シ テ ィ 浜 松 コ ン グ レ ス セ ン タ ー )
1• (財)食品農医薬品安全性評価センター 平
成1年
度
(
第7
目
)
学
術
講
演
会
「細胞社会のホメオスタシス異常とがん」
山崎
洋博士
WHO国際がん研究センター (IARC) 多段階発がん研究部長
今回,安評センターの第7回学術講演会に招かれまして大変光栄に思っております .私が研
究してきたこと,主に細胞生物学が,発がん過程でどのような関係にあるのか,メカニズ、ムが
どのように応用されるかということ,またそれが発がんのリスク評価にどのように関連してい
るかについて話させて頂きたいと考えています.
IARCを少し紹介します.元来,戦後にドゴール大統領が, 私たちの聞で戦うのはやめよう
ということで,世界
ではないか,何か人類共通の敵があるはずだ、からそれをやっつけよう. J
r
の軍事費 1%を削除して,それを国際がん研究機関に寄付しようと提唱したのが,この IARCの
8カ国が参加しています.そういう経緯でできた研究所なので,やはり国際
始まりです.現在 1
間の協力が主になっています.そのために,疫学に非常に重きが置かれています.しかし,初
代の所長のころから疫学をやるにしても何をやるにしても,しっかりしたサイエンスをやるた
めにはラボラトリーが必要で、あるという考えから,ラボラトリーと疫学を併設してやってきま
した.私は一貫してラボラトリーの方をやっていますが,やはり同じ屋根の下にいますと疫学
的なことにも非常に興味がでてきます.そして,いろいろな疫学の人とも話す機会があり,総
合的ながんのあり方がだんだんわかってくるようになる場所です.
先ほど言いましたように,今の時代では,ある物質に発がん性があるかどうかということ
を,既存の変異原性試験を利用して調べています. もちろんそれは非常に大切なことなのです
が,変異原性のないような物質にも発がん性があるというところから,特にメカニズムを重要
視する風潮が生まれています. IARCは相当前から始め,他にも NTP,EU,そして遅ればせな
がらヨーロッパコミッション(ヨーロッパ共同体)もメカニズムを重視する方向で進んでいま
す.ですから,発がん物質を評価するためには,その発がん物質がどの ような作用 をしている
かが重要です.そして,その作用を調べるためには,どのようなメカニズ、ムで発がんがおこっ
ているかが大切になってくると考えます.私たちの環境には非常にたくさんの種類の発がん物
質があります.例えばアフラトキシンとダイオキシンを比べても違った評価 をする必要があり
ます.
私が興味を持っているのは,発がんの中でも,発がんに関与している遺伝子(細胞増殖,そ
の中でも細胞周期に関与するような遺伝子)が損なわれてがんになることです.細胞周期が1
つ
の細胞でいくら明確に制御されていても,私たち人間あるいは多細胞生物の体は正常には動き
ません.すなわち, 多細胞生物である限り, 1
つ1つの細胞の増殖は,周りの細胞と 同 じように
細胞社会の ホメオ ス タシ ス異常 とがん
ホメオスタシスを保ちながらでしかコントロールできないのです.ですから細胞周期が一致し
て動いている場合はいいのですが,もしこの 1つの細胞だけが全く違った方向へ行くのなら,
組織として成り立ちません.従って,細胞増殖には 2つのヒエラルキーがあります. 1つは細胞
内でおこる個々の細胞増殖のコントロール,さらに多細胞生物としてのホメオスタシスという
点から調節するもう 1
つ上のヒエラルキーとして,組織のホメオスタシスを司るメカニズムが
あると考えられます.それを司っているのが,いろいろな形の細胞間 communicationだ、と考えら
れます.
a
c
t
o
r
細胞間 communicationにはいろいろな形があります.一般に知られているのが, Growthf
です.細胞がGrowthf
a
c
t
o
rを出し,それがレセプターと結合してコントロールするという方法
です.もう少し親密な方法として,物理的に細胞と細胞が接着し,それによってお互いの細胞
増殖をコントロールするというメカニズムがあります.その中でも私が興味を持っているの
が
, Gapj
u
n
c
t
i
o
nという細胞間 communicationで、す.それはどうしてかというと,今まで知られ
ている中では,その Gapj
u
n
c
t
i
o
nc
o
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m
u
n
i
c
a
t
i
o
nだ、けが分子を一度も細胞の外に出すことなしに,
細胞の中から隣の細胞の中へ直接物を交換できる役割を持っているからです.こういう機能を
持っている構造物は細胞の中ではこれだけしかありません.例えばcAMPが l
つの細胞で多くな
ると,それは組織の中ですぐに広がり,隣の細胞もその隣の細胞も cAMPの量が増えていきま
す.すなわち 1
つの細胞だけに cAMPが高濃度で、留まることはあり えないのです.ですから正常
なホメオスタシスを維持していくためには非常に大切なことだと考えられます.
Gapj
u
n
c
t
i
o
nc
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nを通るものの条件は,水溶性であること,分子量が 1
,
000以下であ
,
000以下といのは非常に限られているように私たちには思えるのです
ることです.この分子量 1
が,生体というのは非常によくできていて,だいたいの物質は 1
,
000以下あるいは数万以上の分
子量なのです.もちろん核酸とか蛋白というのは数万以上です.それ以下のものはだいたい
1
0
0
0以下です.ですから Gapj
u
n
c
t
i
o
nが通していいかどうか迷うような分子は生体内には存在し
ません. cAMP,cGMP,Ca++,イノシトール 3リン酸の ような情報伝達物質や, トラ ンスフェ
u
n
c
t
i
o
nを通るということがわかってい
クションに関与するセカンドメッセンジャーは殆どGapj
ます.
u
n
c
t
i
o
n
がホメオスタシスに関与していると考えられるのですが,この現象
このように, Gapj
が今まではどのように知られていたかということを説明します.例えば,肝臓ではた くさんの
Gapj
u
n
c
t
i
o
nがあり,それと同時に薬物の代謝に大切な酵素があります. 1
つの肝臓の細胞で酵
素が産生できなくなったとしても,その肝臓にはあまり異常はありません.その訳は代謝を司
u
n
c
t
i
o
nを介して送 ってもら えるから
る酵素がやられでも酵素産物そのものが隣の細胞から Gapj
です.これを代謝協同と呼んでいます.ですから lつの細胞で代謝産物ができな くても隣の細
胞からもらえるので,その肝臓自体としてはあまり異常がないように見えるのです.それから
レンズ細胞そのものは代謝能力を持っていないのですが,回りの上皮細胞から栄養物質を Gap
j
u
n
c
t
i
o
nを通して受け取ります.ですから G
a
p
j
u
n
c
t
i
o
nがないと 栄養物質が上皮細胞から来ない
ので,レンズ細胞は機能を果たさな くなり ます.また,普通心臓はドキドキ動いているのが当
たり前ですが,細胞培養系に持ってい って心筋細胞 1つ 1つを培養 してみ ると,離れたとこ ろに
いる細胞は違ったように鼓動します.すなわち 1
つはドキドキとするけれども,もう 1つの細胞
では全く違ったリズムでドキドキとしているのです.これが生体内では同時に鼓動しなければ
いけないわけです.これも Gapj
u
n
c
t
i
o
nを通して シグナルが伝わ っているので,心筋細胞が同調
2
(
財)安評 セ ンタ ー研究所報
∞
第1
0巻 2
0
して鼓動できる.それから,分娩時には子宮筋膜の先に Gapj
u
n
c
t
i
o
n
が急激に増えます.その時
には c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nを介したシグナルで分娩を完遂することがわかっています.私たちの発生に
おいては,この部位はどのようになるのかと運命付けられる過程があるのですが,その過程の
細胞の集団には Gapj
u
n
c
t
i
o
nの結合があ って,違う運命にあるものは違う Ga
pj
u
n
c
t
i
o
nの系で、
固
まっているという現象もあります.
その G
a
p
j
u
n
c
t
i
o
nについて,最近では構造もかなりわかってきました (
F
i
g
.1
)
. Gapj
u
n
c
t
i
o
nは
,
細胞と細胞の接着面でまずヘミチャネルというものが二つの細胞から 出て 1つのチャネルとし
て働きます.このヘミチャネルを私たちの分野ではコネキソンと呼んでいます.これは6つの
C
x
)という分子から成っており, 1
つのコネキ シンというのは膜貫通型の蛋 白で,
コネキシン (
N末端と C末端が細胞質内にあるというものです.
S
t
r
u
c
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u
r
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fGapJ
u
n
c
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i
o
n
s
CEL
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附1
C血
・
・
同
.
.
¥
.
.
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デデ由
.
.
!
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f
NOz --rbpF
J
Y
市.
門。
.
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・・
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~ ' .'
.
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百0曜lÇ~.l
(
F
i
g.1
)
Gapj
u
n
c
t
i
o
nを研究するためにはいろいろな方法があり,主に私たちが様々な細胞で、 commuu
c
i
f
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rYellowという
n
i
c
a
t
i
o
nがあるかどうかというのを見るためには,まず分子量550くらいの L
つ1
つの細胞に微小注入します. L
u
c
i
f
e
rYellowはGapj
u
n
c
t
i
o
nは通るが,細胞膜は
蛍光色素を 1
つの細胞に微小注入して,もし隣の細胞にも蛍光があれば, Gapj
u
n
c
t
i
o
n
通りません.従って 1
を通して色素が通ったと言えます.ですから,蛍光を持った細胞がどれくらいあるかを測り定
量していくことや,細胞と細胞の接着面を抗体で染めることができます.
1
つわからなか った ことがあったのですが,それは Gapj
u
n
c
t
i
o
ncommunicationがロブスター
からまず最初に見つかったのですが,遺伝子がわかってもどうしてもロブスターにはコネキシ
ンの遺伝子が見つかり ませんでした.それから線虫のC.e
l
e
g
a
n
sでもやはり Gapj
u
n
c
t
i
o
ncommuがあるのですが,コネキシ ンの遺伝子がなかった
n
i
c
a
t
i
o
n
c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nはあるが,コネキ シ
ンの遺伝子がないのはどうしてかわからなかったのですが,この頃コネキシンではなくて,
シェイキングピーオープンという,構造が似ていて機能も似た別の遺伝子が見つかっていま
n
v
e
r
t
e
b
r
a
t
e
す.ですから機能が同じでシークエンスのホモロジーのないものがわかり,これは I
(無脊椎動物)の コネキ シンということで,イネキシン と呼ばれています.
つの遺伝子が見つかると 次々にスーパーファミリーが見つかりました.
コネキ シンもやはり 1
の蛋白をコード
初期に見つかったのはコネキシン 43,32,26の3つでした. 43というのは 43kDa
したことからそのように呼ばれています.コネキシンの構造はほぼ共通していますが, C末端
だけ違います . C末端にはいろいろな酵素でリン酸化される部位があります.それによって
3
細胞社会のホメオスタシス異常とがん
communicationが変動することもわかっています.今
1
5種類程のコネキシンがわかっています
が,一応コネキシンには紙織特異性,細胞特異性があります.しかし, 1
つの細胞 1つの組織が
l
つのコネキシンだけを表現しているということはありません.今までに知られた細胞の大部
分では必ず2つあるいはそれ以上のコネキシンが発現しています.コネキシンの分類には分子
量で分類する方法と,構造のよく似たものということでし戸で分ける方法が知られていま
す.
そしてコネキシンの遺伝子が人間の染色体上のどこに乗っているかということですが, 1つ
の場所に乗っていることもあるのですが,やはりいろいろなところに乗っているということで
す.従って,どうもコネキシンの遺伝子ができたのは非常に古いのではないかと,すなわち相
当前からコネキシンというものがあって,それが分化の過程で染色体が離れてきた.ですから
Cx26とCx46のように非常に近寄ったところは進化的にはわりと近いのではないかと考えていま
す.
どうしてたくさんコネキシンが必要なのかということですが, 2つの説が考えられます. 1つ
は,それぞれのコネキシンはまったく違った役割をしているということです.たとえばCx26、
で
つくったチャネルと Cx43で、つくったチャネルを電気的に測ってみますと,その性質は相当違い
ます.それからいろいろな分子を微少注入して,その通り方を見てもやはり細胞の分子量の範
囲が違います.ですから l
つ1
つのコネキシンの性質が確かにあるとわかります.もう 1
つ考え
られるのは,機能的にレダンダンスすなわち Cx32であっても Cx26で、あってもいいような機能が
あるのではないか,ということです. Cx32がだ、めになると Cx26が機能することが考えられま
す.例えばCx32の遺伝子をノックアウトしてしまってもこのマウスは正常に生きられます.つ
まり,他のコネキシンがCx32の代わりをしていることが考えられます.最近面白い実験がドイ
ツであったのですが, Cx43の遺伝子をノックアウトしたその場所に, Cx40やCx32を入れるわ
けです.すなわち,この Cx43をもともとレギ、ユレートしていた promoterによって動くように,
Cx40やCx32を入れてみると,マウスは生きることができます. Cx43ノックアウトマウスは生
きられませんが, Cx40やCx32を代わりに入れてやると生きられます. しかし, しばらくたって
から死にます.一時的にはレダンダンスがあって,一時的には Cx43を代替えすることができた
という結果です.
u
n
i
c
a
t
i
o
nというのは,相当前からローウェンシュタインや広島大学におられた菅
がんと comm
野教授などがされていましたが,私たちが正常細胞 (BALB/c3T3)を化学物質でトランスフォー
ムしてみると,やはりがん細胞はホメオスタシスを逸脱しているものだと直感的にわかりま
す communicationが何かやられているのではと考えられます.いろいろながん細胞で実験して
みたのですが,ほぼ例外なしにがん細胞には Gapj
u
n
c
t
i
o
nを介した細胞間 communica
t
i
o
nに異常
が見られます.異常には二種類見られるのですが, 1つはがん細胞そのものがお互いに commun
i
c
a
t
i
o
nをし ないもの,もう 1つはがん細胞どうしは comm
un
i
c
a
t
i
o
nをしているが,がん細胞と正
常細胞には特異的に communicationをしていないものが見られます.私はこの二つの挙動は全く
同じことをしているのではと思います.すなわちがん細胞にとって正常細胞は怖いのではない
かと.すなわちがん細胞と正常細胞を融合させると,必ず正常になります.正常細胞の方が情
報としては強いわけです.ですから正常細胞とがん細胞とは communicationしたくはないのでは
n
i
c
a
t
i
o
nするとがん細胞はがん細胞ではなくなり,正常細胞になってしま
ないかと.も lcommu
うのではないかと考えられます .
4
(
財)
安評センタ ー研究所報
第1
0
巻
2000
これは (
F
i
g
.2
)c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
n能ががん細胞そのもので全く低くなっているという l
つの例です
が,私たちの研究所の隣にありますリヨン大学の病院から,手術された肝がんの細胞を採り,
それに微小注入して communicationを見てみました.肝臓は非常に communication能が高いので、
すが,肝がんの細胞では communication能が非常に減少していることが分かります.それからも
う1つは,がん細胞どうしは communicationしているが正常細胞とは communicationしていない例
です (
F
i
g
.3
)
. BALB/c3T3をメチルコラントレンでトランスフォームしたのですが,そのトラ
ンスフォームした 1つの細胞に L
u
c
i
f
e
rYellowを、注入しますと,たしかにがん細胞どうしは com
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしません.逆に正常細胞に L
u
c
i
f
e
rYellowを注
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしますが,正常細胞とは c
入しますともちろん正常細胞ですから communication能を持っています.ところが隣にあるがん
細胞とは communicationしません.すなわちがん細胞と正常細胞の聞は非常に特異的に commun
i
c
a
t
i
o
nが欠損しているわけです.
i
z
・
"
I
ISurroundingl
i
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e
r
喜
三醐
己旦
百 '~ 4ω
i
z
加
E
。主
ω
主
l
'
" ",./
(
Fi
g.
3
)
(
F
i
g
.2)
ラットの肝でGST-Pが陽性すなわち前がん状態のフォーカスが2つありました.そのど真ん中
にL
u
c
i
f
e
rYellowを注入すると l
つのフォーカスは正常細胞と communicationしました.ところ
が,もう一方のフォーカスは特異的に正常細胞との communicationを避けているように思えま
す.ですからこの正常細胞と communicationしている場合ではこのフォーカスはまだ前がん状態
から進んで、いないのではないか,すなわちひょっとするとリプログラムされて元に戻るのでは
ないか,と私たちは考えております.そしてこの正常細胞と communicationしていないフォーカ
スは本当のがんにプログレッションしていくものではないかと考えています.生体の場合は正
常細胞との聞が細胞間質とかで物理的に完全に切断されていますので,これも正常細胞とは
c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nが不可能だ、と考えられます.がん細胞というのはc
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしないのですが,
つの目的が,正常細胞と communicationしたくないからではないかと私は考
そのしないという 1
えています.
5
細胞社会のホ メオス タシ ス異常 とがん
このように見てみると, communicationの能力が低くなった細胞ががん化していることが多い
のですが, communication能力を回復すれば正常細胞に戻るのか,がん化が元に戻るのか,とい
うことをいろいろな系でやった仕事があります. 4
つのコネキシ ンをいろいろながん細胞に入
れると ,i
nv
i
t
r
oあるいは i
nv
i
v
oでの造腫蕩性 ,i
nv
i
v
oでの細胞増殖と軟寒天で、の増殖が減っ
てきます.ですから多分,コネキシンは 1
つのがん抑制遺伝子群であろうということが言われ
ています.私たちの研究室では,どのようながんにどのようなコネキシンを入れても同じよう
に発がん抑制遺伝子として働くのかを調べてみました. HeLa.%町包とはご存知のように造腫傷性
が高いもので,これをヌードマウスに移植したものですが,この細胞はほとんどコネキシンを
発現していませんが,外から Cx26,Cx32,Cx40,Cx43の違 った種類をトラ ンスフェクトして
e
n
d
o
g
e
n
i
o
u
sなコネキシンをつくらせたところ c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nが回復しました.この4つの細胞を
ヌードマウスに移植すると, Cx26をトランスフェクトした細胞だけが非常に強 く造腫蕩性を抑
制しました. Cx43は少し抑制しますが,やはり造腫傷性を残しています.それから Cx40とCx32
はまったく造腫傷性に関連しませんでした.私たちは,これはどういうことか考えたのです
が
, HeLa
細胞はもともとヒトの子宮頚がんから分離されたものなので,ひょ っとしたら子宮の
細胞は Cx26が発現しているのではと考え,ラットで調べてみました.予想、どおり, Cx26が非常
にメジャーに発現しました. Cx43は少し発現していますが非常に弱いものでした.このことか
ら少なくともこの系では元あった組織の communicationを司っているコネキシンでないとその細
胞増殖もコントロールできないのではないかと,すなわち communicationは回復できますが,造
腫蕩性までは回復できない,ですから組織特異性があるのでは考えています.
組織特異性がどこに由来するかということでやってみた実験があります. Cx26,Cx32,
Cx40,Cx43を模式的に書くと,違うところは C末端です. Cx26で、
はほとんどC末端がない.
Cx32が中間で, Cx43が非常に長いわけです.そこでひょっとすると C末端に鍵があるのではな
いかと考え, Cx32とCx43のC末端の遺伝子を切ってやって造腫傷性を抑えることができるかど
うかやってみました.こういう系をイ乍 ってヌードマウスや i
nv
i
t
r
oでや ってみると, communic
a
t
i
o
nは同じように回復するのですが,造腫蕩性が7日遅れ,軟寒天での増殖も遅れています.
Cx26ほどには強力ではありませんが,やはり C末端においてなにか生理的な情報でそのコント
ロールを受けるようなものがあるのではないかとこの系から考えています.
コネキシン遺伝子が発がん抑制遺伝子であるということがだいたいわかってきたのですが,
発がん抑制遺伝子というと当然がん細胞では変異がおこっているのではないかというのが次の
仕事になります.私たちも 3年間精力を費やしましたが,その3年間の成果が1
つのスライドに
P
i
g
.4
)
. すなわちいくら探しても変異は非常に
まとめられるくらいの簡単な結果になりました (
稀でした.コネキシンの遺伝子の変異というのはがんではほとんど見られませんでした.見ら
u
t
a
t
i
o
n
が見られました.ヒトでは全く見られませ
れたのはラットの Cx37とCx32で,肝がんで、m
u
t
a
t
i
o
nは全てがpolymorphismでした.お
んでした.見られたと思ったヒトでのコネキシンの m
もしろいのは,家族性の動脈硬化にどうも Cx37のpolymorphismが関係するという論文が最近な
されています.やはりこのような polymorphismというのは,今のところがんとは関連していま
u
t
a
t
i
o
nはがんでは
せんが,これからの他の病気と関連する可能性があります.コネキシンの m
見つかりませんが,ヒトの他の病気で、は見つかっています.家族性の難聴がそうです. Cx26の
m
u
t
a
t
i
o
nがいろいろなところで見られます.それから C
h
a
r
c
o
tM
a
r
i
eT
o
o
t
hD
i
s
e
a
s
eという脳の病
u
t
a
t
i
o
nが見つか っています.これ
気があります.これはX染色体付随性ですが,これも非常に m
6
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2
0
0
0
(
Fi
g
.4
)
は,ほとんどどこをさわってもこの病気が治るという感じで,多くの種類のm
u
t
a
t
i
o
n
が見つかっ
ております.ですからコネキシンというのは,変異をおこさないのではなく,がんの過程では
変異がおこっていないと考えられます.
m
u
t
a
t
i
o
nがおこ って面白いと考えたのは, d
o
m
i
n
a
n
tn
e
g
a
t
i
v
eがおこるであろうということで
つの染色体が変異をおこしますと,変異をおこした蛋白ができます.コネキシンは 6量体
す. 1
をつくらないといけないわけですから,ミュータントと野生株がミックスしてモザイクのコネ
キソンを作るわけです.たぶんミュータントとワイルドタイプが一緒になると,これはコネキ
ソンとして, Gapj
u
n
c
t
i
o
nとして機能しないのでは,と考え られます.ですか ら非常に強力な
)
.
d
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eとして働くのでは,と考えられます (
F
i
g
.5
“
1 '1.]"i i , (j"':t~:!f;iirn1íl創沈~
s
1
'
I
j
祖t
Connexln
,
r
u
:
.
.
a.
・
・
M
I
.
h町田舗。ni
(
Fi
g
.5)
先程のC
h
a
r
c
o
t
M
a
r
i
eToothD
i
s
e
a
s
eで、見られたCx32の ミュ ータ ン トを使 って実験してみ まし
た. HeLa
細胞を使 ったのですが, この細胞はもともと c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしてないわけですから ベ
クターだけを トラ ンスフェク トしでもほとんどc
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしません.ここで,ワイルド タイ
プを入れると当然c
ommunicationを回復します.ところが この3つのミュータントを入れると
c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nしません.ですから機能的にまったく commumcatlOn能を持たないミュータント
です. 220で切断した遺伝子は,ワイルドタイプと同じくらいにc
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nを回復します.
lO
nをしてもおかしくない
これはここを切断しても Cx26と同じような形になるのでcommumcat
と考えています.この変異したミュータントのコネキシンがワイルドタイプで回復したcommun
i
c
a
t
i
o
nを疎外するかど うかという実験をしました .HeLa
細胞で、ワイルド タイフ。で、c
o
mmunica-
7
細胞社会のホメオスタシス異常とがん
t
i
o
nを回干夏したものに,さらにワイルドタイプを入れますと communication
が増えます.このワ
イルドタイプを 1つだけ入れたところにミュータントを入れますと,回復した communicationが
疎外され,すなわち d
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eに働くことがわかります.これががんにどう関係がある
n
e
g
a
t
iveなものは Cx26だ、けで,まず造腫蕩性を抑えたものに Cx26の
かですが,やはり dominanto
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eに造腫虜性を回復することで,やはり発が
ミュータントを入れますとやはり d
n
e
g
a
t
iveが関与していることがわかります.
ん性にも dominant-
これは非常におもしろい系で,私の研究室にいたフルコスキーががんセンターの浅本,津田
両先生とした仕事ですが, BC31というラ ッ トの勝脱がんの細胞があります.これはもともと
communication能がわりとあります
communicationがあるにも関わらず発がん性があるという
奇妙な系であったのですが,それの解明をした実験です.これが (Fig.6)BC31のヌードマウス
での造腫蕩性です.この細胞にワイルドタイフ。の Cx43を入れてやると,全く造腫傷性がなくな
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eのここを欠失した遺伝子をいれてやってみます
ります.ところがこの細胞に d
と,やはり d
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
巴で,また非常に造腫虜性が増えます.すなわち,この実験からコ
ネキシンは, a
l
lo
rnoneで、はなくて,ある程度の communicationを持 っているものはやはり造腫
蕩性も低い,全く communicationがなくなると造腫蕩性がまた増える,それから communication
を非常に高くしてやると増腫蕩性がなくなる,という定量的な相関性もあるのではないかとい
うことをこのスライドは示しています.
n
e
g
a
t
i
v
eの遺伝子を持つと,それをトランス ジェ ニ ックマウスでやり たい
こういう dominantということになるのですが,しかも臓器特異的なトランスジ、エニ ツクマウスを作りたいという
ことで, 1つの d
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eの遺伝子である V139Mの遺伝子を持ったものをアルブミン p
r
o
moterと引っつけて肝臓だけで発現するようなトラ ンスジェ ニックマウスを作ろうと試みまし
た.これはアルブミンですから,当然肝臓の中ではモザイクを作るので,たぶん Cx32は機能し
ないだろう,ところが他の臓器ではこのアルブミン promoterで、ミュータントは動いていないの
でここには影響がないと考えます.
元になるマウスが2系統できています (
F
i
g
.7
)
. 私たちの予想どおり,ライン Xというのは肝
臓だけにトランスジ、エニックの遺伝子が発現されています.ところがライン W というのはアル
t
e
r
がl
e
a
k
yだ、ったからだと思うのですが,他の臓器でもすべて発現しています.で
ブミン promo
すから私たちのラボラトリーで、
は Cx32のミュータ ン トのトランス ジェ ニ ックマウスが肝臓特異
的なものと全身的なものとこつの系が確立できました.非常にばらつきはありますが, commu-
8
(財)安評センター研究所報第 1
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巻
2
0
0
0
n
i
c
a
t
i
o
nはこのトランスジェニックマウスで落ちている,すなわち d
o
m
i
n
a
n
t
n
e
g
a
t
i
v
eで働いてい
ることがわかります.これは,発がん実験の中間報告です (
F
i
g
.8
)
.1
3日目にジメチルニトロ
u
l
t
i
p
l
i
c
i
t
yから見られるよ
ソアミンを投与するという,簡易法があるのですが,それで見ると m
うに,これはトランスジ、ェニックマウスですが,弱いですけど有意差がある,すなわち化学発
がん物質に対して感受性が高くなっています.
(
F
ig.8
)
発がん,あるいはトランスフォームした細胞で殆どのものがcommunicationが減少,あるいは
正常細胞と communicationしない,とお話しましたが,どのようなメカニズムでそういうことが
おこっているのか調べています.まず言えますのは m
u
t
a
t
i
o
nは非常に少ない,それからコネキ
シンの蛋 白が減っている,コネキシンの遺伝子が変異しているものもあります.一番多いのは
コネキ シンが正常に作られているけれどもその挙動がおか しいものです.それをこれからすこ
しお話したいとおもいます.これはその 1つの例ですが,これは Cx32のウエスタンブロットで
F
i
g.
9
)
. ラットとヒトの肝臓で Cx32が発現されていますが,肝細胞がんでも Cx32の発現は
す(
わりとたくさん見られます.ところが蛋白はあるのですが局在性がやはり正常で、はありませ
ん.正常なヒトでは細胞と細胞の接着面に Cx32が局在しているのですが,肝細胞がんの場合,
ぱらぱらに,ある時には核近くに集まっています. Cx32は作られるが,その挙動がうまく行か
なくて細胞膜まで、持っていかれない,だから機能しないとみられます.
これは典型的なマウスの発がんp
r
o
m
o
t
e
rである 1
2
0
-テトラデカノイルホルボール 1
3アセテー
ト(TPA)を使 っていますが (
F
i
g
.1
0),やはりこれも同じ様なことが言えて, TPA
処理前と TPA
9
細胞社会のホ メオス タシ ス異常とがん
c
2
12邑昌
也
(
F
i
g.9)
JP性一~圃422
(
F
i
g.10)
処理後のラット肝臓の上皮細胞での communicationで、すが, TPAI0ng/
mLで1時間後にはほとんど
communicationしてない.ところがウエスタンで見られるように蛋白はあるわけです.リン酸化
のパターンが少し違ってきます.たぶんこれはプロテインキナーゼCによってリン酸化された
と思うのですが,この異常なリン酸化に伴ってコネキシンの挙動が変わ ってきます .TPA処理
前は Cx43は細胞と細胞の聞にちゃんとあるわけです.ですから communicationが行われた.と
ころがTPA処理後はコネキシンは細胞膜から細胞質のほうへ移行しています.ですから機能で
きないのでは,と考えられます.
どうしてこのようにコネキシンの挙動が変わるかということに少し興味を持ったのですが,
細胞と細胞との認識機構ではないかというヒントを2つ くらいの仕事から得たわけですが,そ
の1
つがラットの肝細胞です.ラットの肝細胞はもともと普通の培地に入れてもほとんど生き
られないわけですね,ですから 24時間後にもうほとんどP450は無くなってしまうわけです.と
ころがこれを肝臓と同じような環境すなわち肝細胞そのものだけではな くて胆管上皮細胞と一
緒に入れてやる,すなわちミニチュアの肝臓みたいなものを作ってやると,この肝細胞の機能
というのは非常に長いこと維持することができます .こ れはその仕事をやったデータですが
(
P
i
g
.1
1),肝細胞と上皮細胞が共存しています.肝細胞そのものではアルブミンの放出がすぐ
になくなりますが,共存下では 60日間くらいは分化した機能が続きます.これがcommunication
のためではないかと思ってやったのですが,上皮細胞どうしは communi
c
at
i
o
nをとっています
ommunicationしていません.ですから,細胞と細胞の接触が
が,機能を助けている肝細胞とは c
必要だと考えられます.接触しているところだけが肝細胞として残っており,していない部分
はどんどん死んで、
いっています.細胞の接触は必要だが, communicationは必要で、なかったので
す.それで、,肝細胞は肝細胞どう Lcommunication能を獲得しますが,周りにある上皮細胞とは
communicationしていない.このように,細胞の接触は必要であるが, communicationは必要で、
ないというような情報伝達性があります.
1
0
(
財)
安評セン ター研究所報
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巻
2
0
0
0
(
F
i
g.1
1)
もう 1つ決定的に細胞と細胞の認識が必要ではないかと考えたのは,この図で、すが (
F
i
g
.12),
同じ種類のラットから樹立した非造腫蕩性の細胞と造腫蕩性のある細胞では communicationはあ
りません.これをコネキシンで染めてみます.そうするとノーマル細胞はコネキシンを生産し
ており,細胞と細胞に局在しているわけです.とこ ろが,同じ正常細胞であっても自分ではコ
ネキシンを作って仲間である正常細胞には Cx43を共有させているわけですが,同じ細胞であっ
ても自分と communicationしていないがん細胞には Cx43を移動していません.同じ細胞でも同
じ仲間である正常細胞を見るときには Cx43を運んで、いる.ところが違う面でがん細胞を見てい
るときには Cx43を移動させない.正常細胞とがん細胞の聞には何か違った認識機構が存在す
る,すなわち認識できないようなものがあるのではないかと考えられます.
つの系がE
c
a
d
h
e
r
i
nで、あるということがわかりました .それはどうしてかと言うと,そ
その 1
の頃テキサスにいましたスラガと共同研究したものですが,これはマウス皮膚のパピローマの
系で、すが (
F
i
g.1
3
),これはほとんどカルシウム依存性に機能します. Gapj
u
n
c
t
i
o
nもやはりカル
シウム依存性です.細胞種いろいろあって,ほとんどの細胞がカルシウムを上げると c
o
mmuniつだけどうしても communicationを回復できない系がありました.
c
a
t
i
o
nは回復するのですが, 1
これらのマウスの上皮細胞というのは Cx26とCx
43がメインなコネキシンとして発現していま
す.それで'Cx43を見てみますとこの細胞系もやはり Cx43を持っていました.カルシウム依存性
の細胞接着というのを私たちは考えていましたので, c
a
d
h
e
r
i
nじゃないかと考えて見てみると,
1
1
細胞社会のホメオスタシス異常とがん
確かにこの細胞だ、けカ~'E-cadherin の発現をしてなかったのです.この E-cadherin の遺伝子をこの
細胞にトランスフェクトすると communication能力が回復しました.それでは,これがどのよう
なメカニズムになっているかということですが,パピローマになると Cx26とCx43が完全に共存
しているような状態です.だから,たぶん Cx26とCx43が色々なパピローマでは働いているので
はないか,ということで、今のマウスの系では Cx43だ、けじゃなくて Cx26の仕事もやっています.
その仕事を今から紹介します.
(
F
i
g.1
3)
Cx43が回復することがわかったのですが,それでは Cx26も回復するかということです. Cx43
は非常に長い C末端を持っていて,これはリン酸化する場所を持っています.ところがCx26は
C末端がほとんどな くて リン酸化する部位がありません.ですからこの 2つがどのように挙動す
るかを比べてみました (
F
i
g
.
1
4
)
. ま
ず
、Cx43の挙動で、すが,これは Ec
a
d
h
e
r
i
nがないとやはり細
胞膜には行きません.すなわち,先程communicationをしなかったのは多分Cx43というものが
c
a
d
h
e
r
i
nをトラ ンスフェクトした系にカルシウムを
細胞内にまだ局在するからだと思います. E
c
a
d
h
e
r
i
nというのは Cx43
加 える と,きれいに細胞と細胞の接着面に移行してきます.だか ら
, E-
の移行のコントロールの役割を果たしていると思われます.それから,ここにあたかももうほ
とんど使い物にならないように存在しているのですが,これは使い物にならないのでなくて,
まだ機能できるコネキ シンなのです.というのは,こ の状態でシクロヘキシミドの共存下で高
カルシウムの条件にしても,この蛋白を細胞膜にきちんと移行させます.ここにある既存の
Cx43が車田胞膜へ移行していくとということがわかりました.すなわちゲノムの蛋白合成ではな
くて既存のものが細胞膜へいって機能した.そこで, Cx43は行ったということでCx26はどうか
(
F
i
g.1
4)
1
2
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0
巻
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0
0
0
ということをやってみると,高カルシウムの条件で核近くにあった Cx26もやはり同じように細
胞膜へ行きます.
c
a
d
h
e
r
i
nによってコ
すなわち Cx43のC末端が大切な役割を果たすのではないらしい.どうも E-
ネキシンが移行するというのは C末端には関係なくて,コネキシンにわりと普遍的なものでは
ないかと考えられます.この二つを同時に染めてみると, Gapj
u
n
c
t
i
o
nのプラークに Cx26とCx43
が共存しております.これがどこにあるかということなのですが,どうもこれはゴルジにある
ということがわかりました.それは,セラミドというゴl
レジのマーカーと一緒に染めてみると
F
i
g
.1
5).ですからもともとカルシウムがな
コネキシンとセラミドが共存するということです (
い時は,コネキシンはゴルジの辺で止まっているようです.それを本格的に調べたのがブレ
フェルデイン Aです (
F
i
g
.
1
6
)
. これはゴルジから細胞膜への蛋白の輸送を阻害するけれども,
ブレフェルデイン Aで処理するといくらハイカルシウムであってもゴルジ周辺へ残るので,や
c
a
d
h
e
r
i
nが阻害しているのではないかと考えられます.
はりゴルジから細胞膜への移行を E
Cx43
I
4
[
.
.
.
戸
':
L一二一一ー一一
・
・
Ca+
ωbr│
~白 C-rl伺 nïne;,;:{;$J tJ.Jii帽旬~
企里堕堕坐副旦旦空堕塑型空空1~制r:z!j!'_
一
一
一
一
l
!
I
U
I
I
i
I
「一一一一一一一一「
J可吋叶
0
1i
Apparatus
FJ
M uf
m
1
吋4
画時
一
一
l :m~ jI!ft "fj , t.l íìfj'i"i~fi. , ji.)ih1ill
(
Fi
g
.1
5
)
T
E
~ ー !1!3
・
(
F
ig
.1
6
)
それからもう 1つ実験したのがサイトカラシン Dです.サイトカラシン Dというのはアクチン
の重合阻害剤です.コネキシンの局在にはアクチンが関与しているのではないかと,毎回言わ
れているので,実験してみると,たしかにサイトカラシン Dで処理すると Cx43もCx26も両方と
F
i
g
.1
7
)
. ですから,アクチンフィラメントの形成が非常に大切な役割
も細胞膜へ行きません (
を果しているように見られます.アクチンフィラメントの形成を追ってみますと,たしかに Ec
a
d
h
e
r
i
nをトランスフェク卜した細胞では高カルシウムの条件にするとフィラメントが非常に
u
n
c
t
i
o
nとしての機能を示すようになります.ですからこれを通し
構造だ、ってきます.それから j
てコネキシンが動いている可能性があります.一度まずアクチンが普通に働いている状態で,
Cx43を細胞膜へ移行させた後,サイトカラシン Dでアクチ ンの重合を阻害しでもやはり元に戻
F
i
g
.1
8
)
. 今私
る,ということで非常にアクチンの作用が大切で、あることがこれでわかります (
たちが考えているのは,どちらが先かはわかりませんが, Ec
a
d
h
e
r
i
nがアクチンのフィラメント
と関係があって何らかのシグナルによってアクチンのケーブルを介してゴルジにあるコネキシ
F
i
g
.1
9
)
.
ンを細胞膜へ運んでいくのではないかということです (
このように細胞の中にはいろんなj
u
n
c
t
i
o
nがあります (
F
i
g
.2
0
)
. Ec
a
d
h
e
r
i
nはAdherencej
u
n
c
t
i
o
n
を作っているのですが,この Gapj
u
n
c
t
i
o
nとAdherencejunction はこの cadherin~こよって結び付け
られます.この他にもコネキシンは T
i
g
h
tj
u
n
c
t
i
o
nのメンバーである ZO-1と一緒になるという報
1
3
細胞社会のホメオス タシス異常とがん
告が出ています.この Gapj
u
n
c
t
i
o
nはこれそのもので存在しているのでなくて,他の T
i
g
h
t
j
u
n
c
-
p
y
-m
d
h
e
r
e
n
c
ej
u
n
c
t
i
o
nというような細胞聞の連絡が一緒になって形成して,その調和
t
i
o
nあるいは A
・・池山l
園
川
を保っているのではないかと考えられます.
ω
l
1
1
1
昨日
ω
.づご。一
・
C
y
t
o
c
h
a
l
a
s
i
n0InducesI
n
ω
m
a
l
l
z
a
t
i
o
n
:
:
II,
'
,
n
t
i
'
1.
i
f
l
t
.
:
S
@
i
i
l
l
t
I
itHl
/
長
町
!
;
m
l
i
l
O
J
'
U
J・ndCx2
6Rem.ln・[I'1;lj同lil!I3抱~
l
I
i
1
伽 P閣制r.rr.n句協!iT"!l・.lnD
1
(
Fi
g
.1
7
)
(
F
i
g
.1
8
)
(
F
i
g
.1
9
)
(
F
i
g.
2
0
)
私たちが仮説として持っている,細胞の中でのコネキシンの移動に関するメカニズムは,ま
だ見つかっていない何か蛋白があって,それがその輸送に関係しているのではないかというこ
w
o
h
)
廿i
d
法で、
Cx26に特異的に結合するような蛋白がないかと探したら,
とでした.そこで, t
それが見っかりました . X
染色体に位置していて,ジーンパンクにも見つかったが,わりと
u
b
i
q
u
i
t
o
u
sに発現している遺伝子がとれました (
P
i
g
.2
1
)
. まだ、機能はわかっていませんが,たぶ
んこの蛋 白がコネキシンの移行あるいはコネキ シンに関与したシグナル伝達に関与しているの
ではないかと考えて研究を続けているところです.
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nの仕事のほとんどはアメリカの NIHの助成
すこし話題をかえまして,私はこの c
金をもらって使用しています.だいぶ以前に,人のた めになるようなことができないかと考
え,思いついたのがコネキシンによる c
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nを経由したがんの撲滅ということで,それ
1年前に発表しました. C
a
n
c
e
rR
e
s
e
a
r
c
hに出したのですが,その時にはほと んど信用性がな
は1
かったのですが,私は非常に大切だと思って,日本とフランスで特許をとってあるのですが,
今また注目されだしました.私たちのやった仕事というのはトランスフォームした細胞と正常
o
m
m
u
n
i
c
a
t
i
o
nの仕切りができている,もしそうであるならばがん*目胞の commuな細胞の聞には c
G
a
p
j
u
n
c
t
i
o
nを通すような治療剤を取り込んでやれば,当
n
i
c
a
t
i
o
nの区画に細胞膜を通さないで、
1
4
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻
2
0
0
0
C
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.
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, j,ji.i')'i
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約ふ .
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(
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)
、
然Gapj
u
n
c
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i
o
nを通してがん細胞だけが死ぬであろう. すなわち ,正常細胞にはがんの治療剤が
行かないわけですから非常に特異的ながん治療ができるのではないかと考えています .I
nv
i
t
r
o
では,これはトリパンブルーで死んだ細胞を染めたので、すが (
P
i
g
.2
2
),もともとのがん細胞の
形状のまま死んで、いますので,回りの細胞を全く殺さずに,がん細胞を殺すことに成功しました.
砂 コミュ =ケー ション
とガン治療 写真Aはガ
ン細胞と 正常細胞との
聞に選択 的コミュニ
ケ ション切断がある
状態。これにギヤジプ
結告を通るようにして
毒性物質を注入してや
8)と、ギャップ結合
る(
を介して、ガンにだけ
毒性物置が甚がる。す
ると Cを経て、ガン細胞
だけが死由 (
D)
。培聾細
胞による実験では、以
上 町治療法が成功して
いる。
写真 山崎洋
(
Fi
g.
22
)
Gapj
u
n
c
t
i
o
nを通し てのがん治療が注目され始めたのは,遺伝子治療が脚光を浴びた からで
す.遺伝子治療というのは遺伝子をがん細胞に入れないといけないのですが, 100%の細胞に
遺伝子を入れるということは不可能です.不可能といっても 1%あるいは0.1%のがん細胞にこ
の遺伝子の効果が無ければこれは意味がないわけです. 1%のがん細胞が残ってい ればこれが
またのびて くるので,がんの治療に はならないのです.最初に用いられたがんの治療の試みは
H
e
r
p
e
ss
i
m
p
l
e
xv
i
r
u
sのチミジンキナ ーゼ遺伝子 (
HSVTKg
e
n
e)です.この遺伝子は g
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rを
リン酸化して g
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rp
h
o
s
p
h
a
t
eというものになります.これが核酸に取り込まれて細胞を殺
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rで、殺すという方法がと
すという方法です.従って,この遺伝子をがん細胞に入れて g
られてい ます.
予想、に反して,大体50%位の遺伝子が入ったがんでも g
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rで、死んで、しまったのです.
すなわちがんの撲滅ができたのです.結局メカニズムがわからないということでその現象が,
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rp
h
o
s
p
h
a
t
eとい うことで, Gap
パイスタンダー効果として発表されたわけです.私は g
j
u
n
c
t
i
o
nが関与してい るのではないか と思 って,その実験をし ました. そのパイスタンダー効果
1
5
細胞社会のホメオス タシス異常とがん
の原理ですが, HSVTKをターゲットとした g
e
n
ec
a
r
r
i
e
rにg
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rを処置すると,本来ならば
この 2つだけの細胞が死にます.これはどうしてかといいますともちろん g
a
n
c
i
c
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v
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ri
J
{
}
I
SVTK
によってリン酸化されて死ぬ.それで, g
a
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v
i
rp
h
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s
p
h
a
t
eとい うのは細胞膜を 出ないので隣
の細胞へ行くことはできません.ところが全部死んで、しまったということは,やはり Gapjunc・
t
i
o
nを通して g
a
n
c
i
c
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v
i
rp
h
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s
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t
eがg
e
n
ec
a
r
r
i
e
rから隣の細胞へ行 ったことが考えられます.
田胞を使って実験してみました .HeLa*
田胞は, HSV-TKはも ち
これを証明するために, HeLa*
ろん発現していないし,コネキシンも発現していないので,私たちはいつもエンプテイボック
スだといってこれをモデルにしています.これにコネキシンを入れたり TKを入れたり,両方入
れたりしたような系を作って実験しています.例えばgenec
a
r
r
i
e
rが 10%,それから g
e
n
eが入っ
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rによって死ぬのはこの細胞がcommunicaていないのが90%の混合であるとします. g
t
i
o
nをしている場合です.すなわちコネキ シンを持っていないと g
a
n
c
i
c
l
o
v
i
r
がきても殆んど細胞
a
r
r
i
e
rが 10%にも関わらず,両方の細胞がコネキシンを持ってい
は死にません.ところがgenec
ると,残りの 90%の細胞もこの 10%の細胞によって死んでしまいます.すなわち完全にパイス
タンダー効果が実現されたのです.これにはコ ネキシンが無いと結局死ななかったのです.こ
れがGapj
u
n
c
t
i
o
nによるものであることを調べるために,同じ培地の中でコネキシンの g
e
n
ec
a
r
r
i
e
r
で、あるがTKi
舌性を持っているもの, TK活性を持っていないものを違った層に培養します.
a
n
c
i
c
l
o
v
i
rを入れると細胞と細胞の接触がないので,当然Gapj
u
n
c
t
i
o
nもない.ですから,
これで、g
TKのg
e
n
ec
a
r
r
i
e
rだ、けが死んで、しまいます.それから TKの遺伝子がないものは死なない.です
から細胞と細胞の接触が必要であるということがわかります.
それからもう 1
つ実験したのが, 1
8a
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c
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i
n
i
ca
c
i
d(AGA)という Ga
pj
u
n
c
t
i
o
nを疎外
する物質があるのですが, Gapjunctionがどれくらい阻害されるかというと,この系では 85%~
90%くらいの communicationが疎外されます. ノTイスタンダー効果をみると 80%くらいが疎外さ
れます.やはり主に Gapjunctionがパイスタ ンダ ー効果を司 っている ことがわかりました
(
P
i
g
.2
3
)
. 今メニールという男が私の研究室でそのベクターを開発しようとしています. Cx43
とTKを同じベクターにひっつけて取り込んだら一番いいのではないかと考えたのですが,どう
もうまくはいかなくて,結論から先にいうと, Cx43とTKを別々にやったほうが効率がよかっ
た.ですからこういうパイジェニックベクターというのは少なくともこの系ではパイスタン
ダー効果はあまりよくありませんでした.
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3
)
1
6
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2
0
0
0
このようなパイスタンダー効果というのはこの頃,放射線の分野でも注目されています. 1
つ1つの細胞を正確な細いビームで照射するような装置で 1
つの細胞に照射しでも Gapj
u
n
c
t
i
o
n
が
あると,その細胞ではなくてその前の細胞も死ぬということが分かつてきています.ですか
ら,パイスタンダー効果というのはこれから放射線に よる治療などにも使えるのではと考えら
れます.
私たちがコネキシンを特に注目しているのは,コネキシンは発がん抑制遺伝子であって,し
かもパイスタンダー効果があるということで,がんのコントロ ールにまつのいい効果があると
考えられるからです
¥
そろそろまとめに入りたいと思い ます.コネキ シンの仕事を 2
0
年近 くやってきたのですが,
がんに関しては発がん抑制遺伝子であるのですが,例えばノックアウ トにしても,ケモサプ
レッションにしても影響はあるが私たちが考えていたよりも影響は少ない,ということがこの
u
n
c
t
i
o
nはセ jレサイ クルに直接影響するので
頃の結論です.いろいろ考えましたが,やはり Gapj
はなくて,生体そのもののホメオスタシスを維持しているものであると.ですから非常に微妙
なバランスをとっているものではないかと考えられます (
P
i
g
.2
4
)
. その異常がおこると当然が
んにもなるしアポトーシスにもなるが,それが必ずしもすぐにがんになるものではないのでは
u
n
c
t
i
o
nを通してのホメオ スタシスというの
ないのではないかと考えられます.すなわち Gapj
は,結局バッファリングの役割を果たしていることで,これはプラス,マイナスいろいろな
ファクターがあるが,これをバッファリングして生体が恒常性を保っていると考えられます.
この communicationカ宝なくなることによりノ Tッファリングカfなくなると,プラスになったりマイ
ナスになったりするような細胞が出てきます.マイナスになったような細胞は,細胞の増殖が
遅れたり,あるいはアポトーシスに行ったりということになっているのではないかと考えられ
ます.私たちはがんを見ているので,がんを見ているときにはアポトーシスをおこしてしまっ
たような細胞は見ていません.だからその現象を追ってないのです.おこっているかもわから
ないけれども,私たちはいつもこのような状態を探していたので,これしか見つからなかった
のではないか,すなわちこういう状態もお こっているのではないかと考えられ ます.
(
F
i
g
.
2
4)
G
a
p
j
u
n
c
t
i
o
nがなくても自立でやっていけるような細胞,特に血液細胞などではまだ恒常性を
保ってノーマルグロースしていけるのではないかと考えます.この観点からみると, 1
つ1
つの
コネキシンをノックアウトするといろいろなフェノタイプが表れるというのが理解できると思
います (
P
i
g
.2
5
)
. すなわち Cx43をノックアウトすると心臓の奇形で死んで、しまいます.それか
1
7
細 胞 社会 のホ メオス タシ ス異常とがん
Connexingeneknock-outmice
Prrn目Illrn田 ~e ーーーーーーーーーー­
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0K~n~
(
F
i
g
.2
5
)
らCx26をノックアウトすると胎盤異常によりネズミは産まれません. Cx32をノックアウトする
と肝臓のがんが増えます. Cx37で、は卵巣の異常がおこり, Cx46,Cx50で、は白内障, Cx40で
、
も
心臓.このようにコネキ シンが異常をお こすと,ホメオス タシスの系なので,がんも含めてい
ろいろな病気に関与することがわかると思います.人間でも同じで,今まで生殖細胞では 5つ
のコネキシンの遺伝子の変異が見つかっていますが,それは全く違ったいろんな病気で,難
聴,白内障,脳の病気
, 心臓の奇形なとミが見つかっています.ですからやはり,コネ キシンと
いうのはホメオスタシスの遺伝子であって,それがなくなるといろいろな異常がおこるのでは
ないかと考えられます.
そういう観点から,私たちは,最初は発がんだ、けに興味を持って,がんの communicationの阻
活性を持った物質がcom害ということをやってきました.もちろん発がんpromoterとpromoter
mumcat
lOn
の回害能を持つということはわりとオーバーラ ップするのですが,それだけでなく
て他の病気に関与している物質が見つかってもおかしくないと思います.今までわかっている
のはがん関係で、
はtumorp
r
o
m
o
t
e
r,tumorp
r
o
m
o
t
e
r
的な肝部分切除,皮膚 の創傷,がん遺伝子,
grow出 f
a
c
t
o
rのようなものがcommunicationを疎外します.これは発がんに関係しています.逆
に化学予防物質と言われるようながんを予防するようなもの,納豆を含めて,やはり Gapjunct
i
o
ncommunicationを促進しているものが多く見られます.
つのメカニズ、ムとして大切だと思うのです.
もし,このようなことが発がんでわかれば, 1
communicationの遺伝子がm
u
t
a
t
i
o
nをおこすか,あるいはそうではなくて蛋白そのものをいじ
くっているかというの は,リス ク評価に非常に大切な要になるのではないかと.すなわち,遺
伝子に傷を付けたから危ないのではなく,遺伝子を傷つけない他の方法であっても,同じメカ
ニズムを阻害すると,私は発がんに危ないのではないかと考えます.その時にそのメカニズム
u
t
a
t
i
o
nで、はなくてこのように communicationをシャットア
がどうであるか,すなわち遺伝子の m
ウトするような物質もやはりあって,そのときにはリスクが違うのではないかと考えられま
す.これはどういうことかと言うと,もし, m
u
t
a
g
e
n
i
cに遺伝子の変異をおこすようなものがコ
ネキシンの遺伝子に変異をおこすと,これは不可逆的です.ところが突然変異性を持った発
がん物質でおこった変異は, 1つの細胞だけです.ところがノンジェノトキシックすなわち 他
の方法での発がん物質が影響を及ぼすと,細胞全体に影響が及ぶわけです.これは可逆的なの
です.ですからこの 2つは全く違った影響を及ぼすのですから,この時にはやはりメカニズ、ム
をベースにしたリスクアセスメントが必要になってくると考えられます.
1
8
(財)安評センター研究所報
第1
0巻 2000
ジェノ トキシ ック,ノンジェノ トキ シックという ことで,こ のGapj
u
n
c
t
i
o
nを含め てもそうで
すが,よく議題になるのがジェノトキシックだから危ない,ノンジェノトキシックだから安
全,というふうな観点があります.私は その分類は学問的にやるのには賛成ですが, リスク評
価にするには不賛成です.役にも立たないし,非常に弊害があると思います.と言うのは,例
えばAがm
u
t
a
g
e
n
i
cで、あり, CはGa
pj
u
n
c
t
i
o
nを阻害し, Bはペルオキシソームの増殖を促進した
とすると,普通言われるのは,ペルオキシソームの増殖を誘導したならノンジ、エノトキシック
である, Gapj
u
n
c
t
i
o
nを阻害したならノンジ、エノトキシックである,というような分類の仕方を
みなさんやられているわけです.それで,これから リスク評価をしている.
これは私は全く意味がないことをやっているのではないかと思います.どうしてかと言う
と,全く同じようなことをヒトの場合でやると,例えば私は日本人である,私はアメリカ人で
ある,それからフランス人とスペイン人はヨーロッパ人であるといった時に,日本人であり,
アメ リカ人 で あ る と い う の を わ ざ わ ざ ノ ン ヨ ー ロビ ア ン と い う こ と は な い と 思 い ま す
(
F
i
g
.2
6
)
. というのはこの日本人であるという情報がノンヨーロピアンよりもずっと大切だと
u
n
c
t
i
o
nを疎外することが大事であって,これをわざわ
思います.これと全く同じように, Gapj
ざノンジ、ェノ トキ シックにもっていくことはないと思います.ペルオキシソームの増殖を誘導
するというその事実は非常に大切なのですが
それをわざわざノンジェノ トキ シックにもって
u
n
c
t
i
o
n
いく必要はないと思います.私はリスク評価の時はカテゴリ一分けは全くやめて, Gapj
なら Gapj
u
n
c
t
i
o
nを疎外した,あるいはこの テス トではポ ジテイブ,ネガテイブというように直
接にリスク評価に持っていくほうが正確になっていくのではないかと考えています (
F
i
g.
2
7
)
.
そのためにもメカニズムの研究はこれから大切になっていくと考えます.これは最後のスラ
F
i
g
.2
8
),私の研究室のメンバーと美しいリヨンの風景です.長い間のご静聴有り
イドで、すが (
難うございました.
(
F
i
g.
2
6
)
(
F
i
g
.
2
7
)
(
F
i
g.
2
8
)
1
9
テロメレースノックアウトマウスと癌
「テロメレースノックアウトマウスと癌J
石川冬木博士
東京工業大学生命理工学部教授
本日はこのような席にお招き頂きまして有難うございます.午前中は安評センターを見学さ
せて頂き,実際作業着に着替えて飼育室内を見学させて頂きました.作業が非常に手際よくし
かも厳重に行われているのを見て大変感銘を受けました.安評センターでも行われているよう
に実験動物を使って我々が日々使用している医薬品,食品,農薬の安全を強化することは非常
に重要なことです.そのような研究を行う際には,我々に毒になりそうなことはマウスやその
他の実験動物にも毒や害があるに違いない,というような前提があるわけです.こ のような前
提はスタートラインとしてはいいかもしれませんが,その前提が成り立たない場合がありま
す.それをどうすればいいかというと,人間を使ったりそれに近い霊長類を使ったりできれば
いいのですが,それは不可能あるいは困難なことですので,マウスなど手軽に使える実験動物
を遺伝子工学的に改変して,遺伝子改変動物について研究を重ねることが一つの手段となって
います.そこで今日ご紹介したいと思いますのは私たちが最近作製しました「テロメレースノッ
クアウ トマウス」についてです.私たちは,このマウスがヒトの老化を模倣しヒト の老化病態
のモデル系を与えてくれることを期待しています.
まず,具体的な「テロ メレースノックアウ トマウス」の話に入る前に,私たちが実験動物を使
う際にどのようなトリックにはまりやすいのか考察してみたいと思います. 2
1世紀は老年社会
であると言われ,仮に6
5歳以上を高齢者として定義すると高齢者の割合カ斗人に 1
人
, 2
1世紀中
頃には3人に 1
人であると言われています.このことは, 2
1世紀において, 1
人の高齢者を 3人も
しくは 2人の働き手で支えることを意味します.このよ うな事態は人類の歴史を 見ても未曾有
のことであり,我々は早くからこれに対処する方策を定める必要があります.それでは,いわ
ゆる老化とはどのようなことを意味しているのでしょうか.ここでは,直接老化を考察するの
ではなく,観点を変えて,老化と全く逆の現象である「発達」について考えてみます.
私たちには誰しも生まれてきて歩きはじめ,小学校に入る,そのような発達がありますが,
老化と一番違う特徴的な点は,発達は,非常に規則正しく殆ど万人が同じようなペースで,ま
たいろいろな現象が決まった順番で起こっていることです.例えば,私たちは子供が通常1
歳
頃立ちはじめ歩きはじめることを知っていますし,小学校に入りたての子がどのような子供な
のか容易に頭の中で想像することができます.発達現象は青少年,成熟するまで至るわけです
が,これらの一連の現象は,我々の遺伝子にプログラムされている非常に正確なプログラムに
基づいて着々と行われる現象である と言え ます.そのような発達現象に対して,老化に特徴的
なのは,我々がどのように老化するか,腰や目など体の中でどこが一番老化するかなど非常に
個体差があり,予測することが困難な点であります C
F
i
g
.1
)
. 同じような遺伝的なパックグラ
ウンドを持っている方であっても,片方は喫煙歴がある,片方はないとすると,おそらく喫煙
する人のほうが早く呼吸が苦しくなるでしょう.すなわち,老化はいろいろなパラメーター,
2
0
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻 2000
例えば遺伝学的,生活習慣,その時の医療水準,社会衛生社会などによって影響を受けて,予
測不可能であるということに特徴があります.
発達はプ口ク。ラムされている
周到
│
舗│
老化がいつ、どのように起こるかを予測することはむずかしい
(
F
i
g.1
)
人生の前半で起こる発達と後半でおこる老化が,なぜこのようにその均一性において対照的
であるのか,について考察してみましょう.私たちの体がどのように一生を送るかということ
は,遺伝子にコードされていると考えることが出来ると思います.そういった遺伝子,命の設
計図がどのように地球上に生まれたかというと,進化論は,現在ある全ての生物の遺伝子は大
昔の原始的な共通祖先から進化してきたことを教えています.生物と非生物の違いは,生物は
自分の子供を残すことです.進化論では 全ての生物はできるだけ多くの自分の子供を残すよ
うに進化し,現在の姿を得たと考えます.通常,多くの多細胞生物は一生の間子供を作り続け
るわけで、はなく,ある時期に限って子供を作ることができます.発達とはこの子供を作るため
に体のっくりが成熟する過程を言い
老化とは子供を作り終えた時期におこる生命現象を指し
ます.種が維持されるためには,元気に育つ子供をたくさん作る必要があります.このため,
成熟するまでの発達過程は種の維持に非常に重要な役割をはたします.最も効率的に子供を残
そうとするならば,全ての個体が等しく同じ発達様式をとる必要があるのです.また,その効
率のよい発達様式は種の聞でも保存されていることが多いのです .それのいい証拠としまし
て,晴乳類(たとえば,マウスとヒト)の胎児の形は非常によく似ていることをあげることがで
きます.一方,子供を作り終えた後の現象,すなわち,老化現象は直接は残すべき子供の数に
は関係ありません.従って
老化現象は種の維持のために遺伝子プログラムによって正確に規
定されているわけではなく 様々な因子によって決定されるいわば受動的な現象であることが
F
i
g
.2
).子供が乳離れしたときに親は生物学的には子孫を残す上で必要がなく
理解できます (
なったと見なすことができます.しかし,これはあくまでも生物学的な話であり,文化活動,
経済活動などは多くの場合,この人生の後半にますます盛んになることが多いわけです.以上
の議論から,老化現象は様々な要因によって複雑に修飾されるであろうことが示唆されます.
事実,生物種によって老化の現象は大いに違います.マウスの老化と人間の老化は全く異なり
ます.同じ人間であ っ て も 民 族 生 活 習 慣 遺 伝的な背景社会的現象によ ってこの後の こと
が様々に修飾されて,そのために予測不可能な現象がおこっていきます.このことから,マウ
スを用いた研究成果を,特にそれが老化に関連する場合には,ヒ トに そのまま当てはめること
の潜在的な危険性が示唆されます.
2
1
テロメレースノックアウトマウスと癌
プログラムは自然淘汰によりつくられる
自然淘汰は、できるだけ多くの子孫を残すよう作用する
自然淘汰によるプログラムは、子供を育てた後の生命現象には関係がない
(
Fi
g.2
)
次にこのような老化を起こす原動力は何か?を考えていきましょう.単細胞生物と異なり
我々多細胞生物の特徴の一つは,多くの場合,幾つかの種類の異なる組織から出来ていること
です.例えば一人の個体を樽に見立て臓器など各組織がたて板としますと,樽(個体)は脳,腎
臓,肺,心臓などの多数の組織(板)から成り立っており,全ての臓器(板)の機能が完全であっ
て,樽の中にたたえられている命の水がこぼれることなく,維持されるのです.ひとつでも板
が傷んできて水の水平線より低くなれば水はこぼれ,命は失われてしまう,すなわち老化で死
を迎えることになります.
このような臓器,組織を見ますと,大きく 2つのグループにわけることができます.第1のグ
ループは非再生組織で,生まれた後は殆ど細胞の増殖がない組織です.中枢神経系,末梢神経
系,筋肉などは組織が破損しても新しく細胞を作って生まれ変わることが出来ない特徴をもっ
ています.そのような細胞に老廃物がたまったり,蛋白質・ DNAに傷が付いたりした時に,そ
れを修復はしても,細胞を新しく作って生まれ変わることができないために,ある限度以上に
なると誤りがどんどんたまってしまいます.或いは再生する細胞ではないので細胞が死んでし
まうとそれを穴埋めすることができないので、細胞数が減ってくるかもしれません (
F
i
g
.3
)
.中
枢神経などはその例だと思います.従って,このような組織においては DNAなり蛋白質といっ
た大事な生体分子に誤りが蓄積することが,おそらく年とともに機能が落ちていくことの原動
力だろうと考えることが出来ます.どのような原因で我々の細胞は傷つくのでしょうか.最近
特に注目されているのは,活性酸素です.我々は酸素を使ってエネルギーを得て体を動かして
いますけれども,酸素を使って酸化を行いミトコンドリアでエネルギーを得るときに活性酸素
ができます (
F
i
g.
4
)
. 普通は活性酸素を無毒化する機構があるのですが,非常に大量に活性酸
素ができたり,あるいは少しずつでも長年の聞にわたってできたりするといろいろな蛋白質や
DNA
が活性酸素によ って傷つけられて細胞は死んでしまいます.ですから酸化ストレスは老化
の原因であることは間違いなく,おそらく再生することが出来ない神経や筋肉では重要な役割
を果たしているだろうと考えられます.
もう l
つグループの臓器は,生まれてから一生の聞に,程度の差はありますが増殖すること
ができる再生組織であります.例えば我々の血液は毎日多くの細胞が死んでいるわけですか
ら,それを穴埋めするために新しい血液細胞が出来なければいけない.ですから骨髄の中では
毎日たくさんの造血が行われています.或いは消化管や皮膚の上皮細胞,血管の内皮細胞など
は,増殖をして新しい細胞をつくることによってはじめて組織が維持できるわけです (
F
i
g
.5
)
.
2
2
(財)安評センター研究所報
第1
0巻
2
0
0
0
非再生組織の老化
生涯の間細胞増殖による新陳代謝(再生)を行わない組織は、
「銀り蓄積仮鋭」により老化する可能性が高い固
例神経、筋肉
(
F
i
g
.3
)
(
Fig.4)
ところがこれに関しまして 1
9
6
1年にアメリカのレオン・ヘイフリック先生が,我々の持ってい
る細胞は決して無尽蔵に増殖することはできずそれには上限があるのだという発見をしました
(
P
i
g
.6
).彼は正常人から線維芽細胞を採取してシャーレーに移し,培養していきました.彼
は,細胞が最初のうちはどんどん増殖しますけれども,ある程度のところに至りますと増殖が
止まってしまい,血清を交換したり,今で言う増殖因子を振りかけても全く増殖をしないよう
になってしまうことを発見しました.大事なことは,この様な細胞は決して死んでしまうので
なく,生きていて代謝活動もしているのですが,増殖刺激に対して不能であって分裂すること
が出来ない,すなわち老化細胞であるということです.ヘイフリック先生は我々の体の中で既
に行った線維芽細胞の分裂回数とそれを試験管に移して行った分裂回数は一定であって,若い
人はまだ個体の中で分裂していないために試験管の中で長生きするけども,ご老人は回数券が
尽きてここで早く老化してしまうと提唱しました .これはいわゆる細胞寿命という仮説で,最
初のうちは評判が悪かったようです.しかし,このような考え方に従いますと,幾つかの再生
組織についての老化を説明することが出来ます.例えば高齢者の特徴の一つは免疫不全で、ある
ことです.免疫不全ですと風邪をひいても直りにくく肺炎になって,それが原因で亡くなって
しまうことが多いのです.これをヘイフリック先生の考え方,細胞寿命を用いて説明 しようと
すると,免疫細胞というのは表面に外敵を認識できるレセプターがあって,そこに外敵がくる
と活性化されて細胞分裂を繰り返して外敵をやっつけるわけです.そういった細胞が一生のう
ちに何回か分裂を経ていますから,高齢者の免疫細胞は回数券を使い果たしてしまって外敵が
組織の中には、生涯にわたって細胞死と細胞増殖の
バランスの上に立ってはじめて機能が維持できるものがある
例
免疫・造血細胞、上皮細胞、向車細胞
(
F
i
g
.5)
(
F
i
g
.6)
2
3
テロメレースノァクアウトマウスと癌
来ても分裂できない,と考えますと高齢者に免疫不全が多いことは理解できます.また,高齢
者の成人病で重要なもののひとつに動脈硬化症があります.動脈は大きく外膜・中膜・内膜に
分かれ,ホースの管に相当する中膜には平滑筋や線維芽細胞といったものがあります.血液が
スムースに流れるために血管の内側をコーテイングしておく必要があり,それが血管内皮細胞
に相当します.動脈内は非常に強い圧力で血液が流れていきます.ですからこの内皮細胞は機
械的なストレスにさらされていると考えていいと思います.いかに強い内皮細胞であっても,
時々はがれ落ちることがあります.若い人であれば隣の細胞が増殖してそこをふさぐのです
が,高齢者でもし内皮細胞が細胞寿命を迎えたとすると穴をふさぐことが出来ずに血小板が付
着して,そこから増殖因子ができて中膜の線維芽細胞や平滑筋が出てきて動脈硬化がおこると
理解することが出来ます.また,動脈硬化の好発部位は決して一様で、はなく,例えば腰の部分
で1
本の腹部大動脈が足の2本の動脈に分かれる分岐点が非常に動脈硬化をおこしやすい.これ
は,ここに分岐があるために,血流の乱流がおこりやすく,他のまっすぐな大動脈の内皮細胞
より早く老化してしまって動脈硬化がおこりやすいと説明できます.またよ く知られているこ
ととして高血圧症や高脂血症のヒトは動脈硬化がおこりやすいのですが,これらの病態は全て
内皮細胞を傷つけるために早く老化を引き起こす原因にな っていると言え ます.細胞老化と
いった観点からすると老化は,決して暦年齢に従って起こるのではなくて,高血圧などの基礎
病変の有無,同じ動脈でもストレスが激しい部位,などの様々な因子によって全く老化のス
ピードが違うことがいえます.逆に言うと,どの程度老化をしているか診断するためには少な
くとも臓器別に,一つの臓器であっても場所別に診断して,弱点を診断することが重要である
と考えます.
先程言いましたとおり正常な細胞は無限に増殖することはできない,必ず有限で、寿命があ
る.ところが増殖しなければいけない細胞は日々増殖を続けて組織を維持していくわけですか
ら,そのような組織が年をとって分裂能力がなくなると,新しい補給のないまま細胞がどんど
ん死んで、いき細胞の数や活力が減り,ついには水がこぼれるのです.どの臓器が一番早く機能
が失われるかは,生活習慣など様々な因子によって変わってきます (
F
i
g
.7
)
.
細胞の増殖は有限であることが老化に重要でありますが, ヘイフリックが提唱して以後30
年
間,その理由は分子論的には不明でした.ところが 1990
年代に入りまして意外なところに細胞
老化を生み出す仕組みがあることが発見されました.細胞老化は分裂回数があるところまでい
くと増殖しないということですから,その細胞に何か分裂回数を記録するような仕組みがある
と考えられます.そこで注目されたのは染色体の末端のテロメアと呼ばれるところです (
F
i
g
.
個の細胞に 46本の染色体を持っていますから 92個のテロ メアがあることに
8
)
. 私たち人聞が1
なります. これからお話しますようにテロメアは何回分裂したかをカウントする分裂時計であ
ることが分かつています.
我々の DNAは二重鎖であるといわれ,その中には AGCTの塩基か らできています.我々の細
胞が分裂するときには遺伝子が1セットだ、ったものを 2セットにしてそれぞれ子供の細胞に分配
しな くて はならない,その過程を複製と呼んでいます.複製過程で, DNAの一番末端部分テロ
メアは完全に は複製されないことが知られています.これが IDNAの末端複製問題J
と呼ばれて
いるものです.再生する血液や上皮細胞は一生の聞にたくさん分裂するのですが,そういう細
胞は年をとるとともに延べの分裂回数が多くなります.ですから段々とテロメアの端の部分が
短くなっていきます.テロメアは染色体の安定性にとって大変重要なものですから,テロメア
24
(
財)
安評センター研究所報
2
0
0
0
こ縮小 化 す る
テ ロ メ ア は 、 細 胞 分 裂 の た ひ1
日々の細胞増殖により維持されている組織では、
細胞老化により組織の老化が生じている 可能性がある 。
例
第1
0
巻
免疫系、造血果、血管内度、直膚・消化菅・気管上庄
鴫("_
「ーー
A
aa--A
44
・
・
・
‘
,
.
.
.
・
・
・
テロメアは分裂回数をカウン卜する「分裂時計Jである
(
F
i
g.
8)
(
F
i
g.7
)
があるところまで短くなったらそれを認識して,それ以上の細胞増殖を押さえることがされて
います.逆に言いますとテロメアの長さは一生の聞で何回分裂をしたかがわかる時計のような
ものです.その時計が最終的な 0の値まできてしまうと負のフィードパックによってその細胞
は分裂を中止してしまいます.若い細胞はある程度長いテロメアを持っていますが,テロメア
長が非常に短小化した時には細胞の増殖は停止している,これが老化細胞です.同じようなこ
とが我々人間の中でもおこっているだろうというのがヘイフリック先生の仮説です.少なくと
もその一部の細胞については現在この仮説が証明されています (
F
i
g
.9
)
.
このようにすべての成長細胞が有限界の増殖しか出来ないとするならば生殖細胞はどうなっ
ているのでしょうか.我々の体は精子と卵子から出来て,赤ちゃんになって最終的におじいさ
ん,おばあさんになるわけですが,このような我々の死とともに死んで、しまう細胞は体細胞と
呼ばれています.我々の体を構成する殆どの細胞がそうですが,これは次の子供に伝わること
はありません.生殖細胞と呼ばれる特殊な細胞,すなわち精子と卵子だけ次の子供を作ること
によって次世代に生き延びることが出来ます (
F
i
g
.1
0
)
. 体細胞ではだんだんとテロメアが短く
なって増殖が止まってしまうのですけれども,生殖細胞はヒトという生物種が維持される限り
は祖先から子孫に向かつてずっと生き延びているはずですから無限に増殖しているはずです.
いったい生殖細胞はどうやって末端複製問題を解いているのでしょうか.それはテロメレース
と呼ばれる特殊な酵素がテロメア DNAを伸長させることによって無限に増殖することを保証し
F
i
g
.1
1
).
ているのです (
細胞寿命の有限性
G三→勉
若い細胞
一
一
一
一
+
年をとった締飽
按色体の末漏テロメア の
長さはあと何回細胞分裂を
行えるかを決める
f
鍋胞分裂時計 J
している.
(
F
i
g.
9)
25
テロメレースノックアウトマウスと癌
TelomeraseAssay
「生殖細胞 J系列と「体細胞j系列
1234M
一
,
a
1
。1I11~
G
+
土
¥ 誌、
土
昼
、
r
'
'
1
"PJdGTP
.
.
~"~ACII・_ ,
.
.
.
.
.
岨.
.
由主)
白田白園田嗣
ト
事
(
F
i
g.
1
1
)
生殖細胞は、無限に増殖でき、全ての組織に分化できる 。
体細胞は、限られた数の細胞分裂しかできず、
ひとたび分化すると来分化状態に戻すことは難しい。
(
F
i
g
.1
0
)
テロメア DNA
は
, TTAGGG
の6
文字が繰り返しつながっている配列を持っています.テロメ
レースはテロメアの最も末端部分に作用してこの TTAGGG
の繰り返しをし 2
,3
個と繰り返し
付けてあげてテロメアの長さを伸ばしています.実際,テロメレースを試験管の中にとって,
DNAに反応をおこさせてやりますと, TTAGGGの6
塩基をはしごしてどんどん伸びて行きま
す.テロメレースは実は生殖細胞では非常に活性が強くて,生殖細胞が多数回増殖するにも関
わらずテロメアが非常に長いまま維持されます.逆に生殖細胞が無限に増殖するのはテロメ
レースがあるおかげと言えます. しかしどういうわけか生殖細胞が受精して赤ちゃんができて
体細胞になると,テロメレースはオフになってそれ以降は末端複製問題に従ってだんだんと短
F
i
g
.12).
くなり,再生組織では老化してしまうと考えられます (
次にテロメレースがどのような構成成分からなっているのかをご紹介したいと思います.テ
からなっていると言いましたけれども,テロメレースはたった一本の蛋白質
ロメアは TTAGGG
成分からできている酵素ではなく, RNA
成分と蛋白質からできているリボ核酸蛋白質であるこ
とがわかっています.ヒト,マウスの日甫乳類のテロメレースは,我々を含めた幾つかのグルー
プの努力によってここ数年の聞に全てクローニングが終わりました.では,どういうふうに働
いているのかといいますと,テロメレース RNAは合成すべき TTAGGG
の逆に相当する CCCUAA
という配列を繰り返し持っています (
F
i
g
.1
3
)
. その配列と作用すべきテロメア DNA
末端とのあ
いだでくっつくことができ,また貯-l"
A上で、余った部分を鋳型に使って,蛋白質成分の働きで新
し
く TTAGGGを作るようになっています.テロメレースは RNA
鋳型を使ってDNAを合成します
はまたはがれてっきなおして,また TTAGGGをつくると,その結
が,一度くっついた TTAGGG
果,テロメレースは6塩基つまり 1リピートず、
つ伸ばす逆転写酵素の一部だ、と考えられます.
2
年ほど前にクローニングされたヒトテロメレースの触媒サブユニット(実際に DNAを合成す
,
1
3
2アミノ酸の蛋白質で, C末端には他の蛋白質で見られ
る蛋白質)の構造を示します .全長 1
るモチーフが存在しています.ここには例えばエイズウイルスのようなレトロウイルスの逆転
26
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2
0
0
0
。
生殖細胞や癌細胞などの無限に増殖する細胞では、
テロメアをのばす酵素テロメレースが存在する 。
生殖細胞
・
.
,・
・
TelomeraseCounteracts 10m r Shor
加川
n
o
テロメレース
‘
'
テロメア
若い体細胞
b
l
老化した体細胞
f
司
@
。
/
¥
(
F
i
g.13)
癌細胞
(
F
i
g.12)
写酵素に保存されているモチーフがあります.テロメ レー スは RNAを鋳型に使い, DNAを合成
しますので機能的に逆転写酵素なわけでありますけれども,分子生物学的に構造としても逆転
写酵素であることがこれで、わかったわけです.テロメレースは最初に発見された生理的な意義
を持つ逆転写酵素であると言われています.次の疑問は,なぜ、体細胞には テロメ レー スがな
く,生殖細胞にはあるのか,という点です.すなわち,なぜテロメレースがオンになったりオ
フになるのか明らかにすることが重要なことです.
私たちはテロメレース活性がある細胞とない細胞について TERTという触媒サブユニッ トの
遺伝子の発現,つまり悶-.r
Aを実際に作っているかを調べてみました .そうしますとテロメレー
遺伝子の発現があり,ないものはないということが
ス活性があるものは非常にきれいに TERT
わかったわけです.このことは,テロメレースの活性がない細胞では触媒サブユニットの TER
T
の発現がないために活性がないのであり,もしかするとその他の RNAや必要な要素はテロメ
レース活性の有無に関係なしに存在している可能性が示唆されます.そのことを検証するため
に,テロメレース活性を持っていない 3種類の正常な体細胞の線維芽細胞に TERTの遺伝子導入
をして無理やり発現させてやりますと,テロメレースが発現しました.少なくても線維芽細胞
でテロメレースがない理由は, RNAサブユニットがもともとあって触媒サブユニットが作られ
ていないためにできないのだということがわかったわけです.
次に広島大学の第二内科と広島大学の病理との共同研究のお話をします.広島大学の先生た
ちは臨床献体で肝臓の組織をたくさん持っていらっしゃいます.肝硬変や肝炎また肝癌の検体
についてテロメレース活性の有無,触媒サブユニット遺伝子の発現部分を比較して頂きまし
た.非癌部組織では全てテロメレース活性はありませんでしたが,肝癌の組織では 6割ほど強
いテロメレース活性がありました.ここでも正常な体細胞ではテロメレースがないのに対し
て,癌化するとテロメレースがでてくるという結果が得られたのです.そのような組織につい
て触媒サブユニットの発現を見ると,それは正確にテロメレース活性の強さと相関しておりま
27
テロメレースノックアウトマウスと癌
した.正常肝細胞が肝癌になる過程におきましでも TERT
の発現が誘導されてテロメレースが
活性化されるものと示唆されたわけです.
正常な体細胞はテロメレース活性がないわけですが,線維芽細胞に行ったように,もし体細
胞へTERT
遺伝子を導入し,これを強制発現させてやると,テロメアが伸びた結果老化時計が
リセットされるのではないかということが期待されます.一年以上前ですが,アメリカのベン
チャーカンパニーで、あるジ、エロンの人達がこの実験を実際にやりまして,その通りの結果が得
られました.すなわち, TERT
遺伝子を発現しておらずテロメレース活性を持たないために有
遺伝子を常
限回の細胞増殖しかできないヒト正常線維芽細胞に,遺伝子導入法によって TERT
に発現させると,テロメレースが陽性となり,細胞分裂を行ってもテロメアの短小化が起こら
なくなり,細胞は細胞老化を示すことなくず、っと増殖できることが分かつたのです.無限に増
殖するヒト由来の細胞はこれまでにたくさん知られていますが,それらは全て癌化した細胞で
した.大事な点は,この TERT
遺伝子を導入した細胞は無限に増殖しているが癌化の傾向はな
い,すなわち正常と同じ性質を持って無限に増殖をしていることです.このような細胞は,も
し本当に安全な細胞であることが保証できれば再生医学の手段として非常に重要なものになる
と考えられます.たとえば,将来的には, TERT
遺伝子を遺伝子導入して不死化した正常血管
内皮細胞を用いることで動脈硬化を遅らせることができるかもしれません.ただテロメレース
はいわゆる古典的なヘイフリック限界には効くと考えられますが,全ての再生組織の老化が本
当にヘイフリック限界で説明できるかどうかはまだ証明されていません.さらに個体の老化で
は,非再生組織の老化,すなわち酸化ストレスの蓄積がもう一つの重要な柱ですが,テロメ
レースはそれに対しての何の影響も効力もありません.テロメレースは個体レベルで考えたと
きに不老長寿の薬ではなく,その再生組織の力をある程度強める可能性はあっても決して個体
の寿命をどんどんのばすとは考えられません.
次に,私たちが作成をしましたテロメレースノックアウトマウスについてお話をしたいと思
います.テロメレースには RNA鋳型と触媒サブユニットの二つが重要だと言いました. RNA
鋳
e
P
i
n
h
oに
型のテロメレースノックアウトマウスはアメリカで3年ほど前にハーバード大学の D
よって報告され,非常に精力的に解析されています.そこで,私たちは,東京大学医学部の石
橋俊博士との共同研究により,もうひとつの活性に必須な成分である触媒サブユニット TERT
のノックアウトマウスを作成することにいたしました.その結果得られた T
E
R
T
+
/
+,+人千マウ
スについて,胎児由来線維芽細胞,肝臓,精巣についてテロメレース活性を測定しますと,十/+
では三種類の細胞全てについて非常に強い活性があります.それが+/ーで、は少し弱まり,ー/ーでは
全く活性がないということがわかりました (
P
i
g
.1
4
)
. このことは先程の TERT
が,生体が持っ
ている唯一の触媒サブユニットであることを正式に証明したものであり,我々のノックアウト
マウスが期待通り動いているということをも示しています.
ヒトの老化の少なくとも一部にはテロメアの短小化が重要で、あると 申しましたが,最初に触
れましたとおり老化のメカニズムというのはヒトの中でもそれぞれ違いますし,またヒトとマ
ウスの間では大きく違います.その一つの例として実験に用いられる純系マウスの老化にはテ
ロメアは何の関係もありません.ヒトのテロメアの長さは1O ~20 キロ ベースで一生の 聞には十
分短くなる長さですが,実験動物である純系のマウスのテロメアの長さは 50~100 キロベース
と非常に長く,彼らの寿命である 3年ではほとんど短くならないのです.この意味でもマウス
を人間の老化モデルとして使う危うさが指摘できると思います.従って,純系マウスではテロ
2
8
(
財)
安評セ ンタ ー研究所報
第1
0
巻
2000
・
1
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TelomeraseAc
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ー +ーし +ー+ート+ート剛圃
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・
・
・
・
・
・
・
••
••••
(
F
i
g
_14)
メアの短小化に伴う細胞老化が引き起こす病態を再現することはできません.しかし,実験動
物は非常に有用なもので人間ではできないことが数々出来ますので,このようなマウスをどう
にかして人間の老化が再現できるようにしたい,すなわち,ヒューマナイズすることを考える
必要があります.
TERTノックアウトマウスイーは,テロメレース活性を全然持っていませんが, 2,3世代では
テロメア長が長いため特に症状は出てきません.しかし,チのまま子供を次々と作っていくと
ー
/ のマウスは一見正常ですが,野性の
第5,第6世代でようやく症状が出てきます .第5世代のー
マウスに比べると体が小さ く,何らかの形で細胞の分裂が少しおかしくなっていることが示唆
されます.外見でも十のマウスは白髪ができてきたり,皮膚が抜けて毛が脆弱でありました.
ここからは,浜松医大の椙村先生,安評センターの岩田先生,飯田麻里さんと一緒にやっ
た実験ですが,組織を切 って検討をしてみました .精巣の横断面を 5つ示します. 3
つがチの第
5世代のマウス, 2つが同じ遺伝的なパ ックグラウ ン ドをもっ+
/
+のマウスです.先ほどの説明
から容易に想像できるように,テロメアがどれだけ短くなるかについては細胞や染色体もたく
さんありますので非常に確率論的に短くなるものもあれば,そうでないものもあります.その
世代でも 2匹のマウスの精巣は比較的形も大きさも
事を反映していると思うのですが,同じ第5
野性と変わりませんでした.ところが3番目は非常に小さく明らかに萎縮がわかりました. 3番
目の小さか った精巣の強拡大の写真です.精細管は拡張していて,真ん中に精子が見られない
ような管がたくさんあります.さらに顕著なのは,精子を作る細胞がほとんどなく,かわりに
脂肪に置き換わっていることです.ですから, 5世代目のテロメレースノックアウトマウスに
おいてテロメア長を失 ったものは,生殖細胞もついにテロメアが尽き果ててそれ以上分裂でき
なくなり,萎縮を示す事が明らかと成りました.また正常に見えるものも顕微鏡レベルで見る
と萎縮があることがわかりました.さらに,これを強拡大してみると萎縮して代わりに脂肪変
性しているようなものが強 く,また本来ライデイツヒ細胞が埋めるべきところになにかの細胞
が肥大していました.これがラ イデイツ ヒ細胞そのものであるか今後検討していかなくてはな
らないのですが,一つ考えられる面白い仮説は,ライデイツヒ細胞であるとするとアンドロ
ジェンを分泌して分化 させようとするのですが,ここにタ ーゲットの細胞がいない場合には
フィードパッ クが効いて,これをも っともっと作ろうとがんばるのかもしれません.この
フィードパック 機構の結果,このような細胞が非常に密になって肥大している可能性がありま
す.岩田先生は,精細管の真ん中に細胞の集塊があって,これがどういったものに由来する
2
9
テロメレースノックアウトマウスと癌
のかまだ良く分からない
病理的に非常に興味があると述べられていました.次に卵巣につい
て調べますと,コントロールの卵巣では,中に卵が入っている卵胞と黄体が存在します.とこ
ろがノックアウトマウスの卵巣は卵胞が非常に貧弱で,少ししかありません.その他のほとん
どの卵巣部分は,おそらく体細胞と思われる何かわからない細胞でほとんどが置き換わってい
てさらに大きさが小さくなっています.このように第5世代のマウスにおきましては精巣,卵
巣が萎縮して第6世代は不妊になります.以上がテロメレースノックアウトマウスに関しまし
てまとめたものであります.以上のように, TERTノ ックアウ トマウス同士の交配を行って第
4,5世代になりますと,マウスのテロメア長はヒトのテロメアの長さと同じようなところまで
短くなります.そういったマウスは人間と同じように一生を通じてどんどんテロメアが短く
なって人間と同じような老化を示すだろうと期待されます.ですからテロメレースノックアウ
世代を使うことによって,ヒトの老化の一部を模倣するような実験モデル生
トマウスの第4,5
物として有用な株となるかもしません.
このように,テロメアは細胞老化を引き起こしたり,がん化に貢献したりと悪いことばかり
しているように見えます.それでは,そもそも私たち真核生物はなぜ、線状染色体をもち,テロ
メアがあるのでしょうか.といいますのは,原核生物であるバクテリアの類は環状染色体をも
つためにテロメアを持っていません. したがって,ノ fクテリアはテロメアを持っていないため
に少な くとも末端複製問題による増殖の不都合はおこらないといえます.いろいろなバクテリ
アについて染色体の形状を調べた研究者がいまして,ほとんどの原核生物は環状染色体を持ち
テロメアを持っていないことが分かりました.放線菌などでは,線状染色体をもっているので
すが,進化学的に隣接した種を見ると,やはり環状であります.ということは,放線菌が線状
染色体を持っているのは,おそら く環状染色体をもっ子孫の生物種から現今の放線菌に枝分か
れしたあと固有に線状化したと思われます.すなわち,バクテリアというものは生命が始まっ
て以来,環状のままゲノムを維持していたと考えられます.ここで問題は,線状染色体にはテ
ロメレースが必要です.それからテロメアを守るために蛋白質が必要です.それでは,なぜ、
我々はこのようなテロメレースやテロメア蛋白質などの余分なエネルギーを使ってまで線状染
色体を維持していくのか?なにかテロメアを持っていることの恩恵があるのか?というのが次
の問題です.
この問題についてお話する前に,酵母についてご紹介します.酵母も真核生物ですので線状
染色体を持ち,テロメアを持っています.テロメア部分をズームアップしますとテロメアの維
持に必要なテロメレースやテロメア結合蛋白質があります.私たちは ATMと呼ばれている遺伝
子がテロメアの維持に必須だということを発見しました. ATMとは, A
t
a
x
i
a
-T
e
l
a
n
g
i
e
c
t
a
s
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M
u
t
a
t
e
dといい,毛細血管拡張性運動失調症というヒトの劣性遺伝病の原因遺伝子としてクロー
ニングされたものです.この病気の特徴は小脳失調や血管拡張があるのですが,生化学的に重
要なのは X線に非常に敏感であり, DNA
組み換えがおこりやすい,染色体が不安定だというこ
とがあります.この遺伝子に注目しましたのは,臨床的にこの遺伝病の患者さんではテロメア
の短小化が早いという報告があったからです.このような ATMの相同遺伝子が酵母にありまし
たので,酵母でも同じようなことが起こるのかを調べました.酵母は ATMに相当する遺伝子を
2
1
固持っていまして, t
e
l
1
とr
a
d
3と言いますが,この 2つの遺伝子をそれぞれ破壊した場合にはテ
ロメアの長さは正常では少しずつ短 くなりますけれども,遺伝子を両方破壊するとほとんどな
くなってしまうことがわかりました.テロメアを失った染色体は,どういう運命をたどるので
30
(財)安評センタ ー 研 究 所 報 第 1
0
巻
2
0
0
0
しょうか.これに関しては,半世紀前にアメリカの女性ノーベル賞学者パーパラ・マックリン
B
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i
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g
e
-B
r
e
a
k
a
g
eF
u
s
i
o
n)
C
y
c
l
eと呼ばれるモデルが有名です (
F
i
g
.1
5
).テロメ
トが提唱した BBF(
アの大きな機能の一つに,染色体どうしの融合を防ぐということがあります.今,二つのテロ
メア機能を失った染色体がありますと,この 2つは末端同士でくっついて一つの染色体になっ
てしまいます.この状態の染色体を 2つの染色体に由来してセントロメアが2つあることからダ
イセントリック染色体といいますが,これが分裂期に入りますと,染色体を娘細胞に分配しよ
うとする紡錘体が二つのセントロメアにくっつき,一つの染色体を互いに反対方向にヲ │
っ張ろ
うとします.その結果,綱引きが生じて物理的なテンションがかかり, 別のところで切れてし
まうという悪循環サイクルとなり,染色体はぐちゃぐちゃになり,最終的になくなってしまう
と彼女は提唱しました. t
e
l
1
とr
a
d
3を遺伝子破壊されテロメア配列を失った酵母株では,分裂し
ている時に綱引きが起きていることを示すブリッジを高頻度で観察できました (
F
i
g
.1
6)
. よっ
て明らかにこの酵母は分裂に異常があると考えられます.実際に顕微鏡で酵母のコロニーを見
たのですが,野性のものは丸いコロニーが育っていたのに比べ,テロメアを失 ったも のはギザ
ギザのコロニ ーになっていました.いずれにせよテロメアを失った細胞は非常に惨めで、あるこ
とがわかりました.
BBF(
B
r
i
d
g
e
.
B
r
e
a
k
a
ge
-Fusion)Cycle
DelayedChromosomeSegregationi
nDerivative
d
I
C
.
n
l
n
ccnfO~
ノ
(
Fi
g.1
6)
(
F
ig
.15)
ところが学生がこのよ うな ギザギザ細胞の中から 数百分のーの割合で,一見野性型と同じよ
うな恰好ですくすくと育つ株が出てくるという面白い発見をしました.これを仮に派生株と呼
ぶことにします.実際すくすく育ちはじめた派生株のテロメアを見てみますと,親株同様依然
としてテロメア DNA
が全くないことがわかりました.とすると真核生物である酵母は線状染色
体をもっているはずですが この派生株はテロメア配列なしにす くすく と育つことがわかりま
した.それでは,何が起こ っているので しょう?最終的に分かったことは,派生株の染色体は
環状化していたのです.野性株の染色体では,棒状の 3つの染色体を持っています. しかし,
派生株の場合は一個の酵母の中にドーナッツ状の染色体が3つ存在しました (
F
i
g
.1
7).すなわ
ちこの株は,真核生物として初めて 3つの染色体がリングで維持された例であります.このよ
うな株がすくすくと育つわけですから,リング染色体は少なくとも普通の増殖にはあまり悪影
響を及ぼさないと言えます.また我々真核生物が線状ゲノムを維持するのは,普通の分子とは
違うところに理由があるに違いないということが示唆されました.
真核生物と原核生物をわけるもう一つの特徴は
真核生物 は減数分裂を伴う有性生殖をする
3
1
テロメレース ノックアウ トマウスと癌
ということです.そこで私たちはリング染色体をもっ株が有性生殖するかどうかを検討しまし
た.まず,おさらいとして有性生殖とはどのようなものかについてお話したいと思います.私
たちの体はお父さんの精子由来,お母さんの卵子由来の染色体が 1
本ずつ合わさって,同じタ
イフ。の染色体について父方母方の 2本を持っています.これは相同染色体といいます.酵母も
生意気にも性をもっていまして hプラスと hマイナスといいますが
この 2つの細胞が集まりま
すと,最初キスをします.次に合体して核がl
個になります.そして減数分裂の過程を経て4つ
の子供(胞子)を作ります.これが酵母の有性生殖過程です. DNAを見てみます と,正常型の4
つの子供が見られます.しかし,先ほどのリングの染色体を持った酵母を接合させますと赤
ちゃんは非常に気の毒な形で生まれます (
F
i
g
.1
8).DNAの量が多かったり少なかったり,数が
不揃いだったり,本来あるべきところになかったり,実際育ててみるとこういうものは生きら
れないことがわかりました.このことは
減数分裂するためには線状染色体でなければいけな
いことを強く示唆します.このことから私たち真核生物が線状染色体をあまねくもっている理
由は,私たちが減数分裂を伴った有性生殖をするからなのです.我々のように複雑な細胞体制
をもっていると有性生殖がどうしても必要で、,そのためにこそ線状染色体が必要なのです.
CircularChromosomeFormationi
nD
e
r
i
v
a
t
i
v
eCells
Wi
ldType
D
e
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i
v
a
t
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AberranlSpo
r
eForr
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nTheDer
i
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i
v
e
A Wi
l
dI
ype
B.Oc
i
rv
a
l
i
v
c
咽
E-
込│/
5μm
5μm
(
F
i
g
.1
7)
(
F
i
g
.
1
8)
それではどうしてリング染色体は有性生殖ができないのかと,そのメカニズムについて調べ
ました.有性分裂をもう少し詳細に見ますと,我々の体にはお父さんとお母さんの染色体が
あってそれがバラバラに存在しています.ところが減数分裂をしそうになると,お父さんとお
母さんのそれぞれの染色体はどういうわけか相手を見つけてベアリングをし,その間で遺伝的
組み換えを行い,それが 1
本ずつわかれて精子と卵子が出来るのです (
F
i
g
.1
9
)
. ヒトの場合,
染色体が46本もあるのですが, 1
番染色体は 1
番と, 2番は 2番と,というように正しいパート
ナーを見つけてベアリングします.これはどのようにすればできるでしょうか?例えば,自分
がいろいろな長さの染色体を並べようと思った場合どうしますか?簡単な方法は,染色体をピ
ンと伸ばしてあげて長さの同じものをそろえてあげれば良いわけです (
F
i
g
.2
0
)
. それでは,細
胞はどうやってこの複雑な課程を克服しているのでしょうか?すなわち, 46本の長さ の違う染
色体があってそれが正しいパートナーを見つけるにはどうしたらよいか?これについて最近,
兵庫県にある郵政省の逓信総合研究所の平岡泰博士が非常に魅力的な仮説を発表しました (
F
i
g
.
2
1
).先ほどのベアリングする過程でバラバラにあった染色体が,お尻の部分であるテロメア
をつかんで一点に集中し,その部分を左右に激しく振ります.そうするとだんだんと染色体が
3
2
(財)安評センター研究所報
合 83
¥ρf
SexualReproductionI
n
v
o
l
v
e
s
eiosis
PhysicalExchangeso
fGeneticInformation:M
Telomeresse問
第1
0
巻
2000
asaS
l
a
n
d
a
r
dP
O
l
n
tt
oC
a
l
i
b悶 1
0I
h
oChromosomeL
e
n
g
l
t
咽
一 静
B
u
t加 W 伺 n
白 F噌 岨 踊
(
Fig.20)
(
F
i
g.19)
まとまってきて近くにあるものどうしが正しいものどうしになると認識しやすくなります.
実際に平岡先生は先ほどの酵母の減数分裂過程で次の現象を発見しました.すなわちこの時
期,テロメアが集まって全部の染色体がル ープアウトしています.この時期が数時間かかるの
ですが,その間酵母は左右に激しい振り子運動をし, DNAはそれについていってやはり左右に
激しく振られます.ホーステ ール運動と呼ばれているこの間に最初はバラバラにあったル ープ
Fi
g.
2
2
).私たちも正常
がぱらけてきて 同 じような染色体が同じ ような位置に到達するのです (
細胞で実際にホ ーステール運動を調べてみました .染色体に 3つのプロー ブ(テロメアに近いプ
ローブ,テロメアから離れたプロープ,さらに離れてセントロメアに近いプロープ)をそれぞ
れくっつけます.さきほど,一点に集中するといいましたがプローブの場所によってループア
ウ トする位置も異なっています.大事な事は,酵母もお父さんとお母さんの2つの染色体を持っ
ていますからシグナルとしては 2点見えるはずなのに 1
点しか見えていません.すなわち,この
時点でお父さんとお母さんはベアリングしているわけです.そうすると,私達が調べた環状染
色体は束ねるための支点となるような橋がありませんので,このベアリング過程に異常がある
のではないかと考えました.セン トロメア部分をプロープとすると,本来テロメアが,あるべ
きところからル ープアウトして 1点で見えるはずですが, 2点でい続ける.すなわちお父さんと
お母さんがベアをつ くっ ていないということになります.実際にペアに異常があるわけです.
次にテロメアを見ると,やはりベアリングしていないことがわかりま した.このことは,環状
染色体はベアリングするための指標となるおしりを捕まえることができず, よって減数分裂は
一
ハ
一
小
山
︽
小
︽
一
F
i
s
s
i
o
nYeastShowsHo
r
s
e
t
a
ilMovemento
fNuc
l
eusdur
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i
o
s
i
s
S
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g
sw
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l
lbea
l
i
g
n
ed
京→
許→
。
言執
GraspA
I
IS
l
r
i
n
gEnds.andShakoThem
一
(
Fi
g.2
1)
(
F
i
g.22)
3
3
テロメレースノックアウトマウスと癌
進まず,結果子供ができないということを示しています.
私が申し上げたいのは,私たちが有性生殖をすることと線状の染色体あるいはテロメアを
持っていることは,実は一つの懇意の表裏であったのです.我々が癌になったり老化する原因
の一つにテロメアの短小化があるとすると,それは,我々が有性生殖をして子孫を残すために
あるのだというように解釈することが出来ます.しかし,細菌は環状というチープなストラテ
ジーで染色体を維持しているかわり,有性生殖はできない.またそういった細菌の欠点は何か
というと,たとえば,私達の体をつくるためには非常にたくさんの遺伝子が合わさってできて
います. 目などは非常に複雑な遺伝子を持っています.そのような構造物をつくるためにはた
くさんの遺伝子をつ くらなければなり ません.今, AとBという遺伝子がある機能を持つため
に必要ですが, AやB単独では何も意味がないとします.原核生物の場合,複雑な機能を持つ
ためにはまずAというものがたまたま偶然にできて,次にこの子孫にたまたま Bというものが
偶然にできるというように偶然を2回待たなくてはなりません.これは非常に稀にしか起こら
ないと思われます.なぜなら Aが1つできただけではその集団にとって利点はなく,その後増殖
することは期待できないからです.ところが真核生物では有性生殖ができますのでAができて
Bができれば, AとBが合体して有性生殖を行い, ABという子孫をつ くることができるのです.
よって AとBという 2つの遺伝子により,複雑な構造が簡単にできるのです.これが有性生殖の
意味なのですが,こういうことはテロメアがあって初めて可能なのです.まとめますと,テロ
メアをもっている真核生物は老化や癌化にかかりやすいわけですが,それと代替えに複雑な体
制を組み立てていろいろな環境に適応できることが言えます.ところが,原核生物では,環状
染色体なのでいつまでたっても単細胞の簡単な体制しかできないということがわかります.
本日,前半のノックアウトマウスについての話は,私の研究室に所属する非常に優秀な大学
院学生である中国の留学生,震動梅が行ったもので,ノックアウトマウスの作成には私の同
級生である東京大学第 3内科の石橋俊博士との協力です.また病理学的な解析には安評セン
ターの岩田聖先生,飯田麻里さん,浜松医科大学の椙村春彦先生にご協力いただきました.
後半の酵母についての話は,私のポスドクである内藤拓が主な仕事をしました.
どうもご静聴有難うございました.
3
4
(財)安評センタ ー研 究 所 報 第9
巻
1
9
99
l
l
. 原著論文
東海畜産学会報,第9巻
, 1号
, 16,
1
998より転載
動物試験か ら得 られる定量 データの適切な統計処理法の選択
小林克己
(財)食品農医薬品安全性評価セ ンタ ー
浜松医科大学公衆衛生学教室
[はじめに]
動物試験を扱うものにとって最終判定の一助 を担 う統計処理の選択 は
, 設 定 した群数,群構
成お よび試験責任者の判 断基準に よって理論的 に手法が選択される .こ れら統計手法の選択に
ついて説明したい .
[告検定法の解説 1
1
.パラメトリックおよびノンパラメトリック検定
パラメトリック検定は分布を利用した検定で,標準偏差などの表示ができる . ノンパラメ ト
リック検定は分布を 利用せず各定量値を大きさ に よって順位化 し,その順位 の差を検定する .
したがって,平均順 位などが表示できる .下記 に各パラメ トリ ックに 対応す るノンパラメ ト
リック検定を示した.
設定群数
二群のみ
多群 (
3
群以上)
パラメ ト
リ ック検定
St
u
d
e
n
t,
¥
OAspi
nW巴l
c
h,
Co
ch
r
a
nなと守の t
検定
。
分散分析 (A
NOVA)
Dunn
e
t
tの多重比較検定
一般的な多重比較検定
¥
OTukeyの多重範囲検定法(群の大きさ 同一)
Tu
keyK
r
a
m巴r
の多重範囲検(群の大きさ異)
Dunc
anの多重範囲検定法
Sche
f
f
eの多重比較検定
¥
OWilliamsの多重比較検定(用量相関が前提)
。
。
ノンパラメ トリック検定 1)
Mann-Whi
t
n
e
yのU検定
Wilcoxonの検定
Krusk
a
l
Wa
l
l
i
sの順位検定
。
Dunne
t
t型ノンパラ順位検定2)
S
t
e
e
lのノンパラ 順位検定
Tukey型ノンパラ 順位検定2)
¥
OSteel-Dwa
s
s'
t
es
t
Dunc
a
n型ノンパラ 順位検定2)
Sche
f
f
e型ノンパラ順位検定2)
S
h
i
r
l
eyW
i
l
l
i
a
ms
の多重比較検定
J
onckh
田 r
eの傾向検定
1
) 順位(和)検定 (
r
a
nkeds
umt
e
st
)と呼ぶ.
2
)
日本でみの使用,その他は世界的に使用されている .
0推奨できる手法(後述).
35
動物試験から得られる定量データの適切な統計処理法の選択
2
.パ ラ メ ト リ ッ ク 検 定
2
.
1
.t
一検定(二群聞の比較)
t
一検定は一般的に分散比の大きさおよび各群の動物数によって三種類が常用されている. し
9
9
引
5
)
で土
l
はC
o
ω
c
耐
h
1
首
r
加
a
nは検出力が低いので
かし,最近(仕1
専門家によつて指摘されている. したがつて ,等分散の場合土
l
はS
t
凶u
d
白e
削
n
I
t,不等分散の場合は
As
叩
p
i
凶
n
.
1
.S
t
u
d
e
n
tのt 検定
2
.1
両群の分布がほぼ同様な場合のみに実施する検定である.すなわち,両群の分散を 算出し,
分散比 (分散の小さい群を分母に)をF表と比較し 同様の分散か否かを有意水準5%で検定する.
もし同様の分布を示した (
p
>
0
.
0
5,有意差なし)場合は S
t
u
d
e
n
tのt-検定を用いて吟味する.
S
t
u
d
e
n
tはG
o
s
s
e
tのペンネームである.
2
.
1
.2
.A
s
p
i
nW
e
l
c
hのt
寸食定
両群の分布が異なるが,標本数が同一(最近では異なっていても実施する )の場合に実施する
検定である .各群の例数がほぼ等しい場合には S
t
u
d
巴n
tのt
一検定とほぼ一致する.最近では,不
等分散性を考慮して,はじめからこの手法を応用している例が多い . したがって,二群間の手
法では,この手法で分析するのが最良と思える.
2
.
1
.3
.C
o
c
h
r
a
nのt
検定
両群の分布および標本数が異なる場合に実施する検定である.我が国では最近検出力が低い
理由として使用されなくなりつつあるが,諸外国では使用されている.
2
.
2
.一元配置の分散分析 (ANOVA,One-wayA
n
a
l
y
s
i
s0
1V
a
r
i
a
n
c
e
)
三群以上の設定の場合に用いる.一般的には,この検定で有意差が検出された場合,どこの
群聞に差が存在するのかは不明である.この手法は特に農学分野を含めた畜産獣医関係の論文
)全平方和の算出 2)
群間平方和の算出 3)
誤差項の平方和を 計算,全平方和
に多い.その計算は 1
一群間平方和 4)それぞれの平方和を自由度で割って分散を算出 5)
分散比を算出してF-分布表の
値と比較して有意差を判定する.その他に二元(用量と測定時期)および三元配置(用量,測定
時期,性差)の分散分析も常用されている. したがって,有意差が認められれば,どこの群聞
に有意差があるかは下記のい くつかの検定法で吟味する.
2
.
3
.D
u
n
n
e
t
tの多重比較検定
-対照群間との比較のみに使用する.
-各群の分散がほぼ等しく標本数も 同一の場合.
-分散分析表の誤差項の標準誤差を用いて対照群と各用量群聞の差を吟味する.
.通常5および 1%水準で判定する .
標本数が一定の場合に応用すると言われているが,極端な標本数の減少がない場合は使用で
きるといわれている(小林克己, 1
9
8
3)
.現在では,標本数が変化しても対応できるように“確率
ダネッ ト"(パラ・ノンパラとも)としてプログラミング化 されている(佐野正樹,岡山佳宏,
1
9
9
0およびY
o
s
h
i
d
a,1
9
8
8
)
. 多重範囲検定法の多重とは単に対照群と各群間との比較という意
味ではなく,全群聞の比較を (
4群設定の場合の組み合わせは 6通りある)意味している.一般的
36
(財)安評センター研究所報
第9巻
1
9
9
9
に Dunnett の多重些藍検定は,対照群との比較といわれている.そして Tukey および~Duncanの多
重皇国検定法は,全群聞の検定法に利用する.
2.
4
.Tukeyの多重範囲検定法
群
平均値
l
2
3
4
5
1
5
.
5
1
"
8
.
0
2b
8
.
7
5b
8
.
9
6b
1
3
.
7
5
"
-全群間の比較に使用する.
-各群の分散がほぼ等しく標本数も同ーの場合.
-分散分析表の誤差項の標準誤差を用いて全群問の平均値の差を吟味す
る.
-通常5および 1%水準で判定する.しかし,一般的には表中は 5%のみの有
意水準で表示している文献が多い.
異符号聞は 5%
水準で有意差を示す.
2
.
5
.Duncanの多重範囲検定法
-全群聞の比較に使用する.
-各群の分散がほぼ等しく標本数が異なる場合.
-分散分析表の誤差項の標準誤差を用いて全群聞の平均値の差を吟味する.
-通常5および 1%水準で判定する.しかし
一般的には表中は 5%のみの有意水準で表示し
ている文献が多い.
外国の毒性試験および関連試験では比較的使用されている.我が国では検出力が低いと
1
9
8
6)によると標本数が同ーまたは同一で、ない
のことで使用されない傾向にある. Gadら(
場合にそれぞれ異なった計算式が与えられている.有意差の表示法はTukeyの検定と同様
である.この検定法は, Tukeyと同じ く対象薬剤を設定した場合に有用と思う.
2
.
6
.Scheffeの多重比較検定
.S
c
h
e
f
f
eの多重比較検定は対比較以外の場合も対象となる.
.各群の分散がほぼ等し く標本数が異なる場合.
-群の大きさが等しい場合は
検出力が少し低くなるといわれている.
.通常5および 1%水準で判定する.
有意差の検出力が低いことから最近ではあまり使用されていない.対照群に対して 40%の
差があっても有意差が検出できない場合もある.
2
.
7
.W
i
l
l
i
a
m
sの多重比較検定
対照群とー薬剤をいくつかの用量に設定し,各群の平均値に用量相関性(対照群に対して用
量群の値が増加あるいは減少)が肉眼的に見られる場合に使用する. Gadらは毒性試験のみに適
用することをW
i
l
l
i
a
m
s(
1
9
7
1,1
9
7
2)は述べているといっている .死亡によって群内動物数が極め
1
9
7
2
)
. したがっ
て変化した (
i
m
p
o
s
eas
e
v
e
rp
e
n
a
l
t
y
)群が存在する場合は適用で、きない (
W
i
l
l
i
a
m
s,
て,各群の大きさが等しいときに用い,等分散性が前提としている. W
i
l
l
i
a
m
sの検定は,対照
群との比較を高用量用量群から低用量群の順に一つず、つ行い,ある用量群で有意差がないと,
それより用量の低い群は自動的に有意差なしとする.したがって,毒性試験では,用量相関性
を前提としている場合が多いので最良と思われる. しかし,我が国ではあまり使用されていない.
37
動物試験から得られる定量データの適切な統計処理法の選択
2
.
8
.多重比較・範囲検定のまとめ
S
c
h
e
f
f
eの多重比較検定は検出力が低い理由に,本検定は対比の組み合わせがDunnett,
Tukey
お よ びDuncanの検定に比較して多いためである(橋本, 1997).
群構成
Tukeyおよび、Duncanの
D
u
n
n
e
t
tの多重比較検定
対照群
低用量群
S
c
h
e
f
f
eの多重比較検定
多重範囲検定
J
J
高用量群
J JJJ~
1
9
9
7)を転載し一部加筆した.
橋本修二 (
各検定による棄却限界値(各分布表中の値
各検定による計算値がこの値より大きい場合は
有意差とする)を下記に示した.二群間のみの検定に用いる t
検定の棄却限界値がもっとも小さ
く,ついで、Dunnett,
Wi
l
1iams,
Duncanおよび、Tuke
yの順になる.この表と上の表を対比すること
によって多群を設定した場合に ,t
検定を使用することの間違いが理解できる. Scheffeの多重
比較検定では有意差の検出力が弱いといわれている割に棄却限界値が小さい理由は,計算法が
そのほかの 3
法と異なりまたF分布表を使用しているためである.
有意水準
棄却限界値
t
t
e
s
tf
o
r2g
r
oup
5%
2
.
1
0
D
u
n
n
e
t
tの多重比較検定
5%
2.
3
0
検定法
W
i
l
l
i
a
m
sの多重比較検定
5%
2
.
5
0
Duncanの多重範囲検定
5%
3.
1
1
Tukeyの多重範囲検定
5%
3
.
8
0
S
c
h
e
f
f
eの多重比較検定
5%
2
.
6
3
群数は 4,一群内標本数は 1
0で両側検定による .
検定手法の選択
単に両者の差は両側検定で
群構成
3
8
強弱の問いかけは片側検定を使用する
二群のみの設定
比較対象
二群問一回のみ
使用統計処理名
対照,低用量,
対照群と各用量群聞のみの差の検定
中用量,高用量
(検定回数は 3回)
対照,低用量,
対照群と各用量群聞のみの差の検定で用量相
中用量,高用量
関性を考慮(検定回数は 3回)
対照,低用量,
対照群と各用量群間および対照薬剤群と各用
Tukeyの多重範囲検定(標本数がほ
中用量,高用量
対照薬剤
量群で各群の標本数がほぼ一定又は異なって
ぼ一定), Duncanの多重範囲検定(標
いる場合(検定回数は 10回)
本数が異なる)
対照,低用量
,
l
対の検定から l
群対2群
,1
群対 1
群対 l
群など
中用量,高用量
任意の組み合わせが可能 (検定回数はかなり
対照薬剤
多い)
A
s
p
i
nW巴l
c
hのt
検定
D
u
n
n
e
t
tの多重比較検定
W
i
l
l
i
a
m
sの多重比検定
S
c
h
e
f
f
eの多重範囲検定
(
財)
安評セ ンタ ー研究所報
第 9巻
1
999
3
.ノンパラメトリ ック検定
3
.
1
.Wilcoxonの順位和検定および‘
Mann-Whitney
のU検定
二群のみの設定による試験の比較手法である .我が国では,一般毒性試験の検査項目では,
この検定法の使用例が少ない (
生殖毒性試験では一部のデータに対して常用されている).この
理由に毒性試験が多群を前提にしているからで ,t検定が不適当とする考えと 同様である. し
かし,この検定法は我が国で常用されている Dunne
t
t
,
Sc
hef
f
eなどの順位和検定に比べて標本数
が3で有意差が検出できることか ら感度が極めてよい.この二つの検定の検出力は 同一である.
3
.
2
.Dunnett
型ノンバラ順位検定
多群聞を設定した場合に用い る.Kr
us
k
al
Wa
l
li
sの順位検定で、
有意差を示した場合に用いる
か
, Kruskal
-Wa
li
sの順位検定を実施せずに,対照群と各群聞に有意差があるか順位を検定(佐
久間昭, 1981)する.
3
.
3
.S
t
e
e
lの順位和検定
NIH
s
)および諸外国で広く使用さ
多群聞を設定した場合に用い る.この検定法は米国保健局 (
れていてる.我が国では極めて少ないが, この検定法は MannWh
i
t
neyのU検定とほぼ同様な検
出力を持つことか ら,今後は使用例が増加すると思う.
3.4.順位和検定に対する注意点
順位和検定を使用する 場合
あ らかじめ一群内の標本数が幾つあれば有意差が検出で、
きるか
把握する必要があ る.各順位和検定で有意差の検出できる群内最低標本数は下記の通りであ
る.MannWh
i
t
n
e
yのU検定を除いては, 多群間検定である.
検 定 法
4群設定
5群設定
S
c
h
e
f
f
et
y
p巴*
22
40
Ho
la
n
d
e
r
Wo
l
f
e
1
9
3
0
T
u
r
k
yt
y
p
e
*
1
8
3
2
Du
nn
巴t
tt
y
p
e
*
1
5
26
W
i
l
c
o
x
o
n
8
1
2
S
t
e
e
lt
y
p
e
Mann-Whi
t
n
e
yUl)
4
6
3
1
)
2群間検定.
*我が国のみ .
上記の順位和検定の中 で国際的に使用されている検定法は, Hola
nde
r
Wol
f
e
,
Wi
l
c
o
xon,
S
t
e
e
l
t
ypeおよび2群間検定の MannWhi
t
neyのU検定で、
ある.
3
9
動物試験から得られる定量デー タの適切な統計処理法の選択
3
.
5
.順 位 和 検 定 の ま と め
-順位を検定していることに留意して考察する.
t
n
e
yのu
検定を使用すること.
・二群のみ η設定の場合は Mann-Whi
-多群検定では検定手法によって低用量群の有意差検出力が極めて低いことから事前に検出
力を確認すること.
-対照群,低用量,中用量および高用量群を設定した試験で,群聞の分布が極めて悪い場合
(
B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定で 1%水準以下で、
有意差を示した場合など)または試験責任者がデー
タの性格上,順位を適用した方がデータを評価する 上で適切と判断した場合は, S
t
e
e
lの検
定を使用する.
-発がん性のメカニズム試験などから得られる面積細胞数などの前例がないものでもある
P
a
r
a
m
e
t
r
i
c
検定で、処理する.
程度分布が良ければ'
a
n
n
Whi
t
n
e
yのU検 定
・発がん性のメカニズム試験などの文献では,これら種々の測定値がi'M
で実施されている理由は, N
o
n
p
a
r
a
m
e
t
r
i
c
検定の方がP
a
r
a
m
e
t
r
i
c
検定に比較して制限が少な
く単に順位に差があることで考察したいためである.
[文献]
Gad,
c
.G.andWeil,S,W.(1986):StatisticsforToxicologists,PrinciplesandMethodsofToxicology.In:
NewYork,
p
5
9
6
7
.
E
d
i
t
i
o
nb
y
.A
.W
a
l
l
a
c
eH
a
y
e
s
.RavenP
r
e
s
s,
橋本修二 (
1
9
9
7
):薬理試験における統計解析の Q&A,日薬理誌, 1
1
0,3
2
5
3
3
2
.
小林克己 (
1
9
8
3
):
D
u
n
n
e
t
tの多重比較検定法について,医薬安全性研究会会報, 1
0,
p
l
l
1
5
.
佐野正樹,岡山佳宏 (
1
9
9
0
):医薬安全研究会会報 32,
p
.
2
1
4
4
.
佐久間昭 (
1
9
8
1
):薬効評価一計画と解析-I,
p232
7,東京大学出版会,東京.
Y
o
s
h
i
d
a,
M.
(
1
9
8
8
):
J
.J
.S
ocComp.S
t
a
,
.
t1
.p.
1
1
11
2
2
.
4
0
(財)安評センター研究所報
第1
0
巻
2
0
0
0
東海畜産学会報,第 10巻
,1
号
,3-16,
1
9
9
9より転載
なぜ、生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか?
両側検定と片側検定の違い・検定結果をどう理解すべきか?
小林克己
(財)食品農医薬品安全性評価センター
動物を用いた試験を実施し,試験結果を考察するにあたって,統計処理はその一助となる.
しかし,統計処理を実施する前に,比較的常用されている用語がどのような意味を持つのか,
余り理解せずに使用してきている場合も多々ある.今回,著者は幾つかの用語について簡単に
解説する.
1
.帰無仮説
一般的に統計処理は,帰無仮説を設定することから始まり,帰無仮設は,全群閉または二つ
の群聞に差がない"という仮説である. 5
%水準で、有意差 (
p三
五0
.
0
5)
があれば帰無仮説を捨て差が
ありと判断する.なぜ帰無仮説を採るのかというと,吉田実 1)は“実際の研究では,母数の推定
も必要で、あるが,それよりも,新しい飼料A1が,慣用の対照飼料A2より優れているかどうかの
判断が必要となるケ ースが多いと述べている .この判断を確率論に基づいて下すのが,統計的
な仮説の検定法である.新飼料A1が良いだ、ろうと考えるからこそ,実験を計画するはずであっ
て,A1がだめだ、と分かつておれば,実験を計画する気にはならないだろう.しかし,統計的な
方法では,まず,飼料A1とA2は同じ飼料価値を持つという仮説を立てる.すなわち, A1>A2と
いう予測に反する, A1=A2という仮説を立てる.そして,データからみて, A1=A2とはいえな
い場合,この仮説を捨てて, A1とA2は同じではないと判断する.このように,統計的な仮説の
検定は,ひとひねりひねった道順をたどるもので,内心は, AI>A2と,思ってい ながら, Al=A2
という仮説を立て,実はそれが誤りで、A1ヰ A2を証明する手順を取る.できれば捨ててしまいた
い仮説, A1=A2を,帰無仮説と呼んでいる"と述べている.
2
.有意差のp値 と は ?
p はp
r
o
b
a
b
i
l
i
t
y(確率)を示す .p孟 0
.
0
5で有意差ありとは,差がないのに誤って 「差あり」とし
てしまう危険率が5%以下を示す.従って
差がないという帰無仮説は危険率5%以下で捨てら
れ,有意差を示したことになる.この有意水準 p値は,あくまでも試験結果を考察する上での
目安であって,算出 された群聞の差の方が重要である .このように統計処理は,算出された差
について検定しているのであるから,群間の差が 10%以上も認められる体重や幾つかの血液検
査値・臓器重量の場合は
この差に注目すべきであり
有意水準は二の次で、あることを付け加
えたい.
有意水準のもうひとつの理解の仕方は,たとえば両群聞の差が7%あり有意差検定の結果5%
水準で有意であったとしよう.この場合
動物,飼料,環境,
実際には難しいが実施した試験と 同様の規模で同じ
管 理 な ど で 再 度 試 験 を 実 施 し た 場 合 , 79
も の 差 が 100田 中 95回 以 上 再 現 さ れ
4
1
なぜ生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか?・両側検定と片側検定の違い・検定結果をどう理解すべきか?
ることを統計学上保証していることを示している.
3
.有意水準値は何%?
有意水準のとり方については, 5%にするか 1%にするかまた 0.
1%にするか,どう決めるかと
いう問題である.一般的には,前述の 3点をとるが,ここで、有意水準値を何%に設定するのが
望ましいのかは,推計学の問題ではなく,人生観・社会観・自然科学の問題である.たとえ同
じ1%水準といっても,それが赤血球数の差が認められるかどうかの場合の危険率と飛行機が
墜落する危険率とでは,おのずから異なることが理解できょう.つまり,危険率を何%にする
かは,仮説が正しいにもかかわらず仮説を捨ててしまうという誤りを犯した時に,こうむる損
害の重大さによって決めるべきである.生物統計解析の中で特に毒性試験分野では,有意水準
値の境界をここ半世紀のあいだ国際的に 5%水準としている.
4
.なぜ生物試験では 5%の危険率を採用するのか?
①生物統計が育てられた農学の領域では,大学を出て 20年くらいは現役で実務に就く.種子
を蒔き収穫を調べるという試験では, 1年単位である.そこで長い研究生活のうち, 1回位の言
い過ぎは,人の常として許してよかろう. 20回に l回ということで 5%の線が出た.
②八百長賭博の心理的な研究から,そうざらには無いという基準がおおよそ 5%になる.
③碁でもテニスでもよいが,ほぼ互角と思える相手と何回か勝負し,続けて負けたとする .
このとき何回続けて負けたら相手の方が強いと認めるだろうか.人の性格にもよるが, 3回で
認める人は少ないだろう. 3回ぐらいなら,互角の相手に続けて負けることが珍しくない.そ
れが4回続けて負けたとなると大抵の人は弱気になるに違いない.更に5回となるとどうであろ
うか, 5回続けて負けたら,互角という帰無仮説を棄却して,相手が強いことを認めるのが常
識的な判断であろう .
相手が互角の時に 1回負ける確率は l
β である. 5回続けて負ける確率は (
1
β)
5=0.032,すなわ
ち3%程度である.ということは,
1
5回続けて負けたら,相手が強いと認める Jという判断基準
では,本当は互角なのに相手が強いと判断する確率.すなわち,第一種の過誤の確率が5%程
度はあることになる.
2回続けて負ける確率は, (
1
/
2)
2=25%,3回続けて負ける確率は, (
1
/
2)
3=12.5%
4回続けて負ける確率は, (
1
/
2)
4=6.3%,5回続けて負ける確率は, (
1
/
2)
5=3.2%
しかし,最近で、は B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定を 1
%水準で吟味した文献2
)が少しではあるが報告され
ている. しかし,生物に対する試験は,ここ 50年間 5%水準で、国際的に容認されてきたことか
ら,私はこの 5%有意水準は崩したくないと考えている.
5.5%水準の棄却限界値は,以下 (p孟 0
.
0
5
)または未満 (p<
0.05)のどちらを基準にして判定
するのか?
この決まりはない,試験結果を判断する責任者が判断すればよい.各検定法の分布表の値も
算出者によってその桁数は, 3から 7
桁と異なる.これは概して数学者の書いた文献はその桁が
大きく,生物学者などはそれが小さい.以下または未満かどちらが多く使用されているか,幾
つかの動物試験に対して調査したところ,内外を問わず両者に差はないようである.著者ら
は,いまだにこの棄却限界値と同一な計算値を得たことはない.一般的には, 5%以下で判定
.
0
5と表示をした方がよいと思う.
したという場面が多い. したがって ,p 孟 0
4
2
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻
2000
6
.両側検定と片側検定のどちらを選ぶ
両側検定:①単に群間差があるかどうかの 問いかけの場合
②群聞の差の正負が事前に想定できない場合
③ 試 験 責任 者 が 正負の 両方向同時の結果を望む場合
片 側 検 定 :①強弱を扱う問 いかけの場合
② 群 聞の差の正負が事前に想定できる場合
③ 試 験 責任 者 が一 方向のみの重要性を指摘す る場合
したが って,毒性試験では検出力を大きくすること(有意差が出やすい)また,薬理学的に毒
性の方向に多少の知見を得ていることが多いことや期待は,大小どちらかを願っていることが
多い ことから,可能な限り片側検定を推奨したい.これらの問題点を少しでも解決するために
文献および実際の毒性試験から得られたデータから考えたい.また多くの文献はどちらの検定
で実施したかを明記していないものが極めて多い .
7
.両側検定および片側検定で実施した場合の有意差検出の差異
-検定および、
D
u
n
n
e
t
t
検定によって
幾つかの定量値を 2800回t
それぞれ片側検定および両側検
定による有意差検出率を調査した結果3), 両側 検 定 による有意差検出数は少なく,片側検定の
それに比較して 85%前後を示した.
8
.検定結果をどう理解すべきか
統計学的結果に対して
生物・医学・病理学・公衆衛生学的(分野によってここの項は変わ
る)結果の両者が一致すれば,算出された群間差は,自信を持って世に問うことができる . 試
験および調査結果から得られる生物学的結果と統計学的結果の組み合わせによって,表 lに示
した知く結論が導かれる 4)
表1
. 生物学と統計学的結果の組み合わせによる解釈
生物学的有意差
統計学的結果
意味がある
有意である
意味がある
有意でない
意味がない
有意である
意味がない
有意で、ない
角
ヰ
釈
得られた知見すなわち意味があるを採用する
得られた知見すなわち意味があるを採用するま
たは標本数を増やして再度検定を実施する*
得られた知見は捨てる(始めから統計処理は不要
である)
得られた知見は捨てる(始めから統計処理は不要
である)
この場合の判 断は難しいが著者らは生物学的有意差を支持する .
k
以上のように統計処理は,あくまで試験・調査を実施した責任者が群間差を把握するため
の
, 一つの 指標であ る.決 して統計処理の結果を 生 物 学有 意 差 に 優 先 してはいけない.
この理由を説明する例として
ある薬物を 1
0匹のネズミに投与した結果, 3匹が死亡した.
これを統計処理した場合 , 表2の如 くとなる.
4
3
なぜ生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか?・両側検定と片側検定の違い・検定結果をどう理解すべ きかワ
表 2 カイニ乗検定結果の一例
生存動物数│供試動物数
w
、
“
内
一
口
7一
日リペ今
m m 一却
1
山
死亡動物数
F
i
s
h
e
rの直接確率検定で、検定した場合有意差は,認められない.統計学的に 3匹のネズミの死
亡は意味がないと結論されるが, 30%の死亡は,誰が見ても薬剤の影響と認められよう.この
i
s
h
e
r
およびカイ 二乗検定の 5%水準で有意差を示す
場合は,統計処理の応用は不適当である. F
/
1
0に対して 4
/
1
0である.ちなみに有意水準値 p は
, F
i
s
h
e
rの直接確率検定が4.3%で、
動物数は, 0
Y
a
t
e'
s
の補正処理)が2.8%である.
カイ二乗検定 (
日開文献1
1
) 吉田
実:畜産を中心とする実験計画法, p
p53づ4,養賢堂,東京 (
1
9
8
0
)
.
2
幻
)M
耐
凶
I
s
泊
s
l
剥
h
i
k
a
削
w
a
,
A
.e
tα
叫
d
1
.
:R巴p
戸
明r
仙
o
伽
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l
u
山
I
凶即
C
t
肘
i
討
V巴げ
To
】
x
i
c
i
Sc
制
i,22,2
0
7
2
1
7
(
1
9
9
7
)
3
) 小林克己:実験動物を用いた定量データの有意差検定における両側検定と片側検定の比較.
6(
1
9
9
6).
東海畜産学会報 7,1
昨 u
.
a
c
.
j
4
) AOK1(1997):a
o
k
i
@
s
i
.
g
u
n
r
r
4
4
∞
(
財)安評センター研究所報第 10巻 20
J
ouma
lo
fEnvironme
nt
a
lBi
o
l
ogy,
2
0
(
3
),
1
8
9
1
9
3,
1
9
9
9より和訳転載
ヒト,ラ ッ ト,マウス及びイヌなどの種差による
自然発生がんの違い
小林克己 lJ ,萩原孝 I,三浦大作 l, 大 堀 兼 男 三 竹 内 宏 一 人 金 森 雅 夫 九 高崎興平 4
1(
財)食品農医薬品安全性評価セ
ンター
2静岡産業大学, 3浜松医科大学公衆衛生学教室
4東京農業大学
[抄録]
ヒ,
ト ラット,マウス及びイヌなどの種差による自然発生がんの違い :小林克己ほ か.財団法
人食品農医薬品安全性評価センタ一一化学物質のヒトに対する毒性や発がん性の検索試験は,
現在げっ歯類の 中で,特にラッ ト及びマウスを実験動物として使用 している .今回,こ れら試
験の背景データとしてげっ歯類及びイヌの自然発生がん状況 を検索 しヒ トを含めて種差につい
て検討した.ヒ ト,げっ歯類及びイヌのあいだには,原発部位ゃがんに よる死亡率にかなりの
相違のあることが認められた .マウスの肝がん及びラット ・マウスの白血病の有病率は,ヒ ト
に比較して極めて多く,逆に肺や消化器などのがんはヒ トの方が高率で、あった .一方,ヒト と
ほぼ同一な発生率を示したがんは,イヌの 白血病とラッ トとマウスの乳がんであった.今回の
調査の結果,ヒ トに近いがんの発生を示す実験動物は,イヌ,マウス,ラッ トの順 と考えられ
る.またがん原性試験に使用する動物種は,その自然発生がん及び化学物質により誘発される
がんの標的臓器をあらかじめよく検討して種の選択を行う ことが必要であろう.
1.はじめに
化学物質のヒ トに対する安全性や発がん物質の検索試験は,現在げっ歯類の中で,特にラッ
ト及びマウスが実験動物として使用されている .これらの試験は
どれも実験動物に誘発され
る中毒やがんが,ヒ トでの発生を示唆する貴重な予知データとなるという 前提で実施 されてい
る.特に発がん性試験の場合は
対照群と被験物質投与群のがん発生率の比較が,ヒ トに対す
るがん擢患に対する危険度の評価に役立つている .またこれらの試験では,自然発生がんも多
く発生するために,発がん物質の誘発性の判断が難しいこ とがある.今回,これらげっ歯類,
イヌ及びヒ トなど種差の違いによる自然発生がん状況を紹介し,ヒ トへの外挿について考えた
い.またそのほかの実験動物を用いた発がん試験についても
種差を含めて紹介する .
I
I
. 調査方法および解析法
1
.死亡者のがんの原発部位とその性別分布及び受療率の調査
がんによって死亡したヒトの原発部位 ・性別分布は 平成4年度人 口動態社会経済調査報
告書"悪性新生物"・厚生統計協会 1)でまた受療率は,平成5
年度調査"日本の疾病別総患者数
データブ ック "・厚生統計協会2)から引用した.
4
5
なぜ生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか? ・両側検定と片側検定の違い ・検定結果をどう理解すべきか?
2
.げ っ 歯 類 の が ん に よ る 死 亡 率 及 び が ん 有 病 率 の 調 査
財団法人
食品農医薬品安全性評価センターで実施した,がん原性試験(1988-1995)の対照
群 (薬剤無投与)のF344 ラ ッ ト[日本チヤールスリ バ ー株~J (
14試験,雄659,雌708匹
,その 内,途
中死亡・切迫と殺動物は雄 147,雌 174匹)
およ
び
、B6C3F]マウ ス 旧 本SLC(
欄](11試験,雌雄各
550匹,その内,途中死亡・切迫と殺動物は雄 1
2
8,雌 104匹)
の所見を用い た.飼料は ,放射線
滅菌改良NIH
公開ラット ・マウス飼料 [
オリエンタル酵母工業(鮒]を用いた.動物は, 109週齢
で計画解剖したものと,途中死亡 ・切迫と 殺動物に対して,主回哉学的にがんの有無を検索した.
3
.イヌのがんによる有病率の調査
Smithらの調査3)を引用したこの報告は,腫傷 性病変を持 ったイヌ 5854匹の発生部位とその
診断名について記載されている.また福田らの調査4)も一部引用した.この報告は,ピーグ
ル423匹中に見られた腫蕩について報告して いる .
4
.調査対象がん
死亡者のがんの原発部位とその性別分布は,食道,胃,直腸など,肝, ~革,肺・気管・気
管支,乳房(腺),子宮,白血病及びそのほかについて調査し,げっ歯類の場合は,死亡・切
迫と殺動物について,がんの発生部位・性別分布を調査した.げっ歯類を 用 いた試験で は
,
がんが原因で死亡に至ったか否かの診断は
困難なこともあるが,途中死亡・切迫屠殺動物
に対して,担がん個体を選んだ.イヌについてもヒトの病変に対応した部位について調査した.
ヒトのがんに対する 受療率の調査対象年齢は,動物の 109週齢に 該当すると 思われるの歳
以上とした.げっ歯類の調査もヒトと同様の臓器
すなわち食道,胃,結腸・直腸,肝・肝
内胆管,醇,気管・気管支 ・肺,雌の乳房(腺),子宮, 前立腺,腸脱及び造血臓器(骨髄,
牌,胸腺,リンパ節)を対象に,その有病率を調査した.
5
.比較方法
げっ歯類の各がん有病率は,母比率Pの95%の信頼区間を計算し,ヒトの受療率と比較した.
i
l
l
. 結果
1
.ヒト,げっ歯類及び‘イヌのがんによる部位別死亡割合(表 1
):
ヒ
ト 守げっ歯類及びイヌのがんによる部位別死亡割合 (
%
)
男(雄)
女(雌)
マウス
フッ ト
フッ ト
ヒ ト
マウス
ヒ ト
表1
がんによる死亡又は担福個体数
総数
食道
胃
結腸など*
H
干
豚
肺・気管 ・気管支
乳房
子宮
白血病
1
3
9
6
7
4
1
0
0
4.
7
21
.8
4.
4
1
4
5
.
6
2
0
.
9
く0
.
1
2.
4
2
6.
1
1
0
5
1
0
0
。
。
。
。
。
1
2.
9
50.
5
40
1
2
0
1
0
0
。
。
。
。
0
.
8
5
2
.
5
5
2
0.
8
2
0
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.
9
その他
*直腸と S状結腸移行部及び虹門を,げっ歯類は十二指腸,小腸,大腸,結腸部を,イヌは結腸を含む腸
を示す .
4
6
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻 2
0
0
0
ヒトのがんによ る死亡割合 は,男女とも胃と肺・気管・ 気管支が最も多く ,次いで、
男では,
肝,障,食道,直腸など,造血器(白血病)の順で,女では,肝,膳,乳房 (腺),子宮,直腸な
ど,造血器(白血病),食道の順であった.
ラットでは,白血病が雌雄共最も多く 5160%を示し,雌では子宮がんが 10%を示した以外は
各性とも胃,肝, s
,
革 乳房の順に低頻度のがんに よる死亡発生が見 られた.マウスは,肝がん
24%及び21
3
1%を示 した. 次いで雄では,肺・気管 ・気
及び白血病が雌雄とも多くそれぞれ531%,乳がんが8% を示した以外は,低頻度
管支のそれぞれのがんが5%,雌では,子宮がんが 1
の死亡率を示した .
イヌでは,乳房の発生が9
.1% と最も高く ,次いで、 白血病 の4.
3%,腸が1
.0%で,食道,胃,
肝,膳,肺・ 気管 ・気管支, 乳房及び子宮がいずれも 1%以下であ った.特に肝がんがヒト 及び
雌ラ ッ ト・雌雄マウ スに比較 して極めて低い死亡率を示し,白血病がヒトとほぼ同一な死亡率
を示した .
2
.性別・部位別によるヒトの受療率及びげ、つ歯類の有病率の信頼区間(表2
):
表2
. 性別・部位別によるヒトの受療率及びけ、っ歯類の有病率の信頼区間(標本 10万対)
ヒ ト
がんの原発臓器
食道
胃
結腸
肝及び肝内胆管
膝
肺
・ 気管 ・気管支
女性乳房
子宮
前立腺
勝脱
白血病
470
5
8
5
3
21
07
8
0
8
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1
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2724
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2
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フット
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ヒ ト
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9
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0
0
7
4
0
0
1
) 食道,胃及び結腸:男女の受療率に比較してラット・マウスの有病率は,極めて低い率
を示した.
2
) 肝及 び肝内胆管 :ヒト男女の受療率 に対して雌雄ラ ッ トの有病率は ,同程度であ った .
しかし,マウ スの雄 は23倍,雌は 15倍それぞれ高い有病率を示した.
3) 勝:ヒトに対して雌雄のラットはほぼ同様の有病率を示した.一方マウスに対するその
発生は,見 られなかった .
4) 肺・ 気管・気管支 :ヒトに対して雄ラ ッ トは, 若干低い有病率を示した .雌ラ ッ トの発
生は,見られなかった.ヒトに比較 して雌雄マウ スは,それぞれ3
倍の有病率を示した.
5) 女性乳房 :ヒトに比較してラット・マウスは,ほぼ同程度の有病率を示した .
6) 子宮:ヒ トに比較してラットは,ほぼ同程度の有病率を示した.マウスは約 3
.
6倍高い有
病率を示した.
7
) 前立腺:ヒトに比較してラッ トは, 1
/
7の有病率を示した.マウスは,その発生が見られ
なかった .
8
) 腸脱:ヒ トに比較してラット ・マウスは
発生が見られなかった .
4
7
なぜ生物統計では帰銀仮説と 5%水準を採用するのかワ・両側検定と片側検定の違い・検定結果をどう理解すべきか?
9) 造 血 器 : ヒ ト の 白 血 病 の 分 類 が 異 な る が , ヒ ト に 対 し て ラ ッ ト は , 雄 で 7
2倍 , 雌 で 1
4
2
倍,マウスでは,雄で 37倍,雌で 1
0
8倍の有病率を示した.
N. 考察
がんによって死亡したヒト,げっ歯類及び、イヌの原発部位別分布は,かなり相違することが
認められた. しかし,ヒトとほぼ同一な分布を示した臓器と実験動物は,イヌの白血病と雌の
ラット・マウスの乳がんであった.
マウスの肝がん及びラット・マウスの白血病の有病率は,ヒトに比較して極めて多く,逆に
肺や消化器などではヒトの方が高率であった.がんの原発臓器に種差が認められたことは,遺
伝,潜在性ウイルス感染,食生活,薬物代謝,環境などの因子による差異が関連しているとも
考えられるが,げっ歯類に自然発生がんがかなり多くまた加齢により増加することが観察され
たことは,ヒトのがんの発生においても内因や加齢の関連するものも含まれることを示唆する
ことが考えられる.これらヒトとラ ッ トの種差による発がんの差異は,生体機能の違いを
5
Mo
町 0 )らは指摘している(表 3
).この中で,特に寿命,基礎代謝率,同等性及びDNA切断修復
能力の異いに注目したい.
表3
.化 学 物 質 の 発 が ん に 対 す る ラ ッ ト と ヒ 卜 の 生 体 機 能 の 差 異
調
査
項
目
寿命(年)
食 物 摂 取 量(K
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性周期
同等性
発情
角い
45
胃
内
の
_
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H
細菌叢
日
2
μ ーグロプリン
DNA切断修復能力
ヘパァイツク 06ーアルキルグアニン
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月経周期
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2
多数
少数
あり(特に雄)
低い
1
事実上なし
高い
1
0
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oら6)は,イヌ 1867匹に発生した肝がんは, 1
3匹でその割合が0.7%とMonroの調査と酷似
している.このことから,イヌの肝がん発生率は,ヒト及びマウスに比較して極めて低く,む
8
8匹中
しろラットに近い発生率を示すと考えられる.安評センターで実施した試験で用いた 1
悪性腫壌は, 1匹(
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)でその割合は 0.5%であった 7) 福 田ら 4)によると,ピー
グルの新生児201匹
, 1
週齢以上の動物 222匹,計423匹中 1
0匹に腫蕩の発生を見ている.腫蕩の
種類は,良性腫虜が3匹(血管腫,組織球種,平滑筋腫),悪性腫蕩が7匹(線維肉腫2匹,血管肉
腫,乳腺繊維肉腫,肥伴細胞腫,リンパ肉腫及び腎癌がそれぞれ 1匹)で,がんの擢患率は,
1
.7%であった.これら担腫蕩動物は, 1
匹(
4才)を除いて全て5才以上であったと報告している.
日本に於ける「がん」の総患者数は 90万 3千人 (
男 44
万3千人,女46万6千人)と推測される.これ
は,人口の約0.7%ががんにより,医療機関にかかっていることになる 2) 表2に示 したげっ歯類
5%(
131
/1
0
4
4
),マウスで
の幅を算出した基本数値から,がんが見られた割合は,ラットで 12.
21
.
1%
(
1
8
3
/
8
6
8
)で,がんが多く発生する種は,マウス,ラット,イヌ及びヒトの順であった.
以上のように,イヌに対する発がんの背景データは幾っか公表されている.しかし,モルモ ッ
4
8
(
財)安評セ ンタ ー研究所報
第1
0
巻
2000
ト・ウサギなど他の実験動物を用いた発がんに対する背景データとしては,ほとんど見つから
なかったが,これらの動物を使用した発がん性試験は,以下に幾っか報告されている.
Sohnら8)は
, 二種類の化学物質に対する結腸の発がん性をラット,マウス及びモルモットを
用いて検索した結果,モルモットでは発がん性を示さなかった. しかし,メカニズム試験の結
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濃度は, F344ラットと 2系統のモルモットに差がないこと
果,肝臓と結腸中の DNAm
を報告している. Rozmanら9)によると,発がん性を含めた長期の試験から,モルモットと SD
ラットが同程度の感受性であ ったことを 4化学物質を用いた試験結果から報告している. L
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ら1
0)はシリアンハムスターを用いて h
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lの発がん性を検討した結果,発がん性がなかった
ことを報告している. McConnellら11)は5つの化学物質に対する発がん性をモルモット,ウサギ
及びラ ッ ト・マウスを用いて検討している. Kligmanら12)は発がん物質のスクリーニング法と
してウサギの耳の皮膚を用いることによって,早期に発がん性が確認できることを提唱してい
る.
発がん試験に使用される完験動物,特にラット・マウスは,個体差や環境・食生活の差が極
めて少ない条件下にあり,被験物質の影響が浮き彫りにされるように配慮されている.しか
し,加齢によ って,げっ歯類にがんが発生する場合には,自然発生がんと誘発がんの区別が困
難なことが多 く,その場合は,病理学的な評価と適切な統計学的解析が必要となる.今回の調
査で,ヒトに近いがんの発生割合を示す実験動物は,イヌ,マウス,ラットの順と考えられ
る.またがん原性試験に使用する動物種は,がんの標的臓器を予想して種の選択が必要と推察
する.
本研究の一部は,平成8年度日本産業衛生学会東海地方学会で発表した.
[ 文 献1
1
) 平成4年度人口動態社会経済調査報告書悪性新生物. 厚生省大臣官房統計情報部編.東京:
(
財)
厚生統計協会協会, 1
9
9
4
:
8
2
.
2
) 日本の疾病別総患者数データブ ック.厚生省大臣官房統計情報部保健社会統計課保健統計室.
北井暁子.東京:(財)厚生統計協会, 1
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なぜ、
生物統計では帰無仮説と 5%水準を採用するのか? ・両側検定と 片側検定の違い ・検定結果をどう理解すべきかっ
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巻
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宮島留美子原著
B6C3F1マウスの先天性線毛上皮を有する胃嚢胞の 1例
宮島留美子,木原
亨,細井理代, 山本慎二,三上真一,
山川誠己,岩田聖,榎本員
(財)食品農医薬品安全性評価センター
[keywords]
消化管重複症;マウス;先天性;嚢胞;線毛上皮;胃
[Abstract]
消化管の先天性疾患は実験動物では稀な病変である.今回我々は, B6C3Flマウスの前胃大湾
部に付着した先天性嚢胞について報告する.嚢胞はそのほとんどが立方または多列線毛上皮と
局所的に扇平化した上皮で内張りされていた.嚢胞の基部は前胃の外縦走筋層の聞に挿入する
ように存在していたが,嚢胞壁の自由面には明確な平滑筋層は見られなか った.嚢胞は,内面
が線毛上皮で被われていること,胃の大湾部にある点は消化管重複症と大変類似していた . し
かし,本症例には嚢胞壁全体を裏打ちする平滑筋層が存在せず,消化管との連絡がないことか
ら,標準的な消化管重複症ではなく
消化管の先天性嚢胞の一つであると考えられた.
[
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ヒ トにおける消化管の先天性疾患のうち,消化管重複症は, e
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.)内面にいずれかの消化管粘膜を有すること 2
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)壁外
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)消化管の一部と密着していることを挙げている.
層に平滑筋を有すること,通常二層 3
一方,実験動物における消化管重複症は非常に稀な発生で,腸管の消化管重複症がSDラットに
1
例報告されているのみである (
3
).消化管重複症以外に,解剖時に嚢胞や憩室などの消化管疾
患が観察されるが,メッケル憩室等の先天性のもの,腫蕩や筋層の脆弱化や不連続等によるヘ
ルニアなどの後天性のものである (
4
)
.
今回,我々は消化管重複症に類似した B6C3Flマウスにおける消化管の先天性嚢胞を報告す
る.
[Caser
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]
動物は癌原性試験に用いられた被験物質投与群の雄で
一般状態や体表面の異常は観察され
ず,計画解剖動物として 109週齢で安楽死に付された.この症例は被験物質投与の影響ではな
かった.解剖時,病変は前田の大湾に位置する直径 1
2mmの嚢胞として観察された (
F
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の他の病変として肝臓の結節(組織学検査:肝細胞腺腫),腹腔内の塊(直径2mm:脂肪壊死),
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包皮腺の結節(内腔拡張)などの所見が観察され,これらは老齢B6C3Flマウスで見られる自然発
生性の病変であった.材料は 10%中性緩衝ホルマリンを消化管内に注入,浸漬固定後,定法に
従い包埋,薄切
, H&E
染色を行った.また, 30μmごとに連続切片を 4枚作製し, H&E
染色を
施した.ならびに抗 αSMA
抗体 (
DAKO
社
50
倍希釈)
に よる免疫染色を行った.
組織学的に,嚢胞はそのほとんどが立方または多列線毛上皮で内張りされていたが,局所的
F
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g.
2).前胃の紫膜面に付着した嚢胞壁基部は,前胃の外縦走
に扇平化 した上皮も観察された (
筋を共有し,薄い平滑筋で被われていた.しかし,嚢胞壁の自由面では,薄い結合織で被われ
F
i
g
.
3
).30μmごとの連続切片でも,嚢胞の上皮の形態や
ているのみで筋層の発達はなかった (
構造は同じで,嚢胞全体を囲む平滑筋層はなかった.また前胃内腔との交通は観察されなかっ
た.
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先天性疾患はその発生に深く関わる .本症例に大変類似している消化管重複症との比較を文
献的に試みた . ヒトにおける腸管の消化管重複症の原因は
空胞の癒合による再疎通のエラー
の結果,二つの管腔が形成されることによって起こる (
7,
9
).
他にも W i
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12)はBrem
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2
)
の再疎通化 と縦ひだの融合(胃粘膜は腸のような充実期をとることはないため)のエラーである
という提案を引用している. また
M cLet
chieは胸腔と腹腔の消化管重複症と脊椎異形を説明
し,内脹葉と脊索の癒着もしくは神経腸管 は
, 周囲の構造と同じ様に早く 伸 びないため,憩室
牽引の原因となり,消化管嚢胞形成を導くとしている (
8)
.いずれにしても消化管の部位によっ
てその発生機序も異なるのではないかといわれている .
本症例のように胃の嚢胞を内張りする上皮が線毛を有することは大変稀ではあるが,ヒトの
食道の重複症では,気管上皮と 同様の線毛 円柱上皮であることは珍 しいことではないこと
(1,
5)
,また,
R
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aらが,ヒトの横隔膜下の消化管重複症で胃と気管上皮の両方が観察さ
れたと報告していること (
7
) 前腸から気管や肺が発生することから
消化管重複症における
線毛上皮は起こり得ることである.
この嚢胞 を内張りする上皮の形態,消化管の一部に付着し,胃の大湾側であるという点 は消
化管重複症と大変類似している.しかし,本症例には嚢胞全体を裏打ちする平滑筋層が存在 し
なかったこと,胃内腔との連続がなかったことから,狭義の消化管重複症ではなく, 消化管の
先天性嚢胞の一つであると考えられた.
Teeleら(10)によると,ヒ
トの嚢胞状の消化管重複症を含む胃,腸,気管の奇形は,
H
f
形成期
5と7週の聞に前腸における過剰な肺芽が出現するためであると報告している .マウスでは,胎
生9日齢の前腸は急速に分化 し
, 肺原基(咽頭気管 ・気管支原基)が前腸の粘膜上皮腹側の肥厚
として出現するが,胃はまだ形成されていない .そして9・1/2日齢になると ,肺原基は後部に
境界を定め,咽頭気管溝はその深さを増し,消化管から離れ始め, 同時期に胃原基は急速に拡
1
1)
.これらのことから,本症例の嚢胞の成り立ちは,肺原基が消化管と離れる際
大してくる (
に,その一部が胃原基の外側に癒着したためではないかと推察された (Pig.
4
.
).ゆえに,嚢胞内
面を 裏打ちする上皮は線毛を有し
嚢胞壁全体を被う平滑筋層を持たないのではないかと推察
53
B6C3
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9より和訳転載
B6C3Flマウスに自然発生する主な非上皮性腫蕩の
r
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s遺伝子の解析
飯田麻里 l)2),岩田聖 1),榎本異 l),堀江信之 2),竹石桂 _
1
)
2)
(財)食品農医薬品安全性評価セ ンタ ー
生活健康科学研究科
2
) 静岡県立大学
[抄録]
B6C3Flマウスは様々な毒性/発癌性試験に一般的に用いられている.このマウスは一生の聞に
様々なタイプの自然発生腫蕩が発生することが知られており,そのなかでも,肝臓,肺,ハー
a
s
遺伝子の変異が報告されている. しかしながら非上皮性
ダー氏腺などの上皮腫療については r
a
s
遺伝子の変異について解析を
腫虜については,その発生率が上皮腫虜と同等にもかかわらず、r
行った報告はほとんどない.今回我々は, B6C3Flマウスに自然発生した 114例の非上皮性腫蕩
(血管 内皮性腫蕩,悪性リンパ腫,組織球肉腫)についてパラフィン切片から DNAを抽出し,
PCRで増幅後, nonRISSCP法と塩基配列決定法を行いr
ω遺伝子の変異の有無を検索した. 114
例中, 7例に H-rasコドン 61の変異がnon悶 SSCP
法で確認され,シークエンスの結果,すべて C
から A(CAA→ AAA)へのトランスパージョンであった.今回の結果から, B6C3Flマウスの自然
発生非上皮性腫蕩の発生における r
a
s
遺伝子の活性化はほとんど関与がなく ,r
a
s遺伝子以外の
遺伝子が非上皮性腫蕩の発生に関与していることが示唆された.
[序論]
C57BL/
6C
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cXC3H
周e
S
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B6C3Fl)マウスは実験動物として主に長期毒性試験や発癌性試験
1
7
).ま
に用いられている.このマウスは,その生涯聞で様々な自然発生の腫蕩が観察される (
たこのマウスの多くの臓器は化学物質の標的臓器として同定され,多くの化学物質で誘発され
たその臓器の腫虜はヒトにおけるリスクアセスメントを評価するために調べられている.癌遺
伝子,特に r
a
s遺伝子の活性化はヒトの腫療と同様にマウスの自然発生,誘発性1
重傷で観察され
ている.たとえば,ヒトではK-ras遺伝子の変異が醇癌で、 90%,大腸癌で 50%,甲状腺癌で 50
%,そして肺癌で30%にみとめられており ,Nr
a
s遺伝子の変異が白血病の 30%にみとめられて
いる (
8
1
1
).マウスでは, N
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eなどの強力な遺伝子障害│生化学物質で誘発された肝腫療で、 Hr
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s遺伝子の codon
6
1の変異が 100%と高率にみられ,変異のタイ プは化学物質によ って分類されている (
1
2).さ
u
r
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nおよび、f
u
r
f
u
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lにより誘発された肝腫蕩では ,H
r
a
s遺伝子コドン 6
1の変異に加えてコ
らに f
ドン 1
3とコドン 117の変異が検出された (
1
3
)
. GoodrowT
.L
.(
1
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)やHongH.L.らは (
1
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)1
,
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eで誘発されたハーダー腺腫蕩において Kr
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s遺伝子が活↑生イ七し
ていることを報告した.また,自然発生の肝腫蕩では,比較的高率にH
r
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s
遺伝子コドン 6
1の変
異が認められている (
1
6
21
).我々も,すで、
にnonR
1PCR-SSCP法を用いて B6C3Flマウ スの自然
57
B6C3F,マウスに自然発生する主な非上皮性腫蕩の r
a
s遺
伝子の解析
発 生 の 肝 腫 爆 の 約 30% に Hr
as遺 伝 子 コ ド ン 61の 変 異 が 認 め ら れ た こ と を 報 告 し た (
22). Hras
コドン 6
1で,最も頻度の高かった塩基置換は第一番目の塩基である Cから Aへの トランスパー
ジョンであった.
B6C3Flマウスの 自然発生性お よび誘発性の上皮腫蕩における r
a
s
遺伝子の活性化 については
多くの報告があるが,自然発生の非上皮性腫蕩についての報告はほとんどなく, C
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(
2
3)
が非上皮性腫蕩(リンパ腫, 血管腫)を含む 49例の自然発生腫傷について DNAトランスフェ
a
s
遺伝子を調べただけである .今回我々は, B6C3Flマウスの 自然発生の
クシ ョン法を 用いてr
非上皮性腫蕩にお ける形態学的特徴を 明 らかに し
, その 中で発生率の高い腫蕩(血管内皮腫蕩,
ω遺伝子変異 について non
RIPCR
SSCP
法と塩基配列決定法
悪性リ ンパ腫,組織球肉腫)で、の r
によ り解析し た.
[材料と方法]
非上皮性腫蕩の発生率は
安評セ ンタ ーで、行われた B6C3
F
lマウスを用いた 1
7
毒性/
発癌性試
験で, コン トロール の雄 800匹,雌 850匹に観察 された非上皮性腫壌を調査 した.その結果,発
, non-RI
生率の高かっ た3つの非上皮性腫蕩 114列 につい てパ ラフイン切片から DNAを抽 出 し
法
as
遺伝子の存在を調べ,塩基配列決定法にて変異箇所 を確認 した
。
PCRSSCP
; を用いて r
DNA
抽出
既存のパラフイン切片からの DNA抽出法はすでに報告した (
22).簡単に説明すると,未染色
.
5
m
lチュー ブに入れた.
切片を脱パラフィン処理 し,使い捨て の替え刃 で腫蕩部 を削 り取り, 1
200μl
のI
ns
t
a
g
e
n
e(
Bio-Rad,
H
e
r
c
u
l
e
s,
CA,
USA)とp
r
o
t
e
i
n
as
eK(最終濃度 20mgJ
ml;Wako
,Osaka,
0
J
a
p
a
n)を1
.
5mlチューブに加 えた .よ く混合 したあ と,サ ンプルを 42Cで一晩イン キュベ ート し
た.その後, サ ンプルを8分煮沸 し
, 1
5,
000rpmで室温, 5
分間遠心 した .正常な肝臓の組織も 同
様 に抽出し た.
Non-RIPCR-SSCP5:
去
20μlのDNA
抽出液を PCRに用いた .PCRの反応液は全量を 50μl
とし,その組成は lOmMT
r
is
/
pH8
.
3,
50mMKCl,l
.
5m MMgCh,0
.
0
1% (
w
J
v)
g
e
l
a
t
i
n,
0
.
2μMのそ れぞれのプラ イマー,
200
HCl
μ MのdNTPs(
dATP,
dCTP,
dGTP,
d
甘'P
,
) 2.
5
u
n
i
t
sのTaqDNAp
o
lyme
r
a
s
e(
Pe
r
k
i
nElmer
,
Norwalk,
CT,
USA)である .反応、
液t
こ50μI
のm
i
n
e
r
a
lo
i
l(
Sigma,S
tL
o
i
s,
Mo,
USA)を蒸発防止のため加 え
H
r
a
s,
Kr
asa
ndNr
as
)はT
a
b
l
e1に示した. PCRはt
h
e
r
ma
lc
yc
l
e
r(
TR1
0
0;
た.用 いたプ ライマ ー (
Tokyo,
J
a
p
a
n)を用いて ,4
5サイ クル行 った. ネガテ イブ コン トロール (
not
e
m
p
l
a
t
eDNA)
T
a
i
t
e
c,
とポジ テ イブ コン トロー ル (
H刊
Sコド ン6
1にCAA→ CGAの変異を持つ ことがわかっ
ている 肝細
0μl
の反応液を 用いて 1.
5%のアガ ロー スゲル電気
胞癌由来DNA)を必ずおい た. PCR終了後,1
泳動を行った .残り 40μlの反応液のうち 1
0μl
に45μl
のl
oa
d
i
n
gbuf
f
e
r(
95% formamide,20mM
0
.
0
5% b
r
o
m
o
p
h
e
n
o
lb
l
u
e,
0.
0
5% xy
l
e
n
ec
y
a
n
o
l)を加 え
, P
h
a
s
t
Sys
t
e
m
™(
AmershamP
h
a
r
m
a
c
i
a
EDTA,
U
p
p
s
a
l
a
,
Sweden)を用いて SSCP
解析 を行った .そのための電気泳動は, 1
2.
5% na
t
i
v
eg
e
l
B
i
o
t
e
c
h,
とna
t
i
v
eb
u
f
f
e
rs
t
r
i
p
sを用 いた. 電気泳動の条件は ,H-rasお よび
、Kr
asは (
i
)
P
r
er
u
n,15mA,
300V,
2.
5W,
4C,100Vh;
(
i
何 ample叩 p
l
i
c
a
t
i
o
n,15mA,
300V,
2.
5W
,
4C,
2Vh;
(
i
i
i)
Run
,15mA,
300V,
2.
5
W,
0
0
0
0
4C,
200Vh,
であり, N
r
a
sは (
i
)
P
r
e
r
u
n,
1
5mA,
400V
,
2.5W,
4C,
1
0
0
V
h
;(
i)
Sampl
ea
p
p
l
i
c
a
t
i
o
n,
1
5mA,
5
8
(財)安評センター研究所報
0
第1
0巻
2000
0
400V,
2.5W
,
4C,
2Vh;
(
i
i
i
)Run,15mA,
400V,
2.5W,
4C,
200Vhである.
塩基配列決定法
SSCP
解析によ って H-ras遺伝子に変異が認められたサン プjレのPCR断片について塩基配列決
定法によりその変異箇所を確認した . 増幅された PCR 断片の残り 30μ l は SUPREC™_02
(
TAKARAShuzo,
Kyoto,
J
a
p
a
n)で精製 し
, 20μlのTE(
1
1
)に再懸濁し た.精製したサンプルは
c
1
e
s
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q
u
e
n
c
i
n
gr
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y,
CA,
Bigd
y
et
e
r
m
i
n
a
t
o
rc
y
USA)を用いて シークエ ンシング用 サ ンプルを調製した.シークエ ンシング用PCRに用いたプ
0
0
5
s
e
cで、
50C,4minで60
ライ マーはT
a
b
l
e1に示した.シークエンシング用PCRは
, 3
0
s
e
c
、
で96C,1
O
C,これらを 1サイ クルとし,全部で25サイクル行った.シー クエ ンシングの解析はABIP悶 SM
310を用いて行った.変異の存在が認められたサンプルはすべて確認を行 った.
T
a
b
l
e1
. PCRAmpl
i
自c
a
t
i
o
na
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g
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1
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t
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p
(
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r
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r
s
9
8
+
KI2S
KI2AS
5
2
K61S
5
2
1
7
1
+
6
0
1
1
1
+
H61
S
H61
-AS
N
r
a
sampli
f
i
c
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t
i
o
np
r
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e
r
s
NI
2
S
5
'
-TACAGGAAACAAGTAGTAA
TTGATGGAGAA-3'
5
'
-ATAATGGTGAATATCTTCAAATGATTTAGT3
'
5
'-ATGACAGAATACAAGCTTGTGGTG3
'
5
'-CTCTA
TAGTGGGATCATACTCGTC-3'
6
0
1
1
6
+
5
'-GAGACA
TGTCTACTGGACATCTT3
'
5
'-GTGTTGTTGA
TGGCAAATACACAGAGG-3'
6
0
1
0
8
+
5
'-A
TGACTGAGTACAAACTGGTGGTG-3
'
6
0
1
4
4
+
5
'-GA
TTCTTACCGAAAGCAAGTGGTG3
'
NI
2-AS
N61
S
N61
-AS
市
5
'-TCGT
ACTCATCCTCAAAGTG-3'
K6ト AS
a
tlOnpnmer
s
Hr
a
sampi
l自c
HI2
-S
HI2-AS
5
'-A
TGACTGAGTATAAACTTGT 3
'
5
'
-TATGGTGGGA
TCATATTCATCCAC3
'
5
'-A
TTGATGGCAAATACACAGAGGAA3
'
Hr
a
ss
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u
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c
i
n
gp
r
i
m
e
r
s
HI2-S
q
H61Sq
5
'ーTAGTGGGATCATACTCGT3
'
5
'ーGATGGCAAATACACAGAG3
'
a
ti
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e
q
u
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gc
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n
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o
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sar
ei
ls
t
e
di
nM
a
t
e
r
i
a
lsandmethod
Ampli自c
[結果]
自然発生非上皮性腫蕩の発生率と形態学的特徴
B6C3F,
マ ウスを用いた 1
7の毒性お よび発癌性試験で観察された 自然発生非上皮性腫蕩の発生
率をT
a
b
l
e2に示した.雌雄ともに高率に認められた非上皮性腫傷は,血管内皮性腫蕩,悪性リ
ンパ腫, 組織球肉腫であった .
血管内皮性腫療は,発生率9.
8%(
1
6
2
/
1
6
5
0
)で,主な発生臓器は牌臓,肝臓,皮下,骨髄であ
る.マウス 血管 内皮 由来腫蕩の 内の 8
4
.
6% (
137/162例 )
をc
a
p
i
l
l
a
r
yhemangiomaや cavernous
hemangioma,v
e
n
o
u
shemangiomaなど良性腫蕩が占めており,まれに悪性の血管肉腫も血管内
4
%(
25
/
1
6
2
例)に発生 した.
皮由来腫傷の内の 1
5.
1
.6%(
1
9
2
/
1
6
5
0
例)であった .原発臓器としては リンパ節 (
悪性リン
悪性リンパ腫の発生率は 1
パ腫の7
7
.6%:1
4
9
/
1
9
2
例)が最も多く ,次いで牌臓 (
悪性リンパ腫の 1
5
.
6
%
:
3
0
/
1
9
2
例),小腸(悪性
59
B6C3F,"7ウスに自然発生する主な非上皮性腫蕩の r
as遺伝子の解析
τ
a
b
l
e2. S
p
o
n
t
a
n
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b
s
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r
v
e
di
nB6C3F1 Mic
c
:
Tumor
7
9
9
.
3
1
6
2
9
.
8
72
9
.
0
1
.
3
1
2
0
3
2
1
4
.
1
3
.
8
1
9
2
1
.
16
2
.
5
1
0
42
4Tt
吋
A U A U A U A U A U A U A U ハu n v n u
ゐ
今,
弓
543222111ω
J
-
吋
U
︽ n U
ζU ︽J d“
Y A峰マミd
n υ n u n U A U n u n U ハU A U
9612412220
4
吋
000
J
内 -AU
dtt
今,ゐ司‘
乱
L
F
、J 1 4
dqd'11MAUAUAυ'I
Fibroma
M
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l
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g
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a
n
tschwanoma
1
0
.
4
nU1A
F
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r
c
oma
8
3
5
4Avnunuti
Rhabdomyosarcoma
(
寓
)
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D
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s
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T
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0=1
6
5
0
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f
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s
0 0、
0000
戸
S
c
hwannoma
(
克
)
n u E B A斗 吋 54ti
M.F.H
Female
0=850
numbero
f
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s
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。
。
品守
O
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h
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rt
u
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r
s
Leiomyoma
(
克
)
∞
。
。
34
今,
創刊
H
e
r
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n
g
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o
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tIymphoma
H
i
s
t
i
o
c
y
t
i
cs
a
r
c
o
町1
a
Male
0=8
numbero
f
l
凶i
o
ns
リンパ腫の 3
.
6
%
:
7
/
1
9
2
例),その他臓器(悪性リンパ腫の 3
.
1%
:
4
/
1
9
2
例)の順であった. 1
9
2
例中,
5
3例を P
a
t
t
e
n
g
a
l
巴
ーT
a
y
l
o
rらにしたがって分類した.大部分の症例7
7.4%(
41
/
5
3例)がB細胞由来の
櫨胞中心細胞リンパ腫 (
f
o
l
l
i
c
u
l
a
rc
e
n
t
e
rcelllymphoma
)に属した.その内,白血化を示した例は,
悪性リンパ腫の内の 5.7%(
3
/
5
3例)であった .
組織球肉腫の発生率は 2.5%(
4
2
/
1
6
5
0
例)であった .雄では,肝臓に原発する例が最も多く (
5
/
1
0例),その他,精巣上体やリンパ節などにも観察された.雌では子宮に原発する例が最も多
2
3/
32
例),次いで肝臓 (
7
/
3
2
例),その他リンパ節にも観察された.
く(
r
a
s
遺伝子変異の検出と塩基配列決定法
1
4
例(血管内皮由来腫蕩 3
7
例,悪性リ ンパ腫5
3例,組織球肉腫 24
例)について
非上皮性腫蕩 1
H
r
a
s,K
r
a
sおよび、Nr
a
sのそれぞれエクソン 1および2の変異を調べた.その結果 ,H
r
a
sコドン
6
1の変異率は悪性リンパ腫で、
5
/
5
3(
9.4%
,
) 組織球肉腫で2β4(
8
.
3
%
)にみとめられた .すべての
2の変異は認められなかった .H
r
a
sコドン 6
1の変異が認められた悪性リ
非上皮↑生腫蕩でコドン 1
o
l
l
i
c
u
l
a
rc
e
n
t
e
rc
e
l
l lymphomaが3例
,
ンパ腫 5例についてその形態を分類したところ, f
i
m
m
u
n
o
b
l
a
s
t
i
clymphoma
がl
例
, l
y
m
p
h
o
b
l
a
s
t
i
clymphoma
が1
例で、あった .H
r
a
sコドン 6
1の変異が
例の原発部位は 1
つが肝臓でもう一つは子宮であった.しかしながら,
認められた組織球肉腫2
ω遺伝子の変異が全く認められなかった.さらに K
r
a
s
およびNr
a
s
遺伝
血管内皮由来腫療には r
到重壌にも観察されなかった .H
刊
子の変異は今回の実験ではどの非上皮f
Sコドン 6
1に変異の認
→ AAA)へのトランスパージョン
められた7例の塩基配列を決定した結果,すべて Cから A(CAA
であった (
F
i
g
u
r
e
.2
).
[考察]
B6C3Flマウスに観察される自然発生病変の集積ならびに解析は背景データとして有用であ
り,発癌性試験の結果の評価には貴重な考察を与えている. (財)安評センターでは現在までに
6,
22,
2
53
0)
. B6C3Flマウ
様々な実験動物における多くの背景データを集積し,解析している (
スは多くの長期毒性試験や発癌性試験に使用されているが,このマウスは肝腫蕩の発生率が観
6
0
(
財)安評センター研究所報第 1
0
巻 2000
(
a
)
(
b
)
G
A
A
G
A
一
A一
A一
一
lVA
ASC
一 A一
T
G
G
A
F
i
g
.2 I
d
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n
t
i
f
ica
t
i
o
no
fp
o
i
n
tmuta
t
i
o
ni
ncodon6
1o
fH
r
a
sgenebydirect
sequenci
ngo
fam
p
l
i
f
i
e
dex
on2
o
r
m
a
ll
i
v
e
rt
i
s
s
u
e
(
a)DNAsamplefromn
(
b)DNAsamplefromspontaneousm
a
l
i
g
n
a
n
tIymphoma
察される全腫蕩中で最も高く
遺伝子解析の結果はこれらの肝腫蕩発生の原 因を探る上で重要
な情報となる (
2
2,
3
1,
3
2
).さらに, 血管内皮由来腫蕩,悪性 リンパ腫お よび組織球肉腫は, 他
の報告 (
1
7
)と同様に、自然発生非上皮性腫蕩の中でも高率に発生している
(
Tab
l
e2
)
.
これら
3つの非上皮性腫蕩に共通の特徴は全身性に発生することである .B6C3
F,
マウスにおける自然
発生の非上皮性腫蕩について遺伝子解析を行った報告はほとんどなく
化学物質で誘発された
非上皮腫療についても数例の報告があるのみである (
2
3,
3
33
6
).本研究では, B6C3F,マウスに
多く観察される自然発生非上皮性腫蕩における rω遺伝子変異について non-RIPCR-SSCP法を用
いて調べ,塩基配列決定法にて変異箇所を確認した .その結果 ,Hr
ω コ ドン6
1の変異率が,悪
,
性リンパ腫で5例 (
9.
4
%
),組織球肉腫で2例 (8.3%)に認められた.さらに悪性リンパ腫におけ
るH
r
a
s
遺伝子の変異は,形態学的な特徴をもっ全ての細胞に認められた.これらの結果から,
Hr
a
s
遺伝子は上皮腫蕩と同様に 悪性リンパ腫の発生にも重要な役割を果たしていることが示
唆された.血管腫や血管肉腫を含む血管内皮由来腫虜には H
r
a
s
遺伝子の変異は観察されなかっ
t
o
hら(
3
7
)やHayashiら(
3
8
)は,ヒ トc
H
-r
a
s
遺伝子を導入したトランスジェニックマウス
た. Sai
に自然発生の血管肉腫が観察され,全ての血管肉腫においてヒ トc
-H
r
a
s
遺伝子コドン 6
1に変異
(CAG→ CTG)が認められたが,マウス Hr
a
sコドン 61の変異は検出されなかったと報告した .
これらの結果から, B6C3F,マウスに発生する血管内皮腫療の発生に H
r
a
s
遺伝子の活性化 は関
与しないことが示唆された.
今回の実験では, B6C3F,マウスに観察される自然発生の悪性リンパ腫に K-ras および~-ras遺
6
1
B6C3F,
:
rウスに自然発生する主な非上皮性腫揚の r
a
s遺伝子の解析
伝子の変異は認められなかった. Goodrowらも NIH3T3のトランスフェクションアッセイやヌー
ドマウス発癌アッセイ法を用いて調べた結果, B6C3Flマウスに自然発生した 6つの悪性リンパ
腫にも K
r
a
s遺伝子の活性化は見られなかったと報告した (
3
4
).また C
a
n
d
r
i
a
nらは,ヌードマウ
ω遺伝子
ス発癌アッセイ法を用いて調べた結果,自然発生した 5つの悪性リンパ腫に 1つだ、け N-r
の活性化が認められたと報告した (
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は ,K-ras および~-ras遺伝子の変異が多く認められた (33 , 34, 36) .自然発生の悪性リンパ腫と同
様に,今回の実験では Kr
a
sおよ UN-ras遺伝子の変異は,全ての自然発生組織球肉腫と血管内
皮性腫蕩に認められなかった.これらの結果から, B6C3Flマウスにおける自然発生の非上皮性
腫蕩の発生に K
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1の変異が
最も高頻度に起こっているのは CAAから AAA
へのトランスパージョンでつぎに CAAから CGA
のトランジション, CAAから CTA
へのトランスパージョンであると報告した (
3
9
).我々の実験
でも,自然、発生の非上皮性腫蕩に認められた H
r
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sコドン 6
1の変異は全て CAAから AAAへのト
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sコドン 6
1の変異は r
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s遺伝子変異の中で
ランスパージョンであった.これらの結果から ,Hも主要で、あり,さらにコドン 6
1のCAAから AAA
へのトランスパージョンは肝腫蕩だけでなく非
上皮腫蕩でも重要な変異だと考えられた.
今回の研究結果と以前報告した自然発生の肝細胞増殖性病変との結果 (
2
2
)を合わせて考えて
みると,主要な自然発生の非上皮性腫蕩の発生にも r
a
s遺伝子以外の癌関連遺伝子の変異が関与
していることが示唆された.
[謝辞]
論文作成にあたりご助言いただいた浜松医科大学の椙村春彦教授に深く感謝し 3たします.
[ 文 献1
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66
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第1
0
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2000
実験病理組織技術研究会会 誌 Vo
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9
9より転載
ラットおよびマウスの腎糸球体病変における
コロイド鉄染色の応用
0城間直美・山本郁夫・杉浦ひろ子・磯部香里・萩原
孝
(財)食品農医薬品安全性評価センター
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腎糸球体病変,ラ ッ ト,マウス,コロイド鉄染色
[はじめに]
実験動物において腎糸球体病変を詳細に観察する場合, PAS染色や PAM
染色法が多く使用さ
れている 1) 今回我々は,腎糸球体の上皮細胞および基底膜の障害を観察する目的で粘液多糖
類の染色法として用いられるコロイド鉄染色を試み良好な結果を得たので報告する.
【材料と方法]
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9週齢)の対照群に観察された慢性進行性
ラットで、は長期毒性試験に用いた C
腎症のうち糸球体病変の軽度 (
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例)のうち糸球体病変の軽
8週齢の正常腎を材料とした .材料は 10%中性緩衝ホル
度,中程度および高度のもの,および 1
の切片を作製した.コロイド鉄染色
マリン液に固定後,常法に従いパラフイン包埋し, 4μm
(
M
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表1
)は常法に従い染色を行なった 2)
なお,試薬の調製は使用直前に以下の通りに行なった .
酢酸コロイド鉄
コロイド鉄原液(武藤化学)
10ml
蒸留水
18ml
氷酢酸(和光純薬)
12ml
塩酸・フエロシアン化カリウム溶液
5%フエロシアン化カリウム液
1
容
5%塩酸水
1
容
(フエロシアン化カリウムおよび塩酸…和光純薬)
67
ラットおよびマウスの腎糸球体病変におけるコロイド鉄染色の応用
表 1
コロイド鉄染色 CMuller-mo
岬 r
y法 ) 手 順
①脱パラフイン
②1
2%酢 酸 水
3
0
秒
1
時間
③酢酸コロイド鉄
④ 12%酢 酸 水
3分 X4回
20分
⑤ 塩 酸 ・フ エ ロ シ ア ン 化 カ リ ウ ム 溶 液
⑤ 水 洗 5分
⑦蒸留水水洗
~核染色(マイヤ ー へマ トキシリ ン,
武藤化学)
① 脱 水 ・ 透 徹 ・封 入
[結果]
コロイド鉄染色を用いると
正常の腎糸球体の上皮細胞および基底膜が特異的に強陽性に染
色された.逆に慢性進行性腎症の症例ではいずれもその染色性は正常に比べ明らかに弱 く,糸
球体病変の程度が強くなるほど染色性は失われた .ラ ッ ト・マウスとも同様の結果を得ること
ができた(写真 1,2および表2
).
コロ イド鉄染色を行 った結果
[考察]
ラットおよび、マウスの慢性進行性腎症では初期の変化として
糸球体上皮細胞の粘液多糖類の減少を特徴とする変化を観察することができた.この変化は一
般的な H.E.
染色 をはじめとして糸球体病変の検出に有効な PAS染色や PAM
染色でも検出は困難
である.今回,我々が試みたコロイド鉄染色は,粘液多糖類の陰性荷電を有する重合体と陽性
荷電をもっコロイド鉄粒子の 3
価の鉄が強く結合する.そして,その結合したところをベルリ
ンブルーにより検出する非常に感度の高い染色法である 3
) このため
コロイド鉄染色は粘液
多糖類の減少という形態では現れない変化 を容易に検出することができ,その手順も簡便であ
る.
したがって,コロイド鉄染色は腎糸球体の上皮細胞および基底膜の障害を観察する上で適した
染色法と考えられた.
表 2 マウ スお よびラットのコロイド鉄染色の染色性
マウス
ラット
強陽性
強陽性
軽度
陽性
弱陽性
中程度
弱陽性
正常腎
糸球体病変
高度
6
8
弱陽性
陰性
弱陽性
陰性
陰性
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻 2
0
0
0
左:正常腎
腎糸球体の上皮細胞および
基底膜が強陽性を示してい
る.
中:糸球体病変 (
軽度)
腎糸球体は肥大い上皮細
胞および基底膜の染色性が
低下している.
右:糸球体病変 (
高度)
正常の腎糸球体の上皮細胞
および基底膜と比較して染
色性がほぼ消失している .
ラット. X200)
写真 1 コロイド鉄染色 (
左:正常腎
腎糸球体の上皮細胞および
基底膜が‘強陽性を示してい
る.
中:糸球体病変 (
軽度)
正常の腎糸球体の上皮細胞
および基底膜と比較して染
色性が低下している.
右:糸球体病変 (高度)
正常の腎糸球体の上皮細胞
および基底膜と比較して染
色性が低下している.
写真 2 コロイド鉄染色 (
マウス. X200)
6
9
ラットおよびマウスの腎糸球体病変におけるコロイド鉄染色の応用
[参考文献1
1
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g
y/別冊,カラー版
染色法のすべて,医歯薬出版:東京, p
4
5
4
5,
p
1
0
9
1
1
2,
1
9
8
8
.
1
2
9
1
3
1,
1
9
8
6
.
2
) 渡辺陽之輔,他:病理組織標本の作り方第6版,医学書院:東京, p
3
)M
e
d
i
c
a
lT巴c
h
n
o
l
o
g
y/別冊,新染色法のすべて,医歯薬出版:東京, p
1
5
2
1
5
3,
1
9
9
9
.
70
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2000
m
.研究会・学会発表会
第6回 実験病理組織技術研究会総会講演要旨集, 1999より転載
K
i
6
7(
M
I
B
S)抗体を用いた免疫染色における抗原賦活法の検討
0磯部香里,城間直美,杉浦ひろ子,
山本郁夫,萩原
孝
(財)食品農医薬品安全性評価センター
[はじめに l
K
i
6
7(
MIB-1)
抗体は人をはじめ多くの動物種で細胞増殖マーカーとして使用され,その陽性像
は増殖サイクルにある細胞核 ( GI 期 ~ M期)の核内に頼粒状に認められ,また PCNA とは違い陽
性核の区別が容易で、あることが知られている .そしてその陽性率は BrdU
標識率と相関すること
などから増殖マ ーカー の中では信頼性の高いマーカ ーと 言われている . しかし, MIB-1抗体は
ラット,マウスなと守の実験小動物 には染色不可能であった .最近ラッ ト,マウ スなどの実験小
動物にも染色可能で、あるという Ki
6
7(M
I
B
5)
抗体が市販された .そこで今回, MIB-5抗体にお
ける抗原賦活法について検討を行な ったので報告する .
[材料と方法]
材料 :10%中性緩衝ホルマリンにて固定した F344ラッ トの小腸および肝臓のパラフイン切片
方法:抗原賦活法の検討
1
)マイク ロウェーブ処理 (
5分 X3回)
pH6.
0
)
溶液 :クエン酸緩衝液 (
2)マイク ロウェーブ処理 (
5分 X3回)
)
pH9.5)1)
溶液:5%尿素を含むトリス緩衝液 (
0
3
)オートクレーブ処理 (
1
2
0C 1
5分)
溶液:ク エ ン酸緩衝液 (
pH6.
0
)
0
抗体:Ki-67抗原 (
MIB-5)モノクローナル抗体 (Immunotech
社)100倍希釈
, 4C1晩
免疫染色は LSAB法 (
DAKO
杜)を使用して行 った
[結果およびまとめ]
MIB-5抗体における抗原賦活法の検討の結果,オートクレーブ処理でクエン酸緩衝液を用いた
方法が他の方法に比べて最も良好な結果を得た.
しかし,抗原賦活法については溶液, pH,処理温度お よび時間などの条件の違いにより染色性
がかわるといわれているので現在さらに溶液,時間等について検討を行なっている .本会では
その結果も含めて報告する予定である.
71
K
i
6
7(
MIB・5)抗体を用いた免疫染色における抗原賦活法の検討
[文献]
1
) Shan
R
o
n
g
S
h
i,R
i
c
h
a
r
d
J
_
C
o
t
e,
e
ta
l
UseofpH9
.
5T
r
i
s
H
C
lb
u
f
f
e
rc
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n
t
a
i
n
i
n
g5%Ureaf
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a
li
m
m
u
n
o
h
i
s
t
o
c
h
e
m
i
s
t
r
y,
BIOTECHNIC& HISTOCHEMISTRYVo171,
No.
4,1
9
0
1
9
6,1
9
9
6
.
72
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻
2000
第1
8回北米毒性病理学者国際 シンポ ジウム, 1
9
9
9年6月 1
4日,講演要旨P
o
s
t
e
rB
o
a
r
dA
s
s
i
g
n
m
e
n
t
sP
6より和訳転載
F344ラットと B6C3Flマウスにおける Schwannomaの
発生率,発生部位,種差,雌雄差について
細井理代,長谷川和成,木原 亨,宮島留美子,山本慎二,
三上真一,山川誠己,岩田聖,贋内康彦,榎本異
(財)食品農医薬品安全性評価センター
F344ラ ッ トおよび B6C3F]マウスで自然発生する末梢神経系の腫蕩性病変として,
Schwannoma
が観察される.今回,我々は当センターの長期試験に使用したラットおよびマウス
で観察された自然発生の Schwannomaについて,発生率,発生部位,種差,雌雄差について検討
したので報告する.
Schwannoma(
b
e
n
i
g
nおよび、m
a
l
i
g
n
a
n
t
)の発生率は F344ラットの雄で 0.63%(
4
3/6
3
5
0
),雌で
0.13%(
9/6
7
5
0
),B6C3F]マウスの雄で0.06%(3/4
8
0
0
),雌で0.02%(
1
/5
0
0
0)であった.これ
より F344ラットにおいて Schwannomaは
, B6C3F]マウスに比べ発生率が高く,ラットの雄にお
いて発生率が雌より高値を示した.発生部位は F344ラットにおいて皮下組織(版簡,頚部,背
部),唾液腺,腰椎,心臓,眼嵩および眼に認められた.心内膜の Schwannomaのほとんどは良
性で,唾 i
夜腺,腰椎,眼嵩,縦隔,三叉神経に発生する Schwannomaはほとんどが悪性であっ
た.なお,希な発生部位として, F344ラッ トの前胃,精嚢内,および甲状腺の近位における発
生を経験した.
73
採血方法の実際と工夫
第 27回 静 岡実 験 動 物 研 究 発 表 会 抄 録 よ り 転 載
採血方法の実際と工夫
0杉 山 豊 , 北 島 省 吾 , 勝 俣 勇 , 各 務 進 , 村 田 共 治
(財)食品農医薬品安全性評価センター
当センターで採用しているラット,マウス,イヌおよびウサギの採血方法とその工夫について図
および写真を用いて紹介する .
採血方法の概要については以下の通りである.
ラット
剖検時の採血
腹大動脈から採血する.採血針は長さ 7cm,内径約 1mmのステンレス針に 5cmのテフロン
チュープを装着したものを用いる .腹大動脈に穿刺後流れ出る 血液を採血管に受け,順次
検査種別に採血管を交換する.
経時的採血
頚静脈から採血する.採血機材は 25G注射針に適当なシリンジを装着し使用する.
マウス
剖検時の採血
腹大動脈から採血する.採血針は長さ 7cm 内径約 O.5mmのステンレス針に 1cmの塩ピ
チュ ーブを装着したものを用いる.腹大動脈に穿刺後流れ出る血液を採血管に受け,順次
検査種別に採血管を交換する.
イヌ
榛側皮静脈から採血する.採血器材は 21G翼付き注射針に真空採血用ルアーアダプターを
装着したホルダーを装着し使用する.採血管をホルダーに装着し 順次検査種別に採血管
を交換する.
TK
採血では 23G翼付き注射針と シリン ジを用いる.穿刺後シリンジで吸引し,採血管に分
注する.
ウサギ
耳介動脈から採血する .25G翼付き注射針とシ リンジを用いる .穿刺後シ リンジで吸引
し,順次検査種別に採血管に分注する .
使用している採血管
. 生化学検査用:セキスイインセパック高速凝固タイプ
・
・
7
4
.
血液学検査用 :セ キスイインセパック EDTA2K
凝固検査用:セキスイインセパッククエン酸Na3.13%
•
微量採血用:ベクトンデイッキンソンマイクロティナ
TK
採血用:セキスイインセパックヘパ リンナト リウム 入り
(財)安評センター研究所報第 1
0
巻
2000
フット
剖検時の採血
採血部位:腹大動脈
採血針:長さ 7cm,ステンレス
針
採血時麻酔用のマスク
動脈を露出させる
生殖器付近よりやや離れた
箇所在開腹
血液を分注
左親指で動脈を確保
フット経時的採血
経時的採血
採血部位:頚静脈
採血器材:25G注射針および 1mLのシリンジ
正中線と雨前肢が交わる点
月三
J
採血ポイントを確認する
正中線のやや右側に穿刺する
針を立て,血管に挿入する
75
採血方法の実際と工夫
マウス
採血部位:腹大動脈
採血器材:長さ 7cmのステンレス針
マウスの開腹
採血
イヌ
臨床検査採取用
採血部位:榛側皮静脈
採血器材:21G翼状針および真空採血キ ッ ト
血中濃度用
採血部位;榛側皮静脈
採血器材:23G翼状針およびシリンジ
イヌの保定
前肢を保定
7
6
翼状針を 婦入
採血管を順次 セッ トす る
(財)安評センター研究所報
第1
0
巻
2
0
0
0
ウサギ
採血部位:耳介動脈
採血器材:25G翼状針およびシリン
ン
保定器にあごをセットしない
アルコール錦にて怒張させる
翼状針にて採血
採血実績 (19951998)
圃
『 ー
合計:動物数
動物種
年
ラット
マウス
イヌ
1
9
9
5
1
9
9
6
1
9
9
7
1
9
9
8
4
,
4
2
9
5
,
1
1
2
2
,
6
7
1
3
,
3
5
2
1
5
.
5
6
4
1
,
2
4
7
2
,
5
1
9
3
,
7
1
6
1
.
3
1
1
8
.
7
9
3
6
7
7
9
7
5
1,
1
2
4
6
5
4
3
.
4
3
0
総計
ウサギ
3
6
5
6
2
5
9
9
0
総計
6
,
3
5
3
8
,
6
0
6
7
,
8
7
6
5
.
9
4
2
2
8
.
7
7
7
(臨床検査用動物のみ)
7
7
体外成熟中のマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に及ぼす Car
be
ndaz
imの影響
9回 日 本 先 天 異 常 学 会 学 術 集 会
第3
抄録集
p.
1
5
1, 1
9
9
9より転載
体外におけるマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に
arbendazimの影響
及ぼす C
0田中亮太 1,2) ・笹浪知宏 2)・ 鳥 山 優 3)・森
誠 3)
1
) 岐阜大学大学院連合農学研究科, 2) (財)食品農医薬品安全性評価センター
3)静 岡大学農学部
C
a
r
b
e
n
d
a
z
i
m(MBC)は紡錘体の形成を阻害し,体細胞の有糸分裂や i
nv
i
v
oで、生殖細胞の減数分
a
n
e
u
p
l
o
i
d
y
)を起こすことが知られている薬剤で
裂の進行に影響を及ぼし,染色体の数的異常 (
ある.今回,我々は体外成熟中のマウス卵子に MBCを暴露し,減数分裂の進行や染色体数に及
ぼす影響を調べた.
3~4週齢の ICR雌マウス (Slc:ICR) に妊馬血清性性腺刺激ホルモンを投与し, 4
8時間後に卵丘
hiUen'sMediumを用い,卵子は 5%炭酸ガ
細胞に包まれた卵子を採取した.培養液には修正 W
7C
の条件下で培養した.培養終了後,卵丘細胞を除去して卵子を観察するとともに,第
ス
, 3
0
一減数分裂前期以外の卵子については染色体の伸展標本を作製し,第一減数分裂中期 (MI)お
l
)の染色体像を観察した. Mllの像を示すものは染色体数を数え
よび第二減数分裂中期 (Ml
た.
0,0ふ 2および、6
μg
/
mLのMBCで'
1
5時間培養した結果, 2
μg
/
mL以上の群で M Iに停止する
.
6
μ g/mL以上の群でMllまで進行した卵子の染色体数異常
卵子の割合が用量依存的に増加し, 0
の発生率が増加した.また, 2μg/mLの濃度で、暴露時間の違いによる影響を調べた結果, MBC
は主として M Iから Mllまでの過程に作用し,減数分裂の進行の遅れや染色体数の異常を起こ
すことが示唆された.
78
(財)安評センター研究所報
第2
6回
第1
0巻
2
0
0
0
日本トキシコロジー学会学術年会要旨集 p
.
1
6
6,
1
99
9より転載
全自動免疫化学測定装置によるラット血中ホルモン濃度の測定
0向井大輔,笹浪知宏,大庭耕輔,井上博之
(財)食品農医薬品安全性評価セン ター
近年、化学物質によ る内分泌か く乱作用が注目されており、その影響 を調べるため様々な手
法が開発されつつある。化学物質の影響を的確に検出するためには、これらの方法と併せて実
験動物では血中ホルモン濃度の変化を調べることが必要である。最近では全自動免疫化学測定
装置の測定感度は著しく向上したが、これらの機器で使用される試薬はいずれもヒ トを対象と
したものであり、実験動物、特にラ ッ トに関するデータはこれまで見当たらない 。今回我々
(
槻バイエルメ
は、各機器メーカーの協力により Immuno1((槻バイエルメデイカル)、 ACS180(
ディカ l
レ
)
、 V
i
t
r
o
sECi((槻オーソ ・クリニカル ・デイアグノスティックス)を用いてラットの血
中ホルモ ン濃度測定の検討を行 ったので報告する。
ラット 血清1O~食体について、エストラジオール -17
s(E2)、プロゲステロン (P4)、テス
トス
テロン (
T
)、 トリヨードチロニ ン(
T3
)、チ ロキ シン (
T4)、卵胞刺激ホルモン (
F
SH)、黄体形成ホ
P
也)をそれぞれの機器で測定し
ルモン (LH)、甲状腺刺激ホルモン (TSH)およびプロラクチン (
た。また、これとは別にラジオイムノアッセイ (RIA)法でホルモン濃度を測定し((株 SRL)、各
機器との比較を行った。
性ステロイドホルモ ンである E
2、P
4およびTの測定では、いずれの機器でも RIA
法との間で相
.
9以上あり、高い相関性を示した。また、 T
3およびf
T4
の測定で壮、検体間のばらつき
関係数が0
が少なく、相関係数は性ステロイドホルモンと比較して低値であったが (T3:0 .5 9~0.84 、
T4:
0.87 ~0.9 3 ) 、すべての機器において検 出可能で、あ った。ペプチ ドホルモンである FSH 、 LH、
TSHおよびPRL
の測定ではすべての機器で検出下限以下であ ったが、 これはこれ らホルモ ンの
分子構造がヒトとラットとの間で差異があるためと考えられた。以上の ことより、 全自動免疫
化学測定装置はラッ トのペプチドホルモン測定には問題があるが、性ステロイドホルモンおよ
び甲状腺ホルモンの測定に有効で、あることが示された。
79
体外におけるマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に及ぼす G
r
is
e
o
f
ul
v
i
nの影響
第2
6回 日 本 ト キ シ コ ロ ジ ー 学会 学術 集 会
プロ グ ラ ム ・ 要 旨 集
p
.
2
7
9, 1
9
9
9より転載 (
一部修正)
体外におけるマウス卵子の減数分裂の進行と染色体数に及ぼす
G
r
i
s
e
o
f
u
l
v
i
nの影響
0田中亮太 1,2)・笹浪知宏 2) . 鳥 山 優 3)・森
誠 3)
1
) 岐阜大学大学院連合農学研究科, 2
) (財)食品農医薬品安全性評価センター
3
) 静岡大学農学部
[目的]
マウスの卵子は出生直後から排卵までの間,第一減数分裂前期 (
GV
期)で停止している.こ
の時期の卵子を卵胞から摘出し
i
nv
i
t
r
oで培養すると
ができる.そこでこの培養法を応用して
第二減数分裂中期まで進行させること
体細胞有糸分裂や i
nv
i
t
r
oで、生殖細胞の減数分裂の進
r
i
s
e
o
f
u
l
v
i
n(
GF
)を体外成熟
行に影響を及ぼし,染色体の数的異常を起こすことが知られている G
中のマウス卵子に暴露し,減数分裂の進行や染色体数に及ぼす影響を調べた.
[材料および方法 1
3~4週齢の ICR雌マウス (Slc:ICR) に妊馬血清性性腺刺激ホルモ ン を投与し, 4
8時間後に卵正
細胞に包まれた卵子を採取した.培養液には修正 W
h
i
t
t
e
n
'
sMediumを用い,卵子は 5%炭酸ガ
ス
, 3
7C
の条件で培養した. GFは
, 1
,3および、 1
0
μg
/
ml
の濃度になるようにジメチルスルフオ
0
キシドに溶解して培養液に添加した.培養終了後卵正細胞を除去して卵子を観察するととも
に
, GV
期以外の卵子については染色体の伸展標本を作製し,第一減数分裂中期 (
M 1)および第
の染色体像を観察した. MIIについては染色体数を数えた.
二減数分裂中期 (MI)
[結果]
0, 1
,3
および、 10μg/
mLの GFで 1
5時間培養した結果, 3μg
/mL
以上の群で、
第一減数分裂前期
あるいは M Iに停止する卵子の割合が用量依存的に増加し, 10μg
加 L群では MIIまで進行した
加 L群でMIIまで進行した卵子では染色体数異常の発生
卵子は認められなかった.また, 3μg
率が増加した .10μg
加 Lの濃度で暴露時間の違いによる影響を調べ た結果, GF
はGV
期から M
Iまでの過程に作用すると染色分体の分離異常を起こし, M Iから MIIまでの過程に作用する
と減数分裂の進行の遅れや D
i
p
l
o
i
dを起こすことが示唆された.
8
0
(財)安評センター研究所報
第1
0
巻
2000
第5
8回日本癌学会総会記事, p
4
3
6, 1
9
9
9より転載
B6C3Flマウスの自然発生性肝腫蕩についての解析 E
~ p16INK4aお よ び p19ARFの 検 索
飯田麻里 l人 岩 田 聖 ¥ 榎 本 民 ¥ 竹 石 桂 一 2
(
' (財)食品農医薬品安全性評価センタ一、
2静岡県立大学生活健康科学研究科)
,
P
a
t
h
o
l
o
g
i
c
a
la
n
a
l
y
s
i
sont
h
es
p
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n
t
a
n
e
ous
l
y
o
c
c
u
η
i
n
gl
i
v
e
rt
u
m
o
r
so
fB6C3F micem~detection o
f
p
1
6
I
N
K
4
a
a
n
dp19ARF~
:M
ariIIDA1
ペ
H
i
j
i
r
iIW
ATA1,MakotoENOMOT01,K
e
i
i
c
h
iTAKEISHI2
(
1An-pyoCenter,
2U
n
i
v
.o
fS
h
i
z
u
o
k
a
)
[目的]
最近では発癌性物質の安全性評価が肉眼、組織観察だけでなく遺伝子レベルで行われるよう
になった。発癌性物質の安全性評価に使用されている B6C3Flマウスの自然発生性肝腫虜の 60
%には Hr
a
scodon61の変異が関わっており、我々も本病変における各種遺伝子の変異につい
N
K
4
aおよび p19A町の変異を検索した。
て検索を進めているが、今回、癌抑制遺伝子である p16I
[材料と方法 1
例(肝
2年間の発癌性/毒性試験に使用された B6C3Flマウスで観察された自然発生性肝腫揚64
細胞腺腫 :
2
0
例、肝細胞癌 :
4
4
例)についてパラフィン切片から DNAを抽出し、 n
o
n
悶 PCRSSCP
A
I
N
K
4
a
町(それぞれのエクソン
と共通のエクソン
法で p16
および p19
1
2
)の変異を検索した。
[結果および考察]
I
N
K
4
a
p16
.
1% (
2
刷)であった。また p19組
エクソン 1の変異率は 3
F エクソン 1
およびエクソン
2の変異は見つかっていない。以上の結果から、自然発生性肝腫蕩の発生に p16INK4aおよび
p19ARFの変異はあまり関与しないことが示唆された。さらに最近、腫虜発生における r
a
s
活性
y
c
l
i
nD1の過剰発現との関係が報告されており、本病変についても現在検討を進めている。
とc
8
1
B
a
r
t
l
e
t
tと Leveneの等分散検定に対す る有意差検出力 の比較検討
平 成1
1年 度 日 本 産業 衛 生 学会 東 海 地 方 会 , 1999-11-6名古 屋 大 学 医学 部 , 口 演番 号 2
1
1
Bar
t
1
e
t
tとLeveneの等分散検定に対する有意差検出力の比較検討
0小林克己 1,3・大堀兼男 2 ・金森雅夫 3 .竹内宏一 3
(
1 (財)食品農医薬品安全性評価センター,
2静岡産業大学メ浜松医大公衆衛生)
[目的]
等分散検定の目的は,多群間の分散の分布状態を把握して分布を利用する検定または分布を
利用しない検定のどちらかで定量値を吟味する判断材料として一般的に使用されている.ほと
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定が使用されている.最近B
a
r
t
l
e
t
tの等分
んどの毒性試験では,等分散検定に B
散検定の有意水準を 5%から 1%に変更したり
B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定を使用せず、
に直接分布を利
用した検定法が散見される.多群設定の場合の等分散検定には, B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定以外にも
1
)
L
e
v
e
n
et
回 t
がある. Leveneの等分散検定は海外の文献で、
時折使用されており, B
a
r
t
l
e
t
tの等分散
検定に比較して検出力が低いといわれている.今回 Leveneの等分散検定の手、法および、B
a
r
t
l
e
t
tの
等分散検定と Leveneの等分散検定による有意差検出力の比較を紹介する.
[材料および方法]
Leveneの等分散検定の計算法:各群の平均値から各個体値を引き,それを絶対値とし一元配
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定は常法 (
M
u
s
c
o
tCATVol
.1
,YDK株~,東京)に
置の分散分析法で吟味する. B
従った.
両者の
計算値は,毒性試験から得られた生化学値を使用し, BTおよびLeveneの等分散検定で、
p値を比較した.検討材料は,
1
)6
群中大きい分散が各 1
,
2
,
3
,
4および5群存在する場合. 2
)等分
散および不等分散の例で群内動物数が変化した場合.
[結果および考察]
B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定に比較して Leveneの等分散検定は, 6
群中大きい分散が各 1
,
2,
3,
4および
5
群存在する場合で 1
ユ4.9倍(表 1
),等分散では両者の差はなか っ た(表2). 不等分散では 3~>
2
5倍のp値が認められ,異なった分散が含まれる場合B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定に比較して Leveneの
等分散検定は検出力が低か った(表2
).F
i
r
t
l
e
t
tの等分散検定は非正規性の分
n
n
e
y2)によるとカ'i'sa
布に対して感度が高く,データの等分散性検定には信頼性が欠けること,そもそも分散に一様
性がなくても驚くことはないと述べてる.
8
2
(財)安評セン ター研究所報 第 1
0
巻
表
2000
1 分散の違いによる L
e
v
e
n
eと B
a
r
tl
e
t
tの等分散検定の実質有意水準の比較
26週後のイヌの GPT値
, 4匹/群 X6
群
分散の小 さい群数
分
数
実質有意水準 (%)
6群
B
a
r
t
l
e
t
t
L
e
v
e
n
e
2
3
0
.
0
1
.0
5
2
.
0
0
230.
0
2
3
0
.
0
0
.
5
4
3
.
2
1
230.
0
2
3
0
.
0
1
.77
8
.
7
3
分散の大き い群数
1
群
2群
3群
4群
5群
5
/
1
8
.
7
1
0
.
9
1
5.
6
8
.
7
1
5
.
0
4
/
2
8
.
7
1
0
.
9
1
5
.
6
8
.
7
3
/
3
8
.
7
1
0
.
9
1
5
.
6
2
3
0
.
0
2
/
4
8
.
7
1
0
.
9
2
3
0
.
0
2
3
0
.
0
230.
0
230.
0
5.
84
2
0
.
3
1
/
5
8
.
7
2
3
0
.
0
2
3
0
.
0
2
3
0
.
0
230.
0
2
3
0
.
0
.4
31
5
3
.
8
6
/
0
8.
7
1
0.
9
1
5
.
6
8
.
7
1
5
.
0
8
.
7
9
9
.
1
7
9
.
5
表 2 群内標本数の違いによる
L
e
v
e
n
eと B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定の実質有意水準の比較
一 一 等分散の場合一一
一 一 不等 分散の場合 一 一
9ヶ月のイヌのコレステロール値
9ヶ月のイヌの コレ ステ ロール値
動物
数
群
動物
e
n
巴
B
a
r
t
l
e
t
t L巴v
数
群
平均値
分数
4
2
.
2
6
.
6
9
平均値
分数
1
2
3
1
3
0
2
1
2
2
1
3
1
2
.6
41
11
.
3
3
1
2
4
1
1
8
3
4
2
.
2
11
.
7
4
41
.6
8
6
.
8
4
2
.
2
5
.
9
6
l
5
実質有意水準(%)
4
1
2
3
1
3
0
1
1
2
3
1
3
0
9
9
.
9
9
9
.
9
5
1
0 2
1
2
2
1
3
1
1
0 2
.6
41
1
0
.
0
3
1
2
4
1
1
8
3
4
2
.
2
4
1
0.
4
1
2
3
1
3
0
4
1
1
2
3
1
3
0
30 2
1
2
2
1
3
1
3
1
2
4
1
1
8
4
1
2
3
1
3
0
9
9
.
9
9
9
.
9
9
9
.
7
9
8
.
7
41
.6
7
7
.2
42.
2
5
.
7
4
2
41
.6
9
.
6
8
3
4
2
.
2
1
0
.
5
4
41
.6
7
7
.4
1
4
2
.
2
5.
64
20 2
41
.6
9
.
5
1
3
4
2
.
2
1
0.
5
1
5
.6
41
7
3
.
1
4
2
.
2
5
.
5
8
2
.6
41
9.
42
3
42.
2
1
0
.
1
4
.6
41
7
2
.3
1
4
2
.
2
5
.
5
4
30 2
41
.6
9
.
3
5
3
42.
2
8
.
9
3
4
41
.6
71
.8
4
2
5
実質有意水準(%)
e
n
巴
B
a
r
t
l
e
t
t L巴v
4
.
3
9
1
3.
1
0
.
0
2
4
0
.
5
9
0
.
0
0
0
0
.
0
2
0
.
0
0
0
0
.
0
0
1
0
.
0
0
0
0
.
0
0
0
0
.
0
0
0
0
.
0
0
0
8
3
B
a
r
t
l
e
t
tとLe
veneの等分散検定に対する有意差検出力の比較検討
毒性試験では,無毒性量と毒性量を把握するため高用量群では,極めて多量の薬物を投与す
ることから,分散および標本数の著しい変化が見られる.従って, B
a
r
t
l
e
t
tの等分散を使用した
場合,長期の試験では, 35%以上の定量値に有意差 (p<O.05)が認められ,順位和検定となる.
t
e
e
lの検定を除いて検出力が
現在,一般的に使用されている多重性を考慮した順位和検定は, S
極めて低い .低用量群で有意差が検出できる群内動物数は, S
c
h
e
f
f
eが22,H
o
l
l
a
凶
n
吋
l
de
釘r
1
円9,T
urkyが 1
8,D
u
n
n
e
t
tが 1
5,W
i
l
l
i
a
m
s
-Wilcoxonが8,S
t
e
e
lが4匹である.
v
e
n
e
等分散検定の計算手法は,各群の平均値から個体値がどのくらい離れているかを分散
Le
検定の前に一様'性の検定を実施する F
検定と同
を用いて吟味し,計算法は分散分析である. t
様な考えである. B
a
r
t
l
e
t
tの等分散検定は,正規性を前提としていない検定で,その計算式も対
数を使用し,棄却限界値はカイ分布を使用している.用手法では計算が煩雑である.
以上の結果, Leveneの等分散検定の使用によって定量値を順位化する順位和検定を選択する
場面が少なくなり,第二種の過誤を防ぎ,被験物質の影響が考察しやすいと考えられる.
[引用文献および引用資料]
1
) 青木繁伸, h
t
t
p
/
/
w
w
w
.
s
i
.
g
u
n
m
a
u.
a
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l
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,
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.
1
9
9
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n
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2
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oe
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i
t
o
r,
J
.
T
o
x
i
c
o
l
.S
c
i
.,
20,1
6
5
1
7
0,1
9
9
5
8
4
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2000
実験病理組織技術研究会第 2
3団関西部会例会講演要旨集, 1
9
9
9より転載.
TH抗体を用いたラ ッ ト副腎髄質の免疫染色
0萩原
孝,山本郁夫,杉浦ひろ子,磯部香里,城間直美
(財)食品農医薬品安全性評価センター
[目的]
カテコールアミン類の局在を証明する方法として合成酵素である T
y
r
o
s
i
n
eh
y
d
r
o
x
y
l
a
s
e(TH),
h
)
命 o
x
y
l
a
s
e(
DBH)などに対す
Ar
o
m
a
t
i
cL-aminoa
c
i
dd
e
c
a
r
b
o
x
y
l
a
s
e(AA
DC)および、Dopaminesる抗体が知られている.我々も,第 1
2
1回日本獣医学会において脳のドーパミン性神経細胞の
マーカーとして,ラットではTH
抗体が最も良い結果であったことを報告した.今回, TH
抗体
を用いラット副腎髄質を染色したところ,従来用いてきたC
h
r
o
m
o
g
r
a
n
i
nAに比べ容易かっ明瞭
に副腎髄質を染め出すことができたので報告する.
[材料と方法1
1
9週齢の雄F344ラットの副腎5例を 10%中性緩衝ホルマリン固定し,常法に従いパラフイン
次抗体としてTH
抗体 (
ETI社 )
お よび
切片を作製した.免疫染色はLSAB;
法(ダコ社)を用い, 1
ChromograinA抗体(ダコ社)を室温1時間反応させDABで発色,ヘマトキシリンにて核染色を
行った.また,長期毒性試験で観察されたラット副腎の褐色細胞腫と診断した標本についても
同時に染色を行った.
[結果]
TH
抗体および、ChromograninA抗体ともに副腎髄質細胞を選択的に染め出した.しかし, TH
抗体を用いた場合には髄質細胞の染色性が濃く,皮質と髄質の境界も明瞭であったのにくらべ
ChromograinA抗体を用いた場合,多少髄質細胞の染色性が淡く,皮質と髄質の境界も不明瞭
であった.褐色細胞腫と診断された組織標本においても同様で'TH
抗体がC
h
r
o
m
o
g
r
a
n
i
nA抗体と
比べ良好な染色結果であった.
8
5
1
0%中性緩衝 ホルマ リン国定液での長期保存性
実 験病 理 組織 技 術 研 究会 第 23回 関 西部 会例 会 講 演要 旨集 pl,1999よ り 転載
1
0%中性緩衝ホルマリ ン固定液での長期保存性
0城間直美
・山本郁夫 ・杉浦ひろ子・磯部香里・萩原
孝
(
財)食品農医薬品安全性評価セン ター
[目的]
現在, GLP上実験動物の病理組織標本は 5 ~ 1O年さらにそれ以上の保存が必要 となる場合が
ある 1) 今回我々は,臓器を固定し 1
,3,5,7および1
3年経過した材料を用い,人工産物の有
E
.染色および免疫染色の染色性 の変化 を検討したので報告する .
無
, H.
[材料および方法]
0%中性緩衝ホルマリ ン固定液を入れ替 えて,プラス
材料は,固定,切り出し後,保管前に 1
チ ック製シール容器で密閉し保管した . これらの中から 1
,3,5,7および1
3年間経過したF3
44
ラ ッ ト ( 8 3 ~ 1 09週齢,対照群,各25例 ) の肝臓および腎臓を常法に従いパラフ イ ン包埋し,薄
切後H.
E.
染色および免疫染色 (αAct
i
n)を行な った.
[結果および考察]
H.E
.染色 を行な った結果,年数が経過するごとに ヘマ トキシ リンの染色性がやや低下した
が,染色性 については大きな 問題はなかった . しかし,肝臓類洞内や腎臓の 間質 に結晶様構造
が小領域であるが多数観察 された .本研究会でも脇田ら 2)が報告し,文献的にも炭酸カル シウ
ムによる偽石灰の沈着に類似していた 3) なお
コ ッサ反応には陽性を示した .本結晶様構造
についての詳細は,現在検討中である .
また,免疫染色では全てにおいて陽性 を示したが固定後3年目以降,陽性部位の染色性が低
下した .
[参考文献]
1
) 医薬品 GLP
解説
1
9
9
8
:6
56
9,1
9
9
8
2
) 脇田 隆次,
他:
ホ ルマ リン固定率H
織の長期保存性 -6年間の経時的な pH変
イじと札織の染色性一
:
75
8
0,1
9
93
実験病理組織技術研 究会会誌, 2
3) 病理組織標本のアーテイファク ト 一 正 しい標本作製とその鑑別 一 医歯薬出版株式会社:
5
65
9,1
9
8
2
8
6
(財)安評センター研究所報
第1
0巻 2000
第1
0回前臨床血液研究会抄録より転載
H
*
l
E(
V
e
r
.3
.
0
) と AD
V
I
A
1
2
0における動物血データの比較
杉山豊
(財)食品農医薬品安全性評価センター
[目的]
バイエル社の新製品である ADVIA120のMULTI-SPECIESSOFTWARE(Ve
r
.1
.
107MS)の基本
性能を確認するため,従来機種である H*lEを対象に各種動物血をサンプルとして評価を行う.
[材料および試験方法]
相関性試験
0
0サンプ jレ以上用意し,下記の項目について比較した.
ラット,マウスおよびイヌについて 1
0
例は体重 100g当たり 1.5mLの頚静脈採血を行
なお,貧血サンプルを得るため,ラットの 1
い,その 4日後に採血した鴻血サンプルを用いた.同様に,イヌ 5
例は体重 1
k
g当たり 15mL潟
血したサンプルを用いた.
.既存機種 (H*1EVer
.3
.
0)との相関係数の算出.
・白血球分類値について目視との相関係数を求める .メイ・ギムザ染色をした標本を 200カ
ウントする.
・網赤血球についてニューメチレンブルー染色をした標本をブレッカ一法にて鏡検し,相関
係数を求める.
同時再現性試験
イヌ無処置動物血5mLを5
検体用意し, 1
0回の転倒混和, 1
0回の吸引測定, 1
0回の転倒混和,
1
0回の吸引測定, 1
0回の転倒混和, 3回の吸引測定し,合計2
3回の吸引測定を行った.
直線性試験
1
.RBCおよび目的の直線性試験
イヌ正常動物血を 40mL用意する. lOmLを4本に分けそのうちの 2本を 4C、
で500g2
5分間遠
0
心分離を行い, PLTF
r
e
eP
l
a
s
m
aを採取し,それを (
O%pool)とする.それと RBC1
0
0
0
万の全
血を用 い100%,
80%,
60%,
40%,
20%,および0%の希釈倍率で,希釈直線性を検討する
2.PLTおよびWBCの直線性試験
0
0
0
g1
0
分間遠心分離を行い, WBC9万
, PLT300
万
ラット無処置動物血を 40mL用意する .1
の検体と O%poolとで, 100%,W %,~%, ~%, W %,0%の希釈倍率で,希釈直線性を
検討する.
3
.R
e
t
i
cの直線性試験
Retic%が 12%以上のサンプルと 0%(O%pool)のサンプルを用いて 100%,80%,60%,40
%
, 20%,0%の希釈倍率で,希釈直線性を検討する.
8
7
H*lE (Yer
.3
.
0
l と ADYIAl
2
0における動物血データの比較
・
[結果]
相関性試験
CBC(
表1)
H*lEとの相関はおおむね良好な値を示した.主要項目の WBC,RBC,Hgb,HCT,
MCV,PLT,Neut%および、Lymph%で、はいず、れの動物種も r
=
0.
9以上を示した. Mono%お
よびEos%についてもマウスの Mono%で
、
はr
=0
.
3
7
0と低値を示したが,その他は r
=
0
.
6
5以上
を示した.
、
は PLTが高値傾向を示し, MCVが低値傾向を示した.イヌでは MPV
しかし, ADVIA120で
およぴBaso%が高値を示した.
.DIFF(目視v
sADVIA120およびH*lE(
表2
)
ADVIAおよび日*lEとも目視との比較では, Neut% および~ymph% が良好な相関を示した.
ラットおよびマウスでは H*lEより ADVIAが良好な値を示したが,逆にイヌでは H*lEが
ADVIAを上回った. Mono%はマウスで、
r
=0.
1
6以下と低い値を示した. Eos%はラ ットおよ
びマウスではr
=
O.
4
前後と低値を示したが,高値サンプルが含まれたイヌで、はr=
0
.
8以上と良
好な値を示した.
.RC(目視v
sADVIA120 表 3
)
ラットで、は r
=0.
8
8,イヌで、は r
=0
.
8
9と良好な値を示したがマウスでは r
=0.
267と低い相関を
示した .
同時再現性試験(表4
)
CBC主要項目について良好な CV%値を得た.白血球分類値で、
の Lymph%値が 1
6
.
5と高値を示
した.
直線性試験(表5および6
)
イヌ 血液を用いた RBCおよび目的試験で、は, RBCがr
=0
.
9
9
9,Hgbがr
=0
.
9
9
9と良好な値を示し
た. WBC試験では r
=0
.
9
9
4そして PLT
試験では r
=
0
.
9
9
9と良好な値を示した.
考察
CBCのH*lEとの相関試験については別表のとおり WBC,RBC,Hgb,MCV
共に,切片がほ
ぼ原点を通る回帰式となり相関係数も良好な値を示したことから,両機種聞に特性の違いが
ほとんど認められないと判断した. PLTについては ADVIA120が少し高い傾向を示したが,
これは検出領域の変更(上限スレ ッショルドを 20から 6
0
f
lに変更し,大型PLT
が存在する際の
最適化を行った)により,大型 PLTが存在するサンプルに違いが生じたものと思われた.
Di
妊の目視との相関試験では絶対数の多い Neut% とLymph%が予測したとおり良い相闘を
示したが,イヌについては Mono%およ UEos%については H*lEに比べ悪い結果となった.こ
れは検体処理時間を増加させた関係で,ペルオキシダーゼ染色のインキュベーション時間な
どが短縮され,一部の細胞集団の染色不良が生じたことなどが考えられた.
網赤血球の相関試験では,ラットおよびイヌにおいて良好な相関を示した.しかし,マウ
スの相関係数が低値であったことについては測定値のばらつきが小さかったことが原因と考
えられ,潟血サンプルなどを用いてデータ解析する必要がある.
同時再現性および直線性試験ではカタログに記載されている基本スペックどおり良好な結
果を得られた.以上のことから ADVIA120はルーテイン検査用の血球計数装置として充分耐
えうるものと判断した.
8
8
表 1 ADVIA120と H1Eとの相関データ
A
pg
0冶 /mm^3
1
0^
3
/
mm^
3
MCH
MCHC
g/d
l
%
PLTx
MCVmicrom 3
RBCx1
HCT
%
HGB
H1E
ADVIA
H1E
ADVIA
H1E
H1E
ADVIA
ADVIA
ADVIA
H1E ADVIA
H1E
ADVIA
H1E
102
102
102
102
102
102
102
102
102
102
102
102
102
102
1
7
.
6
1
9
.
0
7
.
5
2
5
5
.
5
5
8
.
3
31
.8
3
2
.
5
1144
1
4
.
2
8.
04
1021
4
3
.
6
1
4
.
1
44.5
1
.
0
0
.
6
6
3
.
7
4.
3
1.
2
0.
9
0
.
8
0
.
8
0.
68
339
304
0
.
8
2
.
6
2.
4
y=0.842x+6.431
y=0.752x+3.
401
y=0.878x+3.242
yニ 1.107x+13.225
y=0.995x+0.
037
y=0.980x+0.
675
y=1.035x-0.
6
6
9
戸 0
.
8
9
1
r=0.952
r=0.988
r
=
0
.
7
3
1
r=0.992
戸 0
.970
戸 0
.944
Rat
Name
Method
N
Mean
D
S.
Mouse
Name
Method
N
Mean
S.D
Dog
Name
Method
N
Mean
S.D
A
03/mm^
pg
覧
3
百
3
MCVmicrom 3
MCH
MCHC
0冶 /mm^
PLTx1
g/d
l
RBCx1
HCT
HGB
H1E
ADVIA
H1E
ADVIA
ADVIA
H1E
ADVIA
H1E ADVIA
H1E
ADVIA
ADVIA
H1E
H1E
108
108
108
108
108
108
108
108
108
108
108
108
108
108
5
0
.
6
5
2
.
9
1
5
.
3
1
6
.
1
3
0
.
1
3
0
.
4
4
7
.
0
1
4
.
3
14.
3
9
.
3
5
8.
90
1185
47.3
1143
1
.3
0
.
3
0
.
3
0
.
5
0
.
7
0
.
3
4
1.
2
116
109
1
.
7
0
.
5
0.
5
0.
36
1
.
6
y=0.915x+2.221
y=0.
621x+5.278
y=0.
503x+14.
876
y=0.884x+1.
641
y=0.988x+0.558
y=0.970x+76.
426
448
y=0.848x+7.
r=0.666
戸 0
.650
戸 0
.917
r
=
0.
916
戸 0
.958
戸 0
.918
r
=0.885
角
A
0
出
冶/
mm^
3
MCH
pg
HGB
g/d
l
RBCx1
%
PLTx
1
0^
3
/mm^
3
MCVmicrom 3
MCHC
HCT
ADVIA
ADVIA
H1E ADVIA
H1E ADVIA
H1E
ADVIA
H1E
ADVIA
ADVIA
H1E
H1E
H1E
109
109
109
109
109
109
109
109
109
109
109
109
109
109
1
4
.
2
6.
84
6.
43
6
5
.
3
6
8
.
0
2
0
.
9
2
2
.
1
31
.9
4
4
.
6
43.
7
1
4
.
3
3
2
.
5
338
291
0
.
6
6
0
.
6
1
2
.
3
2.
3
1
.
0
0
.
9
0.
6
0
.
6
4.
5
4
.
3
1
.
5
1
.
5
69
60
yニ 1.
076x-0.075
y=0.
990x-1.004
y=1.
037x-0.
455
y=0.949x+0.727
y=0.
534x+14.
613
y=1.034x-0.581
yニ 1.102x+18.053
r
ニ0
.955
戸 0
.
985
r
=0.944
戸 0
.983
r
=0.990
戸 0
.964
r=0.
545
雪湖国司裁
(浬)品市川哨 介 い¥ W I
灘o疎
MOOD
。
。
、
ο
、
。
Cコ
回 二 開 (︿E
e凶(︺ ) 什 ﹀ ロ ヨ ﹀ -MCFh討ヰ炉型ぎ旨 刈l wquR簿
表 1 ADVIA120と H1Eとの相関デー タ
(財)安評センター研究所報
第1
0
巻
2
0
0
0
表 2 ADVIA120と H1Eと目視データ(白血球百分比)
Mouse
Rat
Dog
Name
Method
N
Mean
S.
D
% LYMPH
NEUT
%
MONO
%
EOSN
%
目視
ADVIA
ADVIA
目視
ADVIA
目視
ADVIA
白夜
108
108
108
108
108
108
108
108
17.
7
17.
4
7
8
.
1
7
8
.
6
1
.
6
2
.
6
2.
4
1.
4
7.
3
8
.
8
7.
5
9
.
1
0
.
6
1
.8
1
.3
1
.3
y=O.
726x+5.
015
y=0.697x+23.32
y=0.
061x+1
.437
y=0.
49
1x+1.669
戸 0
.
874
r=0.846
戸 0
.168
戸 0
.
485
Name
Method
N
Mean
S.
D.
% LYMPH
%
NEUT
MONO
%
%
EOSN
目視
H1E
H1E
目視
H1E
目視
H1E
目視
108
108
108
108
108
108
108
108
17.
4
7
8
.
2
7
8
.
6
17.
8
1
.9
2
.
6
2
.
2
1.
4
7.
8
8
.
8
8
.
0
9
.
1
0
.
8
1
.8
1
.5
1
.3
753x+4.657
y=0.723x+21.326
y=0.038x+1
.754
yニ0.
y=0.532x+1.
456
r
=0.851
r=0.825
r=0.084
r
=0.
484
Name
Method
N
Mean
D
.
S.
%
MONO
%
NEUT
% LYMPH
EOSN
目視
ADVIA
目視
ADVIA
目視
ADVIA
ADVIA
102
102
102
102
102
102
102
18.
9
7
4
.
6
7
4
.
5
2
.
5
5
.
5
21
.
1
1
.1
7.
0
7.
4
7.
4
9
.
3
0
.
9
3.
4
0
.
5
y=0.716x+21.251
y=0.131x+1
.
8
1
5
y=0.199x+0.96
y=0.874x+4.582
戸 0
.
484
r
=
0
.
3
4
1
r=0.896
r=0.920
Name
Method
N
Mean
D.
S.
% LYMPH
%
%
MONO
EOSN
%
NEUT
目視
目視
目視
H1E
H1E
目視
H1E
H1E
102
102
102
102
102
102
102
102
0.
9
4
5
.
5
1
.2
2
2
.
0
1
8
.
9
7
3
.
5
7
4
.
5
2.
7
.
8I
9
.
3
0
.
9I
3.
4
7.
4I
7.
4
433x+0.
778
y=0.737x+18.
637
y=0.160x+1.
518
y=0.
yニ0.
893x+5.
099
戸 0
.876
r
=0.
6
1
7
戸 0
.894
r
=0.
476
Name
Method
N
Mean
D.
S.
弘
%
% LYMPH
MONO
EOSN
NEUT
%
目視
目視
目視
ADVIA
目視
ADVIA
ADVIA
ADVIA
94
94
94
94
94
94
94
94
4
2
7
.
7
6.
1
8
.
2
2
.
5
2.
3
3
1.
.8
5
9
.
5
61
1
.9
1
.8
7
.
5
1
.
7
3
.
8
8
.
7
8
.
7
7.
9
y=0.232x+4.
244
y
=
O
.785x+0.
713
y=0.887x+6.
812
y=0.900x+3.
873
戸 0
.
5
1
1
r=0.848
戸 0
.899
r
=
0
.
8
37
Name
Method
N
Mean
S.D
%
% LYMPH
MONO
EOSN
%
%
NEUT
H1E
目視
H1E
目視
H1E
H1E
目視
日視
94
94
94
94
94
94
94
94
2.
3
2
7
.
7
5
.
9
8
.
2
2
.
6
6
0
.
3
6
1
.
8
3
0
.
7
1
.8
1
.9
2
.
1
8.
7
7
.
6
7
.
5
3
.
8
8
.
7
y=0.815x+0.773
y=0.
859x+6.919
y=0.291x+3.512
y=0.
911x+4.032
戸 0
.850
r=0.519
r=0.842
戸 0
.
9
1
1
%
目視
102
0
.
9
0
.
8
好塩基球は目視データが全て0のため省略した
9
1
H叶 E (
Ve
r
.3.
0J と ADVI
A1
2
0に お け る 動 物血 デ ー タ の 比 較
表 3
ADVIA120と 目 視 デ ー タ (網 赤 血 球 率)
Rat
Name
Method
4
0
N
4
.
2
Mean
S.
D.
Mouse
Name
Method
N
Mean
9
2
目4
視
0
4
.
7
RC%A
ADVIA
%
RC%A
ADVIA
%
目視
50
5
0
2.
9
2
.
4
0.
8
0.
5
y
=
0
.
1
5
6
x
+
2.
5
1
3
戸 0
.
2
6
7
Name
Method
N
Mean
S.
D.
九
y=1
.2
生
5
6
x
L
-L
14
2
2
J旦戸 0
.
8
8
1
S.
D.
Dog
RC%A
ADVIA
目視
9
4
9
4
0
.
6
0.
8
0.
3
0
.
6
y二 0.
6
1
1x
+
0
.
2
2
0
戸 0
.
855
(
財)
安評セ ンター研究所報
第1
0巻
2
0
0
0
表 4 同時再現性結果
サンプル
1
回目
2回目
3回目
4回目
5回目
九
平均 CV
サンプル
WBC
3
.
5
3
.
0
2.
7
2
.
6
2
.
5
2.
8
WBCP 「百長 c
2.
4
1
.0
3
.
3
0
.
9
1
.0
2.
2
1
.7
0
.
8
2.
4
1
.
1
2.
4
1
.0
HGB
0
.
9
0
.
8
0
.
7
0.
8
0.
8
0
.
8
HCT
1
.
1
1
.2
1
.4
1
.0
1
.
4
1
.
2
MCV
0.
6
0.
7
0
.
7
0
.
6
0
.
8
0.
7
MCH
0
.
9
1
.
0
0
.
8
0
.
7
1
.0
0
.
9
CHDW HGBc
0
.
8
1
.
1
1
.2
0
.
9
0.
9
1
.1
1
.
1
0
.
9
0.
9
1
.
1
1
.
0
1
.0
RDW
0
.
4
0
.
7
0
.
6
0
.
8
0
.
6
0
.
6
HDW
1
.
7
1
.
3
2
.
0
1
.4
1
.
6
1
.6
MCHC
0
.
9
1
.1
1
.3
0
.
9
1
.
4
1
.
1
CHCM
0
.
9
1
.0
0
.
9
0.
9
1
.0
0
.
9
CH
0
.
3
0
.
3
0
.
2
0.
4
0
.
3
0
.
3
PLT
3.
9
3
.
7
2
.
6
2
.
5
2
.
2
3
.
0
MPV
7
.
1
2
.
8
3.
3
2
.
1
4.
7
4.
0
MPC
6
.
1
2
.
3
3
.
0
2.
1
3.
9
3
.
5
MPM %NEUT %LYMPH %MONO
1
.
1
4
.
1
1
7
.
0
1
2
.
1
0
.
8
3
.
1
1
9
.
7
7
.
7
0
.
8
5.
3
11
.3
9
.
2
0
.
5
3
.
6
1
6
.
1
7
.
7
1
.0
4
.
3
1
8
.
6
6
.
9
0.
9
4
.
1
1
6
.
5
8.
7
サンプル
切EOS
九BASO
九LUC
1
回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV
弘
7
.
2
7.
3
7
.
4
5
.
9
8.
3
7.
2
27.
5
1
5.
8
1
2
.
0
2
3
.
2
1
4
.
5
1
8
.
6
3
4
.
9
3
5
.
3
2
4
.
6
4
0
.
2
2
7
.
2
3
2
.
4
#NEUT #LYMPH#MONO #EOS
4
.
2
1
8
.
3
11
.2
7
.
8
3.
2
.0
7
.
5
8.
0
21
5
.
0
1
2
.
3
9
.
5
6
.
7
3
.
0
1
7
.
6
7
.
2
4.
7
4
.
2
4
6
.
8
8
.
0
1
9.
3
.
9
1
7.
7
8
.
5
7
.
0 I
サンプル
#BASO
2
7.
5
1
4
.
3
9
.
7
21
.4
1
4.
7
1
7.
5
詳
しUC
L
I
35.
3
21
.2
23.
7
42.
3
1
8.
5
2
8.
2
2.
5
3.
3
3.
3
2
.
5
3
.
6
3.
1
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV%
サンプル
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV%
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV%
サンプル
1回目
2回目
3回目
4回目
目
5回
平均 CV%
%PMN
3
.
1
1
.5
1
.
7
2.
8
1
.
8
2.
2
NNRBC
非D
IV
/O
!
#DIV
/O
!
#DIV
/O
!
#DIV
/O
!
持D
1V/
O
!
#D1V/
O
!
MPXI PxNoise%BLAST %MN
/O
! 9
3.
8
1
5
.
2 #DIV
.
7
/O
! 6.
4
3.
1
1
2
.
3 #DIV
8
.
6
/O
! 3.
2
1
2
.
4 #DIV
4
.
7
/O
! 7.
8
3
.
6 #DIV
4 #DIV/O
! 5
.
1
4
.
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4
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L
R
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IV
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1
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1
.
4
2
.
8
1
1.
6
1
93
H*l
E(
Yer
.
3.
0) と ADYI
A120における動物血データの比較
表 4
%MRetics
1
回
目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV弘
1
0
.
9
1
9
.
5
1
0
.
7
20.
0
2
2
.
2
1
6
.
7
サンプル
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平均 CV%
サンプル
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
平 均 CV%
94
4デ
サンプル
t
i
c
s
I
司 時 再 現性 結 果
IRF-H IRF-M+H
!MCVg I
CHCMgI CHg
3
.
4
42.
3
3
25
.
5
8
.
5
48.
3
3
7
.
6
33.
4
4
2
.
3
2
5
.
5
3
8
.
5
4
8
.
3
37.
6
1
0
.
7
1
9
.
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0
.
0
1
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1
1
5.
5
MCVr
CHCMr
CHr
RDWr
1
.
0
1
.3
2.
7
1
.7
1
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1
.2
2.
0
1
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0.
8
1
.3
0.
5
0.
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1
.
4
1
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0
.
6
0
.
8
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.
9
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1
7
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1.
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1
1.
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1
.
1
1
.
5
~ eltaMCV
3
.
5
4
.
8
11
.4
7
.
2
4.
4
6.
2
deltaCトICMr NEUTx NEUT
y
3
.
0
-4.
4
-8.
9
一7
.
3
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4
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.
6
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.
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.
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.
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5
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0.
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2
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1
0.
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0
.
1
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1
HDWr CHDWr deltaCHr
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2
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3
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.
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7
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.
9
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5.
5
MNx
MNy
4
.
0
3.
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.
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6
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2.
5
2
.
0
2
.
8
2.
2
6.
4
7.
1
20.
2
1
2.
5
9.
4
11
.
1
(財)安評セ ン タ ー 研 究 所 報 第 1
0
巻
表5
RBCおよ び HGB直線性試験結果
濃度 RBC
o0.00 傾き 10.294
r 1
.
0
0
0
20 1
.
9
9
40 3
.
9
3切 片 -0.
41
5
6
05
.
9
4
8
07
.
8
3
1
0
09
.
7
0
表6
WBCおよび P
L
T直線性試験結果
濃度 WBC
o 0.00 i
頃き 1
.
1
6
3
r0
.
9
9
4
2
01
7.
07
40 33.
6
7切片 1
.
894
6
04
3
.
0
1
80 6
7
.
7
8
1
0
08
6
.
7
2
RBC直線性ゲ匂う,1
0.
29x-0.
415
WBC直線性グラ
r=0.
9999
8
.00
6.
00
4.
00
2,00
濃度
100
150
-
0,00
ハ
υnunununUAUnununununU
U
内
nU U
内 n u n u n U
仇
UAUnununununU
0 090 8
07
06
05
04
00000
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y
メ
│
ム払
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.
手
50
I
BC)
1
00
H
。PLT
HGB
濃度
o 0.0 傾き
4.
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2
0 4
.
1
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.
0
0
0
.
6
9
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.
2切 片 0
6
01
2
.
8
8
01
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.
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.5
20
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1
7 切片 0
.
4
9
9
r1
.
0
0
0
635
.
0
3
2
1258 傾き 0
1888
2513
3122
v=4.
64
x+0,698
Hgb直線性グラフ r=0.
9998
25 r 一
一
一
ー
:
!
r
16: x_ ~1894
r=0994
,
0
,
12
.00
50
2
0
0
0
ー
一
ー
ー
PLT
直線性グラフ
3500
3000
20
2500
1
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2000
1500
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0
1000
500
。
ど
5
0
100
1$0
50
100
150
ー5
9
5
F344ラッ
トおよび B6C3F,
7ウ
スの自然発生 Schwannomaについて
第 16回 目 本 毒 性 病 理 学 会 講 演 要 旨 集 ,
:
発生率,発生部{立,種差,雌雄差および組織学的検討
P-I01, p86, 2000よ り 転 載 , 於
岐阜
F
3
4
4ラットおよび B
6
C
3
F
lマウスの自然発生 S
c
h
w
a
n
n
o
m
aについ
て:発生率,発生部位,種差,雌雄差および組織学的検討
細井理代,長谷川和成,木原 亨,宮島留美子,山本慎二,
三上真一,山川誠己,岩田聖,贋内康彦,榎本異
(
財)食品農医薬品安全性評価センター
[はじめに]
F344ラットおよび、B6C3Flマウスで自然発生する末梢神経系の腫傷性病変として Schwannoma
が観察される.これら動物の Schwannomaの 発 生 率 発 生 部 位 種 差 雌 雄 差 お よ び 組 織 像 の 特
徴について,比較検討を試み,興味深い知見を得たので報告する.
[材料と方法]
当センターにおける 2年の長期試験に使用されたラットおよびマウスに観察された自然発生
の病変のうち, Schwannomaと診断された 5
7例 (ラッ ト5
3例,マウス 4例)を用いた.それぞれの
症例は常法に従い田標本を作製し
組織学的検査を行った.症例は Schwannomaが疑われた症
例の中から S
1
0
0
抗体による免疫染色や電子顕微鏡検査により確定診断されたもののみを選択
した.
[結果]
発生率は, F344ラッ トの雄0,
69%(
44/6
3
5
0),雌0,
13%(
9/6750),B6C3Flマウスの雄0,
06%
(
3/5
0
0
0
),雌0,
02%(
1
/5200)であり ,ラ ッ トの方がマウスに比べて高く, また,ラ ッ トでは
雌より雄の方が高い結果で、あった .発生部位は (多い順に記載)ラッ トでは,唾液腺,腰椎,眼
s
夜寓,頚部),心臓,縦隔,皮下組織(背部,腹部,腰部),子宮,三叉神経,
簡内,皮下札織 (
精嚢,甲状腺等で,またマウスでは三叉神経等に見られた.良性/悪性の区別をしてみると,
唾液腺,腰椎,眼嵩内,縦隔,子宮,精嚢,甲状腺等の内臓か ら発生 したものは悪性が多く(例
外;心臓は良性),また皮下組織のうち,頭部付近および腹部付近から発生したものも悪性が
多く,例数は少ないが背部の皮下組織から発生したものはすべて良性の結果であった.その
他,悪性腫療のうち遠隔転移を示した Schwannomaは,眼嵩内,頭部および頚部皮下制裁,唾液
腺など,主に頭部付近の器官から発生したものに多く観察された.組織像における発生率は,
A
n
t
o
n
it
y
p
eAとt
y
p
eBの混合 (
4
0.
4%)>typeA(
3
6,
8%)>typeB(
1
5,
8%)>血管周囲性 (
7,
0%)の
順であ った.血管周囲性の増殖形態を示す Schwannomaの発生部位は,ほとんど皮下組織由来で
あった.
9
6
(財)安評センター研究所報
第1
6回日本毒性病理学会講演要旨集,
第10巻 2000
P2
2,p
.
4
6,2
0
0
0より転載
ラッ ト生殖・発生毒性試験における母動物病理学的
背景データに関する研究 -肝肥大について0木原
亨,細井理代,宮島留美子,山本慎二,三上真一,
山川 誠己,田中亮太,岩 田
聖,榎本異
(財)食品農医薬品安全性評価センター
[はじめに]
ラットを用いる生殖・発生毒性試験では,被験物質投与による影響について妊娠・周産期に
おける生理的変化 との鑑別が時として必要となる.しかし,これらの動物について病理学的検
査に関する報告は殆ど無い.そこで現在
各種生殖・発生毒性試験の病理学検査に対応する
ラット母動物の生理的背景値を集計している.今回は母動物の肝肥大について報告する.
[材料と方法]
当センターで実施した Crj:CD(SD)ラットを用いた生殖・発生毒性試験の対照群に使用した妊
娠1
5,20, P
甫育4および22日目の雌について,体重,胎児数,肝重量および組織学的検索とし
て単位面積当たり肝細胞数およびfJ>
CNA陽性率を計測し
肝組織像に対する妊娠の経時的影響
例を非妊娠群と
について比較検討を行った.なお,各群の 比較の基準として同時期の不妊雌6
して用いた.
[結果と考察]
肝重量は妊娠 1
5日目をピークとして減少する傾向にあった.一方,肝細胞数は妊娠 1
5日目で
は650
前後,妊娠20日日以後ではいずれも 1
0
00
前後であった. また,肝細胞容積を推定する為,
肝細胞数)比を算 出したところ,肝重量と同様に妊娠 1
5日目をピークとして減少する
(
肝重量 /
傾向にあった. PCNAによる肝細胞増殖活性の検討では
妊娠 1
5日目群で非妊娠群の 1
2
倍以上
の高値を示していたが,妊娠20日以降では非妊娠群とほぼ同等或いはそれ以下にまで低下して
5日の時点では主に肝細胞の肥大,妊娠
いた.以上の結果から,妊娠中の肝重量の高値は妊娠 1
20日以降では細胞数の増加によるものと考えられた .現在,肝重量減少に対する a
p
o
p
t
o
s
is
関与
の有無および肥大肝細胞の微細構造を含め
詳細な検討を進めているところである.
9
7
加 齢 F344ラ ットの黒質におけるドーノTミン性神経細胞の減少について
第 1
6回 日 本 毒 性 病 理 学 会 ( 示 税 報 告 ) よ り 転 戦
加齢 F
3
4
4ラットの黒質におけるドーパミン性神経細胞の
減少について
D
e
c
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e
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i
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3
4
4r
a
t
s
岩田
聖,飯田麻里,長谷川和成,木原 亨,細井理代, 宮島留美子,
山本慎二,三上真一, 山川誠己, 贋内康彦,榎本 虞
(財)食品農医薬品安全性評価セ ンタ ー
[はじめに l
F
e
l
t
e
n(
1
9
9
2)らは ,F344ラッ トの脳にお いて黒質のド ーパミンが加齢性に減少することを報
告した.今回我々は T
y
r
o
s
i
n
eh
y
d
r
o
x
y
l
a
s
e(
TH)
抗体を用 いて免疫組織学的に若齢ラッ トと加齢
ラットの黒質綴密部および〕線条体のドーパミン性神経細胞について比較検討した.パーキンソ
1
m
e
t
h
y
l4p
h
e
n
y
l1
ム3ムー
t
e
t
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h
y
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i
n
e)
投与動物で、も黒質
ン病モデルとされている MPTP(
ドーパ ミン含有細胞数の減少が知 られており, A
p
o
p
t
o
t
i
cc
e
l
ld
e
a
t
hに起因す るものとされてい
p
o
p
t
o
t
i
cc
e
l
ld
e
a
t
hの可能性も 検討した.
る.そこで,加齢ラットの黒質について A
[材料と方法}
無処置雄F344若齢ラット (
1
3週齢) 加齢ラ ッ ト(
1
0
6週齢)の各 1
0
例の脳を l
O%PBSホルマ リン
固定, パ ラフ イン包埋し,黒質 ・線条体を含む位置で連続的に 薄切した.一次抗体には抗THウ
サギポリクローナル抗体 (
EugeneTechI
n
t
e
m
a
t
i
o
n
a
l
社製)を用いた. 1
個体当たり 5切片について
黒質綴密部では単位面積当たりの陽性細胞数を,線条体では単位面積当たりの陽性部の吸光度
を測定した. A
p
o
p
t
o
t
i
cc
e
l
ld
e
a
t
hの検討として, T
i
l
l
叩 L法によるア ポ ト
ー シスの検出や
, 抗Bax
および、抗B
c
l2による免疫組織化学的検討を試みた.
{結果]
1.黒質綾密部の抗TH陽性細胞数は若齢ラットに比べ加齢ラ ッ トで有意に減少した .
2
.隷条体の抗TH陽性部の吸光度に ついて は明らかな差は認められなかった .
3.
F344ラッ ト同様SD
系ラ ッ トにおいても黒質綴密部の抗TH陽性細胞数は若齢ラッ トに比べ加
齢ラ ッ トで有意に減少した.
4
.黒質織密部における TUNEL
法によるアポト ーシスの検出や
, 抗Baxおよ び抗B
c
l
2によ る免疫
組織化学的検討を試みたがいずれも陰性であった .
9
8
(財)安評センター研究所報
F
i
g
1黒塁審議閥抗『刊現蛍割勘
(肉体口刷用。
(
/245760μ冊}
1
8“
"
'
一
ー
1
6一
一
1
5
.
5
司
一一
一
一
(12
4
5
7
6
0
μ m2)
…
山 h 山
第1
0巻
2
0
0
0
F
ig2線条体t
訂 H陽性部吸光度
(
F344
/0
u
C
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jr
a
t
)
8
0r
一一ーー も
ーー
一
一
一
一一
一一
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一一
一
7
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1
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1
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1
0,
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6
0
.
1邸 5
6
1
.
6
2
8
9
1
3週齢
106週齢
50
8し一一-
,
一
一
一
6
4L
一
一
一一│
2
0
2γ一一一│
1
0
oL
1
3
晶令
1
句通令
[まとめ]
加齢F344ラットでは若齢ラットに比べ,黒質 ドー パミン含有細胞の数が有意に減少してい
た. しかし,恥1PT
P投与動物の黒質に観察されているような A
p
o
p
t
o
t
i
cc
e
l
ld
e
a
t
hは観察されなかっ
た. (
加齢ラ ットと P
a
r
k
i
n
s
o
n
病と の比較):黒質ー
線条体ニューロンの消失,
ドーパミンや THの
減少が認められる点では共通するが,筋硬直・無動症・振戦などの症状はなく,神経細胞の実
質変性やLewy
小体の出現が観察されない.グリア細胞や線維の増加が認められないなど多くの
点で, P
a
r
k
i
n
s
o
n
病とは異なる. (M
PTP誘発P
a
r
k
i
n
s
o
n
病):MPTPをサル・犬・マウス (
C57Blな
ど)に投与するとアス トロ グリア細胞内で MAOBに酸化を受け MTT+となる. MTT+はドーパミ
蛋白合成を阻害し, P
a
r
k
i
n
s
o
n
病様病態を誘発する . M
甘+は同
ン神経細胞内に取り込まれ, TH
時にミトコンドリア内 ATP合成阻害を介して,細胞を死に至らしめるとされている.最近,
J
e
n
n
e
r
P
.らや福田らはこれらの細胞死が酸化ストレスに起因している事や, A
p
o
p
t
o
t
i
cc
e
l
ld
e
a
t
h
である可能性を報告している.
9
9
ν
.望 月 喜 多 司 記 念 賞
1.平成 11年度(第 14回)望月喜多司記念賞要旨
ォ雄要
法 寸変 関 目 大
緯パ引機題の
業一切属究績
、lj 司ベ ノ 芋)ノ サ
4ザ 草
;木
アソ
祖
t
1
) 食品・農薬・医薬品等の安全性の分野
昭和 1
3年5月 1
2日生
オリンパス光学工業株式会社染色体研究センター
所長
化学物質安全性評価のための遺伝毒性試験法の国際的標準化に関する研究
遺伝毒性試験には複数の試験が組込まれているが,固により試験法が異
なっており,国際的標準化が求められていた.最初にマウスを用いる小核試
験に取り組み,その成果は国際的に評価された .次いで,培養細胞を用いる
染色体異常試験について,米国との共同研究を行い,我が国のプロトコール
の利点を OECDガイドラインに反映させた.さらに,医薬品国際規制ハーモ
I
C
H
)において
ナイゼーション (
マウスリンフォーマ試験の国際的な共同研
究を実施し,日欧米間の合意をもたらした.また,新しい試験法として,
ト
ランスジ、ェニックマウスを用いる試験の規制への導入を検討し,染色体異常
試験の代替としての培養細胞を用いる小核試験についても共同研究を実施す
るなど遺伝毒性試験分野のリ ーダーとして活躍した.国際的にも OECDガイ
江PCS国際会議へ参加し,幅広く活躍しており,
ドライン専門家会議や WHO
その業績は高い評価 をうけている.
イ)奨励賞
ミズハ シフク タ ロ ウ
水橋福太郎
昭和 28年9月2
3日生
所属機関
クミアイ 化学 工 業 株 式 会 社 生 物 科 学 研 究 所 毒 性 研 究 室 主 席 研 究 員
研究題目
農薬を中心とした化学物質の毒性発現機序に関する研究とその応用
業績の大要
農薬を 中心 とした化学物質の毒性発現機序の研究は
化学物質自体の性質
の解明と同時に,安全性評価,中でもヒトへの外挿面から非常に重要であ
り,数々の化合物について毒性発現機序の解明を行い,その安全性評価に重
P-104
要な知見 をもたらした . とりわけ,当初殺菌剤として開発していた IK
に関して,詳細にその毒性および作用発現機序を検討し,その結果,本化合
物が既知の物質とは異なる性質を持つ有糸分裂阻害剤であり,抗腫蕩剤の開
発あるいは細胞分裂に関わる微小管の分子構造を解くツールとなる可能性を
示した.これは毒性発現機序研究の成果を生命科学等の新たな分野へ応用し
たもので,興味深い研究と言える.
1
0
0
(財)安評センター研究所報
第1
0
巻
20
00
ウ)奨励賞
カトウ
ヨシヒサ
加藤善久
昭和 3
3年 1
1月2
4日生
所属機関
静岡県立大学薬学部薬剤学教室講師
研究題目
P
o
l
y
c
h
l
o
r
i
n
a
t
e
db
i
p
h
e
n
y
lの薬物代謝酵素誘導効果発現における 3
-メチルスルホ
ン代謝物の役割とその内分泌撹乱作用に関する研究
業績の大要
PCB 同族体の 3- メチルスルホン代謝物が,それらの母PCB 自身より 500~
7
0
0
倍強力な p
h
e
n
o
b
a
r
b
i
t
a
l(
PB)
型の肝薬物代謝酵素誘導効果を示すことを 明ら
かにした.次いで, 1
3
種類の PCBの3
-メチルスルホン誘導体を用いて,それ
らの PB
誘導性P
4
5
0
分子種C
Y
P
2
B
l
β の誘導能とそれらの化学構造とに密接な
-メチルスルホン誘導体はその作用を
相関関係のあること, 一方,それらの 4
,
2
'人 5
,
5
'p
e
n
t
a
c
h
l
o
r
o
b
i
p
h
e
n
y
lをモデ
示さないことを明らかにした.さらに, 2
ル化合物として取り上げ,このメチルスルホン代謝物の生成経路の重要な部
分を明らかにし,母PCBの酵素誘導効果はその 3
-メチルスルホン代謝物が作
用本体となって起こることをつきとめた.また,数種の PCBのメチルスルホ
ン代謝物は,母PCBより強力な発がんプロモーターとして作用すること, 9
種の PCBのメチルスルホン代謝物は, 血中甲状腺ホルモン(T3, T
4
)量を低下
させ,甲状腺刺激ホルモン量を上昇させる作用のあることを明らかにし,そ
c
h
e
n
g
の作用メカニズムを解明した.我が国のカネミ油症患者及び台湾の Yu
患者にみられる重篤な内分泌機能障害
ヨーロ ッパ
カナダにおける野生ホ
乳動物の免疫や生殖機能に対する障害は, PCB関連化学物質及びそれらの代
謝物による複合作用によると考えられるが,代謝物については,その毒性や
内分泌系への作用の研究はほとんど成されていなかった.本研究は,ヒトの
内分泌機能への影響が懸念されている PCBの有毒作用の解明上重要な研究に
研究家の注目をあびるようになった.
なるものであり,現在全世界の PCB
PCBよりむし ろ残留性が高いメチルスルホン代謝物が,新たな毒性と 内分泌
障害を引き起こすことを初めて明らかにしたことは高く評価できる.
エ)奨励賞
7J
レカワ
タダシ
古川忠司
昭和 3
8年 3月1
9日生
所属機関
三共株式会社安全性研究所試験研究第一グループ副主任研究員
研究題目
ラットにおける肝薬物代謝酵素活性の日内変動に関する研究
業績の大要
薬効や毒性の日内 リズムを規定する要因の一つである 肝薬物代謝酵素活性
4
5
0の幅広い基質となり
における日内変動に焦点をあて,雄ラットにおいて P
える 7
a
l
k
o
x
y
c
o
u
m
a
r
i
nの0
脱アルキル化、活性に明瞭な日内変動が認められるこ
とを明らかとした.また
このような P
4
5
0
酸化酵素活性の日内変動がヘキソ
パルピタール投与時の血禁中濃度推移お よびス リービン グタイムに影響を及
ぼしうることをも確認した.さらに, P
4
5
0
酸化酵素活性の日内変動の成立要
因を調べ る一連の実験結果から ,この日内変動は体内時計の存在する脳内の
視交叉上核の支配下にあり,その時間情報にしたがった成長ホルモンの分泌
101
パ タ ー ン を 経 由 し てP450
酸 化 酵素 活 性 の 日 内 変 動 が 形 成 さ れ て い る と い う 仮
説を提唱するに至っている.
近年,時間薬理学が注目されるなか,動物レ ベルで肝薬物代謝酵素の日内
変動と薬効・毒性の関連を検索対象とした極めて有意義かっ今後の発展が期
待される研究である.
オ)奨励賞
的場好英
8年2月3日生
昭和 3
所属機関
住友化学工業株式会社生物環境科学研究所主任研究員
研究題目
家庭用殺虫剤のリスクアセスメントモデルの開発
業績の大要
ヒトが健康で快適な生活を享受するために
室内で、ハエ・蚊・ゴキブリ等
の害虫防除が広く行われており,その使用者や居住者への安全性に注目し,
散布後の気中・床等での殺虫剤の濃度を予測する新たな手法を構築し,モデ
ルとして開発した.次に,一般家庭内での殺虫剤の室内挙動を要因別に詳細
に実測し,モデルの予測値と比較することにより
モデルの信頼性を実証し
た.さらに,家庭内で、
の居住者の接触や吸入による曝露量を気中濃度と床残
留量から予測する手法を考案し,化合物の持つ毒性値と比較する事で,大人
のみならず幼児の殺虫剤に対するリスクアセスメントを可能にした.これに
加え,考案した数学モデルをさらに発展させ,ユーザーフレンドリーソフト
ウェアInP
e
s
tとして集約し,家庭用殺虫剤の室内挙動予測ツールおよび居住
者 リスクの判定材料を提供するまでに至ったことは高く評価出来る.
賞品一謂目
励ヒ玉劇題
j 4
漠 イ井 問 問
カ け福
0月5日生
昭和 37年 1
武田薬品工業株式会社薬剤安全性研究所主任研究員
SHT)受容体を介した瞳吐発現機構に
イヌ及びサルにおける末梢セロトニン (
関する研究
業績の大要
日匝吐はイヌ毒性試験でしばしばみられる所見であり,またヒトでは最も耐
え難い副作用の一つである.ヒトにより近いと考えられるイヌ及びサルを用
いて制癌薬及び硫酸銅による恒吐発現機序を検討し,以下の如く優れた成果
を上げた. 1
)マイクロダイアシリス法を世界で初めてイヌ腸管に適用し,シ
HTの合成・遊離の尤進と末梢 5-HT3受
スプラチンによる恒吐には腸管での 5容体が深く関与していることをほぼ完全に証明した. 2
)シスプラチン以外の
)硫
制癌薬による恒吐にも同様の機序が関与していることを明らかにした. 3
酸銅による恒吐には,イヌでは 5
HT4受容体が,サルでは S
-HT3受容体が重要
な役割を担っていることを見いだ、した.これらの研究は,恒吐発現機序解明
に大きく貢献すると同時に,毒性(副作用)を軽減する薬剤の開発に向けて毒
科学研究者が果たせる役割を示した点で貴重である.
1
0
2
(財)安評センター研究所報
第1
0巻
2000
2
) 農薬の分野
ア)功労賞
トシオ
フジタ
藤田稔夫
昭和4
年1
月2
6日生
所属機関
京都大学名誉教授(エミールプロジ、エクト代表)
研究題目
農薬の生理活性と化学構造との相関関係に関する研究
一定量的方法論および経験的法則性のデータベース化について
業績の大要
長年にわたり農薬および植物生長物質の有機生物化学的研究・教育に従事
し,種々の系列化合物の作用機構と分子(下)レベルで解明するための手掛か
りとしての定量的・物理化学的研究方法論の展開と新規系列化合物の分子設
計に活用され得るデータベースシステム構築に大きな成果を上げるととも
に,現在農薬学(業)界において活躍中の多くの人材の育成においても顕著な
9
8
1~1982年度には日本農薬学会常任評議員, 1983~
功績を残した.さらに 1
1
9
8
4
年同会副会長,
1985~1986年同会会長として,日本農薬学会の運営に多
大の貢献を果たした.
イ)功労賞
モリフサ
エトウ
江藤守総
昭和 5年2月20日生
所属機関
九 州 女 子 大 学 ・ 九 州 女 子 短 期 大 学 学 長 九 州 大 学 名誉教授
研究題目
見虫制御化学の研究
業績の大要
遅発神経毒T
OCPの活性代謝物サリゲニン環状リン酸エステル (
S
C
p
)を発見
し,その構造
した.
選択毒性の研究から非遅発神経毒性殺虫剤サリチオンを発明
SCPのOP
抵抗性見虫に対する効力や OP
共力効果がリン酸化(エステ
ラーゼ阻害)とアルキル化(グルタチオン転移酵素阻害)によることを明らか
にし,両反応とチオレートの酸化活性化反応を用いたリン酸化合成試薬
(
MTBO)
を開発した.次いで環状二環式O
Pの抗GABA
活性と殺虫活性を発見
等の作用で分泌される昆虫神経活性物質として提示し
した.一方,微量DDT
たLーロイシンと代謝物イソアミルアミンやオクトパミンから殺虫性5
員環状
アミドエステルを設計し
Pの立4
材葺造と生物活性の関係
また光学活性環状O
を明示した.さらに見虫生育制御物質を開発し,進んでストレスによる昆虫
生育制御を示した.
川信長リコい事大同口
主ォ夫
労ノ京劇題
ウ川栗
功
、属究
v
rZ
こ1
民升
所
jj
昭和 8年2月1
6日生
京都大学名誉教授
有機塩素系化合物の代謝反応の研究 (
BHCおよびメトキシクロールを中心と
して)一同位体効果を利用した代謝反応の摂動,ならびに薬物代謝反応にお
ける C
ypの立体選択性の解析
業績の大要
有機塩素系化合物なかでも殺虫剤 B
HC(ヘキサクロロシクロヘキサン)なら
103
ぴに関連化合物(異性体及びアナローグ〉の代謝について徹底的に研究した.
マウス i
nv
i
v
o,ラットの肝ミクロソームや肝可溶性画分による代謝を研究
し,酸化的代謝,還元的脱塩素代謝,抱合代謝などについて,微量代謝物も
数多く同定し,数々の新しい知見を得た.さらには肝ミクロソーム
CytochromeP450(
CYP)を精製し,その再構成系を用いた代謝を, 他の有機塩
素系化合物たとえばメトキシクロールについて行い,それらの立体選択性の
微妙な差異などについて興味深い知見を得た.これらの研究においては,炭
素 -14を中心とする放射性同位元素のトレーサ利用はもとより,重水素同位
体効果をも効率よく用い,解毒反応との関連も含め,新しい代謝研究方法の
確立に寄与した.
文関目大
品E F n
まォ夫要
労機題の
コ マお
い
功 ラ﹁ 属 究 績
よ比一派所研業
昭和9年2月5日生
Dep.
to
fE
n
v
i
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o
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m
e
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t
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lT
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x
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y,U
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fC
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l
i
f
o
m
i
a,P
r
o
f
e
s
s
o
r
農薬の作用と抵抗性の機構に関する研究
(
1
)ドリン系殺虫剤の作用点がGABAreceptorで、ある事の発見, (2)DDTおよ
びピレスロイドの抵抗性がナトリウムチャネルの IS
6における発見, (
3
)マ
4)
ラソンの選択性及ぴ抵抗性がカルボン酸エステルに依存する事の同定, (
クロロジメフォルム系がOctopaminer
e
c
e
p
t
o
rに作用する事の解明等が上げら
れる.又,環境の方では (
5
)Toxapheneの構造決定,環境残留の発見, (
6
)
及びHCH
系の環境における女性ホルモン的働きの機構解明, (
7
)魚鳥等
DDT
に与える影響がATPaseと関係がある事,さらに昆虫フェロモンでも研究業績
8
)白蟻の道しるべ物質, (
9
)ハパチの性誘引物質および (
1
0
)ジンサン
として (
シパムシのフェロモンの同定など数多くの業績を上げ高い評価を受けてい
る.
オ)業績賞
カタヤマ
アラタ
片山新太
昭和 32年 1
0月1
5日生
所属機関
名古屋大学大学院生命農学研究科助教授
研究題目
土壌中の農薬分解に関与する微生物群の構造と挙動
業績の大要
純粋培養条件下で、農薬分解能を示す様々な微生物が土壌から単離されてき
たが,それらが土壌中の主要分解菌であったか否かは不明で,土壌中の農薬
分解の予測・制御に役立つていない.
これに対し,土壌中の全微生物群と同時に分解に関与する微生物群の挙動
を明らかにした.選択的阻害剤を利用し
有機物施用土壌で殺菌剤クロロタ
ロニル (
2人 5,
6
t
e
回 c
h
l
o
r
o
i
s
o
p
h
t
h
a
l
o
n
i
出l
e)の分解速度が高 まるのは糸状菌の活
性化によるものであり,主要分解菌は F
u
s
a
r
i
u
m
属菌と推定した.また,植物
4,
4
'd
i
m
e
t
h
y
l
b
i
p
y
r
i
d
i
n
i
u
md
i
c
h
l
o
r
i
d
e
)を分解するの
遺体上で、除草剤パラコート (
は
, C
o
r
y
n
e
b
a
c
t
e
r
i
u
m
属細菌と推定した.更に, 14C
標識化合物が土壌中で分
1
0
4
(財)安評センター研究所報
第1
0巻
2
0
0
0
解する際に標識される呼吸鎖キノンを 同定することにより,土壌中の全微生
物群の構造と分解微生物群の両者を同時に明らかにする方法を開発した.こ
の一連の研究は,土壌の農薬分解活性を制御するための基礎的知見として農
薬の安全性の点から重要であるばかりでなく
他の微生物群存在下における
特定微生物群の動態の追跡方法を提示するもので,環境微生物学に新しい方
法論を提案するものとして評価し
この分野での今後の貢献が期待される.
105
2.第 1回 か 5の 望 月 喜 多 司 記 念 賞 受 賞 者 リ ス ト
第l
回(
昭和 6
1
年度)
l 安 全性の分野
所
属
~ζ
1
.
賞
業
績(研究題目)
賞名
受賞者
業績賞
田 中寿子
東京慈恵会医科大学
ヒ トにおける多剤併用療法の毒性 に関する研究
奨励賞
真板敬三
(財)残留農薬研究所
農楽究並安全び性に試験における老齢マウス ・ラッ トの病理学的
研
毒性病理学的研究
2
.農薬の分野
中北
属
宏│農林水産省食品総合研究所
戸,
3ζ
業
所
受賞者
績(研究題目)
賞
貯穀害虫くん蒸剤ホスフイ ンの作用機構に関する研究
第2回(
昭和 6
2年度)
1
.安全性の分野
所
属
業
績(研究題目)
賞名
受賞者
業績賞
谷本義文
(財)実験動物中央研 究 所
安全性試験における 血液学的 ・臨床化学的成績の評価法
に関する研究
奨励賞
山中すみへ
東京歯科大学
有
ン
機
剤 リン剤中毒に関する基礎的研究,特に 低毒性有機 リ
の効果とその問題点
中毒に対する解毒剤l
戸
3ζ
L
賞
2.
農薬の分野
賞名
受賞者
業績賞
若 林
業績賞
上 路雅子
攻
所
属
F
又L
賞
業
績(
研 究題目)
三菱化成株式会社
環状イミ ド系除草剤の分子設計に関する研究
農林水産省農業環境技術研 究所
アミ ドリ ン酸エスァル系殺虫剤の生理活 性お よび代謝に
関する 研 究
第 3回 (
昭和 6
3年度)
1
.安全性の分野
受賞者
業績賞
大森義仁
東京慈恵会医科大学
奨励賞
山添
慶慮義塾大学医学部
康
所
属
賞名
晶
玉ζ
賞
業
績(
研 究題目)
N-ヒ ドロキシアミノアレンの代謝的活性 化 と遺伝毒性お
よび発癌性
2.
農薬の分野
受賞者
辻
1
06
所
属
孝 三 ! 住 友化学工業株式会社
戸.
ムζ
賞
業
農薬の新しい製剤に関する 研 究
績(
研 究題目)
(財)安評センター研究所報 第 1
0巻
2
0
0
0
第4回(
平成元年度)
1 安全性の分野
所
属
~
賞名
受賞者
業績賞
井 村伸 正
北里大学薬学部
重金属の毒性に 関す る生化 学 的研究
業績賞
宮罵宏彰
武 田薬品工業株式会社
化学物質の腎毒性に関する実験病理学的研究
奨励賞
伊沢義弘
帝人株式会社
活性型ビタミン D3類緑化 合物の安全性評価 研究
賞
業
績(研究題目)
2 農薬の分野
所
属
1
ι
.
業
賞名
受賞者
功労賞
鍬塚昭三
名古屋大学農学部
功労賞
後藤真康
(財)残留農薬研究所
功労賞
宮本純 之
住友化 学工業株式会社
業績賞
本田
博
大沢貫寿
東尽農業大学農学部
東京農業大学農学部
貯穀害虫の化学生態学的研究
奨励賞
中山
日本曹達株式会社
コンピ ュータによる農薬の分子設計および構造活性相関
章
豆
賞
績(研 究題目)
第5回(
平成2年度)
l
.安 全性の分野
所
賞名
受賞者
業績賞
水谷正寛
(財)食品薬品安全センタ ー
医薬品等評価
化学
法物質の生殖 ・発生毒性試験における行動奇
形学的
の研究
業績賞
早津彦裁
岡山大学薬学部
食物 中の変異原物質の検出 と変異原性抑制物質の研究
奨励賞
村 田共治
クミアイ 化学工業株式会社
ヒ ト尿価酸法代謝 モデる研ル動
究物を 用い たプ リン類似物質の安全
性評
に関す
者
賞
野 一受
分 一
の﹁
ii-
L Fl
ぺE
曲
辰 一
所
米 山 勝 美 │明治大学農学部
安西弘行│明治製菓株式会社
属
属
戸
3ζ•
戸.
3ζ
賞
賞
業
業
績(研 究 題 目)
績(研究題目)
病原菌毒素不活化酵素遺伝子導入に よる植物病害制御に
関する研究
1
0
7
第 6回(
平成3年度)
1
.安全性の分野
属
所
~ζL
賞名
受賞者
賞
業
奨励賞
寺本昭二
(財)残留農薬研究所
生
農
薬
すの発生毒性の解析および安全性試験において自然発
る遺伝性先天奇形の発見と系統育成に関する研究
奨励賞
柳井徳磨
三共株式会社
ゲッ歯類,家畜および霊長類の脳におけるミネラル沈着
病変の比較病理学的研究
績(研究題目)
2
.農薬の分野
受賞者
宮本
所
属
徹│東京農業大学農学部
戸.
1
賞
業
績(研究題目)
含イオウ有機リン殺虫剤の活性化に関する研究
第7回(平成4年度)
1.安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
~ら
賞
業
績(研究題目)
業績賞
遠藤
東京大学医学部
腎毒性発現機構に関する基礎的研究
業績賞
前 川 昭彦
(財)佐々木研究所
医
薬
。
プ
品
包し ・食品添加物等生活関連化学物質の癌原性に関す
る研
2
.農薬の分野
受賞者
丸
諭
所
属
戸,
コ
ζ
賞
業
績(研究題 目)
水系環境における農薬の動態に関する研究
│千葉県農業試験場
第 8回(平成5年度)
1
.安全企の分野
賞名
受賞者
功労賞
柳田知司
業績賞
小野
業績賞
鎌滝哲也
宏
所
属
~ζ
賞
業
績(研究題目)
(財)実験動物中央研究所
(財)食品薬品安全センタ ー
一般毒性試験への機能異常検査導入の研究
北海道大学薬学部
ヒトにおけ究
る毒性 の予測を指向した楽物代謝酵素の比較
生化学的研
2 農薬の分野
1
08
賞名
受賞者
業績賞
宮崎昭雄
業績賞
寺岡
徹
所
属
戸
3ζ•
賞
業
績(研究題 目)
大阪府立農林技術センター
殺
す 虫剤の代謝および活性発現における絶対立体化学に関
る研究
東京農工大学農学部
プロトプラスト・細胞培養系を用いた農薬の薬理学的研
究
(財)安評センター研究所報第 1
0巻 2
0
0
0
第9回(平成 6
年度)
l安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
見
ヌι
賞
業
績(研究題目)
業績賞
高仲
正
昭和大学薬学部
化学物質の安全性における体内動態と毒性に関する研究
奨励賞
岩田
聖
(財)食品農医薬品安全性評価センター
マウス自然発生性心臓血管内皮細胞増殖性病変に関する
研究
奨励賞
高橋有里
藤沢薬品工業株式会社
免と疫
機 抑 制 剤 タクロリムス (FK506) の豚臓障害発現様式
序に関する研究
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
浩
所
属
深海
功労賞
松中昭一
関西大学工学部
功労賞
渋谷正弘
日本農薬株式会社
功労賞
山本
東京農業大学農学部
功労賞
業績賞
長長
A
ミ
業
績(研究題目)
立命館大学理工学部
功労賞
出
戸玉
ζ•
J
o
如1E
.C
a
s
i
d
a 米国カルホルニア大学
佐々木満
住友化学工業株式会社
有機リン 化合物の合成と農薬活性に関する研究
第10回(平成7年度)
1.安全性の分野
賞名
受賞者
所
属
1
t
ζ
賞
業
績(研究題目)
大阪府立公衆衛生研究所
薬物・毒物・発癒性物質の酸化 的 代謝に関与するヒト肝
チトクローム P450酵素の生化学的,毒性学的研究
木村正明
大正製薬株式会社
フットの諸臓器の死後変化および肝臓の死後経過時間推
定に関する組織学的研究
滝沢節子
日本ロシュ株式会社
生殖品的・発ア生毒性試験における毒性発現機序の研究
フロチ
泌子
業績賞
島田
奨励賞
奨励賞
力
内分
2農薬の分野
所
属
賞
業
績(研究題目)
賞名
受賞者
業績賞
利部伸三
岐阜大学教育学部
ネオニコチノイド系化合物の合成と殺虫活性に関する研
究
業績賞
S
c
o
t
tJ
e
f
f
r
e
y
コーネル大学見虫学部
殺虫剤の抵抗性メカニズムに関する研究
A
J
ζ
109
第 11回 (平成 8年 度 )
1
.安全性の分野
属
業
賞名
受賞者
所
功労賞
加藤隆一
慶藤義塾大学名誉教授
奨励賞
近藤
ま
青
田辺製薬株式会社
ラット遺伝子地図の構築
奨励賞
滝沢達也
麻布大学獣医学部
ラット動脈管に対する降圧剤(エナラプリル,アンジオ
テンシン変換酵素 (ACE) 限害剤エナラプリル)の影響
奨励賞
斉藤昇二
住友化学工業株式会社
述
お
理
よ
論
び
にZ
関
0)
す
を
る
用
研
い
究た魚
無介機類性におよび有機性パラメータ 性
(
2
記
:I
おける化学物質の生物濃縮
戸
3ζ
L
賞
績(研究題目)
2
.農薬の分野
属
績(
研 究題目)
受賞者
業績賞
PeterBOger
U
n
i
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t
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tK
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s
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z,
F
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lModeo
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o
no
fH
e
r
b
i
c
i
d
e
s
,
F
u
l
lP
r
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業績賞
桑野栄一
九州大学農学部
所
戸
3ζ•
賞
業
賞名
イミダゾール系化合物の合成と生物活性に関する研究
第1
2回(平成 9年度)
1
.安全性の分野
110
所
属
戸
5
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:
賞名
受賞者
業績賞
小野寺威
関東第一サービス株式会社
化学療法薬の毒性発現機構に関する研究
業績賞
福島昭治
大阪市立大学医学部
ラット多証臓明器発がん性中期検索法によるヒ素化合物発が
ん性の明
奨励賞
土 井孝良
武 田薬品工業株式会社
ラットにおける薬剤の免疫毒性評価法に関する研究
奨励賞
築、瀬
山之 内製薬株式会社
ピー グル犬網膜電図の梓体系成分の記録と解析
主
賞
業
績(研究題目)
(財)安評センター研究所報 第 1
0
巻 2
0
0
0
第1
3回 (平成 1
0
年度)
1
.安 全性の分野
賞名
受賞者
所
属
戸
3ζ•
賞
業
績(研究題目)
オリンパス光学工業株式会社
がん原発物質の効す率的究
な検出のためのスクリーニングシス
テム闘 に関 る
石
汗
村越正典
帝国臓器製薬株式会社
前立腺過形成におけする性るホルモ理ンの学関的与研及究びその発生な
らびに退縮過程に関
機能病
桑原
株式会社大塚製薬工場
末梢用輸液の血管障害性に関する実験的研究
功労賞
石館
奨励賞
奨励賞
基
孝
2
.農薬の分野
,
賞名
受賞者
業績賞
佐藤幸治
玉川大学農学部
プロ トックス阻害型除草剤の作用機構と代謝活性化に関
する研究
奨励賞
堀越
日本農楽株式会社
プロトックス阻害型除草剤耐性植物の作出に関する基礎
研究
奨励賞
西野友規
日本たばこ産業株式会社
スズメノカタピラ防除における植物病原細菌の利用に関
する研究
所
守
属
戸
J
ι
賞
業
績(
研究題目)
第1
4回 (平成 1
1年度)
1安全性の分野
賞名
受賞者
業績賞
祖父尼俊雄
オリンパス光学工業株式会社
準学化物質関安す全性評価のための遺伝毒性試験法の国際的標
化
に
る研究
奨励賞
水橋福太郎
クミアイ化学工業株式会社
と
農楽を中心とした化学物質の毒性発現機序に関する研究
その応用
奨励賞
加藤善久
静岡県立大学薬学部
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内
酵
,素誘導効果発現における 3メ
奨励賞
古川忠司
三共株式会社
ラットにおける肝薬物代謝酵素活性の日内変動に関する
研究
奨励賞
的場好英
住友化学工業株式会社
家庭用殺虫剤のリスクアセスメン トモデルの開発
奨励賞
福井英夫
武田薬品工業株式会社
5HT)受容体を
イヌ及びサルにおける末関梢すセロトニン (
介した恒吐発現機構に
る研究
所
属
戸
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ん.
賞
業
績(研究題目)
分泌撹乱作用に関する研究
2
.農薬の分野
賞名
受賞者
功労賞
藤田稔夫
尽都大学名誉教授
(エミールプロジ、エクト代表)
農薬の生理活性と化学構造との相関関係に関する研究
一定量的方法論および経験的法則性のデータベース化について
功労賞
江藤守線
九州女子大学・九州女子短期大学学長
見虫制御化学の研究
功労賞
栗原紀夫
京都大学名誉教授
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功労賞
松村文夫
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農薬の作用と抵抗性の機構に関する研究
業績賞
片山新太
名古屋大学大学院生命農学研究科
土壌中の農薬分解に関与する椴生物群の構造と挙動
所
属
戸ム
ι
.
賞
業
績(研究題目)
1
1
1
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.平成11年度に実施した特別講演会,海外出張,研修,講師派遣
1
)特別講演会
平成 1
1年 4月 8日
演題:トランスジ、エニックマウスを用いる短期発がん性試験の現状
講師 :財団法人実験動物中央研究所
白井敏仁先生
9月 8日
演題 :医薬品企業のグ ロー パル展開と非臨床 CROの在り方
講師:山之内製薬株式会社信頼性保証本部薬事部松津利明先生
1
1月1
7日
演題:査察を充実させよう
講師:武田薬品工業株式会社薬事管理部監査室青野皆基先生
2
)海外出張
(
1
)病理臨床検査室細井理代
北米毒性病理学者協会国際 シンポジウム参加
訪問国:ア メ リカ (平成 11 年6 月 9 日 ~ 19 日 )
(
2)副 理 事 長 榎 本 異
GLP国際 シンポジウム 講師
訪問国:韓国 (平成 11 年 11 月 8 日 ~ 11 日 )
(
3
)病 理 臨 床 検 査 室 長 岩 田 聖 同 室 飯 田 麻 里
アメリカ癌学会
訪問国:アメリカ(平成 12年3 月 28 日 ~4 月 8 日)
3
)研修
(
1
) 平成 1
1年度新規採用職員等の教育 (
6名)
目的:実験動物と安全性試験の基礎的な知識・技術の教育
場所:安評センター(平成 11 年5 月 14 日 ~8 月 3 日)
(
2
)環 境 遺 伝 毒 性 試 験 室 研 究 員 益 森 勝 志
目的:微生物を用いる 変異原性試験の精度管理に関する講習会 (試験責任者対象 3日間
コース )
場所:日本バイオア ッ セイ研究センター ( 平成 11 年8 月 31 日 ~9 月 2 日 )
(
3
) 環境遺伝毒性試験室
嶋田佐和子
目的:細胞工学基礎 コース動物細胞培養基本操作 I
場所:バイオカレッジ京都(平成 11 年 11 月 15 日 ~11 月 19 日)
(
4
) 代謝分析室 島田寿久
種放射線取扱主任者講習
目的:第 1
場 所 : (社 ) 日本アイソトープ協会 (平成 12年 1 月 31 日 ~2 月 4 日 )
1
1
2
(財)安評センター研究所報
第1
0巻 20
00
4
)講師派遣
(
1
)第一毒性試験室主席研究員小林克己
講
座:データ分析/および多変量データ分析(平成 1
1年4月より 1
年間)
学校名:慶麿義塾大学総合政策学部/湘南藤沢キャンパス
(
2
)事 業 部 次 長 山 本 利 男
講座:実験動物学(平成 1
1年4月より半年間)
学校名:国際工学院専門学校浜松校
113
4
砂次巻の予定.
安評センタ一平成 12年度学術講演会より
1
.
i
医薬品、農薬の安全性評価における DNAチップの利
用と将来」
講師 :京都府立医科大学
第一内科学教室一石英一郎先生
吉川敏一教授
2. i
がんと肥満、動脈硬化の接点一予防のための標的」
ストレス応答と細胞増殖のシグナル伝達におけるグル
タチオン Sー トランスフエラーゼの役割
講師 :弘 前 大 学 医 学 部
土田成紀教授
編集後記
今 回の号の中に、“我々ヒ トをはじめとした、真核生物 は、「
寿命」とい
う宿命を背負う代償として 「
進化 jを可能とした"との記載があり ま し
た。(石川先生学術講演会より)
遠い未来にかけて、人類はどの様な変化 をしていくのでしょうか?
緑豊かな地球で、我々の子孫が平和 な暮らしをしいることを切望致し
ます。
編集委員
太田明人
聖
岩田
伊賀達也
杉
山
E
且
5
邑
L
中嶋康子
長 谷川 和
成
藤島
敦
編集顧問
井上才祐
財団法人食品農医薬品安全性評価センター研究所報
第1
0
巻(
2
0
0
0年)
発行:平成 1
2年 1
1月
発行者 :望 月 信 彦
印刷:株式会社 杉
山印刷
電話 (
0
5
3)
4
8
4
1
1
7
1俄)
0
財団法人
食品農医薬品安全性評価センター
(略称安評センター)
ふ〈でちょうしおしんでんあざあらほ ま
干4
37-1213
静岡県磐田郡福田町塩新田字荒浜 582-2
電 話(
0538)
58-1266
附)
フ
ァ
ク
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ミ
リ (0538)58-1393,
1293,
1343
59-1170
東京事務所
〒110-0015 東京都台東区上野 2
1
8
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共同ビル (
上野 )
501号室
電 話(
03)
3837-2340
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リ (03)38377850
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