知識も漸増 Vol.9

知識も漸増 Vol.9
~年末特別版~
目次
はじめに ........................................................................................................................ 1
2017 年の展望........................................................................................................... 2
日本株式市場について ................................................................................................ 2
米国およびグローバル株式市場について ....................................................................... 4
より良き投資成果を得るための一言エッセイ ................................................................. 6
知識も漸増 ~特別版~ ............................................................................................ 8
2016 年 12 月
1
はじめに
年末の Outlook レポートも昨年に引続き 2 回目となりました。昨年のこの時期も「今年もいろ
いろなことがありました」と申し上げましたが、2016 年はさらにいろいろなことがありました。
この 1 年を振返り、2016 年について考える機会を持つために、このレポートをお届けさせてい
ただきます。
この企画に当っては、あおぞら投信のファンドを実質的に運用している運用会社のご協力いただ
きました。昨年に引続き、日本株式についてはあおぞら・日本株式フォーカス戦略ファンド(愛
称“しゅういつ”)を運用するアリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン株式会社に、
米国およびグローバル株式についてはあおぞら・世界配当成長株ベガ・ファンド(愛称“くらだ
し”)の実質的な運用会社である TCW アセット・マネジメント・カンパニーに執筆をお願いし
ました。また、あおぞら・新グローバル分散ファンド(愛称 “ぜんぞう”)シリーズの投資対象
ファンドや“しずくシリーズ“の組入れファンドの一部を運用しているディメンショナル・ファン
ド・アドバイザーズ社の創立 35 年を記念して出版された同社に深く関わるプロフェッショナル
や、同社のアドバイザー等を務める高名な研究者の方々の資産運用に対する情熱のこもった一言
エッセイ集から、あおぞら投信が選りすぐって掲載しました。
あおぞら投信からは、今年も資産運用を考える際に、押さえておきたい 3 つのポイントをご紹介
したいと思います。
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2017 年の展望
日本株式市場について
~アリアンツ・グローバル・インベスターズ社~
■ 2016 年のわが国株式市場の振返り
2016年の日本経済を振り返りま
すと、低調な個人消費や外需の低
迷を受け、低成長で推移しました。
年の前半は中国元の切り下げ懸念、
原油安による世界経済の減速懸念
が強まり、市場心理が悪化しまし
た。こうした状況下、日銀は金融
緩和策を更に進めてマイナス金利
政策を導入しましたが、その効果
は限定的なものに止まりました。
年後半に入ると円高の是正や中国
景気の落ち着きなどから、外需が底打ちし、経済成長率も若干上向きに転じました。
そうした中、2016年の株式市場は、円高による企業業績の悪化やマイナス金利導入による金
融機関への収益圧迫が懸念され、年初から下落基調で推移しました。更に、中国経済の減速や
中国元の下落によるアジア経済のデフレが懸念され、株式市場の下落要因となりました。また、
6月に実施されたイギリスの国民投票においてEU離脱派が過半数を獲得したことがリスクオフ
(投資家のリスク回避姿勢)を更に進め、国内株式市場は一時急落しました。しかし、その影
響はすぐに顕在化するものではなく、また、世界的に景気下支えのための財政支出も期待でき
るとの観測等から世界の資本市場は持ち直し、国内株式市場も反発に転じました。
企業業績は、円高による収益率悪化や国内需要の低迷を背景に、下方修正されましたが、夏場
までにその悪影響は概ね折り込まれ、株価は第1四半期(4月~6月期)決算発表前後の7月に底
打ちしました。また、日銀によるマイナス金利政策を含む金融政策の総括検証、長期債利回り
の誘導目標の導入により、イールドカーブがスティープ化(長短金利差が拡大)し、金融機関
の収益悪化懸念が弱まったことから、金融株が反発し、市場の上昇要因となりました。また、
企業は、配当増、自社株買いの増加など株主還元に引き続き積極的な姿勢を見せ、市場の支援
材料となりました。
11月には、米国大統領選において、事前の予想に反してトランプ候補が勝利しましたが、財政
支出拡大や規制緩和による景気浮揚効果への期待が強まり、国内株式市場は上昇しました。ま
た財政支出拡大に伴うインフレ期待から、米国の金融政策においても利上げが今後数回行われ
るとの観測が強まり、為替相場が円安方向に動いたことが企業収益の改善期待を強めました。
株式市場は第4・四半期には大幅に反発し、年前半のマイナス幅を縮める展開となりました。
■ 2017 年のわが国株式市場の展望
日本経済は、海外需要の増加、円安の効果などにより、低水準ながらも底堅い成長を示すと予
想しています。米国経済の回復や企業収益の回復を背景に設備投資、個人消費とも緩やかに回
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復することが期待されます。また、補正予算の執行による公共投資の増加も総需要をサポート
すると思われます。
2017年はトランプ新米国大統領の経済、通商、規制緩和策が注目されます。財政政策につい
ては、インフラ投資の増加、所得税の減税などによる景気の押し上げ効果が見込まれます。イ
ンフラ投資の増加については、米議会との議論が難航する可能性がありますが、総じて政策は
景気刺激的なものになり、これまで経済の実態以上に低下してきた金利が正常化するプロセス
を後押しするものになると見ています。また、規制緩和については、金融機関の収益機会を制
限してきたドット・フランク法の改正による金融機関の利益成長やエネルギー自給に向けたエ
ネルギー関連の投資の拡大が期待されます。これらを背景にFRBは年数回の利上げを実施す
ると予想され、為替相場は円安・ドル高方向で推移すると見ています。
2016年の企業業績は
円高の影響により伸び
悩みましたが、2017年
は米国景気の回復、円
安効果などにより回復
していくと予想されま
す。外需関連企業が成
長を牽引すると考えら
れますが、内需関連企
業も堅調な内需、リス
トラ効果などにより安
定した収益成長が期待されます。また、世界的に金利が上昇基調にあることから、金融機関を
とりまく経営環境も好転してきており、銀行、保険会社などの収益も底打ちすると考えられま
す。また企業の株主還元強化への動きは継続しており、今後増配、自社株買いが更に積極化し
ていくと思われ、株価の再評価に繋がっていくと予想しております。
日銀の金融政策は、足下の円安などの影響からインフレ率が今後緩やかに上昇していくと思
われることから、当面現状維持となると考えています。しかし、米国経済が上向きの兆候を見
せ、米国の長期金利が上昇し始めたことから、インフレ率の動向、為替相場の水準によっては
現状ゼロ近辺としている長期金利のターゲットを若干上方にシフトすることもありえると考え
ています。
このような環境下、国内株式市場は、基本的には企業業績の回復を背景に上昇していくとみ
ています。足下、米トランプ新大統領の経済政策に対する期待が先行し、株式市場は景気敏感
株を主体に上昇してきておりますが、米国の政策効果は2017年後半から2018年にならないと
顕在化しないため、景気の動向によっては年前半に一旦調整する局面もありえるとみています。
しかし、年後半から翌年にかけての経済成長率の加速期待や日銀によるETF購入による需給
面でのサポートなどから、株式市場の調整は深いものにはならないと考えています。また、企
業の自社株買いの増加傾向も株式市場の需給にプラス影響を与え、下値をサポートすると思わ
れます。こうした中、企業業績は為替相場に対する感応度や本業の競争力により、収益力格差
は広がると考えられ、また株主還元の拡大についても企業ごとに拡大余地、還元方針に差があ
ることから、銘柄間の株価リターンにも大きな差が出てくると予想しています。
(アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン株式会社のレポートを基にあおぞら投信が作成)
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米国およびグローバル株式市場について
~TCW アセット・マネジメント・カンパニー社~
■ 2016 年の米国株式市場の振返り
11 月末現在、S&P500 種でみ
た米国株式市場は年初来で 7.6%
の上昇となっています。ドナル
ド・トランプの予想外の大統領選
での勝利に加え、共和党が上下両
院で過半数を握ったことで市況関
連株が大幅上昇し、主要株価指数
は史上最高値を更新しました。ト
ランプ次期大統領の基本政策は法
人税および所得税減税とインフラ
投資および国防支出拡大であるた
め、財政支出拡大による景気浮揚
効果への期待とインフレへの懸念を誘発しました。その結果、米国債は 11 月に単月としては
2009 年以来の金利上昇に見舞われ、10 年国債利回りは月末に 2.38%と今年 7 月初旬につけ
た史上最低利回りの 1.37%から 1%上昇しました。また、米ドルは主要通貨のバスケットに対
して 14 年振りの高値となり、OPEC(石油輸出国機構)が生産量の削減という画期的な決定を
し、指標となる WTI(ウエストテキサス・インターミディエート)が 13 ヶ月振りの高値とな
る 1 バレル=50 ドルに月間で 6%上昇したことで、既に選挙前から可能性はひじょうに高いと
されていた 12 月中旬での FRB(連邦準備制度理事会)による利上げがほぼ 100%確実となり
ました。
■ 2017 年の米国およびグローバル株式市場の展望
トランプ次期政権は依然、閣僚
の選考過程にあるものの、株式市
場は既に投資環境のパラダイムシ
フトを織込みつつあります。過去
8 年間、FRB が超金融緩和政策を
とったことで従来の景気循環サイ
クルを雲散霧消させ、資本のコス
トと合理性を歪めてしまいました。
選挙後、株式市場において、公益
セクターや生活必需品セクターと
いった低リスクで債券代替的なセ
クターから金融や資本財といった市況関連セクターへの顕著な主役交代が起こりました。
現在の株価バリュエーションの水準(S&P500 種の予想株価収益率で 17 倍程度)から更
に株価が上昇するためには、消費や設備投資支出の増加による景気拡大によって、企業の売上
増を伴う利益の増加が必要となります。過去 1 年半に亘って企業収益が停滞した後、第 3 四半
期(10 月~12 月)の企業収益は前年同期比で既にプラスに転じていると思われます。
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当然ながらトランプ次期大統領はまだ政権の座に就いておらず、彼の政策の多くが議会によ
る法制化と承認が必要です。一方で、過去1ケ月における債券利回りの上昇は住宅ローン金利
を押上げ(30 年固定金利の平均は 3.51%から 3.98%へ上昇)ており、これは力強いとはいえ
ない米国経済の持続的な推進力となっていた住宅市場にとって逆風となります。トランプ政権
による政策の劇的な変化は将来に対する不透明性を高める一方、過去8年間続いた超金融緩和
がよりトラディショナルなビジネス・サイクルに向かって正常化することで、株式投資に対して
は引続き慎重な姿勢を維持しながらも収益機会が増えると考えます。
米国株式に対しては、短期的には徐々にアップサイドに対するリスクを感じています。信用
サイクルについては依然慎重な見方を維持しながらも、インフラ関連への支出や減税という形
を変えた一種の金融緩和が、当初の予想を超えて信用サイクルを引き伸ばすという可能性も考
慮しています。その結果、成長や金利上昇から恩恵を受ける銘柄の組入れを増やしており、ポ
ートフォリオ全体を以前に比べてディフェンシブからより積極的なものにしています。
加えて、住宅市場の引続きの堅調さは雇用と GDP 成長にプラスの影響を与え、経済を今後も支
えると期待されます。景気の下振れリスクについては世界の中央銀行が必要に応じ、金融市場
が正常に機能するように十分な流動性を供給するということに疑いはありません。従って、金
融危機のような市場の混乱は考え難いといえます。利回りが枯渇してしまった現在の環境下で
は、S&P500 種の配当利回りが 2.1%という現在の状況でも、ここからの大きな下げはないと
いう、ある程度の下値サポート要因として働くでしょう。このような環境下においては、銘柄
の選別がこれまで以上に重要となってくるでしょう。
最後に、米国株式市場が世界の他の地域のどの株式市場よりも比較優位の魅力的な市場だと
いうことを付け加えておきたいと思います。政治的、経済的な環境は概ね安定的で、米ドルは
引続き世界の基軸通貨の地位にあります。株式市場の流動性は従来に比べれば下がったものの、
相対的には引続き強固ですし、規制環境は市場からの信頼を得ています。米国の金融政策は正
常化への途上にあり、それがもし成功すれば、更に堅調な経済成長へとつながるでしょうし、
より強固な企業収益につながります。日本や欧州などの米国以外の先進国株式市場は、各国・
地域中央銀行による継続的な量的金融緩和の好影響で引続き魅力的な投資対象であり続けると
思われますが、それらの地域の潜在成長性は米国のそれと比較すると劣っており、バリュエー
ションも緩和的な金融政策による流動性を反映して高くなっています。そうした中、
引続き米国市場にフォーカスした運用が継続すると予想されます。
(TCW アセット・マネジメント・カンパニーのレポートを基にあおぞら投信が作成)
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より良き投資成果を得るための一言エッセイ
~ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ社~
あおぞら投信のぜんぞうシリーズが組入れている全てのファンド、しずくシリーズの一部の
組入れファンドを運用するディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ社は、優れた学術的
研究成果を投資の実践に応用することにより飛躍的な発展を遂げてきました。そのディメンシ
ョナル社が、創立 35 周年を記念して発刊した同社のシニアメンバーやアドバイザーを務める世
界トップクラスの研究者の人達による、「より良き投資成果を得るための 35 の一言エッセイ集」
の中から、投資をするに当って役に立つ 3 つの一言エッセイをご紹介します。
「効率的市場仮説とは、簡単に言えば、証券の価格はすべての利用可能な情報を織り込んで
いることだ」
ユージン・ファーマ
2013 年ノーベル経済学賞受賞 シカゴ大学教授
Dimensional Fund Advisors LP ディレクター 兼
コンサルタント
シカゴ大学博士課程の学生のころ、ファーマ教授は有名な効率的市場仮説を打ち立てました。
この仮説は、効率的な市場では価格にすべての利用可能な情報が織り込まれているという、簡
単にいえば市場は誰よりもよく知っているということです。この発見は多くの示唆を含んでい
ます。そのひとつに、プロの運用者であっても、市場の動きを予測して勝ち続けることはでき
ないということがあります。このことは業界の長年のデータからも裏付けられています。ディ
メンショナル社の運用は、市場の将来を予測するのではなく、価格が持つ情報を利用すること
で、長期的に優れた投資成果に結び付けます。
「研究成果は誰にでも見ることができる。しかしディメンショナルと他社との違いは、そのアイディ
アを実践に移す方法にある」
デービッド・ブース
創業者、共同 CEO, Dimensional Fund Advisors LP
市場や投資に関する大量の研究や論文は、誰でも閲覧することができます。学術研究をレビ
ューすることは出発点に過ぎません。その研究を徹底的に検証し、実践的な応用を考え尽くし
た上で、お客様が自らの投資内容を理解し、目標を達成できるように、お客様とともに考える
必要があります。
「人は不確実性の世界で確実性を求めるものだ。しかし私たちは不確実性を受け入れ、強健な
ポートフォリオでそれに対処する」
エデュアルド・レペト
共同 CEO 兼 共同 CIO, Dimensional Fund Advisors LP
投資家は確実性を求めるものです。しかし現在の市場に確実な将来は存在しません。存在し
ない確実性を求めるよりも、投資プロセスの中に不確実性の要素を取り入れるべきです。
ディメンショナルは慎重にポートフォリオを構築します。多くのディメンション(特性)に
焦点をあて、信頼できる付加価値の源泉を選び出し、コストを抑え、分散を徹底し、効率的に
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トレードを執行します。ディメンショナルは不確実性の世界で、より良い投資成果を提供でき
るように努めています。
最後に、投資のためのエッセイではありませんが、ディメンショナル社を現す象徴的な一言
をご紹介したいと思います。ディメンショナル社に強い影響を与えた 3 人のノーベル経済学賞
受賞者の1人で、元シカゴ大学教授のマートン・ミラー博士のことばです。「私がディメンショ
ナルを評価する点は、ノーベル賞を受賞する前に、ノーベル経済学賞受賞者をボードメンバー
(取締役)に迎え入れたことだ。受賞した後に迎えるのは簡単だ」ということばです。創業者
のデービッド・ブース氏は、近代ファイナンス理論の発展に大きな役割を果した人々を次々に
会社に迎え入れました。彼はアイディアこそが重要であると確信していました。ディメンショ
ナルの手法を広めるため、ウォール街よりも学術研究を信頼することを決めたことで、ディメ
ンショナル社は他社とは違う道を歩み始めました。
(ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズのレポートを基にあおぞら投信が作成)
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知識も漸増 ~特別版~
資産運用をギャンブル(当てもの)にしてはいけない
最近、「IR(統合リゾート)推進法案」が国会を通過し、日本にもカジノが作られること
になりました。反対派の主な主張の1つはギャンブル依存症を増加させるからというものでした。
ところで日本では投資や資産運用はギャンブル、怖い、と考えている向きも少なくなくありま
せん。これは、あおぞら投信が創業以来、繰り返しお伝えしていることなのですが、資産運用、
つまり投資はギャンブルではありませんし、ギャンブルにしてしまっては成功しません。「投
資はギャンブル」と考えてしまう根底に、投資は当てて儲けるものという考え、あるいは当て
なければ儲からないという誤解が根強くあるからではないかと考えます。しかし、ギャンブル
にしてしまうと、そもそも当てること、あるいは当て続けることが難しいのです。
今年あった市場の2つの大きな変動要因であるブリクジット(英国の国民投票によるEU離脱)
と米大統領選挙でのトランプ候補の勝利を思い出してください。下馬評では英国はEU残留、
米大統領はクリントン候補の勝利というのが多数意見でしたし、知識層ほどその見方が強い傾
向がありました。この2つのイベント自体は残留か離脱、クリントンかトランプかの二者択一で
したので、単純な確率では正解率は50%ということになりますが、大勢の見方、特に専門家と
称される人々は結果を正確に予測できませんでした。それにも増して、その後の市場の動きを
予想できた人は皆無に近かったことは皆さまもご承知のことと思われます。これらのイベント
に先立って、マスコミで取り上げられていた識者や専門家の見通しが、ことごとく外れたこと
は皆さまのご記憶にも新しいのではと思います。
ではなぜギャンブルは勝ち続けることはできないのか。まずギャンブルには主催者(胴元)
がいて、一定の割合を取ります。賭け手は残った金額を分け合うことになるので、賭け手の元
に戻る金額の総和は、当初の掛金よりも確実に少ない額となります。これは“ゼロサムゲーム”
(勝者の利益と敗者の損失の合計がゼロのもの)と呼ばれる投機性が強い商品先物などと比べ
ても歩が悪いゲームです。
ここで簡単な数字を見ていただきた
いと思います。これはいかにギャンブ
ルが儲からないかを簡単な算数で示し
たものです。返金率80%(逆にいうと
主 催 者 の 取 り 分 が 20 % ) の ゲ ー ム に
100万円を持って臨んだ場合のゲーム
(賭け)を重ねる毎の残存額です。
《左図の条件:
【初期投資金額】1,000,000円
【払戻し率】0.8%》
もちろん1つ1つの賭けは勝つか負けるかのデジタルですので、ある人は1回の賭けで所持金全
てを失うでしょうし、ある人は何回か勝ち続けたり、あるいは勝ったり負けたりするでしょう。
これはそうした複数の人達の平均です。驚くことに(あるいは驚かれないかもしれませんが)、
10回のゲームが終わった段階で、所持金の平均は約10分の1になっており、20回のゲームの後
ではなんと100分の1近くまで減少しています。これがギャンブルです。
このことが、われわれが「投資をギャンブルにしてはいけない」と主張する論拠です。では、
どうすれば投資をギャンブルではないもの、つまり当てものではないものにすることができる
のでしょうか。答えは、投資は勝ち負けの総和がゼロになってしまうゼロサムゲームや、まし
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てや賭けごとのように主催者(胴元)が一定の割合をはね、残りを参加者が奪い合うといった
類のものではなく、長期的に投資額の総和は成長していくからです。株式は株主から集めた資
本で事業を行い、付加価値を創造することで成長します。債券は債券で集めた資金で事業を行
い、投資家に利息を支払います。
ある株式が明日値上りするか値下がりするかはほぼ50:50の確率ですが、本当の答えは誰に
も分かりません。当ったとすれば、単に50%の確率だけで当っただけです。
一方、株式、例えば分散されたグロ
ーバル株式ポートフォリオは長期的
には値上りすることが分かっており、
その値上り率は計測期間によっても
異なりますが、平均すると年率で8~
9%程度です。もちろん短期的には値
下がりすることもありますが、値上
りする確率は期間を長くすればする
ほど100%に近付きます。唯一の例
外は日本株式で、これは市場全体と
いう意味ではバブル期につけたピークから見ると、最近は好調とはいえ、過去27年間では高値
から50%程度値下がりしており、その間、ときどき大きく上昇しては、長期的に低迷するとい
うことを繰り返しています。ただそうした中にも業績を伸ばし、株価が大きく上昇している銘
柄も少なからずありますので、市場全体の流れを掴むというよりは、業績を伸ばして株価が上
昇することが期待できる銘柄だけに絞って投資を行う戦略が、日本株式については有効と考え
ます。ただし、そのような投資手法は真のプロフェッショナルでないと行うことはできません。
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ウーバーエコノミーの今後
先日、アメリカに出張した際、移動にはウーバーをよく使いました。ウーバーについては、
昨年のこのコーナーでも民泊サイトのエアビーアンドビーとともに世界のゲームチャンジャー
(それまでの常識を塗り替えるような革新的なもの)としてご紹介しました。ウーバーは、一
般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶサービスと仕組みを提供しています。そ
の仕組みはスマートフォンのアプリを使って車を探す、目的地を指定する、クレジットカード
で決済する(顧客と運転手は現金の授受を行わない)、領収書をメールで配信するというとて
も便利なサービスです。一方、顧客が運転手を評価すると同時に、運転手も顧客を評価する
「相互評価」を行うことで、ドライバーと顧客双方のモラルを向上させています。アメリカを
始め世界の多くの国ではタクシーが領収書を出さない、メーターを倒さずに法外な料金を請求
するといった問題が多く起こっていることから、これらの問題をなくし、さらに自家用車のオ
ーナーにとって空いた時間で「簡単な副業」ができる点が受け、爆発的に成長しています。一
方で日本国内では大手タクシー業界団体がこのような配車サービスの国内普及に対して反発し
ていること等から現在においては一般のドライバーによるウーバーのサービスは提供されてい
ません。今回は訪問したニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの全ての都市で空港
と市内の往復や、市内での移動にウーバーを使いました。特にニューヨークでの一日は土砂降
りの雨で、通常のタクシーは絶対に掴まらない状況の中、画面のように簡単に車を呼ぶことが
できてとても助かりました。
(ウーバーのスマートフォンアプリ画面)
(カリフォルニア州で自動運転の実験をするウーバーの車)
ロサンゼルスの空港から市内に向かうウーバーの運転手が話してくれたのですが、カリフォ
ルニアでの最低賃金は時給約10ドルなので、彼が得られる仕事では1日8時間、1週間40時間労
働で400ドル、1ヶ月でせいぜい2,000ドル程度の収入しか得ることができません。そこから家
賃(ロサンゼルスではアパートが最低でも1,400ドルするとのこと)を引くと残りは600ドル、
その600ドルで残りの全て(公共料金、携帯電話代、衣食費、医療費、車の維持費等)を賄わ
なければならず、とても生活していけないのです。それに対し、ウーバーでは経費込みで1時間
当り約15ドル間ほど稼げ、車の維持費(保険、ガソリン)を引くと最低賃金の10ドルを大きく
超えるわけではないものの、ウーバーの場合は自分が働こうと思えば週70時間でも80時間でも
働けるのです(その代わりいわゆる人間らしい「ライフ」はなくなってしまうのです
が・・。)。
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ウーバーは当初、エアビーアンドビー同様、シェアエコノミー(空いているものをシェアす
る)を前提としていましたが、今では多くのドライバーが、それを専業とする人が増えている
ようです。このように、革新的なサービスは、それまで最低賃金で働くことしかできなかった
人達の生活をも変えており、そのことはアメリカが他の先進国よりも高い成長を実現している
1つの背景であること考えます。こうした利便性と働く機会を提供しているウーバーですが、
一方で自動運転技術の研究でも進んでいると言われており、現在自家用車を運転してお客さん
を運んで稼いでいるドライバー達が自動運転に置換えられてしまう日が来るのも時間の問題か
もしれません。IT革命は産業革命に匹敵する革新であり、今、その改革の主戦場はサービス分
野に及んできており、私たちの生活や働き方は大きく変わり始めています。ウーバーだけでな
く、ITを使って生産性を飛躍的に改善する革新的な技術やサービスの今後には目が離せません。
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トランプは劇薬?!
11月8日に行われた米国大統領選挙では、事前予想に反してドナルド・トランプ候補が勝利し
ました。また、同時に行われた議会選挙では、共和党が上下両院の過半数を維持する結果と
なり、共和党がブッシュ政権以来8年ぶりで政府(大統領)と上下両院を押えることとなり、政
府と議会のねじれが解消されることになりました。しかし、上院における共和党の議席数は52
と全体(100議席)の過半数をわずかに上回るもので、法案を通すには民主党の一部を取込むた
めの妥協が求められるでしょう。
トランプ次期大統領が選挙期間中に発言した排他的・人種差別的な政策は実行性に不透明な
ものが多くありますが、減税、規制緩和やインフラ投資などの政策は実現性が高いと思われま
す。減税とインフラ投資については財政収支の悪化からインフレを危惧する向きも多いものの、
インフラ投資については民間資金の活用が主になると考えられ、財政面からインフレが高進す
る可能性は低いと思われます。
来年1月にスタートするトランプ政権が実際にどのような政策を取るのか、今の段階では全く
明らかになっていませんが、任命されている閣僚などの政府幹部やブレーンとなっている経済
学者からは、新政権が過去8年続いた民主党オバマ政権とは全く異なるレジームチェンジ(体制
の変更)を目指していることが推測されます。現政権や世界の先進各国が長期に停滞する経済
に対して主に金融政策と(銀行などに対する)規制で対応していたのに対し、トランプ新政権
は官僚の関与を極力廃した小さな政府を指向し、中間層をメインターゲットとする減税、民間
主導の市場経済による経済の活性化を目指すものと思われます。
一方で、懸念は軍事・外交です。安全保障面では選挙期間中から日本を含む同盟国による米
軍駐留経費の負担やNATO(北大西洋条約機構)の見直し、通商面ではTPP(環太平洋経済連携
協定)からの離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を強く主張しています。不動産王ド
ナルド・トランプが何度もの破産から立ち直ったのは、その類(たぐい)稀な交渉力によるとこ
ろも大です。しかし、アメリカ第一主義の方針の下、アメリカだけの主張を通し難い多国間協
定から2国間交渉に切替え、その交渉力でアメリカの利益を極大化しようとする考えはアメリカ
の孤立に繋がる可能性を否定できません。議会による立法化や承認手続きが必要な国内問題と
は異なり、外交に関しては大統領の裁量が大きいだけに、彼がビジネスで実践してきた強引な
交渉術で外国に揺さぶりをかけるとすれば危険でしょう。特に危惧されるのが中国との関係で
す。生産の移転は経済の発展の過程で避けられなかった問題でもあり、またアメリカが一方的
に被害を被ったわけではない(それどころか大きな恩恵もうけています)にもかかわらず、彼
は生産に係わる雇用がアメリカから中国に移ったことに対し、中国を不公正な為替操作国と断
じています。一方で、台湾との密接な関係を確認し、「一つの中国」という考えには縛られな
いとの考えを表明して中国を強く刺激しており、これは最悪中国軍部による台湾武力併合を誘
発するなど、深刻な懸念と考えられています。経済においては活性化が期待できる反面、こう
した点が「劇薬」と考えられる所以です。
ただ、現時点ではトランプ次期政権の具体的な政策については何も明確になっておらず、ま
たその結果としての市場の反応も予想が困難であることから、憶測で何かに賭けるということ
はギャンブルになってしまいます。今後も市場は変動し続けると思われますが、価値あるもの
を見極め、長期的なスタンスで臨むことが成功への鍵と考えます。
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まとめ
市場は常に変動するものです。投資理論ではある意味、その変動のことをボラティリティ、
あるいはリスクと呼んでいますが、定期預金や短期国債などの無リスク資産のリターンを上回
る超過収益を得るためには何らかのリスクを取る必要があります。リスクに対処するためには
長期的な投資スタンスとリスクの分散が欠かせません。短期のアップダウンに神経を擦り減ら
してしまうと本来の目的を見失う危険があります。遠くを見ることが乗り物酔いを防ぐ効果が
ありますが、資産運用にも同じことがいえます。短期的な値動きに一喜一憂することなく、長
期的なスタンスで目的を達成できるよう、あおぞら投信は今後もより良い商品とサービスを提
供するよう心掛けていく所存です。
(あおぞら投信株式会社)
留意事項
■本資料は情報の提供を目的としており、何らかの行動を勧誘するものではありません。
■本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性
を保証するものではありません。また、将来の市場環境の変動や投資収益を示唆あるいは保証する
ものではありません。
■ここに示された意見などは、本資料作成日現在の当社および一部個人の見解であり、事前の予告
なしに変更される事もあります。
■本資料で使用している各指数に関する著作権等の知的財産権、その他の一切の権利はそれぞれ
の指数の開発元もしくは公表元に帰属します。
■投資信託の取得に当たっては、投資信託説明書(交付目論見書)等の内容を必ずご確認の上、ご
自身でご判断ください。
2016 年 12 月
あおぞら投信株式会社からのお知らせ
【ご購入に際しての留意事項】
◆投資信託に係るリスクについて
投資信託は、国内外の株式や公社債等の値動きのある有価証券等に投資しますので、基準価額が変動し
ます。また、為替の変動により損失を被ることがあります。したがって、投資家の皆さまの投資元本は
保証されているものではなく、基準価額の下落により、損失を被り、投資元本を割り込むことがありま
す。信託財産に生じた利益および損失は、すべて投資家の皆さまに帰属します。
なお、投資信託は預貯金と異なります。また、投資信託は、投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制
限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なりますので、詳しくは、「投
資信託説明書(交付目論見書)」の「投資リスク」を必ずご覧ください。
<投資信託に係る費用>
◆投資者が直接的に負担する費用
購入時手数料
上限 4.32%(税抜 4.00%)
換金時手数料
上限 1.08%(税抜 1.00%)
信託財産留保額
ありません。
◆投資者が信託財産で間接的に負担する費用
運用管理費用
純資産総額に対して上限年率 2.727%(税込)
(信託報酬)
*一部のファンドについては、運用成果等に応じて成功報酬をご負担いただく場合
があります。
その他費用
上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書
(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。
※上記当該手数料等の合計額については、ファンドの保有期間に応じて異なりますので、表示すること
ができません。
《ご注意》
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。
費用の料率につきましては、あおぞら投信が運用するすべての投資信託のうち、投資家の皆さまにご負
担いただく、それぞれの費用における最大の料率を記載しております。
投資信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますので、ご投資をされる際には、
事前によく投資信託説明書(交付目論見書)、目論見書補完書面等をご覧ください。
投資信託は預金保険または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。投資信託は金融機関の預
金と異なり、元金および利息の保証はありません。
投資信託のお申込みにあたっては、販売会社よりお渡しする投資信託説明書(交付目論見書)の内容を
必ずご確認のうえ、ご自身でご判断ください。
あおぞら投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2771号
加入協会 一般社団法人 投資信託協会