“情報”をフランスから逆輸入!?∼高山市の野心的な海外戦略∼

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中経連事務局員が、担当するエリアでお聴きした、
各県の最新トピックや地域特有の情報を紹介するコーナーです。
“ 情報 ”をフランスから逆輸入!?∼高山市の野心的な海外戦略∼
欧州からの来訪者が多い高山の外国人旅行客
全国でも有数の観光地として名高い高山市。外国
人旅行客が多いことでも有名だ。
しかし、高山市の平
成 27 年の宿泊旅行客における外国人比率は 17 . 6 %
と全国の14 . 6%と比較して3ポイント上回る程度であ
情報の逆輸入
海外戦略室は、
フランスをファッションや料理など
様々な分野における世界最先端の流行をリードし、世
すると、高山市は全国に比べアジアへの偏りが少な
界へ発信することに長けた国と捉え、
フランスで認知
く、欧州からの来訪者が多い(図1)。非アジア人の旅
が高まり評価されればやがて欧州全土、全世界に伝
行客が多いことが、実際の人数より、外国人旅行客が
播すると分析。特にパリの有名料理店は世界中から
多いという印象に繋がっているかもしれない。
注目を集めていることから、高山の農産品がパリの有
欧州の割合が高い理由は明らかだ。平成 19 年にミ
名料理店で採用されれば世界中の料理人に認知さ
シュラン社が発行する旅行ガイドブックで「高山」が最
れ、輸出増に繋がるという目論見のもと、有名シェフや
上位の3つ星を獲得したためである。事実、ガイドブッ
食材店オーナーを高山に招き、農産品の生産現場や
ク掲載直後から欧州からの来訪者は急増し、
4年間
調理法などを伝える事業を行っている。
高山市の目論見は輸出増だけに留まらない。フラ
図1 平成27年における外国人宿泊客のエリア比率
高山
アジア
欧州
北米
その他
56%
19%
6%
19%
全国
83%
0%
20%
6%
40%
60%
80%
100%
図2 高山市の欧州からの宿泊者数
(単位:人泊)
60,000
50,000
40,000
30,000
20,000
3月にミシュランで
3つ星を獲得
18,160
24,260
10,000
0
平成18年
平成19年
37,440
45,521
宿 泊 者が急
平成20年
52,521
増
平成21年
ンスで高評価を受けた という情報を 逆輸入 するこ
とで、国内における
「飛騨高山」
ブランドを向上させ、最
大消費地の国内出荷の増加に繋げることも視野に入
7% 4%
出所:高山市「平成27年高山市外国人観光客宿泊統計」および
日本政府観光局(JNTO)「2015年訪日外客数」をもとに作成
平成22年
出所:高山市「平成27年高山市外国人観光宿泊統計」をもとに作成
れている。同室ではこれを
「情報の逆輸入」
と呼んでい
る。すなわち、強力な情報発信力を持った国で「飛騨
高山」
ブランドに付加価値を付け、国内に還流するこ
とで、国内外からの誘客・需要拡大による地域産業の
振興に繋げる、
という野心的な戦略と言えるだろう。
地域産業の生産性向上に向けて
地域活性化のキーワードとして
「観光」
「 農業」の生
産性向上と言われて久しいが、
「 情報の逆輸入」のよ
海外戦略室の設置
うな手法によって、地域そのものの魅力が向上すれ
欧州における観光面の認知度が向上した高山市
ば、国内外の方々から高くても買ってもらえるブランド
は、観光だけでなく国際化の取り組みとして、平成 23
に育ち、
「 観光」
「 農業」
といった地域に根ざした産業
年、観光、商工、農政、国際交流などの分野を統括し、
の生産性向上に大きく寄与するのではないだろうか。
海外に向けた施策を総合的に推進する海外戦略室を
地域活性化の一つのモデルとして、高山市の取り組み
設置した(平成 27 年度の組織改編により、海外戦略
から目が離せない。
課に移行)。同室は国際観光をはじめ、地場産品の海
外販路開拓、国際交流を一体的に進め、
「 飛騨高山」
中経連 2016.9
的な例としてフランスにおける取り組みを紹介したい。
る。一方で、外国人宿泊客の出身地域の内訳で比較
で2倍以上増加した
(図2)。
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ブランドをさらに高める事業に取り組んでいる。代表
(岐阜担当 和田 耕一朗)
取材協力:高山市 ブランド・海外戦略部 海外戦略課
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