ペニシリンの単離

課 題 名
発表者氏名
指 導 教 員
ペニシリンの単離
鈴木 佑允
鈴木 長寿
田坂 将太郎
1.目的
青カビからペニシリンを抽出し、単離する。
2.方法
固 体 培 地 で 青 カ ビ を 育 て 液 体 培 地 で 増 殖 さ せ 、生 成 し た ペ ニ シ リ ン を 精 製 ・ 単 離 を す る 。
(1) 培 地 の 調 製
固体平板培地 3 種(A、B、C)を用意した。
<培地Aの作成>
① ト リ プ ト ン 4.0 g 、 酵 母 エ キ ス 1.0 g 、 寒 天 3.0 g 、 ブ ロ モ ク レ ゾ ー ル パ ー プ ル 0.1 g
を秤量した。
② ① を 500ml ビ ー カ ー に 入 れ 、 精 製 水 を 200ml 加 え 加 熱 、 溶 解 し た 。
③ 寒 天 培 地 の 溶 液 を 滅 菌 し た シ ャ ー レ の 3 分 の 1 ぐ ら い ま で 入 れ た 。( 入 れ た ら す ぐ に
ふたをする)
④③のシャーレを再度、オートクレーブで滅菌した。
<培地 B の作成>
① グ ル コ ー ス 10 g 、 ポ リ ペ プ ト ン 10 g 、 ア デ ニ ン 0.4 g 、 酵 母 抽 出 剤 5.0 g 、 寒 天 7.5
g を 秤 量 し た 。( ② 以 降 は 培 地 A と 同 様 )
<培地 C の作成>
① ジ ャ ガ イ モ を 水 洗 い し て 皮 を む き 、 約 1 cm 3 程 度 に 切 っ た 。
② ① の ジ ャ ガ イ モ 200g を 簡 単 に 水 洗 い し て 、 1  の 蒸 留 水 で 約 20 分 煮 た 。 冷 ま し た ら
ガーゼで絞った。
③ ス ク ロ ー ス 2 g を 加 え pH を 調 製 す る 。 寒 天 を 加 え 、 温 め て 溶 か し 、 シ ャ ー レ に 入 れ
た。
④③のシャーレをオートクレーブで滅菌する。
(2) 青 カ ビ の 採 取
天然の青カビは落下菌を採取、また餅に生えた青カビ、ブルーチーズの青カビの3種
を利用した。
3種の培地にそれぞれのカビを落とし、数日間カビが発生する過程を観察した。
( 落 下 菌 の 採 取 は 、 培 地 を 空 気 中 に 十 数 分 静 置 す る こ と で 採 取 し た 。)
(3) 青 カ ビ の 大 量 培 養
① (2) の 実 験 よ り 、 最 も 大 量 に 青 カ ビ が 発 生 し た の が 培
地 C とブルーチーズの組み合わせだったので、それ
をもとに固体培地で純粋な青カビが出来るまで培養
し た ( 図 1 )。 青 カ ビ を 他 の 培 地 に 移 す と き は 、 ガ
スバーナーをたき上昇気流を起こすことで他の菌類
が侵入することを防いだ。
②分離した純粋な青カビを、液体培地(培地 B の寒天
を入れなかったものを使用)に移し培養した。
図1
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青カビの培養
(4) ペ ニ シ リ ン の 抽 出 ・ 単 離
① (3) の 液 体 培 地 で 培 養 し た カ ビ の 培 地 を ろ 過 し た 固 形 物 を 除 去 し た 。
②ろ液に活性炭を入れ、イオン化したペニシリンを吸着させた。
③活性炭に 1 %酢酸水溶液を加え洗浄した。
④ 洗 浄 後 、 2 % 炭 酸 水 素 ナ ト リ ウ ム 水 溶 液 を 加 え 、 30ml ず つ に 区 分 し た 。
⑤フリーズドライにかけ、粉末を得た。
(5) 防 菌 感 受 性 テ ス ト
(4) で 得 た 粉 末 状 の 物 質 を 水 に 溶 か し た も の を 、 細 菌 を 培 養 し た 固 体 培 地 に 滴 下 し 防
菌感受性テストを行った。
3.結果
フリーズドライによって針状結晶を含む粉末が得られたが、ペニシリンも炭酸水素ナト
リウムも針状結晶であるため、顕微鏡だけでは粉末がペニシリンがどうか判断できなかっ
た ( 図 2 、 3 )。
防菌感受性テストでは陽性だったので粉末状の物質にペニシリンの結晶が含まれている
こ と は 確 認 で き た ( 図 4 )。
図2 得られた結晶
図 3 得 ら れ た 針 状 結 晶 × 2000
図4
防菌感受性テスト
4.考察
・空気中を漂う落下菌の利用は、予想よりも量が少なく、また目的のものを得られる可
能性を考えると問題があると考えられる。
・活性炭の洗浄に炭酸水素ナトリウムを使ったことで、酢酸ナトリウムの生成や過剰の
炭酸水素ナトリウムの残留が起こると考えられる。
・炭酸水素ナトリウムと酢酸ナトリウムはともにペニシリンと同じ針状結晶なので、顕
微鏡による確認は難しい。
5.今後の課題
・青カビは僅かな環境の違いによって育ち方に大差がでるため、培養にもっとも良い環
境方法を特定する。
・液体培地からの単離の時に、過剰の炭酸水素ナトリウムや生成した酢酸ナトリウムを
除去して純度を高める必要がある。
6.参考文献
バイオ実 験 イラストレイテッド 6 す く す く 育 て 細 胞 培 養 渡 邉 利 雄 秀 潤 社
バイオ実 験 イラストレイテッド 7 使 お う 酵 母 で き る Two Hybrid 水 野 貴 之 秀 潤 社
顕 微 鏡 フル活 用 術 イラストレイテッド 基 礎 か ら 応 用 ま で 稲 澤 、 津 田 、 小 島 監 修 秀 潤 社
稲 毛 敬 吉 : カマンベールチーズの 青 カ ビ か ら ペニシリンを 生 成 す る 、 関 東 工 化 研 、 2004
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