2015.05 王子計測機器株式会社 高偏光度測定方法の実験結果 ● はじめに 偏光板の偏光度は、楕円偏光測定装置KOBRA-WPRの透過率測定用のTRソフトによ って測定できます。しかし、LCD用の偏光板の多くは99.95%以上の高偏光度であり、 TRソフトで測定したときに得られる数値の正確さや再現性は十分とは言えませんでした。 ここでは、偏光度数値が既知の基準偏光板を利用する新しい方法で高偏光度偏光板を測定し た実験結果を報告します。 ● 使用した装置と試料 装置:楕円偏光測定装置 KOBRA-WPR 使用ソフト:装置調整用CheckW ※比較のために透過率測定用TRソフト 試料:表1の偏光板2種 表1 偏光板試料 記号 商品名 商品コード メーカー 備考 #49078 高コントラストガラス偏光フィルター #49-078 エドモンド・オプティクス・ φ30mm、日本製 #85920 高コントラストプラスチックス偏光板 #85-920 ジャパン φ30mm、ドイツ製 ● 測定結果 1) 新しい方法による測定結果 基準板と表1の各試料それぞれをKOBRA-WPRの傾斜試料台にセットして、検光子方 位30°ごとの透過光強度を測定し、そのデータをコサイン2乗近似して透過光強度の最小値/ 最大値を計算しました。その後、基準板の偏光度数値と最小値/最大値から、新しい計算方法に よって各試料の偏光度を算出すると図1のようになります。図1を見ると、99.99%以上の 高偏光度範囲の数値も滑らかに変化しており、試料間の違いも明確に出ています。 1 100.000 偏光度V (%) 99.995 99.990 99.985 99.980 99.975 基準板 #49078 99.970 #85920 99.965 400 450 500 550 600 650 700 波長 (nm) 図1 新しい方法による偏光度の測定結果 2) TRソフトの測定結果 従来のTRソフトによる偏光度Vおよび平均透過率Tm の測定結果は、それぞれ図2、図3の ようになります。図1と図2を比較すると、図2の方が乱れたグラフになっており、連続性が ないことが分かります。これは高偏光度試料の場合は、TRソフトの測定値は吸収軸方向の透 過率が殆どゼロに近いために、Vの再現性が悪くなることが原因です。図3のTm については、 TRソフトでも正確な数値が得られています。 100.0 99.9 V (%) 99.8 99.7 99.6 基準板 #49078 99.5 #85920 99.4 400 450 500 550 600 波長 (nm) 図2 TRソフトによる偏光度の測定結果 2 650 700 55 50 Tm (%) 45 40 35 30 基準板 #49078 #85920 25 20 400 500 600 波長 (nm) 700 800 図3 TRソフトによる平均透過率Tm の測定結果 ● おわりに 当初の目的の通り、99.95%以上の高偏光度の測定方法として、今回の基準板を利用す る方法が有効であることが分かりました。一般的な手法の場合は、試料を2枚準備して平行位 と直交位の透過率を測定しますが、本方法の場合は1枚でよく測定手順もいたって簡単と言え ます。また、Tm とVが測定できれば、試料の吸収軸方向と透過軸方向の透過率の数値化も可能 です。ただし、今回の実験では測定データをエクセルで処理しましたので、本方法を組み込ん だ測定用ソフトは未だ作成していません。 高偏光度測定の用途としては、偏光板単体に限ったものではなく、例えば直交にした偏光板 2枚の間に試料を置いたときの光漏れの評価、カラーフィルタによる偏光解消の評価、あるい は偏光板自体の環境試験後の劣化の評価等の様々な用途が考えられます。それらは、いずれも 光学的にはごく僅かの変化ですが、高偏光度の数値化によって現象がより明確なものとして捉 えられることになります。 以上 3
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