2015/03/17 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: 03-5919-9341(直通) URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 地ウイスキー、クラフトビール、着実な成長 ~国内酒類市場は縮小続くも、新興勢力が台頭~ はじめに>> 若者のハード・リカー離れ、健康志向、第三のビールやプライベート・ブランド商品に象徴される根 強い低価格志向。国税庁調べの酒類出荷量(国産+輸入、国税庁調べ)によれば、酒類全体の出荷 量は 2010 年に 900 万 kl の大台を割り込んで以来、低迷が続いている。特に、ビール、清酒、焼酎 の三大カテゴリーにおいて、その傾向が顕著だ。 しかし、その一方で“地ウイスキー”やワイン、また一部のプレミアムビールや地ビールメーカーによ る“クラフトビール”など、小規模な蒸留所、醸造所で作られる酒類の需要は確実に伸びている。 そこで、企業概要ファイル「COSMOS2」(146 万社収録)から国内酒類メーカー1570 社を抽出、 これらのカテゴリーに所属する企業に焦点を絞り、分析を行った。 同様の調査は今回が初めて。 調査結果(要旨) 1.ウイスキー市場はサントリーとニッカウヰ 酒類出荷量(2013年、国産+輸入、国税庁調べ) スキーの大手 2 社で市場の 9 割を占めてお り、地ウイスキーメーカーも 10 社にとどまる。 しかし、規模は小さいながらも近年、世界的 その他 8% な知名度を誇る企業も登場してきている 清酒・合成 清酒 7% 単式蒸留 焼酎(乙類) 6% 2.ビール市場はアサヒビール、キリンビール、 サントリー、サッポロの大手 4 社が市場の 99%を占めているが、地ビールメーカーに スピリッツ・ リキュール 29% よるクラフトビールも一定の市場を形成、増 勢傾向にある 3.ワイン市場はこの 20 年で完全に定着、 輸入、国産とも伸びており、地場系ワインメ 連続式蒸留 焼酎(甲類) 5% ビール 32% 発泡酒 8% ウイスキー 1% 果実酒 4% ーカーも 100 社超と裾野が広い。酒税法上、 優遇されていることも普及の一因 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 1 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 1.地ウイスキーメーカーは 10 社、新規参入企業も 主な地ウイスキーメーカー10社 商号 所在地 資本金 創業/設立 (千円) 概要 本坊酒造株式会社 鹿児島 県 100,000 鹿児島 市 明治5年 焼酎主体の総合酒類メーカー。1949年よりマルスブランドのウィスキーを展開、山梨、 次いで85年に長野に信州マルス蒸留所を開設。92年にモルト原酒の蒸留をいったん 停止したが、2011年2月に19年ぶりに再開、2014年8月にリバイバルと銘打って商品展 開。同年11月に1億円かけて設備増強。ブレンデッドの「マルスウイスキーツインアルプ ス」など普及価格帯の商品から、シングルモルト、シングルカスクの「駒ヶ岳」など高価 格帯の限定品も展開。欧米への輸出も。屋久島などの焼酎蔵で熟成した新商品も投 入予定。 株式会社宮﨑本店 三重県 四日市 67,500 弘化3年 焼酎主体で甲類焼酎「キンミヤ焼酎」が非常に好調。一方、戦後間もなく製造、販売を 開始した「サンピース ウイスキー」も展開。80年代中頃、地ウイスキー隆盛の時代の面 影をいまに伝える一升瓶スタイル。 相生ユニビオ株式会社 愛知県 西尾市 88,000 明治5年 焼酎、清酒およびみりんなど調味料主体。「レインボーウイスキー」、「レインボー三州」 を展開。 札幌酒精工業株式会社 北海道 札幌市 75,000 昭和8年 焼酎主体。ブレンデッドの「サッポロウイスキーSS」、「サッポロウイスキー」など4種類を 展開。 江井ケ嶋酒造株式会社 兵庫県 明石市 33,000 延宝7年 清酒、焼酎の総合酒類メーカー。1919年に洋酒製造免許取得、89年酒税法改正で出 荷量1/10となったが事業存続、現在は輸出も相当あり、粗利の3分の1を稼ぎ出す収 益事業に。「あかし」ブランドは昨年10月以降、売上倍増。5年貯蔵のシングルモルト 「シングルモルトあかし」も好調。年に2回、限定のシングルカスクも展開。 サングレイン株式会社 愛知県 100,000 知多市 昭和47年 サントリー50%出資。グレーンウイスキー、原料用アルコールなど受託製造。 玉泉堂酒造株式会社 岐阜県 養老郡 50,000 文化3年 清酒と焼酎主力だが、ブレンデッドの地ウイスキー「ピークウイスキー」展開。 若鶴酒造株式会社 富山県 砺波市 80,000 文久2年 清酒主体だが、北陸唯一の地ウイスキーメーカーとして、昭和27年に製造免許、昭和 35年よりブレンデッド「サンシャイン・ウイスキー」も展開。小規模ながらも自前の蒸留設 備を持ち、この数年、仕込みも増やして2015年は更に増加させる予定。神奈川の酒 店、星藤からもPBの「地酒村のウイスキー」展開。 笹の川酒造株式会社 福島県 郡山市 50,000 明和2年 清酒と焼酎主力だが、東北唯一の地ウイスキーブランド「チェリーウイスキー」も展開。 ベンチャーウイスキーの立ち上げを支援。 41,000 国内唯一のウイスキー専業メーカー。「イチローズモルト」は、もはや世界的有名ブラン ド。東亜酒造創業者の孫であり、自身もウイスキーファンである肥土伊知郎(アクト イチロ ウ)氏が創業者。旧:東亜酒造の羽生蒸留所の原酒を笹の川酒造で貯蔵熟成、次いで 平成16年 08年2月より秩父蒸留所にて原酒の仕込みを開始。04年の会社設立時は国内市場右 肩下がり、そのため当時から海外も視野に、WWAなど積極出品。ブレンデッドの「ホワ イトラベル」、「ブラックラベル」からシングルモルトの「カードシリーズ」など世界的評価 も極めて高い。 株式会社ベンチャー ウイスキー 埼玉県 秩父市 堅展実業株式会社 東京都 千代田 区 10,000 昭和57年 北海道厚岸町にウイスキーの蒸留所建設を予定しており、製造免許取得、建設許可 の手続き中。2016年10月の稼動を目指している。2019年に出荷予定。 ガイアフロー株式会社 静岡県 静岡市 1,000 平成24年 洋酒輸入販売業だが、2014年10月にウイスキー製造を目的とするガイアフローディス ティリング(株)を設立、メルシャン軽井沢蒸留所の競争入札で製造設備一式を落札。 ウイスキー市場は、サントリー、ニッカウヰスキーの 2 社で市場の約 9 割を占めている。そして、ウイ スキー専業、少なくとも売上の一定割合をウイスキーが占める“地ウイスキーメーカー”は、数えるほど しかない。大手も中小も多くは総合酒類メーカーとして、焼酎や清酒を主力製品としつつ、傍流にお いてウイスキーの製造、販売も手掛けているのが実態だ。 かつて、“ジョニ黒”に象徴されるスコッチ・ウイスキーが舶来高級洋酒の代名詞だった時代があっ た。80 年代には国産、地ウイスキーのブームがあった。しかし、欧米諸国から非関税障壁の撤廃を ©TEIKOKU DATABANK,LTD 2 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 要求され、89 年に酒税法を改正、2 級ウイスキーが大幅値上げされてウイスキー市場は 90-2000 年代に長期低迷を余儀なくされることとなった(皮肉なことに、プレミアム感の失われたスコッチ・ウイ スキーの地位も凋落した)。 参考:大手ウイスキーメーカー5社 商号 所在地 資本金 創業/設立 2013年度 売上高 大阪府 大阪市 70,000 明治32年 ニッカウヰスキー株式会社 東京都 港区 100 昭和 9年 45,600 静岡県 御殿場市 10 昭和47年 18,600 宝ホールディングス株式会社 京都府 京都市 13,226 天保13年 オエノンホールディングス株式会社 東京都 中央区 6,946 大正 9年 概要 国内有数の酒類・飲料メーカーグループ。国産ウイスキー出荷量で業界トップ。 非上 ※2,040,204 ※195,574 場。グループ中核のサントリー酒類(株)が製造するウイスキーは、「山崎」、「白州」、 「響」、「オールド」、「角」、「トリス」などフルラインナップ。 サントリーホールディングス株式会社 キリンディスティラリー株式会社 税引後 利益 北海道余市蒸留所、仙台の宮城峡蒸留所などで「余市」、「竹鶴」、「スーパーニッ カ」、「ブラックニッカクリアブレンド」などのウイスキーをフルラインナップ。自社工場に よる製造が約99%。 アサヒグループホールディングス100%子会社で、アサヒビール 経由で酒類販売業者等に流通。 麒麟麦酒100%子会社。旧:キリン・シ-グラム。キリンブランドの缶酎ハイ、洋酒、ミネ 196 ラルウォーターを製造。ウイスキーでは「ボストンクラブ」「富士山麓」「フォアローゼス」 などを製造。 592 ※209,568 ※10,280 ※85,799 ※1,128 東証1部上場。焼酎・清酒を主体に本みりん等の製造販売。ウイスキーは「キングウイ スキー 凛」などを展開。 東証1部上場。グループ中核の合同酒精(株)が、焼酎を主体とした清酒、缶チューハ イなど製造。 ウイスキーでは「香薫」、「マッキンレー」を展開。 ※は連結数値。単位:百万円 この間、地ウイスキーメーカーの廃業・倒産や、他社へ事業譲渡した事例が少なからずある。事業 が存続しているメーカーであっても、かつてのように自社での製造(蒸留、原酒の製造)を続けること ができず、輸入モルトを使うようになっているケースも多い。 一方では、大麦麦芽(モルト)のみを原料とするシングルモルト・ウイスキーは息の長い隠れたブー ムとなっている。2008 年からのハイボール人気で若者の需要喚起に成功、ウイスキー市場全体も底 打ちに転じ、NHK の連続ドラマ小説「マッサン」の効果もあってサントリー、ニッカなどの一部商品に はプレミアムがつく事態となっている。地ウイスキーメーカーも 80 年代のブーム時の不良在庫を 30 年かけてようやく一掃、ところが今度は不足する事態になっている。この原料確保の困難さから、 2014 年をもって製造、販売を中止したメーカーも複数社あった。 こうした状況下、気を吐くウイスキーメーカーも現れてきている。 本坊酒造(株)は、92 年にモルト原酒の蒸留を止めたが、2011 年に 19 年ぶりに再開、以降、「マ ルスウイスキーツインアルプス」など普及価格帯から高価格の限定品まで積極的な商品展開を行っ ている。ワールドウイスキーアワード(WWA)2013 ブレンディッド・モルト部門でワールドベスト賞を受 賞したシングルモルト「マルスモルテージ 3+25 28 年」など、欧米市場での評価も高い。屋久島の 焼酎蔵で熟成した新商品も投入予定であるなど、新しい試みも目立つ。 江井ケ嶋酒造(株)は、戦間期に洋酒製造免許を取得した老舗。89 年の酒税法改正で国内出荷 量が 9 割減となる大ダメージを受けたが、輸出によって冬の時代を耐えた。現在、「あかし」ブランドの ウイスキー製造部門は収益事業に成長している。5 年貯蔵の「シングルモルトあかし」や、年 2 回のシ ングルカスク(ひとつの樽から瓶詰めしたウイスキー)も品薄。仕込みの量は既に 4-5 年前から増や しているという。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 3 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 (株)ベンチャーウイスキーは、国内唯一のウイスキー専業メーカー。創業者の肥土伊知郎(アクト イ チロウ)氏は(株)東亜酒造の創業者の孫であり、父とともに 2000 年 9 月の民事再生法申請も経験した。 当社は 2004 年 9 月に設立され、当初は笹の川酒造(株)の協力で東亜酒造の原酒を貯蔵熟成、08 年には秩父蒸留所を設立、いまや「イチローズ・モルト」は世界的な名声を博している。顧客へのリー チを品質のみで評価されるショットバーに絞ったこと、品質最優先のものづくりがワールド・ウイスキ ー・アワード(WWA)などで評価されるに至ったこと、成功の理由はいくつかあるが、経営者の能力、 関心、経営資源のすべてをウイスキーに注ぐ唯一の“専業”であることも、その要因のひとつだろう。 いずれも設立時期こそ異なるが、市場低迷期に粘り強く事業を続け、むしろ原酒の長期貯蔵によっ て価値を高め、品質を重視する一方で需要予測に長け、海外市場に活路を見出しそこで得られた 評価を国内市場でのプロモーションに利用するしたたかさを持っている。 蒸留後、最低 3 年の貯蔵、熟成が必要なウイスキー製造は投資から回収までに長い時間を要する ビジネスだ。しかし堅展実業(株)(東京都千代田区)、ガイアフロー(株)(静岡県)など、新たな蒸留 所設立の動きも出てきていることは注目すべきだろう。 2.クラフトビール市場も拡大、多様化の時代に ビール市 場もまた、 大手 4 社の 市場占有率 が 99%を超 える寡占市 場だ。 主な地ビールメーカー10社 商号 株式会社ヤッホーブルーイング 株式会社銀河高原ビール 木内酒造合資会社 エチゴビール株式会社 有限会社二軒茶屋餅角屋本店 酪農王国株式会社 株式会社ベアレン醸造所 水口酒造株式会社 サンクトガーレン有限会社 エイ.ジェイ.アイ.ビア株式会社 所在地 長野県北佐久郡 岩手県和賀郡 茨城県那珂市 新潟県新潟市 三重県伊勢市 静岡県田方郡 岩手県盛岡市 愛媛県松山市 神奈川県厚木市 大阪府箕面市 資本金(千円) 50,000 50,000 2,500 100,000 58,000 50,000 18,750 20,000 3,000 15,000 創業/設立 平成8年 平成6年 文政6年 平成12年 天正3年 平成8年 平成13年 明治29年 平成14年 平成8年 ビールの生産数量が清酒を上回ったのは 1956 年(昭和 31 年)のことだが、この 10 年来、市場規 模そのものは 10 年連続で縮小を続けている。そうしたなかで、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」 が、アサヒビール「スーパードライ」、キリンビール「一番搾り」に次ぐブランドに成長。プレミアムビール 市場の過半のシェアを押さえている。一方、量販価格帯では「第三のビール」が好調であり、典型的 な二極化現象が起きている。 地ビールメーカー主要 30 社の合計売上規模は 2013 年度で約 84 億 6200 万円。ランキング圏 外企業を含めても大手とは比較にならないニッチ市場ではあるが、小規模な醸造所で独特の製造方 法によって作られる、いわゆる“クラフトビール”市場は確実に拡大していることがわかる。 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 4 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 例えば、業界最大 手の(株)ヤッホーブ 地ビールメーカー主要30社の業績推移 ルーイングは、従来、 ビール製造法である 8,000 なビール」や「東京ブ ラック」など、ユニーク なネーミングと代表が 率先して行う独特のプ ロモーションで、大き な話題となっている。 94 年のビール製造 の規制緩和以降、新 地ビールメー カー主要30社 純利益 300 200 百 4,000 万 円 3,000 100 0 ) 販売している。「よなよ 7,000 売 上 6,000 高 5,000 400 ( エールビールを製造、 地ビールメー カー主要30社 売上高 2,000 百 万 円 ▲ 100 1,000 年度 純 利 益 ( ピルスナーとは異なる、 500 ) 日本で一般的だった 9,000 ▲ 200 0 2009 2010 2011 2012 2013 規参入したメーカーも多く、実際、売上上位 30 社のうち 27 社が 94 年以降の設立だ。地ビールは 99 年がピークと言われるが、画一的だった日本のビール文化に多様性をもたらしていることは間違 いない。大手メーカーがプレミアム・ビールに注力している現在、相乗効果もあって第二次ブームも 期待できる情勢だ。 参考:大手ビール4社 商号 アサヒグループホールディングス株式会社 キリンホールディングス株式会社 サントリーホールディングス株式会社 サッポロホールディングス株式会社 所在地 東京都墨田区 東京都中野区 大阪府大阪市 東京都渋谷区 資本金 182,531 102,045 70,000 53,886 創業/設立 2013年度売上高 税引後利益 明治22年 1,714,237 61,749 明治40年 2,254,585 85,656 明治32年 2,040,204 195,574 明治39年 509,834 9,451 単位:百万円 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 5 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 3.地場系ワインメーカー、裾野広く、市場に定着 90 年代半 ばよりメルシ ャン(株)がチ リ、アルゼン チン、オース トラリアなど南 半球から価 格 1000 円前 主な地場系ワインメーカー10社 商号 所在地 マンズワイン株式会社 サントネージュワイン株式会社 株式会社島根ワイナリー 北海道ワイン株式会社 一般財団法人神戸みのりの公社 株式会社シャトー勝沼 高畠ワイン株式会社 モンデ酒造株式会社 蒼龍葡萄酒株式会社 株式会社林農園 山梨県甲州市 山梨県山梨市 島根県出雲市 北海道小樽市 兵庫県神戸市 山梨県甲州市 山形県東置賜郡 山梨県笛吹市 山梨県甲州市 長野県塩尻市 資本金 創業/設立 (千円) 900,000 昭和37年 50,000 昭和17年 80,000 昭和61年 446,890 昭和49年 - 昭和54年 20,000 昭和38年 30,000 昭和23年 28,100 昭和27年 26,000 明治32年 30,000 明治44年 後の低価格商品を輸入販売したことをきっかけに、爆発的に市場が拡大したのがワインだ。当時の 赤ワインブームは、まだ記憶に新しい。2000 年以降、ワイン文化は完全に日本に定着した。2013 年 には輸入ワインの課税数量が 98 年の水準を超えて過去最高となる一方、国産ワインも 4 年連続で伸 びている。 キリンホールディングス(株)傘下のメルシャンが国内ワイン市場の 4 分の 1 のシェアを占め、サッ ポロホールディングス(株)の 100%子会社、サッポロワイン(株)がこれに次ぐが、地場系ワインメーカ ー主要 30 社の合計売上規模は、約 245 億円に達する。国産ワインメーカーは優に 100 社を超えて おり、裾野の広さも ワインメーカー主要 30社 売上高 ワインメーカー主要30社の業績推移 ワイ ン市 場 の 特徴 700 30,000 実は、日本の酒 つの要因だ。TPP で輸入ワインの関 税引き下げが取り 400 百 15,000 万 円 300 10,000 ) ワイン普及のひと 500 売 20,000 上 高 ( されていることが、 600 25,000 純 利 益 ( 税法において優遇 ワインメーカー主要 30社 純利益 200 百 万 円 ) だ。 沙汰されており、市 場環境がどう変わ るか、要注目だろ う。 5,000 100 0 0 2009 2010 2011 2012 2013 年度 ©TEIKOKU DATABANK,LTD 6 2015/3/17 特別企画:“地場系”ウイスキー&ビール&ワイン実態調査 4.まとめ 明治期、酒税は国庫収入の第一位を占め、日清・日露戦争の戦費を支えたという。現在、国家財政 の酒類への依存度は低くなっているものの、これまで見てきたように酒類は何よりもまず行政の裁量 が市場動向を大きく左右する市場だ。 89 年の酒税法改正では地ウイスキー市場が消失し、94 年には地ビール市場が生まれた。2000 年代の焼酎ブームでは単式蒸留により芋、麦など原料本来の風味を引き出した在来焼酎(焼酎乙 類)が再評価され、2005 年の規制緩和で新規参入が認められて市場活性化に拍車が掛かった。 TPP では、国産ワインメーカーに影響が出る可能性がある。 昨今のプレミアム・ビール人気、またベンチャーウイスキーやヤッホーブルーイングなどの活躍をみ てもそうだが、成熟した日本の市場にはデフレ下においても“本物”を受け入れる余地があり、世界で もまた日本のものづくりは認められている。景気回復、為替円安の局面では、こうした傾向がより一層 強まるはずだ。 とはいえ、酒類製造は設備投資に多額の費用がかかる装置産業であり、投資回収には長期を要 する。例えば甲州産ワインや沖縄の泡盛、古酒(クース)には貯蔵中の商品を担保とする融資制度が ある。酒類メーカーの自助努力が第一であることはもちろんだが、世界を市場とする産業を育成する との視点に立てば、酒税法の柔軟な運用、資金調達面でのより一層の環境整備なども必要となって くるだろう。 【内容に関する問い合わせ先】 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