第 2 章 公営ギャンブル 第1節 公営ギャンブルとは ギャンブルの範疇には、スポーツ競技を見せながら、金銭を賭けてその着順 を推理して投票し、的中者には不的中者の金銭を含めた金額のうち、実施主体が 控除した残余の金額を配当金として的中者の投票数に応じて配当を受ける、と いうものがある。 この種のギャンブルは、本来、金銭を賭けることから、刑法にいう賭博・富くじ の罪として犯罪になる。しかしながら、こうしたギャンブルであっても、一定の 社会的な公益目的に資することを前提に、特別法でその違法性を阻却すれば、 正当化されうる。その場合、概ねその実施主体は、国や地方自治体などの公的 な団体に委ねられるのが通常である。こうしたスポーツ競技を我が国では、“公 営競技”と呼んでいる(実質的な命名としては“公営ギャンブル”がふさわし いが、我が国ではスポーツ性を強調して公営競技と呼ばれる)。 我が国では、この公営ギャンブルとして現在、競馬、競輪、競艇(ボートレ ース)および小型自動車競走(オートレース)の4種が、それぞれ特別法にもと づいて実施されている。 競馬は古くは 1923 年の「競馬法」の制定にまで遡ることができるが、1948 年に改めて制定された現行の「競馬法」(昭和 23 年7月 13 日法律第 208 号) にもとづき、農林水産省の監督下で行われる。競輪は、同じく 1948 年に自転車 競技法(昭和 23 年8月1日法律第 209 号)、オートレースが 1950 年に、小型 自動車競走法(昭和 25 年5月 27 日法律第 208 号)にもとづいて、経済産業 省の監督下において実施されている。少し遅れて、1951 年、競艇は、モーター ボート競走法(昭和 26 年6月 18 日法律第 242 号)にもとづいて、国土交通 省の監督のもとに行われている。 実施主体は中央競馬が国のいわゆる特殊法人としての中央競馬会であるが、 それ以外の公営ギャンブルの実施主体はすべて県や市町村などの地方自治体で ある。 韓国では、現在のところ競馬、競輪、競艇の3種の公営ギャンブルが実施さ れているが、オートレースは実施されていないし計画もない。 競馬は、日本と同様その歴史は古く 1922 年に社団法人朝鮮競馬倶楽部が組 -23- 織化され、同年5月 20 日に初の公式競馬が行われたとされる。戦前の 1933 年 には朝鮮競馬令が制定され、法律にもとづいて競馬が実施された。その後 1942 年には朝鮮馬事会が創設されたりしたが、戦禍の混乱のなか本格的な制度が確 立されたのは、現行の「韓国馬事会法」(1962 年1月 20 日法律第 1012 号) が制定された 1962 年のことであった。 実施主体は、韓国政府の監督下にある非営利公益法人「韓国馬事会」である。 これは性格的には、日本の中央競馬会と類似の団体といえる。競馬場は現在2 ヶ所で行われている。ひとつはソウル南部に隣接する果川市内の「ソウル競馬 場」が、もうひとつは済州島に「済州競馬場」がある。 ―方、競輪と競艇はいずれも比較的新しく、競輪は最初の競輪場が 1994 年 にソウル特別市オリンピック公園内のソウルオリンピック自転車競技場を改修 してオープン、その後 2000 年に釜山市に近い昌原(チャンウオン)市総合運 動場内に第 2 番目の競輪場が建設された。 競艇はつい最近の 2002 年に、ソウル特別市東南の漢江沿いに位置するオリ ンピック漕艇場施設を利用してスタートを切ったばかりである。 この競輪、競艇の根拠となる法律は、1991 年に制定された「競輪・競艇法」 (1991 年 12 月 31 日法律第 4476 号)である。同法によると、実施主体は競 輪、競艇とも政府監督下の非営利法人「ソウルオリンピック記念国民体育振興公 団」である(以下、国民体育振興公団という)。これはもともとソウルオリンピ ックの実施母体であり、1989 年に「国民体育振興法」(1982 年)の一部改正 により改組されて創設された団体である。競輪、競艇はこのほか、地方自治体 にも施行が認められている。昌原競輪場は、地方自治体である慶尚南道と昌原市 との対等出資により創設された昌原競輪公団が実施主体となっている。 韓国ではこのように、伝統と歴史のある競馬と、新しく誕生した競輪、競艇と いう公営ギャンブルが、いましのぎを削ってファン獲得に奔走している。 以下、韓国におけるこれら公営ギャンブルの状況を概観しながら、韓国のギ ャンブル事情を考察してみることにしよう。 -24- 第2節 韓国の競馬 1.韓国競馬の沿革 韓国での競馬は、1898 年頃の驢馬競走や騎兵競馬などがそのはしりであると いわれる。もっともこれはギャンブルの対象とはされず、単なる遊びにすぎなか った。これが賭けの対象としての近代競馬に発展していったのは、1920 年頃と される。 当時はソウル、大邱、平壌、元山など、いくつかの都市で乗馬団体が独自に競馬 を実施していたが、1922 年になってソウルに社団法人朝鮮競馬倶楽部が発足、 最初の競馬施行体となり、同年5月 20 日に韓国で最初の公式競馬が行われた。 韓国では、この5月 20 日が「競馬の日」とされている。 1933 年には朝鮮競馬令により競馬の実施が認可制となり、上記朝鮮競馬倶楽 部が認可されたほか、1941 年までに9つの競馬倶楽部が公認され、それぞれ9 つの競馬場(上述4都市のほかに、群山、新義州、咸興、清津、雄基の各地方 都市)で競馬が実施された。 1942 年2月には、朝鮮馬事会令により朝鮮競馬倶楽部はじめすべての競馬倶 楽部が解散させられ、新たに朝鮮馬事会が創設された。この朝鮮馬事会がすべて の競馬を実施する単一施行体となったのである。 第二次世界大戦中は、小規模競馬場は軍用地に転用されていった。戦争終了 後の 1945 年には韓国は日本統治から開放され、朝鮮馬事会は「韓国馬事会」 に改称された。そして、当時韓国内に残っていたソウル、釜山、大邱、郡山の4 競馬場はすべて閉鎖された。馬匹輸入や国内での馬匹生産の中断が大きな要因 とされるが、日本統治下の遺物を廃し、新たな自立を目指したいとする思いが根 底にあったことはまちがいない。 その後、国産馬の自主的な生産拡大により、国内での馬事振興と畜産発展を 目指して、1950 年朝鮮戦争中からソウル郊外トクソムで競馬場を建設する計 画が持ち上がった。これが実を結び、休戦直後の 1954 年5月にトクソム競馬場 を完成させた。ここでは、国内産馬匹改良事業の中断と輸入抑止のなか、自国 在来種の小馬による競馬がしばらく行なわれた。このトクソム競馬場は、1989 -25- 年に新たにソウル南部の果川市内に建設されたソウル競馬場に引き継がれるま で、韓国内唯一の競馬場として発展を遂げてきた。 その後、1962 年には現行法である「韓国馬事会法」が制定され、公布され た。これによって「韓国馬事会」は、国産馬生産体制に向けた確固たる地位を確 立したのである。「韓国馬事会」は、1972 年に競走馬を一括所有する単一馬主 制を実施、馬匹・施設を含む運営すべてを引き受けることになった。この単一馬 主制度は、1993 年に個人または法人に競走馬の所有を認める個人馬主制への 転換が図られるまで続いた。 これと前後して韓国の経済状況が改善、韓国競馬も一気に隆盛への道を辿る ことになる。1970 年に加盟したアジア競馬連盟(Asian Racing Federation)の 第 15 回会議(ARC)も 1980 年にソウルで開催され、これを契機に韓国競馬は 国際的にも飛躍的に発展した。 1984 年には競走馬の本格的な国内生産を始め、馬事会直営の元堂種馬牧場が 開設、民間牧場の拡大も伴って馬匹生産のための基盤が確立されることになっ た。また同年以降、馬券の発売業務が手売りの時代から電算化へ移行、場外馬 券売場もソウル中心に拡大された。 1986 年にはアジア大会が、そして 1988 年にオリンピック大会がそれぞれ開 催されることになり、1984 年にはその乗馬競技場の建設が、ソウル南部に隣接 する果川市内の 35 万坪の広大な敷地に着工された。これは同大会終了後に新 競馬場に転用されることを前提に、「韓国馬事会」により建設されたものであ る。ソウルオリンピック終了後、同乗馬競技場は改装され、1989 年に新ソウル 競馬場としてオープン。36 年間続いたトクソム競馬場は、その幕を閉じた。 その後 1990 年には、主に国内馬である済州小馬(ponies native)の保護育成 を図る目的で、済州島の漢拏山ふもとに、22 万坪敷地の済州競馬場が建設され、 小馬競馬が実施されている。 今後の計画としては、2003 年に開催された釜山アジア大会での乗馬競技場 を転用して、38 万坪の広大な敷地に慶南競馬場を建設中である。2004 年7月 オープンを目指しているという。 -26- 2.運営主体と運営方法 (1)運営主体 韓国の競馬は、「韓国馬事会」が独占して施行し運営している。現在あるソウ ル競馬場、済州競馬場はもとより、28 ヶ所にも及ぶ場外馬券売場も統一的に運 営している。「韓国馬事会法」によると、その第1条で「韓国馬事会の組織・運 営」と競馬に関する事項を定めるとした上で、この「目的を達成するための事 業を効率的に行うために韓国馬事会を設立する」としている(第 18 条)。同 18 条ではまた、馬事会は法律に根拠を置いてつくられた非営利法人、いわゆる 特殊法人にあたるとされる。そして同法第3条で、「競馬は第 18 条の規定に もとづいて設立された韓国馬事会が開催する」と定めている。 図表2-1 韓国馬事会組織図 【韓国馬事会組織図】 経営支援本部 競馬運用本部 秘書室 会長 副会長―ソウル競馬本部 広報室 事業運用本部 釜山競馬本部 済 州 競馬場 外 監 査 室 局 企画調整室 総 務 処 施 設 処 競 馬 処 審 判 処 馬事保健処 顧客支援処 場外事業処 情報技術処 競馬事業処 建設事業処 総合競馬処 牧場・教育院 競馬調査室 競馬研究室 競馬教育院 乗馬センター 監 査 員 韓国馬事会の組織は上図のとおりである。政府農林部(日本の農水省にあたる) の監督下、会長、副会長、常任理事、非常任理事で構成される理事会と 17 の部署 -27- (処・室)及び監査室がある。なお、釜山競馬場は現在建設中で、ソウル競馬本 部内にその準備のための釜山競馬本部が設けられている。 (2)運営方法 競馬の開催日は、ソウル・済州両競馬とも土曜・日曜である。旧盆時期や年 末年始、それに競走馬保護の目的で、暑さの最も厳しい8月初頭のホリデーな どは除かれる。 年間開催日数は、韓国馬事会施行令第2条第1項第1号で、105 日以内と定 められている。1日のレース数は、同施行令で 15 競走以内(第2条第1項第 2号)と定められているが、実際には 11~12 レースで行われている。1レー ス当たり7~14 頭立てである。また、7月中下旬から8月上中旬にかけてはナ イター開催となる。2002 年は 93 日、1,094 レース、2003 年は 94 日、1,106 レ ースであった(下表参照)。開催時間は 11 時~17 時 20 分だが、冬期は少し早く 終わる。また、ナイター時期はソウルでは 15 時から、済州島では 16 時 25 分~ 21 時 20 分である。入場料は 800 ウォン(約 80 円)である。 競走は一般、特別、重賞競走に分けられる。特別競走は産地・年齢・性別など の条件を出走馬に設定したレース、重賞レースは最上級レースで、5月にコリア ンダービー、8月にコリアンオークス、12 月にグランプリなどがある。また、 日本でも「韓国馬事会杯」というレースがあるが、韓国でも例年 10 月初めに JRA 杯が行われる。 図表2-2 韓国競馬の開催日数・年間競走数等 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 91 94 95 93 年間競走数 1,060 1,104 1,118 1,094 1日平均競走数 11.6 11.7 11.8 11.8 12,302 12,806 12,227 11,915 11.6 11.6 10.9 10.9 開催日数(日) 年間出走頭数 競走平均出走頭数 -28- 競馬場への入場料の徴収を義務づけている(同馬事会法第5条)のは、日本 と同じである。 勝馬投票は 1999 年の法改正により、韓国馬事会法第7条第1項で、単勝式、 複勝式(韓国では連勝式という漢字を使う)、連勝複式 (韓国では複勝式)、連勝 単式(韓国では双勝式)の4種類のほかに、複連勝式(1~3着のうち順位と 関係なく2頭を的中させる、いわゆるワイド)、3複勝式(3連勝複式)、重単 勝式(指定された2レースの1着者を続けて的中)、及び特別勝馬式という、 合計8種類の投票方法が認められている。しかしながら、実際にはこれまで、 はじめにあげた4種類に限定されてきた。 年間総売上実績(2002 年)を基準にして、勝馬投票方式別売上の占有率は、 単勝式 1.3%、複勝式 4.5%、連勝複式 89.3%、連勝単式 5.0%である。連勝 単式のほうが連勝複式に比べて圧倒的に人気がある。ワイドは 2003 年 10 月に なって実施されることになった。残る3種類の投票方法は、現在のところ実施 される計画はない。これらの投票方法はすべて馬番で、日本のように複数の馬 が1つの枠に入る枠番方式はない。 的中者に払い戻す配当金(韓国では還給金という)の割合は、単勝式・複勝 式は 80%、連勝複式・連勝単式は 72%(済州競馬では 70%)である。投票は すべてマークカードに記入し、発売単価は最低 100 ウォンから最高 10 万ウォ ンまでである。 的中者への払戻しは金券で発行される。その金券で馬券を購入することもで きるし、換金したければ換金窓口で現金と両替してくれる。こうした金券シス テムは、購入や払戻しの都度の現金のやり取りを不要にして、誤払いなどのミ スを解消するばかりか、現金収納や保管場所を無用にすることによって、自動 発払い機のコストを大きく軽減する作用を働かせている。そのうえ、いわゆる 在席投票や端末機携行による出前販売を容易にしている。勝馬投票券の消滅時 効は、発売日から 1 年である(同馬事会法第10条第5項)。 競馬賞金は馬主、調教師、騎手、管理者らの諸経費に充てられる。総賞金額 は 2000 年が 556 億ウォン、01 年が 575 億ウォンで、馬1頭当たり年間 4100 万~4300 万ウォン程度となる。 -29- 馬主制は、長らく馬事会による単一馬主制であったが、1993 年から個人・法 人に馬所有を認め、相互に競わせる個人馬主制に転換を図って今日に至ってい る。馬主は馬事会に登録することとし、禁治産者、破産者、馬事会法違反で罰 金刑以上有罪者、禁固刑以上有罪者など、一定の欠格事由が定められている(韓 国馬事会法第 11 条)。競走馬も馬事会に登録する(同法第 12 条)。調教師は馬事 会から免許を受けたものでなければならない(同法第 14 条)。騎手は、乗馬教育 院施設で2年間の訓練を受けてから免許を受ける。競走馬の診療、馬体検査、 ドーピング検査体制も揃っていて、競走前の前検量、競走後の後検量が行われ る。馬蹄に打つ蹄鉄も 2000 年から国内生産体制になった。 図表2-3 競馬の運営体制 韓国馬事会 免許馬屋賃貸 免許 騎 手 騎乗契約/賞金 調教師 馬主馬名登録/賞金 賞金委託管理費 馬 主 馬匹管理者賞金支給 調騎協会 雇用契約/人件費支給 馬匹管理者 また、競馬場には外国人専用室がある。ソウル競馬場には 130 席、済州競馬 場には 40 席程度であるが、通常の入場料金以外は不要である。言葉の不自由 な外国人が一般の窓口で馬券を買うのは混雑に拍車をかける、という理由のよ うであるが、日本語・英語版のガイダンスを備えていたり、日本語や英語が通 じるスタッフを用意したりしている。外貨対応のATMも備えられていて、外 貨獲得といった側面もあるようである。 -30- 3.競馬場及び場外馬券売場 (1)競馬場 ①ソウル競馬場 ソウル競馬場は、1983 年に国務総理指示第8号にもとづき、ソウルオリンピ ック大会(1988 年)乗馬競技場の建設事業体として、「韓国馬事会」が指定 されたことに始まる。同競技場は 1984 年、ソウル特別市の南部に隣接する京 畿道果川(クァチョン)市、ソウル大公園(動物園・植物園)の北側に位置す る約 35 万坪の広大な敷地に総工費 723 億ウォンで着工、オリンピックの始ま る直前の 1988 年7月に完成した。オリンピック終了後、同施設は競馬場に改 装され、翌年ソウル競馬場としてオープンした。 競馬場のメインスタンドには、2ヶ所の大きな観覧棟が並んでいる。1つは 当初建設されたもので、長さ 210M、地下1階・地上6階建て。1階は屋外ス タンドが中心、2階以上は前面がバルコニー風で、その後ろ側がガラスで仕切 られ、空調装備付きである。最大収容人員は4万人、延べ面積1万 2000 坪の 壮大な観覧棟である。地下1階には調教師や騎手、検査・管理などの執務員控 え室、計算センター、電気・空調施設がある。1階から5階までは観覧席、投 票窓口、食堂・売店、来場者施設など、6階には馬主や運営関係者室がある。 新スタンドは 1996 年6月着工 02 年5月に完成したが、延べ面積2万 1000 坪、総6階建て、最大収容人員3万 7000 人の大観覧施設である。外国人専用 室(130 席)も、この新スタンド4階におかれている。 ②済州競馬場 済州競馬場は、済州島にある韓国最高峰・漢拏山(ハルラサン)の北東側中 腹に立地する。建設が始まったのは 1987 年。完成は 1990 年である。 同競馬場は、韓国馬事会法が目的とする「馬事の振興及び畜産の発展に寄与」 (同法第1条)に文字通り貢献しており、蒙古馬が起源といわれる韓国内産の -31- 済州小馬(ポニー)を使った競馬の実施を前提に創設されたものである。それ ばかりか、済州島での地域経済の活性化と観光名所としての期待は大きい。 ③釜山競馬場(建設中) 釜山競馬場は、2002 年の釜山アジア競技大会の乗馬競技場を改造する形で 建設が進められている。5階建ての本格的なメインスタンドの建設を中心に、 04 年 12 月竣工、翌 2005 年からのオープンを目指している。場所は、釜山広 域市江西区、金海国際空港に近い。 このほかでは、韓国南東部、新羅時代の旧都・慶州に、ごく近い将来競馬場 が建設されるという。 (2)場外発売所、その他の施設 ①場外発売所 場外発売所は 1957 年以来増設され、現在ソウルには江南、江北、光明など に 13 ヶ所、京畿道に仁川、水原などに 11 ヵ所、その他の地方に大邱、釜山な どに4ヶ所、合計 28 ヵ所存在する。平均 1500 坪前後のスペースを有するとさ れ、本場との比率は来場者・売上はともに、本場4:場外6といった割合であ る。非開催日には地域住民に開放して、各種学習・文化施設として活用されて いる。これ以外にも既に 26 ヶ所の場外発売所設置計画が建てられており、50 ヶ所以上の場外発売体制に拡大されるのもそう遠くない。 場外発売所の拡大に伴い、本場・場外発売所間の通報システムも米国DEC 社開発の VAX-7710 の導入により飛躍的に拡充、96 年には電話投票も実施さ れ、現在3万人程度の会員が登録されている。競馬場間のいわゆる場間場外発 売の体制も出来上がっている。中継放送は衛星を利用して全国で見られるし、 パソコンによる動画放映も行われている。 -32- ②乗馬教育院 ソウル競馬場内には乗馬教育院がある。ここでは、乗馬愛好の一般の人に対 する乗馬講習を提供して乗馬人口の拡大を目指しているほか、騎手養成教育を 行っている。養成教育課程は 1988 年に1年から2年に延長し、充実を図って いる。入所した騎手候補生は、寄宿による教育を受け、所要経費はすべて給付 され、奨学金も支給される。入所資格は 17~22 歳、高卒以上の学歴、身長・ 体重の制限などがある。 その他、馬匹診療所で馬の手術や治療を行うほか、ドーピング検査体制も整 っている。また、競馬の歴史資料館としての馬事博物館もある。 -33- 4.売上・入場者数と収益配分 (1)売上高・入場者数 韓国競馬は最近好調に推移している。2002 年(暦年)の売上高・入場者数 は、1995 年当時から比べると約3倍程度の著しい伸びを示している。韓国に おいても最近経済成長の伸びに鈍化傾向が見られるものの、ここ数年にわたっ て落ち込みが続いている日本の公営ギャンブルの不振を考えると、まさに驚異 的な成長ぶりである。 1995 年は、ソウル競馬と済州競馬を合わせて、売上高は2兆 1000 億ウォン (1日当たり 220 億ウォン)、入場者が 626 万人(同6万 7000 人)であった。 これが 2002 年には、売上高7兆 6500 億ウォン(825 億ウォン)、入場者が 1630 万人(17 万 500 人)にまで伸びている。 図表2―4 最近の売上高・入場者数 ソウル競馬(売上 百万ウォン) (入場者 人) 済 州 競馬(売上 百万ウォン) (入場者 人) 2000 年 4,264,877 11,554,803 174,368 400,336 2001 年 5,509,072 12,971,266 246,793 394,611 2002 年 6,987,614 15,846,693 661,533 438,341 もっとも、2003 年の売上状況は、さすがに押し寄せる経済不況の影響を受 けてか、横ばいからやや下方修正傾向にある。売上高見込みは前年とほぼ同じ の7兆 6800 億ウォン、入場者数見込みは 1620 万人としている。 場外売上の全体売上に占める割合は、90 年代初めは5~6割程度で推移して いたが、場外発売所の拡大に伴い年々その割合が大きくなり、2001 年以降は 7割台に乗せている。このことは、場外売上高が 1995 年当時に比べて 02 年に は3倍強の伸びであるのに対して本場売上高は2倍に至っていないことや、入 場者数が同じく場外では3倍近くであるのに対して 1.2 倍程度に留まっている ことからもうかがえる。こうした傾向は、パソコン投票やモバイル投票が広が るにつれて、今後さらに強まるものと推測される。 -34- (2)収益の社会還元 「韓国馬事会」では、競馬事業による収益金を畜産振興のための畜産発展基 金に拠出するほか、農漁村地域への奨学支援やその他社会福祉増進事業を実施 している。また、国、地方財政に寄与するため、馬券税、教育税、農特税を納め るほか、収益金額に応じて、法人税や所得税を納めている。このように、一般の 民間法人と同じレベルで税を納付するシステムは日本にはない。 図表2-5 韓国競馬の売上高・入場者数の推移 開 催 売 上 高(億ウォン) 日 数 本場 場外 合計 入 場 本場 者 数(千名) 場外 合計 1992年 115 3,887 5,389 9,276 1,195 1,692 2,887 1993年 89 4,958 4,746 9,704 1,492 1,790 3,282 1994年 94 7,719 9.353 17,073 2,057 3,414 5,472 1995年 94 8,546 12,513 21,059 2,390 3,875 6,265 1996年 94 10,204 16,965 27,169 2,571 4,786 7,356 1997年 94 11,241 19,870 31,110 2,790 5,456 8,246 1998年 91 10,512 17,209 27,721 3,019 6,546 9,566 1999年 91 11,581 20,212 31,793 3,066 7,023 10,089 2000年 94 13,404 29,245 42,649 2,809 8,746 11,555 2001年 95 16,217 38,874 55,091 2,831 10,140 12,971 2002年 93 ― ― 76,491 ― ― 16,285 まず、売上の内訳についてみておこう。売上のうち配当金は、前述のように 単勝式・複勝式は 80%、連勝複式・連勝単式は 72%(済州競馬では 70%)で ある。これを控除した金額が運営サイドの馬事会に残ることになるが、そのな かで、馬券税(売上全体の 10%)、教育税(同6%)、農特税(同2%)の合 計 18%が税法にもとづいて無条件に納めることになっている。控除率は 72% と大きいが、税金の割合も非常に大きいといえる。 -35- 残余の 11%(連勝複式・連勝単式、済州競馬では 13%)で諸経費を賄い、 その結果生じた収益に対して民間法人と同じシステムで法人税・所得税がかか るから、日本と比べて相当厳しいといえよう。 これらの税金以外に、収益のなかから社会に還元する経費として、売上の約 2%~3%が充てられる。その事業は、畜産発展基金、農漁村児女奨学事業、 農漁村社会福祉増進事業である。その他の経費としては、運営諸経費(売上全 体の約4%程度)、賞金(同じく約1%程度)、減価償却費などがある。実際 の配分状況について、2002 年実績をもとに示すと次のとおりである。 図表2-6 売上の配分状況 総売上及び入場料その他の収入 配 当 金 馬券・教育 72.0% 農特税 18% (55,398) (13,790) 特別積立金 60% (2,287) 利益準備金 10% (381) 畜産発展基金 80% (1,830) ( )内単位は億ウォン 運営費 賞金 4.1% 1% (3,204) (762) 事業拡張積立金 30% (1,143) 農漁村奨学・福祉事業 20% (457) -36- 収 益 4.9% (3,811) 5.今後の展望 韓国競馬の歴史は、馬匹の国内生産をいかに高めるかの戦いであった。これ まで競走馬は、済州競馬場が済州島産の小馬の国内生産で賄うほか、ソウル競 馬場ではわずかの例外を除いて、8割以上がオーストラリア、ニュージーラン ド、アメリカなどの外国からの輸入で賄ってきた。例えば、1981 年のサラブレ ッドの国内産はわずか8頭であったものが、02 年には 1442 頭にまでなってい る。ソウル競馬場での競走馬では、95 年に国内産はわずか4頭、輸入馬が 604 頭という状態であった。その後 1998 年前後から半数近くを国内で供給できる 体制になってきた。 「韓国馬事会」では競走馬の国内自給率を高めるため、中長期計画を立て、 釜山競馬場がスタートする予定の 2005 年までには 75%にまで高めるべく、 1984 年に京畿道の元堂馬牧場を、95 年には済州島に 65 万坪の牧場を設け、さ らに 99 年から韓国中央部に 84 万坪規模の育成牧場の建設に入っている。2000 年を境に競走馬の自給率は逆転して、過半数を越える状況になっている。 「韓国馬事会」では、これからの方針として、5大スローガンを掲げている。 ①「競馬のイメージアップの革新」のため、社会的公益増進の拡大、経営の透 明性、公正な競馬の施行を図ること、②「競馬ファン第一主義の実現」のため、 競馬ファンの特性に応じたサービス強化、競馬公園でのイベント強化、③「競 馬の大衆化」を目指して、ファンの来場し易い環境作りに努め、配当率引上げ や投票方法の多様化を図ること、④「競馬の先進化」のため、競技運営の改善 や国際交流の活性化を図ること、そして、⑤「内部体制の充実・強化」を図る ため、組織の刷新、責任経営と経営革新の主体的でたゆまない努力を続けるこ と、といった目標である。 「韓国馬事会」では、釜山競馬場のオープンを機にさらに飛躍的に競馬の振 興を図るべく、2002 年実績から 2006 年までに達成すべき目標を、次のように 掲げている。即ち、入場者数は 1628 万人から 2300 万人へ、売上は7兆 6500 億ウォンから 12 兆 3700 億ウォンに、場外発売所は 28 ヶ所から 48 ヶ所に、 子馬の年間国内生産頭数は 915 頭から 1015 頭に、そして競走馬は 1400 頭か ら 2300 頭にという目標である。 -37- 第3節 韓国の競輪 1.韓国競輪の沿革 (1)前史 韓国に自転車が始めて輸入されたのは 1869 年。自転車競技が始まったのは 1913 年といわれている。これは恐らく日本と大差ないであろう。 日本では第二次世界大戦後、競輪が戦災復興という名目で始まり、既に 50 有余年が経った。韓国ではこれがつい数年前にオープンしたばかりである。そ れでは、何故日本で競輪が誕生して韓国ではつい最近までそういう機運がなか ったのか。何故世の中が落ち着いてきて経済成長著しいなか、韓国競輪が立ち 上がったのだろうか。 韓国の人々は気性が激しく、ギャンブルに対してものめり込みやすい民族だ といわれる。儒教的な考え方がまだ日常生活に残っている。例えば、食事の際 には、目上の人が箸をつけるまで誰も箸を持たないなどということがまだある。 身内の年配や会社の上司について、他人に話すときでも敬語を用いる。「社長 さまが仰っておられます」というような言い方になる。社会に役立つため自ら を律し、年長者や目上の人を敬う。こうしたお国柄では、ギャンブルは忌み嫌わ れるはずなのだ。 こうした社会環境にある韓国においては、ギャンブルとしての競輪を生み出 すことにはとうていならなかったであろう。―方、我が国では戦後の荒廃しき った国土の中で、戦災復興という名目で競輪が生み出された。そこには卓越し た先人の仕掛けがあったことが大きな要素であることは間違いない。 韓国競輪の誕生のきっかけは、1988 年に成功裡に終わったソウルオリンピ ック大会と、それに2年先行して行なわれたソウルアジア競技大会に遡る。両 大会が決定した後、ソウルオリンピック委員会は巨大な建設資金を投じて、ソ ウル市内松坡区蚕室の夢村土城跡の 18 万坪敷地を広大なオリンピック公園に して、体育館、フェンシング、水泳、重量挙げ、テニス、自転車競技の6つの施設と 漢江沿い美沙里の漕艇競技場を建設した。これらの施設は、オリンピック大会 -38- 終了後は、その大半がアマチュア競技を中心に有効利用がなされた。 しかしながら、自転車競技場と漕艇競技場はそれほどの需要はなく、施設維 持費も自転車競技場だけで年間5億ウォンかかることから、その有効活用が大 きな議論となった。自転車競技場は、1年に 15 日間だけアマチュア競技大会 などで使用される状態であったといわれている。さりとて、同施設はオリンピ ック大会のメモリアルとして、これを取り壊す議論は世情許されなかった。走 路は特注のアフリカ産木製で、雨や雪に弱いこともあって、整備の必要が差し 迫っていた。約 5000 坪にもなる広大な漕艇競技場も、利用者不在で全く同じ 悩みを抱えていたのだ こうした状況の対応策について、オリンピック公園施設を管理する国民体育 振興公団では、大統領府、国務総理室らとともに幅広い検討を進め、1991 年 になって競輪場への転用が最善であるとの結論に達した。併せて、美沙里の漕 艇競技場も競艇場への整備を進めることを決めた。このように、伝統ある競馬 では、初めから乗馬施設が競馬場に転用されることを前提に建設されたが、競 輪、競艇については全く事情を異にし、これらの施設をもてあましてから対応を 考えるといういきさつであった。 当時の政府所管の体育青少年部(その後、文化観光部所管となる)では、さ っそく法案作りが始まった。韓国関係者は日本の競輪を調査するためたびたび 来日した。法案作業は当然、ギャンブル・アレルギーからくる世論の批判を浴 びた。競馬のような歴史と伝統に支えられた競技と違って、レジャー施設があ りあふれたソウルにあって、経済状況も勢いのある当時に何故競輪なのかとい う批判には、抗弁し難いものがあったであろう。 こうした批判を背にしながら、1991 年夏になんとか競輪と競艇とを一本に した「競輪・競艇法」案がまとまり、年末に国会で可決された。これには当然 健全な国民レジャー産業の育成支援、青少年への保護育成支援、地方自治の確 立支援、自転車関連産業発展支援、農漁業村支援と奨学制度支援などの世論緩和 策が盛り込まれた。成功の背景には、一貫した政府主導による組織作り、委員 会方式による遂行があった。 しかし、法案が通ってからも競輪実施にこぎつけるまでは、さらに苦難の道 があった。1992 年には競輪事業臨時準備団(現競輪運営本部の前身)が組織 -39- 化され、競技場から競輪場への再整備のための設計・施工が始まった。投票用 機器、発売窓口、木製の走路の撤去と周長 333m走路への改修、競走監視用エ ンドレスカメラの設置など、オリンピック施設の保存という前提での最小限の 手直しとはいえ大変な作業であった。一方、地域住民への協力要請や議員への ロビー活動、交通渋滞防止策、競輪の健全なレジャー性の啓蒙活動など、あら ゆる対応策がうたれた。選手・審判その他の運営執務関係者の養成にも力が入 りだしたのはかなり遅れ、法案成立後2年余が経過してからのことであった。 競輪を輸出するという視点で、日本競輪選手会と韓国プロ自転車競技連盟との 交流も始まった。日本の競輪学校で審判養成が始められたのもこの頃であった。 そして4年の歳月を要して、韓国ソウルの地に蚕室(チャムシル、韓国では 「蠶室」)競輪場が竣工、1995 年 10 月 15 日、2000 名の観客が見守るなか、 韓国競輪のオープンセレモニーが挙行され、その後韓国競輪のスタートが切ら れた。初日は7レースで単勝・複勝式に限定し、レース当たり購入限度額も1 万ウォンとされた。世論の批判を浴びないで実施することにすべてのエネルギ ーが傾注されたのである。ちなみに初日の売上高は、1266 万ウォン(日本円に 換算して約 130 万円程度)にすぎなかった。 (2)成長期 ①場外発売所の拡大 1944 年 10 月、粛々とスタートしたソウル蚕室競輪場は、第2回までは土・ 日曜日の各2日間開催、11 月に入って毎週金・土・日曜日の3日開催で、計6 回・16 日開催された。その年はすべて単勝式、複勝式の2投票方法のみに抑制 され、翌年から連勝単式が追加、1997 年から連勝複式がさらに追加されて今 日に至っている。 その間、売上は 94 年が 16 億ウォン、翌 95 年は冬期間(例年 12 月中旬か ら翌年3月初旬)休場したが、1年を通して開催した最初の年で売上は 728 億 ウォンであった。これが 2002 年には2兆 2898 億ウォンと 30 倍を越えており、 毎年ほぼ倍増する形で飛躍的に成長してきたのである。スタート時の2年間は -40- 赤字経営であったが、1996 年以降は黒字決算で、2001 年には 1550 億ウォン の黒字を計上している。 こうした売上高の急上昇の背景には、場外車券発売所の拡充がある。1994 年4月に京畿道水原市内に初めての場外発売所・水原がオープン、98 年にソウ ル上峰と京畿道一山の2ヶ所、99 年にはソウル市内の東大門と長安、京畿道の 盆唐、山本、富川の5ヶ所、そして、2000 年にはいずれもソウル市内で、吉音、 堂山、冠岳の3ヶ所、01 年には大田広域市に大田儒城、03 年春に仁川とソウル 市内に2ヶ所、合計 14 ヶ所となっている。 これらはいずれも繁華街の百貨店など、ショッピングビル2~3フロア―を 借り切る形態となっており、大変賑わっている。建設・運営はすべて、国民体 育振興公団である。 ②2番目の競輪場誕生 ソウルでの競輪が成長し続けているなか、韓国南部の釜山から西方約 50km 離れた昌原市に韓国2番目の競輪場ができた。昌原市は慶尚南道の道庁所在都 市で、人口 50 万人強の新興都市である。その中心に近い運動公園内に競輪場 の建設が始まったのは 1996 年 12 月。翌 97 年に慶尚南道と昌原市との間で、 昌原競輪公団の前身である共同事業体が締結された。そして 1998 年になって、 昌原競輪公団が組織化され、事業認可を申請、同 99 年に事業認可された。昌 原競輪場の誕生は 2000 年 11 月。初の開催は同年 12 月8日で、その日の売上 は3億 9500 万ウォン、3日間で 11 億 7100 万ウォンとまずまずの滑り出しで あった。 昌原競輪場はドーム型・地上5階建て、延べ面積 12,617 坪、一般席 6300 席、特別観覧席 172 席、総収容人員 12,000 名、投票窓口 207 窓と、壮大なも のである。室内走路は1周 333mで、概観は日本の前橋競輪場(グリーンドー ム前橋)にそっくりである。総工費は 720 億ウォンを要したということである。 この昌原競輪場はソウルの国民体育振興団競輪運営本部の協力を得て、選手及 び審判員のあっせんを受け競走を実施しているほか、2001 年1月からはソウ ルの蚕室競輪場でもいわゆる場間場外方式で車券発売を実施することになった。 -41- これによって蚕室競輪場がもっぱら使っていた場外発売所でも場外発売ができ ることになり、売上は一挙に増加したのである。 ③今後の競輪場建設計画 そして第三の競輪場が、03 年3月現在、釜山広域市金井区で建設が進められ ている。2002 年秋に実施された釜山アジア競技大会での自転車競技場を転用 しようというものである。観覧棟は地下1階、地上4回で、延べ面積 11,054 坪、 観覧客2万人収容規模で、2003 年後半のオープンを目指しているとされる。 また、ソウルの蚕室競輪場はアマチュア自転車競技場として造られており、 競輪事業を拡充していくためには新しく競輪場を建設するのが望ましいとして、 国民体育振興公団はソウル特別市南部に隣接する光明市に、競輪専用の全天候 型ドーム競輪場の建設に着手している。建築延べ面積は 20,573 坪、最大3万人 を収容できる大型競輪場が、早ければ 2005 年中に完工することが期待されて いる。 韓国での競輪は、現在このように活況下にあるといえる。しかしながら、釜 山競輪場が出来上がると、お隣の昌原競輪場とは距離的にも近いし、ファンも 競合関係にある。また、ソウルや各場外発売所とのクロスボーティング(場間 場外発売)をどうするかなど、運用上の難しい局面に立たされることは必至で ある。もともとソウル筋では、こうした事情を踏まえて、釜山での競輪場の建 設には消極的であったともいわれる。近い将来、韓国競輪事業は曲がり角を迎 えるかもしれない。 -42- 2.運営主体と運営方法 (1)運営主体 競輪と競艇をまとめて規定しているのは、「競輪・競艇法」(1991年1 2月31日制定法律第4476号)である。これまで3回ほど一部改正が行な われているが、基本的には関連法の改正に連動するものがほとんどで、その大 綱は全く変わっていない。 まず同法の第1条では、「本法は、競輪及び競艇の公正な施行と円滑な普及 を通じて国民のレジャー活動と青少年の健全育成及び国民体育の振興を図り、 地方財政拡充のための財源を作り、自転車及びモーターボート競技レベルの向 上に寄与することを目的とする」と謳われている。つまり同法は、「国民のレ ジャー活動・青少年の健全育成、国民体育の振興」「地方財政拡充」及び「「自 転車・・・競技レベルの向上」の3つの目的を掲げている。日本の競輪の根拠法で ある自転車競技法第1条第1項には、「自転車その他の機械の改良・・・」「体育 事業その他の公益の増進」 「地方財政の健全化」という3本柱の目的があるが、 表現に若干の違いこそあれ、ほぼ重なり合うのは興味深い。 競輪(及び競艇)の施行者としては、「競輪・競艇法」は第4条第1項で、「地 方自治団体、または国民体育振興法により設立されたソウルオリンピック記念 国民体育振興公団が文化観光部長官の許可を得て施行する」としている。つまり、 国民体育振興公団と地方自治体が施行者になり得る。実際、蚕室競輪は国民体 育振興公団、昌原競輪は慶尚南道と昌原市で構成される昌原競輪公団が施行者 である。日本でいう競輪事務組合に類する団体といえよう。また、まもなくお 目見えする釜山競輪場については、釜山広域市の施行が予定されている。 ここで、国民体育振興公団の組織をみておこう(図表2-7)。便宜上、競 艇関係もあわせ紹介することとしたい。 この中で競輪運営本部は、1993 年発足当初は社長、2室、7部、18 課で、役 職員は 74 名であったが、2003 年に組織替えを行い、社長、2常務・1院長、 8部、18 課・1チーム・14 場外発売支店長となっている。人員は正規職員 107 人、専門・技術・特殊技能職の期間契約社員 81 人、審判職 30 人、窓口従事員 -43- (日雇いアルバイト)1226 人で、総勢 1444 名である(02 年 10 月現在)。 図表2-7 国民体育振興公団組織図 (2003年3月1日現在) 体育科学研究院 ゴルフ場運営本部 オリンピックパークテル運営本部 競艇運営 社 長 広報室 常 務 秘書室長 理事長 訓 練 部 審 判 部 公 正 部 競 技 部 管 理 部 競艇支援部 競輪訓練院長 競輪運営本部 社 長 運営常務 経営分析室長 広報チーム 管理常務 競輪ドーム競技場 建設本部 投票・福券事業団 常務理事 広報室 訓 練 部 審 判 部 公 正 部 競 技 部 場外管理部 管 理 部 競輪総務部 競輪支援部 建設事業団 記念事業部 体育振興部 資金管理部 総 務 部 企画調整室 (2)運営方法 競輪の開催は昌原競輪場では、年末年始と8月第1週(競馬が暑さの最も厳 しい8月初頭の第1週を休むため、競輪も混雑回避のため同じように休みとな る)、及び旧盆を除く毎週金・土・日曜日、ソウル蚕室競輪場では、12 月第2 週から翌年3月第1週は冬期休みとするが、あとは昌原競輪場と同じである。 施行者は毎年「競走開催計画書」を作成し、文化観光長官の承認を受ける(競 輪・競艇法第4条第2項)。原則として、1日 13 レース、年 38 回(1回3日) -44- であるが、昌原競輪場では蚕室競輪場と開催が競合する(冬期以外の)日程の ときは、1日の約半分は蚕室競輪場のレースを中継して(場間場外発売として) 車券を発売する。開催時間は 11 時 20 分~18 時 10 分で、冬期は少し早く終わ る。入場料は 400 ウォンである。 競走は1レース当たり7人の選手で、6周回(2025m)。通常の競走は初日、 2日目ともに、特選(S級選手)3レース、優秀(A級選手)5レース、選抜 (B級選手)5レースで、最終日には各級別成績優秀選手を直近上位レースに 勝上げて、決勝1レース、特選3レース、優秀5レース、選抜4レースとする。 各月最終開催時には大賞競走と称し、最終日に各級別決勝3レースを実施する。 毎年 12 月最終開催では、成績優秀選手による特別競輪であるオールスター競 輪を実施する。優勝者には 2000 万ウォンの賞金が出る。―方、日本で最高額 の賞金は競輪グランプリで、優勝者賞金はなんと 7000 万円である。単純比較 では、韓国は日本のわずか3%弱の賞金ということになる。 勝者投票は、法律上は「競輪・競艇法」第9条第1項で、単勝式、複勝式、 連勝複式、連勝単式の4種類のほかに特別勝式という合計5種類の投票方法が 認められている。しかし、実際にははじめの4種類に限定されている。これら の投票方法はすべて7車立て・車番制で、日本のように複数の選手が1つの枠 に入る枠番方式はない。売上は当初、連勝単式と連勝複式の占有率が相半ばし ていたが、2002 年で前者が 79.3%、後者が 20.6%と、連勝単式の人気が高ま っていることがわかる。―方、単勝式と複勝式は極端に不人気であることは、 日本の場合と同じである。 的中者に払い戻す配当金(還給金)の割合は70%である。投票はすべてマ ークカードに記入し、発売単価は最低 100 ウォンから最高 50 万ウォンまでで ある。的中者への払戻しは、競馬と同じように金券で発行される。その金券で 車券を購入することもできるし、換金窓口で現金と両替もできる。勝車投票券 の消滅時効は、発売日から 1 年である。 蚕室競輪場にも一応外国人専用室があるが、10 席程度で競馬ほどは充実して いない。新競輪場には本格的な外国人専用室が設置される予定である。 競輪選手は 2002 年 12 月現在 373 人で、その内訳はS級1班 30 人、2班 29 人、3班 30 人、A級1班 46 人、2班 46 人、3班 48 人、B級1班 51 人、2 -45- 班 48 人、3班 45 人である(S級、A級、B級の順に選手の実力が高い)。 競輪選手と審判は、競輪訓練院(慶尚北道栄州市に設置)で1年間の教育と 実技指導を受ける。1994 年9月に1期生 112 人が育って以来、現在 10 期生が 訓練中である。当初は 112 人、82 人と多かったが、最近は 50 人前後の卒業生 の輩出にとどまっている。 -46- 3.売上・入場者数と収益配分 (1)売上高・入場者数 韓国競輪は競馬とは違い、売上高・入場者数とも急増してきた。 ソウルの蚕室競輪について 1995 年と 2002 年を比較してみると、開催は 95 年が 34 回 102 日、売上高は 728 億ウォン、入場者数は約 57 万人であったが、 02 年には 38 回 113 日、2兆 2898 億ウォン、約 463 万人である。8年間で実 に売上高は 30 倍以上、入場者数は8倍伸びたことになる。この間、毎年売上を 落としてきた日本の競輪とは全く逆の動きになっている。 図表2-8 開催期間 回数 日数 蚕室競輪の売上高・入場者数 1994 年 10.15~ 11.27 6回 16 日 売 上 高 入場者数 1995 年 3.24~ 12.3 34 回 102 日 1996 年 3.15~ 12.8 38 回 117 日 (売上高の単位は、百万ウォン) 1997 年 3.14~ 12. 7 39 回 117 日 1998 年 3. 6~ 12.6 40 回 118 日 1,673 72.820 185,139 299,988 338,449 61,410 573,282 1,245,388 1,613,663 2,104,958 1999 年 2.26~ 12. 5 40 回 119 日 2000 年 3. 3~ 12.3 40 回 119 日 2001 年 3. 2~ 12. 9 39 回 115 日 2002 年 3. 8~ 12. 8 38 回 113 日 595,583 1,224.339 1,738,918 2,289,798 3,407,966 3,543,765 1,738,918 4,626,928 ―方、昌原競輪は 2000 年 12 月スタートであるから、01 年と 02 年との比 較になるが、01 年が開催 50 回 150 日、総売上高 4186 億ウォン、入場者数 74 万人に対して、1年後の 02 年には開催 49 回 147 日、7967 億ウォン、89 万 人で、売上高はほぼ倍増している。昌原競輪の売上高、入場者数は図表2-9の とおりである。 -47- 図表2-9 昌 原競輪の売上高・入場者数(売上高の単位は、百万ウォン) 回数 日数 売 上 高 入場者数 2000 年 4回 12 日 2001 年 50 回 150 日 2002 年 49 回 147 日 6,549 418,582 2,289,798 31,659 737,347 796,736 (2)収益の社会還元 競輪事業者である国民体育振興公団と昌原競輪公団は、競輪事業による売上 金から各種税金を納めるほか、運営経費を控除した残りの収益金を体育振興、 青少年育成、中小企業・産業振興および地方財政支援のために拠出しなければな らない。つまり、収益配分は2段階のステップを踏む。まず1段階は売上金か らレジャー税 10%、教育税6%、農漁村特別税2%、合計 18%を納付する。 その根拠はそれぞれの税法上に定めをおいている。この税は収益の多寡には関 係なく納付しなければならない。配当金としての 70%は、払い戻すための財源 であるから、残りは 12%である。 次に、この 12%の金額から運営経費を支出する。「競輪・競艇法」第 13 条 によると、開催による運営経費は「発売金額の 100 分の 20 を越えられない」 としているが、すでに、売上の 30%のうち税金で 18%控除されており、残り は 12%しかないので、20%を越えてはならないとする意味はあまりない。そ れはともかく、運用経費は売上高のおよそ4%程度で推移している。したがっ て、12%から4%を差し引いた8%前後が収益金となる。 その収益金は、ⅰ.国民体育施行基金・青少年基本法による青少年育成基金 及び工業発展法による産業基盤基金への出捐、 方財政拡充支援、 ⅱ.地方体育振興などのため地 ⅲ.その他の文化観光部長官が認める公益事業、の目的で使 用しなければならない(「競輪・競艇法」第 15 条第1項)と定められている。 その配分比率は法施行令第 19 条に規定があり、国民体育振興基金は国民体 育振興公団は 40%、地方自治体である昌原競輪公団は 10%、青少年育成基金 は国民体育振興公団が 30%、昌原競輪公団は 10%、地方財政支援は国民体育 -48- 振興公団が 10%、昌原競輪公団は 60%、中小企業振興・産業基盤基金はいず れの事業体も 17.5%、文化観光部長官が認める公益事業青少年育成基金もいず れも 2.5%である。 蚕室競輪の 2002 年実績をもとに実際の配分状況をみると、以下のとおりで ある。2002 年総売上高は2兆 2897 億 9800 万ウォン、配当金が 70%の1兆 6028 億 5800 万ウォン。残る 6869 億 4000 万ウォンのうち、レジャー税 10% の 2289 億 8000 万ウォン、教育税6%の 1373 億 8800 万ウォン、農漁村特別 税2%が 457 億 9600 万ウォンで、税金合計 4121 億 6400 万ウォンとなる。 そして残余の 2747 億 7600 万ウォンに入場料や昌原競輪の場外発売手数料等 の収入を含めた総額に、所得税と入場料税が課せられる。さらに、運営経費と して人件費(205 億 3300 万ウォン)、賞金(126 億 7300 万ウォン)、管理費 (413 億 1100 万ウォン)、減価償却費、損失保全準備金など差し引いた収益金 額が 2263 億 7700 万ウォンということになる。この額から、上述のとおり、 国民体育振興基金以下の各種公益振興に使われることになる。 -49- 4.今後の課題 韓国で競輪がスタートして9年目。売上急増とともに第2第3の競輪場が誕 生し、ソウルでも新しく巨大ドーム競輪場の建設が始まっている。華やかな競 輪の話題である。 しかしながら 2002 年2月、韓国で一部競輪選手と競輪運営本部担当課長ら 30 数名が八百長レース容疑で逮捕されるという事件が発生した。事件は前年に 遡るものであったようだが、運営サイドまで逮捕者がでたためセンセーショナ ルに報道された。また、それ以前になるが、審判判定をめぐるトラブルでファ ンが騒ぎ出し、収拾するのに手間取って夜遅くまでかかったという事故も発生 している。 我が国でも同様に、急成長をとげながらもこうした事件や事故が相次いで発 生し、競輪の存廃論をにぎわした時代があった。韓国でもいま同じ洗礼を少な からず体験しているといえるのである。また、依然としてギャンブル批判がく すぶっており、これに対する対策も必要とされている。 このように、韓国における競輪は必ずしも順風満帆というわけでもない。韓国 での関心事は大きく、内部運営上の課題と対外的な課題とに分けられる。 内部の問題とは、八百長など不正の防止と競技の改善である。そのためレー ス分析体制を敷いて、不自然なレース、消極的な走行をする選手のチェック、 特定の選手に有利な競走をしたり妨害をして競走を不利にさせようとしたりす る、いわゆる助力レースの処分の強化を図っている。また、ドーピング検査の 導入も図られている。一方、選手賞金の改善に着手し、下位着位に配慮した賞 金の改正が行われている。 競技の改善で大きな課題は、選手のライン競走を是認するかどうか、という 問題である。日本での競輪競走は、9人の選手が通常は3グループに分かれて、 それぞれのグループが組んで、相互に相手の力を利用しながら、競走を有利に 運ぼうとする。そして、どういうグループになって、どういう競走を展開する かを、レース前にファンに見せている。同県選手であるとか、競輪学校同期で あるとかで、グループができる。韓国では現在のところ、そうした競走は見ら れない。個人競走に徹している。これではファンが競走の推理をするという面 -50- 白さが半減するとして、あらかじめ出走選手の間でグループを定めておこうと いう考え方も出てきている。日本の場合は、自然発生的に出来上がったもので、 果たして運営者側が人為的にグループを指定して走らせることができるのか疑 問であるが、前向きに検討が進められているようである。 もう1つの課題は、対外的なものである。韓国内のギャンブル・アレルギーを どう緩和するか、という問題である。これについて、韓国ではギャンブル依存 症、特に競輪については競輪中毒者という言葉もあるが、その中毒者に対するケ ア施設をすでに設置している。中毒問題研究院という専門的な研究所もあり、 中毒医学的な研究も進んでいる。競輪にのめり込んで土地家屋などの財産まで なくしてしまう人が話題になるらしい。果たして、ケア施設に飛び込む中毒者 がいるのかは疑問ではあるが、そうしたケアをやっているということがギャン ブル・アレルギーの緩和剤になっているといえようか。 また、主に場外発売所拡大のための施策といえるが、地域住民に語学や趣味 の講座、文化教室を場外施設で無料または低価格で提供することなどが盛んに 行われている。 韓国の競輪を観察していると、日本での競輪の歴史を想起させることが多い。 急成長しながらも、たえず問題を抱えているのである。先輩であるべき日本の 競輪関係者がもっと韓国競輪に近づいて、相互に交流してくれることを韓国で は望んでいる。交流が進めばそのことによって、日本の競輪を見つめ直す良き きっかけとなるかもしれない。 -51- 第4節 韓国の競艇 1.韓国競艇の沿革 韓国競艇は 2002 年6月にオープンしたばかりである。蚕室競輪場のあるソ ウル特別市江東区の東側に隣接する河南市美沙洞にあり、ソウルを縦断する漢 江沿いにある。その地名をとって美沙里競艇場と呼ばれる。漢江対岸で少し下 ったところには、カジノで有名なホテル「シェラトンウォーカーヒル」がある。 「競輪・競艇法」が成立したのが 1991 年だから遅れること 10 年余のスター ト。韓国競輪が誕生したのが 1994 年 10 月だから、それから8年が経過してい る。この理由として、自転車と違ってモーターボートのエンジンの開発が非常 に遅れたこと、競輪場と違って整備の範囲が広大であったこと、国民体育振興 公団が競輪を優先させ、その実施状況も勘案しながら最終的な実施の判断を見 極めたかったこと、などが挙げられるという。 実際、競艇事業計画チーム(1チーム7人体制)で発足したのが 1998 年 11 月のことであった。競輪がようやく定着しはじめた頃である。翌 99 年3月、 競艇事業および競艇場の設置許可を文化観光部長官に申請している。半年後の 9月、上の計画チームが競艇準備団に模様替えし、12 月に緑地帯(グリーンベ ルト)開発許可と整備事業の工事許可、2000 年4月には競艇事業施行の許可お よび競艇場設置許可が下りることになった。これを受けて、同年7月に国民体 育振興公団は競艇運営本部を設置した。競艇場の観覧棟及び関連施設の建設に 着工したのが、2ヵ月後の9月のこと。1年3ヶ月かけて 2002 年1月に竣工、 同年6月のオープンを決定した。 2002 年6月 18 日、韓国競艇が始まった。しかし、オープンを目前に控えて いた矢先、国民体育振興公団トップの贈収賄事件が発覚、逮捕されるという不 祥事が起こり、マスコミでセンセーショナルに伝えられた。このため一時はオ ープンも危ぶまれ、延期も取りざたされたが、派手な行事を取りやめて粛々と 初開催を迎えることになった。比較的段取りよく進んできたのに、最後になっ てつまずいた感じのほろ苦い船出であった。 -52- 2.運営状況 美沙里競艇場で競艇事業を実施するのは、国民体育振興公団の競艇運営本部 である。同組織の概要は、前節で紹介したとおり。社長、常務ほか 70 人の役 職員と、発売窓口従事者ら非常勤勤務者 373 人で運営されている(2003 年3 月現在)。 オープン時の 02 年は、船券売上高見込み 162 億 3600 ウォン、入場料収入 2億 3400 万ウォンなど収入が 172 億 1300 万ウォン、支出は 326 億 8700 万 ウォンと、154 億 7400 万の赤字予算でスタートしている。もっとも実際の 02 年の売上高は 1223 億 2900 万ウォンであったから、ほぼ一桁多いうれしい見 込み違いとなった。 入場料は競輪と同じで 400 ウォン。船券は競輪と全く同じで、単勝式、複勝 式、連勝複式、連勝単式の4種類のみで、1競走当たり6艇で競走が行われる。 1日8~10 レースである。第1レースは昼の 12 時 30 分スタート、夏場はナ イターで午後5時から始まる。開催は、毎週火曜・水曜日の2日間のみである。 その理由として、競艇場のある一帯は 43 万坪を擁する広大な公園になって おり、土日には公園内に人が繰り出して混雑すること、土日勤務者で平日に休 みをとる人も少なくないので、そういう人にも公営ギャンブルを楽しんでもら うためということであった。 しかしながら、実は将来的に競輪の場外発売所を有効利用したいことから、 競輪開催日の金・土・日曜日及びコンピュータの整備と立上げに必要な競輪開 催の前後1日(つまり、月曜日と木曜日)を外して、火曜・水曜日の平日開催 になったもののようである。現に 2003 年3月からは、ソウルの上峰、長安、 および、大田儒城の競輪場外発売所で競艇の場外発売が行われているほか、あ と2ヶ所で発売の準備に入っている。いずれにしても、平日開催であることと、 週に2日間であることから、韓国競艇は初めから厳しい運営を強いられている。 競艇選手は 2003 年3月現在 88 人で、上位からA級1班が 10 人、2班が4 人、B級1班が7人、2班が 67 人となっている。B級2班が多いのは、競艇 訓練院(美沙里競艇場内)を出たばかりの新人が多いからである。年2回級班 審査期間があり、その成績に応じて昇降級が決定する。これまで過去2回、訓 -53- 練院卒業生を出しており、03 年現在3期目 21 人はすべて女子である。まもな く女子競艇選手がお目見えすることになる。この女子選手が、競艇の目玉と考 えられている。 施設関係に目を向けると、競艇場敷地面積は約7万 1000 坪で、競艇水面は 3万坪、観覧棟、運営棟などの敷地面積が4万 1000 坪である。主要施設は、 4100 人収容の観覧棟で2階立て、それぞれ階段状の観覧席がある。このほか、 大型電光掲示板、管理棟、競艇訓練院などがある。駐車場は 1000 台収容の競 艇場専用のほかに、公園施設としての駐車場がある。 ボートは、全長 2950mm、幅 1346mm、総重量 116kg、モーターは排気 量 429cc、2サイクル2気筒、最大速力時速 75km、最高出力 30 馬力であ る。すべて韓国国内生産で供給しているという。 売上はオープンしてまだ1年になっていない状況であるが、売上は1日平均 約 24 億ウォン、入場者数は1日平均約 9000 人である。売上は日本の競艇場の 平均値に近いが、入場者はやや多いようである。今後、場外発売が拡大するに つれて、売上規模は拡大していくはずである。また、週2回の平日開催の拡大 によっても売上は左右される。 収益配分であるが、これは競輪と全く同じで、売上金からレジャー税 10%、 教育税6%、農漁村特別税2%、合計 18%を納付する。残る 12%の金額から 運営経費を差し引いた残額の収益金は、国民体育施行基金、青少年育成基金、 産業基盤基金、地方財政拡充支援、その他の公益事業の支援を行う。当面、赤字 予算で推移することになるが、その場合にも赤字分を何年かに分けて返済する 形をとり、これらの支援は実施されることになっている。 韓国の競艇はまだ始まったばかり。新たな競艇場建設についてはいくつか俎 上にはのぼっているが、現段階では具体的な建設計画は出ていないようである。 -54- 参考資料1 韓国馬事会法 制 定 1962 年 1 月 20 日法律第 10125 号 全面改正 1990 年 8 月 1 日 法律第 4251 号(全文改正) 一部改正 1990 年 12 月 27 日法律第 4268 号(政府組織法の改正に伴う改正) 一部改正 1993 年 3月 6日 法律第 4541 号() 一部改正 1999 年 12 月 31 日法律第 6091 号 一部改正 2001 年 1 月 29 日法律第 6400 号(政府組織法の改正に伴う改正) 一部改正 2001 年 12 月 31 日法律第 6572 号 第1章 総則 第 1 条(目的) 本法は、韓国馬事会の組織・運営と競馬に関する事項を定め、競馬の公正な実施と円滑 な普及を通じて、馬事の振興及び畜産の発展に寄与することを目的とする。 第 2 条(定義) 本法で使用する用語の定義は、次のとおりである。 1.「競馬」とは、騎手が騎乗した馬の競走の勝馬投票券を発売し、勝馬的中者に還給 金を交付する行為をいう。 2.「競走馬」とは、競走に出走する目的で韓国馬事会に登録した馬をいう。 3.「馬主」とは、競走馬を所有しているか、所有しようとする目的で韓国馬事会に登録 した者をいう。 4.「調教師」とは、韓国馬事会の免許を得て、競走馬を管理し、訓練する者をいう。 5.「騎手」とは、韓国馬事会の免許を得て、競馬施行時に騎乗する者をいう。 6.「勝者投票券」とは、競馬施行時に勝馬を的中させ、還給金の支給を受けようとする 者の請求により、韓国馬事会が発売する勝馬投票方法、馬番及び金額等が記載されて いる票券をいう。 7.「還給金」とは、出走馬の到着順位が確定したときに、韓国馬事会が勝馬投票券発売 金額のうち、発売収得金及び諸税等を控除した後、勝馬的中者又は勝馬投票券を購入 -55- した者に交付する金額をいう。 8.「単位投票金額」とは、勝馬投票券の発売単位で最低発売金額をいう。 9.「購買券」とは、競馬開催のときに、勝馬投票券の購入の便宜を図るため、韓国馬事 会が発行する金額、固有番号及び消滅時効等が記載されている勝馬投票券と交換でき る票券をいう。(新設 2001.12.31) 第2章 競馬の施行 第3条(競馬の開催) ①競馬は、第 18 条の規定に基づいて設立された韓国馬事会(以下、「馬事会」という) が開催する。 ②馬事会が競馬を開催しようとするときは、競馬場毎の競馬開催の範囲、競走の種類及び 競走馬の出走基準等に関する事項は、大統領例で定める。(改正 2001.12.31) 第 4 条(競馬場) ①馬事会が競馬場を設置しようとするときには、大統領令が定める条件を満たした上、農 林部長官の許可を得なければならない。(改正 2001.12.31) ②農林部長官は、競馬場の設備が不適合で、競走場内の秩序の維持や競馬の公正性の確保 に支障があると認めたときには、馬事会に対して、設備の変更その他の必要な設置を命 じることができる。(改正 99.12.31) 第 5 条(入場料) ①馬事会は、競馬を開催するときに競馬場に入場する者に対して入場料を徴収することが できる。 ②第1項の規定による入場料の徴収対象、徴収方法及び金額に関する必要な事項は、農林 部令で定める。(改正 99.12.31) 第 6 条(勝馬投票券の発売等) ①馬事会は、競馬を開催するときに競馬場内で勝馬投票券(以下、「馬券」という。)を 発売することができる。 -56- ②馬事会は、競馬場以外の場所で馬券の発売業務等を取り扱うため、施設を設置しようと する場合には、農林部長官の承認を得なければならない。農林部長官の承認を得て設置 した施設(以下、「場外発売所」という。)を移転させるときも同様とする。 ③第1項の規定に基づいた馬券の単位投票金額、発売方法及び第2項に基づく場外発売所 の 施設基 準、 取り扱 う事 務等に 関す る必要 な事 項は、 大統 領令で 定め る。( 改正 2001.12.31) 第6条の2(購買券) ①馬事会は、馬券を購入しようとする者の要請がある場合、購買券の発売ができる。 ②購買券は、馬券の購入以外の目的に使用できない。 ③購入券を所持した者が、購買券の買戻しを要求するとき、馬事会は買い戻さなければな らない。 ④第1項に基づいた馬券の購入請求権と第3項に基づいた購買券の買戻し請求権の消滅 時効は1年間とする。(本条新設 2001.12.31) 第7条(勝馬投票方法) ①勝馬投票方法は、単勝式・複勝式・双勝式・連勝式・複連勝式・三複勝式・重単勝式及 び特別勝馬式の8種とする。(改正 2001.12.31) ②第1項の規定に基づいた各勝馬投票方法の勝馬決定・実施方法等に関する必要な事項は、 農林部令で定める。(改正 99.12.31) 第8条(還給金) ①馬事会は、勝馬投票の的中者に対して、大統領令に定める方法に基づいて、当該競走に 関する勝馬投票券の発売金額のなかで、還給金を交付しなければならない。 ②勝馬投票の的中者がない場合は、大統領令の定めにより、馬券を購入した者にこれを還 給しなければならない。但し、勝馬が2以上の勝馬投票方法において、一部勝馬に関す る勝馬投票の的中者がない場合は、当該勝馬に関する還給金は、他の勝馬投票の的中者 に均分して交付しなければならない。(改正 99.12.31) ③第1項及び第2項に基づいた還給金の債権の消滅時効は1年間とする。 -57- 第9条(発売収得金) 馬事会は、馬券の発売金額において農林部長官が定める比率の金額を競馬施行による運 営経費として収得できる。この場合において、収得金額は発売金額の 100 分の 20 を超え ないものとする。(改正 99.12.31) 第 10 条(投票の無効) ①馬券を発売したあと、当該競走において、次の各号の1に該当する理由が発生した場合 には、当該競走に対する投票は無効とする。 1.出走すべき馬が一頭のみとなり又はなくなった場合 2.競走が成立しなかった場合 3.当該勝馬投票方法による競走に勝馬がない場合 ②発売された馬券に表示された番号の馬が出走しない場合には、その馬に対する投票は無 効とする。 ③第2項の規定により投票が無効となる馬の範囲は、各投票方法別に農林部令で定める。 (改正 99.12.31) ④第1項又は第2項の規定により無効となった馬券を所持する者は、馬事会に対して購入 金額の返還を請求できる。 ⑤第4項の請求権の消滅時効は、当該勝馬投票券の発売日から1年間とする。 第 11 条(馬主の登録等) ①馬を競走に出走させようとする者は、馬事会に登録しなければならない。 ②馬事会は、馬主が次の各号の1に該当する場合は、6ヶ月の範囲内で期間を定めて、そ の活動の停止を命じることができる。 1.住民登録事項(法人にあっては名称、住所、代表者及び定款)の変更があるとき、14 日以内に馬事会への変更の申告をしない場合。 2.正当な事由なく6ヶ月以上続けて競走馬を所有しない場合 3.その他の職務上の順守義務に違反するか、品位を損なう場合 ③馬事会は、馬主が次の各号の1に該当するときには、第1項に基づいた登録を取消すこ とができる。 1.死亡した場合 -58- 2.第4項第1号乃至第3号の1に該当する場合 3.禁固以上の刑に処せられた場合 4.第2項の規定による馬主活動の停止命令に従わないか、2回以上の停止命令を受けた 場合 5.馬事会の役職員になるか、競馬事務に従事する場合 6.調教師、騎手及び馬の管理員になる場合 7.その他、競馬の公正性を著しく阻害する行為として農林部で定めた事項 次の各号の1に該当する者は、第1項の登録ができない。(新設 2001.12.31) 1.禁治産者又は限定治産者 2.復権が許されていない者 3.本法の規定に違反して罰金以上の刑を宣告された者 4.禁固以上の刑を宣告され、その執行が終了し(執行が終了したと認められる場合も含 む)又は執行を受けなくなって 5 年が経過していない者 5.禁固以上の刑を宣告され、その執行猶予の期間が完了した日から 2 年が経過していな い者 第 12 条(競走馬の登録) 競馬に出走させようとする馬は、馬事会に登録しなければならない。 第 13 条(服色の登録) ①競馬施行のときに騎手が着用する衣服の色合い及び図柄は、馬事会に登録されたものに 限る。 ②第 1 項の規定による衣服の色合い及び図柄の登録に関して必要な事項は農林部令で定め る。(改正 1999.12.31) 第 14 条(調教師・騎手の免許等) ①競走馬の調教又は騎乗をしようとする者は、馬事会から調教師又は騎手の免許を得なけ ればならない。 ②競走馬の装蹄をしようとする者は、馬事会に登録しなければならない。 ③第1項又は第2項の規定による免許又は登録の要件・取消し等に関して必要な事項は、 -59- 馬事会がこれを定める。 第 15 条(登録料及び免許手数料) 馬事会は、第 11 条乃至第 14 条の規定による登録又は免許を受けようとする者に対して、 登録料及び免許手数料を徴収することができる。 第 16 条(特別登録料) ①馬事会は、特別競馬に馬を出走させようとする馬主に対して特別登録料を徴収すること ができる。(改正 2001.12.31) ②第1項の規定による特別登録料は、全額を該当競馬の賞金に含めなければならない。 第 17 条(開催執務委員) 馬事会が競馬を開催しようとするときは、当該競馬に関する事務を執行するため、大統 領令に定めにより開催執務委員を設置しなければならない。 第3章 韓国馬事会 第1節 設立 第 18 条(設立) 第1章の目的を達するための事業を効率的に行うため韓国馬事会を設立する。 第 19 条(法人格) 馬事会は法人とする。 第 20 条(事務所及び住所) ①馬事会の主たる事務所の所在地は定款で定める。 ②馬事会はその業務の遂行上必要な場合には支事務所を置くことができる。 ③馬事会の住所は主たる事務所の所在地とする。 -60- 第 21 条(登記) ①馬事会は、主たる事務所の所在地で次の事項を登記することにより成立する。 1.目的 2.名称 3.主たる事務所及び支事務所の所在地 4.設立の年月日 5.資産の総額 6.会長、副会長、常任理事、理事及び常任監事の住所・氏名 ②第1項の各号の事項を変更するとき又は支事務所を設置するときは、主たる事務所と支 事務所の所在地に登記しなければならない。 ③第2項の規定による登記すべき事項は登記完了前には第三者に対抗できない。 ④第1項乃至第3項で規定された事項以外の登記に関する必要な事項は大統領令で定め る。 第 22 条(類似名称の使用禁止) 本法に定める馬事会以外の者が、韓国馬事会又はこれに類似する名称を使用してはなら ない。 第 23 条(定款) ①馬事会の定款には、次の事項を記載しなければならない。 1.目的 2.名称 3.主たる事務所及び支事務所の所在地 4.役員及び職員に関する事項 5.事業及びその執行に関する事項 6.資金の借入れ、資産及び会計に関する事項(改正 2001.12.31) 7.理事会に関する事項 8.定款変更に関する事項 9.公告の方法 -61- ②馬事会は、定款を変更しようとするときは農林部長官の許可を得なければならない。 (改 正 1999.12.31) 第 24 条(規程) ①馬事会は、法令と定款の範囲内で次の事項に関して規程を定めることができる。 1.競馬施行に関する事項 2.会計に関する事項 3.役人の報酬、職人の定数、任免及び給与に関する事項。 ②馬事会は、第1項の事項に関する規程を定めるとき又は変更しようとするときは、農林 部長官の承認を得なければならない。(改正 2001.12.31) 第2節 役員と職員 第 25 条(役員) 1.会長 1名 2.副会長2名 3.常任理事5名以内 4.理事 10 名以内 5.常任監事1名 第 26 条(役員の職務) ①会長は、馬事会を代表して馬事会の業務を総括する。 ②副会長は、会長を補佐し、会長に事故あるときその職務を代行する。 ③常任理事は、会長と副会長を補佐し、定款に定める方法にしたがって馬事会の業務を代 行する。 ④会長、副会長ともに事故あるとき定款に定める常任理事がその職務を代行する。 ⑤理事は、理事会に付議された議案を審議し、議決に参与する。 ⑥常任理事は、馬事会の財産と業務執行状況を監査する。 第 27 条(役員の任命) -62- ①会長、副会長及び常任監事は、その職務に必要な学識と経験が豊富な者のなかから農林 部長官が任命する。(改正 1999.12.31) ②常任理事及び理事は、その職務に必要な学識と経験が豊富な者のなかから会長が農林部 長官の承認を得て任命する。但し、大統領令に定めてある員数の常任理事は馬事会の職 員のなかから任命しなければならない。(改正 1999.12.31) 第 28 条(役員の任期) 役員の任期は 3 年とする。(改正 2001.12.31) 第 29 条(役員の欠格事由) ①次の各号の1に該当する者は馬事会の役員になれない。 1.大韓民国の国民でない者 2.国家公務員法第 33 条各号に該当する者 3.馬事会に登録された馬主 ②役員は、第1項の各項の1に該当するか、任命時に該当することが判明したときは、当 然に退職したものとみなされる。(新設 2001.12.31) ③第2項の規定により退職した役員が退職前に関与した行為は、その効力を失わないもの とする。(新設 2001.12.31) 第 30 条(兼職の禁止) 馬事会の常任役員は、営利を目的とする団体の役員になること又は営利事業に従事する ことはできない。但し、農林部長官の許可を得た場合はその限りでない。(改正 1999.12.31) 第 31 条(代表権の制限) ①馬事会は、会長、副会長、常任理事又は理事との利益が相反する事項に関しては、常任 監事が馬事会を代表する。 ②第1項の規定は、馬事会と会長、副会長、常任理事又は理事との訴訟に関してこれを準 用する。 -63- 第 32 条(理事会) ①理事会は、会長、副会長、常任理事及び理事で構成する。 ②理事会は会長が招集し、会長がその議長になる。 ③次の事項は、理事会の議決を得なければならない。 1.事業計画及び収支予算 2.決算 3.定款の変更 4.不動産の処分 5.規程の制定及び変更(改正 2001.12.31) 6.資金の借入れ(改正 2001.12.31) 7.その他、農林部長官の許可、認可又は承認を得なければならない。 (改正 1999.12.31) ④理事会の会議は、構成員の過半数の出席と出席者の過半数の賛成で議決する。 ⑤常任理事は理事会に出席し意見を述べることができる。 第 32 条の2(競馬発展委員会) ①競馬の発展と馬事会の運営に関して諮問するため、馬事会に競馬発展委員会を置く。 ②競馬発展委員会は、委員長を含めて 15 名以内の委員で構成し、委員長は委員のなかか ら互選する。 ③競馬発展委員会の委員は、次の各号の者から会長が委嘱する。(改正 2001.12.31) 1.競馬と関連がある政府部署の関係公務員 2.馬事会に登録した馬主及び調教師、騎手の代表者 3.競走馬の生産者の代表者 4.競馬に関する専門性と経験が豊富な者 ④競馬発展委員会の運営等に関して必要な事項は、農林部長官の承認を得て馬事会が定め る。(本条新設 1999.12.31) 第 33 条(職員の任免) 馬事会の職員は会長が任免する。 第 34 条(代理人の選任) -64- 会長は、役員又は職員のなかで馬事会の事務に関して一切の裁判上又は裁判以外の行為 をする権限を持つ代理人を選任することができる。 第 35 条(民法の準用) 民法第 35 条の規定は馬事会に関してこれを準用する。 第3節 事業及び会計 第 36 条(事業の範囲) 馬事会はその目的を達成するため次の事業を行う。 1.競馬の施行に関する事業 ア.競馬の開催 イ.馬、馬主及び服色の登録 ウ.調教師、騎手の免許及び装蹄をしようとする者の登録 エ.騎手の育成と訓練 2.馬事の振興に関する事業 ア.馬の改良、増殖、育成及びその技術開発と普及 イ.馬の保健及び衛星に関する研究 ウ.馬の利用に関する指導、奨励 3.畜産法第 35 条の規定に基づいた畜産発展基金への出捐(改正 2001.12.31) 4.競馬場のなかで簡易体育施設及びレジャー施設の設置、運営 5.家畜の競走を用いて行う類似競馬事業 6.第1号ないし第4号の事業と関連を持つ事業を遂行する法人への投資、出捐、補助 第 37 条(事業計画等の承認) 馬事会は、毎年度末までに次年度の事業計画及び収入支出予算に対して農林部長官の承 認を得なければならない。これを変更しようとするときも同様とする。 第 38 条(事業年度) 馬事会の会計年度は政府の会計年度による。 -65- 第 39 条(借入金) 馬事会は、必要な場合に定款の定めにより資金の借入れをすることができる。(改正 2001.12.31) 第 40 条(資金の運用) 馬事会は、次の方法以外の方法で資金を運用しようとする場合は、農林部長官の承認を 得なければならない。(改正 99.12.31) 1.金融機関への預金。 2.国・公債その他農林部長官が定める有価証券の取得。 第 41 条 (財産の処分の制限) 馬事会は、所有不動産を譲与、交換又は担保の提供をしたり、権利を放棄しようとする 場合は、農林部長官の承認を得なければならない。(改正 99.12.31) 第 42 条 (損益金の処理) ①馬事会は、毎事業年度決算の結果、収益が生じた場合は、次の順序で処理しなければな らない。 1.繰越損失金の補填。 2.資本金の 100 分の 50 に達するまで収益金の 100 分の 10 を利益準備金へ積立て。(改 正 2001.12.31) 3.資本金と同額に達するまで収益金の 100 分の 30 を競馬事業拡張積立金へ積立て。(改 正 2001.12.31) 4.特別積立金へ積立て。 ②馬事会は、毎事業年度決算の結果、損失が生じた場合は、第 1 項第 4 号の特別積立金で 補填し、特別積立金で不足する時は第 1 項第 3 号の競馬事業拡張積立金、第 1 項第 2 号 の利益準備金の順序で補填する。 ③第 1 項第 2 号及び第 3 号の規定に基づいた利益準備金と競馬事業拡張積立金は、資本へ 転入できる。 ④第 1 項第 4 号の特別積立金は、大統領令が定める方法により畜産発展、農漁民子女奨学 -66- 事業その他農漁村社会福祉増進に必要な経費に充当する。(改正 2001.12.31) ⑤馬事会は、第 2 項及び第 3 項の規定に基づいた積立金をしようとする場合は、農林部長 官の承認を得なければならない。(改正 2001.12.31) 第 43 条(決算書の提出) ①馬事会は、会計年度の終了後 3 ヶ月以内に前会計年度の決算書を農林部長官に提出しな ければならない。(改正 99.12.31) ②第 1 項の規定による決算書には、次の各号の書類を添付しなければならない。 1.財務諸表とその付属書類 2.その他、決算の内容を確認するために必要な書類 第4節 監 督 第 44 条(命令・処分及び検査) ①農林部長官は、本法を施行するため必要と認めるときは、馬事会に対してその事務に関 する監督上必要な命令又は処分をすることができる。(改正 99.12.31) ②農林部長官は、必要と認めるときは、馬事会から報告を受けたり、農林部所属の公務員 に馬事会の事務所、競馬場の事務状況又は帳簿・書類その他の必要な物件を検査するこ とができる。(改正 99.12.31) ③第2項の規定により検査をする公務員は、その権限を表示する証票を持ち、これを関係 者に提示しなければならない。 第 45 条 (理事会出席) 農林部長官が指定する公務員は馬事会の理事会に出席し、意見を述べることができる。 (改正 99.12.31) 第 46 条(役員の解任) 農林部長官は馬事会の役員が、次の各号の1に該当する場合、当該役員を解任できる。 但し、第 1 号に該当する場合は解任しなければならない。(改正 99.12.31) 1.第 29 条の各号の1に該当する場合。 -67- 2.本法及び本法に基づく命令又は定款の規定に違反した場合。 3.心身の障害で職務を遂行できない場合。 第4章 補 則 第 47 条(競馬場の取り締り) ①馬事会は、競馬場の秩序維持と競馬の公正性を確保するため必要な措置をしなければな らない。 ②第 1 項の措置に関して必要な事項は大統領令で定める。 第 48 条(類似行為の禁止) 馬事会でない者は、馬券又はこれと類似したものを発売したり、勝馬投票的中者に対し て金銭を交付する競馬をしてはならない。 第 49 条(馬券の購買制限等) ①未成年者に対して馬券の発売をしてはならない。 ②次の各号の1に該当する者は、馬券を購入したり、その斡旋をしてはならない。 1.競馬に関する監督の地位の者。 2.馬事会の役職員。 3.調教師・騎手・馬匹管理員。 4.競馬開催の業務に従事する者(馬事会と契約により競馬開催の業務に従事する者を 含む) 第5章 罰則 第 50 条 (罰則) 次の各号の1該当する者は、3年以下の懲役又は 1 千万ウォン以下の罰金に処する。(改 正 2001.12.31) 1.第 48 条の規定に違反した者。 2.本法による競馬に関して営利の目的で賭博をした者又はこれを幇助した者。 -68- 3.馬事会の役員、職員若しくは競馬に関する事務に従事する者又は監督の地位にある 者として第2号の規定による行為の相手方となった者。 第 51 条 (罰則) 次の各号の1該当する者は、5年以下の懲役または1千万 500 万ウォン以下の罰金に処 する。(改正 2001.12.31) 1.出走する馬の能力を一時的に高めたり、抑制するために薬品を使用した者。 2.競馬に関して財物又は財産上の利益を得たり、他人の利益のために競走において全 能力を発揮させなかった騎手。 第 52 条(罰金の併科) 第 50 条及び第 51 条に規定した懲役刑と罰金刑は併科することができる。 第 53 条 (罰則) ①調教師・騎手・馬匹管理員が、その業務に関して不正な請託を受け、財物又は財産上の 利益を授受、要求又は約束した場合は、5 年以下の懲役または1千万 500 万ウォン以下 の罰金に処する。(改正 2001.12.31) ②調教師・騎手・馬匹管理員が、第1項の罪を犯して不正な行為をした場合、7年以下の 懲役または2千万ウォン以下の罰金に処する。(改正 2001.12.31) 第 54 条(罰則) 調教師・騎手・馬匹管理員が、その業務に関して不正な請託を受け、第三者に財物又は 財産上の利益を供与させたり、供与の要求又は約束した場合は、5 年以下の懲役又は 1 千 万 500 万ウォン以下の罰金に処する。(改正 2001.12.31) 第 55 条(罰則) 第 53 条及び第 54 条に規定する財物又は財産上の利益を約束、供与又は供与の意思を表 示した者は、2 年以下の懲役または 500 万ウォン以下の罰金に処する。(改正 2001.12.31) 第 56 条(没収・追徴) -69- 第 53 条乃至第 55 条の財物はこれを没収する。但し、財物を没収することが不可能又は 財産上の利益を得た場合には、その価額を追徴する。 第 57 条(資格停止の併科) 第 53 条乃至第 55 条の罪には、10 年以下の資格停止を併科できる。 第 58 条 (罰則) 偽計又は威力を用いて競馬の公正を妨害したり、公正な施行を妨害した者は、5年以下 の懲役または 1 千万 500 万ウォン以下の罰金に処する。(改正 2001.12.31) 第 59 条(罰則) 第 49 条の規定に違反したものは、1 年以下の懲役又は 300 万ウォン以下の罰金に処す る。(改正 2001.12.31) 第 60 条 (未遂犯) 第 50 条及び第 51 条の未遂犯は処罰する。 第 61 条 (過怠料) ①次の各号の1に該当する者は、100 万ウォン以下の過怠料に処する。但し、第1号乃 至第3号、第5号及び第6号の規定は、馬事会の役員又は第 17 条の規定による開催 執務委員に限るものとする。 1.第3条第2項・第 15 条・第 16 条第1項・第 27 条第2項・第 37 条・第 39 条乃至第 41 条・第 42 条第5項の規定に基づいて、農林部長官の承認を得なければならない事 項に対して承認を得ていない者。(改正 99.12.31) 2.第4条第1項の規定による許可を受けないで競馬場を設置した者。 3.第4条第2項又は第 44 条第1項の規定による命令に違反した者。 4.第 22 条の規定に違反した者。 5.第 42 条第2項又は第4項の規定に違反した者。 6.第 44 条の第2項による報告をしなかったり、虚偽の報告した者又は検査を拒否・妨 害若しくは忌避した者。 -70- ②第1項の規定による過怠料は、農林部長官が賦課・徴収する。(改正 99.12.31) ③第1項の規定による過怠料の処分に不服がある者は、その処分があることを知った日か ら 30 日以内に農林部長官に異議を申し立てることができる。(改正 1999.12.31) ④第1項の規定による過怠料の処分を受けた者が、第3項の規定により異議を申し立てた 場合は、農林部長官は直ちに管轄裁判所にその事実を通報し、通報を受けた管轄裁判所 は、非訟事節次法による過怠料の裁判を行う。(改正 99.12.31) ⑤第3項の規定による期間内に異議を申し立てないで過怠料を納付しないときは、国税滞 納処分の例によりこれを徴収する。 付則 (省略) -71- 参考資料2 競輪・競艇法 制 定 1991 年 12 月 31 日法律第 4476 号 一部改正 1993 年 3 月 6 日 法律第 4541 号(政府組織法の改正に伴う改正) 一部改正 1959 年 11 月 22 日法律第 4977 号(工業発展法の改正に伴う改正) 一部改正 1997 年 12 月 13 日法律第 5453 号(行政手続法の施行による公認会 計士法の整備に関する法律の改正に伴う改正) 一部改正 1999 年 1 月 21 日法律第 5655 号 一部改正 1999 年 2 月 8 日法律第 5825 号(産業発展法の改正に伴う改正) 第1章 総則 第 1 条(目的) 本法は、競輪及び競艇の公正な施行と円滑な普及を通じて、国民のレジャー活動と青少 年の健全育成及び国民体育の振興を図り、地方財政拡充のための財源を作り、自転車及び モーターボート競技レベルの向上に寄与することを目的とする。 第 2 条(定義) 本法で使用する用語の定義は、次のとおりである。 1.「競輪」とは、自転車競走の勝者投票券を発売し、勝者投票の的中者に還給金を交 付する行為をいう。 2.「競艇」とは、モーターボート競走の勝者投票券を発売し、勝者投票の的中者に還給 金を交付する行為をいう。 3.「勝者投票券」とは、競輪又は競艇の開催において、勝者を的中させ、還給金を交付 しようとする者の請求により、競輪又は競艇事業者が発売する勝者投票方法、選手番 号及び金額等が記載されている票券をいう。 4.「還給金」とは、競輪又は競艇選手の到着順位が確定したときに、競輪又は競艇運営 者が発売する勝者投票券発売金額のうち、発売収得金及び諸税等を控除した後、勝者 的中者又は勝者投票券を購入した者に交付する金額をいう。 -72- 第 3 条(他の法律との関係) 勝者投票券の発売においては、射倖行為の規制及び処罰特例法を適用しなければならな い。(改正 99.1.21) 第2章 競輪及び競艇の施行等 第 4 条(競輪及び競艇の施行) ①競輪又は競艇(以下「競走」という)は、地方自治団体又は国民体育振興法により設立 されたソウルオリンピック記念国民体育振興公団(以下「振興公団」という)が文化観 光部長官の許可を得て施行する。(改正 93.3.6、99.1.21) ②第 1 項の規定に基づき競走施行の許可を得た者(以下「競走事業者」という)は、毎年 競走開催計画書を作成し、文化観光部長官の承認を得なければならない。 (改正 93.3.6、 99.1.21) 第 5 条(競走場の設置等) ①競走事業者は、競輪場又は競艇場(以下、「競走場」という)を設置しようとするとき には、大統領令が定める条件を満たした上、文化観光部長官の許可を得なければならな い。これを変更しようとするとき(文化観光部令が定める軽微な事項は除外)もまた同 じである。(改正 93.3.6、99.1.21) ②文化観光部長官は、競走場の設備が不適合で、競走場内の秩序の維持や競走の公正性の 確保に支障があると認めたときには、競走事業者に対して、設備の変更その他の必要な 設置を命じることができる。(改正 99.3.6、99.1.21) ③(削除 99.1.21) ④第 1 項の規定により競走場の設置許可を受けた者が許可を受けた日から 1 年以内に正当 な理由もなくその競走場の設置に着手しないときは、文化観光部長官はその許可を取消 すことができる。(改正 93.3.6、99.1.21) 第 5 条の 2(聴聞) 文化観光部長官は、第 5 条第 4 項の規定により競走場の設置許可を取消そうとするとき には、聴聞を実施しなければならない。(本条新設 97.12.13) -73- 第 6 条(選手・審判及び用具の登録等) ①競走に出走する選手及び審判として従事しようとする者は、振興公団に登録しなければ ならない。但し、次の各号の1に該当する者は登録できない。 1.禁治産者・限定治産者又は破産宣告を受けて復権されていない者。 2.この法の規定に違反し罰金以上の刑の宣告を受けて復権していない者。 3.禁固以上の刑の宣告を受けて、その執行が終了するか、執行を受けないことが確定し てから 5 年が経過していないもの。 ②競走に選手として出走したり、審判として従事しようとする者の資格・選抜・登録及び 訓練等に関する必要な事項は大統領令で定める。 ③競走に使用される自転車及びモーターボートは、振興公団に登録しなければならない。 ④競走に使用される自転車及びモーターボートの種類・規格・用具・検査及び登録に関す る必要な事項は文化観光部令で定める。(改正 93.3.6、99.1.21) ⑤振興公団は、第1項及び第3項の規定に基づき登録する者に対して、文化観光部令が定 めた手数料を徴収できる。(改正 93.3.6、99.1.21) 第7条(入場料) ①競走事業者は、競走を開催するときに競走場に入場する者に対して入場料を徴収するこ とができる。 ②第1項の規定による入場料の徴収対象及び金額等に関する必要な事項は、文化観光部令 で定める。(改正 93.3.6、99.1.21) 第8条(勝者投票券の発売) ①競走事業者は、競走を開催するときに勝者投票券を発売できる。 ②競走事業者は、競走場以外の場所での勝者投票券の発売、還給金及び返還金の支払事務 等を処理するための施設(以下、「場外売場」という)を設置しようとする場合には、 文化観光部長官の許可を受けなければならない。これを移転させるときも同様とする。 (改正 93.3.6、99.1.21) ③勝者投票券の単位投票金額・発売方法及び場外売場の施設基準等に関する必要な事項は、 大統領令で定める。 -74- 第9条(勝者投票方法) ①競走の勝者投票方法は、単勝式・複勝式・連勝式・双勝式及び特別勝式の5種とする。 ②第1項の規定による各勝者投票方法の勝者決定方法等に関する必要な事項は、大統領令 で定める。 第 10 条(還給金) ①競走事業者は、勝者投票の的中者に対して、大統領令に定める当該競走に関する勝者投 票券の発売金額のなかで、還給金を交付しなければならない。 ②第1項の規定による還給金額が勝者投票券の券面金額に満たない場合には、その券面金 額を還給金額とする。 ③勝者投票の的中者がない場合の勝者投票券の発売金は、大統領令の定めにより、勝者投 票券を購入した者にこれを還給しなければならない。 ④第1項及び第3項の規定による還給金を支給することで 10 ウォン未満の端数がある場 合には、5ウォン未満はこれを切り捨て、5ウォン以上は 10 ウォンに切り上げる。(改 正 99.1.21) ⑤第4項の規定により端数処理した結果、利益が生じる場合はこれを競走事業者の収入と し、損失が生じる場合はこれを競走事業者の支出とする。((本条新設 99.1.21) 第 11 条(投票の無効) ①勝者投票券を発売したあと、当該競走において、次の各号の1に該当する理由が発生し た場合には、当該競走に対する投票は無効とする。 1.出走すべき選手が一人のみとなり又はなくなった場合 2.競走が成立しなかった場合 ②第9条第1項の規定による勝者投票方法のうち、該当勝者がいない場合には、その勝者 投票方法による投票は無効とする。 ③発売された勝者投票券に表示された番号の選手が出走しない場合には、その選手に対す る投票は無効とする。 ④第3項の規定により投票が無効となる選手の範囲は、各投票方法別に大統領令で定め る。 -75- ⑤第1項乃至第3項の規定により無効となった勝者投票券を所持する者は、競走事業者に 対して購入金額の返還を請求できる。 第 12 条(消滅時効) 第 10 条の規定による還給金の債権及び第 11 条第5項の規定による購入金額の返還請求 権は、勝者投票券の発売日から 1 年間これを行使しない場合に時効によって消滅する。 第 13 条(発売収得金) 競走事業者は、勝者投票券発売金額において文化観光部令に定める比率の金額を競走開 催による運営経費として収得できる。この場合において、収得金額は発売金額の 100 分の 20 を超えないものとする。(改正 93.3.6、99.1.21) 第 14 条(損失保全準備金) ①競走事業者は、勝者投票券発売金額の 100 分の 1 を超えない範囲で、文化観光部令の定 めにより損失補填準備金を積み立てなければならない。(改正 93.3.6、99.1.21) ②競走事業者は、第1項の規定による損失保全準備金を損失補填に当てる場合には、文化 観光部長官の承認を得るものとする。(改正 93.3.6、99.1.21) 第 15 条(収益金の使用) ①競走事業者は、競走の施行による収益金を次の各号の目的で使用しなければならない。 (改正 93.3.6、95.11.22、99.1.21) 1.国民体育振興法による国民体育振興基金・青少年基本法による青少年育成 基金及び 工業発展法による産業基盤基金への出捐 2.地方体育振興などのため地方財政拡充支援 3.その他の文化観光部長官が見とめる公益事業 ②第1項の規定による収益金の配分及び使用等に関する必要な時効は大統領令で定める。 第 16 条(競走事業の委託) ①競走事業者は、必要と認めるとき文化観光部長官の承認を得て、競走事業を大統領令で 定める団体又は個人に委託できる。(改正 93.3.6、99.1.21) -76- ②競走事業者は、第 1 項の規定により競走事業を委託するときは、競走事業の委託を受け たもの(以下、「受託事業者」という)に対して、大統領令で定める基準に相当する金 額の委託運営経費を支給しなければならない。 ③受託事業者は、毎年、競走事業の運営計画及び収入・支出計画を競走事業者に提出しな ければならない。 第 17 条(競走運営委員) 競走事業者(第 16 条の規定による受託事業者を含む。以下同じ。)は、競走に関する 事務を執行させるために、大統領令の定めによる競走運営委員をおかなければならない。 第3章 補則 第 18 条(競走場での取締り等) ①競走事業者は、競走の公正な運営と競走場の秩序維持等のために必要な措置をとらなけ ればならない。 ②第1項の規定による措置に関する必要な事項は、大統領令で定める。 第 19 条(選手及び審判の福祉等) ①競走事業者は、競走に出走する選手・審判、その他の競走に従事する者の福祉と安全の ために必要な措置をとらなければならない。 ②第1項の規定による福祉及び安全の措置等に関する必要な事項は大統領令で定める。 第 20 条(命令・処分及び検査) ①文化観光部長官は、本法を施行するために必要と認められるときは、競走事業者に対し て、監督上必要な命令又は処分を行うことができる。 ②文化観光部長官は、必要と認めるときは、競走事業者に対して競走事業に関する報告を させたり、所属公務員に競走事業者の事務所又は競走場に立ち入り、帳簿・書類その他 の物件を検査できる。(改正 93.3.6、99.1.21) ③第2項の規定により検査する公務員は、その権限を表示する証票を所持し、これを関係 者に見せなければならない。 -77- 第 21 条(類似行為の禁止) 競走事業者でない者は、勝者投票券又はこれと類似したものを販売したり、勝者投票的 中者に対して金銭を交付する競走をしてはならない。 第 22 条(勝者投票券の購入制限等) ①競走事業者は、未成年者に対して勝者投票券を販売してはならない。 ②次の各号の1に該当する者は、勝者投票券を購入、その他斡旋したり、譲り受けたりし てはならない。 1.競走に関する監督の地位にある者 2.競走事業者 3.第6条第1項の規定により選手又は審判として登録された者 4.その他、競走運営に従事する者 ③第2項第1号及び第4号に該当する者の範囲は、大統領令で定める。 第4章 罰則 第 23 条(罰則) 偽計又は威力を用いて競走の公正を妨害したり、公正な施行を妨害した者は、5 年以下 の懲役又は1千 500 万ウォン以下の罰金に処する。(改正 99.1.21) 第 24 条(罰則) ①次の各号の1に該当する者は、3年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。 (改正 99.1.21) 1.第 21 条の規定に違反した者 2.本法による競走に関して営利の目的で賭博をする者又はこれを幇助した者 3.第 22 条第2項第1号・第2号及び第4号に該当する者として第2号の規定による行 為の相手方となった者 ②第1項の未遂犯は処罰する。 -78- 第 25 条(罰金の併科) 第 24 条第1項の場合には、懲役刑と罰金刑はこれを併科できる。 第 26 条(罰則) ①選手又は審判が、その業務に関して不正に請託を受けて財物又は財産上の利益を収受・ 要求又は約束をしたときは、5年以下の懲役又は1千500万ウォン以下の罰金に処す る。(改正 99.1.21) ②選手又は審判が、第1項の罪を犯し、不正な行為をしたときは、7年以下の懲役又は2 千万ウォン以下の罰金に処する。(改正 93.3.6、99.1.21) 第 27 条(罰則) 選手又は審判が、その業務と関連して不正な請託を受け、第3者に財物又は財産上の利 益を供与したり供与を要求又は約束したときは、5年以下の懲役又は 1 千万ウォン以下の 罰金に処する。(改正 99.1.21) 第 28 条(罰則) 第 26 条及び第 27 条に規定した財物又は財産上の利益を約束・供与又は供与の意思を表 示した者は、2年以下の懲役又は 500 万ウォン以下の罰金に処する。(改正 99.1.21) 第 29 条(没収・追徴) 第 26 条乃至第 28 条の財物はこれを没収する。但し、財物を没収するのが不可能であっ たり、財産上の利益を得たときは、その価格を追徴する。 第 30 条(資格停止の併科) 第 26 条乃至第 28 条の罪には、10 年以下の資格停止を併科することができる。 第 31 条(罰則) 第 22 条第 1 項及び第2項の規定に違反した者には、1年以下の懲役又は 300 万ウォン の罰金に処する。(改正 99.1.21) -79- 第 32 条(過怠料) ①次の各号の1に該当する者は 100 万ウォン以下の過怠料に処する。(改正 93.3.6) 1.第4条第1項、第5条第1項又は第8条第2項の規定により文化観光部長 の許可を受けるべき事項について許可を受けていない者 2.第4条第2項、第 14 条第2項又は第 16 条第1項の規定により文化観光部 長官の承認を得なければならない事項について承認を得ていない者 3.第5条第2項又は第 20 条第1項の規定による命令に違反した者 4.第 20 条第2項の規定による報告をしなかったり虚偽の報告をした者又は 検査を拒否・妨害又は忌避した者 ②第1項の規定による過怠料は文化観光部長官が賦課・徴収する。 (改正 93.3.6、99.1.21) ③第2項の規定による過怠料処分に不服がある者は、その処分の告示を受けた日から 30 日以内に文化観光部長官に意義を申し立てることができる。 ④第2項の規定により過怠料処分を受けた者が第3項の規定により異議を申し立てたと きは、文化観光部長官は直ちに管轄裁判所にその事実を通報しなければならない。その 通報を受けた管轄裁判所は非訟事件節次法による過怠料の裁判を行う。(改正 93.3.6、 99.1.21) ⑤第3項の規定による期間内に異議を申し立てないで過怠料を納付しないときは、国税滞 納処分の例によりこれを徴収する。 付則 (省略) -80-
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