高速無線LAN用2周波共用広帯域平面アンテナ Dual Frequency Broad band Planar Antenna for High-Speed Wireless LAN Systems たまくま かずお 電気工学専攻(修士課程) 102168 玉熊 一雄 移動体通信工学研究 指導教員 岩崎 久雄 1.まえがき 表1 無線LANで使用している周波数 近年、ノートパソコン等の携帯情報端末の通信システ ムとして高速無線 LAN が主に利用されている。現在、 無線 LAN に使用されている周波数帯は、2.4GHz 帯と 5GHz 帯の2つの周波帯である。また、ノートパソコン 等に無線 LAN が標準搭載される動向にあり、携帯情報 端末に内蔵するための小型・薄型アンテナが盛んに研究 されている[1]。本論文では、携帯情報端末に無線 LAN を内蔵して利用することを目的とした、2.4GHz 帯と 5GHz 帯で動作する2周波共用広帯域平面アンテナを提 案している。三次元電磁界シミュレータを用いて、提案 する平面アンテナの動作メカニズムを明らかにすると ともに、アンテナ特性を明確にした。 フレーム 無線LAN用アンテナ ディスプレー 2.無線LANで使用している周波数 表1に無線LANで使用している周波数を示す。これ より、VSWR≦2 の帯域幅は、2.4GHz 帯で 100MHz、 5GHz 帯で約 1GHz となる。この帯域幅を目標とする。 周波数 2.4~2.5GHz 4.9~5.25GHz 5.15~5.875GHz IEEE802.11b/g IEEE802.11a(日本) IEEE802.11a(欧米) 図1 アンテナ搭載のイメージ L2 h2 d2 t2 L1 h1 3.提案する平面アンテナの構造および動作 t1 d1 w2 w1 i 図1に本アンテナ搭載のイメージを示す。ノートパソ コンにアンテナを搭載する場合、放射素子は液晶ディス プレイのフレームの部分に内蔵される。そこで放射素子 の大きさを、フレームの内部に収まる程度の大きさとし た。図2に提案するアンテナの構造を示す。本アンテナ は、地導体板の一辺の右側に、高さt1、長さL1の逆F の導体1と、左側に高さt2、長さL2の逆Lの導体2か ら構成されている。導体2は導体1とオーバーラップす る様に配置する。放射素子の寸法はt2×W である。地 導体板の寸法はH×Wである。同軸ケーブルで導体1と 地導体板間に給電する。給電点から導体1の左端の長さ で共振し、5GHz 帯で動作する。一方、給電点から導体 2の右端の長さで共振し、2.4GHz 帯で動作する。よ って、2周波化が図れる。 導体2 導体1 給電点 H 地導体板 Z Y X W 図2 アンテナの構造 5 4.解析結果 4 VSWR Ansoft‐HFSSを用いて解析した。文献[1]では、 地導体板と導体1の1周波フィルムアンテナが報告さ れている。そこで、導体2を配置した時のVSWRの変 化を解析した。図3に導体2の有無によるVSWRを示す。 導体2により、2.4GHz帯と5GHz帯の2周波で共振 していることが分かる。導体2を配置した本アンテナの 共振周波数は、1周波アンテナの共振周波数4.6GHz に比べて、5.65GHz と高くなっている。これより、 1周波アンテナとは異なる動作をしていることが分か る。本アンテナの動作を確認するために、2.42GHz と5.65GHzの電界分布を解析した。電界分布より、5 GHz帯では地導体板と導体1の間で、給電点から導体1 の左端で共振している。2.4GHz帯では、給電点から導 体1の左端を折り返して、導体2の右端で共振している。 よって、本アンテナはスロットアンテナの様に動作する ことが分かった。このアンテナのVSWR≦2の帯域幅は 3 導体2なし 2 導体2あり 1 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 Frequency[GHz] H=W= 30 , L1= 22 , h1= 3 , t1= 4 , d1= 1 , w1= 2 i=8 , L2= 15 , h2= 4 , t2= 9 , d2= 1 , w2= 2 単位:mm 図3 導体2の有無によるVSWR 0 2.4GHz帯で200MHz、5GHz帯で1GHzが得られ た。図4に放射指向性を示す。2.4GHz帯のピーク利得 は0.1dBiで、Y軸方向に放射している。5GHz帯のピ ーク利得は4.9dBiである。以上の結果より、2.4GHz 帯と5GHz帯に要求される帯域幅を満たすことが分か った。更に、5GHz帯では周波数のずれ等を考慮すると、 より広帯域なアンテナが求められる。 0 10 330 30 0 300 10 330 X-Y面 X-Z面 Y-Z面 60 60 -10 90 -20 270 -10 120 240 120 0 210 0 150 10 210 150 10 180 180 f = 2 . 42 GHz 図5に5GHz 帯の広帯域化を行ったアンテナの構造 を示す。このアンテナは、図2に示したアンテナの導体 1に幅S、長さL0のスリット2を設け、導体1を2本 にする。5GHz 帯は、給電点から導体1と地導体板間お よび、導体1のスリット1とスリット2で2共振させる ことで広帯域化することができると考えられる。 90 -20 -10 240 5.広帯域化したアンテナの構造および動作 X-Y面 X-Z面 Y-Z面 300 -10 270 30 0 f = 5 . 65 GHz 図4 放射指向性 導体2 L2 h2 h1 s 6.広帯域化したアンテナの解析結果 t2 図6にL0をパラメータとしたVSWRを示す。スリ ット2により、5GHz 帯が2共振化し、L0=21mm では、4.83GHz と6.23GHz で共振することが分か る。図1のアンテナでは、5GHz 帯のVSWR≦2の帯 域幅は1GHz であった。図5のアンテナでは、L0=2 1mm において、2.4GHz 帯で70MHz、5GHz 帯で 2.43GHz の帯域幅が得られた。以上より、スリット 2を設けることで、5GHz 帯を広帯域化できることが分 かった。図7にL0=21mm における、各共振周波数 の放射指向性を示す。各共振周波数のピーク利得は、2. 48GHz で−1.20dBi 、4.83GHz で3.32dBi 、 6.23GHz で4.14dBi となり、5GHz 帯の指向性は、 ほぼ同じであることも分かった。 w2 導体1 L1 d2 L0 w0 t1 h0 d1 w1 i 給電点 スリット1 スリット2 H 地導体板 Z Y X W 図5 5GHz帯を広帯域化したアンテナの構造 7.まとめ 5 L0 =16mm 4 L0 =21mm L0 =18mm VSWR 本論文は、高速無線 LAN 用の2周波共用広帯域平面 アンテナを提案し、三次元電磁界シミュレータを用いて 動作メカニズムを検討した。導体1と導体2を共にオー バーラップする様に配置することで、アンテナを2周波 化できることを示した。また、5GHz 帯の広帯域化とし て、導体1にスリット2を設けることで、5GHz 帯が2 共振化され広帯域化できることを示した。 3 L0 =20mm 参考文献 2 [1]池ケ谷他、「2.4GHz 帯モバイル機器内蔵用フィル ムアンテナ」日立電線、No21(2002-1) [2]玉熊・岩崎、「高速無線LAN用2周波共用広帯 域平面アンテナ」2003 信学ソ大、B−1−178 1 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 Frequency[GHz] 謝辞 H=30 , W= 25 , L1= 22 , L2= 10 , t1= 3.5 , t2= 8 , s= 1 , d1= 1 d2= 1 w0= 2 , w1= 3 , w2= 2 , h0=0.5 , h1= 1 , h2= 3.5 , i = 8 単位:mm 本研究を進めるにあたり、熱心な御指導を賜りまし た岩崎久雄教授に深く感謝の意を表します。 図6 L0をパラメータにしたVSWR 0 330 10 0 30 0 300 330 X-Y面 X-Z面 Y-Z面 60 300 90 60 270 180 f = 2.48GHz 300 90 60 270 120 210 10 90 -20 240 120 0 150 X-Y面 X-Z面 Y-Z面 -10 240 0 30 0 -10 120 10 -10 -20 -10 240 10 330 X-Y面 X-Z面 Y-Z面 -10 -20 210 0 30 0 -10 270 10 0 150 180 f = 4.83GHz 図7 広帯域化したアンテナの放射指向性 210 10 180 150 f = 6.23GHz
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