空荷でも気分はアメリカ西海岸 アウトドア派のクルマと言えば、SUVやキャンピングカー、 そしてミニバンが相場でしたよね。 でもアメリカではこれがスタンダード。そう、ピックアップトラックです。 398万円という戦略的な価格にもそそられます! TEXT/AKIRA TAKEI[竹井あきら] PHOTO/TAKAYOSHI MATSUMOTO[松本高好] ピックアップトラックはいつだって、アメリカの トしたり突き上げがキツいなんてことは全然な 広大な大地に降り注ぐビッカビカの太陽光をま い。むしろハンドリングがシャキッとして走りや とっている。こっち方面めっぽう造詣が浅いのだ すいくらいだ。搭載される、エクスプローラー けど、漠然と、しかし鮮烈にそんな印象が刷り込 「 X L T 」と 同 じ 2 1 3 p s / 5 1 0 0 r p m と まれていて、夏っぽさに目を細めてしまう。いっぽ 35.1mkg/3700rpmを発生する4リッターV6 うでその夏っぽさは、底抜けにノー天気なおバ SOHCエンジンは十二分にパワフルで、組み合 カっぽさともイメージが重なっていて、だからこの わせられる5段ATもまたクレバー。2230kgの車 エクスプローラー・スポーツトラックのまともさに 重をものともせず、独立フレームの恩恵もあって はちょっと驚いてしまった。 か大仰な騒音や振動とも無縁に、ごく自然に走 走行感覚と後席に拍手 こちら日本ではじゅうぶん重量級だけど、本国 アメリカではライトSUVの正統派として名高い、 エクスプローラーをベースとしたピックアップ版 ーキのおかげで、きちんと走れる以上にきちん と止まってくれる。予想以上に、大人っぽくスマ ートな走りなのであった。 ホイールベースは425mm、全長で440mm、 がこのスポーツトラック。さらっと流してしまった ベースとなるエクスプローラーより長いが、内輪 が、エクスプローラーをベースにってところがキモ 差にちょっと気を配ってやるくらいの気遣いの上 で、トラック的粗野なところがないのがすごい。 乗せでじゅうぶん。前方の見切りのよさにも助 屈強なラダーフレームを採用するも、サスペンシ けられ、大物ゆえの運転のしづらさはたいして感 ョンはちゃんと4輪独立懸架を採って、乗用らし じない。走行中の安定感と、とくに後席の快適 いふるまいをみせてくれる。 な広さを思えば、ホイールベースの延長はいい その足回りはエクスプローラーより硬めにセッ 086 る。対する制動力もまた、大径のディスクブレ ことばっかりだ。 ティングされているということだが、乗り心地はト そう、この後席には拍手。ダブルキャブの後 ラック的なものではなく、空荷で走ってもゴトゴ 席なんてしょせんペラペラのシートに直立した背 087 パウンド) と呼ばれ 後にぜーったいこのクルマくらいゴツいカレが る、防水性/耐腐 いるぞ、気をつけろっ! 食性に優れた素材 まあそのへんの事情をクリアすれば、もうバ が使用され、見て ンバン遊びまくるしかない。サーフィン、ウインド、 触れてみるだに頑 ダイビングにシーカヤック。とりあえず海水のま 丈で、泥も海水も んま積めちゃって、後でジャバジャバ洗えるベッ どんと来 いという ドってすごい。一回海に入っちゃってからポイン 風 体 である。しか ト移動するなんて時の気分がグッと軽くなる。 し無骨なばっかり つまりはいい思いする確率が上がる。泥んこの でもなく、床 下 収 ダウンヒルライダーも、漁港でざっと道具を洗お 納よろしく、排水用 うと思ったら海水の蛇口しか見つからない上に のドレンプラグまで きれいにしてきたつもりなのにコマセ臭(いわゆ 用意された大小3 るコマスメル) に悩まされてる釣り師のみなさん もたれで窮屈、もっぱら手荷物置き場で、人を つの一体形成型ボックスもしつらえられていて、 も、さあごいっしょに。しかも友だちや家族も気 乗せるのはエマージェンシー、そんな認識は星 収納にうるさいママも納得の気配り上手。 分よくドライブできるんだもの、ああ夢のよう。 一徹のちゃぶ台返し並に覆される。ゆったりと 雨、風、盗人から荷物を守ってくれるハード した足元のスペースに、ふっくらたっぷりとした トノーカバーが標準設定されているのもうれし シート。シートバックもきちんと厚みがあって、ゆ い。このカバーのハードっぷりを実際目にする だけどそんなにまともな使い方ばっかりじゃな ったりとした角度もある。家族を乗せなきゃいけ と、ピックアップはかっこいいけど荷物むき出し くて、MTVのカスタマイズ 番 組「 PIMP MY ないお父さんも堂々と手が出せるクルマなのが じゃな……って心配はご無用ってことになる。 RIDE」ばりにおバカなこともしたいところ。番組 うれしいじゃないですか。 めちゃめちゃ分厚くてハード。しっかり鍵もかか ではピックアップのベッドに卓球台やピンボー 上質感もありながら、頼りがいのあるゴツさも る。ただし重たくて作業位置も高いので、小柄 ルマシンを作っちゃって「クールだろ」っていって 表現したインテリアは守られてるかんじが濃厚。 女子(私)には開閉作業はハードすぎた。前後 たりしたけど (ってアホな!) 、このスポーツトラッ きっとアメリカのキビシい風土に育てられたであ に2分割されたカバーを片方だけ持ち上げるの クならリッチな風体を生かしつつ、ニッポンらし ろうこの「守られ感」 、たとえば悪天候で撤収を が精一杯。全面を持ち上げて取り外すとなる さもアレンジしたいところ。ベッドをジャグジー 余儀なくされたキャンプのときとか、めちゃめちゃ と絶対無理っていうレベルにハード。オプショ にしてどこでも露天風呂とか、畳敷きにして風炉 頼りがいがあるだろうなぁ。キャビンの床はラバ ンでいいのでガタイのいい男子、欲をいえば見 を置いて移動茶室とか、ああ、なんか夢が広が ー素材でドロドロでも気が引けないし、こんな 目麗しいのをひとり付けてくれるとうれしいんで るぅ。そんな夢想をしつつ、空っぽのベッドに楽 心強い後ろ盾があれば、うっかり大自然に飛び すが。別のいい方をすれば、このクルマに乗っ しい気分だけを満載して走るのも、またおつな 込んで行けそうな気がする。 た細身のかわいい女子を見かけたら、その背 ものです。 ベッドに夢を載せて 泥も海水もドーンと来い! さてスポーツトラックの本題、荷台である。荷 台のことはベッドと呼ぶそうだ。知らなかったけ どなんかかっこよさげなので私も今日から訳知 り顔でそう呼ばせてもらう。えー、このベッドの パネルにはSMC(シート・モールディング・コン 搭載されるパワーユニットはエクスプローラー XLTと同じ4RV6SOHC(213ps・35.1mkg) 。5段ATを介して4輪を駆動する。全長5370×全幅1870×全高1840mm。インテリアはカジュア ルすぎることもなく適度な高級感を醸す。さらに、後席にも充分な空間が用意されている。まっすぐ走っている限り、 トラックに乗っていることを忘れてしまうかもしれない。ただし、ホイールベ ースが3315mmもあるから狭い路地などでは内輪差に注意が必要。ハードトノカバーは標準装備となる。新車価格:398万円。 088 089
© Copyright 2024 Paperzz